JPWO2012026531A1 - ハイドロゲル乾燥体、ビトリゲル膜乾燥体およびこれらの製造方法 - Google Patents

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Abstract

以下の工程:(1)基板上に配置された、前記所望形状と同形状の壁面鋳型内部にハイドロゲルを保持して、ハイドロゲル内の自由水の一部を基板と壁面鋳型の間隙から流出させる工程;(2)壁面鋳型を基板上から除去する工程;(3)ハイドロゲルを乾燥させて残留する自由水を除去し、ガラス化したハイドロゲル乾燥体を作製する工程;(4)ハイドロゲル乾燥体を再水和してビトリゲル膜を作製する工程、および(5)ビトリゲル膜を再乾燥させて自由水を除去し、ガラス化したビトリゲル膜乾燥体を作製する工程を含む方法によってビトリゲル膜乾燥体を製造する。

Description

本発明は、不定形外周縁部をもたないハイドロゲル乾燥体、ビトリゲル膜乾燥体およびこれらの製造方法に関する。
創薬の研究には、様々な機能細胞を用いて生体を反映した3次元培養モデルを簡便に構築できる培養システムの開発が長く求められてきた。特にコラーゲンゲルを細胞の培養担体に用いる3次元培養技術は、血管新生モデル、がん湿潤モデル、上皮間充織モデルなどを再構築するのに有用であるが、幅広く普及するには至っていなかった。
その理由としては、従来のコラーゲンゲルは、低密度の線維で構成されるため柔らかく取り扱いが困難であること、また、不透明であるため培養細胞の位相差顕微鏡観察は必ずしも容易でないこと等が考えられてきた。
このような問題を解決するため、本発明者は、低温でゲル化(gelation)に至適な塩濃度と水素イオン濃度(pH)を付与したコラーゲンのゾルを培養シャーレ内に注入して、さらに至適な温度に保温することでコラーゲンのゾルをゲル化した後、低温で十分に乾燥させることで自由水のみならず結合水も徐々に除去してガラス化(vitrification)し、さらに再水和(rehydration)することで、コラーゲンゲルの物性を、強度と透明性に優れた薄膜に再現性良く変換する技術を確立している(特許文献1)。
そして、ハイドロゲルであればコラーゲン以外の成分のゲルでも、ガラス化した後に再水和することで、ゲルを安定した新しい物性状態に変換することができるので、このガラス化工程を経て作製された新しい物性状態のゲルをビトリゲル(vitrigel)と命名している(非特許文献1)。
特に、これまでに開発してきたコラーゲンビトリゲル薄膜は、生体内の結合組織に匹敵する高密度のコラーゲン線維が互いに絡み合った厚さ数十マイクロメートルの透明な薄い膜であり、優れたタンパク質透過性及び強度を有しているという特徴がある。また、作製工程のコラーゲンゾルには様々な物質を添加できるので、添加した物質の特性をコラーゲンビトリゲル薄膜に反映することができる。さらに、例えば、環状ナイロン膜支持体を包埋したコラーゲンビトリゲル薄膜は、ピンセットで容易に取り扱うことができる。
そして、本発明者は、このコラーゲンビトリゲル薄膜に関する技術をさらに発展させ、コラーゲンビトリゲル薄膜の透明性、作製再現性を向上させるための技術(特許文献2)や、コラーゲンビトリゲルを膜形状ではなく糸状あるいは管状の形状に作製する技術(特許文献3)なども提案している。
特開平8−228768号公報 WO2005/014774 特開2007−204881号公報
Takezawa T, et al., Cell Transplant. 13: 463-473, 2004 Takezawa T, et al., Cells Tissues Organs 185: 237-241, 2007 Takezawa T, et al., J. Biotechnol. 131: 76-83, 2007
しかしながら、従来のコラーゲンビトリゲル薄膜の製造方法においては、例えば図3に例示したように、コラーゲンビトリゲル薄膜が任意の厚さとなるように、プラスチック製の培養シャーレにコラーゲンゾルを所定量注入してゲル化し、乾燥によるガラス化および再水和することで製造していた。
このため、乾燥によりガラス化したコラーゲンゲル乾燥体は、培養シャーレの底面と壁面に付着した状態でしか作製できていなかった。それゆえ、再水和した際に、壁面由来のコラーゲンビトリゲル薄膜を伴ってしまうという問題があった。壁面由来のコラーゲンビトリゲル薄膜を伴う場合には、コラーゲンビトリゲル薄膜の取り扱いが難しく、細胞の3次元培養担体として利用するためには、不必要な壁面由来のコラーゲンビトリゲル薄膜部分を除去するための作業が必要であるが、コラーゲンビトリゲル薄膜は水分を含有するため、この切断加工作業は容易ではなかった。また、コラーゲンゾルを注入する容器の形状を変えることで、出来上がるコラーゲンビトリゲル薄膜の形状をある程度制御することは可能であったが、壁面由来のコラーゲンビトリゲル薄膜を伴うため、正確に微細形状を加工するには水分を含んだコラーゲンビトリゲル薄膜を切断加工する必要があり容易ではなかった。そして、任意の形状のコラーゲンビトリゲル薄膜を製品として迅速かつ大量生産するためには、このような煩雑な作業を克服することは大きな課題であった。特に、細胞の3次元培養担体として利用する環状ナイロン膜支持体を包埋したコラーゲンビトリゲル薄膜については、培養容器の底面にのみコラーゲンビトリゲル薄膜が付着しており、必要時にはピンセット等で容易に培養容器の底面より剥離できる形状、すなわち環状ナイロン膜支持体の外周部にはコラーゲンビトリゲル薄膜が余分にはみ出さない形状に微細加工する必要があった。
また、従来のコラーゲンビトリゲル薄膜の製造方法では、ガラス化の第1工程であるゲル内の自由水の除去は風乾による自然乾燥で行っていたため、通常2日以上の時間を要していた。
そして、これまでの技術では、コラーゲンビトリゲル薄膜の含有コラーゲン量と厚さの制御については、0.25% コラーゲンゾルを培養シャーレの単位面積(1.0 cm2)当たりに0.04〜0.4ml注入してゲル化、ガラス化および再水和することで、単位面積(1.0 cm2)当たりにコラーゲンを100μg〜1.0mg含有するコラーゲンビトリゲル薄膜の作製が可能であり、さらにガラス化の期間を調節することでコラーゲンビトリゲル薄膜の厚さは数μm〜数百μm程度に調製可能であった。例えば、0.25% コラーゲンゾルを培養シャーレの単位面積(1.0 cm2)当たりに0.2ml注入してゲル化した後に2週間以上ガラス化して再水和した場合には厚さ約15μm、また、同様に0.4ml注入してゲル化した後に1週間程度ガラス化して再水和した場合には厚さ約120μmのコラーゲンビトリゲル薄膜の作製が可能であった(非特許文献2)。
しかしながら、薄膜状ではなく、例えば、厚さ1mm以上のコラーゲンビトリゲル膜を調製するためには、0.25% コラーゲンゾルを単位面積(1.0 cm2)当たりに少なくとも3.3ml以上注入する必要があると考えられた。しかし、この量は既存の培養シャーレでは溢れ出てしまうため、特殊な容器を準備しなければならない。さらに、ゲル化した後に、ゲル内の自由水を自然乾燥させるためには10日間以上かかる。このため、コラーゲンビトリゲル膜を迅速かつ大量に生産するためには、ゲル内の大量の自由水を除去する時間を短縮することは重要な課題であった。
さらに、従来の製造方法では、コラーゲンビトリゲル薄膜の乾燥体を培養シャーレから剥離させることは不可能であるため、コラーゲンビトリゲル薄膜の乾燥体は培養シャーレの底面と壁面に付着した状態で作製されていた。このため、コラーゲンビトリゲル薄膜の乾燥体を膜状態で自由に取り扱うことはできなかった。したがって、コラーゲンビトリゲル薄膜の乾燥体を任意の微細形状に切断することも不可能であった。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、所望の形状を有し、実用性、取り扱い性などの特性に優れたビトリゲル膜乾燥体およびこのビトリゲル膜乾燥体の前段階のハイドロゲル乾燥体、そして、このビトリゲル膜乾燥体およびハイドロゲル乾燥体を迅速かつ大量生産するための方法を提供することを課題としている。
本発明は、上記の課題を解決するため、以下のビトリゲル膜乾燥体、ハイドロゲル乾燥体およびこれらの製造方法を提供する。
<1>不定形外周縁部をもたないことを特徴とするビトリゲル膜乾燥体。
<2>基板に付着していることを特徴とする前記<1>のビトリゲル膜乾燥体。
<3>ビトリゲル膜乾燥体が、剥離可能なフィルムと重層化されていることを特徴とする前記<1>のビトリゲル膜乾燥体。
<4>フィルムがパラフィルムであることを特徴とする前記<3>のビトリゲル膜乾燥体。
<5>不定形外周縁部をもたないことを特徴とするハイドロゲル乾燥体。
<6>基板に付着していることを特徴とする前記<5>のハイドロゲル乾燥体。
<7>ハイドロゲル乾燥体が、剥離可能なフィルムと重層化されていることを特徴とする前記<5>のハイドロゲル乾燥体。
<8>フィルムがパラフィルムであることを特徴とする前記<7>のハイドロゲル乾燥体。
<9>所望形状のビトリゲル膜乾燥体の製造方法であって、以下の工程:
(1)基板上に配置された、前記所望形状と同形状の壁面鋳型内部にハイドロゲルを保持して、ハイドロゲル内の自由水の一部を基板と壁面鋳型の間隙から流出させる工程;
(2)壁面鋳型を基板上から除去する工程;
(3)ハイドロゲルを乾燥させて残留する自由水を除去し、ガラス化したハイドロゲル乾燥体を作製する工程;
(4)ハイドロゲル乾燥体を再水和してビトリゲル膜を作製する工程;および
(5)ビトリゲル膜を再乾燥させて自由水を除去し、ガラス化したビトリゲル膜乾燥体を作製する工程
を含むことを特徴とするビトリゲル膜乾燥体の製造方法。
<10>前記工程(1)において、壁面鋳型内部のハイドロゲルに、支持体を導入することを特徴とする前記<9>のビトリゲル膜乾燥体の製造方法。
<11>前記工程(1)において、ハイドロゲル内の自由水を1/4〜3/4程度に減じることを特徴とする前記<9>のビトリゲル膜乾燥体の製造方法。
<12>前記工程(5)において、ビトリゲル膜を、ビトリゲル膜乾燥体が剥離可能なフィルム上でガラス化することを特徴とする前記<9>のビトリゲル膜乾燥体の製造方法。
<13>フィルムがパラフィルムであることを特徴とする前記<12>のビトリゲル膜乾燥体の製造方法。
<14>所望形状に成形可能なビトリゲル膜乾燥体の製造方法であって、以下の工程:
(1)ビトリゲル膜乾燥体が剥離可能なフィルムが敷かれた基板上に配置された、任意形状の壁面鋳型内部にハイドロゲルを保持して、ハイドロゲル内の自由水の一部を基板上のフィルムと壁面鋳型の間隙から流出させる工程;
(2)壁面鋳型を基板上から除去する工程;
(3)ハイドロゲルを乾燥させて残留する自由水を除去し、ガラス化したハイドロゲル乾燥体を作製する工程;
(4)ハイドロゲル乾燥体を再水和してビトリゲル膜を作製する工程;
(5)ビトリゲル膜を再乾燥させて自由水を除去し、ガラス化したビトリゲル膜乾燥体を作製する工程
を含むことを特徴とするビトリゲル膜乾燥体の製造方法。
<15>前記工程(5)の後、
(6)フィルムと重層化されているビトリゲル膜乾燥体を所望形状に切断する工程を含むことを特徴とする前記<14>のビトリゲル膜乾燥体の製造方法。
<16>前記工程(6)の後、ビトリゲル膜乾燥体をフィルムから剥離させる工程を含むことを特徴とする前記<15>のビトリゲル膜乾燥体の製造方法。
<17>フィルムがパラフィルムであることを特徴とする前記<14>のビトリゲル膜乾燥体の製造方法。
<18>前記工程(1)において、壁面鋳型内部のハイドロゲルに、支持体を導入することを特徴とする前記<14>のビトリゲル膜乾燥体の製造方法。
<19>前記工程(1)において、ハイドロゲル内の自由水を1/4〜3/4程度に減じることを特徴とする前記<14>のビトリゲル膜乾燥体の製造方法。
<20>所望形状のハイドロゲル乾燥体の製造方法であって、以下の工程:
(1)基板上に配置された、前記所望形状と同形状の壁面鋳型内部にハイドロゲルを保持して、ハイドロゲル内の自由水の一部を基板と壁面鋳型の間隙から流出させる工程;
(2)壁面鋳型を基板上から除去する工程;
(3)ハイドロゲルを乾燥させて残留する自由水を除去し、ガラス化したハイドロゲル乾燥体を作製する工程;
を含むことを特徴とするハイドロゲル乾燥体の製造方法。
<21>前記工程(1)において、壁面鋳型内部のハイドロゲルに、支持体を導入することを特徴とする前記<20>のハイドロゲル乾燥体の製造方法。
<22>前記工程(1)において、ハイドロゲル内の自由水を1/4〜3/4程度に減じることを特徴とする前記<20>のハイドロゲル乾燥体の製造方法。
<23>前記工程(3)において、ハイドロゲル乾燥体が剥離可能なフィルム上でガラス化することを特徴とする前記<20>のハイドロゲル乾燥体の製造方法。
<24>フィルムがパラフィルムであることを特徴とする前記<23>のハイドロゲル乾燥体の製造方法。
<25>所望形状に成形可能なハイドロゲル乾燥体の製造方法であって、以下の工程:
(1)ハイドロゲル乾燥体が剥離可能なフィルムが敷かれた基板上に配置された、任意形状の壁面鋳型内部にハイドロゲルを保持して、ハイドロゲル内の自由水の一部を基板上のフィルムと壁面鋳型の間隙から流出させる工程;
(2)壁面鋳型を基板上から除去する工程;
(3)ハイドロゲルを乾燥させて残留する自由水を除去し、ガラス化したハイドロゲル乾燥体を作製する工程
を含むことを特徴とするハイドロゲル乾燥体の製造方法。
<26>前記工程(3)の後、
(4)フィルムと重層化されているハイドロゲル乾燥体を所望形状に切断する工程、を含むことを特徴とする前記<25>のハイドロゲル乾燥体の製造方法。
<27>前記工程(4)の後、ハイドロゲル乾燥体をフィルムから剥離させる工程を含むことを特徴とする前記<26>のハイドロゲル乾燥体の製造方法。
<28>前記工程(1)において、壁面鋳型内部のハイドロゲルに、支持体を導入することを特徴とする前記<25>のハイドロゲル乾燥体の製造方法。
<29>前記工程(1)において、ハイドロゲル内の自由水を1/4〜3/4程度に減じることを特徴とする前記<25>のハイドロゲル乾燥体の製造方法。
<30>フィルムがパラフィルムであることを特徴とする前記<25>のハイドロゲル乾燥体の製造方法。
<31>前記<1>のビトリゲル膜乾燥体が重層化し、一体化していることを特徴とする積層体。
<32>前記<1>のビトリゲル膜乾燥体はコラーゲンを原料としており、このビトリゲル膜乾燥体を再水和したビトリゲル膜を複数枚重ねて得られる積層体を用いた角膜の主に実質を構成しているコラーゲンの模倣物。
<33>前記<1>のビトリゲル膜乾燥体はコラーゲンを原料としており、このビトリゲル膜乾燥体が重層化し、一体化している積層体を再水和して得られたビトリゲル膜を用いた角膜の主に実質を構成しているコラーゲンの模倣物。
本発明によれば、壁面由来の不定形外周縁部をもたない所望形状のハイドロゲル乾燥体およびビトリゲル膜乾燥体を迅速に大量生産することができる。
また、ビトリゲル膜乾燥体あるいはハイドロゲル乾燥体を剥離可能なフィルムに重層化させることで、ビトリゲル膜乾燥体あるいはハイドロゲル乾燥体をフィルムから剥離させ、膜状態で自由に取り扱うことができる。さらに、壁面鋳型の形状以外にも、ガラス化したビトリゲル膜乾燥体あるいはハイドロゲル乾燥体を任意の形に切断加工することが可能である。
本発明のビトリゲル膜の製造方法の一実施形態を例示したフローチャートである。 本発明のビトリゲル膜の製造方法に使用される壁面鋳型を例示した斜視図である。 従来のビトリゲル薄膜の製造方法の一実施形態を例示したフローチャートである。 不定形外周縁部をもたないコラーゲンビトリゲル膜を例示した図である。 不定形外周縁部が付随したコラーゲンビトリゲル膜を例示した図である。 パラフィルムに吸着してあるコラーゲンビトリゲル膜乾燥体の一部分を、パラフィルムより容易に剥離した状態を例示した図である。 パラフィルムに吸着してある環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜乾燥体の一部分を、パラフィルムより容易に剥離した状態を例示した図である。 1つの基板上に4つの壁面鋳型を設置し、壁面鋳型内部にコラーゲンゾルを注入した状態を例示した図である。 図8の形態において、壁面鋳型を上下に僅かに動かすことでコラーゲンゲルと壁面鋳型間の接着を解除した状態の図である。 図8の形態において、壁面鋳型を基板上から除去した形態を例示した図である。 (A)は、実施例8で作製したFITC標識ヤギ抗マウス抗体を含有したビトリゲル膜乾燥体の積層体をPBSで再水和し、蛍光顕微鏡(Nikon)で観察した図である。(B)は、実施例6の方法で作製した積層体を観察した図である。 実施例8で作製したビトリゲル膜におけるFITC標識ヤギ抗マウス抗体の局在を示すビトリゲル膜の垂直断面図である。 実施例9で作製したアガロースを含有したビトリゲル膜乾燥体の積層体をPBSで再水和し、蛍光顕微鏡で観察した図である。 重ねるビトリゲル膜の枚数を増やした場合に、一体化されてない積層体について吸光度の変化を示した図である。 10枚重ねたビトリゲル膜の一体化されてない積層体に関して、透明性を示す図である。 9枚のビトリゲル膜を挿入することで一体化した積層体(0.25%コラーゲンゾル 1.0ml + 0.25%コラーゲンゾル 2.0ml×9層 + 0.25%コラーゲンゾル 1.0ml由来)の透明性を示す図である。
本発明のハイドロゲル乾燥体の製造方法の第1の実施形態は、所望形状のハイドロゲル乾燥体の製造方法であって、以下の工程:
(1)基板上に配置された、前記所望形状と同形状の壁面鋳型内部にハイドロゲルを保持して、ハイドロゲル内の自由水の一部を基板と壁面鋳型の間隙から流出させる工程;
(2)壁面鋳型を基板上から除去する工程;および
(3)ハイドロゲルを乾燥させて残留する自由水を除去し、ガラス化したハイドロゲル乾燥体を作製する工程
を含む。さらに、本発明のビトリゲル膜乾燥体の製造方法の第1の実施形態は、所望形状のビトリゲル膜乾燥体の製造方法であって、前記工程(3)に続いて、
(4)ハイドロゲル乾燥体を再水和してビトリゲル膜を作製する工程、および
(5)ビトリゲル膜を再乾燥させて自由水を除去し、ガラス化したビトリゲル膜乾燥体を作製する工程
を含む。
本発明において、「ハイドロゲル」とは、高分子が化学結合によって網目状構造をとり、その網目に多量の水を保有した物質を指し、より具体的には、天然物由来の高分子や合成高分子の人工素材に架橋を導入してゲル化させたものをいう。
また、「ハイドロゲル乾燥体」とは、ハイドロゲルから自由水を除去してガラス化させたものをいう。さらに、「ビトリゲル膜」とは、このハイドロゲル乾燥体を再水和させたものをいう。なお、上記の通り、「ガラス化(vitrification)の工程を経て作製できる新しい安定状態のゲル」は、本発明者によって「ビトリゲル(vitrigel)」と命名されている。そして、「ビトリゲル膜乾燥体」とは、このビトリゲルを再びガラス化したものをいう。ビトリゲル膜乾燥体は、必要なときに再水和することで、ビトリゲル膜を得ることができる。
以下、各工程について説明する。図1は、本発明のビトリゲル膜の製造方法の一実施形態を例示したフローチャートである。
工程(1):基板上に配置された、前記所望形状と同形状の壁面鋳型内部にハイドロゲルを保持して、ハイドロゲル内の自由水の一部を基板と壁面鋳型の間隙から流出させる。
基板と壁面鋳型は、70%エタノールあるいはオートクレーブ等による滅菌に耐えられる材料を適宜使用することができる。具体的には、ポリスチレンやアクリル等のプラスチック、ガラス、あるいはステンレス等を例示することができる。
第1の実施形態においては、壁面鋳型は、上面、底面を有していない筒状の枠体とすることができ、壁面鋳型の形状は、所望のビトリゲル膜の形状と同形状に設計することができる。具体的には、例えば、円形のビトリゲル膜を作製する場合には、図2に例示したように、壁面(枠)が環状のもの(円筒状)を使用することができる。また、矩形のビトリゲル膜を作製する場合には、壁面(枠)が矩形状のもの(角筒状)とすることができる。
そして、基板上に壁面鋳型が配置されると、両者は当接状態となるが、物理的には基板と壁面鋳型の表面の凹凸により自由水を流出させることができる程度のわずかな間隙が形成されることになる。本発明においては、所望の数のビトリゲル膜に応じて、基板上に壁面鋳型を複数配置することができる。
本発明において、ハイドロゲルの作製に用いられる原料としての天然物由来高分子は、例えば、コラーゲン、マウスEHS腫瘍抽出物より再構成された基底膜成分(商品名:マトリゲル)、ゼラチン、寒天、アガロース、フィブリン、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、プロテオグリカンなどを例示することができる。それぞれのゲル化に至適な塩等の成分、その濃度、pHなどを選択しハイドロゲルを作製することが可能である。
また、ハイドロゲルの作製に用いられる合成高分子としては、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、poly(2−hydroxyethylmethacrylate)/polycaprolactoneなどが挙げられる。また、これらの高分子を2種以上用いてハイドロゲルを作製することも可能である。ハイドロゲルの量は、作製するビトリゲル膜の厚さを考慮して調節することができる。
なかでも、ハイドロゲルの原料はコラーゲンが好ましく、コラーゲンゲルを用いる場合には、コラーゲンゾルを、基板上に配置された壁面鋳型に注入し、インキュベーターでゲル化させたものを使用することができる。図1では、ハイドロゲルの原料としてコラーゲンゾルを例示している。
コラーゲンゾルを使用する場合を例に説明すると、コラーゲンゾルは、至適な塩濃度を有するものとして、生理食塩水、PBS(Phosphate Buffered Saline)、HBSS(Hank’s Balanced Salt Solution)、基礎培養液、無血清培養液、あるいは血清含有培養液などで調製することができる。また、コラーゲンゲル化の際の溶液のpHは、6から8程度が好ましい。
ここで、コラーゲンゾルの調製は4℃で行うのが望ましい。その後、ゲル化する際の保温は、用いるコラーゲンの動物種に依存したコラーゲンの変性温度より低い温度でなければならないが、一般的には37℃以下の温度で数分から数十分でゲル化できる温度に保温して行うことができる。
また、コラーゲンゾルはコラーゲンの濃度が0.2%以下になると希薄すぎてゲル化が弱く、0.3%以上になると濃厚すぎて均一化が困難になる。したがって、コラーゲンゾルのコラーゲンの濃度は0.2〜0.3%が好ましく、より好ましくは0.25%程度である。
このように調整されたコラーゲンゾルを壁面鋳型内部に注入する。前記濃度のコラーゲンゾルは粘性を有しているため、コラーゲンゾルを壁面鋳型内部に注入して迅速に保温すれば、コラーゲンゾルは基板と壁面鋳型との間隙から流出することなく数分以内にゲル化することができる。
そして、形成されたコラーゲンゲルは基板と壁面鋳型に密着するが、所定の時間放置することで、時間の経過とともに、コラーゲンゲル内の自由水の一部が、基板と壁面鋳型の間隙から壁面鋳型の外側へ流出する。
ここで、壁面鋳型を上下等に僅かに動かすことで、ゲルと壁面鋳型間の接着が解除されて僅かな間隙が生じるので、自由水の流出を促進することができる。
さらに、例えば、単位面積(1.0 cm2)当たりに注入する0.25%コラーゲンゾルの量が0.4ml以上の場合には、ゲル化したコラーゲンゲル内の自由水を1/4〜2/3程度に減じるまでは、基板と壁面鋳型の間隙から流出する自由水を経時的に除去することが望ましい。これによって、ゲルのコラーゲン濃度は0.375〜1.0%程度になるため、壁面鋳型を除去してもゲル形状が歪まないゲル強度にすることができる。なお、その後は基板上に流出する自由水も伴った状態でゲル内に残留する自由水を自然乾燥させて除去してガラス化することができる。ここで、迅速大量生産の観点からは、コラーゲンゲル内の自由水を1/4〜2/3程度に減じさせる時間は2〜8時間が望ましい。さらに、その後、ゲル内に残留する自由水を自然乾燥させ完全に除去させる時間は48時間以内が望ましい。そのためには、単位面積(1.0 cm2)当たりに注入する0.25%コラーゲンゾルの量は0.1〜2.4mlが望ましく、その結果、単位面積(1.0 cm2)当たりに250μg〜6mgのコラーゲンを含有するコラーゲンビトリゲル膜を作製することができる。
なお、さらに単位面積当たりに多くのコラーゲンを含有するコラーゲンビトリゲル膜を作製する方法としては、以下の2通りの方法が可能である。第1の方法は、既に作製したコラーゲンビトリゲル膜あるいはその乾燥体の上にコラーゲンゾルを重層してゲル化、ガラス化および再水和する方法である。この方法を繰り返すことで、コラーゲンビトリゲル膜が重層化した積層体が得られ、任意の厚さのコラーゲンビトリゲル膜(積層体)を作製することが可能となる。また、第2の方法は、コラーゲンゾル内に既に作製したコラーゲンビトリゲル膜あるいはその乾燥体を包埋してゲル化、ガラス化および再水和する方法である。この方法においても、任意の枚数のコラーゲンビトリゲル膜が包埋された状態で重層化した積層体が得られ、任意の厚さのコラーゲンビトリゲル膜を作製することが可能となる。なお、第1の方法で重層に用いるゾルおよび第2の方法で包埋に用いるゾルにコラーゲン以外の成分を使用して、表裏あるいは層状に成分の異なるビトリゲル膜を作製することも可能となる。
また、壁面鋳型の内部のハイドロゾルには、支持体を導入することができる。例えば、支持体は、ナイロン膜、ワイヤ、綿製ガーゼ、繭糸、その他の織成体、生体吸収性材料等を例示することができ、壁面鋳型の内部の形状に対応したものを使用することができる。好ましくは、壁面鋳型が環状の場合には、支持体は、図1に例示したような壁面鋳型の内径と略等しい外径を有する環状ナイロン膜とすることができる。ゾルに支持体を導入することで、ビトリゲル膜の強度や形状保持能が高まり、取り扱い性、利便性が向上する。例えば、円形の壁面鋳型の直径より1.0 mm程短い外円直径の環状ナイロン膜支持体を導入することで、ピンセットで容易に取り扱えるビトリゲル膜を作製することができる。
工程(2)壁面鋳型を基板上から除去する。
基板上にハイドロゲルを残して、壁面鋳型を取り除く。ハイドロゲルは、自由水が流出しているため、基板上で変形等することなく、壁面鋳型に保持された形状を維持することができる。
工程(3)ハイドロゲルを乾燥させて残留する自由水を除去し、ガラス化したハイドロゲル乾燥体を作製する。
必要に応じて、最終的にガラス化させたい容器内へハイドロゲルを移動させた後、乾燥により、完全にハイドロゲル内の自由水を除去しガラス化する。例えば、ハイドロゲル乾燥体を剥離可能なフィルム上にハイドロゲルを移動させることで、作製されたハイドロゲル乾燥体をフィルムから剥離することができる。また、この場合、フィルム上でハイドロゲル乾燥体を所望の形状に成形することもできる。フィルムとしては、パラフィルム、サランラップ、ビニール等の非吸水性フィルムを例示することができ、特にパラフィルムが好ましい。
このガラス化工程の期間を長くするほど、再水和した際には透明度、強度に優れたビトリゲル膜を得ることができる。なお、必要に応じて短期間のガラス化後に再水和して得たビトリゲル膜をPBS等で洗浄し、再度ガラス化することもできる。
乾燥方法としては、例えば、風乾、密閉容器内で乾燥(容器内の空気を循環させ、常に乾燥空気を供給する)、シリカゲルを置いた環境下で乾燥する等、種々の方法を用いることができる。例えば、風乾の方法としては、10℃40%湿度で無菌に保たれたインキュベーターで2日間乾燥させる、もしくは無菌状態のクリーンベンチ内で一昼夜、室温で乾燥する等の方法を例示することができる。
ハイドロゲル乾燥体は、必要なときに再水和することでビトリゲル膜を作製することができるため、産業上有効に利用することができる。また、本発明のハイドロゲル乾燥体を再水和したビトリゲル膜は、後述するように、壁面由来の不必要なビトリゲル膜(本発明において、「不定形外周縁部」という)を伴わない点においても優れている。
さらに、本発明のビトリゲル膜乾燥体の製造方法では、
工程(4)ハイドロゲル乾燥体を再水和してビトリゲル膜を作製する。
ハイドロゲル乾燥体をPBSや使用する培養液などで再水和することでビトリゲル膜を作製することができる。ここで、再水和する液体には、生理活性物質などの各種の成分が含まれていてもよく、例えば、生理活性物質としては、抗生物質をはじめとする各種医薬品、細胞増殖因子、分化誘導因子、細胞接着因子、抗体、酵素、サイトカイン、ホルモン、レクチン、またはゲル化しない細胞外マトリックス成分としてファイブロネクチン、ビトロネクチン、エンタクチン、オステオポエチン等が挙げられる。また、これらを複数含有させることも可能である。
工程(5)ビトリゲル膜を再乾燥させて自由水を除去し、ガラス化したビトリゲル膜乾燥体を作製する。
乾燥方法は、工程(3)と同様に、風乾、密閉容器内で乾燥(容器内の空気を循環させ、常に乾燥空気を供給する)、シリカゲルを置いた環境下で乾燥する等、種々の方法を用いることができる。
ビトリゲル膜を再乾燥させることで、ガラス化したビトリゲル膜乾燥体を作製することができる。このビトリゲル膜乾燥体は、必要な時に再水和することで、再度ビトリゲル膜に変換することができる。
また、ビトリゲル膜を、例えば、パラフィルムのようなビトリゲル膜乾燥体が剥離可能なフィルム上でガラス化することもできる。パラフィルムは、パラフィンを原料とした熱可塑性フィルムであり、伸縮性・粘着性をもち、気密性、防水性にも優れているという特徴がある。
ビトリゲル膜乾燥体を剥離可能なフィルムに重層化させることで、コラーゲンビトリゲル膜の乾燥体をフィルムから剥離させ、膜状態で自由に取り扱うことができる。さらに、壁面鋳型の形状以外にも、ガラス化したビトリゲル膜乾燥体を任意の形に切断加工することが可能である。
なお、「ハイドロゲル乾燥体」と「ビトリゲル膜乾燥体」に含まれる成分は必ずしも同じではない。「ハイドロゲル乾燥体」は、ハイドロゲルの成分を含んでいるが、「ビトリゲル膜乾燥体」は、ハイドロゲル乾燥体を再水和した際の水溶液で平衡化されたビトリゲル膜に残存する成分を含んでいる。
また、工程(5)のビトリゲル膜乾燥体を再水和することで得られるビトリゲル膜は、工程(4)で得られるビトリゲル膜と比較して、ガラス化の期間が長いため、強度および透明性に優れている。
さらに、ガラス化の期間は「ハイドロゲル乾燥体」の状態で長くすることも可能であるが、「ハイドロゲル乾燥体」はハイドロゲル作製時の成分が全て共存している状態であり、ハイドロゲル乾燥体を維持し続ける際あるいはビトリゲル膜を利用する際には不必要となる成分も混在している。一方、「ハイドロゲル乾燥体」を再水和して不必要な混在成分を除去した後のビトリゲル膜については、その乾燥体においても不必要な成分は除去されている。したがって、ガラス化の期間を長く維持する必要がある時は、このビトリゲル膜乾燥体の状態で維持し続けることが好ましく、ビトリゲル膜乾燥体を再水和して得られるビトリゲル膜には不必要な成分が混在しない点が優れている。
本発明の第1の実施形態においては、壁面鋳型の形状は、所望のビトリゲル膜の形状と同形状に設計されており、さらに、基板と壁面鋳型の間隙から自由水を1/4〜3/4程度流出させた後、壁面鋳型を除去し、乾燥によるガラス化を行うため、壁面鋳型の形状を反映させた所望形状のビトリゲル膜を得ることができる。すなわち、上記の通り、従来の培養シャーレを用いた方法では、培養シャーレの壁面由来の不必要なビトリゲル薄膜(本発明において、「不定形外周縁部」という)を伴っていたが、本発明においては、不定形外周縁部をもたない、基板上に壁面鋳型の形状を反映させたハイドロゲル乾燥体あるいはビトリゲル膜乾燥体を得ることができる。したがって、従来必要であった不定形外周縁部の除去作業が不要であり、ビトリゲル膜を迅速、かつ大量に生産することが可能になる。さらに、壁面鋳型の利用によって、自由水の量を1/4〜3/4程度にまで減じるため、従来は、通常2日以上を要していた自由水除去のための乾燥時間を、1/2〜1/4程度の時間に短縮することができる。このような乾燥時間の短縮も、ビトリゲル膜乾燥体の迅速かつ大量生産に大きく寄与する。
また、従来は、乾燥時間に2日以上を要していたため、乾燥時間を実用的な範囲に抑えるため、ハイドロゲルの注入量が制限されていた。したがって、ビトリゲル膜の厚さは、最大でも約120μm程度の薄膜状(ビトリゲル薄膜)として作製されていた(非特許文献2)。これに対し、本発明のビトリゲル膜は、自由水除去のための乾燥時間を、1/2〜1/4程度の時間に短縮することができるため、乾燥時間を実用的な範囲に抑えても、従来よりもハイドロゲルの注入量を増加させることができる。具体的には、本発明では、2〜3日程度の実用的な乾燥時間で、厚さ約1mmのビトリゲル膜を容易に作製することができる。
さらに、ビトリゲル膜およびビトリゲル膜乾燥体は、例えば、ゲル化する前のゾル溶液に、含有させたい生理活性物質を混合し、その後、ゲル化・ガラス化等のビトリゲル膜の作製工程を経て作製することもできる。
生理活性物質を含有するビトリゲル膜およびビトリゲル膜乾燥体は、細胞の接着・増殖・分化などに必要な因子をビトリゲル膜側から供給することができるので、より良い培養環境を実現することができる。また、含有させた生理活性物質の細胞に対する影響を調べる試験を行うのに非常に有用である。また、生理活性物質を含んだビトリゲル膜は、体内へ移植することで薬物送達システムとしても機能し得る(非特許文献3)。
さらに、本発明の方法で作製されたビトリゲル膜は、分子量の大きな生理活性物質を透過することが可能であり、それにより、このビトリゲル膜の異なる2つの面に播種された各々の細胞の間での生理活性物質を介した相互作用の試験・研究に大きく貢献できる(非特許文献3)。
また、本発明の方法で作製されたビトリゲル膜は、培養容器に挿入して動物細胞を培養する細胞培養担体として用いることができる。培養する動物細胞としては、初代培養細胞、株化細胞、受精卵、およびそれらの細胞に外来遺伝子を導入した細胞が挙げられる。さらにそれらの細胞が、未分化な幹細胞、分化過程にある細胞、終末分化した細胞、および脱分化した細胞であっても良い。また、それらの細胞の培養を開始する手段としては、細胞懸濁液、細切組織片、受精卵、または三次元再構築したゲル培養体あるいは多細胞性凝集塊(スフェロイド)の播種が挙げられる。つまり、既存の方法で培養できる接着性の細胞は本ビトリゲル膜上で培養することが可能である。
さらに、例えば上記の細胞を、ビトリゲル膜の片面はもちろんのこと、両面に1種類以上の細胞を培養することが可能である。両面培養においては、各々の面に異種の細胞を培養することが可能である。特に、ビトリゲル膜の一方の面には上皮系細胞、他方の面には間充織細胞を培養することで、上皮間充織相互作用を有した経皮吸収モデルや腸管吸収モデルなど、また、一方の面には血管内皮細胞、他方の面にはガン細胞を培養することで、血管新生モデルやガン浸潤モデルなどの細胞機能アッセイを可能とする。
さらに、1枚のビトリゲル膜の厚さを高めた場合、ビトリゲル膜の透明性は、厚さに比例して低下するが、ビトリゲル膜を複数枚重ねて同程度の厚さとした場合には、1枚のビトリゲル膜に比べて透明性が高い。したがって、コラーゲンビトリゲル膜を複数枚重ねて透明性を向上させ、例えば、このコラーゲンビトリゲル膜上で角膜由来の細胞などを培養することで、角膜の模倣物として利用することができる。この角膜の模倣物は、生体に移植することもできるし、角膜モデルとして各種の薬理試験に利用することもできる。
なお、コラーゲンビトリゲル膜を複数枚重ねることで一体化した積層体を作製する方法としては、次の2通り(反復法と挿入法)が可能である。反復法では、すでに作製したコラーゲンビトリゲル膜乾燥体の上にコラーゲンゾルを注入し、ゲル化、ガラス化および再水和することを繰り返すことで一体化した積層体を作製できる。一方、挿入法では、コラーゲンゾルの中に予め作製した複数枚のコラーゲンビトリゲル膜あるいはコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を挿入した後にガラス化および再水和することで、一体化した積層体を作製することができる。
次に、本発明のハイドロゲル乾燥体およびビトリゲル膜乾燥体の製造方法の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態と共通する点については、以下では説明を一部省略する。
本発明のハイドロゲル乾燥体の製造方法の第2の実施形態は、所望形状に成形可能なハイドロゲル乾燥体の製造方法であって、以下の工程:
(1)ハイドロゲル乾燥体が剥離可能なフィルムが敷かれた基板上に配置された、任意形状の壁面鋳型内部にハイドロゲルを保持して、ハイドロゲル内の自由水の一部を基板上のフィルムと壁面鋳型の間隙から流出させる工程;
(2)壁面鋳型を基板上から除去する工程;
(3)ハイドロゲルを乾燥させて残留する自由水を除去し、ガラス化したハイドロゲル乾燥体を作製する工程;
を含む。
この実施形態においても、壁面鋳型は、上面、底面を有していない筒状の枠体とすることができるが、その形状は任意であり、所望のハイドロゲル乾燥体の形状と同形状である必要はない。
そして、第2の実施形態では、予め基板上にハイドロゲル乾燥体が剥離可能なフィルムを敷いて、このフィルム上にゾルを注入し、ゲル化、乾燥によるガラス化を行う。ハイドロゲル乾燥体が剥離可能なフィルムとしては、パラフィルム、サランラップ、ビニール等の非吸水性フィルムを例示することができ、特にパラフィルムが好ましい。
第2の実施形態では、フィルム上で、ハイドロゲルを乾燥させて残留する自由水を除去し、ガラス化したハイドロゲル乾燥体を作製することができる。この場合、フィルムと重層化されているハイドロゲル乾燥体が得られる。
ハイドロゲル乾燥体は、フィルムに吸着し重層化しているため、安定性が高く、所望の形状に容易に切断することができる。壁面鋳型の形状以外の所望形状に切断加工することができる。したがって、この実施形態では、前記工程(3)に続いて、フィルムと重層化されているハイドロゲル乾燥体を所望形状に切断する工程を含むことができる。
さらに、この実施形態では、所望形状に切断したハイドロゲル乾燥体をフィルムから剥離させる工程を含むことができる。ハイドロゲル乾燥体をフィルムから剥離させることで、膜状態で自由に取り扱うことができる。さらに、このハイドロゲル乾燥体も、不定形外周縁部を有していない。なお、フィルムから剥離させたハイドロゲル乾燥体を切断加工することも可能である。
そして、所望形状に成形したハイドロゲル乾燥体を再水和することで、所望形状のビトリゲル膜を得ることができる。
さらに、本発明のビトリゲル膜乾燥体の製造方法の第2の実施形態は、所望形状に成形可能なビトリゲル膜乾燥体の製造方法であって、
(1)ハイドロゲル乾燥体が剥離可能なフィルムが敷かれた基板上に配置された、任意形状の壁面鋳型内部にハイドロゲルを保持して、ハイドロゲル内の自由水の一部を基板上のフィルムと壁面鋳型の間隙から流出させる工程;
(2)壁面鋳型を基板上から除去する工程;
(3)ハイドロゲルを乾燥させて残留する自由水を除去し、ガラス化したハイドロゲル乾燥体を作製する工程;
(4)ハイドロゲル乾燥体を再水和してビトリゲル膜を作製する工程;および
(5)ビトリゲル膜を再乾燥させて自由水を除去し、ガラス化したビトリゲル膜乾燥体を作製する工程;
を含む。前記工程(3)で得られた、フィルムと重層化したハイドロゲル乾燥体を再水和することで、フィルムと重層化したビトリゲル膜を得ることができる(工程(4))。このフィルムと重層化した状態のビトリゲル膜を再度、乾燥してガラス化することで、フィルムに重層化したビトリゲル膜乾燥体を得ることができる(工程(5))。
この実施形態によって作製されるビトリゲル膜乾燥体も、不定形外周縁部をもたないため、従来必要であった不定形外周縁部の除去作業が不要であり、ビトリゲル膜を迅速、かつ大量に生産することが可能になる。
さらに、従来、ビトリゲル膜は、所望の形状に切断加工することが難しいという問題があったが、フィルムに吸着し、重層化した状態のビトリゲル膜乾燥体は、複雑な形状であっても、所望の形状に正確に切断加工することができる。したがって、この実施形態では、フィルムと重層化されているビトリゲル膜乾燥体を所望形状に切断する工程を含むことができる。所望の形状に成形したビトリゲル膜乾燥体は、必要な時に再水和することで、所望の形状のビトリゲル膜を得ることができる。用途に応じて所望形状のビトリゲル膜を製造することが可能であるため、さらに利便性が向上する。
なお、ハイドロゲル乾燥体の製造方法の第2の実施形態で説明したように、この実施形態では、上記工程(3)の後に、フィルムに重層化したハイドロゲル乾燥体を所望の形状に成形することも可能である。この場合にも、続いて上記工程(4)(5)を経ることで、所望の形状のビトリゲル膜乾燥体を作製することができる。
また、フィルムに重層化したビトリゲル膜乾燥体は、容易にフィルムから剥離することが可能である。したがって、所望の形状に成形したビトリゲル膜乾燥体をフィルムから剥離させ、膜状態で取り扱うことができる。したがって、ビトリゲル膜乾燥体の取り扱い性に優れるとともに、その水分吸収性等の特性を利用した医療素材等への有効活用が期待される。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>基板と壁面鋳型を利用した環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜乾燥体(コラーゲン量:0.55〜2.2 mg/cm2)の作製
ウシ真皮由来I型コラーゲンの0.25% ゾルは、氷上で冷却した50ml容量の滅菌コニカルチューブ(Falcon # 35-2070)内で0.5%I型コラーゲン酸性溶液(KOKEN # IAC-50;5mg/ml)と細胞培養液を均一に等量混合することで調製した。なお、ここで用いた細胞培養液は、10% 非動化ウシ胎仔血清(SIGMA # F2442)、20mM HEPES(GIBCO BRL # 15630-080)、および100 units/ml ペニシリンと100μg/ml ストレプトマイシン(GIBCO BRL # 15140-148)を含有するダルベッコ改変イーグル培養液(GIBCO BRL # 11885-084)である。
環状ナイロン膜支持体は、外円の直径が33mmで内円の直径が24mmになるようにナイロン膜(GEヘルスケア # RPN1732B;Hybond-N+ 核酸ブロッティング用メンブレン)を切り抜いた後、70% エタノールで10分間滅菌処理、滅菌PBSで10分間3回洗浄、さらに上述の細胞培養液で10分間平衡化することで作製した(特許文献2の図1参照)。
基板としては、直径60mmの疎水性ポリスチレン製培養シャーレ(Falcon # 35-1007)の底表面を用いた。また、壁面鋳型としては、外円の直径が38mmで内円の直径が34mmで高さが10.0mmのアクリルを用いた。また、壁面鋳型は70% エタノールを噴霧して拭き取る滅菌処理を施してから使用した。具体的には、1つの基板上に1つの壁面鋳型を設置することで、基板と壁面鋳型を分離できる1つの容器を作製した。
コラーゲンゲルは、この容器内に1枚の環状ナイロン膜支持体を挿入し、その直後に2.0ml、4.0ml、6.0ml、あるいは8.0ml の0.25% コラーゲンゾルを注入して基板にシャーレの蓋をした後、5.0% CO2/95%空気存在下の37.0 ℃ の保湿インキュベーター内でゲル化することで作製した。この際、注入したコラーゲンゾルは基板と壁面鋳型との間隙から流出することなくゲル化した。37.0 ℃の保湿インキュベーター内に移し入れてから2時間目、4時間目、6時間目、および8時間目には、コラーゲンゲル内の自由水が基板と壁面鋳型との間隙から壁面鋳型の外側へ流出した量を定量すると共に、各時間で流出した自由水は除去した。なお、2時間目に壁面鋳型を上下に僅かに動かすことで、コラーゲンゲルと壁面鋳型間の接着を解除した。
その結果、いずれのコラーゲンゲルも4時間目までに1/3以上、また、8時間目までに2/3程度の自由水を壁面鋳型の外側へ流出したことが分かった(表1)。
なお、壁面鋳型は8時間目に基板上から除去したが、この際、壁面鋳型はコラーゲンゲルと非接着状態にあり、基板上から除去した壁面鋳型の内壁等周囲へのコラーゲンゲルの付着は全くなかった。また、8時間目には37.0 ℃ の保湿インキュベーターより10.0 ℃ 40%湿度の条件下のクリーンベンチ内に移し入れ、その後はシャーレの蓋をはずした状態で流出する自由水は流出させながらコラーゲンゲル内に残留する自由水を自然乾燥により完全に除去し、ガラス化したコラーゲンゲル乾燥体を得た。ここで、コラーゲンゲル内に残留する自由水が完全に除去された段階からはガラス化が始まることになる。そこで、このガラス化が始まるまでの自然乾燥に要したおよその時間を計測した。その結果、ガラス化が始まるまで(コラーゲンゲル内に残留する自由水が完全に除去されてコラーゲンゲル乾燥体となるまで)に要した時間は、2.0mlおよび4.0mlの0.25% コラーゲンゲルの場合は21時間以内、また、6.0mlおよび8.0mlの0.25% コラーゲンゲルの場合は21時間以上41時間以内であった(表2)。
自然乾燥に要した時間は、従来の方法(以下の比較例1)と比べて大幅に短縮された。
ガラス化後1日ないしは2日目のコラーゲンゲル乾燥体を室温下のクリーンベンチに移し入れ、基板のシャーレ内に5.0ml のPBSを加えて再水和して基板より剥離することで環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜を作製した。そして、数回5.0ml のPBSでリンスすることで、PBSに平衡化した環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜を作製した。この環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜は壁面鋳型の直径34mmの内円(面積:9.1 cm2)形状を反映して、環状ナイロン膜支持体の直径33mmの外円周囲を僅かなゆとりで包埋していた(図4)
なお、この環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜は、図4の左から、コラーゲンを5.0 mg (コラーゲンゾル2.0ml由来)、10.0 mg (コラーゲンゾル4.0ml由来)、15.0 mg (コラーゲンゾル6.0ml由来)、および20.0 mg (コラーゲンゾル8.0ml由来)含有している。
さらに、この環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜を直径35mmの親水性ポリスチレン製培養シャーレ(Falcon # 35-3001)および底表面にパラフィルム(Pechiney Plastic Packaging社製)を敷いた直径60mmの疎水性ポリスチレン製培養シャーレ(Falcon # 35-1007)に移し入れ、10.0 ℃ 40%湿度の条件下のクリーンベンチ内で蓋をはずした状態で1〜2日間程度放置し完全に乾燥させた。その後、室温下のクリーンベンチに移し入れて各々のシャーレに蓋をしてから室温で無菌的に保管維持してガラス化を進行させることで、各々の環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を作製した。
その結果、前者の直径35mmの親水性ポリスチレン製培養シャーレ内に作製した環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜乾燥体に於いては、乾燥した状態ではシャーレ底面に密着しており剥離できないが、再水和した際にはシャーレの内壁を周囲に沿って先の鋭敏なピンセットでなぞる操作を必要とせず、また、環状ナイロン膜の外周に余分なビトリゲル膜(不定形外周縁部)を伴わない状態で容易にシャーレ底面よりピンセットで剥離できた。したがって、細胞を両面に3次元培養する担体として取扱い性に優れており有用である。
後者のパラフィルム上に作製した環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜乾燥体に於いては、環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜乾燥体はパラフィルムに吸着した状態を呈しており、また乾燥したままの状態で容易にパラフィルムより剥離できた。したがって、パラフィルムに吸着した環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜乾燥体あるいはパラフィルムより剥離した環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜乾燥体はバイオマテリアルとして取扱い性に優れており有用である。
なお、この環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜乾燥体は単位面積(1.0 cm2)当たりにコラーゲンを0.55 mg (コラーゲンゾル2.0ml由来)、1.1 mg (コラーゲンゾル4.0ml由来)、1.6 mg (コラーゲンゾル6.0ml由来)、あるいは2.2 mg (コラーゲンゾル8.0ml由来)含有している。
なお、上述の工程で環状ナイロン膜を挿入しなければ、環状ナイロン膜の支持体が無いコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を作製できる。また、壁面鋳型の底平面形状および高さを改変することで、任意の形状と厚みを有するコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を作製できる。

<比較例1>従来の培養シャーレを利用した環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜乾燥体の作製
実施例1で基板と分離できる壁面鋳型を利用した代わりに従来の直径35mmの疎水性ポリスチレン製培養シャーレ(Falcon # 35-1008)を使用して、実施例1と同様に実験を行った。
具体的には、コラーゲンゲルは、この培養シャーレ内に1枚の環状ナイロン膜支持体を挿入し、その直後に2.0ml、4.0ml、6.0ml、あるいは8.0ml の0.25% コラーゲンゾルを注入してシャーレの蓋をした後、5.0% CO2/95%空気存在下の37.0 ℃ の保湿インキュベーター内でゲル化することで作製した。37.0 ℃ の保湿インキュベーター内に移し入れてから2時間目、4時間目、6時間目、および8時間目には、コラーゲンゲルの上面側に滲出てくる自由水の量を定量すると共に、各時間で滲出した自由水は除去した。その結果、いずれのコラーゲンゲルからも8時間目までに10%以下の自由水しか上面側には滲出しないことが分かった(表3)。
また、8時間目には37.0 ℃ の保湿インキュベーターより10.0 ℃ 40%湿度の条件下のクリーンベンチ内に移し入れ、その後はシャーレの蓋をはずした状態でコラーゲンゲル内に残留する自由水を自然乾燥により完全に除去し、ガラス化したコラーゲンゲル乾燥体を得た。
ここで、コラーゲンゲル内に残留する自由水が完全に除去された段階からはガラス化が始まることになる。そこで、このガラス化が始まるまで(コラーゲンゲル内に残留する自由水が完全に除去されてコラーゲンゲル乾燥体となるまで)の自然乾燥に要したおよその時間を計測した。その結果、いずれのコラーゲンゲルも90%以上の自由水をゲル内に残留しているため、ガラス化が始まるまでに要した時間は、2.0mlの0.25% コラーゲンゲルの場合は21時間以上41時間以内、4.0mlの0.25% コラーゲンゲルの場合は41時間以上48時間以内、6.0mlの0.25% コラーゲンゲルの場合は48時間(2日)以上3日以内、また、8.0ml の0.25% コラーゲンの場合は3日以上4日以内であった(表4)。
ガラス化後1日ないしは2日目のコラーゲンゲル乾燥体を室温下のクリーンベンチに移し入れ、シャーレ内に2.0ml のPBSを加えて再水和してシャーレ底面および壁面より剥離することで環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜を作製した。そして、数回2.0ml のPBSでリンスすることで、PBSに平衡化した環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜を作製した。この環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜には、環状ナイロン膜支持体の直径33mmの外円周囲にシャーレの壁面由来の余分なコラーゲンビトリゲル膜(不定形外周縁部)が付随していた(図5)。なお、この環状ナイロン膜支持体の外円周囲の余分なコラーゲンビトリゲル膜を切り落とすことは、再水和した際にシャーレの内壁に沿って先の鋭敏なピンセットでなぞる操作をしても、環状ナイロン膜支持体の直径33mmの外円周囲よりはみ出してしまうので不可能であった。したがって、環状ナイロン膜支持体の外円周囲に見合ったコラーゲンビトリゲル膜を切り出す作業は極めて困難である。
また、この環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜は、図5の左から、コラーゲンを5.0 mg (コラーゲンゾル2.0ml由来)、10.0 mg (コラーゲンゾル4.0ml由来)、15.0 mg (コラーゲンゾル6.0ml由来)、あるいは20.0 mg (コラーゲンゾル8.0ml由来)含有しているが、壁面由来の余分なコラーゲンビトリゲル膜を切り落とした場合には、正確なコラーゲン含有量を算出できなくなる。
比較例1においても、環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を作製することは可能であったが、作製に伴う作業の困難性、正確なコラーゲン含有量を算出できないこと、およびガラス化に至るまでコラーゲンゲル内自由水の乾燥時間が長いことを考慮すると実用的ではないことが確認された。
<実施例2>基板上に敷いたパラフィルムと壁面鋳型を利用したパラフィルムに吸着したコラーゲンビトリゲル膜乾燥体(コラーゲン量:0.52〜2.1 mg/cm2)の作製
基板としては、直径60mmの疎水性ポリスチレン製培養シャーレ(Falcon # 35-1007)の底表面を用いた。また、壁面鋳型としては、外円の直径が39mmで内円の直径が35mmで高さが10.0mmのアクリルを用いた。パラフィルム(Pechiney Plastic Packaging社製)は、直径50mmの円形に切断して用いた。なお、壁面鋳型およびパラフィルムともに70% エタノールを噴霧して拭き取る滅菌処理を施してから使用した。具体的には、直径60mmの疎水性ポリスチレン製培養シャーレの底表面上に直径50mmの円形に切断した1枚のパラフィルムを敷いて、その上に1つの壁面鋳型を設置することで、基板上に敷いたパラフィルムと壁面鋳型を分離できる1つの容器を作製した。
コラーゲンゲルは、この容器内に2.0ml、4.0ml、6.0ml、あるいは8.0ml の0.25% コラーゲンゾルを注入してシャーレの蓋をした後、5.0% CO2/95%空気存在下の37.0 ℃ の保湿インキュベーター内でゲル化することで作製した。この際、注入したコラーゲンゾルは基板上に敷いたパラフィルムと壁面鋳型との間隙から流出することなくゲル化した。
37.0 ℃の保湿インキュベーター内に移し入れてから4時間目、6時間目、および8時間目には、コラーゲンゲル内の自由水が基板上に敷いたパラフィルムと壁面鋳型との間隙から壁面鋳型の外側へ流出した量を定量すると共に、各時間で流出した自由水は除去した。なお、2時間目に壁面鋳型を上下に僅かに動かすことで、コラーゲンゲルと壁面鋳型間の接着を解除した。その結果、コラーゲンゾル6.0mlおよび8.0ml由来のコラーゲンゲルは4時間目までに1/3以上、コラーゲンゾル4.0ml由来のコラーゲンゲルは6時間目までに約1/3、またコラーゲンゾル2.0ml由来のコラーゲンゲルは8時間目までに約1/4の自由水が壁面鋳型の外側へ流出したことが分かった(表5)。
壁面鋳型は8時間目に基板上から除去したが、この際、壁面鋳型はコラーゲンゲルと非接着状態にあり、基板上に敷いたパラフィルムから除去した壁面鋳型の内壁等周囲へのコラーゲンゲルの付着は全くなかった。また、8時間目には37.0 ℃ の保湿インキュベーターより10.0 ℃ 40%湿度の条件下のクリーンベンチ内に移し入れ、その後はシャーレの蓋をはずした状態で流出する自由水は流出させながらコラーゲンゲル内に残留する自由水を自然乾燥により完全に除去し、コラーゲンゲル乾燥体を得た。
ここで、コラーゲンゲル内に残留する自由水が完全に除去された段階からはガラス化が始まることになる。そこで、このガラス化が始まるまで(コラーゲンゲル内に残留する自由水が完全に除去されてコラーゲンゲル乾燥体となるまで)の自然乾燥に要したおよその時間を計測した。その結果、ガラス化が始まるまでに要した時間は、2.0mlの0.25% コラーゲンゲルの場合は20時間以内、また、4.0ml、6.0mlおよび8.0mlの0.25% コラーゲンゲルの場合は20時間以上41時間以内であった(表6)。
ガラス化後1日ないしは2日目のコラーゲンゲル乾燥体を室温下のクリーンベンチに移し入れ、基板のシャーレ内に5.0ml のPBSを加えて再水和して基板上に敷いてあるパラフィルムに吸着した状態でコラーゲンビトリゲル膜を作製した。そして、数回5.0ml のPBSでリンスすることで、PBSに平衡化したコラーゲンビトリゲル膜をパラフィルムに吸着した状態で作製した。このコラーゲンビトリゲル膜は壁面鋳型の直径35mmの内円(面積:9.6 cm2)形状を反映しており、不定形外周縁部をもたないものであった。
さらに、このパラフィルムに吸着した状態のコラーゲンビトリゲル膜を直径60mmの疎水性ポリスチレン製培養シャーレ(Falcon # 35-1007)に移し入れ、10.0 ℃ 40%湿度の条件下のクリーンベンチ内で蓋をはずした状態で1〜2日間程度放置し完全に乾燥させた後、室温下のクリーンベンチに移し入れてシャーレに蓋をしてから室温で無菌的に保管維持してガラス化を進行させることで、パラフィルムに吸着した状態のコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を作製した。このパラフィルムに吸着した状態のコラーゲンビトリゲル膜乾燥体は、所望の微細形状にハサミやメス等で容易に切断できた。また、コラーゲンビトリゲル膜乾燥体は、パラフィルムより容易に剥離することも可能であった(図6)。
この工程で作製したコラーゲンビトリゲル膜は、コラーゲンを5.0 mg (コラーゲンゾル2.0ml由来)、10.0 mg (コラーゲンゾル4.0ml由来)、15.0 mg (コラーゲンゾル6.0ml由来)、あるいは20.0 mg (コラーゲンゾル8.0ml由来)含有している。また、この工程で作製したコラーゲンビトリゲル膜乾燥体は、図6の左から、単位面積(1.0 cm2)当たりにコラーゲンを0.52 mg (コラーゲンゾル2.0ml由来)、1.0 mg (コラーゲンゾル4.0ml由来)、1.6 mg (コラーゲンゾル6.0ml由来)、あるいは2.1 mg (コラーゲンゾル8.0ml由来)含有している。
なお、上述の工程でコラーゲンゾルに環状ナイロン膜を挿入すれば、環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜乾燥体をパラフィルムに吸着した状態で作製できる(図7)。また、壁面鋳型の底平面形状および高さを改変することで、任意の形状と厚みを有するコラーゲンビトリゲル膜乾燥体をパラフィルムに吸着した状態で作製できる。
<実施例3>基板と壁面鋳型を利用した環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜乾燥体の迅速大量生産法
基板としては、100mmx100mmの疎水性ポリスチレン製培養シャーレ(Falcon # 35-1112)の底表面を用いた。また、壁面鋳型としては、外円の直径が38mmで内円の直径が34mm外円で高さが10.0mmのアクリルを4つ用いた。また、壁面鋳型は70% エタノールを噴霧して拭き取る滅菌処理を施してから使用した。
具体的には、1つの基板上に4つの壁面鋳型を設置することで、基板と壁面鋳型を分離できる4つの容器を作製した。各容器内に1枚の環状ナイロン膜支持体を挿入し2.0mlの0.25% コラーゲンゾルを注入して基板にシャーレの蓋をした後、5.0% CO2/95%空気存在下の37.0 ℃ の保湿インキュベーター内でゲル化することで、1つの基板上に4つのコラーゲンゲルを作製した。この際、注入したコラーゲンゾルは基板と壁面鋳型との間隙から流出することなくゲル化した(図8)。
また、37.0 ℃ の保湿インキュベーター内に移し入れてから2時間目には、壁面鋳型を上下に僅かに動かすことでコラーゲンゲルと壁面鋳型間の接着を解除した(図9)。その後、4時間目までに1/3程度の自由水が壁面鋳型の外側へ流出したので、壁面鋳型を基板上から除去した(図10)。流出した自由水を除去した後、10.0 ℃ 40%湿度の条件下のクリーンベンチ内に移し入れ、その後はシャーレの蓋をはずした状態で流出する自由水は流出させながらコラーゲンゲル内に残留する自由水を自然乾燥により完全に除去し、コラーゲンゲル乾燥体を得た。
ここで、コラーゲンゲル内に残留する自由水が完全に除去された段階からはガラス化が始まることになる。このガラス化が始まるまで(コラーゲンゲル内に残留する自由水が完全に除去されてコラーゲンゲル乾燥体となるまで)の自然乾燥は1日以内に完了した。ガラス化後1日ないしは2日目に室温下のクリーンベンチに移し入れ、基板のシャーレ内に20ml のPBSを加えて再水和して基板より剥離することで環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜を4つ同時に作製した。以下、実施例1と同様の操作を施すことで、単位面積(1.0 cm2)当たりにコラーゲンを0.55 mg含有する環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を4つ同時に作製した。
なお、上述の工程で環状ナイロン膜を挿入しなければ、環状ナイロン膜の支持体が無いコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を4つ同時に作製できる。また、上述の工程で実施例2と同様に基板上にパラフィルム敷いて用いれば、パラフィルムに吸着したコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を4つ同時に作製できる。
<実施例4>基板と壁面鋳型を利用した環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜乾燥体(コラーゲン量:2.7〜11.0 mg/cm2)の作製
実施例1の基板と壁面鋳型を分離できる容器において、10.0mlから40.0ml までの0.25% コラーゲンゾルを注入できるようにするために、実施例1で使用した壁面鋳型より高さが高い壁面鋳型を作製して、実施例1と同様の実験を行った。
具体的には、外円の直径が38mmで内円の直径が34mmで高さが30.0mmおよび60.0mmのアクリルからなる壁面鋳型を作製した。基板としては、高さが30.0mmの壁面鋳型には直径60mmの疎水性ポリスチレン製培養シャーレ(Falcon # 35-1007)の底表面、また高さが60.0mmの壁面鋳型には100mmx100mmの疎水性ポリスチレン製培養シャーレ(Falcon # 35-1112)の底表面を用いた。それぞれ、1つの基板上に1つの壁面鋳型を設置することで基板と壁面鋳型を分離できる1つの容器を作製し、各容器内に1枚の環状ナイロン膜支持体を挿入した。その直後に、高さが30.0mmの壁面鋳型を有する容器には10.0ml、12.0ml、16.0ml、あるいは20.0ml の0.25% コラーゲンゾルを注入して、また高さが60.0mmの壁面鋳型を有する容器には24.0ml、28.0ml、32.0ml、36.0ml、あるいは40.0ml の0.25% コラーゲンゾルを注入して、基板に各々のシャーレの蓋をした後、5.0% CO2/95%空気存在下の37.0 ℃ の保湿インキュベーター内でゲル化することでコラーゲンゲルを作製した。この際、注入したコラーゲンゾルは基板と壁面鋳型との間隙から流出することなくゲル化した。37.0 ℃の保湿インキュベーター内に移し入れてから2時間目、4時間目、6時間目、および8時間目には、コラーゲンゲル内の自由水が基板と壁面鋳型との間隙から壁面鋳型の外側へ流出した量を定量すると共に、各時間で流出した自由水は除去した。なお、2時間目に壁面鋳型を上下に僅かに動かすことで、コラーゲンゲルと壁面鋳型間の接着を解除した。
なお、壁面鋳型は8時間目に基板上から除去したが、この際、壁面鋳型はコラーゲンゲルと非接着状態にあり、基板上から除去した壁面鋳型の内壁等周囲へのコラーゲンゲルの付着は全くなかった。また、8時間目には37.0 ℃ の保湿インキュベーターより10.0 ℃ 40%湿度の条件下のクリーンベンチ内に移し入れ、その後はシャーレの蓋をはずした状態で流出する自由水は流出させた。ここで、10.0mlから20.0ml までの0.25% コラーゲンゾルを高さ30.0mmの壁面鋳型内に注入した直径60mmの疎水性ポリスチレン製培養シャーレについては、コラーゲンゲル内に残留する自由水を自然乾燥により完全に除去し、ガラス化したコラーゲンゲル乾燥体を得た。また、24.0mlから40.0ml までの0.25% コラーゲンゾルを高さ60.0mmの壁面鋳型内に注入した100mmx100mmの疎水性ポリスチレン製培養シャーレについては、流出する自由水の量が多いため10.0 ℃ 40%湿度の条件下のクリーンベンチ内に移し入れてから1時間半後(ゲル作製後の9時間半目)にもコラーゲンゲルの外側へ流出した自由水の量を定量して、その自由水を除去した後、コラーゲンゲル内に残留する自由水を自然乾燥により完全に除去し、ガラス化したコラーゲンゲル乾燥体を得た。
その結果、10.0mlおよび12.0mlのコラーゲンゲルについては8時間目までに1/2程度、また、16.0mlおよび20.0mlのコラーゲンゲルについては8時間目までに2/3以上の自由水を壁面鋳型の外側へ流出したことが分かった(表7)。
さらに、24.0mlから40.0ml までのコラーゲンゲルについては8時間目までに1/2以上、また、9時間半目までに2/3程度の自由水を壁面鋳型の外側へ流出したことが分かった(表8)。
なお、コラーゲンゲル内に残留する自由水が完全に除去された段階からはガラス化が始まることになる。そこで、このガラス化が始まるまでの自然乾燥に要したおよその時間を計測した。その結果、ガラス化が始まるまで(コラーゲンゲル内に残留する自由水が完全に除去されてコラーゲンゲル乾燥体となるまで)に要した時間は、10.0mlの0.25% コラーゲンゲルの場合は21時間以上37時間以内、12.0mlの0.25% コラーゲンゲルの場合は40時間以上43時間以内、また、16.0mlおよび20.0mlの0.25% コラーゲンゲルの場合は37時間以上40時間以内であった(表9)。
さらに、24.0mlおよび32.0mlの0.25% コラーゲンゲルの場合は47時間以内、28.0mlの0.25% コラーゲンゲルの場合は47時間以上51時間以内、36.0mlの0.25% コラーゲンゲルの場合は51時間以上62時間以内、また、40.0mlの0.25% コラーゲンゲルの場合は47時間以上51時間以内であった(表10)。
つまり、自然乾燥に要した時間は、10.0mlから40.0ml までの0.25% コラーゲンゲルでは最長でも62時間以内であり、基板と壁面鋳型からなる容器にコラーゲンゾルを注入後3日間以内にはガラス化したコラーゲンゲル乾燥体を得られることが分かった。
ガラス化後1日ないしは2日目のコラーゲンゲル乾燥体を室温下のクリーンベンチに移し入れ、基板のシャーレが直径60mmの疎水性ポリスチレン製培養シャーレの場合はシャーレ内に5.0ml、また基板のシャーレが100mmx100mmの疎水性ポリスチレン製培養シャーレの場合はシャーレ内に20.0mlのPBSを加えて再水和して基板より剥離することで環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜を作製した。そして、数回PBSでリンスすることで、PBSに平衡化した環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜を作製した。この環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜は壁面鋳型の直径34mmの内円(面積:9.1 cm2)形状を反映して、環状ナイロン膜支持体の直径33mmの外円周囲を僅かなゆとりで包埋していた。
この工程で作製したコラーゲンビトリゲル膜は、コラーゲンを25.0 mg (コラーゲンゾル10.0ml由来)、30.0 mg (コラーゲンゾル12.0ml由来)、40.0 mg (コラーゲンゾル16.0ml由来)、50.0 mg (コラーゲンゾル20.0ml由来)、60.0 mg (コラーゲンゾル24.0ml由来)、70.0 mg (コラーゲンゾル28.0ml由来)、80.0 mg (コラーゲンゾル32.0ml由来)、90.0 mg (コラーゲンゾル36.0ml由来)、あるいは100.0 mg (コラーゲンゾル40.0ml由来)含有している。
さらに、この環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜を直径35mmの親水性ポリスチレン製培養シャーレ(Falcon # 35-3001)および底表面にパラフィルム(Pechiney Plastic Packaging社製)を敷いた直径60mmの疎水性ポリスチレン製培養シャーレ(Falcon # 35-1007)に移し入れ、10.0 ℃ 40%湿度の条件下のクリーンベンチ内で蓋をはずした状態で1〜2日間程度放置し完全に乾燥させた。その後、室温下のクリーンベンチに移し入れて各々のシャーレに蓋をしてから室温で無菌的に保管維持してガラス化を進行させることで、各々の環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を作製した。
この工程で作製したコラーゲンビトリゲル膜乾燥体は、単位面積(1.0 cm2)当たりにコラーゲンを2.7 mg (コラーゲンゾル10.0ml由来)、3.3 mg (コラーゲンゾル12.0ml由来)、4.4 mg (コラーゲンゾル16.0ml由来)、5.5 mg (コラーゲンゾル20.0ml由来)、6.6 mg (コラーゲンゾル24.0ml由来)、7.7 mg (コラーゲンゾル28.0ml由来)、8.8 mg (コラーゲンゾル32.0ml由来)、9.9 mg (コラーゲンゾル36.0ml由来)、あるいは11.0 mg (コラーゲンゾル40.0ml由来)含有している。
<比較例2>従来の培養シャーレを利用した環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜乾燥体の作製
実施例4で基板と分離できる壁面鋳型を利用した代わりに従来の直径35mmの疎水性ポリスチレン製培養シャーレ(Falcon # 35-1008)を使用して、実施例4と同様に実験を行った。
具体的には、この培養シャーレ内に1枚の環状ナイロン膜支持体を挿入し、その直後に10.0mlから40.0ml までの0.25% コラーゲンゾルを注入しようとしたが、10.0mlの0.25% コラーゲンゾルを注入するとシャーレの高さより注入したコラーゲンゾルがドーム状に盛り上がってしまい蓋をすることができず、また、12.0ml以上の0.25% コラーゲンゾルを注入するとシャーレの許容量を超えて溢れ出ることが分かった。つまり、従来の直径35mmの疎水性ポリスチレン製培養シャーレでは、10.0ml以上のコラーゲンゲルは作製できないことが分かった。
<実施例5>基板と壁面鋳型を利用して作製した環状ナイロン膜支持体の無いコラーゲンビトリゲル膜の厚さの測定
実施例4において、外円の直径が39mmで内円の直径が35mmで高さが60.0mmのアクリルからなる壁面鋳型、および基板として100mmx100mmの疎水性ポリスチレン製培養シャーレ(Falcon # 35-1112)の底表面を用いて、1つの基板上に1つの壁面鋳型を設置することで基板と壁面鋳型を分離できる1つの容器を作製した。各容器内には環状ナイロン膜を挿入せずに、20.0ml、24.0ml、28.0ml、32.0ml、36.0ml、あるいは40.0ml の0.25% コラーゲンゾルを注入して、5.0% CO2/95%空気存在下の37.0 ℃ の保湿インキュベーター内でゲル化すると共に、8時間にわたりコラーゲンゲル内の自由水を基板と壁面鋳型との間隙から壁面鋳型の外側へ流出させ除去した。その後、10.0 ℃ 40%湿度の条件下のクリーンベンチ内に移し入れて1時間半後(ゲル作製後の9時間半目)には、各コラーゲンゲルについて外側へ流出した自由水を除去した。さらに、3日間かけて各コラーゲンゲル内に残留する自由水を自然乾燥により完全に除去し、ガラス化したコラーゲンゲル乾燥体を得た。ガラス化後1日目の各コラーゲンゲル乾燥体を室温下のクリーンベンチに移し入れ、基板のシャーレ内に20.0mlのPBSを加えて再水和して基板より剥離することでコラーゲンビトリゲル膜を作製した。そして、数回PBSでリンスすることで、PBSに平衡化したコラーゲンビトリゲル膜を作製した。各コラーゲンビトリゲル膜は壁面鋳型の直径35mmの内円(面積:9.6 cm2)形状を反映しており、不定形外周縁部をもたないものであった。
このように作製した環状ナイロン膜支持体の無い各コラーゲンビトリゲル膜について、厚さを計測した。具体的には、2枚のスライドガラス(Matsunami # S-0317)の間に1枚のコラーゲンビトリゲル膜を挟んだ状態でマイクロメータ(Mitutoyo デジマチックマイクロメータ # MDC-25M)に装着して計測した。その結果、コラーゲンを50.0 mg 含有するコラーゲンビトリゲル膜(コラーゲンゾル20.0ml由来)は 428±148.1 μm (3回測定)、60.0 mg 含有するコラーゲンビトリゲル膜(コラーゲンゾル24.0ml由来)は 635±21.4 μm(3回測定)、70.0 mg 含有するコラーゲンビトリゲル膜(コラーゲンゾル28.0ml由来)は 714±34.6 μm(3回測定)、80.0 mg 含有するコラーゲンビトリゲル膜(コラーゲンゾル32.0ml由来)は 774±29.9 μm(3回測定)、90.0 mg 含有するコラーゲンビトリゲル膜(コラーゲンゾル36.0ml由来)は 934±22.2 μm(3回測定)、および100.0 mg 含有するコラーゲンビトリゲル膜(コラーゲンゾル40.0ml由来)は 1,073±58.5 μm(3回測定)であった。
<実施例6>コラーゲンビトリゲル膜乾燥体が重層化した積層体の作製
基板としては、100mm×100mmの疎水性ポリスチレン製培養シャーレの底面、壁面鋳型としては、外円の直径が38mmで内円の直径が34mmで高さが30mmのアクリルを4つ用いた。1つの基板上に4つの壁面鋳型を設置することで、基板と壁面鋳型を分離できる4つの容器を作製した。各容器に1枚の環状ナイロン膜支持体を挿入し、2.0mlの0.25%コラーゲンゾルを注入して基板にシャーレの蓋をした後、5.0% CO2/95%空気存在下の37.0℃の保湿インキュベーター内でゲル化することで、1つの基板上に4つのコラーゲンゲルを作製した。
37.0℃の保湿インキュベーター内に移し入れてから2時間目には、壁面鋳型を上下に僅かに動かすことでコラーゲンゲルと壁面鋳型間の接着を解除した。その後、4-6時間目までに1/4程度の自由水が壁面鋳型の外側に流出したので、壁面鋳型を基板から除去した。流出した自由水を除去した後、10.0℃ 40%湿度の条件下のクリーンベンチ内に移し入れ、その後はシャーレの蓋をはずした状態でコラーゲンゲル内に残留する自由水を2日間の自然乾燥により完全に除去し、コラーゲンゲル乾燥体を得た。
このガラス化したコラーゲンゲル乾燥体を基板のシャーレ内に10mlの細胞培養液(実施例1と同様の組成)を加えて再水和して基板より剥離することで環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜を4つ作製した。
さらに、1つの基板上に4つの壁面鋳型を設置し、基板と壁面鋳型を分離できる4つの容器を再度、作製した。そして、上記の方法で作製した環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜の細胞培養液を除去後、この環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜を各容器に1枚ずつ挿入した。
以下、先と同様に各容器に2.0mlの0.25%コラーゲンゾルを注入して、ゲル化、コラーゲンゲル内の自由水の流出、10.0℃ 40%湿度の条件下での自由水の完全に除去、10mlの細胞培養液による再水和の一連の操作を2回繰り返した(最後の再水和は10mlの細胞培養液の代わりに20mlのPBSで行った)後、数回PBSでリンスすることで、PBSで平衡化した。これによって、環状ナイロン膜支持体を有しコラーゲンビトリゲル膜が重層化した積層体(0.25%コラーゲンゾル2.0ml×3層由来)を4つ作製することができた。
このコラーゲンビトリゲル膜が重層化した積層体は、コラーゲンを15.0mg含有しており、壁面鋳型の直径34mmの内円の形状を反映していた。
また、コラーゲンビトリゲル膜が重層化した積層体(0.25%コラーゲンゾル2.0ml×3層由来)について、マイクロメータに装着して厚さを計測した結果、65±2μm(3回測定平均)であった。実施例3の方法で作製したコラーゲンビトリゲル(0.25%コラーゲンゾル6.0ml由来)の厚さ69±5μm(3回測定平均)と同等であった。
さらに、このコラーゲンビトリゲル膜の積層体を、底面にパラフィルムを敷いた100mm×100mmの疎水性ポリスチレン製培養シャーレに移し入れ、10.0℃ 40%湿度の条件下のクリーンベンチ内で蓋をはずした状態でコラーゲンゲル内に1日程度放置し完全に乾燥させた。その後、シャーレの蓋をしてから室温で無菌的に保管維持してガラス化を進行させることで、コラーゲンビトリゲル膜乾燥体が重層化した積層体を作製した。
そして、この工程で作製した、コラーゲンビトリゲル膜乾燥体の積層体は、単位面積(1.0cm2)当たりコラーゲンを1.65mg含有していた。
<実施例7>個別に作製したコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を重層化させた積層体の作製
基板としては、100mm×100mmの疎水性ポリスチレン製培養シャーレの底面、壁面鋳型としては、外円の直径が38mmで内円の直径が34mmで高さが30mmのアクリルを4つ用いた。1つの基板上に4つの壁面鋳型を設置することで、基板と壁面鋳型を分離できる4つの容器を作製した。各容器に2.0mlの0.25%コラーゲンゾルを注入した後、実施例4に従い作製したビトリゲル膜乾燥体(0.25%コラーゲンゾル10.0ml由来)を挿入し、そこに再度2.0mlの0.25%コラーゲンゾルを注入した後、さらに実施例4に従い作製したビトリゲル膜乾燥体(0.25%コラーゲンゾル10.0ml由来)を挿入して、最後に2.0mlの0.25%コラーゲンゾルを注入して、基板にシャーレの蓋をした後、5.0% CO2/95%空気存在下の37.0℃の保湿インキュベーター内でゲル化することで、1つの基板上に4つのコラーゲンゲルを作製した。
37.0℃の保湿インキュベーター内に移し入れてから2時間目には、壁面鋳型を上下に僅かに動かすことでコラーゲンゲルと壁面鋳型間の接着を解除した。その後、3時間目までに1/3程度の自由水が壁面鋳型の外側に流出したので、壁面鋳型を基板から除去した。流出した自由水を除去した後、10.0℃ 40%湿度の条件下のクリーンベンチ内に移し入れ、その後はシャーレの蓋をはずした状態でコラーゲンゲル内に残留する自由水を2日間の自然乾燥により完全に除去し、コラーゲンゲル乾燥体が重層化した積層体を得た。このガラス化したコラーゲンゲル乾燥体の積層体を基板のシャーレ内に20mlのPBSを加えて再水和して基板より剥離することでコラーゲンビトリゲル膜の積層体を4つ作製した。そして、数回PBSでリンスすることで、PBSで平衡化したコラーゲンビトリゲル膜の積層体を4つ作製した。このコラーゲンビトリゲル膜の積層体は、コラーゲンを65.0mg含有しており、壁面鋳型の直径34mmの内円の形状を反映していた。
また、このように作製したコラーゲンビトリゲル膜の積層体(0.25%コラーゲンゾル2.0ml+10.0ml+2.0ml+10.0ml+2.0ml(合計26ml)由来)について、実施例6の方法に従って厚さを計測した結果、336±20μm(3回測定平均)であった。
さらに、このコラーゲンビトリゲル膜の積層体を、底面にパラフィルムをしいた100mm×100mmの疎水性ポリスチレン製培養シャーレに移し入れ、10.0℃ 40%湿度の条件下のクリーンベンチ内で蓋をはずした状態でコラーゲンゲル内に1日程度放置し完全に乾燥させた。その後、シャーレの蓋をしてから室温で無菌的に保管維持してガラス化を進行させることで、コラーゲンビトリゲル膜乾燥体の積層体を作製した。
この工程で作製したコラーゲンビトリゲル膜乾燥体の積層体は、単位面積(1.0cm2)当たりコラーゲンを7.15mg含有している。
<実施例8>FITC標識ヤギ抗マウス抗体を含有したビトリゲル膜乾燥体の作製
基板としては、100mm×100mmの疎水性ポリスチレン製培養シャーレの底面、壁面鋳型としては、外円の直径が38mmで内円の直径が34mmで高さが30mmのアクリルを4つ用いた。1つの基板上に4つの壁面鋳型を設置することで、基板と壁面鋳型を分離できる4つの容器を作製した。各容器に1枚の環状ナイロン膜支持体を挿入し、2.0mlの0.25%コラーゲンゾルを注入して基板にシャーレの蓋をした後、5.0% CO2/95%空気存在下の37.0℃の保湿インキュベーター内でゲル化することで、1つの基板上に4つのコラーゲンゲルを作製した。
37.0℃の保湿インキュベーター内に移しいれてから2時間目には、壁面鋳型を上下に僅かに動かすことでコラーゲンゲルと壁面鋳型間の接着を解除した。その後、4-6時間目までに1/3程度の自由水が壁面鋳型の外側に流出したので、壁面鋳型を基板から除去した。流出した自由水を除去した後、10.0℃ 40%湿度の条件下のクリーンベンチ内に移し入れ、その後はシャーレの蓋をはずした状態でコラーゲンゲル内に残留する自由水を2日間の自然乾燥により完全に除去し、コラーゲンゲル乾燥体を得た。
このガラス化したコラーゲンゲル乾燥体を基板のシャーレ内に10mlの細胞培養液(実施例1と同様の組成)を加えて再水和して基板より剥離することで環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜を4つ作製した。細胞培養液を除去後、この環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜が各容器に1枚挿入されるように、1つの基板上に4つの壁面鋳型を設置することで、基板と壁面鋳型を分離できる4つの容器を再度、作製した。
さらに、各容器に2.0mlの1%のFITC標識したヤギ抗マウスIgG抗体溶液を含有した0.25%コラーゲンゾルを注入して、ゲル化、コラーゲンゲル内の自由水の流出、10.0℃ 40%湿度の条件下での自由水の完全に除去、10mlの細胞培養液による再水和の一連の操作を行った。これによって、環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜とFITC標識ヤギ抗マウスIgG抗体を含有したコラーゲンビトリゲル膜と重層化させた。
さらに、1つの基板上に4つの壁面鋳型を設置することで、基板と壁面鋳型を分離できる4つの容器を再度作製し、重層化したコラーゲンビトリゲル膜の細胞培養液を除去後、各容器に1枚挿入した。
そして、各容器に2.0mlの0.25%コラーゲンゾルを注入して、ゲル化、コラーゲンゲル内の自由水の流出、10.0℃ 40%湿度の条件下での自由水の完全に除去、20mlのPBSによる再水和の一連の操作を行い、その後、数回PBSでリンスすることで、PBSで平衡化した。
これによって、2枚のコラーゲンビトリゲル膜の間にFITC標識ヤギ抗マウスIgG抗体を含有したコラーゲンビトリゲル膜が挟持された状態で3層に重層化された積層体を作製することができた。この積層体は、コラーゲンを15.0mg含有しており、壁面鋳型の直径34mmの内円の形状を反映していた。
このように作製したコラーゲンビトリゲル膜の積層体(0.25%コラーゲンゾル2.0ml+2.0ml+2.0ml(合計6ml)について、実施例6の方法に従って厚さを計測した。その結果、60±3μm(3回測定平均)であった。
また、このコラーゲンビトリゲル膜の積層体を、底面にパラフィルムを敷いた100mm×100mmの疎水性ポリスチレン製培養シャーレに移し入れ、10.0℃ 40%湿度の条件下のクリーンベンチ内で蓋をはずした状態でコラーゲンゲル内に1日程度放置し完全に乾燥させた。その後、シャーレの蓋をしてから室温で無菌的に保管維持してガラス化を進行させることで、2枚のコラーゲンビトリゲル膜乾燥体の間にFITC標識ヤギ抗マウスIgG抗体を含有したコラーゲンビトリゲル乾燥体が挟持された状態で重層化された、コラーゲンビトリゲル膜乾燥体の積層体を作製した。この工程で作製したコラーゲンビトリゲル膜乾燥体の積層体は、単位面積(1.0cm2)当たりコラーゲンを1.65mg含有していた。
また、このコラーゲンビトリゲル膜乾燥体の積層体をPBSで再水和し、蛍光顕微鏡(Nikon)で観察した。その結果、FITC特有の蛍光(緑色)を観察することができた(図11(A))。なお、実施例6の方法で作製した積層体はFITC特有の蛍光を観察できなかった(図11(B)倍率10倍)。
そして、作製したコラーゲンビトリゲル膜の積層体についてFITC標識ヤギ抗マウス抗体がビトリゲル膜中にどのように局在しているか観察した。具体的には、このコラーゲンビトリゲル膜の積層体を、Tissue-Tek O.C.T.コンパウンド中に包埋して凍結した。凍結した試料をクライオスタット内で厚さ 5μmに薄切したところ、3層構造をしたコラーゲンビトリゲル膜の中間層にはFITC特有の蛍光が残存しており、観察することができた(図12、倍率40倍)。
さらに、作製したコラーゲンビトリゲル膜乾燥体の積層体からFITC標識ヤギ抗マウス抗体が徐放されるか確認した。具体的にはコラーゲンビトリゲル膜乾燥体の積層体を容器に入れ、5mlのPBSを注入した後、37.0℃の保湿インキュベーターに保持した。3日目にPBSを回収して新たに5mlのPBSを注入した後、同様に保持して、6日目に再度PBSを回収し、各PBSを蛍光プレートリーダー(Molecular Devices)で測定した。その結果、3日目に5.53±0.21%(3回測定平均)、6日目に1.62±0.08%(3回測定平均)のFITC標識ヤギ抗マウス抗体(作製に使用したFITC標識ヤギ抗マウス抗体量を100%とした場合)がPBS中に検出された。なお、コラーゲンビトリゲル膜乾燥体の積層体の作製工程(再水和のPBS中)でも、8.33%のFITC標識ヤギ抗マウス抗体が検出された。以上のことから、作製したコラーゲンビトリゲル膜乾燥体の積層体における中間層に残存しているFITC標識ヤギ抗マウス抗体は、積層体の外層を介してPBS中に徐放されることが明らかになった。
<実施例9>アガロースビトリゲル膜を中間層に有するコラーゲンビトリゲル膜の乾燥体の作製
基板としては、100mm×100mmの疎水性ポリスチレン製培養シャーレの底面、壁面鋳型としては、外円の直径が38mmで内円の直径が34mmで高さが30mmのアクリルを4つ用いた。1つの基板上に4つの壁面鋳型を設置することで、基板と壁面鋳型を分離できる4つの容器を作製した。各容器に1枚の環状ナイロン膜支持体を挿入し、2.0mlの0.25%コラーゲンゾルを注入して基板にシャーレの蓋をした後、5.0% CO2/95%空気存在下の37.0℃の保湿インキュベーター内でゲル化することで、1つの基板上に4つのコラーゲンゲルを作製した。
37.0℃の保湿インキュベーター内に移しいれてから2時間目には、壁面鋳型を上下に僅かに動かすことでコラーゲンゲルと壁面鋳型間の接着を解除した。その後、4-6時間目までに1/3程度の自由水が壁面鋳型の外側に流出したので、壁面鋳型を基板から除去した。流出した自由水を除去した後、10.0℃ 40%湿度の条件下のクリーンベンチ内に移し入れ、その後はシャーレの蓋をはずした状態でコラーゲンゲル内に残留する自由水を2日間の自然乾燥により完全に除去し、コラーゲンゲル乾燥体を得た。
このガラス化したコラーゲンゲル乾燥体を基板のシャーレ内に10mlの細胞培養液(実施例1と同様の組成)を加えて再水和して基板より剥離することで環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜を4つ作製した。
さらに、基板上(直径60mm疎水性ポリスチレンシャーレ)に1つの壁面鋳型を設置して、基板と壁面鋳型を分離できる1つの容器を作製し、この容器に、環状ナイロン膜支持体付きコラーゲンビトリゲル膜を1枚挿入した。
そして、この容器に2.0mlの1%のFITC標識したヤギ抗マウスIgG抗体を含有した2%アガロースを注入した。1%のFITC標識したヤギ抗マウスIgG抗体を含有した2%アガロースは、9.9 mlのPBSに0.2 gのアガロース(ニッポンジーン)を添加し、加熱により溶解して調製した2%アガロースを37℃程度まで冷却し、0.1 mlのFITC標識したヤギ抗マウスIgG抗体溶液をさらに添加してよく混和することで調製した。
室温でゲル化後、10.0℃ 40%湿度の条件下での自由水の完全に除去、10mlの細胞培養液による再水和の一連の操作を行い、コラーゲンビトリゲル膜とFITC標識ヤギ抗マウスIgG抗体を含有したアガロースゲル膜が重層化された積層体(環状ナイロン膜支持体付きコラーゲン−アガロースビトリゲル膜)を作製した。
さらに、細胞培養液を除去後、1つの基板上に1つの壁面鋳型を設置することで、基板と壁面鋳型を分離できる容器を再度、作製し、この容器に、この積層体(環状ナイロン膜支持体付きコラーゲン−アガロースビトリゲル膜)を1枚挿入した。
これまでと同様に各容器に2.0mlの0.25%コラーゲンゾルを注入して、ゲル化、コラーゲンゲル内の自由水の流出、10.0℃ 40%湿度の条件下での自由水の完全に除去、20mlのPBSによる再水和の一連の操作を行い、2枚のコラーゲンビトリゲル膜の間にFITC標識ヤギ抗マウスIgG抗体を含有したアガロースビトリゲル膜が挟持されて3層に重層化したビトリゲル膜の積層体(環状ナイロン膜支持体付きコラーゲン−アガロースビトリゲル膜)を作製した。そして、この積層体を数回PBSでリンスすることで、PBSで平衡化したビトリゲル膜の積層体を1つ作製した。このビトリゲル膜の積層体は、コラーゲンを10.0mgとアガロース40.0mgを含有しており、壁面鋳型の直径34mmの内円の形状を反映していた。
また、このように作製したビトリゲル膜の積層体(0.25%コラーゲンゾル2.0ml+2%アガロースゾル2.0ml+0.25%コラーゲンゾル2.0ml(合計6ml)について、実施例6の方法に従って厚さを計測した結果、556±13μm(3回測定平均)であった。
さらに、この積層体を、底面にパラフィルムを敷いた100mm×100mmの疎水性ポリスチレン製培養シャーレに移し入れ、10.0℃ 40%湿度の条件下のクリーンベンチ内で蓋をはずした状態でコラーゲンゲル内に1日程度放置し完全に乾燥させた。その後、シャーレの蓋をしてから室温で無菌的に保管維持してガラス化を進行させることで、2枚のコラーゲンビトリゲル膜乾燥体の間にFITC標識ヤギ抗マウスIgG抗体を含有したアガロースビトリゲル膜乾燥体が挟持されて3層に重層化した積層体(環状ナイロン膜支持体付きコラーゲン−アガロースビトリゲル膜乾燥体)を作製した。
この工程で作製したビトリゲル膜乾燥体の積層体は、単位面積(1.0cm2)当たりコラーゲンを1.1mg、アガロースを4.4mg含有していた。
さらに、作製したビトリゲル膜乾燥体の積層体をPBSで再水和し、蛍光顕微鏡(Nikon)で観察した。その結果、FITC特有の蛍光(緑色)を観察することができた(図13、倍率10倍)。
<実施例10>厚いビトリゲル膜の透明性の改善に関する検討
実施例4において、従来よりも厚さの厚いビトリゲル膜を作製することができたことから、より実用性を高めるため、ビトリゲル膜の特性の一つである透明性を改善することを検討した。
実施例1の方法に従って作製したガラス化期間の長い(3ヶ月間以上)ビトリゲル膜乾燥体(0.25%コラーゲンゾル2ml由来)を10枚用意し、それぞれ3mlのPBSで再水和した。再水和後、空気が入らないように1枚ずつ上へ重ねた。
重層していく過程においてビトリゲル膜の透明度は、分光光度計(日本分光)を用いて吸光度(測定波長400nm)の測定を行った。その結果、各々の吸光度は、1枚の時0.148、2枚の時0.208、5枚の時0.415、10枚の時、0.803だった(図14)。
また、この時、実施例4の方法に従って作製したガラス化期間が長く(3ヶ月間以上)厚さの厚いビトリゲル膜乾燥体(0.25%コラーゲンゾル20ml由来)をPBSで再水和後、同様に吸光度の測定を行った。その結果、吸光度は1.67であった。
ビトリゲル膜を重ねる枚数が増えるほど、吸光度は増加し、透明性は低下するものの、10枚重ねした時の吸光度は、1枚の厚いビトリゲル膜乾燥体(0.25%コラーゲンゾル20ml由来)の吸光度の1/2であり、より透明であった。ガラス化が進んだ一体化されていないビトリゲル膜を重ねることによって、再水和時の透明性を改善することができた(図15)。したがって、ビトリゲル膜を複数枚重ねて、所望の厚さにすることで、透明性に優れた角膜の主に実質を構成しているコラーゲンの模倣物として利用することができる。
<実施例11>透明性に優れた厚いビトリゲル膜の作製
基板として、100mm×100mmの疎水性ポリスチレン製培養シャーレの底面、壁面鋳型としては、外円の直径が38mmで内円の直径が34mmで高さが18mmのアクリル容器を用いた。容器に、1.0mlの0.25%コラーゲンゾルを注入した後、実施例1に従い作製したガラス化期間の長い(3ヶ月間以上)ビトリゲル膜乾燥体(0.25 %コラーゲンゾル2ml由来)9枚を挿入した。挿入後、1.0mlの0.25%コラーゲンゾルを注入し、基板にシャーレの蓋をした後、5.0%・CO2/95%空気存在下の37℃の保温インキュベーター内で2時間ゲル化した。
ゲル化2時間後、壁面鋳型を上下に僅かに動かすことで、コラーゲンゾルと壁面鋳型間の接着を解除した。2時間目までに、1/2程度の自由水が壁面鋳型の外側に流出したので、壁面鋳型を基板から除去した。流出した自由水を除去後、10℃・40%湿度の条件下のクリーンベンチ内に移し入れ、シャーレの蓋を外した状態でコラーゲンゾル内に残留する自由水を2日間で完全に除去した。自由水の除去後、PBSをシャーレに10ml入れ、数回リンスした。リンス後、再び、10℃・40%湿度の条件下のクリーンベンチ内に移し入れ、シャーレの蓋を外した状態でコラーゲンゾル内に残留する自由水を除去することで、重層化により一体化したコラーゲンビトリゲル膜乾燥体の積層体を得た。
このビトリゲル膜乾燥体の積層体(9枚挿入:0.25 %コラーゲンゾル1.0ml+0.25 %コラーゲンゾル2.0ml×9層+0.25 %コラーゲンゾル1.0ml由来)を再水和したビトリゲル膜の透明度を、分光光度計(日本分光)を用いて吸光度(測定波長400nm)の測定を行った。その結果、吸光度は、1.06(3回の平均値)であった。
また、この時、実施例4に従い作製した厚さの厚いビトリゲル膜乾燥体(0.25%コラーゲンゾル20ml由来)をPBSで再水和後、同様に吸光度の測定を行った。その結果、吸光度は2.12(3回の平均値)であった。
このことより、厚さの厚いビトリゲル膜の透明性は、単回作製法に比較して重層一体化による作製法の方が改善されることがわかった(図16)。したがって、ビトリゲル膜を複数枚重ね一体化して、所望の厚さにすることで、透明性に優れた角膜の主に実質を構成しているコラーゲンの模倣物として利用することができる。

Claims (33)

  1. 不定形外周縁部をもたないことを特徴とするビトリゲル膜乾燥体。
  2. 基板に付着していることを特徴とする請求項1のビトリゲル膜乾燥体。
  3. ビトリゲル膜乾燥体が、剥離可能なフィルムと重層化されていることを特徴とする請求項1のビトリゲル膜乾燥体。
  4. フィルムがパラフィルムであることを特徴とする請求項3のビトリゲル膜乾燥体。
  5. 不定形外周縁部をもたないことを特徴とするハイドロゲル乾燥体。
  6. 基板に付着していることを特徴とする請求項5のハイドロゲル乾燥体。
  7. ハイドロゲル乾燥体が、剥離可能なフィルムと重層化されていることを特徴とする請求項5のハイドロゲル乾燥体。
  8. フィルムがパラフィルムであることを特徴とする請求項7のハイドロゲル乾燥体。
  9. 所望形状のビトリゲル膜乾燥体の製造方法であって、以下の工程:
    (1)基板上に配置された、前記所望形状と同形状の壁面鋳型内部にハイドロゲルを保持して、ハイドロゲル内の自由水の一部を基板と壁面鋳型の間隙から流出させる工程;
    (2)壁面鋳型を基板上から除去する工程;
    (3)ハイドロゲルを乾燥させて残留する自由水を除去し、ガラス化したハイドロゲル乾燥体を作製する工程;
    (4)ハイドロゲル乾燥体を再水和してビトリゲル膜を作製する工程;および
    (5)ビトリゲル膜を再乾燥させて自由水を除去し、ガラス化したビトリゲル膜乾燥体を作製する工程
    を含むことを特徴とするビトリゲル膜乾燥体の製造方法。
  10. 前記工程(1)において、壁面鋳型内部のハイドロゲルに、支持体を導入することを特徴とする請求項9のビトリゲル膜乾燥体の製造方法。
  11. 前記工程(1)において、ハイドロゲル内の自由水を1/4〜3/4程度に減じることを特徴とする請求項9のビトリゲル膜乾燥体の製造方法。
  12. 前記工程(5)において、ビトリゲル膜を、ビトリゲル膜乾燥体が剥離可能なフィルム上でガラス化することを特徴とする請求項9のビトリゲル膜乾燥体の製造方法。
  13. フィルムがパラフィルムであることを特徴とする請求項12のビトリゲル膜乾燥体の製造方法。
  14. 所望形状に成形可能なビトリゲル膜乾燥体の製造方法であって、以下の工程:
    (1)ビトリゲル膜乾燥体が剥離可能なフィルムが敷かれた基板上に配置された、任意形状の壁面鋳型内部にハイドロゲルを保持して、ハイドロゲル内の自由水の一部を基板上のフィルムと壁面鋳型の間隙から流出させる工程;
    (2)壁面鋳型を基板上から除去する工程;
    (3)ハイドロゲルを乾燥させて残留する自由水を除去し、ガラス化したハイドロゲル乾燥体を作製する工程;
    (4)ハイドロゲル乾燥体を再水和してビトリゲル膜を作製する工程;
    (5)ビトリゲル膜を再乾燥させて自由水を除去し、ガラス化したビトリゲル膜乾燥体を作製する工程
    を含むことを特徴とするビトリゲル膜乾燥体の製造方法。
  15. 前記工程(5)の後、
    (6)フィルムと重層化されているビトリゲル膜乾燥体を所望形状に切断する工程を含むことを特徴とする請求項14のビトリゲル膜乾燥体の製造方法。
  16. 前記工程(6)の後、ビトリゲル膜乾燥体をフィルムから剥離させる工程を含むことを特徴とする請求項15のビトリゲル膜乾燥体の製造方法。
  17. フィルムがパラフィルムであることを特徴とする請求項14のビトリゲル膜乾燥体の製造方法。
  18. 前記工程(1)において、壁面鋳型内部のハイドロゲルに、支持体を導入することを特徴とする請求項14のビトリゲル膜乾燥体の製造方法。
  19. 前記工程(1)において、ハイドロゲル内の自由水を1/4〜3/4程度に減じることを特徴とする請求項14のビトリゲル膜乾燥体の製造方法。
  20. 所望形状のハイドロゲル乾燥体の製造方法であって、以下の工程:
    (1)基板上に配置された、前記所望形状と同形状の壁面鋳型内部にハイドロゲルを保持して、ハイドロゲル内の自由水の一部を基板と壁面鋳型の間隙から流出させる工程;
    (2)壁面鋳型を基板上から除去する工程;
    (3)ハイドロゲルを乾燥させて残留する自由水を除去し、ガラス化したハイドロゲル乾燥体を作製する工程;
    を含むことを特徴とするハイドロゲル乾燥体の製造方法。
  21. 前記工程(1)において、壁面鋳型内部のハイドロゲルに、支持体を導入することを特徴とする請求項20のハイドロゲル乾燥体の製造方法。
  22. 前記工程(1)において、ハイドロゲル内の自由水を1/4〜3/4程度に減じることを特徴とする請求項20のハイドロゲル乾燥体の製造方法。
  23. 前記工程(3)において、ハイドロゲル乾燥体が剥離可能なフィルム上でガラス化することを特徴とする請求項20のハイドロゲル乾燥体の製造方法。
  24. フィルムがパラフィルムであることを特徴とする請求項23のハイドロゲル乾燥体の製造方法。
  25. 所望形状に成形可能なハイドロゲル乾燥体の製造方法であって、以下の工程:
    (1)ハイドロゲル乾燥体が剥離可能なフィルムが敷かれた基板上に配置された、任意形状の壁面鋳型内部にハイドロゲルを保持して、ハイドロゲル内の自由水の一部を基板上のフィルムと壁面鋳型の間隙から流出させる工程;
    (2)壁面鋳型を基板上から除去する工程;
    (3)ハイドロゲルを乾燥させて残留する自由水を除去し、ガラス化したハイドロゲル乾燥体を作製する工程
    を含むことを特徴とするハイドロゲル乾燥体の製造方法。
  26. 前記工程(3)の後、
    (4)フィルムと重層化されているハイドロゲル乾燥体を所望形状に切断する工程、を含むことを特徴とする請求項25のハイドロゲル乾燥体の製造方法。
  27. 前記工程(4)の後、ハイドロゲル乾燥体をフィルムから剥離させる工程を含むことを特徴とする請求項26のハイドロゲル乾燥体の製造方法。
  28. 前記工程(1)において、壁面鋳型内部のハイドロゲルに、支持体を導入することを特徴とする請求項25のハイドロゲル乾燥体の製造方法。
  29. 前記工程(1)において、ハイドロゲル内の自由水を1/4〜3/4程度に減じることを特徴とする請求項25のハイドロゲル乾燥体の製造方法。
  30. フィルムがパラフィルムであることを特徴とする請求項25のハイドロゲル乾燥体の製造方法。
  31. 請求項1のビトリゲル膜乾燥体が重層化し、一体化していることを特徴とする積層体。
  32. 請求項1のビトリゲル膜乾燥体はコラーゲンを原料としており、このビトリゲル膜乾燥体を再水和したビトリゲル膜を複数枚重ねて得られる積層体を用いた角膜の主に実質を構成しているコラーゲンの模倣物。
  33. 請求項1のビトリゲル膜乾燥体はコラーゲンを原料としており、このビトリゲル膜乾燥体が重層化し、一体化している積層体を再水和して得られたビトリゲル膜を用いた角膜の主に実質を構成しているコラーゲンの模倣物。
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