以下、実施形態に係る線材について図面を参照して説明する。以下の説明において、線材とは、断面形状が円形、略円形、楕円形、多角形、異形等である長尺物を意味する。また、この線材として、ばね材料や電線等の金属製を想定するが、光ファイバ等のガラス繊維や、釣り糸等のナイロン製線や、その他樹脂製であってもよい。
実施形態に係る線材は、研磨材とともに弾性体に押し付けられるとともに当該線材自体又は弾性体の少なくともいずれか一方が移動されることにより長手方向に平行な溝が複数付与された線材である。該線材は、有害な凹凸が低減され、一定方向の微細な溝が連続的に付与されているので、疲労強度が向上されている。
また、該線材は、線材径が0.6〜2.8mmであり、溝の平均深さが線材径の1/1000未満で且つ10μm未満であってもよい。ここで、線材径とは、線材の長手方向に直交する断面において、最も幅が広い部分の長さを意味するものとする。線材径がφ0.6mmを下回ると積極的に付与される長手方向の平行な溝が疲労破壊の破壊起点となってしまい効果が得られにくいため、それより太くしてもよい。また、線材径が太くなると、後述する線材加工装置による加工が「弾性体の押し付けによる」であることを考慮すると、加工抵抗が増大し、装置の巨大化が必要となってしまう。この点を考慮して、適用される線材の最大径を例えばφ2.8mmとすることで適正な装置で適正な加工を可能としてもよい。尚、上述の線材径の範囲に換えて、断面積の範囲を規定してもよい。すなわち、該線材は、断面積が0.25〜8.0mm2であり、溝の平均深さが線材径の1/1000未満で且つ10μm未満であるように構成しても同様の効果が得られる。また、溝の平均深さは、JISB0601−1994で示される十点平均粗さを意味するものとする。
また、研磨材の径の最頻値が100〜300μmであり、この研磨材により該線材が形成されてもよい。尚、研磨材の径は、JISR6010に準じたふるい網を用いた方法で得られた径である。また、「最頻値」とは、粒度分布のなかでピークとなる値であり、標準ふるいJISZ8801の開き目による。100μm未満の小さい研磨材を使用すると線材表面の表面粗さは低減できるものの研磨能力が劣るため100μm以上の研磨材を用いてもよい。また、300μmを越える研摩材を使用すると表面粗さが大きくなり新たな破壊起点を生成する場合があるため300μm以下の研磨材を用いてもよい。また、研磨材の平均径は、125〜250μm程度である。
また、研磨材が、シリコンカーバイド、アルミナ、ガーネット、ダイヤモンドのうちの少なくとも一を含んでもよい。
また、当該線材の硬度が、10〜68HRc(ロックウェル硬さのCスケール)であり、研磨材の硬度が当該線材の硬度より大きくてもよい。HRc10未満の軟らかい線材は、後述の線材加工装置を用いた弾性体の押し付けによる方法では、加工抵抗により断線の恐れがある。また、HRc68を超える線材は硬すぎて、後述の線材加工装置を用いた加工方法では効果をもたらす面を生成することができない場合がある。尚、この範囲は、ビッカース硬さのHv190〜940に相当する。
また、当該線材の材質が、高炭素鋼、ステンレス、銅合金、チタン合金、タングステン合金のうちのいずれか一であってもよい。
また、当該線材の表面における研磨材により形成された溝部分の面積が当該線材の表面の面積の全体に対して75%以上であってもよい。「当該線材の表面における研磨材により形成された溝部分の面積が当該線材の表面の面積の全体に対して75%以上である」とは、研磨剤により溝形成が行われずに、傷が残された領域が全領域に対して25%未満となった状態を意味するものとする。例えば、図19(a)のような元(ダイス後加工前)の表面形状に対して加工後の表面形状が図19(b)となったとする。図19(b)中、Grで示された部分が、研磨材により加工処理された部分、すなわち溝部分を示す。一方、Unで示された部分が、未加工部分、すなわち残存した傷部分を示す。換言すると、上述の記載は、Grの総和を、Gr及びUnの総和で除算した値(Gr/(Gr+Un))が75%以上であることを意味している。以下、値(Gr/(Gr+Un))で表される「線材の表面における研磨材により形成された溝部分の面積の全表面積に対する割合」のことを「カバー率」ともいう。尚、図19(b)は、カバー率が50%程度の状態であるので、実際には、さらに加工が進められ、Grの領域が増えた適正な状態とされる。
以上、実施形態に係る線材は、線材の表面に様々な形状をなし破壊起点となりうる有害な窪みが低減されていることにより、疲労強度が向上されるという利点がある。さらに、線材の長手方向に線材円周の75%以上の領域に連続状の溝が付与された場合には、線材のねじりに対して有害な円周方向の窪みがさらに低減され、疲労強度がさらに向上されるという利点がある。
さらに、線材の長手方向に連続的に付与される一様な溝は、その形状から、線材の摩擦係数を小さくすることができる。そのため、線材をコイリング等により加工する際、加工抵抗が小さく抑えられ、ツールチップの焼き付きを抑制することができる等の効果をもたらす。
また、線材が一様な方向で加工されていることにより、表面の極近傍層には、一定方向の塑性流動層が形成されている。そのため、線材の材質によっては、耐食性を向上するという効果をもたらす。
ところで、線材の長手方向に連続的に付与される一様な溝は、線材円周の全体の領域に付与されているほど、その効果を発揮できる。しかし、該溝を線材円周の全体の領域(面積)に付与した場合には加工工数が増大してしまう点と、線材円周の75%程度の領域に該溝が付与された状態とそれ以上の割合の領域に該溝が付与された状態とを比較した場合の効果が漸近しつつある点とを考慮して適正な状態とされている。すなわち、線材の長手方向に連続状の溝を線材円周の75%以上の領域に付与した場合には、適正な加工工数で十分な疲労強度を得る等の効果がある。
また、線材の長手方向に連続状の溝は、深すぎると返って破壊起点となる場合があるため、溝深さが線材径の1/1000未満としてもよいし、また、直径4mm以上の太い線材においては、溝深さが10μm未満としてもよい。これにより、適正な疲労強度を得ることができる。
また、溝付与に用いられる弾性体は、例えば、ベルト状やローラ状をなし、回転により線材との接触部を変位させる構成としてもよい。かかる構成により、弾性体自体の消耗が分散され有利である。尚、弾性体は、ブロック状のものを往復移動させるようにしてもよい。
また、溝付与に用いられる研磨材は、例えば、アルミナ、セラミックス、ガラス粉、シリカ粉、金属粉等の単体又は混合物であればよい。また、研磨材は、線材の硬度より硬いものを採用してもよい。尚、研磨材は、表面を切削加工することができるものであれば良い。
以上のように、研磨材とともに弾性体に押し付けられるとともに当該線材自体又は弾性体の少なくともいずれか一方が移動されることにより形成された線材によれば、線材表面に存在する有害な凹凸が低減され、線材の疲労強度を向上することを実現することができる。例えば線材径が0.6〜2.8mmで、長手方向に複数形成された平行な溝を有し、該溝の平均深さが線材径の1/1000未満で且つ10μm未満である線材は、線材表面に存在する有害な凹凸が低減され、線材の疲労強度を向上することを実現することができる。そして、この線材を用いたコイリング部材等の各種部品の寿命を長くすることを実現することができる。
次に、上述した線材を製造する方法について説明する。実施形態に係る線材製造方法は、表面に傷を有する線材の表面を加工して疲労強度が向上された線材を製造する線材製造方法である。当該方法において、線材を研磨材とともに弾性体に押し付け、線材又は弾性体の少なくともいずれか一方を線材の長手方向に移動させることにより、線材に長手方向に平行な溝を付与する。尚、上述の加工前に、線材径の調整のためダイスを通過されており、換言すると、上述の「表面に傷を有する線材」は、ダイス通過後の線材である。
また、該線材製造方法において、弾性体は、線材を挟持するように少なくとも一対設けられ、線材及び弾性体間の長手方向の相対速度が40m/分以上とされていてもよい。
以上、実施形態に係る線材製造方法によれば、得られる線材の表面に存在する有害な凹凸が低減され、線材の疲労強度を向上することを実現することができる。そして、この線材を用いたコイリング部材等の各種部品の寿命を長くすることを実現することができる。該方法によれば、パウダ(研磨材)を用いた機械的な加工で表面全体を均一に加工された線材を得ることができる。該方法は、酸洗等に用いる化学薬品を使用しないため環境負荷を大幅に低減することができる。該方法においても、上述した線材で説明したのと同様の特徴的な構成は有効であり、同様の効果が得られる。
さらに、該線材製造方法は、走行される線材の表面を加工する線材加工装置1,101を用いて、表面に傷を有する線材から表面を加工して疲労強度が向上された線材を製造する点に特徴を有する。この線材加工装置1については、図1〜図6を用いて説明する。また、線材加工装置101については、図7〜図14を用いて後述する。
最初に、実施形態に係る線材製造方法に用いるのに適した図1〜図6に示す線材加工装置1について説明する。線材加工装置1は、少なくとも二対以上設けられ、それぞれが円筒状の摺接面を有し、且つ、走行される前記線材に対して回転されながら該摺接面を摺接させるとともに、それぞれの対の間に線材を挟持可能である回転摺接体(例えば弾性ローラ3,4)と、対をなす回転摺接体を相互に近接及び離間する方向に駆動する近接離間駆動手段(例えば駆動手段5)とを有する。
弾性ローラ3,4は、図1に示すように、前後方向へ延びる回転軸3a,4aを相互に平行させ相対向して軸支されて対を成し、二対設けられている。尚、三対以上設けられるようにしてもよい。弾性ローラ3,4は、それぞれの対が上下方向へ適宜の間隔をおいて配置され、長尺物である線材33を挟持可能であり、且つ線材33の移動方向または反対方向へ回転可能とされている。駆動手段5は、弾性ローラ3、4を相互に接近・離隔させるものであり、ここでは4箇所に設けられている。
また、線材加工装置1は、回転摺接体(弾性ローラ3,4)を回転駆動させる回転駆動手段(以下、「回転手段6」という。)と、研磨材投入手段(図示せず)と、加湿手段7とを有する。回転手段6は、弾性ローラ3、4を回転させる。研磨材投入手段は、対をなす弾性ローラ3間、又は対をなす弾性ローラ4間に粉粒体状の研磨材を投入する。加湿手段7は、図2に示すように配置され、弾性ローラ3、4を加湿する。尚、図1〜図3に示す線材加工装置1は、変形例として、スクレーパ手段を設けるように構成してもよい。具体的には、図4〜図6に示すような複数のスクレーパ手段21を設けるようにしてもよい。この複数のスクレーパ手段21は、弾性ローラ3、4のそれぞれの外側に配設され、弾性ローラ3,4に付着した異物を剥離可能とされている。
駆動手段5は、図2に示すように、回転軸3a,4aに環装された軸受部材8,9と、軸受部材8,9にリンク機構10,11を介して連結された横向きのシリンダ12,13とを有している。シリンダ12、13の各後端側は、箱体状の支持フレーム14の左右外側面に装着されたブラケット15の上下両端に上下動自在にピン支持されている。支持フレーム14は、固定されている。軸受部材8、9は、上下のもの同士がリンク機構16を介して連結されている。
図3に示すように、回転軸3a,4aの後部には、回転手段6の一部を構成するギヤユニットが装着されている。ギヤユニットは、回転軸3a,4aにそれぞれ嵌着されたギヤ17、18と、ギヤ17、18間にそれぞれ配置されたピニオン19と、出力軸に一方のピニオン19が嵌着された電動機(図示せず)とを有している。ピニオン19は噛み合っていて、電動機の駆動により弾性ローラ3、4が所定方向へ回転するようになっている。
また、図2に示すように、回転軸3a,4aの後端には、支持フレーム14に装着された加湿手段7が連結されている。加湿手段7は、弾性ローラ3、4に貫通するよう設けられた多数の細孔と、回転軸3a,4aに形成され、一端が細孔に連通し、他端が導管20を介して液体供給源35に接続する貫通孔(図示せず)とを有している。
ここで、変形例として図4〜図6に示すようなスクレーパ手段を設けた場合について説明する。スクレーパ手段21には、図4及び図5に示すように、弾性ローラ3、4に平行するとともにこれらと同一方向へ指向する段付状の支持軸22が設けられている。支持軸22は、大径の後部が固定配設されたガイド部材24に係合される。スクレーパ手段21は、弾性ローラ3、4のそれぞれに接近・離隔するようにされる。また、支持軸22の前部には、環状のスクレーパ取付部材25が設けられている。スクレーパ取付部材25は、内蔵されたカムクラッチ(図示せず)を介して矢印方向にのみ回転可能にして嵌着されている。スクレーパ取付部材25の外面には、複数のスクレーパ本体26が等間隔で取り付けられている。
また、支持軸22の後端には、図5に示すように、連結軸27が支持軸22と同一方向へ指向されるとともに、これと同心して固定されている。連結軸27の他端には、図6に示すようにL字状を成すリンク28の一端が回動自在にピン連結されている。リンク28の屈曲位置は、固定配設された支持部材29に枢設されている。リンク28の他端には、固定されたブラケット30(図4参照)に枢設されたシリンダ31のピストンロッドの先端がピン連結されている。シリンダ31の伸縮作動により、スクレーパ取付部材25及びスクレーパ26は、それぞれ弾性ローラ3、4に近接又は離間される。
さらに、スクレーパ取付部材25の前面には、スクレーパ本体26にそれぞれ対向して複数の受金(図示せず)が固定されている。受金のそれぞれは、別途固定されたシリンダ(図示せず)の伸長作動により、これのピストンロッドに押されて、スクレーパ取付部材25を矢印方向へ回転させる。これにより、スクレーパ本体26は、適宜交換可能とされている。
次に、以上のような線材加工装置1によって長尺物としての線材33を表面加工する動作について説明する。線材33を二対の弾性ローラ3、4間に順次に通過させるとともに、シリンダ12,13を伸長作動して4個の弾性ローラ3、4を相互に接近させて、弾性ローラ3、4により線材33を所要の大きさの力で挟持する。
次いで、回転手段6の減速機付き電動機を駆動して弾性ローラ3、4の周縁速度を線材33の移動速度より速く又は遅くなるようにして、弾性ローラ3、4をピニオン19及びギヤ17、18を介して回転させ、且つ、弾性ローラ3間及び弾性ローラ4間に研磨材投入手段から粉粒体状の研磨材を投入する。
この際、弾性ローラ3、4は、周縁のうち相互に接触する部分が変形して線材33の形状に順応し、これに伴い、弾性ローラ3が、線材33に対して比較的長く覆い被さる状態になる。それと同時に、加湿手段7による弾性ローラ3、4の加湿によって、研磨材の弾性ローラ3、4への付着が確実に行われる。この結果、弾性ローラ3、4によって研磨材は、線材33に対して相対的に移動され線材33を摩擦し、表面加工する。
線材33を摩擦し表面加工している間に、複数のスクレーパ手段21の各シリンダ31が間歇的に伸長作動されると、スクレーパ本体26は、スクレーパ取付部材25を介して弾性ローラ3、4のそれぞれの外面に所要長さ当接する。これにより、弾性ローラ3、4のそれぞれの外面に付着した異物が剥離されることとなる。また、スクレーパ取付部材25に付設したシリンダを適宜伸縮作動することによりスクレーパ本体26が交換される。
尚、上述では、弾性ローラ3、4に付着した異物をスクレーパ手段21によって剥離するものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、弾性ローラ3、4に予め外筒を着脱可能に環装して、この外筒が損傷あるいは摩耗した時点で外筒を交換するようにしてもよい。
以上のような図1〜図6に示す線材加工装置1は、実施形態に係る線材製造方法に用いられるのに適しており、すなわち、線材加工装置1を用いた線材製造方法は、得られる線材の表面に存在する有害な凹凸が低減され、線材の疲労強度を向上することを実現することができ、この線材を用いたコイリング部材等の各種部品の寿命を長くすることを実現することができる。
次に、実施形態に係る線材製造方法に用いるのに適した図7〜図14に示す線材加工装置101について説明する。尚、以下の説明等において、円錐状とは、円錐面や、円錐面を底面と平行な平面等の平面で切り取った形状を含むものとする。ここで、溶液とは、液体状態の均一な混合物を意味し、すなわち、一つの液体に一又は複数の他の物質(固体、液体又は気体)が溶解してできたものを意味するものとする。さらにこの溶液には、ゾル(コロイド溶液)も含まれるものとする。
線材加工装置101は、円錐状の摺接面105を有し、且つ、走行される線材103に対して回転されながら該摺接面を摺接させる複数の回転摺接体104を備え、複数の回転摺接体104は、線材の上方から摺接面を摺接させる一又は複数の回転摺接体と、前記線材の下方から摺接面を摺接させる一又は複数の回転摺接体とを有する。
図7に示す線材加工装置101は、図8に示す線材走行駆動手段102により走行される被処理製品である線材103の表面を加工する線材表面の加工装置である。この線材加工装置101は、複数の回転摺接体104を備える。この回転摺接体104は研磨材が供給される円錐状の摺接面105を有し、かつ、走行される線材103に対して、回転されながら該摺接面105を摺接させる。すなわち、被処理製品としての線材103は、後述のように研磨材が存在する回転摺接体104の摺接面105に接触走行されることで研磨加工が行われる。尚、回転摺接体104は、円錐形状でもよいが、ここでは、図10に示すような円錐台形状とされており、線材103を研磨する所謂ポリシャである。
また、線材加工装置101は、回転摺接体104を回転軸104aと平行な方向Dへ駆動して移動させる摺接体駆動手段として第1及び第2摺接体駆動手段106,107を備えている。
複数の回転摺接体104は、図9に示すように、線材103の上方から摺接面105を摺接させる一又は複数の回転摺接体(以下、「上側回転摺接体104G1,104G2」ともいう。)と、線材103の下方から摺接面105を摺接させる一又は複数の回転摺接体(以下、「下側回転摺接体104G3,104G4」ともいう。)とを有している。尚、本装置の変形例として、これらの回転摺接体104G1〜104G4に加えて斜め方向から摺接するような回転摺接体を追加するように構成しても良い。
この複数の回転摺接体104は、回転軸104aが互いに平行となるように配置されている(図11参照)。そして、複数の回転摺接体104は、摺接面105の円錐状の先細る向きが反対方向のものが混在するように配置されている。このような構成により、後述のように、線材103に対して複数の方向から摺接でき、加工性能が向上する。ここで、先細る向きとは、回転軸に直交する断面が円形とされているが、径が小さくなる方向に向いていることを示す。すなわち、ここでは回転摺接体104は図10等に示すように円錐台であるので、底面が大きい側である大底面104c側から底面が小さい側である小底面104b側に向いていることを示す。先細る向きが反対方向とは、径が小さくなる方向が異なるように配置されていることを示し、換言すると図9に示すように、軸方向の片側から見たときに大底面と小底面が混在することを示す。具体的に線材加工装置101においては、この先細る方向が、図中D2で示す摺接体駆動手段側か、若しくは、図中D1で示す通線作業側(作業者側)とされている。尚図中Duは、装置が配置された状態の上側を示し、Ddは、下側を示す。
さらにここでは、線材の上方から摺接面を摺接させる回転摺接体104G1,104G2は、複数であり、摺接面105の円錐状の先細る向きが反対方向のものが混在するように配置され、線材の下方から摺接面を摺接させる回転摺接体104G3,104G4は、複数であり、摺接面105の円錐状の先細る向きが反対方向のものが混在するように配置されている。このような構成により、後述の図12等に示すように、線材103に対して4つの方向から摺接させることができ、線材103の断面全周を満遍なく加工することができ、加工性能を著しく向上させることができる。
尚、前記線材の上方から摺接面を摺接させる回転摺接体のうち、先細る向きが第1の方向D1であるものを第1群の回転摺接体104G1とし、先細る向きが前記第1の方向D1の反対方向である第2の方向D2であるものを第2群の回転摺接体104G2とする。また、前記線材の下方から摺接面を摺接させる回転摺接体のうち、先細る向きが前記第2の方向D2であるものを第3群の回転摺接体104G3とし、先細る向きが前記第1の方向D1であるものを第4群の回転摺接体104G4とする。ここでは、各群の回転摺接体は、2個ずつであるが、1個でも3個以上(複数個)でもよい。
第1,第2摺接体駆動手段106,107は、第1群及び第3群の回転摺接体104G1,104G3を一方向に駆動しているときに、第2群及び第4群の回転摺接体104G2,104G4を反対方向に駆動するように往復移動させる。具体的に、第1,第2摺接体駆動手段106,107は、それぞれ、固定部111と、固定部111に対してD1,D2方向に可動する可動部112と、可動部112をD1,D2方向に可動自在となるようにガイドするガイドロッド113と、可動部112をD1,D2方向に駆動するシリンダ114とを備える。尚、図11は、第2摺接体駆動手段107を示す図であるが、第1摺接体駆動手段106も同様の構成を有している。このように、各回転摺接体104G1〜104G4は、中心軸の一方側が第1、第2摺接体駆動手段106,107の可動部112に接続され、中心軸の他方側が線材103を当該線材加工装置101にセットするために開放されている。図中D2が、摺接体駆動手段側であり、D1が線材セット側(作業者側)である。
第1摺接体駆動手段106は、第1群及び第3群の回転摺接体104G1,104G3を1セットとなるように固定部111に取り付けており、これらの回転摺接体104G1,104G3を同時に、D1方向又はD2方向に駆動することができる。この1セットとなる第1群及び第3群の回転摺接体104G1,104G3は、走行する線材103を互いに挟み込む配置とされている。第2摺接体駆動手段107は、第2群及び第4群の回転摺接体104G2,104G4を1セットとなるように固定部111に取り付けており、これらの回転摺接体104G2,104G4を同時に、D1方向又はD2方向に駆動することができる。この1セットとなる第2群及び第4群の回転摺接体104G2,104G4は、走行する線材103を互いに挟み込む配置とされている。換言すると、第1群及び第3群は、互いに対向する部分の母線が平行でD2方向(摺接体駆動手段側)に向けて(斜め)上方向きとなる回転摺接体の組み合わせである。第2群及び第4群は、互いに対向する部分の母線が平行でD2方向に向けて(斜め)下方向きとなる回転摺接体の組み合わせである。
第1及び第2の摺接体駆動手段106,107は、それぞれ駆動する回転摺接体をD1,D2方向のうち反対方向に同期するように駆動することで図12(a)〜図12(c)に示すように、線材103に対して4方向から摺接面を摺接させ線材103の断面全周を満遍なく加工可能な状態で、且つ摺接面の線材103に摺接させる位置を変更することができる。これにより、各回転摺接体4G1〜4G4の部分的な磨耗を回避でき、加工性能を長く保持することができ、装置の長寿命化を実現できる。尚、ここでは、摺接体駆動手段を2つ設け、一方の可動部に第1群及び第3群を設け、他方の可動部に第2群及び第4群を設けるようにしたが、これに限られるものでなく、例えば各群毎の摺接体駆動手段を設けても、上述のように同期するように駆動すれば同様の効果が得られる。
ところで、回転摺接体104は、回転駆動手段としてのモータ121及び駆動歯車122により、回転駆動されている。回転駆動方向は、線材103の駆動方向と同一でも反対でも問題ないが、ここでは例えば同一方向とされている。具体的に、モータ121は、第1及び第2摺接体駆動手段106,107のそれぞれに1つ設けられており、駆動伝達手段である複数の駆動歯車122を回転させる。駆動歯車122は、回転摺接体104の個数と同じ数だけ設けられており、モータ121により発生された回転力を回転摺接体104に伝達して、各回転摺接体104を回転軸104aを中心に回転させる。
回転摺接体104は、ショア硬さが40〜90の弾性体で前記摺接面を形成する部分が形成されている(ショア硬さ試験方法JIS Z2246)。回転摺接体104は、線材103の走行軌跡を挟み込むように配置される。これより低い(軟らかい)と耐摩耗性が悪く、交換頻度が高くなるほか線材(長尺物)103への押し付け力を得られにくく、加工性も低下し、逆に大きい(硬い)と回転摺接体104が充分に歪まないことから線材103の断面になじまず、線材103の断面のうち部分的に加工されない部位が生じてしまう恐れがあるからである。例えば、回転摺接体104としては、ショア硬さ60程度のブタジエンゴムが用いられ、最大外径が100mmであり、毎分10回転の回転数で回転されてもよい。このとき、第1及び第2摺接体駆動手段106,107により回転摺接体の軸方向の移動は、60秒で1往復とした。
また、線材加工装置101は、複数の研磨材供給部108と、複数のバインダ供給部109とを備える。複数の研磨材供給部108は、複数の回転摺接体104のそれぞれの上方に配置され、摺接面105に上方から研磨材を供給する。研磨材供給部108は、例えばパイプ状の供給部を有しており、この供給部から円錐状の摺接面105に研磨材を供給する。研磨材の供給は、連続又は断続で行われる。研磨材としては、例えば粒度#220のシリコンカーバイド製のものを用い、供給量としては、40秒おきに各回転摺接体104に1ccずつ供給してもよい。この場合、研磨材切出しヘッドの往復により研磨材一定時間おきに定量に切り出す装置(図示せず)を用いることができる。尚、研磨材としては、アルミナ、セラミックス、ガラス粉、シリカ粉(シリコンカーバイド)、金属粉、ガーネット、ダイヤモンド等から選ばれる単体又は混合物であっても良い。
複数のバインダ供給部109は、摺接面105に研磨材を付着させるための液体又は溶液を供給させるものである。ここでは、バインダ供給部109は、回転摺接体104の上方及び下方に設けられ、バインダを霧状に若しくは直接、且つ連続若しくは断続的に供給する。ここでは、バインダ供給部109は、例えば図示しない圧縮エア源及びバインダタンクに接続された気液混合ノズルである。バインダとしては、水を用い、供給量としては、摺接面105に5秒噴射と1分停止とを繰り返す動作により供給してもよい。尚、バインダは、寒天、糖類などの高分子有機物などの水溶液であって、研磨材を摺接面105に付着することができれば良い。さらにバインダにより摺接面105に付着した研磨材は、線材103との接触により脱落する程度の付着力であれば、加工に使われた研磨材の脱落と新たな研磨材の供給とを繰返すことが可能であり、加工程度を均一にすることができる。
また、ここでは、研磨材供給部108及びバインダ供給部109を設けるように構成したが、研磨材供給部から、研磨材にバインダを既に混合したスラリー状の研磨材を供給するようにしても同様の効果が得られる。
さらに、線材加工装置101を構成する回転摺接体の表面に研磨材が練り込まれて付着されているようにしてもよい。換言すると、回転摺接体は、摺接面を形成する部分が研磨材、又は研磨材が分散された材料により形成されていてもよい。すなわち、本発明においては、回転摺接体の摺接面には研磨材が存在するように構成すればよい。すなわち、その態様としては、まず、上述の図7〜図12等を用いて説明したような、弾性体からなる回転摺接体の摺接面に外部から研磨材を供給させる機構を併せ持つようなものがある。また、その態様として、研磨材を焼成して形成され、例えばディスクグラインダの砥石のように回転摺接体全体が研磨材によりなるものがある。さらに、その態様として、弾性体に研磨材を練り込んで分散配合されるもので、砂消しゴムのように、弾性力があって線材表面に密着でき、表面の研磨材により研削力を併せ持つものがある。
以上のように構成された線材加工装置101においては、線材(長尺物)103を走行させることにより、線材は、研磨材の存在する回転摺接体104の摺接面105に接触することによって、線材103の表面は、従来のように走行方向を変えることなく水平状態で走行しながら研磨加工がなされる。
以上のような線材加工装置101は、円錐状の摺接面105を有し、且つ、走行される線材103に対して回転されながら該摺接面を摺接させる複数の回転摺接体104を備え、複数の回転摺接体104は、線材の上方から摺接面を摺接させる一又は複数の回転摺接体と、線材の下方から摺接面を摺接させる一又は複数の回転摺接体とを有する。線材加工装置101は、回転摺接体の配置及び摺接面の形状を上述のようにすることで、線材103の走行に負担を与えることなく、高速で且つムラのない表面加工を実現することができる。また、該線材加工装置101は機械的な構成で表面加工を実現するので、環境負荷を抑制することができる。
また、線材加工装置101によれば、ポリシャである回転摺接体104の形状と配置を工夫して線材103の走行方向を略水平に保った状態で、線材表面を均一な加工が可能であり、さらに、高速加工が可能であるという利点がある。さらに、従来に比較して線材を上方へ持ち上げるための部品が不要となり、部品点数が少なくなるほか、高所での通線作業もなくなり、操作性も向上する。
また、線材加工装置101は、研磨材供給部108と、バインダ供給部109とにより回転摺接体104の摺接面105に研磨材を供給し続けることができ、線材(長尺物)を先端から末端まで加工品質が変化しない状態で連続加工することができる。
さらに、線材加工装置101は、回転摺接体104がショア硬さ40〜90の弾性体で摺接面105を形成したので、適度に変形して線材103の大部分を覆うことができ、ムラがなくなるように加工することができる。
また、線材加工装置101は、線材103の上方から摺接面を摺接させる回転摺接体104G1,104G2が、摺接面105の円錐状の先細る向きが反対方向のものが混在するように配置され、線材103の下方から摺接面を摺接させる回転摺接体104G3,104G4が、摺接面105の円錐状の先細る向きが反対方向のものが混在するように配置されていることにより、線材103に直交する断面において、線材103を抱え込む状態となり、加工時に線材103の振動によって発生する可能性のある脱落を抑制することができる。
また、線材加工装置101は、摺接体駆動手段が第1群及び第3群の回転摺接体104G1,104G3を一方向に駆動しているときに、これと同期して第2群及び第4群の回転摺接体104G2,104G4を反対方向に駆動するように往復移動させていることにより、線材103が各回転摺接体104の母線上を往復することとなり、局部磨耗を抑制して、長寿命化を実現することができる。
また、線材加工装置101において、回転摺接体104は作業者側D1においてスペースを確保でき、その交換作業が簡便になるほか、回転摺接体104の形状の特徴を生かして単純な往復運動(摺接体駆動手段による回転摺接体の軸方向への移動動作)をさせるだけで、回転摺接体104の局部磨耗もなくすことができ、交換頻度も減少させることができ、ランニングコストを低減させることを実現することができる。
次に、図7〜図12に示す線材加工装置101の変形例である線材加工装置131について、図13を用いて説明する。線材加工装置131は、回転摺接体104の配置を変更したことを除いて、上述の線材加工装置101と同様の構成とされている。図13(a)及び図13(b)に示すように線材加工装置101は、線材走行方向から見たときに、回転摺接体は、その対向する母線が一致するか若しくは線材の幅分以下の隙間を有するように配置されている。ここで、線材走行方向から見たとは、線材の断面を含む平面における関係を意味し、例えば図13(b)や図13(b)に示す関係である。また、線材の幅とは、該母線の対向方向における幅を意味する。すなわち、図13(b)は、第1群及び第3群の右側面図を示しているが、第1群及び第3群の回転摺接体104G1、104G3は、その対向する母線が略一致するように配置されることで、上述したように、当該部分で線材103を挟んだ状態で摺接して加工することを可能とする。第2群及び第4群についてもその対向する母線の方向が異なることを除いて同様の配置とされている。これに対して、図13(c)及び図13(d)に示す線材加工装置131は、対向配置された第1群及び第3群が互いにラップするように上下方向に近接するように移動され、同様に、対向配置された第2群及び第4群が互いにラップするように上下方向に近接するように移動された状態で配置されて構成されている。尚、図13(d)は、図13(b)と同様に、第1群及び第3群の右側面図を示しており、領域X部分がラップした状態(重なる領域を有する状態)となっているが、第2群及び第4群も同様の関係となっている。
このように、線材加工装置131は、対向配置される回転摺接体が、線材103の走行方向から投影したときに、その摺接部分において重なる領域を有するように配置されている。具体的に対向配置される第1群及び第3群の回転摺接体104G1,104G3は、図13(d)に示すようにその摺接面105付近の部分(摺接部分)において重なる領域Xを有した状態で配置されている。同様に、対向配置される第2群及び第4群の回転摺接体4G2,4G4は、図示しないが、摺接部分において重なる領域を有した状態で配置されている。尚、対向配置される回転摺接体とは、線材の上方から摺接面を摺接させる回転摺接体と、この回転摺接体と先細る向きが反対方向であって且つ線材の下方から摺接面を摺接させる回転摺接体とを一組としたものである。
図13(c)及び図13(d)に示す線材加工装置131は、上述の線材加工装置1の効果に加えて、図13(c)に示すように線材103の長さ方向において各回転摺接体104に接触する部分が増加し、換言すると線材103が各回転摺接体104に接触する時間が増加し、これにより、研削力が向上し、加工性能が向上する。
尚、本発明は、これに限られるものではなく、例えば、線材の上方側から摺接する回転摺接体群(上述では第1群及び第2群)と、線材の下方側から摺接する回転摺接体群(上述では第3群及び第4群)との、いずれか一方及び両方を、近接離間する方向、すなわち上下方向に駆動させる上下駆動機構を設けるように構成してもよい。かかる上下駆動機構を有する線材加工装置は、上述した線材加工装置101による加工と、線材加工装置131による加工とを切り換えて行うことができるとともに、線材の種類(大きさや太さ)に応じてその加工程度を調整することができるという効果を奏する。
また、上述した線材加工装置101,131等を構成する回転摺接体は、上述した図7〜図13を用いて説明した回転摺接体104に限られるものではなく、例えば、図14(b)に示すような先端先細り形状を有する回転摺接体134であってもよい。すなわち、上述した回転摺接体104は、図14(a)に示すように、単純な円錐台であり、その断面や側面から投影した形状において、摺接面105は、直線Y1とされている。これに対して図14(b)に示す回転摺接体134は、円錐台の摺接面が膨らんだ形状とされ、その断面や側面から投影した形状において、摺接面135は、直線Y1に対して外側に膨らんだ曲線Y2とされている。円錐形状を外側に向けて膨らませた形状とされた摺接面135を有する回転摺接体134は、上述した線材加工装置101等に用いられることで、図13で説明した線材加工装置131と同様の効果を奏する。すなわち、回転摺接体134は、上下に取り付けられ先細り方向が異なるように対向配置されたときに、線材の走行方向から投影したときに重なる領域を有する。
よって、図14(b)に示す回転摺接体134を用いた線材加工装置は、上述の線材加工装置101と同様の効果が得られるのに加えて、図13(c)で説明したのと同様に、線材103の長さ方向において各回転摺接体に接触する部分が増加し、換言すると線材103が各回転摺接体に接触する時間が増加し、これにより、研削力が向上し、加工性能が向上する。
以上のような図7〜図14に示す線材加工装置101等は、実施形態に係る線材製造方法に用いられるのに適しており、すなわち、線材加工装置101を用いた線材製造方法は、得られる線材の表面に存在する有害な凹凸が低減され、線材の疲労強度を向上することを実現でき、この線材を用いたコイリング部材等の各種部品の寿命を長くすることを実現する。尚、線材加工装置101は、弾性体として円錐台形状のものを互い違いに配置し、回転させ、その間を線材が走行し円錐台面に接触するようにしたため、図1〜6で説明した線材加工装置1に対して、線材と弾性体が接触する抵抗が増大する太物線材への適用が容易となる。
次に、上述の図1〜図6で説明した線材加工装置1を用いた線材の加工方法(線材製造方法)の一例を説明する。対象となる線材として、直径1.2mmの断面が円形のステンレス線とし、研磨材として約100μmのシリコンカーバイド粒子を用いた。
弾性ローラは、0.2MPaの圧力で挟持させ、毎分6回転の速度で回転させた。また、線材の走行速度を調整し、弾性ローラと線材の相対速度、及び線材が線材加工装置1を通過するパス回数の組み合わせを表1に示す組み合わせとして実施した。また、図15〜図18に、各例の表面状態を示す。図15は、伸線加工されただけの状態を示すものであり、比較例1の表面状態を拡大した図である。図16は、比較例2の表面状態を拡大した図である。図17は、実施例1の表面状態を拡大した図である。図18は、実施例2の表面状態を拡大した図である。
また、各例の線材の長手方向の連続状の溝のカバー率(図9を用いて上述)及び溝の平均深さμm(および線材径比)を表2に示す。
上述の比較例及び実験例からも明らかなように、線材に連続的な溝を付与することによって、線材の疲労強度を向上させることができる。尚、疲労強度は、1.27〜1.5倍程度に増加した。
本発明の線材及び線材製造方法は、疲労強度を向上させることができることにより、これまで疲労強度向上のためになされた高価なレアメタルの添加や特殊な熱処理工程をなくすことができる。
また、本発明の線材及び線材製造方法は、積極的に付与される溝が一様な方向とされているため、表面粗さ(十点平均粗さ(平均深さ))Rzを低減(伸線後のものが2.39μmであったのに対し、加工後の線材が0.83μmである。)できる。さらに、光沢を増す結果となり、後工程でばね等へ成形したさらに後の表面処理や洗浄といった見た目を調整する工程を不要にでき、製品価値も向上できる。
また、上述した実施形態に係る線材、若しくは実施形態に係る線材製造方法により製造された線材を用い、該線材が巻回されることによりリング状又は螺旋状に形成された部分を少なくとも含むコイリング部材は、疲労強度が高く、寿命が長いため、製品価値が高い。
ここで、「線材が巻回されることによりリング状又は螺旋状に形成された部分を少なくとも含むコイリング部材」の一例としては、例えば、ピストンリング、引張バネや圧縮バネなどのバネ部材、ねじりバネやトーションバネなどの線細工バネ等が挙げられる。すなわち、線材が巻回されることによりリング状に形成された部材には、巻回された線材の両端部が接するように1周分巻き回されたものだけでなく、その両端部が所定の隙間(合い口隙間)を有してリング状となるように巻き回されたものも含まれるものとする。また、実施形態に係る線材等は、動的負荷をうけ疲労が発生する部品に用いて好適であり、上述の引張バネや圧縮バネなどのコイルバネ、ねじりバネやトーションバネなどの線細工バネ、ピストンリングの他にも、めがねフレームにも適用可能である。