通常、リチウム二次電池パックの定電流−定電圧充電では、定電圧(CV)充電期間における単位時間当たりの充電容量よりも、定電流(CC)充電期間における単位時間当たりの容量が大きい。よって、CC充電できる領域を大きくし、かつ充電電流を高めることでリチウム二次電池パックの充電開始から満充電状態にするまでの時間を大幅に短縮できる。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、Siを含む材料を負極活物質として含むリチウム二次電池を用いて容量1.5Ahの電池パックを作製し、この電池パックのインピーダンスを0.09Ωから0.05Ωに変更した場合に、1.5Cの電流値で充電すると、CC充電で電池パック容量の80%まで充電できることを見出した。そして、この知見に基づいて、リチウム二次電池に係る負極活物質を特定のものとし、かつリチウム二次電池パックのインピーダンスと容量とを特定の関係に調整することで、充電時のリチウム二次電池パックの電圧上昇を小さくし、また、通常では想定できないほどのCC充電領域を確保し、充電時に電流の減衰を極力抑えることを可能にして、強制的に冷却する等の特別の操作を要することなく、その急速充電特性を大きく高め、例えば1C以下の電流値で充電する従来の方式に比べて、充電開始から満充電状態にするまでの時間を大きく短縮化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のリチウム二次電池パックは、正極と負極とがセパレータを介して対向してなる電極体及び非水電解質を有するリチウム二次電池と、PTC素子と、電界効果トランジスタを有する保護回路とを備えたリチウム二次電池パックであって、上記負極は、負極活物質としてSiを含む材料を含有する負極合剤層を有し、上記リチウム二次電池パックのインピーダンスをZ(Ω)とし、上記リチウム二次電池パックの容量をQ(Ah)としたとき、Z/Qで表されるインピーダンス容量指数が0.055Ω/Ah以下であることを特徴とする。これにより、リチウム二次電池パックの急速充電特性を向上できる。
図1は、本発明のリチウム二次電池パックの一例を表す回路図を示している。図1に示すリチウム二次電池パックは、リチウム二次電池100と、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子(PTCサーミスタ)101と、保護回路102と、外部端子+IN,−INとを有しており、これらがリード線で接続され、リチウム二次電池100の正極端子及び負極端子から、外部端子+IN,−INを介して、外部の負荷に対する電力の供給、あるいは外部からの充電が行われる。
上記PTC素子101は、温度の上昇に応じて電流を遮断する機能を有する。上記保護回路102は、放電電流をオン/オフするためのスイッチング素子である電解効果トランジスタ(FET)103aと、充電電流をオン/オフするためのスイッチング素子であるFET103bと、充放電時の電池電圧及びFET103a,103b間の電圧を検出し、該検出した電圧に基づいてFET103a,103bの動作を制御する制御部104とを備え、充放電時の過充電や過放電、過電流からリチウム二次電池を保護するための機能を有する。なお、図1では、2個のFETが並列に接続されている場合について示しているが、直列に接続されていてもよいし、FETの数は1個でもよい。
本発明のリチウム二次電池パックは、例えば、図1に示すリチウム二次電池100、PTC素子101及び保護回路102等の構成要素を、外装体に収容した構造とすることができる。
本発明のリチウム二次電池パックは、図1に示す構成のものに限定されない。例えば、図1ではリチウム二次電池100を1個有するリチウム二次電池パックの例を示したが、本発明のリチウム二次電池パックは、要求される容量に応じて、リチウム二次電池100を複数個有していてもよい。
本発明のリチウム二次電池パックにおいて、インピーダンスをZ(Ω)とし、容量をQ(Ah)としたとき、Z/Qで表されるインピーダンス容量指数が、0.055Ω/Ah以下であることが好ましく、0.04Ω/Ah以下がより好ましく、0.035Ω/Ah以下が更に好ましい。リチウム二次電池パックのインピーダンス容量指数を上記の値とすることで、リチウム二次電池パックの充電時におけるCC充電時間を長くすることができ、急速充電特性を高めることができる。
上記インピーダンス容量指数Z/Qは小さいほど好ましいが、技術的な限界もあることから、通常は0.01以上である。
上記インピーダンス容量指数Z/Qを算出するためのインピーダンスZには、LCRメータを用いて、25℃、1kHzの条件で測定される値を用いる。
また、上記インピーダンス容量指数Z/Qを算出するためのリチウム二次電池パックの容量Qには、以下の方法により求められる値を用いる。すなわち、リチウム二次電池パックを、25℃において、1.0Cの電流値で定電流充電し、電圧値が4.2Vに達した後に更に4.2Vの電圧値で定電圧充電を行い、合計充電時間が2.5時間となった時点で充電を終了する。充電後のリチウム二次電池パックについて、0.2Cで放電を行い、電圧値が3Vに達したら放電をやめて放電電気量を求め、この放電電気量を容量Qとする。
上記インピーダンス容量指数Z/Qは、リチウム二次電池パックのインピーダンスZと容量Qとをそれぞれ調節することで調整できる。
上記リチウム二次電池パックの容量Q、すなわちリチウム二次電池の容量の調節方法としては、種々の方法が知られており、本発明では、これらを本発明の効果を損なわない範囲で採用できる。容量Qは1.5Ah以上が好ましく、より好ましくは2.0Ah以上である。なお、後述するように、本発明に係るリチウム二次電池では、例えばリチウム二次電池用の負極活物質として汎用されている炭素材料よりも高容量の、Siを含む材料を、負極活物質の少なくとも一部に使用するが、これも、リチウム二次電池パックの容量の調節方法として挙げられる。
また、上記リチウム二次電池パックのインピーダンスZの調節方法としては、リチウム二次電池パックの構成要素であるリチウム二次電池、PTC素子、保護回路(そこに含まれるFET)、更には、これらを接続するためのリード線のそれぞれについて、抵抗値の小さなものを使用する方法が挙げられる。例えば、PTC素子やFETについては、従来の携帯電話用のリチウム二次電池パック(1C以下の電流値で1時間程度充電すれば満充電状態とし得る程度の容量のリチウム二次電池パック)で採用されているものよりも低い抵抗値のものを選択することが好ましい。特にFETに抵抗値の低いものを使用するか、FETを並列接続して経路全体として抵抗を下げることにより、リチウム二次電池パック全体のインピーダンス低下に大きく寄与する。本発明において、インピーダンスZは、0.085Ω以下が好ましく、より好ましくは0.05Ω以下である。また、下限値は、0.02Ω以上が好ましく、より好ましくは0.03Ω以上である。
前述の通り、リチウム二次電池パックの急速充電特性を高めるには、CC−CV充電において、充電電流値を高めると共に、CC充電により充電可能な領域を大きくすることが好ましい。具体的には、CC充電により充電可能な容量が、リチウム二次電池パックの容量の80%を超えることが好ましい。
また、本発明のリチウム二次電池パックは、1.5Cの電流値で充電したときに得られる電圧(mV)−SOC(規格容量に対する充電容量の比率)(%)曲線のSOC40%における傾きk40が小さいことが好ましい。傾きk40は、電圧−SOC曲線のSOC40%における接線を、SOC35%からSOC45%まで延長し、それぞれのSOCにおける電圧の差を求め、その値を、SOC10%の変化に対する電圧上昇の値(mV)として表される。以下、本明細書では、傾きk40を、電圧上昇の値(mV)/10%SOCと記述する。
上記傾きk40の値は小さいほど、リチウム二次電池パックのCC充電における電圧上昇が小さく、より充電可能な容量が大きいことを意味していることから、上記傾きk40の値をより小さくすることで、リチウム二次電池パックの急速充電特性をより高めることができる。傾きk40は、具体的には、90mV/10%SOC以下であることが好ましく、50mV/10%SOC以下であることがより好ましく、10mV/10%SOC以下であることが更に好ましい。また、傾きk40は、通常は1mV/10%SOCより大きくなる。
上記傾きk40は、リチウム二次電池パックを構成するリチウム二次電池に係る負極活物質に、Siを含む材料を使用することで小さくできる。この場合、負極活物質に含まれるSiの負極合剤層の単位面積(平面視での面積。以下同じ。)当たりの含有量を、後述する値に調節することで、上記傾きk40をより良好に調整できる。
本発明のリチウム二次電池パックに係るリチウム二次電池は、正極合剤層を有する正極と負極合剤層を有する負極とがセパレータを介して対向してなる電極体と、非水電解質とを有するものである。以下、上記リチウム二次電池の各構成要素について説明する。
<負極>
本発明のリチウム二次電池パックを構成するリチウム二次電池に係る負極には、例えば、負極活物質及びバインダ等を含有する負極合剤層を、集電体の片面または両面に有する構造のものが使用できる。
上記負極合剤層に含まれる負極活物質には、Siを含む材料を用いる。これにより、充電時の電圧上昇の少ないリチウム二次電池パックを形成し得るリチウム二次電池を構成できる。上記Siを含む材料としては、例えば、Siを構成元素に含む合金、酸化物、炭化物等のSi系活物質が挙げられるが、一般組成式SiOx(ただし、Siに対するOの原子比xは、0.5≦x≦1.5である。)で表されるSiとOとを構成元素に含む材料が好ましい。以下、SiとOとを構成元素に含む材料を、「SiOx」という。上記Siを含む材料は、いずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記SiOxは、Siの酸化物に限定されず、Siと他の金属(例えば、B、Al、Ga、In、Ge、Sn、P、Bi等)との複合酸化物であってもよく、また、Siや他の金属の微結晶または非晶質相を含んでいてもよく、全体として、Siに対するOの原子比xが0.5≦x≦1.5を満たしていればよい。
また、上記SiOxには、例えば、非晶質のSiO2マトリックス中に、Si(例えば、微結晶Si)が分散した構造のものが含まれ、この非晶質のSiO2と、その中に分散しているSiを合わせて、上記の原子比xが0.5≦x≦1.5を満足していればよい。例えば、非晶質のSiO2マトリックス中に、Siが分散した構造で、SiO2とSiのモル比が1:1である材料の場合、x=1であるので、本発明においてはSiOと表記される。このような構造の材料の場合、例えば、X線回折分析では、Si(微結晶Si)の存在に起因するピークが観察されない場合もあるが、透過型電子顕微鏡で観察すると、微細なSiの存在が確認できる。SiOxの粒径としては、後述する炭素材料との複合化の効果を高め、また、充放電での微細化を防ぐため、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置、例えば、日機装社製の「マイクロトラックHRA」等により測定される数平均粒子径として、およそ0.5〜10μmのものが好ましく用いられる。
ところで、上記SiOxは、導電性が乏しいため、これを負極活物質として単独で用いる際には、良好な電池特性確保の観点から、炭素材料等の導電助剤が必要となる。ただし、SiOxを単に炭素材料と混合して得られる混合物を負極活物質として用いるよりも、SiOxをコア材とし、その表面に炭素の被覆層が形成されてなる複合体(以下、SiOx/炭素複合体という。)を用いることが好ましく、この場合、負極における導電ネットワークが良好に形成され、リチウム二次電池の負荷特性を高めることが可能となる。
更に、上記負極活物質として、SiOx/炭素複合体を使用する場合、コア材の表面に堆積させる炭素の量及び状態を最適化することで、高容量であるという特徴を保ちつつ、貯蔵特性を向上させることができる。
コア材となる上記SiOxは、従来公知の手法によって製造できる。SiOxとしては、SiOxの一次粒子の他、複数の粒子を含むSiOx複合粒子や、コア材の導電性を高める等の目的で、SiOxを炭素材料とともに造粒させた造粒体等が挙げられる。
また、上記SiOx/炭素複合体は、例えば、SiOx粒子と炭化水素系ガスとを気相中にて加熱して、炭化水素系ガスの熱分解により生じた炭素を、SiOx粒子の表面上に堆積させることにより得られる。このように気相成長(CVD)法を用いて製造することで、炭化水素系ガスがSiOx粒子の隅々にまで行き渡り、粒子の表面や表面の空孔内に、導電性を有する炭素材料を含む薄くて均一な皮膜(炭素の被覆層)を形成できることから、少量の炭素材料によってSiOx粒子に均一性よく導電性を付与できる。
上記気相成長(CVD)法の処理温度(雰囲気温度)については、上記炭化水素系ガスの種類によっても異なるが、通常、600〜1200℃が適当であり、中でも、700℃以上であることが好ましく、800℃以上であることが更に好ましい。処理温度が高い方が不純物の残存が少なく、かつ導電性の高い炭素を含む被覆層を形成できるからである。
上記炭化水素系ガスの液体ソースとしては、トルエン、ベンゼン、キシレン、メシチレン等を用いることができるが、取り扱い易いトルエンが特に好ましい。これらを気化させる(例えば、窒素ガスでバブリングする)ことにより炭化水素系ガスを得ることができる。また、メタンガスやアセチレンガス等を用いることもできる。
また、上記気相成長(CVD)法を用いてSiOx粒子の表面を炭素材料で被覆した後に、石油系ピッチ、石炭系のピッチ、熱硬化性樹脂、及びナフタレンスルホン酸塩とアルデヒド類との縮合物よりなる群から選択される少なくとも1種の有機化合物を、炭素材料を含む被覆層に付着させ、上記有機化合物が付着した粒子を焼成してもよい。具体的には、表面が炭素材料で被覆されたSiOx粒子と有機化合物とが分散媒に分散した分散液を用意し、この分散液を噴霧し乾燥して、有機化合物によって被覆された粒子を形成し、その有機化合物によって被覆された粒子を焼成する。
上記ピッチとしては、等方性ピッチを用いることができる。また、上記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、フラン樹脂、フルフラール樹脂等を用いることができる。ナフタレンスルホン酸塩とアルデヒド類との縮合物としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物を用いることができる。
上記の表面が炭素材料で被覆されたSiOx粒子と有機化合物とを分散させるための分散媒としては、例えば、水、アルコール類(エタノール等)を用いることができる。分散液の噴霧は、通常、50〜300℃の雰囲気内で行うことが適当である。焼成温度は、通常、600〜1200℃が適当であるが、中でも700℃以上が好ましく、800℃以上であることが更に好ましい。処理温度が高い方が不純物の残存が少なく、かつ導電性の高い良質な炭素材料を含む被覆層を形成できるからである。ただし、処理温度はSiOxの融点以下であることを要する。
コア材であるSiOxの表面に堆積させる炭素の量は、少なすぎると貯蔵後の容量低下が大きく、多すぎると高容量であるSiOxを使用する効果を十分に確保し得ない虞があることから、SiOxと炭素材料との複合体の全量に対して、10〜30質量%が好ましい。
コア材の表面が露出している場合には、貯蔵後に容量が低下しやすくなることから、コア材の表面のうち、炭素で被覆されている割合が高いほど好ましい。例えば、SiOx/炭素複合体のラマンスペクトルを測定レーザ波長532nmで測定したとき、Siに由来する510cm−1のピーク強度:I510と、炭素(C)に由来する1343cm−1のピーク強度:I1343との強度比I510/I1343が、0.25以下であることが好ましい。強度比I510/I1343は小さいほど、炭素被覆率が高いことを意味する。
上記ラマンスペクトルの強度比I510/I1343は、顕微ラマン分光法でSiOx/炭素複合体をマッピング測定(測定範囲:80×80μm、2μmステップ)し、測定範囲内の全てのスペクトルを平均して、Siに由来するピーク(510cm−1)とCに由来するピーク(1343cm−1)との強度比率により求められる値である。
上記SiOx/炭素複合体を負極活物質として用いる場合、コア材に含まれるSi相の結晶子サイズが小さすぎると、貯蔵後の容量低下が大きくなる虞があることから、CuKα線を用いたX線回折法により得られるSiの(111)回折ピークの半値幅は、3.0°未満が好ましく、2.5°以下であることがより好ましい。一方、Si相の結晶子サイズが大きすぎると、初期の充放電容量が小さくなる虞があることから、上記X線回折法により求められるSiの(111)回折ピークの半値幅は、0.5°以上であることが好ましい。
上記SiOx/炭素複合体の平均粒子径D50は、リチウム二次電池パックを繰り返し充放電した後の容量低下を抑える観点から、0.5μm以上であることが好ましく、リチウム二次電池パックの充放電に伴う負極の膨張を抑える観点から、20μm以下であることが好ましい。なお、上記平均粒子径D50は、レーザ散乱粒度分布計(例えば、堀場製作所製「LA−920」)を用い、樹脂を溶解しない媒体に、当該材料を分散させて測定した体積基準の平均粒子径である。
上記SiOxの比抵抗値は、通常、103〜107kΩcmであるのに対し、上記SiOxを被覆する炭素材料の比抵抗値は、通常、10−5〜10kΩcmである。
上記リチウム二次電池に係る負極には、負極活物質として、上述したSiOxと共に、他の活物質を併用することができる。他の活物質としては、例えば、黒鉛質炭素材料が好ましい。黒鉛質炭素材料としては、従来から知られているリチウム二次電池に使用されているものが好適であり、例えば、鱗片状黒鉛等の天然黒鉛;熱分解炭素類、メソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維等の易黒鉛化炭素を2800℃以上で黒鉛化処理した人造黒鉛;等が挙げられる。
上記負極活物質中におけるSiOxの含有量は、リチウム二次電池の容量を増加させ、リチウム二次電池パックの急速充電特性をより高める観点から、Si換算で、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることが更に好ましい。SiOxの含有量が多い場合は、初期容量は増加するが、充放電に伴いリチウム二次電池の容量低下を引き起こす虞があるので、必要な容量と充放電サイクル特性とのバランスを見て使用量を決定する必要がある。よって、電池の充放電に伴うSiOxの体積変化に起因する充放電に伴う容量減少を抑えて、リチウム二次電池パックの充放電サイクル特性を高めるには、負極活物質中におけるSiOxの含有量が、活物質中に含まれるSiの量で、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。
上記負極合剤層に使用するバインダには、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸塩、ポリイミド、ポリアミドイミド、等が好適に用いられる。
また、上記負極合剤層には、更に導電助剤として導電性材料を添加してもよい。導電性材料としては、リチウム二次電池内において化学変化を起こさないものであれば特に限定されず、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の各種カーボンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維等の材料を1種または2種以上用いることができる。
本発明に係る負極は、例えば、負極活物質及びバインダ、更には必要に応じて導電助剤を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)や水等の溶剤に分散させたペースト状やスラリー状の負極合剤含有組成物を調製し(ただし、バインダは溶剤に溶解していてもよい)、これを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥した後に、必要に応じてプレス処理を施す工程を経て製造される。ただし、負極は、上記の製造方法で製造されたものに制限される訳ではなく、他の製造方法で製造されたものであってもよい。
上記負極合剤層の厚みは、集電体の片面あたり10〜100μmであることが好ましい。負極合剤層の密度(集電体に積層した単位面積あたりの負極合剤層の質量と、厚みから算出される)は、1.0〜1.9g/cm3であることが好ましい。上記負極合剤層の組成としては、負極活物質の総量が80〜99質量%であることが好ましく、バインダの量が1〜20質量%であることが好ましく、導電助剤を使用する場合には、導電助剤は、負極活物質の総量及びバインダの量が上記の好適値を満足する範囲内で使用することが好ましい。
本発明に係る負極では、負極活物質に含まれるSi元素の負極合剤層の単位面積当たりの含有量は、リチウム二次電池パックの急速充電特性をより高める観点から、0.007mg/cm2以上であることが好ましく、0.018mg/cm2以上であることがより好ましく、0.1mg/cm2以上であることが更に好ましい。Si元素の含有量が多すぎると、リチウム二次電池の初期容量は大きくなるが、リチウム二次電池パックの充放電サイクル特性が低下する虞があることから、負極活物質に含まれるSi元素の負極合剤層の単位面積当たりの含有量は、1.5mg/cm2未満であることが好ましく、1.0mg/cm2未満であることがより好ましく、0.5mg/cm2未満であることが更に好ましい。
負極の集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタル等を用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、機械的強度を確保するためには厚みの下限は5μmであることが好ましい。
<正極>
本発明のリチウム二次電池パックを構成するリチウム二次電池に係る正極には、例えば、正極活物質、導電助剤及びバインダ等を含有する正極合剤層を、集電体の片面または両面に有する構造のものが使用できる。
上記正極活物質としては、Li(リチウム)イオンを吸蔵放出可能なLi含有遷移金属酸化物等が使用される。Li含有遷移金属酸化物としては、従来から知られているリチウム二次電池に使用されているものが挙げられる。具体的には、LiyCoO2(ただし、0≦y≦1.1である。)、LizNiO2(ただし、0≦z≦1.1である。)、LipMnO2(ただし、0≦p≦1.1である。)、LiqCorM1 1−rO2(ただし、M1は、Mg、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Al、Ti、Ge及びCrよりなる群から選択される少なくとも1種の金属元素であり、0≦q≦1.1、0<r<1.0である。)、LisNi1−tM2 tO2(ただし、M2は、Mg、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Al、Ti、Ge及びCrよりなる群から選択される少なくとも1種の金属元素であり、0≦s≦1.1、0<t<1.0である。)、LifMnvNiwCo1−v−wO2(ただし、0≦f≦1.1、0<v<1.0、0<w<1.0である。)等の層状構造を有するLi含有遷移金属酸化物等が挙げられ、これらのうちの1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記バインダとしては、負極のバインダとして先に例示した各種バインダと同じものが使用できる。
また、上記導電助剤としては、例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛等)、人造黒鉛等の黒鉛(黒鉛質炭素材料);アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカ−ボンブラック;炭素繊維;等の炭素材料等が挙げられる。
本発明に係る正極は、例えば、正極活物質、バインダ及び導電助剤を、NMP等の溶剤に分散させたペースト状やスラリー状の正極合剤含有組成物を調製し(ただし、バインダは溶剤に溶解していてもよい)、これを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥した後に、必要に応じてプレス処理を施す工程を経て製造される。ただし、正極は、上記の製造方法で製造されたものに制限される訳ではなく、他の製造方法で製造されたものであってもよい。
上記正極合剤層の厚みは、例えば、集電体の片面あたり10〜100μmであることが好ましい。上記正極合剤層の密度は、集電体に積層した単位面積あたりの正極合剤層の質量と、厚みとから算出され、3.0〜4.5g/cm3であることが好ましい。上記正極合剤層の組成としては、例えば、正極活物質の量が60〜95質量%であることが好ましく、バインダの量が1〜15質量%であることが好ましく、導電助剤の量が3〜20質量%であることが好ましい。
正極の集電体には、従来から知られているリチウム二次電池の正極に使用されているものと同様のものが使用でき、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはそれらの合金からなる箔、パンチドメタル、エキスパンドメタル、網等が挙げられ、通常、厚みが10〜30μmのアルミニウム箔が好適に用いられる。
上記の負極と上記の正極とは、後述するセパレータを挟んで積層することで、これらをセパレータを介して対向させた積層電極体や、負極と正極とをセパレータを介して積層した積層体を渦巻状に巻回した巻回電極体として、リチウム二次電池に使用される。
リチウム二次電池においては、その容量(mAh)を、正極合剤層と負極合剤層との対向面積(セパレータを介して対向する部分の面積。単位:cm2である。)で除して求められる単位面積当たりの容量(以下、「電極対向面積当たりの容量」という。)が、3.3mAh/cm2未満であることが好ましく、3.0mAh/cm2未満であることがより好ましく、2.8mAh/cm2未満であることが更に好ましい。上記電極対向面積当たりの容量が小さいリチウム二次電池を使用することで、リチウム二次電池パックの急速充電時の電池電圧の上昇を抑えることができる。ただし、上記電極対向面積当たりの容量が小さすぎると、リチウム二次電池のエネルギー密度が低下するため、リチウム二次電池における上記電極対向面積当たりの容量は、1mAh/cm2以上であることが好ましい。
上記の電極対向面積当たりの容量の算出に使用するリチウム二次電池の容量は、以下の方法により求められる値である。リチウム二次電池を、25℃において、1.0Cの電流値で定電流充電し、電圧値が4.2Vに達した後に更に4.2Vで定電圧充電を行い、合計充電時間が2.5時間となった時点で充電を終了する。充電後のリチウム二次電池について、0.2Cで放電を行い、電圧値が3Vに達したら放電をやめて放電電気量を求め、この放電電気量を容量とする。
なお、正極が負極より小さく、正極合剤層のすべてが負極合剤層と対向している場合には、電極対向面積当たりの容量は、リチウム二次電池の容量を正極合剤層の面積で除した値となる。
本発明では、正極活物質の質量をP、負極活物質の質量をNとしたとき、P/Nが1.0〜3.6であることが好ましい。P/N比率を3.6以下とすることで、負極活物質の利用率を下げて充電電気容量を制限でき、前述した充放電に伴う負極活物質の体積変化を抑制し、負極活物質粒子の粉砕等によるリチウム二次電池パックの充放電サイクル特性の低下を抑制することができる。また、P/N比率を1.0以上とすることで、高い電池容量を確保することができる。
<セパレータ>
本発明のリチウム二次電池パックを構成するリチウム二次電池に係るセパレータとしては、強度が十分で、かつ非水電解質を多く保持できるものがよく、例えば、厚さが5〜50μmで空孔率が30〜70%の、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン製の微多孔膜を用いることができる。セパレータを構成する微多孔膜は、例えば、PEのみを使用したものやPPのみを使用したものであってもよく、エチレン−プロピレン共重合体を含んでいてもよく、また、PE製の微多孔膜とPP製の微多孔膜との積層体であってもよい。
また、上記セパレータには、融点が140℃以下の樹脂を主体とした多孔質層(A)と、融点が150℃以上の樹脂または耐熱温度が150℃以上の無機フィラーを主体として含む多孔質層(B)とから構成された積層型のセパレータを使用することができる。ここで、「融点」とは日本工業規格(JIS) K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度を意味し、「耐熱温度が150℃以上」とは、少なくとも150℃において軟化などの変形が見られないことを意味している。
上記積層型のセパレータに係る多孔質層(A)は、主にシャットダウン機能を確保するためのものであり、リチウム二次電池が多孔質層(A)の主体となる成分である樹脂の融点以上に達したときには、多孔質層(A)に係る樹脂が溶融してセパレータの空孔を塞ぎ、電気化学反応の進行を抑制するシャットダウンを生じる。
多孔質層(A)の主成分となる融点が140℃以下の樹脂としては、例えばPEが挙げられ、その形態としては、リチウム二次電池に用いられる微多孔膜や、不織布などの基材にPEの粒子を塗布したものが挙げられる。ここで、多孔質層(A)の全構成成分中において、主体となる融点が140℃以下の樹脂の体積は、50体積%以上であり、70体積%以上であることがより好ましい。多孔質層(A)を上記PEの微多孔膜で形成する場合、融点が140℃以下の樹脂の体積は100体積%となる。
上記積層型のセパレータに係る多孔質層(B)は、リチウム二次電池の内部温度が上昇した際にも正極と負極との直接の接触による短絡を防止する機能を備えたものであり、融点が150℃以上の樹脂または耐熱温度が150℃以上の無機フィラーによって、その機能を確保している。すなわち、電池が高温となった場合には、喩え多孔質層(A)が収縮しても、収縮し難い多孔質層(B)によって、セパレータが熱収縮した場合に発生し得る正負極の直接の接触による短絡を防止することができる。また、この耐熱性の多孔質層(B)がセパレータの骨格として作用するため、多孔質層(A)の熱収縮、すなわちセパレータ全体の熱収縮自体も抑制できる。
多孔質層(B)を融点が150℃以上の樹脂を主体として形成する場合、その形態としては、例えば、融点が150℃以上の樹脂で形成された微多孔膜(例えば前述のPP製の電池用微多孔膜)を多孔質層(A)に積層させる形態、融点が150℃以上の樹脂の微粒子を含む多孔質層(B)形成用の組成物(塗液)を多孔質層(A)に塗布して、融点が150℃以上の樹脂の微粒子を含む多孔質層(B)を積層させる塗布積層型の形態が挙げられる。
融点が150℃以上の樹脂の微粒子を構成する樹脂としては、PP;架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン、架橋ポリジビニルベンゼン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体架橋物、ポリイミド、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物などの各種架橋高分子;ポリスルフォン;ポリエーテルスルフォン;ポリフェニレンスルフィド;ポリテトラフルオロエチレン;ポリアクリロニトリル;アラミド;ポリアセタールなどが挙げられる。
上記微粒子の粒径は、平均粒子径で、例えば、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上であって、好ましくは10μm以下、より好ましくは2μm以下である。上記微粒子の平均粒子径は、例えば、レーザ散乱粒度分布計(例えば、堀場製作所製「LA−920」)を用い、樹脂を溶解しない媒体に、これら微粒子を分散させて測定した平均粒子径(D50)である。
上記微粒子の量は、多孔質層(B)の構成成分の全体積(空孔部分を除く全体積)中、50体積%以上であり、70体積%以上であることが好ましく、80体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることが更に好ましい。
多孔質層(B)を耐熱温度が150℃以上の無機フィラーを主体として形成する場合には、耐熱温度が150℃以上の無機フィラーを含む多孔質層(B)形成用の組成物(塗液)を多孔質層(A)に塗布して、耐熱温度が150℃以上の無機フィラーを含む多孔質層(B)を積層させる塗布積層型の形態が挙げられる。
上記無機フィラーは、耐熱温度が150℃以上で、リチウム二次電池の有する非水電解質に対して安定であり、更にリチウム二次電池の作動電圧範囲において酸化還元され難い電気化学的に安定なものであればよいが、分散などの点から微粒子であることが好ましく、また、アルミナ、シリカ、ベーマイトが好ましい。アルミナ、シリカ、ベーマイトは、耐酸化性が高く、粒径や形状を所望の数値などに調整することが可能であるため、多孔質層(B)の空孔率を精度よく制御することが容易となる。なお、上記無機フィラーは、例えば上記例示のものを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記耐熱温度が150℃以上の無機フィラーと、前述の融点が150℃以上の樹脂の微粒子とを併用しても差し支えない。
上記無機フィラーの形状については特に制限はなく、略球状(真球状を含む)、略楕円体状(楕円体状を含む)、板状などの各種形状のものを使用できる。
また、上記無機フィラーの平均粒子径(板状フィラーおよび他形状フィラーの平均粒子径。以下同じ。)は、小さすぎるとイオンの透過性が低下することから、0.3μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。また、上記無機フィラーが大きすぎると、電気特性が劣化しやすくなることから、その平均粒子径は、5μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。本明細書でいう耐熱温度が150℃以上の無機フィラーの平均粒子径は、融点が150℃以上の樹脂の微粒子の平均粒子径と同じ方法で求められる平均粒子径(D50)である。
上記無機フィラーの量は、多孔質層(B)の構成成分の全体積(空孔部分を除く全体積)中、50体積%以上であり、70体積%以上であることが好ましく、80体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることが更に好ましい。上記無機フィラーを上記のように高含有量とすることで、リチウム二次電池が高温となった際にも、セパレータ全体の熱収縮を良好に抑制することができ、正極と負極との直接の接触による短絡の発生をより良好に抑制することができる。
多孔質層(B)には、上記融点が150℃以上の樹脂の微粒子同士または上記耐熱温度が150℃以上の無機フィラー同士を結着したり、多孔質層(B)と多孔質層(A)とを一体化するために、有機バインダを含有させることが好ましい。有機バインダとしては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA、酢酸ビニル由来の構造単位が20〜35モル%のもの)、エチレン−エチルアクリレート共重合体などのエチレン−アクリル酸共重合体、フッ素系ゴム、SBR、CMC、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられるが、特に、150℃以上の耐熱温度を有する耐熱性のバインダが好ましく用いられる。有機バインダは、上記例示のものを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
多孔質層(B)形成用組成物は、上記融点が150℃以上の樹脂の微粒子または上記耐熱温度が150℃以上の無機フィラーの他、必要に応じて上記有機バインダなどを含有し、これらを溶媒(分散媒を含む。以下同じ。)に分散させたものである。多孔質層(B)形成用組成物に用いられる溶媒は、無機フィラーなどを均一に分散でき、また、有機バインダを均一に溶解または分散できるものであればよいが、例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素、テトラヒドロフランなどのフラン類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類など、一般的な有機溶媒が好適に用いられる。
多孔質層(B)形成用組成物は、上記融点が150℃以上の樹脂の微粒子または上記耐熱温度が150℃以上の無機フィラー、および上記有機バインダなどを含む固形分含量を、例えば10〜80質量%とすることが好ましい。
ポリオレフィン製の微多孔膜からなるセパレータや、上記積層型のセパレータの厚みは、10〜30μmであることがより好ましい。
また、上記積層型のセパレータにおいては、多孔質層(B)の厚み[セパレータが多孔質層(B)を複数有する場合は、その総厚み]は、多孔質層(B)による上記の各作用をより有効に発揮させる観点から、3μm以上であることが好ましい。ただし、多孔質層(B)が厚すぎると、電池のエネルギー密度の低下を引き起こすなどの虞があることから、多孔質層(B)の厚みは、8μm以下であることが好ましい。
更に、上記積層型のセパレータにおいては、多孔質層(A)の厚み[セパレータが多孔質層(A)を複数有する場合は、その総厚み。以下同じ。]は、多孔質層(A)の使用による上記作用(特にシャットダウン作用)をより有効に発揮させる観点から、6μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。ただし、多孔質層(A)が厚すぎると、電池のエネルギー密度の低下を引き起こす虞があることに加えて、多孔質層(A)が熱収縮しようとする力が大きくなり、セパレータ全体の熱収縮を抑える作用が小さくなる虞がある。そのため、多孔質層(A)の厚みは、25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、14μm以下であることが更に好ましい。
セパレータ全体の空孔率としては、電解液の保液量を確保してイオン透過性を良好にするために、乾燥した状態で、30%以上であることが好ましい。一方、セパレータ強度の確保と内部短絡の防止の観点から、セパレータの空孔率は、乾燥した状態で、70%以下であることが好ましい。セパレータの空孔率:P(%)は、セパレータの厚み、単位面積あたりの質量、構成成分の密度から、下記(1)式を用いて各成分iについての総和を求めることにより計算できる。
P ={1−(m/t)/(Σai・ρi)}×100 (1)
ここで、上記式中、ai:全体の質量を1としたときの成分iの比率、ρi:成分iの密度(g/cm3)、m:セパレータの単位面積あたりの質量(g/cm2)、t:セパレータの厚み(cm)、である。
また、上記積層型のセパレータの場合、上記(1)式において、mを多孔質層(A)の単位面積あたりの質量(g/cm2)とし、tを多孔質層(A)の厚み(cm)とすることで、上記(1)式を用いて多孔質層(A)の空孔率:P(%)を求めることもできる。この方法により求められる多孔質層(A)の空孔率は、30〜70%であることが好ましい。
更に、上記積層型のセパレータの場合、上記(1)式において、mを多孔質層(B)の単位面積あたりの質量(g/cm2)とし、tを多孔質層(B)の厚み(cm)とすることで、上記(1)式を用いて多孔質層(B)の空孔率:P(%)を求めることもできる。この方法により求められる多孔質層(B)の空孔率は、20〜60%であることが好ましい。
リチウム二次電池に使用する上記の積層電極体や巻回電極体においては、上記積層型のセパレータを使用した場合、特に融点が140℃以下の樹脂を主体とした多孔質層(A)に、耐熱温度が150℃以上の無機フィラーを主体として含む多孔質層(B)を積層したセパレータを使用する場合には、多孔質層(B)が少なくとも正極に面するように配置することが好ましい。この場合、耐熱温度が150℃以上の無機フィラーを主体として含み、より耐酸化性に優れる多孔質層(B)が正極と面することで、正極によるセパレータの酸化をより良好に抑制できるため、電池の高温時の保存特性や充放電サイクル特性を高めることもできる。また、ビニレンカーボネートやシクロヘキシルベンゼンなどの添加剤を非水電解質中に加えた場合(後述する)、正極側で被膜化しセパレータの細孔を詰まらせて電池特性を著しく低下させる虞もある。そこで比較的ポーラスな多孔質層(B)を正極に対面させることで、細孔の目詰まりを抑制する効果も期待できる。
他方、上記積層型セパレータの一方の表面が多孔質層(A)である場合には、多孔質層(A)が負極に面するようにすることが好ましい。この場合、多孔質層(A)を正極側に配置した場合よりも、シャットダウン時に多孔質層(A)から溶融した熱可塑性樹脂が電極合剤層に吸収されにくく、溶融した熱可塑性樹脂の大部分を、セパレータの空孔を閉塞するのに利用できるため、シャットダウンによる効果がより良好となる。
<非水電解質>
本発明のリチウム二次電池パックを構成するリチウム二次電池に係る非水電解質としては、下記の溶媒中に無機リチウム塩または有機リチウム塩あるいはその両者を溶解させることによって調製した電解液が挙げられる。
上記溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC),ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、蟻酸メチル、酢酸メチル、燐酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、ジエチルエーテル、1,3−プロパンサルトン等の非プロトン性有機溶媒が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記無機リチウム塩としては、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸Li、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランLi、四フェニルホウ酸Li等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記有機リチウム塩としては、LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li2C2F4(SO3)2、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiCnF2n+1SO3(2≦n≦7)、LiN(Rf1OSO2)2〔ここでRf1はフルオロアルキル基である。〕等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記電解液中のリチウム塩の濃度は、非水電解液中、例えば、0.2〜3.0mol/dm3が好ましく、0.5〜1.5mol/dm3がより好ましく、0.9〜1.3mol/dm3が更に好ましい。
上記非水電解液としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびメチルエチルカーボネートより選ばれる少なくとも1種の鎖状カーボネートと、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートより選ばれる少なくとも1種の環状カーボネートとを含む溶媒に、LiPF6を溶解した電解液が特に好ましく用いられる。
また、上記非水電解液には、充放電サイクル特性の改善、高温貯蔵性や過充電防止等の安全性を向上させる目的で、次に示す添加剤を適宜含有させることができる。添加剤としては、例えば、無水酸、スルホン酸エステル、ジニトリル、1,3−プロパンサルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキシルベンゼン、ビニレンカーボネート(VC)、ビフェニル、フルオロベンゼン、t−ブチルベンゼン、環状フッ素化カーボネート[トリフロオロプロピレンカーボネート(TFPC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等]、または、鎖状フッ素化カーボネート[トリフルオロジメチルカーボネート(TFDMC)、トリフルオロジエチルカーボネート(TFDEC)、トリフルオロエチルメチルカーボネート(TFEMC)等]、フッ素化エーテル[Rf2−OR(ただし、Rf2はフッ素を含有するアルキル基であり、Rはフッ素を含有してもよい有機基である。)]、リン酸エステル[エチルジエチルホスホノアセテート(EDPA):(C2H5O)2(P=O)−CH2(C=O)OC2H5]、リン酸トリス(トリフルオロエチル)(TFEP):(CF3CH2O)3P=O、リン酸トリフェニル(TPP):(C6H5O)3P=O等]等(上記各化合物の誘導体も含む)が挙げられる。前述のように、正極と負極のP/N比率を制限することで、SiOx/炭素複合体の体積の膨張・収縮による粒子の粉砕を抑制することが可能であるが、TFPCを非水電解液に添加することで、SiOx/炭素複合体の粒子表面に被膜を形成し、繰り返しの充放電によって粒子表面に亀裂等が発生して新生面が露出する場合でも、上記TFPCが新生面を再度被覆するので充放電サイクルによる容量劣化を抑制することができる。また、TFPCは、FECと比べて耐酸化還元性が高いので、被膜生成以外の余剰な分解反応(ガス発生等)を起こしにくく、分解反応に伴う発熱反応を抑制してリチウム二次電池の内部温度上昇を起こしにくくする働きがある。
また、上記非水電解液は、公知のポリマー等のゲル化剤を用いてゲル状の電解質として用いることもできる。
本発明のリチウム二次電池パックに係るリチウム二次電池の形態としては、特に制限はない。例えば、コイン形、ボタン形、シート形、積層形、円筒形、偏平形、角形、電気自動車等に用いる大型のもの等、いずれであってもよい。
また、リチウム二次電池に正極、負極及びセパレータを導入するにあたっては、電池の形態に応じて、複数の正極と複数の負極とをセパレータを介して積層した積層電極体や、正極と負極とをセパレータを介して積層し、更にこれを渦巻状に巻回した巻回電極体として使用することもできる。
本発明のリチウム二次電池パックは、容量を高めつつ、良好な急速充電特性を確保し得ることから、これらの特性を生かして、小型で多機能な携帯機器の電源を始めとして、従来から知られているリチウム二次電池パックが適用されている各種用途に好ましく用いることができる。例えば、本発明のリチウム二次電池パックを、従来から汎用されている充電装置(定電流定電圧充電装置、パルス充電装置等)に設置した場合、急速充電可能な本発明の充電システムを構成でき、また、かかる充電システムによって、急速充電可能な本発明の充電方法を実施することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
(実施例1)
<正極の作製>
正極活物質であるLiCoO2:80質量部及びLiMn0.2Ni0.6Co0.2O2:20質量部と、導電助剤である人造黒鉛:1質量部及びケッチェンブラック:1質量部と、バインダであるPVDF:10質量部とを、溶媒であるNMPに均一になるように混合して正極合剤含有ペーストを調製した。そして、得られた正極合剤含有ペーストを、厚み15μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に厚みを調節して間欠塗布し、乾燥した後、カレンダー処理を行って、全厚が120μmになるように正極合剤層の厚みを調整し、幅が54.5mmになるように切断して正極を作製した。更にこの正極のアルミニウム箔の露出部にタブを溶接してリード部を形成した。
<負極の作製>
負極活物質である、SiOの表面を炭素で被覆した材料(平均粒子径D50が5μm。以下、「SiO/炭素複合体」という。)と平均粒子径D50が16μmの黒鉛質炭素とを5:95の質量比で混合した混合物:98質量部と、バインダである粘度が1500〜5000mPa・sの範囲に調整された1質量%の濃度のCMC水溶液:1.0質量部及びSBR:1.0質量部とを、溶媒である比伝導度が2.0×105Ω/cm以上のイオン交換水に混合して水系の負極合剤含有ペーストを調製した。
上記SiO/炭素複合体における炭素の被覆量は20質量%であり、測定レーザ波長532nmにおけるラマンスペクトルのI510/I1343強度比は0.10であり、CuKα線を用いたSiOのX線回折測定でのSi(111)回折ピーク半値幅は1.0°であった。
次に、上記負極合剤含有ペーストを、厚み8μmの銅箔からなる集電体の両面に厚みを調節して間欠塗布し、乾燥した後、カレンダー処理を行って全厚が108μmになるように負極合剤層の厚みを調整し、幅が55.5mmになるように切断して負極を作製した。更にこの負極の銅箔の露出部にタブを溶接してリード部を形成した。
上記負極における負極合剤層の面積は599cm2であり、負極活物質に含まれるSiの負極合剤層の単位面積当たりの含有量は、0.14mg/cm2であった。
<セパレータの作製>
平均粒子径D50が1μmのベーマイト5kgに、イオン交換水5kgと、分散剤(水系ポリカルボン酸アンモニウム塩、固形分濃度40質量%)0.5kgとを加え、内容積20L、転回数40回/分のボールミルで10時間解砕処理をして分散液を調製した。処理後の分散液を120℃で真空乾燥し、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、ベーマイトの形状はほぼ板状であった。
上記分散液500gに、増粘剤としてキサンタンガムを0.5g、バインダとして樹脂バインダディスパージョン(変性ポリブチルアクリレート、固形分含量45質量%)を17g加え、撹拌機で3時間攪拌して均一なスラリー[多孔質層(B)形成用スラリー、固形分含量50質量%]を調製した。
次に、リチウム二次電池用PE製微多孔質セパレータ[多孔質層(A):厚み12μm、空孔率40%、平均孔径0.08μm、PEの融点135℃]の片面にコロナ放電処理(放電量40W・min/m2)を施し、この処理面に多孔質層(B)形成用スラリーをマイクログラビアコーターによって塗布し、乾燥して厚みが4μmの多孔質層(B)を形成して、積層型のセパレータを得た。このセパレータにおける多孔質層(B)の単位面積あたりの質量は5.5g/m2で、ベーマイトの体積含有率は95体積%であり、空孔率は45%であった。
<非水電解液の調製>
EC、MEC及びDECを体積比1.0:0.5:1.5で混合した混合溶媒に、リチウム塩としてLiPF6を濃度1.1mol/dm3で溶解させて、更に、VC、FEC及びEDPAを、それぞれ2.5質量%、1.75質量%及び1.00質量%となる量で加えて、非水電解液を調製した。
<電池の組み立て>
上記の正極と上記の負極とを、上記のセパレータの多孔質層(B)が正極に面するように介在させつつ重ね、渦巻状に巻回して巻回電極体を作製した。得られた巻回電極体を押しつぶして扁平状にし、厚み5mm、幅42mm、高さ61mmのアルミニウム合金製外装缶に入れ、上記の非水電解液を注入した。そして、非水電解液の注入後に外装缶の封止を行って、図2A,Bに示す構造で、図3に示す外観のリチウム二次電池を作製した。
ここで、図2A,B及び図3に示す電池について説明すると、図2Aは平面図、図2Bは部分断面図であって、図2Bに示すように、正極1と負極2は、セパレータ3を介して渦巻状に巻回した後、扁平状になるように加圧して扁平状の巻回電極体6として、角筒形の外装缶4に非水電解液と共に収容されている。ただし、図2Bでは、煩雑化を避けるため、正極1や負極2の作製にあたって使用した集電体としての金属箔や電解液等は図示していない。また、セパレータの各層も区別して示していない。
外装缶4はアルミニウム合金製で電池の外装体を構成するものであり、この外装缶4は正極端子を兼ねている。そして、外装缶4の底部にはPEシートからなる絶縁体5が配置され、正極1、負極2及びセパレータ3からなる扁平状の巻回電極体6からは、正極1及び負極2のそれぞれ一端に接続された正極リード体7と負極リード体8が引き出されている。また、外装缶4の開口部を封口するアルミニウム合金製の封口用蓋板9にはPP製の絶縁パッキング10を介してステンレス鋼製の端子11が取り付けられ、この端子11には絶縁体12を介してステンレス鋼製のリード板13が取り付けられている。
そして、蓋板9は外装缶4の開口部に挿入され、両者の接合部を溶接することによって、外装缶4の開口部が封口され、電池内部が密閉されている。また、図2A,Bの電池では、蓋板9に非水電解液注入口14が設けられており、この非水電解液注入口14には、封止部材が挿入された状態で、例えばレーザ溶接等により溶接封止されて、電池の密閉性が確保されている。従って、図2A,B及び図3の電池では、実際には、非水電解液注入口14は、非水電解液注入口と封止部材であるが、説明を容易にするために、非水電解液注入口14として示している。更に、蓋板9には、電池の温度が上昇した際に内部のガスを外部に排出する機構として、開裂ベント15が設けられている。
この実施例1のリチウム二次電池では、正極リード体7を蓋板9に直接溶接することによって外装缶4と蓋板9とが正極端子として機能し、負極リード体8をリード板13に溶接し、そのリード板13を介して負極リード体8と端子11とを導通させることによって端子11が負極端子として機能するようになっているが、外装缶4の材質等によっては、その正負が逆になる場合もある。
図3は、上記図2A,Bに示す電池の外観を模式的に示す斜視図である。この図3は上記電池が角形電池であることを示すことを目的として図示されたものであって、図3では電池を概略的に示しており、電池を構成する部材のうち、特定のものしか図示していない。また、図2Bにおいても、巻回電極体6の中央部及びセパレータ3には、断面を示すハッチングを表示していない。
上記実施例1のリチウム二次電池について、インピーダンスは0.033Ωであり、電極対向面積当たりの容量は2.8mAh/cm2であった。
<リチウム二次電池パックの組み立て>
上記実施例1のリチウム二次電池と、抵抗値が0.01ΩのFET2個が並列に接続された保護回路と、抵抗値が0.01ΩのPTC素子とを使用し、これらを図1に示すようにリード線で接続し、外装体に収容して実施例1のリチウム二次電池パックを組み立てた。
本実施例1のリチウム二次電池パックについて、前述の方法により求めたインピーダンスは0.050Ω、前述の方法により求めた容量は1.55Ah、インピーダンス容量指数は0.032Ω/Ahであった。
(実施例2)
負極活物質としてSiO/炭素複合体に代えてSi合金を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2のリチウム二次電池を作製した。得られた実施例2のリチウム二次電池について、インピーダンスは0.034Ω、電極対向面積当たりの容量は2.8mAh/cm2であった。
そして、実施例2のリチウム二次電池を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2のリチウム二次電池パックを作製した。得られた実施例2のリチウム二次電池パックについて、インピーダンスは0.051Ω、容量は1.54Ah、インピーダンス容量指数は0.033Ω/Ahであった。
(実施例3)
負極活物質に含まれるSiの負極合剤層の単位面積当たりの含有量を0.02mg/cm2とし、これにより負極容量が減少する分を、負極合剤層を厚くして実施例1で作製した負極とほぼ同一の負極容量とした以外は、実施例1と同様にして負極を作製し、この負極を用い、かつ負極の厚み変更に伴って外装缶のサイズを変更した以外は、実施例1と同様にして実施例3のリチウム二次電池を作製した。得られた実施例3のリチウム二次電池について、インピーダンスは0.036Ω、電極対向面積当たりの容量は2.8mAh/cm2であった。
そして、実施例3のリチウム二次電池を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例3のリチウム二次電池パックを作製した。得られた実施例3のリチウム二次電池パックについて、インピーダンスは0.053Ω、容量は1.56Ah、インピーダンス容量指数は0.034Ω/Ahであった。
(実施例4)
負極活物質に含まれるSiの負極合剤層の単位面積当たりの含有量を0.18mg/cm2とし、これにより負極容量が増加する分を、負極合剤層を薄くして実施例1で作製した負極とほぼ同一の負極容量とした以外は、実施例1と同様にして負極を作製し、この負極を用いた以外は実施例1と同様にして実施例4のリチウム二次電池を作製した。得られた実施例4のリチウム二次電池について、インピーダンスは0.032Ω、電極対向面積当たりの容量は2.7mAh/cm2であった。
そして、実施例4のリチウム二次電池を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例4のリチウム二次電池パックを作製した。得られた実施例4のリチウム二次電池パックについて、インピーダンスは0.049Ω、容量は1.54Ah、インピーダンス容量指数は0.032Ω/Ahであった。
(実施例5)
電極対向面積当たりの容量を3.3mAh/cm2とし、容量が増える分を、正負極の合剤層の面積を調整して実施例1で作製したリチウム二次電池と同一の容量とした以外は、実施例1と同様にして実施例5のリチウム二次電池を作製した。得られた実施例5のリチウム二次電池について、インピーダンスは0.036Ω、電極対向面積当たりの容量は3.3mAh/cm2であった。
そして、実施例5のリチウム二次電池を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例5のリチウム二次電池パックを作製した。得られた実施例5のリチウム二次電池パックについて、インピーダンスは0.053Ω、容量は1.55Ah、インピーダンス容量指数は0.034Ω/Ahであった。
(実施例6)
抵抗値が0.02ΩのFETを1個のみ備えた保護回路と、抵抗値が0.02ΩのPTC素子とを使用した以外は、実施例1と同様にして実施例6のリチウム二次電池パックを作製した。得られた実施例6のリチウム二次電池パックについて、インピーダンスは0.075Ω、容量は1.55Ah、インピーダンス容量指数は0.048Ω/Ahであった。
(実施例7)
抵抗値が0.03ΩのFETを1個のみ備えた保護回路と、抵抗値が0.02ΩのPTC素子とを使用した以外は、実施例1と同様にして実施例7のリチウム二次電池パックを作製した。得られた実施例7のリチウム二次電池パックについて、インピーダンスは0.085Ω、容量は1.55Ah、インピーダンス容量指数は0.055Ω/Ahであった。
(比較例1)
負極活物質を、SiO/炭素複合体と黒鉛質炭素との混合物から、黒鉛質炭素のみに変更し、これにより負極容量が減少する分を、負極合剤層を厚くして実施例5で作製した負極とほぼ同一の容量とした以外は、実施例5と同様にして負極を作製し、この負極を用い、かつ負極の厚み変更に伴って外装缶のサイズを変更した以外は、実施例5と同様にして比較例1のリチウム二次電池を作製した。得られた比較例1のリチウム二次電池について、インピーダンスは0.039Ω、電極対向面積当たりの容量は3.3mAh/cm2であった。
そして、比較例1のリチウム二次電池を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例1のリチウム二次電池パックを作製した。得られた比較例1のリチウム二次電池パックについて、インピーダンスは0.056Ω、容量は1.55Ah、インピーダンス容量指数は0.036Ω/Ahであった。
(比較例2)
比較例1で作製したものと同じリチウム二次電池と、抵抗値が0.05ΩのFETを1個のみ備えた保護回路と、抵抗値が0.03ΩのPTC素子とを使用した以外は、実施例1と同様にして比較例2のリチウム二次電池パックを作製した。得られた比較例2のリチウム二次電池パックについて、インピーダンスは0.121Ω、容量は1.55Ah、インピーダンス容量指数は0.078Ω/Ahであった。
(比較例3)
負極活物質を、SiO/炭素複合体と黒鉛質炭素との混合物から、黒鉛質炭素のみに変更し、これにより負極容量が減少する分を、電極対向面積を増やすことで、実施例1で作製したリチウム二次電池と同一の容量となるように調整した以外は、実施例1と同様にして比較例3のリチウム二次電池を作製した。得られた比較例3のリチウム二次電池について、インピーダンスは0.036Ω、電極対向面積当たりの容量は2.8mAh/cm2であった。
そして、比較例3のリチウム二次電池を用いた以外は、比較例2と同様にして比較例3のリチウム二次電池パックを作製した。得られた比較例3のリチウム二次電池パックについて、インピーダンスは0.118Ω、容量は1.55Ah、インピーダンス容量指数は0.076Ω/Ahであった。
(比較例4)
実施例1で作製したものと同じリチウム二次電池と、比較例2と同じ抵抗値が0.05ΩのFETを1個のみ備えた保護回路と、抵抗値が0.03ΩのPTC素子とを使用した以外は、実施例1と同様にして比較例4のリチウム二次電池パックを作製した。得られた比較例4のリチウム二次電池パックについて、インピーダンスは0.115Ω、容量は1.55Ah、インピーダンス容量指数は0.074Ω/Ahであった。
(比較例5)
実施例1で作製したものと同じリチウム二次電池と、抵抗値が0.04ΩのFETを1個のみ備えた保護回路と、抵抗値が0.03ΩのPTC素子とを使用した以外は、実施例1と同様にして比較例5のリチウム二次電池パックを作製した。得られた比較例5のリチウム二次電池パックについて、インピーダンスは0.105Ω、容量は1.55Ah、インピーダンス容量指数は0.068Ω/Ahであった。
上記実施例1〜7及び上記比較例1〜5のリチウム二次電池パックと充放電装置とを組み合わせて充電システムを構成し、下記充電方法によって急速充電試験を行った。
<急速充電試験>
上記の各充電システムを用い、25℃で、それぞれの容量に対し1.5C(1.55Ahの場合、2.3Aに相当)の定電流で電圧値が4.2Vになるまで充電し、その後その電圧を保つ定電圧で充電するCC−CV充電(カットオフ電流値が0.05C)を行った。そして、充電開始から定電圧モードに切り替わるまでの時間であるCC充電時間(分)と、充電開始からSOC90%までの充電に要した時間(分)とを測定した。
上記各実施例及び比較例のリチウム二次電池について、Si系活物質の種類、負極活物質に含まれるSiの負極合剤層の単位面積当たりの含有量、電極対向面積当たりの容量、及び1.5Cの電流値で充電したときに得られる電圧−SOC曲線のSOC40%における傾きを表1に示した。
表1における「SOC40%での電圧傾き」は、1.5Cの電流値で充電したときに得られる電圧−SOC曲線のSOC40%における傾きk40を意味している。
また、上記各実施例及び比較例のリチウム二次電池パックについて、インピーダンス、容量、インピーダンス容量指数、CC充電時間及びSOC90%までの充電に要した時間を表2に示した。また、上記実施例1,6,7及び比較例4,5のリチウム二次電池パックについて、インピーダンス(Ω)とCC充電時間(分)との関係を図4に示した。
表2に示す通り、負極活物質としてSi系活物質を含有する負極を備えたリチウム二次電池を使用し、インピーダンス容量指数を適正な値とした実施例1〜7のリチウム二次電池パックは、比較例1〜5のリチウム二次電池パックに比べて、急速充電試験時におけるCC充電時間が長く、SOC90%までの充電に要する時間を短縮できている。また、図4から、リチウム二次電池パックのインピーダンスが0.085Ωを超えると、CC充電時間が急激に短くなることが分かる。また、実施例のリチウム二次電池パック同士の比較から、リチウム二次電池の電極対向面積当たりの容量や、負極活物質に含まれるSiの負極合剤層の単位面積当たりの含有量、SOC40%での電圧傾きを、より適正な値に調整することで、リチウム二次電池パックの急速充電特性をより高め得ることも分かる。
また、実施例1の電池パックと比較例1の電池パックを電子機器の一つである携帯電話の電池と置き換え、携帯電話の端子部からリードを取り出し、実施例1または比較例1の電池パックに接続し、充電90%になるまでの時間を比較した。その結果、実施例1の電池パックを用いた携帯電話の充電時間は、比較例1の電池パックを用いた携帯電話の充電時間に比べて10%以上充電時間が短縮されていた。実施例1の電池パックと携帯電話の充電回路の組み合わせは本発明の充電システム、充電方法でもあり、これらの効果は明らかである。
なお、リチウム二次電池パックは、低温度環境下(例えば、5℃)では、SOC90%までに要する時間が長くなるが、実施例のリチウム二次電池パックは、パック自体をヒーターで室温(25℃)まで加温しつつ充電することで、室温環境下で充電した場合と、ほぼ同等の充電時間とすることができた。よって、本発明のリチウム二次電池パックであれば、低温環境下でもパック自体を加温することで急速充電が可能であり、広い温度範囲でも急速充電できることも判明した。
(実施例8)
実施例1と同様のFETとPTC素子を用い、インピーダンスは0.050Ωで同一であるが、電池容量の異なる5つのリチウム二次電池パックA〜Eを作製した。得られたリチウム二次電池パックA〜Eのインピーダンス、容量、及びインピーダンス容量指数を表3に示す。
(比較例6)
比較例4と同様のFETとPTC素子を用い、インピーダンスを0.133Ωに変更したこと以外は、上記実施例8と同様にして、電池容量の異なる5つのリチウム二次電池パックF〜Jを作製した。得られたリチウム二次電池パックF〜Jのインピーダンス、容量、及びインピーダンス容量指数を表3に示す。
上記各リチウム二次電池パックA〜E,F〜Jと充放電装置とを組み合わせて充電システムを構築した。得られた各充電システムを用い、25℃で、それぞれの容量に対し1.5C(1.5Ahの場合、2.3Aに相当)の定電流で電圧値が4.2Vになるまで充電し、その後その電圧を保つ定電圧で充電するCC−CV充電(カットオフ電流値が0.05C)を行った。そして、充電開始から定電圧モードに切り替わるまでの時間であるCC充電時間(分)を測定した。その結果を表3及び図5に示す。図5は、リチウム二次電池パックA〜E,F〜Jの電池容量(Ah)とCC充電時間(分)との関係を表す図である。
図5から、インピーダンス容量指数が0.055Ω/Ahより大きいリチウム電池パックF〜Jの場合、容量が1.5Ah辺りから急激にCC充電できる時間が低下することが分かる。これは電池の容量が上昇したことにより、1.5Cに相当する充電電流値が相対的に大きくなったことが影響していると考えられる。つまり、容量が1.0Ah程度の電池パックであれば、従来のインピーダンスであっても、1時間程度で満充電とすることが可能であるが、1.5Ah以上の容量を超えた辺りから、1.5C相当の電流値での充電が困難になり、本来の大きな電流で充電できる時間が短くなることが分かる。
一方、インピーダンス容量指数が0.055Ω/Ah以下であるリチウム電池パックA〜Eの場合、容量が1.5Aを超えてもCC充電できる時間が急激に低下することはなく、容量が大きな場合でも1時間程度で満充電することが可能であることが分かる。
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、上記以外の形態としても実施が可能である。本出願に開示された実施形態は一例であって、これらに限定はされない。本発明の範囲は、上述の明細書の記載よりも、添付されている請求の範囲の記載を優先して解釈され、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は、請求の範囲に含まれるものである。
通常、リチウム二次電池パックの定電流−定電圧充電では、定電圧(CV)充電期間における単位時間当たりの充電容量よりも、定電流(CC)充電期間における単位時間当たりの容量が大きい。よって、CC充電できる領域を大きくし、かつ充電電流を高めることでリチウム二次電池パックの充電開始から満充電状態にするまでの時間を大幅に短縮できる。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、Siを含む材料を負極活物質として含むリチウム二次電池を用いて容量1.5Ahの電池パックを作製し、この電池パックのインピーダンスを0.09Ωから0.05Ωに変更した場合に、1.5Cの電流値で充電すると、CC充電で電池パック容量の80%まで充電できることを見出した。そして、この知見に基づいて、リチウム二次電池に係る負極活物質を特定のものとし、かつリチウム二次電池パックのインピーダンスと容量とを特定の関係に調整することで、充電時のリチウム二次電池パックの電圧上昇を小さくし、また、通常では想定できないほどのCC充電領域を確保し、充電時に電流の減衰を極力抑えることを可能にして、強制的に冷却する等の特別の操作を要することなく、その急速充電特性を大きく高め、例えば1C以下の電流値で充電する従来の方式に比べて、充電開始から満充電状態にするまでの時間を大きく短縮化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のリチウム二次電池パックは、正極と負極とがセパレータを介して対向してなる電極体及び非水電解質を有するリチウム二次電池と、PTC素子と、電界効果トランジスタを有する保護回路とを備えたリチウム二次電池パックであって、上記負極は、負極活物質としてSiを含む材料を含有する負極合剤層を有し、上記リチウム二次電池パックのインピーダンスをZ(Ω)とし、上記リチウム二次電池パックの容量をQ(Ah)としたとき、Z/Qで表されるインピーダンス容量指数が0.055Ω/Ah以下であることを特徴とする。これにより、リチウム二次電池パックの急速充電特性を向上できる。
図1は、本発明のリチウム二次電池パックの一例を表す回路図を示している。図1に示すリチウム二次電池パックは、リチウム二次電池100と、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子(PTCサーミスタ)101と、保護回路102と、外部端子+IN,−INとを有しており、これらがリード線で接続され、リチウム二次電池100の正極端子及び負極端子から、外部端子+IN,−INを介して、外部の負荷に対する電力の供給、あるいは外部からの充電が行われる。
上記PTC素子101は、温度の上昇に応じて電流を遮断する機能を有する。上記保護回路102は、放電電流をオン/オフするためのスイッチング素子である電解効果トランジスタ(FET)103aと、充電電流をオン/オフするためのスイッチング素子であるFET103bと、充放電時の電池電圧及びFET103a,103b間の電圧を検出し、該検出した電圧に基づいてFET103a,103bの動作を制御する制御部104とを備え、充放電時の過充電や過放電、過電流からリチウム二次電池を保護するための機能を有する。なお、図1では、2個のFETが並列に接続されている場合について示しているが、直列に接続されていてもよいし、FETの数は1個でもよい。
本発明のリチウム二次電池パックは、例えば、図1に示すリチウム二次電池100、PTC素子101及び保護回路102等の構成要素を、外装体に収容した構造とすることができる。
本発明のリチウム二次電池パックは、図1に示す構成のものに限定されない。例えば、図1ではリチウム二次電池100を1個有するリチウム二次電池パックの例を示したが、本発明のリチウム二次電池パックは、要求される容量に応じて、リチウム二次電池100を複数個有していてもよい。
本発明のリチウム二次電池パックにおいて、インピーダンスをZ(Ω)とし、容量をQ(Ah)としたとき、Z/Qで表されるインピーダンス容量指数が、0.055Ω/Ah以下であることが好ましく、0.04Ω/Ah以下がより好ましく、0.035Ω/Ah以下が更に好ましい。リチウム二次電池パックのインピーダンス容量指数を上記の値とすることで、リチウム二次電池パックの充電時におけるCC充電時間を長くすることができ、急速充電特性を高めることができる。
上記インピーダンス容量指数Z/Qは小さいほど好ましいが、技術的な限界もあることから、通常は0.01以上である。
上記インピーダンス容量指数Z/Qを算出するためのインピーダンスZには、LCRメータを用いて、25℃、1kHzの条件で測定される値を用いる。
また、上記インピーダンス容量指数Z/Qを算出するためのリチウム二次電池パックの容量Qには、以下の方法により求められる値を用いる。すなわち、リチウム二次電池パックを、25℃において、1.0Cの電流値で定電流充電し、電圧値が4.2Vに達した後に更に4.2Vの電圧値で定電圧充電を行い、合計充電時間が2.5時間となった時点で充電を終了する。充電後のリチウム二次電池パックについて、0.2Cで放電を行い、電圧値が3Vに達したら放電をやめて放電電気量を求め、この放電電気量を容量Qとする。
上記インピーダンス容量指数Z/Qは、リチウム二次電池パックのインピーダンスZと容量Qとをそれぞれ調節することで調整できる。
上記リチウム二次電池パックの容量Q、すなわちリチウム二次電池の容量の調節方法としては、種々の方法が知られており、本発明では、これらを本発明の効果を損なわない範囲で採用できる。容量Qは1.5Ah以上が好ましく、より好ましくは2.0Ah以上である。なお、後述するように、本発明に係るリチウム二次電池では、例えばリチウム二次電池用の負極活物質として汎用されている炭素材料よりも高容量の、Siを含む材料を、負極活物質の少なくとも一部に使用するが、これも、リチウム二次電池パックの容量の調節方法として挙げられる。
また、上記リチウム二次電池パックのインピーダンスZの調節方法としては、リチウム二次電池パックの構成要素であるリチウム二次電池、PTC素子、保護回路(そこに含まれるFET)、更には、これらを接続するためのリード線のそれぞれについて、抵抗値の小さなものを使用する方法が挙げられる。例えば、PTC素子やFETについては、従来の携帯電話用のリチウム二次電池パック(1C以下の電流値で1時間程度充電すれば満充電状態とし得る程度の容量のリチウム二次電池パック)で採用されているものよりも低い抵抗値のものを選択することが好ましい。特にFETに抵抗値の低いものを使用するか、FETを並列接続して経路全体として抵抗を下げることにより、リチウム二次電池パック全体のインピーダンス低下に大きく寄与する。本発明において、インピーダンスZは、0.085Ω以下が好ましく、より好ましくは0.05Ω以下である。また、下限値は、0.02Ω以上が好ましく、より好ましくは0.03Ω以上である。
前述の通り、リチウム二次電池パックの急速充電特性を高めるには、CC−CV充電において、充電電流値を高めると共に、CC充電により充電可能な領域を大きくすることが好ましい。具体的には、CC充電により充電可能な容量が、リチウム二次電池パックの容量の80%を超えることが好ましい。
また、本発明のリチウム二次電池パックは、1.5Cの電流値で充電したときに得られる電圧(mV)−SOC(規格容量に対する充電容量の比率)(%)曲線のSOC40%における傾きk40が小さいことが好ましい。傾きk40は、電圧−SOC曲線のSOC40%における接線を、SOC35%からSOC45%まで延長し、それぞれのSOCにおける電圧の差を求め、その値を、SOC10%の変化に対する電圧上昇の値(mV)として表される。以下、本明細書では、傾きk40を、電圧上昇の値(mV)/10%SOCと記述する。
上記傾きk40の値は小さいほど、リチウム二次電池パックのCC充電における電圧上昇が小さく、より充電可能な容量が大きいことを意味していることから、上記傾きk40の値をより小さくすることで、リチウム二次電池パックの急速充電特性をより高めることができる。傾きk40は、具体的には、90mV/10%SOC以下であることが好ましく、50mV/10%SOC以下であることがより好ましく、10mV/10%SOC以下であることが更に好ましい。また、傾きk40は、通常は1mV/10%SOCより大きくなる。
上記傾きk40は、リチウム二次電池パックを構成するリチウム二次電池に係る負極活物質に、Siを含む材料を使用することで小さくできる。この場合、負極活物質に含まれるSiの負極合剤層の単位面積(平面視での面積。以下同じ。)当たりの含有量を、後述する値に調節することで、上記傾きk40をより良好に調整できる。
本発明のリチウム二次電池パックに係るリチウム二次電池は、正極合剤層を有する正極と負極合剤層を有する負極とがセパレータを介して対向してなる電極体と、非水電解質とを有するものである。以下、上記リチウム二次電池の各構成要素について説明する。
<負極>
本発明のリチウム二次電池パックを構成するリチウム二次電池に係る負極には、例えば、負極活物質及びバインダ等を含有する負極合剤層を、集電体の片面または両面に有する構造のものが使用できる。
上記負極合剤層に含まれる負極活物質には、Siを含む材料を用いる。これにより、充電時の電圧上昇の少ないリチウム二次電池パックを形成し得るリチウム二次電池を構成できる。上記Siを含む材料としては、例えば、Siを構成元素に含む合金、酸化物、炭化物等のSi系活物質が挙げられるが、一般組成式SiOx(ただし、Siに対するOの原子比xは、0.5≦x≦1.5である。)で表されるSiとOとを構成元素に含む材料が好ましい。以下、SiとOとを構成元素に含む材料を、「SiOx」という。上記Siを含む材料は、いずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記SiOxは、Siの酸化物に限定されず、Siと他の金属(例えば、B、Al、Ga、In、Ge、Sn、P、Bi等)との複合酸化物であってもよく、また、Siや他の金属の微結晶または非晶質相を含んでいてもよく、全体として、Siに対するOの原子比xが0.5≦x≦1.5を満たしていればよい。
また、上記SiOxには、例えば、非晶質のSiO2マトリックス中に、Si(例えば、微結晶Si)が分散した構造のものが含まれ、この非晶質のSiO2と、その中に分散しているSiを合わせて、上記の原子比xが0.5≦x≦1.5を満足していればよい。例えば、非晶質のSiO2マトリックス中に、Siが分散した構造で、SiO2とSiのモル比が1:1である材料の場合、x=1であるので、本発明においてはSiOと表記される。このような構造の材料の場合、例えば、X線回折分析では、Si(微結晶Si)の存在に起因するピークが観察されない場合もあるが、透過型電子顕微鏡で観察すると、微細なSiの存在が確認できる。SiOxの粒径としては、後述する炭素材料との複合化の効果を高め、また、充放電での微細化を防ぐため、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置、例えば、日機装社製の「マイクロトラックHRA」等により測定される数平均粒子径として、およそ0.5〜10μmのものが好ましく用いられる。
ところで、上記SiOxは、導電性が乏しいため、これを負極活物質として単独で用いる際には、良好な電池特性確保の観点から、炭素材料等の導電助剤が必要となる。ただし、SiOxを単に炭素材料と混合して得られる混合物を負極活物質として用いるよりも、SiOxをコア材とし、その表面に炭素の被覆層が形成されてなる複合体(以下、SiOx/炭素複合体という。)を用いることが好ましく、この場合、負極における導電ネットワークが良好に形成され、リチウム二次電池の負荷特性を高めることが可能となる。
更に、上記負極活物質として、SiOx/炭素複合体を使用する場合、コア材の表面に堆積させる炭素の量及び状態を最適化することで、高容量であるという特徴を保ちつつ、貯蔵特性を向上させることができる。
コア材となる上記SiOxは、従来公知の手法によって製造できる。SiOxとしては、SiOxの一次粒子の他、複数の粒子を含むSiOx複合粒子や、コア材の導電性を高める等の目的で、SiOxを炭素材料とともに造粒させた造粒体等が挙げられる。
また、上記SiOx/炭素複合体は、例えば、SiOx粒子と炭化水素系ガスとを気相中にて加熱して、炭化水素系ガスの熱分解により生じた炭素を、SiOx粒子の表面上に堆積させることにより得られる。このように気相成長(CVD)法を用いて製造することで、炭化水素系ガスがSiOx粒子の隅々にまで行き渡り、粒子の表面や表面の空孔内に、導電性を有する炭素材料を含む薄くて均一な皮膜(炭素の被覆層)を形成できることから、少量の炭素材料によってSiOx粒子に均一性よく導電性を付与できる。
上記気相成長(CVD)法の処理温度(雰囲気温度)については、上記炭化水素系ガスの種類によっても異なるが、通常、600〜1200℃が適当であり、中でも、700℃以上であることが好ましく、800℃以上であることが更に好ましい。処理温度が高い方が不純物の残存が少なく、かつ導電性の高い炭素を含む被覆層を形成できるからである。
上記炭化水素系ガスの液体ソースとしては、トルエン、ベンゼン、キシレン、メシチレン等を用いることができるが、取り扱い易いトルエンが特に好ましい。これらを気化させる(例えば、窒素ガスでバブリングする)ことにより炭化水素系ガスを得ることができる。また、メタンガスやアセチレンガス等を用いることもできる。
また、上記気相成長(CVD)法を用いてSiOx粒子の表面を炭素材料で被覆した後に、石油系ピッチ、石炭系のピッチ、熱硬化性樹脂、及びナフタレンスルホン酸塩とアルデヒド類との縮合物よりなる群から選択される少なくとも1種の有機化合物を、炭素材料を含む被覆層に付着させ、上記有機化合物が付着した粒子を焼成してもよい。具体的には、表面が炭素材料で被覆されたSiOx粒子と有機化合物とが分散媒に分散した分散液を用意し、この分散液を噴霧し乾燥して、有機化合物によって被覆された粒子を形成し、その有機化合物によって被覆された粒子を焼成する。
上記ピッチとしては、等方性ピッチを用いることができる。また、上記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、フラン樹脂、フルフラール樹脂等を用いることができる。ナフタレンスルホン酸塩とアルデヒド類との縮合物としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物を用いることができる。
上記の表面が炭素材料で被覆されたSiOx粒子と有機化合物とを分散させるための分散媒としては、例えば、水、アルコール類(エタノール等)を用いることができる。分散液の噴霧は、通常、50〜300℃の雰囲気内で行うことが適当である。焼成温度は、通常、600〜1200℃が適当であるが、中でも700℃以上が好ましく、800℃以上であることが更に好ましい。処理温度が高い方が不純物の残存が少なく、かつ導電性の高い良質な炭素材料を含む被覆層を形成できるからである。ただし、処理温度はSiOxの融点以下であることを要する。
コア材であるSiOxの表面に堆積させる炭素の量は、少なすぎると貯蔵後の容量低下が大きく、多すぎると高容量であるSiOxを使用する効果を十分に確保し得ない虞があることから、SiOxと炭素材料との複合体の全量に対して、10〜30質量%が好ましい。
コア材の表面が露出している場合には、貯蔵後に容量が低下しやすくなることから、コア材の表面のうち、炭素で被覆されている割合が高いほど好ましい。例えば、SiOx/炭素複合体のラマンスペクトルを測定レーザ波長532nmで測定したとき、Siに由来する510cm-1のピーク強度:I510と、炭素(C)に由来する1343cm-1のピーク強度:I1343との強度比I510/I1343が、0.25以下であることが好ましい。強度比I510/I1343は小さいほど、炭素被覆率が高いことを意味する。
上記ラマンスペクトルの強度比I510/I1343は、顕微ラマン分光法でSiOx/炭素複合体をマッピング測定(測定範囲:80×80μm、2μmステップ)し、測定範囲内の全てのスペクトルを平均して、Siに由来するピーク(510cm-1)とCに由来するピーク(1343cm-1)との強度比率により求められる値である。
上記SiOx/炭素複合体を負極活物質として用いる場合、コア材に含まれるSi相の結晶子サイズが小さすぎると、貯蔵後の容量低下が大きくなる虞があることから、CuKα線を用いたX線回折法により得られるSiの(111)回折ピークの半値幅は、3.0°未満が好ましく、2.5°以下であることがより好ましい。一方、Si相の結晶子サイズが大きすぎると、初期の充放電容量が小さくなる虞があることから、上記X線回折法により求められるSiの(111)回折ピークの半値幅は、0.5°以上であることが好ましい。
上記SiOx/炭素複合体の平均粒子径D50は、リチウム二次電池パックを繰り返し充放電した後の容量低下を抑える観点から、0.5μm以上であることが好ましく、リチウム二次電池パックの充放電に伴う負極の膨張を抑える観点から、20μm以下であることが好ましい。なお、上記平均粒子径D50は、レーザ散乱粒度分布計(例えば、堀場製作所製「LA−920」)を用い、樹脂を溶解しない媒体に、当該材料を分散させて測定した体積基準の平均粒子径である。
上記SiOxの比抵抗値は、通常、103〜107kΩcmであるのに対し、上記SiOxを被覆する炭素材料の比抵抗値は、通常、10-5〜10kΩcmである。
上記リチウム二次電池に係る負極には、負極活物質として、上述したSiOxと共に、他の活物質を併用することができる。他の活物質としては、例えば、黒鉛質炭素材料が好ましい。黒鉛質炭素材料としては、従来から知られているリチウム二次電池に使用されているものが好適であり、例えば、鱗片状黒鉛等の天然黒鉛;熱分解炭素類、メソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維等の易黒鉛化炭素を2800℃以上で黒鉛化処理した人造黒鉛;等が挙げられる。
上記負極活物質中におけるSiOxの含有量は、リチウム二次電池の容量を増加させ、リチウム二次電池パックの急速充電特性をより高める観点から、Si換算で、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることが更に好ましい。SiOxの含有量が多い場合は、初期容量は増加するが、充放電に伴いリチウム二次電池の容量低下を引き起こす虞があるので、必要な容量と充放電サイクル特性とのバランスを見て使用量を決定する必要がある。よって、電池の充放電に伴うSiOxの体積変化に起因する充放電に伴う容量減少を抑えて、リチウム二次電池パックの充放電サイクル特性を高めるには、負極活物質中におけるSiOxの含有量が、活物質中に含まれるSiの量で、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。
上記負極合剤層に使用するバインダには、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸塩、ポリイミド、ポリアミドイミド、等が好適に用いられる。
また、上記負極合剤層には、更に導電助剤として導電性材料を添加してもよい。導電性材料としては、リチウム二次電池内において化学変化を起こさないものであれば特に限定されず、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の各種カーボンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維等の材料を1種または2種以上用いることができる。
本発明に係る負極は、例えば、負極活物質及びバインダ、更には必要に応じて導電助剤を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)や水等の溶剤に分散させたペースト状やスラリー状の負極合剤含有組成物を調製し(ただし、バインダは溶剤に溶解していてもよい)、これを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥した後に、必要に応じてプレス処理を施す工程を経て製造される。ただし、負極は、上記の製造方法で製造されたものに制限される訳ではなく、他の製造方法で製造されたものであってもよい。
上記負極合剤層の厚みは、集電体の片面あたり10〜100μmであることが好ましい。負極合剤層の密度(集電体に積層した単位面積あたりの負極合剤層の質量と、厚みから算出される)は、1.0〜1.9g/cm3であることが好ましい。上記負極合剤層の組成としては、負極活物質の総量が80〜99質量%であることが好ましく、バインダの量が1〜20質量%であることが好ましく、導電助剤を使用する場合には、導電助剤は、負極活物質の総量及びバインダの量が上記の好適値を満足する範囲内で使用することが好ましい。
本発明に係る負極では、負極活物質に含まれるSi元素の負極合剤層の単位面積当たりの含有量は、リチウム二次電池パックの急速充電特性をより高める観点から、0.007mg/cm2以上であることが好ましく、0.018mg/cm2以上であることがより好ましく、0.1mg/cm2以上であることが更に好ましい。Si元素の含有量が多すぎると、リチウム二次電池の初期容量は大きくなるが、リチウム二次電池パックの充放電サイクル特性が低下する虞があることから、負極活物質に含まれるSi元素の負極合剤層の単位面積当たりの含有量は、1.5mg/cm2未満であることが好ましく、1.0mg/cm2未満であることがより好ましく、0.5mg/cm2未満であることが更に好ましい。
負極の集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタル等を用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、機械的強度を確保するためには厚みの下限は5μmであることが好ましい。
<正極>
本発明のリチウム二次電池パックを構成するリチウム二次電池に係る正極には、例えば、正極活物質、導電助剤及びバインダ等を含有する正極合剤層を、集電体の片面または両面に有する構造のものが使用できる。
上記正極活物質としては、Li(リチウム)イオンを吸蔵放出可能なLi含有遷移金属酸化物等が使用される。Li含有遷移金属酸化物としては、従来から知られているリチウム二次電池に使用されているものが挙げられる。具体的には、LiyCoO2(ただし、0≦y≦1.1である。)、LizNiO2(ただし、0≦z≦1.1である。)、LipMnO2(ただし、0≦p≦1.1である。)、LiqCorM1 1-rO2(ただし、M1は、Mg、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Al、Ti、Ge及びCrよりなる群から選択される少なくとも1種の金属元素であり、0≦q≦1.1、0<r<1.0である。)、LisNi1-tM2 tO2(ただし、M2は、Mg、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Al、Ti、Ge及びCrよりなる群から選択される少なくとも1種の金属元素であり、0≦s≦1.1、0<t<1.0である。)、LifMnvNiwCo1-v-wO2(ただし、0≦f≦1.1、0<v<1.0、0<w<1.0である。)等の層状構造を有するLi含有遷移金属酸化物等が挙げられ、これらのうちの1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記バインダとしては、負極のバインダとして先に例示した各種バインダと同じものが使用できる。
また、上記導電助剤としては、例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛等)、人造黒鉛等の黒鉛(黒鉛質炭素材料);アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカ−ボンブラック;炭素繊維;等の炭素材料等が挙げられる。
本発明に係る正極は、例えば、正極活物質、バインダ及び導電助剤を、NMP等の溶剤に分散させたペースト状やスラリー状の正極合剤含有組成物を調製し(ただし、バインダは溶剤に溶解していてもよい)、これを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥した後に、必要に応じてプレス処理を施す工程を経て製造される。ただし、正極は、上記の製造方法で製造されたものに制限される訳ではなく、他の製造方法で製造されたものであってもよい。
上記正極合剤層の厚みは、例えば、集電体の片面あたり10〜100μmであることが好ましい。上記正極合剤層の密度は、集電体に積層した単位面積あたりの正極合剤層の質量と、厚みとから算出され、3.0〜4.5g/cm3であることが好ましい。上記正極合剤層の組成としては、例えば、正極活物質の量が60〜95質量%であることが好ましく、バインダの量が1〜15質量%であることが好ましく、導電助剤の量が3〜20質量%であることが好ましい。
正極の集電体には、従来から知られているリチウム二次電池の正極に使用されているものと同様のものが使用でき、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはそれらの合金からなる箔、パンチドメタル、エキスパンドメタル、網等が挙げられ、通常、厚みが10〜30μmのアルミニウム箔が好適に用いられる。
上記の負極と上記の正極とは、後述するセパレータを挟んで積層することで、これらをセパレータを介して対向させた積層電極体や、負極と正極とをセパレータを介して積層した積層体を渦巻状に巻回した巻回電極体として、リチウム二次電池に使用される。
リチウム二次電池においては、その容量(mAh)を、正極合剤層と負極合剤層との対向面積(セパレータを介して対向する部分の面積。単位:cm2である。)で除して求められる単位面積当たりの容量(以下、「電極対向面積当たりの容量」という。)が、3.3mAh/cm2未満であることが好ましく、3.0mAh/cm2未満であることがより好ましく、2.8mAh/cm2未満であることが更に好ましい。上記電極対向面積当たりの容量が小さいリチウム二次電池を使用することで、リチウム二次電池パックの急速充電時の電池電圧の上昇を抑えることができる。ただし、上記電極対向面積当たりの容量が小さすぎると、リチウム二次電池のエネルギー密度が低下するため、リチウム二次電池における上記電極対向面積当たりの容量は、1mAh/cm2以上であることが好ましい。
上記の電極対向面積当たりの容量の算出に使用するリチウム二次電池の容量は、以下の方法により求められる値である。リチウム二次電池を、25℃において、1.0Cの電流値で定電流充電し、電圧値が4.2Vに達した後に更に4.2Vで定電圧充電を行い、合計充電時間が2.5時間となった時点で充電を終了する。充電後のリチウム二次電池について、0.2Cで放電を行い、電圧値が3Vに達したら放電をやめて放電電気量を求め、この放電電気量を容量とする。
なお、正極が負極より小さく、正極合剤層のすべてが負極合剤層と対向している場合には、電極対向面積当たりの容量は、リチウム二次電池の容量を正極合剤層の面積で除した値となる。
本発明では、正極活物質の質量をP、負極活物質の質量をNとしたとき、P/Nが1.0〜3.6であることが好ましい。P/N比率を3.6以下とすることで、負極活物質の利用率を下げて充電電気容量を制限でき、前述した充放電に伴う負極活物質の体積変化を抑制し、負極活物質粒子の粉砕等によるリチウム二次電池パックの充放電サイクル特性の低下を抑制することができる。また、P/N比率を1.0以上とすることで、高い電池容量を確保することができる。
<セパレータ>
本発明のリチウム二次電池パックを構成するリチウム二次電池に係るセパレータとしては、強度が十分で、かつ非水電解質を多く保持できるものがよく、例えば、厚さが5〜50μmで空孔率が30〜70%の、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン製の微多孔膜を用いることができる。セパレータを構成する微多孔膜は、例えば、PEのみを使用したものやPPのみを使用したものであってもよく、エチレン−プロピレン共重合体を含んでいてもよく、また、PE製の微多孔膜とPP製の微多孔膜との積層体であってもよい。
また、上記セパレータには、融点が140℃以下の樹脂を主体とした多孔質層(A)と、融点が150℃以上の樹脂または耐熱温度が150℃以上の無機フィラーを主体として含む多孔質層(B)とから構成された積層型のセパレータを使用することができる。ここで、「融点」とは日本工業規格(JIS) K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度を意味し、「耐熱温度が150℃以上」とは、少なくとも150℃において軟化などの変形が見られないことを意味している。
上記積層型のセパレータに係る多孔質層(A)は、主にシャットダウン機能を確保するためのものであり、リチウム二次電池が多孔質層(A)の主体となる成分である樹脂の融点以上に達したときには、多孔質層(A)に係る樹脂が溶融してセパレータの空孔を塞ぎ、電気化学反応の進行を抑制するシャットダウンを生じる。
多孔質層(A)の主成分となる融点が140℃以下の樹脂としては、例えばPEが挙げられ、その形態としては、リチウム二次電池に用いられる微多孔膜や、不織布などの基材にPEの粒子を塗布したものが挙げられる。ここで、多孔質層(A)の全構成成分中において、主体となる融点が140℃以下の樹脂の体積は、50体積%以上であり、70体積%以上であることがより好ましい。多孔質層(A)を上記PEの微多孔膜で形成する場合、融点が140℃以下の樹脂の体積は100体積%となる。
上記積層型のセパレータに係る多孔質層(B)は、リチウム二次電池の内部温度が上昇した際にも正極と負極との直接の接触による短絡を防止する機能を備えたものであり、融点が150℃以上の樹脂または耐熱温度が150℃以上の無機フィラーによって、その機能を確保している。すなわち、電池が高温となった場合には、喩え多孔質層(A)が収縮しても、収縮し難い多孔質層(B)によって、セパレータが熱収縮した場合に発生し得る正負極の直接の接触による短絡を防止することができる。また、この耐熱性の多孔質層(B)がセパレータの骨格として作用するため、多孔質層(A)の熱収縮、すなわちセパレータ全体の熱収縮自体も抑制できる。
多孔質層(B)を融点が150℃以上の樹脂を主体として形成する場合、その形態としては、例えば、融点が150℃以上の樹脂で形成された微多孔膜(例えば前述のPP製の電池用微多孔膜)を多孔質層(A)に積層させる形態、融点が150℃以上の樹脂の微粒子を含む多孔質層(B)形成用の組成物(塗液)を多孔質層(A)に塗布して、融点が150℃以上の樹脂の微粒子を含む多孔質層(B)を積層させる塗布積層型の形態が挙げられる。
融点が150℃以上の樹脂の微粒子を構成する樹脂としては、PP;架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン、架橋ポリジビニルベンゼン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体架橋物、ポリイミド、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物などの各種架橋高分子;ポリスルフォン;ポリエーテルスルフォン;ポリフェニレンスルフィド;ポリテトラフルオロエチレン;ポリアクリロニトリル;アラミド;ポリアセタールなどが挙げられる。
上記微粒子の粒径は、平均粒子径で、例えば、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上であって、好ましくは10μm以下、より好ましくは2μm以下である。上記微粒子の平均粒子径は、例えば、レーザ散乱粒度分布計(例えば、堀場製作所製「LA−920」)を用い、樹脂を溶解しない媒体に、これら微粒子を分散させて測定した平均粒子径(D50)である。
上記微粒子の量は、多孔質層(B)の構成成分の全体積(空孔部分を除く全体積)中、50体積%以上であり、70体積%以上であることが好ましく、80体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることが更に好ましい。
多孔質層(B)を耐熱温度が150℃以上の無機フィラーを主体として形成する場合には、耐熱温度が150℃以上の無機フィラーを含む多孔質層(B)形成用の組成物(塗液)を多孔質層(A)に塗布して、耐熱温度が150℃以上の無機フィラーを含む多孔質層(B)を積層させる塗布積層型の形態が挙げられる。
上記無機フィラーは、耐熱温度が150℃以上で、リチウム二次電池の有する非水電解質に対して安定であり、更にリチウム二次電池の作動電圧範囲において酸化還元され難い電気化学的に安定なものであればよいが、分散などの点から微粒子であることが好ましく、また、アルミナ、シリカ、ベーマイトが好ましい。アルミナ、シリカ、ベーマイトは、耐酸化性が高く、粒径や形状を所望の数値などに調整することが可能であるため、多孔質層(B)の空孔率を精度よく制御することが容易となる。なお、上記無機フィラーは、例えば上記例示のものを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記耐熱温度が150℃以上の無機フィラーと、前述の融点が150℃以上の樹脂の微粒子とを併用しても差し支えない。
上記無機フィラーの形状については特に制限はなく、略球状(真球状を含む)、略楕円体状(楕円体状を含む)、板状などの各種形状のものを使用できる。
また、上記無機フィラーの平均粒子径(板状フィラーおよび他形状フィラーの平均粒子径。以下同じ。)は、小さすぎるとイオンの透過性が低下することから、0.3μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。また、上記無機フィラーが大きすぎると、電気特性が劣化しやすくなることから、その平均粒子径は、5μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。本明細書でいう耐熱温度が150℃以上の無機フィラーの平均粒子径は、融点が150℃以上の樹脂の微粒子の平均粒子径と同じ方法で求められる平均粒子径(D50)である。
上記無機フィラーの量は、多孔質層(B)の構成成分の全体積(空孔部分を除く全体積)中、50体積%以上であり、70体積%以上であることが好ましく、80体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることが更に好ましい。上記無機フィラーを上記のように高含有量とすることで、リチウム二次電池が高温となった際にも、セパレータ全体の熱収縮を良好に抑制することができ、正極と負極との直接の接触による短絡の発生をより良好に抑制することができる。
多孔質層(B)には、上記融点が150℃以上の樹脂の微粒子同士または上記耐熱温度が150℃以上の無機フィラー同士を結着したり、多孔質層(B)と多孔質層(A)とを一体化するために、有機バインダを含有させることが好ましい。有機バインダとしては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA、酢酸ビニル由来の構造単位が20〜35モル%のもの)、エチレン−エチルアクリレート共重合体などのエチレン−アクリル酸共重合体、フッ素系ゴム、SBR、CMC、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられるが、特に、150℃以上の耐熱温度を有する耐熱性のバインダが好ましく用いられる。有機バインダは、上記例示のものを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
多孔質層(B)形成用組成物は、上記融点が150℃以上の樹脂の微粒子または上記耐熱温度が150℃以上の無機フィラーの他、必要に応じて上記有機バインダなどを含有し、これらを溶媒(分散媒を含む。以下同じ。)に分散させたものである。多孔質層(B)形成用組成物に用いられる溶媒は、無機フィラーなどを均一に分散でき、また、有機バインダを均一に溶解または分散できるものであればよいが、例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素、テトラヒドロフランなどのフラン類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類など、一般的な有機溶媒が好適に用いられる。
多孔質層(B)形成用組成物は、上記融点が150℃以上の樹脂の微粒子または上記耐熱温度が150℃以上の無機フィラー、および上記有機バインダなどを含む固形分含量を、例えば10〜80質量%とすることが好ましい。
ポリオレフィン製の微多孔膜からなるセパレータや、上記積層型のセパレータの厚みは、10〜30μmであることがより好ましい。
また、上記積層型のセパレータにおいては、多孔質層(B)の厚み[セパレータが多孔質層(B)を複数有する場合は、その総厚み]は、多孔質層(B)による上記の各作用をより有効に発揮させる観点から、3μm以上であることが好ましい。ただし、多孔質層(B)が厚すぎると、電池のエネルギー密度の低下を引き起こすなどの虞があることから、多孔質層(B)の厚みは、8μm以下であることが好ましい。
更に、上記積層型のセパレータにおいては、多孔質層(A)の厚み[セパレータが多孔質層(A)を複数有する場合は、その総厚み。以下同じ。]は、多孔質層(A)の使用による上記作用(特にシャットダウン作用)をより有効に発揮させる観点から、6μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。ただし、多孔質層(A)が厚すぎると、電池のエネルギー密度の低下を引き起こす虞があることに加えて、多孔質層(A)が熱収縮しようとする力が大きくなり、セパレータ全体の熱収縮を抑える作用が小さくなる虞がある。そのため、多孔質層(A)の厚みは、25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、14μm以下であることが更に好ましい。
セパレータ全体の空孔率としては、電解液の保液量を確保してイオン透過性を良好にするために、乾燥した状態で、30%以上であることが好ましい。一方、セパレータ強度の確保と内部短絡の防止の観点から、セパレータの空孔率は、乾燥した状態で、70%以下であることが好ましい。セパレータの空孔率:P(%)は、セパレータの厚み、単位面積あたりの質量、構成成分の密度から、下記(1)式を用いて各成分iについての総和を求めることにより計算できる。
P={1−(m/t)/(Σai・ρi)}×100 (1)
ここで、上記式中、ai:全体の質量を1としたときの成分iの比率、ρi:成分iの密度(g/cm3)、m:セパレータの単位面積あたりの質量(g/cm2)、t:セパレータの厚み(cm)、である。
また、上記積層型のセパレータの場合、上記(1)式において、mを多孔質層(A)の単位面積あたりの質量(g/cm2)とし、tを多孔質層(A)の厚み(cm)とすることで、上記(1)式を用いて多孔質層(A)の空孔率:P(%)を求めることもできる。この方法により求められる多孔質層(A)の空孔率は、30〜70%であることが好ましい。
更に、上記積層型のセパレータの場合、上記(1)式において、mを多孔質層(B)の単位面積あたりの質量(g/cm2)とし、tを多孔質層(B)の厚み(cm)とすることで、上記(1)式を用いて多孔質層(B)の空孔率:P(%)を求めることもできる。この方法により求められる多孔質層(B)の空孔率は、20〜60%であることが好ましい。
リチウム二次電池に使用する上記の積層電極体や巻回電極体においては、上記積層型のセパレータを使用した場合、特に融点が140℃以下の樹脂を主体とした多孔質層(A)に、耐熱温度が150℃以上の無機フィラーを主体として含む多孔質層(B)を積層したセパレータを使用する場合には、多孔質層(B)が少なくとも正極に面するように配置することが好ましい。この場合、耐熱温度が150℃以上の無機フィラーを主体として含み、より耐酸化性に優れる多孔質層(B)が正極と面することで、正極によるセパレータの酸化をより良好に抑制できるため、電池の高温時の保存特性や充放電サイクル特性を高めることもできる。また、ビニレンカーボネートやシクロヘキシルベンゼンなどの添加剤を非水電解質中に加えた場合(後述する)、正極側で被膜化しセパレータの細孔を詰まらせて電池特性を著しく低下させる虞もある。そこで比較的ポーラスな多孔質層(B)を正極に対面させることで、細孔の目詰まりを抑制する効果も期待できる。
他方、上記積層型セパレータの一方の表面が多孔質層(A)である場合には、多孔質層(A)が負極に面するようにすることが好ましい。この場合、多孔質層(A)を正極側に配置した場合よりも、シャットダウン時に多孔質層(A)から溶融した熱可塑性樹脂が電極合剤層に吸収されにくく、溶融した熱可塑性樹脂の大部分を、セパレータの空孔を閉塞するのに利用できるため、シャットダウンによる効果がより良好となる。
<非水電解質>
本発明のリチウム二次電池パックを構成するリチウム二次電池に係る非水電解質としては、下記の溶媒中に無機リチウム塩または有機リチウム塩あるいはその両者を溶解させることによって調製した電解液が挙げられる。
上記溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、蟻酸メチル、酢酸メチル、燐酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、ジエチルエーテル、1,3−プロパンサルトン等の非プロトン性有機溶媒が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記無機リチウム塩としては、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸Li、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランLi、四フェニルホウ酸Li等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記有機リチウム塩としては、LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li2C2F4(SO3)2、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiCnF2n+1SO3(2≦n≦7)、LiN(Rf1OSO2)2〔ここでRf1はフルオロアルキル基である。〕等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記電解液中のリチウム塩の濃度は、非水電解液中、例えば、0.2〜3.0mol/dm3が好ましく、0.5〜1.5mol/dm3がより好ましく、0.9〜1.3mol/dm3が更に好ましい。
上記非水電解液としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびメチルエチルカーボネートより選ばれる少なくとも1種の鎖状カーボネートと、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートより選ばれる少なくとも1種の環状カーボネートとを含む溶媒に、LiPF6を溶解した電解液が特に好ましく用いられる。
また、上記非水電解液には、充放電サイクル特性の改善、高温貯蔵性や過充電防止等の安全性を向上させる目的で、次に示す添加剤を適宜含有させることができる。添加剤としては、例えば、無水酸、スルホン酸エステル、ジニトリル、1,3−プロパンサルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキシルベンゼン、ビニレンカーボネート(VC)、ビフェニル、フルオロベンゼン、t−ブチルベンゼン、環状フッ素化カーボネート[トリフロオロプロピレンカーボネート(TFPC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等]、または、鎖状フッ素化カーボネート[トリフルオロジメチルカーボネート(TFDMC)、トリフルオロジエチルカーボネート(TFDEC)、トリフルオロエチルメチルカーボネート(TFEMC)等]、フッ素化エーテル[Rf2−OR(ただし、Rf2はフッ素を含有するアルキル基であり、Rはフッ素を含有してもよい有機基である。]、リン酸エステル[エチルジエチルホスホノアセテート(EDPA):(C2H5O)2(P=O)−CH2(C=O)OC2H5]、リン酸トリス(トリフルオロエチル)(TFEP):(CF3CH2O)3P=O、リン酸トリフェニル(TPP):(C6H5O)3P=O等]等(上記各化合物の誘導体も含む)が挙げられる。前述のように、正極と負極のP/N比率を制限することで、SiOx/炭素複合体の体積の膨張・収縮による粒子の粉砕を抑制することが可能であるが、TFPCを非水電解液に添加することで、SiOx/炭素複合体の粒子表面に被膜を形成し、繰り返しの充放電によって粒子表面に亀裂等が発生して新生面が露出する場合でも、上記TFPCが新生面を再度被覆するので充放電サイクルによる容量劣化を抑制することができる。また、TFPCは、FECと比べて耐酸化還元性が高いので、被膜生成以外の余剰な分解反応(ガス発生等)を起こしにくく、分解反応に伴う発熱反応を抑制してリチウム二次電池の内部温度上昇を起こしにくくする働きがある。
また、上記非水電解液は、公知のポリマー等のゲル化剤を用いてゲル状の電解質として用いることもできる。
本発明のリチウム二次電池パックに係るリチウム二次電池の形態としては、特に制限はない。例えば、コイン形、ボタン形、シート形、積層形、円筒形、偏平形、角形、電気自動車等に用いる大型のもの等、いずれであってもよい。
また、リチウム二次電池に正極、負極及びセパレータを導入するにあたっては、電池の形態に応じて、複数の正極と複数の負極とをセパレータを介して積層した積層電極体や、正極と負極とをセパレータを介して積層し、更にこれを渦巻状に巻回した巻回電極体として使用することもできる。
本発明のリチウム二次電池パックは、容量を高めつつ、良好な急速充電特性を確保し得ることから、これらの特性を生かして、小型で多機能な携帯機器の電源を始めとして、従来から知られているリチウム二次電池パックが適用されている各種用途に好ましく用いることができる。例えば、本発明のリチウム二次電池パックを、従来から汎用されている充電装置(定電流定電圧充電装置、パルス充電装置等)に設置した場合、急速充電可能な本発明の充電システムを構成でき、また、かかる充電システムによって、急速充電可能な本発明の充電方法を実施することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
(実施例1)
<正極の作製>
正極活物質であるLiCoO2:80質量部及びLiMn0.2Ni0.6Co0.2O2:20質量部と、導電助剤である人造黒鉛:1質量部及びケッチェンブラック:1質量部と、バインダであるPVDF:10質量部とを、溶媒であるNMPに均一になるように混合して正極合剤含有ペーストを調製した。そして、得られた正極合剤含有ペーストを、厚み15μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に厚みを調節して間欠塗布し、乾燥した後、カレンダー処理を行って、全厚が120μmになるように正極合剤層の厚みを調整し、幅が54.5mmになるように切断して正極を作製した。更にこの正極のアルミニウム箔の露出部にタブを溶接してリード部を形成した。
<負極の作製>
負極活物質である、SiOの表面を炭素で被覆した材料(平均粒子径D50が5μm。以下、「SiO/炭素複合体」という。)と平均粒子径D50が16μmの黒鉛質炭素とを5:95の質量比で混合した混合物:98質量部と、バインダである粘度が1500〜5000mPa・sの範囲に調整された1質量%の濃度のCMC水溶液:1.0質量部及びSBR:1.0質量部とを、溶媒である比伝導度が2.0×105Ω/cm以上のイオン交換水に混合して水系の負極合剤含有ペーストを調製した。
上記SiO/炭素複合体における炭素の被覆量は20質量%であり、測定レーザ波長532nmにおけるラマンスペクトルのI510/I1343強度比は0.10であり、CuKα線を用いたSiOのX線回折測定でのSi(111)回折ピーク半値幅は1.0°であった。
次に、上記負極合剤含有ペーストを、厚み8μmの銅箔からなる集電体の両面に厚みを調節して間欠塗布し、乾燥した後、カレンダー処理を行って全厚が108μmになるように負極合剤層の厚みを調整し、幅が55.5mmになるように切断して負極を作製した。更にこの負極の銅箔の露出部にタブを溶接してリード部を形成した。
上記負極における負極合剤層の面積は599cm2であり、負極活物質に含まれるSiの負極合剤層の単位面積当たりの含有量は、0.14mg/cm2であった。
<セパレータの作製>
平均粒子径D50が1μmのベーマイト5kgに、イオン交換水5kgと、分散剤(水系ポリカルボン酸アンモニウム塩、固形分濃度40質量%)0.5kgとを加え、内容積20L、転回数40回/分のボールミルで10時間解砕処理をして分散液を調製した。処理後の分散液を120℃で真空乾燥し、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、ベーマイトの形状はほぼ板状であった。
上記分散液500gに、増粘剤としてキサンタンガムを0.5g、バインダとして樹脂バインダディスパージョン(変性ポリブチルアクリレート、固形分含量45質量%)を17g加え、撹拌機で3時間攪拌して均一なスラリー[多孔質層(B)形成用スラリー、固形分含量50質量%]を調製した。
次に、リチウム二次電池用PE製微多孔質セパレータ[多孔質層(A):厚み12μm、空孔率40%、平均孔径0.08μm、PEの融点135℃]の片面にコロナ放電処理(放電量40W・min/m2)を施し、この処理面に多孔質層(B)形成用スラリーをマイクログラビアコーターによって塗布し、乾燥して厚みが4μmの多孔質層(B)を形成して、積層型のセパレータを得た。このセパレータにおける多孔質層(B)の単位面積あたりの質量は5.5g/m2で、ベーマイトの体積含有率は95体積%であり、空孔率は45%であった。
<非水電解液の調製>
EC、MEC及びDECを体積比1.0:0.5:1.5で混合した混合溶媒に、リチウム塩としてLiPF6を濃度1.1mol/dm3で溶解させて、更に、VC、FEC及びEDPAを、それぞれ2.5質量%、1.75質量%及び1.00質量%となる量で加えて、非水電解液を調製した。
<電池の組み立て>
上記の正極と上記の負極とを、上記のセパレータの多孔質層(B)が正極に面するように介在させつつ重ね、渦巻状に巻回して巻回電極体を作製した。得られた巻回電極体を押しつぶして扁平状にし、厚み5mm、幅42mm、高さ61mmのアルミニウム合金製外装缶に入れ、上記の非水電解液を注入した。そして、非水電解液の注入後に外装缶の封止を行って、図2A,Bに示す構造で、図3に示す外観のリチウム二次電池を作製した。
ここで、図2A,B及び図3に示す電池について説明すると、図2Aは平面図、図2Bは部分断面図であって、図2Bに示すように、正極1と負極2は、セパレータ3を介して渦巻状に巻回した後、扁平状になるように加圧して扁平状の巻回電極体6として、角筒形の外装缶4に非水電解液と共に収容されている。ただし、図2Bでは、煩雑化を避けるため、正極1や負極2の作製にあたって使用した集電体としての金属箔や電解液等は図示していない。また、セパレータの各層も区別して示していない。
外装缶4はアルミニウム合金製で電池の外装体を構成するものであり、この外装缶4は正極端子を兼ねている。そして、外装缶4の底部にはPEシートからなる絶縁体5が配置され、正極1、負極2及びセパレータ3からなる扁平状の巻回電極体6からは、正極1及び負極2のそれぞれ一端に接続された正極リード体7と負極リード体8が引き出されている。また、外装缶4の開口部を封口するアルミニウム合金製の封口用蓋板9にはPP製の絶縁パッキング10を介してステンレス鋼製の端子11が取り付けられ、この端子11には絶縁体12を介してステンレス鋼製のリード板13が取り付けられている。
そして、蓋板9は外装缶4の開口部に挿入され、両者の接合部を溶接することによって、外装缶4の開口部が封口され、電池内部が密閉されている。また、図2A,Bの電池では、蓋板9に非水電解液注入口14が設けられており、この非水電解液注入口14には、封止部材が挿入された状態で、例えばレーザ溶接等により溶接封止されて、電池の密閉性が確保されている。従って、図2A,B及び図3の電池では、実際には、非水電解液注入口14は、非水電解液注入口と封止部材であるが、説明を容易にするために、非水電解液注入口14として示している。更に、蓋板9には、電池の温度が上昇した際に内部のガスを外部に排出する機構として、開裂ベント15が設けられている。
この実施例1のリチウム二次電池では、正極リード体7を蓋板9に直接溶接することによって外装缶4と蓋板9とが正極端子として機能し、負極リード体8をリード板13に溶接し、そのリード板13を介して負極リード体8と端子11とを導通させることによって端子11が負極端子として機能するようになっているが、外装缶4の材質等によっては、その正負が逆になる場合もある。
図3は、上記図2A,Bに示す電池の外観を模式的に示す斜視図である。この図3は上記電池が角形電池であることを示すことを目的として図示されたものであって、図3では電池を概略的に示しており、電池を構成する部材のうち、特定のものしか図示していない。また、図2Bにおいても、巻回電極体6の中央部及びセパレータ3には、断面を示すハッチングを表示していない。
上記実施例1のリチウム二次電池について、インピーダンスは0.033Ωであり、電極対向面積当たりの容量は2.8mAh/cm2であった。
<リチウム二次電池パックの組み立て>
上記実施例1のリチウム二次電池と、抵抗値が0.01ΩのFET2個が並列に接続された保護回路と、抵抗値が0.01ΩのPTC素子とを使用し、これらを図1に示すようにリード線で接続し、外装体に収容して実施例1のリチウム二次電池パックを組み立てた。
本実施例1のリチウム二次電池パックについて、前述の方法により求めたインピーダンスは0.050Ω、前述の方法により求めた容量は1.55Ah、インピーダンス容量指数は0.032Ω/Ahであった。
(実施例2)
負極活物質としてSiO/炭素複合体に代えてSi合金を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2のリチウム二次電池を作製した。得られた実施例2のリチウム二次電池について、インピーダンスは0.034Ω、電極対向面積当たりの容量は2.8mAh/cm2であった。
そして、実施例2のリチウム二次電池を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2のリチウム二次電池パックを作製した。得られた実施例2のリチウム二次電池パックについて、インピーダンスは0.051Ω、容量は1.54Ah、インピーダンス容量指数は0.033Ω/Ahであった。
(実施例3)
負極活物質に含まれるSiの負極合剤層の単位面積当たりの含有量を0.02mg/cm2とし、これにより負極容量が減少する分を、負極合剤層を厚くして実施例1で作製した負極とほぼ同一の負極容量とした以外は、実施例1と同様にして負極を作製し、この負極を用い、かつ負極の厚み変更に伴って外装缶のサイズを変更した以外は、実施例1と同様にして実施例3のリチウム二次電池を作製した。得られた実施例3のリチウム二次電池について、インピーダンスは0.036Ω、電極対向面積当たりの容量は2.8mAh/cm2であった。
そして、実施例3のリチウム二次電池を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例3のリチウム二次電池パックを作製した。得られた実施例3のリチウム二次電池パックについて、インピーダンスは0.053Ω、容量は1.56Ah、インピーダンス容量指数は0.034Ω/Ahであった。
(実施例4)
負極活物質に含まれるSiの負極合剤層の単位面積当たりの含有量を0.18mg/cm2とし、これにより負極容量が増加する分を、負極合剤層を薄くして実施例1で作製した負極とほぼ同一の負極容量とした以外は、実施例1と同様にして負極を作製し、この負極を用いた以外は実施例1と同様にして実施例4のリチウム二次電池を作製した。得られた実施例4のリチウム二次電池について、インピーダンスは0.032Ω、電極対向面積当たりの容量は2.7mAh/cm2であった。
そして、実施例4のリチウム二次電池を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例4のリチウム二次電池パックを作製した。得られた実施例4のリチウム二次電池パックについて、インピーダンスは0.049Ω、容量は1.54Ah、インピーダンス容量指数は0.032Ω/Ahであった。
(実施例5)
電極対向面積当たりの容量を3.3mAh/cm2とし、容量が増える分を、正負極の合剤層の面積を調整して実施例1で作製したリチウム二次電池と同一の容量とした以外は、実施例1と同様にして実施例5のリチウム二次電池を作製した。得られた実施例5のリチウム二次電池について、インピーダンスは0.036Ω、電極対向面積当たりの容量は3.3mAh/cm2であった。
そして、実施例5のリチウム二次電池を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例5のリチウム二次電池パックを作製した。得られた実施例5のリチウム二次電池パックについて、インピーダンスは0.053Ω、容量は1.55Ah、インピーダンス容量指数は0.034Ω/Ahであった。
(実施例6)
抵抗値が0.02ΩのFETを1個のみ備えた保護回路と、抵抗値が0.02ΩのPTC素子とを使用した以外は、実施例1と同様にして実施例6のリチウム二次電池パックを作製した。得られた実施例6のリチウム二次電池パックについて、インピーダンスは0.075Ω、容量は1.55Ah、インピーダンス容量指数は0.048Ω/Ahであった。
(実施例7)
抵抗値が0.03ΩのFETを1個のみ備えた保護回路と、抵抗値が0.02ΩのPTC素子とを使用した以外は、実施例1と同様にして実施例7のリチウム二次電池パックを作製した。得られた実施例7のリチウム二次電池パックについて、インピーダンスは0.085Ω、容量は1.55Ah、インピーダンス容量指数は0.055Ω/Ahであった。
(比較例1)
負極活物質を、SiO/炭素複合体と黒鉛質炭素との混合物から、黒鉛質炭素のみに変更し、これにより負極容量が減少する分を、負極合剤層を厚くして実施例5で作製した負極とほぼ同一の容量とした以外は、実施例5と同様にして負極を作製し、この負極を用い、かつ負極の厚み変更に伴って外装缶のサイズを変更した以外は、実施例5と同様にして比較例1のリチウム二次電池を作製した。得られた比較例1のリチウム二次電池について、インピーダンスは0.039Ω、電極対向面積当たりの容量は3.3mAh/cm2であった。
そして、比較例1のリチウム二次電池を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例1のリチウム二次電池パックを作製した。得られた比較例1のリチウム二次電池パックについて、インピーダンスは0.056Ω、容量は1.55Ah、インピーダンス容量指数は0.036Ω/Ahであった。
(比較例2)
比較例1で作製したものと同じリチウム二次電池と、抵抗値が0.05ΩのFETを1個のみ備えた保護回路と、抵抗値が0.03ΩのPTC素子とを使用した以外は、実施例1と同様にして比較例2のリチウム二次電池パックを作製した。得られた比較例2のリチウム二次電池パックについて、インピーダンスは0.121Ω、容量は1.55Ah、インピーダンス容量指数は0.078Ω/Ahであった。
(比較例3)
負極活物質を、SiO/炭素複合体と黒鉛質炭素との混合物から、黒鉛質炭素のみに変更し、これにより負極容量が減少する分を、電極対向面積を増やすことで、実施例1で作製したリチウム二次電池と同一の容量となるように調整した以外は、実施例1と同様にして比較例3のリチウム二次電池を作製した。得られた比較例3のリチウム二次電池について、インピーダンスは0.036Ω、電極対向面積当たりの容量は2.8mAh/cm2であった。
そして、比較例3のリチウム二次電池を用いた以外は、比較例2と同様にして比較例3のリチウム二次電池パックを作製した。得られた比較例3のリチウム二次電池パックについて、インピーダンスは0.118Ω、容量は1.55Ah、インピーダンス容量指数は0.076Ω/Ahであった。
(比較例4)
実施例1で作製したものと同じリチウム二次電池と、比較例2と同じ抵抗値が0.05ΩのFETを1個のみ備えた保護回路と、抵抗値が0.03ΩのPTC素子とを使用した以外は、実施例1と同様にして比較例4のリチウム二次電池パックを作製した。得られた比較例4のリチウム二次電池パックについて、インピーダンスは0.115Ω、容量は1.55Ah、インピーダンス容量指数は0.074Ω/Ahであった。
(比較例5)
実施例1で作製したものと同じリチウム二次電池と、抵抗値が0.04ΩのFETを1個のみ備えた保護回路と、抵抗値が0.03ΩのPTC素子とを使用した以外は、実施例1と同様にして比較例5のリチウム二次電池パックを作製した。得られた比較例5のリチウム二次電池パックについて、インピーダンスは0.105Ω、容量は1.55Ah、インピーダンス容量指数は0.068Ω/Ahであった。
上記実施例1〜7及び上記比較例1〜5のリチウム二次電池パックと充放電装置とを組み合わせて充電システムを構成し、下記充電方法によって急速充電試験を行った。
<急速充電試験>
上記の各充電システムを用い、25℃で、それぞれの容量に対し1.5C(1.55Ahの場合、2.3Aに相当)の定電流で電圧値が4.2Vになるまで充電し、その後その電圧を保つ定電圧で充電するCC−CV充電(カットオフ電流値が0.05C)を行った。そして、充電開始から定電圧モードに切り替わるまでの時間であるCC充電時間(分)と、充電開始からSOC90%までの充電に要した時間(分)とを測定した。
上記各実施例及び比較例のリチウム二次電池について、Si系活物質の種類、負極活物質に含まれるSiの負極合剤層の単位面積当たりの含有量、電極対向面積当たりの容量、及び1.5Cの電流値で充電したときに得られる電圧−SOC曲線のSOC40%における傾きを表1に示した。
表1における「SOC40%での電圧傾き」は、1.5Cの電流値で充電したときに得られる電圧−SOC曲線のSOC40%における傾きk40を意味している。
また、上記各実施例及び比較例のリチウム二次電池パックについて、インピーダンス、容量、インピーダンス容量指数、CC充電時間及びSOC90%までの充電に要した時間を表2に示した。また、上記実施例1,6,7及び比較例4,5のリチウム二次電池パックについて、インピーダンス(Ω)とCC充電時間(分)との関係を図4に示した。
表2に示す通り、負極活物質としてSi系活物質を含有する負極を備えたリチウム二次電池を使用し、インピーダンス容量指数を適正な値とした実施例1〜7のリチウム二次電池パックは、比較例1〜5のリチウム二次電池パックに比べて、急速充電試験時におけるCC充電時間が長く、SOC90%までの充電に要する時間を短縮できている。また、図4から、リチウム二次電池パックのインピーダンスが0.085Ωを超えると、CC充電時間が急激に短くなることが分かる。また、実施例のリチウム二次電池パック同士の比較から、リチウム二次電池の電極対向面積当たりの容量や、負極活物質に含まれるSiの負極合剤層の単位面積当たりの含有量、SOC40%での電圧傾きを、より適正な値に調整することで、リチウム二次電池パックの急速充電特性をより高め得ることも分かる。
また、実施例1の電池パックと比較例1の電池パックを電子機器の一つである携帯電話の電池と置き換え、携帯電話の端子部からリードを取り出し、実施例1または比較例1の電池パックに接続し、充電90%になるまでの時間を比較した。その結果、実施例1の電池パックを用いた携帯電話の充電時間は、比較例1の電池パックを用いた携帯電話の充電時間に比べて10%以上充電時間が短縮されていた。実施例1の電池パックと携帯電話の充電回路の組み合わせは本発明の充電システム、充電方法でもあり、これらの効果は明らかである。
なお、リチウム二次電池パックは、低温度環境下(例えば、5℃)では、SOC90%までに要する時間が長くなるが、実施例のリチウム二次電池パックは、パック自体をヒーターで室温(25℃)まで加温しつつ充電することで、室温環境下で充電した場合と、ほぼ同等の充電時間とすることができた。よって、本発明のリチウム二次電池パックであれば、低温環境下でもパック自体を加温することで急速充電が可能であり、広い温度範囲でも急速充電できることも判明した。
(実施例8)
実施例1と同様のFETとPTC素子を用い、インピーダンスは0.050Ωで同一であるが、電池容量の異なる5つのリチウム二次電池パックA〜Eを作製した。得られたリチウム二次電池パックA〜Eのインピーダンス、容量、及びインピーダンス容量指数を表3に示す。
(比較例6)
比較例4と同様のFETとPTC素子を用い、インピーダンスを0.133Ωに変更したこと以外は、上記実施例8と同様にして、電池容量の異なる5つのリチウム二次電池パックF〜Jを作製した。得られたリチウム二次電池パックF〜Jのインピーダンス、容量、及びインピーダンス容量指数を表3に示す。
上記各リチウム二次電池パックA〜E,F〜Jと充放電装置とを組み合わせて充電システムを構築した。得られた各充電システムを用い、25℃で、それぞれの容量に対し1.5C(1.5Ahの場合、2.3Aに相当)の定電流で電圧値が4.2Vになるまで充電し、その後その電圧を保つ定電圧で充電するCC−CV充電(カットオフ電流値が0.05C)を行った。そして、充電開始から定電圧モードに切り替わるまでの時間であるCC充電時間(分)を測定した。その結果を表3及び図5に示す。図5は、リチウム二次電池パックA〜E,F〜Jの電池容量(Ah)とCC充電時間(分)との関係を表す図である。
図5から、インピーダンス容量指数が0.055Ω/Ahより大きいリチウム電池パックF〜Jの場合、容量が1.5Ah辺りから急激にCC充電できる時間が低下することが分かる。これは電池の容量が上昇したことにより、1.5Cに相当する充電電流値が相対的に大きくなったことが影響していると考えられる。つまり、容量が1.0Ah程度の電池パックであれば、従来のインピーダンスであっても、1時間程度で満充電とすることが可能であるが、1.5Ah以上の容量を超えた辺りから、1.5C相当の電流値での充電が困難になり、本来の大きな電流で充電できる時間が短くなることが分かる。
一方、インピーダンス容量指数が0.055Ω/Ah以下であるリチウム電池パックA〜Eの場合、容量が1.5Aを超えてもCC充電できる時間が急激に低下することはなく、容量が大きな場合でも1時間程度で満充電することが可能であることが分かる。
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、上記以外の形態としても実施が可能である。本出願に開示された実施形態は一例であって、これらに限定はされない。本発明の範囲は、上述の明細書の記載よりも、添付されている請求の範囲の記載を優先して解釈され、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は、請求の範囲に含まれるものである。