JPWO2011065434A1 - 船舶のバラスト水の処理方法 - Google Patents

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Abstract

バラスト水にアンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを混合し、バラスト水中の水生生物を殺滅・殺菌させ且つトリハロメタン類の発生を抑制することを特徴とするバラスト水の処理方法、及び当該方法に用いるバラスト水の処理剤。

Description

本発明は、船舶のバラスト水を安全に排出できるよう処理する方法、及び当該処理方法に用いるバラスト水の処理剤に関する。
近年、水生生物がその自然分布域を越えた水域に人為的に運ばれて定着し、新たな水域の生態系を乱している事例が、各国で報告され問題となっている。このような生物は外来侵入生物と呼ばれ、その多くは二枚貝や、ヒトデ、フジツボ類、或いは海藻のような底生生物・付着生物である。移動定着の原因としては、船体への付着やバラスト水への混入といった船舶を介する場合、養殖や放流のための輸入あるいは輸入水産物に混入しての移動といった水産業に起因する場合等が考えられている。海洋調査等の研究の進展に伴い、外来侵入生物として渦鞭毛藻類、カイアシ類、クシクラゲ等のプランクトンがバラスト水によって運ばれるのはもちろんのこと、底生・付着生物も幼生のプランクトン時にバラスト水によって大量に運ばれていることが認識されるようになり、これが生態圏撹乱の大きな原因の一つであると考えられている。このような実情に鑑み、バラスト水による水生生物の移動を防ぐことの重要性が指摘され、陸地から200海里以上離れた水域でのバラスト水交換が義務付けられている。
国際海事機関ではこの問題を1980年代後半から取り上げ、2004年2月には「船舶のバラスト水および沈殿物の規制および管理のための国際条約(INTERNATIONAL CONVENTION FOR THE CONTROL AND MANAGEMENT OF SHIPS’ BALLAST WATER AND SEDIMENTS)」を採択して、バラスト水管理を規制しようと努めている。この条約によって、国際航海に従事する船舶には承認されたバラスト水管理システム(バラスト水処理装置など)の設置を義務付ける等といった今後の求められる方向性が明確にされている。さらには、前述のように陸地から200海里以上離れた水域でのバラスト水交換によって、交換中の船舶が転覆するという事故もあり、バラスト水の規制管理強化の方向性が加速されている。
さらに近年、バラスト水処理に伴って発生又は副生する化学物質の存在についても関心が高まっている。これらの化学物質を何ら処理せず、バラスト水を目的海域等で排出した場合に、上述した外来侵入生物の場合と同様、海洋環境を汚染し、ひいては生態系に悪影響を与えることが懸念されている。化学物質による汚染は、例えば、バラスト水中の外来侵入生物を殺滅・殺菌する目的で混入された殺菌剤等の化学物質が、殺滅・殺菌後においてもバラスト水中に残存し、これを処理しないまま排水を行うこと等によっても生じ得る。そのため、排出に際して外来侵入生物と微量であっても発生又は副生する化学物質との双方を除去し、生態系に悪影響を与えることなく安全な状態でバラスト水を排出しうるシステムの構築が希求されている。
一般的に行われているバラスト水の処理方法では、何らかの有害物質が生成することが多く、例えば、次亜塩素酸塩などを用いてバラスト水を塩素処理する場合、微量副生物としてブロモホルムを生成する。また、ブロモホルムの他に、海水中に含まれる塩化物や臭化物等のハロゲンで置換されたトリハロメタン類が発生することもある。
トリハロメタン類の低減化については、飲料水を塩素処理する際に生成するトリハロメタン類、特にクロロホルムを低減させる試みが種々行われている。水道水では、殺菌消毒のために次亜塩素酸塩である次亜塩素酸ナトリウムが広く用いられているが、この次亜塩素酸ナトリウムとpH7程度の中性の原水中に存在するフミン質とが反応し、副生成物としてクロロホルムをはじめとするトリハロメタン類を生成する。クロロホルム等の副生を抑制するために、塩基性にした次亜塩素酸ナトリウムにアンモニア等のアンモニウムイオンを生成する物質を加えて予めクロラミンを生成させ、これを殺菌消毒に用いることで副生成物であるクロロホルム等の発生が抑制されることが知られている。また、飲料水等に使用するための原水からトリハロメタン類の前駆物質(フミン質等)を除去し、トリハロメタン類の発生を抑制する方法が提案されている(例えば、特公平3−15516号公報、特開平8−155493号公報、及び特開平10−202297号公報を参照)。
しかしながら、バラスト水に通常用いられる海水や汽水は、pHが8程度であること、臭化物イオンを豊富に含むこと等中性の飲料水とは性質が大きく異なり、これら海水や汽水においてブロモホルム等のトリハロメタン類の発生を抑制することについては未だ検討がなされていない。
本発明は、船舶のバラスト水中における外来侵入生物等の水生生物を殺滅・殺菌するとともに、ブロモホルムをはじめとするトリハロメタン類の発生を抑制しうるバラスト水の処理方法、及び当該処理方法に用いるバラスト水の処理剤を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題に鑑み、バラスト水中の水生生物を殺滅・殺菌して外来侵入生物等の移動定着を防止するとともに、多量に生成した場合には有害となる恐れがあるブロモホルム等の発生を抑制する方法について鋭意検討した。その結果、バラスト水にアンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを混合することで、海水条件下においてもバラスト水中のブロモホルムをはじめとするトリハロメタン類の発生を抑え、排水するバラスト水中のブロモホルム等の濃度を大幅に低減できるとともに、バラスト水中の水生生物を効果的に殺滅・殺菌することができることを見出した。本発明は、これらの知見に基づき成されるに至ったものである。
本発明によれば、下記の手段が提供される:
(1)バラスト水にアンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを混合し、バラスト水中の水生生物を殺滅・殺菌させ且つトリハロメタン類の発生を抑制することを特徴とするバラスト水の処理方法。
(2)排出時のバラスト水中のブロモホルムの濃度が300μg/L以下であることを特徴とする前記(1)項に記載のバラスト水の処理方法。
(3)前記ブロモホルム濃度が150μg/L以下であることを特徴とする前記(2)項に記載のバラスト水の処理方法。
(4)前記アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩との混合により、バラスト水中の残留塩素濃度を1mg/L以上100mg/L以下に調整して水生生物を殺滅・殺菌することを特徴とする前記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載のバラスト水の処理方法。
(5)前記バラスト水中の残留塩素濃度を2mg/L以上20mg/L以下に調整して水生生物を殺滅・殺菌することを特徴とする前記(4)項に記載のバラスト水の処理方法。
(6)前記バラスト水中の残留塩素濃度を2mg/L以上10mg/L以下に調整して水生生物を殺滅・殺菌することを特徴とする前記(4)項に記載のバラスト水の処理方法。
(7)前記アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩との混合により、バラスト水中の水生生物を殺滅・殺菌処理した後、該バラスト水中の残留塩素を亜硫酸塩によって還元・中和処理することを特徴とする前記(1)〜(6)項のいずれか1項に記載のバラスト水の処理方法。
(8)バラスト水にアンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを混合するにあたり、アンモニア又はアンモニウム塩をバラスト水に混合した後、次亜塩素酸塩をバラスト水に混合することを特徴とする前記(1)〜(7)項のいずれか1項に記載のバラスト水の処理方法。
(9)バラスト水にアンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを混合するにあたり、アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを予め混合しバラスト水に加えることを特徴とする前記(1)〜(7)項のいずれか1項に記載のバラスト水の処理方法。
(10)バラスト水にアンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを混合するにあたり、次亜塩素酸塩をバラスト水に混合した後、アンモニア又はアンモニウム塩をバラスト水に混合することを特徴とする前記(1)〜(7)項のいずれか1項に記載のバラスト水の処理方法。
(11)バラスト水にアンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを混合するにあたり、アンモニア又はアンモニウム塩を事前にバラストタンクへ添加した後、次亜塩素酸塩を混合したバラスト水をバラストタンクに注入することを特徴とする前記(1)〜(7)項のいずれか1項に記載のバラスト水の処理方法。
(12)前記アンモニア又はアンモニウム塩が、次亜塩素酸塩と反応してクロラミンを生成しうる化合物であることを特徴とする前記(1)〜(11)項のいずれか1項に記載のバラスト水の処理方法。
(13)アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを組合わせてなる前記(1)〜(12)項のいずれか1項に記載のバラスト水の処理方法に用いるバラスト水の処理剤。
(14)前記アンモニア又はアンモニウム塩が、次亜塩素酸塩と反応してクロラミンを生成しうる化合物であることを特徴とする前記(13)項に記載のバラスト水の処理剤。
本発明によれば、船舶のバラスト水中において外来侵入生物となり得る水生生物を殺滅・殺菌するとともに、バラスト水中におけるブロモホルムをはじめとするトリハロメタン類の発生を効果的且つ持続的に抑制し、排出するバラスト水中のブロモホルム等のトリハロメタン類の濃度を低減できるバラスト水の処理方法を提供することができる。また、本発明によれば、前記処理方法に用いるバラスト水の処理剤を提供することができる。
本発明の処理方法によれば、処理剤として入手が容易で低コストな成分を使用し、外来侵入生物や有害性が懸念される化学物質によって排出水域の環境・生態系を汚染することなく安全にバラスト水を排出することが可能となる。
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、下記の記載からより明らかになるであろう。
本発明のバラスト水処理方法は、バラスト水中の水生生物を効果的に殺滅・殺菌する方法であり、しかも当該殺滅・殺菌処理を行うにあたりブロモホルム等の発生を抑制できるものである。より具体的には、バラスト水にアンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを混合することで、取水から排水までの間においてバラスト水中の水生生物を殺滅・殺菌し、且つその間バラスト水中でブロモホルムをはじめとするトリハロメタン類(以下、ブロモホルム等という)が発生することを抑制し、バラスト水中のブロモホルム等の濃度を低いレベルに抑えることを特徴とする。本発明の方法によれば、取水水域の水生生物等を排水水域に持ち込むことなく、しかもブロモホルム等の濃度が十分に低減された状態でバラスト水を船外に排出することが可能となるため、排水水域の海洋環境及び海洋生態系への悪影響を回避できる。
本発明において「殺滅・殺菌」とは、生物等の個体死のほか、生きていても繁殖できない状態を含み、例えば、目的地までの航行中にバラスト水中において、微生物や細菌等の発生ないしは増殖を防止することも包含する。また、「バラスト水中の水生生物」とは、バラスト水中に含まれうる細菌、微生物及び生物をいい、バラスト水に含まれる水生生物はもちろん、バラストタンク底部に堆積した底質中に含まれる生物や卵等も含まれる。これらの水生生物には、本体の分布地域を超えて移動定着することで、移動先の水域の生態系を乱すことが懸念される外来侵入生物が含まれる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のバラスト水の処理方法は、殺滅・殺菌成分として次亜塩素酸塩とともにアンモニア又はアンモニウム塩を併せて用いる。
バラスト水は、船舶の安定性を保つために船舶の船倉内またはバラストタンク内に積載される水で、一般的に海水や海水と淡水とが混ざり合った汽水を用いることが多い。取水されたバラスト水中には多くの水生生物や細菌等が含まれ、これらを殺滅・殺菌するために殺菌剤を用いることが行われている。強力な殺菌剤である塩素や次亜塩素酸は、バラスト水中の生物等の除去のため好適に用いることができるが、その一方で殺滅・殺菌目的で添加した塩素や次亜塩素酸が、バラスト水として用いた海水や汽水に溶存している有機物(例えば、フミン質)と反応して、ブロモホルム等が発生するという懸念がある。
このような事情に鑑み、本発明は、バラスト水中に次亜塩素酸塩成分に併せて、アンモニア成分又はアンモニウム塩成分を含有させることを特徴とする。アンモニア又はアンモニウム塩を併せて使用することにより、次亜塩素酸塩を単独で用いた場合と比較して、バラスト水中の水生生物に対する殺滅・殺菌能力を維持したまま、バラスト水中におけるブロモホルム等の発生を効果的かつ持続的に抑制又は防止することができる。本発明の方法により処理されたバラスト水は、取水から排水までの間においてブロモホルム等の発生が低いレベルに抑えられており、排水時に更なるブロモホルム等の低減化処理等を施すことなく、安全に排出又は再利用することができる。
本発明におけるトリハロメタン類としては、ブロモホルム(トリブロモメタン)の他に、海水中の塩化物や臭化物などで置換されたクロロホルム(トリクロロメタン)、ブロモジクロロメタン、ジブロモクロロメタン等が挙げられる。中でも、本発明の処理方法はブロモホルムの発生を好適に抑制することができる。上述のようにバラスト水は海水や汽水を用いることが多く、一般に海水や汽水中の臭化物イオン濃度は淡水中よりも高いためブロモホルムが生成されやすい。そのため、次亜塩素酸塩等によって発生するトリハロメタン類の中でも、特にブロモホルムの発生を抑制することが環境・生態系保護の点から重要である。本発明の処理方法は、バラスト水として海水又は汽水を用いた場合においても効果的かつ持続的にブロモホルム等の発生を抑制することができる。
バラスト水中のブロモホルム濃度については、国によっては個別の基準値を設定する可能性もあり、今後規制が厳格化されることが見込まれる。排出時のバラスト水に含まれる化学物質に関しては、国際海事機関が2004年2月に定めた「船舶バラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための国際条約」において難分解性、生物蓄積性及び毒性(Persistent,Bioaccumulative and Toxic(PBT))、及びPEC/PNEC(PEC:Predicted Environmental Concentration/PNEC:Predicted No Effect Concentration)という環境影響評価が設けられている。また、上記評価を満足しても更に環境にやさしいことが望まれる傾向にある。通常、排出時のバラスト水中のブロモホルム濃度は500μg/L前後であることが多い。本発明の処理方法を用いれば、後述の実施例でも実証されているように、排水時のバラスト水のブロモホルム濃度を500μg/L以下とすることができる。さらに、本発明においては当該ブロモホルム濃度を300μg/L以下となるよう処理することが好ましく、150μg/L以下となるよう処理することがより好ましく、130μg/L以下となるよう処理することが特に好ましい。
バラスト水中含まれる水生生物を効果的に殺滅・殺菌するためには、殺滅・殺菌や酸化反応に有効に作用しうる残留塩素がバラスト水中にどの程度含まれているかが重要であり、これは残留塩素濃度として表すことができる。残留塩素は有効塩素ともいい、次亜塩素酸等の遊離塩素及びクロラミンやブロラミン等の結合塩素を含む概念である。残留塩素濃度は有効塩素濃度とも言い、遊離塩素や結合塩素の酸化能力を塩素換算で表したものである。
本発明においては、アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とをバラスト水中に混合させることにより、残留塩素として次亜塩素酸等の遊離塩素とクロラミンやブロラミン等の結合塩素とが生じる。これらの残留塩素は生物等に対して殺菌・殺滅作用を発揮する。クロラミンは次亜塩素酸塩とアンモニア又はアンモニウム塩が反応して生成する物質である。また、ブロラミンは、海水に添加された次亜塩素酸塩の塩素と海水中の臭素が置換され生成した次亜臭素酸塩が、アンモニア又はアンモニウム塩と反応して生成するものであり、クロラミンと同様に結合塩素の一種である。
本発明においては、アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを用いた殺滅・殺菌処理によって、排出時のバラスト水が前記「船舶バラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための国際条約」に定められているバラスト水排出基準を満たしていることが好ましい。具体的な基準としては、前記条約のD節:バラスト水管理基準 規則D−2:バラスト水排出基準で、最小サイズ50μm以上の生物について、1m当たり生存可能数10未満、また、最小サイズ50μm未満で10μm以上の生物について、1mL当たり生存可能数10未満の排出とされ、さらに人間の健康基準としての指標微生物として(1)病毒性コレラ菌(O1及びO139)について、1cfu/100mL未満、又は動物プランクトンのサンプル1cfu/1g未満(湿重量)、(2)大腸菌について、250cfu/100mL未満、(3)腸球菌について、100cfu/100mL未満と示されており、これらを満たすよう殺滅・殺菌処理を行うことが好ましい。なかでも、本発明の処理方法は、細菌および10μm以上のサイズの生物を殺滅・殺菌するために好適に用いることができる。10μm以上のサイズの生物の具体例としては、例えば、動物プランクトン、植物プランクトン、無脊椎動物、藻類などの水生生物があげられる。なお、前記条約の規定によれば、cfuとは、colony forming unit(群単位)のことであり、最小サイズとは、高さ、幅または奥行きのうち最小値のことである。
バラスト水中に混合するアンモニア又はアンモニウム塩の含有量及び次亜塩素酸塩の含有量は、バラスト水中の水生生物を殺滅・殺菌できればよい。例えば、上述したバラスト水排出基準を満たすよう水生生物を殺滅・殺菌可能な含有量とすることができる。結合塩素であるクロラミンの急性毒性値を表すLC50(半致死濃度)は0.012mg/Lであり、次亜塩素酸塩等に由来する遊離塩素の急性毒性値を表すLC50(半致死濃度)は0.005mg/Lである。一般に、多くの水生生物に対する急性毒性値は、0.01〜0.1mg/L付近であることから、クロラミン及び次亜塩素酸塩の急性毒性作用は高く、従って、水生生物に対する殺滅・殺菌能力も非常に高いといえる。このような殺菌・殺滅能力を考慮すると、本発明ではバラスト水中の残留塩素が1mg/L以上100mg/L以下となるようにアンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とをバラスト水に混合することが好ましく、2mg/L以上100mg/L以下となるように混合することがより好ましく、2mg/L以上20mg/L以下となるように混合することがさらに好ましく、2mg/L以上10mg/L以下となるように混合することが特に好ましい。この範囲とすることで、バラスト水中の水生生物をより効果的に殺滅・殺菌でき、また、必要量以上のアンモニア又はアンモニウム塩、次亜塩素酸塩を消費することなく実際的である。
アンモニア又はアンモニウム塩の含有量は、上述の残留塩素濃度を保持できればよく特に限定されないが、次亜塩素酸塩の初期有効塩素濃度に対して化学量論的に当量〜2当量となるようアンモニア又はアンモニウム塩を使用することが好ましく、当量〜1.5当量とすることがより好ましく、当量〜1.2当量とすることが更に好ましい。なお、次亜塩素酸塩の初期有効塩素濃度とは、バラスト水量と添加された次亜塩素酸ナトリウム量から求めた有効塩素濃度のことを言う。
本発明において、アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とをバラスト水に混合する際の態様は特に限定されない。例えば、アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とをバラストタンクに注入前のバラスト水に混合(例えば、海水をバラストタンクに取水する際の配管内等で混合)してもよいし、取水後のバラストタンクに添加し混合してもよい。なお、本明細書においてバラストタンクとは、船舶を安定させるために水を入れるものを意味し、船舶の専用のバラストタンク以外に、タンカーにおける油槽や船倉内に設置したタンク等にバラスト水を入れる場合を含むものである。
アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩との混合順についても特に限定されず、例えば、バラスト水にまずアンモニア又はアンモニウム塩を加え、次いで次亜塩素酸塩を加える方法、バラスト水にまず次亜塩素酸塩を加え、次いでアンモニア又はアンモニウム塩を加える方法、アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを予め混合し、その混合物をバラスト水に加える方法、バラストタンクに予めアンモニア又はアンモニウム塩を投入し、次いで次亜塩素酸塩が混合されたバラスト水を該タンクに注入する方法等が挙げられる。後述の実施例でも実証されているように、本発明の処理方法では、アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸ナトリウムとを予め混合してクロラミンを生成させた後にバラスト水に添加した場合であっても、アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを別々に混合してバラスト水中でブロラミンやクロラミン等を生成させた場合であっても、バラスト水中におけるブロモホルムの発生を効果的に抑制することができる。中でも好ましくは、バラスト水にまずアンモニア又はアンモニウム塩を加え、次いで次亜塩素酸塩を加える方法であり、より好ましくは、アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを予め混合し、その混合物をバラスト水に加える方法である。
アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを別々にバラスト水に混合する場合、混合間隔は残留塩素を所定の濃度に保持できるものであればよく、例えば、この間隔を1秒以上で1時間以内とすることができる。また、両者を混合する間を単にパイプで連結してもよく、間に混合器を入れてもよく、タンクを入れてもよい。この場合、アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩との混合によって生ずる臭い、又は発熱の問題を解消できる。
また、バラスト水として海水等を船舶に取りこむときに、はじめにフィルタ等によって大型の生物やプランクトンを除去してもとの生息域に戻し、その後、ろ過後のバラスト水に、上述のような添加態様及び添加順序でアンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを混合してもよい。
本発明において、アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とによる処理時間としては、バラスト水中の水生生物を殺滅・殺菌することができればよく、特に限定されない。また、当該処理時間の上限は、船舶の航海時間により決定すれば良い。例えば、バラスト水を積み込んだ後に寄港地に到着してバラスト水を排水する迄の時間から、後述する亜硫酸塩の処理時間を除いた時間とすることができる。このような処理時間であると、バラスト水中の水生生物を効果的に殺滅・殺菌することができ、かつ、支障のない排出ができ好ましい。
本発明に用いる次亜塩素酸塩としては、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩、又はカルシウム等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。なかでも、カリウム等は植物系の栄養成分となり、またバリウム等は毒性があるため、海水成分であるナトリウム塩であって取り扱いが簡素な次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。また、次亜塩素酸塩は水溶液として用いることが好ましい。
本発明で用いるアンモニア又はアンモニウム塩としては、次亜塩素酸塩と反応してクロラミンを生成しうる物質であればよい。アンモニアとして、具体的にはアンモニア、アンモニア水を用いることができる。具体的なアンモニウム塩としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、酢酸アンモニウム等が挙げられる。これらアンモニウム塩は固形で添加しても、水や海水で希釈した水溶液の形態で扱っても良いが、水溶液が取り扱い面から好ましい。
なかでも本発明においては、安価且つ取り扱いやすい点から、アンモニア水、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムが好ましく、アンモニア水又は海水成分である塩化物の無機アンモニウム塩を用いることがより好ましく、アンモニア水又は塩化アンモニウムを用いることがさらに好ましい。
本発明においては、電流滴定法、DPD(diethyl-p-phenylenediamine)法、酸化還元電位(Oxidation-Reduction Potential:以下ORPとも略する)等により残留塩素濃度を測定する方法によって、バラスト水中の残留塩素濃度を制御することも好ましい態様である。一般に、海水等の不純物を多く含む水中に次亜塩素酸塩等を添加すると、次亜塩素酸塩が分解、消費されることがある。そこで、どのような水質の水をバラスト水として用いた場合においても、水生生物の殺滅・殺菌効果を担保できるようにするためには、次亜塩素酸塩とアンモニウムイオンの混合量管理システムに加え、残留塩素濃度を測定・制御できるようなシステムを備えていることが好ましい。電流滴定法、DPD法、酸化還元電位による方法を用いると、残留塩素濃度を高精度に測定し、所望の範囲に制御することができる。
本発明においては、前述したアンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを用いてバラスト水中の水生生物を殺滅・殺菌処理した後に、該バラスト水中の残留塩素を亜硫酸塩によって還元・中和処理することが好ましい。残留塩素は、微量でも生物に対して悪影響を与える懸念があるため、バラスト水排出の際には、還元・中和して水生生物等に対して影響のないように処理してから排出する必要がある。そこで本発明においては、バラスト水中の水生生物を殺滅・殺菌処理した後、当該バラスト水中に亜硫酸塩を含有させる工程を設けることが好ましく、これによりバラスト水中の残留塩素を還元・中和して生物に影響のない安全な状態にすることができる。
本発明において、バラスト水に含有させる亜硫酸塩の量としては、バラスト水に含まれる残留塩素を水生生物等に対して影響が無い範囲にまで低減化することができる量であればよい。残留塩素を水生生物等に対して影響が無い範囲まで低減化するとは、具体的には、バラスト水中の残留塩素濃度が0.06mg/L以下であればよい。
本発明に用いる亜硫酸塩としては、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩が挙げられ、なかでも海水の主成分であるナトリウム塩が好ましい。また、亜硫酸塩は水溶液として用いることが好ましい。
亜硫酸塩による処理の態様については、特に限定されず、バラストタンク内に亜硫酸塩を加えてもよく、バラスト水を排水するときに亜硫酸塩を含有させても良い。本発明のバラスト水処理方法においては、排水時にバラスト水中に亜硫酸塩を添加することが好ましい。
バラスト水を船外に排出する場合、低酸素状態のバラスト水の排水を行わないことが好ましい。即ち、低酸素状態の排水が船舶周辺の水生生物にダメージを与えないようにすることが好ましい。通常の海洋の例では7〜8.5mg/Lの溶存酸素を含有するが、養殖での酸素欠乏濃度の目安となる溶存酸素6mg/L以上の状態であることが確保されていることが好ましい。過剰の亜硫酸塩は自身が酸化されて自然界に存在する硫酸塩となるが、空気中の酸素以外に溶存酸素も消費される。この場合、バラストタンク内で曝気しても良く、排水管中に空気を吹き込んでも良いが、滞船料の増加の原因等になる。そのため投入する亜硫酸塩の量を適切な量に調整することが好ましい。この方法も上記のアンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とによる処理の場合と同様に、電流滴定法、DPD法、酸化還元電位を活用する方法が有効である。本発明のバラスト水処理方法において、残留塩素を含むバラスト水を排水する際、亜硫酸塩で当該排水の酸化還元電位を500mV未満に調整すれば、バラスト水中の残留塩素は完全に還元・中和することができる。
本発明のバラスト水処理方法によれば、バラスト水中の水生生物等を殺滅・殺菌させることができるとともに、副生するブロモホルム等の発生を抑制できる。そのため、排水水域の生態系や環境に悪影響を与えることなく、安全にバラスト水を排出することができる。
また、本発明は、上述したバラスト水の処理方法に用いるバラスト水の処理剤を提供するものである。本発明の処理剤は、アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを組合わせてなる。アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを組合わせてなるとは、アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを予め混合した状態で処理剤としてもよく、アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを別々にパッケージ等して処理剤としてもよい。
処理剤に用いるアンモニア又はアンモニウム塩としては、次亜塩素酸塩と反応してクロラミンを生成しうる物質が好ましい。アンモニア又はアンモニウム塩として具体的には、上述したバラスト水の処理方法に用いるアンモニア又はアンモニウム塩を挙げることができ、好ましい範囲も同様である。また、本発明の処理剤に用いる次亜塩素酸塩としては、上述したバラスト水の処理方法に用いる次亜塩素酸塩を挙げることができ、好ましい範囲も同様である。
処理剤に用いられるアンモニア又はアンモニウム塩、及び次亜塩素酸塩の形態としては、粉末等の固体であってもよいし、濃縮液等の液体であってもよい。処理剤の使用態様やバラスト水への混合量等についても、上述したバラスト水の処理方法において、アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを用いて処理を行う際と同様である。
本発明のバラスト水の処理剤は、安価で容易に入手でき取扱いが簡便であり、これを用いることによって、バラスト水中に存在する外来侵入生物等を殺滅・殺菌することができ、かつバラスト水中のブロモホルム等の発生を抑制することができるため、環境面や安全性の点からバラスト水処理に好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
下記の試薬等及び分析装置を実施例に用いた。
1.試薬等
(1)バラスト水
横浜市鶴見区末広町にて採取した海水(pH7.75、26.6℃)をフィルタでろ過し、模擬バラスト水として用いた。フィルタは、硼珪酸塩ガラス繊維製の直径95mmのガラスろ紙(アドバンテック製 GC-90)を使用した。
(2)アンモニア又はアンモニウム塩
アンモニア又はアンモニウム塩の供給源として、試薬の1mol/Lアンモニア水及び塩化アンモニウムを用いた。塩化アンモニウムは、試薬1級塩化アンモニウムをイオン交換水に溶解し、1mol/L塩化アンモニウム水溶液としたものを用いた。
(3)トリハロメタン類の標準液
トリハロメタン類の標準液として、和光純薬工業製のトリハロメタン標準液B(ヘキサン溶液)を用いた。このトリハロメタン標準液Bは、クロロホルム10mg/L、ブロモジクロロメタン2.5mg/L、クロロジブロモメタン4mg/L、ブロモホルム20mg/Lを含むものである。
(4)ブロモホルム標準液
トリハロメタン類の標準液を正確に1mL採取し、予め採取した100mLのn−ヘキサンに添加し、1次希釈ブロモホルム標準ヘキサン溶液(以下、ブロモホルム標準ヘキサン溶液を、単にブロモホルム標準液という)を作製した。1次希釈ブロモホルム標準液を正確に1mL採取し、予め採取した50mLのn−ヘキサンに添加し、2次希釈ブロモホルム標準液を作製した。2次希釈ブロモホルム標準液を正確に1mL採取し、予め採取した50mLのn−ヘキサンに添加し、ブロモホルム標準液を作製した。このブロモホルム標準液は、ブロモホルムを76.1μg/L含むものである。
(5)次亜塩素酸ナトリウム
次亜塩素酸ナトリウムとして、有効塩素濃度が約13質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(TGバラストクリーナー(商品名))を用いた。
(6)亜硫酸ナトリウム
亜硫酸ナトリウムをイオン交換水に溶解し、0.25mol/L亜硫酸ナトリウム水溶液(TGエンバイロンメンタルガード(商品名))としたものを用いた。
2.分析装置
分析試料の測定は、電子捕獲型検出器付きガスクロマトグラフ(日立製作所製、G-5000)を用いて行った。カラムは、内径0.32mm、長さ25mの溶融シリカ製のキャピラリーカラムで、内面に5%ジフェニルポリシロキサン−95%ジメチルポリシロキサンの液相を1.20μmの厚さで被覆したものを用いた。測定条件は、カラム温度120℃、インジェクション温度210℃、検出器温度220℃とした。
下記実施例及び比較例は、最高気温30.1℃(試験期間中の平均値)及び最低気温24.2℃(平均値)の条件下において室温で行われたものである。アンモニア又は塩化アンモニウムと次亜塩素酸塩との併用による効果を明確にするため、実際にバラスト水が取排水又は運搬される条件よりもブロモホルム等が発生しやすい条件下において検証を行った。
実施例1
上記のバラスト水に、アンモニア水を22mg/Lとなるよう添加後、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を初期有効塩素濃度20mg/Lとなるよう添加後、密栓し、アルミ箔で全体を覆い遮光した状態で、室温で17日間静置した。その後、亜硫酸ナトリウム水溶液を30mg/Lとなるよう添加し還元・中和したものをバラスト水試料1とした。なお、実施例1及び下記の実施例2はそれぞれ2連で試料を作成した。
また、ブランク試料として、上記のバラスト水のみを同様に密栓し、アルミ箔で全体を覆い遮光した状態で、室温で17日間静置した後、亜硫酸ナトリウム水溶液を上記試料1と同量添加したものを作製し、ブランク試料とした。
実施例2
上記のバラスト水に、塩化アンモニア水溶液を22mg/Lとなるよう添加後、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を初期有効塩素濃度20mg/Lとなるように添加後、密栓し、アルミ箔で全体を覆い遮光した状態で、室温で17日間静置した。その後、実施例1と同量の亜硫酸ナトリウム水溶液で還元・中和したものをバラスト水試料2とした。
実施例3
実施例1で添加したのと同量のアンモニア水(22mg/L)及び次亜塩素酸ナトリウム水溶液(初期有効塩素濃度20mg/L)を予め混合した溶液を調製し、上記のバラスト水に添加した。密栓し、アルミ箔で全体を覆い遮光した状態で、室温で17日間静置した後、実施例1と同量の亜硫酸ナトリウム水溶液で還元・中和したものをバラスト水試料3とした。
実施例4
実施例2で添加したのと同量の塩化アンモニア水溶液(22mg/L)及び次亜塩素酸ナトリウム水溶液(初期有効塩素濃度20mg/L)を予め混合した溶液を調製し、上記のバラスト水に添加した。密栓し、アルミ箔で全体を覆い遮光した状態で、室温で17日間静置した後、実施例1と同量の亜硫酸ナトリウム水溶液で還元・中和したものをバラスト水試料4とした。
比較例1
上記のバラスト水に、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を初期有効塩素濃度20mg/Lとなるように添加後、密栓し、アルミ箔で全体を覆い遮光した状態で、室温で1日間静置した。その後、実施例1と同量の亜硫酸ナトリウム水溶液を添加して還元・中和した。密栓し、アルミ箔で全体を覆い遮光した状態で、室温で16日間静置したものを比較試料1とした。
比較例2
上記のバラスト水に、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を初期有効塩素濃度20mg/Lとなるように添加後、密栓し、アルミ箔で全体を覆い遮光した状態で、室温で17日間静置した。その後、実施例1と同量の亜硫酸ナトリウム水溶液を添加して還元・中和したものを比較試料2とした。
比較例3
上記のバラスト水に、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を初期有効塩素濃度20mg/Lとなるように添加後、密栓し、アルミ箔で全体を覆い遮光した状態で、室温で1日間静置した。その後、初期有効塩素濃度10mg/L相当の亜硫酸ナトリウム水溶液を添加して還元・中和した。密栓し、アルミ箔で全体を覆い遮光した状態で、室温で16日間静置したものを比較試料3とした。
ブロモホルム濃度の測定
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られたバラスト水試料について、ブロモホルム生成量を測定した。ホールピペットを用いて各バラスト水試料を5mL採取し、予めn−ヘキサンを正確に50mL入れた比色管に添加し、15秒間振り混ぜ、n−ヘキサン層にブロモホルムを抽出した。ブランク試料、試料3及び試料4については、本抽出層のブロモホルム濃度を直接分析装置にて測定した。試料1〜2及び比較試料1〜3については、本抽出層のブロモホルム濃度が高いため、下記のように希釈した分析試料をそれぞれ作製し、それらのブロモホルム濃度を測定し、希釈前の試料中のブロモホルム濃度に換算した。試料1及び試料2については、本抽出層を正確に1mL採取し、予めn−ヘキサンを正確に10mL入れた比色管に添加し、11倍希釈して分析試料として用いた。比較試料1〜3については、本抽出層を正確に1mL採取し、予めn−ヘキサンを正確に10mL入れた比色管に添加し、11倍希釈した。さらに、11倍希釈溶液を正確に1mL採取し、予めn−ヘキサンを正確に10mL入れた比色管に添加し、最終的に121倍希釈したものを分析試料として用いた。
各試料のブロモホルム濃度を表1に示す。
Figure 2011065434
表1の結果から明らかなように、バラスト水に次亜塩素酸ナトリウム水溶液のみを混合した場合は、ブロモホルム濃度は高い値を示した(比較試料1〜3)。一方、バラスト水にアンモニア水又は塩化アンモニウム水溶液を添加後、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加した場合(試料1〜2)では、次亜塩素酸ナトリウム水溶液のみを混合した場合(比較試料1〜3)と比較して、ブロモホルム濃度を1/6〜1/7程度まで抑えることができた。また、アンモニア水または塩化アンモニウム水溶液と次亜塩素酸ナトリウム水溶液とを予め混合した溶液をバラスト水に添加した場合(試料3〜4)では、次亜塩素酸ナトリウム水溶液のみを混合した場合(比較試料1〜3)と比較して、ブロモホルム濃度を1/30以下にまで抑えることができた。以上のことから、アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを併用することで、次亜塩素酸塩を単独で添加した場合と比べ、長期間保持後でもブロモホルムの発生量を大幅に抑制できることがわかった。
また、中性の飲料水等とは異なりpHが高く、臭化物イオンを多く含有する海水をバラスト水として用いた場合であっても、アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを併用することで、バラスト水中でのブロモホルムの発生を大幅に抑制できることがわかった。すなわち、アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸ナトリウムとを予め混合してクロラミンを生成させた後にバラスト水に混合する方法、及びバラスト水にまずアンモニア又はアンモニウム塩を混合し、その後次亜塩素酸ナトリウムを混合してバラスト水中でブロラミンやクロラミン等を生成させる方法はともに、海水条件下におけるブロモホルムの発生を顕著に抑制できることがわかった。
本発明のバラスト水の処理方法及び当該方法に用いるバラスト水の処理剤は、バラスト水に含まれる有害な水生生物を効果的に殺滅・殺菌でき、しかも殺滅・殺菌処理に際してブロモホルム等のトリハロメタン類の発生を抑制することができる。したがって、本発明の処理方法及び処理剤を用いることで、船舶のバラスト水を排出水域の環境・生態系を汚染することなく安全に排出することが可能となる。
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
本願は、2009年11月27日に日本国で特許出願された特願2009-270655に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。

Claims (14)

  1. バラスト水にアンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを混合し、バラスト水中の水生生物を殺滅・殺菌させ且つトリハロメタン類の発生を抑制することを特徴とするバラスト水の処理方法。
  2. 排出時のバラスト水中のブロモホルムの濃度が300μg/L以下であることを特徴とする請求項1記載のバラスト水の処理方法。
  3. 前記ブロモホルム濃度が150μg/L以下であることを特徴とする請求項2記載のバラスト水の処理方法。
  4. 前記アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩との混合により、バラスト水中の残留塩素濃度を1mg/L以上100mg/L以下に調整して水生生物を殺滅・殺菌することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のバラスト水の処理方法。
  5. 前記バラスト水中の残留塩素濃度を2mg/L以上20mg/L以下に調整して水生生物を殺滅・殺菌することを特徴とする請求項4記載のバラスト水の処理方法。
  6. 前記バラスト水中の残留塩素濃度を2mg/L以上10mg/L以下に調整して水生生物を殺滅・殺菌することを特徴とする請求項4記載のバラスト水の処理方法。
  7. 前記アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩との混合により、バラスト水中の水生生物を殺滅・殺菌処理した後、該バラスト水中の残留塩素を亜硫酸塩によって還元・中和処理することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のバラスト水の処理方法。
  8. バラスト水にアンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを混合するにあたり、アンモニア又はアンモニウム塩をバラスト水に混合した後、次亜塩素酸塩をバラスト水に混合することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のバラスト水の処理方法。
  9. バラスト水にアンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを混合するにあたり、アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを予め混合しバラスト水に加えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のバラスト水の処理方法。
  10. バラスト水にアンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを混合するにあたり、次亜塩素酸塩をバラスト水に混合した後、アンモニア又はアンモニウム塩をバラスト水に混合することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のバラスト水の処理方法。
  11. バラスト水にアンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを混合するにあたり、アンモニア又はアンモニウム塩を事前にバラストタンクへ添加した後、次亜塩素酸塩を混合したバラスト水をバラストタンクに注入することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のバラスト水の処理方法。
  12. 前記アンモニア又はアンモニウム塩が、次亜塩素酸塩と反応してクロラミンを生成しうる化合物であることを特徴とする請求項1〜11に記載のバラスト水の処理方法。
  13. アンモニア又はアンモニウム塩と次亜塩素酸塩とを組合わせてなる請求項1〜12のいずれか1項に記載のバラスト水の処理方法に用いるバラスト水の処理剤。
  14. 前記アンモニア又はアンモニウム塩が、次亜塩素酸塩と反応してクロラミンを生成しうる化合物であることを特徴とする請求項13に記載のバラスト水の処理剤。
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