JPWO2013100152A1 - 磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法および磁気ディスク用ガラス基板の製造方法 - Google Patents

磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法および磁気ディスク用ガラス基板の製造方法 Download PDF

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Abstract

プレス成形によって板厚偏差が低減した磁気ディスク用ガラスブランクが得られる磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法および磁気ディスク用ガラス基板の製造方法が提供される。互いに対向する一対の金型を用いて、溶融ガラスの塊をプレス成形する成形工程を含む磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法であって、前記一対の金型は、前記プレス成形するためのプレス成形面と、前記プレス成形面の外周から前記一対の金型の対向方向に突出するように形成され、前記対向方向の突出高さに基づき前記磁気ディスク用ガラスブランクの板厚を設定するための板厚設定部とを有し、前記成形工程では、前記溶融ガラスのプレス成形時に前記プレス成形面から前記板厚設定部に前記溶融ガラスの熱が伝わるときの前記板厚設定部の前記突出高さを均一にするための均一化部材を用いて、前記板厚設定部の前記突出高さを均一にした状態で、プレス成形を行う。

Description

本発明は、磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法および磁気ディスク用ガラス基板の製造方法に関する。
今日、パーソナルコンピュータ、あるいはDVD(Digital Versatile Disc)記録装置等には、データ記録のためにハードディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)が内蔵されている。特に、ノート型パーソナルコンピュータ等の可搬性を前提とした機器に用いられるハードディスク装置では、ガラス基板に磁性層が設けられた磁気ディスクが用いられ、磁気ディスクの面上を僅かに浮上させた磁気ヘッド(DFH(Dynamic Flying Height)ヘッド)で磁性層に磁気記録情報が記録され、あるいは読み取られる。この磁気ディスクの基板として、金属基板(アルミニウム基板)等に比べて塑性変形し難い性質を持つことから、ガラス基板が好適に用いられる。
磁気ヘッドは、例えば磁気抵抗効果型素子を備えているが、このような磁気ヘッドに固有の障害としてサーマルアスペリティ障害を引き起こす場合がある。サーマルアスペリティ障害とは、磁気ディスクの微小な凹凸形状の主表面上を磁気ヘッドが浮上飛行しながら通過するときに、空気の断熱圧縮または接触により磁気抵抗効果型素子が加熱され、読み出しエラーを生じる障害である。そのため、サーマルアスペリティ障害を回避するため、磁気ディスク用ガラス基板の主表面の表面粗さ、平面度などの表面性状は良好なレベルとなるように作製されている。
従来の板状ガラス(ガラスブランク)の製造方法としては、垂直ダイレクトプレス法(特許文献1)や、水平ダイレクトプレス法(特許文献2)が知られている。垂直ダイレクトプレス法では、鉛直方向に対向する一対の金型のうち下方の金型上に溶融ガラスの塊(溶融ガラス塊)を供給し、上方の金型を使用して溶融ガラス塊をプレス成形している。一方、水平ダイレクトプレス法では、落下中の溶融ガラス塊を、溶融ガラス塊の落下方向に対して直交する方向(水平方向)に対向配置された一対の金型を用いてプレス成形している。
これらのプレス法に用いられる金型は、溶融ガラス塊をプレス成形するためのプレス成形面と、プレス成形面の外周から一対の金型間の対向方向に突出するように形成され、対向方向の突出高さに基づき板状ガラスの板厚を設定するための板厚設定部を有している。溶融ガラス塊をプレス成形する際、板厚設定部が対向相手の金型に当接することにより、各金型のプレス成形面間の間隔が一定、すなわち各金型のプレス成形面が平行して対向するように維持され、板状の空間が形成される。そして、溶融ガラス塊が各金型のプレス成形面の間に挟み込まれることにより、ガラスブランクが成形される。ここで、各金型のプレス成形面間の間隔は、板厚設定部のプレス成形面からの突出高さに基づいて形成される。これにより、ガラスブランクの板厚は、板厚設定部の突出高さに基づき設定されるようになっている。
また、プレス成形により作製されたガラスブランクから磁気ディスク用ガラス基板を製造する従来の方法では、ガラスブランクの主表面を研削する研削(ラップ)工程を行うことにより、ガラスブランクの板厚を均一、すなわちガラスブランクの板厚偏差を低減した上で、ガラスブランクの主表面の表面粗さを改善するための研磨(ポリッシング)工程を行っている。
特開平11−255521号公報 特開2011−207738号公報
ところで、情報化社会の進展とともに、磁気ディスク等の磁気記録媒体の低価格化の要求は日増しに高まってきており、この要求に応じるためには、磁気ディスク用ガラス基板の低価格化を実現する必要がある。磁気ディスク用ガラス基板の低価格化を実現するために、例えば、研削工程や研磨工程における主表面の取り代を低減することや、研削工程を省略すること等が検討されている。ここで、研削工程を省略する場合には、ガラスブランクがプレス成形により作製された時点で、ガラスブランクの板厚偏差が十分に低減されている必要がある。これは、ガラスブランクの板厚偏差が大きい状態で研削工程を省略して研磨工程を行った場合、研磨工程で用いられる研磨パッドをガラスブランクの主表面全面に接触させることができないので、ガラスブランクの主表面全面を均一に研磨することで表面粗さを改善することができず、結果として、表面性状が良好なレベルとなる磁気ディスク用ガラス基板を得ることが困難になるからである。
しかしながら、上記のプレス法を単に用いたとき、プレス成形された時点でのガラスブランクの板厚偏差が十分に低減されない場合がある。この理由は、以下のとおりである。
すなわち、上記のプレス法では、溶融ガラス塊のプレス成形が開始されると、溶融ガラス塊は、各金型のプレス成形面と接触することにより冷却されて固化する。この場合、溶融ガラス塊の熱は、各金型のプレス成形面から板厚設定部に伝わり、板厚設定部から外部に排出される。ここで、板厚設定部のうちプレス成形面と溶融ガラス塊との接触位置に近い部分には、溶融ガラス塊の熱が他の部分と比較して伝わり易くなるので、プレス成形が長時間連続して行われると、板厚設定部内の温度分布が不均一になる。この場合、板厚設定部の熱膨張量が不均一になることにより、板厚設定部のプレス成形面からの突出高さが不均一になるため、例えば図20に示すように、プレス成形時における各金型のプレス成形面間の間隔が一定でなくなる(図20にD1,D2で示す)。このため、プレス成形によって作製されるガラスブランクの板厚偏差が大きくなる。
また、溶融ガラス塊が各金型によって急冷されることにより、ガラスブランクが割れる等して破損することを防ぐために、各金型は、板厚設定部の外周面が所定の加熱手段(例えばヒータ等)によって加熱されることにより、プレス成形の際に所定の温度になるように予め制御される場合がある。ここで、例えば、加熱手段が板厚設定部の外周面の一部のみを加熱するように構成されている等のように、板厚設定部の外周面全面が均等に加熱されない場合には、加熱手段による加熱量が板厚設定部の位置によって異なるため、板厚設定部内の温度分布が不均一になる。この場合、板厚設定部の熱膨張量が不均一になることにより、板厚設定部のプレス成形面からの突出高さが不均一になるため、プレス成形時における各金型のプレス成形面間の間隔が一定でなくなる。このため、プレス成形によって作製されるガラスブランクの板厚偏差が大きくなる。
ガラスブランクの板厚偏差が大きくなった場合には研削工程が必要となることから、磁気ディスク用ガラス基板の低価格化を図ることが困難であった。
本発明は、プレス成形によって板厚偏差が低減した磁気ディスク用ガラスブランクが得られる磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法および磁気ディスク用ガラス基板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、互いに対向する一対の金型を用いて、溶融ガラスの塊をプレス成形する成形工程を含む磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法である。
第1の観点の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法は、前記一対の金型は、前記プレス成形するためのプレス成形面と、前記プレス成形面の外周から前記一対の金型の対向方向に突出するように、前記プレス成形面を囲むように設けられ、前記対向方向の突出高さに基づき前記磁気ディスク用ガラスブランクの板厚を設定するための板厚設定部とを有し、前記成形工程では、プレス開始時からプレス終了時までの間で一対の金型のプレス成形面同士の平行状態を維持して、成形されるガラスブランクの一対の主表面が互いに平行となるよう各金型の板厚設定部の突出高さを均一に調節した状態でプレス成形を行う。
第2の観点の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法は、前記一対の金型は、前記プレス成形するためのプレス成形面と、前記プレス成形面の外周から前記一対の金型の対向方向に突出するように、前記プレス成形面を囲むように設けられ、前記対向方向の突出高さに基づき前記磁気ディスク用ガラスブランクの板厚を設定するための板厚設定部とを有し、前記成形工程では、前記溶融ガラスのプレス成形時に前記プレス成形面から前記板厚設定部に前記溶融ガラスの熱が伝わるときの前記板厚設定部の前記突出高さを均一にするための均一化部材を用いて、前記板厚設定部の前記突出高さを均一にした状態で、プレス成形を行う。
第3の観点の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法は、前記一対の金型は、前記プレス成形するためのプレス成形面と、前記プレス成形面の外周から前記一対の金型の対向方向に突出するように、前記プレス成形面を囲むように設けられ、前記対向方向の突出高さに基づき前記磁気ディスク用ガラスブランクの板厚を設定するための板厚設定部とを有し、前記成形工程では、前記板厚設定部の前記突出高さに関する情報を取得し、前記板厚設定部の温度を、前記板厚設定部の温度を制御する温度制御手段を用いて、前記突出高さに関する情報に基づき制御することにより、前記板厚設定部の前記突出高さが均一になるように調整された状態で、プレス成形を行う。
第4の観点の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法は、前記一対の金型は、前記プレス成形するためのプレス成形面と、前記プレス成形面の外周から前記一対の金型の対向方向に突出するように、前記プレス成形面を囲むように設けられ、前記対向方向の突出高さに基づき前記磁気ディスク用ガラスブランクの板厚を設定するための板厚設定部とを有し、板厚設定部の温度と板厚設定部の前記対向方向の熱膨張量との相関関係を予め求めておき、前記相関関係に基づいて、一対の金型が閉じた際にプレス成形面同士の間の距離が目標の距離となるように板厚設定部の温度から板厚設定部の熱膨張量を決定し、温度制御手段を用いて板厚設定部の熱膨張による突出高さを変化させることにより、プレス時のガラスブランクの板厚を所望の板厚に調整する。
本発明の他の観点は、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法である。
前記磁気ディスク用ガラス基板の製造方法は、上記磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法によって得られた磁気ディスク用ガラスブランクを用いて、磁気ディスク用ガラス基板を製造する。
第1の実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の外観形状を示す斜視図。 第1の実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法の一実施形態のフローを示す図。 第1の実施形態のプレス成形において用いられる装置の平面図。 第1の実施形態の一対の金型の正面図。 第1の実施形態の一対の金型の側面断面図。 一対の金型の変形例を説明する図。 第1の実施形態のプレス成形を示す図。 第1の実施形態のプレス成形の変形例を示す図。 切断ユニットを用いないようにした、第1の実施形態のプレス成形の変形例を示す図。 軟化炉で加熱した光学ガラスを用いた、第1の実施形態のプレス成形の変形例を示す図。 第2の実施形態の一対の金型の正面図。 第2の実施形態の一対の金型の側面断面図。 一対の金型の変形例を説明する図。 第3の実施形態の切断工程の一例を説明する図。 第3の実施形態の1次プレス工程の一例を説明する図。 第3の実施形態の1次プレス工程の他の例を説明する図。 第3の実施形態の1次プレス工程の他の例を説明する図。 第3の実施形態の1次プレス工程及び2次プレス工程におけるガラスブランクとプレス成形型の温度履歴の計測結果の一例を示す図。 第3の実施形態の取出工程の一例を示す図。 第4の実施形態の一対の金型の正面図。 第4の実施形態の一対の金型の側面断面図。 第5の実施形態の一対の金型の正面図。 第5の実施形態の一対の金型の側面断面図。 板厚設定部の突出高さが不均一になる場合について説明する図。
以下、本実施形態の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法および磁気ディスク用ガラス基板の製造方法について詳細に説明する。
<第1の実施形態>
[磁気ディスク用ガラス基板]
以下、第1の実施形態の磁気ディスク用ガラス基板について説明するが、後述する他の実施形態で作製される磁気ディスク用ガラス基板についても同様の形態である。
図1に示すように、本実施形態における磁気ディスク用ガラス基板1は、円環状の薄板のガラス基板である。磁気ディスク用ガラス基板のサイズは問わないが、例えば、公称直径2.5インチの磁気ディスク用ガラス基板として好適である。公称直径2.5インチの磁気ディスク用ガラス基板の場合、例えば、外径が65mm、中心穴2の径が20mm、板厚Tが0.6〜1.0mmである。実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の主表面の平面度は例えば4μm以下であり、主表面の表面粗さ(算術平均粗さRa)は例えば0.2nm以下である。なお、最終製品である磁気ディスク用基板に求められる平面度は、例えば4μm以下である。
本実施形態における磁気ディスク用ガラス基板の材料として、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラスなどを用いることができる。特に、化学強化を施すことができ、また主表面の平面度及び基板の強度において優れた磁気ディスク用ガラス基板を作製することができるという点で、アルミノシリケートガラスを好適に用いることができる。
本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の組成を限定するものではないが、本実施形態のガラス基板は好ましくは、酸化物基準に換算し、モル%表示で、SiOを50〜75%、Alを1〜15%、LiO、NaO及びKOから選択される少なくとも1種の成分を合計で5〜35%、MgO、CaO、SrO、BaO及びZnOから選択される少なくとも1種の成分を合計で0〜20%、ならびにZrO、TiO、La、Y、Ta、Nb及びHfOから選択される少なくとも1種の成分を合計で0〜10%、有する組成からなるアルミノシリケートガラスである。
[実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法]
以下、図2を参照して、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法のフローを説明する。図2は、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法の一実施形態のフローを示す図である。
図2に示すように、本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法では先ず、円板上のガラスブランクをプレス成形により作製する(ステップS10)。次に、成形されたガラスブランクをスクライブして、円環状のガラス基板を作製する(ステップS20)。次に、スクライブされたガラス基板に対して形状加工(チャンファリング加工)を行う(ステップS30)。次に、ガラス基板の端面研磨を行う(ステップS40)。次に、ガラス基板の主表面に第1研磨を施す(ステップS50)。次に、第1研磨後のガラス基板に対して化学強化を施す(ステップS60)。次に、化学強化されたガラス基板に対して第2研磨を施す(ステップS70)。以上の工程を経て、磁気ディスク用ガラス基板が得られる。
なお、本実施形態のプレス成形工程(ステップS10)では、後述するように、板厚偏差が低減したガラスブランクを作製できるため、例えば、ガラス基板の両主表面に対して、後述する研削加工(機械加工)を施さなくてもよい。
以下、各工程について、詳細に説明する。
(a)プレス成形工程(ステップS10)
先ず、図3を参照して、プレス成形工程について説明する。図3は、プレス成形において用いられる装置の平面図である。図3に示されるように、装置101は、4組のプレスユニット120,130,140,150と、切断ユニット160とを備える。切断ユニット160は、溶融ガラス流出口111から流出する溶融ガラスの経路上に設けられる。装置101は、切断ユニット160によって切断されてできる溶融ガラス塊(以降、ゴブともいう)を落下させ、そのとき、塊の落下経路の両側から、互いに対向する一対の金型の面で塊を挟み込みプレスすることにより、ガラスブランクを成形する。
具体的には、図3に示されるように、装置101は、溶融ガラス流出口111を中心として、4組のプレスユニット120,130,140及び150が90度おきに設けられている。
プレスユニット120,130,140及び150の各々は、図示しない移動機構によって駆動されて、溶融ガラス流出口111に対して進退可能となっている。すなわち、溶融ガラス流出口111の真下に位置するキャッチ位置(図3においてプレスユニット140が実線で描画されている位置)と、溶融ガラス流出口111から離れた退避位置(図3において、プレスユニット120,130及び150が実線で描画されている位置、及びプレスユニット140が破線で描画されている位置)との間で移動可能となっている。
切断ユニット160は、キャッチ位置(プレスユニットによるゴブの捕獲位置)と溶融ガラス流出口111との間の溶融ガラスの経路上に設けられ、溶融ガラス流出口111から流出される溶融ガラスを適量に切り出して溶融ガラスの塊を形成する。切断ユニット160は、一対の切断刃161,162を有する。各切断刃161,162は、一定のタイミングで溶融ガラスの経路上で交差するよう駆動され、各切断刃161,162が交差したとき、溶融ガラスが切り出されてゴブが得られる。得られたゴブは、キャッチ位置に向かって落下する。
プレスユニット120は、第1の金型121、第2の金型122及び均熱部材123を有している。第1の金型121及び第2の金型122は、互いに対向するように配置されている。また、プレスユニット120は、温度制御部124を有することが好ましい。さらに、プレスユニット120は、第1駆動部225及び第2駆動部226を有している。
第1の金型121は、図4A,図4Bに示すように、プレート状に形成されており、ゴブをプレス成形するための面(プレス成形面)121aを有する円柱状のプレス部121bと、プレス部121bの側面全面を覆うように形成され、プレス成形面121aの外周から第2の金型122との対向方向に突出するように、プレス成形面121aを囲むように設けられる板厚設定部121cとを有している。板厚設定部121cは、プレス成形面121aから前記対向方向への突出高さに基づいて、ガラスブランクの板厚を設定するようになっている。第1の金型121は、プレス成形時にかかる荷重に耐えうるという観点から、例えばVM30、VM40等の超硬合金や、ダクタイル鋳鉄(FCD:Ferrum Casting Ductile)、SKD(Steel Kogu Dice)等から構成されていることが好ましい。さらに、軟鋼(SS41等)に対して、めっき等の金属コーティングを施したものから構成してもよい。特に、板厚設定部121cは、後述するように、プレス成形時に第2の金型122に当接する部分であるため、プレス成形時にかかる荷重が第1の金型121の他の部分と比べて大きい。このため、板厚設定部121cは、プレスに耐えうる硬度が必要であることから、例えばVM30、VM40等の超硬合金や、FCD、SKD等のように、ビッカース硬さが1000HV以上の材料で形成されている、ことが好ましい。なお、超硬合金(VM40)のビッカース硬さは1450(HV)である。
均熱部材123は、プレス部121bの側面全面を覆う略筒状に形成されており、プレス部121bと板厚設定部121cとの間において、プレス成形面121a及び板厚設定部121cのそれぞれと接触するように設けられている。均熱部材123は、ゴブのプレス成形時にプレス成形面121aから板厚設定部121cに伝わるゴブの熱によって生じるときの板厚設定部121cのプレス成形面121aから対向方向への突出高さを均一にする。ここで、均熱部材123は、均一化部材の一例である。均熱部材123は、第1の金型121より高い熱伝導率を有する材料で形成されていることが好ましい。例えば、均熱部材123は、熱伝導率が50(W/m・K)以上の材料で形成されていることが好ましく、熱伝導率が100(W/m・K)以上の材料で形成されていることがより好ましい。具体的には、第1の金型121が例えば超硬合金(VM40)から構成されている場合には、均熱部材123は、銅、銅合金、アルミニウム又はアルミニウム合金等で形成されてもよい。なお、超硬合金(VM40)の熱伝導率は71(W/m・K)、銅の熱伝導率は400(W/m・K)である。
均熱部材123が第1の金型121より高い熱伝導率を有することにより、プレス成形面121aから均熱部材123に伝わったゴブの熱を、均熱部材123全体に効率良く伝えることができる。このため、ゴブの熱を板厚設定部121c全体に分散させることができるので、例えば、板厚設定部121cのうちプレス成形面121aとゴブとの接触位置に近い部分に、溶融ガラス塊の熱が他の部分と比較して伝わり易くなるのを防ぐことができる。この場合、プレス成形が長時間連続して行われた場合であっても、板厚設定部121c内の温度分布を均一にすることができるので、板厚設定部121cの熱膨張量を均一にすることができる。したがって、板厚設定部121cのプレス成形面121aからの突出高さを均一にすることができるので、プレス成形時における一対の金型間の間隔Dを一定に維持することができ、ひいては、プレス成形によって作製されるガラスブランクの板厚偏差を低減することができる。
なお、均熱部材123を構成する材料は、第1の金型121を構成する金属の熱伝導率、硬度、厚み寸法等に応じて適宜選択されてよい。
ここで、ガラスブランクの板厚偏差とは、例えば、ガラスブランクの主表面上の任意の地点(例えば2つの地点)においてマイクロメータを用いて測定された板厚の最大値と最小値との差分である。
さらに、板厚設定部121c内の温度差とは、例えば、板厚設定部121の表面のうち第2の金型122との対向方向に向く表面(対向面)から板厚設定部121の内部に1mm移動した地点であって、対向面の中心位置を基準として所定の角度(例えば45度)おきに設けられた地点で、熱電対を用いて計測するときのそれぞれの地点の温度の差分のうち最大となる温度の差分である。
温度制御部124は、板厚設定部121cの側面全面に接触するように設けられていることが好ましい。温度制御部124は、板厚設定部121cを加熱あるいは冷却することにより、プレス成形開始時の第1の金型121の温度を所定の温度(例えば430℃〜450℃)に制御する。これにより、第1の金型121の温度が低い(例えば歪点以下)場合に、プレス成形時に溶融ガラス塊が第1の金型121によって急速に冷却されることにより、ガラスブランクが破損するのを防ぐことができる。また、温度制御部124は、所望の平坦度のガラスブランクを得るために各金型121,122のプレス成形面121a,122aの溶融ガラスと接する温度がプレス成形面同士で揃うように制御する。
温度制御部124は、例えばヒータやヒートシンク等で構成されてもよい。また、温度制御部124は、冷却作用を有する流体(液体や気体等)を用いて第1の金型121を冷却するように構成されてもよい。さらに、温度制御部124による加熱量あるいは冷却量は、例えば、CPU、RAM、ROM及びハードディスク等から構成された所定の制御装置(図示省略)によって制御されてもよい。なお、温度制御部124は、温度制御手段の一例である。
第2の金型122は、図4A,図4Bに示すように、プレス成形面122aを有するプレス部122bと、板厚設定部122cとを有している。また、第2の金型122には、均熱部材123と温度制御部124とが設けられている。
第2の金型122の構成は第1の金型121の構成と同様であるため、説明を省略する。また、第2の金型122に設けられた均熱部材123と温度制御部124の構成は、第1の金型121に設けられた均熱部材123と温度制御部124の構成と同様であるため、説明を省略する。
なお、本実施形態では、板厚設定部121cは、プレス成形面121aの外周全面から対向方向に突出するように設けられているが、図5に示すように、プレス成形面121aの外周に沿って間隔をおいて対向方向に突出するように設けられてもよい。具体的には、図5に示すように、複数(図5に示す例では4つ)の板厚設定部121cのそれぞれを、プレス成形面121aの外周に沿って互いに間隔をおいて設けてもよい。なお、各板厚設定部121cは、互いに熱伝導可能に接続されるように構成されてもよい。
さらに、板厚設定部122cは、図5に示すように、板厚設定部121cと同様に構成されてもよい。
各金型121,122は、2つのプレス成形面121a,122aの法線方向が略水平方向となり、2つのプレス成形面121a,122aが互いに平行に対向するように配置されている。また、各金型121,122の2つの板厚設定部121c,122cは、2つのプレス成形面121a,122aの対向方向に平行して、互いに対向するように配置されている。各金型121,122が互いに近づくように移動すると、図4Bに示すように、2つの板厚設定部121c,122cが互いに当接することによって、2つのプレス成形面121a,122aの間隔Dは一定に維持される。これにより、2つのプレス成形面121a,122a間には、板状の空間が作られる。
なお、第1の金型121及び第2の金型122は、それぞれプレス成形面121a,122aを有していればよく、各金型121,122の形状がプレート状に限定されることはない。また、本実施形態では、各金型121,122のプレス成形面121a,122aが円形に形成されているが、プレス成形面121a,122aの形状は、例えば多角形状等に形成されてもよい。
第1駆動部225は、第1の金型121を第2の金型122に対して進退させる。一方、第2駆動部226は、第2の金型122を第1の金型121に対して進退させる。第1駆動部225及び第2駆動部226は、例えばエアシリンダやソレノイドとコイルばねを組み合わせた機構など、第1駆動部225の面と第2駆動部226の面とを急速に近接させる機構を有する。
なお、プレスユニット130,140及び150の構成は、プレスユニット120と同様であるため、説明を省略する。
プレスユニットの各々は、キャッチ位置に移動した後、第1駆動部と第2駆動部の駆動により、落下するゴブを第1の金型と第2の金型の問で挟み込んで所定の厚さに成形すると共に冷却し、円形状のガラスブランクGを作製する。つぎに、プレスユニットは退避位置に移動した後、第1の金型と第2の金型を引き離し、成形されたガラスブランクGを落下させる。プレスユニット120,130,140及び150の退避位置の下には、第1コンベア171、第2コンベア172、第3コンベア173及び第4コンベア174が設けられている。第1〜第4コンベア171〜174の各々は、対応する各プレスユニットから落下するガラスブランクGを受け止めて図示しない次工程の装置にガラスブランクGを搬送する。
装置101では、プレスユニット120,130,140及び150が、順番にキャッチ位置に移動して、ゴブを挟み込んで退避位置に移動するよう構成されているため、各プレスユニットでのガラスブランクGの冷却を待たずに、連続的にガラスブランクGの成形を行うことができる。
図6は、装置101を用いたプレス成形をより具体的に説明している。図6のS1は、ゴブを作る以前の状態を示す図であり、図6のS2は、切断ユニット160によってゴブが作られた状態を示す図であり、図6のS3は、ゴブをプレスすることによりガラスブランクGが成形された状態を示す図である。
図6のS1に示されるように、溶融ガラス流出口111から、溶融ガラス材料LGが連続的に流出される。このとき、所定のタイミングで切断ユニット160を駆動し、切断刃161及び162によって溶融ガラス材料LGを切断する(図6のS2)。これにより、切断された溶融ガラスは、その表面張力によって、概略球状のゴブGGとなる。溶融ガラス材料LGの時間当たりの流出量及び切断ユニット160の駆動間隔の調整は、目標とするガラスブランクGの大きさ、板厚から定まる体積に応じて適宜行われてよい。
作られたゴブGGは、プレスユニット120の第1の金型121と第2の金型122の隙間に向かって落下する。このとき、ゴブGGが第1の金型121と第2の金型122の隙間に入るタイミングで、第1の金型121と第2の金型122が互いに近づくように、第1駆動部225及び第2駆動部226が駆動される。これにより、図6のS3に示されるように、第1の金型121と第2の金型122の間にゴブGGが捕獲(キャッチ)される。さらに、第1の金型121のプレス成形面121aと第2の金型122のプレス成形面122aとが、間隔Dにて近接した状態になり、第1の金型121のプレス成形面121aと第2の金型122のプレス成形面122aの間に挟み込まれたゴブGGが、板厚Dを有する薄板状に成形される。各金型121,122のプレス成形面121a,122a間の板状の空間は、板厚設定部121c及び板厚設定部122cが当接することによって形成されている。ここで、ゴブGGから各プレス成形面121a,122aそれぞれに伝わる熱は、均熱部材123を介して板厚設定部121c,122cに伝えられる。
このプレス成形工程では、一対の金型121,122を用いてプレス成形するが、本実施形態におけるプレス成形では、ガラスブランクの外形は金型の形状によって規制されない。すなわち、図6のS3に示すように、プレス成形時に引き伸ばされたゴブが各金型121,122の板厚設定部121c,122cまで到達することはない。
また、第1の金型121及び第2の金型122には、温度制御部124が設けられているので、第1の金型121及び第2の金型122の温度は、溶融ガラスLGのガラス転移点(Tg)よりも十分に低い温度(例えば430℃〜450℃)に維持されている。
また、プレス成形工程において、第1の金型121及び第2の金型122に離型材を付着させる必要はない。
なお、ゴブGGをプレス成形する際の第1の金型121の板厚設定部121c内の温度差及び第2の金型122の板厚設定部122c内の温度差が小さいほど、プレス成形後に得られるガラスブランクの板厚偏差を低減することができる。特に、各金型121,122の板厚設定部121c,122cそれぞれの温度分布が均一になるように、ゴブGGからの熱を板厚設定部121c,122cに伝えることにより、温度差を小さくすることが好ましい。これは、プレス成形時における第1の金型121の板厚設定部121c内の温度差及び第2の金型122の板厚設定部122c内の温度差をそれぞれ小さくすれば、板厚設定部121c,122cの熱膨張量をそれぞれの内部で同一にすることができるためである。これにより、プレス成形時における各金型121,122のプレス成形面121a,122a間の間隔を一定に維持することができるので、プレス成形によって作成されるガラスブランクの板厚偏差を低減することができる。
そこで、板厚設定部121c,122cそれぞれの内部の温度差を、均熱部材123を用いて低減した状態でプレス成形を行うことで、プレス成形によって作成されるガラスブランクの板厚偏差を低減することができる。プレス成形によって作成されるガラスブランクの板厚偏差を低減するための板厚設定部121c,122cそれぞれの内部の温度差は、同じ温度において板厚設定部の高さが一致している場合、例えば、研削工程を省略可能な板厚偏差を2μmとしたならば、板厚設定部121c,122cそれぞれの内部の温度差を6℃以内とした状態でプレス成形を行うことが好ましい。上記温度差が0℃であるときに作製されるガラスブランクの板厚偏差が最も良好となるが、上記温度差は、研削工程を省略可能な板厚偏差に応じて適宜決定してよい。
なお、板厚設定部の内部の温度差は、例えば、板厚設定部の対向面から板厚設定部の内部に1mm移動した地点であって、対向面の中心位置を基準として所定の角度(例えば45度)おきに設けられた地点で、熱電対を用いて計測するときのそれぞれの地点の温度の差分のうち最大となる温度の差分である。
また、一対の金型121,122間の温度差は、磁気ディスク用ガラス基板に要求される平面度に応じて、以下の観点から決定することができる。
本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板は、最終製品である磁気ディスクとして、ハードディスク装置内で熱膨張係数の高い金属製のスピンドルに軸支されて組み込まれるため、磁気ディスク用ガラス基板の熱膨張係数もスピンドルと同程度に高いことが好ましい。このため、磁気ディスク用ガラス基板の熱膨張係数が高くなるように磁気ディスク用ガラス基板の組成は定められている。磁気ディスク用ガラス基板の熱膨張係数は、例えば、30〜100×10-7(K-1)の範囲内であり、好ましくは、50〜100×10-7(K-1)の範囲内である。上記熱膨張係数は、磁気ディスク用ガラス基板の温度100度と温度300度における線膨張率を用いて算出される値である。熱膨張係数は、例えば30×10-7(K-1)未満または100×10-7より大きい場合、スピンドルの熱膨張係数との差が大きくなり好ましくない。この点から、熱膨張係数が高い磁気ディスク用ガラス基板を作製する際、上記プレス成型工程においてガラスブランクの主表面周りの温度条件を揃える。一例として、第1の金型121のプレス成形面121aと第2の金型122のプレス成形面122aの温度が実質的に同一になるように温度管理をすることが好ましい。実質的に温度が同一となるように温度管理される場合、例えば、温度差は5度以下であることが好ましい。上記温度差は、より好ましくは3度以下であり、特に好ましくは1度以下である。
金型間の温度差は、第1の金型121のプレス成形面121aおよび第2の金型122のプレス成形面122aのそれぞれの表面から金型の内部に1mm移動した地点であって、プレス成形面121aおよびプレス成形面122aの互いに対向する地点(例えば、ガラスブランクの中心位置に対応する地点やプレス成形面121aおよびプレス成形面122aの中心点)で、熱電対を用いて計測するときの温度の差分である。
装置101では、ゴブGGが第1の金型121のプレス成形面121a又は第2の金型122のプレス成形面122aに接触してから、第1の金型121と第2の金型122とがゴブGGを完全に閉じ込める状態になるまでの時間は約0.06秒と極めて短い。このため、ゴブGGは極めて短時間の内に第1の金型121のプレス成形面121a及び第2の金型122のプレス成形面122aに沿って広がって略円形状に成形され、さらに、冷却されて非晶質のガラスとして固化する。これによって、ガラスブランクGが作製される。なお、本実施形態において成形されるガラスブランクGの大きさは、目的とする磁気ディスク用ガラス基板の大きさにもよるが、例えば、直径20〜200mm程度である。
また、本実施形態のプレス成形方法では、第1の金型121のプレス成形面121a及び第2の金型122のプレス成形面122aが形状転写された形でガラスブランクGが形成されるため、一対の金型のプレス成形面の平面度および平滑性は、目的とする磁気ディスク用ガラス基板のそれと同等なものとしておくことが好ましい。この場合、プレス成形後に、ガラスブランクGに対する表面加工工程、すなわち研削および研磨工程を不要とすることができる。すなわち、本実施形態のプレス成形方法において成形されるガラスブランクGは、最終的に得られる磁気ディスク用ガラス基板の目標板厚と同一の板厚であってよい。例えば、ガラスブランクGは、厚さ0.2〜1.1mmの円形状の板である。プレス成形面121a及びプレス成形面122aの表面粗さは、ガラスブランクGの算術平均粗さRaが0.001〜0.1μmとなるように、好ましくは、0.0005〜0.05μmとなるように調整される。
第1の金型121と第2の金型122が閉じられた後、プレスユニット120は速やかに退避位置に移動し、代わりに、他のプレスユニット130がキャッチ位置に移動し、このプレスユニット130によって、ゴブGGのプレスが行われる。
プレスユニット120が退避位置に移動した後、ガラスブランクGが十分に冷却されるまで(少なくとも屈服点よりも低い温度となるまで)、第1の金型121と第2の金型122は閉じた状態を維特する。この後、第1駆動部225及び第2駆動部226が駆動されて第1の金型121と第2の金型122が離間し、ガラスブランクGは、プレスユニット120を離れて落下し、下部にあるコンベア171に受け止められる(図3参照)。
装置101では、上記のように、0.1秒以内(約0.06秒)という極めて短時間の問に第1の金型121と第2の金型122が閉じられ、第1の金型121のプレス成形面121aと第2の金型122のプレス成形面122aの全体に、略同時に溶融ガラスが接触することになる。このため、第1の金型121のプレス成形面121aと第2の金型122のプレス成形面122aが局所的に加熱されることは無く、プレス成形面121aとプレス成形面122aに歪みは殆ど生じない。また、溶融ガラスから第1の金型121及び第2の金型122に熱が移動する前に、溶融ガラスが円形状に成形されるため、成形される溶融ガラスの温度分布は略一様なものとなる。このため、溶融ガラスの冷却時、ガラス材料の収縮量の分布は小さく、ガラスブランクGの歪みが大きく発生することはない。したがって、作製されたガラスブランクGの主表面の平面度は、従来の垂直ダイレクトプレス法を用いて作製されるガラスブランクに比べて向上する。
なお、図6に示す例では、切断刃161及び162を用いて、流出する溶融ガラスLGを切断することによって略球状のゴブGGが形成される。しかしながら、溶融ガラス材料LGの粘度が、切り出そうとするゴブGGの体積に対して小さい場合は、溶融ガラスLGを切断するのみでは切断されたガラスが略球状とはならず、ゴブが作れない。このような場合は、ゴブを作るためのゴブ形成型を用いる。
図7は、図6に示す実施形態の変形例を説明する図である。この変形例ではゴブ形成型を用いる。図7のS1は、ゴブを作る前の状態を示す図であり、図7のS2は、切断ユニット160及びゴブ形成型180によってゴブGGが作られた状態を示す図であり、図7のS3は、ゴブGGをプレス成形してガラスブランクGが作られた状態を示す図である。
図7のS1に示すように、プレスユニット120は、ブロック181,182を溶融ガラスLGの経路上で閉じることにより溶融ガラスLGの経路が塞がれ、ブロック181,182で作られる凹部180Cで、切断ユニット160で切断された溶融ガラスLGの塊が受け止められる。この後、図7のS2に示すように、ブロック181,182が開かれることにより、凹部180Cにおいて球状となった溶融ガラスLGが一度にプレスユニット120に向けて落下する。この落下時、ゴブGGは、溶融ガラスLGの表面張力により球状になる。球状のゴブGGは、落下途中、図7のS3に示すように、第1の金型121と第2の金型122とに挟まれてプレス成形されることにより、円形状のガラスブランクGが作製される。
あるいは、図8に示すように、装置101は、図7に示す切断ユニット160を用いずに、ゴブ形成型180を、溶融ガラスLGの経路に沿って上流側方向あるいは下流側方向に移動させる移動機構を用いてもよい。図8は、ゴブ形成型180を使用する変形例を説明する図である。図8のS1,S2は、ゴブGGが作られる前の状態を示す図であり、図8のS3は、ゴブ形成型180によってゴブGGが作られた状態を示す図であり、図8のS4は、ゴブGGをプレス成形してガラスブランクGが作られた状態を示す図である。
図8のS1に示すように、ブロック181,182によって作られる凹部180Cが溶融ガラス流出口111から流出する溶融ガラスLGを受け止め、図8のS2に示すように、所定のタイミングでブロック181,182を溶融ガラスLGの流れの下流側に素早く移動させる。これにより、溶融ガラスLGが切断される。この後、所定のタイミングで、図8のS3に示すように、ブロック181,182が離間する。これにより、ブロック181,182で保持されている溶融ガラスLGは一度に落下し、ゴブGGは、溶融ガラスLGの表面張力により球状になる。球状のゴブGGは、落下途中、図8のS4に示すように、第1の金型121と第2の金型122とに挟まれてプレス成形されることにより、円形状のガラスブランクGが作製される。
図9は、ゴブGGの代わりに図示されない軟化炉で加熱した光学ガラスの塊CPを落下させ、落下途中の両側から型221,222で挟んでプレス成形する変形例を説明する図である。図9のS1は、加熱した光学ガラスの塊を成形する前の状態を示す図であり、図9のS2は、光学ガラスの塊を落下する状態を示す図であり、図9のS3は、光学ガラスの塊をプレス成形してガラスブランクGが作られた状態を示す図である。
図9のS1に示すように、装置201は、光学ガラスの塊CPをガラス材把持機構212でプレスユニット220の上部の位置に搬送し、この位置で、図9のS2に示すように、ガラス材把持機構212による光学ガラスの塊CPの把持を開放して、光学ガラスの塊CPを落下させる。光学ガラスの塊CPは、落下途中、図9のS3に示すように、第1の金型121と第2の金型122とに挟まれて円形状のガラスブランクGが成形される。
(b)スクライブ工程(ステップS20)
次に、スクライブ工程について説明する。プレス成形工程の後、スクライブ工程では、成形されたガラスブランクGに対してスクライブが行われる。
ここでスクライブとは、成形されたガラスブランクGを所定のサイズのリング形状とするために、ガラスブランクGの表面に超鋼合金製あるいはダイヤモンド粒子からなるスクライバにより2つの同心円(内側同心円および外側同心円)状の切断線(線状のキズ)を設けることをいう。2つの同心円の形状にスクライブされたガラスブランクGは、部分的に加熱され、ガラスブランクGの熱膨張の差異により、外側同心円の外側部分および内側同心円の内側部分が除去される。これにより、円環状のガラス基板が得られる。
なお、ガラスブランクに対してコアドリル等を用いて円孔を形成することにより円環状のガラス基板を得ることもできる。
(c)形状加工工程(ステップS30)
次に、形状加工工程について説明する。形状加工工程では、スクライブ工程後のガラス基板の端部に対するチャンファリング加工(外周端部および内周端部の面取り加工)を含む。チャンファリング加工は、スクライブ工程後のガラス基板の外周端部および内周端部において、主表面と、主表面と垂直な側壁部との間で、ダイヤモンド砥石により面取りを施す形状加工である。面取り角度は、主表面に対して例えば40〜50度である。
(d)端面研磨工程(ステップS40)
次に、形状加工工程後のガラス基板の端面研磨が行われる。
端面研磨では、ガラス基板の内周端面及び外周端面をブラシ研磨により鏡面仕上げを行う。このとき、酸化セリウム等の微粒子を遊離砥粒として含むスラリーが用いられる。端面研磨を行うことにより、ガラス基板の端面での塵等が付着した汚染、ダメージあるいはキズ等の損傷の除去を行うことにより、サーマルアスペリティの発生の防止や、ナトリウムやカリウム等のコロージョンの原因となるイオン析出の発生を防止することができる。
(e)第1研磨工程(ステップS50)
次に、端面研磨工程後のガラス基板の主表面に第1研磨が施される。第1研磨による取り代は、例えば数μm〜50μm程度である。第1研磨は、例えば固定砥粒による研削を行った場合に主表面に残留したキズや歪みの除去、あるいは微小な表面凹凸(マイクロウェービネス、粗さ)の調整を目的とする。
第1研磨工程では、例えば、遊星歯車機構を備えた両面研磨装置を用いて、研磨液を与えながら研磨する。研磨液に含有させる研磨剤は、例えば、酸化セリウム砥粒、あるいはジルコニア砥粒である。両面研磨装置は、上下一対の定盤(上定盤および下定盤)を有しており、上定盤および下定盤の間にガラス基板が狭持される。なお、下定盤の上面及び上定盤の底面には、全体として円環形状の平板の研磨パッドが取り付けられている。そして、上定盤または下定盤のいずれか一方、または、双方を移動操作させることで、ガラス基板と各定盤とを相対的に移動させることにより、このガラス基板の両主表面を研削することができる。
また、第1研磨工程後のガラス基板の板厚は、ガラスブランクの板厚の90%以上であることが好ましい。これは、ガラス基板の主表面に対する研削加工が省略されていることを意味する。これにより、磁気ディスク用ガラス基板の低価格化を実現することができる。
なお、第1研磨工程では、ガラス基板の主表面について、表面粗さ(Ra)を0.5nm以下とし、かつマイクロウェービネス(MV−Rq)を0.5nm以下とするように研磨を行う。ここで、マイクロウェービネスは、主表面全面の半径14.0〜31.5mmの領域における波長帯域100〜500μmの粗さとして算出されるRMS(Rq)値で表すことができ、例えば、ポリテック社製のModel−4224を用いて計測できる。
表面粗さは、JIS B0601:2001により規定される算術平均粗さRaで表され、0.006μm以上200μm以下の場合は、例えば、ミツトヨ社製粗さ測定機SV−3100で測定し、JIS B0633:2001で規定される方法で算出できる。その結果、粗さが0.03μm以下であった場合は、例えば、日本Veeco社製走査型プローブ顕微鏡(原子間力顕微鏡;AFM)ナノスコープで計測しJIS R1683:2007で規定される方法で算出できる。本実施形態においては、1μm×1μm角の測定エリアにおいて、512×512ピクセルの解像度で測定したときの算術平均粗さRaを用いることができる。
(f)化学強化工程(ステップS60)
次に、第1研磨工程後のガラス基板は化学強化される。
化学強化液として、例えば硝酸カリウム(60重量%)と硫酸ナトリウム(40重量%)の混合液等を用いることができる。化学強化工程では、化学強化液を例えば300℃〜400℃に加熱し、洗浄したガラス基板を例えば200℃〜300℃に予熱した後、ガラス基板を化学強化液中に例えば3時間〜4時間浸漬する。
ガラス基板を化学強化液に浸漬することによって、ガラス基板の表層のリチウムイオン及びナトリウムイオンが、化学強化液中のイオン半径が相対的に大きいナトリウムイオン及びカリウムイオンにそれぞれ置換されることで表層部分に圧縮応力層が形成され、ガラス基板が強化される。なお、化学強化処理されたガラス基板は洗浄される。例えば、硫酸で洗浄された後に、純水等で洗浄される。
(g)第2研磨工程(ステップS70)
次に、化学強化工程後のガラス基板に第2研磨が施される。第2研磨による取り代は、例えば1μm程度である。第2研磨工程は、主表面の鏡面研磨を目的とする。第2研磨工程では、例えば、第1研磨工程で用いた両面研磨装置を用いる。このとき、第1研磨工程と異なる点は、遊離砥粒の種類及び粒子サイズが異なることと、樹脂ポリッシャの硬度が異なることである。
第2研磨工程に用いる遊離砥粒として、例えば、スラリーに混濁させたコロイダルシリカ等の微粒子(粒子サイズ:直径10〜50nm程度)が用いられる。
研磨されたガラス基板を中性洗剤、純水、IPA等を用いて洗浄することで、磁気ディスク用ガラス基板が得られる。
第2研磨工程を実施することは必ずしも必須ではないが、ガラス基板の主表面の表面凹凸のレベルをさらに良好なものとすることができる点で実施することが好ましい。第2研磨工程を実施することで、主表面の粗さ(Ra)を0.1nm以下かつ上記主表面のマイクロウェービネス(MW−Rq)を0.1nm以下とすることができる。
なお、第2研磨工程後(第2研磨工程を省略する場合には第1研磨工程後)のガラス基板の板厚は、ガラスブランクの板厚の90%以上となることが好ましい。
以上説明したように、本実施形態の磁気ディスク用ガラスブランク及び磁気ディスク用ガラス基板の製造方法によれば、プレス成形工程において、溶融ガラスのプレス成形時にプレス成形面から板厚設定部に溶融ガラスの熱が伝わるときの板厚設定部の突出高さを均一にするための均一化部材を用いて、板厚設定部の突出高さを均一にした状態で、プレス成形を行っている。つまり、本実施形態のプレス成形工程では、プレス開始時からプレス終了時までの間で一対の金型のプレス成形面同士の平行状態を維持して、成形されるガラスブランクの一対の主表面が互いに平行となるよう各金型の板厚設定部の突出高さを均一に調節した状態でプレス成形が行われる。これにより、本実施形態のプレス成形工程で得られるガラスブランクは、板厚偏差を、研削工程が省略可能なレベルとすることができる。したがって、後工程で主表面に対して研削加工を施す必要がないので、磁気ディスク用ガラス基板の低価格化を実現することができる。
本実施形態のプレス成形工程では、板厚偏差が低減したガラスブランクを作製できるため、固定砥粒による研削工程を行わなくてもよい。なお、固定砥粒による研削工程を行う場合には、形状加工工程(ステップS30)と端面研磨工程(ステップS40)の間のタイミングで以下のように行うと好ましい。
固定砥粒による研削工程では、遊星歯車機構を備えた両面研削装置を用いて、形状加工工程後のガラス基板の主表面に対して研削加工(機械加工)を行う。研削による取り代は、例えば数μm〜100μm程度である。両面研削装置は、上下一対の定盤(上定盤および下定盤)を有しており、上定盤および下定盤の間にガラス基板が狭持される。そして、上定盤または下定盤のいずれか一方、または、双方を移動操作させることで、ガラス基板と各定盤とを相対的に移動させることにより、ガラス基板の両主表面を研削することができる。
なお、研削工程の前に、研削工程で用いた装置と同様の両面研削装置及びアルミナ系遊離砥粒を用いたラッピング工程を行ってもよい。
[磁気ディスク]
以上の各工程を経て、磁気ディスク用ガラス基板が作製される。この磁気ディスク用ガラス基板を用いて、磁気ディスクは以下のようにして得られる。
磁気ディスクは、例えばガラス基板の主表面上に、主表面に近いほうから順に、少なくとも付着層、下地層、磁性層(磁気記録層)、保護層、潤滑層が積層された構成になっている。
例えば基板を、真空引きを行った成膜装置内に導入し、DCマグネトロンスパッタリング法にてAr雰囲気中で、基板主表面上に付着層から磁性層まで順次成膜する。付着層としては例えばCrTi、下地層としては例えばCrRuを用いることができる。磁性層としては、例えばCoPt系合金を用いることができる。また、L10規則構造のCoPt系合金やFePt系合金を形成して熱アシスト磁気記録用の磁性層とすることもできる。上記成膜後、例えばCVD法によりCを用いて保護層を成膜し、続いて表面に窒素を導入する窒化処理を行うことにより、磁気記録媒体を形成することができる。その後、例えばPFPE(パーフルオロポリエーテル)をディップコート法により保護層上に塗布することにより、潤滑層を形成することができる。
[第1の実施形態の実施例]
以下に、本発明を実施例によりさらに説明する。但し、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
(1)溶融ガラスの作製
以下の組成のガラスが得られるように原料を秤量し、混合して調合原料とした。この原料を熔融容器に投入して加熱、熔融し、清澄、攪拌して泡、未熔解物を含まない均質な熔融ガラスを作製した。得られたガラス中には泡や未熔解物、結晶の析出、熔融容器を構成する耐火物や白金の混入物は認められなかった。
[ガラスの組成]
酸化物基準に換算し、モル%表示で、SiOを50〜75%、Alを1〜15%、LiO、NaO及びKOから選択される少なくとも1種の成分を合計で5〜35%、MgO、CaO、SrO、BaO及びZnOから選択される少なくとも1種の成分を合計で0〜20%、ならびにZrO、TiO、La、Y、Ta、Nb及びHfOから選択される少なくとも1種の成分を合計で0〜10%、有する組成からなるアルミノシリケートガラス
上記溶融ガラスを準備し、本発明のプレス成形方法(図3、図4A及び図4Bの装置を用いた方法)を用いて、直径75mm、厚さ0.9mmのガラスブランクを作製した。溶融ガラス流出口111から吐出される溶融ガラス材料LGの温度は1300℃であり、この時の溶融ガラス材料LGの粘度は700ポアズである。また、第1の金型121のプレス成形面121a及び第2の金型122のプレス成形面122aの表面粗さ(算術平均粗さRa)は、0.01μm〜1μmとした。さらに、各金型121,122のプレス成形面121a,122aは超硬合金(VM40)で構成されている。また、各金型121,122の板厚設定部121c,122cはSKD61で構成されている。ここで、SKD61の熱膨張率は、12.8×10-6(K-1)である。また、板厚設定部121c,122cのプレス成形面121a,122aからの突出高さは0.44mmであり、板厚設定部121c,122cの対向方向の長さは55mmである。また、均熱部材123として銅を用いた。
また、プレス成形する際には、プレス開始時の第1の金型121及び第2の金型122それぞれの温度は、430℃〜450℃となるように、温度制御部124によって制御されている。
溶融ガラス流出口111から吐出される溶融ガラス材料LGは、切断ユニット160によって切断され、直径約20mmのゴブGGが形成される。ゴブGGは、プレスユニットによって荷重3000kgfで、その温度が溶融ガラス材料のガラス転移温度(Tg)以下となるまで(約3秒)プレスされ、直径75mmのガラスブランクが形成された。
なお、プレス中の金型の板厚設定部内の温度差は、板厚設定部の対向面から型の内部に1mm移動した地点であって、対向面の中心位置を基準として所定の角度(例えば45度)おきに設けられた地点で、熱電対を用いて計測するときのそれぞれの地点の温度の差分のうち最大となる温度の差分を算出することによりもとめられる。
この実施例では、磁気ディスク用ガラス基板に要求される平面度を4μm以下とした場合に、この平面度を実現すべく、各プレスユニットにおいて第1の型及び第2の型の温度差は、10℃以内とした。具体的には、第1の型の温度を420℃とし、第2の型の温度を411〜429℃とした。
[実施例のガラスブランクの評価]
実施例で作製された直径75mmのガラスブランクについて、板厚偏差および表面粗さ(算術平均粗さRa)を測定した。
板厚偏差は、ここでは、ガラスブランクの主表面上の任意の2つの地点においてマイクロメータを用いて測定された板厚の最大値と最小値との差分と定義した。なお、ガラスブランクの目標板厚は、0.88mmである。表1に示す平面度の評価基準は、以下のとおりである。
以下の基準において、ガラスブランクの板厚偏差が2μmより大きければ研削工程を実施して板厚偏差を2μm以下まで低減する必要がある。また、ガラスブランクの板厚偏差が2μm以下のガラスブランクの場合は、研削工程を省略することができ、さらに研磨工程における取り代を少なくすることができるので、好ましい。
○ (Good):板厚偏差が2μm以下
× (Poor):板厚偏差が2μmより大きい
表面粗さは、JIS B0601:2001により規定される算術平均粗さRaで表され、0.006μm以上200μm以下の場合は、例えば、ミツトヨ社製粗さ測定機SV−3100で測定し、JIS B0633:2001で規定される方法で算出できる。その結果粗さが0.03μm以下であった場合は、例えば、日本Veeco社製走査型プローブ顕微鏡(原子間力顕微鏡;AFM)ナノスコープで計測しJIS R1683:2007で規定される方法で算出できる。本願においては、10μm×10μm角の測定エリアにおいて、256×256ピクセルの解像度で測定したときの算術平均粗さRaを用いた。その結果、ガラスブランクの表面粗さについてはすべての例において0.5μm以下であった。これは、型の温度とは無関係に、第1の型及び第2の型の内周面がガラスブランクに形状転写されるため、ガラスブランクの表面粗さが第1の型及び第2の型の内周面の表面粗さと同等となるためである。なお、算術平均粗さRaが0.1μm以下であれば、主表面に対する研削工程を省略して直接研磨工程を行うことで、目標とする磁気ディスク用ガラス基板の表面性状を得ることができる。
Figure 2013100152
表1から、ガラスブランクをプレス成形する際に、一対の金型の板厚設定部内の温度差を低減することにより、板厚偏差の良好なガラスブランクが作製されることが分かる。また、各例のガラスブランクの表面粗さについては、第1の金型及び第2の金型のプレス成形面の表面粗さとほぼ同じであった。
[実施例の磁気ディスク用ガラス基板の作製]
上記比較例及び実施例のガラスブランクを用い、図2に示したステップS20(スクライブ)→S30(形状加工)→S40(端面研磨)→S50(第1研磨)→S60(化学強化)→S70(第2研磨)の工程を順に行って、それぞれ磁気ディスク用ガラス基板を作製した。つまり、板厚偏差を低減させるための主表面の研削工程を行わずに磁気ディスク用ガラス基板を作製した。
なお、上記磁気ディスク用ガラス基板の作製に当たっては、第1研磨、第2研磨の各工程は、以下の条件で行った。
・第1研磨工程:酸化セリウム(平均粒子サイズ;直径1〜2μm)、硬質ウレタンパッドを使用して研磨した。取り代10μm。
・第2研磨工程:コロイダルシリカ(平均粒子サイズ;直径0.1μm)、軟質ポリウレタンパッドを使用して研磨した。取り代1μm。
次に、比較例及び実施例2のガラスブランクを元にして作製された磁気ディスク用ガラス基板に記録層を成膜して磁気ディスクを作製した(それぞれ順に、比較例A、実施例1A、実施例2A)。作製した磁気ディスクは公称2.5インチサイズ(内径20mm、外径65mm、板厚0.8mm)である。
なお、磁気ディスク用ガラス基板に対する記録層の成膜は以下の通り行った。まず、真空引きを行った成膜装置を用い、DCマグネトロンスパッタリング法にてAr雰囲気中で、基板上に付着層/軟磁性層/前下地層/下地層/主記録層/補助記録層/保護層/潤滑層を順次成膜した。なお、断らない限り成膜時のArガス圧は0.6Paで行った。付着層としては、Cr−50Tiを10nm成膜した。軟磁性層としては、0.7nmのRu層を挟んで、92Co−3Ta−5Zrをそれぞれ20nm成膜した。前下地層としては、Ni−5Wを8nm成膜した。下地層としては、0.6PaでRuを10nm成膜した上に5PaでRuを10nm成膜した。主記録層としては、3Paで90(72Co−10Cr−18Pt)−5(SiO2)−5(TiO2)を15nm成膜した。補助記録層としては、62Co−18Cr−15Pt−5Bを6nm成膜した。保護層としては、CVD法によりC2H4を用いて4nm成膜し、表層を窒化処理した。潤滑層としては、ディップコート法によりPFPEを用いて1nm形成した。
[実施例の磁気ディスクの評価]
比較例及び実施例の磁気ディスクを対象として、クボタコンプス社製HDFテスター(Head/Disk Flyability Tester)を用いて、DFH(Dynamic Fly height)ヘッド素子部のタッチダウン試験(DFHタッチダウン試験)を行った。この試験は、DFH機構によって素子部を徐々に突き出していき、AE(Acoustic Emission)センサによって磁気ディスク表面との接触を検知することによって、ヘッド素子部が磁気ディスク表面と接触するときの突き出し量を評価するものである。ヘッドは320GB/P磁気ディスク(2.5インチサイズ)向けのDFHヘッドを用いた。素子部の突き出しがない時の浮上量は10nmである。すなわち、例えば突き出し量が8nmのとき、ヘッド浮上量は2nmとなる。また、その他の条件は以下の通り設定した。
・評価半径:22mm
・磁気ディスクの回転数:5400rpm
・温度:25℃
・湿度:60%
DFHタッチダウン試験の結果を表2に示す。なお、表2において、ヘッド素子部の突き出し量に応じて以下の通り評価した。なお、320GB/P以上の記録密度を達成するためには、突き出し量を8nm以上とすることが好ましい。
○ (Good):突き出し量≧8nm
× (Poor):突き出し量<8nm
Figure 2013100152
表2から明らかなように、実施例Aについては、研削工程を省略してもDFHヘッドの突き出し量を十分大きくすることができた。すなわち、実施例Aについては、研削工程を省略しても平面度、表面粗さ共に良好で、かつ媒体化した際に良好なDFHタッチダウン試験結果が得られる磁気ディスク用ガラス基板が製造できることが確認できた。
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。
本実施形態は、第1の実施形態と比較して、プレス成形工程が異なる。本実施形態において、第1の実施形態と同一の内容については重複説明を省略する。
図10A及び図10Bに示すように、本実施形態のプレス成形で用いられるプレスユニット120は、第1の金型121及び第2の金型122を有している。第1の金型121及び第2の金型122は、互いに対向するように配置されている。また、プレスユニット120は、均熱部材123を有することが好ましい。さらに、プレスユニット120は、複数の温度制御部124a〜124h、複数の熱電対125a〜125hを備える。プレスユニットはまた、第1の実施形態と同様に、第1駆動部225及び第2駆動部226を有している(図3参照)。
第1の金型121は、図10A,図10Bに示すように、プレート状に形成されており、ゴブをプレス成形するための面(プレス成形面)121aを有する円柱状のプレス部121bと、プレス部121bの側面全面に接触してプレス部121bの側面を覆うように形成され、プレス成形面121aの外周から第2の金型122との対向方向に突出するように、プレス成形面121aを囲むように設けられる板厚設定部121cとを有している。板厚設定部121cは、プレス成形面121aから前記対向方向への突出高さに基づいて、ガラスブランクの板厚を設定するようになっている。第1の金型121は、プレス成形時にかかる荷重に耐えうるという観点から、例えばVM30、VM40等の超硬合金や、ダクタイル鋳鉄(FCD:Ferrum Casting Ductile)、SKD(Steel Kogu Dice)等から構成されていることが好ましい。さらに、軟鋼(SS41等)に対して、めっき等の金属コーティングを施したものから構成してもよい。特に、板厚設定部121cは、後述するように、プレス成形時に第2の金型122に当接する部分であるため、プレス成形時にかかる荷重が第1の金型121の他の部分と比べて大きい。このため、板厚設定部121cは、プレスに耐えうる硬度が必要であることから、例えばVM30、VM40等の超硬合金や、FCD、SKD等のように、ビッカース硬さが1000HV以上の材料で形成されている、ことが好ましい。なお、超硬合金(VM40)のビッカース硬さは1450(HV)である。
また、板厚設定部121cの表面のうち第2の金型122との対向方向に向く表面(対向面)には、複数の熱電対125a〜125hが設けられている。図10Aに示すように、熱電対125a〜125hは、プレス成形面121aの法線方向にプレス成形面121aをみたとき、時計回りに間隔をおいて配置されている。例えば、各熱電対125a〜125hのそれぞれは、板厚設定部121cの対向面から板厚設定部121の内部に1mm移動した地点であって、対向面の中心位置を基準として所定の角度(例えば45度)おきに設けられた地点に配置されてもよい。各熱電対125a〜125hは、それぞれの配置位置近傍の板厚設定部121cの温度を取得するために用いられる。また、各熱電対125a〜125hのそれぞれは、例えば、CPU、RAM、ROM及びハードディスク等から構成された所定の制御装置(図示省略)と電気的に接続されており、各熱電対125a〜125hによって取得された温度に関する情報は、制御装置に送信されるようになっている。
なお、本実施形態において、各熱電対125a〜125hによってそれぞれ取得される板厚設定部121cの温度は、板厚設定部121cのプレス成形面121aからの突出高さに関する情報の一例である。これは、各熱電対125a〜125hの配置位置近傍における板厚設定部121cのプレス成形面121aからの突出高さは、各熱電対125a〜125hによって取得された温度と、板厚設定部121を構成する材料の熱膨張率によって求めることが可能であるためである。
また、本実施形態では、8つの熱電対125a〜125hを用いているが、熱電対の数は任意に選択することが可能である。
均熱部材123は、板厚設定部121cの側面全面を覆う略筒状に形成されており、板厚設定部121cと複数の温度制御部124a〜124hとの間において、板厚設定部121c及び各温度制御部124a〜124hと接触するように設けられている。均熱部材123は、各温度制御部124a〜124hによる加熱あるいは冷却等の温度制御によって生じる板厚設定部121c内の温度差を低減する。均熱部材123は、第1の金型121より高い熱伝導率を有する材料で形成されていることが好ましい。例えば、均熱部材123は、熱伝導率が50(W/m・K)以上の材料で形成されていることが好ましく、熱伝導率が100(W/m・K)以上の材料で形成されていることがより好ましい。具体的には、第1の金型121が例えば超硬合金(VM40)から構成されている場合には、均熱部材123は、銅、銅合金、アルミニウム又はアルミニウム合金等で形成されてもよい。なお、超硬合金(VM40)の熱伝導率は71(W/m・K)、銅の熱伝導率は400(W/m・K)である。
均熱部材123が第1の金型121より高い熱伝導率を有することにより、各温度制御部124a〜124hから伝わる加熱あるいは冷却等の温度制御用の熱を、板厚設定部121cの外周面全面に効率良く伝えることができる。このため、板厚設定部121cの外周面全面を均等に加熱あるいは冷却することができるので、板厚設定部121c内の温度分布を均一にすることができる。したがって、板厚設定部121cの熱膨張量を均一にすることができるので、板厚設定部121cのプレス成形面121aからの突出高さを均一にすることができる。このため、プレス成形時における一対の金型間の間隔Dを一定に維持することができることから、プレス成形によって作製されるガラスブランクの板厚偏差を低減することができる。
なお、均熱部材123は、プレス成形面121aと板厚設定部121cとの間に設けられてもよい。この場合、プレス成形面121aから均熱部材123に伝わったゴブの熱を、均熱部材123全体に効率良く伝えることができる。このため、ゴブの熱を板厚設定部121c全体に分散させることができるので、例えば、板厚設定部121cのうちプレス成形面121aとゴブとの接触位置に近い部分に、溶融ガラス塊の熱が他の部分と比較して伝わり易くなるのを防ぐことができる。この場合、プレス成形が長時間連続して行われた場合であっても、板厚設定部121c内の温度分布を均一にすることができるので、板厚設定部121cの熱膨張量を均一にすることができる。したがって、板厚設定部121cのプレス成形面121aからの突出高さを均一にすることができるので、プレス成形時における一対の金型間の間隔Dを一定に維持することができ、ひいては、プレス成形によって作製されるガラスブランクの板厚偏差を低減することができる。
また、均熱部材123を構成する材料は、第1の金型121を構成する金属の熱伝導率、硬度、厚み寸法等に応じて適宜選択されてよい。
ここで、ガラスブランクの板厚偏差とは、例えば、ガラスブランクの主表面上の任意の地点(例えば2つの地点)においてマイクロメータを用いて測定された板厚の最大値と最小値との差分である。
さらに、板厚設定部121c内の温度差とは、熱電対125a〜125hを用いて計測するときのそれぞれの地点の温度の差分のうち最大となる温度の差分である。
各温度制御部124a〜124hは、プレス成形面121aの外周に沿って均熱部材123の側面にそれぞれ接触するように設けられている。各温度制御部124a〜124hは、所望の平坦度のガラスブランクを得るために各金型のプレス成形面の前記溶融ガラスと接する温度がプレス成形面同士で揃うように制御するために設けられている。図10Aに示すように、各温度制御部124a〜124hは、プレス成形面121aの法線方向にプレス成形面121aをみたとき、時計回りに互いに隣接するように配置されている。また、各温度制御部124a〜124hは、熱電対125a〜125hと1対1の関係になるように設けられていることが好ましい。各温度制御部124a〜124hは、板厚設定部121cを加熱あるいは冷却等することにより、プレス成形開始時の第1の金型121の温度を所定の温度(例えば430℃〜450℃)に制御する。これにより、第1の金型121の温度が低い(例えば歪点以下)場合に、プレス成形時に溶融ガラス塊が第1の金型121によって急速に冷却されることにより、ガラスブランクが割れる等して破損するのを防ぐことができる。
各温度制御部124a〜124hは、例えばヒータやヒートシンク等で構成されてもよい。また、各温度制御部124a〜124hは、冷却作用を有する流体(液体や気体等)を用いて第1の金型121を冷却するように構成されてもよい。
各温度制御部124a〜124hによる加熱量あるいは冷却量は、制御装置によって調整される。なお、各温度制御部124a〜124hは、温度制御手段の一例である。
なお、本実施形態では、8つの温度制御部124a〜124hを用いているが、温度制御部の数は任意に選択することが可能である。
第2の金型122は、図10A,図10Bに示すように、プレス成形面122aを有するプレス部122bと、板厚設定部122cとを有している。また、第2の金型122には、均熱部材123と、複数の温度制御部124a〜124hと、複数の熱電対125a〜125hとが設けられている。
第2の金型122の構成は第1の金型121の構成と同様であるため、説明を省略する。また、第2の金型122に設けられた均熱部材123と、各温度制御部124a〜124hと、各熱電対125a〜125hとの構成は、第1の金型121に設けられた均熱部材123と、各温度制御部124a〜124hと、各熱電対125a〜125hとの構成と同様であるため、説明を省略する。
なお、本実施形態では、板厚設定部121cは、プレス成形面121aの外周全面から対向方向に突出するように設けられているが、図11に示すように、プレス成形面121aの外周に沿って間隔をおいて対向方向に突出するように設けられてもよい。具体的には、図11に示すように、複数(図11に示す例では4つ)の板厚設定部121cのそれぞれを、プレス成形面121aの外周に沿って互いに間隔をおいて設けてもよい。なお、各板厚設定部121cは、互いに熱伝導可能に接続されるように構成されてもよい。また、温度制御部の数は、板厚設定部121cの配置位置及び配置数に応じて任意に設定可能である。
さらに、板厚設定部122cは、図11に示すように、板厚設定部121cと同様に構成されてもよい。
各金型121,122は、2つのプレス成形面121a,122aの法線方向が略水平方向となり、2つのプレス成形面121a,122aが互いに平行に対向するように配置されている。また、各金型121,122の2つの板厚設定部121c,122cは、2つのプレス成形面121a,122aの対向方向に平行して、互いに対向するように配置されている。各金型121,122が互いに近づくように移動すると、図10Bに示すように、2つの板厚設定部121c,122cが互いに当接することによって、2つのプレス成形面121a,122aの間隔Dは一定に維持される。これにより、2つのプレス成形面121a,122a間には、板状の空間が作られる。
なお、第1の金型121及び第2の金型122は、それぞれプレス成形面121a,122aを有していればよく、各金型121,122の形状がプレート状に限定されることはない。また、本実施形態では、各金型121,122のプレス成形面121a,122aが円形に形成されているが、プレス成形面121a,122aの形状は、例えば多角形状等に形成されてもよい。
第1駆動部225は、第1の金型121を第2の金型122に対して進退させる。一方、第2駆動部226は、第2の金型122を第1の金型121に対して進退させる。第1駆動部225及び第2駆動部226は、例えばエアシリンダやソレノイドとコイルばねを組み合わせた機構など、第1駆動部225の面と第2駆動部226の面とを急速に近接させる機構を有する。
なお、プレスユニット130,140及び150の構成は、プレスユニット120と同様であるため、説明を省略する。
本実施形態のプレス成形工程では、一対の金型121,122を用いてプレス成形するが、本実施形態におけるプレス成形では、ガラスブランクの外形は金型の形状によって規制されない。すなわち、図6のS3に示した場合と同様に、プレス成形時に引き伸ばされたゴブが各金型121,122の板厚設定部121c,122cまで到達することはない。
なお、プレス成形工程において、第1の金型121及び第2の金型122に離型材を付着させる必要はない。
また、第1の金型121及び第2の金型122は、板厚設定部121c,122cが各温度制御部124a〜124hによって加熱あるいは冷却されることにより、温度が溶融ガラスLGのガラス転移点(Tg)よりも十分に低い温度(例えば430℃〜450℃)となるように制御されている。
ここで、制御装置は、板厚設定部121c,122cの突出高さに関する情報を取得する。具体的には、制御装置は、第1の金型121及び第2の金型122のそれぞれに設けられた熱電対125a〜125hから温度情報を取得する。
また、制御装置は、取得した突出高さに関する情報に基づき、板厚設定部121c,122cそれぞれの温度を制御することにより、板厚設定部121c,122cの突出高さがそれぞれの内部で均一になるように調整する。具体的には、制御装置は、各熱電対125a〜125hから取得した温度の情報に基づき板厚設定部121c,122cそれぞれの内部の温度差をもとめ、温度差が低減するように各温度制御部124a〜124hそれぞれの加熱量あるいは冷却量を調整する。例えば、板厚設定部121cに設けられた熱電対125aによって検出された温度が他の熱電対125b〜125hによって検出された温度よりも極めて高い場合、制御装置は、熱電対125aに対応付けられた温度制御部(例えば、124a)の冷却量が、他の温度制御部124b〜124hの冷却量よりも大きくなるように制御してもよい。これにより、板厚設定部121c,122cのそれぞれの温度分布を均一にすることができる。したがって、板厚設定部121c,122cのそれぞれの熱膨張量を、板厚設定部121c,122cのそれぞれの内部で均一にすることができるので、板厚設定部121c,122cの突出高さを、それぞれの内部で均一にすることができる。これにより、プレス成形時における一対の金型間の間隔Dを一定に維持することができ、ひいては、プレス成形によって作製されるガラスブランクの板厚偏差を低減することができる。
そして、板厚設定部121c,122cそれぞれの内部の温度差が低減するように温度制御部124b〜124hの加熱量あるいは冷却量が調整され、板厚設定部121c,122cそれぞれの内部の温度差が低減した状態で、プレス成形が行われる。
なお、プレス成形によって作成されるガラスブランクの板厚偏差を低減するための板厚設定部121c,122cそれぞれの内部の温度差は、同じ温度において板厚設定部の高さが一致している場合、例えば、研削工程を省略可能な板厚偏差を2μmとしたならば、板厚設定部121c,122cそれぞれの内部の温度差を6℃以内とした状態でプレス成形を行うことが好ましい。上記温度差が0℃であるときに作製されるガラスブランクの板厚偏差が最も良好となるが、上記温度差は、研削工程を省略可能な板厚偏差に応じて適宜決定してよい。
以上説明したように、本実施形態の磁気ディスク用ガラスブランク及び磁気ディスク用ガラス基板の製造方法によれば、プレス成形工程において、板厚設定部の突出高さに関する情報を取得し、板厚設定部の温度を、板厚設定部の温度を制御する温度制御部を用いて、突出高さに関する情報に基づき制御することにより、板厚設定部の前記突出高さが均一になるように調整された状態で、プレス成形を行っている。つまり、本実施形態のプレス成形工程では、プレス開始時からプレス終了時までの間で一対の金型のプレス成形面同士の平行状態を維持して、成形されるガラスブランクの一対の主表面が互いに平行となるよう各金型の板厚設定部の突出高さを均一に調節した状態でプレス成形が行われる。これにより、本実施形態のプレス成形工程で得られるガラスブランクは、板厚偏差を、研削工程が省略可能なレベルとすることができる。したがって、後工程で主表面に対して研削加工を施す必要がないので、磁気ディスク用ガラス基板の低価格化を実現することができる。
[第2の実施形態の実施例]
以下に、本発明を実施例によりさらに説明する。なお、溶融ガラスの作製については、第1の実施形態と同じであるので重複説明を省略する。
本実施形態のプレス成形方法(図3、図10A,図10Bの装置を用いた方法)を用いて、直径75mm、厚さ0.9mmのガラスブランクを作製した。溶融ガラス流出口111から吐出される溶融ガラス材料LGの温度は1300℃であり、この時の溶融ガラス材料LGの粘度は700ポアズである。また、第1の金型121のプレス成形面121a及び第2の金型122のプレス成形面122aの表面粗さ(算術平均粗さRa)は、0.01μm〜1μmとした。さらに、各金型121,122のプレス成形面121a,122aは超硬合金(VM40)で構成されている。また、各金型121,122の板厚設定部121c,122cはSKD61で構成されている。ここで、SKD61の熱膨張率は、12.8×10-6(K-1)である。また、板厚設定部121c,122cのプレス成形面121a,122aからの突出高さは0.44mmであり、板厚設定部121c,122cの対向方向の長さは55mmである。さらに、温度制御部124a〜124hとしてヒータを用いた。また、均熱部材123として銅を用いた。
また、プレス成形する際には、プレス開始時の第1の金型121及び第2の金型122それぞれの温度が430℃〜450℃となるように、温度制御部124a〜124hそれぞれの加熱量が調整されている。
溶融ガラス流出口111から吐出される溶融ガラス材料LGは、切断ユニット160によって切断され、直径約20mmのゴブGGが形成される。ゴブGGは、プレスユニットによって荷重3000kgfで、その温度が溶融ガラス材料のガラス転移温度(Tg)以下となるまで(約3秒)プレスされ、直径75mmのガラスブランクが形成された。
なお、プレス中の金型の板厚設定部内の温度差は、熱電対125a〜125hを用いて計測するときのそれぞれの地点の温度の差分のうち最大となる温度の差分を算出することによりもとめられる。
この実施例では、磁気ディスク用ガラス基板に要求される平面度を4μm以下とした場合に、この平面度を実現すべく、各プレスユニットにおいて第1の型及び第2の型の温度差は、10℃以内とした。具体的には、第1の型の温度を420℃とし、第2の型の温度を411〜429℃とした。
[実施例のガラスブランクの評価]
実施例で作製された直径75mmのガラスブランクについて、板厚偏差および表面粗さ(算術平均粗さRa)を測定した。
板厚偏差は、ここでは、ガラスブランクの主表面上の任意の2つの地点においてマイクロメータを用いて測定された板厚の最大値と最小値との差分と定義した。なお、ガラスブランクの目標板厚は、0.88mmである。表1に示す平面度の評価基準は、以下のとおりである。
以下の基準において、ガラスブランクの板厚偏差が2μmより大きければ研削工程を実施して板厚偏差を2μm以下まで低減する必要がある。板厚偏差が1μmより大きく且つ2μm以下であるガラスブランクの場合には、研削工程を省略することができるので好ましいが、品質を安定させるために研磨工程における取り代を増大させる必要があるので、生産性の観点から板厚偏差が1μm以下のガラスブランクよりも劣る。また、ガラスブランクの板厚偏差が1μm以下のガラスブランクの場合は、研削工程を省略することができ、さらに研磨工程における取り代を少なくすることができるので、最も好ましい。
◎ (Excellent):板厚偏差が1μm以下
○ (Good):板厚偏差が1μmより大きく2μm以下
× (Poor):板厚偏差が2μmより大きい
Figure 2013100152
表3から、ガラスブランクをプレス成形する際に、温度制御部による加熱量あるいは冷却量を調整することにより、板厚偏差の良好なガラスブランクが作製されることが分かる。特に、均熱部材を設けた場合には、板厚偏差が最も良好なガラスブランクが得られた。また、各例のガラスブランクの表面粗さについては、第1の金型及び第2の金型のプレス成形面の表面粗さとほぼ同じであった。
[実施例の磁気ディスク用ガラス基板の作製]
第1の実施形態と同一の工程、条件にて磁気ディスク用ガラス基板を作製した。このとき、表3の比較例、実施例1、実施例2のガラスブランクを元にして作製された磁気ディスク用ガラス基板に記録層を成膜して磁気ディスクを作製した(それぞれ順に、比較例A、実施例1A、実施例2A)。作製した磁気ディスクは公称2.5インチサイズ(内径20mm、外径65mm、板厚0.8mm)である。
その後、作製されたディスクについて、前述した条件と同様にしてDFHタッチダウン試験を行った結果を表4に示す。
Figure 2013100152
表4から明らかなように、実施例1A、実施例2Aについては、研削工程を省略してもDFHヘッドの突き出し量を十分大きくすることができた。すなわち、実施例1A、実施例2Aについては、研削工程を省略しても平面度、表面粗さ共に良好で、かつ媒体化した際に良好なDFHタッチダウン試験結果が得られる磁気ディスク用ガラス基板が製造できることが確認できた。
第2の実施形態では、板厚設定部の温度を、板厚設定部の突出高さに関する情報として取得したが、所定の計測機器を用いて板厚設定部の突出高さを計測することにより、板厚設定部の突出高さに関する情報を取得してもよい。ここで、板厚設定部の突出高さは、温度制御部によって板厚設定部の温度が制御される前に計測されてもよいし、制御された後に計測されてもよい。
また、プレス成形工程により得られたガラスブランクの板厚を、板厚設定部の突出高さに関する情報として取得してもよい。
これら何れの場合であっても、上記実施形態と同様に、プレス成形工程で得られるガラスブランクの板厚偏差を、研削工程が省略可能なレベルとすることができる。したがって、後工程で主表面に対して研削加工を施す必要がないので、磁気ディスク用ガラス基板の低価格化を実現することができる。
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。
本実施形態は、第1の実施形態と比較して、プレス成形工程が異なる。本実施形態において、上述した実施形態と同一の内容については重複説明を省略する。
本実施形態のプレス成形工程は、1次プレス工程と2次プレス工程からなる。本実施形態では、プレス成形工程において、図12に示す第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60が用いられる。略球状の溶融ガラスが金型に向かって落下する点は上述した各実施形態と同様である。なお、図12には図示していないが、第1又は第2の実施形態と同様にして、温度制御部を設けることができる。
(a)1次プレス工程
1次プレス工程を実施する直前における、第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60のプレス成形面52A、62Aの温度は、溶融ガラスの塊(ゴブG)を構成するガラス材料のガラス転移点以上、屈服点未満の温度で加熱され平衡状態にある。ガラス転移点は、本実施形態では、例えば500℃である。一方、屈服点は、本実施形態では、例えば560℃である。プレス成形面の温度を、上述した範囲内とすることにより、後述するように、ゴブGにおいて温度分布があったとしても、後述する2次プレス工程において、ガラス転移点以上の温度で、ガラスブランクの温度分布を略均一にすることができる。これにより、温度分布が略均一になったガラスブランクを第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60から取り出して、大気中で放冷することにより、残留応力の少ないガラスブランクを作製することができる。プレス成形面の温度を屈服点未満とするのは、ガラスブランクをプレス成形型から離型した後に平面度が大きく悪化してしまうことを防ぐことができるためである。
金型を構成する第1のプレス成形型50及び第2のプレス成形型60について、図12を参照しながら説明する。第1のプレス成形型50及び第2のプレス成形型60は、超硬合金(例えばVM30やVM40など)で構成されることが、機械的強度及び後述する熱伝導度を高くする点で好ましい。第1のプレス成形型50及び第2のプレス成形型60は、略円盤形状を有するプレス成形型本体52、62と、このプレス成形型本体52、62の外周端を囲うように配置されたガイド部材54、64とを有する。ガイド部材54、64は、本発明の板厚設定部の一例である。なお、図12は断面図であるため、図12中において、ガイド部材54、64は、プレス成形型本体52、62の上下両側に位置するように記されている。また、プレス成形型50をX1方向へ移動させ、第2のプレス成形型60をX2方向に移動させるように、第1のプレス成形型50及び第2のプレス成形型60は、図示されない駆動装置と機械的に接続されている。
図12には図示しないが、第1の実施形態と同様に、プレス成形型本体52、62の側面全面を覆う略筒状に形成されており、プレス成形型本体52,62とガイド部材54、64との間において、プレス成形面52A、62A及びされたガイド部材54、64のそれぞれと接触する均熱部材が設けられてもよい。また、所望の平坦度のガラスブランクを得るために各プレス成形型50,60のプレス成形面52A、62Aの溶融ガラスと接する温度がプレス成形面同士で揃うように制御するための温度制御部や、均一化部材等が設けられてもよい。それによって、ガイド部材54、64の突出高さを均一に調節した状態でプレスすることができる。
プレス成形型本体52、62の一方の面は、それぞれプレス成形面52A、62Aとなっている。プレス成形面52Aとプレス成形面62Aとは互いに対向するように配置されている。ガイド部材54には、プレス成形面52Aに対してX1方向に少しだけ突出した高さ位置にガイド面54Aが設けられ、ガイド部材64には、プレス成形面62Aに対してX2方向に少しだけ突出した高さ位置にガイド面64Aが設けられている。このため、プレス成形に際しては、ガイド面54Aとガイド面64Aとが突き当たり接触するため、プレス成形面52Aとプレス成形面62Aとの間には隙間が形成される。この隙間の厚さが、第1のプレス成形型50と第2のプレス成形型60との間でプレスされてガラスブランクの厚さとなる。プレス成形面52A、62Aは、鏡面仕上げされている。なお、第1のプレス成形型50と第2のプレス成形型60によるプレスにより、ゴブGが押し広げられてガラスブランクとなるときのプレス成形面52A、62Aの領域である溶融ガラス延伸領域S1を含むプレス成形面52A、および、溶融ガラス延伸領域S2を含むプレス成形面62Aの全面が、曲率が0である平坦面を成している。
図12中の第1のプレス成形型50のプレス成形本体52のプレス成形面52Aと反対側には、第1の押出部材56及び第2の押出部材58が設けられている。
第1の押出部材56の一方の押出面56Aは、プレス成形型本体52の端面である被押出面52Bとガイド部材54の端面である押出面54Bとに接触している。また、プレス成形型本体52の被押出面52Bに対向する領域の一部に、第1の押出部材56の厚み方向に貫通する貫通穴56Hが設けられている。なお、押出面56Aと反対側の面56Bは、図示されない駆動装置に機械的に接続されている。このため、プレス成形に際しては、上記駆動装置によって、第1の押出部材56を介して、プレス成形型本体52とガイド部材54とを同時に、図中の軸方向Xの第1の押出部材56が配置された側からプレス成形型本体52およびガイド部材54が配置された側へと押し出すことができる。これにより、第1の押出部材56からプレス成形型本体52にプレス圧力となる押圧荷重が与えられる。
第2の押出部材58は、貫通穴56H内に挿入されると共に、プレス成形型本体52の被押出面52B側に接続されている。第2の押出部材58は、図12に示す例では円柱状の棒状を成すが、プレス成形型本体52に対して荷重を自在にかけることができるのであれば、その形状は特に限定されない。なお、第2の押出部材58の被押出面52B側に接続された端と反対側の端は、図示されない駆動装置に機械的に接続されている。このため、プレス成形に際しては、上記駆動装置及び第2の押出部材58によって、第1の押出部材56がプレス成形型本体52に与える押圧荷重に、さらに押圧荷重を付加させることができ、あるいは、この付加した押圧荷重を除去させることができる。この押圧荷重の除去によって、後述する2次プレス成形においてプレス圧力が調整される。この点は後述する。
1次プレス工程では、図12〜14に示すように、ゴブGは、下方へ落下し、2つのプレス成形面52A、62A間に進入する。そして、図14に示すように、落下方向Y1と平行を成すプレス成形面52A、62Aの上下方向の略中央部近傍に到達した時点で、ゴブGの両側表面が、プレス成形面52A、62Aに同時または略同時に接触する。
その後、図14に示すように、ゴブGを、その両側から第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60により押圧し続けると、ゴブGは、ゴブGとプレス成形面52A、62Aとが最初に接触した位置を中心に均等な厚みで押し広げられる。図15に示すようにガイド面54Aとガイド面64Aとが接触するところまで、第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60により押圧し続けることで、プレス成形面52A、62A間に、円盤状もしくは略円盤状のガラスブランクGに成形される。このとき、第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60により成形されるガラスブランクは、ガイド面54Aとガイド面64Aの端部まで達しない。すなわち、ガラスブランクの端面は、自由曲面となっている。この状態で、1次プレス工程は終了する。したがって、ガラスブランクの端面における熱は、プレス成形面52A、62Aと接触せず、プレス成形面52A、62A内の気相空間の空気に対して放冷される。したがって、ガラスブランクの端面では、冷却に伴って表面に形成される圧縮応力層はほとんどないか、あるいは極めて小さい。すなわち、ガラスブランクの端面には残留応力がないか、あっても極めて小さい。
(b)2次プレス工程
2次プレス工程では、ガラスブランクが破損しない程度の時間、1次プレス工程を行った後、1次プレス工程後に1次プレス工程に用いるプレス面(プレス成形面52A、62A)のプレス圧よりも低いプレス圧力でガラスブランクを一対の型で保持する工程である。
プレス圧力は、第1プレス工程時、第2の押出部材58が第1のプレス成形型50に与えた押圧荷重を除去することにより、低下することができる。したがって、2次プレス工程では、図15に示す状態と変化はない。
1次プレス工程における、プレス成形面52A、62Aのプレス圧力は、例えば0.04〜0.40トン/cm2であり、2次プレス工程におけるプレス圧力は、例えば1×10−5〜4×10−3トン/cm2である。
このように1次プレス工程と2次プレス工程でプレス圧力を変化させるのは、1次プレス工程の機能と、2次プレス工程の機能とを異なるものとするためである。
1次プレス工程において高いプレス圧力を用いてプレスをすることにより、ガラスブランクを所定の厚さ(薄さ)にするとともに、板厚差を低下させることができる。2次プレス工程において低いプレス圧力を用いてプレスすることにより、ガラスブランクの温度分布を均一に近づけることができ、平面度を向上することができる。
具体的に説明すると、2次プレス工程前の1次プレス工程では、高いプレス圧力により、ゴブGの不均一な温度分布に起因して成形直後のガラスブランクの温度分布は不均一である。この不均一な温度分布のガラスブランクから熱が第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60に移動して、第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60に不均一の温度分布を生じさせる。2次プレス工程において低いプレス圧力を用いることにより、2次プレス工程では、ガラスブランクとプレス成形面52A、62Aとの間の実質的な接触面積が低下する。その結果、ガラスブランクから第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60への熱移動が低下する。その間、第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60の不均一な温度分布は、熱伝導による拡散により均一に近づき、温度分布が均一に近づいた第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60が、ガラスブランクと接触することにより、ガラスブランクの温度分布は均一に近づく。
また、1次プレス工程では、上述したように第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60に不均一の温度分布を生じさせるので、第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60の不均一の温度分布により、プレス成形面52A、62Aの表面は不均一な熱膨張を起こし、プレス成形面52A、62Aに表面凹凸をつくる。この表面凹凸は、ガラスブランクの表面に転写されるので一定の厚さのガラスブランクを作製する上で好ましくない。第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60の不均一な温度分布を解消するために、2次プレス成形では、プレス圧力の低下により、ガラスブランクから第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60への熱移動を低下させることができる。そして、2次プレス工程中、第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60内での熱伝導による熱拡散により第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60の温度分布を均一に近づけることができる。これにより、プレス成形面52A、62Aの表面凹凸は均一に近づく。しかも、第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60の温度は、ガラス転移点以上であるので、ガラスブランクもガラス転移点以上である。このため、ガラスブランクの表面には、プレス成形面52A、62Aの均一な表面に近づいた表面形状が転写される。したがって、平面度の小さいガラスブランクが形成される。
このように、2次プレス工程の作用により、ガラスブランクは、ガラス転移点以上の温度で温度分布は均一に近づき、平面度が小さくなる。
1次プレス工程は、ガラスブランクに一定の厚さを確保するために行われるため、1次プレスの継続時間は、ガラスブランクが一定の厚さの形状を確保する時間であればよい。この継続時間が過度に長いと、ガラスブランクが不均一な温度分布に起因する熱歪み(熱応力)によって、あるいは、プレス成形面52A,62Aの不均一な表面凹凸等によって破損する。このため、1次プレス工程の継続時間は、ガラスブランクが温度分布に起因する熱歪み(熱応力)によって破損しない程度の時間であり、例えば0.1〜2秒である。一方、2次プレス工程の継続時間は、ガラスブランクの温度分布が略均一になる時間であればよい。2次プレス工程の継続時間は長いことが、ガラスブランクの温度分布は均一に近づく点から好ましいが、ガラスブランクの生産効率は低下する。したがって、2次プレス工程の継続時間は、例えば10〜298秒である。このような1次プレス工程及び2次プレス工程の継続時間は、予め定められている。したがって、1次プレス工程及び2次プレス工程の合計の継続時間である、プレス開始からプレス終了までの時間が300秒以下であることが好ましい。
図16は、1次プレス工程及び2次プレス工程におけるガラスブランクの2箇所の位置における温度履歴A1,A2と、第1のプレス成形型50の2箇所における温度履歴A3,A4の計測結果の一例を示す図である。
1次プレス工程の開始時、ゴブGは、図12に示す切断刃161,162による切断で冷やされるため、ゴブGの切断された部分は、ゴブGの内部に比べて低温になっている。すなわち、ゴブGの温度分布は不均一である。このため、1次プレス工程の開始時においても、ガラスブランクの温度分布は不均一であり、場所によって温度はばらついている。図16の例では、温度T1と温度T2が温度のばらつきを示す一例である。一方、第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60の温度は、ゴブGを構成するガラス材料のガラス転移点以上、屈服点未満の温度で加熱されて、均一な熱平衡状態にある。この状態で、1次プレス工程が開始されると、ガラスブランクの温度は第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60の温度に比べて高いので、ガラスブランクから第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60に多量の熱が移動する。これによって、ガラスブランクの温度は温度履歴A1,A2に示すように急激に低下する。一方、第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60は、ガラスブランクから多量の熱が移動するので、ガラスブランクの各場所の温度に応じた熱移動を受けて温度履歴A3,A4に示すように異なる温度履歴を示す。この状態で予め定められた1次プレス工程の継続時間が過ぎると、2次プレス工程に移行する。
2次プレス工程では、1次プレス工程に比べて第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60のプレス圧力は低下しているので、ガラスブランクとプレス成形面52A、62Aとの間の実質的な接触面積が低下し、その結果、ガラスブランクから第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60への熱移動が低下する。この間、第1のプレス成形型および第2のプレス成形型の不均一な温度分布は、熱伝導による拡散により、温度履歴A3、A4に示すように温度分布は均一に近づく。温度分布が均一に近づいた第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60は、ガラスブランクと接触することにより、ガラスブランクの温度分布も温度履歴A1,A2に示すように、均一に近づく。しかし、第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60の温度は、ゴブGを構成するガラス材料のガラス転移点以上、屈服点未満の温度で常時加熱されているので、ガラスブランクの温度は、ガラス転移点以上、屈服点未満のある温度に近づく。このような状態で、2次プレス工程は終了する。したがって、2次プレス工程は、上記ガラスブランクの温度状態が達成される時間を予め計測することにより、2次プレス工程の継続時間を定めることが好ましい。しかも、プレス成形面52A,62Aの熱膨張も、第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60の均一に近づいた温度分布により、均一に近づくため、ガラスブランクは、プレス成形面52A,62Aの表面凹凸の少ない表面形状が転写される。したがって、平面度の小さいガラスブランクが形成される。
(c)取出工程
取出工程では、ガラスブランクは、第1のプレス成形型50および第2のプレス成形型60のプレス成形面を離間して取り出される。図17は、取出工程を示す図である。図17に示すように、第1のプレス成形型50と第2のプレス成形型60とを互いに離間させるように、第1のプレス成形型50をX2方向へ移動させ、第2のプレス成形型60をX1方向へ移動させる。これにより、プレス成形面62Aと、ガラスブランクGとを離型させる。次いで、プレス成形面52Aと、ガラスブランクGとを離型させて、ガラスブランクGを鉛直方向下方に落下させて取り出す。なお、プレス成形面52AとガラスブランクGとを離型させる際には、ガラスブランクGの外周方向から力を加えてガラスブランクGを剥がすように離型することができる。この場合、ガラスブランクGに大きな力を加えることなく、取出しを行うことができる。なお、取出しの際、プレス成形面52AとガラスブランクGとを離型した後に、プレス成形面62AとガラスブランクGとを離型してもよい。こうして、ガラスブランクGを得る。ガラスブランクGは、図示されない断熱板上に載せられて、大気中で放冷される。このとき、ガラスブランクGにおけるプレス成形面52A及びプレス成形面62Aとの接触部分の温度は、ガラス転移点以上であり、均一な温度分布を持ってガラス転移点以上の温度を有するので、この状態で冷却しても、均一な温度分布を保ってガラスブランクは冷えるので、冷却に起因する不均一な残留応力は小さくなる。
なお、プレス成形面52A及びプレス成形面62Aには、従来より用いられてきたボロンナイトライド等の離型剤は用いられない。これは、1次プレス工程及び2次プレス工程におけるガラスブランクとプレス成形面52A及びプレス成形面62Aとの間の面接触を増やして、ガラスブランクとプレス成形面52A及びプレス成形面62Aとの間の熱移動を利用するためである。また、離型剤の使用は、離型剤の形状がガラスブランクの表面に転写されて平面度が大きくなることから好ましくない。
なお、得られるガラスブランクの残留応力値は、上述したスクライブ工程(S20)や形状加工工程(S30)における機械加工で破断が生じない許容値以下となるように、2次プレス工程が行われることが好ましい。例えば、2次プレス工程におけるプレス圧力及び継続時間等が調整される。この場合、上記許容値は、例えば、0.4kgf/mmである。
例えば、1次プレス工程におけるプレス圧力を0.2トン/cm2とし、1次プレス工程の継続時間を1秒とし、2次プレス工程におけるプレス圧力を1.0×10−3トン/cm2とし、2次プレス工程の継続時間を60秒とし、第1のプレス成形型50と第2のプレス成形型60の温度を515℃とした条件で、平面度の平均値は3.87μmであり、ガラスブランクの板厚差は5μm以下とすることができる。
また、本実施形態で得られるガラスブランクは、平坦性に優れ(平面度が小さく)、残留応力も小さいことから、従来のように、ガラスブランクにアニール処理を施す必要がない。
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態について説明する。
本実施形態は、第1の実施形態と比較して、プレス成形工程で使用されるプレスユニットのみが異なる。本実施形態において、第1の実施形態と同一の内容については重複説明を省略する。
本実施形態のプレス成形工程に用いられるプレスユニットに設けられる温度制御部は、それぞれ独立に温度を制御可能に構成される一対の温度制御部124j,124kによって構成されている点で、第1の実施形態の温度制御部124とは異なる。図18A,図18Bに示すように、一対の温度制御部124j,124kはそれぞれ、板厚設定部121c及び122cの側面全面に接触するように設けられている。温度制御部124j,124kは各板厚設定部において隣接して設けられており、各プレス成形面に近い側に温度制御部124kが設けられ、各プレス成形面から遠い側に温度制御部124jが設けられている。温度制御部124j,124kは、温度制御手段の一例である。
一対の温度制御部124j,124kは、例えばヒータやヒートシンク等で構成されてもよい。一対の温度制御部124j,124kによる加熱量あるいは冷却量は、例えば、CPU、RAM、ROM及びハードディスク等から構成された所定の制御装置(図示省略)によって制御されてもよい。
温度制御部124j,124kは、第1の実施形態と同様に、板厚設定部121c,122cを加熱あるいは冷却することにより、プレス成形開始時の第1の金型121の温度を所定の温度(例えば430℃〜450℃)に制御することを目的として設けられるものであるが、第1の実施形態の場合と異なり、複数の温度制御部によって各板厚設定部121c,122cの所望の部位をそれぞれ独立に加熱又は冷却することが可能となる構成となっている。そして、板厚設定部121c,122cの温度と板厚設定部121c,122cの金型対向方向での熱膨張量との相関関係を予め求めておき、その相関関係に基づいて、板厚設定部121c,122cの実際の温度から一対の金型が閉じた際にプレス成形面同士の間の距離が目標の距離となるように板厚設定部の熱膨張量を決定し、温度制御部124j,124kによって板厚設定部121c,122cの熱膨張により板厚設定部121c,122cの突出高さを変化させる。こうすることで、プレスによって得られるガラスブランクの板厚の調整をより容易に行うことができる。つまり、一対の温度制御部124j,124kの加熱量及び冷却量をそれぞれ独自に設定することで、板厚設定部121c,122cを構成する部材の熱膨張量をより精度良く調整することができ、その結果、ガラスブランクの板厚の調整の幅が広がり、より容易に調整を行うことができるようになる。
ここで、板厚設定部121c,122cの金型対向方向での熱膨張量と温度との相関関係については、温度制御部124j,124kにおける設定温度を変化させて、板厚設定部121c,122cの熱膨張量を測定することにより、予め求めることができる。
このような相関関係を求めるために、板厚設定部121c,122cの金型対向方向の寸法が50mmで板厚設定部121c,122cにSKDを用いた条件で板厚設定部121c,122cの金型対向方向での1℃あたりの熱膨張量を実際に測定したところ、板厚設定部121c,122cの金型対向方向での熱膨張量の合計が1.3μm/℃(片側で0.65μm/℃)であった。
従って、このような相関関係に基づいて、一対の金型が閉じた際のプレス成形面同士の間の距離が目標の距離となるように板厚設定部の熱膨張量を決定し、その熱膨張量に対応する温度になるように板厚設定部121c,122cの温度を制御することによって、板厚設定部121c,122cの熱膨張量によりガラスブランクの板厚調整が可能となる。また、上記の相関関係の例では、板厚設定部121c,122cの温度を10℃変化させることにより、ガラスブランクの板厚を13μm変化させることができる。なお、板厚設定部121c,122cの温度を互いに異ならせて、板厚設定部121c,122cの熱膨張量を変化させて板厚調整を行ってもよい。
また、金型が閉じた際にプレス成形面同士の間の距離が目標の距離となるように板厚設定部の熱膨張量を決定する処理は、4組のプレスユニット120,130,140,150の各々についてユニット単位で行われることが好ましい。つまり、4組のプレスユニット120,130,140,150は、同一の装置101に設けられているが、各ユニットのプレスによる加熱、及びプレス終了による放熱とそのタイミングによって各プレスのときの熱的環境が正確には異なる場合があるため、各プレスユニットで熱的環境を揃えるためにユニット単位でプレスユニット成形面同士の間の距離の調整を行う(つまり、温度制御部の調整を行う)ことが好ましい。ユニット単位で調整を行う場合には、全ユニットで同一の目標板厚を設定し、ガラスブランクの板厚がその目標板厚となるように、各ユニットでプレス成形面同士の間の距離を調整する(つまり、温度制御部の調整をユニット単位で行う)ことが好ましい。
ガラスブランクの板厚の調整をより容易に行うことができることは、以下の点から重要である。従来の垂直あるいは水平プレスでは、金型の材質による熱膨張率、成形時の金型の温度などの成形条件、及び一対の金型間の間隙(キャビティ)の設計値によって、プレス成形で得られるガラスブランクの板厚が決まっていた。このとき、従来は、ガラスブランクの板厚の設計値(つまり、金型間の間隙)と実際にプレスによって得られるガラスブランクの板厚の実際の値との差が小さくなるように、金型の間隙を決定する金型の寸法が試行錯誤によって決定して金型の追加工等を行っていた。また、従来は金型の追加工を行う前は板厚の偏差が大きいために、ガラスブランクから磁気ディスク用ガラス基板を製造するに際して、ガラス基板の両主表面に対する機械加工(研削又は研磨加工)の前に、プレス成形で得られたガラスブランクの中で板厚の要求値を満たすガラスブランクをソートする工程もあり、製造時間を短縮することが難しかった。さらに従来は、ガラスブランクの板厚偏差が大きかったために、後工程の主表面の研磨による取り代のばらつきも必然的に大きくなっていた。
これに対し、本実施形態のプレス成形では、金型の材質による熱膨張率、成形時の金型の温度などの成形条件に応じて、ガラスブランクの板厚が所望の値となるように一対の温度制御部124j,124kの加熱量及び冷却量を調整すればよく、ガラスブランクの板厚調整のための金型自体の追加工は要しない。また、第1の実施形態と同様に、プレス成形によって得られるガラスブランクの板厚偏差も小さくなるという利点がある。
なお、図18A,図18Bでは、各板厚設定部につき一対の温度制御部を設ける場合を例示したが、この場合に限られない。3以上の温度制御部を設けてもよい。
<第5の実施形態>
次に、第5の実施形態について説明する。
本実施形態は、第4の実施形態と比較して、プレス成形工程で使用されるプレスユニットのみが異なる。本実施形態において、第1の実施形態と同一の内容については重複説明を省略する。
本実施形態のプレス成形工程に用いられるプレスユニットは、第4の実施形態と同様に、それぞれ独立に温度を制御可能に構成される一対の温度制御部124j,124kが設けられているが、一対の温度制御部124j,124kに対応して板厚設定部が121j,121kが設けられている点で第4の実施形態とは異なる。すなわち、図19A,図19Bに示すように、板厚設定部が121j,121kが均熱部材123の側面前面に接触するように設けられており、板厚設定部が121j,121kの側面前面に接触するように、それぞれ温度制御部124j,124kが設けられている。温度制御部124j,124kは、温度制御手段の一例である。
本実施形態の構成では、他方の金型へ向けて突出するように配置された板厚設定部121kと、他方の金型から遠い位置に配置された板厚設定部121jとで構成されているが、それぞれの板厚設定部は熱膨張率及び/又は熱伝導率が異なる部材で構成されていることが好ましい。また、板厚設定部121k,122kについては、プレスに耐えうる硬度をもつ部材であることが好ましい。ここで、板厚設定部121k,122kについては、例えば、VM30、VM40等の超硬合金や、ダクタイル鋳鉄(FCD:Ferrum Casting Ductile)、又はSKD(Steel Kogu Dice)等を用いることができる。さらに、板厚設定部121j,122jについては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム又はアルミニウム合金等を用いることができる。
本実施形態の構成では、プレス成形によって得られるガラスブランクの板厚の調整の幅をさらに広げることが可能となる。例えば、プレス成形面と板厚調整部の温度が異なるようにそれぞれ独立に温度を制御することができる。例えば、第1の金型121に着目した場合、プレス成形面121aに近い板厚設定部121kを熱伝導率の高い材料で構成して温度制御部124kによる熱がプレス成形面121aまで伝達しやすくする一方で、板厚設定部121jとして熱膨張率が高い部材で構成して主として熱膨張によるプレス成形面の方向の突出量を稼ぐといったように、板厚設定部121k、121jのそれぞれで機能分担を図ることができる。要するに本実施形態では、各板厚設定部に用いられる部材の特性、各板厚設定部に対応する温度制御部による加熱又は冷却の程度等、ガラスブランクの板厚を調整するためのファクタが多く設定されているため、これらのファクタを調整することでプレス成形によって得られるガラスブランクの板厚の調整の幅をさらに広げることができる。
なお、図19A,図19Bでは、各板厚設定部につき一対の温度制御部と一対の板厚設定部を設ける場合を例示したが、この場合に限られない。3以上の温度制御部及び板厚設定部を設けてもよい。また、温度制御の精度を高める上で、板厚設定部121kと板厚設定部121jとの間(板厚設定部122kと板厚設定部122jとの間)に、断熱材を介在させてもよい。さらに、所望の板厚調整可能範囲となるように、各板厚設定部121j,121k(板厚設定部122j,122k)の金型対向方向の寸法を互いに異ならせてもよい。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法および磁気ディスク用ガラス基板の製造方法は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのは勿論である。上述した各実施形態で説明した技術的事項は適宜組み合わせて適用してもよく、特定の実施形態で説明した技術的事項、技術的効果はその他の実施形態にも適用されうる。
例えば、第3の実施形態のプレス成形工程では、一対の型のプレス面の温度が溶融ガラス(ゴブG)のガラス転移点以上屈服点未満の温度で溶融ガラスの塊をプレスすることや、ガラスブランクの残留応力値がガラスブランクの機械加工で破断が生じない許容値以下となるようにプレスすることを説明したが、これらの事項は他の実施形態においても適用することができる。
なお、上述した各実施形態のプレス成形工程では、第1の金型121、第2の金型122について仮に何ら温度制御を行わないとしたならば、極めて高温の溶融ガラスの各金型への接触開始、及び溶融ガラスのプレスによって溶融ガラスの熱が金型へ伝達することで、各金型の温度が急激に上昇し、溶融ガラスのプレスが完了して開型した後は放熱によって徐々に温度が低下していくという温度サイクルが、溶融ガラスのプレスを連続的に行うことで順次繰り返し行われることになる。このような温度サイクルが金型に生じた場合には、板厚設定部についてもこの金型の温度サイクルの影響を受けることになり、板厚設定部の温度調整が困難になることが考えられる。そこで、プレス成形工程においては、溶融ガラスの塊(ゴブ)と接触する前に予め金型を加熱し、溶融ガラスの塊と接触後に金型を冷却することが好ましい。このような金型に対する温度調整処理を各実施形態の温度調整部によって行うことで、金型の上記温度サイクル中に金型の温度環境の変化が抑制されるため、平面度の良好なガラスブランクが得られるとともに、板厚設定部の部材の温度環境の変化も抑制されるので、ガラスブランクの板厚の調整も容易となる。
また、近年、磁気ディスクにおいて、例えば面記録密度が1テラバイト/inch2を超える高密度記録を実現するために、エネルギーアシスト記録方式が注目されている。エネルギーアシスト記録方式は、記録ヘッドによる磁気ディスクへの情報の書き込み時に記録ヘッドからデータ書き込み領域に瞬間的にエネルギーを加え、保磁力を低下させることで高Ku磁性材料の磁化反転をアシストする記録方式である。このエネルギーアシスト記録方式には、レーザー光の照射により磁化反転をアシストする熱アシスト記録方式や、マイクロ波によりアシストするマイクロ波アシスト記録方式が含まれる。このようなエネルギーアシスト記録方式では、ガラス転移点が比較的高いガラスが要求される。したがって、エネルギーアシスト記録方式に対応させる場合には、上述した各実施形態では、ガラスブランクに用いるガラスとして、例えば、ガラス転移点が比較的高いガラス、例えばガラス転移点が650℃以上のガラスを用いることが好ましい。しかし、従来のプリフォーム(リヒートプレス)方式、すなわちガラスの軟化点温度まで金型を加熱する方式では、ガラス転移点が比較的高いガラスを用いて、金型を軟化点温度まで加熱することは難しい。この点でも、上述した各実施形態のガラスブランクの製造方法は優れている。すなわち、上述した各実施形態のガラスブランクの製造方法は、ガラス転移点が高いガラス材料であっても、平面度と板厚差を小さくすることができるとともに、ガラスブランクの加工性を向上させることができる。

Claims (25)

  1. 互いに対向する一対の金型を用いて、溶融ガラスの塊をプレス成形する成形工程を含む磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法であって、
    前記一対の金型は、前記プレス成形するためのプレス成形面と、前記プレス成形面の外周から前記一対の金型の対向方向に突出するように、前記プレス成形面を囲むように設けられ、前記対向方向の突出高さに基づき前記磁気ディスク用ガラスブランクの板厚を設定するための板厚設定部とを有し、
    前記成形工程では、プレス開始時からプレス終了時までの間で一対の金型のプレス成形面同士の平行状態を維持して、成形されるガラスブランクの一対の主表面が互いに平行となるよう各金型の板厚設定部の突出高さを均一に調節した状態でプレス成形を行うことを特徴とする磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
  2. 互いに対向する一対の金型を用いて、溶融ガラスの塊をプレス成形する成形工程を含む磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法であって、
    前記一対の金型は、前記プレス成形するためのプレス成形面と、前記プレス成形面の外周から前記一対の金型の対向方向に突出するように、前記プレス成形面を囲むように設けられ、前記対向方向の突出高さに基づき前記磁気ディスク用ガラスブランクの板厚を設定するための板厚設定部とを有し、
    前記成形工程では、前記溶融ガラスのプレス成形時に前記プレス成形面から前記板厚設定部に前記溶融ガラスの熱が伝わるときの前記板厚設定部の前記突出高さを均一にするための均一化部材を用いて、前記板厚設定部の前記突出高さを均一にした状態で、プレス成形を行うことを特徴とする磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
  3. 前記均一化部材は、前記溶融ガラスの熱が伝わるときの前記板厚設定部内の温度差を低減するための均熱部材である、請求項2に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
  4. 前記成形工程では、前記板厚設定部の温度を調整する手段であって、所望の平坦度のガラスブランクを得るために各金型のプレス成形面の前記溶融ガラスと接する温度がプレス成形面同士で揃うように制御するための温度制御手段、を用いて前記板厚設定部の温度を制御した状態で、プレス成形を行う、請求項2又は3に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
  5. 互いに対向する一対の金型を用いて、溶融ガラスの塊をプレス成形する成形工程を含む磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法であって、
    前記一対の金型は、前記プレス成形するためのプレス成形面と、前記プレス成形面の外周から前記一対の金型の対向方向に突出するように、前記プレス成形面を囲むように設けられ、前記対向方向の突出高さに基づき前記磁気ディスク用ガラスブランクの板厚を設定するための板厚設定部とを有し、
    前記成形工程では、前記板厚設定部の前記突出高さに関する情報を取得し、前記板厚設定部の温度を、前記板厚設定部の温度を制御する温度制御手段を用いて、前記突出高さに関する情報に基づき制御することにより、前記板厚設定部の前記突出高さが均一になるように調整された状態で、プレス成形を行うことを特徴とする磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
  6. 前記温度制御手段は、所望の平坦度のガラスブランクを得るために各金型のプレス成形面の前記溶融ガラスと接する温度がプレス成形面同士で揃うように制御するための手段であって、
    前記温度制御手段は前記板厚設定部の外周に設けられている、請求項5に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
  7. 前記板厚設定部と前記温度制御手段との間には、前記板厚設定部内の温度差を低減するための均熱部材が設けられている、請求項5又は6に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
  8. 前記成形工程では、前記板厚設定部の温度を、前記板厚設定部の前記突出高さに関する情報として取得する、請求項5〜7の何れか1項に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
  9. 前記成形工程では、前記一対の金型を用いたプレス成形により得られた磁気ディスク用ガラスブランクの板厚を、前記板厚設定部の前記突出高さに関する情報として取得する、請求項5〜7の何れか1項に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
  10. 前記均熱部材は、熱伝導率が50W/(m・K)以上の材料で形成されている、請求項3又は7に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
  11. 前記板厚設定部は、ビッカース硬さが1000HV以上の材料で形成されている、請求項1〜10の何れか1項に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
  12. 前記成形工程では、落下中の溶融ガラスの塊を、水平方向両側から一対の金型でプレス成形する、請求項1〜11のいずれかに記載された磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
  13. 前記成形工程において、溶融ガラスの塊と接触する前に予め金型を加熱し、溶融ガラスの塊と接触後に金型を冷却する、請求項1〜12の何れか1項に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。

  14. 前記成形工程では、一対の型のプレス面の温度が溶融ガラスのガラス転移点以上屈服点未満の温度で、前記溶融ガラスの塊をプレスする、請求項1〜13の何れか1項に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。

  15. 前記成形工程では、ガラスブランクの残留応力値が、ガラスブランクの機械加工で破断が生じない許容値以下となるようにプレスする、請求項1〜14の何れか1項に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。

  16. 溶融ガラスのガラス転移点が650℃以上である、請求項1〜15の何れか1項に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
  17. 互いに対向する一対の金型を用いて、溶融ガラスの塊をプレス成形する成形工程を含む磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法であって、
    前記一対の金型は、前記プレス成形するためのプレス成形面と、前記プレス成形面の外周から前記一対の金型の対向方向に突出するように、前記プレス成形面を囲むように設けられ、前記対向方向の突出高さに基づき前記磁気ディスク用ガラスブランクの板厚を設定するための板厚設定部とを有し、
    板厚設定部の温度と板厚設定部の前記対向方向の熱膨張量との相関関係を予め求めておき、前記相関関係に基づいて、一対の金型が閉じた際にプレス成形面同士の間の距離が目標の距離となるように板厚設定部の温度から板厚設定部の熱膨張量を決定し、温度制御手段を用いて板厚設定部の熱膨張による突出高さを変化させることにより、プレス時のガラスブランクの板厚を所望の板厚に調整することを特徴とする磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
  18. (新規従属)
    前記成形工程では、溶融ガラス供給部から供給され落下中の溶融ガラスの塊を、水平方向の両側からプレス成形する、請求項17に記載された磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
  19. 前記温度制御手段は、プレス成形面と板厚設定部との温度が異なるようにそれぞれ独立に温度を制御する、請求項17又は18に記載された磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
  20. 板厚調整部においてプレス成形面に近い部分と遠い部分とで、熱膨張率及び/又は熱伝導率が異なる部材で構成されている、請求項17〜19の何れか1項に記載された磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
  21. 前記成形工程において、溶融ガラスの塊と接触する前に予め金型を加熱し、溶融ガラスの塊と接触後に金型を冷却する、請求項17〜20の何れか1項に記載された磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
  22. 一対の金型を持つプレスユニットを複数用いてプレスする構成であり、ユニット単位で一対の金型が閉じた際のプレス成形面同士の間の距離を調整する、請求項17〜21の何れか1項に記載された磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
  23. 全ユニットのブランクの板厚が一致するように、各ユニットの一対の金型が閉じた際のプレス成形面同士の間の距離を調整する、請求項22に記載された磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
  24. 請求項1〜23の何れか1項に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法により製造された磁気ディスク用ガラスブランクを用いて、磁気ディスク用ガラス基板を製造することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  25. 前記磁気ディスク用ガラスブランクに対して研磨加工を施すことにより、前記磁気ディスク用ガラスブランクの板厚の90%以上の板厚を有する磁気ディスク用ガラス基板を製造することを特徴とする、請求項24に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
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