本発明は、デジタルテレビ放送を複数のアンテナで受信するダイバーシチ受信装置に関するものである。
デジタルテレビ(DTV)放送波の車載受信あるいは室内受信においては、構造物等周辺の物体での回折、散乱、反射によって構成されるマルチパス伝搬によって、受信信号は著しい波形歪を伴うとともに局所的に著しい信号強度の低下(フェージング)を生じて、安定した受信を行うことは難しい。このような環境での受信においては、複数の受信アンテナを用いたダイバーシチ受信が効果的であり実用化されている。ダイバーシチ合成の手法としては、各アンテナでの各々受信信号の位相を合わせ、同時に各受信信号の信号対雑音比(CNR)で重み付けを行って合成する最大比合成を行うことが一般的である。最大比合成によって、合成後の信号のCNRは積極的に改善される。特に、直交多重方式(OFDM)を採るDTV方式では、サブキャリア毎に最大比合成を行うことで、周波数ダイバーシチの効果も得られ、大きな改善効果が得られる。受信品質の改善および受信可能エリアの拡張は、ダイバーシチ枝数に応じて改善される。
一方、受信品質の改善あるいは受信可能エリアの拡張には、指向性を有するアンテナを用いる考えもある。指向性アンテナの使用は、受信到来方向が制限されることで、マルチパス受信状況を改善し、フェージングを減じる効果も期待できる。また、高速移動時のドップラー広がりが抑えられ、キャリア間干渉で弱点を有するOFDM方式では、ダイバーシチ受信と指向性アンテナとを組み合わせることが好ましい。しかしながら、固定受信の場合とは異なり、受信波の到来方向は様々となるので、一般には、相異なる方向に指向性を有する多数のアンテナを用意する必要があり、それら多数のアンテナを切り替え選択して使用する、あるいは、上述のようなダイバーシチ受信と組み合わせて合成して受信する必要がある。
図9は、第1従来例のダイバーシチ受信装置の構成を示すブロック図である。図9に示した第1従来例のダイバーシチ受信装置では、DTV放送波の車載受信において、複数の指向性を有するアンテナを用い、切り替え選択と合成とを組み合わせて、受信品質を改善する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
図9において、第1従来例のダイバーシチ受信装置のは、前方ビームアンテナ5101、5201と、後方ビームアンテナ5102、5202と、アンテナ切り替え器5111と、チューナ部5171、5271と、利得制御部5135、5235と、OFDM復調部5145、5245と、レベル検出部5142、5242と、ダイバーシチ合成部5303と、誤り訂正部5304と、アンテナ制御部5301とで構成される。
アンテナ切り替え器5111は、車両前方に指向特性を有する前方ビームアンテナ5101あるいは車両後方に指向特性を有する後方ビームアンテナ5102のどちらか一方を選択し、前方ビームアンテナ5201あるいは後方ビームアンテナ5202のどちらか一方を選択する。選択されたビームアンテナからの受信信号は、各々チューナ部5171および5271を経て、OFDM復調部5145および5245で復調された後、ダイバーシチ合成部5303で合成され、誤り訂正部5304で誤り訂正がなされて、トランスポートストリーム(TS)として出力される。
OFDM復調部5145および5245において、レベル検出部5142および5242の各出力は、利得制御部5135および5235を介して、チューナ部5171および5271の利得を制御し、OFDM復調部5145および5245の入力レベルを適切に保つとともに、受信電力情報として、アンテナ制御部5301でのアンテナ切り替え選択の判断情報に用いられる。加えて、誤り訂正部5304での誤り率情報もアンテナ制御部5301でのアンテナ切り替え選択の判断情報に用いられる。
図10は、従来の第1構成例のダイバーシチ受信装置における、アンテナ制御部5301でのアンテナ切り替え選択の手順を示すフローチャートである。前方あるいは後方の指向特性のアンテナを選択する際に、第1従来例のダイバーシチ受信装置は、チューナ部5171あるいは5271や、OFDM復調部5145あるいは5245等が共用される。また、利得制御部5235の応答時間等の制約も相まって、数百ミリ秒程度の時間をかけて平均受信レベルを検出する必要があり、各方向における受信状態を調べるために、むやみにアンテナを切り替えることができない。
そこで、まず、アンテナ制御部5301は、受信誤り率を観測し、受信誤り率が基準を越えて大きくなり受信状況が悪くなったと判断したら(すなわち、切り替え開始条件を満たすと)、アンテナ切り替え選択のシーケンスに入る(ステップS6001)。具体的には、ステップS6001において、切り替え開始条件を満たしたら、アンテナ制御部5301は、前方ビームアンテナ5101あるいは5201の平均受信レベルを数百ミリ秒の期間に亘って検出する(ステップS6002)。その後、アンテナ制御部5301は、アンテナ切り替え器5111を切り替えて、後方ビームアンテナ5102あるいは5202の平均受信レベルを数百ミリ秒の期間に亘って検出する(ステップS6003)。そして、アンテナ制御部5301は、両平均受信レベルを比較し(ステップS6004)、より高い方のアンテナに切り替えて数秒から数十秒保持して(ステップS6005)、切り替え開始条件の判定に戻る(ステップS6001)。
かかる構成および手順により、第1従来例のダイバーシチ受信装置では、切り替え選択と合成とを組み合わせることで、コスト高となる後段のチューナ部やOFDM復調部の系統数の増加を抑えながら、アンテナに指向性を持たせ、かつ、アンテナ数を増やして性能向上を図る提案がなされている。
例えば、第1従来例のダイバーシチ受信装置において、アンテナ制御部5301でのアンテナ切り替え選択が改良された制御手順が提案されている。図11は、第1従来例のダイバーシチ受信装置における、アンテナ制御部5301でのアンテナ切り替え選択が改良された制御手順を示すフローチャートである。
図10の手順と同様に、各方向における受信状態を調べるために、むやみにアンテナを切り替えることができないので、アンテナ制御部5301は、まず受信誤り率を観測し、受信誤り率が基準を越えて大きくなり受信状況が悪くなったと判断したら(すなわち、切り替え開始条件を満たすと)、アンテナ切り替え選択のシーケンスに入る(ステップS7001)。具体的には、ステップS7001において、切り替え開始条件を満たしたら、アンテナ制御部5301は、前方ビームアンテナ5101(あるいは5201のどちらか一方)の平均受信レベルを数百ミリ秒の期間に亘って検出する(ステップS7002)。その後、アンテナ制御部5301は、アンテナ切り替え器5111を切り替えて、後方ビームアンテナ5102(あるいは5202のどちらか一方)の平均受信レベルを数百ミリ秒の期間に亘って検出する(ステップS7003)。そして、アンテナ制御部5301は、両平均受信レベルを比較し、前方ビームアンテナ5101(あるいは5201)と後方ビームアンテナ5102(あるいは5202)の内、より平均受信レベルが高い方のアンテナに切り替え(ステップS7004)、一定時間待つ(ステップS7005)。
図11に示す制御手順において、図10の手順と異なるのは、別系統のアンテナの切り替え選択に関して、平均受信レベルを実測することなく、切り替え選択することである。つまり、ステップS7004において、アンテナ制御部5301は、前方ビームアンテナ5101(あるいは5201)を選択した場合は別系統においても前方ビームアンテナ5201(あるいは5101)を、後方ビームアンテナ5102(あるいは5202)を選択した場合は別系統においても後方ビームアンテナ5202(あるいは5102)を切り替え選択し(ステップS7006)、一定時間経てから(ステップS7007)、切り替え開始条件の判定に戻る(ステップS7001)。
また、図11に示す制御手順では、別系統での平均受信レベル検出を省いて、切り替えおよび平均受信レベル測定中の受信劣化を軽減させる考えも開示されている。図12は、第2従来例のダイバーシチ受信装置の構成を示すブロック図である。図12に示した第2従来例のダイバーシチ受信装置は、第1従来例と同様に、DTV放送波の車載受信において、複数の指向性を有するアンテナを用い、切り替え選択と合成とを組み合わせて受信品質を改善する方法が提案されているが、さらに、第2従来例では、単純にアンテナを切り替えるだけでなく、予め複数のアンテナからの信号を足して1つのダイバーシチ枝とする考えも開示されている。また、切り替え開始条件として、受信レベルやCNRを用いることや、ステアリング角センサやジャイロセンサを用いて走行方向の変化や速度を用いる考えも開示されている(例えば、特許文献2参照)。
図12において、第2従来例のダイバーシチ受信装置は、前方ビームアンテナ8101、8201と、後方ビームアンテナ8102、8202と、アンテナ切り替え器8111と、チューナ部8171、8271と、OFDM復調部8145、8245と、ダイバーシチ合成部8303と、誤り訂正部8304と、TSデコード回路8311と、アンテナ制御部8301と、ステアリング角センサ8312と、ジャイロセンサ8313とで構成される。
アンテナ切り替え器8111は、車両前方に指向特性を有する前方ビームアンテナ8101あるいは車両後方に指向特性を有する後方ビームアンテナ8102のどちらか一方を選択し、前方ビームアンテナ8201あるいは後方ビームアンテナ8202のどちらか一方を選択するだけでなく、前方ビームアンテナ8101と後方ビームアンテナ8102とを、あるいは前方ビームアンテナ8201と後方ビームアンテナ8202とを足して出力することもできる所が第1の従来例と異なっている。そして、各系統での受信信号は、各々チューナ部8171および8271を経て、OFDM復調部8145および8245で復調された後、ダイバーシチ合成部8303で合成され、誤り訂正部8304で誤り訂正がなされ、TSデコード回路8311で画像および音声の情報が取り出される。アンテナ制御部8301は、アンテナ切り替え選択の判断情報に、第1従来例と同様に、受信電力情報と誤り情報に加え、CNRおよび伝送路推定値を用いる。
図13は、第2従来例のダイバーシチ受信装置における、アンテナ制御部8301のアンテナ切り替え選択の制御手順を示すフローチャートである。第1従来例と同様に、指向性アンテナの切り替え選択において、各方向における受信状態を調べるために、むやみにアンテナを切り替えることができず、本従来例においても、受信状況が悪くなったと判断してからアンテナ切り替え選択のシーケンスに入る(ステップS9001)。すなわち、切り替え開始条件を設定する考え方は共通している。ただし、切り替え開始条件には、すべてのダイバーシチ枝の受信電力やCNRが所定の閾値を下回ることを以って判断することや、ステアリング角センサやジャイロセンサを用いて走行方向の変化や速度を用いる考えも開示されている(ステップS9002)。
切り替え開始条件を満たした後のアンテナ切り替え選択に関して、さらにステップS9002において、受信電力が閾値を下回った場合、前方ビームアンテナ8101と後方ビームアンテナ8102とを、あるいは、前方ビームアンテナ8201と後方ビームアンテナ8202とを足して出力しダイバーシチ枝として用いる(ステップS9003)。ステップS9002において、受信電力が閾値を下回らない場合は、第1従来例と同様に、アンテナ切り替え器8111を切り替えて、CNRあるいは伝送路推定値を検出し、CNRの高い方、あるいは、伝送路推定値の変動の少ない方を以って、受信品質が良い方のアンテナを判断し切り替え選択を行う(ステップS9004)考えも開示されている。
また、受信レベルを用いるものの、受信レベルではCNRと異なり、チューナ部等の利得のばらつきやマルチパスやドップラー環境では正確な判断ができないので、予め受信レベルとCNRとの関係を測定評価しテーブルの形で持ち換算する考えも示されている。
特開2007−274726号公報
特開2006−033056号公報
しかしながら、上記従来のダイバーシチ受信装置における構成および制御手順では、有意な時間をかけて、アンテナを切り替え、受信状況を平均受信レベルやCNRや伝送路推定値等で評価するために、むやみにアンテナ切り替え選択を行うことができず、開始条件の設定や待ち時間の挿入等、頻繁な切り替え選択での劣化を避ける手順を採る必要があった。このため、従来のダイバーシチ受信装置では、本来全てのアンテナをダイバーシチ合成した場合に比して、アンテナ数の増大の割にはあまり受信品質の改善効果が得られないという課題があった。特に、車載受信の用途においては、フロントガラス等に貼付するフィルムアンテナの場合、平面構造での制約と車両ボディー等の影響から、複雑な指向性パタンになる場合が多く、到来方向と走行方向との関係の変化に対し、きちんとした指向性を有するアンテナに比して、各アンテナでの受信状況の変化が激しく、頻繁な切り替え選択を行わないと、大きな受信品質の改善が得られないという問題があった。
また、フィルムアンテナの場合、前置される低雑音増幅器は、フィルムアンテナと同様にフロントガラス等に貼付され、温度での利得変化に加え、同軸ケーブルで別筐体となる本体受信装置に任意の組み合わせで接続されるので、利得のばらつきを予め評価規定して本体受信装置に換算テーブルを持たせるのは実際上困難となる。加えて、室内受信ではパソコン等の近傍電子機器からの外来雑音、車載受信では、車両搭載の電装品からの雑音の飛込みが比較的大きく、また、他の無線システム等からの雑音干渉波や都市部での環境雑音として外来雑音の影響が大きく、外来雑音環境にも適応して、真に良好な受信状況改善を行えるように、頻繁といえども、同時に的確に切り替え選択ができることは大きな課題となる。
それ故に、本発明は、前記従来の課題を解決するもので、特段なる指向性を有さないアンテナにも適用でき、より短時間で劣化の少ないアンテナ切り替え選択を行えることを目的とする。また、前置増幅器の利得ばらつきや外来雑音に対しても的確に切り替え選択を行えることで、コスト増を抑えつつ、より性能の良いダイバーシチ受信装置を提供することを目的とする。
上記従来の課題を解決するために、本発明のダイバーシチ受信装置は、デジタル放送波を受信する複数のアンテナと、複数のアンテナから所定の系統数を選択して切り替えるアンテナ切り替え部と、アンテナ切り替え部で選択された所定の系統数の受信信号を各々入力する所定の系統数のチューナ部および復調部と、所定の系統数の復調部の出力をダイバーシチ合成するダイバーシチ合成部と、アンテナ切り替え部を制御してアンテナを入替えるアンテナ入替え制御部とを備える。各復調部は、復調過程にて受信信号の信号対雑音比を測定する復調回路と、受信信号の入力レベルを測定するレベル検出部とを有し、各チューナ部は、受信信号の利得を制御する利得制御部を有し、アンテナ入替え制御部は、各系統の復調回路が測定した信号対雑音比を比較し、アンテナ切り替え部を制御して、信号対雑音比が最低となる系統のアンテナを、繋ぎ得る他の系統のアンテナに順次繋ぎ替え、当該繋ぎ替えた系統のアンテナについて、レベル検出部が測定した入力レベルをそれぞれ比較し、信号対雑音比が最低となる系統のアンテナを、入力レベルが最良となる系統のアンテナに入替える。
本構成によって、信号対雑音比が最低となる系統のアンテナを、入力レベルが最良となる系統のアンテナに短時間で切り替えることができる。
本発明のダイバーシチ受信装置によれば、より短時間で劣化の少ないアンテナ切り替え選択を行える。また、前置増幅器の利得ばらつきや外来雑音に対しても的確に切り替え選択を行えることで、コスト増を抑えつつ、より性能の良いダイバーシチ受信装置を提供できる。
図1は、本発明の実施の形態1におけるダイバーシチ受信装置の構成図である。
図2は、本発明の実施の形態1におけるダイバーシチ受信装置のアンテナ切り替え選択手順を示すフローチャートである。
図3は、本発明の実施の形態1におけるダイバーシチ受信装置の補正値計算更新手順を示すフローチャートである。
図4は、本発明の実施の形態1におけるダイバーシチ受信装置の補正値計算更新手順の原理を説明する単純化した高周波系の構成図である。
図5は、本発明の実施の形態1におけるダイバーシチ受信装置の補正値テーブルの図である。
図6は、本発明の実施の形態1における雑音干渉波が存在する場合のアンテナ選択と合成指向特性の模式図である。
図7は、本発明の実施の形態2におけるダイバーシチ受信装置の構成図である。
図8は、本発明の実施の形態2におけるダイバーシチ受信装置のアンテナ切り替え選択および系統制御の手順を示すフローチャートである。
図9は、第1従来例のダイバーシチ受信装置の構成図である。
図10は、第1従来例のダイバーシチ受信装置のアンテナ切り替え選択手順を示すフローチャートである。
図11は、第1従来例のダイバーシチ受信装置のアンテナ切り替え選択手順を示すフローチャートである。
図12は、第2従来例のダイバーシチ受信装置の構成図である。
図13は、第2従来例のダイバーシチ受信装置のアンテナ切り替え選択手順を示すフローチャートである。
以下、本発明を実施するための各形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1におけるダイバーシチ受信装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態1におけるダイバーシチ受信装置の構成図である。図1において、本発明の実施の形態1におけるダイバーシチ受信装置は、アンテナ1101〜1104、1201〜1204と、アンテナモジュール1111、1211と、低雑音増幅器1121〜1124、1221〜1224と、アンテナ切り替え器1112、1212と、アンテナ制御部1113、1213と、チューナ部1171、1172、1271、1272と、高周波増幅器1131,1151、1231、1251と、混合器1132、1152、1232、1252と、局部発振器1134、1154、1234、1254と、中間周波増幅器1133、1153、1233、1253と、利得制御部1135、1155、1235、1255と、 復調部1145,1165、1245、1265と、A/D変換器1141、1161、1241、1261と、レベル検出部1142、1162、1242、1262と、復調回路1144、1164、1244、1264と、切替&比較部1143、1163、1243、1263と、補正値更新保持部1301と、アンテナ入替え制御部1302と、ダイバーシチ合成部1303と、誤り訂正部1304と、バックエンド部1309とで構成されている。
アンテナ1101〜1104および1201〜1204で受信したDTV放送波受信信号は、それぞれアンテナモジュール1111、1211内にて、低雑音増幅器1121〜1124および1221〜1224で増幅された後、アンテナ切り替え器1112および1212で、各々4つのアンテナから2つが選ばれ、後段のチューナ部1171、1172、および、1271、1272に入力される。
チューナ部1171、1172、1271、1272において、各々受信信号は、高周波増幅器1131,1151、1231、1251で増幅された後、局部発振器1134、1154、1234、1254の局部発振信号で、混合器1132、1152、1232、1252により周波数変換および選局され、中間周波数信号となる。各々中間周波信号は、さらに、中間周波増幅器1133、1153、1233、1253で増幅され、復調部1145,1165、1245、1265に入力される。
復調部1145,1165、1245、1265において、各々中間周波数信号は、A/D変換器1141、1161、1241、1261でデジタル信号に変換された後、復調回路1144、1164、1244、1264に入力され、OFDM復調がなされる。一方、A/D変換器1141、1161、1241、1261の出力は、各々、レベル検出器1142、1162、1242、1262で、信号レベルが検出され、入力レベルが適切になるように、利得制御部1135、1155、1235、1255を介して、高周波増幅器1131,1151、1231、1251、および、中間周波増幅器1133、1153、1233、1253の利得を調整する。
各復調回路1144、1164、1244、1264の出力は、ダイバーシチ合成部1303にて、位相が合わせられ、CNRで重み付けを行う最大比合成が行われる。その後、なお、OFDM方式の場合は、好ましくは、この位相を合わせてCNRで重み付けを行う操作は、サブキャリア毎に行うことが好ましい。誤り訂正部1304にて、誤り訂正等を行い、バックエンド部1309にトランスポートストリーム(TS)を出力する。一方、復調回路1144、1164、1244、1264は、復調過程において、各々の系統での受信信号の観測されたCNRを出力し、補正値更新保持部1301、および、アンテナ入替え制御部1302に入力する。補正値更新保持部1301には、さらに、アンテナ入替え制御部1302を介して、アンテナ切り替え前後のレベル差の情報も入力されており、後述の所定のアルゴリズムでアンテナ選択時の適正な補正値を随時算出更新する。
図2は、本発明の実施の形態1におけるダイバーシチ受信装置のアンテナ切り替え選択手順を示すフローチャートである。なお、アンテナ切り替え選択手順に関しては、さらに、図2のフローチャートも用いて、図1に示した対応する構成と動作手順を併せて説明する。
まずは、アンテナ入替え制御部1302が最低のCNRとなっている系統を1つ見出し決定し、その系統の切替&比較部1143、1163、1243、あるいは1263に指示を出す所から始まる。アンテナ入替え制御部1302は、所定の短区間、各系統のCNRを観測し、中央値あるいは平均値で以って、短区間CNRを計算する(ステップS2001)。所定の短区間とは、車載での受信の場合、干渉性の早いフェージング変化の影響を除くのに適当な期間、すなわち、波長に対しで数十倍程度の期間が好ましい。そのため、所定の短区間を時間間隔で表した場合は、移動速度を検出する手段を用いて、移動速度に反比例するように可変することが望ましいが、室内受信の場合を含め、予め算出した固定(一定)の時間間隔にしても良い。あるいは、車載での受信で固定の時間間隔にする場合は、高速走行時の激しい変動を鑑みて、明示的な中央値あるいは平均値処理を行わず、CNR観測上の時間間隔で以って代用しても良い(ステップS2001)。また、所定の短期間をダイバーシチ受信装置の移動距離に対応するようにしてもよい。そして、アンテナ入替え制御部1302は、最低の短区間CNRとなっている切り替え対象となる系統を選定決定する(ステップS2002)。
図2では一般例を示しているが、どの系統が選ばれたとしても同様であるので、以降の説明では、図1の一番上の系統が切り替え対象系統となった場合を一例として動作を説明する。
この場合、切替&比較部1143は、まず、レベル検出部1142の出力から現選択中アンテナにおけるA/D変換器1141の出力レベルを検出し記憶する(ステップS2003)。なお、通常受信中は利得制御部1135を介したフィードバック制御により、一定のレベルになるように制御されているので、制御目標値をデフォルトとして、切り替え前のレベル測定および記憶は省略することも可能である。
しかる後、切替&比較部1143は、復調回路1144にダイバーシチ合成部1303からの切り離しと、アンテナ切り替えに伴う影響を軽減させる操作を施す(ステップS2004)とともに、利得制御部1135の利得制御ホールド信号を送出し、利得制御部1135を一旦停止した後(ステップS2005)、アンテナ制御部1113へアンテナ切替信号を送出する(ステップS2006)。そして、アンテナ制御部1113は、現在使われていないアンテナにアンテナ切り替え器1112の接点を繋ぎ変える(ステップS2007)。その後、切替&比較部1143は、再度、レベル検出部1142の出力から切り替え後のアンテナにおけるA/D変換器1141の出力でのレベルを検出し、差分を記憶する(ステップS2008)。
図1の例では、4本から2本のアンテナを選んでいるので、切替&比較部1143は、選択可能な別の候補アンテナがあるかどうかを判断する(ステップS2009)。ステップS2009において、選択可能な別の候補アンテナがある場合、ステップS2006からS2008までの操作を繰り返し、各アンテナでのレベルを検出し、差分を記憶する。
ステップS2009において、選択可能な別の候補アンテナがない場合、切替&比較部1143は、現アンテナおよび切り替え選択候補のアンテナにおける各レベル差分から、補正値更新保持部1301の当該アンテナに対応する補正値も勘案して、最良のアンテナを決定し(ステップS2010)、アンテナ制御部1113を介して、アンテナ切り替え器1112の接点を繋ぎ変える(ステップS2011)。また、利得制御部1135の利得制御を再開し(ステップS2012)、復調回路1144の復調動作を通常に戻し、ダイバーシチ合成部1303へ繋ぎ直しを行う(ステップS2013)。以上のように、最低CNRの系統1つずつ、その系統に繋がるアンテナをより良い方に、影響が無いように、速やかに検出判断し入替える操作を繰り返す(ステップS2014)。
図3は、本発明の実施の形態1におけるダイバーシチ受信装置の補正値計算更新手順を示すフローチャートであり、図4は、その計算の原理を説明するために単純化した高周波系の構成図であり、図5は補正値テーブルの一例である。
図4において、高周波系は、アンテナ1401、1402と、低雑音増幅器1421、1422と、アンテナ切り替え器1412と、可変利得増幅部1433とで構成されている。ここでは、単純化して、この2つのアンテナ1401、1402をアンテナ切り替え器1412で切り替え選択する場合を考える。なお、可変利得増幅部1433を用いて、図1の高周波増幅器1131,1151、1231、1251、および、混合器1132、1152、1232、1252、および、中間周波増幅器1133、1153、1233、1253の系をまとめて表している。
ここで、図4のように、n回目(nは自然数)のアンテナ切り替えにおいて、アンテナ1401からアンテナ1402に切り替えたとして、この切り替え前後において、アンテナ1401からの信号電力をCi1,n、外来雑音電力をNi1,nとし、アンテナ1402からの信号電力をCi2,n、外来雑音電力をNi2,nとし、低雑音増幅器1421の利得をGL1、内部で発生する雑音をNL1とし、低雑音増幅器1422の利得をGL2、内部で発生する雑音をNL2とし、可変利得増幅部1433の利得をGR,n、内部で発生する雑音をNR,nとするなら、可変利得増幅部1433の出力での各アンテナを選んだ時の信号電力Co1,n、Co2,nと、雑音電力No1,n、No2,nは、数1および数2で表される。
ここで、利得GL1、GL2、GR,nが十分大きく、外来雑音Ni1,n、Ni2,nが相対的に大きい場合、数2は、数3と近似できる。
ところで、切り替え選択の前後では、各アンテナでのCN比γ1,n、γ2,nと、信号レベル差Γ12,nとが検出記憶されるが、それらは数4で表されるので、数3を併せ用いると、数5で示される関係が成立することが分かる。
低雑音増幅器の利得GL1、GL2は、温度等でのドリフトや個体差でのばらつきが主であり、車載の場合の走行に伴うフェージングに比べても、急に変化するものではない。
また、外来雑音Ni1,n、Ni2,nは、車載受信での状況では、近傍の電装品からの雑音の飛込みが比較的大きく、また、他の無線システム等からの雑音干渉波の飛び込みや都市部での環境雑音としてレベルが盛り上がることがあるものの、走行に伴うフェージングほどには急に変化はしない。また、室内受信においては、半固定での使用になるので、同様に急な変化は起こらない。つまり、数5の右辺の係数をk12,nとすると、k12,nは数6で表される。
これは、走行に伴うフェージングほどには急に変化しないもので、実測される値γ1,n、γ2,n、Γ12,nから計算されるもので、この過去の観測計算結果から、例えば、過去に遡るm+1回から(mは自然数)、数7として表される。
また、n+1の次の機会には、信号レベル差Γ12,n+1を観測した時点で、数7の左辺を補正値として、切り替えた時のCN比の改善比を数8として推定することができる。
なお、数7は、対数(デシベル)として計算するものであって、右辺の平均は真値でなく、デシベル値に対する平均であってもよい。また、好ましくは、いわゆる忘却係数等、過去に遡るほど重みを下げる係数を掛けて算出するものであってもよい。あるいは、m=0として、前回の結果のみをそのまま使うものであっても良い。また、当該アンテナ入替えに対応する補正値の更新が未だ行われていない場合、初期値として1を用いるのが好ましい。また、当該アンテナ入替えに対応する補正値の最後の更新から所定の時間を経ている場合、初期値の1に戻し、これを用いて切り替え選択を行った後、次回に備えて補正値の更新を行うものであっても良い。
ところで、同組のアンテナを逆方向に切り替えた時の係数は、互いに逆数、つまり、数9の関係があるので、補正値である数7の左辺の算出において、この逆数関係での観測値も用いて算出することにより、更新頻度を上げることができ、より緻密な更新を行うことができる。また、数10でもあるので、この性質を用いて、補正値の記憶エリアを半分に縮小しても良い。これによって、補正値テーブルの記憶容量を削減することができる。
図3は、以上に述べた補正値の算出更新の手順の一例を示すフローチャートである。図2のステップS2013でのアンテナの切り替え選択の一連の手順が終わった直後、補正値更新保持部1301は、まず、新しく切り替え選択したアンテナについて、その系統の復調回路のCNRを観測することでγ
2,nを得る(ステップS3001)。その後、補正値更新保持部1301は、切り替え前のアンテナでの直前のCNR測定値γ
1,nと、レベル差Γ
12,nとをアンテナ入替え制御部1302から得る(ステップS3002)。この3つの値から、上述のように、補正値である数7の左辺を算出更新し(ステップS3003)、図2のメインのフローに戻る。
図5は、補正値テーブルの一例を示したものである。テーブルのパラメタは、切り替え前後のアンテナに加え、受信チャネルによって、低雑音増幅器の利得GL1、GL2および外来雑音電力Ni1,n、Ni2,nには差が生じ、受信チャネルが加わるので、このような3次元のテーブルとなる。なお、補正値の更新には、数9の関係を利用したり、数10の関係を利用したりするので、テーブルとしては、右上の(あるいは左下)部分だけでも良い。図3の手順で、図5のテーブルを計算更新するとともに、図2のステップS2010で、対応する補正値を読み出し、補正を加えて、レベル差からCNRでの改善量を推定し、最良のアンテナを判定決定する。
アンテナモジュール1111および1211は、通常、アンテナ1101〜1104およびアンテナ1201〜1204の近く、例えばフロントガラス等に貼付され、別設置されるもので、ダッシュボード内あるいは座席下等に置かれる本体筐体内のチューナ部1171、1172、1271,1272まで同軸ケーブルで接続される。低雑音増幅器1121〜1124、1221〜1224の利得のばらつきを予め測定し、接続関係、本体筐体との組み合わせをすべて規定して補正を加えることは実際上困難で、上述のように、適応自動的に補正されることは有用である。さらには、特定の方向から雑音干渉波が到来している場合も、適応追従して、雑音干渉方向に利得のあるアンテナが選ばれにくくなる方向に補正値が働くので、雑音干渉を回避する効果も得られる。
図6は、雑音干渉波が存在する場合のアンテナ選択と合成指向特性との関係を示す模式図である。8つの異なる指向特性を有するアンテナから、到来波を受けやすく、かつ、雑音干渉波を受けにくいアンテナ4つが結果的に選ばれダイバーシチ合成されるので、到来波方向に偏り、雑音干渉波方向を避ける合成指向特性が得られることになる。
以上、図1〜図6を用いて説明したように、かかる構成と手順によれば、CNR最低の系統1つずつに対し、他の候補アンテナのレベル差をすばやく切り替え観測し、手順に組み込まれ適応的に計算更新される補正値を併せ用いて的確に良いアンテナを選び入替えることを繰り返すことで、より短時間で劣化の少ないアンテナ切り替え選択を行うことができる。また、前置増幅器の利得ばらつきや外来雑音に対しても的確に切り替え選択を行えることで、コスト増を抑えつつ、より性能の良い受信を行うことができる。
なお、アンテナ1101〜1104、アンテナ1201〜1204は、図1の例では、車載受信のフィルムアンテナで、フロントガラスの左右に、2群に分けて粘付するような想定を例として示しているが、これらを合わせて1群とし、アンテナモジュール1111および1211も一体のものであり、アンテナ切り替え器1112および1212は、8つのアンテナから4つを切り替え選択するものであってもよい。
もちろん、8あるいは4の数はこれに限らず、例えば、6つのアンテナから4つを切り替え選択するもの、8つのアンテナから3つを切り替え選択するもの等々他の組み合わせであっても良い。
また、各アンテナは明確な指向特性を有するものである必要は必ずしも無い。好ましくは、各アンテナの指向性パタンが異なっておればよく、例えば、車載受信でのフィルムアンテナの場合、各アンテナは同一のものであっても、貼る向き、あるいは、貼る位置によって車両ボディーとの関係で指向特性が様々になるので、この条件は満たされる。
なお、指向性の弱いアンテナと指向性の強いアンテナとを混用することも可能である。例えば、車載受信においては、道路に沿った伝搬が顕著な場合が多く、前後方向に指向性を有するアンテナと、指向性の弱いアンテナとの組み合わせであっても良い。
また、室内受信では、天井や壁での反射散乱により様々な方向からの到来波をカバーすることができる指向性が弱い全方位型アンテナと、窓等の開口部から入射到来する波に対応し、指向性を比較的有するアンテナとの組み合わせであっても良い。
なお、全体の繰り返し周期は、固定であっても良いし、ステップS2001の短区間に、所要の処理時間等が加わるものであっても良いし、ステップS2001の短区間が移動速度に反比例して可変する場合は、これに依って変わるものであっても良い。また、さらには、上記最低CNRの値に応じて、変わるものであっても良い。また、補正値更新保持部1301の補正値の計算更新は、この所要の処理時間で行うのが良い。また、復調回路1144にダイバーシチ合成部1303からの切り離しと、アンテナ切り替えに伴う影響を軽減させる操作は、例えば、同期等の復帰に時間が掛かるものは操作前に自走状態のタイミングを維持して、その後、系統のCNRを低いものとして、ダイバーシチ合成部1303での合成重み付けを減じてから、切り離しを行う等の操作を行うことが好ましい。また、ステップS2002において、利得制御部1135の利得制御を再開する際に、予めレベル差が分かっているので、このレベル差の分だけオフセットさせて再開させることにより、その後の受信をより早く復帰させることができるので好ましい。
なお、利得制御の一旦停止(ステップS2005)および再開(ステップS2012)は、制御時定数が十分に大きい場合、両ステップの間での利得制御量の変化がほぼ無視できるので、省略しても良い。また、ダイバーシチ合成からの枝切離し動作(ステップS2004)および枝再接続動作(ステップS2013)も、省略することもできる。これは、アンテナ切り替えでの雑音で当該系統のCNR観測値が瞬時にうまく対応し減少する限りは、ダイバーシチ合成部1303での最大比合成によって、等価的に、枝切り離し、あるいは、枝再接続の動作が行われることになること、また、多少の誤り発生に対しては、誤り訂正部1304で訂正されるからである。
なお、利得のばらつきが少なく、かつ、外来雑音の影響が少ない環境での適用においては、補正値更新保持部1301およびステップS2014の補正値計算更新を省略し、ステップS2010において、補正値を用いず、各レベル差分のみで決定することで、性能よりコスト重視で省略実装することもできる。また、この場合、アンテナを切り替えてのレベル比較を行うにおいて、利得制御を一旦停止して行うのではなくて、切り替えた前後での利得制御方向を観察することで、レベル差分を判定するものであっても良い。例えば、アンテナを切り替え後、利得を押さえ込む方向に制御されているのであれば、新しいアンテナの方がレベルが高いと判定し、このアンテナに差し替える。
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2のダイバーシチ受信装置の構成図である。図7において、本発明の実施の形態2におけるダイバーシチ受信装置は、アンテナ1101〜1104、1201〜1204と、アンテナモジュール1111、1211と、低雑音増幅器1121〜1124、1221〜1224と、アンテナ切り替え器1112、1212と、アンテナ制御部1113、1213と、チューナ部1171、1172、1271、1272と、高周波増幅器1131,1151、1231、1251と、混合器1132、1152、1232、1252と、局部発振器1134、1154、1234、1254と、中間周波増幅器1133、1153、1233、1253と、利得制御部1135、1155、1235、1255と、復調部1145,1165、1245、1265と、A/D変換器1141、1161、1241、1261と、レベル検出部1142、1162、1242、1262と、復調回路1144、1164、1244、1264と、切替&比較部1143、1163、1243、1263と、補正値更新保持部1301と、ダイバーシチ合成部1303、1305と、誤り訂正部1304、1306と、アンテナ主副系統入替え制御部1307と、チャネル制御部1308と、バックエンド部1309と、主副系統選択器1310とで構成されている。
本発明の実施の形態2におけるダイバーシチ受信装置が、実施の形態1(図1)と異なっているのは、主副系統選択器1310が追加され、これに伴い以降、ダイバーシチ合成部は1303と1305、誤り訂正部は1304と1306の2系統準備され、併せて、アンテナ入替え制御部1302の代わりに、主副系統選択器1310も制御するアンテナ主副系統入替え制御部1307を配置し、連動して局部発振器1134、1154、1234、1254を制御するチャネル制御部1308を加えたことである。その他の構成は、実施の形態1(図1)の説明と同様であるので説明を省略する。
DTV放送波の車載等の移動受信(室内受信用のものを車載搭載時含め)においては、受信エリア端で同系列の放送へスムースかつ速やかに切り替わることが望ましく、このためには、一時的に、2チャネルの信号を同時に受信することが望ましい。実施の形態2は、そのような2チャネル同時受信が可能な構成での適用例になる。
図7において、チャネル制御部1308は、バックエンド部1309からの制御指示によって、局部発振器1134、1154、1234、1254を制御し、2チャネル受信のために、任意の系統を2つの周波数に振り分け設定制御する。この設定に合わせて、主副系統選択器1310は、対応する系統を振り分け、切り替え選択して、中間周波数信号をダイバーシチ合成部1303および1305に入力しダイバーシチ合成し、誤り訂正部1304および1306にて誤り制御等の処理を経て、バックエンド部1309に2系統のTSを出力する。
図8は、本発明の実施の形態2におけるダイバーシチ受信装置のアンテナ切り替え選択および系統制御の手順を示すフローチャートである。実施の形態1の場合と同様に、まずは、アンテナ主副系統入替え制御部1307は、所定の短区間、各系統のCNRを観測し、中央値あるいは平均値で以って、短区間CNRを計算する(ステップS2001)。そして、アンテナ主副系統入替え制御部1307は、バックエンド部1309から副系統分離の指示があったかどうかを判断する(ステップS4001)。
ステップS4001において、副系統分離の指示が無かった場合は、実施の形態1の場合(図2)と全く同様に、最低の短区間CNRとなっている切り替え対象となる系統を選定決定し(ステップS2002)、そしてステップS2003〜S2014を実行する。
ステップS4001において、副系統分離の指示があった場合は、実施の形態1と異なり、副系統に対してもフローを進める。ます、アンテナ主副系統入替え制御部1307は、最低の短区間CNRとなっている系統を副系統に、最低から2番目、すなわち、次に低い短区間CNRを有する系統をアンテナの切り替え対象の系統に選択決定する(ステップS4002)。アンテナ切り替え選択に関しては、ステップS2003〜S2014、そして、さらに副系統に分離追加する指示が無い限りは、ステップS2001、ステップS2002と繰り返し、系統数が減ってはいるものの、実施の形態1の場合と同様の性能改善への動作が行われるので詳細の説明を省略する。
図8では一般例を示しているが、どの系統が選ばれたとしても同様であるので、以降の説明では、図7の一番下の系統が副系統への対象系統となった場合を一例として動作を説明する。副系統への分離対象の系統に対しては、まず、切替&比較部1263は、復調回路1264にダイバーシチ合成部1303からの切り離しと、アンテナ切り替えに伴う影響を軽減させる操作を施す(ステップS4003)。その後、チャネル制御部1308は、局部発振器1254の周波数を変更する(ステップS4004)。主副系統選択器1310は、復調回路1264の復調出力をダイバーシチ合成部1305に繋ぎ、副系統への繋ぎ替えを実施する(ステップS4005)。最後に、切替&比較部1263は、復調回路1264の復調動作を通常に戻し、ダイバーシチ合成部1305へ繋ぎ直しを行い(ステップS4006)、副系統のオペレーションを開始することとなる。
このように、随時、受信チャネルを変えながらサーチを行い、同一系列の放送を探索、良好な受信チャネルを見つければ、主系統と併行して受信しながら、副系統の受信状況が安定した所で、副系統を今度は主系統として扱いなおし、受信画像としてはできるだけ途切れずにチャネル切り替えを完了することができる。この際、サーチから併行受信への移行において、ステップS4001〜S4006を繰り返すことで、主系統は、減じた系統数をアンテナ切り替え選択で性能を補填しつつ、副系統は、割り当て系統数を増してダイバーシチ能力を高め受信を安定させても良く、こうして副系統が安定受信できた所で残りすべての系統を同様に副系統へ、さらに副系統を主系統として扱い直し、ステップS2002〜S2014を実行してチャネル切り替えの操作が完了する。
かかる構成によれば、実施の形態1に加えて、副系統分離の指示があった場合は、最低の短区間CNRとなっている系統を1つずつ副系統に回し、残りで実施の形態1と同様のアンテナ入替え制御を行うことで、スムースかつ適切に2チャネル併行受信に移行すると共に、系統数の減少を実施形態1と同様の改善機構で受信性能を補うことで、安定した受信状況を保ち、受信画像としてはできるだけ途切れずにチャネル切り替えを完了することができる利点が生まれる。
なお、上述した各実施の形態では、OFDM方式を採用したダイバーシチ受信装置について説明してきたが、それ以外の方式に適用することも可能であることは言うまでもない。OFDM以外の方式としては、例えば、残留側波帯多値方式等がある。
本発明にかかるダイバーシチ受信装置は、デジタルテレビ放送を複数のアンテナで車載受信すること等に有用である。
1101〜1104、1201〜1204、1401、1402 アンテナ
1111、1211 アンテナモジュール
1121〜1124、1221〜1224、1421、1422 低雑音増幅器
1112、1212、1412 アンテナ切り替え器
1113、1213 アンテナ制御部
1171、1172、1271、1272 チューナ部
1131,1151、1231、1251 高周波増幅器
1132、1152、1232、1252 混合器
1134、1154、1234、1254 局部発振器
1133、1153、1233、1253 中間周波増幅器
1135、1155、1235、1255 利得制御部
1433 可変利得増幅部
1145,1165、1245、1265 復調部
1141、1161、1241、1261 A/D変換器
1142、1162、1242、1262 レベル検出部
1144、1164、1244、1264 復調回路
1143、1163、1243、1263 切替&比較部
1301 補正値更新保持部
1302 アンテナ入替え制御部
1303、1305 ダイバーシチ合成部
1304、1306 誤り訂正部
1307 アンテナ主副系統入替え制御部
1308 チャネル制御部
1309 バックエンド部
1310 主副系統選択器
本発明は、デジタルテレビ放送を複数のアンテナで受信するダイバーシチ受信装置に関するものである。
デジタルテレビ(DTV)放送波の車載受信あるいは室内受信においては、構造物等周辺の物体での回折、散乱、反射によって構成されるマルチパス伝搬によって、受信信号は著しい波形歪を伴うとともに局所的に著しい信号強度の低下(フェージング)を生じて、安定した受信を行うことは難しい。このような環境での受信においては、複数の受信アンテナを用いたダイバーシチ受信が効果的であり実用化されている。ダイバーシチ合成の手法としては、各アンテナでの各々受信信号の位相を合わせ、同時に各受信信号の信号対雑音比(CNR)で重み付けを行って合成する最大比合成を行うことが一般的である。最大比合成によって、合成後の信号のCNRは積極的に改善される。特に、直交多重方式(OFDM)を採るDTV方式では、サブキャリア毎に最大比合成を行うことで、周波数ダイバーシチの効果も得られ、大きな改善効果が得られる。受信品質の改善および受信可能エリアの拡張は、ダイバーシチ枝数に応じて改善される。
一方、受信品質の改善あるいは受信可能エリアの拡張には、指向性を有するアンテナを用いる考えもある。指向性アンテナの使用は、受信到来方向が制限されることで、マルチパス受信状況を改善し、フェージングを減じる効果も期待できる。また、高速移動時のドップラー広がりが抑えられ、キャリア間干渉で弱点を有するOFDM方式では、ダイバーシチ受信と指向性アンテナとを組み合わせることが好ましい。しかしながら、固定受信の場合とは異なり、受信波の到来方向は様々となるので、一般には、相異なる方向に指向性を有する多数のアンテナを用意する必要があり、それら多数のアンテナを切り替え選択して使用する、あるいは、上述のようなダイバーシチ受信と組み合わせて合成して受信する必要がある。
図9は、第1従来例のダイバーシチ受信装置の構成を示すブロック図である。図9に示した第1従来例のダイバーシチ受信装置では、DTV放送波の車載受信において、複数の指向性を有するアンテナを用い、切り替え選択と合成とを組み合わせて、受信品質を改善する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
図9において、第1従来例のダイバーシチ受信装置は、前方ビームアンテナ5101、5201と、後方ビームアンテナ5102、5202と、アンテナ切り替え器5111と、チューナ部5171、5271と、利得制御部5135、5235と、OFDM復調部5145、5245と、レベル検出部5142、5242と、ダイバーシチ合成部5303と、誤り訂正部5304と、アンテナ制御部5301とで構成される。
アンテナ切り替え器5111は、車両前方に指向特性を有する前方ビームアンテナ5101あるいは車両後方に指向特性を有する後方ビームアンテナ5102のどちらか一方を選択し、前方ビームアンテナ5201あるいは後方ビームアンテナ5202のどちらか一方を選択する。選択されたビームアンテナからの受信信号は、各々チューナ部5171および5271を経て、OFDM復調部5145および5245で復調された後、ダイバーシチ合成部5303で合成され、誤り訂正部5304で誤り訂正がなされて、トランスポートストリーム(TS)として出力される。
OFDM復調部5145および5245において、レベル検出部5142および5242の各出力は、利得制御部5135および5235を介して、チューナ部5171および5271の利得を制御し、OFDM復調部5145および5245の入力レベルを適切に保つとともに、受信電力情報として、アンテナ制御部5301でのアンテナ切り替え選択の判断情報に用いられる。加えて、誤り訂正部5304での誤り率情報もアンテナ制御部5301でのアンテナ切り替え選択の判断情報に用いられる。
図10は、従来の第1構成例のダイバーシチ受信装置における、アンテナ制御部5301でのアンテナ切り替え選択の手順を示すフローチャートである。前方あるいは後方の指向特性のアンテナを選択する際に、第1従来例のダイバーシチ受信装置は、チューナ部5171あるいは5271や、OFDM復調部5145あるいは5245等が共用される。また、利得制御部5235の応答時間等の制約も相まって、数百ミリ秒程度の時間をかけて平均受信レベルを検出する必要があり、各方向における受信状態を調べるために、むやみにアンテナを切り替えることができない。
そこで、まず、アンテナ制御部5301は、受信誤り率を観測し、受信誤り率が基準を越えて大きくなり受信状況が悪くなったと判断したら(すなわち、切り替え開始条件を満たすと)、アンテナ切り替え選択のシーケンスに入る(ステップS6001)。具体的には、ステップS6001において、切り替え開始条件を満たしたら、アンテナ制御部5301は、前方ビームアンテナ5101あるいは5201の平均受信レベルを数百ミリ秒の期間に亘って検出する(ステップS6002)。その後、アンテナ制御部5301は、アンテナ切り替え器5111を切り替えて、後方ビームアンテナ5102あるいは5202の平均受信レベルを数百ミリ秒の期間に亘って検出する(ステップS6003)。そして、アンテナ制御部5301は、両平均受信レベルを比較し(ステップS6004)、より高い方のアンテナに切り替えて数秒から数十秒保持して(ステップS6005)、切り替え開始条件の判定に戻る(ステップS6001)。
かかる構成および手順により、第1従来例のダイバーシチ受信装置では、切り替え選択と合成とを組み合わせることで、コスト高となる後段のチューナ部やOFDM復調部の系統数の増加を抑えながら、アンテナに指向性を持たせ、かつ、アンテナ数を増やして性能向上を図る提案がなされている。
例えば、第1従来例のダイバーシチ受信装置において、アンテナ制御部5301でのアンテナ切り替え選択が改良された制御手順が提案されている。図11は、第1従来例のダイバーシチ受信装置における、アンテナ制御部5301でのアンテナ切り替え選択が改良された制御手順を示すフローチャートである。
図10の手順と同様に、各方向における受信状態を調べるために、むやみにアンテナを切り替えることができないので、アンテナ制御部5301は、まず受信誤り率を観測し、受信誤り率が基準を越えて大きくなり受信状況が悪くなったと判断したら(すなわち、切り替え開始条件を満たすと)、アンテナ切り替え選択のシーケンスに入る(ステップS7001)。具体的には、ステップS7001において、切り替え開始条件を満たしたら、アンテナ制御部5301は、前方ビームアンテナ5101(あるいは5201のどちらか一方)の平均受信レベルを数百ミリ秒の期間に亘って検出する(ステップS7002)。その後、アンテナ制御部5301は、アンテナ切り替え器5111を切り替えて、後方ビームアンテナ5102(あるいは5202のどちらか一方)の平均受信レベルを数百ミリ秒の期間に亘って検出する(ステップS7003)。そして、アンテナ制御部5301は、両平均受信レベルを比較し、前方ビームアンテナ5101(あるいは5201)と後方ビームアンテナ5102(あるいは5202)の内、より平均受信レベルが高い方のアンテナに切り替え(ステップS7004)、一定時間待つ(ステップS7005)。
図11に示す制御手順において、図10の手順と異なるのは、別系統のアンテナの切り替え選択に関して、平均受信レベルを実測することなく、切り替え選択することである。つまり、ステップS7004において、アンテナ制御部5301は、前方ビームアンテナ5101(あるいは5201)を選択した場合は別系統においても前方ビームアンテナ5201(あるいは5101)を、後方ビームアンテナ5102(あるいは5202)を選択した場合は別系統においても後方ビームアンテナ5202(あるいは5102)を切り替え選択し(ステップS7006)、一定時間経てから(ステップS7007)、切り替え開始条件の判定に戻る(ステップS7001)。
また、図11に示す制御手順では、別系統での平均受信レベル検出を省いて、切り替えおよび平均受信レベル測定中の受信劣化を軽減させる考えも開示されている。図12は、第2従来例のダイバーシチ受信装置の構成を示すブロック図である。図12に示した第2従来例のダイバーシチ受信装置は、第1従来例と同様に、DTV放送波の車載受信において、複数の指向性を有するアンテナを用い、切り替え選択と合成とを組み合わせて受信品質を改善する方法が提案されているが、さらに、第2従来例では、単純にアンテナを切り替えるだけでなく、予め複数のアンテナからの信号を足して1つのダイバーシチ枝とする考えも開示されている。また、切り替え開始条件として、受信レベルやCNRを用いることや、ステアリング角センサやジャイロセンサを用いて走行方向の変化や速度を用いる考えも開示されている(例えば、特許文献2参照)。
図12において、第2従来例のダイバーシチ受信装置は、前方ビームアンテナ8101、8201と、後方ビームアンテナ8102、8202と、アンテナ切り替え器8111と、チューナ部8171、8271と、OFDM復調部8145、8245と、ダイバーシチ合成部8303と、誤り訂正部8304と、TSデコード回路8311と、アンテナ制御部8301と、ステアリング角センサ8312と、ジャイロセンサ8313とで構成される。
アンテナ切り替え器8111は、車両前方に指向特性を有する前方ビームアンテナ8101あるいは車両後方に指向特性を有する後方ビームアンテナ8102のどちらか一方を選択し、前方ビームアンテナ8201あるいは後方ビームアンテナ8202のどちらか一方を選択するだけでなく、前方ビームアンテナ8101と後方ビームアンテナ8102とを、あるいは前方ビームアンテナ8201と後方ビームアンテナ8202とを足して出力することもできる所が第1の従来例と異なっている。そして、各系統での受信信号は、各々チューナ部8171および8271を経て、OFDM復調部8145および8245で復調された後、ダイバーシチ合成部8303で合成され、誤り訂正部8304で誤り訂正がなされ、TSデコード回路8311で画像および音声の情報が取り出される。アンテナ制御部8301は、アンテナ切り替え選択の判断情報に、第1従来例と同様に、受信電力情報と誤り情報に加え、CNRおよび伝送路推定値を用いる。
図13は、第2従来例のダイバーシチ受信装置における、アンテナ制御部8301のアンテナ切り替え選択の制御手順を示すフローチャートである。第1従来例と同様に、指向性アンテナの切り替え選択において、各方向における受信状態を調べるために、むやみにアンテナを切り替えることができず、本従来例においても、受信状況が悪くなったと判断してからアンテナ切り替え選択のシーケンスに入る(ステップS9001)。すなわち、切り替え開始条件を設定する考え方は共通している。ただし、切り替え開始条件には、すべてのダイバーシチ枝の受信電力やCNRが所定の閾値を下回ることを以って判断することや、ステアリング角センサやジャイロセンサを用いて走行方向の変化や速度を用いる考えも開示されている(ステップS9002)。
切り替え開始条件を満たした後のアンテナ切り替え選択に関して、さらにステップS9002において、受信電力が閾値を下回った場合、前方ビームアンテナ8101と後方ビームアンテナ8102とを、あるいは、前方ビームアンテナ8201と後方ビームアンテナ8202とを足して出力しダイバーシチ枝として用いる(ステップS9003)。ステップS9002において、受信電力が閾値を下回らない場合は、第1従来例と同様に、アンテナ切り替え器8111を切り替えて、CNRあるいは伝送路推定値を検出し、CNRの高い方、あるいは、伝送路推定値の変動の少ない方を以って、受信品質が良い方のアンテナを判断し切り替え選択を行う(ステップS9004)考えも開示されている。
また、受信レベルを用いるものの、受信レベルではCNRと異なり、チューナ部等の利得のばらつきやマルチパスやドップラー環境では正確な判断ができないので、予め受信レベルとCNRとの関係を測定評価しテーブルの形で持ち換算する考えも示されている。
特開2007−274726号公報
特開2006−033056号公報
しかしながら、上記従来のダイバーシチ受信装置における構成および制御手順では、有意な時間をかけて、アンテナを切り替え、受信状況を平均受信レベルやCNRや伝送路推定値等で評価するために、むやみにアンテナ切り替え選択を行うことができず、開始条件の設定や待ち時間の挿入等、頻繁な切り替え選択での劣化を避ける手順を採る必要があった。このため、従来のダイバーシチ受信装置では、本来全てのアンテナをダイバーシチ合成した場合に比して、アンテナ数の増大の割にはあまり受信品質の改善効果が得られないという課題があった。特に、車載受信の用途においては、フロントガラス等に貼付するフィルムアンテナの場合、平面構造での制約と車両ボディー等の影響から、複雑な指向性パタンになる場合が多く、到来方向と走行方向との関係の変化に対し、きちんとした指向性を有するアンテナに比して、各アンテナでの受信状況の変化が激しく、頻繁な切り替え選択を行わないと、大きな受信品質の改善が得られないという問題があった。
また、フィルムアンテナの場合、前置される低雑音増幅器は、フィルムアンテナと同様にフロントガラス等に貼付され、温度での利得変化に加え、同軸ケーブルで別筐体となる本体受信装置に任意の組み合わせで接続されるので、利得のばらつきを予め評価規定して本体受信装置に換算テーブルを持たせるのは実際上困難となる。加えて、室内受信ではパソコン等の近傍電子機器からの外来雑音、車載受信では、車両搭載の電装品からの雑音の飛込みが比較的大きく、また、他の無線システム等からの雑音干渉波や都市部での環境雑音として外来雑音の影響が大きく、外来雑音環境にも適応して、真に良好な受信状況改善を行えるように、頻繁といえども、同時に的確に切り替え選択ができることは大きな課題となる。
それ故に、本発明は、前記従来の課題を解決するもので、特段なる指向性を有さないアンテナにも適用でき、より短時間で劣化の少ないアンテナ切り替え選択を行えることを目的とする。また、前置増幅器の利得ばらつきや外来雑音に対しても的確に切り替え選択を行えることで、コスト増を抑えつつ、より性能の良いダイバーシチ受信装置を提供することを目的とする。
上記従来の課題を解決するために、本発明のダイバーシチ受信装置は、デジタル放送波を受信する複数のアンテナと、複数のアンテナから所定の系統数を選択して切り替えるアンテナ切り替え部と、アンテナ切り替え部で選択された所定の系統数の受信信号を各々入力する所定の系統数のチューナ部および復調部と、所定の系統数の復調部の出力をダイバーシチ合成するダイバーシチ合成部と、アンテナ切り替え部を制御してアンテナを入替えるアンテナ入替え制御部とを備える。各復調部は、復調過程にて受信信号の信号対雑音比を測定する復調回路と、受信信号の入力レベルを測定するレベル検出部とを有し、各チューナ部は、受信信号の利得を制御する利得制御部を有し、アンテナ入替え制御部は、各系統の復調回路が測定した信号対雑音比を比較し、アンテナ切り替え部を制御して、信号対雑音比が最低となる系統のアンテナを、該系統に繋ぎ得るアンテナに順次繋ぎ替え、信号対雑音比が最低となる系統のアンテナを、当該繋ぎ替えたアンテナのうち、レベル検出部が測定した入力レベルに基づいて信号対雑音比が最高になると推定したアンテナ、又は、レベル検出部が測定した前記入力レベルが最高となるアンテナに入替える。
本構成によって、信号対雑音比が最低となる系統のアンテナを、入力レベルが最良となる系統のアンテナに短時間で切り替えることができる。
本発明のダイバーシチ受信装置によれば、より短時間で劣化の少ないアンテナ切り替え選択を行える。また、前置増幅器の利得ばらつきや外来雑音に対しても的確に切り替え選択を行えることで、コスト増を抑えつつ、より性能の良いダイバーシチ受信装置を提供できる。
図1は、本発明の実施の形態1におけるダイバーシチ受信装置の構成図である。
図2は、本発明の実施の形態1におけるダイバーシチ受信装置のアンテナ切り替え選択手順を示すフローチャートである。
図3は、本発明の実施の形態1におけるダイバーシチ受信装置の補正値計算更新手順を示すフローチャートである。
図4は、本発明の実施の形態1におけるダイバーシチ受信装置の補正値計算更新手順の原理を説明する単純化した高周波系の構成図である。
図5は、本発明の実施の形態1におけるダイバーシチ受信装置の補正値テーブルの図である。
図6は、本発明の実施の形態1における雑音干渉波が存在する場合のアンテナ選択と合成指向特性の模式図である。
図7は、本発明の実施の形態2におけるダイバーシチ受信装置の構成図である。
図8は、本発明の実施の形態2におけるダイバーシチ受信装置のアンテナ切り替え選択および系統制御の手順を示すフローチャートである。
図9は、第1従来例のダイバーシチ受信装置の構成図である。
図10は、第1従来例のダイバーシチ受信装置のアンテナ切り替え選択手順を示すフローチャートである。
図11は、第1従来例のダイバーシチ受信装置のアンテナ切り替え選択手順を示すフローチャートである。
図12は、第2従来例のダイバーシチ受信装置の構成図である。
図13は、第2従来例のダイバーシチ受信装置のアンテナ切り替え選択手順を示すフローチャートである。
以下、本発明を実施するための各形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1におけるダイバーシチ受信装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態1におけるダイバーシチ受信装置の構成図である。図1において、本発明の実施の形態1におけるダイバーシチ受信装置は、アンテナ1101〜1104、1201〜1204と、アンテナモジュール1111、1211と、低雑音増幅器1121〜1124、1221〜1224と、アンテナ切り替え器1112、1212と、アンテナ制御部1113、1213と、チューナ部1171、1172、1271、1272と、高周波増幅器1131,1151、1231、1251と、混合器1132、1152、1232、1252と、局部発振器1134、1154、1234、1254と、中間周波増幅器1133、1153、1233、1253と、利得制御部1135、1155、1235、1255と、復調部1145,1165、1245、1265と、A/D変換器1141、1161、1241、1261と、レベル検出部1142、1162、1242、1262と、復調回路1144、1164、1244、1264と、切替&比較部1143、1163、1243、1263と、補正値更新保持部1301と、アンテナ入替え制御部1302と、ダイバーシチ合成部1303と、誤り訂正部1304と、バックエンド部1309とで構成されている。
アンテナ1101〜1104および1201〜1204で受信したDTV放送波受信信号は、それぞれアンテナモジュール1111、1211内にて、低雑音増幅器1121〜1124および1221〜1224で増幅された後、アンテナ切り替え器1112および1212で、各々4つのアンテナから2つが選ばれ、後段のチューナ部1171、1172、および、1271、1272に入力される。
チューナ部1171、1172、1271、1272において、各々受信信号は、高周波増幅器1131,1151、1231、1251で増幅された後、局部発振器1134、1154、1234、1254の局部発振信号で、混合器1132、1152、1232、1252により周波数変換および選局され、中間周波数信号となる。各々中間周波信号は、さらに、中間周波増幅器1133、1153、1233、1253で増幅され、復調部1145,1165、1245、1265に入力される。
復調部1145,1165、1245、1265において、各々中間周波数信号は、A/D変換器1141、1161、1241、1261でデジタル信号に変換された後、復調回路1144、1164、1244、1264に入力され、OFDM復調がなされる。一方、A/D変換器1141、1161、1241、1261の出力は、各々、レベル検出部1142、1162、1242、1262で、信号レベルが検出され、入力レベルが適切になるように、利得制御部1135、1155、1235、1255を介して、高周波増幅器1131,1151、1231、1251、および、中間周波増幅器1133、1153、1233、1253の利得を調整する。
各復調回路1144、1164、1244、1264の出力は、ダイバーシチ合成部1303にて、位相が合わせられ、CNRで重み付けを行う最大比合成が行われる。その後、なお、OFDM方式の場合は、好ましくは、この位相を合わせてCNRで重み付けを行う操作は、サブキャリア毎に行うことが好ましい。誤り訂正部1304にて、誤り訂正等を行い、バックエンド部1309にトランスポートストリーム(TS)を出力する。一方、復調回路1144、1164、1244、1264は、復調過程において、各々の系統での受信信号の観測されたCNRを出力し、補正値更新保持部1301、および、アンテナ入替え制御部1302に入力する。補正値更新保持部1301には、さらに、アンテナ入替え制御部1302を介して、アンテナ切り替え前後のレベル差の情報も入力されており、後述の所定のアルゴリズムでアンテナ選択時の適正な補正値を随時算出更新する。
図2は、本発明の実施の形態1におけるダイバーシチ受信装置のアンテナ切り替え選択手順を示すフローチャートである。なお、アンテナ切り替え選択手順に関しては、さらに、図2のフローチャートも用いて、図1に示した対応する構成と動作手順を併せて説明する。
まずは、アンテナ入替え制御部1302が最低のCNRとなっている系統を1つ見出し決定し、その系統の切替&比較部1143、1163、1243、あるいは1263に指示を出す所から始まる。アンテナ入替え制御部1302は、所定の短区間、各系統のCNRを観測し、中央値あるいは平均値で以って、短区間CNRを計算する(ステップS2001)。所定の短区間とは、車載での受信の場合、干渉性の早いフェージング変化の影響を除くのに適当な期間、すなわち、波長に対して数十倍程度の期間が好ましい。そのため、所定の短区間を時間間隔で表した場合は、移動速度を検出する手段を用いて、移動速度に反比例するように可変することが望ましいが、室内受信の場合を含め、予め算出した固定(一定)の時間間隔にしても良い。あるいは、車載での受信で固定の時間間隔にする場合は、高速走行時の激しい変動を鑑みて、明示的な中央値あるいは平均値処理を行わず、CNR観測上の時間間隔で以って代用しても良い(ステップS2001)。また、所定の短期間をダイバーシチ受信装置の移動距離に対応するようにしてもよい。そして、アンテナ入替え制御部1302は、最低の短区間CNRとなっている切り替え対象となる系統を選定決定する(ステップS2002)。
図2では一般例を示しているが、どの系統が選ばれたとしても同様であるので、以降の説明では、図1の一番上の系統が切り替え対象系統となった場合を一例として動作を説明する。
この場合、切替&比較部1143は、まず、レベル検出部1142の出力から現選択中アンテナにおけるA/D変換器1141の出力レベルを検出し記憶する(ステップS2003)。なお、通常受信中は利得制御部1135を介したフィードバック制御により、一定のレベルになるように制御されているので、制御目標値をデフォルトとして、切り替え前のレベル測定および記憶は省略することも可能である。
しかる後、切替&比較部1143は、復調回路1144にダイバーシチ合成部1303からの切り離しと、アンテナ切り替えに伴う影響を軽減させる操作を施す(ステップS2004)とともに、利得制御部1135の利得制御ホールド信号を送出し、利得制御部1135を一旦停止した後(ステップS2005)、アンテナ制御部1113へアンテナ切替信号を送出する(ステップS2006)。そして、アンテナ制御部1113は、現在使われていないアンテナにアンテナ切り替え器1112の接点を繋ぎ変える(ステップS2007)。その後、切替&比較部1143は、再度、レベル検出部1142の出力から切り替え後のアンテナにおけるA/D変換器1141の出力でのレベルを検出し、差分を記憶する(ステップS2008)。
図1の例では、4本から2本のアンテナを選んでいるので、切替&比較部1143は、選択可能な別の候補アンテナがあるかどうかを判断する(ステップS2009)。ステップS2009において、選択可能な別の候補アンテナがある場合、ステップS2006からS2008までの操作を繰り返し、各アンテナでのレベルを検出し、差分を記憶する。
ステップS2009において、選択可能な別の候補アンテナがない場合、切替&比較部1143は、現アンテナおよび切り替え選択候補のアンテナにおける各レベル差分から、補正値更新保持部1301の当該アンテナに対応する補正値も勘案して、最良のアンテナを決定し(ステップS2010)、アンテナ制御部1113を介して、アンテナ切り替え器1112の接点を繋ぎ変える(ステップS2011)。また、利得制御部1135の利得制御を再開し(ステップS2012)、復調回路1144の復調動作を通常に戻し、ダイバーシチ合成部1303へ繋ぎ直しを行う(ステップS2013)。以上のように、最低CNRの系統1つずつ、その系統に繋がるアンテナをより良い方に、影響が無いように、速やかに検出判断し入替える操作を繰り返す(ステップS2014)。
図3は、本発明の実施の形態1におけるダイバーシチ受信装置の補正値計算更新手順を示すフローチャートであり、図4は、その計算の原理を説明するために単純化した高周波系の構成図であり、図5は補正値テーブルの一例である。
図4において、高周波系は、アンテナ1401、1402と、低雑音増幅器1421、1422と、アンテナ切り替え器1412と、可変利得増幅部1433とで構成されている。ここでは、単純化して、この2つのアンテナ1401、1402をアンテナ切り替え器1412で切り替え選択する場合を考える。なお、可変利得増幅部1433を用いて、図1の高周波増幅器1131,1151、1231、1251、および、混合器1132、1152、1232、1252、および、中間周波増幅器1133、1153、1233、1253の系をまとめて表している。
ここで、図4のように、n回目(nは自然数)のアンテナ切り替えにおいて、アンテナ1401からアンテナ1402に切り替えたとして、この切り替え前後において、アンテナ1401からの信号電力をCi1,n、外来雑音電力をNi1,nとし、アンテナ1402からの信号電力をCi2,n、外来雑音電力をNi2,nとし、低雑音増幅器1421の利得をGL1、内部で発生する雑音をNL1とし、低雑音増幅器1422の利得をGL2、内部で発生する雑音をNL2とし、可変利得増幅部1433の利得をGR,n、内部で発生する雑音をNR,nとするなら、可変利得増幅部1433の出力での各アンテナを選んだ時の信号電力Co1,n、Co2,nと、雑音電力No1,n、No2,nは、数1および数2で表される。
ここで、利得GL1、GL2、GR,nが十分大きく、外来雑音Ni1,n、Ni2,nが相対的に大きい場合、数2は、数3と近似できる。
ところで、切り替え選択の前後では、各アンテナでのCN比γ1,n、γ2,nと、信号レベル差Γ12,nとが検出記憶されるが、それらは数4で表されるので、数3を併せ用いると、数5で示される関係が成立することが分かる。
低雑音増幅器の利得GL1、GL2は、温度等でのドリフトや個体差でのばらつきが主であり、車載の場合の走行に伴うフェージングに比べても、急に変化するものではない。
また、外来雑音Ni1,n、Ni2,nは、車載受信での状況では、近傍の電装品からの雑音の飛込みが比較的大きく、また、他の無線システム等からの雑音干渉波の飛び込みや都市部での環境雑音としてレベルが盛り上がることがあるものの、走行に伴うフェージングほどには急に変化はしない。また、室内受信においては、半固定での使用になるので、同様に急な変化は起こらない。つまり、数5の右辺の係数をk12,nとすると、k12,nは数6で表される。
これは、走行に伴うフェージングほどには急に変化しないもので、実測される値γ1,n、γ2,n、Γ12,nから計算されるもので、この過去の観測計算結果から、例えば、過去に遡るm+1回から(mは自然数)、数7として表される。
また、n+1の次の機会には、信号レベル差Γ12,n+1を観測した時点で、数7の左辺を補正値として、切り替えた時のCN比の改善比を数8として推定することができる。
なお、数7は、対数(デシベル)として計算するものであって、右辺の平均は真値でなく、デシベル値に対する平均であってもよい。また、好ましくは、いわゆる忘却係数等、過去に遡るほど重みを下げる係数を掛けて算出するものであってもよい。あるいは、m=0として、前回の結果のみをそのまま使うものであっても良い。また、当該アンテナ入替えに対応する補正値の更新が未だ行われていない場合、初期値として1を用いるのが好ましい。また、当該アンテナ入替えに対応する補正値の最後の更新から所定の時間を経ている場合、初期値の1に戻し、これを用いて切り替え選択を行った後、次回に備えて補正値の更新を行うものであっても良い。
ところで、同組のアンテナを逆方向に切り替えた時の係数は、互いに逆数、つまり、数9の関係があるので、補正値である数7の左辺の算出において、この逆数関係での観測値も用いて算出することにより、更新頻度を上げることができ、より緻密な更新を行うことができる。また、数10でもあるので、この性質を用いて、補正値の記憶エリアを半分に縮小しても良い。これによって、補正値テーブルの記憶容量を削減することができる。
図3は、以上に述べた補正値の算出更新の手順の一例を示すフローチャートである。図2のステップS2013でのアンテナの切り替え選択の一連の手順が終わった直後、補正値更新保持部1301は、まず、新しく切り替え選択したアンテナについて、その系統の復調回路のCNRを観測することでγ
2,nを得る(ステップS3001)。その後、補正値更新保持部1301は、切り替え前のアンテナでの直前のCNR測定値γ
1,nと、レベル差Γ
12,nとをアンテナ入替え制御部1302から得る(ステップS3002)。この3つの値から、上述のように、補正値である数7の左辺を算出更新し(ステップS3003)、図2のメインのフローに戻る。
図5は、補正値テーブルの一例を示したものである。テーブルのパラメタは、切り替え前後のアンテナに加え、受信チャネルによって、低雑音増幅器の利得GL1、GL2および外来雑音電力Ni1,n、Ni2,nには差が生じ、受信チャネルが加わるので、このような3次元のテーブルとなる。なお、補正値の更新には、数9の関係を利用したり、数10の関係を利用したりするので、テーブルとしては、右上の(あるいは左下)部分だけでも良い。図3の手順で、図5のテーブルを計算更新するとともに、図2のステップS2010で、対応する補正値を読み出し、補正を加えて、レベル差からCNRでの改善量を推定し、最良のアンテナを判定決定する。
アンテナモジュール1111および1211は、通常、アンテナ1101〜1104およびアンテナ1201〜1204の近く、例えばフロントガラス等に貼付され、別設置されるもので、ダッシュボード内あるいは座席下等に置かれる本体筐体内のチューナ部1171、1172、1271,1272まで同軸ケーブルで接続される。低雑音増幅器1121〜1124、1221〜1224の利得のばらつきを予め測定し、接続関係、本体筐体との組み合わせをすべて規定して補正を加えることは実際上困難で、上述のように、適応自動的に補正されることは有用である。さらには、特定の方向から雑音干渉波が到来している場合も、適応追従して、雑音干渉方向に利得のあるアンテナが選ばれにくくなる方向に補正値が働くので、雑音干渉を回避する効果も得られる。
図6は、雑音干渉波が存在する場合のアンテナ選択と合成指向特性との関係を示す模式図である。8つの異なる指向特性を有するアンテナから、到来波を受けやすく、かつ、雑音干渉波を受けにくいアンテナ4つが結果的に選ばれダイバーシチ合成されるので、到来波方向に偏り、雑音干渉波方向を避ける合成指向特性が得られることになる。
以上、図1〜図6を用いて説明したように、かかる構成と手順によれば、CNR最低の系統1つずつに対し、他の候補アンテナのレベル差をすばやく切り替え観測し、手順に組み込まれ適応的に計算更新される補正値を併せ用いて的確に良いアンテナを選び入替えることを繰り返すことで、より短時間で劣化の少ないアンテナ切り替え選択を行うことができる。また、前置増幅器の利得ばらつきや外来雑音に対しても的確に切り替え選択を行えることで、コスト増を抑えつつ、より性能の良い受信を行うことができる。
なお、アンテナ1101〜1104、アンテナ1201〜1204は、図1の例では、車載受信のフィルムアンテナで、フロントガラスの左右に、2群に分けて粘付するような想定を例として示しているが、これらを合わせて1群とし、アンテナモジュール1111および1211も一体のものであり、アンテナ切り替え器1112および1212は、8つのアンテナから4つを切り替え選択するものであってもよい。
もちろん、8あるいは4の数はこれに限らず、例えば、6つのアンテナから4つを切り替え選択するもの、8つのアンテナから3つを切り替え選択するもの等々他の組み合わせであっても良い。
また、各アンテナは明確な指向特性を有するものである必要は必ずしも無い。好ましくは、各アンテナの指向性パタンが異なっておればよく、例えば、車載受信でのフィルムアンテナの場合、各アンテナは同一のものであっても、貼る向き、あるいは、貼る位置によって車両ボディーとの関係で指向特性が様々になるので、この条件は満たされる。
なお、指向性の弱いアンテナと指向性の強いアンテナとを混用することも可能である。例えば、車載受信においては、道路に沿った伝搬が顕著な場合が多く、前後方向に指向性を有するアンテナと、指向性の弱いアンテナとの組み合わせであっても良い。
また、室内受信では、天井や壁での反射散乱により様々な方向からの到来波をカバーすることができる指向性が弱い全方位型アンテナと、窓等の開口部から入射到来する波に対応し、指向性を比較的有するアンテナとの組み合わせであっても良い。
なお、全体の繰り返し周期は、固定であっても良いし、ステップS2001の短区間に、所要の処理時間等が加わるものであっても良いし、ステップS2001の短区間が移動速度に反比例して可変する場合は、これに依って変わるものであっても良い。また、さらには、上記最低CNRの値に応じて、変わるものであっても良い。また、補正値更新保持部1301の補正値の計算更新は、この所要の処理時間で行うのが良い。また、復調回路1144にダイバーシチ合成部1303からの切り離しと、アンテナ切り替えに伴う影響を軽減させる操作は、例えば、同期等の復帰に時間が掛かるものは操作前に自走状態のタイミングを維持して、その後、系統のCNRを低いものとして、ダイバーシチ合成部1303での合成重み付けを減じてから、切り離しを行う等の操作を行うことが好ましい。また、ステップS2002において、利得制御部1135の利得制御を再開する際に、予めレベル差が分かっているので、このレベル差の分だけオフセットさせて再開させることにより、その後の受信をより早く復帰させることができるので好ましい。
なお、利得制御の一旦停止(ステップS2005)および再開(ステップS2012)は、制御時定数が十分に大きい場合、両ステップの間での利得制御量の変化がほぼ無視できるので、省略しても良い。また、ダイバーシチ合成からの枝切離し動作(ステップS2004)および枝再接続動作(ステップS2013)も、省略することもできる。これは、アンテナ切り替えでの雑音で当該系統のCNR観測値が瞬時にうまく対応し減少する限りは、ダイバーシチ合成部1303での最大比合成によって、等価的に、枝切り離し、あるいは、枝再接続の動作が行われることになること、また、多少の誤り発生に対しては、誤り訂正部1304で訂正されるからである。
なお、利得のばらつきが少なく、かつ、外来雑音の影響が少ない環境での適用においては、補正値更新保持部1301およびステップS2014の補正値計算更新を省略し、ステップS2010において、補正値を用いず、各レベル差分のみで決定することで、性能よりコスト重視で省略実装することもできる。また、この場合、アンテナを切り替えてのレベル比較を行うにおいて、利得制御を一旦停止して行うのではなくて、切り替えた前後での利得制御方向を観察することで、レベル差分を判定するものであっても良い。例えば、アンテナを切り替え後、利得を押さえ込む方向に制御されているのであれば、新しいアンテナの方がレベルが高いと判定し、このアンテナに差し替える。
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2のダイバーシチ受信装置の構成図である。図7において、本発明の実施の形態2におけるダイバーシチ受信装置は、アンテナ1101〜1104、1201〜1204と、アンテナモジュール1111、1211と、低雑音増幅器1121〜1124、1221〜1224と、アンテナ切り替え器1112、1212と、アンテナ制御部1113、1213と、チューナ部1171、1172、1271、1272と、高周波増幅器1131,1151、1231、1251と、混合器1132、1152、1232、1252と、局部発振器1134、1154、1234、1254と、中間周波増幅器1133、1153、1233、1253と、利得制御部1135、1155、1235、1255と、復調部1145,1165、1245、1265と、A/D変換器1141、1161、1241、1261と、レベル検出部1142、1162、1242、1262と、復調回路1144、1164、1244、1264と、切替&比較部1143、1163、1243、1263と、補正値更新保持部1301と、ダイバーシチ合成部1303、1305と、誤り訂正部1304、1306と、アンテナ主副系統入替え制御部1307と、チャネル制御部1308と、バックエンド部1309と、主副系統選択器1310とで構成されている。
本発明の実施の形態2におけるダイバーシチ受信装置が、実施の形態1(図1)と異なっているのは、主副系統選択器1310が追加され、これに伴い以降、ダイバーシチ合成部は1303と1305、誤り訂正部は1304と1306の2系統準備され、併せて、アンテナ入替え制御部1302の代わりに、主副系統選択器1310も制御するアンテナ主副系統入替え制御部1307を配置し、連動して局部発振器1134、1154、1234、1254を制御するチャネル制御部1308を加えたことである。その他の構成は、実施の形態1(図1)の説明と同様であるので説明を省略する。
DTV放送波の車載等の移動受信(室内受信用のものを車載搭載時含め)においては、受信エリア端で同系列の放送へスムーズかつ速やかに切り替わることが望ましく、このためには、一時的に、2チャネルの信号を同時に受信することが望ましい。実施の形態2は、そのような2チャネル同時受信が可能な構成での適用例になる。
図7において、チャネル制御部1308は、バックエンド部1309からの制御指示によって、局部発振器1134、1154、1234、1254を制御し、2チャネル受信のために、任意の系統を2つの周波数に振り分け設定制御する。この設定に合わせて、主副系統選択器1310は、対応する系統を振り分け、切り替え選択して、中間周波数信号をダイバーシチ合成部1303および1305に入力しダイバーシチ合成し、誤り訂正部1304および1306にて誤り制御等の処理を経て、バックエンド部1309に2系統のTSを出力する。
図8は、本発明の実施の形態2におけるダイバーシチ受信装置のアンテナ切り替え選択および系統制御の手順を示すフローチャートである。実施の形態1の場合と同様に、まずは、アンテナ主副系統入替え制御部1307は、所定の短区間、各系統のCNRを観測し、中央値あるいは平均値で以って、短区間CNRを計算する(ステップS2001)。そして、アンテナ主副系統入替え制御部1307は、バックエンド部1309から副系統分離の指示があったかどうかを判断する(ステップS4001)。
ステップS4001において、副系統分離の指示が無かった場合は、実施の形態1の場合(図2)と全く同様に、最低の短区間CNRとなっている切り替え対象となる系統を選定決定し(ステップS2002)、そしてステップS2003〜S2014を実行する。
ステップS4001において、副系統分離の指示があった場合は、実施の形態1と異なり、副系統に対してもフローを進める。ます、アンテナ主副系統入替え制御部1307は、最低の短区間CNRとなっている系統を副系統に、最低から2番目、すなわち、次に低い短区間CNRを有する系統をアンテナの切り替え対象の系統に選択決定する(ステップS4002)。アンテナ切り替え選択に関しては、ステップS2003〜S2014、そして、さらに副系統に分離追加する指示が無い限りは、ステップS2001、ステップS2002と繰り返し、系統数が減ってはいるものの、実施の形態1の場合と同様の性能改善への動作が行われるので詳細の説明を省略する。
図8では一般例を示しているが、どの系統が選ばれたとしても同様であるので、以降の説明では、図7の一番下の系統が副系統への対象系統となった場合を一例として動作を説明する。副系統への分離対象の系統に対しては、まず、切替&比較部1263は、復調回路1264にダイバーシチ合成部1303からの切り離しと、アンテナ切り替えに伴う影響を軽減させる操作を施す(ステップS4003)。その後、チャネル制御部1308は、局部発振器1254の周波数を変更する(ステップS4004)。主副系統選択器1310は、復調回路1264の復調出力をダイバーシチ合成部1305に繋ぎ、副系統への繋ぎ替えを実施する(ステップS4005)。最後に、切替&比較部1263は、復調回路1264の復調動作を通常に戻し、ダイバーシチ合成部1305へ繋ぎ直しを行い(ステップS4006)、副系統のオペレーションを開始することとなる。
このように、随時、受信チャネルを変えながらサーチを行い、同一系列の放送を探索、良好な受信チャネルを見つければ、主系統と併行して受信しながら、副系統の受信状況が安定した所で、副系統を今度は主系統として扱いなおし、受信画像としてはできるだけ途切れずにチャネル切り替えを完了することができる。この際、サーチから併行受信への移行において、ステップS4001〜S4006を繰り返すことで、主系統は、減じた系統数をアンテナ切り替え選択で性能を補填しつつ、副系統は、割り当て系統数を増してダイバーシチ能力を高め受信を安定させても良く、こうして副系統が安定受信できた所で残りすべての系統を同様に副系統へ、さらに副系統を主系統として扱い直し、ステップS2002〜S2014を実行してチャネル切り替えの操作が完了する。
かかる構成によれば、実施の形態1に加えて、副系統分離の指示があった場合は、最低の短区間CNRとなっている系統を1つずつ副系統に回し、残りで実施の形態1と同様のアンテナ入替え制御を行うことで、スムーズかつ適切に2チャネル併行受信に移行すると共に、系統数の減少を実施形態1と同様の改善機構で受信性能を補うことで、安定した受信状況を保ち、受信画像としてはできるだけ途切れずにチャネル切り替えを完了することができる利点が生まれる。
なお、上述した各実施の形態では、OFDM方式を採用したダイバーシチ受信装置について説明してきたが、それ以外の方式に適用することも可能であることは言うまでもない。OFDM以外の方式としては、例えば、残留側波帯多値方式等がある。
本発明にかかるダイバーシチ受信装置は、デジタルテレビ放送を複数のアンテナで車載受信すること等に有用である。
1101〜1104、1201〜1204、1401、1402 アンテナ
1111、1211 アンテナモジュール
1121〜1124、1221〜1224、1421、1422 低雑音増幅器
1112、1212、1412 アンテナ切り替え器
1113、1213 アンテナ制御部
1171、1172、1271、1272 チューナ部
1131,1151、1231、1251 高周波増幅器
1132、1152、1232、1252 混合器
1134、1154、1234、1254 局部発振器
1133、1153、1233、1253 中間周波増幅器
1135、1155、1235、1255 利得制御部
1433 可変利得増幅部
1145,1165、1245、1265 復調部
1141、1161、1241、1261 A/D変換器
1142、1162、1242、1262 レベル検出部
1144、1164、1244、1264 復調回路
1143、1163、1243、1263 切替&比較部
1301 補正値更新保持部
1302 アンテナ入替え制御部
1303、1305 ダイバーシチ合成部
1304、1306 誤り訂正部
1307 アンテナ主副系統入替え制御部
1308 チャネル制御部
1309 バックエンド部
1310 主副系統選択器