JPWO2014129162A1 - 産業用ロボットおよび産業用ロボットのツール取り付け位置の較正方法 - Google Patents

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Abstract

専用ゲージを使用して溶接用トーチの制御点の位置を較正する方法は、コスト面で課題がある。本開示の産業用ロボットは、マニピュレータと、ツールと、ロボット制御装置と、較正用基準点とを有する。マニピュレータは、ロボット座標系原点を有する設置面に設置されている。ツールは、マニピュレータに取り付けられ、制御点を有する。ロボット制御装置は、マニピュレータを制御する。較正用基準点は、マニピュレータに設けられている。較正用基準点とロボット座標系原点とは所定の距離だけ離れている。制御点の位置の較正を行うとき、制御点を較正用基準点に移動させる。

Description

本開示は、産業用ロボットおよび産業用ロボットのツール取り付け位置の較正方法に関し、特に、ツールを産業用ロボットの手首部に取り付ける際の、制御点であるツール先端の座標の較正に関する。
アーク溶接は、溶接用ワイヤと母材との間にアークを発生させる溶接である。産業用ロボットの一例であるアーク溶接用ロボットを利用したアーク溶接では、アーク発生点である溶接用ワイヤの先端の座標を精確に制御することにより、高品質の溶接を実現する。アーク発生点を精確に制御するためには、溶接用ロボットを構成するマニピュレータの動作の精確さに加えて、マニピュレータの手首部に溶接用トーチを精度よく取り付ける必要がある。すなわち、マニピュレータの基準となる点に対するアーク発生点の座標を、本来あるべき座標となるように精確に較正する必要がある。
以下に、溶接用ロボットの構成と溶接用トーチの取り付け方法について、図1から図4Cを用いて説明する。
図1は、溶接用ロボットの概略構成を示す図である。マニピュレータ1は、図1に示すように6軸の回転軸を有する。マニピュレータ1は、この6軸の回転角の組み合わせによって、マニピュレータ1の手首フランジ12を動作範囲内の任意の点に移動させることができる。なお、マニピュレータ1の動作は、ロボット制御装置2により制御される。図1では、マニピュレータ1は6軸の垂直多関節型の例を示しており、6つの回転軸は、マニピュレータ1の設置面に近い側から順に、第1の回転軸、第2の回転軸、第3の回転軸、第4の回転軸、第5の回転軸、第6の回転軸とする。
ロボット制御装置2は、制御部5と、マニピュレータ駆動部6と、記憶部7を有している。ロボット制御装置2では、制御部5がティーチペンダント3から得た情報を処理し、処理された情報をマニピュレータ駆動部6に伝達する。マニピュレータ1の動作は、マニピュレータ駆動部6からの信号により制御される。ティーチペンダント3は、情報入力部8と、表示部9を有している。使用者がティーチペンダント3の表示部9に表示される情報を確認しながら情報入力部8に命令を入力することで、使用者の命令がロボット制御装置2に伝わる。
マニピュレータ1の手首フランジ12には、ボルト穴やピン穴が設けられており、ホルダ32を介して溶接用トーチ4を手首フランジ12に取り付けることができる。溶接用トーチ4の先端からは、図3Aに示すように、溶接用ワイヤ13が送給される。溶接用ワイヤ13は、それ自体が曲がり癖をもっている。そのため、アーク発生点である溶接用ワイヤ13の先端の位置は、溶接のたびに精確には定まらない。そこで、実際にマニピュレータ1を用いて溶接用プログラムを作成する場合、曲がり癖のない溶接用ワイヤ13の先端の位置をアーク発生点と仮定する。この仮定されたアーク発生点を制御点14とする。制御点14の位置は、溶接用トーチ4の先端に図3Cに示す所定の長さの教示用チップ15を取り付けることで簡単に決めることができる。なお、制御点14は、TCP(ツールセンターポイント)とも呼ばれる。
図2は、マニピュレータ1の座標系を示す図である。また、図4A〜図4Cは、マニピュレータ1の手首部から制御点14までの寸法等を表す図である。なお、図4A〜図4Cに示す寸法16から寸法20までの5個の寸法によって、図2に示すロボット座標系原点10に対する制御点14の座標が決まる。これら5個の寸法は、それぞれ以下の通りである。
図4Bに示すように、寸法16は、マニピュレータ1の回転軸である第4の回転軸21が設置面に平行な状態における、第4の回転軸21から制御点14がある水平面までの鉛直距離である。図4Bおよび図4Cに示すように、寸法17と寸法18は、マニピュレータ1の回転軸である第6の回転軸23から制御点14までの距離である。なお、寸法17の向きと寸法18の向きとがなす角度は90度である。図4Cにおいて寸法18は0であり、制御点14と第6の回転軸23とは紙面に垂直な方向で重なっている。図4Bに示すように、寸法19は、溶接用トーチ4の延長線と手首フランジ12の面との交点31からマニピュレータ1の第6の回転軸23までの水平距離である。手首フランジ12の面とは、手首フランジ12が第6の回転軸23を中心に回転する面であり、第6の回転軸23に垂直である。図4Aに示すように、寸法20は、マニピュレータ1の第6の回転軸23を回転中心とした場合の、マニピュレータ1の第4の回転軸21の方向と、溶接用トーチ4の取り付け方向とがなす角度である。
ここで、アーク溶接用ロボットの手首部に取り付けたツールの座標を較正する方法としては、以下のものがある。特許文献1には、位置が特定された3つの穴を有する治具を用い、TCP(ツールセンターポイント)の設定を行う方法が記載されている。また、特許文献2には、3次元視覚センサを用いてロボットのツール座標系を補正する方法が記載されている。特許文献3には、専用のチェックゲージを用いてトーチの取り付け位置の変化を把握し、トーチの位置を修正する方法が記載されている。
以下では、図3Bを用いて、マニピュレータ1の手首フランジ12に溶接用トーチ4を取り付ける際に、ゲージ29を用いて制御点14の位置を較正する方法について説明する。まず、手首フランジ12と溶接用トーチ4とを、ホルダ32を介してボルトで締結する。次に、溶接用トーチ4の先端に教示用チップ15を取り付ける。ホルダ32には、ホルダ32の形状を調整する調整用ボルト30がホルダ32の中央付近に設けられている。また、ホルダ32には、溶接用トーチ4の固定場所を調整する調整用ボルト33が設けられている。調整用ボルト30は、ホルダ32の上下の首振りを調整し、ホルダ32の形状を決めてから締結される。調整用ボルト33は、溶接用トーチ4の固定場所を調整し、溶接用トーチ4のホルダ32からの突き出し長さを決めてから締結される。これらの調整用ボルト30、33を緩めた状態で、図3Bに示すように、ゲージ29を、手首フランジ12に取り付ける。ゲージ29は、溶接用ワイヤ13の直径程度の小さな穴を有する。ゲージ29の穴に教示用チップ15の先端が差し込まれるように、調整用ボルト30、33を調整して溶接用トーチ4を動かす。ゲージ29の穴に教示用チップ15の先端が差し込まれた状態で、調整用ボルト30、33を締結し、溶接用トーチ4を固定する。最後に、ゲージ29を取り外す。以上により、マニピュレータ1に対する制御点14の位置を適正な位置に較正できる。
特開昭61−25206号公報 特開平10−97311号公報 特公平2−30795号公報
しかし、従来のようにゲージを使用して溶接用トーチの制御点の位置を較正する方法は、溶接用トーチごとに専用のゲージが必要となる。溶接対象物や溶接方法によってマニピュレータに取り付ける溶接用トーチの種類は多く存在し、形状の異なる溶接用トーチごとにゲージを揃える必要がある。また、特殊な仕様のため少量のみ生産されるような溶接用トーチに用いるゲージは高価である。
また、溶接用トーチの形状によっては、直線状のゲージの取り付けが難しい場合があり、複雑な形状のゲージを設計するか、あるいは、溶接用トーチ自体をゲージが取り付け可能な複雑な形状に設計しなければならない。
このように、手首フランジにゲージを取り付ける、従来の制御点の位置の較正方法は、ゲージに関係する大きなコストが発生する。
本開示は、上記課題を解決するために、マニピュレータに取り付けられたツールの制御点の座標を、ゲージを使用せずに較正する産業用ロボットおよび産業用ロボットのツール取り付け位置の較正方法を提供する。
上記課題を解決するために、本開示の産業用ロボットは、マニピュレータと、ツールと、ロボット制御装置と、較正用基準点とを有する。マニピュレータは、ロボット座標系原点を有する設置面に設置されている。ツールは、マニピュレータに取り付けられ、制御点を有する。ロボット制御装置は、マニピュレータを制御する。較正用基準点は、マニピュレータに設けられている。較正用基準点とロボット座標系原点とは所定の距離だけ離れている。
また、本開示の産業用ロボットのツール取り付け位置の較正方法は、第1の工程〜第4の工程を有する。第1の工程では、マニピュレータを、ロボット座標系原点を有する設置面に設置し、マニピュレータに較正用基準点を設ける。第2の工程では、マニピュレータをツール取り付け姿勢となるように動作させる。第3の工程では、制御点を有するツールをマニピュレータに、調整可能な状態で取り付ける。第4の工程では、ツールを調整して、制御点を較正用基準点に一致させる。較正用基準点とロボット座標系原点とは所定の距離だけ離れている。
本開示によれば、ゲージを用いることなくツールの制御点の位置を較正することができる。
図1は、実施の形態1におけるアーク溶接ロボットの概略構成を示す図である。 図2は、実施の形態1におけるロボット座標系を示す図である。 図3Aは、実施の形態1における溶接用トーチの先端部分を示す図である。 図3Bは、従来の専用ゲージを用いた溶接用トーチの取り付け状態を示す図である。 図3Cは、実施の形態1における教示用チップを示す図である。 図4Aは、実施の形態1における各部の寸法を示す図である。 図4Bは、実施の形態1における各部の寸法を示す図である。 図4Cは、実施の形態1における各部の寸法を示す図である。 図5は、実施の形態1における較正用治具を示す図である。 図6は、実施の形態1における較正用治具を取り付ける前のマニピュレータの状態を示す図である。 図7は、実施の形態1における較正用治具を取り付けた後のマニピュレータの状態を示す図である。 図8は、実施の形態1におけるを取り付けた後のマニピュレータの状態を示す図である。 図9は、実施の形態1におけるマニピュレータの較正用姿勢を示し、マニピュレータに溶接用トーチが取り付けられた状態を示す図である。 図10は、実施の形態1におけるマニピュレータの較正用姿勢を示し、溶接用トーチが取り付けられていない状態を示す図である。
以下、本開示の実施の形態について、図1から図9を用いて説明する。
(実施の形態1)
本実施の形態1において、図1から図3A、図3Cから図4Cは、背景技術と共通であり、背景技術と同様の箇所には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。なお、図3Bに示すゲージ29を用いない点が背景技術と異なる大きな点である。また、図5から図10は、本実施の形態1にのみ関係する図面である。
図5は、本実施の形態1における較正用治具11(較正用部材)を示す図である。図6は、本実施の形態1における較正用治具11を取り付ける前のマニピュレータ1の状態を示す図である。図7は、本実施の形態1における較正用治具11を取り付けた後のマニピュレータ1の状態を示す図である。図8は、本実施の形態1におけるマニピュレータ1の較正用姿勢であり、マニピュレータ1に溶接用トーチ4が取り付けられた状態を示す図である。図9は、本実施の形態1におけるマニピュレータ1の較正用姿勢であり、溶接用トーチ4が取り付けられていない状態を示す図である。
図5に示すように、較正用治具11はブロック形状であり、金属ブロックを精度よく削りだしたものである。較正用治具11は、溶接用トーチ4の制御点14の位置の較正に用いる部材である。較正用治具11には、マニピュレータ1にボルトで取り付けるための貫通穴24と、溶接用ワイヤ13の先端や教示用チップ15の先端を差し込むための較正用穴25が設けられている。なお、較正用穴25は、溶接用ワイヤ13の先端や教示用チップ15の先端が差し込める程度の小さな穴である。
較正用治具11をマニピュレータ1に取り付けるため、図6に示すように、マニピュレータ1には、取り付け面26が設けられている。また、マニピュレータ1には、較正用治具11の取り付け位置を固定するための2つの接触面27が設けられている。この取り付け面26および2つの接触面27は、マニピュレータ1の第2の回転軸を囲む筐体に設けられている。第2の回転軸を囲む筐体は、金属の鋳物であり、取り付け面26および2つの接触面27は機械加工により精度よく切削して作られている。このため、ロボット座標系原点10に対する取り付け面26および2つの接触面27の位置は精確である。なお、本実施の形態1におけるマニピュレータ1は、6軸の垂直多関節型の例を示しており、6つの回転軸は、マニピュレータ1の設置面に近い側から順に、第1の回転軸、第2の回転軸、第3の回転軸、第4の回転軸,第5の回転軸、第6の回転軸とする。なお、マニピュレータ1の第2の回転軸を囲む筐体に較正用穴25を設けることが望ましい。第1の回転軸を囲む筐体から較正用穴25を設ける筐体までの各筐体は、製作誤差を有する。較正用穴25がマニピュレータ1の設置面から遠い筐体に設けられると、較正用穴25の位置は筐体の製作誤差が蓄積され、大きな影響を受ける。従って、第1の回転軸を囲む筐体に近い側にあり、加工精度の高い第2の回転軸を囲む筐体に較正用穴25を設けることが望ましい。
取り付け面26にはボルト穴28が設けられ、ボルトにより較正用治具11をマニピュレータ1に取り付けることができる。そして、較正用治具11を2つの接触面27に押し当てながら、較正用治具11の貫通穴24を介して、マニピュレータ1のボルト穴28へとボルト(図示せず)を締結し、較正用治具11をマニピュレータ1に取り付ける。なお、2つの接触面27のうちのいずれか、または両方のかわりに、ピン穴を設けても良い。
較正用治具11をマニピュレータ1に取り付けた状態を図7に示す。接触面27に較正用治具11を密着させて取り付けることで、ロボット座標系原点10に対する較正用穴25の位置が精確に定まっている。また、溶接時には、スパッタの飛散等によりマニピュレータ1に汚れが付着する場合がある。しかし、較正用治具11はマニピュレータ1に対して着脱可能であるため、溶接時には取り外すことができる。従って、溶接時に較正用治具11をマニピュレータ1から取り外しておくことで、溶接時に較正用治具11が汚れることを防ぐことができる。すなわち、溶接時のスパッタ等が較正用治具11の較正用穴25に付着してツールの位置の較正精度を低下させてしまうことはない。
なお、図8に示すように、較正用治具11を用いず、マニピュレータ1自体に較正用穴25を設けても良い。この場合は、溶接時のスパッタの飛散等から較正用穴25を保護するため、カバー34を較正用穴25の周辺に設けることが望ましい。
また、較正用穴25を有する較正用治具11がマニピュレータ1に着脱可能であり、かつ、較正用治具11の較正用穴25を保護するためのカバー等をマニピュレータ1に設けていてもよい。
以上のように、本実施の形態1のマニピュレータ1には、ロボット座標系原点10からの精度が保証された位置に、溶接用トーチ4の制御点14の位置を較正する較正用穴25が設けられている。較正用穴25は、マニピュレータ1に対して着脱可能な較正用治具11に設けることができる。また、図8に示すように、較正用穴25は、マニピュレータ1自体に設けて、マニピュレータ1がスパッタ等の汚れから較正用穴25を保護できるカバー34をさらに有していてもよい。
図9は、溶接用トーチ4の制御点14の位置を較正する際のマニピュレータ1の姿勢を示している。この姿勢をマニピュレータの較正用姿勢とする。マニピュレータ1の較正用姿勢は、溶接用トーチ4の取り付け作業を行いやすいマニピュレータ1の姿勢でもあり、予めロボット制御装置2の記憶部7に登録しておく。手首フランジ12の中心点から制御点14までの座標は、使用する溶接用トーチ4の形状によって異なる。そのため、溶接用トーチ4に応じたマニピュレータの較正用姿勢をそれぞれ、予めロボット制御装置2の記憶部7に記憶しておく。
上記構成の溶接ロボットに関し、マニピュレータ1へ溶接用トーチ4を取り付けた後の溶接用トーチ4の制御点14の位置を較正する較正方法について説明する。
作業者はティーチペンダント3の情報入力部8を操作し、ティーチペンダント3の表示部9に溶接用トーチ4の較正機能(以下、較正機能とする)を呼び出す。較正機能を用いて、作業者は情報入力部8を操作し、手首フランジ12に取り付ける溶接用トーチ4を、較正機能に予め記憶されている複数の溶接用トーチの中から選択する。ロボット制御装置2の記憶部7には、複数の溶接用トーチ4の較正用姿勢の情報が予め登録されている。ロボット制御装置2は、選択された溶接用トーチ4の較正用姿勢の情報を記憶部7からマニピュレータ駆動部6に送信する。ロボット制御装置2のマニピュレータ駆動部6は、受信した較正用姿勢に基づき、マニピュレータ1を、図10に示すように、溶接用トーチ4の較正用姿勢に動作させる。
次に、図9に示すように、ホルダ32を介して溶接用トーチ4をマニピュレータ1の手首フランジ12に取り付け、ホルダ32と手首フランジ12とをピンまたはボルト、もしくはピンおよびボルトで締結する。次に、ホルダ32の形状を調整する調整用ボルト30と、溶接用トーチ4の固定場所を調整する調整用ボルト33とを緩め、マニピュレータ1に対する溶接用トーチ4の位置、すなわち、マニピュレータ1に対する溶接用トーチ4の制御点14の位置が微調整可能な状態にする。この状態でティーチペンダント3を操作し、溶接用トーチ4の先端から溶接用ワイヤ13を所定の長さだけ押し出す。この所定の長さとは、溶接用ワイヤ13に曲がり癖がない場合の溶接用トーチ4から制御点14までの距離に等しい。この所定の長さは、溶接用トーチ4ごとに規定された長さである。次に、調整用ボルト30が緩んでいるため、調整可能(変更可能)な状態となっているホルダ32を変形させる。合わせて、調整用ボルト33が緩んでいるため、調整可能(変更可能)な状態となっている溶接用トーチ4の固定位置を調整する。これらの調整により、溶接用トーチ4の先端を動かし、溶接用ワイヤ13の先端が較正用穴25に差し込まれるようにする。そして、調整用ボルト30を締結することで、ホルダ32に形状を固定し、調整用ボルト33を締結することで、溶接用トーチ4の固定位置を確定する。これにより、マニピュレータ1に対する溶接用トーチ4の制御点14の位置を適正な位置に較正する。
なお、溶接用ワイヤ13には曲がり癖がある。そのため、より精確な調整を行う場合は、教示用チップ15を溶接用トーチ4の先端に取り付け、溶接用ワイヤ13の代わりに教示用チップ15の先端を較正用穴25に差し込んだ状態で調整用ボルト30、33を締結する。
次に、ティーチペンダント3を操作することでマニピュレータ1を適当な姿勢に移動させ、較正用治具11をマニピュレータ1から取り外す。較正用治具11は、次回使用時まで傷や汚れが付かないように保管しておく。
以上の動作により、溶接用トーチ4をマニピュレータ1に取り付けた後に、溶接用トーチ4の制御点14を適正な位置に較正することができる。すなわち、マニピュレータ1に溶接用トーチ4を取り付けた際、制御点14が正しい位置でなかった場合でも、ホルダ32を適切に変形させること、および、溶接用トーチ4の固定位置を調整することにより、制御点14を正しい位置へ移動させることができる。
次に、溶接対象物と溶接用トーチ4との衝突等により、制御点14にずれが生じた場合の制御点14の位置の較正方法について説明する。
初めに、ティーチペンダント3を操作して溶接用ワイヤ13の先端を溶接用トーチ4の内部に納める。次に、調整用ボルト30、33を緩めて溶接用トーチ4の位置を微調整可能な状態にする。以後は、上記した溶接用トーチ4の制御点14の位置の較正方法と同様である。
以上のように、本実施の形態1によれば、マニピュレータ1がゲージ29の代わりとなる制御点14の位置の較正のための基準点(較正用穴25)を有する。この基準点に溶接用トーチ4の制御点14が一致するように溶接用トーチ4の位置を調整することで、溶接用トーチ4の制御点14の位置の較正を簡単に実現出来る。
そして、さまざまな溶接用トーチ4に対応した較正用姿勢がロボット制御装置2の記憶部7に記憶されている。そのため、溶接用トーチ4の形状にかかわらず、ゲージ29を使用せず簡単に制御点14の位置を較正することができるので、ゲージ29にかかるコストを削減できる。また、ゲージ29の取り付けが困難な場合に必要とされていた、溶接用トーチ4の追加の設計も不要であり、溶接用トーチ4自体の構造をシンプルにすることができる。
なお、上記では、マニピュレータ1が溶接用トーチ4を較正用姿勢に移動した後にマニピュレータ1に溶接用トーチ4を取り付ける例を示した。しかし、マニピュレータ1に溶接用トーチ4を取り付け、その後に、マニピュレータ1を較正用姿勢となるように移動させても良い。いずれの場合においても、調整用ボルト30,33を用いて溶接用トーチ4の制御点14の位置を較正することができる。
また、溶接対象物と溶接用トーチ4との衝突等により、制御点14にずれが生じた場合の較正方法に関し、上記では、調整用ボルト30を緩めて溶接用トーチ4の先端位置が微調整可能な状態にしてから、マニピュレータ1を較正用姿勢に移動させる例を示した。しかし、マニピュレータ1を較正用姿勢に移動させてから、調整用ボルト30を緩めて溶接用トーチ4の先端位置が微調整可能な状態となるようにしても良い。
また、ホルダ32の調整機構は、調整用ボルト30,33によって実現される。調整用ボルト30は、ホルダ32が含んでいる2つのパーツを接続する接続部を固定するものであり、調整用ボルト30を緩めた状態で、2つのパーツの位置関係を変更し、ホルダ32の形状を変更できる。そして、調整用ボルト30を締結することで、ホルダ32を好ましい形状に固定できる。また、調整用ボルト33は、ホルダ32に設けられた長穴に通され、溶接用トーチ4に設けられたねじ穴部と螺合する。調整用ボルト33により、溶接用トーチ4とホルダ32が結合される。調整用ボルト33を緩めることにより、ホルダ32に対する溶接用トーチ4の位置の微調整が可能となる。
本開示によれば、ゲージを用いることなくツールの制御点の位置を較正でき、産業用ロボットおよび産業用ロボットのツール取り付け位置の較正方法として産業上有用である。
1 マニピュレータ
2 ロボット制御装置
3 ティーチペンダント
4 溶接用トーチ
5 制御部
6 マニピュレータ駆動部
7 記憶部
8 情報入力部
9 表示部
10 ロボット座標系原点
11 較正用治具
12 手首フランジ
13 溶接用ワイヤ
14 制御点
15 教示用チップ
21 第4の回転軸
23 第6の回転軸
24 貫通穴
25 較正用穴
26 取り付け面
27 接触面
28 ボルト穴
29 ゲージ
30,33 調整用ボルト
31 交点
32 ホルダ
34 カバー
本開示は、産業用ロボットおよび産業用ロボットのツール取り付け位置の較正方法に関し、特に、ツールを産業用ロボットの手首部に取り付ける際の、制御点であるツール先端の座標の較正に関する。
アーク溶接は、溶接用ワイヤと母材との間にアークを発生させる溶接である。産業用ロボットの一例であるアーク溶接用ロボットを利用したアーク溶接では、アーク発生点である溶接用ワイヤの先端の座標を精確に制御することにより、高品質の溶接を実現する。アーク発生点を精確に制御するためには、溶接用ロボットを構成するマニピュレータの動作の精確さに加えて、マニピュレータの手首部に溶接用トーチを精度よく取り付ける必要がある。すなわち、マニピュレータの基準となる点に対するアーク発生点の座標を、本来あるべき座標となるように精確に較正する必要がある。
以下に、溶接用ロボットの構成と溶接用トーチの取り付け方法について、図1から図4Cを用いて説明する。
図1は、溶接用ロボットの概略構成を示す図である。マニピュレータ1は、図1に示すように6軸の回転軸を有する。マニピュレータ1は、この6軸の回転角の組み合わせによって、マニピュレータ1の手首フランジ12を動作範囲内の任意の点に移動させることができる。なお、マニピュレータ1の動作は、ロボット制御装置2により制御される。図1では、マニピュレータ1は6軸の垂直多関節型の例を示しており、6つの回転軸は、マニピュレータ1の設置面に近い側から順に、第1の回転軸、第2の回転軸、第3の回転軸、第4の回転軸、第5の回転軸、第6の回転軸とする。
ロボット制御装置2は、制御部5と、マニピュレータ駆動部6と、記憶部7を有している。ロボット制御装置2では、制御部5がティーチペンダント3から得た情報を処理し、処理された情報をマニピュレータ駆動部6に伝達する。マニピュレータ1の動作は、マニピュレータ駆動部6からの信号により制御される。ティーチペンダント3は、情報入力部8と、表示部9を有している。使用者がティーチペンダント3の表示部9に表示される情報を確認しながら情報入力部8に命令を入力することで、使用者の命令がロボット制御装置2に伝わる。
マニピュレータ1の手首フランジ12には、ボルト穴やピン穴が設けられており、ホルダ32を介して溶接用トーチ4を手首フランジ12に取り付けることができる。溶接用トーチ4の先端からは、図3Aに示すように、溶接用ワイヤ13が送給される。溶接用ワイヤ13は、それ自体が曲がり癖をもっている。そのため、アーク発生点である溶接用ワイヤ13の先端の位置は、溶接のたびに精確には定まらない。そこで、実際にマニピュレータ1を用いて溶接用プログラムを作成する場合、曲がり癖のない溶接用ワイヤ13の先端の位置をアーク発生点と仮定する。この仮定されたアーク発生点を制御点14とする。制御点14の位置は、溶接用トーチ4の先端に図3Cに示す所定の長さの教示用チップ15を取り付けることで簡単に決めることができる。なお、制御点14は、TCP(ツールセンターポイント)とも呼ばれる。
図2は、マニピュレータ1の座標系を示す図である。また、図4A〜図4Cは、マニピュレータ1の手首部から制御点14までの寸法等を表す図である。なお、図4A〜図4Cに示す寸法16から寸法20までの5個の寸法によって、図2に示すロボット座標系原点10に対する制御点14の座標が決まる。これら5個の寸法は、それぞれ以下の通りである。
図4Bに示すように、寸法16は、マニピュレータ1の回転軸である第4の回転軸21が設置面に平行な状態における、第4の回転軸21から制御点14がある水平面までの鉛直距離である。図4Bおよび図4Cに示すように、寸法17と寸法18は、マニピュレータ1の回転軸である第6の回転軸23から制御点14までの距離である。なお、寸法17の向きと寸法18の向きとがなす角度は90度である。図4Cにおいて寸法18は0であり、制御点14と第6の回転軸23とは紙面に垂直な方向で重なっている。図4Bに示すように、寸法19は、溶接用トーチ4の延長線と手首フランジ12の面との交点31からマニピュレータ1の第6の回転軸23までの水平距離である。手首フランジ12の面とは、手首フランジ12が第6の回転軸23を中心に回転する面であり、第6の回転軸23に垂直である。図4Aに示すように、寸法20は、マニピュレータ1の第6の回転軸23を回転中心とした場合の、マニピュレータ1の第4の回転軸21の方向と、溶接用トーチ4の取り付け方向とがなす角度である。
ここで、アーク溶接用ロボットの手首部に取り付けたツールの座標を較正する方法としては、以下のものがある。特許文献1には、位置が特定された3つの穴を有する治具を用い、TCP(ツールセンターポイント)の設定を行う方法が記載されている。また、特許文献2には、3次元視覚センサを用いてロボットのツール座標系を補正する方法が記載されている。特許文献3には、専用のチェックゲージを用いてトーチの取り付け位置の変化を把握し、トーチの位置を修正する方法が記載されている。
以下では、図3Bを用いて、マニピュレータ1の手首フランジ12に溶接用トーチ4を取り付ける際に、ゲージ29を用いて制御点14の位置を較正する方法について説明する。まず、手首フランジ12と溶接用トーチ4とを、ホルダ32を介してボルトで締結する。次に、溶接用トーチ4の先端に教示用チップ15を取り付ける。ホルダ32には、ホルダ32の形状を調整する調整用ボルト30がホルダ32の中央付近に設けられている。また、ホルダ32には、溶接用トーチ4の固定場所を調整する調整用ボルト33が設けられている。調整用ボルト30は、ホルダ32の上下の首振りを調整し、ホルダ32の形状を決めてから締結される。調整用ボルト33は、溶接用トーチ4の固定場所を調整し、溶接用トーチ4のホルダ32からの突き出し長さを決めてから締結される。これらの調整用ボルト30、33を緩めた状態で、図3Bに示すように、ゲージ29を、手首フランジ12に取り付ける。ゲージ29は、溶接用ワイヤ13の直径程度の小さな穴を有する。ゲージ29の穴に教示用チップ15の先端が差し込まれるように、調整用ボルト30、33を調整して溶接用トーチ4を動かす。ゲージ29の穴に教示用チップ15の先端が差し込まれた状態で、調整用ボルト30、33を締結し、溶接用トーチ4を固定する。最後に、ゲージ29を取り外す。以上により、マニピュレータ1に対する制御点14の位置を適正な位置に較正できる。
特開昭61−25206号公報 特開平10−97311号公報 特公平2−30795号公報
しかし、従来のようにゲージを使用して溶接用トーチの制御点の位置を較正する方法は、溶接用トーチごとに専用のゲージが必要となる。溶接対象物や溶接方法によってマニピュレータに取り付ける溶接用トーチの種類は多く存在し、形状の異なる溶接用トーチごとにゲージを揃える必要がある。また、特殊な仕様のため少量のみ生産されるような溶接用トーチに用いるゲージは高価である。
また、溶接用トーチの形状によっては、直線状のゲージの取り付けが難しい場合があり、複雑な形状のゲージを設計するか、あるいは、溶接用トーチ自体をゲージが取り付け可能な複雑な形状に設計しなければならない。
このように、手首フランジにゲージを取り付ける、従来の制御点の位置の較正方法は、ゲージに関係する大きなコストが発生する。
本開示は、上記課題を解決するために、マニピュレータに取り付けられたツールの制御点の座標を、ゲージを使用せずに較正する産業用ロボットおよび産業用ロボットのツール取り付け位置の較正方法を提供する。
上記課題を解決するために、本開示の産業用ロボットは、マニピュレータと、ツールと、ロボット制御装置と、較正用基準点と、着脱可能なカバーとを有する。マニピュレータは、ロボット座標系原点を有する設置面に設置されている。ツールは、マニピュレータに取り付けられ、制御点を有する。ロボット制御装置は、マニピュレータを制御する。較正用基準点は、マニピュレータに設けられている。カバーは、較正用基準点を覆う。較正用基準点とロボット座標系原点とは所定の距離だけ離れている。較正用基準点は、マニピュレータの表面に形成されている。また、本開示の産業用ロボットは、マニピュレータと、ツールと、ロボット制御装置と、較正用基準点とを有する。マニピュレータは、ロボット座標系原点を有する設置面に設置されている。ツールは、マニピュレータに取り付けられ、制御点を有する。ロボット制御装置は、マニピュレータを制御する。較正用基準点は、マニピュレータに設けられている。較正用基準点とロボット座標系原点とは所定の距離だけ離れている。マニピュレータは、第1の回転軸と第2の回転軸とを有する。第1の回転軸は、設置面に最も近いマニピュレータの回転軸である。第2の回転軸は、設置面に2番目に近いマニピュレータの回転軸である。較正用基準点は、第2の回転軸を囲む筐体に設けられている。
また、本開示の産業用ロボットのツール取り付け位置の較正方法は、第1の工程〜第4の工程を有する。第1の工程では、マニピュレータを、ロボット座標系原点を有する設置面に設置し、マニピュレータに較正用基準点を設ける。第2の工程では、マニピュレータをツール取り付け姿勢となるように動作させる。第3の工程では、制御点を有するツールをマニピュレータに、調整可能な状態で取り付ける。第4の工程では、ツールを調整して、制御点を較正用基準点に一致させる。較正用基準点とロボット座標系原点とは所定の距離だけ離れている。較正用基準点は、マニピュレータの表面に形成されている。マニピュレータは、較正用基準点を覆い、着脱可能なカバーを有する。また、本開示の産業用ロボットのツール取り付け位置の較正方法は、第1の工程〜第4の工程を有する。第1の工程では、マニピュレータを、ロボット座標系原点を有する設置面に設置し、マニピュレータに較正用基準点を設ける。第2の工程では、マニピュレータをツール取り付け姿勢となるように動作させる。第3の工程では、制御点を有するツールをマニピュレータに、調整可能な状態で取り付ける。第4の工程では、ツールを調整して、制御点を較正用基準点に一致させる。較正用基準点とロボット座標系原点とは所定の距離だけ離れている。マニピュレータは、第1の回転軸と第2の回転軸とを有する。第1の回転軸は、設置面に最も近いマニピュレータの回転軸である。第2の回転軸は、設置面に2番目に近いマニピュレータの回転軸である。較正用基準点は、第2の回転軸を囲む筐体に設けられている。
本開示によれば、ゲージを用いることなくツールの制御点の位置を較正することができる。
図1は、実施の形態1におけるアーク溶接ロボットの概略構成を示す図である。 図2は、実施の形態1におけるロボット座標系を示す図である。 図3Aは、実施の形態1における溶接用トーチの先端部分を示す図である。 図3Bは、従来の専用ゲージを用いた溶接用トーチの取り付け状態を示す図である。 図3Cは、実施の形態1における教示用チップを示す図である。 図4Aは、実施の形態1における各部の寸法を示す図である。 図4Bは、実施の形態1における各部の寸法を示す図である。 図4Cは、実施の形態1における各部の寸法を示す図である。 図5は、実施の形態1における較正用治具を示す図である。 図6は、実施の形態1における較正用治具を取り付ける前のマニピュレータの状態を示す図である。 図7は、実施の形態1における較正用治具を取り付けた後のマニピュレータの状態を示す図である。 図8は、実施の形態1におけるカバーを取り付けた後のマニピュレータの状態を示す図である。 図9は、実施の形態1におけるマニピュレータの較正用姿勢を示し、マニピュレータに溶接用トーチが取り付けられた状態を示す図である。 図10は、実施の形態1におけるマニピュレータの較正用姿勢を示し、溶接用トーチが取り付けられていない状態を示す図である。
以下、本開示の実施の形態について、図1から図9を用いて説明する。
(実施の形態1)
本実施の形態1において、図1から図3A、図3Cから図4Cは、背景技術と共通であり、背景技術と同様の箇所には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。なお、図3Bに示すゲージ29を用いない点が背景技術と異なる大きな点である。また、図5から図10は、本実施の形態1にのみ関係する図面である。
図5は、本実施の形態1における較正用治具11(較正用部材)を示す図である。図6は、本実施の形態1における較正用治具11を取り付ける前のマニピュレータ1の状態を示す図である。図7は、本実施の形態1における較正用治具11を取り付けた後のマニピュレータ1の状態を示す図である。図8は、本実施の形態1におけるカバー34を取り付けた後のマニピュレータ1の状態を示す図である。は、本実施の形態1におけるマニピュレータ1の較正用姿勢であり、マニピュレータ1に溶接用トーチ4が取り付けられた状態を示す図である。図10は、本実施の形態1におけるマニピュレータ1の較正用姿勢であり、溶接用トーチ4が取り付けられていない状態を示す図である。
図5に示すように、較正用治具11はブロック形状であり、金属ブロックを精度よく削りだしたものである。較正用治具11は、溶接用トーチ4の制御点14の位置の較正に用いる部材である。較正用治具11には、マニピュレータ1にボルトで取り付けるための貫通穴24と、溶接用ワイヤ13の先端や教示用チップ15の先端を差し込むための較正用穴25が設けられている。なお、較正用穴25は、溶接用ワイヤ13の先端や教示用チップ15の先端が差し込める程度の小さな穴である。
較正用治具11をマニピュレータ1に取り付けるため、図6に示すように、マニピュレータ1には、取り付け面26が設けられている。また、マニピュレータ1には、較正用治具11の取り付け位置を固定するための2つの接触面27が設けられている。この取り付け面26および2つの接触面27は、マニピュレータ1の第2の回転軸を囲む筐体に設けられている。第2の回転軸を囲む筐体は、金属の鋳物であり、取り付け面26および2つの接触面27は機械加工により精度よく切削して作られている。このため、ロボット座標系原点10に対する取り付け面26および2つの接触面27の位置は精確である。なお、本実施の形態1におけるマニピュレータ1は、6軸の垂直多関節型の例を示しており、6つの回転軸は、マニピュレータ1の設置面に近い側から順に、第1の回転軸、第2の回転軸、第3の回転軸、第4の回転軸,第5の回転軸、第6の回転軸とする。なお、マニピュレータ1の第2の回転軸を囲む筐体に較正用穴25を設けることが望ましい。第1の回転軸を囲む筐体から較正用穴25を設ける筐体までの各筐体は、製作誤差を有する。較正用穴25がマニピュレータ1の設置面から遠い筐体に設けられると、較正用穴25の位置は筐体の製作誤差が蓄積され、大きな影響を受ける。従って、第1の回転軸を囲む筐体に近い側にあり、加工精度の高い第2の回転軸を囲む筐体に較正用穴25を設けることが望ましい。
取り付け面26にはボルト穴28が設けられ、ボルトにより較正用治具11をマニピュレータ1に取り付けることができる。そして、較正用治具11を2つの接触面27に押し当てながら、較正用治具11の貫通穴24を介して、マニピュレータ1のボルト穴28へとボルト(図示せず)を締結し、較正用治具11をマニピュレータ1に取り付ける。なお、2つの接触面27のうちのいずれか、または両方のかわりに、ピン穴を設けても良い。
較正用治具11をマニピュレータ1に取り付けた状態を図7に示す。接触面27に較正用治具11を密着させて取り付けることで、ロボット座標系原点10に対する較正用穴25の位置が精確に定まっている。また、溶接時には、スパッタの飛散等によりマニピュレータ1に汚れが付着する場合がある。しかし、較正用治具11はマニピュレータ1に対して着脱可能であるため、溶接時には取り外すことができる。従って、溶接時に較正用治具11をマニピュレータ1から取り外しておくことで、溶接時に較正用治具11が汚れることを防ぐことができる。すなわち、溶接時のスパッタ等が較正用治具11の較正用穴25に付着してツールの位置の較正精度を低下させてしまうことはない。
なお、図8に示すように、較正用治具11を用いず、マニピュレータ1自体に較正用穴25を設けても良い。この場合は、溶接時のスパッタの飛散等から較正用穴25を保護するため、カバー34を較正用穴25の周辺に設けることが望ましい。
また、較正用穴25を有する較正用治具11がマニピュレータ1に着脱可能であり、かつ、較正用治具11の較正用穴25を保護するためのカバー等をマニピュレータ1に設けていてもよい。
以上のように、本実施の形態1のマニピュレータ1には、ロボット座標系原点10からの精度が保証された位置に、溶接用トーチ4の制御点14の位置を較正する較正用穴25が設けられている。較正用穴25は、マニピュレータ1に対して着脱可能な較正用治具11に設けることができる。また、図8に示すように、較正用穴25は、マニピュレータ1自体に設けて、マニピュレータ1がスパッタ等の汚れから較正用穴25を保護できるカバー34をさらに有していてもよい。
図9は、溶接用トーチ4の制御点14の位置を較正する際のマニピュレータ1の姿勢を示している。この姿勢をマニピュレータの較正用姿勢とする。マニピュレータ1の較正用姿勢は、溶接用トーチ4の取り付け作業を行いやすいマニピュレータ1の姿勢でもあり、予めロボット制御装置2の記憶部7に登録しておく。手首フランジ12の中心点から制御点14までの座標は、使用する溶接用トーチ4の形状によって異なる。そのため、溶接用トーチ4に応じたマニピュレータの較正用姿勢をそれぞれ、予めロボット制御装置2の記憶部7に記憶しておく。
上記構成の溶接ロボットに関し、マニピュレータ1へ溶接用トーチ4を取り付けた後の溶接用トーチ4の制御点14の位置を較正する較正方法について説明する。
作業者はティーチペンダント3の情報入力部8を操作し、ティーチペンダント3の表示部9に溶接用トーチ4の較正機能(以下、較正機能とする)を呼び出す。較正機能を用いて、作業者は情報入力部8を操作し、手首フランジ12に取り付ける溶接用トーチ4を、較正機能に予め記憶されている複数の溶接用トーチの中から選択する。ロボット制御装置2の記憶部7には、複数の溶接用トーチ4の較正用姿勢の情報が予め登録されている。ロボット制御装置2は、選択された溶接用トーチ4の較正用姿勢の情報を記憶部7からマニピュレータ駆動部6に送信する。ロボット制御装置2のマニピュレータ駆動部6は、受信した較正用姿勢に基づき、マニピュレータ1を、図10に示すように、溶接用トーチ4の較正用姿勢に動作させる。
次に、図9に示すように、ホルダ32を介して溶接用トーチ4をマニピュレータ1の手首フランジ12に取り付け、ホルダ32と手首フランジ12とをピンまたはボルト、もしくはピンおよびボルトで締結する。次に、ホルダ32の形状を調整する調整用ボルト30と、溶接用トーチ4の固定場所を調整する調整用ボルト33とを緩め、マニピュレータ1に対する溶接用トーチ4の位置、すなわち、マニピュレータ1に対する溶接用トーチ4の制御点14の位置が微調整可能な状態にする。この状態でティーチペンダント3を操作し、溶接用トーチ4の先端から溶接用ワイヤ13を所定の長さだけ押し出す。この所定の長さとは、溶接用ワイヤ13に曲がり癖がない場合の溶接用トーチ4から制御点14までの距離に等しい。この所定の長さは、溶接用トーチ4ごとに規定された長さである。次に、調整用ボルト30が緩んでいるため、調整可能(変更可能)な状態となっているホルダ32を変形させる。合わせて、調整用ボルト33が緩んでいるため、調整可能(変更可能)な状態となっている溶接用トーチ4の固定位置を調整する。これらの調整により、溶接用トーチ4の先端を動かし、溶接用ワイヤ13の先端が較正用穴25に差し込まれるようにする。そして、調整用ボルト30を締結することで、ホルダ32に形状を固定し、調整用ボルト33を締結することで、溶接用トーチ4の固定位置を確定する。これにより、マニピュレータ1に対する溶接用トーチ4の制御点14の位置を適正な位置に較正する。
なお、溶接用ワイヤ13には曲がり癖がある。そのため、より精確な調整を行う場合は、教示用チップ15を溶接用トーチ4の先端に取り付け、溶接用ワイヤ13の代わりに教示用チップ15の先端を較正用穴25に差し込んだ状態で調整用ボルト30、33を締結する。
次に、ティーチペンダント3を操作することでマニピュレータ1を適当な姿勢に移動させ、較正用治具11をマニピュレータ1から取り外す。較正用治具11は、次回使用時まで傷や汚れが付かないように保管しておく。
以上の動作により、溶接用トーチ4をマニピュレータ1に取り付けた後に、溶接用トーチ4の制御点14を適正な位置に較正することができる。すなわち、マニピュレータ1に溶接用トーチ4を取り付けた際、制御点14が正しい位置でなかった場合でも、ホルダ32を適切に変形させること、および、溶接用トーチ4の固定位置を調整することにより、制御点14を正しい位置へ移動させることができる。
次に、溶接対象物と溶接用トーチ4との衝突等により、制御点14にずれが生じた場合の制御点14の位置の較正方法について説明する。
初めに、ティーチペンダント3を操作して溶接用ワイヤ13の先端を溶接用トーチ4の内部に納める。次に、調整用ボルト30、33を緩めて溶接用トーチ4の位置を微調整可能な状態にする。以後は、上記した溶接用トーチ4の制御点14の位置の較正方法と同様である。
以上のように、本実施の形態1によれば、マニピュレータ1がゲージ29の代わりとなる制御点14の位置の較正のための基準点(較正用穴25)を有する。この基準点に溶接用トーチ4の制御点14が一致するように溶接用トーチ4の位置を調整することで、溶接用トーチ4の制御点14の位置の較正を簡単に実現出来る。
そして、さまざまな溶接用トーチ4に対応した較正用姿勢がロボット制御装置2の記憶部7に記憶されている。そのため、溶接用トーチ4の形状にかかわらず、ゲージ29を使用せず簡単に制御点14の位置を較正することができるので、ゲージ29にかかるコストを削減できる。また、ゲージ29の取り付けが困難な場合に必要とされていた、溶接用トーチ4の追加の設計も不要であり、溶接用トーチ4自体の構造をシンプルにすることができる。
なお、上記では、マニピュレータ1が溶接用トーチ4を較正用姿勢に移動した後にマニピュレータ1に溶接用トーチ4を取り付ける例を示した。しかし、マニピュレータ1に溶接用トーチ4を取り付け、その後に、マニピュレータ1を較正用姿勢となるように移動させても良い。いずれの場合においても、調整用ボルト30,33を用いて溶接用トーチ4の制御点14の位置を較正することができる。
また、溶接対象物と溶接用トーチ4との衝突等により、制御点14にずれが生じた場合の較正方法に関し、上記では、調整用ボルト30を緩めて溶接用トーチ4の先端位置が微調整可能な状態にしてから、マニピュレータ1を較正用姿勢に移動させる例を示した。しかし、マニピュレータ1を較正用姿勢に移動させてから、調整用ボルト30を緩めて溶接用トーチ4の先端位置が微調整可能な状態となるようにしても良い。
また、ホルダ32の調整機構は、調整用ボルト30,33によって実現される。調整用ボルト30は、ホルダ32が含んでいる2つのパーツを接続する接続部を固定するものであり、調整用ボルト30を緩めた状態で、2つのパーツの位置関係を変更し、ホルダ32の形状を変更できる。そして、調整用ボルト30を締結することで、ホルダ32を好ましい形状に固定できる。また、調整用ボルト33は、ホルダ32に設けられた長穴に通され、溶接用トーチ4に設けられたねじ穴部と螺合する。調整用ボルト33により、溶接用トーチ4とホルダ32が結合される。調整用ボルト33を緩めることにより、ホルダ32に対する溶接用トーチ4の位置の微調整が可能となる。
本開示によれば、ゲージを用いることなくツールの制御点の位置を較正でき、産業用ロボットおよび産業用ロボットのツール取り付け位置の較正方法として産業上有用である。
1 マニピュレータ
2 ロボット制御装置
3 ティーチペンダント
4 溶接用トーチ
5 制御部
6 マニピュレータ駆動部
7 記憶部
8 情報入力部
9 表示部
10 ロボット座標系原点
11 較正用治具
12 手首フランジ
13 溶接用ワイヤ
14 制御点
15 教示用チップ
21 第4の回転軸
23 第6の回転軸
24 貫通穴
25 較正用穴
26 取り付け面
27 接触面
28 ボルト穴
29 ゲージ
30,33 調整用ボルト
31 交点
32 ホルダ
34 カバー

Claims (11)

  1. ロボット座標系原点を有する設置面に設置されたマニピュレータと、
    前記マニピュレータに取り付けられ、制御点を有するツールと、
    前記マニピュレータを制御するロボット制御装置と、
    前記マニピュレータに設けられた較正用基準点とを備え、
    前記較正用基準点と前記ロボット座標系原点とは所定の距離だけ離れている産業用ロボット。
  2. 前記マニピュレータに取り付けられた較正用部材をさらに備え、
    前記較正用基準点は、前記較正用部材に設けられている請求項1に記載の産業用ロボット。
  3. 前記較正用基準点は、前記マニピュレータの表面に形成されている請求項1に記載の産業用ロボット。
  4. 前記較正用基準点を覆い、着脱可能なカバーをさらに備えた請求項3に記載の産業用ロボット。
  5. 前記マニピュレータは、第1の回転軸と第2の回転軸を有し、
    前記第1の回転軸は前記マニピュレータの設置面に最も近い回転軸であり、
    前記第2の回転軸は前記マニピュレータの設置面に2番目に近い回転軸であり、
    前記較正用基準点は、前記第2の回転軸を囲む筐体に設けられている請求項1から4のいずれか1項に記載の産業用ロボット。
  6. 前記ロボット座標系原点は、前記第1の回転軸と前記設置面の交点である請求項5に記載の産業用ロボット。
  7. 前記ツールは溶接用トーチおよびホルダを含む請求項1から6のいずれか1項に記載の産業用ロボット。
  8. マニピュレータを、ロボット座標系原点を有する設置面に設置し、前記マニピュレータに較正用基準点を設ける第1の工程と、
    前記マニピュレータを較正用姿勢となるように動作させる第2の工程と、
    制御点を有するツールを前記マニピュレータに、調整可能な状態で取り付ける第3の工程と、
    前記ツールを調整して、前記制御点を前記較正用基準点に一致させる第4の工程とを備え、
    前記較正用基準点と前記ロボット座標系原点とは所定の距離だけ離れている産業用ロボットのツール取り付け位置の較正方法。
  9. 前記第2の工程の後に前記第3の工程を行う請求項8に記載の産業用ロボットのツール取り付け位置の較正方法。
  10. 前記第3の工程の後に前記第2の工程を行う請求項8に記載の産業用ロボットのツール取り付け位置の較正方法。
  11. 前記ツールは溶接用トーチおよびホルダである請求項8〜10のいずれか1項に記載の産業用ロボットのツール取り付け位置の較正方法。
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