JPWO2012141313A1 - ノルボルナンジカルボン酸エステルの製造方法 - Google Patents

ノルボルナンジカルボン酸エステルの製造方法 Download PDF

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Abstract

ノルボルナジエンとギ酸エステルとを、ルテニウム化合物、コバルト化合物、ハロゲン化物塩及び塩基性化合物の存在下で反応させる工程を有するノルボルナンジカルボン酸エステルの製造方法。

Description

本発明は、ノルボルナンジカルボン酸エステルの製造方法に関する。
従来、光電子機器等に利用される光学部材用樹脂には、電子基板等への実装プロセスや高温動作下での優れた耐熱性や機械特性、またはその汎用性から、芳香族エポキシ樹脂が広く使用されてきた。しかし、近年、光電子機器分野でも高強度のレーザー光や青色光、近紫外光の利用が広がり、従来以上に透明性、耐熱性及び耐光性に優れた樹脂が求められている。
一般に芳香族エポキシ樹脂は、可視光での透明性は高いが、紫外から近紫外域では十分な透明性が得られない。また、脂環族エポキシ樹脂と酸無水物からなる硬化物は、近紫外領域での透明性が比較的高いが、熱や光によって着色し易い等の問題があり、耐熱性、耐紫外線着色性の向上が求められている。このような状況の下、様々なエポキシ樹脂が検討されている。
一方、ポリアミド、ポリエステル等の耐熱性樹脂は、耐熱性に加え、絶縁性、耐光性や機械的特性に優れることから、エレクトロニクス分野で半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜等として幅広く使用されている。その中でも、脂環族構造を有するポリマーが、紫外領域での透明性に優れるため、光電子機器、各種ディスプレイ等の材料として検討され始めている。それらの原料モノマーとして、ノルボルナン骨格を有するジカルボン酸あるいはその誘導体が盛んに使用されている。
ところで、ノルボルナン骨格を有するジカルボン酸誘導体であるノルボルナンジカルボン酸ジメチルは、一般的に、シクロペンタジエンとアクリル酸エステルとをディールス・アルダー反応させてノルボルネンモノカルボン酸エステルとした後、その不飽和結合部分にカルボン酸エステルを付加させることによって得ることができる。このディールス・アルダー反応では、エンド体含有率の多いエキソ/エンド混合物が得られる。しかしながら、エンド位に極性官能基を持つノルボルナン誘導体が、触媒の重合活性を低下させることが知られており(例えば、特許文献1参照)、エキソ体含有率の高いエキソ/エンド混合物が望まれている。
上記課題を解決する方法の一つとして160〜300℃の高温条件下で、シクロペンタジエンとアクリル酸メチルとをディールス・アルダー反応させるエキソ体ノルボルネンモノカルボン酸メチルの製造方法例が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この製造方法では、高温条件下でアクリル酸メチルが重合するという問題がある。
また、エンド体のノルボルネンモノカルボン酸エステルを、金属アルコキシド等の塩基性触媒の存在下で異性化してエキソ体とする方法が提案されているが(例えば、特許文献3参照)、エキソ体の含有率が55モル%程度であり、まだ十分とはいえない。
特開2003−128766号公報 国際公開第03/035598号公報 特開2007−261980号公報
本発明は、エキソ体含有率の高いノルボルナンジカルボン酸エステルを、効率良く製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、かかる目的を解決すべく鋭意研究した結果、ノルボルナジエンとギ酸エステルを、ルテニウム化合物、コバルト化合物、ハロゲン化物塩及び塩基性化合物を組み合わせた触媒系の存在下で反応させることによって、エキソ体含有率の高いノルボルナンジカルボン酸エステルが効率良く得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、ノルボルナジエンとギ酸エステルとを、ルテニウム化合物、コバルト化合物、ハロゲン化物塩及び塩基性化合物の存在下で反応させる工程を有するノルボルナンジカルボン酸エステルの製造方法に関する。
本発明の実施態様として、下記式(I)又は下記式(II)で表されるノルボルナンジカルボン酸エステルの製造方法であって、
(式中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基、ビニル基、又はベンジル基を示す。)
(式中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基、ビニル基、又はベンジル基を示す。)
下記式(III)で表されるノルボルナジエンと、
下記式(IV)で表されるギ酸エステルとを、
(式中、Rは、炭素数1〜5のアルキル基、ビニル基、又はベンジル基を示す。)
ルテニウム化合物、コバルト化合物、ハロゲン化物塩及び塩基性化合物の存在下で反応させる工程を有する上記ノルボルナンジカルボン酸エステルの製造方法が挙げられる。
また、本発明の実施態様においては、ルテニウム化合物として、カルボニル配位子及びハロゲン配位子を有するルテニウム錯体化合物を用いることができる。また、ハロゲン化物塩として、第四級アンモニウム塩を用いることができる。さらに、塩基性化合物として、第三級アミン化合物を用いることができる。
本発明の実施態様においては、ノルボルナジエンとギ酸エステルとを反応させる際に、さらにフェノール化合物及び/又は有機ハロゲン化合物を存在させることも可能である。
さらに、本発明の実施態様は、上記ノルボルナンジカルボン酸エステルの製造方法により得られたノルボルナンジカルボン酸エステルを、エンド体ノルボルナンジカルボン酸エステルとエキソ体ノルボルナンジカルボン酸エステルとに分離する工程を有するエキソ体ノルボルナンジカルボン酸エステルの製造方法に関する。
本願の開示は、2011年4月14日に出願された特願2011−090168号に記載の主題と関連しており、それらの開示内容は引用によりここに援用される。
本発明によれば、安価な原料を使用して、所望とするエキソ体含有率の高いノルボルナンジカルボン酸エステルを、一段階の反応によって、効率良く製造することができる。
図1は、実施例4で得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチルの13C−NMRスペクトルである。 図2は、実施例4で得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチルの13C−NMRスペクトルである。 図3は、実施例4で得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチルのH−NMRスペクトルである。 図4は、実施例4で得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチルのH−13C HSQCスペクトルである。 図5は、実施例4で得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチルのH−H COSYスペクトルである。 図6は、実施例4で得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチルのH−13C HMBCスペクトルである。 図7は、実施例4で得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチルのH−H NOESYスペクトルである。 図8は、参考例1で得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸のH−NMRスペクトルである。
以下、本発明について説明する。本発明は、ノルボルナジエンとギ酸エステルとを、ルテニウム化合物、コバルト化合物、ハロゲン化物塩及び塩基性化合物の存在下で反応させる工程を有するノルボルナンジカルボン酸エステルの製造方法である。
本発明の実施態様として、下記式(I)又は下記式(II)で表されるノルボルナンジカルボン酸エステルの製造方法であって、
(式中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基、ビニル基、又はベンジル基を示す)
(式中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基、ビニル基、又はベンジル基を示す)
下記式(III)で表されるノルボルナジエンと、
下記式(IV)で表されるギ酸エステルとを、
(式中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基、ビニル基、ベンジル基を示す)
ルテニウム化合物、コバルト化合物、ハロゲン化物塩及び塩基性化合物の存在下で反応させる工程を有するノルボルナンジカルボン酸エステルの製造方法が挙げられる。
上記式(I)及び(II)における炭素数1〜5のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基が挙げられ、これらは直鎖状でも分岐状でもよい。式(III)で表されるノルボルナジエンと式(IV)で表されるギ酸エステルとの反応により、式(I)で表されるノルボルナンジカルボン酸エステル又は式(II)で表されるノルボルナンジカルボン酸エステルのいずれか少なくとも一つを含むノルボルナンジカルボン酸エステルが得られる。
(ギ酸エステル)
原料として使用可能なギ酸エステルは、特に制限されない。例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸アミル、ギ酸イソアミル、ギ酸ビニル、ギ酸ベンジル等から適宜選択して使用することができる。コスト及び反応性の観点から、ギ酸メチルが好適である。本発明では、ギ酸エステルを単独で用いても、複数組み合わせて用いてもよい。
本発明では、ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩と、塩基性化合物との4成分を必須とする触媒系を使用する。後述する実施例によって明らかにされるように、本発明では、ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩と、塩基性化合物の組み合わせによって、所期の目的が達成可能となる。理論によって拘束するものではないが、本発明によるノルボルナジエンのエステル化反応は、ルテニウム化合物がギ酸エステルのC−H結合を開裂し、ノルボルナジエンの不飽和基に付加したコバルト化合物と反応することによって進行し、このような反応をハロゲン化物塩と塩基性化合物が促進するものと考えられる。以下、各種化合物について具体的に説明する。
(ルテニウム化合物)
本発明で使用可能なルテニウム化合物は、ルテニウムを含む化合物であればよく、特に制限はない。例えば、ルテニウム原子に配位子が結合した構造を有するルテニウム錯体化合物が挙げられる。本発明の実施態様では、分子内にカルボニル配位子とハロゲン配位子とを合わせ持つ、ルテニウム錯体化合物が好ましい。ハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられるが、なかでも塩素が好ましい。そのようなルテニウム錯体化合物の具体例として、[Ru(CO)Cl及び[Ru(CO)Cl(nは1以上の整数)等のルテニウムカルボニルハロゲン錯体、並びに[Ru(CO)Cl、[Ru(CO)11Cl]及び[Ru(CO)13Cl]等をカウンタアニオンとして有するルテニウムカルボニルハロゲン錯塩などの各種化合物が挙げられる。上記カウンタアニオンを有する塩は、カウンタカチオンとして、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属等の金属イオンを有するものであってよい。アルカリ金属やアルカリ土類金属の具体例として、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウムが挙げられる。例示した化合物の中でも、反応率向上の観点から、[Ru(CO)Cl、及び[Ru(CO)Cl等のルテニウムカルボニルハロゲン錯体がより好ましい。
ルテニウム化合物は、当技術分野において周知の方法に従って製造することもできるが、市販品として入手することもできる。また、[Ru(CO)Clは、M.J.Cleare,W.P.Griffith,J.Chem.Soc.(A),1969,372.に記載された方法に従って製造することができる。
さらに、ルテニウム化合物の例としては、上記で例示したルテニウム化合物の他に、例えば、RuCl、Ru(CO)12、RuCl(C12)、Ru(CO)(C)、Ru(CO)(C12)、及びRu(C10)(C12)が挙げられる。これらのルテニウム化合物は、上記で例示したルテニウム化合物の前駆体化合物として使用することも可能であり、本発明におけるエステル化の反応前又は反応中に、上記で例示したルテニウム化合物を調製して、反応系に導入してもよい。
ルテニウム化合物の使用量は、特に限定されるものではないが、製造コストを考えると可能な限り少量にすることが好ましい。しかし、エステル化反応の実用的な速度を得るという観点から、ルテニウム化合物の使用量は、原料として使用するノルボルナジエンに対して、例えば1/10000当量以上、好ましくは1/1000当量以上、より好ましくは1/100当量以上である。また、使用量に応じた反応速度を得るという観点から、ルテニウム化合物の使用量は、ノルボルナジエンに対して、例えば1当量以下、好ましくは1/10当量以下、より好ましくは1/20当量以下である。本発明では、ルテニウム化合物を単独で用いても、複数組み合わせて用いてもよい。
(コバルト化合物)
本発明で使用可能なコバルト化合物は、コバルトを含む化合物であればよく、特に制限はない。好適な化合物の具体例として、Co(CO)、HCo(CO)、Co(CO)12等のカルボニル配位子を持つコバルト錯体化合物、酢酸コバルト、プロピオン酸コバルト、安息香酸コバルト、クエン酸コバルト等のカルボン酸配位子を持つコバルト錯体化合物、及びリン酸コバルトが挙げられる。
コバルト化合物の使用量は、特に限定されるものではないが、ルテニウム化合物に対して、例えば1/100当量以上、好ましくは1/10当量以上、より好ましくは1/5当量以上である。また、ルテニウム化合物に対して、例えば10当量以下、好ましくは5当量以下、より好ましくは3当量以下である。前記範囲は、エステル化合物の生成量の観点から好ましい範囲である。本発明では、コバルト化合物を単独で用いても、複数組み合わせて用いてもよい。
(ハロゲン化物塩)
本発明で使用可能なハロゲン化物塩は、塩化物イオン、臭化物イオン及びヨウ化物イオン等のハロゲンイオンと、カチオンとから構成される化合物であればよく、特に限定されない。但し、本発明におけるハロゲン化物塩には、ルテニウム及び/又はコバルトを含む塩は含まれないものとする。上記カチオンは、無機物イオン及び有機物イオンのいずれであってもよい。また、上記ハロゲン化物塩は、分子内に1以上のハロゲンイオンを含んでもよい。
ハロゲン化物塩を構成する無機物イオンは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択される1種の金属イオンであってよい。具体例として、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウムが挙げられる。
また、有機物イオンは、有機化合物から誘導される1価以上の有機基であってよい。一例として、アンモニウム、ホスホニウム、ピロリジニウム、ピリジウム、イミダゾリウム及びイミニウムが挙げられ、これらイオンの水素原子はアルキル及びアリール等の炭化水素基によって置換されていてもよい。特に限定するものではないが、好適な有機物イオンの具体例として、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、テトラヘプチルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム、トリオクチルメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、ベンジルトリフェニルホスホニウム、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムが挙げられる。
本発明で使用するハロゲン化物塩は、固体の塩である必要はない。ハロゲン化物塩として、室温付近または100℃以下の温度領域で液体となる、ハロゲン化物イオンを含むイオン性液体を用いてもよい。このようなイオン性液体に用いられるカチオンの具体例として、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ペンチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘプチル−3−メチルイミダゾリウム、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム、1−デシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチルピリジニウム、1−ブチルピリジニウム、1−ヘキシルピリジニウム、ブチルメチルピロリジニウム、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−エチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−プロピル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−ブチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−ペンチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−ヘキシル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−ヘプチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−オクチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等の有機物イオンが挙げられる。
上述のハロゲン化物塩のうち、好適なハロゲン化物塩は、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩であり、カチオンが有機物イオンである化合物である。また、反応率向上の観点から、第四級アンモニウム塩が好ましい。第四級アンモニウム塩には、窒素原子が有する置換基同士が結合し環状構造を形成している化合物や、窒素原子に二重結合を介して置換基が結合している化合物も含まれる。特に限定するものではないが、本発明において好適なハロゲン化物塩の具体例として、ブチルメチルピロリジニウムクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムアイオダイド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
ハロゲン化物塩の使用量は、特に限定されるものではないが、ルテニウム化合物に対して、例えば1当量以上、好ましくは1.5当量以上、より好ましくは2当量以上である。使用量が前記範囲の場合、反応速度を効果的に高めることができる。また、ハロゲン化物塩の使用量は、ルテニウム化合物に対して、例えば1000当量以下、好ましくは50当量以下、より好ましくは10当量以下である。前記範囲は、使用量に応じた反応促進の向上効果を得るという観点から好ましい範囲である。本発明では、ハロゲン化物塩を単独で用いても、複数組み合わせて用いてもよい。
(塩基性化合物)
本発明において、使用可能な塩基性化合物は、無機化合物であっても、有機化合物であってもよい。塩基性の無機化合物の具体例として、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の各種金属の炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物塩、アルコキシドが挙げられる。塩基性の有機化合物の具体例として、第一級アミン化合物、第二級アミン化合物、第三級アミン化合物が挙げられる。上述の塩基性化合物のなかでも、反応促進効果の観点から、第三級アミン化合物が好適である。第三級アミン化合物には、窒素原子が有する置換基同士が結合し環状構造を形成している化合物や、窒素原子に二重結合を介して置換基が結合している化合物も含まれる。したがって、第三級アミン化合物には、ピリジン化合物、イミダゾール化合物、キノリン化合物等が含まれる。本発明において好適な第三級アミン化合物の具体例として、トリアルキルアミン、N−アルキルピロリジン、N−アルキルピペリジン、キヌクリジン、及びトリエチレンジアミンが挙げられる。これらの化合物におけるアルキル基は、好ましくは炭素数1〜12のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基が挙げられ、これらは直鎖状、分岐状、または環状であってよい。トリアルキルアミンにおいて、3つのアルキル基は同一でも異なっていてもよい。
塩基性化合物の使用量は、特に限定されるものではないが、ルテニウム化合物に対して、例えば1当量以上、好ましくは2当量以上、より好ましくは5当量以上である。使用量を前記範囲とすることによって、反応促進効果の発現がより顕著になる傾向がある。また、塩基性化合物の使用量は、例えば1000当量以下、好ましくは200当量以下、より好ましくは30当量以下である。前記範囲は、使用量に応じた反応促進の向上効果を得るという観点から好ましい範囲である。本発明では、塩基性化合物を単独で用いても、複数組み合わせて用いてもよい。
本発明による製造方法では、ルテニウム化合物とコバルト化合物とハロゲン化物塩と塩基性化合物とを含む触媒系に、必要に応じて、フェノール化合物及び有機ハロゲン化合物の一方または両方を追加することによって、上記触媒系による反応促進の効果をより高めることが可能である。以下、各化合物について説明する。
(フェノール化合物)
本発明において好適なフェノール化合物の具体例として、フェノール、クレゾール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、フェノキシフェノール、クロルフェノール、トリフルオロメチルフェノール、ヒドロキノン及びカテコールが挙げられる。アルキルフェノール及びアルコキシフェノールにおけるアルキル基は、好ましくは炭素数1〜12のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基が挙げられ、これらは直鎖状、分岐状、または環状であってよい。
フェノール化合物の添加量は、特に限定されるものではないが、ルテニウム化合物に対して、例えば1当量以上、好ましくは2当量以上、より好ましくは3当量以上である。添加量を前記範囲とすることによって、促進効果の発現がより顕著になる傾向がある。また、フェノール化合物の添加量は、例えば1000当量以下、好ましくは50当量以下、より好ましくは10当量以下である。前記範囲は、添加量に応じた反応促進の向上効果を得るという観点から好ましい範囲である。本発明では、フェノール化合物を単独で用いても、複数組み合わせて用いてもよい。
(有機ハロゲン化合物)
本発明において好適な有機ハロゲン化合物としては、ハロゲン化メチル、ハロゲン化エチル等のハロゲン化アルキル、ジハロゲンメタン、ジハロゲンエタン、トリハロゲンメタン、テトラハロゲン炭素等の2以上のハロゲンにより置換されたアルカン、ハロゲン化ベンゼン等のハロゲン置換脂肪族炭化水素やハロゲン置換芳香族炭化水素などが挙げられる。ハロゲンの例としては、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
有機ハロゲン化合物の添加量は、特に限定されるものではないが、ルテニウム化合物に対して、例えば1当量以上、好ましくは2当量以上、より好ましくは3当量以上である。添加量を前記範囲とすることによって、反応促進効果の発現が顕著になる傾向がある。また、有機ハロゲン化合物の添加量は、例えば1000当量以下、好ましくは50当量以下、より好ましくは10当量以下である。前記範囲は、添加量に応じた反応促進の向上効果を得るという観点から好ましい範囲である。本発明では、有機ハロゲン化合物を単独で用いても、複数組み合わせて用いてもよい。
なお、フェノール化合物及び有機ハロゲン化合物として、クロルフェノール、トリフルオロメチルフェノールなどのハロゲン置換フェノール化合物を用いることも可能である。この場合、ハロゲン置換フェノール化合物の好ましい添加量は、上記のフェノール化合物又は有機ハロゲン化合物の添加量と同様である。
(溶媒)
本発明の製造方法において、ノルボルナジエンとギ酸エステルとの反応は、特に溶媒を用いることなく進行させることができる。しかし、必要に応じて、溶媒を使用してもよい。本発明において使用可能な溶媒は、原料として使用する化合物を溶解できればよく、特に限定はされない。本発明において好適に使用できる溶媒の具体例として、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、エチルベンゼン、クメン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルイミダゾリジノン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリルが挙げられる。溶媒を用いる場合、単独で用いても、複数組み合わせて用いてもよい。
(原料の割合)
反応に用いるノルボルナジエンとギ酸エステルの割合は、仕込み量で、ノルボルナジエン1molに対し、ギ酸エステルを2mol以上が好ましく、4mol以上がより好ましい。前記範囲であると、副反応を抑え十分な収率を得ることができるという傾向がある。また、ノルボルナジエンとギ酸エステルの割合は、仕込み量で、ノルボルナジエン1molに対し、ギ酸エステルを100mol以下が好ましく、50mol以下がより好ましい。前記範囲は、生産性の観点から好ましい範囲である。
(反応温度)
本発明の製造方法において、ノルボルナジエンとギ酸エステルとの反応は、80℃〜200℃の温度範囲で実施することが好ましい。上記反応は、100℃〜160℃の温度範囲で実施することがより好ましい。80℃以上の温度で反応を実施することによって、反応速度が速まり、効率良く反応を進めることができる。その一方で、反応温度を200℃以下に制御することによって、原料として使用するギ酸エステルの分解を抑制することができる。ギ酸エステルが分解すると、ノルボルナジエンに対するエステル基の付加が達成されなくなる。さらに、反応温度が高すぎると、原料であるノルボルナジエンの開環重合が起こり、収率が低下する可能性がある。反応温度が、原料として使用するノルボルナジエン又はギ酸エステルのいずれかの沸点を超える場合には、耐圧容器内で反応を行うことが望ましい。反応の終結は、ガスクロマトグラフ、NMR等の周知の分析技術を用いて確認することができる。
以上に説明した製造方法により、エキソ体含有率の高いノルボルナンジカルボン酸エステルを効率よく得ることができる。本発明の実施態様によれば、エキソ体含有率(エキソ体(mol)/(エキソ体+エンド体(mol)))が例えば60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上のノルボルナンジカルボン酸エステルを得ることが可能である。
また本発明の実施形態によれば、ノルボルナンジカルボン酸エステルを高い収率、例えばノルボルナジエンを基準(ノルボルナンジカルボン酸エステル(mol)/ノルボルナジエン(mol))として50%以上、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上の収率で得ることができる。
本発明においては、さらに、得られたノルボルナンジカルボン酸エステルを、エンド体ノルボルナンジカルボン酸エステルとエキソ体ノルボルナンジカルボン酸エステルとに分離することにより、エキソ体ノルボルナンジカルボン酸エステルを得ることも可能である。
エキソ体ノルボルナンジカルボン酸エステルの実施態様としては、下記式(V)又は下記式(VI)で表されるエキソ体ノルボルナンジカルボン酸エステルを挙げることができる。
(式中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基、ビニル基、又はベンジル基を示す)
(式中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基、ビニル基、又はベンジル基を示す)
ノルボルナンジカルボン酸エステル(エキソ/エンド混合物)を、エンド体ノルボルナンジカルボン酸エステルとエキソ体ノルボルナンジカルボン酸エステルとに分離する方法としては、減圧蒸留や、再結晶などの公知の方法を用いることができる。
また、本発明においては、ノルボルナンジカルボン酸エステルからノルボルナンジカルボン酸を得ることも可能である。ノルボルナンジカルボン酸エステルからノルボルナンジカルボン酸を得る方法としては、酸又はアルカリで処理する等の公知の加水分解方法を用いることができる。
以下、本発明を実施例によってより詳細に説明する。しかし、本発明の範囲は以下の実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
室温下、内容積50mlのステンレス製加圧反応装置内に、ルテニウム化合物として[Ru(CO)Clを0.05mmol(ノルボルナジエンに対して1/50当量)、コバルト化合物としてCo(CO)を0.05mmol(ルテニウム化合物に対して1当量)、ハロゲン化物塩としてブチルメチルピロリジニウムクロリドを0.25mmol(ルテニウム化合物に対して5当量)、塩基性化合物としてトリエチルアミンを0.5mmol(ルテニウム化合物に対して10当量)加え、混合して触媒系を得た。この触媒系に、ノルボルナジエン(東京化成工業株式会社)を2.5mmol、ギ酸メチル(三菱ガス化学株式会社)を5.0mL(ノルボルナジエン1molに対して32.9mol)加え、次いで窒素ガス0.5MPaで反応装置内をパージし、120℃で15時間保持した。その後、反応装置を室温まで冷却し、放圧し、残存有機相の一部を抜き取り、ガスクロマトグラフを用いて下記条件で、反応混合物の成分を分析した。分析結果によれば、反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは1.23mmol(ノルボルナジエン基準で収率49.2%)であり、エキソ/エンド組成比(モル比)は75/25であった。また、この際、エキソ体、エンド体ともガスクロマトグラフのピークが2本ずつ存在したので、2,5−体と2,6−体であると推察した。なお、ガスクロマトグラフ分析は、ジーエルサイエンス(株)製GC−353B型GCを使用して下記条件で行った。
検 出 器 :水素炎イオン検出器
カ ラ ム :ジーエルサイエンス(株)製 TC−1(60m)
キャリアガス:ヘリウム(300kPa)
温 度
注入口:200℃
検出器:200℃
カラム:40℃〜240℃(昇温速度:5℃/min)
(比較例1):ルテニウム化合物とハロゲン化物塩のみの触媒系
実施例1の触媒系についてコバルト化合物及び塩基性化合物を使用しないことを除き、全て実施例1と同じ条件下で反応を行った。得られた反応混合物を実施例1と同様にして分析したところ、反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは痕跡量だった。
(比較例2):コバルト化合物とハロゲン化物塩のみの触媒系
実施例1の触媒系についてルテニウム化合物及び塩基性化合物を使用しないことを除き、全て実施例1と同じ条件下で反応を行った。得られた反応混合物の成分をガスクロマトグラフで分析したところ、反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは痕跡量であった。
(比較例3):ルテニウム化合物とコバルト化合物のみの触媒系
実施例1の触媒系についてハロゲン化物塩及び塩基性化合物を使用しないことを除き、全て実施例1と同じ条件下で反応を行った。得られた反応混合物をガスクロマトグラフで分析したところ、反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは痕跡量であった。
(比較例4):ルテニウム化合物、コバルト化合物とハロゲン化物塩のみの触媒系
実施例1の触媒系について塩基性化合物を使用しないことを除き、全て実施例1と同じ条件下で反応を行った。得られた反応混合物をガスクロマトグラフで分析したところ、反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは痕跡量であった。
(実施例2)
実施例1の触媒系について、塩基性化合物をトリプロピルアミン 0.5mmolにした以外は、実施例1と全く同様の操作を実施した。反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは0.83mmol(ノルボルナジエン基準で収率33.2%)であり、エキソ/エンド組成比は75/25であった。また、この際、エキソ体、エンド体ともガスクロマトグラフのピークが2本ずつ存在したので、2,5−体と2,6−体であると推察した。
(実施例3)
実施例1の触媒系において、塩基性化合物をN−メチルピロリジン 0.5mmolにした以外は実施例1と全く同様の操作を実施した。反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは1.33mmol(ノルボルナジエン基準で収率53.2%)であり、エキソ/エンド組成比は75/25であった。また、この際、エキソ体、エンド体ともガスクロマトグラフのピークが2本ずつ存在したので、2,5−体と2,6−体であると推察した。
(実施例4)
実施例1の触媒系において、塩基性化合物であるトリエチルアミンを1.0mmol(ルテニウム化合物に対して20当量)にした以外は実施例1と全く同様の操作を実施した。反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは1.63mmol(ノルボルナジエン基準で収率65.2%)であり、エキソ/エンド組成比は75/25であった。また、この際、エキソ体、エンド体ともガスクロマトグラフのピークが2本ずつ存在したので、2,5−体と2,6−体であると推察した。
次に、上記エキソ体(ガスクロマトグラフのピークが2本)を減圧蒸留で分離した。
得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチルの13C−NMRスペクトルを図1及び図2に示す。13C−NMRスペクトルの測定条件及び同定データは以下のとおりである。
条件:溶媒DMSO−d6、BRUKER社製の装置「AV400M」(カーボン基本周波数:100.62MHz)。
13C−NMR分析の結果、170〜180ppm付近にカルボニルのカーボン、51〜52ppm付近にメチルエステルのカーボン、32〜35ppm付近にメチレンのカーボン、36〜45ppm付近にメチンのカーボンが観測され、それぞれのカーボン数は、カルボニル/メチルエステル/メチレン/メチン=2/2/4/5であった。各カーボンが下記に示すように帰属された。
カーボン(1):39.89ppmのピーク(メチン)
カーボン(2):44.59ppmのピーク(メチン)
カーボン(3):33.03ppmのピーク(メチレン)
カーボン(4):39.89ppmのピーク(メチン)
カーボン(5):44.59ppmのピーク(メチン)
カーボン(6):33.02ppmのピーク(メチレン)
カーボン(7):34.35ppmのピーク(メチレン)
カーボン(8):51.44ppmのピーク(メチルエステル)
カーボン(9):175.22ppmのピーク(カルボニル)
カーボン(11):35.15ppmのピーク(メチン)
カーボン(12):44.77ppmのピーク(メチン)
カーボン(13):32.68ppmのピーク(メチレン)
カーボン(14):43.86ppmのピーク(メチン)
カーボン(15):32.68ppmのピーク(メチレン)
カーボン(16):44.77ppmのピーク(メチン)
カーボン(17):34.47ppmのピーク(メチレン)
カーボン(18):51.51ppmのピーク(メチルエステル)
カーボン(19):174.85ppmのピーク(カルボニル)
得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチルのH−NMRスペクトルを図3に示す。H−NMRスペクトルの測定条件及び同定データは以下のとおりである。
条件:溶媒DMSO−d6、BRUKER社製の装置「AV400M」(プロトン基本周波数:400.13MHz)。
H−NMR分析の結果、各プロトンが下記に示すように帰属された。
プロトン(1):2.47ppm付近のピーク(メチン)
プロトン(2):2.4ppm付近のピーク(メチン)
プロトン(3):1.5ppm〜1.8ppm付近のピーク(メチレン)
プロトン(4):2.47ppm付近のピーク(メチン)
プロトン(5):2.4ppm付近のピーク(メチン)
プロトン(6):1.5ppm〜1.8ppm付近のピーク(メチレン)
プロトン(7):1.3ppm付近のピーク(メチレン)
プロトン(8):3.6ppm付近のピーク(メチル)
プロトン(11):2.3ppm付近のピーク(メチン)
プロトン(12):2.5ppm付近のピーク(メチン)
プロトン(13):1.5ppm〜1.8ppm付近のピーク(メチレン)
プロトン(14):2.7ppm付近のピーク(メチン)
プロトン(15):1.5ppm〜1.8ppm付近のピーク(メチレン)
プロトン(16):2.5ppm付近のピーク(メチン)
プロトン(17):1.2ppm付近のピーク(メチレン)
プロトン(18):3.6ppm付近のピーク(メチル)
また、積分強度比から、メチル基が4つ、メチレン基が6つ、メチン基が8つ存在することが分かった。
得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチルのH−13C HSQCスペクトルを図4に示す。H−13C HSQCスペクトルから、それぞれ同じピーク番号を持つカーボンとプロトンが相関し、図1、図2及び図3の帰属結果が正しいことを確認した。
得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチルのH−H COSYスペクトルを図5に示す。図5から、プロトン(1)(4)とプロトン(7)、プロトン(1)(4)とプロトン(3)(6)、プロトン(2)(5)とプロトン(3)(6)、プロトン(11)(14)とプロトン(17)、プロトン(12)(16)とプロトン(13)(15)、プロトン(13)(15)とプロトン(14)の相関が観測され、それぞれ、プロトン(1)〜(7)及び(11)〜(17)でノルボルナン環が構成されていることを確認した。
得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチルのH−13C HMBCスペクトルを図6に示す。H−13C HMBCスペクトルによって、2種類の化合物の構造同定を行った。
(1)プロトン(1)〜(7)でノルボルナン環が構成されている化合物
図6から、カルボニルカーボン(9)とメチンプロトン(2)及びメチンプロトン(5)に相関が認められることから、ノルボルナン−2,5−ジカルボン酸メチルであることを確認した。
(2)プロトン(11)〜(17)でノルボルナン環が構成されている化合物
図6から、カルボニルカーボン(19)とメチンプロトン(12)及びメチンプロトン(16)に相関が認められることから、ノルボルナン−2,6−ジカルボン酸メチルであることを確認した。
得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチルのH−H NOESYスペクトルを図7に示す。H−H NOESYスペクトルから、ノルボルナン−2,5−ジカルボン酸メチル及びノルボルナン−2,6−ジカルボン酸メチルの立体構造同定を行った。
(1)ノルボルナン−2,5−ジカルボン酸メチル
図7から、プロトン(1)(4)とプロトン(7)との相関はあるが、プロトン(2)(5)との相関が認められないことから、プロトン(2)(5)はエンド位に結合していることが分かる。よって、この化合物が、ノルボルナン−2(エキソ)−5(エキソ)−ジカルボン酸メチルであることを確認した。
(2)ノルボルナン−2,6−ジカルボン酸メチル
図7から、プロトン(11)(14)はプロトン(17)との相関はあるが、プロトン(12)(16)との相関が認められないことから、プロトン(12)(16)はエンド位に結合していることが分かる。よって、この化合物が、ノルボルナン−2(エキソ)−6(エキソ)−ジカルボン酸メチルであることを確認した。
(実施例5)
実施例4の触媒系において、フェノール化合物としてp−クレゾールを0.25mmol(ルテニウム化合物に対して5当量)追加した以外は実施例4と全く同様の操作を実施した。反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは1.74mmol(ノルボルナジエン基準で収率69.6%)であり、エキソ/エンド組成比は75/25であった。また、この際、エキソ体、エンド体ともガスクロマトグラフのピークが2本ずつ存在したので、2,5−体と2,6−体であると推察した。
実施例1〜5及び比較例1〜4の結果を表1に示す。本発明においては、ルテニウム化合物、コバルト化合物、ハロゲン化物塩、及び塩基性化合物の存在化でエステル化反応を行うことにより、エキソ体含有率の高いノルボルナンジカルボン酸エステルを効率良く得ることができる。塩基性化合物の使用量が多いこと、また、ルテニウム化合物、コバルト化合物、ハロゲン化物塩、及び塩基性化合物に加え、さらにフェノール化合物を用いることは、ノルボルナンジカルボン酸エステルをより高い収率で得るために有効である。
(実施例6)
実施例4の触媒系において、ハロゲン化物塩をトリオクチルメチルアンモニウムクロリド 0.25mmol、塩基性化合物をジメチルエチルアミン 1.0mmolにした以外は実施例4と全く同様の操作を実施した。反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは1.42mmol(ノルボルナジエン基準で収率56.8%)であり、エキソ/エンド組成比は75/25であった。また、この際、エキソ体、エンド体ともガスクロマトグラフのピークが2本ずつ存在したので、2,5−体と2,6−体であると推察した。
(実施例7)
実施例6の触媒系において、塩基性化合物をトリエチルアミン 1.0mmolにした以外は実施例6と全く同様の操作を実施した。反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは1.32mmol(ノルボルナジエン基準で収率52.8%)であり、エキソ/エンド組成比は75/25であった。また、この際、エキソ体、エンド体ともガスクロマトグラフのピークが2本ずつ存在したので、2,5−体と2,6−体であると推察した。
(実施例8)
実施例7の触媒系において、コバルト化合物をクエン酸コバルト 0.05mmolにした以外は実施例7と全く同様の操作を実施した。反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは0.35mmol(ノルボルナジエン基準で収率14.0%)であり、エキソ/エンド組成比は75/25であった。また、この際、エキソ体、エンド体ともガスクロマトグラフのピークが2本ずつ存在したので、2,5−体と2,6−体であると推察した。
(実施例9)
実施例7の触媒系において、塩基性化合物をN,N−ジメチルシクロヘキシルアミン 1.0mmolにした以外は実施例7と全く同様の操作を実施した。反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは1.00mmol(ノルボルナジエン基準で収率40.0%)であり、エキソ/エンド組成比は75/25であった。また、この際、エキソ体、エンド体ともガスクロマトグラフのピークが2本ずつ存在したので、2,5−体と2,6−体であると推察した。
実施例6〜9の結果を表2に示す。コバルト化合物としてカルボニル配位子を有する化合物を用いることは、ノルボルナンジカルボン酸エステルを高い収率で得るために有効である。さらに、実施例4と実施例7の比較から分かるように、ハロゲン化物塩としてイオン性液体を用いることも、高い収率を実現するうえで効果的である。
(実施例10)
実施例8の触媒系において、ルテニウム化合物をあらかじめM.J.Cleare,W.P.Griffith,J.Chem.Soc.(A),1969,372.に従って塩化ルテニウムとギ酸から調製した[Ru(CO)Cl 0.05mmolにした以外は実施例8と全く同様の操作を実施した。反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは1.13mmol(ノルボルナジエン基準で収率45.2%)であり、エキソ/エンド組成比は75/25であった。また、この際、エキソ体、エンド体ともガスクロマトグラフのピークが2本ずつ存在したので、2,5−体と2,6−体であると推察した。
(実施例11)
実施例10の触媒系において、ハロゲン化物塩をテトラエチルアンモニウムクロリド 0.25mmolにした以外は実施例10と全く同様の操作を実施した。反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは1.41mmol(ノルボルナジエン基準で収率56.4%)であり、エキソ/エンド組成比は75/25であった。また、この際、エキソ体、エンド体ともガスクロマトグラフのピークが2本ずつ存在したので、2,5−体と2,6−体であると推察した。
(実施例12)
実施例11の触媒系において、フェノール化合物としてヒドロキノンモノメチルエーテルを0.25mmol追加した以外は実施例11と全く同様の操作を実施した。反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは1.65mmol(ノルボルナジエン基準で収率66.0%)であり、エキソ/エンド組成比は75/25であった。また、この際、エキソ体、エンド体ともガスクロマトグラフのピークが2本ずつ存在したので、2,5−体と2,6−体であると推察した。
(実施例13)
実施例11の触媒系において、コバルト化合物を酢酸コバルト 0.25mmolにした以外は実施例11と全く同様の操作を実施した。反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは1.74mmol(ノルボルナジエン基準で収率69.6%)であり、エキソ/エンド組成比は75/25であった。また、この際、エキソ体、エンド体ともガスクロマトグラフのピークが2本ずつ存在したので、2,5−体と2,6−体であると推察した。
実施例10〜13の結果を表3に示す。ハロゲン化物塩としてトリエチルアンモニウムクロリドを用いること、また、コバルト化合物として酢酸コバルトを用いることは、ノルボルナンジカルボン酸エステルを高い収率で得るために有効である。さらに、実施例8と実施例10の比較から分かるように、ルテニウム化合物として[Ru(CO)Clを用いることも、高い収率を実現するうえで効果的である。
なお、表1〜3における符号の説明、触媒系の入手先は以下のとおりである。
[Ru(CO)3Cl2]2:STREM CHEMICALS社
Co2(CO)8:東京化成工業株式会社
Co citrate:クエン酸コバルト2水和物、Alfa Aesar社
Co acetate:酢酸コバルト4水和物、東京化成工業株式会社
[bmpy]Cl:ブチルメチルピロリジニウムクロリド、東京化成工業株式会社
[toma]Cl:トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、東京化成工業株式会社
[tea]Cl:テトラエチルアンモニウムクロリド、ライオン株式会社
TEA:トリエチルアミン、和光純薬工業株式会社
TPA:トリプロピルアミン、東京化成工業株式会社
N-methylpyrrolidine:N−メチルピロリジン、東京化成工業株式会社
Me2NEt:ジメチルエチルアミン、東京化成工業株式会社
DMCHA:N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、東京化成工業株式会社
P-Cresol:p−クレゾール、和光純薬工業株式会社
MeHQ:ヒドロキノンモノメチルエーテル、川口化学工業株式会社
(参考例1)
冷却管を取り付けた1リットルナス型フラスコに、実施例4と同様の方法で得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチル 30g及びメタノール 200gを投入して均一溶液とした後、10%水酸化ナトリウム溶液 200gを加え、100℃のオイルバスに入れ、6時間加熱還流した。その後、反応液量が140gになるまでメタノールを留去し、これに36%塩酸 48mlを加え、pHを1としたところ、白色粉末が沈殿した。この白色粉末をろ過、水洗、乾燥し、エキソ体ノルボルナンジカルボン酸 25gを得た。得られたノルボルナンジカルボン酸を、H−NMRで分析した結果(図8)、ノルボルナン環のメチレン及びメチン基のピークが1.1〜3.0ppm付近に、カルボン酸に起因する水酸基のピークが12.4ppm付近に確認でき、その積分強度比が10.00/1.98(理論値:10/2)であった。
以上のとおり、本発明の製造方法によれば、エキソ体含有率の高いノルボルナンジカルボン酸エステルを、効率良く製造することができた。ギ酸メチルを用いる場合を例に示したが、他のギ酸エステルを用いる場合にも、同様の効果を得ることができる。
本発明の実施態様によれば、安価な原料を使用して、所望とするエキソ体含有率の高いノルボルナンジカルボン酸エステルを、一段階の反応によって効率良く、さらには高い収率で製造することができる。本発明の実施態様による方法は、少ない設備投資で実現することができ、また環境負荷を最低限に抑えることもできるため、産業界のニーズに十分に応えることができる。
また、本発明の実施態様によって得られるエキソ体含有率の高いノルボルナンジカルボン酸エステルを原料としてなるポリマーは、耐熱性、絶縁性、耐光性や機械的特性に優れるため、半導体・液晶に用いられる電子部品、光ファイバー、光学レンズ等に代表される光学材料、さらには、ディスプレイ関連材料、医療用材料として使用することができる。
図1は、実施例4で得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチルの13C−NMRスペクトルである。 図2は、実施例4で得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチルの13C−NMRスペクトルである。 図3は、実施例4で得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチルのH−NMRスペクトルである。 図4は、実施例4で得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチルのH−13C HSQCスペクトルである。 図5は、実施例4で得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチルのH−H COSYスペクトルである。 図6は、実施例4で得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチルのH−13C HMBCスペクトルである。 図7は、実施例4で得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチルのH−H NOESYスペクトルである。 図8は、参考例1で得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸のH−NMRスペクトルである。
また、有機物イオンは、有機化合物から誘導される1価以上の有機基であってよい。一例として、アンモニウム、ホスホニウム、ピロリジニウム、ピリジウム、イミダゾリウム及びイミニウムが挙げられ、これらイオンの水素原子はアルキル及びアリール等の炭化水素基によって置換されていてもよい。特に限定するものではないが、好適な有機物イオンの具体例として、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、テトラヘプチルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム、トリオクチルメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、ベンジルトリフェニルホスホニウム、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムが挙げられる。
(実施例1)
室温下、内容積50mlのステンレス製加圧反応装置内に、ルテニウム化合物として[Ru(CO)Clを0.05mmol(ノルボルナジエンに対して1/50当量)、コバルト化合物としてCo(CO)を0.05mmol(ルテニウム化合物に対して1当量)、ハロゲン化物塩としてブチルメチルピロリジニウムクロリドを0.25mmol(ルテニウム化合物に対して5当量)、塩基性化合物としてトリエチルアミンを0.5mmol(ルテニウム化合物に対して10当量)加え、混合して触媒系を得た。この触媒系に、ノルボルナジエン(東京化成工業株式会社)を2.5mmol、ギ酸メチル(三菱ガス化学株式会社)を5.0mL(ノルボルナジエン1molに対して32.9mol)加え、次いで窒素ガス0.5MPaで反応装置内をパージし、120℃で15時間保持した。その後、反応装置を室温まで冷却し、放圧し、残存有機相の一部を抜き取り、ガスクロマトグラフを用いて下記条件で、反応混合物の成分を分析した。分析結果によれば、反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは1.23mmol(ノルボルナジエン基準で収率49.2%)であり、エキソ/エンド組成比(モル比)は75/25であった。また、この際、エキソ体、エンド体ともガスクロマトグラフのピークが2本ずつ存在したので、2,5−体と2,6−体であると推察した。なお、ガスクロマトグラフ分析は、ジーエルサイエンス(株)製GC−353B型GCを使用して下記条件で行った。
(比較例1):ルテニウム化合物とハロゲン化物塩のみの触媒系
実施例1の触媒系についてコバルト化合物及び塩基性化合物を使用しないことを除き、全て実施例1と同じ条件下で反応を行った。得られた反応混合物を実施例1と同様にして分析したところ、反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは痕跡量だった。
(比較例2):コバルト化合物とハロゲン化物塩のみの触媒系
実施例1の触媒系についてルテニウム化合物及び塩基性化合物を使用しないことを除き、全て実施例1と同じ条件下で反応を行った。得られた反応混合物の成分をガスクロマトグラフで分析したところ、反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは痕跡量であった。
(比較例3):ルテニウム化合物とコバルト化合物のみの触媒系
実施例1の触媒系についてハロゲン化物塩及び塩基性化合物を使用しないことを除き、全て実施例1と同じ条件下で反応を行った。得られた反応混合物をガスクロマトグラフで分析したところ、反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは痕跡量であった。
(比較例4):ルテニウム化合物、コバルト化合物とハロゲン化物塩のみの触媒系
実施例1の触媒系について塩基性化合物を使用しないことを除き、全て実施例1と同じ条件下で反応を行った。得られた反応混合物をガスクロマトグラフで分析したところ、反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは痕跡量であった。
(実施例2)
実施例1の触媒系について、塩基性化合物をトリプロピルアミン 0.5mmolにした以外は、実施例1と全く同様の操作を実施した。反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは0.83mmol(ノルボルナジエン基準で収率33.2%)であり、エキソ/エンド組成比は75/25であった。また、この際、エキソ体、エンド体ともガスクロマトグラフのピークが2本ずつ存在したので、2,5−体と2,6−体であると推察した。
(実施例3)
実施例1の触媒系において、塩基性化合物をN−メチルピロリジン 0.5mmolにした以外は実施例1と全く同様の操作を実施した。反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは1.33mmol(ノルボルナジエン基準で収率53.2%)であり、エキソ/エンド組成比は75/25であった。また、この際、エキソ体、エンド体ともガスクロマトグラフのピークが2本ずつ存在したので、2,5−体と2,6−体であると推察した。
(実施例4)
実施例1の触媒系において、塩基性化合物であるトリエチルアミンを1.0mmol(ルテニウム化合物に対して20当量)にした以外は実施例1と全く同様の操作を実施した。反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは1.63mmol(ノルボルナジエン基準で収率65.2%)であり、エキソ/エンド組成比は75/25であった。また、この際、エキソ体、エンド体ともガスクロマトグラフのピークが2本ずつ存在したので、2,5−体と2,6−体であると推察した。
得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチルの13C−NMRスペクトルを図1及び図2に示す。13C−NMRスペクトルの測定条件及び同定データは以下のとおりである。
条件:溶媒DMSO−d6、BRUKER社製の装置「AV400M」(カーボン基本周波数:100.62MHz)。
得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチルのH−NMRスペクトルを図3に示す。H−NMRスペクトルの測定条件及び同定データは以下のとおりである。
条件:溶媒DMSO−d6、BRUKER社製の装置「AV400M」(プロトン基本周波数:400.13MHz)。
得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチルのH−13C HSQCスペクトルを図4に示す。H−13C HSQCスペクトルから、それぞれ同じピーク番号を持つカーボンとプロトンが相関し、図1、図2及び図3の帰属結果が正しいことを確認した。
得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチルのH−H COSYスペクトルを図5に示す。図5から、プロトン(1)(4)とプロトン(7)、プロトン(1)(4)とプロトン(3)(6)、プロトン(2)(5)とプロトン(3)(6)、プロトン(11)(14)とプロトン(17)、プロトン(12)(16)とプロトン(13)(15)、プロトン(13)(15)とプロトン(14)の相関が観測され、それぞれ、プロトン(1)〜(7)及び(11)〜(17)でノルボルナン環が構成されていることを確認した。
得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチルのH−13C HMBCスペクトルを図6に示す。H−13C HMBCスペクトルによって、2種類の化合物の構造同定を行った。
図6から、カルボニルカーボン(9)とメチンプロトン(2)及びメチンプロトン(5)に相関が認められることから、ノルボルナン−2,5−ジカルボン酸メチルであることを確認した。
図6から、カルボニルカーボン(19)とメチンプロトン(12)及びメチンプロトン(16)に相関が認められることから、ノルボルナン−2,6−ジカルボン酸メチルであることを確認した。
得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチルのH−H NOESYスペクトルを図7に示す。H−H NOESYスペクトルから、ノルボルナン−2,5−ジカルボン酸メチル及びノルボルナン−2,6−ジカルボン酸メチルの立体構造同定を行った。
(1)ノルボルナン−2,5−ジカルボン酸メチル
図7から、プロトン(1)(4)とプロトン(7)との相関はあるが、プロトン(2)(5)との相関が認められないことから、プロトン(2)(5)はエンド位に結合していることが分かる。よって、この化合物が、ノルボルナン−2(エキソ)−5(エキソ)−ジカルボン酸メチルであることを確認した。
(2)ノルボルナン−2,6−ジカルボン酸メチル
図7から、プロトン(11)(14)はプロトン(17)との相関はあるが、プロトン(12)(16)との相関が認められないことから、プロトン(12)(16)はエンド位に結合していることが分かる。よって、この化合物が、ノルボルナン−2(エキソ)−6(エキソ)−ジカルボン酸メチルであることを確認した。
(実施例5)
実施例4の触媒系において、フェノール化合物としてp−クレゾールを0.25mmol(ルテニウム化合物に対して5当量)追加した以外は実施例4と全く同様の操作を実施した。反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは1.74mmol(ノルボルナジエン基準で収率69.6%)であり、エキソ/エンド組成比は75/25であった。また、この際、エキソ体、エンド体ともガスクロマトグラフのピークが2本ずつ存在したので、2,5−体と2,6−体であると推察した。
実施例1〜5及び比較例1〜4の結果を表1に示す。本発明においては、ルテニウム化合物、コバルト化合物、ハロゲン化物塩、及び塩基性化合物の存在でエステル化反応を行うことにより、エキソ体含有率の高いノルボルナンジカルボン酸エステルを効率良く得ることができる。塩基性化合物の使用量が多いこと、また、ルテニウム化合物、コバルト化合物、ハロゲン化物塩、及び塩基性化合物に加え、さらにフェノール化合物を用いることは、ノルボルナンジカルボン酸エステルをより高い収率で得るために有効である。
(実施例6)
実施例4の触媒系において、ハロゲン化物塩をトリオクチルメチルアンモニウムクロリド 0.25mmol、塩基性化合物をジメチルエチルアミン 1.0mmolにした以外は実施例4と全く同様の操作を実施した。反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは1.42mmol(ノルボルナジエン基準で収率56.8%)であり、エキソ/エンド組成比は75/25であった。また、この際、エキソ体、エンド体ともガスクロマトグラフのピークが2本ずつ存在したので、2,5−体と2,6−体であると推察した。
(実施例7)
実施例6の触媒系において、塩基性化合物をトリエチルアミン 1.0mmolにした以外は実施例6と全く同様の操作を実施した。反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは1.32mmol(ノルボルナジエン基準で収率52.8%)であり、エキソ/エンド組成比は75/25であった。また、この際、エキソ体、エンド体ともガスクロマトグラフのピークが2本ずつ存在したので、2,5−体と2,6−体であると推察した。
(実施例8)
実施例7の触媒系において、コバルト化合物をクエン酸コバルト 0.05mmolにした以外は実施例7と全く同様の操作を実施した。反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは0.35mmol(ノルボルナジエン基準で収率14.0%)であり、エキソ/エンド組成比は75/25であった。また、この際、エキソ体、エンド体ともガスクロマトグラフのピークが2本ずつ存在したので、2,5−体と2,6−体であると推察した。
(実施例9)
実施例7の触媒系において、塩基性化合物をN,N−ジメチルシクロヘキシルアミン 1.0mmolにした以外は実施例7と全く同様の操作を実施した。反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは1.00mmol(ノルボルナジエン基準で収率40.0%)であり、エキソ/エンド組成比は75/25であった。また、この際、エキソ体、エンド体ともガスクロマトグラフのピークが2本ずつ存在したので、2,5−体と2,6−体であると推察した。
(実施例10)
実施例8の触媒系において、ルテニウム化合物をあらかじめM.J.Cleare,W.P.Griffith,J.Chem.Soc.(A),1969,372.に従って塩化ルテニウムとギ酸から調製した[Ru(CO)Cl 0.05mmolにした以外は実施例8と全く同様の操作を実施した。反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは1.13mmol(ノルボルナジエン基準で収率45.2%)であり、エキソ/エンド組成比は75/25であった。また、この際、エキソ体、エンド体ともガスクロマトグラフのピークが2本ずつ存在したので、2,5−体と2,6−体であると推察した。
(実施例11)
実施例10の触媒系において、ハロゲン化物塩をテトラエチルアンモニウムクロリド 0.25mmolにした以外は実施例10と全く同様の操作を実施した。反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは1.41mmol(ノルボルナジエン基準で収率56.4%)であり、エキソ/エンド組成比は75/25であった。また、この際、エキソ体、エンド体ともガスクロマトグラフのピークが2本ずつ存在したので、2,5−体と2,6−体であると推察した。
(実施例12)
実施例11の触媒系において、フェノール化合物としてヒドロキノンモノメチルエーテルを0.25mmol追加した以外は実施例11と全く同様の操作を実施した。反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは1.65mmol(ノルボルナジエン基準で収率66.0%)であり、エキソ/エンド組成比は75/25であった。また、この際、エキソ体、エンド体ともガスクロマトグラフのピークが2本ずつ存在したので、2,5−体と2,6−体であると推察した。
(実施例13)
実施例11の触媒系において、コバルト化合物を酢酸コバルト 0.25mmolにした以外は実施例11と全く同様の操作を実施した。反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは1.74mmol(ノルボルナジエン基準で収率69.6%)であり、エキソ/エンド組成比は75/25であった。また、この際、エキソ体、エンド体ともガスクロマトグラフのピークが2本ずつ存在したので、2,5−体と2,6−体であると推察した。
実施例10〜13の結果を表3に示す。ハロゲン化物塩としてテトラエチルアンモニウムクロリドを用いること、また、コバルト化合物として酢酸コバルトを用いることは、ノルボルナンジカルボン酸エステルを高い収率で得るために有効である。さらに、実施例8と実施例10の比較から分かるように、ルテニウム化合物として[Ru(CO)Clを用いることも、高い収率を実現するうえで効果的である。
(参考例1)
冷却管を取り付けた1リットルナス型フラスコに、実施例4と同様の方法で得られたエキソ体ノルボルナンジカルボン酸メチル 30g及びメタノール 200gを投入して均一溶液とした後、10%水酸化ナトリウム溶液 200gを加え、100℃のオイルバスに入れ、6時間加熱還流した。その後、反応液量が140gになるまでメタノールを留去し、これに36%塩酸 48mlを加え、pHを1としたところ、白色粉末が沈殿した。この白色粉末をろ過、水洗、乾燥し、エキソ体ノルボルナンジカルボン酸 25gを得た。得られたノルボルナンジカルボン酸を、H−NMRで分析した結果(図8)、ノルボルナン環のメチレン及びメチン基のピークが1.1〜3.0ppm付近に、カルボン酸に起因する水酸基のピークが12.4ppm付近に確認でき、その積分強度比が10.00/1.98(理論値:10/2)であった。

Claims (8)

  1. ノルボルナジエンとギ酸エステルとを、ルテニウム化合物、コバルト化合物、ハロゲン化物塩及び塩基性化合物の存在下で反応させる工程を有するノルボルナンジカルボン酸エステルの製造方法。
  2. 下記式(I)又は式(II)で表されるノルボルナンジカルボン酸エステルの製造方法であって、
    (式中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基、ビニル基、又はベンジル基を示す。)
    (式中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基、ビニル基、又はベンジル基を示す。)
    下記式(III)で表されるノルボルナジエンと、
    下記式(IV)で表されるギ酸エステルとを、
    (式中、Rは、炭素数1〜5のアルキル基、ビニル基、又はベンジル基を示す。)
    ルテニウム化合物、コバルト化合物、ハロゲン化物塩及び塩基性化合物の存在下で反応させる工程を有する請求項1記載のノルボルナンジカルボン酸エステルの製造方法。
  3. ルテニウム化合物が、カルボニル配位子及びハロゲン配位子を有するルテニウム錯体化合物である請求項1又は2に記載されたノルボルナンジカルボン酸エステルの製造方法。
  4. ハロゲン化物塩が、第四級アンモニウム塩である請求項1〜3のいずれかに記載のノルボルナンジカルボン酸エステルの製造方法。
  5. 塩基性化合物が、第三級アミン化合物である請求項1〜4のいずれかに記載のノルボルナンジカルボン酸エステルの製造方法。
  6. フェノール化合物の存在下で反応を行う請求項1〜5のいずれかに記載のノルボルナンジカルボン酸エステルの製造方法。
  7. 有機ハロゲン化合物の存在下で反応を行う請求項1〜6のいずれかに記載のノルボルナンジカルボン酸エステルの製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のノルボルナンジカルボン酸エステルの製造方法により得られたノルボルナンジカルボン酸エステルを、エンド体ノルボルナンジカルボン酸エステルとエキソ体ノルボルナンジカルボン酸エステルとに分離する工程を有するエキソ体ノルボルナンジカルボン酸エステルの製造方法。
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