JPWO2013031747A1 - 圧電バルク波装置及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

LiTaO3の厚み滑り振動モードを利用しており、しかも電気機械結合係数k2が高い圧電バルク波装置を得る。LiTaO3からなる圧電薄板5と、圧電薄板5に接するように設けられた第1,第2の電極6,7とを備え、LiTaO3からなる圧電薄板5の厚み滑り振動モードを利用しており、LiTaO3のオイラー角(φ,θ,ψ)において、φが0?であり、θが54?以上、107?以下の範囲にある、圧電バルク波装置1。

Description

本発明は、LiTaOを用いた圧電バルク波装置及びその製造方法に関し、より詳細には、バルク波として厚み滑りモードのバルク波を利用した圧電バルク波装置及びその製造方法に関する。
従来、発振子やフィルタなどに、圧電薄膜デバイスが用いられている。例えば、下記の特許文献1には、図16に示す圧電薄膜デバイスが開示されている。圧電薄膜デバイス1001は、圧電薄膜1002を有する。圧電薄膜1002は、水晶、LiTaO、LiNbOなどの圧電単結晶からなることが望ましいと記載されている。また、上記圧電薄膜1002の上面に電極1003,1004が形成されている。圧電薄膜1002の下面には電極1005〜1007が形成されている。これらの電極1003〜1007を用いることにより、圧電薄膜デバイス1001では、厚み滑りモードを利用してなる4個の圧電薄膜共振子が構成されている。
特開2007−228356号公報
特許文献1に記載のように、従来、LiTaOの厚み滑りモードを利用した圧電薄膜デバイスが知られていた。しかしながら、LiTaOからなる圧電薄膜を用いて厚み滑り振動モードを利用した場合、厚み滑りモードの電気機械結合係数kを十分高くすることができなかった。そのため、広帯域化や帯域幅の調整幅を広くすることが困難であった。
本発明の目的は、LiTaOの厚み滑りモードを利用しており、しかも電気機械結合係数kが高い圧電バルク波装置及びその製造方法を提供することにある。
本発明に係る圧電バルク波装置は、LiTaOからなる圧電薄板の厚み滑りモードを利用している。本発明の圧電バルク波装置は、LiTaOからなる圧電薄板と、前記圧電薄板に接するように設けられた第1,第2の電極とを備える。本発明では、LiTaOのオイラー角(φ,θ,ψ)において、φが0°であり、θが54°以上、107°以下の範囲にある。本発明においては、好ましくは、上記オイラー角のθが55°〜88°の範囲にあり、その場合には、スプリアスモードである厚み縦振動の電気機械結合係数を十分に小さくすることができる。
また、本発明においては、より好ましくは、上記オイラー角のθが62°〜87°の範囲にある。この場合には、周波数温度係数TCFの絶対値を小さくすることができる。
本発明に係る圧電バルク波装置の製造方法は、LiTaOからなる圧電薄板の厚み滑りモードを利用した圧電バルク波装置の製造方法であって、オイラー角(φ,θ,ψ)において、φが0°であり、θが54°以上、107°以下の範囲にある圧電薄板を用意する工程と、前記圧電薄板に接するように第1の電極を形成する工程と、前記圧電薄板に接するように第2の電極を形成する工程とを備える。
本発明の圧電バルク波装置の製造方法のある特定の局面では、前記圧電薄板を用意する工程が、LiTaOからなる圧電基板の一方面からイオン注入し、該一方面側に注入イオン濃度がもっとも高い高濃度イオン注入部分を形成する工程と、前記圧電基板の前記一方面側に支持基板を接合する工程と、前記圧電基板を加熱しつつ、前記高濃度イオン注入部分において前記圧電基板を該圧電基板の前記一方面から前記高濃度イオン注入部分に至る圧電薄板と、残りの圧電基板部分とに分離する工程とを備える。この場合には、イオン注入条件を制御することにより、高濃度イオン注入部分の位置を容易に制御することができる。一般にイオン注入装置のイオンビームは均質な強度で直線的に基板へ照射され、かつ、基板全体をイオンビームが掃引しながら同一箇所にほぼ同じ照射角で多数回照射される。従って、スパッタやCVD、蒸着などの成膜法による厚みバラツキに比べると、イオン注入では高濃度イオン注入部分の位置は、基板全面で均等となり、深さバラツキは小さくなる。よって、基板全面で正確な厚みの圧電薄板を容易に得ることができる。
本発明の圧電バルク波装置の製造方法の他の特定の局面では、前記圧電薄板を用意する工程が、LiTaOからなる圧電基板の一方面からイオン注入し、該一方面側に注入イオン濃度がもっとも高い高濃度イオン注入部分を形成する工程と、前記圧電基板の前記一方面側に仮支持部材を貼り合わせる工程と、前記仮支持部材に貼り合わされている圧電基板を加熱しつつ、前記高濃度イオン注入部分において前記圧電基板を該圧電基板の前記一方面から前記高濃度イオン注入部分に至る圧電薄板と、残りの圧電基板部分とに分離する工程とを有し、前記圧電薄板から前記仮支持部材を剥離する工程とを有する。
この場合には、圧電薄板の分離時に、熱応力によって圧電薄板に不具合が発生するおそれを抑制できる。
本発明に係る圧電バルク波装置の製造方法のさらに他の特定の局面では、前記圧電薄板から前記仮支持部材を剥離するに先立ち、前記圧電薄板上に第1の電極を形成する工程と、前記第1の電極を覆うように犠牲層を形成する工程と、前記犠牲層上に支持基板を積層する工程とを実施する。また、前記圧電薄板から仮支持部材を剥離した後に、前記仮支持部材の剥離により露出した前記圧電薄板の他方面に第2の電極を形成する工程と、前記犠牲層を消失させる工程とをさらに備える。この場合には、圧電薄板の上下に第1,第2の電極が形成されている振動部分が支持基板から浮かされた構造を有する圧電バルク波装置を本発明に従って提供することができる。
本発明に係る圧電バルク波装置では、LiTaOからなる圧電薄板においてφが0°であり、θが54°以上、107°以下の範囲にあるため、厚み滑りモードの電気機械結合係数kを高めることができる。従って、帯域幅が広い圧電バルク波装置や、帯域幅の調整範囲が広い圧電バルク波装置を提供することが可能となる。
図1(a)及び(b)は、本発明の一実施形態にかかる圧電バルク波装置の正面断面図及び平面図である。 図2は、LiTaOのオイラー角のθと、厚み滑りモードの共振周波数Fr及び反共振周波数Faとの関係を示す図である。 図3は、LiTaOのオイラー角のθと、厚み滑りモードの電気機械結合係数kとの関係を示す図である。 図4は、LiTaOのオイラー角のθと、厚み滑りモードの周波数温度係数TCFとの関係を示す図である。 図5は、LiTaOのオイラー角のθと、スプリアスとなる厚み縦振動モードの電気機械結合係数kspとの関係を示す図である。 図6は、LiTaOのオイラー角のθと、厚み縦振動の共振周波数Fr及び反共振周波数Faとの関係を示す図である。 図7は、LiTaOのオイラー角のθと、厚み縦振動の電気機械結合係数kとの関係を示す図である。 図8は、LiTaOのオイラー角のθと、周波数温度係数TCFとの関係を示す図である。 図9は、LiNbOを用いた場合の、厚みすべり振動モードにおけるオイラー角θと周波数温度係数TCFの関係を示す図である。 図10は、第1の実施形態の圧電バルク波装置のインピーダンス特性及び位相特性を示す図である。 図11は、第1の実施形態の圧電バルク波装置のインピーダンススミスチャートを示す図である。 図12(a)〜(d)は、本発明の一実施形態にかかる圧電バルク波装置の製造方法を説明するための各模式的正面断面図である。 図13(a)〜(c)は、本発明の一実施形態にかかる圧電バルク波装置の製造方法を説明するための各模式的正面断面図である。 図14(a)〜(c)は、本発明の一実施形態にかかる圧電バルク波装置の製造方法を説明するための各模式的正面断面図である。 図15(a)〜(c)は、本発明の一実施形態にかかる圧電バルク波装置の製造方法を説明するための各模式的正面断面図である。 図16は、従来の圧電薄膜デバイスの一例を示す模式的断面図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
図1(a)及び(b)は、本発明の一実施形態にかかる圧電バルク波装置の模式的正面断面図及び平面図である。
本実施形態の圧電バルク波装置1は、支持基板2を有する。支持基板2は、適宜の絶縁体あるいは圧電体からなる。本実施形態では、支持基板2は、アルミナからなる。
支持基板2上に、絶縁層3が形成されている。絶縁層3は、本実施形態では、酸化シリコンからなるが、LiTaOやLiNbO、サファイア、ガラスなど適宜の絶縁性材料により形成することができる。アルミナやガラス、LiNbOは、LiTaOやサファイアに比べて材料が安価で製造が容易であるため入手しやすく、望ましい。絶縁層3の上面には、凹部3aが形成されている。凹部3aが設けられている部分の上方において、圧電薄板振動部4が配置されている。圧電薄板振動部4は、圧電薄板5と、圧電薄板5の上面に形成された第1の電極6と、下面に形成された第2の電極7とを有する。
圧電薄板5は、LiTaOからなる。なお、圧電薄板5とは、例えば厚みが2μm以下程度の薄い単結晶の圧電体をいうものとする。後述する製造方法によれば、イオン注入−分割法を用いることにより、このような厚みの薄いLiTaOからなる圧電薄板を高精度に得ることができる。
また、第1の電極6及び第2の電極7は、適宜の金属または該金属を主体とする合金からなる。このような金属または合金としては、要求される物性値によって、適宜選択すればよい。例えば、耐熱性が求められる場合には、W、Mo、Ta、Hfなどの高融点金属を用いればよい。また、電気的抵抗が低いCuやAlを用いてもよい。さらには、熱拡散を起こし難いPtを用いてもよい。また、LiTaOとの密着性に優れているTiまたはNiなどを用いてもよい。第1,第2の電極6,7は、複数の金属膜を積層してなる積層金属膜により形成されていてもよい。
上記第1,第2の電極6,7の形成方法も特に限定されない。電子ビーム蒸着、化学蒸着、スパッタリング、またはCVDなどの適宜の方法を用いることができる。
なお、図1(a)は、図1(b)のA−A線に沿う部分の断面図に相当する。圧電薄板5は、凹部3aのA−A線に沿う方向両側において、スリット5a,5bを有する。従って、図1(a)に示すように、凹部3aの上方において圧電薄板振動部4は、浮かされた状態とされている。スリット5aの外側において、絶縁層3上に配線電極8が形成されている。配線電極8は、図示しない部分において第2の電極7に接続されている。また、スリット5bの外側において、配線電極9が形成されている。配線電極9は圧電薄板5上に形成されており、第1の電極6と図示しない部分において電気的に接続されている。配線電極8,9は、適宜の導電性材料からなる。このような導電性材料としては、Cu、Alまたはこれらの合金などを用いることができる。
配線電極9上に金バンプ10が設けられている。また、配線電極8に電気的に接続されるように、ビアホール電極11が圧電薄板5に設けられている。ビアホール電極11の上端に、金バンプ12が接合されている。従って、金バンプ10,12から交番電界を印加することにより圧電薄板振動部4を振動させることができる。加えて、主電気信号を伝送する配線電極8が、絶縁層3と支持基板2の接合界面から離間しているため、接合界面の拡散や不均一性に伴う半導体的な抵抗劣化や表皮効果の影響を受け難い。従って、主電気振動を低損失で伝送できる。
本実施形態の圧電バルク波装置1の特徴は、上記圧電薄板振動部4において、LiTaOからなる圧電薄板5の厚み滑り振動モードを利用しており、かつLiTaOのオイラー角の(φ,θ,ψ)において、φが0°であり、θが54°以上、107°以下の範囲にあることにある。それによって、厚み滑り振動モードを利用した良好な共振特性を得ることができる。これを、以下においてより具体的に説明する。
有限要素法により、LiTaOを用いた厚み滑り振動モード及び厚み縦振動モードを利用したバルク波振動子を解析した。LiTaOの厚みは1000nmとした。このLiTaOの上下に100nmの厚みのAlからなる電極を形成した構造をモデルとした。上下の電極の重なり合っている面積は、2000μmとした。
LiTaOのオイラー角(0°,θ,0°)において、θを変化させ、厚み滑り振動モード及び厚み縦振動モードの状態を解析した。結果を図2〜図8に示す。
図2は、オイラー角のθと、厚み滑り振動モードの共振周波数Fr及び反共振周波数Faとの関係を示す図であり、実線が共振周波数、破線が反共振周波数を示す。また、図3は、オイラー角のθと、厚み滑り振動モードの電気機械結合係数kとの関係を示す図である。図3から明らかなように、利用する厚み滑り振動モードの電気機械結合係数kは、θが80°付近で最大となり、14.3%の値となる。ここで、θが54°以上、107°以下の範囲であれば、電気機械結合係数kは、5%を超えており、携帯端末用フィルタの帯域幅を形成するのに必要な電気機械結合係数が得られる。さらに、θが63°以上°、97°以下の範囲であれば、電気機械結合係数kは、上記最大値の2/3である9.5%以上と大きな値を維持する。電気機械結合係数kはフィルタの帯域幅に比例する。従って、オイラー角のθを54°以上、107°以下とすれば、電気機械結合係数kを高めることができ、広帯域のバルク波フィルタを構成し得ることがわかる。
よって、本実施形態では、オイラー角のθを54°以上、107°以下とすることにより、広帯域のバルク波装置を提供し得ることがわかる。もっとも、用途によっては、帯域幅は広ければ広いほどよいというものではない。しかしながら、バルク波共振子に並列にまたは直列に静電容量を付加すれば、帯域幅を狭めることができる。従って、電気機械結合係数kが大きい場合、設計の自由度を高めることができる。よって、本実施形態によれば、オイラー角のθが54°以上、107°以下であり、電気機械結合係数kが大きいため、様々な帯域幅のバルク波装置を容易に提供することができる。
他方、図5から明らかなように、スプリアスとなる厚み縦振動モードの電気機械結合係数kは、θが73°でほぼゼロとなる。このことは、図7の結果とも一致する。すなわち、図6〜図8は、スプリアスとなる厚み縦振動モードのオイラー角のθによる変化を説明するための図である。図6は、オイラー角のθと、厚み縦振動の共振周波数Fr及び反共振周波数Faとの関係を示す。実線が共振周波数の結果を、破線が反共振周波数の結果を示す。また、図7は、オイラー角のθと厚み縦振動の電気機械結合係数kとの関係を示し、図8はオイラー角のθと周波数温度係数TCFとの関係を示す。図6〜図8からも明らかなように、オイラー角のθが73°において、スプリアスとなる厚み縦振動モードの電気機械結合係数kがほぼゼロとなり、θが55°以上、85°以下の範囲であれば、図5から明らかなように、スプリアスとなる厚み縦振動モードの電気機械結合係数k1.5%以下と非常に小さい。
よって、好ましくは、オイラー角のθを55°以上、85°以下の範囲とすることが望ましい。それによって、スプリアスとなる厚み縦振動モードの応答を小さくすることができる。よって、上記実施形態の圧電バルク波装置を構成した場合、フィルタの阻止帯域における減衰特性を向上することができる。
他方、図4から明らかなように、厚み滑り振動モードの周波数温度係数TCFは、θ=75°の場合、21.4ppm/℃と小さくなる。また、θが62°以上87°以下の範囲では、TCFは30ppm/℃以下と小さい。従って、好ましくは、θは、62°以上87°以下の範囲とすることが望ましい。それによって、圧電バルク波装置1におけるフィルタの通過帯域や阻止帯域が環境温度の変化によりシフトし難い。すなわち、周波数の変動に対して安定な圧電バルク波装置1を提供することができる。
ここで、LiNbOを用いた場合の、厚みすべり振動モードにおけるオイラー角θと周波数温度係数TCFの関係を図9に示す。LiNbOにおいて、LiTaOの場合と同様に、スプリアスとなる厚み縦振動モードの電気機械結合係数kが小さくなるθ=73°付近のTCFを確認すると、96ppm/℃、と、21.4ppm/℃であるLiTaOに比べて5倍近く大きくなっていることがわかる。よって、圧電薄板としてLiTaOを用いることが好ましいことが言える。
なお、図2〜図8では、LiTaOの上面及び下面に、Alからなる電極を形成した構造をモデルとして検討した。しかしながら、電極材料を他の金属に変更したとしても、電気機械結合係数kの絶対値は変化するにしても、オイラー角のθを上記と同様の範囲内とすることにより、電気機械結合係数kを高め、さらに上記望ましい範囲のθとすることにより、スプリアスを抑制し、あるいはTCFの絶対値を小さくできることが確かめられている。
図10及び図11は、前述した本実施形態の圧電バルク波装置1のインピーダンス特性及び位相特性並びにインピーダンススミスチャートを示す図である。ここでは、LiTaOからなる圧電薄板5のオイラー角(0°,85°,0°)であり、その厚みは0.85μmとした。また、第1の電極6及び第2の電極7はアルミニウムにより構成し、その膜厚は75nmとした。また、アルミニウムとLiTaOの間に密着層として10nmと薄いTiを配した。図10及び図11から明らかなように、共振周波数が1990MHz、反共振周波数が2196MHzであり、帯域幅が10.3%と広い共振特性が得られている。
次に、図12(a)〜図15(c)を参照して、上記圧電バルク波装置1の製造方法の一例を説明する。
図12(a)に示すように、LiTaOからなる圧電基板5Aを用意する。圧電基板5Aの一方面から矢印で示すように水素イオンを注入する。注入されるイオンは水素に限らず、ヘリウムなどを用いてもよい。イオン注入に際してのエネルギーは特に限定されないが、本実施形態では、150KeV、ドーズ量8×1017、原子/cmとする。なお、上記イオン注入条件は、目的とする圧電薄板の厚みに応じて選択すればよい。すなわち、注入イオン高濃度部分の位置を、上記イオン注入条件を選択することにより制御することができる。
イオン注入を行うと、圧電基板5A内において、厚み方向にイオン濃度分布が生じる。最もイオン濃度が高い部分を図12において破線で示す。破線で示すイオン濃度が最も高い部分である注入イオン高濃度部分5xでは、加熱すると応力により容易に分離する。このような注入イオン高濃度部分5xにより分離する方法は、特表2002−534886号公報において開示されている。
次に、図12(b)に示すように、圧電基板5Aのイオン注入が行われた側の面に仮接合層21を形成する。仮接合層21は、後述する仮支持部材22を接合するとともに、最終的に得られる圧電薄板5を保護するために設けられている。仮接合層21は、後述するエッチング工程により除去される材料により構成されている。すなわち、エッチングにより除去され、かつエッチング時に圧電薄板5が損傷されない適宜の材料からなる。このような仮接合層21を構成する材料としては、無機材料、あるいは有機材料などの適宜の材料を用いることができる。無機材料としては、ZnO、SiO、AlNなどの絶縁性無機材料や、Cu、Al、Tiなどの金属材料を挙げることができる。有機材料としては、ポリイミドなどを挙げることができる。仮接合層21はこれらの材料からなる複数の膜を積層したものであってもよい。本実施形態では、上記仮接合層21は、SiOからなる。
仮接合層21に、図12(c)に示すように、仮支持部材22を積層し貼り合わせる。仮支持部材22は適宜の剛性材料により形成することができる。このような材料としては、絶縁性セラミックス、圧電性セラミックスなど適宜の材料を用いることができる。ここで、仮支持部材は、圧電基板との界面に作用する熱応力がほとんど存在しない、あるいは、支持基板と圧電基板とを接合したときに、支持基板と圧電基板との界面に作用する熱応力よりも、仮支持部材と圧電基板との界面に作用する熱応力が小さい材料からなる。そのため、圧電薄板の分離時に熱応力によって圧電薄板に不具合が発生するおそれを従来よりも抑制できる。一方、圧電薄板の分割のための加熱の後で支持基板を圧電薄板上に形成するので、支持基板の構成材料としては、支持基板と圧電薄板との界面に作用する熱応力を考慮することなく、任意の線膨張係数のものを選定できる。
そのため、圧電薄板の構成材料と支持基板の構成材料との組み合わせの選択性を高められる。例えば、フィルタ用途のデバイスでは、支持基板の構成材料の線膨張係数を圧電薄板の線膨張係数よりも大幅に小さくすることにより、フィルタの温度−周波数特性を向上させることが可能になる。また、支持基板に熱伝導率性が高い材料を選択することにより放熱性および耐電力性を向上させることが可能となる。よって、安価な構成材料を選択することによりデバイスの製造コストを低くすることが可能になる。
次に、加熱し、注入イオン高濃度部分5xにおいて圧電基板5Aの分割を容易とする。圧電基板5Aを注入イオン高濃度部分5xにおいて容易に分割するための加熱温度については、本実施形態では、250℃〜400℃程度の温度に維持することにより行う。
その状態で外力を加え、圧電基板5Aを分割する。すなわち、図6(d)に示す圧電薄板5を残すように、注入イオン高濃度部分5xにおいて、圧電薄板5と、残りの圧電基板部分とを分離し、残りの圧電基板部分を除去する。
なお、加熱により分割した後、適宜圧電性を回復させる加熱処理を施すことが望ましい。このような加熱処理としては、400℃〜500℃の温度で3時間程度維持すればよい。
上記圧電性回復に必要な加熱温度は、上記分割を用意とするための加熱温度よりも高くすればよい。それによって、圧電性を効果的に回復させることができる。
次に、図13(a)に示すように、圧電薄板5上に、フォトリソグラフィー法により第2の電極7及び配線電極8を含む電極構造を形成する。さらに、配線電極8を覆うように保護膜8aを形成する。
次に、図13(b)に示すように、第2の電極7を覆うように犠牲層23を形成する。犠牲層23は、エッチングにより除去し得る材料からなる。このような犠牲層形成材料としては、SiO ZnO PSG(フォスフォシリケートガラス)などの絶縁膜や、各種有機膜、下部電極や下部電極を覆うパッシベーション膜との溶解選択度の高い金属などを用いることができる。本実施形態では、Cuを用いている。上記エッチングに際してのエッチャントとしては、第2の電極7をエッチングせずに、該犠牲層のみをエッチングにより除去し得る適宜の材料を用いることができる。
図13(c)に示すように、犠牲層23、保護膜8aなどを覆うように、全面に絶縁層3を形成する。絶縁層3は、SiO、SiN、Ta2、AlNなどの適宜の絶縁性セラミックスにより形成することができる。また、ガラスや樹脂などの絶縁素材を用いても良い。
しかる後、図14(a)に示すように、上記絶縁層3を研磨し、その上面を平坦化する。
次に、図14(b)に示すように、平坦化された絶縁層3上に、支持基板2を積層する。
次に、エッチングにより前述した仮接合層21を除去し、圧電薄板5から分離する。それによって、圧電薄板5を仮支持部材22から剥離することができる。このようにして、図14(c)に示すように、支持基板2の下面に、絶縁層3を介して、犠牲層23、第2の電極7、圧電薄板5が積層されている構造が得られる。次に、図15(a)に示すように、上下逆転し、圧電薄板5上に、第1の電極6及び配線電極9をフォトリソグラフィー法により形成する。
しかる後、エッチングによりスリット5a,5b及びビアホール形成用電極孔を圧電薄板5に形成する。次に、図15(b)に示すように、ビアホール電極11を形成する。
しかる後、エッチングにより犠牲層23を除去する。このようにして、図15(c)に示すように、凹部3aが形成され、圧電薄板振動部4が浮かされた状態となる。最後に、図1(a)に示すように、ビアホール電極11及び配線電極9上にバンプ12,10を形成する。このようにして、上記実施形態の圧電バルク波装置1を得ることができる。上記製造方法によれば、予め厚みの厚い圧電基板5Aにイオン注入している。そのため、注入イオン高濃度部分5xにおいて分割し、圧電薄板5を容易に得ることができる。この方法によれば、厚みの比較的薄い圧電薄板5を高精度に得ることができる。
なお、以上の実施形態で示した製造方法により本発明の圧電バルク波装置を製造できるが、その他の方法により製造してもよい。
例えば、上記実施形態では、圧電基板の一方面に仮支持部材22を貼り合わせたのち、圧電薄板と、残りの圧電基板部分とを分離していたが、圧電薄板を用意する工程は以下の工程により実施してもよい。すなわち、LiTaOからなる圧電基板の一方面からイオン注入し、前述した高濃度イオン注入部分を形成する工程と、圧電基板の上記一方面側に支持基板を接合する工程と、次に、圧電基板を加熱しつつ、高濃度イオン注入部分において圧電基板を該圧電基板の前記一方面から前記高濃度イオン注入部分に至る圧電薄板と、残りの圧電基板部分とに分離する工程とを実施することにより、圧電薄板を用意してもよい。より具体的には、図12(a)に示すような、イオン注入により高濃度イオン注入部分5xを有する圧電基板5Aを用意する。次に、圧電基板5Aのイオン注入を行った側の面に第1の電極を形成する。しかる後、圧電基板5Aのイオン注入を行った側の面すなわち第1の電極が形成されている面に支持基板2を接合する。その状態で、圧電基板5Aを加熱しつつ、前述した実施形態と同様にして、圧電薄板と、残りの圧電基板部分とに分離する。次に、圧電薄板の第1の電極が形成されている面とは反対側の面に第2の電極を形成すればよい。
また、圧電薄板の形成は、LiTaOからなる圧電基板へのイオン注入と分割とにより実現する他、圧電基板の研削、圧電基板のエッチングなどにより実現してもよい。
なお、上記圧電バルク波装置1は本発明の圧電バルク波装置の一例にすぎず、本発明の特徴は、LiTaOのオイラー角を特定の範囲とし、厚み滑り振動モードによる共振特性を有効に利用したことにある。従って、第1,第2の電極の材料及び形状等は特に限定されない。また共振子に限らず、様々な帯域フィルタとして機能する電極構造を有するように圧電バルク波装置を構成してもよい。
1…圧電バルク波装置
2…支持基板
3…絶縁層
3a…凹部
4…圧電薄板振動部
5…圧電薄板
5A…圧電基板
5a,5b…スリット
5x…注入イオン高濃度部分
6…第1の電極
7…第2の電極
8…配線電極
8a…保護膜
9…配線電極
10…バンプ
11…ビアホール電極
12…バンプ
21…仮接合層
22…仮支持部材
23…犠牲層
配線電極9上に金バンプ10が設けられている。また、配線電極8に電気的に接続されるように、ビアホール電極11が圧電薄板5に設けられている。ビアホール電極11の上端に、金バンプ12が接合されている。従って、金バンプ10,12から交番電界を印加することにより圧電薄板振動部4を振動させることができる。加えて、主電気信号を伝送する配線電極8が、絶縁層3と支持基板2の接合界面から離間しているため、接合界面の拡散や不均一性に伴う半導体的な抵抗劣化や表皮効果の影響を受け難い。従って、主電気信号を低損失で伝送できる。
他方、図5から明らかなように、スプリアスとなる厚み縦振動モードの電気機械結合係数ksp は、θが73°でほぼゼロとなる。このことは、図7の結果とも一致する。すなわち、図6〜図8は、スプリアスとなる厚み縦振動モードのオイラー角のθによる変化を説明するための図である。図6は、オイラー角のθと、厚み縦振動の共振周波数Fr及び反共振周波数Faとの関係を示す。実線が共振周波数の結果を、破線が反共振周波数の結果を示す。また、図7は、オイラー角のθと厚み縦振動の電気機械結合係数kとの関係を示し、図8はオイラー角のθと周波数温度係数TCFとの関係を示す。図6〜図8からも明らかなように、オイラー角のθが73°において、スプリアスとなる厚み縦振動モードの電気機械結合係数kがほぼゼロとなり、θが55°以上、85°以下の範囲であれば、図5から明らかなように、スプリアスとなる厚み縦振動モードの電気機械結合係数ksp 1.5%以下と非常に小さい。
図12(a)に示すように、LiTaOからなる圧電基板5Aを用意する。圧電基板5Aの一方面から矢印で示すように水素イオンを注入する。注入されるイオンは水素に限らず、ヘリウムなどを用いてもよい。イオン注入に際してのエネルギーは特に限定されないが、本実施形態では、150KeV、ドーズ量8×10 子/cmとする。なお、上記イオン注入条件は、目的とする圧電薄板の厚みに応じて選択すればよい。すなわち、注入イオン高濃度部分の位置を、上記イオン注入条件を選択することにより制御することができる。
上記圧電性回復に必要な加熱温度は、上記分割を容易とするための加熱温度よりも高くすればよい。それによって、圧電性を効果的に回復させることができる。
図12(a)に示すように、LiTaOからなる圧電基板5Aを用意する。圧電基板5Aの一方面から矢印で示すように水素イオンを注入する。注入されるイオンは水素に限らず、ヘリウムなどを用いてもよい。イオン注入に際してのエネルギーは特に限定されないが、本実施形態では、150KeV、ドーズ量8×1017原子/cm とする。なお、上記イオン注入条件は、目的とする圧電薄板の厚みに応じて選択すればよい。すなわち、注入イオン高濃度部分の位置を、上記イオン注入条件を選択することにより制御することができる。

Claims (7)

  1. LiTaOからなる圧電薄板と、
    前記圧電薄板に接するように設けられた第1,第2の電極とを備え、
    前記LiTaOからなる圧電薄板の厚み滑りモードを利用しており、前記LiTaOのオイラー角(φ,θ,ψ)において、φが0°であり、θが54°以上、107°以下の範囲にある、圧電バルク波装置。
  2. 前記LiTaOのオイラー角のθが55°〜88°の範囲にある、請求項1に記載の圧電バルク波装置。
  3. 前記LiTaOのオイラー角のθが62°〜87°の範囲にある、請求項1に記載の圧電バルク波装置。
  4. LiTaOからなる圧電薄板の厚み滑りモードを利用した圧電バルク波装置の製造方法であって、
    オイラー角(φ,θ,ψ)において、φが0°であり、θが54°以上、107°以下の範囲にある圧電薄板を用意する工程と、
    前記圧電薄板に接するように第1の電極を形成する工程と、
    前記圧電薄板に接するように第2の電極を形成する工程とを備える、圧電バルク波装置の製造方法。
  5. 前記圧電薄板を用意する工程が、
    LiTaOからなる圧電基板の一方面からイオン注入し、該一方面側に注入イオン濃度がもっとも高い高濃度イオン注入部分を形成する工程と、
    前記圧電基板の前記一方面側に支持基板を接合する工程と、
    前記圧電基板を加熱しつつ、前記高濃度イオン注入部分において前記圧電基板を該圧電基板の前記一方面から前記高濃度イオン注入部分に至る圧電薄板と、残りの圧電基板部分とに分離する工程とを備える、請求項4に記載の圧電バルク波装置の製造方法。
  6. 前記圧電薄板を用意する工程が、
    LiTaOからなる圧電基板の一方面からイオン注入し、該一方面側に注入イオン濃度がもっとも高い高濃度イオン注入部分を形成する工程と、
    前記圧電基板の前記一方面側に仮支持部材を貼り合わせる工程と、
    前記仮支持部材に貼り合わされている圧電基板を加熱しつつ、前記高濃度イオン注入部分において前記圧電基板を該圧電基板の前記一方面から前記高濃度イオン注入部分に至る圧電薄板と、残りの圧電基板部分とに分離する工程とを有し、
    前記圧電薄板から前記仮支持部材を剥離する工程をさらに備える、請求項4に記載の圧電バルク波装置の製造方法。
  7. 前記圧電薄板から前記仮支持部材を剥離するに先立ち、前記圧電薄板上に第1の電極を形成する工程と、前記第1の電極を覆うように犠牲層を形成する工程と、前記犠牲層上に支持基板を積層する工程とを実施し、
    前記圧電薄板から仮支持部材を剥離した後に、前記仮支持部材の剥離により露出した前記圧電薄板の他方面に第2の電極を形成する工程と、前記犠牲層を消失させる工程とをさらに備える、請求項6に記載の圧電バルク波装置の製造方法。
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