JPWO2011148651A1 - アルコール処理酵母を用いた鉄吸着及び/又は吸収剤 - Google Patents

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Abstract

果汁飲料等の飲料や、酒類等の製造に際しての鉄分の除去に適用できる鉄吸着及び/又は吸収剤を提供すること、及び、該鉄吸着及び/又は吸収剤を用いて、果汁飲料や、酒類等の製造工程等において、製造原料溶液から、効果的に鉄分を除去する方法を提供することを課題として、アルコールで処理された酵母を有効成分とする鉄吸着及び/又は吸収剤として用いて該課題を解決する。また、本発明は、該鉄吸着及び/又は吸収剤を用い、鉄を含有する溶液に、該鉄吸着及び/又は吸収剤を接触処理して、溶液中の鉄分を除去する方法を包含し、該方法は、果汁飲料や、酒類等の製造に適用して、製品の本来の味覚等にも影響を及ぼさず、更に、コスト的にも安価な方法で、製品に悪影響を及ぼす鉄分を除去することを可能とする。

Description

本発明は、アルコールで処理された酵母を有効成分とする鉄吸着及び/又は吸収剤、及び、該鉄吸着及び/又は吸収剤を用いて、酒類や果汁飲料等の飲料における製造工程等において、鉄を含有する酒類や果汁飲料等の飲料製造溶液から、鉄分を除去する方法に関する。
鉄分は、生体中で重要なミネラルである一方、飲料中に存在した場合、鉄イオンの酸化力により多くの物質が酸化され、例えば、果汁飲料等においては、香味安定性の低下や外観品質の低下をもたらすことが知られている。また、清酒醸造等における酒類の醸造においては、麹菌の生産するフェリクローム類が鉄をキレートし、酒を着色させてしまうという問題があることが知られている(日本醸造協会出版、「改訂清酒入門」、174頁)。すなわち、醸造用水や清酒中に鉄が存在すると、清酒中には麹由来のデフェリフェリクリシンが多量に存在しており、鉄と強いキレート力を持っているため醸造用水や原料に鉄が含まれると、直ちに反応して着色の原因物質であるフェリクリシンとなり、清酒の品質を劣化させる。したがって、醸造用水の場合、0.1ppm以下にすることが肝要とされており、特に、清酒中においてはできるかぎり低濃度にすることが重要とされている。
また、ワイン中に含まれる二価鉄イオンは、魚介中の過酸化脂質と反応することで、生臭みを発生させることが知られており、ワイン中の鉄含量が多いほど、ホタテの干物等の魚介類と食べ合わせた際に生臭みを感じやすくなることが、官能評価や化学分析の結果から明らかになっている(T. TAMURA et al., J. Agric. Food Chem., Vol.57, p.8550-8556, 2009)。したがって、特に、酒類の製造に際しては、従来より、醸造用水等の鉄イオンの除去や、醸造原料中の鉄分の除去が望まれ、また、果汁飲料等においても、香味安定性の低下や外観品質の低下を避けるために、飲料製造溶液中からの鉄分の除去が望まれている。
工業用水や工業廃水等の用水、排水中から鉄イオンを除去するには、工業的には、被処理水を次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸等の塩素酸やそれらの水溶性塩、或いは、過酸化水素、オゾン等の酸化剤を用いて処理し、被処理水中の二価鉄を三価鉄に変換して不溶化し、除去する方法が行われている。しかし、これらの方法は、飲料や酒類の製造における用水や原料溶液等の製造溶液の鉄分の処理には直接適用することはできない。
飲料や酒類の製造における用水や原料溶液等の製造溶液の鉄分の除去については、例えば、醸造用水中の鉄除去法等については数多くの研究報告があり、いくつかは実用化されている。醸造用水中の鉄は一般には重炭酸鉄の形で存在しているので、重炭酸鉄に関する種々の除去法がある。この方法にはイオン交換樹脂使用法、塩素処理法、気曝法があり、また、その他鉄の存在形態によって様々な方法が実用化されている。しかし、いずれも選択性がなく、必要なミネラルまで除去し、鉄のみを除去することができないという問題がある。また、清酒中の鉄についてはキレート樹脂を用いた鉄の除去法等が知られているが、微量の鉄を除く方法は確立されておらず、更に、他の清涼飲料水等の水についても選択的に鉄のみを除去できないという制約がある。
また、最近、トランスフェリンを用いて、飲料水や、醸造用水、或いは清酒中に含まれる鉄イオンを選択的に除去する方法が開示されている(特開平9−37760号公報)。この方法は、卵白中に存在するオボトランスフェリンや、牛乳中のラクトトランスフェリンを単独、或いはデフェリフェリクリシン低生産麹と併用することにより、飲料水や、醸造用水、或いは清酒中に含まれる鉄イオンを選択的に除去すると共に、他の金属イオン(K,Na,Ca,Mg,Mnイオン)には影響を与えず鉄イオンのみを検出限界以下にまで低減するものである。この方法は、飲料水や、醸造用水、或いは清酒中に含まれる鉄イオンの選択的除去に適合させた方法であるが、蛋白質を添加するものである点で、製造される清酒の味覚や品質への影響や、コストの面から課題が残る。
したがって、飲料や、酒類等の製造に際しての鉄分の除去に適用でき、かつ製造される製品の味覚等にも影響を及ぼさず、更に、コスト的にも安価な鉄吸着及び/又は吸収剤の更なる開発が望まれるところである。
特開平9−37760号公報
日本醸造協会出版、「改訂清酒入門」、174頁 T. TAMURA et al., J. Agric. Food Chem., Vol.57, p.8550-8556,2009
本発明の課題は、果汁飲料等の飲料や、酒類等の製造に際しての鉄分の除去に適用でき、かつ製造される製品の味覚等にも影響を及ぼさず、更に、コスト的にも安価な鉄吸着及び/又は吸収剤を提供すること、及び、該鉄吸着及び/又は吸収剤を用いて、果汁飲料等の飲料や、酒類等の製造工程等において、鉄を含有する用水や、原料溶液の製造溶液から、効果的に鉄分を除去する方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく、天然素材で、かつ、飲料や、酒類等の製造に際しての鉄分の除去に有効に適用できる鉄吸着及び/又は吸収剤について鋭意探索する中で、アルコールで処理された酵母(酵母菌体)が、顕著な鉄吸着及び/又は吸収作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。ここで、本発明において酵母をアルコールで処理するとは、酵母を5〜100v/v%濃度のアルコールに接触処理することからなる。また、本発明においては、酵母を20〜100v/v%濃度のアルコールで固定化処理された酵母が、特に顕著な鉄吸着及び/又は吸収作用を有することを見出し、本発明をなすに至った。ここで、本発明における「アルコールで固定化」とは、主に微生物や哺乳類細胞の顕微鏡観察の際に用いられる固定処理方法であるが、その作用機序は主に「脱水と蛋白質の変性」処理からなる。該固定化処理により、細胞は変性して、細胞膜の浸透性が高められ、例えば、生細胞では内部へと透過しない蛍光試薬などを外部から加えることで容易に細胞内小器官等を染めることができるようになる。
すなわち、本発明は、アルコールで処理された酵母を有効成分とする鉄吸着及び/又は吸収剤からなる。本発明において、鉄吸着及び/又は吸収剤の有効成分であるアルコール処理酵母としては、5〜100v/v%濃度のアルコールにより処理された酵母菌体を挙げることができる。酵母のアルコール処理において、低濃度(5〜20v/v%)のアルコール処理に関しては、エタノールに対して感受性である酵母菌株の使用や、3日〜1週間程度の処理時間を経ることが望ましい。本発明におけるアルコール処理は、殺菌処理などを目的として他の処理が加わることを妨げない。例えば、アルコール処理前後、或いは、アルコール処理中に、アルカリ処理や熱処理、酵素(放線菌産生酵素類、担子菌産生酵素類など)処理が加えられても良い。つまり、ビールやワインなどの酒類製造工程で、実質的にアルコール処理が加われば、かかる製造工程で処理された酵母菌株を乾燥させて使用しても、本発明の示す鉄吸着及び/又は吸収剤と同等の効果を示す。またビール製品によってはアルコール度数が5%以下のものも存在し、例えば2.5%程度の製品も存在するが、より長時間のアルコール浸漬時間、つまり製造中のアルコールを含んだビールと酵母が長時間接触することで、本発明の示す鉄吸着及び/又は吸収剤と同等の効果を示すことが可能である。
また、本発明は、本発明の鉄吸着及び/又は吸収剤を用い、鉄を含有する溶液に、該鉄吸着及び/又は吸収剤を接触処理して、溶液中の鉄分を吸着及び/又は吸収させ、溶液中の鉄分を除去する方法を包含する。該鉄を含有する溶液としては、酒類製造工程における酒類製造溶液を挙げることができる。酒類製造溶液としては、特に、清酒又はワインの製造溶液を挙げることができる。また、本発明の鉄吸着及び/又は吸収剤を用いた溶液中の鉄分の除去方法を適用する対象として、果汁飲料製造工程における果汁飲料製造溶液を挙げることができる。
本発明の溶液中の鉄分の除去方法において、酒類製造溶液又は果汁飲料製造溶液と鉄吸着及び/又は吸収剤の接触処理、及び鉄分を吸着及び/又は吸収した吸着及び/又は吸収剤の除去を行うには、該酒類製造溶液又は果汁飲料製造溶液と鉄吸着及び/又は吸収剤の接触処理、及び鉄分を吸着及び/又は吸収した吸着及び/又は吸収剤の除去を、該酒類製造工程又は果汁飲料製造工程における濾過工程において同時に行うか、或いは、酒類製造溶液又は果汁飲料製造溶液と鉄吸着及び/又は吸収剤の接触処理後、鉄分を吸着及び/又は吸収した吸着及び/又は吸収剤の除去工程を設けることにより行うことができる。本発明において、鉄を含有する溶液に鉄吸着及び/又は吸収剤を接触処理して、溶液中の鉄分を吸着及び/又は吸収した吸着及び/又は吸収剤の除去工程は、遠心分離や限外濾過等、通常酵母菌体の除去に用いられている分離手段を用いて行うことができる。
本発明の溶液中の鉄分の除去方法において、溶液中の鉄分と吸着及び/又は吸収剤の有効成分であるアルコール処理酵母との接触処理及び鉄分を吸着及び/又は吸収した酵母菌体の分離及び/又は除去を効率的に行うために、アルコールで処理された酵母を不溶化担体に固定した形状で調製し、用いることができる。すなわち、酵母を不溶化担体に固定した形状の鉄吸着及び/又は吸収剤を、鉄を含有する溶液に接触処理して、溶液中の鉄分を吸着及び/又は吸収させ、該吸着及び/又は吸収剤を除去する方法で行なうことができる。
本発明の溶液中の鉄分の除去方法において、溶液中の鉄分と吸着及び/又は吸収剤の有効成分であるアルコール処理酵母との接触処理及び鉄分を吸着及び/又は吸収した酵母菌体の分離及び/又は除去を効率的に行うために、アルコールで処理された酵母を濾過助剤として調製し、用いることができる。すなわち、酵母を濾過助剤として単独で若しくは珪藻土等と組合わせて、鉄を含有する溶液に接触処理して、溶液中の鉄分を吸着及び/又は吸収させ、濾過助剤を除去する方法で行なうことができる。
本発明の鉄吸着及び/又は吸収剤は、果汁飲料等の飲料や、酒類等の製造に際しての鉄分の除去に適用することができる。したがって、本発明においては、該鉄吸着及び/又は吸収剤を用いて、果汁飲料等の飲料や、酒類等の製造工程等において、鉄を含有する用水や、原料溶液の製造溶液から、効果的に鉄分を除去することが可能となる。
すなわち具体的には本発明は、(1)アルコールで処理された酵母を有効成分とする鉄吸着及び/又は吸収剤や、(2)アルコールで処理された酵母が、5〜100v/v%濃度のアルコールにより処理された酵母菌体であることを特徴とする上記(1)記載の鉄吸着及び/又は吸収剤や、(3)アルコールで処理された酵母が、20〜100v/v%濃度のアルコール処理により固定化された酵母菌体であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の鉄吸着及び/又は吸収剤や、(4)鉄を含有する溶液に、上記(1)〜(3)のいずれか記載の鉄吸着及び/又は吸収剤を接触処理して、溶液中の鉄分を吸着及び/又は吸収させ、該鉄分を吸着及び/又は吸収した吸着及び/又は吸収剤を除去することを特徴とする溶液中の鉄分の除去方法や、(5)鉄を含有する溶液が、酒類製造工程における酒類製造溶液であることを特徴とする上記(4)記載の溶液中の鉄分の除去方法や、(6)酒類製造溶液が、清酒又はワイン又はビールの製造溶液であることを特徴とする上記(5)記載の溶液中の鉄分の除去方法や、(7)鉄を含有する溶液が、果汁飲料製造工程における果汁飲料製造溶液であることを特徴とする上記(4)記載の溶液中の鉄分の除去方法からなる。
また本発明は、(8)酒類製造溶液又は果汁飲料製造溶液と鉄吸着及び/又は吸収剤の接触処理、及び鉄分を吸着及び/又は吸収した吸着及び/又は吸収剤の除去を、酒類製造工程又は果汁飲料製造工程における濾過工程において同時に行うか、或いは、酒類製造溶液又は果汁飲料製造溶液と鉄吸着及び/又は吸収剤の接触処理後、鉄分を吸着及び/又は吸収した吸着及び/又は吸収剤の除去工程を設けて行うことを特徴とする上記(5)〜(7)のいずれか記載の溶液中の鉄分の除去方法や、(9)鉄を含有する溶液に鉄吸着及び/又は吸収剤を接触処理して、溶液中の鉄分を吸着及び/又は吸収した吸着及び/又は吸収剤の除去工程を、遠心分離又は限外濾過により行うことを特徴とする上記(4)〜(8)のいずれか記載の溶液中の鉄分の除去方法や、(10)上記(1)〜(3)のいずれか記載の鉄吸着及び/又は吸収剤を、アルコールで処理された酵母を不溶化担体に固定した形状で調製し、該鉄吸着及び/又は吸収剤を、鉄を含有する溶液に接触処理して、溶液中の鉄分を吸着及び/又は吸収させ、該鉄分を吸着及び/又は吸収した吸着及び/又は吸収剤を除去することを特徴とする上記(4)記載の溶液中の鉄分の除去方法や、(11)鉄を含有する溶液に、上記(1)〜(3)のいずれか記載の鉄吸着及び/又は吸収剤とフィチン酸とを接触処理をして、溶液中の鉄分を吸着及び/又は吸収させ、該鉄分を吸着及び/又は吸収した吸着及び/又は吸収剤を除去することを特徴とする上記(4)記載の溶液中の鉄分の除去方法や、(12)上記(4)〜(11)のいずれか記載の溶液中の鉄分の除去方法を用いて、製造溶液中の鉄分の除去を行ったことを特徴とする鉄分の除去された飲料や、(13)飲料が、酒類又は果汁飲料であることを特徴とする上記(12)記載の鉄分の除去された飲料からなる。
本発明は、果汁飲料等の飲料や、酒類等の製造に際しての鉄分の除去に適用でき、かつ製造される製品の味覚等にも影響を及ぼさず、更に、コスト的にも安価な鉄吸着及び/又は吸収剤を提供する。また、本発明は、該鉄吸着及び/又は吸収剤を用いて、果汁飲料等の飲料や、酒類等の製造工程等において、製品の品質や安定性に影響を及ぼす鉄を含有する用水や、製造溶液から、効果的に鉄分を除去する方法を提供する。本発明の鉄吸着及び/又は吸収剤を接触させた飲料は、亜鉛濃度が高くなるという効果を有し、したがって、本発明の鉄分の除去方法により栄養価の高い飲料を提供することができる。
本発明の実施例におけるアルコール処理(アルコールで固定化)された酵母の鉄吸着及び/又は吸収試験において、70%エタノールで固定化された酵母(DV10、SYT001)を初期鉄濃度6ppmの白ワイン用の果汁に添加した後、7日目のエタノール固定化酵母に吸着及び/又は吸収された鉄量を示すグラフである。エタノール固定化酵母の対照として、熱処理を加えて固定化した酵母を添加した場合の鉄吸着及び/又は吸収量を示した(n=3)。 本発明の実施例におけるアルコール処理(アルコールで固定化)された酵母の鉄吸着及び/又は吸収試験において、70%エタノールで固定化された酵母(DV10、SYT001)を初期鉄濃度11ppmの白ワイン用の果汁に添加した後、7日目のエタノール固定化酵母に吸着及び/又は吸収された鉄量を示すグラフである。エタノール固定化酵母の対照として、熱処理を加えて固定化した酵母を添加した場合の鉄吸着及び/又は吸収量を示した(n=3)。 本発明の実施例におけるアルコール処理(アルコールで固定化)された酵母の鉄吸着及び/又は吸収試験において、70%エタノールで固定化された酵母(DV10、SYT001)を初期鉄濃度6ppmの白ワイン用の果汁に添加した後、7日目の果汁中の亜鉛濃度を示したグラフである(n=3)。 本発明の実施例におけるアルコール処理(アルコールで固定化)された酵母の鉄吸着及び/又は吸収試験において、70%エタノールで固定化された酵母(DV10、SYT001)を添加量OD600=3で添加した場合の初期鉄濃度に応じた鉄吸着及び/又は吸収量を示すグラフである(n=3)。 本発明の実施例におけるアルコール処理(アルコールで固定化)された酵母の鉄吸着及び/又は吸収試験において、サッカロマイセス・セレビジエDV10、SYT001をエタノール濃度を20%から100%まで変えて固定化した場合に、鉄吸着及び/又は吸収量がどのように変化するかを示したグラフである。ただし、エタノール固定により細胞が完全に死滅しなかった濃度条件は予めグラフから除いている(n=3)。 本発明の実施例におけるアルコール処理(アルコールで固定化)された酵母の鉄吸着及び/又は吸収試験において、サッカロマイセス・セレビジエDV10をエタノール濃度を20%、30%、40%、70%まで変えて、さらに4℃、37℃で0、24、48、120時間静置することで固定化した場合に、鉄吸着及び/又は吸収量がどのように変化するかを示したグラフである。矢印は酵母が完全に死滅していなかった実験区である(n=3)。 本発明の実施例におけるアルコール処理(アルコールで固定化)された酵母の鉄吸着及び/又は吸収試験において、サッカロマイセス・セレビジエSYT001をエタノール濃度を20%、30%、40%、70%まで変えて、さらに4℃、37℃で0、24、48、120時間静置することで固定化した場合に、鉄吸着及び/又は吸収量がどのように変化するかを示したグラフである。矢印は酵母が完全に死滅していなかった実験区である(n=3)。 本発明の実施例におけるアルコール処理(アルコールで固定化)された酵母の鉄吸着及び/又は吸収試験において、エタノールで固定化した湿潤した酵母サッカロマイセス・セレビジエDV10、SYT001を25℃、60℃、90℃で12時間乾燥した場合に鉄吸着及び/又は吸収量がどのように変化するかを示したグラフである(n=3)。 本発明の実施例におけるアルコール処理(アルコールで固定化)された酵母の鉄吸着及び/又は吸収試験において、70%エタノールで固定化された酵母(DV10、SYT001)を市販されているワイン(白ワイン2銘柄、赤ワイン2銘柄)に添加した後、2日目の各々のワイン中の鉄濃度を示したグラフである。 本発明の実施例におけるアルコール処理(アルコールで固定化)された酵母の鉄吸着及び/又は吸収試験において、70%エタノールで固定化された酵母(DV10、SYT001)をブドウ果汁入り飲料(ジュース)、スパークリングワイン、硫酸第一鉄水溶液、塩化第二鉄水溶液に添加した後、2日目の各々の飲料又は溶液中の鉄濃度を示したグラフである。 本発明の実施例におけるアルコール処理(アルコールで固定化)された酵母の鉄吸着及び/又は吸収試験において、乾燥した70%エタノールで固定化された酵母DV10を市販されている白ワインに1000、3000、10000ppm添加した後、0時間目、1日目のワイン中の鉄濃度及びエタノール固定化酵母の鉄吸着・吸収量を示したグラフである。 本発明の実施例におけるアルコール処理(アルコールで固定化)された酵母の鉄吸着及び/又は吸収試験において、各種70%アルコールで固定化した乾燥酵母(SYT001)を白ワイン用の果汁に添加した後、1日後のエタノール固定化酵母の鉄吸着及び/又は吸収量を示したグラフである(n=3)。 本発明の実施例におけるアルコール処理(アルコールで固定化)された酵母の鉄吸着及び/又は吸収試験において、70%エタノールで固定化された酵母(Saccharomyces cerevisiaeSYT001株)、乳酸菌(Lactobacillus rhamnosus ATCC53103株)と麹菌(Aspergillus oryzae RIB40株)を初期鉄濃度4.1ppmの白ワイン用の果汁、2.6ppmの市販白ワイン、3.9ppmの市販赤ワインに添加した後、1日目の各エタノール固定微生物の鉄吸着及び/又は吸収量を酵母を1として示したグラフである(n=3)。 本発明の実施例におけるアルコール処理(アルコールで固定化)された酵母の鉄吸着及び/又は吸収試験において、70%エタノールで固定化された酵母Saccharomyces cerevisiae SYT001株、Candida utilis NBRC0988株、Kluyveromyces lactis IFO1090株、Pichia pastoris NBRC1013株を初期濃度3.6ppmの白ワイン用の果汁に添加した後、1日目の各エタノール固定化酵母の鉄吸着及び/又は吸収量をS.cerevisiaeを1として示したグラフである(n=3)。 本発明の実施例におけるアルコール処理(アルコールで固定化)された酵母の鉄吸着及び/又は吸収試験において、70%エタノールで固定化された乾燥パン酵母DY株とフィチン酸を市販されている白ワインに添加した後、1日後の白ワイン中の残存鉄濃度(ppm)を示したグラフである(n=3)。 本発明の実施例におけるアルコール処理(アルコールで固定化)された酵母の鉄吸着及び/又は吸収試験において、70%エタノールで固定化された乾燥パン酵母DY株とフィチン酸を市販されている白ワインおよび赤ワインに様々な順序で添加した後、1日後の白ワイン、赤ワイン中の残存鉄濃度(ppm)を示したグラフである(n=3)。 本発明の実施例におけるアルコール処理(アルコールで固定化)された酵母の鉄吸着及び/又は吸収試験において、乾燥ビール酵母(BY-G)、酵母酵素処理物(YER)及び70%エタノールで固定化された乾燥酵母SYT001株を初期鉄濃度6ppmの白ワイン用の果汁に添加した後、3日目の乾燥ビール酵母、酵母酵素処理物、エタノール固定化酵母に吸着・吸収された鉄量を示すグラフである(n=3)。 本発明の実施例におけるアルコール処理(アルコールで固定化)された酵母の鉄吸着及び/又は吸収試験において、S. cerevisiae SYT001株およびS.bayanus IFO1127株を炭酸ナトリウム(pH8〜10)および水酸化ナトリウム(pH8〜12)で1時間処理した後、乾燥させ、初期濃度3.8ppmの果汁に添加した後、8時間後の各処理酵母に吸着及び/又は吸収された鉄量を示すグラフである。対照としてアルカリ処理を行っていない酵母および70%エタノール処理を行った酵母を添加した場合の鉄吸着及び/又は吸収量を示した(n=3)。 本発明の実施例におけるアルコール処理(アルコールで固定化)された酵母の鉄吸着及び/又は吸収試験において、S. cerevisiae SYT001株およびS.bayanus IFO1127株を5%および10%のエタノールで処理を行い、さらに浸漬(処理)時間を1日、3日、7日としたときに鉄吸着及び/又は吸収量がどのように変化するかを示したグラフである(n=3)。 本発明の実施例におけるアルコール処理(アルコールで固定化)された酵母の鉄吸着及び/又は吸収試験において、70%エタノールで処理された酵母S. cerevisiae SYT001株をProteinaseK(1mg/ml)で2日間処理したときの、鉄吸着及び/又は吸収量を示したグラフである(n=3)。
本発明は、アルコールで処理された酵母を有効成分とする鉄吸着及び/又は吸収剤、及び、該鉄吸着及び/又は吸収剤を用いて、鉄を含有する溶液に鉄吸着及び/又は吸収剤を接触処理して、溶液中の鉄分を吸着及び/又は吸収させ、除去することからなる溶液中の鉄分の除去方法からなる。
本発明において、鉄吸着及び/又は吸収剤の有効成分であるアルコール固定化酵母の調製のために用いる酵母としては、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、キャンディダ(Candida)属等の酵母を挙げることができる。食用微生物の1つである乳酸菌や麹菌を用いても、本発明の調製法では鉄吸着及び/又は吸収剤としての十分な効果を示さない。アルコール固定化酵母は、いずれの酵母菌株も鉄を吸着及び/又は吸収する機能を有するが、特に好ましい酵母菌株としては、サッカロマイセス属の酵母であるS.cerevisiae株(DV10、SYT001)、S.bayanus株(IFO1127)、S.pastorianus株(IFO1167)、S.paradoxus株(IFO10609)、S.pastorianus株(KY1040)、S.pastorianus株(KY1103)、及び、キャンディダ(Candida)属の酵母Candida utilis株(NBRC0988)、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)属の酵母Kluyveromyces lactis株(IFO1090)、ピキア(Pichia)属の酵母Pichia pastoris株(NBRC1013)を挙げることができる。
本発明において、アルコールで処理された酵母を有効成分として鉄を吸着及び/又は吸収する際の「吸着」とは、細胞の表面、すなわち細胞壁および細胞膜に物質(鉄)が結合した状態を示しており、「吸収」とは細胞内部、すなわち細胞壁および細胞膜よりも内側に物質(鉄)が入りこんだ状態を示す。例えば、鉄が酵母細胞壁、酵母細胞膜を通過し、酵母細胞質内の蛋白質に結合した場合、鉄は酵母内に「吸収」されたと表現する。
本発明において、酵母のアルコールによる処理(固定化)には、濃度5〜100v/v%濃度のアルコールを用いての、酵母菌体との接触処理により行なうことができる。好ましくは30〜90v/v%、特に、好ましくは60〜90v/v%のアルコールを用いての、酵母の固定化処理を挙げることができる。低濃度のアルコール処理を行う場合にはエタノールに対して感受性である酵母菌株の使用、及び、3日から1週間程度の処理時間を経ることが望ましい。また、本発明におけるアルコール処理には、殺菌処理等を目的として、他の処理が加わることを妨げない。例えば、アルコール処理前後、或いは、アルコール処理中に、アルカリ処理や熱処理、酵素(放線菌産生酵素類、担子菌産生酵素類など)処理が加えられても良い。つまり、ビールやワインなどの酒類製造工程で、実質的にアルコール処理が加われば、かかる製造工程で処理された酵母菌株を乾燥させて使用しても、本発明の示す鉄吸着及び/又は吸収剤と同等の効果を示し、該酵母菌体を用いることができ、また、酵母菌株を酵素処理などによってある程度消化したエキス抽出残渣を用いることもできる。したがって、普段は製造工程で廃棄してしまう酵母関連素材を乾燥させて使用できるため、非常に低コストで溶液からの鉄分を除去できる。またビール製品によってはアルコール度数が5%以下のものも存在し、例えば2.5%程度の製品も存在するが、より長時間のアルコール浸漬時間、つまり製造中のアルコールを含んだビールと酵母が長時間接触することで、本発明の示す鉄吸着及び/又は吸収剤と同等の効果を示すことが可能となる。
本発明において、アルコール処理酵母の鉄吸着及び/又は吸収作用に関わる成分としては、タンパク質であることが明らかとなっている。つまり、アルコール処理酵母にタンパク質成分を残すような処理を加えた後に鉄除去剤として使用することは可能であり、例えば、核酸分解酵素や細胞壁分解酵素などをアルコール固定化酵母に添加して、タンパク質を含む部分を鉄除去剤として使用することができる。
本発明において、酵母のアルコールによる処理の方法は、酵母を5〜100v/v%濃度のアルコールに接触処理することからなる。また、本発明における酵母のアルコール処理において、酵母を20〜100v/v%濃度のアルコールで固定化処理する場合は、それ自体、既に公知の、微生物や哺乳類細胞の顕微鏡観察の際に用いられる固定化処理方法に従って行なうことができる。すなわち、培養した酵母に最終濃度が所定の濃度になるようにアルコールを加え、よく攪拌することで調製することができる。例えば、YPD(酵母エキス1%、ペプトン2%、グルコース2%)培地で2日間振とう培養した酵母を遠心して回収し、水で懸濁した後、最終濃度70%になるようにアルコールを加え、攪拌することでアルコールによる固定化を行うことができる。しかし、低濃度5〜20v/v%濃度のアルコールで処理を行う場合には、3日から1週間程度の処理時間を経ることが望ましい。
本発明におけるアルコールとしてはアルコール性OH基を持つものを使用することができる。好ましくは低級1価アルコールであり、特に好ましくは、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソアミルアルコールである。
本発明の鉄を含有する溶液からの鉄分の除去方法において、鉄を含有する溶液の対象としては、特に限定されず、鉄を含む食品(飲料)や、用水等が挙げられるが、アルコール処理酵母の鉄吸着及び/又は吸収性効果が最大限発揮される果汁飲料等の飲料や、酒類等の製造に際しての鉄分の除去が、特に、有効な適用対象として挙げることができる。例えば、該果汁飲料等の飲料や、酒類等の製造に際しての鉄分の除去の対象としては、果汁、ジュース、ワイン、酒類一般が挙げられ、特にpHが4付近であることなどから鉄吸着及び/又は吸収の効果が大きい果汁やワインの製造における鉄分の除去を有効な対象として挙げることができる。
本発明において、溶液中の鉄分の除去方法を実施するには、アルコールで処理された酵母からなる吸着及び/又は吸収剤を、鉄を含有する溶液に接触させ、溶液中の鉄分を吸着及び/又は吸収剤に吸着及び/又は吸収させることにより行うことができる。該接触方法は特に限定されず、直接対象に添加する方法や濾過材に混ぜての接触方法がある。本発明において、アルコールで処理された酵母を、鉄を含有する溶液に接触して鉄分を吸着及び/又は吸収せしめるにあたって、鉄を含有する溶液とアルコールで処理された酵母とを長い時間接触させる必要はない。したがって、通常の濾過工程で用いられる濾過材に混ぜての接触や、アルコール処理された酵母と鉄を含有する溶液に添加した後、すぐに遠心分離等によって、アルコール処理された酵母を分離しても、大部分の鉄は除去することができる。
アルコール処理された酵母と鉄を含有する溶液を接触処理後、鉄分を吸着及び/又は吸収した吸着及び/又は吸収剤は、除去されるが、該除去方法としては、濾過により濾過材と共に除去する方法、或いは、鉄分を吸着及び/又は吸収した吸着及び/又は吸収剤を、遠心分離や限外濾過等、通常酵母菌体の除去に用いられている分離手段を用いて行うことができる。
すなわち、飲料や、酒類の製造工程において、本発明の鉄分の除去方法を実施するには、酒類製造溶液又は果汁飲料製造溶液と鉄吸着及び/又は吸収剤の接触処理、及び鉄分を吸着及び/又は吸収した吸着及び/又は吸収剤の除去を、酒類製造工程又は果汁飲料製造工程における濾過工程において同時に行うか、或いは、酒類製造溶液又は果汁飲料製造溶液と鉄吸着及び/又は吸収剤の接触処理後、鉄分を吸着及び/又は吸収した吸着及び/又は吸収剤の除去工程を設けて行うことにより実施することができる。
更に、飲料又は酒類製造で用いられている金属キレート剤であるフィチン酸とアルコール処理された酵母を併用することで、酒類製造溶液、又は果汁飲料製造溶液中の鉄をさらに効率よく除去することが可能である。また、フィチン酸とアルコール処理酵母の併用によって鉄を含有する溶液から鉄分を吸着及び/又は吸収せしめるにあたって、フィチン酸、アルコール処理酵母はどの順序でも添加することができる。すなわち、フィチン酸が含まれた製造溶液にアルコール処理酵母を添加することや、アルコール処理酵母が含まれる溶液にフィチン酸を追添加すること、そしてフィチン酸とアルコール処理酵母を同時に添加することが可能である。
本発明の溶液中の鉄分の除去方法において、溶液中の鉄分と吸着及び/又は吸収剤の有効成分であるアルコール処理酵母との接触処理及び鉄分を吸着及び/又は吸収した酵母菌体の分離及び除去を効率的に行うために、アルコールで処理された酵母を不溶化担体に固定した形状で調製し、用いることができる。すなわち、酵母を不溶化担体に固定した形状の鉄吸着及び/又は吸収剤を、鉄を含有する溶液に接触処理して、溶液中の鉄分を吸着及び/又は吸収させ、該吸着及び/又は吸収剤を除去する方法で行うことができる。
アルコールで処理された酵母を不溶化担体に固定する方法としては、公知の酵母の不溶化担体への固定化法を用いることができる。用いる不溶化担体は、酒類や飲料の製造に用いることから、その素材が選択されるが、食品添加物として認められているアルギン酸塩などは有効に用いることができる。また、多孔性無機材料、例えば、多孔性ガラスも適当な固定化材として用いることができる。その他、セルロース、デキストロース、アガロース等の多糖類の誘導体や、合成高分子ゲル、スチレンビーズ等も不溶化担体として用いることができる。
アルコールで処理された酵母の不溶化担体への固定の形状は、ビーズ状、シート状、テープ状、ヒモ状、その他任意の形状のものであってもよい。ビーズ状の場合は、「篭」状の収容部材で容器内部に固定させることができる。また、該ビーズを充填したカラムを用いて、アルコール処理酵母と、鉄を含有する溶液との接触処理を行うことができる。また、シート状、テープ状、ヒモ状その他の一次元的ないし二次元的な広さをもつ形状の場合には、アルコールで処理された酵母と、鉄を含有する溶液との接触処理を行う容器内壁への貼着(シート等の全面または一端で)その他の手段(たとえば、シート状固定化酵母の前駆体である酵母分散液の塗布及び不溶化)によって容器内壁への固定を行なうことができる。
本発明のアルコール固定化酵母は、飲料・溶液中の鉄を低減することを目的としており、例えば10ppm程度までの鉄を含んだ飲料・溶液中にアルコール固定化酵母を10000ppm(乾燥重量)加えたときに、飲料・溶液中に残存する鉄濃度が2ppm以下、もしくは0.5〜2ppm程度になるような鉄吸着及び/又は吸収剤として利用することができる。
本発明を用いて、鉄分を除去せしめるにあたり、鉄を含有する果汁やワインから、他成分量が大きく変化することはなく、処理前後の官能評価にも違いはほとんど見られない。したがって、鉄のみを飲料製造溶液、酒類製造溶液を取り除く方法として、非常に有効に使用できる。
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによってなんら限定されるものではない。
[エタノールで処理(固定)された酵母の果汁における鉄分の吸着及び/又は吸収]
<方法>
酵母サッカロマイセス属SYT001株(S.Yoshida et al., 「Appl. Environ. Microbiol.」, Yol.74, p.2787〜2796, 2008.)、DV10株をYPD(酵母エキス1%、ペプトン2%、グルコース2%)培地1Lに植菌し、25℃で2日間好気振とう培養した。培養液の菌体濃度として600nmにおける吸光度(OD600)を測定した後、培養液を遠心分離(3000rpm、5分)し、その後4℃の水で懸濁した後、最終濃度70%になるように氷冷エタノールを加え、攪拌、更に、4℃で12時間静置することでエタノール固定を行った。固定後、ゆるやかな遠心(1000rpm、5分)を行い、上清を捨て、エタノール固定された酵母を調製した。
次いで、白ワイン用の果汁(20Brix、30mL)に硫酸第一鉄を鉄濃度換算で5ppm、10ppm追添加したものに、上記のごとくしてエタノール固定された酵母を最終菌体濃度OD600が1、2、3になるように果汁に添加し、25℃で7日間静置後、遠心分離(3000rpm、5分)を行うことでエタノール固定された酵母と果汁を分離した。果汁中の鉄濃度を原子吸光度計(アナリティクイエナ社、contrAA700、フレーム法)を用いて測定し、酵母無添加の果汁中の鉄濃度との差を鉄吸着及び/又は吸収量と定義した。
<結果>
結果を図1(初期鉄濃度6ppm)、図2(初期鉄濃度11ppm)に示した。エタノール固定処理の対照として、培養した酵母を滅菌水で洗浄後、65℃、1時間熱処理した熱処理酵母を果汁に添加した場合も示した。鉄濃度に加えて亜鉛濃度を原子吸光度計(アナリティクイエナ社、contrAA700、フレーム法)を用いて定量した結果を図3に示した。図3は初期鉄濃度6ppmの果汁で、エタノール固定された酵母を添加した場合のみを示す。上記結果に示されるとおり、エタノール固定された酵母は酵母株によらず果汁中の鉄を7割以上吸着及び/又は吸収し、鉄を除去した果汁を製造することが可能であることが示された。更に、これら鉄吸着及び/又は吸収作用はエタノール固定された酵母特異的に有するものであり、熱処理によって固定された酵母には鉄を吸着及び/又は吸収する作用が無いことが明らかとなった。また、エタノール固定された酵母の添加量に応じてエタノール固定化酵母から発酵促進効果を持つ亜鉛が放出され、果汁中の亜鉛濃度が上昇することも明らかになった。
上記試験結果を基に、果汁に硫酸第一鉄を添加しなかった場合のエタノール固定された酵母の鉄吸着及び/又は吸収量の結果を加え、横軸に果汁中の初期鉄濃度、縦軸にエタノール固定された酵母の鉄吸着及び/又は吸収量(OD600=3で添加した場合)をとった結果を図4に示す。該結果に示されるとおり、初期鉄濃度によらず、鉄濃度が高い場合でもエタノール固定された酵母は果汁中の鉄を7割以上吸着及び/又は吸収することができた。
[エタノール濃度による処理(固定化)酵母の鉄吸着及び/又は吸収量の変化]
<方法>
酵母サッカロマイセス属SYT001株(S.Yoshida et al., 「Appl. Environ. Microbiol.」, Yol.74, p.2787〜2796, 2008.)、DV10株をYPD(酵母エキス1%、ペプトン2%、グルコース2%)培地1Lに植菌し、25℃で2日間好気振とう培養した。培養液の菌体濃度として600nmにおける吸光度(OD600)を測定した後、培養液を遠心分離(3000rpm、5分)し、その後4℃の水で懸濁した後、最終エタノール濃度が20%から100%の範囲になるようにエタノールを加え、攪拌、更に4℃で12時間静置することでエタノール固定を行った。固定後、ゆるやかな遠心(1000rpm、5分)を行い、上清を捨て、エタノール固定された酵母を調製した。次いで、白ワイン用の果汁(20Brix、30mL)に硫酸第一鉄を鉄濃度換算で5ppm追添加したものに、上記のごとくしてエタノール固定された酵母を最終菌体濃度OD600が1になるように果汁に添加し、25℃で6日間静置後、遠心分離(3000rpm、5分)を行うことでエタノール固定された酵母と果汁を分離した。果汁中の鉄濃度を原子吸光度計(アナリティクイエナ社、contrAA700、フレーム法)を用いて測定した。
<結果>
結果を図5に示した。使用した酵母菌株DV10におけるエタノール固定濃度が20%から40%の範囲、SYT001株における20%から50%および100%では酵母が完全に固定されなかった(死滅しなかった)ため、予め図から除いた。該結果に示すとおり、エタノール固定の濃度は50%〜100%で酵母が完全に死滅し、かつ鉄吸着及び/又は吸収作用を示すことがわかった。特に菌株間のエタノールに対しての耐性度を考慮にいれると、60%から90%の範囲のエタノール濃度が固定に適していることがわかった。
[エタノール処理条件(温度、浸漬時間)による処理(固定化)酵母の鉄吸着及び/又は吸収量の変化]
<方法>
酵母サッカロマイセス属SYT001株(S.Yoshida et al., 「Appl. Environ. Microbiol.」, Yol.74, p.2787〜2796, 2008.)、DV10株をYPD(酵母エキス1%、ペプトン2%、グルコース2%)培地1Lに植菌し、25℃で2日間好気振とう培養した。培養液の菌体濃度として600nmにおける吸光度(OD600)を測定した後、培養液を遠心分離(3000rpm、5分)し、その後25℃の水で懸濁した後、最終エタノール濃度が20%、30%、40%、70%になるように25℃のエタノールを加え、攪拌、更に37℃で一定時間(0時間、24時間、48時間、120時間)静置することでエタノール固定を行った。固定後、ゆるやかな遠心(1000rpm、5分)を行い、上清を捨て、エタノール固定された酵母を調製した。次いで、白ワイン用の果汁(20Brix、30mL)に硫酸第一鉄を鉄濃度換算で5ppm追添加したものに、上記のごとくしてエタノール固定された酵母を最終菌体濃度OD600が1になるように果汁に添加し、25℃で4日間静置後、遠心分離(3000rpm、5分)を行うことでエタノール固定された酵母と果汁を分離した。果汁中の鉄濃度を原子吸光度計(アナリティクイエナ社、contrAA700、フレーム法)を用いて測定した。
結果を図6、図7に示した。図6はワイン酵母DV10を用いた場合で、図7は実験室母SYT001を用いた場合の鉄吸着及び/又は吸収量である。図中の赤矢印で示した部分(例としてDV10のエタノール20%、処理時間0時間)は酵母が完全に死滅しなかったエタノール濃度又は処理時間である。
<結果>
図6、図7の結果に示すとおり、酵母の死滅を考慮にいれると、25℃のエタノールを使用すれば、エタノール濃度を30%にまで下げることが可能であり(図7、30%エタノール固定0時間)、処理(浸漬)時間にかかわらず鉄吸着・吸収作用を示すことがわかり、常温エタノール濃度40%以上であれば、浸漬時間は必要ないことも示された。上記結果に示す通り、エタノール処理温度を4℃から37℃へ上げることで、固定に必要なエタノール濃度は50%から20%にまで下げられることが明らかになった。エタノール固定酵母として使用する場合は、エタノール濃度30%以上が望ましいことが示された。
[エタノール処理(固定化)酵母の乾燥条件による鉄吸着及び/又は吸収量の変化]
<方法>
酵母サッカロマイセス属SYT001株(S.Yoshida et al., 「Appl. Environ. Microbiol.」, Yol.74, p.2787〜2796, 2008.)、DV10株をYPD(酵母エキス1%、ペプトン2%、グルコース2%)培地1Lに植菌し、25℃で2日間好気振とう培養した。培養液の菌体濃度として600nmにおける吸光度(OD600)を測定した後、培養液を遠心分離(3000rpm、5分)し、その後4℃の水で懸濁した後、最終エタノール濃度が70%になるようにエタノールを加え、攪拌、さらに4℃で12時間静置することでエタノール固定を行った。固定後、ゆるやかな遠心(1000rpm、5分)を行い、上清を捨て、エタノール固定された酵母を調製した。調製した湿潤している酵母を25℃、60℃、90℃で12時間インキュベーター内で静置することで乾燥を行った。次いで、白ワイン用の果汁(20Brix、30mL)に硫酸第一鉄を5ppm追添加したものに、上記のごとくしてエタノール固定後に乾燥した酵母を最終菌体濃度OD600が1になるように果汁に添加し、25℃で6日間静置後、遠心分離(3000rpm、5分)を行うことでエタノール固定された酵母と果汁を分離した。果汁中の鉄濃度を原子吸光度計(アナリティクイエナ社、contrAA700、フレーム法)を用いて測定した。
<結果>
結果を図8に示した。該結果に示すとおり、エタノール固定酵母を乾燥しても鉄吸着及び/又は吸収性はなくならず、また乾燥温度にかかわらず鉄吸着及び/又は吸収作用を示した。以上より、エタノール固定酵母はハンドリングの良い乾燥した状態でも使用できることがわかった。
[エタノールで固定化された酵母の鉄吸着及び/又は吸収作用に必要な時間]
<方法・結果>
上記実施例1のごとくして調製した70%エタノール固定された酵母を、白ワイン用の果汁(20Brix、30mL、鉄濃度6ppm)に添加した。添加後、0時間、1時間、12時間、6日間25℃で静置した後、遠心分離(3000rpm、5分)を行うことでエタノール固定された酵母と果汁を分離した。果汁中の鉄濃度を原子吸光度計(アナリティクイエナ社、contrAA700、フレーム法)を用いて測定し、結果を表1に示した。該結果に示されるとおり、エタノール固定された酵母を果汁に添加した後、すぐに遠心分離によって果汁とエタノール固定された酵母を分離しても、大部分の鉄は除去されることが確認された。
[菌株による鉄吸着及び/又は吸収量の変化]
<方法>
酵母サッカロマイセス属のS.bayanus株(IFO1127)、S.uvarum株(IFO0615)、S.pastorianus株(IFO1167)、S.paradoxus株(IFO10609)、S.pastorianus株(IFO10012)、S.bayanus株(KY702)、S.pastorianus株(KY1040)、S.pastorianus株(KY1041)、S.pastorianus株(KY1104)、S.kudriavzevii株(NBRC1802)、S.mikatae株(NBRC1815)の11株をYPD(酵母エキス1%、ペプトン2%、グルコース2%)培地1Lに植菌し、25℃で2日間好気振とう培養した。培養液の菌体濃度として600nmにおける吸光度(OD600)を測定した後、培養液を遠心分離(3000rpm、5分)し、その後25℃の水で懸濁した後、最終エタノール濃度が10%、20%、30%、70%になるように25℃のエタノールを加え、攪拌、さらに25℃で7日間静置することでエタノール固定を行った。固定後、ゆるやかな遠心(1000rpm、5分)を行い、上清を捨て、エタノール固定された酵母を調製した。次いで、白ワイン用の果汁(20Brix、30mL)に硫酸第一鉄を鉄濃度換算で5ppm追添加したものに、上記のごとくしてエタノール固定された酵母を最終菌体濃度OD600が3になるように果汁に添加し、25℃で6日間静置後、遠心分離(3000rpm、5分)を行うことでエタノール固定された酵母と果汁を分離した。果汁中の鉄濃度を原子吸光度計(アナリティクイエナ社、contrAA700、フレーム法)を用いて測定した。
<結果>
結果を表2に示した。表2中の*印で示した部分はエタノール処理によって酵母が完全に死滅しなかった実験区である。該結果に示すとおり、酵母の死滅を考慮にいれるとエタノール濃度が30%以上であればほぼ全ての菌株で鉄吸着及び/又は吸収作用を示すことがわかった。また、S.bayanus株(IFO1127)、S.pastorianus株(IFO1167)、S.paradoxus株(IFO10609)、S.pastorianus株(KY1040)、S.pastorianus株(KY1104)であればエタノール濃度を20%にまで下げても鉄吸着及び/又は吸収作用を示すことがわかった。
[鉄分除去対象飲料での比較]
<方法>
実施例1のごとくして調製した70%エタノール固定された酵母(DV10、SYT001)を市販されている赤又は白ワイン(それぞれ2銘柄ずつ)、ブドウ果汁入り飲料(ジュース)、スパークリングワイン、硫酸第一鉄水溶液、塩化第二鉄水溶液にOD600=3となるように添加し、25℃で2日間静置した後、遠心分離(3000rpm、5分)を行うことでエタノール固定された酵母と果汁を分離した。エタノール固定された酵母添加前後の飲料又は水溶液中の鉄濃度を原子吸光度計(アナリティクイエナ社、contrAA700、フレーム法)を用いて測定し、飲料又は溶液中に残った鉄量を残存鉄量とした。
<結果>
結果を図9(ワインのみ)、図10(その他飲料および鉄水溶液)に示した。該結果からわかるとおり、鉄が含まれている水溶液であれば、溶液中のpH、鉄イオンの価数及び炭酸ガス又はアルコールの含有有無に関わらず、エタノール固定された酵母の鉄吸着及び/又は吸収作用があることが確認された。
[乾燥エタノール処理(固定化)酵母をワインに添加した場合の鉄濃度の変化]
<方法>
実施例1のごとくして調製した70%エタノール固定された酵母DV10を吸引濾過し、水分を除去した。その後、酵母を容器に広げ、1日常温で乾燥させた。市販されている白ワイン(1銘柄)に、乾燥エタノール固定化酵母を終濃度1000、3000、10000ppmとなるように添加した。その後、速やかに遠心分離(3000rpm、5分)を行いエタノール固定された酵母と果汁を分離した場合とエタノール固定化酵母を加えた状態で25℃1日静置した後、遠心分離(3000rpm、5分)を行うことでエタノール固定された酵母と果汁を分離した場合の2条件について、添加前後の白ワイン中の鉄濃度を原子吸光度計(アナリティクイエナ社、contrAA700、フレーム法)を用いて測定した。白ワイン中の初期鉄濃度は2.9ppmであり、エタノール固定酵母添加後に残った鉄量を残存鉄量とした。
<結果>
結果を図11に示した。該結果に示すとおり、乾燥エタノール固定化酵母をワインに添加することでワイン中の鉄は低減され、かつ添加後速やかにエタノール固定化酵母を除去しても大部分の鉄は吸着及び/又は吸収されていることが示された。
[官能評価]
<方法>
ワイン中の鉄含量が多いほど、ホタテの干物等の魚介類と食べ合わせた際に生臭みを感じやすくなることが、官能評価や化学分析の結果から明らかになっていることから(非特許文献2)、パネリストが市販のホタテの干物(約1cm)を口に含み、約20秒後に実施例8により得られた鉄含有量の低下したワイン6種類について試飲することで官能評価を実施した。官能評価は、(i) 生臭みはあるかという点と(ii)酵母の添加による香味の変化はあるかに注意して行った。(i)についての評価は、魚介類と食べ合わせた際の生臭みがなくワインとしてより好ましいと判断した場合には◎、好ましいと判断した場合は○、好ましくないと判断した場合は△で表記した。また(ii)についての評価は、酵母の添加による香味の変化がほとんど感じられないと判断した場合には◎、少し感じるが気にならないと判断した場合は○、少し感じると判断した場合は△で表記した。官能評価結果を表3に示す。なお表3中のサンプル番号の詳細は以下の通りである。
サンプル番号1:エタノール固定化酵母1000ppm添加、添加直後に分離
サンプル番号2:エタノール固定化酵母3000ppm添加、添加直後に分離
サンプル番号3:エタノール固定化酵母10000ppm添加、添加直後に分離
サンプル番号4:エタノール固定化酵母1000ppm添加、添加1日後に分離
サンプル番号5:エタノール固定化酵母3000ppm添加、添加1日後に分離
サンプル番号6:エタノール固定化酵母10000ppm添加、添加1日後に分離
<結果>
表3で示したように、エタノール固定酵母をワインに接触させている時間に関わらず、エタノール固定酵母の添加量に応じて食べ合わせ時に発生する生臭みが感じられなくなりワインとして良好であった。また、エタノール固定酵母を添加し、接触させている時間を長くした場合には酵母の添加による香味の変化が少し感じられた。
[アルコールで処理(固定)された酵母の果汁における鉄分の吸着及び/又は吸収]
<方法>
酵母サッカロマイセス属SYT001株をYPD(酵母エキス1%、ペプトン2%、グルコース2%)培地1Lに植菌し、25℃で2日間好気振とう培養した。培養液を遠心分離(3000rpm、5分)し、その後25℃の水で懸濁した後、最終濃度70%になるように各種アルコール(エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソアミルアルコール)を加え、攪拌、更に、25℃で1時間静置することでアルコール固定を行った。アルコール固定化酵母を吸引濾過し、水分を除去した後、酵母を容器に広げ、1日常温で乾燥させた。次いで、白ワイン用の果汁(20Brix、20mL)に硫酸第一鉄を鉄濃度換算で5ppm追添加したものに、乾燥アルコール固定化酵母を終濃度3000ppmとなるように添加し、25℃1日静置した後、遠心分離(3000rpm、5分)を行い、アルコール固定された酵母と果汁を分離した。果汁中の鉄濃度を原子吸光度計(アナリティクイエナ社、contrAA700、フレーム法)を用いて測定し、酵母無添加の果汁中の鉄濃度との差を鉄吸着及び/又は吸収量と定義した。
<結果>
結果を図12に示した。図12に示すように、エタノール以外の各種アルコール固定処理でも、酵母は鉄吸着及び/又は吸収性を持つことが明らかになった。この結果により、鉄を低減又は除去したい対象に応じて、酵母固定化処理時のアルコールの種類の使い分けが可能であることが示された。
[酵母特異的なアルコール固定化処理時の鉄吸着及び/又は吸収性]
<方法>
酵母サッカロマイセス属SYT001株をYPD(酵母エキス1%、ペプトン2%、グルコース2%)培地1Lに植菌し、25℃で2日間好気振とう培養した。培養液を遠心分離(3000rpm、5分)し、その後25℃の水で懸濁した後、最終濃度70%になるようにエタノールを加え、攪拌、更に、25℃で1時間静置することでエタノール固定を行った。エタノール固定化酵母を吸引濾過し、水分を除去した後、酵母を容器に広げ、1日常温で乾燥させた。加えて、乳酸菌Lactobacillus rhamnosus(ATCC53103)を400mL M.R.S培地に植菌し、37℃で1日静置培養した。培養液を遠心分離(6000rpm、5分)し、その後25℃の水で懸濁した後、最終濃度70%になるようにエタノールを加え、攪拌、更に、25℃で3時間静置することでエタノール固定を行った。エタノール固定化乳酸菌を吸引濾過し、水分を除去した後、乳酸菌を容器に広げ、2日常温で乾燥させた。さらに、麹菌Aspergillus oryzae(RIB40)を1.5L DPY液体培地(デキストリン2%,ペプトン1%,酵母エキス0.5%)に植菌し、30℃で100rpmで36時間振とう培養を行った。菌体は濾紙で濾過し、回収後、終濃度70%になるようエタノールを添加し、25℃、2日間振とうしてエタノール固定を行った。エタノール固定化麹菌を吸引濾過し、水分を除去した後、麹菌を容器に広げ、1日常温で乾燥させた。
白ワイン用の果汁(20Brix、20mL)に硫酸第一鉄を鉄濃度換算で5ppm追添加したもの、及び市販されている白ワイン(1銘柄)、市販されている赤ワイン(1銘柄)に、乾燥エタノール固定化酵母、乳酸菌、麹菌を終濃度1000ppmとなるように添加し、25℃1日静置した後、遠心分離(3000rpm、5分)、フィルター濾過を行い、エタノール固定された微生物と果汁を分離した。果汁中の鉄濃度を原子吸光度計(アナリティクイエナ社、contrAA700、フレーム法)を用いて測定し、微生物無添加の果汁中の鉄濃度との差を鉄吸着及び/又は吸収量と定義した。
<結果>
エタノール固定化酵母の鉄吸収量を1とした場合のエタノール固定化乳酸菌、エタノール固定化麹菌の鉄吸着及び/又は吸収量の相対値の結果を図13に示した。図13に示すように、明らかに酵母の鉄吸着及び/又は吸収量が高いことが明らかになった。エタノール処理により付与される酵母の鉄吸着及び/又は吸収能は酵母特異的な現象であることが明らかになった。
[酵母属によらないアルコール処理(固定化処理)時の鉄吸着及び/又は吸収性]
<方法>
酵母Saccharomyces cerevisiae SYT001株、Candida utilis NBRC0988株、Kluyveromyces lactis IFO1090株、Pichia pastoris NBRC1013株をYPD(酵母エキス1%、ペプトン2%、グルコース2%)培地1.5Lに植菌し、25℃で2日間好気振とう培養した。培養液を遠心分離(3000rpm、5分)し、その後25℃の水で懸濁した後、最終濃度70%になるようにエタノールを加え、攪拌、更に、25℃で1時間静置することでエタノール固定を行った。これらエタノール固定化酵母を吸引濾過し、水分を除去した後、酵母を容器に広げ、1日常温で乾燥させた。次いで、白ワイン用の果汁(20Brix、20mL)に硫酸第一鉄を鉄濃度換算で5ppm追添加したものに、乾燥エタノール固定化酵母を終濃度3000ppmとなるように添加し、25℃で1日静置した後、遠心分離(3000rpm、5分)、フィルター濾過を行い、エタノール固定された酵母と果汁を分離した。果汁中の鉄濃度を原子吸光度計(アナリティクイエナ社、contrAA700、フレーム法)を用いて測定し、酵母無添加の果汁中の鉄濃度との差を鉄吸着及び/又は吸収量と定義した。
<結果>
Saccharomyces属SYT001株の鉄吸収量を1とした場合の各酵母菌の鉄吸着及び/又は吸収量の相対値の結果を図14に示した。図14の結果に示されるように、酵母属によらず、酵母一般的に明らかにエタノール処理によって酵母は鉄を吸着及び/又は吸収することが明らかになった。
[フィチン酸とエタノール処理(固定化)酵母の鉄吸着及び/又は吸収における相乗効果]
<方法>
実施例1のごとくして調製した30%エタノール固定されたパン酵母DY株を吸引濾過し、水分を除去した後、酵母を容器に広げ、1日常温で乾燥させた。次いで、市販されている白ワイン(1銘柄)に乾燥アルコール固定化酵母を3000ppmの濃度で添加したもの、フィチン酸20ppm添加したもの、及びフィチン酸20ppmとエタノール固定化酵母3000ppmを両添加したものを調製し、25℃1日静置した後、遠心分離(3000rpm、5分)、フィルター濾過を行い、エタノール固定された酵母とワインを分離した。
<結果>
溶液中の鉄濃度を原子吸光度計(アナリティクイエナ社、contrAA700、フレーム法)を用いて測定し、酵母添加前後の鉄濃度を図15に示した。図15に示すように、本実験に使用した白ワインはフィチン酸を添加しても鉄をほとんど吸収できないワインであったが、エタノール固定化酵母はフィチン酸で除去できなかった鉄を除くことができ、かつフィチン酸とエタノール固定化酵母を併用することで、鉄吸着及び/又は吸収量が相乗的に上昇することを見出した。食品又は飲料製造において、比較的低コストで用いることが可能なフィチン酸が技術的に適用できないものに対して、エタノール固定化酵母は新たな鉄吸着及び/又は吸収剤として使用できる可能性を示した。
[フィチン酸とエタノール処理(固定化)酵母の相乗効果(添加順序検討)]
<方法>
実施例1のごとくして調製した30%エタノール固定されたパン酵母DY株を吸引濾過し、水分を除去した後、酵母を容器に広げ、1日常温で乾燥させた。次いで、フィチン酸とエタノール固定化酵母の添加順序による効果を検討するために、3つの実験区を設定した。市販されている白ワイン(1銘柄)、および市販されている赤ワイン(1銘柄)に
(1)乾燥エタノール固定化酵母3000ppm添加(25℃、1日)、遠心分離(3000rpm、5分)、フィルター濾過⇒フィチン酸20ppmを追添加(25℃、1日);
(2)フィチン酸20ppm添加(25℃、1日)、遠心分離(3000rpm、5分)、フィルター濾過⇒エタノール固定化酵母3000ppmを追添加(25℃、1日);
(3)エタノール固定化酵母3000ppmとフィチン酸20ppmを両添加(25℃、1日);
したものを調製し、遠心分離(3000rpm、5分)、フィルター濾過を行い、エタノール固定された酵母とワインを分離した。
<結果>
溶液中の鉄濃度を原子吸光度計(アナリティクイエナ社、contrAA700、フレーム法)を用いて測定し、酵母無添加の溶液中の鉄濃度と酵母又はフィチン酸添加後の鉄濃度を図16に示した。図16に示すように、フィチン酸、エタノール固定化酵母の添加の順序によらず、相乗的な鉄吸着及び/又は吸収効果が見られた。また、フィチン酸を添加した後にエタノール固定化酵母を添加した場合は、遠心分離とフィルター濾過で除けなかったフィチン酸が系中に残存するため、より高い鉄吸着及び/又は吸収効果を発揮することができた。
[官能評価]
<方法>
実施例1のごとくして調製した80%イソプロパノール固定されたパン酵母DY株を吸引濾過し、水分を除去した後、酵母を容器に広げ、1日常温で乾燥させた。滓下げ・清澄化前の赤ワインおよび白ワインに関して、次のような処理を行った4つの試験区を用意した。
(1)対照として用意した滓下げ・清澄化を行う前のワイン(無処理);
(2)赤および白ワインにフィチン酸を50ppmの濃度で添加し、30分反応後に、キトサン50ppmとベントナイト300ppmを用いて清澄化を行った。
(3)赤および白ワインにイソプロパノール固定化酵母を3000ppmの濃度で添加し、30分撹拌後、遠心分離によりイソプロパノール固定化酵母とワインを分離・除去。その後、キトサン50ppmとベントナイト300ppmを用いて清澄化を行った。
(4)赤および白ワインにイソプロパノール固定化酵母を3000ppmの濃度で添加し、30分撹拌後に、遠心分離により、イソプロパノール固定化酵母とワインを分離、除去。その後、フィチン酸50ppmを添加し、30分反応後に、キトサン50ppmとベントナイト300ppmを用いて清澄化を行った。
ワイン中の鉄含量が多いほど、ホタテの干物等の魚介類と食べ合わせた際に生臭みを感じやすくなることが、官能評価や化学分析の結果から明らかになっていることから(非特許文献2)、イソプロパノール固定化酵母で処理したワインについてパネリスト10〜11名による官能評価を実施した。市販のホタテの干物(約1cm)を口に含み、約20秒後に調製したワインを一口のみ、生臭みの強さをLMS(Labeled Magnitude Scale)で評価した。ワインは、中身がわからないように非明示で供した。白ワインに関しての官能評価結果を表4に、赤ワインの結果を表5に示す。なお、各ワイン中の鉄濃度は原子吸光度計を用いて測定した。
<結果>
表4(白ワインの結果),表5(赤ワインの結果)で示したように、アルコール固定化酵母を添加したワイン(生臭み:強くも弱くもない)では無添加のワイン(生臭み:とても強い)に比べて顕著に生臭みを感じなくなっていた。また、フィチン酸とアルコール固定化酵母を併用した場合において、生臭みは「弱い」あるいは「ほとんど感じない」レベルにまで低減されており、白ワイン、赤ワインに限らずに生臭みを抑える効果が見えた。
[ビール酵母およびビール酵母エキス残渣の鉄吸着及び/又は吸収効果]
<方法>
酵母酵素処理物(以下、YER)は、放線菌産生酵素類(5'−リン酸生成型ヌクレア−ゼ、デアミナーゼ、及びプロテアーゼを必須からなる構成成分とする酵素類)及び、担子菌産生酵素類(プロテアーゼ、セルラーゼ、及びグルカナーゼからなる)を必須構成成分とする酵素類を用いた酵母エキス製造法(特許第4045192号公報)におけるエキス抽出残渣を乾燥粉末化することで得た。及び、乾燥ビール酵母(商品名 BY−G:キリン協和フーズ社)を、それぞれ白ワイン用の果汁(20Brix、30mL)に硫酸第一鉄を鉄濃度換算で5ppm追添加したものに3000ppmとなるように添加した。同じく対照として、実施例1のごとくして調製した70%エタノール固定された酵母(SYT001)を乾燥し、同白ワイン用の果汁に3000ppmとなるように添加した。ともに25℃で3日間静置後、遠心分離(3000rpm、5分)を行うことで添加した酵母素材およびエタノール固定化酵母と果汁を分離した。果汁中の鉄濃度を原子吸光度計(アナリティクイエナ社、contrAA700、フレーム法)を用いて測定し、酵母素材無添加の果汁中の鉄濃度との差を鉄吸着・吸収量と定義した。
<結果>
結果を図17に示す。乾燥ビール酵母BY-Gおよび酵母酵素処理物YERは、エタノール固定化酵母と同様の鉄吸着及び/又は吸収効果を示すことがわかった。つまりビール酵母およびビール酵母エキス残渣にも鉄吸着及び/又は吸収効果があることがわかった。
[アルコール処理以外の処理操作による酵母の鉄吸着及び/又は吸収性]
<方法>
酵母サッカロマイセス属S.cerevisiae株(SYT001)、S.bayanus株(IFO1127)をYPD(酵母エキス1%、ペプトン2%、グルコース2%)培地0.4Lに植菌し、25℃で2日間好気振とう培養した。培養液を遠心分離(3000rpm、5分)し、その後25℃の水で懸濁した後、各々に分注し、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムでpHを調整しながらアルカリ処理を行った。pHは8、9、10、11、12で調整し、25℃で1時間浸漬後、遠心分離(3000rpm、5分)し、洗浄(2回)、乾燥(60℃)を行い、白ワイン用の果汁(20Brix、10mL)に硫酸第一鉄を鉄濃度換算で3ppm追添加したものに3000ppmの濃度で添加した。添加8時間後、遠心分離(3000rpm、5分)、フィルター濾過を行い、調製した酵母と果汁を分離した。果汁中の鉄濃度を原子吸光度計(アナリティクイエナ社、contrAA700、フレーム法)を用いて測定し、酵母無添加の果汁中の鉄濃度との差を鉄吸着及び/又は吸収量と定義した。
<結果>
結果を図18に示す。図18に示すように、通常行われ得るようなアルカリ処理では、酵母の鉄吸着及び/又は吸収量はアルカリ処理をしていないものとほとんど変わらなかった。アルカリ処理は水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムのどちらでも大きな差異はなく、また酵母間によって、アルカリ処理に対しての効果が異なることもなかった。この結果より、アルコール以外の処理では酵母へ鉄吸着及び/又は吸収能を付与することはできないことがわかった。つまり、乾燥ビール酵母の鉄吸着及び/又は吸収性はアルカリ処理によるものではないことが示された。
[低濃度アルコール処理した酵母の鉄吸着及び/又は吸収効果]
<方法>
酵母サッカロマイセス属S.cerevisiae株(SYT001)、S.bayanus株(IFO1127)をYPD(酵母エキス1%、ペプトン2%、グルコース2%)培地0.4Lに植菌し、25℃で2日間好気振とう培養した。培養液を遠心分離(3000rpm、5分)し、その後25℃の水で懸濁した後、最終エタノール濃度が5%および10%の範囲になるようにエタノールを加え、攪拌、更に25℃で1日、3日、7日静置することで低濃度エタノール処理を行った。処理後、ゆるやかな遠心(1000rpm、5分)を行い、上清を捨て、エタノール処理された酵母を調製した。その後、酵母を容器に広げ、60℃で1時間乾燥させた後、白ワイン用の果汁(20Brix、10mL)に硫酸第一鉄を鉄濃度換算で3ppm追添加したものに3000ppmの濃度で添加した。残った生細胞による鉄吸収効果が見えないように添加3時間後、遠心分離(3000rpm、5分)、フィルター濾過を行い、調製した酵母と果汁を分離した。果汁中の鉄濃度を原子吸光度計(アナリティクイエナ社、contrAA700、フレーム法)を用いて測定し、酵母無添加の果汁中の鉄濃度との差を鉄吸着及び/又は吸収量と定義した。
<結果>
結果を図19に示す。図19に示すように、低濃度のアルコールで処理した場合は1日では鉄吸着及び/又は吸収効果はないが、3日、さらに7日と浸漬を行うことで、70%エタノールで処理(固定)した場合とほぼ同程度の鉄吸着及び/又は吸収効果を示すことが明らかになった。またこの効果はエタノール耐性の低いIFO1127株で顕著であり、乾燥ビール酵母が鉄吸着及び/又は吸収性を保持しているのは、ビール製造中およそ2.5〜10%程度のアルコールで長時間浸漬していた履歴によることが示された。
[アルコール処理(固定化)酵母の鉄吸着及び/又は吸収性に関与する成分の同定]
<方法>
エタノール処理(固定化)酵母をProteinase K処理し、果汁中での鉄吸着及び/又は吸収量がどのように変化するかを調査した。実施例1のごとくして調製した70%エタノール固定化酵母S.cerevisiae株(SYT001)を吸引濾過し、水分を除去した後、酵母を容器に広げ、1日常温で乾燥させた。乾燥エタノール固定化酵母60mgを1mlのMilliQ水に懸濁し、Proteinase K(1mg/ml:Roche)で2日間処理した後、遠心、洗浄を行い、白ワイン用の果汁(初期鉄濃度4.3ppm)20mlに添加(酵母濃度:3000ppm)した。添加1日後、サンプルを遠心、フィルター濾過した後、鉄濃度を原子吸光度計(アナリティクイエナ社、contrAA700、フレーム法)で測定した。対照として、未処理エタノール固定化酵母と、水で2日間処理(Proteinase Kは未投入)したエタノール固定化酵母を白ワイン用の果汁に添加した。酵母無添加の果汁中の鉄濃度との差を鉄吸着及び/又は吸収量と定義した。測定結果を図20に示す。
<結果>
Proteinase K処理によって、エタノール固定化酵母の鉄吸着及び/又は吸収性が完全に消失することが明らかとなった。この結果より、エタノール固定化酵母の鉄吸着及び/又は吸収性に関わっている成分がタンパク質であることがわかった。
本発明は、果汁飲料等の飲料や、酒類等の製造に際しての鉄分の除去に適用でき、かつ製造される製品の味覚等にも影響を及ぼさず、更に、コスト的にも安価な鉄吸着及び/又は吸収剤を提供する。また、本発明は、該鉄吸着及び/又は吸収剤を用いて、果汁飲料等の飲料や、酒類等の製造工程等において、製品の品質や安定性に影響を及ぼす鉄を含有する用水や、製造溶液から、簡便な手段で、効果的に鉄分を除去する方法を提供する。

Claims (13)

  1. アルコールで処理された酵母を有効成分とする鉄吸着及び/又は吸収剤。
  2. アルコールで処理された酵母が、5〜100v/v%濃度のアルコールにより処理された酵母菌体であることを特徴とする請求項1記載の鉄吸着及び/又は吸収剤。
  3. アルコールで処理された酵母が、20〜100v/v%濃度のアルコール処理により固定化された酵母菌体であることを特徴とする請求項1又は2記載の鉄吸着及び/又は吸収剤。
  4. 鉄を含有する溶液に、請求項1〜3のいずれか記載の鉄吸着及び/又は吸収剤を接触処理して、溶液中の鉄分を吸着及び/又は吸収させ、該鉄分を吸着及び/又は吸収した吸着及び/又は吸収剤を除去することを特徴とする溶液中の鉄分の除去方法。
  5. 鉄を含有する溶液が、酒類製造工程における酒類製造溶液であることを特徴とする請求項4記載の溶液中の鉄分の除去方法。
  6. 酒類製造溶液が、清酒又はワイン又はビールの製造溶液であることを特徴とする請求項5記載の溶液中の鉄分の除去方法。
  7. 鉄を含有する溶液が、果汁飲料製造工程における果汁飲料製造溶液であることを特徴とする請求項4記載の溶液中の鉄分の除去方法。
  8. 酒類製造溶液又は果汁飲料製造溶液と鉄吸着及び/又は吸収剤の接触処理、及び鉄分を吸着及び/又は吸収した吸着及び/又は吸収剤の除去を、酒類製造工程又は果汁飲料製造工程における濾過工程において同時に行うか、或いは、酒類製造溶液又は果汁飲料製造溶液と鉄吸着及び/又は吸収剤の接触処理後、鉄分を吸着及び/又は吸収した吸着及び/又は吸収剤の除去工程を設けて行うことを特徴とする請求項5〜7のいずれか記載の溶液中の鉄分の除去方法。
  9. 鉄を含有する溶液に鉄吸着及び/又は吸収剤を接触処理して、溶液中の鉄分を吸着及び/又は吸収した吸着及び/又は吸収剤の除去工程を、遠心分離又は限外濾過により行うことを特徴とする請求項4〜8のいずれか記載の溶液中の鉄分の除去方法。
  10. 請求項1〜3のいずれか記載の鉄吸着及び/又は吸収剤を、アルコールで処理された酵母を不溶化担体に固定した形状で調製し、該鉄吸着及び/又は吸収剤を、鉄を含有する溶液に接触処理して、溶液中の鉄分を吸着及び/又は吸収させ、該鉄分を吸着及び/又は吸収した吸着及び/又は吸収剤を除去することを特徴とする請求項4記載の溶液中の鉄分の除去方法。
  11. 鉄を含有する溶液に、請求項1〜3のいずれか記載の鉄吸着及び/又は吸収剤とフィチン酸とを接触処理をして、溶液中の鉄分を吸着及び/又は吸収させ、該鉄分を吸着及び/又は吸収した吸着及び/又は吸収剤を除去することを特徴とする請求項4記載の溶液中の鉄分の除去方法。
  12. 請求項4〜11のいずれか記載の溶液中の鉄分の除去方法を用いて、製造溶液中の鉄分の除去を行ったことを特徴とする鉄分の除去された飲料。
  13. 飲料が、酒類又は果汁飲料であることを特徴とする請求項12記載の鉄分の除去された飲料。
JP2012517152A 2010-05-27 2011-05-27 アルコール処理酵母を用いた鉄吸着及び/又は吸収剤 Withdrawn JPWO2011148651A1 (ja)

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