以下、データセンターにおける光ファイバを用いた温度測定を例にとって、実施形態に係る線材の敷設状態解析方法及び敷設状態解析装置について説明する。
図1は、データセンターにおける光ファイバの敷設例を示す模式図である。データセンターの計算機室内は、機器設置エリア30と、フリーアクセスフロア35とに分離されている。機器設置エリア30には多数のラック(サーバラック)31が配置されており、各ラック31にはそれぞれ複数の計算機(サーバ:図示せず)が収納されている。
フリーアクセスフロア35は、機器設置エリア30の床下に設けられている。フリーアクセスフロア35には各ラック31に接続される電力ケーブルや通信ケーブル等が配置されており、空調機から冷風が供給されて温度がほぼ一定に維持される。機器設置エリア30の床下には通風口(グリル)が設けられており、この通風口を介してフリーアクセスフロア35からラック31の吸気口近傍に冷風を供給する。この冷風をラック31内に取り込んで、ラック31内の計算機を冷却する。
図2に示すように、1本の光ファイバ20には複数の光ファイバプリロールカセット(以下、単に「カセット」という)10が取り付けられており、両端に配置された光コネクタ21を介して光ファイバ温度測定装置13(図1参照)や他の光ファイバ(図示せず)に接続するようになっている。各カセット10には、それぞれ固有の識別子(バーコード等)12が設けられている。この識別子12により、カセット10とラック31とを容易に対応付けすることができる。
各カセット10は、その入口部(カセット入口部)と出口部(カセット出口部)とに光ファイバ20の所定の位置を一致させ、それらの間の光ファイバ20を入口部及び出口部に近い側から円筒状の部材に同一方向に巻き付けて収納している。入口部と出口部との間の光ファイバ20の長さは例えば10mに設定されており、必要な長さだけカセット10から光ファイバ20をその折り返し点側から引き出して敷設する。また、各カセット10間の光ファイバ20の長さはラック31間の間隔に応じて設定されている。ここでは、各カセット10間の光ファイバ20の長さが1mに設定されているものとする。
光ファイバ20には、基準点(例えば光コネクタ21の位置)からの距離を示すメーターマークが長さ方向に沿って例えば20cmのピッチで設けられている。また、各カセット10の入口部と出口部との間の光ファイバ20には、メーターマークとは別に位置マーク23が例えば50cmのピッチで設けられている。
位置マーク23は例えばシアン、マゼンダ及びイエロー等の複数の色を組み合わせて形成されており、この位置マーク23によりカセット10の入口部からの距離と光ファイバ20の向き(位置マーク23のどちら側がカセット入口部側か)とがわかるようになっている。同一カセット10内の光ファイバ20には同一の色の組み合わせの位置マーク23はないが、各カセット10内の光ファイバ20にはそれぞれカセット入口部からの距離に応じた色の組み合わせの位置マーク(カラーコード)23が配置されている。なお、光ファイバ20が捩れても位置マーク23を検出することができるように、位置マーク(各色)は光ケーブル20の周方向を一周するように付与されている。
図3には、一例として1番目から9番目までの位置マーク(カラーコード)23を示している。この図3において、Cはシアン、Mはマゼンダ、Yはイエローを示している。また、図の左側がカセット入口部側であることを示している。例えば1番目の位置マーク23はカセット入口部から光ファイバ20の長さ方向50cmの位置に配置され、2番目の位置マーク23はカセット入口部から光ファイバ20の長さ方向1mの位置に配置される。以下同様に、3番目〜9番目の位置マーク23は、カセット入口部から光ファイバ20の長さ方向1.5m〜4.5mの位置にそれぞれ50cmのピッチで配置される。
なお、本実施形態では位置マーク23を複数の色の組み合わせにより実現しているが、他の方法(例えばバーコードの付与)などにより位置マーク23を実現してもよい。但し、後述の画像認識により位置マーク23の情報が正しく取得できることが重要である。
図1に示す例では、空調機により温度がほぼ一定に維持されるフリーアクセスフロア35にカセット10を配置し、そこから光ファイバ20を引き出して機器設置エリア30のラック31内に光ファイバ20を敷設している。従って、光ファイバ温度測定装置13で得られる光ファイバ20の長さ方向に沿った温度分布では、一定温度(フリーアクセスフロア35の温度)の箇所が周期的に現れる。この一定温度の箇所は各カセット10の位置に対応しており、光ファイバ温度測定装置13では温度分布から各カセット10の位置(光ファイバの長さ方向の位置)を認識することができる。また、フリーアクセスフロア35の温度を基準にしてラック31内の測定温度を補正することで、ラック31内の測定温度の精度をより一層向上させることができる。
光ファイバ20は、所定の形状の光ファイバ敷設具を用いてラック31内に敷設される。図4は光ファイバ敷設具の一例を示す斜視図、図5は同じくその上面図である。
光ファイバ敷設具40はプラスチック(樹脂)を射出成型して形成されており、図4に示すように、ファイバガイド部41とフック部42とを有している。ファイバガイド部41は、図4からわかるように、断面がほぼ矩形の細い棒を点A(曲率中心)を中心とする半径rの円の円弧に沿って湾曲させた形状を有している。図5に示すように曲率中心Aとファイバガイド部41の両端とをそれぞれ結ぶ2本の直線のなす角度θは、90°よりも大きく、且つ180°よりも小さい(90°<θ<180°)。本実施形態では、θが120°に設定されているものとする。また、ファイバガイド部41の曲率半径rは約22.5mmであるとする。
ファイバガイド部41の外周面には周方向に延びる溝41aが形成されており、光ファイバ20を溝41a内に配置して円弧状に曲げるようになっている。溝41aの幅(開口幅)は光ファイバ20の直径よりも若干大きく設定されており、溝41a内に1〜数本分の光ファイバ20を配置することができる。
ファイバガイド部41の下側には、ファイバガイド部41の長手方向の中心(円弧の中点)を挟んで対称の位置に台座部41dが設けられており、この台座部41dの下方にフック部42が設けられている。これらのフック部42は、支軸部42aとヒンジ部(弾性部)42bとを有している。支軸部42aは棒状に形成されており、点Aを中心としファイバガイド部41(ファイバガイド部41の中心軸)を円周の一部とする円に対しほぼ垂直下方に延びている。支軸部42aは太く弾力性が低いため、応力が加えられても殆ど変形しない。
一方、ヒンジ部42bは支軸部42aの下端から斜め上方に向けて延びており、細く弾力性が高いため、応力が加えられると支軸部42aに対し離接する方向に弾性変形する。なお、ヒンジ部42bの上端は、支軸部42aの上端(基端)よりも若干下側に位置する。
図6は、ラック31に光ファイバ敷設具40を取り付けた状態を示す図である。ラック31の裏面側の扉には室内の冷気を取り込む吸気口が設けられており、正面側の扉にはラック内で発生した熱を排出する排気口が設けられている。これらの吸気口及び排気口には例えばパンチングメタルが配置されている。
この図6に示すように、パンチングメタル37の開口部に光ファイバ敷設具40のフック部42を挿入し、ヒンジ部42bの先端とファイバガイド部41との間でパンチングメタル37を挟持することにより、光ファイバ敷設具40を固定する。フック部42をパンチングメタル37の開口部に挿入するときにヒンジ部42bがパンチングメタル37に当たると、ヒンジ部42bは弾性変形して窄まる。そして、ヒンジ部42bが開口部を通過すると、弾性力により元の形状に戻って、上述したようにヒンジ部42bの先端とファイバガイド41との間でパンチングメタル37を挟持する。
図7(a)〜(c)は光ファイバの敷設例を示す図である。図7(a)は、2個の光ファイバ敷設具40を相互に対向させて近接して配置し、それらの間に光ファイバ20をその光ファイバ20の弾性張力を利用して円形(コイル状)に敷設した例である。また、図7(b)は、2個の光ファイバ敷設具40を距離を離して対向させて配置し、それらの間に光ファイバ20を8の字状に敷設した例である。また、図7(c)は、光ファイバ敷設具40を使用して光ファイバ20の敷設方向を90°曲げた例を示している。
これらの図7(a)〜(c)に示すように、同一形状の複数の光ファイバ敷設具40を用いて光ファイバ23を種々の形態に敷設することができる。
図8(a),(b)は、いずれも光ファイバ敷設具の他の例を示す斜視図である。また、図9は同じくその光ファイバ敷設具に光ファイバを配置した状態を示す斜視図である。
光ファイバ敷設具70は、リング状(中空リング)に形成されたファイバガイド部71と、光ファイバ20をファイバガイド部71の周面に保持するクランプ部(脱落防止部)72と、当該光ファイバ敷設具70をパンチングメタル等の支持部材に固定するフック部73とを有している。この光ファイバ敷設具70も、図4に示す光ファイバ敷設具40と同様に、樹脂の射出成型により一体的に形成される。
ファイバガイド部71は、リング状のベース部71aと、ベース部71aの内側(リング中心側)の辺に沿って形成された内壁部71bとを有している。内壁部71bの外周面(ファイバ支持面)は、リング中心側に若干窪んでおり、図9に示すようにこの内壁部71bの外周面に沿って光ファイバ20を配置する。ここでは、内壁部71bの外周面(ファイバ支持面)における半径を22.5mmとしている。
クランプ部72は、図8に示すように、ファイバガイド部71の中心点(リング中心)を通る直線(第1の直線)がファイバガイド部71と交差する2箇所の位置にそれぞれ配置されている。これらのクランプ部72は、その下端がベース部71aに接続して弾力性を有するばね部72aと、ばね部72aの上端に接続したハンドル部72bとを有している。図9に示すように通常の状態ではハンドル部72bの先端と内壁部71bの上端との間には殆ど隙間がない。しかし、ハンドル部72bを指で押し下げると、ばね部72aが変形してハンドル部72bの先端と内壁部71bの上端との間に光ファイバ20が通る隙間が形成される。ハンドル部72bから指を離すと、ばね部72aの弾性力により元に戻ってハンドル部72bと内壁部71bの上端との間の隙間が閉じる。
フック部73は、図8(a)に示すように、2つのクランプ部72を結ぶ直線(第1の直線)に直交する直線(第2の直線)がファイバガイド部71に交差する位置に配置されている。これらのフック部73は、図8(b)に示すようにファイバガイド部71の台座部71dからほぼ垂直下方に延びる支軸部73aと、支軸部73aの下端から水平方向に延びるヒンジ部73bとを有している。この光ファイバ敷設具70は、ヒンジ部73bと台座部71d(ファイバガイド部71)との間でパンチングメタル等の支持部材を挟んで固定される。
射出成型時の金型ブロック数を削減するためには、図10に示すように、2つのフック部73を結ぶ直線(第2の直線)上の無限遠方から光ファイバ敷設具70を見たときに、ファイバガイド部71とクランプ部72(ハンドル部72bの先端)との間に隙間が見えるとともに、台座部71d(ファイバガイド部71)とヒンジ部73bとの間にも隙間が見えることが重要である。
図11は、開口部の形状が六角形のパンチングメタル75に光ファイバ敷設具70を取り付けた状態を示す模式図である。また、図12は、開口部の形状が円形のパンチングメタル76に光ファイバ敷設具70を取り付けた状態を示す模式図である。
この光ファイバ敷設具70においても、光ファイバを円形に敷設する場合だけでなく、光ファイバを8の字状に敷設する場合や敷設方向を90°曲げる場合など、種々の光ファイバの敷設形態に対応することができる。
図13は、ラックの扉に敷設された光ファイバと、敷設状態の解析に用いるカメラ及び敷設状態解析装置とを示す模式図である。また、図14は、敷設状態解析装置の構造を示すブロック図である。
この例では、図13に示すように、ラックの扉32(吸気側又は排気側の扉)には、カセット10から引き出された光ファイバ20が光ファイバ敷設具40を用いて所定の順路で敷設されている。ラック内に敷設される光ファイバ20には、前述したように位置マーク23が設けられている。また、光ファイバ20の敷設方向を変える位置には光ファイバ敷設具40が必ず配置されており、光ファイバ敷設具40間では光ファイバ20がほぼ直線状に敷設されている。ここでは、図13に示すように、扉32の左側を下から上に往復するように、かつ、所定の位置では光ファイバ20がほぼ水平方向(扉32の幅方向)に往復するように敷設されているものとする。
図14に示すように、敷設状態解析装置52は、画像入力部61と、画像処理部62と、データ記憶部63と、データ出力部64と、これらの画像入力部61、画像処理部62、データ記憶部63及びデータ出力部64を制御する制御部65とを有している。
図15は、実施形態に係る線材(光ファイバ)の敷設状態解析方法を示すフローチャートである。
まず、ステップS11において、カメラ(カラー撮像素子)51を用いて、光ファイバ20が敷設された側のラックの扉(パンチングメタル)32を撮影する。例えば、図13に示すように、ラックの扉32の裏面側(光ファイバ20が敷設された面と反対側の面側)に遮光カーテン53を配置し、カメラ51によりラックの扉32の全体を撮影する。なお、遮光カーテン53は後述する画像認識処理において光ファイバ20、光ファイバ敷設具40及び位置マーク23を認識しやすくするためのものである。従って、遮光カーテン53の色は、光ファイバ20、光ファイバ敷設具40及び位置マーク23に用いられている色と異なることが好ましい。
次に、ステップS12において、カメラ51で撮影したラックの画像を、そのラックに対応するカセット10の識別子(図2参照)に対応付けて敷設状態解析装置52(画像入力部61)に入力する。カメラ51で撮影した画像は必ずしもラックの扉32を真正面から撮影した画像であるとは限らない。そのため、画像処理部62は、ステップS13において、ワーピング等の方法を用いて入力された画像に対し正対変換を行い、扉32を真正面から見た画像に変換する。例えば、画像処理部62は画像認識処理を行って扉32のフレーム(外枠)を検出し、それらのフレームにより形成される四辺形の角が正しく90°となるように画像処理を行う。
図16(a),(b)に、正対変換前の画像(図16(a))の例と正対変換後の画像(図16(b))の例とを模式的に示す。なお、例えば遮光カーテン53の四隅に特定の色又は形状のマーク(以下、「特定マーク」という)を配置しておき、画像処理部62が撮影された画像から特定マークを抽出して当該特定マークが直方体の四隅に位置するように画像処理を行うようにしてもよい。
次に、ステップS14において、画像処理部62は、正対変換された画像から所定の範囲の画像、例えばフレームの内側の画像(又は特定マークを結ぶ矩形の範囲の画像)を切り抜く。そして、この画像をバイリニア又はバイキュービック等の方法を用いて予め決められた大きさの画像に変換(正規化)する。
図17(a)は正対変換された画像から切り抜かれたフレーム内側の画像を示す模式図であり、図17(b)は正規化処理後の画像を示す模式図である。なお、図17(a),(b)において、符号15は、画像処理部62の画像バッファの大きさを模式的に示している。正規化処理後の画像は、例えば横方向をX軸方向とし、縦方向をY軸方向とする直交座標に対応付けされる。
次に、ステップS15において、画像処理部62は、正規化された画像からカラーフィルタリング及びパターンマッチング技術を使用して光ファイバ敷設具40を抽出し、ステップS16において各光ファイバ敷設具40が配置された位置(座標)と向きとを求める。
その後、制御部65は、ステップS17において、各光ファイバ敷設具40の配置状態から基本モデルを決定する。
図18,図19は、予め設定された光ファイバ敷設具の配置と光ファイバの敷設状態の基本モデルの例を示す図である。ここでは、光ファイバ敷設具40は図18,図19に示す基本モデルのいずれかの状態で使用されるものとする。なお、基本モデルのデータは、予めデータ記憶部63に記憶されている。
これらの図18,図19からわかるように、2以上の光ファイバ敷設具40を横方向(X軸方向)に離して配置し、それらの光ファイバ敷設具40間に光ファイバ20をかけ渡す場合、それらの光ファイバ敷設具40は高さ方向(Y軸方向)に大きくずれることはない。
制御部65は、画像処理部62を制御して、図20に模式的に示すように、正規化された画像からある幅の画像をX軸と平行な方向に切り出す。そして、その画像から抽出される光ファイバ敷設具40のうち最も左側に配置された光ファイバ敷設具40を基準とし、その基準となる光ファイバ敷設具40の右側に配置された光ファイバ敷設具40を全て抽出する。そして、それらの光ファイバ敷設具40の位置と向きとを検出し、その結果を予め設定された基本モデルと比較して、対応する基本モデルを抽出する。
なお、図18,図19からわかるように、光ファイバ敷設具40の配置が同じであっても、光ファイバの敷設状態が異なる基本モデルが複数存在することもある。この場合、複数の基本モデルが抽出される。また、前述したように基本モデルでは2つの光ファイバ敷設具40がY軸方向に大きくずれて配置されることはない。そのため、ここでは、基準の光ファイバ敷設具40に対し高さ方向(Y軸方向)に光ファイバ敷設具1個分以上離れた光ファイバ敷設具40は、抽出対象から外す。
その後、制御部65は、画像処理部62を制御して、既に基本モデルに対応付けされた光ファイバ敷設具40が配置されている領域を除いて再度正規化された画像からある幅の画像をX軸と平行な方向に切り出す。そして、上記と同様に、切り出された画像から抽出される光ファイバ敷設具40のうち最も左側に配置された光ファイバ敷設具40を基準とし、その基準となる光ファイバ敷設具40の右側に配置された光ファイバ敷設具40を全て抽出する。そして、それらの光ファイバ敷設具40の位置と向きとを検出し、その結果を予め設定された基本モデルと比較して、対応する基本モデルを抽出する。このようにして、画像認識処理により検出した複数の光ファイバ敷設具40を複数のグループに分け、各グループ毎に基本モデルを少なくとも1つ対応させておく。
次に、敷設状態解析装置52の制御部65は、各グループ毎に基本モデルを1つに絞る。例えば図21に示すように2つの光ファイバ敷設具40が水平方向(X軸方向)に離隔し、且つ相互に向き合うように配置されている場合、上述の工程で図22に示す5種類の基本モデルが抽出される。この場合、制御部65は、画像処理部62を制御して、図23に示すように2つの光ファイバ敷設具40間の5箇所のエリア(図中に矩形で示すモデル内のエリア55a〜55e)でそれぞれ光ファイバが何本あるのかを画像認識(例えばエッジ検出)により検出する。具体的には、制御部65は図23の5箇所のエリア55a〜55eに対応して5つのバッファ(カウンタ)を設定し、各バッファに画像認識で検出された光ファイバの本数を書き込む。
例えば図24(a)に示すように各バッファに数字が書き込まれた場合は、図24(b)に示す基本モデルであることがわかる。また、図25(a)に示すように各バッファに数字が書き込まれた場合は、図25(b)に示す基本モデルであることがわかる。
図26は横方向に光ファイバ敷設具40が3つ並んだ場合の例を示している。この場合、制御部65は図26中に矩形で示すエリア56a〜56fに対応して6つのバッファを設定し、各バッファに画像認識で検出された光ファイバの本数を書き込む。図27(a),(b)にそれぞれバッファに書き込まれた数字とそれにより確定される基本モデルとを示す。このようにして、ラック31内に配置された全ての光ファイバ敷設具40に対し基本モデルが確定する。以下、基本モデルに対応付けされた実際の光ファイバ敷設状態を、敷設モデルと呼ぶ。
次に、ステップS18において、制御部65は、敷設モデル間の光ファイバの敷設状態を推定する。ここでは、基本モデル毎に光ファイバの入出力部の位置が予め決められており、従って基本モデルが決まれば敷設モデルの入出力部の位置も決まるものとする。
制御部65は、敷設モデルの入出力部の位置(エリア)に対応させてバッファ(カウンタ)を設定し、それらのバッファに画像処理部62で画像認識により検出した光ファイバの本数を書き込む。
例えば図28(a)に示す基本モデルはラック内で最も上側に配置されるモデルであり、この基本モデルの入出力部の位置はモデルの左下の1箇所のみであることが予め決められているものとする。この基本モデルに対応する敷設モデルでは、左上のエリア57aを通る光ファイバの本数は常に0となり、左下のエリア57bを通る光ファイバの本数は常に偶数となる。例えばエリア57bに対応するバッファの値が1の場合、エリア57bでは2本の光ファイバが重なって1本として検出されたものと考えられる。従って、制御部65は、敷設モデルのエリア57bに対応するバッファの値を2に修正する。
図28(b)に示す基本モデルも、ラック内で最も上側に配置されるモデルである。この基本モデルでは、入出力部がモデルの左下と右下との2箇所にあり、これらの入出力部を通る光ファイバの本数はいずれも偶数であると予め決められている。
図28(c),(d)に示す基本モデルはラック内で上から2番目以降に配置されるモデルである。これらの基本モデルでは、入出力部がモデルの左下及び左上の2箇所にあり、これらの入出力部を通る光ファイバの本数が同じであると予め決められている。制御部65は、これらの基本モデルに対応する敷設モデルの入出力部の各エリアに対応するバッファを設定し、画像認識により検出した光ファイバの本数を書き込む。そして、基本モデルを参照し、必要な場合はバッファに書き込まれた値を修正する。
次に、ステップS19において、敷設モデルの修正及び再定義を行う。例えば図29(a)に示す基本モデルはラック内で最も上側に配置されるモデルであり、左下の入出力部における光ファイバの本数は常に偶数になる。しかし、この基本モデルに対応する敷設モデル内のエリア58aを通る光ファイバの本数を画像認識により検出した結果、光ファイバの本数は1であったする。この場合、光ファイバ同士が重なって画像処理部62が誤検出したものと考えることができる。従って、ここでは、画像処理部52はエリア58aに対応するバッファに書き込まれた値を2に修正(繰り上げ)する。
一方、図29(b)に示すように、画像認識によりエリア58b(モデルの入出力部)を通る光ファイバの本数を画像認識により検出した結果、光ファイバの本数は3であったとする。しかし、上述したように、このモデルでは入出力部における光ファイバの本数が偶数に決められているので、制御部65はエリア58bに対応するバッファに書き込まれた値を4に修正(繰り上げ)する。
その後、制御部65は、エリア58a,58bに対応するバッファに書き込まれた値を比較する。この例では、エリア58a,58bに対応するバッファに書き込まれた値が異なるので、制御部65はエリア58a,58bに対応するバッファに書き込まれた値を大きい方に合わせる。すなわち、図29(c)に示すように、制御部65はエリア58a,58bに対応するバッファに書き込まれた値をいずれも4にする。このようにして、敷設モデルの修正及び再定義が完了する。なお、この工程において、光ファイバに付与された位置マーク23が検出される場合は、その情報(位置マーク間の距離及び方向)を用いて入出力部(エリア58b)を通る光ファイバの本数をより正確に判定することができる。
次に、ステップS20において、敷設モデル内の光ファイバの敷設状態を規格化する。ここでは、例えば図30(a)に示すように光ファイバ敷設具40及び光ファイバ20が検出(画像認識)され、この敷設モデルに対応する基本モデルが決定されているものとする。
まず、制御部65は、画像処理部62を制御して、敷設モデル内に存在する光ファイバ敷設具40のうち最も左側に配置された光ファイバ敷設具40の中心座標を決定し、この光ファイバ敷設具40の中心座標を原点とする直交座標(X−Y座標)を一時的に定義する。
ここでは、画像認識により、図30(a)に示すように、光ファイバ敷設具40、光ファイバ20及び位置マーク23aが検出されたものとする。なお、この例では、敷設モデル内に他の位置マーク23bも存在するが、この位置マーク23bはその一部が光ファイバ敷設具40に隠れている。画像処理部62は、位置マークを正確に検出することができない場合は、その位置マークを無視する。
次に、制御部65は、画像処理部62を制御して、図30(b)に示すように、敷設モデル内の光ファイバ20を、円弧(光ファイバ敷設具40の曲率中心を中心点とする円又は長円の円周の一部)とその円弧の端部から接線方向に延びる直線との組み合わせに置き換える。そして、この置き換えたモデルの光ファイバ20上に位置マーク23を配置し直す。ここでは、図30(a)に示すように、位置マーク23a(位置マークの先端又は後端)がXc,−Ycの位置にあるとする。画像処理部62は、上述したように画像処理を行ってモデル内の光ファイバ20を円弧と直線との単純な形状に置き換え、位置マーク23aを図30(b)に示すように置き換え後の光ファイバ20上の点Xc,−Yc’の位置に配置する。このようにして、敷設モデルが規格化される。
図30(c)は規格化されたモデルの例を示している。敷設モデル内の光ファイバを単純な円弧と直線とに置き換えることにより、敷設モデル内の光ファイバ上の任意の位置における座標(X−Y座標)を、位置マーク23aからの距離(光ファイバの長さ方向の距離)により代数計算することができる。なお、後述するように光ファイバ敷設具40間の光ファイバを直線の集合により近似して、敷設モデル内の光ファイバ上の任意の位置における座標を位置マーク23aからの距離(光ファイバの長さ方向の距離)により代数計算できるようにしてもよい。
次に、ステップS21において、制御部65は、画像処理部62を制御して、敷設モデル間の光ファイバの接続状態を解析する。ここでは、各モデルの入出力部を通る光ファイバ20の本数と、光ファイバ20に付与された位置マーク23とを用いる。
図31において、モデルAは最も上に配置されたモデルであり、モデルBはモデルAの下に配置されたモデルである。これまでの工程で、モデルAの入出力部(エリア59a)を通る光ファイバの本数が2本であることが確定しているものとする。
ここで、モデルBの左上の入出力部(エリア59b)及び左下の入出力部(エリア59c)を通る光ファイバの本数がいずれも1本であるとする。この場合、モデルAとモデルBとを接続する光ファイバの本数は1本であり、モデルAと接続する他の1本の光ファイバは、モデルB内を通ることなくモデルBよりも下方のモデルと接続されていることになる。一方、モデルBのエリア59b,59cを通る光ファイバの本数がいずれも2本であるのならば、モデルB内を通る光ファイバは全てモデルAと接続されていることになる。この場合、モデルBよりも下方のモデルを通る光ファイバがモデルB内を通ることなくモデルAと接続されていることはない。
このようにして、ラック内の各敷設モデルに対し、例えば上から順に敷設モデル間の光ファイバの敷設状態を解析することにより、ラック全体の光ファイバの敷設状態がわかる。なお、敷設モデル間の光ファイバの敷設状態をより正確に解析するために、モデル間の所定のエリアを通る光ファイバの本数を画像認識により計測するようにしてもよい。また、位置マークを利用することにより、敷設モデル間の光ファイバの敷設状態をより正確に解析することができる。
このようにして敷設モデル間の光ファイバの敷設状態がわかると、敷設モデル間の光ファイバの規格化も可能となる。すなわち、敷設モデル間では光ファイバが直線的に敷設されているものとすると、敷設モデル間の位置マークからの距離により、敷設モデル間の光ファイバ上の任意の位置の座標(X−Y座標)を取得することができる。また、モデル内に位置マークが検出できない敷設モデルにおいても、敷設モデル間の位置マークからの距離により、敷設モデル内の光ファイバ上の任意の位置の座標を取得することができる。
なお、敷設モデル間の光ファイバの敷設状態を1本の直線に置き換えると誤差が大きくなる場合は、敷設モデル間の光ファイバを複数の直線の集合に置き換えてもよい。図32は敷設モデル間の光ファイバの規格化方法の一例を示す図である。この図32では、左側から右側に順番に規格化の過程を示している。
例えば図32に示すように、敷設モデル間に2本の光ファイバ20が非直線状に敷設されているものとする。そして、着目する光ファイバ20には図示する範囲内に3つの位置マーク23a〜23cがあり、それらのうち位置マーク23bの一部又は全部が他の光ファイバ20に隠れているものとする。
この場合、位置マーク23aを始点とし、この始点から接線方向に一定の長さのベクトルを引き、そのベクトルの先端に直交する直線と光ファイバ20との交点を求める。そして、始点からその交点までを直線で結んで、この直線を光ファイバ20と置き換える。
次に、前記交点を始点とし、始点から接線方向に一定の長さのベクトルを引き、そのベクトルの先端に直交する直線と光ファイバ20との交点を求める。そして、始点からその交点までを直線で結んで、この直線を光ファイバ20と置き換える。
このようにして、ラック内の光ファイバ20を直線で規格化しておくことにより、ラック内に敷設された光ファイバの任意の位置における座標(X−Y座標)を、位置マークからの距離(光ファイバの長さ方向に沿った距離)から演算することができる。なお、図30に示す方法に替えて、上述した方法を用いて敷設モデル内の光ファイバを多数の直線の集合として規格化してもよい。ここでは、円弧状の敷設具を用いたモデルについて説明したが、図8(a),(b)に示すリング状の光ファイバ敷設具を用いても、同様の工程により敷設モデル内及び敷設モデル間の光ファイバの敷設状態を解析できる。
ところで、光ファイバ温度測定装置13(図1参照)では、サンプリング周波数により決まる間隔で光ファイバの長さ方向に測定ポイントが決定される。光ファイバ温度測定装置13において平均化に要する時間等の実用的な計測時間を考慮すると、測定ポイントの間隔は10〜50cm程度になる。ラック内の所定の位置の温度を精度よく測定するためには、所定の位置に測定ポイントが配置されることが重要である。
上述した方法によれば、カセット10から引き出された光ファイバ20がどのような順路でラック内のどこに敷設されているのかが敷設状態解析装置52により容易に解析できる。このため、例えば予めカセット10の入口部の位置と測定ポイントの位置とを一致させておけば、カセット10の入口部から各位置マーク23までの距離は既知であるので、所望の位置に測定ポイントが配置されているか否かを容易に調べることができる。カセット10の入口部の位置と測定ポイントの位置とを一致させておく替わりに、カセット10の入口部からその近傍の測定ポイントまでの距離(オフセット量)をデータ化しておいてもよい。
また、敷設状態解析装置52により解析された光ファイバの敷設状態を用いて光ファイバ温度測定装置13で温度測定(温度分布測定)を行う際に、測定温度の補正時の条件(以下、「先験情報」という)を敷設状態解析装置52から光ファイバ温度測定装置13に入力するようにしてもよい。例えば、光ファイバが小さくコイル状に巻回されていれば、コイル状の部分の温度は均一であるとすることができる。また、光ファイバの往路と復路とで同じ位置を通る場合、往路及び復路でその位置の温度は同じであるとすることができる。更に、対称の位置に配置された光ファイバでは、温度分布も対称であるとすることができる場合もある。このような情報を先験情報として敷設状態解析装置52から光ファイバ温度測定装置13に入力することにより、光ファイバ温度測定装置13では先験情報を用いて測定温度をより正確に補正することができる。なお、先験情報は、予めデータ記憶部62に記憶しておく。敷設状態解析装置52で解析された敷設状態のデータは、データ出力部64を介して出力される。
(敷設例1)
図33は、ラック内の光ファイバの敷設例1を示す模式図である。この図33に示す敷設形態は、例えばラックの吸気側の温度分布を測定する際に採用される。なお、図33において、光ファイバに付与された位置マークの図示を省略している。
この敷設例1では、図33に示すように、下から順にM1,M2,M3の3つの敷設モデルが使用されている。モデルM1は往路及び復路の光ファイバ20の敷設方向をそれぞれ約90°曲げる2つの光ファイバ敷設具40a,40bを有し、モデルM2は光ファイバ20の敷設方向を約180°曲げるための光ファイバ敷設具40cを有している。また、モデルM3は光ファイバ20をコイル状に巻回するための光ファイバ敷設具を2対(光ファイバ敷設具40d,40eと光ファイバ敷設具40f,40g)有している。
カセット(図1,図2参照)から引き出された光ファイバ20は、ラック左下部に配置された光ファイバ敷設具40aを通り、ラックの左上部に配置された一対の光ファイバ敷設具40d.40e間にコイル状に巻回される。そして、光ファイバ敷設具40eから光ファイバ敷設具40cを通って、ラックの右上部に配置された一対の光ファイバ敷設具40f.40gに敷設され、この光ファイバ敷設具40f,40g間にコイル状に巻回される。その後、光ファイバ20は、光ファイバ敷設具40gからラック右下部に配置された光ファイバ敷設具40bを通り、光ファイバ敷設具40aに向けて敷設され、ラックの外(フリーアクセスフロア)に導出される。
この敷設例1において、モデルM3では光ファイバ20が光ファイバ敷設具40d,40e間及び光ファイバ敷設具40f,40g間にコイル状に敷設されているので、位置マークを検出することは殆どできない。一方、光ファイバ敷設具40a,40d間のエリアF1、光ファイバ敷設具40e,40c間のエリアF2、光ファイバ敷設具40c,40f間のエリアF3、光ファイバ敷設具40g,40b間のエリアF4では、各エリアを通る光ファイバ20の本数がいずれも1であるので、位置マークを容易に検出できる。
この敷設例1の光ファイバの敷設状態を解析する場合(図13,図15参照)、まず、カメラ51でラックに敷設された光ファイバを撮影し、その画像を敷設状態解析装置52に入力する。
敷設状態解析装置52は、入力された画像を正対変換及び正規化処理した後、正規化処理後の画像から光ファイバ敷設具40a〜40gを抽出する。そして、各光ファイバ敷設具40a〜40gの位置及び向きを決定した後、各光ファイバ敷設具40a〜40gを基本モデルに対応付ける。ここでは、前述したようにモデルM1,M2,M3の3種類のモデルが決定されたものとする。
その後、敷設状態解析装置52は、各モデルM1,M2,M3間の光ファイバの敷設状態を推定する。この例では、モデルM1から上方に向かう光ファイバの本数が2、モデルM2から上方に向かう光ファイバの本数が2、モデルM3から下方に向かう光ファイバの本数が4である。従って、モデルM1から上方に向かう2本の光ファイバはモデルM3に直接接続され、モデルM2から上方に向かう2本の光ファイバもモデルM3に直接接続されていると推定できる。また、光ファイバ敷設具40a〜40g、光ファイバ20及び位置マーク(図示せず)の画像認識の結果からも、各モデルM1,M2,M3間の光ファイバの敷設状態を検出することができる。
次に、敷設状態解析装置52は、敷設モデルの修正・再定義を行う。この敷設例1では、モデルM3の光ファイバ敷設具40d,40e及び光ファイバ敷設具40f,40gにそれぞれ巻回された光ファイバ20の巻回数を決める必要がある。但し、このモデルM3の場合、巻回数は任意ではなく、信号処理のしやすさの観点から1周又は7周というように巻回数は高々2〜3パターンしかない。また、モデルM3の左側の光ファイバ敷設具40d,40eの巻回数と右側の光ファイバ敷設具40f,40gの巻回数とが同じに設定される。従って、モデルM1とモデルM3との間(エリアF1,F4)、又はモデルM3とモデルM2との間(エリアF2,F3)で検出された位置マークから、光ファイバ敷設具40d,40e及び光ファイバ敷設具40f,40gにそれぞれ巻回された光ファイバ20の巻回数を決定できる。
その後、敷設状態解析装置52は、各モデルM1,M2,M3内及び各モデル間(エリアF1,F2,F3,F4)の光ファイバ20を規格化する。これにより、光ファイバ20上の任意の位置の座標(X−Y座標)を位置マーク又はカセット入口部からの距離により演算できるようになる。
次いで、敷設状態解析装置52は、これらの処理結果に先験情報を付加して光ファイバ温度測定装置用データとして出力する。このようにして、ラック内の光ファイバの敷設状態の解析及びデータ出力が完了する。
(敷設例2)
図34は、ラック内の光ファイバの敷設例2を示す模式図である。この図34に示す敷設形態は、例えばラックの排気側の温度分布を測定する際に採用される。なお、図34において、光ファイバに付与された位置マークの図示を省略している。
この敷設例2では、図34に示すように、下から順にM1,M2,M3,M4の4つの敷設モデルが使用されている。モデルM1は光ファイバ20の敷設方向を約90°曲げるための光ファイバ敷設具40aを有する。また、モデルM2は、水平方向に離隔し且つ相互に対向して配置された2つの光ファイバ敷設具40b,40cを有し、それらの光ファイバ敷設具40b,40c間に光ファイバ20を8の字状に敷設している。モデルM3も、水平方向に離隔し且つ相互に対向して配置された2つの光ファイバ敷設具40d,40eを有し、それらの光ファイバ敷設具40d,40e間に光ファイバ20を8の字状に敷設している。但し、モデルM2では光ファイバ20を1重に敷設しているのに対し、モデルM3では往路及び復路でそれぞれ光ファイバ敷設具40d,40e間に光ファイバ20を敷設している。モデルM4は、光ファイバ20の敷設方向を変えるための光ファイバ敷設具40fと、光ファイバ20をコイル状に巻回するための光ファイバ敷設具40g,40hとを有している。
カセット(図1,図2参照)から引き出された光ファイバ20は、ラック左下部に配置された光ファイバ敷設具40aを通り、モデルM2の光ファイバ敷設具40b,40c間に8の字状に敷設される。その後、モデルM2から導出した光ファイバ20は、モデルM3の光ファイバ敷設具40d,40e間に8の字状に敷設された後、モデルM4に導入される。そして、光ファイバ20は、光ファイバ敷設具40fを通り、光ファイバ敷設具40g,40h間にコイル状に巻回され、再び光ファイバ敷設具40fを通ってモデルM3に導入され、光ファイバ敷設具40d,40e間に8の字状に敷設される。その後、モデルM3から導出した光ファイバ20は、モデルM1の光ファイバ敷設具40aを通り、ラックの外(フリーアクセスフロア)に導出される。
この敷設例2の光ファイバの敷設状態を解析する場合(図13,図15参照)、まず、カメラ51でラックに敷設された光ファイバを撮影し、その画像を敷設状態解析装置52に入力する。
敷設状態解析装置52は、入力された画像を正対変換及び正規化処理した後、正規化処理後の画像から光ファイバ敷設具40a〜40hを抽出する。そして、各光ファイバ敷設具40a〜40hの位置及び向きを決定した後、各光ファイバ敷設具40a〜40hを基本モデルに対応付ける。ここでは、前述したようにモデルM1,M2,M3,M4の4種類のモデルが決定されたものとする。
その後、敷設状態解析装置52は、各モデルM1,M2,M3,M4間の敷設状態を推定する。この例では、モデルM1の2箇所の入出力部における光ファイバの本数はいずれも1となり、モデルM2の2箇所の入出力部における光ファイバの本数はいずれも1となり、モデルM3の2箇所の入出力部における光ファイバの本数はいずれも2となる。また、最上位に配置されたモデルM4の入出力部における光ファイバの本数は2となる。敷設状態解析装置52は、画像認識処理により各モデルの入出力部における光ファイバの本数を検出し、その結果に基づいて各モデル間の光ファイバの敷設状態を検出する。
ここで、図34に示すように、モデルM1からモデルM2までの往路のエリアをF1、モデルM2からモデルM3までの往路のエリアをF2、モデルM3からモデルM4までの往路のエリアをF3とする。また、モデルM4からモデルM3までの復路のエリアをF4、モデルM3からモデルM1までの復路のエリアをF5とする。
次に、敷設状態解析装置52は、敷設モデルの修正・再定義を行う。この敷設例2でも、モデルM4の光ファイバ敷設具40g,40f間に巻回された光ファイバ20の巻回数を決める必要がある。敷設状態解析装置52は、光ファイバ20に付与された位置マーク(図示せず)に基づいて、光ファイバ敷設具40g,40f間に巻回された光ファイバ20の巻回数を決めることができる。
その後、敷設状態解析装置52は、各モデルM1,M2,M3,M4内及び各モデル間(エリアF1,F2,F3,F4,F5)の光ファイバ20を規格化する。これにより、光ファイバ20上の任意の位置の座標を位置マーク又はカセット入口部からの距離により演算できるようになる。
次いで、敷設状態解析装置52は、これらの処理結果にカセット10の識別子の情報及び先験情報を付加して光ファイバ温度測定装置用データとして出力する。ここでは、光ファイバ温度測定装置用データは、光ファイバの長さ方向に沿って設定される測定ポイントの位置(座標)を含む位置定義ファイルと、先験情報を含む信号処理用ファイルとを有するものとする。
図35は、光ファイバ温度測定装置により検出された温度の補正方法の例を示す図である。この図35において、測定データファイルは光ファイバ温度測定装置で検出した温度のデータ(補正前の温度データ)である。また、位置定義ファイル及び信号処理用定義ファイルは敷設状態解析装置52から取得した光ファイバ温度測定装置用データに含まれるものである。更に、出力ファイルは、温度データファイルの温度データを、位置定義ファイル及び信号処理用定義ファイルを用いて補正したものである。
光ファイバ温度測定装置では、例えばこの図35に測定データとして示すように、測定ポイント毎の温度が得られる。この測定ポイント毎の温度に対し、光ファイバ温度測定装置では位置定義ファイルを用いて、各測定ポイントに対し構造物番号及びX−Y座標が対応付けされる。なお、構造物番号はカセットの識別子に対応しており、この構造物番号からどのラックの測定ポイントなのかがわかる。
次に、光ファイバ温度測定装置は、信号処理用定義ファイルを用いて、各測定ポイントを基本モデルに対応付ける。そして、先験情報から同一温度となるモデル(又はエリア)が定義される。例えば図35の信号処理用定義ファイルにおいて、モデルF1(図34のエリアF1)はモデルF5(図34のエリアF5)と同一温度になることが示されている。また、モデルM4のBend-Coil1(図34の光ファイバ敷設具40fから光ファイバ敷設具40g,40hまでの間)の温度は、Bend-Coil3(図34の光ファイバ敷設具40g,40hから光ファイバ敷設具40fまでの間)と同一温度になることが示されている。更に、モデル4のBend-Coil2(図34の光ファイバ敷設具40g,40hに巻回された部分)は同一温度になることが示されている。
光ファイバ温度測定装置では、この情報を用いて、図35に出力ファイルとして示すように各測定ポイントの測定温度を補正し、更に各測定ポイントを構造物番号(ラック番号)及びX−Y座標に対応付ける。
以上説明したように、上記実施形態によれば、ラックに敷設された光ファイバをカメラで撮影してその画像を敷設状態解析装置に入力するだけで、ラック内の敷設状態を容易に解析することができる。このため、温度測定すべき位置に測定ポイントが配置されているか否かを容易に調べることができ、設備の変更に容易に対応することができる。
また、上記実施形態によれば、敷設状態解析装置から出力されるデータには先験情報が付加されているので、光ファイバ温度測定装置では先験情報を用いてラック内の温度分布をより正確に補正することができる。
(敷設例3)
図36は、ラック内の光ファイバの敷設例3を示す模式図である。この敷設例3においても、光ファイバに付与された位置マークの図示を省略している。ここでは、説明の都合上、ラックの幅方向をX軸方向、高さ方向をZ軸方向とする。
本例では、光ファイバの所定の位置(例えば光コネクタの位置又はカセットの入口部の位置:以下、基準点という)からの光ファイバの長さ方向に沿った距離(光ファイバ長さ)が既知である点のX−Z座標を取得する方法について説明する。
敷設例3では、カセット10から引き出された光ファイバ20を、図36に示すようにリング状の光ファイバ敷設具(図8〜図12参照)80a〜80fを用いてラック31の吸気側の扉に敷設している。ここでは、カセット10から引き出した光ファイバ20は、扉下段左側の光ファイバ敷設具80e、扉上段左側の光ファイバ敷設具80a、扉上段中央の光ファイバ敷設具80b、扉中段中央の光ファイバ敷設具80d,扉上段中央の光ファイバ敷設具80b、扉上段右側の光ファイバ敷設具80c、扉下段右側の光ファイバ敷設具80f、扉下段左側の光ファイバ敷設具80eをこの順番に通り、カセット10に戻るように敷設されている。なお、光ファイバ20の敷設の仕方によっては、敷設の順番が上記の順番と逆になることもある。
また、光ファイバ敷設具80eには往路及び復路の光ファイバ20をそれぞれ1回づつ巻回しており、光ファイバ敷設具80a,80bには光ファイバ20を3回巻回しているものとする。また、光ファイバ敷設具80b,80d,80fには敷設方向を変更する分の光ファイバ20しか接していないものとする。すなわち、光ファイバ敷設具80b,80d,80fにおける光ファイバ20の巻回数は1未満である。図36において、図中のNは各光ファイバ敷設具80a〜80fにおける光ファイバの巻回数(但し、端数切り捨て)を示している。
この敷設例3の光ファイバの敷設状態を解析する場合(図13,図15参照)、まず、カメラ51でラック31に敷設された光ファイバ20、位置マーク(カラーコード:図3参照)82及び光ファイバ敷設具80a〜80fを撮影し、その画像を敷設状態解析装置52に入力する。
敷設状態解析装置52は、入力された画像を正対変換及び正規化処理した後、正規化処理後の画像から光ファイバ20、光ファイバ敷設具80a〜80f及び位置マーク82を抽出する。そして、各光ファイバ敷設具80a〜80f及び位置マーク82の位置(X−Z座標)を決定した後、図20に示すように画像をX軸と平行な方向に切り出して、各光ファイバ敷設具80a〜80fを基本モデルに対応付ける。
ここでは、図37に示すように扉上段においてX軸方向に並んだ3つの光ファイバ敷設具80a,80b,80cを第1グループとし、扉中段の光ファイバ敷設具80dを第2グループとし、扉下段においてX軸方向に並んだ2つの光ファイバ敷設具80e,80fを第3グループとする。なお、以下の説明において、光ファイバ敷設具80a,80e間のエリアをF1、光ファイバ敷設具80c,80f間のエリアをF2、光ファイバ敷設具80b,80d間の往路のエリアをF3、復路のエリアをF4で表す。
上述の如く各光ファイバ敷設具80a〜80fをグループ分けした後、敷設状態解析装置52は、各グループの敷設モデル及び光ファイバ敷設状態を確定する。
図38(a),(b)は、第3グループの敷設モデル及び敷設状態の確定方法を示す模式図である。敷設状態解析装置52は、検出された光ファイバ敷設具80e,80fの周囲に図38(a)に示すようにエリアB0〜B8を設定し、各エリアB0〜B8に対応するバッファ(カウンタ)を設けて各エリアB0〜B8を通る光ファイバの本数を画像処理により解析する。ここでは水平方向(45°未満)及び垂直方向(45°以上)に分けて各エリアB0〜B8を通る光ファイバの本数を計測するものとする。ここでは、図38(b)に示すように各エリアB0〜B8を通る光ファイバの本数が検出され、その検出結果に応じて第3グループの敷設モデルと光ファイバの敷設状態とが確定したものとする。以下、第3グループのモデルをモデル3という。
図39(a),(b)は、第1グループの敷設モデル及び敷設状態の確定方法を示す模式図である。敷設状態解析装置52は、検出された光ファイバ敷設具80a,80b,80cの周囲に図39(a)に示すようにエリアB0〜B13を設定し、各エリアB0〜B13に対応するバッファ(カウンタ)を設けて各エリアB0〜B13を通る光ファイバの本数を画像処理により解析する。ここでは、図39(b)に示すように各エリアB0〜B13を通る光ファイバの本数が検出され、その結果に応じて第1グループの敷設モデルと光ファイバの敷設状態とが確定したものとする。以下、第1グループの敷設モデルをモデル1という。
図40(a),(b)は、第2グループの敷設モデル及び敷設状態の確定方法を示す模式図である。敷設状態解析装置52は、検出された光ファイバ敷設具80dの周囲に図40(a)に示すようにエリアB0〜B4を設定し、各エリアB0〜B4に対応するバッファ(カウンタ)を設けて各エリアB0〜B4を通る光ファイバの本数を画像処理により解析する。ここでは、図40(b)に示すように各エリアB0〜B4を通る光ファイバの本数が検出され、その検出結果に応じて第2グループの敷設モデルと光ファイバの敷設状態とが確定したものとする。以下、第2グループの敷設モデルをモデル2という。
各グループのモデルが確定すると、各モデルには各光ファイバ敷設具における光ファイバの巻回数が定義されているので、各光ファイバ敷設具における光ファイバの巻回数が判明する。巻回数が2種類以上定義されている場合は、モデル内及びモデル間の位置マークを解析することにより、各光ファイバ敷設具における巻回数Nが確定する。
このようにして各グループの敷設モデルと光ファイバ敷設状態が確定した後、敷設状態解析装置52において代数演算可能化処理を行う。
図41は、モデル3の代数演算可能化処理を示す模式図である。この図41において、光ファイバ敷設具80eの中心点O1の座標を(x1,z1)、光ファイバ敷設具80fの中心点O2の座標を(x2,z2)とする。また、点O3〜点O5はそれぞれ光ファイバに付与された位置マーク(カラーコード)の位置を示し、点O3の座標は(x3,y3)、点O4の座標は(x4,z4)、点O5の座標は(x5,z5)である。これらの点O1〜点O5の座標は、画像処理の結果から既知であるとする。また、光ファイバ敷設具80a〜80fの半径はいずれもr(既知)であるとする。
ここで、光ファイバ敷設具80eとラック導入側及びラック導出側の光ファイバとの接点をそれぞれPin1,Pout2とし、光ファイバ敷設具80eとエリアF1の光ファイバとの接点をPout1とする。また、光ファイバ敷設具80fとエリアF2の光ファイバとの接点をPin2とし、光ファイバ敷設具80e,80f間の光ファイバと光ファイバ敷設具80eとの接点をP1、光ファイバ敷設具80e,80f間の光ファイバと光ファイバ敷設具80fとの接点をP2とする。
更に、光ファイバ敷設具80e,80fの中心点O1,O2間を結ぶ直線の長さをL、該直線とX軸とのなす角度をΨとする。更にまた、光ファイバ敷設具80eの中心点O1と点P1との間を結ぶ直線とX軸とのなす角度をθ1、光ファイバ敷設具80fの中心点O2と点P2との間を結ぶ直線とX軸とのなす角度をθ2とする。
なお、角度は、反時計回り(CCW)をプラスの方向、時計回り(CW)をマイナスの方向とする。また、導入側の光ファイバのうち光ファイバ敷設具80eに巻かれた部分をエリアS1、光ファイバ敷設具80fに巻かれた部分をエリアS2、光ファイバ敷設具80fと光ファイバ敷設具80eとの間の部分をエリアS3、導出側の光ファイバのうち光ファイバ敷設具80eに巻かれた部分をエリアS4とする。
このモデル3において、点Pin1のX−Z座標(Pin1x,Pin1z)は下記式で表されるものとする。なお、Pin1x、Pin1zにおける添え字x,zは、Pin1のx座標及びz座標を表す。以下同様に、各点の後の添え字xはその点のx座標を表し、添え字zはz座標を表す。
Pin1x=x1、
Pin1z=z1−r
一方、光ファイバ敷設具80e,80fの各中心点O1,O2間を結ぶ直線の長さL及び角度Ψは下記式により求められる。なお、以下の説明において、sqrtは平方根記号(√)を示す。
L=sqrt((x2−x1)2+(z2−z1)2)
Ψ=arctan((z2−z1)/(x2−x1))
また、角度θ1,θ2は下記式により表わされる。
θ1=θ2=Ψ−0.5π≦0
更に、点P1,P2の座標(P1x,P1z、P2x,P2z)は下記式により表わされる。
P1x=x1+r・cos(θ1)
P1z=z1+r・sin(θ1)
P2x=x2+r・cos(θ2)
P2z=z2+r・sin(θ2)
更に、光ファイバ敷設具80eの中心点O1及び点O3の座標が既知であるので、光ファイバ敷設具80eの中心点O1と点O3との間を結ぶ直線の長さL2は下記の式で求められる。
L2=sqrt((x3−x1)2+(z3−z1)2)
ここで、光ファイバ敷設具80eの中心点O1と点O3との間を結ぶ直線と点O3と点Pout1との間を結ぶ直線とのなす角度をφ2とし、光ファイバ敷設具80eの中心点O1と点Pout1との間を結ぶ直線とX軸とのなす角度をθout1とすると、下記式が成り立つ。
φ2=arcsin(r/L2)
L2cos(0.5・π−φ2+θout1)=x3−x1
従って、角度θout1は下記式により求められる。
θout1=arccos((x3−x1)/L2)+φ2−0.5・π
この角度θout1を用いて、点Pout1のX−Z座標(Pout1x,Pout1z)が下記式により求められる。
Pout1x=x1+r・cos(θout1)
Pout1z=z1+r・sin(θout1)
これと同様に、光ファイバ敷設具80fの中心点O2と点O4との間を結ぶ直線の長さをL3とすると、下記式が成り立つ。
L3=sqrt((x4−x2)2+(z4−z2)2)
ここで、光ファイバ敷設具80fの中心点O2と点O4との間を結ぶ直線と点O4と点Pin2との間を結ぶ直線とのなす角度をφ3とし、光ファイバ敷設具80fの中心点O2と点Pin2との間を結ぶ直線とX軸とのなす角度をθin2とすると、下記式が成り立つ。
φ3=arcsin(r/L3)
L3cos(0.5・π−φ3+θin2)=x4−x2
従って、角度θin2は下記式により求められる。
θin2=arccos((x4−x2)/L3)+φ3−0.5・π
この角度θin2を用いて、点Pin2のX−Z座標(Pin2x,Pin2z)が下記式により求められる。
Pin2x=x2+r・cos(θin2)
Pin2z=z2+r・sin(θin2)
ここで、光ファイバの敷設の仕方によって、点O3の位置の位置マークが上向き、点O4の位置の位置マークが下向きの場合と、点O3の位置の位置マークが下向き、点O4の位置の位置マークが上向きの場合とがある。
点O3の位置の位置マークが上向き、点O4の位置の位置マークが下向きの場合のエリアS1〜S4のマッピング(光ファイバ長さとX−Z座標との関連付け)は、以下に示すようになる。但し、以下の説明においてSOx及びXXsとは、基準点から当該点(Ox又はXX)までの光ファイバ長さを示す。例えば、SO3は基準点から点O3までの光ファイバ長さを示し、Pout1sは基準点から点Pout1までの光ファイバ長さを示す。
基準点から点Pout1までの光ファイバの長さPout1sは、基準点から点O3までの光ファイバ長さSO3、点O3のX−Z座標(x3,z3)及び点Pout1のX−Z座標(Pout1x,Pout1z)が既知であるので、下記式により求められる。
Pout1s=SO3−sqrt((x3−Pout1x)2+(z3−Pout1z)2)
また、光ファイバ敷設具80eには導入側光ファイバが1回巻きされているので、基準点から点Pin1までの光ファイバ長さPin1sは次の式により求められる。
Pin1s=Pout1s−r×1×2×π−r・(θout1+0.5・π)
これと同様に、基準点から点Pin2までの光ファイバの長さPin2sは、基準点から点O4までの光ファイバ長さSO4、点O4のX−Z座標(x4,z4)及び点Pin2のX−Z座標(Pin2x,Pin2z)が既知であるので、下記式により求められる。
Pin2s=SO4+sqrt((x4−Pin2x)2+(z4−Pin2z)2)
また、基準点から点P2,P1,Pout2までの光ファイバ長さP2s,P1s,Pout2sは、下記式により求められる。
P2s=Pin2s+r・(−θ2+θin2)
=SO5−sqrt((x5−P2x)2+(z5−P2z)2)
P1s=P2s+L
=SO5+sqrt((P1x−x5)2+(P1z−z5)2)
Pout2s=P1s+r×1×2×π+r・(0.5・π+θ1)
これらのことから、光ファイバ上の任意の点のX−Z座標(x,z)は、基準点から当該点までの光ファイバ長さをsとし、当該点がエリアS1にあるとすると、下記式により求められる。
x=x1+r・cos(−0.5・π+(s−Pin1s)/r)
z=z1+r・sin(−0.5・π+(s−Pin1s)/r)
また、当該点がエリアS2にあるとすると、当該点のX−Z座標(x,z)は下記式により求められる。
x=x2+r・cos(−(s−Pin2s)/r+θin2)
z=z2+r・sin(−(s−Pin2s)/r+θin2)
更に、当該点がエリアS3にあるとすると、当該点のX−Z座標(x,z)は下記式により求められる。
x=P2x−(s−P2s)・sin(−θ2)
z=P2z−(s−P2s)/cos(−θ2)
更にまた、当該点がエリアS4にあるとすると、当該点のX−Z座標(x,z)は下記式により求められる。
x=x1+r・cos(−(s−P1s)/r+θ2)
z=z1+r・sin(−(s−P1s)/r+θ2)
一方、点O3の位置の位置マークが下向き、点O4の位置の位置マークが上向きの場合のS1〜S4のマッピングは、以下に示すようになる。すなわち、基準点から点Pout1までの光ファイバ長さPout1sは、下記式により求められる。
Pout1s=SO3+sqrt((x3−Pout1x)2+(z3−Pout1z)2)
また、光ファイバ敷設具80eには導入側光ファイバが1回巻きされているので、基準点から点Pin1までの光ファイバ長さPin1sは次の式により求められる。
Pin1s=Pout1s+r×1×2×π+r・(θout1+0.5・π)
これと同様に、基準点から点Pin2までの光ファイバ長さPin2sは、基準点から点O4までの光ファイバ長さSO4、点O4のX−Z座標(x4,z4)及び点Pin2のX−Z座標(Pin2x,Pin2z)が既知であるので、下記式により求められる。
Pin2s=SO4−sqrt((x4−Pin2x)2+(z4−Pin2z)2)
また、基準点から点P2,P1,Pout2までの光ファイバ長さP2s,P1s,Pout2sは、下記式により求められる。
P2s=Pin2s−r・(−θ2+θin2)
=SO5+sqrt((x5−P2x)2+(z5−P2z)2)
P1s=P2s−L
=SO5−sqrt((P1x−x5)2+(P1z−z5)2)
Pout2s=P1s−r×1×2×π−r・(0.5・π+θ1)
これらのことから、光ファイバ上の任意の点のX−Z座標(x,z)は、基準点から当該点までの光ファイバ長さをsとし、当該点がエリアS1にあるとすると、下記式により求められる。
x=x1+r・cos(θout1−(s−Pout1s)/r)
z=z1+r・sin(θout1−(s−Pout1s)/r)
また、当該点がエリアS2にあるとすると、当該点のX−Z座標(x,z)は下記式により求められる。
x=x2+r・cos((s−P2s)/r+θ2)
z=z2+r・sin((s−P2s)/r+θ2)
更に、当該点がエリアS3にあるとすると、当該点のX−Z座標(x,z)は下記式により求められる。
x=P1x+(s−P1s)・sin(−θ2)
z=P1z+(s−P1s)・cos(−θ2)
更にまた、当該点がエリアS4にあるとすると、当該点のX−Z座標(x,z)は下記式により求められる。
x=x1+r・cos((s−Pout2s)/r−0.5・π)
z=z1+r・sin((s−Pout2s)/r−0.5・π)
このようにして、モデル3の代数演算可能化処理が完了する。
図42は、モデル1の代数演算可能化処理を示す模式図である。この図42において、光ファイバ敷設具80aの中心点O1の座標を(x1,z1)とし、光ファイバ敷設具80bの中心点O2の座標を(x2,z2)とし、光ファイバ敷設具80cの中心点O3の座標を(x3,z3)とする。また、点O4〜点O9はそれぞれ光ファイバに付与された位置マーク(カラーコード)の位置を示し、点O4の座標は(x4,z4)、点O5の座標は(x5,z5)、点O6の座標は(x6,z6)、点O7の座標は(x7,z7)、点O8の座標は(x8,z8)、点O9の座標は(x9,z9)である。これらの点O1〜O9の座標は、画像処理の結果から既知であるとする。
一方、光ファイバ敷設具80a,80b間の光ファイバと光ファイバ敷設具80aとの接点をP1、光ファイバ敷設具80a,80b間の光ファイバと光ファイバ敷設具80bとの接点をP2、光ファイバ敷設具80b,80c間の光ファイバと光ファイバ敷設具80bとの接点をP3、光ファイバ敷設具80b,80c間の光ファイバと光ファイバ敷設具80cとの接点をP4とする。
また、光ファイバ敷設具80aとエリアF1の光ファイバとの接点をPin1とし、光ファイバ敷設具80bから光ファイバ敷設部80dに向かう光ファイバ(エリアF3の光ファイバ)と光ファイバ敷設具80bとの接点をPout1とし、光ファイバ敷設具80dから光ファイバ敷設具80bに向かう光ファイバ(エリアF4の光ファイバ)と光ファイバ敷設具80bとの接点をPin2とし、光ファイバ敷設具80cとエリアF2の光ファイバとの接点をPout2とする。
更に、光ファイバ敷設具80aの中心点O1と光ファイバ敷設具80bの中心点との間を結ぶ直線とX軸とのなす角度をΨA、光ファイバ敷設具80bの中心点O2と光ファイバ敷設具80cの中心点O3との間を結ぶ直線とX軸とのなす角度をΨBとする。
更にまた、光ファイバ敷設具80aの中心点O1と点P1との間結ぶ直線とX軸とのなす角度をθ1、光ファイバ敷設具80aの中心点O1と点Pin1との間を結ぶ直線とX軸とのなす角度をθin1、光ファイバ敷設具80bの中心点O2と点P2との間を結ぶ直線とX軸とのなす角度をθ2A、光ファイバ敷設具80bの中心点O2と点P3との間を結ぶ直線とX軸とのなす角度をθ2B、光ファイバ敷設具80bの中心点O2と点Pin2との間を結ぶ直線とX軸とのなす角度をθin2、光ファイバ敷設具80bの中心点O2と点Pout1との間を結ぶ直線とX軸とのなす角度をθout1とする。
更に、光ファイバ敷設具80cの中心点と点P4との間を結ぶ直線とX軸とのなす角度をθ3、光ファイバ敷設具80cの中心点O3と点Pout2との間を結ぶ直線とX軸とのなす角度をθout2とする。ここでも、角度は反時計回り(CCW)をプラスの方向、時計周り(CW)をマイナスの方向とする。
更に、光ファイバのうち光ファイバ敷設具80aに巻かれている部分をエリアS1、光ファイバ敷設具80a,80b間の部分をエリアS2、点P2から点Pout1までの部分をエリアS3、点Pin2から点P3までの部分をエリアS4、光ファイバ敷設具80b,80c間の部分をエリアS5、光ファイバ敷設具80cに巻かれている部分をエリアS6という。
光ファイバ敷設具80a,80bの中心点O1,O2間を結ぶ直線の長さLA及び角度ΨAは、下記式により求められる。
LA=sqrt((x2−x1)2+(z2−z1)2)
ΨA=arctan((z2−z1)/(x2−x1))
また、角度θ1,θ2Aは、下記式により求められる。
θ1=θ2A=ΨA+0.5・π
これと同様に、光ファイバ敷設具80b,80cの中心点O2,O3間を結ぶ直線の長さをLB及び角度ΨBは、下記式により求められる。
LB=sqrt((x3−x2)2+(z3−z2)2)
ΨB=arctan((z3−z2)/(x3−x2))
また、角度θ2B,θ3は、下記式により求められる。
θ2B=θ3=ΨB+0.5・π
更に、点P1〜P4の座標(P1x,P1z、P2x,P2z、P3x,P3z、P4x,P4z)は、θ1,θ3(但し、θ2A=θ1、θ2B=θ3)を用いて下記式により表される。
P1x=x1+r・cos(θ1)
P1z=z1+r・sin(θ1)
P2x=x2+r・cos(θ1)
P2z=z2+r・sin(θ1)
P3x=x2+r・cos(θ3)
P3z=z2+r・sin(θ3)
P4x=x3+r・cos(θ3)
P2z=z3+r・sin(θ3)
更に、光ファイバ敷設具80aの中心点O1及び点O4の座標が既知であるので、光ファイバ敷設具80aの中心点O1と点O4との間を結ぶ直線の長さL1は下記式により求めることができる。
L1=sqrt((x4−x1)2+(z4−z1)2)
ここで、光ファイバ敷設具80aの中心点O1と点O4との間を結ぶ直線と点O4と点Pin1との間を結ぶ直線とのなす角度をφ1とすると、下記式が成り立つ。
0<φ1=arcsin(r/L1)<0.5・π
L1cos(−(θin1+0.5・π−φ1)=x4−x1
従って、角度θin1は下記式により求められる。
θin1=−arccos((x4−x1)/L1)+φ1−0.5・π<−0.5・π
この角度θin1を用いて、下記式のように点Pin1のX−Z座標(Pin1x,Pin1z)が求められる。
Pin1x=x1+r・cos(θin1)
Pin1z=z1+r・sin(θin1)
これと同様に、光ファイバ敷設具80bの中心点O2及び点O6の座標が既知であるので、光ファイバ敷設具80bの中心点O2と点O6との間を結ぶ直線の長さL2は下記式により求めることができる。
L2=sqrt((x6−x2)2+(z6−z2)2)
ここで、光ファイバ敷設具80bの中心点O2と点O6との間を結ぶ直線と点O6と点Pout1との間を結ぶ直線とのなす角度をφ2とすると、下記式が成り立つ。
0<φ2=arcsin(r/L2)<0.5・π
L2cos(−(θout1−0.5・π+φ2)=x6−x2
従って、角度θout1は下記式により求められる。
θout1=−arccos((x6−x2)/L2)−φ2+0.5・π
この角度θout1を用いて、下記式のように点Pout1のX−Z(Pout1x,Pout1z)座標が求められる。
Pout1x=x2+r・cos(θout1)
Pout1z=z2+r・sin(θout1)
更に、光ファイバ敷設具80bの中心点O2及び点O7の座標が既知であるので、光ファイバ敷設具80bの中心点O2と点O7との間を結ぶ直線の長さL3は下記式により求めることができる。
L3=sqrt((x2−x7)2+(z2−z7)2)
ここで、光ファイバ敷設具80bの中心点O2と点O7との間を結ぶ直線と点O7と点Pin2との間を結ぶ直線とのなす角度をφ3とすると、下記式が成り立つ。
0<φ3=arcsin(r/L3)<0.5・π
L3cos(−(θin2+0.5・π−φ3)=x7−x2
従って、角度θin2は下記式により求められる。
θin2=−arccos((x7−x2)/L3)+φ3−0.5・π<−0.5・π
この角度θin2を用いて、下記式のように点Pin2のX−Z座標(Pin2x,Pin2z)が求められる。
Pin2x=x2+r・cos(θin2)
Pin2z=z2+r・sin(θin2)
更にまた、光ファイバ敷設具80cの中心点O3及び点O9の座標が既知であるので、光ファイバ敷設具80cの中心点O3と点O7との間を結ぶ直線の長さL4は下記式により求めることができる。
L4=sqrt((x9−x3)2+(z9−z3)2)
ここで、光ファイバ敷設具80cの中心点O3と点O9との間を結ぶ直線と点O9と点Pout2との間を結ぶ直線とのなす角度をφ4とすると、下記式が成り立つ。
0<φ4=arcsin(r/L4)<0.5・π
L4cos(−(θout2−0.5・π+φ4)=x9−x3
従って、角度θout2は下記式により求められる。
θout2=−arccos((x9−x3)/L4)−φ4+0.5・π
この角度θout2を用いて、下記式のように点Pout2のX−Z座標(Pout2x,Pout2z)を求めることができる。
Pout2x=x3+r・cos(θout2)
Pout2z=z3+r・sin(θout2)
ここで、光ファイバの敷設の仕方によって、点O4の位置マークが上向き、点O9の位置マークが下向きの場合と、点O4の位置マークが下向き、点O9の位置マークが上向きの場合とがある。
点O4の位置マークが上向き、点O9の位置マークが下向きの場合のエリアS1〜S6のマッピングは、以下に示すようになる。
基準点から点O4までの光ファイバの長さSO4、点O4のX−Z座標(x4,z4)及び点Pin1のX−Z座標(Pin1x,Pin1z)が既知であるので、基準点から点Pin1までの光ファイバの長さPin1sは以下の式により求められる。
Pin1s=SO4+sqrt((Pin1x−x4)2+(Pin1z−z4)2)
また、光ファイバ敷設具80aには光ファイバが3回巻きされており、基準点から点O5までの光ファイバ長さが既知であるので、基準点から点P1,P2までの光ファイバ長さP1s,P2sは次の式により求められる。
P1s=Pin1s+r×3×2×π+r・(2・π+θin1−θ1)
=SO5−sqrt((x5−P1x)2+(z5−P1z)2)
P2s=P1s+LA
=SO5+sqrt((P2x−x5)2+(P2z−z5)2)
また、基準点から点Pout1までの光ファイバ長さは、下記式により求めることができる。
Pout1s=P2s+r・(θ1−θout1)
=SO6−sqrt((x6−Pout1x)2+(z6−Pout1z)2)
これらのことから、光ファイバ上の任意の点のX−Z座標(x,z)は、基準点から当該点までの光ファイバ長さをsとし、当該点がエリアS1にあるとすると、下記式により求められる。
x=x1+r・cos(−(s−Pin1s)/r+θin)
z=z1+r・sin(−(s−Pin1s)/r+θin)
また、当該点がエリアS2にあるとすると、当該点のX−Z座標(x,z)は下記式により求められる。
x=P1x+(s−P1s)・sin(θ1)
z=P1z−(s−P1s)・cos(θ1)
更に、当該点がエリアS3にあるとすると、当該点のX−Z座標(x,z)は下記式により求められる。
x=x2+r・cos(−(s−P2S)/r+θ1)
z=z2+r・sin(−(s−P2s)/r+θ1)
また、基準点から点Pin2,P3,P4,Pout2までの長さは、Pin2s,P3s,P4s,Pout2sは、下記式で求められる。
Pin2s=SO7+sqrt((Pin2x−x7)2+(Pin2z−z7)2)
P3s=Pin2s+r・(2・π+θin2−θ3)
=SO8−sqrt((x8−P3x)2+(z8−P3z)2)
P4s=P3s+LB
=SO8+sqrt((P4x−x8)2+(P4z−z8)2)
Pout2s=P4s+r×3×2×π+r・(θ3−θout2)
=SO9−sqrt((x9−Pout2x)2+(z9−Pout2z)2)
この場合、光ファイバ上の任意の点がエリアS4にあるとすると、当該点のX−Z座標(x,z)は下記式により求められる。
x=x2+r・cos(−(s−Pin2s)/r+θin2)
z=z2+r・sin(−(s−Pin2s)/r+θin2)
また、当該点がエリアS5にあるとすると、当該点のX−Z座標(x,z)は下記式により求められる。
x=P3x+(s−P3s)・sin(θ3)
z=P3z−(s−P3s)・cos(θ3)
更に、当該点がエリアS6にあるとすると、当該点のX−Z座標(x,z)は下記式により求められる。
x=x3+r・cos(−(s−P4s)/r+θ3)
z=z3+r・sin(−(s−P4S)/r+θ3)
一方、点O4の位置マークが下向き、点O9の位置マークが上向きの場合のエリアS1〜S6のマッピングは、以下に示すようになる。
基準点から点O4までの光ファイバの長さSO4、点O4のX−Z座標(x4,z4)及び点Pin1のX−Z座標(Pin1x,Pin1z)が既知であるので、基準点から点Pin1までの光ファイバの長さPin1sは以下の式により求められる。
Pin1s=SO4−sqrt((Pin1x−x4)2+(Pin1z−z4)2)
また、光ファイバ敷設具80aには光ファイバが3回巻きされており、また基準点から点O5までの光ファイバ長さが既知であるので、基準点から点P1,P2までの光ファイバ長さP1s,P2sは次の式により求められる。
P1s=Pin1s−r×3×2×π+r・(2・π+θin1−θ1)
=SO5+sqrt((x5−P1x)2+(z5−P1z)2)
P2s=P1s−LA
=SO5−sqrt((P2x−x5)2+(P2z−z5)2)
また、基準点から点Pout1までの光ファイバ長さは、下記式により求めることができる。
Pout1s=P2s−r・(θ1−θout1)
=SO6+sqrt((x6−Pout1x)2+(z6−Pout1z)2)
これらのことから、光ファイバ上の任意の点のX−Z座標(x,z)は、基準点から当該点までの光ファイバ長さをsとし、当該点がエリアS1にあるとすると、下記式により求められる。
x=x1+r・cos((s−P1s)/r+θ1)
z=z1+r・sin((s−P1s)/r+θ1)
また、当該点がエリアS2にあるとすると、当該点のX−Z座標(x,z)は下記式により求められる。
x=P2x−(s−P2s)・sin(θ1)
z=P2z+(s−P2s)・cos(θ1)
更に、当該点がエリアS3にあるとすると、当該点のX−Z座標(x,z)は下記式により求められる。
x=x2+r・cos((s−Pout1s)/r+θout1)
z=z2+r・sin((s−Pout1s)/r+θout1)
また、基準点から点Pin2,P3,P4,Pout2までの長さPin2s,P3s,P4s,Pout2sは、下記式で求められる。
Pin2s=SO7−sqrt((Pin2x−x7)2+(Pin2z−z7)2)
P3s=Pin2s−r・(2・π+θin2−θ3)
=SO8+sqrt((x8−P3x)2+(z8−P3z)2)
P4s=P3s−LB
=SO8+sqrt((P4x−x8)2+(P4z−z8)2)
Pout2s=P4s−r×3×2×π+r・(θ3−θout2)
=SO9+sqrt((x9−Pout2x)2+(z9−Pout2z)2)
この場合、光ファイバ上の任意の点がエリアS4にあるとすると、当該点のX−Z座標(x,z)は下記式により求められる。
x=x2+cos((s−P3s)/r+θ3)
z=z2+sin((s−P3s)/r+θ3)
また、当該点がエリアS5にあるとすると、当該点のX−Z座標(x,z)は下記式により求められる。
x=P4x−(s−P4s)・sin(θ3)
z=P4z+(s−P4s)・cos(θ3)
更に、当該点がエリアS6にあるとすると、当該点のX−Z座標(x,z)は下記式により求められる。
x=x3+r・cos((s−Pout2s)/r+θout2)
z=z3+r・sin((s−Pout2s)/r+θout2)
このようにして、モデル1の代数演算可能化処理が完了する。
図43は、モデル2の代数演算可能化処理を示す模式図である。この図43において、光ファイバ敷設具80dの中心点O1の座標を(x1,z1)とする。また、点O3,点O4はそれぞれ光ファイバに付与された位置マーク(カラーコード)の位置を示し、点O3の座標は(x3,z3)、点O4の座標は(x4,z4)である。これらの点O3,点O4の座標は、画像処理の結果から既知であるとする。なお、点O3,点O4の座標に変えて、モデル1の点Pout1,Pin2の座標を用いてもよい。
一方、光ファイバF3と光ファイバ敷設具80dとの接点をPinとし、光ファイバF4と光ファイバ敷設具80dとの接点をPoutとする。そして、光ファイバ敷設具80dの中心点O1と点Pinとの間を結ぶ直線とX軸とのなす角度をθinとし、光ファイバ敷設具80dの中心点O1と点Poutとの間を結ぶ直線とX軸とのなす角度をθoutとする。なお、光ファイバのうち光ファイバ敷設具80dに巻かれた(接触した)部分をエリアS1とする。
更に、光ファイバ敷設具80dの中心点O1と点O4との間を結ぶ直線の長さをL1、該直線と点O4,Pin間を結ぶ直線とのなす角度をφ1とし、光ファイバ敷設具80dの中心点O1と点O3との間を結ぶ直線の長さをL2、該直線と点O3,Pout間を結ぶ直線とのなす角度をφ2とする。
光ファイバ敷設具80dの中心点O1及び点O3,O4の座標が既知であるので、点O1と点O4との間を結ぶ直線の長さL1、及び点O1と点O3との間を結ぶ直線の長さL2は、下記式により求められる。
L1=sqrt((x4−x1)2+(z4−z1)2)
L2=sqrt((x3−x1)2+(z3−z1)2)
また、角度φ1,φ2は、下記式により求められる。
0<φ1=arcsin(r/L1)< 0.5・π
0<φ2=arcsin(r/L2)<0.5π
角度φ1を用いると、下記式が成り立つ。
L1cos(θin+0.5・π−φ1)=x4−x1
従って、角度θinは、下記式により求められる。
θin=arccos((x4−x1)/L1)+φ1−0.5・π
この角度θinを用いて、点PinのX−Z座標(Pinx,Pinz)が下記式により求められる。
Pinx=x1+r・cos(θin)
Pinz=z1+r・sin(θin)
これと同様に、角度φ2を用いると、下記式が成り立つ。
L2cos(θout−0.5・π+φ2)=x3−x1
従って、角度θoutは、下記式により求められる。
θout=arccos((x3−x1)/L2)−φ2+0.5・π
この角度θoutを用いて、点PoutのX−Z座標(Poutx,Poutz)が下記式により求められる。
Poutx=x1+r・cos(θout)
Poutz=z1+r・sin(θout)
ここで、光ファイバの敷設の仕方によって、点O3の位置マークが上向き、点O4の位置マークが下向きの場合と、点O3の位置マークが下向き、点O4の位置マークが上向きの場合とがある。点O3の位置マークが上向き、点O4の位置マークが下向きの場合のエリアS1のマッピングは、以下のようになる。
基準点から点O3までの光ファイバ長さSO3及び点O4までの光ファイバ長さSO4は既知であるので、基準点から点Poutまでの光ファイバ長さPouts及び点Pinまでの光ファイバ長さPinsは下記式により求められる。
Pouts=SO3−sqrt((x3−Poutx)2+(z3−Poutz)2)
=SO4+sqrt((x4−Pinx)2+(z4−Pinz)2)
+2・π・r・N+r(2・π−θout+θin)
Pins=Pouts−2・π・r・N−r(2・π−θout+θin)
=SO4+PinO4=SO4+sqrt((x4−Pinx)2+(z4−Pinz)2)
但し、Pins<Poutsである。この場合、光ファイバ上の任意の位置の点がエリアS1にあるとすると、当該点のX−Z座標(x,z)は下記式により求められる。
x=x1+r・cos(−(s−Pins)/r+θin)
z=z1+r・sin(−(s−Pins)/r+θin)
一方、点O3の位置マークが下向き、点O4の位置マークが上向きの場合のエリアS1のマッピングは、以下のようになる。
基準点から点O3までの光ファイバ長さSO3及び点O4までの光ファイバ長さSO4は既知であるので、基準点から点Poutまでの光ファイバ長さPouts及び点Pinまでの光ファイバ長さPouts,Pinsは下記式により求められる。
Pouts=SO3−sqrt((x3−Poutx)2+(z3−Poutz)2)
=SO4−sqrt((x4−Pinx)2+(z4−Pinz)2)
−2・π・r・N−r(2・π−θout+θin)
Pins=Pouts+2・π・r・N−r(2・π−θout+θin)
=SO4−PinO4=SO4−sqrt((x4−Pinx)2+(z4−Pinz)2)
但し、Pins>Poutsである。この場合、光ファイバ上の任意の位置の点がエリアS1にあるとすると、当該点のX−Z座標(x,z)は下記式により求められる。
x=x1+r・cos((s−Pouts)/r+θout)
z=z1+r・sin((s−Pouts)/r+θout)
これにより、モデル2の代数演算可能化処理が完了する。
このようにして各モデルの代数演算可能化処理が完了した後、モデル間の光ファイバの代数演算可能化処理を行う。図44は、モデル間の光ファイバの演算可能化処理を示す模式図である。ここでは、モデル間の光ファイバの代数演算可能化処理の一例として、光ファイバ敷設具80b,80c間の光ファイバ(エリアF4の光ファイバ)の代数演算可能化処理について説明する。
ここでは、光ファイバ敷設具80b,80d間の光ファイバと光ファイバ敷設具80dとの接点をP、光ファイバ敷設具80b,80d間の光ファイバと光ファイバ敷設具80bとの接点をQとする。先に実施した代数演算可能化処理により、点Pの座標(px,pz)、点Qの座標(qx,qz)、基準点から点Pまでの光ファイバ長さSP及び基準点から点Qまでの光ファイバ長さSQは判明しているものとする。
点P,点Q間の光ファイバの長さLHは、以下の式により求めることができる。
LH=sqrt((qx−px)2+(qz−pz)2)
ここで、光ファイバ敷設具80b,80d間の光ファイバ上の任意の点をOC、点P,Q間を結ぶ直線とX軸とのなす角度をΨ、点Pから点OCまでの長さをL、点Qから点Cまでの長さをL’とする。
この場合、SQ>SPとすると、角度Ψ、点OCのX−Z座標(xC,zC)は以下の式に示すようになる。
Ψ=arstan((qz−pz)/(qx−px))
xC=px+L・cosΨ
zC=pz+L・sinΨ
また、SQ<SPとすると、角度Ψ、点CのX−Z座標(xC,zC)は以下の式に示すようになる。
Ψ=arstan((qz−pz)/(qx−px))
xC=px+L’・cosΨ
zC=pz+L’・sinΨ
このようにして、基準点から光ファイバ上の任意の点までのファイバ長さとX−Z座標との対応付けが完了する。
図45は、横軸に基準点からの光ファイバ長さをとり、縦軸に温度をとって、光ファイバ温度測定装置を使用して測定した光ファイバの長さ方向の温度分布を示す図である。なお、図45では、ラック3台(ラックA,B,C)分の温度分布を示している。また、図45には、光ファイバに付与されたメーターマークと基準点からの光ファイバ長さとの関係を併せて示している。
図46は、画像処理により検出された光ファイバ敷設具及び位置マーク(カラーコード)を示す模式図である。この図46において、Hook1〜Hook6は光ファイバ敷設具80a〜80fの位置を示し、Col1〜Col4は位置マークの位置を示している。また、図47はラックA,B,Cにおける各カセット入口部、出口部、位置マークの位置(Col1,Col2,…)及び光ファイバ敷設具の位置(Hook1,Hook2,…)における光ファイバ長さ(メーターマーク換算値)及びX−Z座標を示す図である。
この場合のラック内の温度分布の推定方法について説明する。
まず、敷設状態解析装置52において上述の代数演算可能化処理を行い、例えば図47に示すようにカセットの入口部及び出口部における光ファイバ長さ、各位置マーク(カラーコード)の位置における光ファイバ長さ(Scol1,Scol2,…)及びX−Z座標(xcol11,zcol1,xcol2,zcol2,…)、各光ファイバ敷設具のX−Z座標(xHook1,zhook1,xhook2,zhook2,…)等を算出する。また、例えば図48に示すように、ラック毎に、モデル内外の各領域の始まり部分の光ファイバ長さを算出する。なお、ここでは、光ファイバ長さをメーターマークに換算した値で示している。
図49は、光ファイバの長さ方向に沿って10cm毎に測定ポイントを設定し、各測定ポイントにおける測定温度と各測定ポイントのX−Z座標とを関連付けて示す図である。この図48に示すように、温度測定装置13では、測定ポイント毎の温度が検出される。一方、敷設状態解析装置52では、測定ポイント毎のX−Z座標が検出されるとともに、ラック内における光ファイバの敷設状態が検出される。
敷設状態解析装置52では、光ファイバの敷設状態を解析して、温度測定装置13で測定した温度分布を補正する際の先験情報を付与する。例えば、光ファイバ敷設具80aには光ファイバが3回巻きされており、この光ファイバ敷設具80aに巻回された光ファイバ上の測定ポイントの温度は同一とみなすことができる。このため、敷設状態解析装置52では、該当する領域の測定ポイントの情報に、先験情報として平均情報を付加する。また、例えば光ファイバ敷設具80b,80d間を往復する光ファイバ(エリアF3,F4の光ファイバ)はほぼ同じ経路を通っている。このため、エリアF3の光ファイバ上の測定ポイントとエリアF4の光ファイバ上の測定ポイントとの位置が同一又はほぼ同一の場合、それらの測定ポイントの温度は同一とみなすことができる。このため、敷設状態解析装置52では、該当する領域の測定ポイントの情報に、先験情報としてSort情報を付与する。温度測定装置13では、これらの情報を敷設状態解析装置52から入手して温度分布を補正する。
例えば、温度測定装置13では、同一の平均情報が付加された測定ポイントの測定温度の平均値を算出し、各測定ポイントの測定温度を平均値に置き換える。また、例えば温度測定装置13は、同一のSort情報が付加された測定ポイントからX−Z座標が同一又はほぼ同一の測定ポイントを抽出し、それらの測定ポイントの測定温度をそれらの測定ポイントの平均温度に置き換える。また、必要に応じて、温度測定装置13では各測定ポイントの温度情報からスプライン補間等の手法を用いて補間処理を行い、面内の温度分布を算出する。図50は、補間処理を行って得たラック内の面内温度分布(等温線)の一例を示す図である。この図50において、丸印は測定ポイントを模式的に示している。このように、ラック内の面内温度分布を得ることもできる。
(その他の実施形態)
上述の実施形態では線材(光ファイバ)の敷設状態をカメラで撮影し、画像処理して線材の敷設状態を解析する場合について説明したが、画像処理を行わなくても線材の敷設状態を解析することが可能である。
図51は、他の実施形態を示す模式図である。本実施形態では、カセット90から引き出された光ファイバ20を、図36に示すようなリング状の光ファイバ敷設具91a〜91fを用いてラック31の扉に敷設している。光ファイバ敷設具91a〜91fの中心部には、図52に示すように、それぞれ固有のIDコードを有するパッシブ型RFID(Radio Frequency IDentification)タグ92が搭載されている。
また、光ファイバ20には、メーターマーク(図示せず)とともに磁性塗料を塗布して形成された位置マーク93が一定のピッチで付与されている。これらの位置マーク93は、例えば図53に示すように、カセット90の入力端からの距離に応じたパターンで形成されている。
図54は、敷設状態検出部を示す模式図である。この敷設状態検出部95は、ラック31の幅方向に並んだ多数のホール素子(磁気検出素子)により形成されるホール素子センサアレイ95aと、ラック31の幅方向に並んだ多数の近接RFIDアンテナにより形成される近接RFIDアンテナアレイ95bとを有している。本実施形態では、ホール素子センサアレイ95aの上に近接RFIDアンテナアレイ95bが配置されている。
この敷設状態検出部95は、図示しない駆動装置により駆動され、ラック31の幅方向の両側に配置されたガイドレール96に沿って上下方向に移動する。また、ガイドレール96に沿ってリニアスケール97が配置されており、このリニアスケール97によって敷設状態検出部95のZ軸方向の位置が検出されるようになっている。
ラック31に敷設された光ファイバの敷設状態を解析する場合、敷設状態検出部95をガイドレール96に沿って上下方向に移動させる。光ファイバ敷設具91a〜91fに設置されたRFIDタグ92に近接RFIDアンテナアレイ95bが近付くと、近接RFIDアンテナから出力される電波により電力が供給されてRFIDタグ92の電子回路が働き、RFIDタグ92からIDコードを示す電波が出力される。敷設状態検出部95は、この電波を近接RFIDアンテナで受信し、どのアンテナで受信したかにより光ファイバ敷設具のX軸方向の位置を決定する。一方、光ファイバ敷設具のZ軸方向の位置は、リニアスケール97の出力により求まる。このようにして、光ファイバ敷設具91a〜91fのX−Z座標が判明する。
また、敷設状態検出部95が位置マーク93の近傍を通るときに、ホール素子センサアレイ95bが位置マーク93から発生する磁場を検出する。敷設状態検出部95では、どのホール素子が磁場を検出したかにより、位置マーク93のX軸方向の位置を決定する。このとき、ホール素子は分解能が高いので、各位置マーク93の磁気パターンを識別することが可能であり、カセット入口部から当該位置マーク93までの光ファイバ長さが判明する。一方、位置マーク93のZ軸方向の位置は、リニアスケール97の出力により求まる。このようにして、位置マーク93のX−Z座標が判明する。
この敷設状態検出部95の出力は、コンピュータにより構成される敷設状態解析装置(図示せず)に入力される。その後の処理は、前述の実施形態と同様であるので、ここではその詳細は省略する。
なお、本実施形態では、光ファイバ20を直接検出していないため、位置マーク93から光ファイバ20の向きを判定できないことが考えられる。しかし、位置マーク93の数がある程度多ければ、その前後の位置マーク93から光ファイバ20の向きを判定することが可能であり、モデルの特定や光ファイバの敷設状態の特定に支障はない。
上記実施形態ではいずれも線材が計算機室内に敷設された光ファイバの場合について説明したが、開示した技術を電力ケーブルやその他の線材の敷設状態の解析に適用することができる。また、計算機室内に敷設する線材の敷設状態を解析する場合には位置マークとして上述したカラーコードや磁性塗料により磁気コードを使用することが好ましいが、広いエリアに敷設された線材の敷設状態を検出する場合は、位置マーク又は位置マーク検出手段として、超音波センサやGPS(Global Positioning System)等を利用することもできる。