JPWO2010126099A1 - 超電導線材の電流端子構造及びこの電流端子構造を備える超電導ケーブル - Google Patents

超電導線材の電流端子構造及びこの電流端子構造を備える超電導ケーブル Download PDF

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Abstract

基板上に超電導層を形成した超電導線材をフォーマに1層以上巻き付けた超電導導体であって、前記フォーマの直上に巻き付けられた1層目の超電導線材が、基板側が外側に、超電導層側が内側になるように配置されている超電導導体の電流端子構造において、前記1層目の超電導線材の端部の超電導層の内側に向いた面と、接続用超電導線材の超電導層の外側に向いた面の一部とを対面させて接続したことを特徴とする超電導導体の電流端子構造。

Description

本発明は、超電導線材の電流端子構造及びこの電流端子構造を備える超電導ケーブルに関する。
一般に、超電導導体は、巻き芯(フォーマ)にテープ状の超電導線材を多層に巻き付けた構造を有する。使用される薄膜系の超電導線材は、基板上に中間層を介して、例えばReBCO(Re−Ba−Cu−O、Reは希土類金属)からなる超電導層を形成し、その上に銀からなる安定化層を形成した構造を有する。
このような超電導導体に電流を流す場合、各超電導線材の超電導層に均等に電流が流れるようにし、また電流を供給する電流リードとの接続において接続部の発熱が小さくなるように、電流端子部の接続抵抗が低くなければならない。
超電導線材は、表と裏が存在し、通常、電流端子での接続は、超電導層側が外側または表側になるように接続する。基板側が表になるように接続すると、基板は高い抵抗を有するため、大きなジュール熱が発生し、非効率になる。
超電導層としてYBCO(Y−Ba−Cu−O)層を用いたYBCO超電導線材の面に垂直な磁場をかけた場合、大きな交流損失が発生する。即ち、磁場が大きくなると、磁場が超電導線材に侵入し、侵入しようとする方向のローレンツ力とピン止め力が釣り合う。交流の場合、磁場が周期的に変動し、ピン止め力に逆らって動くため、交流損失が生ずる。
しかし、超電導線材の面に平行な磁場をかけた場合、超電導層は1μm程度と非常に薄いため、磁場の侵入する領域が薄く、交流損失は非常に小さくなる。例えば、YBCO超電導線材を使用してケーブルをつくると、平行磁場が主であるため、交流損失は飛躍的に小さくなる。ただし、実際の超電導線材の幅は有限であるため、ケーブルの断面は線材間にギャップが存在し、このギャップに磁場が吸い寄せられるような形となる。そして、この部分に垂直磁場の成分が生じ、交流損失の大部分を分担することになる(例えば、非特許文献1参照)。
このように垂直磁場を減らすことがYBCO超電導線材を電力機器へ利用する際に非常に重要である。
一方、基板が磁性を有する場合、磁場は磁性基板に吸い寄せられるので、複雑な磁力線を描く。即ち、線材の端部で磁束が集中し、この部分に垂直磁場が多くなり、損失が大きくなる(例えば、非特許文献1参照)。
図7は、通常の多層超電導ケーブルの電流端子部を示す。図4において、フォーマ21の周囲に、1層目の第1の超電導線材22と、2層目の第2の超電導線材23とが、スパイラル状に巻回されている。この場合、1層目の第1の超電導線材22は、基板22aとこの基板22a上に形成された超電導層22bとからなり、2層目の第2の超電導線材23は、基板23aとこの基板23a上に形成された超電導層23bとからなる。
第1及び第2の超電導線材22,23は、いずれも超電導層22b,23bが表側(外側)になるように配置されている。このように配置された第1及び第2の超電導線材22,23の端部は、段切りにされ、半田固定部24により一体化された電流端子部とされている(例えば、特許文献1参照)。
このような電流端子部によると、接続抵抗は非常に小さく、各超電導層への分流の度合いは、超電導層の巻きスパイラルにより決定され、この巻きスパイラルを調整することで、ほぼ均等に分流することが出来る。
図8は、基板が磁性を有する多層超電導ケーブルの電流端子部を示す。図5において、フォーマ21の周囲に、1層目の第1の超電導線材22と、2層目の第2の超電導線材23とが、スパイラル状に巻回されている。この場合、1層目の第1の超電導線材22を、通常の配置とは逆に、磁性を有する基板22a側が超電導ケーブルの外側を向くように配置し、2層目の第2の超電導線材23を、超電導層23bが超電導ケーブルの外側を向くように配置して導体化すると、磁性の影響を超電導導体内部にクローズし、交流損失を低く抑えることが出来る(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、1層目の第1の超電導線材22の超電導層22bが裏側(内側)を向くように配置したときの電流端子部は、接続抵抗が大きくなり、1層目と2層目に同じ電流が分担されない。即ち、十分な電極容量を持たないため、2層目の第2の超電導線材23を流れる電流が臨界電流Icを越えた段階で、ジュール熱が発生し、交流損失は非常に大きくなる。
N. Amemiya and M. Nakahata, Physica C 463-465 (2007) 775-780
特開2004−87265号公報 特開2008−47519号公報
本発明は、以上のような事情の下になされ、接続抵抗が低く、交流損失の少ない超電導線材の電流端子構造及びこの電流端子構造を備える超電導ケーブルを提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、基板上に超電導層を形成した超電導線材をフォーマに1層以上巻き付けた超電導導体であって、前記フォーマの直上に巻き付けられた1層目の超電導線材が、基板側が外側に、超電導層側が内側になるように配置されている超電導導体の電流端子構造において、前記1層目の超電導線材の端部の超電導層の内側に向いた面と、接続用超電導線材の超電導層の外側に向いた面の一部とを対面させて接続したことを特徴とする超電導導体の電流端子構造を提供する。
このような超電導導体の電流端子構造は、前記1層目の超電導線材上に、2層目の超電導線材が、超電導層側が外側に、基板側が内側になるように巻き付けられ、前記接続用超電導線材の超電導層が露出する部分と、前記2層目の超電導線材の端部とが、半田を用いて一体化された半田固定部を具備することが出来る。
この場合、前記接続用超電導線材と前記1層目の超電導線材との接続部に用いる半田の液体窒素温度での抵抗率は、前記半田固定部に用いる半田の抵抗率以下であることが望ましい。また、前記接続用超電導線材と前記1層目の超電導線材との接続部に用いる半田の融点は、前記半田固定部に用いる半田の融点以上であることが望ましい。このとき、前記接続用超電導線材の前記半田固定部との接続長bと、前記2層目の超電導線材の前記半田固定部との接続長cとは、b≧cの関係を満たすことが望ましい。
本発明の第2の態様は、基板上に超電導層を形成した超電導線材をフォーマに4層以上巻き付けた超電導導体であって、奇数層目の超電導線材が、基板側が外側に、超電導層側が内側になるように配置されている超電導導体の電流端子構造において、前記奇数層目の超電導線材の端部の超電導層の内側に向いた面と、接続用超電導線材の超電導層の外側に向いた面の一部とを対面させて接続したことを特徴とする超電導導体の電流端子構造を提供する。
このような超電導導体の電流端子構造は、前記奇数層目の超電導線材上に、前記奇数プラス1層目の超電導線材が、超電導層側が外側に、基板側が内側になるように巻き付けられ、前記接続用超電導線材の超電導層が露出する部分と、前記奇数プラス1層目の超電導線材の端部とが、半田を用いて一体化された半田固定部を具備することが出来る。
この場合、前記接続用超電導線材と前記奇数層目の超電導線材との接続部に用いる半田の液体窒素温度での抵抗率は、前記半田固定部に用いる半田の抵抗率以下であることが望ましい。また、前記接続用超電導線材と前記奇数層目の超電導線材との接続部に用いる半田の融点は、前記半田固定部に用いる半田の融点以上であることが望ましい。このとき、前記接続用超電導線材の前記半田固定部との接続長bと、前記奇数プラス1層目の超電導線材の前記半田固定部との接続長cとは、b≧cの関係を満たすことが望ましい。
本発明の第3の態様は、以上の電流端子構造を具備することを特徴とする超電導ケーブルを提供する。
本発明によると、接続抵抗が低く、交流損失の少ない超電導線材の電流端子構造及びこの電流端子構造を備える超電導ケーブルが提供される。
本発明の一実施形態に係る超電導線材の電流端子構造を示す断面図である。 本発明の他の実施形態に係る超電導線材の電流端子構造を示す断面図である。 本発明の他の実施形態に係る超電導線材の電流端子構造を示す断面図である。 本発明の他の実施形態に係る超電導線材の電流端子構造を示す断面図である。 本発明の他の実施形態に係る超電導線材の電流端子構造を示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る超電導線材の電流端子構造を作製する手順を示す概略図である。 本発明の一実施形態に係る超電導線材の電流端子構造を作製する手順を示す概略図である。 本発明の一実施形態に係る超電導線材の電流端子構造を作製する手順を示す概略図である。 本発明の一実施形態に係る超電導線材の電流端子構造を作製する手順を示す概略図である。 本発明の一実施形態に係る超電導線材の電流端子構造を作製する手順を示す概略図である。 本発明の一実施形態に係る超電導線材の電流端子構造を作製する手順を示す概略図である。 従来の多層超電導ケーブルの電流端子構造を示す断面図である。 基板が磁性を有する従来の多層超電導ケーブルの電流端子構造を示す断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る2層構造の超電導ケーブルの電流端子部の断面図である。なお、図1(以下の図も同様)では、超電導ケーブルの上半分の断面が記載され、下半分は省略されている。
図1において、フォーマ1の周囲に、1層目の第1の超電導線材2と、2層目の第2の超電導線材3とが、スパイラル状に巻回されている。この場合、1層目の第1の超電導線材2は、基板2aとこの基板2a上に形成された超電導層2bとからなる線材Aと、その端部に接続された、基板4aとこの基板4a上に形成された超電導層4bとからなる接続用線材Bとにより構成されている。なお、2層目の第2の超電導線材3は、基板3aとこの基板3a上に形成された超電導層3bとから構成されている。
第1の超電導線材2では、線材Aは基板2aが表側(外側)になるように配置され、接続用線材Bは超電導層4bが表側(外側)になるように配置されており、即ち、線材Aの超電導層2bと接続用線材Bの超電導層4bとが対面している。また、第2の超電導線材3は、超電導層3bが表側(外側)になるように配置されている。
このように配置された第1の超電導線材2及び第2の超電導線材3の端部は、半田固定部5により一体化されている。なお、第1の超電導線材2と第2の超電導線材3の端部の一体化による電流端子構造の形成の具体的方法について、後述する。
以上のように構成される超電導線材の電流端子構造は、線材Aは、基板2aが表側(外側)になるように配置されているため、交流損失が低減され、また、接続用線材Bは、超電導層4bが表側(外側)になるように配置され、線材Aの超電導層2bと接続用線材Bの超電導層4bとが合わされているため、第1の超電導線材2と第2の超電導線材3に流れる電流が均一であり、接続抵抗も低い。
この場合、第1の超電導線材2において、線材Aと接続用線材Bの接続に用いる半田の融点は、半田固定部5に用いる半田の融点以上とすることが望ましい。また、線材Aと接続用線材Bの接続に用いる半田の液体窒素温度での抵抗値は、半田固定部5に用いる半田の液体窒素温度における抵抗値以下とすることが望ましい。なお、液体窒素温度とは、電流端子構造を有する超電導ケーブル等の運転時温度を意味し、具体的には、液体窒素を冷媒に利用したときの63K〜90K程度である。
また、接続用線材Bの半田固定部5との接続長(剥き出し長)bと第2の超電導線材3の半田固定部5との接続長(剥き出し長)cとは、b≧cとすることが望ましい。なお、cの値は、超電導導体の径が15〜100mmの場合に、通常、30mm以上、好ましくは50〜100mmである。また、bの値は、通常、30mm以上、好ましくは50〜110mmである。
長さa、接続長b、cがこのような条件を満たすことにより、基板2aが表側になるように第1の超電導線材2が配置されていても、多層化した超電導導体の電流の均流化をより確実に達成することが出来る。なお、超電導導体の径は、図1の場合では、第1の超電導線材2が形成された層での径であり、言い換えると、接続用線材(第2の超電導線材3)が接続される超電導線材(第1の超電導線材2)が形成する層での導体径を意味する。
図2は、本発明の第2の実施形態に係る4層構造の超電導ケーブルの電流端子構造の断面図である。図2に示す超電導ケーブルは、図1に示す超電導ケーブルに対し、更に3層目の第3の超電導線材6及び4層目の第4の超電導線材7がスパイラル状に巻回されている4層構造を有する。
この場合、3層目の第3の超電導線材6及び4層目の第4の超電導線材7の端部の構造は、段剥ぎにより、第2の超電導線材3の超電導層3bが上方に露出するように、後退して配置されていることを除いて、1層目の第1の超電導線材2及び2層目の第2の超電導線材3の端部の構造と同様である。
即ち、3層目の第3の超電導線材6は、基板6aとこの基板6a上に形成された超電導層6bとからなる線材Cと、その端部に接続された、基板8aとこの基板8a上に形成された超電導層8bとからなる接続用線材Dとにより構成されている。また、この第3の超電導線材6では、線材Cは基板6aが表側(外側)になるように配置され、接続用線材D
は超電導層8bが表側(外側)になるように配置されており、即ち、線材Cの超電導層6bと接続用線材Dの超電導層8bとが対面している。
更に、このような3層目の第3の超電導線材6の上に、基板7aとこの基板7a上に形成された超電導層7bとからなる4層目の第4の超電導線材7が、超電導層7bが表側(外側)になるように配置されている。
このように配置された第1の超電導線材2、第2の超電導線材3、第3の超電導線材6、及び第4の超電導線材7の端部は、半田固定部9により一体化されている。
この場合、第3の超電導線材6において、線材Cと接続用線材Dの端部同士が重なる長さ(接続長)dは、好ましくは50mm以上、より好ましくは50〜100mmとすることがよい。
また、第4の超電導線材7の半田固定部9との接続長fと、超電導線材Dの半田固定部9との接続長eとは、e≧fとすることが望ましい。なお、fの値は、超電導導体の径が15〜100mmの場合に、通常、30mm以上、好ましくは50〜100mmである。
また、eの値は、通常、30mm以上、好ましくは50〜110mmである。
接続長d、e、fがこのような条件を満たすことにより、基板6aが表側になるように第3の超電導線材6が配置されていても、多層化した超電導導体の電流の均流化を確実に達成することが出来る。
図3は、本発明の第3の実施形態に係る6層構造の超電導ケーブルの電流端子構造の断面図である。図3に示す超電導ケーブルは、図2に示す超電導ケーブルに対し、更に5層目の第5の超電導線材13及び6層目の第6の超電導線材14がスパイラル状に巻回されている6層構造を有する。
この場合、4層構造の超電導ケーブルと同様に、5層目の第5の超電導線材13及び6層目の第6の超電導線材14の端部の構造は、段剥ぎにより、第4の超電導線材7の超電導層7bが上方に露出するように、後退して配置されていることを除いて、1層目の第1の超電導線材2及び2層目の第2の超電導線材3の端部の構造と同様である。
即ち、5層目の第5の超電導線材13は、基板とこの基板上に形成された超電導層とからなる線材Eと、その端部に接続された、基板とこの基板上に形成された超電導層とからなる接続用線材Fとにより構成されている。また、この第5の超電導線材13では、線材Eは基板が表側(外側)になるように配置され、接続用線材Fは超電導層が表側(外側)になるように配置されており、即ち、線材Eの超電導層と接続用線材Fの超電導層とが対面している。
更に、このような5層目の第5の超電導線材13の上に、基板とこの基板上に形成された超電導層とからなる6層目の第6の超電導線材14が、超電導層が表側(外側)になるように配置されている。このように配置された第1の超電導線材2、第2の超電導線材3、第3の超電導線材6、第4の超電導線材7、第5の超電導線材13及び第6の超電導線材14の端部は、半田固定部15により一体化されている。
このように、奇数層目、例えば3層目、5層目、7層目の超電導線材について、その端部に接続用線材が接続されたものを用い、その端部の超電導層を一体化することにより、上記と同様の効果を得ることが出来る。半田固定部による一体化は、1層目の超電導線材から最上層の奇数層プラス1層目の超電導線材までの端部について行われる。
この場合、奇数層目の超電導線材と接続用線材との接続長aを好ましくは50mm以上、より好ましくは50〜100mmとすることがよい。また、接続用線材の半田固定部との接続長bと、奇数プラス1層目の超電導線材の半田固定部との接続長cとは、b≧cの関係を満たすことが望ましい。なお、cの値は、超電導導体の径が15〜100mmの場合に、通常、30mm以上、好ましくは50〜100mmである。また、bの値は、通常、30mm以上、好ましくは50〜110mmである。
また、奇数層の超電導線材が磁性を有する基板を含む場合に、特にその効果が発揮される。ここで、「磁性を有する基板」とは、超電導導体を使用する環境温度(代表的には77K)以下において、飽和磁化を有する金属基板のことを意味し、特に、使用時の飽和磁化が0.15T以上のものの場合に本発明の効果を発揮する。なお、磁性金属としては、具体的には、Fe,Co,Ni等を代表とした強磁性体や、これらを基とした合金が挙げられる。
奇数層の超電導線材が磁性を有する基板を含む場合、偶数層の超電導線材は磁性を有する基板を含んでいてもよいし、磁性を有しない基板(例えば、ハステロイ(登録商標))を含む超電導線材(IBAD線材等)を用いてもよい。
図4は、本発明の第4の実施形態に係る3層構造の超電導ケーブルの電流端子構造の断面図である。図4に示す超電導ケーブルは、図1に示す超電導ケーブルに対し、更に3層目に、磁性を有しない基板を含む超電導線材である非磁性超電導線材16がスパイラル状に巻回されている3層構造を有する。
この場合、3層目の非磁性超電導線材16の端部の構造は、段剥ぎにより、第2の超電導線材3の超電導層3bが上方に露出するように、後退して配置されている。
このように配置された第1の超電導線材2、第2の超電導線材3及び非磁性超電導線材16の端部は、半田固定部17により一体化されている。
図5は、本発明の第5の実施形態に係る5層構造の超電導ケーブルの電流端子構造の断面図である。図5に示す超電導ケーブルは、図2に示す超電導ケーブルに対し、更に5層目に、磁性を有しない基板を含む超電導線材である非磁性超電導線材18がスパイラル状に巻回されている5層構造を有する。
この場合、5層目の非磁性超電導線材18の端部の構造は、段剥ぎにより、第4の超電導線材7の超電導層7bが上方に露出するように、後退して配置されている。
このように配置された第1の超電導線材2、第2の超電導線材3、第3の超電導線材6、第4の超電導線材7及び非磁性超電導線材18の端部は、半田固定部19により一体化されている。
このように、3層以上からなる場合であって、最外層が奇数層で終わる場合には、最外層には、磁性を有しない基板を含む超電導線材を用いると、接続用超電導線材が不要になり、よりコンパクトに電流端子構造を形成することができる。
次に、超電導導体の端部の超電導層を一体化する半田固定部の形成方法について、図6A〜図6Fを参照して説明する。
まず、フォーマ1にスパイラル状に巻回された第1及び第2の超電導線材2,3を、図6Aに示すように段剥ぎする。そして、第1及び第2の超電導線材2,3の端部を、冶具11に沿わせてカールして後方に逃がしておく。次いで、図6Bに示すように、接続用線材Bを、超電導層(図では省略)が表側(外側)になるように配置する。
次に、接続用線材Bの超電導層の表面を研磨して平滑にし、フラックスを塗布する。フラックスとしては、例えば、ハロゲン無添加の樹脂系のフラックスを用いることが出来る。そして、フラックスを塗布した上に、例えば厚さ0.1mmの薄い半田テープを巻き付ける。半田テープとしては、例えば、融点(液相線)165℃のSn−43Pb−14Biを用いることが出来る。
その後、図6Cに示すように、カールされて後方にある1層目の第1の超電導線材2の線材Aの端部を治具11から外して、半田テープ上に配置し、押さえのテープ及びヒータを巻く。ヒータの電源をONにして半田テープの融点以上に加熱する。このような加熱により半田テープが溶融すると、接続用線材Bの超電導層と、第1の超電導線材2の超電導層とが接着される。
次に、図6Dに示すように、半田テープにより接続された第1の超電導線材2の端部上に、2層目の第2の超電導線材3を戻す。このとき、第2の超電導線材3の剥き出し長bと、接続用線材Bの剥き出し長cとが、b≧cの関係とする。
この図6Dに示す構造に対し、第1の超電導線材2と第2の超電導線材3とを一括して電気的に接続する処理を行う。以下、その手順について説明する。
図6Eに示すように、第2の超電導線材3の剥き出し長bと、接続用線材Bの剥き出し長cを覆うように、網状テープ12を、1層ないし数層の巻き数で巻き付ける。網状テープ12は、良導電性の金属細線を編み上げたものである。例えば、銅の平編み線を好ましく用いることが出来る。
次に、低融点金属である半田(例えば、Sn−43Pb−14Bi)を溶融し、網状テープ12の網目に浸透させ、網状テープ12と第2の超電導線材3及び接続用線材Bとを半田により接合し、1層目の第1の超電導線材2と2層目の第2の超電導線材3の端部を一体化する。参照数字5は、半田固定部を示す。
この一体化作業は、例えば、図6Fに示すように、るつぼに収容された溶融半田の中に、1層目の第1の超電導線材2と2層目の第2の超電導線材3の網状テープ12で覆われた部分を浸漬し、半田を網状テープ12から第1及び第2の超電導線材2,3まで浸透させることにより、行うことが出来る。なお、網状テープ12の代わりに、網状ではない良導電性の金属細線を用いて、接続用線材Bと第2の超電導線材3の剥き出し部分を巻き付けてもよい。
このような第1及び第2の超電導線材2,3の端部の一体化によると、電気抵抗の高い半田の厚みが薄くて済むため、第1及び第2の超電導線材2,3の端末領域における接続抵抗を非常に小さくすることが出来る。また、網状テープ12を構成する良導電性の金属細線が電流の通路となることから、第1及び第2の超電導線材2,3の端部の接続抵抗が均一となる。
ここで、1層目の第1の超電導線材2と2層目の第2の超電導線材3の端部を一体化し、半田固定部5を形成する半田は、第1の超電導線材2の線材Aと線材Bの接合の際に用いる半田よりも融点が低いものが望ましい。この融点の差は、大きければ大きいほど良く、一体化を行う際の施工温度は、超電導線材2の線材Aと接続用線材Bの接合に使用した半田の融点を超えないことが望ましい。
また、第1の超電導線材2の線材Aと線材Bの接合の際に用いる半田は融点(液相線)が250℃以下の低融点金属であることが望ましい。先に説明したように、接続用線材Bの上に、半田テープを配し、1層目の第1の超電導線材2の線材Aを半田テープ上に配置し、接続用線材B及び1層目の第1の超電導線材2を半田テープの融点以上に加熱する。このとき加熱が高温の場合には、接続用線材Bと第1の超電導線材2の超電導層が劣化するため、第1の超電導線材2の線材Aと接続用線材Bの接合の際に用いる半田は低融点金属であることが望ましく、超電導線材の耐熱性から見ても、250℃以下、更に好ましくは、200℃未満が望ましい。
なお、以下の実施例では、下記表1に記載の半田1〜5を用いた。なお、表1における室温は25℃、液体窒素温度は77Kを意味する。
Figure 2010126099
上記表1に示す半田1〜5として、以下の製品を用いた。
半田1: BI165(株式会社日本スペリア社製)
半田2: 低温プラスタン120(株式会社青木メタル製)
半田3: BI57(株式会社日本スペリア社製)
半田4: H60A(株式会社青木メタル製)
半田5: SN100C(株式会社日本スペリア社製)
実施例
以下本発明の実施例を示し、本発明をより具体的に説明するとともに、本発明の効果を説明する。
実施例1
絶縁被覆された導体線を多層に撚り合わされて構成された20mm径のフォーマ上に、1層目の第1の超電導線材を基板が表側(外側)になるようにスパイラル状に巻き付けた。なお、第1及び第2の超電導線材としては、磁性を有するNi5Wからなる基板上にYBCO層を形成したYBCO線材を用いた。
次に、1層目の第1の超電導線材と同一の構造の2層目の第2の超電導線材を、超電導層の面が表側(外側)になるようにスパイラル状に巻き付けた。
その後、図3に示す方法により、接続用線材、網状テープ及び表1に記載の半田1〜5からなるテープ状半田を用い、第1及び第2の超電導線材の端部を一体化し、図1に示すような構造を得た。この場合、第1の超電導線材2の線材Aと接続用線材Bの接合の際に用いる半田(以下、線材の接続部と言う)の種類と半田固定部5を形成する半田の種類、第1の超電導線材の線材Aと接続用線材Bの端部同士が重なる接続長aを種々変化させて、表1に示すような試料を得た。なお、このときの超電導導体径(第1の超電導線材での導体径)は50mmとし、第2の超電導線材の剥き出し長(半田固定部との接続長)bと、接続用線材Bの剥き出し長(半田固定部との接続長)cは同じ長さとし、第1の超電導線材2の線材Aと接続用線材Bの接続部における半田の厚みは0.1mmとした。
これらの試料について、液体窒素中で約1000A通電し、第1の超電導線材と第2の超電導線材への分流割合を測定したところ、下記表2に示す結果を得た。
Figure 2010126099
上記表2から、いずれの試料も、1層目と2層目の超電導線材への許容し得る程度の分流が行われているが、試料1−1〜1−4のように、線材の接続部の半田と半田固定部の半田で、同種のものを用いた場合、線材の接続長(距離a)が長いほど良い。一方、試料1−5〜1−28のように、線材の接続部の半田と半田固定部の半田が異種であり、かつ、接続部の半田の液体窒素中での抵抗率が半田固定部より低いと線材の接続長(距離a)の依存度は小さくなる。特に、試料1−9〜1−12、1−17〜1−28のように、一体化時の施工温度が線材の接続部に用いた半田の融点を超えないならば、接続長の依存度はさらに小さくなる。一体化時の施工温度をこのように制御するためには、接続用線材Bと超電導線材2の線材Aとの接続部に用いる半田の融点は、前記半田固定部に用いる半田の融点より高いことが望ましい。
一方、試料1−29〜1−32のように、線材の接続部の半田と半田固定部の半田が異種であっても、線材の接続部の半田に液体窒素中での抵抗率が半田固定部の半田よりも高いものを使用すると、接続長の依存度は大きくなる。
なお、環境への影響を考えた場合には、用いる半田はPbフリーであることが望ましく、その場合には、試料1−21〜1−24のように、Pbフリー半田の中から、接続部の半田の液体窒素中での抵抗率が半田固定部の半田よりも低いもの、または、Pbフリー半田で同種を用いることが望ましい。
なお、線材の接続部の抵抗は、「半田の抵抗率×半田の厚み÷接続部の断面積」で調整を行うことができる。前述したように、線材の接続部に使用する半田は、半田固定部との関係より、低融点半田の中でも、比較的高い融点で、かつ、抵抗率の低いものを選択することが好ましいが、超電導線材に対する熱の影響を考慮すると、半田5よりも半田1などが好ましい。
また、第1の超電導線材2の線材Aと線材Bの接合の際に用いる半田の形状としては、テープ状のものが好ましく、このときのテープ厚さは薄くなればなるほど製造が困難である。
つまり、線材の接続部では、半田種類(抵抗率)と半田の厚みが限定されるため、線材の接続部の抵抗の調整においては、前記接続用超電導線材と1層目の超電導線材との接続長aを調整するのが最も好ましい。ただし、接続長aを長くすると、電流端子の半田固定部部分を多くとることとなり、コンパクト性から考えると好ましくなく、望ましくは50mmから100mm程度の接続長とすることが好ましい。
比較例1
実施例1と同様にして、1層目の第1の超電導線材及び2層目の第2の超電導線材をフォーマ上にスパイラル状に巻き付けた後、実施例1とは異なり、接続用線材Bを用いずに、網状テープ及び半田を用いて端部の一体化を行い、図8に示すような構造の試料を得た。
この試料について、液体窒素中で通電し、第1の超電導線材と第2の超電導線材への分流割合を測定したところ、第1の超電導線材へは1%未満、第2の超電導線材へは99%以上であり、第1の超電導線材へは電流は殆ど分流されていなかった。
なお、参考例として、1層目の第1の超電導線材及び2層目の第2の超電導線材ともに非磁性の基板を用い、超電導層の面が表側(外側)になるようにスパイラル状に巻き付け、比較例1と同様に端部の一体化を行い、図7に示すような構造の試料を得た。
この試料について、液体窒素中で通電し、第1の超電導線材と第2の超電導線材への分流割合を測定したところ、第1の超電導線材へは50%、第2の超電導線材へは50%であり、ほぼ均等に分流されていた。
実施例2
実施例1と同様にして、図1に示すような構造を得た。この場合、第2の超電導線材の剥き出し長(半田固定部との接続長)bと、接続用線材Bの剥き出し長(半田固定部との接続長)cの関係を種々変化させて、7つの試料を得た。なお、b<c+10(mm)の試料については1つ、b=c、b>c+10(mm)、b>c+100(mm)の試料については2つずつの試料を得た。なお、このときのbとcの関係性以外は、実施例1の試料1−1〜1−3と同じ条件を用いた。
これらの試料について、液体窒素中で通電し、第1の超電導線材と第2の超電導線材への分流割合を測定したところ、下記表3に示す結果を得た。
Figure 2010126099
上記表3から、いずれの試料も、1層目と2層目の超電導線材への許容し得る程度の分流が行われているが、b=cか又はb>cの時に、特に特に均一な分流が行われていることがわかる。
1,21…フォーマ、2,22…第1の超電導線材、2a,3a,4a,6a,7a,8a,22a,23a…基板、2b,3b,4b,6b,7b,8b,22b,23b…超電導層、3,23…第2の超電導線材、5,9,15,17,19,24…半田固定部、
6…第3の超電導線材、7…第4の超電導線材、11…治具、12…網状テープ、13…第5の超電導線材、14…第6の超電導線材、16,18…非磁性超電導線材。

Claims (11)

  1. 基板上に超電導層を形成した超電導線材をフォーマに1層以上巻き付けた超電導導体であって、前記フォーマの直上に巻き付けられた1層目の超電導線材が、基板側が外側に、超電導層側が内側になるように配置されている超電導導体の電流端子構造において、前記1層目の超電導線材の端部の超電導層の内側に向いた面と、接続用超電導線材の超電導層の外側に向いた面の一部とを対面させて接続したことを特徴とする超電導導体の電流端子構造。
  2. 前記1層目の超電導線材上に、2層目の超電導線材が、超電導層側が外側に、基板側が内側になるように巻き付けられ、前記接続用超電導線材の超電導層が露出する部分と、前記2層目の超電導線材の端部とが、半田を用いて一体化された半田固定部を具備することを特徴とする請求項1に記載の超電導導体の電流端子構造。
  3. 前記接続用超電導線材と前記1層目の超電導線材との接続部に用いる半田の液体窒素温度での抵抗率は、前記半田固定部に用いる半田の抵抗率以下であることを特徴とする請求項2に記載の超電導導体の電流端子構造。
  4. 前記接続用超電導線材と前記1層目の超電導線材との接続部に用いる半田の融点は、前記半田固定部に用いる半田の融点より高いことを特徴とする請求項2に記載の超電導導体の電流端子構造。
  5. 前記接続用超電導線材の前記半田固定部との接続長bと、前記2層目の超電導線材の前記半田固定部との接続長cとは、b≧cの関係を満たすことを特徴とする請求項2に記載の超電導導体の電流端子構造。
  6. 基板上に超電導層を形成した超電導線材をフォーマに4層以上巻き付けた超電導導体であって、奇数層目の超電導線材が、基板側が外側に、超電導層側が内側になるように配置されている超電導導体の電流端子構造において、前記奇数層目の超電導線材の端部の超電導層の内側に向いた面と、接続用超電導線材の超電導層の外側に向いた面の一部とを対面させて接続したことを特徴とする超電導導体の電流端子構造。
  7. 前記奇数層目の超電導線材上に、前記奇数プラス1層目の超電導線材が、超電導層側が外側に、基板側が内側になるように巻き付けられ、前記接続用超電導線材の超電導層が露出する部分と、前記奇数プラス1層目の超電導線材の端部とが、半田を用いて一体化された半田固定部を具備することを特徴とする請求項6に記載の超電導導体の電流端子構造。
  8. 前記接続用超電導線材と前記奇数層目の超電導線材との接続部に用いる半田の液体窒素温度での抵抗率は、前記半田固定部に用いる半田の抵抗率以下であることを特徴とする請求項7に記載の超電導導体の電流端子構造。
  9. 前記接続用超電導線材と前記奇数層目の超電導線材との接続部に用いる半田の融点は、前記半田固定部に用いる半田の融点より高いことを特徴とする請求項7に記載の超電導導体の電流端子構造。
  10. 前記接続用超電導線材の前記半田固定部との接続長bと、前記奇数プラス1層目の超電導線材の前記半田固定部との接続長cとは、b≧cの関係を満たすことを特徴とする請求項7に記載の超電導導体の電流端子構造。
  11. 請求項1〜8のいずれかに記載の電流端子構造を具備することを特徴とする超電導ケーブル。
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