JP2017178910A - 心拍数回復促進組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ヒトや動物において、運動などによって増大した心拍数を速やかに安静時の値に回復させ、結果として運動パフォーマンスを向上させるための組成物、その組成物からなる医薬品や飲食物を提供することを課題とする。【解決手段】アスタキサンチンを有効成分とする心拍数回復促進用組成物。【選択図】図2

Description

本発明は、アスタキサンチンを有効成分として含む心拍数回復促進用の組成物であり、ヒトや動物に薬剤として投与または食品として摂取させることにより、運動やストレスなどによって増大した心拍数を速やかに安静時の値に戻す、心拍数回復促進に有効な薬剤および食品に関する。
心臓の心拍数は運動により増加する。スポーツ選手や競走馬などの競技動物においては、増加した心拍数が迅速に正常に回復することで次のラウンドへの対応がよりスムーズになり運動パフォーマンスの向上につながる。
アスタキサンチンは、天然由来または合成されたもので副作用がなく、食品として容易に摂取可能な組成物として知られている。
また、アスタキサンチンはβ−カロテンと同じカロテノイドの一種で、エビ、カニなどの甲殻類、サケ、タイなどの魚類、緑藻ヘマトコッカスなどの藻類、赤色酵母ファフィアなどの酵母類など、天然、特に海洋に広く分布する食経験豊かな赤色色素であり、ビタミンEの約1,000倍、β−カロテンの約40倍もの強力な抗酸化作用を有することが見いだされている。
アスタキサンチンが有するその他の機能特性としては、抗炎症作用、抗動脈硬化作用、糖尿病に対する作用、光傷害からの網膜保護作用、日周リズム調節作用、免疫賦活作用、抗ストレス作用、精子の質向上作用や膀胱がん誘発抑制などが報告されている。また、アスタキサンチンの運動に対する作用としては、筋肉持久力向上、筋肉疲労軽減、サルコペニア予防作用、心不全改善作用、有酸素運動・無酸素運動・間欠的無酸素運動に対するパフォーマンス向上などが報告されている。
例えば、アスタキサンチンの機能として、ウマの労作性横紋筋融解症(特許文献1)、運動後の疲労回復(特許文献2、非特許文献1)、運動後の酸化ストレス低減(特許文献3)、エネルギー産生代謝向上(特許文献4)に対して有効であることが報告されており、また、運動負荷時におけるアスタキサンチンの生理機能への影響に関する報告もある(非特許文献2)。
特表第2001−514215号公報 特開第2006−016409号公報 特表第2007−532121号公報 特開第2009−215170号公報
疲労と休養の科学、18(1)、35-46、2003年 Health and Behavior Sciences 3(1)、5−10、2004年
しかしながら、アスタキサンチンの機能特性としての心拍数回復促進作用、すなわち、運動などによって増大した心拍数を速やかに平常値に戻すという作用については、未だ報告されていない。
そこで、本発明は、ヒトや動物において、運動などによって増大した心拍数を速やかに平常値に戻し、結果として運動パフォーマンスを向上させるための組成物、その組成物からなる医薬品や飲食物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、アスタキサンチンが心拍数回復促進効果を示すことを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の請求項1に記載の組成物は、アスタキサンチンを有効成分とする心拍数回復促進用組成物である。
また、本発明の請求項2に記載の組成物は、請求項1に記載の心拍数回復促進用組成物において、心拍数回復が、運動による心拍数増加後の心拍数回復であることを特徴とするものである。
また、本発明の請求項3に記載の組成物は、請求項1または請求項2に記載の心拍数回復促進用組成物において、アスタキサンチンが、ヘマトコッカス藻由来であることを特徴とするものである。
また、本発明の請求項4に記載の組成物は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の心拍数回復促進用組成物において、アスタキサンチンが脂肪酸エステルであることを特徴とするものである。
また、本発明の請求項5に記載の組成物は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の組成物が、心拍数回復治療用の医薬組成物とするものである。
また、本発明の請求項6に記載の組成物は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の組成物が、心拍数回復用の飲食物組成物とするものである。
本発明において「アスタキサンチン」とは、天然物由来のものまたは化学合成により得られるものを意味する。天然物由来のものとしては、例えば、エビ、オキアミ、カニなどの甲殻類の甲殻、卵および臓器、種々の魚介類の皮および卵、緑藻ヘマトコッカスなどの藻類、赤色酵母ファフィアなどの酵母類、海洋性細菌、福寿草および金鳳花などの種子植物から得られるものを挙げることができる。天然物由来のアスタキサンチンおよびアスタキサンチンの化学合成品は市販され、または公知の方法で製造されるので、入手は容易である。
天然物由来のアスタキサンチンは、例えば、赤色酵母ファフィア、緑藻ヘマトコッカス、海洋性細菌などを、公知の方法に準拠して、適宜な培地で培養することにより得られる。培養や抽出のしやすさ、アスタキサンチンを最も高濃度で含有すること、生産性の高さから、天然物としては緑藻ヘマトコッカスが最も好適である。アスタキサンチン含量が高い緑藻ヘマトコッカスを得るための培養方法としては、異種微生物の混入・繁殖がなく、その他の夾雑物の混入が少ない密閉型の培養方法が好ましく、例えば、密閉型のドーム形状、円錐形状または円筒形状の培養装置と装置内で移動自在のガス吐出装置を有する培養基を用いて培養する方法(国際公開第99/050384号)や、密閉型の培養装置に光源を入れ内部から光を照射して培養する方法、平板状の培養槽で培養する方法が適している。
アスタキサンチンの抽出・精製方法については種々の方法が知られている。例えば、アスタキサンチンおよびそのエステルは油溶性物質であることから、アセトン、アルコール、酢酸エチル、ベンゼン、クロロホルムなどの油溶性有機溶媒で上記天然物からアスタキサンチンを抽出することができる。また、二酸化炭素や水などを用い超臨界抽出を行うこともできる。抽出の後、常法に従って溶媒を除去し、モノエステル型のアスタキサンチンとジエステル型のアスタキサンチンの混合濃縮物を得ることができる。さらに、分離カラムやリパーゼ分解によってこの濃縮物を精製することができる。
上記のドーム型培養装置で培養したヘマトコッカス藻を乾燥させ、粉砕後にアセトンで抽出、或いはアセトン中で粉砕・抽出を同時に行った後、アセトンを除去してアスタキサンチンを抽出する方法が、夾雑物が少なく、すなわち本発明の心拍数回復促進効果を阻害する物質が少なく、アスタキサンチンとトリグリセリドを純度良く多く含むことができ好適である。
アスタキサンチンの使用形態としては、上記方法で得たアスタキサンチン抽出物、アスタキサンチン抽出物を含有する粉末や水溶液、或いは、赤色酵母ファフィア、緑藻ヘマトコッカス、海洋性細菌などの乾燥品や破砕品を用いることができる。
アスタキサンチンの化学合成品は、公知の方法により得られる。例えば、ジメチルエステルの形でのアスタキサンチンの合成方法(Surmatis, J.D.ほか:J. Org. Chem., 32, 180-184, 1967)、カンタキサンチンからアスタキサンチン遊離体を合成する方法(Leftwick, A.P.ら:J. Chem. Soc., Chem. Comm., 49-50, 1967)が知られている。また、ホフマンラロシュのグループによるC10−ジアルデヒドの両端にC15−エンドグループのフォスホニウム塩をWittig反応で結合させるアスタキサンチンの合成方法(Britton, G.ほか:Carotenoids vol.2 Synthesis, Birkhauser Verlag, Basel, 1996)は、工業的合成法として用いられている。また、水溶性を付加したアスタキサンチン誘導体の製造方法も知られている(国際公開第2004/011423号、国際公開第2003/066583号)。
アスタキサンチンの遊離体は、3,3'−ジヒドロキシ−β,β−カロテン−4,4'−ジオンであり、立体異性体を有する。具体的には、(3R,3'R)−アスタキサンチン、(3R,3'S)−アスタキサンチンおよび(3S,3'S)−アスタキサンチンの3種の立体異性体が知られているが、本発明にはそのいずれも用いることができる。
アスタキサンチンは、突然変異原性が観察されず安全性が高い化合物であることが知られており、食品添加物として広く用いられている(高橋二郎ほか:ヘマトコッカス藻アスタキサンチンの毒性試験―Ames試験、ラット単回投与毒性試験、ラット90日反復経口投与毒性試験―臨床医薬,20:867−881, 2004.)。
本発明の記載で、特に記載がない限り、アスタキサンチンはアスタキサンチンの遊離体および/またはそのエステルを含む。さらに、アスタキサンチンのエステルにはモノエステル体および/またはジエステル体が含まれる。なお、ヘマトコッカス藻由来のアスタキサンチンは、主としてモノエステル体を含むことが知られている。
本発明の心拍数回復促進用組成物には、アスタキサンチンの遊離体、モノエステル体、ジエステル体の少なくとも一種を用いることができる。ジエステル体は2つの水酸基がエステル結合により保護されているため化学的および物理的に遊離体やモノエステル体よりも安定性が高く本発明の組成物中で酸化分解されにくい。しかし、生体中に取り込まれると生体内酵素により速やかにアスタキサンチンに加水分解され、効果を示すものと考えられている。
アスタキサンチンのモノエステル体としては、低級飽和脂肪酸、高級飽和脂肪酸、低級不飽和脂肪酸、高級不飽和脂肪酸によりエステル化されたモノエステル類を挙げることができる。上記低級飽和脂肪酸、高級飽和脂肪酸、低級不飽和脂肪酸、高級不飽和脂肪酸の具体例としては、酢酸、クエン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトオレイン酸、へプタデカン酸、エライジン酸、リシノール酸、ベトロセリン酸、バクセン酸、エレオステアリン酸、プニシン酸、リカン酸、パリナリン酸、ガドール酸、5−エイコセン酸、5−ドコセン酸、セトール酸、エルシン酸、5,13−ドコサジエン酸、セラコール酸、デセン酸、ステリング酸、ドデセン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エイコサオペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などが挙げられる。また、グリシン、アラニンなどのアミノ酸;リン酸、硫酸などの無機酸;グルコシドなどの糖;グリセロ糖脂肪酸、スフィンゴ糖脂肪酸などの糖脂肪酸;グリセロ脂肪酸などの脂肪酸;グリセロリン酸などによりエステル化されたモノエステル類を挙げることができる。なお、上記モノエステル類の塩も含む。上記のうち好ましくはパルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、より好ましくはパルミチン酸、オレイン酸、さらに好ましくはオレイン酸によりエステル化されたモノエステル類を挙げることができる。
また、アスタキサンチンのジエステル体としては、上記低級飽和脂肪酸、高級飽和脂肪酸、低級不飽和脂肪酸、高級不飽和脂肪酸、アミノ酸、無機酸、糖、糖脂肪酸、脂肪酸およびグリセロリン酸からなる群から選択される同一または異種の酸によりエステル化されたジエステル類を挙げることができる。なお、上記ジエステル類の塩も含む。グリセロリン酸のジエステルとしては、グリセロリン酸の飽和脂肪酸エステル類、または高級不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸または飽和脂肪酸から選択される脂肪酸類を含有するグリセロリン酸エステル類などを挙げることができる。上記のうち好ましくはパルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、より好ましくはパルミチン酸、オレイン酸、さらに好ましくはオレイン酸から選択される同一または異種の酸によりエステル化されたジエステル類を挙げることができる。
上記アスタキサンチンのモノエステル類の塩、ジエステル類の塩は、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩、鉄塩などの金属塩;アンモニウム塩、t−オクチルアミン塩のようなアミン塩;リジン塩、オルニチン塩のようなアミノ酸塩;フッ化水素酸塩、塩酸塩のようなハロゲン化水素酸塩;硝酸塩;過塩素酸塩;硫酸塩;リン酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩のようなスルホン酸塩;酢酸塩、リンゴ酸塩のようなカルボン酸塩;またはグルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩である。
本発明のアスタキサンチンの心拍数回復促進効果を高めるために、水溶性添加剤および/または水不溶性添加剤として活性酸素除去剤を配合することができる。活性酸素除去剤としては、例えば、ビタミンEアセテートなどのビタミンEおよびその誘導体並びにそれらの塩;トコトリエノールおよびその誘導体並びにそれらの塩;アスコルビン酸、リン酸−L−アスコルビルマグネシウム、L−アスコルビン酸硫酸エステル二ナトリウム、ビタミンCジパルミテートなどのビタミンCおよびその誘導体並びにそれらの塩、ビタミンD類およびそれらの誘導体並びにそれらの塩;ビタミンAアセテート、ビタミンAパルミテートなどのビタミンA類およびそれらの誘導体並びにそれらの塩;ビタミンB類およびそれらの誘導体並びにそれらの塩;イチョウ抽出物、ゴカヒ抽出物、ヤシャジツ抽出物、ジコッピ抽出物などのフラボノイドを成分中に含む植物抽出物;血清除蛋白抽出物、脾臓抽出物、胎盤抽出物、鶏冠抽出物、ローヤルゼリーなどの動物由来の抽出物;ニンジン抽出物、センブリ抽出物、ローズマリー抽出物、オウバク抽出物、ニンニク抽出物、ヒノキチオール、セファランチンなどの植物由来の抽出物;酵母抽出物、乳酸菌抽出物、ビフィズス菌抽出物、霊芝抽出物などの微生物由来の抽出物;ブチルヒドロキシトルエン(BHT)およびブチルヒドロキシアニソール(BHA)などのビタミン類;デオキシリボ核酸およびその塩、アデノシン三リン酸、アデノシン一リン酸などのアデニル酸誘導体およびそれらの塩、リボ核酸およびその塩、グアニン、キサンチンおよびそれらの誘導体並びにそれらの塩などの核酸関連物質;グルタチオンおよびその誘導体並びにそれらの塩;α−またはγ−リノレイン酸、エイコサペンタエン酸およびそれらの誘導体;コハク酸およびその誘導体並びにそれらの塩:エストラジオールおよびその誘導体並びにそれらの塩;乳酸、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、サリチル酸などのα−ヒドロキシ酸およびそれらの誘導体並びにそれらの塩など;ハイドロキノン、ビリルビン、コレステロール、トリプトファン、ヒスチジン、クエルセチン、クエルシトリン、没食子酸、没食子酸誘導体などが挙げられる。上記のうち好ましくはビタミンEおよびその誘導体並びにその塩、トコトリエノールおよびその誘導体並びにそれらの塩、ビタミンCおよびその誘導体並びにその塩が挙げられ、さらに好ましくはトコトリエノールが挙げられる。
上記トコトリエノールは、活性酸素除去作用以外にも、コレステロール低下作用、動脈硬化改善作用、乳がん細胞増殖抑制作用などを有することが報告されており、また、血管新生抑制作用、全血流動性改善作用、赤血球膜変形能改善作用などの新たな機能性も発見されている。また、欧米では次世代のビタミンEとして化粧品など外用においても広く使用されている。トコトリエノールは、天然物の圧搾、天然物からの抽出、合成などの方法で得られる。一般的にはヤシ科植物の果皮および/または種子から抽出される。天然物の抽出物から得られるトコトリエノールは複数のトコトリエノール異性体の混合物である。これらは抗酸化作用を利用して、食品添加物、化粧品などへの応用がなされている。
トコトリエノールとしては、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール、これらの各異性体のニコチン酸、酢酸、コハク酸などのエステルなどを意味する。これらのトコトリエノールには、d−、l−、dl−型の異性体がある。また、これらの1種以上または2種以上の混合物としても使用することができる。
これらのトコトリエノールは、常法により、例えば、天然物の圧搾、天然物からの抽出または合成などの方法により得ることができる。これらのトコトリエノール類は、所望により、例えば、カラムクロマトグラフィーなどにより、さらに分離精製し、純度を良くしたものであってもよい。
本発明の組成物において、アスタキサンチン1重量部に対して、活性酸素除去剤は0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部含まれる。
本発明の組成物は、常法により、例えば、錠剤、舌下錠、丸剤、坐剤、散剤、粉剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤、注射剤、乳剤、貼付剤などの形態に製剤化することができる。例えば、錠剤は薬理的に受容しうる担体と均一に混合して打錠することにより、また、散剤、粉剤、顆粒剤は薬剤と担体とを乾式造粒または湿式造粒して製造することができ、湿式造粒としては、常法により、例えば、噴霧乾燥法、流動層造粒法、混練造粒法または凍結乾燥法などで乾燥することにより製造することができる。また、必要に応じて、常法によりチュアブル錠や口腔内速崩壊錠とすることができる。
散剤、粉剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤は、ラクトース、グルコース、スクロース、マンニトール、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、無水リン水素酸カルシウム、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、乳糖、ショ糖、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、マガルトレート、無水リン酸カルシウム、炭酸カルシウムなどの賦形剤、デンプン、アルギン酸ソーダ、寒天、クロスボビドン、結晶セルロースなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク、二酸化ケイ素、ポリエチレングリコールなどの滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、デンプンなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの表面活性剤、グリセリンなどの可塑剤、フレーバ剤、甘味料などを用いて製造できる。
本発明の組成物には必要ならばさらに抗酸化剤を添加してもよい。抗酸化剤は特に限定されるものでなく、抗酸化作用を有するものであれば適用可能である。例えば、前記の活性酸素除去剤、コエンザイムQ、フラボノイド、タンニン、エラグ酸、ポリフェノール類、ラジカル阻止剤、ヒドロペルオキシド分解剤、金属キレート剤、α−カロチン、β−カロチン、γ−カロチン、およびδ−カロチンを含むカロチン類、トコキノン、およびこれらの薬学的に許容できる塩、並びにそれらの混合物からなる群から1種または2種以上選択することができる。
注射剤は、有効成分を必要に応じてpH調製剤、緩衝剤、溶解剤、懸濁剤など、張化剤、安定化剤、防腐剤などの存在下、常法により製剤化することができる。
懸濁剤としては、例えば、ポリソルベート80、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、アラビアガム、粉末トラガントなどを挙げることができる。溶解剤としては、例えば、ポリソルベート80、水添ポリオキシエチレンヒマシ油、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、マクロゴール、ヒマシ油脂肪酸エチルエステルなどを挙げることができる。安定化剤としては、例えば亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウムなどを挙げることができる。防腐剤としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、クロロクレゾールなどを挙げることができる。
本発明の医薬品におけるアスタキサンチン量は0.01〜99重量%、好ましくは0.1〜90重量%の量で含有させることができる。
本発明の医薬品に配合されるアスタキサンチンまたはそのエステルの成人1日あたりの投与量は、アスタキサンチン遊離体換算量で、0.01〜2mg/kg体重、好ましくは0.04〜0.24mg/kg体重であり、経口投与または非経口投与で行う。投与量は、投与される患者の年齢、体重、症状の程度、投与形態によって異なる。
投与方法としては、運動負荷を与える前2〜3週間前から、上記の1日あたり量を1日1回〜数回に分けて投与することができる。また、運動負荷を与える1〜2時間前に上記の1日あたり量を投与することもできる。
本発明の心拍数回復促進用組成物は、飲食品に配合して用いることができる。
飲食品としては、サプリメント、健康食品、栄養機能食品や特定保健用食品などの保健機能食、特別用途食、一般食品、医薬部外品さらにはスポーツ用のサプリメントとして用いることができ、摂取のしやすさや摂取量が決めやすいことから、サプリメント、スポーツ用のサプリメント、保健機能食、特別用途食品が好ましい。
本発明の食品を栄養補助食品あるいは機能性食品として用いる場合、その形態は、上記医薬用製剤と同様の形態であってもよい。乳蛋白質、大豆蛋白質、卵アルブミン蛋白質など、または、これらの分解物である卵白オリゴペプチド、大豆加水分解物、アミノ酸単体の混合物を併用することもできる。また、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、乳化剤、香料などを配合した自然流動食、半消化体栄養食および栄養食、ドリンク剤、カプセル剤、経腸栄養剤などの加工物を挙げることができる。ドリンク形態で提供する場合は、栄養バランス、摂取時の風味を良くするためにアミノ酸、ビタミン類、ミネラル類などの栄養的添加物、甘味料、香辛料、香料および色素などを配合してもよい。本発明の食品の形態は、これらに限定されるものではない。
一般食品、すなわち飲食物の形態例としては、マーガリン、バター、チーズ、生クリーム、ヨーグルト、乳製品、肉製品、魚製品、フライドポテト、チューインガム、チョコレート、ゼリー、キャンディー、カステラ、ケーキなど、パスタ、サラダ油、インスタントスープ、ドレッシング、卵、マヨネーズなど、清涼飲料、スポーツ飲料などの炭酸系飲料または非炭酸系飲料など、茶、コーヒーなどの非アルコールまたはリキュール、薬用酒などのアルコール飲料などを挙げることができる。
本発明の食品は、アスタキサンチンまたはそのエステルを一般食品の原料と共に配合し、常法に従って加工製造することにより製造される。アスタキサンチンまたはそのエステルの配合量は食品の形態などにより異なり特に限定されるものではないが、一般には0.00001〜10重量%、好ましくは0.0001〜5重量%であり、心拍数回復促進作用を発揮するのに必要な量だけ含まれるように調製する。アスタキサンチンまたはそのエステルの使用量は当業者が飲食物の種類に応じて適宜選択でき、成人1日摂取量あたり0.2〜100mg、好ましくは0.5〜20mgである。
本発明の心拍数回復促進用組成物を飼料に配合した場合も、医薬品や飲食品と同様の効果を得ることができ、例えば、マウス、ラット、ウサギ、サル、犬、猫、豚、牛、羊、馬、鳥に投与することができる。
本発明の食品や飼料に配合されるアスタキサンチンまたはそのエステルのヒトまたは動物1日あたりの摂取量は、アスタキサンチン遊離体換算量で、0.01〜2mg/kg体重、好ましくは0.04〜0.24mg/kg体重であり、食品や飼料の形態などによって異なる。
本発明における心拍数回復促進効果とは、本発明の心拍数回復促進用組成物を投与することで、運動負荷後一定時間経過後の心拍数が対照群における心拍数に比較して有意に低いことであり、運動後に生じた心拍数増加を安静時心拍数にまで速やかに減少させる効果である。そして、特に、負荷強度の高い運動による心拍数増加に対しての回復を促進させることである。
本発明における心拍数回復促進用組成物は、毒性のないアスタキサンチンを有効成分として含み、その組成物を医薬品または食品として継続的に投与することにより、副作用なく、運動負荷によって生じた心拍数増加を安静時心拍数にまで速やかに減少させる効果を有する。
試験例1における、ファイナルスプリント終了後8分後の対照群およびアスタキサンチン投与群における平均心拍数を示した棒グラフである。 試験例1における、ファイナルスプリント終了直後の心拍数から安静時心拍数に戻るまでを100%とした場合の、30%に戻るまでの各群における平均時間を示した棒グラフである。
本発明をさらに詳細に説明にするために以下に実施例を挙げるが、本発明がこの実施例のみに限定されないことはいうまでもない。
[試験例1]
試験に供されたアスタキサンチンは、5%のアスタキサンチンを含有するヘマトコッカス藻〔アスタリール(株)製〕である。試験試料は、このヘマトコッカス藻100mgをオリーブ油1mLに懸濁させ、アスタキサンチンとして5mgになるよう調製したものを使用した(以下、「アスタキサンチン5mg含有懸濁液」という。)。また、アスタキサンチンを与えない対照群に対する試験試料は、オリーブ油1mLを使用した。
ウィスター系雄ラット12匹(体重200〜250g)を、試験期間中、温度21〜25℃、照明12時間および暗闇12時間のサイクルの条件下で飼育した。環境に慣れさせるため、2週間、自由に水と餌を与えた。その後、それぞれ6匹からなる以下の2群に分けた。
(1)対照群:オリーブ油1mLを1日1回、強制経口投与
(2)アスタキサンチン投与群:アスタキサンチン5mg含有懸濁液を1日1回、強制経口投与
上記各群に3週間、上記強制経口投与を行うことなく順応させた後、各群から状態の良い5匹を選定し、全てのラットの体内に心拍数測定モニター装置〔Star−Oddi社製〕を埋め込んだ。その後、各群への各試験試料の強制経口投与を1日1回行い、並行して、運動負荷を与える試験を行った。
すなわち、トレッドミル〔ラット用ランニングマシン:Columbus Instruments社製〕上で(A)、(B)、(C)、および(D)の順序の一連の運動を、週2回、4週間にわたり負荷した。トレッドミルの傾斜は5度にした。
(A)30m/分の速度で15分間走行
(B)7分間休憩
(C)30m/分の速度で15分間走行
(D)40m/分の速度で1分間走行(以下、「ファイナルスプリント」という。)
この運動負荷は、各群への各試験試料の強制経口投与後1〜2時間後に行った。そして、運動負荷後に、ラットの体重、摂餌量、健康所見を測定、観察した。
上記4週間にわたる運動負荷試験の期間が終了した後、ラット体内から心拍数測定モニター装置を取り出し、心拍数の変動について検討した。
試験期間中、いずれのラットにおいても、試験試料投与および運動負荷による健康障害は認められなかった。また、体重、摂餌量については、各群間で差は認められなかった。
4週間運動負荷試験の最終日である28日目の、各群ファイナルスプリント終了後8分後の平均心拍数および標準偏差を表1および図1に示す。
[表1]
ファイナルスプリント終了後の平均心拍数
Figure 2017178910
アスタキサンチン投与群の平均心拍数は、対照群の心拍数に比して有意に低く(p<0.01)、アスタキサンチン投与により運動負荷による心拍数増加後の回復が促進された。
4週間運動負荷試験の最終日である28日目の、各群ファイナルスプリント終了直後の心拍数から安静時心拍数に戻るまでを100%とした場合の、30%に戻るまでの各群における平均時間および標準偏差を表2および図2に示す。
[表2]
心拍数が30%に戻るまでの平均時間
Figure 2017178910
ファイナルスプリント終了直後の心拍数から安静時心拍数に戻るまでを100%とした場合の、30%に戻るまでのアスタキサンチン投与群の平均時間は、対照群の平均時間に比して有意に短く(p<0.01)、アスタキサンチン投与により運動負荷による心拍数増加後の回復が促進された。
〔製剤例1〕錠剤
下記成分を下記組成比(重量%)で均一に混合し、1粒300mgの錠剤とした。
ヘマトコッカス藻抽出物 30mg
乳糖 70mg
デンプン 70mg
カゼインナトリウム 6mg
ゼラチン 6mg
セルロース 109mg
二酸化ケイ素 3mg
ショ糖脂肪酸エステル 6mg
ヘマトコッカス藻抽出物は、アスタキサンチンを遊離体換算で5重量%含む。
〔製剤例2〕軟カプセル剤
下記成分からなるソフトカプセル剤皮の中にヘマトコッカス藻抽出物(アスタキサンチンを遊離体換算で5重量%含有)を常法により充填し、1粒300mgのソフトカプセルを得た。
内容物
ヘマトコッカス藻抽出物 20mg
食用油脂 150mg
剤皮
ゼラチン 100mg
グリセリン 30mg
〔製剤例3〕ドリンク剤
下記成分を配合し、常法に従って、水10kgを加えてドリンク剤を調製した。
ヘマトコッカス藻抽出物水溶液* 25g
液糖 4000g
DL−酒石酸ナトリウム 1g
クエン酸 50g
ビタミンC 50g
ビタミンE 150g
シクロデキストリン 25g
塩化カリウム 5g
硫酸マグネシウム 2g
*特開2001−316601の実施例の方法で調製したヘマトコッカス藻抽出物水溶液(アスタキサンチン1%含有)

Claims (6)

  1. アスタキサンチンを有効成分とする心拍数回復促進用組成物。
  2. 心拍数回復が、運動による心拍数増加後の心拍数回復である、請求項1に記載の心拍数回復促進用組成物。
  3. アスタキサンチンが、ヘマトコッカス藻由来である、請求項1または請求項2に記載の心拍数回復促進用組成物。
  4. アスタキサンチンが脂肪酸エステルである、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の心拍数回復促進用組成物。
  5. 請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の組成物が、心拍数回復治療用の医薬組成物。
  6. 請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の組成物が、心拍数回復用の飲食物組成物。
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