JPWO2011129175A1 - シリンジ保持構造 - Google Patents

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Abstract

種々のタイプのシリンジを簡単に装着することができ、しかも装着されたシリンジを外れることの無いよう確実に保持することができるシリンジ保持構造を提供する。このシリンジ保持構造(1)は、メインアダプタ(701)と、その一部に着脱可能に装着されるサブアダプタ(300)とを備える。サブアダプタ(300)は、シリンダフランジ(211)を受けるフランジ受けと、シリンダフランジがそのフランジ受けに受け入れられた状態でシリンジ(200)が軸線周りに90角度回転されることによって、シリンダフランジをロックするフランジロック機構と、サブアダプタをメインアダプタにロックするアダプタ固定機構とを有している。さらに、シリンダフランジ(211)がフランジロック機構によってロックされている状態でアダプタ固定機構によるロックが解除されるのを禁止する解除禁止機構が設けられている。

Description

本発明は、シリンジ保持構造に関し、特には、種々のタイプのシリンジを簡単に装着することができ、しかも装着されたシリンジを外れることの無いよう確実に保持することができるシリンジ保持構造に関する。
現在、医療用の画像診断装置として、CT(Computed
Tomography)スキャナ、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、血管造影装置等が知られている。このような撮像装置を使用する際、被験者に造影剤や生理食塩水など(以下、これらを単に「薬液」とも言う)を注入することがある。また、従来、この注入を自動的に実行する様々なインジェクタ(注入ヘッド)も提案されている。
そのような注入ヘッドを用いた薬液注入においては、薬液を確実にかつ安全に注入するために注入ヘッドにシリンジをしっかりと保持させることが重要である。
特許文献1には、シリンジのシリンダ部材に一体に設けられたシリンダフランジを、シリンジの左右両側から保持する一対の保持部材を設け、この保持部材が、シリンジを保持する閉止位置(ロック位置)と、シリンジの挿入を可能とする開放位置とのいずれかの姿勢をとるように設けられた構造が開示されている。
また、シリンジには直径の異なる複数の種類が存在し、そのような直径の異なるシリンジを装着できるようにするために、シリンジの直径に対応したアダプタが用いられている。
特開2004−154238
ところで、上述した従来のシリンジ保持構造は、シリンジの着脱操作が極めて容易であるという利点を有している。一方で、閉止位置から開放位置への保持部材の移動は単にシリンジを上方へ引き上げるだけの操作であるので、意図せずにシリンジが外れてしまう可能性が考えられる。このような問題は、仮にそのような保持構造をシリンジアダプタに適用した場合にも同様に生じうる問題である。
さらに、上述した一対の保持部材による保持構造では、手動で一対の保持部材をロック位置に動かしてシリンジをセットする必要があった。しかし、作業性の向上や、シリンジをセットする際の人為的ミスを低減させるという観点から、より簡単にシリンジをセットできることが望ましい。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、種々のタイプのシリンジを簡単に装着することができ、しかも装着されたシリンジを外れることの無いよう確実に保持することができるシリンジ保持構造を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明のシリンジ保持構造は、
シリンダ部材とピストン部材とを有するシリンジを保持して注入ヘッドに装着されるメインアダプタと、
前記メインアダプタの一部に着脱可能に装着され、前記シリンダ部材に形成されたシリンダフランジを保持するサブアダプタと、
を備えるシリンジ保持構造であって、
前記サブアダプタは、
前記シリンダフランジを受けるフランジ受けと、
前記シリンダフランジがそのフランジ受けに受け入れられた状態で前記シリンジがその軸線周りに所定角度回転されることによって、前記シリンダフランジをロックするフランジロック機構と、
前記サブアダプタを前記メインアダプタにロックするアダプタ固定機構と、
前記シリンダフランジが前記フランジロック機構によってロックされている状態で、前記アダプタ固定機構によるロックが解除されるのを禁止する解除禁止機構と、
を備えている。
このような構成によれば、サブアダプタを交換するのみで種々のタイプのシリンジに対応することができる。しかも、シリンジを装着するにはシリンジをその軸線周りに所定角度回すだけで良いので装着作業も非常に簡単である。また、サブアダプタに設けられた解除禁止機構の機能により、シリンジが装着されている間はアダプタ固定機構によるロックが解除されない(すなわち、サブアダプタがメインアダプタから外れない)ようになっているので、意図せずにシリンジが外れてしまうことも防止することができる。
本発明はまた、次のような構成であってもよい。
前記メインアダプタには、前記サブアダプタが装着されるアダプタ受入れ部が形成されており、
前記アダプタ固定構造は、
前記サブアダプタの側面または前記アダプタ受入れ部の一方に設けられた係止爪と、
前記サブアダプタの側面または前記アダプタ受入れ部の他方に設けられ前記係止爪が係止する係止部と、
を有するシリンジ保持構造。
前記フランジ受けは、
その内周面の曲率半径が前記シリンダフランジの外周面の曲率半径とほぼ等しい円弧状部と、
前記円弧状部の両端から延びて前記円弧状部に対して弾性変位可能に(すなわち、可動に)設けられたアーム部と、
前記アーム部に形成された摘み部と、を有し、
前記摘み部の内周面の一部が、前記円弧状部の内周面の円弧形状の延長上に形成されている、シリンジ保持構造。
本発明の薬液注入装置は、上記記載のシリンジ保持構造と、それが装着される注入ヘッドと、を備える。
上述したように、本発明によれば、種々のタイプのシリンジを簡単に装着することができ、しかも装着されたシリンジを外れることの無いよう確実に保持することができるシリンジ保持構造を提供することができる。
本発明の一形態の薬液注入装置の斜視図である。 図1の注入ヘッドにメインアダプタが取り付けられる状態を示す斜視図である。 メインアダプタにシリンジが装着された状態を示す斜視図である。 サブアダプタを正面側から見た斜視図である。 シリンダフランジの輪郭形状を示す図である。 サブアダプタの正面図である。 サブアダプタの背面図である。 サブアダプタにシリンダフランジをロックする手順を説明するための図である。 図8の状態からシリンジをその軸線周りに90°回転させた状態(ロック状態)を示す図である。 メインアダプタのフランジ受入れ部を上方から見た図である。 図10のフランジ受入れ部の内部の構造を説明するための斜視図である。 サブアダプタの裏面の一部を示す背面図である。 他の形態のサブアダプタの例を示す斜視図である。 図13のサブアダプタの構造を示す図である。 メインアダプタに図13のサブアダプタを介してシリンジが装着された状態を示す斜視図である。 近接センサ等の配置例を模式的に示す断面図である。 本発明の一形態のロック機構に固定されるシリンジの一部を示す図である。 本発明の一形態のロック機構を示す斜視図である。 図18のロック機構の正面図である。 図18のロック機構の右側面図および左側面図である。 図18のロック機構の平面図および下面図である。 図18のロック機構にシリンジ(フランジ)をロックする手順を説明するための模式図である。 図18のロック機構にシリンジ(フランジ)をロックする手順を説明するための模式図である。 注入ヘッドの一例を示す斜視図である。 シリンジのフランジ形状の他の例を示す図である。 シリンジのフランジ形状のさらに他の例を示す図である。 本発明のロック機構の他の例を示す図である。 本発明のロック機構のさらに他の例を模式的に示す図である。 注入ヘッドを、それに装着されるシリンジおよびアダプタと共に示す斜視図である。 アダプタの背面側から見た斜視図である。 シリンジアダプタを、そのフランジロック機構が見えるように一部を破断して示す、背面側から見た斜視図である。 シリンダの背面図である。 アダプタへのシリンジの装着方法を説明する図であり、シリンジがアダプタに挿入された状態を示している。 アダプタへのシリンジの装着方法を説明する図であり、シリンジがアダプタに保持された状態を示している。 他の形態によるフランジロック機構を説明する図であり、シリンジが挿入された状態を示している。 フランジロック機構のシリンダフランジを保持した状態を示す図である。 他の形態によるアダプタの正面図である。 本発明の一形態のシリンジ保持構造を示す斜視図である。 アダプタケースにシリンジが挿入される様子を示す斜視図である。 アダプタケースをその基端側から見た斜視図である。 アダプタケースをその先端側から見た斜視図である。 シリンジ保持部材の斜視図である。 図40のシリンジ保持部材の正面図である。 図40のシリンジ保持部材の平面図である。 シリンジのフランジ形状を示す図である。 アダプタケースをシリンジ保持部材に装着する手順を説明するための図である(装着前)。 アダプタケースをシリンジ保持部材に装着する手順を説明するための図である(挿入)。 アダプタケースをシリンジ保持部材に装着する手順を説明するための図である(固定)。 シリンジの他の例を示す斜視図である。 図49のシリンジがアダプタケースを介してシリンジ保持部材に保持された状態を示す斜視図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の一形態を説明する。
〔第1の実施形態〕
図1に示すように、この薬液注入装置1は、シリンジ200を2本装着可能な二筒式タイプの注入ヘッド110と、シリンジ200をその注入ヘッド110に装着するための、サブアダプタ300とメインアダプタ701とを有するシリンジ保持構造700と、を備えている。
シリンジ200は、従来公知のものを利用可能であり、この例では、円筒状のシリンダ部材210と、それにスライド自在に挿入されたピストン部材220とを有している。シリンジとしては、薬液が予め充填されたプレフィルドタイプのシリンジであってもよいし、医療現場等で必要に応じて薬液が充填される現場充填タイプのシリンジであってもよい。図1では、シリンジのシリンダフランジ211の後面に複数のリブが形成されたものが描かれている。しかし、本実施形態で説明するシリンダフランジのロック機構を用いる場合には、これらのリブは必ずしも必要ない。
注入ヘッド110は、一例として、可動式のキャスタースタンド(不図示)に取り付けられて使用されるものであり、この例では、注入ヘッド110の本体113の下面にバー状の取付け部材119が設けられている。
本体113には、装着された各シリンジ200のピストン部材220を動かすために互いに独立して駆動される2つのピストン駆動機構(不図示)が内蔵されている。このピストン駆動機構については、この種の注入装置に一般に用いられる公知の機構を採用できる。ピストン駆動機構は、進退移動するように構成されたプレッサー部材を有しており、その先端には把持構造(不図示)が備えられている。その把持構造でピストン部材の端部を把持し、プレッサー部材を移動させることでピストン部材を移動させる。
なお、本発明においては、プレッサー部材の上記把持構造がピストン部材を直接把持してもよいし、所定の中間部材(アダプタ)を介してプレッサー部材とピストン部材とが連結されてもよい。
注入ヘッド110の前面には、メインアダプタ701を装着するためのアダプタ保持部114が2つ設けられている。このアダプタ保持部114は、図2に示すように、メインアダプタ701の一部が挿入される円形(一例)の保持孔115と、拡径部115a、115bとを有している。拡径部は、前面側から見てその保持孔115の左右両側に位置し径方向外側に張り出すように形成されている。
次に、メインアダプタ701の構造について説明する。
メインアダプタ701は、図1に示すように、一例として、ピストン部材220が引き出された状態でシリンジ200を保持するものである。図2に示すように、メインアダプタ701は、シリンジを受ける半円筒状のシリンジ支持部730と、当該アダプタ701を注入ヘッド110に取り付けるための基端側の取付け部720とを有している。
シリンジ支持部730の内周面の曲率半径はシリンジ200のシリンダ部材210の半径より僅かに大きい程度に設定されている。これにより、シリンダ部材210を安定して保持できるようになっている。シリンジ支持部730の長さは、ピストン部材220が引き出された状態のシリンジ200の全長よりもやや短い程度に設定されている。図3に示すように、シリンジ200をメインアダプタ701に装着した状態では、シリンジ200の先端側がアダプタ701の先端部から突出するようになっている。
図1に示すように、シリンジ支持部730の一部、すなわち、シリンジ支持部730の長さ方向の中心部よりもやや先端寄りの位置には、サブアダプタ300を受け入れるための溝状のアダプタ受入れ部740が設けられている。後述するようにサブアダプタ300は全体として略U字型の部品であるので、アダプタ受入れ部740もそれに対応して略U字型に形成されている。
図2に示すように、メインアダプタ701の基端部に設けられた取付け部720は、上述した注入ヘッド110の保持孔115に挿入される軸部721と、その上下に1つずつ設けられた係止鍔721a、721bとを有している。なお、図2ではメインアダプタ701がその軸線周りに90°回転させた状態で描かれているのでこれらの係止鍔は軸部721の左右両側に位置している。また、図示の都合上、一方の係止鍔721aのみが描かれている。このメインアダプタ701は、取付け部720を保持孔115に挿入し、所定角度回転させることによって注入ヘッド110に固定される。
なお、メインアダプタを注入ヘッドに固定するための方式は、上記に限定されるものではなく、種々の方式を採用しうる。例えば、注入ヘッドの一部にクランパ等が設けられており、このクランパによってメインアダプタを固定する方式であってもよい。上記では、メインアダプタがその長手方向の軸線周りに回転させられることで固定される方式について説明したが、このような回転は必ずしも必要ない。
他にも、次のようなものであってもよい。メインアダプタの一部にフランジが設けられるとともに、注入ヘッドの一部にそのフランジを受け入れる係止溝が設けられている。メインアダプタの上記フランジをその係止溝内にスライド方式で挿入することにより、メインアダプタが注入ヘッドに固定される。
図2に示すように、取付け部720とシリンジ支持部730との境界部分には、輪郭が略円形のフランジ部723が形成されている。このフランジ部723は、注入ヘッド110の保持孔115へのメインアダプタ701の挿入量を規定する役割を果たす。図1に示すように、メインアダプタ701を注入ヘッド110に装着した状態では、このフランジ部723の裏面が注入ヘッド110の前面の一部に当接(面接触)するようになっている。
次に、サブアダプタ300について詳細に説明する。
サブアダプタ300は、シリンダ部材210のシリンダフランジ211を保持するものであり、図1に示したように、全体として略U字型である。具体的には、サブアダプタ300は、図4に示すように、上方に向かって広がるように円弧状にカーブしたベース部材310と、そのベース部材310に固定されたシリンダフランジ211をロックためのフランジロック部材320とを有する。
なお、本形態ではベース部材310およびフランジロック部材320は互いに別部品で構成されているが、これらは一部品で一体に形成されていてもよい。
ベース部材310は、内周面311がほぼ円弧状に形成された部材であり、内周面311の曲率半径は、シリンダフランジ211の外周面の曲率半径よりは小さいが、シリンジ200のピストン220が動かされた際にピストン220が干渉しないような曲率半径とされている。
フランジロック部材320は、内周面321aがほぼ円弧状に形成された円弧状部321を有しており、円弧状部321は、ベース部材310に重ねられている。円弧状部321は、その内縁の曲率中心がベース部材310の内縁の曲率中心と同軸上に位置するように、重ね合わせられている。
なお、本形態では、円弧状部321は全体として円弧状に形成されているが、円弧状部321は、少なくとも内周面が円弧状に形成されていれば、外側面の形状は任意の形状であってよい。
フランジロック部材320は、それが全体としてU字型となるように円弧状部321の両端からそれぞれ上方に向かって延び出した一対のアーム部322、322をさらに有する。各アーム部322は、互いの間隔を変化させることができるように、円弧状部321に対して変位可能に支持されている。ベース部材310へのフランジロック部材320の固定は、円弧状部321でなされている。
円弧状部321の内周面321aの曲率半径は、その内周面321a上でシリンダフランジ211の外周面が支持されるように、シリンダフランジ211の外周面の曲率半径とほぼ等しい。ベース部材310の内周面311の曲率半径(小径)と、フランジロック部材320の内周面321aの曲率半径(大径)とは、それぞれ上記のように規定されている。その結果、ベース部材310とフランジロック部材の円弧状部311との間に段差が形成される。この段差によって形成されたベース部材310の面は、シリンダフランジ211の後面に対向する面330(図4参照)である。
各アーム部322の先端部には、フランジアダプタ300を着脱する際にユーザーによって摘まれる摘み部325が形成されている。摘み部325は、その内向きの面の一部が、円弧状部321の内周面321aの円弧形状の延長上に位置している。
これにより、フランジロック部材320は、全体として、その内側にシリンダフランジ211を受け入れる形状とされている。ロック部材320は、面330とともに、シリンダフランジ211の一部を着脱自在に受け入れる、シリンダフランジ211の形状に対応したフランジ受けを構成する。一対のアーム部322、322は、このフランジ受けに受け入れられたシリンダフランジ211の左右両側に位置する。
また、一対のアーム部322、322が上記形状に構成されている結果、フランジロック部材320は一対のアーム部側がやや狭まった形状となっている。このような構成とすることで、後述するように、使用時におけるシリンダフランジ211のサブアダプタ300からの抜けを防止することができる。
次に、サブアダプタ300が保持するシリンジ200のシリンダフランジ211について説明する。
図5に示すように、このシリンダフランジ211は、基本的には直径Dで形成されているがその左右両側(互いに対向する部分)は平行にカットされている。これにより、シリンダフランジ211の外周縁は、互いに対向する位置に形成された2つのカット部213と、これらカット部213を結ぶ円弧状部212とを有する形状とされている。カット部213間の距離Aは、円弧状部212での直径Dよりも小さい。また、各円弧状部212の外周面には凹部212aが、シリンダフランジ211の中心Oに対して点対称となるように、カット部213に対して90度回転させた位置に形成されている。
再びサブアダプタ300の説明に戻り、図6、図7に示すように、フランジロック部材320のアーム部322は、フランジロック機構としてロック爪323を有する。このロック爪323は、摘み部325から円弧状部321に向かって下方に延び出している。各ロック爪323は、外向きに弾性変位するように摘み部325に支持されており、また、各ロック爪323の先端部には互いに内側に突出した凸部323aが形成されている。
これら凸部323a、323aは、図5に示したシリンダフランジ211の凹部212a、212aに係合する寸法で形成されている。2つの凸部323a間の距離は、シリンダフランジ211のカット部213間の距離Aよりも大きく、かつ、円弧状部212での直径Dよりも小さい。
上記のように構成にされたサブアダプタ300に対して、シリンジのシリンダフランジ211は次のように挿入、保持される。
まず、図8に示すように、シリンダフランジ211のカット部213がロック爪323と対向する姿勢でシリンジ200をサブアダプタ300に挿入する。これにより、シリンジ200はロック爪323と干渉することなく、シリンダフランジ211の円弧状部212がフランジロック部材320の円弧状部321に当接するまでサブアダプタ300に挿入される。
この状態で、シリンダ200をその軸線を中心として90度回転(時計回りまたは反時計回りのいずれでもよい)させる。すると、シリンダフランジ211の円弧状部212がロック爪323に当接してロック爪323を外側に弾性変位させる。最終的に、図9に示すようにロック爪323の凸部がシリンダフランジ211の凹部212aに係合する。これにより、シリンジ200が弾性的にロックされる。
ロック爪323によるシリンジ200をロックする力は、その後のシリンジ200への延長チューブ(不図示)の連結作業等ではシリンジ200が回転しないが、ロック爪323と凹部212aとの係合を解除するためにユーザーがシリンジ200を回転させる場合には、適度な力で回転させることができるような力とされることが好ましい。
次に、図10、図11を参照してアダプタ受入れ部740の内部構造について説明する。なお、図10および図11は、矢印方向をシリンジの先端側として示している。
アダプタ受入れ部740は、これらの図に示すように、サブアダプタ300の挿入をガイドするためにその両側にガイド溝717、717を有している。各ガイド溝717は、サブアダプタ300の挿入方向(図1における上下方向)に延びている。具体的には、当該挿入方向に延びた2つのリブ715、716をアダプタ受入れ部740の内面に形成することにより、それらの間に溝が形成されている。
一方、図7に示すように、サブアダプタ300のベース部材310には、上記のガイド溝717に挿入されるリブ312が、ベース部材310の幅方向両側に形成されている。
図6に示すように、フランジロック部材320の各アーム部322の外側には係合爪324が形成されている。サブアダプタ300のそのような係合爪324に対応して、図10、図11に示すように、アダプタ受入れ部740内の両側には係合爪718(係止部)が1つずつ設けられている。
係合爪324および係合爪718は、サブアダプタをメインアダプタにロックするための構造部(アダプタ固定機構)である。サブアダプタ300がアダプタ受入れ部740の所定位置まで挿入されたときに、係合爪324と係合爪718とが互いに係合する。
サブアダプタの係合爪324とアダプタ受入れ部の係合爪718との係合・解除は、次のような構成によって達成される。少なくとも係合爪324が形成されたフランジロック部材320の部分が互いに内向きに男性変位可能に支持されていること、好ましくは前述のようにアダプタ300の各アーム部322が互いに内向き(図6の白抜き矢印参照)に弾性変位可能に支持されていること。
この弾性変位のために、本形態では、フランジロック部材320全体を、係合爪324 がアダプタ受入れ部740の係合爪718に係合可能に弾性変形する程度の弾性を有する材料で形成している。このような弾性を有する材料としては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ABS等の樹脂材料、およびリン青銅等の金属材料が挙げられる。
フランジロック部材320全体を弾性材料で形成することで、前述した、ロック爪323の弾性変位機能も同時に達成することができる。そのため、フランジロック部材320を一部品で構成することができ、フランジロック部材320の構造が簡単になる。
なお、本形態のように係合爪324がアーム部322に形成されている場合は、フランジロック部材320のアーム部322のみを弾性材料で構成することもできる。あるいは、アーム部322を他の部分に対してバネ等により弾性的に付勢された別部品として構成してもよく、この場合は、各部品の材料は特に制限されない。
何れの場合でも、アダプタ受入れ部740に挿入されたサブアダプタ300をそこからから取り出す際には、両側の摘み部325、325を摘んでアーム部322、322を互いに内側へ変位させ、係合爪324と係合爪718との係合を解除させる。
必要以上にアーム部322、322を内側に撓ませるとフランジロック部材320が破損してしまうおそれがある。
そこで、本形態では、図12の拡大図に示すように、アーム部322の内側への変位量を制限する構造が設けられている。すなわち、ベース部材310およびフランジロック部材320のそれぞれに、互いに間隔をあけて対向配置された当接面313、327が、ストッパ構造として形成されている。アーム部322を内側(図10においては左側)へ変位させると、両当接面313、327が互いに当接し、アーム部322はそれ以上変位しない。これによって、アーム部322の過度の変位による破損が防止される。
アーム部322には、傾斜リブ326が形成されている。この傾斜リブ326は、ベース部材310に形成されたリブ312の延長上で、かつ、シリンダフランジ300がアダプタ受入れ部740に挿入されたときにガイド溝717の上端部に相当する位置に設けられている。傾斜リブ326は、リブ312から離れた側の端部が、図10に示したリブ715、717のうち内側のリブ715に接近するように傾斜している。サブアダプタ300がアダプタ受入れ部740に挿入された状態でアーム部322を内側へ変位させると、傾斜リブ326の内側の面がリブ715の上端部に当接する。
なお、図12では一方のアーム部322のみを示しているが、もう一方のアーム部322についても同様に構成されている。
次に、上述したサブアダプタ300を用いた、注入ヘッド110へのシリンジ200の着脱動作を説明する。
ユーザーは、まず、サブアダプタ300の両側の摘み部325、325を持って、サブアダプタ300をメインアダプタのアダプタ受入れ部740に挿入する。アダプタ受入れ部740へのサブアダプタ300の装着(ロック)は、アダプタ受入れ部内の係合爪118と、サブアダプタの係合爪324との係合によりなされる。
サブアダプタ300をメインアダプタ701に装着するためには、上記の通り、サブアダプタ300をアダプタ受入れ部740に挿入するだけ良いので、極めて簡単である。
サブアダプタ300をアダプタ受入れ部740に挿入する際、サブアダプタのリブ312がアダプタ受入れ部740内のガイド溝717によってガイドされるので、挿入をスムーズに行なうことができる。
さらに、サブアダプタ300にリブ312が形成されているので次のような利点も得られる。すなわち、サブアダプタ300の向きを前後逆向きとした場合にはこのリブ312が邪魔になりサブアダプタ300をアダプタ受入れ部740に挿入できない。よって、サブアダプタ300を誤った向きで装着することが防止される。
サブアダプタ300の装着後、ユーザーは、そのサブアダプタ300にシリンジ200を装着する。シリンジ200の装着は以下のようにして行う。
まず、図8に示すように、ユーザーは、サブアダプタ300内に、シリンダフランジ211の円弧状部212がフランジロック部材320の円弧状部321に当接するまでシリンジ200を挿入する。このとき、シリンダフランジ211の左右のカット部213、213をロック爪323、323と対向させた姿勢でシリンジ200を挿入することで、シリンジ200をスムーズに挿入することができる。
次いで、ユーザーは、シリンジ200をその軸線を中心として回転させる。前述したように、本実施形態では、シリンジ200をメインアダプタ701にセットした状態でシリンジの先端側(この例では、シリンダ部材の全長の半分程度)がメインアダプタの先端よりも突出するように構成されている(図3参照)。したがって、ユーザーは、この突出したシリンジの部分をつかんでシリンジを回転させることができる。
その一方で、シリンダ部材210の残りの部分は、メインアダプタ701の半円筒状のシリンジ支持部730によって支持されている。したがって、ユーザーは、シリンジ200をその軸線周りに正確に回転させることができる。なお、曲率半径が互いにほぼ等しいシリンダフランジ211の円弧状部212とフランジロック部材320の円弧状部321とが当接していることによっても、上記のような、シリンジ200の軸線周りの正確な回転が実現される。
シリンジ200の回転によりシリンダフランジ211の円弧状部212がロック爪323と対向する位置に来ると、ロック爪323は円弧状部212に押されて外側に弾性変位する。シリンジ200をさらに回転させ、図9に示すように、シリンダフランジ211の凹部212aがロック爪323の先端の凸部と対向する位置に達すると、ロック爪323は復帰し、ロック爪323はシリンダフランジ211の凹部212aに係合する。これによってシリンジ200がロックされ、サブアダプタ300に保持される。
シリンジ200のロックは、ロック爪323と凹部212aとの係合によってなされ、その係合時のクリック感によって、ユーザーは、正常なセットを確認できる。例えば注入ヘッド110が高い位置にありシリンジ200のロックを目視で確認にしくいような状況においても、ユーザーは、クリック感で、シリンジ200がロックされたことを確実に認識できる。
上記のようにしてシリンジ200が保持されることによって、注入ヘッド110へのシリンジ200の装着が完了する。
サブアダプタ300からのシリンジ200の取外しは、上述した一連の動作と逆の動作でよい。すなわち、ユーザーは、まず、シリンジ200を回転(上記と同じ回転方向でもよいし、逆方向でもよい)させることによって、ロック爪323とシリンダフランジ211との係合を解除する。次いで、その状態(図8参照)で、シリンジ200をサブアダプタ300から引き上げる。
以上説明した本実施形態のシリンジ保持構造700によれば、メインアダプタ701とサプアダプタ300とを介して、シリンジ200を注入ヘッド110に良好に保持させることができる。
メインアダプタ701とサブアダプタ300とが一体化されたような1つのアダプタを利用するのではなく、本実施形態のように2つのアダプタ701、300を組み合わせてシリンジを保持する構成によれば、次のような利点がある。すなわち、1つのアダプタの全体を交換するのではなく、サブアダプタ300を交換するだけで種々のタイプのシリンジに対応することができる。そのため、メインアダプタを幾つも作る必要がなくコストの面で有利である。しかも医療現場に多数のメインアダプタを用意しておく必要もないので保管場所を無駄にとることもない。
また、このサブアダプタ300の装着・取外しは、上記のとおり、サブアダプタ300をメインアダプタのアダプタ受け部740に対して抜き差しする動作で行うことができるので、非常に簡単である。
一方、図3に示すようにシリンジ200が装着された状態からそのシリンジを取り外すには、シリンジ200をその軸線周りに回転させる必要がある。そのため、シリンジ200が意図せずに外れてしまうことを防止できる。
本実施形態のサブアダプタ300の利点としては、次のようなものも挙げられる。すなわち、前述したように、アーム部322には傾斜リブ326が形成されており、傾斜リブ326は、アーム部322を内側に変位させることによって、アダプタ受入れ部740に形成されたリブ715の上端部に当接する。このとき傾斜リブ326がリブ715から受ける力により、サブアダプタ300には、サブアダプタ300がアダプタ受入れ部740から脱する方向である、図12において上向きの力が作用する。よって、アーム部322を内側に変位させると、サブアダプタ300がアダプタ受入れ部740から浮き上がり、サブアダプタ300を取り出し易くなる。
また、前述したように、アーム部322の摘み部325は、その内向きの面の一部が、シリンダフランジ211の直径に対応する曲率半径を有する円弧状部321の円弧形状の延長上に位置している。すなわち、フランジロック部材320の内側にシリンダフランジ211が受け入れられた状態では、摘み部325の内向きの面の一部がシリンダフランジ211の外周面と干渉する。このような構成では、係合爪324と係合爪118との係合を解除することができるまでアーム部322を内側(互いに接近する向き)へ変位させることができない。つまり、この状態では、アーム部322の摘み部325が、アダプタ固定機構(324、718)によるサブアダプタのロックが解除されるのを禁止する解除禁止機構として機能する。
このような構成によれば、サブアダプタ300にシリンジ200が保持されている状態(例えば薬液注入時)では、サブアダプタをメインアダプタから取り外すことはできない。そのため、薬液注入中に不意にサブアダプタが外れてしまうこともない。
〔第2の実施形態〕
図13〜図15に、上記実施形態とは異なるサイズのシリンジに対応したサブアダプタ400を示す。以下、本形態のサブアダプタ400について、前述した形態と同様な点は説明を省略し、異なる点を主に説明する。
このサブアダプタ400は、一例として100mlタイプのシリンジ200′(図15参照)に対応したものである。サブアダプタ400は、前述した形態と同様、ベース部材およびフランジロック部材を有している。サブアダプタ400は、メインアダプタ701のアダプタ受入れ部740(図1参照)に着脱自在に装着することができる。装着のためにアダプタ受入れ部740と対応する構造については、前述した形態と同様である。
このサブアダプタ400は、第1の実施形態のシリンジよりも小径のシリンジ(図15参照)を保持する。小径のシリンジ200′をメインアダプタのシリンジ支持部730に装着しようとすると、そのシリンダ部材が小径であるためにシリンジ支持部730から浮き上がってしまう。そこで本形態では、シリンダを支持するシリンダ支持部414をベース部材に一体に形成している。
シリンダ支持部414は、注入ヘッド110に装着したときに注入ヘッド110の凹部114上に延びる略半円筒形状に形成されている。また、シリンダ支持部414の内周面の半径は、保持するシリンダの外周面の半径とほぼ等しい。これによって、小径のシリンジを注入ヘッド110に安定して支持することができる。
ベース部材には、図13に示すように、面430に間隔をあけて対向する2つの板状部415、415が、ベース部材の幅方向両側に形成されている。面430と板状部415との間隔はシリンダフランジの厚みよりも大きい。これにより、面430と板状部415との間にシリンダフランジを保持することができる。ベース部材に板状部415が形成されることに伴い、シリンダフランジ400を注入ヘッドに装着する際のガイドとなるリブ412は板状部415の外壁面に形成されている。
この板状部415に対応して、フランジロック部材にも、面430と間隔をあけて対向する2つの板状部428が、フランジロック部材の幅方向両側に形成されている。それに伴い、傾斜リブ426が板状部428の外壁面に形成されている。
さらに、これら板状部415、428は、アーム部422が過度に変位しようとしたときに互いの端面同士が当接し、アーム部422の過度の変位を防止するストッパとしての機能も果たすように形成されている。
フランジロック機構であるロック爪423は、円弧状部において弾性変位可能に支持され、そこからその円弧形状に沿ってアーム部422に向かって延びている。このように、フランジロック機構の形態は前述したサブアダプタ300のフランジロック機構と異なっているが、その機能およびシリンジの着脱動作は同様である。
なお、本形態のフランジロック機構を前述したサブアダプタ300のフランジロック機構に適用することもできるし、その逆も可能である。
以上のように、形状の異なるシリンジに応じた複数種類のサブアダプタ300、400を用意することで、メインアダプタ701対して各シリンジを装着することができる。しかも、メインアダプタに対するサブアダプタのロック機構は各アダプタ300、400とも共通であるので、シリンジをしっかりと保持でき、かつ、シリンジの着脱が容易である。
さらに、本形態では、いずれのサブアダプタ300、400においても、(i)シリンダフランジ部分をアダプタ内に挿入し、(ii)その後、その位置でシリンダを軸線周りに90°回転させる、という共通の方式で、シリンジのサブアダプタへの装着が実施される。例えば100mlタイプのシリンジと、200mlタイプのシリンジとで装着方式が異なっている場合、ユーザーは両方の装着方式を覚える必要があり、使い勝手が良くないことがある。これに対して、本発明によれば、各シリンジを共通の方式で装着することができるので、使い勝手が良い。しかも、シリンジ装着時の人為的なミスの発生も低減できる。
〔アダプタ識別部材〕
複数種類のサブアダプタ300、400等を用いる場合、どのサブアダプタが装着されているか、言い換えると、どのシリンジが装着されているか等を容易に識別できるようにすると便利である。そのため、サブアダプタの種類を識別するのに用いるアダプタ識別部材を備えることが好ましい。
サブアダプタは、アダプタ識別部材として最大で4つの被検出物を有することができるように構成されており(詳細後述)、その被検出物の数、位置、材料および取り付け方の少なくとも1つがアダプタの種類ごとに異なっている。
一方、注入ヘッド側(正確には、メインアダプタ側)には、被検出物を個々に検出する少なくとも1つのセンサを有している。センサは、シリンジアダプタが装着された状態において被検出物が取り付けられることができる位置と対向する位置に設けられる。センサが検出した被検出物の組合せから、どのサブアダプタが装着されているかを識別することができる。また、何れの位置においても被検出物が検出されなければ、サブアダプタが装着されていないと判断する。
なお、被検出物の位置および数は特に限定されず、装着されるサブアダプタの種類に応じて適宜設定することができる。例えば、サブアダプタの種類が少なければ、それだけ少ない数の被検出物とすることができる。サブアダプタの種類が多く、4つの被検出物だけでは対応できない場合は、被検出物の数を4つ以上とすることもできる。
アダプタ識別部材は、金属やプラスチックなど種々の材料で構成することができる。アダプタ識別部材を検出するセンサとしては、サブアダプタが適切に装着されたときにアダプタ識別部材を検出できる任意のセンサを用いることができる。
特に、物体の有無や位置を非接触で検出する近接センサを好ましく用いることができる。代表的な近接センサは、磁気を検出媒体として物体の有無や位置を検出する。近接センサが検出する磁気の種類としては直流静磁界および交流磁界がある。
(1)センサとして直流磁界を検出媒体とする近接センサを用いる場合、アダプタ識別部材としてはマグネットを用いることができる。マグネットを検出できる近接センサとしては、磁気抵抗素子やホール素子などの半導体磁気センサ、およびフラックスゲート型センサ、MR(Magneto−Resisutive)素子、MI(Magneto−Impedance)素子などの強磁性体磁気センサを用いることができる。
直流静磁界を検出する近接センサは、マグネットの極性を検出する。そこで、アダプタ識別部材として少なくとも1つのマグネットを、個々の極性の向きがサブアダプタの種類ごとに異なるように配置する。センサがマグネットの極性を検出するようにすることで、検出したマグネットの極性の組み合わせから、どのサブアダプタが装着されているかを識別することができる。ただし、この場合は、センサがマグネットの極性を検出することから、作業ミスによりマグネットの極性を逆にして取り付けてしまった場合には正常な検出ができなくなってしまう。
(2)交流磁界を検出媒体とする近接センサは、アダプタ識別部材として金属を用いることができ、上記のような作業ミスによる問題は生じない。また、交流磁界を検出媒体とする近接センサは、直流静磁界を検出媒体とする近接センサと比べて、アダプタ識別部材を検出できる距離が小さいため、サブアダプタが正規の位置に装着されたことをより正確に検出することができる。よって、本発明においては、アダプタ識別部材を検出するセンサとして、交流磁界を検出媒体とする近接センサを用いることが好ましい。
交流磁界を検出媒体とする近接センサは、コイルを有し、このコイルに交流電源から一定の交流電流を流して金属(アダプタ識別部材)に交流磁場を与えるとその金属に渦電流が発生することを利用する。金属に発生した渦電流は磁界を生じ、コイルに誘起電圧が発生する。結果的に、コイルに金属を接近させると、コイルに流した電流に対するコイルに生じた電圧の比であるコイルのインピーダンスが変化し、近接センサはこのインピーダンスの変化を利用して金属を検出する。
この種の近接センサは、シングルコイル式と、複数のコイルを有するマルチコイル式とに大別することができる。シングルコイル式では、1つのコイルが、アダプタ識別部材に交流磁界を与える励磁コイルとしての機能と同時に、アダプタ識別部材から発生した渦電流磁界を検出する検出コイルとしての機能を併せ持つ。
シングルコイル式の近接センサの種類としては、高周波発振型およびフィルタ型が挙げられる。高周波発振型の近接センサは、検出コイルを発振回路の一部に組み込み、そのインピーダンス変化に応じて発振振幅や発振周波数の変化を検出する。フィルタ型の近接センサは、検出コイルをLCまたはLRのフィルタ回路の一部に組み込み、検出コイルのインピーダンス変化によってフィルタ特性が変化することを利用する。
マルチコイル式の近接センサの種類としては、ダブルコイル型、差動コイル型およびホークコイル型が挙げられる。
ダブルコイル型の近接センサは、同じ構造の2つのコイルを用いる。その一方を検出コイルとしてアダプタ識別部材に接近させ、他方を基準コイルにしてアダプタ識別部材の影響を受けないように配置する。2つのコイルを同じ条件で励磁して誘起電圧の差を比較すれば、検出コイルはアダプタ識別部材の接近の影響を受けるため、両者の誘起電圧の差が、アダプタ識別部材の接近によるものであるということになる。検出回路の方式としては、2つのコイルでインピーダンスブリッジを構成し、これを固定発振器で励磁して、不平衡電圧の振幅や励磁電流に対する位相を検出する方法が一般的である。あるいは、ブリッジ回路から得られた不平衡電圧を増幅してブリッジ回路の励磁側に帰還し、回路を発振させてその振幅を検出する方法もある。
差動コイル型の近接センサは、一般的には、励磁コイルの両側に検出コイルを対称の位置に配置し、検出コイルの端子を直列逆極性に接続して検出出力端とする。励磁磁束は検出コイルに等しい誘起電圧を発生するため、励磁磁束による誘起電圧はキャンセルされ、ダブルコイル型と同様、渦電流が作る磁束による誘起電圧だけを取り出すことができる。あとは、ダブルコイル型と同様に、検出コイルの端子の出力電圧の振幅や位相を検出したり、検出コイルの端子の電圧を増幅して励磁コイルに帰還し、発振させたりすればよい。
ホークコイル型の近接センサは、励磁コイルと検出コイルを対向配置して磁気結合を作っておき、その間にアダプタ識別部材を挿入することによって検出コイルに生じた誘起電圧の振幅や位相の変化を検出する。
以上、交流磁界を検出媒体として非接触で金属を検出することのできる種々の近接センサについて説明した。本発明ではこれらのいずれも利用可能である。金属を検出することのできる近接センサを用いた場合、アダプタ識別部材は、全体が金属で構成されていてもよいし、一部が金属で構成されていてもよい。
アダプタ識別部材のサイズおよび形状は、サブアダプタの装着の妨げにならなければ任意とすることができる。好ましくは、アダプタ識別部材はボールプランジャであってよい。
アダプタ識別部材としてボールプランジャを用いる場合、ボールプランジャは、そのボールの一部を、サブアダプタの表面から突出させて取り付けられるのが好ましい。一方、アダプタ受けには、アダプタ受けにサブアダプタが装着された状態でボールプランジャと対向する位置に、近接センサを収容する凹部または貫通孔が設けられる。この凹部または貫通孔に、ボールプランジャのボールが係合するように構成することが好ましい。これにより、アダプタ受けに対するサブアダプタの補助的なロック機能をアダプタ検出手段に持たせることができる。
近接センサは、例えば、アダプタ受けに形成された凹部または貫通孔内に配置することができ、その場合、近接センサは、凹部または貫通孔内に圧入によって保持されてもよいし、ねじ込み式で保持されてもよい。近接センサをねじ込み式で保持することにより凹部または貫通孔内での近接センサの位置調整、および近接センサの交換のための取外しを容易に行うことができる。また、凹部または貫通孔は、樹脂で充填されてもよい。これにより、近接センサの防水性が高まり、薬液等が付着した場合に近接センサが故障するおそれを低減することができる。
図16の例では、物体の有無や位置を非接触で検出する近接センサ846が設けられる。近接センサ846は、一例で、メインアダプタ701のアダプタ受入れ部740の一部(貫通穴841b)に設けられていてもよい。
サブアダプタ300には、その近接センサ846によって検出されるアダプタ識別部材847が配置される。アダプタ識別部材847は、一例で、貫通穴842bに設けられている。
なお、本発明においては、上記のような近接センサ(一例)を利用して、注入ヘッドの所定位置にメインアダプタが取り付けられたか否かを検出する構成を採用することも可能である。この場合、例えば、メインアダプタに上述したような識別部材が取り付けられるとともに、注入ヘッドに近接センサ等の検出器が設けられていてもよい。
他の形態としては、例えばRFIDタグ(一例)およびその検出器等を利用して、メインアダプタの有無の検出等(当該アダプタが所定位置に取り付けられているか否かの検出であってもよい)が実施されてもよい。この場合、RFIDタグ等の他にも、例えばバーコードおよびそれを検出する検出器が用いられてもよい。
また、他の形態としては、例えば、メインアダプタにRFIDタグ等のリーダ(検出器)が設けられていてもよい。このリーダは、シリンジに設けられたRFIDタグ等を読み込むためのものである。このようなリーダをメインアダプタに設けることで、本発明のようにメインアダプタを利用する構成においてもシリンジのRFIDタグ等の情報を良好に読み込むことができる。
このリーダに電源を供給する方式は、特に限定されるものではないが、一例として次のようなものであってもよい。すなわち、メインアダプタの一部に電気的接点(この電気的接点はリーダと電気的に接続される)が設けられる。メインアダプタを注入ヘッドに搭載するとこの電気的接点がヘッド側の所定の電気的接点に当接する。電気的接点どうしが当接することにより、注入ヘッド側からリーダへと電源が供給される。
以上、本発明について、代表的な実施形態を例に挙げて説明したが本発明は上述した実施形態に限られるものではない。
例えば、サブアダプタは、保持するシリンジのシリンダフランジの形状やサイズ等に対応して、フランジ受けおよびフランジロック機構の構造およびサイズ等を適宜変更することができる。上記のサブアダプタは、空のシリンジに薬液を充填するための薬液充填装置に適用することもできる。
上記実施形態では、サブアダプタの左右一対のロック爪をシリンダフランジ外周の凹部212a、212aに係合させてフランジをロックする機構について説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、サブアダプタ内に入れられたシリンダフランジが所定角度回転したところでそのシリンダフランジをロックすることができるものであれば、その構造は特に限定されるものではない。
〔フランジロック機構の他の例1〕
フランジロック機構は、下記に説明するロック機構A50のようなものであってもよい。
図17に示すように、このシリンジA10は、ピストン部材(不図示)がスライド自在に挿入される円筒状のシリンダ部材A11を有している。このシリンジA10自体は従来公知のものである。シリンダ部材A11の基端付近には、径方向外側に張り出した略円盤状のフランジA16が形成されている。
図17(a)に示すように、フランジA16の左右両側は縦方向にカットされている(カット部A17、A17)。
フランジA16には、シリンジの基端側の面であって各カット部A17の近く位置に、一対のフランジリブA19、A19が設けられている。図17(a)に示すように、1つのカット部A17において、フランジリブA19、A19はカット部A17の両端(上下両端)に1つずつ設けられている。フランジリブA19の先端間の寸法d1は一例として約14mmである。
図17(a)に示すように、各フランジリブA19は横方向(カット部A17に直交する方向)に延びている。上側のフランジリブA19の側面A19aと、下側のフランジリブの側面A19bは、径方向外側にいくにつれて互いの間隔が狭まる傾斜面となっている。
図17(b)に示すように、各フランジリブA19は、フランジA16の厚み方向に突出している(図17(b)参照)。
図18は、本実施形態のシリンジロック機構A50を示す斜視図である。図19は、図18のロック機構A50の正面図である。図20は図18のロック機構の右側面図および左側面図であり、図21は図18のロック機構の平面図および下面図である。
図18に示すように、このシリンジロック機構A50は全体として略U字形状に形成されている。ロック機構A50は、略U字形状のフランジ受け溝A77を有し、この溝A77でシリンジA10のフランジA16を保持する。
このロック機構A50は、例えば、注入ヘッドの一部として一体に設けられていてもよいし、注入ヘッドの一部(図1の受入れ部740に相当)に対して、取外し可能に装着されるように構成されていてもよい。一例として、ロック機構A50は、図18の手前側が注入ヘッドA1の前方側となる向きで配置される。
図18に示すように、このロック機構A50は、U字形状の下半分を構成する(正確には、下半分のうちさらに厚み方向の奥側略半分を構成する)円弧形状のベース部材A51と、該部材A51に重なるように手前側に取り付けられたU字形状の可動部材61とを有している。
両部材は、可動部材A61の下部に設けられた2つのビス孔A68、A68のところでビス止め(一例)され互いに固定されている。
可動部材A61は、大別すると、2つのビス孔A68付近の一定範囲を占める固定部A61Aと、その固定部A61Aの両側から上方に延び出した一対のアーム部A67、A67とを有している。
一対のアーム部A67、A67は、弾性的に撓んで縮拡径するように構成されている。例えば、両アーム部A67、A67の先端を指で摘んで互いに近づけることにより、アーム部A67、A67は内側に弾性変形する。指を離すことにより元の形状に復元する。逆に、内側から、径方向外向きの力を受けた場合には、各アーム部A67、A67は外側に弾性変形する。
各アーム部A67の上端には、フランジA16をロック機構内に誘導しやすいように上方に向かってなだらかに広がるガイド部A66が形成されている。特に、本実施形態では、このガイド部A66がフランジの厚み方向(手前奥方向)および横方向に十分大きく形成されているので、フランジをロック機構内に入れ易い。
ベース部材A51および/または可動部材A61の材質としては、例えば、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ABS等の樹脂であってもよい。また、リン青銅等の金属材料であってもよい。両部材がいずれも樹脂材料または金属材料であってもよいし、一方のみが樹脂材料で他方が金属材料であってもよい。
図18に示すように、一対のアーム部A67、A67および固定部A61Aの内側は、全体として略U字状のフランジ受け溝A77となっている。
図18では、このフランジ受け溝A77の奥側の面のみが存在し、手前側の側面が存在しない構成が描かれている。ここで、手前側の側面は、注入ヘッド側に予め設けられた面であってもよく、この注入ヘッド側の面と、図18の可動部材等の内面とが共同して、全体として略U字状のフランジ受け溝A77(断面凹型)を構成するようになっていてもよい。
特に、手前側の面が、例えば金属製で十分な剛性を持った部材に形成された面である場合、薬液注入時にフランジA16が手前側に押し付けられたとしても部材の変形や破損等が生じにくく、該フランジA16を良好に受けることができる。
図18に示すように、フランジ受け溝A77の底部には水平な平坦面(受け面)A63が形成されている。この平坦面A63は、後述するように、フランジの外周部が押し付けられて摺動する面である。
図19に示すように、アーム部A67の内周は2つ(一例)の円弧部分を有している。そのうちの一方は、平坦面A63の左右端部から上方に向かって延び出した円弧部分68aであり、この円弧の曲率半径はシリンジのフランジ16の半径とほぼ同じである。円弧部分A68aは、平坦部A63の端部から、図19の水平線L1と交差する点付近まで延びている。なお、L1は、円弧部分A68aの中心(フランジ受け溝A77の円弧中心ともいう)O1を通る水平線である。
アーム部A67の内周を構成する他方の円弧部分は、円弧部分A68aの上端からさらに上側に延び出した円弧部分A68bである。この円弧部分A68bは、水平線L1付近から、さらに所定角度αだけ上に延びている。左右両側の円弧部分A68b、A68bが上側に延び出しているため、アーム部A67、A67間の寸法は水平線L1から上に行くにつれて徐々に狭くなっている。
一例として、アーム部A67、A67の先端間の寸法d3は、フランジの直径d0(図17参照)よりも短く、かつ、カット部間の寸法d2よりも長い。このように構成されていることで、フランジA16を横向きにした状態では溝A77内にフランジA16を挿入することはできず、一方、フランジA16を縦向きにした状態で溝A77内にフランジA16に挿入できるようになっている。
この円弧部分A68bは(図19参照)、後述するように、シリンジのフランジA16の外周に当接して該フランジを略下向きに押し付ける働きをする部分である。これを実現するために、一例として、円弧部分A68bの曲率半径がフランジA16の半径よりも小さく形成されている。あるいは、フランジA16と同じ曲率半径であるがその中心点がO1よりも下に設定されていてもよい。
後述するように、受け溝A77内でシリンジのフランジA16を回転させたときに、フランジA16の外周と円弧部分A68bの内周とが当接する。そして、フランジA16を回転させるにつれてアーム部A67が押し広げられ、その反力を受けて、フランジA16が略下向きに押し付けられることとなる。
再び図18を参照して、平坦面A63の両端のやや上には、一対のガイドリブA55、A55が設けられている。ガイドリブA55、A55は、ベース部材A51の一部に設けられており、ベース部材51の厚み方向に突出している。
このガイドリブA55は、図19に示すように、フランジ受け溝A77の内側に向かってなだらかにカーブした(内側がより低くなる)リブ上面A55aと、該リブ上面A55aの内側の端部から斜め下向きに延び出した傾斜面A55bと、を有している。
リブ上面A55aは、後述するように、シリンジのフランジリブA19の先端が当接してその先端が摺動する曲面である(図23(e)も参照)。傾斜面A55bは、各フランジリブA19の側面(図17の符号19a、19b参照)とほぼ同じ角度に傾斜している(図23(f)参照)。
次に、図22、図23を参照して、以上のように構成された本実施形態のロック機構におけるシリンジの装着手順について説明する。
なお、図22、図23では、ロック機構A50の主要な構造部とフランジリブA19等との関係が分かり易いように、不要な部分を省略してやや模式的に示している。図22、図23は、ロック機構A50を図18の手前側から見た図である。これらの図では、分かり易いように、フランジA16とフランジリブA19とがいずれも実線で描かれている。しかし、実際には、フランジリブA19はフランジA16よりも奥に存在している。また、図示を簡素化するため、フランジリブA19、A19についても、片側のカット部A17のものだけを描いている。
なお、以下では、シリンジを時計回りに回転させてロックする例について説明するが、本実施形態のロック機構では、シリンジを半時計周りに回転させてロックすることも可能である。
先ず、図22(a)に示すように、フランジA16のカット部A17、A17が左右に位置するような姿勢で、フランジA16を縦向きにフランジ受け溝A77内に挿入する。
この際、フランジ16の寸法d2(図17参照)がアーム部A67、A67間の寸法d3より小さいので、アーム部A67、A67は特に押し広げられたりすることなく、フランジA16が溝A77に挿入される。
次いで、図22(b)に示すように、シリンジを、フランジA16の外周がロック機構A50の平坦面A63に当接するまで下方に移動させる。図22(b)の状態では、シリンジA10の中心O2は、フランジ受け溝A77の中心O1よりも数mm高いところに位置している。
なお、図22(b)では、フランジA16の輪郭とガイドリブA55の輪郭とが若干重なって描かれているが、両構造部はシリンジの軸方向(紙面方向)に位置をずらして設けられているため(図18参照)、互いに干渉することはない。
次いで、図22(c)に示すようにシリンジA10全体を時計回りに回転させる。図22(b)の状態(0°)から、フランジA16が第1の角度だけ回転すると、各アーム部A67の内周先端P1がフランジA16の外周の円弧部分に乗り上がり当接する。
この状態では、各アーム部A67は外側にやや押し広げられて弾性変形する。これにより、図中の矢印B1、B2で示すように、フランジA16に略下向きの力(下向きの成分を含む力を意図する)が付与される。その結果、フランジA16の外周(円弧部分)が平坦面A63に押し付けられる。
続いて、図23(d)〜(e)の状態について説明する。なお、図23(d)、(e)ではフランジA16の外周とアーム部A67とが一部重なって描かれているが、実際には、アーム部A67はフランジA16によって外側に押し広げられている。
図22(c)の状態から図23(d)の状態にかけて、シリンジA10をさらに時計回りに回転させる。この際、フランジA16は、その外周の円弧部分が平坦面A63上で摺動する。シリンジ10の回転中心は点O2である。
そして、フランジ16が図23(d)に示すような第2の角度まで回転すると、一対のフランジリブA19のうち右側のフランジリブA19の先端が、ガイドリブA55の上面A55aに当接する。
なお、上記説明から明らかなように、本実施形態において「第1の角度」とは、フランジの外周とアーム部(付勢手段)と当接することによって該アーム部を押し広げ、その反力として、フランジに略下向きの力が付与され始める角度をいう。「第2の角度」とは、フランジリブとガイドリブ(係合手段)とが当接し、係合し始める角度をいう。
再び図22、図23を参照し、図22(c)の状態から図23(d)の状態にかけて、シリンジは点O1よりも高い位置に設定された点O2周りで回転するようになっている。これにより、シリンジを時計回りに回転させたときに最初の(図示左側の)フランジリブA19はガイドリブA55に当たることはない。シリンジが、図23(d)の状態まで回転したときにはじめて、最後の(右側の)フランジリブA19がガイドリブA55に当接する。
このように本実施形態によれば、複数のフランジリブのうち最後のフランジリブA19のみがガイドリブA55に当接し、該リブA19がガイドA55から外れるときのクリックのみが得られるようになっている。したがって、シリンジが確実にロックされたことを確認しやすく、また、他のリブA19がガイドリブA55と干渉することにより、回転の際の感触が悪くなること等も防止できる。
この第2の角度からさらに回転させると、図23(e)に示すように、フランジリブA19の先端がガイドリブA55の上面A55aを滑るように移動し、その際のガイド作用によって、シリンジA10全体が一時的に僅かに上に持ち上がる。
次いで、図23(f)に示すように、最初の状態から約90°回転させたところ(第3の角度)までシリンジを回転させる。すると、フランジリブA19の先端がガイドリブの上面A55aから外れ、一対のフランジリブA19、A19が一対のガイドリブA55、A55の間に落ち込む。このようにして、シリンジ全体の位置も下方に下がり(この例では、シリンジの中心O2と、フランジ受け溝A77の中心O1とがほぼ重なる)、シリンジのフランジA16がロック機構A50に固定される。
なお、図23(f)の状態では、各ガイドリブA19、A19の先端が、ロック機構の平坦面A63上に当接している。図23(f)の状態では、また、左右のアーム部A67の先端P1がフランジA16の外周(円弧部分)に略当接している。
2つのフランジリブA19、A19が一対のガイドリブA55、A55の間に落ち込む際にクリック感が得られる。このため、作業者は、シリンジが確実にロックされたかどうかを知ることができる。
ところで、図24に示すように注入ヘッドA1は、比較的高さのある可動式スタンドA2の上に保持されることもある。この場合、例えば座って作業をしているオペレータや背の低いオペレータではシリンジが装着されるロック機構部分を視認しにくいことがあった。これに対して、本実施形態によれば、シリンジが確実にロックされたかどうかをクリック感で知ることができるので、シリンジの取付けミスの発生を低減させることができる。
シリンジ10を取り外す場合には、図23(f)の状態でシリンジA10を回転させればよく、回転方向も特に限定されるものではない。シリンジを回転させると、フランジリブA19の一方がガイドリブA55の傾斜面A55bをせり上がって上面A55aに乗り上がり、これにより、一対のフランジリブA19、A19と一対のガイドリブA55、A55との係合が解除される。その後、フランジA16が縦向き(図22(a)参照)となるまでシリンジA10を回転させることによって、フランジA16を受け溝A77から取り外すことができる。
なお、シリンジが図23(f)のようにロック機構A50に固定された後、該シリンジの先端に三方活栓や薬液チューブが取り付けられる作業が行われることがある。この作業中にシリンジに加わる回転力によってシリンジが外れてしまわないように、シリンジを外すために必要な回転力はある程度高めに設定されていることが好ましい。
以上説明したように本実施形態のロック機構によれば、シリンジのフランジに形成されたフランジリブを利用して、フランジ受け溝内にフランジを挿入してシリンジ全体を90°ひねるという簡単な作業でシリンジの固定を行うことができる。また、シリンジを取り外す場合も、固定されている状態のシリンジをひねるだけで取外しを行うことができるので非常に簡単である。
(変形例)
上記ロック機構にロックすることができるシリンジのタイプは、図25に示すように、フランジA116のカット部A117付近にフランジリブA119が3本以上(この例では5本)形成されたものであってもよい。この場合であっても、複数のフランジリブA119のうち最後のフランジリブA119のみがガイドリブA55(図18参照)に当接するようになっていることが好ましい。
また、図26に示すように、フランジA116の両側に複数のフランジリブA119が形成されると共に、さらに、フランジの上下(円弧部分)に切欠きA115、A115を有しているタイプのシリンジであってもよい。このようなフランジA116の場合には、図27のようなロック機構A250を利用することができる。
図27のロック機構A250では、左右両側に爪(A265a)付き板バネA265が追加で設けられている。この板バネA265は、その上端がアーム部A267の先端側に片持ち梁状に保持されており、下方に向かって延び出している。板バネA265の先端は径方向内側に突出した爪A265aとなっている。
なお、図26のような切欠きA115の数は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。切欠きA115の位置も、図26の位置に限定されるものではない。
フランジA116をフランジ受け溝内に挿入し、溝内で90°回転させると各爪A265a、A265aがフランジの切欠きA115に係合する。また、上記実施形態と同じように、一対のガイドリブA255の間にフランジリブA119が落ち込む。これにより、フランジA116がフランジ受け溝内で固定される。
また、上記実施形態で説明したガイドリブA55の機能や、アーム部A67が撓むことによってフランジを略下向きに押し付ける機能は、他の部材が有していてもよい。具体的には、図28の模式図に示すような、左右のボールプランジャA301、A301および底部の2つのボールプランジャA303、A303がそのような機能を有していてもよい。
図28のロック機構A350は、上記実施形態同様に全体として略U字状に形成されており、各アーム部のうちやや上寄りの位置にボールプランジャA301が設けられている。このボールブランジャA301は、内部にスプリングが収容された円筒状のボディと、該ボディの片端に設けられた球体A301aとを有している。球体A301aは、ボディから外れないように組み込まれており、ボディの端部から半球状に突出している。球体A301aをボディに向けて押すと、ボディ内のスプリングが押し縮められ、このスプリングの反力が、球体を介して、当該球体に接するフランジ(不図示)に作用するようになっている。
フランジに対して略下向きの力を付与することができるように、ボールブランジャA301は、図28に示すようにその球体A301a側が下向きとなるようにやや傾斜して配置されている。これらのボールプランジャA301は、上記実施形態同様、フランジ受け溝内でシリンジのフランジが第1の角度から第2の角度まで回転させられる時に該フランジの外周に当接し、スプリングの付勢力により、フランジを略下向きに押し付ける。
次に、底部に設けられた2つのボールプランジャA303、A303について説明する。これらのボールプランジャA303、A303は、上記実施形態のガイドリブA55、A55に対応する位置に設けられている。各ボールプランジャは、球体が手前側となるように、ロック機構A350の厚み方向に配置されている(すなわち、球体が紙面方向に変位するようになっている)。
このようにガイドリブA55、A55の代わりにボールプランジャA303、A303を設けた場合であっても、上記実施形態と同様、クリック感を得ることができる。クリック感は、一対のフランジリブA19、A19(例えば図17参照)がこれら一対のボールプランジャA303、A303の間に落ち込む際に得られる。
なお、上記の種々の構造は当然ながら適宜組み合わせ可能であり、例えば、第1の実施形態のガイドリブA55、A55(図19参照)のみを、図28のような底部のボールプランジャA303、303に置き換えてもよい。または、弾性変形するアーム部A67(図19参照)のみを、図28のような左右のボールプランジャA301に置き換えてもよい。
〔フランジロック機構の他の例2〕
本発明において、サブアダプタがシリンダ部材のシリンダフランジを保持する機構としては、上記に説明したものに限らず、種々の構成のものを採用できる。例えば、下記に説明するような方式のロック機構(アダプタB300がシリンダフランジを保持する機構)を図1の構成に適用してもよい。なお、図29の例では、図1とは異なるタイプの注入ヘッドが描かれているが、アダプタB300が備えるロック機構そのものは(詳細下記)は、図1のようなタイプの構成に問題なく適用可能である。
注入ヘッドB110は、図29に示すように、2本のシリンジB200C、B200Pを着脱自在に装着するものであり、これらシリンジB200C、B200Pを支持する2つの凹部B114を、ヘッド本体B113の上面に有している。シリンジB200C、B200Pはそれぞれ、末端にシリンダフランジB211が形成されたシリンダB210と、末端にピストンフランジが形成されたピストンB220とを有している。
シリンジB200C、B200Pは、アダプタB300を介して注入ヘッドB110に装着される。アダプタB300は、シリンジB200C、B200Pのシリンダフランジを保持するように構成されている。また、注入ヘッドB110の凹部B114の一部には、アダプタB300を受け入れるように構成されたアダプタ受け入れ部であるアダプタ受けB114a(図1の受入れ部740に相当)が形成されている。アダプタB300について詳しくは後述する。
さらに、注入ヘッドB110には、装着されたシリンジB200C、B200PのピストンB220を操作するために互いに独立して駆動される2つのピストン駆動機構B130が、各凹部B114に対応して設けられている。これらピストン駆動機構B130は、装着されたシリンジB200C、B200PのピストンB220を操作する。これによって、シリンジB200C、B200Pに充填されている造影剤および生理食塩水を、別々に、または同時に被験者へ注入することができる。ピストン駆動機構B130については、この種の注入装置に一般にいられる公知の機構を採用することができる。
薬液注入装置B100は、例えばX線CT装置といった、被験者の断層画像を撮像するための透視撮像装置(不図示)に接続されており、薬液注入装置B100によって、撮像部位や被験者の身体条件等に応じて設定された注入条件で薬液を注入した後、透視撮像装置で被験者の断層画像を撮像することができる。
次に、上述したアダプタB300について、図30、図31等を参照して詳細に説明する。
本形態のアダプタB300は、図29に示した注入ヘッドB110に通常装着されるシリンジよりも小径のシリンジB200を装着する際に用いられる。アダプタB300は、ベース部材B310と、ベース部材B310に固定された、シリンダフランジB211をロックためのフランジロック部材B320とを有し、全体としてU字管状に構成されている。本形態では、ベース部材B310およびフランジロック部材B320は互いに別部品で構成されているが、これらは一部品で一体に形成されていてもよい。
ベース部材B310は、略半円筒状のシリンダ支持部B314とその末端に形成されたフランジ状部とを有している。シリンダ支持部B314は、シリンジB200のシリンダB210を支持する。支持部B314は、内周面の曲率半径がシリンダB210の外周面の曲率半径と略等しくなるように形成されている。アダプタB300を注入ヘッドB110に装着したとき、シリンダ支持部B314は注入ヘッドB110の凹部B114上に位置する。
フランジロック部材B320は、ほぼ円弧状に形成された円弧状部B321と、全体としてU字状となるように円弧状部B321の両端から互いに並列するように延びたBアーム部322とを有する。各アーム部B322は、互いの間隔を変化させることができるように、円弧状部B331に対して弾性変位可能に支持されている。そのため、ベース部材B310へのフランジロック部材B320の固定は、円弧状部B321がベース部材B310のフランジ状部に固定されることでなされている。
円弧状部B321は、その内周面B321aの内側に、シリンダB210のシリンダフランジB211が位置し、その状態でシリンダB210が軸線周りに回転できるような寸法で形成されている。円弧状部B321の内周面B321aの曲率半径は、ベース部材B310のシリンダ支持部B314の曲率半径よりも大きい。このような寸法で形成された円弧状部B321がベース部材B310のフランジ状部に固定されることで、ベース部材B310とフランジロック部材B320の円弧状部B311との間に段差が形成される。
アーム部B322の両端部には、アダプタB300を着脱する際にユーザーによって操作される摘み部B325がそれぞれ形成されている。フランジロック部材B320は、円弧状部B321、アーム部B322および摘み部B325により、全体としてその内側シリンダフランジB211を受け入れる形状とされ、フランジ受け面B330とともに、シリンダフランジB211の一部を受け入れるフランジ受けを構成する。
ここで、アダプタB300が保持するシリンジB200のシリンダフランジB211について説明する。
図32に示すように、シリンダB210の末端に形成されたシリンダフランジB211は、その主面に垂直な方向から見たとき、最大長さL1と最小長さL2とを有する。最大長さL1をとる方向と最小長さL2をとる方向とは互いに直交する。
再び図31を参照すると、フランジロック部材B320は、フランジロック機構として、フランジ受け内においてシリンダフランジB211が挿入される方向と直角な方向(左右方向)の両側に対向配置された一対のロック爪B323を有する。ロック爪B323は、アーム部B322に一体的に設けられて、左右対称となるように互いに内向きに延びている。ロック爪B323は、図33に示すように、基部B323aと、基部B323aから二股に分かれてそれぞれ内側に湾曲しながら上方および下方に延びた一対のフランジ押え部B323bとを有する。基部B323b、B323bは、シリンダフランジB211が前述したフランジ受けに受け入れられた状態でのシリンダフランジB211の面内方向において、二股に分かれている。基部B323aはアーム部B322に固定されており、フランジ押え部B323bは基部B232aに対して弾性変位可能に支持されている。各フランジ押え部B323bの先端部は鉤状に屈曲している。
一対のロック爪B323の先端部間の距離Dは、保持するシリンジのシリンダフランジB211をロック爪B323の間に挿入できるようにシリンダフランジB211の最小長さL2よりも大きい。かつ、シリンジB210が図34に示すような姿勢のときにロック爪B323によってシリンダフランジB211を左右両側から挟み込むことができるように、シリンダフランジB211の最大長さL1よりも小さい。また、各ロック爪B323でのフランジ押え部B323b間の間隔は、図34に示すように、シリンダフランジB211が回転され最大長さL1の方向が一対のロック爪B323の対向方向と一致する方向とされたときに、各部B323bがフランジB211に当接する間隔とされている。各部B323bは、シリンダフランジB211を、フランジ受けへのシリンダフランジB211の挿入方向両側である上下から挟む。
ロック爪B323を以上のように構成することにより、図33に示すように、シリンダフランジB211の最小長さL2の方向がロック爪B323の対向方向と略一致するような姿勢で、シリンダフランジB211を、最大長さL1をとる方向からフランジ受けに挿入することができる。この状態で、シリンジをその軸線を中心として回転させると、シリンダフランジB211の外周面が各フランジ押え部B323bに当接し、各フランジ押え部B323bを弾性変位させる。
シリンジをさらに回転させ、図33に示した姿勢から略90度回転した図34に示す状態では、シリンダフランジB211は、その最大長さL1方向両端部で各ロック爪B323の2つのフランジ押え部B323bによって、上下方向から挟まれる。これにより、回転後のシリンダフランジB211の姿勢が保たれ、弾性的にロックされる。シリンダフランジB211は弾性的にロックされているので、シリンダB210をさらに、同じ方向または逆方向に回転させれば、ロックは解除される。
ロック爪B323によるシリンジB200をロックする力は、その後のシリンジB200への延長チューブB230(図29参照)の連結作業等ではシリンジB200が回転しないが、ロック爪B323によるシリンダフランジB211のロックを解除するためにユーザーがシリンジB200を回転させる場合には、適度な力で回転させることができるような力とされることが好ましい。
図30を参照すると、ベース部材B310は、アダプタB300の幅方向両側においてフランジロック部材B320を越えて形成された2つの板状部B315を有する。各板状部B315は、フランジ受け面B330との間でシリンダフランジB211を受け入れるのに十分な間隔をあけてフランジ受け面B330と対向している。同様に、フランジロック部材B320の各アーム部B322も、アダプタB300の幅方向両側に位置するように2つの板状部B328を有している。これら板状部B328も、フランジ受け面B330との間でシリンダフランジを受け入れることができるように、ベース部材B310の板状部B315と略同一平面上に形成されている。
次に、上述したアダプタB300を用いた、注入ヘッド110へのシリンジ200の着脱動作を説明する。
ユーザーは、まず、アダプタB300の両側の摘み部B325を持って、アダプタB300をアダプタ受けB114aに装着する。アダプタ受けB114aへのアダプタB300の装着は、アーム部B322が内側に弾性変位することによる、アダプタ受けB114aに形成された係合爪とアーム部B322に形成された係合爪B324との係合によりなされる。この係合により、アダプタB300はアダプタ受けB114a内でロックされる。
アダプタ300の装着後、ユーザーは、アダプタ300にシリンジ200を装着する。シリンジ200の装着は、以下のようにして行なうことができる。
まず、ユーザーは、前述したフランジ受けにシリンダフランジB211が受け入れられるように、シリンダ支持部B314上にシリンダB210を載せ、シリンダフランジB211を一対のロック爪B323の間に位置させる。このとき、図33に示すように、シリンダフランジB211の最小長さL2の方向がロック爪B323の対向方向と略平行となるような姿勢でシリンジB200を挿入する。これにより、シリンジB200をスムーズに挿入することができる。また、アダプタB200は全体としてU字管状に構成されておりシリンジB200が挿入されるアーム部B322間の間口が広いので、シリンジB200の挿入は容易である。
シリンジB200の挿入後、ユーザーは、シリンジB200をその軸線を中心として回転させる。このとき、シリンダB210はその外周面がシリンダ支持部B314上に支持されているので、シリンジB200は、その回転中心位置を維持しながらスムーズに回転させられる。
シリンジB200の回転によりシリンジフランジB211は、ロック爪B323のフランジ押え部B323bに当接し、フランジ押え部B323bを弾性変位させる。シリンジB200をさらに回転させ、図34に示すように、シリンダフランジB211の最大長さL1の方向がロック爪B323の対向方向と略平行になる状態とする。すると、シリンダフランジB211は最大長さL1の方向の両端部においてその外周面が、一対のロック爪B323によって挟まれるように保持される。しかも、各ロック爪B323はそれぞれ、2つのフランジ押えB323bがシリンダフランジB211を上下から挟んでおり、これによってシリンダフランジB211がロックされる。
シリンダフランジB211を左右両側で保持する一対のロック爪B323は、それぞれ2つのフランジ押え部B323bによって上下対称な位置でシリンダフランジB211の外周面を挟み込んでいるの。そのため、シリンジフランジB211が図34に示す姿勢となることにより、シリンダフランジB211が左右方向および上下方向から受ける力の平衡が保たれ、回転後のシリンダフランジB211の姿勢が保たれる。よって、シリンジB200の回転によりシリンダフランジB211が図34に示す姿勢とされたとき、弾性的に支持された4つのフランジ押え部B323bによるシリンジB200の保持は、ユーザーにクリック感を与える。このクリック感によって、ユーザーは、例えば注入ヘッドB110が高い位置にありシリンジB200
のロックを目視で確認できないような状況においても、シリンジB200がロックされたことを確実に認識できる。
このようにしてシリンジB200が保持されることによって、注入ヘッドB110へのシリンジ200の装着が完了する。
上述した形態では、シリンダフランジB211の外周面をその左右方向両側の上下4点で支持するフランジロック機構を有するアダプタB300を説明したが、フランジロック機構はこれに限定されず、シリンダフランジB211をその面内方向で回転させた所定の姿勢でロックできるような構成であれば他の構成を採用することができる。
その一例を図35および図36を参照して説明する。なお、図35および図36に示すフランジロック機構は、前述したアダプタB300のフランジロック機構と置き換えることができる。以下の説明では、図30、図31に示したアダプタB300においてフランジロック機構を置き換えたものとして、フランジロック機構を除く構成については図30、図31で用いた符号を用いて説明する。
図35に示すフランジロック機構は、保持されるシリンジのシリンダフランジB211の左右両側に対向配置された一対のロック爪B423と、ロック爪B423の対向方向の中間地点においてロック爪B423よりも下方(シリンダフランジB211の挿入方向側)に配置された可動支持部材B440とを有する。
各ロック爪B423は、前述した形態と同様に、フランジロック部材B320のアーム部B322に設けられており、アーム部B322に固定された基部B423aと、基部B423aに対して弾性変位可能に支持されたフランジ押え部B423bとを有する。フランジ押え部B432bは、内側に湾曲しながら上方に延びて、先端部が鉤状に屈曲して形成されている。
可動支持部材B440は、フランジロック部材B320およびフランジ受け面B330を有する前述したフランジ受けの底部に位置する。部材B440は、フランジ受けに挿入されたシリンダフランジB211の外周面が当接する位置で、フランジ受けへのシリンダフランジB211の挿入方向と略平行な方向に移動可能に支持されている。さらに、可動支持部材B440は、所定の付勢力で、シリンダフランジB211をフランジ受けから押し出す方向(図中白抜き矢印方向)に付勢されている。この付勢力は、シリンダフランジB211をフランジ受けに挿入したときに、シリンダフランジB211によりフランジ受けの底部に向かって押し下げられる程度である。可動支持部材B440の付勢には、例えばバネ等(不図示)を用いることができる。
本形態においても、アダプタへのシリンジの保持は、前述した形態と同様にして行うことができる。具体的には、ユーザーは、まず、シリンダフランジB211が図35に示す姿勢になるようにしてシリンジをフランジ受けに挿入する。次いで、シリンジをその軸線を中心として回転させる。シリンジの回転により、図36に示すようにシリンダフランジB211の最大長さの方向がロック爪B423の対向方向と略平行になると、シリンダフランジ211は、2つのフランジ押え部B423bおよび可動支持部材B440によって上下から挟まれて保持される。
シリンダフランジB211が図36に示す姿勢となったとき、シリンダフランジB21の左右両側が2つのフランジ押え部B442bによって左右対称となる位置で支持される。また、フランジ押え部B423bは、内側に湾曲しながら上方に延びて先端部が鉤状に屈曲している。よって、フランジ押え部B423bによりシリンダフランジB211には下向きの力が作用する。一方、シリンダフランジB211には、可動支持部材B440によって上向きの力が作用する。よって、シリンダフランジB211が図36に示す姿勢となったとき、シリンダフランジB211の姿勢が安定し、シリンジはクリック感を伴ってロックされる。ロックされたシリンジの取外し方は、前述した形態と同様である。
以上説明したように、シリンダフランジB211を左右両側の上方、および下方からの3点で支持することによっても、シリンジを安定して保持することができる。
図30、図31に示した形態では、半円筒状のシリンダ支持部B314を有する小径シリンジ用のアダプタB300を示した。しかし、保持するシリンジが、注入ヘッドB110の凹部B114に対応した直径のシリンダを有している場合は、シリンジは凹部B114上に直接載置されるため、シリンダ支持部は不要である。
図37は、上述したアダプタを先端側から見た図である。同図に示すようにアダプタB300には、アダプタ識別部材として複数のマグネットB351a〜B351dが設けられていてもよい。
〔フランジロック機構の他の例3〕
図38のシリンジ保持構造C50は、全体として略筒型に形成されたアダプタケースC40と、そのケースC40のフランジ部分C46を保持するシリンジ保持部材C50とを備えている。
アダプタケースC40は、小径のシリンジC80(図39参照)をシリンジ保持部材C50に装着させるためのものである。この小径のシリンジC80は、図39に示すように、一般的なシリンジ同様、薬液が充填される円筒状のシリンダ部材C81と、そのシリンダ部材にスライド自在に挿入されたピストン部材(不図示)と、を有している。シリンダ部材C81の基端部には、輪郭が多角形(この例では八角形)のフランジC86が形成されている。
図40、図41に示すように、アダプタケースC40は一例として樹脂成形品であり全体として略筒型に形成されている。このアダプタケースC40は、シリンジC80(図39参照)のシリンダ部材C81が挿入される円筒部C41と、その円筒部C41の軸方向端部に形成されたフランジ部分C46とを有している。
フランジ部分C46の輪郭は全体としてほぼ円形であり、左右両側には縦方向のカット部C47、C47が形成されている。フランジ部分C46の上下(円弧部分)には、切欠きC45、C45が1つずつ形成されている。
図40に示すように、フランジ部分C46の背面には、小径のシリンジC80のフランジC86(図39参照)が嵌り込む凹部C43が形成されている。この凹部C43は、フランジ部分C46の厚み方向に掘り込まれており、C凹部43内の輪郭形状はCフランジ86の輪郭形状に対応して八角形となっている。シリンジC80のフランジC86がこの凹部C43に嵌り込むことにより、周方向に関して、シリンジC80とアダプタケースC40との位置が固定される(すなわち、シリンジC80がケースC40に対して回転しない状態となる)。
図40に示すように、フランジ部分C46の左右両側には縦方向の溝C49、C49が1本ずつ形成されている。この縦溝C49は、フランジ部分C46の背面から該フランジ部分の厚み方向に所定深さだけ掘り込まれている。縦溝C49、C49が形成されていることにより、後述するように、フランジ部分C46をフランジ受け溝C77(図42参照)内に挿入する際にフランジ部分C46が一対のリブC55、C55と干渉しないようになっている。
図42はシリンジ保持部材C50を示す斜視図である。図43はその正面図である。図42、図43に示すように、このシリンジ保持部材C50は全体として略U字形状に形成されており、アダプタケースC40のフランジ部分C46を保持する略U字形状のフランジ受け溝C77を有している。
図42に示すように、このシリンジ保持部材C50は、具体的には、U字形状の下半分の湾曲部分を構成する(正確には、下半分のうちさらに厚み方向の奥側略半分を構成する)円弧形状のベース部材C51と、この部材C51に重なるように手前側に取り付けられたU字形状の可動部材C61とを有している。
両部材は、可動部材C61の下部に設けられた2つのビス孔C68、C68のところでビス止め(一例)され互いに固定されている。可動部材C61は、大別すると、2つのビス孔C68付近の一定範囲を占める固定部C61Aと、その固定部C61Aの両側から上方に延び出した一対のアーム部C67、C67とを有している。一対のアーム部C67、C67は、弾性的に撓んで縮拡径するように構成されている。例えば、両アーム部C67、C67の先端を指で摘んで互いに近づけることにより、アーム部C67、C67は内側に弾性変形する。指を離すことにより元の形状に復元する。
各アーム部C67の先端側には爪付き板バネC65が設けられており、この爪付き板バネC65はその上端が片持ち梁状に支持され、下方に向かって延び出している。板バネC65の先端部には、径方向内側に突出した爪C65aが形成されている。この左右一対の爪C65a、65aが、アダプタケースC40のフランジ部分C46の切欠きC45、C45(図40参照)に係合する。これにより、フランジ部分C46をフランジ受け溝C77(詳細下記)内に固定することができる。
各アーム部C67の上端には、フランジ部分を溝内に誘導しやすいように上方に向かってなだらかに広がるガイド部C66が形成されている。特に、本実施形態では、このガイド部C66がフランジ部分の厚み方向(手前奥方向)および横方向に十分大きく形成されているので、フランジ部分を溝内に入れ易い。
図42に示すように、フランジ受け溝C77は、一対のアーム部C67、C67および固定部C61Aの内側に形成されている。図42では、このフランジ受け溝C77の奥側の面のみが存在し、手前側の側面が存在しない構成が描かれている。ここで、手前側の側面は、注入ヘッド側に予め設けられた面(不図示)であってもよく、この注入ヘッド側の面と、図42の可動部材等の内面とが共同して、全体として断面凹型の略U字状のフランジ受け溝77を構成するようになっていてもよい。
図42に示すように、フランジ受け溝C77内であって、各アーム部C67の中間付近のやや内側には一対のリブC55、C55が形成されている。各リブC55は、フランジ受け溝C77の奥側の面から手前側に突出するように延び出している。各リブC55は、下側ほど突出量が大きくなるような形状である。この例では、リブC55の輪郭C55aが四分の一円弧状となっている。リブC55の下側は略水平なストレート部C55bとなっている。
図44(平面図)に示すように、このようなリブC55、C55が形成されていることにより、このリブの部分でのフランジ受け溝C77の厚み、つまりフランジが入る隙間d77は部分的に狭くなっている。隙間d77の寸法は、アダプタケースC40のフランジ部分C46(図40参照)の厚みよりも小さく設定されている。これにより、フランジ部分C46は、所定の向きでしかフランジ受け溝C77内に挿入できないようになっている。
次に、以上のように構成された本実施形態のシリンジ保持構造におけるアダプタケースの装着手順について説明する。なお、以下の説明では図46〜図48も参照するが、これらの図面では、アダプタケースC40内のシリンジの図示は省略されている。
まず、図39に示すように小径のシリンジC80をアダプタケースC40にセットする。シリンジC80のフランジC86がアダプタケースC40の凹部C43に嵌り込むことによって、周方向に関して、シリンジC80とアダプタケースC40との位置が固定される。なお、このような構成によれば、周方向に関してシリンジC80とアダプタケースC40との位置を固定するための特別な部品が不要である点で有利である。
次いで、アダプタケースC40にセットされた状態のシリンジC80を、シリンジ保持部材C50に装着する。具体的には、まず、図46に示すように、ケースC40のフランジ部分C46の縦溝C49、C49が縦向きとなるような姿勢でアダプタケースC40を持つ。そしてそれを、図38に示すように、該ケースのフランジ部分C46をシリンジ保持部材C50の受け溝C77内に挿入する。
この際、シリンジ保持部材C50の一対のリブC55、C55(図40参照)は、各縦溝C49、C49内を通るようになっているので、フランジ部分C46とリブC55とが干渉することなく、フランジ部分C46を受け溝C77内に挿入することができる。
フランジ部分C46が受け溝C77内に挿入された状態では(図47参照)、各リブC55、C55の先端がシリンジC80のフランジC86の背面に当接する。これにより、アダプタケースC40に対するシリンジC80の軸方向位置が固定される。このような構成によれば、軸方向に関してシリンジC80とアダプタケースC40との位置を固定するための特別な部品が不要である点で有利である。
なお、リブC55は、上記のようにアダプタケースC40の軸方向位置を固定する役割を果たすものであれば種々変更可能であり、例えばリブ状ではない他の形状の突起であってもよい。また、シリンジC80がシリンジ保持部材C50に装着された状態でリブ先端がフランジ部分背面に完全に当接している必要はない。完全に当接していなくても、実質的にアダプタケースC40の軸方向位置は固定されるためである。
次いで、ケースのフランジ部分C46を受け溝C77内に挿入したら、図48に示すように時計回りまたは反時計回りでシリンジを回転させる(この例では90°)。これにより、フランジ部分C46の外周の2つの切欠きC45、C45に板バネの爪C65a、C65aが係合し、フランジ部分C46がシリンジ保持部材に固定(周方向に関しての固定をいう)される。
薬液注入後、アダプタケースC40をシリンジ保持部材C50から取り外す場合には、ケースC40を時計回りまたは反時計回りに90°回転させる。これにより、爪が外れて、フランジ部分C46をフランジ受け溝C77から取り外すことができる。
なお、アダプタケースC40がシリンジ保持部材C50に装着されている状態では、ケースのフランジ部分背面の2本の縦溝C49、C49は横向きとなる。その結果、仮にこの状態でアダプタケースC40を上方に持ち上げてフランジ部分C46をフランジ受け溝C77から取り外そうとしても、リブC55、C55の下側がフランジ部分C46の内側(凹溝43の内周)に干渉するので、フランジ部分C46を取り外すことはできない。
以上説明したように本実施形態によれば、図39に示すようにフランジC86の輪郭形状が八角形(一例)でありフランジ外周に切欠きが形成されていないタイプのシリンジC80であっても、アダプタケースC40を介して該シリンジC80をシリンジ保持部材C50に装着することができる。しかも、その取付け方式は、アダプタケースC40のフランジ部分C46をフランジ受け溝C77内に入れて90°回転させるだけなので非常に簡単である。
また、シリンジC80を装着した際、シリンジ保持部材C50の一対のリブC55、C55がシリンジC80のフランジC86背面に当接してアダプタケースC40とシリンジC80との軸方向位置が固定されるようになっている。よって、シリンジC80とアダプタケースC40との軸方向位置を固定するための特別な部品も不要である。
また、アダプタケースC40がシリンジ保持部材C50に装着されている状態では、縦溝C49が横向きとなり、一対のリブC55、C55がフランジ部分C46の内側と干渉してフランジ部分C46をシリンジ保持部材C50から取り外せないようになっている。よって、薬液注入中にシリンジが外れてしまうことも防止できる。特に、このリブC55、C55は、上記の通り、ケースC40に対するシリンジC80の軸方向位置を固定する機能も備えており、このようにリブC55、C55に複数の機能をもたせることで、シリンジ保持部材C50の構造の簡素化が図られている。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、フランジ部分C46をフランジ受け溝C77内に挿入した後、90°以外の所定角度回転させることでフランジ部分C46がフランジ受け溝C77で固定されるようになっていてもよい。
フランジ部分C46をフランジ受け溝C77内で固定するためのロック手段としては、図42に示したような一対の爪付き板バネC65、C65に限らず、他の様々な機構を用いることができる。
アダプタケースC40に挿入されるシリンジとしては様々なものを利用可能であり、例えば、図49に示すシリンジC180では、シリンダ部材内にロッドレスタイプのピストン部材C182がスライド可能に挿入されている。このピストン部材C182の背面には、ピストン駆動機構の把持部(不図示)によって掴まれる係止突起C182aが形成されている。このシリンジC180は、上記実施形態同様、シリンダ部材のフランジC186の輪郭が八角形(一例)に形成されている。図50に示すように、上記実施形態同様、ケースC40がシリンジ保持部材C50に保持された状態では、シリンジ保持部材C50のリブC55、C55(一方のみを図示する)の先端がシリンジC180のフランジC186の背面に当接する。
1 薬液注入装置
110 注入ヘッド
114 アダプタ保持部
200 シリンジ
210 シリンダ部材
211 シリンダフランジ
212a 凹部
220 ピストン部材
300、400 サブアダプタ
310 ベース部材
320 フランジロック部材
322 アーム部
323 ロック爪
323a 凸部
351a〜351d 識別部材
414 シリンダ支持部
423 ロック爪
700 シリンジ保持構造
701 メインアダプタ
723 フランジ部
730 シリンジ支持部
740 アダプタ受入れ部
717 ガイド溝
846 近接センサ
847 アダプタ識別部材

Claims (10)

  1. シリンダ部材とピストン部材とを有するシリンジを保持して注入ヘッドに装着されるメインアダプタと、
    前記メインアダプタの一部に着脱可能に装着され、前記シリンダ部材に形成されたシリンダフランジを保持するサブアダプタと、
    を備えるシリンジ保持構造であって、
    前記サブアダプタは、
    前記シリンダフランジを受けるフランジ受けと、
    前記シリンダフランジがそのフランジ受けに受け入れられた状態で前記シリンジがその軸線周りに所定角度回転されることによって、前記シリンダフランジをロックするフランジロック機構と、
    前記サブアダプタを前記メインアダプタにロックするアダプタ固定機構と、
    前記シリンダフランジが前記フランジロック機構によってロックされている状態で、前記アダプタ固定機構によるロックが解除されるのを禁止する解除禁止機構と、
    を備えている、シリンジ保持構造。
  2. 前記サブアダプタは全体としてU字型である、請求項1に記載のシリンジ保持構造。
  3. 前記メインアダプタには、前記サブアダプタが装着されるアダプタ受入れ部が形成されており、
    前記アダプタ固定構造は、
    前記サブアダプタの側面または前記アダプタ受入れ部の一方に設けられた係止爪と、
    前記サブアダプタの側面または前記アダプタ受入れ部の他方に設けられ前記係止爪が係止する係止部と、
    を有する、請求項1または2に記載のシリンジ保持構造。
  4. 前記フランジ受けは、
    その内周面の曲率半径が前記シリンダフランジの外周面の曲率半径とほぼ等しい円弧状部と、
    前記円弧状部の両端から延びて前記円弧状部に対して可動に設けられたアーム部と、
    前記アーム部に形成された摘み部と、を有し、
    前記摘み部の内周面の一部が、前記円弧状部の内周面の円弧形状の延長上に形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリンジ保持構造。
  5. 前記サブアダプタが、さらに、
    前記各アーム部の内側への変位の量を規制するストッパ構造を有する、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリンジ保持構造。
  6. 前記メインアダプタは、前記シリンダ部材の一部を支持するシリンダ支持部を有しており、
    シリンジを前記メインアダプタに装着した状態で前記シリンダ部材の先端側が前記メインアダプタの先端部よりも突出するように構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシリンジ保持構造。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のシリンジ保持構造と、
    それが装着される注入ヘッドと、
    を備える薬液注入装置。
  8. 前記サブアダプタには、該アダプタの種類を識別するために用いられる識別部材が設けられており、
    さらに、
    その識別部材を検出するための検出器を備える、請求項7に記載の薬液注入装置。
  9. 前記検出器が近接センサである、請求項8に記載の薬液注入装置。
  10. 前記近接センサは、交流磁界を検出媒体として金属を非接触で検出するセンサであり、
    前記識別部材は、前記検出センサで検出される金属を含んでいる、請求項9に記載の薬液注入装置。
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