JPWO2012001989A1 - 回転式圧縮機 - Google Patents
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Abstract
Description
密閉容器1内には、電動機2と圧縮機構部3とがクランク軸31で連結されて収納されている。密閉容器1内の底部には油溜6を形成している。圧縮機構部3は、円筒状の内部空間を形成するシリンダ30と、シリンダ30の内部空間に配置されるピストン32と、シリンダ30の上端面を閉塞する上軸受34aの端板34と、シリンダ30の下端面を閉塞する下軸受35aの端板35と、圧縮室39内を低圧部と高圧部とに仕切るベーン33とを備えている。
圧縮室39は、シリンダ30の内部空間と、ピストン32と、端板34と、端板35とで形成される。クランク軸31は、上軸受34aと下軸受35aで支持される。クランク軸31には偏芯部31aが形成されている。偏芯部31aは、端板34と端板35との間に配置される。ピストン32は偏芯部31aに嵌合されている。ベーン33は、シリンダ30に設けられたスロット内を往復運動する。ベーン33の先端はピストン32の外周に圧接し、ベーン33はピストン32の偏心回転に追従して往復運動することで圧縮室39内を低圧部と高圧部とに仕切る。
クランク軸31の軸線部には、油穴41が設けられている。油穴41には、油溜6の油(潤滑油)が供給される。また、クランク軸31の壁部には、油穴41に連通した給油穴42、43が設けられている。給油穴42は上軸受34aに対応する壁部、給油穴43は下軸受35aに対応する壁部に形成されている。また、偏芯部31aの壁部には、油穴41に連通した給油穴(図示せず)と、油溝(図示せず)とが形成されている。
圧縮室39の低圧部(吸入室)は、ピストン32とシリンダ30との摺接部が吸入ポート40を通過した後、徐々に拡大し、吸入ポート40からガスを吸入する。一方、圧縮室39の高圧部は、ピストン32とシリンダ30との摺動部が吐出ポート38に近づき、徐々に縮小し、所定圧力以上に圧縮された時点で吐出弁36が開いて吐出ポート38からガスを流出する。吐出ポート38から流出したガスは、カップマフラ−37を経由して密閉容器1内に吐出される。
図10〜図14では、説明を簡単にするために、クランク軸31を除いた状態を示しており、ピストン32と上下の端板34、35との隙間(上下方向を誇張して表現、実際は数10μm程度)の関係を示す模式図である。
図10に示すように、ピストン32の内周面端部には、上端部と下端部で略同等の大きさの面取りが設けられている。
ピストン32の内周面の上端部と下端部との面取りを同じとした場合には、ピストン32の自重により、ピストン32は下側の端板35と摺動する。そのため、ピストン32の上側の端面と上側の端板34の間には、数10μm程度の隙間ができ、その隙間を介して、圧縮室39へ油が漏れる。
そして、ピストン32の自重に対して釣り合うような面取り差(B−A>0)を設けて上向きの力を発生させると、ピストン32は浮上する。
一般的にガス漏れは隙間の3乗に比例するため、ピストン32の上下の隙間が均等に配分された時と不均等に配分された時では後者の方がガス漏れ量としては多くなる。よって、ピストン32の上下端面の隙間を通じて吸入室へと漏れていたガスやオイルが抑制され、効率が向上する。
隙間を縮小することにより、漏れを抑制させて、効率を向上させることができる。
ただし、実際の運転中にはピストン32は不安定な挙動であるために、隙間を縮小させることにより、特に下側の端板35に鏡面磨耗、焼き付き等の問題が発生しやすくなる。
よって、図13に示すように、ピストン32の下端部の面取りを大きくして、ピストン32と下側の端板35の間の油保持面積を増加させ、油による冷却効果を高めて信頼性を向上させることが必要である。
ただし、ピストン32の下側の面取りのみ大きくすると、圧力差により上向きの力が発生するため、上側の端板34で強く摺動してしまう。
そのため、図14で示すようにピストン32の上下両方の面取りを大きくして、ピストン32に大きな上向きの力を発生させないようにする必要がある。
1つ目の課題は、図11に示すようにピストン32の自重と釣り合うように上下の面取り差を調整する時に、B−Aの値が0.1以下程度となり、生産性を考えたときに寸法管理することが非常に困難である。
2つ目の課題は、ピストン32の上下の隙間を縮小した時に、ピストン32の上下の面取りを両方とも大きくする必要があるが、特許文献1で示すようにピストン32の内面と吐出ポート38のシール長を確保しなければ、高圧ガスが吸入まで戻り効率が低下してしまうため、上側面取りをそれほど大きくすることができない。結局、上側面取りと略同等の大きさの下側面取りのみしか設定できないため、大きく信頼性を高めることができないことである。
しかし、ピストン32の上端部の面取りを大きくすると、吐出ポート38とピストン32の内面が連通してしまうため、高圧ガスが吸入まで戻り効率が低下してしまう。よって、ピストン32の内面と吐出ポート38のシール長を確保しなければならないため、上側の面取りと略同等の大きさの下側の面取りしか設定できず、大きく信頼性を高めることができない。
2 電動機
3 圧縮機構部
22 固定子
24 回転子
30 シリンダ
31 クランク軸
31a 偏芯部
32 ピストン
33 ベーン
34a 上軸受
34 端板
35a 下軸受
35 端板
36 吐出弁
37 カップマフラ−
38 吐出ポート
39 圧縮室
40 吸入ポート
41 油穴
42 給油穴
43 給油穴
44 給油穴
45 油溝
46 空間
47 空間
この構成により、ピストンの下端面ではピストン内面から圧縮室に油が流れる時の圧力降下が大きくなるため、ピストンの下内面角部による第2の面積を大きくしても、ピストンには上向きに大きな力が発生しない。よって、ピストンの上下の隙間を縮小して高効率化を図っても、下側の端板の油保持量を増加させることができ、かつ、ピストンの上内面角部と吐出ポートとの間のシール長も確保できるため、高信頼性を維持できる。
この構成により、組立て時に見た目で上下の判断ができるようになり、上下の方向の間違いによる効率低下や、ロスコストを低減できる。
この構成により、また、ピストンの自重と釣り合う力を発生させる時に、ピストンの上下が面取りの構成では、B−Aが0.1mm程度であったの対して、下側のみをザグリ形状とするとB−Aが0.4〜0.8mm程度まで公差を拡大することができ、量産性が向上する。
この構成により、ピストンが浮上しピストンの上下端面と端板間の二つの隙間も均一化される。一般的にガス漏れは隙間の3乗に比例するため、ピストン上下の隙間が均等に配分された時と不均等に配分された時では後者の方がガス漏れ量としては多くなる。そのため、ピストンの上下端面の隙間を通じて吸入室へと漏れていたガスやオイルが抑制されることから、圧縮損失の低減も可能となり、上下の隙間を縮小しなくても隙間を縮小した時と同等の効率向上効果が得られ、かつ隙間を縮小して効率向上させた時と比べて信頼性はさらに向上する。
この冷媒は、高温で分解しやすい特性を有するが、漏れ損失と摺動損失を低減することにより、冷媒の高温分解を抑制しつつより効果的に圧縮機の信頼性を向上させることが可能となる。また、この冷媒に関しては、オゾン破壊が無く、地球温暖化係数が低いため、地球に優しい空調サイクルの構成に寄与することが可能となる。
図1は本発明の実施の形態1における回転式圧縮機の縦断面図、図2は同圧縮機構部の拡大図面である。なお、図15を用いて説明した構成部材については同一符号を付して説明を省略する。
クランク軸31の偏芯部31aの壁部には、油穴41に連通した給油穴44と、油溝45とが形成されている。
一方、クランク軸31の偏芯部31a、上軸受34aの端板34、及びピストン32の内周面によってピストン内上部空間46が形成され、クランク軸31の偏芯部31a、下軸受35aの端板35、及びピストン32の内周面によってピストン内下部空間47が形成される。ピストン内上部空間46には給油穴42から油穴41内の油が漏れ込み、ピストン内下部空間47には給油穴43から油穴41内の油が漏れ込む。ピストン内上部空間46及びピストン内下部空間47は、ほぼ常に圧縮室39内部の圧力より高い状態にある。
また、シリンダ30の高さはピストン32が内部で摺動できるようにこのピストン32の高さよりやや大きめに設定しなければならず、その結果として、このピストン32の端面と上軸受34aの端板34との間、及びピストン32の端面と下軸受35aの端板35との間に隙間が生じる。そのため、この隙間を介してピストン内上部空間46及びピストン内下部空間47から圧縮室39へ油が漏れる。
図3に示すように、本実施の形態1は、ピストン32の下端面に形成する下内面角部と端板35で囲まれる第2の面積32bを、ピストン32の上端面に形成する上内面角部と端板34で囲まれる第1の面積32aより大きくする。
また、本実施の形態1は、ピストン32の下端面と下内面角部の角度Dを、ピストン32の上端面と上内面角部の角度Cより小さくする。
本実施の形態1は、上記のように構成することで高効率化と高信頼性を向上させている。
図4に示すように、ピストン32の上側では、内面側は高圧が均等に分布し、端面側は高圧から中間圧まで直線状に分布する。
一方、ピストン32の下側では、内面側は高圧が均等に分布するが、端面側は中高圧(高圧よりも低い圧力)から中間圧まで直線状に分布する。すなわち、ピストン32の下側ではピストン32の下端面と下内面角部との角度Dが、角度Cに比較して小さいため、油の流れが悪くなり、圧力降下が生じる。よって、図5に示すように、ピストン32の下側のBの幅を大きくしても、それほど大きな力が上向きに発生しない。
従って、下側の端板35でのオイル保持量が増加し、かつ、ピストン32と吐出ポート38のシール長Lも確保できるため、高信頼性と高効率化を実現できる。さらに、ピストン32の自重と釣り合うようにAとBを設定することにより、図6に示すように、ピストン32が浮上し上下の隙間を縮小しなくても上下の隙間を縮小した時と同等の効果が得られる。
(実施の形態2)
図7に示すように、本発明の実施の形態2は、ピストン32の下端面に形成する下内面角部と端板35で囲まれる第2の面積32bを、ピストン32の上端面に形成する上内面角部と端板34で囲まれる第1の面積32aより大きくする。
また、本実施の形態2は、ピストン32の下端面と下内面角部との角度Dを、ピストン32の上端面と上内面角部との角度Cより小さくする。
本実施の形態では、ピストン32の上端面と上内面とを面取りによって上内面角部を形成し、ピストン32の下端面と下内面とをザグリによって下内面角部を形成する。
ピストン32の上端面と上内面角部との角度Cは、132度〜138度の範囲が好ましく、135度とすることが更に好ましい。
ピストン32の下内面角部をザグリとすることで、ピストン32の下端面と下内面角部との角度Dは90度となる。
本実施の形態では、上内面角部を面取りによって形成し、下内面角部をザグリによって形成することにより、組立て時に見た目で上下の判断ができ、ピストン32の上下の間違いによる効率低下や、ロスコストを低減できる。また、ピストン32の自重と釣り合う力を発生させる時に、ピストン32の上下が面取りの構成ではB−Aが0.1mm程度であったの対して、下側のみをザグリ形状とするとB−Aが0.4〜0.8mm程度まで公差範囲を拡大することができ、量産性が向上する。
図8に示す回転式圧縮機は、ピストン132の外周部に突出状に結合されて圧縮室39を低圧側と高圧側とに区画するベーン133と、ベーン133を揺動自在に且つ進退自在に支持する揺動ブッシュ130で構成されている。
図8に示す回転式圧縮機においても、実施の形態1及び実施の形態2の構成を適用することができ、同等の効果が得られる。
図9に示す回転式圧縮機は、ピストン232と先端部で揺動自由に接続されるベーン233で構成されている。
図9に示す回転式圧縮機においても、実施の形態1及び実施の形態2の構成を適用することができ、同等の効果が得られる。
また、ハイドロフルオロオレフィンをテトラフルオロプロペン(HFO1234yfまたはHFO1234ze)またはトリフルオロプロペン(HFO1243zf)とし、ハイドロフルオロカーボンをペンタフルオロエタン(HFC125)とした、混合冷媒を作動冷媒としてもよい。
また、ハイドロフルオロオレフィンをテトラフルオロプロペン(HFO1234yfまたはHFO1234ze)またはトリフルオロプロペン(HFO1243zf)とし、ハイドロフルオロカーボンをペンタフルオロエタン(HFC125)、ジフルオロメタン(HFC32)とした、3成分からなる混合冷媒を作動冷媒としてもよい。
Claims (6)
- シリンダと、前記シリンダ内に配置されるシャフトの偏心部と、前記偏心部に嵌合されるピストンと、前記ピストンの偏心回転に追従して前記シリンダに設けられたスロット内を往復運動するベーンと、前記シリンダの上下端面を閉塞する2つ端板を有する回転式圧縮機であって、前記ピストンの下端面に形成する下内面角部と、前記シリンダの前記下端面を閉塞する前記端板とで囲まれる第2の面積を、前記ピストンの上端面に形成する上内面角部と、前記シリンダの前記上端面を閉塞する前記端板とで囲まれる第1の面積より大きくし、かつ、前記ピストンの前記下端面と前記下内面角部との角度を、前記ピストンの前記上端面と前記上内面角部との角度より小さくしたことを特徴とする回転式圧縮機。
- 前記上内面角部を面取りによって形成し、前記下内面角部をザグリによって形成することを特徴とする請求項1に記載の回転式圧縮機。
- 前記ピストンの前記上端面と前記上内面角部との角度を132度〜138度の範囲としたことを特徴とする請求項2に記載の回転式圧縮機。
- 前記第1の面積と前記第2の面積とを、前記ピストンの自重に釣り合うように設定したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の回転式圧縮機。
- 作動流体として、高圧冷媒であるCO2を用いたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の回転式圧縮機。
- 作動流体として、炭素と炭素間に2重結合を有するハイドロフルオロオレフィンをベース成分とした冷媒からなる単一冷媒または前記冷媒を含む混合冷媒を使用したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の回転式圧縮機。
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