JPWO2010095343A1 - プラズマディスプレイパネル - Google Patents

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美智子 岡藤
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Abstract

本発明は、第一の目的として、表面層を改良して二次電子放出特性と電荷保持特性を向上させ、良好な画像表示性能で安定して低電力駆動することが可能なPDPを提供する。第二の目的として、さらに駆動時の放電遅れの発生を防止し、高速駆動される高精細なPDPでも高品位な画像表示性能が期待できるPDPを提供する。そのため、誘電体層7の放電空間15側の面に、CeO2を主成分とし、Baを16mol%〜29mol%添加してなる膜厚約1μmの表面層(保護膜)8を配設する。これにより表面層8中の禁制帯に一定の深さの電子準位を形成、または価電子帯の電子準位を上昇させてバンドギャップを減少させ、二次電子放出特性及び電荷保持特性の向上を図る。

Description

本発明は、気体放電による放射を利用したプラズマディスプレイパネルに関する。特に、放電空間に臨む表面層(保護膜)の特性の改良技術に関する。
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと称する)は、気体放電からの放射を利用した平面表示装置である。高速の表示や大型化が容易であり、映像表示装置や広報表示装置などの分野で広く実用化されている。PDPには直流型(DC型)と交流型(AC型)があるが、面放電型AC型PDPが寿命特性や大型化の面で特に高い技術的ポテンシャルを持ち、商品化されている。
図6は、一般的なAC型PDPにおける放電単位である放電セル構造の模式的組図である。当図6に示すPDP1xはフロントパネル2及びバックパネル9を貼り合わせてなる。第一基板であるフロントパネル2は、フロントパネルガラス3の片面に、走査電極5及び維持電極4を一対とする表示電極対6が複数対にわたり配設され、当該表示電極対6を覆うように、誘電体層7および表面層8が順次積層されてなる。走査電極5、維持電極4は、それぞれ透明電極51、41及びバスライン52、42を積層して構成される。
誘電体層7は、ガラス軟化点が550℃〜600℃程度の範囲の低融点ガラスから形成され、AC型PDP特有の電流制限機能を有する。
表面層8は、上記誘電体層7及び表示電極対6をプラズマ放電のイオン衝突より保護すると共に、放電空間15に二次電子を効率よく放出し、PDPの放電開始電圧を低下させる役目をなす。通常、当該表面層8は二次電子放出特性、耐スパッタ性、可視光透過率に優れる酸化マグネシウム(MgO)を用いて、真空蒸着法や印刷法で成膜される。なお表面層8と同様の構成は、専ら二次電子放出特性の確保を目的とした保護層(保護膜とも称する。)として設けられることもある。
他方、第二基板であるバックパネル9は、バックパネルガラス10上に画像データを書き込むための複数のデータ(アドレス)電極11が前記フロントパネル2の表示電極対6と直交方向で交差するように併設される。バックパネルガラス10には、データ電極11を覆うように低融点ガラスからなる誘電体層12が配設される。誘電体層12において隣接する放電セル(図示省略)との境界上には、低融点ガラスからなる所定の高さの隔壁(リブ)13が放電空間15を区画するように、ストライプ状の複数のパターン部1231、1232をそれぞれ井桁状に組み合わせて形成される。誘電体層12の表面と隔壁13の側面には、R、G、B各色の蛍光体インクが塗布及び焼成されてなる蛍光体層14(蛍光体層14R、14G、14B)が形成されている。
フロントパネル2とバックパネル9は、表示電極対6とデータ電極11の各長手方向が放電空間15をおいて互いに直交するように配置され、両パネル2、9の周囲において内部封止される。封止された放電空間15には、放電ガスとしてXe−Ne系あるいはXe−He系等の希ガスが約数十kPaの圧力で封入される。以上でPDP1xが構成される。
PDPで画像表示するためには、1フィールドの映像を複数のサブフィールド(S.F.)に分割する階調表現方式(例えばフィールド内時分割表示方式)等が用いられる。
ところで、近年の電化製品には低電力駆動化が望まれており、PDPについても同様の要求がある。高精細な画像表示を行うPDPにおいては、放電セルが微細化されて放電セル数も増大する。従って、確実に書込放電を行うには、狭い放電空間内で確実に放電を生じさせるため、動作電圧を高めなければならない。PDPの動作電圧は、表面層の二次電子放出係数(γ)に依存する。γは、材料と放電ガスにより決まる値で、材料の仕事関数が小さいほどγが高くなることが知られている。動作電圧の上昇は、PDPを低電力で駆動する上で障害となる。
そこで特許文献1には、MgOに酸化セリウム(CeO2)を0.1mol%〜20mol%の範囲で添加させたアモルファス構造により表面層を構成する技術が開示されている。具体的には添加剤であるCeO2によりアモルファス状のMgOで表面層を構成し、その表面が不純物ガスと反応して変質(炭酸化)するのを防止して、動作電圧の上昇抑制を図っている。
また、特許文献2でも、MgOにCeO2を0.1mol%〜20mol%の範囲で添加させたアモルファス構造の表面層を構成する技術が開示されている。この構成により、PDPの放電開始電圧ないし放電維持電圧の低減を図っている。
さらに特許文献3では、MgOに対してCeO2を重量比0.011〜0.5の範囲で添加してなる表面層が開示され、これにより動作電圧の低減を図っている。
そして、特許文献4では、SrOを主成分とし、CeO2が混合された表面層が開示されている。これによりPDPを低電圧で安定に放電させることを図っている。
特開2000−164143号公報 特開平11−339665号公報 特開2003−173738号公報 特開昭52−116067号公報
しかしながら、上記したいずれの従来技術においても、実際にPDPの低電力駆動化を十分に達成しているとは言い難い。
また、CeO2を含む表面層はエージング時間がMgOよりも長時間になり、生産効率上の課題を有している。
さらにPDPでは、「放電遅れ」の問題が存在する。PDP等のディスプレイ分野では、画像表示の高精細化に伴い、画像ソースの情報量の増加が進んでおり、表示面の走査電極(走査線)数が増加傾向にある。例えば、いわゆるフルスペックハイビジョンTVでは、通常のNTSC方式のTVと比べ、走査線の数が2倍以上に増加している。このような高精細型PDPで正確に映像表示するためには、映像ソースの情報量が増えた分、高速で駆動することが求められる。具体的には1フィールドのシーケンスを1/60[s]以内で高速駆動する必要がある。
これを達成するためには、例えばサブフィールド中の書込期間において、データ電極へ印加するパルスの幅を狭くする方法が挙げられる。
しかしながら、この方法を単に実施すると、「放電遅れ」の問題が大きくなる。「放電遅れ」とは、PDPの駆動時において、電圧パルスの立ち上がりから実際に放電セル内で放電発生するまでにタイムラグが発生する問題を指す。高速駆動の実現のためにパルスの幅を短くすれば、各パルスの幅内で放電終了できる確率が低くなるので、「放電遅れ」を生じ易くなる。その結果、しばしば画面に不灯セル(点灯不良)が生じ、画像表示性能が損なわれる。特に、特許文献1のようにアモルファス構造の表面層を備えるPDPでは、当該表面層から放電空間に放電遅れを抑制する初期電子が放出しにくいので、このような不灯セルによる画質劣化が比較的大きくなりうる。
このように現在のPDPでは、幾つかの解決すべき課題が残されている。
本発明は以上の各課題に鑑みてなされたものであって、第一の目的として、表面層を改良して二次電子放出特性と電荷保持特性を向上させることにより、良好な画像表示性能の発揮と低電力駆動を安定して実現可能なプラズマディスプレイパネルを提供する。
第二の目的として、上記各効果に加え、さらに駆動時の放電遅れの発生を防止することにより、高速駆動で高精細画像を表示する場合でも、高品位な画像表示性能を安定して発揮することが期待できるPDPを提供する。
上記目的を達成するために、本発明は、複数の表示電極対が配設された第一基板が、放電空間を介して第二基板と対向配置され、両基板の間に放電ガスが満たされて内部封止されたプラズマディスプレイパネルであって、第一基板の放電空間に臨む面には、CeO2を主成分とし、Baを16mol%以上31mol%以下の範囲で含有する表面層が配設されているものとした。
ここで、前記表面層は、さらにBaを16mol%以上24mol%以下の範囲で含有するものとすれば、表面層への炭酸化物の付着を防止する上で一層好ましい。
また、前記表面層は、Baを26mol%以上29mol%以下の範囲で含有するものとすれば、駆動電圧を低減する効果を得る上で一層好ましい。
また、前記表面層は、ホタル石構造を有する構成とすることもできる。
ここで、表面層の放電空間側には、さらにMgO微粒子を配設することもできる。すなわち、上記表面層をベース層とし、この上にMgO微粒子を放電空間に臨むように配設し、その全体として表面層を構成することが可能である。
このMgO微粒子は、気相酸化法で作製することができる。或いは、MgO前駆体を焼成して作製することもできる。
以上の構成を持つ本発明のPDPでは、CeO2を主体とし、Baを含む表面層において、高い二次電子放出特性が発揮されることを特徴としている。その理由としては、以下の2つが考えられる。
第一の理由として、表面層にBaを添加することにより、当該表面層の価電子帯の準位が真空準位から4〜6eV程度の位置に設けられることが挙げられる。これは現在、広く実用化されているMgOの表面層の価電子帯の電子準位(8eV程度)と比較すると、オージェ中性化の過程で取得する励起に必要なエネルギーが充分にあり、二次電子放出特性が非常に大きいことを示す。なお、一般にBaOは表面安定性が極めて悪く、数秒程度の大気暴露で水酸化、炭酸化が進行してしまう。このためBaOからなる表面層を形成する場合は、極めて清浄化された状況下でのPDP作製プロセスを余儀なくされる。これに対し、本発明の表面層は高い化学安定性を有するCeO2を主成分とするので、ある程度清浄化された状況下であれば、それほど成膜雰囲気を厳密にコントロールしなくても、高い二次電子放出特性を持つ表面層を形成することが可能である。
第二の理由として、表面層の禁制帯中にCeに起因する電子準位が形成されることが挙げられる。このPDPの駆動時には、前記Ceに起因する電子準位にトラップされた電子を利用して、いわゆるオージェ中性化の過程で取得する励起に使用可能なエネルギーを増大させることができる。この増大したエネルギーを利用することにより、表面層の二次電子放出特性が大幅に向上する。従って、比較的低い放電開始電圧でも良好な応答性で放電を開始でき、放電遅れを防止することで、優れた画像表示性能を低電力で駆動することが可能なPDPの実現が期待できる。
また、表面層において、Ceに起因する電子準位は、真空準位から或程度の深さ(すなわち、エネルギー的に浅すぎない深さ)に形成されており、当該電子準位にトラップされた電子は容易に放出されない。これにより、駆動時に表面層中の電荷が過度に消失するという、いわゆる「電荷抜け」の問題が低減される。このように、表面層において適切な電荷保持特性が発揮されることで、放電空間に二次電子を経時的に放出することができる。
このような二つの理由で、本発明のPDPにおいては、高い二次電子放出特性を有することとなる。
なお、このようにCeO2を主体とし、Baを含む層をベース層とし、その表面に、さらに気相酸化法や前駆体焼成法等で作製されたMgO微粒子からなる微粒子群を配設することで表面層を構成すれば、いっそう二次電子放出特性を向上させて放電遅れを抑制できるほか、放電開始時の初期電子放出特性が改善される。これにより、微小な放電空間を持つ高精細セルを有するPDPを高速駆動する場合であっても、放電空間内の豊富な電子を利用して放電を発生させ、良好な表示応答性が得られるほか、放電遅れ及び放電遅れの温度依存性の問題の改善も期待でき、結果として優れた画像表示性能が実現される。また、これにより、駆動温度が幅広い温度範囲にわたっても、安定してPDPを駆動することができる。
本発明の実施の形態1に係るPDPの構成を示す断面図である。 各電極とドライバとの関係を示す模式図である。 PDPの駆動波形例を示す図である。 CeO2の電子準位とオージェ過程における二次電子放出の様子を示す模式図である。 本実施の形態1のPDPの表面層及び従来のPDPの保護膜の各電子準位と、オージェ過程における二次次電子放出の様子を示す模式図である。 本発明の実施の形態2に係るPDPの構成を示す断面図である。 CeO2中のBa濃度を変化させたサンプルのX線回折結果を示すグラフである。 XPS測定により求めた表面に占める炭酸化物の割合のCeO2におけるBa濃度依存性を示すグラフである。 Xe15%における放電開始電圧のCeO2におけるBa濃度依存性を示すグラフである。 従来の一般的なPDPの構成を示す組図である。
以下に、本発明の実施の形態及び実施例を説明するが、当然ながら本発明はこれらの形式に限定されるものでなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。
<実施の形態1>
(PDPの構成例)
図1は、本発明の実施の形態1に係るPDP1のxz平面に沿った模式的な断面図である。当該PDP1は表面層8周辺の構成を除き、全体的には従来構成(図4)と同様である。
PDP1は、ここでは42インチクラスのNTSC仕様例のAC型としているが、本発明は当然ながらXGAやSXGA等、この他の仕様例に適用してもよい。HD(High Definition)以上の解像度を有する高精細なPDPとしては、例えば、次の規格を例示できる。パネルサイズが37、42、50インチの各サイズの場合、同順に1024×720(画素数)、1024×768(画素数)、1366×768(画素数)に設定できる。そのほか、当該HDパネルよりもさらに高解像度のパネルを含めることができる。HD以上の解像度を有するパネルとしては、1920×1080(画素数)を備えるフルHDパネルを含めることができる。
図1に示すように、PDP1の構成は互いに主面を対向させて配設された第1基板(フロントパネル2)および第二基板(バックパネル9)に大別される。
フロントパネル2の基板となるフロントパネルガラス3には、その一方の主面に所定の放電ギャップ(75μm)をおいて配設された一対の表示電極対6(走査電極5、維持電極4)が複数対にわたり形成されている。各表示電極対6は、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2)等の透明導電性材料からなる帯状の透明電極51、41(厚さ0.1μm、幅150μm)に対して、Ag厚膜(厚み2μm〜10μm)、Al薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等からなるバスライン52、42(厚さ7μm、幅95μm)が積層されてなる。このバスライン52、42によって透明電極51、41のシート抵抗が下げられる。
ここで、「厚膜」とは、導電性材料を含むペースト等を塗布した後に焼成して形成する各種厚膜法により形成される膜をいう。また、「薄膜」とは、スパッタリング法、イオンプレーティング法、電子線蒸着法等を含む、真空プロセスを用いた各種薄膜法により形成される膜をいう。
表示電極対6を配設したフロントパネルガラス3には、その主面全体にわたり、酸化鉛(PbO)または酸化ビスマス(Bi23)または酸化燐(PO4)を主成分とする低融点ガラス(厚み35μm)の誘電体層7が、スクリーン印刷法等によって形成されている。
誘電体層7は、AC型PDP特有の電流制限機能を有し、DC型PDPに比べて長寿命化を実現できる要素になっている。
誘電体層7の表面には、膜厚約1μmの表面層(保護層)8が形成される。この表面層8は、放電時のイオン衝撃から誘電体層7を保護し、放電開始電圧を低減させる目的で配され、耐スパッタ性及び二次電子放出係数γに優れる材料からなる。当該材料には、さらに良好な光学透明性、電気絶縁性が要求される。
表面層8は本発明の主たる特徴部分であって、CeO2を主成分とし、Baを含んでなる。結晶構造的には、全体としてNaClの微結晶構造又は結晶構造の少なくともいずれかを保持した結晶性膜となっている。Baは、後述するように当該表面層8のバンドギャップを縮小させるために添加されており、これによってエージング時間の削減と電圧低減の降下が実現される。
また、表面層8はCeO2を主成分とし、Baを含むホタル石構造の材料で構成されるものとしても良い。
本発明では、表面層8において、CeO2に対してBa元素を添加することにより、良好な二次電子放出特性及び電荷保持特性が発揮される。その結果、PDP1で動作電圧(主として放電開始電圧と放電維持電圧)の低減が図られ、安定した低電力駆動が可能となっている。
なお、Ba濃度が低濃度であると、表面層8の二次電子放出特性及び電荷保持特性が不十分となるうえ、エージングに長時間有してしまい好ましくない。
また、Ba濃度が高濃度であると、CeO2のもつ表面安定性が悪化し、充分な二次電子放出特性が発揮できず、さらに表面汚染物を除去するためのエージング時間も長時間となる。
従って、良好な低電力駆動と可視光透過率を両立させるためには、上記した適正なBa添加濃度が重要である。
表面層8の構造については、線源をCuKα線とする薄膜X線解析測定において、Ba添加濃度が高いときにはBaOと同等の位置関係にピークが確認でき、相当量のCeが存在するにもかかわらず、少なくともBaOと同様のNaCl構造を有していることが分かる。一方、Ba添加濃度が低いときには、純粋なCeO2と同等の位置にピークが確認できることから、少なくともCeO2と同様のホタル石構造を保持していることが確認できる。Baのイオン半径は、Ceのイオン半径とは相当に異なるため、表面層8中のBa濃度が高い(Ba添加量が多すぎる)と、CeO2ベースのホタル石構造が崩れてしまう。これに対してBa濃度を適切に調節することにより、表面層8の結晶構造(ホタル石構造)を保持することができる。
バックパネル9の基板となるバックパネルガラス10には、その一方の主面に、Ag厚膜(厚み2μm〜10μm)、Al薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等のいずれかからなるデータ電極11が、幅100μmで、x方向を長手方向としてy方向に一定間隔毎(360μm)でストライプ状に並設される。そして、各々のデータ電極11を内包するように、バックパネルガラス9の全面にわたって、厚さ30μmの誘電体層12が配設されている。
誘電体層12の上には、さらに隣接するデータ電極11の間隙に合わせて井桁状の隔壁13(高さ約110μm、幅40μm)が配設され、放電セルが区画されることで誤放電や光学的クロストークの発生を防ぐ役割をしている。
隣接する2つの隔壁13の側面とその間の誘電体層12の面上には、カラー表示のための赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各々に対応する蛍光体層14が形成されている。なお、誘電体層12は必須ではなく、データ電極11を直接蛍光体層14で内包するようにしてもよい。
フロントパネル2とバックパネル9は、データ電極11と表示電極対6の互いの長手方向が直交するように対向配置され、両パネル2、9の外周縁部がガラスフリットで封着されている。この両パネル2、9間にはHe、Xe、Ne等を含む不活性ガス成分からなる放電ガスが所定圧力で封入される。
隔壁13の間は放電空間15であり、隣り合う一対の表示電極対6と1本のデータ電極11が放電空間15を挟んで交叉する領域が、画像表示にかかる放電セル(「サブピクセル」とも言う)に対応する。放電セルピッチはx方向が675μm、y方向が300μmである。隣り合うRGBの各色に対応する3つの放電セルで1画素(675μm×900μm)が構成される。
走査電極5、維持電極4及びデータ電極11の各々には、図2に示すようにパネル外部において、駆動回路として走査電極ドライバ111、維持電極ドライバ112、データ電極ドライバ113が接続される。
(PDPの駆動例)
上記構成のPDP1は、駆動時には各ドライバ111〜113を含む公知の駆動回路(不図示)によって、各表示電極対6の間隙に数十kHz〜数百kHzのAC電圧が印加される。これにより任意の放電セル内で放電が発生し、主として励起Xe原子による波長147nm主体の共鳴線と励起Xe分子による波長172nm主体の分子線を含む紫外線(図1の点線及び矢印)が蛍光体層14に照射される。蛍光体層14は励起されて可視光発光する。そして当該可視光はフロントパネル2を透過して前面に発光される。
この駆動方法の一例としては、フィールド内時分割階調表示方式が採られる。当該方式は、表示するフィールドを複数のサブフィールド(S.F.)に分け、各サブフィールドをさらに複数の期間に分ける。1サブフィールドは更に、(1)全放電セルを初期化状態にする初期化期間、(2)各放電セルをアドレスし、各放電セルへ入力データに対応した表示状態を選択・入力していく書込期間、(3)表示状態にある放電セルを表示発光させる維持期間、(4)維持放電により形成された壁電荷を消去する消去期間という4つの期間に分割されてなる。
各サブフィールドでは、初期化期間で画面全体の壁電荷を初期化パルスでリセットした後、書込期間で点灯すべき放電セルのみに壁電荷を蓄積させる書込放電を行い、その後の放電維持期間ですべての放電セルに対して一斉に交流電圧(維持電圧)を印加することによって一定時間放電維持することで発光表示する。
ここで図3は、フィールド中の第m番目のサブフィールドにおける駆動波形例である。図3が示すように、各サブフィールドには、初期化期間、書込期間、放電維持期間、消去期間がそれぞれ割り当てられる。
初期化期間とは、それ以前の放電セルの点灯による影響(蓄積された壁電荷による影響)を防ぐため、画面全体の壁電荷の消去(初期化放電)を行う期間である。図3に示す駆動波形例では、走査電極5にデータ電極11および維持電極4に比べて高い電圧(初期化パルス)を印加し放電セル内の気体を放電させる。それによって発生した電荷はデータ電極11、走査電極5および維持電極4間の電位差を打ち消すように放電セルの壁面に蓄積されるので、走査電極5付近の表面層8の表面には負の電荷が壁電荷として蓄積される。またデータ電極11付近の蛍光体層14表面および維持電極4付近の表面層8の表面には正の電荷が壁電荷として蓄積される。この壁電荷により、走査電極5―データ電極11間、走査電極5―維持電極4間に所定の値の壁電位が生じる。
書込期間は、サブフィールドに分割された画像信号に基づいて選択された放電セルのアドレッシング(点灯/不点灯の設定)を行う期間である。当該期間では、放電セルを点灯させる場合には走査電極5にデータ電極11および維持電極4に比べ低い電圧(走査パルス)を印加させる。すなわち、走査電極5―データ電極11には前記壁電位と同方向にデータパルスを印加させると共に走査電極5―維持電極4間に壁電位と同方向に電圧を印加させ、書込放電を生じさせる。これにより蛍光体層14表面、維持電極4付近の表面層8の表面には負の電荷が蓄積され、走査電極5付近の表面層8の表面には正の電荷が壁電荷として蓄積される。以上で維持電極4―走査電極5間には所定の値の壁電位が生じる。
放電維持期間は、階調に応じた輝度を確保するために、書込放電により設定された点灯状態を拡大して放電維持する期間である。ここでは、上記壁電荷が存在する放電セルで、一対の走査電極5および維持電極4の各々に維持放電のための電圧パルス(例えば約200Vの矩形波電圧)を互いに異なる位相で印加する。これにより表示状態が書き込まれた放電セルに対し電圧極性の変化毎にパルス放電を発生せしめる。
この維持放電により、放電空間15における励起Xe原子からは147nmの共鳴線が放射され、励起Xe分子からは173nm主体の分子線が放射される。この共鳴線・分子線が蛍光体層14表面に照射され、可視光発光による表示発光がなされる。そして、RGB各色ごとのサブフィールド単位の組み合わせにより、多色・多階調表示がなされる。なお、表面層8に壁電荷が書き込まれていない非放電セルでは、維持放電が発生せず表示状態は黒表示となる。
消去期間では、走査電極5に漸減型の消去パルスを印加し、これによって壁電荷を消去させる。
(放電電圧の減少について)
表面層8は、主成分であるCeO2にBaを含んで構成され、BaOに起因したNaCl構造を有している。そして表面層8のエネルギーバンドにおける電子状態は、ほぼBaOと同様になっている。
ここで、BaOに固有の電子準位として存在するエネルギー準位は、MgOと比較すると、真空準位からの深さが比較的浅い領域に存在する。
従って、PDP1を駆動する場合において、BaOに固有の電子準位であるエネルギー準位に存在する電子が、Xeイオンの基底状態に遷移する際、当該エネルギー準位に存在する別の電子がオージェ効果を受けて獲得するエネルギー量は、MgOの場合と比較して大きい。この前記別の電子が受けるエネルギー量は、当該電子が真空準位を超えて二次電子として放出されるためには十分な量である。この結果、表面層8では、その材料がMgOの場合と比較して、良好な二次電子放出特性が発揮される。
具体的には、本実施の形態1の表面層に固有の電子準位として存在するエネルギー準位は、真空準位からの深さが6.05eV以下の領域に存在する。一方、MgOに固有の電子準位として存在するエネルギー準位は、真空準位からの深さが6.05eV超の領域に存在する。

以下、放電空間15内の放電ガスと、表面層8との間のエネルギーのやり取りに伴う電子の状態遷移経路を説明する。この説明を用いて、表面層8の上記の領域に固有の電子準位が存在する根拠について詳述する。
PDP1の駆動時において、放電ガスに起因するイオン(Xeイオン等)が放電空間15内で発生し、当該イオンが表面層8に対して相互作用可能な位置まで接近すると、表面層8を構成材料に固有の電子準位に存在する電子が、前記イオンの基底状態に遷移する。これにより、表面層8中の別の電子は、オージェ効果によって一定のエネルギーを獲得する。この獲得エネルギーは、「真空準位から前記イオンの基底状態の準位までの深さに相当するエネルギー」から、「真空準位から、表面層8の構成材料に固有の電子準位までの深さに相当するエネルギー」を差し引いた分のエネルギーを獲得する。このプロセスを経ることにより、前記差し引かれた分のエネルギーを獲得した前記別の電子は、真空準位までのエネルギーギャップを飛び越え、二次電子として放電空間15に放出される。
ここで図4に示すように、Xeイオンは、バンド構造において、真空準位から12.1eVの深さに基底状態のエネルギー準位を有する。従って、表面層8の構成に材料に固有の電子準位が、上記12.1eVの半分である6.05eVより浅い領域に存在する場合(図4中の(a))、表面層8中に存在する前記別の電子は、「Xe原子のイオン化状態の準位の深さに相当するエネルギー(12.1eV)」から、「表面層8を構成する材料に固有の電子準位の深さに相当するエネルギー」を引いた分のエネルギー(6.05eV超)を得る。これにより当該電子は、真空準位までのエネルギーギャップを飛び越え、二次電子として放出される。
なお、逆に表面層8を構成する材料に固有の電子準位が、上記12.1eVの半分である6.05eVより深い準位に存在する場合(図4中の(b))、前記別の電子が基底状態の準位の深さ(12.1eV)から表面層8を構成する材料に固有の電子準位の深さを引いた分のエネルギー(6.05eV未満)を得たとしても、真空準位までのエネルギーギャップを飛び越えることができない。このため、当該電子は二次電子として放出されることはない。
なお、一般的に、各材料固有のバンドギャップと電子親和力の和は、MgOは約8.8eV、CaOは約8.0eV、SrOは約6.9eV、BaOは約5.2eVとされている。
次に、CeO2を主成分とし、これにBaを含み、全体としてホタル石構造を有する表面層8を備えるPDP1において、放電電圧が減少されるメカニズムについて考察する。
図5は、CeO2からなる表面層8の電子準位を示す模式図である。
本発明では、放電電圧の上昇を抑える一つの解決策として、図5に示すように、CeO2の真空準位から比較的浅い禁制帯中の位置において、オージェ効果の作用を良好に受けられる電子準位を配設している。この電子準位は、表面層8に対し、ホタル石構造を保つことができる程度のBaを導入することで形成される。本発明では、このような電子準位を創設することにより、二次電子放出のためにオージェ中性化の過程で取得する励起に使用できるエネルギーを見かけ上、増加させることができる。したがって、本発明では二次電子放出確率を上昇でき、結果として、豊富な二次電子を放電空間15で利用できる。このため、PDP1では動作電圧が低減されるとともに良好な規模の放電が形成されるので、優れた画像表示性能を有するPDPを低電力で駆動できるようになっている。
<実施の形態2>
本発明の実施の形態2について、実施の形態1との差異を中心に説明する。図6は、実施の形態2に係るPDP1aの構成を示す断面図である。
PDP1aは、基本構造はPDP1と同様であるが、表面層8をベース層8とし、その表面に、初期電子放出特性が高いMgO微粒子16を分散配置することで表面層8aを構成した点に特徴を有する。MgO微粒子16の分散密度としては、一例として、Z方向から放電セル20中の表面層8aを平面視したときに、ベース層8が直に見えないように設定することができるが、このような分散密度に限定されない。例えば、ベース表8の表面に部分的に設けても良い。この場合、さらに例示すれば、表示電極対6に対応する位置にのみ、部分的にMgO微粒子16を設けることもできる。
なお、図6では構成を理解させる都合上、ベース層8上に配設されているMgO微粒子16を実際よりも大きく、模式的に表している。MgO微粒子16は、気相法或いは前駆体焼成法のいずれで作製してもよい。しかしながら、後述する前駆体焼成法で作製すれば、特に性能の良いMgO微粒子16が得られることが本願発明者らの検討により分かっている。
このような構成を有するPDP1aによれば、表面層において、互いに機能分離されたベース層8及びMgO微粒子16の各特性が相乗的に発揮される。
すなわち、その駆動時にはPDP1と同様に、CeO2にBaを添加したベース層8によって二次電子放出特性が向上される。その結果、PDP1aの動作電圧の低減が図られ、低電力駆動が実現される。また、ベース層8が良好な電荷保持特性を有していることから、PDP1aが継続して駆動される場合でも、前記した二次電子放出特性が経時的に安定して発揮される。
一方、PDP1aでは、さらにMgO微粒子16の配設によって初期電子放出特性が向上されている。これにより放電応答性が飛躍的に改善され、放電遅れ及び放電遅れの温度依存性に係る問題を低減する効果が期待できる。この効果は特に、本発明を高精細型のPDPに適用し、幅の短いパルスにより高速駆動する場合において、優れた画像表示性能を奏するものとなる。
なお、PDP1aでは、ベース層8の表面がMgO微粒子16により保護されているので、放電空間15側から不純物がベース層8表面に直接付着する問題が低減される。これにより、さらなるPDPのライフ特性の向上が期待できる。
(MgO微粒子16について)
PDP1aに設けたMgO微粒子16は、本願発明者が行った実験により、主として書込放電における「放電遅れ」を抑制する効果と、「放電遅れ」の温度依存性を改善する効果があることが確認されている。そこで本実施の形態2のPDP1aでは、MgO微粒子16がベース層8に比べて高度な初期電子放出特性に優れる性質を利用して、放電空間15に臨むようにMgO微粒子16を駆動時の初期電子放出部として配設したものである。
「放電遅れ」の発生は、放電開始時において、トリガーとなる初期電子がベース層8の表面から放電空間15中に放出される量が不足することが主原因であると考えられる。そこで、放電空間15に対する初期電子放出性に有効に寄与するため、ベース層8よりも初期電子放出量が極めて大きいMgO微粒子16をベース層8の表面に分散配置した。これによって、アドレス期間で必要な初期電子が、MgO微粒子16から大量に放出されるようになり、放電遅れの解消が図られる。このような初期電子放出特性を得ることで、PDP1aは高精細の場合等においても放電応答性の良い高速駆動ができるようになっている。
さらに、ベース層8の表面にこのようなMgO微粒子16を配設する構成として、主として書込放電における「放電遅れ」を抑制する効果に加え、「放電遅れ」の温度依存性を改善する効果も得られることも分かっている。
以上のようにPDP1aでは、低電力駆動化と二次電子放出特性、電荷保持特性等の各効果を奏するベース層8と、放電遅れ及びその温度依存性の抑制効果を奏するMgO微粒子16とを組み合わせて表面層を構成する。これにより、PDP1全体として、高精細な放電セルを有する場合でも高速駆動を低電圧で駆動でき、且つ、不灯セルの発生を抑制した高品位な画像表示性能が期待できる。
さらに、MgO微粒子16は、ベース層8の表面に積層して設けられることにより、当該ベース層8に対する一定の保護効果も有する。すなわち、ベース層8は高い二次電子放出係数を有し、PDPの低電力駆動を可能にする反面、水や二酸化炭素、炭化水素などの不純物の吸着性が比較的高い性質がある。不純物の吸着が起きると、二次電子放出特性等、放電の初期特性が損なわれる。そこで、このようなベース層8をMgO微粒子16で被覆すれば、その被覆領域において、放電空間15からベース層8の表面に不純物が付着するのを防止できる。これによりPDP1aのライフ特性についても向上が期待できる。
<PDPの製造方法>
次に、上記各実施の形態におけるPDP1及び1aの製造方法について例示する。PDP1と1aとの違いは、表面層8と8aの構成のみであり、その他の製造工程については共通する。
(バックパネルの作製)
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなるバックパネルガラス10の表面上に、スクリーン印刷法によりAgを主成分とする導電体材料を一定間隔でストライプ状に塗布し、厚さ数μm(例えば約5μm)のデータ電極11を形成する。データ電極11の電極材料としては、Ag、Al、Ni、Pt、Cr、Cu、Pd等の金属や、各種金属の炭化物や窒化物等の導電性セラミックスなどの材料やこれらの組み合わせ、あるいはそれらを積層して形成される積層電極も必要に応じて使用できる。
ここで、作製予定のPDP1を40インチクラスのNTSC規格もしくはVGA規格とするためには、隣り合う2つのデータ電極11の間隔を0.4mm程度以下に設定する。
続いて、データ電極11を形成したバックパネルガラス10の面全体にわたって鉛系あるいは非鉛系の低融点ガラスやSiO2材料からなるガラスペーストを厚さ約20〜30μmで塗布して焼成し、誘電体層を形成する。
次に、誘電体層12面上に所定のパターンで隔壁13を形成する。低融点ガラス材料ペーストを塗布し、サンドブラスト法やフォトリソグラフィ法を用い、隣接放電セル(図示省略)との境界周囲を仕切るように、放電セルの複数個の配列を行および列を仕切る井桁形状のパターン(図10を参照)で形成する。
隔壁13が形成できたら、隔壁13の壁面と、隔壁13間で露出している誘電体層12の表面に、AC型PDPで通常使用される赤色(R)蛍光体、緑色(G)蛍光体、青色(B)蛍光体のいずれかを含む蛍光インクを塗布する。これを乾燥・焼成し、それぞれ蛍光体層14とする。
適用可能なRGB各色蛍光の化学組成例は以下の通りである。
赤色蛍光体;(Y、Gd)BO3:Eu
緑色蛍光体;Zn2SiO4:Mn
青色蛍光体;BaMgAl1017:Eu
各蛍光体材料の形態は、平均粒径2.0μmの粉末が好適である。これをサーバー内に50質量%の割合で入れ、エチルセルローズ1.0質量%、溶剤(α−ターピネオール)49質量%を投入し、サンドミルで撹拌混合して、15×10-3Pa・sの蛍光体インクを作製する。そして、これをポンプにて径60μmのノズルから隔壁13間に噴射させて塗布する。このとき、パネルを隔壁20の長手方向に移動させ、ストライプ状に蛍光体インクを塗布する。その後は500℃で10分間焼成し、蛍光体層14を形成する。
以上でバックパネル9が完成される。
なお上記方法例ではフロントパネルガラス3およびバックパネルガラス10をソーダライムガラスからなるものとしたが、これは材料の一例として挙げたものであって、これ以外の材料で構成してもよい。
(フロントパネル2の作製)
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなるフロントパネルガラス3の面上に、表示電極対6を作製する。ここでは印刷法によって表示電極対6を形成する例を示すが、これ以外にもダイコート法、ブレードコート法等で形成することができる。
まず、ITO、SnO2、ZnO等の透明電極材料を最終厚み約100nmで、ストライプ等の所定のパターンでフロントパネルガラス3上に塗布し、乾燥させる。これにより透明電極41、51が作製される。
一方、Ag粉末と有機ビヒクルに感光性樹脂(光分解性樹脂)を混合してなる感光性ペーストを調整し、これを前記透明電極41、51の上に重ねて塗布し、形成する表示電極のパターンを有するマスクで覆う。そして、当該マスク上から露光し、現像工程を経て、590〜600℃程度の焼成温度で焼成する。これにより透明電極41、51上に最終厚みが数μmのバスライン42、52が形成される。このフォトマスク法によれば、従来は100μmの線幅が限界とされていたスクリーン印刷法に比べ、30μm程度の線幅までバスライン42、52を細線化することが可能である。バスライン42、52の金属材料としては、Agの他にPt、Au、Al、Ni、Cr、また酸化錫、酸化インジウム等を用いることができる。バスライン42、52は上記方法以外にも、蒸着法、スパッタリング法などで電極材料を成膜したのち、エッチング処理して形成することも可能である。
次に、形成した表示電極対6の上から、軟化点が550℃〜600℃の鉛系あるいは非鉛系の低融点ガラスやSiO2材料粉末とブチルカルビトールアセテート等からなる有機バインダーを混合したペーストを塗布する。そして550℃〜650℃程度で焼成し、最終厚みが膜厚数μm〜数十μmの誘電体層7を形成する。
(表面層の形成)
実施の形態1又は2のPDP1又はPDP1aの表面層を、それぞれ以下のいずれかのステップで形成する。
まず、表面層(ベース層)8を電子ビーム蒸着法で形成する場合について説明する。
蒸着源用ペレットを準備する。当該ペレットの作製方法としては、まずCeO2粉末とアルカリ土類金属元素の炭酸化物であるBaCO3粉末とを混合し、この混合粉末を金型に入れて加圧成型する。その後、これをアルミナルツボに入れ、大気中で1400℃程度の温度で以て約30分間、焼成すれば、焼結体としてペレットが得られる。
この焼結体ないしはペレットを電子ビーム蒸着装置の蒸着ルツボに入れ、これを蒸着源として誘電体層7の表面に蒸着させることで、CeO2とBaを含む表面層8を成膜する。ストロンチウム濃度の調整は、アルミナルツボに入れる混合粉末を得る段階で、CeO2と炭酸ストロンチウムの混合比率を調節することにより行う。これにより、PDP1の表面層が完成する。
なお、表面層(ベース層)8の成膜方法は、電子ビーム蒸着法だけでなく、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの公知の方法も同様に適用できる。
次に、PDP1aを製造する場合には、MgO微粒子16を作製する。MgO微粒子は、以下に示す気相合成法または前駆体焼成法のいずれかで製造することができる。
[気相合成法]
マグネシウム金属材料(純度99.9%)を、不活性ガスが満たされた雰囲気下で加熱する。この加熱状態を維持しつつ、不活性ガス雰囲気に酸素を少量導入し、マグネシウムを直接酸化させることにより、MgO微粒子16を作製する。
[前駆体焼成法]
次に例示するMgO前駆体を高温(例えば700℃以上)で均一に焼成し、これを徐冷してMgO微粒子16を得る。MgO前駆体としては、例えばマグネシウムアルコキシド(Mg(OR)2)、マグネシウムアセチルアセトン(Mg(acac)2)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、MgCO3、塩化マグネシウム(MgCl2)、硫酸マグネシウム(MgSO4)、硝酸マグネシウム(Mg(NO32)、シュウ酸マグネシウム(MgC24)、の内のいずれか一種以上(2種以上を混合して用いてもよい)を選ぶことができる。なお選択した化合物によっては、通常、水和物の形態を取ることもあるが、このような水和物を用いてもよい。
MgO前駆体となるマグネシウム化合物は、焼成後に得られるMgOの純度が99.95%以上、最適値として99.98%以上になるように調整する。これはマグネシウム化合物に、各種アルカリ金属、B、Si、Fe、Al等の不純物元素が一定量以上混じっていると、熱処理時に不要な粒子間癒着や焼結を生じ、高結晶性のMgO微粒子16を得にくいためである。このため、不純物元素を除去する等により、予め前駆体を調整する。
上記何れかの方法で得られたMgO微粒子16を、溶媒に分散させる。そして当該分散液をスプレー法やスクリーン印刷法、静電塗布法に基づき、上記作製したベース層8の表面に分散散布させる。その後は乾燥・焼成工程を経て溶媒除去を図り、微粒子16をベース層8の表面に定着させる。
以上の工程でPDP1aの表面層8aが形成される。
(PDPの完成)
作製したフロントパネル2とバックパネル9を、封着用ガラスを用いて貼り合わせる。その後、放電空間15の内部を高真空(1.0×10-4Pa)程度に排気し、これに所定の圧力(ここでは66.5kPa〜101kPa)でNe−Xe系やHe−Ne−Xe系、Ne−Xe−Ar系等の放電ガスを封入する。
以上の各工程を経ることにより、PDP1又は1aが完成する。
(性能確認実験)
続いて、本発明の性能を確認するべく、基本構成が同一で、表面層のみが異なる以下のサンプル1〜8のPDPを用意した。
CeO2を主体とする表面層(ベース層)中に含まれるBa量を表す方法として、Ba/(Ba+Ce)*100で表される原子数の割合(以下「XBa」と表記)を用いた。この原子数の割合は、CeとBaの合計の原子数に対するBaの原子数の割合を示す。
なお、このXBaの単位は、数値はそのままで(%)または(mol%)のいずれでも表記することができるが、便宜上、以下は(mol%)で表す。
サンプル1(比較例1)は最も基本的なPDPの従来構成とするため、EB蒸着にて成膜したMgOからなる表面層(Ce、Baは含まない)を有するものとした。
サンプル2、7(比較例2〜4)は、CeO2にBaを添加した表面層で、それぞれ同順にXBaが0mol%、9.3mol%、100mol%である表面層を有するものとした。
サンプル4〜6(実施例1〜3)は実施の形態1のPDP1の構成に相当する。すなわち、CeO2にBaを添加した表面層で、それぞれ同順にXBaが16.4mol%、23.8mol%、31.2mol%である表面層を有するものとした。
サンプル8(実施例4)は実施の形態2のPDP1aの構成に相当する。すなわち、CeO2にBaを添加し、XBaが31.2mol%であるベース層と、その上に前駆体焼成法で作製されたMgO微粒子が分散配置された表面層を有するものとした。
各サンプル1〜8の表面層の構成と、これらを用いて得られた実験データを表1にまとめて示す。
Figure 2010095343
[実験1]膜物性評価
(結晶構造解析)
上記した各サンプルの結晶構造を調べるために、θ/2θX線回折測定を行った。その測定結果を図7に、解析結果を表1に示した。図7ではXBaがそれぞれ0mol%、9.3mol%、16.4mol%、23.8mol%、31.2mol%(サンプル2、3、4、5、6)のサンプルのプロファイルを示した。
Baが0mol%、9.3mol%、16.4mol%、23.8mol%のサンプル(サンプル2〜5)においてはホタル石構造であるCeO2のみ存在することが確認された。
一方、XBaが31.2mol%程度と含有されているBaの量が多い領域(サンプル6)では、BaOの単相になっていることが分かった。
Ceを含まないBaOからなる膜では、大気に暴露されるとすぐに水酸化・炭酸化が進む。X線回折測定を行うと、このような水酸化・炭酸化を示す相が同定され、BaOの相は検出されなくなる。しかしながら、上記のようにBaとCeの比を適切に調節して酸化物を生成すれば、安定性の高いBaOを主体とする層を生成することができる。
(表面安定性の評価)
一般に、表面層中に含まれる炭酸化物が多いと、表面層本来の二次電子放出特性が得られず、結果として動作電圧が上がってしまう。これを回避するためには出荷前のPDPを一定時間放電させ、表面層の汚染物を除去するエージング工程が必要となる。エージング工程はPDPの生産性を考慮すると、短時間で終了することが望まれるため、予めエージング工程前に表面層中の炭酸化物量を可能な限り抑えておくことが好ましい。
そこで、MgOからなる保護膜に不純物の炭酸化物を含有させた場合の各サンプルについて、保護膜表面の安定性を調べた。その方法として、保護膜表面に含まれる炭酸化量をX線光電子分光法(XPS)に基づいて測定した。各サンプルの保護膜は、成膜後一定期間、大気中に曝露処理し、測定用のプレートに配置させ、XPS測定チャンバーに投入した。大気中に曝している間は常に膜表面の炭酸化反応が進行していると予想されるので、サンプル間の処理条件を揃えるため、上記セッティングに要する大気曝露時間を5分に設定した。
XPS測定装置には、ULVAC−PHI社製の「QUANTERA」を使用した。X線源はAl−Kαを用い、モノクロメーターを使用した。中和銃およびイオン銃により絶縁体である実験用試料の中和を行った。測定はMg2p、Ce3d、C1s、O1sに対応するエネルギー領域を30サイクル積算して測定し、得られたスペクトルのピーク面積と感度係数から膜表面における各元素の組成比を求めた。C1sスペクトルピークを290eV付近で検出されるスペクトルピークと285eV付近で検出されるC、CHのスペクトルピークに波形分離してそれぞれの割合を求め、Cの組成比とその中におけるCOの割合の積から膜表面におけるCO量を求めた。このXPSにより求められた膜中のCO量によって、膜表面の安定性、すなわち炭酸化の程度を比較した。
上記の条件を基にXPS測定し、表面に占める炭酸化物の割合をプロットしたグラフを図8に示す。
図8に示す各測定位置から、Baの添加量に比例して、膜中に含まれる炭酸化物の割合が多くなっていることが分かる。この結果から、炭酸化物による膜の表面汚染を抑制するためには、膜中のBaの量をできるだけ少なくすることが望ましいと言える。
また、表1に示す結果では、実施例1、2のサンプルにおいて、特に炭酸化物の割合が比較的小さく優れる結果が得られている。この結果を考慮すると、少なくともXBaを16mol%以上24mol%以下の範囲に設定して表面層を構成すれば、良好な炭酸化物の低減効果が期待できると思われる。
[実験2] 放電特性評価
(放電電圧)
上記した各サンプルの作動電圧の特性を調べるために、各々のサンプルと、放電ガスとしてXe分圧が15%のXe−Ne混合ガスを用いたPDPを作製し、放電維持電圧の測定を行った。
図9は上記条件で測定を行った膜中のXBaに対する放電開始電圧の挙動をプロットしたものである。
図9及び表1に示すように、XBaを16mol%以上31mol%以下(ほぼ実施例1〜3に相当する範囲)に設定すると、もともと175V程度であった放電維持電圧が140V以下まで下がり、低電力駆動化が促進されることが分かる。さらにはXBaが26mol%以上29mol%以下(実施例2及び3の近辺)のときは130V程度にまで電圧が減少しており、特に低電力駆動化の効果が高いことが分かる。
このような結果が得られた理由として、Baを添加することで、表面層(ベース層)の価電子帯の位置が押し上げられ、その結果、二次電子放出特性が向上したためと考えられる。
しかしながら、XBaが31mol%を大きく超えると、逆に電圧上昇が確認できる(比較例4)。これは、層の状態がBaOが主体となってしまい、パネル作製プロセスで表面層が汚染されてしまうためである。
これらの結果を総合すると、表面層に含有させるBa量が多すぎても望ましくなく、適度な濃度範囲があることが分かる。
(放電遅れの測定)
次に、上記と同様の放電ガスを用い、且つ、保護膜上にMgO微粒子を配設した表面層を持つサンプルについて、書き込み放電における放電遅れの程度を評価した。その評価方法として、各サンプル1〜8のPDPにおける任意の1セルに対し、図3に示す駆動波形例の初期化パルスに相当するパルスを印加し、その後、データパルス及び走査パルスを印加したときに生じる統計遅れを測定した。
その結果、MgO微粒子を配設させたサンプル8(実施例4)においては、サンプル2〜7に比べて放電遅れが効果的に減少していることが分かった。
また、PDPにおける放電遅れ防止の効果は、MgO微粒子を配設することでさらに高まるが、その効果は気相法で作製したMgO微粒子よりも前駆体焼成法で作製したMgO微粒子を使用した方が大きい。したがって、前駆体焼成法は本発明に好適なMgO微粒子の作製方法であると言える。
以上のサンプル8(実施例4)の実験データが示すように、所定のBa濃度を有する表面層の表面にMgO微粒子を分散して表面層を構成すれば、低電力駆動を実現し、且つ、放電遅れも小さいPDPが得られることが分かった。
本発明のPDPは、例えば高精細な動画を低電圧駆動により画像表示するガス放電パネルに適用することができる。その他、交通機関及び公共施設における情報表示装置、或いは家庭や職場等におけるテレビジョン装置又はコンピューターディスプレイ等への利用が可能である。
1、1x PDP
2 フロントパネル
3 フロントパネルガラス
4 維持電極
5 走査電極
6 表示電極対
7、12 誘電体層
8、8a 表面層(高γ膜)
9 バックパネル
10 バックパネルガラス
11 データ(アドレス)電極
13 隔壁
14、14R、14G、14B 蛍光体層
15 放電空間
16 MgO微粒子
本発明は、気体放電による放射を利用したプラズマディスプレイパネルに関する。特に、放電空間に臨む表面層(保護膜)の特性の改良技術に関する。
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと称する)は、気体放電からの放射を利用した平面表示装置である。高速の表示や大型化が容易であり、映像表示装置や広報表示装置などの分野で広く実用化されている。PDPには直流型(DC型)と交流型(AC型)があるが、面放電型AC型PDPが寿命特性や大型化の面で特に高い技術的ポテンシャルを持ち、商品化されている。
図6は、一般的なAC型PDPにおける放電単位である放電セル構造の模式的組図である。当図6に示すPDP1xはフロントパネル2及びバックパネル9を貼り合わせてなる。第一基板であるフロントパネル2は、フロントパネルガラス3の片面に、走査電極5及び維持電極4を一対とする表示電極対6が複数対にわたり配設され、当該表示電極対6を覆うように、誘電体層7および表面層8が順次積層されてなる。走査電極5、維持電極4は、それぞれ透明電極51、41及びバスライン52、42を積層して構成される。
誘電体層7は、ガラス軟化点が550℃〜600℃程度の範囲の低融点ガラスから形成され、AC型PDP特有の電流制限機能を有する。
表面層8は、上記誘電体層7及び表示電極対6をプラズマ放電のイオン衝突より保護すると共に、放電空間15に二次電子を効率よく放出し、PDPの放電開始電圧を低下させる役目をなす。通常、当該表面層8は二次電子放出特性、耐スパッタ性、可視光透過率に優れる酸化マグネシウム(MgO)を用いて、真空蒸着法や印刷法で成膜される。なお表面層8と同様の構成は、専ら二次電子放出特性の確保を目的とした保護層(保護膜とも称する。)として設けられることもある。
他方、第二基板であるバックパネル9は、バックパネルガラス10上に画像データを書き込むための複数のデータ(アドレス)電極11が前記フロントパネル2の表示電極対6と直交方向で交差するように併設される。バックパネルガラス10には、データ電極11を覆うように低融点ガラスからなる誘電体層12が配設される。誘電体層12において隣接する放電セル(図示省略)との境界上には、低融点ガラスからなる所定の高さの隔壁(リブ)13が放電空間15を区画するように、ストライプ状の複数のパターン部1231、1232をそれぞれ井桁状に組み合わせて形成される。誘電体層12の表面と隔壁13の側面には、R、G、B各色の蛍光体インクが塗布及び焼成されてなる蛍光体層14(蛍光体層14R、14G、14B)が形成されている。
フロントパネル2とバックパネル9は、表示電極対6とデータ電極11の各長手方向が放電空間15をおいて互いに直交するように配置され、両パネル2、9の周囲において内部封止される。封止された放電空間15には、放電ガスとしてXe−Ne系あるいはXe−He系等の希ガスが約数十kPaの圧力で封入される。以上でPDP1xが構成される。
PDPで画像表示するためには、1フィールドの映像を複数のサブフィールド(S.F.)に分割する階調表現方式(例えばフィールド内時分割表示方式)等が用いられる。
ところで、近年の電化製品には低電力駆動化が望まれており、PDPについても同様の要求がある。高精細な画像表示を行うPDPにおいては、放電セルが微細化されて放電セル数も増大する。従って、確実に書込放電を行うには、狭い放電空間内で確実に放電を生じさせるため、動作電圧を高めなければならない。PDPの動作電圧は、表面層の二次電子放出係数(γ)に依存する。γは、材料と放電ガスにより決まる値で、材料の仕事関数が小さいほどγが高くなることが知られている。動作電圧の上昇は、PDPを低電力で駆動する上で障害となる。
そこで特許文献1には、MgOに酸化セリウム(CeO2)を0.1mol%〜20mol%の範囲で添加させたアモルファス構造により表面層を構成する技術が開示されている。具体的には添加剤であるCeO2によりアモルファス状のMgOで表面層を構成し、その表面が不純物ガスと反応して変質(炭酸化)するのを防止して、動作電圧の上昇抑制を図っている。
また、特許文献2でも、MgOにCeO2を0.1mol%〜20mol%の範囲で添加させたアモルファス構造の表面層を構成する技術が開示されている。この構成により、PDPの放電開始電圧ないし放電維持電圧の低減を図っている。
さらに特許文献3では、MgOに対してCeO2を重量比0.011〜0.5の範囲で添加してなる表面層が開示され、これにより動作電圧の低減を図っている。
そして、特許文献4では、SrOを主成分とし、CeO2が混合された表面層が開示されている。これによりPDPを低電圧で安定に放電させることを図っている。
特開2000−164143号公報 特開平11−339665号公報 特開2003−173738号公報 特開昭52−116067号公報
しかしながら、上記したいずれの従来技術においても、実際にPDPの低電力駆動化を十分に達成しているとは言い難い。
また、CeO2を含む表面層はエージング時間がMgOよりも長時間になり、生産効率上の課題を有している。
さらにPDPでは、「放電遅れ」の問題が存在する。PDP等のディスプレイ分野では、画像表示の高精細化に伴い、画像ソースの情報量の増加が進んでおり、表示面の走査電極(走査線)数が増加傾向にある。例えば、いわゆるフルスペックハイビジョンTVでは、通常のNTSC方式のTVと比べ、走査線の数が2倍以上に増加している。このような高精細型PDPで正確に映像表示するためには、映像ソースの情報量が増えた分、高速で駆動することが求められる。具体的には1フィールドのシーケンスを1/60[s]以内で高速駆動する必要がある。
これを達成するためには、例えばサブフィールド中の書込期間において、データ電極へ印加するパルスの幅を狭くする方法が挙げられる。
しかしながら、この方法を単に実施すると、「放電遅れ」の問題が大きくなる。「放電遅れ」とは、PDPの駆動時において、電圧パルスの立ち上がりから実際に放電セル内で放電発生するまでにタイムラグが発生する問題を指す。高速駆動の実現のためにパルスの幅を短くすれば、各パルスの幅内で放電終了できる確率が低くなるので、「放電遅れ」を生じ易くなる。その結果、しばしば画面に不灯セル(点灯不良)が生じ、画像表示性能が損なわれる。特に、特許文献1のようにアモルファス構造の表面層を備えるPDPでは、当該表面層から放電空間に放電遅れを抑制する初期電子が放出しにくいので、このような不灯セルによる画質劣化が比較的大きくなりうる。
このように現在のPDPでは、幾つかの解決すべき課題が残されている。
本発明は以上の各課題に鑑みてなされたものであって、第一の目的として、表面層を改良して二次電子放出特性と電荷保持特性を向上させることにより、良好な画像表示性能の発揮と低電力駆動を安定して実現可能なプラズマディスプレイパネルを提供する。
第二の目的として、上記各効果に加え、さらに駆動時の放電遅れの発生を防止することにより、高速駆動で高精細画像を表示する場合でも、高品位な画像表示性能を安定して発揮することが期待できるPDPを提供する。
上記目的を達成するために、本発明は、複数の表示電極対が配設された第一基板が、放電空間を介して第二基板と対向配置され、両基板の間に放電ガスが満たされて内部封止されたプラズマディスプレイパネルであって、第一基板の放電空間に臨む面には、CeO2を主成分とし、Baを16mol%以上31mol%以下の範囲で含有する表面層が配設されているものとした。
ここで、前記表面層は、さらにBaを16mol%以上24mol%以下の範囲で含有するものとすれば、表面層への炭酸化物の付着を防止する上で一層好ましい。
また、前記表面層は、Baを26mol%以上29mol%以下の範囲で含有するものとすれば、駆動電圧を低減する効果を得る上で一層好ましい。
また、前記表面層は、ホタル石構造を有する構成とすることもできる。
ここで、表面層の放電空間側には、さらにMgO微粒子を配設することもできる。すなわち、上記表面層をベース層とし、この上にMgO微粒子を放電空間に臨むように配設し、その全体として表面層を構成することが可能である。
このMgO微粒子は、気相酸化法で作製することができる。或いは、MgO前駆体を焼成して作製することもできる。
以上の構成を持つ本発明のPDPでは、CeO2を主体とし、Baを含む表面層において、高い二次電子放出特性が発揮されることを特徴としている。その理由としては、以下の2つが考えられる。
第一の理由として、表面層にBaを添加することにより、当該表面層の価電子帯の準位が真空準位から4〜6eV程度の位置に設けられることが挙げられる。これは現在、広く実用化されているMgOの表面層の価電子帯の電子準位(8eV程度)と比較すると、オージェ中性化の過程で取得する励起に必要なエネルギーが充分にあり、二次電子放出特性が非常に大きいことを示す。なお、一般にBaOは表面安定性が極めて悪く、数秒程度の大気暴露で水酸化、炭酸化が進行してしまう。このためBaOからなる表面層を形成する場合は、極めて清浄化された状況下でのPDP作製プロセスを余儀なくされる。これに対し、本発明の表面層は高い化学安定性を有するCeO2を主成分とするので、ある程度清浄化された状況下であれば、それほど成膜雰囲気を厳密にコントロールしなくても、高い二次電子放出特性を持つ表面層を形成することが可能である。
第二の理由として、表面層の禁制帯中にCeに起因する電子準位が形成されることが挙げられる。このPDPの駆動時には、前記Ceに起因する電子準位にトラップされた電子を利用して、いわゆるオージェ中性化の過程で取得する励起に使用可能なエネルギーを増大させることができる。この増大したエネルギーを利用することにより、表面層の二次電子放出特性が大幅に向上する。従って、比較的低い放電開始電圧でも良好な応答性で放電を開始でき、放電遅れを防止することで、優れた画像表示性能を低電力で駆動することが可能なPDPの実現が期待できる。
また、表面層において、Ceに起因する電子準位は、真空準位から或程度の深さ(すなわち、エネルギー的に浅すぎない深さ)に形成されており、当該電子準位にトラップされた電子は容易に放出されない。これにより、駆動時に表面層中の電荷が過度に消失するという、いわゆる「電荷抜け」の問題が低減される。このように、表面層において適切な電荷保持特性が発揮されることで、放電空間に二次電子を経時的に放出することができる。
このような二つの理由で、本発明のPDPにおいては、高い二次電子放出特性を有することとなる。
なお、このようにCeO2を主体とし、Baを含む層をベース層とし、その表面に、さらに気相酸化法や前駆体焼成法等で作製されたMgO微粒子からなる微粒子群を配設することで表面層を構成すれば、いっそう二次電子放出特性を向上させて放電遅れを抑制できるほか、放電開始時の初期電子放出特性が改善される。これにより、微小な放電空間を持つ高精細セルを有するPDPを高速駆動する場合であっても、放電空間内の豊富な電子を利用して放電を発生させ、良好な表示応答性が得られるほか、放電遅れ及び放電遅れの温度依存性の問題の改善も期待でき、結果として優れた画像表示性能が実現される。また、これにより、駆動温度が幅広い温度範囲にわたっても、安定してPDPを駆動することができる。
本発明の実施の形態1に係るPDPの構成を示す断面図である。 各電極とドライバとの関係を示す模式図である。 PDPの駆動波形例を示す図である。 CeO2の電子準位とオージェ過程における二次電子放出の様子を示す模式図である。 本実施の形態1のPDPの表面層及び従来のPDPの保護膜の各電子準位と、オージェ過程における二次次電子放出の様子を示す模式図である。 本発明の実施の形態2に係るPDPの構成を示す断面図である。 CeO2中のBa濃度を変化させたサンプルのX線回折結果を示すグラフである。 XPS測定により求めた表面に占める炭酸化物の割合のCeO2におけるBa濃度依存性を示すグラフである。 Xe15%における放電開始電圧のCeO2におけるBa濃度依存性を示すグラフである。 従来の一般的なPDPの構成を示す組図である。
以下に、本発明の実施の形態及び実施例を説明するが、当然ながら本発明はこれらの形式に限定されるものでなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。
<実施の形態1>
(PDPの構成例)
図1は、本発明の実施の形態1に係るPDP1のxz平面に沿った模式的な断面図である。当該PDP1は表面層8周辺の構成を除き、全体的には従来構成(図4)と同様である。
PDP1は、ここでは42インチクラスのNTSC仕様例のAC型としているが、本発明は当然ながらXGAやSXGA等、この他の仕様例に適用してもよい。HD(High Definition)以上の解像度を有する高精細なPDPとしては、例えば、次の規格を例示できる。パネルサイズが37、42、50インチの各サイズの場合、同順に1024×720(画素数)、1024×768(画素数)、1366×768(画素数)に設定できる。そのほか、当該HDパネルよりもさらに高解像度のパネルを含めることができる。HD以上の解像度を有するパネルとしては、1920×1080(画素数)を備えるフルHDパネルを含めることができる。
図1に示すように、PDP1の構成は互いに主面を対向させて配設された第1基板(フロントパネル2)および第二基板(バックパネル9)に大別される。
フロントパネル2の基板となるフロントパネルガラス3には、その一方の主面に所定の放電ギャップ(75μm)をおいて配設された一対の表示電極対6(走査電極5、維持電極4)が複数対にわたり形成されている。各表示電極対6は、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2)等の透明導電性材料からなる帯状の透明電極51、41(厚さ0.1μm、幅150μm)に対して、Ag厚膜(厚み2μm〜10μm)、Al薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等からなるバスライン52、42(厚さ7μm、幅95μm)が積層されてなる。このバスライン52、42によって透明電極51、41のシート抵抗が下げられる。
ここで、「厚膜」とは、導電性材料を含むペースト等を塗布した後に焼成して形成する各種厚膜法により形成される膜をいう。また、「薄膜」とは、スパッタリング法、イオンプレーティング法、電子線蒸着法等を含む、真空プロセスを用いた各種薄膜法により形成される膜をいう。
表示電極対6を配設したフロントパネルガラス3には、その主面全体にわたり、酸化鉛(PbO)または酸化ビスマス(Bi23)または酸化燐(PO4)を主成分とする低融点ガラス(厚み35μm)の誘電体層7が、スクリーン印刷法等によって形成されている。
誘電体層7は、AC型PDP特有の電流制限機能を有し、DC型PDPに比べて長寿命化を実現できる要素になっている。
誘電体層7の表面には、膜厚約1μmの表面層(保護層)8が形成される。この表面層8は、放電時のイオン衝撃から誘電体層7を保護し、放電開始電圧を低減させる目的で配され、耐スパッタ性及び二次電子放出係数γに優れる材料からなる。当該材料には、さらに良好な光学透明性、電気絶縁性が要求される。
表面層8は本発明の主たる特徴部分であって、CeO2を主成分とし、Baを含んでなる。結晶構造的には、全体としてNaClの微結晶構造又は結晶構造の少なくともいずれかを保持した結晶性膜となっている。Baは、後述するように当該表面層8のバンドギャップを縮小させるために添加されており、これによってエージング時間の削減と電圧低減の降下が実現される。
また、表面層8はCeO2を主成分とし、Baを含むホタル石構造の材料で構成されるものとしても良い。
本発明では、表面層8において、CeO2に対してBa元素を添加することにより、良好な二次電子放出特性及び電荷保持特性が発揮される。その結果、PDP1で動作電圧(主として放電開始電圧と放電維持電圧)の低減が図られ、安定した低電力駆動が可能となっている。
なお、Ba濃度が低濃度であると、表面層8の二次電子放出特性及び電荷保持特性が不十分となるうえ、エージングに長時間有してしまい好ましくない。
また、Ba濃度が高濃度であると、CeO2のもつ表面安定性が悪化し、充分な二次電子放出特性が発揮できず、さらに表面汚染物を除去するためのエージング時間も長時間となる。
従って、良好な低電力駆動と可視光透過率を両立させるためには、上記した適正なBa添加濃度が重要である。
表面層8の構造については、線源をCuKα線とする薄膜X線解析測定において、Ba添加濃度が高いときにはBaOと同等の位置関係にピークが確認でき、相当量のCeが存在するにもかかわらず、少なくともBaOと同様のNaCl構造を有していることが分かる。一方、Ba添加濃度が低いときには、純粋なCeO2と同等の位置にピークが確認できることから、少なくともCeO2と同様のホタル石構造を保持していることが確認できる。Baのイオン半径は、Ceのイオン半径とは相当に異なるため、表面層8中のBa濃度が高い(Ba添加量が多すぎる)と、CeO2ベースのホタル石構造が崩れてしまう。これに対してBa濃度を適切に調節することにより、表面層8の結晶構造(ホタル石構造)を保持することができる。
バックパネル9の基板となるバックパネルガラス10には、その一方の主面に、Ag厚膜(厚み2μm〜10μm)、Al薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等のいずれかからなるデータ電極11が、幅100μmで、x方向を長手方向としてy方向に一定間隔毎(360μm)でストライプ状に並設される。そして、各々のデータ電極11を内包するように、バックパネルガラス9の全面にわたって、厚さ30μmの誘電体層12が配設されている。
誘電体層12の上には、さらに隣接するデータ電極11の間隙に合わせて井桁状の隔壁13(高さ約110μm、幅40μm)が配設され、放電セルが区画されることで誤放電や光学的クロストークの発生を防ぐ役割をしている。
隣接する2つの隔壁13の側面とその間の誘電体層12の面上には、カラー表示のための赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各々に対応する蛍光体層14が形成されている。なお、誘電体層12は必須ではなく、データ電極11を直接蛍光体層14で内包するようにしてもよい。
フロントパネル2とバックパネル9は、データ電極11と表示電極対6の互いの長手方向が直交するように対向配置され、両パネル2、9の外周縁部がガラスフリットで封着されている。この両パネル2、9間にはHe、Xe、Ne等を含む不活性ガス成分からなる放電ガスが所定圧力で封入される。
隔壁13の間は放電空間15であり、隣り合う一対の表示電極対6と1本のデータ電極11が放電空間15を挟んで交叉する領域が、画像表示にかかる放電セル(「サブピクセル」とも言う)に対応する。放電セルピッチはx方向が675μm、y方向が300μmである。隣り合うRGBの各色に対応する3つの放電セルで1画素(675μm×900μm)が構成される。
走査電極5、維持電極4及びデータ電極11の各々には、図2に示すようにパネル外部において、駆動回路として走査電極ドライバ111、維持電極ドライバ112、データ電極ドライバ113が接続される。
(PDPの駆動例)
上記構成のPDP1は、駆動時には各ドライバ111〜113を含む公知の駆動回路(不図示)によって、各表示電極対6の間隙に数十kHz〜数百kHzのAC電圧が印加される。これにより任意の放電セル内で放電が発生し、主として励起Xe原子による波長147nm主体の共鳴線と励起Xe分子による波長172nm主体の分子線を含む紫外線(図1の点線及び矢印)が蛍光体層14に照射される。蛍光体層14は励起されて可視光発光する。そして当該可視光はフロントパネル2を透過して前面に発光される。
この駆動方法の一例としては、フィールド内時分割階調表示方式が採られる。当該方式は、表示するフィールドを複数のサブフィールド(S.F.)に分け、各サブフィールドをさらに複数の期間に分ける。1サブフィールドは更に、(1)全放電セルを初期化状態にする初期化期間、(2)各放電セルをアドレスし、各放電セルへ入力データに対応した表示状態を選択・入力していく書込期間、(3)表示状態にある放電セルを表示発光させる維持期間、(4)維持放電により形成された壁電荷を消去する消去期間という4つの期間に分割されてなる。
各サブフィールドでは、初期化期間で画面全体の壁電荷を初期化パルスでリセットした後、書込期間で点灯すべき放電セルのみに壁電荷を蓄積させる書込放電を行い、その後の放電維持期間ですべての放電セルに対して一斉に交流電圧(維持電圧)を印加することによって一定時間放電維持することで発光表示する。
ここで図3は、フィールド中の第m番目のサブフィールドにおける駆動波形例である。図3が示すように、各サブフィールドには、初期化期間、書込期間、放電維持期間、消去期間がそれぞれ割り当てられる。
初期化期間とは、それ以前の放電セルの点灯による影響(蓄積された壁電荷による影響)を防ぐため、画面全体の壁電荷の消去(初期化放電)を行う期間である。図3に示す駆動波形例では、走査電極5にデータ電極11および維持電極4に比べて高い電圧(初期化パルス)を印加し放電セル内の気体を放電させる。それによって発生した電荷はデータ電極11、走査電極5および維持電極4間の電位差を打ち消すように放電セルの壁面に蓄積されるので、走査電極5付近の表面層8の表面には負の電荷が壁電荷として蓄積される。またデータ電極11付近の蛍光体層14表面および維持電極4付近の表面層8の表面には正の電荷が壁電荷として蓄積される。この壁電荷により、走査電極5―データ電極11間、走査電極5―維持電極4間に所定の値の壁電位が生じる。
書込期間は、サブフィールドに分割された画像信号に基づいて選択された放電セルのアドレッシング(点灯/不点灯の設定)を行う期間である。当該期間では、放電セルを点灯させる場合には走査電極5にデータ電極11および維持電極4に比べ低い電圧(走査パルス)を印加させる。すなわち、走査電極5―データ電極11には前記壁電位と同方向にデータパルスを印加させると共に走査電極5―維持電極4間に壁電位と同方向に電圧を印加させ、書込放電を生じさせる。これにより蛍光体層14表面、維持電極4付近の表面層8の表面には負の電荷が蓄積され、走査電極5付近の表面層8の表面には正の電荷が壁電荷として蓄積される。以上で維持電極4―走査電極5間には所定の値の壁電位が生じる。
放電維持期間は、階調に応じた輝度を確保するために、書込放電により設定された点灯状態を拡大して放電維持する期間である。ここでは、上記壁電荷が存在する放電セルで、一対の走査電極5および維持電極4の各々に維持放電のための電圧パルス(例えば約200Vの矩形波電圧)を互いに異なる位相で印加する。これにより表示状態が書き込まれた放電セルに対し電圧極性の変化毎にパルス放電を発生せしめる。
この維持放電により、放電空間15における励起Xe原子からは147nmの共鳴線が放射され、励起Xe分子からは173nm主体の分子線が放射される。この共鳴線・分子線が蛍光体層14表面に照射され、可視光発光による表示発光がなされる。そして、RGB各色ごとのサブフィールド単位の組み合わせにより、多色・多階調表示がなされる。なお、表面層8に壁電荷が書き込まれていない非放電セルでは、維持放電が発生せず表示状態は黒表示となる。
消去期間では、走査電極5に漸減型の消去パルスを印加し、これによって壁電荷を消去させる。
(放電電圧の減少について)
表面層8は、主成分であるCeO2にBaを含んで構成され、BaOに起因したNaCl構造を有している。そして表面層8のエネルギーバンドにおける電子状態は、ほぼBaOと同様になっている。
ここで、BaOに固有の電子準位として存在するエネルギー準位は、MgOと比較すると、真空準位からの深さが比較的浅い領域に存在する。
従って、PDP1を駆動する場合において、BaOに固有の電子準位であるエネルギー準位に存在する電子が、Xeイオンの基底状態に遷移する際、当該エネルギー準位に存在する別の電子がオージェ効果を受けて獲得するエネルギー量は、MgOの場合と比較して大きい。この前記別の電子が受けるエネルギー量は、当該電子が真空準位を超えて二次電子として放出されるためには十分な量である。この結果、表面層8では、その材料がMgOの場合と比較して、良好な二次電子放出特性が発揮される。
具体的には、本実施の形態1の表面層に固有の電子準位として存在するエネルギー準位は、真空準位からの深さが6.05eV以下の領域に存在する。一方、MgOに固有の電子準位として存在するエネルギー準位は、真空準位からの深さが6.05eV超の領域に存在する。

以下、放電空間15内の放電ガスと、表面層8との間のエネルギーのやり取りに伴う電子の状態遷移経路を説明する。この説明を用いて、表面層8の上記の領域に固有の電子準位が存在する根拠について詳述する。
PDP1の駆動時において、放電ガスに起因するイオン(Xeイオン等)が放電空間15内で発生し、当該イオンが表面層8に対して相互作用可能な位置まで接近すると、表面層8を構成材料に固有の電子準位に存在する電子が、前記イオンの基底状態に遷移する。これにより、表面層8中の別の電子は、オージェ効果によって一定のエネルギーを獲得する。この獲得エネルギーは、「真空準位から前記イオンの基底状態の準位までの深さに相当するエネルギー」から、「真空準位から、表面層8の構成材料に固有の電子準位までの深さに相当するエネルギー」を差し引いた分のエネルギーを獲得する。このプロセスを経ることにより、前記差し引かれた分のエネルギーを獲得した前記別の電子は、真空準位までのエネルギーギャップを飛び越え、二次電子として放電空間15に放出される。
ここで図4に示すように、Xeイオンは、バンド構造において、真空準位から12.1eVの深さに基底状態のエネルギー準位を有する。従って、表面層8の構成に材料に固有の電子準位が、上記12.1eVの半分である6.05eVより浅い領域に存在する場合(図4中の(a))、表面層8中に存在する前記別の電子は、「Xe原子のイオン化状態の準位の深さに相当するエネルギー(12.1eV)」から、「表面層8を構成する材料に固有の電子準位の深さに相当するエネルギー」を引いた分のエネルギー(6.05eV超)を得る。これにより当該電子は、真空準位までのエネルギーギャップを飛び越え、二次電子として放出される。
なお、逆に表面層8を構成する材料に固有の電子準位が、上記12.1eVの半分である6.05eVより深い準位に存在する場合(図4中の(b))、前記別の電子が基底状態の準位の深さ(12.1eV)から表面層8を構成する材料に固有の電子準位の深さを引いた分のエネルギー(6.05eV未満)を得たとしても、真空準位までのエネルギーギャップを飛び越えることができない。このため、当該電子は二次電子として放出されることはない。
なお、一般的に、各材料固有のバンドギャップと電子親和力の和は、MgOは約8.8eV、CaOは約8.0eV、SrOは約6.9eV、BaOは約5.2eVとされている。
次に、CeO2を主成分とし、これにBaを含み、全体としてホタル石構造を有する表面層8を備えるPDP1において、放電電圧が減少されるメカニズムについて考察する。
図5は、CeO2からなる表面層8の電子準位を示す模式図である。
本発明では、放電電圧の上昇を抑える一つの解決策として、図5に示すように、CeO2の真空準位から比較的浅い禁制帯中の位置において、オージェ効果の作用を良好に受けられる電子準位を配設している。この電子準位は、表面層8に対し、ホタル石構造を保つことができる程度のBaを導入することで形成される。本発明では、このような電子準位を創設することにより、二次電子放出のためにオージェ中性化の過程で取得する励起に使用できるエネルギーを見かけ上、増加させることができる。したがって、本発明では二次電子放出確率を上昇でき、結果として、豊富な二次電子を放電空間15で利用できる。このため、PDP1では動作電圧が低減されるとともに良好な規模の放電が形成されるので、優れた画像表示性能を有するPDPを低電力で駆動できるようになっている。
<実施の形態2>
本発明の実施の形態2について、実施の形態1との差異を中心に説明する。図6は、実施の形態2に係るPDP1aの構成を示す断面図である。
PDP1aは、基本構造はPDP1と同様であるが、表面層8をベース層8とし、その表面に、初期電子放出特性が高いMgO微粒子16を分散配置することで表面層8aを構成した点に特徴を有する。MgO微粒子16の分散密度としては、一例として、Z方向から放電セル20中の表面層8aを平面視したときに、ベース層8が直に見えないように設定することができるが、このような分散密度に限定されない。例えば、ベース表8の表面に部分的に設けても良い。この場合、さらに例示すれば、表示電極対6に対応する位置にのみ、部分的にMgO微粒子16を設けることもできる。
なお、図6では構成を理解させる都合上、ベース層8上に配設されているMgO微粒子16を実際よりも大きく、模式的に表している。MgO微粒子16は、気相法或いは前駆体焼成法のいずれで作製してもよい。しかしながら、後述する前駆体焼成法で作製すれば、特に性能の良いMgO微粒子16が得られることが本願発明者らの検討により分かっている。
このような構成を有するPDP1aによれば、表面層において、互いに機能分離されたベース層8及びMgO微粒子16の各特性が相乗的に発揮される。
すなわち、その駆動時にはPDP1と同様に、CeO2にBaを添加したベース層8によって二次電子放出特性が向上される。その結果、PDP1aの動作電圧の低減が図られ、低電力駆動が実現される。また、ベース層8が良好な電荷保持特性を有していることから、PDP1aが継続して駆動される場合でも、前記した二次電子放出特性が経時的に安定して発揮される。
一方、PDP1aでは、さらにMgO微粒子16の配設によって初期電子放出特性が向上されている。これにより放電応答性が飛躍的に改善され、放電遅れ及び放電遅れの温度依存性に係る問題を低減する効果が期待できる。この効果は特に、本発明を高精細型のPDPに適用し、幅の短いパルスにより高速駆動する場合において、優れた画像表示性能を奏するものとなる。
なお、PDP1aでは、ベース層8の表面がMgO微粒子16により保護されているので、放電空間15側から不純物がベース層8表面に直接付着する問題が低減される。これにより、さらなるPDPのライフ特性の向上が期待できる。
(MgO微粒子16について)
PDP1aに設けたMgO微粒子16は、本願発明者が行った実験により、主として書込放電における「放電遅れ」を抑制する効果と、「放電遅れ」の温度依存性を改善する効果があることが確認されている。そこで本実施の形態2のPDP1aでは、MgO微粒子16がベース層8に比べて高度な初期電子放出特性に優れる性質を利用して、放電空間15に臨むようにMgO微粒子16を駆動時の初期電子放出部として配設したものである。
「放電遅れ」の発生は、放電開始時において、トリガーとなる初期電子がベース層8の表面から放電空間15中に放出される量が不足することが主原因であると考えられる。そこで、放電空間15に対する初期電子放出性に有効に寄与するため、ベース層8よりも初期電子放出量が極めて大きいMgO微粒子16をベース層8の表面に分散配置した。これによって、アドレス期間で必要な初期電子が、MgO微粒子16から大量に放出されるようになり、放電遅れの解消が図られる。このような初期電子放出特性を得ることで、PDP1aは高精細の場合等においても放電応答性の良い高速駆動ができるようになっている。
さらに、ベース層8の表面にこのようなMgO微粒子16を配設する構成として、主として書込放電における「放電遅れ」を抑制する効果に加え、「放電遅れ」の温度依存性を改善する効果も得られることも分かっている。
以上のようにPDP1aでは、低電力駆動化と二次電子放出特性、電荷保持特性等の各効果を奏するベース層8と、放電遅れ及びその温度依存性の抑制効果を奏するMgO微粒子16とを組み合わせて表面層を構成する。これにより、PDP1全体として、高精細な放電セルを有する場合でも高速駆動を低電圧で駆動でき、且つ、不灯セルの発生を抑制した高品位な画像表示性能が期待できる。
さらに、MgO微粒子16は、ベース層8の表面に積層して設けられることにより、当該ベース層8に対する一定の保護効果も有する。すなわち、ベース層8は高い二次電子放出係数を有し、PDPの低電力駆動を可能にする反面、水や二酸化炭素、炭化水素などの不純物の吸着性が比較的高い性質がある。不純物の吸着が起きると、二次電子放出特性等、放電の初期特性が損なわれる。そこで、このようなベース層8をMgO微粒子16で被覆すれば、その被覆領域において、放電空間15からベース層8の表面に不純物が付着するのを防止できる。これによりPDP1aのライフ特性についても向上が期待できる。
<PDPの製造方法>
次に、上記各実施の形態におけるPDP1及び1aの製造方法について例示する。PDP1と1aとの違いは、表面層8と8aの構成のみであり、その他の製造工程については共通する。
(バックパネルの作製)
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなるバックパネルガラス10の表面上に、スクリーン印刷法によりAgを主成分とする導電体材料を一定間隔でストライプ状に塗布し、厚さ数μm(例えば約5μm)のデータ電極11を形成する。データ電極11の電極材料としては、Ag、Al、Ni、Pt、Cr、Cu、Pd等の金属や、各種金属の炭化物や窒化物等の導電性セラミックスなどの材料やこれらの組み合わせ、あるいはそれらを積層して形成される積層電極も必要に応じて使用できる。
ここで、作製予定のPDP1を40インチクラスのNTSC規格もしくはVGA規格とするためには、隣り合う2つのデータ電極11の間隔を0.4mm程度以下に設定する。
続いて、データ電極11を形成したバックパネルガラス10の面全体にわたって鉛系あるいは非鉛系の低融点ガラスやSiO2材料からなるガラスペーストを厚さ約20〜30μmで塗布して焼成し、誘電体層を形成する。
次に、誘電体層12面上に所定のパターンで隔壁13を形成する。低融点ガラス材料ペーストを塗布し、サンドブラスト法やフォトリソグラフィ法を用い、隣接放電セル(図示省略)との境界周囲を仕切るように、放電セルの複数個の配列を行および列を仕切る井桁形状のパターン(図10を参照)で形成する。
隔壁13が形成できたら、隔壁13の壁面と、隔壁13間で露出している誘電体層12の表面に、AC型PDPで通常使用される赤色(R)蛍光体、緑色(G)蛍光体、青色(B)蛍光体のいずれかを含む蛍光インクを塗布する。これを乾燥・焼成し、それぞれ蛍光体層14とする。
適用可能なRGB各色蛍光の化学組成例は以下の通りである。
赤色蛍光体;(Y、Gd)BO3:Eu
緑色蛍光体;Zn2SiO4:Mn
青色蛍光体;BaMgAl1017:Eu
各蛍光体材料の形態は、平均粒径2.0μmの粉末が好適である。これをサーバー内に50質量%の割合で入れ、エチルセルローズ1.0質量%、溶剤(α−ターピネオール)49質量%を投入し、サンドミルで撹拌混合して、15×10-3Pa・sの蛍光体インクを作製する。そして、これをポンプにて径60μmのノズルから隔壁13間に噴射させて塗布する。このとき、パネルを隔壁20の長手方向に移動させ、ストライプ状に蛍光体インクを塗布する。その後は500℃で10分間焼成し、蛍光体層14を形成する。
以上でバックパネル9が完成される。
なお上記方法例ではフロントパネルガラス3およびバックパネルガラス10をソーダライムガラスからなるものとしたが、これは材料の一例として挙げたものであって、これ以外の材料で構成してもよい。
(フロントパネル2の作製)
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなるフロントパネルガラス3の面上に、表示電極対6を作製する。ここでは印刷法によって表示電極対6を形成する例を示すが、これ以外にもダイコート法、ブレードコート法等で形成することができる。
まず、ITO、SnO2、ZnO等の透明電極材料を最終厚み約100nmで、ストライプ等の所定のパターンでフロントパネルガラス3上に塗布し、乾燥させる。これにより透明電極41、51が作製される。
一方、Ag粉末と有機ビヒクルに感光性樹脂(光分解性樹脂)を混合してなる感光性ペーストを調整し、これを前記透明電極41、51の上に重ねて塗布し、形成する表示電極のパターンを有するマスクで覆う。そして、当該マスク上から露光し、現像工程を経て、590〜600℃程度の焼成温度で焼成する。これにより透明電極41、51上に最終厚みが数μmのバスライン42、52が形成される。このフォトマスク法によれば、従来は100μmの線幅が限界とされていたスクリーン印刷法に比べ、30μm程度の線幅までバスライン42、52を細線化することが可能である。バスライン42、52の金属材料としては、Agの他にPt、Au、Al、Ni、Cr、また酸化錫、酸化インジウム等を用いることができる。バスライン42、52は上記方法以外にも、蒸着法、スパッタリング法などで電極材料を成膜したのち、エッチング処理して形成することも可能である。
次に、形成した表示電極対6の上から、軟化点が550℃〜600℃の鉛系あるいは非鉛系の低融点ガラスやSiO2材料粉末とブチルカルビトールアセテート等からなる有機バインダーを混合したペーストを塗布する。そして550℃〜650℃程度で焼成し、最終厚みが膜厚数μm〜数十μmの誘電体層7を形成する。
(表面層の形成)
実施の形態1又は2のPDP1又はPDP1aの表面層を、それぞれ以下のいずれかのステップで形成する。
まず、表面層(ベース層)8を電子ビーム蒸着法で形成する場合について説明する。
蒸着源用ペレットを準備する。当該ペレットの作製方法としては、まずCeO2粉末とアルカリ土類金属元素の炭酸化物であるBaCO3粉末とを混合し、この混合粉末を金型に入れて加圧成型する。その後、これをアルミナルツボに入れ、大気中で1400℃程度の温度で以て約30分間、焼成すれば、焼結体としてペレットが得られる。
この焼結体ないしはペレットを電子ビーム蒸着装置の蒸着ルツボに入れ、これを蒸着源として誘電体層7の表面に蒸着させることで、CeO2とBaを含む表面層8を成膜する。ストロンチウム濃度の調整は、アルミナルツボに入れる混合粉末を得る段階で、CeO2と炭酸ストロンチウムの混合比率を調節することにより行う。これにより、PDP1の表面層が完成する。
なお、表面層(ベース層)8の成膜方法は、電子ビーム蒸着法だけでなく、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの公知の方法も同様に適用できる。
次に、PDP1aを製造する場合には、MgO微粒子16を作製する。MgO微粒子は、以下に示す気相合成法または前駆体焼成法のいずれかで製造することができる。
[気相合成法]
マグネシウム金属材料(純度99.9%)を、不活性ガスが満たされた雰囲気下で加熱する。この加熱状態を維持しつつ、不活性ガス雰囲気に酸素を少量導入し、マグネシウムを直接酸化させることにより、MgO微粒子16を作製する。
[前駆体焼成法]
次に例示するMgO前駆体を高温(例えば700℃以上)で均一に焼成し、これを徐冷してMgO微粒子16を得る。MgO前駆体としては、例えばマグネシウムアルコキシド(Mg(OR)2)、マグネシウムアセチルアセトン(Mg(acac)2)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、MgCO3、塩化マグネシウム(MgCl2)、硫酸マグネシウム(MgSO4)、硝酸マグネシウム(Mg(NO32)、シュウ酸マグネシウム(MgC24)、の内のいずれか一種以上(2種以上を混合して用いてもよい)を選ぶことができる。なお選択した化合物によっては、通常、水和物の形態を取ることもあるが、このような水和物を用いてもよい。
MgO前駆体となるマグネシウム化合物は、焼成後に得られるMgOの純度が99.95%以上、最適値として99.98%以上になるように調整する。これはマグネシウム化合物に、各種アルカリ金属、B、Si、Fe、Al等の不純物元素が一定量以上混じっていると、熱処理時に不要な粒子間癒着や焼結を生じ、高結晶性のMgO微粒子16を得にくいためである。このため、不純物元素を除去する等により、予め前駆体を調整する。
上記何れかの方法で得られたMgO微粒子16を、溶媒に分散させる。そして当該分散液をスプレー法やスクリーン印刷法、静電塗布法に基づき、上記作製したベース層8の表面に分散散布させる。その後は乾燥・焼成工程を経て溶媒除去を図り、微粒子16をベース層8の表面に定着させる。
以上の工程でPDP1aの表面層8aが形成される。
(PDPの完成)
作製したフロントパネル2とバックパネル9を、封着用ガラスを用いて貼り合わせる。その後、放電空間15の内部を高真空(1.0×10-4Pa)程度に排気し、これに所定の圧力(ここでは66.5kPa〜101kPa)でNe−Xe系やHe−Ne−Xe系、Ne−Xe−Ar系等の放電ガスを封入する。
以上の各工程を経ることにより、PDP1又は1aが完成する。
(性能確認実験)
続いて、本発明の性能を確認するべく、基本構成が同一で、表面層のみが異なる以下のサンプル1〜8のPDPを用意した。
CeO2を主体とする表面層(ベース層)中に含まれるBa量を表す方法として、Ba/(Ba+Ce)*100で表される原子数の割合(以下「XBa」と表記)を用いた。この原子数の割合は、CeとBaの合計の原子数に対するBaの原子数の割合を示す。
なお、このXBaの単位は、数値はそのままで(%)または(mol%)のいずれでも表記することができるが、便宜上、以下は(mol%)で表す。
サンプル1(比較例1)は最も基本的なPDPの従来構成とするため、EB蒸着にて成膜したMgOからなる表面層(Ce、Baは含まない)を有するものとした。
サンプル2、7(比較例2〜4)は、CeO2にBaを添加した表面層で、それぞれ同順にXBaが0mol%、9.3mol%、100mol%である表面層を有するものとした。
サンプル4〜6(実施例1〜3)は実施の形態1のPDP1の構成に相当する。すなわち、CeO2にBaを添加した表面層で、それぞれ同順にXBaが16.4mol%、23.8mol%、31.2mol%である表面層を有するものとした。
サンプル8(実施例4)は実施の形態2のPDP1aの構成に相当する。すなわち、CeO2にBaを添加し、XBaが31.2mol%であるベース層と、その上に前駆体焼成法で作製されたMgO微粒子が分散配置された表面層を有するものとした。
各サンプル1〜8の表面層の構成と、これらを用いて得られた実験データを表1にまとめて示す。
Figure 2010095343
[実験1]膜物性評価
(結晶構造解析)
上記した各サンプルの結晶構造を調べるために、θ/2θX線回折測定を行った。その測定結果を図7に、解析結果を表1に示した。図7ではXBaがそれぞれ0mol%、9.3mol%、16.4mol%、23.8mol%、31.2mol%(サンプル2、3、4、5、6)のサンプルのプロファイルを示した。
Baが0mol%、9.3mol%、16.4mol%、23.8mol%のサンプル(サンプル2〜5)においてはホタル石構造であるCeO2のみ存在することが確認された。
一方、XBaが31.2mol%程度と含有されているBaの量が多い領域(サンプル6)では、BaOの単相になっていることが分かった。
Ceを含まないBaOからなる膜では、大気に暴露されるとすぐに水酸化・炭酸化が進む。X線回折測定を行うと、このような水酸化・炭酸化を示す相が同定され、BaOの相は検出されなくなる。しかしながら、上記のようにBaとCeの比を適切に調節して酸化物を生成すれば、安定性の高いBaOを主体とする層を生成することができる。
(表面安定性の評価)
一般に、表面層中に含まれる炭酸化物が多いと、表面層本来の二次電子放出特性が得られず、結果として動作電圧が上がってしまう。これを回避するためには出荷前のPDPを一定時間放電させ、表面層の汚染物を除去するエージング工程が必要となる。エージング工程はPDPの生産性を考慮すると、短時間で終了することが望まれるため、予めエージング工程前に表面層中の炭酸化物量を可能な限り抑えておくことが好ましい。
そこで、MgOからなる保護膜に不純物の炭酸化物を含有させた場合の各サンプルについて、保護膜表面の安定性を調べた。その方法として、保護膜表面に含まれる炭酸化量をX線光電子分光法(XPS)に基づいて測定した。各サンプルの保護膜は、成膜後一定期間、大気中に曝露処理し、測定用のプレートに配置させ、XPS測定チャンバーに投入した。大気中に曝している間は常に膜表面の炭酸化反応が進行していると予想されるので、サンプル間の処理条件を揃えるため、上記セッティングに要する大気曝露時間を5分に設定した。
XPS測定装置には、ULVAC−PHI社製の「QUANTERA」を使用した。X線源はAl−Kαを用い、モノクロメーターを使用した。中和銃およびイオン銃により絶縁体である実験用試料の中和を行った。測定はMg2p、Ce3d、C1s、O1sに対応するエネルギー領域を30サイクル積算して測定し、得られたスペクトルのピーク面積と感度係数から膜表面における各元素の組成比を求めた。C1sスペクトルピークを290eV付近で検出されるスペクトルピークと285eV付近で検出されるC、CHのスペクトルピークに波形分離してそれぞれの割合を求め、Cの組成比とその中におけるCOの割合の積から膜表面におけるCO量を求めた。このXPSにより求められた膜中のCO量によって、膜表面の安定性、すなわち炭酸化の程度を比較した。
上記の条件を基にXPS測定し、表面に占める炭酸化物の割合をプロットしたグラフを図8に示す。
図8に示す各測定位置から、Baの添加量に比例して、膜中に含まれる炭酸化物の割合が多くなっていることが分かる。この結果から、炭酸化物による膜の表面汚染を抑制するためには、膜中のBaの量をできるだけ少なくすることが望ましいと言える。
また、表1に示す結果では、実施例1、2のサンプルにおいて、特に炭酸化物の割合が比較的小さく優れる結果が得られている。この結果を考慮すると、少なくともXBaを16mol%以上24mol%以下の範囲に設定して表面層を構成すれば、良好な炭酸化物の低減効果が期待できると思われる。
[実験2] 放電特性評価
(放電電圧)
上記した各サンプルの作動電圧の特性を調べるために、各々のサンプルと、放電ガスとしてXe分圧が15%のXe−Ne混合ガスを用いたPDPを作製し、放電維持電圧の測定を行った。
図9は上記条件で測定を行った膜中のXBaに対する放電開始電圧の挙動をプロットしたものである。
図9及び表1に示すように、XBaを16mol%以上31mol%以下(ほぼ実施例1〜3に相当する範囲)に設定すると、もともと175V程度であった放電維持電圧が140V以下まで下がり、低電力駆動化が促進されることが分かる。さらにはXBaが26mol%以上29mol%以下(実施例2及び3の近辺)のときは130V程度にまで電圧が減少しており、特に低電力駆動化の効果が高いことが分かる。
このような結果が得られた理由として、Baを添加することで、表面層(ベース層)の価電子帯の位置が押し上げられ、その結果、二次電子放出特性が向上したためと考えられる。
しかしながら、XBaが31mol%を大きく超えると、逆に電圧上昇が確認できる(比較例4)。これは、層の状態がBaOが主体となってしまい、パネル作製プロセスで表面層が汚染されてしまうためである。
これらの結果を総合すると、表面層に含有させるBa量が多すぎても望ましくなく、適度な濃度範囲があることが分かる。
(放電遅れの測定)
次に、上記と同様の放電ガスを用い、且つ、保護膜上にMgO微粒子を配設した表面層を持つサンプルについて、書き込み放電における放電遅れの程度を評価した。その評価方法として、各サンプル1〜8のPDPにおける任意の1セルに対し、図3に示す駆動波形例の初期化パルスに相当するパルスを印加し、その後、データパルス及び走査パルスを印加したときに生じる統計遅れを測定した。
その結果、MgO微粒子を配設させたサンプル8(実施例4)においては、サンプル2〜7に比べて放電遅れが効果的に減少していることが分かった。
また、PDPにおける放電遅れ防止の効果は、MgO微粒子を配設することでさらに高まるが、その効果は気相法で作製したMgO微粒子よりも前駆体焼成法で作製したMgO微粒子を使用した方が大きい。したがって、前駆体焼成法は本発明に好適なMgO微粒子の作製方法であると言える。
以上のサンプル8(実施例4)の実験データが示すように、所定のBa濃度を有する表面層の表面にMgO微粒子を分散して表面層を構成すれば、低電力駆動を実現し、且つ、放電遅れも小さいPDPが得られることが分かった。
本発明のPDPは、例えば高精細な動画を低電圧駆動により画像表示するガス放電パネルに適用することができる。その他、交通機関及び公共施設における情報表示装置、或いは家庭や職場等におけるテレビジョン装置又はコンピューターディスプレイ等への利用が可能である。
1、1x PDP
2 フロントパネル
3 フロントパネルガラス
4 維持電極
5 走査電極
6 表示電極対
7、12 誘電体層
8、8a 表面層(高γ膜)
9 バックパネル
10 バックパネルガラス
11 データ(アドレス)電極
13 隔壁
14、14R、14G、14B 蛍光体層
15 放電空間
16 MgO微粒子
10は、一般的なAC型PDPにおける放電単位である放電セル構造の模式的組図である。当図10に示すPDP1xはフロントパネル2及びバックパネル9を貼り合わせてなる。第一基板であるフロントパネル2は、フロントパネルガラス3の片面に、走査電極5及び維持電極4を一対とする表示電極対6が複数対にわたり配設され、当該表示電極対6を覆うように、誘電体層7および表面層8が順次積層されてなる。走査電極5、維持電極4は、それぞれ透明電極51、41及びバスライン52、42を積層して構成される。

Claims (5)

  1. 複数の表示電極対が配設された第一基板が、放電空間を介して第二基板と対向配置され、両基板の間に放電ガスが満たされて内部封止されたプラズマディスプレイパネルであって、
    第一基板の放電空間に臨む面には、CeO2を主成分とし、Baを16mol%以上31mol%以下の範囲で含有する表面層が配設されている
    プラズマディスプレイパネル。
  2. 前記表面層は、Baを16mol%以上24mol%以下で含有する
    請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  3. 前記表面層は、Baを26mol%以上29mol%以下の範囲で含有する
    請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  4. 前記表面層はホタル石構造を有する
    請求項2に記載のプラズマディスプレイパネル。
  5. 表面層の放電空間側には、さらにMgO微粒子が配設されている
    請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
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