JPWO2013180106A6 - 防曇性シート - Google Patents
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Abstract
高湿度環境下や塗膜が濡れた状態下において紫外線が当たっても、防曇性を維持しつつ、塗膜が白化したり、塗膜の白化による塗膜の接着性が低下することのない防曇性シートを提供する。
本発明の防曇性シートは、基材上に第1層と第2層が順に積層されてなる。第1層は、吸水性樹脂を含む第1コーティング組成物の加熱処理物で構成されている。第2層は、ポリオールとベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とを含む第2コーティング組成物の加熱処理物で構成されている。第2コーティング組成物中のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の使用量は、固形分換算で、1.5〜8重量%である。
本発明の防曇性シートは、基材上に第1層と第2層が順に積層されてなる。第1層は、吸水性樹脂を含む第1コーティング組成物の加熱処理物で構成されている。第2層は、ポリオールとベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とを含む第2コーティング組成物の加熱処理物で構成されている。第2コーティング組成物中のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の使用量は、固形分換算で、1.5〜8重量%である。
Description
本発明は、高湿度環境下や塗膜が濡れた状態下において紫外線が当たっても、防曇性を維持しつつ、塗膜の白化や塗膜の接着性が低下することのない防曇性シートに関する。
ガラス、プラスチックなどの基材が曇るのは、表面温度が露点以下に下がったときに空気中の水分が細かな水滴となって付着し、基材表面で光が乱反射するためである。従って、基材表面における水滴の生成を防止することにより、曇りを防ぐことができる。このような防曇方法においては、撥水性の優れた界面活性剤を含む、有機ポリマーからなる防曇性コーティング組成物が提案されている。この組成物においては、界面活性剤の存在下でポリエーテルポリオールによって親水性となった膜が水分を吸収して防曇性を発揮する。親水性となった膜が吸水限界点以上になった場合には、含有されている界面活性剤により、濡れが調整されて透明性を保つように設計されている。しかし、界面活性剤は水に溶けやすく、流出するため、防曇性が著しく低下してしまう。
そこで近年、防曇性を発揮しつつ水に不溶性の防曇性塗膜が形成可能な組成物及び当該組成物をプラスチック上に塗布した防曇シート(特許文献1)や、基材上に、吸水性と防曇性を発現させるための第1層と、防曇性を維持しつつ、さらに耐水性を付与するための第2層が順に積層させてなる積層体構造とし、防曇性能はもとより、高湿度環境下や塗膜が濡れた状態下においても塗膜が剥がれることのない、耐水性にも優れる防曇性シートが提案されている(特許文献2)。
上述した防曇性の塗膜を二層積層させてなる防曇性シートは、防曇性及び耐水性の点で従来の防曇性シートに比べ優れているが、高湿度環境下や塗膜が濡れた状態下において紫外線が当たると、塗膜が白化したり、塗膜の接着性が低下する不具合が生じた。
特許文献2には、防曇性塗膜の耐候性を向上するために、防曇性を発現する第1層に紫外線吸収剤としてベンゾフェノン化合物を添加することが記載されているが、本発明者らの検討によれば、この構成では、第2層の塗膜の白化や、第1層と第2層との塗膜接着性の低下を防ぐことができない。また第1層ではなく第2層にベンゾフェノン化合物を添加した場合には、防曇性が損なわれるという新たな問題を生じた。
そこで本発明は、高湿度環境下や塗膜が濡れた状態下において紫外線が当たっても、防曇性を維持しつつ、塗膜が白化したり、塗膜の接着性が低下することのない防曇性シートを提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、第2層の塗膜に紫外線吸収剤の中でも比較的分子量の小さいベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を特定量添加することにより、高湿度環境下や塗膜が濡れた状態下において紫外線が当たっても、防曇性を維持しつつ、塗膜が白化したり、塗膜の接着性が低下することのない防曇性シートを得ることができることを見出した。
すなわち、本発明の防曇性シートは、基材上に第1層と第2層が順に積層されてなり、第1層は、吸水性樹脂を含み、第2層は、ポリオールと分子量500以下のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とを含み、第2層中の前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量は、1.5〜8重量%である。
第1層は、吸水性樹脂を含む第1コーティング組成物の加熱処理物で構成することができる。また第2層は、ポリオールとベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とを含む第2コーティング組成物の加熱処理物で構成することができる。
第1層は、吸水性樹脂を含む第1コーティング組成物の加熱処理物で構成することができる。また第2層は、ポリオールとベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とを含む第2コーティング組成物の加熱処理物で構成することができる。
また、本発明の防曇性シートは、好ましくは前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の分子量が350以下である。またベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量は、好ましくは5重量%以下である。
また、本発明の防曇性シートは、好ましくは吸水性樹脂が、ポリビニルアルコール及びポリアクリル酸類の少なくとも何れかを含むことを特徴とするものである。より好ましくは、吸水性樹脂は、ポリビニルアルコール及びポリアクリル酸類を含む。
また、本発明の防曇性シートは、好ましくは第1コーティング組成物及び第2コーティング組成物の少なくとも何れかが、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解物及び金属アルコキシドの加水分解重縮合物から選ばれる少なくとも1つの化合物を含むことを特徴とするものである。
また、本発明の防曇性シートは、好ましくは第1コーティング組成物及び第2コーティング組成物の少なくとも何れかが、硬化剤を含むことを特徴とするものである。
なお、本発明でいう「高湿度環境下」とは、相対湿度70%以上の環境下をいう。
本発明によれば、基材上に第1層と第2層が順に積層された防曇性シートの、第2層に特定の紫外線吸収剤を含有させたことにより、第1層の特性を阻害することなく第1層と第2層に対し耐候性を付与することができ、特に防曇性シートが曝される高湿度環境下や塗膜が濡れた状態下において、高い紫外線防止機能が付与される。また第2層に用いる紫外性吸収剤として特定量のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を用いたことにより、架橋強度の高い第2層に対しても相溶性よく含有させることができ、防曇性の維持と耐水性の付与という第2層の機能を保つことができる。その結果、高湿度環境下や塗膜が濡れた状態下で紫外線が当たっても、防曇性を維持しつつ、塗膜が白化したり、塗膜の接着性が低下することのない防曇性シートを提供することができる。
本発明の防曇性シートは、基材上に第1層と第2層が順に積層されてなる。第1層は、吸水性樹脂を含む第1コーティング組成物の加熱処理物で構成することができ、第2層は、ポリオールとベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とを含む第2コーティング組成物の加熱処理物で構成することができる。第2コーティング組成物中のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の使用量は、固形分換算で、1.5〜8重量%である。
第1層を構成する第1コーティング組成物は、少なくとも吸水性樹脂を含む。吸水性樹脂は、第1コーティング組成物を加熱処理し塗膜化した際に、第1層に対して吸水性と防曇性を発現させるために用いられる。
吸水性樹脂としては、ポリビニルアルコール(以下「PVA」と略記することもある。)、ポリアクリル酸類、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。これらの樹脂は、単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
本発明では、吸水性樹脂として、PVA及びポリアクリル酸類の少なくとも何れかを用いることが好ましい。特に、塗膜化した際に吸水性と防曇性に優れたものとする観点からは、吸水性樹脂として、より好ましくは、PVAとポリアクリル酸類を混合したものを用いる。吸水性樹脂として、PVAとポリアクリル酸類の混合物を用いる場合において、PVAに対するポリアクリル酸類の使用割合(ポリアクリル酸類/PVA)は、重量換算で、好ましくは5/95〜50/50である。PVAに対するポリアクリル酸類の使用量が増えるにつれて防曇性が低下する傾向があり、少なくなるにつれて塗膜の耐水性が低下する傾向がある。
PVAとしては、鹸化度が65〜89モル%[即ち、水酸基のモル数×100/(アセチル基のモル数+水酸基のモル数)]の不完全鹸化物(「部分鹸化物」とも言うことがある。)が好ましい。さらに好ましくは、鹸化度75〜89モル%の不完全鹸化PVAを用いる。鹸化度が高すぎたり低すぎる場合、吸水性と防曇性がバランスよく発現されないこともあり得る。
PVAの平均重合度は、特に限定されないが、好ましくは300〜3500である。重合度が高すぎたり低すぎる場合、吸水性と防曇性がバランスよく発現されないこともあり得る。
ポリアクリル酸類としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸のメチルエステル又はエチルエステル、ポリメタクリル酸のメチルエステル又はエチルエステルなどが挙げられる。ポリアクリル酸のメチルエステル又はエチルエステルや、ポリメタクリル酸のメチルエステル又はエチルエステルとしては、それぞれ、鹸化度が10〜30モル%[即ち、加水分解されたエステル基のモル数×100/(加水分解されたエステル基のモル数+加水分解されていないエステル基のモル数)]の不完全鹸化物が好ましい。
第1コーティング組成物中の吸水性樹脂の使用量は、固形分換算で、好ましくは20〜99.5重量%、より好ましくは50〜90重量%である。この範囲で吸水性樹脂を使用することで、吸水性と防曇性の発現バランスがより図られる。
吸水性樹脂としてPVAを用いる場合における、第1コーティング組成物中のPVAの使用量は、固形分換算で、好ましくは50〜95重量%である。吸水性樹脂としてポリアクリル酸類を用いる場合における、第1コーティング組成物中のポリアクリル酸類の使用量は、固形分換算で、好ましくは5〜50重量%である。
第1コーティング組成物は、上述した吸水性樹脂の他に、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解物、及び金属アルコキシドの加水分解重縮合物から選ばれる少なくとも1つの化合物(以下「金属アルコキシド等」ともいう。)を含むことが好ましい。
第1コーティング組成物に、好ましくは金属アルコキシド等を含ませることで、その第1コーティング組成物を塗膜化する過程で金属アルコキシドの加水分解物が重縮合反応を生ずる際、これと共存する吸水性樹脂とも反応して、金属アルコキシドに由来する無機部分と吸水性樹脂に由来する親水性基を有する有機部分を持つ複合ポリマーが生成される。この複合ポリマーの親水性基が効果的に配向し、外部からの水分を多く、且つ速やかに吸収することができるものと考えられる。その結果、防曇性に優れ、かつ、防曇性塗膜として要求される、不溶性、耐摩耗性および耐候性も兼ね備えた被膜(第1層)とすることができる。
なお、金属アルコキシドの加水分解物及び金属アルコキシドの加水分解重縮合物とは、所謂、ゾル−ゲル法反応と呼ばれる反応により、金属アルコキシドを溶液中で加水分解・重縮合反応させた溶液を、金属酸化物または金属水酸化物の微粒子が溶解したゾルとし、さらに反応を進めてゲルとすることで得られる加水分解物及び、それに続く加水分解重縮合物をいう。金属アルコキシドの加水分解重縮合物としては、GPC法によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、例えば数百〜数万程度の低分子量重縮合物が用いられる。
金属アルコキシドは、例えば、次式(I)で示される化合物を含む。
M(OR)n(X)a−n・・・(I)
式(I)中、Mは、Si、Al、Ti、Zr、Ca、Fe、V、Sn、Li、Be、BおよびPから選択される原子である。Rはアルキル基である。Xはアルキル基、官能基を有するアルキル基、またはハロゲンである。aはMの原子価である。nは1からaまでの整数である。式(I)の化合物のうち汎用されるのは、n=a、つまりMにアルコキシ基のみが結合した化合物である。
上記MがSiの場合には、上記式(I)のaは4であり、このようなアルコキシドは、Si(OR1)4で表される。ここでR1は、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基(以下、低級アルキル基という)である。このようなアルコキシシラン(ケイ素アルコキシド)としては、Si(OCH3)4のテトラメトキシシラン(又はメチルシリケート)、Si(OC2H5)4のテトラエトキシシラン(又はエチルシリケート)などが挙げられる。金属アルコキシド中のアルコキシシランの使用量は、好ましくは50〜100重量%である。
上記MがAlの場合には、上記式(I)のaは3であり、このようなアルコキシドは、Al(OR2)3で表される。ここでR2は、好ましくは低級アルキル基である。このようなアルミニウムアルコキシドとしては、Al(OCH3)3、Al(OC2H5)3、Al(O−n−C3H7)3、Al(O−iso−C3H7)3、Al(OC4H9)3などが挙げられる。上記アルミニウムアルコキシドは、単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。このようなアルミニウムアルコキシドは、通常、上記アルコキシシランと混合して用いられる。アルミニウムアルコキシドを用いることによって、得られる防曇性塗膜の透光性や耐熱性が向上する。金属アルコキシド中のアルミニウムアルコキシドの使用量は、アルコキシシラン100重量部に対して、好ましくは1〜10重量部の範囲である。
上記MがTiの場合には、上記式(I)のaは4であり、このようなアルコキシドは、Ti(OR3)4で表される。ここでR3は、好ましくは低級アルキル基である。このようなチタニウムアルコキシドとしては、Ti(O−CH3)4、Ti(O−C2H5)4、Ti(O−n−C3H7)4、Ti(O−iso−C3H7)4、Ti(O−C4H9)4などが挙げられる。上記チタニウムアルコキシドは、単独でまた2種以上を混合して用いてもよい。このようなチタニウムアルコキシドは、通常、上記アルコキシシランと混合して用いられる。チタニウムアルコキシドを用いることによって、得られる防曇性塗膜の耐紫外線性は向上し、基材の耐熱性も著しく向上する。金属アルコキシド中のチタニウムアルコキシドの使用量は、アルコキシシラン100重量部に対して、好ましくは0.1〜3重量部の範囲である。
上記MがZrの場合には、上記式(I)のaは4であり、このようなアルコキシドは、Zr(OR4)4で表される。ここでR4は、好ましくは低級アルキル基である。このようなジルコニウムアルコキシドとしては、Zr(OCH3)4、Zr(OC2H5)4、Zr(O−iso−C3H7)4、Zr(O−t−C4H9)4、Zr(O−n−C4H 9)4などが挙げられる。上記ジルコニウムアルコキシドは、単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。このようなジルコニウムアルコキシドは、通常、上記アルコキシシランと混合して用いられる。ジルコニウムアルコキシドを用いることによって、得られる防曇性塗膜の靭性や耐熱性が向上する。金属アルコキシド中のジルコニウムアルコキシドの使用量は、アルコキシシラン100重量部に対して、好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。
上記以外のアルコキシドとしては、例えば、Ca(OC2H5)2、Fe(OC2H5)3、V(O−iso−C3H7)4、Sn(O−t−C4H9)4、Li(OC2H5)、Be(OC3H5)2、B(OC2H5)3、P(OC2H5)2、P(OCH3) 3などが挙げられる。
式(I)で示されるアルコキシドのうちn=a−1以下の場合、つまりMにアルコキシド以外の基Xが結合している化合物としては、例えばXがCl、Brのようなハロゲンである化合物がある。Xがハロゲンである化合物には、後述のように、アルコキシ基と同様に加水分解されてOH基を生じ重縮合反応が起こる。Xはまた、アルキル基や官能基を有するアルキル基であり得、このアルキル基の炭素数は通常1〜15である。このような基は、加水分解されずに得られるポリマー中に有機部分として残留する。上記官能基としては、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、ビニル基、エポキシ基などがある。このような基は、後述のように防曇性を高める上で好適である。
Xを有する式(I)の化合物としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメトキシシランなどが挙げられる。
第1コーティング組成物中に金属アルコキシド等を含める場合における、第1コーティング組成物中の金属アルコキシド等の使用量は、固形分換算で、好ましくは0.5〜50重量%である。
本発明で用いる第1コーティング組成物は、基材への密着の観点から、シランカップリング剤を含むことが好ましい。シランカップリング剤は、金属アルコキシド等と同様に有機部分と無機部分とを有する三次元構造の複合ポリマーの形成に寄与し、それにより吸収性を維持しながら不溶性を高めることができる。
シランカップリング剤としては、ビニルシラン、メタクリルシラン、アミノシラン、エポキシシランが挙げられる。この中でも特に、エポキシ基を有するシランカップリング剤を用いることが好ましい。エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、金属アルコキシドでもあるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。第1コーティング組成物中にシランカップリング剤を含める場合における、第1コーティング組成物中のシランカップリング剤の使用量は、固形分換算で、好ましくは0.2〜10重量%である。
第1コーティング組成物に上述した金属アルコキシド等を含有させる場合、さらに触媒を含有させることが好ましい。触媒としては、酸触媒が挙げられる。酸触媒は金属アルコキシドの加水分解反応に用いられる。従って、予め金属アルコキシドがある程度加水分解されて、重縮合し、OH基を有するポリマー(比較的低分子量のオリゴマーであり得る)となる。
酸触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸などが用いられる。鉱酸の無水物(例えば塩化水素ガス)も用いられ得る。この他に有機酸やその無水物も利用され得る。有機酸やその無水物としては、例えば、酒石酸、フタル酸、マレイン酸、ドデシルコハク酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルナジック酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジクロルコハク酸、クロレンディック酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ドデシルコハク酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水ジクロルコハク酸、無水クロレンディック酸などが挙げられる。第1コーティング組成物中に酸触媒を含める場合における、酸触媒の使用量は、金属アルコキシド100重量部に対して、好ましくは0.01〜0.5重量部、さらに好ましくは0.015〜0.3重量部である。
さらに、ポリアクリル酸エステルの鹸化部分に由来する有機酸が上記アルコキシド、好ましくはアルコキシドおよびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの加水分解・重縮合反応の触媒として作用する。
本発明で用いる第1コーティング組成物は、上述したように、吸水性樹脂(PVA、ポリアクリル酸類など)を含み、好ましくはさらに金属アルコキシド等を含み、さらにまた触媒(特定化合物に含まれうる金属アルコキシドの加水分解物の重縮合反応を促進させるもの)を含む反応溶液で構成される。ここで、金属アルコキシド等を構成する金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解物および該加水分解物の重合縮合物から選ばれる少なくとも1つの化合物とは、次の4つの場合を含む。
(1)反応溶液を調合するのに用いるのが、金属アルコキシドであり、その加水分解反応は反応溶液の調合後に生じさせるもの。
(2)反応溶液を調合するのに用いるのが、既に加水分解反応処理が行われた金属アルコキシドの加水分解物であるもの。
(3)反応溶液を調合するのに用いるのが、金属アルコキシドの加水分解物が既に一部重縮合した低分子量重縮合物であるもの。
(4)反応溶液を調合するのに用いるのが、金属アルコキシド、その加水分解物およびその加水分解物の低分子量重縮合物の2種以上であるもの。
(2)反応溶液を調合するのに用いるのが、既に加水分解反応処理が行われた金属アルコキシドの加水分解物であるもの。
(3)反応溶液を調合するのに用いるのが、金属アルコキシドの加水分解物が既に一部重縮合した低分子量重縮合物であるもの。
(4)反応溶液を調合するのに用いるのが、金属アルコキシド、その加水分解物およびその加水分解物の低分子量重縮合物の2種以上であるもの。
本発明で用いる第1コーティング組成物は、さらに硬化剤を含んでいてもよい。硬化剤としては、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、メラミン系硬化剤等が挙げられる。
第1コーティング組成物中に硬化剤を含める場合における、第1コーティング組成物中の硬化剤の使用量は、固形分換算で、好ましくは0.5〜20重量%である。
第1コーティング組成物は、さらにケイフッ化水素酸を含んでいてもよい。第1コーティング組成物中にケイフッ化水素酸を含める場合における、第1コーティング組成物中のケイフッ化水素酸の使用量は、好ましくは0.2〜10重量%である。
第1コーティング層は、通常は塗工液の形態で用いて第1層を形成する。例えば、上述した吸水性樹脂(必要に応じてさらに金属アルコキシド等その他)を、有機溶媒に溶解または分散させることで、塗工液を調製することができる。好ましく用いられる有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、N−メチルピロリドンなどの水との相溶性のある溶媒が挙げられる。さらに好ましくは、この有機溶媒は水と共に用いられる。第1コーティング組成物中の有機溶媒の使用量は、好ましくは0〜60重量%である。なお、有機溶媒の使用量が0(ゼロ)の場合を含むのは、有機溶媒を使用することなしに、塗工液の形態を取れる場合もあるからである。
第1コーティング組成物の主な組成は、吸水性樹脂の存在下でゾル−ゲル反応を生じさせて得られるものであるから、金属アルコキシドの加水分解物のOH基が脱プロトン化し、その結果、重縮合反応が生じて得られる重縮合物や、重縮合物が有するOH基に吸水性樹脂が架橋反応して得られる、前述の複合ポリマーや、金属アルコキシドの加水分解物と吸水性樹脂との反応物や、上記重縮合物、加水分解物および吸水性樹脂の三者の反応物などが考えられる。
次に、本発明の防曇性シートの第2層を構成する第2コーティング組成物について説明する。第2コーティング組成物は、少なくともポリオールとベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とを含む。ポリオールは、第2コーティング組成物を加熱処理し塗膜化した際に、第1層で発現される防曇性を維持しつつ、さらに耐水性を付与するために用いられる。また、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、高湿度環境下や塗膜が濡れた状態下において紫外線が当たっても、第1層で発現される防曇性を維持しつつ、第1層や第2層の塗膜が白化したり、塗膜の接着性が低下することを防ぐために用いられる。
ポリオールとしては、ポリエステル、アクリル、部分アセタール化ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。特に防曇性を維持する観点からは、ポリエチレングリコールを用いることが好ましい。第2コーティング組成物中のポリオールの使用量は、固形分換算で、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは30〜80重量%である。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤には、入手可能なものとして、例えば、台湾永光化学工業股分有限公司社提供のEVERSORB (商標名) シリーズ 70〜78、80、81、109等、住化ケムテックス社提供のSumisorb (商標名) シリーズ200、250、300、340、350、等、アデカ社提供のアデカスタブ LA (商標名)シリーズ LA−29、LA−31、LA32、LA36等、ケミプロ社提供のMEMISORB (商標名)シリーズ 71、73、74等があるが、本発明ではこのようなベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤のうち分子量500以下、好ましくは350以下のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を用いる。
分子量500以下のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(5−ターシャリー−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(5−クロロ−2−ベンゾトリアゾリル)−6−ターシャリー−ブチル−p−クレゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−ターシャリー−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが挙げられる。分子量500以下のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、塗膜を構成するポリオールや他の組成物との相溶性が良く、防曇性を阻害することなく第1層や第2層の塗膜の白化を防止できる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。
第2コーティング組成物中のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の使用量は、固形分換算で1.5〜8重量%、好ましくは1.9〜5重量%である。使用料を1.5重量%以上とすることにより、塗膜の白化を防止するに十分な紫外線吸収機能が得られる。また使用料を5重量%とすることにより、防曇性が損なわれるのを防止することができる。
第2コーティング組成物は、第1コーティング組成物と同様の金属アルコキシド等を含むことが好ましい。第2コーティング組成物中の金属アルコキシド等の使用量は、固形分換算で、好ましくは0.5〜50重量%である。
第2コーティング組成物に金属アルコキシド等を含有させる場合、第1コーティング組成物と同様の触媒を含めてもよい。この場合、使用量は、第1コーティング組成物における場合と同様とする。
また第2コーティング組成物は、第1コーティング組成物と同様のシランカップリング剤を含むことが好ましい。第2コーティング組成物中のシランカップリング剤の使用量は、第1コーティング組成物における場合と同じである。
第2コーティング組成物は、さらに硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤としては、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、メラミン系硬化剤等が挙げられる。
イソシアネート系硬化剤としては、イソシアネートモノマーを重合若しくは共重合させたポリイソシアネートが主なものとして挙げられ、特に制限されること無く使用することができる。イソシアネートモノマーとしては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−若しくは1,4−ジイソシアネートシクロヘキサン、m−若しくはp−テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
また、常温では全く反応せずにある温度以上に加熱すると架橋反応を起こすような一液型硬化反応となるイソシアネートを用いることもできる。このようなイソシアネートとしては、触媒や官能基をブロック化した手法が用いられたブロックイソシアネート等を用いることができる。
ここでブロックイソシアネートとは、上述したポリイソシアネートをマスク剤でマスク化したものであり、常温では全く反応せず硬化反応を進行させることはなく、マスク剤が解離する温度以上に加熱すると活性なイソシアネート基が再生されて十分な架橋反応を起こすものである。
エポキシ系硬化剤としては、エチレングリコールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルが挙げられる。カルボジイミド系硬化剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩が挙げられる。メラミン系硬化剤としては、完全アルキルエーテル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、一部にイミノ基を有するイミノ基型メラミン樹脂などが挙げられる。
第2コーティング組成物中の硬化剤の使用量は、固形分換算で、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは30〜60重量%である。
第2コーティング組成物は、第1コーティング組成物と同様に、ケイフッ化水素酸を含むことが好ましい。第2コーティング組成物中のケイフッ化水素酸の使用量は、第1コーティング組成物における場合と同じである。
第2コーティング組成物も、第1コーティング組成物の場合と同様、通常は塗工液の形態で用いて第2層とする。例えば、上述したポリオールとベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、さらに必要に応じて金属アルコキシド等及び硬化剤を、有機溶媒に溶解または分散させることで、塗工液を調製することができる。好ましく用いられる有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、N−メチルピロリドン、ジアセトンアルコールなどの水との相溶性のある溶媒が挙げられる。第2コーティング組成物中の有機溶媒の使用量は、好ましくは50〜90重量%である。
第1層上に形成される第2層は、ポリオールが架橋した塗膜であるため塗膜の架橋密度が高い。このため、第1層で発現される防曇性を維持しつつ、さらに耐水性を付与することができる。具体的には、高湿度環境下や基材が濡れた状態下において、塗膜(第1層及び第2層)が乾いたウエスや指等により擦られても、塗膜が剥がれることなく耐水性に優れたものとなる。また、第2層には特定量のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含むため、高湿度環境下や塗膜が濡れた状態下において紫外線が当たっても、第1層で発現される防曇性を維持しつつ、第1層や第2層の塗膜が白化したり、塗膜の接着性が低下することを防ぐことができる。
第1層及び第2層を積層する基材としては、主にガラス又はプラスチックフィルムが挙げられる。ガラスとしては、例えばケイ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、ホウ酸塩ガラス等の酸化ガラスを板ガラス化したものを使用することができる。特にケイ酸ガラス、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラス等のケイ酸塩ガラスを板ガラス化したものが好ましい。プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、アクリル、ポリ塩化ビニル、ノルボルネン化合物等が使用できる。特に、延伸加工、特に二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムが機械的強度、寸法安定性に優れているために好適に使用される。
本発明では、基材として、易接着処理が施されたものを用いることが好ましい。表面に易接着処理が施された基材を用いることで、これを施さないものと比較して、第1層や後述する粘着層との密着性の向上を図ることができる。易接着処理としては、各種表面処理(例えばプラズマ処理、コロナ処理、ケミカル・アクチベーション処理、酸化炎処理、遠紫外線照射処理など)の他、下引き易接着層の形成などが挙げられる。基材の厚みは、12〜188μmであることが好ましい。
下引き易接着層のバインダー成分としては、アクリル系、ポリエステル系、シリコーン系、ウレタン系、スチレン系、セルロース系、ビニル系、エポキシ系、ブチラール系、アミノ系、ゴム系等が挙げられる。これらの中でも基材や第1層との接着性や作業性の観点から、ポリエステル系が特に好ましく用いられる。
下引き易接着層の厚みは、基材や第1層との接着性や作業性の観点から、0.05〜3μmが好ましく、0.5〜2μmがより好ましい。
本発明の防曇性シートは、基材の第1層が形成されている面とは反対面に、粘着層が形成されていてもよい。粘着層に用いられる粘着剤としては、一般に使用されるアクリル系、シリコーン系、ウレタン系、ゴム系などの合成樹脂系粘着剤が用いられ、取り扱い性等の観点からアクリル系粘着剤を用いることが好ましい。このようなアクリル系粘着剤の主成分である粘着性ポリマーとしては、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸プロピルなどのアルキル基の炭素数が1〜10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチルなどの官能基含有不飽和単量体とを主成分として含む単量体混合物を共重合させてなるものが好ましく用いられる。これら粘着層中には、上記粘着性ポリマー成分のほか、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、硬化剤、可塑剤、粘着付与成分などの種々の添加剤を含ませることができる。
粘着層の厚みは、特に限定されるものではなく、基材の材料に応じた厚みを適宜選択すればよく、具体的には0.5μm〜50μm、好適には5〜30μmとすることが好ましい。
本発明の防曇性シートは、例えば、以下のようにして製造される。まず、第1コーティング組成物の各成分を混合し、透明の第1塗工液(本発明では第1コーティング組成物と同義)を準備する。また、第2コーティング組成物の各成分を混合し、透明の第2塗工液(本発明では第2コーティング組成物と同義)を準備する。次に、第1塗工液を基材の少なくとも片面に塗布し、これを好ましくは80℃以上の温度、さらに好ましくは80〜150℃の範囲内で加熱乾燥させる(加熱処理)。これにより基材上に第1層が形成される。必要に応じて、塗工液を数回重ねて塗工した後、加熱処理を行ってもよい。
次に、第2塗工液を、基材上に形成された第1層の上に塗布し、これを好ましくは60℃以上の温度、さらに好ましくは60〜150℃の範囲内で加熱乾燥させる(加熱処理)。これにより第1層上に第2層が形成される。必要に応じて、塗工液を数回重ねて塗工した後、加熱処理を行ってもよい。
なお、本発明の防曇性シートが粘着層を備える場合、粘着層を構成する材料を適当な溶媒によって溶解または分散して調整した粘着層用塗布液を準備する。次に、基材の、第1層が形成される面とは反対面に、準備した粘着層用塗布液を、従来公知のコーティング方法で塗布、乾燥し、必要により硬化させて粘着層を形成する。
本発明の防曇性シートにおいて、第1層の厚み(T1)と第2層の厚み(T2)の合計は、光学レンズなどに用いる場合には、0.01〜1.0μmが好ましい。窓ガラスなどに塗布する場合には、1.0〜10.0μmが好ましい。第1層と第2層の合計厚み(T1+T2)は、各コーティング組成物を塗工液の形態で厚く塗布することにより、あるいは数回重ねて塗布することにより、適宜、調節し得る。このようにして得られる防曇性の物品は、基材の表面に防曇性および結露防止性を与える。形成された塗膜(第1層+第2層)は、水および有機溶剤に不溶であり、且つ高い表面硬度を有する。
本発明では、第1コーティング組成物を基材に塗工し、加熱乾燥(加熱処理)を行うと、上記重縮合反応および架橋反応が進行し、三次元構造を有する複合ポリマーが形成される。形成される複合ポリマーは、無機部分と有機部分とを有する。すなわち、このポリマーは無機部分である不溶性骨格を有しているため、このポリマーにより形成される防曇性の塗膜は、水および有機溶剤に不溶であり、高い表面硬度を有する。さらに、このポリマーは、有機部分である吸水性樹脂(ポリアクリル酸エステルやPVA等)に由来する親水部分を有しているため、このポリマーにより形成される塗膜は、その表面部分に当該親水部分が存在し、その部分に水分が吸着する。さらに、上記式(I)のX基の端末にカルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、ビニル基、エポキシ基などを有する場合には、さらにその基にも水分が吸着する。
ただし、防曇性シートが、基材上に第1コーティング組成物の加熱処理物で構成される第1層のみを形成したものであると、塗膜を構成する有機物の硬化反応・架橋反応が未だ不十分なため、高湿度環境下や、基材が濡れた状態下において、塗膜(第1層)を乾いたウエスや指等で擦ると、有機物が容易に移動し、塗膜が剥がれてしまうこととなる。
これに対し、本発明の防曇性シートは、上述した第1層上に、さらに第2コーティング組成物の加熱処理物で構成される第2層を備える。この第2層は、塗膜の架橋密度が高いので、第1層で発現される防曇性を維持しつつ、さらに耐水性を付与することができる。具体的には、高湿度環境下や基材が濡れた状態下において、塗膜(第1層及び第2層)が乾いたウエスや指等により擦られても、塗膜が剥がれることなく耐水性に優れたものとなる。さらに、第2層には特定量のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含むので、高湿度環境下や塗膜が濡れた状態下において紫外線が当たっても、第1層で発現される防曇性を維持しつつ、第1層や第2層の塗膜が白化したり、塗膜の接着性が低下することを防ぐことができる。
なお、第2層の塗膜にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤ではなく、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を添加すると、上述の塗膜の白化や、塗膜の接着性の低下を抑えることが出来るが、防曇性を阻害してしまう。これは、第2層が架橋密度の高い塗膜であるがゆえに、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を塗膜の白化や塗膜の接着性の低下を抑える程度に添加すると、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤と第2層の塗膜との相溶性が悪く、第1層で発現される防曇性を阻害すると考えられる。また、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を第1層の塗膜のみに添加しても、第2層には高湿度環境下や塗膜が濡れた状態下において紫外線が当たるので、第2層の塗膜が白化したり、塗膜の接着性が低下することを防ぐことができない。
一方、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を紫外線が直接照射される第2層の塗膜に特定量添加すると、当該ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は第2層の塗膜との相溶性が良いので、高湿度環境下や塗膜が濡れた状態下において紫外線が当たっても、第1層で発現される防曇性を維持しつつ第1層や第2層の塗膜が白化したり、塗膜の接着性が低下することを防ぐことができる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
1.防曇性シートの作製
[実施例1]
まず、下記処方の第1コーティング組成物及び第2コーティング組成物を調製した。
[実施例1]
まず、下記処方の第1コーティング組成物及び第2コーティング組成物を調製した。
<実施例1の第1コーティング組成物>
・メチルシリケート(MS−56:三菱化学社) 5.0部
・シランカップリング剤 0.3部
(SH6040:東レ・ダウコーニング社)
・部分鹸化PVA(キシダ化学社) 5.0部
(固形分100%、鹸化度87〜89モル%、平均重合度3500)
・ポリアクリル酸(AC−10H:日本純薬社) 5.0部
(固形分100%)
・メタノール 40.0部
・水 44.5部
・メチルシリケート(MS−56:三菱化学社) 5.0部
・シランカップリング剤 0.3部
(SH6040:東レ・ダウコーニング社)
・部分鹸化PVA(キシダ化学社) 5.0部
(固形分100%、鹸化度87〜89モル%、平均重合度3500)
・ポリアクリル酸(AC−10H:日本純薬社) 5.0部
(固形分100%)
・メタノール 40.0部
・水 44.5部
<実施例1の第2コーティング組成物>
・ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 1.1部
(アデカスタブLA−32:ADEKA社、化学名:2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、分子量225)
・メチルシリケート(MS−56:三菱化学社) 5.0部
・シランカップリング剤 0.3部
(SH6040:東レ・ダウコーニング社)
・ポリエチレングリコール(キシダ化学社) 30.0部
・イソシアネート系硬化剤 20.0部
(MF−K60X:旭化成ケミカルズ社)
・ジアセトンアルコール 30.0部
・t−ブタノール 14.7部
・ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 1.1部
(アデカスタブLA−32:ADEKA社、化学名:2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、分子量225)
・メチルシリケート(MS−56:三菱化学社) 5.0部
・シランカップリング剤 0.3部
(SH6040:東レ・ダウコーニング社)
・ポリエチレングリコール(キシダ化学社) 30.0部
・イソシアネート系硬化剤 20.0部
(MF−K60X:旭化成ケミカルズ社)
・ジアセトンアルコール 30.0部
・t−ブタノール 14.7部
なお、実施例1のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「アデカスタブLA−32」の使用量1.1部は、第2コーティング組成物中の固形分換算で1.95重量%である。
次に、調製した第1コーティング組成物を、基材として厚み100μmのプラスチックフィルム(ルミラーT60:東レ社)へディップコート装置にて50mm/minの速度で引き上げ塗布した。その後、150℃で10分間加熱・乾燥(加熱処理)を行った。その結果、基材上に、厚みが3μmで、均一且つ無色透明な第1層が形成された。
次に、形成した第1層上に、前記組成の第2コーティング組成物をディップコート装置にて30mm/minの速度で引き上げ塗布した。その後、100〜120℃の乾燥炉で15分間乾燥(加熱処理)を行った。その結果、第1層上に、厚みが約5μmの透明な第2層が形成され、本実施例の防曇性シートを得た。
[実施例2]
実施例1の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「アデカスタブLA−32」の量を2.77部とした。それ以外は、実施例1と同じ条件で、本実施例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で4.8重量%である。
実施例1の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「アデカスタブLA−32」の量を2.77部とした。それ以外は、実施例1と同じ条件で、本実施例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で4.8重量%である。
[実施例3]
実施例1の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「アデカスタブLA−32」の量を3.87部とした。それ以外は、実施例1と同じ条件で、本実施例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で6.5重量%である。
実施例1の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「アデカスタブLA−32」の量を3.87部とした。それ以外は、実施例1と同じ条件で、本実施例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で6.5重量%である。
[実施例4]
実施例1の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「アデカスタブLA−32」の量を4.42部とした。それ以外は、実施例1と同じ条件で、本実施例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で7.4重量%である。
実施例1の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「アデカスタブLA−32」の量を4.42部とした。それ以外は、実施例1と同じ条件で、本実施例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で7.4重量%である。
[実施例5]
実施例1の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「アデカスタブLA−32」をベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(Sumisorb 300:住化ケムテックス社、化学名:2−(5−クロロ−2−ベンゾトリアゾリル)−6−ターシャリー−ブチル−p−クレゾール、分子量315)1.1部に変更した。それ以外は、実施例1と同じ条件で、本実施例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で1.95重量%である。
実施例1の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「アデカスタブLA−32」をベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(Sumisorb 300:住化ケムテックス社、化学名:2−(5−クロロ−2−ベンゾトリアゾリル)−6−ターシャリー−ブチル−p−クレゾール、分子量315)1.1部に変更した。それ以外は、実施例1と同じ条件で、本実施例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で1.95重量%である。
[実施例6]
実施例5の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「Sumisorb 300」の量を2.77部とした。それ以外は、実施例5と同じ条件で、本実施例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で4.8重量%である。
実施例5の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「Sumisorb 300」の量を2.77部とした。それ以外は、実施例5と同じ条件で、本実施例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で4.8重量%である。
[実施例7]
実施例5の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「Sumisorb 300」の量を3.87部とした。それ以外は、実施例5と同じ条件で、本実施例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で6.5重量%である。
実施例5の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「Sumisorb 300」の量を3.87部とした。それ以外は、実施例5と同じ条件で、本実施例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で6.5重量%である。
[実施例8]
実施例5の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「Sumisorb 300」の量を4.42部とした。それ以外は、実施例5と同じ条件で、本実施例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で7.4重量%である。
実施例5の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「Sumisorb 300」の量を4.42部とした。それ以外は、実施例5と同じ条件で、本実施例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で7.4重量%である。
[実施例9]
実施例1の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「アデカスタブLA−32」をベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(Sumisorb 250:住化ケムテックス社、化学名:N−[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ-5-メチルベンジル]-3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミド、分子量388)1.1部に変更した。それ以外は、実施例1と同じ条件で、本実施例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で1.95重量%である。
実施例1の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「アデカスタブLA−32」をベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(Sumisorb 250:住化ケムテックス社、化学名:N−[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ-5-メチルベンジル]-3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミド、分子量388)1.1部に変更した。それ以外は、実施例1と同じ条件で、本実施例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で1.95重量%である。
[実施例10]
実施例9の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「Sumisorb 250」の量を2.77部とした。それ以外は、実施例9と同じ条件で、本実施例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で4.8重量%である。
実施例9の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「Sumisorb 250」の量を2.77部とした。それ以外は、実施例9と同じ条件で、本実施例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で4.8重量%である。
[実施例11]
実施例9の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「Sumisorb 250」の量を3.87部とした。それ以外は、実施例9と同じ条件で、本実施例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で6.5重量%である。
実施例9の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「Sumisorb 250」の量を3.87部とした。それ以外は、実施例9と同じ条件で、本実施例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で6.5重量%である。
[実施例12]
実施例9の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「Sumisorb 250」の量を4.42部とした。それ以外は、実施例9と同じ条件で、本実施例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で7.4重量%である。
実施例9の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「Sumisorb 250」の量を4.42部とした。それ以外は、実施例9と同じ条件で、本実施例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で7.4重量%である。
[比較例1]
実施例1の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「アデカスタブLA−32」を添加しなかった。それ以外は、実施例1と同じ条件で、本比較例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で0重量%である。
実施例1の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「アデカスタブLA−32」を添加しなかった。それ以外は、実施例1と同じ条件で、本比較例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で0重量%である。
[比較例2]
実施例1の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「アデカスタブLA−32」の量を5.53部とした。それ以外は、実施例1と同じ条件で、本比較例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で9.1重量%である。
実施例1の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「アデカスタブLA−32」の量を5.53部とした。それ以外は、実施例1と同じ条件で、本比較例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で9.1重量%である。
[比較例3]
実施例1の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「アデカスタブLA−32」をベンゾフェノン系紫外線吸収剤(ケミソーブ11:ケミプロ化成社、化学名:2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、分子量228)1.1部に変更した。それ以外は、実施例1と同じ条件で、本比較例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で1.95重量%である。
実施例1の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「アデカスタブLA−32」をベンゾフェノン系紫外線吸収剤(ケミソーブ11:ケミプロ化成社、化学名:2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、分子量228)1.1部に変更した。それ以外は、実施例1と同じ条件で、本比較例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で1.95重量%である。
[比較例4]
比較例3の第2コーティング組成物のベンゾフェノン系紫外線吸収剤「ケミソーブ11」の量を2.77部とした。それ以外は、比較例3と同じ条件で、本比較例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で4.8重量%である。
比較例3の第2コーティング組成物のベンゾフェノン系紫外線吸収剤「ケミソーブ11」の量を2.77部とした。それ以外は、比較例3と同じ条件で、本比較例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で4.8重量%である。
[比較例5]
比較例3の第2コーティング組成物のベンゾフェノン系紫外線吸収剤「ケミソーブ11」の量を3.87部とした。それ以外は、比較例3と同じ条件で、本比較例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で6.5重量%である。
比較例3の第2コーティング組成物のベンゾフェノン系紫外線吸収剤「ケミソーブ11」の量を3.87部とした。それ以外は、比較例3と同じ条件で、本比較例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で6.5重量%である。
[比較例6]
実施例1の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「アデカスタブLA−32」をベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(EVERSORB 78:台湾永光化学工業股分有限公司社、化学名:2,2'-メチレンビス[6-(ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール]、分子量:658)1.1部に変更した。それ以外は、実施例1と同じ条件で、本比較例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で1.95重量%である。
実施例1の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「アデカスタブLA−32」をベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(EVERSORB 78:台湾永光化学工業股分有限公司社、化学名:2,2'-メチレンビス[6-(ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール]、分子量:658)1.1部に変更した。それ以外は、実施例1と同じ条件で、本比較例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で1.95重量%である。
[比較例7]
比較例6の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「EVERSORB 78」の量を2.77部とした。それ以外は、比較例6と同じ条件で、本比較例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で4.8重量%である。
比較例6の第2コーティング組成物のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「EVERSORB 78」の量を2.77部とした。それ以外は、比較例6と同じ条件で、本比較例の防曇性シートを得た。なお、第2コーティング組成物中の、この使用量は、固形分換算で4.8重量%である。
2.評価
実施例1〜12、及び比較例1〜7の防曇性シートを、JIS−A5759―2008に基づいて、サンシャインカーボンアーク灯式の耐候性試験機(スガ試験機社)を用いて、防曇層側に紫外光を照射して水噴射を行なう耐候性促進試験を250時間行った。耐候性促進試験を行なった防曇性シートについて、下記項目の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1〜12、及び比較例1〜7の防曇性シートを、JIS−A5759―2008に基づいて、サンシャインカーボンアーク灯式の耐候性試験機(スガ試験機社)を用いて、防曇層側に紫外光を照射して水噴射を行なう耐候性促進試験を250時間行った。耐候性促進試験を行なった防曇性シートについて、下記項目の評価を行った。結果を表1に示す。
(1)防曇性の評価
耐候性促進試験を行なった防曇性シートを冷蔵庫(約0℃)に5分間収納し、その後、23℃、55%RHの雰囲気下に放置した。防曇性シートの塗膜表面に、曇りがまったく発生していなかったものを「○」、わずかに曇りが発生していたものを「△」、曇りが発生していたものを「×」とした。
(2)塗膜の白化の評価
耐候性促進試験を行なった防曇性シートの外観評価を行い、防曇性シートの第1層や第2層の塗膜の白化が観察されなかったものを「○」、白化がわずかに観察されたものを「△」、白化が観察されたものを「×」とした。
(3)塗膜の接着性の評価
耐候性促進試験を行なった防曇性シートを乾燥させた後、JIS−K5400:1990における碁盤目テープ法に基づき測定して、基材と第1層との接着性を評価した。碁盤目部分の面績が10%以上剥離したものを「×」、5%以上10%未満のものを「△」、5%未満のものを「○」とした。
耐候性促進試験を行なった防曇性シートを冷蔵庫(約0℃)に5分間収納し、その後、23℃、55%RHの雰囲気下に放置した。防曇性シートの塗膜表面に、曇りがまったく発生していなかったものを「○」、わずかに曇りが発生していたものを「△」、曇りが発生していたものを「×」とした。
(2)塗膜の白化の評価
耐候性促進試験を行なった防曇性シートの外観評価を行い、防曇性シートの第1層や第2層の塗膜の白化が観察されなかったものを「○」、白化がわずかに観察されたものを「△」、白化が観察されたものを「×」とした。
(3)塗膜の接着性の評価
耐候性促進試験を行なった防曇性シートを乾燥させた後、JIS−K5400:1990における碁盤目テープ法に基づき測定して、基材と第1層との接着性を評価した。碁盤目部分の面績が10%以上剥離したものを「×」、5%以上10%未満のものを「△」、5%未満のものを「○」とした。
3.考察
表1の結果をまとめると次のとおりである。
実施例1〜12の防曇性シートは、基材上に第1層と第2層が順に積層し、第1層は吸水性樹脂を含み、第2層はポリオールとベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を固形分換算で1.5〜8重量%含むので、防曇性の評価は良好であり、また塗膜の白化および塗膜の接着性の評価も良好であった。
特に、実施例1、2、5、6の防曇性シートは、第2層でのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の使用量が固形分換算で1.9〜5重量%であるので、防曇性の評価は曇りがまったく無く良好であり、塗膜の白化および塗膜の接着性の評価も良好であった。またベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の使用量が多くなるにつれて防曇性の評価は下がる傾向にあり、分子量が350以上のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を用いた実施例9〜12では、使用量が2重量%までは防曇性が維持されたが、4重量%を超えると防曇性がやや低下した。
表1の結果をまとめると次のとおりである。
実施例1〜12の防曇性シートは、基材上に第1層と第2層が順に積層し、第1層は吸水性樹脂を含み、第2層はポリオールとベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を固形分換算で1.5〜8重量%含むので、防曇性の評価は良好であり、また塗膜の白化および塗膜の接着性の評価も良好であった。
特に、実施例1、2、5、6の防曇性シートは、第2層でのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の使用量が固形分換算で1.9〜5重量%であるので、防曇性の評価は曇りがまったく無く良好であり、塗膜の白化および塗膜の接着性の評価も良好であった。またベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の使用量が多くなるにつれて防曇性の評価は下がる傾向にあり、分子量が350以上のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を用いた実施例9〜12では、使用量が2重量%までは防曇性が維持されたが、4重量%を超えると防曇性がやや低下した。
一方、比較例1の防曇性シートは、第2層にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含まないので、防曇性の評価は曇りがまったくなく良好だが、塗膜の白化および塗膜の接着性の評価は不良であった。また、比較例2の防曇性シートは、第2層のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量が8重量%を超えるので、塗膜の白化および塗膜の接着性の評価は良好であったが、防曇性の評価は曇りが生じ不良であった。
比較例3〜5の防曇性シートは、第2層にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤ではなくベンゾフェノン系紫外線吸収剤を含むものであり、使用量が固形分換算で1.95重量%では(比較例3)、防曇性の低下は少なかったが、塗膜の白化および塗膜の接着性の評価は不良であった。使用量を固形分換算を4.8重量%、6.5重量%にした場合には(比較例4、5)、塗膜の白化および塗膜の接着性の評価は良好になったが、防曇性の評価は曇りが生じ不良であった。
比較例6、7は、第2層に分子量が500以上のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含むものであり、塗膜の白化および塗膜の接着性の評価は良好であったが、使用量が少ない場合でも、防曇性の評価は曇りが生じ不良であった。
以上のように、すべての実施例の防曇性シートにおいて、高湿度環境下や塗膜が濡れた状態下において紫外線が当たっても、防曇性を維持しつつ、第1層や第2層の塗膜が白化したり、塗膜の接着性が低下することがないことが認められた。
Claims (11)
- 基材上に第1層と第2層が順に積層されてなる防曇性シートであって、
前記第1層は、吸水性樹脂を含み、前記第2層はポリオールと分子量が500以下のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とを含み、
前記第2層中の前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量が1.5〜8重量%であることを特徴とする防曇性シート。 - 請求項1記載の防曇性シートにおいて、
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の分子量が350以下であることを特徴とする防曇性シート。 - 請求項1又は2記載の防曇性シートにおいて、
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量が4重量%以下であることを特徴とする防曇性シート。 - 請求項1又は2記載の防曇性シートにおいて、
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量が5重量%以下であることを特徴とする防曇性シート。 - 請求項1〜4の何れか一項記載の防曇性シートにおいて、
前記吸水性樹脂は、ポリビニルアルコール及びポリアクリル酸類の少なくとも何れかを含むことを特徴とする防曇性シート。 - 請求項1に記載の防曇性シートにおいて、
前記第2層は、ポリオールとベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とを含むコーティング組成物の加熱処理物で構成されていることを特徴とする防曇性シート。 - 請求項6記載の防曇性シートにおいて、
前記コーティング組成物は、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解物及び金属アルコキシドの加水分解重縮合物から選ばれる少なくとも1つの化合物を含むことを特徴とする防曇性シート。 - 請求項6又は7記載の防曇性シートにおいて、
前記コーティング組成物が硬化剤を含むことを特徴とする防曇性シート。 - 請求項1に記載の防曇性シートにおいて、
前記第1層は、吸水性樹脂を含む第1コーティング組成物の加熱処理物で構成されており、
前記第2層は、ポリオールとベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とを含む第2コーティング組成物の加熱処理物で構成されていることを特徴とする防曇性シート。 - 請求項9記載の防曇性シートにおいて、
前記第1コーティング組成物及び前記第2コーティング組成物の少なくとも何れかが、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解物及び金属アルコキシドの加水分解重縮合物から選ばれる少なくとも1つの化合物を含むことを特徴とする防曇性シート。 - 請求項9又は10記載の防曇性シートにおいて、
前記第1コーティング組成物及び前記第2コーティング組成物の少なくとも何れかが、硬化剤を含むことを特徴とする防曇性シート。
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