実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1について、図に基づいて説明する。図1は実施の形態1に係る貫流ファン8が搭載された空気調和機の室内機1を示す外観斜視図、図2は図1のQ−Q線における縦断面図である。空気の流れを、図1では白抜き矢印で示し、図2では点線矢印で示す。空気調和機は実際には室内機と室外機とで冷凍サイクルを構成するが、ここでは室内機の構成に関するものであり、室外機に関しては省略する。図1及び図2に示すように、空気調和機の室内機(以下、室内機と記す)1は、正面から見て、左右方向に伸びる細長い略直方体形状であり、部屋の壁に設置される。室内機1本体の上部1aには、室内空気が吸い込まれる吸込口となる吸込グリル2、ホコリを静電させ集塵する電気集塵器5、ホコリを除塵する網目状のフィルタ6が配設される。さらに、並列される複数のアルミフィン7aに配管7bが貫通する構成の熱交換器7が、貫流ファン8の正面側と上部側に、ファン8を囲むように配置される。また、室内機1本体の前面1bは前面パネルで覆われ、室内機1本体の下部には吹出口3が設けられ、熱交換器7で熱交換された室内空気が吹出口3から室内へ吹き出される。吹出口3は室内機1本体の左右方向を長手方向として細長く伸びる開口で構成される。即ち、吹出口3の長手方向が室内機1本体の左右方向と一致するように吹出口3が設けられる。送風機である貫流ファン8は、熱交換器7と吹出口3の間に、室内機1本体の左右方向(長手方向)を回転軸線方向とするように設けられ、モータ16(図3参照)で回転駆動されて吸込口2から吹出口3へ室内空気を送風する。室内機1本体の内部には、ファン8に対して吸込領域E1と吹出領域E2を分離するスタビライザー9及びリアガイド部10を有する。スタビライザー9は貫流ファン8から吹き出す室内空気を吹出口3に導く吹出風路11の前面側を構成し、リアガイド部10は、例えば渦巻状であり、吹出風路11の背面側を構成する。前面側のスタビライザー9よりもリアガイド部10の方が緩やかな曲面であり、吹出風路11は吹出口3に向かって徐々に広がる形状である。吹出口3には上下風向ベーン4a、左右風向ベーン4bが回動自在に取り付けられ、室内への送風方向を変化させる。図中、Oはファン8の回転中心を示し、E1はファン8の吸込領域、E2は回転中心Oに対して吸込領域E1と反対側に位置する吹出領域である。スタビライザー9の舌部9aとリアガイド部10の空気流の上流側端部10aとで、ファン8の吸込領域E1と吹出領域E2が分離されている。また、ROはファン8の回転方向を示す。
図3は実施の形態1に係る貫流ファン8を示す概略図であり、図3(a)は貫流ファンの側面図、図3(b)は図3(a)のU−U線断面図である。図3(b)の下半分は向こう側の複数枚の翼が見えている状態を示し、上半分は1枚の翼13を示している。図4(a)は5個の羽根車単体14を回転軸線方向AXに固定してなるファン8を拡大して示す斜視図、図4(b)は支持板12を示す説明図である。図4では、モータ16やモータシャフト16aを省略して羽根車の部分を貫流ファン8として示す。ファン8を構成する羽根車単体14の数や1つの羽根車単体14を構成する翼13の数はいくつでもよく、この個数で限定されるものではない。
図3、図4に示すように、貫流ファン8は、回転軸線方向AX(長手方向)に複数、例えば5個の羽根車単体14を有する。羽根車単体14の一端に環状の支持板12が配設され、回転軸線方向AXに伸びる複数の翼13が支持板12の外周に沿って配設される。例えばAS樹脂やABS樹脂などの熱可塑性樹脂で成形された羽根車単体14を回転軸線方向AXに複数個備え、超音波溶着などによって翼13の先端を隣に配置する羽根車単体14の支持板12に連結する。そして他端に位置するファン端板12bには翼13が設けられておらず、円板形状である。回転軸線方向AXの一端に位置する支持板12a(以下、ファン端板と記す)の中心にファンシャフト15aが設けられ、他端に位置するファン端板12bの中心にファンボス15bが設けられる。そして、ファンボス15bとモータ16のモータシャフト16aがネジ等で固定される。即ち、ファン8の回転軸線方向AXの両端に位置するファン端板12a、12bは円板形状であり、回転軸線17が位置する中央部分にファンシャフト15a及びファンボス15bが形成される。両端を除く支持板12は、回転中心となる回転軸線17が位置する中央部分が空間の環状で、図4(b)に示すように内径K1と外径K2を有する。ここで、図3(b)、図4(b)で、一点鎖線はモータシャフト16aとファンシャフト15aを結び、回転中心Oを示す仮想回転軸線であり、ここでは回転軸線17とし、回転軸線17の伸びる方向が回転軸線方向AXである。また、1つの羽根車単体を連14と称し、回転軸線方向AXの両端部に位置する連を端部連14aと称する。
図5は本実施の形態に係る空気調和機の室内機1本体を斜め下方から見た斜視図である。この図では説明をわかりやすくするために、上下風向ベーン4a及び左右風向ベーン4bは取り除いて示しており、吹出口3を通してファン8の一部が見えている。室内機の吹出口3の長手方向の長さL1に比べて、ファン8の回転軸線方向AXの長さL2が長く構成される(L2>L1)。この吹出口3は、その長手方向が室内機1本体の左右方向と一致するように開口している。そして、ファン8の両方の端部連14aの一部は吹出口3の両端からそれぞれ延長され、この延長部を、即ちファン8の両方の端部連14aで、吹出口3に面していない部分を、ファン延長部8aと称する。そして、ファン延長部8aから吹き出される吹出気流が衝突する衝突壁18をファン延長部8aに対向する室内機1本体に設ける。また、側壁30は、ファン8の両端部に、ファン端板12a、12bと所定の距離だけ離れた位置に、ファン端板12a、12bに略平行に伸びるように設けられ、室内機1の内部の吸込口2から吹出口3に至る風路の左右の両側面を構成している。
ファン8の回転軸線方向AXで両端のファン延長部8aを除く部分、即ちファン8の回転軸線方向AXの中央部分では、図2に示すように、吹出風路11の背面側は吹出口3に至るまでリアガイド部10で構成され、リアガイド部10の最も上流側10aから吹出口3まで渦巻き形状をなし、徐々にファン8の羽根車の外周からリアガイド部10までの距離が大きくなるような構成である。吹出風路11の前面側はスタビライザー9で構成される。ファン8の回転によって、ファン8の前面側に加速されて吹き出された気流は、吹出風路11を曲線を描いて流れ、吹出口3から前面側に吹き出される。
図6〜図9は室内機1の両端部に設けられた衝突壁18の形状を説明する図であり、図6は、室内機1本体内部の両端部のそれぞれに設けられた衝突壁18を示し、図5に向かって右側の一端に設けられた衝突壁18を拡大して示す斜視図(図6(a))及び上面図(図6(b))である。図7は衝突壁18を示す説明図、図8(a)、(b)は、端部連14aのファン端板12bの面に垂直で、回転軸線17を含む平面で衝突壁18を切断したときの断面図であり、図8(a)はスタビライザー9側に配設されるスタビライザー側端部19aにおける断面、図8(b)はリアガイド部10側に配設されるリアガイド部側端部19bにおける断面を示す。また、図9は図5のW−W線断面図であり、ファン端板12b近傍における衝突壁18を含む部分の室内機1の回転軸線17に垂直な縦断面を示す。図9において、ファン延長部8aにおける断面では、リアガイド部10、スタビライザー9、及び衝突壁18は、ファン延長部8aから吹き出す気流に対して壁を構成しており、斜線で示す。
図8に示す断面において、衝突壁18の対向面18aはファン延長部8aに略平行に向かい合う面であり、ファン延長部8aから吹き出す気流は対向面18aに衝突する。ファン延長部8aでは、吹出風路11の背面は、途中までリアガイド部10の上流側で構成されるが、図9に示すように途中のリアガイド部側端部19b(説明は後述)から衝突壁18の対向面18aに対向し、吹出口3のような開口に接続されず、スタビライザー9に続く。ここで、室内機1本体の奥行き方向AYで、吹出口3の位置する側を前面側、リアガイド部10の位置する側を背面側と称し、衝突壁18のファン延長部8aに対向する対向面18aにおいて、スタビライザー9に接続する前面側をスタビライザー側端部19a、リアガイド部10に接続する背面側をリアガイド部側端部19bとする。即ち、衝突壁18は、スタビライザー9側に配設されるスタビライザー側端部19aとリアガイド部10側に配設されるリアガイド部側端部19bとを接続するように、ファン延長部8aの外周を囲んで設けられ、ファン延長部8aから吹き出される室内空気が衝突する対向面18aを有する構成である。そして、ファン8の羽根車の外周から衝突壁18の対向面18aまでの距離(ファン8の半径方向の距離)は、図9にて符号アで示すように、リアガイド部10の最も上流側10aから衝突壁18(リアガイド部側端部19bからスタビライザー側端部19a)を経てスタビライザー9に続く部分まで略同じである。また、ファン延長部8aから吹き出される吹出気流が、衝突壁18に衝突する衝突領域を領域E3で示す。即ち、ファン8から気流が吹き出される領域を示す吹出領域E2(図2参照)のうち、ファン延長部8aから吹き出される気流が、衝突壁18に衝突する領域を衝突領域E3とする。この衝突領域E3は吹出領域E2の一部となる。
図6において点線はファン8及びファン端板12bを示し、図7において点線はファン端板12bを示す。衝突壁18の形状は、図6、図7に示すように、回転軸線方向AXの長さにおいて、リアガイド部側端部19bにおける対向面18aの長さが、スタビライザー側端部19aにおける対向面18aの長さよりも短く構成される。左右の両端部に設けられる衝突壁18は、例えば左右の側壁30と一体に成形されるため側壁30に接続しており、側壁30を一端として左右方向の内側に伸びている。従って、衝突壁18の対向面18aを示す上面図(図6(b))では、略台形状である。ここで、対向面18aにおいて、室内機1本体の左右方向で外側に位置する縁部をファン外側縁部Ha、逆に室内機1本体の左右方向で内側に位置する縁部をファン内側縁部Hbとする。図6(b)に示すように、上から見た台形状の対向面18aは、上底であるリアガイド部側端部19bと下底であるスタビライザー側端部19aは互いに略平行を成し、一方の辺であるファン外側縁部Haは側壁30と衝突壁18との接続部であり、リアガイド部側端部19b(上底)とスタビライザー側端部19a(下底)とに略直角に交わる。また、他方の辺であるファン内側縁部Hbは、スタビライザー側端部19aの回転軸線方向AXの長さがリアガイド部側端部19bの回転軸線方向AXの長さよりも長いために、傾斜している。スタビライザー側端部19aと減少開始位置19c(詳細については後述する)間の対向面18aの回転軸線方向AXの長さは同じである。
なお、構成の都合上、側壁30が回転軸線方向AXに凹凸を成す場合もあるので、上記の対向面18aのスタビライザー側端部19aの回転軸線方向AXの長さ、及び対向面18aのリアガイド部側端部19bの回転軸線方向AXの長さとは、ファン延長部8aに対して回転軸線17と略平行に向かい合っている対向面18aのファン端板12a、12bからの長さとする。即ち、図8(a)、(b)に示すように、スタビライザー側端部19aのファン端板12bからの対向面18aの回転軸線方向AXの長さ(Na)>リアガイド部側端部19bのファン端板12bからの対向面18aの回転軸線方向AXの長さ(Nb)である。
また、前述のように、衝突壁18のリアガイド部側端部19bでは、リアガイド部10に滑らかに接続するため、実際には、衝突壁18は最端部においてリアガイド部10からの立ち上がりの高さがゼロとなる。ここでは、説明をわかりやすくするために、リアガイド部側端部19bは、衝突壁18がリアガイド部10に接続する最端部近傍で、対向面18aと底面18bとの距離がある程度の大きさを有する位置とする。
図7に示すように、ファン端板12bに垂直で回転軸線17を含む平面で衝突壁18を切断した時の断面(例えばスタビライザー側端部19aにおける平面C1での断面や、位置20aにおける平面C2での断面)では、図8に示すように衝突壁18の断面形状は多角形状、ここでは四角形を成す。四角形の4辺は、対向面18a、底面18b、衝突壁側面18c、側壁30の内側の面の一部である。対向面18aは衝突壁18の一面であって、回転軸線17に平行で端部連14aのファン延長部8aに向かい合っている。底面18bは、ファン延長部8aと反対側で対向面18aに対向する面であり、吹出風路11の背面側を構成するリアガイド部10に接続する。衝突壁側面18cは、室内機1本体の左右方向の内側に向き、対向面18aと底面18bとを接続する面であり、吹出風路11に面している。上記したNb<Naは、奥行き方向AYの各位置での断面における四角形で、対向面18aを表す一辺の長さについて、リアガイド部側端部19bの長さがスタビライザー側端部19aの長さよりも短いということである。
なお、衝突壁18の高さ、即ち対向面18aと底面18bとの距離は、ファン8の外周とリアガイド部10との間の距離(ファン8の半径方向の距離)が徐々に大きくなっているので、スタビライザー側端部19aでリアガイド部側端部19bよりも大きくなる。
衝突壁18の端部連14aに向かい合う対向面18aの回転軸線方向AXの長さは、図10に曲線I1で示すように、衝突壁18の奥行き方向AYで滑らかに変化するように構成している。図10は横軸に奥行き方向AYの位置、縦軸に衝突壁18の対向面18aの回転軸線方向AXの長さを示すグラフである。曲線I1に示すように、衝突壁18の対向面18aの回転軸線方向AXの長さは、スタビライザー側端部19aの長さ(Na)を最大、リアガイド部側端部19bの長さ(Nb)を最小として、途中の奥行き方向AYの位置20a、20bではNaとNbとを滑らかに略直線で結ぶ長さとする。この構成例では、スタビライザー側端部19aから奥行き方向の全体の長さの10%程度の間(図10ではスタビライザー側端部19aから減少開始位置19cの間)は、対向面18aの回転軸線方向AXの長さを同じとする。即ち、奥行き方向AYで衝突壁18のスタビライザー側端部19aとリアガイド部側端部19bの間の位置に減少開始位置19cを設け、対向面18aの回転軸線方向AXの長さについて、スタビライザー側端部19aから減少開始位置19cまでの長さを同じ(=Na)とし、減少開始位置19cからリアガイド部側端部19bに向かって、対向面18aの回転軸線方向AXの長さを滑らかに減少させる。ここで、減少開始とは、対向面18aにおける回転軸線方向AXの長さの減少開始を意味し、減少開始位置19cは、スタビライザー側端部19aとリアガイド部側端部19bの間の途中に設けられ、対向面18aの回転軸線方向AXの長さを短くするときのスタビライザー側の開始位置である。
以下、本実施の形態で用いたファンの各長さの一例を示す。
羽根車単体14の端部で翼13に固定されている環状の支持板12の外径K2(図4参照)をΦ110mm、内径K1(図4参照)をΦ60mmとし、この支持板12の円周上に例えば35枚の翼13が固定されている。また、回転軸線方向AXでは、吹出口3の長手方向長さL1=610mm、ファン8の回転軸線方向AXの全長L2=640mmである。衝突壁18は、スタビライザー側端部19aにおいて、ファン端板12a、12bからの衝突壁18の対向面18aの回転軸線方向AXの長さNaは15mm、リアガイド部側端部19bにおいて、ファン端板12a、12bからの衝突壁18の対向面18aの回転軸線方向AXの長さNbは5mmである。また、図8におけるSは、ファン8の両端のファン端板12a、12bと側壁30の間にできる空間を示している。空間Sの回転軸線方向AXの長さは、例えば10mmである。さらに、端部連14aの回転軸線方向AXの長さは、一端の端部連14aで25mm、他端の端部連14aで70mmとし、2つの端部連14aを除く他の連14の回転軸線方向AX長さを略80mmとする。また、ファン延長部8aにおける羽根車の外周から衝突壁18の表面までの距離アは、5mm程度である。また、衝突壁18の対向面18aの奥行き方向AYの長さ(スタビライザー側端部19aからリアガイド部側端部19bまでの曲面に沿った長さ)を200mmとし、スタビライザー側の長さを同一とする部分の長さ(スタビライザー側端部19aから減少開始位置19cまでの曲面に沿った長さ)を20mmとする。
図11は貫流ファン8による室内機1本体内の気流を示す説明図である。貫流ファン8の内部でスタビライザー9付近には気流の通過に伴う渦(循環渦)F1が発生する。渦F1の周囲である領域E4は室内機1内で最も気圧が低くなり(Pmin)、大気圧(P0)との差が最も大きくなる。このため、渦F1周辺を通る気流が吹き出す吹出口3のスタビライザー側(Ga)の方がリアガイド部側(Gb)よりも逆吸いが発生しやすい。
また、ファン8から吹き出す気流の風速を図12に示す。図12は横軸に奥行き方向AYの位置、縦軸に吹出気流の風速を示す。図中、J1、J2は図11に示した気流J1、J2の風速を示している。風路の形状と貫流ファン8の特性から、吹出風路11を流れる気流の風速は、スタビライザー側で小さく、リアガイド部側に向かって風速が大きくなり、スタビライザー側とリアガイド部側との中央付近で最も大きく、さらにリアガイド部側に向かって風速が小さくなる。このように風速に分布があるということは、ファン8によって気流全体に均一にエネルギーが与えられるのではないということである。特にスタビライザー側では気流の風速が低く、エネルギーが十分ではない。これも加わって、室内空気が吹出口3を通って室内機1内に流入する逆吸いが、リアガイド部側(Gb)よりもスタビライザー側(Ga)で起こりやすくなる。
以下、図13、図14に基づいて、逆吸いの発生しやすいスタビライザー側(Ga)、即ちスタビライザー側端部19a近傍の衝突壁18の作用について説明する。図13は、スタビライザー側端部19aにおける室内機1の内部構成を簡略化して示す模式図であり、気流方向(点線矢印)に従って、吸込口2、熱交換器7、ファン8、吹出口3の関係を簡略化して示す。また、図14は図13の向かって右端部の衝突壁18付近を拡大して示す説明図である。
回転軸線方向AXで、ファン8の両端部連14aは、吹出口3の長手方向の両端部よりも延長されたファン延長部8aを有し、吹出側で衝突壁18の対向面18aに対向する。この衝突壁18に対向する吹出領域E2を衝突領域E3と称している。一方、ファン8の回転軸線方向AXで、ファン延長部8aを除く部分、即ちファン8の回転軸線方向AXの中央部分は、吹出領域E2では開口で構成される吹出口3に対向して配設される。ここで、両ファン端板12a、12bの位置は、例えばファン端板12a、12bの室内機1本体の外側に向く外向面であるファン端面の位置とする。
空気調和機が運転され、モータ16によってファン8が回転される。貫流ファン8がRO方向(図2参照)に回転することにより、室内空気が室内機1本体の上部に設けられる吸込口2から吸い込まれ、熱交換器7を通過する際に配管7b内を流れる冷媒と熱交換される。そして空気調和された気流Aとなり貫流ファン8を通って吹出口3から室内へ吹き出される。ここで、吸込口2から吸い込まれた室内空気が熱交換器7を通過する際に摩擦抵抗(圧力損失)が生じるため、図14に示すように、貫流ファン8に流入する時の吸込領域E1の気圧Pe1は、大気圧P0よりも低くなる。空間Sは、吸込領域E1と連続する空間であり、同じ圧力雰囲気であるので、吸込領域E1と同等の気圧Pe1(<大気圧P0)である。また、端部連14aの吹き出し側に着目すると、衝突壁18に対向する場所に吹き出した気流Aaは衝突壁18に当たり、風速のエネルギーが圧力のエネルギーに変換されて、衝突領域E3には淀み圧P1aが発生する。ファン8の回転が速くなるにつれて気流Aaの風速Vaが大きくなり、淀み圧P1aは高くなる。風速Vaが所定の値以上であれば、淀み圧P1aが大気圧P0よりも高くなる。この淀み圧P1aが大気圧P0より高くなるときの風速Vaは、搭載する熱交換器などの圧力損失に応じて異なる。
空気調和機の室内機1に搭載される貫流ファン8は、例えば弱冷房、強冷房などの運転モードに応じて運転する回転数が設定される。最も低い回転数で運転する時の風速で、大気圧P0より高い淀み圧P1aが得られるように、衝突壁18とファン8の外周との間隔ア(図9参照)、及び衝突壁18のスタビライザー側端部19aにおける対向面18aの回転軸線方向AXの長さNaを決定する。こうして決定された寸法を有して衝突壁18のスタビライザー側端部19aを設ければ、室内機1の運転中、即ちファン8の回転時には、ファン8の端部連14aの衝突領域E3を淀み圧P1a(>大気圧P0)の空間とすることができる。空間Sに通じる衝突領域E3を淀み圧P1a>大気圧P0とすることで圧力差を形成し、淀み圧P1aが大気圧P0の室内空気の流入を遮断する。このため、吹出口3を通って室内機1の外部から室内機1の内部の圧力の低い空間Sへ室内空気が流入する逆吸いが発生するのを防止できる。特に、逆吸いの発生しやすいスタビライザー側端部19aにおいて、ファン8と衝突壁18との間に大気圧P0よりも大きい淀み圧P1aを作ることで、逆吸いを防止できる。
ところが、衝突壁18への衝突流は、室内機1外への送風気流にならないため、淀み圧P1aを大気圧P0より過剰に大きくすることは、送風する目的から考慮すると損失になる。即ち、奥行き方向AYでスタビライザー側端部19aからリアガイド部側端部19bに至るまで、回転軸線方向AXに一様の幅の対向面18aを有する衝突壁18を設けて吹出気流を衝突壁18に衝突させることは、通風抵抗を大きくすることになるので、ファン8にとって負荷が大きくなり、エネルギー損失や騒音の増加につながる。
このため、実施の形態1では、逆吸い防止と送風のバランスを考慮し、衝突壁18のリアガイド部側端部19bの形状において、ファン8に向かい合う面である対向面18aの回転軸線方向AXの長さ(左右方向の幅)をスタビライザー側端部19aよりも短くする。そして、スタビライザー側端部19aからリアガイド部側端部19bに向かって、衝突壁18のファンとの対向面18aのファン端板12bからの回転軸線方向AXの長さを滑らかに減少させる。
ここで、例えば、奥行き方向AYで、減少開始位置19cとリアガイド部側端部19bの間の位置20aにおける気流について説明する。図15は室内機1を示す縦断面図であり、位置20aのファン内側端部Hbを通り、回転軸線17に垂直な断面を示す。図9と同様、この断面では、リアガイド部10、スタビライザー9、及び衝突壁18の一部は、気流に対して壁を構成しており、斜線で示す。位置20aよりもスタビライザー側端部19aに近い部分には衝突壁18が形成され、位置20aよりもリアガイド部側端部19bに近い部分には吹出風路11が形成される。このため、ファン8のファン延長部8aから吹き出される気流のうち、奥行き方向AYで位置20aとリアガイド部側端部19bの間に吹き出される気流は、吹出風路11に流れて室内機1外への送風気流になる。一方、奥行き方向AYで位置20aとスタビライザー側端部19aの間に吹き出す気流は、衝突壁18に衝突して淀み圧を形成し、逆吸いを防止する。
上記では、位置20aにおける気流について説明したが、回転軸線方向AXで、両端部のファン端板12a、12b側から見ていくと、ファン端板12a、12b側では図9に示す断面となり、奥行き方向AYでスタビライザー側端部19aとリアガイド部側端部19bの間に吹き出す気流は、全て衝突壁18に衝突して淀み圧を形成し、逆吸いを防止する。回転軸線17に垂直な断面が、ファン端板12a、12bから内側の位置になるにつれて、リアガイド部側端部19bの方から吹出風路11が形成され、ファン延長部8aから吹き出す吹出気流の一部が、室内機1外への送風気流になる。そして、衝突壁18のスタビライザー側端部19aのファン内側端部Hbを通り、回転軸線17に垂直な断面は、図11と同様の吹出風路11を構成し、これよりも回転軸線方向AXの内側には衝突壁18が形成されておらず、全て送風気流となる。
次に、リアガイド部側端部19b近傍の衝突壁18の作用について説明する。図16は、リアガイド部側端部19bにおける右端部の衝突壁18付近を拡大して示す説明図である。リアガイド部側端部19bの衝突壁18は、回転軸線方向AXの対向面18aの長さNbが、スタビライザー側端部19aの長さNaよりも短く、端部連14aと向かい合う対向面18aの幅が狭い。このため、図16に示すように気流が衝突することによる高圧部P1bの回転軸線方向AXの長さは狭くなるが、循環渦F1から遠く、スタビライザー9側に比べて逆吸いしにくい場所であるため、逆吸いに対してはこの程度で十分な効果が得られる。ここでは、衝突壁18の対向面18aの幅を狭くしたため、リアガイド部10付近でファン8から吹き出した気流Aのうち、気流Aaaは衝突壁18の対向面18aと衝突し、淀み圧P1bを作る。一方、左右方向で内側に流れる気流Aabは衝突壁18に衝突せずに吹出風路11、及び吹出口3を通って室内機1の外へ吹き出す。このように、この部分では衝突壁18の対向面18aの長さをスタビライザー側端部19aよりも短くすることで、送風気流を確保することができる。
即ち、スタビライザー側端部19aからリアガイド側端部19bまでの奥行き方向AYの各位置において、その位置で逆吸いの発生を防止するのに必要な淀み圧が得られる長さ(回転軸線方向AXの長さ)の対向面18aを有する衝突壁18を形成する。このように形成すると、スタビライザー側端部19aの対向面18aの長さ(回転軸線方向AXの長さ)が最も長く、リアガイド側端部19bに向かって、必要な対向面18aの長さ(回転軸線方向AXの長さ)は短くなる。この短くした部分では、ファン8から吹き出した気流は衝突壁18に衝突することなく、送風気流として吹出口3に流れる。
従って、スタビライザー側端部19aからリアガイド側端部19bまでの全ての位置で、対向面18aの回転軸線方向AXの長さを同じに形成した衝突壁18と比較して、同じファン回転数に対して風量が増加し、消費電力を低減することができる。さらに気流の衝突に伴う騒音を低減することもできる。
前に述べたように、最も低い回転数で運転する時の風速で、吹出口3の両端部付近に大気圧P0より高い淀み圧P1aが安定して得られるように、衝突壁18のスタビライザー側端部19aにおける対向面18aの回転軸線方向AXの長さNaや減少開始位置19cを決定する。そして、リアガイド部側端部19bにおける対向面18aの回転軸線方向AXの長さNbは、Na>Nb≧0の範囲の幅で、設定すればよい。
以上のように、実施の形態1では、空気調和機1本体の上部に設けられ室内空気を吸い込む吸込口2と、この吸込口2から吸い込まれた室内空気と熱交換する熱交換器7と、空気調和機1本体の下部に空気調和機1本体の左右方向に長手方向を伸ばすように設けられ、熱交換器7にて熱交換された室内空気を室内へ吹き出す吹出口3と、熱交換器7と吹出口3の間に空気調和機1本体の左右方向を回転軸線方向AXとするように設けられ、吸込口2から吹出口3へ室内空気を送風する貫流ファン8と、貫流ファン8の両端部のそれぞれにあって貫流ファン8が吹出口3の長手方向の両端から回転軸線方向AXに延長されてなるファン延長部8aと、貫流ファン8から吹き出す室内空気を吹出口3に導く吹出風路11の前面側を構成するスタビライザー9と、吹出風路11の背面側を構成するリアガイド部10と、空気調和機1本体の両端部のそれぞれにスタビライザー9とリアガイド部10とを接続するように設けられ、ファン延長部8aから吹き出される室内空気が衝突する衝突壁18と、衝突壁18の一面であってファン延長部8aに向かい合う対向面18aと、を備え、対向面18aは、リアガイド部9側に位置するリアガイド部側端部19bの回転軸線方向AXの長さが、スタビライザー9側に位置するスタビライザー側端部19aの回転軸線方向AXの長さよりも短く構成されていることにより、吹出口3の両端部付近では、ファン8の端部連14aからの吹出気流を衝突壁18に衝突させて大気圧より高い淀み圧を作るので、吹出口3の左右方向の両端部において室内空気が室内機1の外部から吹出口3を通って室内機1の内部に進入する逆吸いを防止できる。このため、逆吸いの発生によって生じていたファン性能の低下や騒音の増加や露飛びなどを防止できる。さらに、渦F1の発生するスタビライザー9付近の気流に対しては、逆吸いを防止するのに必要な幅(回転軸線方向AXの長さ)の淀み圧を衝突領域E3に形成し、渦F1から遠い気流に対しては渦F1の発生する付近の気流に対する淀み圧よりも狭い幅で淀み圧を形成することで、逆吸いを防止でき、且つ吹出気流が衝突壁18に衝突することによるエネルギー損失の増加を抑制して、低電力化及び低騒音化を実現することができる。
また、衝突壁18の対向面18aの回転軸線方向AX長さにおいて、スタビライザー側端部19aから減少開始位置19cまでの長さを、Naで一定にした。このため、渦F1が発生するスタビライザー9付近の気流に対しては、空間Sに通じる衝突領域E3に形成する淀み圧P1を、逆吸いによる室内空気の流入を遮断することができる十分な幅(ここでは回転軸線方向AXの長さ)及び奥行き方向AYの長さで形成できる。従って、逆吸いの発生しやすいスタビライザー側で逆吸いが発生するのを確実に防止できる。この減少開始位置19cは、スタビライザー側端部19aから衝突壁18の奥行き方向の長さの10%程度の位置としたが、これに限るものではない。図11に示すように、ファン8の回転中心Oと吹出口3のリアガイド部10側であるGbを結ぶ直線Zが衝突壁18の対向面18aと交差する位置、図11では減少開始位置19cで示しているが、この位置よりもリアガイド部側端部19bに近い位置とするのが好ましい。スタビライザー側端部19aから減少開始位置19cまでは渦F1のために低圧になる領域E4に近く、逆吸いが起こりやすいためである。
以上のように、衝突壁18は、対向面18aの回転軸線方向AXの長さを短くするときのスタビライザー9側の開始位置である減少開始位置19cを、スタビライザー側端部19aとリアガイド部側端部19bの間の途中に有し、対向面18aの回転軸線方向AXの長さについて、スタビライザー側端部19aから減少開始位置19cまでの長さを同じにすることにより、逆吸いの起こりやすいスタビライザー側端部19aから減少開始位置19cで、衝突壁18の他の部分よりも回転軸線方向AXに十分な幅の淀み圧を形成するので、確実に逆吸いを防止できる。
なお、図17は衝突壁18の他の形状の構成例を示す斜視図である。図7に示す衝突壁18では、スタビライザー側端部19aからリアガイド部側端部19bまでの奥行き方向AYの各位置において、ファン端板12bに垂直で回転軸線17を含む平面で衝突壁18を切断したときの断面が、多角形状、例えば四角形を成すような形状である。図18に示す衝突壁18は、スタビライザー側端部19aからリアガイド部側端部19bまでの奥行き方向AYの各位置において、ファン端板12bに垂直で且つ鉛直な平面で衝突壁18を切断したときの断面が多角形状、例えば四角形をなすような形状である。このため、位置20aのファン内側端部Hbを通り、回転軸線17に垂直な断面は、図18のように示される。この形状の場合にも、リアガイド部側端部19bにおける衝突壁18の対向面18aの回転軸線方向AXの長さは、スタビライザー側端部19aにおける衝突壁18の対向面18aの回転軸線方向AXの長さよりも短く構成される。このため、スタビライザー側端部19aでは回転軸線方向AXに逆吸いを防止できるだけの十分な幅で淀み圧を形成でき、特に逆吸いの起こりやすいファンの両端部で且つスタビライザー側(Ga)に淀み圧を形成できるので、吹出口3の左右方向の両端部且つスタビライザー9付近である吹出口3の上側を通って室内機1の内部に室内空気が流入するのを防止できる。
さらに、位置20aにおける回転軸線17に垂直な断面の図15と図18を比較すると、位置20aと回転中心Oを結ぶ直線(図15)と、位置20aを通る鉛直線(図18)とで、吹出風路11に流れる気流が異なる。即ち、スタビライザー側端部19aよりも上流側の各位置で吹出風路11に流れる気流が図18に示す空間Dだけ多くなる。このため、図18の構成では、風量を図15の構成よりも多くでき、低電力化及び低騒音化を実現することができる。
図19は実施の形態1に係る衝突壁18の形状に係り、衝突壁18のファン8との対向面18aの回転軸線方向AXの長さを示すグラフである。横軸に奥行き方向AYの位置、縦軸に対向面18aの回転軸線方向AXの長さを示す。ここで、対向面18aの回転軸線方向AXの長さとは、ファン8のファン端板12a、12bからの長さとする。衝突壁18の対向面18aの回転軸線方向AXの長さにおいて、スタビライザー側端部19aよりも上流側では、リアガイド部側端部19bに至る変化は図10に示すように直線状でなくてもよく、階段状や凹や凸の曲線状、波状などでもよい。例えば図19における階段状に変化させた曲線I2や、緩やかな凸状の曲線I3のように変化させても、同様の効果を奏する。
図20は、実施の形態1に係る衝突壁18を示す断面図であり、例えば吹出口3の向かって右側の端部に配置する衝突壁18を示す。吹出口3の向かって左側の端部に配置する衝突壁18も同様であり、この右側の衝突壁を左右反転させればよい。また、この断面は、ファン端板12bに垂直で回転軸線17を含む平面で切断したときの断面でもよく、ファン端板12bに垂直で且つ鉛直な平面で切断したときの断面でもよい。衝突壁側面18cの左側は吹出口3に続く吹出風路11であるので、衝突壁側面18cは吹出風路11の側面を構成する。これまで説明してきた衝突壁18は、図20(a)に示すように、衝突壁の対向面18aと底面18bの回転軸線方向AXの長さを略同じ長さとし、対向面18aと底面18bを接続する衝突壁側面18cは対向面18aに対してθ=90°を成す形状である。ここで、角度θは、衝突壁の対向面18aから時計回り方向(吹出口3の左側の端部では反時計回り方向)に衝突壁側面18cまでの成す角度である。
衝突壁18の他の構成例として、図20(b)に示すように、回転軸線方向AXの対向面18aの長さを底面18bよりも短く構成して、衝突壁側面18cと対向面18aとの成す角度θが、鈍角(>90°)になるように構成してもよい。図20(a)では、対向面18aに衝突するように流れる気流のうち、対向面18aと衝突壁側面18cの角部に衝突する気流は、図20(d)に示すように、この角部で乱れて衝突壁側面18cの付近で渦F2を生じやすい。図20(b)では、角度θ(>90°)で鈍角を成しており、対向面18aと衝突壁側面18cの角部に衝突する気流は、なだらかに傾斜して衝突壁側面18cに流れるので、この部分で渦F2ができにくい。このように、剥離や乱れを抑制することでエネルギー損失や騒音の低減し、低電力化及び低騒音化を図ることができる。
また、図20(c)に示すように、回転軸線方向AXの対向面18aの長さを底面18bよりも長く構成して、衝突壁側面18cを底面18bとの成す角度θが鈍角(<90°)になるように構成してもよい。この構成では、図20(a)と同様、衝突壁側面18cの付近で渦F2ができやすい構成ではあるが、図20(a)、(b)よりも吹出風路11の回転軸線方向AXの長さを長くすることができる。このため、風速X風路面積で決定される風量を大きくすることができる。また言い換えると、図20(a)、(b)よりも対向面18aの回転軸線方向AXの長さを長くできる。このため、対向面18aに形成される淀み圧の回転軸線方向AXの幅を大きくできる構成である。
図20(a)〜(c)のいずれの衝突壁18の形状であっても、対向面18aとファン8との間に淀み圧を形成することができるので、室内機1の外部の室内空気が吹出口3を通ってファン8の両端部の空間S(図14、図16参照)に侵入する逆吸いを防止できる。
なお、衝突壁18の奥行き方向AYで、スタビライザー側端部19aからリアガイド部側端部19bまでの衝突壁18の断面形状は、図20(a)、(b)、(c)のいずれか1つの構成に限るものではなく、組み合わせて構成してもよい。例えば、スタビライザー側端部19a付近では図20(a)や図20(c)として対向面18aを長くしたり吹出風路11が広くなるようにし、奥行き方向AYの位置20aや20bでは、図20(a)や図20(b)の形状とし、リアガイド部側端部19bに近いところでは、対向面18aの回転軸線方向AXの長さが短いので、図20(b)としてもよい。
なお、スタビライザー側端部19aからリアガイド部側端部19bにおいて、中央部分からリアガイド部側端部19bでは、図12に示すように、ファン8から吹き出した気流の風速がスタビライザー側端部19aに比べて大きい。風速の大きい部分で角部を図20(b)に示すように鈍角にして渦F2を防止することは、渦F2によるエネルギー損失や騒音を低減することができ、効果的である。
実施の形態2.
以下、本発明の実施の形態2について図に基づいて説明する。この実施の形態は、衝突壁18の断面形状を多角形状、基本的には四角形とし、衝突壁18のファン8との対向面18aと衝突壁側面18cで形成される角部を直線又は曲線で削り取った形状、いわゆる面取り部を有する形状とすることを特徴とする。このときの断面も、ファン端板12a、12bに垂直且つ回転軸線17を含む平面で切断したときの断面でもよく、ファン端板12a、12bに垂直且つ鉛直な平面で切断したときの断面でもよい。実施の形態2に係る各図において、実施の形態1と同一符号は同一、または相当部分を示す。
図21は、本発明の実施の形態2に係る衝突壁18を拡大して示す斜視図であり、例えば室内機1本体の向かって右側の端部に配置する衝突壁18である。図において、点線はファン端板12bを示す。室内機1本体の両端部のそれぞれにスタビライザー9とリアガイド部10とを接続するように設けられ、ファン8に向かい合う対向面18aを有する衝突壁18は、図9に示したように、スタビライザー側端部19aからリアガイド部側端部19bに亘って、吹出領域E2のファン延長部8aの外周を囲む形状である。長手方向が左右に伸びる吹出口3の左側の端部には同様の衝突壁18を配置するが、左右反転した形状となる。
実施の形態2では、ファン8と向かい合う対向面18aのファン内側縁部Hbの角部を切り取って、傾斜面を作成し、傾斜面21とすることを特徴とする。ここでは例えばスタビライザー側端部19aから減少開始位置19cまでは傾斜面21を形成せず、リアガイド部側端部19bではファン内側縁部Hbの角を大きく切り取るような形状の傾斜面21を形成する。位置19b、20a、20bに示す一点差線で囲まれた面は、ファン端板12bに垂直な平面で衝突壁18を切断したときの断面を示す。
図22は、衝突壁18をファン端板12bに垂直な平面で切断したときの断面形状を示す説明図であり、図22(a)はスタビライザー側端部19a(または減少開始位置19c)、図22(b)は位置20a、図22(c)はリアガイド部側端部19bにおける断面である。また、図23は、実施の形態2に係り、衝突壁18を示す上面図(図23(a))、及び断面図(図23(b))である。図23(b)は、図23(a)におけるW20a−W20a線断面を示す。
前述のように、衝突壁18の高さ、即ち対向面18aと底面18bとの距離は、ファン8の外周とリアガイド部10との間の距離(ファン8の半径方向の距離)が徐々に大きくなっているので、気流に対して下流に位置するスタビライザー側端部19aでは、上流に位置するリアガイド部側端部19bよりも大きくなる。
実施の形態1と同様、衝突壁18は一端では吹出風路11を形成する側壁30に接続して構成されるが、回転軸線方向AXの衝突壁18の底面18bの長さLDや対向面18aである上面の長さLUを表す場合には、ファン端板12b(左側端部の衝突壁18の場合にはファン端板12a)の外向面からの長さで表す。また、対向面18aの回転軸線方向AXの長さに関しては、リアガイド部10側に位置するリアガイド部側端部19bの長さが、スタビライザー9側に位置するスタビライザー側端部19aの長さよりも短い。そして、対向面18aの回転軸方向AXの長さ(LU)を短くするときのスタビライザー側の開始位置を減少開始位置19cとし、スタビライザー側端部19aから減少開始位置19cまでは、対向面18aの長さ(LU)を同じとする。従って、衝突壁18のファン8と向かい合う対向面18aは、実施の形態1と同様、スタビライザー側端部19aにおける回転軸線方向AXのファン端板12bからの長さ(LU19a)>リアガイド部側端部19bにおける回転軸線方向AXのファン端板12bからの長さ(LU19b)である。さらに、スタビライザー側端部19a(または減少開始位置19c)とリアガイド部側端部19bの間の位置20aでは、その間の長さとし、LU19a>LU20a>LU19bとする。
また、この構成例は、スタビライザー側端部19aからリアガイド部側端部19bに亘って、衝突壁18の底面18bのファン端板12bから衝突壁側面18cまでの長さ(LD)は同じとする。即ち、スタビライザー側端部19a(または減少開始位置19c)における回転軸線方向AXのファン端板12bから衝突壁側面18cまでの底面18bの長さ(LD19a)=位置20aにおける回転軸線方向AXのファン端板12bから衝突壁側面18cまでの底面18bの長さ(LD20a)=リアガイド部側端部19bにおける回転軸線方向AXのファン端板12bから底面18bの衝突壁側面18cまでの長さ(LD19b)である。
また、対向面長さ(LU)/底面長さ(LD)を対向面比(LU/LD)と称し、奥行き方向AYの位置に対する対向面比(LU/LD)は、リアガイド部側端部19bでスタビライザー側端部19aよりも小さく、以下の式(1)を満足するように構成される。
LU19a/LD19a(=1)
> LU20a/LD20a
> LU19b/LD19b ・・・(1)
図24は、実施の形態2に係り、衝突壁18の対向面18a及び底面18bに関し、回転軸線方向AXのファン端板12bからの対向面長さ(LU)/底面長さ(LD)を示すグラフである。横軸は奥行き方向AYの位置を示す。この奥行き方向AYの位置に対する対向面比(LU/LD)が式(1)を満足するように、減少開始位置19cからリアガイド部側端部19bの間で、ファン内側縁部Hbに傾斜面21が設けられている。対向面18aから時計回りに傾斜面21との間の角度θを鈍角とする。なお、スタビライザー側端部19aから減少開始位置19cの間は、底面18bの回転軸線方向AXの長さ(LD)及び対向面18aの回転軸線方向AXの長さ(LU)を同じとし、LD19a=LD19c=LU19a=LU19cである。
減少開始位置19cからリアガイド部側端部19bにおいて、対向面比(LU/LD)の一例は、次のとおりである。
スタビライザー側端部19a、減少開始位置19cで、LU19a/LD19a=LU19c/LD19c=1、位置20aで、LU20a/LD20a=0.8、リアガイド部側端部19bで、LU19b/LD19b=0.6とする。そして、対向面18aと底面18bとの長さの差の範囲内で、左右方向(回転軸線方向AX)の内側で対向面18aに接続される面を傾斜面21で構成する。
図22、図23に示すように、回転軸線方向AXで、対向面18aのファン端板12bからの長さLUにおいて、スタビライザー側端部19aでの長さLU19aを最も長くし、リアガイド部側端部19bでの長さLU19bを最も短くしている。このため、実施の形態1と同様、スタビライザー側端部19aにおいて、衝突壁18の衝突領域E3(図16参照)に大気圧よりも大きな淀み圧を十分な幅で形成し、室内空気が領域Sに逆流するのを遮断することで、逆吸いを防止できる。特に、スタビライザー側端部19aから減少開始位置19cまでは傾斜面21を形成していないので、逆吸いが起こりやすいスタビライザー9付近では、長さLU19aの対向面18aの全面で淀み圧を形成し、逆吸いを確実に防止する。
また、図22(b)に示すように、スタビライザー側端部19aとリアガイド部側端部19bの間の位置20aでは、端部連14aのファン延長部8aから吹き出した吹出気流の例えば内側の20%は傾斜面21に吹き出し、傾斜面21に沿って吹出口3に滑らかに導かれて送風気流となる。そして、端部連14aのファン延長部8aから吹き出した吹出気流のファン端板12b側の80%が衝突壁18に衝突して淀み圧の形成に作用する。
さらに、図22(c)に示すように、ファン内部の循環渦F1から遠いリアガイド部側端部19bでは、回転軸線方向AXに広い傾斜面21を構成することで、端部連14aのファン延長部8aから吹き出した吹出気流の例えば内側の60%は傾斜面21に吹き出し、吹出口3に滑らかに導かれて送風気流となる。そして、端部連14aのファン延長部8aから吹き出した吹出気流のうち、ファン端板12b側の40%は、対向面18aに衝突して衝突領域E3に淀み圧を形成し、空間Sに通じる衝突領域E3を淀み圧P1>大気圧P0とすることで圧力差を形成し、淀み圧P1が大気圧P0の室内空気の流入を遮断する。このため、吹出口3を通って室内機1の外部から室内機1の内部の圧力の低い空間Sへ室内空気が流入する逆吸いが発生するのを防止できる。
なお、傾斜面21の対向面18aからの時計回りの角度θは、110°〜160°とした。この角度はこの範囲に限るものではなく、気流が滑らかに傾斜面21に沿って滑らかに流れるような角度であればよい。
このように、逆吸いの起こりやすいスタビライザー9側(Ga:図15、図18参照)では、衝突壁18の対向面18aを回転軸線方向AXに逆吸いを遮断するのに必要なだけ十分長くすることで、回転軸線方向AXに必要な幅(回転軸線方向AXの長さ)で淀み圧を形成し、室内空気の吹出口からの進入を遮断して逆吸いを防止できる。さらに逆吸いの起こりにくいリアガイド部10側(Gb:図15、図18参照)では、対向面18aの回転軸線方向AXの長さを、スタビライザー9側(Ga)よりも短くすることで、ファン延長部8aから吹き出した吹出気流の一部が吹出口3に流れて送風気流になる。対向面18aの回転軸線方向AXの長さを、スタビライザー側端部19aからリアガイド部側端部19bまで、スタビライザー側端部19aと同じ長さLU19aとした構成と比較すると、図22に示すように傾斜面21を形成すれば、同じファン回転数に対して風量が増加し、消費電力を低減でき省エネルギー化を図ることができる。さらに、ファン延長部8aから吹き出した全ての吹出気流が対向面18aに衝突しないので、気流の衝突に伴う騒音を低減することができる。
また、ファン8に向かい合う対向面18aの内側に接続される面を傾斜面21とすることで、ファン延長部8aから吹き出される空気の一部が衝突壁18に当たっても、その空気は傾斜面21に沿って流れ、図20(d)のように剥離が形成されることなく滑らかに吹出口3に流れる。これにより、騒音を低減でき、空気の通風抵抗が低減されるので、風速(風量)が低下するのを防止でき、低電力化を図ることができる。
なお、スタビライザー側端部19aから減少開始位置19cまでの対向面18aについても、ファン内側縁部Hbに傾斜面21を設けてもよい。この部分は、スタビライザー9に近い部分であり逆吸いが起こりやすいので、十分な幅(回転軸線方向AXの長さ)で淀み圧を形成するのが好ましいが、対向面18aと傾斜面21とのなす角度θが、例えば180°に近い緩やかに傾斜する傾斜面21を設けてもよい。傾斜面21を設けることで、図20(d)のような乱れの発生を低減できる。
また、実施の形態2では図22に示すように、衝突壁18の底面18bの回転軸線方向AXの長さLDを、スタビライザー側端部19aからリアガイド部側端部19bまで、同じとした。即ち、ファン8から吹き出した吹出気流が通る吹出風路11の左右方向の長さは吹出口3まで略同一である。このため、圧力損失や乱れも少なく、安定した吹出気流が得られる。対向面18aの回転軸線方向AXの長さが短い位置、例えば位置20a、19bでも底面は安定した構成である。また、リアガイド部側端部19bにおいて、対向面18aの回転軸線方向AXのファン端板12bからの長さLU19bをゼロに構成することもできる。このように、逆吸いが起こる可能性の低い部分で対向面18aをなくして、端部連14aのファン延長部8aから吹出気流の全てを送風気流としてもよい。これにより、リアガイド部側端部19bで対向面18aが形成される場合よりも風量を増加させることができ、消費電力を低減できる。
なお、図24では減少開始位置19cからリアガイド部側端部19bに至るまで、対向面比(LU/LD)を徐々に減少するように変化させたが、これに限るものではない。例えば、階段状に変化させてもよい。また、説明図中の傾斜面21は平面としたが、平面に限らず左右方向の内側、即ち吹出風路11側に凸な曲面であってもよい。
以上のように、実施の形態2でも実施の形態1と同様、衝突壁18の対向面18aの回転軸線方向AXの長さ(LU)について、リアガイド部10側に位置するリアガイド部側端部19bの回転軸線方向AXの長さ(LU19b)が、スタビライザー9側に位置するスタビライザー側端部19aの回転軸線方向AXの長さ(LU19a)よりも短く構成されていることにより、吹出口3の両端部付近では、ファン8の端部連14aからの吹出気流を衝突壁18に衝突させて大気圧より高い淀み圧を作るので、吹出口3の左右方向の両端部において室内空気が室内機1の外部から吹出口3を通って室内機1の内部に進入する逆吸いを防止できる。このため、逆吸いの発生によって生じていたファン性能の低下や騒音の増加や露飛びなどを防止できる。さらに、渦F1の発生するスタビライザー9付近の気流に対しては、逆吸いを防止するのに必要な幅(回転軸線方向AXの長さ)の淀み圧を衝突領域E3に形成し、渦F1から遠い気流に対しては渦F1の発生する付近の気流に対する淀み圧よりも狭い幅で淀み圧を形成することで、逆吸いを防止でき、且つ吹出気流が衝突壁18に衝突することによるエネルギー損失の増加を抑制して、低電力化及び低騒音化を実現することができる。
さらに、貫流ファン7の両端に設けられている円板形状のファン端板12a、12bに垂直な平面で衝突壁18を切断した断面にて、衝突壁18は多角形状を成し、対向面18a、ファン延長部8aと反対側で対向面18aに対向する底面18b、左右方向の内側で対向面18aと底面18bとを結ぶ衝突壁側面18cを有し、回転軸線方向AXにおけるファン端板12a、12bからの対向面18aの長さをLU、回転軸線方向AXにおけるファン端板12a、12bからの底面18bの長さをLDとした場合に、LU/LDで求まる対向面比について、リアガイド部側端部19bの対向面比(LU19b/LD19b)をスタビライザー側端部19aの対向面比(LU19a/LD19a(=1))未満としたので、逆吸いを防止できる共に送風気流を確保し、特に傾斜面21によって気流を滑らかに吹出口3に導くことで、気流衝突によるエネルギー損失を低減して低電力化でき、さらに衝突壁18との衝突音を低減できる効果がある。
また、貫流ファン8の両端に設けられている円板形状のファン端板12a、12bに垂直な平面で衝突壁18を切断した断面にて、左右方向の内側で対向面18aに接続される面は、対向面18aに対して鈍角で交わる傾斜面で構成されることにより、衝突壁18のファン内側縁部Hbを直角に交わる角部とした場合と比較して、角部付近で剥離や乱れが生じるのを抑制でき、低電力化及び低騒音化を図ることができる効果がある。
実施の形態3.
実施の形態3でも、衝突壁18の対向面18aの回転軸線方向AXの長さについて、リアガイド部側端部19bを、スタビライザー側端部19aよりも短くする構成は、実施の形態1、2と同様である。実施の形態1では、衝突壁18の形状において、対向面18aと底面18bの長さを同じとし、対向面18aと底面18bを接続する衝突壁側面18cと対向面18aとの成す角度θ=90°の場合について述べた。また、実施の形態2では、スタビライザー側端部19aからリアガイド部側端部19bに亘って、底面18bのファン端板12bからの長さ(LD)を、スタビライザー側端部19aと同じ長さとし、対向面18aの長さと底面18bとの長さの差を、ファン内側縁部Hbに傾斜面21を設けて滑らかに流れる気流を形成した。実施の形態3では、底面18bのファン端板12bからの長さを、奥行き方向AYでスタビライザー側端部19a(または減少開始位置19c)からリアガイド部側端部19bまで、変化させる。ここで、底面18bの長さは、その位置の対向面18aの長さとは異なる長さとする。ただし、スタビライザー側端部19a(または減少開始位置19c)で底面18bのファン端板12bからの長さを最も長くし、リアガイド部側端部19bで底面18bのファン端板12bからの長さを最も短くする。
図25は、衝突壁18をファン端板12bに垂直な平面で切断したときの断面形状を示す説明図であり、図25(a)はスタビライザー側端部19a及び減少開始位置19c、図25(b)は位置20a、図25(c)はリアガイド部側端部19bにおける断面である。また、図26は、実施の形態3に係り、衝突壁18を示す上面図である。図に示すように、スタビライザー側端部19aからリアガイド部側端部19bに亘って、衝突壁18の底面18bのファン端板12bから衝突壁側面18cまでの長さ(LD)を変化させて構成し、少なくともスタビライザー側端部19a及び減少開始位置19cにおける長さ(LD19a)>リアガイド部側端部19bにおける長さ(LD19b)とする。衝突壁18のファン8と向かい合う対向面18aは、実施の形態1と同様、スタビライザー側端部19aにおける回転軸線方向AXのファン端板12bからの長さ(LU19a)>リアガイド部側端部19bにおける回転軸線方向AXのファン端板12bからの長さ(LU19b)である。
さらにこの構成では、底面18bの長さ(LD)に対する対向面18aの長さ(LU)である対向面比(LU/LD)を一定とする。従って、衝突壁18の各位置における対向面比(LU/LD)について、式(2)の関係を満足している。
LU19a/LD19a(=1)
=LU19c/LD19c
> LU20a/LD20a
= LU19b/LD19b ・・・(2)
また、図27は、式(2)を満足する構成の一例を示し、縦軸は衝突壁18の底面18bの長さに対する対向面18aの長さである対向面比(LU/LD)に関し、回転軸線方向AXのファン端板12bからの対向面長さ(LU)/底面長さ(LD)を示すグラフである。横軸は奥行き方向AYを示す。この対向面比(LU/LD)を満足するように、スタビライザー9側からリアガイド部10側の奥行き方向AYの各位置における対向面18aの長さ及び底面18bの長さを設定する。さらに、対向面18aの長さと底面18bの長さの差の範囲内で、対向面18aの回転軸線方向AXの内側に接続する面を傾斜面21とする。例えば、傾斜面21が減少開始位置19cからリアガイド部側端部19bのファン内側縁部Hbに設けられている。この傾斜面21は対向面18aに対してθ>90°の鈍角で交わる面とする。この構成例では、傾斜面21を設けた位置で、対向面比LU/LDを一定とし、例えば対向面比LU/LD=0.8とする。スタビライザー側端部19aから減少開始位置19cまでは、LU/LD=1とし、減少開始位置19cからリアガイド部側端部19bまでは、LU/LD=0.8として一定とする。ただし、成形上、減少開始位置19cからすぐに所定の対向面比にすることは困難である。減少開始位置19cのファン内側縁部Hbに形成される角部と傾斜面21との境界は、奥行き方向AYでリアガイド部10側にある程度の長さが必要であり、自然に滑らかに形成するのが好ましい。
図11で示したように、ファン内部の循環渦F1に近い部分に逆吸いが起こりやすい。実施の形態3では、循環渦F1から遠いリアガイド部側端部19bでは、底面18bの回転軸線方向AXの長さ(LD19b)をスタビライザー側端部19aの長さ(LD19a)よりも短くすることを特徴とする。例えば、実施の形態2の図22(b)、(c)と図25(b)、(c)とをそれぞれ比較すると、図25(b)、(c)では、端部連14aのファン延長部8aから吹き出した吹出気流のうち、図22(b)、(c)の構成よりも衝突壁18の底面18bの長さを短くした部分に流れる気流は、衝突壁18に衝突することなく、衝突壁側面18cの内側を通って吹出口3に滑らかに導かれる。即ち、底面18bの回転軸線方向AXの長さを短くした分だけ、吹出領域E2の吹出風路11の回転軸線方向AXの長さが長くなる。このため、通風抵抗を図22の構成よりも小さくでき、風量を増加できる。入力が同一の場合を比較すると、風量を多くでき、同一風量で比較すると、入力を小さくできるので、消費電力を低減して、省エネルギー化できる。また、衝突壁18に衝突する気流が少なくなるので、衝突音も低減できる。
ここで、衝突壁18の底面18bの回転軸線方向AXの長さについて、説明する。この底面18bの長さは、長すぎると吹出風路11の回転軸線方向AXの長さを短くし、吹出気流の風量を低下させることになる。一方、底面18bの長さは、短すぎると吹出風路11の回転軸線方向AXの長さを必要以上に長くし、吹出気流の速度が低下して吹出口3で十分な速度の風速が得られなくなる。吹出口3で十分な風速が得られない場合には、やはり、室内機1本体の外側から吹出口3を通って吹出領域E2に室内空気が逆流する恐れがある。衝突壁18によって大気圧よりも高い淀み圧が対向面18aに形成されており、逆流した室内空気が空間Sに入り込むことは防止されるが、吹出口3から吹出領域E2に逆流した室内空気が淀み圧によって再び室内機1外に流れ出るとしても、損失を招くことになる。このため、最も低い回転数で運転する時の風速で、吹出口3で逆吸いが起こらない程度の風速が得られるように、衝突壁18のスタビライザー側端部19aにおける底面18bの回転軸線方向AXの長さを決定する。このように衝突壁18のスタビライザー側端部19aを設ければ、室内機1の運転中、即ちファン8の回転時には、吹出口3で十分な風速を得ることができる。即ち、逆吸いの発生しやすいスタビライザー側端部19aにおいて、ファン8と衝突壁18との間に大気圧P0よりも大きい淀み圧P1aを形成すると共に、衝突壁側面18c付近で十分な風速の気流を吹き出すことで、確実に逆吸いを防止できる。
実施の形態3では、減少開始位置19cからリアガイド部側端部19bのファン内側縁部Hbに傾斜面21が設けられている。この傾斜面21によって、角部に流れる気流が原因となる渦F2(図20(d)参照)の発生を抑制し、通風抵抗を減少できる。
なお、位置20aにおける対向面比(LD20a/LD20a)とリアガイド部側端部19bにおける対向面比(LU19b/LD19b)を同一とし、LU20a/LD20a=LU19b/LD19bを一定としたが、これに限るものではない。リアガイド部側端部19bの対向面比(LU19b/LD19b)を、スタビライザー側端部19aの対向面比(LU19a/LD19a)未満とすればよい。LU19a/LD19a>LU19b/LD19bの構成の一例を図28に示す。図28は、実施の形態3に係る衝突壁18を示す上面図であり、例えば、スタビライザー側端部19aの対向面比(LU19a/LD19a)=1、リアガイド部側端部19bの対向面比(LU19b/LD19b)=0.25とする。底面の長さ(LD)に対する対向面の長さ(LU)の対向面比を、スタビライザー9側よりもリアガイド部10側で小さくなるように構成するということは、同一底面の長さで比較すると、LU19a/LD19a=LU19b/LD19bとしたときよりもリアガイド部10側で対向面18aの長さを短くできる。逆吸いが起こりにくいリアガイド部側端部19bで、傾斜面21を通って吹出風路11に流れる気流の割合を、衝突壁18の対向面18aに衝突する気流の割合よりも多くでき、ファン8から吹き出した気流が衝突壁18に衝突することで生じるエネルギー損失及び衝突音をさらに低減できる。
図29(a)、(b)はそれぞれ実施の形態3に係る衝突壁18の他の構成例を示すものであり、衝突壁18のスタビライザー側端部19a(減少開始位置19cと同様)のファン端板12bに垂直な断面を示す。この構成例は、対向面18aの長さLU19a>底面18bの長さLD19aとすることを特徴とする。リアガイド部側端部19bや、その間の位置20aにおける衝突壁18の形状は、図22や図25で示した形状と同様とする。この構成では、衝突壁18の各位置における対向面比(LU/LD)について、式(3)の関係を満足している。
LU19a/LD19a(>1)
> LU20a/LD20a
≧ LU19b/LD19b ・・・(3)
衝突壁18において、ファン8との対向面18aは図14に示すように、衝突領域E3に淀み圧P1aを形成して、室内機1の外部から吹出口3を通って空間Sに室内空気が逆流するのを防ぐ。ファン8の内部に発生する渦F1によって最も低圧になる部分であるスタビライザー側端部19a及びこの近傍の衝突壁18、例えばスタビライザー側端部19aから減少開始位置19cまでの衝突壁は、逆吸いを防止する淀み圧を確実に形成する形状とする。図29(a)は、対向面18aの回転軸線方向AXの長さ(LU19a)を長く構成したので、ファン8の両端部に逆吸いを防止するのに必要な幅の淀み圧を形成できる。
一方、底面18bのファン端板12bからの回転軸線方向AXの長さを、対向面18aよりも短くしたので、吹出風路11の左右方向(回転軸線方向AX)の長さが長くなる。吹出風路11の面積が大きくなって吹出気流の風量が多くなる。ただし、前述のように、逆吸いが起こりやすいスタビライザー側端部19a近傍において、底面18bの長さ(LD19a)は、ファン8の回転数が低いときでも逆吸いが起こらない程度の風速が得られる長さとする。
なお、実施の形態1、2と同様、リアガイド部側端部19bに近い部分は、逆吸いが起こりにくいので、対向面18aの回転軸線方向AXの長さをスタビライザー側端部19aよりも短くすることで、気流の一部によってこの位置で逆吸い防止に必要な淀み圧を形成すると共に、気流の他部を送風気流とし、エネルギー損失及び衝突音を低減できる。
図29(b)は、図29(a)の対向面18aの回転軸線方向AXで内側に接続される面を傾斜面21とする構成である。図29(b)の構成では、衝突壁18の対向面18aのファン内側縁部Hbに形成される傾斜面21によって、対向面18aの角部に流れる気流は、傾斜面21に沿って滑らかに流れて下流の吹出口3に導かれる。このため、図20(d)に示した乱れが生じるのを抑制できる。
以上のように、貫流ファン8の両端に設けられている円板形状のファン端板12a、12bに垂直な平面で衝突壁18を切断した断面にて、衝突壁18は多角形状を成し、対向面18a、ファン延長部8aと反対側で対向面18aに対向する底面18b、左右方向の内側で対向面18aと底面18bとを結ぶ衝突壁側面18cを有し、回転軸線方向AXにおけるファン端板12a、12bからの対向面18aの長さをLU、回転軸線方向AXにファン端板12a、12bからの底面18bの長さをLDとした場合に、LU/LDで求まる対向面比について、リアガイド部側端部19bの対向面比(LU19b/LD19b)がスタビライザー側端部19aの対向面比(LU19a/LD19a(≧1))未満であることにより、逆吸いを防止できる共に送風気流を確保し、特に対向面18aのファン内側縁部Hbの傾斜面21によって気流を滑らかに吹出口3に導くことで、逆吸いを防止できると共に気流衝突によるエネルギー損失を低減して消費電力を低くできる効果がある。
また、貫流ファン8の両端に設けられている円板形状のファン端板12a、12bに垂直な平面で衝突壁18を切断した断面にて、左右方向の内側で対向面18aに接続される面は、対向面18aに対して鈍角で交わる傾斜面で構成されることにより、衝突壁18のファン内側縁部Hbを直角に交わる角部とした場合と比較して、角部付近で剥離や乱れが生じるのを抑制でき、低電力化及び低騒音化を図ることができる効果がある。
実施の形態4.
以下、本発明の実施の形態4について、図に基づいて説明する。実施の形態4では、実施の形態1における図20(a)、(b)や、実施の形態2における図22(b)、(c)や、実施の形態3における図25(b)、(c)に示すように、左右方向(回転軸線方向AX)の内側で衝突壁18の対向面18aに接続される面が、対向面18aに対して鈍角で交わる傾斜面21を有する構成に関する。衝突壁18の対向面18aと傾斜面21との成す角度を角度θとし、この角度θについて説明する。ここで、室内機1の右端部に設ける衝突壁18の場合、対向面18aから時計回りで傾斜面21と成す角度を角度θとする。室内機1の左端部に設ける衝突壁18の場合には、右端部の衝突壁18を左右反転した形状になるので、対向面18aから反時計回りで傾斜面21と成す角度を角度θとする。
図30は位置20aにおける衝突壁18を示す断面図(図30(a))と角度θを説明する説明図(図30(b))である。また、図31はリアガイド部側端部19bにおける衝突壁18を示す断面図(図31(a))と角度θを説明する説明図(図31(b))である。位置20aにおける対向面18aと傾斜面21との成す角度θ(20a)>リアガイド部側端部19bにおける対向面18aと傾斜面21との成す角度θ(19b)とする。例えば、角度θ(20a)を150℃、角度θ(19b)を120°とする。ここで、対向面18aの奥行き方向AYの位置について、図30における位置は、スタビライザー側端部19aとリアガイド部側端部19b間で、図31に示すリアガイド部側端部19bよりもスタビライザー9側の位置であればどこでもよく、ここでは例えば位置20aの場合について説明する。
位置20aにおいて、図30(b)に示すように、気流は衝突壁18の対向面18aに垂直に流入するのであるが、傾斜面21に流れてくる気流Bは、傾斜面21では傾斜面21に垂直な成分(B1)と、傾斜面21に平行な成分(B2)に分解される。傾斜面21に平行な成分(B2)は、傾斜面21に沿って衝突壁側面18cから吹出口3に流れていく。一方、傾斜面21に垂直な成分(B1)は、傾斜面21に衝突して風速のエネルギーが圧力のエネルギーに変換され、傾斜面21に淀み圧を形成し、傾斜面21に続く対向面18aの淀み圧の形成を補助するように作用する。
図31(b)も同様であり、傾斜面21に流れる気流Bは、傾斜面21では傾斜面に垂直な成分(B1)と、傾斜面に平行な成分(B2)に分解される。傾斜面に平行な成分(B2)は、傾斜面21に沿って衝突壁側面18cに流れていく。一方、傾斜面に垂直な成分(B1)は、傾斜面21と衝突して傾斜面21との間で淀み圧を形成しようとする。
角度θ(20a)>角度θ(19b)としているので、気流B(20a)と気流B(19b)とが同一の大きさの場合、傾斜面21(20a)と傾斜面21(19b)の傾斜面に垂直な気流は、成分B1(20a)>成分B1(19b)である。即ち、逆吸いの起こりやすいスタビライザー9側では、リアガイド部側端部19bよりも大きな淀み圧が傾斜面21に形成され、確実に逆吸いを防止できる。
一方、角度θ(20a)>角度θ(19b)としているので、気流B(20a)と気流B(19b)とが同一の大きさの場合、傾斜面21(20a)と傾斜面21(19b)の傾斜面に平行な気流は、成分B2(20a)<成分B2(19b)である。即ち、逆吸いの起こりにくく低い淀み圧で十分であるリアガイド部側端部19bでは、スタビライザー側端部19aよりも送風気流に作用する成分B2が大きくなる。従って、角度θをスタビライザー側端部19aと同じに構成した場合よりも、気流が衝突壁18に衝突することによるエネルギー損失の増加を抑制でき、消費電力の抑制を図ることができる。また、衝突による騒音も抑制できる。
図32は、横軸に奥行き方向の位置、縦軸に傾斜面21の角度θを示すグラフである。スタビライザー側端部19aから減少開始位置19cは傾斜部がないので、スタビライザー側端部19aにおける角度θは180°であり、リアガイド部側端部19bにおける角度θは、120°とし、その間の位置、位置20a、位置20bでは、略直線状に滑らかに角度θを減少する。角度θが小さくなるにつれて、傾斜面21との間にできる淀み圧は減少する。即ち、奥行き方向AYの位置がリアガイド部10側(リアガイド部側端部19b)に進むにつれて、送風気流が多くなるので、逆吸いが起こりにくい位置で風速のエネルギーはそのまま送風に働く。これと同時に、衝突壁18と衝突する気流が減少するので、気流衝突によるエネルギー損失及び衝突音を低減できる。
一方、奥行き方向AYの位置がスラビライザー9側(スタビライザー側端部19a)に進むにつれて、送風気流が減少して衝突壁18と衝突する気流が増加する。このため、逆吸いの起こりやすいスタビライザー9側で逆吸いを確実に防止できる。
図32は一例であり、これに限るものではない。即ち、角度θを徐々に直線状に変化させなくてもよい。例えば階段状や曲線状に変化させてもよい。
なお、このファン内側縁部Hbに傾斜面21を有する構成は、実施の形態2、実施の形態3で示した全てに適用されるものである。また、傾斜面21が形成されていなくても、衝突壁18の対向面18aと衝突壁側面18cが90°より大きい角度を成す形状の場合に適用される。図9に示すように、実際にはリアガイド部側端部19bでは、吹出風路11を形成するリアガイド部10とファン8の外周との距離が近いので、リアガイド部10とファン8の外周との間の吹出風路11に形成される衝突壁側面18cの長さは短くなる。即ち、図31(a)のように、角度θの小さい傾斜面21を構成しようとすると、衝突壁側面18cに接続する前に底面18bの位置になる可能性が高い。この場合には、衝突壁側面18cを傾斜面21と見なしてもよい。
これまでの説明では、スタビライザー側端部19aから減少開始位置19cまでは、ファン内側縁部Hbで傾斜を設けない形状について述べてきた。ただし、スタビライザー側端部19aのファン内側縁部Hbを90°にしていることで、この角部が気流の乱れの大きな原因となる場合には、この角部に傾斜部を設けてもよい。衝突壁18のファン8との対向面18aの回転軸線方向AXに十分な長さがあれば、対向面18aのファン内側縁部Hbに傾斜を設けても、対向面18aと傾斜面に衝突する気流で、逆吸いを防止できる十分な淀み圧を形成できる。
また、スタビライザー側端部19aから減少開始位置19cまでは、対向面18aのファン内側縁部Hbの角部を曲面で形成することで、気流に対して滑らかな面とし、角部による気流の乱れを抑制してもよい。実際に射出成型などでリアガイド部10や側壁30や衝突壁18を成型する際には、ほとんど全ての角部が若干丸みを有する形状で構成される。
以上のように、貫流ファン8の両端に設けられている円板形状のファン端板12a、12bに垂直な平面で衝突壁18を切断した断面にて、左右方向の内側で対向面18aに接続される面は、対向面18aに対して鈍角で交わる傾斜面で構成されることにより、衝突壁18のファン内側縁部Hbを直角に交わる角部とした場合と比較して、角部付近で剥離や乱れが生じるのを抑制でき、低電力化及び低騒音化を図ることができる効果がある。
また、傾斜面21と対向面18aとの間の角度θについて、リアガイド部10側に設けられる傾斜面21の方が、スタビライザー9側に設けられる傾斜面21より小さく構成されることにより、スタビライザー側端部19aでは逆吸いを防止するのに必要な幅(回転軸線方向AXの長さ)で淀み圧を形成し、リアガイド部側端部19bでは淀み圧を形成すると共に送風気流を多くして風量を多くし、逆吸いを防止できると共に低電力化及び低騒音化を図ることができる効果がある。
なお、実施の形態1〜実施の形態4において、スタビライザー側端部19aから減少開始位置19cまでは、対向面18aの回転軸線方向AXの長さを一定としたが、これに限るものではない。スタビライザー側端部19aで逆吸いを防止できる十分な淀み圧が得られ、この部分からリアガイド部側端部19bに向かった位置20a付近でも十分な淀み圧が得られる場合には、減少開始位置19cを設けずに、スタビライザー側端部19aから対向面18a回転軸線方向AXの長さを減少させてもよい。