図1を参照すると、透視撮像装置200と薬液注入装置100とを有する、本発明の一実施形態による透視撮像システムが示されている。透視撮像装置200と薬液注入装置100とは、相互間でデータの送受信を行えるように互いに接続されることができる。透視撮像装置200と薬液注入装置100との接続は、有線接続とすることもできるし、無線接続とすることもできる。
透視撮像装置200は、撮像動作を実行するスキャナ201と、スキャナ201の動作を制御する撮像制御ユニット(不図示)とを有しており、薬液注入装置100によって薬液が注入された被験者の断層画像を取得することができる。撮像制御ユニットは、撮像条件や取得した断層画像などを表示できる液晶ディスプレイなどの表示装置、および撮像条件などを入力するための、キーボードおよび/またはマウスなどの入力装置を含むことができる。表示装置は、入力装置を兼ねるタッチスクリーンを有していてもよい。
薬液注入装置100は、例えば、スタンド121の上部に旋回アーム122を介して上下方向に回動自在に取り付けられた注入ヘッド110と、薬液注入装置100全体の動作を制御するための各種機能を備えたコンソール101とを有している。注入ヘッド110とコンソール101とは一つの筐体に構成することもできるが、本実施形態では、注入ヘッド110とコンソール101とは別ユニットとして構成されている。この場合、注入ヘッド110はスキャナ201とともに検査室内に配置し、コンソール101は、透視撮像装置200の撮像制御ユニットとともに操作室内に配置することができる。スタンド121は、注入ヘッド110の移動を容易にするためにキャスター付きのスタンドとすることができる。
コンソール101はAC/DCコンバータを内蔵しており、交流から直流に変換された電力がコンソール101に供給される。図2に示すように、コンソール101は、注入を強制停止させるためのストップボタン102a、ホーム画面を表示させるためのホームボタン102bおよび電源オン/オフのための電源ボタン102cを含むボタン群102と、入力デバイスおよび表示デバイスを兼ねたタッチパネル103とを有している。
注入ヘッド110は、図3〜5に示すように、2本のシリンジ800を着脱自在に装着することができる。シリンジ800は、例えば、一方を造影剤用のシリンジとし、他方を生理食塩水用のシリンジとすることができる。シリンジ800は、薬液を収容し先端に導管が形成されたシリンダと、シリンダ内に進退移動可能に挿入されたピストンとを有する。注入ヘッド110は、このシリンダを保持するシリンダ保持機構111と、シリンダ保持機構111にシリンダが保持されたシリンジ800のピストンを操作する(例えば、シリンダ内に押し込む)ための、シリンジ800の軸方向に移動される直動ユニットとを、2つずつ有する。
直動ユニットは、モータの回転運動を直線運動に変換するリードスクリュー機構やラックピニオン機構等の適宜の回転運動変換機構によって進退移動させられるロッド113と、ロッド113の先端部に固定されたプレッサー112と、を有する。ピストンを進退移動させるための、これらモータ、回転運動変換機構、直動ユニット(ロッド113およびプレッサー112を含み、直進運動するユニット)を有する機構を、本発明ではピストン駆動機構という。本形態では、注入ヘッド110は2つのピストン駆動機構を備えている。
ピストン駆動機構の駆動源となるモータとしては、直流モータを用いることができ、その中でも特に、直流ブラシレスモータを好ましく用いることができる。ブラシレスモータは、ブラシが無いことから、静音性および耐久性に優れている。また、ブラシレスモータは、より高速回転が可能であるため、外部ギア比を高くしてモータにかかるトルクを小さくすれば、所望の注入圧力で薬液を注入するのに必要な電流をブラシモータに比べて小さくすることができる。あるいは、超音波モータを、ピストン駆動機構の駆動源として用いることもできる。
注入ヘッド110は、ピストン駆動機構の一部(例えばプレッサー112)を除き、全体が合成樹脂製の筐体115で覆われている。筐体115の上面には、ユーザの操作によってピストン駆動機構を動作させることができるように、幾つかの操作ボタン116が配置されている。
例えば、本形態では、注入ヘッド110は、操作ボタン116として、注入可能な状態にするために操作されるチェックボタン116a、注入を開始する際に操作されるスタートボタン116b、プレッサー112を任意の距離だけ前進させる際(例えば、1.5ml/secの注入速度で)に操作される前進ボタン116c、プレッサー112の移動速度を加速する際(例えば、現在の注入速度にさらに8ml/sec加える。前進および後退のどちらも可。)に操作される加速ボタン116d、プレッサー112を任意の距離だけ後退させる際(例えば、1.5ml/secの注入速度で)に操作される後退ボタン116e、プレッサー112をイニシャライズ位置まで後退させる際に操作されるオートリターンボタン116f、動作を手動で停止または中断する際に操作されるストップボタン116g、116hおよびプレッサーを低速(例えば、0.7ml/sec)で前進/後退させる際に操作されるルートスイッチ116iと、を含むボタン群116を有している。本形態では、各ピストン駆動機構を独立して動作させることができるように、前進ボタン116c、加速ボタン116d、後退ボタン116eおよびオートリターンボタン116fをそれぞれ2つずつ有している。
シリンダ保持機構111は、アダプタ600を介してシリンジ800が装着されるように構成されている。シリンジ800には、充填可能な薬液の容量に応じて様々なサイズのものがある。アダプタ600は、シリンジ800のサイズごとに用意されており、図4に示すように、それぞれ適合するシリンジ800のシリンダの末端に形成されているシリンダフランジ801を保持できるように構成されており、注入ヘッド110のシリンダ保持機構111に着脱自在に装着される。
注入ヘッド110へのシリンジ800の装着は、例えば、注入ヘッド110のシリンダ保持機構111にアダプタ600を装着し、次いで、シリンジ800のシリンダフランジ801をアダプタ600に保持させることによって行うことができる。アダプタ600は、シリンダフランジ801を受け入れる溝を有しており、シリンダフランジ801が溝に挿入されることによってシリンジ800がアダプタ600に保持される。また、シリンダフランジ801がアダプタ600の溝に挿入された後、シリンジ800をその軸周りに所定の角度(例えば90度)回転させることによってシリンダをロックするロック機構を有していてもよい。このようにアダプタ600を用いることによって、種々のサイズのシリンジ800を注入ヘッド110に装着することができる。
シリンジ800は、薬液が充填された状態で製剤メーカーから提供されるプレフィルドタイプのシリンジであってもよいし、医療現場で薬液を充填した現場充填タイプのシリンジであってもよい。
各直動ユニットにはそれぞれ加速度センサ114が取り付けられている。加速度センサ114は、MEMS技術を用いて比較的小型に製造することができるので、加速度センサ114が直動ユニットに固定されても直動ユニットの動作の障害となることはない。加速度センサ114によって、直動ユニットの移動方向の加速度を検出できる。加速度センサ114には、1方向のみの加速度を検出できる1軸加速度センサ、および多軸(2軸および3軸)方向の加速度を検出できる多軸加速度センサがある。本形態では、注入ヘッド110は、仰角が変更可能に旋回アーム122を介して支持されており、したがって直動ユニットの移動方向も注入ヘッド110の仰角に応じて変わる。このような場合は、注入ヘッド110の仰角に依存することなく直動ユニットの移動方向の加速度を検出できるように、多軸の加速度センサを用いることが好ましい。
特に3軸の加速度センサを用いることで、三次元空間内の任意の方向での加速度を検出でき、検出結果から様々な情報を取得できるので、本形態では3軸の加速度センサを用いている。もちろん、1軸の加速度センサであっても、3個の加速度センサを組み合わせて三次元空間内の任意の方向での加速度を検出するようにすることもできる。
なお、図3では、加速度センサ114がプレッサー112に固定されていることが示されているが、プレッサー112の代わりにロッド113など、モータの回転によって直進運動する部分であれば、直動ユニットの任意の部品および位置に加速度センサ114を固定することができる。
加速度センサ114は、加速度を検出する検出素子と、検出素子からの信号を増幅および調整して出力する信号調整回路とを有する。検出素子における検出方式には、静電容量検出方式、ピエゾ抵抗方式および熱検知方式があり、本発明ではこれらの何れの方式も利用可能である。加速度センサ114は、少なくとも注入ヘッド110の電源が投入されている間は所定の時間間隔で加速度を検出しており、加速度センサ114によって検出された直動ユニットの加速度は、直動ユニットの移動速度、移動距離などを算出するのに利用することができる。
被験者への薬液注入および画像の撮像に際し、上述した構成のうちスキャナ201、注入ヘッド110は検査室に設置され、透視撮像装置200の撮像制御ユニットおよび薬液注入装置100のコンソール101は、検査室とは壁で隔てられた操作室に設置される。したがって、コンソール101と注入ヘッド110との間での信号およびデータの送受信をケーブルによる有線通信で行う場合は、検査室と操作室を隔てる壁にケーブル用の通路を形成し、この通路を通してケーブルが引き回される。コンソール101と注入ヘッド110との間での信号およびデータの送受信を無線通信により行うこともでき、その場合は、壁にケーブル用の通路を形成する必要がなくなる。無線通信のために、例えばコンソール101および注入ヘッド110はそれぞれ無線通信ユニット(不図示)を備えることができる。
以下、上述した透視撮像システムにおけるデータ等の流れについて、図6に示すブロック図を参照しつつ説明する。なお、図6は、本形態の透視撮像システムにおける制御系の主要な機能のみを示しており、本発明はこれに限定されるものではない。
撮像制御部152は、例えば透視撮像装置200の撮像制御ユニットに組み込まれることができ、スキャナ201、撮像制御ユニットの表示装置など透視撮像装置200の動作を全般的に制御するように構成されている。撮像制御部152は、いわゆるマイクロコンピュータとして構成することができ、CPU、ROM、RAM、他の機器とのインターフェースを有することができる。ROMには透視撮像装置200の制御用のコンピュータプログラムが実装されている。CPUは、このコンピュータプログラムに対応して各種機能を実行することで、透視撮像装置200の各部の動作を制御する。また、撮像制御部152は、注入制御部150からデータおよび信号等を受信することができ、注入制御部150から受信したデータおよび信号を、透視撮像装置200の各部の動作の制御に利用することもできる。
注入制御部150は、例えばコンソール101に組み込まれることができ、コンソール101および注入ヘッド110の動作を全般的に制御するように構成されている。より詳しくは、注入制御部150は、入力ユニット156からのデータおよび情報等の入力、加速度センサ114からの検出結果の入力、およびRFIDモジュール166からのデータおよび情報の入力に応じて、表示ユニット154に表示させる画面およびデータ等を制御したり、入力ユニット156から入力されたデータおよび情報、および入力ユニット156からのデータおよび情報の入力に基づいて薬液の注入プロトコルを作成したり、ピストン駆動機構140の動作を制御したりすることができる。
注入制御部150は、いわゆるマイクロコンピュータとして構成することができ、CPU、ROM、RAM、他の機器とのインターフェースを有することができる。ROMには薬液注入装置100の制御用のコンピュータプログラムが実装されている。CPUは、このコンピュータプログラムに対応して各種機能を実行することで、薬液注入装置100の各部の動作を制御する。また、注入制御部150は、CPUが持つクロックを利用した計時機能を有しており、例えば、現在時刻や、注入を開始してからの経過時間をカウントすることができる。注入制御部150は、撮像制御部152からもデータおよび信号等を受信することができ、撮像制御部152から受信したデータおよび信号を、注入撮像装置100の各部の動作の制御に利用することもできる。
表示ユニット154は、コンソール101のタッチパネル103であることができる。入力ユニット156は、タッチパネル103だけでなく、コンソール101のボタン群102および注入ヘッド110のボタン群116を含むことができる。タッチパネル103は、通常、表示ユニット154として機能するディスプレイ、入力ユニットとして機能するタッチスクリーン、およびこれらの制御回路をモジュール化したものである。
ディスプレイとしては、液晶ディスプレイおよび有機ELディスプレイなどを含む任意のディスプレイを用いることができる。タッチスクリーンとしては、静電容量式および感圧式など、任意のタッチスクリーンを用いることができる。タッチパネル103の制御回路は、注入制御部150から伝送された信号に基づいた所定の画面およびデータをディスプレイに表示させ、また、操作者などがタッチスクリーンに接触することによってタッチスクリーンから生成された信号に基づく入力情報を注入制御部150に伝送する。
RFIDモジュール166は、RFID制御回路164およびアンテナ165を有している。本形態では、シリンジ800は、シリンダの外周面にデータキャリアであるRFIDタグ802が貼付されており(図4参照)、RFIDモジュール166は、RFIDタグ802に記録された情報をアンテナ165によってRFIDタグ802から読み出し、読み出した情報を注入制御部150に伝送する。RFIDモジュール166は、注入制御回路150から伝送された情報をRFIDタグ802に書き込む機能をさらに有していてもよい。RFID制御回路164は、このRFIDモジュール166による情報の送受信動作を制御する。すなわち、RFIDモジュール166は、RFIDタグ802から情報を読み出すリーダ、または、さらにRFIDタグ802に情報を書き込むリーダ/ライタとして機能する。
RFIDタグ802に記録されている情報としては、例えば、シリンジ800に充填されている薬液に関する、製造メーカー、薬液の種類、品番、含有成分(特に、薬液が造影剤の場合はヨード含有濃度など)、充填量、ロット番号、消費期限などの他に、シリンジに関する、製造メーカー、品番といった固有識別番号、許容圧力値、シリンジの容量、ピストンストローク、必要な各部の寸法、ロット番号などが挙げられる。これらの情報の少なくとも一部は、透視撮像装置200へ伝送することができる。
RFID制御回路164は、任意の位置に設置することができるが、アンテナ165は、シリンジ800がシリンダ保持機構111に正常に保持された状態においてRFIDタグ802と対向する位置に設置されることが望ましい。
特に本形態では、図4に示すように、RFIDタグ802は長手方向を有する形状とされ、その長手方向をシリンジ800の周方向と一致させて貼付されている。シリンジ800は、シリンダ保持機構111に挿入された後、シリンジ800を特定の向きとなるように回転させることによって正常に保持され、その保持された状態では、RFIDタグ802が下向きとなるように設計されている。
そして、RFIDモジュール166のアンテナ165は、導体からなる所定のパターン(例えば、1つまたは複数のループ状パターン)を形成したFPC(フレキシブルプリント基板)を有し、図7に示すように、シリンダ保持機構にシリンダが正常に保持されたシリンジ800のRFIDタグ802と対向する位置に、シリンジ800と同心状となるように円弧状に曲げられて配置されている。これにより、曲面上に貼付されたRFIDタグ802の検出範囲の拡大を図っている。
また本形態では、RFIDタグ802の貼付位置にばらつきがあったとしても、RFIDタグ802が確実にアンテナ165と対向することができるように、アンテナ165は、RFIDタグ802よりも大きな面積を有している。したがって、アンテナ165のサイズは、シリンジ800へのRFIDタグ802の貼付位置のばらつきを考慮して設計することが好ましい。
一方、アンテナ165を円弧状に曲げることにより、アンテナ165の曲率半径が小さくなるほど、また、アンテナ165の周方向での長さが長くなるほど、通信用の電波が干渉しやすくなり、通信感度が低下する傾向がある。そこで、電波の干渉を抑制するため、アンテナ165は、FPCのRFIDタグ802と対向する面と反対側の面に、フェライトシート165aを有することが好ましい。
RFIDモジュール166の出力は、例えば200mWとすることができる。これにより、RFIDタグ802の検出範囲(検出距離)をより広くすることができ、RFIDモジュール166は、シリンジ800内に充填されている薬液を通して、RFIDタグ802から情報を読み出したり、RFIDタグ802に情報を書き込んだりすることも可能となる。これは、例えば、シリンジ800が、図7に示した状態から180度回転した、シリンジ800に充填された薬液を介してアンテナ165と対向した状態であっても、RFIDモジュール166がRFIDタグ802との間で情報の読み出し等を行えることを意味する。
次に、上述した透視撮像システムの動作について、薬液注入装置100の動作を中心により詳しく説明する。
まず、薬液注入装置100および透視撮像装置200の電源が投入され、薬液注入装置100および透視撮像装置200が起動される。次いで、薬液が充填されているシリンジ800が所定の手順で注入ヘッド110に装着されると、RFIDモジュール166によってRFIDタグ802記録されている、シリンジ800および薬液に関する情報が読み出される。
注入制御部150は、RFIDタグ802から読み出した情報に基づいて、シリンジ800に充填されている薬液の種類や充填量などを必要に応じて表示ユニット154に表示させたり、プレッサー112を待機位置へ移動させたりする。待機位置とは、プレッサー112がシリンジ800のピストンの末端に当接する位置から最後端位置までの間の任意の位置である。待機位置への移動は、注入制御部150が、RFIDタグ802から読み出した情報に基づいてピストンの末端位置を求め、プレッサー112の可動範囲の最後端位置である初期位置からピストン末端位置までの距離を求め、その距離と予め決められていた任意のオフセット値分だけプレッサー112が前進するようにピストン駆動機構140を動作させることによって行うことができる。これにより、プレッサー112はピストンの待機位置へ移動される。
また、注入制御部150は、RFIDタグ802から取得した情報およびタッチパネル103から入力されたデータ等に基づいて、注入速度、注入量および注入時間などをパラメータとした注入プロトコルを作成する。作成された注入プロトコルは、タッチパネル103上に、グラフィック的、あるいは数値データの形式で表示することができる。操作者は、表示された注入プロトコルを任意に変更することができる。操作者が注入ヘッド110のチェックボタン116aを押下することによって、注入プロトコルが確定される。
この状態で、操作者が注入ヘッド110のスタートボタン116bを操作すると、それに応じた信号が注入制御部150に送られ、注入制御部150は、この信号をトリガーとして、作成されている注入プロトコルにしたがってピストン駆動機構140が動作するようにピストン駆動機構140の動作を制御する。これによって、シリンジ800内に充填された薬液を被験者に注入することができる。
注入プロトコルとは、どのような薬液を、どれくらいの量、どれくらいの速度で注入するかを示すものである。注入速度は、一定であってもよいし、時間とともに変化するこのであってもよい。また、複数種の薬液、例えば造影剤と生理食塩水とを注入する場合、それらの薬液をどのような順序で注入するかといった情報も注入プロトコルに含まれる。注入プロトコルは、公知の任意の注入プロトコルを用いることができる。また、注入プロトコルの作成手順についても、公知の任意の手順であってよい。
薬液として造影剤を注入する場合、造影剤による造影効果には被験者ごとの個人差がある。この造影効果の個人差の程度を把握するために、薬液の注入では、透視撮像装置200による断層画像の撮像のための注入に先立って、撮像のための注入量よりも少ない注入量で薬液を注入するテスト注入を行い、その結果に基づいて、撮像タイミングを決定することなどが行われる。
このような場合、テスト注入後の薬液の注入動作は、透視撮像装置200から送信される指令を注入制御部150がその指令を撮像制御部152から受信することによって開始させることもできる。透視撮像装置200は、例えば、透視撮像装置200のモニタに表示されている断層画像をCCDカメラ(不図示)で撮影し、その断層画像のROIにおける明るさ(白さ)を監視し、明るさが予め定められた閾値以上となったとき、あるいは、モニタに接続されるケーブルからの信号強度を測定し、その測定結果が、予め定められた閾値以上となったときに、注入動作開始のための指令を注入制御部150へ送信することができる。また、断層画像の撮像のための注入(本注入)に先立ってテスト注入を実施する場合、テスト注入時のCT値およびTDC(Time Density Curve)をモニタし、その結果に応じて注入プロトコルを決定し、それに適した最適な撮像開始を薬液注入装置100から透視撮像装置200へ送信してもよい。
ここで、薬液注入装置100の電源が投入されている間、加速度センサ114によって直動ユニットプレッサー112の加速度が所定の時間間隔で検出され、注入制御部150へ送られている。注入制御部150は、加速度センサ114から加速度の検出結果が送られる都度、検出された加速度と計時した時間とを用いて、直動ユニットの移動速度および移動距離を求める。直動ユニットの移動速度は、加速度センサ114によって検出された加速度を時間で積分することによって求めることができ、移動距離は、それをさらに時間で積分することによって求めることができる。
加速度を利用した移動速度および移動距離は、具体的には以下の計算式を用いて算出することができる。なお、移動速度および移動距離は、以下の計算式に限定されず、任意の計算式を用いて算出することができる。
[移動速度]
v=vo+at ・・・(1)
[移動距離]
x=vot+at2/2 ・・・(2)
上記式(1)、(2)において、vは加速した後の速度、v0は加速する前の速度(初速度)、aは加速度センサによって検出された加速度、tは速度がv0からvに達するまでの時間、xは速度がv0からvに達するまでの移動距離である。
前述した待機位置までのプレッサー112の移動に際して、注入制御部150は、加速度センサ114によって検出された加速度および計時した時間を用いて求められた移動速度および/または移動距離が、プレッサー112を待機位置まで移動させる所定の移動速度および/または移動距離となるように、ピストン駆動機構140の動作を制御する。
同様に、注入動作中の直動ユニットの移動に際しても、注入制御部150は、加速度センサ114によって検出された加速度および計時した時間を用いて求められた移動速度および/または移動距離が、作成した注入プロトコルに従った所定の移動速度および/または移動距離となるように、ピストン駆動機構140の動作を制御する。薬液の注入動作は、プレッサー112がピストンをシリンダ内に押し込むことによって行われるので、直動ユニットの移動速度および移動距離は、ピストンの移動速度および移動距離と一致する。したがって、直動ユニットが所定の移動速度および/または移動距離となるようにピストン駆動機構140を制御することは、薬液の注入速度および/または注入量を制御することを意味する。
以上説明したように、直動ユニットに加速度センサ114を取り付け、加速度センサ114からの検出結果を利用することによって、ロータリーエンコーダやポテンショメータを用いることなく、直動ユニットの移動速度および移動距離を求めることができる。また、通常、加速度センサ114は、加速度を検出する構造部分パッケージ化されているので、防滴化も容易である。
また、加速度センサ114の検出結果から、薬液の注入動作中に生じた過負荷を検出することもできる。例えば、薬液の注入動作中、シリンジ800から被験者までの注入経路中に何らかの原因で過剰な圧力が生じると、その過剰な圧力によって、ピストンの前進速度が一時的に遅くなる、あるいは、ピストンが一旦戻され、その後、再び前進を開始する、といったピストンの動作の変化が生じる。したがって、直動ユニットの意図しない移動速度の低下が生じた場合、注入制御部150は、注入動作中に過負荷が生じたと判断することができる。注入制御部150は、さらに、過負荷が生じたことを示すメッセージまたはマーク等を表示ユニット154に表示させたり、警報音を発するブザー等の発音ユニット(不図示)を作動させたりといった処理を行うことができる。
この逆に、注入経路の途中で薬液の漏れが生じた場合は、直動ユニットの移動速度が上昇する現象が生じる。よって、直動ユニットの意図しない移動速度の上昇が生じた場合、注入制御部150は、注入動作中に注入経路から薬液が漏出していると判断することもできる。注入制御部150は、さらに、薬液の漏出が生じたことを示すメッセージまたはマーク等を表示ユニット154に表示させたり、警報音を発するブザー等の発音ユニット(不図示)を作動させたりといった処理を行うことができる。
上述した形態では、同時に2つのシリンジ800を装着できる注入ヘッド110を例に挙げて説明したが、注入ヘッドは、同時に装着できるシリンジ800の数が1つのみであってもよいし3つ以上であってもよい。ただし、複数本のシリンジ800を同時に装着できるようにすることは、例えば、造影剤が充填されたシリンジと生理食塩水が充填されたシリンジを注入ヘッド110に装着し、造影剤の注入後に生理食塩水を注入し、生理食塩水によって造影剤を後押ししたり、造影剤を生理食塩水で所望の濃度に希釈して注入したり、様々な注入手順を実現することができるため、好ましい。
また、本形態では、姿勢を変更可能に支持された注入ヘッド110における直動ユニットの移動を検出する場合を例に挙げて説明したが、本発明は、例えばシリンジポンプのような、据え置き型の装置にも適用することができる。この場合、直動ユニットの移動方向は概ね水平方向に限定されるので、用いる加速度センサは、1軸または2軸の加速度センサで十分である。
本形態のように3軸の加速度センサ114を用いる場合、その加速度センサ114からの検出結果を利用して、直動ユニットの移動速度や移動距離だけでなく、注入ヘッド110そのものの各種情報を検出することができる。以下、加速度センサ114で検出可能な情報の一例を挙げる。
(a)注入ヘッド110の姿勢(傾き)の検出
3軸の加速度センサ114を用いることによって、注入ヘッド110の傾きも検出することができる。注入ヘッド110の姿勢検出は、例えば、注入準備の段階で行われるシリンジ内および注入経路内のエア抜きや注入動作において、注入ヘッド110が適切な姿勢であるかどうかの判断に利用することができる。
エア抜きの際は、シリンジ800内に混入したエアのみをシリンジ800および注入経路から排出できるようにするために、注入ヘッド110は、シリンジ800の先端を真上に向けた姿勢とされる。また、薬液の注入動作中は、仮にシリンジ800内にエアが混入していたとしてもエアがシリンジ800から排出されないようにするために、注入ヘッド110は、シリンジ800の先端が下方を向くように傾けた姿勢とされるのが好ましい。加速度センサ114からの出力値を、注入ヘッド110が水平方向を向いているときの出力値と比較する、あるいは、加速度センサ114からの出力値が、エア抜き時および注入動作時のそれぞれに対応する所定の出力値に対してどうであるかを比較することによって、注入ヘッド110が、エア抜きおよび注入動作のそれぞれに適した姿勢であるかどうかを検出することができる。注入制御部150は、その検出結果に応じて、注入ヘッド110がエア抜きに適した所定の姿勢ではない、および注入ヘッド110が薬液の注入動作に適した所定の姿勢ではない場合、前述したように、表示ユニット154に警告を表示させ、かつ/または発音ユニットにより警報音を発したり、ピストン駆動機構140が動作しないようにしたりするなど、これらの動作を制御することができる。
(b)ボタンが操作されたことの検出
注入ヘッド110に設けられたボタン群116を操作すると、わずかではあるが注入ヘッド110に動きが生じる。加速度センサ114は、そのときの動きに伴う加速度の変化により、ボタン操作の間、出力値が変化する。よって、注入制御部150を、ボタン操作による加速度センサ114からの出力値の変化と同様の、出力値の変化が生じた場合、ボタン操作が行われたと判断するように構成することにより、ボタン操作の有無を検出することができる。
ボタン操作の有無の検出は、注入ヘッド110の誤動作の判断の一つに利用することができる。例えば、ボタンが操作されたことが検出された後に、該当するピストン駆動機構140が動作開始または停止すれば、このピストン駆動機構140の動作開始または停止はボタン操作に基づく正常な動作開始または停止であると判断し、一方、ボタン操作が検出されることなくピストン駆動機構140の予定外の動作開始または停止があった場合は、そのピストン駆動機構140の動作開始または停止は、誤動作による可能性があると判断することができる。そして、注入制御部150は、その検出結果に応じて、表示ユニット154に警告を表示させ、かつ/または発音ユニットにより警報音を発したり、ピストン駆動機構140が動作している場合はその動作を停止したりするなど、これらの動作を制御することができる。
(c)シリンジ800およびアダプタ600の着脱検出
注入ヘッド110のボタン操作と同様、注入ヘッド110へのアダプタ600の着脱およびシリンジ800の着脱に伴って、注入ヘッド110に動きが生じ、この動きは加速度センサ114の出力値を変化させる。よって、注入制御部150を、アダプタ600の着脱およびシリンジ800の着脱による加速度センサ114からの出力値の変化と同様の、出力値の変化が生じた場合、アダプタ600の着脱およびシリンジ800の着脱が行われたと判断するように構成することにより、アダプタ600の着脱およびシリンジ800の着脱の検出を検出することができる。
注入ヘッド110へのアダプタ600の着脱動作およびシリンジ800の着脱動作は、通常、ボタンの操作よりも大きな力を要する。よって、アダプタ600を着脱したとき、およびシリンジ800を着脱したときに加速度センサ114によって検出される加速度の変化は、ボタン操作ときに生じる加速度の変化よりも大きい。また、アダプタ600とシリンジ800も、それらの重量が大きく異なることから、アダプタ600を着脱したときとシリンジ800を着脱したときとで、検出される加速度の変化は異なる。したがって、これらの加速度の変化の違いから、アダプタ600が着脱されたのか、シリンジ800が着脱されたのか、あるいはボタンが操作されたのかを判断することが可能である。
注入制御部150は、アダプタ600およびシリンジ800の装着が検出されていない状態で、例えば注入ヘッド110のスタートボタン116bが操作されても、アダプタ600およびシリンジ800が装着されていない旨、表示ユニット154に表示させ、かつ/または発音ユニットにより警報音を発したり、ピストン駆動機構140が動作されず、従って注入動作が実行されないようにしたりするなど、これらの動作を制御することができる。
(d)注入ヘッド110の位置検出
本形態のように注入ヘッド110がキャスター付きのスタンド121によって移動可能とされている場合、加速度センサ114によって検出された加速度を利用して、注入ヘッド110の位置を検出することができる。前述したように、加速度センサ114によって検出された加速度と注入制御部150で計時した時間との関係から、移動距離を求めることができる。プレッサー112が動作していない状態で、水平方向への加速度の変化が検出された場合は、その加速度の向きについての情報も含めて、加速度の大きさの経時的な変化を積分することで、注入ヘッド110の移動方向および移動速度を求めることができる。これをさらに時間で積分することによって、注入ヘッド110がどの方向にどれだけ移動したかを求めることができる。よって、注入ヘッド110の電源投入時(すなわち加速度センサ114が起動したとき)の注入ヘッド110の位置が分かれば、注入ヘッド110の現在位置が分かる。
注入ヘッド110がキャスター付きのスタンド121に支持されているような場合、注入ヘッド110の移動時以外は、キャスターに備えられたストッパ機構を働かせてスタンド121が不用意に動かないように固定される。しかし、操作者がストッパを働かせるのを忘れて別の作業を行っている間に注入ヘッド110に何らかの外力が作用すると、操作者が気付かないうちに注入ヘッド110が移動してしまう可能性がある。このような意図しない注入ヘッド110の移動は、注入ヘッド110が他の機器や部屋の壁に衝突する危険性を含んでいる。
そこで、注入制御部150は、加速度センサ114によって検出された加速度を利用して求めた注入ヘッド110の移動距離が、予め決められた所定の距離に達したら、表示ユニット154に警告を表示させ、かつ/または発音ユニットにより警報音を発するように、これらを制御することができる。これにより、操作者の注意が喚起され、上記のような注入ヘッド110の衝突などを未然に防ぐことができる。
(e)注入ヘッド110の回転の検出
注入ヘッド110は、天井から吊り下げされた状態で支持されることもできる。その一例を図8に示す。図8に示す例では、注入ヘッド110は、多関節の天井アームユニット170に支持されている。天井アームユニット170は、ボルト等によって天井に固定されるベース部171と、ベース部171から延びる多関節のアーム部173とを有している。アーム部173の先端側には、鉛直方向に延びる取り付けアーム173aが、その軸周りに回転自在に取り付けられている。注入ヘッド110は、その取り付けアーム173aの下端部に、水平な軸周りに回転自在に取り付けられている。
このように、注入ヘッド110が天井アームユニット170に回転可能に支持され、かつ、他の機器とケーブルを介して接続されている場合、ケーブルは、作業の邪魔にならないように、取り付けアーム173aの内部を通して、あるいは外部において、取り付けアーム173aに沿って引き回されることが多い。したがって、注入ヘッド110が同じ方向にばかり回転されるとケーブルの捻れ(取り付けアーム173aへのケーブルの巻き付き)が生じる。ケーブルの過度の捻れは、ケーブル内の配線を損傷させるおそれがある。特に、ケーブルが取り付けアーム173aの内部を通して引き回されている場合は、操作者はケーブルが捻れているかどうか、ケーブルの状態を見ることができない。
3軸の加速度センサ114を用いることによって、検出された加速度から、注入ヘッド110が、どの方向にどれだけの量、移動したかが分かるので、その移動方向および移動量を累積することにより、例えば、取り付けアーム173aを中心として注入ヘッド110が何度回転したかを求めることができる。よって、注入制御部150は、注入ヘッド110の電源投入時からの累積の回転角度を求め、その回転角度が予め決められた所定の回転角度に達したら、表示ユニット154に警告を表示させ、かつ/または発音ユニットにより警報音を発するように、これらを制御することができる。これにより、操作者の注意が喚起され、注入ヘッド110と他の機器とを接続するケーブルの捻れによる損傷を未然に防ぐことができる。
注入ヘッド110が天井アームユニット170に支持されている場合に限らず、図1に示したようにスタンド121に支持された場合であっても、注入ヘッド110がスタンド121に対して、鉛直な軸周りに回転自在に支持されている場合においても、上述したケーブルの捻れ(スタンド121へのケーブルの巻き付き)は発生し得る。よって、注入ヘッド110がスタンド121に支持されている場合においても、スタンド121に対する注入ヘッド110の回転角度を求めることは有効である。
なお、図8において、注入ヘッド110とともに取り付けアーム173aに取り付けられているのは、サブディスプレイユニット154bである。本発明においては、このように、前述した表示ユニット154とは別のサブディスプレイユニット154bをさらに有することもできる。
サブディスプレイユニット154bには、薬液の種類、注入速度、注入量、注入時間など、薬液の注入に関する各種情報を表示させることができ、これによって、操作者は注入ヘッド110の近傍で薬液の注入条件を確認することができる。また、サブディスプレイユニット154bは、画面上をタッチすることで入力操作も可能なタッチパネルであってもよい。サブディスプレイユニット154bをタッチパネルとすることで、操作者は被験者の状態等に応じてサブディスプレイユニット154bに表示された注入条件に関する情報を適宜変更することができる。
図8ではサブディスプレイユニット154bを天井アームユニット170に取り付けた例を示したが、サブディスプレイユニット154bは、注入ヘッド110を操作する操作者が視認できる位置であれば、例えば、図1に示したスタンド121に取り付けられてもよいし、注入ヘッド110に取り付け用ブラケットなどを介して取り付けられようにしてもよい。
(f)注入ヘッド110に衝撃が加わったことの検出
加速度センサ114によって検出された加速度が、例えば1/10秒単位の極めて短い時間内に大きく変化するようなものであった場合、それは注入ヘッド110の移動ではなく、衝突によるものであると考えることができる。そこで、注入制御部150は、加速度センサ114によって検出された加速度の変化が、上記のような衝突に相当する加速度の変化以上となった場合、表示ユニット154に警告を表示させ、かつ/または発音ユニットにより警報音を発するように、これらを制御することができる。これにより、注入ヘッド110の他の機器との衝突、室内の壁との衝突、床上のケーブルへの乗り上げが生じたことなどを操作者に知らせることができる。操作者は、注入ヘッド110の損傷の有無の確認、各部の動作の確認、シリンジ800が注入ヘッド110から外れていないかどうかの確認など、必要な措置を講ずることができる。
これら項目(a)〜(f)の検出は、検出する項目に応じた適宜の判断処理を含むコンピュータプログラムを注入制御部150に実装することによって、注入制御部150で行うようにすることができる。注入制御部150は、これらすべての項目を検出できるように構成されていてもよいし、項目(a)〜(f)のうち1つ以上を組み合わせた1つまたは複数の項目を検出できるように構成されていてもよい。
また、直動ユニットの移動速度や移動距離の検出は、従来と同様、ロータリーエンコーダまたはポテンショメータを用いて検出し、加速度センサ114は、例えば上記の項目(a)〜(f)のような、注入ヘッド110に作用する力に関する情報を検出することのみに利用されるようにすることもできる。この場合、加速度センサ114の取り付け位置は、直動ユニットである必要はなく、注入ヘッド110の筐体115や内部の回路基板など任意の位置であってよい。
すなわち本明細書は、
シリンダとピストンとを有するシリンジに充填された薬液を注入する薬液注入装置であって、
シリンジが着脱自在に装着される注入ヘッドであって、前記シリンジのピストンを操作するための、前記シリンジの軸方向に移動される直動ユニットを含むピストン駆動機構を備えた注入ヘッドと、
前記注入ヘッドに固定された加速度センサと、
表示ユニットおよび発音ユニットの少なくとも一方と、
前記加速度センサによる検出結果を利用して、その検出結果に応じて、前記ピストン駆動機構、前記表示ユニットおよび前記発音ユニットの少なくとも1つの動作を制御する注入制御部と、
を有する薬液注入装置をも開示する。
上述した実施形態では、撮像制御部152が撮像制御ユニットに組み込まれ、注入制御部150が、薬液注入装置100のコンソール101に組み込まれたものとして説明した。しかし、撮像制御部152および注入制御部150がともに撮像制御ユニットに組み込まれていてもよいし、撮像制御部152および注入制御部150がともにコンソール101に組み込まれていてもよいし、あるいは、撮像制御部152および注入制御部150がともに、プログラム可能なコンピュータ装置(不図示)に組み込まれていてもよい。こうすることにより、薬液注入装置100のコンソール101または透視撮像装置200のコンソールが不要と成し、システム全体を簡略化することができる。
さらには、注入制御部150の特定の機能を残りの他の機能とは別のユニットに組み込むこともできる。例えば、注入プロトコルの決定(演算)機能を透視撮像装置200の撮像制御ユニットに組み込み、残りの他の機能を薬液注入装置100のコンソール101に組み込むことができる。この場合は、撮像条件の設定および注入条件の設定に共通するデータを、透視撮像装置200および薬液注入装置100に重複して入力する必要がなくなる。注入条件の設定に際して不足するデータは、撮像制御ユニットから入力できるようにしてもよいし、薬液注入装置100のコンソール101から撮像制御ユニットに送信するようにしてもよい。
撮像制御部152の持つ機能および注入制御部150の持つ機能は、必要により各種ハードウェアを利用して実現し得るが、その主体はコンピュータプログラムに対応してCPUが機能することにより実現される。
そのコンピュータプログラムは、上述した手順の少なくとも一部、例えば、加速度センサ114によって直動ユニットの加速度を検出させるステップと、加速度センサによる検出結果を利用してピストン駆動機構140の動作を制御するステップと、を透視撮像装置200または薬液注入装置100に実行させるためのソフトウェアとして実装されることができる。さらには、ピストン駆動機構140の動作を制御するステップは、加速度および時間を用いて直動ユニットの移動速度および移動距離を求めるステップと、薬液の注入プロトコルを作成するステップと、作成した注入プロトコルに従った移動速度および/または移動距離で直動ユニットが移動するようにピストン駆動機構140の動作を制御するステップと、を含むことができる。
また、構造的な点では、注入ヘッド110とコンソール101とを一体に構成することもできる。コンソール101と注入ヘッド110が一体に構成された場合、コンソール101も検査室に配置されることになる。そこで、注入動作の開始および停止には、リモートコントローラ102(図1参照)を用いることができる。リモートコントローラ102を用いることにより、操作者は、操作室内で注入動作の開始および停止を制御できる。
シリンジとしては具体的には図9の(a)および(b)に示すようなものであってもよく、このシリンジは例えば100ml用のものである。このシリンジは、シリンダ部材501とピストン部材502とを備え、シリンダ部材501の末端に形成されたシリンダフランジ501aはIカット形状の輪郭形状を有し、同フランジ501aの外周部には2つの切欠き部505(一方のみを示す)が形成されている。シリンダ部材501の先端の導管部501bは、同軸状に配置された内側および外側の2つの筒状部を有するルアーロック接続用のものであってもよい。図9の(b)に示すように、シリンダフランジ501aの後面には、リング状の突起部501cが形成されていてもよい。
シリンジの他の例としては、図10の(a)、(b)に示すようなシリンジであってもよく、このシリンジは例えば200ml用のものである。このシリンジも、上記シリンジと同様、シリンダ部材501とピストン部材502とを備え、シリンダ部材501の末端に形成されたシリンダフランジ501aはIカット形状の輪郭形状を有するものであってもよい。シリンダフランジ501aの外周部には2つの切欠き部505(一方のみを示す)が形成されている。シリンダ部材501の先端の導管部501bは、同軸状に配置された内側および外側の2つの筒状部を有するルアーロック接続用のものであってもよい。図10の(b)に示すように、シリンダフランジ501aの後面には、リング状の突起部501cと、その突起部501cから外側に向かって延びる複数のリブ501dが形成されていてもよい。
なお、図10ではシリンダフランジ501aに切欠き部505とリブ501dの両方が形成されたものが描かれているが、いずれか一方のみが形成されたもの(例えば、切欠き部505が形成されていないもの)であってもよい。また、リブ501dに関し、図示上下方向に並んだ複数のリブのうち上部と下部の2つのリブのみを残し、他のリブを省略したような形状としてもよい。このようなリブ群が、フランジ部の左右両側のいずれか一方のみに形成されたシリンジとしてもよい。
図9および10に示すような、シリンダフランジ501aに切欠き部505を有するシリンジが装着されるアダプタは、図示した姿勢でシリンダフランジ501aが上方から挿入される溝を有し、シリンダフランジ501aが挿入され、さらに軸周りに90度回転した状態で切欠き部505に係合する突起を有することが好ましい。これにより、シリンダがより確実に保持される。したがって、仮に注入動作中に注入圧力制御に不具合が発生し、過剰な圧力がシリンジに作用した場合であってもシリンジはしっかりと保持されるため、シリンダフランジ501aが破損しにくくなっている。また、シリンジが斜めに装着されることに起因する偏荷重も生じにくく、ピストンとシリンダとの隙間による液漏れも防止できる。
図9および10に示したシリンジも、前述したシリンジ800と同様、シリンダの外周面にRFIDタグを有していてもよい。
薬液注入装置は、注入圧力を検出するためのロードセルをさらに有していてもよい。ロードセルは、例えばプレッサー112に備えることができる。図3に示したように複数のプレッサー112を有する場合は、それらの中のいずれか少なくとも1つにロードセルを有していてもよい。注入圧力は、モータ電流を測定することによって検出することもできる。プレッサー112に作用する負荷が大きくなると、その負荷の大きさに応じて、ピストン駆動機構140の駆動源であるモータ電流が大きくなる。モータ電流を利用した注入圧力の検出には、そのことが利用される。注入圧力の検出は、ロードセルを用いた検出およびモータ電流を利用した検出のいずれか一方のみであってもよいし、両者を併用してもよい。両者を併用する場合、通常はロードセルによって注入圧力を検出し、ロードセルが故障したときのみモータ電流の測定結果を利用して注入圧力を測定することができる。
透視撮像装置としては、薬液注入装置100と共に使用し得るものであれば、CT装置、MRI装置、PET装置、アンギオ装置および超音波画像診断装置など任意の透視撮像装置であってよい。
薬液注入システムは、図11に示すように、薬液注入装置100および透視撮像装置200の他に、使用前のシリンジ800を所定の温度に加温する加温器900および使用済みであり廃棄されるべきシリンジ800を収納する廃棄ボックス910をさらに含んでいてもよい。加温器900および廃棄ボックス910は、薬液注入装置100および透視撮像装置200とは独立した装置であってもよいし、これらの少なくとも1つとネットワークを介してデータ通信可能に接続されていてもよい。加温器900と廃棄ボックス910との間についても、互いに独立していてもよいし、ネットワークを介してデータ通信可能に接続されていてもよい。加温器900および廃棄ボックス910はそれぞれ、RFIDタグ802に記録されている情報を読み出したり、情報をRFIDタグ802に書き込んだりするためのリーダ/ライタ902、912を備えることができる。シリンジ800には、加温器900により加温されることにより、リーダ/ライタ902によりシリンジ800のRFIDタグ802に加温された旨の情報が記録される。また、使用済みのシリンジ800は、廃棄ボックス910に収納される際に、廃棄されたシリンジ800である旨の情報が、912によってRFIDタグ802に記録される。
薬液注入システムは、薬液充填装置920をさらに備えることもできる。薬液充填装置920は、薬液が充填されていない空のシリンジを搭載し、この空シリンジに薬液を充填することのできる装置である。薬液充填装置920も、薬液注入装置100、透視撮像装置200、加温器900および廃棄ボックス910とは独立した装置であってもよいし、これらの少なくとも1つとネットワークを介してデータ通信可能に接続されていてもよい。空シリンジには、ピストンが最前進位置にある状態で、薬液が収容されている袋およびボトルといった任意の形態の薬液容器930が、チューブなどによって流体連通するように接続される。空シリンジと薬液容器930との接続後、薬液充填装置920によってピストンを後退させることで、空シリンジに薬液を充填することができる。空シリンジにはデータキャリアであるRFIDタグが装着されていることが好ましい。以下の説明では、空シリンジは、RFIDタグ802が装着された薬液が充填される前のシリンジ800であるものとして説明する。
薬液容器930にもデータキャリアであるRFIDタグ932が装着されている。RFIDタグ932には、例えば、収容されている薬液の種類、内容量、製薬メーカー、品番、粘度、消費期限、薬液が造影剤の場合はそのヨード含有濃度など、薬液に関する情報がデータとして記録されている。薬液充填装置920は、RFIDタグ932からデータを読み出すことのできるリーダ922aと、シリンジ800に装着されているRFIDタグ802にデータを書き込むことのできるライタ922bと、を備えている。
以上のような構成において、薬液充填装置920を用いて薬液容器930からシリンジ800に薬液を充填するとき、薬液容器930に装着されたRFIDタグ932に記録されたデータが、リーダ922aによって読み出される。薬液充填装置920は、メモリなどの記憶装置を備えており、読み出されたデータは、この記憶装置に一時的に記憶される。次いで、操作者は、薬液充填装置920に充填量を設定し、薬液充填装置920を動作させる。
これによって、設定された量の薬液がシリンジ800内に充填される。充填量は、薬液充填装置920の所定の操作手順に従って設定することができる。薬液の充填後、ライタ922bは、記憶装置に一時的に記憶されたデータとともに、薬液の充填量および充填日時をシリンジ800のRFIDタグ802に書き込む。以上により、シリンジ800には、薬液が充填され、充填された薬液に関するデータがRFIDタグ802に記録されることになる。
なお、RFIDタグ802には、前述したような、シリンジに関するデータが予め記録されていてもよい。また、薬液容器930のRFIDタグ932からデータを読み出すリーダ922aを、データの書き込みも行えるリーダ/ライタとすることもできる。この場合、薬液容器930に収容されていた充填前の内容量から充填量を減算した現在の内容量(残量)をRFIDタグ932に書き込むようにすることもできる。残量の計算は、薬液充填装置920が有するCPUにて行うことができる。
注入制御部150は、前述したように、現在時刻の計時機能を有している。これを利用し、RFIDタグ932に記録された充填日時をRFIDモジュール166(図5参照)にて読み出し、上記計時機能により計時された現在日時と、読み出した充填日時とを、注入制御部150(図6参照)にて比較し、その結果、現在日時が充填日時から所定の期間経過後、すなわち使用期限超過であれば、注入制御部150は、この薬液の注入防止のための処理を行うようにすることができる。薬液の注入防止のための処理とは、例えば、ピストン駆動機構140(図6参照)の動作を不能とすること、表示ユニット154(図6参照)に、薬液の使用期限が超過していることを表示させること、およびブザー等の発音ユニット(不図示)から音または音声による警告を発することなどが挙げられる。薬液の使用期限は、注入制御部150に予め設定されているが、設定された使用期限は操作者が任意に変更することもできる。このように、薬液の充填日時を管理することによって、注入される造影剤の安全性を確保することができる。
薬液注入装置100、透視撮像装置200、加温器900、廃棄ボックス910および薬液充填装置920等の、透視撮像システムを構成する各医療機器は、医療ネットワークに接続されていてもよい。これにより、被験者に対する処置の履歴、薬液の使用履歴、シリンジの使用履歴等を簡単に保存および追跡することができる。
また、少なくとも薬液注入装置100および透視撮像装置200が医療ネットワークに接続されていてもよい。これによって、薬液注入装置100により注入された薬液の注入速度、注入時間、注入量、注入グラフを含む注入結果、さらに、透視撮像装置200による撮像条件(撮像時間、撮像装置がCT装置の場合は管電圧、などを含む)は、医療ネットワークを通じて透視撮像装置、RIS、PACS、HISなどに注入データとして保存できる。これにより、保存した注入データは、注入履歴の管理に利用されるが、特に注入量などは会計処理にも利用することができる。また、被験者の体重等の身体的情報、ID、氏名、検査部位、検査手法を、RIS、PACS、HISなどから取得して薬液注入装置に表示し、それにあった注入を実施することもできる。
また、薬液充填装置920による薬液の充填量は、その薬液の被験者への注入量とすることができる。そうすることにより、充填した薬液を無駄なく使用できる。注入量は、被験者の体重といった身体的特徴、撮像部位および撮像時間などのファクターを考慮した計算式を用いて算出することもできるし、医師等が値を直接決定することもできる。注入量の算出に用いられる上記のファクター、あるいは医師等が決定した注入量の値は、操作者が入力することもできるし、ネットワーク経由あるいはダイレクト回線で接続されたRIS、HIS、PACS、外部サーバ、クラウドなどの外部データベースから入手することもできる。注入量の計算に用いるファクターを外部データベースから入手することで、操作者による入力ミスを防止することができる。
計算式を用いた注入量の計算は、注入制御部150で実行される。注入制御部150の機能は、薬液注入装置、透視撮像装置および薬液充填装置が含む各種制御回路など任意のコンピュータ装置の何れが有していてもよい。すなわち、薬液の注入量は、薬液注入装置ではなく、他の任意のコンピュータ装置の何れかが計算するように構成することができる。また、コンソール制御回路の機能を薬液注入装置ではなく他の任意のコンピュータ装置が有することで、薬液の注入量だけでなく、注入速度および注入時間などをパラメータとした注入プロトコルも、その任意のコンピュータ装置で作成することができる。
空シリンジへの薬液の充填は、薬液注入装置100で代用することができる。これにより、薬液充填装置は不要とすることができる。薬液注入装置100を用いて空シリンジに薬液を充填する場合は、プレッサー112は、注入ヘッド110に装着された空シリンジのピストン末端に形成されたフランジを着脱可能に保持するための、爪またはフックなどのフランジ保持構造を有する。このフランジ保持構造によってピストンのフランジが保持され、かつ、シリンジが薬液容器930に連結された状態でプレッサー112を後退させることで、薬液容器930内の薬液をシリンジに充填することができる。このとき、プレッサー112の移動速度および移動距離の制御には、上述した薬液注入時の動作と同様、加速度センサ114によって加速度を利用することができる。