JP6104538B2 - 注入機器及び注入圧力を求める方法 - Google Patents

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Description

本発明は、超音波モーターを備えた注入機器であって、薬液の注入圧力を求めることができる注入機器、及び注入圧力を求める方法に関する。
従来、シリンジが装着されるシリンジ保持部と、シリンジのピストン部材を押し込むピストン駆動機構とを備えた注入機器であって、超音波モーターの動力によりピストン駆動機構を動作させ、シリンジ内の薬液を患者に注入する注入機器が知られていた(特許文献1)。この注入機器はロードセル等の圧力検出手段をさらに備え、薬液の注入圧力は、圧力検出手段によってピストン部材を押す力を検出することで求めている。
特開2003−290343号公報
この圧力検出手段は高価な部品であり、注入機器の価格を上げる原因となっていた。また、圧力検出手段のシールが劣化することにより、造影剤が圧力検出手段の内部に入り込んでしまう可能性があった。そのため、圧力検出手段を備えない注入機器が望まれている。しかし、超音波モーターを用いて動作する注入機器において、圧力検出手段を用いずに薬液の注入圧力を容易且つ精度良く求めることは困難である。正確に注入圧力を求めることができない場合には、圧力が設定された上限を超えてしまう結果、シリンジが破損してしまう可能性がある。
上記課題を解決するため、本発明の一例としての注入装置は、薬液を注入するための注入機器であって、超音波モーターと、前記薬液を送り出すように、前記超音波モーターによって駆動される駆動機構と、前記超音波モーターに供給される電流の電流値を計測する電流値計測手段と、前記超音波モーターを制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、電流値ごとに前記薬液の注入圧力が設定されたデータテーブルを用いて、前記計測された電流値に基づき前記注入圧力を求めると共に、前記求めた注入圧力が注入圧力リミット値を超えないように前記超音波モーターを制御することを特徴とする。
また、本発明の他の例としての方法は、超音波モーターと、薬液を送り出すように前記超音波モーターによって駆動される駆動機構とを備えた注入機器において、前記薬液の注入圧力を求める方法であって、前記超音波モーターに供給される電流の電流値を計測し、電流値ごとに前記薬液の注入圧力が設定されたデータテーブルを用いて、前記計測された電流値に基づき前記注入圧力を求めることを特徴とする。
これにより、高価な圧力検出手段を備えない低価格の注入機器を提供することができる。また、超音波モーターを用いて動作する注入機器において、圧力検出手段を用いずに薬液の注入圧力を容易且つ精度良く求めることができる。
本発明のさらなる特徴は、添付図面を参照して例示的に示した以下の実施例の説明から明らかになる。
注入機器を説明する概略ブロック図である。 第1実施形態に係る注入装置の制御装置を説明する概略ブロック図である。 注入圧力とモーター電流値との関係を示すグラフである。 第2実施形態に係る注入機器におけるモーター電流値とモーター電流値の移動平均の傾きとの関係を示すグラフである。 第3実施形態に係る注入機器におけるモーター電流値とエンコーダーパルス幅との関係を示すグラフである。 第4実施形態に係る注入装置の制御装置を説明する概略ブロック図である。
以下、本発明を実施するための例示的な実施例を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施例で説明する寸法、材料、形状、構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に具体的に記載された実施例に限定されるものではない。
[第1実施形態]
図1に示すように、薬液を注入するための注入機器1は、超音波モーター3と、超音波モーター3が正転するときに薬液を送り出すように、超音波モーター3によって駆動される駆動機構4と、超音波モーター3を制御する制御装置5とを備える。そして、駆動機構4及び超音波モーター3は、注入機器1の注入ヘッド2(注入装置)のフレーム21内に格納されている。このフレーム21は、2つのシリンジ91を保持するために2つのシリンジホルダー92を有する。さらに、注入機器1は、薬液の注入状況等が表示されるディスプレイを含むコンソール6を有している。このコンソール6は制御装置5に接続されており、制御装置5は光ケーブル等を介して注入ヘッド2に接続されている。なお、注入機器1の電源又はバッテリーは、注入ヘッド2、制御装置5、又はコンソール6のいずれかに設けることができ、またこれらとは別に設けることもできる。また、注入ヘッド2、制御装置5、コンソール6は、キャスタースタンドと一体的に構成されてもよく、それぞればらばらに設けられ且つキャスタースタンドに搭載された状態で有線ケーブルにより電気的に接続されて注入機器1を構成してもよい。また、注入ヘッド2、制御装置5、コンソール6間のそれぞれの接続は、有線接続でも無線接続でもよい。なお、遠隔操作装置を用いて、遠隔操作で薬液注入のスタート及びストップを操作することもできる。
制御装置5は、超音波モーター3に電気的に接続されており、超音波モーター3にはエンコーダー39が接続されている。そして、エンコーダー39は、超音波モーター3の回転速度に対応する周波数のパルス信号を制御装置5に送信している。なお、フレーム21内においてシリンジホルダー92が位置する側を前側とした場合に、超音波モーター3は後側部分に配置されている。また、駆動機構4は、シリンジホルダー92と超音波モーター3との間に配置されている。そして、この駆動機構4は、超音波モーター3のシャフト35に接続された伝達機構41と、伝達機構41に接続されたボールネジ軸411と、ボールネジ軸411に取り付けられたボールネジナット412と、ボールネジナット412に接続されたアクチュエーター413とを備える。
ボールネジナット412は、ボールネジ軸411の中間部分に螺合されている。そして、伝達機構41は、超音波モーター3からの回転をボールネジ軸411に伝達する。また、伝達機構41は、シャフト35に接続されたピニオンギアと、ボールネジ軸411に接続されたスクリューギアとを有している。そのため、超音波モーター3のシャフト35の回転は、ピニオンギア及びスクリューギアを介してボールネジ軸411に伝達される。これにより、ボールネジ軸411は、伝達された回転に従って回転する。そして、ボールネジナット412は、ボールネジ軸411の回転に伴い前進方向(前側方向)又は後進方向(後側方向)に摺動する。その結果、ボールネジナット412の摺動に伴い、アクチュエーター413が前進又は後進する。すなわち、シャフト35が正転するとアクチュエーター413が前進し、シャフト35が逆転するとアクチュエーター413が後進する。
薬液を注入する際には、薬液が充填されたシリンジ91がシリンジホルダー92に搭載される。このシリンジ91には、シリンジ91内において摺動可能であるピストン93が取り付けられている。そして、シリンジ91は、ピストン93のロッドがアクチュエーター413の先端に当接するように搭載される。これにより、シリンジ91が搭載された状態でボールネジナット412が前進方向に摺動すると、アクチュエーター413がピストン93を前進方向に押すことになる。そして、ピストン93が前進するとシリンジ91内の薬液が押し出され、シリンジ91の先端に接続されるカテーテル等を介して患者の体内に注入される。また、ボールネジナット412が後進方向に摺動すると、アクチュエーター413がピストン93を後進方向に引くことになる。薬液が充填されたシリンジ91は、プレフィルシリンジであってもよい。そして、シリンジ91(プレフィルシリンジ)には、RFIDやバーコードといったデーターキャリアを設けることができる。データーキャリアには、最高圧力値(耐圧値)が記録されている。注入機器1は、記録された圧力値を読み取り、この圧力値以上にならないよう注入圧力を制御することができる。また、薬液は、手動でシリンジ91に充填されてもよく、注入機器1や充填器でシリンジ91に充填されてもよい。
薬液を注入する場合、使用者は注入機器1の電源をオンにし、シリンジ91をシリンジホルダー92に搭載する。その後、使用者は、コンソール6の操作パネル(タッチパネル)に表示された注入ボタンを押す。また、注入ヘッド2に操作パネルが設けられている場合には、使用者は操作パネルの注入ボタンを押すこともできる。注入ボタンが押されると、制御装置5は超音波モーター3に駆動信号として正転信号を送る。この正転信号に応じて超音波モーター3が駆動し、シャフト35が正転する。シャフト35が正転すると、エンコーダー39は回転を検出して制御装置5にパルス信号を送る。注入が終了しシリンジ91を外す場合、ピストン93を後進させるために、制御装置5は超音波モーター3に駆動信号として逆転信号を送る。この逆転信号に応じて超音波モーター3が駆動し、シャフト35が逆転する。なお、超音波モーター3に送信される駆動信号は交流信号であり、位相が異なる2種類の信号のうち一方が他方に対して遅れている場合を正転信号としたときに、他方が一方に対して遅れている場合が逆転信号となる。なお、使用者はシリンジ91をシリンジホルダー92に搭載した後に、注入機器1の電源をオンすることもできる。
制御装置5は不図示の記憶手段に予め注入プロトコルを記憶しており、薬液の注入は注入プロトコルに従って自動的に行われる。また、制御装置5に注入プロトコルが記憶された記憶媒体を接続して、記憶媒体から読み込んだ注入プロトコルに従って薬液の注入行うこともできる。この注入プロトコルには、例えば、注入時間、注入速度、注入量及び注入圧力リミット値が設定されている。そして、注入プロトコルの内容はコンソール6に表示されるので、使用者は注入プロトコルの内容を確認することができる。また、制御装置5は、タイマーを利用して注入時間を制御すると共に、薬液の注入圧力等の注入状況を監視している。
注入ヘッド2及び制御装置5は、検査室内に配置できるように非磁性体材料を用いて構成されている。具体的には、ステンレス、アルミニウム、プラスチック、真鍮、銅、セラッミックス等を用いて構成されている。さらに、操作室に配置されるコンソール6も、非磁性体材料を用いて構成すれば検査室内に配置できる。また、超音波モーター3も非磁性体材料を用いて構成されている。具体的には、弾性体の材料はリン青銅であり、シャフト35、ネジ及びスペーサの材料は真鍮であり、ケース、ベース及びローターの材料はアルミニウムであり、ブッシュの材料はフッ素樹脂である。これにより、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等の、磁気を利用する機器の近傍で注入機器1を使用することができる。ただし、MRI装置から十分に離して設置する場合、又は磁気シールド処理を施した場合は、磁性体材料を用いて注入ヘッド2又は制御装置5を構成することもできる。また、注入機器1は、CT(Computed Tomography)スキャナ、PET(Positron Emission Tomography)装置、CTアンギオ装置、MRアンギオ装置、血管撮影装置等の他の医療機器と共に使用することもできる。この場合は、注入ヘッド2又は制御装置5を、磁性体材料を用いて構成することができる。
図2に示すように、制御装置5は、超音波モーター3を制御する制御部50と、コンソール6及び超音波モーター3に電力を供給する内部電源55とを有する。また、コンソールは、注入ヘッド2を操作するために、タッチパネルからなる操作パネルを有する。制御部50のメインCPU(Central Processing Unit)51は、ワンチップマイコンからなり、予め記憶されたプログラムに応じて所定のデータ処理を実行する。また、制御装置5にはコンソール6が電気的に接続されている。そして、制御装置5のメインCPU51は、コンソール6と信号の送受信を行う。このコンソール6から注入ヘッド2に装着されたシリンジ91の識別データが入力されると、CPU51は不図示の記憶手段に識別データを記憶させる。
メインCPU51は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)56との間で信号の送受信を行う。また、FPGA56は、速度判定位相制御ユニット501と、駆動信号生成ユニット504と、実速度検出ユニット505とを有する。そして、制御部50においては、速度判定位相制御ユニット501、積分回路502、信号生成手段であるVCO(Voltage Controlled Oscillator)503、駆動信号生成ユニット504、ドライブ回路52、が順番に接続されている。このドライブ回路52は、超音波モーター3に電気的に接続されている。そして、超音波モーター3のローターには、超音波モーター3の回転速度に対応するパルス信号を出力するエンコーダー39が接続されている。このエンコーダー39は、実速度検出ユニット505にパルス信号を出力する。
注入機器1の使用者がコンソール6を操作して薬液の注入条件を設定すると、注入を開始するための指令信号がコンソール6からメインCPU51に送信される。指令信号を受信したメインCPU51は、設定速度信号を駆動信号生成ユニット504に送信する。そして、設定速度信号を受信した駆動信号生成ユニット504は、sin生成信号、-sin生成信号、cos生成信号、-cos生成信号及び位相転移信号をドライブ回路52に送信する。sin生成信号等を受信したドライブ回路52は、AC(Alternating Current)電圧(sin波、-sin波、cos波、-cos波)に変換して超音波モーター3に送信する。
超音波モーター3に接続されたエンコーダー39は、超音波モーター3の回転を検出して実速度検出ユニット505にパルス信号を送る。実速度検出ユニット505は、実速度を判定し、検出速度信号を速度判定位相制御ユニット501に送信する。また、速度判定位相制御ユニット501は、圧力リミット信号、設定速度信号をメインCPU51から受信する。そして、速度判定位相制御ユニット501は、検出速度信号、圧力リミット信号及び設定速度信号に基づいて、実速度を設定速度に一致させるように駆動電圧を発生させる。積分回路502は、速度判定位相制御ユニット501が発生させた駆動電圧を積分する。そして、VCO503は、積分された駆動電圧を対応する周波数の駆動信号に変換する。
駆動信号生成ユニット504は、VCO503から受信した駆動信号を4相のパルス信号、すなわちsin生成信号、-sin生成信号、cos生成信号、-cos生成信号に変換する。この時、駆動信号生成ユニット504においては、メインCPUから受信した設定速度信号を用いて位相のズレ量が定められる。そして、ドライブ回路52は、駆動信号生成ユニット504から受信したパルス信号及び位相転移信号に基づき、AC(Alternating Current)電圧(sin波、-sin波、cos波、-cos波)に変換する。なお、VCO503からは、速度判定位相制御ユニット501にも信号が送信され、フィードバック制御に利用される。これにより、制御部50は、設定された速度で回転駆動するように超音波モーター3を制御することができる。また、メインCPU51は、電源制御信号を電源55に送信し、供給される電力を制御する。そして、電源55からは、コンソール6と、制御部50(メインCPU51、FPGA56、ドライブ回路52)と、超音波モーター3とに電力が供給される。
第1実施例において、超音波モーター3のドライブ回路52と超音波モーター3の電源55との間には電流値計測手段506が設けられている。そして、電流値計測手段506は、超音波モーター3の電源55から超音波モーター3のドライブ回路52へと流れるモーター電流の電流値を計測している。メインCPU51は、電流値計測手段506から出力される電流値をリアルタイムに取得する。そして、メインCPU51は、電流値ごとに薬液の注入圧力が設定されたデータテーブルを用いて、薬液の注入圧力を求める。
図3を参照して注入機器1における注入圧力の求め方について説明する。図3において、縦軸はモーター電流の電流値(A)を示し、横軸は注入圧力(PSI)を示す。図3に示すように、本発明の発明者らによって、モーター電流値が薬液の注入圧力とほぼ一次に比例することが見出された。すなわち、各回転数(39.6rpm、80.4rpm、99.6rpm、120.0rpm)において、モーター電流値の増加に略比例して、それぞれ注入圧力も増加する。したがって、予め測定したデータに基づいてデータテーブルを作成することにより、検出された電流値に応じた注入圧力を求めることができる。
すなわち、メインCPU51は、予め記憶されたデータテーブルを用いることにより、注入圧力を求めることができる。そして、メインCPU51は、求めた注入圧力の監視を行う。具体的にメインCPU51は、計測された電流値に基づき薬液の注入圧力を求めると共に、コンソール6を介して設定された圧力リミット値と、求めた注入圧力とを比較する。そして、メインCPU51は、求めた注入圧力が注入圧力リミット値を超えないように、超音波モーター3の回転速度を制御する。また、メインCPU51は、注入圧力の異常を検知した場合には薬液の注入を自動で停止する。このように、メインCPU51を備えた制御装置5は、電流値ごとに薬液の注入圧力が設定されたデータテーブルを用いて、計測された電流値に基づき注入圧力を求めることができる。さらに、制御装置5は、求めた注入圧力が注入圧力リミット値を超えないように超音波モーター3を制御することができる。
なお、本発明者らによって、超音波モーター3の回転数(回転速度)に応じて注入圧力に対応する電流値の変動率が変化することが見出された。そのため、データテーブルは、超音波モーター3の回転数に応じて注入圧力が設定された複数のデータテーブルを含んでもよい。例えば、データテーブルは、39.6rpm、80.4rpm、99.6rpm、120.0rpmの回転数に応じた4つのデータテーブルを含むことができる。また、データテーブルにおいては、超音波モーター3の回転数毎に注入圧力とモーター電流値との相関が設定されてもよい。具体的には、モーター電流値から注入圧力を求める際に、超音波モーター3の回転数毎に異なる係数を用いて注入圧力が設定されたデータテーブルを用いることができる。なお、超音波モーター3の回転数は、エンコーダーを用いて検出することができる。また、薬液の注入圧力は、シリンジ91の種類に応じて異なる。そのため、データテーブルは、シリンジ91の種類に応じて設定されてもよく、この場合は電流値に対応する注入圧力がそれぞれ設定される。そして、メインCPU51は、シリンジ91の識別データに対応したデータテーブルを用いて注入圧力を求める。
また、制御装置5は、リアルタイムに求めた圧力を、経時グラフとしてコンソール6に表示させることができる。具体的に、制御装置5は、横軸が時間を表し且つ縦軸が圧力を表すように、経時グラフを表示させることができる。そして、経時グラフには、設定された圧力値の上限に対応する注入圧力リミット値、又はシリンジ91が許容しうる圧力値の上限に対応するハザードリミット値を表示させることもできる。制御装置5は、リアルタイムに求められた圧力が理想の圧力値又は注入圧力リミット値に追従するように、超音波モーター3の出力をフィードバック制御することができる。さらに、制御装置5は、リアルタイムに求められた圧力がハザードリミット値を超えた場合には、超音波モーター3を停止させるように制御することもできる。
このような注入機器1において、操作者がコンソール6の操作パネルに希望の注入速度を入力すると、メインCPU51は注入速度を回転速度に換算し、設定速度信号として速度判定位相制御ユニット501に送信する。そして、操作者が注入開始を入力すると、速度判定位相制御ユニット501は設定された回転速度に対応して駆動電圧を発生する。この駆動電圧は、積分回路502により積分され、VCO503により対応する周波数の駆動信号に変換される。この駆動信号は、駆動信号生成ユニット504及びドライブ回路52により、AC電圧に変換される。そして、このAC電圧に従い、超音波モーター3が回転駆動する。超音波モーター3の回転に伴い、駆動機構4はシリンジ91のピストン93を摺動させる。このとき、制御装置5は、超音波モーター3に供給される電流の電流値を計測し、電流値ごとに薬液の注入圧力が設定されたデータテーブルを用いて、計測された電流値に基づき注入圧力を求める。そして、制御装置5によって注入圧力が監視されているので、設定された注入圧力の範囲内でシリンジ91内の薬液が注入される。
第1実施形態の注入機器1によれば、高価な圧力検出手段を備える必要がなく、低価格の注入機器1を提供することができる。また、電流値を計測するのみで注入圧力が求めることができるので、圧力検出手段を用いずに薬液の注入圧力を容易且つ精度良く求めることができる。
さらに、第1実施形態の注入機器1においては、電源55からドライブ回路52へ流れる電流の値を電流値計測手段506が計測している。そのため、電流値が高い箇所で電流値を測定することができるので、電流値の変動を容易且つ正確に検出することができる。また、電流値計測手段506の数が1つで足りるため、回路構成が煩雑になることもない。
[第2実施形態]
図4を参照して、第2実施形態について説明する。図4は、モーター電流値とモーター電流値の移動平均の傾き(以下、単に傾きという)との関係を示すグラフである。この傾きは、モーター電流値の区間平均(移動平均)を求め、そこから求めている。図4において、四角で示された点がモーター電流値(A)であり、三角で示された点が傾き(A/sec)である。また、図4において、横軸は注入開始からの経過時間(sec)を表している。なお、第2実施形態においては、薬液の注入条件が第1実施形態とは異なる。
図4に示されるように、モーター電流値は、注入開始(超音波モーター3の回転開始)後に大きく変動し、その後安定状態に至る。そして、モーター電流値が変動している間は、注入圧力を正確に求めることが難しい。そのため、注入圧力は、モーター電流値が安定した後で求めることが好ましい。ここで、本発明の発明者らは、モーター電流値の安定と傾きとの間に相関関係があることを見出した。すなわち、モーター電流値が安定すると、傾きが所定値以下となることを見出した。
そこで、第2実施形態では、薬液の注入開始後であって所定の待機時間が経過した後に、注入圧力を求める。具体的には、制御装置は、電流値の移動平均の傾きを監視して、傾きが所定値よりも大きくなった後であって、傾きが当該所定値以下となった後に、注入圧力を求める。ここで、注入圧力を求めることは、超音波モーター3の制御に使用される注入圧力を求めることを意味する。従って、注入開始後、待機時間(所定時間)が経過するまでの間は、注入圧力を求めないこと、及び注入開始後、待機時間が経過するまでの間は、注入圧力を求めても当該注入圧力に基づく制御を行わないことの両者を含む。そのため、注入開始後に、傾きが所定値より大きくなり、その後に再び傾きが所定値以下となるまでの間が待機時間となる。図4においては、傾きが所定値以下となるタイミングの傾きを丸Aで囲って示している。そして、このタイミング以降のモーター電流値は、安定している(所定の範囲内の変動に収まっている)ことが見てとれる。なお、所定値は、実験等によって予め求めることができる。
第2実施形態の注入機器1において、操作者が注入開始を入力すると、メインCPU51は、電流値計測手段506から出力される電流値をリアルタイムに取得し、傾きを求める。そして、メインCPU51は、傾きが所定値を越え、再び所定値以下になるまで待機する。傾きが所定値以下になると、メインCPU51は、電流値計測手段506から出力される電流値に基づき、予め記憶されたデータテーブルを用いて薬液の注入圧力を求める。その後、メインCPU51は、第1実施形態と同様に注入圧力の監視を行う。
第2実施形態の注入機器1によっても、高価な圧力検出手段を備える必要がなく、低価格の注入機器1を提供することができる。また、電流値を計測するのみで注入圧力を求めることができるので、圧力検出手段を用いずに薬液の注入圧力を容易且つ精度良く求めることができる。さらに、待機時間経過後に注入圧力を求めるので、注入圧力をより精度良く求めることができる。
[第3実施形態]
図5を参照して第3実施形態について説明する。図5は、モーター電流値とエンコーダーパルス幅(以下、単にパルス幅という)との関係を示すグラフである。第3実施形態においても、注入圧力を求めるタイミングを遅らせているが、エンコーダーパルス幅に基づき待機時間の経過を判断している。また、図5において、横軸は時間(sec)を表している。なお、第3実施形態においては、薬液の注入条件が第1及び第2実施形態とは異なる。
図5に示されるように、モーター電流値は、注入開始後に大きく変動し、その後安定状態に至る。そして、モーター電流値が変動している間は、正確に注入圧力を求めることが難しい。そのため、注入圧力は、モーター電流値が安定した後で求めることが好ましい。ここで、本発明の発明者らは、モーター電流値の安定とパルス幅との間に相関関係があることを見出した。すなわち、モーター電流値が安定すると、パルス幅が一定になることを見出した。
そこで、第3実施形態では、薬液の注入開始後であって所定の待機時間が経過した後に、注入圧力を求めている。具体的には、パルス信号のパルス幅が一定となった後に、注入圧力を求める。ここで、注入圧力を求めることは、超音波モーター3の制御に使用される注入圧力を求めることを意味する。従って、注入開始後、待機時間が経過するまでの間は、注入圧力を求めないこと、及び注入開始後、待機時間が経過するまでの間は、注入圧力を求めても当該注入圧力に基づく制御を行わないことの両者を含む。そのため、注入開始から、パルス幅が一定になるまでの間を待機時間としている。図5においては、パルス幅が一定になるタイミングを線Bで示している。そして、これ以降は、モーター電流値が安定している(所定の範囲内の変動に収まっている)ことが見てとれる。換言すると、線Bで示すタイミングの後は、超音波モーター3の回転速度が設定値に達し、パルス幅が略一定になっている。
第3実施形態の注入機器1において、操作者が注入開始を入力すると、メインCPU51は、エンコーダー39から出力されるパルス信号をリアルタイムに取得し、超音波モーター3の回転速度を検出する。そして、メインCPU51は、パルス幅が一定になる(回転速度が設定値に達する)まで待機する。パルス幅が一定になると、メインCPU51は、電流値計測手段506から出力される電流値に基づき、予め記憶されたデータテーブルを用いて薬液の注入圧力を求める。その後、メインCPU51は、第1実施形態と同様に注入圧力の監視を行う。
第3実施形態の注入機器1によっても、高価な圧力検出手段を備える必要がなく、低価格の注入機器1を提供することができる。また、電流値を計測するのみで注入圧力を求めることができるので、圧力検出手段を用いずに薬液の注入圧力を容易且つ精度良く求めることができる。さらに、待機時間経過後に注入圧力を求めるので、注入圧力をより精度良く求めることができる。
なお、第2及び第3実施形態の待機時間は、所定の時間、例えば、0.5sec等に設定することもできる。この所定の時間は、予めデータを計測することよって導き出すことができる。これにより、傾きと所定値との比較を省略することができ、より簡易的に待機時間の経過を判断することが可能となる。
[第4実施形態]
図6を参照して第4実施形態について説明する。図6は、制御装置5を説明する概略ブロック図である。なお、第4実施形態の説明においては、第1実施形態との相違点について説明し、第1実施形態で説明した構成要素については同じ参照番号を付し、その説明を省略する。特に説明した場合を除き、同じ参照符号を付した構成要素は略同一の動作及び機能を奏し、その作用効果も略同一である。
第4実施形態においても、第1実施形態と同様に電流値計測手段506が設けられている。ただし、第1実施形態においては、電流値計測手段506がドライブ回路52と電源55との間に設けられている。一方、第4実施形態においては、電流値計測手段506が超音波モーター3のドライブ回路52と超音波モーター3との間に4つ設けられている。そして、電流値計測手段506は、超音波モーター3のドライブ回路52から超音波モーター3へ流れるモーター電流の電流値を計測している。具体的には、sin波、-sin波、cos波、-cos波に対応して、1つの超音波モーターに対して4つの電流値計測手段506が設けられている。なお、説明の便宜上、図6においては、4つの電流値計測手段506を点線で囲って示している。
メインCPU51は、4つの電流値計測手段506から出力される電流値をリアルタイムに取得し、超音波モーター3に加わるモーター電流の電流値が検出される。そして、メインCPU51は、予め記憶されたデータテーブルを用いて薬液の注入圧力を求める。第1実施形態と同様に、メインCPU51は、シリンジ91の識別データに対応したデータテーブルを用いて注入圧力を求める。
第1実施形態においては、ドライブ回路52と電源55との間に電流値計測手段506が設けられていた。そのため、ドライブ回路52での回路損失により、超音波モーター3に実際に印加される電流値とは差異が生じてしまう。そこで、第4実施形態においては、ドライブ回路52と超音波モーターとの間に電流値計測手段506が設けられている。これにより、超音波モーター3に近い箇所でより正確な電流値を計測することができる。そのため、注入圧力をより精度良く求めることができる。
第4実施形態の注入機器1によっても、高価な圧力検出手段を備える必要がなく、低価格の注入機器を提供することができる。また、電流値を計測するのみで注入圧力を求めることができるので、圧力検出手段を用いずに薬液の注入圧力を容易且つ精度良く求めることができる。さらに、超音波モーターに近い箇所で電流値を計測するので、注入圧力をより精度良く求めることができる。
以上、実施例を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。本発明に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、上述の各実施形態及び変形例は、本発明に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
例えば、第1実施形態においては、ドライブ回路52と電源55との間に1つの電流値計測手段506が設けられていた。しかし、1つの超音波モーター3に対して、ドライブ回路52と電源55との間に複数の電流値計測手段506を設けることもできる。具体的には、sin生成信号、-sin生成信号、cos生成信号、-cos生成信号に対応して、1つの超音波モーター3に対して4つの電流値計測手段506を設けることが考えられる。この4つの電流値計測手段506は、ドライブ回路52の直前に設けられる。
また、制御装置5は、注入ヘッド2に組み込むこともできる。この場合、制御装置5は、注入ヘッド2のフレーム21内に配置することができる。また、制御装置5は、フレーム21の外面に取り付けることもできる。なお、遠隔操作を行う場合、注入機器1を以下のように構成することができる。例えば、制御装置5に対して、遠隔操作装置又はコンソール6から無線接続を介して信号を送信するように構成することができる。また、制御装置5が組み込まれた注入ヘッド2に対して、遠隔操作装置又はコンソール6から無線接続を介して信号を送信するように構成することができる。さらに、注入ヘッド2に対して、制御装置5が組み込まれたコンソール6から無線接続を介して信号を送信するように構成することができる。なお、コンソール6及び制御装置5は、それぞれ外部電源に接続することができる。また、遠隔操作装置とコンソール6とは、有線接続することができる。
1:注入機器、2:注入ヘッド、3:超音波モーター、4:駆動機構、5:制御装置、6:コンソール、21:フレーム、35:シャフト、39:エンコーダー、41:伝達機構、50:制御部、51:メインCPU、52:ドライブ回路、55:電源、56:FPGA、91:シリンジ、92:シリンジホルダー、93:ピストン、411:ボールネジ軸、412:ボールネジナット、413:アクチュエーター、501:速度判定位相制御ユニット、502:積分回路、503:VCO、504:駆動信号生成ユニット、505:実速度検出ユニット、506:電流値計測手段

Claims (8)

  1. 薬液を注入するための注入機器であって、
    超音波モーターと、
    前記薬液を送り出すように、前記超音波モーターによって駆動される駆動機構と、
    前記超音波モーターに供給される電流の電流値を計測する電流値計測手段と、
    前記超音波モーターを制御する制御装置とを備え、
    前記制御装置は、電流値ごとに前記薬液の注入圧力が設定されたデータテーブルを用いて、前記計測された電流値に基づき前記注入圧力を求めると共に、前記求めた注入圧力が注入圧力リミット値を超えないように前記超音波モーターを制御し、
    前記データテーブルは、前記超音波モーターの回転数に応じた複数のデータテーブルを含んでいることを特徴とする、注入機器。
  2. 薬液を注入するための注入機器であって、
    超音波モーターと、
    前記薬液を送り出すように、前記超音波モーターによって駆動される駆動機構と、
    前記超音波モーターに供給される電流の電流値を計測する電流値計測手段と、
    前記超音波モーターを制御する制御装置とを備え、
    前記制御装置は、電流値ごとに前記薬液の注入圧力が設定されたデータテーブルを用いて、前記計測された電流値に基づき前記注入圧力を求めると共に、前記求めた注入圧力が注入圧力リミット値を超えないように前記超音波モーターを制御し、
    前記データテーブルは、前記超音波モーターの回転数毎に前記薬液の注入圧力と前記電流値との相関が設定されていることを特徴とする、注入機器。
  3. 前記電流値計測手段は、前記超音波モーターのドライブ回路と前記超音波モーターの電源との間において前記電流値を計測することを特徴とする、請求項1又は2に記載の注入機器。
  4. 前記電流値計測手段は、前記超音波モーターのドライブ回路と前記超音波モーターとの間において前記電流値を計測することを特徴とする、請求項1又は2に記載の注入機器。
  5. 前記制御装置は、前記薬液の注入開始後であって所定の待機時間が経過した後に、前記注入圧力を求めることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の注入機器。
  6. 前記制御装置は、前記電流値の移動平均の傾きが所定値を超えた後であって前記傾きが前記所定値以下となった後に、前記注入圧力を求めることを特徴とする、請求項5に記載の注入機器。
  7. 前記超音波モーターの回転速度に対応するパルス信号を出力するエンコーダーをさらに備え、
    前記制御装置は、前記パルス信号のパルス幅が一定となった後に、前記注入圧力を求めることを特徴とする、請求項5に記載の注入機器。
  8. 超音波モーターと、薬液を送り出すように前記超音波モーターによって駆動される駆動機構と、電流値計測手段と、前記超音波モーターを制御する制御装置とを備えた注入機器において、前記薬液の注入圧力を求める方法であって、
    前記電流値計測手段が、前記超音波モーターに供給される電流の電流値を計測し、
    前記制御装置が、電流値ごとに前記薬液の注入圧力が設定されたデータテーブルを用いて、前記計測された電流値に基づき前記注入圧力を求め
    前記データテーブルは、前記超音波モーターの回転数に応じた複数のデータテーブルを含んでいるか、又は前記超音波モーターの回転数毎に前記薬液の注入圧力と前記電流値との相関が設定されていることを特徴とする、方法。
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