以下、本発明の触覚センサ用前面板の実施形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明の触覚センサ用前面板はこれに限定されるものではない。
図2は、触覚センサ用前面板の一例を示す模式的断面図であり、図3は該触覚センサ用前面板をタッチパネル本体の上方に積層した状態を示す模式的断面図である。図4〜図7は、それぞれ本発明の実施形態の触覚センサ用前面板の別の一例を示す模式的断面図である。
本発明の実施形態の触覚センサ用前面板1は、透明基体2上に、高抵抗層3と、絶縁層4が透明基体2側からこの順に積層されている。
触覚センサ用前面板1において、
高抵抗層3の表面抵抗値は、1〜100MΩ/□であり、
絶縁層4の透明基体2側の面S1から触覚センサ用前面板1の絶縁層4側の表面に至るまでの間を構成する層のJIS K7129 B法に基づき、温度40℃、湿度100%RHで測定される水蒸気透過度は、0.01〜1g/m2・dayである。
本明細書において、「触覚センサ用前面板1の絶縁層4側の表面」とは、触覚センサ用前面板において絶縁層側に有する最表層の表面をいい、例えば図2では、触覚センサ用前面板1の絶縁層4の表面S2を意味する。図5のように絶縁層4上にさらに撥水層7等の機能層を有する場合は、触覚センサ用前面板の絶縁層4側の表面とは、最表層を構成する機能層、例えば撥水層7の表面S3となる。
「触覚センサ用前面板1の絶縁層4側の表面」とは、言い換えれば、触覚センサ用前面板1の透明基体2側の面S4と反対側の面、すなわち、タッチパネルが配設される側の面(図3参照)と反対側の面をいう。本明細書において、触覚センサ用前面板の絶縁層側の表面を「触覚センサ用前面板の表面」ということもある。触覚センサ用前面板の表面は、パネル操作を行うユーザの指先等の感覚受容体Xにより接触される面である。図3を参照すると、絶縁層4の透明基体2側の面S1の反対側の面S2が触覚センサ用前面板の表面である。
なお、以下の説明において、上記絶縁層4の透明基体2側の面S1から触覚センサ用前面板1の絶縁層4側の表面に至るまでの間を構成する層を必要に応じてカバー層という。例えば、図2に示される触覚センサ用前面板1においては、カバー層は絶縁層4の透明基体2側の面S1と絶縁層4のこれとは反対側の面S2とで挟まれた層、すなわち絶縁層4それ自体である。また、絶縁層4の透明基体2側とは反対側の面S2上にさらに別の層が積層されている場合には、カバー層は、絶縁層4および上記で積層されたさらに別の層の全体をいう。例えば、図5に示される触覚センサ用前面板1においてカバー層は、上記絶縁層4の透明基体2側の面S1から触覚センサ用前面板1の絶縁層4側の表面、すなわち撥水層7の表面S3に至るまでの間を構成する層である。この場合、言い換えれば、カバー層は絶縁層4と撥水層7とで構成される層である。
本発明の触覚センサ用前面板においては、JIS K7129 B法に基づき、温度40℃、湿度100%RHで測定されるカバー層の水蒸気透過度は、0.01〜1g/m2・dayである。本明細書において、特に断りのない限り、水蒸気透過度とは、JIS K7129 B法に基づき、温度40℃、湿度100%RHで測定した値をいう。
ここで、本発明の触覚センサ用前面板が有する、絶縁層、または絶縁層とさらにその透明基体側とは反対側の面上に形成された撥水層等からなるカバー層について、カバー層自体の水蒸気透過度を単独で測定することは技術的に困難である。したがって、例えば、カバー層を構成する層を、水蒸気透過度が上記カバー層の規定値に比べて十分に大きい、例えば、水蒸気透過度が20g/m2/day以上のPETフィルム等の基材上に成膜し、その成膜された層側から基材側に調湿を行うことで、JIS K7129 B法に基づく測定に相当する水蒸気透過度の測定が可能である。
カバー層の水蒸気透過度が1g/m2・dayを超えると、例えば、触覚センサ用前面板1の表面を指先で摺擦したときに、触覚センサ用前面板1の表面から内部に浸入した汗等の水分が、絶縁層4内を浸透して高抵抗層3に到達しやすくなる。このようにして絶縁層4内にリークパスが形成されれば、高抵抗層3が外部雰囲気と導通するおそれがある。この場合、触覚センサ用前面板1の表面に近接させた指先等の感覚受容体Xと前面板1表面との間に働く静電気力が微弱化して、センサ精度が低下するおそれがある。
また、カバー層の水蒸気透過度が0.01g/m2・day未満とするには、成膜レートを落として、加熱成膜を行う必要があるなど、生産効率の低下を招き、結果として非常にコストが高くなってしまう。
よって、カバー層の水蒸気透過度を0.01〜1g/m2・dayとすることで、触覚センサ用前面板1の表面を指先で繰り返し摺擦しても、絶縁層4内でのリークパスの形成およびこれに伴う高抵抗層3と外部雰囲気との導通を抑制でき、優れたセンサ精度を長期間にわたって得ることができる。カバー層の水蒸気透過度は、さらに0.1〜1g/m2・dayが好ましい。
以下、触覚センサ用前面板1を構成する透明基体2、高抵抗層3および絶縁層4について説明する。
[透明基板]
透明基体2は、平滑で、可視光領域の光を透過し得るものであれば、特に限定することなく利用できる。
具体的には、例えば、無色透明なソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス(SiO2−Al2O3−Na2O系ガラス)、リチウムアルミノシリケートガラス、石英ガラス、無アルカリガラス、その他の各種ガラスからなる透明ガラス板や、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタクリレート、シクロオレフィンポリマー等から選ばれるプラスチック材料の単独の層からなるプラスチックフィルム、または上記から選ばれるプラスチック材料の層を二種以上積層してなる積層フィルム等のプラスチックフィルムを利用できる。
透明基体2としては、その高抵抗層3側の面上に直接設ける層との密着性の観点からは、ソーダライムシリケートガラス板を用いることが好ましい。また、透明基体2自体の強度の点からは、アルミノシリケートガラス板を強化処理した強化ガラス板(例えば、「ドラゴントレイル(登録商標、旭硝子社製)」等)を用いることが好ましい。
触覚センサ用前面板1の使用形態を考慮すると、透明基体2としては、ある程度の押圧力に耐え得る十分な強度が求められる。このような観点から、透明基体2としては、アルミノシリケートガラス板を強化処理した強化ガラス板、例えば化学強化処理したガラス板を用いることが好ましい。
アルミノシリケートガラス板を構成するガラス材料としては、例えば以下の組成のガラス材料が使用される。下記酸化物換算のモル%で表示した組成が、SiO2を50〜80%、Al2O3を1〜20%、Na2Oを6〜20%、K2Oを0〜11%、MgOを0〜15%、CaOを0〜6%およびZrO2を0〜5%含有するガラス材料。
アルミノシリケートガラス板を強化処理した強化ガラス板の表面には、圧縮応力層が形成されており、その圧縮応力層の厚さは好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上である。また、圧縮応力層における表面圧縮応力は、200MPa以上が好ましく、550MPa以上がより好ましい。
アルミノシリケートガラス板に対する強化処理としては、化学強化処理が好ましい。化学強化処理を施す方法として、典型的には、アルミノシリケートガラス板を、KNO3溶融塩に浸漬し、イオン交換処理した後、室温付近まで冷却する方法が挙げられる。KNO3溶融塩の温度や浸漬時間などの処理条件は、表面圧縮応力および圧縮応力層の厚さが所望の値となるように設定すればよい。
透明基体2の厚さは特に限定されないが、透明基体2を上述したガラス基板で構成する場合、0.1〜2mmが好ましく、0.3〜1mmがより好ましい。透明基体2の厚さが2mm以下の場合、触覚センサ用前面板1表面に対する押圧力が下部のパネル本体に伝達しやすくなり、操作性が良好である。透明基体2を上述したプラスチックフィルムで構成する場合、その厚さは50〜500μmが好ましく、50〜200μmがより好ましい。
なお、透明基体2は、単一の層で構成されていてもよく、複数の層から構成されていてもよい。
[高抵抗層]
高抵抗層3は、1〜100MΩ/□の表面抵抗値を有する層である。触覚センサ用前面板1は、例えば、図3に示すように、透明電極6aを備えるタッチパネル本体6と積層して用いられる。積層は、タッチパネル本体6が有する透明電極6aに、触覚センサ用前面板1の透明基体2側の面S4が対向するように行われる。このようにして、タッチパネル本体6と積層されて使用される触覚センサ用前面板1において高抵抗層3は、タッチパネル本体6の透明電極6aへの通電により、触覚センサ用前面板1側に誘起された電荷を蓄積する層として機能する。
高抵抗層3は、上記範囲の表面抵抗値を有するものであれば、その構成は特に限定されない。例えば、酸化スズおよび酸化チタンを主成分として含む層、酸化ニオブおよび酸化チタンを主成分として含む層を好適に利用できる。
酸化スズおよび酸化チタンを主成分として含む層には、スズとチタンの複合酸化物が含まれていてもよい。また、酸化ニオブおよび酸化チタンを主成分として含む層には、ニオブとチタンの複合酸化物が含まれていてもよい。
なお、本明細書において、「金属酸化物を主成分として含む層」とは、金属酸化物を50%以上の割合で含む層をいう。
高抵抗層3の表面抵抗値を1MΩ/□以上とすることで、タッチパネル本体6の透明電極6aへの通電時に、高抵抗層3と透明電極6aとが電気的に作用してタッチパネル本体6の動作が妨げられるのを防止できる。また、高抵抗層3の表面抵抗値を100MΩ/□以下とすることで、制御電圧や周波数に基づく帯電状態を正確に発現して、感覚受容体Xに所望の触覚を再現性よく発現させることができ、触覚による優れたセンサ精度が得られる。高抵抗層3の表面抵抗値は、5〜60MΩ/□とすることが好ましい。
高抵抗層3としては、酸化スズおよび酸化チタンを主成分として含む層が、良好な視感透過率、および低視感反射率を確保しつつ、その表面抵抗値を上記所望の範囲に制御しやすいため、好適に用いられる。
酸化スズおよび酸化チタンを主成分として含む層や、酸化ニオブおよび酸化チタンを主成分として含む層は、酸化スズおよび酸化チタンまたは酸化ニオブおよび酸化チタンを主成分として含み、かつ高抵抗層3としての機能を損なわない範囲で、Al、Si、Ga、In等の他の元素が含まれていてもよい。
高抵抗層3は、例えばDC(直流)スパッタリング、AC(交流)スパッタリング、RF(高周波)スパッタリング等のスパッタリングにより、ガラス基板やプラスチックフィルム等からなる透明基体2上に形成できる。これらの中でも、DCマグネトロンスパッタリングによるスパッタ法は、プロセスが安定しており、大面積への成膜が容易であるため好適に用いられる。
なお、DCマグネトロンスパッタリングには、パルス化(パルス波状に電圧を印加する)DCマグネトロンスパッタリングが含まれる。パルス化DCマグネトロンスパッタリングは、異常放電の防止に有効である。
高抵抗層3は、上述した酸化スズおよび酸化チタンを主成分として含む層のように、二以上の金属元素を含むものが、良好な光透過性を有しつつ、その表面抵抗値を上記所望の範囲に制御しやすいため好適である。このような高抵抗層3の形成には、単体の元素からなるターゲットを複数用いる、いわゆるコスパッタリングを利用できる。
例えば、酸化スズおよび酸化チタンを主成分として含む層をコスパッタリング法により形成する場合、ターゲットとしては、スズを主成分とするもの、およびチタンを主成分とするものが好適に用いられる。
スズを主成分とする金属ターゲットとしては、スズのみからなるもの、またはスズを主成分として含み、かつスズ以外の金属、例えばAl、Si等の公知のドーパントを本発明の特徴を損なわない範囲でドープしたものを利用できる。チタンを主成分とする金属ターゲットとしては、チタンのみからなるもの、またはチタンを主成分として含み、かつチタン以外の公知のドーパントを本発明の特徴を損なわない範囲でドープしたものを利用できる。
スパッタガスとしては、各種反応性ガスを利用できる。具体的には、例えば、酸素ガスおよび不活性ガスの混合ガス、酸素ガス、窒素ガスおよび不活性ガスの混合ガス等を利用できる。不活性ガスとしては、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン等の希ガスが挙げられる。これらの中でも、経済性および放電のしやすさの点から、アルゴンが好ましい。これらは、単独でまたは2種以上を混合して利用する。なお、スパッタガスには、窒素ガス(N2)以外にも、窒素原子を含むガスとしてN2O、NO、NO2、NH3等を利用できる。
スパッタガスにおける酸素ガスおよび不活性ガスや窒素原子を含むガスの分圧、ならびにスパッタガスの全圧は、特に限定されず、グロー放電が安定に行われる圧力であればよい。
スパッタリングを行う場合、電力密度は、0.9〜4W/cm2が好ましく、0.9〜3W/cm2がより好ましい。成膜時間は、成膜速度および所望の膜厚に応じて決定すればよい。
なお、コスパッタリングは、各ターゲットを同時に放電させて行うものであり、それぞれのターゲットに印加される電力密度やスパッタガスの分圧を制御することにより、所望の組成の被膜を形成できる。
なお、高抵抗層3は、例えば真空蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法、イオンプレート法等のスパッタ法以外の物理気相析出法や、プラズマCVD法等の化学気相析出法等を用いて形成できる。大面積で均一膜厚が得られやすいため、スパッタ法が好適に用いられる。
高抵抗層3が、酸化スズおよび酸化チタンを主成分として含む層である場合、高抵抗層3は、SnとTiとの合計量(100原子%)に対して、Tiを1〜30原子%含有する層が好ましく、5〜20原子%含有する層がより好ましい。また、高抵抗層3が、酸化ニオブおよび酸化チタンを主成分として含む層である場合、高抵抗層3は、NbとTiとの合計量(100原子%)に対して、Tiを90〜99.9原子%含有する層が好ましく、95〜99.9原子%含有する層がより好ましい。
高抵抗層3における、原子比率を上記範囲とすることで、高抵抗層3において、上記所望の範囲の表面抵抗値を得られやすく、また適度な屈折率を有するものにできる。
高抵抗層3の厚さは、好ましくは5nm以上100nm以下であり、より好ましくは5nm以上50nm以下であり、さらに好ましくは5nm以上30nm以下である。高抵抗層3の厚さを5nm以上とすることで、十分な電荷保持機能が得られる。また、高抵抗層3の厚さを100nm以下とすることで、より良好な視感透過率が得られる。
本明細書における各層の「厚さ」は、触針式表面粗さ測定機により測定して得られた厚さである。
なお、高抵抗層3の厚さは、スパッタリングを行う際の製膜速度や実質的な製膜時間により、適宜調整できる。
触覚センサ用前面板1において、視感透過率、視感反射率等の点で優れた光学特性を得る観点から、高抵抗層3の屈折率は、1.8〜2.5が好ましい。
ここで、本明細書において「屈折率」とは、特に断りのない限り、20℃において波長550nmの光線を用いて測定される屈折率をいう。
[絶縁層]
絶縁層4は、高抵抗層3の上面すなわち透明基体2側とは反対側の面に直接、または高抵抗層3の透明基体2側とは反対側に他の層を介して設けられる。絶縁層4は、例えば、図3に示すようにして用いた場合に、触覚センサ用前面板1の表面S2に触れる指先などの感覚受容体Xに、高抵抗層3に蓄積された電荷に基づく電流が直接流入するのを防止する役割をもつ。
なお、本明細書において、絶縁層4とは、1010Ω・cm以上の体積抵抗値を有する層をいう。ここで、体積抵抗値は、JIS C2318(1975年)に準じて測定した値である。
絶縁層4については、例えば図2、図4および図6にそれぞれ示されるように、触覚センサ用前面板1においてカバー層が絶縁層4のみで構成される場合には、その水蒸気透過度は0.01〜1g/m2・dayである。なお、例えば、図5および図7に示される触覚センサ用前面板1のように、カバー層が絶縁層4と他の層、図5および図7では撥水層7とで構成される場合には、絶縁層4自体として上記水蒸気透過度を達成しなくともよい。
絶縁層4としては、光透過性を有し、かつ電気的絶縁性、すなわち上記体積抵抗値を有する層であれば、特に限定なく利用できる。なお、触覚センサ用前面板1においてカバー層が絶縁層4のみで構成される場合は、上記水蒸気透過度を有する。
絶縁層4は、上記特性を有する限り、例えば、紫外線硬化性の有機樹脂成分等を含み、得られる硬化体で層を形成した際に絶縁層4の特性を満たすように調整された絶縁層形成用組成物(i)(以下、この組成物を「(i)絶縁層形成用組成物」とも称する。)を光により硬化させた硬化体、または熱硬化性の有機樹脂成分等を含み、得られる硬化体で層を形成した際に絶縁層4の特性を満たすように調整された絶縁層形成用組成物(ii)(以下、この組成物を「(ii)絶縁層形成用組成物」とも称する。)を熱により硬化させた硬化体からなる層であってもよい。
ここで、(i)絶縁層形成用組成物および(ii)絶縁層形成用組成物は、層を形成する際に揮発する有機溶剤のような揮発成分を含んでいてもよい。(i)絶縁層形成用組成物中、(ii)絶縁層形成用組成物中で、揮発成分以外の実際に絶縁層を形成する成分を固形分という。固形分は、硬化性の成分以外に非硬化性の成分を含んでいてもよい。したがって、(i)絶縁層形成用組成物、(ii)絶縁層形成用組成物を硬化させた「硬化体」とは、該組成物が含有する固形分のみから硬化により形成された、硬化性成分の硬化物と非硬化性成分とからなるものをいう。
絶縁層4は、有機樹脂を主成分として含む層であることが好ましい。すなわち、絶縁層4が上記のような硬化体からなる場合、該硬化体は有機樹脂を主成分として含有することが好ましい。なお、本明細書において、「有機樹脂を主成分として含む層」とは、有機樹脂を95%以上の割合で含む層をいう。
有機樹脂としては、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等から選ばれる1種または2種以上が好ましい。これらの中でも、アクリル系樹脂が特に好ましい。アクリル系樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等が挙げられる。
なお、絶縁層4に用いる有機樹脂としては、紫外線硬化性の成分の硬化物であってもよく、熱硬化性の成分の硬化物であってもよい。有機樹脂は好ましくは、紫外線硬化性の成分の硬化物である。よって、(i)絶縁層形成用組成物が含有する紫外線硬化性の成分としては、硬化して有機樹脂、特にはアクリル系樹脂となる成分が好ましい。
また、(ii)絶縁層形成用組成物が含有する熱硬化性の成分としては、硬化して有機樹脂となる成分であってもよく、オルガノシランのような硬化によりシロキサン結合による主骨格を有する硬化物を与える成分であってもよい。
絶縁層4は、また上記特性を有する限り、無機酸化物を主成分とする層であってもよい。本明細書において、「無機酸化物を主成分とする層」とは、無機酸化物を95%以上の割合で含む層をいう。
無機酸化物としては、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、タンタル酸化物、チタン酸化物、ケイ素窒化物等が挙げられる。無機酸化物を主成分とする層を形成する方法としては、スパッタ法、真空蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法、イオンプレート法等の物理気相析出法や、プラズマCVD法等の化学気相析出法等が挙げられる。製造方法の具体的態様については後述する。
絶縁層4は、上記のいずれの場合であっても、単層で構成されてもよく、2層以上の複層であってもよい。また、触覚センサ用前面板1において、視感透過率、視感反射率等の点で優れた光学特性を得る観点から、絶縁層4の屈折率は、上記のいずれの場合であっても、1.3〜1.8が好ましい。
以下、(i)絶縁層形成用組成物および(ii)絶縁層形成用組成物における含有成分ならびに該組成物を用いた絶縁層4の形成方法、および無機酸化物を主成分とする絶縁層4の形成方法について説明する。
なお、以下において(i)絶縁層形成用組成物については、硬化して有機樹脂、特にはアクリル系樹脂となる成分を含むものを例として、(ii)絶縁層形成用組成物については硬化によりシロキサン結合による主骨格を有する硬化物を与える成分を含むものを例として説明するが、これに限定されない。
((i)絶縁層形成用組成物)
(i)絶縁層形成用組成物としては、例えば以下に示す、紫外線硬化性の重合性化合物(A)(以下、「重合性化合物(A)」という。)、紫外線吸収剤(B)および光重合開始剤(C)を含むものを利用できる。
ここで、重合性化合物(A)は、紫外線硬化性を有する限りにおいて、単量体であっても、その1種以上が複数個重合した(コ)オリゴマーまたはプレ(コ)ポリマーであってもよい。
(重合性化合物(A))
重合性化合物(A)のうち少なくとも一部は、アクリロイル基またはメタクリロイル基を1分子中に2個以上有する多官能性重合性化合物(a−1)(以下、重合性化合物(a−1)という。)からなることが好ましい。以下、アクリロイル基とメタクリロイル基の両重合性官能基を意味する用語として(メタ)アクリロル基を使用する。(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等の用語も同様である。
重合性官能基としては、重合性が高いこと、特に紫外線による重合性が高いこと、からアクリロイル基が好ましい。したがって、以下の(メタ)アクリロイル基を有する化合物において好ましいものはアクリロイル基を有する化合物である。同様に(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等においてもアクリロイル基を有する化合物が好ましい。重合性官能基は、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物1分子中において、相互に異なっていてもよく(すなわち、1個以上のアクリロイル基と1個以上のメタクリロイル基を含んでいてもよい)、好ましくはすべての重合性官能基がアクリロイル基であるものである。
重合性化合物(a−1)以外の重合性化合物(A)としては、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1個有する単官能性重合性単量体(以下、「重合性化合物(a−2)」という。)や(メタ)アクリロイル基以外の紫外線硬化性の重合性官能基を1個以上有する化合物がある。
紫外線硬化性の重合性官能基が(メタ)アクリロイル基であると、紫外線硬化性が充分であり、また入手も容易であることから、重合性化合物(a−1)以外の重合性化合物(A)としては、重合性化合物(a−2)が好ましい。したがって、重合性化合物(A)としては重合性化合物(a−1)を含め実質的にすべて(メタ)アクリロイル基を有する化合物の1種以上からなることが好ましい。以下、重合性化合物(a−1)を含め重合性化合物(A)はすべて(メタ)アクリロイル基を有する化合物であるもの、すなわち硬化して得られる有機樹脂がアクリル系樹脂であるもの、として説明する。
重合性化合物(A)としては、(メタ)アクリロイル基以外に種々の官能基や結合を有する化合物であってもよい。例えば、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、ウレタン結合、エーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、アミド結合などを有していてもよい。特に、ウレタン結合を有する(メタ)アクリロイル基含有化合物(以下アクリルウレタンという)とウレタン結合を有しない(メタ)アクリル酸エステル化合物が好ましい。
重合性化合物(a−2)は通常ウレタン結合を有しない化合物であるが、重合性化合物(a−2)はウレタン結合を有しない化合物に限定されない。一方、重合性化合物(a−1)はウレタン結合を有していても有していなくてもよい。重合性化合物(a−1)1分子あたり平均の(メタ)アクリロイル基の数は、特に限定されないが、2〜50個が好ましく、特に2〜30個が好ましい。
アクリルウレタンは、(メタ)アクリロイル基および水酸基を有する化合物とイソシアネート基を有する化合物との反応、(メタ)アクリロイル基およびイソシアネート基を有する化合物と(メタ)アクリロイル基を有さず2個以上の水酸基を有する化合物(以下、「水酸基含有化合物」という。との反応、または、(メタ)アクリロイル基および水酸基を有する化合物と、2個以上のイソシアネート基を有する化合物(以下、「ポリイソシアネート」という。)と、水酸基含有化合物との反応、などにより得られる。
アクリルウレタンの原料となる上記各化合物における(メタ)アクリロイル基、水酸基およびイソシアネート基はそれぞれ1分子中に2個以上存在していてもよい。これらの反応により得られるアクリルウレタンにおいては、水酸基は存在してもよいが、イソシアネート基は存在しないことが好ましい。
なお、水酸基含有化合物としては、多価アルコールや多価アルコールに比較して高分子量のポリオール、水酸基含有ビニルポリマーなどが挙げられる。これら水酸基含有化合物は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合性化合物(a−1)として好ましいアクリルウレタンは、水酸基含有の(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートとポリイソシアネートの反応生成物が好ましい。上記(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートにおける(ポリ)ペンタエリスリトールとは、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールのようなペンタエリスリトール多量体、またはそれらを主成分とする混合物をいい、その平均の多量化度は約1〜4、特に約1.5〜3が好ましい。
また、上記(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートにおけるポリ(メタ)アクリレートとしては2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するエステルであり、1分子あたり平均約3〜6個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。このような上記アクリルウレタンの生成に用いる(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートは1分子あたり平均して約1個以上の水酸基を有する。また、この水酸基含有(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートとポリイソシアネートの反応生成物であるアクリルウレタンにおける1分子あたり平均の(メタ)アクリロイル基の数は4個以上、特に8〜20個が好ましい。
ウレタン結合を含まない重合性化合物(a−1)としては水酸基含有化合物の(メタ)アクリレートやポリエポキシドの(メタ)アクリル酸付加物が好ましい。水酸基含有化合物としては前記のような多価アルコールや高分子量ポリオールなどがある。ウレタン結合を含まない重合性化合物(a−1)の具体例としては例えば以下のような化合物がある。
以下の脂肪族多価アルコールの(メタ)アクリレート。1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、炭素数14〜15の長鎖脂肪族ジオールのジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールとトリメチロールプロパンとの縮合物からなるジオールのジ(メタ)アクリレート。
以下の芳香核またはトリアジン環を有する多価アルコールや多価フェノールの(メタ)アクリレート。ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ビスフェノールA、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ビスフェノールS、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ビスフェノールF、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート。
以下の水酸基含有化合物−アルキレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、水酸基含有化合物−カプロラクトン付加物の(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレンポリオールの(メタ)アクリレート。以下において、EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキシドを表し、[ ]内はポリオキシアルキレンポリオールの分子量を表す。トリメチロールプロパン−EO付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン−PO付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール−カプロラクトン付加物のヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート−カプロラクトン付加物のトリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール[200〜1000]ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール[200〜1000]ジ(メタ)アクリレート。
下記(メタ)アクリロイル基を有するカルボン酸エステルやリン酸エステル。ビス(アクリロイルオキシネオペンチルグリコール)アジペート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート。
下記ポリエポキシドの(メタ)アクリル酸付加物(ただし、ポリエポキシドのエポキシ基1個あたり1分子の(メタ)アクリル酸が付加したもの)、およびグリシジル(メタ)アクリレートと多価アルコールもしくは多価カルボン酸との反応生成物(ただし、多価アルコール等の1分子あたりグリシジル(メタ)アクリレート2分子以上反応したもの)。ビスフェノールA−ジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、ビニルシクロヘキセンジオキシド−(メタ)アクリル酸付加物、ジシクロペンタジエンジオキシド−(メタ)アクリル酸付加物、グリシジル(メタ)アクリレートとエチレングリコールの反応生成物、グリシジル(メタ)アクリレートとプロピレングリコールの反応生成物、グリシジル(メタ)アクリレートとジエチレングリコールの反応生成物、グリシジル(メタ)アクリレートと1,6−ヘキサンジオールの反応生成物、グリシジル(メタ)アクリレートとグリセロールの反応生成物、グリシジル(メタ)アクリレートとトリメチロールプロパンの反応生成物、グリシジル(メタ)アクリレートとフタル酸の反応生成物。
上記のような(メタ)アクリレート類でかつ未反応の水酸基を有している化合物のアルキルエーテル化物である、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート。上記のような(メタ)アクリレート類でかつ未反応の水酸基を有している化合物のアルケニルエーテル化物、カルボン酸エステル化物等も「変性」の用語について同様に準ずる下記のような化合物。ビニルシクロヘキセンジオキシド−(メタ)アクリル酸付加物のアリルエーテル化物、ビニルシクロヘキセンジオキシド−(メタ)アクリル酸付加物のメチルエーテル化物、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート。
ウレタン結合を含まず2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するポリエステルである重合性化合物(a−1)として好ましいものは、前記したような(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートである。この(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートは1分子あたり平均2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、また水酸基は有していても有していなくてもよい。また、(ポリ)ペンタエリスリトール部分の多量化度は約1〜4が好ましく、特に1.5〜3が好ましい。さらに好ましい(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートは、(ポリ)ペンタエリスリトールの実質的にすべての水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基に変換された(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートである。
重合性化合物(a−2)である単官能性重合性単量体としては、水酸基、エポキシ基などの官能基を有していてもよい。好ましい単官能性化合物は(メタ)アクリル酸エステル、すなわち(メタ)アクリレートである。
具体的な単官能性化合物としては例えば以下の化合物が挙げられる。メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物。
重合性化合物(a−1)は2種以上を併用することが好ましい場合が多い。そのうち1種以上の重合性化合物(a−1)は(メタ)アクリロイル基を2〜3個有する化合物であり、他の1種以上はそれに比較して多数の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。前者の重合性化合物(a−1)は(メタ)アクリロイル基を2個有する化合物が好ましい。
重合性化合物(A)中における重合性化合物(a−1)の合計の割合は20〜100質量%が好ましく、特に50〜100質量%が好ましく、さらには70〜100質量%が好ましい。重合性化合物(a−1)の割合がこの範囲にあると耐擦傷性が充分となる。
(紫外線吸収剤(B))
紫外線吸収剤(B)の一部または全部は重合性紫外線吸収剤(b−1)からなる。紫外線吸収剤(B)の量が少ない場合は通常その全量が重合性紫外線吸収剤(b−1)からなる。(i)絶縁層形成用組成物における、重合性化合物(A)100質量部に対する重合性紫外線吸収剤(b−1)の割合は0.1質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。その上限は50質量部が好ましく、30質量部がより好ましい。
この重合性紫外線吸収剤(b−1)を使用することにより、(i)絶縁層形成用組成物中に比較的多量の紫外線吸収剤(B)を配合しても紫外線吸収剤(B)の表面へのブリードや耐擦傷性等の著しい低下を伴わないという効果が発揮される。
重合性紫外線吸収剤(b−1)としては、以下に述べる重合性ベンゾフェノン系化合物および重合性ベンゾトリアゾール系化合物から選ばれる1種以上を利用できる。
紫外線吸収剤(B)として重合性紫外線吸収剤(b−1)以外の紫外線吸収剤を併用しうるが、多量に使用することは好ましくない。重合性紫外線吸収剤(b−1)以外の紫外線吸収剤としては、非重合性の紫外線吸収剤(以下、「紫外線吸収剤(b−2)」という。)がある。
紫外線吸収剤(B)における重合性紫外線吸収剤(b−1)以外の紫外線吸収剤の割合は、特に限定されないが、全紫外線吸収剤(B)中0〜80質量%、特に0〜50質量%が好ましい。(i)絶縁層形成用組成物における、重合性紫外線吸収剤(b−1)以外の紫外線吸収剤の含有量としては、重合性化合物(A)100質量部に対して20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
(i)絶縁層形成用組成物における、紫外線吸収剤(B)全体の含有量は重合性化合物(A)100質量部に対して好ましくは0.1〜50質量部であり、より好ましくは1〜30質量部である。得られる硬化体からなる層、すなわち絶縁層の厚さによっても変化するが、0.1質重量部以上の場合、絶縁層自身の耐候性が良好であり、50重量部以下の場合その全量が重合性紫外線吸収剤(b−1)のみからなっていても塗膜の硬化性が良好であり物性に優れる。
重合性ベンゾフェノン系化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する有機基(以下、「(メタ)アクリロイル含有基」という。)の1個以上と、ベンゾフェノン骨格の1個以上を有する化合物である。重合性ベンゾフェノン系化合物は、(メタ)アクリロイル含有基以外にベンゾフェノン骨格の2つのベンゼン環の少なくとも一方に1個以上の水酸基を有することが好ましい。この水酸基は(メタ)アクリロイル含有基が結合したベンゼン環に存在していてもよく、他のベンゼン環に存在していてもよい。この水酸基はベンゾフェノン骨格の2位に存在することが好ましい。
重合性ベンゾフェノン系化合物において、(メタ)アクリロイル含有基は通常1個存在する。しかし(メタ)アクリロイル含有基は2個以上存在してもよくその場合2つのベンゼン環の一方のみに存在していてもよく両方のベンゼン環に存在していてもよい。上記水酸基は(メタ)アクリロイル含有基が存在するベンゼン環に存在していることが好ましい。また2個のベンゼン環には(メタ)アクリロイル含有基と水酸基以外に他の置換基が1個以上存在していてもよく、その置換基としてはアルキル基などの炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子などが好ましい。炭化水素基やアルコキシ基の炭素数は6以下が好ましい。
(メタ)アクリロイル含有基は(メタ)アクリロイルオキシ基や下記式(1)で表される有機基が好ましい。
−X1−R1−X2−CO−CR=CH2 …(1)
式(1)において、Rは水素原子またはメチル基を表し、X1は酸素原子、−OCONH−、−OCH2CH(OH)−または単結合を表し、R1は2価の炭化水素基を表し、X2は酸素原子、−O−(−COCH2CH2O−)k−(kは1以上の整数)、−NH−、またはCH(OH)CH2O−を表す。好ましくは、Rは水素原子、X1は酸素原子または単結合、R1は炭素数1〜6のアルキレン基、X2は酸素原子である。
好ましい(メタ)アクリロイル含有基は、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、((メタ)アクリロイルオキシ)アルコキシ基であり、後2者の(メタ)アクリロイルオキシ基部分以外の炭素数は2〜4が好ましい。
好ましい重合性ベンゾフェノン系化合物はヒドロキシフェニル基に(メタ)アクリロイル含有基を有する2−ヒドロキシベンゾフェノン類である。この化合物は、下記式(2)で表される。下記式(2)において、Aは上記のような(メタ)アクリロイル含有基を表し、R2、R3は上記のような(メタ)アクリロイル含有基以外の置換基を表す。
具体的な重合性ベンゾフェノン系化合物の例としては以下の化合物がある。2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキ−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン。
重合性ベンゾトリアゾール系化合物としては、1個以上の(メタ)アクリロイル基と1個以上のベンゾトリアゾール環を有する化合物が好ましい。通常、紫外線吸収能を有するベンゾトリアゾール系化合物はベンゾトリアゾール環の2位に1つのベンゼン環が結合している骨格すなわち、2−フェニルベンゾトリアゾールを骨格とし、さらにこのフェニル基の2位に水酸基を有する。
重合性ベンゾトリアゾール系化合物においては、このような2−フェニルベンゾトリアゾールを骨格とし、かつそのフェニル基の2位に水酸基を有するものが好ましい。(メタ)アクリロイル含有基はベンゾトリアゾール環の4〜8位に存在していてもよく、好ましくはフェニル基の3〜6位に存在する。また(メタ)アクリロイル含有基は2個以上存在していてもよく好ましくは1個存在する。
ベンゾトリアゾール環の4〜8位およびフェニル基の3〜6位の(メタ)アクリロイル含有基の存在しない位置には置換基が1個以上存在していてもよく、その置換基としてはアルキル基などの炭化水素基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子などが好ましい。炭化水素基やアルコキシ基の炭素数は6以下が好ましい。
(メタ)アクリロイル含有基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基や上記式(1)で表される有機基が好ましい。より好ましい(メタ)アクリロイル含有基は、上記と同様に、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、((メタ)アクリロイルオキシ)アルコキシ基であり、後2者の(メタ)アクリロイルオキシ基部分以外の炭素数は2〜4が好ましい。
好ましい重合性ベンゾトリアゾール系化合物は2−ヒドロキシフェニル基に(メタ)アクリロイル含有基を有する2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類である。この化合物は下記式(3)で表される。下記式(3)において、Aは前記のような(メタ)アクリロイル含有基を表し、R4、R5は上記のような(メタ)アクリロイル含有基以外の置換基を表す。
具体的な重合性ベンゾトリアゾール系化合物としては以下の化合物がある。2−{2−ヒドロキシ−5−((メタ)アクリロイルオキシ)フェニル}ベンゾトリアゾール、2−{2−ヒドロキシ−3−メチル−5−((メタ)アクリロイルオキシ)フェニル}ベンゾトリアゾール、2−{2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−((メタ)アクリロイルオキシ)フェニル}ベンゾトリアゾール、2−{2−ヒドロキシ−5−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)フェニル}ベンゾトリアゾール、2−{2−ヒドロキシ−5−(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)フェニル}ベンゾトリアゾール、2−{2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)フェニル}ベンゾトリアゾール。
2−{2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)フェニル}ベンゾトリアゾール、2−{2−ヒドロキシ−3−メチル−5−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)フェニル}ベンゾトリアゾール、2−{2−ヒドロキシ−3−メチル−5−(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)フェニル}ベンゾトリアゾール、2−{2−ヒドロキシ−5−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)フェニル}−5−クロロベンゾトリアゾール、2−{2−ヒドロキシ−5−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)フェニル}−5−メチルベンゾトリアゾール、2−{2−ヒドロキシ−5−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニル)エチル)フェニル}ベンゾトリアゾール、2−{2−ヒドロキシ−5−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル}ベンゾトリアゾール、2−{2−ヒドロキシ−5−(2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)フェニル}ベンゾトリアゾール。
紫外線吸収剤(b−2)としては、市販されている公知または周知の紫外線吸収剤を使用できる。そのような紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、フェニルトリアジン系紫外線吸収剤などがある。具体的には例えば以下のような化合物がある。
オクチル3−{3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル}プロピオネート、2−(3,5−ジーt−ペンチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、p−t−ブチルフェニルサリシレート。
(光重合開始剤(C))
光重合開始剤(C)としては、アリールケトン系光重合開始剤(例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アルキルアミノベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール類、ベンゾイルベンゾエート類、α−アシロキシムエステル類など)、含硫黄系光重合開始剤(例えば、スルフィド類、チオキサントン類など)、アシルホスフィンオキシド類(例えばアシルジアリールホスフィンオキシドなど)、その他の光重合開始剤がある。光重合開始剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、光重合開始剤はアミン類などの光増感剤と組み合わせても使用できる。具体的な光重合開始剤としては以下のような化合物がある。
4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルホリノプロパン−1−オン。
ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、9,10−フェナントレンキノン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2−エチルアントラキノン、4’,4”−ジエチルイソフタロフェノン、α−アシロキシムエステル、メチルフェニルグリオキシレート。
4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド。
(i)絶縁層形成用組成物における光重合開始剤(C)の含有量は重合性化合物(A)100質量部に対し、0.1〜20質量部が好ましい。
(その他の成分)
(i)絶縁層形成用組成物は、紫外線照射による重合性成分の重合の度合いを調整する目的で、必要に応じて、ハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤の適量を含有してもよい。
(i)絶縁層形成用組成物には、必要に応じて、アクリル系(共)重合体等の高分子量化合物、酸化防止剤、光安定剤、熱重合防止剤などの安定剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、顔料分散剤、防曇剤などの界面活性剤類、近赤外線吸収剤等を適宜配合して用いてもよい。
(i)絶縁層形成用組成物に、例えば、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系(共)重合体を配合することにより、得られる硬化体からなる絶縁層の密着性を高めたり、塗膜のレベリング性を高めたりすることができる。(i)絶縁層形成用組成物における、アクリル系(共)重合体等の高分子量化合物の含有量は、単量体(A)100質量部に対して20質量部以下が好ましい。
(i)絶縁層形成用組成物には、さらに、得られる硬化体からなる絶縁層の耐擦傷性をより向上させる目的でコロイダルシリカ(D)を配合してもよい。コロイダルシリカ(D)は、水やメタノール等からなる分散媒中にコロイド状に分散した無水ケイ酸の超微粒子であり、コロイダルシリカ(D)の平均粒径は通常1〜1000nm程度であり好ましくは平均粒径1〜200nm、特に好ましくは平均粒径1〜50nmである。
なお、コロイダルシリカ(D)は、分散安定性を向上させるために粒子表面を加水分解性シラン化合物の加水分解物で修飾されたもの、すなわち、コロイダルシリカ粒子の表面の一部または全部のシラノール基にシラン化合物の加水分解物が縮合反応により結合、保持され、表面特性が改質されたものを利用できる。
(i)絶縁層形成用組成物にコロイダルシリカ(D)を配合する場合、その配合量(固形分)は重合性化合物(A)100質量部に対し500質量部以下、特に300質量部以下が好ましい。コロイダルシリカ(D)を配合する場合、重合性化合物(A)100質量部に対し0.1質量部以上配合することにより、その配合した効果が発揮される。
また、(i)絶縁層形成用組成物には、紫外線吸収剤(B)以外に光に対する安定性を向上させるために光安定剤を配合することも好ましい。光安定剤としてはヒンダードアミン系光安定剤、特に2,2,6,6−テトラメチルピペリジン残基を有するヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。具体的には例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバセート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバセート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバセート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)などがある。(i)絶縁層形成用組成物に、光安定剤を配合する場合、その配合量は重合性化合物(A)100質量部に対し10質量部以下、特に5質量部以下が好ましい。
また、絶縁層4に撥水性を付与するため、(i)絶縁層形成用組成物に、下記式(4)で表される含フッ素重合性単量体(e−1)を撥水性単量体(E)として配合してもよい。
CH2=C(R6)COOX3Rf …(4)
(式中、R6は、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基、X3は炭素数1〜6の2価の有機基を示し、Rfは、炭素数4〜6のパーフルオロアルキル基を示す。)
上記式(4)で表される含フッ素重合性単量体(e−1)の例としては、以下が挙げられる。
CH2=C(R6)COOR7Rf
CH2=C(R6)COOR7NR8SO2Rf
CH2=C(R6)COOR7NR8CORf
CH2=C(R6)COOCH2CH(OH)R9Rf
ここで、R7は炭素数1〜6のアルキレン基を、R8は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を、R9は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基を示す。
上記式(4)においてX3は、入手の容易さから、炭素数2〜4のアルキレン基が好ましい。
上記式(4)で表される含フッ素重合性単量体(e−1)の具体例としては、パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記式(4)で表される単量体は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
Rfが炭素数4〜6のパーフルオロアルキル基であることにより、含フッ素重合性単量体(e−1)は、重合性化合物(A)等の他の成分との相溶性が良好であり、(i)絶縁層形成用組成物の塗膜を硬化させたときにその重合体同士が凝集することがない。したがって、硬化体としての絶縁層4が白濁することなく外観が良好であり、絶縁層4とその下層(例えば、高抵抗層3)との密着性が高くなる。Rfが炭素数4以上のパーフルオロアルキル基の場合、絶縁層4の撥水性が良好である。一方、Rfが炭素数6以下のパーフルオロアルキル基の場合、塗膜を硬化させたときに硬化体である絶縁層4が白濁せず、絶縁層4とその下層(例えば、高抵抗層3)との密着性が良好である。
さらに、(i)絶縁層形成用組成物には、塗膜の塗工性や、高抵抗層3などの下層との密着性を向上させる目的で有機溶剤を配合してもよい。有機溶剤としては、重合性化合物(A)、紫外線吸収剤(B)、光重合開始剤(C)、およびその他の添加剤の溶解性に問題がなければ特に限定されず、上記性能を満足させるものであればよい。また、単独で使用してもよく、2種以上の有機溶剤を併用してもよい。(i)絶縁層形成用組成物における、有機溶剤の含有量は、重合性化合物(A)に対して100倍質量以下、特に50倍質量以下が適当である。
有機溶剤としては例えば低級アルコール類、ケトン類、エーテル類、セロソルブ類などの有機溶剤がある。そのほか、n−ブチルアセテート、ジエチレングリコールモノアセテートなどのエステル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類なども使用できる。
(i)絶縁層形成用組成物の硬化体からなる絶縁層4は、透明基体2上に高抵抗層3を有する積層体の高抵抗層3側の表面、例えば、図2に示す触覚センサ用前面板1の場合においては、高抵抗層3の上面に、上記各成分を含む(i)絶縁層形成用組成物をスピンコート法、ディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法等の方法で塗布し、紫外線を照射して硬化させることで形成できる。なお、(i)絶縁層形成用組成物が有機溶剤を含む場合は、高抵抗層3を有する積層体の上層に塗布し、乾燥させた後、紫外線照射を行えばよい。
例えば、スピンコート法を適用して(i)絶縁層形成用組成物の塗布を行う場合、透明基体2上に高抵抗層3を有する積層体の高抵抗層3側の表面に、(i)絶縁層形成用組成物を滴下した後、当該積層体を載置固定するステージを所定の回転数で回転させることで、積層体の高抵抗層3側の表面に、(i)絶縁層形成用組成物の均一な塗膜を形成することができる。塗膜の膜厚は、硬化後に得られる絶縁層が上記本発明の範囲の膜厚となるように、上記において(i)絶縁層形成用組成物の滴下量やステージの回転数を適宜選択することで、調整される。
具体的には、例えば、透明基体2上に高抵抗層3を有する積層体の上記塗布面への(i)絶縁層形成用組成物の滴下量を、約1cm3程度とした場合、積層体が載置されたステージの回転を、初期回転数を200〜2000rpmで10〜15秒程度、その後最大回転数を2000〜3000rpmで0.1〜1.0秒程度行うことが好ましい。
なお、(i)絶縁層形成用組成物が有機溶媒を含む場合、塗膜形成後の積層体を、例えば100〜150℃の温度範囲で10分程度保持して、有機溶媒を除去することが好ましい。
紫外線照射に用いる紫外線光源としては、キセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ等が挙げられる。
紫外線照射の照射時間、照射強度は、重合性化合物(A)の種類、紫外線吸収剤(B)の種類、光重合開始剤(C)の種類、被膜厚、紫外線光源等の条件により適宜変更できる。通常は1〜60秒程度照射することにより目的が達成される。さらに硬化反応を完結させる目的で、紫外線照射後加熱処理することもできる。
紫外線照射の照射時間、照射強度は、例えば、照射光のエネルギー積算値が500〜2000mJ/cm2程度、照射強度のピーク値が100〜500mW/cm2となるように、適宜調整して行うことが好ましい。
上記のような(i)絶縁層形成用組成物を、上述した例えば金属酸化物を主成分として含む高抵抗層3の上面に塗布、硬化させて絶縁層4を形成する場合には、高抵抗層3と絶縁層4との密着性を高めるため、高抵抗層3上面に、樹脂成分との密着性を高めるための表面処理(以下、密着処理ともいう。)を施した上で(i)絶縁層形成用組成物を塗布することが好ましい。
密着性向上のための密着処理には、例えば、以下に挙げるシラン系カップリング剤を利用できる。
例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、および3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランが密着処理に用いるシラン系カップリング剤として挙げられる。
上記のシラン系カップリング剤を低級アルコール類、ケトン類、エーテル類、セロソルブ類などの有機溶剤と混合してなる組成物を、高抵抗層3の上面にスピンコート法、ディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法等の方法で塗布し、乾燥させることで、密着処理ができる。
例えば、スピンコート法を適用して高抵抗層3の上面の密着処理を行う場合、透明基体2上に高抵抗層3を有する積層体を準備し、その高抵抗層3の上面上に、上述したシラン系カップリング剤を含む組成物を滴下した後、当該積層体を載置固定するステージを所定の回転数で回転させることで、積層体が有する高抵抗層3の上面上にシラン系カップリング剤を含む組成物の薄膜を形成し、密着処理を行うことができる。
具体的には、例えば、シラン系カップリング剤を含む組成物の高抵抗層3上面への滴下量を、約1cm3程度とした場合、積層体が載置されたステージの回転を、初期回転数を500rpm〜1500rpmで5〜15秒程度、その後最大回転数を1500rpm〜2500rpmで0.1〜1.0秒の回転時間で行うことが好ましい。
なお、密着処理に用いた組成物が有機溶媒を含む場合、密着処理後の積層体を、100〜150℃で30分間程度保持して、当該有機溶媒を除去することが好ましい。
((ii)絶縁層形成用組成物)
(ii)絶縁層形成用組成物としては、熱硬化後に光透過性を有する硬化体を得られるものであれば、特に限定されないが、例えば、コロイダルシリカ(f−1)および次式(5)で示されるオルガノアルコキシシランの部分縮合物(f−2)からなる固形成分を含む水性/有機溶剤分散物(F)を含有してなるものを好適に利用できる。なお、水性/有機溶剤分散物とは、水性媒体および/または有機溶媒に固形成分が分散した態様をいう。
オルガノアルコキシシランとしては、例えば下記式(5)で示されるものを利用できる。
(R10)aSi(OR11)4−a …(5)
(式(5)中、R10は炭素数1〜6の一価炭化水素基、R11は炭素数1〜6の一価炭化水素基または水素基であり、aは0〜2の整数である)
R10、R11は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
上記式(5)の範囲内に包含されるオルガノアルコキシシランは、好ましくはメチルトリメトキシシラン、メチルトリヒドロキシシラン、またはそれらの混合物であり、これらは部分縮合物(f−2)を形成し得るものである。上記以外に、式(5)の範囲内に包含されるオルガノアルコキシシランとしては、例えば、テトラエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、およびジメチルジメトキシシランが挙げられる。
水性/有機溶剤分散物(F)としては、例えば、Clarkの米国特許第3,986,997号明細書に示されているものを利用できる。
水性/有機溶剤分散物(F)としては、上述したものの他に、例えば、米国特許第3,986,997号、同第4,624,870号、同第4,680,232号および同第4,914,143号明細書に示されているものを利用できる。
水性/有機溶剤分散物(F)は、具体的には、メチルトリメトキシシランのようなトリアルコキシシランを、コロイダルシリカの水性/有機溶剤分散物添加することによって製造できる。このようなコロイダルシリカの水性/有機溶剤分散物としては、例えば「ルドックス(Ludox)HS」(デュポン社製)や、「ナルコ(Nalco)」1034A(ナルコ・ケミカル社(Nalco Chemical Co.)製、「OSCAL」(商品名、触媒化成工業株式会社製)、「オルガノシリカゾル」(商品名、日産化学工業株式会社製))などが挙げられる。
コロイダルシリカ(f−1)の水性/有機溶剤分散物としては、例えば、Ubersaxの米国特許第4,177,315号明細書に示されているものを利用できる。
オルガノアルコキシシランの部分縮合物(f−2)は、好ましくは、オルガノアルコキシシランの様々な部分縮合物の混合物からなる。
水性/有機溶剤分散物(F)自体(すなわち、コロイダルシリカ(f−1)とオルガノアルコキシシランの部分縮合物(f−2)との組合せ)は、通常、固形分約10質量%〜50質量%であり、好ましくは固形分約15質量%〜25質量%である。
(ii)絶縁層形成用組成物は、一般に、塗布される面、例えば高抵抗層3の透明基体2側と反対側の面に対する接着性を向上させるため、上記のようなオルガノアルコキシシラン、コロイダルシリカ(f−1)および十分量のアルコールを含む水性/有機溶剤分散物(F)に、接着促進剤(G)を混合することが好ましい。
(接着促進剤(G))
接着促進剤(G)としては、例えば、米国特許第5411807号に記載されている(メタ)アクリレートエステルを用いることができる。(メタ)アクリレートエステルとしては、具体的には、例えば、ユニオン・カーバイド・コーティング・レジンズ(Union Carbide Coating Resins)社からToneモノマーとして市販されているものを接着促進剤(G)として用いることができる。
(メタ)アクリレートエステルとしては、例えば、カプロラクトン(メタ)アクリレートを、接着促進剤(G)として好適に用いることができる。
(メタ)アクリレートエステルは、通常、樹脂固形分100質量部を基準として、約1質量部〜20質量部の量で用いられる。(メタ)アクリレートエステルは、好ましくは、樹脂固形分100質量部を基準として、約3質量部〜8質量部の量で用いることがよい。
接着促進剤(G)としては、上記以外のものとして、ポリエステルポリオールを利用できる。ポリエステルポリオールとしては、例えば、米国特許第5349002号に記載されているカプロラクトン系ポリエステルポリオールを利用できる。
カプロラクトン系ポリエステルポリオールの多くは二官能性または三官能性であり、例えば、ユニオン・カーバイド社からToneポリオールとして市販されているものを利用できる。具体的には、例えば、「Tone 0200ジオール」(商品名、ユニオン・カーバイド社製)、「Tone 0301トリオール」(商品名、ユニオン・カーバイド社製)、「Tone 0310トリオール」(商品名、ユニオン・カーバイド社製)等を利用できる。
なお、Toneポリオールとして市販されているもので、上記のものと分子量、ヒドロキシ価、融点、粘度などが異なる種々のものを、接着促進剤(G)として用いることも可能である。
カプロラクトン系ポリエステルポリオール以外のポリエステルポリオールとしては、ウレタン変性ポリエステルポリオールまたはシリコーン変性ポリエステルポリオールを利用できる。
ポリエステルポリオールは、通常、樹脂固形分100質量部を基準として、約1質量部〜10質量部の量で利用できる。
接着促進剤(G)としては、上記以外のものとして、アクリルウレタンを利用できる。アクリルウレタンとしては、例えば米国特許第5503935号に記載のものを利用できる。アクリルウレタンは、通常、約400〜1500の範囲内の分子量を有しており、一般に、半固体または粘稠な性質を有し、シリコーン分散液に直接添加できる。
アクリルウレタンとしては、具体的には、例えば、アクリル系として「Actilane CB−32」(商品名、SNPEシミー (SNPE Chimie)社(フランス)製)、「Ebecryl 8804」(商品名、ラドキュア・スペシャルティーズ(Radcure Specialties) 社(ケンタッキー州ルーイビル)製)等、メタクリル系として「M−407」(商品名、エコー・レジンズ・アンド・ラボラトリ(Echo Resins & Laboratory)社製)等の市販品を用いることができる。なお、「M−407」は、イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルメタクリレートとの付加物であり、約482の分子量を有するものである。
アクリルウレタンは、通常、樹脂固形分100質量部を基準として約1質量部〜15質量部の量で利用できる。
接着促進剤(G)としては、上記以外のものとして、反応性部位または相互作用性部位を有する数平均分子量約1000〜約10000のアクリル系共重合体(g−1)を利用できる。アクリル系共重合体(g−1)(通常、熱硬化性のものである)としては、例えば米国特許第5503935号に記載されているものを利用でき、これらは水性/有機溶剤分散物(F)に直接添加できる。
好ましいアクリル系共重合体(g−1)は、反応性部位または相互作用性部位として、ヒドロキシル基を有しており、約30〜160の範囲内のヒドロキシ価、約4未満の酸価および約1000〜10000の数平均分子量を有する。
アクリル系共重合体(g−1)としては、例えば、Mark他著の「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, Vol.4(John Wiley & Sons発行,1986)」374〜375頁に記載されているものを利用でき、これらは各種コモノマーのラジカル重合で合成できる。
アクリル系共重合体(g−1)は、K.J. Saunders著の「OrganicPolymer Chemistry(Chapman Hall(ロンドン)発行,1973)」に記載されているように、複数種のモノマーを用いることで、共重合体が、適当な性質を組み合わせて有するものとできる。
例えば、アクリロニトリルやメチルメタクリレートのような単量体を用いた場合、一般には、アクリル系共重合体(g−1)には硬さが与えられ、エチルアクリレートや2−エチルヘキシルアクリレートのような単量体を用いた場合、アクリル系共重合体(g−1)には柔軟性が与えられる。さらに、ジメチルアミノエチルメタクリレートやアクリル酸のような単量体を用いることで、通常、重合に適した反応性部位が与えられる。
接着促進剤(G)としてのアクリル系共重合体(g−1)は、アミノ基、カルボキシル基、アミド結合、エポキシ基、ヒドロキシル基またはアシルオキシ基を含んでいてもよい。
アクリル系共重合体(g−1)としては、具体的には、例えば、アクリル系ポリオール「Joncryl(商標)」(商品名、BASF社製)、アクリロイドアクリル樹脂(ローム・アンド・ハース社(Rohm and Haas Company)製)を接着促進剤(G)として利用できる。
米国特許第5503935号に記載されているとおり、アクリル系共重合体(g−1)としては、ヒドロキシアルキルアクリレート系の共重合体が、シラノールとの反応性部位または相互作用部位を有するため好ましい。アクリル系共重合体(g−1)は、例えば、Kamath他著の論文「Journal of Coating Technology, Vol.59, No.746(March, 1987)」51〜56頁に記載された方法を用いて製造したものを、接着促進剤(G)の好適なものとして利用できる。
アクリル系共重合体(g−1)は、通常、樹脂固形分100質量部を基準として、約1質量部〜15質量部の量で利用できる。
水性/有機溶剤分散物(F)の製造には、例えば炭素数1〜4のアルコール、たとえばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール;グリコールおよびグリコールエーテル、たとえばプロピレングリコールメチルエーテル等の有機溶媒、およびこれらの混合物を好適に利用できる。
(ii)絶縁層形成用組成物を、上記のような水性/有機溶剤分散物(F)を含んでなるものとする場合、(ii)絶縁層形成用組成物は、コロイダルシリカ(f−1)を10〜70質量%および式(5)で示されるオルガノアルコキシシランの部分縮合物(f−2)30〜90質量%からなる固形成分を、10〜50質量%の割合で含む水性/有機溶剤分散物(F)100部に対し、アクリル系ポリオールからなる接着促進剤(G)を1〜10部含有してなるものが好ましい。
(ii)絶縁層形成用組成物に配合する紫外線吸収剤(J)としては、オルガノアルコキシシランと共反応し、かつ加熱硬化工程中に殆ど揮発しないものが好適である。紫外線吸収剤(J)としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−(3−(トリメトキシシリル)プロポキシ)ベンゾフェノン、(2−ヒドロキシ−4−(3−(トリエトキシシリル)プロポキシ)ベンゾフェノンまたはそれらの混合物が好適である。紫外線吸収剤(J)は、(ii)絶縁層形成用組成物に対し、0.1〜20質量%の濃度で配合できる。
(ii)絶縁層形成用組成物には、遊離基開始剤、立体障害アミン型光安定剤、酸化防止剤、染料、流動性改良剤および均展剤または表面滑剤のような他の添加剤を配合してもよい。
(ii)絶縁層形成用組成物には、硬化時間を短縮するため、触媒として、例えばテトラ−n−ブチルアンモニウムアセテート(TBAA)またはテトラ−n−ブチルアンモニウムホルメートのようなテトラブチルアンモニウムカルボキシレート触媒を配合してもよい。
(ii)絶縁層形成用組成物の硬化体からなる絶縁層4は、透明基体2上に高抵抗層3を有する積層体の高抵抗層3側の表面、例えば、図2に示す触覚センサ用前面板1の場合においては、高抵抗層3の上面に、上記各成分を含む上記(ii)絶縁層形成用組成物をスピンコート法、ディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法等のような周知の任意の塗布方法によって塗布した後、100〜150℃で30〜90分程度加熱するか、または赤外線またはマイクロ波エネルギーを用いて加熱、硬化させることで形成できる。
例えば、スピンコート法を適用して(ii)絶縁層形成用組成物の塗布を行う場合、透明基体2上に高抵抗層3を有する積層体の高抵抗層3側の表面に、(ii)絶縁層形成用組成物を滴下した後、当該積層体を載置固定するステージを所定の回転数で回転させることで、積層体の高抵抗層3側の表面に、(ii)絶縁層形成用組成物の均一な塗膜を形成することができる。塗膜の膜厚は、硬化後に得られる絶縁層が上記本発明の範囲の膜厚となるように、上記において(ii)絶縁層形成用組成物の滴下量やステージの回転数を適宜選択することで、調整される。
積層体を載置固定するステージの回転は、具体的には、例えば、透明基体2上に高抵抗層3を有する積層体の上記塗布面への(ii)絶縁層形成用組成物の滴下量を、約1cm3とした場合、初期回転数を100〜300rpmで10〜15秒程度、その後最大回転数を1500〜2500rpm程度で0.1〜1.0秒の回転時間で行うことが好ましい。
絶縁層4を、上記のような(ii)絶縁層形成用組成物を硬化させてなる層とすることで、絶縁層4の形成速度が高められ、触覚センサ用前面板1の製造の効率を高めることができる。
上記のような(i)絶縁層形成用組成物、または(ii)絶縁層形成用組成物を硬化させてなる層からなる絶縁層4は、単層であってもよく、2層以上の複層からなるものであってもよい。
絶縁層4を、絶縁層形成用組成物の硬化体からなる層とした場合、その厚さは、好ましくは0.5μm以上100μm以下であり、より好ましくは1μm以上50μm以下であり、さらに好ましくは5μm以上10μm以下である。
絶縁層形成用組成物の硬化体からなる絶縁層4の厚さを0.5μm以上とすることで、触覚センサ用前面板1表面から浸入した水分が高抵抗層3に到達しにくくなり、絶縁層4内でのリークパスの形成を抑制できる。すなわち、絶縁層4を介して外部雰囲気と導通しにくくなるため、触覚センサ感度の低下が抑制された触覚センサ用前面板1とできる。また、絶縁層形成用組成物の硬化体からなる絶縁層4の厚さを0.5μm以上とすることで、絶縁層4において十分な耐摩耗性や耐候性を得ることができる。
一方、絶縁層形成用組成物の硬化体からなる絶縁層4の厚さを100μm以下とすることで、十分な触覚センサ感度を得ることができる。同時に、絶縁層4の深部においても硬化が十分に進行するために、優れた光透過性を確保でき、また触覚センサ用前面板1において適度な曲げ強度を得るので好ましい。
本発明の触覚センサ用前面板においてカバー層の水蒸気透過度は、0.01〜1g/m2・dayである。したがって、カバー層が絶縁層のみで構成される場合、絶縁層の水蒸気透過度は0.01〜1g/m2・dayとされる。絶縁層を上に説明した絶縁層形成用組成物の硬化体からなる層とする場合、得られる絶縁層の水蒸気透過度は、用いる絶縁層形成用組成物の組成と膜厚により調整される。なお、上記(i)絶縁層形成用組成物または(ii)絶縁層形成用組成物の硬化体からなる絶縁層であれば、上記膜厚とした場合に、該層の水蒸気透過度を、0.01〜1g/m2・dayとすることができる。
ただし、上記絶縁層形成用組成物の硬化体からなる絶縁層が上記水蒸気透過度の上限を超える場合には、例えば、絶縁層の透明基体側とは反対側に後述する撥水層等の水蒸気の透過性を低下可能とする層をさらに設けることで、絶縁層と該層からなるカバー層の水蒸気透過度を、0.01〜1g/m2・dayとする。
(無機酸化物を主成分とする絶縁層)
触覚センサ用前面板1が有する絶縁層4としては、前記した有機系の絶縁層形成用組成物の硬化体からなる層に限定されない。電気的絶縁性、すなわち、上述した体積抵抗値を有しかつ光透過性を有する無機酸化物を主成分とする層により、絶縁層4を構成できる。
無機酸化物を主成分とする層からなる絶縁層4は、例えば、図2に示す触覚センサ用前面板1における絶縁層4のように単層でもよいし、図4に示す触覚センサ用前面板1における絶縁層4のように、2層以上の複層でもよい。図4に示す触覚センサ用前面板1は、透明基体2上に高抵抗層3、絶縁層4がその順に積層されてなり、絶縁層4は高抵抗層3側から順に積層された第1の絶縁層41および第2の絶縁層42からなる構成を有する。第1の絶縁層41および第2の絶縁層42は、ともに無機酸化物を主成分とする層である。
本発明の触覚センサ用前面板において絶縁層を、無機酸化物を主成分とする層の複層で構成した場合を、図4に示す触覚センサ用前面板1を例に説明する。ただし、これに制限されない。
図4に示す触覚センサ用前面板1においては、例えば、高抵抗層3側に設けられた第1の絶縁層41に微小クラックやピンホールが生じた場合でも、この第1の絶縁層41を被覆するように設けられた第2の絶縁層42により、第1の絶縁層41における微小クラックやピンホールの成長を抑制できる利点を有する。さらに、この場合、第2の絶縁層42を薄く形成するのが好ましい。第1の絶縁層41と合わせた絶縁層4自体の厚さを過度に増大させることなく、絶縁層4における水蒸気透過度の上昇やこれに伴うリークパスの発生を抑制でき、優れた絶縁性が得られるためである。
図4に示す触覚センサ用前面板1においては、高抵抗層3上に形成した第1の絶縁層41の表面を、例えば超音波洗浄等により洗浄処理してピンホール等を除去した後、当該第1の絶縁層41の上に第2の絶縁層42を形成することが好ましい。第1の絶縁層41および第2の絶縁層をこのようにして形成することで、絶縁層内の微小クラックやピンホールの成長を高い精度で抑制でき、水蒸気透過度が少なく、より絶縁性に優れた絶縁層とできる。
無機酸化物を主成分とする層からなる絶縁層4としては、例えば、ケイ素の酸化物を主成分とする層、アルミニウムの酸化物を主成分とする層、タンタルの酸化物を主成分とする層、チタンの酸化物を主成分とする層、ケイ素の窒化物を主成分とする層などが挙げられる。これらの中でも、ケイ素の酸化物を主成分とする層は、可視光に対して良好な光透過性および低反射性を確保しつつ、十分な耐摩耗性や耐候性を得られるため、好適に用いられる。
絶縁層4を複層とする場合、各層は、それぞれ同種の無機酸化物を主成分とする層としてもよく、異種の無機酸化物を主成分とする層としてもよい。
例えば、図4に示す触覚センサ用前面板1においては、無機酸化物を主成分とする第1の絶縁層41を、これとは異なる無機酸化物を主成分とする第2の絶縁層42で被覆することにより、第1の絶縁層41に生じた微小クラックやピンホールの成長が、その上に積層された異種の成分により阻害される。このため、第1の絶縁層41の表面を洗浄処理しなくても、絶縁層4内の微小クラックやピンホールが低減され、水蒸気透過度が少なく、より絶縁性に優れた絶縁層4を得られるため好ましい。
ケイ素の酸化物を主成分とする層としては、ケイ素の酸化物のみからなる層、またはケイ素の酸化物を主成分として含み、かつケイ素以外の添加元素としてホウ素、リンから選ばれる少なくとも1種を含む層が挙げられる。
また、アルミニウムの酸化物を主成分とする層、タンタルの酸化物を主成分とする層としては、ケイ素の酸化物を主成分とする層と同様に、アルミニウムの酸化物のみからなる層またはタンタルの酸化物のみからなる層に限られず、アルミニウムの酸化物またはタンタルの酸化物を主成分として含み、かつ添加元素としてホウ素、リンから選ばれる少なくとも1種を含む層であってもよい。
無機酸化物を主成分とする層からなる絶縁層4は、上述した高抵抗層3の形成と同様にして、DC(直流)マグネトロンスパッタリング等のDC(直流)スパッタリング、AC(交流)スパッタリング、RF(高周波)スパッタリング等のスパッタリングにより、透明基体2上に高抵抗層3を有する積層体の高抵抗層3側の表面に形成できる。
絶縁層4を、ケイ素の酸化物を主成分とする層とする場合、絶縁層4の形成に用いられるターゲットとしては、ケイ素を主成分とするターゲットが用いられる。ケイ素を主成分とするターゲットとしては、ケイ素のみからなるもの、またはケイ素を主成分として含み、かつケイ素以外の元素、例えばホウ素、リン等公知のドーパントを本発明の特徴を損なわない範囲でドープしたものが挙げられる。
絶縁層4を、アルミニウムの酸化物を主成分とする層とする場合、またはタンタルの酸化物を主成分とする層とする場合、絶縁層4の形成に用いられるターゲットとしては、それぞれ、アルミニウムを主成分とするターゲット、タンタルを主成分とするターゲットが用いられる。これらのターゲットとしては、アルミニウムのみからなるものまたはタンタルのみからなるものに限られず、アルミニウムまたはタンタルを主成分として含み、かつ、例えばホウ素、リン等公知のドーパントを本発明の特徴を損なわない範囲でドープしたものを利用できる。
無機酸化物を主成分とする層からなる絶縁層4は、上述した高抵抗層3におけるスパッタリングと同様にして、スパッタガスの圧力や製膜速度等の条件を適宜調整して形成できる。
無機酸化物を主成分とする層からなる絶縁層4をスパッタリングにより形成する場合、例えば100〜300℃の温度範囲で加熱処理しながら行ってもよい。スパッタリングによる成膜処理を加熱しながら行った場合、成膜体がアニーリングされることで、絶縁層4内の微小クラックやピンホールが低減されるため好ましい。
なお、絶縁層を構成する無機酸化物を主成分とする層も、スパッタ法に限定されず、例えば真空蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法、イオンプレート法等のスパッタ方式以外の物理気相析出法や、プラズマCVD法等の化学気相析出法等を用いて形成できる。
絶縁層4を、上記のような無機酸化物を主成分とする層とした場合、その厚さは、好ましくは50nm以上5μm以下であり、より好ましくは100nm以上1μm以下であり、さらに好ましくは100nm以上500nm以下である。
無機酸化物を主成分とする絶縁層4の厚さを50nm以上とすることで、絶縁層4内でのリークパスの形成を抑制できる。従って、触覚センサ用前面板1表面から浸入した水分が高抵抗層3に到達しにくくなる。すなわち、絶縁層4を介した外部雰囲気との導通を抑制できるので、触覚センサ感度の低下が抑制された触覚センサ用前面板1とできる。また、無機酸化物を主成分とする絶縁層4の厚さを50nm以上とすることで、絶縁層4において十分な耐摩耗性や耐候性を得るので好ましい。
一方、無機酸化物を主成分とする絶縁層4の厚さを5μm以下とすることで、適度な曲げ強度を有し、かつ十分な光透過性を確保できる。さらに、無機酸化物を主成分とする絶縁層4の厚さを1μm以下とするのがより好ましく、500nm以下とすることで、反射色味の角度依存性を低減でき、視認性に優れたものとできるので、最も好ましい。
無機酸化物を主成分とする絶縁層4が単層である場合、例えば、図2に示す触覚センサ用前面板1の絶縁層4のような場合には、絶縁層4の厚さは150nm以上5μm以下が好ましく、200nm以上3μm以下がより好ましい。
また、無機酸化物を主成分とする絶縁層4が2層以上の複層である場合、例えば、図4に示す触覚センサ用前面板1の絶縁層4のような場合には、絶縁層4全体の厚さは50nm以上5μm以下が好ましく、100nm以上3μm以下がより好ましい。
例えば、図4に示す触覚センサ用前面板1のように絶縁層4が第1の絶縁層41と第2の絶縁層42の2層からなる場合、第1の絶縁層41の厚さは、好ましくは10nm以上500nm以下、より好ましくは15nm以上200nm以下であり、第2の絶縁層42の厚さは、好ましくは50nm以上500nm以下、より好ましくは70nm以上200nm以下である。
触覚センサ用前面板1において、無機酸化物を主成分とする絶縁層のみでカバー層が構成される場合、上記絶縁層形成用組成物の硬化体からなる絶縁層の場合と同様、絶縁層の水蒸気透過度は0.01〜1g/m2・dayとされる。この場合、上記のとおり、層構成や厚さを調整することにより、絶縁層の水蒸気透過度を、0.01〜1g/m2・dayとすることができる。
ただし、上記無機酸化物を主成分とする絶縁層が上記水蒸気透過度の上限を超える場合には、例えば、絶縁層の透明基体側とは反対側に後述する撥水層等の水蒸気の透過性を低下可能とする層をさらに設けることで、絶縁層と該層からなるカバー層の水蒸気透過度を、0.01〜1g/m2・dayとする。
以上、触覚センサ用前面板1における絶縁層4について説明した。
ここで、絶縁層4が、例えば、上記の含フッ素重合性単量体(e−1)のような撥水性を付与する成分を含有していない場合や撥水性を有する成分を十分量含有しない場合には、この絶縁層4の高抵抗層3側とは反対側の表面に接した水分が、該表面に拡散、付着しやすく、電荷が蓄積された高抵抗層3と、絶縁層4表層に近接した指先等の感覚受容体Xとの間に働く静電引力(クーロン力)が遮蔽されるため、触覚センサとしての機能が十分に得られなくなるおそれがある。このため、撥水性を有する成分を十分量含有しない絶縁層4の上面には、図5に示すように、さらに撥水層7を形成することがよい。なお、図5に示す触覚センサ用前面板1は、透明基体2上に高抵抗層3、絶縁層4および撥水層7がその順に積層された構成である。そして、この場合、触覚センサ用前面板1の表面は、撥水層7の絶縁層4側と反対側の面S3となる。
具体的には、例えば、絶縁層4が無機酸化物を主成分とする絶縁材料から構成された層である場合、より具体的には、例えば、絶縁層4がケイ素酸化物を主成分とする層である場合に、その上面S2に、撥水層7を形成することがより好ましい。
このような構成とすることで、絶縁層4表面S2に水分が接することなく、よって撥水層7を設けない場合に発生しやすい高抵抗層3と感覚受容体Xとの間に働く静電引力(クーロン力)の遮蔽を抑制でき、触覚センサ用前面板1において、触覚センサとしての機能を十分に得られる。
なお、絶縁層4が、(i)絶縁層形成用組成物の硬化体からなる層である場合や(ii)絶縁層形成用組成物の硬化体からなる層である場合には、必ずしも撥水層7を設けなくてもよいが、例えば、絶縁層4が(i)絶縁層形成用組成物の硬化体からなる層である場合に、該組成物が上述した含フッ素重合性単量体(e−1)のような撥水性を付与する成分を含有しない場合には、絶縁層4の上面S2に撥水層7を形成してもよい。
図5で示す触覚センサ用前面板1においては、カバー層は絶縁層4および撥水層7からなる層であり、このカバー層の水蒸気透過度は0.01〜1g/m2・dayである。
カバー層の水蒸気透過度を0.01〜1g/m2・dayとすることで、触覚センサ用前面板1表面を指先で繰り返し摺擦しても、触覚センサ用前面板1の表面から内部に浸入した汗等の水分が、高抵抗層3に到達しにくくできる。すなわち、絶縁層4内でのリークパスの形成およびこれに伴う高抵抗層3と外部雰囲気との導通を抑制でき、優れた触覚センサ感度を長期間にわたって維持できる。
撥水層7は、含フッ素化合物または含ケイ素化合物(以下、撥水剤(H)と示す。)を含有する撥水層形成用組成物の硬化体からなる層により形成できる。
撥水剤(H)を形成する含フッ素化合物または含ケイ素化合物としては、シランカップリング剤等が挙げられる。シランカップリング剤としては、含フッ素シランカップリング剤、アミノ基を有するシランカップリング剤、(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤、チオール基を有するシランカップリング剤、イソシアネート基を有するシランカップリング剤、オキシラニル基を有するシランカップリング剤が挙げられる。また、FS−10(信越化学社製)等の市販品を採用できる。
シランカップリング剤としては、撥水性等の点から、含フッ素シランカップリング剤が好ましく、フルオロアルキル基を有するシランカップリング剤が特に好ましい。フルオロアルキル基としては、パーフルオロアルキル基;パーフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖を含むフルオロアルキル基等が挙げられる。
市販されているフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤としては、Gelest社製のAQUAPHOBE(登録商標)CF、3M社製のノベック(登録商標)EGC−1720、ダイキン社製のオプツール(登録商標)DSX(パーフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖を有するシランカップリング剤)等が挙げられる。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルメチルジエトキシシラン、アミノエチル−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチル−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
撥水層7は、上述した撥水剤を含有する撥水層形成用組成物を、例えば、図2に示す透明基体2、高抵抗層3、絶縁層4の順に積層された積層体の絶縁層4の高抵抗層3側とは反対側の面S2に塗布した後、加熱処理する方法、または、該積層体における絶縁層4の高抵抗層3側とは反対側の面S2に撥水剤を気相蒸着させた後、加熱処理する方法により形成することができる。
撥水層形成用組成物の塗布により撥水層7を形成する場合、塗布方法としては、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、スリットコート法、スプレーコート法等が挙げられる。加熱処理の温度は、20〜150℃が好ましく、生産性の点から、70〜140℃が特に好ましい。撥水剤の反応性を高めるために、加熱処理の際に湿度を制御してもよい。
撥水層形成用組成物の蒸着により撥水層7を形成する場合には、例えば、上述した撥水層形成用組成物から溶媒を除去した後、真空状態で250〜300℃に加熱し、撥水剤(H)を気相状態とした雰囲気下に、例えば、図2に示す透明基体2、高抵抗層3、絶縁層4の順に積層された積層体を投入し、所定時間保持することで、撥水剤(H)の気体分子を該積層体の絶縁層4の高抵抗層3側とは反対側の面S2に付着させて、積層体上面に、撥水剤(H)の均一な薄膜を形成できる。
撥水層7の厚さは2nm以上20nm以下が好ましい。撥水層7の厚さを2nm以上とすると、触覚センサ用前面板1表面における水分の拡散、付着を抑制でき、十分な撥水性を得るので好ましい。一方、撥水層7の厚さを20nm以下とすると、触覚センサ用前面板1全体として、適度な曲げ強度を有し、かつ十分な光透過性が得るので好ましい。
触覚センサ用前面板1としては、図2〜5で示す構成に限られず、例えば図6、7で示すように、透明基体2と高抵抗層3との間にバリア層8を介設した構成とすることも好ましい。
透明基体2と高抵抗層3との間にバリア層8を介設することで、透明基体2に含まれる成分が高抵抗層3に拡散するのを抑制できる。すなわち、高抵抗層3の下地の材質や状態に依存して、高抵抗層3の表面抵抗値等の特性が変動するのを抑制できる。たとえば、透明基体2がソーダライムシリケートガラス板の場合、バリア層8によってナトリウムやカリウム等のアルカリ成分溶出等を抑制することで、高抵抗層3の表面抵抗値等の特性変動を抑制できる。また、ガラス基板等の透明基体2の表面形状が触覚センサ用前面板1全体に与える影響を抑制できる。
バリア層8としては、例えば、ケイ素の酸化物を主成分とする層、ケイ素の酸化物および酸化インジウムを主成分とする層を主成分とする層が挙げられる。これらの中でも、ケイ素の酸化物を主成分とする層は、良好な光透過性を確保しやすいため好ましい。また、ケイ素の酸化物を主成分とする層の中でも、さらに窒素を含む層、例えば酸化窒化ケイ素(SiON)を含む層は、優れた光透過性を得られるうえ、触覚センサ用前面板1としての視感反射率を低減する効果を得られるため好ましい。
バリア層8は、上述した高抵抗層3の形成と同様、DC(直流)マグネトロンスパッタリング等のDC(直流)スパッタリング、AC(交流)スパッタリング、RF(高周波)スパッタリング等のスパッタリングにより、透明基体2上に形成できる。
バリア層8を、ケイ素の酸化物を主成分とする層とする場合、バリア層8の形成に用いられるターゲットとしては、ケイ素を主成分とするターゲットが用いられる。ケイ素を主成分とするターゲットとしては、ケイ素のみからなるもの、またはケイ素を主成分として含み、かつケイ素以外の元素、例えばホウ素、リン等公知のドーパントを本発明の特徴を損なわない範囲でドープしたものが挙げられる。
バリア層8は、上述した高抵抗層3におけるスパッタリングと同様にして、スパッタガスの圧力や製膜速度等の条件を適宜調整して形成できる。
なお、バリア層8として、ケイ素の酸化物を主成分とし、さらに窒素を含む層、例えば酸化窒化ケイ素(SiON)を含む層を形成する場合には、スパッタガスとして、例えば酸素ガスおよび不活性ガスに、窒素ガス、またはN2O、NO、NO2、NH3等の窒素原子を含むガスを混合した混合ガスを利用できる。
このような、ケイ素の酸化物等の無機酸化物からなるバリア層8は、上記のようなスパッタ法に限定されず、例えば真空蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法、イオンプレート法等のスパッタ方式以外の物理気相析出法や、プラズマCVD法等の化学気相析出法等を用いて形成できる。
バリア層8の厚さは、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは50nm以下であり、さらに好ましくは30nm以下である。バリア層8の厚さを100nm以下とすることで、触覚センサ用前面板1全体として、適度な曲げ強度を有し、かつ十分な光透過性が得られる。バリア層8の厚さは、連続膜としてバリア効果を得る観点からは2nm以上が好ましい。
触覚センサ用前面板1において、優れた視感透過率、視感反射率を得る観点から、バリア層8の屈折率は、1.4〜2.2が好ましい。
触覚センサ用前面板1における視感透過率は、80%以上が好ましい。80%以上の視感透過率を有することで、十分な視認性を得る。触覚センサ用前面板1における視感透過率は、より好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
また、触覚センサ用前面板1の表面における視感反射率は、14%以下が好ましく、7%以下がより好ましい。さらに外光下でも画面が見やすいという観点を考慮すると、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。
なお、本明細書において、視感透過率および視感反射率は、JIS Z8701に規定されている刺激値Yに基づく視感透過率および視感反射率をいう。
触覚センサ用前面板1の表面における静摩擦係数は、0.2以下が好ましく、0.15以下がより好ましい。また、触覚センサ用前面板1の表面における動摩擦係数は、0.2以下が好ましく、0.15以下がより好ましい。
静摩擦係数は、0.2以下とすることにより、快適な指滑り性を有する触覚センサ用前面板1を得ることができ、また動摩擦係数は、0.2以下とすることにより、指が滑っているときと、電圧を印加して触覚を発現した時のコントラストが大きく、したがって触覚感度が大きい触覚センサ用前面板1を得ることができる。
触覚センサ用前面板1はその表面において、微小硬度測定試験を用いて評価した押込み弾性率が、2.5GPa以上が好ましく、3.0GPa以上がより好ましい。押込み弾性率が、2.5GPa以上とすることにより、日常使用に十分耐える耐久性を有する触覚センサ用前面板1を得ることができる。
ここで、「微小硬度測定試験」は、侵入深さから硬さを算出するこの試験方法であり、これにより、押込み硬さに相当する押込み弾性率(GPa)を測定できる。この硬さは、触覚センサ用前面板1の「硬さ」、すなわち、耐擦傷性といった機械的強度を表す指針となる。
触覚センサ用前面板1の表面における水に対する接触角は、80度以上が好ましく、90度以上がより好ましい。接触角が、80度以上とすることにより、日常の汚れが付きにくい触覚センサ用前面板1を得ることができる。水に対する接触角は、触覚センサ用前面板1の表面について、接触角計を用いて測定したものである。
触覚センサ用前面板1において、絶縁層4内でのリークパスが少ないことは、絶縁層4を厚さ方向に仕切る絶縁層4の主面に対して平行な複数の面において各面の中央領域に1本ずつ配される所定長さの直線と交わる、絶縁層4中のクラックおよび結晶粒界の合計本数(n)が、前記複数の直線における平均として、所定の数以下であることと言い換えることができる。
触覚センサ用前面板1においては、絶縁層4を厚さ方向に等間隔に仕切る絶縁層4の主面に対して平行な3つの面において各面の中央領域に1本ずつ配される長さ1μmの直線と交わる絶縁層4中のクラックおよび結晶粒界の合計本数(n)が、前記3本の直線における平均として、8本以下であることが好ましい。
以下、上記クラックおよび結晶粒界の合計本数(n)を「リークパス本数(n)」といい、上記3本の直線におけるリークパス本数(n)の平均を、平均リークパス本数(n)ともいう。また、リークパス本数(n)の計測に用いる長さ1μmの直線を、リークパス計測用直線という。
上記のように計測される絶縁層4中の平均リークパス本数(n)を8本以下とすることで、絶縁層4内でのリークパスが形成されにくくなり、触覚センサ用前面板1の表面から浸入した水分が高抵抗層3に到達しにくくなる。すなわち、絶縁層4を介して外部雰囲気と導通しにくくなるため、触覚センサ感度の低下が抑制された触覚センサ用前面板1とできる。上記の平均リークパス本数(n)は、より好ましくは3本以下である。
なお、本明細書において、「絶縁層4の主面」とは、絶縁層4の高抵抗層3との界面S1およびその反対側の面S2をいう。絶縁層4の高抵抗層3側と反対側の面S2は、触覚センサ用前面板1の表面となる場合もあり、撥水層7等の絶縁層4上に形成される層との界面となる場合もある。また、面の中央領域とは該面の中心と同一の中心を有しかつ外周が該面の外周の形状に相似するとともに、面積が概ね該面の面積の50%の領域をいう。
ここで、リークパス計測用直線を用いたリークパス本数(n)の計測は、例えば、触覚センサ用前面板の表面に直交する断面、ただし触覚センサ用前面板の表面における中央領域を通る直線により該前面板を厚さ方向に切断して得られる断面の、走査型電子顕微鏡(SEM)等による写真を用いて行うことができる。なお、触覚センサ用前面板の表面における中央領域を通る直線は、好ましくは表面の中心を通る直線である。
以下に、図8に示す、実施例の例2における触覚センサ用前面板のSEM断面写真を参照しながら説明する。図8に示す写真は、上記中央領域が含まれるように作製された例2における触覚センサ用前面板の断面の写真であり、点線が絶縁層の2つの主面を示す。図8では、2つの主面の間が、主面に平行する3本の直線(実線)(L1、L2、L3)で4等分されている。該L1、L2、L3は各1μmの長さであり、これをリークパス計測用直線として用いる。
なお、各リークパス計測用直線(L1、L2、L3)と交わる絶縁層4中のクラックおよび結晶粒界は、目視でシワまたは溝として観測される。目視で数えにくい場合は、取得したSEM断面写真をもとに、適当な条件で二値化処理を行った上で数えればよい。図9に、図8に示すSEM断面写真の二値画像の例を示す。例えば、この図9を用いてリークパス本数(n)を計測する場合を説明する。図9において、各リークパス計測用直線(L1、L2、L3)と交わる絶縁層4中のクラックおよび結晶粒界を矢印で示す。リークパス計測用直線ごとに計測された矢印の数、すなわちリークパスの本数(n)は、L1において7本、L2において9本、L3において4本である。これらを平均することで、平均リークパス本数(n)=6.6を得る。
このような触覚センサ用前面板1は、例えば図3に示すように、タッチパネル本体6の前面に設けられるものであり、表現したい触感を再現可能なパターンに制御された電圧および周波数で、不図示の制御部からタッチパネル本体6の透明電極6aに通電し、触覚センサ用前面板1側に誘起された電荷を、高抵抗層3に蓄積することで、触覚センサ用前面板1を帯電させるように構成されている。このような帯電状態の触覚センサ用前面板1表面に、指などの感覚受容体Xが接触することで、絶縁層4を介して両者間に働く微弱な静電気力により、凹凸感などの触覚として感覚受容体Xに感知される。
なお、タッチパネル本体6に透明電極6aを設ける代わりに、触覚センサ用前面板1に透明電極が配設されていてもよい。すなわち、触覚センサ用前面板1における透明基体2の高抵抗層3が配設されたのと反対側の面S4に、透明電極が配設されていてもよい。このような構成とすることで、タッチパネル全体の構造を簡素化できるとともに、透明電極と高抵抗層3との距離が近くなるため、駆動電圧を低く抑えることが可能となるので好ましい。
透明電極を構成する材料としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、インジウム・ガリウムドープ酸化亜鉛(IGZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)等が挙げられる。その中でもITOが、透過性、抵抗安定性および耐久性が良好であるため好ましい。透明電極の厚さは、50〜500nmが好ましく、100〜300nmがより好ましい。厚さが50nm以上であれば、十分な電気抵抗値が得られるうえに、電気抵抗値の安定性が確保できるので好ましい。500nm以下であれば、十分な視感透過率を確保できるため好ましい。
触覚センサ用前面板1に透明電極を配設する場合、以下の手順で形成できる。まずスパッタリング法、または蒸着法等により透明電極となる材料の膜を透明基体2の高抵抗層3の配設面と反対側の表面に形成する。そして、前記膜を、フォトリソグラフィ法、レーザーパターニング法等によって所望の形状にパターニングすると、所望の透明電極を形成できる。
本発明の実施形態の触覚センサ用前面板1によれば、高抵抗層3の表面抵抗値が1〜100MΩ/□とされており、使用に際して、高抵抗層3と、タッチパネル本体6または触覚センサ用前面板1自体が有する透明電極との電気的作用を生じることなく、所望の触覚を再現性よく発現でき、優れた触覚センサ感度を得られる。
さらに絶縁層4の透明基体2側の面から触覚センサ用前面板1の絶縁層4側の表面に至るまでの間を構成する層、すなわちカバー層の水蒸気透過度が0.01〜1g/m2・dayとされているので、長期間の使用においても、優れた触覚センサ感度を維持できる。
以上、本発明の触覚センサ用前面板の実施形態を、図2〜図7に示されるそれぞれ例を挙げて説明したが、本発明の触覚センサ用前面板はこれらに限定されるものではない。本発明の趣旨に反しない限度において、また必要に応じて、その構成を適宜変更できる。
以下、実施例を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明は本発明を限定するものではく、本発明の趣旨に沿った形での改変が可能である。例1〜9が実施例であり、例10〜16が比較例である。
<絶縁層形成用組成物の調製>
(絶縁層形成用組成物(i−1)の調製)
撹拌機を装着した300mLの4つ口フラスコに、酢酸ブチル1級(純正化学社製)の163gと2−プロパノールの41gを入れ、ここに重合性ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(大塚化学社製、商品名:R-UVA93)の2g、光安定剤(BASF社製、商品名:TINUVIN292)の1g、レベリング剤(ビックケミー社製、商品名:BYK306)の0.65g、光重合開始剤(BASF社製、商品名:Irgacure907)の2.5g、および重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル(純正化学社製)の0.1gを加え、溶解させて溶液を得た。
次いで、この溶液に、多官能アクリレート(新中村化学社製、商品名:U15HA)の40g、多官能アクリレート(東亞合成社製、商品名:M325)の60g、およびメタクリル酸メチルを主成分とする高分子量体(三菱レイヨン社製、商品名:LR248)の33gを加え、均一になるまで室温で撹拌し、溶解させて、紫外線硬化性の絶縁層形成用組成物(i)に相当する絶縁層形成用組成物(i−1)を得た。
(絶縁層形成用組成物(i−2)の調製)
撹拌機を装着した300mLの4つ口フラスコに、酢酸ブチル1級(純正化学社製)の163gと2−プロパノールの41gを入れ、ここに重合性ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(大塚化学社製、商品名:R-UVA93)の2g、光安定剤(BASF社製、商品名:TINUVIN292)の1g、レベリング剤(ビックケミー社製、商品名:BYK306)の0.65g、光重合開始剤(BASF社製、商品名:Irgacure907)の2.5g、および重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル(純正化学社製)の0.1gを加え、溶解させて溶液を得た。
次いで、この溶液に、多官能アクリレート(新中村化学社製、商品名:U15HA)の60g、多官能アクリレート(東亞合成社製、商品名:M325)の40g、含フッ素アクリレート(旭硝子社製、商品名:C6FMA)の1gおよびメタクリル酸メチルを主成分とする高分子量体(三菱レイヨン社製、商品名:LR248)17gを加え、均一になるまで室温で撹拌し、溶解させて、紫外線硬化性の絶縁層形成用組成物(i)に相当する絶縁層形成用組成物(i−2)を得た。
(絶縁層形成用組成物(ii−1)の調製)
熱硬化性の絶縁層形成用組成物(ii)として、熱硬化型シリコーンハードコート剤(モメンティブ社製、商品名:PHC587C)を使用した。以下、このシリコーンハードコート剤を絶縁層形成用組成物(ii−1)と示す。
[例1]
ガラス基板Q1(旭硝子社製、商品名:ASガラス、縦100mm×横100mm×厚さ1mm)を真空チャンバー内に投入し、チャンバー内の圧力が1×10−4Paとなるまで排気した。その後、ガラス基板Q1上に下記条件でマグネトロンスパッタ方式により成膜処理を行い、バリア層C1および高抵抗層A1を順に形成した。
まず、アルゴンガスに40体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、Siターゲットを用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm2、反転パルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、ガラス基板Q1の表面に、ケイ素酸化物からなる厚さ20nmのバリア層C1を形成した。
次いで、バリア層C1の上に、アルゴンガスに2体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、酸化スズターゲット(AGCセラミックス社製、商品名:GITターゲット)と酸化チタンターゲット(AGCセラミックス社製、商品名:TXOターゲット)を用いて、圧力0.1Paでマグネトロンスパッタ法によりコスパッタリングを行って、ガラス基板Q1のバリア層C1上に、厚さ20nmの高抵抗層A1を形成した。
なお、GITターゲットは、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm2、反転パルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、TXOターゲットは、周波数20kHz、電力密度4W/cm2、反転パルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行った。
この高抵抗層A1の原子組成をESCA(Physical Electronics社製、装置名:Quantera SXM)により分析したところ、原子比率でSn:Ti=93:7であった。
また、上記で得られたガラス基板Q1、バリア層C1、高抵抗層A1の順に積層された積層体について測定装置(三菱化学アナリテック社製、装置名:ハイレスタUP(MCP-HT450型))を用いて高抵抗層A1の表面抵抗値を測定した。上記10cm□の積層体の高抵抗層A1表面の中央にプローブをあて、10Vで10秒間通電して測定したところ、表面抵抗値は48MΩ/□であった。
次いで、以下のようにして絶縁層を形成した。
まず、アルゴンガスに40体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、Siターゲットを用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm2、反転パルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、ガラス基板Q1の表面に、厚さ50nmのケイ素酸化物からなる層β1を形成した。
次いで、真空チャンバーから積層体を取り出し、純水にて超音波洗浄して、積層体表面の付着物やダストを除去した後、洗浄後の積層体を再度真空チャンバーに投入し、チャンバー内の圧力が1×10−4Paとなるまで排気し、アルゴンガスに40体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、Siターゲットを用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm2、反転パルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、ケイ素酸化物からなる層β1の表面に、厚さ50nmのケイ素酸化物からなる層β2を形成した。
こうして、高抵抗層A1上に、ケイ素酸化物からなる層β1、ケイ素酸化物からなる層β2からなる厚さ100nmの絶縁層B1を形成した。
次に、絶縁層B1上に、以下の方法で撥水層D1を形成した。
まず、加熱容器としてのるつぼ内に、蒸着材料であるオプツール(登録商標)DSX(商品名:ダイキン社製)溶液75gを投入した後、るつぼ内を真空ポンプで10時間以上脱気して、溶媒除去を行った。
その後、真空チャンバー内でるつぼ内の温度が270℃に達するまで加熱し、さらにるつぼ内の温度が安定するまで10分間程度保持してから、ガラス基板Q1上にバリア層C1、高抵抗層A1および絶縁層B1が順に形成された積層基板を真空チャンバー内に導入し、成膜を行った。こうして、絶縁層B1上に厚さ10nmの撥水層D1を形成した。こうして、ガラス基板Q1上に、バリア層C1、高抵抗層A1、絶縁層B1、撥水層D1を積層した触覚センサ用前面板1を得た。
[例2]
ガラス基板Q1上に、例1と同様にして、厚さ20nmのバリア層C1、次いで厚さ20nmの高抵抗層A1を形成した。
次いで、アルゴンガスに40体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、Siターゲットを用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm2、反転パルス幅5μsecの条件でマグネトロンスパッタ方式によりパルススパッタリングを行い、高抵抗層A1の上に、ケイ素酸化物からなる厚さ1μmの絶縁層B2を形成した。
次いで、絶縁層B2上に、例1と同様にして厚さ10nmの撥水層D1を形成し、ガラス基板Q1上に、バリア層C1、高抵抗層A1、絶縁層B2、撥水層D1を積層した触覚センサ用前面板2を得た。
[例3]
ガラス基板Q1上に、例1と同様にして、厚さ20nmのバリア層C1、次いで厚さ20nmの高抵抗層A1を形成した。
次いで、アルゴンガスに40体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、Taターゲットを用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm2、反転パルス幅5μsecの条件でマグネトロンスパッタ方式によりパルススパッタリングを行い、高抵抗層A1の上に、酸化タンタルからなる厚さ1μmの絶縁層B3を形成した。
次いで、絶縁層B3上に、例1と同様にして、厚さ10nmの撥水層D1を形成し、ガラス基板Q1上に、バリア層C1、高抵抗層A1、絶縁層B3、撥水層D1を積層した触覚センサ用前面板3を得た。
[例4]
ガラス基板Q1上に、例1と同様にして、厚さ20nmのバリア層C1、次いで厚さ20nmの高抵抗層A1を形成した。
次いで、アルゴンガスに40体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、Alターゲットを用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度4W/cm2、反転パルス幅5μsecの条件でマグネトロンスパッタ方式によりパルススパッタリングを行い、高抵抗層A1の上に、厚さ100nmの酸化アルミニウムからなる層β3を形成した。
ついで、アルゴンガスに40体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、Siターゲットを用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm2、反転パルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、酸化アルミニウムからなる層β3の表面に、厚さ100nmのケイ素酸化物からなる層β4を形成した。
こうして、高抵抗層A1上に、酸化アルミニウムからなる層β3、ケイ素酸化物からなる層β4からなる厚さ200nmの絶縁層B4を形成した。
次いで、絶縁層B4上に、例1と同様にして、厚さ10nmの撥水層D1を形成し、ガラス基板Q1上に、バリア層C1、高抵抗層A1、絶縁層B4、撥水層D1を積層した触覚センサ用前面板4を得た。
[例5]
ガラス基板Q1上に、例1と同様にして、厚さ20nmのバリア層C1、次いで厚さ20nmの高抵抗層A1を形成した。
次いで、高抵抗層A1の上に、例4と同様にして、酸化アルミニウムからなる層β3を積層した後、この酸化アルミニウムからなる層β3上にケイ素酸化物からなる層β4を積層する操作を5回繰り返して行った。こうして、酸化アルミニウムからなる層β3上に、ケイ素酸化物からなる層β4を積層した層を5層積層してなる厚さ1μmの絶縁層B5を形成した。
次いで、絶縁層B5上に、例1と同様にして、厚さ10nmの撥水層D1を形成し、触覚センサ用前面板5を得た。
[例6]
例1において、ガラス基板Q1上にバリア層C1の形成を行わず、GITターゲットにおけるパルススパッタリングの電力密度を、3.8W/cm2から3W/cm2に変更したこと以外は、例1と同様にして、マグネトロンスパッタ方式により、ガラス基板Q1上にコスパッタリングを行い、厚さ20nmの高抵抗層A2を形成した。
この高抵抗層A2の原子組成をESCA(Physical Electronics社製、装置名:Quantera SXM)により分析したところ、原子比率でSn:Ti=9:1であった。さらに、例1と同様に測定した高抵抗層A2の表面抵抗値は50MΩ/□であった。
次いで、高抵抗層A2の上に、以下の方法で密着処理を行った。
まず、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製、商品名:KBM503)をエタノールで0.1質量%に希釈し、この希釈液を、上記の高抵抗層A2の表面に約1cm3滴下した後、スピンコーターにより、回転数1000rpmで10秒間、次いで2000rpmで0.5秒間回転させて塗布した。その後、恒温槽に入れて120℃で30分間保持した。こうして、高抵抗層A2の上に密着処理を行った。
次に、以下の方法で絶縁層B6を形成した。
まず、密着処理を施した高抵抗層A2の密着処理表面に、上記で得られた絶縁層形成用組成物(i−1)を約1cm3滴下し、スピンコーターにより、回転数200rpmで10秒間、次いで2000rpmで0.5秒間回転させて塗膜を形成した。その後、恒温槽に入れて120℃で10分間保持し、塗膜を乾燥させた。
次に、乾燥した塗膜が形成された積層体に対し、コンベア付UV照射装置(ウシオ電機社製、装置名:UVC-02516S1)を用いて、UV照射の積算値が1000mJ/cm2、ピーク値が375mW/cm2となるように、搬送速度とUV強度を調整しながらUV照射を行って前記乾燥した塗膜を硬化させ、絶縁層形成用組成物(i−1)の硬化体からなる絶縁層B6を形成した。絶縁層B6の厚さは10μmであった。
こうして、ガラス基板Q1上に、高抵抗層A2と絶縁層B6とが積層された触覚センサ用前面板6を得た。
[例7]
絶縁層形成用組成物として、絶縁層形成用組成物(i−1)に代えて絶縁層形成用組成物(i−2)を用いたこと以外は、例6と同様にして、ガラス基板Q1上に、厚さ20nmの高抵抗層A2、厚さ10μmの絶縁層B7が積層された触覚センサ用前面板7を得た。
[例8]
ガラス基板Q1上に、例6と同様にして高抵抗層A2を形成した。この高抵抗層A2の上に、密着処理を施すことなく、以下に示すようにして絶縁層B8を形成した。
すなわち、高抵抗層A2上に絶縁層形成用組成物(ii−1)を約1cm3滴下し、スピンコーターにより、回転数200rpmで10秒間、次いで2000rpmで0.5秒回転させた後、恒温槽に入れ、120℃で60分間保持して絶縁層形成用組成物(ii−1)を熱硬化させて、絶縁層B8を形成した。絶縁層B8の厚さは5μmであった。
こうして、ガラス基板Q1上に、高抵抗層A2と絶縁層B8が積層された触覚センサ用前面板8を得た。
[例9]
例1と同様にして、厚さ20nmのバリア層C1、次いで厚さ20nmの高抵抗層A1を形成した。
次いで、高抵抗層A1の上に、例6と同様にして(ただし、膜厚調整のために組成物の塗布量を調整して)、絶縁層形成用組成物(i−1)の硬化体からなる絶縁層B6を形成した。絶縁層B6の厚さは8μmであった。
こうして、ガラス基板Q1上に、バリア層C1、高抵抗層A1、絶縁層B6が順に積層された触覚センサ用前面板9を得た。
[例10]
ガラス基板Q1上に、例1と同様にして、厚さ20nmのバリア層C1、厚さ20nmの高抵抗層A1を形成した。
次いで、例2と同様にして、高抵抗層A1の上に、ケイ素酸化物からなる厚さ1μmの絶縁層B2を形成した。
こうして、ガラス基板Q1上に、バリア層C1、高抵抗層A1、絶縁層B2が順に積層された触覚センサ用前面板10を得た。
[例11]
ガラス基板Q1を真空チャンバー内に投入し、チャンバー内の圧力が1×10−4Paとなるまで排気した後、ガラス基板Q1上に下記条件でマグネトロンスパッタ方式により成膜処理を行い、バリア層C2および高抵抗層A3を順に形成した。
まず、アルゴンガスに5体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、酸化インジウムに30質量%のケイ素酸化物を混合してなるターゲットを用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm2、反転パルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、ガラス基板Q1の表面に、厚さ70nmのバリア層C2を形成した。
次いで、真空チャンバー内に導入するガスを、「アルゴンガスに2体積%の酸素ガスを混合した混合ガス」から「アルゴンガスに5体積%の酸素ガスを混合した混合ガス」に変更したこと以外は、例1と同様にして、マグネトロンスパッタ方式によりコスパッタリングを行った。こうして、バリア層C2上に、厚さ100nmの高抵抗層A3を形成した。
この高抵抗層A3の原子組成をESCA(Physical Electronics社製、装置名:Quantera SXM)により分析したところ、原子比率でSn:Ti=93:7であった。なお、高抵抗層A3の表面抵抗値は未測定であった。
次いで、高抵抗層A3上に、例2と同様にして(ただし、膜厚調整のためにスパッタ時間を調整して)、ケイ素酸化物からなる厚さ90nmの絶縁層B2を形成した後、さらに絶縁層B2上に、例1と同様にして厚さ10nmの撥水層D1を形成した。
こうして、ガラス基板Q1上に、バリア層C2、高抵抗層A3、絶縁層B2、および撥水層D1が順に積層された触覚センサ用前面板11を得た。
[例12]
ガラス基板Q1上に、例1と同様にして、厚さ20nmのバリア層C1、次いで厚さ20nmの高抵抗層A1を形成した。
次いで、例3と同様にして(ただし、膜厚調整のためにスパッタ時間を調整して)、マグネトロンスパッタ方式によりパルススパッタリングを行い、高抵抗層A1の上に、酸化タンタルからなる厚さ100nmの絶縁層B3を形成した。
次いで、絶縁層B3上に、例1と同様にして、厚さ10nmの撥水層D1を形成し、触覚センサ用前面板12を得た。
[例13]
ガラス基板Q1上に、例1と同様にして、厚さ20nmのバリア層C1、次いで厚さ20nmの高抵抗層A1を形成した。そして、この高抵抗層A1上に、例1と同様にして、厚さ100nmの絶縁層B1を形成し、触覚センサ用前面板13を得た。なお、触覚センサ用前面板13において、撥水層は形成しなかった。
[例14]
ガラス基板Q1に代えて、アルミノシリケートガラスを化学強化処理したガラス基板Q2(縦100mm×横100mm×厚さ0.8mm)を用い、かつ絶縁層B2の厚さを100nmとしたこと以外は、例10と同様(ただし、膜厚調整のためにスパッタ時間を調整)にして触覚センサ用前面板14を得た。
なお、ガラス基板Q2におけるガラス材料の組成は、モル%表示で、SiO2を64.5%、Al2O3を8%、Na2Oを12.5%、K2Oを4%、MgOを10.5%、CaOを0.1%、SrOを0.1%、BaOを0.1%およびZrO2を0.5%含有するものであった。化学強化処理は、上記の組成を有するアルミノシリケートガラスのガラス板をKNO3溶融塩に浸漬し、イオン交換処理した後、室温付近まで冷却することにより作製した。得られた強化ガラスの表面圧縮応力は、735MPa、圧縮応力層の厚さは51.2μmであった。なお、表面圧縮応力および圧縮応力層の厚さは、表面圧縮応力計FSM−6000(折原製作所社製)を用いて測定した。
[例15]
ガラス基板Q1上に、例1と同様にして、厚さ20nmのバリア層C1を形成した。
次いで、バリア層C1の上に、例6と同様にして、厚さ20nmの高抵抗層A2を形成した。このようにして、マグネトロンスパッタ法により、ガラス基板Q1上にバリア層C1と高抵抗層A2を積層した積層体を得た。
次に、こうして得られた積層体の高抵抗層A2の上に、例7と同様にして、密着処理を施した後、厚さ10μmの絶縁層B7を形成し、触覚センサ用前面板15を得た。
[例16]
ガラス基板Q1上に、例1と同様にして、厚さ20nmのバリア層C1を形成した。
次いで、アルゴンガスに2体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、酸化ガリウムに酸化インジウムを50質量%混合したターゲット(住友金属鉱山社製、商品名:GIOターゲット)を用いて、圧力0.1Pa、周波数20kHz、電力密度0.8W/cm2、反転パルス幅5μsecの条件でマグネトロンスパッタ方式によりパルススパッタリングを行った。その結果、バリア層C1表面に、厚さ15nmの高抵抗層A4が形成された。
この高抵抗層A4の原子組成をESCA(Physical Electronics社製、装置名:Quantera SXM)により分析したところ、原子比率でGa:In=6:4であった。さらに、例1と同様に測定した高抵抗層A4の表面抵抗値は0.7MΩ/□であった。
次いで、高抵抗層A4の上に、例6と同様にして、密着処理を施した後、絶縁層形成用組成物(i−1)の硬化体からなる絶縁層B6を形成し、触覚センサ用前面板16を得た。
[触覚センサ用前面板の評価]
例1〜例16で得られた触覚センサ用前面板1〜16について、視感透過率、視感反射率、押し込み弾性率、反射色味の角度依存性、静摩擦係数、動摩擦係数、水の接触角、および触覚センサの感度を、それぞれ以下に示す方法で測定した。また、絶縁層における平均リークパス本数(n)および、絶縁層からなる、または絶縁層と撥水層からなるカバー層に関して水蒸気透過度を以下に示す方法で測定した。触覚センサ用前面板1〜16の各層の構成を表1に示し、触覚センサ用前面板についての上記各特性の測定結果を表2に示す。なお、例11のみ各種特性測定は実施しなかった。
(視感透過率)
分光光度計(島津製作所社製、装置名:SolidSpec-3700)を用いて、触覚センサ用前面板の分光透過率を測定し、その分光透過率から、JIS Z8701において規定されている刺激値Yを算出した。そして、この刺激値Yを視感透過率とした。
(視感反射率)
分光光度計(島津製作所社製、形式:UV3150PC)により、触覚センサ用前面板の絶縁層側の表面における反射率を測定し、その反射率から、視感反射率(JIS Z8701において規定されている反射の刺激値Y)を求めた。前面板の裏面反射を打ち消すために、ガラス基板の裏面を黒色に塗って測定した。
(押し込み弾性率)
微小硬さ試験機(フィッシャーインスツルメンツ社製、装置名:ピコデンターHM500)を用いて、触覚センサ用前面板の絶縁層側の表面における押し込み弾性率(GPa)をISO14577に準じて測定した。測定には、ビッカーズ圧子を使用した。
(反射色味の角度依存性)
各触覚センサ用前面板1〜16において、ガラス基板側の表面(ガラス基板の高抵抗層形成面とは反対側の面)を黒色に塗ることで裏面反射を相殺するようにした触覚センサ用前面板を絶縁層側が上に向くようにして机上に配置した。また、机上から40cmの高さに昼色光直管蛍光灯(日本電気株式会社製、3波長形昼白色)のスタンドを配置した。
この蛍光灯による照射光の下、触覚センサ用前面板の表面(絶縁層面)を種々の角度から目視で観察し、目視する角度による、反射光の色調の変化を評価した。
いずれの角度から目視観察した場合も、触覚センサ用前面板の表面の色調が単色(主に青色等)であったもの、または、目視角度を10度より超えて変化させた場合でも、色調の変化が緩やかであったものを「○」とし、目視角度を10度以下の範囲で変化させたときに、触覚センサ用前面板の表面の色調が変化したものを「×」とした。
(動摩擦係数)
表面性測定機(新東科学社製、型式名:Type38)を用いて、以下の条件で触覚センサ用前面板の絶縁層側の表面における動摩擦係数の測定を行った。
まず、圧子(試料との接触面積:10mm×30mm)にワイパー(旭化成社製、商品名:ベンコット(登録商標))を固定した後、測定機のステージ上に載置した触覚センサ用前面板の絶縁層側の表面に圧子を接触させた。この圧子に500gの荷重をかけた状態で、触覚センサ用前面板を載置したステージを動かし、摺動速度500mm/min、ストローク20mmで触覚センサ用前面板の表面を5回摺動し、圧子根元のひずみゲージで摩擦力を測定した。そして、摩擦力の測定値と、圧子にかけた荷重から算出される摩擦係数の平均値を、動摩擦係数とした。
(静摩擦係数)
動摩擦係数の測定で用いた圧子を鉄球としたこと以外は、動摩擦係数の測定で用いたのと同じ装置を用い、同じ条件で触覚センサ用前面板の表面を摺動し、鉄球の滑り始めの時点で測定した摩擦力から算出される摩擦係数を静摩擦係数とした。
(触覚センサの感度)
各触覚センサ用前面板1〜16(11を除く)のガラス基板側の表面の4辺に銅製の導電テープを貼り、周波数400Hz前後で、2kVの電圧を印加した。このような通電状態の触覚センサ用前面板1〜16表面(絶縁層側の表面)を指先でなぞり、指先で感知される触覚の大きさにより、触覚センサ感度を4段階で評価した。
表2中、0〜4は、それぞれ「0:全く感じないか、または指先により感知される触覚が強すぎて指先が過度の刺激を受けた状態となり、適切なセンサ感度を得られない」、「1:かすかに感じるが弱い」、「2:感じる」、「3:十分感じる」状態であったことを示す。
なお、感度評価の印加電圧(2kV)は、以下のとおり決定した。
触覚センサ用前面板のガラス基板側の表面に設けた導電テープ(銅箔にポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ10μm)を貼り付けたテープ)からの電圧印加を、印加電圧750V〜100kVの間で調整しながら行ったところ、約2kV程度で触覚が発現したため、この電圧値に基づいてセンサ感度の評価を行った。
(水の接触角)
触覚センサ用前面板の絶縁層側の表面に約1μLの純水の水滴を着滴させ、接触角計(協和界面科学社製、装置名;DM−51)を用いて、水に対する接触角を測定した。
(水蒸気透過度)
PETフィルム(東洋紡績社製、製品名「A4100」、厚さ100μm)を基材として、この基材上に、例1〜16の各触覚センサ用前面板のカバー層(例1〜5、11〜12については絶縁層および撥水層からなる層、例6〜10、13〜16については絶縁層からなる層)と同様の構成の層を成膜したフィルム積層体1〜16を得た。
このフィルム積層体1〜16について、水蒸気透過度測定装置(MOCON社製、製品名「PERMATRAN−W 3/33MG」)を用い、JIS K7129 B法に準じて、温度40℃、湿度100%RHの雰囲気下で水蒸気透過度を測定した。なお、積層フィルムへの調湿は、成膜面側から基材側へ水蒸気が透過する方向とした。
なお、この測定方法では基材であるPETフィルムの水蒸気透過度は、一般的に20g/m2/day以上と、フィルム積層体の水蒸気透過度に対して一桁大きいので、カバー層の水蒸気バリア性を評価する際に、PETフィルムの水蒸気バリア性は無視できる。
(平均リークパス本数(n))
水蒸気透過度は絶縁層の欠陥、特にクラックや結晶粒界の有無や密度と大きく相関があると考えられている。なぜならクラックや結晶粒界があるとそこから水蒸気が浸透しやすく、膜の密度よりもクラックや結晶粒界によって水蒸気の透過量が決まってしまうからである。従って、以下のようにして、絶縁層の断面形状を観察し、クラックおよび結晶粒界の本数を求めた。
例2、例8、例10による触覚センサ用前面板2、8、10のそれぞれについて、触覚センサ用前面板の表面における中央領域を通る直線により、該前面板を厚さ方向に切断して得られる断面が観察できるように断面試料を作製した。得られた断面試料の断面について走査型電子顕微鏡(日立ハイテク社製、SEM SU8020)による断面観察を行った。図8に例2における触覚センサ用前面板2のSEM断面写真を、図10に例10における触覚センサ用前面板10のSEM断面写真(倍率10万倍)をそれぞれ示す。なお、図8、図10において、右下端に示した白色の直線は、100nm長を示す。
図8、図10は、いずれも絶縁層を中心として示す(目安として、領域A:ガラス基板、領域B:絶縁層、領域C:カバー層表面(撥水層または絶縁層表面に形成された被膜領域)であり、破線は各領域の境界の目安の位置を示す。)。絶縁層中でシワのように確認されるのは、クラックまたは結晶粒界である。なお、クラックは、結晶粒界と比較するとサイズが大きいと推測されるが、ここでは特に区別しない。なお、例2および例10において、領域Aと領域Bの境界領域は、バリア層および高抵抗層に相当する。
絶縁層の成膜過程において、同一絶縁層の断面における単位面積当たりのクラックや結晶粒界の数は、その絶縁層内での位置が多少異なっても、概ね一定であると推定されるので、シワの本数を次のようにして求めた。
まず、得られたSEM断面写真を二値化処理した。図8に示すSEM断面写真を二値化した画像を図9に示す。以下、図8および図9による例2における触覚センサ用前面板2の平均リークパス本数(n)を例に測定方法を示す。また、例8、例10についても同様に二値化処理した画像を用いて、同様の操作を行い、それぞれの平均リークパス本数(n)を求めた。
図8、図9において絶縁層の2つの主面の間を主面に平行する3本の直線(実線)(L1、L2、L3)で4等分し、リークパス計測用直線とした。L1、L2、L3の位置は、それぞれ、絶縁層(領域B)とカバー層(領域C)との境界から、絶縁層全体の膜厚の3/4、2/4、1/4の位置とした。図8、図9、図10に、それぞれ例2、例10の触覚センサ用前面板2、10の断面におけるL1、L2、L3の位置を示す。L1、L2、L3は各1μmの長さである。
図9において、絶縁層のカバー層表面側の主面から絶縁層全体の膜厚の3/4の深さの位置に設けられた長さ1μmの直線L1と交わるシワの本数を計測した。図9においては矢印で示すとおり7本と計測された。
また、この直線L1とは別に絶縁層のカバー層表面側の主面から絶縁層全体の膜厚の2/4、1/4の深さの位置に設けられた直線L2、L3について、上記の直線L1について行ったのと同様の操作を繰り返し行った。図9においては矢印で示すとおりL2において9本、L3において4本である。
そして、これら3本の直線L1、L2、L3について計測したシワの本数の平均値を算出した。この平均値を、絶縁層中のクラックまたは結晶粒界の本数、すなわち平均リークパス本数(n)とした。図9を用いて求められた例2における触覚センサ用前面板2においては、平均リークパス本数(n)は、(7+9+4)/3=6.6であった。同様にして、例8、例10による触覚センサ用前面板8、10のそれぞれについて、平均リークパス本数(n)を計測した。結果を表2に示す。
表2から明らかなように、例1〜9では、高抵抗層が1〜100MΩ/□の表面抵抗値を有しており、かつカバー層が0.01〜1g/m2・dayと低い水蒸気透過度を有しており、良好なセンサ感度を得られていた。また、例8の絶縁層断面において、絶縁層の膜面に対して平行な長さ1μmの直線と交わるクラックや結晶粒界が1.3本と十分少ないことから、絶縁層中にクラックや結晶粒界が少なく、触覚センサ用前面板1の表面からガラス基板Q1への水蒸気透過が抑制されていると考えられる。
一方、例10〜16では、カバー層の水蒸気透過度が0.01〜1g/m2・dayを超えており、指先により感知される触覚を十分に得られず、センサ精度に劣るものであった。
また、例10の絶縁層断面において、絶縁層の膜面に対して平行な長さ1μmの直線と交わるクラックや結晶粒界が13.3本と多いことから、絶縁層中にクラックや結晶粒界が多く、触覚センサ用前面板1の表面からガラス基板Q1への水蒸気透過が抑制されにくくなっていると考えられる。さらに、例16では、表面抵抗値が0.7Ω/□で、指先により感知される触覚が過度に高くなっており、適切なセンサ感度を得られないものであった。