JPWO2010137176A1 - スペクトル測定装置 - Google Patents

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Abstract

2つ以上の互いに異なる測定部分を含む測定対象に対して、各測定部分からの光のスペクトル測定に要する測定時間を短縮するスペクトル測定装置を提供する。スペクトル測定装置は、2本以上のスリット12bを有するスリット群12Gと、スリット群12Gによって抽出された光をスリット12bごとに分光する分光器14と、分光器14によって分光されたスリット12bごとの各成分の強度を測定する測定器15とを備える。各スリット12bは、2以上の互いに異なる測定部分を含む測定対象20に対して、当該測定対象20からの光のうちから、各測定部分からの光を抽出する。

Description

本発明は、測定対象からの光をスペクトルとして測定するスペクトル測定装置、例えば車両等の移動体に搭載されるスペクトル測定装置に関する。
近年、自動車等の車両に適用される運転支援技術には、自車両の周辺状況を可視画像として撮像するCCDカメラ等の撮像装置が自車両に搭載される態様で用いられている。こうした運転支援技術ではまず、自車両周辺の歩行者や信号機等、運転支援に必要とされる対象物に関する情報が、この撮像装置が撮像した可視画像の画像処理を通して生成されて、自車両の周辺状況に応じた運転支援が、このようにして生成された情報に基づき実行される。
一方、自車両周辺を歩行する歩行者の状況、例えば、人数、体型、姿勢、所持品、移動する方向等とは、通常、自車両周辺の可視画像が撮像されるごとに変化するものである。更に自車両の走行状況、例えば、自車両の旋回方向や自車両が走行する道路の属性が変わることとなれば、上記歩行者は当然のこと、道路に設置された信号機でさえ、自車両周辺の可視画像における形状やサイズが変化することとなる。それゆえに、運転支援に必要とされる対象物をこれが含まれる撮像対象の可視画像から検出する態様では、対象物の検出精度も自ずと低いものとなってしまい、運転支援の精度自体を欠く結果となってしまう。そこで、上述する運転支援技術では、運転支援の精度を向上するために、対象物の検出精度を向上させる技術が望まれている。
ところで、対象物が有する光学的な特性から対象物を識別する技術の中には、特許文献1に示されるように、地球上の土壌調査等に使用される目的で人工衛星に搭載されるスペクトル測定装置として、ハイパースペクトルセンサを用いる技術が知られている。特許文献1に記載されるハイパースペクトルセンサでは、例えば、対象物からの光が波長ごとに分光されて、波長ごとの光の強度がその波長に対応付けられる態様でスペクトルが検出される。つまり、波長に対して連続的なスペクトルが対象物の光学的な特性として取り扱われる。図10は、こうしたスペクトル測定装置としてのハイパースペクトルセンサの光学的な構成の一例を示す構成図である。
図10に示されるように、人工衛星に搭載されるハイパースペクトルセンサ100の内部には、入射口111、ミラー112、集光器113、遮蔽板114、視準器115、分光器116、結像器117、および測定器118が、光の進行方向に沿ってこの順に配置されている。ハイパースペクトルセンサ100を構成するこれら構成要素の各々は、それを通過する光束の代表となる仮想的な光線、すなわち光軸(図10の左右方向に延びる)に対して交差する一つの方向において、光学的な特性が連続するように構成されている。このような構成を有するハイパースペクトルセンサ100では、測定対象としての地表面である対象物120にて反射された太陽光の一部が、まず入射口111を通して装置内に入射して、ミラー112の反射作用によって集光器113へ導かれる。集光器113に入射した光は、集光器113の集光作用によって遮蔽板114に向かって集光されて、遮蔽板114の遮蔽作用によって、単スリット114aに向かう光のみが視準器115に導かれる。このようにして単スリット114aを通過した光は、視準器115の光学作用によって平行光として分光器116に導かれて、分光器116の分光作用によって各波長成分に分光される。分光器116によって分光された各波長成分(波長成分λa〜波長成分λb)は、結像器117の結像作用によって、波長ごとに区分された測定器118の各領域、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等が有する各受光素子118a,118bに結像される。
つまり、このようなハイパースペクトルセンサ100では、集光器113が集めた光のうちで単スリット114aを通過した光についてのみ、そのスペクトルが測定されることになる。言い換えれば、単スリット114aにおいて光学的な特性が連続する方向、すなわち単スリット114aの長さ方向Dmに沿うライン状の測定部分120aからの光のみが、地表面である対象物120からの光のうちから上記単スリット114aによって抽出されることになる。そしてライン状の測定部分120aに関する光学的な情報のみが、その都度、ハイパースペクトルセンサ100に入力されることになる。そして一次元的な測定部分120aについてのスペクトル測定が人工衛星の飛行方向に沿って繰り返されることによって、二次元的な地表面である対象物120の光学的な特性が、ハイパースペクトルセンサ100によって測定されることになる。
特開2006−145362号公報
ところで、上述するようなハイパースペクトルセンサ100にあっては、対象物120に対してハイパースペクトルセンサ100が移動する方向は、測定部分120aの並ぶ方向となる。そしてスペクトルの測定対象である2次元的な範囲が、こうした移動方向Drで常に制約されることになる。そのため、2以上の互いに異なる測定部分120aが、移動方向Drとは異なる方向に並んだ測定対象、例えば歩行者や信号機が含まれる自車両周辺の1つのシーン等、こうした測定対象に関わるスペクトルを測定する際には、長さ方向Dmに対して交差する方向へ上記単スリット114aを走査させるといった走査の態様が取られざるを得ない。図11(a)(b)(c)は、こうした単スリット114aの走査の一例を光学的な作用とともに示す作用図である。
図11(a)に示されるように、対象物120の上端の測定部分120aを物点とし、遮蔽板114に設けられた単スリット114aを像点とするかたちに単スリット114aが配置されることによって、まず対象物120の上端の測定部分120aに関するスペクトルが測定される。次いで、遮蔽板114が単スリット114aの幅だけ移動する態様で走査が繰り返されることによって、図11(b)に示されるように、対象物120の上端から下端の各測定部分120aに関するスペクトルが順に測定される。そして図11(c)に示されるように、対象物120の下端の測定部分120aを物点とし、遮蔽板114に設けられた単スリット114aを像点とするかたちに単スリット114aが配置されることによって、対象物120の上下方向の全幅にわたり、スペクトルが測定される。このように、移動方向とは異なる方向に測定部分が並んだシーンであっても、そのシーンに対応して単スリット114aを走査させる態様であれば、そのシーンについてのスペクトルを測定することが可能となる。
なお、図10では、遮蔽板114のみが単スリット114aの幅だけ移動する態様で走査が繰り返されるとしたが、これに限られず、遮蔽板114、視準器115、分光器116、結像器117、および測定器118が、固定された単スリット114aに対して、一体となって移動する態様で走査が繰り返される場合もある。
しかしながら、こうした走査が採用されるとすれども、1つのシーンについてのスペクトルを測定する際には、単スリット114aの走査に要する時間が必要となってしまう。それゆえに、単スリット114aの走査に要する時間よりも短い時間からなるシーンでは、結局、スペクトルを測定することが不可能となってしまう。
特に、車両等の移動体にハイパースペクトルセンサ100が搭載されて、測定結果に基づき移動の支援がなされることとなれば、1つのシーンに関わるスペクトルの測定が、移動の支援に間に合わなくなってしまい、結局、こうした移動の支援がその精度を大きく欠いたものとなってしまう。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、2つ以上の互いに異なる測定部分から構成される測定対象に対して、各測定部分からの光のスペクトル測定に要する測定時間を短縮するスペクトル測定装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明に従うスペクトル測定装置は、2本以上のスリットを有するスリット群と、前記スリット群によって抽出された光を前記スリットごとに分光する分光器と、前記分光器によって分光された前記スリットごとの各成分の強度を測定する測定器とを備える。各スリットは、2以上の互いに異なる測定部分を含む測定対象に対して、当該測定対象からの光のうちから、前記各測定部分からの光を抽出することを要旨とする。
こうした構成を有するスペクトル測定装置によれば、2以上の互いに異なる測定部分を含む測定対象に対して、スリットを移動させることなく、各測定部分からの光のスペクトルが測定可能になる。そのため、例えば単スリットを移動させながら各測定部分からの光のスペクトルを測定する構成と比較して、各スペクトルの測定時間が短縮可能になる。そのうえ、各測定部分からの光のスペクトルが互いに同じタイミングで測定されることにもなるため、測定対象の広範囲にわたるスペクトル測定が実時間で可能になる。なお、こうしたスペクトル測定装置が移動体に搭載されるとすれば、要求される移動状態でのスペクトル測定が実時間で可能になる。そのため、スペクトルの測定結果を利用して移動体の移動支援がなされることになれば、その移動支援の精度が向上可能にもなる。
また、前記スリット群は、前記スペクトル測定装置が備える2つ以上の互いに異なるスリット群のうちの一つであり、前記スペクトル測定装置は更に、分光させる光を前記分光器に透過させる1つのスリット群を、前記2つ以上の互いに異なるスリット群のうちで切替可能にするスリット切替器を備えることを要旨とする。
測定対象における測定部分の位置や数等が互いに異なることとなれば、こうした測定部分からの光の位置や量も、互いに異なることになる。測定対象からの光のうちからこうした光が抽出されるには、スリット群におけるスリットの位置や数等も互いに異なる必要がある。この点、このスペクトル測定装置によれば、分光器に分光させる光を透過させる1つのスリット群、すなわち測定用のスリット群は、スリット切替器による切替によって、2つ以上の互いに異なるスリット群のいずれかに切替可能になる。そのため、2つ以上の互いに異なる測定対象であっても、2つ以上の互いに異なるスリット群のいずれかが各測定対象に適用可能となれば、それらのスペクトル測定が可能にもなる。こうしたことから、例えば単一のスリット群を有する構成と比較して、測定部分の位置や数等といった測定部分の属性に関して自由度が拡張可能になる。
またこのスペクトル測定装置は更に、前記スリット切替器による切替の態様を、前記測定部分の属性に応じた制御値に基づき制御するスリット制御器を備えることを要旨とする。
このスペクトル測定装置によれば、スリット切替器が測定用のスリット群を変更するか否か、あるいはスリット切替器が測定用のスリット群を何れのスリット群に切替えるかといったスリット切替器による切替の態様は、スリット制御器による制御によって、測定部分の属性に応じて制御可能になる。そのため、測定部分の位置や数等といった測定部分の属性が互いに異なる複数の測定対象であっても、測定部分の属性に適したスリット群によって、実時間でのスペクトル測定が可能になる。
またこのスペクトル測定装置は、前記スリット制御器が、前記測定対象と前記スリット群との間の距離に基づき前記測定部分の属性を決定することを要旨とする。
測定対象の空間的な範囲は、スペクトル測定装置から測定対象までの距離が長くなるにつれて大きくなり、反対に、スペクトル測定装置から測定対象までの距離が短くなるにつれて小さくなる。こうした測定対象の空間的な範囲を有効的に利用する上では、測定部分の位置や数等といった測定部分の属性が、測定対象の空間的な範囲、つまりスペクトル測定装置から測定対象までの距離に応じて互いに異なることが好ましい。
例えば測定対象の範囲が空間的に大きくなる際に、測定対象内の広い範囲にわたり多数の測定部分が散在することになれば、空間的に広い測定対象の全体についてスペクトル測定が可能となり、空間的に広い測定対象を有効的に利用した測定が可能になる。反対に、測定対象の範囲が空間的に小さくなる際に、小数の測定部分でスペクトル測定がなされるとすれば、予め空間的に絞り込まれた測定対象を有効的に利用した測定が可能になる。
このスペクトル測定装置によれば、測定部分の属性は、測定対象とスリット群との間の距離に基づき、スリット制御器によって決定される。こうした構成であれば、測定用のスリット群の変更の態様は、測定対象とスリット群との間の距離に基づき制御可能になるため、上述するような測定対象の範囲を有効的に利用したスペクトル測定が実時間で可能になる。
また前記測定器は、前記分光器によって分光された光の成分の各々を、前記スリットごとに受光する2つ以上の受光素子を含み、前記スペクトル測定装置は更に、前記分光器と前記測定器との間の距離を変更可能にする距離可変器を備えたことを要旨とする。
分光器によって分光された光は、それの断面が測定器に向かって拡がるかたちに進行する。ゆえに測定器における受光面積は、測定器が分光器から離れるにつれて大きくなり、反対に、測定器が分光器に近づくにつれて小さくなる。そして分光された光を受ける受光素子の数、すなわち測定結果のデータ量も、測定器が分光器から離れるにつれて大きくなり、反対に、測定器が分光器に近づくにつれて小さくなる。なお測定器の受光面積が小さくなる場合には、より多くの成分が単一の受光素子に入射することによって成分の分解能が低くなり、反対に、測定器の受光面積が大きくなれば、より少ない成分が単一の受光素子に入射することによって、成分の分解能が高くなる。
このスペクトル測定装置によれば、分光器と測定器との間の距離が距離可変器によって変更可能になる。よって、例えば分光器と測定器との間の距離が固定される構成と比較して、測定結果のデータ量や各成分の分解能の自由度が拡張可能になる。
またこのスペクトル測定装置は更に、前記距離可変器による変更の態様を、前記スリット群の属性に応じた制御値に基づき制御する距離制御器を備えることを要旨とする。
上述したように、分光された光を受ける受光素子の数、すなわち測定結果のデータ量は、測定器が分光器から離れるにつれて大きくなり、反対に、測定器が分光器に近づくにつれて小さくなる。測定データのデータ量を一定量以下に抑える上では、強度の測定に用いられる受光素子の数が、一定量以下に抑えられることが好ましい。
例えば互いに隣接するスリット同士の間の距離が短くなると、測定器が受ける光束同士の間の距離も短くなり、こうした光束を受ける受光素子の数も多くなる。この際、分光器と測定器との間の距離が短くなるとすれば、このように増加した受光素子の数が低減可能となり、測定データのデータ量を一定量に抑えることが可能になる。また互いに隣接するスリット同士の間の距離が長くなると、測定器が受ける光束同士の間の距離も長くなり、こうした光束を受ける受光素子の数も少なくなる。この際、分光器と測定器との間の距離が長くなるとすれば、このように減少した受光素子の数が増加可能となり、測定データのデータ量を一定量にすることが可能になる。
また各成分の分解能を一定値以上に維持する上では、強度の測定に用いられる受光素子の数が、一定量以上に維持されることが好ましい。上述するように互いに隣接するスリット同士の間の距離が長くなると、測定器が受ける光束同士の間の距離も長くなり、こうした光束を受ける受光素子の数も少なくなる。この際、分光器と測定器との間の距離が長くなるとすれば、このように減少した受光素子の数が増加可能となり、単一の受光素子が受ける成分の数を低減することが可能になる。
このスペクトル測定装置によれば、分光器と測定器との間の距離を長くするか否か、あるいは分光器と測定器との間の距離を短くするか否かといった距離可変器による変更の態様が、距離制御器によって、スリット群の属性に応じて制御可能になる。こうした構成であれば、互いに隣接するスリット同士の間の距離やスリットの数といった属性が互いに異なる複数のスリット群が搭載される構成であっても、スリット群の属性に基づき分光器と測定器との間の距離が制御可能になるため、上述するようなデータ量の調整や成分分解能の調整が可能にもなる。
またこのスペクトル測定装置は更に、測定帯域の波長成分のみを前記分光器に導くバンドパスフィルタを備えることを要旨とする。
例えば複数のスリットの各々を通過した光同士の間で、測定帯域の波長成分と測定帯域以外の波長成分とが干渉するとなっては、測定器における測定精度が損われるといった懸念がある。しかし、このスペクトル測定装置によれば、測定帯域の波長成分のみが分光器に導かれることから、各スリットを通過した光同士の間において、測定帯域以外の光と測定帯域の光との干渉が分光器よりも後段において回避可能になる。それゆえ各成分の強度に関わる精度が向上可能になり、ひいてはスペクトルの精度が向上可能になる。更に、干渉を抑制するための構成が分光器や測定器に必要とされなくなるため、分光器や測定器の構成が容易にもなる。
またこのスペクトル測定装置では、前記バンドパスフィルタは、互いに隣接する前記スリット同士の間隔が短くなるにつれて前記測定帯域を狭くするかたちに構成されることを要旨とする。
互いに隣接するスリット同士の間隔が短くなると、各スリットを通過した光束同士の間隔も自ずと短くなる。例えば互いに隣接するスリット同士の間隔が長くなる場合と比較して、分光器によって分光された各成分が測定器よりも前段において干渉し易くなる懸念がある。しかし、このスペクトル測定装置によれば、互いに隣接するスリット同士の間隔が短くなるにつれてバンドパスフィルタが測定帯域を狭くすることから、上述するような干渉を抑制することが可能にもなる。
またこのスペクトル測定装置では、前記2本以上のスリットの各々が、当該スリットを通過した光を収束光もしくは平行光に変換する光学素子を備えることを要旨とする。
互いに隣接するスリット同士の間隔が短くなると、各スリットを通過した光束同士の間隔も自ずと狭くなるため、スリットを通過した光束と、当該スリットに隣接する他のスリットを通過した光束とが、分光器よりも前段において干渉し易くなる懸念がある。しかし、このスペクトル測定装置によれば、各スリットが有する光学素子によって、当該スリットを通過した光束が収束光もしくは平行光に変換されることから、上述するような干渉を抑制することが可能にもなる。
またこのスペクトル測定装置は、前記スリット群では、前記2本以上のスリットがそれらの配列方向で偏倚していることを要旨とする。
このスペクトル測定装置によれば、2本以上のスリットがそれらの配列方向で偏倚していることから、偏倚している2つ以上の互いに異なる測定部分から構成される測定対象に対しても実時間でのスペクトル測定が可能になる。
またこのスペクトル測定装置は、前記2つ以上の互いに異なるスリット群は、それぞれ有する前記スリットの本数において互いに異なることを要旨とする。
このスペクトル測定装置によれば、2本以上の互いに異なるスリット群が、スリットの本数において互いに異なる。よって、測定部分の数において互いに異なる2つ以上の測定対象に対しても、実時間でのスペクトル測定が可能になる。
またこのスペクトル測定装置は、移動体に搭載されるものであることを要旨とする。
移動体の周辺から移動体が受ける光の特性は、その周辺に照射される光の特性、更にはこうした光を受ける周辺の光学的な特性によって特に変わる。そして移動体の周辺に照射される光、また移動体の周辺を構成する構成要素といった移動体の周辺の状況は、移動体の移動状況によってその都度変わるものである。このスペクトル測定装置によれば、それが有する実時間でのスペクトル測定によって、移動体の周辺からの光のスペクトルと移動体の移動状況とが対応するかたちで測定可能となる。
本発明にかかるスペクトル測定装置の第1の実施の形態について、その光学的な構成を示す構成図。 本発明にかかるスペクトル測定装置の第2の実施の形態について、その遮蔽板の平面構造を示す平面図。 本発明にかかるスペクトル測定装置の第2の実施の形態について、その光学的な構成を示す構成図。 本発明にかかるスペクトル測定装置の第3の実施の形態について、その光学的な構成を示す構成図。 本発明にかかるスペクトル測定装置の第4の実施の形態について、その光学的な構成を示す構成図。 本発明にかかるスペクトル測定装置の第4の実施の形態について、測定対象の一例を示す概念図。 本発明にかかるスペクトル測定装置の第5の実施の形態について、その全体構成を示すブロック図。 本発明にかかるスペクトル測定装置の第5の実施の形態にて実行されるスペクトルの測定手順を示すフローチャート。 変更例のスペクトル測定装置における遮蔽板の斜視構造を示す斜視図。 従来のスペクトル測定装置たるハイパースペクトルセンサが人工衛星に搭載されている場合について、その光学的な構成の一例を示す構成図。 (a)(b)(c)は、従来のスペクトル測定装置たるハイパースペクトルセンサを車両等の移動体に搭載する場合について、遮蔽板に設けられた単スリットの走査の一例を光学的な作用とともに示す作用図。
(第1の実施の形態)
以下、本発明にかかるスペクトル測定装置の第1の実施の形態について、図1を参照して詳細に説明する。まず、図1を参照して、本実施の形態のスペクトル測定装置10が、備える光学的な構成について説明する。
スペクトル測定装置10は、集光器11、遮蔽器12、バンドパスフィルタ13、分光器14、および測定器15が、測定対象20からの光の進行方向に沿ってこの順に配置されるかたちに構成されている。スペクトル測定装置10を構成するこれらの構成要素の各々は、それを通過する光束の代表となる仮想的な光線、すなわち光軸(図1の左右方向に延びる)に対して交差する一つの方向において、光学的な特性が連続するように構成されている。つまりスペクトル測定装置10を構成するこれらの構成要素は、図1の紙面に垂直な方向に延びる。
集光器11は、測定対象20が自ら発する光や測定対象20が反射する光、すなわち測定対象20からの光を、損失なく集める、あるいは収束させるレンズ等の光学素子から構成される光学系であって、それが集めた光を後段の光学素子である遮蔽器12へと指向させる機能を有する。
遮蔽器12は、集光器11からの光のうちの一部を、後段の光学素子であるバンドパスフィルタ13に対して遮蔽する部分と、集光器11からの光のうちの他部を、同バンドパスフィルタ13へ通過させる部分とを有した遮蔽板12aから構成されている。またこの遮蔽板12aにおいて光を通過させる部分は、2つ以上のスリット12bを有するスリット群12Gによって構成されている。スリット群12Gを構成する2つ以上のスリット12bの各々は、光が進行する方向に対して交差する一つの方向(スリット12bの長さ方向Dm)、例えば図1の紙面に対して垂直となる方向に延びる穿孔であって、光が進行する方向に対して交差する他の方向(スリット12bの幅方向Dw)、例えば図1における上下方向に沿って等間隔に配列されている。このスリット群12Gを構成する各スリット12bは、それを通過した光をスリット12bごとの平行光に変換する視準レンズ、あるいはそれを通過した光をスリット12bごとの収束光に変換する収束レンズといった光学素子12cを有している。つまりこの遮蔽器12は、集光器11からの光のうちの一部を、後段の光学素子であるバンドパスフィルタ13へ、スリット12bごとの平行光あるいは収束光として指向させる機能を有する。
バンドパスフィルタ13は、特定の帯域である測定帯域の光に対して高い透過率を有し、測定帯域以外の光に対して低い透過率を有するフィルタである。なお、ここにおける測定帯域とは、測定対象20を識別するために予め設定される波長の帯域であって、例えば可視帯域のみならず不可視帯域を含む帯域であり、識別対象からの光を構成する特異的な波長を含む帯域である。このバンドパスフィルタ13は、スリット群12Gを通過した光を、後段の光学素子である分光器14へ、スリット12bごとの光として指向させる機能を有する。
分光器14は、測定帯域の光を、連続的な成分である波長ごとの成分に分散させる分光光学系である。この分光器14は、スリット12bの幅方向Dwにおいて、スリット12bごとの光Lを波長ごとの成分(波長成分λa〜波長成分λb)に分散させて、かつ、後段の光学素子である測定器15へスリット12bごとの光Lとして指向させる機能を有する。
測定器15は、分光器14の光軸と直交する2つの方向、つまりスリット12bの長さ方向Dmと幅方向Dwとに沿って受光素子が配列されたCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサである。この測定器15は、スリット12bの幅方向Dwにおいて、スリット12bごとの互いに異なる波長成分がそれぞれ互いに異なる受光素子に入射するかたちに配置されている。またこの測定器15は、スリット12bの長さ方向Dmにおいて、測定対象20上の互いに異なる位置からの光がそれぞれ互いに異なる受光素子に入射するかたちに配置されている。
このような構成を有するスペクトル測定装置10では、測定対象20の各部からの光が、まず集光器11に入射する。集光器11に入射した光は、集光器11の集光作用によって遮蔽器12に向かって集光されて、スリット群12Gに向かう光のみが遮蔽器12の作用によって各光学素子12cを通過する。このようにしてスリット群12Gで抽出された光は、光学素子12cの光学作用によって平行光あるいは収束光とされ、バンドパスフィルタ13に導かれる。バンドパスフィルタ13に入射した光からは、バンドパスフィルタ13のフィルタ作用によって測定帯域の光のみが分光器14に導かれて、分光器14の分光作用によって波長成分λa〜波長成分λbに分光される。なお本実施の形態では、バンドパスフィルタ13は、波長が400nmから2500nmまでの波長帯域の光を通過させている。分光器14によって分光されたスリット12bごとの各波長成分は、当該スリット12bに対応する測定器15の各受光素子で受光される。
つまり、このスペクトル測定装置10では、測定対象20から集光器11によって集光され得る光のうちから、長さ方向Dmに延びるライン状の測定部分からの光が、スリット12bによって抽出されることになる。そして、こうした機能を有したスリット12bが幅方向Dwに沿って2本以上並ぶために、同じく幅方向Dwに沿って並ぶ2つ以上の測定部分からの光が、互いに同じタイミングで抽出されることになる。それゆえに、こうした構成を有するスペクトル測定装置10によれば、長さ方向Dmに延びる2つ以上の互いに異なる測定部分からの光について、これらのスペクトルが互いに同じタイミングで測定されることになる。
ここで、上述するように、図11に示されるような従来のハイパースペクトルセンサ100では、対象物120となる1つのシーンについてスペクトルを測定する際に、単スリット114aに対応する1つの測定部分120aが、対象物120の全域にわたり走査される期間が少なくとも必要となる。例えば、1回の単スリット114aの移動に0.033秒の期間が必要となり、かつ、400回の単スリット114aの移動によって1つのシーンについてのスペクトルが測定されるとなると、こうした1つのシーンについてのスペクトル測定に約13秒を要してしまう。これでは1つのシーンについてのスペクトルを測定するために、ハイパースペクトルセンサ100と対象物120とが相対的に約13秒間も静止していなければならないこととなる。この点、本実施の形態のスペクトル測定装置10に400本のスリット12bが搭載されるとなれば、上述するようなスリットの走査が全く必要とならないために、1つのシーンに含まれる各測定部分についてのスペクトルが実時間にて測定可能となる。また400本のスリット12bが搭載されない構成であっても、2本以上のスリット12bが搭載される限りでは、上述するようなスリット12bの走査の回数が低減可能となるため、スペクトルの測定に要する時間が短縮可能となる。
なお、このようなスペクトル測定装置10においてスリット群12Gを走査させないとすれば、測定対象20における空間的な分解能は、スリット群12Gを構成するスリット12bの本数に相当するものとなる。また測定対象20における波長の分解能は、1本のスリット12bからの光Lを受ける受光素子のうちで幅方向Dwに沿って配列された受光素子の個数に相当するものとなる。
例えばスペクトル測定装置10における測定器15が、長さ方向Dmおよび幅方向Dwに沿ってマトリックス状に配列された受光素子から構成されて、長さ方向Dmに沿って300個の受光素子を有し、かつ、幅方向Dwに沿って300個の受光素子を有するものとする。こうした構成においてスリット群12Gを構成するスリット12bの本数が5本であるとすると、5つの測定部分の各々が長さ方向Dmに沿って300個の領域に仮想的に分割されることになる。そして測定対象20からの光についてのスペクトルが、5本×300個の空間からの光についてのスペクトルに分解されることになる。また1本のスリット12bからの光Lを受ける受光素子のうちで幅方向Dwに沿って配列された受光素子の個数が300個/5本=60個になるため、測定対象20を構成する各測定部分からの光についてのスペクトルが、60個の波長成分で構成されることになる。
それゆえに、スリット群12Gを構成するスリット12bの本数を変更することによって、測定対象20における空間的な分解能が変更可能になる。また1本のスリット12bからの光Lを受ける受光素子のうちで幅方向Dwに沿って配列された受光素子の個数を変更することによって、測定対象20における波長の分解能が変更可能にもなる。
以上説明したように、第1の実施の形態に係るスペクトル測定装置によれば、以下列記するような効果が得られるようになる。
(1)スペクトル測定装置10は、2以上の互いに異なる測定部分を含む測定対象20に対して、測定対象20からの光のうちから各測定部分からの光を抽出する2本以上のスリット12bを有するスリット群12Gを備える。そしてスペクトル測定装置10は、スリット群12Gによって抽出された光をスリット12bごとに分光する分光器14と、分光器14によって分光されたスリット12bごとの各波長成分の強度を測定する測定器15とを備える。それゆえに、2以上の互いに異なる測定部分を含む測定対象20に対して、スリット12bを移動させることなく、各測定部分からの光のスペクトルが測定可能になる。そのため、単スリットを移動させながら各測定部分からの光のスペクトルを測定する構成と比較して、各スペクトルの測定時間が短縮可能になる。またスリット12bを移動させる場合であっても、2本以上のスリット12bが搭載される限りでは、単スリットを移動させる回数と比較してその移動の回数が低減可能となるため、スペクトルの測定に要する時間が短縮可能となる。
(2)そのうえ、各測定部分からの光のスペクトルが互いに同じタイミングで測定されることにもなるため、測定対象20の広範囲にわたるスペクトル測定が実時間で可能になる。なお、こうしたスペクトル測定装置10が移動体に搭載されるとすれば、要求される移動状態でのスペクトル測定が実時間で可能になる。そのため、スペクトルの測定結果を利用して移動体の移動支援がなされることになれば、その移動支援の精度が向上可能にもなる。
(3)スペクトル測定装置10は、測定帯域の波長成分のみを分光器14に導くバンドパスフィルタ13を備える。複数のスリット12bの各々を通過した光同士の間で、測定帯域の波長成分と測定帯域以外の波長成分とが干渉するとなっては、測定器15における測定精度が損われるといった懸念がある。この点、本実施の形態では、上述するバンドパスフィルタ13によって、測定帯域の波長成分のみが分光器14に導かれることから、各スリット12bを通過した光同士の間において、測定帯域以外の光と測定帯域の光との干渉が、分光器14よりも後段において回避可能になる。それゆえ各成分の強度に関わる精度が向上可能になり、ひいてはスペクトルの精度が向上可能になる。更に、干渉を抑制するための構成が分光器14や測定器15に必要とされなくなるため、分光器14や測定器15の構成が容易にもなる。
(4)スペクトル測定装置10の2本以上のスリット12bの各々は、スリット12bを通過した光を収束光もしくは平行光に変換する、光学素子12cを備える。互いに隣接するスリット12b同士の間隔が短くなると、各スリット12bを通過した光束同士の間隔も自ずと狭くなるため、スリット12bを通過した光束と、当該スリット12bに隣接する他のスリット12bを通過した光束とが、分光器14よりも前段において干渉し易くなることも懸念される。この点、本実施の形態では、各スリット12bが有する光学素子12cは、当該スリット12bを通過した光束を収束光もしくは平行光に変換することから、このような干渉を抑制することが可能にもなる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明にかかるスペクトル測定装置の第2の実施の形態について、図2および図3を用いて説明する。なお、第2の実施の形態は、第1の実施の形態とは異なる遮蔽器12を備え、更に、スリット切替器22および整合器23を備える構成である。その他の基本的な構成は第1の実施の形態と同じであるため、以下ではその変更点について詳細に説明する。
図2に示されるように、遮蔽器12を構成する円板状の遮蔽板12aには、中心から放射線状に延びる4つのスリット群12Gが、遮蔽板12aの周方向に等配されている。4つのスリット群12Gの各々は、それを構成するスリット12bの本数や間隔、および方向が互いに異なる。詳しくは、4つのスリット群12Gのうちの3つのスリット群12G(図2の上方、左方、下方のスリット群12G)では、遮蔽板12aの径方向に対して直交する方向に延びる2本以上のスリット12bが、径方向に沿って等間隔に配列されている。そしてこれら3つのスリット群12Gは、スリット12bの本数および間隔について互いに異なる。一方、これら3つのスリット群12Gとは異なる1つのスリット群12G(図2の右方のスリット群12G)では、遮蔽板12aの略径方向に延びる2本以上のスリット12bが、径方向に対して直交する方向に沿って等間隔に配列されている。
遮蔽板12aの中心には、遮蔽板12aの軸線を回転中心として遮蔽板12aをその周方向に沿って90°ごとに回転可能にするスリット切替器22が連結されている。そしてスリット切替器22が遮蔽板12aを回転させることによって、分光のために分光器14に光Lを透過させる1つのスリット群、つまり測定用のスリット群12Gは、上記4つのスリット群12Gのうちで切替えられることになる。
図3に示されるように、集光器11、バンドパスフィルタ13、分光器14、および測定器15には、これら各構成要素の各々を、その光軸を回転中心にして90°の可動範囲で正転および反転転可能にする整合器23が連結されている。そして、遮蔽板12aの略径方向に延びるスリット12bを有するスリット群12G(図2の右方のスリット群12G)が測定用のスリット群12Gとなる際に、整合器23は、上記各構成要素の各々をその光軸を回転中心に90°だけ正転させる。またこの状態から、遮蔽板12aの径方向に対して直交する方向に延びるスリット12bを有するスリット群12G(図2の上方、左方、または下方のスリット群12G)が測定用のスリット群12Gとなる際に、整合器23は、上記各構成要素の各々をその光軸を回転中心に90°だけ反転させる。つまり整合器23は、集光器11、バンドパスフィルタ13、分光器14、および測定器15の各々における光学的な特性が連続する方向と、スリット12bの長軸方向とが整合する態様になるように、集光器11、バンドパスフィルタ13、分光器14、および測定器15の各々を回転させる。
そしてn本(図3においては、n=3)のスリット12bを有するスリット群12G(図2の上方のスリット群12Gがn=3)が測定用のスリット群12Gとなると、n本のスリット12bに対応するn箇所の測定部分20aからの光が、各スリット12bによって互いに同じタイミングで抽出されることになる。それゆえに、こうした構成を有するスペクトル測定装置10によれば、n箇所の測定部分20aからの光について、これらのスペクトルが互いに同じタイミングで測定されることになる。
ここで、測定対象20における測定部分20aの位置や数等が互いに異なることとなれば、こうした測定部分20aからの光の位置や量も、互いに異なることになる。測定対象20からの光のうちからこうした光が抽出されるためには、スリット群12Gにおけるスリット12bの位置や数等も、互いに異なる必要がある。この点、本実施の形態のスペクトル測定装置10によれば、スリット切替器22による切替によって、測定用のスリット群12Gは、4つの互いに異なるスリット群12Gのいずれかに切替可能になる。そのため、2つ以上の互いに異なる測定部分20aを測定する場合であっても、4つのスリット群12Gが切替えられていずれかが測定対象20に適用可能となれば、それらのスペクトル測定が可能にもなる。
以上説明したように、第2の実施の形態に係るスペクトル測定装置10によれば、第1の実施の形態から得られる上記(1)〜(4)の効果に加えて、以下列記するような効果が得られるようになる。
(5)スペクトル測定装置10は、4つの互いに異なるスリット群12Gと、スリット切替器22とを備える。スリット切替器22は、測定用のスリット群12Gを、4つの互いに異なるスリット群12Gのうちのいずれかに切替可能にする。つまりスリット切替器22による切替によって、測定用のスリット群12Gは、4つの互いに異なるスリット群12Gのいずれかに切替可能になる。そのため、2つ以上の互いに異なる測定対象20を測定する場合でも、4つの互いに異なるスリット群12Gのいずれかが各測定対象20に適用されることによって、それらのスペクトル測定が可能にもなる。こうしたことから、本実施の形態は、例えば単一のスリット群12Gを有する構成と比較して、測定部分20aの位置や数等といった測定部分20aの属性に関して自由度が拡張可能になる。
(6)スペクトル測定装置10では、スリット12bの本数が、3つのスリット群12G(図2の上方、左方、下方のスリット群12G)において互いに異なる。このような構成によれば、互いに異なる本数のスリット12bを有するスリット群12Gが、単一のスペクトル測定装置10において利用可能になるため、単一のスペクトル測定装置10において空間的な解像度が切替可能にもなる。
(7)また互いに隣接するスリット12b同士の間隔が狭くなると、互いに隣接するスリット12bからの光束同士の間隔も狭くなる。更にバンドパスフィルタ13の変更に伴って測定帯域が広くなると、分光された光の幅方向Dwにおける幅も広がることになる。そのため、例えば分光された光の幅方向Dwにおける幅が広がるにもかかわらず、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が固定されるような場合では、互いに隣接するスリットからの光同士が分光器14よりも後段において干渉する懸念がある。この点、本実施の形態のスペクトル測定装置10では、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が切替可能であるために、上述するような干渉を抑制可能にもなる。
(8)スペクトル測定装置10の3つのスリット群12G(図2の上方、左方、下方)と、残りの1つのスリット群12G(図2の右方)とでは、スリット12bの長軸方向が、測定対象20に対して互いに異なる。そして整合器23は、集光器11、バンドパスフィルタ13、分光器14、および測定器15の各々における光学的な特性が連続する方向と、スリット12bの長軸方向とが整合する態様になるように、集光器11、バンドパスフィルタ13、分光器14、および測定器15の各々を回転させる。このような構成によれば、スリット12bの長軸方向が互いに異なるスリット群12G同士が、単一のスペクトル測定装置10において利用可能になる。つまり、単一のスペクトル測定装置10において、測定部分20aの長軸方向が切替可能にもなる。
(第3の実施の形態)
次に、本発明にかかるスペクトル測定装置の第3の実施の形態について、図4を用いて説明する。なお、第4の実施の形態は、距離可変器24を備える構成であり、その他の基本的な構成は第1の実施の形態と同じであるため、以下ではその変更点について詳細に説明する。
図4に示されるように、スペクトル測定装置10の測定器15には、分光器14と測定器15の間の距離を変更可能にする距離可変器24が連結されている。距離可変器24は、測定器15が分光器14から最も離間する位置(図4において二点鎖線で示す位置)と、測定器15が分光器14に最も接近する位置(図4において実線で示す位置)との間を、光軸の方向に沿って測定器15を移動可能にする。なお、測定器15が分光器14から最も離間する位置は、一つのスリット12bからの波長成分λa,λbと、当該スリット12bに隣接する他のスリット12bからの波長成分λa,λbとが、受光素子よりも前段において干渉しないことが条件として設定されている。
ここで、分光器14によって分光された光は、断面が測定器15に向かって幅方向Dwに拡がるかたちに進行する。ゆえに測定器15における受光面積は、測定器15が分光器14から離れるにつれて大きくなり、反対に、測定器15が分光器14に近づくにつれて小さくなる。そして分光された光を受ける受光素子の数、すなわち測定結果のデータ量も、測定器15が分光器14から離れるにつれて多くなり、反対に、測定器15が分光器14に近づくにつれて少なくなる。なお測定器15の受光面積が小さくなる場合には、より多くの波長成分が単一の受光素子に入射することによって波長成分の分解能が低くなり、反対に、測定器15の受光面積が大きくなれば、より少ない波長成分が単一の受光素子に入射することによって波長成分の分解能が高くなる。
例えば、測定器15と分光器14の間の距離が第1距離Laまで伸長された場合において、1つのスリット12bからの光を受ける幅方向Dwの受光素子の数を、第1素子数kaとする。また測定器15と分光器14の間の距離が第2距離Lbまで短縮された場合において、1つのスリット12bからの光を受ける幅方向Dwの受光素子の数を、第2素子数kbとする。すると第2距離Lbにおける受光素子の数、すなわち第2素子数kbは、測定器15における受光面積が小さくなる分だけ、第1距離Laにおける受光素子の数、すなわち第1素子数kaよりも小さくなる。なおこの際、第2素子数kbを構成する各受光素子には、第1素子数kaを構成する各受光素子よりも多くの波長成分が入射することによって、第2素子数kbを構成する各受光素子の波長成分の分解能が低くなる。
このように、測定器15を移動させて分光器14と測定器15の間の距離を短縮することによって、スリット12bの数、つまり測定対象20における空間的な解像度を保持しつつ、スペクトルのデータ量を低減させることが可能になる。これに対して、測定器15を移動させて分光器14と測定器15の間の距離を伸長することによって、スリット12bの数、つまり測定対象20における空間的な解像度を保持しつつ、波長成分の分解能を向上させることが可能になる。
以上説明したように、第3の実施の形態に係るスペクトル測定装置10によれば、第1の実施の形態から得られる上記(1)〜(4)の効果に加えて、以下列記するような効果が得られるようになる。
(9)このスペクトル測定装置は、分光器14と測定器15の間の距離を変更可能にする距離可変器24を備える。そのため、分光器14と測定器15の間の距離が距離可変器24によって変更可能になる。よって、例えば分光器14と測定器15の間の距離が固定される構成と比較して、スペクトルの測定結果のデータ量や各波長成分の分解能の自由度が拡張可能になる。
(第4の実施の形態)
次に、本発明にかかるスペクトル測定装置の第4の実施の形態について、図5および図6を用いて説明する。なお、第4の実施の形態は、第1の実施の形態とは異なる遮蔽器12およびバンドパスフィルタ13を備える構成であり、その他の基本的な構成は第1の実施の形態と同じであるため、以下ではその変更点について詳細に説明する。
図5に示されるように、スペクトル測定装置10の遮蔽器12には、スリット12bの配列方向である幅方向Dwの中央付近に、3本のスリット12bが偏倚して配列されている。またこれら3本のスリット12bを間に挟む2本のスリット12bが、遮蔽器12の幅方向Dwの両端に配列されている。これら5本のスリット12bは、幅方向Dwの中央に偏倚する3本のスリット12b同士の間隔が、これらと幅方向Dwの両端のスリット12bとの間の間隔よりも短くなるように配置されている。
バンドパスフィルタ13は、幅方向Dwにおける両端のスリット12bからの光を受ける2つの第1のバンドパスフィルタ13aと、幅方向Dwの中央に偏倚する3本のスリット12bからの光を受ける第2のバンドパスフィルタ13bとから構成されている。第1のバンドパスフィルタ13aが高い透過率を示す帯域(波長成分λa〜波長成分λb)は、第2のバンドパスフィルタ13bが高い透過率を示す波長の帯域(波長成分λc〜波長成分λd)を含み、かつ、その波長成分λc〜波長成分λdよりも広くなるように構成されている。つまりバンドパスフィルタ13は、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が短くなるにつれて、測定帯域を狭くするかたちに構成されている。
ここで、上述するように分光器14によって分光された光は、断面が測定器15に向かって幅方向Dwに拡がるかたちに進行する。ゆえに測定器15における受光面積は、バンドパスフィルタ13における透過帯域が広くなるにつれて大きくなり、反対に、バンドパスフィルタ13における透過帯域が狭くなるにつれて小さくなる。また互いに隣接するスリット12b同士の間隔が短くなると、各スリット12bを通過した光同士の間隔も自ずと狭くなり、反対に、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が長くなると、各スリット12bを通過した光同士の間隔も自ずと広くなる。
本実施の形態における構成では、第2のバンドパスフィルタ13bを通過する光Lの波長帯域は、第1のバンドパスフィルタ13aを通過する光Lの波長帯域よりも狭くなる。そのため、測定器15における受光面積については、第2のバンドパスフィルタ13bを通過した光の受光面積は、第1のバンドパスフィルタ13aを通過した光の受光面積よりも小さくなる。また第2のバンドパスフィルタ13bを通過する光Lと、これに隣接する光Lとの間の間隔は、これらに対応するスリット12b同士の間隔に対応して相対的に狭くなる。また第1のバンドパスフィルタ13aを通過する光Lと、これに隣接する光Lとの間の間隔は、これらに対応するスリット12b同士の間隔に対応して相対的に広くなる。そのため互いに隣接するスリット12b同士の間隔が短くなるにつれてバンドパスフィルタ13が測定帯域を狭くすると、測定器15の受光素子やそれよりも前段において、互いに隣接するスリット12bからの光同士の干渉を抑制することが可能にもなる。
そのうえ、第1のバンドパスフィルタ13aを通過した光Lを受光する受光素子の個数は、第2のバンドパスフィルタ13bを通過した光Lを受光する受光素子の個数よりも多くなる。つまり、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が長くなる測定部分に対しては、波長成分の分解能が高くなり、反対に、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が短くなる測定部分に対しては、波長成分の分解能が低くなることになる。それゆえ光学的な特性、すなわち測定対象20の物性を詳細に測定すべき測定部分が、測定対象20において予め特定可能な場合には、互いに隣接するスリット同士の間隔が長くなるスリット12bを、こうした測定部分に対して配列する構成が好ましい。このような構成によれば、光学的な特性、すなわち測定対象20の物性を詳細に測定すべき測定部分に対して、波長成分の分解能を高くしたスペクトルが測定可能になる。
例えば車道を走行する車両の車室内から観測される車両の前方周辺には、図6に示されるように、車道、歩道、建物、壁、上空、樹木(街路樹)、自転車、および車両のボンネット等が観測される。こうした車両の前方周辺においては、車両の運転支援に必要とされる歩行者や自転車等が、一般に車両前方のボンネットと上空との間の領域にて観測されることになる。このように車両の前方周辺が測定対象20となる態様で、スペクトル測定装置10が車両に搭載されるとすると、以下のような構成であれば、歩行者や自転車等の測定部分について、高い空間的な分解能と、高い波長成分の分解能との双方で、そのスペクトルが測定可能になる。
すなわち、車両のボンネットから上空に向かう方向が幅方向Dwであって、かつ、測定対象20の幅方向Dwの中央付近にて、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が相対的に狭くなるようにスリット群12G(図5参照)が構成されるとする。こうした構成によれば、測定対象20における中央付近において空間的な分解能が高くなり、また測定対象20における幅方向Dwの両端付近において波長成分の分解能が高くなる。そのため歩行者や自転車等が測定対象20の中央付近に存在する場合、つまり運転支援に必要とされる対象が車両から遠く離れて存在する場合、まず高い空間的な分解能の下で、それらの空間的な特性が測定可能となる。そして運転支援に必要とされる対象が測定対象20における幅方向Dwの両端付近に存在する場合、つまり運転支援に必要とされる対象が車両から近い位置に存在する場合には、高い波長成分の分解能の下で、それらの光学的な特性が測定可能となる。
それゆえ遮蔽器12においてスリット群12Gの切替が行われずとも、車両から遠く離れた物体に対しては、高い空間的な解像度によってそれの識別が可能になる。また車両に近い物体に対しては、高い波長成分の分解能によってそれの識別が可能になる。したがって車両から遠く離れた物体に対しては、それが運転支援に必要とされる対象か否かといった点について空間的に識別可能となる。そして車両に近い物体に対しては、それが歩行者、動物、自転車のいずれであるかといった点について識別可能となる。
以上説明したように、第4の実施の形態に係るスペクトル測定装置10によれば、第1の実施の形態から得られる上記(1)〜(4)の効果に加えて、以下列記するような効果が得られるようになる。
(10)このスペクトル測定装置10のスリット群12Gでは、2本以上のスリット12bがそれらの配列方向で偏倚していることから、偏倚している2つ以上の互いに異なる測定部分から構成される測定対象20に対しても、実時間でのスペクトル測定が可能になる。
(11)そのうえ偏倚している2本以上のスリット12bに対応する測定部分では、測定対象20における空間的な分解能が向上可能となる。反対に、こうした偏倚しているスリット12bとは別のスリット12bに対応する測定部分では、測定対象20における空間的な分解能が抑制可能となる。したがってスリット群12Gの切替等を必要とすることなく、1つのスペクトル測定装置10によって、測定対象20における空間的な解像度を複数設定することが可能にもなる。
(12)そのうえ、偏倚している2つ以上の測定部分においては、空間的な分解能が向上可能となる一方、こうした測定部分を除いた他の測定部分においては、波長成分の分解能が向上可能になる。それゆえ、高い空間解像度によってスペクトルが測定される部分と、高い波長成分の分解能によってスペクトルが測定される部分とが、1つの測定対象20のなかに構成可能にもなる。
(13)このスペクトル測定装置10のバンドパスフィルタ13は、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が短くなるにつれて測定帯域を狭くするかたちに構成されている。そのため互いに隣接するスリット12b同士の間隔が偏倚によって短くなるとしても、各スリットを通過した光同士の干渉を抑制することが可能にもなる。
(第5の実施の形態)
次に、本発明にかかるスペクトル測定装置の第5の実施の形態について、図7および図8を用いて説明する。なお、第5の実施の形態は、スペクトル測定装置10が車両に搭載される構成であり、その他の基本的な構成は上述する実施の形態と類似する構成であるため、以下ではその変更点について特に説明する。
なお、本実施の形態におけるスペクトル測定装置10は、第2の実施の形態にて説明された遮蔽器12およびスリット切替器22と、第3の実施の形態にて説明された距離可変器24とを搭載している。
また本実施の形態におけるスペクトル測定装置10は、スリット切替器22を駆動するための第1アクチュエータ22Aと、距離可変器24を駆動するための第2アクチュエータ24Aとを備えている。更にスペクトル測定装置10は、これら各アクチュエータ22A、24Aに、各々の駆動量を制御値として各アクチュエータ22A、24Aに入力するスリット制御器および距離制御器を構成する制御部26を備えている。以下では、こうした構成を有するスペクトル測定装置10の測定結果に基づき車両の運転支援が行われる例について説明する。
図7に示されるように、このスペクトル測定装置10が搭載される車両Cには、イグニッションがオンであるかオフであるかを検出するイグニッションセンサや、車両Cの周辺における物体と車両Cとの間の距離を検出可能にする赤外線レーダ、ミリ波レーダ、車載カメラ等の対物センサから構成される車載センサ31が搭載されている。こうした車載センサ31を搭載する車両Cには、車載センサ31からの各種検出結果を取得して、スペクトル測定処理に必要となる各種情報を生成するデータ処理部32が搭載されている。具体的には、このデータ処理部32は、イグニッションセンサからの検出結果に基づき、スペクトル測定装置10を起動させるか否かを示す情報を生成し、また対物センサからの検出結果に基づき、運転支援に必要とされる対象の候補と車両Cとの間の距離を示す情報を生成する。
車両Cに搭載されるスペクトル測定装置10には、データ処理部32からの各種情報に基づき、スペクトル測定装置10の起動判定を実行し、かつ、アクチュエータ22A、24Aの駆動量を制御する制御部26が搭載されている。
またこの制御部26は、運転支援に必要とされる対象の候補と車両Cとの間の距離、つまり測定部分とスリット群12Gとの間の距離に、測定対象20における測定部分20aの個数が対応付けられたマップ等にて構成される属性データを格納している。具体的には、こうした属性データでは、測定部分20aとスリット群12Gとの間の距離が短くなるにつれて、測定対象20における測定部分20aの個数が少なくなるかたちで、測定部分20aとスリット群12Gとの間の距離に対し測定部分20aの個数が対応付けられている。
そして、運転支援に必要とされる対象の候補と車両Cとの間の距離を示す情報を、データ処理部32から制御部26が取得すると、当該制御部26は、上記属性データを参照して、当該対象の候補と車両Cとの間の距離に対応する測定部分20aの個数を決定する。
またこの制御部26は、測定対象20における測定部分20aの個数が、アクチュエータ22A、24Aの駆動量に対応付けられたテーブル等にて構成される駆動量データDB1を格納している。具体的には、こうした駆動量データDB1では、測定対象20における測定部分20aの個数が小さくなるにつれて、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が長くなるかたちで、測定対象20における測定部分20aの個数に、第1アクチュエータ22Aの駆動量が対応付けられている。またこうした駆動量データDB1では、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が長くなるにつれて、分光器14と測定器15の間の距離が長くなるかたちで、上記第1アクチュエータ22Aの駆動量に、第2アクチュエータ24Aの駆動量が対応付けられている。
そして上記測定部分20aの個数を決定すると、当該制御部26は、上記駆動量データDB1を参照し、当該測定部分20aの個数に対応する第1アクチュエータ22Aの駆動量と、当該第1アクチュエータ22Aの駆動量に対応する第2アクチュエータ24Aの駆動量とを算出する。そして制御部26は、アクチュエータ22A、24Aの各々を、それに対応する駆動量で制御する。
こうしたスペクトル測定装置10を搭載する車両Cには、スペクトル測定装置10が取得したスペクトルデータに基づき各測定部分を識別するスペクトルデータ解析部33が、搭載されている。このスペクトルデータ解析部33は、スペクトルの各種特異量を示すデータに、運転支援に必要とされる各種対象が紐付けられたテーブル等にて構成される辞書データDB2を、格納している。具体的には、こうした辞書データDB2では、特異的な波長、当該波長に対する強度、当該波長におけるピーク形状等、これらスペクトルの各特異量に、信号機、標識、歩行者、自転車、動物等、運転支援に必要とされる各種対象が紐付けられるかたちに構成されている。
そしてスペクトル測定装置10からのスペクトルデータを取得したスペクトルデータ解析部33は、上記辞書データDB2を参照して、当該スペクトルデータの各特異量に紐付けられた対象、すなわち測定部分の識別結果を、識別データとして生成する。次いでスペクトルデータ解析部33は、それが生成した識別データに基づき運転支援を実行する各部、例えば車両Cの運転者に注意喚起を促す警報部や表示部、更には当該車両Cを構成する各種アクチュエータ等へ識別データを出力し、こうした各部において、当該識別データに基づく運転支援を実行させる。
次に、本実施の形態のスペクトル測定装置10を搭載する車両Cにて行われる一連のスペクトル測定処理について、図8を参照して説明する。なお、本実施の形態におけるスペクトル測定処理は、車両Cの電源状態がACC(Accessory)オンの状態である期間に、所定の演算周期で繰り返して実行される。
図8に示されるように、当該スペクトル測定処理においてはまず、スペクトル測定装置10の起動判定として、イグニッションセンサの検出結果に基づき、イグニッションがオンであるか、あるいはオフであるかを、制御部26が判断する(ステップS1)。イグニッションがオフであると判断すると、制御部26はスペクトル測定処理を終了する。一方、イグニッションがオンであると判断すると、制御部26は、データ処理部32を介して、運転支援に必要とされる対象の候補と車両Cとの間の距離を示す情報を取得し、属性データを参照して、当該距離に対応する測定部分20aの個数を決定する。すなわち制御部26は、測定部分20aとスリット群12Gとの間の距離が短くなるにつれて測定対象20における測定部分の個数が少なくなるかたちで、測定部分の個数、つまり測定部分の属性を決定する(ステップS2)。
このようにして測定部分の属性が決定されると、制御部26は、駆動量データDB1を参照して、測定部分20aの個数に対応する第1アクチュエータ22Aの駆動量を算出し、当該測定部分20aの個数に対応する駆動量で第1アクチュエータ22Aを制御する(ステップS3)。すなわち制御部26は、測定対象20における測定部分20aの個数が小さくなるにつれて、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が長くなるかたちで、2つ以上の互いに異なるスリット群12Gのうちから、測定用のスリット群12Gを選択する。
次いで制御部26は、駆動量データDB1を参照して、第1アクチュエータ22Aの駆動量に対応付けられた第2アクチュエータ24Aの駆動量を算出し、第1アクチュエータ22Aの駆動量に対応する駆動量で第2アクチュエータ24Aを制御する(ステップS4)。すなわち制御部26は、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が長くなるにつれて、分光器14と測定器15の間の距離が長くなるかたちで、分光器14と測定器15の間の距離を、測定用のスリット群12Gに対応して変更する。
このようにして測定用のスリット群12Gが選択されることによって、分光器14と測定器15の間の距離が、距離可変器24によって当該測定用のスリット群12Gに対応付けられると、制御部26は、各測定部分における波長成分ごとの強度を示すデータを、測定器15から取得する。そして、波長成分ごとの光の強度がその波長に対応付けられる態様で、スペクトルデータを生成する(ステップS5)。
この際、運転支援に必要とされる対象の候補と車両Cとの間の距離が短ければ、こうした対象に対して運転支援を実行するまでの時間も短くなる。そのため測定対象の識別がより詳細になされるべく、測定対象における高い波長成分の分解能が必要とされることになる。つまりスリット12bの個数も、自ずと少ないものが必要とされることになる。反対に、運転支援に必要とされる対象の候補と車両Cとの間の距離が長ければ、こうした対象に対して運転支援を実行するまでの時間も、十分に長くなる。そのため測定対象の識別がより単純になされるべく、測定対象における高い空間的な分解能が必要とされることになる。つまりスリット12bの個数も、自ずと多いものが必要とされることになる。
上述するような構成を有するスペクトル測定装置10であれば、測定部分とスリット群12Gとの間の距離が長くなるにつれて、測定対象20における測定部分の個数が多くなる。そのため運転支援に必要とされる対象の候補と車両Cとの間の距離が長ければ、測定対象における空間的な分解能が高くなり、反対に、運転支援に必要とされる対象の候補と車両Cとの間の距離が短ければ、測定対象における波長成分の分解能が高くなる。それゆえに、測定対象20における空間的な分解能と波長成分の分解能とが、運転支援のタイミングに合わせられるかたちとなるため、運転支援における支援精度が向上可能にもなる。
また測定対象20における測定部分の個数が少なければ、こうした測定部分に対応するスリット12bの本数も少なくなるため、測定器15における受光面積も自ずと当該本数に対応して小さくなる。一方、測定対象20における測定部分の個数が多ければ、こうした測定部分に対応するスリット12bの本数も多くなるため、測定器15における受光面積も自ずと当該本数に対応して大きくなる。
上述するような構成を有するスペクトル測定装置10であれば、スリット12bの本数が多くなるにつれて分光器14と測定器15の間の距離が短くなり、反対に、スリット12bの本数が少なくなるにつれて分光器14と測定器15の間の距離が長くなる。そして上述したように、分光された光を受ける受光素子の個数、すなわち測定結果のデータ量は、測定器15が分光器14から離れるにつれて大きくなり、反対に、測定器15が分光器14に近づくにつれて小さくなる。そのためスリット12bの本数が多ければ、スペクトルデータのデータ量が一定量に向かって抑えられることになり、反対に、スリット12bの本数が少なければ、スペクトルデータのデータ量が当該一定量に向かって増加されることになる。それゆえに、測定データのデータ量を、測定用のスリット群12Gに対応して略一定量にすることが可能になるため、スペクトルデータの一部を間引いたり、あるいはスペクトルデータの一部にダミーとなるデータを補間したりといった演算が不要となる。したがって、スペクトルデータの解析時間を含めたスペクトル測定が、実時間にて実現し易くもなる。
そしてスペクトルデータが生成されると、制御部26は、イグニッションセンサの検出結果に基づき、イグニッションがオンであるか、あるいはオフであるかを再び判断する(ステップS6)。イグニッションがオフであると判断すると、制御部26はスペクトル測定処理を終了する。一方、イグニッションがオンであると判断すると、制御部26は、上記スペクトルデータをスペクトルデータ解析部33に出力する。そして制御部26は、運転支援に必要とされる対象の候補の識別結果を示す識別データを、スペクトルデータ解析部33によって生成させて、運転支援を実行する各部に当該識別データを出力させ、当該各部に運転支援を実行させて、上記と同様の処理を繰り返す(ステップS7)。
以上説明したように、第5の実施の形態に係るスペクトル測定装置10によれば、各実施の形態から得られる上記の効果に加えて、以下列記するような効果が得られるようになる。
(14)このスペクトル測定装置10の制御部26は、測定対象20とスリット群12Gとの間の距離に基づき、測定部分の属性としての測定部分20aの個数を決定する。そのため、測定用のスリット群12Gの切替の態様が、測定対象20とスリット群12Gとの間の距離に基づき制御可能になる。よって、例えばスペクトル測定装置10から測定対象20までの距離が短ければ、スリット12bの本数を減らし、こうした測定対象20における空間的な解像度を下げることが可能になる。また、例えばスペクトル測定装置10から測定対象20までの距離が長ければ、スリット12bの本数を増やし、こうした測定対象20における空間的な解像度を上げることが可能になる。それゆえ、測定対象20の範囲を有効的に利用したスペクトル測定が、実時間で可能になる。
(15)このスペクトル測定装置10の制御部26は、距離可変器24による分光器14と測定器15の間の距離の変動を、スリット群12Gの属性としてのスリット12bの本数に基づき制御する。これによって、分光器14と測定器15の間の距離は、測定用のスリット12bの本数に基づき制御可能になるため、例えば測定用のスリット12bの本数が多ければ、空間的な解像度を上げつつ、スペクトルにおける波長成分の分解能を下げてデータ量を略一定量に抑えることが可能になる。反対に、測定用のスリット12bの本数が少なければ、空間的な解像度を下げつつ、スペクトルにおける波長成分の分解能を上げてデータ量を一定量に近づけることが可能なる。それゆえ、スリット12bの本数が互いに異なるというように、属性が互いに異なるスリット群12Gが測定用のスリット群12Gに適用される構成であっても、空間的な解像度を調整しつつ、上述するようなデータ量の調整や波長成分の分解能の調整が可能にもなる。
なお、上記各実施の形態は、以下のような態様をもって実施することもできる。
・上記第5の実施の形態では、移動体としての車両Cに、スペクトル測定装置10が搭載される構成を説明したが、これに限らず、スリット切替器22による切替の態様を、測定部分20aの属性に応じた制御値に基づき制御する構成であってもよい。このように、当該スペクトル測定装置10が移動体に搭載されない構成としても、第5の実施の形態で得られる(14)、(15)と同様の効果を得ることが可能である。
・上記第5の実施の形態では、移動体としての車両Cに、スペクトル測定装置10が搭載される構成を説明したが、これに限らず、距離可変器24による分光器14と測定器15の間の距離の変動が、スリット群12Gの属性に応じた制御値に基づき制御される構成であってもよい。このように、当該スペクトル測定装置10が移動体に搭載されない構成であっても、第5の実施の形態で得られる(14)、(15)と同様の効果を得ることが可能である。
・上記第5の実施の形態では、スリット切替器22による切替の態様を、測定部分20aの属性に応じた制御値に基づき制御し、かつ、距離可変器24による分光器14と測定器15の間の距離の変動を、スリット群12Gの属性に応じた制御値に基づき制御する構成とした。しかしこれに限られず、例えば分光器14と測定器15の間の距離が固定されて、スリット切替器22による切替の態様のみが測定部分20aの属性に応じて制御される構成であってもよい。こうした構成であっても、第5の実施の形態で得られる(14)と同様の効果が得られることになる。あるいは、スリット群12Gが固定されて、距離可変器24による分光器14と測定器15の間の距離の変動のみが当該スリット群12Gの属性に応じて制御される構成であってもよい。こうした構成であっても、第5の実施の形態で得られる(15)と同様の効果が得られることになる。
・上記第5の実施の形態では、スペクトル測定装置10が、第2の実施の形態にて説明された遮蔽器12およびスリット切替器22と、第3の実施の形態にて説明された距離可変器24とを備えている。そして、その遮蔽器12が備える2以上の互いに異なるスリット群12Gは、それぞれスリット12bの本数といった属性が互いに異なることとした。しかしこれに限らず、例えば第4の実施の形態にて説明されたような、スリット12bの配列方向である幅方向Dwの中央付近に3本のスリット12bが偏倚して配列されているスリット群12Gが、2以上の互いに異なるスリット群12Gのうちの1つとなる構成であってもよい。こうした構成であっても、第5の実施の形態で得られる(14)、(15)と同様の効果が得られることになる。
・上記第5の実施の形態では、測定部分20aの属性が、測定部分20aの個数として具体化されているが、これに限らず、測定部分20aの属性は、測定部分20aのサイズや測定対象における測定部分20aの位置等に具体化されてもよい。こうした構成であっても、第5の実施の形態で得られる(14)、(15)と同様の効果が得られることになる。
・上記第5の実施の形態では、制御部26が、測定対象20とスリット群12Gとの間の距離に基づき測定部分20aの属性を決定する。しかしこれに限らず、例えば測定対象20を測定する周辺の環境や、車両Cの挙動等の走行状況に基づき、これに適した測定部分20aの属性、例えば測定対象20における測定部分20aの位置、個数、サイズ等が決定される構成であってもよい。こうした構成であっても、第5の実施の形態で得られる(14)、(15)と同様の効果が得られることになる。
・上記第5の実施の形態では、スリット群12Gの属性を、スリット12bの本数として具体化したが、これに限らず、スリット群12Gの属性を、隣接するスリット12bとの間の間隔や、スリット12bの偏倚している位置等に具体化することも可能である。こうした構成であっても、第5の実施の形態で得られる(14)、(15)と同様の効果が得られることになる。
・上記第5の実施の形態では、測定部分20aとスリット群12Gとの間の距離が短くなるにつれて、測定対象20における測定部分20aの個数が少なくなるようにした。しかしこれに限らず、例えば測定部分20aとスリット群12Gとの間の距離が短くなるにつれて、測定対象20における測定部分20aの個数が多くなるようにしてもよい。こうした構成であれば、測定対象20がスペクトル測定装置10に近づくにつれて、空間的な解像度を高くすることができる。
・上記第5の実施の形態では、スペクトル測定装置10が制御部26を有する構成としているが、これを変更して、例えば車両Cが上記制御部26を有する構成としてもよい。また車両Cがスペクトルデータ解析部33を有する構成としているが、これを変更して、スペクトル測定装置10がスペクトルデータ解析部33を有する構成であってもよい。こうした構成であっても、第5の実施の形態で得られる(14)、(15)と同様の効果が得られることになる。
・上記第5の実施の形態では、測定対象20とスリット群12Gとの間の距離に基づきスリット群12Gを切替え、かつその切替えたスリット群12Gの属性に応じて、分光器14と測定器15との距離を調整する構成としている。しかしこれに限らず、スリット群12Gを切替えるために用いる測定部分20aの属性としては、例えば、昼夜、晴雨、または走行場所(都市部か農村部か)等の周囲環境、スペクトル測定装置10の解析結果、あるいはこのスペクトル測定装置10を搭載する車両Cの挙動等の走行状況に適した測定部分20aの位置、サイズ、個数等を用いてもよい。こうした構成であっても、第5の実施の形態で得られる(14)、(15)と同様の効果が得られることになる。
・上記第4の実施の形態では、バンドパスフィルタ13が透過させる波長帯域が、互いに隣接するスリット12b同士の間隔に応じて異なり、分光器14から分散する各波長成分の広がりが、互いに隣接するスリット12b同士の間隔に応じて互いに異なる構成としている。しかしこれに限らず、バンドパスフィルタ13が透過させる波長帯域が、互いに隣接するスリット12b同士の間隔にかかわらず共通するものであってもよいし、分光器から分散する各波長成分の広がりが、互いに隣接するスリット12b同士の間隔に応じて互いに異なる構成であってもよい。こうした構成は、第4の実施の形態において、例えば1つのバンドパスフィルタ13と、上記各波長成分の広がりが、互いに隣接するスリット12b同士の間隔に応じて互いに異なる2種類の分光器14とから実現可能である。こうした構成によっても、上記第4の実施の形態で得られる効果と同様の効果が得られることになる。
・上記第3および第5の実施の形態では、測定器15が移動することによって、分光器14と測定器15の間の距離が変更される構成としている。しかしこれに限らず、分光器14が移動する構成としてもよく、また分光器14と測定器15とが共に移動する構成としてもよい。これらの構成であれば、波長成分の分解能を上げるために測定器15を移動する余裕を確保しておく必要がなくなる。すなわち、スペクトル測定装置10を小型化することができる。したがって、小型化されたスペクトル測定装置10を搭載する移動体としての車両Cの設計自由度を高めることも可能となる。
・上記第2の実施の形態を構成する2以上のスリット群12Gのうちの1つと、それに対応するバンドパスフィルタ13として、第4の実施の形態を構成する遮蔽器12および、2種類のバンドパスフィルタを備えるバンドパスフィルタ13を適用することも可能である。こうすることによっても、上記第2の実施の形態で得られる効果と同様の効果が得られることになる。
・上記第3の実施の形態を構成する遮蔽器12およびバンドパスフィルタ13として、第4の実施の形態を構成する遮蔽器12および、2種類のバンドパスフィルタを備えるバンドパスフィルタ13を適用することも可能である。こうすることによっても、上記第3の実施の形態で得られる効果と同様の効果が得られることになる。
・上記第2の実施の形態では、遮蔽器12を構成する遮蔽板12aが円板状に構成されるが、これに限らず、2つ以上の互いに異なるスリット群12Gを有する構成であれば、遮蔽板12aは、例えば図9に例示されるように、六角筒状に構成されていてもよい。更には、多角形の平板や六角筒状を除いた多角筒状に構成されていてもよい。これによって、遮蔽器12についての設計の自由度を高くすることができる。
・上記の各実施の形態では、スリット12bの各々が光学素子12cを有する構成であるが、こうした構成に限られない。例えば、各スリット12bに共通する視準器が、遮蔽器12と分光器14との間に配置される構成、あるいは各スリット12bからの光同士が干渉しないように各スリット12bが配置される構成であってもよい。そのような構成とすることによって、上記各光学素子12cを割愛し、遮蔽器12の製造を簡略化することも可能となる。
・上記の各実施の形態では、測定帯域の光のみを透過させるバンドパスフィルタ13がスペクトル測定装置10に設けられる構成であるが、分光器14にて分光された各波長成分が互いに干渉しない構成であれば、こうしたバンドパスフィルタ13を割愛することも可能である。そのような構成とすることによって、スペクトル測定装置10の構造を簡略化することで、スペクトル測定装置10の製造を容易にすることができる。
・上記の各実施の形態では、遮蔽器12と分光器14の間にバンドパスフィルタ13が配置される構成であるが、測定器15よりも前段にバンドパスフィルタ13が設けられるのであれば、バンドパスフィルタ13の配置はこれに限られるものではない。すなわち、測定器15が備える受光素子に、測定帯域の光が入射することになるのであれば、バンドパスフィルタ13はどこに配置されていてもよい。こうすることによって、スペクトル測定装置10の設計の自由度を高めることができる。
・上記の各実施の形態では、スリット12bは、長さ方向Dmに延びる孔、すなわち、図1、図3、図4および図5の紙面に対して垂直となる方向に延びる穿孔として構成されているが、これに限られない。すなわち、各スリット12bからの光が互いに干渉しない構成であれば、各スリット12bたる孔は、その方向を自由に構成することができる。例えば、スリット12bたる孔の方向は、図1、図3、図4および図5の紙面に対して垂直となる方向と並行とするのではなく、その方向に対して斜め方向であってもよい。また、上記スリット12bたる孔の長さも、長短おりまぜ、自由に構成することができる。こうした構成であっても、上記の各実施の形態にて得られる効果と同様に効果を得ることができる。更に、特に上記第4の実施の形態において、高い空間解像度によってスペクトルが測定される部分と、高い波長成分の分解能によってスペクトルが測定される部分とをより詳しく測定することができるスリット群12Gを備える遮蔽器12を適用することが可能となる。
・上記の各実施の形態では、2本以上のスリット12bが幅方向Dwに配列される構成とされているが、2本以上のスリット12bが2以上の互いに異なる方向に配列されて、各列に対応した光学系が備えられる構成としてもよい。こうした構成であっても、上記の各実施の形態にて得られる効果と同様の効果が得られることになる。更に、特に上記第4の実施の形態において、高い空間解像度によってスペクトルが測定される部分と、高い波長成分の分解能によってスペクトルが測定される部分とをより詳しく測定することができるスリット群12Gを備える遮蔽器12を適用することが可能となる。
10…スペクトル測定装置、11…集光器、12…遮蔽器、12a…遮蔽板、12b…スリット、12c…光学素子、12G…スリット群、13…バンドパスフィルタ、13a…第1のバンドパスフィルタ、13b…第2のバンドパスフィルタ、14…分光器、15…測定器、20…測定対象、20a…測定部分、22…スリット切替器、23…整合器、24…距離可変器、100…ハイパースペクトルセンサ、111…入射口、112…ミラー、113…集光器、114…遮蔽板、114a…単スリット、115…視準器、116…分光器、117…結像器、118…測定器、118a…受光素子、118b…受光素子、120…対象物、120a…測定部分。
本発明は、測定対象からの光をスペクトルとして測定するスペクトル測定装置、例えば車両等の移動体に搭載されるスペクトル測定装置に関する。
近年、自動車等の車両に適用される運転支援技術には、自車両の周辺状況を可視画像として撮像するCCDカメラ等の撮像装置が自車両に搭載される態様で用いられている。こうした運転支援技術ではまず、自車両周辺の歩行者や信号機等、運転支援に必要とされる対象物に関する情報が、この撮像装置が撮像した可視画像の画像処理を通して生成されて、自車両の周辺状況に応じた運転支援が、このようにして生成された情報に基づき実行される。
一方、自車両周辺を歩行する歩行者の状況、例えば、人数、体型、姿勢、所持品、移動する方向等とは、通常、自車両周辺の可視画像が撮像されるごとに変化するものである。更に自車両の走行状況、例えば、自車両の旋回方向や自車両が走行する道路の属性が変わることとなれば、上記歩行者は当然のこと、道路に設置された信号機でさえ、自車両周辺の可視画像における形状やサイズが変化することとなる。それゆえに、運転支援に必要とされる対象物をこれが含まれる撮像対象の可視画像から検出する態様では、対象物の検出精度も自ずと低いものとなってしまい、運転支援の精度自体を欠く結果となってしまう。そこで、上述する運転支援技術では、運転支援の精度を向上するために、対象物の検出精度を向上させる技術が望まれている。
ところで、対象物が有する光学的な特性から対象物を識別する技術の中には、特許文献1に示されるように、地球上の土壌調査等に使用される目的で人工衛星に搭載されるスペクトル測定装置として、ハイパースペクトルセンサを用いる技術が知られている。特許文献1に記載されるハイパースペクトルセンサでは、例えば、対象物からの光が波長ごとに分光されて、波長ごとの光の強度がその波長に対応付けられる態様でスペクトルが検出される。つまり、波長に対して連続的なスペクトルが対象物の光学的な特性として取り扱われる。図10は、こうしたスペクトル測定装置としてのハイパースペクトルセンサの光学的な構成の一例を示す構成図である。
図10に示されるように、人工衛星に搭載されるハイパースペクトルセンサ100の内部には、入射口111、ミラー112、集光器113、遮蔽板114、視準器115、分光器116、結像器117、および測定器118が、光の進行方向に沿ってこの順に配置されている。ハイパースペクトルセンサ100を構成するこれら構成要素の各々は、それを通過する光束の代表となる仮想的な光線、すなわち光軸(図10の左右方向に延びる)に対して交差する一つの方向において、光学的な特性が連続するように構成されている。このような構成を有するハイパースペクトルセンサ100では、測定対象としての地表面である対象物120にて反射された太陽光の一部が、まず入射口111を通して装置内に入射して、ミラー112の反射作用によって集光器113へ導かれる。集光器113に入射した光は、集光器113の集光作用によって遮蔽板114に向かって集光されて、遮蔽板114の遮蔽作用によって、単スリット114aに向かう光のみが視準器115に導かれる。このようにして単スリット114aを通過した光は、視準器115の光学作用によって平行光として分光器116に導かれて、分光器116の分光作用によって各波長成分に分光される。分光器116によって分光された各波長成分(波長成分λa〜波長成分λb)は、結像器117の結像作用によって、波長ごとに区分された測定器118の各領域、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等が有する各受光素子118a,118bに結像される。
つまり、このようなハイパースペクトルセンサ100では、集光器113が集めた光のうちで単スリット114aを通過した光についてのみ、そのスペクトルが測定されることになる。言い換えれば、単スリット114aにおいて光学的な特性が連続する方向、すなわち単スリット114aの長さ方向Dmに沿うライン状の測定部分120aからの光のみが、地表面である対象物120からの光のうちから上記単スリット114aによって抽出されることになる。そしてライン状の測定部分120aに関する光学的な情報のみが、その都度、ハイパースペクトルセンサ100に入力されることになる。そして一次元的な測定部分120aについてのスペクトル測定が人工衛星の飛行方向に沿って繰り返されることによって、二次元的な地表面である対象物120の光学的な特性が、ハイパースペクトルセンサ100によって測定されることになる。
特開2006−145362号公報
ところで、上述するようなハイパースペクトルセンサ100にあっては、対象物120に対してハイパースペクトルセンサ100が移動する方向は、測定部分120aの並ぶ方向となる。そしてスペクトルの測定対象である2次元的な範囲が、こうした移動方向Drで常に制約されることになる。そのため、2以上の互いに異なる測定部分120aが、移動方向Drとは異なる方向に並んだ測定対象、例えば歩行者や信号機が含まれる自車両周辺の1つのシーン等、こうした測定対象に関わるスペクトルを測定する際には、長さ方向Dmに対して交差する方向へ上記単スリット114aを走査させるといった走査の態様が取られざるを得ない。図11(a)(b)(c)は、こうした単スリット114aの走査の一例を光学的な作用とともに示す作用図である。
図11(a)に示されるように、対象物120の上端の測定部分120aを物点とし、遮蔽板114に設けられた単スリット114aを像点とするかたちに単スリット114aが配置されることによって、まず対象物120の上端の測定部分120aに関するスペクトルが測定される。次いで、遮蔽板114が単スリット114aの幅だけ移動する態様で走査が繰り返されることによって、図11(b)に示されるように、対象物120の上端から下端の各測定部分120aに関するスペクトルが順に測定される。そして図11(c)に示されるように、対象物120の下端の測定部分120aを物点とし、遮蔽板114に設けられた単スリット114aを像点とするかたちに単スリット114aが配置されることによって、対象物120の上下方向の全幅にわたり、スペクトルが測定される。このように、移動方向とは異なる方向に測定部分が並んだシーンであっても、そのシーンに対応して単スリット114aを走査させる態様であれば、そのシーンについてのスペクトルを測定することが可能となる。
なお、図10では、遮蔽板114のみが単スリット114aの幅だけ移動する態様で走査が繰り返されるとしたが、これに限られず、遮蔽板114、視準器115、分光器116、結像器117、および測定器118が、固定された単スリット114aに対して、一体となって移動する態様で走査が繰り返される場合もある。
しかしながら、こうした走査が採用されるとすれども、1つのシーンについてのスペクトルを測定する際には、単スリット114aの走査に要する時間が必要となってしまう。それゆえに、単スリット114aの走査に要する時間よりも短い時間からなるシーンでは、結局、スペクトルを測定することが不可能となってしまう。
特に、車両等の移動体にハイパースペクトルセンサ100が搭載されて、測定結果に基づき移動の支援がなされることとなれば、1つのシーンに関わるスペクトルの測定が、移動の支援に間に合わなくなってしまい、結局、こうした移動の支援がその精度を大きく欠いたものとなってしまう。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、2つ以上の互いに異なる測定部分から構成される測定対象に対して、各測定部分からの光のスペクトル測定に要する測定時間を短縮するスペクトル測定装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明に従うスペクトル測定装置は、本以上のスリットを有するスリット群であって、前記各スリットは、4以上の互いに異なる測定部分を含む測定対象に対して、当該測定対象からの光のうちから、前記各測定部分からの光を抽出することと、前記スリット群によって抽出された光を前記スリットごとに分光する分光器と、前記分光器によって分光された前記スリットごとの光の各成分の強度を測定する測定器とを備え、前記測定器は、前記分光器によって分光された光の成分の各々を、前記スリットごとに前記分光器から直接受光する4つ以上の受光素子を含み、更に、前記受光素子よりも前段の光路において前記分光器によって分光された前記スリットごとの光の成分が互いに干渉しない態様で前記分光器と前記測定器との間の距離を変更可能にする距離可変器を備え、前記スリットの配列方向の中央付近における前記スリット同士の間隔が、前記配列方向の両端付近における前記スリット同士の間隔よりも狭くなるかたちに前記スリットが偏倚して配置されていることを要旨とする。
こうした構成を有するスペクトル測定装置によれば、以上の互いに異なる測定部分を含む測定対象に対して、スリットを移動させることなく、各測定部分からの光のスペクトルが測定可能になる。そのため、例えば単スリットを移動させながら各測定部分からの光のスペクトルを測定する構成と比較して、各スペクトルの測定時間が短縮可能になる。そのうえ、各測定部分からの光のスペクトルが互いに同じタイミングで測定されることにもなるため、測定対象の広範囲にわたるスペクトル測定が実時間で可能になる。なお、こうしたスペクトル測定装置が移動体に搭載されるとすれば、要求される移動状態でのスペクトル測定が実時間で可能になる。そのため、スペクトルの測定結果を利用して移動体の移動支援がなされることになれば、その移動支援の精度が向上可能にもなる。
また、分光器によって分光された光は、それの断面が測定器に向かって拡がるかたちに進行する。ゆえに当該分光された光を直接受光する測定器における受光面積は、測定器が分光器から離れるにつれて大きくなり、反対に、測定器が分光器に近づくにつれて小さくなる。そして分光された光を受ける受光素子の数、すなわち測定結果のデータ量も、測定器が分光器から離れるにつれて大きくなり、反対に、測定器が分光器に近づくにつれて小さくなる。なお測定器の受光面積が小さくなる場合には、より多くの成分が単一の受光素子に入射することによって成分の分解能が低くなり、反対に、測定器の受光面積が大きくなれば、より少ない成分が単一の受光素子に入射することによって、成分の分解能が高くなる。
そして、このスペクトル測定装置によれば、分光器と測定器との間の距離が距離可変器によって、前記分光された前記スリットごとの光の成分が互いに干渉しないようにしつつ変更可能になる。よって、例えば分光器と測定器との間の距離が固定される構成と比較して、測定結果のデータ量や各成分の分解能の自由度が拡張可能になる。
さらに、このスペクトル測定装置によれば、前記スリットの配列方向の中央付近における前記スリット同士の間隔が、前記配列方向の両端付近における前記スリット同士の間隔よりも狭くなるかたちに前記スリットが偏倚して配置されていることから、このように偏倚している2つ以上の互いに異なる測定部分から構成される測定対象に対しても実時間でのスペクトル測定が可能になる。
また、前記スリット群は、前記スペクトル測定装置が備える2つ以上の互いに異なるスリット群のうちの一つであり、前記スペクトル測定装置は更に、分光させる光を前記分光器に透過させる1つのスリット群を、前記2つ以上の互いに異なるスリット群のうちで切替可能にするスリット切替器を備えることを要旨とする。
測定対象における測定部分の位置や数等が互いに異なることとなれば、こうした測定部分からの光の位置や量も、互いに異なることになる。測定対象からの光のうちからこうした光が抽出されるには、スリット群におけるスリットの位置や数等も互いに異なる必要がある。この点、このスペクトル測定装置によれば、分光器に分光させる光を透過させる1つのスリット群、すなわち測定用のスリット群は、スリット切替器による切替によって、2つ以上の互いに異なるスリット群のいずれかに切替可能になる。そのため、2つ以上の互いに異なる測定対象であっても、2つ以上の互いに異なるスリット群のいずれかが各測定対象に適用可能となれば、それらのスペクトル測定が可能にもなる。こうしたことから、例えば単一のスリット群を有する構成と比較して、測定部分の位置や数等といった測定部分の属性に関して自由度が拡張可能になる。
またこのスペクトル測定装置は更に、前記スリット切替器による切替の態様を、前記測定部分の属性に応じた制御値に基づき制御するスリット制御器を備えることを要旨とする。
このスペクトル測定装置によれば、スリット切替器が測定用のスリット群を変更するか否か、あるいはスリット切替器が測定用のスリット群を何れのスリット群に切替えるかといったスリット切替器による切替の態様は、スリット制御器による制御によって、測定部分の属性に応じて制御可能になる。そのため、測定部分の位置や数等といった測定部分の属性が互いに異なる複数の測定対象であっても、測定部分の属性に適したスリット群によって、実時間でのスペクトル測定が可能になる。
またこのスペクトル測定装置は、前記スリット制御器が、前記測定対象と前記スリット群との間の距離に基づき、前記測定部分の属性を決定することを要旨とする。
測定対象の空間的な範囲は、スペクトル測定装置から測定対象までの距離が長くなるにつれて大きくなり、反対に、スペクトル測定装置から測定対象までの距離が短くなるにつれて小さくなる。こうした測定対象の空間的な範囲を有効的に利用する上では、測定部分の位置や数等といった測定部分の属性が、測定対象の空間的な範囲、つまりスペクトル測定装置から測定対象までの距離に応じて互いに異なることが好ましい。
例えば測定対象の範囲が空間的に大きくなる際に、測定対象内の広い範囲にわたり多数の測定部分が散在することになれば、空間的に広い測定対象の全体についてスペクトル測定が可能となり、空間的に広い測定対象を有効的に利用した測定が可能になる。反対に、測定対象の範囲が空間的に小さくなる際に、小数の測定部分でスペクトル測定がなされるとすれば、予め空間的に絞り込まれた測定対象を有効的に利用した測定が可能になる。
このスペクトル測定装置によれば、測定部分の属性は、測定対象とスリット群との間の距離に基づき、スリット制御器によって決定される。こうした構成であれば、測定用のスリット群の変更の態様は、測定対象とスリット群との間の距離に基づき制御可能になるため、上述するような測定対象の範囲を有効的に利用したスペクトル測定が実時間で可能になる。
またこのスペクトル測定装置は更に、前記距離可変器による変更の態様を、前記スリット群の属性に応じた制御値に基づき制御する距離制御器を備えることを要旨とする。
上述したように、分光された光を受ける受光素子の数、すなわち測定結果のデータ量は、測定器が分光器から離れるにつれて大きくなり、反対に、測定器が分光器に近づくにつれて小さくなる。測定データのデータ量を一定量以下に抑える上では、強度の測定に用いられる受光素子の数が、一定量以下に抑えられることが好ましい。
例えば互いに隣接するスリット同士の間の距離が短くなると、測定器が受ける光束同士の間の距離も短くなり、こうした光束を受ける受光素子の数も多くなる。この際、分光器と測定器との間の距離が短くなるとすれば、このように増加した受光素子の数が低減可能となり、測定データのデータ量を一定量に抑えることが可能になる。また互いに隣接するスリット同士の間の距離が長くなると、測定器が受ける光束同士の間の距離も長くなり、こうした光束を受ける受光素子の数も少なくなる。この際、分光器と測定器との間の距離が長くなるとすれば、このように減少した受光素子の数が増加可能となり、測定データのデータ量を一定量にすることが可能になる。
また各成分の分解能を一定値以上に維持する上では、強度の測定に用いられる受光素子の数が、一定量以上に維持されることが好ましい。上述するように互いに隣接するスリット同士の間の距離が長くなると、測定器が受ける光束同士の間の距離も長くなり、こうした光束を受ける受光素子の数も少なくなる。この際、分光器と測定器との間の距離が長くなるとすれば、このように減少した受光素子の数が増加可能となり、単一の受光素子が受ける成分の数を低減することが可能になる。
このスペクトル測定装置によれば、分光器と測定器との間の距離を長くするか否か、あるいは分光器と測定器との間の距離を短くするか否かといった距離可変器による変更の態様が、距離制御器によって、スリット群の属性に応じて制御可能になる。こうした構成であれば、互いに隣接するスリット同士の間の距離やスリットの数といった属性が互いに異なる複数のスリット群が搭載される構成であっても、スリット群の属性に基づき分光器と測定器との間の距離が制御可能になるため、上述するようなデータ量の調整や成分分解能の調整が可能にもなる。
またこのスペクトル測定装置は更に、測定帯域の波長成分のみを前記分光器に導くバンドパスフィルタを備えることを要旨とする。
例えば複数のスリットの各々を通過した光同士の間で、測定帯域の波長成分と測定帯域以外の波長成分とが干渉するとなっては、測定器における測定精度が損われるといった懸念がある。しかし、このスペクトル測定装置によれば、測定帯域の波長成分のみが分光器に導かれることから、各スリットを通過した光同士の間において、測定帯域以外の光と測定帯域の光との干渉が分光器よりも後段において回避可能になる。それゆえ各成分の強度に関わる精度が向上可能になり、ひいてはスペクトルの精度が向上可能になる。更に、干渉を抑制するための構成が分光器や測定器に必要とされなくなるため、分光器や測定器の構成が容易にもなる。
またこのスペクトル測定装置では、前記バンドパスフィルタは、互いに隣接する前記スリット同士の間隔が短くなるにつれて前記測定帯域を狭くするかたちに構成されることを要旨とする。
互いに隣接するスリット同士の間隔が短くなると、各スリットを通過した光束同士の間隔も自ずと短くなる。例えば互いに隣接するスリット同士の間隔が長くなる場合と比較して、分光器によって分光された各成分が測定器よりも前段において干渉し易くなる懸念がある。しかし、このスペクトル測定装置によれば、互いに隣接するスリット同士の間隔が短くなるにつれてバンドパスフィルタが測定帯域を狭くすることから、上述するような干渉を抑制することが可能にもなる。
またこのスペクトル測定装置では、前記2本以上のスリットの各々が、当該スリットを通過した光を収束光もしくは平行光に変換する光学素子を備えることを要旨とする。
互いに隣接するスリット同士の間隔が短くなると、各スリットを通過した光束同士の間隔も自ずと狭くなるため、スリットを通過した光束と、当該スリットに隣接する他のスリットを通過した光束とが、分光器よりも前段において干渉し易くなる懸念がある。しかし、このスペクトル測定装置によれば、各スリットが有する光学素子によって、当該スリットを通過した光束が収束光もしくは平行光に変換されることから、上述するような干渉を抑制することが可能にもなる。
またこのスペクトル測定装置は、前記2つ以上の互いに異なるスリット群は、それぞれ有する前記スリットの本数において互いに異なることを要旨とする。
このスペクトル測定装置によれば、2本以上の互いに異なるスリット群が、スリットの本数において互いに異なる。よって、測定部分の数において互いに異なる2つ以上の測定対象に対しても、実時間でのスペクトル測定が可能になる。
またこのスペクトル測定装置は、移動体に搭載されるものであることを要旨とする。
移動体の周辺から移動体が受ける光の特性は、その周辺に照射される光の特性、更にはこうした光を受ける周辺の光学的な特性によって特に変わる。そして移動体の周辺に照射される光、また移動体の周辺を構成する構成要素といった移動体の周辺の状況は、移動体の移動状況によってその都度変わるものである。このスペクトル測定装置によれば、それが有する実時間でのスペクトル測定によって、移動体の周辺からの光のスペクトルと移動体の移動状況とが対応するかたちで測定可能となる。
ペクトル測定装置の第1の参考例について、その光学的な構成を示す構成図。 ペクトル測定装置の第2の参考例について、その遮蔽板の平面構造を示す平面図。 ペクトル測定装置の第2の参考例について、その光学的な構成を示す構成図。 ペクトル測定装置の第3の参考例について、その光学的な構成を示す構成図。 本発明にかかるスペクトル測定装置の一実施の形態について、その光学的な構成を示す構成図。 本発明にかかるスペクトル測定装置の一実施の形態について、測定対象の一例を示す概念図。 ペクトル測定装置の第4の参考例について、その全体構成を示すブロック図。 ペクトル測定装置の第4の参考例にて実行されるスペクトルの測定手順を示すフローチャート。 変更例のスペクトル測定装置における遮蔽板の斜視構造を示す斜視図。 従来のスペクトル測定装置たるハイパースペクトルセンサが人工衛星に搭載されている場合について、その光学的な構成の一例を示す構成図。 (a)(b)(c)は、従来のスペクトル測定装置たるハイパースペクトルセンサを車両等の移動体に搭載する場合について、遮蔽板に設けられた単スリットの走査の一例を光学的な作用とともに示す作用図。
第1の参考例
以下、ペクトル測定装置の第1の参考例について、図1を参照して詳細に説明する。まず、図1を参照して、本参考例のスペクトル測定装置10が、備える光学的な構成について説明する。
スペクトル測定装置10は、集光器11、遮蔽器12、バンドパスフィルタ13、分光器14、および測定器15が、測定対象20からの光の進行方向に沿ってこの順に配置されるかたちに構成されている。スペクトル測定装置10を構成するこれらの構成要素の各々は、それを通過する光束の代表となる仮想的な光線、すなわち光軸(図1の左右方向に延びる)に対して交差する一つの方向において、光学的な特性が連続するように構成されている。つまりスペクトル測定装置10を構成するこれらの構成要素は、図1の紙面に垂直な方向に延びる。
集光器11は、測定対象20が自ら発する光や測定対象20が反射する光、すなわち測定対象20からの光を、損失なく集める、あるいは収束させるレンズ等の光学素子から構成される光学系であって、それが集めた光を後段の光学素子である遮蔽器12へと指向させる機能を有する。
遮蔽器12は、集光器11からの光のうちの一部を、後段の光学素子であるバンドパスフィルタ13に対して遮蔽する部分と、集光器11からの光のうちの他部を、同バンドパスフィルタ13へ通過させる部分とを有した遮蔽板12aから構成されている。またこの遮蔽板12aにおいて光を通過させる部分は、2つ以上のスリット12bを有するスリット群12Gによって構成されている。スリット群12Gを構成する2つ以上のスリット12bの各々は、光が進行する方向に対して交差する一つの方向(スリット12bの長さ方向Dm)、例えば図1の紙面に対して垂直となる方向に延びる穿孔であって、光が進行する方向に対して交差する他の方向(スリット12bの幅方向Dw)、例えば図1における上下方向に沿って等間隔に配列されている。このスリット群12Gを構成する各スリット12bは、それを通過した光をスリット12bごとの平行光に変換する視準レンズ、あるいはそれを通過した光をスリット12bごとの収束光に変換する収束レンズといった光学素子12cを有している。つまりこの遮蔽器12は、集光器11からの光のうちの一部を、後段の光学素子であるバンドパスフィルタ13へ、スリット12bごとの平行光あるいは収束光として指向させる機能を有する。
バンドパスフィルタ13は、特定の帯域である測定帯域の光に対して高い透過率を有し、測定帯域以外の光に対して低い透過率を有するフィルタである。なお、ここにおける測定帯域とは、測定対象20を識別するために予め設定される波長の帯域であって、例えば可視帯域のみならず不可視帯域を含む帯域であり、識別対象からの光を構成する特異的な波長を含む帯域である。このバンドパスフィルタ13は、スリット群12Gを通過した光を、後段の光学素子である分光器14へ、スリット12bごとの光として指向させる機能を有する。
分光器14は、測定帯域の光を、連続的な成分である波長ごとの成分に分散させる分光光学系である。この分光器14は、スリット12bの幅方向Dwにおいて、スリット12bごとの光Lを波長ごとの成分(波長成分λa〜波長成分λb)に分散させて、かつ、後段の光学素子である測定器15へスリット12bごとの光Lとして指向させる機能を有する。
測定器15は、分光器14の光軸と直交する2つの方向、つまりスリット12bの長さ方向Dmと幅方向Dwとに沿って受光素子が配列されたCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサである。この測定器15は、スリット12bの幅方向Dwにおいて、スリット12bごとの互いに異なる波長成分がそれぞれ互いに異なる受光素子に入射するかたちに配置されている。またこの測定器15は、スリット12bの長さ方向Dmにおいて、測定対象20上の互いに異なる位置からの光がそれぞれ互いに異なる受光素子に入射するかたちに配置されている。
このような構成を有するスペクトル測定装置10では、測定対象20の各部からの光が、まず集光器11に入射する。集光器11に入射した光は、集光器11の集光作用によって遮蔽器12に向かって集光されて、スリット群12Gに向かう光のみが遮蔽器12の作用によって各光学素子12cを通過する。このようにしてスリット群12Gで抽出された光は、光学素子12cの光学作用によって平行光あるいは収束光とされ、バンドパスフィルタ13に導かれる。バンドパスフィルタ13に入射した光からは、バンドパスフィルタ13のフィルタ作用によって測定帯域の光のみが分光器14に導かれて、分光器14の分光作用によって波長成分λa〜波長成分λbに分光される。なお本参考例では、バンドパスフィルタ13は、波長が400nmから2500nmまでの波長帯域の光を通過させている。分光器14によって分光されたスリット12bごとの各波長成分は、当該スリット12bに対応する測定器15の各受光素子で受光される。
つまり、このスペクトル測定装置10では、測定対象20から集光器11によって集光され得る光のうちから、長さ方向Dmに延びるライン状の測定部分からの光が、スリット12bによって抽出されることになる。そして、こうした機能を有したスリット12bが幅方向Dwに沿って2本以上並ぶために、同じく幅方向Dwに沿って並ぶ2つ以上の測定部分からの光が、互いに同じタイミングで抽出されることになる。それゆえに、こうした構成を有するスペクトル測定装置10によれば、長さ方向Dmに延びる2つ以上の互いに異なる測定部分からの光について、これらのスペクトルが互いに同じタイミングで測定されることになる。
ここで、上述するように、図11に示されるような従来のハイパースペクトルセンサ100では、対象物120となる1つのシーンについてスペクトルを測定する際に、単スリット114aに対応する1つの測定部分120aが、対象物120の全域にわたり走査される期間が少なくとも必要となる。例えば、1回の単スリット114aの移動に0.033秒の期間が必要となり、かつ、400回の単スリット114aの移動によって1つのシーンについてのスペクトルが測定されるとなると、こうした1つのシーンについてのスペクトル測定に約13秒を要してしまう。これでは1つのシーンについてのスペクトルを測定するために、ハイパースペクトルセンサ100と対象物120とが相対的に約13秒間も静止していなければならないこととなる。この点、本参考例のスペクトル測定装置10に400本のスリット12bが搭載されるとなれば、上述するようなスリットの走査が全く必要とならないために、1つのシーンに含まれる各測定部分についてのスペクトルが実時間にて測定可能となる。また400本のスリット12bが搭載されない構成であっても、2本以上のスリット12bが搭載される限りでは、上述するようなスリット12bの走査の回数が低減可能となるため、スペクトルの測定に要する時間が短縮可能となる。
なお、このようなスペクトル測定装置10においてスリット群12Gを走査させないとすれば、測定対象20における空間的な分解能は、スリット群12Gを構成するスリット12bの本数に相当するものとなる。また測定対象20における波長の分解能は、1本のスリット12bからの光Lを受ける受光素子のうちで幅方向Dwに沿って配列された受光素子の個数に相当するものとなる。
例えばスペクトル測定装置10における測定器15が、長さ方向Dmおよび幅方向Dwに沿ってマトリックス状に配列された受光素子から構成されて、長さ方向Dmに沿って300個の受光素子を有し、かつ、幅方向Dwに沿って300個の受光素子を有するものとする。こうした構成においてスリット群12Gを構成するスリット12bの本数が5本であるとすると、5つの測定部分の各々が長さ方向Dmに沿って300個の領域に仮想的に分割されることになる。そして測定対象20からの光についてのスペクトルが、5本×300個の空間からの光についてのスペクトルに分解されることになる。また1本のスリット12bからの光Lを受ける受光素子のうちで幅方向Dwに沿って配列された受光素子の個数が300個/5本=60個になるため、測定対象20を構成する各測定部分からの光についてのスペクトルが、60個の波長成分で構成されることになる。
それゆえに、スリット群12Gを構成するスリット12bの本数を変更することによって、測定対象20における空間的な分解能が変更可能になる。また1本のスリット12bからの光Lを受ける受光素子のうちで幅方向Dwに沿って配列された受光素子の個数を変更することによって、測定対象20における波長の分解能が変更可能にもなる。
以上説明したように、第1の参考例に係るスペクトル測定装置によれば、以下列記するような効果が得られるようになる。
(1)スペクトル測定装置10は、2以上の互いに異なる測定部分を含む測定対象20に対して、測定対象20からの光のうちから各測定部分からの光を抽出する2本以上のスリット12bを有するスリット群12Gを備える。そしてスペクトル測定装置10は、スリット群12Gによって抽出された光をスリット12bごとに分光する分光器14と、分光器14によって分光されたスリット12bごとの各波長成分の強度を測定する測定器15とを備える。それゆえに、2以上の互いに異なる測定部分を含む測定対象20に対して、スリット12bを移動させることなく、各測定部分からの光のスペクトルが測定可能になる。そのため、単スリットを移動させながら各測定部分からの光のスペクトルを測定する構成と比較して、各スペクトルの測定時間が短縮可能になる。またスリット12bを移動させる場合であっても、2本以上のスリット12bが搭載される限りでは、単スリットを移動させる回数と比較してその移動の回数が低減可能となるため、スペクトルの測定に要する時間が短縮可能となる。
(2)そのうえ、各測定部分からの光のスペクトルが互いに同じタイミングで測定されることにもなるため、測定対象20の広範囲にわたるスペクトル測定が実時間で可能になる。なお、こうしたスペクトル測定装置10が移動体に搭載されるとすれば、要求される移動状態でのスペクトル測定が実時間で可能になる。そのため、スペクトルの測定結果を利用して移動体の移動支援がなされることになれば、その移動支援の精度が向上可能にもなる。
(3)スペクトル測定装置10は、測定帯域の波長成分のみを分光器14に導くバンドパスフィルタ13を備える。複数のスリット12bの各々を通過した光同士の間で、測定帯域の波長成分と測定帯域以外の波長成分とが干渉するとなっては、測定器15における測定精度が損われるといった懸念がある。この点、本参考例では、上述するバンドパスフィルタ13によって、測定帯域の波長成分のみが分光器14に導かれることから、各スリット12bを通過した光同士の間において、測定帯域以外の光と測定帯域の光との干渉が、分光器14よりも後段において回避可能になる。それゆえ各成分の強度に関わる精度が向上可能になり、ひいてはスペクトルの精度が向上可能になる。更に、干渉を抑制するための構成が分光器14や測定器15に必要とされなくなるため、分光器14や測定器15の構成が容易にもなる。
(4)スペクトル測定装置10の2本以上のスリット12bの各々は、スリット12bを通過した光を収束光もしくは平行光に変換する、光学素子12cを備える。互いに隣接するスリット12b同士の間隔が短くなると、各スリット12bを通過した光束同士の間隔も自ずと狭くなるため、スリット12bを通過した光束と、当該スリット12bに隣接する他のスリット12bを通過した光束とが、分光器14よりも前段において干渉し易くなることも懸念される。この点、本参考例では、各スリット12bが有する光学素子12cは、当該スリット12bを通過した光束を収束光もしくは平行光に変換することから、このような干渉を抑制することが可能にもなる。
第2の参考例
次に、ペクトル測定装置の第2の参考例について、図2および図3を用いて説明する。なお、第2の参考例は、第1の参考例とは異なる遮蔽器12を備え、更に、スリット切替器22および整合器23を備える構成である。その他の基本的な構成は第1の参考例と同じであるため、以下ではその変更点について詳細に説明する。
図2に示されるように、遮蔽器12を構成する円板状の遮蔽板12aには、中心から放射線状に延びる4つのスリット群12Gが、遮蔽板12aの周方向に等配されている。4つのスリット群12Gの各々は、それを構成するスリット12bの本数や間隔、および方向が互いに異なる。詳しくは、4つのスリット群12Gのうちの3つのスリット群12G(図2の上方、左方、下方のスリット群12G)では、遮蔽板12aの径方向に対して直交する方向に延びる2本以上のスリット12bが、径方向に沿って等間隔に配列されている。そしてこれら3つのスリット群12Gは、スリット12bの本数および間隔について互いに異なる。一方、これら3つのスリット群12Gとは異なる1つのスリット群12G(図2の右方のスリット群12G)では、遮蔽板12aの略径方向に延びる2本以上のスリット12bが、径方向に対して直交する方向に沿って等間隔に配列されている。
遮蔽板12aの中心には、遮蔽板12aの軸線を回転中心として遮蔽板12aをその周方向に沿って90°ごとに回転可能にするスリット切替器22が連結されている。そしてスリット切替器22が遮蔽板12aを回転させることによって、分光のために分光器14に光Lを透過させる1つのスリット群、つまり測定用のスリット群12Gは、上記4つのスリット群12Gのうちで切替えられることになる。
図3に示されるように、集光器11、バンドパスフィルタ13、分光器14、および測定器15には、これら各構成要素の各々を、その光軸を回転中心にして90°の可動範囲で正転および反転転可能にする整合器23が連結されている。そして、遮蔽板12aの略径方向に延びるスリット12bを有するスリット群12G(図2の右方のスリット群12G)が測定用のスリット群12Gとなる際に、整合器23は、上記各構成要素の各々をその光軸を回転中心に90°だけ正転させる。またこの状態から、遮蔽板12aの径方向に対して直交する方向に延びるスリット12bを有するスリット群12G(図2の上方、左方、または下方のスリット群12G)が測定用のスリット群12Gとなる際に、整合器23は、上記各構成要素の各々をその光軸を回転中心に90°だけ反転させる。つまり整合器23は、集光器11、バンドパスフィルタ13、分光器14、および測定器15の各々における光学的な特性が連続する方向と、スリット12bの長軸方向とが整合する態様になるように、集光器11、バンドパスフィルタ13、分光器14、および測定器15の各々を回転させる。
そしてn本(図3においては、n=3)のスリット12bを有するスリット群12G(図2の上方のスリット群12Gがn=3)が測定用のスリット群12Gとなると、n本のスリット12bに対応するn箇所の測定部分20aからの光が、各スリット12bによって互いに同じタイミングで抽出されることになる。それゆえに、こうした構成を有するスペクトル測定装置10によれば、n箇所の測定部分20aからの光について、これらのスペクトルが互いに同じタイミングで測定されることになる。
ここで、測定対象20における測定部分20aの位置や数等が互いに異なることとなれば、こうした測定部分20aからの光の位置や量も、互いに異なることになる。測定対象20からの光のうちからこうした光が抽出されるためには、スリット群12Gにおけるスリット12bの位置や数等も、互いに異なる必要がある。この点、本参考例のスペクトル測定装置10によれば、スリット切替器22による切替によって、測定用のスリット群12Gは、4つの互いに異なるスリット群12Gのいずれかに切替可能になる。そのため、2つ以上の互いに異なる測定部分20aを測定する場合であっても、4つのスリット群12Gが切替えられていずれかが測定対象20に適用可能となれば、それらのスペクトル測定が可能にもなる。
以上説明したように、第2の参考例に係るスペクトル測定装置10によれば、第1の参考例から得られる上記(1)〜(4)の効果に加えて、以下列記するような効果が得られるようになる。
(5)スペクトル測定装置10は、4つの互いに異なるスリット群12Gと、スリット切替器22とを備える。スリット切替器22は、測定用のスリット群12Gを、4つの互いに異なるスリット群12Gのうちのいずれかに切替可能にする。つまりスリット切替器22による切替によって、測定用のスリット群12Gは、4つの互いに異なるスリット群12Gのいずれかに切替可能になる。そのため、2つ以上の互いに異なる測定対象20を測定する場合でも、4つの互いに異なるスリット群12Gのいずれかが各測定対象20に適用されることによって、それらのスペクトル測定が可能にもなる。こうしたことから、本参考例は、例えば単一のスリット群12Gを有する構成と比較して、測定部分20aの位置や数等といった測定部分20aの属性に関して自由度が拡張可能になる。
(6)スペクトル測定装置10では、スリット12bの本数が、3つのスリット群12G(図2の上方、左方、下方のスリット群12G)において互いに異なる。このような構成によれば、互いに異なる本数のスリット12bを有するスリット群12Gが、単一のスペクトル測定装置10において利用可能になるため、単一のスペクトル測定装置10において空間的な解像度が切替可能にもなる。
(7)また互いに隣接するスリット12b同士の間隔が狭くなると、互いに隣接するスリット12bからの光束同士の間隔も狭くなる。更にバンドパスフィルタ13の変更に伴って測定帯域が広くなると、分光された光の幅方向Dwにおける幅も広がることになる。そのため、例えば分光された光の幅方向Dwにおける幅が広がるにもかかわらず、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が固定されるような場合では、互いに隣接するスリットからの光同士が分光器14よりも後段において干渉する懸念がある。この点、本参考例のスペクトル測定装置10では、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が切替可能であるために、上述するような干渉を抑制可能にもなる。
(8)スペクトル測定装置10の3つのスリット群12G(図2の上方、左方、下方)と、残りの1つのスリット群12G(図2の右方)とでは、スリット12bの長軸方向が、測定対象20に対して互いに異なる。そして整合器23は、集光器11、バンドパスフィルタ13、分光器14、および測定器15の各々における光学的な特性が連続する方向と、スリット12bの長軸方向とが整合する態様になるように、集光器11、バンドパスフィルタ13、分光器14、および測定器15の各々を回転させる。このような構成によれば、スリット12bの長軸方向が互いに異なるスリット群12G同士が、単一のスペクトル測定装置10において利用可能になる。つまり、単一のスペクトル測定装置10において、測定部分20aの長軸方向が切替可能にもなる。
第3の参考例
次に、ペクトル測定装置の第3の参考例について、図4を用いて説明する。なお、本参考例は、距離可変器24を備える構成であり、その他の基本的な構成は第1の参考例と同じであるため、以下ではその変更点について詳細に説明する。
図4に示されるように、スペクトル測定装置10の測定器15には、分光器14と測定器15の間の距離を変更可能にする距離可変器24が連結されている。距離可変器24は、測定器15が分光器14から最も離間する位置(図4において二点鎖線で示す位置)と、測定器15が分光器14に最も接近する位置(図4において実線で示す位置)との間を、光軸の方向に沿って測定器15を移動可能にする。なお、測定器15が分光器14から最も離間する位置は、一つのスリット12bからの波長成分λa,λbと、当該スリット12bに隣接する他のスリット12bからの波長成分λa,λbとが、受光素子よりも前段において干渉しないことが条件として設定されている。
ここで、分光器14によって分光された光は、断面が測定器15に向かって幅方向Dwに拡がるかたちに進行する。ゆえに測定器15における受光面積は、測定器15が分光器14から離れるにつれて大きくなり、反対に、測定器15が分光器14に近づくにつれて小さくなる。そして分光された光を受ける受光素子の数、すなわち測定結果のデータ量も、測定器15が分光器14から離れるにつれて多くなり、反対に、測定器15が分光器14に近づくにつれて少なくなる。なお測定器15の受光面積が小さくなる場合には、より多くの波長成分が単一の受光素子に入射することによって波長成分の分解能が低くなり、反対に、測定器15の受光面積が大きくなれば、より少ない波長成分が単一の受光素子に入射することによって波長成分の分解能が高くなる。
例えば、測定器15と分光器14の間の距離が第1距離Laまで伸長された場合において、1つのスリット12bからの光を受ける幅方向Dwの受光素子の数を、第1素子数kaとする。また測定器15と分光器14の間の距離が第2距離Lbまで短縮された場合において、1つのスリット12bからの光を受ける幅方向Dwの受光素子の数を、第2素子数kbとする。すると第2距離Lbにおける受光素子の数、すなわち第2素子数kbは、測定器15における受光面積が小さくなる分だけ、第1距離Laにおける受光素子の数、すなわち第1素子数kaよりも小さくなる。なおこの際、第2素子数kbを構成する各受光素子には、第1素子数kaを構成する各受光素子よりも多くの波長成分が入射することによって、第2素子数kbを構成する各受光素子の波長成分の分解能が低くなる。
このように、測定器15を移動させて分光器14と測定器15の間の距離を短縮することによって、スリット12bの数、つまり測定対象20における空間的な解像度を保持しつつ、スペクトルのデータ量を低減させることが可能になる。これに対して、測定器15を移動させて分光器14と測定器15の間の距離を伸長することによって、スリット12bの数、つまり測定対象20における空間的な解像度を保持しつつ、波長成分の分解能を向上させることが可能になる。
以上説明したように、第3の参考例に係るスペクトル測定装置10によれば、第1の参考例から得られる上記(1)〜(4)の効果に加えて、以下列記するような効果が得られるようになる。
(9)このスペクトル測定装置は、分光器14と測定器15の間の距離を変更可能にする距離可変器24を備える。そのため、分光器14と測定器15の間の距離が距離可変器24によって変更可能になる。よって、例えば分光器14と測定器15の間の距離が固定される構成と比較して、スペクトルの測定結果のデータ量や各波長成分の分解能の自由度が拡張可能になる。
一実施の形態
次に、本発明にかかるスペクトル測定装置の一実施の形態について、図5および図6を用いて説明する。なお、一実施の形態は、第1の参考例とは異なる遮蔽器12およびバンドパスフィルタ13を備える構成であり、その他の基本的な構成は第1の参考例と同じであるため、以下ではその変更点について詳細に説明する。
図5に示されるように、スペクトル測定装置10の遮蔽器12には、スリット12bの配列方向である幅方向Dwの中央付近に、3本のスリット12bが偏倚して配列されている。またこれら3本のスリット12bを間に挟む2本のスリット12bが、遮蔽器12の幅方向Dwの両端に配列されている。これら5本のスリット12bは、幅方向Dwの中央に偏倚する3本のスリット12b同士の間隔が、これらと幅方向Dwの両端のスリット12bとの間の間隔よりも短くなるように配置されている。
バンドパスフィルタ13は、幅方向Dwにおける両端のスリット12bからの光を受ける2つの第1のバンドパスフィルタ13aと、幅方向Dwの中央に偏倚する3本のスリット12bからの光を受ける第2のバンドパスフィルタ13bとから構成されている。第1のバンドパスフィルタ13aが高い透過率を示す帯域(波長成分λa〜波長成分λb)は、第2のバンドパスフィルタ13bが高い透過率を示す波長の帯域(波長成分λc〜波長成分λd)を含み、かつ、その波長成分λc〜波長成分λdよりも広くなるように構成されている。つまりバンドパスフィルタ13は、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が短くなるにつれて、測定帯域を狭くするかたちに構成されている。
ここで、上述するように分光器14によって分光された光は、断面が測定器15に向かって幅方向Dwに拡がるかたちに進行する。ゆえに測定器15における受光面積は、バンドパスフィルタ13における透過帯域が広くなるにつれて大きくなり、反対に、バンドパスフィルタ13における透過帯域が狭くなるにつれて小さくなる。また互いに隣接するスリット12b同士の間隔が短くなると、各スリット12bを通過した光同士の間隔も自ずと狭くなり、反対に、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が長くなると、各スリット12bを通過した光同士の間隔も自ずと広くなる。
本実施の形態における構成では、第2のバンドパスフィルタ13bを通過する光Lの波長帯域は、第1のバンドパスフィルタ13aを通過する光Lの波長帯域よりも狭くなる。そのため、測定器15における受光面積については、第2のバンドパスフィルタ13bを通過した光の受光面積は、第1のバンドパスフィルタ13aを通過した光の受光面積よりも小さくなる。また第2のバンドパスフィルタ13bを通過する光Lと、これに隣接する光Lとの間の間隔は、これらに対応するスリット12b同士の間隔に対応して相対的に狭くなる。また第1のバンドパスフィルタ13aを通過する光Lと、これに隣接する光Lとの間の間隔は、これらに対応するスリット12b同士の間隔に対応して相対的に広くなる。そのため互いに隣接するスリット12b同士の間隔が短くなるにつれてバンドパスフィルタ13が測定帯域を狭くすると、測定器15の受光素子やそれよりも前段において、互いに隣接するスリット12bからの光同士の干渉を抑制することが可能にもなる。
そのうえ、第1のバンドパスフィルタ13aを通過した光Lを受光する受光素子の個数は、第2のバンドパスフィルタ13bを通過した光Lを受光する受光素子の個数よりも多くなる。つまり、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が長くなる測定部分に対しては、波長成分の分解能が高くなり、反対に、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が短くなる測定部分に対しては、波長成分の分解能が低くなることになる。それゆえ光学的な特性、すなわち測定対象20の物性を詳細に測定すべき測定部分が、測定対象20において予め特定可能な場合には、互いに隣接するスリット同士の間隔が長くなるスリット12bを、こうした測定部分に対して配列する構成が好ましい。このような構成によれば、光学的な特性、すなわち測定対象20の物性を詳細に測定すべき測定部分に対して、波長成分の分解能を高くしたスペクトルが測定可能になる。
例えば車道を走行する車両の車室内から観測される車両の前方周辺には、図6に示されるように、車道、歩道、建物、壁、上空、樹木(街路樹)、自転車、および車両のボンネット等が観測される。こうした車両の前方周辺においては、車両の運転支援に必要とされる歩行者や自転車等が、一般に車両前方のボンネットと上空との間の領域にて観測されることになる。このように車両の前方周辺が測定対象20となる態様で、スペクトル測定装置10が車両に搭載されるとすると、以下のような構成であれば、歩行者や自転車等の測定部分について、高い空間的な分解能と、高い波長成分の分解能との双方で、そのスペクトルが測定可能になる。
すなわち、車両のボンネットから上空に向かう方向が幅方向Dwであって、かつ、測定対象20の幅方向Dwの中央付近にて、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が相対的に狭くなるようにスリット群12G(図5参照)が構成されるとする。こうした構成によれば、測定対象20における中央付近において空間的な分解能が高くなり、また測定対象20における幅方向Dwの両端付近において波長成分の分解能が高くなる。そのため歩行者や自転車等が測定対象20の中央付近に存在する場合、つまり運転支援に必要とされる対象が車両から遠く離れて存在する場合、まず高い空間的な分解能の下で、それらの空間的な特性が測定可能となる。そして運転支援に必要とされる対象が測定対象20における幅方向Dwの両端付近に存在する場合、つまり運転支援に必要とされる対象が車両から近い位置に存在する場合には、高い波長成分の分解能の下で、それらの光学的な特性が測定可能となる。
それゆえ遮蔽器12においてスリット群12Gの切替が行われずとも、車両から遠く離れた物体に対しては、高い空間的な解像度によってそれの識別が可能になる。また車両に近い物体に対しては、高い波長成分の分解能によってそれの識別が可能になる。したがって車両から遠く離れた物体に対しては、それが運転支援に必要とされる対象か否かといった点について空間的に識別可能となる。そして車両に近い物体に対しては、それが歩行者、動物、自転車のいずれであるかといった点について識別可能となる。
以上説明したように、一実施の形態に係るスペクトル測定装置10によれば、第1の参考例から得られる上記(1)〜(4)の効果に加えて、以下列記するような効果が得られるようになる。
(10)このスペクトル測定装置10のスリット群12Gでは、2本以上のスリット12bがそれらの配列方向で偏倚していることから、偏倚している2つ以上の互いに異なる測定部分から構成される測定対象20に対しても、実時間でのスペクトル測定が可能になる。
(11)そのうえ偏倚している2本以上のスリット12bに対応する測定部分では、測定対象20における空間的な分解能が向上可能となる。反対に、こうした偏倚しているスリット12bとは別のスリット12bに対応する測定部分では、測定対象20における空間的な分解能が抑制可能となる。したがってスリット群12Gの切替等を必要とすることなく、1つのスペクトル測定装置10によって、測定対象20における空間的な解像度を複数設定することが可能にもなる。
(12)そのうえ、偏倚している2つ以上の測定部分においては、空間的な分解能が向上可能となる一方、こうした測定部分を除いた他の測定部分においては、波長成分の分解能が向上可能になる。それゆえ、高い空間解像度によってスペクトルが測定される部分と、高い波長成分の分解能によってスペクトルが測定される部分とが、1つの測定対象20のなかに構成可能にもなる。
(13)このスペクトル測定装置10のバンドパスフィルタ13は、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が短くなるにつれて測定帯域を狭くするかたちに構成されている。そのため互いに隣接するスリット12b同士の間隔が偏倚によって短くなるとしても、各スリットを通過した光同士の干渉を抑制することが可能にもなる。
第4の参考例
次に、ペクトル測定装置の第4の参考例について、図7および図8を用いて説明する。なお、第4の参考例は、スペクトル測定装置10が車両に搭載される構成であり、その他の基本的な構成は上述する参考例および実施の形態と類似する構成であるため、以下ではその変更点について特に説明する。
なお、本参考例におけるスペクトル測定装置10は、第2の参考例にて説明された遮蔽器12およびスリット切替器22と、第3の参考例にて説明された距離可変器24とを搭載している。
また本参考例におけるスペクトル測定装置10は、スリット切替器22を駆動するための第1アクチュエータ22Aと、距離可変器24を駆動するための第2アクチュエータ24Aとを備えている。更にスペクトル測定装置10は、これら各アクチュエータ22A、24Aに、各々の駆動量を制御値として各アクチュエータ22A、24Aに入力するスリット制御器および距離制御器を構成する制御部26を備えている。以下では、こうした構成を有するスペクトル測定装置10の測定結果に基づき車両の運転支援が行われる例について説明する。
図7に示されるように、このスペクトル測定装置10が搭載される車両Cには、イグニッションがオンであるかオフであるかを検出するイグニッションセンサや、車両Cの周辺における物体と車両Cとの間の距離を検出可能にする赤外線レーダ、ミリ波レーダ、車載カメラ等の対物センサから構成される車載センサ31が搭載されている。こうした車載センサ31を搭載する車両Cには、車載センサ31からの各種検出結果を取得して、スペクトル測定処理に必要となる各種情報を生成するデータ処理部32が搭載されている。具体的には、このデータ処理部32は、イグニッションセンサからの検出結果に基づき、スペクトル測定装置10を起動させるか否かを示す情報を生成し、また対物センサからの検出結果に基づき、運転支援に必要とされる対象の候補と車両Cとの間の距離を示す情報を生成する。
車両Cに搭載されるスペクトル測定装置10には、データ処理部32からの各種情報に基づき、スペクトル測定装置10の起動判定を実行し、かつ、アクチュエータ22A、24Aの駆動量を制御する制御部26が搭載されている。
またこの制御部26は、運転支援に必要とされる対象の候補と車両Cとの間の距離、つまり測定部分とスリット群12Gとの間の距離に、測定対象20における測定部分20aの個数が対応付けられたマップ等にて構成される属性データを格納している。具体的には、こうした属性データでは、測定部分20aとスリット群12Gとの間の距離が短くなるにつれて、測定対象20における測定部分20aの個数が少なくなるかたちで、測定部分20aとスリット群12Gとの間の距離に対し測定部分20aの個数が対応付けられている。
そして、運転支援に必要とされる対象の候補と車両Cとの間の距離を示す情報を、データ処理部32から制御部26が取得すると、当該制御部26は、上記属性データを参照して、当該対象の候補と車両Cとの間の距離に対応する測定部分20aの個数を決定する。
またこの制御部26は、測定対象20における測定部分20aの個数が、アクチュエータ22A、24Aの駆動量に対応付けられたテーブル等にて構成される駆動量データDB1を格納している。具体的には、こうした駆動量データDB1では、測定対象20における測定部分20aの個数が小さくなるにつれて、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が長くなるかたちで、測定対象20における測定部分20aの個数に、第1アクチュエータ22Aの駆動量が対応付けられている。またこうした駆動量データDB1では、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が長くなるにつれて、分光器14と測定器15の間の距離が長くなるかたちで、上記第1アクチュエータ22Aの駆動量に、第2アクチュエータ24Aの駆動量が対応付けられている。
そして上記測定部分20aの個数を決定すると、当該制御部26は、上記駆動量データDB1を参照し、当該測定部分20aの個数に対応する第1アクチュエータ22Aの駆動量と、当該第1アクチュエータ22Aの駆動量に対応する第2アクチュエータ24Aの駆動量とを算出する。そして制御部26は、アクチュエータ22A、24Aの各々を、それに対応する駆動量で制御する。
こうしたスペクトル測定装置10を搭載する車両Cには、スペクトル測定装置10が取得したスペクトルデータに基づき各測定部分を識別するスペクトルデータ解析部33が、搭載されている。このスペクトルデータ解析部33は、スペクトルの各種特異量を示すデータに、運転支援に必要とされる各種対象が紐付けられたテーブル等にて構成される辞書データDB2を、格納している。具体的には、こうした辞書データDB2では、特異的な波長、当該波長に対する強度、当該波長におけるピーク形状等、これらスペクトルの各特異量に、信号機、標識、歩行者、自転車、動物等、運転支援に必要とされる各種対象が紐付けられるかたちに構成されている。
そしてスペクトル測定装置10からのスペクトルデータを取得したスペクトルデータ解析部33は、上記辞書データDB2を参照して、当該スペクトルデータの各特異量に紐付けられた対象、すなわち測定部分の識別結果を、識別データとして生成する。次いでスペクトルデータ解析部33は、それが生成した識別データに基づき運転支援を実行する各部、例えば車両Cの運転者に注意喚起を促す警報部や表示部、更には当該車両Cを構成する各種アクチュエータ等へ識別データを出力し、こうした各部において、当該識別データに基づく運転支援を実行させる。
次に、本参考例のスペクトル測定装置10を搭載する車両Cにて行われる一連のスペクトル測定処理について、図8を参照して説明する。なお、本参考例におけるスペクトル測定処理は、車両Cの電源状態がACC(Accessory)オンの状態である期間に、所定の演算周期で繰り返して実行される。
図8に示されるように、当該スペクトル測定処理においてはまず、スペクトル測定装置10の起動判定として、イグニッションセンサの検出結果に基づき、イグニッションがオンであるか、あるいはオフであるかを、制御部26が判断する(ステップS1)。イグニッションがオフであると判断すると、制御部26はスペクトル測定処理を終了する。一方、イグニッションがオンであると判断すると、制御部26は、データ処理部32を介して、運転支援に必要とされる対象の候補と車両Cとの間の距離を示す情報を取得し、属性データを参照して、当該距離に対応する測定部分20aの個数を決定する。すなわち制御部26は、測定部分20aとスリット群12Gとの間の距離が短くなるにつれて測定対象20における測定部分の個数が少なくなるかたちで、測定部分の個数、つまり測定部分の属性を決定する(ステップS2)。
このようにして測定部分の属性が決定されると、制御部26は、駆動量データDB1を参照して、測定部分20aの個数に対応する第1アクチュエータ22Aの駆動量を算出し、当該測定部分20aの個数に対応する駆動量で第1アクチュエータ22Aを制御する(ステップS3)。すなわち制御部26は、測定対象20における測定部分20aの個数が小さくなるにつれて、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が長くなるかたちで、2つ以上の互いに異なるスリット群12Gのうちから、測定用のスリット群12Gを選択する。
次いで制御部26は、駆動量データDB1を参照して、第1アクチュエータ22Aの駆動量に対応付けられた第2アクチュエータ24Aの駆動量を算出し、第1アクチュエータ22Aの駆動量に対応する駆動量で第2アクチュエータ24Aを制御する(ステップS4)。すなわち制御部26は、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が長くなるにつれて、分光器14と測定器15の間の距離が長くなるかたちで、分光器14と測定器15の間の距離を、測定用のスリット群12Gに対応して変更する。
このようにして測定用のスリット群12Gが選択されることによって、分光器14と測定器15の間の距離が、距離可変器24によって当該測定用のスリット群12Gに対応付けられると、制御部26は、各測定部分における波長成分ごとの強度を示すデータを、測定器15から取得する。そして、波長成分ごとの光の強度がその波長に対応付けられる態様で、スペクトルデータを生成する(ステップS5)。
この際、運転支援に必要とされる対象の候補と車両Cとの間の距離が短ければ、こうした対象に対して運転支援を実行するまでの時間も短くなる。そのため測定対象の識別がより詳細になされるべく、測定対象における高い波長成分の分解能が必要とされることになる。つまりスリット12bの個数も、自ずと少ないものが必要とされることになる。反対に、運転支援に必要とされる対象の候補と車両Cとの間の距離が長ければ、こうした対象に対して運転支援を実行するまでの時間も、十分に長くなる。そのため測定対象の識別がより単純になされるべく、測定対象における高い空間的な分解能が必要とされることになる。つまりスリット12bの個数も、自ずと多いものが必要とされることになる。
上述するような構成を有するスペクトル測定装置10であれば、測定部分とスリット群12Gとの間の距離が長くなるにつれて、測定対象20における測定部分の個数が多くなる。そのため運転支援に必要とされる対象の候補と車両Cとの間の距離が長ければ、測定対象における空間的な分解能が高くなり、反対に、運転支援に必要とされる対象の候補と車両Cとの間の距離が短ければ、測定対象における波長成分の分解能が高くなる。それゆえに、測定対象20における空間的な分解能と波長成分の分解能とが、運転支援のタイミングに合わせられるかたちとなるため、運転支援における支援精度が向上可能にもなる。
また測定対象20における測定部分の個数が少なければ、こうした測定部分に対応するスリット12bの本数も少なくなるため、測定器15における受光面積も自ずと当該本数に対応して小さくなる。一方、測定対象20における測定部分の個数が多ければ、こうした測定部分に対応するスリット12bの本数も多くなるため、測定器15における受光面積も自ずと当該本数に対応して大きくなる。
上述するような構成を有するスペクトル測定装置10であれば、スリット12bの本数が多くなるにつれて分光器14と測定器15の間の距離が短くなり、反対に、スリット12bの本数が少なくなるにつれて分光器14と測定器15の間の距離が長くなる。そして上述したように、分光された光を受ける受光素子の個数、すなわち測定結果のデータ量は、測定器15が分光器14から離れるにつれて大きくなり、反対に、測定器15が分光器14に近づくにつれて小さくなる。そのためスリット12bの本数が多ければ、スペクトルデータのデータ量が一定量に向かって抑えられることになり、反対に、スリット12bの本数が少なければ、スペクトルデータのデータ量が当該一定量に向かって増加されることになる。それゆえに、測定データのデータ量を、測定用のスリット群12Gに対応して略一定量にすることが可能になるため、スペクトルデータの一部を間引いたり、あるいはスペクトルデータの一部にダミーとなるデータを補間したりといった演算が不要となる。したがって、スペクトルデータの解析時間を含めたスペクトル測定が、実時間にて実現し易くもなる。
そしてスペクトルデータが生成されると、制御部26は、イグニッションセンサの検出結果に基づき、イグニッションがオンであるか、あるいはオフであるかを再び判断する(ステップS6)。イグニッションがオフであると判断すると、制御部26はスペクトル測定処理を終了する。一方、イグニッションがオンであると判断すると、制御部26は、上記スペクトルデータをスペクトルデータ解析部33に出力する。そして制御部26は、運転支援に必要とされる対象の候補の識別結果を示す識別データを、スペクトルデータ解析部33によって生成させて、運転支援を実行する各部に当該識別データを出力させ、当該各部に運転支援を実行させて、上記と同様の処理を繰り返す(ステップS7)。
以上説明したように、第4の参考例に係るスペクトル測定装置10によれば、各参考例から得られる上記の効果に加えて、以下列記するような効果が得られるようになる。
(14)このスペクトル測定装置10の制御部26は、測定対象20とスリット群12Gとの間の距離に基づき、測定部分の属性としての測定部分20aの個数を決定する。そのため、測定用のスリット群12Gの切替の態様が、測定対象20とスリット群12Gとの間の距離に基づき制御可能になる。よって、例えばスペクトル測定装置10から測定対象20までの距離が短ければ、スリット12bの本数を減らし、こうした測定対象20における空間的な解像度を下げることが可能になる。また、例えばスペクトル測定装置10から測定対象20までの距離が長ければ、スリット12bの本数を増やし、こうした測定対象20における空間的な解像度を上げることが可能になる。それゆえ、測定対象20の範囲を有効的に利用したスペクトル測定が、実時間で可能になる。
(15)このスペクトル測定装置10の制御部26は、距離可変器24による分光器14と測定器15の間の距離の変動を、スリット群12Gの属性としてのスリット12bの本数に基づき制御する。これによって、分光器14と測定器15の間の距離は、測定用のスリット12bの本数に基づき制御可能になるため、例えば測定用のスリット12bの本数が多ければ、空間的な解像度を上げつつ、スペクトルにおける波長成分の分解能を下げてデータ量を略一定量に抑えることが可能になる。反対に、測定用のスリット12bの本数が少なければ、空間的な解像度を下げつつ、スペクトルにおける波長成分の分解能を上げてデータ量を一定量に近づけることが可能なる。それゆえ、スリット12bの本数が互いに異なるというように、属性が互いに異なるスリット群12Gが測定用のスリット群12Gに適用される構成であっても、空間的な解像度を調整しつつ、上述するようなデータ量の調整や波長成分の分解能の調整が可能にもなる。
なお、上記各実施の形態および参考例は、以下のような態様をもって実施することもできる。
・上記第4の参考例では、移動体としての車両Cに、スペクトル測定装置10が搭載される構成を説明したが、これに限らず、スリット切替器22による切替の態様を、測定部分20aの属性に応じた制御値に基づき制御する構成であってもよい。このように、当該スペクトル測定装置10が移動体に搭載されない構成としても、第4の参考例で得られる(14)、(15)と同様の効果を得ることが可能である。
・上記第4の参考例では、移動体としての車両Cに、スペクトル測定装置10が搭載される構成を説明したが、これに限らず、距離可変器24による分光器14と測定器15の間の距離の変動が、スリット群12Gの属性に応じた制御値に基づき制御される構成であってもよい。このように、当該スペクトル測定装置10が移動体に搭載されない構成であっても、第4の参考例で得られる(14)、(15)と同様の効果を得ることが可能である。
・上記第4の参考例では、スリット切替器22による切替の態様を、測定部分20aの属性に応じた制御値に基づき制御し、かつ、距離可変器24による分光器14と測定器15の間の距離の変動を、スリット群12Gの属性に応じた制御値に基づき制御する構成とした。しかしこれに限られず、例えば分光器14と測定器15の間の距離が固定されて、スリット切替器22による切替の態様のみが測定部分20aの属性に応じて制御される構成であってもよい。こうした構成であっても、第4の参考例で得られる(14)と同様の効果が得られることになる。あるいは、スリット群12Gが固定されて、距離可変器24による分光器14と測定器15の間の距離の変動のみが当該スリット群12Gの属性に応じて制御される構成であってもよい。こうした構成であっても、第4の参考例で得られる(15)と同様の効果が得られることになる。
・上記第4の参考例では、スペクトル測定装置10が、第2の参考例にて説明された遮蔽器12およびスリット切替器22と、第3の参考例にて説明された距離可変器24とを備えている。そして、その遮蔽器12が備える2以上の互いに異なるスリット群12Gは、それぞれスリット12bの本数といった属性が互いに異なることとした。しかしこれに限らず、例えば一実施の形態にて説明されたような、スリット12bの配列方向である幅方向Dwの中央付近に3本のスリット12bが偏倚して配列されているスリット群12Gが、2以上の互いに異なるスリット群12Gのうちの1つとなる構成であってもよい。こうした構成であっても、第4の参考例で得られる(14)、(15)と同様の効果が得られることになる。
・上記第4の参考例では、測定部分20aの属性が、測定部分20aの個数として具体化されているが、これに限らず、測定部分20aの属性は、測定部分20aのサイズや測定対象における測定部分20aの位置等に具体化されてもよい。こうした構成であっても、第4の参考例で得られる(14)、(15)と同様の効果が得られることになる。
・上記第4の参考例では、制御部26が、測定対象20とスリット群12Gとの間の距離に基づき測定部分20aの属性を決定する。しかしこれに限らず、例えば測定対象20を測定する周辺の環境や、車両Cの挙動等の走行状況に基づき、これに適した測定部分20aの属性、例えば測定対象20における測定部分20aの位置、個数、サイズ等が決定される構成であってもよい。こうした構成であっても、第4の参考例で得られる(14)、(15)と同様の効果が得られることになる。
・上記第4の参考例では、スリット群12Gの属性を、スリット12bの本数として具体化したが、これに限らず、スリット群12Gの属性を、隣接するスリット12bとの間の間隔や、スリット12bの偏倚している位置等に具体化することも可能である。こうした構成であっても、第4の参考例で得られる(14)、(15)と同様の効果が得られることになる。
・上記第4の参考例では、測定部分20aとスリット群12Gとの間の距離が短くなるにつれて、測定対象20における測定部分20aの個数が少なくなるようにした。しかしこれに限らず、例えば測定部分20aとスリット群12Gとの間の距離が短くなるにつれて、測定対象20における測定部分20aの個数が多くなるようにしてもよい。こうした構成であれば、測定対象20がスペクトル測定装置10に近づくにつれて、空間的な解像度を高くすることができる。
・上記第4の参考例では、スペクトル測定装置10が制御部26を有する構成としているが、これを変更して、例えば車両Cが上記制御部26を有する構成としてもよい。また車両Cがスペクトルデータ解析部33を有する構成としているが、これを変更して、スペクトル測定装置10がスペクトルデータ解析部33を有する構成であってもよい。こうした構成であっても、第4の参考例で得られる(14)、(15)と同様の効果が得られることになる。
・上記第4の参考例では、測定対象20とスリット群12Gとの間の距離に基づきスリット群12Gを切替え、かつその切替えたスリット群12Gの属性に応じて、分光器14と測定器15との距離を調整する構成としている。しかしこれに限らず、スリット群12Gを切替えるために用いる測定部分20aの属性としては、例えば、昼夜、晴雨、または走行場所(都市部か農村部か)等の周囲環境、スペクトル測定装置10の解析結果、あるいはこのスペクトル測定装置10を搭載する車両Cの挙動等の走行状況に適した測定部分20aの位置、サイズ、個数等を用いてもよい。こうした構成であっても、第4の参考例で得られる(14)、(15)と同様の効果が得られることになる。
・上記一実施の形態では、バンドパスフィルタ13が透過させる波長帯域が、互いに隣接するスリット12b同士の間隔に応じて異なり、分光器14から分散する各波長成分の広がりが、互いに隣接するスリット12b同士の間隔に応じて互いに異なる構成としている。しかしこれに限らず、バンドパスフィルタ13が透過させる波長帯域が、互いに隣接するスリット12b同士の間隔にかかわらず共通するものであってもよいし、分光器から分散する各波長成分の広がりが、互いに隣接するスリット12b同士の間隔に応じて互いに異なる構成であってもよい。こうした構成は、一実施の形態において、例えば1つのバンドパスフィルタ13と、上記各波長成分の広がりが、互いに隣接するスリット12b同士の間隔に応じて互いに異なる2種類の分光器14とから実現可能である。こうした構成によっても、上記一実施の形態で得られる効果と同様の効果が得られることになる。
・上記第3および第4の参考例では、測定器15が移動することによって、分光器14と測定器15の間の距離が変更される構成としている。しかしこれに限らず、分光器14が移動する構成としてもよく、また分光器14と測定器15とが共に移動する構成としてもよい。これらの構成であれば、波長成分の分解能を上げるために測定器15を移動する余裕を確保しておく必要がなくなる。すなわち、スペクトル測定装置10を小型化することができる。したがって、小型化されたスペクトル測定装置10を搭載する移動体としての車両Cの設計自由度を高めることも可能となる。
・上記第2の参考例を構成する2以上のスリット群12Gのうちの1つと、それに対応するバンドパスフィルタ13として、一実施の形態を構成する遮蔽器12および、2種類のバンドパスフィルタを備えるバンドパスフィルタ13を適用することも可能である。こうすることによっても、上記第2の参考例で得られる効果と同様の効果が得られることになる。
・上記第3の参考例を構成する遮蔽器12およびバンドパスフィルタ13として、一実施の形態を構成する遮蔽器12および、2種類のバンドパスフィルタを備えるバンドパスフィルタ13を適用することも可能である。こうすることによっても、上記第3の参考例で得られる効果と同様の効果が得られることになる。
・上記第2の参考例では、遮蔽器12を構成する遮蔽板12aが円板状に構成されるが、これに限らず、2つ以上の互いに異なるスリット群12Gを有する構成であれば、遮蔽板12aは、例えば図9に例示されるように、六角筒状に構成されていてもよい。更には、多角形の平板や六角筒状を除いた多角筒状に構成されていてもよい。これによって、遮蔽器12についての設計の自由度を高くすることができる。
・上記の各実施の形態および参考例では、スリット12bの各々が光学素子12cを有する構成であるが、こうした構成に限られない。例えば、各スリット12bに共通する視準器が、遮蔽器12と分光器14との間に配置される構成、あるいは各スリット12bからの光同士が干渉しないように各スリット12bが配置される構成であってもよい。そのような構成とすることによって、上記各光学素子12cを割愛し、遮蔽器12の製造を簡略化することも可能となる。
・上記の各実施の形態および参考例では、測定帯域の光のみを透過させるバンドパスフィルタ13がスペクトル測定装置10に設けられる構成であるが、分光器14にて分光された各波長成分が互いに干渉しない構成であれば、こうしたバンドパスフィルタ13を割愛することも可能である。そのような構成とすることによって、スペクトル測定装置10の構造を簡略化することで、スペクトル測定装置10の製造を容易にすることができる。
・上記の各実施の形態および参考例では、遮蔽器12と分光器14の間にバンドパスフィルタ13が配置される構成であるが、測定器15よりも前段にバンドパスフィルタ13が設けられるのであれば、バンドパスフィルタ13の配置はこれに限られるものではない。すなわち、測定器15が備える受光素子に、測定帯域の光が入射することになるのであれば、バンドパスフィルタ13はどこに配置されていてもよい。こうすることによって、スペクトル測定装置10の設計の自由度を高めることができる。
・上記の各実施の形態および参考例では、スリット12bは、長さ方向Dmに延びる孔、すなわち、図1、図3、図4および図5の紙面に対して垂直となる方向に延びる穿孔として構成されているが、これに限られない。すなわち、各スリット12bからの光が互いに干渉しない構成であれば、各スリット12bたる孔は、その方向を自由に構成することができる。例えば、スリット12bたる孔の方向は、図1、図3、図4および図5の紙面に対して垂直となる方向と並行とするのではなく、その方向に対して斜め方向であってもよい。また、上記スリット12bたる孔の長さも、長短おりまぜ、自由に構成することができる。こうした構成であっても、上記の各実施の形態および参考例にて得られる効果と同様に効果を得ることができる。更に、特に上記一実施の形態において、高い空間解像度によってスペクトルが測定される部分と、高い波長成分の分解能によってスペクトルが測定される部分とをより詳しく測定することができるスリット群12Gを備える遮蔽器12を適用することが可能となる。
・上記の各実施の形態および参考例では、2本以上のスリット12bが幅方向Dwに配列される構成とされているが、2本以上のスリット12bが2以上の互いに異なる方向に配列されて、各列に対応した光学系が備えられる構成としてもよい。こうした構成であっても、上記の各実施の形態および参考例にて得られる効果と同様の効果が得られることになる。更に、特に上記一実施の形態において、高い空間解像度によってスペクトルが測定される部分と、高い波長成分の分解能によってスペクトルが測定される部分とをより詳しく測定することができるスリット群12Gを備える遮蔽器12を適用することが可能となる。
10…スペクトル測定装置、11…集光器、12…遮蔽器、12a…遮蔽板、12b…スリット、12c…光学素子、12G…スリット群、13…バンドパスフィルタ、13a…第1のバンドパスフィルタ、13b…第2のバンドパスフィルタ、14…分光器、15…測定器、20…測定対象、20a…測定部分、22…スリット切替器、23…整合器、24…距離可変器、100…ハイパースペクトルセンサ、111…入射口、112…ミラー、113…集光器、114…遮蔽板、114a…単スリット、115…視準器、116…分光器、117…結像器、118…測定器、118a…受光素子、118b…受光素子、120…対象物、120a…測定部分。
本発明は、測定対象からの光をスペクトルとして測定するスペクトル測定装置、例えば車両等の移動体に搭載されるスペクトル測定装置に関する。
近年、自動車等の車両に適用される運転支援技術には、自車両の周辺状況を可視画像として撮像するCCDカメラ等の撮像装置が自車両に搭載される態様で用いられている。こうした運転支援技術ではまず、自車両周辺の歩行者や信号機等、運転支援に必要とされる対象物に関する情報が、この撮像装置が撮像した可視画像の画像処理を通して生成されて、自車両の周辺状況に応じた運転支援が、このようにして生成された情報に基づき実行される。
一方、自車両周辺を歩行する歩行者の状況、例えば、人数、体型、姿勢、所持品、移動する方向等とは、通常、自車両周辺の可視画像が撮像されるごとに変化するものである。更に自車両の走行状況、例えば、自車両の旋回方向や自車両が走行する道路の属性が変わることとなれば、上記歩行者は当然のこと、道路に設置された信号機でさえ、自車両周辺の可視画像における形状やサイズが変化することとなる。それゆえに、運転支援に必要とされる対象物をこれが含まれる撮像対象の可視画像から検出する態様では、対象物の検出精度も自ずと低いものとなってしまい、運転支援の精度自体を欠く結果となってしまう。そこで、上述する運転支援技術では、運転支援の精度を向上するために、対象物の検出精度を向上させる技術が望まれている。
ところで、対象物が有する光学的な特性から対象物を識別する技術の中には、特許文献1に示されるように、地球上の土壌調査等に使用される目的で人工衛星に搭載されるスペクトル測定装置として、ハイパースペクトルセンサを用いる技術が知られている。特許文献1に記載されるハイパースペクトルセンサでは、例えば、対象物からの光が波長ごとに分光されて、波長ごとの光の強度がその波長に対応付けられる態様でスペクトルが検出される。つまり、波長に対して連続的なスペクトルが対象物の光学的な特性として取り扱われる。図10は、こうしたスペクトル測定装置としてのハイパースペクトルセンサの光学的な構成の一例を示す構成図である。
図10に示されるように、人工衛星に搭載されるハイパースペクトルセンサ100の内部には、入射口111、ミラー112、集光器113、遮蔽板114、視準器115、分光器116、結像器117、および測定器118が、光の進行方向に沿ってこの順に配置されている。ハイパースペクトルセンサ100を構成するこれら構成要素の各々は、それを通過する光束の代表となる仮想的な光線、すなわち光軸(図10の左右方向に延びる)に対して交差する一つの方向において、光学的な特性が連続するように構成されている。このような構成を有するハイパースペクトルセンサ100では、測定対象としての地表面である対象物120にて反射された太陽光の一部が、まず入射口111を通して装置内に入射して、ミラー112の反射作用によって集光器113へ導かれる。集光器113に入射した光は、集光器113の集光作用によって遮蔽板114に向かって集光されて、遮蔽板114の遮蔽作用によって、単スリット114aに向かう光のみが視準器115に導かれる。このようにして単スリット114aを通過した光は、視準器115の光学作用によって平行光として分光器116に導かれて、分光器116の分光作用によって各波長成分に分光される。分光器116によって分光された各波長成分(波長成分λa〜波長成分λb)は、結像器117の結像作用によって、波長ごとに区分された測定器118の各領域、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等が有する各受光素子118a,118bに結像される。
つまり、このようなハイパースペクトルセンサ100では、集光器113が集めた光のうちで単スリット114aを通過した光についてのみ、そのスペクトルが測定されることになる。言い換えれば、単スリット114aにおいて光学的な特性が連続する方向、すなわち単スリット114aの長さ方向Dmに沿うライン状の測定部分120aからの光のみが、地表面である対象物120からの光のうちから上記単スリット114aによって抽出されることになる。そしてライン状の測定部分120aに関する光学的な情報のみが、その都度、ハイパースペクトルセンサ100に入力されることになる。そして一次元的な測定部分120aについてのスペクトル測定が人工衛星の飛行方向に沿って繰り返されることによって、二次元的な地表面である対象物120の光学的な特性が、ハイパースペクトルセンサ100によって測定されることになる。
特開2006−145362号公報
ところで、上述するようなハイパースペクトルセンサ100にあっては、対象物120に対してハイパースペクトルセンサ100が移動する方向は、測定部分120aの並ぶ方向となる。そしてスペクトルの測定対象である2次元的な範囲が、こうした移動方向Drで常に制約されることになる。そのため、2以上の互いに異なる測定部分120aが、移動方向Drとは異なる方向に並んだ測定対象、例えば歩行者や信号機が含まれる自車両周辺の1つのシーン等、こうした測定対象に関わるスペクトルを測定する際には、長さ方向Dmに対して交差する方向へ上記単スリット114aを走査させるといった走査の態様が取られざるを得ない。図11(a)(b)(c)は、こうした単スリット114aの走査の一例を光学的な作用とともに示す作用図である。
図11(a)に示されるように、対象物120の上端の測定部分120aを物点とし、遮蔽板114に設けられた単スリット114aを像点とするかたちに単スリット114aが配置されることによって、まず対象物120の上端の測定部分120aに関するスペクトルが測定される。次いで、遮蔽板114が単スリット114aの幅だけ移動する態様で走査が繰り返されることによって、図11(b)に示されるように、対象物120の上端から下端の各測定部分120aに関するスペクトルが順に測定される。そして図11(c)に示されるように、対象物120の下端の測定部分120aを物点とし、遮蔽板114に設けられた単スリット114aを像点とするかたちに単スリット114aが配置されることによって、対象物120の上下方向の全幅にわたり、スペクトルが測定される。このように、移動方向とは異なる方向に測定部分が並んだシーンであっても、そのシーンに対応して単スリット114aを走査させる態様であれば、そのシーンについてのスペクトルを測定することが可能となる。
なお、図10では、遮蔽板114のみが単スリット114aの幅だけ移動する態様で走査が繰り返されるとしたが、これに限られず、遮蔽板114、視準器115、分光器116、結像器117、および測定器118が、固定された単スリット114aに対して、一体となって移動する態様で走査が繰り返される場合もある。
しかしながら、こうした走査が採用されるとすれども、1つのシーンについてのスペクトルを測定する際には、単スリット114aの走査に要する時間が必要となってしまう。それゆえに、単スリット114aの走査に要する時間よりも短い時間からなるシーンでは、結局、スペクトルを測定することが不可能となってしまう。
特に、車両等の移動体にハイパースペクトルセンサ100が搭載されて、測定結果に基づき移動の支援がなされることとなれば、1つのシーンに関わるスペクトルの測定が、移動の支援に間に合わなくなってしまい、結局、こうした移動の支援がその精度を大きく欠いたものとなってしまう。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、2つ以上の互いに異なる測定部分から構成される測定対象に対して、各測定部分からの光のスペクトル測定に要する測定時間を短縮するスペクトル測定装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明に従うスペクトル測定装置は、本以上のスリットを有するスリット群であって、前記各スリットは、4以上の互いに異なる測定部分を含む測定対象に対して、当該測定対象からの光のうちから、前記各測定部分からの光を抽出することと、前記スリット群によって抽出された光を前記スリットごとに分光する分光器と、前記分光器によって分光された前記スリットごとの光の各成分の強度を測定する測定器とを備え、前記測定器は、前記分光器によって分光された光の成分の各々を、前記スリットごとに前記分光器から直接受光する4つ以上の受光素子を含み、更に、前記受光素子よりも前段の光路において前記分光器によって分光された前記スリットごとの光の成分が互いに干渉しない態様で前記分光器と前記測定器との間の距離を変更可能にする距離可変器を備え、前記スリットの配列方向の中央付近における前記スリット同士の間隔が、前記配列方向の両端付近における前記スリット同士の間隔よりも狭くなるかたちに前記スリットが偏倚して配置されていることを要旨とする。
こうした構成を有するスペクトル測定装置によれば、以上の互いに異なる測定部分を含む測定対象に対して、スリットを移動させることなく、各測定部分からの光のスペクトルが測定可能になる。そのため、例えば単スリットを移動させながら各測定部分からの光のスペクトルを測定する構成と比較して、各スペクトルの測定時間が短縮可能になる。そのうえ、各測定部分からの光のスペクトルが互いに同じタイミングで測定されることにもなるため、測定対象の広範囲にわたるスペクトル測定が実時間で可能になる。なお、こうしたスペクトル測定装置が移動体に搭載されるとすれば、要求される移動状態でのスペクトル測定が実時間で可能になる。そのため、スペクトルの測定結果を利用して移動体の移動支援がなされることになれば、その移動支援の精度が向上可能にもなる。
また、分光器によって分光された光は、それの断面が測定器に向かって拡がるかたちに進行する。ゆえに当該分光された光を直接受光する測定器における受光面積は、測定器が分光器から離れるにつれて大きくなり、反対に、測定器が分光器に近づくにつれて小さくなる。そして分光された光を受ける受光素子の数、すなわち測定結果のデータ量も、測定器が分光器から離れるにつれて大きくなり、反対に、測定器が分光器に近づくにつれて小さくなる。なお測定器の受光面積が小さくなる場合には、より多くの成分が単一の受光素子に入射することによって成分の分解能が低くなり、反対に、測定器の受光面積が大きくなれば、より少ない成分が単一の受光素子に入射することによって、成分の分解能が高くなる。
そして、このスペクトル測定装置によれば、分光器と測定器との間の距離が距離可変器によって、前記分光された前記スリットごとの光の成分が互いに干渉しないようにしつつ変更可能になる。よって、例えば分光器と測定器との間の距離が固定される構成と比較して、測定結果のデータ量や各成分の分解能の自由度が拡張可能になる。
さらに、このスペクトル測定装置によれば、前記スリットの配列方向の中央付近における前記スリット同士の間隔が、前記配列方向の両端付近における前記スリット同士の間隔よりも狭くなるかたちに前記スリットが偏倚して配置されていることから、このように偏倚している2つ以上の互いに異なる測定部分から構成される測定対象に対しても実時間でのスペクトル測定が可能になる。
また、前記スリット群は、前記スペクトル測定装置が備える2つ以上の互いに異なるスリット群のうちの一つであり、前記スペクトル測定装置は更に、分光させる光を前記分光器に透過させる1つのスリット群を、前記2つ以上の互いに異なるスリット群のうちで切替可能にするスリット切替器を備えることを要旨とする。
測定対象における測定部分の位置や数等が互いに異なることとなれば、こうした測定部分からの光の位置や量も、互いに異なることになる。測定対象からの光のうちからこうした光が抽出されるには、スリット群におけるスリットの位置や数等も互いに異なる必要がある。この点、このスペクトル測定装置によれば、分光器に分光させる光を透過させる1つのスリット群、すなわち測定用のスリット群は、スリット切替器による切替によって、2つ以上の互いに異なるスリット群のいずれかに切替可能になる。そのため、2つ以上の互いに異なる測定対象であっても、2つ以上の互いに異なるスリット群のいずれかが各測定対象に適用可能となれば、それらのスペクトル測定が可能にもなる。こうしたことから、例えば単一のスリット群を有する構成と比較して、測定部分の位置や数等といった測定部分の属性に関して自由度が拡張可能になる。
またこのスペクトル測定装置は更に、前記スリット切替器による切替の態様を、前記測定部分の属性に応じた制御値に基づき制御するスリット制御器を備えることを要旨とする。
このスペクトル測定装置によれば、スリット切替器が測定用のスリット群を変更するか否か、あるいはスリット切替器が測定用のスリット群を何れのスリット群に切替えるかといったスリット切替器による切替の態様は、スリット制御器による制御によって、測定部分の属性に応じて制御可能になる。そのため、測定部分の位置や数等といった測定部分の属性が互いに異なる複数の測定対象であっても、測定部分の属性に適したスリット群によって、実時間でのスペクトル測定が可能になる。
またこのスペクトル測定装置は、前記スリット制御器が、前記測定対象と前記スリット群との間の距離に基づき、前記測定部分の属性を決定することを要旨とする。
測定対象の空間的な範囲は、スペクトル測定装置から測定対象までの距離が長くなるにつれて大きくなり、反対に、スペクトル測定装置から測定対象までの距離が短くなるにつれて小さくなる。こうした測定対象の空間的な範囲を有効的に利用する上では、測定部分の位置や数等といった測定部分の属性が、測定対象の空間的な範囲、つまりスペクトル測定装置から測定対象までの距離に応じて互いに異なることが好ましい。
例えば測定対象の範囲が空間的に大きくなる際に、測定対象内の広い範囲にわたり多数の測定部分が散在することになれば、空間的に広い測定対象の全体についてスペクトル測定が可能となり、空間的に広い測定対象を有効的に利用した測定が可能になる。反対に、測定対象の範囲が空間的に小さくなる際に、小数の測定部分でスペクトル測定がなされるとすれば、予め空間的に絞り込まれた測定対象を有効的に利用した測定が可能になる。
このスペクトル測定装置によれば、測定部分の属性は、測定対象とスリット群との間の距離に基づき、スリット制御器によって決定される。こうした構成であれば、測定用のスリット群の変更の態様は、測定対象とスリット群との間の距離に基づき制御可能になるため、上述するような測定対象の範囲を有効的に利用したスペクトル測定が実時間で可能になる。
またこのスペクトル測定装置は更に、前記距離可変器による変更の態様を、前記スリット群の属性に応じた制御値に基づき制御する距離制御器を備えることを要旨とする。
上述したように、分光された光を受ける受光素子の数、すなわち測定結果のデータ量は、測定器が分光器から離れるにつれて大きくなり、反対に、測定器が分光器に近づくにつれて小さくなる。測定データのデータ量を一定量以下に抑える上では、強度の測定に用いられる受光素子の数が、一定量以下に抑えられることが好ましい。
例えば互いに隣接するスリット同士の間の距離が短くなると、測定器が受ける光束同士の間の距離も短くなり、こうした光束を受ける受光素子の数も多くなる。この際、分光器と測定器との間の距離が短くなるとすれば、このように増加した受光素子の数が低減可能となり、測定データのデータ量を一定量に抑えることが可能になる。また互いに隣接するスリット同士の間の距離が長くなると、測定器が受ける光束同士の間の距離も長くなり、こうした光束を受ける受光素子の数も少なくなる。この際、分光器と測定器との間の距離が長くなるとすれば、このように減少した受光素子の数が増加可能となり、測定データのデータ量を一定量にすることが可能になる。
また各成分の分解能を一定値以上に維持する上では、強度の測定に用いられる受光素子の数が、一定量以上に維持されることが好ましい。上述するように互いに隣接するスリット同士の間の距離が長くなると、測定器が受ける光束同士の間の距離も長くなり、こうした光束を受ける受光素子の数も少なくなる。この際、分光器と測定器との間の距離が長くなるとすれば、このように減少した受光素子の数が増加可能となり、単一の受光素子が受ける成分の数を低減することが可能になる。
このスペクトル測定装置によれば、分光器と測定器との間の距離を長くするか否か、あるいは分光器と測定器との間の距離を短くするか否かといった距離可変器による変更の態様が、距離制御器によって、スリット群の属性に応じて制御可能になる。こうした構成であれば、互いに隣接するスリット同士の間の距離やスリットの数といった属性が互いに異なる複数のスリット群が搭載される構成であっても、スリット群の属性に基づき分光器と測定器との間の距離が制御可能になるため、上述するようなデータ量の調整や成分分解能の調整が可能にもなる。
またこのスペクトル測定装置は更に、測定帯域の波長成分のみを前記分光器に導くバンドパスフィルタを備えることを要旨とする。
例えば複数のスリットの各々を通過した光同士の間で、測定帯域の波長成分と測定帯域以外の波長成分とが干渉するとなっては、測定器における測定精度が損われるといった懸念がある。しかし、このスペクトル測定装置によれば、測定帯域の波長成分のみが分光器に導かれることから、各スリットを通過した光同士の間において、測定帯域以外の光と測定帯域の光との干渉が分光器よりも後段において回避可能になる。それゆえ各成分の強度に関わる精度が向上可能になり、ひいてはスペクトルの精度が向上可能になる。更に、干渉を抑制するための構成が分光器や測定器に必要とされなくなるため、分光器や測定器の構成が容易にもなる。
またこのスペクトル測定装置では、前記バンドパスフィルタは、互いに隣接する前記スリット同士の間隔が短くなるにつれて前記測定帯域を狭くするかたちに構成されることを要旨とする。
互いに隣接するスリット同士の間隔が短くなると、各スリットを通過した光束同士の間隔も自ずと短くなる。例えば互いに隣接するスリット同士の間隔が長くなる場合と比較して、分光器によって分光された各成分が測定器よりも前段において干渉し易くなる懸念がある。しかし、このスペクトル測定装置によれば、互いに隣接するスリット同士の間隔が短くなるにつれてバンドパスフィルタが測定帯域を狭くすることから、上述するような干渉を抑制することが可能にもなる。
またこのスペクトル測定装置では、前記2本以上のスリットの各々が、当該スリットを通過した光を収束光もしくは平行光に変換する光学素子を備えることを要旨とする。
互いに隣接するスリット同士の間隔が短くなると、各スリットを通過した光束同士の間隔も自ずと狭くなるため、スリットを通過した光束と、当該スリットに隣接する他のスリットを通過した光束とが、分光器よりも前段において干渉し易くなる懸念がある。しかし、このスペクトル測定装置によれば、各スリットが有する光学素子によって、当該スリットを通過した光束が収束光もしくは平行光に変換されることから、上述するような干渉を抑制することが可能にもなる。
またこのスペクトル測定装置は、前記2つ以上の互いに異なるスリット群は、それぞれ有する前記スリットの本数において互いに異なることを要旨とする。
このスペクトル測定装置によれば、2本以上の互いに異なるスリット群が、スリットの本数において互いに異なる。よって、測定部分の数において互いに異なる2つ以上の測定対象に対しても、実時間でのスペクトル測定が可能になる。
またこのスペクトル測定装置は、移動体に搭載されるものであることを要旨とする。
移動体の周辺から移動体が受ける光の特性は、その周辺に照射される光の特性、更にはこうした光を受ける周辺の光学的な特性によって特に変わる。そして移動体の周辺に照射される光、また移動体の周辺を構成する構成要素といった移動体の周辺の状況は、移動体の移動状況によってその都度変わるものである。このスペクトル測定装置によれば、それが有する実時間でのスペクトル測定によって、移動体の周辺からの光のスペクトルと移動体の移動状況とが対応するかたちで測定可能となる。
ペクトル測定装置の第1の参考例について、その光学的な構成を示す構成図。 ペクトル測定装置の第2の参考例について、その遮蔽板の平面構造を示す平面図。 ペクトル測定装置の第2の参考例について、その光学的な構成を示す構成図。 ペクトル測定装置の第3の参考例について、その光学的な構成を示す構成図。 本発明にかかるスペクトル測定装置の一実施の形態について、その光学的な構成を示す構成図。 本発明にかかるスペクトル測定装置の一実施の形態について、測定対象の一例を示す概念図。 ペクトル測定装置の第4の参考例について、その全体構成を示すブロック図。 ペクトル測定装置の第4の参考例にて実行されるスペクトルの測定手順を示すフローチャート。 変更例のスペクトル測定装置における遮蔽板の斜視構造を示す斜視図。 従来のスペクトル測定装置たるハイパースペクトルセンサが人工衛星に搭載されている場合について、その光学的な構成の一例を示す構成図。 (a)(b)(c)は、従来のスペクトル測定装置たるハイパースペクトルセンサを車両等の移動体に搭載する場合について、遮蔽板に設けられた単スリットの走査の一例を光学的な作用とともに示す作用図。
第1の参考例
以下、ペクトル測定装置の第1の参考例について、図1を参照して詳細に説明する。まず、図1を参照して、本参考例のスペクトル測定装置10が、備える光学的な構成について説明する。
スペクトル測定装置10は、集光器11、遮蔽器12、バンドパスフィルタ13、分光器14、および測定器15が、測定対象20からの光の進行方向に沿ってこの順に配置されるかたちに構成されている。スペクトル測定装置10を構成するこれらの構成要素の各々は、それを通過する光束の代表となる仮想的な光線、すなわち光軸(図1の左右方向に延びる)に対して交差する一つの方向において、光学的な特性が連続するように構成されている。つまりスペクトル測定装置10を構成するこれらの構成要素は、図1の紙面に垂直な方向に延びる。
集光器11は、測定対象20が自ら発する光や測定対象20が反射する光、すなわち測定対象20からの光を、損失なく集める、あるいは収束させるレンズ等の光学素子から構成される光学系であって、それが集めた光を後段の光学素子である遮蔽器12へと指向させる機能を有する。
遮蔽器12は、集光器11からの光のうちの一部を、後段の光学素子であるバンドパスフィルタ13に対して遮蔽する部分と、集光器11からの光のうちの他部を、同バンドパスフィルタ13へ通過させる部分とを有した遮蔽板12aから構成されている。またこの遮蔽板12aにおいて光を通過させる部分は、2つ以上のスリット12bを有するスリット群12Gによって構成されている。スリット群12Gを構成する2つ以上のスリット12bの各々は、光が進行する方向に対して交差する一つの方向(スリット12bの長さ方向Dm)、例えば図1の紙面に対して垂直となる方向に延びる穿孔であって、光が進行する方向に対して交差する他の方向(スリット12bの幅方向Dw)、例えば図1における上下方向に沿って等間隔に配列されている。このスリット群12Gを構成する各スリット12bは、それを通過した光をスリット12bごとの平行光に変換する視準レンズ、あるいはそれを通過した光をスリット12bごとの収束光に変換する収束レンズといった光学素子12cを有している。つまりこの遮蔽器12は、集光器11からの光のうちの一部を、後段の光学素子であるバンドパスフィルタ13へ、スリット12bごとの平行光あるいは収束光として指向させる機能を有する。
バンドパスフィルタ13は、特定の帯域である測定帯域の光に対して高い透過率を有し、測定帯域以外の光に対して低い透過率を有するフィルタである。なお、ここにおける測定帯域とは、測定対象20を識別するために予め設定される波長の帯域であって、例えば可視帯域のみならず不可視帯域を含む帯域であり、識別対象からの光を構成する特異的な波長を含む帯域である。このバンドパスフィルタ13は、スリット群12Gを通過した光を、後段の光学素子である分光器14へ、スリット12bごとの光として指向させる機能を有する。
分光器14は、測定帯域の光を、連続的な成分である波長ごとの成分に分散させる分光光学系である。この分光器14は、スリット12bの幅方向Dwにおいて、スリット12bごとの光Lを波長ごとの成分(波長成分λa〜波長成分λb)に分散させて、かつ、後段の光学素子である測定器15へスリット12bごとの光Lとして指向させる機能を有する。
測定器15は、分光器14の光軸と直交する2つの方向、つまりスリット12bの長さ方向Dmと幅方向Dwとに沿って受光素子が配列されたCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサである。この測定器15は、スリット12bの幅方向Dwにおいて、スリット12bごとの互いに異なる波長成分がそれぞれ互いに異なる受光素子に入射するかたちに配置されている。またこの測定器15は、スリット12bの長さ方向Dmにおいて、測定対象20上の互いに異なる位置からの光がそれぞれ互いに異なる受光素子に入射するかたちに配置されている。
このような構成を有するスペクトル測定装置10では、測定対象20の各部からの光が、まず集光器11に入射する。集光器11に入射した光は、集光器11の集光作用によって遮蔽器12に向かって集光されて、スリット群12Gに向かう光のみが遮蔽器12の作用によって各光学素子12cを通過する。このようにしてスリット群12Gで抽出された光は、光学素子12cの光学作用によって平行光あるいは収束光とされ、バンドパスフィルタ13に導かれる。バンドパスフィルタ13に入射した光からは、バンドパスフィルタ13のフィルタ作用によって測定帯域の光のみが分光器14に導かれて、分光器14の分光作用によって波長成分λa〜波長成分λbに分光される。なお本参考例では、バンドパスフィルタ13は、波長が400nmから2500nmまでの波長帯域の光を通過させている。分光器14によって分光されたスリット12bごとの各波長成分は、当該スリット12bに対応する測定器15の各受光素子で受光される。
つまり、このスペクトル測定装置10では、測定対象20から集光器11によって集光され得る光のうちから、長さ方向Dmに延びるライン状の測定部分からの光が、スリット12bによって抽出されることになる。そして、こうした機能を有したスリット12bが幅方向Dwに沿って2本以上並ぶために、同じく幅方向Dwに沿って並ぶ2つ以上の測定部分からの光が、互いに同じタイミングで抽出されることになる。それゆえに、こうした構成を有するスペクトル測定装置10によれば、長さ方向Dmに延びる2つ以上の互いに異なる測定部分からの光について、これらのスペクトルが互いに同じタイミングで測定されることになる。
ここで、上述するように、図11に示されるような従来のハイパースペクトルセンサ100では、対象物120となる1つのシーンについてスペクトルを測定する際に、単スリット114aに対応する1つの測定部分120aが、対象物120の全域にわたり走査される期間が少なくとも必要となる。例えば、1回の単スリット114aの移動に0.033秒の期間が必要となり、かつ、400回の単スリット114aの移動によって1つのシーンについてのスペクトルが測定されるとなると、こうした1つのシーンについてのスペクトル測定に約13秒を要してしまう。これでは1つのシーンについてのスペクトルを測定するために、ハイパースペクトルセンサ100と対象物120とが相対的に約13秒間も静止していなければならないこととなる。この点、本参考例のスペクトル測定装置10に400本のスリット12bが搭載されるとなれば、上述するようなスリットの走査が全く必要とならないために、1つのシーンに含まれる各測定部分についてのスペクトルが実時間にて測定可能となる。また400本のスリット12bが搭載されない構成であっても、2本以上のスリット12bが搭載される限りでは、上述するようなスリット12bの走査の回数が低減可能となるため、スペクトルの測定に要する時間が短縮可能となる。
なお、このようなスペクトル測定装置10においてスリット群12Gを走査させないとすれば、測定対象20における空間的な分解能は、スリット群12Gを構成するスリット12bの本数に相当するものとなる。また測定対象20における波長の分解能は、1本のスリット12bからの光Lを受ける受光素子のうちで幅方向Dwに沿って配列された受光素子の個数に相当するものとなる。
例えばスペクトル測定装置10における測定器15が、長さ方向Dmおよび幅方向Dwに沿ってマトリックス状に配列された受光素子から構成されて、長さ方向Dmに沿って300個の受光素子を有し、かつ、幅方向Dwに沿って300個の受光素子を有するものとする。こうした構成においてスリット群12Gを構成するスリット12bの本数が5本であるとすると、5つの測定部分の各々が長さ方向Dmに沿って300個の領域に仮想的に分割されることになる。そして測定対象20からの光についてのスペクトルが、5本×300個の空間からの光についてのスペクトルに分解されることになる。また1本のスリット12bからの光Lを受ける受光素子のうちで幅方向Dwに沿って配列された受光素子の個数が300個/5本=60個になるため、測定対象20を構成する各測定部分からの光についてのスペクトルが、60個の波長成分で構成されることになる。
それゆえに、スリット群12Gを構成するスリット12bの本数を変更することによって、測定対象20における空間的な分解能が変更可能になる。また1本のスリット12bからの光Lを受ける受光素子のうちで幅方向Dwに沿って配列された受光素子の個数を変更することによって、測定対象20における波長の分解能が変更可能にもなる。
以上説明したように、第1の参考例に係るスペクトル測定装置によれば、以下列記するような効果が得られるようになる。
(1)スペクトル測定装置10は、2以上の互いに異なる測定部分を含む測定対象20に対して、測定対象20からの光のうちから各測定部分からの光を抽出する2本以上のスリット12bを有するスリット群12Gを備える。そしてスペクトル測定装置10は、スリット群12Gによって抽出された光をスリット12bごとに分光する分光器14と、分光器14によって分光されたスリット12bごとの各波長成分の強度を測定する測定器15とを備える。それゆえに、2以上の互いに異なる測定部分を含む測定対象20に対して、スリット12bを移動させることなく、各測定部分からの光のスペクトルが測定可能になる。そのため、単スリットを移動させながら各測定部分からの光のスペクトルを測定する構成と比較して、各スペクトルの測定時間が短縮可能になる。またスリット12bを移動させる場合であっても、2本以上のスリット12bが搭載される限りでは、単スリットを移動させる回数と比較してその移動の回数が低減可能となるため、スペクトルの測定に要する時間が短縮可能となる。
(2)そのうえ、各測定部分からの光のスペクトルが互いに同じタイミングで測定されることにもなるため、測定対象20の広範囲にわたるスペクトル測定が実時間で可能になる。なお、こうしたスペクトル測定装置10が移動体に搭載されるとすれば、要求される移動状態でのスペクトル測定が実時間で可能になる。そのため、スペクトルの測定結果を利用して移動体の移動支援がなされることになれば、その移動支援の精度が向上可能にもなる。
(3)スペクトル測定装置10は、測定帯域の波長成分のみを分光器14に導くバンドパスフィルタ13を備える。複数のスリット12bの各々を通過した光同士の間で、測定帯域の波長成分と測定帯域以外の波長成分とが干渉するとなっては、測定器15における測定精度が損われるといった懸念がある。この点、本参考例では、上述するバンドパスフィルタ13によって、測定帯域の波長成分のみが分光器14に導かれることから、各スリット12bを通過した光同士の間において、測定帯域以外の光と測定帯域の光との干渉が、分光器14よりも後段において回避可能になる。それゆえ各成分の強度に関わる精度が向上可能になり、ひいてはスペクトルの精度が向上可能になる。更に、干渉を抑制するための構成が分光器14や測定器15に必要とされなくなるため、分光器14や測定器15の構成が容易にもなる。
(4)スペクトル測定装置10の2本以上のスリット12bの各々は、スリット12bを通過した光を収束光もしくは平行光に変換する、光学素子12cを備える。互いに隣接するスリット12b同士の間隔が短くなると、各スリット12bを通過した光束同士の間隔も自ずと狭くなるため、スリット12bを通過した光束と、当該スリット12bに隣接する他のスリット12bを通過した光束とが、分光器14よりも前段において干渉し易くなることも懸念される。この点、本参考例では、各スリット12bが有する光学素子12cは、当該スリット12bを通過した光束を収束光もしくは平行光に変換することから、このような干渉を抑制することが可能にもなる。
第2の参考例
次に、ペクトル測定装置の第2の参考例について、図2および図3を用いて説明する。なお、第2の参考例は、第1の参考例とは異なる遮蔽器12を備え、更に、スリット切替器22および整合器23を備える構成である。その他の基本的な構成は第1の参考例と同じであるため、以下ではその変更点について詳細に説明する。
図2に示されるように、遮蔽器12を構成する円板状の遮蔽板12aには、中心から放射線状に延びる4つのスリット群12Gが、遮蔽板12aの周方向に等配されている。4つのスリット群12Gの各々は、それを構成するスリット12bの本数や間隔、および方向が互いに異なる。詳しくは、4つのスリット群12Gのうちの3つのスリット群12G(図2の上方、左方、下方のスリット群12G)では、遮蔽板12aの径方向に対して直交する方向に延びる2本以上のスリット12bが、径方向に沿って等間隔に配列されている。そしてこれら3つのスリット群12Gは、スリット12bの本数および間隔について互いに異なる。一方、これら3つのスリット群12Gとは異なる1つのスリット群12G(図2の右方のスリット群12G)では、遮蔽板12aの略径方向に延びる2本以上のスリット12bが、径方向に対して直交する方向に沿って等間隔に配列されている。
遮蔽板12aの中心には、遮蔽板12aの軸線を回転中心として遮蔽板12aをその周方向に沿って90°ごとに回転可能にするスリット切替器22が連結されている。そしてスリット切替器22が遮蔽板12aを回転させることによって、分光のために分光器14に光Lを透過させる1つのスリット群、つまり測定用のスリット群12Gは、上記4つのスリット群12Gのうちで切替えられることになる。
図3に示されるように、集光器11、バンドパスフィルタ13、分光器14、および測定器15には、これら各構成要素の各々を、その光軸を回転中心にして90°の可動範囲で正転および反転転可能にする整合器23が連結されている。そして、遮蔽板12aの略径方向に延びるスリット12bを有するスリット群12G(図2の右方のスリット群12G)が測定用のスリット群12Gとなる際に、整合器23は、上記各構成要素の各々をその光軸を回転中心に90°だけ正転させる。またこの状態から、遮蔽板12aの径方向に対して直交する方向に延びるスリット12bを有するスリット群12G(図2の上方、左方、または下方のスリット群12G)が測定用のスリット群12Gとなる際に、整合器23は、上記各構成要素の各々をその光軸を回転中心に90°だけ反転させる。つまり整合器23は、集光器11、バンドパスフィルタ13、分光器14、および測定器15の各々における光学的な特性が連続する方向と、スリット12bの長軸方向とが整合する態様になるように、集光器11、バンドパスフィルタ13、分光器14、および測定器15の各々を回転させる。
そしてn本(図3においては、n=3)のスリット12bを有するスリット群12G(図2の上方のスリット群12Gがn=3)が測定用のスリット群12Gとなると、n本のスリット12bに対応するn箇所の測定部分20aからの光が、各スリット12bによって互いに同じタイミングで抽出されることになる。それゆえに、こうした構成を有するスペクトル測定装置10によれば、n箇所の測定部分20aからの光について、これらのスペクトルが互いに同じタイミングで測定されることになる。
ここで、測定対象20における測定部分20aの位置や数等が互いに異なることとなれば、こうした測定部分20aからの光の位置や量も、互いに異なることになる。測定対象20からの光のうちからこうした光が抽出されるためには、スリット群12Gにおけるスリット12bの位置や数等も、互いに異なる必要がある。この点、本参考例のスペクトル測定装置10によれば、スリット切替器22による切替によって、測定用のスリット群12Gは、4つの互いに異なるスリット群12Gのいずれかに切替可能になる。そのため、2つ以上の互いに異なる測定部分20aを測定する場合であっても、4つのスリット群12Gが切替えられていずれかが測定対象20に適用可能となれば、それらのスペクトル測定が可能にもなる。
以上説明したように、第2の参考例に係るスペクトル測定装置10によれば、第1の参考例から得られる上記(1)〜(4)の効果に加えて、以下列記するような効果が得られるようになる。
(5)スペクトル測定装置10は、4つの互いに異なるスリット群12Gと、スリット切替器22とを備える。スリット切替器22は、測定用のスリット群12Gを、4つの互いに異なるスリット群12Gのうちのいずれかに切替可能にする。つまりスリット切替器22による切替によって、測定用のスリット群12Gは、4つの互いに異なるスリット群12Gのいずれかに切替可能になる。そのため、2つ以上の互いに異なる測定対象20を測定する場合でも、4つの互いに異なるスリット群12Gのいずれかが各測定対象20に適用されることによって、それらのスペクトル測定が可能にもなる。こうしたことから、本参考例は、例えば単一のスリット群12Gを有する構成と比較して、測定部分20aの位置や数等といった測定部分20aの属性に関して自由度が拡張可能になる。
(6)スペクトル測定装置10では、スリット12bの本数が、3つのスリット群12G(図2の上方、左方、下方のスリット群12G)において互いに異なる。このような構成によれば、互いに異なる本数のスリット12bを有するスリット群12Gが、単一のスペクトル測定装置10において利用可能になるため、単一のスペクトル測定装置10において空間的な解像度が切替可能にもなる。
(7)また互いに隣接するスリット12b同士の間隔が狭くなると、互いに隣接するスリット12bからの光束同士の間隔も狭くなる。更にバンドパスフィルタ13の変更に伴って測定帯域が広くなると、分光された光の幅方向Dwにおける幅も広がることになる。そのため、例えば分光された光の幅方向Dwにおける幅が広がるにもかかわらず、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が固定されるような場合では、互いに隣接するスリットからの光同士が分光器14よりも後段において干渉する懸念がある。この点、本参考例のスペクトル測定装置10では、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が切替可能であるために、上述するような干渉を抑制可能にもなる。
(8)スペクトル測定装置10の3つのスリット群12G(図2の上方、左方、下方)と、残りの1つのスリット群12G(図2の右方)とでは、スリット12bの長軸方向が、測定対象20に対して互いに異なる。そして整合器23は、集光器11、バンドパスフィルタ13、分光器14、および測定器15の各々における光学的な特性が連続する方向と、スリット12bの長軸方向とが整合する態様になるように、集光器11、バンドパスフィルタ13、分光器14、および測定器15の各々を回転させる。このような構成によれば、スリット12bの長軸方向が互いに異なるスリット群12G同士が、単一のスペクトル測定装置10において利用可能になる。つまり、単一のスペクトル測定装置10において、測定部分20aの長軸方向が切替可能にもなる。
第3の参考例
次に、ペクトル測定装置の第3の参考例について、図4を用いて説明する。なお、本参考例は、距離可変器24を備える構成であり、その他の基本的な構成は第1の参考例と同じであるため、以下ではその変更点について詳細に説明する。
図4に示されるように、スペクトル測定装置10の測定器15には、分光器14と測定器15の間の距離を変更可能にする距離可変器24が連結されている。距離可変器24は、測定器15が分光器14から最も離間する位置(図4において二点鎖線で示す位置)と、測定器15が分光器14に最も接近する位置(図4において実線で示す位置)との間を、光軸の方向に沿って測定器15を移動可能にする。なお、測定器15が分光器14から最も離間する位置は、一つのスリット12bからの波長成分λa,λbと、当該スリット12bに隣接する他のスリット12bからの波長成分λa,λbとが、受光素子よりも前段において干渉しないことが条件として設定されている。
ここで、分光器14によって分光された光は、断面が測定器15に向かって幅方向Dwに拡がるかたちに進行する。ゆえに測定器15における受光面積は、測定器15が分光器14から離れるにつれて大きくなり、反対に、測定器15が分光器14に近づくにつれて小さくなる。そして分光された光を受ける受光素子の数、すなわち測定結果のデータ量も、測定器15が分光器14から離れるにつれて多くなり、反対に、測定器15が分光器14に近づくにつれて少なくなる。なお測定器15の受光面積が小さくなる場合には、より多くの波長成分が単一の受光素子に入射することによって波長成分の分解能が低くなり、反対に、測定器15の受光面積が大きくなれば、より少ない波長成分が単一の受光素子に入射することによって波長成分の分解能が高くなる。
例えば、測定器15と分光器14の間の距離が第1距離Laまで伸長された場合において、1つのスリット12bからの光を受ける幅方向Dwの受光素子の数を、第1素子数kaとする。また測定器15と分光器14の間の距離が第2距離Lbまで短縮された場合において、1つのスリット12bからの光を受ける幅方向Dwの受光素子の数を、第2素子数kbとする。すると第2距離Lbにおける受光素子の数、すなわち第2素子数kbは、測定器15における受光面積が小さくなる分だけ、第1距離Laにおける受光素子の数、すなわち第1素子数kaよりも小さくなる。なおこの際、第2素子数kbを構成する各受光素子には、第1素子数kaを構成する各受光素子よりも多くの波長成分が入射することによって、第2素子数kbを構成する各受光素子の波長成分の分解能が低くなる。
このように、測定器15を移動させて分光器14と測定器15の間の距離を短縮することによって、スリット12bの数、つまり測定対象20における空間的な解像度を保持しつつ、スペクトルのデータ量を低減させることが可能になる。これに対して、測定器15を移動させて分光器14と測定器15の間の距離を伸長することによって、スリット12bの数、つまり測定対象20における空間的な解像度を保持しつつ、波長成分の分解能を向上させることが可能になる。
以上説明したように、第3の参考例に係るスペクトル測定装置10によれば、第1の参考例から得られる上記(1)〜(4)の効果に加えて、以下列記するような効果が得られるようになる。
(9)このスペクトル測定装置は、分光器14と測定器15の間の距離を変更可能にする距離可変器24を備える。そのため、分光器14と測定器15の間の距離が距離可変器24によって変更可能になる。よって、例えば分光器14と測定器15の間の距離が固定される構成と比較して、スペクトルの測定結果のデータ量や各波長成分の分解能の自由度が拡張可能になる。
一実施の形態
次に、本発明にかかるスペクトル測定装置の一実施の形態について、図5および図6を用いて説明する。なお、一実施の形態は、第1の参考例とは異なる遮蔽器12およびバンドパスフィルタ13を備える構成であり、その他の基本的な構成は第1の参考例と同じであるため、以下ではその変更点について詳細に説明する。
図5に示されるように、スペクトル測定装置10の遮蔽器12には、スリット12bの配列方向である幅方向Dwの中央付近に、3本のスリット12bが偏倚して配列されている。またこれら3本のスリット12bを間に挟む2本のスリット12bが、遮蔽器12の幅方向Dwの両端に配列されている。これら5本のスリット12bは、幅方向Dwの中央に偏倚する3本のスリット12b同士の間隔が、これらと幅方向Dwの両端のスリット12bとの間の間隔よりも短くなるように配置されている。
バンドパスフィルタ13は、幅方向Dwにおける両端のスリット12bからの光を受ける2つの第1のバンドパスフィルタ13aと、幅方向Dwの中央に偏倚する3本のスリット12bからの光を受ける第2のバンドパスフィルタ13bとから構成されている。第1のバンドパスフィルタ13aが高い透過率を示す帯域(波長成分λa〜波長成分λb)は、第2のバンドパスフィルタ13bが高い透過率を示す波長の帯域(波長成分λc〜波長成分λd)を含み、かつ、その波長成分λc〜波長成分λdよりも広くなるように構成されている。つまりバンドパスフィルタ13は、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が短くなるにつれて、測定帯域を狭くするかたちに構成されている。
ここで、上述するように分光器14によって分光された光は、断面が測定器15に向かって幅方向Dwに拡がるかたちに進行する。ゆえに測定器15における受光面積は、バンドパスフィルタ13における透過帯域が広くなるにつれて大きくなり、反対に、バンドパスフィルタ13における透過帯域が狭くなるにつれて小さくなる。また互いに隣接するスリット12b同士の間隔が短くなると、各スリット12bを通過した光同士の間隔も自ずと狭くなり、反対に、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が長くなると、各スリット12bを通過した光同士の間隔も自ずと広くなる。
本実施の形態における構成では、第2のバンドパスフィルタ13bを通過する光Lの波長帯域は、第1のバンドパスフィルタ13aを通過する光Lの波長帯域よりも狭くなる。そのため、測定器15における受光面積については、第2のバンドパスフィルタ13bを通過した光の受光面積は、第1のバンドパスフィルタ13aを通過した光の受光面積よりも小さくなる。また第2のバンドパスフィルタ13bを通過する光Lと、これに隣接する光Lとの間の間隔は、これらに対応するスリット12b同士の間隔に対応して相対的に狭くなる。また第1のバンドパスフィルタ13aを通過する光Lと、これに隣接する光Lとの間の間隔は、これらに対応するスリット12b同士の間隔に対応して相対的に広くなる。そのため互いに隣接するスリット12b同士の間隔が短くなるにつれてバンドパスフィルタ13が測定帯域を狭くすると、測定器15の受光素子やそれよりも前段において、互いに隣接するスリット12bからの光同士の干渉を抑制することが可能にもなる。
そのうえ、第1のバンドパスフィルタ13aを通過した光Lを受光する受光素子の個数は、第2のバンドパスフィルタ13bを通過した光Lを受光する受光素子の個数よりも多くなる。つまり、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が長くなる測定部分に対しては、波長成分の分解能が高くなり、反対に、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が短くなる測定部分に対しては、波長成分の分解能が低くなることになる。それゆえ光学的な特性、すなわち測定対象20の物性を詳細に測定すべき測定部分が、測定対象20において予め特定可能な場合には、互いに隣接するスリット同士の間隔が長くなるスリット12bを、こうした測定部分に対して配列する構成が好ましい。このような構成によれば、光学的な特性、すなわち測定対象20の物性を詳細に測定すべき測定部分に対して、波長成分の分解能を高くしたスペクトルが測定可能になる。
例えば車道を走行する車両の車室内から観測される車両の前方周辺には、図6に示されるように、車道、歩道、建物、壁、上空、樹木(街路樹)、自転車、および車両のボンネット等が観測される。こうした車両の前方周辺においては、車両の運転支援に必要とされる歩行者や自転車等が、一般に車両前方のボンネットと上空との間の領域にて観測されることになる。このように車両の前方周辺が測定対象20となる態様で、スペクトル測定装置10が車両に搭載されるとすると、以下のような構成であれば、歩行者や自転車等の測定部分について、高い空間的な分解能と、高い波長成分の分解能との双方で、そのスペクトルが測定可能になる。
すなわち、車両のボンネットから上空に向かう方向が幅方向Dwであって、かつ、測定対象20の幅方向Dwの中央付近にて、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が相対的に狭くなるようにスリット群12G(図5参照)が構成されるとする。こうした構成によれば、測定対象20における中央付近において空間的な分解能が高くなり、また測定対象20における幅方向Dwの両端付近において波長成分の分解能が高くなる。そのため歩行者や自転車等が測定対象20の中央付近に存在する場合、つまり運転支援に必要とされる対象が車両から遠く離れて存在する場合、まず高い空間的な分解能の下で、それらの空間的な特性が測定可能となる。そして運転支援に必要とされる対象が測定対象20における幅方向Dwの両端付近に存在する場合、つまり運転支援に必要とされる対象が車両から近い位置に存在する場合には、高い波長成分の分解能の下で、それらの光学的な特性が測定可能となる。
それゆえ遮蔽器12においてスリット群12Gの切替が行われずとも、車両から遠く離れた物体に対しては、高い空間的な解像度によってそれの識別が可能になる。また車両に近い物体に対しては、高い波長成分の分解能によってそれの識別が可能になる。したがって車両から遠く離れた物体に対しては、それが運転支援に必要とされる対象か否かといった点について空間的に識別可能となる。そして車両に近い物体に対しては、それが歩行者、動物、自転車のいずれであるかといった点について識別可能となる。
以上説明したように、一実施の形態に係るスペクトル測定装置10によれば、第1の参考例から得られる上記(1)〜(4)の効果に加えて、以下列記するような効果が得られるようになる。
(10)このスペクトル測定装置10のスリット群12Gでは、2本以上のスリット12bがそれらの配列方向で偏倚していることから、偏倚している2つ以上の互いに異なる測定部分から構成される測定対象20に対しても、実時間でのスペクトル測定が可能になる。
(11)そのうえ偏倚している2本以上のスリット12bに対応する測定部分では、測定対象20における空間的な分解能が向上可能となる。反対に、こうした偏倚しているスリット12bとは別のスリット12bに対応する測定部分では、測定対象20における空間的な分解能が抑制可能となる。したがってスリット群12Gの切替等を必要とすることなく、1つのスペクトル測定装置10によって、測定対象20における空間的な解像度を複数設定することが可能にもなる。
(12)そのうえ、偏倚している2つ以上の測定部分においては、空間的な分解能が向上可能となる一方、こうした測定部分を除いた他の測定部分においては、波長成分の分解能が向上可能になる。それゆえ、高い空間解像度によってスペクトルが測定される部分と、高い波長成分の分解能によってスペクトルが測定される部分とが、1つの測定対象20のなかに構成可能にもなる。
(13)このスペクトル測定装置10のバンドパスフィルタ13は、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が短くなるにつれて測定帯域を狭くするかたちに構成されている。そのため互いに隣接するスリット12b同士の間隔が偏倚によって短くなるとしても、各スリットを通過した光同士の干渉を抑制することが可能にもなる。
第4の参考例
次に、ペクトル測定装置の第4の参考例について、図7および図8を用いて説明する。なお、第4の参考例は、スペクトル測定装置10が車両に搭載される構成であり、その他の基本的な構成は上述する参考例および実施の形態と類似する構成であるため、以下ではその変更点について特に説明する。
なお、本参考例におけるスペクトル測定装置10は、第2の参考例にて説明された遮蔽器12およびスリット切替器22と、第3の参考例にて説明された距離可変器24とを搭載している。
また本参考例におけるスペクトル測定装置10は、スリット切替器22を駆動するための第1アクチュエータ22Aと、距離可変器24を駆動するための第2アクチュエータ24Aとを備えている。更にスペクトル測定装置10は、これら各アクチュエータ22A、24Aに、各々の駆動量を制御値として各アクチュエータ22A、24Aに入力するスリット制御器および距離制御器を構成する制御部26を備えている。以下では、こうした構成を有するスペクトル測定装置10の測定結果に基づき車両の運転支援が行われる例について説明する。
図7に示されるように、このスペクトル測定装置10が搭載される車両Cには、イグニッションがオンであるかオフであるかを検出するイグニッションセンサや、車両Cの周辺における物体と車両Cとの間の距離を検出可能にする赤外線レーダ、ミリ波レーダ、車載カメラ等の対物センサから構成される車載センサ31が搭載されている。こうした車載センサ31を搭載する車両Cには、車載センサ31からの各種検出結果を取得して、スペクトル測定処理に必要となる各種情報を生成するデータ処理部32が搭載されている。具体的には、このデータ処理部32は、イグニッションセンサからの検出結果に基づき、スペクトル測定装置10を起動させるか否かを示す情報を生成し、また対物センサからの検出結果に基づき、運転支援に必要とされる対象の候補と車両Cとの間の距離を示す情報を生成する。
車両Cに搭載されるスペクトル測定装置10には、データ処理部32からの各種情報に基づき、スペクトル測定装置10の起動判定を実行し、かつ、アクチュエータ22A、24Aの駆動量を制御する制御部26が搭載されている。
またこの制御部26は、運転支援に必要とされる対象の候補と車両Cとの間の距離、つまり測定部分とスリット群12Gとの間の距離に、測定対象20における測定部分20aの個数が対応付けられたマップ等にて構成される属性データを格納している。具体的には、こうした属性データでは、測定部分20aとスリット群12Gとの間の距離が短くなるにつれて、測定対象20における測定部分20aの個数が少なくなるかたちで、測定部分20aとスリット群12Gとの間の距離に対し測定部分20aの個数が対応付けられている。
そして、運転支援に必要とされる対象の候補と車両Cとの間の距離を示す情報を、データ処理部32から制御部26が取得すると、当該制御部26は、上記属性データを参照して、当該対象の候補と車両Cとの間の距離に対応する測定部分20aの個数を決定する。
またこの制御部26は、測定対象20における測定部分20aの個数が、アクチュエータ22A、24Aの駆動量に対応付けられたテーブル等にて構成される駆動量データDB1を格納している。具体的には、こうした駆動量データDB1では、測定対象20における測定部分20aの個数が小さくなるにつれて、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が長くなるかたちで、測定対象20における測定部分20aの個数に、第1アクチュエータ22Aの駆動量が対応付けられている。またこうした駆動量データDB1では、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が長くなるにつれて、分光器14と測定器15の間の距離が長くなるかたちで、上記第1アクチュエータ22Aの駆動量に、第2アクチュエータ24Aの駆動量が対応付けられている。
そして上記測定部分20aの個数を決定すると、当該制御部26は、上記駆動量データDB1を参照し、当該測定部分20aの個数に対応する第1アクチュエータ22Aの駆動量と、当該第1アクチュエータ22Aの駆動量に対応する第2アクチュエータ24Aの駆動量とを算出する。そして制御部26は、アクチュエータ22A、24Aの各々を、それに対応する駆動量で制御する。
こうしたスペクトル測定装置10を搭載する車両Cには、スペクトル測定装置10が取得したスペクトルデータに基づき各測定部分を識別するスペクトルデータ解析部33が、搭載されている。このスペクトルデータ解析部33は、スペクトルの各種特異量を示すデータに、運転支援に必要とされる各種対象が紐付けられたテーブル等にて構成される辞書データDB2を、格納している。具体的には、こうした辞書データDB2では、特異的な波長、当該波長に対する強度、当該波長におけるピーク形状等、これらスペクトルの各特異量に、信号機、標識、歩行者、自転車、動物等、運転支援に必要とされる各種対象が紐付けられるかたちに構成されている。
そしてスペクトル測定装置10からのスペクトルデータを取得したスペクトルデータ解析部33は、上記辞書データDB2を参照して、当該スペクトルデータの各特異量に紐付けられた対象、すなわち測定部分の識別結果を、識別データとして生成する。次いでスペクトルデータ解析部33は、それが生成した識別データに基づき運転支援を実行する各部、例えば車両Cの運転者に注意喚起を促す警報部や表示部、更には当該車両Cを構成する各種アクチュエータ等へ識別データを出力し、こうした各部において、当該識別データに基づく運転支援を実行させる。
次に、本参考例のスペクトル測定装置10を搭載する車両Cにて行われる一連のスペクトル測定処理について、図8を参照して説明する。なお、本参考例におけるスペクトル測定処理は、車両Cの電源状態がACC(Accessory)オンの状態である期間に、所定の演算周期で繰り返して実行される。
図8に示されるように、当該スペクトル測定処理においてはまず、スペクトル測定装置10の起動判定として、イグニッションセンサの検出結果に基づき、イグニッションがオンであるか、あるいはオフであるかを、制御部26が判断する(ステップS1)。イグニッションがオフであると判断すると、制御部26はスペクトル測定処理を終了する。一方、イグニッションがオンであると判断すると、制御部26は、データ処理部32を介して、運転支援に必要とされる対象の候補と車両Cとの間の距離を示す情報を取得し、属性データを参照して、当該距離に対応する測定部分20aの個数を決定する。すなわち制御部26は、測定部分20aとスリット群12Gとの間の距離が短くなるにつれて測定対象20における測定部分の個数が少なくなるかたちで、測定部分の個数、つまり測定部分の属性を決定する(ステップS2)。
このようにして測定部分の属性が決定されると、制御部26は、駆動量データDB1を参照して、測定部分20aの個数に対応する第1アクチュエータ22Aの駆動量を算出し、当該測定部分20aの個数に対応する駆動量で第1アクチュエータ22Aを制御する(ステップS3)。すなわち制御部26は、測定対象20における測定部分20aの個数が小さくなるにつれて、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が長くなるかたちで、2つ以上の互いに異なるスリット群12Gのうちから、測定用のスリット群12Gを選択する。
次いで制御部26は、駆動量データDB1を参照して、第1アクチュエータ22Aの駆動量に対応付けられた第2アクチュエータ24Aの駆動量を算出し、第1アクチュエータ22Aの駆動量に対応する駆動量で第2アクチュエータ24Aを制御する(ステップS4)。すなわち制御部26は、互いに隣接するスリット12b同士の間隔が長くなるにつれて、分光器14と測定器15の間の距離が長くなるかたちで、分光器14と測定器15の間の距離を、測定用のスリット群12Gに対応して変更する。
このようにして測定用のスリット群12Gが選択されることによって、分光器14と測定器15の間の距離が、距離可変器24によって当該測定用のスリット群12Gに対応付けられると、制御部26は、各測定部分における波長成分ごとの強度を示すデータを、測定器15から取得する。そして、波長成分ごとの光の強度がその波長に対応付けられる態様で、スペクトルデータを生成する(ステップS5)。
この際、運転支援に必要とされる対象の候補と車両Cとの間の距離が短ければ、こうした対象に対して運転支援を実行するまでの時間も短くなる。そのため測定対象の識別がより詳細になされるべく、測定対象における高い波長成分の分解能が必要とされることになる。つまりスリット12bの個数も、自ずと少ないものが必要とされることになる。反対に、運転支援に必要とされる対象の候補と車両Cとの間の距離が長ければ、こうした対象に対して運転支援を実行するまでの時間も、十分に長くなる。そのため測定対象の識別がより単純になされるべく、測定対象における高い空間的な分解能が必要とされることになる。つまりスリット12bの個数も、自ずと多いものが必要とされることになる。
上述するような構成を有するスペクトル測定装置10であれば、測定部分とスリット群12Gとの間の距離が長くなるにつれて、測定対象20における測定部分の個数が多くなる。そのため運転支援に必要とされる対象の候補と車両Cとの間の距離が長ければ、測定対象における空間的な分解能が高くなり、反対に、運転支援に必要とされる対象の候補と車両Cとの間の距離が短ければ、測定対象における波長成分の分解能が高くなる。それゆえに、測定対象20における空間的な分解能と波長成分の分解能とが、運転支援のタイミングに合わせられるかたちとなるため、運転支援における支援精度が向上可能にもなる。
また測定対象20における測定部分の個数が少なければ、こうした測定部分に対応するスリット12bの本数も少なくなるため、測定器15における受光面積も自ずと当該本数に対応して小さくなる。一方、測定対象20における測定部分の個数が多ければ、こうした測定部分に対応するスリット12bの本数も多くなるため、測定器15における受光面積も自ずと当該本数に対応して大きくなる。
上述するような構成を有するスペクトル測定装置10であれば、スリット12bの本数が多くなるにつれて分光器14と測定器15の間の距離が短くなり、反対に、スリット12bの本数が少なくなるにつれて分光器14と測定器15の間の距離が長くなる。そして上述したように、分光された光を受ける受光素子の個数、すなわち測定結果のデータ量は、測定器15が分光器14から離れるにつれて大きくなり、反対に、測定器15が分光器14に近づくにつれて小さくなる。そのためスリット12bの本数が多ければ、スペクトルデータのデータ量が一定量に向かって抑えられることになり、反対に、スリット12bの本数が少なければ、スペクトルデータのデータ量が当該一定量に向かって増加されることになる。それゆえに、測定データのデータ量を、測定用のスリット群12Gに対応して略一定量にすることが可能になるため、スペクトルデータの一部を間引いたり、あるいはスペクトルデータの一部にダミーとなるデータを補間したりといった演算が不要となる。したがって、スペクトルデータの解析時間を含めたスペクトル測定が、実時間にて実現し易くもなる。
そしてスペクトルデータが生成されると、制御部26は、イグニッションセンサの検出結果に基づき、イグニッションがオンであるか、あるいはオフであるかを再び判断する(ステップS6)。イグニッションがオフであると判断すると、制御部26はスペクトル測定処理を終了する。一方、イグニッションがオンであると判断すると、制御部26は、上記スペクトルデータをスペクトルデータ解析部33に出力する。そして制御部26は、運転支援に必要とされる対象の候補の識別結果を示す識別データを、スペクトルデータ解析部33によって生成させて、運転支援を実行する各部に当該識別データを出力させ、当該各部に運転支援を実行させて、上記と同様の処理を繰り返す(ステップS7)。
以上説明したように、第4の参考例に係るスペクトル測定装置10によれば、各参考例から得られる上記の効果に加えて、以下列記するような効果が得られるようになる。
(14)このスペクトル測定装置10の制御部26は、測定対象20とスリット群12Gとの間の距離に基づき、測定部分の属性としての測定部分20aの個数を決定する。そのため、測定用のスリット群12Gの切替の態様が、測定対象20とスリット群12Gとの間の距離に基づき制御可能になる。よって、例えばスペクトル測定装置10から測定対象20までの距離が短ければ、スリット12bの本数を減らし、こうした測定対象20における空間的な解像度を下げることが可能になる。また、例えばスペクトル測定装置10から測定対象20までの距離が長ければ、スリット12bの本数を増やし、こうした測定対象20における空間的な解像度を上げることが可能になる。それゆえ、測定対象20の範囲を有効的に利用したスペクトル測定が、実時間で可能になる。
(15)このスペクトル測定装置10の制御部26は、距離可変器24による分光器14と測定器15の間の距離の変動を、スリット群12Gの属性としてのスリット12bの本数に基づき制御する。これによって、分光器14と測定器15の間の距離は、測定用のスリット12bの本数に基づき制御可能になるため、例えば測定用のスリット12bの本数が多ければ、空間的な解像度を上げつつ、スペクトルにおける波長成分の分解能を下げてデータ量を略一定量に抑えることが可能になる。反対に、測定用のスリット12bの本数が少なければ、空間的な解像度を下げつつ、スペクトルにおける波長成分の分解能を上げてデータ量を一定量に近づけることが可能なる。それゆえ、スリット12bの本数が互いに異なるというように、属性が互いに異なるスリット群12Gが測定用のスリット群12Gに適用される構成であっても、空間的な解像度を調整しつつ、上述するようなデータ量の調整や波長成分の分解能の調整が可能にもなる。
なお、上記各実施の形態および参考例は、以下のような態様をもって実施することもできる。
・上記第4の参考例では、移動体としての車両Cに、スペクトル測定装置10が搭載される構成を説明したが、これに限らず、スリット切替器22による切替の態様を、測定部分20aの属性に応じた制御値に基づき制御する構成であってもよい。このように、当該スペクトル測定装置10が移動体に搭載されない構成としても、第4の参考例で得られる(14)、(15)と同様の効果を得ることが可能である。
・上記第4の参考例では、移動体としての車両Cに、スペクトル測定装置10が搭載される構成を説明したが、これに限らず、距離可変器24による分光器14と測定器15の間の距離の変動が、スリット群12Gの属性に応じた制御値に基づき制御される構成であってもよい。このように、当該スペクトル測定装置10が移動体に搭載されない構成であっても、第4の参考例で得られる(14)、(15)と同様の効果を得ることが可能である。
・上記第4の参考例では、スリット切替器22による切替の態様を、測定部分20aの属性に応じた制御値に基づき制御し、かつ、距離可変器24による分光器14と測定器15の間の距離の変動を、スリット群12Gの属性に応じた制御値に基づき制御する構成とした。しかしこれに限られず、例えば分光器14と測定器15の間の距離が固定されて、スリット切替器22による切替の態様のみが測定部分20aの属性に応じて制御される構成であってもよい。こうした構成であっても、第4の参考例で得られる(14)と同様の効果が得られることになる。あるいは、スリット群12Gが固定されて、距離可変器24による分光器14と測定器15の間の距離の変動のみが当該スリット群12Gの属性に応じて制御される構成であってもよい。こうした構成であっても、第4の参考例で得られる(15)と同様の効果が得られることになる。
・上記第4の参考例では、スペクトル測定装置10が、第2の参考例にて説明された遮蔽器12およびスリット切替器22と、第3の参考例にて説明された距離可変器24とを備えている。そして、その遮蔽器12が備える2以上の互いに異なるスリット群12Gは、それぞれスリット12bの本数といった属性が互いに異なることとした。しかしこれに限らず、例えば一実施の形態にて説明されたような、スリット12bの配列方向である幅方向Dwの中央付近に3本のスリット12bが偏倚して配列されているスリット群12Gが、2以上の互いに異なるスリット群12Gのうちの1つとなる構成であってもよい。こうした構成であっても、第4の参考例で得られる(14)、(15)と同様の効果が得られることになる。
・上記第4の参考例では、測定部分20aの属性が、測定部分20aの個数として具体化されているが、これに限らず、測定部分20aの属性は、測定部分20aのサイズや測定対象における測定部分20aの位置等に具体化されてもよい。こうした構成であっても、第4の参考例で得られる(14)、(15)と同様の効果が得られることになる。
・上記第4の参考例では、制御部26が、測定対象20とスリット群12Gとの間の距離に基づき測定部分20aの属性を決定する。しかしこれに限らず、例えば測定対象20を測定する周辺の環境や、車両Cの挙動等の走行状況に基づき、これに適した測定部分20aの属性、例えば測定対象20における測定部分20aの位置、個数、サイズ等が決定される構成であってもよい。こうした構成であっても、第4の参考例で得られる(14)、(15)と同様の効果が得られることになる。
・上記第4の参考例では、スリット群12Gの属性を、スリット12bの本数として具体化したが、これに限らず、スリット群12Gの属性を、隣接するスリット12bとの間の間隔や、スリット12bの偏倚している位置等に具体化することも可能である。こうした構成であっても、第4の参考例で得られる(14)、(15)と同様の効果が得られることになる。
・上記第4の参考例では、測定部分20aとスリット群12Gとの間の距離が短くなるにつれて、測定対象20における測定部分20aの個数が少なくなるようにした。しかしこれに限らず、例えば測定部分20aとスリット群12Gとの間の距離が短くなるにつれて、測定対象20における測定部分20aの個数が多くなるようにしてもよい。こうした構成であれば、測定対象20がスペクトル測定装置10に近づくにつれて、空間的な解像度を高くすることができる。
・上記第4の参考例では、スペクトル測定装置10が制御部26を有する構成としているが、これを変更して、例えば車両Cが上記制御部26を有する構成としてもよい。また車両Cがスペクトルデータ解析部33を有する構成としているが、これを変更して、スペクトル測定装置10がスペクトルデータ解析部33を有する構成であってもよい。こうした構成であっても、第4の参考例で得られる(14)、(15)と同様の効果が得られることになる。
・上記第4の参考例では、測定対象20とスリット群12Gとの間の距離に基づきスリット群12Gを切替え、かつその切替えたスリット群12Gの属性に応じて、分光器14と測定器15との距離を調整する構成としている。しかしこれに限らず、スリット群12Gを切替えるために用いる測定部分20aの属性としては、例えば、昼夜、晴雨、または走行場所(都市部か農村部か)等の周囲環境、スペクトル測定装置10の解析結果、あるいはこのスペクトル測定装置10を搭載する車両Cの挙動等の走行状況に適した測定部分20aの位置、サイズ、個数等を用いてもよい。こうした構成であっても、第4の参考例で得られる(14)、(15)と同様の効果が得られることになる。
・上記一実施の形態では、バンドパスフィルタ13が透過させる波長帯域が、互いに隣接するスリット12b同士の間隔に応じて異なり、分光器14から分散する各波長成分の広がりが、互いに隣接するスリット12b同士の間隔に応じて互いに異なる構成としている。しかしこれに限らず、バンドパスフィルタ13が透過させる波長帯域が、互いに隣接するスリット12b同士の間隔にかかわらず共通するものであってもよいし、分光器から分散する各波長成分の広がりが、互いに隣接するスリット12b同士の間隔に応じて互いに異なる構成であってもよい。こうした構成は、一実施の形態において、例えば1つのバンドパスフィルタ13と、上記各波長成分の広がりが、互いに隣接するスリット12b同士の間隔に応じて互いに異なる2種類の分光器14とから実現可能である。こうした構成によっても、上記一実施の形態で得られる効果と同様の効果が得られることになる。
・上記第3および第4の参考例では、測定器15が移動することによって、分光器14と測定器15の間の距離が変更される構成としている。しかしこれに限らず、分光器14が移動する構成としてもよく、また分光器14と測定器15とが共に移動する構成としてもよい。これらの構成であれば、波長成分の分解能を上げるために測定器15を移動する余裕を確保しておく必要がなくなる。すなわち、スペクトル測定装置10を小型化することができる。したがって、小型化されたスペクトル測定装置10を搭載する移動体としての車両Cの設計自由度を高めることも可能となる。
・上記第2の参考例を構成する2以上のスリット群12Gのうちの1つと、それに対応するバンドパスフィルタ13として、一実施の形態を構成する遮蔽器12および、2種類のバンドパスフィルタを備えるバンドパスフィルタ13を適用することも可能である。こうすることによっても、上記第2の参考例で得られる効果と同様の効果が得られることになる。
・上記第3の参考例を構成する遮蔽器12およびバンドパスフィルタ13として、一実施の形態を構成する遮蔽器12および、2種類のバンドパスフィルタを備えるバンドパスフィルタ13を適用することも可能である。こうすることによっても、上記第3の参考例で得られる効果と同様の効果が得られることになる。
・上記第2の参考例では、遮蔽器12を構成する遮蔽板12aが円板状に構成されるが、これに限らず、2つ以上の互いに異なるスリット群12Gを有する構成であれば、遮蔽板12aは、例えば図9に例示されるように、六角筒状に構成されていてもよい。更には、多角形の平板や六角筒状を除いた多角筒状に構成されていてもよい。これによって、遮蔽器12についての設計の自由度を高くすることができる。
・上記の各実施の形態および参考例では、スリット12bの各々が光学素子12cを有する構成であるが、こうした構成に限られない。例えば、各スリット12bに共通する視準器が、遮蔽器12と分光器14との間に配置される構成、あるいは各スリット12bからの光同士が干渉しないように各スリット12bが配置される構成であってもよい。そのような構成とすることによって、上記各光学素子12cを割愛し、遮蔽器12の製造を簡略化することも可能となる。
・上記の各実施の形態および参考例では、測定帯域の光のみを透過させるバンドパスフィルタ13がスペクトル測定装置10に設けられる構成であるが、分光器14にて分光された各波長成分が互いに干渉しない構成であれば、こうしたバンドパスフィルタ13を割愛することも可能である。そのような構成とすることによって、スペクトル測定装置10の構造を簡略化することで、スペクトル測定装置10の製造を容易にすることができる。
・上記の各実施の形態および参考例では、遮蔽器12と分光器14の間にバンドパスフィルタ13が配置される構成であるが、測定器15よりも前段にバンドパスフィルタ13が設けられるのであれば、バンドパスフィルタ13の配置はこれに限られるものではない。すなわち、測定器15が備える受光素子に、測定帯域の光が入射することになるのであれば、バンドパスフィルタ13はどこに配置されていてもよい。こうすることによって、スペクトル測定装置10の設計の自由度を高めることができる。
・上記の各実施の形態および参考例では、スリット12bは、長さ方向Dmに延びる孔、すなわち、図1、図3、図4および図5の紙面に対して垂直となる方向に延びる穿孔として構成されているが、これに限られない。すなわち、各スリット12bからの光が互いに干渉しない構成であれば、各スリット12bたる孔は、その方向を自由に構成することができる。例えば、スリット12bたる孔の方向は、図1、図3、図4および図5の紙面に対して垂直となる方向と並行とするのではなく、その方向に対して斜め方向であってもよい。また、上記スリット12bたる孔の長さも、長短おりまぜ、自由に構成することができる。こうした構成であっても、上記の各実施の形態および参考例にて得られる効果と同様に効果を得ることができる。更に、特に上記一実施の形態において、高い空間解像度によってスペクトルが測定される部分と、高い波長成分の分解能によってスペクトルが測定される部分とをより詳しく測定することができるスリット群12Gを備える遮蔽器12を適用することが可能となる。
・上記の各実施の形態および参考例では、2本以上のスリット12bが幅方向Dwに配列される構成とされているが、2本以上のスリット12bが2以上の互いに異なる方向に配列されて、各列に対応した光学系が備えられる構成としてもよい。こうした構成であっても、上記の各実施の形態および参考例にて得られる効果と同様の効果が得られることになる。更に、特に上記一実施の形態において、高い空間解像度によってスペクトルが測定される部分と、高い波長成分の分解能によってスペクトルが測定される部分とをより詳しく測定することができるスリット群12Gを備える遮蔽器12を適用することが可能となる。
10…スペクトル測定装置、11…集光器、12…遮蔽器、12a…遮蔽板、12b…スリット、12c…光学素子、12G…スリット群、13…バンドパスフィルタ、13a…第1のバンドパスフィルタ、13b…第2のバンドパスフィルタ、14…分光器、15…測定器、20…測定対象、20a…測定部分、22…スリット切替器、23…整合器、24…距離可変器、100…ハイパースペクトルセンサ、111…入射口、112…ミラー、113…集光器、114…遮蔽板、114a…単スリット、115…視準器、116…分光器、117…結像器、118…測定器、118a…受光素子、118b…受光素子、120…対象物、120a…測定部分。

Claims (12)

  1. 2本以上のスリットを有するスリット群であって、前記各スリットは、2以上の互いに異なる測定部分を含む測定対象に対して、当該測定対象からの光のうちから、前記各測定部分からの光を抽出することと、
    前記スリット群によって抽出された光を前記スリットごとに分光する分光器と、
    前記分光器によって分光された前記スリットごとの光の各成分の強度を測定する測定器と、
    を備えることを特徴とする、スペクトル測定装置。
  2. 前記スリット群は、前記スペクトル測定装置が備える2つ以上の互いに異なるスリット群のうちの一つであり、
    前記スペクトル測定装置は更に、分光させる光を前記分光器に透過させる1つのスリット群を、前記2つ以上の互いに異なるスリット群のうちで切替可能にするスリット切替器を備える
    請求項1に記載のスペクトル測定装置。
  3. 前記スペクトル測定装置は更に、前記スリット切替器による切替の態様を、前記測定部分の属性に応じた制御値に基づき制御するスリット制御器を備える
    請求項2に記載のスペクトル測定装置。
  4. 前記スリット制御器は、前記測定対象と前記スリット群との間の距離に基づき、前記測定部分の属性を決定する
    請求項3に記載のスペクトル測定装置。
  5. 前記測定器は、前記分光器によって分光された光の成分の各々を、前記スリットごとに受光する2つ以上の受光素子を含み、
    前記スペクトル測定装置は更に、前記分光器と前記測定器との間の距離を変更可能にする距離可変器を備えた
    請求項1乃至4のいずれか一項に記載のスペクトル測定装置。
  6. 前記スペクトル測定装置は更に、前記距離可変器による変更の態様を、前記スリット群の属性に応じた制御値に基づき制御する距離制御器を備える
    請求項5に記載のスペクトル測定装置。
  7. 前記スペクトル測定装置は更に、測定帯域の波長成分のみを前記分光器に導くバンドパスフィルタを備える
    請求項1乃至6のいずれか一項に記載のスペクトル測定装置。
  8. 前記バンドパスフィルタは、互いに隣接する前記スリット同士の間隔が短くなるにつれて前記測定帯域を狭くするかたちに構成される
    請求項7に記載のスペクトル測定装置。
  9. 前記2本以上のスリットの各々は、当該スリットを通過した光を収束光もしくは平行光に変換する光学素子を備える
    請求項1乃至8のいずれか一項に記載のスペクトル測定装置。
  10. 前記スリット群では、前記2本以上のスリットが、それらの配列方向で偏倚している
    請求項1乃至8のいずれか一項に記載のスペクトル測定装置。
  11. 前記2つ以上の互いに異なるスリット群は、それぞれ有する前記スリットの本数において互いに異なる
    請求項2乃至9のいずれか一項に記載のスペクトル測定装置。
  12. 前記スペクトル測定装置は、移動体に搭載されるものである
    請求項1乃至10のいずれか一項に記載のスペクトル測定装置。
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