JPWO2013141165A1 - 非水系電解液及び非水系電解液電池 - Google Patents
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Abstract
Description
高容量化する方法として、例えば、電極の活物質層を加圧して、電池内部のかつ物質以外を占める体積を極力少なくする方法や、正極の利用範囲を広げて高電位まで使用する方法が検討されている。しかし、電極の活物質層を加圧して高密度化すると、活物質を均一にしようすることができにくくなり、不均一な反応により一部のリチウムが析出したり、活物質の劣化が即任されたりして、十分な特性が得られにくいという問題が発生しやすくなる。また、正極の利用範囲を広げて高電位まで使用すると、正極の活性は更に高くなり、正極と電解液との反応により劣化が促進される問題が発生しやすくなる。
非水系電解液二次電池のサイクル特性を向上させる目的でエーテル結合を有する化合物を含有する化合物が提案されている(特許文献2)。しかし、エーテル結合を有する化合物はカーボネートやカルボン酸エステルに比べ酸化分解電位が低いため(非特許文献1)、高温保存特性や高温連続充電特性が充分ではないという問題があった。
すなわち、本発明の要旨は、下記に示すとおりである。
(a)リチウム塩とこれを溶解する非水溶媒を含有してなる非水系電解液であって、該非水系電解液が下記一般式(1)で表される化合物0.01ppm以上、100ppm以下含有することを特徴とする非水系電解液。
(式(1)中、R1、R3は置換基を有していてもよい炭素数1〜10の有機基を表し、R2は水素または置換基を有していてもよい炭素数1〜10の有機基を表す。また、R1〜R3はそれぞれ同一の基を表してもよく、それぞれ異なる基を表してもよい。)
(b)前記非水系電解液が、前記一般式(1)で表される化合物を0.01ppm以上、80ppm以下含有することを特徴とする(a)に記載の非水系電解液。
(c)リチウム塩とこれを溶解する非水溶媒を含有してなる非水系電解液であって、該非水溶媒が下記一般式(1)で表される化合物を0.01ppm以上、150ppm以下含有することを特徴とする非水系電解液。
(式(1)中、R1、R3は置換基を有していてもよい炭素数1〜10の有機基を表し、R2は水素または置換基を有していてもよい炭素数1〜10の有機基を表す。また、R1〜R3はそれぞれ同一の基を表してもよく、それぞれ異なる基を表してもよい。)
(d)前記非水溶媒が少なくともジメチルカーボネートまたはエチルメチルカーボネートを含有することを特徴とする(a)乃至(c)の何れかに記載の非水系電解液。
(e)前記一般式(1)で表される化合物が、1,2−ジメトキシプロパンまたは1,2−ジメトキシブタンであることを特徴とする(a)乃至(d)の何れかに記載の非水系電解液。
(f)リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極及び正極、並びに非水系電解液を含む非水系電解液電池であって、前記非水系電解液が(a)乃至(e)の何れかに記載の非水系電解液であることを特徴とする非水系電解液電池。
(g)前記負極が、負極活物質として炭素材料を含有することを特徴とする(f)に記載の非水系電解液電池。
(h)1,2−ジメトキシプロパンを0.01ppm以上、250ppm以下含有することを特徴とするジメチルカーボネート。
<非水系電解液>
本発明の非水系電解液は、一般的な非水系電解液と同様に、通常はその主成分として、電解質及びこれを溶解する非水溶媒を有し、更に一般式(1)で表される化合物を含有している。
(式(1)中、R1、R3は置換基を有していてもよい炭素数1〜10の有機基を表し、R2は水素または置換基を有していてもよい炭素数1〜10の有機基を表す。また、R1〜R3はそれぞれ同一の基を表してもよく、それぞれ異なる基を表してもよい。)
一般式(1)中、R1、R3で表される置換基を有していてもよい炭素数1〜10の有機基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数7〜10のアラルキル基等が挙げられる。
炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、t−アミル基、n−ヘキシル基、1,1−ジメチルブチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基等が挙げられる。中でも炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、1〜4のアルキル基が特に好ましい。また、これらアルキル基は鎖状又は環状のどちらでもよく、中でも鎖状アルキル基であるのが好ましい。
炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トリル基、キシリル基、シクロヘキシルフェニル基、t−ブチルフェニル基等が挙げられ、中でもフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、t−ブチルフェニル基が好ましい。
ここで、有していてもよい置換基としては、ヘテロ原子あるいはハロゲン原子を含有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、シアノ基、イソシアナト基、エーテル基、カーボネート基、カルボニル基、カルボキシル基、スルホニル基およびホスホリル基などが挙げられる。
上記化合物の中で、高温連続充電特性向上の点から、一般式(1)における、R1、R3がメチル基、エチル基、R2が水素原子である化合物が特に好ましく、R1、R3がメチル基、R2が水素原子である化合物が最も好ましい。即ち、1,2−ジメトキシプロパン、1,2−ジエトキシプロパン、1,2−ジメトキシブタン、1,2−ジエトキシブタンが特に好ましく、1,2−ジメトキシプロパンが最も好ましい。
また、一般式(1)で表される化合物は単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
一般式(1)で表される化合物は炭素数1〜10の有機基であるR1、R3を有する。一般に水素原子をアルキル基に置換した化合物は、アルキル基の電子供与性により酸化電位が低くなる。例えば、図1で示すように、1,2−ジメトキシエタンと、ジメトキシエタンの水素原子の1つをメチル基に置換した1,2−ジメトキシプロパンのCV(サイクリックボルタモグラム)を比較すると、1,2−ジメトキシプロパンの方が1,2−ジメトキシエタンよりも酸化電位が低いことがわかる。
そして、初期充電時に、正極表面では一般式(1)で表わされる化合物が、他の電解液成分と共に被膜を形成する。これは、一般式(1)で表される化合物は、無置換の化合物に比べて酸化電位が低いため、他の電解液成分より早く反応するためであり、それにより強固な被膜を形成すると考えている。そしてこの被膜により、活性の高い電極と電解液との接触を抑制して、電池内部で生じる副反応を抑制するため、高温での連続充電特性、保存特性が改善されるものと考えられる。
本発明の非水系電解液に用いる電解質に制限は無く、目的とする非水系電解液二次電池に電解質として用いられるものであれば公知のものを任意に用いることができる。
本発明の非水系電解液をリチウム二次電池に用いる場合には、通常は、電解質としてリチウム塩を用いる。
電解質の具体例としては、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiFSO3等の無機リチウム塩;LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、リチウム環状1,2−テトラフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−ヘキサフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)、LiC(CF3SO2)3、LiPF4(CF3)2、LiPF4(C2F5)2、LiPF4(CF3SO2)2、LiPF4(C2F5SO2)2、LiBF2(CF3)2、LiBF2(C2F5)2、LiBF2(CF3SO2)2、LiBF2(C2F5SO2)2等の含フッ素有機リチウム塩;リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムトリス(オキサラト)ホスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート、リチウムテトラフルオロオキサラトホスフェート等のジカルボン酸錯体リチウム塩;等が挙げられる。
特に、LiPF6とLiBF4との併用や、LiPF6、LiBF4等の無機リチウム塩と、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、リチウム環状1,2−テトラフルオロエタンジスルホニルイミド、及びリチウム環状1,3−ヘキサフルオロプロパンジスルホニルイミド等の含フッ素有機リチウム塩や、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムトリス(オキサラト)ホスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート、リチウムテトラフルオロオキサラトホスフェート等のジカルボン酸錯体リチウム塩とを併用することが好ましい。
この範囲未満の場合には所望する効果が得られないことがあり、この範囲を超える場合は高負荷放電特性等の電池の特性が低下することがある。
非水溶媒も、従来から非水系電解液の溶媒として公知のものの中から適宜選択して用いることができる。例えば、環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、環状カルボン酸エステル類、鎖状カルボン酸エステル類、含硫黄有機溶媒、含燐有機溶媒、芳香族含フッ素溶媒等が挙げられる。
鎖状カルボン酸エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、吉草酸メチル、吉草酸エチル等及びトリフルオロ酢酸プロピル、トリフルオロ酢酸ブチル等のこれらの化合物の水素の一部をフッ素で置換した化合物等が挙げられ、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、吉草酸メチルがより好ましい。
含リン有機溶媒としては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸ジメチルエチル、リン酸メチルジエチル、リン酸エチレンメチル、リン酸エチレンエチル等及びこれらの化合物の水素の一部をフッ素で置換した化合物が挙げられる。
これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよいが、2種以上の化合物を併用するのが好ましい。例えば、環状カーボネート類や環状カルボン酸エステル類等の高誘電率溶媒と、鎖状カーボネート類や鎖状カルボン酸エステル類等の低粘度溶媒とを併用するのが好ましい。
エチレンカーボネートとジアルキルカーボネートの好ましい組み合わせの具体例としては、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート等が挙げられる。
プロピレンカーボネートを含有する場合には、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの容量比は、99:1〜40:60が好ましく、特に好ましくは95:5〜50:50である。更に、非水溶媒全体に占めるプロピレンカーボネートの割合は、好ましくは0.1容量%以上、より好ましくは1容量%以上、更に好ましくは2容量%以上、また、好ましくは20容量%以下、より好ましくは8容量%以下、更に好ましくは5容量%以下である。この濃度範囲でプロピレンカーボネートを含有すると、エチレンカーボネートとジアルキルカーボネートとの組み合わせの特性を維持したまま、更に低温特性が優れることがあるので好ましい。
また、非水溶媒中にジエチルカーボネートを含有する場合は、全非水溶媒中に占めるジエチルカーボネートの割合が、好ましくは10容量%以上、より好ましくは20容量%以上、更に好ましくは25容量%以上、特に好ましくは30容量%以上であり、また、好ましくは90容量%以下、より好ましくは80容量%以下、更に好ましくは75容量%以下、特に好ましくは、70容量%以下となる範囲で含有させると、高温保存時におけるガス発生が抑制されることがある。
全非水溶媒中に占めるジメチルカーボネートのエチルメチルカーボネートに対する容量比(ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート)は、電解液の電気伝導度の向上と保存後の電池特性を向上の点で、1.1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.5以上が更に好ましい。上記容量比(ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート)は、低温での電池特性を向上の点で、40以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましく、8以下が特に好ましい。
なお、本明細書において、非水溶媒の容量は25℃での測定値であるが、エチレンカーボネートのように25℃で固体のものは融点での測定値を用いる。
本発明に係る非水系電解液は、本発明の効果を損ねない範囲で、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物、フッ素原子を有する環状カーボネート化合物、モノフルオロリン酸塩およびジフルオロリン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物や従来公知の過充電防止剤などの種々の他の化合物を助剤として含有していてもよい。
これらの中でも、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物、フッ素原子を有する環状カーボネート化合物、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含有する場合、負極に安定な皮膜を形成するため、サイクル特性や高温保存後の電池特性が向上することがあり好ましい。
炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物としては、例えば、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、1,2−ジメチルビニレンカーボネート、1,2−ジエチルビニレンカーボネート、フルオロビニレンカーボネート、トリフルオロメチルビニレンカーボネート等のビニレンカーボネート化合物;ビニルエチレンカーボネート、1−メチル−2−ビニルエチレンカーボネート、1−エチル−2−ビニルエチレンカーボネート、1−n−プロピル−2−ビニルエチレンカーボネート、1−メチル−2−ビニルエチレンカーボネート、1,1−ジビニルエチレンカーボネート、1,2−ジビニルエチレンカーボネート等のビニルエチレンカーボネート化合物;1,1−ジメチル−2−メチレンエチレンカーボネート、1,1−ジエチル−2−メチレンエチレンカーボネート等のメチレンエチレンカーボネート化合物等が挙げられる。これらのうち、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1,2−ジビニルエチレンカーボネートがサイクル特性や高温保存後の容量維持特性向上の点から好ましく、中でもビニレンカーボネート又はビニルエチレンカーボネートがより好ましく、特にビニレンカーボネートが好ましい。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
2種以上を併用する場合は、ビニレンカーボネートとビニルエチレンカーボネートとを併用するのが好ましい。
フッ素原子を有する環状カーボネート化合物としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート、1,2−ジフルオロエチレンカーボネート、1,1−ジフルオロエチレンカーボネート、1,1,2−トリフルオロエチレンカーボネート、テトラフルオロエチレンカーボネート、1−フルオロ−2−メチルエチレンカーボネート、1−フルオロ−1−メチルエチレンカーボネート、1,2−ジフルオロ−1−メチルエチレンカーボネート、1,1,2−トリフルオロ−2−メチルエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。これらのうち、フルオロエチレンカーボネート、1,2−ジフルオロエチレンカーボネート、1−フルオロ−2−メチルエチレンカーボネートがサイクル特性向上や高温保存特性向上の点から好ましい。これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
また、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物や次に記載するモノフルオロリン酸塩およびジフルオロリン酸塩と併用してもよく、サイクル特性向上や高温保存特性向上の点から、併用するのが好ましい。
モノフルオロリン酸塩およびジフルオロリン酸塩のカウンターカチオンとしては特に限定はないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、及び、NRaRbRcRd(式中、Ra〜Rdは、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜12の有機基を表わす。)で表されるアンモニウム等が例示として挙げられる。
上記アンモニウムのRa〜Rdで表わされる炭素数1〜12の有機基としては特に限定はないが、例えば、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環基等が挙げられる。中でもRa〜Rdとして、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は窒素原子含有複素環基等が好ましい。
これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
非水系電解液が炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物を含有する場合、非水系電解液中におけるその割合は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.3質量%以上である。炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物の割合が小さすぎると、電池のサイクル特性や高温保存後の容量維持特性を向上させるという効果を十分に発揮できない場合がある。しかし、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物の割合が大きすぎると、高温保存時にガス発生量が増大したり、低温での放電特性が低下したりする場合があるので、好ましくは8質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
非水系電解液がモノフルオロリン酸塩および/またはジフルオロリン酸塩を含有する場合、非水系電解液中におけるその割合は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
上記割合が上記範囲未満では、電池のサイクル特性や高温保存特性を向上させるという効果を十分に発揮できない可能性があり、上記範囲を超える場合は、電解液に溶解しにくくなり、効果が飽和する傾向がある。
非水系電解液中におけるこれらの助剤の含有割合は、特に制限はないが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。これらの助剤を添加することは、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を向上させる点で好ましい。この下限より低濃度では助剤の効果がほとんど発現しない場合がある。また、逆に濃度が高すぎると高負荷放電特性等の電池の特性が低下する場合がある。
本発明に係る非水系電解液は、非水溶媒に、電解質、一般式(1)で表される化合物、必要に応じて他の化合物を溶解することにより調製することができる。非水系電解液の調製に際しては、各原料は、電解液とした場合の水分を低減させるため予め脱水しておくのが好ましい。好ましくは50ppm以下、より好ましくは30ppm以下、更に好ましくは10ppm以下までそれぞれ脱水するのがよい。また、電解液調製後に、脱水、脱酸処理等を実施してもよい。
本発明の非水系電解液は、非水系電解液電池の中でも二次電池用、即ち非水系電解液二次電池、例えばリチウム二次電池用の非水系電解液として用いるのに好適である。以下、本発明の非水系電解液を用いた非水系電解液二次電池について説明する。
本発明の非水系電解液二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極及び正極、並びに非水系電解液を含む非水系電解液電池であって、該非水系電解液が上記本発明の非水系電解液であることを特徴とするものである。
本発明に係る非水系電解液二次電池は、上記本発明の非水系電解液を用いて作製される以外は従来公知の非水系電解液二次電池と同様、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極及び正極、並びに非水系電解液を含む非水系電解液電池であり、通常、正極と負極とを上記本発明の非水系電解液が含浸されている多孔膜を介してケースに収納することで得られる。従って、本発明の非水系電解液二次電池の形状は特に制限されるものではなく、円筒型、角型、ラミネート型、コイン型、大型等のいずれであってもよい。
負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば特に制限はない。その具体例としては、炭素質材料、合金系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が挙げられる。
これらの負極活物質は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。中でも好ましいものは炭素質材料、合金系材料である。
黒鉛は、学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)が0.335〜0.338nm、特に0.335〜0.337nmであるものが好ましい。また、学振法によるX線回折で求めた結晶子サイズ(Lc)は、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは100nm以上である。灰分は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
炭素質材料のBET法による比表面積は、好ましくは0.3m2/g以上、より好ましくは0.5m2/g以上、更に好ましくは0.7m2/g以上、特に好ましくは0.8m2/g以上であり、好ましくは25.0m2/g以下、より好ましくは20.0m2/g以下、更に好ましくは15.0m2/g以下、特に好ましくは10.0m2/g以下である。
また、金属単体又は合金を用いるよりは単位質量当りの容量には劣るものの、サイクル特性に優れることから、ケイ素及び/又はスズを含有する以下の化合物も好ましい。
・ケイ素及び/又はスズと窒素との元素比が好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.9以上であり、また、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.1以下であるケイ素及び/又はスズの窒化物。
また、リチウムチタン複合酸化物のリチウムやチタンの一部が、他の金属元素、例えば、Na、K、Co、Al、Fe、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素で置換されているものも好ましい。
(a)1.2≦x≦1.4、1.5≦y≦1.7、z=0
(b)0.9≦x≦1.1、1.9≦y≦2.1、z=0
(c)0.7≦x≦0.9、2.1≦y≦2.3、z=0
より好ましい代表的な組成は、(a)ではLi4/3Ti5/3O4、(b)ではLi1Ti2O4、(c)ではLi4/5Ti11/5O4である。
(正極活物質)
正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば特に制限はない。リチウムと少なくとも1種の遷移金属を含有する物質が好ましく、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム含有遷移金属リン酸化合物が挙げられる。
表面付着物質の量としては、本願発明の効果を発現するためには、特に制限はないが、正極活物質に対して質量で、好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは1ppm以上、更に好ましくは10ppm以上、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下で用いられる。表面付着物質により、正極活物質表面での非水系電解液の酸化反応を抑制することができ、電池寿命を向上させることができるが、その付着量が少なすぎる場合その効果は十分に発現せず、多すぎる場合には、リチウムイオンの出入りを阻害するため抵抗が増加する場合がある。
活物質を結着する結着剤としては、電極製造時に使用する溶媒や電解液に対して安定な材料であれば、任意のものを使用することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等の不飽和結合を有するポリマー、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等のアクリル酸系ポリマー等が挙げられる。
導電材としては、銅又はニッケル等の金属材料、グラファイト又はカーボンブラック等の炭素材料等が挙げられる。電極の製造は、常法によればよい。例えば、負極又は正極活物質に、結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー化し、これを集電体に塗布、乾燥した後に、プレスすることによって形成することができる。
負極活物質に黒鉛を用いた場合、負極活物質層の乾燥、プレス後の密度は、好ましくは1.45g/cm3以上、より好ましくは1.55g/cm3以上、更に好ましくは1.60g/cm3以上、特に好ましくは1.65g/cm3以上、である。
正極と負極の間には、短絡を防止するために多孔膜(セパレータ)を介在させる。この場合、電解液は多孔膜に含浸させて用いる。多孔膜の材質や形状は、電解液に安定であり、かつ保液性に優れていれば、特に制限はなく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート又は不織布等が好ましい。
尚、下記実施例及び比較例で得られた評価方法を以下に示す。
電池をエタノール浴中に浸して体積を測定した後、60℃において、0.5Cの定電流で定電流充電を行い、4.25Vに到達した後、定電圧充電に切り替え、1週間連続充電を行った。
連続充電試験後、電池を25℃まで冷却させた後、エタノール浴中に浸して体積を測定し、連続充電前後の体積変化から発生したガス量を求めた。
発生ガス量の測定後、25℃において0.2Cの定電流で3Vまで放電させ、連続充電試験後の残存容量を測定し、初期放電容量に対する連続充電試験後の放電容量の割合を求め、これを連続充電試験後の残存容量(%)とした。
[負極の製造]
X線回折における格子面(002面)のd値が0.336nm、結晶子サイズ(Lc)が652nm、灰分が0.07質量部、レーザー回折・散乱法によるメジアン径が12μm、BET法による比表面積が7.5m2/g、アルゴンイオンレーザー光を用いたラマンスペクトル分析から求めたR値(=IB/IA)が0.12、1570〜1620cm−1の範囲にあるピーク半値幅が19.9cm−1である天然黒鉛粉末94質量部とポリフッ化ビニリデン(呉羽化学社製、商品名「KF−1000」)6質量部とを混合し、N−メチル−2−ピロリドンを加えスラリー状にした。このスラリーを厚さ12μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、負極活物質層の密度が1.67g/cm3になるようにプレスして負極とした。
LiCoO290質量部、カーボンブラック4質量部及びポリフッ化ビニリデン(呉羽化学社製、商品名「KF−1000」)6質量部を混合し、N−メチル−2−ピロリドンを加えスラリー状にし、これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、正極活物質層の密度が3.2g/cm3になるようにプレスして正極とした。
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートの混合物(容積比3:3:4)を調製した後、ビニレンカーボネート2質量%を混合し、ついで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。その後、1,2−ジメトキシプロパンを電解液中に0.1ppmとなるように混合した。
上記の正極、負極及びポリエチレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被膜したラミネートフィルムからなる袋内に正極負極の端子を突設させながら挿入した後、上記電解液を袋内に注入し、真空封止を行い、シート状電池を作製し、高温連続充電特性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例1の電解液において、1,2−ジメトキシプロパンを1ppm加えた以外は実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、高温連続充電特性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例1の電解液において、1,2−ジメトキシプロパンを10ppm加えた以外は実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、高温連続充電特性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例1の電解液において、1,2−ジメトキシプロパンを20ppm加えた以外は実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、高温連続充電特性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例1の電解液において、1,2−ジメトキシプロパンを30ppm加えた以外は実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、高温連続充電特性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例1の電解液において、1,2−ジメトキシプロパンを80ppm加えた以外は実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、高温連続充電特性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例1の電解液において、1,2−ジメトキシプロパンを200ppm加えた以外は実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、高温連続充電特性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例1の電解液において、1,2−ジメトキシプロパンを500ppm加えた以外は実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、高温連続充電特性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例3の電解液において、1,2−ジメトキシプロパンを1,2−ジメトキシエタンに変えた以外は実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、高温連続充電特性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例1の電解液において、1,2−ジメトキシプロパンを加えなかった以外は実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、高温連続充電特性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
これらの結果は、電解液中に1,2−ジメトキシプロパンを200ppm以上含有する場合、および1,2−ジメトキシエタンは高温連続充電特性に悪影響を与えるが、1,2−ジメトキシプロパンを200ppm未満含有する場合には逆に特性が向上することは、特異的な効果であるといえる。この効果が発現される理由は明らかではないが、一般式(1)で表される化合物が初期充電時に、正極表面で他の電解液成分と共に強固な被膜を形成し、活性の高い電極と電解液との反応を抑制するため、高温での連続充電特性が改善されるものと考えられる。
Claims (8)
- リチウム塩とこれを溶解する非水溶媒を含有してなる非水系電解液であって、該非水系電解液が下記一般式(1)で表される化合物を0.01ppm以上、100ppm以下含有することを特徴とする非水系電解液。
R1−CR2OR3−CR2 2OR3・・・(1)
(式(1)中、R1、R3は置換基を有していてもよい炭素数1〜10の有機基を表し、R2は水素または置換基を有していてもよい炭素数1〜10の有機基を表す。また、R1〜R3はそれぞれ同一の基を表してもよく、それぞれ異なる基を表してもよい。) - 前記非水系電解液が、前記一般式(1)で表される化合物を0.01ppm以上、80ppm以下含有することを特徴とする請求項1に記載の非水系電解液。
- リチウム塩とこれを溶解する非水溶媒を含有してなる非水系電解液であって、該非水溶媒が下記一般式(1)で表される化合物を0.01ppm以上、150ppm以下含有することを特徴とする非水系電解液。
R1−CR2OR3−CR2 2OR3・・・(1)
(式(1)中、R1、R3は置換基を有していてもよい炭素数1〜10の有機基を表し、R2は水素または置換基を有していてもよい炭素数1〜10の有機基を表す。また、R1〜R3はそれぞれ同一の基を表してもよく、それぞれ異なる基を表してもよい。) - 前記非水溶媒が少なくともジメチルカーボネートまたはエチルメチルカーボネートを含有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の非水系電解液。
- 前記一般式(1)で表される化合物が、1,2−ジメトキシプロパンまたは1,2−ジメトキシブタンであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の非水系電解液。
- リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極及び正極、並びに非水系電解液を含む非水系電解液電池であって、前記非水系電解液が請求項1乃至5の何れか1項に記載の非水系電解液であることを特徴とする非水系電解液電池。
- 前記負極が、負極活物質として炭素材料を含有することを特徴とする請求項6に記載の非水系電解液電池。
- 1,2−ジメトキシプロパンを0.01ppm以上、250ppm以下含有することを特徴とするジメチルカーボネート。
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