JPWO2014119695A1 - 圧電振動体 - Google Patents

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Abstract

本発明の目的は、電圧印加時に効果的に音波を発し、ハプティクス感と呼ばれる振動を瞬時に発現できる圧電振動体の提供にある。本発明は、ポリ乳酸からなる配向フィルム層と導電層とが交互に積層された圧電積層体と、その両端部を把持する把持具とからなり、配向フィルム層を介して隣り合う導電層は一方は負極に他方は正極に短絡しており、電流を流した際に、各導電層に挟まれた配向フィルム層は、伸縮方向が同方向になるように積層され、(ii)圧電積層体は、配向フィルム層の面方向と平行な2つの平行表面と、それら平行表面に挟まれ、互いに平行な2つの端面AおよびBとを有し、(iii)前記把持される両端部がそれぞれ端面Aと端面Bを含み、かつ把持具によって端面AとBの間の圧電積層体に応力が付加されている圧電振動体

Description

本発明は、ポリ乳酸からなる配向フィルム層を用いた圧電振動体に関する。
特許文献1には、透明圧電フィルムスピーカーを携帯電話の表示面に湾曲させて設置し、音を広い範囲から出力して、スピーカーからの聞き取り性能を向上させたものが開示されている。そして、具体的に開示されているのは長方形のPVDF(ポリビニルフッ化ビニリデン)のフィルムを、厚み方向の一方の表層側と他方の表層側とを、電荷を付加したときに、逆向きの伸縮挙動を示す、いわゆるバイモルフ構造で積層し、その2つの短辺を固定して、フィルムを湾曲させる振動によって音を出す方法が提案されている。
また特許文献2には、高分子圧電シートに主面に沿った方向に有効電極部分を設け、その有効電極部分を分割して隣り合う有効電極部分に当該圧電シートの厚み方向に生じる電界ベクトルが互いに逆向きになるように、電荷を印加することで、四角形の圧電シートの4辺を固定しても、圧電シートが湾曲して音を出力できる圧電スピーカーが提案されている。また、圧電シートを構成する高分子として、キラル高分子であるL−ポリ乳酸が提案されている。
さらに本発明者らは、ポリL−乳酸やポリD−乳酸からなる層を積層することで変位する力を大きくできることを特許文献3や特許文献4で提案している。
ところで圧電体を振動板に貼り付けて音を出すには、圧電体の伸縮変位によって振動板に反りを発生させ、曲げ振動で音を出す方式と、圧電体が面内で伸縮することで、張り合わせた振動板に面内振動を発生させ、その共振により音を出す方式とがある。そして、PZTなど圧電セラミックスに比べ、高分子からなる圧電体は圧電率が低く、その力も弱いため、硬い振動板を共振させるのには適しておらず、前述の特許文献1と2のように、圧電体の曲げ振動による方式が用いられてきた。
特開2003−244792号公報 国際公開2009/50236号パンフレット 特開2011−243606号公報 特開2011−153023号公報
本発明の目的は、電圧印加時に効果的に音波を発し、ハプティクス感と呼ばれる振動を瞬時に発現できる圧電振動体を提供することにある。
本発明は、ポリ乳酸からなる配向フィルム層と導電層とが交互に積層された圧電積層体と、その両端部を把持する把持具とからなる圧電振動体であって、
(i)圧電積層体は、配向フィルム層を介して隣り合う導電層は一方は負極に他方は正極に短絡しており、電流を流した際に、各導電層に挟まれた配向フィルム層は、伸縮方向が同方向になるように積層され、
(ii)圧電積層体は、配向フィルム層の面方向と平行な2つの平行表面と、それら平行表面に挟まれ、互いに平行な2つの端面AおよびBとを有し、
(iii)前記把持される両端部がそれぞれ端面Aと端面Bを含み、かつ把持具によって端面AとBの間の圧電積層体に応力が付加されている圧電振動体である。
また、本発明の圧電振動体の好ましい態様は、圧電積層体の形状がテープ状である圧電振動体、両端部を把持する把持具が振動板に固定されており、把持具によって圧電積層体に付加される応力が、伸張応力である圧電振動体1、前記端面AおよびBが、圧電積層体の長手方向の両端に位置する圧電振動体1、把持具によって圧電積層体に付加される応力が、圧縮応力である圧電振動体2、またその両端部に位置する把持具の位置が固定されている圧電振動体2や両端部に位置する把持具の位置が、圧電積層体の伸縮に合わせて可動する圧電振動体2、そして端面AおよびBが、圧電積層体の長手方向に平行な両端に位置する圧電振動体2、圧電積層体は、配向フィルム層の層数が3以上である圧電振動体、各配向フィルム層の厚みがそれぞれ25μm以下である圧電振動体、各配向フィルム層が、ポリL−乳酸を主たる成分とする樹脂Lからなる配向フィルム層LおよびポリD−乳酸を主たる成分とする樹脂Dからなる配向フィルム層Dからなる群より選ばれる少なくとも1種である圧電振動体、圧電積層体の最大伸縮方向が、端面AおよびBと平行または直交する方向である圧電振動体、導電層の表面固有抵抗が1×10Ω/□以下である圧電振動体、そして、圧電スピーカーまたは信号入力装置に用いられる圧電振動体の少なくともいずれかを具備する圧電振動体である。
本発明の圧電振動体は、配向フィルム層を、導電層を介して複数積層し、かつ電荷を掛けたときに各配向フィルム層の伸縮が同方向になるように積層して圧電積層体を形成し、かつ、圧電積層体の両端部にある把持具で圧電積層体に応力を付加させたものである。その結果、本発明の圧電振動体は、圧電積層体の振動を効率的に音波に変え、ハプティクス感と呼ばれる振動として伝えることができる。
図1は本発明で使用する導電層付きフィルム層A(5)と導電層付きフィルム層B(6)の一例の斜視図である。
図2は本発明で使用する導電層付きフィルム層A(5)と導電層付きフィルム層B(6)を複数積層するときの斜視図である。
図3は図2の積層によって得られる圧電積層体の斜視図である。
図4は図3の圧電積層体のそれぞれの面を示した概略図である。
図5は図3の圧電積層体に電極(10)を付与したときの斜視図である。
図6は図5の圧電積層体をy方向から見たときの平面図である。
図7は長方形の配向フィルム層に電流を流した時の変形を示す平面図である。
図8は長方形の配向フィルム層に電流を流した時の変形を示す他の平面図である。
図9は長方形の配向フィルム層に電流を流した時の変形を示す他の平面図である。
図10は本発明で使用する圧電積層体の他の好ましい態様を示す斜視図である。
図11は本発明で使用する圧電積層体の他の好ましい態様を示す斜視図である。
図12は本発明で使用する圧電積層体の他の好ましい態様を示す斜視図である。
図13は本発明で使用する圧電積層体の他の好ましい態様を示す斜視図である。
図14は本発明の圧電振動体を正面からみた平面図である。
図15は本発明の圧電振動体を上面からみた平面図である。
図16は本発明の圧電振動体の他の好ましい態様を、正面からみた平面図である。
図17は本発明の圧電振動体の他の好ましい態様を、上面からみた平面図である。
図18は本発明の圧電振動体の他の好ましい態様を、正面からみた平面図である。
図19は本発明の圧電振動体の他の好ましい態様を、上面からみた平面図である。
図20は本発明の圧電振動体の他の好ましい態様を、正面からみた平面図である。
図21は本発明の圧電振動体の他の好ましい態様を、上面からみた平面図である。
図22は本発明の圧電振動体の他の好ましい態様を、正面からみた平面図である。
図23は本発明の圧電振動体の他の好ましい態様を、上面からみた平面図である。
図24は圧電積層体の把持方法を示す例である。
図25は圧電積層体の把持方法を示す例である。
図26は圧電積層体の把持方法を示す例である。
図27は圧電積層体の把持方法を示す例である。
本発明における圧電積層体および本発明の圧電振動体について、まず図を用いて説明する。
図1は、本発明で使用する導電層付きフィルム層Aと導電層付きフィルム層Bの一例の斜視図である。図1中の符号1は配向フィルム層A、符号2は配向フィルム層B、符号3は導電層A、符号4は導電層B、符号5は左側に導電層のないマージンを有する導電層付きフィルム層A、符号6は右側に導電層のないマージンを有する導電層付きフィルム層Bである。
図2は、本発明で使用する導電層付きフィルム層Aと導電層付きフィルム層Bを複数積層するときの斜視図である。図2では、図1で示した導電層付きフィルム層Aと導電層付きフィルム層Bとを交互に、かつ導電層が交互に一方の端には存在しつつ、他方の端には存在しないように積層することを示している。
図3は、図2の積層によって得られる圧電積層体(符号11)の斜視図である。導電層と配向フィルム層が交互に、かつ配向フィルム層を介して隣り合う導電層は、一方は負極に、他方は正極に短絡できるように積層されている。このような積層とすることで、隣り合う配向フィルム層に、その厚み方向に逆の電荷を付加することができる。そのため、各導電層に挟まれた配向フィルム層は、電流を流した際に、伸縮方向が同方向になるように積層されていることが必要である。圧電積層体の一部に、伸縮方向が異なる樹脂が存在すると、圧電特性が打ち消しあう状況となり、振動板を共振させる効果が損なわれる。このように圧電積層体中の配向フィルム層の伸縮方向を揃える方法は、特に制限されないが、後述の通り、配向フィルム層AをポリL乳酸からなるフィルム層、配向フィルム層BをポリD乳酸からなるフィルム層とするのが簡便で効率的である。
図4は、図3の圧電積層体のそれぞれの面を示した概略図である。図4中の符号7は圧電積層体の積層方向に位置し、配向フィルム層の面方向に平行な2つの面であり、本発明では圧電積層体における平行表面と以下称する。そして、この平行表面が、従来の圧電スピーカーでは振動板に貼り付けて振動を付与する面であった。図4中の符号8と9は、上記平行表面に挟まれた面であり、本発明では以下、端面と称する。また、その端面の中でも、符号8は圧電積層体における長手方向に平行な端面であり、符号9は圧電積層体における長手方向に平行ではない端面である。そして、向かい合う端面を端面Aと端面Bとそれぞれ称する。そのため、図4において、端面Aが符号8で示された面である場合、底面が端面Bと以下称する。
図5は、図3の圧電積層体(11)に電極(10)を付与したときの斜視図である。符号10は例えば陰極(または正極)に短絡させるための電極である。このような電極は、隣り合う導電層を短絡させずに、交互に正極と陰極に短絡できるものであれば制限されず、例えば後述の銀ペーストなどが挙げられる。もちろん、電極を付与せずに、それぞれの導電層に直接導線を設けてもよい。
図6は図5の圧電積層体をy方向から見たときの平面図である。隣り合う導電層はそれぞれの電極に交互に短絡されている。なお、図6に示すように、圧電積層体中の配向フィルム層の数をnとしたとき、導電層の層数はn+1であることが好ましい。このようにすることで、圧電積層体中の配向フィルム層は全て電流が流れて圧電特性を発現することができる。
ところで、ヘリカルキラルな高分子であるポリ乳酸からなる配向フィルム層に、電流を流したときの、主配向方向と圧電による変形との関係を図7〜9を用いて説明する。図7〜9は、長方形の配向フィルム層に電流を流した時の変形を示す平面図である。図7〜9におけるaは配向フィルム層における主配向方向で、簡単に言えば最も延伸された方向である。そして、ポリ乳酸からなる配向フィルム層の厚み方向に電流を流した場合、実線の長方形から、点線で示される平行四辺形のようなずり変形が生じる。そして、符号bは、このフィルム面内における最も面内変位の大きな方向を示し、ポリ乳酸からなる配向フィルムでは、この符号bで示される方向は、符号aで示される方向に対して45°傾く。なお、今後の説明のため、配向フィルム層を長方形に裁断した場合、配向フィルム層の長手方向と主配向軸とのなす角度にて、0°カット、45°カット、90°カットと称することがある。ちなみに、図7は0°カットであり、図8が45°カット、図9が90°カットである。
なお、本発明における圧電積層体は、前述の図1〜図6に示されたものに限定されず、他の好ましい態様として、図10〜図13にその一例を示す。
図10〜図13は、上から下に5つの図があり、上から1一つ目と2つめの図が前記図1に相当する図で、上から3つ目の図が前記図2に相当する図で、上から4つ目が前記図3に相当する図で、上から5つ目が前記図5に相当する。そして、図10は右上隅にマージンを有する導電層付きフィルム層Aと右下隅にマージンを有する導電層付きフィルム層Bを用いた場合の図であり、図11は右下隅にマージンを有する導電層付きフィルム層Aと左下隅にマージンを有する導電層付きフィルム層Bを用いた場合の図であり、図12はy方向の幅を極めて細くした導電層付きフィルム層Aと導電層付きフィルム層Bを用いた場合の図であり、図13は導電層付きフィルム層Aと導電層付きフィルム層Bの形状を長方形から平行四辺形に変更した場合の図である。
つぎに、本発明の圧電振動体について、図14〜図23を用いて説明する。本発明の圧電振動体は、前述のポリ乳酸からなる配向フィルム層(1または2)と導電層(3または4)とが交互に積層された圧電積層体(11)と、その両端部を把持する把持具(13)とからなる圧電振動体である。
そして、(i)圧電積層体(11)は、配向フィルム層を介して隣り合う導電層は一方は負の電極(10)に他方は正の電極(10)に短絡しており、電流を流した際に、各導電層(3または4)に挟まれた配向フィルム層(1または2)は、伸縮方向が同方向になるように積層されている。
また、(ii)圧電積層体(11)は、配向フィルム層(1または2)の面方向と平行な2つの平行表面(7)と、それら平行表面に挟まれ、互いに平行な2つの端面AおよびB(8または9)とを有する。前述の図4で見れば、符号8で記した端面が端面Aだとすれば、端面Bは底面になる。そして、前述の図4には、二組の端面AとBの組合せがあるといえ、本発明ではその一組が後述の(iii)のように把持されていればよい。すなわち、(iii)前記把持される両端部がそれぞれ端面Aと端面Bを含み、かつ把持具によって端面AとBの間の圧電積層体に応力が付加されていることが必要である。この際、把持具によって端面AとBの間の圧電積層体に付加される応力は、圧縮応力でも伸張応力であってもよい。このように、圧電積層体の互いに平行な端面AとBと把持具で把持し、その間の圧電積層体に応力を付加することで、圧電積層体にひずみが加わるのか、圧電特性が向上し、しかも圧電積層体自身が高い圧電性層を有するので、効果的に振動を発現できるのである。
なお、本発明における把持具は、圧電積層体の位置がずれないように把持でき、応力を付加できるものであればよく、例えば図24のように把持具に切欠きのような溝を設け、その中に圧電積層体を挿入しただけでもよいし、図25のように圧電積層体が挿入された後、溝幅を狭めるような処理を把持具に施したものでもよいし、把持具としてクリップを用いてもよい。また、図26のように把持具の溝の中に接着剤などを装填し、把持具と圧電積層体とを固着させてもよい。また、図27のように把持具自体を接着剤とし、振動板などの固定具に固着させてもよい。なお、圧電積層体に圧縮応力を付加する場合はいずれの方法でもよいが、伸張応力を付与する場合は、図25、図26、図27のような方式が好ましい。
まず、本発明の好ましい第1の態様として、図14と15を用いて、説明する。
本発明の好ましい態様の第1は、図14および図15に示すように、両端部を把持する把持具(13)が振動板(12)に固定されており、把持具(13)によって圧電積層体に付加される応力が、伸張応力である圧電振動体である。この伸張応力の付与の仕方は、振動板に固定する際に、圧電積層体を張った状態で固定すればよい。伸張応力の範囲は特に制限されず、目的とする振動の周波数に応じて調整すればよい。なお、この伸張応力を付加した場合、低周波での振動の伝搬がしやすいという利点がある。そのため、入力信号装置に信号を入力した際に、瞬時に振動を発現でき、ハプティクスと呼ばれる入力の有無を人に伝えるのに適した圧電振動体として極めて好適である。
ところで、このような圧電振動体によって低周波の振動を発現させようとすると、変位量もより大きいことが望まれる。そのため、把持する面AおよびBが、図14や図15に示すように、圧電積層体(11)の長手方向の両端に位置することが好ましい。
また、配向フィルム層における圧電歪による面内変位が最も大きい方向(b)は、圧電積層体(11)の製造を簡便にできることから、配向フィルム層の長手方向に対して45°の方向に傾いていることが好ましく、他方、振動をより効率的に発現させる観点からは、向かい合う把持具(13)を最短距離で結んだ直線と平行もしくは直交する方向であることが好ましい。特に好ましいのは、把持する端面AおよびBが、図14や図15に示すように、圧電積層体(11)の長手方向の両端に位置し、かつ配向フィルム層における圧電歪による面内変位が最も大きい方向(b)が圧電積層体の長手方向と平行もしくは直交する方向であり、最も好ましいのは長手方向と平行な方向の場合である。
なお、図16および図17は、本発明の好ましい第1の態様のさらに別の態様であり、把持具として接着剤などの固着できるものを採用し、振動板に固定したものである。このようにすることで、圧電振動体の厚みを薄くすることができる。
つぎに、本発明の好ましい第2の態様として、図18と図19を用いて、説明する。本発明の好ましい態様の第2は、図18および図19に示すように、把持具によって圧電積層体に付加される応力が、圧縮応力である圧電振動体である。圧縮応力を付加しているため、図18に示すように圧電積層体は湾曲している。
この際、図18や図19は、固定具に両端部に位置する把持具(13)の位置が固定されていることが好ましく、その際固定具は、振動を伝搬できる振動板であることが好ましい。
このような圧縮応力を付加した状態にしておくことで、圧電振動体が自ら振動して高周波の音波などを発現することができ、さらに固定具として振動板を用いれば、圧電積層体の端面から生じる振動で振動板を共振させることもできる。
そのような観点から第2の態様は、圧電スピーカーなどに好適に使用することができる。
ところで、このような圧電振動体によって高周波の振動を発現させようとすると、圧電積層体により大きな圧縮応力を付加することが望まれる。そのため、把持する端面AおよびBが、図18や図19に示すように、圧電積層体(11)の長手方向と平行なそれぞれの端面の位置にあることが圧縮応力を圧電積層体に付与しやすいことから好ましい。
また、配向フィルム層における圧電歪による面内変位が最も大きい方向(b)は、圧電積層体(11)の製造を簡便にできることから、配向フィルム層の長手方向に対して45°の方向に傾いていることが好ましく、他方、振動をより効率的に発現させる観点からは、向かい合う把持具(13)を最短距離で結んだ直線と平行もしくは直交する方向であることが好ましい。特に好ましいのは、把持する端面AおよびBが、図19に示すように、圧電積層体(11)の長手方向に平行な端面で、かつ配向フィルム層における圧電歪による面内変位が最も大きい方向(b)が圧電積層体の長手方向と平行もしくは直交する方向であり、最も好ましいのは長手方向と平行な方向の場合である。
つぎに、図20および図21は、本発明の好ましい第2の態様のさらに別の態様であり、把持具として接着剤などの固着できるものを採用し、振動板に固定したものである。このようにすることで、圧電振動体の厚みを薄くすることができる。
ところで、本発明の好ましい第2の態様は、把持具の位置が完全に固定されていなくてもよい。すなわち、両端部に位置する把持具(13)の位置が、圧電積層体の伸縮に合わせて可動する圧電振動体であってもよく、そうすることで広帯域の周波数で、音波を発生させることができる。なお、図22は、把持具(13)を固定具(12)で固定しており、この固定具(12)は把持具(13)の間隔が圧電積層体の伸縮に合わせて変化するものである。例えば、固定具(12)として、薄い金属板やプラスチックなどを用いれば、圧電積層体の伸縮に合わせて、圧電積層体に圧縮応力を付与しつつ、把持具(13)間の間隔を微妙に変化させることができる。
ところで、このような両端部に位置する把持具(13)の位置が、圧電積層体の伸縮に合わせて可動する圧電振動体の場合、把持具の間で挟まれた圧電積層体の形状を維持しつつ、振動を最大限に発現させることが望まれる。そのため、把持する端面AおよびBが、図23に示すように、圧電積層体(11)の長手方向と平行なそれぞれの端面の位置にあることが好ましい。
また、配向フィルム層における圧電歪による面内変位が最も大きい方向(b)は、圧電積層体(11)の製造を簡便にできることから、配向フィルム層の長手方向に対して45°の方向に傾いていることが好ましく、他方、振動をより効率的に発現させる観点からは、向かい合う把持具(13)を最短距離で結んだ直線と平行もしくは直交する方向であることが好ましい。特に好ましいのは、把持する端面AおよびBが、図23に示すように、圧電積層体(11)の長手方向の平行な端面で、かつ配向フィルム層における圧電歪による面内変位が最も大きい方向(b)が圧電積層体の長手方向と平行もしくは直交する方向であり、最も好ましいのは長手方向と平行な方向の場合である。
これら図14〜23に示した圧電振動体は、その図に記載したように、電極(10)および導線(14)を設け、この導線(14)を、アンプ(15)などに接続し、信号入力
装置(16)、例えばオーディオプレーヤーに接続することでスピーカーとして音を出したり、発振器に接続することで、ハプティクス感を発現させることができる。
なお、本発明の他の好ましい態様として、前述の図10〜図13の圧電積層体を用いたものも挙げられる。
なお、本発明の圧電振動体は、例えばアンプに接続したオーディオプレーヤーを再生させ、その音量などで評価することができる。
つぎに、本発明の圧電振動体について、さらに詳述する。
ポリ乳酸
本発明において、配向フィルム層はポリ乳酸からなる。ポリ乳酸としては、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸が好ましく挙げられる。
ここで、ポリL−乳酸は、実質的にL−乳酸単位のみから構成されるポリL−乳酸(以下、PLLAと省略する場合がある。)や、L−乳酸とその他のモノマーとの共重合体等であるが、特に、実質的にL−乳酸単位だけで構成されるポリL−乳酸であることが好ましい。また、ポリD−乳酸は、実質的にD−乳酸単位のみから構成されるポリD−乳酸(以下、PDLAと省略する場合がある。)や、D−乳酸とその他のモノマーとの共重合体等であるが、特に、実質的にD−乳酸単位だけで構成されるポリD−乳酸であることが好ましい。
ポリL−(D−)乳酸におけるL−(D−)乳酸単位の量は、結晶性の観点、また変位量の向上効果を高くするという観点およびフィルム耐熱性などの観点より、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは98〜100モル%である。すなわち、L−(D−)乳酸単位以外の単位の含有量は、好ましくは0〜10モル%、より好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%である。
かかるポリ乳酸は、結晶性を有していることが好ましく、前述のような配向・結晶の態様とすることが容易となり、変位量の向上効果を高くすることができる。またその融点は150℃以上190℃以下であることが好ましく、160℃以上190℃以下であることがさらに好ましい。このような態様であるとフィルムの耐熱性に優れる。
本発明におけるポリ乳酸は、その重量平均分子量(Mw)が8万から25万の範囲であることが好ましく、10万から25万の範囲であることがより好ましい。とりわけ好ましくは12万から20万の範囲である。重量平均分子量Mwが上記数値範囲にあると、フィルムの剛性に優れ、またフィルムの厚み斑が良好になる。
本発明におけるヘリカルキラル高分子は、本発明の効果を損なわない範囲で、共重合や他の樹脂を混合したものであってもよい。
本発明におけるポリ乳酸の製造方法は特に制限されず、以下ポリL−乳酸およびポリD−乳酸を製造する方法を例にとって説明する。例えば、L−乳酸またはD−乳酸を直接脱水縮合する方法、L−またはD−乳酸オリゴマーを固相重合する方法、L−またはD−乳酸を一度脱水環化してラクチドとした後、溶融開環重合する方法等が例示される。なかでも、直接脱水縮合方法、あるいはラクチド類の溶融開環重合法により得られるポリ乳酸が、品質、生産効率の観点から好ましく、中でもラクチド類の溶融開環重合法が特に好ましく選択される。
これらの製造法において使用する触媒は、ポリ乳酸が前述した所定の特性を有するように重合させることができるものであれば特に限定されず、それ自体公知のものを適宜使用できる。
得られたポリL−乳酸およびポリD−乳酸は、従来公知の方法により、重合触媒を除去したり、失活剤を用いて重合触媒の触媒活性を失活、不活性化したりするのが、フィルムの溶融安定性、湿熱安定性のために好ましい。
失活剤を用いる場合、その使用量は、特定金属含有触媒の金属元素1当量あたり0.3から20当量、より好ましくは0.5から15当量、さらに好ましくは0.5から10当量、特に好ましくは0.6から7当量とすればよい。失活剤の使用量が少なすぎると、触媒金属の活性を十分に低下させることができないし、また過剰に使用すると、失活剤が樹脂の分解を引き起こす可能性があり好ましくない。
配向フィルム層
本発明における配向フィルム層は、前述のポリ乳酸からなる。本発明における配向フィルム層は、圧電特性をより効率よく発現させやすくすることから、一方向に分子鎖が配向されている、すなわち主配向方向を有する。なお、本発明における主配向軸とは、エリプソメーター(型式M−220;日本分光)を用いて測定された面内方向の最も屈折率の高い方向である。
本発明における各配向フィルム層の破断強度は、その主配向方向が120MPa以上であることが好ましい。破断強度が上記下限よりも低い場合は、共振特性の向上効果が低くなる。他方、主配向方向の破断強度の上限は特に制限されないが、製膜性などの点から300MPa以下であることが好ましい。このような観点から、主配向方向の破断強度の下限は、より好ましくは120MPa以上、さらに150MPa以上、特に180MPa以上が好ましく、他方上限は300MPa以下、さらに好ましくは250MPa以下であることが好ましい。主配向方向の破断強度が上記下限以上あることで、共振特性の向上効果を高くすることができる。
また、本発明における配向フィルム層の主配向軸方向に直交する方向の破断強度は、80MPa以下であることが好ましい。破断強度が上記上限以下にあると、共振特性の向上効果を高くすることができる。主配向軸方向に直交する方向の破断強度が上記上限よりも高い場合は、共振特性の向上効果が低くなる。他方、主配向軸方向に直交する方向の破断強度の下限は特に制限されないが、製膜後の取り扱いなどの点から、30MPa以上、さらに50MPa以上であることが好ましい。
ところで、配向フィルム層の主配向方向が、配向フィルム層の長さ方向と平行(図7の0°カット)もしくは直交する方向(図9の90°カット)であることがより効率的に共振による音を大きく発生させやすいことから好ましい。また、配向フィルム層は、圧電歪による面内変位が最も大きい方向が、配向フィルム層の主配向方向とそれに直交する方向の中間方向に位置することがより効率的に音を発生させやすいことから好ましい。
ところで、導電層を介して互いにエナンチオマーな高分子からなる配向フィルム層が積層されていることが好ましい。特に異なるエナンチオマーな高分子からなる配向フィルム層が交互に積層されると、主配向軸を同一方向に揃えた状態で、圧電特性を効率よく発現でき、ロールtoロールや共押出しといった製造方法を採用できることから好ましい。
本発明における配向フィルム層の密度は、1.22〜1.27g/cm3であることが好ましい。密度が上記数値範囲にあると、共振特性の向上効果を高くすることができる。密度が低い場合は、共振特性の向上効果が低くなる傾向にあり、他方、密度が高い場合は、共振特性の向上効果は高いもののフィルムの機械特性に劣る傾向にある。このような観点から、密度は、より好ましくは1.225〜1.26g/cm3、さらに好ましくは1.23〜1.25g/cm3である。
本発明における配向フィルム層の厚みは、厚すぎるために剛性が高くなりすぎて共振特性を奏さなくなってしまう傾向を考慮して、共振特性を奏する程度の厚さであれば特に限定されない。各層の厚みが1〜50μmであることが好ましい。共振特性の観点からは薄い方が好ましい。特に、積層数を増加させる際には、各層の厚さを薄くして、積層体全体としての厚さが厚くなりすぎないようにすることが好ましい。このような観点から、層Lおよび層Dの1層の厚みはそれぞれ独立に、好ましくは25μm以下、さらに好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。厚みが上記数値範囲にあると、共振特性の向上効果を高くすることができる。他方、取り扱い性や剛性の観点からは厚い方が好ましく、例えば2μm以上が好ましく、さらに好ましくは3μm以上である。
耐衝撃性改良剤
本発明における配向フィルム層は、耐衝撃性改良剤を、配向フィルム層の質量を基準として、0.1〜10質量%の範囲で含有させていることが好ましい。本発明における耐衝撃性改良剤とは、例えばポリ乳酸の耐衝撃性改良に用いることのできるものであれば特に制限されず、室温でゴム弾性を示すゴム状物質のことであり、例えば、下記の各種耐衝撃性改良剤などが挙げられる。
具体的な耐衝撃性改良剤としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、各種アクリルゴム、エチレン−アクリル酸共重合体およびそのアルカリ金属塩(いわゆるアイオノマー)、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(例えば、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酸変性エチレン−プロピレン共重合体、ジエンゴム(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン)、ジエンとビニル単量体との共重合体およびその水素添加物(例えば、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエンにスチレンをグラフト共重合せしめたもの、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体)、ポリイソブチレン、イソブチレンとブタジエンまたはイソプレンとの共重合体、天然ゴム、チオコールゴム、多硫化ゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、ポリエーテルゴム、エピクロロヒドリンゴム、ポリエステル系エラストマーまたはポリアミド系エラストマーなどが挙げることができる。さらに、各種の架橋度を有するものや、各種のミクロ構造、例えばシス構造、トランス構造などを有するもの、コア層とそれを覆う1以上のシェル層から構成される多層構造重合体なども使用することができる。また、本発明において、耐衝撃性改良剤としては、上記具体例に挙げた各種の(共)重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体またはグラフト共重合体などのいずれも用いることができる。さらに、これらの(共)重合体を製造するに際し、他のオレフィン類、ジエン類、芳香族ビニル化合物、アクリル酸、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルなどの単量体を共重合することも可能である。
これらの耐衝撃性改良剤の中でも、市販品としては、例えば、三菱レイヨン製“メタブレン”、カネカ製“カネエース”、ロームアンドハース製“パラロイド”、ガンツ化成製“スタフィロイド”またはクラレ製“パラフェイス”などを挙げることができ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。また、公知の方法としては、乳化重合法がより好ましい。製造方法としては、まず所望の単量体混合物を乳化重合させてコア粒子を作った後、他の単量体混合物をそのコア粒子の存在下において乳化重合させてコア粒子の周囲にシェル層を形成するコアシェル粒子を作る。さらに該粒子の存在下において他の単量体混合物を乳化重合させて別のシェル層を形成するコアシェル粒子を作る。このような反応を繰り返して所望のコア層とそれを覆う1以上のシェル層から構成される多層構造重合体を得る。各層の(共)重合体を形成させるための重合温度は、各層とも0〜120℃が好ましく、5〜90℃がより好ましい。
本発明で用いられる多層構造重合体としては、本発明の効果の点で、ガラス転移温度が0℃以下の構成成分を含むものであることがより好ましく、−30℃以下の構成成分を含むものであることがさらに好ましく、−40℃以下の構成成分を含むものであることが特に好ましい。なお、本発明において、上記ガラス転移温度は、示差走査熱量計を用い、昇温速度20℃/分で測定した値である。
本発明において、多層構造重合体の平均一次粒子径は、特に限定されるものではないが、本発明の効果の点で、10〜10000nmであることが好ましく、さらに、20〜1000nmであることがより好ましく、50〜700nmであることが特に好ましく、100〜500nmであることが最も好ましい。
本発明において、耐衝撃性改良剤の配合量は、本発明の効果の点で、配向フィルム層の質量を基準として、0.1〜10質量%の範囲であることが好ましい。下限未満では、後述の圧着などの処理をしたときに層間が剥離しやすくなることがある。他方、上限を超えると圧電特性が低下する。そのような観点から、好ましい耐衝撃性改良剤の配合量の下限は、0.5質量%、さらに1質量%であり、他方上限は、9質量%、さらに8質量%である。なお、このような耐衝撃性改良剤を配合させることで、圧電特性を低下させることなく、圧着後の剥離を抑制できる。理由は定かではないが、得られた配向ポリ乳酸フィルムの配向を低下させずに、柔軟性を付与でき、結果圧着時の圧力が均等に伝わり、圧電積層体の界面に局所的に剥離しやすい部分や局所的に強直に圧着している部分が存在しなくなったためではないかと推定される。
配向フィルム層の製造方法
以下、配向フィルム層の製造方法について、説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
押出工程
前述の方法により得られたポリ乳酸に、所望により前述の耐衝撃性改良剤、カルボキシル基封止剤、滑剤、その他の添加剤等を配合し、ポリ乳酸を、押出機において溶融し、ダイから冷却ドラム上に押し出す。なお、押出機に供給するポリ乳酸は、溶融時の分解を抑制するため、押出機供給前に乾燥処理を行い、水分含有量を100ppm以下程度にすることが好ましい。
押出機における樹脂温度は、ポリ乳酸が十分に流動性を有する温度、すなわち、ポリ乳酸の融点をTmとすると、(Tm+20)から(Tm+50)(℃)の範囲で実施されるが、ポリ乳酸が分解しない温度で溶融押し出しするのが好ましく、かかる温度としては、好ましくは200〜260℃、さらに好ましくは205〜240℃、特に好ましくは210〜235℃である。上記温度範囲であると流動斑が発生しにくい。
キャスティング工程
ダイから押し出した後、フィルムを冷却ドラムにキャスティングして未延伸フィルムを得る。その際、静電密着法により電極より静電荷を印加させることによって冷却ドラムに十分に密着させて冷却固化するのが好ましい。この時、静電荷を印加する電極はワイヤー状或いはナイフ状の形状のものが好適に使用される。該電極の表面物質は白金であることが好ましく、フィルムより昇華する不純物が電極表面に付着するのを抑制することができる。また、高温空気流を電極或いはその近傍に噴きつけ電極の温度を170〜350℃に保ち、電極上部に排気ノズルを設置することにより不純物の付着を防ぐこともできる。
延伸工程
前記で得られた未延伸フィルムは、一軸方向に延伸する。延伸方向は特に制限されないが、製膜方向、幅方向または製膜方向と幅方向に対して、それぞれ45度となるような斜め方向に延伸するのが好ましい。かかる延伸を行うには、未延伸フィルムを延伸可能な温度、例えばポリ乳酸のガラス転移点温度(Tg)℃以上(Tg+80)℃以下の温度に加熱して延伸する。
主配向方向の延伸倍率は、好ましくは3倍以上、より好ましくは3.5倍以上、さらに好ましくは4.0倍以上、特に好ましくは4.5倍以上である。延伸倍率を上記下限以上にすることによって変位量の向上効果を高くすることができる。一方、延伸倍率の上限は特に制限されないが、製膜性の点から10倍以下であることがこのましく、さらに8倍以下、特に7倍以下であることが好ましい。他方、主配向方向と直交する方向は、延伸を行う必要はないが、前述の破断強度の関係を満足する範囲で延伸を施してもよい。その場合の延伸倍率は1.5倍以下が好ましく、さらに1.3倍以下が好ましい。
熱処理工程
上記で得られた延伸フィルムは、熱処理することが好ましい。熱処理温度は、前述の延伸温度よりも高く、樹脂の融点(Tm)未満の温度で行えばよく、好ましくはガラス転移点温度(Tg+15)℃以上(Tm−10)℃以下で、圧電特性をより高くすることができる。熱処理温度が低い場合は、変位量の向上効果が低くなる傾向にあり、他方、高い場合は、フィルムの平面性や機械特性に劣る傾向にあり、また変位量の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、熱処理温度は、さらに好ましくは(Tg+20)℃以上(Tm−20)℃以下、特に好ましくは(Tg+30)℃以上(Tm−35)℃以下である。また、熱処理時間は、好ましくは1〜120秒、さらに好ましくは2〜60秒であり、変位量の向上効果を高くすることができる。
さらに本発明においては、熱処理工程において弛緩処理して、熱寸法安定性を調整することも可能である。
易接着処理
かくして得られた配向フィルム層は、所望により従来公知の方法で、例えば表面活性化処理、例えばプラズマ処理、アミン処理、コロナ処理を施すことも可能である。
なかでも、後述の導電層との密着性を向上し、圧電積層体の耐久性を高めるという観点から、配向フィルム層の少なくとも片面、好ましくは両面に、コロナ処理を施すことも好ましい。かかるコロナ処理の条件としては、例えば電極距離を5mmとした際に、好ましくは1〜20kV、さらに好ましくは5〜15kVの電圧で、好ましくは1〜60秒、さらに好ましくは5〜30秒、特に好ましくは10〜25秒行うとよい。また、かかる処理は大気中で行うことができる。
導電層
本発明における導電層は、電圧印加した際に圧電特性を示すことができる程度の導電性を有していれば、その種類は特に限定されないが、より好適に圧電特性および共振特性を示すことができるという観点から、金属または金属酸化物からなる層および導電性高分子からなる層であることが好ましい。
かかる金属または金属酸化物としては、特に限定はされないが、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属、または上記群より選択される少なくとも1種の金属の酸化物が好ましく用いられる。また、金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属、または上記群に示された他の金属の酸化物を含んでいてもよい。例えば、アルミニウム、金、酸化スズを含有する酸化インジウム、アンチモンを含有する酸化スズ等が好ましく用いられる。導電性高分子としては、ポリチオフェン系、ポリアニリン系、ポリピロール系が挙げられ、必要に応じて導電性や透明性を考慮した選定を行えば良い。例えば、ディスプレイパネルなどに使用する際には透明性に優れたポリチオフェン系、ポリアニリン系高分子が好ましく用いられる。
導電層の各層の厚さは特に制限されないが、その表面抵抗値が1×10Ω/□以下、好ましくは5×10Ω/□以下、さらに好ましくは1×10Ω/□以下となるような厚みを選択すればよく、例えば、厚さ10nm以上とするのが好ましい。さらに金属または金属酸化物からなる層の場合、導電性と、層形成のし易さの観点から、15〜35nmであることが好ましく、より好ましくは20〜30nmである。厚さが薄すぎると、表面抵抗値が高くなる傾向にあり、かつ連続被膜になり難くなる。他方、厚すぎると、品質過剰であり、また積層フィルムの形成が困難となったり、積層フィルムの層間の強度が弱くなったりする傾向にある。また、導電性高分子を用いた印刷などの場合、100〜5000nmであることが好ましく、より好ましくは200〜4000nmである。
ところで、導電層は、図1に示すように、配向フィルム層の全面に形成するのではなく、マージンを設ける。このマージンは端面に近い部位に設けることが振動板をより効率的に共振させる観点から好ましい。マージンを有する側においては電極と導電層とが短絡せず、マージンを有しない側においては電極と導電層とが短絡した構成となることが好ましい。このような構成とすることにより、配向フィルム層を挟んだ各導電層は、簡便に正負が互いに異なるように電極と短絡させることができる。
圧電積層体
すなわち、本発明における圧電積層体は、各導電層に挟まれた配向フィルム層が、電流を流した際に、伸縮方向が同方向になるように積層されていることが必要である。これは、圧電積層体の一部に、伸縮方向が異なる樹脂が存在すると、圧電特性が打ち消しあう状況となり、振動板を共振させる効果が損なわれるからである。このように圧電積層体中の配向フィルム層の伸縮方向を揃える方法は特に制限されないが、L−ポリ乳酸からなる配向フィルム層LとD−ポリ乳酸からなる配向フィルム層Dとを交互に積層した構成であることが、同様に製膜延伸した、すなわち主配向軸が同じ配向ポリ乳酸フィルムをそのまま交互に積層するだけでよいことから好ましい。これは、配向フィルム層Lと配向フィルム層Dとが、その厚み方向に逆の電荷を付加したとき、同方向に伸縮特性を示すからである。
一方、隣り合う配向フィルム層が、どちらも配向フィルム層Lまたは配向フィルム層Dである場合は、一方のフィルム層を固定し、他方のフィルム層は重ねる前に、裏返すことやフィルムの面方向に回転させるなどして、逆の電荷を与えた際に伸縮方向が揃うように合わせればよい。なお、ポリ乳酸を製膜して、生産性に優れるロールtoロールで積層しようとすると、前者の配向フィルム層Lと配向フィルム層Dとを交互に積層した構成が好ましいことは理解されるであろう。
そして、前述の配向フィルム層Lと配向フィルム層Dを用いる場合、図1〜3の符号5で示される導電層付きフィルム層Aを構成する配向フィルム層を配向フィルム層L、符号6で示される導電層付きフィルム層Bを構成する配向フィルム層を配向フィルム層Dとなるように積層すればよい。
また、配向フィルム層と導電層は、厚み1000nmを超える接着剤層を介さずに固着していることが、優れた共振特性を発現させやすいことから好ましい。かかる観点から、本発明においては、配向フィルム層と導電層は、厚み500nmを超える接着剤層を介さずに固着している態様が好ましく、厚み200nmを超える接着剤層を介さずに固着している態様がさらに好ましい。共振特性の観点から、最も好ましいのは、接着剤層を介さずに配向フィルム層と導電層とが固着している態様である。
本発明においては、上記のような積層構成を有していれば、本発明の目的を阻害しない範囲において、さらにその他の層を有していても良い。例えば、圧電積層体の表面に、積層体の剛性を高めるための、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのような芳香族ポリエステル層を有することができる。一方、共振特性の観点からは、このような層は、その厚みが薄いことが好ましく、有しないことが特に好ましい。
なお、本発明における圧電積層体の形状は、取扱いや目的の方向に高い圧電特性を付与するように設計しやすいことから、テープ状であることが好ましい。
積層数
本発明における圧電積層体は、配向フィルム層の合計層数は3以上であることが好ましい。このような態様とすることで優れた共振特性が得られる。共振特性の観点からは、合計層数は多い程好ましく、好ましくは5以上、さらに好ましくは6以上である。
一方、上限は特に制限されない。なお、数万オーダーの合計総数とするには、例えば巻回コンデンサーのごとく製造すればよい。
また、本発明における圧電積層体は、少なくとも一方の表面には導電層が存在し、本発明の効果の点、すなわち振動板をより効率的に共振させる点からは、全ての配向フィルム層が圧電特性を同様に発現することが好ましく、図6に示したように導電層が圧電積層体の両表面に配置されていることが振動板に効率的に振動を伝搬できることから好ましい。すなわち、配向フィルム層の層数をnとしたとき、導電層の層数はn+1であることが好ましい。
共振特性
本発明における圧電積層体は、圧電特性を有し、ある周波数の電圧を印加することにより振動するものであるが、とりわけPVDFに比べて圧電特性が一方向に揃う配向ポリ乳酸フィルムを選択し、かつそれを積層することで、極めて圧電特性に優れ、大きな運動量(力)を発生させることもできる。
主配向方向
本発明において、圧電積層体は、各配向フィルム層の電荷を付加したときのもっとも伸縮の大きい方向が、圧電積層体の厚み方向からみたとき、10度以下の範囲で揃っていることが好ましい。このような態様とすることによって、共振特性の向上効果を高くすることができる。このような観点から、上記成す角は、より好ましくは5度以下、さらに好ましくは3度以下、特に好ましくは1度以下であり、理想的には0度である。上記のような主配向方向の態様とするには、サンプリング時に同方向でサンプリングしたり、積層時に同方向となるように積層したりすればよい。
圧電積層体の製造方法
本発明における圧電積層体は、例えば配向フィルム層が、前述の配向フィルム層Lと配向フィルム層Dを交互に積層する場合、それぞれ別々に形成し、得られた各層の表面に導電層を設けて、層Lと層Dとが交互に、かつ層Lと層Dの間、および得られる圧電積層体の少なくとも一方の表面、好ましくは圧電積層体の両表面に導電層を有する構成となるように積層して固着することにより得ることができる。
また、本発明における圧電積層体が、例えば配向フィルム層Lまたは配向フィルム層Dのいずれかだけである場合は、2つの配向フィルム層L(D)を用意し、一方は表面側に導電層を設け、他方は裏面側や向きを変えて導電層を設け、それぞれ別々に形成し、得られた各層の表面に導電層を設けて、層Lと層Dとが交互に、かつ層Lと層Dの間、および得られる圧電積層体の少なくとも一方の表面、好ましくは圧電積層体の両表面に導電層を有する構成となるように積層して固着することにより得ることができる。
上記により得られた配向フィルム層Lおよび配向フィルム層Dの表面に、導電層を形成する方法は、従来公知の導電層の形成方法であれば特に限定されないが、優れた導電性を有する導電層を均一に、容易に得ることができるという観点から、蒸着法またはスパッタリング法を採用することが好ましい。
また、導電層、配向フィルムの両面に形成してもよいが、密着性の観点からは、片面のみに導電層を形成し、それらを圧着することが好ましい。
熱ラミネート工程
上記により得られた導電層を有する配向フィルムを、本発明が規定する積層構成となるように積層して積層体を作成し、熱ラミネートにより固着する。ここで熱ラミネートは、接着剤層を用いずに行うことが好ましい。また、前述の耐衝撃性改良剤を含有させることにより、より圧着性を高めることができる。
かかる熱ラミネートにおける温度条件は、(Tg−5)〜(Tsm+20)℃とすることが好ましい。ここでTgは、積層体の形成に用いる配向フィルム層Lを構成する樹脂Lのガラス転移温度および配向フィルムDを構成する樹脂Dのガラス転移温度のうち、最も高いガラス転移温度を示す。また、Tsmは、積層体の形成に用いる配向フィルムLのサブピーク温度および配向フィルムDのサブピーク温度のうち、最も低いサブピーク温度を示す。なお、サブピーク温度とは、フィルム製造プロセスにおける熱固定温度に起因する温度であるである。上記温度条件を採用することにより、優れた共振特性を奏する圧電積層体を得ることができる。また、同時に、積層体の各層の密着性に優れる。温度が低すぎると密着性に劣る傾向にあり、他方高すぎると配向が崩れてしまい共振特性に劣る傾向にある。このような観点より、さらに好ましい温度条件は(Tg)〜(Tsm+15)℃であり、特に好ましくは(Tg+10)〜(Tsm+10)℃である。
また、圧力条件は、十分な圧着ができ、かつ配向ポリ乳酸フィルムの配向が崩れない条件であれば特に制限されず、例えば1〜100MPaとすることが好ましい。これにより優れた共振特性を有しながら、密着性に優れた積層体を得ることができる。圧力が低すぎると密着性に劣る傾向にあり、他方高すぎると共振特性に劣る傾向にある。このような観点より、さらに好ましい圧力条件は2〜80MPaであり、特に好ましくは2〜50MPaである。
以上のような温度条件および圧力条件において、10〜600秒の熱ラミネートを行うことが好ましい。これにより優れた共振特性を有しながら、密着性に優れた積層体を得ることができる。時間が短すぎると密着性に劣る傾向にあり、他方長すぎると共振特性に劣る傾向にある。このような観点より、さらに好ましい時間条件は30〜300秒であり、特に好ましくは60〜180秒である。
ところで、圧電積層体を効率よくロールtoロールで製造するには、配向フィルム層Lと配向フィルム層Dとをそれぞれ製膜してロール巻き取り、それぞれの配向フィルム層の幅方向の一部に、導電層を製膜方向に沿って形成する。そして、導電層を有する配向フィルム層Lと導電層を有する配向フィルム層Dとを製膜方向に沿ってスリットしつつ重ね合せ、所望のサイズにカットするのが好ましい。
固定具または振動板
本発明における固定具(12)は把持具の位置を固定できるものであれば特に制限はされない。また、把持具(13)と一体となっていてもよい。なお、固定具(12)として振動を伝搬できる振動板(12)を用いる場合、そのヤング率は圧電振動体よりやや硬いことが、より振動板を共振させやすいことから、3GPa以上が好ましい。また、把持具を接着剤などで固着させる場合、接着性が良いものが好ましい。また、透明性を有することでタッチパネルや携帯電話などディスプレイ上への配置を可能にすることから、全光線透過率は85%以上が好ましい。以上の観点から、振動板の材質としては、上記特性を有する素材であれば特に限定されるのもではなく、有機素材、無機素材のどちらか、もしくは組み合わせであっても構わない。中でも振動板としての取り扱い性の容易さから有機高分子素材であることが好ましく、PLA(ポリ乳酸)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PS(ポリスチレン)、PC(ポリカーボネート)、COC(シクロオレフィンコポリマー)、PMMA(ポリメタクリル酸)が好ましく、さらにPLA、PET、PENが好ましい。
また、振動板の形状は共振させたい周波数によって適宜選択すればよい。例えば共振させたい波長が一つであれば円形でよく、複数の周波数域で共振させたい場合は、それに応じた多角形にすればよい。
また、厚みは圧電積層体と同程度の厚みが好ましい。用いる材質にもよるが、ポリエステルなどのプラスチックフィルムの場合、3〜1500μmの範囲が好ましく、さらに25〜1000μmの範囲が好ましい。
電極
本発明における圧電積層体は、前述の通り、各導電層を介して隣り合う配向フィルム層に逆方向の電界がかかるように電極に短絡される。電極としては特に制限されずそれ自体公知のものを採用でき、例えばアルミニウム、金、銀、銅が例示でき、これらの中でも、価格や取扱いの容易さからから、銀ペーストが好ましい。また、一般的に用いられるメタリコンを用いてもよく、更にはもっと簡便に各積層体を金属で貫通させて短絡させるような手段を用いてもよい。
圧電振動体
本発明の圧電振動体は、前述の構成を採用しており、応力が付加された状態で両端が把持具で固定され、中央部は固定されていないので、優れた圧電特性を発現する。
ところで、本発明の圧電振動体において、圧電積層体と把持具とは、前述の通り、接着剤で固着されていてもよい。固着方法は、特に制限されず、圧電積層体(11)の振動を、例えば振動板(12)に伝えられるように両者を固定できるものであれば特に制限されず、例えば接着剤を用いた接合でも、圧電積層体と振動板を圧着する方法でもよい。この圧着の場合、振動板が把持具も兼ねているといえる。
接着剤を用いる場合は、使用する環境で剥離することがなく、かつ圧電積層体の振動を効率よく振動板に伝えられ、本目的を損なわない接着剤であれば特に制限するものではなく、中でも汎用性や取扱い易さの観点からエポキシ系接着剤が好ましい。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定を受けるものではない。各層の物性、圧電スピーカーの評価は以下の方法で行った。
(1)各層の物性
積層体の端部をしごく等して切欠をつくり、各層を剥離し各層の物性を評価した。
(1−1)主配向方向
エリプソメーター(型式M−220;日本分光)を用い、得られたフィルムを550nm単色光の入射角度を変化させた透過光測定に供し、フィルムを固定した試料台を、光軸を中心に光軸に対して垂直な面内にて回転させて、面内方向の最も屈折率の高い方向を求め、その方向を主配向軸とした。
(1−2)ヤング率
フィルムを150mm長×10mm幅に切り出した試験片を用い、オリエンテック社製テンシロンUCT−100型を用いてヤング率を求めた。なお、測定は温度23℃、湿度65%RHに調節された室内において、チャック間100mmになるようサンプルを装着し、JIS−C2151に従って引張速度10mm/minの条件で行った。得られた荷重−伸び曲線の立ち上り部接線の傾きよりヤング率を計算した。
(1−3)全光線透過率
JIS K7361に準じ、日本電色工業社製のヘーズ測定器(NDH−2000)を使用してフィルムの全光線透過率(単位:%)を測定した。
(1−4)表面抵抗率
三菱化学社製、商品名:Lorester MCP−T600を用いて、JIS K7194に準拠して測定した。測定は、1つのフィルムから3つの測定用サンプル片を採取し、それぞれ任意の5箇所について実施し、それらの平均値を表面抵抗率(単位:Ω/□)とした。
(2)圧電スピーカーの評価方法
圧電スピーカーの評価は以下の方法で行った。図14〜図23に示すように、圧電スピーカーの正極と負極とを、交直両用高圧アンプリファイヤ(TREK Inc.社製、商品名:ピエゾドライバ用電源 PZP350)に連結し、電圧200Vp−p、電流200mAの交流電流を流し、周波数30Hz−20kHzの範囲での最大値の音量を測定した。なお、測定は騒音計(小野測器社製、商品名:高機能型騒音計 LA−2560)を用い、圧
電スピーカーから前方に3cm離れた場所で行った。音量が大きいほど、圧電スピーカーとして効率が良いことを示す。
合成例1:ポリL−乳酸(PLLA)の合成
真空配管、窒素ガス配管、触媒添加配管、L−ラクチド溶液添加配管、アルコール開始剤添加配管を具備したフルゾーン翼具備縦型攪拌槽(40L)を窒素置換した。その後、L−ラクチド30Kg、ステアリルアルコール0.90kg(0.030モル/kg)、オクチル酸スズ6.14g(5.05×10−4モル/1kg)を仕込み、窒素圧106.4kPaの雰囲気下、150℃に昇温した。内容物が溶解した時点で、攪拌を開始、内温をさらに190℃に昇温した。内温が180℃を超えると反応が始まるため、冷却しながら内温を185℃から190℃に保持し1時間反応を継続した。さらに攪拌しつつ、窒素圧106.4kPa、内温200℃から210℃で1時間反応を行なった後、攪拌を停止しリン系の触媒失活剤を添加した。
さらに20分間静置して気泡除去をおこなった後、内圧を窒素圧で2気圧から3気圧に昇圧し、プレポリマーをチップカッターに押し出し、重量平均分子量13万、分子量分散1.8のプレポリマーをペレット化した。
さらに、ペレットを押出機で溶解させ、無軸籠型反応装置に15kg/hrで投入し、10.13kPaに減圧して残留するラクチドを低減処理し、それを再度チップ化した。得られたポリL−乳酸(PLLA)は、ガラス転移点温度(Tg)55℃、融点(Tm)175℃、重量平均分子量12万、分子量分散1.8、ラクチド含有量0.005質量%であった。
合成例2:ポリD−乳酸(PDLA)の合成
また、L−ラクチドの代わりにD−ラクチドを使用する以外は合成例1と同様にして、ガラス転移点温度(Tg)55℃、融点(Tm)175℃、重量平均分子量12万、分子量分散1.8、ラクチド含有量0.005質量%のポリD−乳酸(PDLA)を得た。
参考例L1:配向フィルムL1の製造
合成例1で得られたPLLAを、乾燥機を用いて十分に乾燥させた後、ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社社製、コアシェル構造体(パラロイドTMBPM−500)を5質量%添加し、押出機に投入し、220℃で溶融し、溶融樹脂をダイより押し出して単層のシート状に成形し、かかるシートを表面温度20℃の冷却ドラムで冷却固化して未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを、75℃に加熱したロール群に導き、縦方向に1.1倍に延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き、75℃に加熱された雰囲気中で横方向に4.0倍に延伸した。その後テンター内で110℃の温度条件で30秒間の熱処理を行い、均一に徐冷して室温まで冷やして7μm厚みの二軸配向ポリL−乳酸単層フィルム(配向フィルムL1)を得た。主配向方向は延伸を施した横方向であった。なお、後述の導電層を形成する側の表面に、カスガ製、高周波電源CG−102型を用いて、電圧10kV、処理時間20秒の条件でコロナ処理を施した。
参考例D1:配向フィルムD1の製造
合成例2で得られたPDLAを用いて、参考例L1と同様にして、7μm厚みの二軸配向ポリD−乳酸単層フィルム(配向フィルムD1)を得た。主配向方向は延伸を施した横方向であった。なお、後述の導電層を形成する側の表面に、カスガ製、高周波電源CG−102型を用いて、電圧10kV、処理時間20秒の条件でコロナ処理を施した。
実施例1
本発明の好ましい第1の態様について、図面に基づいて、具体的に説明する。
切り出し
まず、参考例L1で得られた配向フィルムL1および参考例D1で得られた配向フィルムD1を、それぞれ横方向に延伸したときの延伸方向が長辺に対して45度の角度となるように3cm×7cmで切り出した。
導電層の形成
次いで、図1に示すように片方の短辺から1cmの領域(3cm×1cmの領域)をマージンとしてマスキングし、蒸着しない箇所を残した上で、残りの領域(3cm×6cmの領域)に表面抵抗値が10Ω/□となるような厚みでアルミ蒸着を施した。なおマージンの位置は配向フィルムL1と配向フィルムD1とで、それぞれ反対側の短辺においてマージンを作成した。
積層
得られた蒸着した配向フィルムL1と配向フィルムD1とを交互に各10枚、合計20枚を積層した。そして、110℃20MPaの圧力下で、3分間熱圧着を施し、圧電積層体とした。
電極
得られた積層体の両方の短辺に、導電性接着剤(日新EM社製、シルベストP255)を塗布して電極(符号10)を形成し、圧電積層体(11)を作成した。これにより、各アルミ蒸着層において、マージンを有する側においてはかかる導電性接着剤とアルミ蒸着層とが短絡せず、マージンを有しない側においてはかかる導電性接着剤とアルミ蒸着層とが短絡した構成となる。
組立
ステレオコンプレックスポリ乳酸フィルム(帝人株式会社製、商標名:バイオフロント
厚み700μm、ヤング率3GPa、全光線透過率93%)を用意し、これを長さ10.5cm、幅13.0cmに切り出し、振動板(12)とした。また同じステレオコンプレックスポリ乳酸フィルムを長さ5cm、幅2cmに4枚切り出し、それぞれの一方の面にエポキシ樹脂系接着剤(Huntsman Advanced Materials社製、商品名:アラルダイト スタンダード)を塗布したものを把持具用部材として準備した。
そして、上記作成した圧電積層体(11)の電極(10)に導線(14)をつなげ、図15および図16に示すように、圧電積層体(11)の電極(10)のついた両端部に、エポキシ樹脂系接着剤が塗布された面が向かい合うように2枚の把持具用部材で挟み、圧電積層体(11)の長手方向の両端に把持具(13)を固着した。
そして、前記振動板(12)を水平に置き、その中央の上向きの面に、圧電積層体の把持具(13)の底面を前記エポキシ樹脂系接着剤で固着した。その際、振動板(12)の長手方向と圧電積層体(11)の長手方向とが平行になるように、また、2つある把持具の一方をまず接着剤で固着し、圧電積層体に伸張応力をかけた状態でもう一方の把持具(13)を同様に固着した。なお、伸張応力のかけ方は、固着されていない把持具に紐をつけ、その紐の先を振動板の端から鉛直方向に垂らし、その垂らされた紐に重さ50gの荷重をかけることで付与した。
なお、それぞれの把持具(13)は、圧電積層体と5cm×0.5cmの領域で接着されており、残りの部分は把持具用部材同士が接着されている。すなわち、把持具から0.5cmマージンの部分がはみ出した構造になっている。
圧電スピーカーとしての特性
上記のようにして得られた圧電振動体について、正極と負極とを、交直両用高圧アンプリファイヤ(TREK Inc.社製、商品名:ピエゾドライバ用電源 PZP350)に連結し、電圧200Vp−p、電流200mAの交流電流を流し、圧電スピーカーの評価方法の通り音量を測定したところ、102dBであった。なお、測定は圧電振動体から前方に3cm離れた場所で行った。
なお、積層数を20枚から10枚に減らすと、94dBになり、他方積層数を40枚に増やすと112dBになった。また、切り出しサイズを3cm×7cmから5cm×5cmと3cm×14cmにそれぞれ変更すると、105dBと108dBとになった。
また、把持具を固着する際の荷重を50gから35gに減らした場合は103dBに、また50gから65gに増やした場合は98dBになった。
振動発生装置としての特性
上記のようにして得られた圧電振動体について、正極と負極とを、交直両用高圧アンプリファイヤ(TREK Inc.社製、商品名:ピエゾドライバ用電源 PZP350)に連結し、電圧300Vp−p、電流200mAの交流電流を周波数120Hzで流した。
そして、振動板に手を触れると、振動を強く感じることができた。
なお、積層数を20枚から10枚に減らすと、振動は弱まり、他方積層数を40枚に増やすとより強く感じられた。また、切り出しサイズを3cm×7cmから5cm×5cmと3cm×14cmにそれぞれ変更すると、前者は同程度、後者はより強く感じられた。
また、把持具を固着する際の荷重を50gから35gに減らした場合は振動が弱まり、また50gから65gに増やした場合は振動がより強く感じられた。
また、振動板および把持具として、ステレオコンプレックスポリ乳酸フィルムの代わりに、ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムフィルム(帝人デュポン株式会社製、商標名:テオネックスQ65 厚み700μm、ヤング率6GPa、全光線透過率88%)とポリエチレン−テレフタレートフィルム(帝人デュポン株式会社製、商標名:テトロンG2 厚み700μm、ヤング率4GPa、全光線透過率85%)を用いたが、同様に優れた音量および振動が発現された。
実施例2
本発明の好ましい第2の態様について、図面に基づいて、具体的に説明する。
まず、実施例1と同様にして圧電振動体を作成した。
組立
ステレオコンプレックスポリ乳酸フィルム(帝人株式会社製、商標名:バイオフロント
厚み200μm、ヤング率3GPa、全光線透過率95%)を用意し、これを長さ18.5cm、幅26.4cmに切り出し、振動板とした。また同じステレオコンプレックスポリ乳酸フィルムを長さ7.5cm、幅0.5cmに4枚切り出し、それぞれの一方の面にエポキシ樹脂系接着剤(Huntsman Advanced Materials社製、商品名:アラルダイト スタンダード)を塗布したものを把持具用部材として準備した。
そして、上記作成した圧電積層体(11)の電極(10)に導線(14)をつなげ、図18および図19に示すように、圧電構造体の電極のついていない両端部の中央に、エポキシ樹脂系接着剤が塗布された面が向かい合うように2枚の把持具用部材で挟み、圧電積層体(11)の長手方向に沿って把持具(13)を固着した。
そして、前記振動板(12)を水平に置き、その中央の上向きの面に、圧電積層体の把持具(13)の底面を前記エポキシ樹脂系接着剤で固着した。その際、振動板の長手方向と圧電積層体の長手方向とが平行になるようにした。また、2つある把持具の一方をまず接着剤で固着し、圧電積層体(11)に圧縮応力をかけた状態でもう一方の把持具を同様に固着した。なお、圧縮応力のかけ方は、把持具間の圧電積層体の幅が2.5cmであるのに対し、固着した際の把持具間の間隔をそれよりも狭い2.3cmとし、圧電積層体(11)を上方に凸の形で湾曲させることで付与した。
なお、それぞれの把持具(13)は、圧電積層体と7cm×0.25cmの領域で接着されており、残りの部分は把持具用部材同士が接着されている。
圧電スピーカーとしての特性
上記のようにして得られた圧電振動体について、正極と負極とを、交直両用高圧アンプリファイヤ(TREK Inc.社製、商品名:ピエゾドライバ用電源 PZP350)に連結し、電圧200Vp−p、電流200mAの交流電流を流し、圧電スピーカーの評価
方法の通り音量を測定したところ、106dBであった。なお、測定は圧電振動体から前方に3cm離れた場所で行った。
なお、積層数を20枚から10枚に減らすと、100dBになり、他方積層数を40枚に増やすと116dBになった。また、切り出しサイズを3cm×7cmから5cm×5cmと3cm×14cmにそれぞれ変更すると、110dBと108dBとになった。
また、把持具(13)を固着する際の把持具間の間隔を2.3cmから2.1cmに減らした場合は107dBに、また2.3cmから2.4cmに増やした場合は99dBになった。
振動発生装置としての特性
上記のようにして得られた圧電振動体(11)について、正極と負極とを、交直両用高圧アンプリファイヤ(TREK Inc.社製、商品名:ピエゾドライバ用電源 PZP350)に連結し、電圧300Vp−p、電流200mAの交流電流を周波数120Hzで流した。そして、振動板(12)に手を触れると、振動を実施例1ほどではないが感じることができた。
なお、積層数を20枚から10枚に減らすと、振動は弱まり、他方積層数を40枚に増やすとより強く感じられた。また、切り出しサイズを3cm×7cmから5cm×5cmと3cm×14cmにそれぞれ変更すると、前者は弱まり、後者はより強く感じられた。
また、把持具(13)を固着する際の把持具間の間隔を2.3cmから2.1cmに減らした場合は振動が弱まり、また2.3cmから2.4cmに増やした場合は振動がより強く感じられた。
また、振動板(12)および把持具として、ステレオコンプレックスポリ乳酸フィルムの代わりに、ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムフィルム(帝人デュポン株式会社製、商標名:テオネックスQ65 厚み200μm、ヤング率6GPa、全光線透過率89%)とポリエチレン−テレフタレートフィルム(帝人デュポン株式会社製、商標名:テトロンG2 厚み200μm、ヤング率4GPa、全光線透過率87%)を用いたが、同様に優れた音量および振動が発現された。
実施例3
本発明の好ましい第2の態様の別の態様について、図面に基づいて、具体的に説明する。まず、実施例2と同様にして把持具のついた圧電積層体(11)を作成した。そして、図22および図23に示すように、把持具(13)の長手方向の中央部に符号12で示す固定具が通る穴を設けた。そして、固定具(12)として、長さ10cm、幅2cmで厚さ0.5mmのアルミニウム板を用意し、これを長さ方向の端から4cmの位置で80°に折り曲げ、図22に示すような上側が開いたコの字状に成形したものを用意した。そして、図22に示すように、前記把持具の穴に、コの字状に成形した固定具を通し、把持具間の圧電積層体の幅が2.5cmであるのに対し、固定具に通した把持具間の間隔がそれよりも狭い2.3cmの位置で、固定具に固定し、圧電積層体を上方に凸の形で湾曲させた。
なお、それぞれの把持具は、圧電積層体と7cm×0.25cmの領域で接着されており、残りの部分は把持具用部材同士が接着されている。
圧電スピーカーとしての特性
上記のようにして得られた圧電振動体について、正極と負極とを、交直両用高圧アンプリファイヤ(TREK Inc.社製、商品名:ピエゾドライバ用電源 PZP350)に連結し、電圧200Vp−p、電流200mAの交流電流を流し、圧電スピーカーの評価
方法の通り音量を測定したところ、113dBであった。なお、測定は圧電振動体から前方に3cm離れた場所で行った。
なお、積層数を20枚から10枚に減らすと、108dBになり、他方積層数を40枚に増やすと120dBになった。また、切り出しサイズを3cm×7cmから5cm×5cmと3cm×14cmにそれぞれ変更すると、115dBと117dBとになった。
また、把持具(13)を固着する際の把持具間の間隔を2.3cmから2.1cmに減らした場合は116dBに、また2.3cmから2.4cmに増やした場合は110dBになった。
また、100dBを得られる音量範囲が、実施例2圧電振動体は4800Hz〜9100Hzであるのに対し、上記実施例3圧電振動体は1800Hz〜8600Hzである。そのため、実施例3圧電振動体は圧電スピーカーとして対応可能な音域が広いという点で非常に好適な様態である。
本発明の圧電振動体は、圧電スピーカーや信号入力装置などの振動発生装置として好適に使用することができる。
1 配向フィルム層A
2 配向フィルム層B
3 導電層A
4 導電層B
5 導電層付きフィルム層A
6 導電層付きフィルム層B
7 圧電積層体における平行表面
8 圧電積層体における長手方向に平行な端面
9 圧電積層体における長手方向に平行ではない端面
10 電極
11 圧電積層体
12 固定具または振動板
13 把持具
14 導線
15 アンプ
16 信号入力装置
a 配向フィルム層における主配向方向
b 配向フィルム層における圧電歪による面内変位が最も大きい方向
x 配向フィルム層の長手方向
y 配向フィルム層の厚み方向と長手方向に直交する方向
z 配向フィルム層の厚み方向であり、圧電積層体の積層方向
本発明は、ポリ乳酸からなる配向フィルム層を用いた圧電振動体に関する。
特許文献1には、透明圧電フィルムスピーカーを携帯電話の表示面に湾曲させて設置し、音を広い範囲から出力して、スピーカーからの聞き取り性能を向上させたものが開示されている。そして、具体的に開示されているのは長方形のPVDF(ポリビニルフッ化ビニリデン)のフィルムを、厚み方向の一方の表層側と他方の表層側とを、電荷を付加したときに、逆向きの伸縮挙動を示す、いわゆるバイモルフ構造で積層し、その2つの短辺を固定して、フィルムを湾曲させる振動によって音を出す方法が提案されている。
また特許文献2には、高分子圧電シートに主面に沿った方向に有効電極部分を設け、その有効電極部分を分割して隣り合う有効電極部分に当該圧電シートの厚み方向に生じる電界ベクトルが互いに逆向きになるように、電荷を印加することで、四角形の圧電シートの4辺を固定しても、圧電シートが湾曲して音を出力できる圧電スピーカーが提案されている。また、圧電シートを構成する高分子として、キラル高分子であるL−ポリ乳酸が提案されている。
さらに本発明者らは、ポリL−乳酸やポリD−乳酸からなる層を積層することで変位する力を大きくできることを特許文献3や特許文献4で提案している。
ところで圧電体を振動板に貼り付けて音を出すには、圧電体の伸縮変位によって振動板に反りを発生させ、曲げ振動で音を出す方式と、圧電体が面内で伸縮することで、張り合わせた振動板に面内振動を発生させ、その共振により音を出す方式とがある。そして、PZTなど圧電セラミックスに比べ、高分子からなる圧電体は圧電率が低く、その力も弱いため、硬い振動板を共振させるのには適しておらず、前述の特許文献1と2のように、圧電体の曲げ振動による方式が用いられてきた。
特開2003−244792号公報 国際公開第2009/50236号パンフレット 特開2011−243606号公報 特開2011−153023号公報
本発明の目的は、電圧印加時に効果的に音波を発し、ハプティクス感と呼ばれる振動を瞬時に発現できる圧電振動体を提供することにある。
本発明は、ポリ乳酸からなる配向フィルム層と導電層とが交互に積層された圧電積層体と、その両端部を把持する把持具とからなる圧電振動体であって、
(i)圧電積層体は、配向フィルム層を介して隣り合う導電層は一方は負極に他方は正極に短絡しており、電流を流した際に、各導電層に挟まれた配向フィルム層は、伸縮方向が同方向になるように積層され、
(ii)圧電積層体は、配向フィルム層の面方向と平行な2つの平行表面と、それら平行表面に挟まれ、互いに平行な2つの端面AおよびBとを有し、
(iii)前記把持される両端部がそれぞれ端面Aと端面Bを含み、かつ把持具によって端面AとBの間の圧電積層体に応力が付加されている圧電振動体である。
また、本発明の圧電振動体の好ましい態様は、圧電積層体の形状がテープ状である圧電振動体、両端部を把持する把持具が振動板に固定されており、把持具によって圧電積層体に付加される応力が、伸張応力である圧電振動体1、前記端面AおよびBが、圧電積層体の長手方向の両端に位置する圧電振動体1、把持具によって圧電積層体に付加される応力が、圧縮応力である圧電振動体2、またその両端部に位置する把持具の位置が固定されている圧電振動体2や両端部に位置する把持具の位置が、圧電積層体の伸縮に合わせて可動する圧電振動体2、そして端面AおよびBが、圧電積層体の長手方向に平行な両端に位置する圧電振動体2、圧電積層体は、配向フィルム層の層数が3以上である圧電振動体、各配向フィルム層の厚みがそれぞれ25μm以下である圧電振動体、各配向フィルム層が、ポリL−乳酸を主たる成分とする樹脂Lからなる配向フィルム層LおよびポリD−乳酸を主たる成分とする樹脂Dからなる配向フィルム層Dからなる群より選ばれる少なくとも1種である圧電振動体、圧電積層体の最大伸縮方向が、端面AおよびBと平行または直交する方向である圧電振動体、導電層の表面固有抵抗が1×10Ω/□以下である圧電振動体、そして、圧電スピーカーまたは信号入力装置に用いられる圧電振動体の少なくともいずれかを具備する圧電振動体である。
本発明の圧電振動体は、配向フィルム層を、導電層を介して複数積層し、かつ電荷を掛けたときに各配向フィルム層の伸縮が同方向になるように積層して圧電積層体を形成し、かつ、圧電積層体の両端部にある把持具で圧電積層体に応力を付加させたものである。その結果、本発明の圧電振動体は、圧電積層体の振動を効率的に音波に変え、ハプティクス感と呼ばれる振動として伝えることができる。
本発明で使用する導電層付きフィルム層A(5)と導電層付きフィルム層B(6)の一例の斜視図である。 本発明で使用する導電層付きフィルム層A(5)と導電層付きフィルム層B(6)を複数積層するときの斜視図である。 図2の積層によって得られる圧電積層体の斜視図である。 図3の圧電積層体のそれぞれの面を示した概略図である。 図3の圧電積層体に電極(10)を付与したときの斜視図である。 図5の圧電積層体をy方向から見たときの平面図である。 長方形の配向フィルム層に電流を流した時の変形を示す平面図である。 長方形の配向フィルム層に電流を流した時の変形を示す他の平面図である。 長方形の配向フィルム層に電流を流した時の変形を示す他の平面図である。 本発明で使用する圧電積層体の他の好ましい態様を示す斜視図である。 本発明で使用する圧電積層体の他の好ましい態様を示す斜視図である。 本発明で使用する圧電積層体の他の好ましい態様を示す斜視図である。 本発明で使用する圧電積層体の他の好ましい態様を示す斜視図である。 本発明の圧電振動体を正面からみた平面図である。 本発明の圧電振動体を上面からみた平面図である。 本発明の圧電振動体の他の好ましい態様を、正面からみた平面図である。 本発明の圧電振動体の他の好ましい態様を、上面からみた平面図である。 本発明の圧電振動体の他の好ましい態様を、正面からみた平面図である。 本発明の圧電振動体の他の好ましい態様を、上面からみた平面図である。 本発明の圧電振動体の他の好ましい態様を、正面からみた平面図である。 本発明の圧電振動体の他の好ましい態様を、上面からみた平面図である。 本発明の圧電振動体の他の好ましい態様を、正面からみた平面図である。 本発明の圧電振動体の他の好ましい態様を、上面からみた平面図である。 圧電積層体の把持方法を示す例である。 圧電積層体の把持方法を示す例である。 圧電積層体の把持方法を示す例である。 圧電積層体の把持方法を示す例である。
本発明における圧電積層体および本発明の圧電振動体について、まず図を用いて説明する。
図1は、本発明で使用する導電層付きフィルム層Aと導電層付きフィルム層Bの一例の斜視図である。図1中の符号1は配向フィルム層A、符号2は配向フィルム層B、符号3は導電層A、符号4は導電層B、符号5は左側に導電層のないマージンを有する導電層付きフィルム層A、符号6は右側に導電層のないマージンを有する導電層付きフィルム層Bである。
図2は、本発明で使用する導電層付きフィルム層Aと導電層付きフィルム層Bを複数積層するときの斜視図である。図2では、図1で示した導電層付きフィルム層Aと導電層付きフィルム層Bとを交互に、かつ導電層が交互に一方の端には存在しつつ、他方の端には存在しないように積層することを示している。
図3は、図2の積層によって得られる圧電積層体(符号11)の斜視図である。導電層と配向フィルム層が交互に、かつ配向フィルム層を介して隣り合う導電層は、一方は負極に、他方は正極に短絡できるように積層されている。このような積層とすることで、隣り合う配向フィルム層に、その厚み方向に逆の電荷を付加することができる。そのため、各導電層に挟まれた配向フィルム層は、電流を流した際に、伸縮方向が同方向になるように積層されていることが必要である。圧電積層体の一部に、伸縮方向が異なる樹脂が存在すると、圧電特性が打ち消しあう状況となり、振動板を共振させる効果が損なわれる。このように圧電積層体中の配向フィルム層の伸縮方向を揃える方法は、特に制限されないが、後述の通り、配向フィルム層AをポリL乳酸からなるフィルム層、配向フィルム層BをポリD乳酸からなるフィルム層とするのが簡便で効率的である。
図4は、図3の圧電積層体のそれぞれの面を示した概略図である。図4中の符号7は圧電積層体の積層方向に位置し、配向フィルム層の面方向に平行な2つの面であり、本発明では圧電積層体における平行表面と以下称する。そして、この平行表面が、従来の圧電スピーカーでは振動板に貼り付けて振動を付与する面であった。図4中の符号8と9は、上記平行表面に挟まれた面であり、本発明では以下、端面と称する。また、その端面の中でも、符号8は圧電積層体における長手方向に平行な端面であり、符号9は圧電積層体における長手方向に平行ではない端面である。そして、向かい合う端面を端面Aと端面Bとそれぞれ称する。そのため、図4において、端面Aが符号8で示された面である場合、底面が端面Bと以下称する。
図5は、図3の圧電積層体(11)に電極(10)を付与したときの斜視図である。符号10は例えば陰極(または正極)に短絡させるための電極である。このような電極は、隣り合う導電層を短絡させずに、交互に正極と陰極に短絡できるものであれば制限されず、例えば後述の銀ペーストなどが挙げられる。もちろん、電極を付与せずに、それぞれの導電層に直接導線を設けてもよい。
図6は図5の圧電積層体をy方向から見たときの平面図である。隣り合う導電層はそれぞれの電極に交互に短絡されている。なお、図6に示すように、圧電積層体中の配向フィルム層の数をnとしたとき、導電層の層数はn+1であることが好ましい。このようにすることで、圧電積層体中の配向フィルム層は全て電流が流れて圧電特性を発現することができる。
ところで、ヘリカルキラルな高分子であるポリ乳酸からなる配向フィルム層に、電流を流したときの、主配向方向と圧電による変形との関係を図7〜9を用いて説明する。図7〜9は、長方形の配向フィルム層に電流を流した時の変形を示す平面図である。図7〜9におけるaは配向フィルム層における主配向方向で、簡単に言えば最も延伸された方向である。そして、ポリ乳酸からなる配向フィルム層の厚み方向に電流を流した場合、実線の長方形から、点線で示される平行四辺形のようなずり変形が生じる。そして、符号bは、このフィルム面内における最も面内変位の大きな方向を示し、ポリ乳酸からなる配向フィルムでは、この符号bで示される方向は、符号aで示される方向に対して45°傾く。なお、今後の説明のため、配向フィルム層を長方形に裁断した場合、配向フィルム層の長手方向と主配向軸とのなす角度にて、0°カット、45°カット、90°カットと称することがある。ちなみに、図7は0°カットであり、図8が45°カット、図9が90°カットである。
なお、本発明における圧電積層体は、前述の図1〜図6に示されたものに限定されず、他の好ましい態様として、図10〜図13にその一例を示す。
図10〜図13は、上から下に5つの図があり、上から1一つ目と2つめの図が前記図1に相当する図で、上から3つ目の図が前記図2に相当する図で、上から4つ目が前記図3に相当する図で、上から5つ目が前記図5に相当する。そして、図10は右上隅にマージンを有する導電層付きフィルム層Aと右下隅にマージンを有する導電層付きフィルム層Bを用いた場合の図であり、図11は右下隅にマージンを有する導電層付きフィルム層Aと左下隅にマージンを有する導電層付きフィルム層Bを用いた場合の図であり、図12はy方向の幅を極めて細くした導電層付きフィルム層Aと導電層付きフィルム層Bを用いた場合の図であり、図13は導電層付きフィルム層Aと導電層付きフィルム層Bの形状を長方形から平行四辺形に変更した場合の図である。
つぎに、本発明の圧電振動体について、図14〜図23を用いて説明する。本発明の圧電振動体は、前述のポリ乳酸からなる配向フィルム層(1または2)と導電層(3または4)とが交互に積層された圧電積層体(11)と、その両端部を把持する把持具(13)とからなる圧電振動体である。
そして、(i)圧電積層体(11)は、配向フィルム層を介して隣り合う導電層は一方は負の電極(10)に他方は正の電極(10)に短絡しており、電流を流した際に、各導電層(3または4)に挟まれた配向フィルム層(1または2)は、伸縮方向が同方向になるように積層されている。
また、(ii)圧電積層体(11)は、配向フィルム層(1または2)の面方向と平行な2つの平行表面(7)と、それら平行表面に挟まれ、互いに平行な2つの端面AおよびB(8または9)とを有する。前述の図4で見れば、符号8で記した端面が端面Aだとすれば、端面Bは底面になる。そして、前述の図4には、二組の端面AとBの組合せがあるといえ、本発明ではその一組が後述の(iii)のように把持されていればよい。すなわち、(iii)前記把持される両端部がそれぞれ端面Aと端面Bを含み、かつ把持具によって端面AとBの間の圧電積層体に応力が付加されていることが必要である。この際、把持具によって端面AとBの間の圧電積層体に付加される応力は、圧縮応力でも伸張応力であってもよい。このように、圧電積層体の互いに平行な端面AとBと把持具で把持し、その間の圧電積層体に応力を付加することで、圧電積層体にひずみが加わるのか、圧電特性が向上し、しかも圧電積層体自身が高い圧電性層を有するので、効果的に振動を発現できるのである。
なお、本発明における把持具は、圧電積層体の位置がずれないように把持でき、応力を付加できるものであればよく、例えば図24のように把持具に切欠きのような溝を設け、その中に圧電積層体を挿入しただけでもよいし、図25のように圧電積層体が挿入された後、溝幅を狭めるような処理を把持具に施したものでもよいし、把持具としてクリップを用いてもよい。また、図26のように把持具の溝の中に接着剤などを装填し、把持具と圧電積層体とを固着させてもよい。また、図27のように把持具自体を接着剤とし、振動板などの固定具に固着させてもよい。なお、圧電積層体に圧縮応力を付加する場合はいずれの方法でもよいが、伸張応力を付与する場合は、図25、図26、図27のような方式が好ましい。
まず、本発明の好ましい第1の態様として、図14と15を用いて、説明する。
本発明の好ましい態様の第1は、図14および図15に示すように、両端部を把持する把持具(13)が振動板(12)に固定されており、把持具(13)によって圧電積層体に付加される応力が、伸張応力である圧電振動体である。この伸張応力の付与の仕方は、振動板に固定する際に、圧電積層体を張った状態で固定すればよい。伸張応力の範囲は特に制限されず、目的とする振動の周波数に応じて調整すればよい。なお、この伸張応力を付加した場合、低周波での振動の伝搬がしやすいという利点がある。そのため、入力信号装置に信号を入力した際に、瞬時に振動を発現でき、ハプティクスと呼ばれる入力の有無を人に伝えるのに適した圧電振動体として極めて好適である。
ところで、このような圧電振動体によって低周波の振動を発現させようとすると、変位量もより大きいことが望まれる。そのため、把持する面AおよびBが、図14や図15に示すように、圧電積層体(11)の長手方向の両端に位置することが好ましい。
また、配向フィルム層における圧電歪による面内変位が最も大きい方向(b)は、圧電積層体(11)の製造を簡便にできることから、配向フィルム層の長手方向に対して45°の方向に傾いていることが好ましく、他方、振動をより効率的に発現させる観点からは、向かい合う把持具(13)を最短距離で結んだ直線と平行もしくは直交する方向であることが好ましい。特に好ましいのは、把持する端面AおよびBが、図14や図15に示すように、圧電積層体(11)の長手方向の両端に位置し、かつ配向フィルム層における圧電歪による面内変位が最も大きい方向(b)が圧電積層体の長手方向と平行もしくは直交する方向であり、最も好ましいのは長手方向と平行な方向の場合である。
なお、図16および図17は、本発明の好ましい第1の態様のさらに別の態様であり、把持具として接着剤などの固着できるものを採用し、振動板に固定したものである。このようにすることで、圧電振動体の厚みを薄くすることができる。
つぎに、本発明の好ましい第2の態様として、図18と図19を用いて、説明する。本発明の好ましい態様の第2は、図18および図19に示すように、把持具によって圧電積層体に付加される応力が、圧縮応力である圧電振動体である。圧縮応力を付加しているため、図18に示すように圧電積層体は湾曲している。
この際、図18や図19は、固定具に両端部に位置する把持具(13)の位置が固定されていることが好ましく、その際固定具は、振動を伝搬できる振動板であることが好ましい。
このような圧縮応力を付加した状態にしておくことで、圧電振動体が自ら振動して高周波の音波などを発現することができ、さらに固定具として振動板を用いれば、圧電積層体の端面から生じる振動で振動板を共振させることもできる。
そのような観点から第2の態様は、圧電スピーカーなどに好適に使用することができる。
ところで、このような圧電振動体によって高周波の振動を発現させようとすると、圧電積層体により大きな圧縮応力を付加することが望まれる。そのため、把持する端面AおよびBが、図18や図19に示すように、圧電積層体(11)の長手方向と平行なそれぞれの端面の位置にあることが圧縮応力を圧電積層体に付与しやすいことから好ましい。
また、配向フィルム層における圧電歪による面内変位が最も大きい方向(b)は、圧電積層体(11)の製造を簡便にできることから、配向フィルム層の長手方向に対して45°の方向に傾いていることが好ましく、他方、振動をより効率的に発現させる観点からは、向かい合う把持具(13)を最短距離で結んだ直線と平行もしくは直交する方向であることが好ましい。特に好ましいのは、把持する端面AおよびBが、図19に示すように、圧電積層体(11)の長手方向に平行な端面で、かつ配向フィルム層における圧電歪による面内変位が最も大きい方向(b)が圧電積層体の長手方向と平行もしくは直交する方向であり、最も好ましいのは長手方向と平行な方向の場合である。
つぎに、図20および図21は、本発明の好ましい第2の態様のさらに別の態様であり、把持具として接着剤などの固着できるものを採用し、振動板に固定したものである。このようにすることで、圧電振動体の厚みを薄くすることができる。
ところで、本発明の好ましい第2の態様は、把持具の位置が完全に固定されていなくてもよい。すなわち、両端部に位置する把持具(13)の位置が、圧電積層体の伸縮に合わせて可動する圧電振動体であってもよく、そうすることで広帯域の周波数で、音波を発生させることができる。なお、図22は、把持具(13)を固定具(12)で固定しており、この固定具(12)は把持具(13)の間隔が圧電積層体の伸縮に合わせて変化するものである。例えば、固定具(12)として、薄い金属板やプラスチックなどを用いれば、圧電積層体の伸縮に合わせて、圧電積層体に圧縮応力を付与しつつ、把持具(13)間の間隔を微妙に変化させることができる。
ところで、このような両端部に位置する把持具(13)の位置が、圧電積層体の伸縮に合わせて可動する圧電振動体の場合、把持具の間で挟まれた圧電積層体の形状を維持しつつ、振動を最大限に発現させることが望まれる。そのため、把持する端面AおよびBが、図23に示すように、圧電積層体(11)の長手方向と平行なそれぞれの端面の位置にあることが好ましい。
また、配向フィルム層における圧電歪による面内変位が最も大きい方向(b)は、圧電積層体(11)の製造を簡便にできることから、配向フィルム層の長手方向に対して45°の方向に傾いていることが好ましく、他方、振動をより効率的に発現させる観点からは、向かい合う把持具(13)を最短距離で結んだ直線と平行もしくは直交する方向であることが好ましい。特に好ましいのは、把持する端面AおよびBが、図23に示すように、圧電積層体(11)の長手方向の平行な端面で、かつ配向フィルム層における圧電歪による面内変位が最も大きい方向(b)が圧電積層体の長手方向と平行もしくは直交する方向であり、最も好ましいのは長手方向と平行な方向の場合である。
これら図14〜23に示した圧電振動体は、その図に記載したように、電極(10)および導線(14)を設け、この導線(14)を、アンプ(15)などに接続し、信号入力
装置(16)、例えばオーディオプレーヤーに接続することでスピーカーとして音を出したり、発振器に接続することで、ハプティクス感を発現させることができる。
なお、本発明の他の好ましい態様として、前述の図10〜図13の圧電積層体を用いたものも挙げられる。
なお、本発明の圧電振動体は、例えばアンプに接続したオーディオプレーヤーを再生させ、その音量などで評価することができる。
つぎに、本発明の圧電振動体について、さらに詳述する。
ポリ乳酸
本発明において、配向フィルム層はポリ乳酸からなる。ポリ乳酸としては、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸が好ましく挙げられる。
ここで、ポリL−乳酸は、実質的にL−乳酸単位のみから構成されるポリL−乳酸(以下、PLLAと省略する場合がある。)や、L−乳酸とその他のモノマーとの共重合体等であるが、特に、実質的にL−乳酸単位だけで構成されるポリL−乳酸であることが好ましい。また、ポリD−乳酸は、実質的にD−乳酸単位のみから構成されるポリD−乳酸(以下、PDLAと省略する場合がある。)や、D−乳酸とその他のモノマーとの共重合体等であるが、特に、実質的にD−乳酸単位だけで構成されるポリD−乳酸であることが好ましい。
ポリL−(D−)乳酸におけるL−(D−)乳酸単位の量は、結晶性の観点、また変位量の向上効果を高くするという観点およびフィルム耐熱性などの観点より、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは98〜100モル%である。すなわち、L−(D−)乳酸単位以外の単位の含有量は、好ましくは0〜10モル%、より好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%である。
かかるポリ乳酸は、結晶性を有していることが好ましく、前述のような配向・結晶の態様とすることが容易となり、変位量の向上効果を高くすることができる。またその融点は150℃以上190℃以下であることが好ましく、160℃以上190℃以下であることがさらに好ましい。このような態様であるとフィルムの耐熱性に優れる。
本発明におけるポリ乳酸は、その重量平均分子量(Mw)が8万から25万の範囲であることが好ましく、10万から25万の範囲であることがより好ましい。とりわけ好ましくは12万から20万の範囲である。重量平均分子量Mwが上記数値範囲にあると、フィルムの剛性に優れ、またフィルムの厚み斑が良好になる。
本発明におけるヘリカルキラル高分子は、本発明の効果を損なわない範囲で、共重合や他の樹脂を混合したものであってもよい。
本発明におけるポリ乳酸の製造方法は特に制限されず、以下ポリL−乳酸およびポリD−乳酸を製造する方法を例にとって説明する。例えば、L−乳酸またはD−乳酸を直接脱水縮合する方法、L−またはD−乳酸オリゴマーを固相重合する方法、L−またはD−乳酸を一度脱水環化してラクチドとした後、溶融開環重合する方法等が例示される。なかでも、直接脱水縮合方法、あるいはラクチド類の溶融開環重合法により得られるポリ乳酸が、品質、生産効率の観点から好ましく、中でもラクチド類の溶融開環重合法が特に好ましく選択される。
これらの製造法において使用する触媒は、ポリ乳酸が前述した所定の特性を有するように重合させることができるものであれば特に限定されず、それ自体公知のものを適宜使用できる。
得られたポリL−乳酸およびポリD−乳酸は、従来公知の方法により、重合触媒を除去したり、失活剤を用いて重合触媒の触媒活性を失活、不活性化したりするのが、フィルムの溶融安定性、湿熱安定性のために好ましい。
失活剤を用いる場合、その使用量は、特定金属含有触媒の金属元素1当量あたり0.3から20当量、より好ましくは0.5から15当量、さらに好ましくは0.5から10当量、特に好ましくは0.6から7当量とすればよい。失活剤の使用量が少なすぎると、触媒金属の活性を十分に低下させることができないし、また過剰に使用すると、失活剤が樹脂の分解を引き起こす可能性があり好ましくない。
配向フィルム層
本発明における配向フィルム層は、前述のポリ乳酸からなる。本発明における配向フィルム層は、圧電特性をより効率よく発現させやすくすることから、一方向に分子鎖が配向されている、すなわち主配向方向を有する。なお、本発明における主配向軸とは、エリプソメーター(型式M−220;日本分光)を用いて測定された面内方向の最も屈折率の高い方向である。
本発明における各配向フィルム層の破断強度は、その主配向方向が120MPa以上であることが好ましい。破断強度が上記下限よりも低い場合は、共振特性の向上効果が低くなる。他方、主配向方向の破断強度の上限は特に制限されないが、製膜性などの点から300MPa以下であることが好ましい。このような観点から、主配向方向の破断強度の下限は、より好ましくは120MPa以上、さらに150MPa以上、特に180MPa以上が好ましく、他方上限は300MPa以下、さらに好ましくは250MPa以下であることが好ましい。主配向方向の破断強度が上記下限以上あることで、共振特性の向上効果を高くすることができる。
また、本発明における配向フィルム層の主配向軸方向に直交する方向の破断強度は、80MPa以下であることが好ましい。破断強度が上記上限以下にあると、共振特性の向上効果を高くすることができる。主配向軸方向に直交する方向の破断強度が上記上限よりも高い場合は、共振特性の向上効果が低くなる。他方、主配向軸方向に直交する方向の破断強度の下限は特に制限されないが、製膜後の取り扱いなどの点から、30MPa以上、さらに50MPa以上であることが好ましい。
ところで、配向フィルム層の主配向方向が、配向フィルム層の長さ方向と平行(図7の0°カット)もしくは直交する方向(図9の90°カット)であることがより効率的に共振による音を大きく発生させやすいことから好ましい。また、配向フィルム層は、圧電歪による面内変位が最も大きい方向が、配向フィルム層の主配向方向とそれに直交する方向の中間方向に位置することがより効率的に音を発生させやすいことから好ましい。
ところで、導電層を介して互いにエナンチオマーな高分子からなる配向フィルム層が積層されていることが好ましい。特に異なるエナンチオマーな高分子からなる配向フィルム層が交互に積層されると、主配向軸を同一方向に揃えた状態で、圧電特性を効率よく発現でき、ロールtoロールや共押出しといった製造方法を採用できることから好ましい。
本発明における配向フィルム層の密度は、1.22〜1.27g/cm3であることが好ましい。密度が上記数値範囲にあると、共振特性の向上効果を高くすることができる。密度が低い場合は、共振特性の向上効果が低くなる傾向にあり、他方、密度が高い場合は、共振特性の向上効果は高いもののフィルムの機械特性に劣る傾向にある。このような観点から、密度は、より好ましくは1.225〜1.26g/cm3、さらに好ましくは1.23〜1.25g/cm3である。
本発明における配向フィルム層の厚みは、厚すぎるために剛性が高くなりすぎて共振特性を奏さなくなってしまう傾向を考慮して、共振特性を奏する程度の厚さであれば特に限定されない。各層の厚みが1〜50μmであることが好ましい。共振特性の観点からは薄い方が好ましい。特に、積層数を増加させる際には、各層の厚さを薄くして、積層体全体としての厚さが厚くなりすぎないようにすることが好ましい。このような観点から、層Lおよび層Dの1層の厚みはそれぞれ独立に、好ましくは25μm以下、さらに好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。厚みが上記数値範囲にあると、共振特性の向上効果を高くすることができる。他方、取り扱い性や剛性の観点からは厚い方が好ましく、例えば2μm以上が好ましく、さらに好ましくは3μm以上である。
耐衝撃性改良剤
本発明における配向フィルム層は、耐衝撃性改良剤を、配向フィルム層の質量を基準として、0.1〜10質量%の範囲で含有させていることが好ましい。本発明における耐衝撃性改良剤とは、例えばポリ乳酸の耐衝撃性改良に用いることのできるものであれば特に制限されず、室温でゴム弾性を示すゴム状物質のことであり、例えば、下記の各種耐衝撃性改良剤などが挙げられる。
具体的な耐衝撃性改良剤としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、各種アクリルゴム、エチレン−アクリル酸共重合体およびそのアルカリ金属塩(いわゆるアイオノマー)、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(例えば、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酸変性エチレン−プロピレン共重合体、ジエンゴム(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン)、ジエンとビニル単量体との共重合体およびその水素添加物(例えば、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエンにスチレンをグラフト共重合せしめたもの、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体)、ポリイソブチレン、イソブチレンとブタジエンまたはイソプレンとの共重合体、天然ゴム、チオコールゴム、多硫化ゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、ポリエーテルゴム、エピクロロヒドリンゴム、ポリエステル系エラストマーまたはポリアミド系エラストマーなどが挙げることができる。さらに、各種の架橋度を有するものや、各種のミクロ構造、例えばシス構造、トランス構造などを有するもの、コア層とそれを覆う1以上のシェル層から構成される多層構造重合体なども使用することができる。また、本発明において、耐衝撃性改良剤としては、上記具体例に挙げた各種の(共)重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体またはグラフト共重合体などのいずれも用いることができる。さらに、これらの(共)重合体を製造するに際し、他のオレフィン類、ジエン類、芳香族ビニル化合物、アクリル酸、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルなどの単量体を共重合することも可能である。
これらの耐衝撃性改良剤の中でも、市販品としては、例えば、三菱レイヨン製“メタブレン”、カネカ製“カネエース”、ロームアンドハース製“パラロイド”、ガンツ化成製“スタフィロイド”またはクラレ製“パラフェイス”などを挙げることができ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。また、公知の方法としては、乳化重合法がより好ましい。製造方法としては、まず所望の単量体混合物を乳化重合させてコア粒子を作った後、他の単量体混合物をそのコア粒子の存在下において乳化重合させてコア粒子の周囲にシェル層を形成するコアシェル粒子を作る。さらに該粒子の存在下において他の単量体混合物を乳化重合させて別のシェル層を形成するコアシェル粒子を作る。このような反応を繰り返して所望のコア層とそれを覆う1以上のシェル層から構成される多層構造重合体を得る。各層の(共)重合体を形成させるための重合温度は、各層とも0〜120℃が好ましく、5〜90℃がより好ましい。
本発明で用いられる多層構造重合体としては、本発明の効果の点で、ガラス転移温度が0℃以下の構成成分を含むものであることがより好ましく、−30℃以下の構成成分を含むものであることがさらに好ましく、−40℃以下の構成成分を含むものであることが特に好ましい。なお、本発明において、上記ガラス転移温度は、示差走査熱量計を用い、昇温速度20℃/分で測定した値である。
本発明において、多層構造重合体の平均一次粒子径は、特に限定されるものではないが、本発明の効果の点で、10〜10000nmであることが好ましく、さらに、20〜1000nmであることがより好ましく、50〜700nmであることが特に好ましく、100〜500nmであることが最も好ましい。
本発明において、耐衝撃性改良剤の配合量は、本発明の効果の点で、配向フィルム層の質量を基準として、0.1〜10質量%の範囲であることが好ましい。下限未満では、後述の圧着などの処理をしたときに層間が剥離しやすくなることがある。他方、上限を超えると圧電特性が低下する。そのような観点から、好ましい耐衝撃性改良剤の配合量の下限は、0.5質量%、さらに1質量%であり、他方上限は、9質量%、さらに8質量%である。なお、このような耐衝撃性改良剤を配合させることで、圧電特性を低下させることなく、圧着後の剥離を抑制できる。理由は定かではないが、得られた配向ポリ乳酸フィルムの配向を低下させずに、柔軟性を付与でき、結果圧着時の圧力が均等に伝わり、圧電積層体の界面に局所的に剥離しやすい部分や局所的に強直に圧着している部分が存在しなくなったためではないかと推定される。
配向フィルム層の製造方法
以下、配向フィルム層の製造方法について、説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
押出工程
前述の方法により得られたポリ乳酸に、所望により前述の耐衝撃性改良剤、カルボキシル基封止剤、滑剤、その他の添加剤等を配合し、ポリ乳酸を、押出機において溶融し、ダイから冷却ドラム上に押し出す。なお、押出機に供給するポリ乳酸は、溶融時の分解を抑制するため、押出機供給前に乾燥処理を行い、水分含有量を100ppm以下程度にすることが好ましい。
押出機における樹脂温度は、ポリ乳酸が十分に流動性を有する温度、すなわち、ポリ乳酸の融点をTmとすると、(Tm+20)から(Tm+50)(℃)の範囲で実施されるが、ポリ乳酸が分解しない温度で溶融押し出しするのが好ましく、かかる温度としては、好ましくは200〜260℃、さらに好ましくは205〜240℃、特に好ましくは210〜235℃である。上記温度範囲であると流動斑が発生しにくい。
キャスティング工程
ダイから押し出した後、フィルムを冷却ドラムにキャスティングして未延伸フィルムを得る。その際、静電密着法により電極より静電荷を印加させることによって冷却ドラムに十分に密着させて冷却固化するのが好ましい。この時、静電荷を印加する電極はワイヤー状或いはナイフ状の形状のものが好適に使用される。該電極の表面物質は白金であることが好ましく、フィルムより昇華する不純物が電極表面に付着するのを抑制することができる。また、高温空気流を電極或いはその近傍に噴きつけ電極の温度を170〜350℃に保ち、電極上部に排気ノズルを設置することにより不純物の付着を防ぐこともできる。
延伸工程
前記で得られた未延伸フィルムは、一軸方向に延伸する。延伸方向は特に制限されないが、製膜方向、幅方向または製膜方向と幅方向に対して、それぞれ45度となるような斜め方向に延伸するのが好ましい。かかる延伸を行うには、未延伸フィルムを延伸可能な温度、例えばポリ乳酸のガラス転移点温度(Tg)℃以上(Tg+80)℃以下の温度に加熱して延伸する。
主配向方向の延伸倍率は、好ましくは3倍以上、より好ましくは3.5倍以上、さらに好ましくは4.0倍以上、特に好ましくは4.5倍以上である。延伸倍率を上記下限以上にすることによって変位量の向上効果を高くすることができる。一方、延伸倍率の上限は特に制限されないが、製膜性の点から10倍以下であることがこのましく、さらに8倍以下、特に7倍以下であることが好ましい。他方、主配向方向と直交する方向は、延伸を行う必要はないが、前述の破断強度の関係を満足する範囲で延伸を施してもよい。その場合の延伸倍率は1.5倍以下が好ましく、さらに1.3倍以下が好ましい。
熱処理工程
上記で得られた延伸フィルムは、熱処理することが好ましい。熱処理温度は、前述の延伸温度よりも高く、樹脂の融点(Tm)未満の温度で行えばよく、好ましくはガラス転移点温度(Tg+15)℃以上(Tm−10)℃以下で、圧電特性をより高くすることができる。熱処理温度が低い場合は、変位量の向上効果が低くなる傾向にあり、他方、高い場合は、フィルムの平面性や機械特性に劣る傾向にあり、また変位量の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、熱処理温度は、さらに好ましくは(Tg+20)℃以上(Tm−20)℃以下、特に好ましくは(Tg+30)℃以上(Tm−35)℃以下である。また、熱処理時間は、好ましくは1〜120秒、さらに好ましくは2〜60秒であり、変位量の向上効果を高くすることができる。
さらに本発明においては、熱処理工程において弛緩処理して、熱寸法安定性を調整することも可能である。
易接着処理
かくして得られた配向フィルム層は、所望により従来公知の方法で、例えば表面活性化処理、例えばプラズマ処理、アミン処理、コロナ処理を施すことも可能である。
なかでも、後述の導電層との密着性を向上し、圧電積層体の耐久性を高めるという観点から、配向フィルム層の少なくとも片面、好ましくは両面に、コロナ処理を施すことも好ましい。かかるコロナ処理の条件としては、例えば電極距離を5mmとした際に、好ましくは1〜20kV、さらに好ましくは5〜15kVの電圧で、好ましくは1〜60秒、さらに好ましくは5〜30秒、特に好ましくは10〜25秒行うとよい。また、かかる処理は大気中で行うことができる。
導電層
本発明における導電層は、電圧印加した際に圧電特性を示すことができる程度の導電性を有していれば、その種類は特に限定されないが、より好適に圧電特性および共振特性を示すことができるという観点から、金属または金属酸化物からなる層および導電性高分子からなる層であることが好ましい。
かかる金属または金属酸化物としては、特に限定はされないが、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属、または上記群より選択される少なくとも1種の金属の酸化物が好ましく用いられる。また、金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属、または上記群に示された他の金属の酸化物を含んでいてもよい。例えば、アルミニウム、金、酸化スズを含有する酸化インジウム、アンチモンを含有する酸化スズ等が好ましく用いられる。導電性高分子としては、ポリチオフェン系、ポリアニリン系、ポリピロール系が挙げられ、必要に応じて導電性や透明性を考慮した選定を行えば良い。例えば、ディスプレイパネルなどに使用する際には透明性に優れたポリチオフェン系、ポリアニリン系高分子が好ましく用いられる。
導電層の各層の厚さは特に制限されないが、その表面抵抗値が1×10Ω/□以下、好ましくは5×10Ω/□以下、さらに好ましくは1×10Ω/□以下となるような厚みを選択すればよく、例えば、厚さ10nm以上とするのが好ましい。さらに金属または金属酸化物からなる層の場合、導電性と、層形成のし易さの観点から、15〜35nmであることが好ましく、より好ましくは20〜30nmである。厚さが薄すぎると、表面抵抗値が高くなる傾向にあり、かつ連続被膜になり難くなる。他方、厚すぎると、品質過剰であり、また積層フィルムの形成が困難となったり、積層フィルムの層間の強度が弱くなったりする傾向にある。また、導電性高分子を用いた印刷などの場合、100〜5000nmであることが好ましく、より好ましくは200〜4000nmである。
ところで、導電層は、図1に示すように、配向フィルム層の全面に形成するのではなく、マージンを設ける。このマージンは端面に近い部位に設けることが振動板をより効率的に共振させる観点から好ましい。マージンを有する側においては電極と導電層とが短絡せず、マージンを有しない側においては電極と導電層とが短絡した構成となることが好ましい。このような構成とすることにより、配向フィルム層を挟んだ各導電層は、簡便に正負が互いに異なるように電極と短絡させることができる。
圧電積層体
すなわち、本発明における圧電積層体は、各導電層に挟まれた配向フィルム層が、電流を流した際に、伸縮方向が同方向になるように積層されていることが必要である。これは、圧電積層体の一部に、伸縮方向が異なる樹脂が存在すると、圧電特性が打ち消しあう状況となり、振動板を共振させる効果が損なわれるからである。このように圧電積層体中の配向フィルム層の伸縮方向を揃える方法は特に制限されないが、L−ポリ乳酸からなる配向フィルム層LとD−ポリ乳酸からなる配向フィルム層Dとを交互に積層した構成であることが、同様に製膜延伸した、すなわち主配向軸が同じ配向ポリ乳酸フィルムをそのまま交互に積層するだけでよいことから好ましい。これは、配向フィルム層Lと配向フィルム層Dとが、その厚み方向に逆の電荷を付加したとき、同方向に伸縮特性を示すからである。
一方、隣り合う配向フィルム層が、どちらも配向フィルム層Lまたは配向フィルム層Dである場合は、一方のフィルム層を固定し、他方のフィルム層は重ねる前に、裏返すことやフィルムの面方向に回転させるなどして、逆の電荷を与えた際に伸縮方向が揃うように合わせればよい。なお、ポリ乳酸を製膜して、生産性に優れるロールtoロールで積層しようとすると、前者の配向フィルム層Lと配向フィルム層Dとを交互に積層した構成が好ましいことは理解されるであろう。
そして、前述の配向フィルム層Lと配向フィルム層Dを用いる場合、図1〜3の符号5で示される導電層付きフィルム層Aを構成する配向フィルム層を配向フィルム層L、符号6で示される導電層付きフィルム層Bを構成する配向フィルム層を配向フィルム層Dとなるように積層すればよい。
また、配向フィルム層と導電層は、厚み1000nmを超える接着剤層を介さずに固着していることが、優れた共振特性を発現させやすいことから好ましい。かかる観点から、本発明においては、配向フィルム層と導電層は、厚み500nmを超える接着剤層を介さずに固着している態様が好ましく、厚み200nmを超える接着剤層を介さずに固着している態様がさらに好ましい。共振特性の観点から、最も好ましいのは、接着剤層を介さずに配向フィルム層と導電層とが固着している態様である。
本発明においては、上記のような積層構成を有していれば、本発明の目的を阻害しない範囲において、さらにその他の層を有していても良い。例えば、圧電積層体の表面に、積層体の剛性を高めるための、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのような芳香族ポリエステル層を有することができる。一方、共振特性の観点からは、このような層は、その厚みが薄いことが好ましく、有しないことが特に好ましい。
なお、本発明における圧電積層体の形状は、取扱いや目的の方向に高い圧電特性を付与するように設計しやすいことから、テープ状であることが好ましい。
積層数
本発明における圧電積層体は、配向フィルム層の合計層数は3以上であることが好ましい。このような態様とすることで優れた共振特性が得られる。共振特性の観点からは、合計層数は多い程好ましく、好ましくは5以上、さらに好ましくは6以上である。
一方、上限は特に制限されない。なお、数万オーダーの合計総数とするには、例えば巻回コンデンサーのごとく製造すればよい。
また、本発明における圧電積層体は、少なくとも一方の表面には導電層が存在し、本発明の効果の点、すなわち振動板をより効率的に共振させる点からは、全ての配向フィルム層が圧電特性を同様に発現することが好ましく、図6に示したように導電層が圧電積層体の両表面に配置されていることが振動板に効率的に振動を伝搬できることから好ましい。すなわち、配向フィルム層の層数をnとしたとき、導電層の層数はn+1であることが好ましい。
共振特性
本発明における圧電積層体は、圧電特性を有し、ある周波数の電圧を印加することにより振動するものであるが、とりわけPVDFに比べて圧電特性が一方向に揃う配向ポリ乳酸フィルムを選択し、かつそれを積層することで、極めて圧電特性に優れ、大きな運動量(力)を発生させることもできる。
主配向方向
本発明において、圧電積層体は、各配向フィルム層の電荷を付加したときのもっとも伸縮の大きい方向が、圧電積層体の厚み方向からみたとき、10度以下の範囲で揃っていることが好ましい。このような態様とすることによって、共振特性の向上効果を高くすることができる。このような観点から、上記成す角は、より好ましくは5度以下、さらに好ましくは3度以下、特に好ましくは1度以下であり、理想的には0度である。上記のような主配向方向の態様とするには、サンプリング時に同方向でサンプリングしたり、積層時に同方向となるように積層したりすればよい。
圧電積層体の製造方法
本発明における圧電積層体は、例えば配向フィルム層が、前述の配向フィルム層Lと配向フィルム層Dを交互に積層する場合、それぞれ別々に形成し、得られた各層の表面に導電層を設けて、層Lと層Dとが交互に、かつ層Lと層Dの間、および得られる圧電積層体の少なくとも一方の表面、好ましくは圧電積層体の両表面に導電層を有する構成となるように積層して固着することにより得ることができる。
また、本発明における圧電積層体が、例えば配向フィルム層Lまたは配向フィルム層Dのいずれかだけである場合は、2つの配向フィルム層L(D)を用意し、一方は表面側に導電層を設け、他方は裏面側や向きを変えて導電層を設け、それぞれ別々に形成し、得られた各層の表面に導電層を設けて、層Lと層Dとが交互に、かつ層Lと層Dの間、および得られる圧電積層体の少なくとも一方の表面、好ましくは圧電積層体の両表面に導電層を有する構成となるように積層して固着することにより得ることができる。
上記により得られた配向フィルム層Lおよび配向フィルム層Dの表面に、導電層を形成する方法は、従来公知の導電層の形成方法であれば特に限定されないが、優れた導電性を有する導電層を均一に、容易に得ることができるという観点から、蒸着法またはスパッタリング法を採用することが好ましい。
また、導電層、配向フィルムの両面に形成してもよいが、密着性の観点からは、片面のみに導電層を形成し、それらを圧着することが好ましい。
熱ラミネート工程
上記により得られた導電層を有する配向フィルムを、本発明が規定する積層構成となるように積層して積層体を作成し、熱ラミネートにより固着する。ここで熱ラミネートは、接着剤層を用いずに行うことが好ましい。また、前述の耐衝撃性改良剤を含有させることにより、より圧着性を高めることができる。
かかる熱ラミネートにおける温度条件は、(Tg−5)〜(Tsm+20)℃とすることが好ましい。ここでTgは、積層体の形成に用いる配向フィルム層Lを構成する樹脂Lのガラス転移温度および配向フィルムDを構成する樹脂Dのガラス転移温度のうち、最も高いガラス転移温度を示す。また、Tsmは、積層体の形成に用いる配向フィルムLのサブピーク温度および配向フィルムDのサブピーク温度のうち、最も低いサブピーク温度を示す。なお、サブピーク温度とは、フィルム製造プロセスにおける熱固定温度に起因する温度であるである。上記温度条件を採用することにより、優れた共振特性を奏する圧電積層体を得ることができる。また、同時に、積層体の各層の密着性に優れる。温度が低すぎると密着性に劣る傾向にあり、他方高すぎると配向が崩れてしまい共振特性に劣る傾向にある。このような観点より、さらに好ましい温度条件は(Tg)〜(Tsm+15)℃であり、特に好ましくは(Tg+10)〜(Tsm+10)℃である。
また、圧力条件は、十分な圧着ができ、かつ配向ポリ乳酸フィルムの配向が崩れない条件であれば特に制限されず、例えば1〜100MPaとすることが好ましい。これにより優れた共振特性を有しながら、密着性に優れた積層体を得ることができる。圧力が低すぎると密着性に劣る傾向にあり、他方高すぎると共振特性に劣る傾向にある。このような観点より、さらに好ましい圧力条件は2〜80MPaであり、特に好ましくは2〜50MPaである。
以上のような温度条件および圧力条件において、10〜600秒の熱ラミネートを行うことが好ましい。これにより優れた共振特性を有しながら、密着性に優れた積層体を得ることができる。時間が短すぎると密着性に劣る傾向にあり、他方長すぎると共振特性に劣る傾向にある。このような観点より、さらに好ましい時間条件は30〜300秒であり、特に好ましくは60〜180秒である。
ところで、圧電積層体を効率よくロールtoロールで製造するには、配向フィルム層Lと配向フィルム層Dとをそれぞれ製膜してロール巻き取り、それぞれの配向フィルム層の幅方向の一部に、導電層を製膜方向に沿って形成する。そして、導電層を有する配向フィルム層Lと導電層を有する配向フィルム層Dとを製膜方向に沿ってスリットしつつ重ね合せ、所望のサイズにカットするのが好ましい。
固定具または振動板
本発明における固定具(12)は把持具の位置を固定できるものであれば特に制限はされない。また、把持具(13)と一体となっていてもよい。なお、固定具(12)として振動を伝搬できる振動板(12)を用いる場合、そのヤング率は圧電振動体よりやや硬いことが、より振動板を共振させやすいことから、3GPa以上が好ましい。また、把持具を接着剤などで固着させる場合、接着性が良いものが好ましい。また、透明性を有することでタッチパネルや携帯電話などディスプレイ上への配置を可能にすることから、全光線透過率は85%以上が好ましい。以上の観点から、振動板の材質としては、上記特性を有する素材であれば特に限定されるのもではなく、有機素材、無機素材のどちらか、もしくは組み合わせであっても構わない。中でも振動板としての取り扱い性の容易さから有機高分子素材であることが好ましく、PLA(ポリ乳酸)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PS(ポリスチレン)、PC(ポリカーボネート)、COC(シクロオレフィンコポリマー)、PMMA(ポリメタクリル酸)が好ましく、さらにPLA、PET、PENが好ましい。
また、振動板の形状は共振させたい周波数によって適宜選択すればよい。例えば共振させたい波長が一つであれば円形でよく、複数の周波数域で共振させたい場合は、それに応じた多角形にすればよい。
また、厚みは圧電積層体と同程度の厚みが好ましい。用いる材質にもよるが、ポリエステルなどのプラスチックフィルムの場合、3〜1500μmの範囲が好ましく、さらに25〜1000μmの範囲が好ましい。
電極
本発明における圧電積層体は、前述の通り、各導電層を介して隣り合う配向フィルム層に逆方向の電界がかかるように電極に短絡される。電極としては特に制限されずそれ自体公知のものを採用でき、例えばアルミニウム、金、銀、銅が例示でき、これらの中でも、価格や取扱いの容易さからから、銀ペーストが好ましい。また、一般的に用いられるメタリコンを用いてもよく、更にはもっと簡便に各積層体を金属で貫通させて短絡させるような手段を用いてもよい。
圧電振動体
本発明の圧電振動体は、前述の構成を採用しており、応力が付加された状態で両端が把持具で固定され、中央部は固定されていないので、優れた圧電特性を発現する。
ところで、本発明の圧電振動体において、圧電積層体と把持具とは、前述の通り、接着剤で固着されていてもよい。固着方法は、特に制限されず、圧電積層体(11)の振動を、例えば振動板(12)に伝えられるように両者を固定できるものであれば特に制限されず、例えば接着剤を用いた接合でも、圧電積層体と振動板を圧着する方法でもよい。この圧着の場合、振動板が把持具も兼ねているといえる。
接着剤を用いる場合は、使用する環境で剥離することがなく、かつ圧電積層体の振動を効率よく振動板に伝えられ、本目的を損なわない接着剤であれば特に制限するものではなく、中でも汎用性や取扱い易さの観点からエポキシ系接着剤が好ましい。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定を受けるものではない。各層の物性、圧電スピーカーの評価は以下の方法で行った。
(1)各層の物性
積層体の端部をしごく等して切欠をつくり、各層を剥離し各層の物性を評価した。
(1−1)主配向方向
エリプソメーター(型式M−220;日本分光)を用い、得られたフィルムを550nm単色光の入射角度を変化させた透過光測定に供し、フィルムを固定した試料台を、光軸を中心に光軸に対して垂直な面内にて回転させて、面内方向の最も屈折率の高い方向を求め、その方向を主配向軸とした。
(1−2)ヤング率
フィルムを150mm長×10mm幅に切り出した試験片を用い、オリエンテック社製テンシロンUCT−100型を用いてヤング率を求めた。なお、測定は温度23℃、湿度65%RHに調節された室内において、チャック間100mmになるようサンプルを装着し、JIS−C2151に従って引張速度10mm/minの条件で行った。得られた荷重−伸び曲線の立ち上り部接線の傾きよりヤング率を計算した。
(1−3)全光線透過率
JIS K7361に準じ、日本電色工業社製のヘーズ測定器(NDH−2000)を使用してフィルムの全光線透過率(単位:%)を測定した。
(1−4)表面抵抗率
三菱化学社製、商品名:Lorester MCP−T600を用いて、JIS K7194に準拠して測定した。測定は、1つのフィルムから3つの測定用サンプル片を採取し、それぞれ任意の5箇所について実施し、それらの平均値を表面抵抗率(単位:Ω/□)とした。
(2)圧電スピーカーの評価方法
圧電スピーカーの評価は以下の方法で行った。図14〜図23に示すように、圧電スピーカーの正極と負極とを、交直両用高圧アンプリファイヤ(TREK Inc.社製、商品名:ピエゾドライバ用電源 PZP350)に連結し、電圧200Vp−p、電流200mAの交流電流を流し、周波数30Hz−20kHzの範囲での最大値の音量を測定した
。なお、測定は騒音計(小野測器社製、商品名:高機能型騒音計 LA-2560)を用い、圧
電スピーカーから前方に3cm離れた場所で行った。音量が大きいほど、圧電スピーカーとして効率が良いことを示す。
合成例1:ポリL−乳酸(PLLA)の合成
真空配管、窒素ガス配管、触媒添加配管、L−ラクチド溶液添加配管、アルコール開始剤添加配管を具備したフルゾーン翼具備縦型攪拌槽(40L)を窒素置換した。その後、L−ラクチド30Kg、ステアリルアルコール0.90kg(0.030モル/kg)、オクチル酸スズ6.14g(5.05×10−4モル/1kg)を仕込み、窒素圧106.4kPaの雰囲気下、150℃に昇温した。内容物が溶解した時点で、攪拌を開始、内温をさらに190℃に昇温した。内温が180℃を超えると反応が始まるため、冷却しながら内温を185℃から190℃に保持し1時間反応を継続した。さらに攪拌しつつ、窒素圧106.4kPa、内温200℃から210℃で1時間反応を行なった後、攪拌を停止しリン系の触媒失活剤を添加した。
さらに20分間静置して気泡除去をおこなった後、内圧を窒素圧で2気圧から3気圧に昇圧し、プレポリマーをチップカッターに押し出し、重量平均分子量13万、分子量分散1.8のプレポリマーをペレット化した。
さらに、ペレットを押出機で溶解させ、無軸籠型反応装置に15kg/hrで投入し、10.13kPaに減圧して残留するラクチドを低減処理し、それを再度チップ化した。得られたポリL−乳酸(PLLA)は、ガラス転移点温度(Tg)55℃、融点(Tm)175℃、重量平均分子量12万、分子量分散1.8、ラクチド含有量0.005質量%であった。
合成例2:ポリD−乳酸(PDLA)の合成
また、L−ラクチドの代わりにD−ラクチドを使用する以外は合成例1と同様にして、ガラス転移点温度(Tg)55℃、融点(Tm)175℃、重量平均分子量12万、分子量分散1.8、ラクチド含有量0.005質量%のポリD−乳酸(PDLA)を得た。
参考例L1:配向フィルムL1の製造
合成例1で得られたPLLAを、乾燥機を用いて十分に乾燥させた後、ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社社製、コアシェル構造体(パラロイドTMBPM−500)を5質量%添加し、押出機に投入し、220℃で溶融し、溶融樹脂をダイより押し出して単層のシート状に成形し、かかるシートを表面温度20℃の冷却ドラムで冷却固化して未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを、75℃に加熱したロール群に導き、縦方向に1.1倍に延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き、75℃に加熱された雰囲気中で横方向に4.0倍に延伸した。その後テンター内で110℃の温度条件で30秒間の熱処理を行い、均一に徐冷して室温まで冷やして7μm厚みの二軸配向ポリL−乳酸単層フィルム(配向フィルムL1)を得た。主配向方向は延伸を施した横方向であった。なお、後述の導電層を形成する側の表面に、カスガ製、高周波電源CG−102型を用いて、電圧10kV、処理時間20秒の条件でコロナ処理を施した。
参考例D1:配向フィルムD1の製造
合成例2で得られたPDLAを用いて、参考例L1と同様にして、7μm厚みの二軸配向ポリD−乳酸単層フィルム(配向フィルムD1)を得た。主配向方向は延伸を施した横方向であった。なお、後述の導電層を形成する側の表面に、カスガ製、高周波電源CG−102型を用いて、電圧10kV、処理時間20秒の条件でコロナ処理を施した。
実施例1
本発明の好ましい第1の態様について、図面に基づいて、具体的に説明する。
切り出し
まず、参考例L1で得られた配向フィルムL1および参考例D1で得られた配向フィルムD1を、それぞれ横方向に延伸したときの延伸方向が長辺に対して45度の角度となるように3cm×7cmで切り出した。
導電層の形成
次いで、図1に示すように片方の短辺から1cmの領域(3cm×1cmの領域)をマージンとしてマスキングし、蒸着しない箇所を残した上で、残りの領域(3cm×6cmの領域)に表面抵抗値が10Ω/□となるような厚みでアルミ蒸着を施した。なおマージンの位置は配向フィルムL1と配向フィルムD1とで、それぞれ反対側の短辺においてマージンを作成した。
積層
得られた蒸着した配向フィルムL1と配向フィルムD1とを交互に各10枚、合計20枚を積層した。そして、110℃20MPaの圧力下で、3分間熱圧着を施し、圧電積層体とした。
電極
得られた積層体の両方の短辺に、導電性接着剤(日新EM社製、シルベストP255)を塗布して電極(符号10)を形成し、圧電積層体(11)を作成した。これにより、各アルミ蒸着層において、マージンを有する側においてはかかる導電性接着剤とアルミ蒸着層とが短絡せず、マージンを有しない側においてはかかる導電性接着剤とアルミ蒸着層とが短絡した構成となる。
組立
ステレオコンプレックスポリ乳酸フィルム(帝人株式会社製、商標名:バイオフロント
厚み700μm、ヤング率3GPa、全光線透過率93%)を用意し、これを長さ10.5cm、幅13.0cmに切り出し、振動板(12)とした。また同じステレオコンプレックスポリ乳酸フィルムを長さ5cm、幅2cmに4枚切り出し、それぞれの一方の面にエポキシ樹脂系接着剤(Huntsman Advanced Materials社製、商品名:アラルダイト スタンダード)を塗布したものを把持具用部材として準備した。
そして、上記作成した圧電積層体(11)の電極(10)に導線(14)をつなげ、図15および図16に示すように、圧電積層体(11)の電極(10)のついた両端部に、エポキシ樹脂系接着剤が塗布された面が向かい合うように2枚の把持具用部材で挟み、圧電積層体(11)の長手方向の両端に把持具(13)を固着した。
そして、前記振動板(12)を水平に置き、その中央の上向きの面に、圧電積層体の把持具(13)の底面を前記エポキシ樹脂系接着剤で固着した。その際、振動板(12)の長手方向と圧電積層体(11)の長手方向とが平行になるように、また、2つある把持具の一方をまず接着剤で固着し、圧電積層体に伸張応力をかけた状態でもう一方の把持具(13)を同様に固着した。なお、伸張応力のかけ方は、固着されていない把持具に紐をつけ、その紐の先を振動板の端から鉛直方向に垂らし、その垂らされた紐に重さ50gの荷重をかけることで付与した。
なお、それぞれの把持具(13)は、圧電積層体と5cm×0.5cmの領域で接着されており、残りの部分は把持具用部材同士が接着されている。すなわち、把持具から0.5cmマージンの部分がはみ出した構造になっている。
圧電スピーカーとしての特性
上記のようにして得られた圧電振動体について、正極と負極とを、交直両用高圧アンプリファイヤ(TREK Inc.社製、商品名:ピエゾドライバ用電源 PZP350)に連結し、電圧200Vp-p、電流200mAの交流電流を流し、圧電スピーカーの評価方法の通り音量を測定したところ、102dBであった。なお、測定は圧電振動体から前方に3cm離れた場所で行った。
なお、積層数を20枚から10枚に減らすと、94dBになり、他方積層数を40枚に増やすと112dBになった。また、切り出しサイズを3cm×7cmから5cm×5cmと3cm×14cmにそれぞれ変更すると、105dBと108dBとになった。
また、把持具を固着する際の荷重を50gから35gに減らした場合は103dBに、また50gから65gに増やした場合は98dBになった。
振動発生装置としての特性
上記のようにして得られた圧電振動体について、正極と負極とを、交直両用高圧アンプリファイヤ(TREK Inc.社製、商品名:ピエゾドライバ用電源 PZP350)に連結し、電圧300Vp-p、電流200mAの交流電流を周波数120Hzで流した。
そして、振動板に手を触れると、振動を強く感じることができた。
なお、積層数を20枚から10枚に減らすと、振動は弱まり、他方積層数を40枚に増やすとより強く感じられた。また、切り出しサイズを3cm×7cmから5cm×5cmと3cm×14cmにそれぞれ変更すると、前者は同程度、後者はより強く感じられた。
また、把持具を固着する際の荷重を50gから35gに減らした場合は振動が弱まり、また50gから65gに増やした場合は振動がより強く感じられた。
また、振動板および把持具として、ステレオコンプレックスポリ乳酸フィルムの代わりに、ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムフィルム(帝人デュポン株式会社製、商標名:テオネックスQ65 厚み700μm、ヤング率6GPa、全光線透過率88%)とポリエチレン−テレフタレートフィルム(帝人デュポン株式会社製、商標名:テトロンG2 厚み700μm、ヤング率4GPa、全光線透過率85%)を用いたが、同様に優れた音量および振動が発現された。
実施例2
本発明の好ましい第2の態様について、図面に基づいて、具体的に説明する。
まず、実施例1と同様にして圧電振動体を作成した。
組立
ステレオコンプレックスポリ乳酸フィルム(帝人株式会社製、商標名:バイオフロント
厚み200μm、ヤング率3GPa、全光線透過率95%)を用意し、これを長さ18.5cm、幅26.4cmに切り出し、振動板とした。また同じステレオコンプレックスポリ乳酸フィルムを長さ7.5cm、幅0.5cmに4枚切り出し、それぞれの一方の面にエポキシ樹脂系接着剤(Huntsman Advanced Materials社製、商品名:アラルダイト スタンダード)を塗布したものを把持具用部材として準備した。
そして、上記作成した圧電積層体(11)の電極(10)に導線(14)をつなげ、図18および図19に示すように、圧電構造体の電極のついていない両端部の中央に、エポキシ樹脂系接着剤が塗布された面が向かい合うように2枚の把持具用部材で挟み、圧電積層体(11)の長手方向に沿って把持具(13)を固着した。
そして、前記振動板(12)を水平に置き、その中央の上向きの面に、圧電積層体の把持具(13)の底面を前記エポキシ樹脂系接着剤で固着した。その際、振動板の長手方向と圧電積層体の長手方向とが平行になるようにした。また、2つある把持具の一方をまず接着剤で固着し、圧電積層体(11)に圧縮応力をかけた状態でもう一方の把持具を同様に固着した。なお、圧縮応力のかけ方は、把持具間の圧電積層体の幅が2.5cmであるのに対し、固着した際の把持具間の間隔をそれよりも狭い2.3cmとし、圧電積層体(11)を上方に凸の形で湾曲させることで付与した。
なお、それぞれの把持具(13)は、圧電積層体と7cm×0.25cmの領域で接着されており、残りの部分は把持具用部材同士が接着されている。
圧電スピーカーとしての特性
上記のようにして得られた圧電振動体について、正極と負極とを、交直両用高圧アンプリファイヤ(TREK Inc.社製、商品名:ピエゾドライバ用電源 PZP350)に連結し、電圧200Vp-p、電流200mAの交流電流を流し、圧電スピーカーの評価
方法の通り音量を測定したところ、106dBであった。なお、測定は圧電振動体から前方に3cm離れた場所で行った。
なお、積層数を20枚から10枚に減らすと、100dBになり、他方積層数を40枚に増やすと116dBになった。また、切り出しサイズを3cm×7cmから5cm×5cmと3cm×14cmにそれぞれ変更すると、110dBと108dBとになった。
また、把持具(13)を固着する際の把持具間の間隔を2.3cmから2.1cmに減らした場合は107dBに、また2.3cmから2.4cmに増やした場合は99dBになった。
振動発生装置としての特性
上記のようにして得られた圧電振動体(11)について、正極と負極とを、交直両用高圧アンプリファイヤ(TREK Inc.社製、商品名:ピエゾドライバ用電源 PZP350)に連結し、電圧300Vp-p、電流200mAの交流電流を周波数120Hzで流した。そして、振動板(12)に手を触れると、振動を実施例1ほどではないが感じることができた。
なお、積層数を20枚から10枚に減らすと、振動は弱まり、他方積層数を40枚に増やすとより強く感じられた。また、切り出しサイズを3cm×7cmから5cm×5cmと3cm×14cmにそれぞれ変更すると、前者は弱まり、後者はより強く感じられた。
また、把持具(13)を固着する際の把持具間の間隔を2.3cmから2.1cmに減らした場合は振動が弱まり、また2.3cmから2.4cmに増やした場合は振動がより強く感じられた。
また、振動板(12)および把持具として、ステレオコンプレックスポリ乳酸フィルムの代わりに、ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムフィルム(帝人デュポン株式会社製、商標名:テオネックスQ65 厚み200μm、ヤング率6GPa、全光線透過率89%)とポリエチレン−テレフタレートフィルム(帝人デュポン株式会社製、商標名:テトロンG2 厚み200μm、ヤング率4GPa、全光線透過率87%)を用いたが、同様に優れた音量および振動が発現された。
実施例3
本発明の好ましい第2の態様の別の態様について、図面に基づいて、具体的に説明する。まず、実施例2と同様にして把持具のついた圧電積層体(11)を作成した。そして、図22および図23に示すように、把持具(13)の長手方向の中央部に符号12で示す固定具が通る穴を設けた。そして、固定具(12)として、長さ10cm、幅2cmで厚さ0.5mmのアルミニウム板を用意し、これを長さ方向の端から4cmの位置で80°に折り曲げ、図22に示すような上側が開いたコの字状に成形したものを用意した。そして、図22に示すように、前記把持具の穴に、コの字状に成形した固定具を通し、把持具間の圧電積層体の幅が2.5cmであるのに対し、固定具に通した把持具間の間隔がそれよりも狭い2.3cmの位置で、固定具に固定し、圧電積層体を上方に凸の形で湾曲させた。
なお、それぞれの把持具は、圧電積層体と7cm×0.25cmの領域で接着されており、残りの部分は把持具用部材同士が接着されている。
圧電スピーカーとしての特性
上記のようにして得られた圧電振動体について、正極と負極とを、交直両用高圧アンプリファイヤ(TREK Inc.社製、商品名:ピエゾドライバ用電源 PZP350)に連結し、電圧200Vp-p、電流200mAの交流電流を流し、圧電スピーカーの評価
方法の通り音量を測定したところ、113dBであった。なお、測定は圧電振動体から前方に3cm離れた場所で行った。
なお、積層数を20枚から10枚に減らすと、108dBになり、他方積層数を40枚に増やすと120dBになった。また、切り出しサイズを3cm×7cmから5cm×5cmと3cm×14cmにそれぞれ変更すると、115dBと117dBとになった。
また、把持具(13)を固着する際の把持具間の間隔を2.3cmから2.1cmに減らした場合は116dBに、また2.3cmから2.4cmに増やした場合は110dBになった。
また、100dBを得られる音量範囲が、実施例2圧電振動体は4800Hz〜9100Hzであるのに対し、上記実施例3圧電振動体は1800Hz〜8600Hzである。そのため、実施例3圧電振動体は圧電スピーカーとして対応可能な音域が広いという点で非常に好適な様態である。
本発明の圧電振動体は、圧電スピーカーや信号入力装置などの振動発生装置として好適に使用することができる。
1 配向フィルム層A
2 配向フィルム層B
3 導電層A
4 導電層B
5 導電層付きフィルム層A
6 導電層付きフィルム層B
7 圧電積層体における平行表面
8 圧電積層体における長手方向に平行な端面
9 圧電積層体における長手方向に平行ではない端面
10 電極
11 圧電積層体
12 固定具または振動板
13 把持具
14 導線
15 アンプ
16 信号入力装置
a 配向フィルム層における主配向方向
b 配向フィルム層における圧電歪による面内変位が最も大きい方向
x 配向フィルム層の長手方向
y 配向フィルム層の厚み方向と長手方向に直交する方向
z 配向フィルム層の厚み方向であり、圧電積層体の積層方向

Claims (15)

  1. ポリ乳酸からなる配向フィルム層と導電層とが交互に積層された圧電積層体と、その両端部を把持する把持具とからなる圧電振動体であって、
    (i)圧電積層体は、配向フィルム層を介して隣り合う導電層は一方は負極に他方は正極に短絡しており、電流を流した際に、各導電層に挟まれた配向フィルム層は、伸縮方向が同方向になるように積層され、
    (ii)圧電積層体は、配向フィルム層の面方向と平行な2つの平行表面と、それら平行表面に挟まれ、互いに平行な2つの端面AおよびBとを有し、
    (iii)前記把持される両端部がそれぞれ端面Aと端面Bを含み、かつ把持具によって端面AとBの間の圧電積層体に応力が付加されている圧電振動体。
  2. 圧電積層体の形状がテープ状である請求項1記載の圧電振動体。
  3. 両端部を把持する把持具が振動板に固定されており、把持具によって圧電積層体に付加される応力が、伸張応力である請求項1または2に記載の圧電振動体。
  4. 端面AおよびBが、圧電積層体の長手方向の両端に位置する請求項3記載の圧電振動体。
  5. 把持具によって圧電積層体に付加される応力が、圧縮応力である請求項1または2に記載の圧電振動体。
  6. 両端部に位置する把持具の位置が固定されている請求項5記載の圧電振動体。
  7. 両端部に位置する把持具の位置が、圧電積層体の伸縮に合わせて可動する請求項5記載の圧電振動体。
  8. 端面AおよびBが、圧電積層体の長手方向に平行な両端に位置する請求項3記載の圧電振動体。
  9. 圧電積層体は、配向フィルム層の層数が3以上である請求項1記載の圧電振動体。
  10. 各配向フィルム層の厚みがそれぞれ25μm以下である請求項1に記載の圧電振動体。
  11. 各配向フィルム層が、ポリL−乳酸を主たる成分とする樹脂Lからなる配向フィルム層LおよびポリD−乳酸を主たる成分とする樹脂Dからなる配向フィルム層Dからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の圧電振動体。
  12. 圧電積層体の最大伸縮方向が、端面AおよびBと平行または直交する方向である請求項11記載の圧電振動体。
  13. 導電層は、その表面固有抵抗が1×10Ω/□以下である請求項1記載の圧電振動体。
  14. 圧電スピーカーに用いられる請求項1〜13のいずれか一項に記載の圧電振動体。
  15. 信号入力装置に用いられる請求項1〜13のいずれか一項に記載の圧電振動体。
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