JP6930497B2 - 積層電池 - Google Patents
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Description
図1に積層電池100の層構成を概略的に示す。また、図2に積層電池100を構成する発電要素14の層構成を概略的に示す。図1、2に示すように、積層電池100は積層体10を備える。積層体10は、積層方向一端面を構成する第1の集電体層11と、積層方向他端面を構成する第2の集電体層12と、第1の集電体層11と第2の集電体層12との間において積層方向に沿って間隔を有しつつ配置された複数のバイポーラ集電体層13、13、…と、第1の集電体層11と第2の集電体層12との間において複数のバイポーラ集電体層13、13、…を介して電気的に直列に接続された複数の発電要素14、14、…と、を備える。発電要素14は、正極活物質層14aと、負極活物質層14bと、正極活物質層14a及び負極活物質層14bの間に配置された電解質層14cと、を備える。ここで、積層電池100は、積層体10の積層方向一端面から積層方向他端面までの長さh(cm2)と、積層体10の積層方向と直交する断面における電極面積S(cm2)との比h/S(cm−1)が1よりも大きいことに一つの特徴がある。
第1の集電体層11は、金属箔や金属メッシュ等により構成すればよい。特に金属箔が好ましい。第1の集電体層11を構成する金属としては、Cu、Ni、Cr、Au、Pt、Ag、Al、Fe、Ti、Zn、Co、ステンレス鋼等が挙げられる。第1の集電体層11は、その表面に、抵抗を調整するための何らかのコート層を有していてもよい。第1の集電体層11の厚みは特に限定されるものではない。例えば0.1μm以上1mm以下であることが好ましく、1μm以上100μm以下であることがより好ましい。
第2の集電体層12は、金属箔や金属メッシュ等により構成すればよい。特に金属箔が好ましい。第2の集電体層12を構成する金属としては、Cu、Ni、Cr、Au、Pt、Ag、Al、Fe、Ti、Zn、Co、ステンレス鋼等が挙げられる。第1の集電体層11と第2の集電体層12とは、構成する金属の種類が同一であっても異なっていてもよい。第2の集電体層12は、その表面に、抵抗を調整するための何らかのコート層を有していてもよい。第2の集電体層12の厚みは特に限定されるものではない。例えば0.1μm以上1mm以下であることが好ましく、1μm以上100μm以下であることがより好ましい。
バイポーラ集電体層13は、金属箔や金属メッシュ等により構成すればよい。特に金属箔が好ましい。バイポーラ集電体層13を構成する金属としては、Cu、Ni、Cr、Au、Pt、Ag、Al、Fe、Ti、Zn、Co、ステンレス鋼等が挙げられる。第1の集電体層11と第2の集電体層12とバイポーラ集電体層13とは、構成する金属の種類が同一であっても異なっていてもよい。バイポーラ集電体層13は、その表面に、抵抗を調整するための何らかのコート層を有していてもよい。バイポーラ集電体層13は複数の金属箔からなっていてもよい。この場合、複数の金属箔は互いに同じ種類であっても異なる種類であってもよい。バイポーラ集電体層13の厚みは特に限定されるものではない。例えば0.1μm以上1mm以下であることが好ましく、1μm以上100μm以下であることがより好ましい。
図2に示すように、発電要素14は、正極活物質層14aと電解質層14cと負極活物質層14bとが積層されてなる。図2においては、発電要素14が単電池として機能し得る。積層電池100においては、このような発電要素14がバイポーラ集電体13を介して複数積層されることで、積層体10が構成されている。
正極活物質層14aは、少なくとも活物質を含む層である。積層電池100を固体電池とする場合は、活物質に加えて、さらに任意に固体電解質、バインダー及び導電助剤等を含ませることができる。また、積層電池100を電解液系の電池とする場合は、活物質に加えて、さらに任意にバインダー及び導電助剤等を含ませることができる。活物質は公知の活物質を用いればよい。公知の活物質のうち、所定のイオンを吸蔵放出する電位(充放電電位)の異なる2つの物質を選択し、貴な電位を示す物質を正極活物質とし、卑な電位を示す物質を後述の負極活物質として、それぞれ用いることができる。例えば、リチウムイオン電池を構成する場合は、正極活物質としてコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、マンガン酸リチウム、スピネル系リチウム化合物等の各種のリチウム含有複合酸化物を用いることができる。積層電池100を固体電池とする場合は、正極活物質は表面がニオブ酸リチウム層やチタン酸リチウム層やリン酸リチウム層等の酸化物層で被覆されていてもよい。また、積層電池100を固体電池とする場合、固体電解質は無機固体電解質が好ましい。有機ポリマー電解質と比較してイオン伝導度が高いためである。また、有機ポリマー電解質と比較して、耐熱性に優れるためである。また、有機ポリマー電解質と比較して、硬質で剛性に優れ、本開示の積層電池100をより容易に構成できるためである。好ましい無機固体電解質としては、例えば、ランタンジルコン酸リチウム、LiPON、Li1+XAlXGe2−X(PO4)3、Li−SiO系ガラス、Li−Al−S−O系ガラス等の酸化物固体電解質;Li2S−P2S5、Li2S−SiS2、LiI−Li2S−SiS2、LiI−Si2S−P2S5、Li2S−P2S5−LiI−LiBr、LiI−Li2S−P2S5、LiI−Li2S−P2O5、LiI−Li3PO4−P2S5、Li2S−P2S5−GeS2等の硫化物固体電解質を例示することができる。特に、硫化物固体電解質が好ましく、Li2S−P2S5を含む硫化物固体電解質がより好ましく、Li2S−P2S5−LiI−LiBrを含む硫化物固体電解質がさらに好ましい。正極活物質層14aに含まれ得るバインダーとしては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、ブチレンゴム(IIR)、アクリレートブタジエンゴム(ABR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等が挙げられる。正極活物質層14aに含まれ得る導電助剤としてはアセチレンブラックやケッチェンブラック等の炭素材料やニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料が挙げられる。正極活物質層14aにおける各成分の含有量は従来と同様とすればよい。正極活物質層14aの形状も従来と同様とすればよい。特に、積層電池100を容易に構成できる観点から、シート状の正極活物質層14aが好ましい。この場合、正極活物質層14aの厚みは、従来よりも分厚くすることが好ましい。電池の内部に異物が混入した場合に、集電体層同士の短絡を抑制でき、内部短絡時の発熱を一層抑制することができるためである。例えば、正極活物質層14aの厚みは、20μm以上2mm以下であることが好ましい。下限がより好ましくは100μm以上であり、上限がより好ましくは1mm以下である。
負極活物質層14bは、少なくとも活物質を含む層である。積層電池100を固体電池とする場合は、活物質に加えて、さらに任意に固体電解質、バインダー及び導電助剤等を含ませることができる。また、積層電池100を電解液系の電池とする場合は、活物質に加えて、さらに任意にバインダー及び導電助剤等を含ませることができる。活物質は公知の活物質を用いればよい。公知の活物質のうち、所定のイオンを吸蔵放出する電位(充放電電位)の異なる2つの物質を選択し、貴な電位を示す物質を上述の正極活物質とし、卑な電位を示す物質を負極活物質として、それぞれ用いることができる。例えば、リチウムイオン電池を構成する場合は、負極活物質としてSiやSi合金や酸化ケイ素等のシリコン系活物質;グラファイトやハードカーボン等の炭素系活物質;チタン酸リチウム等の各種酸化物系活物質;金属リチウムやリチウム合金等を用いることができる。固体電解質、バインダー及び導電助剤は正極活物質層14aに用いられるものとして例示したものの中から適宜選択して用いることができる。負極活物質層14bにおける各成分の含有量は従来と同様とすればよい。負極活物質層14bの形状も従来と同様とすればよい。特に、積層電池100を容易に構成できる観点から、シート状の負極活物質層14bが好ましい。この場合、負極材層14bの厚みは、従来よりも分厚くすることが好ましい。電池の内部に異物が混入した場合に、集電体層同士の短絡を抑制でき、内部短絡時の発熱を一層抑制することができるためである。例えば、負極活物質層14bの厚みは、20μm以上2mm以下であることが好ましい。下限がより好ましくは100μm以上であり、上限がより好ましくは1mm以下である。
電解質層14cは、少なくとも電解質を含む層である。積層電池100を固体電池とする場合、電解質層14cは、固体電解質と任意にバインダーとを含む固体電解質層とすることができる。固体電解質は上述した無機固体電解質が好ましい。特に、積層電池100を硫化物固体電池とする場合、電解質層14cは硫化物固体電解質を含むことが好ましい。この場合、電解質層14cに含まれる硫化物固体電解質は、Li2S−P2S5を含む硫化物固体電解質が好ましく、Li2S−P2S5−LiI−LiBrを含む硫化物固体電解質がより好ましい。バインダーは正極活物質層14aに用いられるバインダーと同様のものを適宜選択して用いることができる。固体電解質層14cにおける各成分の含有量は従来と同様とすればよい。固体電解質層14cの形状も従来と同様とすればよい。特に、積層電池100を容易に構成できる観点から、シート状の固体電解質層14cが好ましい。この場合、固体電解質層14cの厚みは、例えば0.1μm以上1mm以下であることが好ましく、1μm以上100μm以下であることがより好ましい。一方で、積層電池100を電解液系電池とする場合、電解質層14cは電解液とセパレータとを含む。これら電解液やセパレータについては当業者にとって自明であることから、ここでは詳細な説明を省略する。電解質層14cは固体電解質層であることが好ましい。すなわち、積層電池100は固体電池であることが好ましい。電解質層14cが固体電解質層の場合、積層電池100を構成することがより容易となるためである。特に、電解質層14cは硫化物固体電解質層であることが好ましい。すなわち、積層電池100は硫化物固体電池であることが好ましい。硫化物固体電池においては、通常、拘束部材によって発電要素14に対して積層方向に拘束圧を付与する必要があり、電流ムラの課題が生じ易い。これに対し、本開示の積層電池100では、後述するように、当該電流ムラを抑制し易い。
上述の通り、積層体10は、第1の集電体11、第2の集電体12、複数のバイポーラ集電体13、13、…及び、複数の発電要素14、14、…が積層されてなる。言うまでもないが、積層体10において、複数のバイポーラ集電体13、13、…と複数の発電要素14、14、…とは互いに直接積層されている。本開示の積層電池100においては、このような構成を有する積層体10の積層方向一端面(第1の集電体層11の一端側の表面)から積層方向他端面(第2の集電体層12の他端側の表面)までの長さh(cm)と、積層体10の積層方向と直交する断面における電極面積S(cm2)との比h/S(cm−1)が1よりも大きい点に一つの特徴がある。特に比h/S(cm−1)が10よりも大きいことが好ましい。比h/S(cm−1)の上限は特に限定されるものではないが、例えば、100以下とすることが好ましい。より好ましくは30以下である。
本開示の積層電池100において電極面積S(cm2)は以下の通り定義される。すなわち、図3に示すように、積層体10の積層方向から視た場合において、発電要素14の正極活物質層14aと負極活物質層14bと電解質層14cとのすべてが重なる部分の面積を発電要素の電極面積S’(cm2)とする。積層体10を構成する複数の発電要素14、14、…のすべてについて電極面積S’(cm2)を特定し、その最大値を「積層体10の積層方向と直交する断面における電極面積S(cm2)」とする。複数の発電要素14、14、…においては電極面積S’のバラつきをできるだけ抑えることが好ましい。例えば、積層体10を構成する複数の発電要素14、14、…において、電極面積S’の最小値(S’min)と最大値(S’max)との比(S’min/S’max)は0.9以上1.0以下であることが好ましい。より好ましくは0.95以上1.0以下である。
尚、図3では、積層方向視において、電解質層14cの外縁の内側に負極活物質層14bの外縁が内包され、負極活物質層14bの外縁の内側に正極活物質層14aの外縁が内包され、結果として、電極面積S’が正極活物質層14aの面積と一致する形態を示しているが、各層の面積の大小関係や各層の外縁の位置関係はこの形態に限定されるものではない。
本開示の積層電池100において、長さhの具体的な値は特に限定されるものではない。上記の電極面積Sが決定されることで、長さhを決定することができる。例えば、長さhは1cm以上100cm以下であることが好ましい。下限がより好ましくは2cm以上であり、上限がより好ましくは30cm以下である。
積層体10に備えられる複数の発電要素14、14、…の数は、上記した比h/Sを達成可能な数であればよい。例えば、複数の発電要素14、14、…の数は2個以上1000個以下であることが好ましい。下限がより好ましくは10個以上であり、上限がより好ましくは300個以下である。
図2においては、積層体10の断面が四角形のもの(すなわち、積層体10の全体の形状が図4(A)に示す四角柱状のもの)について示したが、積層体10の形状はこれに限定されるものではない。例えば、積層体10は図4(B)に示すように円柱状であってもよいし、図4(A)及び(B)に示した形状以外の形状であってもよい。いずれにしても、積層体10は各層が一方方向に積層されたものであればよい。
積層電池100の性能について、容量C、電圧V、静電容量F及びエネルギーEの好ましい範囲の一例をまとめると図5の通りとなる。図5の領域Xが本開示の積層電池100の性能の好ましい範囲の一例である。また、図5の領域Yが従来公知の電池の性能の一例である。図5に示すように、本開示の積層電池100は、好ましい形態において、従来公知の電池と比較して、容量Cが小さく、電圧Vが大きく、静電容量Fが小さく、エネルギーEが同等といえる。
積層電池100は容量が小さいことが好ましい。具体的には、積層電池100の容量は、好ましくは1Ah以下、より好ましくは0.5Ah以下、特に好ましくは0.32Ah以下である。積層電池100の容量の下限は特に限定されるものではない。例えば、1mAh以上とすることが好ましい。積層電池100の容量を小さくすることで、短絡時の発熱を一層抑制することができる。積層電池の容量は発電要素の容量と一致する。すなわち、正極活物質層や負極活物質層の大きさによって容量が決まる。ここで、容量を小さくすると積層電池のエネルギーE(Wh)が小さくなるが、本開示の積層電池100においては、上述したように比h/Sを1よりも大きくすることで、高いエネルギーを確保することが可能である。
積層電池100は電圧が10V以上2000V以下であることが好ましい。電圧は下限がより好ましくは40V以上であり、上限がより好ましくは400V以下である。電圧をこの範囲とすることで、十分な電池性能を確保し易くなるとともに、積層電池とした場合に集電体層間のスパークを抑制し易くなる。尚、積層電池100の電圧Vは、発電要素の電圧V0と発電要素の数(積層数)nとから、V=n×V0として算出することができる。
積層電池100は静電容量が小さいことが好ましい。具体的には、積層電池100の静電容量は、好ましくは0.1Ah/V以下、より好ましくは0.01Ah/V以下、特に好ましくは0.001Ah/V以下である。積層電池100の静電容量を小さくすることで、短絡時の発熱を抑制することができる。積層電池100の静電容量の下限は特に限定されるものではない。例えば、0.00001Ah/V以上とすることが好ましい。尚、静電容量Fは、上記した積層電池100の容量Cと電圧Vとから、F=C/Vとして算出することができる。
上述したように、積層電池100は、比h/Sを大きくすることで、エネルギーを高めつつ、内部短絡時の電池の発熱や電池作動時の反応ムラを抑え易くするものである。積層電池100のエネルギーの具体的な値は特に限定されるものではないが、一つの目安として、エネルギーが1Wh以上であることが好ましい。より好ましくは10Wh以上である。積層電池100のエネルギーEの上限は特に限定されるものではない。例えば、100Wh以下とすることが好ましい。尚、エネルギーEは、上記の容量Cと電圧Vとから、E=C×Vとして算出することができる。
積層電池100は上記の積層体10を備えている。また、積層体100は積層体10以外の構成を備えていてもよい。
例えば、図1に示すように、積層電池100は、積層体10のほかに、第1の集電体層11よりも外側(第1の集電体層11に対して第2の集電体層12が配置される側とは反対側、第1の集電体層11に対して積層方向外側)に配置された第3の集電体層20を備えていてもよい。 第3の集電体層20は、金属箔や金属メッシュ等により構成すればよい。特に金属箔が好ましい。第3の集電体層20を構成する金属としては、Cu、Ni、Cr、Au、Pt、Ag、Al、Fe、Ti、Zn、Co、ステンレス鋼等が挙げられる。第3の集電体層20の厚みは特に限定されるものではない。例えば0.1μm以上1mm以下であることが好ましく、1μm以上100μm以下であることがより好ましい。
また、図1に示すように、積層電池100は、積層体10のほかに、第2の集電体層12よりも外側(第2の集電体層12に対して第1の集電体層11が配置される側とは反対側、第2の集電体層12に対して積層方向外側)に配置された第4の集電体層30を備えていてもよい。第4の集電体層30は、金属箔や金属メッシュ等により構成すればよい。特に金属箔が好ましい。第4の集電体層30を構成する金属としては、Cu、Ni、Cr、Au、Pt、Ag、Al、Fe、Ti、Zn、Co、ステンレス鋼等が挙げられる。第4の集電体層30の厚みは特に限定されるものではない。例えば0.1μm以上1mm以下であることが好ましく、1μm以上100μm以下であることがより好ましい。
また、図1に示すように、積層電池100が第3の集電体層20を備える場合、第1の集電体層11と第3の集電体層20との間にヒューズ又はPTC層40を備えていてもよい。また、積層電池100が第4の集電体層30を備える場合、第2の集電体層12と第4の集電体層30との間にヒューズ又はPTC層(不図示)を備えていてもよい。尚、ヒューズ及びPTC層の構成やヒューズ及びPTC層による効果については、特許文献4等に開示されているように公知であり、特に説明せずとも自明である。本開示の積層電池100においては、h/Sを1以上とすることで、内部短絡時の電池の発熱等を抑えることができる。よって、積層電池100において、ヒューズ又はPTC層40は万が一の場合に備えて補完的に設けられるものともいえる。
積層電池100においては、積層体10の少なくとも側面に外装体50が設けられることが好ましい。これにより、積層体10の側面から水分等が侵入することを抑制することができる。尚、図1に示す積層電池100においては、積層体10の積層方向一端側や他端側に外装体50は設けられていない。図1に示す積層電池100においては、上述の第3の集電体20と第4の集電体30と外装体50とによって画定される空間内に積層体10が収容されている。ただし、外装体50の内部に積層体10とともに第3の集電体層20や第4の集電体層30を収容してもよい。
積層電池100は全体として積層体10と対応する形状を有することが好ましい。すなわち、積層体10が四角柱状である場合、外装体50も四角柱状とされ、積層電池100全体として四角柱状であることが好ましい。また、積層電池100においては、上記した長さh(cm)と積層電池100の積層方向視における投影面積A(cm2)(積層方向と直交する断面において外装体50の外側表面によって画定される面積の最大値)との比h/A(cm−1)を1よりも大きくしてもよい。尚、比h/Aが1よりも大きい場合、比h/Sは必ず1よりも大きくなる。
本発明者の知見によれば、内部短絡時の電池の発熱を抑制するためには、電池の容量Cや静電容量Fを小さくすることが有効である。しかしながら、容量Cや静電容量Fを小さくした場合、十分なエネルギーEを確保し難い。十分なエネルギーEを確保するためには、発電要素を複数積層して積層電池とする必要がある。本発明者の知見によれば、積層電池において、電極面積Sに対する積層体の積層方向高さhの比(h/S)が1よりも大きくなるように、バイポーラ集電体を介して発電要素を複数積層することで、エネルギーEを十分に高めることができる(例えば、1Wh以上)。すなわち、バイポーラ構造を有する積層電池100において、積層体10の電極面積Sに対する積層体10の積層方向高さhの比(h/S)を1よりも大きくすることで、エネルギーを高めつつ、内部短絡時の電池の発熱を抑え易い。
発電要素14そのものについては、公知の方法により作製できる。例えば、固体電池を製造する場合は、正極集電体層(第1の集電体層11又はバイポーラ集電体層13として機能し得る)の表面に活物質等の正極材料を湿式にて塗工して乾燥させることで正極活物質層14aを形成し、負極集電体層(第2の集電体層12又はバイポーラ集電体層13として機能し得る)の表面に活物質等の負極材料を湿式にて塗工して乾燥させることで負極活物質層14bを形成し、正極活物質層14aと負極活物質層14bとの間に固体電解質等を含む電解質層14cを転写し、プレス成形して一体化することで発電要素14を作製できる。この時のプレス圧は特に限定されるものではないが、例えば2ton/cm2以上とすることが好ましい。尚、これらの作製手順はあくまでも一例であり、これ以外の手順によっても発電要素14を作製可能である。例えば、湿式法に替えて乾式法によって正極活物質層14a等を形成することも可能である。このようにして作製した発電要素14を電気的に直列に接続しながら複数積層することで積層体10が得られる(この場合、正極集電体層と負極集電体層とが互いに重ね合わされてバイポーラ集電体層13が構成される)。このようにして作製された積層体10を、ラミネートフィルムやステンレス鋼缶等の外装体(電池ケース)内に封入すること等によって積層電池100として固体電池を作製できる。尚、これらの作製手順はあくまでも一例であり、これ以外の手順によっても固体電池を作製可能である。
上記説明においては、電解液系電池及び固体電池のいずれをも含む積層電池について示した。ただし、本開示の技術は、電解質層が固体電解質層である固体電池(特に固体電解質層が硫化物固体電解質を含む硫化物固体電池)に適用した場合においてより顕著な効果を発揮するものと考えられる。固体電池は電解液系電池に比べて発電要素内の隙間が少なく、硬質で変形もし難いため、上記の比h/Sが1よりも大きくなるように複数の発電要素を直列に積層した場合においても、各発電要素の変形等が抑えられ、各発電要素の短絡が生じ難い。さらに、固体電池においては、発電要素内の内部抵抗を低減すべく、積層体に対する拘束圧が高くなる傾向にある。この場合、層界面における圧力ムラが生じ易く、電池作動時に電流ムラが発生し易い。これに対し、本開示の積層電池によれば、比h/Sを1よりも大きくすることで、当該電流ムラを抑制し易い。言い換えれば、電解液系電池の場合よりも固体電池の場合において、本開示の技術による効果が顕著となるものと考えられる。
一方、電解液系電池は、通常、電解液で満たされた電池ケース内に発電要素を浸漬するもの(発電要素の各層の隙間のほか発電要素の外部にも電解液が存在するもの)であり、発電要素を複数積層した場合、電解液等を介して短絡が生じ易い。短絡を防止するための手段(発電要素間において電解液の浸出を抑制するための手段を設ける等)を設けることでこのような課題は解決できるが、上記の比h/Sを大きくするほど、短絡防止のための部材点数が多くなる傾向にある。
以下の手順で発電要素1〜3を作製し、短絡時の発熱量を評価した。
1.1.1.正極活物質の作製
転動流動式コーティング装置(パウレック製)を用いて、大気雰囲気下で、Li(Ni,Co,Mn,W)O2の粒子の表面にニオブ酸リチウムをコーティングし、大気雰囲気下で焼成することで、正極活物質を得た。
PP製容器に、酪酸ブチルと、PVDF系バインダー(クレハ社製)の5wt%酪酸ブチル溶液と、上記の正極活物質と、硫化物固体電解質(Li2S−P2S5系)と、導電助剤としてVGCF(昭和電工社製)とを加え、超音波分散装置(エスエムテー社製UH−50)で30秒間攪拌した。次に、容器を振とう機(柴田科学社製TTM−1)で30分間振とうさせ、さらに超音波分散装置で30秒間攪拌した。その後、さらに3分間振とうして、正極合剤スラリーを得た。得られた正極合剤スラリーをアプリケータを使用してブレード法にてアルミニウム箔(日本製箔社製)の上に塗工した。自然乾燥後、100℃のホットプレート上で30分間乾燥させることで、アルミニウム箔上に正極活物質層(厚み60μm)を形成した。
PP製容器に、酪酸ブチルと、PVDF系バインダー(クレハ社製)の5wt%酪酸ブチル溶液と、負極活物質としてシリコン粒子(高純度化学社製)と、硫化物固体電解質(Li2S−P2S5系)とを加え、超音波分散装置(エスエムテー社製UH−50)で30秒間攪拌した。次に、容器を振とう機(柴田科学社製TTM−1)で30分間振とうさせ、さらに超音波分散装置で30秒間攪拌した。その後、さらに3分間振とうして、負極合剤スラリーを得た。得られた負極合剤スラリーをアプリケータを使用してブレード法にて銅箔上に塗工した。自然乾燥後、100℃のホットプレート上で30分間乾燥させることで、銅箔上に負極活物質層(厚み29μm)を形成した。
PP製容器に、ヘプタンと、BR系バインダー(JSR社製)の5wt%ヘプタン溶液と、硫化物固体電解質(Li2S−P2S5系)とを加え、超音波分散装置(エスエムテー社製UH−50)で30秒間攪拌した。次に、容器を振とう機(柴田科学社製TTM−1)で30分間振とうさせ、さらに超音波分散装置で30秒間攪拌した。その後、さらに3分間振とうして、電解質スラリーを得た。得られた電解質スラリーをアプリケータを使用してブレード法にて基材の表面に塗工した。自然乾燥後、100℃のホットプレート上で30分間乾燥させることで、基材上に電解質層(厚み30μm)を形成した。
各層を電池形状に裁断後、負極活物質層の表面に固体電解質層を重ね合わせ、CIP(神戸製鋼所社製)にて4ton/cm2相当の圧力をかけてプレスした。その後、固体電解質層の表面からアルミニウム箔を剥がし、ここに、正極活物質層を重ね合わせ、同じく4ton/cm2相当の圧力をかけてプレスし、アルミニウム箔/正極活物質層/固体電解質層/負極活物質層/銅箔の構成を備える発電要素1を得た。発電要素1の容量Cは0.32Ahであった。
正極活物質層及び負極活物質層の面積を変更して、容量Cを0.1Ahとしたこと以外は、発電要素1と同様にして発電要素2を作製した。
正極活物質層及び負極活物質層の面積を変更して、容量Cを0.8Ahとしたこと以外は、発電要素1と同様にして発電要素3を作製した。
作製した発電要素1〜3について一定の拘束圧を付与しながら0Vから4.55Vまで充電し、4.55Vから3Vまで放電し、さらに4.35Vまで充電した。充電後、発電要素に釘(φ8mm、先端角度60度)を25mm/secの速度で刺し込み、発電要素を短絡させるとともに、短絡時の発電要素の発熱量を確認した。発熱量は釘先端に設置した熱電対をつかい、短絡前後の最大の温度変化値を用いて概算した。また発電要素の正確な比熱が不明なため、発熱量は0.32Ahで規格化することで比較した。
発熱量P=c*ρ*V*ΔT/t(P:発熱量、c:発電要素の比熱、ρ:発電要素の密度、V:発電要素の体積、ΔT:温度変化、t:時間)
結果を下記表1に示す。
以下の手順で発電要素4〜6を作製し、サイクル特性を評価した。
発電要素1と同様にして正極活物質層、負極活物質層、及び電解質層を作製し、各層を重ね合せて発電要素4とした。ここで、電極面積Sが10cm2となるようにスラリーの塗工量及び積層時の正極活物質層、負極活物質層及び電解質層の重ね合せを調整した。
電極面積Sを1cm2としたこと以外は、発電要素4と同様にして発電要素5を作製した。
電極面積Sを100cm2としたこと以外は、発電要素4と同様にして発電要素6を作製した。
作製した発電要素4〜6に一定の拘束圧を付与しながら0Vから4.55Vまで充電し、4.55Vから3Vまで放電し、その後、4.35Vまでの充電と3Vまでの放電とを繰り返した。その結果、下記表2に示すように、電極面積Sが小さい発電要素4や発電要素5は、充放電時の電流ムラの発生が抑制され、サイクル特性が良好なものとなった。ここで、電極面積Sを10cm2以下とする場合、電池のエネルギーが小さくなる。十分なエネルギーを確保するためには、発電要素を複数積層して積層電池とする必要がある。
10 積層体
11 第1の集電体層
12 第2の集電体層
13 バイポーラ集電体層
14 発電要素
14a 正極活物質層
14b 負極活物質層
14c 電解質層
20 第3の集電体層
30 第4の集電体層
40 ヒューズ又はPTC層
50 外装体
Claims (12)
- 積層体を備える積層電池であって、
前記積層体は、積層方向一端面を構成する第1の集電体層と、積層方向他端面を構成する第2の集電体層と、前記第1の集電体層と前記第2の集電体層との間において積層方向に沿って間隔を有しつつ配置された複数のバイポーラ集電体層と、前記第1の集電体層と前記第2の集電体層との間において前記複数のバイポーラ集電体層を介して電気的に直列に接続された複数の発電要素と、を備え、
前記発電要素は、正極活物質層と、負極活物質層と、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の間に配置された電解質層と、を備え、
前記積層体の前記積層方向一端面から前記積層方向他端面までの長さh(cm)と、前記積層体の積層方向と直交する断面における電極面積S(cm2)との比h/S(cm−1)が1よりも大きい、
積層電池。 - 前記比h/S(cm−1)が10よりも大きい、
請求項1に記載の積層電池。 - 前記積層体のほかに、前記第1の集電体層よりも外側に配置された第3の集電体層を備える、
請求項1又は2に記載の積層電池。 - 前記第1の集電体層と前記第3の集電体層との間にヒューズ又はPTC層を備える、
請求項3に記載の積層電池。 - 前記積層体のほかに、前記第2の集電体層よりも外側に配置された第4の集電体層を備える、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層電池。 - 前記第2の集電体層と前記第4の集電体層との間にヒューズ又はPTC層を備える、
請求項5に記載の積層電池。 - 容量が0.32Ah以下である、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層電池。 - 静電容量が0.01Ah/V以下である、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層電池。 - 電圧が10V以上2000V以下である、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の積層電池。 - 前記電極面積Sが1cm2以上10cm2以下である、
請求項1〜9のいずれか1項に記載の積層電池。 - 前記正極活物質層の厚みが20μm以上2mm以下で、
前記負極活物質層の厚みが20μm以上2mm以下である、
請求項1〜10のいずれか1項に記載の積層電池。 - 前記電解質層が固体電解質層である、
請求項1〜11のいずれか1項に記載の積層電池。
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