JPWO2010098080A1 - 1,4−ベンゾチアゼピン−1−オキシド誘導体、及びそれを用いた医薬組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
心臓が正常な収縮、弛緩ができず、結果としてポンプ作用が損なわれると全身の臓器、組織にうっ血がおこり、心不全が発生する。心不全時にはノルエピネフリンなどの交感神経系が活性化され、血中の濃度が上昇し、心拍数が増加する。
現在、心拍数を減らし、心筋収縮力を低下させる薬剤、すなわち、β遮断薬は心筋酸素消費量を低下させる結果、心不全の治療薬として使われている。しかし、β遮断薬は過量となると心不全を悪化させる危険があり、その使用は注意深く、慎重に行う必要がある。
冠動脈を拡張させる薬剤は心筋酸素供給量を増加させ心筋虚血を軽減させる。また、心筋酸素消費量は心拍数、心収縮力で規定されるので、心拍数の低下や心筋収縮力の低下は心筋の酸素量を減らし、心筋虚血を軽減する。冠動脈を拡張させ、心拍数を低下させ、心収縮力を低下させる作用を併せ持つ薬剤は、虚血性心疾患、すなわち狭心症や心筋梗塞の治療薬又は予防薬となる。
また、冠動脈を拡張させる薬剤は心筋への酸素供給を増強させるため、狭心症、心筋梗塞の治療薬となる。心筋の酸素消費量は心拍数、心筋収縮力に関連する。これらを低下させる作用は心筋酸素消費量を低下させ、虚血を改善させ、虚血性心疾患、すなわち狭心症、心筋梗塞の治療薬、予防薬となる。β遮断薬は狭心症、心筋梗塞、心不全の治療薬となるが、冠動脈拡張作用や左室拡張機能を増強させる作用はない。
左室心筋の拡張機能を増強させ、心拍数を低下させ、更に心筋収縮力を緩徐に低下させ、冠動脈を拡張させる作用を併せ持つ薬剤は、心不全、拡張不全による心不全、左室拡張障害、狭心症、心筋梗塞の治療薬又は予防薬になる。
さらに、心臓における弛緩機能は、収縮機能や拡張機能と同様に重要である。弛緩は主として拡張期4相の中の最初の第1相、等容弛緩期の機能を示し、左室圧の1次微分、最大陰性dP/dtの計測で測定できる。また、心臓における弛緩機能の異常は、心臓超音波ドプラー法で、左室心筋壁モーションを測定することで計測できる。
心筋弛緩障害は、虚血性心疾患、高血圧性心疾患、心不全、心房細動、心室性不整脈において認められる。心筋を専ら弛緩させる薬剤は現在のところない。エピネフリンやノルエピネフリンなどのカテコールアミンは心筋小胞体でのカルシウム取り込みを促進させ、心筋弛緩を促進させる。しかし、これらの物質は、心拍数や血圧を上昇させる作用を合わせもち、心筋酸素消費量を高める結果、上記の疾患の治療薬としては使用しにくい。心拍を変化させずに、心筋弛緩を促進させる薬剤は心筋弛緩薬として理想的な薬剤となりえる。心拍を変化させずに心筋弛緩を促進させることができれば虚血性心疾患、高血圧性心疾患、心不全、心房細動、心室性不整脈に合併した弛緩障害を改善させ、結果として心機能を改善させる薬剤となる。
血圧は心拍出量、末梢血管抵抗、循環血液量、血液粘調度などで規定される。ノルエピネフリンは末梢血管抵抗を増強させ、血圧を高くする。ノルエピネフリン負荷による高血圧に対し、血圧を低下させる薬剤は高血圧の治療薬又は予防薬となる。
また、本発明は、心拍数を変えずに心筋弛緩機能を促進するという有用な薬理作用などを有する新規な化合物、並びにそれを用いた医薬組成物を提供するものである。
で示される1,4−ベンゾチアゼピン−1−オキシド誘導体又はその薬学的に許容しうる塩に関する。
また、本発明は、前記式[I]で表される1,4−ベンゾチアゼピン−1−オキシド誘導体又はその薬学的に許容しうる塩、及び製薬学的の許容される担体を含有してなる医薬組成物に関する。
(1)次の一般式[I]
で示される1,4−ベンゾチアゼピン−1−オキシド誘導体又はその薬学的に許容される塩。
(2)1,4−ベンゾチアゼピン−1−オキシド誘導体の薬学的に許容される塩が、蓚酸塩である前記(1)に記載の1,4−ベンゾチアゼピン−1−オキシド誘導体又はその薬学的に許容される塩。
(3)前記(1)又は(2)に記載の1,4−ベンゾチアゼピン−1−オキシド誘導体又はその薬学的に許容される塩、及び製薬学的に許容される担体を含有してなる医薬組成物。
(4)医薬組成物が、心疾患又は高血圧症の治療薬又は予防薬である前記(3)に記載の医薬組成物。
(5)心疾患が、心不全、狭心症、又は心筋梗塞である前記(4)に記載の医薬組成物。
(6)心不全が、左室拡張障害又は心筋弛緩障害によるものである前記(5)に記載の医薬組成物。
(7)高血圧症が、高血圧時における血圧低下作用によるものである前記(4)に記載の医薬組成物。
(8)医薬組成物が、心拍を変化させずに心筋弛緩機能を促進させて、虚血性心疾患、高血圧性心疾患、心不全、心房細動、心室性不整脈に合併した心筋弛緩障害を改善させるための治療剤又は予防薬である、前記(3)に記載の医薬組成物。
(9)1,4−ベンゾチアゼピン−1−オキシド誘導体の薬学的に許容される塩が、その母体化合物である次の一般式[II]
で示される1,4−ベンゾチアゼピン誘導体又はその薬学的に許容される塩を投与することにより生体内で生成されるものである前記(3)〜(8)のいずれかに記載の医薬組成物。
(10)次の一般式[II]
で示される1,4−ベンゾチアゼピン誘導体を酸化して、次の一般式[I]
で示される1,4−ベンゾチアゼピン−1−オキシド誘導体又はその薬学的に許容される塩を製造する方法。
(11)酸化が過酸によるものである前記(10)に記載の方法。
(12)心疾患又は高血圧症の治療薬又は予防薬を製造するための前記一般式[I]で示される1,4−ベンゾチアゼピン−1−オキシド誘導体又はその薬学的に許容される塩の使用。
(13)心筋弛緩障害による心不全の治療薬又は予防薬を製造するための前記一般式[I]で示される1,4−ベンゾチアゼピン−1−オキシド誘導体又はその薬学的に許容される塩の使用。
(14)前記一般式[I]で示される1,4−ベンゾチアゼピン−1−オキシド誘導体又はその薬学的に許容される塩が、その母体化合物である前記一般式[II]で示される1,4−ベンゾチアゼピン誘導体又はその薬学的に許容される塩を投与することにより生体内で生成されるものである前記(12)又は(13)に記載の使用。
(15)心疾患又は高血圧症の治療薬又は予防薬としての、前記一般式[I]で示される1,4−ベンゾチアゼピン−1−オキシド誘導体又はその薬学的に許容される塩。
(16)心筋弛緩障害による心不全の治療薬又は予防薬としての、前記一般式[I]で示される1,4−ベンゾチアゼピン−1−オキシド誘導体又はその薬学的に許容される塩。
(17)心疾患又は高血圧症の患者に、有効量の前記一般式[I]で示される1,4−ベンゾチアゼピン−1−オキシド誘導体又はその薬学的に許容される塩を含有してなる医薬組成物を投与することからなる心疾患又は高血圧症を治療する方法。
(18)心筋弛緩障害による心不全の患者に、有効量の前記一般式[I]で示される1,4−ベンゾチアゼピン−1−オキシド誘導体又はその薬学的に許容される塩を含有してなる医薬組成物を投与することからなる心筋弛緩障害による心不全を治療する方法。
さらに、本発明の一般式[I]で表される化合物又はその塩は、その母体化合物である一般式[II]で表される化合物又はその塩とは異なり、心拍数を増加させることなく、心筋弛緩機能を調整させる作用を有していることから、その母体化合物である一般式[II]で表される化合物又はその塩とは異なる薬理作用を有する物質であると考えられる。
本発明者らは、本発明の一般式[I]で表される化合物又はその塩が、左室拡張機能を増強する作用があり、血管を拡張させ、心筋収縮力を減少させ、且つ心拍数を減少させる作用が穏やかな、心不全、拡張不全による心不全、左室拡張障害、狭心症又は心筋梗塞の薬剤として極めて有用であることを見出した。さらに、本発明の化合物が、心拍数を変化させずに心筋弛緩機能を促進させ、虚血性心疾患、高血圧性心疾患、心不全、心房細動、心室性不整脈に合併した心筋弛緩障害を改善させる薬剤として有用であることを見出した。
本発明者らは、本発明の化合物が、左室の拡張機能を増強させる有効な作用を有し、且つノルエピネフリン誘発性の左室拡張障害に対する抑制作用を有することを発見した。
本発明は、本発明の化合物を、左室拡張機能を改善し、また、心不全及び拡張不全の際に認められる左室拡張期最小圧と左室拡張末期圧の増加を抑制し、心不全及び拡張不全を改善する有用な薬剤として提供するものである。
また、本発明は、本発明の化合物を、高齢者や高血圧、心肥大に認められる左室拡張障害の患者に投与し左室拡張障害を改善させる治療又は予防する有用な薬剤として提供するものであり、さらに、本発明は、本発明の化合物を、冠動脈に有意の狭窄がある、狭心症や心筋梗塞患者に対して安全な望ましい治療薬又は予防薬として提供するものである。さらに、本発明は、心拍数を変化させずに心筋弛緩機能を促進させ、虚血性心疾患、高血圧性心疾患、心不全、心房細動、心室性不整脈に合併した心筋弛緩障害を改善させる有用な治療薬又は予防薬として提供するものである。
また、本発明の一般式[I]で表される化合物又はその塩は、その母体化合物である一般式[II]で表される化合物又はその塩の生体内での代謝産物と考えられることから、本発明の医薬組成物は、本発明の一般式[I]で表される化合物又はその塩に代えて、その母体化合物である一般式[II]で表される化合物又はその塩を、そのプロドラッグとして用いることができる。
さらに加えて、本発明の化合物は、心拍数を変化させずに心筋弛緩を増強させる作用を有し、心筋弛緩障害に有効である。また、本発明の化合物は高血圧に有効な作用を有し、高血圧症の治療薬又は予防薬として有用である。さらに、本発明の化合物は、心拍数を変化させずに、虚血性心疾患、高血圧性心疾患、心不全、心房細動、心室性不整脈に合併した心筋弛緩障害を改善する治療薬又は予防薬として有用である。
本発明の医薬組成物は、経口、舌下、貼付、静脈内投与ができるが、冠動脈内に注入し、診断的に冠動脈攣縮を誘発した後の攣縮の解除、検査中の冠攣縮の予防及び治療に用いられる。
さらにまた、狭心症、特に、狭心症における心筋虚血を治療又は予防するために、又は、心不全、特に拡張不全による心不全に対して、安全で望ましい治療又は予防をするために、本発明の化合物をβ遮断薬やCa2+拮抗薬と併用することにより、β遮断薬やCa2+拮抗薬の使用量を減じることができる。
で示される本発明の化合物の1,4−ベンゾチアゼピン−1−オキシド誘導体又はその薬学的に許容される塩に関する。本発明の好ましい化合物の例としては、次の式[III]
本発明の一般式[I]で表される化合物は、一般式[II]で表される化合物を適当な酸化剤で酸化することにより製造することができる。酸化剤としては、過酸、例えば、過酢酸、過安息香酸、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)などを使用することができる。溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素などを適宜使用することができる。反応温度はスルホンまでの酸化を防止するために低温、例えば、0℃から5℃程度が好ましい。反応混合物から、抽出操作やクロマトグラフィーや蒸留などの公知の分離精製手段により、目的物を分離精製することができる。
例えば、本発明の式[III]で表される化合物である4−[3−(4−ベンジルピペリジン−1−イル)プロピオニル]−7−メトキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾチアゼピン−1−オキシドは、次の反応経路で、
上記の反応経路により、式[V]で示される塩酸塩をクロロホルム溶媒中で、酸化剤のメタクロロ過安息香酸(mCPBA)により酸化することにより製造された本発明の化合物[III]の4−[3−(4−ベンジルピペリジン−1−イル)プロピオニル]−7−メトキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾチアゼピン−1−オキシドは、移動相としてクロロホルム−メタノール混合液を使用して、シリカゲルクロマトグラフィーにより分離し、次いで、分離されたクロロホルム−メタノール共沸溶媒から溶媒を留出し、さらにアルゴン中で残留溶媒を駆出して最終製品とする。このようにして得られた本発明の前記式[III]で示される化合物は、90%以上の純度を有しており、440.61の分子量を有し、アモルファスであり、室温で酸素及び湿度並びに酸及びアルカリに安定であり、エタノール及びジメチルスルホキシド(DMSO)に易溶であり、皮膚刺激性を有している。また、本発明の化合物[III]のシュウ酸塩は、530.65の分子量を有し、純度90%以上で、167〜168℃の融点を有する結晶であり、水、エタノール及びジメチルスルホキシドに可溶である。1H−NMRの室温における測定で、アミド部分における立体異性体が約2:3の割合で存在することが確認されている。
したがって、本発明の一般式[I]で表される化合物又はその塩は、医薬組成物の有効成分として使用することができる。本発明の医薬組成物は、経口、舌下、貼付、静脈内投与ができるが、冠動脈内に注入し、診断的に冠動脈攣縮を誘発した後の攣縮の解除並びに検査中の冠攣縮の予防及び治療に用いられる。さらにまた、このような治療や予防に、β遮断薬やCa2+拮抗薬と併用することにより、β遮断薬やCa2+拮抗薬の使用量を減じることができる。
錠剤又は丸剤に調製する場合は、必要により白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシメチルセルロースフタレート等の胃溶性あるいは腸溶性物質のフィルムで皮膜してもよいし、二以上の層で皮膜してもよい。さらに、ゼラチン又はエチルセルロースのような物質のカプセルにしてもよい。
水溶性の溶液剤にする場合、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコールあるいはオリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類等を用いてもよい。又、可溶化剤として、例えばポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、蔗糖脂肪酸エステル等の界面活性剤(混合ミセル形成)、又はレシチンあるいは水添レシチン(リポソーム形成)等も用いられる。又、植物油等の非水溶性の溶解剤と、レシチン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油又はポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等からなるエマルジョン製剤にすることもできる。
反応容器に、30.0gの前記式[V]で示される化合物の4−[3−(4−ベンジルピペリジン−1−イル)プロピオニル]−7−メトキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾチアゼピン塩酸塩を入れ、これに溶媒のクロロホルム(CHCl3)800mlを加えて、室温下に攪拌して溶解させる。次いで、反応容器を氷水浴に浸して、容器内温度が0〜1℃になるまで冷却した。これに、14.0gのメタクロロ過安息香酸(mCPBA)のクロロホルム(CHCl3)600mlの溶液を、反応温度が上昇しないように留意しながら110分の滴下時間で徐々に滴下した。滴下終了後、0〜1℃で約20分間攪拌した。
次いで、4.14gのNa2SO3の200mlH2O溶液を0〜5℃で1分間かけて滴下し、滴下終了後、0〜5℃で10分間攪拌した。次いで、0〜5℃に保冷しながら、1モル/リットルのNaOH水溶液を1分間かけて滴下した。滴下後、0〜5℃で15〜20分間攪拌した。有機層を分液後、水層を600mlのCHCl3で抽出した。有機層を合わせて、200mlのH2Oで1回、200mlの飽和食塩水で1回洗浄した。有機層を無水Na2SO4で乾燥した後、減圧で濃縮した。
濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィにより、エタノールで流出させて精製した。目的の化合物は、アモルファス乃至粘性オイル状で13gが得られた。
IR(cm−1) :3452, 2919, 1643, 1594, 1022
1H−NMR(CDCl3 300MHz): δ
1.1-2.95(17H, m), 3.78(3H, s), 3.86-4.16(2H, m),
4.65(2H,s), 6.8-7.65(8H,m)
MS(FD−MS):441(M+)
スプレーグ・ドーリーラット雄3匹に、化合物[IV]の母体化合物を0.3mg/kgの投与量で静脈内投与し、投与後24時間までの尿及び糞を採取し、糞については、水を加えホモジネートを調製した。その後、尿及び糞ホモジネートは3匹のプール試料を調製した。
糞プール試料2gにアセトニトリル溶液4mlを加えて撹拌した後、遠心分離を行い、上清を採取した。得られた上清を窒素気流下、40℃で濃縮乾涸し、この乾涸したものに、アセトニトリル及び水を加えて、再溶解した。この再溶解液を、LC/MSに注入して、保持時間21乃至22分に溶出するものを採取した。m/Zは、457であった。
なお、尿プール試料は、遠心分離した後、上清をLC/MSに注入して、保持時間21乃至22分に溶出するものを採取した。m/Zは、457であった。
(1)ウィスター(Wistar)系雄性ラットを1週間飼育後、3%イソフルランで吸入麻酔し、気管内挿管後、人工呼吸器を装着した。1.7%イソフルランの吸入麻酔下で、呼吸管理を行った。右総頚動脈から圧測定チップ付カテーテル(2Fミラー社)を左室内に挿入し、また、右大腿静脈から本発明の化合物又は生理食塩水注入用ポリエチレンチューブ(SP10)を挿入した。10分間の血行動態の安定化を図った後に、連続的に1分毎に、左室拡張期最小圧、左室拡張末期圧を測定し、本化合物[III]を0.1mg/kg/分で10分間投与した。対照例では生理食塩水を投与し、各溶液の注入速度は1分間あたり、16.6μlとした。
投与前及び投与後における左室拡張期最小圧及び左室拡張末期圧を20心拍測定した。測定された左室拡張期最小圧及び左室拡張末期圧は、投与前値を100%とし、投与後の値を投与前値に対する値(%表示)で表した。測定値は平均値と標準偏差値で求めた。結果を次の表1及び表2に示す。
生理食塩水の投与前及び投与後の左室拡張期最小圧及び左室拡張末期圧の測定結果
生理食塩水投与前 生理食塩水投与後
左室拡張期最小圧 100% 101.6±4.5%
左室拡張末期圧 100% 102.0±5.2%
生理食塩水の投与では、左室拡張期最小圧、左室拡張末期圧の減少を認めない。
次に、本発明の化合物[III]の投与前及び投与後において測定された左室拡張期最小圧と左室拡張末期圧の結果を次の表2に示す。
本発明の化合物[III]の投与前及び投与後の測定結果
本発明の化合物投与前 本発明の化合物投与後
左室拡張期最小圧 100% 76.0±5.2%
左室拡張末期圧 100% 78.4±6.6%
正常ラットにおいて本発明の化合物[III]の投与により、左室拡張期最小圧と左室拡張末期圧の明らかな低下を認めた。この結果、本発明の化合物が左室拡張能を改善させる作用を有していることがわかった。
Wistar系雄性ラットを3%イソフルランで吸入麻酔し、気管内挿管後、人工呼吸器を装着した。1.7%イソフルランの吸入麻酔下で、呼吸管理を行った。左第3肋間で開胸し、心嚢膜を切開後、梗塞群は左冠動脈前下行枝を絹糸(6.0;Ethicon)で完全結紮し、直ちに閉胸した。気管内チューブを抜管し覚醒後、飼育室に戻した。
2ヶ月間飼育後、上記と同様に、麻酔後気管内挿管し、右総頚動脈から圧測定チップ付カテーテル(2Fミラー社)を左室内に挿入し、また、右大腿静脈から生理食塩水あるいは本化合物注入用ポリエチレンチューブ(SP10)を挿入した。10分間の血行動態の安定化を図った後、慢性梗塞ラット群にノルエピネフリン(20μg/kg/分)を30分間投与した。その結果を次の表3に示す。ノルエピネフリン投与20分後に本発明の化合物[III]を0.1mg/kg/分で10分間投与した。1分毎に、左室拡張期最小圧、左室拡張末期圧を20心拍測定した。対照例では生理食塩水を投与し、各溶液の注入速度は1分間あたり、16.6μlとした。心筋梗塞の大きさは本発明の化合物及び対照の生理食塩水を投与したラットの心筋梗塞の大きさはSandmannらの方法(文献)に準じて求めた。即ち、心筋梗塞サイズ(%)は、次の式により求めた。
心筋梗塞サイズ(%)=
{(梗塞外周囲径+梗塞内周囲径)÷2}÷
{(左室外周囲径+左室内周囲径)÷2}×100
本発明の化合物の投与群、及び生理食塩水の投与群のそれぞれの梗塞サイズは各々、24%と26%で大きな差は無かった。
投与前の値を100%とし、投与後の値を投与前値に対する値(%表示)で表した。測定値は、平均値と標準偏差値で求めた。その結果を次の表4(対照)及び表5(本発明の化合物)にそれぞれ示す。
陳旧性心筋梗塞ラットに対するノルエピネフリン誘発性拡張障害の作成
ノルエピネフリン投与前 ノルエピネフリン投与後
左室拡張期最小圧 4.5±0.8mmHg 18.5±1.2mmHg
左室拡張末期圧 6.5±0.7mmHg 25.8±1.1mmHg
陳旧性心筋梗塞ラットにノルエピネフリンを投与すると、左室拡張期最小圧及び左室拡張末期圧の明らかな上昇が認められ、拡張障害が発生したことを示した。
生理食塩水の投与前及び投与後の測定結果
生理食塩水投与前 生理食塩水投与後
左室拡張期最小圧 100% 104.6±4.8%
左室拡張末期圧 100% 105.0±5.1%
陳旧性心筋梗塞ラットにノルエピネフリンを投与後、左室拡張障害を作成し、その後、生理食塩水の投与では、左室拡張期最小圧、左室拡張末期圧の減少を認めず、むしろ投与前に比べてこれらの圧は少し上昇した。
本発明の化合物[III]の投与前及び投与後の測定結果
本発明の化合物[III]投与前 本発明の化合物[III]投与後
左室拡張期最小圧 100% 76.0±5.2%
左室拡張末期圧 100% 78.4±6.6%
陳旧性心筋梗塞ラットにノルエピネフリンを投与後、左室拡張障害を作成し、その後、本発明の化合物[III]を投与することにより、左室拡張期最小圧と左室拡張末期圧は明瞭に低下した。このことから、本発明の化合物[III]が陳旧性心筋梗塞性ラットのノルエピネフリン誘発性拡張障害を改善することが明らかになった。
本発明の式[III]又は[IV]で示される化合物の冠動脈拡張作用についての試験
ブタ心臓を購入し、雌雄の区別無く使用した。予め、95%の酸素(O2)及び2、5%の二酸化炭素(CO2)を飽和させて氷冷したクレブ・ヘンゼライト(Krebs-Henseleit)液に摘出された心臓を浸けて運搬し、外径2.5−3mmの冠動脈前下行枝を摘出した。同じ栄養液で1晩冷蔵庫に保存し、翌日、幅3mmの内皮除去短冊(オープンリング)標本を作製し、37℃の温度で、95%の酸素(O2)及び2、5%の二酸化炭素(CO2)を飽和させて氷冷したクレブ・ヘンゼライト(Krebs-Henseleit)液で満たした臓器浴(organ bath)10ml中に懸垂した。一方を固定し他方を、アイソメトリック トランスデューサ(Isometric transducer)(T7-8-240,T7-30-240 オリエンテック)に接続し、張力用アンプで張力の変化を記録した。1.5g負荷下で120分間安定させた後、KCl(40mM)を投与し、収縮が最大に達したら洗い出し(wash out)を行い、この洗い出しを15分間隔で4回行った。安定したKClの収縮が得られた後に、生理食塩水(saline)に溶解したKCl(30mM)を添加し、持続的な収縮を得た後、ジメチルスルホキシド(DSMO)で溶解した本発明の前記式[III]又は[IV]で示される化合物を、0.01〜100μMまで累積的に投与した。被験物質を含まない、クレブ・ヘンゼライト(Krebs-Henseleit)溶液を対照とした。
試験の結果:対照では冠動脈の弛緩作用は0%であった。しかし、本発明の前記式[III]又は[IV]で示される化合物は、濃度依存的に、ブタ摘出冠動脈を弛緩させる作用を示した。前値を100%とし、冠動脈の最大収縮を50%弛緩させるための本発明の前記式[III]又は[IV]で示される化合物の濃度(EC50%)は、それぞれ42μM、100μMであった。
本発明の前記式[III]又は[IV]で示される化合物の収縮能力低下作用についての試験
SLCHartley系、雄性モルモット(900−1200g)を使用した。頭部打撲後、頚動脈を切断し、放血致死させた後、開胸し、心臓を摘出した。右心房を心室より切離し、右心房標本を作製した。これを、31℃で、95%の酸素(O2)及び2.5%の二酸化炭素(CO2)含有する気体の通気下のクレブ・ヘンゼライト(Krebs-Henseleit)液で満たした臓器浴(Organ bath)20ml中に懸垂し、一方を固定し、アイソメトリック トランスデューサ(isometric transducer)(TB-651-T:日本光電工業)に接続した。右心房標本は自発収縮を指標として薬物の作用を評価した。張力は張力用アンプ(EF601G)を介してレコーダー(RECTIGRAPH−8K日本電気三栄)に記録した。0.5〜1.0gの負荷下で60−90分間安定させた後、ジメチルスルホキシド(DSMO)に溶解した本発明の式[III]又は[IV]で示される化合物の 0.01−100μMを累積的に投与した。被験物質を含まない、クレブ・ヘンゼライト(Krebs-Henseleit)溶液を対照とした。投与前値を100%として、最大収縮を50%抑制させる濃度(IC50値)を求めた。
試験結果:対照群では、自発収縮の抑制は9%であった。本発明の式[III]又は[IV]で示される化合物は、濃度依存的に、モルモット右心房の自発収縮の大きさを抑制する作用を示した。前値の収縮振幅の最大値を100%とし、これを50%抑制する[II]又は[III]の濃度(IC50)は各々36μM、110μMであった。
本発明の式[III]又は[IV]で示される化合物の心拍数低下作用についての試験
雄性モルモット(900−1200g)を使用した。頭部打撲後、頚動脈を切断し、放血致死させた後、開胸し、心臓を摘出した。右心房を心室より切離し、右心房標本を作製した。これを、31℃、95%の酸素(O2)及び2、5%の二酸化炭素(CO2)を含有する気体の通気下のクレブス・ヘンゼライト(Krebs-Henseleit)液で満たした臓器浴(Organ bath)の20ml中に懸垂し、一方を固定し、他方をアイソメトリック トランスデューサ(isometric transducer)(TB-651-T:日本光電工業)に接続した。右心房標本については、自発性収縮による拍動数をレコーダー(RECTIGRAPH−8K日本電気三栄)に記録した。ジメチルスルホキシド(DSMO)に溶解した本発明の式[III]又は[IV]で示される化合物の0.01−100μMを累積的に調べた。
検出結果:対照群では、右心房の心拍数の抑制はできなかった。本発明の式[III]又は[IV]で示される化合物は、濃度依存的に、モルモット右心房の1分間あたりの心拍数を抑制する作用を示した。前値を100%とし、最大収縮を50%抑制する[III]又は[IV]の濃度は35μM、110μMであった。
化合物[III]の心拍数、左室圧、心筋弛緩機能に対する作用と化合物[II](R=H)の比較
実験方法
体重280−300gのWistar系雄性ラットを1週間飼育後、3%イソフルランで吸入麻酔し、気管内挿管後、人工呼吸器を装着した。1.7%イソフルランの吸入麻酔下で、呼吸管理を行った。右総頚動脈から圧測定チップ付カテーテル(2Fミラー社)を左室内に挿入し、また、右大腿静脈から本発明の化合物[III]又は化合物[II](R=H)の注入用ポリエチレンチューブ(SP10)を挿入した。10分間の血行動態の安定化を図った後に、連続的に1分毎に、心拍数、左室圧、最大陰性dP/dtを測定した。本発明の化合物[III]及び化合物[II]を0.3mg/kg/分で5分間投与した。各群4匹のラットで検討した。溶媒は0.05%クエン酸と5%ソルビトール溶液を使用した。投与前及び投与5分後における各パラメーターについて、20心拍を測定した。その結果を図1、図2及び図3に示す。
心拍数(拍/分)は、本発明の化合物[III]投与前は361.7±26.5であり、投与後は360.9±29.1で有意差を認めなかった。一方、化合物[II](R=H)の投与では、投与前370.1±18.9であり、投与後は320.2±24.2で、有意に低下した(図1参照)。以上より、本発明の化合物[III]は心拍数を変化させず、化合物[II](R=H)は心拍数を有意に低下させ、両者が異なる薬理作用を有することが判った。
2)本発明の化合物[III]と化合物[II](R=H)の左室圧への影響
本発明の化合物[III]の投与で左室圧は(mmHg)は、投与前は106.0±5.8であり、投与後は106.3±5.5で有意差はなかった。また、化合物[II](R=H)の投与では、投与前103.7±4.2であり、投与後は 100.8±6.0で、若干の減少があったが有意差は認めなかった(図2参照)。
3)本発明の化合物[III]と化合物[II](R=H)の心筋弛緩機能の比較
本発明の化合物[III]の投与で、心筋弛緩機能(mmHg/秒)は、投与前は−5631.4±395.9で、投与後は−5982.6±520.1で有意に改善した。一方、化合物[II](R=H)の投与では、心筋弛緩機能(mmHg/秒)は、投与前−5973.4±1121.3で、投与後は−5311.0±961.4で、有意に低下した(図3参照)。
以上より、本発明の化合物は心筋弛緩機能を有意に改善させるのに対し、その母体化合物である化合物[II]は心筋弛緩機能を有意に減弱させ、両者が異なる薬理作用を示すことが明らかになった。
実験方法
体重260gのウィスター(Wistar)系雄性ラットを3%イソフルランで吸入麻酔し、気管内挿管後、人工呼吸器を装着した。1.7%イソフルランの吸入麻酔下で、呼吸管理を行った。右総頚動脈から圧測定チップ付カテーテル(2Fミラー社)を左室内に挿入し、また、右大腿静脈から本化合物注入用ポリエチレンチューブ(SP10)を挿入した。10分間の血行動態の安定化を図った後、ノルエピネフリン(20μg/kg/分)を投与し、投与開始10分後に本発明の化合物[III]を0.1mg/kg/分で10分間投与した。10分間隔で本発明の化合物[III]の投与を3回繰り返した。本発明の化合物[III]投与前後の左室圧を20心拍測定した。各溶液の注入速度は1分間あたり、16.6μlとした。その結果を図4に示す。その結果、本発明の化合物[III]の投与前の左室圧(mmHg)は、189.2±14.0であり、投与後は 180.3±14.9で、本発明の化合物[III]投与により左室圧は有意に低下した(図4参照)。
SLCHartley系、雄性モルモット(900−1200g)を使用した。頭部打撲後、頚動脈を切断し、放血致死させた後、開胸し、心臓を摘出した。右心房を心室より切離し、右心房標本を作製した。これを、31℃で、95%の酸素(O2)及び2.5%の二酸化炭素(CO2)含有する気体の通気下のクレブ・ヘンゼライト(Krebs−Henseleit)液で満たした臓器浴(Organ bath)20ml中に懸垂し、一方を固定し、アイソメトリック トランスデューサ(isometric transducer)(TB−651−T:日本光電工業)に接続した。右心房標本は自発収縮を指標として薬物の作用を評価した。張力は張力用アンプ(EF601G)を介してレコーダー(RECTIGRAPH−8K日本電気三栄)に記録した。0.5〜1.0gの負荷下で60−90分間安定させた後、ジメチルスルホキシド(DSMO)に溶解した本発明の式[III]又は[IV]で示される化合物の 0.01−100μMを累積的に投与した。被験物質を含まない、クレブ・ヘンゼライト(Krebs−Henseleit)溶液を対照とした。投与前値を100%として、最大収縮を50%抑制させる濃度(IC50値)を求めた。
試験結果:対照群では、自発収縮の抑制は9%であった。本発明の式[III]又は[IV]で示される化合物は、濃度依存的に、モルモット右心房の自発収縮の大きさを抑制する作用を示した。前値の収縮振幅の最大値を100%とし、これを50%抑制する[III]又は[IV]の濃度(IC50)は各々36μM、110μMであった。
実施例7
[0061]
試験例5
本発明の式[III]又は[IV]で示される化合物の心拍数低下作用についての試験
雄性モルモット(900−1200g)を使用した。頭部打撲後、頚動脈を切断し、放血致死させた後、開胸し、心臓を摘出した。右心房を心室より切離し、右心房標本を作製した。これを、31℃、95%の酸素(O2)及び2、5%の二酸化炭素(CO2)を含有する気体の通気下のクレブス・ヘンゼライト(Krebs−Henseleit)液で満たした臓器浴(Organ bath)の20ml中
Claims (11)
- 1,4−ベンゾチアゼピン−1−オキシド誘導体の薬学的に許容される塩が、蓚酸塩である請求項1に記載の1,4−ベンゾチアゼピン−1−オキシドの薬学的に許容される塩。
- 請求項1又は2に記載の1,4−ベンゾチアゼピン−1−オキシド誘導体又はその薬学的に許容される塩、及び製薬学的に許容される担体を含有してなる医薬組成物。
- 医薬組成物が、心疾患又は高血圧症の治療薬又は予防薬である請求項3に記載の医薬組成物。
- 心疾患が、心不全、狭心症、又は心筋梗塞である請求項4に記載の医薬組成物。
- 心不全が、左室拡張障害又は心筋弛緩障害によるものである請求項5に記載の医薬組成物。
- 高血圧症が、高血圧時における血圧低下作用によるものである請求項4に記載の医薬組成物。
- 医薬組成物が、心拍を変化させずに心筋弛緩機能を促進させて、虚血性心疾患、高血圧性心疾患、心不全、心房細動、心室性不整脈に合併した心筋弛緩障害を改善させる治療薬又は予防薬である請求項3に記載の医薬組成物。
- 酸化が過酸によるものである請求項10に記載の方法。
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