JPWO2013133315A1 - 金コロイド溶液及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明の目的は、安定な金コロイド溶液及びその製造方法を提供することにある。水中に粒子径100nm以下の金ナノ粒子と下記一般式(a)で表わされる陰イオンR−COO-(a)(式中、Rは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を示す)を含む金コロイド溶液、及び当該金コロイド溶液の製造方法。

Description

本発明は、安定な金コロイド溶液及びその製造方法に関する。
近年、金ナノ粒子は触媒、医薬、センシング、エレクトロニクス、色材、塗料など多くの分野で用いられている。これらの用途では、水などの溶媒中に金ナノ粒子を安定に分散した金コロイド溶液を原料として用いることが多い。金コロイド溶液は塩化金酸(HAuCl4)を原料として製造する場合がほとんどであり、塩化金酸を還元して金ナノ粒子を得た段階では、多量の塩化物イオンが溶液中に残存している。
金ナノ粒子は導電性ペーストや触媒としての利用が検討されているが、金コロイド溶液中に塩化物イオンが残存すると、腐食、触媒毒等の原因となり好ましくない。そこで、脱塩処理のための方法が開発されている。しかしながら、例えばイオン交換樹脂を用いて脱塩する場合、塩化物イオンと同様に負の表面電荷を有する金コロイドも相当量吸着されるため、コロイド中の金ナノ粒子濃度が顕著に低下するという弊害が指摘されている(例えば、特許文献1を参照)。
以上のような塩化物イオンの問題を避けるため、塩化物イオン等のハロゲン化物イオンを含まない金属塩から金属コロイドを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。しかしながら、特許文献2をはじめ一般的な貴金属コロイド調製法においては、金属塩または金属錯体を水に溶解させた後、保護剤及び還元剤を加える手順となっているため、水に完全に溶解しない金属塩または金属錯体を使用することは考慮されていない。
また、酢酸金をアルキルジオールの液中に加え、オレイン酸とオレイルアミンを加えて180℃に加熱することにより金ナノ粒子を得た例がある(例えば、非特許文献1を参照)。しかしながら、酢酸金は水に溶けにくく、水系コロイドの原料としては使用できないと認識されているため、酢酸金を原料とし、水を溶媒とするコロイドについては未だ報告されていない。このような背景から、金コロイドの原料としては塩化金酸以外殆ど用いられていないのが現状である。
特開2009−120901号公報 特開平11−151436号公報
Monodispersed Core−Shell Fe3O4@Au Nanoparticles,L.Wan et al.,J.Phys.Chem.B,109(2005)21593−21601.
本発明は、水を溶媒とする安定な金コロイド溶液を提供することを主な目的とする。また、本発明はこのような金コロイド溶液を簡便に調製することが可能な方法を提供することを主な目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、酢酸金の水分散液にエタノールを加えると、室温下で数分後に赤色の金コロイド溶液が得られることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて更に研究を重ねた結果完成されたものである。即ち、本発明は下記態様の金コロイド溶液及び金コロイド溶液の製造方法を提供する。
項1.水中に粒子径100nm以下の金ナノ粒子と、下記一般式(a)で表わされる陰イオン
R−COO- (a)
(式中、Rは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を示す)
を含む、金コロイド溶液。
項2.前記陰イオンが酢酸イオンである、項1に記載の金コロイド溶液。
項3.更に、保護コロイドを含む項1又は2に記載の金コロイド溶液。
項4.前記保護コロイドがポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール及びカルボキシメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種である、項1〜3のいずれかに記載の金コロイド溶液。
項5.更に、1級水酸基及び/又は2級水酸基を有するアルコールからなる還元剤を含む項1〜4のいずれかに記載の金コロイド溶液。
項6.前記金ナノ粒子の濃度が0.0001〜50重量%である、項1〜5のいずれかに記載の金コロイド溶液。
項7.塩化物イオンを実質的に含まない、請求項1〜6のいずれかに記載の金コロイド溶液。
項8.下記工程を含む金コロイド溶液の製造方法:
(i)金カルボキシラートを水に分散させて分散液を調製する工程;及び
(ii)前記工程(i)で得られた分散液において、金カルボキシラートに還元剤を作用させて還元することにより金コロイド溶液を得る工程。
項9.前記還元が、1級水酸基及び/又は2級水酸基を有するアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、デンプン、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース並びにエチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種を用いて行われる、項8に記載の金コロイド溶液の製造方法。
項10.前記金カルボキシラートが酢酸金である、項8又は9に記載の方法。
項11.前記分散液が保護コロイドを含む、項8〜10のいずれかに記載の方法。
項12.前記保護コロイドがポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール及びカルボキシメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種である、項8〜11のいずれかに記載の方法。
本発明によれば、沈澱等を生じることなく、長期に亘って安定な金コロイド溶液が提供される。より具体的には、金カルボキシラートを金ナノ粒子の供給源として用いることにより、塩化物イオンを実質的に含むことなく、前記式(a)で示される陰イオンが金ナノ粒子表面に吸着することによって水中に安定に分散された金コロイド溶液が提供される。
更に、本発明の金コロイド溶液の製造方法によれば、塩化物イオンを含まない安定な金コロイド溶液を得ることができる。従って、塩化物イオンを除去する後処理の必要がなく、簡便且つ高効率に高濃度の金コロイド溶液を得ることができる。また、本発明の方法によれば製造過程で粗大粒子を副生することも無い。
従来、金属コロイドの調製条件としては金属塩が完全に溶解した溶液を出発点とするのが通常であり、難溶性金属塩を用いて金属コロイドを調製した例は殆ど報告されていない。特に金コロイド溶液に関し、原料として難溶性金属塩を用いて高濃度金コロイド溶液を得たとの報告例はこれまでになかった。これに対し、本発明によれば簡単な系で高濃度の金コロイド溶液を調製することが可能である。
図1は、実施例1において酢酸金より調製した金コロイドのUV−VISスペクトルを示すグラフである。 図2は、実施例1において酢酸金より調製し、PVPを除去した金コロイドのTEM写真および金粒子のサイズ分布を示すグラフである。 図3は、実施例2において酢酸金より調製した金コロイドのUV−VISスペクトルを示すグラフである。 図4は、実施例2において酢酸金より調製し、PVPを除去した金コロイドのTEM写真および金粒子のサイズ分布を示すグラフである。
1.金コロイド溶液
本発明の金コロイド溶液は、水中に粒子径100nm以下の金ナノ粒子と下記一般式(a)で表わされる陰イオン
R−COO- (a)
(式中、Rは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を示す)
を含むことを特徴とする。
本明細書において、上記一般式(a)で表わされる陰イオンを「カルボキシラート(carboxylate)」と呼び、その金塩を「金カルボキシラート」と呼ぶことがある。
金コロイド溶液中に塩化物イオン等のハロゲン化物イオンが含まれると、例えば導電性ペーストや触媒として使用された場合に腐食や触媒毒等の問題を生じることから、金ナノ粒子の供給源としてはハロゲン化物イオンを含まない金化合物を用いることが好ましい。本発明において金ナノ粒子の供給源としては、カルボキシル化された金(即ち、金カルボキシラート)、好ましくはカルボキシル化された3価の金を使用することが好ましい。このような金化合物として、具体的には、Au(CH3COO)3、Au(C25COO)3、Au(HCOO)3等が例示される。金カルボキシラートには、塩基性塩であるAu(OH)(CH3COO)2、Au(OH)2(CH3COO)等が含まれていても良い。金カルボキシラートとして、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を組合せて用いてもよい。これらの金カルボキシラートの中でも入手が容易で水に対して適度な溶解度を有するという観点から、好ましくは酢酸金(Au(CH3COO)3)が挙げられる。
本発明の金コロイド溶液中に含まれる金ナノ粒子の平均粒子径は、100nm以下、好ましくは50nm以下、更に好ましくは2〜40nmが挙げられる。ここで、平均粒子径とは、透過型電子顕微鏡(TEM)での観察により得られたサイズ分布から個数平均により求められる値を指す。
本発明の金コロイド溶液中の金ナノ粒子の濃度としては、通常0.0001〜50重量%、好ましくは0.001〜10重量%、更に好ましくは0.01〜5重量%が挙げられる。ここで、調製に用いた全ての金のうちプラズモン吸収を示すナノ粒子として液中に存在する金ナノ粒子の濃度は、媒体が同じ(水に対しPVP等を加えた場合は同一濃度)で金ナノ粒子の濃度が異なる数種の既知サンプルについてUV−VIS測定を行い、極大のプラズモン吸収を示す波長(λmax)における光学密度(OD)値を濃度に対してプロットし得られる検量線(直線で近似できる)により求めることが可能である。
本発明の金コロイド溶液中に含まれる下記一般式(a)で表わされる陰イオンは、金コロイド溶液中に溶解された状態で存在していてもよく、金ナノ粒子の表面に吸着した状態で存在していてもよい。
R−COO- (a)
式中、Rは水素又は炭素数1〜4、好ましくは1〜2、更に好ましくは1の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を示す。具体的なアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられ、好ましくはメチル基が挙げられる。上記一般式(a)で表わされる陰イオンとして好ましくは、酢酸イオン(CH3COO-)が挙げられる。
また、本発明の金コロイド溶液は、保護コロイドを含んでいてもよい。保護コロイドとしては、従来公知のものから適宜選択され得るが、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、グルタチオン等が挙げられ、これらの中でも好ましくはポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースが挙げられ、更に好ましくはポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールが挙げられる。これらの保護コロイドを1種単独で、又は2種以上を含んでもよい。これらの保護コロイドは、本発明の効果を損なわない範囲において変性、修飾等が加えられたものであってもよい。また、保護コロイドとしてポリマーを使用する場合、その分子量は本発明の効果が奏される限り特に限定されず、例えばポリビニルピロリドンであれば、具体的にはキシダ化学製PVP K−15(平均分子量1万)、K−30(平均分子量4万)、K−90(平均分子量36万)等を使用することができる。
本発明の金コロイド溶液中に保護コロイドが含まれる場合、その含有量は水に対する溶解度以下であれば特に限定されないが、通常は金1モルに対して0.1〜1000モル、好ましくは0.1〜500モル、更に好ましくは0.1〜100モルが挙げられる。ここで、保護コロイドがポリマーである場合は、そのモノマー単位でのモル量として扱うものとする。
本発明の金コロイド溶液の溶媒としては水が使用される。ここで、水としては、特に限定されないが、蒸留水、イオン交換水、精製水、純水、超純水など塩化物イオン等の不純物を含まない水を用いることが望ましい。
また、本発明の金コロイド溶液は還元剤を含んでいてもよい。還元剤としては、従来公知のものから適宜選択することが可能であるが、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、エチレングリコール等の1級水酸基を有するアルコール;2−プロパノール、2−ブタノール等の2級水酸基を有するアルコール;グリセリン等の1級及び2級水酸基の両方を有するアルコール;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド;グルコース、フルクトース、グリセルアルデヒド、ラクトース、アラビノース、マルトース等の糖類;クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸アンモニウム、タンニン酸、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム等の有機酸及びその塩;水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等の水素化ホウ素及びその塩;ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン等のヒドラジン及びその無機塩が挙げられる。これらの還元剤を1種単独で、又は2種以上を含んでもよい。これらの還元剤の中でも好ましくは1級水酸基及び/又は2級水酸基を有するアルコール、更に好ましくはエタノール、メタノール等が挙げられる。また、保護コロイドの種類によっては還元剤として使用できるものがある。還元剤としても使用できる保護コロイドの具体例については、後述する工程(i)において記載される。
本発明の金コロイド溶液中に還元剤が含まれる場合、その含有量は本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、金1モルに対して1〜100000モル、好ましくは1〜50000モル、更に好ましくは1〜20000モルが挙げられる。
本発明の金コロイド溶液中には、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンのいずれかであるハロゲン化物イオン(X)が実質的に含まれていないことが好ましい。これにより、本発明の金コロイド溶液を導電性ペーストや触媒などとして利用する場合にも、ハロゲン化物イオンによる腐食の発生や、ハロゲン化物イオンが触媒毒となるといった問題を防ぐことができる。なお、本発明において、ハロゲン化物イオンが実質的に含まれていないとは、金コロイド溶液中の金の量に対して、ハロゲン化物イオンの量が少ないことを意味する。例えば、塩化金酸(HAuCl4)を用いて金コロイド溶液を調製した場合、塩化物イオン除去処理を行わない限り、ハロゲン化物イオン(X)と金(Au)とのモル比(X/Au)は、通常4程度となる。一方、本発明においては、金コロイド溶液中のハロゲン化物イオン(X)と金(Au)とのモル比(X/Au)は、例えば0.4以下、または0.04以下、さらに0.004とすることができる。塩化金酸等のハロゲン化物イオン含有の原料を用いた場合にも、金コロイド溶液生成後に脱塩処理等を行えば、ハロゲン化物イオン濃度を低減することは可能であるが、本発明の金コロイド溶液では、脱塩処理を行うことなく所定のハロゲン化物イオン濃度以下の金コロイド溶液とすることができる。
本発明の金コロイド溶液は、用途に応じて従来公知の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、着色剤、安定剤、界面活性剤、分散剤、増粘剤等が挙げられる。
本発明の金コロイド溶液は、導電性インク、導電性ペースト、触媒、センサー、接合材料、色材、塗料、バイオマーカー等の用途に適用することができる。
2.金コロイド溶液の製造方法
本発明は、上述のような金コロイド溶液を簡便に調製することが可能な金コロイド溶液の製造方法を提供する。当該金コロイド溶液の製造方法は、下記工程(i)及び(ii)を含む。
工程(i)
本工程(i)においては、金カルボキシラートを水に分散させて分散液を得る。ここで、金カルボキシラート及び溶媒である水については、上記「1.金コロイド溶液」において記載される通りである。
本工程(i)において金カルボキシラートを分散させる際、溶媒として保護コロイドを含む水を使用してもよい。保護コロイドを添加することによって、金ナノ粒子の粒度分布を狭くすることができ、得られる金コロイド溶液の安定性を高めることができる。具体的な保護コロイドとしては、上記「1.金コロイド溶液」において記載される通りである。
また、上述される保護コロイドのうち、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、デンプン、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等については還元剤としても使用することができ、これらの中でも好ましくはポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースが挙げられ、より安定な金コロイド溶液が得られることからポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコールが更に好ましいものとして例示される。従って、本工程(i)において保護コロイドとしてこれらが分散液に既に添加されている場合には、下記工程(ii)において別途還元剤を加えることなく金コロイド溶液の調製が可能である。
保護コロイドの添加量としては、水に対する溶解度以下であれば特に限定されないが、通常は金1モルに対して0.1〜1000モル、好ましくは0.1〜500モル、更に好ましくは0.1〜100モルが挙げられる。
本工程(i)において、金カルボキシラートを水に分散させる方法としては、粉体を水中に分散させるために通常使用される方法から適宜選択することができるが、例えば、マグネチックスターラー、タッチミキサー、超音波洗浄機等が挙げられる。また、これらの装置を組合せて使用してもよい。分散させる際の条件としては特に限定されないが、具体的には、タッチミキサー(240rpm、10秒)の後、超音波洗浄機による処理(60秒)が例示される。このような処理を複数回(例えば1〜20回、好ましくは5〜10回)繰り返し行ってもよい。
例えば、金カルボキシラートとして酢酸金を使用する場合、分散液は茶色を呈し、チンダル現象を示すことからコロイド状態で分散していることが確認できる。
本工程(i)において得られる分散液の分散濃度は、目的とする金コロイド溶液を得るのに必要な金カルボキシラートの分散濃度を有している限り特に限定されないが、生成される金コロイド溶液の安定性の観点から、金メタル換算で通常0.0001〜50重量%、好ましくは0.001〜10重量%である。
金カルボキシラートは水に対して、僅かながらイオンとして溶解することが知られている。例えば、酢酸金の溶解度は、非特許文献2(G.C.Bond et al.,Chapter 4 Preparation of Supported Gold Catalysts, Catalysis by gold(Series editor,G.J.Hutchings),p.89,Imperial College Press(2006))において10-5M以下であると報告されている。従って、本発明の限定的な解釈を望むものではないが、金カルボキシラートを水に分散させると、一部は水に溶解し、残りの部分はコロイドとして水に分散すると予想される。
工程(ii)
本工程(ii)においては、前記工程(i)で得られた分散液において、金カルボキシラートに還元剤を作用させて還元することにより金コロイド溶液を得る。
本工程(ii)において、金カルボキシラートの還元は、前記工程(i)で得られた分散液に還元剤を添加することにより行うことができる。還元剤としては、上記「1.金コロイド溶液」に記載の通りであり、好ましくは1級水酸基及び/又は2級水酸基を有するアルコール、更に好ましくはエタノール、メタノール等が挙げられる。分散液に作用させる還元剤の量としては、分散液中の金のモル数に対して酸化還元当量以上のモル数があれば特に制限はないが、例えば、金1モルに対して1〜100000モル、好ましくは1〜50000モル、更に好ましくは1〜20000モルが挙げられる。例えば、還元剤がアルコールである場合、水に対し均一に溶解できる範囲の体積比であることが好ましく、そのような体積比については前記モル数に基づいて適宜設定することができる。
分散液に還元剤を作用させる条件としては、分散液中の金カルボキシラートと還元剤が反応し得る限り特に限定されず、必要に応じて撹拌等を行ってもよい。また、反応温度についても特に限定されず、使用する還元剤の種類等により適宜設定することが可能であるが、例えば1〜100℃、好ましくは5〜40℃、更に好ましくは10〜30℃が挙げられる。
例えば、エタノール、メタノール等の比較的強い還元剤を用いた場合には室温条件下数分で反応が十分進行するが、2−プロパノールや保護コロイドでもあるポリビニルピロリドン等の弱い還元剤を用いた場合には室温条件下では数日から数カ月を要することがある。従って、弱い還元剤を使用する場合には、反応溶液を加熱して反応温度を上げることにより反応速度を速め、金コロイドの生成を数分〜数時間で行うことができる。加熱温度としては、金コロイドが生成され得る限り特に限定されないが、例えば40〜100℃、好ましくは60〜100℃、更に好ましくは80〜100℃が挙げられる。より具体的には、金カルボキシラートとして酢酸金、保護コロイド及び還元剤としてポリビニルピロリドンを組合せて使用する場合であれば、80〜100℃で、5〜60分間加熱することにより、高濃度の金コロイド溶液を得ることができる。
また、本工程(ii)において、必要に応じ過剰の保護コロイドの除去を行ってもよい。除去の方法としては特に限定されず、従来公知の方法から適宜選択され得るが、例えば、遠心濾過、膜分離、透析、電気透析等により行うことができる。除去する保護コロイドの量に応じて、これらの処理を複数回行ってもよい。また、得られた金コロイド溶液に対し、必要に応じて、従来公知の方法に従ってpH調整、濃縮、精製等の処理を行ってもよい。
上述のように、本発明の金コロイド溶液の製造方法においては、金カルボキシラートを必要に応じて保護コロイドを含む水に分散させ、次いで還元剤を作用させることもできるが、より簡便には、上記保護コロイド及び還元剤を溶媒である水に添加して水溶液とし、そこに金カルボキシラートを添加し、金コロイド溶液を調製してもよい。このような方法を採用する場合であっても、上記と同様の材料及び条件を採用することができる。
本発明の金コロイド溶液の製造において、各材料の好ましい組合せとしては、例えば、金カルボキシラートとして酢酸金、保護コロイドとしてポリビニルピロリドン及び/又はポリビニルアルコール、還元剤としてメタノール及び/又はエタノールが挙げられる。このような組合せを採用することにより、簡便に、高濃度且つ安定な金コロイド溶液とすることができる。
本発明を限定的に解釈することを望むものではないが、本発明において高濃度の金コロイドを得ることができる理由は、例えば次のように考えることができる。酢酸金等の金カルボキシラートは水に難溶性であるために、水中の金イオン濃度は金コロイド生成に適した希薄濃度に保たれると考えられる。そして、金イオンが還元剤により金属金に還元されると、金カルボキシラートが再び微量水に溶解できるようになると考えられる。このように、金カルボキシラートの微量溶解と還元を繰り返すことにより、少しずつ金コロイドが生成し、結果として高濃度の金コロイドを得ることができると考えられる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1
エタノールと水の1:1溶液10mLにポリビニルピロリドン(PVP K15,キシダ化学製)を50mg溶かした。酢酸金[Au(CH3COO)3,AlfaAesar製、メーカーの分析証明書に記載の純度99.99%]の茶色粉末5mgを加え、タッチミキサー(IKA社製、Vortex Genius3)及び超音波洗浄機(アズワン製、US−2R)を用いて分散させた。分散処理としては、タッチミキサー処理(2400rpmで10秒)、超音波洗浄機処理(60秒)を交互に各5〜7回繰り返すのを標準条件としたが、沈殿の残存状況に応じて繰り返し回数を適宜増減した。このような処理により、溶液中の溶け残りの沈殿はほぼ無くなるが、容器の横からLEDライトの光を当てるとチンダル現象が見られることから真の水溶液ではなく茶色のコロイド分散液となっていることが確認された。
この分散液を室温(約24℃)で放置すると、約10分で液色が赤くなり始めた。一晩放置後には赤色の金コロイド溶液(調製濃度1.3mmol−Au/L)が得られた。コロイド溶液を水で1/10濃度に希釈し、光路長1cmの石英セルに入れ、分光光度計(島津製作所、UV−1800)にてUV−VISスペクトルの測定を行った。結果を図1に示す。
図1中、横軸は波長、縦軸は分光光度計において吸光度(Absorbance)として表示される値である。吸光度は、金コロイド溶液においては吸収の他に散乱、反射の影響も含まれ、ここでは光学密度(Optical density)と表示する。測定したスペクトルには表面プラズモン吸収に基づくピークが明確に観測され、その波長(λmax)は527nmであった。
一般に金ナノ粒子の粒子径が小さいほど、プラズモン吸収のピーク波長が小さくなるという関係が知られている。例えば、非特許文献3(小林敏勝、第21章 色材としての濃厚金ナノ粒子ペースト、金ナノテクノロジー(春田正毅監修)pp.273−282 CMC出版社(2009))には、金ナノ粒子の体積平均粒子径(DAu)とプラズモン吸収波長(λmax)の対応が示されている。金コロイドの分散媒が同一であればDAuとλmaxの両値には直線関係があり、λmaxの測定値からDAuを求めることが原理的には可能である。
本実施例においては金コロイドの分散媒は水であるが、エタノール等の還元剤やPVP等の保護コロイドの混合によって分散媒の誘電率が変わるため、DAuが同じであってもλmaxは変動する。また、DAuが50nm以下の範囲ではDAuが大きいほど強いプラズモン吸収を示すため、粒度分布が広い場合には大きい粒子からの影響を強く受け、単分散の場合と比較してDAuとλmaxの関係がずれてくる。このため、本実施例のように分散媒の組成が個々に異なり、金ナノ粒子のサイズ分布が単分散でない場合にはλmaxからDAuを正確に求めることは困難である。
そこで、後述する実施例1及び実施例2のTEM測定から求めたDAu値とλmaxの関係を非特許文献3の図8に示されるデータ点列に加え、最小2乗法により回帰直線を求めた。その結果、相関係数が0.96となり概ね1に近いことから、本発明の金コロイドの状況は非特許文献3の図8に示された金コロイドと類似の状況にあると言える。得られた直線式により、実施例1及び後述する実施例2〜33において測定されたλmaxの範囲(524〜562nm)に相当するDAuの範囲を求めると12〜37nmとなり、本実施例においては平均粒子径10〜40nm程度のサイズの金コロイドが得られているものと概算された。
また、λmaxにおける光学密度は、金コロイド濃度の指標として用いることができる。測定に用いた石英セルの光路長をL(cm)、溶液の希釈倍率をF(例えば1/10濃度に希釈して測定した場合はF=10)、その時のλmaxにおける光学密度値をYとするとき、下記の式(1)により算出される調製直後の最大換算光学密度値(即ち、ODmax)は6.8であった(下表1を参照)。
ODmax=Y×F/L 式(1)
金コロイド分散液(調製後40日経過)からPVPを除去するため遠心ろ過を行った。分画分子量50,000の遠心式フィルターユニット(アミコンウルトラ−15、ミリポア社製)を用い、4000rpmで20分間処理したところ、フィルターを通過しない金コロイド分散液は濃赤色に濃縮され、フィルターを通過した分は無色透明なろ液が得られた。濃縮された分散液に水を加えて10mLに戻し、再び遠心ろ過する操作を3回繰り返した。ろ液中のPVPの残存の有無を判断するため、非特許文献4(Binding of Evans Blue Onto Poly(N−Vinyl−2−Pyrrolidone),M.Maruthamuthu and E.Subrarnanian,Polymer Bulletin 14,207−212(1985))の記載に従い、エバンスブルー(EB)溶液を滴下しUV−VIS吸収を測定した。
1回目のろ液にはPVP−EB複合体に基づく639nmの吸収が見られたが、3回目のろ液は639nmの吸収が無くフリーのEBに基づく609nmの吸収のみが見られたことから、3回の遠心ろ過操作でPVPが除去できたことが確認された。得られた金コロイド分散液の一部にもエバンスブルーを加えUV−VIS吸収を測定した結果、639nmの吸収が無いことから金コロイドの分散媒である水中にPVPは残存していないことが確認できた。PVP除去後の金コロイド溶液(エバンスブルーを加えない部分)のUV−VIS吸収におけるλmaxは529nmであった。
PVP除去操作後の金コロイド溶液をマイクログリッドに滴下して乾燥し、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察を行った。TEM写真を図2に示す。各種の結晶構造(正20面体構造Ih,5角10面体構造Dh,面心立方格子構造Fcc)の金ナノ粒子混合物となっており、その粒子径は5nm程度のものから20nmを越えるものまで観察された。図2のサイズ分布から求めた個数平均粒子径は11.5nmであった。
この後、室温下で金コロイド溶液を保存したが、7カ月後においても沈殿は見られずコロイド溶液は安定であった。金ナノ粒子表面に酢酸イオン及び/または少量の残存PVPが吸着して安定な金コロイド溶液になっていると考えられた。調製直後、PVP除去後、7カ月経過後における、λmax及びODmaxの値を下表1にまとめた。
表1より、PVP除去時に粒子径と濃度の変動があるが、その後の7カ月経過の間には大きな変化が無く、コロイドが安定であることが示された。
比較例1
金コロイド原料の金カルボキシラートとして、酢酸金の代わりに塩化金酸四水和物(キシダ化学)の結晶を電子天秤で秤量し、所定量の水に溶解して調製した塩化金酸(HAuCl4)の0.1mol/L水溶液0.13mLを用いる他は、実施例1と同様にして溶液を調製した。調製時の液色は黄色(通常の塩化金酸水溶液の液色)でチンダル現象も観察されず塩化金酸は完全に溶けて真の溶液となっていた。実施例1と同様に室温で1晩放置したが、色の変化は全く起こらず黄色の溶液のままであり、金コロイドは生成しなかった。
実施例2
水20mLに対しポリビニルピロリドン(PVP K15)を6g溶かし、その2mLをガラス製スクリュー管瓶にとった。酢酸金の粉末20mgを加え、タッチミキサと超音波洗浄機を用い実施例1と同様の条件で分散させると、茶色の分散液が得られた。攪拌子を入れて、テフロンコートパッキン付きの蓋を閉めてホットプレートスターラー上で攪拌しながら溶液を沸騰させると、数分で赤色のコロイド液(Au26.7mmol/L)が得られた。1/100に希釈したコロイド液のUV−VISスペクトル(吸収ピーク530nm)を図3に示す。(式1)により求めた金の粒子径は18.1nmであった。
調製後40日を経過した後、2mLのコロイド液に水10mLを加え、12mLに希釈した後実施例1と同じ条件で、遠心ろ過を6回行いPVPを除去し、6回目のろ過後に加える水の量を調節して調製時と同程度の濃度の金コロイド液を得た。PVP除去後の金コロイド溶液(エバンスブルーを加えない部分)のUV−VIS吸収におけるλmaxは524nmであった。調製直後、PVP除去後及び7カ月経過後において、実施例1と同様の方法により得られたλmax及びODmaxの値を下表2に示す。
表2より、前記実施例1と同様、PVP除去時に粒子径と濃度の変動があるが、その後の7カ月経過の間には大きな変化が無く、コロイドが安定であることが示された。
PVP除去操作後の金コロイドのTEM写真を図4に示す。図4には、実施例1と同様、本実施例2の場合も各種構造の金ナノ粒子の混合物であることが示されている。実施例1の場合より粒度分布がやや良い結果となった。図4のサイズ分布から求めた平均粒子径(TEMで通常示す算術平均値)は9.8nmであった。
比較例2
実施例2において酢酸金の粉末20mgを用いる代わりに、比較例1と同様の方法に従って塩化金酸四水和物(キシダ化学)から調製した塩化金酸(HAuCl4)の0.1mol/L水溶液0.5mLを用いる他は、実施例2と同様にして溶液を調製した。沸騰還流すると、粗大金粒子となって沈殿し、金コロイドは生成しなかった。
実施例3〜6
試験管中の水2.5mLにポリビニルピロリドン(PVP K15)を25mg溶かした。酢酸金の粉末5mgを加え、タッチミキサ(IKA社製、Vortex Genius3)と超音波洗浄機(アイワ医科工業製、AU−25C)を用い実施例1と同様の条件で分散させた。ここに、表3に示した還元剤2.5mLの何れかを加えて攪拌した(実施例3:エタノール、実施例4:メタノール、実施例5:エチレングリコール、実施例6:2−プロパノール)。蓋をして室温で放置すると、実施例3〜5は赤色の金コロイドを生成した。実施例6は室温では1日放置しても変化が見られなかったが、蓋をした状態で沸騰水中で100℃に加熱すると直ちに金コロイドを生成した。コロイド生成後、室温で2日間静置し、UV−VIS測定を行った。測定されたλmaxの値より、前記式(1)に基づいてODmax値を算出した。これらの値を下表3に示す。
比較例3
還元剤としてt−ブタノール2.5mLを用い、他の操作は実施例3〜6と同様に行った。室温では1日放置しても変化が見られなかった。更に沸騰水中で2時間加熱したが、茶色の沈殿物が落ち、上澄みは透明となって金コロイドは生成しなかった。結果を下表3に併せて示す。
表3より、1級水酸基又は2級水酸基を有するアルコールを還元剤とした場合(実施例3〜6)は、何れも酢酸金を還元し金コロイドの生成が可能であるが、3級水酸基のみを有するt−ブタノールでは還元が起こらないことが示された。
実施例7〜16<酢酸金及び分散剤の量>
試験管中の水2.5mLにポリビニルピロリドン(PVP K15)の表4に示した量を溶かした。得られた水溶液に酢酸金の粉末を表4に示した量加え、タッチミキサ(IKA社製、Vortex Genius3)と超音波洗浄機(アイワ医科工業製、AU−25C)を用いて実施例1と同様の条件で分散させた。ここに、エタノール2.5mLを加え、蓋をして室温で放置すると金コロイドが生成した。1日放置後、UV−VISスペクトルを測定した。実施例1と同様の方法によって得られたλmax、ODmaxの値を下表4に示す。また、下表4においてAu濃度は調製の際に使用した酢酸金の量から計算したコロイド溶液中のAu重量濃度である。PVP/Auは、PVPのモノマー単位(分子量111)で計算したモル比である。
従来の貴金属コロイド調製ではPVPの添加量により貴金属粒子径を大きく変えた例があるが(例えば、特開2005−281817号公報)、酢酸金に対しPVPの添加量を大きく変えてもλmaxの変化は大きくなく、従って金ナノ粒子径にも大きな変化は無いものと考えられる。またPVPの添加の有無にかかわらず金コロイドは生成するが、PVP無添加の実施例7に比べ、PVPの添加を行った実施例8〜12では同じ酢酸金量でもOD値が1.4倍以上大きな値が得られた。実施例13〜16では酢酸金の量を変えた結果、金ナノ粒子の濃度が0.55重量%までは、ほぼ金ナノ粒子の濃度と直線関係にあるODmax値が得られている。実施例16では前記直線の外挿から期待されるODmax値の約50%の値となった。
実施例17〜24<エタノール還元時における保護コロイドの影響>
試験管中の水2.5mLに表5に示す各種の分散剤を25mg溶かした。酢酸金の粉末5mg加え、タッチミキサ(IKA社製、Vortex Genius3)と超音波洗浄機(アイワ医科工業製、AU−25C)を用い実施例1と同様の条件で分散させた。ここに、エタノール2.5mLを加えた。蓋をして室温で放置すると金コロイドが生成した。1日放置後のUV−VISスペクトルを測定した。測定されたλmaxの値より、前記式(1)に基づいてODmax値を算出した。これらの値を表5に示す。
表5から、保護コロイドの種類により得られる金コロイドのλmaxが異なることが示された。より具体的には、PVP K−15(実施例17)に比べ、分子量の大きなPVP K−30(実施例18)やPVPK−90(実施例19)を用いると、λmaxが小さくなり比較的粒子径の小さな金コロイドの生成が示唆された。また、ポリアクリル酸ナトリウム又はポリアクリル酸(それぞれ実施例21、22)を用いると、λmaxは大きくなり粒子径の大きな金コロイドの生成が示唆された。更に、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール又はカルボキシメチルセルロース(それぞれ実施例20、23、24)を使用した場合には、PVP K−15(実施例17)と同程度のλmaxが示され、同程度の粒子径の金コロイドの生成が示唆されたが、ODmax値はPVP K−15に比べると低く、金ナノ粒子の濃度がわずかに低下したことが示された。
実施例25−33<各種保護コロイドによる還元>
試験管中の水5mLまたは2mLに、表6に示した分散剤を所定量加えて溶かした。酢酸金の粉末を所定量加え、タッチミキサ(IKA社製、Vortex Genius3)と超音波洗浄機(アイワ医科工業製、AU−25C)を用い実施例1と同様の条件で分散させた。蓋をして沸騰水中で2時間加熱する間に金コロイドが生成した。その後、室温で1日静置後(但し、実施例30〜33では3日後、実施例26は加熱せず室温で5日静置後)のUV−VISスペクトルを測定した。測定されたλmaxの値より、前記式(1)に基づいてODmax値を算出した。これらの値を下表6に示す。
表6よりエタノールを加えなくても保護コロイドとしてPVP、PEG、PVA又はCMCを使った場合に金コロイドが生成できることが示された。実施例26と27を比較すると、常温ではコロイドの生成に長期間を要しODmax値も小さいのに対して、加熱により短時間にODmax値の大きなコロイドが得られた。また、酢酸金の量を増やせばODmax値が100を超えるコロイドを生成することが可能であった(実施例29及び32)。保護コロイドとしてPVP又はPVAを用いた場合には、3日間静置後も安定な金コロイドが得られた(実施例25〜30及び32)。
(まとめ)
以上の結果より、本発明によれば安定な金コロイド溶液が得られることが示された。更に、本発明によれば、従来の金コロイド溶液と比べて格段に高濃度のものを調製することも可能であった。また、金ナノ粒子の供給源として金カルボキシラートを使用することにより、塩化物イオン等の残留を懸念することなく、幅広い用途に適用可能な金コロイド溶液を簡便に調製することができることが示された。

Claims (12)

  1. 水中に粒子径100nm以下の金ナノ粒子と下記一般式(a)で表わされる陰イオン
    R−COO- (a)
    (式中、Rは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を示す)
    を含む、金コロイド溶液。
  2. 前記陰イオンが酢酸イオンである、請求項1に記載の金コロイド溶液。
  3. 更に、保護コロイドを含む請求項1又は2に記載の金コロイド溶液。
  4. 前記保護コロイドがポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール及びカルボキシメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の金コロイド溶液。
  5. 更に、1級水酸基及び/又は2級水酸基を有するアルコールからなる還元剤を含む請求項1〜4のいずれかに記載の金コロイド溶液。
  6. 前記金ナノ粒子の濃度が0.001〜50重量%である、請求項1〜5のいずれかに記載の金コロイド溶液。
  7. 塩化物イオンを実質的に含まない、請求項1〜6のいずれかに記載の金コロイド溶液。
  8. 下記工程を含む金コロイド溶液の製造方法:
    (i)金カルボキシラートを水に分散させて分散液を調製する工程;及び
    (ii)前記工程(i)で得られた分散液において、金カルボキシラートに還元剤を作用させて還元することにより金コロイド溶液を得る工程。
  9. 前記還元が、1級水酸基及び/又は2級水酸基を有するアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、デンプン、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース並びにエチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種を用いて行われる、請求項8に記載の金コロイド溶液の製造方法。
  10. 前記金カルボキシラートが酢酸金である、請求項8又は9に記載の方法。
  11. 前記分散液が保護コロイドを含む、請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
  12. 前記保護コロイドがポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール及びカルボキシメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項8〜11のいずれかに記載の方法。
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