本発明は、無線通信装置のアンテナの性能を評価するためのアンテナ評価装置及び当該アンテナ評価装置を用いたアンテナ評価方法に関する。
従来、散乱体をモデル化するための複数の送信アンテナ(以下、散乱体アンテナという。)を所定の半径を有する円周上に等間隔に設け、当該散乱体アンテナの各設置位置の中心付近に空間的な多重波を生成するアンテナ評価装置が提案されている(例えば、特許文献1及び非特許文献1〜4を参照。)。このようなアンテナ評価装置において、信号発生器によって発生された送信信号は、散乱体アンテナの数と同数の送信信号に分配され、分配後の各送信信号はそれぞれ移相器及び減衰器を介して対応する散乱体アンテナから放射される。このとき、移相器の各移相量及び減衰器の各減衰量を調整することにより、散乱体アンテナの各設置位置の中心にレイリーフェージング環境などの所定の多重波伝搬状態を生成できる。このため、散乱体アンテナの各設置位置の中心に評価用受信アンテナを設置し、当該受信アンテナによって受信された受信信号に基づいて、フェージング環境下における受信アンテナの性能を評価できる。
特開2005−227213号公報。
特許第3816499号公報。
坂田勉ほか、「空間フェージングエミュレータによる端末アンテナの実効性能評価」、松下テクニカルジャーナル、第52巻、第5号、70頁〜75頁、2006年10月。
坂田勉ほか、「空間フェージングエミュレータによるMIMOアンテナのチャネル容量測定」、電子情報通信学会2007年ソサイエティ大会講演論文集、B−1−9,2007年9月。
坂田勉ほか、「角度スペクトラムが設定可能な端末MIMOアンテナ測定用空間多重波生成装置、電子情報通信学会技術研究報告、第108巻、第5号、13頁〜18頁、2008年4月」。
坂田勉ほか、「多重波生成装置による複数クラスター伝搬環境下における端末MIMOアンテナ測定用空間多重波生成装置によるアンテナの伝送特性評価」、電子情報通信学会技術研究報告、第108巻、第429号、121頁〜126頁、2009年4月。
図32は、従来技術に係る近傍界校正法を説明するためのブロック図である。図32において、信号源901は送信信号を発生して送信アンテナ902から受信アンテナ903に向けて送信し、受信機904は送信された送信信号を受信アンテナ903を用いて受信する。近傍界校正法による校正時に、校正用測定器907は、送信アンテナ902の近傍に配置された校正用素子であるプローブ905を用いて送信アンテナ902近傍の電磁界を測定し、送信アンテナ902からの放射電力を算出する。信号源901は、算出された放射電力に基づいて、所定の放射電力の電波を放射するように調整される。
従来技術に係る近傍界校正法を、上述したアンテナ評価装置に適用する場合には以下の課題があった。上述したアンテナ評価装置では、散乱体アンテナの各設置位置の中心付近に所定の多重波伝搬状態を生成するように、分配後の各送信信号の位相及び振幅を変化させる。このため、より精度良くフェージング環境を生成するためには、送信信号を発生する信号源から受信アンテナが接続される受信機までのシステム全体において、あらかじめ受信信号の振幅及び位相の校正を行う必要がある。しかしながら、近傍界校正法を用いると、散乱体アンテナからの放射電力しか校正できず、受信機側の校正を別に行う必要があった。さらに、プローブ905を複数の散乱体アンテナの近傍に順次配置する、あるいは散乱体アンテナと同数のプローブ905を散乱体アンテナの近傍にそれぞれ配置する必要があり、校正のために比較的多くの時間、もしくは多数のプローブを必要とした。さらに、上述したアンテナ評価装置において、分配後の各送信信号の位相を、散乱体アンテナの設置位置の中心付近に所定の多重波伝搬状態を生成するように正確に制御する必要がある。しかしながら、従来技術に係る近傍界校正法では、プローブ905で受信された電波の電力しか用いないので、各散乱体アンテナから放射される電波の位相を校正することはできなかった。
本発明の目的は以上の問題点を解決し、従来技術に比較して容易にかつ正確に校正を行って、アンテナの評価精度を向上できるアンテナ評価装置及び当該アンテナ評価装置を用いたアンテナ評価方法を提供することにある。
第1の発明に係るアンテナ評価装置は、互いに異なる所定の位置に設けられた複数N個の散乱体アンテナを含む散乱体アンテナ群と、所定の送信信号を発生する信号発生手段と、上記送信信号を複数N個の送信信号に分配して、当該分配後の各送信信号の振幅及び位相をそれぞれ所定の振幅変化量及び所定の移相量で変化させて、上記各変化後の送信信号を当該各送信信号に対応する上記各散乱体アンテナから電波として放射する送信手段と、上記各位置の実質的に中心に配置された評価用受信アンテナを用いて、上記各散乱体アンテナから放射された電波の多重波を受信信号として受信し、上記送信信号を基準として上記受信信号の振幅及び位相を測定する受信手段と、上記測定された受信信号の振幅及び位相に基づいて評価用受信アンテナの性能を評価する制御手段とを備えたアンテナ評価装置において、上記制御手段は、上記各散乱体アンテナから単独で電波を放射するように上記送信手段を制御し、上記各散乱体アンテナから単独で放射された電波に基づいて、上記評価用受信アンテナに代えて校正用受信アンテナを用いて各測定された受信信号の振幅が同一の目標振幅に一致しかつ各測定された受信信号の位相が同一の目標位相に一致するように上記送信手段を制御し、上記各散乱体アンテナ毎の送信手段の振幅変化量及び移相量を記憶装置に格納する校正を実行し、所定の多重波伝搬状態を実現するときの各散乱体アンテナ毎の送信信号の振幅及び位相に対応する、入力される目標振幅からの振幅差分値及び目標位相からの位相差分値に基づいて、上記格納された各散乱体アンテナ毎の送信手段の振幅変化量及び移相量に対して、上記振幅差分値及び上記位相差分値を加算することにより、上記送信手段において設定すべき各散乱体アンテナ毎の振幅変化量及び移相量を演算して上記送信手段に設定し、上記各散乱体アンテナから同時に送信信号を送信したときに上記評価用受信アンテナを用いて受信信号の振幅及び位相を受信手段により受信して測定することにより上記評価用受信アンテナの性能を評価することを特徴とする。
上記アンテナ評価装置において、校正時において上記各位置の実質的に中心近傍にかつ互いに半波長だけ離隔されて設けられる第1と第2の校正用受信アンテナと、評価時において上記第1の校正用受信アンテナに代えて設けられる第1の評価用受信アンテナと、上記第2の校正用受信アンテナに代えて設けられる第2の評価用受信アンテナとを用いて、上記第1及び第2の評価用受信アンテナの性能を評価する制御手段を備え、上記第1の評価用受信アンテナ又は上記第1の校正用受信アンテナと、上記受信手段との間に挿入され、上記受信信号の振幅を変化させて上記受信手段に出力する振幅調整手段と、上記第2の評価用受信アンテナ又は上記第2の校正用受信アンテナを用いて別の受信信号を受信し、その振幅及び位相を変化させて出力する振幅位相調整手段と、上記振幅位相調整手段からの別の受信信号を受信し、上記送信信号を基準として上記別の受信信号の振幅及び位相を測定する別の受信手段とをさらに備え、上記制御手段は、上記各散乱体アンテナから単独で電波を放射するように上記送信手段を制御し、上記各散乱体アンテナから単独で放射された電波に基づいて、上記第1の校正用受信アンテナを用いて各測定された受信信号の振幅と、上記第2の校正用受信アンテナを用いて各測定された別の受信信号の振幅の平均値とを測定するように上記受信手段及び上記別の受信手段を制御し、上記第1の校正用受信アンテナを用いて各測定された受信信号の振幅と、上記第2の校正用受信アンテナを用いて各測定された別の受信信号の振幅の平均値とが互いに一致するように上記振幅調整手段及び上記振幅位相調整手段を制御した後、上記第1の校正用受信アンテナを用いて各測定された受信信号の位相と、上記第2の校正用受信アンテナを用いて各測定された別の受信信号の位相の平均値とを測定するように上記受信手段及び上記別の受信手段を制御し、上記第1の校正用受信アンテナを用いて各測定された受信信号の位相と、上記第2の校正用受信アンテナを用いて各測定された別の受信信号の位相の平均値とが互いに一致するように上記振幅位相調整手段を制御することを特徴とする。
また、上記アンテナ評価装置において、上記校正用受信アンテナは無指向の指向特性を有することを特徴とする。
さらに、上記アンテナ評価装置において、上記校正用受信アンテナを載置する回転台をさらに備え、上記制御手段は、上記各散乱体アンテナから単独で放射された電波を上記校正用受信アンテナを用いて受信するときに、上記校正用受信アンテナの主ビームを実質的に上記各散乱体アンテナに向けるように上記回転台を回転させることを特徴とする。
またさらに、上記アンテナ評価装置において、上記校正用受信アンテナを載置する回転台をさらに備え、上記制御手段は、上記各散乱体アンテナから単独で放射された電波を上記校正用受信アンテナを用いて受信するときに、上記校正用受信アンテナの直交偏波識別度が実質的に最大となるように上記回転台を回転させることを特徴とする。
また、上記アンテナ評価装置において、上記校正用受信アンテナを載置する回転台をさらに備え、上記制御手段は、上記各散乱体アンテナから単独で放射された電波を上記校正用受信アンテナを用いて受信するときに、上記回転台を所定の角度ずつ回転させることを繰り返すことにより上記校正用受信アンテナを1回転させ、上記各角度毎の各受信信号の振幅の平均値及び位相の平均値を測定し、上記振幅の平均値及び位相の平均値を上記測定された振幅及び位相として用いることを特徴とする。
さらに、上記アンテナ評価装置において、垂直偏波の電波及び水平偏波の電波をそれぞれ放射する2つの上記散乱体アンテナ群と、上記各散乱体アンテナ群毎に設けられた2つの上記送信手段とを備え、上記制御手段は、上記校正用受信アンテナに代えて、垂直偏波の電波を受信する校正用受信アンテナ及び水平偏波の電波を受信する校正用受信アンテナをそれぞれ用いて、上記各送信手段毎に、上記校正を行うことを特徴とする。
またさらに、上記アンテナ評価装置において、上記垂直偏波の電波を受信する校正用受信アンテナ及び上記水平偏波の電波を受信する校正用受信アンテナのうちの一方を、上記受信手段に選択的に接続するスイッチ手段をさらに備えたことを特徴とする。
また、上記アンテナ評価装置において、上記受信手段は、上記垂直偏波の電波を受信する校正用受信アンテナ及び上記水平偏波の電波を受信する校正用受信アンテナに代えて、垂直偏波及び水平偏波の電波を受信する校正用受信アンテナを用いたことを特徴とする。
さらに、上記アンテナ評価装置において、上記信号発生手段によって発生された送信信号を所定の遅延時間だけ遅延させる遅延手段をさらに備え、上記制御手段は、上記校正を実行するときに、上記遅延時間を所定値に設定することを特徴とする。
またさらに、上記アンテナ評価装置において、複数の所定のパラメータを用いて、上記信号発生手段によって発生された送信信号に対して所定の遅延時間及び位相調整量を付加するフェージング手段をさらに備え、上記制御手段は、上記校正を実行するときに、上記各パラメータを所定値に設定することを特徴とする。
第2の発明に係るアンテナ評価方法は、互いに異なる所定の位置に設けられた複数N個の散乱体アンテナを含む散乱体アンテナ群と、所定の送信信号を発生する信号発生手段と、上記送信信号を複数N個の送信信号に分配して、当該分配後の各送信信号の振幅及び位相をそれぞれ所定の振幅変化量及び所定の移相量で変化させて、上記各変化後の送信信号を当該各送信信号に対応する上記各散乱体アンテナから電波として放射する送信手段と、上記各位置の実質的に中心に配置された評価用受信アンテナを用いて、上記各散乱体アンテナから放射された電波の多重波を受信信号として受信し、上記送信信号を基準として上記受信信号の振幅及び位相を測定する受信手段と、上記測定された受信信号の振幅及び位相に基づいて評価用受信アンテナの性能を評価する制御手段とを備えたアンテナ評価装置を用いたアンテナ評価方法であって、上記制御手段により、上記各散乱体アンテナから単独で電波を放射するように上記送信手段を制御し、上記各散乱体アンテナから単独で放射された電波に基づいて、上記評価用受信アンテナに代えて校正用受信アンテナを用いて各測定された受信信号の振幅が同一の目標振幅に一致しかつ各測定された受信信号の位相が同一の目標位相に一致するように上記送信手段を制御し、上記各散乱体アンテナ毎の送信手段の振幅変化量及び移相量を記憶装置に格納する校正を実行し、所定の多重波伝搬状態を実現するときの各散乱体アンテナ毎の送信信号の振幅及び位相に対応する、入力される目標振幅からの振幅差分値及び目標位相からの位相差分値に基づいて、上記格納された各散乱体アンテナ毎の送信手段の振幅変化量及び移相量に対して、上記振幅差分値及び上記位相差分値を加算することにより、上記送信手段において設定すべき各散乱体アンテナ毎の振幅変化量及び移相量を演算して上記送信手段に設定し、上記各散乱体アンテナから同時に送信信号を送信したときに上記評価用受信アンテナを用いて受信信号の振幅及び位相を受信手段により受信して測定することにより上記評価用受信アンテナの性能を評価する制御ステップを含むことを特徴とする。
また、上記アンテナ評価方法において、上記制御ステップは、校正時において上記各位置の実質的に中心近傍にかつ互いに半波長だけ離隔されて設けられる第1と第2の校正用受信アンテナと、評価時において上記第1の校正用受信アンテナに代えて設けられる第1の評価用受信アンテナと、上記第2の校正用受信アンテナに代えて設けられる第2の評価用受信アンテナとを用いて、上記第1及び第2の評価用受信アンテナの性能を評価することを含み、上記アンテナ評価装置は、上記第1の評価用受信アンテナ又は上記第1の校正用受信アンテナと、上記受信手段との間に挿入され、上記受信信号の振幅を変化させて上記受信手段に出力する振幅調整手段と、上記第2の評価用受信アンテナ又は上記第2の校正用受信アンテナを用いて別の受信信号を受信し、その振幅及び位相を変化させて出力する振幅位相調整手段と、上記振幅位相調整手段からの別の受信信号を受信し、上記送信信号を基準として上記別の受信信号の振幅及び位相を測定する別の受信手段とをさらに備え、上記制御ステップは、上記各散乱体アンテナから単独で電波を放射するように上記送信手段を制御し、上記各散乱体アンテナから単独で放射された電波に基づいて、上記第1の校正用受信アンテナを用いて各測定された受信信号の振幅と、上記第2の校正用受信アンテナを用いて各測定された別の受信信号の振幅の平均値とを測定するように上記受信手段及び上記別の受信手段を制御し、上記第1の校正用受信アンテナを用いて各測定された受信信号の振幅と、上記第2の校正用受信アンテナを用いて各測定された別の受信信号の振幅の平均値とが互いに一致するように上記振幅調整手段及び上記振幅位相調整手段を制御した後、上記第1の校正用受信アンテナを用いて各測定された受信信号の位相と、上記第2の校正用受信アンテナを用いて各測定された別の受信信号の位相の平均値とを測定するように上記受信手段及び上記別の受信手段を制御し、上記第1の校正用受信アンテナを用いて各測定された受信信号の位相と、上記第2の校正用受信アンテナを用いて各測定された別の受信信号の位相の平均値とが互いに一致するように上記振幅位相調整手段を制御することを含むことを特徴とする。
さらに、上記アンテナ評価方法において、上記アンテナ評価装置は、垂直偏波の電波及び水平偏波の電波をそれぞれ放射する2つの上記散乱体アンテナ群と、上記各散乱体アンテナ群毎に設けられた2つの上記送信手段とを備え、上記制御ステップは、上記校正用受信アンテナに代えて、垂直偏波の電波を受信する校正用受信アンテナ及び水平偏波の電波を受信する校正用受信アンテナをそれぞれ用いて、上記各送信手段毎に、上記校正を行うことを含むことを特徴とする。
またさらに、上記アンテナ評価方法において、上記アンテナ評価装置は、上記信号発生手段によって発生された送信信号を所定の遅延時間だけ遅延させる遅延手段をさらに備え、上記制御ステップは、上記校正を実行するときに、上記遅延時間を所定値に設定することを含むこと特徴とする。
また、上記アンテナ評価方法において、上記アンテナ評価装置は、複数の所定のパラメータを用いて、上記信号発生手段によって発生された送信信号に対して所定の遅延時間及び位相調整量を付加するフェージング手段をさらに備え、上記制御ステップは、上記校正を実行するときに、上記各パラメータを所定値に設定することを含むことを特徴とする。
本発明に係るアンテナ評価装置及びアンテナ評価方法によれば、上記各散乱体アンテナから単独で電波を放射するように上記送信手段を制御し、上記各散乱体アンテナから単独で放射された電波に基づいて、上記評価用受信アンテナに代えて校正用受信アンテナを用いて各測定された受信信号の振幅が同一の目標振幅に一致しかつ各測定された受信信号の位相が同一の目標位相に一致するように上記送信手段を制御し、上記各散乱体アンテナ毎の送信手段の振幅変化量及び移相量を記憶装置に格納する校正を実行するので、送信手段と受信手段との間の経路全体において生じる通過損失の受信信号の振幅及び位相に対する影響を取り除くことができ、従来技術に比較して容易にかつ正確に校正を行うことができ、評価用受信アンテナの評価精度を向上できる。
本発明の第1の実施形態に係るアンテナ評価装置の構成を示す要部斜視図である。
図1の多重波制御測定装置200Aの構成を示すブロック図である。
図2のコンピュータ10によって実行されるアンテナ評価装置の校正処理を示すフローチャートである。
図3のステップS8において作成される校正テーブルの一例を示す表である。
図3のステップS10において実行される振幅調整処理を示すフローチャートである。
図3のステップS11において実行される位相調整処理を示すフローチャートである。
図2のコンピュータ10によって実行される評価処理を示すフローチャートである。
本発明の第2の実施形態に係る多重波制御測定装置200Bの構成を示すブロック図である。
図8のコンピュータ10によって実行されるアンテナ評価装置の校正処理を示すフローチャートである。
本発明の第3の実施形態に係る多重波制御測定装置200Cの構成を示すブロック図である。
(a)は、図10のコンピュータ10によって実行される垂直偏波の校正時の散乱体アンテナ50a−1〜50a−5及び受信アンテナ60avの配置を示す説明図であり、(b)は、図10のコンピュータ10によって実行される水平偏波の校正時の散乱体アンテナ50b−1〜50b−5及び受信アンテナ60ahの配置を示す説明図である。
本発明の第4の実施形態に係るアンテナ評価装置の散乱体アンテナ50a−1〜50a−5、散乱体アンテナ50b−1〜50b−5及び受信アンテナ60av,60ahの配置を示す説明図である。
本発明の第5の実施形態に係るアンテナ評価装置の散乱体アンテナ50a−1〜50a−5、散乱体アンテナ50b−1〜50b−5及び受信アンテナ60atの配置を示す説明図である。
本発明の第6の実施形態に係るアンテナ評価装置の散乱体アンテナ50a−1〜50a−5、受信アンテナ60a1の配置を示す説明図である。
図14の受信アンテナ60a1の指向特性を示す特性図である。
本発明の第7の実施形態に係るアンテナ評価装置の散乱体アンテナ50a−1〜50a−5、受信アンテナ60aの配置を示す説明図である。
図16の受信アンテナ60aの水平偏波の指向特性及び垂直偏波の指向特性を示す特性図である。
本発明の第8の実施形態に係るアンテナ評価装置の散乱体アンテナ50a−1〜50a−5、受信アンテナ60a2の配置を示す説明図である。
図18の受信アンテナ60a2の指向特性を示す特性図である。
本発明の第1の実施形態の第1の変形例に係る多重波制御測定装置200Dの構成を示すブロック図である。
図20のコンピュータ10によって実行されるアンテナ評価装置の校正処理を示すフローチャートである。
図21のステップS10Aにおいて実行される振幅調整処理を示すフローチャートである。
図22のステップS11Aにおいて実行される位相調整処理を示すフローチャートである。
本発明の第1の実施形態の第2の変形例に係る多重波制御測定装置200Eの構成を示すブロック図である。
図24のコンピュータ10によって実行されるアンテナ評価装置の校正処理を示すフローチャートである。
本発明の第1の実施形態の第3の変形例に係る多重波制御測定装置200Fの構成を示すブロック図である。
図26のコンピュータ10によって実行されるアンテナ評価装置の校正処理を示すフローチャートである。
本発明の第2の実施形態の第1の変形例に係る多重波制御測定装置200Gの構成を示すブロック図である。
本発明の第2の実施形態の第2の変形例に係る多重波制御測定装置200Hの構成を示すブロック図である。
本発明の第3の実施形態の第1の変形例に係る多重波制御測定装置200Iの構成を示すブロック図である。
本発明の第3の実施形態の第2の変形例に係る多重波制御測定装置200Jの構成を示すブロック図である。
従来技術に係る近傍界校正法を説明するためのブロック図である。
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
第1の実施形態.
図1は、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ評価装置(空間多重波生成装置又はフェージングエミュレータともいう。)の構成を示す要部斜視図であり、図2は、図1の多重波制御測定装置200Aの構成を示すブロック図である。
詳細後述するように、本実施形態に係るアンテナ評価装置は、コンピュータ10において、各散乱体アンテナ50a−n(n=1,2,…,Nであり、本実施形態においてNは5である。)から単独で電波を放射するように送信回路30aを制御し、散乱体アンテナ50a−nから単独で放射された電波に基づいて、校正用受信アンテナ60aを用いて各測定された受信信号S60aの振幅が同一の目標振幅に一致しかつ各測定された受信信号の位相が同一の目標位相に一致するように送信回路30aを制御し、上記各散乱体アンテナ50a−n毎の送信回路30aの基準減衰量制御電圧VAa−n及び基準移相量制御電圧VPa−nをメモリ10mに格納する校正を実行することを特徴としている。さらに、コンピュータ10において、所定の多重波伝搬状態を実現するときの各散乱体アンテナ50a−n毎の送信信号の振幅及び位相に対応する、入力装置10iから入力される目標振幅からの振幅差分値及び目標位相からの位相差分値に基づいて、上記格納された各散乱体アンテナ50a−n毎の送信回路30aの基準減衰量制御電圧VAa−n及び基準移相量制御電圧VPa−nに対して、上記振幅差分値に対応する減衰量制御電圧及び上記位相差分値に対応する移相量制御電圧を加算することにより、送信回路30aにおいて設定すべき各散乱体アンテナ50a−毎の減衰量制御電圧及び移相量制御電圧を演算して多重波制御信号S10aを発生してD/Aコンバータ11aに出力し、上記各散乱体アンテナ50a−nから同時に送信信号を送信したときに評価用受信アンテナを用いて受信信号S60aの振幅及び位相を受信機21aにより受信して測定することにより上記評価用受信アンテナの性能を評価することを特徴としている。
図1において、本実施形態に係るアンテナ評価装置は、それぞれ半波長ダイポールアンテナである散乱体アンテナ50a−1〜50a−5を含む散乱体アンテナ群50aと、多重波制御測定装置200Aとを備えて構成される。散乱体アンテナ50a−1〜50a−5はそれぞれ、正5角筒の形状を有する格子状に組み立てられた散乱体アンテナ支持台101の各頂点部に、給電点の高さが床面からHの位置になりかつ垂直偏波の電波を放射するように縦置きに取り付けられている。これにより、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5は半径Rの円周上に等間隔に配置されている。ここで、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5の各給電点の位置の中心を右手系のXYZ座標系の原点とし、原点に対して上方向をZ軸の正の方向とし、原点から散乱体アンテナ50a−1へ向かう方向をY軸の正の方向とする。
図1のアンテナ評価装置の校正時には受信アンテナ支持台102に校正用受信アンテナ(以下、受信アンテナともいう。)60aが取り付けられ、評価時には受信アンテナ60a又は評価対象の別の受信アンテナ(図示せず。以下、評価用受信アンテナという。)が取り付けられる。本実施形態において、校正用受信アンテナ60aは半波長ダイポールアンテナであって、ポールである受信アンテナ支持台102の頂点部に、給電点が原点に設置されかつ垂直偏波の電波を受信するように縦置きに取り付けられている。本実施形態において、散乱体アンテナ支持台101及び受信アンテナ支持台102は、ポリプロピレン又は塩化ビニルなどの樹脂材料によって形成されている。また、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5及び受信アンテナ60aの各給電点の床面からの高さHは1.5mに設定されており、各給電点の原点からの距離Rは1.5mに設定されている。
図2において、多重波制御測定装置200Aは、メモリ10m及びキーボードなどの入力装置10iを有するコンピュータ10と、受信機21a及び信号発生器22aを備えたネットワークアナライザ20aと、送信回路30aとを備えて構成される。さらに、送信回路30aは、D/Aコンバータ11aと、分配器12aと、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5にそれぞれ対応して設けられた移相器13a−1〜13a−5を備えた移相回路13aと、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5にそれぞれ対応して設けられた減衰器14a−1〜14a−5を備えた減衰回路14aとを備えて構成される。ネットワークアナライザ20aは、信号発生器22aにおいて2.14GHzの周波数を有する無変調連続波信号である送信信号S22aを発生する単一周波数モードに設定されており、測定ポイント数は1601ポイント、掃引時間は16秒、送信出力レベルは+5dBm、表示画面は散乱パラメータS21の極座標表示となるようにそれぞれ設定されている。このとき、ネットワークアナライザ20aの出力端子T20a−1がポート1であり、入力端子T20a−2がポート2である。
信号発生器22aは、送信信号S22aを発生して分配器12a及び受信機21aに出力する。送信信号S22aは分配器12aにおいて5分配され、分配後の各送信信号は移相器13a−1〜13a−5にそれぞれ出力される。移相器13a−1〜13a−5はそれぞれ、入力される送信信号の位相を、D/Aコンバータ11aからの移相量制御電圧に対応する所定の移相量Pa−1〜Pa−5だけ移相させて、移相された送信信号を対応する減衰器14a−1〜14a−5に出力する。減衰器14a−1〜14a−5はそれぞれ、入力される移相された送信信号を、D/Aコンバータ11aからの減衰量制御電圧に対応する所定の減衰量Aa−1〜Aa−5だけ減衰させて、対応する散乱体アンテナ50a−1〜50a−5から垂直偏波の電波として放射する。ここで、図1のアンテナ評価装置において、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5と、散乱体アンテナ支持台101と、受信アンテナ60a又は評価用受信アンテナと、受信アンテナ支持台102とは電波暗室内に設置されているので、天井、床面、壁面などで反射する反射波の影響は直接波に比較して十分小さく、XYZ座標系の原点において、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5から放射された直接波からなる多重波が生成される。なお、多重波制御測定装置200Aは金属製であって、電波を反射するので電波暗室の外部に設けられる。
一方、コンピュータ10はアンテナ評価装置の校正時及び評価用の受信アンテナの評価時に、詳細後述するように、移相器13a−1〜13a−5の各移相量Pa−1〜Pa−5及び減衰器14a−1〜14a−5の各減衰量Aa−1〜Aa−5をそれぞれ、所定値に設定する。コンピュータ10は、各移相器13a−n毎に、印加される移相量制御電圧と移相量Pa−nとの関係を表す移相器特性テーブルをメモリ10mに格納するとともに、各減衰器14a−n毎に、印加される減衰量制御電圧と減衰量Aa−nとの関係を表す減衰器特性テーブルをメモリ10mに格納している。そして、各移相器特性テーブル及び各減衰器特性テーブルを参照して、設定された移相量Pa−1〜Pa−5にそれぞれ対応する移相量制御電圧及び設定された減衰量Aa−1〜Aa−5にそれぞれ対応する減衰量制御電圧を含むデジタルの多重波制御信号S10aを発生してD/Aコンバータ11aに出力する。
さらに、D/Aコンバータ11aは、入力される多重波制御信号S10aを、移相器13a−1〜13a−5の移相量Pa−1〜Pa−5にそれぞれ対応するアナログの移相量制御電圧及び減衰器14a−1〜14a−5の減衰量Aa−1〜Aa−5にそれぞれ対応するアナログの減衰量制御電圧に変換して、移相器13a−1〜13a−5及び減衰器14a−1〜14a−5にそれぞれ印加する。
また、受信機21aは、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5によって放射された電波の多重波を、受信アンテナ60a又は評価用受信アンテナを用いて受信信号S60aとして受信し、送信信号S22aを基準として受信信号S60aの振幅(受信電力である。)及び位相を測定し、測定された振幅及び位相の各データを含む受信データをコンピュータ10に出力する。コンピュータ10は、受信機21aからの受信データを用いて、図3を参照して詳細後述する校正処理によってアンテナ評価装置の校正を行い、又は評価用受信アンテナの性能を評価する。
次に、図2のコンピュータ10によって実行されるアンテナ評価装置の校正処理を説明する。図3は、図2のコンピュータ10によって実行されるアンテナ評価装置の校正処理を示すフローチャートであり、図4は、図3のステップS8において作成される校正テーブルの一例を示す表である。また、図5は、図3のステップS10において実行される振幅調整処理を示すフローチャートであり、図6は、図3のステップS11において実行される位相調整処理を示すフローチャートである。なお、アンテナ評価装置の校正時には、図1に示すように、受信アンテナ支持台102に校正用受信アンテナ60aが取り付けられている。
図3のステップS1において、パラメータnが初期値1に設定される。そして、コンピュータ10は、ステップS2において、減衰器14a−nの減衰量Aa−nを0に設定し、減衰器14a−n以外の減衰器の各減衰量を最大値に設定し、ステップS3において、移相器13a−1〜13a−Nの各移相量Pa−1〜Pa−Nをゼロに設定する。次に、コンピュータ10は、ステップS4において、設定された各移相量Pa−1〜Pa−Nにそれぞれ対応する移相量制御電圧及び設定された各減衰量Aa−1〜Aa−Nにそれぞれ対応する減衰量制御電圧を含む多重波制御信号S10aを発生してD/Aコンバータ11aに出力する。これにより、実質的に散乱体アンテナ50a−nのみから電波が放射される。さらに、ステップS5において、コンピュータ10は、受信機21aを用いて、送信信号S22aを基準として受信信号S60aの振幅及び位相を測定する。次に、ステップS6においてパラメータnに1が加算される。そして、ステップS7において、パラメータnが散乱体アンテナ50a−1〜50−Nの総数Nよりも大きいか否かが判断され、YESのときはステップS8に進む一方、NOのときはステップS2に戻る。
次に、ステップS8において、コンピュータ10は、全ての散乱体アンテナ50a−1〜50a−5についてステップS5で測定された各振幅及び各位相に基づいて校正テーブルを作成する。図4に示すように、校正テーブルは、散乱体アンテナ50a−nと、当該散乱体アンテナ50a−nのみから単独で電波を放射したときの受信信号S60aの振幅及び位相との関係を示す。ステップS8に続いて、ステップS9において、コンピュータ10は校正テーブルを参照して、測定された振幅の最小値を目標振幅に設定し、測定された位相の平均値を目標位相に設定する。そして、ステップS10において、目標振幅を用いて図5の振幅調整処理を行い、ステップS11において、目標位相を用いて図6の位相調整処理を行い、アンテナ評価装置の校正処理を終了する。
次に、図5を参照して図3のステップS10における振幅調整処理を説明する。ステップS31において、パラメータnが初期値1に設定される。そして、コンピュータ10は、ステップS32において、減衰器14a−nの減衰量Aa−nを0に設定し、減衰器14a−n以外の減衰器の各減衰量を最大値に設定し、ステップS33において、移相器13a−1〜13a−Nの各移相量Pa−1〜Pa−Nをゼロに設定する。そして、コンピュータ10は、ステップS34において、設定された各移相量Pa−1〜Pa−Nにそれぞれ対応する移相量制御電圧及び設定された各減衰量Aa−1〜Aa−Nにそれぞれ対応する減衰量制御電圧を含む多重波制御信号S10aを発生してD/Aコンバータ11aに出力する。これにより、実質的に散乱体アンテナ50a−nのみから単独で電波が放射される。さらに、ステップS35において、コンピュータ10は、受信機21aを用いて、送信信号S22aを基準として受信信号S60aの振幅を測定する。
そして、ステップS36において、測定された振幅が目標振幅以下か否かが判断され、YESのときはステップS38に進む一方、NOのときはステップS37に進む。ステップS37では、減衰器14a−nの減衰量Aa−nは所定の減衰量だけ増加され、ステップS34に戻る。一方、ステップS38において、減衰器14a−nに対する減衰量制御電圧が基準減衰量制御電圧VAa−nとしてメモリ10mに格納される。そして、ステップS39においてパラメータnに1が加算される。次に、ステップS40において、パラメータnが散乱体アンテナ50a−1〜50−Nの総数Nよりも大きいか否かが判断され、YESのときは振幅調整処理を終了する一方、NOのときはステップS32に戻る。
次に、図6を参照して図3のステップS11における位相調整処理を説明する。ステップS51において、パラメータnが初期値1に設定される。そして、コンピュータ10は、ステップS52において、減衰器14a−nに対する減衰量制御電圧を基準減衰量制御電圧VAa−nに設定し、減衰器14a−n以外の減衰器の各減衰量を最大値に設定する。さらに、ステップS53において、移相器13a−1〜13a−Nの各移相量Pa−1〜Pa−Nをゼロに設定する。次に、コンピュータ10は、ステップS54において、設定された各移相量Pa−1〜Pa−Nにそれぞれ対応する移相量制御電圧と、基準減衰量制御電圧VAa−nと、減衰器14a−n以外の減衰器に対して設定された各減衰量にそれぞれ対応する減衰量制御電圧とを含む多重波制御信号S10aを発生してD/Aコンバータ11aに出力する。これにより、実質的に散乱体アンテナ50a−nのみから単独で電波が放射される。さらに、ステップS55において、コンピュータ10は、受信機21aを用いて、送信信号S22aを基準として受信信号S60aの位相を測定する。
次に、ステップS56において、測定された位相と目標位相との間の差の大きさが所定のしきい値以下であるか否かが判断され、YESのときはステップS58に進む一方、NOのときはステップS57に進む。ステップS57では、コンピュータ10は、受信信号S60aの位相を目標位相に近づけるように、移相器13a−nの移相量を所定の移相量だけ変化させ、ステップS54に戻る。一方、ステップS58において、移相器13a−nに対する移相量制御電圧は、基準移相量制御電圧VPa−nとしてメモリ10mに格納される。引き続き、ステップS59において、パラメータnに1が加算される。次に、ステップS60において、パラメータnが散乱体アンテナ50a−1〜50−Nの総数Nよりも大きいか否かが判断され、YESのときは位相調整処理を終了する一方、NOのときはステップS52に戻る。
次に、図7を参照して、図2のコンピュータ10によって実行される評価処理を説明する。図7は、図2のコンピュータ10によって実行される評価処理を示すフローチャートである。コンピュータ10は、図3の校正処理を行った後に、受信アンテナ支持台102に取り付けられた評価用受信アンテナ(図示せず。)の性能の評価を行う。始めに、ステップS61において、入力装置10iから、XYZ座標系の原点においてレイリーフェージング又は仲上−ライスフェージングなどの所定の多重波伝搬状態を実現するときの各散乱体アンテナ50a−n毎の送信信号の振幅及び位相に対応する、目標振幅からの振幅差分値及び目標位相からの位相差分値を受信する。このとき、上記各振幅差分値及び各位相差分値は、アンテナ評価装置のユーザによって入力装置10iから入力されるが、本発明はこれに限られず、別のコンピュータからインターフェース回路などの入力装置を介して受信されてもよい。
次に、ステップS62において、メモリ10mに格納された各散乱体アンテナ50a−n毎の基準減衰量制御電圧VAa−n及び基準移相量制御電圧VPa−nに対して、各減衰器特性テーブル及び各移相器特性テーブルを参照して、上記振幅差分値に対応する減衰量制御電圧及び上記位相差分値に対応する移相量制御電圧を加算することにより、各減衰器14a−nに印加する減衰量制御電圧及び各移相器13a−nに印加する移相量制御電圧を演算する。さらに、ステップS63において、演算された各減衰量制御電圧及び各移相量制御電圧を含む多重波制御信号S10aを発生してD/Aコンバータ11aに出力することにより、各散乱体アンテナ50a−nから同時に送信信号を送信する。そして、ステップS64において、評価用受信アンテナを用いて、送信信号S22aを基準として受信信号S60aの振幅及び位相を受信機21aにより受信して測定することにより、上記評価用受信アンテナの性能を評価する。
本実施形態に係るアンテナ評価装置の校正処理によれば、受信機21aにおいて各散乱体アンテナ50a−1〜50a−5から、同一の目標位相及び同一の目標振幅を有する受信信号S60aを受信できるように、各移相器13a−nに対する基準移相量制御電圧VPa−n及び各減衰器14a−nに対する基準減衰量制御電圧VAa−nを設定する。ここで、上述した校正処理では、受信信号S60aの振幅及び位相を送信信号S22aを基準として測定することにより、ネットワークアナライザ20aの出力端子T20a−1及び入力端子T20a−2を校正基準面としている。従って、受信アンテナ60aと受信機21aとの間の接続ケーブル及び信号発生器22aと各散乱体アンテナ50a−1〜50a−との間の接続ケーブルなどの信号発生器22aと受信機21aとの間の経路全体において生じる通過損失の受信信号S60aの振幅及び位相に対する影響を取り除くことができる。また、校正用受信アンテナを各散乱体アンテナ50a−1〜50a−5の近傍に順次配置する、あるいは散乱体アンテナ50a−1〜50a−5と同数の校正用受信アンテナを各散乱体アンテナ50a−1〜50a−5の近傍にそれぞれ配置する必要がない。このため、本実施形態によれば、従来技術に比較して容易にかつ正確に校正を行うことができる。さらに、評価用受信アンテナの評価時に、所定の多重波伝搬状態を実現するときの各散乱体アンテナ50a−n毎の送信信号の振幅及び位相に対応する、目標振幅からの振幅差分値及び目標位相からの位相差分値に基づいて、送信回路S30aの動作を制御するので、評価用受信アンテナの評価精度を向上できる。
なお、本実施形態において、XY平面内で無指向の指向特性を有する半波長ダイポールアンテナを校正用受信アンテナ60aとして用いた。しかしながら、本発明はこれに限られず、既知の指向特性を有する別の校正用受信アンテナを用いてもよい。この場合、各散乱体アンテナ50a−nから放射された電波を校正用受信アンテナを用いて受信したときの受信信号S60aの振幅及び位相を、当該散乱体アンテナ50a−nの方位における校正用受信アンテナの振幅及び位相の各指向特性を用いて、無指向の受信アンテナを用いて受信した場合の受信信号S60aの振幅及び位相にそれぞれ補正する。そして、補正後の振幅及び位相を、図3のステップS5、図5のステップS35及び図6のステップS55における振幅及び/又は位相の測定値として用いればよい。ただし、XY平面内でヌルを有する指向特性を有する受信アンテナを校正処理に用いることはできない。好ましくは、受信信号S60aの振幅及び位相を受信アンテナ60aの指向特性を用いて補正する必要がないので、無指向の指向特性を有する受信アンテナ60aを校正処理に用いる。
また、本実施形態において、分配器12aに代えて、信号発生器22aからの送信信号S22aを移相器13a−1〜13a−5のうちの1つに切り換えて出力するスイッチを設けてもよい。これにより、分配器12aにおける分配損失が生じないので、より広いダイナミックレンジを有する受信電力の電波を散乱体アンテナ50a−1〜50a−5から放射できる。
また、図3のアンテナ評価装置の校正処理のステップS9において、測定された位相の平均値を目標位相に設定した。しかしながら、本発明はこれに限られず、例えば、測定された位相の最小値又は最大値などの他の値を目標位相に設定してもよい。ただし、好ましくは、測定された位相の平均値を目標位相に設定する。これにより、図6の位相調整処理において、各移相器13a−nの移相量を変化させるときの変化量の総和(ステップS57における所定の移相量の倍数である。)を最小にできる。このため、各移相器13a−nにおける移相動作に伴う減衰量の変化の影響を最小にして、高い精度で校正を行うことができる。
また、図5の振幅調整処理に代えて、減衰器14a−n毎に、減衰器特性テーブルを参照して目標振幅を有する受信信号S60aを受信するための減衰量制御電圧を決定して、基準減衰量制御電圧VAa−nとしてメモリ10mに格納してもよい。さらに、図6の移相調整処理に代えて、移相器13a−n毎に、移相器特性テーブルを参照して目標位相を有する受信信号S60aを受信するための移相量制御電圧を決定して、基準移相量制御電圧VPa−nとしてメモリ10mに格納してもよい。
第2の実施形態.
図8は、本発明の第2の実施形態に係る多重波制御測定装置200Bの構成を示すブロック図であり、図9は、図8のコンピュータ10によって実行されるアンテナ評価装置の校正処理を示すフローチャートである。本実施形態に係る多重波制御測定装置200Bは、第1の実施形態に係る多重波制御生成装置200Aに比較して、受信機21bを備えたネットワークアナライザ20bと、移相器73及び減衰器74を含む振幅位相調整回路72と、減衰器84とをさらに備え、互いに半波長だけ離隔されて設けられた受信アンテナ60a及び60bを含むアレーアンテナを用いて図9の校正処理を行うことを特徴としている。
受信アンテナ60a及び60bはそれぞれ、垂直偏波の電波を受信する半波長ダイポールアンテナである。また、受信アンテナ60a及び60bは、受信アンテナ支持台102の頂点部に、給電点がXYZ座標系での座標位置(0,λ/4,0)及び座標位置(0,−λ/4,0)にそれぞれ設けられ、かつ垂直偏波の電波を受信するように縦置きに取り付けられている。ただし、λは散乱体アンテナ50a−1〜50a−5から放射される電波の波長である。受信機21aは、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5によって放射された電波の多重波を、受信アンテナ60a又は当該受信アンテナ60aに代えて設けられる第1の評価用受信アンテナ(図示せず。)及び減衰器84を介して受信信号S60aとして受信する。減衰器84は、受信アンテナ60a又は第1の評価用受信アンテナと受信機21aとの間に挿入され、受信信号S60aを減衰させて受信機21aに出力する。一方、振幅位相調整回路72は、受信機21bは、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5によって放射された電波の多重波を、受信アンテナ60b又は当該受信アンテナ60bに代えて設けられる第2の評価用受信アンテナ(図示せず。)を用いて別の受信信号として受信して、当該別の受信信号の位相及び振幅を移相器73及び減衰器74により変化させて、受信信号S60bとして受信機21bに出力する。さらに、受信機20bは、受信信号S60bの振幅(受信電力である。)及び位相を送信信号S22aを基準として測定し、測定された振幅及び位相の各データを含む受信データをコンピュータ10に出力する。なお、信号発生器22aによって発生された送信信号S22aは、分配器12aと、受信機21a及び21bとに出力される。
コンピュータ10は、アンテナ評価装置の校正時及び評価用受信アンテナの評価時に、詳細後述するように、減衰器84の減衰量A84、移相器73の移相量P73及び減衰器74の減衰量A74をそれぞれ所定値に設定する。コンピュータ10は、減衰器84に印加される減衰量制御電圧と減衰量A84との関係を表す減衰器特性テーブルと、移相器73に印加される移相量制御電圧移相量P73との関係を表す移相器特性テーブルと、減衰器74に印加される減衰量制御電圧と減衰量A74との関係を表す減衰器特性テーブルとをメモリ10mに格納している。そして、移相器特性テーブル及び各減衰器特性テーブルを参照して、設定された減衰量A84に対応する減衰量制御電圧設定と、設定された移相量P73に対応する移相量制御電圧と、設定された減衰量A74に対応する減衰量制御電圧とを発生して、減衰器84と、移相器73と、減衰器74とにそれぞれ印加する。また、コンピュータ10は、受信機21a及び21bからの各受信データを用いて、図9を参照して詳細後述する校正処理によってアンテナ評価装置の校正を行い、又は第1及び第2の評価用受信アンテナの性能を評価する。
次に、図9を参照して、図8のコンピュータ10によって実行されるアンテナ評価装置の校正処理を説明する。まず始めに、ステップS71において、コンピュータ10は、減衰器84の減衰量A84をゼロに設定して、図3のアンテナ評価装置の校正処理を行う。なお、基準減衰量制御電圧VA84は減衰量A84がゼロのときの減衰量制御電圧に設定されている。そして、ステップS72において、減衰器74の減衰量A74をゼロに設定するための減衰量制御電圧が減衰器74に印加され、移相器73の移相量P73をゼロに設定するための移相量制御電圧が移相器73に印加される。そして、ステップS73においてパラメータmが初期値0に設定され、ステップS74において、パラメータnが初期値1に設定される。そして、ステップS75において、散乱体アンテナ50a−nのみから単独で電波を放射するように移相回路13及び減衰回路14が制御される。具体的には、移相器13a−nには基準移相量制御電圧VPa−nが印加され、その他の移相器には当該移相器の移相量をゼロにするための各移相量制御電圧が印加される。さらに、減衰器14−nには基準減衰量制御電圧VAa−nが印加され、その他の減衰器には当該減衰器の減衰量を最大値にするための減衰量制御電圧が印加される。これにより、目標振幅及び目標位相を有する電波が散乱体アンテナ50a−nから放射される。そして、コンピュータ10は、ステップS76において、受信機21bを用いて、送信信号S22aを基準として受信信号S60bの振幅を測定する。
引き続き、ステップS77においてパラメータnに1が加算され、ステップS78において、パラメータnが散乱体アンテナ50a−1〜50−Nの総数Nよりも大きいか否かが判断され、YESのときはステップS79に進む一方、NOのときはステップS75に戻る。ステップS79では、測定された振幅の平均値が算出される。そして、ステップS80において、パラメータmが0でありかつ振幅の平均値が目標振幅未満か否かが判断され、YESのときはステップS81に進む一方、NOのときはステップS82に進む。そして、ステップS81において、振幅の平均値に基づいて、減衰器84の基準減衰量制御電圧VA84を、目標振幅を振幅の平均値に減衰させるために必要とされる減衰量制御電圧に変更し、ステップS84に進む。
一方、ステップS82において、振幅の平均値が目標振幅以下か否かが判断され、YESのときはステップS84に進む一方、NOのときはステップS83に進む。ステップS83では、減衰器74の減衰量A74は所定の減衰量だけ増加され、ステップS74に戻る。一方、ステップS84では、減衰器74に対する減衰量制御電圧が基準減衰量制御電圧VA74としてメモリ10mに格納され、ステップS85に進む。
ステップS85では、基準減衰量制御電圧VA74が減衰器74に印加され、移相器73の移相量P73をゼロに設定するための移相量制御電圧が移相器73に印加される。次に、ステップS86において、パラメータnが初期値1に設定され、ステップS87において、ステップS75と同様に、散乱体アンテナ50a−nのみから単独で電波を放射するように移相回路13及び減衰回路14が制御される。そして、コンピュータ10は、ステップS88において、受信機21bを用いて、送信信号S22aを基準として受信信号S60bの位相を測定する。
引き続き、ステップS89においてパラメータnに1が加算され、ステップS90において、パラメータnが散乱体アンテナ50a−1〜50−Nの総数Nよりも大きいか否かが判断され、YESのときはステップS91に進む一方、NOのときはステップS87に戻る。ステップS91では、測定された位相の平均値が算出される。そして、ステップS92において、位相の平均値と目標位相との間の差の大きさが所定のしきい値以下か否かが判断され、YESのときはステップS94に進む一方、NOのときはステップS93に進む。ステップS93では、位相の平均値を目標位相に近づけるように、移相器73の移相量P73は所定の移相量だけ変化され、ステップS86に戻る。一方、ステップS94では移相器73に対する移相量制御電圧が基準移相量制御電圧VP73としてメモリ10mに格納され、校正処理を終了する。
コンピュータ10は、上述した校正処理を行った後に、受信アンテナ支持台102に校正用受信アンテナ60a及び60bに代えて取り付けられた第1及び第2の評価用受信アンテナを備えた評価用アレーアンテナ(図示せず。)の性能の評価を行う。本実施形態に係る評価処理は、第1の実施形態に係る評価処理(図7参照。)に比較して、ステップS61の処理の前に、減衰器74、減衰器84及び移相器73に、基準減衰量制御電圧VA74、基準減衰量制御電圧VA84及び基準移相量制御電圧VP73をそれぞれ印加する点のみが異なる。
本実施形態に係るアンテナ評価装置の校正処理によれば、各散乱体アンテナ50a−nから単独で放射された電波に基づいて、校正用受信アンテナ60aを用いて各測定された受信信号S60aの振幅と、校正用受信アンテナ60bを用いて各測定された受信信号60bの振幅の平均値とを測定するように受信機21a及び21bを制御し、校正用受信アンテナ60aを用いて各測定された受信信号S60aの振幅と、校正用受信アンテナ60bを用いて各測定された別の受信信号S60bの振幅の平均値とが互いに一致するように減衰器84及び上記振幅位相調整回路72を制御する。そして、校正用受信アンテナ60aを用いて各測定された受信信号S60aの位相と、校正用受信アンテナ60bを用いて各測定された受信信号S60bの位相の平均値とを測定するように受信手段21a及び21bを制御し、校正用受信アンテナ60aを用いて各測定された受信信号S60aの位相と、校正用受信アンテナ60bを用いて各測定された受信信号S60bの位相の平均値とが互いに一致するように振幅位相調整回路72を制御する。ここで、上述した校正処理では、受信信号S60a及びS60bの振幅及び位相を送信信号S22aを基準としてそれぞれ測定することにより、ネットワークアナライザ20aの出力端子T20a−1、入力端子T20a−2及びネットワークアナライザ20bの入力端子T20bを校正基準面としているので、受信アンテナ60aと受信機21aとの間の接続ケーブル及び信号発生器22aと各散乱体アンテナ50a−1〜50a−との間の接続ケーブルなどの信号発生器22aと受信機21aとの間の経路全体において生じる通過損失の受信信号S60aの振幅及び位相に対する影響を取り除くことができる。さらに、受信アンテナ60bと受信機21bとの間の接続ケーブル及び信号発生器22aと各散乱体アンテナ50a−1〜50a−との間の接続ケーブルなどの信号発生器22aと受信機21bとの間の経路全体において生じる通過損失の受信信号S60bの振幅及び位相に対する影響を取り除くことができる。
本実施形態によれば、第1の実施形態に比較して、第1及び第2の評価用受信アンテナを含む2素子のアレーアンテナの性能を評価するアンテナ評価装置において、従来技術に比較して容易にかつ正確に校正を行うことができ、上記アレーアンテナの評価精度を向上できる。
本実施形態において、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5はそれぞれ垂直偏波の電波を放射し、校正用受信アンテナ60a及び60bはそれぞれ垂直偏波の電波を受信した。しかしながら本発明はこれに限られず、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5はそれぞれ水平偏波の電波を放射し、かつ校正用受信アンテナ60a及び60bはそれぞれ水平偏波の電波を受信してもよい。
第3の実施形態.
図10は、本発明の第3の実施形態に係る多重波制御測定装置200Cの構成を示すブロック図である。また、図11(a)は、図10のコンピュータ10によって実行される垂直偏波の校正時の散乱体アンテナ50a−1〜50a−5及び受信アンテナ60avの配置を示す説明図であり、図11(b)は、図10のコンピュータ10によって実行される水平偏波の校正時の散乱体アンテナ50b−1〜50b−5及び受信アンテナ60ahの配置を示す説明図である。本実施形態に係る多重波制御測定装置200Cは、第1の実施形態に係る多重波制御測定装置200Aに比較して、それぞれ水平偏波の電波を放射する半波長ダイポールアンテナである散乱体アンテナ50b−1〜50b−5を含む散乱体アンテナ群50bと、分配器40と、送信回路30bとをさらに備えたことを特徴としている。ここで、送信回路30bは、D/Aコンバータ11bと、分配器12bと、散乱体アンテナ50b−1〜50b−5にそれぞれ対応して設けられた移相器13b−1〜13b−5を備えた移相回路13bと、散乱体アンテナ50b−1〜50b−5にそれぞれ対応して設けられた減衰器14b−1〜14b−5を備えた減衰回路14bとを備えて構成される。さらに、校正処理において、垂直偏波の校正時にダイポールアンテナである校正用受信アンテナ60avが用いられ、水平偏波の校正時にスロットダイポールアンテナである校正用受信アンテナ60ahが用いられたことを特徴としている。
散乱体アンテナ50b−nは、散乱体アンテナ50b−nの給電点が散乱体アンテナ50a−nの給電点に対して原点から遠ざかる方向に距離λ/2だけ離れた位置に設けられ、かつ水平偏波の電波を放射するように、散乱体アンテナ支持台101に横置きに取り付けられている。例えば、散乱体アンテナ50a−1,50b−1の各給電点のXYZ座標系での座標位置はそれぞれ、(0,R,0),(0,R+λ/2,0)である。なお、散乱体アンテナ50b−nの長手方向は、原点を中心とする円の接線に対して平行になるように設けられる。
コンピュータ10は、アンテナ評価装置の校正時及び評価用受信アンテナの評価時に、第1の実施形態と同様に、多重波制御信号S10aを発生してD/Aコンバータ11aに出力する。さらに、コンピュータ10は、アンテナ評価装置の校正時及び評価用受信アンテナの評価時に、詳細後述するように、移相器13b−1〜13b−5の各移相量Pb−1〜Pb−5及び減衰器14b−1〜14b−5の各減衰量Ab−1〜Ab−5をそれぞれ、所定値に設定する。コンピュータ10は、各移相器13b−n毎に、印加される移相量制御電圧と移相量Pb−nとの関係を表す移相器特性テーブルをメモリ10mに格納するとともに、各減衰器14b−n毎に、印加される減衰量制御電圧と減衰量Ab−nとの関係を表す減衰器特性テーブルをメモリ10mに格納している。そして、各移相器特性テーブル及び各減衰器特性テーブルを参照して、設定された移相量Pb−1〜Pb−5にそれぞれ対応する移相量制御電圧及び設定された減衰量Ab−1〜Ab−5にそれぞれ対応する減衰量制御電圧を含むデジタルの多重波制御信号S10bを発生してD/Aコンバータ11bに出力する。さらに、D/Aコンバータ11bは、入力される多重波制御信号S10bを、移相器13b−1〜13b−5の移相量Pb−1〜Pb−5に対応するアナログの移相量制御電圧及び減衰器14b−1〜14b−5の減衰量Ab−1〜Ab−5に対応するアナログの減衰量制御電圧に変換して、移相器13b−1〜13b−5及び減衰器14b−1〜14b−5に印加する。
一方、信号発生器22aによって発生された送信信号S22aは、分配器40によって2分配され、分配後の送信信号は分配器12a及び12bに出力される。送信回路30aは、第1の実施形態と同様に、分配器40からの送信信号を用いて、各散乱体アンテナ50a−1〜50a−5から垂直偏波の各電波を放射する。また、分配器40からの送信信号は分配器12bにおいて5分配され、移相器13b−1〜13b−5にそれぞれ出力される。移相器13b−1〜13b−5はそれぞれ、入力される送信信号の位相を、D/Aコンバータ11bからの移相量制御電圧に対応する所定の移相量Pb−1〜Pb−5だけ移相させて、移相された各送信信号を対応する減衰器14b−1〜14b−5に出力する。減衰器14b−1〜14b−5はそれぞれ、入力される移相された送信信号を、D/Aコンバータ11bからの減衰量制御電圧に対応する所定の減衰量Ab−1〜Ab−5だけ減衰させて、対応する散乱体アンテナ50b−1〜50b−5から水平偏波の電波として放射する。
詳細後述するように、受信機21aは垂直偏波の校正時に散乱体アンテナ50a−1〜50a−5によって単独で放射された各電波を受信アンテナ60avを用いて受信信号S60aとして受信する一方、水平偏波の校正時に散乱体アンテナ50b−1〜50b−5によって単独で放射された各電波を受信アンテナ60ahを用いて受信信号S60aとして受信する。さらに、受信機21aは、評価用受信アンテナ(図示せず。)の評価時に、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5によって放射された各電波と、散乱体アンテナ50b−1〜50b−5によって放射された各電波との多重波を、評価用受信アンテナを用いて受信信号S60aとして受信する。そして、受信機21aは、送信信号S22aを基準として受信信号S60aの振幅及び位相を測定し、測定された振幅及び位相の各データを含む受信データをコンピュータ10に出力する。コンピュータ10は、受信機21aからの受信データを用いて、詳細後述する校正処理によってアンテナ評価装置の校正を行い、又は評価用受信アンテナの性能を評価する。
次に、コンピュータ10によって実行される校正処理を説明する。コンピュータ10は始めに垂直偏波の校正を行い、次に水平偏波の校正を行う。図11(a)に示すように、垂直偏波の校正時には、受信アンテナ支持台102には、第1の実施形態に係る受信アンテナ60aと同様に構成された受信アンテナ60avが第1の実施形態と同様に取り付けられる。そして、コンピュータ10は、減衰器14b−1〜14b−5の各減衰量Ab−1〜Ab−5をそれぞれ最大値に設定し、かつ移相器13b−1〜13b−5の各移相量Pb−1〜Pb−5をそれぞれゼロに設定して多重波制御信号S10bを発生してD/Aコンバータ11bに出力する。これにより、散乱体アンテナ50b−1〜50b−5から電波は放射されない。次いで、コンピュータ10は送信回路30a及び受信アンテナ60avを用いて図3の校正処理を行い、垂直偏波の目標振幅、垂直偏波の目標位相、各減衰器14a−nに対する基準減衰量制御電圧VAa−n及び各移相器13a−nに対する基準移相量制御電圧VPa−nをメモリ10mに格納する。
次に、水平偏波の校正時には、図11(b)に示すように受信アンテナ支持台102にはスロットダイポールアンテナである受信アンテナ60ahが、水平偏波の電波を受信するように横置きに取り付けられる。なお、受信アンテナ60ahの長手方向は、Y軸に対して平行になるように設けられる。そして、コンピュータ10は、減衰器14a−1〜14a−5の各減衰量Aa−1〜Aa−5をそれぞれ最大値に設定し、かつ移相器13a−1〜13a−5の各移相量Pa−1〜Pa−5をそれぞれゼロに設定して多重波制御信号S10aを発生してD/Aコンバータ11aに出力する。これにより、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5から電波は放射されない。次いで、コンピュータ10は送信回路30b及び受信アンテナ60ahを用いて図3と同様の校正処理を行い、水平偏波の目標振幅、水平偏波の目標位相、各減衰器14b−nに対する基準減衰量制御電圧VAb−n及び各移相器13b−nに対する基準移相量制御電圧VPb−nをメモリ10mに格納する。
コンピュータ10は、上述した垂直偏波の校正及び水平偏波の校正を行った後に、校正用受信アンテナ60ah及び60avに代えて受信アンテナ支持台102に取り付けられた評価用受信アンテナの性能の評価を行う。具体的には、はじめに、コンピュータ10は、第1の実施形態に係る評価処理におけるステップS61〜S63の各処理を、送信回路30a,30b毎に行う。そして、評価用受信アンテナを用いて、送信信号S22aを基準として受信信号S60aの振幅及び位相を受信機21aにより受信して測定することにより、評価用受信アンテナの性能を評価する。
本実施形態によれば、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5及び散乱体アンテナ50b−1〜50b−5を用いて垂直偏波及び水平偏波の電波を放射するアンテナ評価装置において、第1の実施形態と同様に従来技術に比較して容易にかつ正確に校正を行うことができ、評価用受信アンテナの評価精度を向上できる。
本実施形態によれば、垂直偏波の校正時には垂直偏波に対してXY平面内で無指向の指向特性を有する受信アンテナ60avを用い、水平偏波の校正時にはXY平面内で水平偏波に対して無指向の指向特性を有する受信アンテナ60ahを用いるので、受信機21aによって受信された受信信号S60aの振幅を補正する必要がない。
第4の実施形態.
図12は、本発明の第4の実施形態に係るアンテナ評価装置の散乱体アンテナ50a−1〜50a−5、散乱体アンテナ50b−1〜50b−5及び受信アンテナ60av,60ahの配置を示す説明図である。本実施形態は、第3の実施形態に比較して、受信アンテナ支持台102の頂点部に、垂直偏波の電波を受信するための校正用受信アンテナ60avと、水平偏波の電波を受信するための校正用受信アンテナ60ahと、校正用受信アンテナ60av及び60ahを切り換えて選択的に受信機21aに接続するためのスイッチSWとを設けたことを特徴としている。
図12において、受信アンテナ60avは、受信アンテナ支持台102の頂点部に、給電点がXYZ座標系での座標位置(−λ/4,0,0)に設置されかつ垂直偏波の電波を受信するように縦置きに取り付けられている。また、受信アンテナ60ahは、受信アンテナ支持台102の頂点部に、給電点がXYZ座標系での座標位置(λ/4,0,0)に設置されかつ水平偏波の電波を受信するように横置きに取り付けられている。なお、受信アンテナ60ahの長手方向は、Y軸に対して平行になるように設けられる。受信アンテナ60av及び60ahはアレーアンテナを構成する。
コンピュータ10は、垂直偏波の校正時にはスイッチSWを接点aに切り換え、垂直偏波の校正時にはスイッチSWを接点bに切り換えて、第3の実施形態と同様にアンテナ評価装置の校正を行う。
本実施形態によれば、垂直偏波の校正を行った後に、受信アンテナ支持台102において受信アンテナ60avを受信アンテナ60ahに取り替える必要がないので、第3の実施形態に比較して簡便に、かつ高い精度でアンテナ評価装置の校正を行うことができる。
なお、本実施形態において、スイッチSWに代えて分配器を設けてもよい。また、スイッチSWを受信機21aに設けてもよい。
さらに、第3及び第4の実施形態において、スロットダイポールアンテナである受信アンテナ60ahの長手方向はY軸に平行に設けられた。しかしながら、本発明はこれに限られず、スロットダイポールアンテナのXY平面内での指向特性は、受信すべき主偏波である水平偏波に対して無指向であるので、受信アンテナ60ahの長手方向をXY平面に平行に設ければよい。
第5の実施形態.
図13は、本発明の第5の実施形態に係るアンテナ評価装置の散乱体アンテナ50a−1〜50a−5、散乱体アンテナ50b−1〜50b−5及び受信アンテナ60atの配置を示す説明図である。本実施形態は、第3の実施形態に比較して、校正用受信アンテナ60av及び60ahに代えて、垂直偏波及び水平偏波の各校正時に共通の校正用受信アンテナ60atを用いたことを特徴としている。
図13において、受信アンテナ60atは傾斜ダイポールアンテナであって、受信アンテナ60atの給電点はXYZ座標系の原点に設けられている。さらに、受信アンテナ60atは、原点から散乱体アンテナ50a−1を見込んだ方位から時計回りにθだけ回転した方位に、Z軸に対して53度の傾斜角をなすように傾けて設けられている。一般に、ダイポールアンテナの傾斜角を53度に設定することにより、水平偏波及び垂直偏波の各電波が受信される。
コンピュータ10は、垂直偏波の校正と水平偏波の校正とで共通の受信アンテナ60atを用いて第3の実施形態と同様にアンテナ評価装置の校正を行う。従って、本実施形態によれば、垂直偏波の校正及び水平偏波の校正で共通の受信アンテナ60atを用いたので、垂直偏波の校正と水平偏波の校正とで受信アンテナの取り替え又は切換を行う必要が無く、第3及び第4の実施形態に比較して簡便に、かつ高い精度でアンテナ評価装置の校正を行うことができる。
なお、受信アンテナ60atの傾斜角を53度より大きい値に設定すると水平偏波しか受信されず、傾斜角を53度より小さい値に設定すると垂直偏波しか受信されない。また、一般に、受信アンテナ60atの傾斜角を53度に設定すると、水平偏波と垂直偏波の総到来電力がそれぞれ一定の場合には、交差偏波電力比(水平偏波の電力と垂直偏波の電力の比率である。)に依らず平均受信電力が一定となる。このため、受信アンテナ60atの傾斜角を53度に設定すると、上述した垂直偏波の校正及び水平偏波の校正を行った後に、送信回路30aから放射された各垂直偏波の電波の総電力と、送信回路30bから放射された各水辺偏波の電波の総電力との比を変化させて、受信信号S60aの電力を測定し、当該電力が一定になることを確認できる。
なお、受信アンテナ60atの傾斜方位θは、任意の方位であって良い。
また、第3〜第5の実施形態において、コンピュータ10は垂直偏波の校正を行った後に水平偏波の校正を行ったが、本発明はこれに限られず、水平偏波の校正を行った後に垂直偏波の校正を行ってもよい。
第6の実施形態.
図14は、本発明の第6の実施形態に係るアンテナ評価装置の散乱体アンテナ50a−1〜50a−5、受信アンテナ60a1の配置を示す説明図であり、図15は、図14の受信アンテナ60a1の指向特性を示す特性図である。本実施形態は、第1の実施形態に比較して、受信アンテナ支持台102の頂点部に回転台80を設け、アンテナ評価装置の校正時に、無指向の校正用受信アンテナ60aに代えて回転台80に載置された指向性の校正用受信アンテナ60a1を用いたことを特徴としている。
図14において、回転台80は受信アンテナ支持台102の頂点部に、XYZ座標系の原点を中心として回転方向80rに回転可能なように取り付けられている。受信アンテナ60a1はホーンアンテナであって、回転台80の上に載置されている。図15に示すように、受信アンテナ60a1はXY平面内で開口面の方向に主ビームを有する。コンピュータ10は、第1の実施形態と同様の校正処理(図3参照。)を行う。ただし、第1に実施形態に比較して、図3の校正処理のステップS4、図5の振幅調整処理のステップS34及び図6の位相調整処理のステップS54において、実質的に散乱体アンテナ50a−nのみから単独で電波を放射させるときに、回転台80を、受信アンテナ60a1の主ビームを実質的に散乱体アンテナ50a−nに向けるように回転させる。
本実施形態によれば、指向性の受信アンテナ60a1を用いて、第1の実施形態と同様に、簡便に、かつ高い精度でアンテナ評価装置の校正を行うことができる。
なお、本実施形態において、受信アンテナ60a1の主ビームの幅が、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5の間隔(本実施形態では、72度である。)に比較して十分に狭い場合には、図3の校正処理のステップS4、図5の振幅調整処理のステップS34及び図6の位相調整処理のステップS54において、散乱体アンテナ50a−n以外の各散乱体アンテナから電波をそれぞれ放射してもよい。
第7の実施形態.
図16は、本発明の第7の実施形態に係るアンテナ評価装置の散乱体アンテナ50a−1〜50a−5、受信アンテナ60aの配置を示す説明図であり、図17は、図16の受信アンテナ60aの水平偏波の指向特性及び垂直偏波の指向特性を示す特性図である。本実施形態は、第1の実施形態に比較して、アンテナ評価装置の校正時に、校正用受信アンテナ60aに代えて回転台80に載置されたシュペルトップダイポールアンテナである校正用受信アンテナ60asを用いたことを特徴としている。さらに、アンテナ評価装置の校正時に実質的に散乱体アンテナ50a−nのみから単独で電波を放射させるときに、受信アンテナ60aの交差偏波識別度(XPD(cross−polarization discrimination))が実質的に最大になるように回転台80を回転させることを特徴としている。
図17において、受信アンテナ60aは、主偏波である垂直偏波に対してXY平面内で無指向であるが、交差偏波である水平偏波に対してY軸の正の方向及び負の方向にそれぞれヌルを有する。このため、Y軸の正の方向及び負の方向において、交差偏波識別度が最大となる。本実施形態において、コンピュータ10は、第1の実施形態と同様の校正処理(図3参照。)を行う。ただし、第1に実施形態に比較して、図3の校正処理のステップS4、図5の振幅調整処理のステップS34及び図6の位相調整処理のステップS54において、実質的に散乱体アンテナ50a−nのみから単独で電波を放射させるときに、回転台80を、受信アンテナ60asの交差偏波識別度が実質的に最大になるように回転させる。例えば、図16に示すように、散乱体アンテナ50a−2のみから単独で電波を放射させるときに、回転台80を、受信アンテナ60asの交差偏波識別度が実質的に最大になるように回転させる。
一般に、第1の実施形態に係る受信アンテナ60aが理想的な半波長ダイポールであるときには、水平偏波の電波を受信しない。しかしながら、実際には、受信アンテナ60aに取りつられているバラン及びケーブル(図示せず。)の影響により、受信アンテナ60aによって水平偏波の電波も受信される。本実施形態によれば、実質的に散乱体アンテナ50a−nのみから単独で電波を放射させるときに、回転台80を、受信アンテナ60asの交差偏波識別度が大きい方位を散乱体アンテナ50a−nに向けるように回転させるので、第1の実施形態に比較して、より高い精度で受信信号S60aの振幅を測定でき、より高い精度でアンテナ評価装置を校正できる。
第8の実施形態.
図18は、本発明の第8の実施形態に係るアンテナ評価装置の散乱体アンテナ50a−1〜50a−5、受信アンテナ60a2の配置を示す説明図であり、図19は、図18の受信アンテナ60a2の指向特性を示す特性図である。本実施形態は、第1の実施形態に比較して、受信アンテナ支持台102の頂点部に回転台80を設け、アンテナ評価装置の校正時に、無指向の校正用受信アンテナ60aに代えて回転台80に載置された指向性の校正用受信アンテナ60a2を用いたことを特徴としている。
図19に示すように、受信アンテナ60a2はXY平面内で指向性を有する。コンピュータ10は、第1の実施形態と同様の校正処理(図3参照。)を行う。ただし、第1に実施形態に比較して、図3の校正処理のステップS3の次に、回転台80を、360/K度ずつ回転させる毎に、ステップS4及びS5の各処理を行う。そして、回転台80を360/K度ずつK回だけ繰り返し回転させることにより受信アンテナ60a2を1回転させて得られたK個の振幅の平均値とK個の位相の平均値とに基づいて、ステップS6以降の各処理を行う。同様に、図5の振幅調整処理のステップS33の次に、回転台80を、360/K度ずつK回だけ回転させる毎に、ステップS34及びS35の各処理を行う。そして、得られたK個の振幅の平均値に基づいて、ステップS36以降の各処理を行う。さらに、同様に、図6の位相調整処理のステップS54の次に、回転台80を、360/K度ずつK回だけ回転させる毎に、ステップS55及びS56の各処理を行う。そして、得られたK個の振幅の平均値に基づいて、ステップS57以降の各処理を行う。ただし、パラメータKは、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5の総数5以上の値に設定される。
本実施形態によれば、散乱体アンテナ50a−nのみから単独で電波を放射するときに、受信アンテナ60a2を360/K度ずつK回だけ回転させて、受信信号S60aの振幅の平均値及び位相の平均値を算出し、振幅の平均値及び位相の平均値を用いて校正処理を行うので、指向性の受信アンテナ60a2を用いて、第1の実施形態と同様に、簡便に、かつ高い精度でアンテナ評価装置の校正を行うことができる。
第1の実施形態の第1の変形例.
図20は、本発明の第1の実施形態の第1の変形例に係る多重波制御測定装置200Dの構成を示すブロック図である。また、図21は、図20のコンピュータ10によって実行されるアンテナ評価装置の校正処理を示すフローチャートであり、図22は、図21のステップS10Aにおいて実行される振幅調整処理を示すフローチャートであり、図23は、図22のステップS11Aにおいて実行される位相調整処理を示すフローチャートである。本変形例は、第1の実施形態に比較して、スイッチSW1〜SW5をさらに備えたことを特徴としている。
図20において、スイッチSW1は散乱体アンテナ50a−1と減衰器14a−1との間に挿入され、スイッチSW2は散乱体アンテナ50a−2と減衰器14a−2との間に挿入され、スイッチSW3は散乱体アンテナ50a−3と減衰器14a−3との間に挿入され、スイッチSW4は散乱体アンテナ50a−4と減衰器14a−4との間に挿入され、スイッチSW5は散乱体アンテナ50a−5と減衰器14a−5との間に挿入される。コンピュータ10は、スイッチSW1〜SW5のオンオフ動作をそれぞれ制御する。
図21のアンテナ評価装置の校正処理は、第1の実施形態に係るアンテナ評価装置の校正処理(図3参照。)に比較して、ステップS2及びS3における各処理をステップS2Aにおける処理に置き換え、ステップS10及びS11における各処理をステップS10A及びS11Aにそれぞれ置き換えたものである。図21のステップS2Aにおいて、コンピュータ10は、スイッチSWnをオンし、スイッチSWn以外のスイッチをオフし、減衰器14−nの減衰量をゼロに設定し、移相器13−nの移相量をゼロに設定する。また、ステップS10Aにおいて、目標振幅を用いて図22の振幅調整処理を行い、ステップS11Aにおいて、目標位相を用いて図23の位相調整処理を行う。
図22の振幅調整処理は、第1の実施形態に係る振幅調整処理(図5参照。)に比較して、ステップS32及びS33における各処理を、ステップS32Aに置き換えたものである。ステップS32Aにおいて、コンピュータ10は、スイッチSWnをオンし、スイッチSWn以外のスイッチをオフし、減衰器14−nの減衰量をゼロに設定し、移相器13−nの移相量をゼロに設定する。また、図23の位相調整処理は、第1の実施形態に係る位相調整処理(図6参照。)に比較して、ステップS52及びステップS53における各処理を、ステップS52Aにおける処理に置き換えたものである。ステップS52Aにおいて、コンピュータ10は、スイッチSWnをオンし、スイッチSWn以外のスイッチをオフし、減衰器14−nに対する減衰量制御電圧を基準減衰量制御電圧VAa−nに設定し、移相器13−nの移相量Pa−nをゼロに設定する。
また、コンピュータ10は、全てのスイッチSW1〜SW5をオンした後に、図7の評価処理を実行する。
本変形例によれば、各散乱体アンテナ50a−1〜50a−5から単独で電波を送信するときに、当該電波を送信する散乱体アンテナ以外の散乱体アンテナと送信回路30aとの間の各接続を遮断する。従って、第1の実施形態に比較して、アンテナ評価装置を高精度で校正できる。
なお、スイッチSW1を分配器12aと移相器13a−1との間に挿入し、スイッチSW2を分配器12aと移相器13a−2との間に挿入し、スイッチSW3を分配器12aと移相器13a−3との間に挿入し、スイッチSW4を分配器12aと移相器13a−4との間に挿入し、スイッチSW5を分配器12aと移相器13a−5との間に挿入してもよい。この場合は、ステップS2A、S32A及びステップS52Aにおいて、減衰器14a−n以外の減衰器の各減衰量を最大値に設定する。
第1の実施形態の第2の変形例.
図24は、本発明の第1の実施形態の第2の変形例に係る多重波制御測定装置200Eの構成を示すブロック図である。また、図25は、図24のコンピュータ10によって実行されるアンテナ評価装置の校正処理を示すフローチャートである。本変形例は、第1の実施形態に比較して、信号発生器22aからの送信信号S22aを所定の遅延時間だけ遅延させて送信信号S22adを発生して分配器12aに出力する遅延回路90をさらに備えたことを特徴としている。コンピュータ10は、送信信号S22aを上記所定の遅延量だけ遅延させるように、遅延回路90を制御する。また、分配器12aは、送信信号S22adを5分配して移相器13a−1〜13a−5にそれぞれ出力する。
図25のアンテナ評価装置の校正処理は、第1の実施形態に係るアンテナ評価装置の校正処理(図3参照。)に比較して、ステップS1における処理の前に、始めに、ステップS0における処理を実行する点が異なる。ステップS0において、コンピュータ10は、遅延回路90における遅延時間を0に設定する。コンピュータ10は、図25の校正処理の間は上記遅延時間を0に設定する一方、図7の評価処理の間は上記遅延時間を所定値(0も含む)に設定する。
本変形例は、第1の実施形態と同様の特有の効果を奏する。なお、本変形例において、ステップS0において遅延回路90における遅延時間を0に設定したが、本発明はこれに限らず、0以外の所定値に設定してもよい。
第1の実施形態の第3の変形例.
図26は、本発明の第1の実施形態の第3の変形例に係る多重波制御測定装置200Fの構成を示すブロック図である。また、図27は、図26のコンピュータ10によって実行されるアンテナ評価装置の校正処理を示すフローチャートである。本変形例は、第1の実施形態に比較して、信号発生器22aからの送信信号S22aに対して所定のフェージング生成処理を行って送信信号S22afを発生して分配器12aに出力するフェージング回路91さらに備えたことを特徴としている。フェージング回路91は、送信信号S22aに対して所定の遅延時間及び位相調整量を付加して出力する。フェージング回路91は、コンピュータ10の制御下で、受信アンテナ60aの指向性、到来波の情報、移動速度等の条件を仮想的に設定し、受信アンテナ60aが移動した場合に受信されるであろう信号を出力する。この出力信号は、フェージングに相当する時間的な変動を含む。このように、フェージング回路91は、受信アンテナ60aが移動することによって生じるフェージングを仮想的に発生させることができる。より具体的には、フェージング回路91は、特許文献2に開示されるようなフェージングシミュレータに基づいて構成され、コンピュータ10からの遅延時間、受信電力、ドップラー周波数、及び位相の各パラメータを含むフェージング制御信号に基づいて、送信信号S22aに対して所定の遅延時間及び位相調整量を付加して、送信信号S22afとして分配器12aに出力する。また、分配器12aは、送信信号S22adを5分配して移相器13a−1〜13a−5にそれぞれ出力する。分配器12aは、送信信号S22afを5分配して移相器13a−1〜13a−5にそれぞれ出力する。
図27のアンテナ評価装置の校正処理は、第1の実施形態に係るアンテナ評価装置の校正処理(図3参照。)に比較して、ステップS1における処理の前に、始めに、ステップS0Aにおける処理を実行する点が異なる。ステップS0Aにおいて、コンピュータ10は、フェージング回路91における、遅延時間、受信電力、ドップラー周波数、及び位相をそれぞれ所定値に設定する。具体的には、遅延時間を0に設定し、受信電力を最大値に設定し、ドップラー周波数を0Hzに設定し、位相を一定の値に設定する。一方、コンピュータ10は、図7の評価処理の間は遅延時間、受信電力、ドップラー周波数、及び位相を、所定のフェージング環境を生成するように設定する。
本変形例は、第1の実施形態と同様の特有の効果を奏する。なお、ステップS0において遅延時間、受信電力、ドップラー周波数、及び位相を、上述した各所定値以外の値にそれぞれ設定してもよい。
第2の実施形態の第1の変形例.
図28は、本発明の第2の実施形態の第1の変形例に係る多重波制御測定装置200Gの構成を示すブロック図である。本変形例は、第2の実施形態に比較して、第1の実施形態の第2の変形例と同様に、信号発生器22aからの送信信号S22aを所定の遅延時間だけ遅延させて送信信号S22adを発生して分配器12aに出力する遅延回路90をさらに備えたことを特徴としている。コンピュータ10は、送信信号S22aを上記所定の遅延量だけ遅延させるように、遅延回路90を制御する。また、分配器12aは、送信信号S22adを5分配して移相器13a−1〜13a−5にそれぞれ出力する。
図28において、コンピュータ10は、図9のアンテナ評価装置の校正処理を実行するときに、始めに、遅延回路90における遅延時間を0に設定する。コンピュータ10は、校正処理の間は上記遅延時間を0に設定する一方、評価処理の間は上記遅延時間を所定値(0も含む)に設定する。
本変形例は、第2の実施形態と同様の特有の効果を奏する。なお、本変形例において、校正処理の間は遅延回路90における遅延時間を0に設定したが、本発明はこれに限らず、0以外の所定値に設定してもよい。
第2の実施形態の第2の変形例.
図29は、本発明の第2の実施形態の第2の変形例に係る多重波制御測定装置200Hの構成を示すブロック図である。本変形例は、第2の実施形態に比較して、第1の実施形態の第3の変形例と同様に、信号発生器22aからの送信信号S22aに対して所定のフェージング生成処理を行って送信信号S22afを発生して分配器12aに出力するフェージング回路91さらに備えたことを特徴としている。また、分配器12aは、送信信号S22afを5分配して移相器13a−1〜13a−5にそれぞれ出力する。
図29において、コンピュータ10は、アンテナ評価処理の校正処理を実行するときは、始めに、フェージング回路91における、遅延時間、受信電力、ドップラー周波数、及び位相をそれぞれ所定値に設定する。具体的には、遅延時間を0に設定し、受信電力を最大値に設定し、ドップラー周波数を0Hzに設定し、位相を一定の値に設定する。一方、コンピュータ10は、評価処理の間は遅延時間、受信電力、ドップラー周波数、及び位相を、所定のフェージング環境を生成するように設定する。
本変形例は、第2の実施形態と同様の特有の効果を奏する。なお、アンテナ評価装置の校正処理時に遅延時間、受信電力、ドップラー周波数、及び位相を、上述した各所定値以外の値にそれぞれ設定してもよい。
第3の実施形態の第1の変形例.
図30は、本発明の第3の実施形態の第1の変形例に係る多重波制御測定装置200Iの構成を示すブロック図である。本変形例は、第3の実施形態に比較して、第1の実施形態の第2の変形例と同様に、信号発生器22aからの送信信号S22aを所定の遅延時間だけ遅延させて送信信号S22adを発生して分配器40に出力する遅延回路90をさらに備えたことを特徴としている。コンピュータ10は、送信信号S22aを上記所定の遅延量だけ遅延させるように、遅延回路90を制御する。また、分配器40は、送信信号S22adを2分配して分配器12a,12bにそれぞれ出力する。
図30において、コンピュータ10は、図9のアンテナ評価装置の校正処理を実行するときに、始めに、遅延回路90における遅延時間を0に設定する。コンピュータ10は、校正処理の間は上記遅延時間を0に設定する一方、評価処理の間は上記遅延時間を所定値(0も含む)に設定する。
本変形例は、第3の実施形態と同様の特有の効果を奏する。なお、本変形例において、校正処理の間は遅延回路90における遅延時間を0に設定したが、本発明はこれに限らず、0以外の所定値に設定してもよい。
第3の実施形態の第2の変形例.
図31は、本発明の第3の実施形態の第2の変形例に係る多重波制御測定装置200Jの構成を示すブロック図である。本変形例は、第3の実施形態に比較して、第1の実施形態の第3の変形例と同様に、信号発生器22aからの送信信号S22aに対して所定のフェージング生成処理を行って送信信号S22afを発生して分配器40に出力するフェージング回路91さらに備えたことを特徴としている。また、分配器40は、送信信号S22afを2分配して分配器12a,12bにそれぞれ出力する。
図29において、コンピュータ10は、アンテナ評価処理の校正処理を実行するときは、始めに、フェージング回路91における、遅延時間、受信電力、ドップラー周波数、及び位相をそれぞれ所定値に設定する。具体的には、遅延時間を0に設定し、受信電力を最大値に設定し、ドップラー周波数を0Hzに設定し、位相を一定の値に設定する。一方、コンピュータ10は、評価処理の間は遅延時間、受信電力、ドップラー周波数、及び位相を、所定のフェージング環境を生成するように設定する。
本変形例は、第3の実施形態と同様の特有の効果を奏する。なお、アンテナ評価装置の校正処理時に遅延時間、受信電力、ドップラー周波数、及び位相を、上述した各所定値以外の値にそれぞれ設定してもよい。
なお、上記各実施形態及びその変形例において、送信回路30a,30bは、入力される送信信号を5個の送信信号に分配して分配後の各送信信号の位相及び振幅を変化させたが、本発明はこれに限られず、入力される送信信号を2個以上の複数の送信信号に分配して分配後の各送信信号の位相及び振幅を変化させてもよい。
また、上記各実施形態及びその変形例において、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5,50b−1〜50b−5を円周上に等間隔に配置したが、本発明はこれに限られず、2個以上の複数の散乱体アンテナを、評価用受信アンテナの周囲に配置すればよい。
さらに、上記各実施形態及びその変形例において、送信回路30aは、減衰回路14aにおいて移相後の送信信号を減衰させた。しかしながら、本発明はこれに限られず、減衰回路14aに代えて、移相後の送信信号を増幅する増幅器を設けてもよい。この場合、目標振幅は、各散乱体アンテナ50a−nから単独で放射された電波の受信信号S60aの最大値に設定される。減衰回路14bもまた、減衰回路14aと同様に増幅回路に置き換えてもよい。また、第2の実施形態において、減衰器72及び84に代えて増幅器を設けてもよい。
以上詳述したように、本発明に係るアンテナ評価装置及びアンテナ評価方法によれば、上記各散乱体アンテナから単独で電波を放射するように上記送信手段を制御し、上記各散乱体アンテナから単独で放射された電波に基づいて、上記評価用受信アンテナに代えて校正用受信アンテナを用いて各測定された受信信号の振幅が同一の目標振幅に一致しかつ各測定された受信信号の位相が同一の目標位相に一致するように上記送信手段を制御し、上記各散乱体アンテナ毎の送信手段の振幅変化量及び移相量を記憶装置に格納する校正を実行するので、送信手段と受信手段との間の経路全体において生じる通過損失の受信信号の振幅及び位相に対する影響を取り除くことができ、従来技術に比較して容易にかつ正確に校正を行うことができ、評価用受信アンテナの評価精度を向上できる。
10…コンピュータ、
10m…メモリ、
10i…入力装置、
11a,11b…D/Aコンバータ、
12a,12b…分配器、
13a,13b…移相回路、
13a−1〜13a−5,13b−1〜13b−5…移相器、
14a,14b…減衰回路、
14a−1〜14a−5,14b−1〜14b−5…減衰器、
20a,20b…ネットワークアナライザ、
21a,21b…受信機、
22a…信号発生器、
40…分配器、
50a,50b…散乱体アンテナ群、
50a−1〜50a−5,50b−1〜50b−5…散乱体アンテナ、
60a,60b,60av,60ah,60as,60at,60a1,60a2…校正用受信アンテナ、
72…振幅位相調整回路、
73…移相器、
74,84…減衰器、
80…回転台、
90…遅延回路、
91…フェージング回路、
101…散乱体アンテナ支持台、
102…受信アンテナ支持台、
200A,200B,200C,200D,200E,200F,200G,200H,200I,200J…多重波制御測定装置、
SW,SW1〜SW5…スイッチ。
本発明は、無線通信装置のアンテナの性能を評価するためのアンテナ評価装置及び当該アンテナ評価装置を用いたアンテナ評価方法に関する。
従来、散乱体をモデル化するための複数の送信アンテナ(以下、散乱体アンテナという。)を所定の半径を有する円周上に等間隔に設け、当該散乱体アンテナの各設置位置の中心付近に空間的な多重波を生成するアンテナ評価装置が提案されている(例えば、特許文献1及び非特許文献1〜4を参照。)。このようなアンテナ評価装置において、信号発生器によって発生された送信信号は、散乱体アンテナの数と同数の送信信号に分配され、分配後の各送信信号はそれぞれ移相器及び減衰器を介して対応する散乱体アンテナから放射される。このとき、移相器の各移相量及び減衰器の各減衰量を調整することにより、散乱体アンテナの各設置位置の中心にレイリーフェージング環境などの所定の多重波伝搬状態を生成できる。このため、散乱体アンテナの各設置位置の中心に評価用受信アンテナを設置し、当該受信アンテナによって受信された受信信号に基づいて、フェージング環境下における受信アンテナの性能を評価できる。
特開2005−227213号公報。
特許第3816499号公報。
坂田勉ほか、「空間フェージングエミュレータによる端末アンテナの実効性能評価」、松下テクニカルジャーナル、第52巻、第5号、70頁〜75頁、2006年10月。
坂田勉ほか、「空間フェージングエミュレータによるMIMOアンテナのチャネル容量測定」、電子情報通信学会2007年ソサイエティ大会講演論文集、B−1−9,2007年9月。
坂田勉ほか、「角度スペクトラムが設定可能な端末MIMOアンテナ測定用空間多重波生成装置、電子情報通信学会技術研究報告、第108巻、第5号、13頁〜18頁、2008年4月」。
坂田勉ほか、「多重波生成装置による複数クラスター伝搬環境下における端末MIMOアンテナ測定用空間多重波生成装置によるアンテナの伝送特性評価」、電子情報通信学会技術研究報告、第108巻、第429号、121頁〜126頁、2009年4月。
図32は、従来技術に係る近傍界校正法を説明するためのブロック図である。図32において、信号源901は送信信号を発生して送信アンテナ902から受信アンテナ903に向けて送信し、受信機904は送信された送信信号を受信アンテナ903を用いて受信する。近傍界校正法による校正時に、校正用測定器907は、送信アンテナ902の近傍に配置された校正用素子であるプローブ905を用いて送信アンテナ902近傍の電磁界を測定し、送信アンテナ902からの放射電力を算出する。信号源901は、算出された放射電力に基づいて、所定の放射電力の電波を放射するように調整される。
従来技術に係る近傍界校正法を、上述したアンテナ評価装置に適用する場合には以下の課題があった。上述したアンテナ評価装置では、散乱体アンテナの各設置位置の中心付近に所定の多重波伝搬状態を生成するように、分配後の各送信信号の位相及び振幅を変化させる。このため、より精度良くフェージング環境を生成するためには、送信信号を発生する信号源から受信アンテナが接続される受信機までのシステム全体において、あらかじめ受信信号の振幅及び位相の校正を行う必要がある。しかしながら、近傍界校正法を用いると、散乱体アンテナからの放射電力しか校正できず、受信機側の校正を別に行う必要があった。さらに、プローブ905を複数の散乱体アンテナの近傍に順次配置する、あるいは散乱体アンテナと同数のプローブ905を散乱体アンテナの近傍にそれぞれ配置する必要があり、校正のために比較的多くの時間、もしくは多数のプローブを必要とした。さらに、上述したアンテナ評価装置において、分配後の各送信信号の位相を、散乱体アンテナの設置位置の中心付近に所定の多重波伝搬状態を生成するように正確に制御する必要がある。しかしながら、従来技術に係る近傍界校正法では、プローブ905で受信された電波の電力しか用いないので、各散乱体アンテナから放射される電波の位相を校正することはできなかった。
本発明の目的は以上の問題点を解決し、従来技術に比較して容易にかつ正確に校正を行って、アンテナの評価精度を向上できるアンテナ評価装置及び当該アンテナ評価装置を用いたアンテナ評価方法を提供することにある。
第1の発明に係るアンテナ評価装置は、互いに異なる所定の位置に設けられた複数N個の散乱体アンテナを含む散乱体アンテナ群と、所定の送信信号を発生する信号発生手段と、上記送信信号を複数N個の送信信号に分配して、当該分配後の各送信信号の振幅及び位相をそれぞれ所定の振幅変化量及び所定の移相量で変化させて、上記各変化後の送信信号を当該各送信信号に対応する上記各散乱体アンテナから電波として放射する送信手段と、上記各位置の実質的に中心に配置された評価用受信アンテナを用いて、上記各散乱体アンテナから放射された電波の多重波を受信信号として受信し、上記送信信号を基準として上記受信信号の振幅及び位相を測定する受信手段と、上記測定された受信信号の振幅及び位相に基づいて評価用受信アンテナの性能を評価する制御手段とを備えたアンテナ評価装置において、上記制御手段は、上記各散乱体アンテナから単独で電波を放射するように上記送信手段を制御し、上記各散乱体アンテナから単独で放射された電波に基づいて、上記評価用受信アンテナに代えて校正用受信アンテナを用いて各測定された受信信号の振幅が同一の目標振幅に一致しかつ各測定された受信信号の位相が同一の目標位相に一致するように上記送信手段を制御し、上記各散乱体アンテナ毎の送信手段の振幅変化量及び移相量を記憶装置に格納する校正を実行し、所定の多重波伝搬状態を実現するときの各散乱体アンテナ毎の送信信号の振幅及び位相に対応する、入力される目標振幅からの振幅差分値及び目標位相からの位相差分値に基づいて、上記格納された各散乱体アンテナ毎の送信手段の振幅変化量及び移相量に対して、上記振幅差分値及び上記位相差分値を加算することにより、上記送信手段において設定すべき各散乱体アンテナ毎の振幅変化量及び移相量を演算して上記送信手段に設定し、上記各散乱体アンテナから同時に送信信号を送信したときに上記評価用受信アンテナを用いて受信信号の振幅及び位相を受信手段により受信して測定することにより上記評価用受信アンテナの性能を評価することを特徴とする。
上記アンテナ評価装置において、校正時において上記各位置の実質的に中心近傍にかつ互いに半波長だけ離隔されて設けられる第1と第2の校正用受信アンテナと、評価時において上記第1の校正用受信アンテナに代えて設けられる第1の評価用受信アンテナと、上記第2の校正用受信アンテナに代えて設けられる第2の評価用受信アンテナとを用いて、上記第1及び第2の評価用受信アンテナの性能を評価する制御手段を備え、上記第1の評価用受信アンテナ又は上記第1の校正用受信アンテナと、上記受信手段との間に挿入され、上記受信信号の振幅を変化させて上記受信手段に出力する振幅調整手段と、上記第2の評価用受信アンテナ又は上記第2の校正用受信アンテナを用いて別の受信信号を受信し、その振幅及び位相を変化させて出力する振幅位相調整手段と、上記振幅位相調整手段からの別の受信信号を受信し、上記送信信号を基準として上記別の受信信号の振幅及び位相を測定する別の受信手段とをさらに備え、上記制御手段は、上記各散乱体アンテナから単独で電波を放射するように上記送信手段を制御し、上記各散乱体アンテナから単独で放射された電波に基づいて、上記第1の校正用受信アンテナを用いて各測定された受信信号の振幅と、上記第2の校正用受信アンテナを用いて各測定された別の受信信号の振幅の平均値とを測定するように上記受信手段及び上記別の受信手段を制御し、上記第1の校正用受信アンテナを用いて各測定された受信信号の振幅と、上記第2の校正用受信アンテナを用いて各測定された別の受信信号の振幅の平均値とが互いに一致するように上記振幅調整手段及び上記振幅位相調整手段を制御した後、上記第1の校正用受信アンテナを用いて各測定された受信信号の位相と、上記第2の校正用受信アンテナを用いて各測定された別の受信信号の位相の平均値とを測定するように上記受信手段及び上記別の受信手段を制御し、上記第1の校正用受信アンテナを用いて各測定された受信信号の位相と、上記第2の校正用受信アンテナを用いて各測定された別の受信信号の位相の平均値とが互いに一致するように上記振幅位相調整手段を制御することを特徴とする。
また、上記アンテナ評価装置において、上記校正用受信アンテナは無指向の指向特性を有することを特徴とする。
さらに、上記アンテナ評価装置において、上記校正用受信アンテナを載置する回転台をさらに備え、上記制御手段は、上記各散乱体アンテナから単独で放射された電波を上記校正用受信アンテナを用いて受信するときに、上記校正用受信アンテナの主ビームを実質的に上記各散乱体アンテナに向けるように上記回転台を回転させることを特徴とする。
またさらに、上記アンテナ評価装置において、上記校正用受信アンテナを載置する回転台をさらに備え、上記制御手段は、上記各散乱体アンテナから単独で放射された電波を上記校正用受信アンテナを用いて受信するときに、上記校正用受信アンテナの交差偏波識別度が実質的に最大となるように上記回転台を回転させることを特徴とする。
また、上記アンテナ評価装置において、上記校正用受信アンテナを載置する回転台をさらに備え、上記制御手段は、上記各散乱体アンテナから単独で放射された電波を上記校正用受信アンテナを用いて受信するときに、上記回転台を所定の角度ずつ回転させることを繰り返すことにより上記校正用受信アンテナを1回転させ、上記各角度毎の各受信信号の振幅の平均値及び位相の平均値を測定し、上記振幅の平均値及び位相の平均値を上記測定された振幅及び位相として用いることを特徴とする。
さらに、上記アンテナ評価装置において、垂直偏波の電波及び水平偏波の電波をそれぞれ放射する2つの上記散乱体アンテナ群と、上記各散乱体アンテナ群毎に設けられた2つの上記送信手段とを備え、上記制御手段は、上記校正用受信アンテナに代えて、垂直偏波の電波を受信する校正用受信アンテナ及び水平偏波の電波を受信する校正用受信アンテナをそれぞれ用いて、上記各送信手段毎に、上記校正を行うことを特徴とする。
またさらに、上記アンテナ評価装置において、上記垂直偏波の電波を受信する校正用受信アンテナ及び上記水平偏波の電波を受信する校正用受信アンテナのうちの一方を、上記受信手段に選択的に接続するスイッチ手段をさらに備えたことを特徴とする。
また、上記アンテナ評価装置において、上記受信手段は、上記垂直偏波の電波を受信する校正用受信アンテナ及び上記水平偏波の電波を受信する校正用受信アンテナに代えて、垂直偏波及び水平偏波の電波を受信する校正用受信アンテナを用いたことを特徴とする。
さらに、上記アンテナ評価装置において、上記信号発生手段によって発生された送信信号を所定の遅延時間だけ遅延させる遅延手段をさらに備え、上記制御手段は、上記校正を実行するときに、上記遅延時間を所定値に設定することを特徴とする。
またさらに、上記アンテナ評価装置において、複数の所定のパラメータを用いて、上記信号発生手段によって発生された送信信号に対して所定の遅延時間及び位相調整量を付加するフェージング手段をさらに備え、上記制御手段は、上記校正を実行するときに、上記各パラメータを所定値に設定することを特徴とする。
第2の発明に係るアンテナ評価方法は、互いに異なる所定の位置に設けられた複数N個の散乱体アンテナを含む散乱体アンテナ群と、所定の送信信号を発生する信号発生手段と、上記送信信号を複数N個の送信信号に分配して、当該分配後の各送信信号の振幅及び位相をそれぞれ所定の振幅変化量及び所定の移相量で変化させて、上記各変化後の送信信号を当該各送信信号に対応する上記各散乱体アンテナから電波として放射する送信手段と、上記各位置の実質的に中心に配置された評価用受信アンテナを用いて、上記各散乱体アンテナから放射された電波の多重波を受信信号として受信し、上記送信信号を基準として上記受信信号の振幅及び位相を測定する受信手段と、上記測定された受信信号の振幅及び位相に基づいて評価用受信アンテナの性能を評価する制御手段とを備えたアンテナ評価装置を用いたアンテナ評価方法であって、上記制御手段により、上記各散乱体アンテナから単独で電波を放射するように上記送信手段を制御し、上記各散乱体アンテナから単独で放射された電波に基づいて、上記評価用受信アンテナに代えて校正用受信アンテナを用いて各測定された受信信号の振幅が同一の目標振幅に一致しかつ各測定された受信信号の位相が同一の目標位相に一致するように上記送信手段を制御し、上記各散乱体アンテナ毎の送信手段の振幅変化量及び移相量を記憶装置に格納する校正を実行し、所定の多重波伝搬状態を実現するときの各散乱体アンテナ毎の送信信号の振幅及び位相に対応する、入力される目標振幅からの振幅差分値及び目標位相からの位相差分値に基づいて、上記格納された各散乱体アンテナ毎の送信手段の振幅変化量及び移相量に対して、上記振幅差分値及び上記位相差分値を加算することにより、上記送信手段において設定すべき各散乱体アンテナ毎の振幅変化量及び移相量を演算して上記送信手段に設定し、上記各散乱体アンテナから同時に送信信号を送信したときに上記評価用受信アンテナを用いて受信信号の振幅及び位相を受信手段により受信して測定することにより上記評価用受信アンテナの性能を評価する制御ステップを含むことを特徴とする。
また、上記アンテナ評価方法において、上記制御ステップは、校正時において上記各位置の実質的に中心近傍にかつ互いに半波長だけ離隔されて設けられる第1と第2の校正用受信アンテナと、評価時において上記第1の校正用受信アンテナに代えて設けられる第1の評価用受信アンテナと、上記第2の校正用受信アンテナに代えて設けられる第2の評価用受信アンテナとを用いて、上記第1及び第2の評価用受信アンテナの性能を評価することを含み、上記アンテナ評価装置は、上記第1の評価用受信アンテナ又は上記第1の校正用受信アンテナと、上記受信手段との間に挿入され、上記受信信号の振幅を変化させて上記受信手段に出力する振幅調整手段と、上記第2の評価用受信アンテナ又は上記第2の校正用受信アンテナを用いて別の受信信号を受信し、その振幅及び位相を変化させて出力する振幅位相調整手段と、上記振幅位相調整手段からの別の受信信号を受信し、上記送信信号を基準として上記別の受信信号の振幅及び位相を測定する別の受信手段とをさらに備え、上記制御ステップは、上記各散乱体アンテナから単独で電波を放射するように上記送信手段を制御し、上記各散乱体アンテナから単独で放射された電波に基づいて、上記第1の校正用受信アンテナを用いて各測定された受信信号の振幅と、上記第2の校正用受信アンテナを用いて各測定された別の受信信号の振幅の平均値とを測定するように上記受信手段及び上記別の受信手段を制御し、上記第1の校正用受信アンテナを用いて各測定された受信信号の振幅と、上記第2の校正用受信アンテナを用いて各測定された別の受信信号の振幅の平均値とが互いに一致するように上記振幅調整手段及び上記振幅位相調整手段を制御した後、上記第1の校正用受信アンテナを用いて各測定された受信信号の位相と、上記第2の校正用受信アンテナを用いて各測定された別の受信信号の位相の平均値とを測定するように上記受信手段及び上記別の受信手段を制御し、上記第1の校正用受信アンテナを用いて各測定された受信信号の位相と、上記第2の校正用受信アンテナを用いて各測定された別の受信信号の位相の平均値とが互いに一致するように上記振幅位相調整手段を制御することを含むことを特徴とする。
さらに、上記アンテナ評価方法において、上記アンテナ評価装置は、垂直偏波の電波及び水平偏波の電波をそれぞれ放射する2つの上記散乱体アンテナ群と、上記各散乱体アンテナ群毎に設けられた2つの上記送信手段とを備え、上記制御ステップは、上記校正用受信アンテナに代えて、垂直偏波の電波を受信する校正用受信アンテナ及び水平偏波の電波を受信する校正用受信アンテナをそれぞれ用いて、上記各送信手段毎に、上記校正を行うことを含むことを特徴とする。
またさらに、上記アンテナ評価方法において、上記アンテナ評価装置は、上記信号発生手段によって発生された送信信号を所定の遅延時間だけ遅延させる遅延手段をさらに備え、上記制御ステップは、上記校正を実行するときに、上記遅延時間を所定値に設定することを含むこと特徴とする。
また、上記アンテナ評価方法において、上記アンテナ評価装置は、複数の所定のパラメータを用いて、上記信号発生手段によって発生された送信信号に対して所定の遅延時間及び位相調整量を付加するフェージング手段をさらに備え、上記制御ステップは、上記校正を実行するときに、上記各パラメータを所定値に設定することを含むことを特徴とする。
本発明に係るアンテナ評価装置及びアンテナ評価方法によれば、上記各散乱体アンテナから単独で電波を放射するように上記送信手段を制御し、上記各散乱体アンテナから単独で放射された電波に基づいて、上記評価用受信アンテナに代えて校正用受信アンテナを用いて各測定された受信信号の振幅が同一の目標振幅に一致しかつ各測定された受信信号の位相が同一の目標位相に一致するように上記送信手段を制御し、上記各散乱体アンテナ毎の送信手段の振幅変化量及び移相量を記憶装置に格納する校正を実行するので、送信手段と受信手段との間の経路全体において生じる通過損失の受信信号の振幅及び位相に対する影響を取り除くことができ、従来技術に比較して容易にかつ正確に校正を行うことができ、評価用受信アンテナの評価精度を向上できる。
本発明の第1の実施形態に係るアンテナ評価装置の構成を示す要部斜視図である。
図1の多重波制御測定装置200Aの構成を示すブロック図である。
図2のコンピュータ10によって実行されるアンテナ評価装置の校正処理を示すフローチャートである。
図3のステップS8において作成される校正テーブルの一例を示す表である。
図3のステップS10において実行される振幅調整処理を示すフローチャートである。
図3のステップS11において実行される位相調整処理を示すフローチャートである。
図2のコンピュータ10によって実行される評価処理を示すフローチャートである。
本発明の第2の実施形態に係る多重波制御測定装置200Bの構成を示すブロック図である。
図8のコンピュータ10によって実行されるアンテナ評価装置の校正処理を示すフローチャートである。
本発明の第3の実施形態に係る多重波制御測定装置200Cの構成を示すブロック図である。
(a)は、図10のコンピュータ10によって実行される垂直偏波の校正時の散乱体アンテナ50a−1〜50a−5及び受信アンテナ60avの配置を示す説明図であり、(b)は、図10のコンピュータ10によって実行される水平偏波の校正時の散乱体アンテナ50b−1〜50b−5及び受信アンテナ60ahの配置を示す説明図である。
本発明の第4の実施形態に係るアンテナ評価装置の散乱体アンテナ50a−1〜50a−5、散乱体アンテナ50b−1〜50b−5及び受信アンテナ60av,60ahの配置を示す説明図である。
本発明の第5の実施形態に係るアンテナ評価装置の散乱体アンテナ50a−1〜50a−5、散乱体アンテナ50b−1〜50b−5及び受信アンテナ60atの配置を示す説明図である。
本発明の第6の実施形態に係るアンテナ評価装置の散乱体アンテナ50a−1〜50a−5、受信アンテナ60a1の配置を示す説明図である。
図14の受信アンテナ60a1の指向特性を示す特性図である。
本発明の第7の実施形態に係るアンテナ評価装置の散乱体アンテナ50a−1〜50a−5、受信アンテナ60asの配置を示す説明図である。
図16の受信アンテナ60asの水平偏波の指向特性及び垂直偏波の指向特性を示す特性図である。
本発明の第8の実施形態に係るアンテナ評価装置の散乱体アンテナ50a−1〜50a−5、受信アンテナ60a2の配置を示す説明図である。
図18の受信アンテナ60a2の指向特性を示す特性図である。
本発明の第1の実施形態の第1の変形例に係る多重波制御測定装置200Dの構成を示すブロック図である。
図20のコンピュータ10によって実行されるアンテナ評価装置の校正処理を示すフローチャートである。
図21のステップS10Aにおいて実行される振幅調整処理を示すフローチャートである。
図22のステップS11Aにおいて実行される位相調整処理を示すフローチャートである。
本発明の第1の実施形態の第2の変形例に係る多重波制御測定装置200Eの構成を示すブロック図である。
図24のコンピュータ10によって実行されるアンテナ評価装置の校正処理を示すフローチャートである。
本発明の第1の実施形態の第3の変形例に係る多重波制御測定装置200Fの構成を示すブロック図である。
図26のコンピュータ10によって実行されるアンテナ評価装置の校正処理を示すフローチャートである。
本発明の第2の実施形態の第1の変形例に係る多重波制御測定装置200Gの構成を示すブロック図である。
本発明の第2の実施形態の第2の変形例に係る多重波制御測定装置200Hの構成を示すブロック図である。
本発明の第3の実施形態の第1の変形例に係る多重波制御測定装置200Iの構成を示すブロック図である。
本発明の第3の実施形態の第2の変形例に係る多重波制御測定装置200Jの構成を示すブロック図である。
従来技術に係る近傍界校正法を説明するためのブロック図である。
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
第1の実施形態.
図1は、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ評価装置(空間多重波生成装置又はフェージングエミュレータともいう。)の構成を示す要部斜視図であり、図2は、図1の多重波制御測定装置200Aの構成を示すブロック図である。
詳細後述するように、本実施形態に係るアンテナ評価装置は、コンピュータ10において、各散乱体アンテナ50a−n(n=1,2,…,Nであり、本実施形態においてNは5である。)から単独で電波を放射するように送信回路30aを制御し、散乱体アンテナ50a−nから単独で放射された電波に基づいて、校正用受信アンテナ60aを用いて各測定された受信信号S60aの振幅が同一の目標振幅に一致しかつ各測定された受信信号の位相が同一の目標位相に一致するように送信回路30aを制御し、上記各散乱体アンテナ50a−n毎の送信回路30aの基準減衰量制御電圧VAa−n及び基準移相量制御電圧VPa−nをメモリ10mに格納する校正を実行することを特徴としている。さらに、コンピュータ10において、所定の多重波伝搬状態を実現するときの各散乱体アンテナ50a−n毎の送信信号の振幅及び位相に対応する、入力装置10iから入力される目標振幅からの振幅差分値及び目標位相からの位相差分値に基づいて、上記格納された各散乱体アンテナ50a−n毎の送信回路30aの基準減衰量制御電圧VAa−n及び基準移相量制御電圧VPa−nに対して、上記振幅差分値に対応する減衰量制御電圧及び上記位相差分値に対応する移相量制御電圧を加算することにより、送信回路30aにおいて設定すべき各散乱体アンテナ50a−毎の減衰量制御電圧及び移相量制御電圧を演算して多重波制御信号S10aを発生してD/Aコンバータ11aに出力し、上記各散乱体アンテナ50a−nから同時に送信信号を送信したときに評価用受信アンテナを用いて受信信号S60aの振幅及び位相を受信機21aにより受信して測定することにより上記評価用受信アンテナの性能を評価することを特徴としている。
図1において、本実施形態に係るアンテナ評価装置は、それぞれ半波長ダイポールアンテナである散乱体アンテナ50a−1〜50a−5を含む散乱体アンテナ群50aと、多重波制御測定装置200Aとを備えて構成される。散乱体アンテナ50a−1〜50a−5はそれぞれ、正5角筒の形状を有する格子状に組み立てられた散乱体アンテナ支持台101の各頂点部に、給電点の高さが床面からHの位置になりかつ垂直偏波の電波を放射するように縦置きに取り付けられている。これにより、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5は半径Rの円周上に等間隔に配置されている。ここで、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5の各給電点の位置の中心を右手系のXYZ座標系の原点とし、原点に対して上方向をZ軸の正の方向とし、原点から散乱体アンテナ50a−1へ向かう方向をY軸の正の方向とする。
図1のアンテナ評価装置の校正時には受信アンテナ支持台102に校正用受信アンテナ(以下、受信アンテナともいう。)60aが取り付けられ、評価時には受信アンテナ60a又は評価対象の別の受信アンテナ(図示せず。以下、評価用受信アンテナという。)が取り付けられる。本実施形態において、校正用受信アンテナ60aは半波長ダイポールアンテナであって、ポールである受信アンテナ支持台102の頂点部に、給電点が原点に設置されかつ垂直偏波の電波を受信するように縦置きに取り付けられている。本実施形態において、散乱体アンテナ支持台101及び受信アンテナ支持台102は、ポリプロピレン又は塩化ビニルなどの樹脂材料によって形成されている。また、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5及び受信アンテナ60aの各給電点の床面からの高さHは1.5mに設定されており、各給電点の原点からの距離Rは1.5mに設定されている。
図2において、多重波制御測定装置200Aは、メモリ10m及びキーボードなどの入力装置10iを有するコンピュータ10と、受信機21a及び信号発生器22aを備えたネットワークアナライザ20aと、送信回路30aとを備えて構成される。さらに、送信回路30aは、D/Aコンバータ11aと、分配器12aと、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5にそれぞれ対応して設けられた移相器13a−1〜13a−5を備えた移相回路13aと、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5にそれぞれ対応して設けられた減衰器14a−1〜14a−5を備えた減衰回路14aとを備えて構成される。ネットワークアナライザ20aは、信号発生器22aにおいて2.14GHzの周波数を有する無変調連続波信号である送信信号S22aを発生する単一周波数モードに設定されており、測定ポイント数は1601ポイント、掃引時間は16秒、送信出力レベルは+5dBm、表示画面は散乱パラメータS21の極座標表示となるようにそれぞれ設定されている。このとき、ネットワークアナライザ20aの出力端子T20a−1がポート1であり、入力端子T20a−2がポート2である。
信号発生器22aは、送信信号S22aを発生して分配器12a及び受信機21aに出力する。送信信号S22aは分配器12aにおいて5分配され、分配後の各送信信号は移相器13a−1〜13a−5にそれぞれ出力される。移相器13a−1〜13a−5はそれぞれ、入力される送信信号の位相を、D/Aコンバータ11aからの移相量制御電圧に対応する所定の移相量Pa−1〜Pa−5だけ移相させて、移相された送信信号を対応する減衰器14a−1〜14a−5に出力する。減衰器14a−1〜14a−5はそれぞれ、入力される移相された送信信号を、D/Aコンバータ11aからの減衰量制御電圧に対応する所定の減衰量Aa−1〜Aa−5だけ減衰させて、対応する散乱体アンテナ50a−1〜50a−5から垂直偏波の電波として放射する。ここで、図1のアンテナ評価装置において、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5と、散乱体アンテナ支持台101と、受信アンテナ60a又は評価用受信アンテナと、受信アンテナ支持台102とは電波暗室内に設置されているので、天井、床面、壁面などで反射する反射波の影響は直接波に比較して十分小さく、XYZ座標系の原点において、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5から放射された直接波からなる多重波が生成される。なお、多重波制御測定装置200Aは金属製であって、電波を反射するので電波暗室の外部に設けられる。
一方、コンピュータ10はアンテナ評価装置の校正時及び評価用の受信アンテナの評価時に、詳細後述するように、移相器13a−1〜13a−5の各移相量Pa−1〜Pa−5及び減衰器14a−1〜14a−5の各減衰量Aa−1〜Aa−5をそれぞれ、所定値に設定する。コンピュータ10は、各移相器13a−n毎に、印加される移相量制御電圧と移相量Pa−nとの関係を表す移相器特性テーブルをメモリ10mに格納するとともに、各減衰器14a−n毎に、印加される減衰量制御電圧と減衰量Aa−nとの関係を表す減衰器特性テーブルをメモリ10mに格納している。そして、各移相器特性テーブル及び各減衰器特性テーブルを参照して、設定された移相量Pa−1〜Pa−5にそれぞれ対応する移相量制御電圧及び設定された減衰量Aa−1〜Aa−5にそれぞれ対応する減衰量制御電圧を含むデジタルの多重波制御信号S10aを発生してD/Aコンバータ11aに出力する。
さらに、D/Aコンバータ11aは、入力される多重波制御信号S10aを、移相器13a−1〜13a−5の移相量Pa−1〜Pa−5にそれぞれ対応するアナログの移相量制御電圧及び減衰器14a−1〜14a−5の減衰量Aa−1〜Aa−5にそれぞれ対応するアナログの減衰量制御電圧に変換して、移相器13a−1〜13a−5及び減衰器14a−1〜14a−5にそれぞれ印加する。
また、受信機21aは、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5によって放射された電波の多重波を、受信アンテナ60a又は評価用受信アンテナを用いて受信信号S60aとして受信し、送信信号S22aを基準として受信信号S60aの振幅(受信電力である。)及び位相を測定し、測定された振幅及び位相の各データを含む受信データをコンピュータ10に出力する。コンピュータ10は、受信機21aからの受信データを用いて、図3を参照して詳細後述する校正処理によってアンテナ評価装置の校正を行い、又は評価用受信アンテナの性能を評価する。
次に、図2のコンピュータ10によって実行されるアンテナ評価装置の校正処理を説明する。図3は、図2のコンピュータ10によって実行されるアンテナ評価装置の校正処理を示すフローチャートであり、図4は、図3のステップS8において作成される校正テーブルの一例を示す表である。また、図5は、図3のステップS10において実行される振幅調整処理を示すフローチャートであり、図6は、図3のステップS11において実行される位相調整処理を示すフローチャートである。なお、アンテナ評価装置の校正時には、図1に示すように、受信アンテナ支持台102に校正用受信アンテナ60aが取り付けられている。
図3のステップS1において、パラメータnが初期値1に設定される。そして、コンピュータ10は、ステップS2において、減衰器14a−nの減衰量Aa−nを0に設定し、減衰器14a−n以外の減衰器の各減衰量を最大値に設定し、ステップS3において、移相器13a−1〜13a−Nの各移相量Pa−1〜Pa−Nをゼロに設定する。次に、コンピュータ10は、ステップS4において、設定された各移相量Pa−1〜Pa−Nにそれぞれ対応する移相量制御電圧及び設定された各減衰量Aa−1〜Aa−Nにそれぞれ対応する減衰量制御電圧を含む多重波制御信号S10aを発生してD/Aコンバータ11aに出力する。これにより、実質的に散乱体アンテナ50a−nのみから電波が放射される。さらに、ステップS5において、コンピュータ10は、受信機21aを用いて、送信信号S22aを基準として受信信号S60aの振幅及び位相を測定する。次に、ステップS6においてパラメータnに1が加算される。そして、ステップS7において、パラメータnが散乱体アンテナ50a−1〜50−Nの総数Nよりも大きいか否かが判断され、YESのときはステップS8に進む一方、NOのときはステップS2に戻る。
次に、ステップS8において、コンピュータ10は、全ての散乱体アンテナ50a−1〜50a−5についてステップS5で測定された各振幅及び各位相に基づいて校正テーブルを作成する。図4に示すように、校正テーブルは、散乱体アンテナ50a−nと、当該散乱体アンテナ50a−nのみから単独で電波を放射したときの受信信号S60aの振幅及び位相との関係を示す。ステップS8に続いて、ステップS9において、コンピュータ10は校正テーブルを参照して、測定された振幅の最小値を目標振幅に設定し、測定された位相の平均値を目標位相に設定する。そして、ステップS10において、目標振幅を用いて図5の振幅調整処理を行い、ステップS11において、目標位相を用いて図6の位相調整処理を行い、アンテナ評価装置の校正処理を終了する。
次に、図5を参照して図3のステップS10における振幅調整処理を説明する。ステップS31において、パラメータnが初期値1に設定される。そして、コンピュータ10は、ステップS32において、減衰器14a−nの減衰量Aa−nを0に設定し、減衰器14a−n以外の減衰器の各減衰量を最大値に設定し、ステップS33において、移相器13a−1〜13a−Nの各移相量Pa−1〜Pa−Nをゼロに設定する。そして、コンピュータ10は、ステップS34において、設定された各移相量Pa−1〜Pa−Nにそれぞれ対応する移相量制御電圧及び設定された各減衰量Aa−1〜Aa−Nにそれぞれ対応する減衰量制御電圧を含む多重波制御信号S10aを発生してD/Aコンバータ11aに出力する。これにより、実質的に散乱体アンテナ50a−nのみから単独で電波が放射される。さらに、ステップS35において、コンピュータ10は、受信機21aを用いて、送信信号S22aを基準として受信信号S60aの振幅を測定する。
そして、ステップS36において、測定された振幅が目標振幅以下か否かが判断され、YESのときはステップS38に進む一方、NOのときはステップS37に進む。ステップS37では、減衰器14a−nの減衰量Aa−nは所定の減衰量だけ増加され、ステップS34に戻る。一方、ステップS38において、減衰器14a−nに対する減衰量制御電圧が基準減衰量制御電圧VAa−nとしてメモリ10mに格納される。そして、ステップS39においてパラメータnに1が加算される。次に、ステップS40において、パラメータnが散乱体アンテナ50a−1〜50−Nの総数Nよりも大きいか否かが判断され、YESのときは振幅調整処理を終了する一方、NOのときはステップS32に戻る。
次に、図6を参照して図3のステップS11における位相調整処理を説明する。ステップS51において、パラメータnが初期値1に設定される。そして、コンピュータ10は、ステップS52において、減衰器14a−nに対する減衰量制御電圧を基準減衰量制御電圧VAa−nに設定し、減衰器14a−n以外の減衰器の各減衰量を最大値に設定する。さらに、ステップS53において、移相器13a−1〜13a−Nの各移相量Pa−1〜Pa−Nをゼロに設定する。次に、コンピュータ10は、ステップS54において、設定された各移相量Pa−1〜Pa−Nにそれぞれ対応する移相量制御電圧と、基準減衰量制御電圧VAa−nと、減衰器14a−n以外の減衰器に対して設定された各減衰量にそれぞれ対応する減衰量制御電圧とを含む多重波制御信号S10aを発生してD/Aコンバータ11aに出力する。これにより、実質的に散乱体アンテナ50a−nのみから単独で電波が放射される。さらに、ステップS55において、コンピュータ10は、受信機21aを用いて、送信信号S22aを基準として受信信号S60aの位相を測定する。
次に、ステップS56において、測定された位相と目標位相との間の差の大きさが所定のしきい値以下であるか否かが判断され、YESのときはステップS58に進む一方、NOのときはステップS57に進む。ステップS57では、コンピュータ10は、受信信号S60aの位相を目標位相に近づけるように、移相器13a−nの移相量を所定の移相量だけ変化させ、ステップS54に戻る。一方、ステップS58において、移相器13a−nに対する移相量制御電圧は、基準移相量制御電圧VPa−nとしてメモリ10mに格納される。引き続き、ステップS59において、パラメータnに1が加算される。次に、ステップS60において、パラメータnが散乱体アンテナ50a−1〜50a−Nの総数Nよりも大きいか否かが判断され、YESのときは位相調整処理を終了する一方、NOのときはステップS52に戻る。
次に、図7を参照して、図2のコンピュータ10によって実行される評価処理を説明する。図7は、図2のコンピュータ10によって実行される評価処理を示すフローチャートである。コンピュータ10は、図3の校正処理を行った後に、受信アンテナ支持台102に取り付けられた評価用受信アンテナ(図示せず。)の性能の評価を行う。始めに、ステップS61において、入力装置10iから、XYZ座標系の原点においてレイリーフェージング又は仲上−ライスフェージングなどの所定の多重波伝搬状態を実現するときの各散乱体アンテナ50a−n毎の送信信号の振幅及び位相に対応する、目標振幅からの振幅差分値及び目標位相からの位相差分値を受信する。このとき、上記各振幅差分値及び各位相差分値は、アンテナ評価装置のユーザによって入力装置10iから入力されるが、本発明はこれに限られず、別のコンピュータからインターフェース回路などの入力装置を介して受信されてもよい。
次に、ステップS62において、メモリ10mに格納された各散乱体アンテナ50a−n毎の基準減衰量制御電圧VAa−n及び基準移相量制御電圧VPa−nに対して、各減衰器特性テーブル及び各移相器特性テーブルを参照して、上記振幅差分値に対応する減衰量制御電圧及び上記位相差分値に対応する移相量制御電圧を加算することにより、各減衰器14a−nに印加する減衰量制御電圧及び各移相器13a−nに印加する移相量制御電圧を演算する。さらに、ステップS63において、演算された各減衰量制御電圧及び各移相量制御電圧を含む多重波制御信号S10aを発生してD/Aコンバータ11aに出力することにより、各散乱体アンテナ50a−nから同時に送信信号を送信する。そして、ステップS64において、評価用受信アンテナを用いて、送信信号S22aを基準として受信信号S60aの振幅及び位相を受信機21aにより受信して測定することにより、上記評価用受信アンテナの性能を評価する。
本実施形態に係るアンテナ評価装置の校正処理によれば、受信機21aにおいて各散乱体アンテナ50a−1〜50a−5から、同一の目標位相及び同一の目標振幅を有する受信信号S60aを受信できるように、各移相器13a−nに対する基準移相量制御電圧VPa−n及び各減衰器14a−nに対する基準減衰量制御電圧VAa−nを設定する。ここで、上述した校正処理では、受信信号S60aの振幅及び位相を送信信号S22aを基準として測定することにより、ネットワークアナライザ20aの出力端子T20a−1及び入力端子T20a−2を校正基準面としている。従って、受信アンテナ60aと受信機21aとの間の接続ケーブル及び信号発生器22aと各散乱体アンテナ50a−1〜50a−5との間の接続ケーブルなどの信号発生器22aと受信機21aとの間の経路全体において生じる通過損失の受信信号S60aの振幅及び位相に対する影響を取り除くことができる。また、校正用受信アンテナを各散乱体アンテナ50a−1〜50a−5の近傍に順次配置する、あるいは散乱体アンテナ50a−1〜50a−5と同数の校正用受信アンテナを各散乱体アンテナ50a−1〜50a−5の近傍にそれぞれ配置する必要がない。このため、本実施形態によれば、従来技術に比較して容易にかつ正確に校正を行うことができる。さらに、評価用受信アンテナの評価時に、所定の多重波伝搬状態を実現するときの各散乱体アンテナ50a−n毎の送信信号の振幅及び位相に対応する、目標振幅からの振幅差分値及び目標位相からの位相差分値に基づいて、送信回路S30aの動作を制御するので、評価用受信アンテナの評価精度を向上できる。
なお、本実施形態において、XY平面内で無指向の指向特性を有する半波長ダイポールアンテナを校正用受信アンテナ60aとして用いた。しかしながら、本発明はこれに限られず、既知の指向特性を有する別の校正用受信アンテナを用いてもよい。この場合、各散乱体アンテナ50a−nから放射された電波を校正用受信アンテナを用いて受信したときの受信信号S60aの振幅及び位相を、当該散乱体アンテナ50a−nの方位における校正用受信アンテナの振幅及び位相の各指向特性を用いて、無指向の受信アンテナを用いて受信した場合の受信信号S60aの振幅及び位相にそれぞれ補正する。そして、補正後の振幅及び位相を、図3のステップS5、図5のステップS35及び図6のステップS55における振幅及び/又は位相の測定値として用いればよい。ただし、XY平面内でヌルを有する指向特性を有する受信アンテナを校正処理に用いることはできない。好ましくは、受信信号S60aの振幅及び位相を受信アンテナ60aの指向特性を用いて補正する必要がないので、無指向の指向特性を有する受信アンテナ60aを校正処理に用いる。
また、本実施形態において、分配器12aに代えて、信号発生器22aからの送信信号S22aを移相器13a−1〜13a−5のうちの1つに切り換えて出力するスイッチを設けてもよい。これにより、分配器12aにおける分配損失が生じないので、より広いダイナミックレンジを有する受信電力の電波を散乱体アンテナ50a−1〜50a−5から放射できる。
また、図3のアンテナ評価装置の校正処理のステップS9において、測定された位相の平均値を目標位相に設定した。しかしながら、本発明はこれに限られず、例えば、測定された位相の最小値又は最大値などの他の値を目標位相に設定してもよい。ただし、好ましくは、測定された位相の平均値を目標位相に設定する。これにより、図6の位相調整処理において、各移相器13a−nの移相量を変化させるときの変化量の総和(ステップS57における所定の移相量の倍数である。)を最小にできる。このため、各移相器13a−nにおける移相動作に伴う減衰量の変化の影響を最小にして、高い精度で校正を行うことができる。
また、図5の振幅調整処理に代えて、減衰器14a−n毎に、減衰器特性テーブルを参照して目標振幅を有する受信信号S60aを受信するための減衰量制御電圧を決定して、基準減衰量制御電圧VAa−nとしてメモリ10mに格納してもよい。さらに、図6の移相調整処理に代えて、移相器13a−n毎に、移相器特性テーブルを参照して目標位相を有する受信信号S60aを受信するための移相量制御電圧を決定して、基準移相量制御電圧VPa−nとしてメモリ10mに格納してもよい。
第2の実施形態.
図8は、本発明の第2の実施形態に係る多重波制御測定装置200Bの構成を示すブロック図であり、図9は、図8のコンピュータ10によって実行されるアンテナ評価装置の校正処理を示すフローチャートである。本実施形態に係る多重波制御測定装置200Bは、第1の実施形態に係る多重波制御生成装置200Aに比較して、受信機21bを備えたネットワークアナライザ20bと、移相器73及び減衰器74を含む振幅位相調整回路72と、減衰器84とをさらに備え、互いに半波長だけ離隔されて設けられた受信アンテナ60a及び60bを含むアレーアンテナを用いて図9の校正処理を行うことを特徴としている。
受信アンテナ60a及び60bはそれぞれ、垂直偏波の電波を受信する半波長ダイポールアンテナである。また、受信アンテナ60a及び60bは、受信アンテナ支持台102の頂点部に、給電点がXYZ座標系での座標位置(0,λ/4,0)及び座標位置(0,−λ/4,0)にそれぞれ設けられ、かつ垂直偏波の電波を受信するように縦置きに取り付けられている。ただし、λは散乱体アンテナ50a−1〜50a−5から放射される電波の波長である。受信機21aは、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5によって放射された電波の多重波を、受信アンテナ60a又は当該受信アンテナ60aに代えて設けられる第1の評価用受信アンテナ(図示せず。)及び減衰器84を介して受信信号S60aとして受信する。減衰器84は、受信アンテナ60a又は第1の評価用受信アンテナと受信機21aとの間に挿入され、受信信号S60aを減衰させて受信機21aに出力する。一方、振幅位相調整回路72は、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5によって放射された電波の多重波を、受信アンテナ60b又は当該受信アンテナ60bに代えて設けられる第2の評価用受信アンテナ(図示せず。)を用いて別の受信信号として受信して、当該別の受信信号の位相及び振幅を移相器73及び減衰器74により変化させて、受信信号S60bとして受信機21bに出力する。さらに、受信機20bは、受信信号S60bの振幅(受信電力である。)及び位相を送信信号S22aを基準として測定し、測定された振幅及び位相の各データを含む受信データをコンピュータ10に出力する。なお、信号発生器22aによって発生された送信信号S22aは、分配器12aと、受信機21a及び21bとに出力される。
コンピュータ10は、アンテナ評価装置の校正時及び評価用受信アンテナの評価時に、詳細後述するように、減衰器84の減衰量A84、移相器73の移相量P73及び減衰器74の減衰量A74をそれぞれ所定値に設定する。コンピュータ10は、減衰器84に印加される減衰量制御電圧と減衰量A84との関係を表す減衰器特性テーブルと、移相器73に印加される移相量制御電圧と移相量P73との関係を表す移相器特性テーブルと、減衰器74に印加される減衰量制御電圧と減衰量A74との関係を表す減衰器特性テーブルとをメモリ10mに格納している。そして、移相器特性テーブル及び各減衰器特性テーブルを参照して、設定された減衰量A84に対応する減衰量制御電圧設定と、設定された移相量P73に対応する移相量制御電圧と、設定された減衰量A74に対応する減衰量制御電圧とを発生して、減衰器84と、移相器73と、減衰器74とにそれぞれ印加する。また、コンピュータ10は、受信機21a及び21bからの各受信データを用いて、図9を参照して詳細後述する校正処理によってアンテナ評価装置の校正を行い、又は第1及び第2の評価用受信アンテナの性能を評価する。
次に、図9を参照して、図8のコンピュータ10によって実行されるアンテナ評価装置の校正処理を説明する。まず始めに、ステップS71において、コンピュータ10は、減衰器84の減衰量A84をゼロに設定して、図3のアンテナ評価装置の校正処理を行う。なお、基準減衰量制御電圧VA84は減衰量A84がゼロのときの減衰量制御電圧に設定されている。そして、ステップS72において、減衰器74の減衰量A74をゼロに設定するための減衰量制御電圧が減衰器74に印加され、移相器73の移相量P73をゼロに設定するための移相量制御電圧が移相器73に印加される。そして、ステップS73においてパラメータmが初期値0に設定され、ステップS74において、パラメータnが初期値1に設定される。そして、ステップS75において、散乱体アンテナ50a−nのみから単独で電波を放射するように移相回路13及び減衰回路14が制御される。具体的には、移相器13a−nには基準移相量制御電圧VPa−nが印加され、その他の移相器には当該移相器の移相量をゼロにするための各移相量制御電圧が印加される。さらに、減衰器14−nには基準減衰量制御電圧VAa−nが印加され、その他の減衰器には当該減衰器の減衰量を最大値にするための減衰量制御電圧が印加される。これにより、目標振幅及び目標位相を有する電波が散乱体アンテナ50a−nから放射される。そして、コンピュータ10は、ステップS76において、受信機21bを用いて、送信信号S22aを基準として受信信号S60bの振幅を測定する。
引き続き、ステップS77においてパラメータnに1が加算され、ステップS78において、パラメータnが散乱体アンテナ50a−1〜50−Nの総数Nよりも大きいか否かが判断され、YESのときはステップS79に進む一方、NOのときはステップS75に戻る。ステップS79では、測定された振幅の平均値が算出される。そして、ステップS80において、パラメータmが0でありかつ振幅の平均値が目標振幅未満か否かが判断され、YESのときはステップS81に進む一方、NOのときはステップS82に進む。そして、ステップS81において、振幅の平均値に基づいて、減衰器84の基準減衰量制御電圧VA84を、目標振幅を振幅の平均値に減衰させるために必要とされる減衰量制御電圧に変更し、ステップS84に進む。
一方、ステップS82において、振幅の平均値が目標振幅以下か否かが判断され、YESのときはステップS84に進む一方、NOのときはステップS83に進む。ステップS83では、減衰器74の減衰量A74は所定の減衰量だけ増加され、ステップS74に戻る。一方、ステップS84では、減衰器74に対する減衰量制御電圧が基準減衰量制御電圧VA74としてメモリ10mに格納され、ステップS85に進む。
ステップS85では、基準減衰量制御電圧VA74が減衰器74に印加され、移相器73の移相量P73をゼロに設定するための移相量制御電圧が移相器73に印加される。次に、ステップS86において、パラメータnが初期値1に設定され、ステップS87において、ステップS75と同様に、散乱体アンテナ50a−nのみから単独で電波を放射するように移相回路13及び減衰回路14が制御される。そして、コンピュータ10は、ステップS88において、受信機21bを用いて、送信信号S22aを基準として受信信号S60bの位相を測定する。
引き続き、ステップS89においてパラメータnに1が加算され、ステップS90において、パラメータnが散乱体アンテナ50a−1〜50−Nの総数Nよりも大きいか否かが判断され、YESのときはステップS91に進む一方、NOのときはステップS87に戻る。ステップS91では、測定された位相の平均値が算出される。そして、ステップS92において、位相の平均値と目標位相との間の差の大きさが所定のしきい値以下か否かが判断され、YESのときはステップS94に進む一方、NOのときはステップS93に進む。ステップS93では、位相の平均値を目標位相に近づけるように、移相器73の移相量P73は所定の移相量だけ変化され、ステップS86に戻る。一方、ステップS94では移相器73に対する移相量制御電圧が基準移相量制御電圧VP73としてメモリ10mに格納され、校正処理を終了する。
コンピュータ10は、上述した校正処理を行った後に、受信アンテナ支持台102に校正用受信アンテナ60a及び60bに代えて取り付けられた第1及び第2の評価用受信アンテナを備えた評価用アレーアンテナ(図示せず。)の性能の評価を行う。本実施形態に係る評価処理は、第1の実施形態に係る評価処理(図7参照。)に比較して、ステップS61の処理の前に、減衰器74、減衰器84及び移相器73に、基準減衰量制御電圧VA74、基準減衰量制御電圧VA84及び基準移相量制御電圧VP73をそれぞれ印加する点のみが異なる。
本実施形態に係るアンテナ評価装置の校正処理によれば、各散乱体アンテナ50a−nから単独で放射された電波に基づいて、校正用受信アンテナ60aを用いて各測定された受信信号S60aの振幅と、校正用受信アンテナ60bを用いて各測定された受信信号60bの振幅の平均値とを測定するように受信機21a及び21bを制御し、校正用受信アンテナ60aを用いて各測定された受信信号S60aの振幅と、校正用受信アンテナ60bを用いて各測定された別の受信信号S60bの振幅の平均値とが互いに一致するように減衰器84及び上記振幅位相調整回路72を制御する。そして、校正用受信アンテナ60aを用いて各測定された受信信号S60aの位相と、校正用受信アンテナ60bを用いて各測定された受信信号S60bの位相の平均値とを測定するように受信手段21a及び21bを制御し、校正用受信アンテナ60aを用いて各測定された受信信号S60aの位相と、校正用受信アンテナ60bを用いて各測定された受信信号S60bの位相の平均値とが互いに一致するように振幅位相調整回路72を制御する。ここで、上述した校正処理では、受信信号S60a及びS60bの振幅及び位相を送信信号S22aを基準としてそれぞれ測定することにより、ネットワークアナライザ20aの出力端子T20a−1、入力端子T20a−2及びネットワークアナライザ20bの入力端子T20bを校正基準面としているので、受信アンテナ60aと受信機21aとの間の接続ケーブル及び信号発生器22aと各散乱体アンテナ50a−1〜50a−5との間の接続ケーブルなどの信号発生器22aと受信機21aとの間の経路全体において生じる通過損失の受信信号S60aの振幅及び位相に対する影響を取り除くことができる。さらに、受信アンテナ60bと受信機21bとの間の接続ケーブル及び信号発生器22aと各散乱体アンテナ50a−1〜50a−5との間の接続ケーブルなどの信号発生器22aと受信機21bとの間の経路全体において生じる通過損失の受信信号S60bの振幅及び位相に対する影響を取り除くことができる。
本実施形態によれば、第1の実施形態に比較して、第1及び第2の評価用受信アンテナを含む2素子のアレーアンテナの性能を評価するアンテナ評価装置において、従来技術に比較して容易にかつ正確に校正を行うことができ、上記アレーアンテナの評価精度を向上できる。
本実施形態において、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5はそれぞれ垂直偏波の電波を放射し、校正用受信アンテナ60a及び60bはそれぞれ垂直偏波の電波を受信した。しかしながら本発明はこれに限られず、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5はそれぞれ水平偏波の電波を放射し、かつ校正用受信アンテナ60a及び60bはそれぞれ水平偏波の電波を受信してもよい。
第3の実施形態.
図10は、本発明の第3の実施形態に係る多重波制御測定装置200Cの構成を示すブロック図である。また、図11(a)は、図10のコンピュータ10によって実行される垂直偏波の校正時の散乱体アンテナ50a−1〜50a−5及び受信アンテナ60avの配置を示す説明図であり、図11(b)は、図10のコンピュータ10によって実行される水平偏波の校正時の散乱体アンテナ50b−1〜50b−5及び受信アンテナ60ahの配置を示す説明図である。本実施形態に係る多重波制御測定装置200Cは、第1の実施形態に係る多重波制御測定装置200Aに比較して、それぞれ水平偏波の電波を放射する半波長ダイポールアンテナである散乱体アンテナ50b−1〜50b−5を含む散乱体アンテナ群50bと、分配器40と、送信回路30bとをさらに備えたことを特徴としている。ここで、送信回路30bは、D/Aコンバータ11bと、分配器12bと、散乱体アンテナ50b−1〜50b−5にそれぞれ対応して設けられた移相器13b−1〜13b−5を備えた移相回路13bと、散乱体アンテナ50b−1〜50b−5にそれぞれ対応して設けられた減衰器14b−1〜14b−5を備えた減衰回路14bとを備えて構成される。さらに、校正処理において、垂直偏波の校正時にダイポールアンテナである校正用受信アンテナ60avが用いられ、水平偏波の校正時にスロットダイポールアンテナである校正用受信アンテナ60ahが用いられたことを特徴としている。
散乱体アンテナ50b−nは、散乱体アンテナ50b−nの給電点が散乱体アンテナ50a−nの給電点に対して原点から遠ざかる方向に距離λ/2だけ離れた位置に設けられ、かつ水平偏波の電波を放射するように、散乱体アンテナ支持台101に横置きに取り付けられている。例えば、散乱体アンテナ50a−1,50b−1の各給電点のXYZ座標系での座標位置はそれぞれ、(0,R,0),(0,R+λ/2,0)である。なお、散乱体アンテナ50b−nの長手方向は、原点を中心とする円の接線に対して平行になるように設けられる。
コンピュータ10は、アンテナ評価装置の校正時及び評価用受信アンテナの評価時に、第1の実施形態と同様に、多重波制御信号S10aを発生してD/Aコンバータ11aに出力する。さらに、コンピュータ10は、アンテナ評価装置の校正時及び評価用受信アンテナの評価時に、詳細後述するように、移相器13b−1〜13b−5の各移相量Pb−1〜Pb−5及び減衰器14b−1〜14b−5の各減衰量Ab−1〜Ab−5をそれぞれ、所定値に設定する。コンピュータ10は、各移相器13b−n毎に、印加される移相量制御電圧と移相量Pb−nとの関係を表す移相器特性テーブルをメモリ10mに格納するとともに、各減衰器14b−n毎に、印加される減衰量制御電圧と減衰量Ab−nとの関係を表す減衰器特性テーブルをメモリ10mに格納している。そして、各移相器特性テーブル及び各減衰器特性テーブルを参照して、設定された移相量Pb−1〜Pb−5にそれぞれ対応する移相量制御電圧及び設定された減衰量Ab−1〜Ab−5にそれぞれ対応する減衰量制御電圧を含むデジタルの多重波制御信号S10bを発生してD/Aコンバータ11bに出力する。さらに、D/Aコンバータ11bは、入力される多重波制御信号S10bを、移相器13b−1〜13b−5の移相量Pb−1〜Pb−5に対応するアナログの移相量制御電圧及び減衰器14b−1〜14b−5の減衰量Ab−1〜Ab−5に対応するアナログの減衰量制御電圧に変換して、移相器13b−1〜13b−5及び減衰器14b−1〜14b−5に印加する。
一方、信号発生器22aによって発生された送信信号S22aは、分配器40によって2分配され、分配後の送信信号は分配器12a及び12bに出力される。送信回路30aは、第1の実施形態と同様に、分配器40からの送信信号を用いて、各散乱体アンテナ50a−1〜50a−5から垂直偏波の各電波を放射する。また、分配器40からの送信信号は分配器12bにおいて5分配され、移相器13b−1〜13b−5にそれぞれ出力される。移相器13b−1〜13b−5はそれぞれ、入力される送信信号の位相を、D/Aコンバータ11bからの移相量制御電圧に対応する所定の移相量Pb−1〜Pb−5だけ移相させて、移相された各送信信号を対応する減衰器14b−1〜14b−5に出力する。減衰器14b−1〜14b−5はそれぞれ、入力される移相された送信信号を、D/Aコンバータ11bからの減衰量制御電圧に対応する所定の減衰量Ab−1〜Ab−5だけ減衰させて、対応する散乱体アンテナ50b−1〜50b−5から水平偏波の電波として放射する。
詳細後述するように、受信機21aは垂直偏波の校正時に散乱体アンテナ50a−1〜50a−5によって単独で放射された各電波を受信アンテナ60avを用いて受信信号S60aとして受信する一方、水平偏波の校正時に散乱体アンテナ50b−1〜50b−5によって単独で放射された各電波を受信アンテナ60ahを用いて受信信号S60aとして受信する。さらに、受信機21aは、評価用受信アンテナ(図示せず。)の評価時に、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5によって放射された各電波と、散乱体アンテナ50b−1〜50b−5によって放射された各電波との多重波を、評価用受信アンテナを用いて受信信号S60aとして受信する。そして、受信機21aは、送信信号S22aを基準として受信信号S60aの振幅及び位相を測定し、測定された振幅及び位相の各データを含む受信データをコンピュータ10に出力する。コンピュータ10は、受信機21aからの受信データを用いて、詳細後述する校正処理によってアンテナ評価装置の校正を行い、又は評価用受信アンテナの性能を評価する。
次に、コンピュータ10によって実行される校正処理を説明する。コンピュータ10は始めに垂直偏波の校正を行い、次に水平偏波の校正を行う。図11(a)に示すように、垂直偏波の校正時には、受信アンテナ支持台102には、第1の実施形態に係る受信アンテナ60aと同様に構成された受信アンテナ60avが第1の実施形態と同様に取り付けられる。そして、コンピュータ10は、減衰器14b−1〜14b−5の各減衰量Ab−1〜Ab−5をそれぞれ最大値に設定し、かつ移相器13b−1〜13b−5の各移相量Pb−1〜Pb−5をそれぞれゼロに設定して多重波制御信号S10bを発生してD/Aコンバータ11bに出力する。これにより、散乱体アンテナ50b−1〜50b−5から電波は放射されない。次いで、コンピュータ10は送信回路30a及び受信アンテナ60avを用いて図3の校正処理を行い、垂直偏波の目標振幅、垂直偏波の目標位相、各減衰器14a−nに対する基準減衰量制御電圧VAa−n及び各移相器13a−nに対する基準移相量制御電圧VPa−nをメモリ10mに格納する。
次に、水平偏波の校正時には、図11(b)に示すように受信アンテナ支持台102にはスロットダイポールアンテナである受信アンテナ60ahが、水平偏波の電波を受信するように横置きに取り付けられる。なお、受信アンテナ60ahの長手方向は、Y軸に対して平行になるように設けられる。そして、コンピュータ10は、減衰器14a−1〜14a−5の各減衰量Aa−1〜Aa−5をそれぞれ最大値に設定し、かつ移相器13a−1〜13a−5の各移相量Pa−1〜Pa−5をそれぞれゼロに設定して多重波制御信号S10aを発生してD/Aコンバータ11aに出力する。これにより、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5から電波は放射されない。次いで、コンピュータ10は送信回路30b及び受信アンテナ60ahを用いて図3と同様の校正処理を行い、水平偏波の目標振幅、水平偏波の目標位相、各減衰器14b−nに対する基準減衰量制御電圧VAb−n及び各移相器13b−nに対する基準移相量制御電圧VPb−nをメモリ10mに格納する。
コンピュータ10は、上述した垂直偏波の校正及び水平偏波の校正を行った後に、校正用受信アンテナ60ah及び60avに代えて受信アンテナ支持台102に取り付けられた評価用受信アンテナの性能の評価を行う。具体的には、はじめに、コンピュータ10は、第1の実施形態に係る評価処理におけるステップS61〜S63の各処理を、送信回路30a,30b毎に行う。そして、評価用受信アンテナを用いて、送信信号S22aを基準として受信信号S60aの振幅及び位相を受信機21aにより受信して測定することにより、評価用受信アンテナの性能を評価する。
本実施形態によれば、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5及び散乱体アンテナ50b−1〜50b−5を用いて垂直偏波及び水平偏波の電波を放射するアンテナ評価装置において、第1の実施形態と同様に従来技術に比較して容易にかつ正確に校正を行うことができ、評価用受信アンテナの評価精度を向上できる。
本実施形態によれば、垂直偏波の校正時には垂直偏波に対してXY平面内で無指向の指向特性を有する受信アンテナ60avを用い、水平偏波の校正時にはXY平面内で水平偏波に対して無指向の指向特性を有する受信アンテナ60ahを用いるので、受信機21aによって受信された受信信号S60aの振幅を補正する必要がない。
第4の実施形態.
図12は、本発明の第4の実施形態に係るアンテナ評価装置の散乱体アンテナ50a−1〜50a−5、散乱体アンテナ50b−1〜50b−5及び受信アンテナ60av,60ahの配置を示す説明図である。本実施形態は、第3の実施形態に比較して、受信アンテナ支持台102の頂点部に、垂直偏波の電波を受信するための校正用受信アンテナ60avと、水平偏波の電波を受信するための校正用受信アンテナ60ahと、校正用受信アンテナ60av及び60ahを切り換えて選択的に受信機21aに接続するためのスイッチSWとを設けたことを特徴としている。
図12において、受信アンテナ60avは、受信アンテナ支持台102の頂点部に、給電点がXYZ座標系での座標位置(−λ/4,0,0)に設置されかつ垂直偏波の電波を受信するように縦置きに取り付けられている。また、受信アンテナ60ahは、受信アンテナ支持台102の頂点部に、給電点がXYZ座標系での座標位置(λ/4,0,0)に設置されかつ水平偏波の電波を受信するように横置きに取り付けられている。なお、受信アンテナ60ahの長手方向は、Y軸に対して平行になるように設けられる。受信アンテナ60av及び60ahはアレーアンテナを構成する。
コンピュータ10は、垂直偏波の校正時にはスイッチSWを接点aに切り換え、垂直偏波の校正時にはスイッチSWを接点bに切り換えて、第3の実施形態と同様にアンテナ評価装置の校正を行う。
本実施形態によれば、垂直偏波の校正を行った後に、受信アンテナ支持台102において受信アンテナ60avを受信アンテナ60ahに取り替える必要がないので、第3の実施形態に比較して簡便に、かつ高い精度でアンテナ評価装置の校正を行うことができる。
なお、本実施形態において、スイッチSWに代えて分配器を設けてもよい。また、スイッチSWを受信機21aに設けてもよい。
さらに、第3及び第4の実施形態において、スロットダイポールアンテナである受信アンテナ60ahの長手方向はY軸に平行に設けられた。しかしながら、本発明はこれに限られず、スロットダイポールアンテナのXY平面内での指向特性は、受信すべき主偏波である水平偏波に対して無指向であるので、受信アンテナ60ahの長手方向をXY平面に平行に設ければよい。
第5の実施形態.
図13は、本発明の第5の実施形態に係るアンテナ評価装置の散乱体アンテナ50a−1〜50a−5、散乱体アンテナ50b−1〜50b−5及び受信アンテナ60atの配置を示す説明図である。本実施形態は、第3の実施形態に比較して、校正用受信アンテナ60av及び60ahに代えて、垂直偏波及び水平偏波の各校正時に共通の校正用受信アンテナ60atを用いたことを特徴としている。
図13において、受信アンテナ60atは傾斜ダイポールアンテナであって、受信アンテナ60atの給電点はXYZ座標系の原点に設けられている。さらに、受信アンテナ60atは、原点から散乱体アンテナ50a−1を見込んだ方位から時計回りにθだけ回転した方位に、Z軸に対して53度の傾斜角をなすように傾けて設けられている。一般に、ダイポールアンテナの傾斜角を53度に設定することにより、水平偏波及び垂直偏波の各電波が受信される。
コンピュータ10は、垂直偏波の校正と水平偏波の校正とで共通の受信アンテナ60atを用いて第3の実施形態と同様にアンテナ評価装置の校正を行う。従って、本実施形態によれば、垂直偏波の校正及び水平偏波の校正で共通の受信アンテナ60atを用いたので、垂直偏波の校正と水平偏波の校正とで受信アンテナの取り替え又は切換を行う必要が無く、第3及び第4の実施形態に比較して簡便に、かつ高い精度でアンテナ評価装置の校正を行うことができる。
なお、受信アンテナ60atの傾斜角を53度より大きい値に設定すると水平偏波しか受信されず、傾斜角を53度より小さい値に設定すると垂直偏波しか受信されない。また、一般に、受信アンテナ60atの傾斜角を53度に設定すると、水平偏波と垂直偏波の総到来電力がそれぞれ一定の場合には、交差偏波電力比(水平偏波の電力と垂直偏波の電力の比率である。)に依らず平均受信電力が一定となる。このため、受信アンテナ60atの傾斜角を53度に設定すると、上述した垂直偏波の校正及び水平偏波の校正を行った後に、送信回路30aから放射された各垂直偏波の電波の総電力と、送信回路30bから放射された各水辺偏波の電波の総電力との比を変化させて、受信信号S60aの電力を測定し、当該電力が一定になることを確認できる。
なお、受信アンテナ60atの傾斜方位θは、任意の方位であって良い。
また、第3〜第5の実施形態において、コンピュータ10は垂直偏波の校正を行った後に水平偏波の校正を行ったが、本発明はこれに限られず、水平偏波の校正を行った後に垂直偏波の校正を行ってもよい。
第6の実施形態.
図14は、本発明の第6の実施形態に係るアンテナ評価装置の散乱体アンテナ50a−1〜50a−5、受信アンテナ60a1の配置を示す説明図であり、図15は、図14の受信アンテナ60a1の指向特性を示す特性図である。本実施形態は、第1の実施形態に比較して、受信アンテナ支持台102の頂点部に回転台80を設け、アンテナ評価装置の校正時に、無指向の校正用受信アンテナ60aに代えて回転台80に載置された指向性の校正用受信アンテナ60a1を用いたことを特徴としている。
図14において、回転台80は受信アンテナ支持台102の頂点部に、XYZ座標系の原点を中心として回転方向80rに回転可能なように取り付けられている。受信アンテナ60a1はホーンアンテナであって、回転台80の上に載置されている。図15に示すように、受信アンテナ60a1はXY平面内で開口面の方向に主ビームを有する。コンピュータ10は、第1の実施形態と同様の校正処理(図3参照。)を行う。ただし、第1に実施形態に比較して、図3の校正処理のステップS4、図5の振幅調整処理のステップS34及び図6の位相調整処理のステップS54において、実質的に散乱体アンテナ50a−nのみから単独で電波を放射させるときに、回転台80を、受信アンテナ60a1の主ビームを実質的に散乱体アンテナ50a−nに向けるように回転させる。
本実施形態によれば、指向性の受信アンテナ60a1を用いて、第1の実施形態と同様に、簡便に、かつ高い精度でアンテナ評価装置の校正を行うことができる。
なお、本実施形態において、受信アンテナ60a1の主ビームの幅が、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5の間隔(本実施形態では、72度である。)に比較して十分に狭い場合には、図3の校正処理のステップS4、図5の振幅調整処理のステップS34及び図6の位相調整処理のステップS54において、散乱体アンテナ50a−n以外の各散乱体アンテナから電波をそれぞれ放射してもよい。
第7の実施形態.
図16は、本発明の第7の実施形態に係るアンテナ評価装置の散乱体アンテナ50a−1〜50a−5、受信アンテナ60asの配置を示す説明図であり、図17は、図16の受信アンテナ60asの水平偏波の指向特性及び垂直偏波の指向特性を示す特性図である。本実施形態は、第1の実施形態に比較して、アンテナ評価装置の校正時に、校正用受信アンテナ60aに代えて回転台80に載置されたシュペルトップダイポールアンテナである校正用受信アンテナ60asを用いたことを特徴としている。さらに、アンテナ評価装置の校正時に実質的に散乱体アンテナ50a−nのみから単独で電波を放射させるときに、受信アンテナ60asの交差偏波識別度(XPD(cross−polarization discrimination))が実質的に最大になるように回転台80を回転させることを特徴としている。
図17において、受信アンテナ60asは、主偏波である垂直偏波に対してXY平面内で無指向であるが、交差偏波である水平偏波に対してY軸の正の方向及び負の方向にそれぞれヌルを有する。このため、Y軸の正の方向及び負の方向において、交差偏波識別度が最大となる。本実施形態において、コンピュータ10は、第1の実施形態と同様の校正処理(図3参照。)を行う。ただし、第1に実施形態に比較して、図3の校正処理のステップS4、図5の振幅調整処理のステップS34及び図6の位相調整処理のステップS54において、実質的に散乱体アンテナ50a−nのみから単独で電波を放射させるときに、回転台80を、受信アンテナ60asの交差偏波識別度が実質的に最大になるように回転させる。例えば、図16に示すように、散乱体アンテナ50a−2のみから単独で電波を放射させるときに、回転台80を、受信アンテナ60asの交差偏波識別度が実質的に最大になるように回転させる。
一般に、第1の実施形態に係る受信アンテナ60aが理想的な半波長ダイポールであるときには、水平偏波の電波を受信しない。しかしながら、実際には、受信アンテナ60aに取りつられているバラン及びケーブル(図示せず。)の影響により、受信アンテナ60aによって水平偏波の電波も受信される。本実施形態によれば、実質的に散乱体アンテナ50a−nのみから単独で電波を放射させるときに、回転台80を、受信アンテナ60asの交差偏波識別度が大きい方位を散乱体アンテナ50a−nに向けるように回転させるので、第1の実施形態に比較して、より高い精度で受信信号S60aの振幅を測定でき、より高い精度でアンテナ評価装置を校正できる。
第8の実施形態.
図18は、本発明の第8の実施形態に係るアンテナ評価装置の散乱体アンテナ50a−1〜50a−5、受信アンテナ60a2の配置を示す説明図であり、図19は、図18の受信アンテナ60a2の指向特性を示す特性図である。本実施形態は、第1の実施形態に比較して、受信アンテナ支持台102の頂点部に回転台80を設け、アンテナ評価装置の校正時に、無指向の校正用受信アンテナ60aに代えて回転台80に載置された指向性の校正用受信アンテナ60a2を用いたことを特徴としている。
図19に示すように、受信アンテナ60a2はXY平面内で指向性を有する。コンピュータ10は、第1の実施形態と同様の校正処理(図3参照。)を行う。ただし、第1に実施形態に比較して、図3の校正処理のステップS3の次に、回転台80を、360/K度ずつ回転させる毎に、ステップS4及びS5の各処理を行う。そして、回転台80を360/K度ずつK回だけ繰り返し回転させることにより受信アンテナ60a2を1回転させて得られたK個の振幅の平均値とK個の位相の平均値とに基づいて、ステップS6以降の各処理を行う。同様に、図5の振幅調整処理のステップS33の次に、回転台80を、360/K度ずつK回だけ回転させる毎に、ステップS34及びS35の各処理を行う。そして、得られたK個の振幅の平均値に基づいて、ステップS36以降の各処理を行う。さらに、同様に、図6の位相調整処理のステップS54の次に、回転台80を、360/K度ずつK回だけ回転させる毎に、ステップS55及びS56の各処理を行う。そして、得られたK個の振幅の平均値に基づいて、ステップS57以降の各処理を行う。ただし、パラメータKは、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5の総数5以上の値に設定される。
本実施形態によれば、散乱体アンテナ50a−nのみから単独で電波を放射するときに、受信アンテナ60a2を360/K度ずつK回だけ回転させて、受信信号S60aの振幅の平均値及び位相の平均値を算出し、振幅の平均値及び位相の平均値を用いて校正処理を行うので、指向性の受信アンテナ60a2を用いて、第1の実施形態と同様に、簡便に、かつ高い精度でアンテナ評価装置の校正を行うことができる。
第1の実施形態の第1の変形例.
図20は、本発明の第1の実施形態の第1の変形例に係る多重波制御測定装置200Dの構成を示すブロック図である。また、図21は、図20のコンピュータ10によって実行されるアンテナ評価装置の校正処理を示すフローチャートであり、図22は、図21のステップS10Aにおいて実行される振幅調整処理を示すフローチャートであり、図23は、図22のステップS11Aにおいて実行される位相調整処理を示すフローチャートである。本変形例は、第1の実施形態に比較して、スイッチSW1〜SW5をさらに備えたことを特徴としている。
図20において、スイッチSW1は散乱体アンテナ50a−1と減衰器14a−1との間に挿入され、スイッチSW2は散乱体アンテナ50a−2と減衰器14a−2との間に挿入され、スイッチSW3は散乱体アンテナ50a−3と減衰器14a−3との間に挿入され、スイッチSW4は散乱体アンテナ50a−4と減衰器14a−4との間に挿入され、スイッチSW5は散乱体アンテナ50a−5と減衰器14a−5との間に挿入される。コンピュータ10は、スイッチSW1〜SW5のオンオフ動作をそれぞれ制御する。
図21のアンテナ評価装置の校正処理は、第1の実施形態に係るアンテナ評価装置の校正処理(図3参照。)に比較して、ステップS2及びS3における各処理をステップS2Aにおける処理に置き換え、ステップS10及びS11における各処理をステップS10A及びS11Aにそれぞれ置き換えたものである。図21のステップS2Aにおいて、コンピュータ10は、スイッチSWnをオンし、スイッチSWn以外のスイッチをオフし、減衰器14−nの減衰量をゼロに設定し、移相器13−nの移相量をゼロに設定する。また、ステップS10Aにおいて、目標振幅を用いて図22の振幅調整処理を行い、ステップS11Aにおいて、目標位相を用いて図23の位相調整処理を行う。
図22の振幅調整処理は、第1の実施形態に係る振幅調整処理(図5参照。)に比較して、ステップS32及びS33における各処理を、ステップS32Aに置き換えたものである。ステップS32Aにおいて、コンピュータ10は、スイッチSWnをオンし、スイッチSWn以外のスイッチをオフし、減衰器14−nの減衰量をゼロに設定し、移相器13−nの移相量をゼロに設定する。また、図23の位相調整処理は、第1の実施形態に係る位相調整処理(図6参照。)に比較して、ステップS52及びステップS53における各処理を、ステップS52Aにおける処理に置き換えたものである。ステップS52Aにおいて、コンピュータ10は、スイッチSWnをオンし、スイッチSWn以外のスイッチをオフし、減衰器14−nに対する減衰量制御電圧を基準減衰量制御電圧VAa−nに設定し、移相器13−nの移相量Pa−nをゼロに設定する。
また、コンピュータ10は、全てのスイッチSW1〜SW5をオンした後に、図7の評価処理を実行する。
本変形例によれば、各散乱体アンテナ50a−1〜50a−5から単独で電波を送信するときに、当該電波を送信する散乱体アンテナ以外の散乱体アンテナと送信回路30aとの間の各接続を遮断する。従って、第1の実施形態に比較して、アンテナ評価装置を高精度で校正できる。
なお、スイッチSW1を分配器12aと移相器13a−1との間に挿入し、スイッチSW2を分配器12aと移相器13a−2との間に挿入し、スイッチSW3を分配器12aと移相器13a−3との間に挿入し、スイッチSW4を分配器12aと移相器13a−4との間に挿入し、スイッチSW5を分配器12aと移相器13a−5との間に挿入してもよい。この場合は、ステップS2A、S32A及びステップS52Aにおいて、減衰器14a−n以外の減衰器の各減衰量を最大値に設定する。
第1の実施形態の第2の変形例.
図24は、本発明の第1の実施形態の第2の変形例に係る多重波制御測定装置200Eの構成を示すブロック図である。また、図25は、図24のコンピュータ10によって実行されるアンテナ評価装置の校正処理を示すフローチャートである。本変形例は、第1の実施形態に比較して、信号発生器22aからの送信信号S22aを所定の遅延時間だけ遅延させて送信信号S22adを発生して分配器12aに出力する遅延回路90をさらに備えたことを特徴としている。コンピュータ10は、送信信号S22aを上記所定の遅延量だけ遅延させるように、遅延回路90を制御する。また、分配器12aは、送信信号S22adを5分配して移相器13a−1〜13a−5にそれぞれ出力する。
図25のアンテナ評価装置の校正処理は、第1の実施形態に係るアンテナ評価装置の校正処理(図3参照。)に比較して、ステップS1における処理の前に、始めに、ステップS0における処理を実行する点が異なる。ステップS0において、コンピュータ10は、遅延回路90における遅延時間を0に設定する。コンピュータ10は、図25の校正処理の間は上記遅延時間を0に設定する一方、図7の評価処理の間は上記遅延時間を所定値(0も含む)に設定する。
本変形例は、第1の実施形態と同様の特有の効果を奏する。なお、本変形例において、ステップS0において遅延回路90における遅延時間を0に設定したが、本発明はこれに限らず、0以外の所定値に設定してもよい。
第1の実施形態の第3の変形例.
図26は、本発明の第1の実施形態の第3の変形例に係る多重波制御測定装置200Fの構成を示すブロック図である。また、図27は、図26のコンピュータ10によって実行されるアンテナ評価装置の校正処理を示すフローチャートである。本変形例は、第1の実施形態に比較して、信号発生器22aからの送信信号S22aに対して所定のフェージング生成処理を行って送信信号S22afを発生して分配器12aに出力するフェージング回路91さらに備えたことを特徴としている。フェージング回路91は、送信信号S22aに対して所定の遅延時間及び位相調整量を付加して出力する。フェージング回路91は、コンピュータ10の制御下で、受信アンテナ60aの指向性、到来波の情報、移動速度等の条件を仮想的に設定し、受信アンテナ60aが移動した場合に受信されるであろう信号を出力する。この出力信号は、フェージングに相当する時間的な変動を含む。このように、フェージング回路91は、受信アンテナ60aが移動することによって生じるフェージングを仮想的に発生させることができる。より具体的には、フェージング回路91は、特許文献2に開示されるようなフェージングシミュレータに基づいて構成され、コンピュータ10からの遅延時間、受信電力、ドップラー周波数、及び位相の各パラメータを含むフェージング制御信号に基づいて、送信信号S22aに対して所定の遅延時間及び位相調整量を付加して、送信信号S22afとして分配器12aに出力する。分配器12aは、送信信号S22afを5分配して移相器13a−1〜13a−5にそれぞれ出力する。
図27のアンテナ評価装置の校正処理は、第1の実施形態に係るアンテナ評価装置の校正処理(図3参照。)に比較して、ステップS1における処理の前に、始めに、ステップS0Aにおける処理を実行する点が異なる。ステップS0Aにおいて、コンピュータ10は、フェージング回路91における、遅延時間、受信電力、ドップラー周波数、及び位相をそれぞれ所定値に設定する。具体的には、遅延時間を0に設定し、受信電力を最大値に設定し、ドップラー周波数を0Hzに設定し、位相を一定の値に設定する。一方、コンピュータ10は、図7の評価処理の間は遅延時間、受信電力、ドップラー周波数、及び位相を、所定のフェージング環境を生成するように設定する。
本変形例は、第1の実施形態と同様の特有の効果を奏する。なお、ステップS0Aにおいて遅延時間、受信電力、ドップラー周波数、及び位相を、上述した各所定値以外の値にそれぞれ設定してもよい。
第2の実施形態の第1の変形例.
図28は、本発明の第2の実施形態の第1の変形例に係る多重波制御測定装置200Gの構成を示すブロック図である。本変形例は、第2の実施形態に比較して、第1の実施形態の第2の変形例と同様に、信号発生器22aからの送信信号S22aを所定の遅延時間だけ遅延させて送信信号S22adを発生して分配器12aに出力する遅延回路90をさらに備えたことを特徴としている。コンピュータ10は、送信信号S22aを上記所定の遅延量だけ遅延させるように、遅延回路90を制御する。また、分配器12aは、送信信号S22adを5分配して移相器13a−1〜13a−5にそれぞれ出力する。
図28において、コンピュータ10は、図9のアンテナ評価装置の校正処理を実行するときに、始めに、遅延回路90における遅延時間を0に設定する。コンピュータ10は、校正処理の間は上記遅延時間を0に設定する一方、評価処理の間は上記遅延時間を所定値(0も含む)に設定する。
本変形例は、第2の実施形態と同様の特有の効果を奏する。なお、本変形例において、校正処理の間は遅延回路90における遅延時間を0に設定したが、本発明はこれに限らず、0以外の所定値に設定してもよい。
第2の実施形態の第2の変形例.
図29は、本発明の第2の実施形態の第2の変形例に係る多重波制御測定装置200Hの構成を示すブロック図である。本変形例は、第2の実施形態に比較して、第1の実施形態の第3の変形例と同様に、信号発生器22aからの送信信号S22aに対して所定のフェージング生成処理を行って送信信号S22afを発生して分配器12aに出力するフェージング回路91さらに備えたことを特徴としている。また、分配器12aは、送信信号S22afを5分配して移相器13a−1〜13a−5にそれぞれ出力する。
図29において、コンピュータ10は、アンテナ評価処理の校正処理を実行するときは、始めに、フェージング回路91における、遅延時間、受信電力、ドップラー周波数、及び位相をそれぞれ所定値に設定する。具体的には、遅延時間を0に設定し、受信電力を最大値に設定し、ドップラー周波数を0Hzに設定し、位相を一定の値に設定する。一方、コンピュータ10は、評価処理の間は遅延時間、受信電力、ドップラー周波数、及び位相を、所定のフェージング環境を生成するように設定する。
本変形例は、第2の実施形態と同様の特有の効果を奏する。なお、アンテナ評価装置の校正処理時に遅延時間、受信電力、ドップラー周波数、及び位相を、上述した各所定値以外の値にそれぞれ設定してもよい。
第3の実施形態の第1の変形例.
図30は、本発明の第3の実施形態の第1の変形例に係る多重波制御測定装置200Iの構成を示すブロック図である。本変形例は、第3の実施形態に比較して、第1の実施形態の第2の変形例と同様に、信号発生器22aからの送信信号S22aを所定の遅延時間だけ遅延させて送信信号S22adを発生して分配器40に出力する遅延回路90をさらに備えたことを特徴としている。コンピュータ10は、送信信号S22aを上記所定の遅延量だけ遅延させるように、遅延回路90を制御する。また、分配器40は、送信信号S22adを2分配して分配器12a,12bにそれぞれ出力する。
図30において、コンピュータ10は、図9のアンテナ評価装置の校正処理を実行するときに、始めに、遅延回路90における遅延時間を0に設定する。コンピュータ10は、校正処理の間は上記遅延時間を0に設定する一方、評価処理の間は上記遅延時間を所定値(0も含む)に設定する。
本変形例は、第3の実施形態と同様の特有の効果を奏する。なお、本変形例において、校正処理の間は遅延回路90における遅延時間を0に設定したが、本発明はこれに限らず、0以外の所定値に設定してもよい。
第3の実施形態の第2の変形例.
図31は、本発明の第3の実施形態の第2の変形例に係る多重波制御測定装置200Jの構成を示すブロック図である。本変形例は、第3の実施形態に比較して、第1の実施形態の第3の変形例と同様に、信号発生器22aからの送信信号S22aに対して所定のフェージング生成処理を行って送信信号S22afを発生して分配器40に出力するフェージング回路91さらに備えたことを特徴としている。また、分配器40は、送信信号S22afを2分配して分配器12a,12bにそれぞれ出力する。
図29において、コンピュータ10は、アンテナ評価処理の校正処理を実行するときは、始めに、フェージング回路91における、遅延時間、受信電力、ドップラー周波数、及び位相をそれぞれ所定値に設定する。具体的には、遅延時間を0に設定し、受信電力を最大値に設定し、ドップラー周波数を0Hzに設定し、位相を一定の値に設定する。一方、コンピュータ10は、評価処理の間は遅延時間、受信電力、ドップラー周波数、及び位相を、所定のフェージング環境を生成するように設定する。
本変形例は、第3の実施形態と同様の特有の効果を奏する。なお、アンテナ評価装置の校正処理時に遅延時間、受信電力、ドップラー周波数、及び位相を、上述した各所定値以外の値にそれぞれ設定してもよい。
なお、上記各実施形態及びその変形例において、送信回路30a,30bは、入力される送信信号を5個の送信信号に分配して分配後の各送信信号の位相及び振幅を変化させたが、本発明はこれに限られず、入力される送信信号を2個以上の複数の送信信号に分配して分配後の各送信信号の位相及び振幅を変化させてもよい。
また、上記各実施形態及びその変形例において、散乱体アンテナ50a−1〜50a−5,50b−1〜50b−5を円周上に等間隔に配置したが、本発明はこれに限られず、2個以上の複数の散乱体アンテナを、評価用受信アンテナの周囲に配置すればよい。
さらに、上記各実施形態及びその変形例において、送信回路30aは、減衰回路14aにおいて移相後の送信信号を減衰させた。しかしながら、本発明はこれに限られず、減衰回路14aに代えて、移相後の送信信号を増幅する増幅器を設けてもよい。この場合、目標振幅は、各散乱体アンテナ50a−nから単独で放射された電波の受信信号S60aの最大値に設定される。減衰回路14bもまた、減衰回路14aと同様に増幅回路に置き換えてもよい。また、第2の実施形態において、減衰器72及び84に代えて増幅器を設けてもよい。
以上詳述したように、本発明に係るアンテナ評価装置及びアンテナ評価方法によれば、上記各散乱体アンテナから単独で電波を放射するように上記送信手段を制御し、上記各散乱体アンテナから単独で放射された電波に基づいて、上記評価用受信アンテナに代えて校正用受信アンテナを用いて各測定された受信信号の振幅が同一の目標振幅に一致しかつ各測定された受信信号の位相が同一の目標位相に一致するように上記送信手段を制御し、上記各散乱体アンテナ毎の送信手段の振幅変化量及び移相量を記憶装置に格納する校正を実行するので、送信手段と受信手段との間の経路全体において生じる通過損失の受信信号の振幅及び位相に対する影響を取り除くことができ、従来技術に比較して容易にかつ正確に校正を行うことができ、評価用受信アンテナの評価精度を向上できる。
10…コンピュータ、
10m…メモリ、
10i…入力装置、
11a,11b…D/Aコンバータ、
12a,12b…分配器、
13a,13b…移相回路、
13a−1〜13a−5,13b−1〜13b−5…移相器、
14a,14b…減衰回路、
14a−1〜14a−5,14b−1〜14b−5…減衰器、
20a,20b…ネットワークアナライザ、
21a,21b…受信機、
22a…信号発生器、
40…分配器、
50a,50b…散乱体アンテナ群、
50a−1〜50a−5,50b−1〜50b−5…散乱体アンテナ、
60a,60b,60av,60ah,60as,60at,60a1,60a2…校正用受信アンテナ、
72…振幅位相調整回路、
73…移相器、
74,84…減衰器、
80…回転台、
90…遅延回路、
91…フェージング回路、
101…散乱体アンテナ支持台、
102…受信アンテナ支持台、
200A,200B,200C,200D,200E,200F,200G,200H,200I,200J…多重波制御測定装置、
SW,SW1〜SW5…スイッチ。