ポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAと記すこともある)は、広範な微生物によって生成されるポリエステル型有機分子ポリマーである。これらのポリマーは生分解性を有し、熱可塑性高分子であること、また、再生可能資源から産生されることから、環境調和型素材または生体適合型素材として工業的に生産し、多様な産業へ利用する試みが行われている。
現在までに数多くの微生物において、エネルギー貯蔵物質としてポリエステルを菌体内に蓄積することが知られている。その代表例としては3−ヒドロキシ酪酸(以下、3HBと記すこともある)のホモポリマーであるポリ−3−ヒドロキシ酪酸(以下、P(3HB)と記すこともある)が挙げられる。P(3HB)は1925年にBacillus megaterium内で最初に発見された。P(3HB)は熱可塑性高分子であり、自然環境中で生物的に分解されることから、環境にやさしいプラスチックとして注目されている。しかし、P(3HB)は結晶性が高いために硬くて脆い性質を持っていることから実用的には応用範囲が限られる。応用範囲を広げるためには、P(3HB)に柔軟性を付与することが必要である。
その中で、3HBと3−ヒドロキシ吉草酸(以下、3HVと記すこともある)とからなる共重合体(以下、P(3HB−co−3HV)と記すこともある)の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。P(3HB−co−3HV)は、P(3HB)に比べると柔軟性に富むため、幅広い用途に応用できると考えられた。
しかしながら、実際にはP(3HB−co−3HV)の3HVモル分率を増加させても、それに伴う物性の変化が乏しく、特にフィルムやシート、軟質系食品包装容器等へ加工するために要求される程には柔軟性が向上しないため、シャンプーボトルや使い捨て剃刀の取手等、硬質成型体の限られた分野にしか利用されていない。
P(3HB)の柔軟性を高めるために、3HBと3−ヒドロキシヘキサン酸(以下、3HHと記すこともある)からなる共重合体(以下、P(3HB−co−3HH)と記すこともある)及びその製造方法について研究がなされた(特許文献3、特許文献4)。これら報告におけるP(3HB−co−3HH)の製造方法は、土壌より単離されたAeromonas caviaeの野生株を用い、オレイン酸、パルミチン酸等の脂肪酸を炭素源として発酵生産するものであった。3HH組成比はオレイン酸を炭素源としたとき15mol%、パルミチン酸を炭素源としたとき5mol%であった。
P(3HB−co−3HH)の物性に関する研究もなされている(非特許文献1)。この報告では、炭素数が12個以上の脂肪酸を唯一の炭素源としてA. caviaeを培養し、3HH組成が11〜19mol%のP(3HB−co−3HH)を発酵生産している。このP(3HB−co−3HH)については3HH組成の増加にしたがって、P(3HB)の様な硬くて脆い性質から次第に柔軟な性質を示すようになり、P(3HB−co−3HV)を上回る柔軟性を示すことが明らかにされた。すなわち、P(3HB−co−3HH)は3HH組成比を変えることで、硬質ポリマーから軟質ポリマーまで応用可能な幅広い物性を持たせることができるため、低3HH組成比のP(3HB−co−3HH)を用いたテレビの筐体等のように硬さを要求されるものから、高3HH組成比のP(3HB−co−3HH)を用いたフィルム等のように柔軟性を要求されるものまで、幅広い分野への応用が期待できる。
しかしながら、前記製造方法では菌体生産量4g/L、菌体あたりのポリマー含量30%とポリマー生産性は低いものであったため、実用化に向けて更に高い生産性、特にポリマー含量を向上させる方法が探索されている。
P(3HB−co−3HH)の工業生産を目指した取組みの例として、以下の技術が挙げられる。非特許文献2では、Aeromonas hydrophilaを用い、オレイン酸を炭素源とした43時間の流加培養を行うことにより、菌体量95.7g/L、ポリマー含量45.2%、3HH組成比17mol%のP(3HB−co−3HH)が生産された。また、A. hydrophilaを用いたグルコース及びラウリン酸を炭素源とした培養により、3HH組成比が11mol%であり、菌体量50g/L、ポリマー含量50%が達成された(非特許文献3)。
しかしながら、A. hydrophilaはヒトに対して病原性を有する(非特許文献4)ことから、工業生産に適した微生物とはいえない。また、これらの培養生産で用いられている炭素源は高価であるため、製造コストの観点より安価な炭素源の利用も求められている。
このため、安全な宿主での生産及び生産性の向上を目指した取組みが行なわれた例として、以下の技術が挙げられる。A. caviaeよりクローニングされたポリヒドロキシアルカン酸(PHA)合成酵素遺伝子をCupriavidus necator(旧分類:Ralstonia eutropha或いはAlcaligenes eutrophus)に導入した形質転換体を用い、オクタン酸を炭素源としてP(3HB−co−3HH)の生産を行った結果、3HH組成比は22mol%であり、菌体量4g/L、ポリマー含量は33mol%であった(特許文献5、非特許文献5)。更に前記形質転換体を、炭素源として植物油脂を用いて培養した結果、3HH組成比は4〜5mol%であり、菌体量4g/L、ポリマー含量80%が達成された(非特許文献6)。前記製造方法は安価な植物油脂を炭素源とし、ポリマー含量も高いものの、菌体量が低いため、ポリマー生産量としてはレベルが低く、且つ3HH組成比4〜5mol%ではフィルム等の用途に適用できるほど柔らかいものではない。また、フラクトースを炭素源としてP(3HB−co−3HH)生産できるC. necatorも構築されたが、3HH組成比は0.9〜1.6mol%であり、また本菌株のポリマー生産性は菌体量0.73〜1.91g/L、ポリマー含量は33〜68%と低く、実生産に適しているとはいえなかった(非特許文献7)。
大腸菌を宿主としたP(3HB−co−3HH)生産株も構築された。Aeromonas属細菌のPHA合成酵素遺伝子、C. necatorのNADPH−アセトアセチル−CoA還元酵素遺伝子等を大腸菌に導入した株が構築された。ドデカンを炭素源として同大腸菌を40.8時間培養した結果、菌体量79g/L、ポリマー含量27.2%、3HH組成比10.8mol%であった(非特許文献8)。A. caviaeのPHA合成酵素遺伝子、エノイル−CoAヒドラターゼ遺伝子及びアシル−CoAデヒドロゲナーゼ遺伝子を導入した大腸菌も構築された。ラウリン酸を含む培地で該大腸菌を培養すると、菌体生産性は1g/L、ポリマー含量約16%、3HH組成比約16mol%であった(非特許文献9)。これらの大腸菌では生産性は低く、工業的生産への適用は困難であった。
P(3HB−co−3HH)の生産性向上並びに3HH組成制御を目指して、PHA合成酵素の人為的な改変が行なわれた(非特許文献10)。A. caviae由来のPHA合成酵素変異体のなかで、149番目のアミノ酸アスパラギンがセリンに置換された変異体酵素や、171番目のアスパラギン酸がグリシンに置換された変異体酵素は、大腸菌内でのPHA合成酵素活性や3HH組成が向上していることが示され、また、518番目のフェニルアラニンがイソロイシンに置換された変異体酵素や214番目のバリンがグリシンに置換された変異体酵素は大腸菌でのPHA合成酵素活性やポリマー含量が向上したことが報告されている。しかし、これらは宿主として特殊な大腸菌を用いており未だポリマー含量は約13%と低いことから、これらの変異体酵素の特徴を活かした工業的生産に向けた更なる改良が必要であった。
また、C. necatorを宿主とし、pJRD215(ATCC 37533)にポリエステル合成酵素遺伝子やD−エノイル−CoAヒドラターゼ遺伝子等を導入したpJRDEE32やpJRDEE32d13等(特許文献5参照)のPHA合成酵素発現プラスミドによる形質転換体が検討されており、本菌株の菌体量は4g/Lと低かったが、植物油脂を炭素源とした同菌株の培養条件改善により菌体量45g/L、ポリマー含量62.5%、3HH組成比8.1mol%にまで向上した。このように、培養方法によってP(3HB−co−3HH)の3HH組成比や生産性を改善する方法も研究された(特許文献6)。
P(3HB−co−3HH)の物性を制御する方法も開示されている(特許文献6)。少なくとも2種類の炭素数の異なる油脂および/または脂肪酸を炭素源として用いることによって、3HH組成比が1〜40mol%のポリエステルを生産することが可能となり、種々の物性を有する(3HB−co−3HH)が生産できるようになった。しかしながら、本製造方法では、3HH組成制御のために比較的高価なヘキサン酸、オクタン酸等を添加する必要があり、また高濃度のヘキサン酸は細胞毒性を示すことから菌体生産性が低下する結果となっている。また、多成分の炭素源を添加するため、生産設備が複雑・高価なものになる場合がある。
酪酸やブタノールの代謝に関与する遺伝子を組み込んだ大腸菌にて、グルコースと酪酸またはブタノールからP(3HB−co−3HH)を生産させた方法も開示されているが、3HH組成比は1〜3mol%程度と、高3HH組成P(3HB−co−3HH)の生産には一層の改良が必要であった(特許文献7)。
フィルムやシート、軟質系食品包装容器等への応用には3HH組成比が10mol%以上であることが望まれるが、従来のP(3HB−co−3HH)生産において、3HH組成比を向上させようとすれば、ポリマー含量あるいは菌体量の低下を招くため、工業生産において望ましい70%以上のポリマー含量且つ100g/L以上の菌体量において3HH組成比10mol%以上を実現する方法はなく、一層の改良が必要であった。
特開昭57−150393号公報
特開昭59−220192号公報
特開平5−93049号公報
特開平7−265065号公報
特開平10−108682号公報
特開2001−340078号公報
米国特許6593116号明細書
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以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の3−ヒドロキシヘキサン酸(以下、3HHとも記す)単位含有ポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAとも記す)とは、3HHとともに3−ヒドロキシ酪酸(以下、3HBとも記す)、3−ヒドロキシ吉草酸(以下、3HVとも記す)、3−ヒドロキシオクタン酸、或いはそれらよりアルキル鎖の長い3−ヒドロキシアルカン酸が共重合したポリエステルである。
本発明のphbA遺伝子とは、β−ケトチオラーゼのうち、2分子のアセチル−CoAを縮合する反応を触媒するがβ−ケトバレリル−CoAのチオリシスを殆ど触媒しないタンパク質をコードする遺伝子で、好ましくは配列番号3で示される遺伝子である。本発明のbktB遺伝子とは、β−ケトチオラーゼのうち、2分子のアセチル−CoAの縮合およびアセチル−CoAとそれよりも鎖長の長い例えばプロピオニル−CoAの縮合の両方をよく触媒し、且つβ−ケトバレリル−CoAのチオリシスを触媒するタンパク質をコードする遺伝子で、好ましくは配列番号4で示される遺伝子である(Slater. S.等, J. Bacteriol. vol.180, p1979 (1998))。また、前記PHAを合成可能なポリメラーゼ遺伝子としては、A. caviaeのphaCなどが例示でき、宿主が結果としてPHAを産生できればよい。
本発明において、bktB遺伝子の本来のプロモーターとは、bktB構造遺伝子の転写を誘発するDNA領域のことであり、宿主として用いるphbA遺伝子とbktB遺伝子を元来有する微生物中に内在する前記領域のことである。
本発明におけるphbA遺伝子とbktB遺伝子を元来有する微生物とは、phbA遺伝子とbktB遺伝子を有する野生株、突然変異株、或いは遺伝子操作した微生物であり、且つ、酪酸又はブタノールを資化できる微生物であれば特に制限はなく、それらを宿主として使用することができる。
具体的にはラルストニア(Ralstonia)属、カプリアビダス(Cupriavidus)属、ワウテルシア(Wautersia)属、アエロモナス(Aeromonas)属、エシェリキア(Escherichia)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、シュードモナス(Pseudomonas)属等の細菌類を使用することが好ましい。安全性及び生産性の観点からより好ましくはラルストニア属、カプリアビダス属、ワウテルシア属であり、さらに好ましくはカプリアビダス・ネケータ(Cupriavidus necator)である。勿論、人工的に突然変異処理して得られる変異株、遺伝子工学的手法により変異処理された菌株も使用できる。
そして、3HH組成比を高めるためには、phbA遺伝子とbktB遺伝子を元来有する微生物の染色体上に存在するphbA遺伝子が不活性化されていることが好ましい。phbA遺伝子は、前記のようにアセチル−CoA2分子の縮合によって、PHAモノマーである3−ヒドロキシブチリル−CoAの前駆体であるアセトアセチル−CoAを生成する反応を触媒する。一方、phbA遺伝子はアセチル−CoAとブタノイル−CoAを縮合する反応を触媒しない(Slater. S.等, J. Bacteriol. vol.180, p1979 (1998))。従って、phbA遺伝子の不活性化はポリマー中の3HB比率を低くするため、結果として3HH比率が向上すると考えられる。
phbA遺伝子を不活性化する方法は、結果としてphbAタンパク質が不活性化されていればよく、リボソーム結合部位やphbA構造遺伝子内部に変異を導入する方法や、RNA干渉を利用する方法、トランスポゾンの挿入やphbA構造遺伝子が完全に欠失されていてもよい。これらの方法は当業者に周知である。
また、3HH組成比を高めるためには、bktB遺伝子産物の活性を増強することが好ましい。bktB遺伝子産物は、アセチル−CoA2分子の縮合だけではなく、アセチル−CoAとブタノイル−CoAを縮合する反応も触媒する。アセチル−CoAとブタノイル−CoAが縮合すると、PHAの構成モノマーである3−ヒドロキシヘキサノイル−CoAの前駆体である3−ケトヘキサノイル−CoAが生じる。bktB遺伝子産物の活性は、アセチル−CoA2分子の縮合反応に対してよりもアセチル−CoAとブタノイル−CoAの縮合反応に対しての方が高いからである。bktB遺伝子産物の活性を増強する方法は特に限定されないが、phbA遺伝子とbktB遺伝子を元来有する微生物の染色体上にある該遺伝子のプロモーターを改変して転写活性を上げることが好ましく、例えば、phbA遺伝子とbktB遺伝子を元来有する微生物に内在しているbktB構造遺伝子の上流に、さらにbktB構造遺伝子の転写を誘発するプロモーターが組み込まれていると転写活性が上がる。
bktB遺伝子の転写を誘発するプロモーターは、bktB構造遺伝子の開始コドンの上流に挿入されることが好ましい。また該プロモーターは、phbA遺伝子とbktB遺伝子を元来有する微生物内在のプロモーター及び異種微生物のプロモーターであることが好ましく、配列番号1で示されるC. necatorのphbCABオペロンのプロモーターの塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAや、配列番号2で示されるA. caviaeのphaPCJオペロンのプロモーターの塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAがより好ましい。前記方法は、phbA遺伝子とbktB遺伝子を元来有する微生物としてC. necatorを用いる場合に好適である。
ここで、「配列番号1,2に示したプロモーターの塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA」とは、配列番号1,2に示した塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAをプローブとして、ストリンジェントな条件下にコロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法、あるいはサザン・ハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAで、かつbktB遺伝子の転写を誘発するプロモーター機能を有するDNAを意味する。
前記ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning, A laboratory manual, second edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)等に記載されている方法に準じて行うことができる。
ここで、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA」とは、例えば、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃の条件下でフィルターを洗浄することにより取得できるDNAをあげることができる。好ましくは65℃で2倍濃度のSSC溶液で洗浄、より好ましくは65℃で0.2倍濃度のSSC溶液で洗浄、更に好ましくは65℃で0.1倍濃度のSSC溶液で洗浄することにより取得できるDNAである。
以上のようにハイブリダイゼーション条件を例示したが、これらの条件に特に制限されない。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度や塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで最適なストリンジェンシーを実現することが可能である。
上記の条件にてハイブリダイズ可能なDNAとしては、配列番号1,2に示される塩基配列と、配列同一性が70%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上のDNAをあげることができ、bktB構造遺伝子の転写を誘発する限り、上記DNAに包含される。
前記「配列同一性(%)」とは、対比される2つのDNAを最適に整列させ、核酸塩基(例えば、A、T、C、G、U、またはI)が両方の配列で一致した位置の数を比較塩基総数で除し、そして、この結果に100を乗じた数値で表される。配列同一性は、例えば、以下の配列分析用ツールを用いて算出し得る:GCG Wisconsin Package(Program Manual for The Wisconsin Package, Version8, 1994年9月, Genetics Computer Group, 575 Science Drive Medison, Wisconsin, USA 53711; Rice, P. (1996) Program Manual for EGCG Package, Peter Rice, The Sanger Centre, Hinxton Hall, Cambridge, CB10 1RQ, England)、及び、the ExPASy World Wide Web分子生物学用サーバー(Geneva University Hospital and University of Geneva, Geneva, Switzerland)。
本発明において、3HH含有PHAの生産に用い得る炭素源としては、酪酸或いはその誘導体及び/又はブタノール或いはその誘導体の添加を必須とし、好ましくは酪酸及び/又はブタノールである。酪酸又はブタノール以外に用いることができる炭素源としては、例えばグルコース、フラクトース等の糖類やメタノール、エタノールなどブタノール以外のアルコール類、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸等の飽和・不飽和脂肪酸などの脂肪酸類、あるいはこれら脂肪酸のエステルや塩等の脂肪酸誘導体、乳酸、炭素数が10以上である飽和・不飽和脂肪酸を多く含む油脂、例えばヤシ油、パーム油、パーム核油、パーム核油オレイン(以下、PKOOとも記載する)等が挙げられる。
培養する際の酪酸及び/又はブタノールの添加量としては、菌株が増殖し、ポリエステルを合成できる範囲であれば全く問題無いが、酪酸、ブタノール以外の炭素源100重量部に対して好ましくは5重量部〜40重量部である。酪酸及び/又はブタノールの添加量が5重量部より少ないと、PHA中の3HH組成比率が上がらない場合があり、40重量部よりも多いと菌株が増殖しなくなる場合がある。本発明においては、微生物細胞内の脂肪酸代謝経路であるβ酸化反応によって酪酸又はブタノールから生産されたアセチル−CoAと、同じく酪酸又はブタノールがβ酸化反応により代謝されて生産されたブタノイル−CoAから、3−ヒロドキシヘキサノイル−CoAを生産し、それをPHAへと変換する事によってPHAが産生されると考えられる。
本発明において、宿主に用いるphbA遺伝子とbktB遺伝子を元来有する微生物の野生株が3−ヒロドキシヘキサノイル−CoAを殆どPHAへと変換させる事ができない場合、3−ヒドロキシヘキサノイル−CoAをPHAへと変換する能力の高い酵素を発現する遺伝子を染色体上へ挿入するか、或いはプラスミドベクターなどを導入する事で細胞内にて合成された3−ヒドロキシヘキサノイル−CoAをPHAへと変換する効率を向上させる必要がある。例えば、宿主としてC. necatorを使用する場合、3−ヒドロキシヘキサノイル−CoAをPHAへと変換する能力の高い酵素を発現する遺伝子として、A. caviaeのphaC遺伝子を導入することが好ましい。
本発明の3HH含有PHAを生産可能な微生物の作製方法は、特に限定されないが、C. necatorを宿主として以下に例示する。A. caviae由来で3−ヒドロキシヘキサノイル−CoAをPHAへと変換する能力の高い酵素を発現するポリエステル合成酵素変異体遺伝子を染色体上に相同組換え法などで導入する。そして、遺伝子破壊法を用いて、染色体上に存在するphbA遺伝子を不活性化する。そして染色体上に存在するbktB遺伝子のプロモーターを改変するが、その態様は染色体上に本来存在するbktB遺伝子の転写活性が上がればどのような方法でも良い。例えば、bktB遺伝子の開始コドンの上流に異種のプロモーター及びリボソーム結合部位を含むDNAを挿入してもよいし、bktB遺伝子の本来のプロモーター及び/又はリボソーム結合部位を異種のプロモーター及び/又はリボソーム結合部位を含むDNAに置換する方法でもよい。本来のプロモーターは染色体上からすべて失われていてもよいし、一部が存在していてもよい。
前記bktB遺伝子のプロモーターの改変において、染色体上に任意のDNAを部位特異的に挿入/置換する方法は当業者に周知であり、代表的な方法としては以下の方法が挙げられる:
トランスポゾンと相同組換えの機構を利用した方法(Ohman等、J. Bacteriol., vol.162, p1068 (1985))、
相同組換えの機構によって起こる部位特異的な組み込みと第二段階の相同組換えによる脱落を原理とした方法(Noti等、Methods in Enzymol., vol.154, p197 (1987))、
Bacillus subtilis由来のsacB遺伝子を共存させて、第二段階の相同組換えによって遺伝子が脱落した微生物株をシュークロース添加培地耐性株として容易に単離する方法(Schweizer, Mol. Microbiol., vol.6, p1195 (1992)、Lenz等、J. Bacteriol., vol.176, p4385 (1994))。
染色体上に任意のDNAを挿入/置換出来ればその方法は特に制限されない。
以下に、C. necatorのbktB遺伝子開始コドンの上流にA. caviaeのphaC遺伝子のプロモーター及びリボソーム結合部位を含むDNAを挿入する場合の方法を、より具体的に例示する。
まず、置換フラグメントを作製する。置換フラグメントはbktB遺伝子の開始コドンの上流の配列にA. caviaeのphaC遺伝子(以下、phaCとも記す)のプロモーター及びリボソーム結合部位を含む配列がつながり、その後にbktB遺伝子の開始コドン以降の下流配列がつながった塩基配列からなるDNAとする。すなわち、該構造遺伝子の開始コドンの直前にphaCのプロモーター及びリボソーム結合部位を含むDNAが挿入された形式のDNAフラグメントである。phaCのプロモーター及びリボソーム結合部位を含むDNAを挟んで存在する上流のDNAの塩基配列と下流のDNAの塩基配列は染色体上のDNAと相同組換えを起こすために必要な相同配列であって、一般的にはその長さが長いほど組換え頻度は高くなるが、相同組換えさえ起こればよく、その長さは任意に設定できる。
置換フラグメントには、遺伝子置換の際に選択マーカーとなる遺伝子を付加することができる。選択マーカーとなる遺伝子は、例えばカナマイシン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、アンピシリン等の抗生物質の耐性遺伝子や各種の栄養要求性を相補する遺伝子等が使用できる。C. necatorを宿主とする場合にはカナマイシンの耐性遺伝子が好適である。
さらにそれらに加えて、第二段階の相同組換えによって選択マーカー遺伝子を含む領域が脱落した微生物株の選択を容易にするための遺伝子が付加できる。そのような遺伝子としてはBacillus subtilis由来のsacB遺伝子が例示できる。この遺伝子が発現している微生物はシュークロースを含む培地で生育できないことが知られており、シュークロースを含む培地での生育によりこの遺伝子を脱落した株を選択することが容易となる。
これらで構成された置換フラグメントは、宿主微生物中で自律複製しないベクターに接続することによって遺伝子置換用のプラスミドとして作製される。カプリアビダス属細菌やシュードモナス属細菌等で利用できるこのようなプラスミドベクターには、例えばpUCベクター、pBluescriptベクター、pBR322ベクター、或いはそれらと同じ複製起点を持つベクター等が挙げられる。さらには、導入効率の良い接合伝達での導入を可能にするmob、oriTなどのDNAを共存させることも可能である。
このような構成で作製されたDNA置換用のプラスミドDNAは、エレクトロポレーション法や接合伝達法など公知の方法によりC. necatorに導入することができ、相同組換えを行うことができる。
次に相同組換えによって染色体上にDNA置換用のプラスミドDNAが挿入された株の選択を行う。挿入株の選択は、DNA置換用プラスミドDNAに共存させた選択用の遺伝子に基づいた方法によって行うことができる。カナマイシン耐性遺伝子を用いた場合には、カナマイシンを含む培地で生育してきた株から選ぶことができる。
次の段階で、第二の相同組換えによって染色体上から選択マーカー遺伝子を含む領域が脱落した株を選択する。挿入時に利用した選択用の遺伝子に基づいて、例えばカナマイシンを含む培地で生育できなくなった株を選択してもよいが、sacB遺伝子をDNA置換用プラスミドに共存させている場合は、シュークロースを含む培地で生育してくる株から容易に選択できる。このようにして得られた株が、所望するようにDNAが置換された株かどうか確認するには、PCR法やサザン・ハイブリダイゼーション法、DNA塩基配列の決定など、公知の方法が使用できる。
以上のようにして、C. necatorの染色体上にあるbktB構造遺伝子の開始コドン上流にA. caviaeのphaCのプロモーター及びリボソーム結合部位を含むDNAが挿入された株を取得することができる。
前記で作製した微生物を用いて3HH含有PHAを製造する方法について説明する。その方法は特に限定されないが、以下のようにして行う事ができる。本発明のPHAの生産においては、炭素源、炭素源以外の栄養源である窒素源、無機塩類、そのほかの有機栄養源を含む培地を用いて、前記微生物を培養することが好ましい。
炭素源としては、酪酸及び/又はブタノールを使用することが好ましく、酪酸及び/又はブタノール以外の炭素源である油脂などを含む方がより好ましく、炭素源を与える際には、酪酸及び/又はブタノールと油脂とを混合した混合物を添加するか、又は、酪酸及び/又はブタノールと油脂を別々に添加することが好ましい。
窒素源としては、例えばアンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩の他、ペプトン、肉エキス、酵母エキス等が挙げられる。無機塩類としては、例えばリン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。
そのほかの有機栄養源としては、例えばグリシン、アラニン、セリン、スレオニン、プロリン等のアミノ酸;ビタミンB1、ビタミンB12、ビタミンC等のビタミン等が挙げられる。また、培養液中に、発現プラスミドに存在する薬剤耐性遺伝子に対応する抗生物質(カナマイシン等)を添加しても良い。
本発明において、菌体からの3HH含有PHAの回収は、特に限定されないが、例えば次のような方法により行うことができる。
培養終了後、培養液から遠心分離機等で菌体を分離し、その菌体を蒸留水およびメタノール等により洗浄し、乾燥させる。この乾燥菌体から、クロロホルム等の有機溶剤を用いて3HH含有PHAを抽出する。この3HH含有PHAを含んだ有機溶剤溶液から、濾過等によって菌体成分を除去し、その濾液にメタノールやヘキサン等の貧溶媒を加えて3HH含有PHAを沈殿させる。さらに、濾過や遠心分離によって上澄み液を除去し、乾燥させて3HH含有PHAを回収する。
得られた3HH含有PHAの重量平均分子量(Mw)や3HH組成(mol%)の分析は、例えば、ガスクロマトグラフ法や核磁気共鳴法等により行うことができる。また本発明により、より柔軟なPHAを作製する為には3HH組成比が高い方が好ましく、PHAを加工する観点から見ると、8mol%以上が好ましく、更に好ましくは9mol%以上、10mol%以上の組成比であれば最も好ましい。また、PHAの生産性の観点から見ると、菌体量は100g/L以上、ポリマー含量は70%以上であることが好ましい。
本発明で得られる柔軟性の高いPHAは、フィルムやシート、軟質系食品包装容器などに好適に用いられる。
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお全体的な遺伝子操作は、Molecular Cloning(Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))に記載されているように行うことができる。また、遺伝子操作に使用する酵素、クローニング宿主等は、市場の供給者から購入し、その説明に従い使用することができる。なお、酵素としては、遺伝子操作に使用できるものであれば特に限定されない。
(実施例1) KNK005株の作製
先ず、DNA置換用プラスミドの作製を行った。作製は以下のように行った。Cupriavidus necator H16株の染色体DNAをテンプレートとして、配列番号5と配列番号6で示されるプライマーを用いてPCR反応を行い、ポリヒドロキシアルカン酸合成酵素遺伝子(phaCRe)の構造遺伝子を含むDNA断片を得た。PCR条件は(1)94℃で2分、(2)94℃で30秒、45℃で30秒、72℃で3分、を25サイクル繰り返し、(3)72℃で5分であり、ポリメラーゼとしてはTaKaRa LA Taq(タカラバイオ製)を用いた。PCRで得たDNA断片を制限酵素BamHIで切断し、ベクターpBluescript II KS(−)(TOYOBO社製)を同酵素で切断した部位にサブクローニングした(pBlue−phaCRe)。
Aeromonas caviae由来のポリエステル合成酵素変異体遺伝子であるN149S/D171G変異体は、次のように作成した。まず、pBluescript II KS(−)(TOYOBO社製)をPstI処理し、DNA Blunting Kit(タカラバイオ製)を用いて平滑末端化しライゲーションすることによりPstIサイトを欠失したプラスミドpBlue−Newを作成した。このプラスミドのEcoRIサイトにpJRD215−EE32d13(Fukui等、J. Bacteriol., vol.179, p4821 (1997))より同酵素で切り出したd13断片をクローニングした(pBlue−d13)。
次に、クローンE2−50由来のプラスミド(非特許文献10)をテンプレートとし、配列番号7と8に記載のプライマーのセット及び配列番号9と10に記載のプライマーのセットを用いてそれぞれPCR法により増幅、2断片を得た。その条件は(1)94℃で2分、(2)94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で2分、を25サイクル繰り返し、(3)72℃で5分である。
増幅された2断片を等モル混合し再びPCR反応を行い、2断片を結合させた。その条件は(1)96℃で5分、(2)95℃で2分、72℃で1分を12サイクル繰り返し、ポリメラーゼとしてはPyrobestポリメラーゼ(タカラバイオ製)を用いた。目的サイズのDNA断片をアガロース電気泳動ゲルより切り出しPstIとXhoIで処理し、同酵素で処理したpBlue−d13に断片を入れ替える形でクローニングした(pBlue−N149S/D171G)。
塩基配列決定を,APPLIED BIOSYSTEMS社製のDNAシークエンサー3130xl Genetic Analyzerを用いて行い、PHA合成酵素の149番目のアミノ酸であるアスパラギンがセリンに、171番目のアミノ酸であるアスパラギン酸がグリシンに置換された変異遺伝子であることを確認した。
pBlue−N149S/D171Gをテンプレートとして配列番号11と配列番号12で示されるプライマーを用いてPCR反応を行い、N149S/D171G変異体の構造遺伝子DNAを増幅させた。PCR条件は(1)94℃で2分、(2)94℃で30秒、45℃で30秒、72℃で2分、を25サイクル繰り返し、(3)72℃で5分であり、ポリメラーゼとしてはTaKaRa LA Taq(タカラバイオ製)を用いた。次に、pBlue−phaCReを制限酵素SbfIとCsp45Iで処理し、同酵素で処理した上記増幅DNA断片をphaCRe構造遺伝子と入れ替える形でクローニングした(pBlue−phaCRe::N149S/D171G)。
次に、プラスミドpJRD215(ATCC37533)を制限酵素XhoIとDraIで処理してカナマイシン耐性遺伝子を含む約1.3kbpのDNA断片を単離後、DNAブランティングキット(タカラバイオ製)を用いて末端を平滑化し、pBlue−phaCRe::N149S/D171Gを制限酵素SalIで切断後同様に平滑末端化した部位に挿入した(pBlue−phaCRe::N149S/D171G−Km)。
続いて、プラスミドpMT5071(Tsuda、GENE,207:33−41(1998))制限酵素NotIで処理してsacB遺伝子を含む約8kbpのDNA断片を単離し、pBlue−phaCRe::N149S/D171G−Kmを同酵素で切断した部位に挿入して遺伝子置換用プラスミドpBlue−phaCRe::N149S/D171G−KmSACを作製した。
次に、遺伝子置換株の作製を行った。遺伝子置換用プラスミドpBlue−phaCRe::N149S/D171G−KmSACで大腸菌S17−1株(ATCC47005)を形質転換し、C. nacator H16株とNutrient Agar培地(Difco社製)上で混合培養して接合伝達を行った。
250mg/Lのカナマイシンを含むシモンズ寒天培地(くえん酸ナトリウム2g/L、塩化ナトリウム5g/L、硫酸マグネシウム・7水塩0.2g/L、りん酸二水素アンモニウム1g/L、りん酸水素二カリウム1g/L、寒天15g/L、pH6.8)上で生育してきた菌株を選択して、プラスミドがC. nacator H16株の染色体上に組み込まれた株を取得した。この株をNutrient Broth培地(Difco社製)で2世代培養した後、15%のシュークロースを含むNutrient Agar培地上に希釈して塗布し、生育してきた菌株を選択してプラスミドが脱落した株を取得した。
さらにPCRによる解析によりphaCRe遺伝子がN149S/D171G変異体遺伝子に置換された菌株を単離した。この遺伝子置換株をKNK005株と命名し、塩基配列決定を、APPLIED BIOSYSTEMS社製のDNAシークエンサー3130xl Genetic Analyzerを用いて行い、染色体上のphaCRe遺伝子の開始コドンから終止コドンまでがN149S/D171G変異体遺伝子の開始コドンから終止コドンまでに置換された株であることを確認した。
(実施例2) AS株の作製
<β−ケトチオラーゼ遺伝子の破壊用プラスミドの作製>
プラスミドpJRD215(ATCC37533)をテンプレートとし、配列番号13と配列番号14で示されるプライマーを用いてPCR反応を行い、約1.2kbpのカナマイシン耐性遺伝子を含むDNA断片を調製した。次にpMT5071を制限酵素BamHIで処理し、同酵素で処理した上記DNA断片をクロラムフェニコール耐性遺伝子と入れ替える形でクローニングした(pSACKm)。
KNK005株のゲノムDNAをテンプレートとして、配列番号15と配列番号16で示されるプライマーを用いてPCR反応を行い、約1.1kbpのβ−ケトチオラーゼ遺伝子(phbA)を含むDNA断片を調製した。このDNA断片を制限酵素BamHIで切断し、ベクターpBluescript II KS(−)(TOYOBO社製)を同酵素で切断した部位にサブクローニングした。配列番号17で示される変異プライマーを用い、TaKaRa LA PCR in vitro Mutagenesis System(タカラバイオ製)を利用して開始コドンから16残基目のアミノ酸が終止コドンとなり、同時に制限酵素NheI切断部位が生じるような塩基置換を行った。このプラスミドを制限酵素NotIで切断し、pSACKmを同酵素で切断して調製した約5.7kbpのDNA断片を(oriT+KmR+sacBR)を挿入して染色体置換用ベクター(pBlueASRU)とした。
<染色体置換>
実施例1のDNA置換株の作製方法と同様にして、KNK005株を親株としてpBlueASRUを用いて染色体置換株AS株を作製した。AS株のDNA塩基配列を解析して、β−ケトチオラーゼ遺伝子がpBlueASRUの相同配列部分と置き換わって終止コドンと制限酵素NheI切断部位が生成していることを確認した。
(実施例3) Pac−bktB/AS株の作製
<DNA挿入用プラスミドベクターの作製>
挿入用DNAとしてA. caviaeのphaCのプロモーターおよびリボソーム結合部位を含むDNAを次のように作製した。A. caviaeのゲノムDNAをテンプレートとして配列番号18および配列番号19で示されるプライマーを用いて、PCR反応を行った。PCR条件は(1)98℃で2分、(2)98℃で15秒、60℃で30秒、68℃で20秒を25サイクル繰り返し、ポリメラーゼとしてはKOD−plus−(TOYOBO製)を用いた。PCRで得たDNA断片を末端リン酸化およびEcoRI消化した(PAc−5P+Eco)。
次に、DNA挿入部位をAS株のbktB構造遺伝子の開始コドン直前とし、以下の手順でまず該構造遺伝子の開始コドンより上流側のDNAを作製した。
KNK005株のゲノムDNAをテンプレートとして、配列番号20および配列番号21で示されるプライマーを用いてPCR反応を行い、bktB構造遺伝子の開始コドンより上流側のDNAを得た。PCR条件は(1)98℃で2分、(2)98℃で15秒、64℃で30秒、68℃で30秒を25サイクル繰り返し、ポリメラーゼとしてはKOD−plus−(TOYOBO製)を用いた。PCRで得たDNA断片を制限酵素BamHIおよびEcoRIで同時消化した。このDNA断片をPbktB−Bam+Ecoとした。
PAc−5P+EcoおよびPbktB−Bam+Ecoをライゲーションし、ライゲート液中に生成したDNAをテンプレートとして配列番号20および配列番号19で示されるプライマーを用いてPCR反応を行った。PCR条件は(1)98℃で2分、98℃で15秒、60℃で30秒、68℃で50秒を25サイクル繰り返し、ポリメラーゼとしてはKOD−plus−(TOYOBO製)を用いた。PCRで得たDNA断片を末端リン酸化およびBamHI消化した(bPac−5P+Bam)。
次に、bktB構造遺伝子の開始コドンより下流側のDNAを作製した。KNK005株のゲノムDNAをテンプレートとして、配列番号22および配列番号23で示されるプライマーを用いてPCR反応を行い、bktB構造遺伝子の開始コドンより下流側のDNAを得た。PCR条件は(1)98℃で2分、(2)98℃で15秒、64℃で30秒、68℃で30秒を25サイクル繰り返し、ポリメラーゼとしてはKOD−plus−(TOYOBO製)を用いた。
PCRで得たDNA断片を末端リン酸化およびClaI消化した。このDNA断片をORF−5P+Claとした。bPac−5P+BamとORF−5P+Claをライゲーションし、ライゲート液中に生成したDNAをテンプレートとして配列番号20および配列番号23で示されるプライマーを用いてPCR反応を行った。PCR条件は(1)98℃で2分、(2)98℃で15秒、60℃で30秒、68℃で1分30秒、を25サイクル繰り返し、ポリメラーゼとしてはKOD−plus−(TOYOBO製)を用いた。
PCRで得たDNA断片をBamHIおよびClaIで同時消化した。このDNA断片を、ベクターpBluescript II KS(−) (TOYOBO製)の同制限酵素で消化した部位にサブクローニングした(bAO/pBlu)。塩基配列決定を、APPLIED BIOSYSTEMS社製のDNAシークエンサー3130xl Genetic Analyzerを用いて行い、テンプレートとしたDNA部分の塩基配列と同一であることを確認した。
続いて、pSACKmを制限酵素NotIで処理することによってカナマイシン耐性遺伝子およびsacB遺伝子を含む約5.7 kbpのDNA断片を切り出し、bAO/pBluの同酵素で切断した部位に挿入して遺伝子破壊・挿入用プラスミドbAO/pBlu/SacB−Kmを作製した。
<DNA挿入株Pac−bktB/AS株の作製>
実施例1のDNA置換株の作製方法と同様にして、AS株を親株としてbAO/pBlu/SacB−Kmを用いてbktB構造遺伝子の開始コドンの直前にphaCのプロモーターおよびリボソーム結合部位を含むDNAが挿入された菌株を作製した。このDNA挿入株をPac−bktB/AS株と命名し、塩基配列決定を、APPLIED BIOSYSTEMS社製のDNAシークエンサー3130xl Genetic Analyzerを用いて行い、bktB構造遺伝子の開始コドンの直前にphaCのプロモーターおよびリボソーム結合部位を含むDNAが挿入された株であることを確認した。
(実施例4) Pre−bktB/AS株の作製
<DNA挿入用プラスミドベクターの作製>
挿入用DNAとしてC. necatorのphbCのプロモーターおよびリボソーム結合部位を含むDNA(以下Preと略記する)を次のように作製した。KNK005株のゲノムDNAをテンプレートとして配列番号24および配列番号25で示されるプライマーを用いて、PCR反応を行った。PCR条件は(1)98℃で2分、(2)98℃で15秒、(3)54℃で30秒、(4)68℃で25秒、(2)から(4)を25サイクルであり、ポリメラーゼとしてはKOD−plus−(TOYOBO製)を用いた。PCRで得たDNA断片を末端リン酸化した。(Pre−5P)。
次に、DNA挿入位置をC. necator AS株のbktB構造遺伝子の開始コドン直前とし、以下の手順でまず該構造遺伝子の開始コドンより下流側のDNAを作製した。
KNK005株のゲノムDNAをテンプレートとして、配列番号22および配列番号23で示されるプライマーを用いてPCR反応を行い、bktB構造遺伝子の開始コドンより下流側のDNAを得た。PCR条件は(1)98℃で2分、(2)98℃で15秒、(3)64℃で30秒、(4)68℃で30秒、(2)から(4)を25サイクルであり、ポリメラーゼとしてはKOD−plus−(TOYOBO製)を用いた。PCRで得たDNA断片を末端リン酸化およびClaI消化した。このDNA断片をORF−5P+Claとした。
Pre−5PおよびORF−5P−Claをライゲーションし、ライゲート液中に生成したDNAをテンプレートとして配列番号24および配列番号23で示されるプライマーを用いてPCR反応を行った。PCR条件は(1)98℃で2分、(2)98℃で15秒、(3)54℃で30秒、(4)68℃で50秒、(2)から(4)を25サイクルであり、ポリメラーゼとしてはKOD−plus−(TOYOBO製)を用いた。PCRで得たDNA断片を末端リン酸化およびClaI消化した(PRO−5P+Cla)。
次に、bktB造遺伝子の開始コドンより上流側のDNAを作製した。KNK005株のゲノムDNAをテンプレートとして、配列番号20および配列番号26で示されるプライマーを用いてPCR反応を行い、bktB構造遺伝子の開始コドンより上流側のDNAを得た。PCR条件は(1)98℃で2分、(2)98℃で15秒、(3)58℃で30秒、(4)68℃で20秒、(2)から(4)を25サイクルであり、ポリメラーゼとしてはKOD−plus−(TOYOBO製)を用いた。PCRで得たDNA断片を末端リン酸化およびBamHI消化した。このDNA断片をPbktB−5P+Bamとした。
PbktB−5P+BamとRPO−5P+Claをライゲーションし、ライゲート液中に生成したDNAをテンプレートとして配列番号20および配列番号23で示されるプライマーを用いてPCR反応を行った。PCR条件は(1)98℃で2分、(2)98℃で15秒、(3)60℃で30秒、(4)68℃で1分30秒、(2)から(4)を25サイクルであり、ポリメラーゼとしてはKOD−plus−(TOYOBO製)を用いた。PCRで得たDNA断片をBamHIおよびClaIで同時消化した。このDNA断片を、ベクターpBluescript II KS(−) (TOYOBO製)の同制限酵素で消化した部位にサブクローニングした(bRO/pBlu)。
塩基配列決定を、APPLIED BIOSYSTEMS社製のDNAシークエンサー3130xl Genetic Analyzerを用いて行い、テンプレートとしたDNA部分の塩基配列と同一であることを確認した。
続いて、pSACKmを制限酵素NotIで処理することによってカナマイシン耐性遺伝子およびsacB遺伝子を含む約5.7kbpのDNA断片を切り出し、bRO/pBluの同酵素で切断した部位に挿入して遺伝子破壊・挿入用プラスミドbRO/pBlu/SacB−Kmを作製した。
<DNA挿入株Pre−bktB/AS株の作製>
実施例1のDNA置換株の作製方法と同様にして、AS株を親株としてbRO/pBlu/SacB−Kmを用いてbktB構造遺伝子の開始コドンの直前にphbCのプロモーターおよびリボソーム結合部位を含むDNAが挿入された菌株を作製した。このDNA挿入株をPre−bktB/AS株と命名し、塩基配列決定を、APPLIED BIOSYSTEMS社製のDNAシークエンサー3130xl Genetic Analyzerを用いて行い、bktB構造遺伝子の開始コドンの直前にphbCのプロモーターおよびリボソーム結合部位を含むDNAが挿入された株であることを確認した。
(実施例5) BAB3/AS株の作製
<DNA挿入用プラスミドベクターの作製>
DNA挿入部位を実施例2で作製したAS株のbktB構造遺伝子の開始コドン上流側−91塩基目と−92塩基目の間、即ちbktB構造遺伝子の直前に存在するORFの停止コドン直後とし、挿入用DNAとしてA. caviaeのphaCのプロモーターおよびリボソーム結合部位を含むDNAを次のように作製した。
A. caviaeのゲノムDNAをテンプレートとして配列番号29および配列番号30で示されるプライマーを用いて、PCR反応を行った。PCR条件は(1)98℃で2分、(2)98℃で15秒、60℃で30秒、68℃で20秒を25サイクル繰り返し、ポリメラーゼとしてはKOD−plus−(TOYOBO製)を用いた。PCRで得たDNA断片をMunI消化した(PAc−Mun/3)。
また以下の手順で挿入部位より上流側のDNAを作製した。
KNK005株のゲノムDNAをテンプレートとして、配列番号27および配列番号28で示されるプライマーを用いてPCR反応を行い、bktB構造遺伝子の上流側ORFを得た。PCR条件は(1)98℃で2分、(2)98℃で15秒、64℃で30秒、68℃で30秒を25サイクル繰り返し、ポリメラーゼとしてはKOD−plus−(TOYOBO製)を用いた。PCRで得たDNA断片を制限酵素MunIで消化した。このDNA断片をmiaB−Mun/3とした。
PAc−Mun/3およびmiaB−Mun/3をライゲーションし、ライゲート液中に生成したDNAをテンプレートとして配列番号27および配列番号30で示されるプライマーを用いてPCR反応を行った。PCR条件は(1)98℃で2分、98℃で15秒、60℃で30秒、68℃で60秒を25サイクル繰り返し、ポリメラーゼとしてはKOD−plus−(TOYOBO製)を用いた。PCRで得たDNA断片をBamHIおよびClaIで消化した(BAB3−Bam+Cla)。
このDNA断片を、ベクターpBluescript II KS(−) (TOYOBO製)の同制限酵素で消化した部位にサブクローニングした(BAB3/pBlu)。塩基配列決定を、APPLIED BIOSYSTEMS社製のDNAシークエンサー3130xl Genetic Analyzerを用いて行い、所望の塩基配列であることを確認した。
続いて、pSACKmを制限酵素NotIで処理することによってカナマイシン耐性遺伝子およびsacB遺伝子を含む約5.7 kbpのDNA断片を切り出し、BAB3/pBluの同酵素で切断した部位に挿入して遺伝子破壊・挿入用プラスミドBAB3/pBlu/SacB−Kmを作製した。
<DNA挿入株BAB3/AS株の作製>
実施例1のDNA置換株の作製方法と同様にして、AS株を親株としてBAB3/pBlu/SacB−Kmを用いてbktB構造遺伝子の開始コドンの上流側にphaCのプロモーターおよびリボソーム結合部位を含むDNAが挿入された菌株を作製した。このDNA挿入株をBAB3/AS株と命名し、塩基配列決定を、APPLIED BIOSYSTEMS社製のDNAシークエンサー3130xl Genetic Analyzerを用いて行い、bktB構造遺伝子の開始コドン上流側−91塩基目と−92塩基目の間にphaCのプロモーターおよびリボソーム結合部位を含むDNAが挿入された株であることを確認した。
(実施例6) BAB4/AS株の作製
<DNA挿入用プラスミドベクターの作製>
DNA挿入部位を実施例2で作製したAS株のbktB構造遺伝子の開始コドン上流側−65塩基目と−66塩基目の間、即ちbktB構造遺伝子の直前に存在するORFの停止コドンから26塩基下流とし、挿入用DNAとしてA. caviaeのphaCのプロモーターおよびリボソーム結合部位を含むDNAを次のように作製した。
A. caviaeのゲノムDNAをテンプレートとして配列番号31および配列番号32で示されるプライマーを用いて、PCR反応を行った。PCR条件は(1)98℃で2分、(2)98℃で15秒、60℃で30秒、68℃で20秒を25サイクル繰り返し、ポリメラーゼとしてはKOD−plus−(TOYOBO製)を用いた。PCRで得たDNA断片をMunI消化した(PAc−Mun/4)。
PAc−Mun/4および実施例4で調製したmiaB−Mun/3をライゲーションし、ライゲート液中に生成したDNAをテンプレートとして配列番号27および配列番号32で示されるプライマーを用いてPCR反応を行った。PCR条件は(1)98℃で2分、98℃で15秒、60℃で30秒、68℃で60秒を25サイクル繰り返し、ポリメラーゼとしてはKOD−plus−(TOYOBO製)を用いた。PCRで得たDNA断片をBamHIおよびClaIで消化した(BAB4−Bam+Cla)。
このDNA断片を、ベクターpBluescript II KS(−) (TOYOBO製)の同制限酵素で消化した部位にサブクローニングした(BAB4/pBlu)。塩基配列決定を、APPLIED BIOSYSTEMS社製のDNAシークエンサー3130xl Genetic Analyzerを用いて行い、所望の塩基配列であることを確認した。
続いて、pSACKmを制限酵素NotIで処理することによってカナマイシン耐性遺伝子およびsacB遺伝子を含む約5.7 kbpのDNA断片を切り出し、BAB4/pBluの同酵素で切断した部位に挿入して遺伝子破壊・挿入用プラスミドBAB4/pBlu/SacB−Kmを作製した。
<DNA挿入株BAB4/AS株の作製>
実施例1のDNA置換株の作製方法と同様にして、AS株を親株としてBAB4/pBlu/SacB−Kmを用いてbktB構造遺伝子の開始コドンの上流側にphaCのプロモーターおよびリボソーム結合部位を含むDNAが挿入された菌株を作製した。このDNA挿入株をBAB4/AS株と命名し、塩基配列決定を、APPLIED BIOSYSTEMS社製のDNAシークエンサー3130xl Genetic Analyzerを用いて行い、bktB構造遺伝子の開始コドン上流側−65塩基目と−66塩基目の間にphaCのプロモーターおよびリボソーム結合部位を含むDNAが挿入された株であることを確認した。
(実施例7) BAB5/AS株の作製
<DNA挿入用プラスミドベクターの作製>
遺伝子挿入部位を実施例2で作製したAS株のbktB構造遺伝子の開始コドン上流側−58塩基目と−59塩基目の間、即ちbktB構造遺伝子の直前に存在するORFの停止コドンから33塩基下流とし、挿入用DNAとしてA. caviaeのphaCのプロモーターおよびリボソーム結合部位を含むDNAを次のように作製した。
A. caviaeのゲノムDNAをテンプレートとして配列番号33および配列番号34で示されるプライマーを用いて、PCR反応を行った。PCR条件は(1)98℃で2分、(2)98℃で15秒、60℃で30秒、68℃で20秒を25サイクル繰り返し、ポリメラーゼとしてはKOD−plus−(TOYOBO製)を用いた。PCRで得たDNA断片をMunI消化した(PAc−Mun/5)。
PAc−Mun/5および実施例4で調製したmiaB−Mun/3をライゲーションし、ライゲート液中に生成したDNAをテンプレートとして配列番号27および配列番号34で示されるプライマーを用いてPCR反応を行った。PCR条件は(1)98℃で2分、98℃で15秒、60℃で30秒、68℃で60秒を25サイクル繰り返し、ポリメラーゼとしてはKOD−plus−(TOYOBO製)を用いた。PCRで得たDNA断片をBamHIおよびClaIで消化した(BAB5−Bam+Cla)。
このDNA断片を、ベクターpBluescript II KS(−) (TOYOBO製)の同制限酵素で消化した部位にサブクローニングした(BAB5/pBlu)。塩基配列決定を、APPLIED BIOSYSTEMS社製のDNAシークエンサー3130xl Genetic Analyzerを用いて行い、所望の塩基配列であることを確認した。
続いて、pSACKmを制限酵素NotIで処理することによってカナマイシン耐性遺伝子およびsacB遺伝子を含む約5.7 kbpのDNA断片を切り出し、BAB5/pBluの同酵素で切断した部位に挿入して遺伝子破壊・挿入用プラスミドBAB5/pBlu/SacB−Kmを作製した。
<DNA挿入株BAB5/AS株の作製>
実施例1のDNA置換株の作製方法と同様にして、AS株を親株としてBAB5/pBlu/SacB−Kmを用いてbktB構造遺伝子の開始コドンの上流側にphaCのプロモーターおよびリボソーム結合部位を含むDNAが挿入された菌株を作製した。このDNA挿入株をBAB5/AS株と命名し、塩基配列決定を、APPLIED BIOSYSTEMS社製のDNAシークエンサー3130xl Genetic Analyzerを用いて行い、bktB構造遺伝子の開始コドン上流側−58塩基目と−59塩基目の間にphaCのプロモーターおよびリボソーム結合部位を含むDNAが挿入された株であることを確認した。
(実施例8) BRB5/AS株の作製
<DNA挿入用プラスミドベクターの作製>
DNA挿入部位を実施例2で作製したAS株のbktB構造遺伝子の開始コドン上流側−58塩基目と−59塩基目の間、即ちbktB構造遺伝子の直前に存在するORFの停止コドンから33塩基下流とし、挿入用DNAとしてC. necatorのphbCのプロモーターおよびリボソーム結合部位を含むDNAを次のように作製した。
C. necatorのゲノムDNAをテンプレートとして配列番号35および配列番号36で示されるプライマーを用いて、PCR反応を行った。PCR条件は(1)98℃で2分、(2)98℃で15秒、60℃で30秒、68℃で20秒を25サイクル繰り返し、ポリメラーゼとしてはKOD−plus−(TOYOBO製)を用いた。PCRで得たDNA断片をMunI消化した(PRe−Mun/5)。
PRe−Mun/5および実施例4で調製したmiaB−Mun/3をライゲーションし、ライゲート液中に生成したDNAをテンプレートとして配列番号27および配列番号36で示されるプライマーを用いてPCR反応を行った。PCR条件は(1)98℃で2分、98℃で15秒、60℃で30秒、68℃で60秒を25サイクル繰り返し、ポリメラーゼとしてはKOD−plus−(TOYOBO製)を用いた。PCRで得たDNA断片をBamHIおよびClaIで消化した(BRB5−Bam+Cla)。
このDNA断片を、ベクターpBluescript II KS(−) (TOYOBO製)の同制限酵素で消化した部位にサブクローニングした(BRB5/pBlu)。塩基配列決定を、APPLIED BIOSYSTEMS社製のDNAシークエンサー3130xl Genetic Analyzerを用いて行い、所望の塩基配列であることを確認した。
続いて、pSACKmを制限酵素NotIで処理することによってカナマイシン耐性遺伝子およびsacB遺伝子を含む約5.7 kbpのDNA断片を切り出し、BRB5/pBluの同酵素で切断した部位に挿入して遺伝子破壊・挿入用プラスミドBRB5/pBlu/SacB−Kmを作製した。
<DNA挿入株BRB5/AS株の作製>
実施例1のDNA置換株の作製方法と同様にして、AS株を親株としてBAR5/pBlu/SacB−Kmを用いてbktB構造遺伝子の開始コドンの上流側にphbCのプロモーターおよびリボソーム結合部位を含むDNAが挿入された菌株を作製した。このDNA挿入株をBRB5/AS株と命名し、塩基配列決定を、APPLIED BIOSYSTEMS社製のDNAシークエンサー3130xl Genetic Analyzerを用いて行い、bktB構造遺伝子の開始コドン上流側−58塩基目と−59塩基目の間にphbCのプロモーターおよびリボソーム結合部位を含むDNAが挿入された株であることを確認した。
(実施例9)β−ケトチオラーゼ活性の測定
まず、前培養培地(1w/v% Meat−extract、1w/v% Bacto−Trypton、0.2w/v% Yeast−extract、0.9w/v% Na2HPO4・12H2O、0.15w/v% KH2PO4、(pH6.8))5mlに試験菌株を植菌して30℃で1晩培養したものを、5mlの酵素活性測定用培地(1.1w/v% Na2HPO4・12H2O、0.19w/v% KH2PO4、0.29w/v% (NH4)2SO4、0.1w/v% MgSO4・7H2O、0.5w/v% フラクトース、0.5v/v% 微量金属塩溶液(0.1N塩酸に1.6w/v% FeCl3・6H2O、1w/v% CaCl2・2H2O、0.02w/v% CoCl2・6H2O、0.016w/v %CuSO2・5H2O、0.012w/v% NiCl2・6H2Oを溶かしたもの))に対して0.05ml接種して、30℃で24時間培養した。
この培養液2mlを4℃で10000×g、1分間の遠心分離を行い、菌体を集めた。この菌体を緩衝液(100mM Tris−塩酸緩衝液、1mM EDTA、pH7.5)で2回洗浄し、1mlの同緩衝液に懸濁した。これを超音波処理して菌体を破砕した後、15000×g、4℃、5分間の遠心分離した上清を粗酵素液として用いた。
β−ケトチオラーゼ活性は反応液(100mM Tris−HCl(pH8.0)、0.06mM アセトアセチル−CoA、0.1mM CoA−SH、20mM MgCl2)に前記粗酵素液0.01mlを添加して、全量を0.5mlとし、25℃で反応させてアセトアセチル−CoAの分解を303nmの吸光度で測定した。β−ケトチオラーゼ活性は、1分間に1μmolのアセトアセチル−CoAを分解する酵素量を1ユニットとした。比活性はタンパク質1mgあたりのユニットとした。なお、タンパク質の定量はウシ血清アルブミンをスタンダードとして、Bio−Radプロテインアッセイ試薬(バイオラッド社製)を用いたブラッドフォード法で測定した。
実施例1から8で作製した菌株の内の代表的な菌株のβ−ケトチオラーゼの活性を表1に示す。
(実施例10〜12) 酪酸添加培養
実施例3で作製したPac−bktB/AS株(実施例10)、実施例4で作製したPre−bktB/AS株(実施例11)及び実施例2で作製したAS株(実施例12)の培養を行った。培養は次の様に行った。
前培地の組成は1w/v% Meat−extract、1w/v% Bacto−Trypton、0.2w/v %Yeast−extract、0.9w/v% Na2HPO4・12H2O、0.15w/v% KH2PO4、(pH6.7)とした。ポリエステル生産培地の組成は1.1w/v% Na2HPO4・12H2O、0.19w/v% KH2PO4、0.6w/v% (NH4)2SO4、0.1w/v% MgSO4・7H2O、0.5v/v% 微量金属塩溶液(0.1N塩酸に1.6w/v% FeCl3・6H2O、1w/v% CaCl2・2H2O、0.02w/v% CoCl2・6H2O、0.016w/v% CuSO4・5H2O、0.012w/v% NiCl2・6H2O、0.01w/v% CrCl3・6H2Oを溶かしたもの。)であり、炭素源はPKOO(Palm kernel olein oil=パーム核油オレイン)と、PKOO100重量部に対して酪酸を30重量部混合して使用し、培養は炭素源を流加する流加培養にて行った。
Pac−bktB/AS株、Pre−bktB/AS株及びAS株のグリセロールストックを前培地に接種して20時間培養し、2.5Lの生産培地を入れた5Lジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ製MD−500型)に10v/v%接種した。運転条件は、培養温度28℃、攪拌速度420rpm、通気量0.6vvmとし、pHは6.6から6.8の間でコントロールした。コントロールには14%のアンモニア水を使用した。培養は65時間まで行った。培養後遠心分離によって菌体を回収し、メタノールで洗浄後、凍結乾燥し、3HH組成比率を分析した。
生産されたポリエステルの3HH組成分析は以下のようにガスクロマトグラフィーによって測定した。乾燥ポリエステルの約20mgに2mlの硫酸−メタノール混液(15:85)と2mlのクロロホルムを添加して密栓し、100℃で140分間加熱することでポリエステル分解物のメチルエステルを得た。冷却後、これに1.5gの炭酸水素ナトリウムを少しずつ加えて中和し、炭酸ガスの発生がとまるまで放置した。4mlのジイソプロピルエーテルを添加してよく混合した後、遠心して、上清中のポリエステル分解物のモノマーユニット組成をキャピラリーガスクロマトグラフィーにより分析した。
ガスクロマトグラフは島津製作所GC−17A、キャピラリーカラムはGLサイエンス社製NEUTRA BOND−1(カラム長25m、カラム内径0.25mm、液膜厚0.4μm)を用いた。キャリアガスとしてHeを用い、カラム入口圧100kPaとし、サンプルは1μlを注入した。温度条件は、初発温度100〜200℃まで8℃/分の速度で昇温、さらに200〜290℃まで30℃/分の速度で昇温した。
上記条件にて分析した結果、得られたポリエステルは化学式(1)に示すような共重合体ポリエステルP(3HB−co−3HH)であり、3HH比率は表2に示す通りであった。
(式中、m、nは1以上の整数を表す)
(比較例1,2) 酪酸を添加しない培養
実施例10と同じ培養条件にて、炭素源に酪酸を添加しない培養を実施例1で作製したKNK005株(比較例1)及び実施例2で作製したAS株(比較例2)について行った。3HH組成は表2に示す。