JPWO2014132624A1 - 光学材料、光学素子及び複合光学素子 - Google Patents

光学材料、光学素子及び複合光学素子 Download PDF

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Abstract

樹脂材料と、該樹脂材料中に分散された無機微粒子とで構成されており、前記無機微粒子は、コアと、該コアの表面の少なくとも一部を覆って形成されたシェルとを有し、前記コアは、SiO2、TiO2、ZnO、Al2O3、B2O3、Y2O3、MgO、BaO、CaO、SrO、NiO、CuO、BaTiO3、酸化インジウムスズ、SnO2及びゼオライトから選択される少なくとも1つで形成される光学材料、前記光学材料から形成されてなる光学素子、並びに前記光学素子を備える複合光学素子。

Description

本開示は、光学材料、光学素子及び複合光学素子に関する。
デジタルスチルカメラ等の高精度な撮像機器においては、複数のレンズ群を有する光学系が用いられており、屈折率、アッベ数、部分分散比等の光学定数が異なる、種々の光学材料が必要である。そのため、種々の光学定数を有する光学ガラス材料や光学樹脂材料が開発され、使用されている。特に、高屈折率で高アッベ数の光学ガラス材料は、多くの撮像機器において光学性能の向上のために多用されている。
一方、樹脂材料に特殊な光学定数を有するナノ微粒子を分散させることによって、従来の樹脂材料にはない光学定数を有する成形可能なナノコンポジット材料を合成する技術開発が盛んに行われている。光学ガラスでも実現することができないような光学定数を有するナノコンポジット材料は、高屈折率で高アッベ数の特殊な光学定数を有する光学ガラスや、耐久性の悪い光学ガラスの代替材料として期待されている。
前記ナノコンポジット材料の中でも特に、高屈折率のナノコンポジット材料の開発が盛んに行われている。特許文献1には、無機微粒子に酸化イットリウム(Y)を用いた材料が開示されており、特許文献2には、Al、Si、Ti、Zr、Ga、La等を含む材料が開示されている。
特開2006−089706号公報 特開2008−203821号公報
本開示は、広範囲な光学定数を自由に制御することができる光学材料、並びに該光学材料からなる光学素子及び複合光学素子を提供する。
本開示における光学材料は、
樹脂材料と、該樹脂材料中に分散された無機微粒子とで構成されており、
前記無機微粒子は、コアと、該コアの表面の少なくとも一部を覆って形成されたシェルとを有し、
前記コアは、SiO、TiO、ZnO、Al、B、Y、MgO、BaO、CaO、SrO、NiO、CuO、BaTiO、酸化インジウムスズ、SnO及びゼオライトから選択される少なくとも1つで形成される
ことを特徴とする。
前記シェルは、Si、Ti、Zn、Al、B、Y、Mg、Ba、Ca、Sr、Ni、Cu、In及びSnから選択される少なくとも1つの酸化物で形成されることが有益である。
本開示における光学素子は、
樹脂材料と、該樹脂材料中に分散された無機微粒子とで構成されており、
前記無機微粒子は、コアと、該コアの表面の少なくとも一部を覆って形成されたシェルとを有し、
前記コアは、SiO、TiO、ZnO、Al、B、Y、MgO、BaO、CaO、SrO、NiO、CuO、BaTiO、酸化インジウムスズ、SnO及びゼオライトから選択される少なくとも1つで形成される光学材料、から形成されてなる
ことを特徴とする。
本開示における複合光学素子は、
第1の光学素子と、該第1の光学素子の光学面上に積層された第2の光学素子とを備え、
前記第2の光学素子は、
樹脂材料と、該樹脂材料中に分散された無機微粒子とで構成されており、
前記無機微粒子は、コアと、該コアの表面の少なくとも一部を覆って形成されたシェルとを有し、
前記コアは、SiO、TiO、ZnO、Al、B、Y、MgO、BaO、CaO、SrO、NiO、CuO、BaTiO、酸化インジウムスズ、SnO及びゼオライトから選択される少なくとも1つで形成される光学材料、から形成されてなる光学素子である
ことを特徴とする。
コアシェル構造を有する無機微粒子が樹脂材料に分散されたコンポジット材料である、本開示における光学材料は、広範囲な光学定数を自由に制御することができる。
図1は、実施の形態1に係るコンポジット材料の概略図であり、(a)はコンポジット材料の構成を示す概略断面図、(b)は無機微粒子のコアシェル構造を示す概略断面図である。 図2は、無機微粒子の実効粒子径を説明するグラフである。 図3は、実施の形態1における、SiOの屈折率とアッベ数との関係を示したプロットである。 図4は、実施の形態1における、SiOの部分分散比とアッベ数との関係を示したプロット及び正常分散線である。 図5は、SiO微粒子の透過型電子顕微鏡写真である。 図6は、コアがSiO、シェルがTiOのコアシェル構造を有する無機微粒子の透過型電子顕微鏡写真である。 図7は、実施の形態2に係るハイブリッドレンズの概略構成図である。 図8は、実施例1〜8、並びに比較例1及び2における、各種材料の屈折率とアッベ数との関係を示したプロットである。 図9は、実施例1〜8、並びに比較例1及び2における、各種材料の部分分散比とアッベ数との関係を示したプロット及び正常分散線である。 図10は、実施例9〜14、並びに比較例1及び3における、各種材料の屈折率とアッベ数との関係を示したプロットである。 図11は、実施例9〜14、並びに比較例1及び3における、各種材料の部分分散比とアッベ数との関係を示したプロット及び正常分散線である。
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、発明者は、当業者が本開示を充分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
<実施の形態1>
以下、実施の形態1について図面を参照しながら説明する。
[1.コンポジット材料]
図1は、実施の形態1に係るコンポジット材料の概略図であり、(a)はコンポジット材料の構成を示す概略断面図、(b)は無機微粒子のコアシェル構造を示す概略断面図である。
図1(a)に示すように、本開示における光学材料の一例である、実施の形態1に係るコンポジット材料100は、マトリクス材としての樹脂材料10と、該樹脂材料10中に分散された無機微粒子20とで構成されている。図1(b)に示すように、無機微粒子20は、コア21と、該コア21の表面を覆って形成されたシェル22とを有する。シェル22は、コア21の表面全体を覆っていてもよく、コア21の表面の一部を覆っていてもよい。また、シェル22は、膜状に形成されていてもよく、複数の微粒子が密に形成されていてもよい。
[2.無機微粒子]
無機微粒子20のコア21は、SiO、TiO、ZnO、Al、B、Y、MgO、BaO、CaO、SrO、NiO、CuO、BaTiO、酸化インジウムスズ(以下、ITOという)、SnO及びゼオライトから選択される少なくとも1つで形成される。これらの中でも、広範囲な光学定数をより自由に制御することが可能な光学材料を得ることができるという点から、SiO及びZnOが、コア21の材料として有益である。
なお、コアがSiOで形成されるコアシェル構造を、SiO系コアシェル構造ともいう。
無機微粒子20のシェル22は、Si、Ti、Zn、Al、B、Y、Mg、Ba、Ca、Sr、Ni、Cu、In及びSnから選択される少なくとも1つの酸化物で形成されることが有益である。これらの中でも、広範囲な光学定数をより自由に制御することが可能な光学材料を得ることができるという点から、Y、Zn、Ti、In及びSnから選択される少なくとも1つの酸化物である、Y、ZnO、TiO及びITOが、シェル22の材料として有益である。
コアシェル構造におけるコアを形成する材料とシェルを形成する材料との割合には特に限定がなく、用いる各材料の組合せに応じて、得られる光学材料に広範囲な光学定数を自由に制御し得る効果を付与することができるように適宜調整すればよいが、例えば、シェルを形成する材料はコアを形成する材料の1〜20重量%程度、さらには2〜18重量%程度であることが有益である。
無機微粒子20は、凝集粒子、非凝集粒子のいずれであってもよく、一般に、一次粒子20aと、該一次粒子20aが複数個凝集してなる二次粒子20bとを含んで構成されている。無機微粒子20の分散状態は、マトリクス材である樹脂材料10中に無機微粒子20が存在する限り、所望の効果を得ることができるという点から特に限定はないが、無機微粒子20が樹脂材料10中に均一に分散されていることが有益である。ここで、「無機微粒子20が樹脂材料10中に均一に分散されている」とは、無機微粒子20の一次粒子20a及び二次粒子20bがコンポジット材料100内の特定の位置に偏在することなく、実質的に均一に分散していることを意味する。光学用材料として透光性を損なわないためには、粒子の分散性が良好であることが有益である。そのためには、無機微粒子20は一次粒子20aのみで構成されていることが有益である。
SiO系コアシェル構造を有する無機微粒子20を樹脂材料10中に分散させたコンポジット材料100の透光性を確保するためには、無機微粒子20の粒子径が重要である。無機微粒子20の粒子径が光の波長よりも充分小さい場合は、無機微粒子20が樹脂材料10中に分散されているコンポジット材料100を、屈折率のばらつきがない均質な媒体とみなすことができる。したがって、無機微粒子20の粒子径は、可視光の波長以下の大きさであることが有益である。可視光は400〜700nmの範囲の波長を有するので、無機微粒子20の最大粒子径は400nm以下であることが有益である。なお、無機微粒子20の最大粒子径は、無機微粒子20の走査型電子顕微鏡写真を撮影し、最も大きな無機微粒子20の粒子径(二次粒子の場合は二次粒子径)を測定することにより求めることができる。
無機微粒子20の粒子径が光の波長の1/4よりも大きい場合は、レイリー散乱によってコンポジット材料100の透光性が損なわれるおそれがある。そのため、可視光域において高い透光性を実現するためには、無機微粒子20の実効粒子径は100nm以下であることが有益である。ただし、無機微粒子20の実効粒子径が1nm未満であると、無機微粒子20が量子的な効果を発現する材料からなる場合に蛍光を生じることがあり、これがコンポジット材料100から形成された光学部品の特性に影響を及ぼす場合がある。
以上の観点から、無機微粒子20の実効粒子径は1〜100nmの範囲内であることが有益であり、1〜50nmの範囲内であることがより有益である。特に、無機微粒子20の実効粒子径を20nm以下とすると、レイリー散乱の影響が非常に小さくなり、コンポジット材料100の透光性が特に高くなるので、さらに有益である。
ここで、無機微粒子の実効粒子径について図2を用いて説明する。図2において、横軸は無機微粒子の粒子径を示し、縦軸は横軸の各粒子径に対する無機微粒子の累積頻度を示す。横軸の粒子径は、無機微粒子が凝集している場合には、凝集した状態での二次粒子径である。実効粒子径とは、図2のような無機微粒子の各粒子径における累積頻度分布図において、累積頻度が50%となる中心粒子径(メジアン径:d50)を意味する。実効粒子径の精度を向上させるには、例えば、無機微粒子の走査型電子顕微鏡写真を撮影し、200個以上の無機微粒子について、その粒子径を測定して求めることが有益である。
上述のように、本実施の形態1に係るコンポジット材料100は、SiO系コアシェル構造を有する無機微粒子20を樹脂材料10中に分散させることにより構成されている。後述のとおり、このように構成されたコンポジット材料100は、SiO単体の無機微粒子を用いた場合と比べ、光学特性を広範囲でかつ容易に制御することができる。
図3は、SiOの、d線(波長587.6nm)における屈折率ndと、波長分散性を示すd線におけるアッベ数νdとの関係を示したプロットである。なお、アッベ数νdは、以下の式(1)により定義される値である。
νd=(nd−1)/(nF−nC) ・・・(1)
ここで、
nd:d線における材料の屈折率、
nF:F線(波長486.1nm)における材料の屈折率、
nC:C線(波長656.3nm)における材料の屈折率
である。
図4は、SiOの、g線(波長435.8nm)及びF線の分散性を示す部分分散比PgFと、波長分散性を示すd線におけるアッベ数νdとの関係を示したプロット及び正常分散線である。なお、部分分散比PgFは、以下の式(2)により定義される値である。
PgF=(ng−nF)/(nF−nC) ・・・(2)
ここで、
ng:g線(波長435.8nm)における材料の屈折率、
nF:F線における材料の屈折率、
nC:C線における材料の屈折率
である。
異常分散性ΔPgFは、材料のνdに対応する正常部分分散ガラスの標準線上の点と、その材料のPgFとの偏差である。本開示においては、HOYA(株)の基準に基づく、正常部分分散ガラスの標準線として硝種C7(nd:1.51、νd:60.5、PgF:0.54)と硝種F2(nd:1.62、νd:36.3、PgF:0.58)との座標を通る直線(図4における正常分散線)を用いてΔPgFを算出している。
図3及び4に示すとおり、SiOは、屈折率nd:1.54、アッベ数νd:69.6、部分分散比PgF:0.53という光学特性を有する。また、SiOの異常分散性ΔPgFは0.00であり、SiOは、正常分散線上に存在する極めて一般的な材料である。このSiOをコアとし、ZnO、TiO、ITO、Y、Al、SnO、ZrO等をシェルとしたSiO系コアシェル構造を有する無機微粒子を用いたコンポジット材料は、アッベ数、屈折率、部分分散比等の光学特性を広範囲に制御することができ、結果として、異常分散性が極めて大きいという特性が付与される。したがって、SiO系コアシェル構造を有する無機微粒子を用いたコンポジット材料は、光学部品設計の自由度を従来よりも拡大することができる。
また、コアシェル構造において、シェルの厚みを増大させる(後述する実施例では、コアを形成する材料に対するシェルを形成する材料の割合を高くしている)ことで、光学特性をより広範囲に制御することができる。
[3.樹脂材料]
樹脂材料10としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エネルギー線硬化性樹脂等の樹脂の中から、透光性が高い樹脂を用いることができる。例えば、アクリル樹脂;ポリメタクリル酸メチル等のメタクリル樹脂;エポキシ樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカプロラクトン等のポリエステル樹脂;ポリスチレン等のポリスチレン樹脂;ポリプロピレン等のオレフィン樹脂;ナイロン等のポリアミド樹脂;ポリイミド、ポリエーテルイミド等のポリイミド樹脂;ポリビニルアルコール;ブチラール樹脂;酢酸ビニル樹脂;脂環式ポリオレフィン樹脂;シリコーン樹脂;非晶性フッ素樹脂等を用いることができる。また、ポリカーボネート、液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、非晶性ポリオレフィン等のエンジニアリングプラスチックを用いてもよい。さらに、これらの混合体や共重合体、及びこれらの変性樹脂を用いることもできる。
これらの中でも、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ブチラール樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂及びポリカーボネートは、透明性が高く、成形性も良好であるので有益である。これらの樹脂は、所定の分子骨格を選択することによって、屈折率ndを1.4〜1.7の範囲とすることができる。
樹脂材料10のd線におけるアッベ数νdには特に限定はないが、マトリクス材となる樹脂材料10のアッベ数νdが高いほど、無機微粒子20を分散して得られるコンポジット材料100のd線におけるアッベ数νdCOMも向上することは言うまでもない。特に、樹脂材料10としてアッベ数νdが45以上の樹脂を使用することにより、アッベ数νdCOMが40以上の、レンズ等の光学部品への応用に充分な光学特性を有するコンポジット材料を得ることが可能となるので、有益である。アッベ数νdが45以上の樹脂としては、例えば、脂環式炭化水素基を骨格に有する脂環式ポリオレフィン樹脂、シロキサン構造を有するシリコーン樹脂、主鎖にフッ素原子を有する非晶性フッ素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
[4.コンポジット材料の光学特性]
コンポジット材料100の屈折率は、無機微粒子20の屈折率及び樹脂材料10の屈折率から、例えば以下の式(3)で表されるマックスウェル−ガーネット理論により推定することができる。式(3)より、d線、F線及びC線におけるコンポジット材料100の屈折率をそれぞれ推定し、さらに前記式(1)より、コンポジット材料100のアッベ数νdを推定することも可能である。逆にこの理論に基づく推定から、樹脂材料10と無機微粒子20との重量比を決定してもよい。
ここで、
nλCOM:特定波長λにおけるコンポジット材料100の平均屈折率、
nλ:特定波長λにおける無機微粒子20の屈折率、
nλ:特定波長λにおける樹脂材料10の屈折率、
P:コンポジット材料100全体に対する無機微粒子20の体積比
である。
無機微粒子20が光を吸収する場合や無機微粒子20が金属を含む場合には、式(3)の屈折率を複素屈折率として計算する。なお、式(3)は、nλ≧nλの場合に成立するので、nλ<nλの場合は、以下の式(4)を用いてコンポジット材料100の屈折率を推定する。
ここで、nλCOM、nλ、nλ及びPは、各々式(3)と同じである。
コンポジット材料100の実際の屈折率の評価は、調製したコンポジット材料100を各測定法に適した形状に成膜又は成型し、エリプソメトリ法、アベレス法、光導波路法、分光反射率法等の分光測定法や、プリズムカプラ法等で実測することによって行うことができる。
前記マックスウェル−ガーネット理論を用いて推定したコンポジット材料100の光学特性と、コンポジット材料100中の無機微粒子20の含有量とについて説明する。コンポジット材料100中の無機微粒子20の含有量が少なすぎると、無機微粒子20による光学特性の調整効果が充分に得られないおそれがあるので、無機微粒子20の含有量は、コンポジット材料(光学材料)100全体の1重量%以上、さらには5重量%以上、特に10重量%以上であることが有益である。一方、コンポジット材料100中の無機微粒子20の含有量が多すぎると、コンポジット材料100の流動性が低下して光学素子への成形が困難になる場合や、無機微粒子20の樹脂材料10への充填自体が困難になる場合があるので、無機微粒子20の含有量は、コンポジット材料(光学材料)100全体の80重量%以下、さらには60重量%以下、特に40重量%以下であることが有益である。
[5.コンポジット材料の製造方法]
まず、無機微粒子20の形成方法について説明する。無機微粒子20のコア21は、共沈法、ゾルゲル法、金属錯体分解法等の液相法又は気相法により形成することができる。また、ボールミルあるいはビーズミルによる粉砕法により、バルク体を微粒子化することでコア21を形成してもよい。コア21の材料は、SiO、TiO、ZnO、Al、B、Y、MgO、BaO、CaO、SrO、NiO、CuO、BaTiO、ITO、SnO及びゼオライトから選択される少なくとも1つである。
無機微粒子20のシェル22の形成には、有機金属錯体溶液を用いることができる。例えばSi、Ti、Zn、Al、B、Y、Mg、Ba、Ca、Sr、Ni、Cu、In及びSnから選択される少なくとも1つの酸化物であるシェル22の材料をトルエン、ベンゼン、キシレン、アルコール等で希釈した有機金属錯体溶液と、コア21とを混合した後、遠心分離機で余分な溶液を除去した固形分を大気中で熱処理することにより、コア21の表面の少なくとも一部を覆ってシェル22が形成されたコアシェル構造を有する無機微粒子20が得られる。なお、あまりにも高温で熱処理を行うと、コア21が粒成長する傾向があり、逆にあまりにも低温で熱処理を行うと、有機物が熱分解し難い傾向があるので、200〜600℃程度、さらには200〜400℃程度で、30〜60分間程度熱処理を行うことが有益である。
図5は、SiO微粒子の透過型電子顕微鏡写真であり、図6は、コアがSiO、シェルがTiOのコアシェル構造を有する無機微粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
図5及び6に示すように、図5のSiO微粒子の写真とは異なり、図6のコアシェル構造を有する無機微粒子の写真は、表面に微細な凹凸が顕著に存在していることが観察される。すなわち、図6の写真から、粒子径が数10nmのSiO粒子の表面に、粒子径が1〜3nmのTiO粒子が密に形成されていることがわかる。シェルは、無定形の膜として形成されていると予想されたが、結晶性の微粒子として形成されていることがわかる。
次に、コンポジット材料100の調製方法について説明する。例えば前記方法にて形成された無機微粒子20を、マトリクス材としての樹脂材料10に分散させてコンポジット材料100を調製する方法には特に限定はなく、物理的な方法を採用してもよいし、化学的な方法を採用してもよい。例えば、以下の(1)〜(4)いずれかの方法でコンポジット材料100を調製することができる。
(1)樹脂又は樹脂を溶解した溶液と無機微粒子とを、機械的、物理的に混合する方法。
(2)樹脂の原料である単量体やオリゴマー等と無機微粒子とを、機械的、物理的に混合して混合物を得た後、樹脂の原料である単量体やオリゴマー等を重合する方法。
(3)樹脂又は樹脂を溶解した溶液と無機微粒子の原料とを混合した後、無機微粒子の原料を反応させ、樹脂中で無機微粒子を形成する方法。
(4)樹脂の原料である単量体やオリゴマー等と無機微粒子の原料とを混合した後、無機微粒子の原料を反応させて無機微粒子を形成する工程と、樹脂の原料である単量体やオリゴマー等を重合して樹脂を合成する工程とを行う方法。
前記(1)及び(2)の方法では、予め形成された種々の無機微粒子を用いることができ、また、汎用の分散装置によってコンポジット材料を調製することができるという利点がある。一方、前記(3)及び(4)の方法では、化学的な反応を行う必要があるため、使用する材料にある程度の制限が生じる。しかし、これらの方法は、原料を分子レベルで混合するので、無機微粒子の分散性を高めることができるという利点を有する。
なお、前記方法において、無機微粒子又は無機微粒子の原料と、樹脂又は樹脂の原料である単量体やオリゴマー等とを混合する順序に特に限定はなく、場合に応じて適宜順序を決定すればよい。例えば、一次粒子径が実質1〜100nmの範囲内にある無機微粒子を分散した溶液に、樹脂、樹脂の原料又はこれらを溶解した溶液を加えて機械的、物理的に混合してもよい。コンポジット材料100の製造方法は、本開示における効果が得られる限り、特に限定はない。
また、コンポジット材料100は、本開示における効果が得られる限り、無機微粒子20及びマトリクス材である樹脂材料10以外の成分を含んでもよい。例えば、図示していないが、樹脂材料10における無機微粒子20の分散性を向上させる分散剤や界面活性剤、特定範囲の波長の電磁波を吸収する染料や顔料等がコンポジット材料100中に共存していてもよい。
なお、コンポジット材料100から、例えばレンズ等の光学素子を形成する方法には特に限定はなく、公知の方法を採用することができる。例えば、レンズ等の光学素子に対応する形状を有する型にコンポジット材料100を充填し、例えば紫外線等のエネルギー線を照射してコンポジット材料100を硬化させることによって、レンズ等の光学素子を形成することができる。
<実施の形態2>
以下、実施の形態2について図面を参照しながら説明する。
図7は、実施の形態2に係るハイブリッドレンズの概略構成図である。ハイブリッドレンズレンズ30は、基材となる第1レンズ31と、該第1レンズ31の光学面上に積層された第2レンズ32とで構成されている。ハイブリッドレンズ30は、複合光学素子の一例である。
第1レンズ31は、第1の光学素子で、ガラスレンズの一例である。第1レンズ31は、ガラス材料から形成されており、両凸形状のレンズである。
第2レンズ32は、第2の光学素子で、樹脂レンズの一例である。第2レンズ32は、コンポジット材料から形成されており、該コンポジット材料として、前記実施の形態1に係るコンポジット材料100が用いられる。
なお、図7に示すハイブリッドレンズ30は、両面が凸形状であるが、例えば少なくとも一方の面が凹形状であってもよく、その形状に特に限定はない。ハイブリッドレンズ30は、所望の光学特性に応じて適宜設計される。また、図7に示すハイブリッドレンズ30では、第2レンズ32は、第1レンズ31の一方の光学面上に積層されているが、第1レンズ31の両光学面上に積層されていてもよい。
ハイブリッドレンズ30の製造方法には特に限定がなく、公知の方法を採用することができる。例えば、レンズ研磨、射出成形、プレス成形等により、ガラスレンズの一例である第1レンズ31を成形したのち、第2レンズ32に対応する形状を有する型にコンポジット材料100を充填し、この上方から第1レンズ31を載せて所定の厚みになるまでコンポジット材料を押し広げ、第1レンズ31の上方から、例えば紫外線等のエネルギー線を照射してコンポジット材料100を硬化させることによって、第1レンズ31の光学面上に、第2レンズ32が積層された、複合光学素子の一例であるハイブリッドレンズ30が得られる。
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1及び2を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
以下に、本実施の形態に係る実施例と、比較例とを示す。なお、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例1〜14において、コアの材料に対する有機金属錯体(シェルの材料を含む脂肪酸塩溶液)の割合を変更することにより、シェルの厚みを変化させた。
(実施例1)
コアの材料としてSiOを、シェルの材料としてYを用意した。比表面積200m/gのSiO微粒子1.0gに対して、Yを含む脂肪酸塩(オクチル酸塩、ナフテン酸塩、アセチルアセトン金属錯体)溶液0.05gと、希釈溶液(キシレン、トルエン、酢酸エチル、メタノール)10gとを用い、YのSiOに対する比率を5重量%とした。これらを室温で攪拌混合した後、遠心分離機で上澄み液を除去し、固形分を乾燥した。これを大気中にて400℃で30分間熱処理し、無機微粒子を得た。
得られた無機微粒子を観察したところ、図6に示すような、SiO粒子をコアとして、その表面により細かなY微粒子がぎっしりと形成されたコアシェル構造を有することが確認された。
得られた無機微粒子を含むスラリーを、紫外線硬化性アクリレートモノマー(東亞合成(株)製、商品名「M−8060」)及び重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア754」)と混合し、真空下で脱溶媒した。これに紫外線を照射して硬化させ、実施例1のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(実施例2)
実施例1において、Yを含む脂肪酸塩溶液の量を0.15gに変更し、YのSiOに対する比率を15重量%としたほかは、実施例1と同様にして無機微粒子を得た。得られた無機微粒子を用い、実施例1と同様にして実施例2のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(実施例3)
実施例1において、シェルの材料をZnOに変更し、ZnOのSiOに対する比率を5重量%としたほかは、実施例1と同様にして無機微粒子を得た。得られた無機微粒子を用い、実施例1と同様にして実施例3のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(実施例4)
実施例3において、ZnOを含む脂肪酸塩溶液の量を0.15gに変更し、ZnOのSiOに対する比率を15重量%としたほかは、実施例3と同様にして無機微粒子を得た。得られた無機微粒子を用い、実施例1と同様にして実施例4のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(実施例5)
実施例1において、シェルの材料をTiOに変更し、TiOのSiOに対する比率を5重量%としたほかは、実施例1と同様にして無機微粒子を得た。得られた無機微粒子を用い、実施例1と同様にして実施例5のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(実施例6)
実施例5において、TiOを含む脂肪酸塩溶液の量を0.15gに変更し、TiOのSiOに対する比率を15重量%としたほかは、実施例5と同様にして無機微粒子を得た。得られた無機微粒子を用い、実施例1と同様にして実施例6のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(実施例7)
実施例1において、シェルの材料をITOに変更し、ITOのSiOに対する比率を5重量%としたほかは、実施例1と同様にして無機微粒子を得た。得られた無機微粒子を用い、実施例1と同様にして実施例7のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(実施例8)
実施例7において、ITOを含む脂肪酸塩溶液の量を0.15gに変更し、ITOのSiOに対する比率を15重量%としたほかは、実施例7と同様にして無機微粒子を得た。得られた無機微粒子を用い、実施例1と同様にして実施例8のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(実施例9)
実施例1において、コアの材料を比表面積100m/gのZnO微粒子に変更し、YのZnOに対する比率を5重量%としたほかは、実施例1と同様にして無機微粒子を得た。得られた無機微粒子を用い、実施例1と同様にして実施例9のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(実施例10)
実施例9において、Yを含む脂肪酸塩溶液の量を0.15gに変更し、YのZnOに対する比率を15重量%としたほかは、実施例9と同様にして無機微粒子を得た。得られた無機微粒子を用い、実施例1と同様にして実施例10のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(実施例11)
実施例9において、シェルの材料をTiOに変更し、TiOのZnOに対する比率を5重量%としたほかは、実施例9と同様にして無機微粒子を得た。得られた無機微粒子を用い、実施例1と同様にして実施例11のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(実施例12)
実施例11において、TiOを含む脂肪酸塩溶液の量を0.15gに変更し、TiOのZnOに対する比率を15重量%としたほかは、実施例11と同様にして無機微粒子を得た。得られた無機微粒子を用い、実施例1と同様にして実施例12のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(実施例13)
実施例9において、シェルの材料をITOに変更し、ITOのZnOに対する比率を5重量%としたほかは、実施例9と同様にして無機微粒子を得た。得られた無機微粒子を用い、実施例1と同様にして実施例13のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(実施例14)
実施例13において、ITOを含む脂肪酸塩溶液の量を0.15gに変更し、ITOのZnOに対する比率を15重量%としたほかは、実施例13と同様にして無機微粒子を得た。得られた無機微粒子を用い、実施例1と同様にして実施例14のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(比較例1)
紫外線硬化性アクリレートモノマー(東亞合成(株)製、商品名「M−8060」)及び重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア754」)の混合物に紫外線を照射して硬化させ、比較例1の材料とした。
(比較例2)
SiO微粒子、紫外線硬化性アクリレートモノマー(東亞合成(株)製、商品名「M−8060」)及び重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア754」)の混合物に紫外線を照射して硬化させ、比較例2のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中のSiO微粒子の含有量は5重量%であった。
(比較例3)
ZnO微粒子、紫外線硬化性アクリレートモノマー(東亞合成(株)製、商品名「M−8060」)及び重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア754」)の混合物に紫外線を照射して硬化させ、比較例3のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中のZnO微粒子の含有量は5重量%であった。
実施例1〜14及び比較例1〜3の材料について、精密屈折計((株)島津デバイス製造製、KPR−200)を用い、g線、F線、d線及びC線における屈折率を測定し、前記式(1)及び(2)より、アッベ数νdと部分分散比PgFとを算出した。これらの結果を図8〜11に示す。
図8は、実施例1〜8、並びに比較例1及び2における、各種材料の屈折率とアッベ数との関係を示したプロットである。図9は、実施例1〜8、並びに比較例1及び2における、各種材料の部分分散比とアッベ数との関係を示したプロット及び正常分散線である。図10は、実施例9〜14、並びに比較例1及び3における、各種材料の屈折率とアッベ数との関係を示したプロットである。図11は、実施例9〜14、並びに比較例1及び3における、各種材料の部分分散比とアッベ数との関係を示したプロット及び正常分散線である。
図8〜11に示すように、実施例1〜14のコンポジット材料(光学材料)は、コアシェル構造を有する無機微粒子のシェルの光学特性の影響を受けて、シェルを備えないコアのみの無機微粒子を用いた比較例の材料よりも、広範囲な光学定数を自由に制御することができる。したがって、コアシェル構造を有する無機微粒子を樹脂材料に分散させてなるコンポジット材料は、低分散かつ大きな異常分散性という光学特性を有することがわかる。
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
本開示は、レンズ、プリズム、光学フィルター、回折光学素子等の光学素子に好適に使用することができる。
10 樹脂材料
20 無機微粒子
20a 一次粒子
20b 二次粒子
21 コア
22 シェル
30 ハイブリッドレンズ
31 第1レンズ
32 第2レンズ
100 コンポジット材料
本開示は、光学材料、光学素子及び複合光学素子に関する。
デジタルスチルカメラ等の高精度な撮像機器においては、複数のレンズ群を有する光学系が用いられており、屈折率、アッベ数、部分分散比等の光学定数が異なる、種々の光学材料が必要である。そのため、種々の光学定数を有する光学ガラス材料や光学樹脂材料が開発され、使用されている。特に、高屈折率で高アッベ数の光学ガラス材料は、多くの撮像機器において光学性能の向上のために多用されている。
一方、樹脂材料に特殊な光学定数を有するナノ微粒子を分散させることによって、従来の樹脂材料にはない光学定数を有する成形可能なナノコンポジット材料を合成する技術開発が盛んに行われている。光学ガラスでも実現することができないような光学定数を有するナノコンポジット材料は、高屈折率で高アッベ数の特殊な光学定数を有する光学ガラスや、耐久性の悪い光学ガラスの代替材料として期待されている。
前記ナノコンポジット材料の中でも特に、高屈折率のナノコンポジット材料の開発が盛んに行われている。特許文献1には、無機微粒子に酸化イットリウム(Y)を用いた材料が開示されており、特許文献2には、Al、Si、Ti、Zr、Ga、La等を含む材料が開示されている。
特開2006−089706号公報 特開2008−203821号公報
本開示は、広範囲な光学定数を自由に制御することができる光学材料、並びに該光学材料からなる光学素子及び複合光学素子を提供する。
本開示における光学材料は、
樹脂材料と、該樹脂材料中に分散された無機微粒子とで構成されており、
前記無機微粒子は、コアと、該コアの表面の一部を覆って形成されたシェルとを有し、
前記コアは、Si、Ti、Zn、Al、B、Y、Mg、Ba、Ca、Sr、Ni、Cu、In及びSnから選択される少なくとも1つの酸化物で形成されたものであ
ことを特徴とする。
前記シェルは、前記コアとは異なる酸化物であって、Si、Ti、Zn、Al、B、Y、Mg、Ba、Ca、Sr、Ni、Cu、In及びSnから選択される少なくとも1つの酸化物で形成されたものである。また、前記シェルを形成する酸化物の粒子径は、前記コアを形成する酸化物の粒子径よりも小さく、前記シェルは、前記コアの表面に結晶性の微粒子として形成されたものである。
本開示における光学素子は、
樹脂材料と、該樹脂材料中に分散された無機微粒子とで構成されており、
前記無機微粒子は、コアと、該コアの表面の一部を覆って形成されたシェルとを有し、
前記コアは、Si、Ti、Zn、Al、B、Y、Mg、Ba、Ca、Sr、Ni、Cu、In及びSnから選択される少なくとも1つの酸化物で形成されたものであり、
前記シェルは、前記コアとは異なる酸化物であって、Si、Ti、Zn、Al、B、Y、Mg、Ba、Ca、Sr、Ni、Cu、In及びSnから選択される少なくとも1つの酸化物で形成されたものであり、
前記シェルを形成する酸化物の粒子径は、前記コアを形成する酸化物の粒子径よりも小さく、
前記シェルは、前記コアの表面に結晶性の微粒子として形成されたものである光学材料、から形成されてなる
ことを特徴とする。
本開示における複合光学素子は、
第1の光学素子と、該第1の光学素子の光学面上に積層された第2の光学素子とを備え、
前記第2の光学素子は、
樹脂材料と、該樹脂材料中に分散された無機微粒子とで構成されており、
前記無機微粒子は、コアと、該コアの表面の一部を覆って形成されたシェルとを有し、
前記コアは、Si、Ti、Zn、Al、B、Y、Mg、Ba、Ca、Sr、Ni、Cu、In及びSnから選択される少なくとも1つの酸化物で形成されたものであり、
前記シェルは、前記コアとは異なる酸化物であって、Si、Ti、Zn、Al、B、Y、Mg、Ba、Ca、Sr、Ni、Cu、In及びSnから選択される少なくとも1つの酸化物で形成されたものであり、
前記シェルを形成する酸化物の粒子径は、前記コアを形成する酸化物の粒子径よりも小さく、
前記シェルは、前記コアの表面に結晶性の微粒子として形成されたものである光学材料、から形成されてなる光学素子である
ことを特徴とする。
コアシェル構造を有する無機微粒子が樹脂材料に分散されたコンポジット材料である、本開示における光学材料は、広範囲な光学定数を自由に制御することができる。
実施の形態1に係るコンポジット材料の概略図であり、(a)はコンポジット材料の構成を示す概略断面図、(b)は無機微粒子のコアシェル構造を示す概略断面図 無機微粒子の実効粒子径を説明するグラフ 実施の形態1における、SiOの屈折率とアッベ数との関係を示したプロット 実施の形態1における、SiOの部分分散比とアッベ数との関係を示したプロット及び正常分散線 SiO微粒子の透過型電子顕微鏡写真 コアがSiO、シェルがTiOのコアシェル構造を有する無機微粒子の透過型電子顕微鏡写真 実施の形態2に係るハイブリッドレンズの概略構成図 実施例1〜8、並びに比較例1及び2における、各種材料の屈折率とアッベ数との関係を示したプロット 実施例1〜8、並びに比較例1及び2における、各種材料の部分分散比とアッベ数との関係を示したプロット及び正常分散線 実施例9〜14、並びに比較例1及び3における、各種材料の屈折率とアッベ数との関係を示したプロット 実施例9〜14、並びに比較例1及び3における、各種材料の部分分散比とアッベ数との関係を示したプロット及び正常分散線
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、発明者は、当業者が本開示を充分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
<実施の形態1>
以下、実施の形態1について図面を参照しながら説明する。
[1.コンポジット材料]
図1は、実施の形態1に係るコンポジット材料の概略図であり、(a)はコンポジット材料の構成を示す概略断面図、(b)は無機微粒子のコアシェル構造を示す概略断面図である。
図1(a)に示すように、本開示における光学材料の一例である、実施の形態1に係るコンポジット材料100は、マトリクス材としての樹脂材料10と、該樹脂材料10中に分散された無機微粒子20とで構成されている。図1(b)に示すように、無機微粒子20は、コア21と、該コア21の表面を覆って形成されたシェル22とを有する。シェル22は、コア21の表面全体を覆っていてもよく、コア21の表面の一部を覆っていてもよい。また、シェル22は、膜状に形成されていてもよく、複数の微粒子が密に形成されていてもよい。
[2.無機微粒子]
無機微粒子20のコア21は、SiO、TiO、ZnO、Al、B、Y、MgO、BaO、CaO、SrO、NiO、CuO、BaTiO、酸化インジウムスズ(以下、ITOという)、SnO及びゼオライトから選択される少なくとも1つで形成される。これらの中でも、広範囲な光学定数をより自由に制御することが可能な光学材料を得ることができるという点から、SiO及びZnOが、コア21の材料として有益である。
なお、コアがSiOで形成されるコアシェル構造を、SiO系コアシェル構造ともいう。
無機微粒子20のシェル22は、Si、Ti、Zn、Al、B、Y、Mg、Ba、Ca、Sr、Ni、Cu、In及びSnから選択される少なくとも1つの酸化物で形成されることが有益である。これらの中でも、広範囲な光学定数をより自由に制御することが可能な光学材料を得ることができるという点から、Y、Zn、Ti、In及びSnから選択される少なくとも1つの酸化物である、Y、ZnO、TiO及びITOが、シェル22の材料として有益である。
コアシェル構造におけるコアを形成する材料とシェルを形成する材料との割合には特に限定がなく、用いる各材料の組合せに応じて、得られる光学材料に広範囲な光学定数を自由に制御し得る効果を付与することができるように適宜調整すればよいが、例えば、シェルを形成する材料はコアを形成する材料の1〜20重量%程度、さらには2〜18重量%程度であることが有益である。
無機微粒子20は、凝集粒子、非凝集粒子のいずれであってもよく、一般に、一次粒子20aと、該一次粒子20aが複数個凝集してなる二次粒子20bとを含んで構成されている。無機微粒子20の分散状態は、マトリクス材である樹脂材料10中に無機微粒子20が存在する限り、所望の効果を得ることができるという点から特に限定はないが、無機微粒子20が樹脂材料10中に均一に分散されていることが有益である。ここで、「無機微粒子20が樹脂材料10中に均一に分散されている」とは、無機微粒子20の一次粒子20a及び二次粒子20bがコンポジット材料100内の特定の位置に偏在することなく、実質的に均一に分散していることを意味する。光学用材料として透光性を損なわないためには、粒子の分散性が良好であることが有益である。そのためには、無機微粒子20は一次粒子20aのみで構成されていることが有益である。
SiO系コアシェル構造を有する無機微粒子20を樹脂材料10中に分散させたコンポジット材料100の透光性を確保するためには、無機微粒子20の粒子径が重要である。無機微粒子20の粒子径が光の波長よりも充分小さい場合は、無機微粒子20が樹脂材料10中に分散されているコンポジット材料100を、屈折率のばらつきがない均質な媒体とみなすことができる。したがって、無機微粒子20の粒子径は、可視光の波長以下の大きさであることが有益である。可視光は400〜700nmの範囲の波長を有するので、無機微粒子20の最大粒子径は400nm以下であることが有益である。なお、無機微粒子20の最大粒子径は、無機微粒子20の走査型電子顕微鏡写真を撮影し、最も大きな無機微粒子20の粒子径(二次粒子の場合は二次粒子径)を測定することにより求めることができる。
無機微粒子20の粒子径が光の波長の1/4よりも大きい場合は、レイリー散乱によってコンポジット材料100の透光性が損なわれるおそれがある。そのため、可視光域において高い透光性を実現するためには、無機微粒子20の実効粒子径は100nm以下であることが有益である。ただし、無機微粒子20の実効粒子径が1nm未満であると、無機微粒子20が量子的な効果を発現する材料からなる場合に蛍光を生じることがあり、これがコンポジット材料100から形成された光学部品の特性に影響を及ぼす場合がある。
以上の観点から、無機微粒子20の実効粒子径は1〜100nmの範囲内であることが有益であり、1〜50nmの範囲内であることがより有益である。特に、無機微粒子20の実効粒子径を20nm以下とすると、レイリー散乱の影響が非常に小さくなり、コンポジット材料100の透光性が特に高くなるので、さらに有益である。
ここで、無機微粒子の実効粒子径について図2を用いて説明する。図2において、横軸は無機微粒子の粒子径を示し、縦軸は横軸の各粒子径に対する無機微粒子の累積頻度を示す。横軸の粒子径は、無機微粒子が凝集している場合には、凝集した状態での二次粒子径である。実効粒子径とは、図2のような無機微粒子の各粒子径における累積頻度分布図において、累積頻度が50%となる中心粒子径(メジアン径:d50)を意味する。実効粒子径の精度を向上させるには、例えば、無機微粒子の走査型電子顕微鏡写真を撮影し、200個以上の無機微粒子について、その粒子径を測定して求めることが有益である。
上述のように、本実施の形態1に係るコンポジット材料100は、SiO系コアシェル構造を有する無機微粒子20を樹脂材料10中に分散させることにより構成されている。後述のとおり、このように構成されたコンポジット材料100は、SiO単体の無機微粒子を用いた場合と比べ、光学特性を広範囲でかつ容易に制御することができる。
図3は、SiOの、d線(波長587.6nm)における屈折率ndと、波長分散性を示すd線におけるアッベ数νdとの関係を示したプロットである。なお、アッベ数νdは、以下の式(1)により定義される値である。
νd=(nd−1)/(nF−nC) ・・・(1)
ここで、
nd:d線における材料の屈折率、
nF:F線(波長486.1nm)における材料の屈折率、
nC:C線(波長656.3nm)における材料の屈折率
である。
図4は、SiOの、g線(波長435.8nm)及びF線の分散性を示す部分分散比PgFと、波長分散性を示すd線におけるアッベ数νdとの関係を示したプロット及び正常分散線である。なお、部分分散比PgFは、以下の式(2)により定義される値である。
PgF=(ng−nF)/(nF−nC) ・・・(2)
ここで、
ng:g線(波長435.8nm)における材料の屈折率、
nF:F線における材料の屈折率、
nC:C線における材料の屈折率
である。
異常分散性ΔPgFは、材料のνdに対応する正常部分分散ガラスの標準線上の点と、その材料のPgFとの偏差である。本開示においては、HOYA(株)の基準に基づく、正常部分分散ガラスの標準線として硝種C7(nd:1.51、νd:60.5、PgF:0.54)と硝種F2(nd:1.62、νd:36.3、PgF:0.58)との座標を通る直線(図4における正常分散線)を用いてΔPgFを算出している。
図3及び4に示すとおり、SiOは、屈折率nd:1.54、アッベ数νd:69.6、部分分散比PgF:0.53という光学特性を有する。また、SiOの異常分散性ΔPgFは0.00であり、SiOは、正常分散線上に存在する極めて一般的な材料である。このSiOをコアとし、ZnO、TiO、ITO、Y、Al、SnO、ZrO等をシェルとしたSiO系コアシェル構造を有する無機微粒子を用いたコンポジット材料は、アッベ数、屈折率、部分分散比等の光学特性を広範囲に制御することができ、結果として、異常分散性が極めて大きいという特性が付与される。したがって、SiO系コアシェル構造を有する無機微粒子を用いたコンポジット材料は、光学部品設計の自由度を従来よりも拡大することができる。
また、コアシェル構造において、シェルの厚みを増大させる(後述する実施例では、コアを形成する材料に対するシェルを形成する材料の割合を高くしている)ことで、光学特性をより広範囲に制御することができる。
[3.樹脂材料]
樹脂材料10としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エネルギー線硬化性樹脂等の樹脂の中から、透光性が高い樹脂を用いることができる。例えば、アクリル樹脂;ポリメタクリル酸メチル等のメタクリル樹脂;エポキシ樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカプロラクトン等のポリエステル樹脂;ポリスチレン等のポリスチレン樹脂;ポリプロピレン等のオレフィン樹脂;ナイロン等のポリアミド樹脂;ポリイミド、ポリエーテルイミド等のポリイミド樹脂;ポリビニルアルコール;ブチラール樹脂;酢酸ビニル樹脂;脂環式ポリオレフィン樹脂;シリコーン樹脂;非晶性フッ素樹脂等を用いることができる。また、ポリカーボネート、液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、非晶性ポリオレフィン等のエンジニアリングプラスチックを用いてもよい。さらに、これらの混合体や共重合体、及びこれらの変性樹脂を用いることもできる。
これらの中でも、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ブチラール樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂及びポリカーボネートは、透明性が高く、成形性も良好であるので有益である。これらの樹脂は、所定の分子骨格を選択することによって、屈折率ndを1.4〜1.7の範囲とすることができる。
樹脂材料10のd線におけるアッベ数νdには特に限定はないが、マトリクス材となる樹脂材料10のアッベ数νdが高いほど、無機微粒子20を分散して得られるコンポジット材料100のd線におけるアッベ数νdCOMも向上することは言うまでもない。特に、樹脂材料10としてアッベ数νdが45以上の樹脂を使用することにより、アッベ数νdCOMが40以上の、レンズ等の光学部品への応用に充分な光学特性を有するコンポジット材料を得ることが可能となるので、有益である。アッベ数νdが45以上の樹脂としては、例えば、脂環式炭化水素基を骨格に有する脂環式ポリオレフィン樹脂、シロキサン構造を有するシリコーン樹脂、主鎖にフッ素原子を有する非晶性フッ素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
[4.コンポジット材料の光学特性]
コンポジット材料100の屈折率は、無機微粒子20の屈折率及び樹脂材料10の屈折率から、例えば以下の式(3)で表されるマックスウェル−ガーネット理論により推定することができる。式(3)より、d線、F線及びC線におけるコンポジット材料100の屈折率をそれぞれ推定し、さらに前記式(1)より、コンポジット材料100のアッベ数νdを推定することも可能である。逆にこの理論に基づく推定から、樹脂材料10と無機微粒子20との重量比を決定してもよい。
ここで、
nλCOM:特定波長λにおけるコンポジット材料100の平均屈折率、
nλ:特定波長λにおける無機微粒子20の屈折率、
nλ:特定波長λにおける樹脂材料10の屈折率、
P:コンポジット材料100全体に対する無機微粒子20の体積比
である。
無機微粒子20が光を吸収する場合や無機微粒子20が金属を含む場合には、式(3)の屈折率を複素屈折率として計算する。なお、式(3)は、nλ≧nλの場合に成立するので、nλ<nλの場合は、以下の式(4)を用いてコンポジット材料100の屈折率を推定する。
ここで、nλCOM、nλ、nλ及びPは、各々式(3)と同じである。
コンポジット材料100の実際の屈折率の評価は、調製したコンポジット材料100を各測定法に適した形状に成膜又は成型し、エリプソメトリ法、アベレス法、光導波路法、分光反射率法等の分光測定法や、プリズムカプラ法等で実測することによって行うことができる。
前記マックスウェル−ガーネット理論を用いて推定したコンポジット材料100の光学特性と、コンポジット材料100中の無機微粒子20の含有量とについて説明する。コンポジット材料100中の無機微粒子20の含有量が少なすぎると、無機微粒子20による光学特性の調整効果が充分に得られないおそれがあるので、無機微粒子20の含有量は、コンポジット材料(光学材料)100全体の1重量%以上、さらには5重量%以上、特に10重量%以上であることが有益である。一方、コンポジット材料100中の無機微粒子20の含有量が多すぎると、コンポジット材料100の流動性が低下して光学素子への成形が困難になる場合や、無機微粒子20の樹脂材料10への充填自体が困難になる場合があるので、無機微粒子20の含有量は、コンポジット材料(光学材料)100全体の80重量%以下、さらには60重量%以下、特に40重量%以下であることが有益である。
[5.コンポジット材料の製造方法]
まず、無機微粒子20の形成方法について説明する。無機微粒子20のコア21は、共沈法、ゾルゲル法、金属錯体分解法等の液相法又は気相法により形成することができる。また、ボールミルあるいはビーズミルによる粉砕法により、バルク体を微粒子化することでコア21を形成してもよい。コア21の材料は、SiO、TiO、ZnO、Al、B、Y、MgO、BaO、CaO、SrO、NiO、CuO、BaTiO、ITO、SnO及びゼオライトから選択される少なくとも1つである。
無機微粒子20のシェル22の形成には、有機金属錯体溶液を用いることができる。例えばSi、Ti、Zn、Al、B、Y、Mg、Ba、Ca、Sr、Ni、Cu、In及びSnから選択される少なくとも1つの酸化物であるシェル22の材料をトルエン、ベンゼン、キシレン、アルコール等で希釈した有機金属錯体溶液と、コア21とを混合した後、遠心分離機で余分な溶液を除去した固形分を大気中で熱処理することにより、コア21の表面の少なくとも一部を覆ってシェル22が形成されたコアシェル構造を有する無機微粒子20が得られる。なお、あまりにも高温で熱処理を行うと、コア21が粒成長する傾向があり、逆にあまりにも低温で熱処理を行うと、有機物が熱分解し難い傾向があるので、200〜600℃程度、さらには200〜400℃程度で、30〜60分間程度熱処理を行うことが有益である。
図5は、SiO微粒子の透過型電子顕微鏡写真であり、図6は、コアがSiO、シェルがTiOのコアシェル構造を有する無機微粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
図5及び6に示すように、図5のSiO微粒子の写真とは異なり、図6のコアシェル構造を有する無機微粒子の写真は、表面に微細な凹凸が顕著に存在していることが観察される。すなわち、図6の写真から、粒子径が数10nmのSiO粒子の表面に、粒子径が1〜3nmのTiO粒子が密に形成されていることがわかる。シェルは、無定形の膜として形成されていると予想されたが、結晶性の微粒子として形成されていることがわかる。
次に、コンポジット材料100の調製方法について説明する。例えば前記方法にて形成された無機微粒子20を、マトリクス材としての樹脂材料10に分散させてコンポジット材料100を調製する方法には特に限定はなく、物理的な方法を採用してもよいし、化学的な方法を採用してもよい。例えば、以下の(1)〜(4)いずれかの方法でコンポジット材料100を調製することができる。
(1)樹脂又は樹脂を溶解した溶液と無機微粒子とを、機械的、物理的に混合する方法。
(2)樹脂の原料である単量体やオリゴマー等と無機微粒子とを、機械的、物理的に混合して混合物を得た後、樹脂の原料である単量体やオリゴマー等を重合する方法。
(3)樹脂又は樹脂を溶解した溶液と無機微粒子の原料とを混合した後、無機微粒子の原料を反応させ、樹脂中で無機微粒子を形成する方法。
(4)樹脂の原料である単量体やオリゴマー等と無機微粒子の原料とを混合した後、無機微粒子の原料を反応させて無機微粒子を形成する工程と、樹脂の原料である単量体やオリゴマー等を重合して樹脂を合成する工程とを行う方法。
前記(1)及び(2)の方法では、予め形成された種々の無機微粒子を用いることができ、また、汎用の分散装置によってコンポジット材料を調製することができるという利点がある。一方、前記(3)及び(4)の方法では、化学的な反応を行う必要があるため、使用する材料にある程度の制限が生じる。しかし、これらの方法は、原料を分子レベルで混合するので、無機微粒子の分散性を高めることができるという利点を有する。
なお、前記方法において、無機微粒子又は無機微粒子の原料と、樹脂又は樹脂の原料である単量体やオリゴマー等とを混合する順序に特に限定はなく、場合に応じて適宜順序を決定すればよい。例えば、一次粒子径が実質1〜100nmの範囲内にある無機微粒子を分散した溶液に、樹脂、樹脂の原料又はこれらを溶解した溶液を加えて機械的、物理的に混合してもよい。コンポジット材料100の製造方法は、本開示における効果が得られる限り、特に限定はない。
また、コンポジット材料100は、本開示における効果が得られる限り、無機微粒子20及びマトリクス材である樹脂材料10以外の成分を含んでもよい。例えば、図示していないが、樹脂材料10における無機微粒子20の分散性を向上させる分散剤や界面活性剤、特定範囲の波長の電磁波を吸収する染料や顔料等がコンポジット材料100中に共存していてもよい。
なお、コンポジット材料100から、例えばレンズ等の光学素子を形成する方法には特に限定はなく、公知の方法を採用することができる。例えば、レンズ等の光学素子に対応する形状を有する型にコンポジット材料100を充填し、例えば紫外線等のエネルギー線を照射してコンポジット材料100を硬化させることによって、レンズ等の光学素子を形成することができる。
<実施の形態2>
以下、実施の形態2について図面を参照しながら説明する。
図7は、実施の形態2に係るハイブリッドレンズの概略構成図である。ハイブリッドレンズレンズ30は、基材となる第1レンズ31と、該第1レンズ31の光学面上に積層された第2レンズ32とで構成されている。ハイブリッドレンズ30は、複合光学素子の一例である。
第1レンズ31は、第1の光学素子で、ガラスレンズの一例である。第1レンズ31は、ガラス材料から形成されており、両凸形状のレンズである。
第2レンズ32は、第2の光学素子で、樹脂レンズの一例である。第2レンズ32は、コンポジット材料から形成されており、該コンポジット材料として、前記実施の形態1に係るコンポジット材料100が用いられる。
なお、図7に示すハイブリッドレンズ30は、両面が凸形状であるが、例えば少なくとも一方の面が凹形状であってもよく、その形状に特に限定はない。ハイブリッドレンズ30は、所望の光学特性に応じて適宜設計される。また、図7に示すハイブリッドレンズ30では、第2レンズ32は、第1レンズ31の一方の光学面上に積層されているが、第1レンズ31の両光学面上に積層されていてもよい。
ハイブリッドレンズ30の製造方法には特に限定がなく、公知の方法を採用することができる。例えば、レンズ研磨、射出成形、プレス成形等により、ガラスレンズの一例である第1レンズ31を成形したのち、第2レンズ32に対応する形状を有する型にコンポジット材料100を充填し、この上方から第1レンズ31を載せて所定の厚みになるまでコンポジット材料を押し広げ、第1レンズ31の上方から、例えば紫外線等のエネルギー線を照射してコンポジット材料100を硬化させることによって、第1レンズ31の光学面上に、第2レンズ32が積層された、複合光学素子の一例であるハイブリッドレンズ30が得られる。
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1及び2を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
以下に、本実施の形態に係る実施例と、比較例とを示す。なお、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例1〜14において、コアの材料に対する有機金属錯体(シェルの材料を含む脂肪酸塩溶液)の割合を変更することにより、シェルの厚みを変化させた。
(実施例1)
コアの材料としてSiOを、シェルの材料としてYを用意した。比表面積200m/gのSiO微粒子1.0gに対して、Yを含む脂肪酸塩(オクチル酸塩、ナフテン酸塩、アセチルアセトン金属錯体)溶液0.05gと、希釈溶液(キシレン、トルエン、酢酸エチル、メタノール)10gとを用い、YのSiOに対する比率を5重量%とした。これらを室温で攪拌混合した後、遠心分離機で上澄み液を除去し、固形分を乾燥した。これを大気中にて400℃で30分間熱処理し、無機微粒子を得た。
得られた無機微粒子を観察したところ、図6に示すような、SiO粒子をコアとして、その表面により細かなY微粒子がぎっしりと形成されたコアシェル構造を有することが確認された。
得られた無機微粒子を含むスラリーを、紫外線硬化性アクリレートモノマー(東亞合成(株)製、商品名「M−8060」)及び重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア754」)と混合し、真空下で脱溶媒した。これに紫外線を照射して硬化させ、実施例1のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(実施例2)
実施例1において、Yを含む脂肪酸塩溶液の量を0.15gに変更し、YのSiOに対する比率を15重量%としたほかは、実施例1と同様にして無機微粒子を得た。得られた無機微粒子を用い、実施例1と同様にして実施例2のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(実施例3)
実施例1において、シェルの材料をZnOに変更し、ZnOのSiOに対する比率を5重量%としたほかは、実施例1と同様にして無機微粒子を得た。得られた無機微粒子を用い、実施例1と同様にして実施例3のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(実施例4)
実施例3において、ZnOを含む脂肪酸塩溶液の量を0.15gに変更し、ZnOのSiOに対する比率を15重量%としたほかは、実施例3と同様にして無機微粒子を得た。得られた無機微粒子を用い、実施例1と同様にして実施例4のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(実施例5)
実施例1において、シェルの材料をTiOに変更し、TiOのSiOに対する比率を5重量%としたほかは、実施例1と同様にして無機微粒子を得た。得られた無機微粒子を用い、実施例1と同様にして実施例5のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(実施例6)
実施例5において、TiOを含む脂肪酸塩溶液の量を0.15gに変更し、TiOのSiOに対する比率を15重量%としたほかは、実施例5と同様にして無機微粒子を得た。得られた無機微粒子を用い、実施例1と同様にして実施例6のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(実施例7)
実施例1において、シェルの材料をITOに変更し、ITOのSiOに対する比率を5重量%としたほかは、実施例1と同様にして無機微粒子を得た。得られた無機微粒子を用い、実施例1と同様にして実施例7のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(実施例8)
実施例7において、ITOを含む脂肪酸塩溶液の量を0.15gに変更し、ITOのSiOに対する比率を15重量%としたほかは、実施例7と同様にして無機微粒子を得た。得られた無機微粒子を用い、実施例1と同様にして実施例8のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(実施例9)
実施例1において、コアの材料を比表面積100m/gのZnO微粒子に変更し、YのZnOに対する比率を5重量%としたほかは、実施例1と同様にして無機微粒子を得た。得られた無機微粒子を用い、実施例1と同様にして実施例9のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(実施例10)
実施例9において、Yを含む脂肪酸塩溶液の量を0.15gに変更し、YのZnOに対する比率を15重量%としたほかは、実施例9と同様にして無機微粒子を得た。得られた無機微粒子を用い、実施例1と同様にして実施例10のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(実施例11)
実施例9において、シェルの材料をTiOに変更し、TiOのZnOに対する比率を5重量%としたほかは、実施例9と同様にして無機微粒子を得た。得られた無機微粒子を用い、実施例1と同様にして実施例11のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(実施例12)
実施例11において、TiOを含む脂肪酸塩溶液の量を0.15gに変更し、TiOのZnOに対する比率を15重量%としたほかは、実施例11と同様にして無機微粒子を得た。得られた無機微粒子を用い、実施例1と同様にして実施例12のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(実施例13)
実施例9において、シェルの材料をITOに変更し、ITOのZnOに対する比率を5重量%としたほかは、実施例9と同様にして無機微粒子を得た。得られた無機微粒子を用い、実施例1と同様にして実施例13のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(実施例14)
実施例13において、ITOを含む脂肪酸塩溶液の量を0.15gに変更し、ITOのZnOに対する比率を15重量%としたほかは、実施例13と同様にして無機微粒子を得た。得られた無機微粒子を用い、実施例1と同様にして実施例14のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中の無機微粒子の含有量は5重量%であった。
(比較例1)
紫外線硬化性アクリレートモノマー(東亞合成(株)製、商品名「M−8060」)及び重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア754」)の混合物に紫外線を照射して硬化させ、比較例1の材料とした。
(比較例2)
SiO微粒子、紫外線硬化性アクリレートモノマー(東亞合成(株)製、商品名「M−8060」)及び重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア754」)の混合物に紫外線を照射して硬化させ、比較例2のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中のSiO微粒子の含有量は5重量%であった。
(比較例3)
ZnO微粒子、紫外線硬化性アクリレートモノマー(東亞合成(株)製、商品名「M−8060」)及び重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア754」)の混合物に紫外線を照射して硬化させ、比較例3のコンポジット材料を得た。コンポジット材料中のZnO微粒子の含有量は5重量%であった。
実施例1〜14及び比較例1〜3の材料について、精密屈折計((株)島津デバイス製造製、KPR−200)を用い、g線、F線、d線及びC線における屈折率を測定し、前記式(1)及び(2)より、アッベ数νdと部分分散比PgFとを算出した。これらの結果を図8〜11に示す。
図8は、実施例1〜8、並びに比較例1及び2における、各種材料の屈折率とアッベ数との関係を示したプロットである。図9は、実施例1〜8、並びに比較例1及び2における、各種材料の部分分散比とアッベ数との関係を示したプロット及び正常分散線である。図10は、実施例9〜14、並びに比較例1及び3における、各種材料の屈折率とアッベ数との関係を示したプロットである。図11は、実施例9〜14、並びに比較例1及び3における、各種材料の部分分散比とアッベ数との関係を示したプロット及び正常分散線である。
図8〜11に示すように、実施例1〜14のコンポジット材料(光学材料)は、コアシェル構造を有する無機微粒子のシェルの光学特性の影響を受けて、シェルを備えないコアのみの無機微粒子を用いた比較例の材料よりも、広範囲な光学定数を自由に制御することができる。したがって、コアシェル構造を有する無機微粒子を樹脂材料に分散させてなるコンポジット材料は、低分散かつ大きな異常分散性という光学特性を有することがわかる。
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
本開示は、レンズ、プリズム、光学フィルター、回折光学素子等の光学素子に好適に使用することができる。
10 樹脂材料
20 無機微粒子
20a 一次粒子
20b 二次粒子
21 コア
22 シェル
30 ハイブリッドレンズ
31 第1レンズ
32 第2レンズ
100 コンポジット材料

Claims (4)

  1. 樹脂材料と、該樹脂材料中に分散された無機微粒子とで構成されており、
    前記無機微粒子は、コアと、該コアの表面の少なくとも一部を覆って形成されたシェルとを有し、
    前記コアは、SiO、TiO、ZnO、Al、B、Y、MgO、BaO、CaO、SrO、NiO、CuO、BaTiO、酸化インジウムスズ、SnO及びゼオライトから選択される少なくとも1つで形成される、光学材料。
  2. 前記シェルは、Si、Ti、Zn、Al、B、Y、Mg、Ba、Ca、Sr、Ni、Cu、In及びSnから選択される少なくとも1つの酸化物で形成される、請求項1に記載の光学材料。
  3. 請求項1に記載の光学材料から形成されてなる光学素子。
  4. 第1の光学素子と、該第1の光学素子の光学面上に積層された第2の光学素子とを備え、
    前記第2の光学素子は、請求項1に記載の光学材料から形成されてなる光学素子である、複合光学素子。
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