本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例は、車両に搭載された端末装置間において車車間通信を実行するとともに、交差点等に設置された基地局装置から端末装置へ路車間通信も実行する通信システムに関する。車車間通信として、端末装置は、車両の速度や位置等の情報(以下、これらを「データ」という)を格納したパケット信号をブロードキャスト送信する。また、他の端末装置は、パケット信号を受信するとともに、データをもとに車両の接近等を認識する。また、路車間通信として、基地局装置は、複数のサブフレームが含まれたフレームを繰り返し規定する。基地局装置は、複数のサブフレームのいずれかを選択し、選択したサブフレームの先頭部分の期間において、制御情報等が格納されたパケット信号をブロードキャスト送信する。
制御情報には、当該基地局装置がパケット信号をブローキャスト送信するための期間(以下、「路車送信期間」という)に関する情報が含まれている。端末装置は、制御情報をもとに路車送信期間を特定し、路車送信期間以外の期間においてパケット信号を送信する。このように、路車間通信と車車間通信とが時間分割多重されるので、両者間のパケット信号の衝突確率が低減される。つまり、端末装置が制御情報の内容を認識することによって、路車間通信と車車間通信との干渉が低減される。また、車車間通信を実行している端末装置が存在するエリアは、主として3種類に分類される。
ひとつは、基地局装置の周囲に形成されるエリア(以下、「第1エリア」という)であり、もうひとつは、第1エリアの外側に形成されるエリア(以下、「第2エリア」という)であり、さらに別のひとつは、第2エリアの外側に形成されるエリア(以下、「第2エリア外」という)である。ここで、第1エリアと第2エリアでは、基地局装置からのパケット信号をある程度の品質で端末装置が受信可能であるのに対して、第2エリア外では、基地局装置からのパケット信号をある程度の品質で端末装置が受信できない。また、第1エリアは、第2エリアよりも、交差点の中心に近くなるように形成されている。第1エリアに存在する車両は、交差点の近くに存在している車両であるので、当該車両に搭載された端末装置からのパケット信号は、衝突事故の抑制の点から重要な情報といえる。
このようなエリアの規定に対応して、車車間通信のための期間(以下、「車車送信期間」という)は、優先期間、一般期間の時間分割多重によって形成されている。優先期間は、第1エリアに存在する端末装置が使用するための期間であり、優先期間を形成している複数のスロットのうちのいずれかにおいて、端末装置はパケット信号を送信する。また、一般期間は、第2エリアに存在する端末装置が使用するための期間であり、端末装置は、一般期間においてCSMA方式にてパケット信号を送信する。なお、第2エリア外に存在する端末装置は、フレームの構成に関係なくCSMA方式にてパケット信号を送信する。ここで、車両に搭載された端末装置が、どのエリアに存在するかを判定する。
ここで、端末装置からブロードキャスト送信されるパケット信号に、当該端末装置を識別するための識別番号が含まれている。このような識別番号によって、特定の端末装置が搭載された車両の接近が検知される。しかしながら、特定の端末装置が搭載された車両を追跡するように、情報の悪用の危険性がある。これに対応するため、本実施例に係る端末装置は、通常的にパケット信号を報知するモード(以下、「第1モード」という)において、当該端末装置固有に付与された識別番号をパケット信号に含め、所定の送信電力(以下、「第1の送信電力」という)にてパケット信号を報知する。
一方、端末装置は、他の端末装置からのパケット信号を受信する。端末装置は、各パケット信号に含まれた識別番号を確認し、同一の識別番号が所定期間においてしきい値以上出現した場合に、当該識別番号の他の端末装置を搭載した車両に追跡されていると推定する。推定後、端末装置は、追跡がなされているときにパケット信号を報知するモード(以下、「第2モード」という)へ第1モードから変更される。第2モードにおいて、端末装置は、通信システムに共通に付与された識別番号をパケット信号に含め、第1の送信電力よりも低い送信電力(以下、「第2の送信電力」という)にてパケット信号を報知する。
図1は、本発明の実施例に係る通信システム100の構成を示す。これは、ひとつの交差点を上方から見た場合に相当する。通信システム100は、基地局装置10、車両12と総称される第1車両12a、第2車両12b、第3車両12c、第4車両12d、第5車両12e、第6車両12f、第7車両12g、第8車両12h、ネットワーク202を含む。なお、各車両12には、図示しない端末装置が搭載されている。また、第1エリア210は、基地局装置10の周囲に形成され、第2エリア212は、第1エリア210の外側に形成され、第2エリア外214は、第2エリア212の外側に形成されている。
図示のごとく、図面の水平方向、つまり左右の方向に向かう道路と、図面の垂直方向、つまり上下の方向に向かう道路とが中心部分で交差している。ここで、図面の上側が方角の「北」に相当し、左側が方角の「西」に相当し、下側が方角の「南」に相当し、右側が方角の「東」に相当する。また、ふたつの道路の交差部分が「交差点」である。第1車両12a、第2車両12bが、左から右へ向かって進んでおり、第3車両12c、第4車両12dが、右から左へ向かって進んでいる。また、第5車両12e、第6車両12fが、上から下へ向かって進んでおり、第7車両12g、第8車両12hが、下から上へ向かって進んでいる。
通信システム100は、交差点に基地局装置10を配置する。基地局装置10は、端末装置間の通信を制御する。基地局装置10は、図示しないGPS衛星から受信した信号や、図示しない他の基地局装置10にて形成されたフレームをもとに、複数のサブフレームが含まれたフレームを繰り返し生成する。ここで、各サブフレームの先頭部分に路車送信期間が設定可能であるような規定がなされている。基地局装置10は、複数のサブフレームのうち、他の基地局装置10によって路車送信期間が設定されていないサブフレームを選択する。基地局装置10は、選択したサブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。基地局装置10は、路車送信期間に関する情報等が含まれた制御情報をパケット信号に格納する。また、基地局装置10は、所定のデータもパケット信号に格納する。基地局装置10は、設定した路車送信期間においてパケット信号を報知する。
パケット信号に含まれるべきデータとして、複数種類のデータが想定される。ひとつが、渋滞情報や工事情報等のデータであり、別のひとつが、優先期間に含まれた各スロットに関するデータである。後者には、いずれの端末装置にも使用されていないスロット(以下、「空きスロット」という)、ひとつの端末装置に使用されたスロット(以下、「使用スロット」という)、複数の端末装置に使用されているスロット(以下、「衝突スロット」という)が含まれる。渋滞情報や工事情報等のデータが含まれたパケット信号(以下、「RSUパケット信号」という)と、各スロットに関するデータが含まれたパケット信号(以下、「制御パケット信号」という)とは、別々に生成される。RSUパケット信号と制御パケット信号とは、「パケット信号」と総称される。
端末装置が、基地局装置10からのパケット信号を受信したときの受信状況に応じて、通信システム100の周囲に第1エリア210および第2エリア212が形成される。図示のごとく、基地局装置10の近くに、受信状況が比較的よい領域として、第1エリア210が形成される。第1エリア210は、交差点の中心部分の近くに形成されるともいえる。一方、第1エリア210の外側に、受信状況が第1エリア210よりも悪化している領域として、第2エリア212が形成される。さらに、第2エリア212の外側に、受信状況が第2エリア212よりもさらに悪化している領域として、第2エリア外214が形成されている。なお、受信状況として、パケット信号の誤り率、受信電力が使用される。
基地局装置10からのパケット信号には、2種類の制御情報が含まれており、ひとつは、設定された路車送信期間に関する情報(以下、「基本部分」という)であり、もうひとつは、設定された優先期間に関する情報(以下、「拡張部分」という)である。端末装置は、受信したパケット信号に含まれた基本部分をもとに、フレームを生成する。その結果、複数の端末装置のそれぞれにおいて生成されるフレームは、基地局装置10において生成されるフレームに同期する。また、端末装置は、基地局装置10によって報知されたパケット信号を受信し、受信したパケット信号の受信状況と拡張部分とをもとに、第1エリア210、第2エリア212、第2エリア外214のいずれに存在するかを推定する。端末装置は、第1エリア210に存在する場合に、優先期間に含まれたいずれかのスロットにてパケット信号を報知し、第2エリア212に存在する場合に、一般期間においてキャリアセンスにてパケット信号を報知する。そのため、優先期間においてTDMAが実行され、一般期間においてCSMA/CAが実行される。
なお、端末装置は、次のフレームにおいても、相対的なタイミングが同一のサブフレームを選択する。特に、端末装置は、次のフレームの優先期間において、相対的なタイミングが同一のスロットを選択する。ここで、端末装置は、データを取得し、データをパケット信号に格納する。データには、例えば、存在位置に関する情報が含まれる。また、端末装置は、制御情報もパケット信号に格納する。つまり、基地局装置10から送信された制御情報は、端末装置によって転送される。一方、第2エリア外214に存在していると推定した場合、端末装置は、フレームの構成に関係なく、CSMA/CAを実行することによって、パケット信号を報知する。
図2は、基地局装置10の構成を示す。基地局装置10は、アンテナ20、RF部22、変復調部24、処理部26、制御部30、ネットワーク通信部80を含む。RF部22は、受信処理として、図示しない端末装置や他の基地局装置10からのパケット信号をアンテナ20にて受信する。RF部22は、受信した無線周波数のパケット信号に対して周波数変換を実行し、ベースバンドのパケット信号を生成する。さらに、RF部22は、ベースバンドのパケット信号を変復調部24に出力する。一般的に、ベースバンドのパケット信号は、同相成分と直交成分によって形成されるので、ふたつの信号線が示されるべきであるが、ここでは、図を明瞭にするためにひとつの信号線だけを示すものとする。RF部22には、LNA(Low Noise Amplifier)、ミキサ、AGC、A/D変換部も含まれる。
RF部22は、送信処理として、変復調部24から入力したベースバンドのパケット信号に対して周波数変換を実行し、無線周波数のパケット信号を生成する。さらに、RF部22は、路車送信期間において、無線周波数のパケット信号をアンテナ20から送信する。また、RF部22には、PA(Power Amplifier)、ミキサ、D/A変換部も含まれる。
変復調部24は、受信処理として、RF部22からのベースバンドのパケット信号に対して、復調を実行する。さらに、変復調部24は、復調した結果を処理部26に出力する。また、変復調部24は、送信処理として、処理部26からのデータに対して、変調を実行する。さらに、変復調部24は、変調した結果をベースバンドのパケット信号としてRF部22に出力する。ここで、通信システム100は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式に対応するので、変復調部24は、受信処理としてFFT(Fast Fourier Transform)も実行し、送信処理としてIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)も実行する。
処理部26は、図示しないGPS衛星からの信号を受信し、受信した信号をもとに時刻の情報を取得する。なお、時刻の情報の取得には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。処理部26は、時刻の情報をもとに、複数のフレームを生成する。例えば、処理部26は、時刻の情報にて示されたタイミングを基準にして、「1sec」の期間を10分割することによって、「100msec」のフレームを10個生成する。このような処理を繰り返すことによって、フレームが繰り返されるように規定される。なお、処理部26は、復調結果から制御情報を検出し、検出した制御情報をもとにフレームを生成してもよい。このような処理は、他の基地局装置10によって形成されたフレームのタイミングに同期したフレームを生成することに相当する。図3(a)−(d)は、通信システム100において規定されるフレームのフォーマットを示す。図3(a)は、フレームの構成を示す。フレームは、第1サブフレームから第Nサブフレームと示されるN個のサブフレームによって形成されている。例えば、フレームの長さが100msecであり、Nが8である場合、12.5msecの長さのサブフレームが規定される。図3(b)−(d)の説明は、後述し、図2に戻る。
処理部26は、フレームに含まれた複数のサブフレームのうち、路車送信期間を設定すべきサブフレームを選択する。具体的に説明すると、処理部26は、処理部26にて規定されたフレームを受けつける。処理部26は、RF部22、変復調部24を介して、図示しない他の基地局装置10あるいは端末装置からの復調結果を入力する。処理部26は、入力した復調結果のうち、他の基地局装置10からの復調結果を抽出する。抽出方法は後述する。処理部26は、復調結果を受けつけたサブフレームを特定することによって、復調結果を受けつけていないサブフレームを特定する。これは、他の基地局装置10によって路車送信期間が設定されていないサブフレーム、つまり未使用のサブフレームを特定することに相当する。未使用のサブフレームが複数存在する場合、処理部26は、ランダムにひとつのサブフレームを選択する。未使用のサブフレームが存在しない場合、つまり複数のサブフレームのそれぞれが使用されている場合に、処理部26は、復調結果に対応した受信電力を取得し、受信電力の小さいサブフレームを優先的に選択する。
図3(b)は、第1基地局装置10aによって生成されるフレームの構成を示す。第1基地局装置10aは、第1サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第1基地局装置10aは、第1サブフレームにおいて路車送信期間につづいて車車送信期間を設定する。車車送信期間とは、端末装置がパケット信号を報知可能な期間である。つまり、第1サブフレームの先頭期間である路車送信期間において第1基地局装置10aはパケット信号を報知可能であり、かつフレームのうち、路車送信期間以外の車車送信期間において端末装置がパケット信号を報知可能であるような規定がなされる。さらに、第1基地局装置10aは、第2サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間のみを設定する。
図3(c)は、第2基地局装置10bによって生成されるフレームの構成を示す。第2基地局装置10bは、第2サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第2基地局装置10bは、第2サブフレームにおける路車送信期間の後段、第1サブフレーム、第3サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間を設定する。図3(d)は、第3基地局装置10cによって生成されるフレームの構成を示す。第3基地局装置10cは、第3サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第3基地局装置10cは、第3サブフレームにおける路車送信期間の後段、第1サブフレーム、第2サブフレーム、第4サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間を設定する。このように、複数の基地局装置10は、互いに異なったサブフレームを選択し、選択したサブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。図2に戻る。
処理部26は、優先期間に含まれた複数のスロットのそれぞれが、未使用であるか、使用中であるか、衝突が発生しているかを特定する。処理部26の処理を説明する前に、ここでは、サブフレームの構成を説明する。図4(a)−(b)は、サブフレームの構成を示す。図示のごとく、ひとつのサブフレームは、路車送信期間、優先期間、一般期間の順に構成される。路車送信期間では、基地局装置10がパケット信号を報知し、優先期間は、複数のスロットの時間分割多重にて形成され、かつ各スロットにて端末装置14がパケット信号を報知可能であり、一般期間は、所定の長さを有し、かつ端末装置14がパケット信号を報知可能である。優先期間および一般期間が図3(b)等の車車送信期間に相当する。なお、サブフレームに路車送信期間が含まれない場合、サブフレームは、優先期間、一般期間の順に構成される。その際、路車送信期間も優先期間になっている。図4(b)については後述する。図3に戻る。
処理部26は、各スロットに対する受信電力を測定するとともに、各スロットに対する誤り率も測定する。誤り率の一例はBER(Bit Error Rate)である。受信電力が受信電力用しきい値よりも低ければ、処理部26は、当該スロットが未使用である(以下、このようなスロットを「空きスロット」という)と判定する。一方、受信電力が受信電力用しきい値以上であり、かつ誤り率が誤り率用しきい値よりも低ければ、処理部26は、当該スロットが使用中である(以下、このようなスロットを「使用スロット」という)と判定する。受信電力が受信電力用しきい値以上であり、かつ誤り率が誤り率用しきい値以上であれば、処理部26は、当該スロットにて衝突が発生している(以下、このようなスロットを「衝突スロット」という)と判定する。処理部26は、このような処理をすべてのスロットに対して実行する。
処理部26は、受けつけたサブフレーム番号のサブフレームに路車送信期間を設定し、路車送信期間において報知すべき制御パケット信号とRSUパケット信号とを生成する。図4(b)は、路車送信期間におけるパケット信号の配置を示す。図示のごとく、路車送信期間において、ひとつの制御パケット信号と複数のRSUパケット信号が並べられている。ここで、前後のパケット信号は、SIFS(Short Interframe Space)だけ離れている。図2に戻る。
ここでは、制御パケット信号とRSUパケット信号の構成を説明する。図5(a)−(b)は、通信システム100において規定されるパケット信号に格納されるMACフレームのフォーマットを示す。図5(a)は、MACフレームのフォーマットを示す。MACフレームは、先頭から順に、「MACヘッダ」、「LLCヘッダ」、「メッセージヘッダ」、「データペイロード」、「FCS」を配置する。データペイロードに検出結果が含まれる場合、当該MACフレームを格納したパケット信号が、制御パケット信号に相当する。また、処理部26は、ネットワーク通信部80から、渋滞情報や工事情報等のデータを受けつけた場合、それらをデータペイロードに含める。そのようなMACフレームを格納したパケット信号が、RSUパケット信号に相当する。ここで、ネットワーク通信部80は、図示しないネットワーク202に接続される。また、優先期間および一般期間において報知されるパケット信号も、図5(a)に示されたMACフレームを格納する。
図5(b)は、処理部26によって生成されるメッセージヘッダの構成を示す図である。メッセージヘッダには、基本部分と拡張部分とが含まれている。前述のごとく、制御パケット信号とRSUパケット信号との構成は同一なので、これらには、基本部分と拡張部分とが含まれている。基本部分は、「プロトコルバージョン」、「送信ノード種別」、「再利用回数」、「TSFタイマ」、「RSU送信期間長」を含み、拡張部分は、「車車スロットサイズ」、「優先一般比率」、「優先一般しきい値」を含む。
プロトコルバージョンは、対応しているプロトコルのバージョンを示す。送信ノード種別は、MACフレームが含まれたパケット信号の送信元を示す。例えば、「0」は端末装置を示し、「1」は基地局装置10を示す。処理部26が、入力した復調結果のうち、他の基地局装置10からの復調結果を抽出する場合に、処理部26は、送信ノード種別の値を利用する。再利用回数は、メッセージヘッダが端末装置によって転送される場合の有効性の指標を示し、TSFタイマは、送信時刻を示す。RSU送信期間長は、路車送信期間の長さを示しており、路車送信期間に関する情報といえる。
車車スロットサイズは、優先期間に含まれるスロットのサイズを示し、優先一般比率は、優先期間と一般期間との比率を示し、優先一般しきい値は、優先期間の使用あるいは一般期間の使用を端末装置14に選択させるためのしきい値であって、かつ受信電力に対するしきい値である。このように拡張部分は、優先期間と一般期間とに関する情報に相当する。図2に戻る。
処理部26は、変復調部24、RF部22に対して、路車送信期間においてパケット信号をブロードキャスト送信させる。つまり、処理部26は、基本部分と拡張部分とが含まれた制御パケット信号とRSUパケット信号を基地局報知期間にて報知する。制御部30は、基地局装置10全体の処理を制御する。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
図6は、車両12に搭載された端末装置14の構成を示す。端末装置14は、アンテナ50、RF部52、変復調部54、処理部56、制御部58、モード設定部110、取得部114、記憶部116、検出部118を含む。処理部56は、生成部64、タイミング特定部60、転送決定部90、通知部70を含む。また、タイミング特定部60は、抽出部66、選択部92、キャリアセンス部94を含む。アンテナ50、RF部52、変復調部54は、図2のアンテナ20、RF部22、変復調部24と同様の処理を実行する。そのため、ここでは、差異を中心に説明する。
変復調部54、処理部56は、図示しない他の端末装置14や基地局装置10からのパケット信号を受信する。なお、前述のごとく、変復調部54、処理部56は、路車送信期間において、基地局装置10からのパケット信号を受信する。前述のごとく、変復調部54、処理部56は、優先期間と一般期間とにおいて他の端末装置14からのパケット信号を受信する。
抽出部66は、変復調部54からの復調結果が、図示しない基地局装置10からのパケット信号である場合に、路車送信期間が配置されたサブフレームのタイミングを特定する。また、抽出部66は、サブフレームのタイミングと、パケット信号のメッセージヘッダにおける基本部分の内容、具体的には、RSU送信期間長の内容をもとに、フレームを生成する。なお、フレームの生成は、前述の処理部26と同様になされればよいので、ここでは説明を省略する。その結果、抽出部66は、基地局装置10において形成されたフレームに同期したフレームを生成する。
抽出部66は、基地局装置10からのパケット信号の受信電力を測定する。抽出部66は、測定した受信電力をもとに、第1エリア210に存在しているか、第2エリア212に存在しているか、第2エリア外214に存在しているかを推定する。例えば、抽出部66は、エリア判定用しきい値を記憶する。エリア判定用しきい値は、前述の優先一般しきい値に相当する。受信電力がエリア判定用しきい値よりも大きければ、抽出部66は、第1エリア210に存在していると決定する。受信電力がエリア判定用しきい値以下であれば、抽出部66は、第2エリア212に存在していると決定する。基地局装置10からのパケット信号を受信していない場合、抽出部66は、第2エリア212外に存在すると決定する。なお、抽出部66は、受信電力の代わりに、誤り率を使用してもよく、受信電力と誤り率との組合せを使用してもよい。
抽出部66は、推定結果をもとに、現在存在しているエリアが優先エリアであるか、あるいは一般エリアであるかを決定する。抽出部66は、第1エリア210に存在していれば優先エリアを選択し、第2エリア212に存在していれば一般エリアを選択する。さらに、抽出部66は、第2エリア外214に存在していることを推定すると、フレームの構成と無関係のタイミングを選択する。抽出部66は、一般エリアを選択した場合、一般期間を選択する。抽出部66は、優先エリアを選択した場合、優先期間を選択する。抽出部66は、優先期間を選択した場合、制御パケット信号のデータペイロードに含まれた検出結果を選択部92へ出力する。抽出部66は、一般期間を選択した場合、フレームおよびサブフレームのタイミング、車車送信期間に関する情報をキャリアセンス部94へ出力する。抽出部66は、フレームの構成と無関係のタイミングを選択すると、キャリアセンスの実行をキャリアセンス部94に指示する。
選択部92は、抽出部66から、検出結果を受けつける。前述のごとく、検出結果は、優先期間に含まれた複数のスロットのそれぞれに対して、空きスロット、使用スロット、衝突スロットのいずれかであるかを示している。選択部92は、空きスロットのうちのいずれかを選択する。既にスロットを選択している場合、選択部92は、当該スロットが使用スロットであれば、同一のスロットを継続して選択する。一方、既にスロットを選択している場合、選択部92は、当該スロットが衝突スロットであれば、空きスロットを新たに選択する。選択部92は、選択したスロットに関する情報を送信タイミングとして生成部64へ通知する。
キャリアセンス部94は、抽出部66から、フレームおよびサブフレームのタイミング、車車送信期間に関する情報を受けつける。キャリアセンス部94は、一般期間において、キャリアセンスを実行することによって、干渉電力を測定する。また、キャリアセンス部94は、干渉電力をもとに、一般期間における送信タイミングを決定する。具体的に説明すると、キャリアセンス部94は、所定のしきい値を予め記憶しており、干渉電力としきい値とを比較する。干渉電力がしきい値よりも小さければ、キャリアセンス部94は、送信タイミングを決定する。キャリアセンス部94は、抽出部66から、キャリアセンスの実行を指示された場合、フレームの構成を考慮せずに、CSMAを実行することによって、送信タイミングを決定する。キャリアセンス部94は、決定した送信タイミングを生成部64へ通知する。
転送決定部90は、メッセージヘッダの転送を制御する。転送決定部90は、パケット信号からメッセージヘッダを抽出する。パケット信号が基地局装置10から直接送信されている場合には、再利用回数が「0」に設定されているが、パケット信号が他の端末装置14から送信されている場合には、再利用回数が「1以上」の値に設定されている。転送決定部90は、抽出したメッセージヘッダから、転送すべきメッセージヘッダを選択する。ここでは、例えば、再利用回数が最も小さいメッセージヘッダが選択される。また、転送決定部90は、複数のメッセージヘッダに含まれた内容を合成することによって新たなメッセージヘッダを生成してもよい。転送決定部90は、選択対象のメッセージヘッダを生成部64へ出力する。その際、転送決定部90は、再利用回数を「1」増加させる。
生成部64は、図示しないGPS受信機、ジャイロスコープ、車速センサ等を含んでおり、それらから供給されるデータによって、図示しない車両12、つまり端末装置14が搭載された車両12の存在位置、進行方向、移動速度等(以下、「位置情報」と総称する)を取得する。なお、存在位置は、緯度・経度によって示される。これらの取得には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。生成部64は、転送決定部90からメッセージヘッダを受けつける。生成部64は、図5(a)−(b)に示されたMACフレームを使用し、位置情報をデータペイロードに格納する。生成部64は、MACフレームが含まれたパケット信号を生成するとともに、選択部92またはキャリアセンス部94において決定した送信タイミングにて、変復調部54、RF部52、アンテナ50を介して、生成したパケット信号をブロードキャスト送信する。なお、送信タイミングは、車車送信期間に含まれている。
検出部118は、処理部56から、抽出部66において抽出したパケット信号に含まれた識別番号を順次受けつける。識別番号は、パケット信号の報知元になる他の端末装置14に対して固有に付与されている。検出部118は、新たに受けつけた識別番号を記憶部116に記憶させるとともに、各識別番号の受付状況を監視する。検出部118は、所定の期間において、同一の識別番号をしきい値以上受信していることを検出した場合、モード設定部110へ切替指示を出力する。例えば、所定の期間は、10分間に設定され、しきい値が10000回に設定される。つまり、検出部118は、ある程度の期間にわたって、同一の識別番号が含まれたパケット信号を継続的に複数回数受信していることを検出する。
また、切替指示を出力するための処理は、次のようになされてもよい。検出部118は、識別番号を受けつけると、当該識別番号に対するカウンタを「1」増加させる。検出部118は、カウンタ値に乗算することによって近接時間を導出する。近接時間がしきい値以上になると、検出部118は、モード設定部110へ切替指示を出力する。さらに、切替指示を出力するとともに、記憶部116は、抽出部66において抽出したパケット信号に含まれた識別番号をログとして記憶する。
モード設定部110は、RF部52および処理部56の報知モードとして、第1モードあるいは第2モードを選択する。モード設定部110は、通常の場合、第1モードを選択する。モード設定部110は、検出部118からの切替指示を受けつけると、第1モードの代わりに第2モードを選択する。つまり、検出部118は、ある程度の期間にわたって、同一の識別番号が含まれたパケット信号を継続的に複数回数受信している場合、第1モードから第2モードへの切替がなされる。第2モードを選択してから所定の期間を経過すると、モード設定部110は、第1モードを再び選択してもよい。
モード設定部110が第1モードを選択している場合、生成部64は、本端末装置14に対して固有に付与された識別番号をパケット信号に含める。本端末装置14に対して固有に付与された識別番号とは、本端末装置14に対して一意的に付与された識別番号に相当する。また、RF部52は、第1の送信電力を設定して、パケット信号を増幅する。RF部52は、増幅したパケット信号をブロードキャスト送信する。一方、モード設定部110が第2モードを選択している場合、生成部64は、端末間通信の通信システム100において共通に付与された識別番号をパケット信号に含める。具体的に説明すると、通信システム100では、複数の識別番号が予約されており、生成部64は、これらを記憶する。生成部64は、複数の識別番号のうち、ひとつを選択する。ここで、選択はランダムになされればよい。なお、端末間通信の通信システム100において共通に付与された識別番号でなくても、固有に付与された識別番号とは異なった識別番号であってもよい。また、RF部52は、第1の送信電力よりも低い第2の送信電力を設定して、パケット信号を増幅する。RF部52は、増幅したパケット信号をブロードキャスト送信する。
取得部114は、位置情報を取得する。なお、取得部114は、前述の生成部64と同様の処理がなされればよいので、取得部114は、生成部64と共通化されてもよい。記憶部116は、所定のエリアに関する情報を記憶する。所定のエリアは、円形を有しており、円形の中心の緯度と経度が記憶部116に記憶されていればよい。なお、円形の半径は予め定められているものとする。例えば、ひとつのエリアは、ひとつの交差点を含むように形成されており、前述の第1エリア210や第2エリア212と同等であってもよい。また、記憶部116は、複数のエリアに関する緯度と経度とを記憶する。
モード設定部110は、取得部114から位置情報を受けつけ、記憶部116を参照しながら、取得部114において取得した位置情報が記憶部116において記憶したエリアに含まれているかを確認する。含まれていれば、モード設定部110は、第2モードを選択している場合であっても、RF部52に対して、第2の送信電力よりも高い第3の送信電力を設定する。ここで、第3の送信電力は第1の送信電力よりも低い。なお、第3の送信電力は第1の送信電力と同等であってもよい。このような処理は、第2モードによって送信電力が抑制されていても、交差点近傍では、送信電力が増加されることに相当する。なお、モード設定部110が第1モードを選択していれば、前述の処理はなされない。
検出部118は、本端末装置14の起動を検出する。起動とは、車両12のエンジンがかけられることによって、端末装置14の動作が開始されることである。検出部118が起動を検出した場合、モード設定部110は、既に選択していた報知モードにかかわらず、第1モードを選択する。
通知部70は、路車送信期間において、図示しない基地局装置10からのパケット信号を取得するとともに、車車送信期間において、図示しない他の端末装置14からのパケット信号を取得する。通知部70は、取得したパケット信号に対する処理として、パケット信号に格納されたデータの内容に応じて、図示しない他の車両12の接近等を運転者へモニタやスピーカを介して通知する。また、通知部70は、検出部118が、同一の識別番号が含まれたパケット信号を所定の期間において複数回数受信したことを通知する。なお、通知部70は、モード設定部110が第2モードを選択している期間にわたって、上記の通知を継続してもよい。その際、通知は、モニタへの表示によってなされる。これは、他の車両12によって追跡されているおそれを運転者へ示唆することに相当する。制御部58は、端末装置14全体の動作を制御する。
以上の構成による通信システム100の動作を説明する。図7は、端末装置14における検出手順を示すフローチャートである。抽出部66は、識別番号を抽出する(S80)。すでに当該識別番号を記憶していなければ(S82のN)、記憶部116は、識別番号を記憶する(S84)。すでに当該識別番号を記憶していれば(S82のY)、検出部118は、識別番号に対するカウンタ値に「1」を加えた後、単位時間を乗算することによって近接時間を導出する(S86)。近接時間がしきい値以上であれば(S88のY)、記憶部116は、ログを記憶する(S90)。近接時間がしきい値以上でなければ(S88のN)、処理は終了される。
図8は、端末装置14における通信状態の認定手順を示すフローチャートである。検出部118からの変更指示を受けつけなければ(S10のN)、モード設定部110は、第1モードを選択する(S12)。生成部64は、固有の識別番号を使用し(S14)、RF部52は、第1の送信電力を使用する(S16)。検出部118からの変更指示を受けつければ(S10のY)、モード設定部110は、第2モードを選択する(S18)。生成部64は、共通の識別番号を使用し(S20)、RF部52は、第2の送信電力を使用する(S22)。
図9は、端末装置14における通信状態の認定手順を示す別のフローチャートである。モード設定部110が第2モードを選択している場合(S40のY)、取得部114は、位置情報を取得する(S42)。記憶部116に記憶されたエリア内に存在していれば(S44のY)、RF部52は、第3の送信電力を使用する(S46)。記憶部116に記憶されたエリア内に存在していなければ(S44のN)、RF部52は、第2の送信電力を使用する(S48)。モード設定部110が第2モードを選択していない場合(S40のN)、ステップ42からステップ48は、スキップされる。
図10は、端末装置14における通信状態の認定手順を示すさらに別のフローチャートである。検出部118が起動を検出すれば(S60のY)、モード設定部110は、第1モードを使用する(S62)。検出部118が起動を検出しなければ(S60のN)、ステップ62はスキップされる。
次に変形例を説明する。本発明の変形例では、運転手が、車両が追跡されていることを認識した場合に、運転手は、ボタンを押下する。ボタンの押下によって、端末装置は、追跡がなされているときにパケット信号を報知するモード(以下、「第2モード」という)へ第1モードから変更される。第2モードにおいて、端末装置は、通信システムに共通に付与された識別番号をパケット信号に含め、第1の送信電力よりも低い送信電力(以下、「第2の送信電力」という)にてパケット信号を報知する。本発明の変形例に係る通信システム100は、図1と同様のタイプであり、基地局装置10は、図2と同様のタイプである。以下では、差異を中心に説明する。
図1において、複数の端末装置は、基地局装置10によって報知されたパケット信号を受信し、受信したパケット信号の受信状況をもとに、第1エリア210、第2エリア212、第2エリア外214のいずれに存在するかを推定する。第1エリア210あるいは第2エリア212に存在すると推定した場合、端末装置は、受信したパケット信号に含まれた制御情報をもとに、フレームを生成する。その結果、複数の端末装置のそれぞれにおいて生成されるフレームは、基地局装置10において生成されるフレームに同期する。また、端末装置は、各基地局装置10によって設定されている路車送信期間を認識し、パケット信号の送信のために、車車送信期間を特定する。具体的には、第1エリア210に存在する場合には、優先期間が特定され、第2エリア212に存在する場合には、一般期間が特定される。さらに、端末装置は、優先期間においてTDMAを実行し、一般期間においてCSMA/CAを実行することによって、端末間通信におけるパケット信号を報知する。
なお、端末装置は、次のフレームにおいても、相対的なタイミングが同一のサブフレームを選択する。特に、優先期間において、端末装置は、次のフレームにおいて、相対的なタイミングが同一のスロットを選択する。ここで、端末装置は、データを取得し、データをパケット信号に格納する。データには、例えば、存在位置に関する情報が含まれる。また、端末装置は、制御情報もパケット信号に格納する。つまり、基地局装置10から送信された制御情報は、端末装置によって転送される。一方、第2エリア外214に存在していると推定した場合、端末装置は、フレームの構成に関係なく、CSMA/CAを実行することによって、パケット信号を送信する。
図2において、処理部26は、RF部22、変復調部24を介して、図示しない他の基地局装置10あるいは端末装置からの復調結果を入力する。ここでは、復調結果として、パケット信号に格納されるMACフレームの構成を説明する。なお、処理部26に入力されるMACフレームと、処理部26から出力されるMACフレームとは、同様の構成を有する。図11(a)−(b)は、通信システム100において規定されるパケット信号に格納されるMACフレームのフォーマットを示す。図11(a)は、MACフレームのフォーマットを示す。MACフレームは、先頭から順に、「MACヘッダ」、「RSUコントロールヘッダ」、「アプリケーションデータ」、「CRC」を配置する。RSUコントロールヘッダが、前述の制御情報に相当する。アプリケーションデータには、事故情報等の端末装置へ通知すべきデータが格納される。
図11(b)は、RSUコントロールヘッダのフォーマットを示す。RSUコントロールヘッダは、先頭から順に、「基本情報」、「タイマ値」、「転送回数」、「サブフレーム数」、「フレーム周期」、「使用サブフレーム番号」、「開始タイミング&時間長」を配置する。なお、RSUコントロールヘッダの構成は、図11(b)に限定されず、一部の要素が除外されてもよく、別の要素が含まれてもよい。転送回数は、基地局装置10から送信された制御情報、特にRSUコントロールヘッダの内容が、図示しない端末装置によって転送された回数を示す。ここで、処理部26から出力されるMACフレームに対して、基地局装置10とは、本基地局装置10に相当し、処理部26へ入力されるMACフレームに対して、基地局装置10とは、他の基地局装置10に相当する。これは、以下の説明においても共通である。
処理部26から出力されるMACフレームは、転送回数を「0」に設定される。また、処理部26へ入力されるMACフレームに対して、転送回数は、「0」以上に設定されている。サブフレーム数は、ひとつのフレームを形成しているサブフレーム数を示す。フレーム周期は、フレームの周期を示し、前述のごとく、例えば「100msec」に設定される。使用サブフレーム番号は、基地局装置10が車車送信期間を設定しているサブフレームの番号である。図3(a)のごとく、フレームの先頭においてサブフレーム番号が「1」に設定される。開始タイミング&時間長では、サブフレームの先頭とした路車送信期間の開始タイミングと、路車送信期間の時間長が示される。図2に戻る。
ここでは、路車送信期間を設定すべきサブフレームの選択手順を説明する。これは、処理部26が、他の基地局装置10によって形成されたフレームのタイミングに同期したフレームを生成することに相当する。処理部26は、MACフレームのうち、転送回数が「0」に設定されたMACフレームを抽出する。これは、他の基地局装置10から直接送信されたパケット信号に相当する。処理部26は、抽出したMACフレームのうち、使用サブフレーム番号の値を特定する。これは、他の基地局装置10に使用されたサブフレームを特定することに相当する。処理部26は、既に特定したサブフレームの先頭に配置されたパケット信号の受信電力を測定する。これは、他の基地局装置10からのパケット信号の受信電力を測定することに相当する。
処理部26は、MACフレームのうち、転送回数が「1」以上に設定されたMACフレームを抽出する。これは、他の基地局装置10から送信された後に端末装置によって転送されたパケット信号に相当する。処理部26は、抽出したMACフレームのうち、使用サブフレーム番号の値を特定する。これは、他の基地局装置10に使用されたサブフレームを特定することに相当する。なお、端末装置は、他の基地局装置10からのパケット信号を端末装置が受信したときのサブフレーム番号を転送している。
処理部26は、これらのパケット信号の受信電力も測定する。また、処理部26は、取得した受信信号が、当該パケット信号にて制御情報を転送された他の基地局装置10からのパケット信号の受信電力であると推定する。処理部26は、路車送信期間を設定すべきサブフレームを特定する。具体的には、処理部26は、「未使用」のサブフレームが存在するかを確認する。存在する場合、処理部26は、「未使用」のサブフレームのうちのいずれかを選択する。ここで、複数のサブフレームが未使用である場合、処理部26は、ランダムにひとつのサブフレームを選択する。未使用のサブフレームが存在しない場合、つまり複数のサブフレームのそれぞれが使用されている場合に、処理部26は、受信電力の小さいサブフレームを優先的に特定する。
処理部26は、特定したサブフレーム番号のサブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。処理部26は、パケット信号に格納すべきMACフレームを生成する。その際、路車送信期間の設定に応じて、処理部26は、MACフレームのRSUコントロールヘッダの値を決定する。これは、フレームの構成に関する制御情報に相当する。処理部26は、ネットワーク通信部80を介して所定の情報を取得し、所定の情報をアプリケーションデータに含める。ここで、ネットワーク通信部80は、図示しないネットワーク202に接続される。処理部26は、変復調部24、RF部22に対して、路車送信期間においてパケット信号をブロードキャスト送信させる。ここで、パケット信号には、制御情報と、本基地局装置10を識別するための識別情報とが含まれている。本基地局装置10を識別するための識別情報は、図11(a)のMACヘッダに含まれている。制御部30は、基地局装置10全体の処理を制御する。
図12は、車両12に搭載された端末装置14の構成を示す。端末装置14は、アンテナ50、RF部52、変復調部54、処理部56、制御部58、モード設定部110、受付部112、取得部114、記憶部116、検出部118を含む。処理部56は、生成部64、タイミング特定部60、転送決定部90、通知部70を含む。また、タイミング特定部60は、抽出部66、選択部92、キャリアセンス部94を含む。アンテナ50、RF部52、変復調部54は、図2のアンテナ20、RF部22、変復調部24と同様の処理を実行する。そのため、ここでは、差異を中心に説明する。
変復調部54、処理部56は、図示しない他の端末装置14や基地局装置10からのパケット信号を受信する。なお、前述のごとく、優先期間と一般期間とを時間多重したサブフレームが規定されており、サブフレーム内に路車送信期間が時間多重されていることもある。路車送信期間は、基地局装置10からパケット信号を報知可能な期間である。ここで、変復調部54、処理部56は、路車送信期間において、基地局装置10からのパケット信号を受信する。パケット信号には、当該パケット信号の報知元になる基地局装置10を識別するための識別情報が含まれている。優先期間とは、基地局装置10の周囲に形成された第1エリア210に存在する端末装置14がパケット信号の報知に使用すべき期間である。優先期間に複数のスロットが含まれている。一般期間とは、第1エリア210の外側に形成された第2エリアに存在する端末装置14がパケット信号の報知に使用すべき期間である。また、複数のサブフレームを時間多重したフレームが規定されている。
抽出部66は、基地局装置10からのパケット信号の受信電力を測定する。抽出部66は、測定した受信電力をもとに、第1エリア210に存在しているか、第2エリア212に存在しているか、第2エリア外214に存在しているかを推定する。例えば、抽出部66は、エリア判定用第1しきい値とエリア判定用第2しきい値とを記憶する。ここで、エリア判定用第1しきい値は、エリア判定用第2しきい値よりも大きくなるように規定されている。受信電力がエリア判定用第1しきい値よりも大きければ、抽出部66は、第1エリア210に存在していると決定する。受信電力がエリア判定用第1しきい値以下であり、エリア判定用第2しきい値よりも大きければ、抽出部66は、第2エリア212に存在していると決定する。受信電力がエリア判定用第2しきい値以下であれば、抽出部66は、第2エリア212外に存在すると決定する。なお、抽出部66は、受信電力の代わりに、誤り率を使用してもよく、受信電力と誤り率との組合せを使用してもよい。
抽出部66は、推定結果をもとに、優先期間、一般期間、フレームの構成と無関係のタイミングのいずれかを送信期間として決定する。具体的に説明すると、抽出部66は、第2エリア外214に存在していることを推定すると、フレームの構成と無関係のタイミングを選択する。抽出部66は、第2エリア212に存在していることを推定すると、一般期間を選択する。抽出部66は、第1エリア210に存在していることを推定すると、優先期間を選択する。
抽出部66は、変復調部54からの復調結果が、図示しない基地局装置10からのパケット信号である場合に、路車送信期間が配置されたサブフレームのタイミングを特定する。また、抽出部66は、サブフレームのタイミングと、RSUコントロールヘッダの内容とをもとに、フレームを生成する。なお、フレームの生成は、前述の処理部26と同様になされればよいので、ここでは説明を省略する。その結果、抽出部66は、基地局装置10において形成されたフレームに同期したフレームを生成する。また、抽出部66は、RSUコントロールヘッダの内容をもとに、路車送信期間を特定する。
抽出部66は、優先期間を選択した場合、優先期間に関する情報を選択部92へ出力する。抽出部66は、一般期間を選択した場合、フレームおよびサブフレームのタイミング、車車送信期間に関する情報をキャリアセンス部94へ出力する。抽出部66は、フレームの構成と無関係のタイミングを選択すると、キャリアセンスの実行をキャリアセンス部94に指示する。選択部92は、抽出部66から、優先期間に関する情報を受けつける。また、選択部92は、優先期間に含まれた複数のスロットから、いずれかのスロットを選択し、選択したスロットを送信タイミングとして決定する。ここで、スロットを選択するために、受信電力を使用してもよい。例えば、受信電力の小さいスロットが選択される。選択部92は、決定した送信タイミングを生成部64へ通知する。
生成部64は、図示しないGPS受信機、ジャイロスコープ、車速センサ等を含んでおり、それらから供給されるデータによって、図示しない車両12、つまり端末装置14が搭載された車両12の存在位置、進行方向、移動速度等を取得する。なお、存在位置は、緯度・経度によって示される。これらの取得には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。生成部64は、図11(a)−(b)に示されたMACフレームを使用し、存在位置をアプリケーションデータに格納する。また、生成部64は、抽出部66から、識別情報を受けつけ、最も新しく受けつけた識別情報もアプリケーションデータに格納する。生成部64は、MACフレームが含まれたパケット信号を生成するとともに、選択部92またはキャリアセンス部94において決定した送信タイミングにて、変復調部54、RF部52、アンテナ50を介して、生成したパケット信号をブロードキャスト送信する。なお、送信タイミングは、車車送信期間に含まれている。
転送決定部90は、RSUコントロールヘッダの転送を制御する。前述の抽出部66は、基地局装置10が情報源とされるパケット信号から、RSUコントロールヘッダを抽出する。前述のごとく、パケット信号が基地局装置10から直接送信されている場合には、転送回数が「0」に設定されているが、パケット信号が他の端末装置14から送信されている場合には、転送回数が「1以上」の値に設定されている。ここで、使用サブフレーム番号は、端末装置14によって転送される場合に変更されないので、使用サブフレーム番号を参照することによって、情報源となる基地局装置10にて使用されるサブフレームが特定される。
転送決定部90は、情報源となる基地局装置10ごとに、転送回数に関する情報を取得する。具体的に説明すると、転送決定部90は、サブフレーム番号「1」に対応した転送回数を順次取得し、その後、他のサブフレーム番号に対応した転送回数に対しても同様の処理を実行する。さらに、転送決定部90は、情報源となる基地局装置10ごとに、当該基地局装置10に関連した転送回数に関する情報の中から、少ない方の転送回数、例えば最小の転送回数の値を取得する。つまり、転送決定部90は、サブフレーム番号「1」に対応した転送回数の最小値、サブフレーム番号「2」に対応した転送回数の最小値等をそれぞれ取得する。
転送決定部90は、情報源となる基地局装置10ごとに、RSUコントロールヘッダ、つまり制御情報の抽出回数を計測する。また、転送決定部90は、情報源となる基地局装置10ごとに、転送決定部90において取得した転送回数の値が含まれた制御情報の抽出回数を選択する。具体的に説明すると、転送決定部90は、ひとつのサブフレーム番号に対して、転送回数ごとに制御情報の抽出回数を計測する。その結果、例えば、サブフレーム番号「1」に対して、転送回数「0」回の制御情報の抽出回数が「0」回になり、転送回数「1」回の制御情報の抽出回数が「4」回になり、転送回数「2」回の制御情報の抽出回数が「6」回になる。また、取得した転送回数が「1」回であれば、転送決定部90は、この転送回数が含まれた制御情報の抽出回数「4」を選択する。
転送決定部90は、サブフレーム番号、転送回数、抽出回数を対応づけて記憶する。また、転送決定部90は、転送回数や抽出回数が更新された場合に、記憶内容を更新する。転送決定部90は、各基地局装置10に対する転送回数と抽出回数を取得する。転送決定部90は、これらの転送回数と抽出回数をもとに、少なくともひとつの基地局装置10に対応した制御情報を、転送すべき制御情報として選択する。具体的に説明すると、転送決定部90は、複数の基地局装置10に対して転送回数を比較した後に、抽出回数を比較する。つまり、転送回数が少ない方の制御情報、例えば、最小の転送回数を有した制御情報を選択した後に、選択した制御情報の中から、抽出回数が多い方の制御情報、最大の抽出回数を有した制御情報が選択される。
このように、最小の転送回数を有した制御情報であって、かつ当該転送回数に対応した最大の抽出回数を有した制御情報が、転送決定部90によって選択される。転送回数が少ないほど、情報源となる基地局装置10の近くにおいて、制御情報が受信されているといえる。また、抽出回数が多いほど、無線環境の変動が少ない状況において、制御情報が受信されているといえる。そのため、前述の状況を満たすような制御情報を選択することによって、端末装置14は、なるべく近くに設置された基地局装置10からの制御情報を選択しているといえる。
転送決定部90は、選択した制御情報をもとにRSUコントロールヘッダを生成するように、生成部64に指示する。転送決定部90は、制御情報をRSUコントロールヘッダに格納させる際に、転送回数に関する情報における転送回数を増加させる。生成部64は、このような指示に応じて、転送決定部90において選択された制御情報をもとにRSUコントロールヘッダを生成するとともに、その際に転送回数を増加させる。
モード設定部110は、RF部52および処理部56の報知モードとして、第1モードあるいは第2モードを選択する。モード設定部110は、通常の場合、第1モードを選択する。受付部112は、ボタンに接続され、ボタンを介して運転者からの指示を受けつける。例えば、モード設定部110が第1モードを選択している場合に、運転者は、他の車両12に追跡されていると感じれば、ボタンを押し下げる。受付部112は、ボタンの押下げを受けつけることによって、第1モードから第2モードへの切替指示を受けつける。受付部112は、切替指示をモード設定部110へ出力する。モード設定部110は、受付部112からの切替指示を受けつけると、第1モードの代わりに第2モードを選択する。第2モードを選択してから所定の期間を経過すると、モード設定部110は、第1モードを再び選択してもよい。
本発明の実施例によれば、同一の識別番号が含まれたパケット信号を所定の期間において複数回数受信した場合に、その旨を通知するので、他の車両によって追跡されているおそれを運転者へ示唆できる。また、他の車両によって追跡されているおそれが運転者へ示唆されるので、運転者に危険を通知できる。また、同一の識別番号が含まれたパケット信号を所定の期間において複数回数受信した場合に、第1モードから第2モードへの切替を決定するので、端末装置を搭載した車両が追跡される危険性を低減できる。また、識別番号をログとして記録するので、事件等が発生した際に調査の対象にすることができる。また、他の車両によって追跡がなされている場合に、固有の識別番号を共通の識別番号に変更するとともに、送信電力を低減させることによって、追跡の続行を抑制できる。また、固有の識別番号を共通の識別番号に変更するので、本端末装置の特定を困難にできる。また、共通の識別番号は複数予約されており、そのうちのひとつをランダムに選択して使用するので、共通の識別番号を使用する場合であっても、同一の識別番号が使用される確率を低減できる。また、送信電力を低減させるので、パケット信号を受信可能な距離を短縮できる。
また、第2モードの場合であっても、所定のエリア内に存在していれば、送信電力を増加するので、パケット信号を受信可能な距離を延長できる。また、パケット信号を受信可能な距離が延長されるので、パケット信号の受信確率を向上できる。また、所定のエリアを交差点近傍に設定すれば、パケット信号の受信確率が向上することによって、本端末装置を搭載した車両が交差点に進入することを通知できる。また、本端末装置を搭載した車両が交差点に進入することが通知されるので、交差点において車両が衝突することを抑制できる。起動時には、第1モードに戻るので、第2モードから第1モードへ戻すことを忘れることを抑制できる。
第1エリアと第2エリアとを区別するために、受信電力を使用するので、伝搬損失が所定の程度に収まっている範囲を第1エリアに規定できる。また、伝搬損失が所定の程度に収まっている範囲が第1エリアに規定されているので、交差点の中心付近を第1エリアとして使用できる。また、優先期間ではスロットによる時間分割多重を実行するので、誤り率を低減できる。また、一般期間ではCSMA/CAを実行するので、柔軟に端末装置数を調節できる。
また、他の基地局装置から直接受信したパケット信号だけではなく、端末装置から受信したパケット信号をもとに、他の基地局装置によって使用されているサブフレームを特定するので、使用中のサブフレームの特定精度を向上できる。また、使用中のサブフレームの特定精度が向上するので、基地局装置から送信されるパケット信号間の衝突確率を低減できる。また、基地局装置から送信されるパケット信号間の衝突確率が低減されるので、端末装置が制御情報を正確に認識できる。また、制御情報が正確に認識されるので、路車送信期間を正確に認識できる。また、路車送信期間が正確に認識されるので、パケット信号の衝突確率を低減できる。
また、使用中のサブフレーム以外を優先的に使用するので、他の基地局装置からのパケット信号と重複したタイミングで、パケット信号を送信する可能性を低減できる。また、いずれのサブフレームも他の基地局装置によって使用されている場合に、受信電力の低いサブフレームを選択するので、パケット信号の干渉の影響を抑制できる。また、端末装置によって中継された制御情報の送信元になる他の基地局装置からの受信電力として、当該端末装置の受信電力を使用するので、受信電力の推定処理を簡易にできる。
また、他の車両によって追跡がなされている場合に、固有の識別番号を共通の識別番号に変更するとともに、送信電力を低減させることによって、追跡の続行を抑制できる。また、固有の識別番号を共通の識別番号に変更するので、本端末装置の特定を困難にできる。また、共通の識別番号は複数予約されており、そのうちのひとつをランダムに選択して使用するので、共通の識別番号を使用する場合であっても、同一の識別番号が使用される確率を低減できる。また、送信電力を低減させるので、パケット信号を受信可能な距離を短縮できる。
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。