(実施の形態1)
以下、本実施の形態について図面を用いて説明する。図1は、本実施の形態におけるフェージング検出手段を用いた高周波受信装置の回路ブロック図である。なお図1において、図12と同じものは同じ番号を用いて、その説明は簡略化している。
図1を用いて本実施の形態における高周波受信装置51の構成を説明する。アンテナ4aとアンテナ4bには約50MHzから約900MHzまでのテレビ放送波(高周波信号の一例として用いた)が入力される。そしてこれらのアンテナ4aとアンテナ4bのそれぞれは、受信器52(選局手段の一例として用いた)と受信器53(選局手段の一例として用いた)のそれぞれに接続される。なおこれらのアンテナ4aとアンテナ4bや受信器52と受信器53には、共に同じものが2組づつ用いられている。
これら受信器52と受信器53の出力は共に復調回路54へ接続される。なお本実施の形態における復調回路54は集積回路化(IC内で構成)されているので、高周波受信装置51を小型化することができる。
ここで復調回路54は以下のような構成としている。受信器52の出力は復調回路54の入力端子54aへ接続される。一方受信器53の出力は復調回路54の入力端子54bへ接続される。これら入力端子54aと入力端子54bへ供給された信号のそれぞれは、検波器55aと検波器55bのそれぞれへ供給される。そしてこれら検波器55aと検波器55bのそれぞれの出力は、A/D変換器56aとA/D変換器56bへそれぞれ供給され、検波器55aと検波器55bの出力信号をデジタル信号へと変換する。これらA/D変換器56a、A/D変換器56bの出力は、それぞれフーリエ変換手段57aとフーリエ変換手段57bへと接続されている。これらフーリエ変換手段57aとフーリエ変換手段57bでは、デジタル信号へと変換した信号を周波数軸によって展開するものであり、いわゆるフーリエ展開と呼ばれる処理が施される。これによって、サブキャリアと呼ばれる周波数軸毎で信号が取り出されることとなる。
フーリエ変換手段57aとフーリエ変換手段57bのそれぞれの出力は、重み付け手段58aと重み付け手段58bのそれぞれへ出力される。そして合成器59の一方の入力には重み付け手段58aの出力が接続されるとともに、他方の入力には重み付け手段58bの出力が接続される。この合成器59は、これらの重み付け手段58aの出力信号と重み付け手段58bの出力信号とを合成し、デインターリーブ回路60へと供給する。
なおこのとき、デインターリーブ回路60で良好に復調処理されるためには、信号のレベルに上下限の限界レベルを有しており、このレベル範囲内にするために重み付け手段58a、重み付け手段58bによってレベルの調整を行っている。そしてそのために、重み付け手段58aと重み付け手段58bには合成比設定手段61の出力が接続される。例えば合成比設定手段61は、フーリエ変換手段57aとフーリエ変換手段57bとの出力信号のサブキャリアのレベルを検出して、そのレベル比に応じて合成比を設定する。これによって合成器59では、合成比設定手段61で決定した合成比に応じた比率で合成されることとなる。いずれにしても、合成器59での信号の合成比率は、受信状態の良好な方からの信号の割合が大きくなるようにする。次にデインターリーブ回路60は、合成器59の出力信号が供給され、信号を復調する。そしてこのデインターリーブ回路60で復調された信号は、誤り訂正回路62によって誤り訂正されて、出力端子54cから出力される。
ビット誤り率検出回路63は、誤り訂正回路62の出力に接続され、誤り訂正回路62から出力される信号からビット誤り率を算出する。また、C/N検出器64には、合成器59の出力が供給され、合成された信号のC/N値を検出する。
そして制御回路65(フェージング検出手段、フェージング補正手段、閾値設定手段および比較手段とを含んだ回路の一例として用いたものであり、また受信器52あるいは受信器53と制御回路65とによって、複数チャンネル受信用フェージング検出装置の一例としている)は、復調回路54の出力が供給されて、受信器52と受信器53のいずれか一方を動作(シングル動作)させるか、受信器52と受信器53の双方を動作(ダイバー動作)させるかを判定する。そのためにこの制御回路65と、受信器52および受信器53のそれぞれの電源端子との間には電源回路66a、電源回路66bがそれぞれ挿入される。この電源回路66aと電源回路66bとは、制御回路65からの指示信号によって、それぞれ受信器52や受信器53の電源をオン・オフする。
また制御回路65には、メモリ22や入力キー67が接続されている。入力キー67からは、受信希望チャンネルを受信するための選択信号が入力される。さらに、制御回路65には、ビット誤り率検出回路63、C/N検出器64、合成比設定手段61と検波器55a、検波器55bの出力が接続され、一方この制御回路65の出力は合成比設定手段61に接続されている。
次に、以上のように構成された高周波受信装置51の動作について説明するが、最初に移動速度や受信チャンネルとフェージング周波数との間の関係と、フェージング周波数と所要C/N値との関係について説明する。図2(a)は自動車3が一定の速度で低速走行した場合における時間と検波器で検波されたレベルとの関係図であり、図2(b)は自動車3が一定の速度で高速走行した場合における時間と検波器で検波されたレベルとの関係図である。なお図2(a)、(b)において横軸71は時間を示し、縦軸72は検波器で検出された信号のレベルを示している。
図2(a)において、自動車3が一定の速度で移動する場合、検波された信号レベル73は一定の周期74(周波数)で変動する。そしてこれがフェージングと呼ばれるものである(以下このフェージングの周波数をフェージング周波数と言い、フェージングの度合いの一例として用いた)。これは、自動車3の移動に伴い放送アンテナ2からの経路長が変化したことによって、直接波5と反射波6との位相がずれ、そのずれた位相の信号同士が合成されることによって生じたものである。そしてこのフェージング周波数は自動車3の移動速度に応じて変化することも判っている。図2(b)に示すように、自動車3の移動速度が速い場合には信号レベル75の変動も早く、周期76は移動速度が遅い場合の周期74に比べて短くなる。つまり、移動速度が遅いとフェージング周波数は小さく、移動速度が速いとフェージング周波数も大きくなる。
次に、受信チャンネル(周波数)とフェージング周波数との関係について説明する。受信チャンネル(周波数)が低い場合にはその波長が長いために、フェージング周波数は小さくなる。一方、受信チャンネル(周波数)が高い場合にはその波長が短いために、フェージング周波数は大きくなる。
図3は、本実施の形態における高周波受信装置51におけるフェージング周波数と高周波受信装置51での所要C/N値との関係図である。ただし図3は、高周波受信装置51で受信するチャンネルの変化はなく、移動速度のみが変化する場合を示している。図3において、横軸81はフェージング周波数(あるいは移動速度)を示し、縦軸82は高周波受信装置51でビット誤り率が0.0002となる場合のC/N値(以下所要C/N値と言う)である。
この所要C/N特性曲線83は、フェージング周波数が非常に小さい(移動速度が遅い)場合と、フェージング周波数が非常に大きい(移動速度が高速)場合に所要C/N値が大きくなる傾向を有している。発明者らの実験によれば、フェージング周波数が約20Hz(13ch受信時において移動速度で約45Km/H相当)以下の低速移動領域84においては、移動速度が遅くなるにつれて所要C/N値が大きくなることを確認した。また、フェージング周波数が約70Hz(13ch受信時において移動速度で約130Km/H相当)以上の高速移動領域85において、移動速度が速くなるにつれて所要C/N値が大きくなることも確認した。そしてこの間の中速移動領域86では、所要C/N値に大きな変化はなく、かつこの状態において所要C/Nは最も小さな値となることも確認している。なお、移動速度が0である場合には、フェージングが無いのでその分所要C/Nは小さくなる。
そこで、本実施の形態における制御回路65は、検波器55a、検波器55bで検出された信号レベルに基づいてフェージング周波数を推定し、このフェージング周波数に応じてシングル受信とダイバーシティ受信とを切り替えるものである。
図4は、本実施の形態における制御回路65の動作フローチャートである。図4において、入力キー67から選択信号が入力されると、ダイバー動作ステップ91では電源回路66aと電源回路66bとに対して、受信器52と受信器53の双方をオンする旨の信号を出力する。これによって、受信器52と受信器53との双方を動作させて、これらの出力を合成して受信する動作(いわゆるダイバーシティ方式であり、以下ダイバー動作という)が行われる。なおこのとき選択信号はメモリに記憶される。
まずダイバー動作からシングル動作(受信器52あるいは受信器53のいずれか一方のみで受信する)への切り替えについて説明する。ダイバー動作ステップ91の後で、ビット誤り率判定ステップ92が行われる。このビット誤り率判定ステップ92では、ビット誤り率検出回路63が検出したビット誤り率が、予め定められた誤り率の閾値92aよりも大きい場合には、ダイバー動作が継続される。一方、ビット誤り率検出回路63が検出したビット誤り率が、予め定められたビット誤り率の閾値92aよりも小さい場合には、フェージング検出ステップ93a(フェージング検出手段の一例として用いた)が行われる。フェージング検出ステップ93aでは、検波器55aあるいは検波器55bの信号レベルを読み込んで、フェージング周波数の検出が行われる。この推定の方法については後に詳しく説明するが、予め定められた単位時間内における信号レベルの変化量を算出し、その変化量が小さいものの数を計数値としてカウントするものである。これは、信号レベルの変化の小さな頂点部分では、変化量が小さくなることに着目し、このような変化量が小さな点がどれだけあるかによってフェージング周波数を推定するものである。
そしてフェージング検出ステップ93aの後で、フェージング補正ステップ93b(フェージング補正手段の一例として用いた)が設けられている。このフェージング補正ステップ93bでは、受信チャンネルの変更有無を判定し、受信チャンネルの変更が無い場合には、フェージング検出ステップ93aで計数された計数値が出力される。一方チャンネルが変更された場合には、変更前後の選択信号によってフェージング検出ステップ93aで計数された計数値の補正が行われる。
閾値設定ステップ94(閾値設定手段の一例として用いた)では、フェージング検出ステップ93aあるいはフェージング補正ステップ93bで算出された計数値に応じた所要C/N値を、ダイバー動作からシングル動作へと切り替えるための閾値95として設定する。ここでメモリ22には、計数値に対応した所要C/N値を対応させて記憶されたテーブルが格納されており、閾値設定ステップ94において、算出された計数値に対応した所要C/N値をテーブルから読み出して、閾値95として設定する。
次に比較ステップ96(比較手段の一例として用いた)では、C/N検出器64で検出した検出C/N値と、閾値設定ステップ94で設定した閾値95とを比較する。そして検出C/N値が、閾値95より小さい場合には、ダイバー動作ステップ91へ戻り、ダイバーシティ方式での受信が継続される。一方検出した検出C/N値が、閾値95より大きい場合には、チューナ選択判定ステップ97が行われる。なおこのとき後述するダイバー受信からシングル動作へと切り替えることで、ビット誤り率が悪化することを考慮に入れておく必要がある。そこでC/N検出器64で検出されたC/N値に規定値を乗じた値を検出C/N値としている。なお本実施の形態では、シングル動作への切り替えによるC/Nの悪化は、合成比設定手段61の合成比率に応じて悪化するとして、検出されたC/N値に合成比を乗じた値を検出C/N値としている。
例えば、受信器52と受信器53との合成比率が8:2である場合、シングル動作への切り替えによって20%C/Nも悪化すると想定して、比較ステップ96では検出されたC/N値に0.8を乗じた値を検出C/N値とし、この検出C/N値と閾値95とを比較する。この場合、検出C/N値を補正するので、ダイバー動作からシングル動作へと切り替えるべき閾値95は、所要C/N値と等しくしている。
なお本実施の形態では、シングル動作への切り替え後のC/N値の推定のために、比較ステップ96で合成比率を乗じることで補正したが、これは閾値設定ステップ94において、所要C/N値に対して合成比率に応じた計数を除算して閾値95を設定しても良い。また、本実施の形態では合成比率に応じて補正したが、これは一定値としても良い。
次にチューナ選択判定ステップ97では、合成比設定手段61の合成比率を検知し、受信器52と受信器53とのどちらの合成比率が小さいかを判定する。そしてチューナ選択判定ステップ97の後のシングル動作ステップ98では、チューナ判定ステップ97で選択された、合成比率の低い方の受信器の電源回路に対して、受信器の電源をオフとする旨の信号を送出される。これにより受信品質が良好な方の受信器の動作が継続され、シングル動作へと切り替わる。これによりシングル受信への切り替え時に、C/N値の悪化を少なくできる。
次にシングル動作からダイバー動作への切り替えについて説明する。シングル動作ステップ98の後で、フェージング検出ステップ99a(フェージング検出手段の他の一例として用いた)が行われる。フェージング検出ステップ99aでは、フェージング検出ステップ93aと同様に、検波器55a、検波器55bからの信号を検知し、単位時間内における信号レベルの変動量を算出している。なお、このフェージング検出ステップ99aにおいても、フェージング検出ステップ93aと同様の方法によってフェージング周波数の検出を行う。
フェージング検出ステップ99aの後には、フェージング補正ステップ99b(フェージング補正手段の一例として用いた)が行われる。このフェージング補正ステップ99bでは、受信チャンネルの変更有無を判定し、受信チャンネルの変更が無い場合には、フェージング検出ステップ99aで計数された計数値が出力される。一方チャンネルが変更された場合には、フェージング補正ステップ93bと同様に、変更前後の選択信号によってフェージング検出ステップ99aで計数された計数値の補正が行われる。
そして、閾値設定ステップ100では、フェージング検出ステップ99aで算出された計数値あるいはフェージング補正ステップ99bで補正された計数値に対応した所要C/N値をメモリ22から取得し、閾値101として設定する。そして、比較ステップ102(比較手段の一例として用いた)において、C/N検出器64で検出した検出C/N値と閾値101とを比較する。そして、比較ステップ102では、検出C/N値が閾値101以上である場合には、フェージング検出ステップ99aへと戻り、そのままシングル動作が継続される。一方、検出C/N値が閾値101より小さい場合には、ダイバー動作ステップ91へと戻り、ダイバー動作へと切り替えられる。
以上のように、ダイバー動作からシングル動作への切り替えと、シングル動作からダイバー動作への切り替えの双方の切り替えは、C/N値によって切り替え判定されるので、素早く切り替えることができる。したがって、シングル受信時に急激な受信品質が悪化しても短い時間で受信状態を改善することが可能となる。また、逆にダイバー動作からシングル動作への切り替えも早いので、その分消費電力を少なくできる。
そして、チャンネルが変更された場合には、変更された後のチャンネルのフェージング周波数へ補正しているので、チャンネルが変更された場合においても精度良くフェージング周波数を検出できる。従って、チャンネル変更時においても精度良く所要C/N値の設定ができるので、誤ったダイバーシティ・シングル動作の切り替えを少なくできる。そしてこれは、安定した受信品質を得ることができる。また、フェージング検出手段でのフェージング周波数が特定されるまでの時間を待つことなく、フェージング周波数を特定するので、チャンネル切り替え時においても素早く受信品質を改善できることとなる。特にこれは直接見たいチャンネルを直接入力する場合には、特に有用である。
なお、本実施の形態では、閾値設定ステップ94、100の前にフェージング補正ステップ93b、フェージング補正ステップ99bを設け、このフェージング補正ステップ93b、99bにおいて、補正を行った。しかしながら、これらフェージング補正ステップ93b、フェージング補正ステップ99bに代えて、閾値設定ステップ94(フェージング補正手段の他の例として用いた)あるいは閾値設定ステップ100(フェージング補正手段の他の例として用いた)において、チャンネル変更に対するフェージング度合いの補正を行っても良い。つまり、メモリ22には、受信チャンネルとフェージング検出ステップでの計数値とに対応した所要C/N値をメモリに記憶させておく。そしてこのテーブルから変更後のチャンネルに対応する計数値を読み出すことで補正することも可能である。この場合、フェージング補正ステップ93b、フェージング補正ステップ99bが不要となるので、フェージング補正の処理が早くなる。また、本実施の形態におけるフェージング検出ステップ93a、フェージング検出ステップ99aは、従来のフェージング検出手段などの他の検出方法へ置き換えても良く、その場合においてもチャンネル切り替え時に精度良くフェージング周波数を検出することができる。
さらに、切り替えのためにフェージング度合いを検出して、そのフェージング度合いに応じた所要C/N値を閾値として設定し、この閾値に応じてシングル動作とダイバー動作との切り替えを行うので、フェージングによる受信品質の悪化を改善でき、移動時においても良好な受信を実現できる。さらに、移動速度の変化により受信状態が悪化した場合においても、素早くダイバーシティ受信に切り替えることができるので、移動速度によらず良好な受信品質を実現できる。さらにまた、フェージング度合いに応じて最適に切り替えることができるので、フェージング度合いを判定しない場合に比べて消費電力も削減できる。
次にフェージング検出ステップ93a、フェージング検出ステップ99aでのフェージング周波数の検出について、詳細に説明する。図5は本実施の形態におけるフェージング検出ステップのフローチャートである。図6(a)はフェージング周波数が低い場合におけるサンプリング方法の説明図であり、図6(b)は、同、変動量の算出方法の説明図である。また、図7(a)はフェージング周波数が高い場合におけるサンプリング方法の説明図であり、図7(b)は同、変動量の算出方法の説明図である。
図5においてサンプリングステップ103(サンプリング手段の一例として用いた)では、検波器55aあるいは検波器55bで検出された信号レベル112を一定の時間間隔111毎に、予め定められた個数の信号レベル値113、信号レベル値121を取得する。そして取得された信号レベル値113、信号レベル値121を順次メモリ22へ格納する。変動量算出ステップ104(変動量検出手段の一例として用いた)では、メモリ22に格納された信号レベル値113、信号レベル値121のうちで、連続して取得したn個の信号レベル値の変動量114、変動量122を算出する。このとき変動量114、変動量122には、n個の信号レベルにおける分散値を用いることや、連続して取得された2個の信号レベル間での変動量をn個平均した値が用いられる。
ここで計数ステップ105(計数手段の一例として用いた)では、変動量の値と、予め定められた閾値115とを比較し、変動量が閾値115よりも小さい場合に計数する。そして変動量個数判定ステップ106によって、m個の変動量の算出が完了するまで上記ステップが繰り返される。
ここで、フェージング周波数が低い場合には、信号レベルの極大値近傍での変動量は小さいので、計数ステップ105による計数値は大きくなる。一方フェージング周波数が大きい場合には、フェージング周波数が低い場合に比べて、信号レベルの極大値近傍での変動量は大きくなり、計数ステップ105による計数値は小さくなる。従って、この計数ステップ105での計数値によって、検波された信号レベルの変動量が小さい領域の度合いを検出できるので、フェージング周波数が検出できるわけである。
それでは、この検出方法について図面を用いてさらに詳しく説明する。なお、この動作を判りやすくするために、便宜上5個(n=5)の信号レベル値を用いて変動量を算出し、変動量20個(m=20)によってフェージング周波数を推定するものとしている。図6(a)において、横軸は時間であり、縦軸は信号のレベルである。まずサンプリングステップ103では、検波器55aあるいは検波器55bで検出された信号レベル112を時間間隔111の間隔で順次サンプリングし、取得された時間の順で信号レベル値113がメモリ22に格納される。このとき、サンプリングステップ103では、信号レベル値113aから信号レベル値113eの5個の信号レベル値が取得される。なお、本実施の形態における時間間隔111は、1ミリ秒としている。
次に図6(b)において、横軸は時間であり、縦軸は変動量の値である。変動量算出ステップ104では、サンプリングステップ103で取得された5個の信号レベル値113a〜信号レベル値113eの値から変動量114aを算出する。なお本実施の形態において変動量114aは、信号レベル値113a〜信号レベル値113eの二乗平均による分散値を用いている。
計数ステップ105では、算出された変動量と閾値115とを比較し、変動量が閾値115以下である場合にカウントアップする。例えば変動量114aは閾値115より大きいので、カウントされず計数値は0のままである。
このとき、変動量の個数は1個であるので個数判定ステップ106によって、計数ステップ105の後で再度サンプリングステップ103が繰り返される。このときサンプリングステップ103では、新たな信号レベル値113fの1個だけが取得され、メモリ22に格納された最も古い信号レベル値113aに置き換えて記憶される。このようにすることによって、変動量算出ステップ104では、信号レベル値113b〜信号レベル値113fの値から変動量114bを算出する。ここで計数ステップ105では、変動量114bと閾値115とを比較する。その場合も変動量114bは閾値115以上であるのでカウントされず計数値は0のままとなる。
そして、順次取得した信号レベル値を演算してゆくが、信号レベル値113g〜信号レベル値113kでの変動量114gを算出すると、変動量114gの値は閾値115より小さくなる。従って計数ステップ105で計数され、計数値は1となる。
同様にして信号レベル値113h〜信号レベル値113xのうちの連続した5個の信号レベル値により、残り13個の変動量114h〜変動量114tが算出される。このような手順によって、24個の信号レベル値(信号レベル値113a〜信号レベル値113x)から、20個の変動量(変動量114a〜変動量114t)の算出が完了する。このとき変動量114g〜変動量114nの8個の値が、閾値115以下であるので、計数ステップ105での計数値は8となる。
次に上述した方法を用いて、大きな周波数のフェージングを検出した場合について説明する。図7(a)において、横軸は時間であり、縦軸は信号のレベルである。また図7(b)において、横軸は時間であり、縦軸は変動量の値である。フェージング周波数が高い場合に信号レベルは急激に変化するので、それらの値の分散は大きくなり、変動量の値は大きくなる。従って24個の信号レベル値(信号レベル値121a〜信号レベル値121x)から算出された20個の変動量(変動量122a〜変動量122t)は、周波数が小さい場合の変動量(変動量114a〜変動量114t)よりも大きな値となる。
つまり計数ステップ105において、変動量が閾値115よりも小さいものの個数は少なくなることとなる。例えば図7(b)の場合、変動量が閾値115より小さなものは、変動量122d、変動量122l、変動量122tの3個だけとなるので、計数ステップ105での計数値は2となる。
以上のように、計数ステップ105で計数された計数値が大きければフェージング周波数が小さく、逆に計数値が小さければフェージング周波数が大きいということとなる。従って以上のような方法を用いれば、計数ステップ105で計数された計数値によって、フェージング周波数を推定することが可能となる訳である。
なお本実施の形態において変動量の算出は、5個の信号レベル値が揃い次第に都度行ったが、これは24個の信号レベル値取得、格納した後に、これら24個の信号レベル値から変動量20個を計算しても良い。この場合、サンプリングする時間の間に変動量の計算を完了する必要がないので、変動量の計算時間が長くてもよく、複雑な計算処理を行わせることや、変動量を算出するためのデータの個数を増やすことも可能となる。また、たとえサンプリング時間が変動量の計算時間より短いような場合においても、計算とサンプリングとを並行して実行する必要がなく、制御回路65の回路構成を簡素化できる。同様に、計数ステップ105も20個の変動量を一気に比較して計数値を算出しても良い。
以上のようなフェージング推定方法を用いれば、変動量算出ステップ104において、信号レベルの変動を精度良く検出することができる。これにより、計数ステップ105での計数値は、極大値近傍での傾きが小さくなる領域の長さ度合いを精度良く表せることとなる。従って、計数値を用いてフェージング周波数を推定することができるので、谷の時間を計測することなくフェージング周波数の検出ができ、フェージング周波数の小さな場合においても検出時間を短くできることとなる。
ここで、特に受信チャンネルの周波数が低い場合には波長が長いので、フェージング周波数も低くなり、このフェージングによってレベルが落ち込む時間が長くなる。一方携帯電話のような機器のように周波数が高い場合には、同じ低速移動でもフェージング周波数は高くなり、フェージングによってレベルが落ち込む時間は短くなる。従って特に、周波数が低いチャンネルにおける低速移動では、フェージング周波数が小さくなり、レベルの落ち込む時間が長くなることとなる。従って、本発明は特にこのように受信周波数が低周波から高周波までの広い帯域が使用され、かつ移動速度が遅いような条件が存在する携帯TV放送受信用の受信器などに用いると良く、受信チャンネルや移動速度にかかわらず良好に受信が可能となる。
なお最新の信号レベル値に過去の信号レベル値の重みを付けて算出しているので、過去の履歴を加味した変動量が算出される。さらに取得した5個の信号レベル値の二乗平均による分散値を変動量としているので、取得した信号レベルのばらつき量を精度良く検出できることとなる。逆に言えば、ばらつきの小さな領域の長さを精度良く検出できることとなる。
また、信号レベルが高い山の頂点部分で判定するので、ノイズなどによる影響を受け難くなり、入力されたTV放送波の信号レベルが小さい場合でも、精度良くフェージング周波数を検出することができる。
そして発明者の実験によれば、以下の条件で、精度良くフェージング周波数が推定できることが確認した。具体的には信号レベル値を取得する間隔を1ミリ秒として、10個(n=10)の信号レベル値により変動量を算出し、フェージング周波数を判定するために、100個の変動値(m=100)を用いてフェージング周波数を推定することで精度良くフェージング周波数を検出することができた。そしてこの場合、判定時間は約110ミリ秒である。
なお本実施の形態では、信号レベル値の二乗平均によって分散度合いを算出しているが、これは他の重み付け平均などを用いても良い。また、単位時間内にある閾値を通過する回数や、単位時間における信号レベル値を微分し、その微分値の平均などからフェージング周波数を推定しても良い。
次にフェージング補正ステップ93b、フェージング補正ステップ99bについて、以下図面を用いて詳細に説明する。図8は、本実施の形態におけるフェージング補正ステップのフローチャートである。図8において、最初にチャンネル判定ステップ125が行われる。このチャンネル判定ステップ125では入力キー67から入力された選択信号とメモリに格納された選択信号とを比較し、受信希望チャンネルの変更の有無を判定する。そしてチャンネルの変更が無かった場合にはフェージング検出ステップ93aで検出された計数値をそのまま出力する。一方、チャンネル判定ステップ125でチャンネルが変更されたと判定した場合、補正ステップ126が行われる。
ここで、チャンネル判定ステップ125においては、チャンネル変更前後での受信周波数が近い場合など、チャンネル差が実質的にフェージング周波数への影響を無視できるような場合には、チャンネルは変更されていないものと判定する。そのために、チャンネル判定ステップ125では、チャンネル変更前後のチャンネル変化数と予め定められた閾値とを比較する。そして、チャンネル変更前後のチャンネル変化数が予め定められた値以上である場合には、チャンネルが変更されたものと判定し、補正ステップ126が行われる。
一方、チャンネル変更前後でのチャンネル変化が予め定められた値未満である場合には、チャンネルが変更されていないものと判定し、チャンネル変更前の計数値が維持出力される。そしてこの場合に、変更前に所得したデータはリセットステップ127でリセットされる。このようにすることによって、チャンネル変更後に取得されたレベル値によるフェージングが確定されるまでの間、チャンネル変更前の計数値が維持されることとなる。このように補正ステップ126が行われない分、素早くフェージングを特定できる。
なお本実施形態におけるチャンネル判定ステップ125では、変更前後のチャンネルが20チャンネル以内である場合には、チャンネルの変更は無いものと判定している。
ここで、受信チャンネル(周波数)が低くなると、波長が長くなり、フェージング周波数は小さくなる。逆に受信チャンネル(周波数)が高くなると、波長が長くなり、フェージング周波数は大きくなる。従って補正ステップ126では、受信チャンネルが低いチャンネルから高いチャンネルへと(周波数が高くなる方向)変更された場合には、計数値を小さくする。逆に受信チャンネルが高いチャンネルから低いチャンネルへと(周波数が低くなる方向)変更された場合には、計数値を大きくする。つまり受信するチャンネルの周波数が高くなる方向へ変更された場合には、フェージング度合いが大きくなる方向へと補正し、周波数が低くなる方向へ変更された場合には、フェージング度合いが小さくなる方向へと補正する訳である。
そのためにメモリ22には、選択信号と計数値との対応テーブルが格納される。そして、フェージング補正ステップ126では、フェージング検出ステップ93aで計数された計数値の値が、このテーブルに基づいて変更前後のチャンネル(周波数)の差分に応じて補正されて出力される。
そして補正ステップ126の後にリセットステップ127が設けられる。このリセットステップ127では、メモリ22に記憶された信号レベル値113あるいは信号レベル値121や、変動量114あるいは変動量122が消去される。そしてこのようにして一旦チャンネル変更前のデータが消去されることで、チャンネル変更後のフェージング周波数はチャンネル変更後に取得された値によって検出されることとなる。従って、チャンネル変更後において検出されたフェージング周波数の精度は高くなる。
また本実施の形態におけるフェージング検出ステップ93a、99aやフェージング補正ステップ93b、99bをサーチ受信において用いても良い。いわゆるサーチ受信とは、受信チャンネルを1チャンネルづつ順次変更して受信するような場合であり、この場合サーチ開始チャンネルから予め定められたチャンネル数をアップあるいはダウンした場合に、チャンネルが変更されたものとして判定する。この場合チャンネル判定ステップ125では、サーチ開始チャンネルと現在のサーチチャンネルとの差と予め定められた値とを比較する。ただし、現在のサーチチャンネルが予め定められた値を超え、チャンネル判定ステップ125でチャンネルが変更されたと判定された場合には、チャンネルが変更されたと判定されたチャンネルと現在のサーチチャンネルとの差と予め定められた値とを比較する。これによりサーチ時においても素早くフェージングを特定することができる。
本実施の形態において制御回路65には、検波器55a、検波器55bの出力を供給したが、これはA/D変換器56a、A/D変換器56bの出力を供給しても良い。この場合、別途A/D変換を行う必要がないので、制御回路65を構成する集積回路に別途A/D変換器を設ける必要がない。従って、制御回路65を構成する集積回路を小型化でき、高周波受信装置51を小型化できる。
このとき、A/D変換器56a、A/D変換器56bのサンプリング周波数を受信器52、53から出力される信号の周波数と同じとすれば、A/D変換器56a、A/D変換器56bを検波器55a、検波器55bとして用いることもできる。この場合検波器55a、検波器55bが不要となるので、高周波受信装置51の小型化と低価格化とが実現できる。
また一般的に復調回路54の入力端子54aと検波器55aとの間や、入力端子54bと検波器55bとの間にはそれぞれ利得制御増幅器(図示せず)が挿入され、これらの利得制御増幅器の制御端子と検波器55aや検波器55bとの間のそれぞれには、AGC回路が挿入されている。そして制御回路65には、このAGC回路の出力信号を供給しても良い。この場合、AGC回路に設けられたローパスフィルタによって不要な高周波ノイズがカットされるので、ノイズによる誤判定などが起こりにくくなる。
(実施の形態2)
以下、本実施の形態について図面を用いて説明する。図9は、本実施の形態における高周波受信装置131のブロック図である。図9において、アンテナ4に入力されたTV放送信号は、高周波受信装置131の入力端子131aへ供給される。この入力端子131aへ供給されたTV放送信号は、利得可変増幅器132へ供給され、利得制御端子132aへ供給される制御信号に応じたレベルに増幅される。
混合器133は、利得可変増幅器132の出力が一方の入力に供給されると共に、他方の入力に局部発振器134の信号が供給される。そして入力されたTV放送信号と局部発振器134の信号とを混合して規定の周波数信号へと変換するものであり、本実施の形態では4MHzの中間周波数へと変換している。本実施の形態における中間周波数は4MHzとしたが、これは入力される周波数などに応じて適宜決定すればよい。なおこの混合器133には、直接I,Q変換(いわゆるダイレクトコンバージョン)を行う混合器を用いても良い。
なお混合器133の出力と利得制御端子132aとの間には、AGC回路135が挿入されている。このAGC回路135では、利得可変増幅器132から出力される信号のレベルを検知する。そして、検出された信号レベルが混合器133において飽和し歪みなどを発生する限界レベル(いわゆる強電界)以上の信号である場合に、AGC回路135は利得可変増幅器132の利得を小さくする。つまり利得可変増幅器132は、限界レベル以上の信号を限度レベル以下の一定レベルの信号へ減衰して出力する。従って、混合器133は歪みを生じ難くなる。
混合器133の出力はフィルタ136へ供給されて、受信するチャンネル以外の不要な信号を抑圧する。本実施の形態においてフィルタ136は、4MHzの周波数を中心とし、通過帯域が6MHzのバンドパスフィルタである。なお混合器133にダイレクトコンバージョンを行う混合器を用いた場合、フィルタ136には、ローパスフィルタを用いる。
このフィルタ136の出力は、利得可変増幅器137を介して復調回路138へ供給される。この復調回路138では、入力された信号が復調と誤り訂正が行われて、出力端子131bより出力される。
ここで検波器139には、利得可変増幅器137の出力が供給され、利得可変増幅器137から出力された信号の信号レベルを検波する。この検波器139と利得可変増幅器137の利得制御端子137aとの間には、利得制御回路140が挿入され、検波器139で検出されたレベルと予め定められたレベル値との差に応じた直流信号を出力する。そのために利得制御回路140には、検波器139の出力と基準電圧との差に応じた電圧を出力する比較器と、この比較器の出力が供給されたローパスフィルタ(図示せず)とを含んでいる。
ここでフィルタ136の出力はフェージング検出器151へも供給され、フィルタ136の出力信号のフェージング周波数を検出する。なおフェージング検出器151には、フィルタ136の出力が供給される検波器152と、この検波器152の出力が供給されたA/D変換器153と、このA/D変換器153と利得制御回路140との間に設けられた制御回路154と、この制御回路154に接続されたメモリ155とを含んでいる。
なお本実施の形態における制御回路154でのフェージング周波数の検出は、実施の形態1におけるフェージング検出ステップ93a、フェージング検出ステップ99a、フェージング補正ステップ93b、フェージング補正ステップ99bと同じ検出方法を用いている。
そしてフェージング検出器151の出力が利得制御回路140へ接続されて、利得制御回路140の時定数が切り替えられる。例えばこの時定数の切り替えは、利得制御回路140において利得制御回路140のローパスフィルタを構成するコンデンサの容量を切り替えたり、あるいは時定数の異なるフィルタを予め複数個準備し、フィルタ自体を切り替えたりすることで行われる。
ここで、利得制御回路140の時定数と受信品質との関係について説明する。なおここでは受信品質の代表としてC/N値を用いている。図10はフェージング周波数と高周波受信装置131の所要C/N値との関係を示した関係図である。図10において、横軸161はフェージング周波数であり、縦軸162は所要C/N値である。特性曲線163、特性曲線164、特性曲線165は、所要C/N値のカーブであり、特性曲線163、特性曲線164、特性曲線165の順で利得制御回路140の時定数は小さくなっている。
発明者らの実験によれば、フェージング周波数と所要C/N値との間には、以下のような関係があった。具体的には周波数166以下のフェージング周波数が小さな領域(低速移動領域167)では特性曲線165が最も所要C/N値が小さい。周波数166と周波数168との間(中低速移動領域169)では特性曲線163が最も所要C/N値が小さい。周波数168と周波数170との間(中高速移動領域171)では特性曲線164が最も所要C/N値が小さい。そして周波数170以上(高速移動領域172)では特性曲線163が最も所要C/N値が小さい。
なお発明者らの実験では、周波数166が約20Hz、周波数168が約35Hz、周波数170が約65Hzであった。そしてTV放送波の周波数においては、特に10Hz以下と、50Hz以上のフェージング周波数において所要C/N値が大きくなることも確認している。
このようにフェージング周波数と時定数との関係が、このようになる理由は定かではないが、発明者らは以下の理由によるものと考えている。フェージングによる信号の山谷を改善するのであるから、利得制御回路140のローパスフィルタのカットオフ周波数はフェージング周波数以上とすべきである。従って基本的には時定数はフェージング周波数に応じて小さくすべきである。ただし、時定数が小さい場合、高いフェージング周波数においてオーバーシュートや遅延などにより制御ループの安定性が低くなるものと考えられる。そこで、中高速移動領域171よりも時定数を大きくすることで、制御ループの安定性が大きくなり、所要C/N値が小さくなったと考えられる。
一方低速移動領域167では谷部分の時間が長くなることで受信品質が大きく劣化するので、この谷部分でのレベル補正が必要である。ここで低速移動におけるフェージング周波数は小さいが、谷部分においては急激にレベルが落ち込み、レベル変化(傾き)が大きくなる。従って、時定数が大きいと制御ループが急激なレベル変動に追従できなくなることとなるので、時定数を小さくすることによって谷部分での制御ループの追従性が改善され、所要C/N値が小さくできたと考える。
なお発明者らの実験によれば、低速移動領域167での時定数は、中低速移動領域169における時定数より小さくした方が所要C/N値が小さくなるという結果を得ている。これは、中低速移動領域169よりも谷部分での変化は小さいために、中低速移動領域169に比べてさらに時定数を小さくしても、オーバーシュートなどによる制御ループの安定性の劣化が生じ難くなるためであると考えられる。
以上のように、フェージング周波数に応じて適する時定数が異なるので、制御回路154は計数ステップ105で計数された計数値に応じて時定数を切り替えることとなる。なお本実施の形態において制御回路154にはメモリ155が接続され、このメモリ155には計数値と時定数の設定値との対応テーブルが格納される。これにより、フェージング周波数に応じて適した時定数とすることができるので、高周波受信装置131の所要C/N値を小さくできる。従って、フェージングを良好に改善することができる。また、チャンネル変更時にチャンネル変更前の計数値を選択信号を用いて補正することで、チャンネル変更後の計数値が算出されるので、チャンネル変更時においても素早く時定数を設定できる。従って素早く受信品質を改善できることとなる。
なお、メモリ155に受信チャンネルと計数値とに対応した時定数の設定値を格納しておけば、フェージング補正ステップ93b、99bにおいてチャンネル変更後の時定数の設定値を直接出力させることも可能である。
なお、変動量算出ステップ104では、過去の信号レベルの履歴も考慮された分散値により変動量が算出されるので、信号レベルの変動を精度良く検出することができる。従って、計数ステップ105での計数値は、極大値近傍での傾きが小さくなる領域の長さ度合いを精度良く表せることとなる。これにより、計数値を用いてフェージング周波数を推定することができるので、低いフェージング周波数に対して検出時間を短くできることとなる。従って特に所要C/N値が悪化する10Hz以下のような低いフェージング周波数に対しても短時間で所要C/N値を改善でき、フェージングによる受信品質の劣化を素早く改善できることとなる。
さらに本実施の形態では、検波器152にはフィルタ136で不要な信号が除去された信号が入力されるので、検波器152での検出は妨害信号などに影響が小さくできる。従って、検波器152でのレベルの検出精度が良好となるので、精度良く制御を行うことができる。
さらにまた、検波器152の上流に、強電界で動作する利得可変増幅器132を設けることで、強電界領域において検波器152はフェージングを検出しないようにしている。これは、強電界においては信号のレベルが大きく、フェージングが発生しても受信品質は劣化し難いためである。逆に強電界下において時定数を小さくすると、オーバーシュートの影響が発生しやすくなり、制御ループの安定性が悪くなる。従って検波器152は、強電界下においてフェージングが検知できないので、強電界下において時定数の切り替えは行われないので、制御ループは安定する。加えて検波器152には周波数特性や、入力のダイナミックレンジを小さくできるので安価な検波器を使用できる。従って低価格な高周波受信装置131を実現できる。
なお、本実施の形態では、フェージングを推定するために検波器152を設けている。しかし以下の構成とすることで検波器152を不要とでき、高周波受信装置131の小型化と低価格化とが実現できる。
1つ目は中間周波数とA/D変換器153のサンプリング周波数とを同じとすることで、A/D変換器で信号の検波を行わせるものである。このようにすれば、A/D変換器153を検波器152として用いることもでき、検波器152が不要とできる。例えば、本実施の形態においてA/D変換器153のサンプリング周波数を4MHzとすれば検波器152が不要とできる。
また、図11に示すように検波器139の出力をA/D変換器153へ供給することで、検波器152を不要とする構成としてもよい。
ここで、復調回路138には利得可変増幅器202とA/D変換器203と復調回路204とAGC回路205とを含んでいる。そしてAGC回路205は、A/D変換器203と利得可変増幅器202の利得制御端子との間に挿入されてフィードバック制御ループが構成されている。そして制御回路154の出力は、利得制御回路140に代えて、AGC回路205へ供給される。そして、このAGC回路205の時定数をフェージング周波数に応じて切り替えるものである。この場合、検波器152が不要となるので、高周波受信装置131を小型化できるとともに、低価格化することができる。なおこの場合、利得可変増幅器202の時定数は固定となる。