以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
まず、本発明の一実施形態に係る力覚提示装置1の動作原理について、図1を用いて説明する。本実施形態に係る力覚提示装置1に内蔵される力覚提示ユニットは、錘11と、磁石12と、コイル13と、位置検出センサー14と、を含んで構成されている。なお、図1では錘11の図示は省略されている。
磁石12は永久磁石であって、ある程度の重量を持った錘11に固定されている。そのため、後述するように磁石12が装置内で移動すると、これと一体になっている錘11も同じように装置内を移動する。本実施形態では、磁石12は所定の方向に沿って延伸する棒状の形をしており、一端がS極、他端がN極になっている。
コイル13は、磁石12を往復運動させるための磁場を発生させる。具体的に、コイル13に流れる電流の向き及び大きさが変化すると、これに応じてコイル13が発生させる磁場が変化する。この磁場の変化に応じて磁石12が移動する。また、コイル13に流れる電流の大きさを制御することによって、磁石12の移動速度を制御することもできる。なお、図1において矢印により示されるように、磁石12はその延伸方向と一致する向きに往復運動するように配置されている。
位置検出センサー14は、磁石12の位置を検出する。例えば位置検出センサー14がホール素子の場合、磁石12によって生じる磁界を検出することによって磁石12の位置を検出する。この位置検出センサー14の検出結果に応じてコイル13に流す電流を変化させることによって、錘11を精度よく振動させることができる。
錘11を磁石12の延伸方向に沿って一方に素早く移動させ、逆向きにゆっくり移動させる制御を繰り返すことによって、力覚提示装置1は、錘11が素早く移動する方向に向かって当該装置に力が加わっているような感覚をユーザーに感じさせることができる。以下では、このユーザーが力を感じる向きを力覚発生方向という。
次に、本実施形態に係る力覚提示装置1が内蔵する力覚提示ユニット10の構成について、図2A及び図2Bを用いて説明する。本実施形態では、力覚提示ユニット10は4個の磁石12a〜12dを備えており、これに対応して4個のコイル13a〜13dを備えている。また、この4個のコイル13a〜13dそれぞれの中心に位置検出センサー14a〜14dが配置されている。図2Aは錘11を含む力覚提示ユニット10の全体構成を示しており、図2Bは錘11以外の各構成要素の位置関係を示すために錘11を除いた他の構成要素を示している。
4個の磁石12a〜12dは、いずれも同じ錘11に固定されており、錘11及び磁石12a〜12dは一体的に装置内を移動する。また、磁石12a〜12dはいずれも棒状の形をしており、その延伸方向が所定の平面に平行になるように配置されている。後述するように、錘11はこの所定の平面に平行な向きで振動し、これにより力覚提示装置1はこの所定の平面内におけるいずれかの方向を力覚発生方向として力覚を提示する。以下、この錘11の振動方向を含む平面を振動面という。各磁石12は、振動面に平行な向きで錘11の重心から放射状に伸びるように、錘11の重心を中心とした円周に沿って互いに等間隔に配置されている。
コイル13a〜13dは、磁石12a〜12dと一対一で対応するように配置される。すなわち、各コイル13は、対応する磁石12の下方に配置され、対応する磁石12を振動面内における一方向に沿って往復運動させる磁場を発生させる。ここで各磁石12が対応するコイル13によって往復運動する方向は、錘11の重心に向かう方向(すなわち、当該磁石12の延伸方向)に一致する。また、位置検出センサー14a〜14dは、それぞれ対応する磁石12の位置を検出する。
力覚提示装置1は、コイル13a〜13dのそれぞれに流れる電流を同時に制御することによって、磁石12a〜12dをそれぞれの延伸方向に沿って任意の速度で移動させる。このとき錘11は、各磁石12の移動ベクトルを合成して得られる合成ベクトルが示す方向に沿って移動することになる。そのため力覚提示装置1は、2以上の磁石12を振動面内において互いに異なる方向に沿って往復運動させることによって、錘11を振動面に平行な向きで360度任意の方向に振動させることができる。これにより力覚提示装置1は、振動面内のいずれの方向であっても力覚提示方向とすることができる。
次に、本実施形態に係る力覚提示装置1の概略構成を、図3を用いて説明する。ここでは力覚提示装置1は、家庭用ゲーム機のコントローラーであるものとする。力覚提示装置1の筐体は、左右に把持部21R及び21Lを備えており、ユーザーはこの把持部21R及び21Lを両手で把持して力覚提示装置1を使用する。この把持部21Rと把持部21Lとの間の筐体略中央に、図2Aに示したような力覚提示ユニット10が配置されている。
力覚提示装置1の筐体内には、電流制御部22が配置されており、力覚提示ユニット10はこの電流制御部22の制御によって動作する。具体的に電流制御部22は、外部の家庭用ゲーム機から受信した制御命令に応じて、コイル13a〜13dのそれぞれに流れる電流を制御し、錘11を制御命令によって示される力覚発生方向に沿って振動させる。これにより、力覚提示装置1を両手で把持しているユーザーに、力覚発生方向に向かって力が加わっているかのような感覚を感じさせることができる。
ここで、電流制御部22に対して与えられる制御命令の具体例について、説明する。前述の通り、力覚提示ユニット10による力覚提示動作は、静止時における錘11の重心を通る軌道直線に沿って錘11が往復運動することで実現される。この往復運動中における錘11の位置を示す波形と、軌道直線の基準方向(0度方向)に対する傾きを表す角度aによって、錘11の運動の詳細が定義される。錘11の位置を示す波形を定義する波形データを位置波形データという。また、角度aを定義する波形データを角度波形データという。これらの波形データは、例えばwav形式(RIFF waveform Audio Format形式)のデータファイルで与えられる。これらの波形データを含む制御命令を電流制御部22に入力することによって、力覚提示ユニット10に任意の向きや強度で力覚提示を行わせることができる。なお、角度aについては、角度波形データの代わりに角度値(0度〜360度までのいずれかの数値)を直接電流制御部22に入力してもよい。
図4は、位置波形データ及び角度波形データの具体例を示している。また、図5は図4に示す波形データを入力した場合における、t1〜t5までの各タイミングにおける錘11の移動方向を示している。さらに図6は、t1〜t5までの間における錘11の軌道を示している。
以上説明した本実施の形態に係る力覚提示装置1によれば、錘11が磁石12と一体的に構成され、コイル13が直接磁石12を往復運動させることによってユーザーに力覚を提示するので、電気モーターによる回転運動を直線運動に変換する従来の力覚提示装置と比較して、力覚提示ユニット10を薄型化、小型化できる。特に本実施形態に係る力覚提示装置1によれば、互いに異なる方向に沿って往復運動するように配置された2つ以上の磁石12を備えることにより、力覚提示ユニット10の厚みを抑えながら、360度いずれの方向にも力覚を提示することができる。
なお、本発明の実施の形態は以上説明したものに限られない。例えば以上の説明では力覚提示ユニット10は4個の磁石12と4個のコイル13によって構成されることとしたが、磁石12及びコイル13の数はこれに限られない。図7は、力覚提示ユニット10の変形例を示す図であって、この図7に係る力覚提示ユニット10は、3個の磁石12e〜12g、3個のコイル13e〜13g、及び3個の位置検出センサー14e〜14gを含んで構成されている。なお、図2Bと同様に図7においても錘11の図示は省略されているが、実際には3個の磁石12e〜12gは同じ錘11に固定されている。ここで3個の磁石12e〜12gはいずれも棒状の形状をしており、振動面内において錘11の重心から放射状に伸びるように、錘11の重心を中心とした円周に沿って互いに等間隔に配置されている。この図の例においても、3個のコイル13e〜13gのそれぞれに流れる電流を同時期に制御することによって、力学提示装置1は錘11を振動面内において任意の方向に振動させることができる。
また、以上の説明では錘11は振動面内だけで移動するものとしたが、力覚提示装置1は錘11を振動面に直交する方向に沿って往復運動させる機構をさらに備えてもよい。以下、力覚提示ユニット10の振動面に直交する方向を直交方向といい、直交方向に沿って錘11を移動させる機構を上下動機構24という。この上下動機構24は、錘11だけでなく、図2Aに示す力覚提示ユニット10の全体を直交方向に沿って移動させるものとする。
図8は、このような上下動機構24の一例を模式的に示す図である。この図の例では、力覚提示ユニット10を取り囲むように、直交方向に沿って延伸するリニアガイド25が設けられている。このリニアガイド25によって、力覚提示ユニット10全体の移動方向は直交方向に規制される。さらに図8の例では、磁石24a、コイル24b、及び位置検出センサー24cから構成される上下動機構24が力覚提示装置1内に配置されている。磁石24a、コイル24b及び位置検出センサー24cは、力覚提示ユニット10内において錘11を移動させるために用いられる磁石12、コイル13、及び位置検出センサー14と同様の動作原理により、力覚提示ユニット10全体を直交方向に沿って移動させる。すなわち、磁石24aは直交方向に沿った向きで力覚提示ユニット10の側面に固定されており、コイル24bが発生させる磁場によって直交方向に沿って移動する。これにより力覚提示装置1は、力覚提示ユニット10全体を直交方向に沿って往復運動させて、直交方向に沿った向きの力覚をユーザーに提示することができる。
図9は、上下動機構24の別の例を示す図である。この図の例でも、図8と同様に力覚提示ユニット10を取り囲むようにリニアガイド25が配置されている。また、上下動機構24として、モーター24d、歯車24e、及びラック24fが配置されている。歯車24eはモーター24dの回転軸に取り付けられており、モーター24dの回転に伴って回転する。ラック24fは、図8の例における磁石24aと同様に直交方向に沿った向きで力覚提示ユニット10の側面に固定されている。歯車24eとラック24fは互いにかみ合うように配置されており、ラック24fは歯車24eの回転により直交方向に沿って直線的に移動する。これにより力覚提示装置1は、モーター24dを回転させることによって、力覚提示ユニット10全体を直交方向に沿って往復運動させることができる。
このような上下動機構24を備え、振動面内における移動と組み合わせて錘11の移動を制御することによって、力覚提示装置1は、錘11を振動面内に限らず3次元内の任意の方向に移動させることができる。3次元内における錘11の位置を指定する場合、振動面内の方向を表す角度aに加えて、基準面に対する軌道直線の傾きを表す角度bの情報を電流制御部22に入力する必要がある。この角度bは、基準面に対する錘11の軌道直線の傾き(すなわち、仰角又は俯角)を表すパラメータである。角度bは、角度aと同様に、角度波形データとして電流制御部22に入力されてもよいし、角度の数値データとして電流制御部22に入力されてもよい。図10は角度aと角度bの関係を示している。
また、力覚提示装置1は複数の力覚提示ユニット10を備えてもよい。図11は、図3と同様の形状を備える筐体内に2個の力覚提示ユニット10a及び10bを配置した場合の構成を示している。同図では、筐体の向かって右側に力覚提示ユニット10aが、左側に力覚提示ユニット10bが、それぞれ配置されている。これらの力覚提示ユニット10が同じ力覚発生方向に向かって力覚を提示すれば、当該力覚発生方向に向かって力覚提示装置1を平行に移動させようとする力が加わっている感覚をユーザーに感じさせることができる。また、これらの力覚提示ユニット10が互いに逆向き(例えば力覚提示ユニット10aが上側、力覚提示ユニット10bが下側)に力覚を提示することで、力覚提示装置1を回転させようとする力が加わっている感覚をユーザーに感じさせることができる。
図12及び図13は力覚提示装置1の形状の別の例を示している。これらの例では、力覚提示装置1は全体として棒状の形状を備えており、その中央近傍の把持部23をユーザーが把持して使用するようにデザインされている。また、図12及び図13のいずれにおいても、力覚提示ユニット10は振動面が力覚提示装置1の延伸方向と交差するように筐体内に配置されている。図12の例では、把持部23に近い位置に力覚提示ユニット10が配置されており、この力覚提示ユニット10が力覚を提示することにより、力覚提示装置1全体を平行に移動させようとする力が加わっている感覚をユーザーに感じさせることができる。また、図13の例では、把持部23から離れた力覚提示装置1の端部近傍に力覚提示ユニット10が配置されており、ユーザーが把持部23を把持した状態でこの力覚提示ユニット10が力覚を提示することにより、把持部23を支点として力覚提示装置1を回転させようとする力が加わっている感覚をユーザーに感じさせることができる。
また、以上の説明において力覚提示装置1は家庭用ゲーム機のコントローラーであるものとしたが、本発明の実施の形態に係る力覚提示装置はこれに限らず、例えば携帯型ゲーム機やスマートフォンなど、ユーザーが手で把持して使用する各種のデバイスであってよい。あるいは、力覚提示装置1は、例えばヘッドマウントディスプレイなど、ユーザーが自分の体に接触させて使用するデバイスであってもよい。以下、本発明をユーザーが頭に装着して使用するヘッドマウントディスプレイに適用した場合の構成例について、説明する。
図14及び図15は、いずれもヘッドマウントディスプレイである力覚提示装置1をユーザーが装着した様子を示している。図14の例では、力覚提示ユニット10はその振動面が水平面に平行になるような向きで装置の略中央(ユーザーの額の前方)に配置されている。この図の例では、ユーザーから見て例えばヘッドマウントディスプレイの前後方向や左右方向に力が加わっている感覚をユーザーに感じさせることができる。図15は、図14と異なる向きに力覚提示ユニット10を配置した場合の例を示している。この図の例では、力覚提示ユニット10の配置位置は図14の場合と同じだが、振動面が水平面と直交するような向きで装置内に配置されている。そのため、ユーザーから見て例えば上下方向や左右方向に力が加わっている感覚をユーザーに感じさせることができる。
図16は、ヘッドマウントディスプレイとしての力覚提示装置1に2個の力覚提示ユニット10c及び10dを配置した場合の例を示している。図16では、ヘッドマウントディスプレイを装着するユーザーから見て右側(右耳の近傍)に力覚提示ユニット10cが、左側(左耳の近傍)に力覚提示ユニット10dが、いずれもその振動面が水平面と直交するような向きで配置されている。また、2個の力覚提示ユニット10の振動面は互いに平行になっている。ここで、2個の力覚提示ユニット10c及び10dが同じ力覚発生方向に向かって力覚を提示すれば、当該力覚発生方向に向かって力覚提示装置1を平行に移動させようとする力が加わっている感覚をユーザーに感じさせることができる。また、これらの力覚提示ユニット10が互いに逆向きに力覚を提示することで、力覚提示装置1を回転させようとする力が加わっている感覚をユーザーに感じさせることができる。具体例として、図中に実線の矢印で示すように、力覚提示ユニット10cが鉛直上方に向けて力覚を提示し、力覚提示ユニット10dが鉛直下方に向けて力覚を提示した場合、実線のブロック矢印で示すように、ユーザーを正面から見て時計回りに回転させようとする力が加わっている感覚をユーザーに感じさせることができる。また、図中に破線の矢印で示すように、力覚提示ユニット10cがユーザーの前方に向けて力覚を提示し、力覚提示ユニット10dがユーザーの後方に向けて力覚を提示した場合、破線のブロック矢印で示すように、ユーザーを上方から見て反時計回りに回転させようとする(ユーザーを左向きに回転させようとする)力が加わっている感覚をユーザーに感じさせることができる。