JPWO2012165586A1 - 脳機能改善剤 - Google Patents

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Abstract

脳機能脳機能本発明は、オキアミ油を有効成分として含有する脳機能改善剤、認知判断能力改善剤及び飲食品を提供する。

Description

本発明は、脳機能改善剤及び脳機能改善用の飲食品に関する。また本発明は、認知判断能力改善剤及び認知判断能力改善用の飲食品に関する。
近年、食品成分が脳機能に及ぼす影響について関心が高まっている。例えば、近赤外線スペクトロスコピー(near−infrared spectroscopy; NIRS)等の非侵襲的な方法を用いて、食品成分が知的作業を遂行している際の脳機能に及ぼす影響について検討が行われている。
脳機能の保護効果に関する報告として、アスタキサンチン及び/又はそのエステルが脳内における活性酸素の発生を抑制することによって脳梗塞を予防するという報告がある(特許文献1)。脳機能の向上に関する報告として、ウイスキーやブランデーに含まれる香気成分が、脳内の血流の上昇を抑制し、語想起課題の遂行時における脳の処理機能を効率化させるという報告がある(特許文献2)。
また、例えば、背景脳波活動や事象関連電位(event−related potential; ERP)等の脳波分析により、食品由来の成分が脳機能に及ぼす影響、特に知的作業を遂行している際の脳機能に及ぼす影響について検討が行われている。
例えば、ドコサヘキサエン酸(DHA)を構成脂肪酸として有するトリグリセリドが健常者や痴呆症患者の事象関連電位の成分であるP300のピーク潜時を早め、認知応答機能を改善することが報告されている(特許文献3)。そして、アラキドン酸又はアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物が認知判断能力の正常応答の低下を予防、改善、又は向上させることが報告されている(特許文献4)。さらに、アスタキサンチン又はそのエステルが認知行動能力を向上させることが報告されている(特許文献5)。
特開2007−314436 特開2006−022036 特開平10−59844 特表2006−502196 特開2010−270095
しかし、課題の遂行時に脳の代謝を促進することによって脳機能を改善させる食品由来の成分は知られていない。本発明は、脳機能改善剤及び脳機能を改善するための食品を提供することを目的とする。
また脂肪酸は、生体及び食品中では主としてトリグリセリド又はリン脂質の構成脂肪酸として存在している。しかし、脂肪酸の存在形態によって、脂肪酸による認知判断能力に及ぼす影響が異なることは知られていない。本発明は、認知判断能力改善剤及び認知判断能力を改善するために摂取される飲食品を提供することを目的とする。
上記の事情に鑑み、本発明者はリン脂質を豊富に含有するオキアミ油に注目した。鋭意検討の結果、オキアミ油を継続的に摂取した対象において脳機能が改善されることを見出した。かかる知見に基づいて、本発明を完成させた。
本発明は以下の(1)〜(4)の脳機能改善剤を提供する。
(1)オキアミ油を有効成分として含有する脳機能改善剤。
(2)オキアミ油がオキアミの熱凝固物を経て精製される、(1)に記載の脳機能改善剤。
(3)オキアミ油の脂肪酸組成に占めるn−3系高度不飽和脂肪酸の割合が5%(w/w)以上である、(1)又は(2)に記載の脳機能改善剤。
(4)オキアミ油を0.02〜400mg/kg体重/日で対象に投与するための、(1)〜(3)のいずれかに記載の脳機能改善剤。
別の側面によれば、本発明は以下の(5)の飲食品を提供する。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の脳機能改善剤を含有する飲食品。
別の側面によれば、本発明は(6)〜(12)の脳機能改善剤を提供する。
(6)高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として有するリン脂質を含有する、脳機能改善剤。
(7)高度不飽和脂肪酸がn−3系高度不飽和脂肪酸である、(6)に記載の脳機能改善剤。
(8)n−3系高度不飽和脂肪酸がエイコサペンタエン酸又はドコサヘキサエン酸である、(7)に記載の脳機能改善剤。
(9)リン脂質の構成脂肪酸に占めるn−3系高度不飽和脂肪酸の割合が5%(w/w)以上である、(7)又は(8)に記載の脳機能改善剤。
(10)リン脂質の構成脂肪酸に占めるエイコサペンタエン酸の割合が4%(w/w)以上である、(8)又は(9)に記載の脳機能改善剤。
(11)リン脂質の構成脂肪酸に占めるドコサヘキサエン酸の割合が3%(w/w)以上である、(8)〜(10)のいずれかに記載の脳機能改善剤。
(12)リン脂質がホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトールからなる群から選ばれる、(6)〜(11)のいずれかに記載の脳機能改善剤。
別の側面によれば、本発明は以下の(13)の飲食品を提供する。
(13)(6)〜(12)のいずれかに記載の脳機能改善剤を含有する飲食品。
別の側面によれば、本発明は、以下の(14)〜(20)の脳機能改善剤、又は飲食品を提供する。
(14)記憶、計算、読書、作文、論述、及び論証からなる群から選ばれる課題を遂行する前又は途中に摂取するための、(1)〜(13)のいずれかに記載の脳機能改善剤、又は飲食品。
(15)試験問題の正答率を高めるための、(1)〜(13)のいずれかに記載の脳機能改善剤、又は飲食品。
(16)脳機能の改善が必要な対象が摂取するための、(1)〜(13)のいずれかに記載の脳機能改善剤、又は飲食品。
(17)知的作業に従事する者が摂取するための、(1)〜(13)のいずれかに記載の脳機能改善剤、又は飲食品。
(18)勤務時間に摂取するための(1)〜(13)のいずれかに記載の脳機能改善剤、又は飲食品。
(19)学校給食として用いる(5)又は(13)に記載の飲食品。
(20)昼食用の(5)又は(13)に記載の飲食品。
別の側面によれば、本発明は、以下の(21)〜(32)の飲食品を提供する。
(21)記憶、計算、読書、作文、論述、及び論証からなる群から選ばれる課題を遂行する前又は途中に摂取するための、オキアミ油を含有する飲食品。
(22)試験問題の正答率を高めるための、オキアミ油を含有する飲食品。
(23)脳機能の改善が必要な対象が摂取するための、オキアミ油を含有する飲食品。
(24)知的作業に従事する者が摂取するための、オキアミ油を含有する飲食品。
(25)勤務時間に摂取するためのオキアミ油を含有する飲食品。
(26)学校給食として用いるオキアミ油を含有する飲食品。
(27)昼食用のオキアミ油を含有する飲食品。
(28)オキアミ油がオキアミの熱凝固物を経て精製される、(21)〜(27)のいずれかに記載の飲食品。
(29)オキアミ油の脂肪酸組成に占めるn−3系高度不飽和脂肪酸酸の割合が5%(w/w)以上である、(21)〜(28)のいずれかに記載の飲食品。
(30)オキアミ油の脂肪酸組成に占めるエイコサペンタエン酸の割合が2%(w/w)以上である、(21)〜(29)のいずれかに記載の飲食品。
(31)オキアミ油の脂肪酸組成に占めるドコサヘキサエン酸の割合が1%(w/w)以上である、(21)〜(30)のいずれかに記載の飲食品。
(32)オキアミ油を0.02〜400mg/kg体重/日で対象に投与するための、(21)〜(31)のいずれかに記載の飲食品。
別の側面によれば、本発明は(33)〜(45)の飲食品を提供する。
(33)記憶、計算、読書、作文、論述、及び論証からなる群から選ばれる課題を遂行する前又は途中に摂取するための、リン脂質を含有する飲食品。
(34)試験問題の正答率を高めるための、リン脂質を含有する飲食品。
(35)脳機能の改善が必要な対象が摂取するための、リン脂質を含有する飲食品。
(36)知的作業に従事する者が摂取するための、リン脂質を含有する飲食品。
(37)勤務時間に摂取するための、リン脂質を含有する飲食品。
(38)学校給食として用いるリン脂質を含有する飲食品。
(39)昼食用のリン脂質を含有する飲食品。
(40)リン脂質が高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として有する、(33)〜(39)のいずれかに記載の飲食品。
(41)高度不飽和脂肪酸がn−3系高度不飽和脂肪酸である、(40)に記載の飲食品。
(42)n−3系高度不飽和脂肪酸がエイコサペンタエン酸又はドコサヘキサエン酸である、(41)に記載の飲食品。
(43)リン脂質の構成脂肪酸に占めるエイコサペンタエン酸の割合が4%(w/w)以上である、(42)に記載の飲食品。
(44)リン脂質の脂肪酸組成に占めるドコサヘキサエン酸の割合が3%(w/w)以上である、(42)又は(43)に記載の飲食品。
(45)リン脂質がホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトールからなる群から選ばれる、(33)〜(44)のいずれかに記載の飲食品。
別の側面によれば、本発明は、以下の(46)の方法を提供する。
(46)(1)〜(45)のいずれかに記載の脳機能改善剤、又は飲食品を摂取することを含む、脳機能の改善方法。
別の側面によれば、本発明は、以下の(47)の使用を提供する。
(47)脳機能を改善するための医薬の製造における、オキアミ油又はリン脂質の使用。
さらに、本発明者はリン脂質を豊富に含有するオキアミ油に注目し、鋭意検討の結果、オキアミ油を継続的に摂取した対象において認知判断能力が改善されることを見出した。かかる知見に基づいて、本発明を完成させた。
本発明は(48)〜(51)の認知判断能力改善剤を提供する。
(48)オキアミ油を有効成分として含有する認知判断能力改善剤。
(49)オキアミ油がオキアミの熱凝固物を経て精製される、(48)に記載の認知判断能力改善剤。
(50)オキアミ油の脂肪酸組成に占めるn−3系高度不飽和脂肪酸の割合が5%(w/w)以上である、(48)又は(49)に記載の認知判断能力改善剤。
(51)オキアミ油を0.02〜400mg/kg体重/日で対象に投与するための、(48)〜(50)のいずれかに記載の認知判断能力改善剤。
別の側面によれば、本発明は(52)の飲食品を提供する。
(52)(48)〜(51)のいずれかに記載の認知判断能力改善剤を含有する飲食品。
別の側面によれば、本発明は(53)〜(59)の認知判断能力改善剤を提供する。
(53)高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として有するリン脂質を含有する、認知判断能力改善剤。
(54)高度不飽和脂肪酸がn−3系高度不飽和脂肪酸である、(53)に記載の認知判断能力改善剤。
(55)n−3系高度不飽和脂肪酸がエイコサペンタエン酸又はドコサヘキサエン酸である、(54)に記載の認知判断能力改善剤。
(56)リン脂質の構成脂肪酸に占めるn−3系高度不飽和脂肪酸の割合が5%(w/w)以上である、(54)又は(55)に記載の認知判断能力改善剤。
(57)リン脂質の構成脂肪酸に占めるエイコサペンタエン酸の割合が4%(w/w)以上である、(55)又は(56)に記載の認知判断能力改善剤。
(58)リン脂質の構成脂肪酸に占めるドコサヘキサエン酸の割合が3%(w/w)以上である、(55)〜(57)のいずれかに記載の認知判断能力改善剤。
(59)リン脂質がホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトールからなる群から選ばれる、(53)〜(58)のいずれかに記載の認知判断能力改善剤。
別の側面によれば、本発明は(60)の飲食品を提供する。
(60)(53)〜(59)のいずれかに記載の認知判断能力改善剤を含有する飲食品。
別の側面によれば、本発明は、(61)〜(67)の認知判断能力改善剤、又は飲食品を提供する。
(61)新たな課題に対して迅速に判断することが求められる作業の前又は作業中に摂取するための、(48)〜(60)のいずれかに記載の認知判断能力改善剤、又は飲食品。
(62)運動前又は運動中に摂取するための、(48)〜(60)のいずれかに記載の認知判断能力改善剤、又は飲食品。
(63)自転車、オートバイ、飛行機、列車、又は自動車等の運転制御を要する乗り物の運転前又は運転中に摂取するための、(48)〜(60)のいずれかに記載の認知判断能力改善剤、又は飲食品。
(64)認知判断能力の改善が必要な対象が摂取するための、(48)〜(60)のいずれかに記載の認知判断能力改善剤、又は飲食品。
(65)勤務時間に摂取するための(48)〜(60)のいずれかに記載の認知判断能力改善剤、又は飲食品。
(66)学校給食用の(52)又は(60)に記載の飲食品。
(67)昼食用の(52)又は(60)に記載の飲食品。
別の側面によれば、本発明は(68)〜(79)の飲食品を提供する。
(68)新たな課題に対して迅速に判断することが求められる作業の前又は作業中に摂取するための、オキアミ油を含有する飲食品。
(69)運動前又は運動中に摂取するためのオキアミ油を含有する飲食品。
(70)自転車、オートバイ、飛行機、列車、又は自動車等の運転制御を要する乗り物の運転前又は運転中に摂取するためのオキアミ油を含有する飲食品。
(71)認知判断能力の改善が必要な対象が摂取するためのオキアミ油を含有する飲食品。
(72)勤務時間に摂取するためのオキアミ油を含有する飲食品。
(73)学校給食用のオキアミ油を含有する飲食品。
(74)昼食用のオキアミ油を含有する飲食品。
(75)オキアミ油がオキアミの熱凝固物を経て精製される、(68)〜(74)のいずれかに記載の飲食品。
(76)オキアミ油の脂肪酸組成に占めるn−3系高度不飽和脂肪酸の割合が5%(w/w)以上である、(68)〜(75)のいずれかに記載の飲食品。
(77)オキアミ油の脂肪酸組成に占めるエイコサペンタエン酸の割合が2%(w/w)以上である、(68)〜(76)のいずれかに記載の飲食品。
(78)オキアミ油の脂肪酸組成に占めるドコサヘキサエン酸の割合が1%(w/w)以上である、(68)〜(77)のいずれかに記載の飲食品。
(79)オキアミ油を0.02〜400mg/kg体重/日で対象に投与するための、(68)〜(78)のいずれかに記載の飲食品。
別の側面によれば、本発明は(80)〜(93)の飲食品を提供する。
(80)新たな課題に対して迅速に判断することが求められる作業の前又は作業中に摂取するための、リン脂質を含有する飲食品。
(81)運動前又は運動中に摂取するための、リン脂質を含有する飲食品。
(82)自転車、オートバイ、飛行機、列車、又は自動車等の運転制御を要する乗り物の運転前又は運転中に摂取するための、リン脂質を含有する飲食品。
(83)認知判断能力の改善が必要な対象が摂取するための、リン脂質を含有する飲食品。
(84)勤務時間に摂取するためのリン脂質を含有する飲食品。
(85)学校給食用のリン脂質を含有する飲食品。
(86)昼食用のリン脂質を含有する飲食品。
(87)リン脂質が高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として有する、(80)〜(86)のいずれかに記載の飲食品。
(88)高度不飽和脂肪酸がn−3系高度不飽和脂肪酸である、(87)に記載の飲食品。
(89)n−3系高度不飽和脂肪酸がエイコサペンタエン酸又はドコサヘキサエン酸である、(88)に記載の飲食品。
(90)リン脂質の構成脂肪酸に占めるn−3系高度不飽和脂肪酸の割合が5%(w/w)以上である、(88)又は(89)に記載の飲食品。
(91)リン脂質の構成脂肪酸に占めるエイコサペンタエン酸の割合が4%(w/w)以上である、(89)又は(90)に記載の飲食品。
(92)リン脂質の構成脂肪酸に占めるドコサヘキサエン酸の割合が3%(w/w)以上である、(89)〜(91)のいずれかに記載の飲食品。
(93)リン脂質がホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトールからなる群から選ばれる、(80)〜(92)のいずれかに記載の飲食品。
別の側面によれば、本発明は(94)の方法を提供する。
(94)(48)〜(93)のいずれかに記載の認知判断能力改善剤、又は飲食品を摂取することを含む、認知判断能力の改善方法。
別の側面によれば、本発明は(95)の使用を提供する。
(95)認知判断能力を改善するための医薬の製造における、オキアミ油又はリン脂質の使用。
本発明によれば、課題遂行中の脳内の酸素化ヘモグロビンが高まり、脳の代謝を促進することによって脳機能を改善させることができる。このような効果は、記憶、計算、読書、作文、論述、論証等の論理的思考が要求される課題を行う際に有効である。さらに、疲労、加齢、又は疾患によって低下した脳機能を回復又は低下を防止する際にも有効である。
さらに本発明によって、新たに与えられた課題に応じて事象関連電位の一つとして現れるP300の潜時を短縮させることができる。例えば、本発明の認知判断能力改善剤又は飲食品を摂取することによって、P300の潜時を摂取前より3ミリ秒以上短縮させることが可能である。P300の潜時の20ミリ秒の相違は、ヒトでの20歳分の課題処理速度の差に相当するといわれている。
即ち、本発明の認知判断能力改善剤又は飲食品を摂取することにより、新たに与えられる課題の処理速度を高めることが可能になるため、スポーツにおける競技能力、乗り物の運転制御における危険回避能力等の向上において有効となる。さらに、疲労、加齢、又は疾患によって低下した認知判断能力を回復又は低下を防止することにおいても有効となる。
NIRSの測定部位を示す図である。1〜24の数字で示した箇所に照射プローブ又は検出プローブを設置した。 2−バックテスト遂行時の脳内での酸素化ヘモグロビンの変化を表す図である。試料摂取12週目の被験者の結果を示す。図中のCh(チャンネル)1〜24は頭部の計測部位を表し、図1に付した番号1〜24の位置にそれぞれ対応する。各チャートの横軸は計測時間、縦軸は酸素化ヘモグロビンに相当する。2−バックテストは450秒間実施した。 試料摂取12週目の被験者の2−バックテスト開始後225.0秒の時点での脳内における酸素化ヘモグロビンを示す図である。酸素化ヘモグロビンを色彩によって表す。酸素化ヘモグロビンは、色彩が赤いほど高く、色彩が青いほど低いことを意味する。 クレペリンテスト遂行時の脳内における酸素化ヘモグロビンの変化を表す図である。試料摂取12週目の被験者の結果を示す。図中のCh(チャンネル)1〜24は頭部の計測部位を表し、図1に付した番号1〜24の位置にそれぞれ対応する。各チャートの横軸は計測時間、縦軸は酸素化ヘモグロビンに相当する。クレペリンテストは300秒間実施した。 試料摂取12週目の被験者のクレペリンテスト開始後150.0秒の時点での脳内における酸素化ヘモグロビンを示す図である。酸素化ヘモグロビンを色彩によって表す。酸素化ヘモグロビンは、色彩が赤いほど高く、色彩が青いほど低いことを意味する。 試料摂取12週目に実施したクレペリンテストでの誤答数を示す図である。MC:中鎖脂肪酸油摂取群、SO:イワシ油摂取群、KO:オキアミ油摂取群。 中鎖脂肪酸油摂取群、イワシ油摂取群、及びオキアミ油摂取群における、Cz領域(A)及びPz領域(B)でのP300の頂点潜時の変化を示す図である。試料摂取後6週及び12週におけるP300の頂点潜時の変化を試料摂取前に対する変化量として示す。●:オキアミ油摂取群、△:イワシ油摂取群、○:中鎖脂肪酸油摂取群。
以下、本発明をより具体的に記載する。
本発明は、オキアミ油を含有する脳機能改善剤を提供する。本発明の脳機能改善剤は有効量のオキアミ油を含有する。ここでいう有効量とは、脳機能を改善させるために必要な量をいう。例えば、1日のオキアミ油の摂取量は、動物の体重1kgあたり、0.02〜400mg/kg、好ましくは10〜200mg/kg、さらに好ましくは16〜100mg/kg、特に好ましくは20〜80mg/kgであり、例えば25〜40mg/kgである。本明細書でいう動物とは、例えば、哺乳動物:ヒト、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ロバ、ラクダ、ラマ、ゾウ、アルパカ、トナカイ(カリブー)、ゼブウ(コブウシ)、スイギュウ、ヤク、モルモット、ウサギ(ラビット)、ミンク、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウ、バリケン、ウズラ、ダチョウ、ドバト、キジ、ウミウ、イヌ、ネコ、ハムスター、モルモット、フェレット、リス、サル等、魚類:タイ、マグロ、ブリ、カンパチ、ヒラマサ、アジ、サバ、スズキ、ウナギ、カレイ、ヒラメ、フグ、サケ、マス、ナマズ、ハタ、バラマンディ、コビア等が含まれる。
特にヒト成人の摂取量は、1日あたり1〜20000mg/50kg体重、好ましくは500〜10000mg/50kg体重、更に好ましくは800〜5000mg/50kg体重、特に好ましくは1000〜4000mg/50kg体重であり、例えば1250〜2000mg/50kg体重である。ヒト成人においてより顕著な脳機能の改善効果を得るためには、摂取量を高くすることが好ましいが、摂取量が高すぎると油っぽくなり、吸収が遅れる、消化不良になる、胃腸がもたれる、摂食を好まなくなる、などの好ましくない性質が生じる。これらの摂取量は1回当たりの摂取量としてもよく、数回、例えば2回又は3回当たりの摂取量としてもよい。また、本発明の脳機能改善剤は、継続して摂取することが好ましい。例えば、7日以上、好ましくは30日以上、より好ましくは90日以上継続して摂取する。
本発明は、オキアミ油を含有する認知判断能力改善剤を提供する。
本発明の認知判断能力改善剤は有効量のオキアミ油を含有する。ここでいう有効量とは、認知判断能力を改善させるために必要な量をいう。例えば、1日のオキアミ油の摂取量は、動物の体重1kgあたり、0.02〜400mg/kg、好ましくは10〜200mg/kg、より好ましくは16〜100mg/kg、特に好ましくは20〜80mg/kgであり、例えば25〜40mg/kgである。
特にヒト成人の摂取量は、1日あたり1〜20000mg/50kg体重、好ましくは500〜10000mg/50kg体重、より好ましくは800〜5000mg/50kg体重、特に好ましくは1000〜4000mg/50kg体重であり、例えば1250〜2000mg/50kgである。ヒト成人においてより顕著な認知判断能力の改善効果を得るためには、摂取量を高くすることが好ましいが、摂取量が高すぎると油っぽくなり、吸収が遅れる、消化不良になる、胃腸がもたれる、摂食を好まなくなる、などの好ましくない性質が生じる。これらの摂取量は1回当たりの摂取量としてもよく、数回、例えば2回又は3回当たりの摂取量としてもよい。また、本発明の認知判断能力改善剤は、継続して摂取することが好ましい。例えば、7〜30日、好ましくは30〜90日、より好ましくは90日以上継続して摂取する。
本明細書でいうオキアミとは、節足動物門甲殻綱軟甲亜綱に属する節足動物であればよく、節足動物門甲殻綱軟甲亜綱ホンエビ上目オキアミ目に属する節足動物、例えばナンキョクオキアミ(Euphausia superba)、節足動物門甲殻綱軟甲亜綱フクロエビ上目アミ目に属する節足動物、例えば日本近海などで漁獲されるアミ類を含む。ただし漁獲量の安定性、脂質成分の均一性の点からナンキョクオキアミが特に好ましい。本明細書でいうオキアミ油は、上記のオキアミから得られるものをいう。
本発明において使用するオキアミ油は公知の製造方法により入手することができる。例えばWO2000/023546A1、WO2009/027692A1、WO2010/035749A1、又はWO2010/035750A1等に記載された公知の方法を参照して製造することができる。少なくとも、当該国際公開公報に記載された方法によって製造することのできるオキアミ油は、本発明において好ましく用いることができる。
本発明において使用するオキアミ油は、例えば上記の国際公開公報に記載された方法に従って、オキアミ由来の原料としての固形分から適切な有機溶媒を用いて抽出することによって調製することができる。適切な有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、クロロホルム、トルエン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の単独あるいは2種以上の組み合わせが挙げられる。その際、溶媒の混合比、あるいは原料と溶媒の比率は任意に設定することができる。
上記オキアミ由来の原料としての固形分は、例えば乾燥物、オキアミミール、生のオキアミ、冷凍のオキアミの他、オキアミ全体又はその部分を圧搾することにより圧搾液を得、この圧搾液を加熱して固形分と水溶性成分を分離させることによって得ることができる。当該圧搾においては、一般的に使用される機器を用いることができ、例えば油圧式圧搾機、スクリュープレス、採肉機、プレス脱水機、遠心分離機等、あるいはこれらの組み合わせを用いることができる。
上記圧搾液は、大気圧条件下、加圧条件下、又は減圧条件下において、50℃以上、好ましくは70〜150℃、特に好ましくは85〜110℃で加熱してもよい。この加熱によって固形分(熱凝固物)と水溶性成分を分離させ、ろ過又は遠心分離等により熱凝固物を得る。当該熱凝固物はさらに、適宜乾燥して用いることができる。乾燥は、熱風乾燥、蒸気を用いる乾燥、高周波・マイクロ波加熱による乾燥、真空・減圧乾燥、凍結融解による乾燥、及び乾燥剤を用いる乾燥のいずれか1つ、又はこれらの組み合わせを用いて行うことができる。乾燥する際に高温になりすぎると酸化した脂質が悪臭を発するので、乾燥は90℃以下、好ましくは75℃以下、より好ましくは55℃以下で行うとよい。乾燥により揮発性の不純物が除去されるため、好ましい。当該熱凝固物又はその乾燥品は、アスタキサンチンを含有するので、本発明に好ましく適用することができる。
さらに、不純物の残存量を下げるための工程を行ってもよい。例えば、上記熱凝固物又はその乾燥品を、水洗いすることによって水溶性成分の濃度を低下させることが挙げられる。水洗いは熱凝固物中又はその乾燥品の乾物重量に対して4倍量、好ましくは10倍量以上の真水又は海水で行うことができる。好ましくは2回以上、より好ましくは3回以上洗浄するとよい。水洗いは、容器に入れた熱凝固物又はその乾燥品に対して注水し、5分以上置いてから、水分を分離することにより行うことができる。熱凝固物又はその乾燥品の形状によっては十分に攪拌することも有効である。また水洗いは、容器に入れた熱凝固物又はその乾燥品を流水で洗うことで行うこともできる。
本発明のオキアミ油は、リン脂質を含有する。当該リン脂質のオキアミ油に占める割合は、下限が10%(w/w)以上、好ましくは20%(w/w)以上、より好ましくは30%(w/w)以上、上限が95%(w/w)以下、好ましくは80%(w/w)以下、より好ましくは60%(w/w)以下であり、例えば10〜95%(w/w)、好ましくは20〜80%(w/w)、より好ましくは30〜60%(w/w)である。
本発明のオキアミ油はn−3系高度不飽和脂肪酸を含有する。当該n−3系高度不飽和脂肪酸の総脂肪酸に占める割合は、下限が5%(w/w)以上、好ましくは10%(w/w)以上、より好ましくは15%(w/w)以上、上限が60%(w/w)以下、好ましくは50%(w/w)以下、より好ましくは30%(w/w)以下であり、例えば5〜60%(w/w)、好ましくは10〜50%(w/w)、より好ましくは15〜30%(w/w)である。
そして、本発明のオキアミ油はn−3系高度不飽和脂肪酸としてEPAを含有する。当該EPAの総脂肪酸に占める割合は、下限が2%(w/w)以上、好ましくは5%(w/w)以上、より好ましくは10%(w/w)以上、上限が40%(w/w)以下、好ましくは30%(w/w)以下、より好ましくは20%(w/w)以下であり、例えば2〜40%(w/w)、好ましくは5〜30%(w/w)、より好ましくは10〜20%(w/w)である。
また、本発明のオキアミ油はn−3系高度不飽和脂肪酸としてDHAを含有する。当該DHAの総脂肪酸に占める割合は、下限が1%(w/w)以上、好ましくは2.5%(w/w)以上、より好ましくは4%(w/w)以上、上限が20%(w/w)以下、好ましくは15%(w/w)以下、より好ましくは10%(w/w)以下であり、例えば、1〜20%(w/w)、好ましくは2.5〜15%(w/w)、より好ましくは4〜10%(w/w)である。
さらに、本発明のオキアミ油はアスタキサンチンを含有する。アスタキサンチンは遊離の状態で存在していても、エステル結合を介して脂質の状態で存在していてもよい。アスタキサンチンのオキアミ油における含有量は、下限として20ppm以上、好ましくは50ppm以上、より好ましくは100ppm以上、上限として1000ppm以下、好ましくは600ppm以下、より好ましくは400ppm以下であり、例えば20〜1000ppm、好ましくは50〜600ppm、より好ましくは100〜400ppmである。
本発明の別の側面によれば、リン脂質を有効成分として含有する脳機能改善剤及び認知判断能力改善剤を提供する。1日のリン脂質の摂取量は、動物の体重1kgあたり、0.008〜160mg/kg、好ましくは0.08〜80mg/kg、より好ましくは1.2〜24mg/kgである。特にヒト成人の場合は、1日あたり0.4〜8000mg/50kg体重、好ましくは4〜4000mg/50kg体重、より好ましくは60〜1200mg/50kg体重である。
リン脂質は、細胞膜を構成する主要成分として知られており、親水性のリン酸部及び疎水性の脂肪酸部を有する。リン脂質は、グリセロール骨格の1位と2位に脂肪酸部を有するジアシルグリセロリン脂質、及びリゾアシルグリセロリン脂質に分けられる。リゾアシルグリセロリン脂質としては、グリセロール骨格の1位のみに脂肪酸部を有する1−アシルグリセロリゾリン脂質、及びグリセロール骨格の2位のみに脂肪酸部を有する2−アシルグリセロリゾリン脂質に分けられる。ジアシルグリセロリン脂質としては、例えばホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルグリセロール(PG)、カルジオリピン(CL)、ホスファチジン酸(PA)、及びそれらの2種以上の混合物、好ましくはPC、PE、PS、PI、PA、及びそれらの2種以上の混合物、特に好ましくはPC、PS、及びそれらの混合物が挙げられる。リゾアシルグリセロリン脂質としては、例えば1−又は2−リゾPC、1−又は2−リゾPE、1−又は2−リゾPS、1−又は2−リゾPI、1−又は2−リゾPG、1−又は2−リゾCL、1−又は2−リゾPA、及びそれらの2種以上の混合物、好ましくは1−又は2−リゾPC、1−又は2−リゾPE、1−又は2−リゾPS、1−又は2−リゾPI、1−又は2−リゾPA、及びそれらの2種以上の混合物、特に好ましくは1−又は2−リゾPC、1−又は2−リゾPS、及びそれらの混合物が挙げられる。本明細書でいうリン脂質は、これらのいずれのリン脂質を包含するが、特に好ましいのはジアシルグリセロリン脂質である。
本発明において使用するリン脂質は、構成脂肪酸として高度不飽和脂肪酸を有する。本明細書でいう高度不飽和脂肪酸とは、二重結合を3つ以上有し、炭素数が18以上、好ましくは20以上の脂肪酸をいう。高度不飽和脂肪酸としては、n−3系高度不飽和脂肪酸が好ましい。本明細書でいうn−3系高度不飽和脂肪酸とは、脂肪酸分子のカルボキシル側とは逆の末端炭素から数えて3番目と4番目の炭素が二重結合している脂肪酸を意味する。そのような脂肪酸として、エイコサペンタエン酸(20:5、EPA)、ドコサペンタエン酸(22:5、DPA)、ドコサヘキサエン酸(22:6、DHA)等が挙げられ、好ましくはEPA、及びDHAである。本発明において使用するリン脂質の構成脂肪酸に占めるn−3系高度不飽和脂肪酸の割合は、下限が5%(w/w)以上、好ましくは10%(w/w)以上、より好ましくは15%(w/w)以上、上限が90%(w/w)以下、好ましくは80%(w/w)以下、より好ましくは70%(w/w)以下であり、例えば5〜90%(w/w)、好ましくは10〜80%(w/w)、より好ましくは15〜70%(w/w)である。
本発明において使用するリン脂質は構成脂肪酸としてEPAを含有する。リン脂質の構成脂肪酸に占めるEPAの割合は、下限が4%(w/w)以上、好ましくは10%(w/w)以上、より好ましくは20%(w/w)以上、上限が60%(w/w)以下、好ましくは50%(w/w)以下、より好ましくは40%(w/w)以下であり、例えば4〜60%(w/w)、好ましくは10〜50%(w/w)、より好ましくは20〜40%(w/w)である。
本発明において使用するリン脂質は構成脂肪酸としてDHAを含有する。リン脂質の構成脂肪酸に占めるDHAの割合は、下限が3%(w/w)以上、好ましくは7.5%(w/w)以上、より好ましくは12%(w/w)以上、上限が40%(w/w)以下、好ましくは30%(w/w)以下、より好ましくは20%(w/w)以下であり、例えば、3〜40%(w/w)、好ましくは7.5〜30%(w/w)、より好ましくは12〜20%(w/w)である。n−3系高度不飽和脂肪酸は流動性が高いため、リン脂質中に多く含まれるほど低温において良好な物性を与える上で有効である。しかしながら、n−3系高度不飽和脂肪酸は未精製の天然素材には多くても60%程度しか含まれず、濃度を高くしようとすると濃縮のためのコストがかかることになる。
本発明のリン脂質はどのような素材から調製してもよい。そのような素材としては、魚介類、動物、卵黄、植物、及び菌類等が挙げられる。具体的にはオキアミ油、魚油、魚抽出物、イカ抽出物、カツオ卵巣抽出物、n−3系高度不飽和脂肪酸を配合した飼料を与えた動物の抽出物又はその動物の卵黄抽出物、アマニ油、遺伝子組み換えをした植物の抽出物等、及びラビリンチュラ類の抽出物等が挙げられる。これらのうち、特にリン脂質を多く含むオキアミ油、イカ抽出物、及びカツオ卵巣抽出物等が好ましい。また、これらの素材そのものを本発明のリン脂質として使用してもよい。当該技術分野において一般的に知られている濃縮、抽出、及び/又は精製、配合等の技術を用いることによって、これらの素材から濃度や純度が任意に調節されたリン脂質を調製することができる。
本発明の別の側面によれば、本明細書で説明する脳機能改善剤を含有する飲食品が提供される。本発明のさらに別の側面によれば、本明細書で説明する認知判断能力改善剤を含有する飲食品が提供される。
本発明の別の側面によれば、オキアミ油を含有する飲食品が提供される。オキアミ油は、脳機能及び/又は認知判断能力を改善させるために有効な量で本発明の飲食品に含有されていればよい。1食あたりのオキアミ油の摂取量は、動物の体重1kgあたり、0.02〜400mg/kg、好ましくは0.2〜200mg/kg、特に好ましくは3〜60mg/kgであり、例えば25〜40mg/kgである。特にヒト成人の場合は、1食あたり1〜20000mg/50kg体重、好ましくは10〜10000mg/50kg体重、特に好ましくは150〜3000mg/50kgであり、例えば1250〜2000mg/50kg体重である。ヒト成人においてより顕著な脳機能及び/又は認知判断能力の改善効果を得るためには、摂取量を高くすることが好ましいが、摂取量が高すぎると油っぽくなり、吸収が遅れる、消化不良になる、胃腸がもたれる、摂食を好まなくなる、などの好ましくない性質が生じる。また、本発明の飲食品は、継続して摂取することが好ましい。例えば、7日以上、好ましくは30日以上、より好ましくは90日以上継続して摂取する。
本発明の別の側面によれば、リン脂質を含有する飲食品が提供される。リン脂質は脳機能及び/又は認知判断能力を改善させるために有効な量で飲食品に含有されていればよい。1食あたりのリン脂質の摂取量は、動物の体重1kgあたり、0.008〜160mg/kg、好ましくは0.08〜80mg/kg、より好ましくは1.2〜24mg/kgである。特にヒト成人の場合は、1食あたり0.4〜8000mg/50kg体重、好ましくは4〜4000mg/50kg体重、より好ましくは60〜1200mg/50kg体重である。
本発明の脳機能改善剤及び飲食品は、脳機能を改善させるために用いることができる。本明細書でいう脳機能の改善とは、課題遂行中の脳機能の向上、回復、維持、及び低下の防止等を意味する。例えば、本発明の脳機能改善剤又は飲食品を摂取することにより次の効果を得ることができる:
脳機能が増強されることによって課題の処理能力が高まること;
疲労により低下した脳機能を回復させ、正常な状態に戻すこと;
加齢によって低下した脳機能を回復させることによって若返りを促進すること;
加齢による脳機能の低下を防止することにより衰えを防止すること;又は
疾患によって低下した脳機能を回復させることにより疾患を治療又は症状を軽減し、社会生活への復帰を促進すること等が挙げられる。ここで、本明細書でいう疾患とは、認知症、痴呆性疾患、鬱病等の精神疾患等をいう。
本発明の認知判断能力改善剤及び飲食品は、認知判断能力を改善させるために用いることができる。本明細書でいう認知判断能力の改善とは、認知判断能力の増強、回復、維持、及び低下の防止等を意味する。例えば、本発明の認知判断能力改善剤又は飲食品を摂取することにより、以下の効果を得ることができる:
認知判断能力が増強されて課題の処理速度が高まること;
疲労により低下した認知判断能力が回復して正常な状態に戻ること;
加齢によって低下した認知判断能力を回復させることによって若返りを促進すること;
加齢による認知判断能力の低下を防ぐことにより衰えを防止すること;又は
疾患によって低下した認知判断能力を回復させることにより疾患を治療又は疾患の症状を軽減し、社会生活への復帰を促進すること等が挙げられる。ここで、本明細書でいう疾患とは、認知症、痴呆性疾患、神経変性疾患等をいう。
本発明の脳機能改善剤、認知判断能力改善剤又は飲食品は、健常人が日常的に摂取する飲食品又は疾患を有する人が摂取する飲食品、例えば、肉、穀物、野菜、魚類、果物、及び乳等を原料とするインスタント食品や冷凍食品等の加工食品、酒飲料、茶飲料、清涼飲料水等の飲料、又は特定の目的で摂取される、健康食品、特定保健用食品、機能性食品、栄養機能食品、特別用途食品、病院食等に適用することができる。
本発明の脳機能改善剤、認知判断能力改善剤及び飲食品は、いずれの年齢層のヒトに対しても適用することができる。例えば、乳児(0〜1歳未満)、幼児(1〜6歳未満)、子供(6〜20歳未満)、大人(20〜65歳未満)、及び高齢者(65歳以上)に適用することができるが、より好ましくは乳児、幼児、及び高齢者に適用することができる。
本発明の脳機能改善剤ついて本明細書でいう課題としては、論理的な思考を持続して行うことが要求される知的作業が挙げられる。そのような課題として、論理的思考が求められる記憶、計算、読書、作文、論述、論証、創作等を挙げることができる。本発明の脳機能改善剤及び飲食品は、このような課題を遂行している脳の機能を改善させることができる。具体的な使用態様としては、例えば、試験問題の正答率を高めるために摂取する脳機能改善剤及び飲食品、疲労、加齢等で低下した脳機能を回復させるための脳機能改善剤及び飲食品、疾患に起因する脳機能の低下を抑制、又はそのような疾患によって低下した脳機能を回復させるために、これらの疾患を有する患者が摂取する脳機能改善剤及び飲食品、知的作業従事者が摂取するための脳機能改善剤又は飲食品、及び学校給食に使用するための飲食品等が挙げられる。
本発明の認知判断能力改善剤及び飲食品は、新たな課題に対して迅速に判断することが求められる作業において特に好ましく適用できる。具体的な使用態様としては、例えば、野球、サッカー、テニス、卓球、バスケットボール、スキー、ラグビー、アメリカンフットボール、空手、ボクシング等のスポーツにおいて、相手より先に認知判断するためにスポーツ選手が摂取する認知判断能力改善剤又は飲食品;自転車、自動車、飛行機、列車又はオートバイ等の運転制御を要する乗り物の運転において交通状況の変化を素早く察知し、交通事故を回避し、安全に目的地に到達するためにドライバー又は運転助手が摂取する認知判断能力改善剤又は飲食品、;アクションゲーム、シューティングゲーム等のテレビゲームにおいて好成績を出すためにゲームのプレーヤーが摂取する認知判断能力改善剤又は飲食品;危険を素早く回避することにより転倒や衝突等による怪我を回避し、健全な生活を送るために、疲労又は加齢等により認知判断の速度が低下した人が摂取する認知判断能力改善剤又は飲食品;及び疾患に起因する認知判断能力の低下を抑制、又は疾患によって低下した認知判断能力を回復させるために、これらの疾患を有する患者が摂取する認知判断能力改善剤又は飲食品等が挙げられる。
上記の具体的態様において、本発明の脳機能改善剤、認知判断能力改善剤又は飲食品は、所定の行為の前、途中のいずれで摂取しても有効である。また、本発明の脳機能改善剤、認知判断能力改善剤及び飲食品は、使用態様に応じて適切な形状にすることができる。例えば、シート、カプセル、錠剤、チュワブル、スティック、ブロック、液状、懸濁液、シロップ、ペースト、顆粒(ドライシロップを含む)、カプセル(軟カプセル、硬カプセル)、粉末等が挙げられる。
本発明の脳機能改善剤及び飲食品の包装容器、製品の説明書、製品パンフレットに、脳機能を改善する旨の表示を付して、本発明の脳機能改善剤又は飲食品を販売することは、本発明の範囲に含まれる。具体的な一態様として、本発明の脳機能改善剤又は飲食品の包装容器、製品の説明書、製品パンフレットに、思考力、読解力、計算能力、創作力、又は記憶能力を改善する;疲労、加齢、疾患によって低下した脳機能を改善する等の表示を付して、本発明の脳機能改善剤又は飲食品を販売することが挙げられる。
さらに、テレビコマーシャル、広告、又は雑誌等に脳機能を改善する旨の表示を付して、本発明の脳機能改善剤及び飲食品を宣伝することも本発明の範囲に含まれる。具体的な一態様として、テレビコマーシャル、広告、又は雑誌等に思考力、読解力、計算能力、創作力、又は記憶能力を改善する;疲労、加齢、疾患によって低下した脳機能を改善する表示を付して、本発明の脳機能改善剤及び飲食品を宣伝することが挙げられる。
本発明の認知判断能力改善剤及び飲食品の包装容器、製品の説明書、製品パンフレットに、認知判断能力を改善する旨の表示を付して、本発明の認知判断能力改善剤又は飲食品を販売することは、本発明の範囲に含まれる。具体的な態様として、本発明の認知判断能力改善剤又は飲食品の包装容器、製品の説明書、製品パンフレットに、スポーツ、自転車の運転、オートバイの運転、自動車の運転、飛行機の操縦、列車の運転、及びテレビゲームにおける認知判断能力を改善する;疲労、加齢、疾患によって低下した認知判断能力を改善する等の表示を付して、本発明の認知判断能力改善剤又は飲食品を販売することが挙げられる。
さらに、テレビコマーシャル、広告、又は雑誌等に認知判断能力を改善する旨の表示を付して、本発明の認知判断能力改善剤及び飲食品を宣伝することも本発明の範囲に含まれる。具体的な態様として、テレビコマーシャル、広告、又は雑誌等にスポーツ、自転車、オートバイ、自動車、飛行機、列車等の運転制御を要する乗り物の運転、及びテレビゲームにおける認知判断能力を改善する;疲労、加齢、疾患によって低下した認知判断能力を改善する等の表示を付して、本発明の認知判断能力改善剤又は飲食品を宣伝することも、本発明の範囲に含まれる。
本発明の脳機能改善剤、認知判断能力改善剤及び飲食品は、オキアミ油を含有するオキアミ由来の成分、例えば、オキアミの粉砕物、オキアミミール、オキアミの剥き身等を含有してもよい。さらに、オキアミ油に含まれる他の成分、例えばアスタキサンチン、ステロール等を含有していてもよい。アスタキサンチンは、カニやエビなどの甲殻類に一般的に見出されるカロテノイドに属する化合物である。アスタキサンチンは遊離の状態で存在していても、エステル結合を介した脂質の状態で存在していてもよい。また、アスタキサンチンを遊離状態で下限として1ppm以上、好ましくは5ppm以上、より好ましくは10ppm以上、上限として10000ppm以下、好ましくは5000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、例えば1〜10000ppm、好ましくは5〜5000ppm、より好ましくは10〜1000ppmで上記の脳機能改善剤、認知判断能力改善剤及び飲食品に別途添加してもよい。
アスタキサンチンは内在性の抗酸化剤として高度不飽和脂肪酸の安定化に寄与するため、好ましい。ただし、アスタキサンチンの濃度が高すぎると色や風味の点で問題が生じやすくなる。ステロールは脂質の流動性に寄与するため、上記の脳機能改善剤、認知判断能力改善剤及び飲食品の吸収性を高めることができる。
本発明の別の側面によれば、本発明は、脳機能改善剤又は脳機能改善用飲食品をヒトに投与することを含む、脳機能の改善方法を提供する。
本発明による脳機能の改善効果は、様々な方法によって評価することができる。脳機能と脳内の酸素化ヘモグロビンとの関係については、脳内の酸素化ヘモグロビンが計算課題の遂行に応じて上昇すること、そして酸素化ヘモグロビンの上昇の程度が課題の形式や複雑さに依存することが報告されている(Melany M., et al., J. Neural Transm (2009) 116:267-273)。さらに、脳の賦活マーカーとして酸素化ヘモグロビンが最も敏感であり、信頼できるパラメーターであることが報告されている(福田正人、MEDIX VOL.39)。
従って、本発明による脳機能の改善効果は、例えば、脳内の酸素化ヘモグロビンを指標として評価することができる。酸素化ヘモグロビンの測定は、近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用いて測定することができる。NIRSの原理を以下に説明する。頭皮上に配置した照射プローブから、頭蓋に向けて約2mWの弱い近赤外光を照射すると、光は組織内で散乱・吸収を繰り返し、頭皮下約20〜30mm深部にある大脳皮質に到達し、再び頭皮上に戻ってくる。照射位置から30mm離れた位置に配置した検出プローブで計測される反射光(乱反射して戻ってくる光)は、組織中の血液量の変化によって影響を受ける。近赤外光は脳組織を通過する間にヘモグロビンにより吸収されるが、血液中の酸素化ヘモグロビンと還元型ヘモグロビンは近赤外領域に異なる吸収スペクトルを持つことから、2つの近赤外光(695nm、830nm)を用いて、酸素化ヘモグロビンの変化を計測する。
本発明における課題遂行中の酸素化ヘモグロビンの計測法の一態様として、記憶課題(2−バックテスト)を被験者に課し、課題遂行中の被験者の前頭部及び前側頭部の酸素化ヘモグロビンを計測することが挙げられる。記憶課題として、1〜9の数字をランダムにモニターに表示させ、偶数が表示された2つ後に“3”が表示された場合にのみ、直ちにボタンを押すように被験者に指示する(2−バックテスト)。酸素化ヘモグロビンの計測は、一定環境下において、所定の位置に照射プローブ又は検出プローブが装着されたプローブホルダーを被験者の前頭部及び前側頭部を覆うように左右対称に配置し、NIRSを用いて計測する。
本発明における課題遂行中の酸素化ヘモグロビンの計測法の別の態様として、計算課題(クレペリンテスト)を被験者に課し、課題遂行中の被験者の側頭部の酸素化ヘモグロビンを計測することが挙げられる。クレペリンテストにおいては、速く且つ正確に隣り合う数字の加算を行い1の位の数字を記載するように指示する。酸素化ヘモグロビンの計測は、一定環境下において、所定の位置に照射プローブ又は検出プローブが装着されたプローブホルダーを被験者の前頭部及び前側頭部を覆うように左右対称に配置し、NIRSを用いて計測する。
脳が活動するにはグルコースと酸素の供給が不可欠である。特に脳が課題を遂行するためには、課題の遂行に関与する脳の部位にグルコースと酸素が供給されることが不可欠である。酸素はヘモグロビンと結合した形態、即ち酸素化ヘモグロビンとして脳に供給される。本発明によれば脳内の酸素化ヘモグロビンを上昇させることができるので、脳代謝を活性化することができる。従って、本発明の別の側面によれば、脳内の酸素化ヘモグロビンの上昇による、脳代謝活性剤、及び脳代謝を活性化するための飲食品が提供される。さらに、本発明の別の側面によれば、課題遂行時における脳代謝活性剤、及び脳代謝を活性化するための飲食品が提供される。
また、酸素化ヘモグロビンは血流を介して脳に運ばれ、脳の活動状況に応じて必要な部位に供給される。このことから、課題遂行においては、全体的な循環改善では足りない。従って、本発明の別の側面によれば課題遂行における脳循環改善剤及び脳循環を改善するための飲食品が提供される。
本発明の別の側面によれば、本発明は、認知判断能力改善剤又は認知判断能力改善用飲食品をヒトに投与することを含む、認知判断能力の改善方法を提供する。
本発明による認知判断能力の改善効果は、様々な方法によって評価することができる。例えば、事象関連電位を計測することによって評価できる。事象関連電位とは、脳における認知ないし情報処理の態様が電気生理学的に表されたものをいう。事象関連電位を構成する成分の一つとしてP300が知られている。P300は、視覚、触覚、聴覚、嗅覚、及び味覚等の刺激の種類に係わらず、刺激が提示された後約300ミリ秒で出現する成分であり、認知文脈の更新過程を反映する。即ち、P300は、一旦形成された情報処理の流れを、新たに入力された情報に対応して変化させるというプロセスを反映する成分であるといわれている。
P300は潜時と振幅によって評価される。潜時は課題の処理速度を意味し、潜時が短いほど処理速度が高いことを意味する。即ち、潜時は新たな課題を認知判断するために要する時間を反映する。一方、振幅は課題を遂行するために利用できる処理資源の大きさ、即ち処理能力を表し、振幅が大きいほど課題の遂行能力が高いことを意味する。従って、本明細書でいう課題とは、事象関連電位においてP300を出現させるような刺激を脳に与えるいずれの課題を包含する。
P300の潜時が加齢や神経変性疾患によって延長されること(Y. Hirayasu et al., Clinical Neurophysiology, 111 (2000), 187-194)、さらにP300の潜時が知的遂行力、作業記憶能力、及び、健常人及び神経変性疾患の患者における課題の処理速度と関連があることが知られている(Emmerson et al., Exp Aging Res, 1989, 15:151-159; O'Donnell et al., Int J Psychophysiol, 1992, 12:187-195; O'Donnell et al., Int J Psychophysiol, 1992,12:187-195)。即ち、認知判断能力を評価する指標としてP300の潜時は広く利用されている。
従って、本発明においては、P300の潜時の変化を指標として、認知判断能力の改善効果を評価する。本発明における課題遂行中の事象関連電位の計測法の一態様として、記憶課題を被験者に課し、課題遂行中の被験者の脳波を計測し、脳波の変化を観察する。記憶課題として、1〜9の数字をランダムの順序でモニターに表示させ、偶数が表示された2つ後に“3”が表示された場合にのみ、直ちにボタンを押すように被験者に指示する(2−バックテスト)。事象関連電位の計測は、一定環境下において、国際10−20法で定められた頭皮上の部位に計測電極を装着し、連結両耳朶を基準として導出する。刺激提示前から提示後の一定区間について、事象関連電位の波形を計測し、P300の頂点潜時及びその振幅を求める。
以上のことから、本発明は、認知判断能力改善剤又は飲食品をヒトに投与することを含む、認知判断能力の改善方法を提供することができる。
本発明の脳機能改善剤、認知判断能力改善剤又は飲食品は、必要に応じ、従来公知の脳機能及び/又は認知判断能力の改善に有効な成分、例えば、イチョウ葉エキス、L-カルニチン、メラトニン、コエンザイムQ10、αリポ酸、核酸、霊芝、セラミド、ブドウ種子エキス、ポリフェノール類、松樹皮抽出物、グルコサミン、ハープーシーオイル、ヤマブシタケ、明日葉、ニンニク抽出物、冬虫夏草、ウコン、マカ、カシス抽出物、アスタキサンチン、GABA、αグリセルホスホコリン、アラキドン酸、及びテアニン等と組み合わせて用いてもよい。特にアラキドン酸との組み合わせはn−3系脂肪酸及びn−6系脂肪酸との配合バランスを調整する観点から好ましい。また、必要に応じ、従来公知の着色剤、保存剤、香料、風味剤、コーティング剤、抗酸化剤、ビタミン、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、及びミネラル分(鉄、亜鉛、マグネシム、ヨード等)等の成分を含有していてもよい。
ここで、抗酸化剤の例としては、トコフェロール、乾燥酵母、グルタチオン、リポ酸、ケルセチン、カテキン、コエンザイムQ10、エンゾジノール、プロアントシアニジン類、アントシアニジン、アントシアニン、カロチン類、リコピン、フラボノイド、リザベラトロール、イソフラボン類、亜鉛、メラトニン、イチョウ葉、月桃葉、ハイビスカス、ビタミンC群又はそれらの抽出物が挙げられる。
具体的態様として、トコフェロールは、1日の摂取量が0.50〜650mg/kg体重、好ましくは5〜500mg/kg体重、より好ましくは50〜300mg/kg体重となるように配合される。
別の具体的態様として、カテキンは、1日の摂取量が1〜5000mg/kg体重、好ましくは10〜3000mg/kg体重、より好ましくは100〜1000mg/kg体重となるように配合される。
別の具体的態様として、ビタミンC群は、1日の摂取量が1〜1000mg/kg体重、好ましくは10〜800mg/kg体重、より好ましくは100〜500mg/kg体重となるように配合される。
ビタミンの例としては、ビタミンA群(例えば、レチナール、レチノール、レチノイン酸、カロチン、デヒドロレチナール、リコピン、及びそれらの塩)、ビタミンB群(例えば、チアミン、チアミンジスルフィド、ジセチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、プロスルチアミン、ベンフォチアミン、フルスルチアミン、リボフラビン、フラビンアデニンジヌクレオチド、ピリドキシン、ピリドキサール、ヒドロキソコバラミン、シアノコバラミン、メチルコバラミン、デオキシアデノコバラミン、葉酸、テトラヒドロ葉酸、ジヒドロ葉酸、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチニックアルコール、パントテン酸、パンテノール、ビオチン、コリン、イノシトール、パンガミン酸及びそれらの塩、ビタミンC群(アスコルビン酸及びその誘導体、エリソルビン酸及びその誘導体、及び薬理学的に許容されるそれらの塩)、ビタミンD群(例えば、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、ヒドロキシコレカルシフェロール、ジヒドロキシコレカルシフェロール、ジヒドロタキステロール、及び薬理学的に許容されるそれらの塩)、ビタミンE群(例えば、トコフェロール及びその誘導体、ユビキノン誘導体及びそれらの薬理学的に許容される塩)、その他のビタミン(例えば、カルニチン、フェルラ酸、γ−オリザノール、オロチン酸、ルチン(ビタミンP)、エリオシトリン、ヘスペリジン、及び薬理学的に許容されるそれらの塩が挙げられる。
アミノ酸の例としては、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、トレオニン、アラニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、グリシン、アスパラギン、アスパラギン酸、セリン、グルタミン、グルタミン酸、プロリン、チロシン、システイン、ヒスチジン、オルニチン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、グリシルグリシン、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、シスチン、又は薬理学的に許容されるそれらの塩が挙げられる。
本発明は、医薬組成物、機能性食品、健康食品、サプリメント等に適した形態、例えば顆粒剤(ドライシロップを含む)、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)、錠剤(チュアブル剤などを含む)、散剤(粉末剤)、丸剤などの各種の固形製剤、又は内服用液剤(液剤、懸濁剤、シロップ剤を含む)などの液状製剤などの形態で調製してもよい。
製剤化のための添加物としては、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤、分散剤、湿潤剤、防腐剤、粘稠剤、pH調整剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、溶解補助剤が挙げられる。また、液剤の形態にする場合は、ペクチン、キサンタンガム、グアガムなどの増粘剤を配合することができる。また、コーティング剤を用いてコーティング錠剤にしたり、ペースト状の膠剤とすることもできる。さらに、他の形態に調製する場合であっても、従来の方法に従えばよい。
以下に示す実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
[実施例1] オキアミ油の製造
ナンキョクオキアミ(10t)を漁獲直後に採肉機(バーダー社製、型式BAADER605)にて圧搾し、圧搾液(3t)を得た。この圧搾液を800kgずつステンレスタンクに収納し、140℃の水蒸気を直接投入することにより加熱した。約60分の加熱において85℃達温を確認して加熱を停止した。タンク底部のバルブを開放し、目合い2mmメッシュを通過する液状成分を自然落下により除去した。固形分(熱凝固物)を同量の水でシャワリングすることにより洗浄した後、アルミ製のトレイに12kgずつ収納してコンタクトフリーザにより急速冷凍した。得られた凝固物の総重量は2.25tであった。
当該冷凍品(1t)を水(3000リットル)に投入し、これを撹拌しながら加熱して65℃に達温後10分保持した。24メッシュナイロンを用いて水切りし、固形分を3000リットルの水(20℃)に投入した。15分の撹拌後、24メッシュナイロンにて水切りし、さらに遠心脱水機(タナベ製遠心分離機 O−30、15秒)で処理して水分73%程度の固形分を得た。この固形分にトコフェロール0.3%を添加し、ミキサーでよく混和し、熱風温度70〜75℃にて3.2時間乾燥し、洗浄・乾燥物を得た(170kg)。同様にして他の冷凍品を処理した。
当該洗浄・乾燥物(300kg)に99%エタノール(1200リットル)を添加し、60℃に加温して2時間撹拌した。その後ナイロンの100メッシュを用い自然落下法により固液分離して抽出液A及び抽出粕Aを得た。抽出粕Aに99%エタノール(800リットル)を添加し、60℃に加温して2時間撹拌後ナイロン100メッシュを用いて固液分離し、抽出液B及び抽出粕Bを得た。抽出粕Bに99%エタノール(700リットル)を添加し、60℃に加温して2時間撹拌後ナイロン100メッシュを用いて固液分離し、抽出液C及び抽出粕Cを得た。抽出液A及びB及びCを合一すると2021kgとなった。これを液温60℃以下で減圧濃縮し、エタノール及び水を溜去し、抽出脂質(145.0kg)を得た。
[試験例1]
(1)試験試料の摂取と検査項目
60歳代の健康な男性(右手利き)45名を被験者とした。事前に研究目的を文書で説明し、研究へ参加することについて同意を得た。
被験者に摂取させる試料として以下のものを用いた:
イワシ油 イワシを原料として用い、抽出、蒸留、脱色、脱臭、脱ガム、濃縮等の工程を経ることによって調製した:
中鎖脂肪酸油(プラセボ) ココヤシ及びパームフルーツを原料として用い、酵素反応、脱酸、脱臭等の工程を経ることによって調製した;
オキアミ油 実施例1において製造したオキアミ油。
各試料の基本成分を表1に示した。脂肪酸組成の分析は、基準油脂分析試験法(日本油化学会制定)記載のメチルエステル化法(三フッ化ホウ素メタノール法)により試料を処理することによって脂肪酸をメチルエステル化した後、水素炎イオン化検出器を備えたガスクロマトグラフにより脂肪酸メチルエステルを検出することによって行い、得られた面積百分率を重量百分率とみなした。
被験者をそれぞれ15名ずつ以下の3群に分けた:
オキアミ油摂取群(15名);
イワシ油摂取群(15名);
中鎖脂肪酸油摂取群(15名)。
試料を1日につき2g(ソフトカプセル)、12週間継続して被験者に摂取させた。試料の摂取開始前、試料摂取6週目、及び試料摂取12週目に被験者に課題を課し、課題遂行中の脳内の酸素化ヘモグロビンを計測した。
(2)被験者に課す課題
課題として、記憶課題(2−バックテスト)及び計算課題(クレペリンテスト)を上記(1)の被験者に課した。各課題の条件を以下に示す。
2−バックテスト 1.5m先に設置されたモニターに、1〜9の数字をランダムの順序で表示させ、偶数が表示された2つ後に“3”が表示された場合にのみ、直ちに右手の第一指でボタンを押すように指示した。課題の遂行時間は450秒(7分30秒)とした。
クレペリンテスト クレペリンテスト用の試験用紙を用い、速く且つ正確に隣り合う数字を加算し1の位の数字を記載するように指示した。課題の遂行時間は300秒(5分)とした。
(3)課題遂行中の酸素化ヘモグロビンの計測
計算課題遂行中の被験者の酸素化ヘモグロビンを近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用い、以下の条件で計測した:
計測環境 室温(22℃);
計測機器 光トポグラフィETG−4000(株式会社日立メディコ);
計測部位 図1を参照。両前側頭部を計24チャンネル(1側12チャンネル)で計測。プローブホルダー(3×3、株式会社日立メディコ)2面の所定の位置に照射プローブ又は検出プローブを装着し、被験者の前頭部及び前側頭部を覆うように左右対称に配置;
計測時間 2−バックテスト 450秒;
クレペリンテスト 300秒;
解析 課題開始前10秒間の平均値をベースラインとして、酸素化ヘモグロビンの変化を求めた。
なお同時測定した総ヘモグロビン量の値は、必ずしも酸素化ヘモグロビンの変化の傾向と一致する値ではなかった。
(4)結果
(4−1)2−バックテスト遂行中の酸素化ヘモグロビンの変化
被験者に2−バックテストを課題として課し、課題遂行中の脳における酸素化ヘモグロビンの変化を調査した。代表的な結果の例として、試料摂取12週目の被験者における酸素化ヘモグロビンの変化を示した(図2)。課題の特徴から、ベースから0.25mM×mm以上酸素化ヘモグロビンが上昇した場合、脳機能が賦活化したものとした。全体の傾向として、プラセボとしての中鎖脂肪酸油摂取群及び比較対照としてのイワシ油摂取群に比べて、オキアミ油摂取群において酸素化ヘモグロビンが高いことが示された。その傾向は、特にch9、ch10、ch12、ch14、ch16〜19、及びch21において明らかであった。
そして、このような結果をグラフィックスで表示することによって、計測領域における酸素化ヘモグロビンを視覚化した。代表例的な結果として、2−バックテスト開始後225秒の時点での、試料の摂取開始後12週間の被験者における酸素化ヘモグロビンを示した(図3)。プラセボとしての中鎖脂肪酸油摂取群に比べて、イワシ油摂取群及びオキアミ油摂取群において、酸素化ヘモグロビンの高い領域が観察された。オキアミ油摂取群においては、計測した領域の全体で酸素化ヘモグロビンが高かった。一方、イワシ油摂取群においては、酸素化ヘモグロビンの高い領域が狭く、それ以外の領域における酸素化ヘモグロビンは中鎖脂肪酸油摂取群と同等又はそれ以下であった。
さらに、特定の領域ch10、ch14、及びch19における酸素化ヘモグロビンの計測値を抽出し、以下に示した(表2)。試料摂取12週目のオキアミ油摂取群においては、中鎖脂肪酸油摂取群に比べて、酸素化ヘモグロビンが顕著に高いことが示された。また、イワシ油摂取群と比べても、オキアミ油摂取群における酸素化ヘモグロビンは高く、ch14及び19においては有意差が認められた。
(4−2)クレペリンテスト遂行中の酸素化ヘモグロビンの変化
被験者にクレペリンテストを課題として課し、課題遂行中の脳における酸素化ヘモグロビンの変化を調査した。代表的な結果の例として、試料摂取12週目の被験者における酸素化ヘモグロビンの変化を示す(図4)。課題の特徴から、ベースから0.45mM×mm以上酸素化ヘモグロビンが上昇した場合、脳機能が賦活化したものとした。全体の傾向として、プラセボとしての中鎖脂肪酸油摂取群及び比較対照としてのイワシ油摂取群に比べて、オキアミ油摂取群における酸素化ヘモグロビンが高いことが示された。その傾向は、特にch2、ch5、ch10、ch13、ch14〜18、及びch21において明らかであった。
そして、このような結果をグラフィックスで表示することによって、計測領域における酸素化ヘモグロビンを視覚化した。代表例的な結果として、試料の摂取12週目の被験者におけるクレペリンテスト開始後150.0秒の時点での酸素化ヘモグロビンを示した(図5)。プラセボとしての中鎖脂肪酸油摂取群に比べて、イワシ油摂取群及びオキアミ油摂取群において、酸素化ヘモグロビンの高い領域が観察された。オキアミ油摂取群においては、計測した領域の広い範囲で酸素化ヘモグロビンが著しく高いことが示された。一方、イワシ油摂取群においては、酸素化ヘモグロビンがオキアミ油摂取群におけるほど高くならず、かつ酸素化ヘモグロビンが高い領域も狭かった。
さらに、特定の領域ch15における酸素化ヘモグロビンの計測値を抽出し、以下に示した(表3)。オキアミ油摂取群においては、試料の摂取開始後6週及び12週の時点で、中鎖脂肪酸油摂取群に比べて、酸素化ヘモグロビンが高いことが示された。また、オキアミ油摂取群においては、試料の摂取開始後6週及び12週の時点でイワシ油摂取群に比べて、酸素化ヘモグロビンが高いことが示された。
さらに、各試料の摂取開始後12週において実施したクレペリンテストでの誤答数を算出した(図6)。この結果より、オキアミ油摂取群の誤答数が、中鎖脂肪酸油及びイワシ油摂取群に比べて少ないことが示された。
以上より、オキアミ油を摂取することによって、課題遂行中の脳内の酸素化ヘモグロビンを上昇させることができることが明らかである。脳内の酸素化ヘモグロビンの上昇によって、脳の代謝が活性化されて脳機能が改善されたことが考えられる。実際に、課題における誤答数が低下したことから、目に見えて課題の遂行能力が高まることが示された。
[試験例2]
(1)試験試料の摂取と検査項目
60歳代の健康な男性(右手利き)45名を被験者とした。事前に研究目的を文書で説明し、研究へ参加することについて同意を得た。被験者には試験例1と同じ試料を摂取させた。
被験者をそれぞれ15名ずつ以下の3群に分けた:
オキアミ油摂取群(15名);
イワシ油摂取群(15名);
中鎖脂肪酸油摂取群(15名)。
1日につき2g(ソフトカプセル)、12週間継続して各試料を摂取させた。試料の摂取開始前、摂取開始後6週、及び摂取開始後12週において、被験者に課題を与え、課題遂行中の事象関連電位を計測した。
(2)課題
課題として、記憶課題(2−バックテスト)を上記(1)の被験者に課した。課題の条件を以下に示す:
1.5m先に設置されたモニターに、1〜9の数字をランダムの順序で表示させ、偶数が表示された2つ後に“3”が表示された場合にのみ、直ちに右手の第一指でボタンを押すように指示した。課題の遂行時間は7分30秒とした。
(3)課題遂行中の事象関連電位の計測
記憶課題遂行中の被験者の脳波を計測し、脳波の変化を観察した。以下の条件で計測した:
計測環境 室温(22℃);
計測部位 国際10−20法に基づき頭皮上の2部位(Cz、Pz)にAg/AgCl電極を装着し、連結両耳朶を基準として導出した;
計測時間 450秒間(7分30秒);
解析 刺激提示前100msから提示後900msまでの区間について、20〜30施行を平均加算することにより、事象関連電位の波形を取得した。P300成分に注目し、それぞれの頂点潜時及びその振幅を求めた。
(4)結果
中鎖脂肪酸油摂取群、イワシ油摂取群、及びオキアミ油摂取群の被験者から取得した事象関連電位の波形に基づいて、各摂取群について、摂取開始前、摂取6週目、及び摂取12週目の被験者におけるP300の頂点潜時を計測し、摂取開始前を基準としてP300の頂点潜時の平均変化量を算出した(図7)。
Czにおいて、オキアミ油摂取群の被験者でP300頂点潜時が大幅に短縮された(図1A)。オキアミ油摂取群の被験者におけるP300の頂点潜時は、摂取前に比べて、試料摂取6週目において平均で17.4ミリ秒、試料摂取12週目において平均で22.6ミリ秒短縮された。このようなP300頂点潜時の短縮効果は、中鎖脂肪酸油摂取群との関係で有意差があることが示された。一方、イワシ油摂取群及び中鎖脂肪酸油摂取群の被験者においては、P300の頂点潜時の変化は確認できなかった。
Pzにおいても同様に、オキアミ油摂取群の被験者においてP300頂点潜時が大幅に短縮された(図1B)。オキアミ油摂取群の被験者におけるP300の頂点潜時は、摂取前に比べて、試料摂取6週目において平均で18.0ミリ秒、試料摂取12週目において、平均で21.7ミリ秒短縮された。このようなP300頂点潜時の短縮効果は、中鎖脂肪酸摂取群との関係で有意差があることが示された。
なお、オキアミ油摂取12週目におけるP300の頂点潜時の平均値は上記のとおりであるが、被験者を個別に観察することにより、P300の頂点潜時の短縮の程度は少なくとも3ミリ秒、最大で70ミリ秒であったことが確認された。
ところで、20歳以上のヒトにおいては、P300の潜時が1ミリ秒/年の割合で長くなることが報告されている。したがって、本発明の認知判断能力改善剤及び飲食品は、20歳以上、特に高齢者に対して高い効果を発揮することが考えられる。

Claims (10)

  1. オキアミ油を有効成分として含有する脳機能改善剤。
  2. オキアミ油がオキアミの熱凝固物を経て精製される、請求項1に記載の脳機能改善剤。
  3. オキアミ油の脂肪酸組成に占めるn−3系高度不飽和脂肪酸の割合が5%(w/w)以上である、請求項1又は2に記載の脳機能改善剤。
  4. オキアミ油を0.02〜400mg/kg体重/日で対象に投与するための、請求項1〜3のいずれか1項に記載の脳機能改善剤。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の脳機能改善剤を含有する飲食品。
  6. オキアミ油を有効成分として含有する認知判断能力改善剤。
  7. オキアミ油がオキアミの熱凝固物を経て精製される、請求項6に記載の認知判断能力改善剤。
  8. オキアミ油の脂肪酸組成に占めるn−3系高度不飽和脂肪酸の割合が5%(w/w)以上である、請求項6又は7に記載の認知判断能力改善剤。
  9. オキアミ油を0.02〜400mg/kg体重/日で対象に投与するための、請求項6〜8のいずれか1項に記載の認知判断能力改善剤。
  10. 請求項6〜9のいずれか1項に記載の認知判断能力改善剤を含有する飲食品。
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