JPWO2014010286A1 - 熱電変換素子及びその製造方法 - Google Patents

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明宏 桐原
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Abstract

熱電変換素子は、積層された複数の熱電変換単位構造を備える。複数の熱電変換単位構造の各々は、磁性体層と、磁性体層上に形成されスピン軌道相互作用を発現する材料で形成された起電層と、を備える。各々の熱電変換単位構造は、起電層が外側に露出するように折り畳まれている。また、隣り合う熱電変換単位構造間で、起電層同士が接触している。

Description

本発明は、スピンゼーベック効果及び逆スピンホール効果に基づく熱電変換素子、及びその製造方法に関する。
近年、「スピントロニクス(spintronics)」と呼ばれる電子技術が脚光を浴びている。従来のエレクトロニクスは、電子の1つの性質である「電荷」だけを利用してきたが、スピントロニクスは、それに加えて、電子の他の性質である「スピン」をも積極的に利用する。特に、電子のスピン角運動量の流れである「スピン流(spin-current)」は重要な概念である。スピン流のエネルギー散逸は少ないため、スピン流を利用することによって高効率な情報伝達を実現できる可能性がある。従って、スピン流の生成、検出、制御は重要なテーマである。
例えば、電流が流れるとスピン流が生成される現象が知られている。これは、「スピンホール効果(spin-Hall
effect)」と呼ばれている。また、その逆の現象として、スピン流が流れると起電力が発生することも知られている。これは、「逆スピンホール効果(inverse spin-Hall effect)」と呼ばれている。逆スピンホール効果を利用することによって、スピン流を検出することができる。尚、スピンホール効果も逆スピンホール効果も、「スピン軌道相互作用(spin orbit coupling)」が大きな物質(例:Pt、Au)において有意に発現する。
また、最近の研究により、磁性体における「スピンゼーベック効果(spin-Seebeck effect)」の存在も明らかになっている。スピンゼーベック効果とは、磁性体に温度勾配が印加されると、温度勾配と平行方向にスピン流が誘起される現象である(例えば、特許文献1、非特許文献1、非特許文献2を参照)。すなわち、スピンゼーベック効果により、熱がスピン流に変換される(熱スピン流変換)。特許文献1では、強磁性金属であるNiFe膜におけるスピンゼーベック効果が報告されている。非特許文献1、2では、イットリウム鉄ガーネット(YIG、YFe12)といった磁性絶縁体と金属膜との界面におけるスピンゼーベック効果が報告されている。
尚、温度勾配によって誘起されたスピン流は、上述の逆スピンホール効果を利用して電界(電流、電圧)に変換することが可能である。つまり、スピンゼーベック効果と逆スピンホール効果を併せて利用することによって、温度勾配を電気に変換する「熱電変換」が可能となる。
図1は、特許文献1に開示されている熱電変換素子の構成を示している。サファイア基板101の上に熱スピン流変換部102が形成されている。熱スピン流変換部102は、Ta膜103、PdPtMn膜104及びNiFe膜105の積層構造を有している。NiFe膜105は、面内方向の磁化を有している。更に、NiFe膜105上にはPt電極106が形成されており、そのPt電極106の両端は端子107−1、107−2にそれぞれ接続されている。
このように構成された熱電変換素子において、NiFe膜105が、スピンゼーベック効果によって温度勾配からスピン流を生成する役割を果たし、Pt電極106が、逆スピンホール効果によってスピン流から起電力を生成する役割を果たす。具体的には、NiFe膜105の面内方向に温度勾配が印加されると、スピンゼーベック効果により、その温度勾配と平行な方向にスピン流が発生する。すると、NiFe膜105からPt電極106にスピン流が流れ込む、あるいは、Pt電極106からNiFe膜105にスピン流が流れ出す。Pt電極106では、逆スピンホール効果により、スピン流方向とNiFe磁化方向とに直交する方向に起電力が生成される。その起電力は、Pt電極106の両端に設けられた端子107−1、107−2から取り出すことができる。
特開2009−130070号公報
Uchida et al., "Spin Seebeck insulator", Nature Materials, 2010, vol. 9, p.894. Uchida et al., "Observation of longitudinal spin-Seebeck effect in magnetic insulators", Applied Physics Letters, 2010, vol.97, p172505.
熱電変換素子の更なる高出力化が望まれる。
本発明の1つの観点において、熱電変換素子が提供される。その熱電変換素子は、積層された複数の熱電変換単位構造を備える。複数の熱電変換単位構造の各々は、磁性体層と、磁性体層上に形成されスピン軌道相互作用を発現する材料で形成された起電層と、を備える。各々の熱電変換単位構造は、起電層が外側に露出するように折り畳まれている。また、隣り合う熱電変換単位構造間で、起電層同士が接触している。
本発明の他の観点において、熱電変換素子の製造方法が提供される。その製造方法は、(A)熱電変換シートを提供するステップを含む。ここで、熱電変換シートは、磁性体層と、磁性体層上に形成されスピン軌道相互作用を発現する材料で形成された起電層と、を備える。製造方法は、更に、(B)起電層が外側に露出するように熱電変換シートを折り畳むことによって、熱電変換単位構造を作成するステップと、(C)起電層同士が接触するように、熱電変換単位構造を複数段積層するステップと、を含む。
本発明によれば、熱電変換素子の更なる高出力化が実現される。
図1は、特許文献1に記載されている熱電変換素子を概略的に示す斜視図である。 図2は、本発明の実施の形態に係る熱電変換素子を概略的に示す斜視図である。 図3は、本発明の実施の形態における熱電変換単位構造を概略的に示す斜視図である。 図4は、第1の例における熱電変換素子の製造方法を示す断面図である。 図5は、第1の例における熱電変換素子の製造方法を示す断面図である。 図6は、第1の例における熱電変換素子の製造方法を示す断面図である。 図7は、第1の例における熱電変換素子の構造を示す断面図である。 図8は、第1の例における熱電変換素子の他の構造を示す断面図である。 図9は、第1の例における熱電変換素子の更に他の構造を示す断面図である。 図10は、第1の例における熱電変換素子の更に他の構造を示す断面図である。 図11は、第2の例における熱電変換素子の製造方法を示す断面図である。 図12は、第2の例における熱電変換素子の製造方法を示す断面図である。 図13は、第2の例における熱電変換素子の製造方法を示す断面図である。 図14は、第2の例における熱電変換素子の製造方法を示す断面図である。 図15は、第2の例における熱電変換素子の構造を示す断面図である。 図16は、第2の例における熱電変換素子の他の構造を示す断面図である。 図17は、第2の例における熱電変換素子の更に他の構造を示す断面図である。
添付図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
1.基本構造
図2は、本実施の形態に係る熱電変換素子1を概略的に示す斜視図である。熱電変換素子1は、複数の熱電変換単位構造10が積層された積層構造を備えている。その積層方向はZ方向であり、Z方向に直交する面内方向はX方向とY方向である。X方向とY方向は互いに直交している。
積層構造の第1側面11には第1導電構造51が形成されている。また、積層構造の第2側面12には第2導電構造52が形成されている。第1導電構造51及び第2導電構造52は共に導電体である。第1側面11と第2側面12とは、X方向において対向している。つまり、第1導電構造51と第2導電構造52とは、X方向において対向している。
図3は、単一の熱電変換単位構造10を概略的に示している。熱電変換単位構造10は、磁性体層30と起電層(導電層)40を備えている。起電層40は、磁性体層30上に形成されている。典型的には、起電層40は、磁性体層30に接触している。
磁性体層30は、スピンゼーベック効果を発現する材料で形成される。磁性体層30の材料は、強磁性金属であってもよいし、磁性絶縁体であってもよい。強磁性金属としては、NiFe、CoFe、CoFeBなどが挙げられる。磁性絶縁体としては、イットリウム鉄ガーネット(YIG,YFe12)、ビスマス(Bi)をドープしたYIG(Bi:YIG)、ランタン(La)を添加したYIG(LaYFe12)、イットリウムガリウム鉄ガーネット(YFe5−xGa12)などが挙げられる。尚、電子による熱伝導を抑えるという観点から言えば、磁性絶縁体を用いることが望ましい。
起電層(導電層)40は、逆スピンホール効果(スピン軌道相互作用)を発現する材料で形成される。より詳細には、起電層40の材料は、スピン軌道相互作用の大きな金属材料を含有する。例えば、スピン軌道相互作用の比較的大きなAuやPt、Pd、Ir、その他f軌道を有する金属材料、またはそれらを含有する合金材料を用いる。また、Cuなどの一般的な金属膜材料に、Au、Pt、Pd、Irなどの材料を0.5〜10%程度ドープするだけでも、同様の効果を得ることができる。あるいは、起電層40は、ITOなどの酸化物であってもよい。
これら磁性体層30と起電層40の積層により、熱電変換単位構造10は、スピンゼーベック効果と逆スピンホール効果を利用した「熱電変換部」としての機能を有することになる。より詳細には、磁性体30は、スピンゼーベック効果によって温度勾配∇Tからスピン流を生成(駆動)する。スピン流の方向は、温度勾配∇Tの方向と平行あるいは反平行である。そして、起電層40は、逆スピンホール効果によって上記スピン流から起電力を発生する。ここで、発生する起電力の方向は、磁性体層30の磁化Mの方向と温度勾配∇Tの方向との外積で与えられる(E,J//M×∇T)。
本実施の形態では、効率的な電力生成のため、起電層40における起電力の方向が面内方向となるように熱電変換単位構造10が構成されている。例えば、図3に示されるように、磁性体層30の磁化Mの方向は−Y方向であり、温度勾配∇Tの方向は−Z方向であり、起電力の方向は+X方向である。尚、磁性体層30の磁化Mは、少なくともY方向成分を含んでいればよく、それにより、少なくともX方向の起電力が発生する。
ここで、起電層40の第1側面11側(−X方向側)の端部は、第1端部41である。一方、起電層40の第2側面12側(+X方向側)の端部は、第2端部42である。第1端部41と第2端部42とは、X方向において対向している。また、起電層40の第1端部41は、図2で示された第1導電構造51と物理的につながっている。一方、起電層40の第2端部42は、図2で示された第2導電構造52と物理的につながっている。尚、“物理的につながっている”とは、起電層40と第1導電構造51あるいは第2導電構造52とが一体的に形成されている場合も含む。すなわち、起電層40と第1導電構造51あるいは第2導電構造52とは、別々に形成されていてもよいし、一体的に形成されていてもよい。
各熱電変換単位構造10の起電層40の第1端部41(第2端部42)が第1導電構造51(第2導電構造52)と物理的につながることにより、積層された複数の熱電変換単位構造10のそれぞれの起電層40同士が電気的に接続される。
第1導電構造51及び第2導電構造52は、低抵抗材料で形成されることが望ましい。例えば、第1導電構造51及び第2導電構造52の材料はPtである。また、低抵抗化のため、第1導電構造51及び第2導電構造52のX方向の厚さは、起電層40のZ方向の厚さよりも大きいことが望ましい。
以上に説明されたように、本実施の形態に係る熱電変換素子1では、複数の熱電変換単位構造10が積層されている。そして、それぞれの熱電変換単位構造10の起電層40が、第1導電構造51及び第2導電構造52に共通に接続されている。従って、それら第1導電構造51及び第2導電構造52を用いることによって、複数の熱電変換単位構造10で発生した起電力を同時に取り出すことが可能となる。これにより、素子面積を増大させることなく、発電量すなわち出力電力を増加させることが可能となる。
尚、単一の起電層40の第1端部41と第2端部42との間の抵抗値を“R1”とし、第1導電構造51(第2導電構造52)全体のZ方向の抵抗値を“R2”としたとき、“R1>R2”という条件が満たされることが好ましい。
2.第1の例
次に、本実施の形態に係る熱電変換素子1の製造方法の第1の例を説明する。
まず、図4に示されるように、基板20上に磁性体層30が形成され、その磁性体層30上に起電層40が形成される。更に、これら基板20、磁性体層30及び起電層40の積層を1単位として、その積層が複数回繰り返される。
次に、図4で示された積層構造から、所望の素子サイズに応じた部分が切り出される。その結果、図5に示される積層構造が得られる。その積層構造の−X方向側の側面が第1側面11であり、+X方向側の側面が第2側面12である。ここで、基板20、磁性体層30及び起電層40の積層構造が、単一の熱電変換単位構造10に相当する。また、起電層40の第1側面11側(−X方向側)の端部が第1端部41であり、起電層40の第2側面12側(+X方向側)の端部が第2端部42である。
次に、図6に示されるように、横方向から導電膜が成膜される。その結果、第1側面11の上に接触するように第1導電構造51が形成され、また、第2側面12の上に接触するように第2導電構造52が形成される。
更に、図7に示されるように、第1導電構造51及び第2導電構造52のそれぞれに、第1外部端子61及び第2外部端子62が取り付けられる。これら第1外部端子61及び第2外部端子62は、電力の取り出しに用いられる。
以上に説明された方法により、図2及び図3で示された構造が得られる。尚、磁性体層30の磁化処理は、どのタイミングで実施されてもよい。
このように、起電層40と第1導電構造51(第2導電構造52)とが物理的に接触することで電気的に接続される。従って、複数の熱電変換単位構造10で発生した起電力を同時に取り出すことが可能となる。これにより、素子面積を増大させることなく、発電量すなわち出力電力を増加させることが可能となる。
尚、図8に示されるように、単一の熱電変換単位構造10において、磁性体層30の上下に起電層40が形成されてもよい。
また、起電層40と第1導電構造51(第2導電構造52)との間の接触面積を大きくする(つまり、接触抵抗を低減する)ために、図9に示されるように、第1側面11(第2側面12)が斜面状に形成されてもよい。
あるいは、図10に示されるように、起電層40の両端上に第1電極45及び第2電極46が形成されていてもよい。第1電極45及び第2電極46は、低抵抗材料(例:Cu)で形成されており、Y方向に延在している。第1電極45の側面は、起電層40の第1端部41と共に、第1導電構造51に接触している。一方、第2電極46の側面は、起電層40の第2端部42と共に、第2導電構造52に接触している。このような構造によっても、第1導電構造51や第2導電構造52との接触面積が大きくなる(つまり、接触抵抗が低減される)。
尚、図10に示されるような熱電変換単位構造10が積層された際、第1電極45と第2電極46との間に空間が残ったままだと、その空間において熱伝導が鈍り、発電効率が悪くなる。よって、図10に示されるように、第1電極45と第2電極46との間の空間を埋めるように起電層40上に絶縁膜47が形成されてもよい。絶縁膜47は、熱伝導度が高い(熱抵抗が低い)材料、例えばポリイミドで形成される。このような絶縁膜47により、積層構造中の空間の発生が防止され、発電効率が向上する。
3.第2の例
次に、本実施の形態に係る熱電変換素子1の製造方法の第2の例を説明する。
効率の観点から言えば、起電層40の厚さを、材料に依存する「スピン拡散長(スピン緩和長)」程度に設定することが望ましい。例えば、起電層40がPt膜である場合、その膜厚を10〜30nm程度に設定することが好ましい。しかしながら、上記の第1の例では、起電層40と第1導電構造51(第2導電構造52)とが別プロセスで形成される。この場合、薄い起電層40の第1導電構造51(第2導電構造52)との間の接触抵抗が、どうしても高くなってしまう。つまり、薄い起電層40に対するコンタクト部分(第1端部41、第2端部42)が高抵抗化してしまう。第2の例は、このような問題を解決するためのものである。
まず、図11に示されるような熱電変換シート70が提供される。この熱電変換シート70も、基板20、磁性体層30及び起電層40の積層構造を有している。但し、熱電変換シート70は、可とう性(flexibility)を有している。ここで、可とう性とは、可塑性(plasticity)と弾性(elasticity)の両方の概念を含む。すなわち、熱電変換シート70は曲げることが可能である。
例えば、基板20はポリイミド基板(厚さ:25μm)であり、磁性体層30はフェライト磁性体(厚さ:3μm)であり、起電層40はPt膜(厚さ:10nm)である。フェライト磁性体は、例えばフェライトめっき法により形成される。Pt膜は、例えばスパッタリングにより形成される。このような基板20、磁性体層30及び起電層40により、可とう性を有する熱電変換シート70が実現される。
次に、図12に示されるように、起電層40が外側に露出するように熱電変換シート70が折り畳まれる。このとき、熱電変換シート70は、2箇所において折り曲げられる。起電層40のうちそれら2箇所に相当する折り曲げ部分は、「第1側面導電部40S1」と「第2側面導電部40S2」である。第1側面導電部40S1と第2側面導電部40S2は、X方向において対向している。このうち第1側面導電部40S1が−X方向側に位置し、第2側面導電部40S2が+X方向側に位置している。
また、起電層40のうち上方向(+Z方向)に露出している部分は、以下、「上部起電層40U」と参照される。一方、起電層40のうち下方向(−Z方向)に露出している部分は、以下、「下部起電層40L」と参照される。つまり、上部起電層40Uは上面側に形成されており、下部起電層40Lは下面側に形成されている。尚、上部起電層40Uと下部起電層40Lの各々が、図3で示された単一の起電層40に相当する。
上部起電層40U(下部起電層40L)と第1側面導電部40S1とは、一体的に形成されている。そして、上部起電層40U(下部起電層40L)から第1側面導電部40S1への遷移部分が、図3で示された第1端部41に相当する。つまり、第1側面導電部40S1は、上部起電層40U(下部起電層40L)の第1端部41から延在するように、上部起電層40U(下部起電層40L)と一体的に形成されている。尚、上部起電層40U(下部起電層40L)から第1側面導電部40S1への遷移部分は、ある程度の曲率半径を有している。
同様に、上部起電層40U(下部起電層40L)と第2側面導電部40S2とは、一体的に形成されている。そして、上部起電層40U(下部起電層40L)から第2側面導電部40S2への遷移部分が、図3で示された第2端部42に相当する。つまり、第2側面導電部40S2は、第2端部42から延在するように、上部起電層40U(下部起電層40L)と一体的に形成されている。尚、上部起電層40U(下部起電層40L)から第2側面導電部40S2への遷移部分は、ある程度の曲率半径を有している。
このような図12に示される構造が、本実施の形態に係る熱電変換単位構造10に相当する。図12に示される熱電変換単位構造10の場合、第1側面導電部40S1と第2側面導電部40S2を除く起電層40(つまり、上部起電層40Uと下部起電層40L)において、X方向の起電力が発生する。
尚、図13に示されるように、折り曲げの結果、熱電変換単位構造10の下面側に隙間15が存在していてもよい。
次に、図14に示されるように、図12(あるいは図13)で示された熱電変換単位構造10が複数段積層される。このとき、上下に隣り合う熱電変換単位構造10間で、起電層40同士が広い面積で接触する。より詳細には、上側の熱電変換単位構造10の下部起電層40Lと、下側の熱電変換単位構造10の上部起電層40Uとが、互いに接触する。
また、上下に隣り合う熱電変換単位構造10間で、第1側面導電部40S1同士が物理的につながると好適である。この場合、積層されている複数の熱電変換単位構造10のそれぞれの第1側面導電部40S1がつながることによって、図2で示された「第1導電構造51」が形成される。
同様に、上下に隣り合う熱電変換単位構造10間で、第2側面導電部40S2同士が物理的につながると好適である。この場合、積層されている複数の熱電変換単位構造10のそれぞれの第2側面導電部40S2がつながることによって、図2で示された「第2導電構造52」が形成される。
更に、図15に示されるように、第1導電構造51及び第2導電構造52のそれぞれに、第1外部端子61及び第2外部端子62が取り付けられる。これら第1外部端子61及び第2外部端子62は、電力の取り出しに用いられる。
以上に説明された方法により、図2及び図3で示された構造が得られる。尚、磁性体層30の磁化処理は、どのタイミングで実施されてもよい。
このようにして、積層された複数の熱電変換単位構造10のそれぞれの起電層40同士が電気的に接続される。従って、複数の熱電変換単位構造10で発生した起電力を同時に取り出すことが可能となる。これにより、素子面積を増大させることなく、発電量すなわち出力電力を増加させることが可能となる。
また、第2の例によれば、熱電変換シート70の折り曲げにより熱電変換単位構造10が形成される。更に、その熱電変換単位構造10を複数段積層することにより、熱電変換素子1が形成される。このとき、上下に隣り合う熱電変換単位構造10の起電層40同士は、広い面積で接触する。従って、上記の第1の例で発生したような接触抵抗の高い部分が排除される。すなわち、第2の例によれば、第1の例と比較して、更なる高出力化が可能である。
図16は、一変形例として、図13で示された熱電変換単位構造10の下部起電層40L同士が接触するような積層例を示している。上下の熱電変換単位構造10のそれぞれの隙間15の位置が一致した場合、その部分でX方向の電流が途切れてしまう。この場合、効果が全く無くなるわけではないが、少なくなる。よって、上部起電層40Uと下部起電層40Lが接触するような積層の方が好ましい。あるいは、図12で示されたように、隙間15が出来ないように熱電変換シート70が折り曲げられることが好ましい。
図17は、他の変形例を示している。図17に示されるように、熱電変換シート70は、支持体80の周りに巻き付けられるように折り曲げられてもよい。この場合、熱電変換シート70の破断が抑制されるとともに、熱電変換素子1全体としての強度が増す。
以上、本発明の実施の形態が添付の図面を参照することにより説明された。但し、本発明は、上述の実施の形態に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で当業者により適宜変更され得る。
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
積層された複数の熱電変換単位構造を備え、
前記複数の熱電変換単位構造の各々は、
磁性体層と、
前記磁性体層上に形成され、スピン軌道相互作用を発現する材料で形成された起電層と
を備え、
前記各々の熱電変換単位構造は、前記起電層が外側に露出するように折り畳まれており、
隣り合う熱電変換単位構造間で、前記起電層同士が接触している
熱電変換素子。
(付記2)
付記1に記載の熱電変換素子であって、
前記各々の熱電変換単位構造の前記起電層は、第1側面導電部と第2側面導電部において折れ曲がっており、
隣り合う熱電変換単位構造間で、前記第1側面導電部同士が物理的につながっており、且つ、前記第2側面導電部同士が物理的につながっている
熱電変換素子。
(付記3)
付記1又は2に記載の熱電変換素子であって、
前記第1側面導電部と前記第2側面導電部とは、第1面内方向において対向しており、
前記各々の熱電変換単位構造は、前記第1側面導電部及び前記第2側面導電部を除く前記起電層において前記第1面内方向に起電力が発生するように構成されている
熱電変換素子。
(付記4)
付記3に記載の熱電変換素子であって、
前記磁性体層の磁化は、前記第1面内方向と直交する第2面内方向の成分を含んでいる
熱電変換素子。
(付記5)
複数の熱電変換単位構造が積層された積層構造と、
前記積層構造の第1側面に形成された第1導電構造と、
前記積層構造の第2側面に形成された第2導電構造と
を備え、
前記複数の熱電変換単位構造の各々は、
磁性体層と、
前記磁性体層上に形成され、スピン軌道相互作用を発現する材料で形成された起電層と
を備え、
前記起電層の前記第1側面側の端部である第1端部は、前記第1導電構造と物理的につながっており、
前記起電層の前記第2側面側の端部である第2端部は、前記第2導電構造と物理的につながっている
熱電変換素子。
(付記6)
付記5に記載の熱電変換素子であって、
前記第1側面と前記第2側面とは、第1面内方向において対向しており、
前記各々の熱電変換単位構造は、前記起電層において前記第1面内方向に起電力が発生するように構成されている
熱電変換素子。
(付記7)
付記6に記載の熱電変換素子であって、
前記磁性体層の磁化は、前記第1面内方向と直交する第2面内方向の成分を含んでいる
熱電変換素子。
(付記8)
付記5乃至7のいずれか一項に記載の熱電変換素子であって、
前記各々の熱電変換単位構造は、更に、
前記起電層の前記第1端部から前記第1側面に延在するように、前記起電層と一体的に形成された第1側面導電部と、
前記起電層の前記第2端部から前記第2側面に延在するように、前記起電層と一体的に形成された第2側面導電部と
を備え、
隣り合う熱電変換単位構造間で前記第1側面導電部同士が物理的につながることによって、前記第1導電構造が形成されており、
隣り合う熱電変換単位構造間で前記第2側面導電部同士が物理的につながることによって、前記第2導電構造が形成されている
熱電変換素子。
(付記9)
付記8に記載の熱電変換素子であって、
前記各々の熱電変換単位構造の前記起電層は、
前記各々の熱電変換単位構造の上面側に形成された上部起電層と、
前記各々の熱電変換単位構造の下面側に形成された下部起電層と
を含み、
隣り合う熱電変換単位構造間で、前記上部起電層と前記下部起電層とが接触している
熱電変換素子。
(付記10)
付記8又は9に記載の熱電変換素子であって、
前記各々の熱電変換単位構造は、可とう性を有する材料で形成されている
熱電変換素子。
(付記11)
(A)熱電変換シートを提供するステップと、
ここで、前記熱電変換シートは、
磁性体層と、
前記磁性体層上に形成され、スピン軌道相互作用を発現する材料で形成された起電層と
を備え、
(B)前記起電層が外側に露出するように前記熱電変換シートを折り畳むことによって、熱電変換単位構造を作成するステップと、
(C)前記起電層同士が接触するように、前記熱電変換単位構造を複数段積層するステップと
を含む
熱電変換素子の製造方法。
(付記12)
付記11に記載の熱電変換素子の製造方法であって、
前記熱電変換単位構造を作成するステップにおいて、前記起電層は、第1側面導電部と第2側面導電部において折り曲げられ、
前記熱電変換単位構造を複数段積層するステップにおいて、前記第1側面導電部同士が物理的につなげられ、且つ、前記第2側面導電部同士が物理的につなげられる
熱電変換素子の製造方法。
本出願は、2012年7月9日に出願された日本国特許出願2012−153414を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。

Claims (6)

  1. 積層された複数の熱電変換単位構造を備え、
    前記複数の熱電変換単位構造の各々は、
    磁性体層と、
    前記磁性体層上に形成され、スピン軌道相互作用を発現する材料で形成された起電層と
    を備え、
    前記各々の熱電変換単位構造は、前記起電層が外側に露出するように折り畳まれており、
    隣り合う熱電変換単位構造間で、前記起電層同士が接触している
    熱電変換素子。
  2. 請求項1に記載の熱電変換素子であって、
    前記各々の熱電変換単位構造の前記起電層は、第1側面導電部と第2側面導電部において折れ曲がっており、
    隣り合う熱電変換単位構造間で、前記第1側面導電部同士が物理的につながっており、且つ、前記第2側面導電部同士が物理的につながっている
    熱電変換素子。
  3. 請求項1又は2に記載の熱電変換素子であって、
    前記第1側面導電部と前記第2側面導電部とは、第1面内方向において対向しており、
    前記各々の熱電変換単位構造は、前記第1側面導電部及び前記第2側面導電部を除く前記起電層において前記第1面内方向に起電力が発生するように構成されている
    熱電変換素子。
  4. 請求項3に記載の熱電変換素子であって、
    前記磁性体層の磁化は、前記第1面内方向と直交する第2面内方向の成分を含んでいる
    熱電変換素子。
  5. (A)熱電変換シートを提供するステップと、
    ここで、前記熱電変換シートは、
    磁性体層と、
    前記磁性体層上に形成され、スピン軌道相互作用を発現する材料で形成された起電層と
    を備え、
    (B)前記起電層が外側に露出するように前記熱電変換シートを折り畳むことによって、熱電変換単位構造を作成するステップと、
    (C)前記起電層同士が接触するように、前記熱電変換単位構造を複数段積層するステップと
    を含む
    熱電変換素子の製造方法。
  6. 請求項5に記載の熱電変換素子の製造方法であって、
    前記熱電変換単位構造を作成するステップにおいて、前記起電層は、第1側面導電部と第2側面導電部において折り曲げられ、
    前記熱電変換単位構造を複数段積層するステップにおいて、前記第1側面導電部同士が物理的につなげられ、且つ、前記第2側面導電部同士が物理的につなげられる
    熱電変換素子の製造方法。
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