JPWO2013014938A1 - 小型ダクト付きプロペラ及び船舶 - Google Patents
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Abstract
Description
プロペラを覆うタイプの大型ダクトは、ダクトプロペラと呼ばれ、プロペラと一体で荷重度の高い場合に有効な推進器として扱われている。この理由は、プロペラとダクトとの干渉が大きく、この干渉を考慮した性能を推進器として扱う方が合理的だからである。
一方、プロペラ前方のプロペラ直径よりやや小さい中型ダクトは、省エネ装置として扱われ、推進器とは見なされていない。この理由は、ダクトとプロペラの干渉がそれほど大きくなく、むしろ船体とダクトの干渉が大きいからである。
したがって、中型ダクトの性能試験では、船体にダクトを装備したままで抵抗試験を実施する。これはダクトが船体の一部であるという認識に基づく。
特許文献1では、プロペラ直径よりも小さな直径のダクトが開示され、断面形状が内側に凸形状としたダクトが開示されている。
また、特許文献2では、プロペラ直径と同程度の直径のダクトで大型ダクトの概念にも近いものであり、横方向からみた形状が非軸対称形状のダクトであるが、ダクトの断面形状を内側に凸形状とし、凸形状の突出度を、ダクトの上流側において大きくしたダクトが開示されている。
また、特許文献3では、側面視した形状が非軸対称形状のダクトであるが、ダクト後端部の直径がプロペラ直径の50から80%、ダクト後端面とプロペラ外周先端部との水平距離がプロペラ直径の10から30%とすることが開示されている。
また、特許文献4から特許文献7では、側面視した形状が非軸対称形状のダクトであるが、プロペラ直径よりも小さな直径のダクトが開示されている。
また、特許文献7では、プロペラの翼根部でのピッチをやや大きくし、中央部で減少させ、翼端部で再び増加させた推進装置が開示されている。
また、各特許文献に開示された中型ダクトは、効率を支配するプロペラの半径方向の負荷分布を小型のダクトとの干渉を利用して最適化するものではない。また、干渉の期待できる大型ダクトは、キャビテーションの問題があり、プロペラ径の大きい大型船には採用が困難である。
また、特許文献7は、プロペラの翼端部でのピッチを大きくしているため、プロペラの翼端部においてキャビテーションが増加してしまう。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の小型ダクト付きプロペラにおいて、ピッチの最大値を、ピッチの最小値に対して120%以上160%以下としたことを特徴とする。請求項2に記載の本発明によれば、プロペラ中心部での吸い込み効果を高めて最適な負荷分布とすることができる。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の小型ダクト付きプロペラにおいて、ダクトの後端とプロペラの前縁との距離を、プロペラの直径の0.5%以上10%未満としたことを特徴とする。請求項3に記載の本発明によれば、逓減ピッチのプロペラの吸い込み効果により剥離を生じることなくダクトをプロペラに近接させることができ、ダクトとプロペラとの干渉効果を高めることができる。
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3に記載の小型ダクト付きプロペラにおいて、ダクトの断面形状を内側に凸形状とし、凸形状の突出度を、ダクトの上流側において大きくしてキャンバー比を6%以上16%以下としたことを特徴とする。請求項4に記載の本発明によれば、キャンバー比を6%以上16%以下としても、プロペラ中心部での吸い込み効果により、剥離を生じさせることなく、分力として船体を前方に推進する揚力を増加させることができる。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4に記載の小型ダクト付きプロペラにおいて、ダクトを、上流側の内直径よりも下流側の内直径が小さい加速型ダクトとしたことを特徴とする。請求項5に記載の本発明によれば、プロペラ中心部での吸い込み効果と、分力として船体を前方に推進する揚力とを更に高めることができる。
請求項6記載の本発明は、請求項1から請求項5に記載の小型ダクト付きプロペラにおいて、ダクトの中心をプロペラの軸心と一致させたことを特徴とする。請求項6に記載の本発明によれば、非軸対称形のダクトやプロペラ軸とダクトの中心軸をずらしたり、傾斜角を持たせて設置するダクトと比較して、製作や設置が容易で安価に提供できる。
請求項7記載の本発明は、請求項1から請求項6に記載の小型ダクト付きプロペラにおいて、ダクトが支柱を介して船体の船尾管又は船尾管を覆う船体端部に取り付けられたことを特徴とする。請求項7に記載の本発明によれば、流れを前方の全面から取り込み、プロペラとの干渉を強めて効率向上を図れるとともに、ダクトの後付を容易に行うことができる。
請求項8記載の本発明は、請求項1から請求項7に記載の小型ダクト付きプロペラにおいて、ダクトの内面に、プロペラへの流れを対向流化する固定翼を有したことを特徴とする。請求項8に記載の本発明によれば、ダクトに流入した流れは固定翼によってプロペラに対向流として流入することにより、プロペラ効率の一層の向上が図れる。
請求項9記載の本発明は、請求項8に記載の小型ダクト付きプロペラにおいて、支柱が固定翼を兼ね、支柱がプロペラの回転方向と逆方向に捻られていることを特徴とする。請求項9に記載の本発明によれば、支柱により回転流化することにより支柱が固定翼を兼ねることができ、構成が簡素化される。
請求項10記載に対応した船舶においては、請求項1から請求項9のいずれかに記載の小型ダクト付きプロペラを装備したことを特徴とする。請求項10に記載の本発明によれば、荷重度が増加する実海域においてプロペラ効率の高い船舶を提供することができる。
また、本発明の小型ダクト付きプロペラによれば、プロペラの直径の20%以上50%以下のダクトであるため、小型軽量で摩擦抵抗が小さく、低振動、低騒音、低コストでプロペラの効率を高めることができる。
また、ピッチの最大値を、ピッチの最小値に対して120%以上160%以下とした場合には、プロペラ中心部での吸い込み効果を高めて、最適な負荷分布とすることができる。
また、ダクトの後端とプロペラの前縁との距離を、プロペラの直径の0.5%以上10%未満とした場合には、逓減ピッチのプロペラの吸い込み効果により剥離を生じることなくダクトをプロペラに近接させることができ、ダクトとプロペラとの干渉効果を高めることができる。
また、ダクトの断面形状を内側に凸形状とし、凸形状の突出度を、ダクトの上流側において大きくしてキャンバー比を6%以上16%以下とした場合には、キャンバー比を6%以上16%以下としてもプロペラ中心部での吸い込み効果により、剥離を生じることなく、分力として船体を前方に推進する揚力を増加させることができる。
また、ダクトを、上流側の内直径よりも下流側の内直径が小さい加速型ダクトとした場合には、プロペラ中心部での吸い込み効果と、分力として船体を前方に推進する揚力とを更に高めることができる。
また、ダクトの中心をプロペラの軸心と一致させた場合には、非軸対称形のダクトやプロペラ軸とダクトの中心軸をずらしたり、傾斜角を持たせて設置するダクトと比較して、製作や設置が容易で安価に提供できる。
また、ダクトが支柱を介して船体の船尾管又は船尾管を覆う船体端部に取り付けられた場合には、流れを前方の全面から取り込み、プロペラとの干渉を強めて効率向上を図れるとともに、ダクトの後付を容易に行うことができる。
また、ダクトの内面に、プロペラへの流れを対向流化する固定翼を有した場合には、ダクトに流入した流れは固定翼によってプロペラに対向流として流入することにより、プロペラ効率の一層の向上が図れる。
また、支柱が固定翼を兼ね、支柱がプロペラの回転方向と逆方向に捻られている場合には、支柱により回転流化することにより支柱が固定翼を兼ねることができ、構成が簡素化される。
本発明の船舶によれば、特に荷重度が増加する実海域においてプロペラ効率の高い船舶を提供することができる。
1a 船体端部
10 プロペラ
10b 船尾管
11 ボス
20 ダクト
20a、20b、20c、20d 支柱(固定翼)
Dp プロペラの直径
Ddin ダクトの前端の直径
Ddout ダクトの後端の直径
H ピッチ
L ダクトの後端とプロペラの前縁との距離
図1は本発明の実施形態による小型ダクト付きプロペラを装備した船舶の概略構成図、図2(a)は同船舶に用いる小型ダクト付きプロペラの要部を示す一部断面側面図、図2(b)は同図(a)のA−A断面図、図3は同船舶に用いる他の小型ダクト付きプロペラの要部を示す一部断面構成図、図4は同逓減ピッチプロペラと通常プロペラのピッチ分布を示すグラフ、図5は同逓減ピッチプロペラと通常プロペラの流速分布を示すグラフ、図6は同小型ダクト付きプロペラにおけるダクトの後端とプロペラの前縁との距離による流速分布を示すグラフである。
ダクト20は、その断面形状が内側に凸形状23となっており、凸形状23の突出度は、ダクト20の上流側において大きくしている。最大キャンバー位置におけるキャンバー比は、6%以上16%以下としている。一般にはキャンバー比が8%を越えるとダクト20内で剥離を生じるが、本実施の形態で特定した小型のダクト20をプロペラ10の前方に近接させて設け、プロペラ10のピッチを半径方向に減少する逓減ピッチとしているため、プロペラ10中心部での吸い込み効果により8%を越えても剥離を生じることなく揚力を増加させることができる。このようにダクト20を加速型ダクトとし、断面形状を内側に凸形状としてキャンバー比を高くすることにより、流れが加速でき、プロペラ10との干渉を高めることができ,、分力として船体1を前方に推進する揚力も増すことができる。
プロペラ10の直径Dpの20%以上50%以下のダクト20とすることで、小型軽量で摩擦抵抗が小さく、低振動、低騒音、低コストでプロペラ10の効率を高めることができる。
また、ダクト20の幅W(長さ)は、干渉効果を高め、また船尾部への当接や抵抗増加を避けるため、直径Dpに対して20%以上60%以下であることが好ましい。特に、大型船を含めて広く一般の船舶に適用する上では、ダクト20の幅Wは、直径Dpに対して25%以上50%以下であることがより好ましい。
ダクト20を、支柱20a、20b、20c、20dを介して船体1の船尾管10b又は船尾管10bを覆う船体端部1aに取り付けることで、流れを前方の全面から取り込み、プロペラ10との干渉を強めて効率向上を図れるとともに、ダクト20の後付けを容易に行うことができる。これは既存船に後付でダクト20を取り付ける場合に利点が大きいが、新造船に取り付ける場合も、従来のように船体1の外板へ加工を要しないため利点を有している。
支柱は最低2本、最大5本とすることが好ましく、ダクト20の外側に更に支柱を設けることも可能である。
なお、支柱20eはダクト20の外側に設け、ダクト20の内面には流れを回転流化する固定翼を専用に設けてもよいが、支柱20eにより回転流化することにより支柱20eが固定翼を兼ねることができ、構成が簡素化される。
プロペラ10は、ボス11の半径をr1、翼根部を半径r1から半径r2とする。半径Rは1/2Dpであり、Hはピッチである。翼根部は、プロペラ10の直径Dpの20%以上40%以下である。
本実施の形態によるプロペラ10のピッチHは、プロペラ10の翼根部で最大値となり翼端部で最小値となる、半径R方向に減少する逓減ピッチとしている。図4に示す比較例は一定ピッチを示している。
本実施の形態によるプロペラ10のピッチHは、プロペラ10の翼根部(r1からr2)で最大値Hmaxとなり、最大値Hmaxを、ピッチHの最小値Hminに対して推進効率とキャビテーション発生抑制を考慮して120%以上160%以下としている。
Vはプロペラ10の流入側の流速、Vxはプロペラ10の流出側の流速で、V及びVxはいずれも軸方向の流速である。
図5に示すように、本実施の形態では比較例に対して、r1/Rが0.2から0.6において流速分布が向上している。
すなわち図5では、プロペラ10を逓減ピッチとすることにより、プロペラ10の中心付近(翼根部)の流速分布が改善されるため、ダクト20が直径Ddinの小さい小型のダクト20であってもよいことを示唆している。ダクト20を小型化できることにより、プロペラ10の翼根部の流速を増加させ、翼根部におけるプロペラ10のピッチの増加と相まって干渉を高めることができる。また、軽量で低コストでの製作が可能となり、表面積が小さいことから摩擦抵抗の低減にも繋がる。また、小型のダクト20であることにより、相対的に速度の遅いプロペラ10の翼根部の流速を高めるため、キャビテーションの発生を抑制でき、プロペラ10の損傷や振動、騒音の発生が防止できる。さらに、プロペラ10のピッチが、翼根部で最大値となり翼端部で最小値となる半径方向に減少する逓減ピッチであるため、
プロペラ10の翼端部で発生するキャビテーションも抑制できる。
距離Lは、プロペラ10の直径Dpの15%以下において、プロペラ10とダクト20との干渉が顕著に表れており、距離LをDpの10%未満とすることで更にプロペラ10の半径R方向の負荷分布に大きな影響を与えている。また、距離Lを長くしすぎると船体1に当接してしまう。距離LをDpの10%未満とすることで、船体1に当接することを防止し、前方の全面から流れを取り込むことが困難になることを防止できる。
図7は、プロペラの前縁とダクトの後端との距離を変化させた場合とダクトを設けない場合の推進効率を示すグラフ、図8は、プロペラの前縁とダクトの後端との距離を変化させた場合の推力変化を示すグラフである。
また、試験対象船のプロペラ10は、Dp(プロペラ直径)=7m、H/D(0.7R)(ピッチ位置)=0.67、EAR(展開面積比)=0.45、Rake(翼傾斜)=−216.7mm、Z(翼数)=4、Boss Ratio(ボス比)=0.1586、Skew(翼の反り)=20degとし、Dp=0.148559m、H/D(0.7R)=0.67、EAR=0.45、Rake=−4.6mm、Z=4、Boss Ratio=0.1586、Skew=20degをモデルプロペラとして用いた。
本実験は、波浪中における船速低下を模擬するため、回転数一定のまま船速を低下させ、プロペラ荷重度を増加させた状態での自航試験を行った。
実施例1としてプロペラ10の前縁とダクト20の後端22との距離L=Dp×6%、実施例2としてL=Dp×3%、実施例3としてL=Dp×1%を用い、ダクト20を用いないものを比較例として示している。
実施例1から実施例3は、船速比0.75から1までのいずれにおいても比較例よりも推進効率が上回っている。
実施例2は実施例1よりも推力が増加し、実施例3は実施例2よりも推力が増加している。
図8に示すように、プロペラ10の前縁とダクト20の後端22との距離Lは小さいほど推力が増加する。
プロペラを覆うタイプの大型ダクトは、ダクトプロペラと呼ばれ、プロペラと一体で荷重度の高い場合に有効な推進器として扱われている。この理由は、プロペラとダクトとの干渉が大きく、この干渉を考慮した性能を推進器として扱う方が合理的だからである。
一方、プロペラ前方のプロペラ直径よりやや小さい中型ダクトは、省エネ装置として扱われ、推進器とは見なされていない。この理由は、ダクトとプロペラの干渉がそれほど大きくなく、むしろ船体とダクトの干渉が大きいからである。
したがって、中型ダクトの性能試験では、船体にダクトを装備したままで抵抗試験を実施する。これはダクトが船体の一部であるという認識に基づく。
特許文献1では、プロペラ直径よりも小さな直径のダクトが開示され、断面形状が内側に凸形状としたダクトが開示されている。
また、特許文献2では、プロペラ直径と同程度の直径のダクトで大型ダクトの概念にも近いものであり、横方向からみた形状が非軸対称形状のダクトであるが、ダクトの断面形状を内側に凸形状とし、凸形状の突出度を、ダクトの上流側において大きくしたダクトが開示されている。
また、特許文献3では、側面視した形状が非軸対称形状のダクトであるが、ダクト後端部の直径がプロペラ直径の50から80%、ダクト後端面とプロペラ外周先端部との水平距離がプロペラ直径の10から30%とすることが開示されている。
また、特許文献4から特許文献7では、側面視した形状が非軸対称形状のダクトであるが、プロペラ直径よりも小さな直径のダクトが開示されている。
また、特許文献7では、プロペラの翼根部でのピッチをやや大きくし、中央部で減少させ、翼端部で再び増加させた推進装置が開示されている。
また、各特許文献に開示された中型ダクトは、効率を支配するプロペラの半径方向の負荷分布を小型のダクトとの干渉を利用して最適化するものではない。また、干渉の期待できる大型ダクトは、キャビテーションの問題があり、プロペラ径の大きい大型船には採用が困難である。
また、特許文献7は、プロペラの翼端部でのピッチを大きくしているため、プロペラの翼端部においてキャビテーションが増加してしまう。
請求項2記載に対応した小型ダクト付きプロペラにおいては、船体の船尾に取り付けるプロペラと、プロペラの前方に取り付けるダクトとを有する小型ダクト付きプロペラにおいて、ダクトの直径をプロペラの直径の20%以上50%以下とし、プロペラのピッチを、プロペラの翼根部で最大値となり翼端部で最小値となる、半径方向に減少する逓減ピッチとし、ダクトの後端とプロペラの前縁との距離を、プロペラの直径の0.5%以上10%未満としたことを特徴とする。請求項2に記載の本発明によれば、プロペラの直径の20%以上50%以下のダクトであるため、小型軽量で摩擦抵抗が小さく、低振動、低騒音、低コストでプロペラの効率を高めることができる。また、逓減ピッチのプロペラの吸い込み効果により剥離を生じることなくダクトをプロペラに近接させることができ、ダクトとプロペラとの干渉効果を高めることができる。
請求項3記載に対応した小型ダクト付きプロペラにおいては、船体の船尾に取り付けるプロペラと、プロペラの前方に取り付けるダクトとを有する小型ダクト付きプロペラにおいて、ダクトの直径をプロペラの直径の20%以上50%以下とし、プロペラのピッチを、プロペラの翼根部で最大値となり翼端部で最小値となる、半径方向に減少する逓減ピッチとし、ダクトの断面形状を内側に凸形状とし、凸形状の突出度を、ダクトの上流側において大きくしてキャンバー比を6%以上16%以下としたことを特徴とする。請求項3に記載の本発明によれば、プロペラの直径の20%以上50%以下のダクトであるため、小型軽量で摩擦抵抗が小さく、低振動、低騒音、低コストでプロペラの効率を高めることができる。また、キャンバー比を6%以上16%以下としても、プロペラ中心部での吸い込み効果により、剥離を生じさせることなく、分力として船体を前方に推進する揚力を増加させることができる。
請求項4記載の本発明は、請求項2又は請求項3に記載の小型ダクト付きプロペラにおいて、ピッチの最大値を、ピッチの最小値に対して120%以上160%以下としたことを特徴とする。請求項4に記載の本発明によれば、プロペラ中心部での吸い込み効果を高めて最適な負荷分布とすることができる。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4に記載の小型ダクト付きプロペラにおいて、ダクトを、上流側の内直径よりも下流側の内直径が小さい加速型ダクトとしたことを特徴とする。請求項5に記載の本発明によれば、プロペラ中心部での吸い込み効果と、分力として船体を前方に推進する揚力とを更に高めることができる。
請求項6記載の本発明は、請求項1から請求項5に記載の小型ダクト付きプロペラにおいて、ダクトの中心をプロペラの軸心と一致させたことを特徴とする。請求項6に記載の本発明によれば、非軸対称形のダクトやプロペラ軸とダクトの中心軸をずらしたり、傾斜角を持たせて設置するダクトと比較して、製作や設置が容易で安価に提供できる。
請求項7記載の本発明は、請求項1から請求項6に記載の小型ダクト付きプロペラにおいて、ダクトが支柱を介して船体の船尾管又は船尾管を覆う船体端部に取り付けられたことを特徴とする。請求項7に記載の本発明によれば、流れを前方の全面から取り込み、プロペラとの干渉を強めて効率向上を図れるとともに、ダクトの後付を容易に行うことができる。
請求項8記載の本発明は、請求項1から請求項7に記載の小型ダクト付きプロペラにおいて、ダクトの内面に、プロペラへの流れを対向流化する固定翼を有したことを特徴とする。請求項8に記載の本発明によれば、ダクトに流入した流れは固定翼によってプロペラに対向流として流入することにより、プロペラ効率の一層の向上が図れる。
請求項9記載の本発明は、請求項8に記載の小型ダクト付きプロペラにおいて、支柱が固定翼を兼ね、支柱がプロペラの回転方向と逆方向に捻られていることを特徴とする。請求項9に記載の本発明によれば、支柱により回転流化することにより支柱が固定翼を兼ねることができ、構成が簡素化される。
請求項10記載に対応した船舶においては、請求項1から請求項9のいずれかに記載の小型ダクト付きプロペラを装備したことを特徴とする。請求項10に記載の本発明によれば、荷重度が増加する実海域においてプロペラ効率の高い船舶を提供することができる。
また、本発明の小型ダクト付きプロペラによれば、プロペラの直径の20%以上50%以下のダクトであるため、小型軽量で摩擦抵抗が小さく、低振動、低騒音、低コストでプロペラの効率を高めることができる。
また、ピッチの最大値を、ピッチの最小値に対して120%以上160%以下とした場合には、プロペラ中心部での吸い込み効果を高めて、最適な負荷分布とすることができる。
また、ダクトの後端とプロペラの前縁との距離を、プロペラの直径の0.5%以上10%未満とした場合には、逓減ピッチのプロペラの吸い込み効果により剥離を生じることなくダクトをプロペラに近接させることができ、ダクトとプロペラとの干渉効果を高めることができる。
また、ダクトの断面形状を内側に凸形状とし、凸形状の突出度を、ダクトの上流側において大きくしてキャンバー比を6%以上16%以下とした場合には、キャンバー比を6%以上16%以下としてもプロペラ中心部での吸い込み効果により、剥離を生じることなく、分力として船体を前方に推進する揚力を増加させることができる。
また、ダクトを、上流側の内直径よりも下流側の内直径が小さい加速型ダクトとした場合には、プロペラ中心部での吸い込み効果と、分力として船体を前方に推進する揚力とを更に高めることができる。
また、ダクトの中心をプロペラの軸心と一致させた場合には、非軸対称形のダクトやプロペラ軸とダクトの中心軸をずらしたり、傾斜角を持たせて設置するダクトと比較して、製作や設置が容易で安価に提供できる。
また、ダクトが支柱を介して船体の船尾管又は船尾管を覆う船体端部に取り付けられた場合には、流れを前方の全面から取り込み、プロペラとの干渉を強めて効率向上を図れるとともに、ダクトの後付を容易に行うことができる。
また、ダクトの内面に、プロペラへの流れを対向流化する固定翼を有した場合には、ダクトに流入した流れは固定翼によってプロペラに対向流として流入することにより、プロペラ効率の一層の向上が図れる。
また、支柱が固定翼を兼ね、支柱がプロペラの回転方向と逆方向に捻られている場合には、支柱により回転流化することにより支柱が固定翼を兼ねることができ、構成が簡素化される。
本発明の船舶によれば、特に荷重度が増加する実海域においてプロペラ効率の高い船舶を提供することができる。
1a 船体端部
10 プロペラ
10b 船尾管
11 ボス
20 ダクト
20a、20b、20c、20d 支柱(固定翼)
Dp プロペラの直径
Ddin ダクトの前端の直径
Ddout ダクトの後端の直径
H ピッチ
L ダクトの後端とプロペラの前縁との距離
図1は本発明の実施形態による小型ダクト付きプロペラを装備した船舶の概略構成図、図2(a)は同船舶に用いる小型ダクト付きプロペラの要部を示す一部断面側面図、図2(b)は同図(a)のA−A断面図、図3は同船舶に用いる他の小型ダクト付きプロペラの要部を示す一部断面構成図、図4は同逓減ピッチプロペラと通常プロペラのピッチ分布を示すグラフ、図5は同逓減ピッチプロペラと通常プロペラの流速分布を示すグラフ、図6は同小型ダクト付きプロペラにおけるダクトの後端とプロペラの前縁との距離による流速分布を示すグラフである。
ダクト20は、その断面形状が内側に凸形状23となっており、凸形状23の突出度は、ダクト20の上流側において大きくしている。最大キャンバー位置におけるキャンバー比は、6%以上16%以下としている。一般にはキャンバー比が8%を越えるとダクト20内で剥離を生じるが、本実施の形態で特定した小型のダクト20をプロペラ10の前方に近接させて設け、プロペラ10のピッチを半径方向に減少する逓減ピッチとしているため、プロペラ10中心部での吸い込み効果により8%を越えても剥離を生じることなく揚力を増加させることができる。このようにダクト20を加速型ダクトとし、断面形状を内側に凸形状としてキャンバー比を高くすることにより、流れが加速でき、プロペラ10との干渉を高めることができ、分力として船体1を前方に推進する揚力も増すことができる。
プロペラ10の直径Dpの20%以上50%以下のダクト20とすることで、小型軽量で摩擦抵抗が小さく、低振動、低騒音、低コストでプロペラ10の効率を高めることができる。
また、ダクト20の幅W(長さ)は、干渉効果を高め、また船尾部への当接や抵抗増加を避けるため、直径Dpに対して20%以上60%以下であることが好ましい。特に、大型船を含めて広く一般の船舶に適用する上では、ダクト20の幅Wは、直径Dpに対して25%以上50%以下であることがより好ましい。
ダクト20を、支柱20a、20b、20c、20dを介して船体1の船尾管10b又は船尾管10bを覆う船体端部1aに取り付けることで、流れを前方の全面から取り込み、プロペラ10との干渉を強めて効率向上を図れるとともに、ダクト20の後付けを容易に行うことができる。これは既存船に後付でダクト20を取り付ける場合に利点が大きいが、新造船に取り付ける場合も、従来のように船体1の外板へ加工を要しないため利点を有している。
支柱は最低2本、最大5本とすることが好ましく、ダクト20の外側に更に支柱を設けることも可能である。
なお、支柱20eはダクト20の外側に設け、ダクト20の内面には流れを回転流化する固定翼を専用に設けてもよいが、支柱20eにより回転流化することにより支柱20eが固定翼を兼ねることができ、構成が簡素化される。
プロペラ10は、ボス11の半径をr1、翼根部を半径r1から半径r2とする。半径Rは1/2Dpであり、Hはピッチである。翼根部は、プロペラ10の直径Dpの20%以上40%以下である。
本実施の形態によるプロペラ10のピッチHは、プロペラ10の翼根部で最大値となり翼端部で最小値となる、半径R方向に減少する逓減ピッチとしている。図4に示す比較例は一定ピッチを示している。
本実施の形態によるプロペラ10のピッチHは、プロペラ10の翼根部(r1からr2)で最大値Hmaxとなり、最大値Hmaxを、ピッチHの最小値Hminに対して推進効率とキャビテーション発生抑制を考慮して120%以上160%以下としている。
Vはプロペラ10の流入側の流速、Vxはプロペラ10の流出側の流速で、V及びVxはいずれも軸方向の流速である。
図5に示すように、本実施の形態では比較例に対して、r1/Rが0.2から0.6において流速分布が向上している。
すなわち図5では、プロペラ10を逓減ピッチとすることにより、プロペラ10の中心付近(翼根部)の流速分布が改善されるため、ダクト20が直径Ddinの小さい小型のダクト20であってもよいことを示唆している。ダクト20を小型化できることにより、プロペラ10の翼根部の流速を増加させ、翼根部におけるプロペラ10のピッチの増加と相まって干渉を高めることができる。また、軽量で低コストでの製作が可能となり、表面積が小さいことから摩擦抵抗の低減にも繋がる。また、小型のダクト20であることにより、相対的に速度の遅いプロペラ10の翼根部の流速を高めるため、キャビテーションの発生を抑制でき、プロペラ10の損傷や振動、騒音の発生が防止できる。さらに、プロペラ10のピッチが、翼根部で最大値となり翼端部で最小値となる半径方向に減少する逓減ピッチであるため、
プロペラ10の翼端部で発生するキャビテーションも抑制できる。
距離Lは、プロペラ10の直径Dpの15%以下において、プロペラ10とダクト20との干渉が顕著に表れており、距離LをDpの10%未満とすることで更にプロペラ10の半径R方向の負荷分布に大きな影響を与えている。また、距離Lを長くしすぎると船体1に当接してしまう。距離LをDpの10%未満とすることで、船体1に当接することを防止し、前方の全面から流れを取り込むことが困難になることを防止できる。
図7は、プロペラの前縁とダクトの後端との距離を変化させた場合とダクトを設けない場合の推進効率を示すグラフ、図8は、プロペラの前縁とダクトの後端との距離を変化させた場合の推力変化を示すグラフである。
また、試験対象船のプロペラ10は、Dp(プロペラ直径)=7m、H/D(0.7R)(ピッチ位置)=0.67、EAR(展開面積比)=0.45、Rake(翼傾斜)=−216.7mm、Z(翼数)=4、Boss Ratio(ボス比)=0.1586、Skew(翼の反り)=20degとし、Dp=0.148559m、H/D(0.7R)=0.67、EAR=0.45、Rake=−4.6mm、Z=4、Boss Ratio=0.1586、Skew=20degをモデルプロペラとして用いた。
本実験は、波浪中における船速低下を模擬するため、回転数一定のまま船速を低下させ、プロペラ荷重度を増加させた状態での自航試験を行った。
実施例1としてプロペラ10の前縁とダクト20の後端22との距離L=Dp×6%、実施例2としてL=Dp×3%、実施例3としてL=Dp×1%を用い、ダクト20を用いないものを比較例として示している。
実施例1から実施例3は、船速比0.75から1までのいずれにおいても比較例よりも推進効率が上回っている。
実施例2は実施例1よりも推力が増加し、実施例3は実施例2よりも推力が増加している。
図8に示すように、プロペラ10の前縁とダクト20の後端22との距離Lは小さいほど推力が増加する。
Claims (10)
- 船体の船尾に取り付けるプロペラと、前記プロペラの前方に取り付けるダクトとを有する小型ダクト付きプロペラにおいて、
前記ダクトの直径を前記プロペラの直径の20%以上50%以下とし、
前記プロペラのピッチを、前記プロペラの翼根部で最大値となり翼端部で最小値となる、半径方向に減少する逓減ピッチとしたことを特徴とする小型ダクト付きプロペラ。 - 前記ピッチの前記最大値を、前記ピッチの最小値に対して120%以上160%以下としたことを特徴とする請求項1に記載の小型ダクト付きプロペラ。
- 前記ダクトの後端と前記プロペラの前縁との距離を、前記プロペラの直径の0.5%以上10%未満としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の小型ダクト付きプロペラ。
- 前記ダクトの断面形状を内側に凸形状とし、前記凸形状の突出度を、前記ダクトの上流側において大きくしてキャンバー比を6%以上16%以下としたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の小型ダクト付きプロペラ。
- 前記ダクトを、上流側の内直径よりも下流側の内直径が小さい加速型ダクトとしたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の小型ダクト付きプロペラ。
- 前記ダクトの中心を前記プロペラの軸心と一致させたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の小型ダクト付きプロペラ。
- 前記ダクトが支柱を介して前記船体の船尾管又は前記船尾管を覆う船体端部に取り付けられたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の小型ダクト付きプロペラ。
- 前記ダクトの内面に、前記プロペラへの流れを対向流化する固定翼を有したことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の小型ダクト付きプロペラ。
- 前記支柱が前記固定翼を兼ね、前記支柱が前記プロペラの回転方向と逆方向に捻られていることを特徴とする請求項8に記載の小型ダクト付きプロペラ。
- 請求項1から請求項9のいずれかに記載の小型ダクト付きプロペラを装備したことを特徴とする船舶。
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