JPWO2013146045A1 - 静電荷像現像用トナー - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、電子写真法では、感光体に形成された静電潜像を、着色粒子中に必要に応じて外添剤やキャリア等の他の粒子を配合してなるトナーで現像し、紙やOHPシート等の記録材に転写した後、定着して印刷物を得る。
粉砕法においては、結着樹脂と着色剤を溶融混練する方法により得た着色樹脂の固形物を粉砕し、分級することにより、着色樹脂粒子が製造される。
一方、重合法は、重合性単量体と着色剤を含有する重合性単量体組成物の液滴を形成し、当該液滴を重合させて着色樹脂粒子を製造する方法である。粉砕法により得られる着色樹脂粒子が不定形であるのに対して、重合法により得られる着色樹脂粒子は形状が球形に近く、小粒径且つシャープな粒径分布をもつ。特に、画像再現性や精細性等の画質特性を向上させる観点から、重合法により得られるトナー(いわゆる重合法トナー)のように、形状及び粒径分布が高度に制御されたトナーが用いられるようになってきた。
また、トナーには、温度変化や湿度変化等による画質劣化防止の観点から環境安定性、トナー消費量低減の観点から印字耐久性、及び消費電力低減の観点から低温定着性等様々な特性が要求されている。
しかしながら、温度変化や湿度変化等の環境の変化により、トナーの帯電量の低下や不均一化等の変動が生じると、感光体上に静電潜像に応じた所望の現像ができず、画像の濃度変化やムラ、カブリ等の問題が引き起こされる。
特許文献1には、ジエチルジメチルサクシノニトリルを0.0001〜4質量%含有するトナー組成物が開示されている。また、特許文献1には、帯電制御剤として、負帯電性のクロム錯体を用いるトナーが実施例に開示されている。
特許文献2には、特定の高分子の正帯電制御剤を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナーが開示されている。
すなわち、本発明によれば、結着樹脂、着色剤、及び、帯電制御剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を含有する静電荷像現像用トナーであって、前記帯電制御剤が正帯電性帯電制御剤であり、さらに、分子量が100〜300であるシアノ基含有炭化水素化合物を80〜500ppm含有することを特徴とする静電荷像現像用トナーが提供される。
以下、本発明に用いられる着色樹脂粒子の製造方法、当該製造方法により得られる着色樹脂粒子、当該着色樹脂粒子を用いた本発明のトナーの製造方法及び本発明のトナーについて、順に説明する。
本発明の着色樹脂粒子は、湿式法、または乾式法を採用して製造することが出来る。湿式法の中でも好ましい懸濁重合法は、以下に示すプロセスにより行われる。
(A−1)重合性単量体組成物の調製工程
まず、重合性単量体、着色剤、正帯電性帯電制御剤、及びシアノ基含有炭化水素化合物、さらに必要に応じて添加される離型剤等のその他の添加物を混合し、重合性単量体組成物の調製を行う。重合性単量体組成物を調製する際の混合には、例えば、メディア式分散機を用いる。
本発明では、架橋性の重合性単量体を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常、0.1〜5質量部、好ましくは0.3〜2質量部の割合で用いることが望ましい。
ブラック着色剤としては、カーボンブラック、チタンブラック、並びに酸化鉄亜鉛、及び酸化鉄ニッケル等の磁性粉等を用いることができる。
本発明では、正帯電性帯電制御剤を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常、0.01〜20質量部、好ましくは0.01〜10質量部、更に好ましくは0.03〜8質量部の割合で用いることが望ましい。正帯電性帯電制御剤の添加量が、0.01質量部未満の場合にはカブリが発生することがある。一方、正帯電性帯電制御剤の添加量が20質量部を超える場合には印字汚れが発生することがある。
本発明に用いられるシアノ基含有炭化水素化合物の構造は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状の内の少なくともいずれか1つの炭化水素骨格を有し、且つ、当該炭化水素骨格中の少なくとも1つの水素が、シアノ基(−CN)に置換された構造であれば、特に限定されない。なお、本発明においては、シアノ基とニトリル基は同義であるものとする。
シアノ基含有炭化水素化合物は、シアノ基以外の他の官能基、例えば、ヒドロキシル基(−OH)、アミノ基(−NH2)、ニトロ基(−NO2)、フルオロ基(−F)、クロロ基(−Cl)、ブロモ基(−Br)、ヨード基(−I)等を有していてもよい。ただし、当該他の官能基の数は1分子中に2個以下が好ましく、1分子中に1個以下がより好ましい。また、シアノ基含有炭化水素化合物は、シアノ基以外に官能基を有していないことがさらに好ましい。
シアノ基含有炭化水素化合物は、シアノ基を1分子中に1〜3個有することが好ましく、シアノ基を1分子中に2個有することがより好ましい。シアノ基が1分子中に4個以上含まれる場合、低温低湿(L/L)環境下でカブリが発生することがある。
シアノ基含有炭化水素化合物の分子量は、120〜250であることがより好ましく、150〜200であることがさらに好ましい。
シアノ基含有炭化水素化合物の合成方法は特に限定されず、公知の方法を採用してもよい。シアノ基含有炭化水素化合物の製造方法、特に上記一般式(1)に示した分岐鎖状構造を有する化合物の製造方法や、上記一般式(2)に示した環状構造を有する化合物の製造方法については、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(azobisisobutyronitrile)に代表されるアゾニトリル系化合物の分解による方法が挙げられる。アゾニトリル系化合物の分解による方法としては、例えば、公知文献1(W.Barbe et al.,Chem.Ber.116,1017−1041(1983))の化合物7a〜7lに関する実験項や、公知文献2(C.G.Overberger et al.,J.Am.Chem.Soc.,1949,71(8),pp2661−2666)の表4〜表6に記載されたような加熱による分解方法;公知文献3(M.C.Ford et al.,J.Chem.Soc.,1952,2240−2245)に記載されたようなωωω−トリブロモキナルジン(ωωω−Tribromoquinaldine)やN−ブロモスクシンイミド(N−Bromosuccinimide)等のハロゲン化剤との反応;等が挙げられる。アゾニトリル系化合物の分解による方法以外にも、例えば、公知文献4(W.Barbe et al.,Chem.Ber.116,1042−1057(1983))のスキーム1に記載されたような、ケテンイミン(ketenimine;化合物3a)からのラジカル解裂を経た異性化によっても、シアノ基含有炭化水素化合物を合成することができると考えられる。
本発明に用いられるシアノ基含有炭化水素化合物は、例えば、Achemica社等において市販されているもの等が使用できる。
本発明のトナーにおけるシアノ基含有炭化水素化合物の含有量は、100〜400ppmであることが好ましく、120〜300ppmであることがより好ましく、150〜250ppmであることが更に好ましい。
本発明において離型剤として好適に用いられるエステルワックスは、多官能エステルワックスがより好適であり、例えば、ペンタエリスリトールテトラパルミネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等のペンタエリスリトールエステル化合物;ヘキサグリセリンテトラベヘネートテトラパルミネート、ヘキサグリセリンオクタベヘネート、ペンタグリセリンヘプタベヘネート、テトラグリセリンヘキサベヘネート、トリグリセリンペンタベヘネート、ジグリセリンテトラベヘネート、グリセリントリベヘネート等のグリセリンエステル化合物;ジペンタエリスリトールヘキサミリステート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミネート等のジペンタエリスリトールエステル化合物;等が挙げられ、中でもジペンタエリスリトールエステル化合物が好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサミリステートがより好ましい。
炭化水素系ワックスの数平均分子量は、300〜800であることが好ましく、400〜600であることがより好ましい。また、JIS K2235 5.4で測定される炭化水素系ワックスの針入度は、1〜10であることが好ましく、2〜7であることがより好ましい。
離型剤は、上述した1種又は2種以上のワックスを組み合わせて用いてもよい。
上記離型剤は、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部用いられ、更に好ましくは1〜20質量部用いられる。
分子量調整剤としては、一般にトナー用の分子量調整剤として用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、及び2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−4−チオール等のメルカプタン類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラムジスルフィド、N,N’−ジオクタデシル−N,N’−ジイソプロピルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;等が挙げられる。これらの分子量調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明では、分子量調整剤を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部の割合で用いることが望ましい。
本発明では、少なくとも重合性単量体、着色剤、正帯電性帯電制御剤、及びシアノ基含有炭化水素化合物を含む重合性単量体組成物を、分散安定化剤を含む水系媒体中に分散させ、重合開始剤を添加した後、重合性単量体組成物の液滴形成を行う。液滴形成の方法は特に限定されないが、例えば、(インライン型)乳化分散機(株式会社荏原製作所製、商品名「マイルダー」)、高速乳化分散機(プライミクス株式会社製、商品名「T.K.ホモミクサー MARK II型」)等の強攪拌が可能な装置を用いて行う。
上記(A−2)のようにして、液滴形成を行い、得られた水系分散媒体を加熱し、重合を開始し、着色樹脂粒子の水分散液を調製する。
重合性単量体組成物の重合温度は、好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60〜95℃である。また、重合の反応時間は好ましくは1〜20時間であり、更に好ましくは2〜15時間である。
着色樹脂粒子が分散している水系媒体中に、シェル層を形成するための重合性単量体(シェル用重合性単量体)と重合開始剤を添加し、重合することでコアシェル型の着色樹脂粒子を得ることができる。
重合により得られた着色樹脂粒子の水分散液は、重合終了後に、公知の方法に従い、ろ過、分散安定化剤の除去を行う洗浄、脱水、及び乾燥の操作が、必要に応じて数回繰り返されることが好ましい。
なお、洗浄、濾過、脱水、及び乾燥の一連の操作の前に、着色樹脂粒子の水分散液について、着色樹脂粒子から揮発性物質(主にエーテル成分、及びスチレン)を除去する目的で、ストリッピング処理工程を設けてもよい。
粉砕法を採用して着色樹脂粒子を製造する場合、以下のようなプロセスにより行われる。
まず、結着樹脂、着色剤、正帯電性帯電制御剤、シアノ基含有炭化水素化合物、さらに必要に応じて添加される離型剤等のその他の添加物を混合機、例えば、ボールミル、V型混合機、ヘンシェルミキサー(:商品名)、高速ディゾルバ、インターナルミキサー、フォールバーグ等を用いて混合する。次に、上記により得られた混合物を、加圧ニーダー、二軸押出混練機、ローラ等を用いて加熱しながら混練する。得られた混練物を、ハンマーミル、カッターミル、ローラミル等の粉砕機を用いて、粗粉砕する。更に、ジェットミル、高速回転式粉砕機等の粉砕機を用いて微粉砕した後、風力分級機、気流式分級機等の分級機により、所望の粒径に分級して粉砕法による着色樹脂粒子を得る。
上述の(A)懸濁重合法、又は(B)粉砕法等の製造方法により、着色樹脂粒子が得られる。
以下、トナーを構成する着色樹脂粒子について述べる。なお、以下で述べる着色樹脂粒子は、コアシェル型のものとそうでないもの両方を含む。
上記着色樹脂粒子の平均円形度が0.96未満の場合、印字の細線再現性が悪くなるおそれがある。
本発明においては、上記着色樹脂粒子を、外添剤と共に混合攪拌して外添処理を行うことにより、着色樹脂粒子の表面に、外添剤を付着させて1成分トナー(現像剤)とする。
なお、1成分トナーは、さらにキャリア粒子と共に混合攪拌して2成分現像剤としてもよい。
なお、これらの外添剤は、それぞれ単独で用いることもできるが、2種以上を併用して用いることができる。中でも粒径の異なる2種以上のシリカを併用することが好ましい。
本発明のトナーは、優れた耐熱保存性を維持しつつ、環境変動に対する帯電安定性を向上させることができ、長期間保存後も優れた安定性が得られるトナーである。
[実施例1]
モノビニル単量体としてスチレン75部及びn−ブチルアクリレート25部(得られる共重合体の計算Tg=44℃)、シアン着色剤として銅フタロシアニン顔料(C.I.Pigment Blue 15:3)6部、正帯電性帯電制御剤として正帯電性帯電制御樹脂(4級アンモニウム塩基含有共重合体(スチレン/アクリル樹脂(4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位を8質量%含有)、藤倉化成社製、商品名「FCA−161P」、Tg:60℃、Mw:21,000))0.5部、ポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名「AA6」、Tg=94℃)0.25部を、攪拌装置で攪拌、混合した後、さらにメディア式分散機により、均一に分散させた。ここに、離型剤としてジペンタエリスリトールヘキサミリステート(スチレンに対する溶解度:10g以上/100g、吸熱ピーク:65℃、分子量:1,514)5部、シアノ基含有炭化水素化合物として下記式(1a)により表される2,3−ジエチル−2,3−ジメチルスクシノジニトリル(別名:2,3−ジエチル−2,3−ジメチルブタンジニトリル、分子量:164;以下、DEDMSNと称する場合がある。)0.016部を添加、混合、及び溶解して、重合性単量体組成物を得た。
なお、得られた水酸化マグネシウムコロイドの粒径分布を、粒径分布測定器(島津製作所社製、商品名「SALD」)を用いて測定したところ、粒径は、D50(個数粒径分布の50%累積値)が0.36μm、D90(個数粒径分布の90%累積値)が0.80μmであった。
実施例1において、DEDMSNの添加量を0.016部から0.024部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
実施例1において、DEDMSNの添加量を0.016部から0.032部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
実施例1において、DEDMSN 0.016部を、下記式(1b)により表される2,2,3,3−テトラメチルスクシノジニトリル(別名:2,2,3,3−テトラメチルブタンジニトリル、分子量:136;以下、TMSNと称する場合がある。)0.028部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
実施例1において、正帯電性帯電制御剤を4級アンモニウム塩基含有共重合体0.5部からニグロシン染料(オリエント化学社製、商品名「ボントロンN−01」)0.05部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
実施例1において、DEDMSNを添加しないこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
実施例1において、DEDMSNの添加量を0.016部から0.062部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
実施例1において、DEDMSNを添加しないこと、及び、帯電制御剤として、更に負帯電性帯電制御剤(保土ケ谷化学社製、製品名「スピロンブラックTRH」)0.08部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
実施例1において、DEDMSNを添加しないこと、重合開始剤をt−ブチルパーオキシ−2−エチルブタノエート5部からアゾビスイソブチロニトリル2部に変更したこと、及び、重合温度を90℃から80℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
上記実施例1〜実施例5、及び比較例1〜比較例4の静電荷像現像用トナーについて特性を調べた。詳細は以下の通りである。
トナー3gを1mg単位まで精秤した。精秤したトナー3gに酢酸エチル27gを加えて15分間攪拌した後、メタノール13gを加えて、更に10分間攪拌した。得られた溶液を静置して、不溶分を沈殿させた。当該溶液の上澄み液を測定用試料として採取し、2μLをガスクロマトグラフに注入して、シアノ基含有炭化水素化合物の残留量を定量した。結果を表1に示す。なお、ガスクロマトグラフによる測定条件は以下の通りである。
カラム:Agilent社製、商品名「DB−5」、内径0.25mm×長さ30m
カラム温度:40℃で3分間保持後、130℃まで昇温速度10℃/分で昇温し、さらに230℃まで昇温速度20℃/分で昇温させた。
インジェクション温度:200℃
FID検出側温度:250℃
定量用標準試料:各シアノ基含有炭化水素化合物の酢酸エチル/メタノール溶液
トナー20gを容器に入れて、密閉した後、温度を60℃にした恒温水槽の中に容器を沈め、5時間経過した後に取り出した。取り出した容器からトナーを42メッシュの篩の上にできるだけ振動を与えないように移し、粉体測定機(ホソカワミクロン社製、商品名「パウダーテスターPT−R」)にセットした。篩の振幅を1.0mmに設定して、30秒間振動させた後、篩上に残ったトナーの質量を測定し、これを凝集したトナーの質量とした。測定したトナーの質量(20g)に対する、篩上に残ったトナーの質量(凝集したトナーの質量に相当)の割合(質量%)から、トナーの耐熱保存性(%)を算出した。
トナーの耐熱保存性(%)は、数値が小さい程、凝集したトナーが少なく耐熱保存性が良いことを示す。
市販の非磁性一成分現像方式プリンターを用い、印字用紙をセットし、トナーカートリッジにトナーを入れた。温度23℃、湿度50%の常温常湿(N/N)環境下で、一昼夜放置した後、温度30℃、湿度80%の高温高湿(H/H)環境下にて、カブリ値を以下のようにして測定した。
白ベタ印字(印字濃度0%)を行い、白ベタ印字の途中でプリンターを停止させ、現像後の感光体上における非画像部のトナーを、粘着テープ(住友スリーエム社製、製品名「スコッチメンディングテープ810−3−18」)に付着させた後、剥ぎ取り、それを印字用紙に貼り付けた。次に、その粘着テープを貼り付けた印字用紙を、分光色差計(日本電色社製、商品名「SE−2000」)で色調を測定し、同様にレファレンスとして、未使用の粘着テープだけを印字用紙に貼り付け、測定し、得られた色差をカブリ値とした。この値が小さい方が、カブリが少なく良好であることを示す。
その後、プリンターからトナーカートリッジを取り出し、ポリ塩化ビニル製の袋に入れて密閉し、温度30℃且つ湿度50%の環境下で60日長期保存した後、温度30℃、湿度80%の高温高湿(H/H)環境下の初期カブリの測定、及び、温度10℃、湿度20%の低温低湿(L/L)環境下の初期カブリの測定を行った。
また、上記の長期保存後、温度23℃且つ湿度50%の常温常湿(N/N)環境下で、1%印字濃度で連続印字を行い、500枚毎にカブリ値を測定した。カブリ値が1以上になった枚数(カブリ発生枚数)をカウントし、耐久印字試験は、15,000枚まで行い、途中でカブリ値が1以上になった場合には、その時点で耐久印字試験を中止した。
以下、表1を参照しながら、静電荷像現像用トナーの評価結果について検討する。
表1より、比較例1のトナーは、シアノ基含有炭化水素化合物を添加せず、且つ、正帯電性帯電制御樹脂を用いたトナーである。表1より、比較例1のトナーは、凝集トナーの割合が0.5質量%である。したがって、少なくとも耐熱保存性に問題は見られない。
しかし、比較例1のトナーは、長期保存前における高温高湿(H/H)環境下の初期カブリの値が0.9と高く、長期保存後における高温高湿(H/H)環境下の初期カブリの値が1.7と高く、長期保存後における低温低湿(L/L)環境下の初期カブリの値が2.2と高い。また、比較例1のトナーは、常温常湿(N/N)環境下における印字耐久試験のカブリ発生枚数が13,000枚に留まる。したがって、シアノ基含有炭化水素化合物を添加しなかった比較例1のトナーは、長期保存の有無にかかわらず初期カブリが発生しやすく、且つ、帯電安定性に劣ることが分かる。
しかし、比較例2のトナーは、凝集トナーの割合が1.2質量%と高く、長期保存後における高温高湿(H/H)環境下の初期カブリの値が1.9と高く、長期保存後における低温低湿(L/L)環境下の初期カブリの値が1.8と高い。また、比較例2のトナーは、常温常湿(N/N)環境下における印字耐久試験のカブリ発生枚数が13,000枚に留まる。したがって、シアノ基含有炭化水素化合物の含有量が500ppmを超える比較例2のトナーは、耐熱保存性に劣り、その結果、長期保存後の初期カブリが発生しやすく、且つ、印字耐久性にも劣ることが分かる。
しかし、比較例3のトナーは、常温常湿(N/N)環境下における印字耐久試験のカブリ発生枚数が13,000枚に留まる。したがって、シアノ基含有炭化水素化合物を添加せず、且つ、正帯電性帯電制御樹脂及び負帯電性帯電制御剤を用いた比較例3のトナーは、長期保存後の帯電安定性に劣ることが分かる。
表1より、比較例4のトナーは、凝集トナーの割合が1.8質量%と高い。当該凝集トナーの割合の値は、実施例1〜実施例5、及び比較例1〜比較例4のトナー中、最も高い。また、表1より、比較例4のトナーは、長期保存前における高温高湿(H/H)環境下の初期カブリの値が1.6と高く、長期保存後における高温高湿(H/H)環境下の初期カブリの値が3.1と高く、長期保存後における低温低湿(L/L)環境下の初期カブリの値が2.8と高い。これら3つの初期カブリの値は、実施例1〜実施例5、及び比較例1〜比較例4のトナー中、いずれも最も高い。比較例4のトナーは、常温常湿(N/N)環境下における印字耐久試験のカブリ発生枚数が11,000枚に留まる。このカブリ発生枚数の値は、実施例1〜実施例5、及び比較例1〜比較例4のトナー中、最も少ない。
したがって、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を用い、その結果TMSNを2,100ppmも含む比較例4のトナーは、耐熱保存性及び印字耐久性にいずれも極めて劣ることが分かる。
表1より、実施例1〜実施例5のトナーは、凝集トナーの割合が1.2質量%以下と低い。また、表1より、実施例1〜実施例5のトナーは、長期保存前における高温高湿(H/H)環境下の初期カブリの値が0.6以下と低く、長期保存後における高温高湿(H/H)環境下の初期カブリの値が1.2以下と低く、長期保存後における低温低湿(L/L)環境下の初期カブリの値が1.3以下と低い。また、表1より、実施例1〜実施例5のトナーは、常温常湿(N/N)環境下における印字耐久試験のカブリ発生枚数が13,500枚以上と多い。
したがって、シアノ基含有炭化水素化合物を80〜500ppm含み、且つ、正帯電性帯電制御樹脂又は正帯電性帯電制御剤を用いた実施例1〜実施例5のトナーは、優れた耐熱保存性を維持しつつ、温度変化や湿度変化等の環境変動に対する帯電安定性を向上させることができ、長期間保存後も優れた安定性が得られるトナーであることが分かる。
表1より、実施例1〜実施例3のトナーは、凝集トナーの割合が0.7質量%以下と極めて低い。また、表1より、実施例1〜実施例3のトナーは、長期保存前における高温高湿(H/H)環境下の初期カブリの値が0.6以下と低く、長期保存後における高温高湿(H/H)環境下の初期カブリの値が0.9以下と極めて低く、長期保存後における低温低湿(L/L)環境下の初期カブリの値が1.0以下と極めて低い。また、表1より、実施例1〜実施例3のトナーは、常温常湿(N/N)環境下において15,000枚連続で印字しても、カブリが1未満であり、印字耐久性に極めて優れる。
2 ジャケット
3 攪拌翼を備えた攪拌機
4 着色樹脂粒子の水分散液
5 気体吹き込み管
6 ブロワー
7 ガス循環ライン
8 凝縮器
9 凝縮タンク
10 ガス循環ライン
11 揮発性物質除去装置
12 ガス循環ライン
13 ガス循環ライン
14 非接触型泡レベル計
Claims (6)
- 結着樹脂、着色剤、及び、帯電制御剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を含有する静電荷像現像用トナーであって、
前記帯電制御剤が正帯電性帯電制御剤であり、
さらに、分子量が100〜300であるシアノ基含有炭化水素化合物を80〜500ppm含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー。 - 前記帯電制御剤が、正帯電性帯電制御樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記帯電制御剤が、4級アンモニウム塩基を有する帯電制御樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記シアノ基含有炭化水素化合物の含有量が150〜300ppmであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
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