本発明は、複数の層を備える光ディスクの記録面に光ビームを照射して情報を記録再生する光ディスク装置、光ディスクに照射する光ビームのフォーカスを制御するフォーカス制御方法、及び光ディスクに照射する光ビームのフォーカスを制御する集積回路に関するものである。
光ディスクの記録容量を増大する手法として、光ディスクの高密度化と記録層の多層化とがある。
例えば、Blu−ray Discでは対物レンズの開口数(NA)を0.6から0.85へ増大するとともに、レーザの波長を650nmから405nmへ短波長化することで光ディスクを高密度化し、かつ記録層を2層化することによって、1枚の光ディスクの記録容量を50GBにしている。
近年、更なる大容量化を実現するために、記録層をさらに増やした多層光ディスクの開発が進められている。
高NA及び短波長では、光ディスクの表面から各記録層までの厚みによって発生する球面収差により再生及び記録性能が大きく劣化することが知られており、球面収差補正が必須となっている。
各記録層で良好な再生及び記録を実現するためには、球面収差を各々の記録層で最適な状態に補正する必要がある。
この球面収差の補正動作において、光ビームの合焦点位置を現在の記録層から他の記録層へ変更する動作が行われる場合がある。光ビームの合焦点位置を現在の記録層から他の記録層へ変更する動作は、一般にフォーカスジャンプと呼ばれている。
球面収差は、再生及び記録性能を劣化させるだけではなく、フォーカス制御及びトラッキング制御などを行うためのサーボ信号の品質も劣化させる。
このため、複数の記録層を持つ多層光ディスクにおいて安定したフォーカスジャンプ動作を行うために、球面収差補正とフォーカスジャンプとの手順に関する手法がいくつか提案されている。
例えば、特許文献1によれば、フォーカスジャンプに先立って球面収差を現在の記録層と移動先の目的記録層との中間の位置において最適な状態になるように補正し、フォーカスジャンプ実行後に再度球面収差を移動先の目的記録層において最適な状態になるように補正する技術が開示されている。特許文献1では、このような手順によって安定したフォーカスジャンプ動作が実現できるとしている。
また、特許文献2によれば、フォーカスジャンプに先立って球面収差を移動先の目的記録層において最適な状態になるように補正し、フォーカスジャンプを実行する技術が開示されている。特許文献2では、このような手順によって安定したフォーカスジャンプ動作が実現できるとしている。
これらの技術を用いた光ディスクをさらに大容量化する手段として、特許文献3のような多層光ディスク構造が提案されている。
しかしながら、光ディスクをさらに多層化しようとすると従来提案されている方法では、安定した層間移動を実現することが困難である。
光ディスクの多層化において、層構造には次の様な制限がある。
(1)光ビームが入射する表面につく埃及び指紋に対する再生及び記録性能を確保するため、表面と、表面に最も近い記録層との間の厚みは少なくとも50μm以上必要である。
(2)チルトマージンを確保するため、表面と、表面から最も遠い記録層との間の厚みは大きく増やせない。例えば、Blu−ray Discでは、表面と、表面から最も遠い記録層との間の厚みは100μmとしている。
(3)各記録層の層間距離は等しくできない(各記録層の層間距離が等しい場合、合焦している記録層からの反射光と、合焦している記録層から2つ離れた記録層の裏面からの反射光とが干渉する)。
(4)各記録層の層間距離はあまり狭くできない(隣接する記録層からの干渉が増加するため、最小層間距離は10μm程度である)。
このため、例えば記録層を4層備えた光ディスクを実現しようとすると、図11に示すように各記録層の層間距離が不均一な層構造となる。図11は、多層光ディスクの層構造を示す図である。
図11に示す光ディスク31は、光ビームが入射する表面201から最も遠い第1の記録層L0と、表面201から2番目に遠い第2の記録層L1と、表面201から3番目に遠い第3の記録層L2と、表面201に最も近い第4の記録層L3と、第4の記録層L3と表面201との間に配置されたカバー層203と、第3の記録層L2と第4の記録層L3との間に配置された第1の中間層204と、第2の記録層L1と第3の記録層L2との間に配置された第2の中間層205と、第1の記録層L0と第2の記録層L1との間に配置された第3の中間層206と、第1の記録層L0とレーベル面202との間に配置された第4の中間層207とを備える。
光ビーム入射側から見て最も奥の記録層を第1の記録層L0と呼び、第1の記録層L0から光ディスク表面側に向かって順に第2の記録層L1、第3の記録層L2及び第4の記録層L3と呼ぶ。例えば、第1の記録層L0と第2の記録層L1との間の層間距離は17μmであり、第2の記録層L1と第3の記録層L2との間の層間距離は20μmであり、第3の記録層L2と第4の記録層L3との間の層間距離は13μmであり、第4の記録層L3と表面201との間の層間距離は50μmである。
例えば、特許文献3では、記録層を4層備えた多層光ディスクの層構造を提案している。この多層光ディスクに対して、光ビームを入射した時に得られるフォーカスエラー信号を図12(A)〜(D)に示す。
図12(A)〜(D)は、多層光ディスクの各記録層に対して球面収差を最適にした場合に検出されるフォーカスエラー信号を示す図である。図12(A)は、第1の記録層L0に対して球面収差を最適に調整した状態で得られるフォーカスエラー信号を示す図であり、図12(B)は、第2の記録層L1に対して球面収差を最適に調整した状態で得られるフォーカスエラー信号を示す図であり、図12(C)は、第3の記録層L2に対して球面収差を最適に調整した状態で得られるフォーカスエラー信号を示す図であり、図12(D)は、第4の記録層L3に対して球面収差を最適に調整した状態で得られるフォーカスエラー信号を示す図である。
図12(A)〜図12(D)において、フォーカスエラー信号301は、第1の記録層L0に対応するフォーカスエラー信号であり、フォーカスエラー信号302は、第2の記録層L1に対応するフォーカスエラー信号であり、フォーカスエラー信号303は、第3の記録層L2に対応するフォーカスエラー信号であり、フォーカスエラー信号304は、第4の記録層L3に対応するフォーカスエラー信号である。
図12(A)〜図12(D)のいずれも、球面収差を最適にしていない記録層のフォーカスエラー信号は大きく劣化しており、この状態では安定したフォーカス制御が実現できない。
ここで、従来提案されている、第3の記録層L2から第2の記録層L1に層間移動する方法について説明する。層間移動前において、図12(C)に示すように第3の記録層L2に対応するフォーカスエラー信号303が十分に得られるため、安定したフォーカス制御が実現できる。層間移動に際し、球面収差が移動先の目的記録層となる第2の記録層L1に最適な状態に調整される。この状態では、図12(B)に示すように第2の記録層L1に対応するフォーカスエラー信号302が十分に得られるようになる。
ところが、この時点においては依然第3の記録層L2にフォーカス制御されている状態である。そのため、図12(B)に示すように、第3の記録層L2に対応するフォーカスエラー信号303は対称性が大きく崩れてしまっている。これは次の理由による。
第1に、第2の記録層L1と第3の記録層L2との間の層間距離が離れているために、球面収差を第2の記録層L1に最適な状態に調整すると、第3の記録層L2のフォーカスエラー信号が劣化する。
第2に、第3の記録層L2と第4の記録層L3との間の層間距離が近いため、隣接する互いのフォーカスエラー信号に干渉し、振幅が劣化する。
このような状態では、安定したフォーカス制御を実現するのは困難であり、フォーカスエラー信号にオフセット電圧が発生したり、動作時に衝撃などの外乱が加わったりした場合にはフォーカスジャンプ動作が不安定になり、フォーカス制御が外れてしまう可能性がある。
従来の光ディスク装置の構成について、図13を用いて説明する。図13は、従来の光ディスク装置の構成を示す図である。
図13の光ディスク装置は、光ピックアップ11、フォーカスアクチュエータ駆動回路21、トラッキングアクチュエータ駆動回路22、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23、フォーカスエラー信号生成器25、トラッキングエラー信号生成器26、RF信号生成器27、再生信号品質指標生成器28、ディスクモータ29、マイクロコンピュータ51及び制御部52を備える。
光ピックアップ11は、光ディスク31に対して光ビームを照射して、光ディスク31に記録されている情報を読み取る。又は、光ピックアップ11は、光ディスク31に対して光ビームを照射して、光ディスク31に情報を記録する。フォーカスアクチュエータ駆動回路21は、光ピックアップ11の対物レンズ1を光ディスク31に対して略垂直方向に変位させる。
図13に示す光ディスク装置は、光ディスク31に情報を記録する、又は光ディスク31に記録された情報を再生する。まず、光ピックアップ11に設けられたレーザ光源9から出射された光ビームはコリメータレンズ8によって平行光ビームになる。この平行光ビームは、球面収差補正部7、偏光ビームスプリッタ10及び1/4波長板6を通過し、対物レンズ1によって光ディスク31の情報記録面(記録膜)に収束する。
光ディスク31からの反射光は、対物レンズ1及び1/4波長板6を透過した後、偏光ビームスプリッタ10によって反射され、受光部5に到達する。ここで、光ディスク31は、ディスクモータ29によって回転駆動されている。
受光部5は、光ディスク31からの反射光を電気信号に変換する。受光部5の出力は、フォーカスエラー信号生成器25、トラッキングエラー信号生成器26及びRF信号生成器27に供給される。
フォーカスエラー信号生成器25は、受光部5の出力に基づいて、光ディスク31に照射された光ビームのフォーカス位置と光ディスク31の情報記録面との間の位置ずれを検出し、検出した位置ずれをフォーカスエラー信号として出力する。フォーカスエラー信号は、例えば、非点収差法によって生成することができる。
トラッキングエラー信号生成器26は、受光部5の出力に基づいて、光ディスク31の情報記録面上に形成される光ビームのスポットと光ディスク31の情報記録面上のトラックとの間の位置ずれを検出し、検出した位置ずれをトラッキングエラー信号として出力する。トラッキングエラー信号は、例えば、一般にプッシュプル法によって生成することができる。
フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号は制御部52に供給される。制御部52は、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号に位相補償等の信号処理を施し、制御信号を生成する。
フォーカスアクチュエータ駆動回路21は、制御部52からの制御信号に応じて、光ピックアップ11に設けられたフォーカスアクチュエータ2に駆動信号を供給することにより、フォーカスアクチュエータ2を駆動する。また、トラッキングアクチュエータ駆動回路22は、制御部52からの制御信号に応じて、光ピックアップ11に設けられたトラッキングアクチュエータ3に駆動信号を供給することにより、トラッキングアクチュエータ3を駆動する。
フォーカスアクチュエータ2は、フォーカスアクチュエータ駆動回路21からの駆動信号に応じて、対物レンズ1を駆動する。また、トラッキングアクチュエータ3は、トラッキングアクチュエータ駆動回路22からの駆動信号に応じて、対物レンズ1を駆動する。
このように、制御部52は、フォーカスエラー信号に応じて、フォーカスアクチュエータ2を駆動するフォーカスアクチュエータ駆動回路21を制御することにより、フォーカス制御のためのサーボループを形成する。さらに、制御部52は、トラッキングエラー信号に応じて、トラッキングアクチュエータ3を駆動するトラッキングアクチュエータ駆動回路22を制御することにより、トラッキング制御のためのサーボループを形成する。このようにして、サーボ制御が実行される。
RF信号生成器27は、受光部5の出力に基づいてRF信号を生成し、RF信号を再生信号品質指標生成器28へ出力する。再生信号品質指標生成器28は、RF信号生成器27から得たRF信号に基づき、再生信号の再生性能を示す再生信号品質指標を生成する。再生信号品質指標には、例えばジッタやエラーレートなどがある。再生信号品質指標生成器28で生成された再生信号品質指標はマイクロコンピュータ51に供給される。
球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、マイクロコンピュータ51からの制御信号に応じて、球面収差補正部7に駆動信号を供給することにより、球面収差を補正する。球面収差の補正量は、例えば光ディスクの規格で決められた、光ディスク表面から各記録層までの距離に応じて決めることができる。
マイクロコンピュータ51は、フォーカスジャンプ動作を行うための駆動指令値を制御部52に供給する。この駆動指令値に基づいた駆動信号がフォーカスアクチュエータ駆動回路21に供給され、フォーカスアクチュエータ2が駆動する。
第3の記録層L2から第2の記録層L1へのフォーカスジャンプ動作の手順について、図14を用いて説明する。図14は、従来の層間移動時における、フォーカスエラー信号401、フォーカスアクチュエータ駆動出力402及び球面収差補正量を示す信号403の変化を示している。状態L420は、第1の記録層L0に対応する球面収差が最適となる状態を表し、状態L421は、第2の記録層L1に対応する球面収差が最適となる状態を表し、状態L422は、第3の記録層L2に対応する球面収差が最適となる状態を表し、状態L423は、第4の記録層L3に対応する球面収差が最適となる状態を表している。球面収差補正量を示す信号403は、状態L422を初期状態としている。
最初に、タイミングT101において、第3の記録層L2で再生もしくは記録動作がなされている状態では、球面収差補正量は状態L422になっている。次に、光ディスク装置は、タイミングT102において球面収差補正動作を開始する。光ディスク装置は、タイミングT102からタイミングT104にかけて、フォーカス制御を動作させたまま球面収差補正量を状態L422から状態L421へ調整する。ところが、球面収差補正量を状態L422から状態L421へ変化させている途中のタイミングT103において、フォーカス制御が外れてしまっている。その結果、タイミングT105において、光ビームのスポット位置は光ディスクの表面を通過してしまい、フォーカスジャンプ動作に失敗してしまう。
これは、図12(B)で説明したように、球面収差補正量が第2の記録層L1に対して最適な状態である場合、第3の記録層L2から得られるフォーカスエラー信号は極端に非対称になり、光ディスクの面振れ又は外乱に対してフォーカス制御の安定性が低下するためである。
その結果、多層光ディスクにおいて所望の記録層に対する再生及び記録動作ができない可能性があるため、安定したフォーカスジャンプ方法が求められている。
また、多層光ディスクでは、記録層の数が増えることで、表面に最も近い記録層から表面から最も遠い記録層までの層間距離が広くなるため、この層間距離に対応した広い範囲の球面収差補正が必要となる。このような広い範囲の球面収差補正を実現する方法として、球面収差補正素子をステッピングモータで移動させる形態が一般的である。ところが、光ピックアップのサイズには制限があり、高出力であるステッピングモータは大型になるため光ピックアップ内に収めるのは困難である。そのため、球面収差補正素子を駆動するステッピングモータは小型及び低出力になるため、球面収差補正素子の駆動速度を上げることは困難である。さらに、一般にステッピングモータの駆動制御は、脱調防止のために徐々に加速又は減速を行う台形速度プロフィールで行われるため、駆動及び停止を連続して行うと駆動時間が長くなってしまう。
従来提案されているフォーカスジャンプ手順では、多層光ディスクにおいて複数の記録層を連続して層間移動することに対して考慮されていない。そのため、例えば4層ディスクでは既存のフォーカスジャンプ手順を最大で3回繰り返す必要がある。ところが、前述のように球面収差補正素子を駆動するステッピングモータの駆動速度を上げることは困難である。そのため、球面収差補正動作に時間がかかってしまい、多層光ディスクでは層間アクセス時間が延びてしまうという課題がある。層間アクセス時間が増加すると、例えば映像再生時において映像が途切れてしまう可能性があり、望ましくない。そのため、多層光ディスクにおいて層間アクセスの高速化が求められている。
特許第3995993号公報
特許第4217395号公報
特開2008−152830号公報
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、安定してフォーカスジャンプを行うことができる光ディスク装置、フォーカス制御方法及び集積回路を提供することを目的とするものである。
本発明の一局面に係る光ディスク装置は、複数の記録層を有する光ディスクに対して光ビームを照射することにより、前記光ディスクに記録されている情報を読み出す又は前記光ディスクに情報を記録する光ディスク装置において、前記記録層上の光スポットにおいて発生する球面収差を補正する球面収差補正部と、所定の記録層に前記光ビームを合焦させるフォーカス制御部と、前記光ビームの合焦点位置を現在の記録層から他の記録層に移動させるフォーカスジャンプ部と、前記現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、前記球面収差補正部による球面収差の補正と、前記フォーカスジャンプ部による合焦点位置の移動とを制御するフォーカスジャンプ制御部とを備える。
この構成によれば、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、記録層上の光スポットにおいて発生する球面収差の補正と、光ビームの合焦点位置の移動とが制御される。
本発明によれば、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、球面収差の補正と、合焦点位置の移動とが制御されるので、隣接する記録層によるフォーカスエラー信号への影響を考慮することができ、安定してフォーカスジャンプを行うことができる。
本発明の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
本発明の実施の形態1における光ディスク装置の構成を示す図である。
実施の形態1において、第2の記録層から第3の記録層へのフォーカスジャンプの手順について説明するためのフローチャートである。
実施の形態1において、第2の記録層から第3の記録層への層間移動時における、フォーカスエラー信号、フォーカスアクチュエータ駆動出力、及び球面収差補正量を示す信号の変化を示す図である。
実施の形態1において、第3の記録層から第2の記録層への層間移動時における、フォーカスエラー信号、フォーカスアクチュエータ駆動出力、及び球面収差補正量を示す信号の変化を示す図である。
本発明の実施の形態2における光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
実施の形態2において、第2の記録層から第3の記録層への層間移動時における、フォーカスエラー信号、フォーカスアクチュエータ駆動出力、及び球面収差補正量を示す信号の変化を示す図である。
実施の形態2において、第3の記録層から第2の記録層への層間移動時における、フォーカスエラー信号、フォーカスアクチュエータ駆動出力、及び球面収差補正量を示す信号の変化を示す図である。
本発明の実施の形態3における光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
実施の形態3において、第3の記録層から第2の記録層への層間移動時における、フォーカスエラー信号、フォーカスアクチュエータ駆動出力、及び球面収差補正量を示す信号の変化を示す図である。
実施の形態4において、第4の記録層から第1の記録層への層間移動時における、フォーカスエラー信号、フォーカスアクチュエータ駆動出力、及び球面収差補正量を示す信号の変化を示す図である。
多層光ディスクの層構造を示す図である。
(A)は、第1の記録層に対して球面収差を最適に調整した状態で得られるフォーカスエラー信号を示す図であり、(B)は、第2の記録層に対して球面収差を最適に調整した状態で得られるフォーカスエラー信号を示す図であり、(C)は、第3の記録層に対して球面収差を最適に調整した状態で得られるフォーカスエラー信号を示す図であり、(D)は、第4の記録層に対して球面収差を最適に調整した状態で得られるフォーカスエラー信号を示す図である。
従来の光ディスク装置の構成を示す図である。
従来の層間移動時における、フォーカスエラー信号、フォーカスアクチュエータ駆動出力、及び球面収差補正量を示す信号の変化を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
図1の光ディスク装置は、光ピックアップ11、フォーカスアクチュエータ駆動回路21、トラッキングアクチュエータ駆動回路22、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23、フォーカスエラー信号生成器25、トラッキングエラー信号生成器26、RF信号生成器27、再生信号品質指標生成器28、ディスクモータ29、マイクロコンピュータ51及び制御部52を備える。光ピックアップ11は、対物レンズ1、フォーカスアクチュエータ2、トラッキングアクチュエータ3、受光部5、1/4波長板6、球面収差補正部7、コリメータレンズ8、レーザ光源9及び偏光ビームスプリッタ10を備える。
光ピックアップ11は、光ディスク31に対して光ビームを照射して、光ディスク31に記録されている情報を読み取る。又は、光ピックアップ11は、光ディスク31に対して光ビームを照射して、光ディスク31に情報を記録する。フォーカスアクチュエータ駆動回路21は、光ピックアップ11の対物レンズ1を光ディスク31に対して略垂直方向(光軸方向)に変位させる。
図1に示す光ディスク装置は、複数の記録層を有する光ディスク31に対して光ビームを照射することにより、光ディスク31に情報を記録する又は光ディスク31に記録されている情報を読み出す。まず、光ピックアップ11に設けられたレーザ光源9から出射された光ビームはコリメータレンズ8によって平行光ビームになる。この平行光ビームは、球面収差補正部7、偏光ビームスプリッタ10及び1/4波長板6を通過し、対物レンズ1によって光ディスク31の情報記録面(記録膜)に収束する。
光ディスク31からの反射光は、対物レンズ1及び1/4波長板6を透過した後、偏光ビームスプリッタ10によって反射され、受光部5に到達する。ここで、光ディスク31は、ディスクモータ29によって回転駆動されている。
受光部5は、光ディスク31からの反射光を電気信号に変換する。受光部5の出力は、フォーカスエラー信号生成器25、トラッキングエラー信号生成器26及びRF信号生成器27に供給される。
フォーカスエラー信号生成器25は、受光部5の出力に基づいて、光ディスク31に照射された光ビームのフォーカス位置と光ディスク31の情報記録面との間の位置ずれを検出し、検出した位置ずれをフォーカスエラー信号として出力する。フォーカスエラー信号は、例えば、非点収差法によって生成することができる。
トラッキングエラー信号生成器26は、受光部5の出力に基づいて、光ディスク31の情報記録面上に形成される光ビームのスポットと光ディスク31の情報記録面上のトラックとの間の位置ずれを検出し、検出した位置ずれをトラッキングエラー信号として出力する。トラッキングエラー信号は、例えば、一般にプッシュプル法によって生成することができる。
フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号は制御部52に供給される。制御部52は、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号に位相補償等の信号処理を施し、フォーカスアクチュエータ駆動回路21及びトラッキングアクチュエータ駆動回路22を制御するための制御信号を生成する。
制御部52は、所定の記録層に光ビームを合焦させる。また、制御部52は、光ビームの合焦点位置を現在の記録層から他の記録層に移動させる。
フォーカスアクチュエータ駆動回路21は、制御部52からの制御信号に応じて、光ピックアップ11に設けられたフォーカスアクチュエータ2に駆動信号を供給することにより、フォーカスアクチュエータ2を駆動する。また、トラッキングアクチュエータ駆動回路22は、制御部52からの制御信号に応じて、光ピックアップ11に設けられたトラッキングアクチュエータ3に駆動信号を供給することにより、トラッキングアクチュエータ3を駆動する。
フォーカスアクチュエータ2は、フォーカスアクチュエータ駆動回路21からの駆動信号に応じて、対物レンズ1を駆動する。また、トラッキングアクチュエータ3は、トラッキングアクチュエータ駆動回路22からの駆動信号に応じて、対物レンズ1を駆動する。
このように、制御部52は、フォーカスエラー信号に応じて、フォーカスアクチュエータ2を駆動するフォーカスアクチュエータ駆動回路21を制御することにより、フォーカス制御のためのサーボループを形成する。さらに、制御部52は、トラッキングエラー信号に応じて、トラッキングアクチュエータ3を駆動するトラッキングアクチュエータ駆動回路22を制御することにより、トラッキング制御のためのサーボループを形成する。このようにして、サーボ制御が実行される。
RF信号生成器27は、受光部5の出力に基づいてRF信号を生成し、RF信号を再生信号品質指標生成器28へ出力する。再生信号品質指標生成器28は、RF信号生成器27から得たRF信号に基づき、再生信号の再生性能を示す再生信号品質指標を生成する。再生信号品質指標には、例えばジッタやエラーレートなどがある。再生信号品質指標生成器28で生成された再生信号品質指標はマイクロコンピュータ51に供給される。
球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、マイクロコンピュータ51からの制御信号に応じて、球面収差補正部7に駆動信号を供給することにより、球面収差を補正する。球面収差の補正量は、例えば多層光ディスクの規格で決められた、光ディスク表面から各記録層までの距離に応じて決めることができる。
球面収差補正部7は、球面収差補正素子(例えば、コリメータレンズ)をステッピングモータで移動させることにより、記録層上の光スポットにおいて発生する球面収差を補正する。なお、球面収差補正部7は、コリメータレンズ及びステッピングモータに限定されない。球面収差補正部7は、液晶により、球面収差を補正してもよい。
マイクロコンピュータ51は、フォーカスジャンプ動作を行うための駆動指令値を制御部52に供給する。この駆動指令値に基づいた駆動信号がフォーカスアクチュエータ駆動回路21に供給され、フォーカスアクチュエータ2が駆動する。
また、マイクロコンピュータ51は、層間距離情報取得部53及びフォーカスジャンプ制御部60を備える。層間距離情報取得部53は、光ディスク31が有する各記録層の層間距離情報を取得する。
フォーカスジャンプ制御部60は、層間距離情報取得部53によって取得された、現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23による球面収差の補正と、フォーカスアクチュエータ駆動回路21による合焦点位置の移動とを制御する。
また、フォーカスジャンプ制御部60は、現在の記録層と、現在の記録層から前後所定の距離の範囲内に存在する記録層との間の層間距離に基づいて、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23による球面収差の補正と、フォーカスアクチュエータ駆動回路21による合焦点位置の移動とを制御する。
フォーカスジャンプ制御部60は、層間移動手順判断部54及び層間移動手順指示部55を備える。
層間移動手順判断部54は、層間距離情報取得部53によって取得された、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23による球面収差の補正と、フォーカスアクチュエータ駆動回路21による合焦点位置の移動とのうちのいずれを先に行うかを判断する。すなわち、層間移動手順判断部54は、層間距離情報取得部53によって取得された層間距離情報に基づいて、制御部52に供給するフォーカスジャンプ動作を行うための駆動指令値と、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23へ供給する駆動信号とを出力する手順を判断する。
層間移動手順判断部54の判断結果に基づき、層間移動手順指示部55は、制御部52及び球面収差補正アクチュエータ駆動回路23へ駆動信号を出力する。すなわち、層間移動手順判断部54によって球面収差の補正を先に行うと判断された場合、層間移動手順指示部55は、移動先の記録層上の光スポットにおいて発生する球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示する。その後、層間移動手順指示部55は、光ビームの合焦点位置を現在の記録層から他の記録層に移動するように制御部52に指示する。
一方、層間移動手順判断部54によってフォーカスジャンプ動作を先に行うと判断された場合、層間移動手順指示部55は、光ビームの合焦点位置を現在の記録層から他の記録層に移動するように制御部52に指示する。その後、層間移動手順指示部55は、移動先の記録層上の光スポットにおいて発生する球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示する。
なお、制御部52及びマイクロコンピュータ51は、1つ以上のデジタル回路で構成されることが好ましい。制御部52及びマイクロコンピュータ51は、単一の半導体集積回路基板(単一の半導体チップ)上に集積され得る。
また、本実施の形態1において、球面収差補正部7及び球面収差補正アクチュエータ駆動回路23が球面収差補正部の一例に相当し、フォーカスアクチュエータ駆動回路21及び制御部52がフォーカス制御部の一例に相当し、フォーカスアクチュエータ駆動回路21及び制御部52がフォーカスジャンプ部の一例に相当し、層間距離情報取得部53が層間距離取得部の一例に相当し、フォーカスジャンプ制御部60がフォーカスジャンプ制御部の一例に相当し、フォーカスアクチュエータ駆動回路21が駆動部の一例に相当する。
次に、光ディスク31の詳細な構造について、図11を用いて説明する。ここでは光ディスク31は4つの記録層を有する4層光ディスクであるとして説明を行う。
光ディスク31は、光ビームが入射する表面201から最も遠い第1の記録層L0と、表面201から2番目に遠い第2の記録層L1と、表面201から3番目に遠い第3の記録層L2と、表面201に最も近い第4の記録層L3と、第4の記録層L3と表面201との間に配置されたカバー層203と、第3の記録層L2と第4の記録層L3との間に配置された第1の中間層204と、第2の記録層L1と第3の記録層L2との間に配置された第2の中間層205と、第1の記録層L0と第2の記録層L1との間に配置された第3の中間層206と、第1の記録層L0とレーベル面202との間に配置された第4の中間層207とを備える。
カバー層203、第1の中間層204、第2の中間層205、第3の中間層206及び第4の中間層207は、透明である。
ここで、各記録層の層間距離は以下の理由により制限がある。
(1)光ビームが入射する表面につく埃及び指紋に対する再生及び記録性能を確保するため、表面と、表面に最も近い記録層との間の厚みは少なくとも50μm以上必要である。
(2)チルトマージンを確保するため、表面と、表面から最も遠い記録層との間の厚みは大きく増やせない。例えば、Blu−ray Discでは、表面と、表面から最も遠い記録層との間の厚みは100μmとしている。
(3)各記録層の層間距離は等しくできない(各記録層の層間距離が等しい場合、合焦している記録層からの反射光と、合焦している記録層から2つ離れた記録層の裏面からの反射光とが干渉する)。
(4)各記録層の層間距離はあまり狭くできない(隣接する記録層からの干渉が増加するため、最小層間距離は10μm程度である)。
このため、各記録層の層間距離は不均一な構成となる。
また、各記録層の層間距離は、製造上のばらつきなどにより前述の(1)から(4)の条件を満たす範囲内で変動する。以降の説明に用いる多層光ディスクにおいて、第1の記録層L0と表面201との間の距離は100μmであり、第2の記録層L1と表面201との間の距離は83μmであり、第3の記録層L2と表面201との間の距離は63μmであり、第4の記録層L3と表面201との間の距離は50μmである。このとき、第1の記録層L0と第2の記録層L1との間の層間距離は17μmであり、第2の記録層L1と第3の記録層L2との間の層間距離は20μmであり、第3の記録層L2と第4の記録層L3との間の層間距離は13μmであり、第4の記録層L3と表面201との間の層間距離は50μmである。
このような層構造の光ディスクにおいて、光ビームを入射したときに得られるフォーカスエラー信号は図12(A)〜(D)のようになる。ここで、図12(A)は、第1の記録層L0に対して球面収差を最適に調整した状態で得られるフォーカスエラー信号を示す図であり、第1の記録層L0のフォーカスエラー信号301の振幅が最も大きくなっている。同様に、図12(B)は、第2の記録層L1に対して球面収差を最適に調整した状態で得られるフォーカスエラー信号を示す図であり、図12(C)は、第3の記録層L2に対して球面収差を最適に調整した状態で得られるフォーカスエラー信号を示す図であり、図12(D)は、第4の記録層L3に対して球面収差を最適に調整した状態で得られるフォーカスエラー信号を示す図である。
このような層構造の多層光ディスクを用いて安定したフォーカスジャンプを実現する方法について説明する。具体的には、実施の形態1における光ディスク装置は、光ビームが合焦している現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、フォーカスジャンプ動作と球面収差補正動作との手順を切り替える。
第2の記録層L1から第3の記録層L2へのフォーカスジャンプの手順について、図2及び図3を用いて説明する。
図2は、実施の形態1において、第2の記録層L1から第3の記録層L2へのフォーカスジャンプの手順について説明するためのフローチャートである。
まず、ステップS1において、層間距離情報取得部53は、光ディスク31の各記録層の層間距離情報を取得する。層間距離情報取得部53は、光ディスク31の装填時において、光ディスク31の種類を判別し、判別された種類に応じて各記録層の層間距離を決定する。なお、層間距離情報取得部53による層間距離情報の取得方法については後述する。
次に、ステップS2において、層間移動手順判断部54は、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離が、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向に隣接する記録層との間の層間距離よりも小さいか否かを判断する。本実施の形態では、層間移動手順判断部54は、第2の記録層L1と第1の記録層L0との間の層間距離D1が、第2の記録層L1と第3の記録層L2との間の層間距離D2よりも小さいか否かを判断する。
層間距離D1が層間距離D2よりも小さいと判断された場合(ステップS2でYES)、ステップS3において、層間移動手順判断部54は、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離が、所定の閾値より大きいか否かを判断する。本実施の形態では、層間移動手順判断部54は、層間距離D1が所定の閾値ThDより大きいか否かを判断する。
なお、閾値ThDは、現在の記録層のフォーカスエラー信号の検出に影響を及ぼさない層間距離を表す。
層間距離D1が所定の閾値ThDより大きいと判断された場合(ステップS3でYES)、ステップS4において、層間移動手順指示部55は、移動先の記録層(第3の記録層L2)上の光スポットにおいて発生する球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示する。球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、球面収差補正部7を駆動し、移動先の記録層(第3の記録層L2)上の光スポットにおいて発生する球面収差を補正する。
次に、ステップS5において、層間移動手順指示部55は、光ビームの合焦点位置を現在の記録層(第2の記録層L1)から他の記録層(第3の記録層L2)に移動するように制御部52に指示する。制御部52は、フォーカスアクチュエータ駆動回路21に駆動信号を出力し、フォーカスアクチュエータ駆動回路21は、フォーカスアクチュエータ2を駆動し、光ビームの合焦点位置を現在の記録層(第2の記録層L1)から他の記録層(第3の記録層L2)に移動させる。
一方、層間距離D1が層間距離D2以上であると判断された場合(ステップS2でNO)、又は層間距離D1が所定の閾値ThD以下であると判断された場合(ステップS3でNO)、ステップS6において、層間移動手順指示部55は、光ビームの合焦点位置を現在の記録層(第2の記録層L1)から他の記録層(第3の記録層L2)に移動するように制御部52に指示する。制御部52は、フォーカスアクチュエータ駆動回路21に駆動信号を出力し、フォーカスアクチュエータ駆動回路21は、フォーカスアクチュエータ2を駆動し、光ビームの合焦点位置を現在の記録層(第2の記録層L1)から他の記録層(第3の記録層L2)に移動させる。
次に、ステップS7において、層間移動手順指示部55は、移動先の記録層(第3の記録層L2)上の光スポットにおいて発生する球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示する。球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、球面収差補正部7を駆動し、移動先の記録層(第3の記録層L2)上の光スポットにおいて発生する球面収差を補正する。
図3は、実施の形態1において、第2の記録層L1から第3の記録層L2への層間移動時における、フォーカスエラー信号401、フォーカスアクチュエータ駆動出力402、及び球面収差補正量を示す信号403の変化を示す図である。状態L420は、第1の記録層L0に対応する球面収差が最適となる状態を表し、状態L421は、第2の記録層L1に対応する球面収差が最適となる状態を表し、状態L422は、第3の記録層L2に対応する球面収差が最適となる状態を表し、状態L423は、第4の記録層L3に対応する球面収差が最適となる状態を表している。球面収差補正量を示す信号403は、状態L421を初期状態としている。
第2の記録層L1に隣接する2つの記録層について、第1の記録層L0と第2の記録層L1との間の層間距離D1は17μmであり、第2の記録層L1と第3の記録層L2との間の層間距離D2は20μmであり、第2の記録層L1は、隣接するいずれの記録層とも十分離れている。したがって、図12(B)に示されるように、第1の記録層L0、第2の記録層L1及び第3の記録層L2のそれぞれで得られるフォーカスエラー信号301,302,303は十分に分離できていることがわかる。このような層構造である場合には、以下に述べるように、あらかじめ移動先の記録層に応じて球面収差を調整した後、フォーカスジャンプ動作を行うようにすることで、安定したフォーカスジャンプを実現することができる。
最初に、タイミングT11において、第2の記録層L1で再生又は記録動作がなされている状態では、球面収差補正量を示す信号403は状態L421になっている。
次に、タイミングT12において、層間移動手順判断部54は、第1の記録層L0と第2の記録層L1との間の層間距離D1と、第2の記録層L1と第3の記録層L2との間の層間距離D2とに基づいて、フォーカスジャンプ動作及び球面収差補正動作の手順の切り替えを判断する。ここで、各記録層の層間距離は、層間距離情報取得部53によって取得される。層間距離情報取得部53は、例えば現在装填されている光ディスク31の規格値などに基づいて層間距離を取得する。
具体的には、光ディスク31の各記録層の層間距離が規格により予め決められている場合、層間距離情報取得部53は、層間距離の規格値を予め記憶しておき、記憶している規格値を読み出すことにより、層間距離を取得することができる。
層間距離D1が層間距離D2より小さく、かつ層間距離D1が閾値ThDより大きいと判断された場合、タイミングT13において、層間移動手順指示部55は、移動先の第3の記録層L2に対応する球面収差補正量に応じて球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示する。タイミングT13からタイミングT14にかけて、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、フォーカス制御を動作させたまま球面収差補正量を第3の記録層L2に最適な状態L422へ調整する。
なお、本実施の形態1において、球面収差補正部7は、球面収差補正素子(例えば、コリメータレンズ)とステッピングモータで構成されている。そのため、球面収差補正量は、球面収差が最適となる球面収差補正素子の位置を表す。層間移動手順指示部55は、各記録層と、球面収差が最適となる球面収差補正素子の位置とを対応付けて予め記憶している。層間移動手順指示部55は、移動先の記録層において球面収差が最適となる球面収差補正素子の位置を読み出し、読み出した位置に球面収差補正素子が移動するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に駆動信号を出力する。
次に、タイミングT15において、層間移動手順指示部55は、光ビームの合焦点位置を第2の記録層L1から第3の記録層L2に移動するように、制御部52を介してフォーカスアクチュエータ駆動回路21に指示する。タイミングT15からT16にかけて、フォーカスアクチュエータ駆動回路21は、光ビームの合焦点位置を第2の記録層L1から第3の記録層L2へ移動するフォーカスジャンプを行う。
次に、タイミングT16において、マイクロコンピュータ51は、フォーカス制御が正しく動作できているかを確認し、層間移動動作を完了する。なお、フォーカス制御の確認は、再生信号品質指標生成器28によって生成される再生信号品質指標に基づいて行われる。
ここで、フォーカス制御を安定して行うことが可能であれば、球面収差補正量は必ずしも第3の記録層L2に最適な状態L422にする必要はない。
例えば、球面収差補正量は状態L421と状態L422との中間の状態としてもよい。このように、第2の記録層L1に最適な状態L421と、第3の記録層L2に最適な状態L422との中間の状態へ球面収差補正量を調整した後、第2の記録層L1から第3の記録層L2へのフォーカスジャンプ動作を行うことで、安定した第2の記録層L1から第3の記録層L2へのフォーカスジャンプ動作が実現できる。
次に、第3の記録層L2から第2の記録層L1へのフォーカスジャンプの手順について、図4を用いて説明する。図4は、実施の形態1において、第3の記録層L2から第2の記録層L1への層間移動時における、フォーカスエラー信号401、フォーカスアクチュエータ駆動出力402、及び球面収差補正量を示す信号403の変化を示す図である。なお、図4において、図3と同じ符号については説明を省略する。
球面収差補正量を示す信号403は、第3の記録層L2に対応する球面収差が最適となる状態L422を初期状態としている。
第3の記録層L2に隣接する2つの記録層について、第2の記録層L1と第3の記録層L2との間の層間距離D2は20μmであり、第3の記録層L2と第4の記録層L3との間の層間距離D3は13μmであり、第3の記録層L2は、隣接する2つの記録層のうち、一方の記録層との層間距離は広く、他方の記録層との層間距離は狭くなっている。
図12(C)に示すように、第2の記録層L1において得られるフォーカスエラー信号302と、第3の記録層L2において得られるフォーカスエラー信号303とは十分に分離できているが、第3の記録層L2において得られるフォーカスエラー信号303と、第4の記録層L3において得られるフォーカスエラー信号304とは層間距離が狭いため十分に分離できていない。そこで、第3の記録層L2と、移動先とは反対側の記録層である第4の記録層L3との層間距離が所定の距離より狭い場合には、先にフォーカスジャンプ動作を行った後、球面収差を移動先の記録層に応じて調整することで、安定したフォーカスジャンプを実現することができる。
最初に、タイミングT21において、第3の記録層L2で再生又は記録動作がなされている状態では、球面収差補正量を示す信号403は状態L422になっている。
次に、タイミングT22において、層間移動手順判断部54は、層間距離D2と層間距離D3とに基づいて、フォーカスジャンプ動作及び球面収差補正動作の手順の切り替えを判断する。
層間距離D3が層間距離D2より小さく、かつ層間距離D3が閾値ThD以下であると判断された場合、タイミングT23において、層間移動手順指示部55は、光ビームの合焦点位置を第3の記録層L2から第2の記録層L1に移動するように、制御部52を介してフォーカスアクチュエータ駆動回路21に指示する。タイミングT23からT24にかけて、フォーカスアクチュエータ駆動回路21は、光ビームの合焦点位置を第3の記録層L2から第2の記録層L1へ移動するフォーカスジャンプを行う。
次に、タイミングT24において、マイクロコンピュータ51は、フォーカス制御が正しく動作できているかを確認する。次に、タイミングT25において、層間移動手順指示部55は、移動先の第2の記録層L1に対応する球面収差補正量に応じて球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示する。タイミングT25からT26にかけて、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、フォーカス制御を動作させたまま球面収差補正量を第2の記録層L1に最適な状態L421へ調整する。最後に、タイミングT27において、マイクロコンピュータ51は、フォーカス制御が正しく動作できているかを確認し、層間移動動作を完了する。
なお、図3において、第2の記録層L1から第3の記録層L2へフォーカスジャンプする際、層間距離D1が層間距離D2より小さく、かつ層間距離D1が閾値ThD以下であると判断された場合、実質的に図4を用いて説明した動作と同じ状況となる。そのため、この場合、図4を用いて説明した手順を実施することで、安定したフォーカスジャンプが実現できる。
同様に、図4において、第3の記録層L2から第2の記録層L1へフォーカスジャンプする際、層間距離D3が層間距離D2より小さく、かつ層間距離D3が閾値ThDより大きいと判断された場合、実質的に図3を用いて説明した動作と同じ状況となる。そのため、この場合、図3を用いて説明した手順を実施することで、安定したフォーカスジャンプが実現できる。
また、図3を用いた説明において、層間距離D1が層間距離D2以上である場合、又は図4を用いた説明において、層間距離D3が層間距離D2以上である場合、移動先とは反対側の記録層はフォーカスジャンプ動作に影響を与えない。そのため、層間距離D1が層間距離D2以上である場合、又は層間距離D3が層間距離D2以上である場合、球面収差を補正した後フォーカスジャンプを行う動作手順と、フォーカスジャンプを行った後球面収差を補正する動作手順とのいずれの動作手順であっても安定したフォーカスジャンプ動作を実現できる。
すなわち、図2のステップS2において、層間距離D1が層間距離D2以上であると判断された場合、ステップS6に移行し、フォーカスジャンプ動作が実行されるが、本発明は特にこれに限定されず、層間距離D1が層間距離D2以上であると判断された場合、ステップS4に移行し、球面収差を補正してもよい。
さらに、本実施の形態1では、層間距離D1と層間距離D2とを比較するとともに、層間距離D1と閾値ThDとを比較しているが、本発明は特にこれに限定されず、層間距離D1と層間距離D2とを比較せずに、層間距離D1と閾値ThDとを比較してもよい。
すなわち、図2のステップS2の判断処理を省略してもよい。この場合、層間移動手順判断部54は、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離と所定の閾値とを比較し、層間距離が閾値より大きい場合、球面収差の補正を行った後、合焦点位置の移動を行い、層間距離が閾値以下である場合、合焦点位置の移動を行った後、球面収差の補正を行う。
なお、球面収差を補正させる前には、制御部52は、トラッキング制御を非動作としてもよい。フォーカスエラー信号と同様に、トラキングエラー信号も球面収差によって信号振幅が大きく変化する。そのため、トラッキング制御を行ったまま球面収差を補正させるとトラッキング制御が不安定になる。他の記録層へ移動するためのフォーカスジャンプ動作が完了し、フォーカス制御が正しく行われていることが確認された後、制御部52は、トラッキング制御を開始することが望ましい。
もしくは、制御部52は、球面収差補正量に基づいて、トラッキング制御のゲインを変更してもよい。
また、図12(A)〜(D)に示すように、フォーカスエラー信号の振幅は球面収差補正量によって変わる。そのため、制御部52は、層間距離と、フォーカスジャンプ前の球面収差補正量とに基づいて、フォーカスジャンプ前のフォーカスゲインを補正しても良い。この場合、フォーカスジャンプ前のフォーカス制御をさらに安定化することができる。
さらに、制御部52は、層間距離と、フォーカスジャンプ前の球面収差補正量とに基づいて、フォーカスジャンプ後のフォーカスゲインを補正しても良い。この場合、フォーカスジャンプ後のフォーカス制御をさらに安定化することができる。
さらにまた、制御部52は、フォーカスジャンプの前後で共通のフォーカスゲインの補正を行っても良い。この場合、フォーカスジャンプの前後のゲイン切り替え処理が不要になるという効果が得られる。
なお、ここで用いた各記録層の層間距離情報は、光ディスクの規格で予め決められている、光ディスク表面から各記録層までの距離に応じて決定される。しかしながら、層間距離情報取得部53は、フォーカスアクチュエータ2を所定の速度で光ディスク31に対して垂直方向(光軸方向)に駆動させ、光ビームが光ディスク31の情報記録面に入射したときに得られるフォーカスエラー信号の検出タイミングに基づいて、各記録層の層間距離情報を取得してもよい。
すなわち、層間距離情報取得部53は、フォーカスアクチュエータ駆動回路21によって対物レンズ1を所定の速度で光軸方向に駆動させながら、フォーカスエラー信号生成器25によって生成されるフォーカスエラー信号を検出し、フォーカスエラー信号の検出タイミングに基づいて層間距離情報を取得する。
また、光ディスク装置は、光ディスクの種類を判別するディスク判別部をさらに備え、層間距離情報取得部53は、ディスク判別部によって判別された光ディスクの種類に対応する規格値に基づいて層間距離情報を取得してもよい。この場合、層間距離情報取得部53は、光ディスクの種類と層間距離情報とを対応付けて予め記憶しており、ディスク判別部によって判別された光ディスクの種類に対応する層間距離情報を読み出すことにより、層間距離情報を取得する。
また、層間距離情報取得部53は、光ディスクの各記録層において生成されるトラッキングエラー信号の振幅が最大となる位置の球面収差の補正量に基づいて、層間距離情報を取得してもよい。
また、層間距離情報取得部53は、光ディスクの各記録層の記録済み領域を再生することによって生成される再生信号品質指標が最良となる球面収差の補正量に基づいて、層間距離情報を取得してもよい。
層間距離情報の取得方法は、上記の方法に限定されず、何らかの手段で各記録層の層間距離に対応した情報が得られればよい。多層光ディスクの製造ばらつき等により各記録層の層間距離がばらつく可能性がある。しかしながら、各記録層で最適な球面収差補正量を求めておけば、より安定したフォーカスジャンプ動作が可能となる。
また、制御部52は、フォーカスジャンプ動作を行う際の球面収差補正量の変化量に応じてフォーカスゲインを補正してもよい。球面収差が発生するとフォーカスエラー信号の振幅が低下してフォーカスゲインが低下する。しかしながら、球面収差補正量の変化量に応じてフォーカスゲインを適宜変化させることで、記録層の層間距離によらず安定したフォーカスジャンプ動作が実現できる。
このような手順でフォーカスジャンプ動作と球面収差補正動作とを行うことで、安定した層間移動を実現することが可能となり、3層以上の記録層を有する多層光ディスクにおいても安定かつ高速な層間アクセスを実現することが可能となる。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2における光ディスク装置について説明する。
実施の形態2では、フォーカス制御がなされている現在の記録層に隣接する2つの記録層のそれぞれの層間距離に応じて、フォーカスジャンプにおける球面収差補正量を可変する。
図5は、本発明の実施の形態2における光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
図5の光ディスク装置は、光ピックアップ11、フォーカスアクチュエータ駆動回路21、トラッキングアクチュエータ駆動回路22、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23、フォーカスエラー信号生成器25、トラッキングエラー信号生成器26、RF信号生成器27、再生信号品質指標生成器28、ディスクモータ29、マイクロコンピュータ51及び制御部52を備える。光ピックアップ11は、対物レンズ1、フォーカスアクチュエータ2、トラッキングアクチュエータ3、受光部5、1/4波長板6、球面収差補正部7、コリメータレンズ8、レーザ光源9及び偏光ビームスプリッタ10を備える。
なお、図5に示す光ディスク装置において、図1に示す光ディスク装置と同じ構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
マイクロコンピュータ51は、層間距離情報取得部53及びフォーカスジャンプ制御部60を備える。フォーカスジャンプ制御部60は、球面収差補正量算出部56及び層間移動手順指示部57を備える。
球面収差補正量算出部56は、光ビームが合焦している現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向に隣接する記録層との間の層間距離と、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離とに基づいて、球面収差を補正するための球面収差補正量を算出する。
層間移動手順指示部57は、球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正量に応じて球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示し、光ビームの合焦点位置を現在の記録層から他の記録層に移動するように制御部52に指示し、移動後の他の記録層における球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示する。
球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正量に応じて球面収差を補正するように、球面収差補正部7を駆動する。
なお、本実施の形態2において、球面収差補正量算出部56が球面収差補正量算出部の一例に相当し、層間移動手順指示部57が指示部の一例に相当する。
次に、実施の形態2における、第2の記録層L1から第3の記録層L2へのフォーカスジャンプの手順について、図6を用いて説明する。
図6は、実施の形態2において、第2の記録層L1から第3の記録層L2への層間移動時における、フォーカスエラー信号401、フォーカスアクチュエータ駆動出力402、及び球面収差補正量を示す信号403の変化を示す図である。
最初に、タイミングT31において、第2の記録層L1で再生又は記録動作がなされている状態では、球面収差補正量を示す信号403は状態L421になっている。
次に、タイミングT32において、球面収差補正量算出部56は、フォーカスジャンプを行うときの球面収差補正量を、層間距離情報取得部53によって取得された、第2の記録層L1と第1の記録層L0との間の層間距離と、第2の記録層L1と第3の記録層L2との間の層間距離とに基づいて計算する。球面収差補正量算出部56は、球面収差を補正する位置を表す球面収差補正位置を算出し、算出した球面収差補正位置において球面収差が最小となるように球面収差を補正するための球面収差補正量を算出する。球面収差補正量算出部56によって算出される球面収差補正位置は、フォーカスジャンプに際して球面収差補正量を光ディスク31の表面から何μm離れた位置において調整するかを表す。
表面から第3の記録層L2までの間の層間距離をSAtgtとし、第2の記録層L1から第3の記録層L2までの間の層間距離をΔSA1とし、第2の記録層L1から第1の記録層L0までの間の層間距離をΔSA2とし、層間距離の補正係数をKとした場合、球面収差補正量算出部56は、フォーカスジャンプ時の球面収差補正位置SAtgt2を次の(1)式を用いて計算する。
SAtgt2=SAtgt+(ΔSA1/ΔSA2)×K・・・(1)
例えば、層間距離SAtgtが63μmであり、層間距離ΔSA1が20μmであり、層間距離ΔSA2が17μmであり、補正係数Kが10である場合、球面収差補正位置SAtgt2は、下記の(2)式で算出される。
SAtgt2=63+(20/17)×10=74.8・・・(2)
ここでは、表面から63μmの位置にある第3の記録層L2へのフォーカスジャンプに際し、表面から74.8μmの球面収差補正位置において球面収差量が最適になるように調整した状態で、フォーカスジャンプを実行することを示している。状態L424は、表面から74.8μmの球面収差補正位置において球面収差補正量を最適に調整した状態を表している。
次に、タイミングT33において、層間移動手順指示部57は、球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正量に応じて球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示する。タイミングT33からT34にかけて、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、フォーカス制御を動作させたまま球面収差補正量を状態L424へ調整する。
なお、本実施の形態2において、球面収差補正部7は、球面収差補正素子(例えば、コリメータレンズ)とステッピングモータで構成されている。そのため、球面収差補正量は、球面収差が最適となる球面収差補正素子の位置を表す。球面収差補正量算出部56は、光ディスクの表面からの距離と、球面収差が最適となる球面収差補正素子の位置とを対応付けて予め記憶している。球面収差補正量算出部56は、光ディスクの表面からの距離、すなわち算出した球面収差補正位置において球面収差が最適となる球面収差補正素子の位置を読み出し、読み出した位置に球面収差補正素子が移動するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に駆動信号を出力する。
次に、タイミングT35において、層間移動手順指示部57は、光ビームの合焦点位置を第2の記録層L1から第3の記録層L2に移動するように、制御部52を介してフォーカスアクチュエータ駆動回路21に指示する。タイミングT35からT36にかけて、フォーカスアクチュエータ駆動回路21は、光ビームの合焦点位置を第2の記録層L1から第3の記録層L2へ移動するフォーカスジャンプを行う。
次に、タイミングT36において、マイクロコンピュータ51は、フォーカス制御が正しく動作できているかを確認する。次に、タイミングT37において、層間移動手順指示部57は、移動後の第3の記録層L2における球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示する。タイミングT37からT38にかけて、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、フォーカス制御を動作させたまま再度球面収差補正量を状態L424から状態L422へ調整する。最後に、タイミングT39において、マイクロコンピュータ51は、フォーカス制御が正しく動作できているかを確認し、層間移動動作を完了する。
次に、実施の形態2における、第3の記録層L2から第2の記録層L1へのフォーカスジャンプの手順について、図7を用いて説明する。
図7は、実施の形態2において、第3の記録層L2から第2の記録層L1への層間移動時における、フォーカスエラー信号401、フォーカスアクチュエータ駆動出力402、及び球面収差補正量を示す信号403の変化を示す図である。
最初に、タイミングT41において、第3の記録層L2で再生又は記録動作がなされている状態では、球面収差補正量を示す信号403は状態L422になっている。
次に、タイミングT42において、球面収差補正量算出部56は、フォーカスジャンプを行うときの球面収差補正量を、層間距離情報取得部53によって取得された、第3の記録層L2と第2の記録層L1との間の層間距離と、第3の記録層L2と第4の記録層L3との間の層間距離とに基づいて計算する。球面収差補正量算出部56は、球面収差を補正するための球面収差補正位置を算出し、算出した球面収差補正位置において球面収差が最小となるように球面収差を補正するための球面収差補正量を算出する。
表面から第2の記録層L1までの間の層間距離をSAtgtとし、第3の記録層L2から第2の記録層L1までの間の層間距離をΔSA1とし、第3の記録層L2から第4の記録層L3までの間の層間距離をΔSA2とし、層間距離の補正係数をKとした場合、球面収差補正量算出部56は、フォーカスジャンプ時の球面収差補正位置SAtgt2を次の(3)式を用いて計算する。
SAtgt2=SAtgt−(ΔSA1/ΔSA2)×K・・・(3)
例えば、層間距離SAtgtが83μmであり、層間距離ΔSA1が20μmであり、層間距離ΔSA2が13μmであり、補正係数Kが10である場合、球面収差補正位置SAtgt2は、下記の(4)式で算出される。
SAtgt2=83−(20/13)×10=67.6・・・(4)
ここでは、表面から83μmの位置にある第2の記録層L1へのフォーカスジャンプに際し、表面から67.6μmの球面収差補正位置において球面収差量が最適になるように調整した状態で、フォーカスジャンプを実行することを示している。状態L425は、表面から67.6μmの球面収差補正位置において球面収差補正量を最適に調整した状態を表している。
次に、タイミングT43において、層間移動手順指示部57は、球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正量に応じて球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示する。タイミングT43からT44にかけて、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、フォーカス制御を動作させたまま球面収差補正量を状態L425へ調整する。
次に、タイミングT45において、層間移動手順指示部57は、光ビームの合焦点位置を第3の記録層L2から第2の記録層L1に移動するように、制御部52を介してフォーカスアクチュエータ駆動回路21に指示する。タイミングT45からT46にかけて、フォーカスアクチュエータ駆動回路21は、光ビームの合焦点位置を第3の記録層L2から第2の記録層L1へ移動するフォーカスジャンプを行う。
次に、タイミングT46において、マイクロコンピュータ51は、フォーカス制御が正しく動作できているかを確認する。次に、タイミングT47において、層間移動手順指示部57は、移動後の第2の記録層L1における球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示する。タイミングT47からT48にかけて、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、フォーカス制御を動作させたまま再度球面収差補正量を状態L425から状態L421へ調整する。最後に、タイミングT49において、マイクロコンピュータ51は、フォーカス制御が正しく動作できているかを確認し、層間移動動作を完了する。
なお、現在の記録層と、現在の記録層に隣接する記録層との間の層間距離が十分に広い場合は、各記録層で得られるフォーカスエラー信号は十分に分離することができる。したがって、現在の記録層と、現在の記録層に隣接する記録層との間の層間距離が所定の閾値を越えている場合は、隣接する記録層によるフォーカスエラー信号への影響を無視してもよい。なお、ここでの隣接する記録層には、光ディスクの表面も含まれる。
例えば、第4の記録層L3から第3の記録層L2へのフォーカスジャンプについて説明する。表面から第3の記録層L2までの間の層間距離をSAtgtとし、第4の記録層L3から第3の記録層L2までの間の層間距離をΔSA1とし、第4の記録層L3から表面までの間の層間距離をΔSA2とし、層間距離の補正係数をKとした場合、球面収差補正量算出部56は、フォーカスジャンプ時の球面収差補正位置SAtgt2を次の(5)式を用いて計算する。
SAtgt2=SAtgt−(ΔSA1/ΔSA2)×K・・・(5)
また、例えば、他の記録層からの影響を無視する層間距離の閾値を30μmとすると、第4の記録層L3から表面までの間の層間距離ΔSA2はこの閾値を越える。この層間距離ΔSA2が十分に大きく、隣接する記録層によるフォーカスエラー信号への影響が無視できるということは、ΔSA2を無限大として扱うことができることと等価となる。
そのため、例えば、層間距離SAtgtが63μmであり、層間距離ΔSA1が10μmであり、層間距離ΔSA2が50μmであり、補正係数Kが10であり、閾値が30μmである場合、球面収差補正位置SAtgt2は、下記の(6)式で算出される。
SAtgt2=63−(10/∞)×10=63−0=63・・・(6)
このように、合焦点位置を第4の記録層L3から第3の記録層L2へ移動させる場合、球面収差補正量を表面から63μmの球面収差補正位置、すなわち第3の記録層L2において球面収差量が最適になるように調整した状態で、フォーカスジャンプを実行すればよい。
また、球面収差補正量の決定方法は、本実施の形態2に示す決定方法に限ったものではなく、光ピックアップの特性に応じて変えてもよい。また、球面収差補正量算出部56は、各記録層の層間距離に対応した球面収差補正量を表すテーブルをあらかじめ準備しておき、当該テーブルを参照することにより、球面収差補正量を決定してもよい。球面収差補正量算出部56は、多層光ディスクの各記録層の層間距離に応じて適切に球面収差補正量を求めることができればよい。
また、ここまででは多層光ディスクにおいて、現在の記録層に隣接した記録層への移動について述べたが、現在の記録層から複数先の記録層への層間移動においても本実施の形態1及び実施の形態2は適用可能である。隣接した記録層への層間移動を連続して行うことで、現在の記録層から複数層離れた他の記録層への安定した層間移動を実現することができる。すなわち、フォーカスジャンプ制御部60は、光ビームが合焦している現在の記録層からm(mは2以上の整数)層離れた他の記録層へ合焦点位置を移動させる際に、隣接する記録層へ合焦点位置を移動させる動作をm回繰り返すように、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23による球面収差の補正と、フォーカスアクチュエータ駆動回路21による合焦点位置の移動とを制御する。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3における光ディスク装置について説明する。
実施の形態1,2においては、球面収差補正動作とフォーカスジャンプ動作とを個別に動作させているが、実施の形態3では、球面収差補正動作を中断せずに、球面収差補正動作を継続したままフォーカスジャンプ動作を行う。
図8は、本発明の実施の形態3における光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
図8の光ディスク装置は、光ピックアップ11、フォーカスアクチュエータ駆動回路21、トラッキングアクチュエータ駆動回路22、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23、フォーカスエラー信号生成器25、トラッキングエラー信号生成器26、RF信号生成器27、再生信号品質指標生成器28、ディスクモータ29、マイクロコンピュータ51及び制御部52を備える。光ピックアップ11は、対物レンズ1、フォーカスアクチュエータ2、トラッキングアクチュエータ3、受光部5、1/4波長板6、球面収差補正部7、コリメータレンズ8、レーザ光源9及び偏光ビームスプリッタ10を備える。
なお、図8に示す光ディスク装置において、図1及び図5に示す光ディスク装置と同じ構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
マイクロコンピュータ51は、層間距離情報取得部53、球面収差補正量監視部58及びフォーカスジャンプ制御部60を備える。フォーカスジャンプ制御部60は、球面収差補正量算出部56及び層間移動手順指示部57を備える。
球面収差補正量監視部58は、球面収差補正部7による球面収差補正量を監視する。球面収差補正部7は、球面収差補正素子(例えば、コリメータレンズ)をステッピングモータで移動させる。このとき、球面収差補正量は、球面収差補正素子が光ピックアップ内の光ビームが通過する光路上のどの位置にいるか、すなわちステッピングモータによって球面収差補正素子がどの位置に駆動されているかを検出することによって得ることができる。つまり、球面収差補正量監視部58は、ステッピングモータによって球面収差補正動作を行いながら、同時に球面収差補正量を随時監視することが可能である。したがって、球面収差補正量監視部58は、球面収差補正部7の球面収差補正素子の位置を監視する。なお、本実施の形態3においても、球面収差補正量は、球面収差が最適となる球面収差補正素子の位置を表す。
球面収差補正量算出部56は、光ビームが合焦している現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、球面収差を補正するための球面収差補正量を算出する。また、球面収差補正量算出部56は、現在の記録層から2層以上離れた他の記録層へ合焦点位置を移動させる場合、隣接する記録層へ合焦点位置を移動させる際の各球面収差補正量を算出する。
また、球面収差補正量算出部56は、現在の記録層から2層以上離れた他の記録層へ合焦点位置を移動させる場合、光ビームが合焦している現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向に隣接する記録層との間の層間距離と、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離とに基づいて、隣接する記録層へ合焦点位置を移動させる際の各球面収差補正量を算出する。
層間移動手順指示部57は、移動先の他の記録層において球面収差が最適になるように球面収差の補正を開始し、球面収差が他の記録層に最適になるまでの間、球面収差補正量監視部58によって監視される球面収差補正部7の球面収差補正量が球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正量に達した場合、隣接する記録層へ合焦点位置を移動させるようにフォーカスアクチュエータ駆動回路21に指示する。
なお、本実施の形態2において、球面収差補正量算出部56が球面収差補正量算出部の一例に相当し、層間移動手順指示部57が指示部の一例に相当し、球面収差補正量監視部58が監視部の一例に相当する。
次に、実施の形態3における、第3の記録層L2から第2の記録層L1へのフォーカスジャンプの手順について、図9を用いて説明する。
図9は、実施の形態3において、第3の記録層L2から第2の記録層L1への層間移動時における、フォーカスエラー信号401、フォーカスアクチュエータ駆動出力402、及び球面収差補正量を示す信号403の変化を示す図である。
最初に、タイミングT51において、第3の記録層L2で再生又は記録動作がなされている状態では、球面収差補正量を示す信号403は状態L422になっている。
次に、タイミングT52において、球面収差補正量算出部56は、フォーカスジャンプを行うときの球面収差補正量を、層間距離情報取得部53によって取得された、第3の記録層L2と第2の記録層L1との間の層間距離と、第3の記録層L2と第4の記録層L3との間の層間距離とに基づいて計算する。球面収差補正量算出部56は、球面収差を補正するための球面収差補正位置を算出し、算出した球面収差補正位置において球面収差が最小となるように球面収差を補正するための球面収差補正量を算出する。
ここでは、表面から85μmの位置にある第2の記録層L1へのフォーカスジャンプに際し、表面から69μmの球面収差補正位置において球面収差量が最適になるように調整した状態で、フォーカスジャンプを実行する。本実施の形態3における球面収差補正位置の計算式は、実施の形態2で述べたものと同じであるため省略する。
タイミングT53において、層間移動手順指示部57は、移動先の第2の記録層L1に対応する球面収差補正量に応じて球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示する。球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、フォーカス制御を動作させたまま球面収差補正量が状態L421となるように球面収差補正動作を開始する。
次に、タイミングT54において、層間移動手順指示部57は、球面収差補正量を示す信号403が状態L425に到達したことを検知し、球面収差補正動作を継続したままフォーカスジャンプ動作を行い、光ビームの合焦点位置を第3の記録層L2から第2の記録層L1へ移動させる。
すなわち、層間移動手順指示部57は、球面収差が第2の記録層L1に最適になるまでの間、球面収差補正量監視部58によって監視される球面収差補正部7の球面収差補正量が球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正量(球面収差補正位置SAtgt2に対応する球面収差補正量)に達したか否かを判断する。球面収差補正部7の球面収差補正量が球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正量に達したと判断した場合、層間移動手順指示部57は、隣接する第2の記録層L1へ合焦点位置を移動させるようにフォーカスアクチュエータ駆動回路21に指示する。
より具体的には、層間移動手順指示部57は、球面収差が第2の記録層L1に最適になるまでの間、球面収差補正量監視部58によって監視される球面収差補正部7の球面収差補正素子の位置が球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正素子の位置(球面収差補正位置SAtgt2に対応する球面収差補正素子の位置)に達したか否かを判断する。球面収差補正部7の球面収差補正素子の位置が球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正素子の位置に達したと判断した場合、層間移動手順指示部57は、隣接する第2の記録層L1へ合焦点位置を移動させるようにフォーカスアクチュエータ駆動回路21に指示する。
次に、タイミングT55において、マイクロコンピュータ51は、フォーカス制御が正しく動作できているかを確認する。次に、タイミングT56において、球面収差補正量が状態L421に到達した場合、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、球面収差補正動作を完了する。
最後に、タイミングT57で、マイクロコンピュータ51は、フォーカス制御が正しく動作できているかを確認して層間移動動作を完了する。
なお、本実施の形態3において、球面収差補正量監視部58における球面収差補正量の監視方法として、ステッピングモータの駆動量を随時監視する方法を挙げているが、本発明は特にこれに限定されない。例えば、別途、球面収差補正量(球面収差補正素子の位置)を検出するセンサを搭載してもよい。もしくは、球面収差補正量監視部58は、受光部5から得られる信号を演算することによって、球面収差の量を検出してもよい。
本実施の形態3におけるフォーカスジャンプの手順によれば、フォーカスジャンプ動作のために一旦球面収差補正動作を中断する必要がなくなるため、より高速な層間移動が実現可能となる。
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4における光ディスク装置について説明する。
本実施の形態4における光ディスク装置の構成は実施の形態3と同じであるため、説明を省略する。
実施の形態3では、現在の記録層から、現在の記録層に隣接する他の記録層への層間移動について説明している。これに対し、実施の形態4では、現在の記録層から、2層以上離れた記録層への層間移動において、高速かつ安定して、複数の記録層を連続して移動する手順について説明する。ここでは、第4の記録層L3から第1の記録層L0へのフォーカスジャンプの手順について、図10を用いて説明する。
図10は、実施の形態4において、第4の記録層L3から第1の記録層L0への層間移動時における、フォーカスエラー信号401、フォーカスアクチュエータ駆動出力402、及び球面収差補正量を示す信号403の変化を示す図である。
最初に、タイミングT61において、第4の記録層L3で再生又は記録動作がなされている状態では、球面収差補正量を示す信号403は状態L423になっている。
次に、タイミングT62において、球面収差補正量算出部56は、フォーカスジャンプを行うときの球面収差補正量を、各記録層の層間距離に基づいて計算する。球面収差補正量算出部56は、球面収差を補正するための球面収差補正位置を算出し、算出した球面収差補正位置において球面収差が最小となるように球面収差を補正するための球面収差補正量を算出する。なお、本実施の形態4においても、球面収差補正量は、球面収差が最適となる球面収差補正素子の位置を表す。
球面収差補正量算出部56は、現在の記録層から、2層以上離れた記録層へ移動する場合、現在の記録層と移動先の記録層との間に存在する記録層毎に球面収差補正位置を算出するとともに、当該球面収差補正位置に対応する球面収差補正量を算出する。
球面収差補正量算出部56は、第4の記録層L3から第3の記録層L2へのフォーカスジャンプ動作における球面収差補正位置SAtgt2を次の(7)式を用いて計算する。ただし、表面から第3の記録層L2までの間の層間距離をSAtgtとし、第4の記録層L3から第3の記録層L2までの間の層間距離をΔSA1とし、第4の記録層L3から表面までの間の層間距離をΔSA2とし、層間距離の補正係数をKとする。
SAtgt2=SAtgt−(ΔSA1/ΔSA2)×K・・・(7)
ここで、例えば、層間距離SAtgtが63μmであり、層間距離ΔSA1が13μmであり、層間距離ΔSA2が50μmであり、補正係数Kが10である場合、球面収差補正位置SAtgt2は、下記の(8)式で算出される。
SAtgt2=63−(13/50)×10=60.4・・・(8)
同様にして、球面収差補正量算出部56は、第3の記録層L2から第2の記録層L1へのフォーカスジャンプ動作における球面収差補正位置SAtgt3を次の(9)式を用いて計算する。ただし、表面から第2の記録層L1までの間の層間距離をSAtgtとし、第3の記録層L2から第2の記録層L1までの間の層間距離をΔSA1とし、第3の記録層L2から第4の記録層L3までの間の層間距離をΔSA2とし、層間距離の補正係数をKとする。
SAtgt3=SAtgt−(ΔSA1/ΔSA2)×K・・・(9)
ここで、例えば、層間距離SAtgtが83μmであり、層間距離ΔSA1が20μmであり、層間距離ΔSA2が13μmであり、補正係数Kが10である場合、球面収差補正位置SAtgt3は、下記の(10)式で算出される。
SAtgt3=83−(20/13)×10=67.6・・・(10)
さらに、球面収差補正量算出部56は、第2の記録層L1から第1の記録層L0へのフォーカスジャンプ動作における球面収差補正位置SAtgt4を次の(11)式を用いて計算する。ただし、表面から第1の記録層L0までの間の層間距離をSAtgtとし、第2の記録層L1から第1の記録層L0までの間の層間距離をΔSA1とし、第2の記録層L1から第3の記録層L2までの間の層間距離をΔSA2とし、層間距離の補正係数をKとする。
SAtgt4=SAtgt−(ΔSA1/ΔSA2)×K・・・(11)
ここで、例えば、層間距離SAtgtが100μmであり、層間距離ΔSA1が17μmであり、層間距離ΔSA2が20μmであり、補正係数Kが10である場合、球面収差補正位置SAtgt4は、下記の(12)式で算出される。
SAtgt4=100−(17/20)×10=91.5・・・(12)
このように、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、第4の記録層L3から第3の記録層L2へのフォーカスジャンプでは、球面収差補正量を、表面から60.4μmの球面収差補正位置に最適な状態L426に調整する。また、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、第3の記録層L2から第2の記録層L1へのフォーカスジャンプでは、球面収差補正量を、表面から67.6μmの球面収差補正位置に最適な状態L427に調整する。さらに、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、第2の記録層L1から第1の記録層L0へのフォーカスジャンプでは、球面収差補正量を、表面から91.5μmの球面収差補正位置に最適な状態L428に調整する。
次に、タイミングT63において、層間移動手順指示部57は、移動先の第1の記録層L0に対応する球面収差補正量に応じて球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示する。球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、フォーカス制御を動作させたまま球面収差補正量が状態L420となるように球面収差補正動作を開始する。
次に、タイミングT64において、層間移動手順指示部57は、球面収差補正量を示す信号403が状態L426に到達したことを検知し、球面収差補正動作を継続したままフォーカスジャンプ動作を行い、光ビームの合焦点位置を第4の記録層L3から第3の記録層L2へ移動させる。
すなわち、層間移動手順指示部57は、球面収差が第1の記録層L0に最適になるまでの間、球面収差補正量監視部58によって監視される球面収差補正部7の球面収差補正量が球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正量(球面収差補正位置SAtgt2に対応する球面収差補正量)に達したか否かを判断する。球面収差補正部7の球面収差補正量が球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正量に達したと判断した場合、層間移動手順指示部57は、隣接する第3の記録層L2へ合焦点位置を移動させるようにフォーカスアクチュエータ駆動回路21に指示する。
次に、フォーカスジャンプ動作が完了すると、タイミングT65において、マイクロコンピュータ51は、フォーカス制御が正しく動作できているかを確認する。
次に、タイミングT66において、層間移動手順指示部57は、球面収差補正量を示す信号403が状態L427に到達したことを検知し、球面収差補正動作を継続したままフォーカスジャンプ動作を行い、光ビームの合焦点位置を第3の記録層L2から第2の記録層L1へ移動させる。
すなわち、層間移動手順指示部57は、球面収差が第1の記録層L0に最適になるまでの間、球面収差補正量監視部58によって監視される球面収差補正部7の球面収差補正量が球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正量(球面収差補正位置SAtgt3に対応する球面収差補正量)に達したか否かを判断する。球面収差補正部7の球面収差補正量が球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正量に達したと判断した場合、層間移動手順指示部57は、隣接する第2の記録層L1へ合焦点位置を移動させるようにフォーカスアクチュエータ駆動回路21に指示する。
次に、フォーカスジャンプ動作が完了すると、タイミングT67において、マイクロコンピュータ51は、フォーカス制御が正しく動作できているかを確認する。
次に、タイミングT68において、層間移動手順指示部57は、球面収差補正量を示す信号403が状態L428に到達したことを検知し、球面収差補正動作を継続したままフォーカスジャンプ動作を行い、光ビームの合焦点位置を第2の記録層L1から第1の記録層L0へ移動させる。
すなわち、層間移動手順指示部57は、球面収差が第1の記録層L0に最適になるまでの間、球面収差補正量監視部58によって監視される球面収差補正部7の球面収差補正量が球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正量(球面収差補正位置SAtgt4に対応する球面収差補正量)に達したか否かを判断する。球面収差補正部7の球面収差補正量が球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正量に達したと判断した場合、層間移動手順指示部57は、隣接する第1の記録層L0へ合焦点位置を移動させるようにフォーカスアクチュエータ駆動回路21に指示する。
次に、フォーカスジャンプ動作が完了すると、タイミングT69において、マイクロコンピュータ51は、フォーカス制御が正しく動作できているかを確認する。
最後に、タイミングT70において、球面収差補正量が状態L420に到達した場合、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、球面収差補正動作を完了し、フォーカスアクチュエータ駆動回路21は、層間移動動作を完了する。
このようにして、球面収差補正動作を継続したまま、現在の球面収差補正量が所定の球面収差補正量になったことを検知してフォーカスジャンプ動作を行うという動作を繰り返すことによって、各記録層の層間距離が異なる多層光ディスクにおいても安定かつ高速な層間移動が実現可能となる。
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
本発明の一局面に係る光ディスク装置は、複数の記録層を有する光ディスクに対して光ビームを照射することにより、前記光ディスクに記録されている情報を読み出す又は前記光ディスクに情報を記録する光ディスク装置において、前記記録層上の光スポットにおいて発生する球面収差を補正する球面収差補正部と、所定の記録層に前記光ビームを合焦させるフォーカス制御部と、前記光ビームの合焦点位置を現在の記録層から他の記録層に移動させるフォーカスジャンプ部と、前記現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、前記球面収差補正部による球面収差の補正と、前記フォーカスジャンプ部による合焦点位置の移動とを制御するフォーカスジャンプ制御部とを備える。
この構成によれば、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、記録層上の光スポットにおいて発生する球面収差の補正と、光ビームの合焦点位置の移動とが制御される。
したがって、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、球面収差の補正と、合焦点位置の移動とが制御されるので、隣接する記録層によるフォーカスエラー信号への影響を考慮することができ、安定してフォーカスジャンプを行うことができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記フォーカスジャンプ制御部は、前記現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、前記球面収差補正部による球面収差の補正と、前記フォーカスジャンプ部による合焦点位置の移動とのうちのいずれを先に行うかを判断することが好ましい。
この構成によれば、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、球面収差の補正と、合焦点位置の移動とのうちのいずれを先に行うかが判断される。
したがって、隣接する記録層がフォーカスエラー信号に影響を及ぼす場合、球面収差の補正を行った後、合焦点位置を移動させ、隣接する記録層がフォーカスエラー信号に影響を及ぼさない場合、合焦点位置を移動させた後、球面収差の補正を行うことができ、安定してフォーカスジャンプを行うことができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記フォーカスジャンプ制御部は、前記現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離と所定の閾値とを比較し、前記層間距離が前記閾値より大きい場合、球面収差の補正を行った後、合焦点位置の移動を行い、前記層間距離が前記閾値以下である場合、合焦点位置の移動を行った後、球面収差の補正を行うことが好ましい。
この構成によれば、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離と所定の閾値とが比較される。そして、層間距離が閾値より大きい場合、球面収差の補正が行われた後、合焦点位置の移動が行われる。また、層間距離が閾値以下である場合、合焦点位置の移動が行われた後、球面収差の補正が行われる。
したがって、隣接する記録層がフォーカスエラー信号に影響を及ぼす場合、球面収差の補正を行った後、合焦点位置を移動させ、隣接する記録層がフォーカスエラー信号に影響を及ぼさない場合、合焦点位置を移動させた後、球面収差の補正を行うことができ、安定してフォーカスジャンプを行うことができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記フォーカスジャンプ制御部は、前記現在の記録層と、前記現在の記録層から前後所定の距離の範囲内に存在する記録層との間の層間距離に基づいて、前記球面収差補正部による球面収差の補正と、前記フォーカスジャンプ部による合焦点位置の移動とを制御することが好ましい。
この構成によれば、現在の記録層と、現在の記録層から前後所定の距離の範囲内に存在する記録層との間の層間距離に基づいて、球面収差の補正と、合焦点位置の移動とが制御されるので、より安定してフォーカスジャンプを行うことができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記フォーカスジャンプ制御部は、前記現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向に隣接する記録層との間の層間距離と、前記現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離とに基づいて、前記球面収差を補正するための球面収差補正量を算出し、前記球面収差補正部は、算出された前記球面収差補正量に応じて前記球面収差を補正することが好ましい。
この構成によれば、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向に隣接する記録層との間の層間距離と、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離とに基づいて、球面収差を補正するための球面収差補正量が算出される。そして、算出された球面収差補正量に応じて球面収差が補正される。
したがって、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向に隣接する記録層との間の層間距離と、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離とに基づいて、球面収差を補正するための球面収差補正量が算出されるので、正確に球面収差を補正することができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記フォーカスジャンプ制御部は、球面収差を補正する位置を表す球面収差補正位置を下記の(13)式に基づいて算出し、算出した前記球面収差補正位置において前記球面収差を補正するための球面収差補正量を算出することが好ましい。
SAtgt2=SAtgt+(ΔSA1/ΔSA2)×K・・・(13)
ただし、SAtgt2は、前記球面収差補正位置を表し、SAtgtは、前記光ディスクの表面から、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向に隣接する記録層までの距離を表し、ΔSA1は、前記現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向に隣接する記録層との間の層間距離を表し、ΔSA2は、前記現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離を表し、Kは、補正係数を表す。
この構成によれば、球面収差を補正する位置を表す球面収差補正位置が上記の(13)式に基づいて算出され、算出された球面収差補正位置において球面収差を補正するための球面収差補正量が算出されるので、より正確に球面収差を補正することができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記フォーカスジャンプ制御部は、算出された前記球面収差補正量に応じて前記球面収差を補正するように前記球面収差補正部に指示し、前記光ビームの合焦点位置を現在の記録層から他の記録層に移動するように前記フォーカスジャンプ部に指示し、移動後の前記他の記録層における球面収差を補正するように前記球面収差補正部に指示することが好ましい。
この構成によれば、算出された球面収差補正量に応じて球面収差が補正され、その後、光ビームの合焦点位置が現在の記録層から他の記録層に移動され、その後、移動後の他の記録層における球面収差が補正される。
したがって、段階的に球面収差を補正することによって、より安定してフォーカスジャンプを行うことができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記フォーカスジャンプ制御部は、前記光ビームが合焦している現在の記録層からm層離れた他の記録層へ合焦点位置を移動させる際に、隣接する記録層へ合焦点位置を移動させる動作をm回繰り返すように、前記球面収差補正部による球面収差の補正と、前記フォーカスジャンプ部による合焦点位置の移動とを制御することが好ましい。
この構成によれば、光ビームが合焦している現在の記録層からm層離れた他の記録層へ合焦点位置を移動させる際に、隣接する記録層へ合焦点位置を移動させる動作をm回繰り返すように、球面収差の補正と、合焦点位置の移動とが制御される。したがって、隣接した記録層への層間移動を連続して行うことで、現在の記録層から複数層離れた他の記録層への安定した層間移動を実現することができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記フォーカスジャンプ制御部は、前記現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、前記球面収差を補正するための球面収差補正量を算出する球面収差補正量算出部と、前記他の記録層において前記球面収差が最適になるように前記球面収差の補正を開始し、前記球面収差が前記他の記録層に最適になるまでの間、前記球面収差補正量算出部によって算出された球面収差補正量に達した場合、隣接する記録層へ合焦点位置を移動させるように前記フォーカスジャンプ部に指示する指示部とを含むことが好ましい。
この構成によれば、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、球面収差を補正するための球面収差補正量が算出される。そして、他の記録層において球面収差が最適になるように球面収差の補正を開始し、球面収差が他の記録層に最適になるまでの間、算出された球面収差補正量に達した場合、隣接する記録層へ合焦点位置を移動させる。
したがって、球面収差を補正しながら合焦点位置を移動させることができ、層間アクセス時間を短縮することができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記球面収差補正量算出部は、前記現在の記録層から2層以上離れた他の記録層へ合焦点位置を移動させる場合、前記現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向に隣接する記録層との間の層間距離と、前記現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離とに基づいて、隣接する記録層へ合焦点位置を移動させる際の各球面収差補正量を算出することが好ましい。
この構成によれば、現在の記録層から2層以上離れた他の記録層へ合焦点位置を移動させる場合、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向に隣接する記録層との間の層間距離と、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離とに基づいて、隣接する記録層へ合焦点位置を移動させる際の各球面収差補正量が算出される。
したがって、現在の記録層から2層以上離れた他の記録層へ合焦点位置を移動させる場合であっても、球面収差を補正しながら合焦点位置を移動させることができ、層間アクセス時間を短縮することができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記光ディスクの各記録層の層間距離を取得する層間距離取得部をさらに備え、前記層間距離取得部は、前記光ディスクの規格値に基づいて前記層間距離を取得することが好ましい。この構成によれば、光ディスクの規格値に基づいて層間距離を取得することができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記光ディスクの各記録層の層間距離を取得する層間距離取得部をさらに備え、前記層間距離取得部は、前記光ディスクの種類に対応する規格値に基づいて前記層間距離を取得することが好ましい。この構成によれば、光ディスクの種類に対応する規格値に基づいて層間距離を取得することができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記光ディスクの各記録層の層間距離を取得する層間距離取得部と、前記光ビームを前記記録層に集光する対物レンズと、前記光ビームを所定の記録層に合焦するために、前記対物レンズを光軸方向に駆動する駆動部と、前記光ビームの合焦点位置と前記光ディスクの記録層との相対的な距離をフォーカスエラー信号として生成するフォーカスエラー信号生成部とをさらに備え、前記層間距離取得部は、前記駆動部によって前記対物レンズを所定の速度で光軸方向に駆動させながら、前記フォーカスエラー信号生成部によって生成される前記フォーカスエラー信号を検出し、前記フォーカスエラー信号の検出タイミングに基づいて前記層間距離を取得することが好ましい。
この構成によれば、対物レンズを所定の速度で光軸方向に駆動させながら、生成されるフォーカスエラー信号が検出され、フォーカスエラー信号の検出タイミングに基づいて層間距離が取得される。したがって、光ディスク毎に層間距離を正確に取得することができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記光ディスクの各記録層の層間距離を取得する層間距離取得部と、前記光ビームの合焦点位置と前記光ディスク上に形成されたトラックとの相対的な距離をトラッキングエラー信号として生成するトラッキングエラー信号生成部とをさらに備え、前記層間距離取得部は、前記光ディスクの各記録層において生成される前記トラッキングエラー信号の振幅が最大となる位置の前記球面収差の補正量に基づいて層間距離を取得することが好ましい。
この構成によれば、光ディスクの各記録層において生成されるトラッキングエラー信号の振幅が最大となる位置の球面収差の補正量に基づいて層間距離が取得される。したがって、光ディスク毎に層間距離を正確に取得することができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記光ディスクの各記録層の層間距離を取得する層間距離取得部と、前記光ディスクの各記録層に記録されている情報を再生して再生信号品質指標を生成する再生信号品質指標生成部とをさらに備え、前記層間距離取得部は、前記光ディスクの各記録層の記録済み領域を再生することによって生成される前記再生信号品質指標が最良となる前記球面収差の補正量に基づいて前記層間距離を取得することが好ましい。
この構成によれば、光ディスクの各記録層の記録済み領域を再生することによって生成される再生信号品質指標が最良となる球面収差の補正量に基づいて層間距離が取得される。したがって、光ディスク毎に層間距離を正確に取得することができる。
本発明の他の局面に係るフォーカス制御方法は、複数の記録層を有する光ディスクに照射される光ビームの合焦点位置を現在の記録層から他の記録層に移動させるためのフォーカス制御方法であって、前記光ディスクの所定の記録層に光ビームを合焦させるフォーカス制御ステップと、前記現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、前記記録層上の光スポットにおいて発生する球面収差の補正と、前記光ビームの合焦点位置の移動とを制御するフォーカスジャンプ制御ステップとを含む。
この構成によれば、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、記録層上の光スポットにおいて発生する球面収差の補正と、光ビームの合焦点位置の移動とが制御される。
したがって、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、球面収差の補正と、合焦点位置の移動とが制御されるので、隣接する記録層によるフォーカスエラー信号への影響を考慮することができ、安定してフォーカスジャンプを行うことができる。
本発明の他の局面に係る集積回路は、複数の記録層を有する光ディスクに照射される光ビームの合焦点位置を現在の記録層から他の記録層に移動させるための集積回路であって、前記光ディスクの所定の記録層に光ビームを合焦させるフォーカス制御回路と、前記現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、前記記録層上の光スポットにおいて発生する球面収差の補正と、前記光ビームの合焦点位置の移動とを制御するフォーカスジャンプ制御回路とを備える。
この構成によれば、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、記録層上の光スポットにおいて発生する球面収差の補正と、光ビームの合焦点位置の移動とが制御される。
したがって、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、球面収差の補正と、合焦点位置の移動とが制御されるので、隣接する記録層によるフォーカスエラー信号への影響を考慮することができ、安定してフォーカスジャンプを行うことができる。
これまで述べたいずれの実施の形態についても、フォーカスアクチュエータ駆動回路21が出力する駆動波形を、フォーカスジャンプを行う層間距離に応じて変えることで、より安定したフォーカスジャンプを行うことができる。これは、例えば、フォーカスアクチュエータ駆動回路21が、層間距離の大小に応じて、駆動波形の出力レベル又は出力時間を適宜補正することで実現できる。
また、多層光ディスクの種類によっては、各々の記録層によって最適な光ビームの出力が異なることがある。さらに、多層光ディスクの記録層によっては、多層光ディスクから反射して得られる信号特性を改善するために、レーザ光源によって光ビームを出力する際に高周波成分を重畳させることがある。
最適な光ビームの出力が高い記録層から、最適な光ビームの出力が低い記録層へフォーカスジャンプをする場合、光ビームの出力を変化させずにフォーカスジャンプを行うと、移動先の記録層の情報を劣化させるか、移動先の記録層の情報を誤って消去してしまう可能性がある。
その場合、制御部は、フォーカスジャンプ動作前に、現在の記録層と移動先の記録層とのうちの最適な光ビームの出力が低い方の記録層に応じて光ビームの出力を設定する。これにより、記録層毎に最適な光ビームの出力が異なる多層光ディスクにおいて、記録層の情報が劣化することを防ぐことができる。
また、高周波成分を重畳した光ビームにより情報が再生される記録層から、高周波成分を重畳しない光ビームにより情報が再生される記録層へフォーカスジャンプをする場合、高周波成分を重畳した状態でフォーカスジャンプを行うと、移動先の記録層の情報を劣化させるか、移動先の記録層の情報を誤って消去してしまう可能性がある。
その場合、制御部は、フォーカスジャンプ動作前に、光ビームに高周波成分を重畳するのを停止させる。これにより、高周波成分を重畳した光ビームにより情報が再生される記録層と、高周波成分を重畳しない光ビームにより情報が再生される記録層とが混在する多層光ディスクにおいて、記録層の情報が劣化することを防ぐことができる。
また、光ビームの出力は、球面収差の補正を行う際にもあらかじめ下げておくことが望ましい。光ピックアップ内の光学素子の位置を変えることで、レーザ光源に供給する駆動電流が一定であっても、多層光ディスクに照射される光ビームの出力が変化する可能性がある。そこで、制御部は、フォーカスジャンプ完了後に球面収差の補正量に応じて光ビームの出力を移動先の記録層に最適な値に設定することで、記録層の情報の劣化を防ぐことができる。
さらに、制御部は、多層光ディスクの複数の記録層のうち、最適な光ビームの出力が最も低い記録層に応じて光ビームの出力を設定してからフォーカスジャンプを行ってもよい。これにより、万が一誤って目的と異なる記録層にフォーカスジャンプしてしまった場合でも、記録層の情報が劣化することを防ぐことができる。この際に、制御部は、多層光ディスクの複数の記録層のうち、最適な光ビームの出力が最も低い記録層に応じて光ビームに重畳する高周波成分の振幅を設定してからフォーカスジャンプを行なってもよく、また、高周波成分の重畳を停止してからフォーカスジャンプを行なってもよい。これにより、万が一誤って目的と異なる記録層にフォーカスジャンプしてしまった場合でも、高周波成分が重畳されることで増大する光ビームのピークパワーによって記録層の情報が劣化することを防ぐことができる。
さらにまた、制御部は、フォーカスジャンプ完了後に、トラッキングエラー信号の振幅を測定して所定の閾値と比較することにより、所望の記録層へフォーカスジャンプできたことを確認してもよい。また、制御部は、フォーカスジャンプ完了後に、移動後の記録層のアドレスを読み出すことにより、所望の記録層へフォーカスジャンプできたことを確認してもよい。その後、制御部は、現在の記録層に対して最適な光ビームの出力を設定する。もしくは、現在の記録層が光ビームに高周波成分を重畳して再生すべき記録層であれば、制御部は、光ビームに高周波成分を重畳する。これにより、多層光ディスクに対する信頼性と、高速かつ安定したアクセス動作との両立が可能となる。
なお、発明を実施するための形態の項においてなされた具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と特許請求事項との範囲内で、種々変更して実施することができるものである。
本発明に係る光ディスク装置、フォーカス制御方法及び集積回路は、複数の記録層を備える多層光ディスクにおいても安定かつ高速なフォーカスジャンプ動作を実現することが可能となり、大容量かつ高記録密度を実現する多層光ディスクに記録されている情報を読み出す又は前記光ディスクに情報を記録する光ディスク装置、フォーカス制御方法及び集積回路として有用である。
本発明は、複数の層を備える光ディスクの記録面に光ビームを照射して情報を記録再生する光ディスク装置、光ディスクに照射する光ビームのフォーカスを制御するフォーカス制御方法、及び光ディスクに照射する光ビームのフォーカスを制御する集積回路に関するものである。
光ディスクの記録容量を増大する手法として、光ディスクの高密度化と記録層の多層化とがある。
例えば、Blu−ray Discでは対物レンズの開口数(NA)を0.6から0.85へ増大するとともに、レーザの波長を650nmから405nmへ短波長化することで光ディスクを高密度化し、かつ記録層を2層化することによって、1枚の光ディスクの記録容量を50GBにしている。
近年、更なる大容量化を実現するために、記録層をさらに増やした多層光ディスクの開発が進められている。
高NA及び短波長では、光ディスクの表面から各記録層までの厚みによって発生する球面収差により再生及び記録性能が大きく劣化することが知られており、球面収差補正が必須となっている。
各記録層で良好な再生及び記録を実現するためには、球面収差を各々の記録層で最適な状態に補正する必要がある。
この球面収差の補正動作において、光ビームの合焦点位置を現在の記録層から他の記録層へ変更する動作が行われる場合がある。光ビームの合焦点位置を現在の記録層から他の記録層へ変更する動作は、一般にフォーカスジャンプと呼ばれている。
球面収差は、再生及び記録性能を劣化させるだけではなく、フォーカス制御及びトラッキング制御などを行うためのサーボ信号の品質も劣化させる。
このため、複数の記録層を持つ多層光ディスクにおいて安定したフォーカスジャンプ動作を行うために、球面収差補正とフォーカスジャンプとの手順に関する手法がいくつか提案されている。
例えば、特許文献1によれば、フォーカスジャンプに先立って球面収差を現在の記録層と移動先の目的記録層との中間の位置において最適な状態になるように補正し、フォーカスジャンプ実行後に再度球面収差を移動先の目的記録層において最適な状態になるように補正する技術が開示されている。特許文献1では、このような手順によって安定したフォーカスジャンプ動作が実現できるとしている。
また、特許文献2によれば、フォーカスジャンプに先立って球面収差を移動先の目的記録層において最適な状態になるように補正し、フォーカスジャンプを実行する技術が開示されている。特許文献2では、このような手順によって安定したフォーカスジャンプ動作が実現できるとしている。
これらの技術を用いた光ディスクをさらに大容量化する手段として、特許文献3のような多層光ディスク構造が提案されている。
特許第3995993号公報
特許第4217395号公報
特開2008−152830号公報
しかしながら、光ディスクをさらに多層化しようとすると従来提案されている方法では、安定した層間移動を実現することが困難である。
光ディスクの多層化において、層構造には次の様な制限がある。
(1)光ビームが入射する表面につく埃及び指紋に対する再生及び記録性能を確保するため、表面と、表面に最も近い記録層との間の厚みは少なくとも50μm以上必要である。
(2)チルトマージンを確保するため、表面と、表面から最も遠い記録層との間の厚みは大きく増やせない。例えば、Blu−ray Discでは、表面と、表面から最も遠い記録層との間の厚みは100μmとしている。
(3)各記録層の層間距離は等しくできない(各記録層の層間距離が等しい場合、合焦している記録層からの反射光と、合焦している記録層から2つ離れた記録層の裏面からの反射光とが干渉する)。
(4)各記録層の層間距離はあまり狭くできない(隣接する記録層からの干渉が増加するため、最小層間距離は10μm程度である)。
このため、例えば記録層を4層備えた光ディスクを実現しようとすると、図11に示すように各記録層の層間距離が不均一な層構造となる。図11は、多層光ディスクの層構造を示す図である。
図11に示す光ディスク31は、光ビームが入射する表面201から最も遠い第1の記録層L0と、表面201から2番目に遠い第2の記録層L1と、表面201から3番目に遠い第3の記録層L2と、表面201に最も近い第4の記録層L3と、第4の記録層L3と表面201との間に配置されたカバー層203と、第3の記録層L2と第4の記録層L3との間に配置された第1の中間層204と、第2の記録層L1と第3の記録層L2との間に配置された第2の中間層205と、第1の記録層L0と第2の記録層L1との間に配置された第3の中間層206と、第1の記録層L0とレーベル面202との間に配置された第4の中間層207とを備える。
光ビーム入射側から見て最も奥の記録層を第1の記録層L0と呼び、第1の記録層L0から光ディスク表面側に向かって順に第2の記録層L1、第3の記録層L2及び第4の記録層L3と呼ぶ。例えば、第1の記録層L0と第2の記録層L1との間の層間距離は17μmであり、第2の記録層L1と第3の記録層L2との間の層間距離は20μmであり、第3の記録層L2と第4の記録層L3との間の層間距離は13μmであり、第4の記録層L3と表面201との間の層間距離は50μmである。
例えば、特許文献3では、記録層を4層備えた多層光ディスクの層構造を提案している。この多層光ディスクに対して、光ビームを入射した時に得られるフォーカスエラー信号を図12(A)〜(D)に示す。
図12(A)〜(D)は、多層光ディスクの各記録層に対して球面収差を最適にした場合に検出されるフォーカスエラー信号を示す図である。図12(A)は、第1の記録層L0に対して球面収差を最適に調整した状態で得られるフォーカスエラー信号を示す図であり、図12(B)は、第2の記録層L1に対して球面収差を最適に調整した状態で得られるフォーカスエラー信号を示す図であり、図12(C)は、第3の記録層L2に対して球面収差を最適に調整した状態で得られるフォーカスエラー信号を示す図であり、図12(D)は、第4の記録層L3に対して球面収差を最適に調整した状態で得られるフォーカスエラー信号を示す図である。
図12(A)〜図12(D)において、フォーカスエラー信号301は、第1の記録層L0に対応するフォーカスエラー信号であり、フォーカスエラー信号302は、第2の記録層L1に対応するフォーカスエラー信号であり、フォーカスエラー信号303は、第3の記録層L2に対応するフォーカスエラー信号であり、フォーカスエラー信号304は、第4の記録層L3に対応するフォーカスエラー信号である。
図12(A)〜図12(D)のいずれも、球面収差を最適にしていない記録層のフォーカスエラー信号は大きく劣化しており、この状態では安定したフォーカス制御が実現できない。
ここで、従来提案されている、第3の記録層L2から第2の記録層L1に層間移動する方法について説明する。層間移動前において、図12(C)に示すように第3の記録層L2に対応するフォーカスエラー信号303が十分に得られるため、安定したフォーカス制御が実現できる。層間移動に際し、球面収差が移動先の目的記録層となる第2の記録層L1に最適な状態に調整される。この状態では、図12(B)に示すように第2の記録層L1に対応するフォーカスエラー信号302が十分に得られるようになる。
ところが、この時点においては依然第3の記録層L2にフォーカス制御されている状態である。そのため、図12(B)に示すように、第3の記録層L2に対応するフォーカスエラー信号303は対称性が大きく崩れてしまっている。これは次の理由による。
第1に、第2の記録層L1と第3の記録層L2との間の層間距離が離れているために、球面収差を第2の記録層L1に最適な状態に調整すると、第3の記録層L2のフォーカスエラー信号が劣化する。
第2に、第3の記録層L2と第4の記録層L3との間の層間距離が近いため、隣接する互いのフォーカスエラー信号に干渉し、振幅が劣化する。
このような状態では、安定したフォーカス制御を実現するのは困難であり、フォーカスエラー信号にオフセット電圧が発生したり、動作時に衝撃などの外乱が加わったりした場合にはフォーカスジャンプ動作が不安定になり、フォーカス制御が外れてしまう可能性がある。
従来の光ディスク装置の構成について、図13を用いて説明する。図13は、従来の光ディスク装置の構成を示す図である。
図13の光ディスク装置は、光ピックアップ11、フォーカスアクチュエータ駆動回路21、トラッキングアクチュエータ駆動回路22、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23、フォーカスエラー信号生成器25、トラッキングエラー信号生成器26、RF信号生成器27、再生信号品質指標生成器28、ディスクモータ29、マイクロコンピュータ51及び制御部52を備える。
光ピックアップ11は、光ディスク31に対して光ビームを照射して、光ディスク31に記録されている情報を読み取る。又は、光ピックアップ11は、光ディスク31に対して光ビームを照射して、光ディスク31に情報を記録する。フォーカスアクチュエータ駆動回路21は、光ピックアップ11の対物レンズ1を光ディスク31に対して略垂直方向に変位させる。
図13に示す光ディスク装置は、光ディスク31に情報を記録する、又は光ディスク31に記録された情報を再生する。まず、光ピックアップ11に設けられたレーザ光源9から出射された光ビームはコリメータレンズ8によって平行光ビームになる。この平行光ビームは、球面収差補正部7、偏光ビームスプリッタ10及び1/4波長板6を通過し、対物レンズ1によって光ディスク31の情報記録面(記録膜)に収束する。
光ディスク31からの反射光は、対物レンズ1及び1/4波長板6を透過した後、偏光ビームスプリッタ10によって反射され、受光部5に到達する。ここで、光ディスク31は、ディスクモータ29によって回転駆動されている。
受光部5は、光ディスク31からの反射光を電気信号に変換する。受光部5の出力は、フォーカスエラー信号生成器25、トラッキングエラー信号生成器26及びRF信号生成器27に供給される。
フォーカスエラー信号生成器25は、受光部5の出力に基づいて、光ディスク31に照射された光ビームのフォーカス位置と光ディスク31の情報記録面との間の位置ずれを検出し、検出した位置ずれをフォーカスエラー信号として出力する。フォーカスエラー信号は、例えば、非点収差法によって生成することができる。
トラッキングエラー信号生成器26は、受光部5の出力に基づいて、光ディスク31の情報記録面上に形成される光ビームのスポットと光ディスク31の情報記録面上のトラックとの間の位置ずれを検出し、検出した位置ずれをトラッキングエラー信号として出力する。トラッキングエラー信号は、例えば、一般にプッシュプル法によって生成することができる。
フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号は制御部52に供給される。制御部52は、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号に位相補償等の信号処理を施し、制御信号を生成する。
フォーカスアクチュエータ駆動回路21は、制御部52からの制御信号に応じて、光ピックアップ11に設けられたフォーカスアクチュエータ2に駆動信号を供給することにより、フォーカスアクチュエータ2を駆動する。また、トラッキングアクチュエータ駆動回路22は、制御部52からの制御信号に応じて、光ピックアップ11に設けられたトラッキングアクチュエータ3に駆動信号を供給することにより、トラッキングアクチュエータ3を駆動する。
フォーカスアクチュエータ2は、フォーカスアクチュエータ駆動回路21からの駆動信号に応じて、対物レンズ1を駆動する。また、トラッキングアクチュエータ3は、トラッキングアクチュエータ駆動回路22からの駆動信号に応じて、対物レンズ1を駆動する。
このように、制御部52は、フォーカスエラー信号に応じて、フォーカスアクチュエータ2を駆動するフォーカスアクチュエータ駆動回路21を制御することにより、フォーカス制御のためのサーボループを形成する。さらに、制御部52は、トラッキングエラー信号に応じて、トラッキングアクチュエータ3を駆動するトラッキングアクチュエータ駆動回路22を制御することにより、トラッキング制御のためのサーボループを形成する。このようにして、サーボ制御が実行される。
RF信号生成器27は、受光部5の出力に基づいてRF信号を生成し、RF信号を再生信号品質指標生成器28へ出力する。再生信号品質指標生成器28は、RF信号生成器27から得たRF信号に基づき、再生信号の再生性能を示す再生信号品質指標を生成する。再生信号品質指標には、例えばジッタやエラーレートなどがある。再生信号品質指標生成器28で生成された再生信号品質指標はマイクロコンピュータ51に供給される。
球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、マイクロコンピュータ51からの制御信号に応じて、球面収差補正部7に駆動信号を供給することにより、球面収差を補正する。球面収差の補正量は、例えば光ディスクの規格で決められた、光ディスク表面から各記録層までの距離に応じて決めることができる。
マイクロコンピュータ51は、フォーカスジャンプ動作を行うための駆動指令値を制御部52に供給する。この駆動指令値に基づいた駆動信号がフォーカスアクチュエータ駆動回路21に供給され、フォーカスアクチュエータ2が駆動する。
第3の記録層L2から第2の記録層L1へのフォーカスジャンプ動作の手順について、図14を用いて説明する。図14は、従来の層間移動時における、フォーカスエラー信号401、フォーカスアクチュエータ駆動出力402及び球面収差補正量を示す信号403の変化を示している。状態L420は、第1の記録層L0に対応する球面収差が最適となる状態を表し、状態L421は、第2の記録層L1に対応する球面収差が最適となる状態を表し、状態L422は、第3の記録層L2に対応する球面収差が最適となる状態を表し、状態L423は、第4の記録層L3に対応する球面収差が最適となる状態を表している。球面収差補正量を示す信号403は、状態L422を初期状態としている。
最初に、タイミングT101において、第3の記録層L2で再生もしくは記録動作がなされている状態では、球面収差補正量は状態L422になっている。次に、光ディスク装置は、タイミングT102において球面収差補正動作を開始する。光ディスク装置は、タイミングT102からタイミングT104にかけて、フォーカス制御を動作させたまま球面収差補正量を状態L422から状態L421へ調整する。ところが、球面収差補正量を状態L422から状態L421へ変化させている途中のタイミングT103において、フォーカス制御が外れてしまっている。その結果、タイミングT105において、光ビームのスポット位置は光ディスクの表面を通過してしまい、フォーカスジャンプ動作に失敗してしまう。
これは、図12(B)で説明したように、球面収差補正量が第2の記録層L1に対して最適な状態である場合、第3の記録層L2から得られるフォーカスエラー信号は極端に非対称になり、光ディスクの面振れ又は外乱に対してフォーカス制御の安定性が低下するためである。
その結果、多層光ディスクにおいて所望の記録層に対する再生及び記録動作ができない可能性があるため、安定したフォーカスジャンプ方法が求められている。
また、多層光ディスクでは、記録層の数が増えることで、表面に最も近い記録層から表面から最も遠い記録層までの層間距離が広くなるため、この層間距離に対応した広い範囲の球面収差補正が必要となる。このような広い範囲の球面収差補正を実現する方法として、球面収差補正素子をステッピングモータで移動させる形態が一般的である。ところが、光ピックアップのサイズには制限があり、高出力であるステッピングモータは大型になるため光ピックアップ内に収めるのは困難である。そのため、球面収差補正素子を駆動するステッピングモータは小型及び低出力になるため、球面収差補正素子の駆動速度を上げることは困難である。さらに、一般にステッピングモータの駆動制御は、脱調防止のために徐々に加速又は減速を行う台形速度プロフィールで行われるため、駆動及び停止を連続して行うと駆動時間が長くなってしまう。
従来提案されているフォーカスジャンプ手順では、多層光ディスクにおいて複数の記録層を連続して層間移動することに対して考慮されていない。そのため、例えば4層ディスクでは既存のフォーカスジャンプ手順を最大で3回繰り返す必要がある。ところが、前述のように球面収差補正素子を駆動するステッピングモータの駆動速度を上げることは困難である。そのため、球面収差補正動作に時間がかかってしまい、多層光ディスクでは層間アクセス時間が延びてしまうという課題がある。層間アクセス時間が増加すると、例えば映像再生時において映像が途切れてしまう可能性があり、望ましくない。そのため、多層光ディスクにおいて層間アクセスの高速化が求められている。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、安定してフォーカスジャンプを行うことができる光ディスク装置、フォーカス制御方法及び集積回路を提供することを目的とするものである。
本発明の一局面に係る光ディスク装置は、複数の記録層を有する光ディスクに対して光ビームを照射することにより、前記光ディスクに記録されている情報を読み出す又は前記光ディスクに情報を記録する光ディスク装置において、前記記録層上の光スポットにおいて発生する球面収差を補正する球面収差補正部と、所定の記録層に前記光ビームを合焦させるフォーカス制御部と、前記光ビームの合焦点位置を現在の記録層から他の記録層に移動させるフォーカスジャンプ部と、前記現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、前記球面収差補正部による球面収差の補正と、前記フォーカスジャンプ部による合焦点位置の移動とを制御するフォーカスジャンプ制御部とを備える。
この構成によれば、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、記録層上の光スポットにおいて発生する球面収差の補正と、光ビームの合焦点位置の移動とが制御される。
本発明によれば、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、球面収差の補正と、合焦点位置の移動とが制御されるので、隣接する記録層によるフォーカスエラー信号への影響を考慮することができ、安定してフォーカスジャンプを行うことができる。
本発明の実施の形態1における光ディスク装置の構成を示す図である。
実施の形態1において、第2の記録層から第3の記録層へのフォーカスジャンプの手順について説明するためのフローチャートである。
実施の形態1において、第2の記録層から第3の記録層への層間移動時における、フォーカスエラー信号、フォーカスアクチュエータ駆動出力、及び球面収差補正量を示す信号の変化を示す図である。
実施の形態1において、第3の記録層から第2の記録層への層間移動時における、フォーカスエラー信号、フォーカスアクチュエータ駆動出力、及び球面収差補正量を示す信号の変化を示す図である。
本発明の実施の形態2における光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
実施の形態2において、第2の記録層から第3の記録層への層間移動時における、フォーカスエラー信号、フォーカスアクチュエータ駆動出力、及び球面収差補正量を示す信号の変化を示す図である。
実施の形態2において、第3の記録層から第2の記録層への層間移動時における、フォーカスエラー信号、フォーカスアクチュエータ駆動出力、及び球面収差補正量を示す信号の変化を示す図である。
本発明の実施の形態3における光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
実施の形態3において、第3の記録層から第2の記録層への層間移動時における、フォーカスエラー信号、フォーカスアクチュエータ駆動出力、及び球面収差補正量を示す信号の変化を示す図である。
実施の形態4において、第4の記録層から第1の記録層への層間移動時における、フォーカスエラー信号、フォーカスアクチュエータ駆動出力、及び球面収差補正量を示す信号の変化を示す図である。
多層光ディスクの層構造を示す図である。
(A)は、第1の記録層に対して球面収差を最適に調整した状態で得られるフォーカスエラー信号を示す図であり、(B)は、第2の記録層に対して球面収差を最適に調整した状態で得られるフォーカスエラー信号を示す図であり、(C)は、第3の記録層に対して球面収差を最適に調整した状態で得られるフォーカスエラー信号を示す図であり、(D)は、第4の記録層に対して球面収差を最適に調整した状態で得られるフォーカスエラー信号を示す図である。
従来の光ディスク装置の構成を示す図である。
従来の層間移動時における、フォーカスエラー信号、フォーカスアクチュエータ駆動出力、及び球面収差補正量を示す信号の変化を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
図1の光ディスク装置は、光ピックアップ11、フォーカスアクチュエータ駆動回路21、トラッキングアクチュエータ駆動回路22、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23、フォーカスエラー信号生成器25、トラッキングエラー信号生成器26、RF信号生成器27、再生信号品質指標生成器28、ディスクモータ29、マイクロコンピュータ51及び制御部52を備える。光ピックアップ11は、対物レンズ1、フォーカスアクチュエータ2、トラッキングアクチュエータ3、受光部5、1/4波長板6、球面収差補正部7、コリメータレンズ8、レーザ光源9及び偏光ビームスプリッタ10を備える。
光ピックアップ11は、光ディスク31に対して光ビームを照射して、光ディスク31に記録されている情報を読み取る。又は、光ピックアップ11は、光ディスク31に対して光ビームを照射して、光ディスク31に情報を記録する。フォーカスアクチュエータ駆動回路21は、光ピックアップ11の対物レンズ1を光ディスク31に対して略垂直方向(光軸方向)に変位させる。
図1に示す光ディスク装置は、複数の記録層を有する光ディスク31に対して光ビームを照射することにより、光ディスク31に情報を記録する又は光ディスク31に記録されている情報を読み出す。まず、光ピックアップ11に設けられたレーザ光源9から出射された光ビームはコリメータレンズ8によって平行光ビームになる。この平行光ビームは、球面収差補正部7、偏光ビームスプリッタ10及び1/4波長板6を通過し、対物レンズ1によって光ディスク31の情報記録面(記録膜)に収束する。
光ディスク31からの反射光は、対物レンズ1及び1/4波長板6を透過した後、偏光ビームスプリッタ10によって反射され、受光部5に到達する。ここで、光ディスク31は、ディスクモータ29によって回転駆動されている。
受光部5は、光ディスク31からの反射光を電気信号に変換する。受光部5の出力は、フォーカスエラー信号生成器25、トラッキングエラー信号生成器26及びRF信号生成器27に供給される。
フォーカスエラー信号生成器25は、受光部5の出力に基づいて、光ディスク31に照射された光ビームのフォーカス位置と光ディスク31の情報記録面との間の位置ずれを検出し、検出した位置ずれをフォーカスエラー信号として出力する。フォーカスエラー信号は、例えば、非点収差法によって生成することができる。
トラッキングエラー信号生成器26は、受光部5の出力に基づいて、光ディスク31の情報記録面上に形成される光ビームのスポットと光ディスク31の情報記録面上のトラックとの間の位置ずれを検出し、検出した位置ずれをトラッキングエラー信号として出力する。トラッキングエラー信号は、例えば、一般にプッシュプル法によって生成することができる。
フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号は制御部52に供給される。制御部52は、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号に位相補償等の信号処理を施し、フォーカスアクチュエータ駆動回路21及びトラッキングアクチュエータ駆動回路22を制御するための制御信号を生成する。
制御部52は、所定の記録層に光ビームを合焦させる。また、制御部52は、光ビームの合焦点位置を現在の記録層から他の記録層に移動させる。
フォーカスアクチュエータ駆動回路21は、制御部52からの制御信号に応じて、光ピックアップ11に設けられたフォーカスアクチュエータ2に駆動信号を供給することにより、フォーカスアクチュエータ2を駆動する。また、トラッキングアクチュエータ駆動回路22は、制御部52からの制御信号に応じて、光ピックアップ11に設けられたトラッキングアクチュエータ3に駆動信号を供給することにより、トラッキングアクチュエータ3を駆動する。
フォーカスアクチュエータ2は、フォーカスアクチュエータ駆動回路21からの駆動信号に応じて、対物レンズ1を駆動する。また、トラッキングアクチュエータ3は、トラッキングアクチュエータ駆動回路22からの駆動信号に応じて、対物レンズ1を駆動する。
このように、制御部52は、フォーカスエラー信号に応じて、フォーカスアクチュエータ2を駆動するフォーカスアクチュエータ駆動回路21を制御することにより、フォーカス制御のためのサーボループを形成する。さらに、制御部52は、トラッキングエラー信号に応じて、トラッキングアクチュエータ3を駆動するトラッキングアクチュエータ駆動回路22を制御することにより、トラッキング制御のためのサーボループを形成する。このようにして、サーボ制御が実行される。
RF信号生成器27は、受光部5の出力に基づいてRF信号を生成し、RF信号を再生信号品質指標生成器28へ出力する。再生信号品質指標生成器28は、RF信号生成器27から得たRF信号に基づき、再生信号の再生性能を示す再生信号品質指標を生成する。再生信号品質指標には、例えばジッタやエラーレートなどがある。再生信号品質指標生成器28で生成された再生信号品質指標はマイクロコンピュータ51に供給される。
球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、マイクロコンピュータ51からの制御信号に応じて、球面収差補正部7に駆動信号を供給することにより、球面収差を補正する。球面収差の補正量は、例えば多層光ディスクの規格で決められた、光ディスク表面から各記録層までの距離に応じて決めることができる。
球面収差補正部7は、球面収差補正素子(例えば、コリメータレンズ)をステッピングモータで移動させることにより、記録層上の光スポットにおいて発生する球面収差を補正する。なお、球面収差補正部7は、コリメータレンズ及びステッピングモータに限定されない。球面収差補正部7は、液晶により、球面収差を補正してもよい。
マイクロコンピュータ51は、フォーカスジャンプ動作を行うための駆動指令値を制御部52に供給する。この駆動指令値に基づいた駆動信号がフォーカスアクチュエータ駆動回路21に供給され、フォーカスアクチュエータ2が駆動する。
また、マイクロコンピュータ51は、層間距離情報取得部53及びフォーカスジャンプ制御部60を備える。層間距離情報取得部53は、光ディスク31が有する各記録層の層間距離情報を取得する。
フォーカスジャンプ制御部60は、層間距離情報取得部53によって取得された、現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23による球面収差の補正と、フォーカスアクチュエータ駆動回路21による合焦点位置の移動とを制御する。
また、フォーカスジャンプ制御部60は、現在の記録層と、現在の記録層から前後所定の距離の範囲内に存在する記録層との間の層間距離に基づいて、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23による球面収差の補正と、フォーカスアクチュエータ駆動回路21による合焦点位置の移動とを制御する。
フォーカスジャンプ制御部60は、層間移動手順判断部54及び層間移動手順指示部55を備える。
層間移動手順判断部54は、層間距離情報取得部53によって取得された、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23による球面収差の補正と、フォーカスアクチュエータ駆動回路21による合焦点位置の移動とのうちのいずれを先に行うかを判断する。すなわち、層間移動手順判断部54は、層間距離情報取得部53によって取得された層間距離情報に基づいて、制御部52に供給するフォーカスジャンプ動作を行うための駆動指令値と、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23へ供給する駆動信号とを出力する手順を判断する。
層間移動手順判断部54の判断結果に基づき、層間移動手順指示部55は、制御部52及び球面収差補正アクチュエータ駆動回路23へ駆動信号を出力する。すなわち、層間移動手順判断部54によって球面収差の補正を先に行うと判断された場合、層間移動手順指示部55は、移動先の記録層上の光スポットにおいて発生する球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示する。その後、層間移動手順指示部55は、光ビームの合焦点位置を現在の記録層から他の記録層に移動するように制御部52に指示する。
一方、層間移動手順判断部54によってフォーカスジャンプ動作を先に行うと判断された場合、層間移動手順指示部55は、光ビームの合焦点位置を現在の記録層から他の記録層に移動するように制御部52に指示する。その後、層間移動手順指示部55は、移動先の記録層上の光スポットにおいて発生する球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示する。
なお、制御部52及びマイクロコンピュータ51は、1つ以上のデジタル回路で構成されることが好ましい。制御部52及びマイクロコンピュータ51は、単一の半導体集積回路基板(単一の半導体チップ)上に集積され得る。
また、本実施の形態1において、球面収差補正部7及び球面収差補正アクチュエータ駆動回路23が球面収差補正部の一例に相当し、フォーカスアクチュエータ駆動回路21及び制御部52がフォーカス制御部の一例に相当し、フォーカスアクチュエータ駆動回路21及び制御部52がフォーカスジャンプ部の一例に相当し、層間距離情報取得部53が層間距離取得部の一例に相当し、フォーカスジャンプ制御部60がフォーカスジャンプ制御部の一例に相当し、フォーカスアクチュエータ駆動回路21が駆動部の一例に相当する。
次に、光ディスク31の詳細な構造について、図11を用いて説明する。ここでは光ディスク31は4つの記録層を有する4層光ディスクであるとして説明を行う。
光ディスク31は、光ビームが入射する表面201から最も遠い第1の記録層L0と、表面201から2番目に遠い第2の記録層L1と、表面201から3番目に遠い第3の記録層L2と、表面201に最も近い第4の記録層L3と、第4の記録層L3と表面201との間に配置されたカバー層203と、第3の記録層L2と第4の記録層L3との間に配置された第1の中間層204と、第2の記録層L1と第3の記録層L2との間に配置された第2の中間層205と、第1の記録層L0と第2の記録層L1との間に配置された第3の中間層206と、第1の記録層L0とレーベル面202との間に配置された第4の中間層207とを備える。
カバー層203、第1の中間層204、第2の中間層205、第3の中間層206及び第4の中間層207は、透明である。
ここで、各記録層の層間距離は以下の理由により制限がある。
(1)光ビームが入射する表面につく埃及び指紋に対する再生及び記録性能を確保するため、表面と、表面に最も近い記録層との間の厚みは少なくとも50μm以上必要である。
(2)チルトマージンを確保するため、表面と、表面から最も遠い記録層との間の厚みは大きく増やせない。例えば、Blu−ray Discでは、表面と、表面から最も遠い記録層との間の厚みは100μmとしている。
(3)各記録層の層間距離は等しくできない(各記録層の層間距離が等しい場合、合焦している記録層からの反射光と、合焦している記録層から2つ離れた記録層の裏面からの反射光とが干渉する)。
(4)各記録層の層間距離はあまり狭くできない(隣接する記録層からの干渉が増加するため、最小層間距離は10μm程度である)。
このため、各記録層の層間距離は不均一な構成となる。
また、各記録層の層間距離は、製造上のばらつきなどにより前述の(1)から(4)の条件を満たす範囲内で変動する。以降の説明に用いる多層光ディスクにおいて、第1の記録層L0と表面201との間の距離は100μmであり、第2の記録層L1と表面201との間の距離は83μmであり、第3の記録層L2と表面201との間の距離は63μmであり、第4の記録層L3と表面201との間の距離は50μmである。このとき、第1の記録層L0と第2の記録層L1との間の層間距離は17μmであり、第2の記録層L1と第3の記録層L2との間の層間距離は20μmであり、第3の記録層L2と第4の記録層L3との間の層間距離は13μmであり、第4の記録層L3と表面201との間の層間距離は50μmである。
このような層構造の光ディスクにおいて、光ビームを入射したときに得られるフォーカスエラー信号は図12(A)〜(D)のようになる。ここで、図12(A)は、第1の記録層L0に対して球面収差を最適に調整した状態で得られるフォーカスエラー信号を示す図であり、第1の記録層L0のフォーカスエラー信号301の振幅が最も大きくなっている。同様に、図12(B)は、第2の記録層L1に対して球面収差を最適に調整した状態で得られるフォーカスエラー信号を示す図であり、図12(C)は、第3の記録層L2に対して球面収差を最適に調整した状態で得られるフォーカスエラー信号を示す図であり、図12(D)は、第4の記録層L3に対して球面収差を最適に調整した状態で得られるフォーカスエラー信号を示す図である。
このような層構造の多層光ディスクを用いて安定したフォーカスジャンプを実現する方法について説明する。具体的には、実施の形態1における光ディスク装置は、光ビームが合焦している現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、フォーカスジャンプ動作と球面収差補正動作との手順を切り替える。
第2の記録層L1から第3の記録層L2へのフォーカスジャンプの手順について、図2及び図3を用いて説明する。
図2は、実施の形態1において、第2の記録層L1から第3の記録層L2へのフォーカスジャンプの手順について説明するためのフローチャートである。
まず、ステップS1において、層間距離情報取得部53は、光ディスク31の各記録層の層間距離情報を取得する。層間距離情報取得部53は、光ディスク31の装填時において、光ディスク31の種類を判別し、判別された種類に応じて各記録層の層間距離を決定する。なお、層間距離情報取得部53による層間距離情報の取得方法については後述する。
次に、ステップS2において、層間移動手順判断部54は、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離が、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向に隣接する記録層との間の層間距離よりも小さいか否かを判断する。本実施の形態では、層間移動手順判断部54は、第2の記録層L1と第1の記録層L0との間の層間距離D1が、第2の記録層L1と第3の記録層L2との間の層間距離D2よりも小さいか否かを判断する。
層間距離D1が層間距離D2よりも小さいと判断された場合(ステップS2でYES)、ステップS3において、層間移動手順判断部54は、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離が、所定の閾値より大きいか否かを判断する。本実施の形態では、層間移動手順判断部54は、層間距離D1が所定の閾値ThDより大きいか否かを判断する。
なお、閾値ThDは、現在の記録層のフォーカスエラー信号の検出に影響を及ぼさない層間距離を表す。
層間距離D1が所定の閾値ThDより大きいと判断された場合(ステップS3でYES)、ステップS4において、層間移動手順指示部55は、移動先の記録層(第3の記録層L2)上の光スポットにおいて発生する球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示する。球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、球面収差補正部7を駆動し、移動先の記録層(第3の記録層L2)上の光スポットにおいて発生する球面収差を補正する。
次に、ステップS5において、層間移動手順指示部55は、光ビームの合焦点位置を現在の記録層(第2の記録層L1)から他の記録層(第3の記録層L2)に移動するように制御部52に指示する。制御部52は、フォーカスアクチュエータ駆動回路21に駆動信号を出力し、フォーカスアクチュエータ駆動回路21は、フォーカスアクチュエータ2を駆動し、光ビームの合焦点位置を現在の記録層(第2の記録層L1)から他の記録層(第3の記録層L2)に移動させる。
一方、層間距離D1が層間距離D2以上であると判断された場合(ステップS2でNO)、又は層間距離D1が所定の閾値ThD以下であると判断された場合(ステップS3でNO)、ステップS6において、層間移動手順指示部55は、光ビームの合焦点位置を現在の記録層(第2の記録層L1)から他の記録層(第3の記録層L2)に移動するように制御部52に指示する。制御部52は、フォーカスアクチュエータ駆動回路21に駆動信号を出力し、フォーカスアクチュエータ駆動回路21は、フォーカスアクチュエータ2を駆動し、光ビームの合焦点位置を現在の記録層(第2の記録層L1)から他の記録層(第3の記録層L2)に移動させる。
次に、ステップS7において、層間移動手順指示部55は、移動先の記録層(第3の記録層L2)上の光スポットにおいて発生する球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示する。球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、球面収差補正部7を駆動し、移動先の記録層(第3の記録層L2)上の光スポットにおいて発生する球面収差を補正する。
図3は、実施の形態1において、第2の記録層L1から第3の記録層L2への層間移動時における、フォーカスエラー信号401、フォーカスアクチュエータ駆動出力402、及び球面収差補正量を示す信号403の変化を示す図である。状態L420は、第1の記録層L0に対応する球面収差が最適となる状態を表し、状態L421は、第2の記録層L1に対応する球面収差が最適となる状態を表し、状態L422は、第3の記録層L2に対応する球面収差が最適となる状態を表し、状態L423は、第4の記録層L3に対応する球面収差が最適となる状態を表している。球面収差補正量を示す信号403は、状態L421を初期状態としている。
第2の記録層L1に隣接する2つの記録層について、第1の記録層L0と第2の記録層L1との間の層間距離D1は17μmであり、第2の記録層L1と第3の記録層L2との間の層間距離D2は20μmであり、第2の記録層L1は、隣接するいずれの記録層とも十分離れている。したがって、図12(B)に示されるように、第1の記録層L0、第2の記録層L1及び第3の記録層L2のそれぞれで得られるフォーカスエラー信号301,302,303は十分に分離できていることがわかる。このような層構造である場合には、以下に述べるように、あらかじめ移動先の記録層に応じて球面収差を調整した後、フォーカスジャンプ動作を行うようにすることで、安定したフォーカスジャンプを実現することができる。
最初に、タイミングT11において、第2の記録層L1で再生又は記録動作がなされている状態では、球面収差補正量を示す信号403は状態L421になっている。
次に、タイミングT12において、層間移動手順判断部54は、第1の記録層L0と第2の記録層L1との間の層間距離D1と、第2の記録層L1と第3の記録層L2との間の層間距離D2とに基づいて、フォーカスジャンプ動作及び球面収差補正動作の手順の切り替えを判断する。ここで、各記録層の層間距離は、層間距離情報取得部53によって取得される。層間距離情報取得部53は、例えば現在装填されている光ディスク31の規格値などに基づいて層間距離を取得する。
具体的には、光ディスク31の各記録層の層間距離が規格により予め決められている場合、層間距離情報取得部53は、層間距離の規格値を予め記憶しておき、記憶している規格値を読み出すことにより、層間距離を取得することができる。
層間距離D1が層間距離D2より小さく、かつ層間距離D1が閾値ThDより大きいと判断された場合、タイミングT13において、層間移動手順指示部55は、移動先の第3の記録層L2に対応する球面収差補正量に応じて球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示する。タイミングT13からタイミングT14にかけて、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、フォーカス制御を動作させたまま球面収差補正量を第3の記録層L2に最適な状態L422へ調整する。
なお、本実施の形態1において、球面収差補正部7は、球面収差補正素子(例えば、コリメータレンズ)とステッピングモータで構成されている。そのため、球面収差補正量は、球面収差が最適となる球面収差補正素子の位置を表す。層間移動手順指示部55は、各記録層と、球面収差が最適となる球面収差補正素子の位置とを対応付けて予め記憶している。層間移動手順指示部55は、移動先の記録層において球面収差が最適となる球面収差補正素子の位置を読み出し、読み出した位置に球面収差補正素子が移動するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に駆動信号を出力する。
次に、タイミングT15において、層間移動手順指示部55は、光ビームの合焦点位置を第2の記録層L1から第3の記録層L2に移動するように、制御部52を介してフォーカスアクチュエータ駆動回路21に指示する。タイミングT15からT16にかけて、フォーカスアクチュエータ駆動回路21は、光ビームの合焦点位置を第2の記録層L1から第3の記録層L2へ移動するフォーカスジャンプを行う。
次に、タイミングT16において、マイクロコンピュータ51は、フォーカス制御が正しく動作できているかを確認し、層間移動動作を完了する。なお、フォーカス制御の確認は、再生信号品質指標生成器28によって生成される再生信号品質指標に基づいて行われる。
ここで、フォーカス制御を安定して行うことが可能であれば、球面収差補正量は必ずしも第3の記録層L2に最適な状態L422にする必要はない。
例えば、球面収差補正量は状態L421と状態L422との中間の状態としてもよい。このように、第2の記録層L1に最適な状態L421と、第3の記録層L2に最適な状態L422との中間の状態へ球面収差補正量を調整した後、第2の記録層L1から第3の記録層L2へのフォーカスジャンプ動作を行うことで、安定した第2の記録層L1から第3の記録層L2へのフォーカスジャンプ動作が実現できる。
次に、第3の記録層L2から第2の記録層L1へのフォーカスジャンプの手順について、図4を用いて説明する。図4は、実施の形態1において、第3の記録層L2から第2の記録層L1への層間移動時における、フォーカスエラー信号401、フォーカスアクチュエータ駆動出力402、及び球面収差補正量を示す信号403の変化を示す図である。なお、図4において、図3と同じ符号については説明を省略する。
球面収差補正量を示す信号403は、第3の記録層L2に対応する球面収差が最適となる状態L422を初期状態としている。
第3の記録層L2に隣接する2つの記録層について、第2の記録層L1と第3の記録層L2との間の層間距離D2は20μmであり、第3の記録層L2と第4の記録層L3との間の層間距離D3は13μmであり、第3の記録層L2は、隣接する2つの記録層のうち、一方の記録層との層間距離は広く、他方の記録層との層間距離は狭くなっている。
図12(C)に示すように、第2の記録層L1において得られるフォーカスエラー信号302と、第3の記録層L2において得られるフォーカスエラー信号303とは十分に分離できているが、第3の記録層L2において得られるフォーカスエラー信号303と、第4の記録層L3において得られるフォーカスエラー信号304とは層間距離が狭いため十分に分離できていない。そこで、第3の記録層L2と、移動先とは反対側の記録層である第4の記録層L3との層間距離が所定の距離より狭い場合には、先にフォーカスジャンプ動作を行った後、球面収差を移動先の記録層に応じて調整することで、安定したフォーカスジャンプを実現することができる。
最初に、タイミングT21において、第3の記録層L2で再生又は記録動作がなされている状態では、球面収差補正量を示す信号403は状態L422になっている。
次に、タイミングT22において、層間移動手順判断部54は、層間距離D2と層間距離D3とに基づいて、フォーカスジャンプ動作及び球面収差補正動作の手順の切り替えを判断する。
層間距離D3が層間距離D2より小さく、かつ層間距離D3が閾値ThD以下であると判断された場合、タイミングT23において、層間移動手順指示部55は、光ビームの合焦点位置を第3の記録層L2から第2の記録層L1に移動するように、制御部52を介してフォーカスアクチュエータ駆動回路21に指示する。タイミングT23からT24にかけて、フォーカスアクチュエータ駆動回路21は、光ビームの合焦点位置を第3の記録層L2から第2の記録層L1へ移動するフォーカスジャンプを行う。
次に、タイミングT24において、マイクロコンピュータ51は、フォーカス制御が正しく動作できているかを確認する。次に、タイミングT25において、層間移動手順指示部55は、移動先の第2の記録層L1に対応する球面収差補正量に応じて球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示する。タイミングT25からT26にかけて、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、フォーカス制御を動作させたまま球面収差補正量を第2の記録層L1に最適な状態L421へ調整する。最後に、タイミングT27において、マイクロコンピュータ51は、フォーカス制御が正しく動作できているかを確認し、層間移動動作を完了する。
なお、図3において、第2の記録層L1から第3の記録層L2へフォーカスジャンプする際、層間距離D1が層間距離D2より小さく、かつ層間距離D1が閾値ThD以下であると判断された場合、実質的に図4を用いて説明した動作と同じ状況となる。そのため、この場合、図4を用いて説明した手順を実施することで、安定したフォーカスジャンプが実現できる。
同様に、図4において、第3の記録層L2から第2の記録層L1へフォーカスジャンプする際、層間距離D3が層間距離D2より小さく、かつ層間距離D3が閾値ThDより大きいと判断された場合、実質的に図3を用いて説明した動作と同じ状況となる。そのため、この場合、図3を用いて説明した手順を実施することで、安定したフォーカスジャンプが実現できる。
また、図3を用いた説明において、層間距離D1が層間距離D2以上である場合、又は図4を用いた説明において、層間距離D3が層間距離D2以上である場合、移動先とは反対側の記録層はフォーカスジャンプ動作に影響を与えない。そのため、層間距離D1が層間距離D2以上である場合、又は層間距離D3が層間距離D2以上である場合、球面収差を補正した後フォーカスジャンプを行う動作手順と、フォーカスジャンプを行った後球面収差を補正する動作手順とのいずれの動作手順であっても安定したフォーカスジャンプ動作を実現できる。
すなわち、図2のステップS2において、層間距離D1が層間距離D2以上であると判断された場合、ステップS6に移行し、フォーカスジャンプ動作が実行されるが、本発明は特にこれに限定されず、層間距離D1が層間距離D2以上であると判断された場合、ステップS4に移行し、球面収差を補正してもよい。
さらに、本実施の形態1では、層間距離D1と層間距離D2とを比較するとともに、層間距離D1と閾値ThDとを比較しているが、本発明は特にこれに限定されず、層間距離D1と層間距離D2とを比較せずに、層間距離D1と閾値ThDとを比較してもよい。
すなわち、図2のステップS2の判断処理を省略してもよい。この場合、層間移動手順判断部54は、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離と所定の閾値とを比較し、層間距離が閾値より大きい場合、球面収差の補正を行った後、合焦点位置の移動を行い、層間距離が閾値以下である場合、合焦点位置の移動を行った後、球面収差の補正を行う。
なお、球面収差を補正させる前には、制御部52は、トラッキング制御を非動作としてもよい。フォーカスエラー信号と同様に、トラキングエラー信号も球面収差によって信号振幅が大きく変化する。そのため、トラッキング制御を行ったまま球面収差を補正させるとトラッキング制御が不安定になる。他の記録層へ移動するためのフォーカスジャンプ動作が完了し、フォーカス制御が正しく行われていることが確認された後、制御部52は、トラッキング制御を開始することが望ましい。
もしくは、制御部52は、球面収差補正量に基づいて、トラッキング制御のゲインを変更してもよい。
また、図12(A)〜(D)に示すように、フォーカスエラー信号の振幅は球面収差補正量によって変わる。そのため、制御部52は、層間距離と、フォーカスジャンプ前の球面収差補正量とに基づいて、フォーカスジャンプ前のフォーカスゲインを補正しても良い。この場合、フォーカスジャンプ前のフォーカス制御をさらに安定化することができる。
さらに、制御部52は、層間距離と、フォーカスジャンプ前の球面収差補正量とに基づいて、フォーカスジャンプ後のフォーカスゲインを補正しても良い。この場合、フォーカスジャンプ後のフォーカス制御をさらに安定化することができる。
さらにまた、制御部52は、フォーカスジャンプの前後で共通のフォーカスゲインの補正を行っても良い。この場合、フォーカスジャンプの前後のゲイン切り替え処理が不要になるという効果が得られる。
なお、ここで用いた各記録層の層間距離情報は、光ディスクの規格で予め決められている、光ディスク表面から各記録層までの距離に応じて決定される。しかしながら、層間距離情報取得部53は、フォーカスアクチュエータ2を所定の速度で光ディスク31に対して垂直方向(光軸方向)に駆動させ、光ビームが光ディスク31の情報記録面に入射したときに得られるフォーカスエラー信号の検出タイミングに基づいて、各記録層の層間距離情報を取得してもよい。
すなわち、層間距離情報取得部53は、フォーカスアクチュエータ駆動回路21によって対物レンズ1を所定の速度で光軸方向に駆動させながら、フォーカスエラー信号生成器25によって生成されるフォーカスエラー信号を検出し、フォーカスエラー信号の検出タイミングに基づいて層間距離情報を取得する。
また、光ディスク装置は、光ディスクの種類を判別するディスク判別部をさらに備え、層間距離情報取得部53は、ディスク判別部によって判別された光ディスクの種類に対応する規格値に基づいて層間距離情報を取得してもよい。この場合、層間距離情報取得部53は、光ディスクの種類と層間距離情報とを対応付けて予め記憶しており、ディスク判別部によって判別された光ディスクの種類に対応する層間距離情報を読み出すことにより、層間距離情報を取得する。
また、層間距離情報取得部53は、光ディスクの各記録層において生成されるトラッキングエラー信号の振幅が最大となる位置の球面収差の補正量に基づいて、層間距離情報を取得してもよい。
また、層間距離情報取得部53は、光ディスクの各記録層の記録済み領域を再生することによって生成される再生信号品質指標が最良となる球面収差の補正量に基づいて、層間距離情報を取得してもよい。
層間距離情報の取得方法は、上記の方法に限定されず、何らかの手段で各記録層の層間距離に対応した情報が得られればよい。多層光ディスクの製造ばらつき等により各記録層の層間距離がばらつく可能性がある。しかしながら、各記録層で最適な球面収差補正量を求めておけば、より安定したフォーカスジャンプ動作が可能となる。
また、制御部52は、フォーカスジャンプ動作を行う際の球面収差補正量の変化量に応じてフォーカスゲインを補正してもよい。球面収差が発生するとフォーカスエラー信号の振幅が低下してフォーカスゲインが低下する。しかしながら、球面収差補正量の変化量に応じてフォーカスゲインを適宜変化させることで、記録層の層間距離によらず安定したフォーカスジャンプ動作が実現できる。
このような手順でフォーカスジャンプ動作と球面収差補正動作とを行うことで、安定した層間移動を実現することが可能となり、3層以上の記録層を有する多層光ディスクにおいても安定かつ高速な層間アクセスを実現することが可能となる。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2における光ディスク装置について説明する。
実施の形態2では、フォーカス制御がなされている現在の記録層に隣接する2つの記録層のそれぞれの層間距離に応じて、フォーカスジャンプにおける球面収差補正量を可変する。
図5は、本発明の実施の形態2における光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
図5の光ディスク装置は、光ピックアップ11、フォーカスアクチュエータ駆動回路21、トラッキングアクチュエータ駆動回路22、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23、フォーカスエラー信号生成器25、トラッキングエラー信号生成器26、RF信号生成器27、再生信号品質指標生成器28、ディスクモータ29、マイクロコンピュータ51及び制御部52を備える。光ピックアップ11は、対物レンズ1、フォーカスアクチュエータ2、トラッキングアクチュエータ3、受光部5、1/4波長板6、球面収差補正部7、コリメータレンズ8、レーザ光源9及び偏光ビームスプリッタ10を備える。
なお、図5に示す光ディスク装置において、図1に示す光ディスク装置と同じ構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
マイクロコンピュータ51は、層間距離情報取得部53及びフォーカスジャンプ制御部60を備える。フォーカスジャンプ制御部60は、球面収差補正量算出部56及び層間移動手順指示部57を備える。
球面収差補正量算出部56は、光ビームが合焦している現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向に隣接する記録層との間の層間距離と、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離とに基づいて、球面収差を補正するための球面収差補正量を算出する。
層間移動手順指示部57は、球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正量に応じて球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示し、光ビームの合焦点位置を現在の記録層から他の記録層に移動するように制御部52に指示し、移動後の他の記録層における球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示する。
球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正量に応じて球面収差を補正するように、球面収差補正部7を駆動する。
なお、本実施の形態2において、球面収差補正量算出部56が球面収差補正量算出部の一例に相当し、層間移動手順指示部57が指示部の一例に相当する。
次に、実施の形態2における、第2の記録層L1から第3の記録層L2へのフォーカスジャンプの手順について、図6を用いて説明する。
図6は、実施の形態2において、第2の記録層L1から第3の記録層L2への層間移動時における、フォーカスエラー信号401、フォーカスアクチュエータ駆動出力402、及び球面収差補正量を示す信号403の変化を示す図である。
最初に、タイミングT31において、第2の記録層L1で再生又は記録動作がなされている状態では、球面収差補正量を示す信号403は状態L421になっている。
次に、タイミングT32において、球面収差補正量算出部56は、フォーカスジャンプを行うときの球面収差補正量を、層間距離情報取得部53によって取得された、第2の記録層L1と第1の記録層L0との間の層間距離と、第2の記録層L1と第3の記録層L2との間の層間距離とに基づいて計算する。球面収差補正量算出部56は、球面収差を補正する位置を表す球面収差補正位置を算出し、算出した球面収差補正位置において球面収差が最小となるように球面収差を補正するための球面収差補正量を算出する。球面収差補正量算出部56によって算出される球面収差補正位置は、フォーカスジャンプに際して球面収差補正量を光ディスク31の表面から何μm離れた位置において調整するかを表す。
表面から第3の記録層L2までの間の層間距離をSAtgtとし、第2の記録層L1から第3の記録層L2までの間の層間距離をΔSA1とし、第2の記録層L1から第1の記録層L0までの間の層間距離をΔSA2とし、層間距離の補正係数をKとした場合、球面収差補正量算出部56は、フォーカスジャンプ時の球面収差補正位置SAtgt2を次の(1)式を用いて計算する。
SAtgt2=SAtgt+(ΔSA1/ΔSA2)×K・・・(1)
例えば、層間距離SAtgtが63μmであり、層間距離ΔSA1が20μmであり、層間距離ΔSA2が17μmであり、補正係数Kが10である場合、球面収差補正位置SAtgt2は、下記の(2)式で算出される。
SAtgt2=63+(20/17)×10=74.8・・・(2)
ここでは、表面から63μmの位置にある第3の記録層L2へのフォーカスジャンプに際し、表面から74.8μmの球面収差補正位置において球面収差量が最適になるように調整した状態で、フォーカスジャンプを実行することを示している。状態L424は、表面から74.8μmの球面収差補正位置において球面収差補正量を最適に調整した状態を表している。
次に、タイミングT33において、層間移動手順指示部57は、球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正量に応じて球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示する。タイミングT33からT34にかけて、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、フォーカス制御を動作させたまま球面収差補正量を状態L424へ調整する。
なお、本実施の形態2において、球面収差補正部7は、球面収差補正素子(例えば、コリメータレンズ)とステッピングモータで構成されている。そのため、球面収差補正量は、球面収差が最適となる球面収差補正素子の位置を表す。球面収差補正量算出部56は、光ディスクの表面からの距離と、球面収差が最適となる球面収差補正素子の位置とを対応付けて予め記憶している。球面収差補正量算出部56は、光ディスクの表面からの距離、すなわち算出した球面収差補正位置において球面収差が最適となる球面収差補正素子の位置を読み出し、読み出した位置に球面収差補正素子が移動するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に駆動信号を出力する。
次に、タイミングT35において、層間移動手順指示部57は、光ビームの合焦点位置を第2の記録層L1から第3の記録層L2に移動するように、制御部52を介してフォーカスアクチュエータ駆動回路21に指示する。タイミングT35からT36にかけて、フォーカスアクチュエータ駆動回路21は、光ビームの合焦点位置を第2の記録層L1から第3の記録層L2へ移動するフォーカスジャンプを行う。
次に、タイミングT36において、マイクロコンピュータ51は、フォーカス制御が正しく動作できているかを確認する。次に、タイミングT37において、層間移動手順指示部57は、移動後の第3の記録層L2における球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示する。タイミングT37からT38にかけて、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、フォーカス制御を動作させたまま再度球面収差補正量を状態L424から状態L422へ調整する。最後に、タイミングT39において、マイクロコンピュータ51は、フォーカス制御が正しく動作できているかを確認し、層間移動動作を完了する。
次に、実施の形態2における、第3の記録層L2から第2の記録層L1へのフォーカスジャンプの手順について、図7を用いて説明する。
図7は、実施の形態2において、第3の記録層L2から第2の記録層L1への層間移動時における、フォーカスエラー信号401、フォーカスアクチュエータ駆動出力402、及び球面収差補正量を示す信号403の変化を示す図である。
最初に、タイミングT41において、第3の記録層L2で再生又は記録動作がなされている状態では、球面収差補正量を示す信号403は状態L422になっている。
次に、タイミングT42において、球面収差補正量算出部56は、フォーカスジャンプを行うときの球面収差補正量を、層間距離情報取得部53によって取得された、第3の記録層L2と第2の記録層L1との間の層間距離と、第3の記録層L2と第4の記録層L3との間の層間距離とに基づいて計算する。球面収差補正量算出部56は、球面収差を補正するための球面収差補正位置を算出し、算出した球面収差補正位置において球面収差が最小となるように球面収差を補正するための球面収差補正量を算出する。
表面から第2の記録層L1までの間の層間距離をSAtgtとし、第3の記録層L2から第2の記録層L1までの間の層間距離をΔSA1とし、第3の記録層L2から第4の記録層L3までの間の層間距離をΔSA2とし、層間距離の補正係数をKとした場合、球面収差補正量算出部56は、フォーカスジャンプ時の球面収差補正位置SAtgt2を次の(3)式を用いて計算する。
SAtgt2=SAtgt−(ΔSA1/ΔSA2)×K・・・(3)
例えば、層間距離SAtgtが83μmであり、層間距離ΔSA1が20μmであり、層間距離ΔSA2が13μmであり、補正係数Kが10である場合、球面収差補正位置SAtgt2は、下記の(4)式で算出される。
SAtgt2=83−(20/13)×10=67.6・・・(4)
ここでは、表面から83μmの位置にある第2の記録層L1へのフォーカスジャンプに際し、表面から67.6μmの球面収差補正位置において球面収差量が最適になるように調整した状態で、フォーカスジャンプを実行することを示している。状態L425は、表面から67.6μmの球面収差補正位置において球面収差補正量を最適に調整した状態を表している。
次に、タイミングT43において、層間移動手順指示部57は、球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正量に応じて球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示する。タイミングT43からT44にかけて、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、フォーカス制御を動作させたまま球面収差補正量を状態L425へ調整する。
次に、タイミングT45において、層間移動手順指示部57は、光ビームの合焦点位置を第3の記録層L2から第2の記録層L1に移動するように、制御部52を介してフォーカスアクチュエータ駆動回路21に指示する。タイミングT45からT46にかけて、フォーカスアクチュエータ駆動回路21は、光ビームの合焦点位置を第3の記録層L2から第2の記録層L1へ移動するフォーカスジャンプを行う。
次に、タイミングT46において、マイクロコンピュータ51は、フォーカス制御が正しく動作できているかを確認する。次に、タイミングT47において、層間移動手順指示部57は、移動後の第2の記録層L1における球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示する。タイミングT47からT48にかけて、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、フォーカス制御を動作させたまま再度球面収差補正量を状態L425から状態L421へ調整する。最後に、タイミングT49において、マイクロコンピュータ51は、フォーカス制御が正しく動作できているかを確認し、層間移動動作を完了する。
なお、現在の記録層と、現在の記録層に隣接する記録層との間の層間距離が十分に広い場合は、各記録層で得られるフォーカスエラー信号は十分に分離することができる。したがって、現在の記録層と、現在の記録層に隣接する記録層との間の層間距離が所定の閾値を越えている場合は、隣接する記録層によるフォーカスエラー信号への影響を無視してもよい。なお、ここでの隣接する記録層には、光ディスクの表面も含まれる。
例えば、第4の記録層L3から第3の記録層L2へのフォーカスジャンプについて説明する。表面から第3の記録層L2までの間の層間距離をSAtgtとし、第4の記録層L3から第3の記録層L2までの間の層間距離をΔSA1とし、第4の記録層L3から表面までの間の層間距離をΔSA2とし、層間距離の補正係数をKとした場合、球面収差補正量算出部56は、フォーカスジャンプ時の球面収差補正位置SAtgt2を次の(5)式を用いて計算する。
SAtgt2=SAtgt−(ΔSA1/ΔSA2)×K・・・(5)
また、例えば、他の記録層からの影響を無視する層間距離の閾値を30μmとすると、第4の記録層L3から表面までの間の層間距離ΔSA2はこの閾値を越える。この層間距離ΔSA2が十分に大きく、隣接する記録層によるフォーカスエラー信号への影響が無視できるということは、ΔSA2を無限大として扱うことができることと等価となる。
そのため、例えば、層間距離SAtgtが63μmであり、層間距離ΔSA1が10μmであり、層間距離ΔSA2が50μmであり、補正係数Kが10であり、閾値が30μmである場合、球面収差補正位置SAtgt2は、下記の(6)式で算出される。
SAtgt2=63−(10/∞)×10=63−0=63・・・(6)
このように、合焦点位置を第4の記録層L3から第3の記録層L2へ移動させる場合、球面収差補正量を表面から63μmの球面収差補正位置、すなわち第3の記録層L2において球面収差量が最適になるように調整した状態で、フォーカスジャンプを実行すればよい。
また、球面収差補正量の決定方法は、本実施の形態2に示す決定方法に限ったものではなく、光ピックアップの特性に応じて変えてもよい。また、球面収差補正量算出部56は、各記録層の層間距離に対応した球面収差補正量を表すテーブルをあらかじめ準備しておき、当該テーブルを参照することにより、球面収差補正量を決定してもよい。球面収差補正量算出部56は、多層光ディスクの各記録層の層間距離に応じて適切に球面収差補正量を求めることができればよい。
また、ここまででは多層光ディスクにおいて、現在の記録層に隣接した記録層への移動について述べたが、現在の記録層から複数先の記録層への層間移動においても本実施の形態1及び実施の形態2は適用可能である。隣接した記録層への層間移動を連続して行うことで、現在の記録層から複数層離れた他の記録層への安定した層間移動を実現することができる。すなわち、フォーカスジャンプ制御部60は、光ビームが合焦している現在の記録層からm(mは2以上の整数)層離れた他の記録層へ合焦点位置を移動させる際に、隣接する記録層へ合焦点位置を移動させる動作をm回繰り返すように、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23による球面収差の補正と、フォーカスアクチュエータ駆動回路21による合焦点位置の移動とを制御する。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3における光ディスク装置について説明する。
実施の形態1,2においては、球面収差補正動作とフォーカスジャンプ動作とを個別に動作させているが、実施の形態3では、球面収差補正動作を中断せずに、球面収差補正動作を継続したままフォーカスジャンプ動作を行う。
図8は、本発明の実施の形態3における光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
図8の光ディスク装置は、光ピックアップ11、フォーカスアクチュエータ駆動回路21、トラッキングアクチュエータ駆動回路22、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23、フォーカスエラー信号生成器25、トラッキングエラー信号生成器26、RF信号生成器27、再生信号品質指標生成器28、ディスクモータ29、マイクロコンピュータ51及び制御部52を備える。光ピックアップ11は、対物レンズ1、フォーカスアクチュエータ2、トラッキングアクチュエータ3、受光部5、1/4波長板6、球面収差補正部7、コリメータレンズ8、レーザ光源9及び偏光ビームスプリッタ10を備える。
なお、図8に示す光ディスク装置において、図1及び図5に示す光ディスク装置と同じ構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
マイクロコンピュータ51は、層間距離情報取得部53、球面収差補正量監視部58及びフォーカスジャンプ制御部60を備える。フォーカスジャンプ制御部60は、球面収差補正量算出部56及び層間移動手順指示部57を備える。
球面収差補正量監視部58は、球面収差補正部7による球面収差補正量を監視する。球面収差補正部7は、球面収差補正素子(例えば、コリメータレンズ)をステッピングモータで移動させる。このとき、球面収差補正量は、球面収差補正素子が光ピックアップ内の光ビームが通過する光路上のどの位置にいるか、すなわちステッピングモータによって球面収差補正素子がどの位置に駆動されているかを検出することによって得ることができる。つまり、球面収差補正量監視部58は、ステッピングモータによって球面収差補正動作を行いながら、同時に球面収差補正量を随時監視することが可能である。したがって、球面収差補正量監視部58は、球面収差補正部7の球面収差補正素子の位置を監視する。なお、本実施の形態3においても、球面収差補正量は、球面収差が最適となる球面収差補正素子の位置を表す。
球面収差補正量算出部56は、光ビームが合焦している現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、球面収差を補正するための球面収差補正量を算出する。また、球面収差補正量算出部56は、現在の記録層から2層以上離れた他の記録層へ合焦点位置を移動させる場合、隣接する記録層へ合焦点位置を移動させる際の各球面収差補正量を算出する。
また、球面収差補正量算出部56は、現在の記録層から2層以上離れた他の記録層へ合焦点位置を移動させる場合、光ビームが合焦している現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向に隣接する記録層との間の層間距離と、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離とに基づいて、隣接する記録層へ合焦点位置を移動させる際の各球面収差補正量を算出する。
層間移動手順指示部57は、移動先の他の記録層において球面収差が最適になるように球面収差の補正を開始し、球面収差が他の記録層に最適になるまでの間、球面収差補正量監視部58によって監視される球面収差補正部7の球面収差補正量が球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正量に達した場合、隣接する記録層へ合焦点位置を移動させるようにフォーカスアクチュエータ駆動回路21に指示する。
なお、本実施の形態2において、球面収差補正量算出部56が球面収差補正量算出部の一例に相当し、層間移動手順指示部57が指示部の一例に相当し、球面収差補正量監視部58が監視部の一例に相当する。
次に、実施の形態3における、第3の記録層L2から第2の記録層L1へのフォーカスジャンプの手順について、図9を用いて説明する。
図9は、実施の形態3において、第3の記録層L2から第2の記録層L1への層間移動時における、フォーカスエラー信号401、フォーカスアクチュエータ駆動出力402、及び球面収差補正量を示す信号403の変化を示す図である。
最初に、タイミングT51において、第3の記録層L2で再生又は記録動作がなされている状態では、球面収差補正量を示す信号403は状態L422になっている。
次に、タイミングT52において、球面収差補正量算出部56は、フォーカスジャンプを行うときの球面収差補正量を、層間距離情報取得部53によって取得された、第3の記録層L2と第2の記録層L1との間の層間距離と、第3の記録層L2と第4の記録層L3との間の層間距離とに基づいて計算する。球面収差補正量算出部56は、球面収差を補正するための球面収差補正位置を算出し、算出した球面収差補正位置において球面収差が最小となるように球面収差を補正するための球面収差補正量を算出する。
ここでは、表面から85μmの位置にある第2の記録層L1へのフォーカスジャンプに際し、表面から69μmの球面収差補正位置において球面収差量が最適になるように調整した状態で、フォーカスジャンプを実行する。本実施の形態3における球面収差補正位置の計算式は、実施の形態2で述べたものと同じであるため省略する。
タイミングT53において、層間移動手順指示部57は、移動先の第2の記録層L1に対応する球面収差補正量に応じて球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示する。球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、フォーカス制御を動作させたまま球面収差補正量が状態L421となるように球面収差補正動作を開始する。
次に、タイミングT54において、層間移動手順指示部57は、球面収差補正量を示す信号403が状態L425に到達したことを検知し、球面収差補正動作を継続したままフォーカスジャンプ動作を行い、光ビームの合焦点位置を第3の記録層L2から第2の記録層L1へ移動させる。
すなわち、層間移動手順指示部57は、球面収差が第2の記録層L1に最適になるまでの間、球面収差補正量監視部58によって監視される球面収差補正部7の球面収差補正量が球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正量(球面収差補正位置SAtgt2に対応する球面収差補正量)に達したか否かを判断する。球面収差補正部7の球面収差補正量が球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正量に達したと判断した場合、層間移動手順指示部57は、隣接する第2の記録層L1へ合焦点位置を移動させるようにフォーカスアクチュエータ駆動回路21に指示する。
より具体的には、層間移動手順指示部57は、球面収差が第2の記録層L1に最適になるまでの間、球面収差補正量監視部58によって監視される球面収差補正部7の球面収差補正素子の位置が球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正素子の位置(球面収差補正位置SAtgt2に対応する球面収差補正素子の位置)に達したか否かを判断する。球面収差補正部7の球面収差補正素子の位置が球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正素子の位置に達したと判断した場合、層間移動手順指示部57は、隣接する第2の記録層L1へ合焦点位置を移動させるようにフォーカスアクチュエータ駆動回路21に指示する。
次に、タイミングT55において、マイクロコンピュータ51は、フォーカス制御が正しく動作できているかを確認する。次に、タイミングT56において、球面収差補正量が状態L421に到達した場合、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、球面収差補正動作を完了する。
最後に、タイミングT57で、マイクロコンピュータ51は、フォーカス制御が正しく動作できているかを確認して層間移動動作を完了する。
なお、本実施の形態3において、球面収差補正量監視部58における球面収差補正量の監視方法として、ステッピングモータの駆動量を随時監視する方法を挙げているが、本発明は特にこれに限定されない。例えば、別途、球面収差補正量(球面収差補正素子の位置)を検出するセンサを搭載してもよい。もしくは、球面収差補正量監視部58は、受光部5から得られる信号を演算することによって、球面収差の量を検出してもよい。
本実施の形態3におけるフォーカスジャンプの手順によれば、フォーカスジャンプ動作のために一旦球面収差補正動作を中断する必要がなくなるため、より高速な層間移動が実現可能となる。
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4における光ディスク装置について説明する。
本実施の形態4における光ディスク装置の構成は実施の形態3と同じであるため、説明を省略する。
実施の形態3では、現在の記録層から、現在の記録層に隣接する他の記録層への層間移動について説明している。これに対し、実施の形態4では、現在の記録層から、2層以上離れた記録層への層間移動において、高速かつ安定して、複数の記録層を連続して移動する手順について説明する。ここでは、第4の記録層L3から第1の記録層L0へのフォーカスジャンプの手順について、図10を用いて説明する。
図10は、実施の形態4において、第4の記録層L3から第1の記録層L0への層間移動時における、フォーカスエラー信号401、フォーカスアクチュエータ駆動出力402、及び球面収差補正量を示す信号403の変化を示す図である。
最初に、タイミングT61において、第4の記録層L3で再生又は記録動作がなされている状態では、球面収差補正量を示す信号403は状態L423になっている。
次に、タイミングT62において、球面収差補正量算出部56は、フォーカスジャンプを行うときの球面収差補正量を、各記録層の層間距離に基づいて計算する。球面収差補正量算出部56は、球面収差を補正するための球面収差補正位置を算出し、算出した球面収差補正位置において球面収差が最小となるように球面収差を補正するための球面収差補正量を算出する。なお、本実施の形態4においても、球面収差補正量は、球面収差が最適となる球面収差補正素子の位置を表す。
球面収差補正量算出部56は、現在の記録層から、2層以上離れた記録層へ移動する場合、現在の記録層と移動先の記録層との間に存在する記録層毎に球面収差補正位置を算出するとともに、当該球面収差補正位置に対応する球面収差補正量を算出する。
球面収差補正量算出部56は、第4の記録層L3から第3の記録層L2へのフォーカスジャンプ動作における球面収差補正位置SAtgt2を次の(7)式を用いて計算する。ただし、表面から第3の記録層L2までの間の層間距離をSAtgtとし、第4の記録層L3から第3の記録層L2までの間の層間距離をΔSA1とし、第4の記録層L3から表面までの間の層間距離をΔSA2とし、層間距離の補正係数をKとする。
SAtgt2=SAtgt−(ΔSA1/ΔSA2)×K・・・(7)
ここで、例えば、層間距離SAtgtが63μmであり、層間距離ΔSA1が13μmであり、層間距離ΔSA2が50μmであり、補正係数Kが10である場合、球面収差補正位置SAtgt2は、下記の(8)式で算出される。
SAtgt2=63−(13/50)×10=60.4・・・(8)
同様にして、球面収差補正量算出部56は、第3の記録層L2から第2の記録層L1へのフォーカスジャンプ動作における球面収差補正位置SAtgt3を次の(9)式を用いて計算する。ただし、表面から第2の記録層L1までの間の層間距離をSAtgtとし、第3の記録層L2から第2の記録層L1までの間の層間距離をΔSA1とし、第3の記録層L2から第4の記録層L3までの間の層間距離をΔSA2とし、層間距離の補正係数をKとする。
SAtgt3=SAtgt−(ΔSA1/ΔSA2)×K・・・(9)
ここで、例えば、層間距離SAtgtが83μmであり、層間距離ΔSA1が20μmであり、層間距離ΔSA2が13μmであり、補正係数Kが10である場合、球面収差補正位置SAtgt3は、下記の(10)式で算出される。
SAtgt3=83−(20/13)×10=67.6・・・(10)
さらに、球面収差補正量算出部56は、第2の記録層L1から第1の記録層L0へのフォーカスジャンプ動作における球面収差補正位置SAtgt4を次の(11)式を用いて計算する。ただし、表面から第1の記録層L0までの間の層間距離をSAtgtとし、第2の記録層L1から第1の記録層L0までの間の層間距離をΔSA1とし、第2の記録層L1から第3の記録層L2までの間の層間距離をΔSA2とし、層間距離の補正係数をKとする。
SAtgt4=SAtgt−(ΔSA1/ΔSA2)×K・・・(11)
ここで、例えば、層間距離SAtgtが100μmであり、層間距離ΔSA1が17μmであり、層間距離ΔSA2が20μmであり、補正係数Kが10である場合、球面収差補正位置SAtgt4は、下記の(12)式で算出される。
SAtgt4=100−(17/20)×10=91.5・・・(12)
このように、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、第4の記録層L3から第3の記録層L2へのフォーカスジャンプでは、球面収差補正量を、表面から60.4μmの球面収差補正位置に最適な状態L426に調整する。また、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、第3の記録層L2から第2の記録層L1へのフォーカスジャンプでは、球面収差補正量を、表面から67.6μmの球面収差補正位置に最適な状態L427に調整する。さらに、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、第2の記録層L1から第1の記録層L0へのフォーカスジャンプでは、球面収差補正量を、表面から91.5μmの球面収差補正位置に最適な状態L428に調整する。
次に、タイミングT63において、層間移動手順指示部57は、移動先の第1の記録層L0に対応する球面収差補正量に応じて球面収差を補正するように球面収差補正アクチュエータ駆動回路23に指示する。球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、フォーカス制御を動作させたまま球面収差補正量が状態L420となるように球面収差補正動作を開始する。
次に、タイミングT64において、層間移動手順指示部57は、球面収差補正量を示す信号403が状態L426に到達したことを検知し、球面収差補正動作を継続したままフォーカスジャンプ動作を行い、光ビームの合焦点位置を第4の記録層L3から第3の記録層L2へ移動させる。
すなわち、層間移動手順指示部57は、球面収差が第1の記録層L0に最適になるまでの間、球面収差補正量監視部58によって監視される球面収差補正部7の球面収差補正量が球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正量(球面収差補正位置SAtgt2に対応する球面収差補正量)に達したか否かを判断する。球面収差補正部7の球面収差補正量が球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正量に達したと判断した場合、層間移動手順指示部57は、隣接する第3の記録層L2へ合焦点位置を移動させるようにフォーカスアクチュエータ駆動回路21に指示する。
次に、フォーカスジャンプ動作が完了すると、タイミングT65において、マイクロコンピュータ51は、フォーカス制御が正しく動作できているかを確認する。
次に、タイミングT66において、層間移動手順指示部57は、球面収差補正量を示す信号403が状態L427に到達したことを検知し、球面収差補正動作を継続したままフォーカスジャンプ動作を行い、光ビームの合焦点位置を第3の記録層L2から第2の記録層L1へ移動させる。
すなわち、層間移動手順指示部57は、球面収差が第1の記録層L0に最適になるまでの間、球面収差補正量監視部58によって監視される球面収差補正部7の球面収差補正量が球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正量(球面収差補正位置SAtgt3に対応する球面収差補正量)に達したか否かを判断する。球面収差補正部7の球面収差補正量が球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正量に達したと判断した場合、層間移動手順指示部57は、隣接する第2の記録層L1へ合焦点位置を移動させるようにフォーカスアクチュエータ駆動回路21に指示する。
次に、フォーカスジャンプ動作が完了すると、タイミングT67において、マイクロコンピュータ51は、フォーカス制御が正しく動作できているかを確認する。
次に、タイミングT68において、層間移動手順指示部57は、球面収差補正量を示す信号403が状態L428に到達したことを検知し、球面収差補正動作を継続したままフォーカスジャンプ動作を行い、光ビームの合焦点位置を第2の記録層L1から第1の記録層L0へ移動させる。
すなわち、層間移動手順指示部57は、球面収差が第1の記録層L0に最適になるまでの間、球面収差補正量監視部58によって監視される球面収差補正部7の球面収差補正量が球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正量(球面収差補正位置SAtgt4に対応する球面収差補正量)に達したか否かを判断する。球面収差補正部7の球面収差補正量が球面収差補正量算出部56によって算出された球面収差補正量に達したと判断した場合、層間移動手順指示部57は、隣接する第1の記録層L0へ合焦点位置を移動させるようにフォーカスアクチュエータ駆動回路21に指示する。
次に、フォーカスジャンプ動作が完了すると、タイミングT69において、マイクロコンピュータ51は、フォーカス制御が正しく動作できているかを確認する。
最後に、タイミングT70において、球面収差補正量が状態L420に到達した場合、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、球面収差補正動作を完了し、フォーカスアクチュエータ駆動回路21は、層間移動動作を完了する。
このようにして、球面収差補正動作を継続したまま、現在の球面収差補正量が所定の球面収差補正量になったことを検知してフォーカスジャンプ動作を行うという動作を繰り返すことによって、各記録層の層間距離が異なる多層光ディスクにおいても安定かつ高速な層間移動が実現可能となる。
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
本発明の一局面に係る光ディスク装置は、複数の記録層を有する光ディスクに対して光ビームを照射することにより、前記光ディスクに記録されている情報を読み出す又は前記光ディスクに情報を記録する光ディスク装置において、前記記録層上の光スポットにおいて発生する球面収差を補正する球面収差補正部と、所定の記録層に前記光ビームを合焦させるフォーカス制御部と、前記光ビームの合焦点位置を現在の記録層から他の記録層に移動させるフォーカスジャンプ部と、前記現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、前記球面収差補正部による球面収差の補正と、前記フォーカスジャンプ部による合焦点位置の移動とを制御するフォーカスジャンプ制御部とを備える。
この構成によれば、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、記録層上の光スポットにおいて発生する球面収差の補正と、光ビームの合焦点位置の移動とが制御される。
したがって、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、球面収差の補正と、合焦点位置の移動とが制御されるので、隣接する記録層によるフォーカスエラー信号への影響を考慮することができ、安定してフォーカスジャンプを行うことができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記フォーカスジャンプ制御部は、前記現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、前記球面収差補正部による球面収差の補正と、前記フォーカスジャンプ部による合焦点位置の移動とのうちのいずれを先に行うかを判断することが好ましい。
この構成によれば、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、球面収差の補正と、合焦点位置の移動とのうちのいずれを先に行うかが判断される。
したがって、隣接する記録層がフォーカスエラー信号に影響を及ぼす場合、球面収差の補正を行った後、合焦点位置を移動させ、隣接する記録層がフォーカスエラー信号に影響を及ぼさない場合、合焦点位置を移動させた後、球面収差の補正を行うことができ、安定してフォーカスジャンプを行うことができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記フォーカスジャンプ制御部は、前記現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離と所定の閾値とを比較し、前記層間距離が前記閾値より大きい場合、球面収差の補正を行った後、合焦点位置の移動を行い、前記層間距離が前記閾値以下である場合、合焦点位置の移動を行った後、球面収差の補正を行うことが好ましい。
この構成によれば、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離と所定の閾値とが比較される。そして、層間距離が閾値より大きい場合、球面収差の補正が行われた後、合焦点位置の移動が行われる。また、層間距離が閾値以下である場合、合焦点位置の移動が行われた後、球面収差の補正が行われる。
したがって、隣接する記録層がフォーカスエラー信号に影響を及ぼす場合、球面収差の補正を行った後、合焦点位置を移動させ、隣接する記録層がフォーカスエラー信号に影響を及ぼさない場合、合焦点位置を移動させた後、球面収差の補正を行うことができ、安定してフォーカスジャンプを行うことができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記フォーカスジャンプ制御部は、前記現在の記録層と、前記現在の記録層から前後所定の距離の範囲内に存在する記録層との間の層間距離に基づいて、前記球面収差補正部による球面収差の補正と、前記フォーカスジャンプ部による合焦点位置の移動とを制御することが好ましい。
この構成によれば、現在の記録層と、現在の記録層から前後所定の距離の範囲内に存在する記録層との間の層間距離に基づいて、球面収差の補正と、合焦点位置の移動とが制御されるので、より安定してフォーカスジャンプを行うことができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記フォーカスジャンプ制御部は、前記現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向に隣接する記録層との間の層間距離と、前記現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離とに基づいて、前記球面収差を補正するための球面収差補正量を算出し、前記球面収差補正部は、算出された前記球面収差補正量に応じて前記球面収差を補正することが好ましい。
この構成によれば、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向に隣接する記録層との間の層間距離と、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離とに基づいて、球面収差を補正するための球面収差補正量が算出される。そして、算出された球面収差補正量に応じて球面収差が補正される。
したがって、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向に隣接する記録層との間の層間距離と、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離とに基づいて、球面収差を補正するための球面収差補正量が算出されるので、正確に球面収差を補正することができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記フォーカスジャンプ制御部は、球面収差を補正する位置を表す球面収差補正位置を下記の(13)式に基づいて算出し、算出した前記球面収差補正位置において前記球面収差を補正するための球面収差補正量を算出することが好ましい。
SAtgt2=SAtgt+(ΔSA1/ΔSA2)×K・・・(13)
ただし、SAtgt2は、前記球面収差補正位置を表し、SAtgtは、前記光ディスクの表面から、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向に隣接する記録層までの距離を表し、ΔSA1は、前記現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向に隣接する記録層との間の層間距離を表し、ΔSA2は、前記現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離を表し、Kは、補正係数を表す。
この構成によれば、球面収差を補正する位置を表す球面収差補正位置が上記の(13)式に基づいて算出され、算出された球面収差補正位置において球面収差を補正するための球面収差補正量が算出されるので、より正確に球面収差を補正することができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記フォーカスジャンプ制御部は、算出された前記球面収差補正量に応じて前記球面収差を補正するように前記球面収差補正部に指示し、前記光ビームの合焦点位置を現在の記録層から他の記録層に移動するように前記フォーカスジャンプ部に指示し、移動後の前記他の記録層における球面収差を補正するように前記球面収差補正部に指示することが好ましい。
この構成によれば、算出された球面収差補正量に応じて球面収差が補正され、その後、光ビームの合焦点位置が現在の記録層から他の記録層に移動され、その後、移動後の他の記録層における球面収差が補正される。
したがって、段階的に球面収差を補正することによって、より安定してフォーカスジャンプを行うことができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記フォーカスジャンプ制御部は、前記光ビームが合焦している現在の記録層からm層離れた他の記録層へ合焦点位置を移動させる際に、隣接する記録層へ合焦点位置を移動させる動作をm回繰り返すように、前記球面収差補正部による球面収差の補正と、前記フォーカスジャンプ部による合焦点位置の移動とを制御することが好ましい。
この構成によれば、光ビームが合焦している現在の記録層からm層離れた他の記録層へ合焦点位置を移動させる際に、隣接する記録層へ合焦点位置を移動させる動作をm回繰り返すように、球面収差の補正と、合焦点位置の移動とが制御される。したがって、隣接した記録層への層間移動を連続して行うことで、現在の記録層から複数層離れた他の記録層への安定した層間移動を実現することができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記フォーカスジャンプ制御部は、前記現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、前記球面収差を補正するための球面収差補正量を算出する球面収差補正量算出部と、前記他の記録層において前記球面収差が最適になるように前記球面収差の補正を開始し、前記球面収差が前記他の記録層に最適になるまでの間、前記球面収差補正量算出部によって算出された球面収差補正量に達した場合、隣接する記録層へ合焦点位置を移動させるように前記フォーカスジャンプ部に指示する指示部とを含むことが好ましい。
この構成によれば、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、球面収差を補正するための球面収差補正量が算出される。そして、他の記録層において球面収差が最適になるように球面収差の補正を開始し、球面収差が他の記録層に最適になるまでの間、算出された球面収差補正量に達した場合、隣接する記録層へ合焦点位置を移動させる。
したがって、球面収差を補正しながら合焦点位置を移動させることができ、層間アクセス時間を短縮することができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記球面収差補正量算出部は、前記現在の記録層から2層以上離れた他の記録層へ合焦点位置を移動させる場合、前記現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向に隣接する記録層との間の層間距離と、前記現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離とに基づいて、隣接する記録層へ合焦点位置を移動させる際の各球面収差補正量を算出することが好ましい。
この構成によれば、現在の記録層から2層以上離れた他の記録層へ合焦点位置を移動させる場合、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向に隣接する記録層との間の層間距離と、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離とに基づいて、隣接する記録層へ合焦点位置を移動させる際の各球面収差補正量が算出される。
したがって、現在の記録層から2層以上離れた他の記録層へ合焦点位置を移動させる場合であっても、球面収差を補正しながら合焦点位置を移動させることができ、層間アクセス時間を短縮することができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記光ディスクの各記録層の層間距離を取得する層間距離取得部をさらに備え、前記層間距離取得部は、前記光ディスクの規格値に基づいて前記層間距離を取得することが好ましい。この構成によれば、光ディスクの規格値に基づいて層間距離を取得することができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記光ディスクの各記録層の層間距離を取得する層間距離取得部をさらに備え、前記層間距離取得部は、前記光ディスクの種類に対応する規格値に基づいて前記層間距離を取得することが好ましい。この構成によれば、光ディスクの種類に対応する規格値に基づいて層間距離を取得することができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記光ディスクの各記録層の層間距離を取得する層間距離取得部と、前記光ビームを前記記録層に集光する対物レンズと、前記光ビームを所定の記録層に合焦するために、前記対物レンズを光軸方向に駆動する駆動部と、前記光ビームの合焦点位置と前記光ディスクの記録層との相対的な距離をフォーカスエラー信号として生成するフォーカスエラー信号生成部とをさらに備え、前記層間距離取得部は、前記駆動部によって前記対物レンズを所定の速度で光軸方向に駆動させながら、前記フォーカスエラー信号生成部によって生成される前記フォーカスエラー信号を検出し、前記フォーカスエラー信号の検出タイミングに基づいて前記層間距離を取得することが好ましい。
この構成によれば、対物レンズを所定の速度で光軸方向に駆動させながら、生成されるフォーカスエラー信号が検出され、フォーカスエラー信号の検出タイミングに基づいて層間距離が取得される。したがって、光ディスク毎に層間距離を正確に取得することができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記光ディスクの各記録層の層間距離を取得する層間距離取得部と、前記光ビームの合焦点位置と前記光ディスク上に形成されたトラックとの相対的な距離をトラッキングエラー信号として生成するトラッキングエラー信号生成部とをさらに備え、前記層間距離取得部は、前記光ディスクの各記録層において生成される前記トラッキングエラー信号の振幅が最大となる位置の前記球面収差の補正量に基づいて層間距離を取得することが好ましい。
この構成によれば、光ディスクの各記録層において生成されるトラッキングエラー信号の振幅が最大となる位置の球面収差の補正量に基づいて層間距離が取得される。したがって、光ディスク毎に層間距離を正確に取得することができる。
また、上記の光ディスク装置において、前記光ディスクの各記録層の層間距離を取得する層間距離取得部と、前記光ディスクの各記録層に記録されている情報を再生して再生信号品質指標を生成する再生信号品質指標生成部とをさらに備え、前記層間距離取得部は、前記光ディスクの各記録層の記録済み領域を再生することによって生成される前記再生信号品質指標が最良となる前記球面収差の補正量に基づいて前記層間距離を取得することが好ましい。
この構成によれば、光ディスクの各記録層の記録済み領域を再生することによって生成される再生信号品質指標が最良となる球面収差の補正量に基づいて層間距離が取得される。したがって、光ディスク毎に層間距離を正確に取得することができる。
本発明の他の局面に係るフォーカス制御方法は、複数の記録層を有する光ディスクに照射される光ビームの合焦点位置を現在の記録層から他の記録層に移動させるためのフォーカス制御方法であって、前記光ディスクの所定の記録層に光ビームを合焦させるフォーカス制御ステップと、前記現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、前記記録層上の光スポットにおいて発生する球面収差の補正と、前記光ビームの合焦点位置の移動とを制御するフォーカスジャンプ制御ステップとを含む。
この構成によれば、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、記録層上の光スポットにおいて発生する球面収差の補正と、光ビームの合焦点位置の移動とが制御される。
したがって、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、球面収差の補正と、合焦点位置の移動とが制御されるので、隣接する記録層によるフォーカスエラー信号への影響を考慮することができ、安定してフォーカスジャンプを行うことができる。
本発明の他の局面に係る集積回路は、複数の記録層を有する光ディスクに照射される光ビームの合焦点位置を現在の記録層から他の記録層に移動させるための集積回路であって、前記光ディスクの所定の記録層に光ビームを合焦させるフォーカス制御回路と、前記現在の記録層と、前記光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、前記記録層上の光スポットにおいて発生する球面収差の補正と、前記光ビームの合焦点位置の移動とを制御するフォーカスジャンプ制御回路とを備える。
この構成によれば、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、記録層上の光スポットにおいて発生する球面収差の補正と、光ビームの合焦点位置の移動とが制御される。
したがって、現在の記録層と、光ビームの合焦点位置を移動させる方向とは反対方向に隣接する記録層との間の層間距離に基づいて、球面収差の補正と、合焦点位置の移動とが制御されるので、隣接する記録層によるフォーカスエラー信号への影響を考慮することができ、安定してフォーカスジャンプを行うことができる。
これまで述べたいずれの実施の形態についても、フォーカスアクチュエータ駆動回路21が出力する駆動波形を、フォーカスジャンプを行う層間距離に応じて変えることで、より安定したフォーカスジャンプを行うことができる。これは、例えば、フォーカスアクチュエータ駆動回路21が、層間距離の大小に応じて、駆動波形の出力レベル又は出力時間を適宜補正することで実現できる。
また、多層光ディスクの種類によっては、各々の記録層によって最適な光ビームの出力が異なることがある。さらに、多層光ディスクの記録層によっては、多層光ディスクから反射して得られる信号特性を改善するために、レーザ光源によって光ビームを出力する際に高周波成分を重畳させることがある。
最適な光ビームの出力が高い記録層から、最適な光ビームの出力が低い記録層へフォーカスジャンプをする場合、光ビームの出力を変化させずにフォーカスジャンプを行うと、移動先の記録層の情報を劣化させるか、移動先の記録層の情報を誤って消去してしまう可能性がある。
その場合、制御部は、フォーカスジャンプ動作前に、現在の記録層と移動先の記録層とのうちの最適な光ビームの出力が低い方の記録層に応じて光ビームの出力を設定する。これにより、記録層毎に最適な光ビームの出力が異なる多層光ディスクにおいて、記録層の情報が劣化することを防ぐことができる。
また、高周波成分を重畳した光ビームにより情報が再生される記録層から、高周波成分を重畳しない光ビームにより情報が再生される記録層へフォーカスジャンプをする場合、高周波成分を重畳した状態でフォーカスジャンプを行うと、移動先の記録層の情報を劣化させるか、移動先の記録層の情報を誤って消去してしまう可能性がある。
その場合、制御部は、フォーカスジャンプ動作前に、光ビームに高周波成分を重畳するのを停止させる。これにより、高周波成分を重畳した光ビームにより情報が再生される記録層と、高周波成分を重畳しない光ビームにより情報が再生される記録層とが混在する多層光ディスクにおいて、記録層の情報が劣化することを防ぐことができる。
また、光ビームの出力は、球面収差の補正を行う際にもあらかじめ下げておくことが望ましい。光ピックアップ内の光学素子の位置を変えることで、レーザ光源に供給する駆動電流が一定であっても、多層光ディスクに照射される光ビームの出力が変化する可能性がある。そこで、制御部は、フォーカスジャンプ完了後に球面収差の補正量に応じて光ビームの出力を移動先の記録層に最適な値に設定することで、記録層の情報の劣化を防ぐことができる。
さらに、制御部は、多層光ディスクの複数の記録層のうち、最適な光ビームの出力が最も低い記録層に応じて光ビームの出力を設定してからフォーカスジャンプを行ってもよい。これにより、万が一誤って目的と異なる記録層にフォーカスジャンプしてしまった場合でも、記録層の情報が劣化することを防ぐことができる。この際に、制御部は、多層光ディスクの複数の記録層のうち、最適な光ビームの出力が最も低い記録層に応じて光ビームに重畳する高周波成分の振幅を設定してからフォーカスジャンプを行なってもよく、また、高周波成分の重畳を停止してからフォーカスジャンプを行なってもよい。これにより、万が一誤って目的と異なる記録層にフォーカスジャンプしてしまった場合でも、高周波成分が重畳されることで増大する光ビームのピークパワーによって記録層の情報が劣化することを防ぐことができる。
さらにまた、制御部は、フォーカスジャンプ完了後に、トラッキングエラー信号の振幅を測定して所定の閾値と比較することにより、所望の記録層へフォーカスジャンプできたことを確認してもよい。また、制御部は、フォーカスジャンプ完了後に、移動後の記録層のアドレスを読み出すことにより、所望の記録層へフォーカスジャンプできたことを確認してもよい。その後、制御部は、現在の記録層に対して最適な光ビームの出力を設定する。もしくは、現在の記録層が光ビームに高周波成分を重畳して再生すべき記録層であれば、制御部は、光ビームに高周波成分を重畳する。これにより、多層光ディスクに対する信頼性と、高速かつ安定したアクセス動作との両立が可能となる。
なお、発明を実施するための形態の項においてなされた具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と特許請求事項との範囲内で、種々変更して実施することができるものである。
本発明に係る光ディスク装置、フォーカス制御方法及び集積回路は、複数の記録層を備える多層光ディスクにおいても安定かつ高速なフォーカスジャンプ動作を実現することが可能となり、大容量かつ高記録密度を実現する多層光ディスクに記録されている情報を読み出す又は前記光ディスクに情報を記録する光ディスク装置、フォーカス制御方法及び集積回路として有用である。