JPWO2011125959A1 - シューズのソール構造体 - Google Patents
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Abstract
ランニング時のエネルギーロスを低減できるソール構造体を提供する。シューズのソール構造体1において、上方に配置され、ソール前後方向に延びる上部プレート3と、上部プレート3の下方に配置され、上部プレート3の下面に固着されるとともに、下方に開口しかつソール幅方向に延びる溝41を有する軟質弾性部材製の下部ミッドソール4と、溝41のソール前後方向の各開口縁部間に屈曲した状態で架設されかつ各開口縁部を連結するとともに、ソール屈曲の初期の段階では、屈曲した状態から徐々に伸長して各開口縁部間で直線状に張られる状態までソールの屈曲を許容し、ソール屈曲が進んだ段階では、各開口縁部間で直線状に張られた状態から伸長方向に力を受けることにより、ソールの屈曲を規制するように作用する屈曲規制部材10とを設ける。
Description
本発明は、シューズ用ソール構造体に関し、詳細には、ランニング時のエネルギーロスを低減させるための構造の改良に関する。
本件出願人は、シューズのソール前足部の屈曲性を向上させるために、例えば国際公開第2006/070549号パンフレットに示すようなソール構造体を提案している。このソール構造体は、ソール構造体の前足部領域の上側に配置されかつ前足部領域に沿って前後方向に延設された上部プレートと、上部プレートとの間に一定の空隙を隔てて上部プレートの下方に配置されるとともに、前足部領域に沿って前後方向に延設されかつその前後方向の経路長が上部プレートの前後方向の経路長よりも長くなるような凹凸形状を有する下部プレートとを有している。
この場合には、下部プレートの前後方向の経路長が上部プレートの前後方向の経路長よりも長くなるように下部プレートが凹凸形状を有しているので、ソール前足部の屈曲変形の際には、下部プレートが前後方向に伸びることができ、その結果、下部プレートがソール前足部の屈曲変形を阻害することはなく、ソール前足部の屈曲性が向上している。
また、本件出願人は、シューズのソール前足部の蹴り出しをスムーズに行わせるために、例えば特開2005−13718号公報に示すようなソール構造体を提案している。このソール構造体は、前後方向に延びる扁平な形状の空隙をソール前足部領域に有しており、当該空隙が第1および第2の曲面から形成されるとともに、第1および第2の曲面の先後端間の道程が実質的に等しくなっている。
この場合には、着用者の足の踏付部がソール前足部を押圧すると、その押付荷重により、第1の曲面が第2の曲面に接近するように変形して、空隙後方のソール後足部が上方に持ち上げられるように屈曲変形する。そして、この状態から、ソール前足部がさらに圧縮されて空隙が閉じると、ソール前足部の曲げ剛性が増大し、その結果、ソール前足部の蹴り出し時のいわゆるスナッピー性が向上して、ソール前足部の蹴り出しがスムーズに行われるようになっている。
上記国際公開第2006/070549号パンフレットに示すものにおいては、ソール前足部の屈曲性を向上させることは可能であるが、ソール前足部の屈曲時には、下部プレートが依然として凹凸形状を有していることにより、下部プレートが前後方向に伸び得る状態にあり、このため、ソール前足部の蹴り出しの際には、ソール前足部には依然として前後方向の柔軟性が残っており、その結果、ソール前足部の蹴り出しを必ずしもスムーズに(つまり迅速かつ確実に無駄なく)行うことができない。
また、上記特開2005−13718号公報に示すものでは、ソール前足部の蹴り出しをスムーズに行わせることは可能であるが、主にソール後足部をソール前足部に対して屈曲させるように構成されているため、ソール前足部自体の屈曲性は必ずしも良好なものとはいえない。
その一方、本願発明者らは、ソール前足部の接地時からつま先離地時(トーオフ時)に至るまでの体重移動にともなうライド感を向上させるために、つまり官能評価でよりスムーズなライド感を得るために、とくに蹴り出し動作中のMP関節(中足趾節関節)トルクによるエネルギーについて着目した。
第12図は、シューズ着用者がランニングを行っている様子を模式的に表したものであり、同図はランニング中の蹴り出し局面を示している。同図中、(a)はソールが全面接地したフットフラットの状態を示しており、このとき、ソール前足部を含むソール全体が接地している。(b)はソールの踵部が離地し始めたヒールオフの状態を示すとともに、ソール前足部が屈曲し始めた状態を示している。(c)、(d)はソール前足部の屈曲が徐々に進んでいく状態を示している。(e)はソール前足部が最大屈曲した状態を示しており、言い換えれば、ソール前足部による蹴り出し動作が開始されようとしている局面を示している。(f)はソール前足部による蹴り出し動作が終了してソール前足部が離地し始めようとする直前の状態を示している。各図中の上方への矢印は、ソールが地面から受ける床反力ベクトルを示している。また、第13図は、ランナーの脚をモデル化したものであり、同図中、MPがMP関節を示している。
次に、第14図は、第12図に示す蹴り出し局面において時々刻々変化するMP関節まわりのトルク(MP関節トルク)を求めて、これをグラフ化したものであり、第15図は、そのときの角速度(angle velocity)の時間的変化をグラフ化したものである。第16図は、これらMP関節トルクおよび角速度に基づき、蹴り出し局面においてMP関節が発揮するパワーを算出して、その時間的変化をグラフ化したものである。
第16図に示すように、蹴り出し局面において、パワーが0になった状態つまりMP関節トルクが0になった状態(第14図参照)からつま先が完全に離地するまでの間であるトーオフ局面(toe off phase)においては、MP関節が発揮するエネルギーは負となっており、エネルギーロス(energy loss)を生じていることが分かる(第16図中の斜線領域参照)。このようなエネルギーロスをできるだけ0に近づけることにより、蹴り出し時の力を無駄なく接地面に伝達することができ、スムーズなライド感を得ることができるものと考えられる。
その一方、別の試験によって、シューズのソールの曲げ抵抗の大小が走行中のライド感の官能評価に影響を与えることが分かっているので、曲げ抵抗値の大きいシューズと小さいシューズの2種類のシューズを用意し、これらを同じランナーがそれぞれ着用してランニングを行ってもらった。第17図中の下側のグラフは、それぞれのシューズの蹴り出し局面でMP関節が発揮するパワーの時間的変化を表したものであり、同図中の上側の模式図の(b)〜(f)は、第12図中の(b)〜(f)にそれぞれ対応している。第17図中、上側の模式図は、下側のグラフと上下に対応している。また、第17図のグラフ中、縦軸の負(<0)の部分は、エネルギーロスの発生を示しており、グラフが縦軸の0から下に大きく振れるほど、発生するエネルギーロスが大きいことを示している。
第17図から分かるように、曲げ抵抗の大きいシューズの場合、蹴り出し局面の前半において、(b)、(c)間の中間から(d)にかけてエネルギーロスが大きく、また曲げ抵抗の小さいシューズの場合、蹴り出し局面の後半の(e)〜(f)においてエネルギーロスが大きかった。なお、蹴り出し局面の前半の(b)から(b)、(c)間の中間までは、曲げ抵抗の小さいシューズの方でもエネルギーロスを生じているが、その大きさは無視し得るレベルであると考えられる。
以上の考察から、本願発明者らは、上記両シューズの長所をそれぞれ採り入れることにより、蹴り出し局面の前半(b)〜(d)では曲げ抵抗を小さくしかつ蹴り出し局面の後半(e)〜(f)では曲げ抵抗を大きくすることができるようなシューズを提供できれば、走行中によりスムーズなライド感が得られるようになると考えた。
本発明は、このような考察結果に基づいてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ランニング時のエネルギーロスを低減できるシューズ用ソール構造体を提供することにある。別の言い方をすれば、本発明は、エネルギーロスの低減により、走行中にスムーズなライド感を得ることができるシューズ用ソール構造体を提供しようとしている。
この場合には、下部プレートの前後方向の経路長が上部プレートの前後方向の経路長よりも長くなるように下部プレートが凹凸形状を有しているので、ソール前足部の屈曲変形の際には、下部プレートが前後方向に伸びることができ、その結果、下部プレートがソール前足部の屈曲変形を阻害することはなく、ソール前足部の屈曲性が向上している。
また、本件出願人は、シューズのソール前足部の蹴り出しをスムーズに行わせるために、例えば特開2005−13718号公報に示すようなソール構造体を提案している。このソール構造体は、前後方向に延びる扁平な形状の空隙をソール前足部領域に有しており、当該空隙が第1および第2の曲面から形成されるとともに、第1および第2の曲面の先後端間の道程が実質的に等しくなっている。
この場合には、着用者の足の踏付部がソール前足部を押圧すると、その押付荷重により、第1の曲面が第2の曲面に接近するように変形して、空隙後方のソール後足部が上方に持ち上げられるように屈曲変形する。そして、この状態から、ソール前足部がさらに圧縮されて空隙が閉じると、ソール前足部の曲げ剛性が増大し、その結果、ソール前足部の蹴り出し時のいわゆるスナッピー性が向上して、ソール前足部の蹴り出しがスムーズに行われるようになっている。
上記国際公開第2006/070549号パンフレットに示すものにおいては、ソール前足部の屈曲性を向上させることは可能であるが、ソール前足部の屈曲時には、下部プレートが依然として凹凸形状を有していることにより、下部プレートが前後方向に伸び得る状態にあり、このため、ソール前足部の蹴り出しの際には、ソール前足部には依然として前後方向の柔軟性が残っており、その結果、ソール前足部の蹴り出しを必ずしもスムーズに(つまり迅速かつ確実に無駄なく)行うことができない。
また、上記特開2005−13718号公報に示すものでは、ソール前足部の蹴り出しをスムーズに行わせることは可能であるが、主にソール後足部をソール前足部に対して屈曲させるように構成されているため、ソール前足部自体の屈曲性は必ずしも良好なものとはいえない。
その一方、本願発明者らは、ソール前足部の接地時からつま先離地時(トーオフ時)に至るまでの体重移動にともなうライド感を向上させるために、つまり官能評価でよりスムーズなライド感を得るために、とくに蹴り出し動作中のMP関節(中足趾節関節)トルクによるエネルギーについて着目した。
第12図は、シューズ着用者がランニングを行っている様子を模式的に表したものであり、同図はランニング中の蹴り出し局面を示している。同図中、(a)はソールが全面接地したフットフラットの状態を示しており、このとき、ソール前足部を含むソール全体が接地している。(b)はソールの踵部が離地し始めたヒールオフの状態を示すとともに、ソール前足部が屈曲し始めた状態を示している。(c)、(d)はソール前足部の屈曲が徐々に進んでいく状態を示している。(e)はソール前足部が最大屈曲した状態を示しており、言い換えれば、ソール前足部による蹴り出し動作が開始されようとしている局面を示している。(f)はソール前足部による蹴り出し動作が終了してソール前足部が離地し始めようとする直前の状態を示している。各図中の上方への矢印は、ソールが地面から受ける床反力ベクトルを示している。また、第13図は、ランナーの脚をモデル化したものであり、同図中、MPがMP関節を示している。
次に、第14図は、第12図に示す蹴り出し局面において時々刻々変化するMP関節まわりのトルク(MP関節トルク)を求めて、これをグラフ化したものであり、第15図は、そのときの角速度(angle velocity)の時間的変化をグラフ化したものである。第16図は、これらMP関節トルクおよび角速度に基づき、蹴り出し局面においてMP関節が発揮するパワーを算出して、その時間的変化をグラフ化したものである。
第16図に示すように、蹴り出し局面において、パワーが0になった状態つまりMP関節トルクが0になった状態(第14図参照)からつま先が完全に離地するまでの間であるトーオフ局面(toe off phase)においては、MP関節が発揮するエネルギーは負となっており、エネルギーロス(energy loss)を生じていることが分かる(第16図中の斜線領域参照)。このようなエネルギーロスをできるだけ0に近づけることにより、蹴り出し時の力を無駄なく接地面に伝達することができ、スムーズなライド感を得ることができるものと考えられる。
その一方、別の試験によって、シューズのソールの曲げ抵抗の大小が走行中のライド感の官能評価に影響を与えることが分かっているので、曲げ抵抗値の大きいシューズと小さいシューズの2種類のシューズを用意し、これらを同じランナーがそれぞれ着用してランニングを行ってもらった。第17図中の下側のグラフは、それぞれのシューズの蹴り出し局面でMP関節が発揮するパワーの時間的変化を表したものであり、同図中の上側の模式図の(b)〜(f)は、第12図中の(b)〜(f)にそれぞれ対応している。第17図中、上側の模式図は、下側のグラフと上下に対応している。また、第17図のグラフ中、縦軸の負(<0)の部分は、エネルギーロスの発生を示しており、グラフが縦軸の0から下に大きく振れるほど、発生するエネルギーロスが大きいことを示している。
第17図から分かるように、曲げ抵抗の大きいシューズの場合、蹴り出し局面の前半において、(b)、(c)間の中間から(d)にかけてエネルギーロスが大きく、また曲げ抵抗の小さいシューズの場合、蹴り出し局面の後半の(e)〜(f)においてエネルギーロスが大きかった。なお、蹴り出し局面の前半の(b)から(b)、(c)間の中間までは、曲げ抵抗の小さいシューズの方でもエネルギーロスを生じているが、その大きさは無視し得るレベルであると考えられる。
以上の考察から、本願発明者らは、上記両シューズの長所をそれぞれ採り入れることにより、蹴り出し局面の前半(b)〜(d)では曲げ抵抗を小さくしかつ蹴り出し局面の後半(e)〜(f)では曲げ抵抗を大きくすることができるようなシューズを提供できれば、走行中によりスムーズなライド感が得られるようになると考えた。
本発明は、このような考察結果に基づいてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ランニング時のエネルギーロスを低減できるシューズ用ソール構造体を提供することにある。別の言い方をすれば、本発明は、エネルギーロスの低減により、走行中にスムーズなライド感を得ることができるシューズ用ソール構造体を提供しようとしている。
請求項1の発明に係るシューズ用ソール構造体は、ソール下面に開口形成され、ソール幅方向に延びる溝と、溝のソール前後方向の各開口縁部の間に屈曲した状態で架設されかつ各開口縁部を連結するとともに、ソールの屈曲の初期の段階では、屈曲した状態から徐々に伸長して各開口縁部間で直線状に張られる状態までソールの屈曲を許容し、ソールの屈曲が進んだ段階では、各開口縁部間で直線状に張られた状態から伸長方向に力を受けることにより、ソールの屈曲を規制するように作用する屈曲規制部材とを備えている。
請求項1の発明では、ソール下面に開口形成した溝の前後方向の各開口縁部間に屈曲した状態で架設された屈曲規制部材が、ソールの屈曲の初期の段階では、屈曲した状態から徐々に伸長して各開口縁部間で直線状に張られる状態までソールの屈曲を許容するように作用するので、ランニング時の蹴り出し局面の前半においては、ソールの曲げ抵抗が相対的に小さくなって、ソールの屈曲がスムーズに行われ、これにより、蹴り出し局面の前半におけるエネルギーロスを低減できる。
次に、屈曲規制部材は、ソールの屈曲が進んだ段階では、各開口縁部間で直線状に張られた状態から伸長方向に力を受けることにより、ソールの屈曲を規制するように作用するので、ランニング時の蹴り出し局面の後半においては、ソールの曲げ抵抗が相対的に大きくなって、ソールの屈曲が規制され、これにより、蹴り出し局面の後半におけるエネルギーロスを低減できる。
このようにして、本願の請求項1の発明によれば、ランニング時のエネルギーロスを低減でき、その結果、走行中にスムーズなライド感を得ることができるソール構造体を実現できる。
ここで、特開2006−136715号公報には、シューズのソール構造体の土踏まず部において、上に凸の湾曲形状を有する凹状の空隙をミッドソールに形成するとともに、当該空隙の下方に間隔を隔てて上に凸の湾曲形状の強化プレートを配設したものが示されている。
上記公報に示すソール構造体は、本願の請求項1の発明に係るソール構造体に一見類似しているが、上記公報のソール構造体は、土踏まず部に設けられており、土踏まず部は下に凸の方向に屈曲変形することはない。したがって、上記公報記載の強化プレートは、直線状に張られた状態からさらに伸長方向に力を受けるように変形することは想定されてなく、本願の請求項1の発明における屈曲規制部材とは機能が全く異なっている。
請求項2の発明では、請求項1において、溝がソールの前足部に設けられている。
請求項3の発明では、請求項1において、屈曲規制部材が溝内において上方に屈曲する上方屈曲部を有することで上方に屈曲しており、屈曲規制部材のソール前後方向の断面形状が逆V字状または逆U字状である。
この場合には、ソールの屈曲の初期の段階では、上方屈曲部の屈曲高さが徐々に低くなる(つまり上方屈曲部が徐々に扁平となる)ように変形することで、屈曲規制部材が屈曲した状態から徐々に伸長する。
請求項4の発明では、請求項3において、屈曲規制部材が、溝の壁面に固着されていない。
この場合には、ソールの屈曲の際に、屈曲規制部材が、溝の変形の影響を直接受けることなく、溝から独立して変形できる。
請求項5の発明では、請求項3において、屈曲規制部材が、溝の壁面から離間している。
この場合には、ソールの屈曲の際に、屈曲規制部材が、溝の変形の影響をより受けにくくなり、溝からより独立して変形できるようになる。また、この場合には、ソールの屈曲の際のソール屈曲点である溝の底部が屈曲規制部材から上方に離れた位置に配置できる、別の言い方をすれば、ソール屈曲時の曲げの中立軸を上方に配置できるので、ソールの屈曲の際には、屈曲規制部材が架設された溝の各開口縁部間のスパンの変形量を大きくでき、これにより、ソールの屈曲に対する屈曲規制部材の規制量を容易に大きくでき、規制量の調整が容易になる。
請求項6の発明では、請求項1において、屈曲規制部材が溝内において下方に屈曲する下方屈曲部を有することで下方に屈曲しており、屈曲規制部材のソール前後方向の断面形状がV字状またはU字状である。
この場合には、ソールの屈曲の初期の段階では、下方屈曲部の屈曲高さが徐々に低くなる(つまり下方屈曲部が徐々に扁平となる)ように変形することで、屈曲規制部材が屈曲した状態から徐々に伸長する。
請求項7の発明では、請求項3または6において、屈曲規制部材がテープ状の部材(つまり帯状の部材)である。
この場合には、屈曲規制部材が可撓性を有するとき、屈曲規制部材を溝の前後方向の各開口縁部間に屈曲した状態で架設するのを容易に行える。また、この場合には、屈曲規制部材の幅や厚みを変えることで、屈曲規制部材の引張弾性率や曲げ弾性率を変化させることができ、これにより、ソールの屈曲に対する屈曲規制部材による規制作用を容易に調整できるようになる。
請求項8の発明では、請求項1において、屈曲規制部材が溝内において側方に屈曲する側方屈曲部を有することで側方に屈曲している。
この場合には、ソールの屈曲の初期の段階では、側方屈曲部の側方への屈曲量が徐々に小さくなるように変形することで、屈曲規制部材が屈曲した状態から徐々に伸長する。
請求項9の発明では、請求項8において、屈曲規制部材が線状に延びる部材(例えば糸やワイヤー等)である。
この場合には、屈曲規制部材の断面の大きさや直径を変えることで、屈曲規制部材の引張弾性率や曲げ弾性率を変化させることができ、これにより、ソールの屈曲に対する屈曲規制部材による規制作用を容易に調整できるようになる。
請求項10の発明では、請求項1において、屈曲規制部材が布帛製である。
この場合には、屈曲規制部材が伸縮性に乏しい材料から構成されるので、ソールの屈曲が進んだ段階において、溝の各開口縁部間で屈曲規制部材が直線状に張られた状態から伸長方向に力を受けたとき、屈曲規制部材がソールの屈曲を規制するように効果的に作用する。これにより、ランニング時の蹴り出し局面の後半において、ソールの曲げ抵抗を効果的に大きくできる。また、この場合、布帛製の屈曲規制部材は、屈曲抵抗が非常に小さく変形自在であることから、屈曲した状態のままでは、その屈曲状態を変化させるのに、ほとんど力を必要としない。そのため、布帛製の屈曲規制部材は、ソールの屈曲の初期の段階では、ソールの屈曲抵抗となることがなく、ソールの自由な屈曲を助長できる。
請求項11の発明では、請求項10において、屈曲規制部材が、ソールの接地面を覆うシート状部材であって、当該シート状部材の接地面側の面には、複数のアウトソールチップが固着されている。
この場合には、シート状の屈曲規制部材が、各々分離配置された複数のアウトソールチップ(アウトソール片)のベース材として用いられるので、屈曲規制部材および複数のアウトソールチップを一体成形して単一のユニットにすることができ、これにより、ソール構造体の組立工程を簡略化できるとともに、重量を軽減できる。
請求項12の発明では、請求項1において、屈曲規制部材が、ソールの内甲側または外甲側に設けられている。
屈曲規制部材がソールの内甲側に設けられる場合には、ランニング時に回内(プロネーション)の傾向があるランナーに好適のシューズを実現できる。すなわち、この場合には、ランニング時の蹴り出し局面の後半において、ソールの内甲側の曲げ抵抗が相対的に大きくなってソールの内甲側の屈曲が規制され、これにより、蹴り出し局面の後半におけるエネルギーロスを低減できる。
また、屈曲規制部材がソールの外甲側に設けられる場合には、ランニング時に回外(サピネーション)の傾向があるランナーに好適のシューズを実現できる。すなわち、この場合には、ランニング時の蹴り出し局面の後半において、ソールの外甲側の曲げ抵抗が相対的に大きくなってソールの外甲側の屈曲が規制され、これにより、蹴り出し局面の後半におけるエネルギーロスを低減できる。
請求項13の発明では、請求項1において、屈曲規制部材が、ソールの内甲側および外甲側に設けられている。
この場合には、ランニング時に回内および回外のいずれの傾向があるランナーにも対応可能なシューズを実現できる。また、この場合、ソールの内甲側および外甲側間で各屈曲規制部材の引張弾性率や曲げ弾性率を異ならせることにより、ソールの内甲側および外甲側間でソールの曲げ抵抗の微調整が可能になる。
請求項14の発明では、請求項1において、溝の各開口縁部間には、屈曲規制部材の屈曲形状に沿いつつソール前後方向に延びるとともに、屈曲規制部材を下方から覆う弾性カバー部材が配設されている。
この場合には、弾性カバー部材を設けることにより、屈曲規制部材が接地面側に露出するのを防止でき、屈曲規制部材の耐久性を向上できる。また、この場合、弾性カバー部材が前後方向の弾性を有するため、弾性カバー部材がソールの屈曲を阻害することはない。
請求項15の発明では、請求項14において、接地面を有するアウトソール部材がソール下面に配設されており、弾性カバー部材がアウトソール部材により構成されている。
この場合には、弾性カバー部材をアウトソール部材と別個に設ける必要がないので、部品点数を削減でき、構成を簡略化できる。
請求項16の発明では、請求項1において、当該ソール構造体が、上方に配置されかつソール前後方向に延びる上部プレートと、上部プレートの下方に配置された軟質弾性部材製のミッドソールとを備えており、溝がミッドソールの下面に形成されている。
この場合には、ソールの接地時に着用者の足から下方に作用する押付荷重を上部プレートにより支持できる。また、溝の底部の上方に上部プレートが配置されることで、足からの押付荷重の作用により、溝の底部が変形するのを防止できるとともに、ソール屈曲時の曲げの中立軸を上方に保つことができる。これにより、ソールの屈曲の際に、屈曲規制部材が架設された溝の各開口縁部間のスパンの変形量を大きくでき、これにより、ソールの屈曲に対する屈曲規制部材の規制量を容易に大きくでき、規制量の調整が容易になる。
さらに、この場合には、上部プレートの下方にミッドソールが配置されているので、押付荷重の作用時に上部プレートの下方への落ち込みをミッドソールにより防止でき、これにより、ソール屈曲時の曲げの中立軸を上方に保つことができる。
請求項17の発明では、請求項16において、当該ソール構造体が、ミッドソールの下方に配置されかつソール前後方向に延びる下部プレートをさらに備えており、屈曲規制部材が、下部プレートを溝の開口縁部まで延設することにより構成されている。
この場合には、屈曲規制部材を下部プレートと別個に設ける必要がないので、部品点数を削減でき、構成を簡略化できる。
請求項18の発明に係るシューズのソール構造体は、上方に配置され、ソール前後方向に延びるプレートと、プレートの下方に配置され、プレートの下面に固着されるとともに、下方に開口しかつソール幅方向に延びる溝を有する軟質弾性部材製のミッドソールと、溝のソール前後方向の各開口縁部の間に屈曲した状態で架設されかつ各開口縁部を連結するとともに、ソールの屈曲の初期の段階では、屈曲した状態から徐々に伸長して各開口縁部間で直線状に張られる状態までソールの屈曲を許容するとともに、ソールの屈曲が進んだ段階では、各開口縁部間で直線状に張られた状態から伸長方向に力を受けることにより、ソールの屈曲を規制するように作用する屈曲規制部材とを備えている。
請求項18の発明によれば、ミッドソール下面に開口形成した溝の前後方向の各開口縁部間に屈曲した状態で架設された屈曲規制部材が、ソールの屈曲の初期の段階では、屈曲した状態から徐々に伸長して各開口縁部間で直線状に張られる状態までソールの屈曲を許容するように作用するので、ランニング時の蹴り出し局面の前半においては、ソールの曲げ抵抗が相対的に小さくなって、ソールの屈曲がスムーズに行われ、これにより、蹴り出し局面の前半におけるエネルギーロスを低減できる。
次に、屈曲規制部材は、ソールの屈曲が進んだ段階では、各開口縁部間で直線状に張られた状態から伸長方向に力を受けることにより、ソールの屈曲を規制するように作用するので、ランニング時の蹴り出し局面の後半においては、ソールの曲げ抵抗が相対的に大きくなって、ソールの屈曲が規制され、これにより、蹴り出し局面の後半におけるエネルギーロスを低減できる。
このようにして、本願の請求項18の発明によれば、ランニング時のエネルギーロスを低減でき、その結果、走行中にスムーズなライド感を得ることができるソール構造体を実現できる。
また、この場合には、ソールの接地時に着用者の足から下方に作用する押付荷重をプレートにより支持できる。また、溝の底部の上方にプレートが配置されることで、足からの押付荷重の作用により、溝の底部が変形するのを防止できるとともに、ソール屈曲時の曲げの中立軸を上方に保つことができる。これにより、ソールの屈曲の際に、屈曲規制部材が架設された溝の各開口縁部間のスパンの変形量を大きくでき、これにより、ソールの屈曲に対する屈曲規制部材の規制量を容易に大きくでき、規制量の調整が容易になる。
さらに、この場合には、プレートの下方にミッドソールが配置されているので、押付荷重の作用時にプレートの下方への落ち込みをミッドソールにより防止でき、これにより、ソール屈曲時の曲げの中立軸を上方に保つことができる。
請求項19の発明では、請求項18において、溝の各開口縁部間の距離をS、溝の深さをD、溝の底部の位置におけるミッドソールの厚みをHとするとき、各開口縁部間において屈曲規制部材の屈曲形状に沿った長さLが、
S+D×sin15°≦L≦S+H×sin15
の関係式を満足している。
屈曲規制部材の長さLについて、このように規定した理由を、第4図を用いて説明する。
第4図は、ミッドソールMに形成された溝Gの各開口縁部間に屈曲規制部材Brが屈曲した状態で配設された構造を模式的に示している。この状態から、ミッドソールMが15°屈曲したとする。このとき、ミッドソールMは、溝Gの底部Gaを屈曲点として底部Gaの回りに屈曲し、それによって、溝Gの底部Ga回りの中心角が15°増える。あるいは、ミッドソールMは、底部Gaの上方に位置する当該ミッドソール上の最上位の点Haを屈曲点として点Haの回りに屈曲し、それによって、点Ha回りの中心角が15°増える。実際の屈曲点は、底部Gaと点Haとの間に位置している。このことは、ミッドソールMにプレートが装着されている場合にも当てはまる。なお、ミッドソールMにプレートが装着されている場合、ソール屈曲時の中立軸は、プレート近傍に配置される傾向にある。
ミッドソールMが、溝Gの底部Gaの回りに屈曲して、溝Gの底部Ga回りの中心角が15°増えたことにより、屈曲規制部材Brが溝Gの各開口縁部間において屈曲状態から直線状に張られた状態まで移行したとすれば、溝Gの各開口縁部間の距離の増加分ΔSは、
ΔS≒D×sin15°
と近似的に表すことができる。よって、屈曲規制部材Brの屈曲形状に沿った長さLは、
L≒S+ΔS=S+D×sin15° …(1)
となる。
その一方、ミッドソールMが、点Haの回りに屈曲して、点Ha回りの中心角が15°増えたことにより、屈曲規制部材Brが溝Gの各開口縁部間において屈曲状態から直線状に張られた状態まで移行したとすれば、溝Gの各開口縁部間の距離の増加分ΔS’は、
ΔS’≒H×sin15°
と近似的に表すことができる。よって、屈曲規制部材Brの屈曲形状に沿った長さLは、
L≒S+ΔS’=S+H×sin15° …(2)
となる。
上記(1)式および(2)式から、屈曲規制部材Brの屈曲形状に沿った長さLとしては、上記(1)式の値と上記(2)式の値の中間の値となり、したがって、上記不等式を満足する長さであればよいことになる。
次に、ソールの屈曲角度として15°を用いた理由を、第5図を用いて説明する。
第5図のグラフは、ランナーが地面を後ろに蹴る力とソールの屈曲角度のそれぞれの時間的変化を実際の走行試験(バイオメカニクス実験)を行うことにより求め、それらをグラフ化したものである。
第5図の上側のグラフは、横軸に時間[ms]をとり、縦軸にランナーが地面を後ろに蹴る力Fy[N]をとって、踵が接地してからつま先が地面から離れるトーオフ(toe off)の瞬間までにランナーが地面を後ろに蹴る力Fyの時間的変化を表したものであり、同図の下側のグラフは、そのときのソールの屈曲角度[°]の時間的変化を表したものである。各グラフは上下に対応している。
第5図のグラフより、ランナーが地面を後ろに蹴る力Fyが最大(Fy_max)になるとき、ソールの屈曲角度は15°であることが分かる。なお、屈曲角度の算出は、屈曲角度が0°になったいわゆるフットフラットの状態(つまりソール全面接地の状態)からの屈曲角度の増加分により求められる。
その一方、上述した第17図のグラフより、ソール前足部が屈曲している最中の(c)〜(d)の局面では、ソールの曲げ抵抗の小さい方がエネルギーロスが小さく、またソール前足部が最大屈曲する(e)の局面の前後では、ソールの曲げ抵抗の大きい方がエネルギーロスが小さいことが分かっている。
以上のことから、ソールの屈曲に関して、地面を最大の力(Fy_max)で後ろに蹴ることができる姿勢(つまり屈曲角度)まではソールが曲がり、その後はソールが曲がらない方が理想的であると判断される。
そこで、上述した不等式において、ソールの屈曲角度として15°を採用したのである。
本願発明においては、ソールの屈曲角度が15°未満の状態では、屈曲規制部材が溝の各開口縁部間で屈曲した状態にあり、屈曲角度が15°になると、屈曲規制部材が直線状に張られた状態になり、さらに屈曲角度が15°を超えると、屈曲規制部材が直線状に張られた状態から伸長方向に力を受けるようになる。
請求項20の発明では、請求項1または18において、屈曲規制部材は、ひずみが10%以下のとき400MPa以上のヤング率を有する材料から構成されている。
屈曲規制部材のヤング率についてこのように規定した理由を、第6図を用いて説明する。
第6図は、ヤング率の異なる材料からなる4種類の屈曲規制部材を用意し、これらがそれぞれ組み込まれた4種類のシューズを同じランナーが実際に着用してランニングを行い、そのときの各シューズについてMP関節まわりのトルクに起因したエネルギーロスを算出した結果を示している。
なお、用意した4種類の材料(ソリッドラバー、PEBAX(商品名)、ポリエステルテープ、ナイロンテープ)のヤング率の算出に際して行った試験の条件は、以下のとおりである。
i)試験方法:JIS K 7113(「プラスチックの引張試験方法」に関する規格)に記載された引張試験
ii)試験片の形状: JIS K 7113に規定された形状
iii)引張速度: 500mm/min.
iv)試験片の把持間隔: 50mm
v)引張条件: ひずみ10%以下
上記4種類の材料をヤング率の小さい順に並べると、
ソリッドラバー<PEBAX(商品名)<ポリエステルテープ<ナイロンテープとなった。なお、各材料の具体的なヤング率の大きさは、第6図中にプロットした値を参照のこと。
第6図から分かるように、材料のヤング率が大きくなるほど、エネルギーロスが減少しており、とくにヤング率が400[Mpa]以上になると、エネルギーロスが大幅に減少していることが分かる。また、ヤング率が400[Mpa]を超えると、エネルギーロスの大きさはほとんど変化していないことも分かる。
以上のことから、屈曲規制部材を構成する材料のヤング率の値として、ひずみが10%以下のとき400MPa以上と規定したのである。このような条件に適合する材料は、第6図の例では、ポリエステルまたはナイロン製のテープということになる。
請求項21の発明では、請求項1または18において、屈曲規制部材が、ソールの屈曲角度が15°まではソールの屈曲を許容するとともに、ソールの屈曲角度が15°を超えるとソールの屈曲を規制するように作用している。
以上のように、本願の第1の発明に係るソール構造体によれば、ソール下面に開口形成したソール幅方向の溝の各開口縁部間に各開口縁部を連結する屈曲規制部材を屈曲した状態で架設するようにしたので、ソールの屈曲の初期の段階では、屈曲規制部材が、屈曲した状態から徐々に伸長して各開口縁部間で直線状に張られる状態までソールの屈曲を許容するように作用し、その結果、ランニング時の蹴り出し局面の前半においては、ソールの曲げ抵抗が相対的に小さくなって、ソールの屈曲がスムーズに行われ、これにより、蹴り出し局面の前半におけるエネルギーロスを低減できる。
また、屈曲規制部材は、ソールの屈曲が進んだ段階では、各開口縁部間で直線状に張られた状態から伸長方向に力を受けることにより、ソールの屈曲を規制するように作用し、その結果、ランニング時の蹴り出し局面の後半においては、ソールの曲げ抵抗が相対的に大きくなって、ソールの屈曲が規制され、これにより、蹴り出し局面の後半におけるエネルギーロスを低減できる。
このようにして、ランニング時のエネルギーロスを低減でき、その結果、走行中にスムーズなライド感を得ることができるソール構造体を実現できる。
本願の第2の発明に係るソール構造体によれば、第1の発明と同様に、屈曲規制部材の作用により、ランニング時のエネルギーロスを低減でき、走行中にスムーズなライド感を得ることができるばかりでなく、ソールの接地時に着用者の足から下方に作用する押付荷重をプレートにより支持でき、さらに、溝の底部の上方にプレートが配置されることで、足からの押付荷重の作用により溝の底部が変形するのを防止でき、ソール屈曲時の曲げの中立軸を上方に保つことができる。これにより、ソールの屈曲の際に、屈曲規制部材が架設された溝の各開口縁部間のスパンの変形量を大きくでき、その結果、ソールの屈曲に対する屈曲規制部材の規制量を容易に大きくでき、規制量の調整が容易になる。また、プレートの下方にミッドソールが配置されていることで、押付荷重の作用時にプレートの下方への落ち込みをミッドソールにより防止でき、これにより、ソール屈曲時の曲げの中立軸を上方に保つことができる。
請求項1の発明では、ソール下面に開口形成した溝の前後方向の各開口縁部間に屈曲した状態で架設された屈曲規制部材が、ソールの屈曲の初期の段階では、屈曲した状態から徐々に伸長して各開口縁部間で直線状に張られる状態までソールの屈曲を許容するように作用するので、ランニング時の蹴り出し局面の前半においては、ソールの曲げ抵抗が相対的に小さくなって、ソールの屈曲がスムーズに行われ、これにより、蹴り出し局面の前半におけるエネルギーロスを低減できる。
次に、屈曲規制部材は、ソールの屈曲が進んだ段階では、各開口縁部間で直線状に張られた状態から伸長方向に力を受けることにより、ソールの屈曲を規制するように作用するので、ランニング時の蹴り出し局面の後半においては、ソールの曲げ抵抗が相対的に大きくなって、ソールの屈曲が規制され、これにより、蹴り出し局面の後半におけるエネルギーロスを低減できる。
このようにして、本願の請求項1の発明によれば、ランニング時のエネルギーロスを低減でき、その結果、走行中にスムーズなライド感を得ることができるソール構造体を実現できる。
ここで、特開2006−136715号公報には、シューズのソール構造体の土踏まず部において、上に凸の湾曲形状を有する凹状の空隙をミッドソールに形成するとともに、当該空隙の下方に間隔を隔てて上に凸の湾曲形状の強化プレートを配設したものが示されている。
上記公報に示すソール構造体は、本願の請求項1の発明に係るソール構造体に一見類似しているが、上記公報のソール構造体は、土踏まず部に設けられており、土踏まず部は下に凸の方向に屈曲変形することはない。したがって、上記公報記載の強化プレートは、直線状に張られた状態からさらに伸長方向に力を受けるように変形することは想定されてなく、本願の請求項1の発明における屈曲規制部材とは機能が全く異なっている。
請求項2の発明では、請求項1において、溝がソールの前足部に設けられている。
請求項3の発明では、請求項1において、屈曲規制部材が溝内において上方に屈曲する上方屈曲部を有することで上方に屈曲しており、屈曲規制部材のソール前後方向の断面形状が逆V字状または逆U字状である。
この場合には、ソールの屈曲の初期の段階では、上方屈曲部の屈曲高さが徐々に低くなる(つまり上方屈曲部が徐々に扁平となる)ように変形することで、屈曲規制部材が屈曲した状態から徐々に伸長する。
請求項4の発明では、請求項3において、屈曲規制部材が、溝の壁面に固着されていない。
この場合には、ソールの屈曲の際に、屈曲規制部材が、溝の変形の影響を直接受けることなく、溝から独立して変形できる。
請求項5の発明では、請求項3において、屈曲規制部材が、溝の壁面から離間している。
この場合には、ソールの屈曲の際に、屈曲規制部材が、溝の変形の影響をより受けにくくなり、溝からより独立して変形できるようになる。また、この場合には、ソールの屈曲の際のソール屈曲点である溝の底部が屈曲規制部材から上方に離れた位置に配置できる、別の言い方をすれば、ソール屈曲時の曲げの中立軸を上方に配置できるので、ソールの屈曲の際には、屈曲規制部材が架設された溝の各開口縁部間のスパンの変形量を大きくでき、これにより、ソールの屈曲に対する屈曲規制部材の規制量を容易に大きくでき、規制量の調整が容易になる。
請求項6の発明では、請求項1において、屈曲規制部材が溝内において下方に屈曲する下方屈曲部を有することで下方に屈曲しており、屈曲規制部材のソール前後方向の断面形状がV字状またはU字状である。
この場合には、ソールの屈曲の初期の段階では、下方屈曲部の屈曲高さが徐々に低くなる(つまり下方屈曲部が徐々に扁平となる)ように変形することで、屈曲規制部材が屈曲した状態から徐々に伸長する。
請求項7の発明では、請求項3または6において、屈曲規制部材がテープ状の部材(つまり帯状の部材)である。
この場合には、屈曲規制部材が可撓性を有するとき、屈曲規制部材を溝の前後方向の各開口縁部間に屈曲した状態で架設するのを容易に行える。また、この場合には、屈曲規制部材の幅や厚みを変えることで、屈曲規制部材の引張弾性率や曲げ弾性率を変化させることができ、これにより、ソールの屈曲に対する屈曲規制部材による規制作用を容易に調整できるようになる。
請求項8の発明では、請求項1において、屈曲規制部材が溝内において側方に屈曲する側方屈曲部を有することで側方に屈曲している。
この場合には、ソールの屈曲の初期の段階では、側方屈曲部の側方への屈曲量が徐々に小さくなるように変形することで、屈曲規制部材が屈曲した状態から徐々に伸長する。
請求項9の発明では、請求項8において、屈曲規制部材が線状に延びる部材(例えば糸やワイヤー等)である。
この場合には、屈曲規制部材の断面の大きさや直径を変えることで、屈曲規制部材の引張弾性率や曲げ弾性率を変化させることができ、これにより、ソールの屈曲に対する屈曲規制部材による規制作用を容易に調整できるようになる。
請求項10の発明では、請求項1において、屈曲規制部材が布帛製である。
この場合には、屈曲規制部材が伸縮性に乏しい材料から構成されるので、ソールの屈曲が進んだ段階において、溝の各開口縁部間で屈曲規制部材が直線状に張られた状態から伸長方向に力を受けたとき、屈曲規制部材がソールの屈曲を規制するように効果的に作用する。これにより、ランニング時の蹴り出し局面の後半において、ソールの曲げ抵抗を効果的に大きくできる。また、この場合、布帛製の屈曲規制部材は、屈曲抵抗が非常に小さく変形自在であることから、屈曲した状態のままでは、その屈曲状態を変化させるのに、ほとんど力を必要としない。そのため、布帛製の屈曲規制部材は、ソールの屈曲の初期の段階では、ソールの屈曲抵抗となることがなく、ソールの自由な屈曲を助長できる。
請求項11の発明では、請求項10において、屈曲規制部材が、ソールの接地面を覆うシート状部材であって、当該シート状部材の接地面側の面には、複数のアウトソールチップが固着されている。
この場合には、シート状の屈曲規制部材が、各々分離配置された複数のアウトソールチップ(アウトソール片)のベース材として用いられるので、屈曲規制部材および複数のアウトソールチップを一体成形して単一のユニットにすることができ、これにより、ソール構造体の組立工程を簡略化できるとともに、重量を軽減できる。
請求項12の発明では、請求項1において、屈曲規制部材が、ソールの内甲側または外甲側に設けられている。
屈曲規制部材がソールの内甲側に設けられる場合には、ランニング時に回内(プロネーション)の傾向があるランナーに好適のシューズを実現できる。すなわち、この場合には、ランニング時の蹴り出し局面の後半において、ソールの内甲側の曲げ抵抗が相対的に大きくなってソールの内甲側の屈曲が規制され、これにより、蹴り出し局面の後半におけるエネルギーロスを低減できる。
また、屈曲規制部材がソールの外甲側に設けられる場合には、ランニング時に回外(サピネーション)の傾向があるランナーに好適のシューズを実現できる。すなわち、この場合には、ランニング時の蹴り出し局面の後半において、ソールの外甲側の曲げ抵抗が相対的に大きくなってソールの外甲側の屈曲が規制され、これにより、蹴り出し局面の後半におけるエネルギーロスを低減できる。
請求項13の発明では、請求項1において、屈曲規制部材が、ソールの内甲側および外甲側に設けられている。
この場合には、ランニング時に回内および回外のいずれの傾向があるランナーにも対応可能なシューズを実現できる。また、この場合、ソールの内甲側および外甲側間で各屈曲規制部材の引張弾性率や曲げ弾性率を異ならせることにより、ソールの内甲側および外甲側間でソールの曲げ抵抗の微調整が可能になる。
請求項14の発明では、請求項1において、溝の各開口縁部間には、屈曲規制部材の屈曲形状に沿いつつソール前後方向に延びるとともに、屈曲規制部材を下方から覆う弾性カバー部材が配設されている。
この場合には、弾性カバー部材を設けることにより、屈曲規制部材が接地面側に露出するのを防止でき、屈曲規制部材の耐久性を向上できる。また、この場合、弾性カバー部材が前後方向の弾性を有するため、弾性カバー部材がソールの屈曲を阻害することはない。
請求項15の発明では、請求項14において、接地面を有するアウトソール部材がソール下面に配設されており、弾性カバー部材がアウトソール部材により構成されている。
この場合には、弾性カバー部材をアウトソール部材と別個に設ける必要がないので、部品点数を削減でき、構成を簡略化できる。
請求項16の発明では、請求項1において、当該ソール構造体が、上方に配置されかつソール前後方向に延びる上部プレートと、上部プレートの下方に配置された軟質弾性部材製のミッドソールとを備えており、溝がミッドソールの下面に形成されている。
この場合には、ソールの接地時に着用者の足から下方に作用する押付荷重を上部プレートにより支持できる。また、溝の底部の上方に上部プレートが配置されることで、足からの押付荷重の作用により、溝の底部が変形するのを防止できるとともに、ソール屈曲時の曲げの中立軸を上方に保つことができる。これにより、ソールの屈曲の際に、屈曲規制部材が架設された溝の各開口縁部間のスパンの変形量を大きくでき、これにより、ソールの屈曲に対する屈曲規制部材の規制量を容易に大きくでき、規制量の調整が容易になる。
さらに、この場合には、上部プレートの下方にミッドソールが配置されているので、押付荷重の作用時に上部プレートの下方への落ち込みをミッドソールにより防止でき、これにより、ソール屈曲時の曲げの中立軸を上方に保つことができる。
請求項17の発明では、請求項16において、当該ソール構造体が、ミッドソールの下方に配置されかつソール前後方向に延びる下部プレートをさらに備えており、屈曲規制部材が、下部プレートを溝の開口縁部まで延設することにより構成されている。
この場合には、屈曲規制部材を下部プレートと別個に設ける必要がないので、部品点数を削減でき、構成を簡略化できる。
請求項18の発明に係るシューズのソール構造体は、上方に配置され、ソール前後方向に延びるプレートと、プレートの下方に配置され、プレートの下面に固着されるとともに、下方に開口しかつソール幅方向に延びる溝を有する軟質弾性部材製のミッドソールと、溝のソール前後方向の各開口縁部の間に屈曲した状態で架設されかつ各開口縁部を連結するとともに、ソールの屈曲の初期の段階では、屈曲した状態から徐々に伸長して各開口縁部間で直線状に張られる状態までソールの屈曲を許容するとともに、ソールの屈曲が進んだ段階では、各開口縁部間で直線状に張られた状態から伸長方向に力を受けることにより、ソールの屈曲を規制するように作用する屈曲規制部材とを備えている。
請求項18の発明によれば、ミッドソール下面に開口形成した溝の前後方向の各開口縁部間に屈曲した状態で架設された屈曲規制部材が、ソールの屈曲の初期の段階では、屈曲した状態から徐々に伸長して各開口縁部間で直線状に張られる状態までソールの屈曲を許容するように作用するので、ランニング時の蹴り出し局面の前半においては、ソールの曲げ抵抗が相対的に小さくなって、ソールの屈曲がスムーズに行われ、これにより、蹴り出し局面の前半におけるエネルギーロスを低減できる。
次に、屈曲規制部材は、ソールの屈曲が進んだ段階では、各開口縁部間で直線状に張られた状態から伸長方向に力を受けることにより、ソールの屈曲を規制するように作用するので、ランニング時の蹴り出し局面の後半においては、ソールの曲げ抵抗が相対的に大きくなって、ソールの屈曲が規制され、これにより、蹴り出し局面の後半におけるエネルギーロスを低減できる。
このようにして、本願の請求項18の発明によれば、ランニング時のエネルギーロスを低減でき、その結果、走行中にスムーズなライド感を得ることができるソール構造体を実現できる。
また、この場合には、ソールの接地時に着用者の足から下方に作用する押付荷重をプレートにより支持できる。また、溝の底部の上方にプレートが配置されることで、足からの押付荷重の作用により、溝の底部が変形するのを防止できるとともに、ソール屈曲時の曲げの中立軸を上方に保つことができる。これにより、ソールの屈曲の際に、屈曲規制部材が架設された溝の各開口縁部間のスパンの変形量を大きくでき、これにより、ソールの屈曲に対する屈曲規制部材の規制量を容易に大きくでき、規制量の調整が容易になる。
さらに、この場合には、プレートの下方にミッドソールが配置されているので、押付荷重の作用時にプレートの下方への落ち込みをミッドソールにより防止でき、これにより、ソール屈曲時の曲げの中立軸を上方に保つことができる。
請求項19の発明では、請求項18において、溝の各開口縁部間の距離をS、溝の深さをD、溝の底部の位置におけるミッドソールの厚みをHとするとき、各開口縁部間において屈曲規制部材の屈曲形状に沿った長さLが、
S+D×sin15°≦L≦S+H×sin15
の関係式を満足している。
屈曲規制部材の長さLについて、このように規定した理由を、第4図を用いて説明する。
第4図は、ミッドソールMに形成された溝Gの各開口縁部間に屈曲規制部材Brが屈曲した状態で配設された構造を模式的に示している。この状態から、ミッドソールMが15°屈曲したとする。このとき、ミッドソールMは、溝Gの底部Gaを屈曲点として底部Gaの回りに屈曲し、それによって、溝Gの底部Ga回りの中心角が15°増える。あるいは、ミッドソールMは、底部Gaの上方に位置する当該ミッドソール上の最上位の点Haを屈曲点として点Haの回りに屈曲し、それによって、点Ha回りの中心角が15°増える。実際の屈曲点は、底部Gaと点Haとの間に位置している。このことは、ミッドソールMにプレートが装着されている場合にも当てはまる。なお、ミッドソールMにプレートが装着されている場合、ソール屈曲時の中立軸は、プレート近傍に配置される傾向にある。
ミッドソールMが、溝Gの底部Gaの回りに屈曲して、溝Gの底部Ga回りの中心角が15°増えたことにより、屈曲規制部材Brが溝Gの各開口縁部間において屈曲状態から直線状に張られた状態まで移行したとすれば、溝Gの各開口縁部間の距離の増加分ΔSは、
ΔS≒D×sin15°
と近似的に表すことができる。よって、屈曲規制部材Brの屈曲形状に沿った長さLは、
L≒S+ΔS=S+D×sin15° …(1)
となる。
その一方、ミッドソールMが、点Haの回りに屈曲して、点Ha回りの中心角が15°増えたことにより、屈曲規制部材Brが溝Gの各開口縁部間において屈曲状態から直線状に張られた状態まで移行したとすれば、溝Gの各開口縁部間の距離の増加分ΔS’は、
ΔS’≒H×sin15°
と近似的に表すことができる。よって、屈曲規制部材Brの屈曲形状に沿った長さLは、
L≒S+ΔS’=S+H×sin15° …(2)
となる。
上記(1)式および(2)式から、屈曲規制部材Brの屈曲形状に沿った長さLとしては、上記(1)式の値と上記(2)式の値の中間の値となり、したがって、上記不等式を満足する長さであればよいことになる。
次に、ソールの屈曲角度として15°を用いた理由を、第5図を用いて説明する。
第5図のグラフは、ランナーが地面を後ろに蹴る力とソールの屈曲角度のそれぞれの時間的変化を実際の走行試験(バイオメカニクス実験)を行うことにより求め、それらをグラフ化したものである。
第5図の上側のグラフは、横軸に時間[ms]をとり、縦軸にランナーが地面を後ろに蹴る力Fy[N]をとって、踵が接地してからつま先が地面から離れるトーオフ(toe off)の瞬間までにランナーが地面を後ろに蹴る力Fyの時間的変化を表したものであり、同図の下側のグラフは、そのときのソールの屈曲角度[°]の時間的変化を表したものである。各グラフは上下に対応している。
第5図のグラフより、ランナーが地面を後ろに蹴る力Fyが最大(Fy_max)になるとき、ソールの屈曲角度は15°であることが分かる。なお、屈曲角度の算出は、屈曲角度が0°になったいわゆるフットフラットの状態(つまりソール全面接地の状態)からの屈曲角度の増加分により求められる。
その一方、上述した第17図のグラフより、ソール前足部が屈曲している最中の(c)〜(d)の局面では、ソールの曲げ抵抗の小さい方がエネルギーロスが小さく、またソール前足部が最大屈曲する(e)の局面の前後では、ソールの曲げ抵抗の大きい方がエネルギーロスが小さいことが分かっている。
以上のことから、ソールの屈曲に関して、地面を最大の力(Fy_max)で後ろに蹴ることができる姿勢(つまり屈曲角度)まではソールが曲がり、その後はソールが曲がらない方が理想的であると判断される。
そこで、上述した不等式において、ソールの屈曲角度として15°を採用したのである。
本願発明においては、ソールの屈曲角度が15°未満の状態では、屈曲規制部材が溝の各開口縁部間で屈曲した状態にあり、屈曲角度が15°になると、屈曲規制部材が直線状に張られた状態になり、さらに屈曲角度が15°を超えると、屈曲規制部材が直線状に張られた状態から伸長方向に力を受けるようになる。
請求項20の発明では、請求項1または18において、屈曲規制部材は、ひずみが10%以下のとき400MPa以上のヤング率を有する材料から構成されている。
屈曲規制部材のヤング率についてこのように規定した理由を、第6図を用いて説明する。
第6図は、ヤング率の異なる材料からなる4種類の屈曲規制部材を用意し、これらがそれぞれ組み込まれた4種類のシューズを同じランナーが実際に着用してランニングを行い、そのときの各シューズについてMP関節まわりのトルクに起因したエネルギーロスを算出した結果を示している。
なお、用意した4種類の材料(ソリッドラバー、PEBAX(商品名)、ポリエステルテープ、ナイロンテープ)のヤング率の算出に際して行った試験の条件は、以下のとおりである。
i)試験方法:JIS K 7113(「プラスチックの引張試験方法」に関する規格)に記載された引張試験
ii)試験片の形状: JIS K 7113に規定された形状
iii)引張速度: 500mm/min.
iv)試験片の把持間隔: 50mm
v)引張条件: ひずみ10%以下
上記4種類の材料をヤング率の小さい順に並べると、
ソリッドラバー<PEBAX(商品名)<ポリエステルテープ<ナイロンテープとなった。なお、各材料の具体的なヤング率の大きさは、第6図中にプロットした値を参照のこと。
第6図から分かるように、材料のヤング率が大きくなるほど、エネルギーロスが減少しており、とくにヤング率が400[Mpa]以上になると、エネルギーロスが大幅に減少していることが分かる。また、ヤング率が400[Mpa]を超えると、エネルギーロスの大きさはほとんど変化していないことも分かる。
以上のことから、屈曲規制部材を構成する材料のヤング率の値として、ひずみが10%以下のとき400MPa以上と規定したのである。このような条件に適合する材料は、第6図の例では、ポリエステルまたはナイロン製のテープということになる。
請求項21の発明では、請求項1または18において、屈曲規制部材が、ソールの屈曲角度が15°まではソールの屈曲を許容するとともに、ソールの屈曲角度が15°を超えるとソールの屈曲を規制するように作用している。
以上のように、本願の第1の発明に係るソール構造体によれば、ソール下面に開口形成したソール幅方向の溝の各開口縁部間に各開口縁部を連結する屈曲規制部材を屈曲した状態で架設するようにしたので、ソールの屈曲の初期の段階では、屈曲規制部材が、屈曲した状態から徐々に伸長して各開口縁部間で直線状に張られる状態までソールの屈曲を許容するように作用し、その結果、ランニング時の蹴り出し局面の前半においては、ソールの曲げ抵抗が相対的に小さくなって、ソールの屈曲がスムーズに行われ、これにより、蹴り出し局面の前半におけるエネルギーロスを低減できる。
また、屈曲規制部材は、ソールの屈曲が進んだ段階では、各開口縁部間で直線状に張られた状態から伸長方向に力を受けることにより、ソールの屈曲を規制するように作用し、その結果、ランニング時の蹴り出し局面の後半においては、ソールの曲げ抵抗が相対的に大きくなって、ソールの屈曲が規制され、これにより、蹴り出し局面の後半におけるエネルギーロスを低減できる。
このようにして、ランニング時のエネルギーロスを低減でき、その結果、走行中にスムーズなライド感を得ることができるソール構造体を実現できる。
本願の第2の発明に係るソール構造体によれば、第1の発明と同様に、屈曲規制部材の作用により、ランニング時のエネルギーロスを低減でき、走行中にスムーズなライド感を得ることができるばかりでなく、ソールの接地時に着用者の足から下方に作用する押付荷重をプレートにより支持でき、さらに、溝の底部の上方にプレートが配置されることで、足からの押付荷重の作用により溝の底部が変形するのを防止でき、ソール屈曲時の曲げの中立軸を上方に保つことができる。これにより、ソールの屈曲の際に、屈曲規制部材が架設された溝の各開口縁部間のスパンの変形量を大きくでき、その結果、ソールの屈曲に対する屈曲規制部材の規制量を容易に大きくでき、規制量の調整が容易になる。また、プレートの下方にミッドソールが配置されていることで、押付荷重の作用時にプレートの下方への落ち込みをミッドソールにより防止でき、これにより、ソール屈曲時の曲げの中立軸を上方に保つことができる。
第1A図は、本発明の第1の実施例によるシューズ用ソール構造体の底面図である。
第1B図は、第1A図のソール構造体の内甲側側面図である。
第2図は、第1A図のII−II線断面図である。
第3図は、第1A図のIII−III線断面図である。
第4図は、第3図を模式的に表した図である。
第5図は、走行中のランナーが地面を後ろに蹴る力とソール屈曲角度のそれぞれの時間的変化を示すグラフである。
第6図は、ヤング率の異なる屈曲規制部材によるエネルギーロスとヤング率との関係を示すグラフである。
第7A図は、前記第1の実施例によるソール構造体の屈曲時の作動を時系列的に説明するための概略図である。
第7B図は、前記第1の実施例によるソール構造体の屈曲時の作動を時系列的に説明するための概略図である。
第7C図は、前記第1の実施例によるソール構造体の屈曲時の作動を時系列的に説明するための概略図である。
第8図は、本発明の第3の実施例によるシューズ用ソール構造体の屈曲規制部材部分の断面拡大図であって、前記第1の実施例の第3図に相当する図である。
第9図は、本発明の第5の実施例によるシューズ用ソール構造体の底面部分図である。
第10図は、第9図のX−X線断面図である。
第11図は、本発明の第6の実施例によるシューズ用ソール構造体の底面部分図である。
第12図は、シューズ着用者(ランナー)がランニングを行っている様子を模式的に表した図である。
第13図は、ランナーの脚をモデル化して表した図である。
第14図は、第12図に示す蹴り出し局面において時々刻々変化するMP関節まわりのトルク(MP関節トルク)を求めて、これをグラフ化したものである。
第15図は、第12図に示す蹴り出し局面において角速度の時間的変化をグラフ化したものである。
第16図は、第14図に示すMP関節トルクおよび第15図に示す角速度に基づき、蹴り出し局面においてMP関節が発揮するパワーを算出して、その時間的変化をグラフ化したものである。
第17図の下側のグラフは、曲げ抵抗値が小さいシューズと曲げ抵抗値が大きいシューズのそれぞれについて、シューズの蹴り出し局面でMP関節が発揮するパワーの時間的変化を表したものであり、上側の模式図の(b)〜(f)は、第12図中の(b)〜(f)にそれぞれ対応している。
第1B図は、第1A図のソール構造体の内甲側側面図である。
第2図は、第1A図のII−II線断面図である。
第3図は、第1A図のIII−III線断面図である。
第4図は、第3図を模式的に表した図である。
第5図は、走行中のランナーが地面を後ろに蹴る力とソール屈曲角度のそれぞれの時間的変化を示すグラフである。
第6図は、ヤング率の異なる屈曲規制部材によるエネルギーロスとヤング率との関係を示すグラフである。
第7A図は、前記第1の実施例によるソール構造体の屈曲時の作動を時系列的に説明するための概略図である。
第7B図は、前記第1の実施例によるソール構造体の屈曲時の作動を時系列的に説明するための概略図である。
第7C図は、前記第1の実施例によるソール構造体の屈曲時の作動を時系列的に説明するための概略図である。
第8図は、本発明の第3の実施例によるシューズ用ソール構造体の屈曲規制部材部分の断面拡大図であって、前記第1の実施例の第3図に相当する図である。
第9図は、本発明の第5の実施例によるシューズ用ソール構造体の底面部分図である。
第10図は、第9図のX−X線断面図である。
第11図は、本発明の第6の実施例によるシューズ用ソール構造体の底面部分図である。
第12図は、シューズ着用者(ランナー)がランニングを行っている様子を模式的に表した図である。
第13図は、ランナーの脚をモデル化して表した図である。
第14図は、第12図に示す蹴り出し局面において時々刻々変化するMP関節まわりのトルク(MP関節トルク)を求めて、これをグラフ化したものである。
第15図は、第12図に示す蹴り出し局面において角速度の時間的変化をグラフ化したものである。
第16図は、第14図に示すMP関節トルクおよび第15図に示す角速度に基づき、蹴り出し局面においてMP関節が発揮するパワーを算出して、その時間的変化をグラフ化したものである。
第17図の下側のグラフは、曲げ抵抗値が小さいシューズと曲げ抵抗値が大きいシューズのそれぞれについて、シューズの蹴り出し局面でMP関節が発揮するパワーの時間的変化を表したものであり、上側の模式図の(b)〜(f)は、第12図中の(b)〜(f)にそれぞれ対応している。
以下、本発明の実施態様を添付図面に基づいて説明する。
第1A図ないし第7C図は、本発明の第1の実施例によるシューズ用ソール構造体を示している。第1A図および第1B図に示すように、このソール構造体1は、シューズの踵部Hから中足部Mをへて前足部Fまで前後方向に延設された軟質弾性部材製の上部ミッドソール2と、上部ミッドソール2の下部に固着されるとともに、シューズの踵部Hから中足部Mをへて前足部Fまで前後方向に延設された硬質弾性部材製の上部プレート3と、上部プレート3の下部に固着されるとともに、シューズの主に前足部Fに設けられた軟質弾性部材製の下部ミッドソール4と、シューズの主に踵部Hから中足部Mにかけて前後方向に延設されるとともに、その前端部が下部ミッドソール4の下部に固着された硬質弾性部材製の下部プレート5とを備えている。
上部ミッドソール2は、第2図に示すように、シューズ着用者の足裏が当接する足裏当接部20と、足裏当接部20の左右両側縁部から斜め上方に立ち上がる巻上げ部21とを有している。上部プレート3は、上部ミッドソール2の足裏当接部20を支持する支持部30と、支持部30の左右両側縁部から斜め上方に立ち上がる巻上げ部31とを有している。
下部ミッドソール4は、第1A図および第1B図に示すように、前足部Fにおいて、実質的にシューズ幅方向に延びる溝40、41を底面に有している。これらの溝40、41はいずれもソール前足部領域の屈曲を容易にするためのものであり、溝40は前足部Fの前側に配置され、溝41はその後方側、好ましくは着用者の足の拇指球部の若干後方に配置されている。溝41には、下部ミッドソール4を上下方向に貫通する通気孔4aが形成されている。通気孔4aは、上部ミッドソール2および上部プレート3を同様に上下方向に貫通する通気孔(図示せず)と連通している。
下部プレート5は、前後方向に進む波形状を有しており、上方に凸状に膨出する膨出部50を踵部Hおよび中足部Mに有している。第1A図中、破線Lは膨出部50の稜線を示している。各膨出部50は、弾性ブロック部材6を介して、上方の上部プレート3に連結されている。これにより、上下部プレート3、5間に空隙Cが形成されている。
下部ミッドソール4および下部プレート5の各下面には、路面と接地するアウトソールプレート7が固着されている。
ここで、上部ミッドソール2および下部ミッドソール4は、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性合成樹脂やその発泡体、ポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂やその発泡体、またはブタジエンラバーやクロロプレンラバー等のラバー素材やその発泡体等の軟質弾性部材から構成されている。
また、上部プレート3および下部プレート5は、例えば、熱可塑性ポリウレタン(TPU)やポリアミドエラストマー(PAE)等の熱可塑性材料や、エポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性材料等の硬質弾性部材から構成されており、また、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)やラバー等を用いて一体成形するようにしてもよい。アウトソールプレート7は、例えばラバー素材から構成されている。
下部ミッドソール4の下面に開口形成された溝41は、第3図に示すように、逆V字状の断面形状を有している。溝41の前後方向(第3図左右方向および第1A図上下方向)の各開口縁部間には、上方(第3図上方および第1B図左方)に逆V字状に屈曲する帯状の屈曲規制部材10が屈曲した状態で架設されている。屈曲規制部材10は、上方に逆V字状に屈曲する上方屈曲部10aを有しており、その前後方向の両端部は溝41の各開口縁部を連結している。ここでは、屈曲規制部材10として、例えばナイロン製のテープ状部材(つまりナイロンテープ)を例にとる。屈曲規制部材10の厚みは、コンマ数ミリ程度であり、例えばt=0.5mmのものが用いられる。屈曲規制部材10は、第1A図に示すように、ソールの内甲側および外甲側の双方にそれぞれ設けられている。
溝41の各開口縁部間における屈曲規制部材10の屈曲形状に沿った長さLは、溝の各開口縁部間の距離をS、溝の深さをD、溝の底部の位置の上方位置におけるミッドソールの厚みをHとするとき、
S+D×sin15°≦L≦S+H×sin15°
の関係式を満足している。
屈曲規制部材の長さLについて、このように規定した理由を、第4図を用いて説明する。
第4図は、ミッドソールMに形成された溝Gの各開口縁部間に屈曲規制部材Brが屈曲した状態で配設された構造を模式的に示している。この状態から、ミッドソールMが15°屈曲したとする。このとき、ミッドソールMは溝Gの底部Gaの回りに屈曲して、溝Gが底部Gaの回りに15°屈曲する。すなわち、ミッドソールMは、溝Gの底部Gaを屈曲点として底部Gaの回りに屈曲し、それによって、溝Gの底部Ga回りの中心角が15°増える。あるいは、ミッドソールMは、底部Gaの上方に位置する当該ミッドソール上の最上位の点Haを屈曲点として点Haの回りに屈曲し、それによって、点Ha回りの中心角が15°増える。実際の屈曲点は、底部Gaと点Haとの間に位置している。このことは、ミッドソールMにプレートが装着されている場合にも当てはまる。なお、ミッドソールMにプレートが装着されている場合、ソール屈曲時の中立軸は、プレート近傍に配置される傾向にある。
ミッドソールMが、溝Gの底部Gaの回りに屈曲して、溝Gの底部Ga回りの中心角が15°増えたことにより、屈曲規制部材Brが溝Gの各開口縁部間において屈曲状態から直線状に張られた状態まで移行したとすれば、溝Gの各開口縁部間の距離の増加分ΔSは、
ΔS≒D×sin15°
と近似的に表すことができる。よって、屈曲規制部材Brの屈曲形状に沿った長さLは、
L≒S+ΔS=S+D×sin15° …(1)
となる。
その一方、ミッドソールMが、点Haの回りに屈曲して、点Ha回りの中心角が15°増えたことにより、屈曲規制部材Brが溝Gの各開口縁部間において屈曲状態から直線状に張られた状態まで移行したとすれば、溝Gの各開口縁部間の距離の増加分ΔS’は、
ΔS’≒H×sin15°
と近似的に表すことができる。よって、屈曲規制部材Brの屈曲形状に沿った長さLは、
L≒S+ΔS’=S+H×sin15° …(2)
となる。
上記(1)式および(2)式から、屈曲規制部材Brの屈曲形状に沿った長さLとしては、上記不等式を満足する長さであればよいことになる。
なお、ソールの屈曲角度として15°を用いた理由を、第5図を用いて説明する。
第5図のグラフは、ランナーが地面を後ろに蹴る力とソールの屈曲角度のそれぞれの時間的変化を実際の走行試験(バイオメカニクス実験)を行うことにより求め、それらをグラフ化したものである。
第5図の上側のグラフは、横軸に時間[ms]をとり、縦軸にランナーが地面を後ろに蹴る力Fy[N]をとって、踵が接地してからつま先が地面から離れるトーオフ(toe off)の瞬間までにランナーが地面を後ろに蹴る力Fyの時間的変化を表したものであり、同図の下側のグラフは、そのときのソールの屈曲角度[°]の時間的変化を表したものである。各グラフは上下に対応している。
第5図のグラフより、ランナーが地面を後ろに蹴る力Fyが最大(Fy_max)になるとき、ソールの屈曲角度は15°であることが分かる。なお、屈曲角度の算出は、屈曲角度が0°になったいわゆるフットフラットの状態(つまりソール全面接地の状態)からの屈曲角度の増加分により求められる。
その一方、上述した第17図のグラフより、ソール前足部が屈曲している最中の(c)〜(d)の局面では、ソールの曲げ抵抗の小さい方がエネルギーロスが小さく、またソール前足部が最大屈曲する(e)の局面の前後では、ソールの曲げ抵抗の大きい方がエネルギーロスが小さいことが分かっている。
以上のことから、ソールの屈曲に関して、地面を最大の力(Fy_max)で後ろに蹴ることができる姿勢(つまり屈曲角度)まではソールが曲がり、その後はソールが曲がらない方が理想的であると判断される。
そこで、上述した不等式において、ソールの屈曲角度として15°を採用したのである。
本実施例においては、ソールの屈曲角度が15°未満の状態では、屈曲規制部材が溝の各開口縁部間で屈曲した状態にあり、屈曲角度が15°になると、屈曲規制部材が直線状に張られた状態になり、さらに屈曲角度が15°を超えると、屈曲規制部材が直線状に張られた状態から伸長方向に力を受けるようになる。
屈曲規制部材10は、ひずみが10%以下のとき400MPa以上のヤング率を有する材料から構成されているのが好ましい。
屈曲規制部材のヤング率についてこのように規定した理由を、第6図を用いて説明する。
第6図は、ヤング率の異なる材料からなる4種類の屈曲規制部材を用意し、これらがそれぞれ組み込まれた4類のシューズを同じランナーが実際に着用してランニングを行ってもらい、そのときの各シューズについてMP関節まわりのトルクに起因したエネルギーロスを算出した結果を示している。
なお、用意した4種類の材料(ソリッドラバー、PEBAX(商品名)、ポリエステルテープ、ナイロンテープ)のヤング率の算出に際して行った試験の条件は、以下のとおりである。
i)試験方法:JIS K 7113(「プラスチックの引張試験方法」に関する規格)に記載された引張試験
ii)試験片の形状: JIS K 7113に規定された形状
iii)引張速度: 500mm/min.
iv)試験片の把持間隔: 50mm
v) 引張条件: ひずみ10%以下
上記4種類の材料をヤング率の小さい順に並べると、
ソリッドラバー<PEBAX(商品名)<ポリエステルテープ<ナイロンテープとなった。なお、各材料の具体的なヤング率の大きさは、第6図中にプロットした値を参照のこと。
第6図から分かるように、材料のヤング率が大きくなるほど、エネルギーロスが減少しており、とくにヤング率が400[Mpa]以上になると、エネルギーロスが大幅に減少していることが分かる。また、ヤング率が400[Mpa]を超えると、エネルギーロスの大きさはほとんど変化していないことも分かる。
以上のことから、屈曲規制部材を構成する材料のヤング率の値として、ひずみが10%以下のとき400MPa以上と規定したのである。このような条件に適合する材料は、第6図の例では、ポリエステル製またはナイロン製のテープということになる。
屈曲規制部材10の上方屈曲部10aは、溝41の底壁部(逆V字形状の頂点部分)に固着されていない。好ましくは、屈曲規制部材10は、溝41の壁面にも固着されておらず、溝41の壁面から離間されている。
第3図に示すように、溝41の前後方向の各開口縁部間において、屈曲規制部材10の下方には、屈曲規制部材10の上方屈曲部10aを下方から覆う弾性カバー部材8が架設されている。弾性カバー部材8は、ここでは、アウトソールプレート7から構成されており、この場合、弾性カバー部材8をアウトソールプレート7と別個に設ける必要がないので、部品点数を削減でき、構成を簡略化できる。あるいは、弾性カバー部材8は、アウトソールプレート7と別個に設けられかつアウトソールプレート7と同様のラバー素材から構成されている。弾性カバー部材8は、溝41の各開口縁部間において屈曲規制部材10の屈曲形状に沿って延びており、屈曲規制部材10の下面に装着されている。弾性カバー部材8は、屈曲規制部材10に対応する位置に設けられているので、弾性カバー部材8も屈曲規制部材10と同様に、ソールの内甲側および外甲側の双方にそれぞれ設けられている。
ここで、屈曲規制部材10が、下部ミッドソール4との間で弾性カバー部材8およびアウトソールプレート7により挟持されて固着される端部の長さは、第4図の模式図において、屈曲規制部材BrがミッドソールMおよびカバー部材Pで挟持された端部の長さδに相当しており、このδとしては、δ≧10mmであるのが好ましい。これは、屈曲規制部材の接着領域を十分に確保して剥がれを防止するためである。
次に、本実施例によるソール構造体の屈曲時の作動について、第7A〜7C図を用いて説明する。
第7A〜7C図は、上述したソール構造体の断面構造をモデル化して概略的に示している。第7A〜7C図において、第1A、第1B図、第2図および第3図と同一符号は同一または相当部分を示している。ここでは、屈曲規制部材10の両端が前後方向(第7A〜7C図左右方向)に延設されている。第7A図はソール屈曲前の状態を、第7B図はソールが15度屈曲した状態を、第7C図はソールが30度屈曲した状態をそれぞれ示している。
第7A図に示すように、ソール屈曲前において、溝41の各開口縁部間の前後方向のスパン長さは10mmであり、各開口縁部間に屈曲した状態で架設された屈曲規制部材10の長さ(自由長)Lは、L=12.5mmになっている。なお、同図において、溝41の底壁部を示す点Pは、ソール屈曲時の屈曲点(FLEX POINT)になっている。
この状態から、第7B図に示すように、ソールが15度屈曲すると、ソールは溝41の底壁部の点Pの回りに屈曲し、屈曲規制部材10はその上方屈曲部10aの屈曲高さが徐々に低くなる(つまり上方屈曲部10aが徐々に扁平となる)ように変形して、屈曲規制部材10が屈曲した状態から徐々に伸長する。その結果、溝41の各開口縁部間の前後方向のスパン長さが12.5mmに伸びる。この長さは、屈曲規制部材10の自由長と同じであり、このとき、屈曲規制部材10は、各開口縁部間で直線状に張られているものの、伸びを生じていない自由長のままである。
したがって、第7A〜7B図に示すソール屈曲の初期の段階では、屈曲規制部材10は、屈曲した態から徐々に伸長して各開口縁部間で直線状に張られているだけであり、屈曲規制部材10は、ソールの屈曲を許容しており、ソールの屈曲を阻害することはない。
これにより、ランニング時の蹴り出し局面の前半においては、ソールの曲げ抵抗が相対的に小さくなって、ソールの屈曲がスムーズに行われ、これにより、蹴り出し局面の前半におけるエネルギーロスを低減できる。
次に、第7C図に示すように、ソールがさらに屈曲して屈曲角度が30度になると、ソールが溝41の底部の点Pの回りにさらに屈曲して、溝41の各開口縁部間の前後方向のスパン長さが14.8mmまで伸びる。このとき、屈曲規制部材10は、第7B図に示す直線状に張られた状態からδ(=14.8−12.5)だけ引き伸ばされている。
したがって、第7B〜7C図に示すように、ソール屈曲が進んだ段階では、屈曲規制部材10は、ソールの屈曲を規制するように作用する。
これにより、ランニング時の蹴り出し局面の後半においては、ソールの曲げ抵抗が相対的に大きくなって、ソールの屈曲が規制され、これにより、蹴り出し局面の後半におけるエネルギーロスを低減できる。
このようにして、本実施例によれば、ランニング時のエネルギーロスを低減でき、その結果、走行中にスムーズなライド感を得ることができるソール構造体を実現できる。
また、この場合には、屈曲規制部材10が溝41の壁面に固着されていないことで、ソールの屈曲の際には、屈曲規制部材10は、溝41の変形の影響を直接受けることなく、溝41から独立して変形できる。
さらに、この場合、屈曲規制部材10が溝41の壁面から離間していることで、ソールの屈曲の際に、屈曲規制部材10が、溝41の変形の影響をより受けにくくなり、溝41からより独立して変形できるようになる。また、このとき、ソールの屈曲の際のソール屈曲点である溝の底壁部が屈曲規制部材10から上方に離れた位置に配置できる、別の言い方をすれば、ソール屈曲時の曲げの中立軸を上方に配置できるので、ソールの屈曲の際には、屈曲規制部材10が架設された溝41の各開口縁部間のスパンの変形量を大きくでき、これにより、ソールの屈曲に対する屈曲規制部材10の規制量を容易に大きくでき、規制量の調整が容易になる。
また、この場合、屈曲規制部材10として、帯状またはテープ状のものを採用しており、屈曲規制部材10が可撓性を有している場合には、屈曲規制部材10を溝41の前後方向の各開口縁部間に屈曲した状態で架設するのを容易に行える。また、このとき、屈曲規制部材10の幅や厚みを変えることで、屈曲規制部材10の引張弾性率や曲げ弾性率を変化させることができ、これにより、ソールの屈曲に対する屈曲規制部材10による規制作用を容易に調整できるようになる。
なお、屈曲規制部材10の下方に弾性カバー部材8を設けたことにより、屈曲規制部材10が接地面側に露出するのを防止でき、屈曲規制部材10の耐久性を向上できる。また、この場合、弾性カバー部材8が前後方向の弾性を有するため、弾性カバー部材8がソールの屈曲を阻害することはない。
また、この場合には、上部プレート3を設けたことで、ソールの接地時に着用者の足から下方に作用する押付荷重を上部プレート3により支持できる。また、溝41の底壁部の上方に上部プレート3が配置されることで、足からの押付荷重の作用により、溝41の底部が変形するのを防止できるとともに、ソール屈曲時の曲げの中立軸を上方に保つことができる。これにより、ソールの屈曲の際に、屈曲規制部材10が架設された溝41の各開口縁部間のスパンの変形量を大きくでき、これにより、ソールの屈曲に対する屈曲規制部材10の規制量を容易に大きくでき、規制量の調整が容易になる。
さらに、この場合には、上部プレート3の下方に下部ミッドソール4が配置されるので、押付荷重の作用時に上部プレート3の下方への落ち込みを下部ミッドソール4により防止でき、これにより、ソール屈曲時の曲げの中立軸を上方に保つことができる。
屈曲規制部材10は、下部プレート5を延設することで構成してもよく、この場合には、屈曲規制部材10を下部プレート5と別個に設ける必要がないので、部品点数を削減でき、構成を簡略化できる。
上部ミッドソール2は、第2図に示すように、シューズ着用者の足裏が当接する足裏当接部20と、足裏当接部20の左右両側縁部から斜め上方に立ち上がる巻上げ部21とを有している。上部プレート3は、上部ミッドソール2の足裏当接部20を支持する支持部30と、支持部30の左右両側縁部から斜め上方に立ち上がる巻上げ部31とを有している。
下部ミッドソール4は、第1A図および第1B図に示すように、前足部Fにおいて、実質的にシューズ幅方向に延びる溝40、41を底面に有している。これらの溝40、41はいずれもソール前足部領域の屈曲を容易にするためのものであり、溝40は前足部Fの前側に配置され、溝41はその後方側、好ましくは着用者の足の拇指球部の若干後方に配置されている。溝41には、下部ミッドソール4を上下方向に貫通する通気孔4aが形成されている。通気孔4aは、上部ミッドソール2および上部プレート3を同様に上下方向に貫通する通気孔(図示せず)と連通している。
下部プレート5は、前後方向に進む波形状を有しており、上方に凸状に膨出する膨出部50を踵部Hおよび中足部Mに有している。第1A図中、破線Lは膨出部50の稜線を示している。各膨出部50は、弾性ブロック部材6を介して、上方の上部プレート3に連結されている。これにより、上下部プレート3、5間に空隙Cが形成されている。
下部ミッドソール4および下部プレート5の各下面には、路面と接地するアウトソールプレート7が固着されている。
ここで、上部ミッドソール2および下部ミッドソール4は、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性合成樹脂やその発泡体、ポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂やその発泡体、またはブタジエンラバーやクロロプレンラバー等のラバー素材やその発泡体等の軟質弾性部材から構成されている。
また、上部プレート3および下部プレート5は、例えば、熱可塑性ポリウレタン(TPU)やポリアミドエラストマー(PAE)等の熱可塑性材料や、エポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性材料等の硬質弾性部材から構成されており、また、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)やラバー等を用いて一体成形するようにしてもよい。アウトソールプレート7は、例えばラバー素材から構成されている。
下部ミッドソール4の下面に開口形成された溝41は、第3図に示すように、逆V字状の断面形状を有している。溝41の前後方向(第3図左右方向および第1A図上下方向)の各開口縁部間には、上方(第3図上方および第1B図左方)に逆V字状に屈曲する帯状の屈曲規制部材10が屈曲した状態で架設されている。屈曲規制部材10は、上方に逆V字状に屈曲する上方屈曲部10aを有しており、その前後方向の両端部は溝41の各開口縁部を連結している。ここでは、屈曲規制部材10として、例えばナイロン製のテープ状部材(つまりナイロンテープ)を例にとる。屈曲規制部材10の厚みは、コンマ数ミリ程度であり、例えばt=0.5mmのものが用いられる。屈曲規制部材10は、第1A図に示すように、ソールの内甲側および外甲側の双方にそれぞれ設けられている。
溝41の各開口縁部間における屈曲規制部材10の屈曲形状に沿った長さLは、溝の各開口縁部間の距離をS、溝の深さをD、溝の底部の位置の上方位置におけるミッドソールの厚みをHとするとき、
S+D×sin15°≦L≦S+H×sin15°
の関係式を満足している。
屈曲規制部材の長さLについて、このように規定した理由を、第4図を用いて説明する。
第4図は、ミッドソールMに形成された溝Gの各開口縁部間に屈曲規制部材Brが屈曲した状態で配設された構造を模式的に示している。この状態から、ミッドソールMが15°屈曲したとする。このとき、ミッドソールMは溝Gの底部Gaの回りに屈曲して、溝Gが底部Gaの回りに15°屈曲する。すなわち、ミッドソールMは、溝Gの底部Gaを屈曲点として底部Gaの回りに屈曲し、それによって、溝Gの底部Ga回りの中心角が15°増える。あるいは、ミッドソールMは、底部Gaの上方に位置する当該ミッドソール上の最上位の点Haを屈曲点として点Haの回りに屈曲し、それによって、点Ha回りの中心角が15°増える。実際の屈曲点は、底部Gaと点Haとの間に位置している。このことは、ミッドソールMにプレートが装着されている場合にも当てはまる。なお、ミッドソールMにプレートが装着されている場合、ソール屈曲時の中立軸は、プレート近傍に配置される傾向にある。
ミッドソールMが、溝Gの底部Gaの回りに屈曲して、溝Gの底部Ga回りの中心角が15°増えたことにより、屈曲規制部材Brが溝Gの各開口縁部間において屈曲状態から直線状に張られた状態まで移行したとすれば、溝Gの各開口縁部間の距離の増加分ΔSは、
ΔS≒D×sin15°
と近似的に表すことができる。よって、屈曲規制部材Brの屈曲形状に沿った長さLは、
L≒S+ΔS=S+D×sin15° …(1)
となる。
その一方、ミッドソールMが、点Haの回りに屈曲して、点Ha回りの中心角が15°増えたことにより、屈曲規制部材Brが溝Gの各開口縁部間において屈曲状態から直線状に張られた状態まで移行したとすれば、溝Gの各開口縁部間の距離の増加分ΔS’は、
ΔS’≒H×sin15°
と近似的に表すことができる。よって、屈曲規制部材Brの屈曲形状に沿った長さLは、
L≒S+ΔS’=S+H×sin15° …(2)
となる。
上記(1)式および(2)式から、屈曲規制部材Brの屈曲形状に沿った長さLとしては、上記不等式を満足する長さであればよいことになる。
なお、ソールの屈曲角度として15°を用いた理由を、第5図を用いて説明する。
第5図のグラフは、ランナーが地面を後ろに蹴る力とソールの屈曲角度のそれぞれの時間的変化を実際の走行試験(バイオメカニクス実験)を行うことにより求め、それらをグラフ化したものである。
第5図の上側のグラフは、横軸に時間[ms]をとり、縦軸にランナーが地面を後ろに蹴る力Fy[N]をとって、踵が接地してからつま先が地面から離れるトーオフ(toe off)の瞬間までにランナーが地面を後ろに蹴る力Fyの時間的変化を表したものであり、同図の下側のグラフは、そのときのソールの屈曲角度[°]の時間的変化を表したものである。各グラフは上下に対応している。
第5図のグラフより、ランナーが地面を後ろに蹴る力Fyが最大(Fy_max)になるとき、ソールの屈曲角度は15°であることが分かる。なお、屈曲角度の算出は、屈曲角度が0°になったいわゆるフットフラットの状態(つまりソール全面接地の状態)からの屈曲角度の増加分により求められる。
その一方、上述した第17図のグラフより、ソール前足部が屈曲している最中の(c)〜(d)の局面では、ソールの曲げ抵抗の小さい方がエネルギーロスが小さく、またソール前足部が最大屈曲する(e)の局面の前後では、ソールの曲げ抵抗の大きい方がエネルギーロスが小さいことが分かっている。
以上のことから、ソールの屈曲に関して、地面を最大の力(Fy_max)で後ろに蹴ることができる姿勢(つまり屈曲角度)まではソールが曲がり、その後はソールが曲がらない方が理想的であると判断される。
そこで、上述した不等式において、ソールの屈曲角度として15°を採用したのである。
本実施例においては、ソールの屈曲角度が15°未満の状態では、屈曲規制部材が溝の各開口縁部間で屈曲した状態にあり、屈曲角度が15°になると、屈曲規制部材が直線状に張られた状態になり、さらに屈曲角度が15°を超えると、屈曲規制部材が直線状に張られた状態から伸長方向に力を受けるようになる。
屈曲規制部材10は、ひずみが10%以下のとき400MPa以上のヤング率を有する材料から構成されているのが好ましい。
屈曲規制部材のヤング率についてこのように規定した理由を、第6図を用いて説明する。
第6図は、ヤング率の異なる材料からなる4種類の屈曲規制部材を用意し、これらがそれぞれ組み込まれた4類のシューズを同じランナーが実際に着用してランニングを行ってもらい、そのときの各シューズについてMP関節まわりのトルクに起因したエネルギーロスを算出した結果を示している。
なお、用意した4種類の材料(ソリッドラバー、PEBAX(商品名)、ポリエステルテープ、ナイロンテープ)のヤング率の算出に際して行った試験の条件は、以下のとおりである。
i)試験方法:JIS K 7113(「プラスチックの引張試験方法」に関する規格)に記載された引張試験
ii)試験片の形状: JIS K 7113に規定された形状
iii)引張速度: 500mm/min.
iv)試験片の把持間隔: 50mm
v) 引張条件: ひずみ10%以下
上記4種類の材料をヤング率の小さい順に並べると、
ソリッドラバー<PEBAX(商品名)<ポリエステルテープ<ナイロンテープとなった。なお、各材料の具体的なヤング率の大きさは、第6図中にプロットした値を参照のこと。
第6図から分かるように、材料のヤング率が大きくなるほど、エネルギーロスが減少しており、とくにヤング率が400[Mpa]以上になると、エネルギーロスが大幅に減少していることが分かる。また、ヤング率が400[Mpa]を超えると、エネルギーロスの大きさはほとんど変化していないことも分かる。
以上のことから、屈曲規制部材を構成する材料のヤング率の値として、ひずみが10%以下のとき400MPa以上と規定したのである。このような条件に適合する材料は、第6図の例では、ポリエステル製またはナイロン製のテープということになる。
屈曲規制部材10の上方屈曲部10aは、溝41の底壁部(逆V字形状の頂点部分)に固着されていない。好ましくは、屈曲規制部材10は、溝41の壁面にも固着されておらず、溝41の壁面から離間されている。
第3図に示すように、溝41の前後方向の各開口縁部間において、屈曲規制部材10の下方には、屈曲規制部材10の上方屈曲部10aを下方から覆う弾性カバー部材8が架設されている。弾性カバー部材8は、ここでは、アウトソールプレート7から構成されており、この場合、弾性カバー部材8をアウトソールプレート7と別個に設ける必要がないので、部品点数を削減でき、構成を簡略化できる。あるいは、弾性カバー部材8は、アウトソールプレート7と別個に設けられかつアウトソールプレート7と同様のラバー素材から構成されている。弾性カバー部材8は、溝41の各開口縁部間において屈曲規制部材10の屈曲形状に沿って延びており、屈曲規制部材10の下面に装着されている。弾性カバー部材8は、屈曲規制部材10に対応する位置に設けられているので、弾性カバー部材8も屈曲規制部材10と同様に、ソールの内甲側および外甲側の双方にそれぞれ設けられている。
ここで、屈曲規制部材10が、下部ミッドソール4との間で弾性カバー部材8およびアウトソールプレート7により挟持されて固着される端部の長さは、第4図の模式図において、屈曲規制部材BrがミッドソールMおよびカバー部材Pで挟持された端部の長さδに相当しており、このδとしては、δ≧10mmであるのが好ましい。これは、屈曲規制部材の接着領域を十分に確保して剥がれを防止するためである。
次に、本実施例によるソール構造体の屈曲時の作動について、第7A〜7C図を用いて説明する。
第7A〜7C図は、上述したソール構造体の断面構造をモデル化して概略的に示している。第7A〜7C図において、第1A、第1B図、第2図および第3図と同一符号は同一または相当部分を示している。ここでは、屈曲規制部材10の両端が前後方向(第7A〜7C図左右方向)に延設されている。第7A図はソール屈曲前の状態を、第7B図はソールが15度屈曲した状態を、第7C図はソールが30度屈曲した状態をそれぞれ示している。
第7A図に示すように、ソール屈曲前において、溝41の各開口縁部間の前後方向のスパン長さは10mmであり、各開口縁部間に屈曲した状態で架設された屈曲規制部材10の長さ(自由長)Lは、L=12.5mmになっている。なお、同図において、溝41の底壁部を示す点Pは、ソール屈曲時の屈曲点(FLEX POINT)になっている。
この状態から、第7B図に示すように、ソールが15度屈曲すると、ソールは溝41の底壁部の点Pの回りに屈曲し、屈曲規制部材10はその上方屈曲部10aの屈曲高さが徐々に低くなる(つまり上方屈曲部10aが徐々に扁平となる)ように変形して、屈曲規制部材10が屈曲した状態から徐々に伸長する。その結果、溝41の各開口縁部間の前後方向のスパン長さが12.5mmに伸びる。この長さは、屈曲規制部材10の自由長と同じであり、このとき、屈曲規制部材10は、各開口縁部間で直線状に張られているものの、伸びを生じていない自由長のままである。
したがって、第7A〜7B図に示すソール屈曲の初期の段階では、屈曲規制部材10は、屈曲した態から徐々に伸長して各開口縁部間で直線状に張られているだけであり、屈曲規制部材10は、ソールの屈曲を許容しており、ソールの屈曲を阻害することはない。
これにより、ランニング時の蹴り出し局面の前半においては、ソールの曲げ抵抗が相対的に小さくなって、ソールの屈曲がスムーズに行われ、これにより、蹴り出し局面の前半におけるエネルギーロスを低減できる。
次に、第7C図に示すように、ソールがさらに屈曲して屈曲角度が30度になると、ソールが溝41の底部の点Pの回りにさらに屈曲して、溝41の各開口縁部間の前後方向のスパン長さが14.8mmまで伸びる。このとき、屈曲規制部材10は、第7B図に示す直線状に張られた状態からδ(=14.8−12.5)だけ引き伸ばされている。
したがって、第7B〜7C図に示すように、ソール屈曲が進んだ段階では、屈曲規制部材10は、ソールの屈曲を規制するように作用する。
これにより、ランニング時の蹴り出し局面の後半においては、ソールの曲げ抵抗が相対的に大きくなって、ソールの屈曲が規制され、これにより、蹴り出し局面の後半におけるエネルギーロスを低減できる。
このようにして、本実施例によれば、ランニング時のエネルギーロスを低減でき、その結果、走行中にスムーズなライド感を得ることができるソール構造体を実現できる。
また、この場合には、屈曲規制部材10が溝41の壁面に固着されていないことで、ソールの屈曲の際には、屈曲規制部材10は、溝41の変形の影響を直接受けることなく、溝41から独立して変形できる。
さらに、この場合、屈曲規制部材10が溝41の壁面から離間していることで、ソールの屈曲の際に、屈曲規制部材10が、溝41の変形の影響をより受けにくくなり、溝41からより独立して変形できるようになる。また、このとき、ソールの屈曲の際のソール屈曲点である溝の底壁部が屈曲規制部材10から上方に離れた位置に配置できる、別の言い方をすれば、ソール屈曲時の曲げの中立軸を上方に配置できるので、ソールの屈曲の際には、屈曲規制部材10が架設された溝41の各開口縁部間のスパンの変形量を大きくでき、これにより、ソールの屈曲に対する屈曲規制部材10の規制量を容易に大きくでき、規制量の調整が容易になる。
また、この場合、屈曲規制部材10として、帯状またはテープ状のものを採用しており、屈曲規制部材10が可撓性を有している場合には、屈曲規制部材10を溝41の前後方向の各開口縁部間に屈曲した状態で架設するのを容易に行える。また、このとき、屈曲規制部材10の幅や厚みを変えることで、屈曲規制部材10の引張弾性率や曲げ弾性率を変化させることができ、これにより、ソールの屈曲に対する屈曲規制部材10による規制作用を容易に調整できるようになる。
なお、屈曲規制部材10の下方に弾性カバー部材8を設けたことにより、屈曲規制部材10が接地面側に露出するのを防止でき、屈曲規制部材10の耐久性を向上できる。また、この場合、弾性カバー部材8が前後方向の弾性を有するため、弾性カバー部材8がソールの屈曲を阻害することはない。
また、この場合には、上部プレート3を設けたことで、ソールの接地時に着用者の足から下方に作用する押付荷重を上部プレート3により支持できる。また、溝41の底壁部の上方に上部プレート3が配置されることで、足からの押付荷重の作用により、溝41の底部が変形するのを防止できるとともに、ソール屈曲時の曲げの中立軸を上方に保つことができる。これにより、ソールの屈曲の際に、屈曲規制部材10が架設された溝41の各開口縁部間のスパンの変形量を大きくでき、これにより、ソールの屈曲に対する屈曲規制部材10の規制量を容易に大きくでき、規制量の調整が容易になる。
さらに、この場合には、上部プレート3の下方に下部ミッドソール4が配置されるので、押付荷重の作用時に上部プレート3の下方への落ち込みを下部ミッドソール4により防止でき、これにより、ソール屈曲時の曲げの中立軸を上方に保つことができる。
屈曲規制部材10は、下部プレート5を延設することで構成してもよく、この場合には、屈曲規制部材10を下部プレート5と別個に設ける必要がないので、部品点数を削減でき、構成を簡略化できる。
前記第1の実施例では、下部ミッドソール4に形成される溝41が逆V字状の断面形状を有している場合を例にとって説明したが、本発明の適用はこれに限定されない。溝41の断面形状は、逆U字状でもよく、あるいは円弧状(つまり扁平な逆U字状)でもよい。溝41としては、下方に開口する溝形状であれば、これら以外に任意の形状を採用し得る。
なお、溝41の断面形状がどのようなものであっても、溝41内に配置される屈曲規制部材10は、溝41内において上方に屈曲する上方屈曲部10aを有することで上方に屈曲しており、上方屈曲部10aは溝41の底壁部には固着されない。また、好ましくは、屈曲規制部材10は、溝41の壁面にも固着されておらず、溝41の壁面から離間されている。
なお、溝41の断面形状がどのようなものであっても、溝41内に配置される屈曲規制部材10は、溝41内において上方に屈曲する上方屈曲部10aを有することで上方に屈曲しており、上方屈曲部10aは溝41の底壁部には固着されない。また、好ましくは、屈曲規制部材10は、溝41の壁面にも固着されておらず、溝41の壁面から離間されている。
前記第1の実施例では、屈曲規制部材10のソール前後方向の断面形状が逆V字状の場合を例にとって説明したが、屈曲規制部材10の断面形状としては、逆U字状でもよく、あるいは円弧状(つまり扁平な逆U字状)でもよい。また、下部ミッドソール4の溝41の断面形状等に応じて、種々の形状を採用し得る。
また、屈曲規制部材としては、第8図に示すように、下方にV字状またはU字状に屈曲する下方屈曲部10’aを有していてもよい。この場合、屈曲規制部材10’の下方屈曲部10’aを下方から覆う弾性カバー部材8’についても、屈曲規制部材10’の屈曲形状に沿った屈曲形状を有している。なお、第8図において、前記実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
この場合には、ソールの屈曲の初期の段階では、下方屈曲部10’aの屈曲高さが徐々に低くなる(つまり下方屈曲部10’aが徐々に扁平となる)ように変形することで、屈曲規制部材10’が屈曲した状態から徐々に伸長する。
また、屈曲規制部材としては、第8図に示すように、下方にV字状またはU字状に屈曲する下方屈曲部10’aを有していてもよい。この場合、屈曲規制部材10’の下方屈曲部10’aを下方から覆う弾性カバー部材8’についても、屈曲規制部材10’の屈曲形状に沿った屈曲形状を有している。なお、第8図において、前記実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
この場合には、ソールの屈曲の初期の段階では、下方屈曲部10’aの屈曲高さが徐々に低くなる(つまり下方屈曲部10’aが徐々に扁平となる)ように変形することで、屈曲規制部材10’が屈曲した状態から徐々に伸長する。
前記第1の実施例では、屈曲規制部材10として、ナイロンテープを例にとって説明したが、本発明の適用はこれに限定されない。ナイロン以外の樹脂からなるテープ(例えばポリエステルテープ)を用いてもよい。
あるいは、織物や不織布のような布帛、編み物、人工皮革等を用いて、屈曲規制部材10を構成することも可能である。屈曲規制部材を布帛や人工皮革等から構成した場合には、屈曲規制部材が伸縮性に乏しい材料から構成されるので、ソールの屈曲が進んだ段階において、溝の各開口縁部間で屈曲規制部材が直線状に張られた状態から伸長方向に力を受けたとき、屈曲規制部材がソールの屈曲を規制するように効果的に作用する。これにより、ランニング時の蹴り出し局面の後半において、ソールの曲げ抵抗を効果的に大きくできる。また、この場合、布帛製の屈曲規制部材は、屈曲抵抗が非常に小さく変形自在であることから、屈曲した状態のままでは、その屈曲状態を変化させるのに、ほとんど力を必要としない。そのため、布帛製の屈曲規制部材は、ソールの屈曲の初期の段階では、ソールの屈曲抵抗となることがなく、ソールの自由な屈曲を助長できる。
また、屈曲規制部材10は、下部プレート5を溝41の開口部まで延設することにより構成するようにしてもよい。
あるいは、織物や不織布のような布帛、編み物、人工皮革等を用いて、屈曲規制部材10を構成することも可能である。屈曲規制部材を布帛や人工皮革等から構成した場合には、屈曲規制部材が伸縮性に乏しい材料から構成されるので、ソールの屈曲が進んだ段階において、溝の各開口縁部間で屈曲規制部材が直線状に張られた状態から伸長方向に力を受けたとき、屈曲規制部材がソールの屈曲を規制するように効果的に作用する。これにより、ランニング時の蹴り出し局面の後半において、ソールの曲げ抵抗を効果的に大きくできる。また、この場合、布帛製の屈曲規制部材は、屈曲抵抗が非常に小さく変形自在であることから、屈曲した状態のままでは、その屈曲状態を変化させるのに、ほとんど力を必要としない。そのため、布帛製の屈曲規制部材は、ソールの屈曲の初期の段階では、ソールの屈曲抵抗となることがなく、ソールの自由な屈曲を助長できる。
また、屈曲規制部材10は、下部プレート5を溝41の開口部まで延設することにより構成するようにしてもよい。
前記第1ないし第4の実施例では、屈曲規制部材10として帯状またはテープ状のものを例にとって説明した、本発明の適用はこれに限定されない。屈曲規制部材としては、第9図および第10図に示すように、線状の部材を採用するようにしてもよい。なお、これらの図において、前記第1ないし第4の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
屈曲規制部材10”は、第9図および第10図に示すように、溝41の各開口縁部間において側方つまりシューズ幅方向(第9図左右方向)に略V字状または略U字状に屈曲する線状の部材であって、各開口縁部間に屈曲した状態で架設されている。屈曲規制部材10”は、側方に略V字状または略U字状に屈曲する側方屈曲部10”aを有しており、その前後方向の両端部は溝41の各開口縁部を連結している。屈曲規制部材10”としては、例えばナイロンワイヤや、その他の樹脂からなるワイヤ、または糸や撚糸等が用いられる。
この場合には、ソールの屈曲の初期の段階では、側方屈曲部10”aの側方への屈曲量が徐々に小さくなるように変形することで、屈曲規制部材10”が屈曲した状態から徐々に伸長する。
この場合には、屈曲規制部材10”の断面の大きさや直径を変えることで、屈曲規制部材10”の引張弾性率や曲げ弾性率を変化させることができ、これにより、ソールの屈曲に対する屈曲規制部材10”による規制作用を容易に調整できるようになる。
屈曲規制部材10”は、第9図および第10図に示すように、溝41の各開口縁部間において側方つまりシューズ幅方向(第9図左右方向)に略V字状または略U字状に屈曲する線状の部材であって、各開口縁部間に屈曲した状態で架設されている。屈曲規制部材10”は、側方に略V字状または略U字状に屈曲する側方屈曲部10”aを有しており、その前後方向の両端部は溝41の各開口縁部を連結している。屈曲規制部材10”としては、例えばナイロンワイヤや、その他の樹脂からなるワイヤ、または糸や撚糸等が用いられる。
この場合には、ソールの屈曲の初期の段階では、側方屈曲部10”aの側方への屈曲量が徐々に小さくなるように変形することで、屈曲規制部材10”が屈曲した状態から徐々に伸長する。
この場合には、屈曲規制部材10”の断面の大きさや直径を変えることで、屈曲規制部材10”の引張弾性率や曲げ弾性率を変化させることができ、これにより、ソールの屈曲に対する屈曲規制部材10”による規制作用を容易に調整できるようになる。
前記第4の実施例において、屈曲規制部材10を伸縮性の乏しい布帛製部材から構成する際には、当該屈曲規制部材10を下部ミッドソール4の接地側の面を覆う布帛製シートから構成するとともに、この布帛製シートの接地面側の面に、各々分離配置された多数のアウトソールチップを固着するようにしてもよい。
第11図は、このような布帛製シートを用いた本発明の第6の実施例を示しており、同図において、前記第1の実施例と同一符号は同一または相等部分を示している。第11図に示すように、下部ミッドソール4の下面には、布帛製シート10A、10B、10Cが装着されている。布帛製シート10Aは、シューズの前足部の前端側領域F1に配置され、布帛製シート10Bは、シューズの前足部の前後方向中央側領域F2に配置され、布帛製10Cは、シューズの前足部の後端側領域から中足部にかけての領域F3に配置されている。
また、布帛製シート10B、10Cは、溝41を挟んで前後両側に配置されており、布帛製シート10Bの後端および布帛製シート10Cの前端は、溝41を跨いで延設された左右一対の帯状のシート連結部10eによって連結されている。シート連結部10eも同様に布帛製であって、布帛製シート10B、10Cと一体に連設されるとともに、溝41内において上方に向かって逆U字状に屈曲している。
各布帛製シート10A、10B、10Cの接地面側の面には、多数のアウトソールチップ(アウトソール片)7pが固着されている。アウトソールチップ7pは、例えば六角形状または矩形状等の小形のアウトソール部材であって、インサート成形等によって各布帛製シート10A、10B、10C上に一体化されている。
この場合には、布帛製シート10A、10B、10Cが多数のアウトソールチップ7pのベース材として用いられるので、布帛製シート10A、10B、10Cおよび多数のアウトソールチップを一体成形して単一のユニットにすることができ、これにより、ソール構造体の組立工程を簡略化できるとともに、重量を軽減できる。
第11図は、このような布帛製シートを用いた本発明の第6の実施例を示しており、同図において、前記第1の実施例と同一符号は同一または相等部分を示している。第11図に示すように、下部ミッドソール4の下面には、布帛製シート10A、10B、10Cが装着されている。布帛製シート10Aは、シューズの前足部の前端側領域F1に配置され、布帛製シート10Bは、シューズの前足部の前後方向中央側領域F2に配置され、布帛製10Cは、シューズの前足部の後端側領域から中足部にかけての領域F3に配置されている。
また、布帛製シート10B、10Cは、溝41を挟んで前後両側に配置されており、布帛製シート10Bの後端および布帛製シート10Cの前端は、溝41を跨いで延設された左右一対の帯状のシート連結部10eによって連結されている。シート連結部10eも同様に布帛製であって、布帛製シート10B、10Cと一体に連設されるとともに、溝41内において上方に向かって逆U字状に屈曲している。
各布帛製シート10A、10B、10Cの接地面側の面には、多数のアウトソールチップ(アウトソール片)7pが固着されている。アウトソールチップ7pは、例えば六角形状または矩形状等の小形のアウトソール部材であって、インサート成形等によって各布帛製シート10A、10B、10C上に一体化されている。
この場合には、布帛製シート10A、10B、10Cが多数のアウトソールチップ7pのベース材として用いられるので、布帛製シート10A、10B、10Cおよび多数のアウトソールチップを一体成形して単一のユニットにすることができ、これにより、ソール構造体の組立工程を簡略化できるとともに、重量を軽減できる。
前記第1の実施例では、屈曲規制部材10がソールの内甲側および外甲側の双方に設けられた例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。屈曲規制部材10は、ソールの内甲側のみまたは外甲側のみに設けるようにしてもよい。
屈曲規制部材10がソールの内甲側に設けられる場合には、ランニング時に回内(プロネーション)の傾向があるランナーに好適のシューズを実現できる。すなわち、この場合には、ランニング時の蹴り出し局面の後半において、ソールの内甲側の曲げ抵抗が相対的に大きくなってソールの内甲側の屈曲が規制され、これにより、蹴り出し局面の後半におけるエネルギーロスを低減できる。
また、屈曲規制部材10がソールの外甲側に設けられる場合には、ランニング時に回外(サピネーション)の傾向があるランナーに好適のシューズを実現できる。すなわち、この場合には、ランニング時の蹴り出し局面の後半において、ソールの外甲側の曲げ抵抗が相対的に大きくなってソールの外甲側の屈曲が規制され、これにより、蹴り出し局面の後半におけるエネルギーロスを低減できる。
なお、前記第1の実施例のように、屈曲規制部材10がソールの内甲側および外甲側の双方に設けられている場合には、ランニング時に回内および回外のいずれの傾向があるランナーにも対応可能なシューズを実現できる。また、この場合、ソールの内甲側および外甲側間で各屈曲規制部材10の引張弾性率や曲げ弾性率を異ならせることにより、ソールの内甲側および外甲側間でソールの曲げ抵抗の微調整が可能になる。
また、内甲側および(または)外甲側に設けられる各屈曲規制部材10は、それぞれ複数個の屈曲規制部材から構成されていてもよい。
屈曲規制部材10がソールの内甲側に設けられる場合には、ランニング時に回内(プロネーション)の傾向があるランナーに好適のシューズを実現できる。すなわち、この場合には、ランニング時の蹴り出し局面の後半において、ソールの内甲側の曲げ抵抗が相対的に大きくなってソールの内甲側の屈曲が規制され、これにより、蹴り出し局面の後半におけるエネルギーロスを低減できる。
また、屈曲規制部材10がソールの外甲側に設けられる場合には、ランニング時に回外(サピネーション)の傾向があるランナーに好適のシューズを実現できる。すなわち、この場合には、ランニング時の蹴り出し局面の後半において、ソールの外甲側の曲げ抵抗が相対的に大きくなってソールの外甲側の屈曲が規制され、これにより、蹴り出し局面の後半におけるエネルギーロスを低減できる。
なお、前記第1の実施例のように、屈曲規制部材10がソールの内甲側および外甲側の双方に設けられている場合には、ランニング時に回内および回外のいずれの傾向があるランナーにも対応可能なシューズを実現できる。また、この場合、ソールの内甲側および外甲側間で各屈曲規制部材10の引張弾性率や曲げ弾性率を異ならせることにより、ソールの内甲側および外甲側間でソールの曲げ抵抗の微調整が可能になる。
また、内甲側および(または)外甲側に設けられる各屈曲規制部材10は、それぞれ複数個の屈曲規制部材から構成されていてもよい。
前記第1の実施例では、ソールの内甲側および外甲側にそれぞれ設けられた各屈曲規制部材10が略同一の幅を有している例を示したが、本発明においては、内甲側の屈曲規制部材10の幅が、外甲側の屈曲規制部材10の幅よりも大きくなっていてもよい。なお、屈曲規制部材10が複数個設けられる場合には、ここでいう屈曲規制部材10の幅とは、各屈曲規制部材の合計幅を意味している。また、各屈曲規制部材10が略同一の幅を有している場合には、内甲側に設けられる屈曲規制部材10の個数が、外甲側に設けられる屈曲規制部材10の個数よりも多くなっていてもよい。
ランニング時には、一般に、ソール前足部の内甲側領域は外甲側領域よりも長い時間地面に接地しているため、MP関節の屈曲角度は内甲側領域の方が外甲側領域よりも大きい場合がある。そこで、ソールの屈曲時に屈曲規制作用をより大きく作用させる必要がある内甲側領域の屈曲規制部材10の幅(または個数)を外甲側領域の屈曲規制部材10の幅(または個数)よりも大きく(または多く)したのである。
ランニング時には、一般に、ソール前足部の内甲側領域は外甲側領域よりも長い時間地面に接地しているため、MP関節の屈曲角度は内甲側領域の方が外甲側領域よりも大きい場合がある。そこで、ソールの屈曲時に屈曲規制作用をより大きく作用させる必要がある内甲側領域の屈曲規制部材10の幅(または個数)を外甲側領域の屈曲規制部材10の幅(または個数)よりも大きく(または多く)したのである。
以上のように、本発明は、シューズ用ソール構造体に有用であり、とくにランニングシューズにおいて、エネルギーロスの低減によって走行中によりスムーズなライド感を得たいとするユーザーに適している。
Claims (21)
- シューズのソール構造体において、
ソール下面に開口形成され、ソール幅方向に延びる溝と、
前記溝のソール前後方向の各開口縁部の間に屈曲した状態で架設されかつ前記各開口縁部を連結するとともに、ソールの屈曲の初期の段階では、屈曲した状態から徐々に伸長して前記各開口縁部間で直線状に張られる状態までソールの屈曲を許容し、ソールの屈曲が進んだ段階では、前記各開口縁部間で直線状に張られた状態から伸長方向に力を受けることにより、ソールの屈曲を規制するように作用する屈曲規制部材と、
を備えたシューズのソール構造体。 - 請求項1において、
前記溝が前記ソールの前足部に設けられている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。 - 請求項1において、
前記屈曲規制部材が前記溝内において上方に屈曲する上方屈曲部を有することで上方に屈曲している、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。 - 請求項3において、
前記屈曲規制部材が、前記溝の壁面に固着されていない、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。 - 請求項3において、
前記屈曲規制部材が、前記溝の壁面から離間している、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。 - 請求項1において、
前記屈曲規制部材が前記溝内において下方に屈曲する下方屈曲部を有することで下方に屈曲している、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。 - 請求項3または6において、
前記屈曲規制部材がテープ状の部材である、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。 - 請求項1において、
前記屈曲規制部材が前記溝内において側方に屈曲する側方屈曲部を有することで側方に屈曲している、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。 - 請求項8において、
前記屈曲規制部材が線状に延びる部材である、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。 - 請求項1において、
前記屈曲規制部材が布帛製である、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。 - 請求項10において、
前記屈曲規制部材が、前記ソールの接地面を覆うシート状部材であって、当該シート状部材の接地面側の面には、複数のアウトソールチップが固着されている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。 - 請求項1において、
前記屈曲規制部材が、ソールの内甲側または外甲側に設けられている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。 - 請求項1において、
前記屈曲規制部材が、ソールの内甲側および外甲側に設けられている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。 - 請求項1において、
前記溝の前記各開口縁部間には、前記屈曲規制部材の屈曲形状に沿いつつソール前後方向に延びるとともに、前記屈曲規制部材を下方から覆う弾性カバー部材が配設されている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。 - 請求項14において、
接地面を有するアウトソール部材がソール下面に配設されており、前記弾性カバー部材が前記アウトソール部材により構成されている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。 - 請求項1において、
当該ソール構造体が、上方に配置されかつソール前後方向に延びる上部プレートと、前記上部プレートの下方に配置された軟質弾性部材製のミッドソールとを備えており、前記溝がミッドソールの下面に形成されている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。 - 請求項16において、
当該ソール構造体が、前記ミッドソールの下方に配置されかつソール前後方向に延びる下部プレートをさらに備えており、前記屈曲規制部材が、下部プレートを溝の開口縁部まで延設することにより構成されている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。 - シューズのソール構造体であって、
上方に配置され、ソール前後方向に延びるプレートと、
前記プレートの下方に配置され、前記プレートの下面に固着されるとともに、下方に開口しかつソール幅方向に延びる溝を有する軟質弾性部材製のミッドソールと、
前記溝のソール前後方向の各開口縁部の間に屈曲した状態で架設されかつ前記各開口縁部を連結するとともに、ソールの屈曲の初期の段階では、屈曲した状態から徐々に伸長して前記各開口縁部間で直線状に張られる状態までソールの屈曲を許容するとともに、ソールの屈曲が進んだ段階では、前記各開口縁部間で直線状に張られた状態から伸長方向に力を受けることにより、ソールの屈曲を規制するように作用する屈曲規制部材と、
を備えたシューズのソール構造体。 - 請求項18において、
前記溝の前記各開口縁部間の距離をS、前記溝の深さをD、前記溝の底部の位置における前記ミッドソールの厚みをHとするとき、前記各開口縁部間において前記屈曲規制部材の屈曲形状に沿った長さLが
S+D×sin15°≦L≦S+H×sin15°
の関係式を満足している
ことを特徴とするシューズのソール構造体。 - 請求項1または18において、
前記屈曲規制部材は、ひずみが10%以下のとき400MPa以上のヤング率を有する材料から構成されている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。 - 請求項1または18において、
前記屈曲規制部材は、ソールの屈曲角度が15°まではソールの屈曲を許容するとともに、ソールの屈曲角度が15°を超えるとソールの屈曲を規制するように作用している、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
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