JPWO2013018716A1 - 無線受信装置及び無線受信方法並びに無線システム - Google Patents

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Abstract

ブラインド処理を実現し、且つ、厳しい遅延干渉波が存在する周波数選択性フェージング環境下であったとしても、無線伝搬環境による影響の少ない常に良好なダイバーシチ効果を発揮する。複数のアンテナで受信した受信信号毎に対応するブランチを設け、各ブランチの受信信号を合成することによりスペースダイバーシチを実現する無線受信装置が、各ブランチの受信信号を重み付け係数に基づくウェイト処理によりダイバーシチ合成する際に、ウェイト処理対象とする受信信号の受信信号ベクトルから得られた共分散行列が単位行列となる様な修正行列を生成し、修正行列によって受信信号を変換し、変換後の受信信号の受信信号ベクトルから得られた共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを算出し、固有ベクトルを重み付け係数としてダイバーシチ合成を行う。

Description

本発明は固定局間のマイクロ波無線通信システムのマイクロ波無線受信に関し、特にパイロット信号やリファレンス信号或いはトレーニング信号と呼ばれる既知の系列信号を用いない手法であるブラインド処理によるスペースダイバーシチに関する。
マイクロ波無線通信システムでは、フェージングの防止策としてスペースダイバーシチ方式(Space Diversity:以下、SD方式と呼ぶ。)を採用することが有効である。
ここで、SD方式とは、適切な距離をおいて配置された複数のアンテナへの受信波が同時に劣化する可能性が低いことを利用して、フェージングによる電波伝搬特性の劣化を補償する技術である。SD方式に関して図10及び図11を参照して具体的に説明する。
図10はSD方式を採用する場合の具体的な実装例である。図10を参照すると、本具体例は、固定局5100と固定局5200の二つの固定局を有している。
そして、固定局5100から送信された信号は固定局5200で二基のアンテナにより受信され、固定局5200での受信処理によってダイバーシチ処理が施される。
図11を参照すると固定局5200での受信処理部が示されている。
受信処理は、図11に示す様に、各アンテナ(アンテナ5211、アンテナ5212)に対応して設けられた受信データ処理があり、処理された各ブランチの信号を合成することでダイバーシチ処理が完了する。ここでブランチとは各アンテナに対応して設けられた受信データ処理用の回路や処理のことを指す。図11の例でいえば、ブランチ1は、アンテナ5211、ミキサ5221及びA/D変換器5231により実現される。また、ブランチ2は、アンテナ5212、ミキサ5222及びA/D変換器5232により実現される。また、ダイバーシチ合成部5240により各ブランチの信号が合成される。なお、図11に示すのは本具体例の説明において特に重要な部分のみであり、フィルタ等の他の構成要素や直交復調用の90度位相成分に関しては図示を省略する。
このような、SD方式に関する技術としては、例えば特許文献1に記載の技術等が挙げられる。
特開平07−0385836号公報
上述のように、SD方式はフェージングの防止策として一般的に用いられている。近年はトラフィックの増加に伴いマイクロ波無線通信システムの大容量化が進み、高次の多値変調信号を高速に伝送するようになってきており、一般的なSD方式では対応できない問題が生じてきた。この問題について説明する。
マイクロ波帯では、例えば、図12に示す様に、多重伝搬路(干渉波の発生要因)による周波数選択性フェージングが発生する。高速で更に高次の多値変調信号を使用すると、この周波数選択性フェージングにより誤り率特性が著しく劣化する。
この誤り率特性の著しい劣化を防止するために従来から周波数選択性フェージング対策として適応等化処理が行われてきた。一般に適応アルゴリズムではタップ係数の収束特性を得る為にトレーニング信号を伝送する。特に時分割多元接続(TDMA:Time Division Multiple Access)の移動通信などのバースト伝送では、トレーニング信号の伝送が必須である。
一方、固定マイクロ波無線通信システムなどでは、既存システムの信号構成上、トレーニング信号等を入れられない場合がある。この場合は、パイロット信号やリファレンス信号或いはトレーニング信号と呼ばれる既知の系列信号を用いない手法であるブラインド処理が有効である。
また、例えパイロット信号やリファレンス信号或いはトレーニング信号を入れられる場合であったとしても、これらの信号は、既知の系列信号で実際の情報の伝達に何ら寄与しない為、伝送効率を上げるためにもブラインド処理を行うことが好ましい。
具体的に説明すると、移動通信等では、10%程度の無線リソースをパイロット信号やリファレンス信号に割り当てている。これをそのまま1024QAMで伝送している固定マイクロ波無線通信システムに当てはめたとすると、512QAM相当の伝送速度になってしまう。すなわち、折角送信電力を倍増して高速伝送を実現したのに、情報伝達に対する実効速度がそれに伴わないことになるのである。
このような前提のもとで、ブラインド処理で実現したSD方式について更に検討する。ブラインド処理で実現したSD方式としては、同相合成(In-Phase:以下「IP合成」と呼ぶ。)と呼ばれる手法がある。
IP合成法は、ブランチの片方の信号に低周波の位相変調をかけて、合成後のAM信号成分により位相の同相状態を検出し、その検出結果を用いて位相器へのフィードバック制御を行うというものである。
IP合成法は、低い周波数の振幅成分を検出に用いている。この点、高次の多値変調が可能なQAMはその変調方式に起因する振幅成分の変動を内包している。その為、多値のQAMへのIP合成法の適用は問題がある。また後述するが、IP合成法は、周波数選択性フェージングにより誤り率特性が著しく劣化するという問題点もある。つまり、IP合成法は如何なる場合であっても有効な手法であるとはいえない。
他方、周波数選択性フェージングを考慮し、且つ、ブラインド処理で実現したSD方式として最小振幅偏差合成(Minimum Dispersion Combiner:以下、「MID合成」と呼ぶ。)と呼ばれる方法も存在する。
ここで、IP合成法と異なる部分で、MID合成法の特徴を示す干渉波相殺合成動作について、説明のし易さから極端な例を用いて説明する。
図13は、MID合成法の特徴を示す干渉波相殺合成動作を二つのアンテナで受信した例で示した図である。異なる電波伝搬条件の二つの例(図13中の、例1及び例2)で説明している。また図13では受信波を回転フェザーのベクトル表記で示している。
図13、ブランチ1(Branch 1)は、例えば図12における受信局である基地局5002の上側のアンテナに対する受信信号を示しているものとする。また、同様に図13、ブランチ2(Branch 2)は、図12における受信局である基地局5002の下側のアンテナに対する受信信号を示しているということにする。
各ブランチにおける受信波は図12に示されている様に、直接波(図12中では、「LOS ray」と表記する、図13中では実線にて表記する。)に遅延反射波(図12中、「Reflected ray」と表記する図13中では破線にて表記する。)が加わったものである。
干渉波相殺合成動作は、干渉波であるそれぞれのブランチの遅延反射波の位相を逆位相になるようにブランチ内にある位相器を調整して合成を行うものである。従って、図13上側例1の右側に示されている様に、干渉波成分であるブランチ1の遅延反射波成分とブランチ2の遅延反射波成分が相殺され、残るブランチ1の直接波成分とブランチ2の直接波成分が合成されダイバーシチ処理が完結する。
図13上側例1のようにこの処理が理想的に行われたならば、遅延反射波成分が完全に無くなるので、周波数選択性フェージングによる干渉が結果的に解消される。しかしながらこの方式は以下の問題を包含している。
マイクロ波無線通信システムの電波伝搬環境は、アンテナの設置状況、反射対象である大地、あるいは海峡を跨ぐ場合には海面反射の状況によって色々と変わる。上述した図13の上側の例1は幸運な電波伝搬環境の場合である。つまり、干渉波成分である遅延反射波成分を相殺する様にブランチの位相器を調整した結果各ブランチの直接波が同じ方向を向くようになり、合成後の希望波電力が増大してダイバーシチ利得が得られた幸運な例である。一方、図13の下側の例2は厳しい条件の場合である。干渉波成分である遅延反射波成分を相殺するようにブランチの位相器を調整した結果各ブランチの直接波が反対方向に近い状態になってしまっている。その結果、合成後の希望波電力が減少して、周波数選択性は解消されてもダイバーシチ利得が逆に減ってしまった例である。
以上は説明のし易さから極端な形で、MID合成法を説明したが、ここまで極端でないとしても電波伝搬環境によってダイバーシチ効果が大きく異なるという点でMID合成法には問題があることは明らかである。
そこで、本発明は、実際の情報の伝達に何ら寄与しないパイロット信号やリファレンス信号或いはトレーニング信号など伝送効率を低下させる既知の系列を用いることのないブラインド処理を実現し、且つ、高速で高次の多値変調を用いる大容量マイクロ波無線通信に厳しい遅延干渉波が存在する周波数選択性フェージング環境下であったとしても、無線伝搬環境による影響の少ない常に良好なダイバーシチ効果を発揮することが可能な無線受信装置及び無線受信方法並びに無線システムを提供することを目的とする。
本発明の第1の観点によれば、複数のアンテナで受信した受信信号毎に対応するブランチを設け、当該各ブランチの受信信号を合成することによりスペースダイバーシチを実現する無線受信装置において、前記各ブランチの受信信号を重み付け係数に基づくウェイト処理によりダイバーシチ合成する際に、前記ウェイト処理対象とする受信信号の受信信号ベクトルから得られた共分散行列が単位行列となる様な修正行列を生成し、当該修正行列によって前記受信信号を変換し、当該変換後の受信信号の受信信号ベクトルから得られた共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを算出し、当該固有ベクトルを前記重み付け係数として前記ダイバーシチ合成を行うことを特徴とする無線受信装置が提供される。
本発明の第2の観点によれば、複数のアンテナで受信した受信信号毎に対応するブランチを設け、当該各ブランチの受信信号を合成することによりスペースダイバーシチを実現する無線受信装置において、前記各ブランチの受信信号から干渉波信号を検出する干渉波信号検出部と、前記干渉波信号から得られた共分散行列が単位行列となる様な修正行列を生成し、前記受信信号の受信信号ベクトルから得られた共分散行列を前記修正行列により修正し、当該修正後の共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを用いて重み付け係数を生成し、当該該重み付け係数に基づくウェイト処理によりダイバーシチ合成を行うブラインド処理部と、を備えることを特徴とする無線受信装置が提供される。
本発明の第3の観点によれば、信号を無線送信する無線送信装置と、前記送信された信号を複数のアンテナにより受信する無線受信装置と、を含んだ無線通信システムにおいて、
前記無線送信装置と前記無線受信装置間の無線通信はブラインド処理を実現した通信方式に準拠しており、前記無線受信装置は上記本発明の第1の観点又は第2の観点により提供される記載の無線受信装置である、ことを特徴とする無線通信システムが提供される。
本発明の第4の観点によれば、複数のアンテナで受信した受信信号毎に対応するブランチを設け、当該各ブランチの受信信号を合成することによりスペースダイバーシチを実現する無線受信装置が行う無線受信方法において、前記各ブランチの受信信号を重み付け係数に基づくウェイト処理によりダイバーシチ合成する際に、前記ウェイト処理対象とする受信信号の受信信号ベクトルから得られた共分散行列が単位行列となる様な修正行列を生成し、当該修正行列によって前記受信信号を変換し、当該変換後の受信信号の受信信号ベクトルから得られた共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを算出し、当該固有ベクトルを前記重み付け係数として前記ダイバーシチ合成を行うことを特徴とする無線受信方法が提供される。
本発明の第5の観点によれば、複数のアンテナで受信した受信信号毎に対応するブランチを設け、当該各ブランチの受信信号を合成することによりスペースダイバーシチを実現する無線受信装置が行う無線受信方法において、前記各ブランチの受信信号から干渉波信号を検出し、前記干渉波信号から得られた共分散行列が単位行列となる様な修正行列を生成し、前記受信信号の受信信号ベクトルから得られた共分散行列を前記修正行列により修正し、当該修正後の共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを用いて重み付け係数を生成し、当該該重み付け係数に基づくウェイト処理によりダイバーシチ合成を行う、ことを特徴とする無線受信方法が提供される。
本発明によれば、受信信号ベクトルから得られた共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを算出して、該固有ベクトルを重み付け係数として用いることから、伝送効率を低下させる既知の系列を用いることのないブラインド処理を実現し、且つ、高速で高次の多値変調を用いる大容量マイクロ波無線通信に厳しい遅延干渉波が存在する周波数選択性フェージング環境下であったとしても、無線伝搬環境による影響の少ない常に良好なダイバーシチ効果を発揮することが可能となる。
固有ベクトル空間で表したウェイトベクトルについて表す図である。 最大固有値の固有ベクトル 本発明の実施形態1における固有ベクトル合成方式のシミュレーション結果を表す図である。 白色化により特性劣化を緩和した固有ベクトルによるダイバーシチ合成を行う実施形態である、本発明の実施形態2の基本的構成を表す図である。 本発明の実施形態2における白色化による固有ベクトル合成方式のシミュレーション結果を表す図である。 本発明の干渉波白色化により劣化を緩和した固有ベクトル合成を行う実施形態である、本発明の実施形態3の基本的構成を表す図である。 本発明の実施形態2及び3における白色化固有ベクトル合成方式のシミュレーション結果を表す図(1/2)である。 本発明の実施形態2及び3における白色化固有ベクトル合成方式のシミュレーション結果を表す図(2/2)である。 図7及び8で用いた伝搬環境のベクトル表記とその時のタップ係数表す図(1/2)である。 図7及び8で用いた伝搬環境のベクトル表記とその時のタップ係数表す図(2/2)である。 SD方式を用いたマイクロ波無線通信システムの具体例の構成を表す図である。 SD方式を用いたマイクロ波無線通信システムの具体例における受信処理部の構成を表す図である。 干渉波の発生要因である多重伝搬路について説明するための図である。 MID合成法について説明するための図である。
111、112、5211、5212 アンテナ
121、122、5221、5222 ミキサ
131、132、5231、5232 A/D変換器
141、142 タップ処理部
150、5250 局部発振器
160 ブラインド処理部
170 ダイバーシチ合成部
211、222 白色化・タップ処理部
310 干渉波信号検出部
320 白色化ブラインド処理部
1000、2000、3000 受信装置
5001 固定局(受信)
5002 固定局(送信)
次に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
最初に、本発明の実施形態の概略について述べる。
上述で説明した様に、一般的なブラインド処理でIP(In-Phase)合成と呼ばれる方式がある。このIP合成方式は片方の信号に低周波の位相変調をかけ、合成後のAM信号により位相のフィードバック制御を行う必要があり、低周波の振幅成分を用いている。そのため定振幅ではない多値変調のQAMにはこのままでは使えない。すなわち、IP合成方式はPSK(phase shift keying)の様にAM変動の無い定振幅変調に適した方法であって、高密度変調には適さない。そこで、本発明の実施形態であるマイクロ波無線受信装置は、別のアプローチを採用して高密度変調でも使える様にした点に特徴がある。
更に、一般的なMID合成法の特徴を示す干渉波相殺合成は、確かに周波数選択性は解消されたがダイバーシチ利得が逆に減ってしまった。また、電波伝搬環境によってダイバーシチ効果が大きく異なるという点でMID合成法には問題がある。本発明の実施形態であるマイクロ波無線受信装置は、これらの問題に対処した点に特徴がある。
以下の説明では、先ず本発明の各実施形態の原理的な側面を定量的に説明する為に、定量解析から始めてブラインド処理の概念で構築する。そして、本実施形態における定量解析を示す。最後に、具体的例を示し、その具体例に対して本実施形態の定量的解析結果を用いたシミュレーションにより、各実施形態の効果を定量的に示す。
[実施形態1]
まず、本発明の基本的構成を示す実施形態である実施形態1について説明する。実施形態1は、最大固有値の固有ベクトルによるダイバーシチ合成方式に関する実施形態である。
最初に最大固有値の固有ベクトルによるダイバーシチ合成方式の原理について説明する。
以下の説明では、送信信号をs(t)、ウェイトベクトルをW、チャネルベクトルをh、雑音ベクトルをnとする。この場合、信号対雑音電力比(SNR:signal-to-noise ratio)γ(以下、適宜「SNRγ」と呼ぶ)は、
・・・(式1)
と表せる。ここで、

とした。
とRとはそれぞれ共分散行列を表す。具体的には、Rは送信信号の共分散行列を表す。また、Rは雑音の共分散行列を表す。また、集合平均に対して、統計的独立性から、
とした。
Iは単位行列である。送信信号の共分散行列であるRは階数(以下、適宜「ランク」と呼ぶ)1である。一方、雑音の共分散行列であるRはフルランクである。
SNRγは(式1)より分母及び分子のそれぞれにウェイトベクトルwが含まれている。そのため、SNRγはウェイトベクトルwの大きさには関係しない。そこで、SNRの最大化問題を次の拘束条件の下で考える。
・・・(式2)
これより、(式1)の分母は
となり一定となる。従って、SNRγの最大化は、分子のみの最大化に帰着する。
ここで、本実施形態ではブラインド型を用いることを想定している。そのため、受信側でチャネルベクトルhを求めることが出来ない。そこで評価関数の要素として下記の数式により表される入力信号ベクトルxを用いることにする。
この入力信号ベクトルxにウェイトベクトルwを掛けた
に対する評価関数として、
・・・(式3)
を採用することにする。
上記の(式3)における、Rは入力信号の共分散行列であり、
・・・(式4)
即ち、評価関数Jの最大化はw・R・wの最大化となり、(式1)の分子の最大化となり、SNRγの最大化と同じになる。
[最適化問題]
・w=1の制約条件のもとで、評価関数Jを最大化する解wを調べる。
ラグランジュの未定乗数法(Lagrange-Multiplier Method)を用いて上述の(式3)を変形すると、
に関して偏微分を取ることによって極解が求まるから、
・・・(式5)
λはラグランジュの未定乗数で、解wは次の条件を満たすことになる。
・・・(式6)
これは固有ベクトルと固有値の定義そのものに他ならない。よって、解wは入力信号の共分散行列Rの固有ベクトルであり、ラグランジュの未定乗数は固有値となる。
一方、エルミート(Hermitian)行列である共分散行列Rは、その正規化された固有ベクトルβjと、その固有値λjによってスペクトル分解すると、
・・・(式7)
となり固有ベクトルはN個存在する。このN個の中から最大固有値λに対応する固有ベクトルβを求めればそれがw=βとなる。
今、任意のウェイトベクトルwに対して、(式3)の評価関数は、(式7)を用いて、
・・・(式8)
ここで、Rはエルミート行列であるから、その固有値λjは全て必ず実数で非負である。
そこで、
・・・(式9)
を満足するウェイトベクトルwに対してスカラー値(直交系である{β}への射影係数)
・・・(式10)
とすると、
で(式8)は、(式9)を条件として、以下の様になる。
・・・(式11)
この式11は超楕円を示す。即ちwを固有ベクトルにより直交展開した
で、その直交軸βに対する射影係数が
となって、直交系{β}での幾何学的関係を示している。
従って、例えば一つの固有ベクトルが形作る軸に対する端点を見ると、極限の値であるから(式11)における他の軸成分は全て零となり、全ての値cをこの軸に集めた形となり、その固有ベクトルをβとすると、

に対し、
となり、
に対するβ軸上の端点となる。即ち、
を満足するウェイトベクトルは固有ベクトルで形成された軸に対してその軸の固有値の平方根に逆比例した値で与えられる超楕円上に存在することになる。
以上の内容を表現のし易さからウェイトベクトルwの要素は複素数であるが実数のように扱って描くことにする。
直感的理解の説明のし易さから二次元の実数の要素の場合で示した簡単な例を図1に示す。
図1より、
上の範囲は
で、軸が固有ベクトルで与えられる楕円となる。

は、
となってβ方向での最適な値を示し、
となってβ方向での値を示す。
即ち固有値の平方根に反比例する長さで軸が固有ベクトルで与えられる楕円上の
がc値を持つ等高線となる。制約条件w・w=1は図1中の円筒となる。最大固有値を与える固有ベクトルを求める問題は、等高線cの値を変えることによって出来る超放物曲線とこの円筒が交わる曲線上で、
が最大となるw=βを求める問題と同じことになる。
次に、最大固有値に対応する固有ベクトルの算出手段の一例について説明する。
本例は、冪乗法による最大固有値に対応する固有ベクトル算出法である。
(式7)式より、入力信号の共分散行列Rは
で表される。固有ベクトルβは正規化されている。そのk乗をとると
、且つ、
であるから、
となる。ここで、全てのjに対して
ならば、
で、
kを十分に大きくすると
第二項は消えて、
となる。即ちRはランク1の行列に限りなく近づく。
一方、βと直交関係にない任意のベクトルをvとする。この時新しいベクトルv
とする。
もし、Rのランクが1であるなら、
であるから、
となり、vは固有ベクトルβに比例する。
今、vとR・vを以下の様に正規化された直交基底ベクトルβによって展開する。

全てのjに対して
λ>λ
1≠jならば、
でkを十分に大きくすると第二項は消えて、
となり、最大固有値に対応する固有ベクトルが得られる。この時、vがβと直交しているとαが零となってしまうので、βと直交関係にない任意のベクトルをvとする必要がある。
また、上式よりλ/λの比率で解が収束することが分かる。
以上の原理に基づいて、次のアルゴリズムによる処理手段が得られる。
[処理手段]
離散時刻(i−1)の時点で、入力信号の共分散行列R(i−1)の推定値が既に求められているとする。時刻iにおける初期値として入力信号ベクトル
を用いて共分散行列
の推定を
雑音が存在しない場合の共分散行列は(式1)下よりランク1の

に対応して固有ベクトルがhに相当するから、例として、
が推定出来たとして、
を用いると、正規化した
は、
として与えられる。
上式において、λは忘却係数である、1≧λ>0である。
なお、一般に、離散時刻i−1の推定が無いときは以下の様に設定する。
k=1
その後、正の小さな実数εに対して
が成立している間、以下のステップを繰り返す。
Step1・・・
Step2・・・
k=k+1Step1へ
条件が成立すると、次式を実行して繰り返しを終了する。
収束条件
を満たした時、
は、時刻iにおける共分散行列
の最大固有ベクトルとなる。
このアルゴリズムは、最大固有値に対する他の固有値(主に第2最大固有値)の比率で収束速度が決まる。雑音が無いときには、ランク1となるので、収束が最も速い。
以上説明した様に、複数のブランチの受信信号を重み付け係数に基づいてウェイト処理により合成する際、受信信号ベクトルから得られた共分散行列Rの最大固有値λに対応した固有ベクトルβを共分散行列Rから算出し、当該算出した固有ベクトルβを前記重み付け係数として用いた時、ダイバーシチ合成後の信号対雑音電力比(SNR)γが最大となり良好なダイバーシチ利得が得られる。
しかも、上述の方法はトレーニングシーケンスなどの伝送効率を低下させる信号を使わないブラインド処理であることに注意を要する。すなわち、上述の方法では、トレーニング信号などの伝送効率を低下させる信号を使うことなく、良好なダイバーシチ利得を得ることが出来る。
更に、上述の方法は共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルβを共分散行列Rから算出する際、共分散行列Rの冪乗演算によって最大固有値に対する固有ベクトルを算出し、得られた固有ベクトルを重み付け係数として用いたことを特徴としている。よって、固有ベクトル算出の為に、固有値分解等の複雑な方法ではなく、簡単な積和演算で実現出来、回路規模を小さく出来ることが分かる。
上述した動作を実行するための受信装置の構成例を図2に示す。
図2を参照すると本実施形態の受信装置1000は、アンテナ111、アンテナ112、ミキサ121、ミキサ122、A/D変換器131、A/D変換器132、タップ処理部141、タップ処理部142、局部発振器150、ブラインド処理部160及びダイバーシチ合成部170を有する。
図2において、上側の系統(アンテナ111、ミキサ121、A/D変換器131及びタップ処理部141)がブランチ1である。一方、図2において、下側の系統(アンテナ112、ミキサ122、A/D変換器132及びタップ処理部142)がブランチ2である。なお、ブランチ1及びブランチ2を構成するこれら各部を具体的にどのような回路や部材により実現するかは本実施形態の要旨ではない。各部は任意の方式及び任意の形状により実現することが可能である。また、図2に示すのは本実施形態の説明において特に重要な部分のみであり、フィルタ等の他の構成要素や直交復調用の90度位相成分に関しては図示を省略する。
続いて、受信装置1000が有する各部の動作について説明する。まず、アンテナ111及び112にて信号が受信される。そして、アンテナ111及び112でそれぞれ受信した信号は、波数変換用のミキサ121、ミキサ122に入力される。
周波数変換用のミキサ121、ミキサ122は、局部発振器(local oscillator)150で生成した信号を用いることでアンテナ111及び112から入力された信号をそれぞれダウンコンバートする。なお、図2では1つの局部発振器150を両ブランチで共有する例で書かれているが、ブランチ毎に別々の局部発振器を用いるようにしてもよい。
そして、周波数変換用のミキサ121、ミキサ122でダウンコンバートされた信号は、アナログ−デジタル変換器であるA/D変換器131、132でそれぞれデジタル信号へと変換される。
A/D変換器131、132で変換された信号は、重み付け係数に基づいてウェイトの乗算を行うタップ処理部141、142へそれぞれ入力される。
ここで、本実施形態のブラインド処理部160による重み付け計数の算出について具体的に説明する。
上述した、共分散行列の演算の式[数42]から[数48]の処理を行うのがブラインド160処理部である。式[数42]のXに相当するのが、本実施形態の場合は、
となる。これはブランチ1からブラインド160処理部へ入力される受信信号xとブランチ2からブラインド160処理部へ入力される受信信号xの両受信信号から信号ベクトルXを作ったことに相当する。また、処理の結果である式[数48]は、この具体例の場合は、
となる。これは、上述の説明から受信信号ベクトルXの共分散行列Rの最大固有に対応する固有ベクトルである。ブラインド処理部160の入力は[数50]式のx、xである。また、ブラインド処理部160の出力は、[数51]式のw1、である。
そして、タップ処理部141はブラインド処理部160から送られてきたwを基に
なる演算を行う。
タップ処理部141の出力の同相成分がy1I、直交成分がy1Qである。
また、同様にタップ処理部142はブラインド処理部160から送られてきたw2を基に
なる演算を行う。タップ処理部142の出力の同相成分がy2I、直交成分がy2Qである。
この各タップ処理部によって乗算されたタップ出力は、ダイバーシチ合成部170へ送られる。そして、ダイバーシチ合成部170においてブランチ1と2の信号が合成され、ダイバーシチ処理が完結する。即ち上述の[数7]式に相当する操作が行われることとなる。
具体的に記載すると、
となる。
上述した本実施形態では、固有ベクトルβを重み付け係数として用いているので、ダイバーシチ合成後の信号対雑音電力比(SNR)γが最大となり良好なダイバーシチ利得が得られるという効果を奏する。
なお、ブラインド処理部160に入力する同相成分y1I直交成分y1Qや同相成分y2I直交成分y2Qはモニタ用である。
上述した本実施形態の効果をシミュレーションにより確認した結果が図3に示されている。図3では、縦軸はシンボル誤り率、横軸はアンテナ当たりのSNRで、チャネルは直接波のみの伝搬環境、多値変調として64QAMを使用している。
図3中の「e:本発明の固有ベクトル合成」が本実施形態を用いた場合のシミュレーション結果に相当する。
なお、図3には本実施形態との比較の為、一般的な技術で説明したIP合成法、等化機能を持たせたもの、ダイバーシチ機能が無いもの等の特性も載せている。
具体的に検討すると、それぞれの中で本実施形態を用いた場合の固有ベクトル合成が一番良い特性を示している。
一方、本実施形態に肉薄する「d:IP合成法」は、背景技術として説明した様に多値のQAMの適用には問題がある。そこでこのシミュレーションでは位相が分かっているものと仮定して行った理想状態の特性であり、実現性には問題がある。
しかし、本実施形態の固有ベクトルは完全ブラインド処理で行われている。比較対象「a:ダイバーシチ無し」は、ダイバーシチ無しでCH1のみの場合の特性であり、この特性との比較から本実施形態の固有ベクトル合成eは良好なダイバーシチ利得を有していることがわかる。
他方、比較対象「b:ダイバーシチ無しでLMS等化機能有り」はダイバーシチ無しであって、LMS等化機能がある場合である。このシミュレーション環境は直接波のみで大地反射波等の干渉波が存在しない。従って等化機能を必要としない。同じ比較対象のaと比べて特性が劣化しているのは、等化機能を司るLMSステップサイズμによる適応処理で最適点からのμによる揺らぎの為である。同様のことは、「c:ダイバーシチ有りで、等化機能有り」でも言える。cは、ダイバーシチ有りで、等化機能を有する比較対象である。cは、ダイバーシチ利得を得ているもののμの揺らぎの為に特性が劣化している。
このように、上述したa〜dの何れの方法も本実施形態の固有ベクトル合成eより特性が劣っている。すなわち、本実施形態は一般的な技術と比べて、有利な効果を奏することが分かる。
[実施形態2]
上述した実施形態1の特性は、直接波のみで大地反射波等の干渉波が存在しない伝搬環境での特性である。上述したように実施形態1の固有ベクトル合成のダイバーシチは一般的な技術で説明したIP合成法や等化機能を持たせたものよりも特性が良かった。しかし大地反射波等の遅延干渉波が存在する伝播環境では急激に特性が劣化する。そこで、実施形態2として、白色化処理による特性劣化を緩和する実施形態を説明する。すなわち、実施形態2は、白色化処理により特性劣化を緩和して最大固有値の固有ベクトルにより合成した方式に関するものである。
まず、白色化処理の原理について説明する。
今、各ブランチの受信信号ベクトルをXとする。その共分散行列をRiiとすると、
そこで、
なる修正行列Aにより、例えば
とすると、
となる。即ち、共分散行列Riiを単位行列にするように修正行列Aは作用する。
そこで、受信信号ベクトルXをこの修正行列Aで変換すると、ベクトル
の要素間は無相関となる。例えばブランチ1の修正行列によって変換された受信信号をxとし、ブランチ2の修正行列によって変換された受信信号をxとする。受信信号ベクトルXは、
となる。これは上述のブランチ1の受信信号xとブランチ2の受信信号xから受信信号ベクトルXを作ったことと同じである。これを基にウェイトを計算すると、上述より処理の結果である例えば式[数048]を用いて
が得られる。ダイバーシチ合成後の信号yは
となる。
上述した動作を実行するための構成例を図4に示す。
図4を参照すると、本実施形態の受信装置2000は、アンテナ111、アンテナ112、ミキサ121、ミキサ122、A/D変換器131、A/D変換器132、白色化・タップ処理部211、白色化・タップ処理部212、局部発振器150、ブラインド処理部160及びダイバーシチ合成部170を有する。
図2に示される実施形態1の構成例と共通する符号が振られている部分での処理は上述と同じなので説明を省略する。
一方、本実施形態特有の箇所である白色化・タップ処理部211と白色化・タップ処理部212については、以下説明する。
ブランチ1の白色化・タップ処理部211を代表として説明する。この点、ブランチ2の白色化・タップ処理部212における処理は白色化・タップ処理部211と同様であるので説明を省略する。
ブランチ1の白色化・タップ処理部211は、式[数55]を用いて共分散行列R11を計算する。実際の処理は例えば[数42]を用いれば良い。そして[数56]の関係から修正行列Aを算出する。更に、[数57]を用いて修正行列Aにより変換された受信信号xを算出し、ブラインド処理部160へ送る。ブランチ2も同様である。
ブラインド処理部160は、式[数58]により受信信号ベクトルXを生成して、図2に示される実施形態1の構成例の場合と同様に、最大固有地に対応した固有ベクトルを算出し[数61]として重み付け係数w1及びw2を白色化・タップ処理部211と白色化・タップ処理部212へ送る。
タップ処理部211はブラインド処理部160から送られてきたwを基に
なる演算を行う。タップ処理部212はブラインド処理部160から送られてきたwを基に
なる演算を行う。
この乗算されたタップ出力は、ダイバーシチ合成部170へ送られブランチ1と2の信号が合成されダイバーシチ処理が完結する。即ち上述の[数62]式に相当する操作が行われているのである。具体的に書くと、
となる。
本実施形態では、固有ベクトルβを重み付け係数として用いているので、ダイバーシチ合成後の信号対雑音電力比(SNR)γが最大となり良好なダイバーシチ利得が得られる。
更に、本実施形態では、白色化・タップ処理部211と白色化・タップ処理部212による白色化処理があるので、大地反射波等の遅延干渉波が存在する伝播環境での急激な特性劣化を緩和する効果が期待できる。
上述した本実施形態の効果をシミュレーションにより確認した結果が図5に示されている。図5で、縦軸はシンボル誤り率、横軸は遅延干渉波の遅延時間である。遅延時間が大きくなる程干渉波の影響が厳しい。
図5中の「f:本発明の固有ベクトル合成(白色化有り)」が本実施形態を用いた場合のシミュレーション結果に相当する。
なお、図5には本実施形態との比較の為、一般的な技術で説明したIP合成法、等化機能を持たせたもの、ダイバーシチ機能が無いもの等の特性も載せている。
具体的に検討すると、一般的な技術として紹介した比較対象「d:IP合成法」の場合、干渉波の遅延が少し増えただけで特性が極端に劣化していることが分かる。
また上述の「e:固有ベクトル合成(白色化処理無し)」の場合も特性が極端に劣化している。これに対して本実施形態の「f:本発明の固有ベクトル合成(白色化有り)」の場合、等化機能の有る比較対象
「b:ダイバーシチ無しでLMS等化機能有り」や「c:ダイバーシチ有りで、等化機能有り」には及ばないが、白色化処理により特性劣化を緩和していることが分かる。尚この例はかなり厳しい干渉波を想定した場合であり、後述する様に別の伝搬環境では良好なダイバーシチ効果を得ている。
[実施形態3]
次に、厳しい干渉波が存在する伝搬環境で急激に特性が劣化することについての対策として、実施形態2とは別の白色化処理による特性劣化を緩和する実施形態である実施形態3について説明する。本実施形態では受信信号から干渉波信号を検出する手段を用いる。
すなわち、実施形態3は、白色化処理により特性劣化を緩和して最大固有値の固有ベクトルにより合成した方式(干渉波信号検出手段を用いた場合)に関するものである。
まず、本実施形態での白色化処理の原理について説明する。
上述の式[数1]でSNRγは
となっているが、遅延干渉波が存在する伝播環境では以下のSINR(Signal−to−Interference plus Noise power Ratio)γとして考える必要がある。
ここで、Rは干渉波信号ベクトルXの共分散行列であり以下の式で与えられる。
そこで、
なる修正行列Aにより、
とすると、[数67]の分母は、
となる。
即ち、干渉波信号ベクトルXの共分散行列Rを単位行列になる様に修正行列Aは作用する。干渉波信号ベクトルXをこの修正行列Aで変換すると、ベクトル
の要素間は無相関となる。尚、干渉波信号ベクトルXは雑音成分も含んでいる。
従って、この修正行列Aで変換した後の[数67]は、
ここで、
とすると、
となり、
SINRγを最大化するwは、修正行列Aを用いて共分散行列Rを修正した修正共分散行列
の最大固有値に対応した固有ベクトルとなる。例えば、修正行列Aによって変換された受信信号ベクトルXは、元の受信信号ベクトルをUとすると、
となる。ここでu1はブランチ1の受信信号、u2はブランチ2の受信信号である。従って、
の関係がある。ウェイトは[数74]の最大固有値に対応した固有ベクトルで
とすると、ダイバーシチ合成後の信号yは
となる。
上述した動作を実行するための動作を行っている構成例を図6に示す。
図6を参照すると、本実施形態の受信装置3000は、アンテナ111、アンテナ112、ミキサ121、ミキサ122、A/D変換器131、A/D変換器132、局部発振器150、干渉波信号検出部310及び白色化ブラインド処理部320を有する。
図2に示される実施形態1の構成例と共通する符号が振られている部分での処理は上述と同じなので説明を省略する。
一方、本実施形態特有の箇所である干渉波信号検出部310と白色化ブラインド処理部320については、以下説明する。
干渉波検出部310は各ブランチの受信信号より干渉波を検出する。
干渉波検出部310によって検出された干渉波は信号ベクトルの形に生成して白色化ブラインド処理部320へ送られる。この送られる干渉波信号ベクトルが[数68]のXに相当する。
白色化ブラインド処理部320では入力された干渉波信号ベクトルXを基にして[数68]の演算を行う。実際には[数42]の様な演算を用いても良い。これによって干渉波信号ベクトルから共分散行列Rを得る。
更に、白色化ブラインド処理部320では[数69]の関係より修正行列Aを得る。この修正行列AIは[数70]の関係より共分散行列Rを単位行列にもっていく様に作用することが分かる。白色化ブラインド処理部320には、ブランチ1の受信信号uをA/D変換器131から、ブランチ2の受信信号uをA/D変換器132から得ている。
そして、この受信信号u1及び受信信号u2を受信信号ベクトルUとして統合し、例えば[数42]の様な演算を用いて共分散行列Rを生成する。上の修正行列Aを用いてこの共分散行列Rを[数74]により修正する。これを修正共分散行列と呼ぶことにする。
加えて、白色化ブラインド処理部320は、修正共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを上述と同じ手順により得ると同時に、修正行列Aを用いて受信信号ベクトルUを[数75]により変換し、変換された受信信号ベクトルXを得る。
上記固有ベクトルは式[数77]により重み付け係数として使われるウェイトベクトルWとなる。変換された受信信号ベクトルXとウェイトベクトルWにより式[数78]の演算が行われ、ダイバーシチ合成後の信号yを得て出力してダイバーシチ処理が完結する。
以上の結果、[数73]のSINRを最大化する修正共分散行列の最大固有ベクトルβを重み付け係数として用いているので、ダイバーシチ合成後の信号対干渉波雑音電力比(SINR)γが最大となり、良好なダイバーシチ利得が期待出来る。即ち干渉波信号検出部310と白色化ブラインド処理部320によって、[数67]の分母を白色化してその分子に反映させているので、大地反射波等の遅延干渉波が存在する劣悪な伝播環境でも急激な特性劣化を起こすことがない。
上述した本実施形態の効果をシミュレーションにより確認した結果が図7及び8に示されている。
図7及び8中の「g:本発明の固有ベクトル合成(干渉波信号検出手段を用いた白色化)」が実施形態3を用いた場合のシミュレーション結果に相当する。
加えて、図7及び8では同時に一つ前の構成である実施形態2を用いた場合のシミュレーション結果を「f:本発明の固有ベクトル合成(白色化有り)」として示す。
共に同じ二波モデルによる遅延干渉波の伝搬環境でのシミュレーション結果である。
なお、実施形態1の白色化を用いない固有ベクトル合成では64QAMのコンスタレーションが干渉波に埋もれてしまって特性にならないので図7及び8では図示を省略している。即ち、白色化を用いた実施形態2及び実施形態3は、白色化処理により特性劣化を緩和していることが分かる。
同シミュレーションで使われている二波モデルによる遅延干渉波の様子を詳しく見ることにする。
図9aは図7のシミュレーションで用いた伝搬環境をベクトル表記したものである。同図より直接波成分はブランチ1と2とも同じ方向を示している。一方、直接波成分とは逆に干渉波成分はブランチ1と2で逆相である。但し、ブランチ1の干渉波成分の大きさはブランチ2の0.25倍となっている。
従って干渉波を相殺しようとした場合、第二のタップ要素w2の大きさを第一のタップ要素w1の0.25とすることになる。しかし、このようにすると、ブランチ2の直接波の大きさが減少してダイバーシチ利得が減少する。
図9aの下の表は、その時の比を、シミュレーション値に基づいてSNR毎に観測した値である。同表より、SNRが高いとき、干渉波成分を相殺するように0.25となっているが、SNRが低くなるにつれて0.25より高い値となって、ダイバーシチ利得を得る方向へと作用している。
即ち、白色化処理はただ干渉波成分を相殺する様に作用するだけでなく、ダイバーシチ利得を考慮する様に作用していることが分かる。
図9bは図8のシミュレーションで用いた伝搬環境をベクトル表記したものである。図9bより干渉成分を相殺するには第一のタップ要素の位相と第二のタップ要素の位相の差を大きくすることになる。
シミュレーション結果はSNRが高いうちは位相差をつけて逆相となるが、SNRが低い時はその差が小さくなっていた。しかし、それでも実施形態3の場合、各ブランチの干渉波を相殺する様に作用する。そのため、この例で使われた伝搬環境の場合、実施形態2より特性が劣っているが、より厳しい伝搬環境では逆転して実施形態3の方が特性が良くなる。
[算出の簡略化]
以上では、直接波のみで大地反射波等の干渉波が存在しない伝搬環境での実施形態1の効果や、特性が急激に劣化する大地反射波等の遅延干渉波が存在する伝播環境で白色化処理により特性劣化を緩和する実施形態2や3の効果について説明してきた。ここからは、各構成で用いられてきた最大固有値の固有ベクトルを簡単に算出する方法を説明する。以下で述べる算出方法は、上述した各実施形態で利用することが可能である。
[二つのアンテナによりスペースダイバーシチを実現する際に用いる代数的演算手法]
二つのアンテナによりスペースダイバーシチを実現する際に用いる共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを、共分散行列から算出する代数的演算手法について説明する。
共分散行列Rはエルミート行列だから
とする。この固有値λは、
によって計算出来、
を得る。この内大きい方の固有値λを基に固有ベクトルβを
但し、xは定数であるものとする。
として計算出来る。
何とならば、固有ベクトルβの定義により
で、
となるからである。
[二つのアンテナによりスペースダイバーシチを実現する際に用いる更に簡略化した手法]
式[数79]の共分散行列は更に簡略化出来、受信データが定常なら、
になる。従って、式[数80]の固有値は、
となる。大きい方の固有値を選択するから、当然、
従って、式[数81]の固有ベクトルβは、
但し、xは定数であるものとする。
として計算出来る。
即ち、最大固有値に対応する固有ベクトルを、最大固有値を求めることなく、共分散行列より直接得ることが出来、非常に簡単な処理で実現することが可能となる。
以上の説明では受信装置のアンテナが2つの場合を想定していた。次に、受信装置のアンテナが三つの場合で三次元の行列に対する最大固有値の固有ベクトルを簡単に算出する方法を説明する。
[三つのアンテナによりスペースダイバーシチを実現する際に用いる代数的演算手法]
三つのアンテナによりスペースダイバーシチを実現する際に用いる共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを、共分散行列から算出する代数的演算手法について説明する。
共分散行列Rはエルミート行列だから
とする。この固有値λは、
によって計算出来る。上式を展開すると、
ここで、
とすると、
そこで、
とすると、上式は、
整理していくと、
ここで、式[数91]より、
更に、
であるから、
一方、
従って、[数98]は、
となる。そこで、
と置くと、式[数95]の固有値の条件は、
を得る。ここで、
とすると、f(y)は原点を通る三次特性となる。極値は微分して、
より
の点に有り、その時の値は、
従って、この範囲内
にf(y)があれば、yの取り得る三個の実数の値が存在し、それが[数101]、[数93]の実数による変換を経て固有値となる。
エルミート行列の固有値は必ず実数となるから、根yは実数である必要がある。この範囲外になるとyの取る根は虚数を含むことになるから、エルミート行列の固有値となりえない。[数102]の関係より、f(y)の取る値の絶対値は1以下でなければこの条件は満たされない。従って、端点として
より、左側端点はy=−1、右側端点はy=1となる。
の範囲にあれば全ての固有値が実数となりエルミート行列の固有値となる。これを
なるzで表す。すると、
従って、
を得る。これより、
ここで、nは任意の整数。更に、
とすると、
従って、
となる。固有値λは、
とすると、式[数101]、[数93]より、
であるから、結局三つの固有値λ1、λ2、λ3は、
となる。
この内大きい方の固有値λを基に固有ベクトルβを
但し、xは定数であるものとする。
として計算出来る。
何とならば、固有ベクトルβの定義により
で、
となるからである。ここで、第二要素は受信データの定常性から、
とした。更に第三要素は、式[数90]より、
なる関係を用いた。
更に、上記固有ベクトルが零になる時も考慮しなければならない。その時は、
の第1要素より、
となる。 ・・・(式a)
更に第2要素から、この関係を用いて、
・・・(式b)
更に第3要素から、
・・・(式c)
となる。(これは(式b)と同じ。また固有値の条件から下記の様に(式b)、(式c)を得ることが出来る。)
即ち(式a)を用いて、式[数89]を式[数120]の基に以下の様に書き直す。
そこで、以下の式を固有ベクトルβとして用いる。

の場合)
但し、xは定数であるものとする。
何とならば、固有ベクトルβの定義により
で、
となるからである。ここで、第一要素は上記の条件から、
なる関係を用いた。更に、受信データの定常性から、
である。
更に、第2要素は、(式b)の
を用いた。
更に、第3要素は、[数127]を用いると、
となり、yに対する係数は(式b)より
xに対する係数は(式b)より、
従って、
を用いた。
このように3次の共分散行列に対しても各構成で用いられてきた最大固有値の固有ベクトルを代数的演算によって簡単に算出することが出来る。
以上説明した本発明の実施形態は、以下に示すような多くの効果を奏する。
第1の効果は実際の情報の伝達に何ら寄与しないパイロット信号やリファレンス信号或いはトレーニング信号など伝送効率を低下させる既知の系列を用いることのないブラインド処理で、高速で高次の多値変調を用いる大容量マイクロ波無線通信に厳しい遅延干渉波が存在する周波数選択性フェージング環境下でも、良好なダイバーシチ利得を得ることが出来ることである。
その理由は、白色化処理を用いるからである。
第2の効果はマイクロ波無線受信装置に用いられている固有値ベクトルを得る為に、固有値分解等の複雑な方法ではなく、簡単な積和演算で実現出来、複雑度を削減出来ることである。また、それに伴い回路規模を小さく出来ることである。
その理由は、本発明の実施形態では代数的演算手法を用いるからである。
なお、上述した実施形態は、本発明の好適な実施形態ではあるが、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
また、本発明の実施形態であるマイクロ波無線受信装置は、ハードウェアにより実現することもできるが、コンピュータをそのマイクロ波無線受信装置として機能させるためのプログラムをコンピュータがコンピュータ読み取り可能な記録媒体から読み込んで実行することによっても実現することができる。
また、本発明の実施形態によるマイクロ波無線受信方法は、ハードウェアにより実現することもできるが、コンピュータにその方法を実行させるためのプログラムをコンピュータがコンピュータ読み取り可能な記録媒体から読み込んで実行することによっても実現することができる。
この点、マイクロ波無線受信装置を、装置の全部又は一部として動作させ、あるいは、上述の処理を実行させるためのプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1) 複数のアンテナで受信した受信信号毎に対応するブランチを設け、当該各ブランチの受信信号を合成することによりスペースダイバーシチを実現する無線受信装置において、
前記各ブランチの受信信号を重み付け係数に基づくウェイト処理によりダイバーシチ合成する際に、
前記ウェイト処理対象とする受信信号の受信信号ベクトルから得られた共分散行列が単位行列となる様な修正行列を生成し、当該修正行列によって前記受信信号を変換し、当該変換後の受信信号の受信信号ベクトルから得られた共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを算出し、当該固有ベクトルを前記重み付け係数として前記ダイバーシチ合成を行うことを特徴とする無線受信装置。
(付記2) 複数のアンテナで受信した受信信号毎に対応するブランチを設け、当該各ブランチの受信信号を合成することによりスペースダイバーシチを実現する無線受信装置において、
前記各ブランチの受信信号から干渉波信号を検出する干渉波信号検出部と、
前記干渉波信号から得られた共分散行列が単位行列となる様な修正行列を生成し、前記受信信号の受信信号ベクトルから得られた共分散行列を前記修正行列により修正し、当該修正後の共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを用いて重み付け係数を生成し、当該該重み付け係数に基づくウェイト処理によりダイバーシチ合成を行うブラインド処理部と、
を備えることを特徴とする無線受信装置。
(付記3) 付記1又は2に記載の無線受信装置において、
前記共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルの算出は、当該共分散行列の冪乗演算によって最大固有値に対する固有ベクトルを算出することにより行われることを特徴とする無線受信装置。
(付記4) 付記1又は2に記載の無線受信装置において、
前記共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルの算出は、当該共分散行列から代数的演算によって最大固有値を算出することにより行われることを特徴とする無線受信装置。
(付記5) 付記4に記載の無線受信装置において、
前記アンテナの数は2つであり、
前記共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを該共分散行列から算出する際、
共分散行列Rを
とした時、固有値λを
の如く計算し、この内大きい方の固有値λを基に固有ベクトルβを
但し、xは定数であるものとする、
の如く計算することを特徴とする無線受信装置。
(付記6) 付記4に記載の無線受信装置において、
前記アンテナの数は3つであり、
前記共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを該共分散行列から算出する際、
共分散行列Rを
とした時、
なる変数の元に、あるいは直接的に、
固有値λを
の如く計算し、この内一番大きい固有値λを基に固有ベクトルβを

の場合)
但し、xは定数であるものとする、
或いは、

の場合)
但し、x、yは定数であるものとする、
の如く計算することを特徴とする無線受信装置。
(付記7) 付記4に記載の無線受信装置において、
前記アンテナの数は2つであり、
前記共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを該共分散行列から算出する際、
共分散行列Rを
とした時、固有ベクトルβを
但し、xは定数であるものとする、
の如く計算することを特徴とする無線受信装置。
(付記8) 信号を無線送信する無線送信装置と、前記送信された信号を複数のアンテナにより受信する無線受信装置と、を含んだ無線通信システムにおいて、
前記無線送信装置と前記無線受信装置間の無線通信はブラインド処理を実現した通信方式に準拠しており、
前記無線受信装置は付記1乃至7の何れか1に記載の無線受信装置である、
ことを特徴とする無線通信システム。
(付記9) 複数のアンテナで受信した受信信号毎に対応するブランチを設け、当該各ブランチの受信信号を合成することによりスペースダイバーシチを実現する無線受信装置が行う無線受信方法において、
前記各ブランチの受信信号を重み付け係数に基づくウェイト処理によりダイバーシチ合成する際に、
前記ウェイト処理対象とする受信信号の受信信号ベクトルから得られた共分散行列が単位行列となる様な修正行列を生成し、当該修正行列によって前記受信信号を変換し、当該変換後の受信信号の受信信号ベクトルから得られた共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを算出し、当該固有ベクトルを前記重み付け係数として前記ダイバーシチ合成を行うことを特徴とする無線受信方法。
(付記10) 複数のアンテナで受信した受信信号毎に対応するブランチを設け、当該各ブランチの受信信号を合成することによりスペースダイバーシチを実現する無線受信装置が行う無線受信方法において、
前記各ブランチの受信信号から干渉波信号を検出する干渉波信号検出し、
前記干渉波信号から得られた共分散行列が単位行列となる様な修正行列を生成し、前記受信信号の受信信号ベクトルから得られた共分散行列を前記修正行列により修正し、当該修正後の共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを用いて重み付け係数を生成し、当該該重み付け係数に基づくウェイト処理によりダイバーシチ合成を行う、ことを特徴とする無線受信方法。
(付記11) 複数のアンテナで受信した受信信号毎に対応するブランチを設け、当該各ブランチの受信信号を合成することによりスペースダイバーシチを実現する無線受信装置が行う無線受信方法において、
前記各ブランチの受信信号から干渉波信号を検出する干渉波信号検出ステップと、
前記干渉波信号から得られた共分散行列が単位行列となる様な修正行列を生成し、前記受信信号の受信信号ベクトルから得られた共分散行列を前記修正行列により修正し、当該修正後の共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを用いて重み付け係数を生成し、当該該重み付け係数に基づくウェイト処理によりダイバーシチ合成を行うブラインド処理ステップと、
を備えることを特徴とする無線受信方法。
(付記12) 付記10又は11に記載の無線受信方法において、
前記共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルの算出は、当該共分散行列の冪乗演算によって最大固有値に対する固有ベクトルを算出することにより行われることを特徴とする無線受信方法。
(付記13) 付記10又は11に記載の無線受信方法において、
前記共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルの算出は、当該共分散行列から代数的演算によって最大固有値を算出することにより行われることを特徴とする無線受信方法。
(付記14) 付記13に記載の無線受信方法において、
前記アンテナの数は2つであり、
前記共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを該共分散行列から算出する際、
共分散行列Rを
とした時、固有値λを
の如く計算し、この内大きい方の固有値λを基に固有ベクトルβを
但し、xは定数であるものとする、
の如く計算することを特徴とする無線受信方法。
(付記15) 付記13に記載の無線受信方法において、
前記アンテナの数は3つであり、
前記共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを該共分散行列から算出する際、
共分散行列Rを
とした時、
なる変数の元に、あるいは直接的に、
固有値λを
の如く計算し、この内一番大きい固有値λを基に固有ベクトルβを

の場合)
但し、xは定数であるものとする、
或いは、

の場合)
但し、x、yは定数であるものとする、
の如く計算することを特徴とする無線受信方法。
(付記16) 付記13に記載の無線受信方法において、
前記アンテナの数は2つであり、
前記共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを該共分散行列から算出する際、
共分散行列Rを
とした時、固有ベクトルβを
但し、xは定数であるものとする、
の如く計算することを特徴とする無線受信方法。
本願は、日本の特願2011−166750(2011年7月29日に出願)に基づいたものであり、又、特願2011−166750に基づくパリ条約の優先権を主張するものである。特願2011−166750の開示内容は、特願2011−166750を参照することにより本明細書に援用される。
本発明の代表的な実施の形態が詳細に述べられたが、様々な変更(changes)、置き換え(substitutions)及び選択(alternatives)が請求項で定義された発明の精神と範囲から逸脱することなくなされることが理解されるべきである。また、仮にクレームが出願手続きにおいて補正されたとしても、クレームされた発明の均等の範囲は維持されるものと発明者は意図する。

Claims (10)

  1. 複数のアンテナで受信した受信信号毎に対応するブランチを設け、当該各ブランチの受信信号を合成することによりスペースダイバーシチを実現する無線受信装置において、
    前記各ブランチの受信信号を重み付け係数に基づくウェイト処理によりダイバーシチ合成する際に、
    前記ウェイト処理対象とする受信信号の受信信号ベクトルから得られた共分散行列が単位行列となる様な修正行列を生成し、当該修正行列によって前記受信信号を変換し、当該変換後の受信信号の受信信号ベクトルから得られた共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを算出し、当該固有ベクトルを前記重み付け係数として前記ダイバーシチ合成を行うことを特徴とする無線受信装置。
  2. 複数のアンテナで受信した受信信号毎に対応するブランチを設け、当該各ブランチの受信信号を合成することによりスペースダイバーシチを実現する無線受信装置において、
    前記各ブランチの受信信号から干渉波信号を検出する干渉波信号検出部と、
    前記干渉波信号から得られた共分散行列が単位行列となる様な修正行列を生成し、前記受信信号の受信信号ベクトルから得られた共分散行列を前記修正行列により修正し、当該修正後の共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを用いて重み付け係数を生成し、当該該重み付け係数に基づくウェイト処理によりダイバーシチ合成を行うブラインド処理部と、
    を備えることを特徴とする無線受信装置。
  3. 請求項1又は2に記載の無線受信装置において、
    前記共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルの算出は、当該共分散行列の冪乗演算によって最大固有値に対する固有ベクトルを算出することにより行われることを特徴とする無線受信装置。
  4. 請求項1又は2に記載の無線受信装置において、
    前記共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルの算出は、当該共分散行列から代数的演算によって最大固有値を算出することにより行われることを特徴とする無線受信装置。
  5. 請求項4に記載の無線受信装置において、
    前記アンテナの数は2つであり、
    前記共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを該共分散行列から算出する際、
    共分散行列Rを
    とした時、固有値λを
    の如く計算し、この内大きい方の固有値λを基に固有ベクトルβを
    但し、xは定数であるものとする、
    の如く計算することを特徴とする無線受信装置。
  6. 請求項4に記載の無線受信装置において、
    前記アンテナの数は3つであり、
    前記共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを該共分散行列から算出する際、
    共分散行列Rを
    とした時、
    なる変数の元に、あるいは直接的に、
    固有値λを
    の如く計算し、この内一番大きい固有値λを基に固有ベクトルβを

    の場合)
    但し、xは定数であるものとする、
    或いは、

    の場合)
    但し、x、yは定数であるものとする、
    の如く計算することを特徴とする無線受信装置。
  7. 請求項4に記載の無線受信装置において、
    前記アンテナの数は2つであり、
    前記共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを該共分散行列から算出する際、
    共分散行列Rを
    とした時、固有ベクトルβを
    但し、xは定数であるものとする、
    の如く計算することを特徴とする無線受信装置。
  8. 信号を無線送信する無線送信装置と、前記送信された信号を複数のアンテナにより受信する無線受信装置と、を含んだ無線通信システムにおいて、
    前記無線送信装置と前記無線受信装置間の無線通信はブラインド処理を実現した通信方式に準拠しており、
    前記無線受信装置は請求項1乃至7の何れか1項に記載の無線受信装置である、
    ことを特徴とする無線通信システム。
  9. 複数のアンテナで受信した受信信号毎に対応するブランチを設け、当該各ブランチの受信信号を合成することによりスペースダイバーシチを実現する無線受信装置が行う無線受信方法において、
    前記各ブランチの受信信号を重み付け係数に基づくウェイト処理によりダイバーシチ合成する際に、
    前記ウェイト処理対象とする受信信号の受信信号ベクトルから得られた共分散行列が単位行列となる様な修正行列を生成し、当該修正行列によって前記受信信号を変換し、当該変換後の受信信号の受信信号ベクトルから得られた共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを算出し、当該固有ベクトルを前記重み付け係数として前記ダイバーシチ合成を行うことを特徴とする無線受信方法。
  10. 複数のアンテナで受信した受信信号毎に対応するブランチを設け、当該各ブランチの受信信号を合成することによりスペースダイバーシチを実現する無線受信装置が行う無線受信方法において、
    前記各ブランチの受信信号から干渉波信号を検出し、
    前記干渉波信号から得られた共分散行列が単位行列となる様な修正行列を生成し、前記受信信号の受信信号ベクトルから得られた共分散行列を前記修正行列により修正し、当該修正後の共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを用いて重み付け係数を生成し、当該該重み付け係数に基づくウェイト処理によりダイバーシチ合成を行う、ことを特徴とする無線受信方法。
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