JP2017014624A - コルソン合金及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた曲げ加工性と圧延直交方向の高いヤング率を兼備したコルソン合金及びその製造方法を提供する。
【解決手段】Ni及びCoのうち一種以上を0.8〜5.0質量%、Siを0.2〜1.5質量%含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる圧延材であり、該圧延材の表面においてCube方位から10°以内の方位を持つ領域の面積率であるCube方位{001}<100>の面積率が5〜80%であり、板厚に対し45〜55%の深さの断面において、<100>方向がTDと成す角度が10°以内である領域の面積率である<100>方向が圧延材の幅方向(TD)に配向する結晶の面積率が50%以下であるコルソン合金。
【選択図】図2

Description

本発明は、コネクタ、端子、リレー、スイッチ等の導電性ばね材やトランジスタ、集積回路(IC)等の半導体機器のリ−ドフレーム材として好適な、優れた強度、曲げ加工性、耐応力緩和特性、導電性等を備えたコルソン合金及びその製造方法に関する。
近年、電気・電子部品の小型化が進み、これら部品に使用される銅合金に良好な強度、導電率及び曲げ加工性が要求されている。この要求に応じ、従来のりん青銅や黄銅といった固溶強化型銅合金に替わり、高い強度及び導電率を有するコルソン合金等の析出強化型銅合金の需要が増加している。コルソン合金はCuマトリックス中にNi−Si、Co−Si、Ni−Co−Si等の金属間化合物を析出させた合金であり、高強度、高い導電率、良好な曲げ加工性を兼ね備えている。一般に、強度と曲げ加工性とは相反する性質であり、コルソン合金においても高強度を維持しつつ曲げ加工性を改善することが望まれている。
ここでコルソン合金には、曲げ軸を圧延方向と直交直角にとった場合(Good Way)の曲げ加工性が、曲げ軸を圧延方向と平行にとった場合(Bad Way)の曲げ加工性より劣るという性質があり、Good Wayの曲げ加工性の改善が特に求められている。
近年、コルソン合金の曲げ加工性を改善する技術として、{001}<100>方位(Cube方位)を発達させる方策が提唱されている。例えば、特許文献1(特開2006−283059号)では、(1)鋳造、(2)熱間圧延、(3)冷間圧延(加工度95%以上)、(4)溶体化処理、(5)冷間圧延(加工度20%以下)、(6)時効処理、(7)冷間圧延(加工度1〜20%)、(8)短時間焼鈍、の工程を順次行うことにより、Cube方位の面積率を50%以上に制御し、曲げ加工性を改善している。
特許文献2(特開2010−275622号)では、(1)鋳造、(2)熱間圧延(950℃から400℃に温度を下げながら行う)、(3)冷間圧延(加工度50%以上)、(4)中間焼鈍(450〜600℃、導電率を1.5倍以上に硬さを0.8倍以下に調整する)、(5)冷間圧延(加工度70%以上)、(6)溶体化処理、(7)冷間圧延(加工度0〜50%)、(8)時効処理を順次行うことにより、(200)({001}と同義)のX線回折強度を銅粉標準試料のX線回折強度以上に制御し曲げ加工性を改善している。
特許文献3(特開2011−17072号)では、Cube方位の面積率を5〜60%に制御すると同時に、Brass方位及びCopper方位の面積率をともに20%以下に制御し、曲げ加工性を改善している。そのための製造方法としては、(1)鋳造、(2)熱間圧延、(3)冷間圧延(加工度85〜99%)、(4)熱処理(300〜700℃、5分〜20時間)、(5)冷間圧延(加工度5〜35%)、(6)溶体化処理(昇温速度2〜50℃/秒)、(7)時効処理、(8)冷間圧延(加工度2〜30%)、(9)調質焼鈍、の工程を順次行う場合に最も良好な曲げ性が得られている。
特許文献4(特許第4857395号公報)では、板厚方向の中央部において、Cube方位の面積率を10〜80%に制御すると同時に、Brass方位及びCopper方位の面積率をともに20%以下に制御し、ノッチ曲げ性を改善している。ノッチ曲げを可能とする製造方法として、(1)鋳造、(2)熱間圧延、(3)冷間圧延(30〜99%)、(4)予備焼鈍(軟化度0.25〜0.75、導電率20〜45%IACS)、(5)冷間圧延(7〜50%)、(6)溶体化処理、(7)時効、なる工程を提唱している。
特許文献5(WO2011/068121公報)では、材料の表層および深さ位置で全体の1/4の位置でのCube方位面積率をそれぞれW0およびW4とし、W0/W4を0.8〜1.5、W0を5〜48%に制御し、さらに平均結晶粒径を12〜100μmに調整することで、180度密着曲げ性および耐応力緩和性を改善している。そのための製造方法として、(1)鋳造、(2)熱間圧延、(1パスの加工率を30%以下とし各パス間の保持時間を20〜100秒とする)、(3)冷間圧延(加工度90〜99%)、(4)熱処理(300〜700℃、10秒〜5時間)、(5)冷間圧延(加工度5〜50%)、(6)溶体化処理(800〜1000℃)、(7)時効処理、(8)冷間圧延、(9)調質焼鈍、なる工程を提唱している。
曲げ性を改善する技術ではないが、特許文献6(WO2011/068134公報)では、圧延方向に向く(100)面の面積率を30%以上に制御することにより、ヤング率を110GPa以下、曲げたわみ係数を105GPa以下に調整している。また、そのための製造方法として、(1)鋳造、(2)熱間圧延(徐冷)、(3)冷間圧延(加工度70%以上)、(4)熱処理(300〜800℃、5秒〜2時間)、(5)冷間圧延(加工度3〜60%)、(6)溶体化処理、(7)時効処理、(8)冷間圧延(加工度50%以下)、(9)調質焼鈍、なる工程を提唱している。
特開2006−283059号公報 特開2010−275622号公報 特開2011−17072号公報 特許第4857395号公報 WO2011/068121公報 WO2011/068134公報
本発明者は、従来技術に従いCube方位を発達させ曲げ性を改善したコルソン合金につき、コネクタに加工後のばね特性を検討した。その結果、図1に模式的に示すように、圧延方向と直交する方向(以下、圧延直交方向とする)にばね部が採取される端面接触型端子として用いた場合に、ばね接点において充分な接触力が得られず接触電気抵抗が増大することがあった。また、この接触力の低下が圧延直交方向のヤング率が低いことと関係することを知見した。ここでいうヤング率とは、圧延直交方向に引張試験を行って応力歪曲線を採取し、応力歪曲線における弾性範囲の直線の傾きから求めるヤング率であり、曲げたわみ係数として求めるヤング率(日本伸銅協会(JACBA)技術標準「銅及び銅合金板条の片持ち梁による曲げたわみ係数測定方法」)は上記接触力との相関を示さなかった。以下、単に「ヤング率」と表記する場合は、引張試験から求めるヤング率を指す。
そこで本発明は、優れた曲げ加工性と有すると同時に、高い圧延直交方向のヤング率をも有する、コルソン合金及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、コルソン合金の結晶方位をEBSD法で解析し、表面および板厚中央の断面のそれぞれに対し、結晶方位を最適化することにより、曲げ加工性が良好でありながら、圧延直交方向のヤング率も充分に高いコルソン合金が得られることを見出し、また、この結晶方位を得るための製造方法を明らかにした。
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、Ni及びCoのうち一種以上を0.8〜5.0質量%、Siを0.2〜1.5質量%含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる圧延材であり、該圧延材の表面においてCube方位から10°以内の方位を持つ領域の面積率であるCube方位{001}<100>の面積率が5〜80%であり、板厚に対し45〜55%の深さの断面において、<100>方向がTDと成す角度が10°以内である領域の面積率である<100>方向が圧延材の幅方向(TD)に配向する結晶の面積率が50%以下であるコルソン合金である。
本発明に係るコルソン合金の一実施形態においては、Sn、Zn、Mg、Fe、Ti、Zr、Cr、Al、P、Mn及びAgのうち1種以上を総量で0.005〜3.0質量%含有する。
本発明に係るコルソン合金の別の一実施形態においては、圧延方向と直交する方向の引張試験から求めたヤング率が106GPa以上である。
本発明に係るコルソン合金の更に別の一実施形態においては、圧延方向と直交する方向に採取される端面接触型端子の素材として用いられる。
本発明は別の一側面において、Ni及びCoのうち一種以上を0.8〜5.0質量%、Siを0.2〜1.5質量%含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなるインゴットを作製し、前記インゴットを800〜1000℃の温度から厚み3〜20mmまで熱間圧延し、加工度90〜99.8%の冷間圧延を、1パスあたりの加工度の最大値および平均値をそれぞれ20%以下および15%以下として行った後、軟化度0.20〜0.80の予備焼鈍、加工度3〜50%の冷間圧延、700〜950℃で5〜300秒間の溶体化処理、加工度0〜60%の冷間圧延、350〜600℃で2〜20時間の時効処理、加工度0〜50%の冷間圧延を順次行う方法であり、
前記軟化度は軟化度をSとして、
S=(σ0−σ)/(σ0−σ950
で示される、本発明に係るコルソン合金の製造方法である。
ここで、σ0は予備焼鈍前の引張強さであり、σ及びσ950はそれぞれ予備焼鈍後及び950℃で焼鈍後の引張強さである。
本発明に係るコルソン合金の製造方法の一実施形態においては、前記インゴットが、Sn、Zn、Mg、Fe、Ti、Zr、Cr、Al、P、Mn及びAgのうち1種以上を総量で0.005〜3.0質量%含有する。
本発明は更に別の一側面において、本発明のコルソン合金を備えた伸銅品である。
本発明は更に別の一側面において、本発明のコルソン合金を備えた電子機器部品である。
本発明によれば、優れた曲げ加工性と圧延直交方向の高いヤング率を兼備したコルソン合金及びその製造方法を提供することができる。
圧延直交方向に採取される端面接触型端子を説明するための模式図である。 本発明に係る合金を種々の温度で焼鈍したときの焼鈍温度と引張強さとの関係を示すグラフである。
(Ni、Co及びSiの添加量)
Ni、Co及びSiは、適当な時効処理を行うことにより、Ni−Si、Co−Si、Ni−Co−Si等の金属間化合物として析出する。この析出物の作用により強度が向上し、析出によりCuマトリックス中に固溶したNi、Co及びSiが減少するため導電率が向上する。しかしながら、NiとCoの合計量が0.8質量%未満又はSiが0.2質量%未満になると所望の強度が得られず、反対にNiとCoの合計量が5.0質量%を超えると又はSiが1.5質量%を超えると曲げ加工性が著しく劣化する。このため、本発明に係るコルソン合金では、NiとCoのうち一種以上の添加量は0.8〜5.0質量%とし、Siの添加量は0.2〜1.5質量%としている。NiとCoのうち一種以上の添加量は1.0〜4.0質量%がより好ましく、Siの添加量は0.25〜0.90質量%がより好ましい。
(その他の添加元素)
Sn、Zn、Mg、Fe、Ti、Zr、Cr、Al、P、Mn、Agは強度上昇に寄与する。さらにZnはSnめっきの耐熱剥離性の向上に、Mgは応力緩和特性の向上に、Zr、Cr、Mnは熱間加工性の向上に効果がある。Sn、Zn、Mg、Fe、Ti、Zr、Cr、Al、P、Mn、Agが総量で0.005質量%未満であると上記の効果は得られず、3.0質量%を超えると曲げ加工性が著しく低下する。このため、本発明に係るコルソン合金では、これらの元素を総量で0.005〜3.0質量%含有することが好ましく、0.01〜2.5質量%含有することがより好ましい。
(ヤング率)
ばね部が圧延方向と直交する端面接触型端子において、ばね接点での充分な接触力を得るために、圧延直交方向のヤング率を106GPa以上に調整することが好ましく、111GPa以上に調整することがより好ましい。
ヤング率の上限値は接触力の点からは規制されないものの、本発明のコルソン合金のヤング率は典型的には130GPa以下、より典型的には120GPa以下である。
なお、前記特許文献4、5においても、発明合金のヤング率が評価されているが、文献4のヤング率は圧延方向と平行に測定された曲げたわみ係数であり、また、文献5では引張試験によりヤング率を求めているものの、その引張試験は圧延方向と平行に行われている。
(結晶方位)
本発明では、EBSD(Electron Back Scatter Diffraction:電子後方散乱回折)による測定値に基づき結晶方位を調整する。ここで、EBSDとは、SEM(Scanning Electron Microscope:走査電子顕微鏡)内で試料に電子線を照射したときに生じる反射電子菊池線回折(菊池パターン)を利用して結晶方位を解析する技術である。電子線は試料表面に照射され、このとき得られる情報は電子線が侵入する数10nmの深さまでの方位情報、すなわち極表層の方位情報である。
コルソン合金の圧延材では、その表面において、Cube方位に配向する結晶の面積率(以下、Cube方位面積率)が増加すると、不均一な変形が抑制され曲げ加工性が向上する。ここで、Cube方位とは、圧延面法線方向(ND)に(001)面が、圧延方向(RD)に(100)面が向いている状態であり、{001}<100>の指数で示される。そこで、良好な曲げ加工性を得るために、表面におけるCube方位面積率を5%以上、好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上に制御する。
Cube方位面積率の上限値は、曲げ加工性改善の点からは規制されないものの、本発明のコルソン合金のCube方位面積率は典型的には80%以下である。
表面におけるCube方位面積率を高め曲げ加工性を改善した従来のコルソン合金の場合、圧延直交方向のヤング率が106GPaに満たなかった。このヤング率を高めるために、板厚中央部における結晶方位をEBSDによる測定値に基づき調整する。ここで、板厚中央部の結晶方位は、試料の一方の表面からエッチング、機械研磨等により厚み方向に試料を削って板厚中央部の断面を露出させ、この断面に対しEBSB測定を行うことで測定する。板厚中央部とは、板厚に対し45〜55%の位置を指す。
板厚中央部において、<100>方向が圧延材の幅方向(TD)に配向する結晶の面積率を50%以下に制御すると、圧延直交方向のヤング率が106GPa以上になる。<100>方向が圧延材の幅方向(TD)に配向する結晶としては、Cube方位の他、Cube方位がTDを中心軸として回転した方位(例えば{011}<011>、{012}<021>等)が含まれる。
板厚中央部における<100>方向が圧延材の幅方向(TD)に配向する結晶の面積率の下限値は、圧延直交方向のヤング率を高める点からは規制されないものの、本発明のコルソン合金の該合計値は典型的には5%以上である。
(製造方法)
コルソン合金の一般的な製造プロセスでは、まず溶解炉で電気銅、Ni、Co、Si等の原料を溶解し、所望の組成の溶湯を得る。そして、この溶湯をインゴットに鋳造する。その後、熱間圧延、冷間圧延、溶体化処理、時効処理の順で所望の厚みおよび特性を有する条や箔に仕上げる。熱処理後には、熱処理時に生成した表面酸化膜を除去するために、表面の酸洗や研磨等を行ってもよい。また、高強度化のために、溶体化処理と時効の間や時効後に冷間圧延を行ってもよい。
本発明では、上述の結晶方位を得るために、溶体化処理の前に、熱処理(以下、予備焼鈍ともいう)及び比較的低加工度の冷間圧延(以下、軽圧延ともいう)を行い、さらに熱間圧延と予備焼鈍前との間の冷間圧延の条件を調整する。
予備焼鈍は、熱間圧延後の冷間圧延により形成された圧延組織中に、部分的に再結晶粒を生成させることを目的に行う。圧延組織中の再結晶粒の割合には最適値があり、少なすぎてもまた多すぎても上述の結晶方位が得られない。最適な割合の再結晶粒は、下記に定義する軟化度Sが0.20〜0.80、より好ましくは0.25〜0.75になるよう、予備焼鈍条件を調整することにより得られる。
図2に本発明に係る合金を種々の温度で焼鈍したときの焼鈍温度と引張強さとの関係を例示する。熱電対を取り付けた試料を1000℃の管状炉に挿入し、熱電対で測定される試料温度が所定温度に到達したときに、試料を炉から取り出して水冷し、引張強さを測定したものである。試料到達温度が500〜700℃の間で再結晶が進行し、引張強さが急激に低下している。高温側での引張強さの緩やかな低下は、再結晶粒の成長によるものである。
予備焼鈍における軟化度Sを次式で定義する。
S=(σ0−σ)/(σ0−σ950
ここで、σ0は焼鈍前の引張強さであり、σおよびσ950はそれぞれ予備焼鈍後および950℃で焼鈍後の引張強さである。950℃という温度は、本発明に係る合金を950℃で焼鈍すると安定して完全再結晶することから、再結晶後の引張強さを知るための基準温度として採用している。
軟化度が0.2〜0.8の範囲から外れると、圧延材表面において、Cube方位の面積率が5%未満になる。予備焼鈍の温度および時間は特に制約されず、Sを上記範囲に調整することが重要である。一般的には、連続焼鈍炉を用いる場合には炉温400〜750℃で5秒間〜10分間の範囲、バッチ焼鈍炉を用いる場合には炉温350〜600℃で30分間〜20時間の範囲で行われる。
なお、予備焼鈍条件の設定は、次の手順により行うことができる。
(1)予備焼鈍前の材料の引張強さ(σ0)を測定する。
(2)予備焼鈍前の材料を950℃で焼鈍する。具体的には、熱電対を取り付けた材料を1000℃の管状炉に挿入し、熱電対で測定される試料温度が950℃に到達したときに、試料を炉から取り出して水冷する。
(3)上記950℃焼鈍後の材料の引張強さ(σ950)を求める。
(4)例えば、σ0が800MPa、σ950が300MPaの場合、軟化度0.20及び0.80に相当する引張強さは、それぞれ700MPa及び400MPaである。
(5)焼鈍後の引張強さが400〜700MPaとなるように、予備焼鈍の条件を求める。
上記予備焼鈍の後、溶体化処理に先立ち、加工度が3〜50%、より好ましくは7〜50%の軽圧延を行う。加工度R(%)は次式で定義する。
R=(t0−t)/t0×100(t0:圧延前の板厚,t:圧延後の板厚)
加工度が3〜50%の範囲から外れると、圧延材表面においてCube方位の面積率が5%未満になる。
上記予備焼鈍および軽圧延の実施に加え、熱間圧延と予備焼鈍との間の冷間圧延の条件を調整することにより、表面ではCube方位の面積率が5%以上で、板厚中央部では<100>方向が圧延材のTDに配向する結晶の面積率が50%以下である結晶方位の特徴を付与することができる。
該冷間圧延では、一対の圧延ロール間に材料を繰り返し通過させ、目標の板厚に仕上げてゆく。結晶方位には、該冷間圧延における総加工度と1パスあたりの加工度が影響を及ぼす。ここで、総加工度Rは、一般的にいう加工度を指し、上述したRと同じ式で定義される。また、1パスあたりの加工度r(%)とは、圧延ロールを1回通過したときの板厚減少率であり、r=(T0−T)/T0×100(T0:圧延ロール通過前の厚み、T:圧延ロール通過後の厚み)で与えられる。
総加工度Rは90〜99.8%とする。Rが90%未満になると、表面でのCube方位の面積率が5%未満になる。Rが99.8%を超えると、圧延材のエッジ等に割れが発生し、圧延中の材料が破断することがある。より好ましい加工度は95〜99%である。
1パスあたりの加工度rについては、全パスのうちの最大値(rmax)を20%以下とし、全パスの平均値(rave)を15%以下とする。この条件から外れると、板厚中央部において<100>方向が圧延材のTDに配向する結晶の面積率が50%を超える。raveの下限値については、結晶方位の点からは制限されないが、raveが小さくなると圧延に時間がかかり生産効率が低下するため、raveは10%以上にすることが好ましい。
本発明合金の製造方法を工程順に列記すると次のようになる。
(1)インゴットの鋳造(厚み20〜300mm)
(2)熱間圧延(温度800〜1000℃、厚み3〜20mmまで)
(3)冷間圧延(R=90〜99.8%、rmax≦20%、rave≦15%)
(4)予備焼鈍(軟化度:S=0.20〜0.80)
(5)軽圧延(加工度3〜50%)
(6)溶体化処理(700〜950℃で5〜300秒)
(7)冷間圧延(加工度0〜60%)
(8)時効処理(350〜600℃で2〜20時間)
(9)冷間圧延(加工度0〜50%)
(10)歪取り焼鈍(300〜700℃で5秒〜10時間)
冷間圧延(7)及び(9)は高強度化のために任意に行うものである。ただし、圧延加工度の増加とともに強度が増加する反面、表面でのCube方位の面積率が減少する傾向にある。冷間圧延(7)及び(9)におけるそれぞれの加工度が上記上限値を超えると、表面でのCube方位の面積率が5%未満になり曲げ加工性が劣化する。
歪取り焼鈍(10)は、冷間圧延(9)を行う場合にこの冷間圧延で低下するばね限界値等を回復させるために任意に行うものである。歪取り焼鈍(10)の有無に関わらず、結晶方位制御により良好な曲げ加工性と圧延直交方向の高いヤング率とが両立するという本発明の効果は得られる。歪取り焼鈍(10)は行っても良いし行わなくても良い。
なお、工程(2)、(6)及び(8)については、コルソン合金の一般的な製造条件を選択すればよい。
本発明のコルソン合金は種々の伸銅品、例えば板、条及び箔に加工することができ、更に、本発明のコルソン合金は、リードフレーム、コネクタ、ピン、端子、リレー、スイッチ、二次電池用箔材等の電子機器部品等に使用することができる。特に、厳しいGood Wayの曲げ加工が施される部品、およびばね部が圧延直交方向に採取され端面接触で電気接点を得る部品(図1参照)として好適である。ここでいう直交する方向とは、圧延方向とばね部方向とが成す角度が60〜120度の場合を指す。当該角度が70〜110度であれば発明の効果がより発揮され、80〜100度であれば発明の効果がさらによく発揮される。
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
(実施例1)
Ni:2.6質量%、Si:0.58質量%、Sn:0.5質量%、およびZn:0.4質量%を含有し残部が銅及び不可避的不純物からなる合金を実験材料とし、予備焼鈍条件、軽圧延条件及び予備焼鈍前の圧延条件と結晶方位との関係、さらに結晶方位が製品の曲げ性および機械的特性に及ぼす影響を検討した。
高周波溶解炉にてアルゴン雰囲気中で内径60mm、深さ200mmの黒鉛るつぼを用い電気銅2.5kgを溶解した。上記合金組成が得られるよう合金元素を添加し、溶湯温度を1300℃に調整した後、鋳鉄製の鋳型に鋳込み、厚さ30mm、幅60mm、長さ120mmのインゴットを製造した。このインゴットを、次の工程順で加工し、板厚0.15mmの製品試料を作製した。
(1)熱間圧延:950℃で3時間加熱したインゴットを所定の厚みまで圧延した。圧延後の材料は直ちに水冷した。
(2)研削:熱間圧延で生成した酸化スケールをグラインダーで除去した。研削量は片面あたり0.5mmとした。
(3)冷間圧延:種々の総加工度(R)および1パスあたりの加工度(r)で、所定の厚みまで冷間圧延した。
(4)予備焼鈍:所定温度に調整した電気炉に試料を挿入し、所定時間保持した後、試料を水槽に入れ冷却した。
(5)軽圧延:種々の圧延加工度で、厚み0.25mmまで冷間圧延を行った。
(6)溶体化処理:800℃に調整した電気炉に試料を挿入し、10秒間保持した後、試料を水槽に入れ冷却した。溶体化処理後の結晶粒径は約10μmであった。
(7)時効処理:電気炉を用い450℃で5時間、Ar雰囲気中で加熱した。
(8)冷間圧延:0.25mmから0.20mmまで加工度20%で冷間圧延した。
(9)歪取り焼鈍:400℃に調整した電気炉に試料を挿入し、10秒間保持した後、試料を大気中に放置し冷却した。
予備焼鈍後の試料および製品試料(この場合は歪取り焼鈍上がり)について、次の評価を行った。
(予備焼鈍での軟化度評価)
予備焼鈍前および予備焼鈍後の試料につき、引張試験機を用いてJIS Z 2241に準拠し圧延方向と平行に引張強さを測定し、それぞれの値をσ0およびσとした。また、950℃焼鈍試料を前記手順(1000℃の炉に挿入し試料が950℃に到達したときに水冷)で作製し、圧延方向と平行に引張強さを同様に測定しσ950を求めた。σ0、σ、σ950から、軟化度Sを求めた。
S=(σ0−σ)/(σ0−σ950
なお、引張試験片はJIS Z 2201に規定する13B号試験片とした。
(EBSD)
結晶粒を200個以上含む、500μm四方の試料面積に対し、0.5μmのステップでスキャンし、結晶方位分布を測定し、結晶方位密度関数解析を行った。
表層の結晶方位を解析するための試料として、試料表面を機械研摩して圧延模様等による微小凹凸を除去した後、コロイダルシリカ砥粒を使用し鏡面に仕上げた。これによる表面の研摩深さは2〜3μmの範囲であった。その後、Cube方位から10°以内の方位を持つ領域の面積を求め、この面積を全測定面積で除し、面積率とした。
板厚中央部の結晶方位を解析するための試料として、一方の表面から板厚中央部までを塩化第二鉄溶液を用いたエッチングにより除去し、次に、機械研摩と電解研磨により鏡面に仕上げた。仕上げ後の試料の厚みは、元の板厚に対し45〜55%の範囲であった。その後、結晶の<100>方向がTDと成す角度が10°以内である領域の面積を求め、この面積を全測定面積で除し、<100>方向がTDに配向する結晶の面積率とした。
なお、EBSDによる方位解析において得られる情報は、電子線が試料に侵入する数10nmの深さまでの方位情報を含んでいるが、測定している広さに対して充分に小さいため、面積率として記載した。
(製品の引張り試験)
JIS Z 2201に規定する13B号試験片を引張方向が圧延方向と平行になるように採取し、JIS Z 2241に準拠して圧延方向と平行に引張試験を行い、引張強さを求めた。
(製品の曲げ試験)
より厳しい曲げ加工を想定し、W曲げ等の90度曲げ試験ではなく、180度曲げ試験を行った。
幅が10mmで、長さが30mm以上の短冊形試料を、その長手方向が圧延方向と平行になるように採取した。JIS Z 2248の押し曲げ法に準拠し、内側半径をSとし、Good Way方向(曲げ軸が圧延方向と直交)に180度曲げ試験を行った。曲げ断面を機械研磨及びバフ研磨で鏡面に仕上げ、光学顕微鏡で割れの有無を観察した。Sが0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.40、0.50、0.60、0.80、1.0mmの曲げを行うための試験ジグを準備し、割れが発生しない最小のS(Smin)を求めた。Sminを板厚(d)で割った値(Smin/d)を曲げ加工性の指標とした。Smin/dが1.0以下であれば、良好なGood Wayの曲げ加工性が得られたと判断した。
(製品のヤング率)
JIS Z 2201に規定する13B号試験片を引張方向が圧延方向と直交するように採取し、引張試験を行った。得られた応力歪曲線から、弾性範囲における直線部の傾きを求め、この値をヤング率とした。
評価結果を表1及び表2に示す
Figure 2017014624
Figure 2017014624
発明例は、いずれも本発明が規定する条件で予備焼鈍前の冷間圧延、予備焼鈍および軽圧延を行ったものであり、板厚表面および中央部の結晶方位が本発明の規定を満たし、Good Wayの180度曲げのSmin/dが1.0以下となり、同時に106MPa以上の圧延直交方向のヤング率が得られた。
比較例1〜3は、予備焼鈍前の冷間圧延における1パス当たりの加工度(r)の条件が本発明の規定から外れたものである。比較例1ではraveが過大、比較例2ではrmaxが過大、比較例3ではrave、rmaxとも過大である。これらでは、板厚中央において<100>方向が圧延材のTDに配向する結晶の面積率が50%を超え、圧延直交方向のヤング率が106GPaに満たなかった。
表3は、予備焼鈍の直前に、9.0mmから0.357mmまで総加工度(R)が96.0%の圧延を行った、発明例3および比較例1〜3について、各パスの上がりの板厚および各パスの加工度(r)を比較したものである。
Figure 2017014624
従来のコルソン合金の冷間圧延(特に工程の前半に行なう粗圧延)では、生産性を重視し、比較例3のように各パスの加工度を高く設定し、少ないパス回数で圧延を行うことが通常であった。
比較例4は、予備焼鈍前の冷間圧延における総加工度(R)が90.0%を下回ったものである。表面でのCube方位の面積率が5%未満となったため、曲げ加工性が悪化し、Good Wayの180度曲げのSmin/dが1.0を超えた。
比較例5では予備焼鈍の軟化度が0.20を下回り、比較例6では予備焼鈍での軟化度が0.80を超えた。また、比較例7では軽圧延の加工度が3%を下回り、比較例8では軽圧延の加工度が50%を超えた。比較例5〜8では、表面でのCube方位面積率が5%未満となったため、曲げ加工性が悪化し、Good Wayの180度曲げのSmin/dが1.0を超えた。
比較例9は、従来の一般的なコルソン合金の製造方法に準じて製造されたものである。予備焼鈍および軽圧延は行わず、熱間圧延と溶体化処理との間の冷間圧延では、生産性を重視しraveを15%超、rmaxを20%超に設定している。表面においてCube方位の面積率が5%を下回り、板厚中央において<100>方向が圧延材のTDに配向する結晶の面積率が50%以下であった。Good Wayの180度曲げのSmin/dは2.5と曲げ加工性が悪く、反面、圧延直交方向のヤング率は140GPaを超える高い値であった。
比較例10〜14は、当該合金組成のコルソン合金を特許文献2〜5に記載された製造方法に準じて製造したものである。ここで、熱間圧延と予備焼鈍(中間焼鈍)との間の冷間圧延では、生産性を重視しraveを15%超、rmaxを20%超に設定している。
比較例10は、特許文献2に準じて製造したものであり、表2に記載した以外の条件として、熱間圧延は950℃から400℃に温度を下げながら行い、予備(中間)焼鈍では導電率を1.5倍以上に硬さを0.8倍以下に調整している。この条件で製造することで、表面においてCube方位の面積率が5%以上になったが、板厚中央において<100>方向が圧延材のTDに配向する結晶の面積率が50%を超えた。その結果、曲げ加工性は良好であったが、圧延直交方向のヤング率が106GPaに満たなかった。
比較例11は、特許文献3に準じて製造したものであり、表2に記載した以外の条件として、溶体化処理では400〜750℃の範囲の昇温速度を2〜50℃/秒とした。この条件で製造することで、Cube方位の面積率が5〜60%、Brass方位及びCopper方位の面積率が20%以下となった。一方、板厚中央において<100>方向が圧延材のTDに配向する結晶の面積率が50%を超えた。その結果、曲げ加工性は良好であったが、圧延直交方向のヤング率が106GPaに満たなかった。
比較例12は、特許文献4に準じて製造したものであり、表2に記載した以外の条件として、予備焼鈍において導電率を20〜45%IACSの範囲に調整した。この条件で製造することで、板厚方向の中央部において、Cube方位の面積率を10〜80%、Brass方位及びCopper方位の面積率をともに20%以下になり、ノッチ曲げが可能になった。一方、板厚中央において<100>方向が圧延材のTDに配向する結晶の面積率が50%を超えた。その結果、曲げ加工性は良好であったが、圧延直交方向のヤング率が106GPaに満たなかった。
比較例13は、特許文献5に準じて製造したものであり、表2に記載した以外の条件として、熱間圧延では1パスの加工率を30%以下とし各パス間の保持時間を20〜100秒とした。また、溶体化処理を900℃で行い、平均結晶粒径を12〜100μmの範囲に調整した。この条件で製造することで、W0/W4が0.8〜1.5、W0が5〜48%(W0およびW4は、それぞれ材料の表層および深さ位置で全体の1/4の位置でのCube方位面積率)となり、1.0mm幅の試験片による180度密着曲げが可能となり(試験片幅が細いほど曲げ加工は容易)、150℃で1000時間加熱したときの応力緩和値が30%以下になった。一方、板厚中央において<100>方向が圧延材のTDに配向する結晶の面積率が50%を超えた。その結果、曲げ加工性(試験片幅10mm)は良好であったが、圧延直交方向のヤング率が106GPaに満たなかった。
比較例14は、特許文献6に準じて製造したものであり、表2に記載した以外の条件として、熱間圧延後に350℃まで徐冷した。この条件で製造することで、圧延方向に向く(100)面の面積率が30%以上となり、圧延平行方向のヤング率が110GPa以下になった。一方、表面においてCube方位の面積率が5%をわずかに下回り、板厚中央において<100>方向が圧延材のTDに配向する結晶の面積率が50%を超えた。その結果、曲げ加工性は若干悪く、圧延直交方向のヤング率は106GPaに満たなかった。
(実施例2)
実施例1で示した曲げ加工性の改善効果が、異なる成分および製造条件のコルソン合金でも得られるかについて検討した。
まず、実施例1と同様の方法で鋳造を行い、表4及び5の成分を有するインゴットを得た。
(1)熱間圧延:950℃で3時間加熱したインゴットを所定の厚みまで圧延した。圧延後の材料は直ちに水冷した。
(2)研削:熱間圧延で生成した酸化スケールをグラインダーで除去した。研削量は片面あたり0.5mmとした。
(3)冷間圧延:種々の総加工度(R)および1パスあたりの加工度(r)で、所定の厚みまで冷間圧延した。
(4)予備焼鈍:所定温度に調整した電気炉に試料を挿入し、所定時間保持した後、試料を水槽に入れ冷却した。
(5)軽圧延
(6)溶体化処理:所定温度に調整した電気炉に試料を挿入し、10秒間保持した後、試料を水槽に入れ冷却した。該温度は再結晶粒の平均直径が5〜25μmの範囲になる範囲で選択した。
(7)冷間圧延(圧延1)
(8)時効処理:電気炉を用い所定温度で5時間、Ar雰囲気中で加熱した。該温度は時効後の引張強さが最大になるように選択した。
(9)冷間圧延(圧延2)
(10)歪取り焼鈍:所定温度に調整した電気炉に試料を挿入し、10秒間保持した後、試料を大気中に放置し冷却した。
予備焼鈍後の試料および製品試料について、実施例1と同様の評価を行った。表6に評価結果を示す。圧延1または圧延2を行わなかった場合は、それぞれの加工度の欄に「0」と表記している。また、歪取り焼鈍か行わなかった場合は、温度の欄に「なし」と表記している。
Figure 2017014624
Figure 2017014624
Figure 2017014624
発明例は、いずれも本発明が規定する条件で予備焼鈍前の冷間圧延、予備焼鈍および軽圧延を行ったものであり、板厚表面および中央部の結晶方位が本発明の規定を満たし、Good Wayの180度曲げのSmin/dが1.0以下となり、同時に106MPaを超える圧延直交方向のヤング率が得られた。また、650MPaを超える高い引張強さも得られた。
比較例15、21、22、23、25、27は、予備焼鈍前の冷間圧延における1パス当たりの加工度(r)の条件が本発明の規定から外れたものである。このため、板厚中央において<100>方向が圧延材のTDに配向する結晶の面積率が50%を超え、圧延直交方向のヤング率が106GPaに満たなかった。
比較例17は予備焼鈍前の冷間圧延における総加工度(R)が90.0%を下回ったものである。比較例18、26は軽圧延の加工度が本発明の規定を満足しなかったものである。比較例16、24は予備焼鈍の軟化度が本発明の規定を満足しなかったものである。これらでは、表面でのCube方位の面積率が5%未満となり、Smin/dが1.0を超えた。
比較例19、20、28は、本発明が規定する条件で予備焼鈍前の冷間圧延、予備焼鈍および軽圧延を行ったものであるが、比較例20では圧延1の加工度が60%を超え、比較例19、28では圧延2の加工度が50%を超えた。このため、表面でのCube方位の面積率が5%未満となり、Smin/dが1.0を超えた。
比較例29はNiとCoの合計濃度およびSi濃度が本発明の規定を下回ったものである。結晶方位が本発明の規定を満たし、1.0以下のSmin/dおよび106GPaを超える圧延直交方向のヤング率が得られたものの、引張強さが500MPaにも達しなかった。
比較例30はNiとCoの合計濃度が本発明の規定を超えたものである。表面でのCube方位の面積率が5%以上であったが、Smin/dが1.0を超えた。
比較例31は特許文献1が提唱する方法に準じ製造したものであり、予備焼鈍および軽圧延は行わず、表5に記載した以外の条件として、溶体化処理、時効処理および歪取り焼鈍(短時間焼鈍)の冷却速度をそれぞれ10℃/秒以上、10℃/秒未満および10℃/秒以上とし、短時間焼鈍における導電率低下を0.5〜3%IACSとし、平均結晶粒径を10μm以下とした。また、熱間圧延と溶体化処理との間の冷間圧延では、生産性を重視しraveを15%超、rmaxを20%超に設定した。その結果、導電率が35%IACS、耐力が700MPa以上となり、Bad Wayの90度W曲げ加工性は良好であったが、Good Wayの180度曲げ加工性は本発明例と比較し劣っていた。なお、特許文献1によれば上記方法で製造することにより表面のCube方位面積率は50%以上になるが、本実験で得られたCube方位面積率は5%にも満たなかった。この齟齬が生じた原因は、明らかにできなかった。

Claims (8)

  1. Ni及びCoのうち一種以上を0.8〜5.0質量%、Siを0.2〜1.5質量%含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる圧延材であり、
    該圧延材の表面においてCube方位から10°以内の方位を持つ領域の面積率であるCube方位{001}<100>の面積率が5〜80%であり、
    板厚に対し45〜55%の深さの断面において、<100>方向がTDと成す角度が10°以内である領域の面積率である<100>方向が圧延材の幅方向(TD)に配向する結晶の面積率が50%以下であるコルソン合金。
  2. Sn、Zn、Mg、Fe、Ti、Zr、Cr、Al、P、Mn及びAgのうち1種以上を総量で0.005〜3.0質量%含有する請求項1に記載のコルソン合金。
  3. 圧延方向と直交する方向の引張試験から求めたヤング率が106GPa以上である請求項1又は2に記載のコルソン合金。
  4. 圧延方向と直交する方向に採取される端面接触型端子の素材として用いられる請求項1〜3のいずれかに記載のコルソン合金。
  5. Ni及びCoのうち一種以上を0.8〜5.0質量%、Siを0.2〜1.5質量%含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなるインゴットを作製し、前記インゴットを800〜1000℃の温度から厚み3〜20mmまで熱間圧延し、加工度90〜99.8%の冷間圧延を、1パスあたりの加工度の最大値および平均値をそれぞれ20%以下および15%以下として行った後、軟化度0.20〜0.80の予備焼鈍、加工度3〜50%の冷間圧延、700〜950℃で5〜300秒間の溶体化処理、加工度0〜60%の冷間圧延、350〜600℃で2〜20時間の時効処理、加工度0〜50%の冷間圧延を順次行う方法であり、
    前記軟化度は軟化度をSとして、
    S=(σ0−σ)/(σ0−σ950
    〔ここで、σ0は予備焼鈍前の引張強さであり、σ及びσ950はそれぞれ予備焼鈍後及び950℃で焼鈍後の引張強さである。〕
    で示される、請求項1〜4のいずれかに記載のコルソン合金の製造方法。
  6. 前記インゴットが、Sn、Zn、Mg、Fe、Ti、Zr、Cr、Al、P、Mn及びAgのうち1種以上を総量で0.005〜3.0質量%含有する請求項5に記載のコルソン合金の製造方法。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載のコルソン合金を備えた伸銅品。
  8. 請求項1〜4のいずれかに記載のコルソン合金を備えた電子機器部品。
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