JPWO2010123104A1 - 装飾部品用セラミックスおよびこれを用いた装飾部品 - Google Patents
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Abstract
黄金色の色調を有し、高級感,美的満足感および精神的安らぎが得られるとともに、色差が小さく、装飾面の美観が損なわれることのない装飾部品用セラミックスおよびこれを用いた装飾部品を提供する。ニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素を含む窒化チタン質焼結体からなり、装飾面における炭素の含有量が0.4質量%以上0.9質量%以下であり、装飾面に実質的にアルミニウムを含んでいない装飾部品用セラミックスである。装飾面に実質的にアルミニウムを含んでいないことから好ましい黄金色が提供でき、アルミニウムが金属成分と結合して銀白色の斑点状の異物として装飾面に付着することがないので、装飾面の美観が損なわれることがほとんどない。
Description
本発明は、美しい色調の黄金色を醸し出す装飾部品用セラミックスおよびこれを用いた装飾部品に関する。
従来、金色を呈する時計用装飾部品や装身具用装飾部品には、色調や耐食性の面から金やその合金、または各種金属にメッキを施したものが用いられている。
しかしながら、金やその合金、あるいはメッキを施した金属材料は、いずれも硬度が低いことから、硬質物質との接触により、表面に傷が生じたり変形したりするという問題があった。最近では、このような問題を解決するために、種々の装飾部品用セラミックスが提案されている。
例えば、特許文献1では、硬質相として窒化チタンを45〜75重量%、炭化チタンを7.5〜25重量%、結合相としてクロムを全量中炭化物に換算して1〜10重量%、モリブデンを全量中炭化物に換算して0.1〜5重量%、及びニッケルを全量中5〜20重量%含有して、測色計にて得られるL*a*b*表色系の明度指数がL*=65〜69、a*=4〜9、b*=5〜16である焼結合金(装飾部品用セラミックス)が開示されている。
また、特許文献2では、次式(A)で表わされる硬質相が70〜98重量%と、
(Tia,Mb)(Nw,Cx,Oy)Z・・・(A)
但し、M:Zr,Hf,V,Nb,Ta,Crの中の1種以上
a+b=1,1≧a≧0.4,0.6≧b≧0
W+X+Y=1,X+Y>0,1>W≧0.4
0.19≧X≧0,0.6≧Y≧0,0.93≧Z≧0.6
Fe,Ni,Co,Cr,Mo,Wの中から選ばれた1種以上の結合相が2〜30重量%と、
不可避不純物と、から成る装飾用焼結合金(装飾部品用セラミックス)が開示されている。
(Tia,Mb)(Nw,Cx,Oy)Z・・・(A)
但し、M:Zr,Hf,V,Nb,Ta,Crの中の1種以上
a+b=1,1≧a≧0.4,0.6≧b≧0
W+X+Y=1,X+Y>0,1>W≧0.4
0.19≧X≧0,0.6≧Y≧0,0.93≧Z≧0.6
Fe,Ni,Co,Cr,Mo,Wの中から選ばれた1種以上の結合相が2〜30重量%と、
不可避不純物と、から成る装飾用焼結合金(装飾部品用セラミックス)が開示されている。
また、特許文献3では、Fe,Ni,Co,Cr,Mo,Wの中から選ばれた1種以上の結合相2〜30重量%と、P,Al,B,Si,Mn,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Taの1種以上の金属、合金又はAl,Y,Zr,Mg,Ni,Siの酸化物、Al,Si,Bの窒化物、Moの炭化物もしくはこれらの相互固溶体の1種以上の化合物から成る強化相0.1〜10重量%とを含み、残りが次式(A)で表わされる硬質相と不可避不純物とから成る装飾用焼結合金(装飾部品用セラミックス)が開示されている。
(Tia,Mb)(Nw,Cx,Oy)Z・・・(A)
但し、M:Zr,Hf,V,Nb,Ta,Crの中から選ばれた1種以上
a+b=1,1≧a≧0.4,0.6≧b≧0
W+X+Y=1,X+Y>0,1>W≧0.4
0.5≧X≧0,0.6≧Y≧0.06,0.93≧Z≧0.6
(Tia,Mb)(Nw,Cx,Oy)Z・・・(A)
但し、M:Zr,Hf,V,Nb,Ta,Crの中から選ばれた1種以上
a+b=1,1≧a≧0.4,0.6≧b≧0
W+X+Y=1,X+Y>0,1>W≧0.4
0.5≧X≧0,0.6≧Y≧0.06,0.93≧Z≧0.6
そして、特許文献2および3では、TiNZ(0.6≦Z≦0.95)を主体にした硬質相により、黄金色の色調を保持させた装飾用焼結合金(装飾部品用セラミックス)が開示されており、Zの値が化学量論組成よりも少なくなるほど黄金色から淡黄金色に変化し、この合金に、さらに黄金色を呈するTiO,ZrN,HfN,VN,NbN,TaN,CrN,Cr2N,TaC,NbCを加えることにより、深みのある淡黄金色から鮮明な黄金色までの色調コントロールが一層容易になると記載されている。
また、特許文献4では、窒化チタンを主成分とし、ニッケルを副成分とするとともに、窒化バナジウム,窒化ニオブ,窒化タンタル,炭化モリブデン,炭化ニオブ,炭化タングステンおよび炭化タンタルのうち少なくともいずれか1種、を添加成分として含む装飾部品用セラミックスであって、少なくとも装飾面の算術平均高さRaが0.03μm以下であるとともに、前記装飾面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が72〜84であり、クロマティクネス指数a*,b*がそれぞれ4〜9,28〜36である装飾部品用セラミックスが開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載された焼結合金(装飾部品用セラミックス)は、焼結体そのものであるため、被膜が剥がれることがなく、優れた耐食性を備えてはいるが、色調が銀色と紫色とを併せ持つ色調から銀色とピンク色とを併せ持った色調であり、黄金色の色調ではなかった。
また、特許文献2および3では、TiO,ZrN,HfN,VN,NbN,TaN,CrN,Cr2N,TaC,NbCを加えることにより深みのある淡黄金色から鮮明な黄金色までの色調が示されているものの、開示された装飾用焼結合金(装飾部品用セラミックス)は、硬度,靱性等の機械的特性や装飾部品間で発生する色調感の差である色差に影響を与える炭素の比率は幅広い値をとることができることから、機械的特性の低い装飾部品が現れたり、装飾部品間の色差が大きい場合が発生したりするという問題があった。
特許文献4では、高級感,美的満足感および精神的安らぎ等を与えることができ、しかも最近の市場で人気の高い黄金色を呈する装飾部品用セラミックスが開示されているものの、この装飾部品用セラミックスは、炭素の比率が制御されたものではなく、上記同様、機械的特性の低い装飾部品が現れたり、装飾部品間の色差が大きくなったりするおそれがあった。
さらに、特許文献1〜4に開示されている装飾部品用セラミックスの焼成工程では、焼成のときに使用する敷粉の材料として比較的融点の低い酸化アルミニウムの粉末を焼成用の敷粉として用いているために、一部の酸化アルミニウムが焼成中に蒸発することがあった。その結果、酸化アルミニウムが蒸発して分解したアルミニウムと結合した不純物が銀白色の斑点状の異物として装飾部品用セラミックスの表面に付着して、美観を損ねることがあった。さらに、アルミニウムが窒化チタンの結晶粒子中に固溶したり、固溶して析出したりした場合には、研磨しても異物を除去することができず、美観を損ねるという問題があった。
本発明は、上記課題を解決すべく案出されたものであり、黄金色の色調を有し、高級感,美的満足感および精神的安らぎが得られるとともに、色差が小さく、装飾面の美観が損なわれることのない装飾部品用セラミックスおよびこれを用いた装飾部品を提供することを目的とする。
本発明の装飾部品用セラミックスは、ニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素を含む窒化チタン質焼結体からなり、装飾面における前記炭素の含有量が0.4質量%以上0.9質量%以下であり、前記装飾面に実質的にアルミニウムを含んでいないことを特徴とするものである。
また、本発明の時計用装飾部品は、上記いずれかの構成の本発明の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とするものである。
本発明の装飾部品用セラミックスによれば、ニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素を含む窒化チタン質焼結体からなり、装飾面における炭素の含有量が0.4質量%以上0.9質量%以下であり、装飾面に実質的にアルミニウムを含んでいないことから、好ましい黄金色が提供できるとともに、アルミニウムが上記金属成分と結合して銀白色の斑点状の異物として装飾面に付着することが少なくなるので、装飾面の美観が損なわれることが少なくなる。さらに、炭素が窒化チタンに拡散して固溶体を形成して焼結を促進するため、硬度,靱性等の機械的特性を高くすることができるとともに、炭素の呈する黒色により、無彩色化の傾向が僅かに現れて色むらが抑制されると思われ、色調感の差である色差(△E*ab)を小さくすることができるので、装飾部品間で発生する色調感の差を感じにくくなる。
また、本発明の時計用装飾部品によれば、本発明の装飾部品用セラミックスで構成することにより、高級感や美的満足感といった視覚を通じた精神的安らぎを得ることができるので、機能とともに視覚的な美観も要求される時計に好適に用いることができる。
10A,10B:時計用ケース
11:凹部
12:足部
13:底部
14:胴部
15:穴部
20:中駒
21:貫通孔
30:外駒
31:ピン穴
40:ピン
50:時計用バンド
60:携帯電話機
80:ノート型パーソナルコンピュータ
90:石鹸ケース
100:コーヒーカップセット
11:凹部
12:足部
13:底部
14:胴部
15:穴部
20:中駒
21:貫通孔
30:外駒
31:ピン穴
40:ピン
50:時計用バンド
60:携帯電話機
80:ノート型パーソナルコンピュータ
90:石鹸ケース
100:コーヒーカップセット
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本実施形態の装飾部品用セラミックスは、ニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素を含む窒化チタン質焼結体からなるものである。
本実施形態において、窒化チタン質焼結体とは、窒化チタン(TiN)を主成分とする焼結体であり、ここでいう主成分とは、装飾部品用セラミックスを構成する全成分100質量%に対して、50質量%以上を占める成分である。この主成分である窒化チタンは、装飾品として良好な黄金色を呈するとともに、強度や硬度等の機械的特性が高いという特徴を有していることから、本実施形態の窒化チタン質焼結体からなる装飾部品用セラミックスにおいては、窒化チタンを70質量%以上の含有量で含有させることが好適である。
また、ニッケルは、展性に富み、主成分である窒化チタンの結晶を結合する結合剤として作用するものであって、金属ニッケル以外に組成式が例えばTiNi3,Ti2Ni2で示されるニッケル化合物として存在するものも含む。また、ニオブは、色調調整剤として作用するものであって、金属ニオブ以外に組成式が例えばNbNi3,NbCで示されるニオブ化合物として存在するものも含む。そして、クロムは空気中の酸素と結合し装飾面に緻密な酸化被膜を生成して耐食性を向上させることかでき、炭素は靱性や硬度等の機械的特性を向上させることができる。
本実施形態の装飾部品用セラミックスは、ニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素を含む窒化チタン質焼結体からなり、装飾面における炭素の含有量が0.4質量%以上0.9質量%以下であり、装飾面に実質的にアルミニウムを含んでいないことが重要である。上記構成の窒化チタン質焼結体の装飾面に炭素がこの含有量で含まれることにより、炭素は窒化チタンに拡散して固溶体を形成して焼結を促進するため、靱性や硬度等の機械的特性を高くすることができる。また、炭素はクロマティクネス指数a*および以下の式(A)で規定される色調感の差である色差(△E*ab)に影響を与える。炭素をこの含有量で含むことによって、炭素の呈する黒色により無彩色化の傾向が僅かに現れて色むらが抑制されるため、装飾部品間で発生する色差をほとんど感じることのない好ましい黄金色とすることができる。
△E*ab=((△L*)2+(△a*)2+(△b*)2))1/2・・・(A)
△E*ab=((△L*)2+(△a*)2+(△b*)2))1/2・・・(A)
炭素の含有量が0.4質量%未満では、靱性や硬度等の機械的特性を十分高くすることができず、炭素の呈する黒色による無彩色化の傾向がほとんど表れずに、色差(△E*ab)は大きくなる傾向にある。一方、炭素の含有量が0.9質量%を超えると、靱性や硬度等の機械的特性が高くなるものの、色調は赤みを帯びる傾向にあり、需要者の求める高級感,美的満足感および精神的安らぎ等の装飾的価値を与える黄金色となりにくい。
なお、炭素の含有量については、炭素分析法を用いて測定すればよい。
また、装飾面に実質的にアルミニウムを含んでいなければ、アルミニウムが上記金属成分と結合して銀白色の斑点状の異物として装飾面に付着することが少なくなるので、装飾面の美観が損なわれることがほとんどない。
また、装飾面に実質的にアルミニウムを含んでいない状態とは、装飾面の全面におけるアルミニウムの含有量が0.1質量%以下である状態をいい、アルミニウムの含有量はICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合高周波プラズマ)発光分析法で測定すればよい。
また、装飾面における窒化チタンの結晶粒子の格子定数によっても装飾面の美観は影響を受け、装飾面における窒化チタンの結晶粒子の格子定数が0.4242nm以上0.4252nm以下であることが好適である。格子定数がこの範囲にあれば、窒化チタンの結晶粒子の格子定数がその理論値である0.4242nm近傍に制限されていることから、炭素や酸素等の不純物が窒化チタンに固溶することがほとんどできなくなるため、装飾面の美観を損なうおそれがさらに減少する。なお、窒化チタンの結晶粒子の格子定数の理論値は0.4242nmであり、格子定数は0.4242nmより小さい値をとることはほとんどない。
装飾面における窒化チタンの結晶粒子の格子定数は高分解能X線回折法を用いて求められる。
具体的には、CuKα1特性X線を装飾部品用セラミックスに照射し、回折角(2θ)が20°≦2θ≦110°を満たす範囲で、0.008°のステップでスキャンして得られたX線回折パターンをRIETAN−2000プログラム(泉富士夫氏作成:F. Izumi and T. Ikeda, Mater. Sci. Forum, 321-324 (2000) 198)を用いてリートベルト法で解析することにより、格子定数を求めることができる。
但し、上述のように、RIETAN−2000を用いてリートベルト法で解析する場合には、窒化チタンの結晶粒子の各結晶面からのX線回折パターンのピーク形状によって格子定数が変動するため、虎谷の分割pseudo-voigt関数を用いてピーク形状を限定すればよい。
このように装飾的価値を求める需要者に高級感,美的満足感および精神的安らぎ等を与える黄金色を呈する装飾部品用セラミックスとするには、装飾面の算術平均高さRaが0.03μm以下であるとともに、装飾面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が72以上84以下であり、クロマティクネス指数a*,b*がそれぞれ3以上9以下,27以上36以下であることが好ましい。
ここで、明度指数L*とは色調の明暗を示す指数であり、明度指数L*の値が大きいと色調は明るく、明度指数L*の値が小さいと色調は暗くなる。また、クロマティクネス指数a*は色調の赤から緑の度合いを示す指数であり、a*の値がプラス方向に大きいと色調は赤色になり、その絶対値が小さくなるにつれて色調は鮮やかさに欠けたくすんだ色調になり、a*の値がマイナス方向に大きいと色調は緑色になる。さらに、クロマティクネス指数b*は色調の黄から青の度合いを示す指数であり、b*の値がプラス方向に大きいと色調は黄色になり、その絶対値が小さくなるにつれて色調は鮮やかさに欠けたくすんだ色調になり、b*の値がマイナス方向に大きいと色調は青色になる。
また、装飾面の算術平均高さRaは、光の反射率に影響を及ぼして色調が変わるため、装飾面の算術平均高さRaを0.03μm以下としておくことが好ましい。これにより、光の反射率が高くなり、明度指数L*の値を上昇させることができる。この算術平均高さRaが0.03μmを超えると、明度指数L*の値が低下し、色調は暗くなり高級感が低下するおそれがある。
この光は380〜780nmの波長を有する可視光線の集合であり、算術平均高さRaを0.03μm以下とすることによって、可視光線を分光し、青色を示す波長域450〜500nmの光の反射を少なくするとともに、黄色を示す波長域570〜590nmの光の反射を多くするように作用するので、高級感,美的満足感および精神的安らぎ等を与える黄金色を呈することができる。特に、波長域570〜700nmの光に対する装飾面の反射率は、50%以上であることが好適である。
なお、算術平均高さRaはJIS B 0601−2001に準拠して測定すればよく、測定長さおよびカットオフ値をそれぞれ5mmおよび0.8mmとし、触針式の表面粗さ計を用いて測定する場合であれば、例えば、装飾部品用セラミックスの装飾面に、触針先端半径が2μmの触針を当て、触針の走査速度は0.5mm/秒に設定し、この測定で得られた5箇所の平均値を算術平均高さRaの値とする。
そして、明度指数L*の値を72以上84以下としたのは、黄金色の色調に程良い明るさが発現するからであり、クロマティクネス指数a*の値を3以上9以下としたのは、色調の鮮やかさを落とさずに赤味を抑えることができるためである。また、クロマティクネス指数b*の値を27以上36以下としたのは、色調の鮮やかさを落とさずに黄金色を出せるからである。特に明度指数L*の値は、72以上79以下であることが好適である。
また、本実施形態の装飾部品用セラミックスは、装飾面における開気孔率が2.5%以下であることが好ましい。装飾面における開気孔率は、特に明度指数L*の値に影響を及ぼし、開気孔率が高いと明度指数L*の値は小さくなり、開気孔率が低いと明度指数L*の値は大きくなる。装飾面における開気孔率を2.5%以下にすることで、明度指数L*の値を77以上にすることができ、より好まれる色調となる。さらに、明度指数L*の値を78以上とすることが好適であり、この場合には開気孔率は1.1%以下とすることが好ましい。
なお、装飾面における開気孔率は、以下のようにして算出する。まず、金属顕微鏡を用いて、倍率を200倍にしてCCDカメラで装飾面の画像を取り込む。次に、画像解析装置((株)ニレコ製LUZEX−FS等)により、画像内の1視野の測定面積を2.25×10−2mm2,測定視野数を20,つまり測定総面積を4.5×10−1mm2として、当該測定総面積における開気孔の面積を求める。当該開気孔の面積を測定総面積で除して、測定総面積における当該開気孔の面積の割合を装飾面の開気孔率とする。これにより、装飾面における開気孔率を算出することができる。
なお、本実施形態の装飾部品用セラミックスにおける装飾面とは、装飾部品の装飾的価値が要求される面を指し、全ての面を指すものではない。例えば、本実施形態の装飾部品用セラミックスを時計用ケースに用いる場合では、この時計用ケースの外側の面は、鑑賞の対象となるものでもあり装飾的価値が要求されるので装飾面である。
そして、このような装飾面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*の値およびクロマティクネス指数a*,b*の値は、JIS Z 8722−2000に準拠して測定することで求められる。例えば、分光測色計(コニカミノルタホールディングス(株)製CM−3700d等)を用い、光源をCIE標準光源D65,視野角を10°,測定範囲を5mm×7mmに設定して測定することができる。
また、本実施形態の装飾部品用セラミックスは、ニッケルと、ニオブまたはチタンとからなる金属間化合物が装飾面に含まれていることが好ましい。これら金属間化合物が装飾面に含まれていることによって、装飾面における明度指数L*の値が大きくなるので、気品漂う明るさが醸し出される。このような金属間化合物は、例えば、組成式がTiNi3,Ti2NiまたはNbNi3として示される成分であって、X線回折法で同定することができる。
また、本実施形態の装飾部品用セラミックスは、ニッケルと、ニオブまたはチタンとからなる金属間化合物が装飾面に含まれていることが好ましい。これら金属間化合物が装飾面に含まれていることによって、装飾面における明度指数L*の値が大きくなるので、気品漂う明るさが醸し出される。このような金属間化合物は、例えば、組成式がTiNi3,Ti2NiまたはNbNi3として示される成分であって、X線回折法で同定することができる。
また、本実施形態の装飾部品用セラミックスは、窒化チタン質焼結体の組成式をTiNxとしたときに0.8≦x≦0.96であることが好ましい。後述するように組成式をTiNxとしたときの原子数xの値により、その色調は影響を受ける。原子数xが小さくなると色調は黄金色から薄い黄金色になり、原子数xが大きくなると色調はくすんだ濃い黄金色になる。このような観点から組成式をTiNxとしたときの原子数xの値は、0.8以上0.96以下であることが好ましく、原子数xの値がこの範囲であるときには、光沢のある色調感がさらに増すため、より高い高級感および美的満足感を得ることができる。
窒化チタンは、脱脂または焼成雰囲気中に含まれる酸素および炭素と置換または反応して酸炭窒化チタン(TiCNO)に成りうるため、窒化チタン質焼結体の組成式をTiNxとしたときの原子数xの値は、酸素・窒素分析装置および炭素分析装置を用いて、次のようにして求めることができる。具体的には、これら分析装置により窒化チタン質焼結体の酸素、窒素および炭素の含有量を測定した後、100質量%より酸素,窒素および炭素の含有量を引いた値をチタンの含有量とする。そして、チタンの含有量と窒素の含有量とをそれぞれの原子量で除すことによりモル数が求められるので、チタンのモル数を1としたときの窒素の比の値を原子数xとする。
本実施形態の装飾部品用セラミックスは、ニッケルを7質量%以上14.5質量%以下、ニオブを2.5質量%以上10質量%以下の含有量で含むことが好ましい。
ニッケルは、展性に富み、主成分である窒化チタンの結晶同士を結合する結合剤として作用するために、できる限り多く加えることが好ましいが、一方で、装飾部品用セラミックスにおける比率が高過ぎる場合は、装飾部品用セラミックスを身に付けていると汗と反応してニッケルが溶出してしまい、色調は赤みを帯びて、需要者の求める高級感,美的満足感および精神的安らぎ等の装飾的価値を与える黄金色とならなくなるおそれがある。また、CIE1976L*a*b*色空間におけるクロマティクネス指数a*は高くなるものの、明度指数L*,クロマティクネス指数b*とも低くなるため、ニッケルの含有量は7質量%以上14.5質量%以下であることが好ましい。特に、この装飾用部品用セラミックスが腕時計用ケース,バンド駒等を始めとする身に付けるものである場合は、ニッケルの含有量は7質量%以上10質量%以下であることがより望ましい。
また、ニオブの含有量を2.5質量%以上10質量%以下としたのは、ニオブが窒化チタンに固溶する、あるいはニッケルの内部に溶融することによって、明度指数L*の値を高くする色調調整剤としての作用がある反面、ニオブの含有量が多いと共有結合性が高いために焼結が難しくなるおそれがあるからである。
また、ニオブの含有量は3質量%以上8質量%以下であることがより望ましい。これは、ニオブは粒成長を抑制するように働くので、結晶粒界は増加し、入射した光は装飾面を形成する結晶による鏡面反射と併せて結晶粒界による拡散反射の影響を強く受ける結果、装飾面における明度指数L*は高くなるとともに、その色調は優れた相乗効果を生む。そのため、光沢のある色調感が増し、さらに高級感,美的満足感を得ることができる。その結果、視覚を通じて精神的安らぎが得られるからである。
なお、反射は一般的に鏡面反射と拡散反射とからなり、本実施形態における鏡面反射とは、光が鏡面である装飾面、微視的には装飾面を形成する結晶に入射した後、反射したときにその入射角と反射角が同じになる反射をいい、拡散反射とは光が結晶粒界に入り込み、ランダムな反射を繰り返した後、再び外部に向かう反射をいう。
ただし、装飾面を形成する結晶を後述するバレル研磨により表面粗さを調整することができ、原子間力顕微鏡で測定したときの粒界を含まない結晶面の表面粗さを算術平均高さRaで0.001〜0.002μmにすると、結晶面での反射が鏡面反射から拡散反射に一部変化する傾向が見られ、装飾面におけるクロマティクネス指数b*を32以上にすることができて鮮やかな黄金色となるので好適である。
また、本実施形態の装飾部品用セラミックスは、クロムを1.5質量%以上6.5質量%以下の含有量で含むことが好ましい。クロムは、空気中の酸素と結合して装飾面に緻密な酸化被膜を生成するので耐食性を向上させることができるとともに、ニッケルがクロムを包囲した状態で窒化チタンを結合する粒界相を形成すると、ニッケルがクロムと反応してニッケルクロム化合物を生成して、ニッケルがイオン化して流出することを抑制することができる。しかしながら、クロムの含有量は色の鮮やかさに影響を及ぼすため、ニッケルの流出を抑制し、耐食性と鮮やかさを兼ね備えるためには、クロムを1.5質量%以上6.5質量%以下の含有量で含むことが好ましいのである。
なお、ニッケルがクロムを包囲した状態とは、クロムが窒化チタンの結晶と接することなく粒界相に周囲を取り囲まれた状態をいい、この状態については、走査型電子顕微鏡で得られた装飾面の画像と、エネルギー分散型(EDS)X線マイクロアナライザーによって検出されるニッケル,クロムの分布状態を示す装飾面の画像とを照合することで確認することができる。
また、本実施形態の装飾部品用セラミックスは、窒化チタン質焼結体は、クロムおよびニッケルからなる金属間化合物を含むことが好ましい。クロムおよびニッケルが磁性体であるのに対し、この金属間化合物は、非磁性体であることから、この装飾部品用セラミックスが時計用装飾部品および携帯端末機用装飾部品等に用いられても磁気の影響を及ぼしにくくなる。このような金属間化合物は、例えば、組成式がCr2Ni3またはCr3Ni2として示される成分であって、X線回折法で同定することができる。
チタン,ニッケル,ニオブおよびクロムの含有量は、蛍光X線分析(XRF)法を用いて測定することができる。具体的には、予め窒化チタン,ニッケル,ニオブおよびクロムの各元素の濃度の異なる混合粉末を少なくとも2種類以上用意して、それぞれプレス法により成形して標準試料とする。次に、これら各標準試料にX線を照射して、蛍光X線の強度と既知の濃度との関係から最小二乗法を用いて検量線を作成する。そして、本実施形態の装飾部品用セラミックスを粉砕して粉末とし、プレス法により成形して測定試料とする。この測定試料にX線を照射して、蛍光X線の強度を測定し、検量線より濃度である含有率を求める。また、窒素については酸素・窒素分析装置で測定することができ、炭素は炭素分析装置で測定すればよい。
チタン,ニッケル,ニオブおよびクロムの含有量は、蛍光X線分析(XRF)法を用いて測定することができる。具体的には、予め窒化チタン,ニッケル,ニオブおよびクロムの各元素の濃度の異なる混合粉末を少なくとも2種類以上用意して、それぞれプレス法により成形して標準試料とする。次に、これら各標準試料にX線を照射して、蛍光X線の強度と既知の濃度との関係から最小二乗法を用いて検量線を作成する。そして、本実施形態の装飾部品用セラミックスを粉砕して粉末とし、プレス法により成形して測定試料とする。この測定試料にX線を照射して、蛍光X線の強度を測定し、検量線より濃度である含有率を求める。また、窒素については酸素・窒素分析装置で測定することができ、炭素は炭素分析装置で測定すればよい。
また、本実施形態の時計用装飾部品は、上記構成の本実施形態の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とし、その例としては、時計用ケースや時計用バンド駒がある。
図1は本実施形態の時計用装飾部品である時計用ケースの一例を示しており、(a)は時計用ケースを表側から見た斜視図であり、(b)は(a)の時計用ケースを裏側から見た斜視図である。また、図2は本実施形態の時計用装飾部品である時計用ケースの別の態様を示す斜視図である。また、図3は本実施形態の時計用装飾部品である時計用バンドの構成の一例を示す模式図である。なお、これらの図において同じ部位を示す場合は同じ符号を付してある。
図1(a)、(b)に示す時計用ケース10Aは、図示しないムーブメント(駆動機構)を収容する凹部11と、腕に時計を装着するための時計用バンド(図示しない)を固定する足部12とを備えており、凹部11は厚みの薄い底部13と厚みの厚い胴部14とからなる。また、図2に示す時計用ケース10Bは、図示しないムーブメント(駆動機構)が入る穴部15と、胴部14に形成された腕に時計を装着するための時計用バンド(図示しない)を固定する足部12とを備えている。
図3に示す時計用バンド50を構成するバンド駒は、ピン40が挿入される貫通孔21を有する中駒20と、中駒20を挟むようにして配置され、ピン40の両端が差し込まれるピン穴31を有する外駒30とから構成されている。そして、中駒20の貫通孔21にピン40が挿入され、挿入されたピン40の両端が外駒30のピン穴31に差し込まれることにより、中駒20と外駒30とが順次連結されて時計用バンド50が構成されている。
これら、時計用ケース10A,10Bおよび時計用バンド50を構成するバンド駒として用いられる本実施形態の時計用装飾部品は、本実施形態の装飾部品用セラミックスからなるものであることから、時計としての高級感,美的満足感を十分に得ることができ、視覚を通じて精神的安らぎを得ることができる。
なお、本実施形態の装飾部品用セラミックスでは、装飾面のビッカース硬度(Hv)が長期信頼性に影響を与える要因の一つとなるため、ビッカース硬度(Hv)が8GPa以上であることが好ましい。ビッカース硬度(Hv)をこの範囲にすると、装飾面は傷が入りにくくなるので、ガラスまたは金属からなる塵埃のような硬度の高い物質と接触しても装飾面に容易に傷が生じることが少ないからである。この装飾面のビッカース硬度(Hv)はJIS R 1610−2003に準拠して測定することができる。
また、破壊靱性は装飾面の耐摩耗性に影響し、その値は高いほどよく、本実施形態の装飾部品用セラミックスでは4MPa・m1/2以上であることが好ましい。この破壊靱性はJIS R 1607−1995で規定する圧子圧入法(IF法)に準拠して測定することができる。
装飾部品用セラミックスが身に付けて用いられるようなものである場合は、軽い方が好まれるため、本実施形態の装飾部品用セラミックスでは、その見掛密度は6g/cm3以下(0を除く)であることが好適である。この見掛密度はJIS R 1634−1998に準拠して測定される。装飾部品用セラミックスが時計用バンド駒の一部である中駒20の場合であれば、引張荷重が頻繁に中駒20にかかるため、本実施形態の装飾部品用セラミックスでは、引張強度は196N(ニュートン)以上であることが好適である。この引張強度を求めるには、貫通孔21の長さより長い、超硬製のピン(図示しない)を中駒20の貫通孔21a,21bに挿入した後、このピンを引き離す方向に引っ張り、中駒20が破壊したときの強度をロードセルで読み取ればよい。また、装飾部品用セラミックスが時計用ケースまたは時計用バンド駒である場合、図示しないムーブメント(駆動機構)への悪影響を考慮すると、質量磁化が162G・cm3/g以上の強磁性金属、例えばコバルト(Co)の比率は、装飾部品用セラミックス100質量%に対し、合計0.1質量%以下であることが好適である。このような強磁性金属の比率は、ICP発光分析法で測定することができる。
図4は、本実施形態の携帯端末機用装飾部品を用いた携帯電話機の一例を示す斜視図であり、図5は、図4に示す例の携帯電話機の筐体が開いた状態を示す斜視図である。
本実施形態の携帯端末機用装飾部品は、本実施形態の装飾部品用セラミックスからなることが好適であり、その具体例としては、図4,5に示す例の携帯電話機の各種操作キー,ケース,スイッチ等がある。
図4に示す例の携帯電話機60は、携帯電話機60のモードを、ラジオを聴くモードであるラジオモードや音楽を聴くモードである音楽モードなどに変更するモードキー61aと、携帯電話機60をマナーモードにするマナーキー61bとを第1の筐体62に備え、指などの接触を検知してこの接触により入力が行なわれるタッチセンサ63と、被写体を撮像するカメラ64と、ライト65と、タッチセンサ63等の入力の有効または無効を設定するスライドスイッチ66とを第2の筐体67に備えている。
次に、図5に示す例の携帯電話機60は、第2の筐体67が開いた状態を示すものであり、第1の筐体62と第2の筐体67とは、ヒンジ68を介して連結されており、これにより第2の筐体67は、自在に開閉することができる。また、第2の筐体67は、フロントケース69aとリアケース69bとを有しており、フロントケース69aには液晶表示ユニット70が設けられている。
また、第1の筐体62もフロントケース71aとリアケース71bとを有しており、フロントケース71aには各種操作キーが設けられている。この操作キーには、電話番号等を入力するテンキー72a,各種機能のメニューについてカーソルを移動するカーソル移動キー72b,着信時に押して操作することによって通話を開始する通話キー72c,電源のオンオフおよび通話中に押して操作することによって通話を終了する電源/終話キー72d,カーソル移動キー72bの中心に配置されたセンターキー72fの左右に配置されたファンクションキー73L,73R等がある。
上記したケースであるフロントケース69aや71a,リアケース69bや71b,操作キーであるテンキー72a,カーソル移動キー72b,通話キー72c,電源/終話キー72d,センターキー72f,ファンクションキー73Lや73R等の少なくともいずれか1種を本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、需要者に高級感,美的満足感および精神的安らぎを長期間与え、このような色調を呈する携帯電話機を所有することによる満足感を感じさせることができる。また、本実施形態の装飾部品用セラミックスは、他の色調との相性がよいことから、様々な色調の部材と組み合わせて用いることもできるので、需要者の嗜好の多様化に応えることができる。
図6は、本実施形態の携帯端末機用装飾部品の別の態様であるノート型パーソナルコンピュータの一例を示す斜視図である。
図6に示すノート型パーソナルコンピュータ80は、キーボード81,トラックパッド82およびボタンスイッチ83L,83Rを備えた本体側ケーシング84と、この本体側ケーシング84にヒンジ85L,85Rを介して開閉自在に取り付けられたモニター86とを備えている。
トラックパッド82は感圧式または静電式のポインティングデバイスからなるものであり、モニター86の画面におけるポインタの移動や命令入力等に利用されるものである。例えば、モニター86にアイコン表示されたファイルの指定やアプリケーションプログラムの選択等に用いられ、ボタンスイッチ83L,83Rとのコンビネーション操作によって、モニター86上のアイコンのドラッグやテキストファイル上の文字列の複数選択等にも用いられる。
ボタンスイッチ83Lは、前述のコンビネーション操作の他、トラックパッド82のポインティング機能で指定または選択されたファイルの開閉もしくは処理の実行等の指令にも用いられる。
ボタンスイッチ83Rには、モニター86の画面上にコンテクストメニューを表示させたり、トラックパッド82のポインティング機能で指定あるいは選択されたファイルの属性情報を表示させたりする機能がある。なお、ここでいうコンテクストメニューとは、選択可能な処理をモニター86の画面にポップアップ表示する機能のことである。
上述したトラックパッド82およびボタンスイッチ83a,83bの少なくともいずれか1種を本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、需要者に高級感,美的満足感および精神的安らぎを長期間与え、このような色調を呈する携帯電話機を所有することによる満足感を感じさせることができる。
なお、携帯端末機の一例として携帯電話機およびノートパソコンを用いて説明したが、本実施形態の携帯端末機が用いられる携帯端末機は携帯電話機およびノートパソコンに限定されるものではなく、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant),携帯型のカーナビゲーションやオーディオプレーヤー等の携帯型の端末機であって、部品に装飾性が求められるものであれば、様々な携帯端末機が該当する。
図7は、本実施形態の生活用品用装飾部品である石鹸ケースの構成の一例を示す模式図である。
この石鹸ケース90は、本体93と蓋92とからなり、石鹸91を載置する本体93の載置面94には、石鹸91の表面に付着している水を除去するための排出孔95が形成されている。石鹸91を使用しないときには、本体93の載置面94に石鹸91は載置され、蓋92を本体93に嵌め合わすことにより収納されている。石鹸91を使用するときには、本体93から蓋92を外して石鹸91を取り出して使用する。そして、使用後の石鹸91を本体93の載置面94に載置することにより、排出孔95により石鹸91の表面に付着している水を除去することができ、石鹸91が水に溶けるのを防ぐことができる。
この石鹸ケース90を構成する蓋92または本体93を本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、多くの需要者に対し、所有することによる満足感および使用の際に視覚を通じて高級感,美的満足感および精神的安らぎを与えることができる。
図8は、本実施形態の生活用品用装飾部品の別の態様であるコーヒーカップセットの一例を示す斜視図である。
図8に示すコーヒーカップセット100は、コーヒーカップ101とソーサー102とスプーン103とからなり、このコーヒーカップ101,ソーサー102およびスプーン103を本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、多くの需要者に対し、所有することによる満足感および使用の際に視覚を通じて高級感,美的満足感および精神的安らぎを与えることができる。
また、本実施形態の装飾部品用セラミックスは他の色調との相性がよいので、コーヒーカップ101,ソーサー102およびスプーン103の少なくとも1つを本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成し、他を異なる色調として組み合わせて用いることもできる。
また、本実施形態の生活用品用装飾部品は、石鹸ケース90やコーヒーカップセット100だけではなく、歯ブラシやカミソリの柄,耳かきおよびハサミ等の生活用品用装飾部品に好適に用いることができる。特に、高級ホテルの浴室や洗面所において、各種ロゴ等のマーキングされたアメニティーグッズに本実施形態の装飾部品用セラミックスを用いることにより、非日常感が強く演出された高級感,美的満足感および精神的安らぎを与えることができる。
図9は、本実施形態の車両用品用装飾部品を取り付けた車体の一例を示す斜視図である。
図9に示す車体110には、車両用品用装飾部品であるエンブレム111が取り付けられており、このエンブレム111を本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、需要者に対し、視覚を通じて高級感,美的満足感および精神的安らぎを与えることができるので車体110の装飾的価値を高めることができる。なお、図9では車体110の前方に取り付けたエンブレム111を示したが、車体110の後方に本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成したメーカー名や車種名等を示すエンブレム111を取り付けることによっても、車体110の装飾的価値を高めることができる。
図10は、本実施形態の車両用品用装飾部品を用いたコーナーポールの一例を示す正面図である。
図10に示すコーナーポール112は、駐車場の出し入れ時等に運転席から見えにくい車体の左前方(右ハンドル車の場合)の目印とするために取り付けられるものであり、車体への取り付け部113とポール部114とLED等からなる点灯部115と、を有している。このコーナーポール112のポール部114を本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成したり、点灯部115に替えて本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成したエンブレムを取り付けたりすることにより、コーナーポール112はもとより車体の装飾的価値が向上するので好適である。
また、本実施形態の車両用装飾部品は、エンブレム111やコーナーポール112だけでなく、ホイールキャップの一部や車体のボンネット上に設けられるフードオーナメントの一部、さらに車内に取り付ける小物やアクセサリーまたはこれらの一部として用いても装飾的価値が向上するので好適である。
図11は、本実施形態のスポーツ用品用装飾部品を用いたゴルフクラブの一例を示す正面図である。
図11に示すゴルフクラブ120は、シャフト121と、このシャフト121の一端に取り付けられたグリップ122と、シャフト121の他端に取り付けられたヘッド123とを備えている。ヘッド123は、ゴルフボールを捉える部分であるフェース面123Fや地面に接地する部分となるソール面123Sを有しており、図11に示すように、本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成したアクセサリー124がフェース面123Fに埋め込まれていれば装飾的価値が向上するので好適である。
また、本実施形態のスポーツ用品用装飾部品は、フェース面123Fだけではなく、ソール面123Sやグリップ122に本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成したアクセサリー124が埋め込まれていたり、グリップ122そのものが本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成されていたりしても好適である。
図12は、本実施形態のスポーツ用品用装飾部品を用いたスパイクシューズの一例を示す底面図である。
図12に示すスパイクシューズ130は、例えば、サッカーやラグビーに用いられるものであり、靴底131にはボールを蹴るときに軸足を固定するための突起状に形成されたスタッド132が複数装着されている。本実施形態の装飾部品用セラミックスがこのスタッド132として用いられると、装飾的価値が向上することに加え、従来から用いられているアルミニウム合金製のスタッドよりも耐磨耗性が優れているので、スタッド132の交換頻度が少なくなり、交換によるコストを低減することができる。なお、競技中に発生するおそれがあるスタッド132の欠けを防止するために、透明な樹脂でスタッド132の表面を被覆してもよい。
図13は、本実施形態の楽器用装飾部品を用いたギターの一例を示す斜視図である。
図13に示すギター140の主な構成は、本体141と本体141から前方に延設されたネック142とからなる。ネック142の先端部にはナット143が配設され、ナット143より前方には弦144の張力を調整することができるチューニングベグ145がそれぞれの弦144毎に設けられている。また、弦144を保持してナット143に対して動かないようにするためのクランプ機構146がナット143の近くに配設されている。
一方、本体141には、弦144の張力を同時に増大、あるいは減少させて印象的な音効果を与えるためのトレモロ装置147が取り付けられている。トレモロ装置147は、本体141に取り付けられているベースプレート148と、このベースプレート148に保持されて弦144を調律可能に保持するブリッジサドル149と、トレモロ装置147を稼動させるトレモロバー150とにより構成されている。このギター140のベースプレート148,ブリッジサドル149,トレモロバー150等を本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、ギター140の装飾的価値が向上するため、このギター140を所有することによる満足感を感じさせることができるとともに多くの観客を魅了することができる。
図14は、本実施形態の装身具用装飾部品を用いた人工歯冠の一例を示す模式図である。
図14に示す模式図は、歯肉155の内部の顎骨152に埋め込まれた人工歯根(インプラント)153に固定された支台(アパットメント)154に装着された人工歯冠151を示すものである。この人工歯冠151を本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、歯が黄金色の輝きを放つため、歯の装飾を好む需要者に高い陶酔感を与えることができる。
また、顎骨152に埋め込まれる人工歯根153はスクリュー状に形成され、このスクリュー状に形成された部分には、新生骨の生成を誘導する能力が高いキチン,コラーゲン,およびこれらの誘導体の少なくともいずれか1種を含む生体分解性基材からなる硬質の接合層が形成されていてもよい。また、支台154の基部には、架橋された上記生体分解性基材よりなる軟質の接合層が顎骨152の上側に位置する歯肉155に当接するように形成されていてもよい。
そして、本実施形態の装飾部品用セラミックスは、窒化チタン質焼結体からなるので、生体に適合しやすく、この利点を生かして、人工歯冠151だけでなく、人工歯根153や支台154に用いても好適である。
図15は、本実施形態の装身具用装飾部品を用いたイヤホンユニットの一例を示す正面図である。
図15に示すイヤホンユニット160は、聴取者の耳殻内に挿入されて音波を発するスピーカ161と、このスピーカ161を収容するケース162と、このケース162に当接するコード導出部163を介してスピーカ161に電気信号を供給するコード164と、を備えている。
このイヤホンユニット160のケース162を本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、装飾的価値が高まり、多くの需要者に視覚を通じて高級感,美的満足感および精神的安らぎを与えられる装身具用装飾部品とすることができる。
図16は、本実施形態の装身具用装飾部品を用いためがねの一例を示す斜視図である。
図16に示すめがね170は、視力を矯正したり、紫外線から目を保護したりするための一対のレンズ171a,171bと、一対のレンズ171a,171bを連結するブリッジ172と、それぞれのレンズ171a,171bに連結される鎧173a,173bと、ヒンジを介して回動することができるように鎧173a,173bに連結されるテンプル174a,174bと、レンズ171a,171bにそれぞれノーズパッド連結部材を介して取り付けられるノーズパッド175と、を備えている。
このめがね170のブリッジ172,テンプル174a,174bおよびノーズパッド175の少なくとも1つを本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、装飾的価値が高まり、多くの需要者に視覚を通じて高級感,美的満足感および精神的安らぎを与えられる装身具用装飾部品とすることができる。
図17は、本実施形態の建材用装飾部品を用いたドアハンドル用のグリップの一例を示す斜視図である。
図17に示すドアハンドル180は、L字状に延びる本体181および本体181の端部に嵌合される筒状のグリップ182を備えており、グリップ182はその先端側からフランジ183aが形成されたナット183と、後端側からフランジ184とで挟まれることによって本体181に固定されている。
このようなドアハンドル用のグリップ182を本実施形態の装飾部品用セラミックスで形成することにより、装飾的価値が高まり、多くの需要者に視覚を通じて高級感,美的満足感および精神的安らぎを与えられる建材用装飾部品とすることができる。
次に、本実施形態の装飾部品用セラミックスの製造方法について説明する。
本実施形態の装飾部品用セラミックスを得るには、まず、焼結体中で、主成分となる窒化チタンと、ニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素の各粉末とを所定量秤量し、水,2−プロパノール,メタノールまたはエタノールとともに、粉砕・混合して調合原料とする。より具体的には、平均粒径が10〜30μmの窒化チタンの粉末と、平均粒径が10〜20μmのニッケルの粉末と、平均粒径が20〜50μmのニオブの粉末、平均粒径が30〜60μmのクロムの粉末および0.1〜10μmの炭素の粉末とを準備し、ニッケルの粉末が7〜14.5質量%、ニオブの粉末が2.5〜10質量%、クロムの粉末が1.5〜6.5質量%および炭素の粉末が0.4〜0.9質量%であって、残部が窒化チタンの粉末となるように秤量して粉砕・混合すればよい。
なお、窒化チタン質焼結体は、ニッケルと、ニオブまたはチタンとからなる金属間化合物が装飾面に含まれているようにするには、所定量秤量した上記各粉末を水とともに粉砕・混合し、その時間を例えば、40時間以上70時間以下とすればよい。
また、ニッケルがクロムを包囲した状態で窒化チタンを結合する粒界相を形成するには、ニッケルの粉末とクロムの粉末とが接触する頻度を高くすることが必要である。この頻度を高くするためには、粉砕・混合する時間を長くすればよく、例えば、この時間を150時間以上にすればよい。このとき、この調合原料における不可避不純物としては珪素,リン,イオウ,マンガン,鉄等が挙げられるが、これらは装飾面の色調に悪影響を及ぼすおそれがあるので、各々0.5質量%未満であることが好適である。
また、ニッケルがクロムを包囲した状態で窒化チタンを結合する粒界相を形成するには、ニッケルの粉末とクロムの粉末とが接触する頻度を高くすることが必要である。この頻度を高くするためには、粉砕・混合する時間を長くすればよく、例えば、この時間を150時間以上にすればよい。このとき、この調合原料における不可避不純物としては珪素,リン,イオウ,マンガン,鉄等が挙げられるが、これらは装飾面の色調に悪影響を及ぼすおそれがあるので、各々0.5質量%未満であることが好適である。
また、窒化チタンの粉末は化学量論的組成のTiNであっても、あるいは非化学量論的組成のTiN1−x(0<x<1)であってもいいが、耐摩耗性および装飾的価値が高い色調という観点からは、各粉末の純度は99%以上であることが好ましく、窒化チタンの粉末が一部ニッケルの粉末と反応してTiNiを微量生成しても何等差し支えない。特に、装飾部品用セラミックスを成す窒化チタン質焼結体について組成式をTiNxとしたときに0.8≦x≦0.96とするには、窒化チタンの粉末は組成式をTiNxとしたときに0.7≦x≦0.9のものを用いればよい。
次いで、調合原料に例えば水を加え、ミルを用いて混合粉砕した後、結合剤としてパラフィンワックスを所定量添加し、所望の成形法、例えば、乾式加圧成形法,冷間静水圧加圧成形法,押し出し成形法等により円板,平板,円環体等の所望形状に成形する。
また、成形法として乾式加圧を選択した場合は、成形圧力は装飾面における開気孔率およびビッカース硬度(Hv)に影響を与えることから、成形圧力を49〜196MPaとすることが好適である。成形圧力を49〜196MPaとするのは、相対密度が95%以上で開気孔率が2.5%以下の焼結体を得ることができるとともに、ビッカース硬度(Hv)を8GPa以上にすることができるからである。また、金型は、成形体から反作用として受ける効力が抑制されるため、その寿命を長くすることもできる。
そして、得られた成形体を必要に応じて窒素雰囲気または不活性ガス雰囲気等の非酸化性雰囲気中で脱脂して脱脂体とした後、窒素および不活性ガスから選択される少なくとも1種のガス雰囲気中あるいは真空中で脱脂体をセラミックス製の容器内に収納して焼成することで、理論密度に対する相対密度が95%以上の焼結体を得る。なお、セラミックス製の容器内には予め、比較的融点の高い粉末として、例えば、窒化アルミニウム,酸化イットリウム,酸化カルシウム,窒化硼素,酸化ジルコニウムおよび酸化マグネシウムの少なくともいずれか1種を主成分とする粉末を焼成用の敷粉として散布し、この焼成用の敷粉上に脱脂体を載置しておく。なお、ここでいう主成分とは、焼成用の敷粉を構成する全成分100質量%に対して、90質量%以上を占める成分であり、装飾面における窒化チタンの結晶粒子の格子定数が0.4242nm以上0.4252nm以下である装飾部品用セラミックスを得るには、窒化物を主成分とし、その含有量が93質量%以上の焼成用の敷粉を用いればよい。
また、焼成用の敷粉として酸化物の粉末を選んだ場合には、この粉末の表面が窒化改質されていることが好適である。焼成用敷粉が脱脂体に接触しても、脱脂体の接触部分は酸素による汚染の影響を受けにくくなるからである。なお、窒素および不活性ガスから選択される少なくとも1種のガス雰囲気中あるいは真空中で焼成するのは、酸化性雰囲気中で焼成すると、チタンが酸化してそのほとんどが組成式TiO2で表される酸化チタンとなり、この酸化チタンが本質的に備えている白色の色調の影響を受けてしまい、装飾部品用セラミックスの全体の色調が白っぽくかすむからである。
また、真空中で焼成して装飾部品用セラミックスを得る場合は、その真空度が1.33Pa以下であることが好適である。真空度を1.33Pa以下とするのは、チタンが焼成中に酸化されることがなく、黄金色の装飾部品用セラミックスを得ることができるためである。特に、窒化チタン質焼結体が、クロムおよびニッケルからなる金属間化合物を含むようにするには、真空度を1.0Pa以下とすればよい。さらに、焼成温度を1200〜1800℃とすることが好適である。これにより、相対密度が95%以上で開気孔率が2.5%以下の焼結体を得ることができるとともに、焼成コストも下げられるからである。
そして得られた焼結体の装飾的価値が求められる面に、ラップ盤を用いてラップ加工を行なった後、バレル研磨を行なうことにより、焼結体のその表面は黄金色の色調を有する装飾面となって、本実施形態の装飾部品用セラミックスを得ることができる。なお、このような装飾面に現れる気孔は、その開口部の最大径を30μm以下にすることが好適であり、この範囲にすることで、気孔内への雑菌,異物や汚染物等の凝着を低減することができる。
装飾部品用セラミックスからなる製品の形状が複雑な形状の場合には、予め乾式加圧成形法,冷間静水圧加圧成形法,押し出し成形法および射出成形法等によってブロック形状または製品形状に近い形状に成形し、焼結した後に、製品形状になるように研削加工を施した後、順次ラップ加工,バレル研磨を行なってもよく、あるいは最初から射出成形法によって製品形状とし、焼成後に、順次ラップ加工,バレル研磨を行なってもよい。
ここで、装飾面となる表面の算術平均高さRaを0.03μm以下とするには、錫製のラップ盤に平均粒径の小さいダイヤモンド砥粒を供給してラップ加工すればよく、例えば平均粒径が1μm以下のダイヤモンド砥粒を用いればよい。また、バレル研磨では、回転バレル研磨機を用い、メディアとしてグリーンカーボランダム(GC)を回転バレル研磨機に投入し、湿式で24時間行なえばよい。
以上のようにして得られる本実施形態の装飾部品用セラミックスは、特に美しい色調として評価の高い黄金色を呈し、高級感があって、美的満足感を得ることができ、その結果、視覚を通じて精神的安らぎを得ることができるので、時計用ケース,時計用バンド駒等の時計用装飾部品や携帯電話機,ノート型パーソナルコンピュータ等の携帯端末機用装飾部品を始め、石鹸ケース,コーヒーカップセット,ナイフ,フォーク,ハブラシやカミソリの柄,耳かき,ハサミ,印材や名刺等の生活部品用装飾部品や、メーカー名や車種名等のエンブレムやコーナーポール等の車両用装飾部品や、ゴルフクラブやスパイクシューズを装飾するスポーツ用品用装飾部品や、ギター等を装飾する楽器用装飾部品や、イヤホンユニットの装飾や人工歯冠,めがね,ブローチ,ネックレス,イヤリング,リング,ブレスレット,アンクレット,ネクタイピン,タイタック,メダル,ボタン等の装身具用装飾部品や、床,壁,天井を飾るタイルあるいはドアハンドル用のグリップ等の建材用装飾部品として好適に用いることができる。また、時計と携帯電話とが複合化され、両者の機能を兼ね備えた腕時計型携帯電話機用装飾部品としても好適に用いることができる。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、窒化チタン粉末(純度が99%,平均粒径が22.3μm),ニッケル粉末(純度が99.5%,平均粒径が12.8μm),ニオブ粉末(純度が99.5%,平均粒径が33μm),クロム粉末(純度が99%,平均粒径が55μm)および炭素粉末(純度が99%以上,平均粒径が0.5μm)を焼結体での比率(含有量)が表1に示す比率になるように秤量し、粉砕・混合して調合原料とした。
次に、得られた各調合原料に水を加えて、振動ミルを用いて72時間粉砕・混合した後、バインダとしてパラフィンワックスを調合原料に対し3質量部添加して、噴霧乾燥法により乾燥させて顆粒とした。そして、得られた顆粒を98MPaの圧力で加圧成形して、成形体を作製した。次に、この成形体を窒素雰囲気中にて600℃で脱脂して脱脂体とした後、表1に示す成分およびその成分の含有量が表1に示す焼成用敷粉が散布されたセラミックス製の容器内に脱脂体を載置し、窒素雰囲気中にて1530℃で2時間保持して焼成して、直径が16mmの円板状の焼結体を得た。
そして、錫製のラップ盤に平均粒径が1μmのダイヤモンド砥粒を供給して焼結体の表面を1時間ラップ加工した。引き続き、回転バレル研磨機を用いて、水とメディアとしてグリーンカーボランダム(GC)とを入れて、24時間バレル研磨を行ない、試料No.1〜28の窒化チタン質焼結体からなる装飾部品用セラミックスを得た。
その後、各試料の装飾面におけるアルミニウムの含有量はICP発光分析法で測定した。なお、本実施例における試料の装飾面とは、ラップ加工された表面のみをいうものである。
そして、各試料を構成するニッケル,ニオブおよびクロムの含有量は蛍光X線分析(XRF)装置を用いて測定し、炭素については、炭素分析装置を用いて測定した。また、装飾面の算術平均高さRaについては、JIS B 0601−2001に準拠して触針式の表面粗さ計を用い、測定長さを5mm,カットオフ値を0.8mm,触針先端半径を2μm,触針の走査速度を0.5mm/秒として5箇所を測定し、その平均値を算出した。さらに、破壊靭性K1cについては、JIS R 1607−1995で規定された圧子圧入法(IF法:indentation−Fracture法)に準拠して破壊靱性K1cを測定し、硬度については、JIS R 1610−2003に準拠して、装飾面のビッカース硬度Hv(以下、硬度という。)を5箇所測定し、その平均値を算出した。
また、各試料の装飾面および装飾面と反対側の裏面における銀白色の斑点状の異物については、目視で観察した。
また、各試料の明度指数とクロマティクネス指数について、JIS Z 8722−2000に準拠して、分光測色計(コニカミノルタホールディングス(株)製CM−3700d)の光源をCIE標準光源D65,視野角を10°,測定範囲を3×5mmに設定して装飾面の色調を測定した。
また、色調については、20歳代〜50歳代の各年代について男女5名ずつ計40名のモニターに、高級感,美的満足感および精神的安らぎの3項目でアンケート調査を実施した。高級感,美的満足感,精神的安らぎの3項目の調査結果に対して、「得られる」と回答したモニターの比率がいずれも90%以上のものは「優」、上記3項目のうち1項目でも80%があるものは「良」、1項目でも70%以下となっているものは「劣」と評価した。また、高級感,美的満足感,精神的安らぎの3項目すべてにおいて、「得られる」と回答したモニターの比率がいずれも100%であった試料No.9を標準試料として、試料No.9に対する各試料の色差を上述した式(A)を用いて算出した。
また、装飾面における窒化チタンの結晶粒子の格子定数については、高分解能X線回折法を用いて求めた。
具体的には、CuKα1特性X線を各試料に照射し、回折角(2θ)が20°≦2θ≦110°を満たす範囲で、0.008°のステップでスキャンして得られたX線回折パターンをRIETAN−2000プログラム(泉富士夫氏作成:F. Izumi and T. Ikeda, Mater. Sci. Forum, 321−324 (2000) 198)を用いてリートベルト法で解析することにより、格子定数を求めた。なお、窒化チタンの結晶粒子の各結晶面からのX線回折パターンのピーク形状によって格子定数が変動するため、虎谷の分割pseudo-voigt関数を用いてピーク形状を限定した。なお、各試料の装飾面における銀白色の斑点状の異物については、目視で観察されたものを×とし、目視で観察されなかったものを○とした。また、各試料の裏面における銀白色の斑点状の異物については、目視で観察されたものを×とし、目視で観察されず、光学顕微鏡を用い、倍率を100倍にして観察されたものを○とし、目視で観察されず、光学顕微鏡を用い、倍率を100倍にしても観察されなかったものを◎とした。
それぞれの結果について、表1に各組成とアルミニュウムの含有量と焼成用敷粉とを示し、破壊靭性,硬度,装飾面・裏面における異物,明度指数L*,クロマティクネス指数a*・b*,色差,高級感,美的満足感,精神的安らぎ,評価および格子定数の各評価の結果を表2に示す。
表2に示す通り、色差については、9.5を超えると、高級感,美的満足感,精神的安らぎの3項目の少なくとも1項目においてモニターが求める装飾的価値を得ることができないことが分かる。そして、本発明の範囲外である試料No.1,2は、炭素が0.4質量%未満であることから、破壊靱性および硬度がともに低く、標準試料である試料No.9に対する色差(△E*ab)が大きいことが分かる。また、試料No.11は、炭素が0.9質量%を超えていることから、破壊靱性および硬度は高いものの、クロマネティクス指数a*も高いため、モニターが求める装飾的価値が得られず、モニターを満足させることはできなかったことが分かる。
また、試料No.16は、窒化チタンの結晶を結合する結合剤として作用するニッケルが0質量%であることから、未焼結部分が確認され、装飾部品に用いることはできなかった。試料No.22は、ニオブが0質量%であることから、モニターが求める装飾的価値が得られず、モニターを満足させることはできなかったことが分かる。
一方、本発明の試料No.3〜6,8〜10,12〜15,17〜21,23〜28は、炭素を0.4質量%以上0.9質量%以下の含有量で含むことから、モニターが求める装飾的価値が得られ、モニターを満足させられることが分かる。併せて、本発明の試料No.3〜6,8〜10,12〜15,17〜21,23〜28は、炭素の呈する黒色により、無彩色化の傾向が僅かに現れて色むらが抑制されて試料No.7に対する色差(△E*ab)を小さくすることができているので、装飾部品間で発生する色調感の差をほとんど感じることがなかった。
特に、本発明の試料No.3〜6,8〜10,14,15,18〜20,24〜26は、装飾面の算術平均高さRaが0.03μm以下であるとともに、装飾面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が72以上84以下であり、クロマティクネス指数a*,b*がそれぞれ3以上9以下,27以上36以下であることから、装飾面における光の反射率が高いため、光沢が増し、高級感,美的満足感および精神的安らぎともに「得られる」と回答したモニターの比率が90%以上となっており、モニターを十分満足させられていることが分かる。
また、窒化チタン粉末,ニッケル粉末,ニオブ粉末,クロム粉末および炭素粉末が焼結体における比率(含有量)が同じである試料No.3〜6を比べると、試料No.3〜5は装飾面における窒化チタンの結晶粒子の格子定数が0.4242nm以上0.4252nm以下であることから、不純物が窒化チタンに固溶することがほとんどできなくなっているため、光学顕微鏡を用いて倍率を100倍にして観察しても、異物が裏面には観察されず、裏面が装飾面である場合においても好適であることが分かる。
まず、窒化チタン粉末(純度が99%,平均粒径が22.3μm),ニッケル粉末(純度が99.5%,平均粒径が12.8μm),ニオブ粉末(純度が99.5%,平均粒径が33μm),クロム粉末(純度が99%,平均粒径が55μm)および炭素粉末(純度が99%以上,平均粒径が0.5μm)を焼結体での比率(含有量)が試料No.9と同じ比率になるように秤量し、表3に示す時間で、水とともに粉砕・混合して調合原料とした。次に、実施例1と同様の製造方法にて試料No.29〜33の窒化チタン質焼結体からなる装飾部品用セラミックスを得た。但し、焼成用敷粉については、いずれの試料も、窒化アルミニウムの含有量が95質量%である焼成用敷粉を用いた。
そして、装飾部品用セラミックスの装飾面において、ニッケルと、ニオブまたはチタンとからなる金属間化合物をX線回折法によって同定し、同定された組成式を表3に示した。
その後、実施例1と同様にニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素の含有量、算術平均高さRa、色調を測定し、高級感,美的満足感および精神的安らぎの3項目でアンケート調査を行なった。また、試料No.33を標準試料として、試料No.33に対する各試料の色差を上述した式(A)を用いて算出した。
得られた結果を表3に示す。
表3に示す通り、ニッケルと、ニオブまたはチタンとからなる金属間化合物が装飾面に含まれている試料No.30〜32は、上記金属間化合物が装飾面に含まれていない試料No.29,33よりも装飾面における明度指数L*の値が大きくなるので、気品漂う明るさが醸し出されるので、より高い高級感および美的満足感をモニターに与えていることが分かる。
窒化チタン粉末の組成式の違いによる特性の変化を確認する試験を行なった。
まず、表4に示す組成式の窒化チタン粉末を用意し、他の原料については実施例1と同じ原料を用意した。次に、焼結体での比率(含有量)が表4に示す比率となるように秤量し、粉砕・混合して調合原料とした。次に、実施例1と同様の製造方法にて試料No.34〜38の窒化チタン質焼結体からなる装飾部品用セラミックスを得た。但し、焼成用敷粉については、いずれの試料も、窒化アルミニウムの含有量が95質量%である焼成用敷粉を用いた。
その後、実施例1と同様にニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素の含有量、算術平均高さRa、色調を測定し、高級感,美的満足感および精神的安らぎの3項目でアンケート調査を行なった。また、高級感,美的満足感,精神的安らぎの3項目すべてにおいて、「得られる」と回答したモニターの比率がいずれも100%であった試料No.37を標準試料として、試料No.37に対する各試料の色差を上述した式(A)を用いて算出した。
さらに、組成式をTiNxとしたときの原子数xの値を求めた。具体的には、酸素・窒素分析装置を用いて酸素,窒素の含有量を測定し、炭素の含有量と合わせて100質量%から引いた値をチタンの含有量として、チタンと窒素の含有量をそれぞれの原子量で除すことによりモル数を求めて、チタンのモル数を1としたときの窒素の比の値を原子数xとした。
得られた結果を表4に示す。
表4に示す通り、原子数xの値が0.8未満の試料No.34および原子数xの値が0.96を超える試料No.38と比較して、原子数xが0.8以上0.96以下である試料No.35〜37は、光沢のある色調感が増すために、より高い高級感,美的満足感および精神的安らぎをモニターに与えていることが分かる。
NiおよびNbの含有量の違いによる特性の変化を確認する試験を行なった。
まず、試料No.37に用いた窒化チタン粉末を用意し、他の原料については実施例1と同じ原料を用意した。次に、焼結体での比率(含有量)が表5に示す比率となるように秤量し、粉砕・混合して調合原料とした。次に、実施例2と同様の製造方法にて試料No.39〜50の窒化チタン質焼結体からなる装飾部品用セラミックスを得た。
その後、実施例1と同様にニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素の含有量、算術平均高さRa、色調を測定し、高級感,美的満足感および精神的安らぎの3項目でアンケート調査を行なった。また、高級感,美的満足感,精神的安らぎの3項目すべてにおいて、「得られる」と回答したモニターの比率がいずれも100%であった実施例3の試料No.37を標準試料として、試料No.37に対する各試料の色差を上述した式(A)を用いて算出した。さらに、実施例2と同様の算出方法で原子数xを求めた。
得られた結果を表5に示す。
表5に示す通り、試料No.40〜42,45〜49は、ニッケルを7質量%以上14.5質量%以下、ニオブを2.5質量%以上10質量%以下の含有量で含むことから、明度指数L*が72以上84以下,クロマティクネス指数a*,b*がそれぞれ3以上9以下,27以上36以下となり、高級感,美的満足感および精神的安らぎをともに「得られる」と回答したモニターの比率が90%以上となっており、モニターを十分満足させられていることが分かる。
Crの含有量の違いによる特性の変化を確認する試験を行なった。
まず、実施例1と同じ原料を用意し、焼結体での比率(含有量)が表6に示す比率となるように秤量し、粉砕・混合して調合原料とした。次に、実施例2と同様の製造方法にて試料No.51〜56の窒化チタン質焼結体からなる装飾部品用セラミックスを得た。
その後、実施例1と同様にニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素の含有量、算術平均高さRa、色調を測定した。次に、JIS B 7001−1995で規定する耐食試験のうち、人工汗半浸せき試験(40±2℃、24時間放置)を行ない、試験後の各試料の色調を測定し、試験前後の明度指数L*,クロマティクネス指数a*,b*の差を算出した。
得られた結果を表6に示す。
表6に示す通り、クロムを1.5質量%未満の含有量で含む試料No.51に比べて、試料No.52〜55は、クロムを1.5質量%以上の含有量で含むことから、空気中の酸素と結合して装飾面に緻密な酸化被膜を生成して耐食性を向上させ、明度指数L*,クロマティクネス指数a*,b*とも試験前後の変化が少なく、耐食性が良好であることが分かる。
但し、クロムの含有量が6.5質量%を超えると、試料No.56から分かるように耐食性は良好であるものの、鮮やかさを示すクロマティクネス指数a*、b*がともに低下するため、耐食性と鮮やかさを兼ね備えたものにするには、試料No.52〜55に示すように、クロムを1.5質量%以上6.5質量%以下の含有量で含むことがより好適である。
まず、実施例1と同じ原料を用意し、焼結体での比率(含有量)が表7に示す比率となるように秤量し、粉砕・混合して調合原料とした。次に、実施例2と同様の製造方法にて試料No.57〜59の窒化チタン質焼結体からなる装飾部品用セラミックスを得た。但し、焼成における雰囲気はいずれも真空とし、表7に示す真空度で焼成した。
そして、装飾部品用セラミックスの未研磨面において、クロムおよびニッケルからなる金属間化合物をX線回折法によって同定し、同定された組成式を表7に示した。
表7に示す通り、試料No.58,59は、クロムおよびニッケルからなる金属間化合物を含むことから、クロムおよびニッケルからなる金属間化合物を含まない試料No.57に比べ、時計用装飾部品および携帯端末機用装飾部品等に用いられても磁気の影響を及ぼしにくくなるといえる。
開気孔率の違いによる特性の変化を確認する試験を行なった。
まず、実施例1と同じ原料を用意し、焼結体での比率(含有量)が表8に示す比率となるように秤量し、粉砕・混合して調合原料とした。次に、バレル研磨前まで実施例1と同様の製造方法を行ない、開気孔率による影響を確認するため、バレル研磨時間を異ならせた試料No.60〜63の窒化チタン質焼結体からなる装飾部品用セラミックスを得た。
その後、装飾面の開気孔率は金属顕微鏡を用いて、倍率を200倍にしてCCDカメラで装飾面の画像を取り込み、画像解析装置((株)ニレコ製LUZEX−FS)により画像内の1視野の測定面積を2.25×10−2mm2とし、測定視野数を20,つまり測定総面積を4.5×10−1mm2として当該測定総面積における開気孔率を求めて装飾面の開気孔率とした。また、実施例1と同様にニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素の含有量、算術平均高さRa、色調を測定し、高級感,美的満足感および精神的安らぎの3項目でアンケート調査を行なった。
得られた結果を表8に示す。
表8に示す通り、開気孔率が2.5%を超える試料No.63に比べて、開気孔率が2.5%以下の試料No.60〜62では、明度指数L*の値を77以上にすることができ、より好まれる色調となり、高級感,美的満足感および精神的安らぎをともに「得られる」と回答したモニターの比率が90%以上となっており、モニターを十分に満足させられていることが分かる。
以上説明したような本発明の装飾部品用セラミックスを用いて、時計用装飾部品や携帯端末機用装飾部品および腕時計型携帯電話機用装飾部品を始め、生活用品用装飾部品,車両用品用装飾部品,スポーツ用品用装飾部品,楽器用装飾部品,装身具用装飾部品や建材用装飾部品として用いれば、美しい色調として評価の高い黄金色を呈し、高級感があって、美的満足感を得ることができ、その結果、視覚を通じて精神的安らぎを得ることができて好適である。
Claims (9)
- ニッケル,ニオブ,クロムおよび炭素を含む窒化チタン質焼結体からなり、装飾面における前記炭素の含有量が0.4質量%以上0.9質量%以下であり、前記装飾面に実質的にアルミニウムを含んでいないことを特徴とする装飾部品用セラミックス。
- 前記装飾面における窒化チタンの結晶粒子の格子定数が0.4242nm以上0.4252nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の装飾部品用セラミックス。
- 前記装飾面の算術平均高さRaが0.03μm以下であるとともに、前記装飾面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が72以上84以下であり、クロマティクネス指数a*,b*がそれぞれ3以上9以下,27以上36以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の装飾部品用セラミックス。
- 前記窒化チタン質焼結体は、前記ニッケルと、前記ニオブまたはチタンとからなる金属間化合物が前記装飾面に含まれていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の装飾部品用セラミックス。
- 前記窒化チタン質焼結体は、組成式をTiNxとしたときに0.8≦x≦0.96であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の装飾部品用セラミックス。
- 前記ニッケルを7質量%以上14.5質量%以下、前記ニオブを2.5質量%以上10質量%以下の含有量で含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の装飾部品用セラミックス。
- 前記クロムを1.5質量%以上6.5質量%以下の含有量で含むことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の装飾部品用セラミックス。
- 前記窒化チタン質焼結体は、前記クロムおよび前記ニッケルからなる金属間化合物を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の装飾部品用セラミックス。
- 請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とする時計用装飾部品。
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