JPWO2012160726A1 - 深絞り加工性に優れたCu−Ni−Si系銅合金板及びその製造方法 - Google Patents

深絞り加工性に優れたCu−Ni−Si系銅合金板及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

1.0〜3.0質量%のNiを含有し、Niの質量%濃度に対し1/6〜1/4の濃度のSiを含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなり、表面の算術平均粗さRaが0.2μmで、表面粗さ平均線を基準とした時の各々の山部と谷部の値の絶対値についての標準偏差が0.1μm以下であり、合金組織中の結晶粒のアスペクト比の平均値が0.4〜0.6であり、EBSD法にて測定面積範囲内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が5°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の、GOSの全結晶粒における平均値が1.2〜1.5°であり、結晶粒界の全粒界長さLに対する特殊粒界の全特殊粒界長さLσの比率(Lσ/L)が60〜70%であり、ばね限界値が450〜600N/mm2であり、150℃で1000時間でのはんだ耐熱剥離性が良好で、耐疲労特性の変動が少なく、優れた深絞り加工性を有するCu−Ni−Si系銅合金板。

Description

本発明は、深絞り加工性とはんだ耐熱剥離性とばね限界値とのバランスがとれ、耐疲労特性の変動が少なく、特に、優れた深絞り加工性を有する電気及び電子部材への使用に適したCu−Ni−Si系銅合金板及びその製造方法に関する。
本願は、2011年5月25日に出願された国際出願PCT/JP2011/062028について優先権を主張し、その内容をここに援用する。
近年の電子機器の軽薄短小化に伴い、端子、コネクタ等も小型化及び薄肉化が進み、強度と曲げ加工性が要求され、従来の燐青銅や黄銅といった固溶強化型銅合金に替わり、コルソン(Cu−Ni−Si系)合金、ベリリウム銅、チタン銅といった析出強化型銅合金の需要が増加している。
なかでも、コルソン合金は、ケイ化ニッケル化合物の銅に対する固溶限が温度によって著しく変化する合金で、焼き入れ・焼き戻しによって硬化する析出硬化型合金の一種であり、耐熱性や高温強度も良好で、強度と導電率のバランスにも優れており、これまでも導電用各種ばねや高抗張力用電線などに広く使用されており、最近では、端子、コネクタ等の電子部品に使用される頻度が高まっている。
一般に強度と曲げ加工性は相反する性質であり、コルソン合金においても、高い強度を維持しつつ、曲げ加工性を改善することが従来から研究されており、製造工程を調整し、結晶粒径、析出物の個数及び形状、集合組織を個々にあるいは相互に制御することで曲げ加工性を改善しようという取り組みが広く行われてきた。
また、コルソン合金を各種電子部品にて所定形状にて厳しい環境下で使用して行く為には、加工の容易性、特に良好な深絞り加工性、及び、高温使用時でのはんだ耐熱剥離性が要求されている。
特許文献1には、Niを1.0〜4.0質量%、Niに対し1/6〜1/4濃度のSiを含有し、全結晶粒界中の双晶境界(Σ3境界)の頻度が15〜60%である強度、曲げ加工性のバランスに優れた電子部品用Cu−Ni−Si系基合金が開示されている。
特許文献2には、圧延方向の引張強さと、圧延方向となす角度が45°方向の引張強さと、圧延方向となす角度が90°方向の引張強さの3つの引張強さ間の各差の最大値が100MPa以下である接点材用銅基析出型合金板材であり、2〜4mass%Ni及び0.4〜1mass%Siを含有し、必要ならさらにMg、Sn、Zn、Crの群から選ばれる少なくとも1つを適量含有さる残部が銅と不可避不純物からなる銅基析出型合金板材が開示される。その接点材用銅基析出型合金板材は、溶体化処理した銅合金板材に時効熱処理を施し、その後圧延率30%以下の冷間圧延を施して製造され、電子機器などに用いられる多機能スイッチの操作性を改善する。
特許文献3には、耐力が700N/mm以上、導電率が35%IACS以上、かつ曲げ加工性にも優れたコルソン(Cu−N−Si系)銅合金板が開示される。この銅合金板は、Ni:2.5%(質量%、以下同じ)以上6.0%未満、及びSi:0.5%以上1.5%未満を、NiとSiの質量比Ni/Siが4〜5の範囲となるように含み、さらにSn:0.01%以上4%
未満を含み、残部がCu及び不可避的不純物からなり、平均結晶粒径が10μm以下、SEM−EBSP法による測定結果でCube方位{001}〈100〉の割合が50%以上である集合組織を有し、連続焼鈍により溶体化再結晶組織を得た後、加工率20%以下の冷間圧延及び400〜600℃×1〜8時間の時効処理を行い、続いて加工率1〜20%の最終冷間圧延後、400〜550℃×30秒以下の短時間焼鈍を行って製造される。
特開2009−263784号公報 特開2008−95186号公報 特開2006−283059号公報
従来のCu−Ni−Si系のコルソン合金は、深絞り加工性が充分ではなく、また、深絞り加工性とはんだ耐熱剥離性とばね限界値とのバランスが悪く、更に、耐疲労特性の変動(ばらつき)が大きく、高温及び高振動における長時間での厳しい使用環境下に曝される電子部品の素材としての適用に支障を来たすことが多々見られていた。
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであり、深絞り加工性とはんだ耐熱剥離性とばね限界値とのバランスがとれ、耐疲労特性の変動(ばらつき)が少なく、特に、優れた深絞り加工性を有する電気及び電子部材に使用されるCu−Ni−Si系銅合金板及びその製造方法を提供する。
本発明者らは、鋭意検討の結果、1.0〜3.0質量%のNiを含有し、Niの質量%濃度に対し1/6〜1/4の濃度のSiを含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなるCu−Ni−Si系銅合金板において、表面の算術平均粗さRaが0.02〜0.2μmで、表面粗さ平均線を基準とした時の各々の山部と谷部の値の絶対値についての標準偏差が0.1μm以下であり、合金組織中の結晶粒のアスペクト比(結晶粒の短径/結晶粒の長径)の平均値が0.4〜0.6であり、後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて測定したGOSの全結晶粒における平均値が1.2〜1.5°であり、結晶粒界の全粒界長さLに対する特殊粒界の全特殊粒界長さLσの比率(Lσ/L)が60〜70%であると、ばね限界値が450〜600N/mmとなり、150℃で1000時間でのはんだ耐熱剥離性が良好であり、耐疲労特性の変動(ばらつき)が少なく、深絞り加工性にも優れた特性を発揮することを見出した。
更に、結晶粒のアスペクト比(結晶粒の短径/結晶粒の長径)の平均値は、主に150℃で1000時間のはんだ耐熱剥離性に関与し、GOSの全結晶粒における平均値は、主にばね限界値に関与し、特殊粒界の全特殊粒界長さLσの比率(Lσ/L)は、主に深絞り加工性に関与し、表面の算術平均粗さRaと表面粗さ平均線を基準とした時の各々の山部と谷部の値の絶対値の標準偏差は、耐疲労特性の変動(ばらつき)に関与することを見出した。
また、結晶粒のアスペクト比(結晶粒の短径/結晶粒の長径)の平均値は、基本的に製造時での最終冷間圧延時の加工率により左右され、GOSの全結晶粒における平均値は、基本的に製造時での連続低温焼鈍時の銅合金板の炉内での張力により左右され、特殊粒界の全特殊粒界長さLσの比率(Lσ/L)は、基本的に製造時での連続低温焼鈍時の銅合金板の炉内での浮上距離により左右され、表面の算術平均粗さRaと表面粗さ平均線を基準とした時の各々の山部と谷部の値の絶対値の標準偏差は、基本的に製造時での最終冷間圧延時の銅合金板に付与される張力と圧延ロールの表面粗さにより左右されることも見出した。
上記の知見に基づき本発明はなされたものであり、本発明のCu−Ni−Si系銅合金板は、1.0〜3.0質量%のNiを含有し、Niの質量%濃度に対し1/6〜1/4の濃度のSiを含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなり、表面の算術平均粗さRaが0.02〜0.2μmで、表面粗さ平均線を基準とした時の各々の山部と谷部の値の絶対値についての標準偏差が0.1μm以下であり、合金組織中の結晶粒のアスペクト比(結晶粒の短径/結晶粒の長径)の平均値が0.4〜0.6であり、後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて測定面積範囲内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が5°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の、GOSの全結晶粒における平均値が1.2〜1.5°であり、結晶粒界の全粒界長さLに対する特殊粒界の全特殊粒界長さLσの比率(Lσ/L)が60〜70%であり、ばね限界値が450〜600N/mmであり、150℃で1000時間でのはんだ耐熱剥離性が良好で、耐疲労特性の変動が少なく、優れた深絞り加工性を有することを特徴とする。
Ni及びSiは、適切な熱処理を行うことにより、NiSiを主とする金属間化合物の微細な粒子を形成する。その結果、合金の強度が著しく増加し、同時に電気伝導性も上昇する。
Niは1.0〜3.0質量%、好ましくは、1.5〜2.5質量%の範囲で添加する。Niが1.0質量%未満であると充分な強度が得られない。Niが3.0質量%を超えると、熱間圧延で割れが発生する。
Siの添加濃度(質量%)は、Niの添加濃度(質量%)の1/6〜1/4とする。Si添加濃度がNi添加濃度の1/6より少ないと強度が低下し、Ni添加濃度の1/4より多いと強度に寄与しないばかりでなく、過剰なSiによって導電性が低下する。
結晶粒のアスペクト比(結晶粒の短径/結晶粒の長径)の平均値が0.4未満、或いは、0.6を超えると、150℃×1000時間でのはんだ耐熱剥離性が低下をきたす。
GOSの全結晶粒における平均値が、1.2°未満、或いは、1.5°を超えると、ばね限界値の低下をきたす。
特殊粒界の全特殊粒界長さLσの比率(Lσ/L)が、60%未満、或いは、70%を超えると、深絞り加工性が低下をきたす。
表面の算術平均粗さRaが0.2μmを超えると、耐疲労特性の変動が大きくなり、算術平均粗さRaが0.02μm未満では、効果が飽和して製造コストの無駄となる。
表面粗さ平均線を基準とした時の各々の山部と谷部の値の絶対値についての標準偏差が0.1μmを超えると、耐疲労特性の変動が大きくなる。標準偏差は小さいほど良いが、製造コストや効果を考慮すると、0.03μm以上であることが好ましい。
また、本発明のCu−Ni−Si系銅合金板は、更にSnを0.2〜0.8質量%、Znを0.3〜1.5質量%含有することを特徴とする。
Sn及びZnには、強度及び耐熱性を改善する作用があり、更にSnには耐応力緩和特性の改善作用が、Znには、はんだ接合の耐熱性を改善する作用がある。Snは0.2〜0.8質量%、Znは0.3〜1.5質量%の範囲で添加する。前述の範囲を下回ると所望の効果が得られず、上回ると導電性が低下する。
また、本発明のCu−Ni−Si系銅合金板は、更にMgを0.001〜0.2質量%含有することを特徴とする。
Mgには応力緩和特性及び熱間加工性を改善する効果があるが、0.2質量%を超えると鋳造性(鋳肌品質の低下)、熱間加工性及びめっき耐熱剥離性が低下する。
また、本発明のCu−Ni−Si系銅合金板は、更にFe:0.007〜0.25質量%、P:0.001〜0.2質量%、C:0.0001〜0.001質量%、Cr:0.001〜0.3質量%、Zr:0.001〜0.3質量%を1種又は2種以上を含有することを特徴とする。
Feには、熱間圧延性を向上させる効果(表面割れや耳割れの発生を抑制する効果)およびNiとSiの化合物析出を微細化し、よってメッキの耐熱密着性を向上させる効果等を通じて、コネクタの信頼性を高める作用があるが、その含有量が0.007%未満では上記作用に所望の効果が得られず、一方、その含有量が0.25%を越えると熱間圧延性効果が飽和し、むしろ低下傾向が現われるようになると共に、導電性にも悪影響を及ぼすようになることから、その含有量を0.007〜0.25%と定めた。
Pには、曲げ加工によって起るばね性の低下を抑制し、よって成型加工して得たコネクタの挿抜特性を向上させる作用および耐マイグレーション特性を向上させる作用があるが、その含有量が0.001%未満では所望の効果が得られず、一方、その含有量が0.2%を越えると、はんだ耐熱剥離性を著しく損なうようになることから、その含有量を0.001〜0.2%と定めた。
Cには、打抜き加工性を向上させる作用があり、さらにNiとSiの化合物を微細化させることにより合金の強度を向上させる作用があるが、その含有量が0.0001%未満では所望の効果が得られず、一方、0.001%を越えて含有すると熱間加工性に悪い影響を与えるので好ましくない。したがって、C含有量は0.0001〜0.001%に定めた。
CrおよびZrには、Cとの親和力が強くCu合金中にCを含有させ易くするほか、NiおよびSiの化合物を一層微細化して合金の強度を向上させる作用およびそれ自身の析出によって強度を一層向上させる作用を有するが、CrおよびZrのうちの1種または2種の含有量が0.001%未満含有されていても合金の強度向上効果が得られず、一方、0.3%を越えて含有するとCrおよび/またはZrの大きな析出物が生成し、そのためにめっき性が悪くなり、打抜き加工性も悪くなるとともにさらに熱間加工性が損われるようになるので好ましくない。したがって、CrおよびZrのうちの1種または2種の含有量は0.001〜0.3%に定めた。
そして、本発明のCu−Ni−Si系銅合金板の製造方法は、熱間圧延、冷間圧延、溶体化処理、時効化処理、最終冷間圧延、低温焼鈍をこの順序で含む工程で銅合金板を製造するに際して、最終冷間圧延を、加工率10〜30%にて銅合金板に付与される張力を90〜150N/mmとして、粒度が#180〜600の砥石で研磨した圧延ロールを使用して実施し、連続低温焼鈍を、炉内の銅合金板に付与される張力を300〜900N/mmとして、炉内の銅合金板の浮上距離を10〜20mmにて実施することを特徴とする。
最終冷間圧延時の加工率が10%未満、或いは、30%を超えると、結晶粒のアスペクト比(結晶粒の短径/結晶粒の長径)の平均値が0.4〜0.6の範囲に入らない。
連続低温焼鈍時の銅合金板に付与される炉内張力が300N/mm未満、或いは、900N/mmを超えると、GOSの全結晶粒における平均値が1.2°〜1.5°の範囲に入らない。
連続低温焼鈍時の銅合金板の炉内浮上距離が10mm未満、或いは、20mmを超えると、結晶粒界の全粒界長さLに対する特殊粒界の全特殊粒界長さLσの比率(Lσ/L)が60〜70%の範囲に入らない。
最終冷間圧延時の銅合金板に付与される張力が90N/mm未満では、表面粗さ平均線を基準とした時の各々の山部と谷部の値の絶対値についての標準偏差が0.1μmを超えてしまい、張力が150N/mmを超えると、効果が飽和して製造コストの無駄となる。
最終冷間圧延時に粒度が#180未満の砥石で研磨した圧延ロールを使用すると、表面の算術平均粗さRaが0.2μmを超えてしまい、粒度が#600を超えると、効果が飽和すると共に、製造工程で発生した表面傷を除去し難くなる。
本発明により、深絞り加工性とはんだ耐熱剥離性とばね限界値とのバランスがとれ、耐疲労特性の変動が少なく、特に、優れた深絞り加工性を有する電気及び電子部材に使用されるCu−Ni−Si系銅合金板及びその製造方法が提供される。
本発明のCu−Ni−Si系銅合金板の製造方法にて使用する連続低温焼鈍設備の一例を示す概略図である。 本発明のCu−Ni−Si系銅合金板の製造方法にて使用する連続低温焼鈍炉内の銅板の浮上距離を説明する模式図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
[銅合金条の成分組成]
本発明の銅合金条材は、質量%で、1.0〜3.0質量%のNiを含有し、Niの質量%濃度に対し1/6〜1/4の濃度のSiを含有し、残部がCu及び不可避的不純物である組成を有する。
Ni及びSiは、適切な熱処理を行うことにより、NiSiを主とする金属間化合物の微細な粒子を形成する。その結果、合金の強度が著しく増加し、同時に電気伝導性も上昇する。
Niは1.0〜3.0質量%、好ましくは1.5〜2.5質量%の範囲で添加する。Niが1.0質量%未満であると充分な強度が得られない。Niが3.0質量%を超えると、熱間圧延で割れが発生する。
Siの添加濃度(質量%)は、Niの添加濃度(質量%)の1/6〜1/4とする。Si添加濃度がNi添加濃度の1/6より少ないと強度が低下し、Ni添加濃度の1/4より多いと強度に寄与しないばかりでなく、過剰なSiによって導電性が低下する。
また、この銅合金は、上記の基本組成に対して、更にSnを0.2〜0.8質量%、Znを0.3〜1.5質量%含有してもよい。
Sn及びZnには、強度及び耐熱性を改善する作用があり、更にSnには耐応力緩和特性の改善作用が、Znには、はんだ接合の耐熱性を改善する作用がある。Snは0.2〜0.8質量%、Znは0.3〜1.5質量%の範囲で添加する。前述の範囲を下回ると所望の効果が得られず、上回ると導電性が低下する。
また、この銅合金は、上記の基本組成に対して、更にMgを0.001〜0.2質量%含有してもよい。
Mgには、応力緩和特性及び熱間加工性を改善する効果があり、0.001〜0.2質量%の範囲で添加する。0.2質量%を超えると鋳造性(鋳肌品質の低下)、熱間加工性及びめっき耐熱剥離性が低下する。
また、この銅合金は、上記の基本組成に対して、更にFe:0.007〜0.25質量%、P:0.001〜0.2質量%、C:0.0001〜0.001質量%、Cr:0.001〜0.3質量%、Zr:0.001〜0.3質量%を1種又は2種以上を含有してもよい。
Feには、熱間圧延性を向上させる効果(表面割れや耳割れの発生を抑制する効果)およびNiとSiの化合物析出を微細化し、よってメッキの耐熱密着性を向上させる効果等を通じて、コネクタの信頼性を高める作用があるが、その含有量が0.007%未満では上記作用に所望の効果が得られず、一方、その含有量が0.25%を越えると熱間圧延性効果が飽和し、むしろ低下傾向が現われるようになると共に、導電性にも悪影響を及ぼすようになることから、その含有量を0.007〜0.25%と定めた。
Pには、曲げ加工によって起るばね性の低下を抑制し、よって成型加工して得たコネクタの挿抜特性を向上させる作用および耐マイグレーション特性を向上させる作用があるが、その含有量が0.001%未満では所望の効果が得られず、一方、その含有量が0.2%を越えると、はんだ耐熱剥離性を著しく損なうようになることから、その含有量を0.001〜0.2%と定めた。
Cには、打抜き加工性を向上させる作用があり、さらにNiとSiの化合物を微細化させることにより合金の強度を向上させる作用があるが、その含有量が0.0001%未満では所望の効果が得られず、一方、0.001%を越えて含有すると熱間加工性に悪い影響を与えるので好ましくない。したがって、C含有量は0.0001〜0.001%に定めた。
CrおよびZrには、Cとの親和力が強くCu合金中にCを含有させ易くするほか、NiおよびSiの化合物を一層微細化して合金の強度を向上させる作用およびそれ自身の析出によって強度を一層向上させる作用を有するが、CrおよびZrのうちの1種または2種の含有量が0.001%未満含有されていても合金の強度向上効果が得られず、一方、0.3%を越えて含有するとCrおよび/またはZrの大きな析出物が生成し、そのためにめっき性が悪くなり、打抜き加工性も悪くなるとともにさらに熱間加工性が損われるようになるので好ましくない。したがって、CrおよびZrのうちの1種または2種の含有量は0.001〜0.3%に定めた。
そして、このCu−Ni−Si系銅合金条は、表面の算術平均粗さRaが0.02〜0.2μmで、表面粗さ平均線を基準とした時の各々の山部と谷部の値の絶対値についての標準偏差が0.1μm以下であり、合金組織中の結晶粒のアスペクト比(結晶粒の短径/結晶粒の長径)の平均値が0.4〜0.6であり、後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて測定面積範囲内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が5°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の、GOSの全結晶粒における平均値が1.2〜1.5°であり、結晶粒界の全粒界長さLに対する特殊粒界の全特殊粒界長さLσの比率(Lσ/L)が60〜70%であり、ばね限界値が450〜600N/mmであり、150℃で1000時間でのはんだ耐熱剥離性が良好で、耐疲労特性の変動が少なく、深絞り加工性に優れている。
[算術平均粗さRa、表面粗さ平均線を基準とした時の各々の山部と谷部の値の絶対値についての標準偏差]
銅合金板表面の算術平均粗さRaは、次のようにして求めた。
株式会社小坂研究所製の触針式表面粗さ測定器(SE−30D)を用いて、JIS B0651−1996に基づきプロファイルを得て、そのプロファイルを基に算術平均粗さ(Ra)を算出した(JIS B0601−1994)。
銅合金板表面の面粗さ平均線を基準とした時の各々の山部と谷部の値の絶対値についての標準偏差は、次のように求めた。
株式会社小坂研究所製の触針式表面粗さ測定器(SE−30D)を用いて、JIS
B0651−1996に基づきプロファイルを得て、そのプロファイルを基に表面粗さ平均線を基準とした時の各々の山部と谷部の値の絶対値を実測し、その標準偏差を算出した。
[アスペクト比、GOS、Lσ/L]
合金組織中の結晶粒のアスペクト比(結晶粒の短径/結晶粒の長径)の平均値は、次のようにして求めた。
前処理として、10mm×10mmの試料を10%硫酸に10分間浸漬した後、水洗、エアブローにより散水した後に、散水後の試料を日立ハイテクノロジーズ社製フラットミリング(イオンミリング)装置で、加速電圧5kV、入射角5°、照射時間1時間にて表面処理を施した。
次に、TSL社製EBSDシステム付きの日立ハイテクノロジーズ社製走査型電子顕微鏡S−3400Nでその試料表面を観察した。観察条件は、加速電圧25kV、測定面積(圧延方向)150μm×150μmとした。
次に、ステップサイズ0.5μmにて測定面積内の全てのピクセルの方位を測定し、ピクセル間の方位差が5°以上である境界を結晶粒界と定義し、結晶粒界で囲まれた2つ以上のピクセルの集合を結晶粒とみなした場合、各結晶粒の長軸方向の長さをa、短軸方向の長さをbとし、前記bを前記aで除した値をアスペクト比と定義し、測定面積内の全ての結晶粒のアスペクト比を求め、その平均値を算出した。
結晶粒のアスペクト比(結晶粒の短径/結晶粒の長径)の平均値が0.4未満、或いは、0.6を超えると、150℃×1000時間でのはんだ耐熱剥離性が低下をきたす。
後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて測定したGOSの全結晶粒における平均値は、次のようにして求めた。
前処理として、10mm×10mmの試料を10%硫酸に10分間浸漬した後、水洗、エアブローにより散水した後に、散水後の試料を日立ハイテクノロジーズ社製フラットミリング(イオンミリング)装置で、加速電圧5kV、入射角5°、照射時間1時間にて表面処理を施した。
次に、TSL社製EBSDシステム付きの日立ハイテクノロジーズ社製走査型電子顕微鏡S−3400Nでその試料表面を観察した。観察条件は、加速電圧25kV、測定面積150μm×150μmとした。
観察結果より、全結晶粒における結晶粒内の全ピクセル間の平均方位差の平均値は次の条件にて求めた。
ステップサイズ0.5μmにて、測定面積範囲内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が5°以上である境界を結晶粒界とみなした。
次に、結晶粒界で囲まれた個々の結晶粒の全てについて、結晶粒内の全ピクセル間の方位差の平均値(GOS:Grain Orientation Spread)を(1)式にて計算し、その全ての値の平均値を全結晶粒における結晶粒内の全ピクセル間の平均方位差、即ち、GOSの全結晶粒における平均値とした。なお、2ピクセル以上が連結しているものを結晶粒とした。
Figure 2012160726
上式において、i、jは結晶粒内のピクセルの番号を示す。
nは結晶粒内のピクセル数を示す。
αijはピクセルiとjの方位差を示す。
GOSの全結晶粒における平均値が、1.2°未満、或いは、1.5°を超えると、ばね限界値の低下をきたす。
後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて測定した結晶粒界の全粒界長さLに対する特殊粒界の全特殊粒界長さLσの比率(Lσ/L)は、次のようにして求めた。特殊粒界は、結晶学的にCSL理論(Krongerg et.al.:Trans. Met. Soc. AIME, 185, 501 (1949))に基づき定義されるΣ値で3≦Σ≦29を有する結晶粒界(対応粒界)であって、当該粒界における固有対応部位格子方位欠陥
Dqが Dq≦15°/Σ1/2 (D.G.Brandon:Acta.Metallurgica. Vol.14,p1479,1966)を満たす結晶粒界として定義される。
前処理として、10mm×10mmの試料を10%硫酸に10分間浸漬した後、水洗、エアブローにより散水した後に、散水後の試料を日立ハイテクノロジーズ社製フラットミリング(イオンミリング)装置で、加速電圧5kV、入射角5°、照射時間1時間にて表面処理を施した。
次に、TSL社製EBSDシステム付きの日立ハイテクノロジーズ社製走査型電子顕微鏡S−3400Nでその試料表面を観察した。観察条件は、加速電圧25kV、測定面積150μm×150μmとした。
ステップサイズ0.5μmにて、測定面積範囲内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が5°以上である境界を結晶粒界とみなした。
次に、測定範囲における結晶粒界の全粒界長さLを測定し、隣接する結晶粒の界面が特殊粒界を構成する結晶粒界の位置を決定するとともに、特殊粒界の全特殊粒界長さLσと、上記測定した結晶粒界の全粒界長さLとの粒界長比率Lσ/Lを求め、特殊粒界長さ比率とした。
特殊粒界の全特殊粒界長さLσの比率(Lσ/L)が、60%未満、或いは、70%を超えると、深絞り加工性が低下をきたす。
[製造方法]
本発明のCu−Ni−Si系銅合金の製造方法は、熱間圧延、冷間圧延、溶体化処理、時効化処理、最終冷間圧延、低温焼鈍をこの順序で含む工程で銅合金板を製造するに際して、最終冷間圧延を、加工率10〜30%にて、銅合金板に付与される張力を90〜150N/mmとし、粒度が#180〜600の砥石で研磨した圧延ロールを使用して実施し、連続低温焼鈍を、炉内の銅合金板に付与される張力を300〜900N/mmとして、炉内の銅合金板の浮上距離を10〜20mmにて実施することを特徴とする。
最終冷間圧延時の加工率が10%未満、或いは、30%を超えると、結晶粒のアスペクト比(結晶粒の短径/結晶粒の長径)の平均値が0.4〜0.6の範囲に入らず、はんだ耐熱剥離性の低下をきたす。
連続低温焼鈍時の銅合金板に付与される炉内張力が300N/mm未満、或いは、900N/mmを超えると、GOSの全結晶粒における平均値が1.2°〜1.5°の範囲に入らず、ばね限界値の低下をきたす。
連続低温焼鈍時の銅合金板の炉内浮上距離が10mm未満、或いは、20mmを超えると、結晶粒界の全粒界長さLに対する特殊粒界の全特殊粒界長さLσの比率(Lσ/L)が60〜70%の範囲に入らず、深絞り加工性の低下をきたす。
最終冷間圧延時の銅合金板に付与される張力が90N/mm未満では、表面粗さ平均線を基準とした時の各々の山部と谷部の値の絶対値についての標準偏差が0.1μmを超えてしまい、張力が150N/mmを超えると、効果が飽和して製造コストの無駄となる。
最終冷間圧延時に粒度が#180未満の砥石で研磨した圧延ロールを使用すると、表面の算術平均粗さRaが0.2μmを超えてしまい、粒度が#600を超えると、効果が飽和すると共に、製造工程で発生した表面傷を除去し難くなる。
本発明の製造方法にて使用する連続低温焼鈍設備の一例を図1に示す。最終冷間圧延が施されたペイオフリール11に巻き取られた銅合金板Fは、張力制御装置12、張力制御装置14にて所定の張力を負荷され、横型焼鈍炉13で所定の温度及び時間にて低温焼鈍され、研磨・酸洗装置15を経由してテンションリール16に巻き取られる。
本発明での連続低温焼鈍時の銅合金板Fの炉内浮上距離とは、図2に示すように、炉内の熱風Gにより波動走行している銅合金板Fの波高値である。図2では、銅合金板FがスパンLの波で波動しており、その波の中心からの高さを浮上距離Hとしている。この浮上距離Hは、張力制御装置12,14によって銅合金板Fに付与される張力と、焼鈍炉13内で銅合金板Fに吹き付けられる熱風Gの噴出量とによって制御することができる。
具体的な製造方法の一例としては、次の方法があげられる。
先ず、本発明のCu−Ni−Si系銅合金板となるように材料を調合し、還元性雰囲気の低周波溶解炉を用いて溶解鋳造を行い銅合金鋳塊を得る。次に、この銅合金鋳塊を900〜980℃に加熱した後、熱間圧延を施して適度の厚みの熱延板とし、この熱延板を水冷した後、両面を適度に面削する。次に、圧延率60〜90%にて冷間圧延を施し、適度な厚みの冷延板を作製した後、710〜750℃、7〜15秒間保持の条件にて連続焼鈍を施す。次に、この連続焼鈍処理が済んだ銅板に、酸洗い、表面研磨を行った後、圧延率60〜90%にて冷間圧延を施し、適度な厚みの冷延薄板を作製する。次に、これらの冷延薄板を710〜780℃で7〜15秒間保持した後に急冷して溶体化処理を施した後、430〜470℃で3時間保持して析出時効処理を施した後、酸洗処理し、更に、加工率10〜30%にて、銅合金板に付与される張力を90〜150N/mmとし、粒度が#180〜600の砥石で研磨した圧延ロールを使用して最終冷間圧延を施し、炉内の銅合金板に付与される張力を300〜900N/mmとして、炉内の銅合金板の浮上距離を10〜20mmとして連続低温焼鈍を施す。
表1に示す成分となるように材料を調合し、還元性雰囲気の低周波溶解炉を用いて溶解後に鋳造して厚さ80mm、幅200mm、長さ800mmの寸法の銅合金鋳塊を製造した。この銅合金鋳塊を900〜980℃に加熱した後、熱間圧延にて厚さ11mmの熱延板とし、この熱延板を水冷した後に両面を0.5mm面削した。次に、圧延率87%にて冷間圧延を施して厚さ1.3mmの冷延板を作製した後、710〜750℃にて7〜15秒間保持の条件で連続焼鈍を施した後、酸洗い、表面研磨を行い、更に、圧延率77%にて冷間圧延を施して厚さ0.3mmの冷延板を作製した。
この冷延板を710〜780℃にて7〜15秒間保持した後、急冷して溶体化処理を施し、引続き、430〜470℃にて3時間保持して析出時効処理を施し、酸洗処理後、更に、表1に示す条件にて、最終冷間圧延及び連続低温焼鈍を施し、銅合金薄板を作製した。
Figure 2012160726
次に、得られた各試料につき、算術平均粗さRa、表面粗さ平均線を基準とした時の各々の山部と谷部の値の絶対値についての標準偏差、アスペクト比、GOSの全結晶粒における平均値、結晶粒界の全粒界長さLに対する特殊粒界の全特殊粒界長さLσの比率(Lσ/L)、深絞り加工性、ばね限界値、はんだ耐熱剥離性、疲労特性の平均値、疲労特性の標準偏差を測定した。
銅合金板表面の算術平均粗さRaは、次のようにして求めた。
株式会社小坂研究所製の触針式表面粗さ測定器(SE−30D)を用いて、JIS B0651−1996に基づきプロファイルを得て、そのプロファイルを基に算術平均粗さ(Ra)を算出した(JIS B0601−1994)。
銅合金板表面の面粗さ平均線を基準とした時の各々の山部と谷部の値の絶対値についての標準偏差は、次のように求めた。
株式会社小坂研究所製の触針式表面粗さ測定器(SE−30D)を用いて、JIS
B0651−1996に基づきプロファイルを得て、そのプロファイルを基に表面粗さ平均線を基準とした時の各々の山部と谷部の値の絶対値を実測し、その標準偏差を算出した。
アスペクト比の平均値は、次のようにして求めた。
前処理として、10mm×10mmの試料を10%硫酸に10分間浸漬した後、水洗、エアブローにより散水した後に、散水後の試料を日立ハイテクノロジーズ社製フラットミリング(イオンミリング)装置で、加速電圧5kV、入射角5°、照射時間1時間にて表面処理を施した。
次に、TSL社製EBSDシステム付きの日立ハイテクノロジーズ社製走査型電子顕微鏡S−3400Nでその試料表面を観察した。観察条件は、加速電圧25kV、測定面積(圧延方向)150μm×150μmとした。
次に、ステップサイズ0.5μmにて測定面積内の全てのピクセルの方位を測定し、ピクセル間の方位差が5°以上を粒界と定義し、粒界で囲まれた2つ以上のピクセルの集合を結晶粒とみなした場合、各結晶粒の長軸方向の長さをa、短軸方向の長さをbとし、前記bを前記aで除した値をアスペクト比と定義し、測定面積内の全ての結晶粒のアスペクト比を求め、その平均値を算出した。
GOSの全結晶粒における平均値は、次のようにして求めた。
前処理として、10mm×10mmの試料を10%硫酸に10分間浸漬した後、水洗、エアブローにより散水した後に、散水後の試料を日立ハイテクノロジーズ社製フラットミリング(イオンミリング)装置で、加速電圧5kV、入射角5°、照射時間1時間にて表面処理を施した。
次に、TSL社製EBSDシステム付きの日立ハイテクノロジーズ社製走査型電子顕微鏡S−3400Nでその試料表面を観察した。観察条件は、加速電圧25kV、測定面積150μm×150μmとした。
観察結果より、全結晶粒における結晶粒内の全ピクセル間の平均方位差の平均値は次の条件にて求めた。
ステップサイズ0.5μmにて、測定面積範囲内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が5°以上である境界を結晶粒界とみなした。
次に、結晶粒界で囲まれた個々の結晶粒の全てについて、結晶粒内の全ピクセル間の方位差の平均値(GOS:Grain Orientation Spread)を(1)式にて計算し、その全ての値の平均値を全結晶粒における結晶粒内の全ピクセル間の平均方位差、即ち、GOSの全結晶粒における平均値とした。なお、2ピクセル以上が連結しているものを結晶粒とした。
Figure 2012160726
上式において、i、jは結晶粒内のピクセルの番号を示す。
nは結晶粒内のピクセル数を示す。
αijはピクセルiとjの方位差を示す。
結晶粒界の全粒界長さLに対する特殊粒界の全特殊粒界長さLσの比率(Lσ/L)は、次のようにして求めた。
前処理として、10mm×10mmの試料を10%硫酸に10分間浸漬した後、水洗、エアブローにより散水した後に、散水後の試料を日立ハイテクノロジーズ社製フラットミリング(イオンミリング)装置で、加速電圧5kV、入射角5°、照射時間1時間にて表面処理を施した。
次に、TSL社製EBSDシステム付きの日立ハイテクノロジーズ社製走査型電子顕微鏡S−3400Nでその試料表面を観察した。観察条件は、加速電圧25kV、測定面積150μm×150μmとした。
ステップサイズ0.5μmにて、測定面積範囲内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が5°以上である境界を結晶粒界とみなした。
次に、測定範囲における結晶粒界の全粒界長さLを測定し、隣接する結晶粒の界面が特殊粒界を構成する結晶粒界の位置を決定するとともに、特殊粒界の全特殊粒界長さLσと、上記測定した結晶粒界の全粒界長さLとの粒界長比率Lσ/Lを求め、特殊粒界長さ比率とした。
深絞り加工性は、次のようにして求めた。
エリクセン社製試験機を用い、ポンチ径:Φ10mm、潤滑剤:グリスの条件で、カップを作製し、外観を観察し、良好なものを○、耳部にかけ又はワレが生じていたものを×とした。
ばね限界値は、次のようにして求めた。
JIS−H3130に基づき、モーメント式試験により永久たわみ量を測定し、R.T.におけるKb0.1(永久たわみ量0.1mmに対応する固定端における表面最大応力値)を算出した。
はんだ耐熱剥離性、次のようにして求めた。
得られた各試料を幅10mm、長さ50mmの短冊状に切断し、これを230℃±5℃の60%Sn−40%Pbはんだ中にて5秒間浸漬した。フラックスは25%ロジン−エタノールを用いた。この材料を150℃において1000時間加熱し、板厚と同じ曲げ半径で90°曲げ、これを元に戻した後に、曲げ部のはんだの剥離の有無を肉眼で観察した。
疲労特性の平均値および疲労特性の標準偏差は次のようにして求めた。
疲労試験は、圧延方向に対し平行方向の幅10mmの短冊状の試験片に対しJIS Z2273に従って行った。試験片表面の最大付加応力(固定端での応力)が400MPaでの疲労寿命(試験片が破断に至るまでの繰り返し振動回数)を測定した。測定は同じ条件下で4回行い、4回の測定値の標準偏差を算出した。
これらの測定の結果を表2に示す。
Figure 2012160726
表2より、本発明のCu−Ni−Si系銅合金は、深絞り加工性とはんだ耐熱剥離性とばね限界値とのバランスがとれ、耐疲労特性の変動が少なく、特に、優れた深絞り加工性を有しており、高温及び高振動で長時間での厳しい使用環境下に曝される電子部品への使用に適していることがわかる。
以上、本発明の実施形態の製造方法について説明したが、本発明はこの記載に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
本発明のCu−Ni−Si系銅合金板は、高温及び高振動で長時間での厳しい使用環境下に曝される端子、コネクタ等の電子部品に適用できる。
11 ペイオフリール
12 張力制御装置
13 横型焼鈍炉
14 張力制御装置
15 研磨・酸洗装置
16 テンションリール
F 銅合金板
G 熱風

Claims (6)

  1. 1.0〜3.0質量%のNiを含有し、Niの質量%濃度に対し1/6〜1/4の濃度のSiを含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなり、表面の算術平均粗さRaが0.02〜0.2μmで、表面粗さ平均線を基準とした時の各々の山部と谷部の値の絶対値についての標準偏差が0.1μm以下であり、合金組織中の結晶粒のアスペクト比(結晶粒の短径/結晶粒の長径)の平均値が0.4〜0.6であり、後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて測定面積範囲内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が5°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の、GOSの全結晶粒における平均値が1.2〜1.5°であり、結晶粒界の全粒界長さLに対する特殊粒界の全特殊粒界長さLσの比率(Lσ/L)が60〜70%であり、ばね限界値が450〜600N/mmであり、150℃で1000時間でのはんだ耐熱剥離性が良好で、耐疲労特性の変動が少なく、優れた深絞り加工性を有するCu−Ni−Si系銅合金板。
  2. 更にSnを0.2〜0.8質量%、Znを0.3〜1.5質量%含有することを特徴とする請求項1に記載のCu−Ni−Si系銅合金板。
  3. 更にMgを0.001〜0.2質量%含有することを特徴とする請求項1に記載のCu−Ni−Si系銅合金板。
  4. 更にMgを0.001〜0.2質量%含有することを特徴とする請求項2に記載のCu−Ni−Si系銅合金板。
  5. 更にFe:0.007〜0.25質量%、P:0.001〜0.2質量%、C:0.0001〜0.001質量%、Cr:0.001〜0.3質量%、Zr:0.001〜0.3質量%を1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のCu−Ni−Si系銅合金板。
  6. 請求項1に記載の銅合金板の製造方法であって、熱間圧延、冷間圧延、溶体化処理、時効化処理、最終冷間圧延、低温焼鈍をこの順序で含む工程で銅合金板を製造するに際して、最終冷間圧延を、加工率10〜30%にて、銅合金板に付与される張力を90〜150N/mmとし、粒度が#180〜600の砥石で研磨した圧延ロールを使用して実施し、連続低温焼鈍を、炉内の銅合金板に付与される張力を300〜900N/mmとして、炉内の銅合金板の浮上距離を10〜20mmにて実施することを特徴とするCu−Ni−Si系銅合金板の製造方法。
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