JPWO2013051483A1 - 植物からポリアミン組成物を製造する方法 - Google Patents

植物からポリアミン組成物を製造する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
塩濃度が低い植物素材由来のポリアミン組成物であり、かつ生産効率の良いポリアミン組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
(1)植物及び/又は植物加工物をエタノールで処理する工程、(2)植物及び/又は植物加工物を水で処理する工程、(3)植物及び/又は植物加工物を酸性条件下で処理する工程、および(4)液体画分を分離し採取する工程を含むことを特徴とするポリアミン組成物の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、植物からポリアミン組成物を製造する方法に関する。
ポリアミンは、第1級アミノ基を2つ以上もつ脂肪族炭化水素の総称で生体内に存在する天然物であり、20種類以上のポリアミンが見出されている。近年ポリアミンは、その様々な生理活性が解明され、重要性が高まっている。ポリアミンの主な生理作用としては(1)核酸との相互作用による核酸の安定化と構造変化(2)種々の核酸合成系への促進作用(3)タンパク質合成系の活性化(4)細胞膜の安定化や物質の膜透過性の強化(5)活性酸素の消去(6)細胞増殖の促進(7)抗アレルギー作用が知られている。ポリアミン又はポリアミン組成物は、健康食品、化粧品、食品、医薬品用途に利用されつつある。
工業的に利用できるポリアミン又はポリアミン組成物の製造方法としては、魚類の白子から抽出し調整する方法(特許文献1)、乳又は乳素材から分離、回収する方法(特許文献2、特許文献3)、酵母菌体又は酵母培養液を酸性条件下で処理して調整する方法(特許文献4、特許文献5)が開示されている。また、植物素材からのポリアミン組成物の調整方法としては、植物素材を酸性条件下に処して抽出する方法(特許文献6、特許文献7)、植物素材に塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等の塩溶液を加えてポリアミン抽出物を製造する方法(特許文献8)が検討されてきた。
特開平8−238094号公報 特開2001−8663号公報 特開2001−95483号公報 特開平10−52291号公報 特開2000−245493号公報 特開平10−101624号公報 特開2007−291027号公報 特開2010−263816号公報
Plant CellPhysiol., 43(2),196−206,2002 J.Nutr.Biochem.,4,66−70,1993 Biosci.Biotech.Biochem.,61(9),1582−1584,1997
従来、植物素材からポリアミン又はポリアミン組成物を製造する場合、植物素材をpH2以下の強酸条件下での抽出工程に処し、抽出液をアルカリ溶液で中和する工程を経て製造されていた。しかしながら、強酸条件にするための酸溶液及び中和するためのアルカリ溶液を多量に使用するため、必然的に最終のポリアミン組成物中に含まれる塩濃度が高くなり、健康食品、化粧品、食品、医薬品等に配合される際に問題となっていた。
植物素材に塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等の塩溶液を加えてポリアミン抽出物を製造する方法(特許文献8)においても、最終組成物に含まれる塩が多くなるため、同様に健康食品、化粧品、食品、医薬品等への配合に際し問題を生じる。
そのため、塩濃度が低い植物素材由来のポリアミン組成物であり、かつ生産効率の良いポリアミン組成物の製造方法が求められていた。
また、強酸条件下での抽出工程は、製造に汎用されているステンレスタンクを腐食するため、大量生産を困難にしていた。このため、強酸条件を使用しないポリアミン組成物の製造方法が求められていた。
本発明者らが鋭意検討した結果、塩濃度が低く、かつ生産効率の良いポリアミンの製造方法と、強酸を使用しないポリアミン組成物の製造方法の双方の課題を解決する手段を見出した。本発明者らは、酸性条件での抽出工程の前工程として、水での抽出工程を設け、その後、弱酸性条件下での抽出工程に処することによってポリアミン組成物を製造可能であることを見出した。
植物特有の問題として、植物には多量の多糖類、ポリフェノール、二次代謝産物等が多く含まれており、ポリアミン組成物の抽出効率を下げる原因となっている。そこでさらに検討を加えた結果、水、及び弱酸性条件下による抽出工程の前に、植物及び/又は植物加工物をエタノールで処理することにより、処理溶液の粘度減少によって作業性が改善されるとともに、ポリアミン以外の多糖類、ポリフェノール、二次代謝産物が除去されて、ポリアミン組成物中のポリアミン含量率が有意に上昇することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下のようなポリアミン組成物の製造方法およびポリアミン組成物を提供する。
1.(1)植物及び/又は植物加工物をエタノールで処理する工程、(2)植物及び/又は植物加工物を水で処理する工程、(3)植物及び/又は植物加工物を酸性条件下で処理する工程、および(4)液体画分を分離し採取する工程を含むことを特徴とするポリアミン組成物の製造方法。
2.更に(5)pH6.5〜pH7.5に調整する工程を含む、1.に記載のポリアミン組成物の製造方法。
3.植物及び/又は植物加工物をエタノールで処理する工程におけるエタノール濃度が20%(v/v)以上90%(v/v)以下である、1.もしくは2.に記載のポリアミン組成物の製造方法。
4.植物及び/又は植物加工物をエタノールで処理する工程におけるエタノール濃度が30%(v/v)以上70%(v/v)以下である、1.〜3.のいずれかに記載のポリアミン組成物の製造方法。
5.植物及び/又は植物加工物を酸性条件下で処理する工程が、植物及び/又は植物加工物をpH3.0乃至pH6.0の酸性条件下で処理する工程である、1.〜4.のいずれかに記載のポリアミン組成物の製造方法。
6.植物及び/又は植物加工物を酸性条件下で処理する工程が、植物及び/又は植物加工物をpH4.0乃至pH6.0の酸性条件下で処理する工程である、1.〜5.のいずれかに記載のポリアミン組成物の製造方法。
7.植物及び/又は植物加工物を酸性条件下で処する工程が、植物及び/又は植物加工物を塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、リン酸、クエン酸、乳酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、安息香酸、スルホサリチル酸及びギ酸からなる群より選ばれた少なくとも1種の酸性溶液で処する工程である、1.〜6.のいずれかに記載のポリアミン組成物の製造方法。
8.植物及び/又は植物加工物を酸性条件下で処する工程が、植物及び/又は植物加工物を塩酸及び/又はクエン酸の酸性溶液で処する工程である、7.に記載のポリアミン組成物の製造方法。
9.植物及び/又は植物加工物を酸性条件下で処する工程が、植物及び/又は植物加工物をクエン酸の酸性溶液で処する工程である、8.に記載のポリアミン組成物の製造方法。
10.ポリアミン組成物が、1,3−ジアミノプロパン、プトレシン、カダベリン、カルジン、スペルミジン、ホモスペルミジン、アミノプロピルカダベリン、テルミン、スペルミン、テルモスペルミン、カナバルミン、アミノペンチルノルスペルミジン、N,N−ビス(アミノプロピル)カダベリン、ホモスペルミン、カルドペンタミン、ホモカルドペンタミン、カルドヘキサミン及びホモカルドヘキサミンからなる群より選ばれた少なくとも1種以上の化合物を含む組成物である、1.〜9.のいずれかに記載のポリアミン組成物の製造方法。
11.ポリアミン組成物が、プトレシン、カダベリン、スペルミジン及びスペルミンからなる群より選ばれた少なくとも1種以上の化合物を含む組成物である、10.に記載のポリアミン組成物の製造方法。
12.植物及び/又は植物加工物が、コムギ種子、コムギ胚芽、コムギ胚、ダイズ種子、ダイズ胚芽、ダイズ胚、豆乳及びオカラからなる群より選ばれた少なくとも1つに由来する植物及び/又は植物加工物である、1.〜11.のいずれかに記載のポリアミン組成物の製造方法。
13.植物及び/又は植物加工物が、コムギ種子、コムギ胚芽、コムギ胚、ダイズ種子、ダイズ胚芽、又はダイズ胚に由来する植物及び/又は植物加工物である、12.に記載のポリアミン組成物の製造方法。
14.植物及び/又は植物加工物から製造されたポリアミン組成物であって、固形分中のクエン酸もしくはクエン酸塩濃度が5重量%以下であるポリアミン組成物。
本発明によって、固形分当たりのポリアミン含量が高いポリアミン組成物を得ることができるとともに、生産効率の向上を期待できる。さらに、水のみで植物素材からポリアミン組成物を抽出する方法と比べて、より高いポリアミン濃度を示すポリアミン組成物を得ることができ、酸性条件下のみで植物素材からポリアミン組成物を抽出する方法と比べて、最終の塩濃度がより低いポリアミン組成物を得ることができる。すなわち本発明は、低塩濃度、高ポリアミン濃度のポリアミン組成物を製造することができる点で、従来にはない顕著な効果を有する。
さらに、強酸条件ではなく弱酸条件下で抽出を行うことにより、酸によるステンレスの腐食の影響が小さくなる結果、工業的に汎用される大容量のステンレスタンクの使用が可能になり、ポリアミン組成物の大量製造が可能になる。
エタノール処理工程におけるエタノール濃度と粘度との関係を示す図である。 エタノール処理工程におけるエタノール濃度と前処理液及び抽出液の固形分収量の関係を示す図である。 エタノール処理工程におけるエタノール濃度と前処理液及び抽出液のポリアミン収量の関係を示す図である。 抽出液の固形分当たりのポリアミン含量を示す図である。
「ポリアミン組成物」とは、ポリアミンを含む、植物に由来する化合物を含有する組成物のことである。ポリアミン組成物にはポリアミン以外の天然成分、例えば単糖、オリゴ糖、多糖等の糖類、ペプチド、タンパク質などが含まれることがある。本発明では、水溶液および粉体のいずれの形態であってもポリアミン組成物とよぶ。「固形分」とは、水溶液であるポリアミン組成物(溶液)中の水を除いた溶質分のことであり、ポリアミンの他、糖類やペプチド類、塩を含む。ポリアミン組成物が粉体である場合、「固形分」は粉体であるポリアミン組成物全体のことである。
本発明において、「植物」とは植物体もしくは植物組織をいい、「植物加工物」とはそれらを加工して得られる物をいう。「及び/又は」とは、どちらも含むか、もしくはどちらか一種でもよいという意味である。
植物、植物加工物としては、種々のものを用いることができ、特に限定されないが、例えばウリ科植物、ナス科植物、イネ科植物、アブラナ科植物、マメ科植物、アオイ科植物、キク科植物、アカザ科植物、マメ科植物、ツバキ科植物、これらの植物抽出物、植物エキス、加工処理物などが挙げられる。具体的には、サツマイモ、トマト、キュウリ、カボチャ、メロン、スイカ、タバコ、シロイヌナズナ、ピーマン、ナス、マメ、サトイモ、ホウレンソウ、ニンジン、イチゴ、ジャガイモ、イネ、トウモロコシ、アルファルファ、コムギ、オオムギ、ダイズ、ナタネ、ソルガム、ユーカリ、ポプラ、ケナフ、杜仲、サトウキビ、シュガービート、キャッサバ、サゴヤシ、アカザ、ユリ、ラン、カーネーション、バラ、キク、ペチュニア、トレニア、キンギョソウ、シクラメン、カスミソウ、ゼラニウム、ヒマワリ、シバ、ワタ、エノキダケ、ホンシメジ、マツタケ、シイタケ、キノコ類、チョウセンニンジン、アガリクス、ウコン、オタネニンジン、柑橘類、バナナ、キウイ、果汁、コメ、コムギ、オオムギ、ダイズ、トウモロコシ、マイロ、ヒマワリ、胚芽エキス、胚エキス、緑茶、紅茶、ウーロン茶、納豆、豆乳、オカラなどが挙げられる。好ましくは、イネ科植物、マメ科植物が用いられる。
ポリアミン組成物の製造に使用される植物体もしくは植物組織としては、特に限定されないが、好ましくは種子形態又は生育過程にある植物体もしくは組織である。種子形態もしくは生育過程にある植物体もしくは組織としては、全樹、花、蕾、子房、果実、葉、子葉、茎、芽、根、種子、乾燥種子、胚、胚芽、根が例示される。好ましくは、果実、葉、茎、芽、種子、乾燥種子、胚芽、胚であり、特に好ましくは、種子、乾燥種子、胚芽、胚である。
本発明においては、コムギ種子、コムギ胚芽、コムギ胚、ダイズ種子、ダイズ胚芽、ダイズ胚、植物加工物として豆乳、オカラ、又はこれらを組み合わせたものを好適に使用することができ、より好ましくは、コムギ種子、コムギ胚芽、コムギ胚、ダイズ種子、ダイズ胚芽又はダイズ胚を使用できる。
「植物及び/又は植物加工物をエタノールで処理する工程」とは、植物及び/又は植物加工物をエタノール溶液中に浸し、静置もしくは攪拌する工程をいう。本工程により、多糖類、ポリフェノール、二次代謝産物がエタノール中に抽出される。コムギ等の穀類を原料として用いる場合、粘度上昇の原因となるグルテンが抽出されることにより、本工程における抽出液の粘度が低下し、さらに下記に述べる次工程における抽出液の粘度も抑えることができる。また、ポリアミン以外の成分が除去されることにより、最終的なポリアミン組成物における固形分当たりのポリアミン含量を向上させることができる。本工程におけるエタノール溶液の濃度は、好ましくは20%(v/v)以上90%(v/v)以下であり、さらに好ましくは30%(v/v)以上70%(v/v)以下である。20%(v/v)より低い濃度では、多糖類、ポリフェノール、二次代謝産物等の抽出が不十分となって粘度が上昇してしまうと共に、ポリアミンの抽出量も多くなってしまい、好ましくない。一方、90%(v/v)より高い濃度では、抽出効率が低下しポリアミン組成物の固形分含量が増加するため、やはり好ましくない。処理時間は抽出量により異なるが10分間以上であることが好ましく、より好ましくは30分間以上、さらに好ましくは1時間以上である。10分間より短いと、本処理工程におけるポリアミン以外の成分が十分に抽出されない場合がある。上限は制限されないが、通常は24時間以下で行われ、好ましくは12時間以下、さらに好ましくは6時間以下で行われる。
ポリアミンはエタノールに抽出されにくいため、植物及び/又は植物加工物をエタノールで処理した後、ポリアミンは液体画分ではなく植物体残渣に多く含まれている。したがって、本発明の好ましい実施態様としては、遠心分離及び/又はろ過分離によって液体画分と植物体残渣や沈殿分とを分離し、植物体残渣や沈殿分を回収して、次の工程に処する。
「植物及び/又は植物加工物を水で処理する工程」とは、植物及び/又は植物加工物を水中に浸し、植物及び/又は植物加工物からポリアミンを含有する組成物を抽出する工程をいう。「水」は酸溶液もしくはアルカリ溶液を加えていない水のことをいう。本工程は、静置してもよいし、攪拌してもよい。処理時間は抽出量により異なるが10分間以上であることが好ましく、より好ましくは30分間以上、さらに好ましくは1時間以上である。10分間より短いと、本処理工程における十分量のポリアミン組成物が抽出されない場合がある。上限は制限されないが、通常は24時間以下で行われ、好ましくは12時間以下、特に好ましくは6時間以下で行われる。24時間以上処理したとしても、ポリアミン組成物の抽出量は飽和に向かい、その後新たに抽出できる量は限られると考えられる。
「植物及び/又は植物加工物を酸性条件下で処理する工程」とは、植物及び/又は植物加工物をpH6以下の酸性溶液中に浸し、静置及び/又は攪拌によりポリアミンを含有する抽出物を抽出する工程をいう。最終組成物の塩濃度の低減、及びステンレスタンクの腐食防止の観点から、弱酸条件であることが好ましい。具体的にはpH3.0〜pH6.0の間で工程を実施することが好ましく、より好ましくはpH4.0〜pH6.0の間である。本発明におけるpHは、酸もしくは酸溶液投入後静置または攪拌により10分経過後に測定した数値に基づく。
酸性条件下で処理するために使用される酸性溶液としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、リン酸、クエン酸、乳酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、安息香酸、スルホサリチル酸及びギ酸からなる群より選ばれた少なくとも1種の酸性溶液が挙げられる。化粧品、食品、医薬品、医薬部外品、動物飼料への使用の観点から、塩酸及び/又はクエン酸の酸性溶液を使用することが好ましく、クエン酸の酸性溶液を使用することが特に好ましい。
植物及び/又は植物加工物を酸性条件下で処理する工程は、酸もしくは酸溶液を投入し静置もしくは攪拌する工程を1回もしくは複数回行うことにより行う。本発明の好ましい実施態様は、酸もしくは酸溶液を投入し静置もしくは攪拌する工程を複数回行うことを含む工程である。酸もしくは酸溶液の投入量は植物や植物加工物の種類や量により異なるため、酸もしくは酸溶液の投入量を最低必要量にするためには、pHを測定しつつ複数回に分けたほうがよいからである。また、酸性溶液と植物もしくは植物加工物が反応すると若干の中和が起こるが、少量ずつ酸もしくは酸溶液を投入することによって、中和反応により酸性溶液のステンレスの腐食性が緩和され、ステンレスタンクへの負担が少なくなるからである。
酸性条件下での処理時間は、ポリアミン組成物の抽出量から適宜設定しうるが、一般に10分間以上が好ましく、より好ましくは30分間以上、さらに好ましくは1時間以上である。10分間より短いと、本処理工程における十分量のポリアミン組成物が抽出されない場合がある。上限は限定されないが、通常は24時間以下、好ましくは12時間以下、特に好ましくは6時間以下である。24時間以上処理したとしても、ポリアミン組成物の抽出量は飽和に向かい、その後新たに抽出できる量は限られると考えられる。
植物及び/又は植物加工物を酸性条件下で処理する工程は、植物及び/又は植物加工物を水で処理する工程の後に行うことが好ましい。本発明の実施形態の一例において、植物及び/又は植物加工物を水で処理する工程の後、該水溶液に酸もしくは酸溶液を加えて酸性条件にし、連続して植物及び/又は植物加工物を酸性条件下で処理する工程を行う。
本発明は、液体画分を分離し採取する工程を含む。本工程は、植物及び/又は植物加工物を水及び酸性条件下で処理した後、遠心分離及び/又はろ過分離によって液体画分と植物体残渣や沈殿分と分離し、回収する工程である。回収された液体画分にはポリアミンが多く含まれており、ポリアミン組成物となる。
本発明は、必要に応じて酸性条件の溶液をpH6.5〜pH7.5に調整する工程を含む。この工程は、液体画分を分離し採取する工程の前もしくは後のいずれにも行うことができるが、液体画分を分離し採取する工程の後に本工程を行うことが好ましい。pH調整は、アルカリ溶液を添加することにより行うことができ、アルカリ溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化バリウム、アンモニアの溶液などが挙げられる。中和した際に生じる塩の人体への安全性の観点から、水酸化ナトリウムを使用することが好ましい。
ポリアミン組成物の形態は水溶液の形態もしくは粉体の形態で提供される。ポリアミン組成物の粉体は、植物及び/又は植物加工物を水及び酸性条件下で処理し、遠心分離もしくはろ過分離によって回収した液体画分を、スプレードライもしくは真空凍結乾燥により処理することにより得ることができる。
本発明において「ポリアミン」とは、第1級アミノ基を2つ以上もつ脂肪族炭化水素の総称で生体内に普遍的に存在する天然物であり、20種類以上のポリアミンが見いだされている。例えば、1,3−ジアミノプロパン、プトレシン、カダベリン、カルジン、スペルミジン、ホモスペルミジン、アミノプロピルカダベリン、テルミン、スペルミン、テルモスペルミン、カナバルミン、アミノペンチルノルスペルミジン、N,N−ビス(アミノプロピル)カダベリン、ホモスペルミン、カルドペンタミン、ホモカルドペンタミン、カルドヘキサミン、ホモカルドヘキサミンなどが挙げられる。代表的なポリアミンとしてはプトレシン、スペルミジン、スペルミン、カダベリンがある。
プトレシンは代表的なポリアミンの一つで、生物体内に普遍的に存在する一般的な天然物であり、第一級アミノ基を2つもつ脂肪族炭化水素化合物である。カダベリンは代表的なポリアミンの一つで、生物体内に普遍的に存在する一般的な天然物であり、第一級アミノ基を2つもつ脂肪族炭化水素化合物である。スペルミジンは代表的なポリアミンの一つで、生物体内に普遍的に存在する一般的な天然物であり、第一級アミノ基を3つもつ脂肪族炭化水素化合物である。スペルミンは代表的なポリアミンの一つで、生物体内に普遍的に存在する一般的な天然物であり、第一級アミノ基を4つもつ脂肪族炭化水素化合物である。
必要に応じてポリアミン組成物は、イオン交換法、膜分画法、ゲル濾過法、電気透析法で脱塩処理や精製処理を行っても良く、これらの方法を少なくとも1つ以上実施することで、より高純度なポリアミン組成物を得ることができる。例えば、イオン交換法としては、ポリアミン溶液を、イオン交換樹脂を充填したカラムに通し、ポリアミンとアミノ酸、ペプチド、蛋白質、糖類等の夾雑物とを分離する。使用するイオン交換樹脂としては、イオン交換基がスルホン酸基、スルホプロピル基、リン酸基、カルボキシルメチル基、アミノエチル基、ジエチルアミノ基、4級アミノエチル基、4級アンモニウム基等であればよく、陽イオン交換樹脂でも陰イオン交換樹脂でもいずれも使用することができる。陽イオン交換樹脂を使用した場合には、ポリアミンは陽イオン交換樹脂に吸着されるので、非吸着物質を十分に分離した後、硫酸、塩酸等の酸性溶液や塩化ナトリウム等の塩溶液でポリアミンを溶出する。陰イオン交換樹脂を使用した場合には、ポリアミンは陰イオン交換樹脂に吸着されないので、ポリアミンを含む非吸着画分を回収する。例えば、膜分画法としては、セルロース系、酢酸セルロース系、ポリスルホン系、ポリアミド系、ポリアクリルニトリル系、ポリ四フッ化エチレン系、ポリエステル系、ポリプロピレン系等で分画分子量が1000〜100000の範囲の限外濾過(UF)膜を使用してポリアミン組成物のUFを行い、ポリアミンを含む透過液を回収する。また、食塩阻止率30〜80%のナノフィルトレーション (NF) 膜を使用してポリアミン溶液のNFを行い、脱塩する。例えば、ゲル濾過法は、ポリアミン組成物を中和し、ゲル濾過担体を充填したカラムに通して分子量分画によりポリアミンを回収する。使用するゲル濾過担体は、デキストラン系、アクリルアミド系、アガロース系、セルロース系、ポリビニル系、ガラス系、ポリスチレン系などで分画分子量が100〜100000の範囲である。例えば、電気透析法は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とによって仕切られた各膜間にポリアミン組成物と食塩水とを交互に供給して電気透析を行う。電気透析の条件は、初期電流密度が
0.5〜15A/dm2、電圧が
0.1〜1.5V/槽などが挙げられる。
ポリアミン組成物には、必要に応じて、一般に賦形剤として用いられているショ糖脂肪酸エステルや、脂肪酸エステルなどの乳化剤、結晶セルロース、酵素分解デキストリン、難消化性デキストリン、クラスターデキストリン、シクロデキストリン、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖などを添加することができる。
本発明は、ポリフェノール吸着剤を使用する必要がないという特徴を有する。従来の強酸条件下で植物素材からポリアミン組成物を抽出する方法においては、ポリフェノール吸着剤の使用することによりポリアミン又はポリアミン組成物を回収していた。ポリフェノール吸着剤とは、ポリフェノール類を吸着できる物質であり、PVPP(ポリビニルポリピロリドン)、PVP(ポリビニルピロリドン)、PEG(ポリエチレングリコール)などが使用される。もちろんこれは、本発明の実施態様においてポリフェノール吸着剤の使用を妨げるものではない。
本発明は、植物及び/又は植物加工物から製造されたポリアミン組成物であって、固形分中のクエン酸もしくはクエン酸塩濃度が5重量%以下であるポリアミン組成物を提供する。本発明は、低塩濃度、高ポリアミン濃度のポリアミン組成物を提供するものである。固形分中のクエン酸もしくはクエン酸塩濃度とは、溶質中のクエン酸もしくはクエン酸塩濃度のことであり、固形分に対して5重量%以下であることが好ましく、さらに3重量%以下であることが好ましい。ポリアミン組成物が粉体である場合、「固形分」は粉体であるポリアミン組成物全体のことであり、固形分中のクエン酸もしくはクエン酸塩濃度とは、粉体中のクエン酸もしくはクエン酸塩濃度のことである。
本発明のポリアミン組成物は、化粧品、食品、医薬品、医薬部外品、動物飼料などに配合して用いることができる。
以下に本発明の実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。
(ポリアミン濃度測定方法)
試料中のポリアミン含量を以下の方法で調べた。植物中のポリアミンは遊離型ポリアミン、化合型ポリアミン、結合型ポリアミンがあり、いずれも解析することができるが(非特許文献1−3)、本発明では遊離型ポリアミンを測定した。
(1)スクリューキャップ付きのマイクロチューブに、サンプル20μl、交換水360μl、内部標準液20μl(0.05nmol/μl 1,7−diaminoheptane)、200μLの飽和炭酸ナトリウム水溶液、200μLのダンシルクロライド/アセトン溶液(10mg/mL)を加えて軽く混和する。チューブの栓をしっかりと閉めたのち、60℃のウォーターバスで1時間加温してダンシル化を行う。
(2)チューブを放冷した後、プロリン水溶液(100mg/mL)を200μL加えて混和する。ウォーターバスで30分間再加温する。
(3)再放冷後、窒素ガスを吹き付けてアセトンを除いた後に、600μLのトルエンを加えて激しく混和する。チューブを遠心して2相に分かれた後に、上層のトルエン層を500μLマイクロチューブに分取する。分取したトルエンに窒素ガスを吹き付けてトルエンを完全除去する。マイクロチューブに120μLのメタノールを加えてダンシル化遊離型ポリアミンを溶解させる。
(4)プトレシン、スペルミジン、スペルミンの遊離型ポリアミン量の定量は蛍光検出器(励起波長:365nm・発光波長:510nm)を接続した高速液体クロマトグラフィーを用いて内部標準法で分析する。HPLCカラムはμBondapak C18(Waters社製:027324、3.9×300mm、粒子径10μm)を使用する。試料中のポリアミン含量は標準液と試料のHPLCチャートから、それぞれ各ポリアミンと内部標準のピーク面積を求めて算出する。
(固形分濃度測定方法)
試料中の固形分含量は以下の方法で調べた。
(1)105℃の乾燥機にアルミ缶を入れ、1時間乾燥させる。
(2)デシケーターにて30分間放冷し、アルミ缶重量(風袋重量)を測定する。
(3)アルミ缶に試料1mLを入れ、その重量(試料重量)を測定する。
(4)アルミ缶を105℃の乾燥機に戻し、2時間乾燥させる。
(5)デシケーターにて30分間放冷後に重量(乾燥後重量)を測定する。
(6)固形分濃度を下記計算式にて求める。
固形分濃度(%)=[(乾燥後重量)−(風袋重量)]/(試料重量)×100
(比較例1)
(1)コムギ胚芽100gに水(エタノール濃度0%(v/v))400mlを加え、水温25℃の条件下で、撹拌機(スリーワンモーター、HEIDON製)を用いて100rpmで1時間攪拌した。攪拌終了後、粘度を測定した。粘度測定は振動式粘度計VISCOMATE VM−10A(CBC社製)を用いて行った。
(2)次いで12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、植物体残渣と上清とに分離し、上清を回収した。得られた上清を前処理液とし、ポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
(3)上清を回収した後の植物体残渣に水400mlを加え、水温25℃の条件下で、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(4)(3)の工程後、クエン酸(無水)を加え、pHを4.0に調整し、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(5)再びpH4.0となるようクエン酸(無水)を加えて調整し、攪拌機を用いて100rpmでさらに1時間攪拌した。攪拌終了後、(1)と同様に粘度を測定した。
(6)12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、上清を回収して抽出液とした。抽出液のポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
比較例1の結果は、エタノール処理工程における粘度が63.9mPa・sであり、前処理液のポリアミン濃度は0.0108%、固形分濃度は8.69%であった。また、抽出液のポリアミン濃度は0.0098%、固形分濃度は2.69%、固形分あたりのポリアミン濃度は0.363%であった。
比較例1、2と実施例1〜7の結果を、表1と図1〜4に示す。
(実施例1)
(1)コムギ胚芽100gにエタノール濃度20%(v/v)のエタノール溶液400mlを加え、水温25℃の条件下で、撹拌機(スリーワンモーター、HEIDON製)を用いて100rpmで1時間攪拌した。攪拌終了後、粘度を測定した。粘度測定は振動式粘度計VISCOMATE VM−10A(CBC社製)を用いて行った。
(2)次いで12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、植物体残渣と上清とに分離し、上清を回収した。得られた上清を前処理液とし、ポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
(3)上清を回収した後の植物体残渣に水400mlを加え、水温25℃の条件下で、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(4)(3)の工程後、クエン酸(無水)を加え、pHを4.0に調整し、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(5)再びpH4.0となるようクエン酸(無水)を加えて調整し、攪拌機を用いて100rpmでさらに1時間攪拌した。攪拌終了後、(1)と同様に粘度を測定した。
(6)12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、上清を回収して抽出液とした。抽出液のポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
実施例1の結果は、エタノール処理工程における粘度が5.29mPa・sであり、前処理液のポリアミン濃度は0.0058%、固形分濃度は8.19%であった。また、抽出液のポリアミン濃度は0.0146%、固形分濃度は3.86%、固形分あたりのポリアミン濃度は0.378%であった。比較例3の固形分当たりのポリアミン濃度(PA/固形分)(%)を100とした時の本実施例の固形分当たりのポリアミン濃度の増減割合は、104.3となった。
(実施例2)
(1)コムギ胚芽100gにエタノール濃度30%(v/v)のエタノール溶液400mlを加え、水温25℃の条件下で、撹拌機(スリーワンモーター、HEIDON製)を用いて100rpmで1時間攪拌した。攪拌終了後、粘度を測定した。粘度測定は振動式粘度計VISCOMATE VM−10A(CBC社製)を用いて行った。
(2)次いで12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、植物体残渣と上清とに分離し、上清を回収した。得られた上清を前処理液とし、ポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
(3)上清を回収した後の植物体残渣に水400mlを加え、水温25℃の条件下で、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(4)(3)の工程後、クエン酸(無水)を加え、pHを4.0に調整し、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(5)再びpH4.0となるようクエン酸(無水)を加えて調整し、攪拌機を用いて100rpmでさらに1時間攪拌した。攪拌終了後、(1)と同様に粘度を測定した。
(6)12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、上清を回収して抽出液とした。抽出液のポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
実施例2の結果は、エタノール処理工程における粘度が5.24mPa・sであり、前処理液のポリアミン濃度は0.0045%、固形分濃度は8.34%であった。また、抽出液のポリアミン濃度は0.0147%、固形分濃度は3.08%、固形分あたりのポリアミン濃度は0.476%であった。比較例3の固形分当たりのポリアミン濃度(PA/固形分)(%)を100とした時の本実施例の固形分当たりのポリアミン濃度の増減割合は、131.4となった。
(実施例3)
(1)コムギ胚芽100gにエタノール濃度40%(v/v)のエタノール溶液400mlを加え、水温25℃の条件下で、撹拌機(スリーワンモーター、HEIDON製)を用いて100rpmで1時間攪拌した。攪拌終了後、粘度を測定した。粘度測定は振動式粘度計VISCOMATE VM−10A(CBC社製)を用いて行った。
(2)次いで12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、植物体残渣と上清とに分離し、上清を回収した。得られた上清を前処理液とし、ポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
(3)上清を回収した後の植物体残渣に水400mlを加え、水温25℃の条件下で、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(4)(3)の工程後、クエン酸(無水)を加え、pHを4.0に調整し、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(5)再びpH4.0となるようクエン酸(無水)を加えて調整し、攪拌機を用いて100rpmでさらに1時間攪拌した。攪拌終了後、(1)と同様に粘度を測定した。
(6)12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、上清を回収して抽出液とした。抽出液のポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
実施例3の結果は、エタノール処理工程における粘度が6.32mPa・sであり、前処理液のポリアミン濃度は0.0033%、固形分濃度は8.09%であった。また、抽出液のポリアミン濃度は0.0144%、固形分濃度は3.44%、固形分あたりのポリアミン濃度は0.419%であった。比較例3の固形分当たりのポリアミン濃度(PA/固形分)(%)を100とした時の本実施例の固形分当たりのポリアミン濃度の増減割合は、115.4となった。
(実施例4)
(1)コムギ胚芽100gにエタノール濃度50%(v/v)のエタノール溶液400mlを加え、水温25℃の条件下で、撹拌機(スリーワンモーター、HEIDON製)を用いて100rpmで1時間攪拌した。攪拌終了後、粘度を測定した。粘度測定は振動式粘度計VISCOMATE VM−10A(CBC社製)を用いて行った。
(2)次いで12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、植物体残渣と上清とに分離し、上清を回収した。得られた上清を前処理液とし、ポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
(3)上清を回収した後の植物体残渣に水400mlを加え、水温25℃の条件下で、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(4)(3)の工程後、クエン酸(無水)を加え、pHを4.0に調整し、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(5)再びpH4.0となるようクエン酸(無水)を加えて調整し、攪拌機を用いて100rpmでさらに1時間攪拌した。攪拌終了後、(1)と同様に粘度を測定した。
(6)12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、上清を回収して抽出液とした。抽出液のポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
実施例4の結果は、エタノール処理工程における粘度が4.65mPa・sであり、前処理液のポリアミン濃度は0.0026%、固形分濃度は8.02%であった。また、抽出液のポリアミン濃度は0.0133%、固形分濃度は3.75%、固形分あたりのポリアミン濃度は0.353%であった。比較例3の固形分当たりのポリアミン濃度(PA/固形分)(%)を100とした時の本実施例の固形分当たりのポリアミン濃度の増減割合は、97.5となった。
(実施例5)
(1)コムギ胚芽100gにエタノール濃度60%(v/v)のエタノール溶液400mlを加え、水温25℃の条件下で、撹拌機(スリーワンモーター、HEIDON製)を用いて100rpmで1時間攪拌した。攪拌終了後、粘度を測定した。粘度測定は振動式粘度計VISCOMATE VM−10A(CBC社製)を用いて行った。
(2)次いで12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、植物体残渣と上清とに分離し、上清を回収した。得られた上清を前処理液とし、ポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
(3)上清を回収した後の植物体残渣に水400mlを加え、水温25℃の条件下で、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(4)(3)の工程後、クエン酸(無水)を加え、pHを4.0に調整し、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(5)再びpH4.0となるようクエン酸(無水)を加えて調整し、攪拌機を用いて100rpmでさらに1時間攪拌した。攪拌終了後、(1)と同様に粘度を測定した。
(6)12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、上清を回収して抽出液とした。抽出液のポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
実施例5の結果は、エタノール処理工程における粘度が4.93mPa・sであり、前処理液のポリアミン濃度は0.0029%、固形分濃度は7.64%であった。また、抽出液のポリアミン濃度は0.0134%、固形分濃度は3.85%、固形分あたりのポリアミン濃度は0.347%であった。比較例3の固形分当たりのポリアミン濃度(PA/固形分)(%)を100とした時の本実施例の固形分当たりのポリアミン濃度の増減割合は、95.6となった。
(実施例6)
(1)コムギ胚芽100gにエタノール濃度70%(v/v)のエタノール溶液400mlを加え、水温25℃の条件下で、撹拌機(スリーワンモーター、HEIDON製)を用いて100rpmで1時間攪拌した。攪拌終了後、粘度を測定した。粘度測定は振動式粘度計VISCOMATE VM−10A(CBC社製)を用いて行った。
(2)次いで12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、植物体残渣と上清とに分離し、上清を回収した。得られた上清を前処理液とし、ポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
(3)上清を回収した後の植物体残渣に水400mlを加え、水温25℃の条件下で、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(4)(3)の工程後、クエン酸(無水)を加え、pHを4.0に調整し、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(5)再びpH4.0となるようクエン酸(無水)を加えて調整し、攪拌機を用いて100rpmでさらに1時間攪拌した。攪拌終了後、(1)と同様に粘度を測定した。
(6)12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、上清を回収して抽出液とした。抽出液のポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
実施例6の結果は、エタノール処理工程における粘度が5.03mPa・sであり、前処理液のポリアミン濃度は0.0026%、固形分濃度は7.30%であった。また、抽出液のポリアミン濃度は0.0150%、固形分濃度は4.21%、固形分あたりのポリアミン濃度は0.356%であった。比較例3の固形分当たりのポリアミン濃度(PA/固形分)(%)を100とした時の本実施例の固形分当たりのポリアミン濃度の増減割合は、98.3となった。
(実施例7)
(1)コムギ胚芽100gにエタノール濃度90%(v/v)のエタノール溶液400mlを加え、水温25℃の条件下で、撹拌機(スリーワンモーター、HEIDON製)を用いて100rpmで1時間攪拌した。攪拌終了後、粘度を測定した。粘度測定は振動式粘度計VISCOMATE VM−10A(CBC社製)を用いて行った。
(2)次いで12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、植物体残渣と上清とに分離し、上清を回収した。得られた上清を前処理液とし、ポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
(3)上清を回収した後の植物体残渣に水400mlを加え、水温25℃の条件下で、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(4)(3)の工程後、クエン酸(無水)を加え、pHを4.0に調整し、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(5)再びpH4.0となるようクエン酸(無水)を加えて調整し、攪拌機を用いて100rpmでさらに1時間攪拌した。攪拌終了後、(1)と同様に粘度を測定した。
(6)12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、上清を回収して抽出液とした。抽出液のポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
実施例7の結果は、エタノール処理工程における粘度が3.56mPa・sであり、前処理液のポリアミン濃度は0.0016%、固形分濃度は5.03%であった。また、抽出液のポリアミン濃度は0.0152%、固形分濃度は5.91%、固形分あたりのポリアミン濃度は0.257%であった。比較例3の固形分当たりのポリアミン濃度(PA/固形分)(%)を100とした時の本実施例の固形分当たりのポリアミン濃度の増減割合は、70.9となった。
(比較例2)
(1)コムギ胚芽100gに水400mlを加え、水温25℃の条件下で、撹拌機(スリーワンモーター、HEIDON製)を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(2)次いで、クエン酸(無水)を加え、pHを4.0に調整し、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(3)再びpH4.0となるようクエン酸(無水)を加えて調整し、攪拌機を用いて100rpmでさらに1時間攪拌した。攪拌終了後、振動式粘度計VISCOMATE VM−10A(CBC社製)を用いて粘度を測定した。
(4)12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、上清を回収して抽出液とした。抽出液のポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
比較例2の結果は、抽出液のポリアミン濃度は0.0194%、固形分濃度は12.6%、固形分あたりのポリアミン濃度は0.154%であった。比較例3の固形分当たりのポリアミン濃度(PA/固形分)(%)を100とした時の本実施例の固形分当たりのポリアミン濃度の増減割合は、42.5となった。
以上の結果から分かるとおり、水及び弱酸性条件下での抽出工程の前にエタノールでの処理工程を設けることにより、粘度を有意に低下させることができ、作業性の向上に大いに寄与するものとなった。また、エタノールの処理工程を設けない場合と比べると、ポリアミン収量の大幅な増加は見られなかったものの、抽出液中の固形分濃度に大きな差があり、エタノールでの処理工程、水及び弱酸性条件下での抽出工程が固形分当たりのポリアミン含量を増加させる点で顕著な効果があることが明らかとなった。
Figure 2013051483
(比較例3)
(1)ダイズ胚芽100gに水(エタノール濃度0%(v/v))400mlを加え、水温25℃の条件下で、撹拌機(スリーワンモーター、HEIDON製)を用いて100rpmで1時間攪拌した。攪拌終了後、粘度を測定した。粘度測定は振動式粘度計VISCOMATE VM−10A(CBC社製)を用いて行った。
(2)次いで12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、植物体残渣と上清とに分離し、上清を回収した。得られた上清を前処理液とし、ポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
(3)上清を回収した後の植物体残渣に水400mlを加え、水温25℃の条件下で、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(4)(3)の工程後、クエン酸(無水)を加え、pHを4.0に調整し、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(5)再びpH4.0となるようクエン酸(無水)を加えて調整し、攪拌機を用いて100rpmでさらに1時間攪拌した。攪拌終了後、(1)と同様に粘度を測定した。
(6)12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、上清を回収して抽出液とした。抽出液のポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
比較例3の結果は、エタノール処理工程における粘度が1.84mPa・sであり、前処理液のポリアミン濃度は0.0056%、固形分濃度は7.62%であった。また、抽出液のポリアミン濃度は0.0039%、固形分濃度は2.65%、固形分あたりのポリアミン濃度は0.0369%であった。
比較例3、4と実施例8〜14の結果を、表2に示す。
(実施例8)
(1)ダイズ胚芽100gにエタノール濃度20%(v/v)のエタノール溶液400mlを加え、水温25℃の条件下で、撹拌機(スリーワンモーター、HEIDON製)を用いて100rpmで1時間攪拌した。攪拌終了後、粘度を測定した。粘度測定は振動式粘度計VISCOMATE VM−10A(CBC社製)を用いて行った。
(2)次いで12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、植物体残渣と上清とに分離し、上清を回収した。得られた上清を前処理液とし、ポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
(3)上清を回収した後の植物体残渣に水400mlを加え、水温25℃の条件下で、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(4)(3)の工程後、クエン酸(無水)を加え、pHを4.0に調整し、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(5)再びpH4.0となるようクエン酸(無水)を加えて調整し、攪拌機を用いて100rpmでさらに1時間攪拌した。攪拌終了後、(1)と同様に粘度を測定した。
(6)12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、上清を回収して抽出液とした。抽出液のポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
実施例8の結果は、エタノール処理工程における粘度が2.86mPa・sであり、前処理液のポリアミン濃度は0.005%、固形分濃度は9.67%であった。また、抽出液のポリアミン濃度は0.0051%、固形分濃度は2.86%、固形分あたりのポリアミン濃度は0.0483%であった。比較例3の固形分当たりのポリアミン濃度(PA/固形分)(%)を100とした時の本実施例の固形分当たりのポリアミン濃度の増減割合は、131.0となった。
(実施例9)
(1)ダイズ胚芽100gにエタノール濃度30%(v/v)のエタノール溶液400mlを加え、水温25℃の条件下で、撹拌機(スリーワンモーター、HEIDON製)を用いて100rpmで1時間攪拌した。攪拌終了後、粘度を測定した。粘度測定は振動式粘度計VISCOMATE VM−10A(CBC社製)を用いて行った。
(2)次いで12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、植物体残渣と上清とに分離し、上清を回収した。得られた上清を前処理液とし、ポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
(3)上清を回収した後の植物体残渣に水400mlを加え、水温25℃の条件下で、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(4)(3)の工程後、クエン酸(無水)を加え、pHを4.0に調整し、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(5)再びpH4.0となるようクエン酸(無水)を加えて調整し、攪拌機を用いて100rpmでさらに1時間攪拌した。攪拌終了後、(1)と同様に粘度を測定した。
(6)12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、上清を回収して抽出液とした。抽出液のポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
実施例9の結果は、エタノール処理工程における粘度が3.28mPa・sであり、前処理液のポリアミン濃度は0.022%、固形分濃度は8.19%であった。また、抽出液のポリアミン濃度は0.0047%、固形分濃度は2.81%、固形分あたりのポリアミン濃度は0.0439%であった。比較例3の固形分当たりのポリアミン濃度(PA/固形分)(%)を100とした時の本実施例の固形分当たりのポリアミン濃度の増減割合は、118.9となった。
(実施例10)
(1)ダイズ胚芽100gにエタノール濃度40%(v/v)のエタノール溶液400mlを加え、水温25℃の条件下で、撹拌機(スリーワンモーター、HEIDON製)を用いて100rpmで1時間攪拌した。攪拌終了後、粘度を測定した。粘度測定は振動式粘度計VISCOMATE VM−10A(CBC社製)を用いて行った。
(2)次いで12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、植物体残渣と上清とに分離し、上清を回収した。得られた上清を前処理液とし、ポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
(3)上清を回収した後の植物体残渣に水400mlを加え、水温25℃の条件下で、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(4)(3)の工程後、クエン酸(無水)を加え、pHを4.0に調整し、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(5)再びpH4.0となるようクエン酸(無水)を加えて調整し、攪拌機を用いて100rpmでさらに1時間攪拌した。攪拌終了後、(1)と同様に粘度を測定した。
(6)12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、上清を回収して抽出液とした。抽出液のポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
実施例10の結果は、エタノール処理工程における粘度が3.53mPa・sであり、前処理液のポリアミン濃度は0.0020%、固形分濃度は8.50%であった。また、抽出液のポリアミン濃度は0.0047%、固形分濃度は2.82%、固形分あたりのポリアミン濃度は0.0446%であった。比較例3の固形分当たりのポリアミン濃度(PA/固形分)(%)を100とした時の本実施例の固形分当たりのポリアミン濃度の増減割合は、121.0となった。
(実施例11)
(1)ダイズ胚芽100gにエタノール濃度50%(v/v)のエタノール溶液400mlを加え、水温25℃の条件下で、撹拌機(スリーワンモーター、HEIDON製)を用いて100rpmで1時間攪拌した。攪拌終了後、粘度を測定した。粘度測定は振動式粘度計VISCOMATE VM−10A(CBC社製)を用いて行った。
(2)次いで12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、植物体残渣と上清とに分離し、上清を回収した。得られた上清を前処理液とし、ポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
(3)上清を回収した後の植物体残渣に水400mlを加え、水温25℃の条件下で、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(4)(3)の工程後、クエン酸(無水)を加え、pHを4.0に調整し、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(5)再びpH4.0となるようクエン酸(無水)を加えて調整し、攪拌機を用いて100rpmでさらに1時間攪拌した。攪拌終了後、(1)と同様に粘度を測定した。
(6)12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、上清を回収して抽出液とした。抽出液のポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
実施例11の結果は、エタノール処理工程における粘度が3.61mPa・sであり、前処理液のポリアミン濃度は0.0017%、固形分濃度は7.86%であった。また、抽出液のポリアミン濃度は0.0052%、固形分濃度は3.08%、固形分あたりのポリアミン濃度は0.0467%であった。比較例3の固形分当たりのポリアミン濃度(PA/固形分)(%)を100とした時の本実施例の固形分当たりのポリアミン濃度の増減割合は、126.6となった。
(実施例12)
(1)ダイズ胚芽100gにエタノール濃度60%(v/v)のエタノール溶液400mlを加え、水温25℃の条件下で、撹拌機(スリーワンモーター、HEIDON製)を用いて100rpmで1時間攪拌した。攪拌終了後、粘度を測定した。粘度測定は振動式粘度計VISCOMATE VM−10A(CBC社製)を用いて行った。
(2)次いで12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、植物体残渣と上清とに分離し、上清を回収した。得られた上清を前処理液とし、ポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
(3)上清を回収した後の植物体残渣に水400mlを加え、水温25℃の条件下で、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(4)(3)の工程後、クエン酸(無水)を加え、pHを4.0に調整し、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(5)再びpH4.0となるようクエン酸(無水)を加えて調整し、攪拌機を用いて100rpmでさらに1時間攪拌した。攪拌終了後、(1)と同様に粘度を測定した。
(6)12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、上清を回収して抽出液とした。抽出液のポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
実施例12の結果は、エタノール処理工程における粘度が3.14mPa・sであり、前処理液のポリアミン濃度は0.0015%、固形分濃度は5.09%であった。また、抽出液のポリアミン濃度は0.0064%、固形分濃度は3.92%、固形分あたりのポリアミン濃度は0.0494%であった。比較例3の固形分当たりのポリアミン濃度(PA/固形分)(%)を100とした時の本実施例の固形分当たりのポリアミン濃度の増減割合は、134.1となった。
(実施例13)
(1)ダイズ胚芽100gにエタノール濃度70%(v/v)のエタノール溶液400mlを加え、水温25℃の条件下で、撹拌機(スリーワンモーター、HEIDON製)を用いて100rpmで1時間攪拌した。攪拌終了後、粘度を測定した。粘度測定は振動式粘度計VISCOMATE VM−10A(CBC社製)を用いて行った。
(2)次いで12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、植物体残渣と上清とに分離し、上清を回収した。得られた上清を前処理液とし、ポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
(3)上清を回収した後の植物体残渣に水400mlを加え、水温25℃の条件下で、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(4)(3)の工程後、クエン酸(無水)を加え、pHを4.0に調整し、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(5)再びpH4.0となるようクエン酸(無水)を加えて調整し、攪拌機を用いて100rpmでさらに1時間攪拌した。攪拌終了後、(1)と同様に粘度を測定した。
(6)12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、上清を回収して抽出液とした。抽出液のポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
実施例13の結果は、エタノール処理工程における粘度が2.86mPa・sであり、前処理液のポリアミン濃度は0.0008%、固形分濃度は3.59%であった。また、抽出液のポリアミン濃度は0.0078%、固形分濃度は5.04%、固形分あたりのポリアミン濃度は0.0504%であった。比較例3の固形分当たりのポリアミン濃度(PA/固形分)(%)を100とした時の本実施例の固形分当たりのポリアミン濃度の増減割合は、136.6となった。
(実施例14)
(1)ダイズ胚芽100gにエタノール濃度90%(v/v)のエタノール溶液400mlを加え、水温25℃の条件下で、撹拌機(スリーワンモーター、HEIDON製)を用いて100rpmで1時間攪拌した。攪拌終了後、粘度を測定した。粘度測定は振動式粘度計VISCOMATE VM−10A(CBC社製)を用いて行った。
(2)次いで12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、植物体残渣と上清とに分離し、上清を回収した。得られた上清を前処理液とし、ポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
(3)上清を回収した後の植物体残渣に水400mlを加え、水温25℃の条件下で、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(4)(3)の工程後、クエン酸(無水)を加え、pHを4.0に調整し、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(5)再びpH4.0となるようクエン酸(無水)を加えて調整し、攪拌機を用いて100rpmでさらに1時間攪拌した。攪拌終了後、(1)と同様に粘度を測定した。
(6)12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、上清を回収して抽出液とした。抽出液のポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
実施例14の結果は、エタノール処理工程における粘度が1.96mPa・sであり、前処理液のポリアミン濃度は0.0000%、固形分濃度は0.34%であった。また、抽出液のポリアミン濃度は0.0094%、固形分濃度は7.09%、固形分あたりのポリアミン濃度は0.257%であった。比較例3の固形分当たりのポリアミン濃度(PA/固形分)(%)を100とした時の本実施例の固形分当たりのポリアミン濃度の増減割合は、128.6となった。
(比較例4)
(1)ダイズ胚芽100gに水400mlを加え、水温25℃の条件下で、撹拌機(スリーワンモーター、HEIDON製)を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(2)次いで、クエン酸(無水)を加え、pHを4.0に調整し、攪拌機を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(4)再びpH4.0となるようクエン酸(無水)を加えて調整し、攪拌機を用いて100rpmでさらに1時間攪拌した。攪拌終了後、振動式粘度計VISCOMATE VM−10A(CBC社製)を用いて粘度を測定した。
(5)12000rpm、10分間の条件で遠心分離を行い、上清を回収して抽出液とした。抽出液のポリアミン濃度及び固形分濃度をそれぞれ測定した。
比較例4の結果は、抽出液のポリアミン濃度は0.0051%、固形分濃度は9.32%、固形分あたりのポリアミン濃度は0.0203%であった。比較例3の固形分当たりのポリアミン濃度(PA/固形分)(%)を100とした時の本実施例の固形分当たりのポリアミン濃度の増減割合は、55.0となった。
ダイズ胚芽では、水及び弱酸性条件下での抽出工程の前にエタノールでの処理工程を設けることによる、有意な粘度低下は見られなかった。これはコムギ等に多く含まれるグルテンがダイズにはほとんど含まれないためと考えられる。しかしながら、最終的なポリアミン組成物において、水及び弱酸条件のみで処理した場合、並びに弱酸のみで抽出した場合と比べると、エタノールでの処理工程、水及び弱酸性条件下での抽出工程が固形分当たりのポリアミン含量を増加させる点で顕著な効果があった。
Figure 2013051483
本発明のポリアミン組成物は低塩濃度であり、食品、化粧品、医薬品、医薬部外品、動物飼料などに配合する面で有用である。さらに、本発明よれば工業的な化学品生産に用いられる大規模ステンレスタンクの使用が可能になるため、大量生産が可能となり有用である。

Claims (14)

  1. (1)植物及び/又は植物加工物をエタノールで処理する工程、(2)植物及び/又は植物加工物を水で処理する工程、(3)植物及び/又は植物加工物を酸性条件下で処理する工程、および(4)液体画分を分離し採取する工程を含むことを特徴とするポリアミン組成物の製造方法。
  2. 更に(5)pH6.5〜pH7.5に調整する工程を含む、請求項1に記載のポリアミン組成物の製造方法。
  3. 植物及び/又は植物加工物をエタノールで処理する工程におけるエタノール濃度が20%(v/v)以上90%(v/v)以下である、請求項1もしくは2に記載のポリアミン組成物の製造方法。
  4. 植物及び/又は植物加工物をエタノールで処理する工程におけるエタノール濃度が30%(v/v)以上70%(v/v)以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミン組成物の製造方法。
  5. 植物及び/又は植物加工物を酸性条件下で処理する工程が、植物及び/又は植物加工物をpH3.0乃至pH6.0の酸性条件下で処理する工程である、請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミン組成物の製造方法。
  6. 植物及び/又は植物加工物を酸性条件下で処理する工程が、植物及び/又は植物加工物をpH4.0乃至pH6.0の酸性条件下で処理する工程である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミン組成物の製造方法。
  7. 植物及び/又は植物加工物を酸性条件下で処する工程が、植物及び/又は植物加工物を塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、リン酸、クエン酸、乳酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、安息香酸、スルホサリチル酸及びギ酸からなる群より選ばれた少なくとも1種の酸性溶液で処する工程である、請求項1〜6のいずれかに記載のポリアミン組成物の製造方法。
  8. 植物及び/又は植物加工物を酸性条件下で処する工程が、植物及び/又は植物加工物を塩酸及び/又はクエン酸の酸性溶液で処する工程である、請求項7に記載のポリアミン組成物の製造方法。
  9. 植物及び/又は植物加工物を酸性条件下で処する工程が、植物及び/又は植物加工物をクエン酸の酸性溶液で処する工程である、請求項8に記載のポリアミン組成物の製造方法。
  10. ポリアミン組成物が、1,3−ジアミノプロパン、プトレシン、カダベリン、カルジン、スペルミジン、ホモスペルミジン、アミノプロピルカダベリン、テルミン、スペルミン、テルモスペルミン、カナバルミン、アミノペンチルノルスペルミジン、N,N−ビス(アミノプロピル)カダベリン、ホモスペルミン、カルドペンタミン、ホモカルドペンタミン、カルドヘキサミン及びホモカルドヘキサミンからなる群より選ばれた少なくとも1種以上の化合物を含む組成物である、請求項1〜9のいずれかに記載のポリアミン組成物の製造方法。
  11. ポリアミン組成物が、プトレシン、カダベリン、スペルミジン及びスペルミンからなる群より選ばれた少なくとも1種以上の化合物を含む組成物である、請求項10に記載のポリアミン組成物の製造方法。
  12. 植物及び/又は植物加工物が、コムギ種子、コムギ胚芽、コムギ胚、ダイズ種子、ダイズ胚芽、ダイズ胚、豆乳及びオカラからなる群より選ばれた少なくとも1つに由来する植物及び/又は植物加工物である、請求項1〜11のいずれかに記載のポリアミン組成物の製造方法。
  13. 植物及び/又は植物加工物が、コムギ種子、コムギ胚芽、コムギ胚、ダイズ種子、ダイズ胚芽、又はダイズ胚に由来する植物及び/又は植物加工物である、請求項12に記載のポリアミン組成物の製造方法。
  14. 植物及び/又は植物加工物から製造されたポリアミン組成物であって、固形分中のクエン酸もしくはクエン酸塩濃度が5重量%以下であるポリアミン組成物。
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