JPWO2010067882A1 - 癌及び喘息治療のための医薬組成物 - Google Patents

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Abstract

癌及び喘息治療のための医薬組成物を提供する。本発明の課題は、ムチンサブタイプ5ACのmRNAを、RNA干渉を介して開裂することのできるsiRNA、又はムチンサブタイプ5ACに対する抗体を有効成分として含む、医薬組成物によって解決できる。本発明により、MUC5ACの過剰発現を伴う疾患の治療を効率よく行うことができる。MUC5ACが発現している癌、特には膵臓癌においては、本発明のsiRNAを含む医薬組成物は、癌の治療に効果的に用いることが可能である。また、本発明のsiRNA又は抗体は、喘息において、MUC5ACの発現又は機能を抑えることによって、喘息の症状を効果的に予防又は治療することが可能である。

Description

本発明は、ムチンサブタイプ5AC(以下、MUC5ACと称することがある)に特異的な短鎖干渉RNA(small interfering RNA;siRNA)、及びそれらを含有する医薬組成物に関する。本発明のsiRNAによれば、MUC5ACの発現を特異的に抑制することにより、癌及び喘息の治療を効果的に行うことが可能である。
ムチンはコアタンパク質に高分子の糖鎖が修飾された糖タンパク質で、その分子量は100〜1000万にもなる巨大分子である。動物では口腔、気道、胃、腸管の粘膜に粘性物質として見られ、外界に接している内腔の柔らかい粘膜層を病原菌、異物、乾燥などから保護している。ヒトでは21種のムチンが知られており、それぞれのムチン分子のコアタンパクには異なる繰り返し配列が存在している。この繰り返しのアミノ酸配列の領域はセリンとスレオニンに富み、ムチン型糖鎖が高頻度で結合している。ムチン型糖鎖は一般的に、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルグルコサミン、ガラクトース、フコース、シアル酸などから構成され、糖鎖はムチンの分子量の50〜80%以上を占め、ムチンのもつ粘性や保水力、タンパク質分解酵素への耐性など、さまざまな性質の要因となっている。
ムチンの中で、MUC5ACは、コアタンパク質としてセリンとスレオニンに富んだ繰り返し配列を有し、正常組織では気管と胃の上皮細胞でのみ発現している。このMUC5ACと疾患の関係については、癌組織において、MUC5ACが発現していることが知られており、特に、MUC5ACが膵臓の癌化に伴い膜結合型ムチンとして高率に発現することが報告されている(非特許文献1、及び非特許文献2)。また、喘息の患者において、気道のMUC5ACの過剰分泌が、喘息の悪化につながることが報告されている(非特許文献3)。
前記の膵臓癌は、難治性の癌として知られている。2000年における膵臓癌罹患者数は、日本で17,000人、アメリカで30,000人であり、今後の膵臓癌罹患者数の予測でも、増加傾向にある。全癌腫に占める患者数の割合としてはそれほど多くはないものの、年齢調整死亡率を年齢調整罹患率で割った数を悪性度とした場合、1998年の膵臓癌の悪性度は全癌腫の中で最も高く、男性で99.2%、女性で94.6%であった。また、罹患者の5年生存率は男女ともに10%程度と非常に低く、予後が悪い難治性の癌である。
現在の膵臓癌の標準的な治療法は、早期診断された場合の腫瘍部位を切除する外科療法のみが有効であるとされている。しかし、膵臓癌は、症状に乏しく、早期病変(1cm以下)の内視鏡や画像診断での診断は困難であり、膵臓癌特異的な腫瘍マーカーも存在しないことから、早期発見が難しく、手術可能例は約30%程度にすぎない。また、進行癌では主に化学療法が施され、gemcitabine(核酸合成阻害剤、イーライリリー社)が用いられているが、症状緩和効果のみで、腫瘍への根本的な治療効果はない。更に、外科療法に放射線療法を併用する場合もあるが、膵臓癌は放射線に対する感受性が低く、この治療法も有効ではない。このため、膵臓癌患者における腫瘍細胞の増殖を抑制し、QOLを改善することのできる有効な医薬組成物の開発が待ち望まれている。
前記のように膵臓癌組織においてMUC5ACが高い確率で発現しているが、MUC5ACが発現していない膵臓癌の患者において、リンパ浸潤、血管浸潤、及びリンパ節転移が見られ、そのため、MUC5ACの発現している膵臓癌患者の生存率がよいことが報告されている(非特許文献1)。従って、膵臓癌患者の生存率の観点からは、膵臓癌にMUC5ACが発現していることが望ましいと考えられる。
「インターナショナル・ジャーナル・オブ・ガストロインテストティナル・キャンサー(International Journal of Gastrointestinal Cancer)」(米国)2003年、第34巻、p.9−18 「インターナショナル・ジャーナル・オブ・オンコロジー(International Journal of Oncology)」(ギリシャ)2004年、第24巻、p.107−113 「日本小児アレルギー学会誌」(日本)2007年、第21巻、p.180−186
本発明者らは、生体内において癌細胞の増殖を抑制することのできる有効な医薬組成物について鋭意検討を重ねた結果、MUC5ACのmRNAを標的とするsiRNAにより、MUC5ACを発現している膵臓癌細胞の生体内での増殖、そして場合によっては膵臓癌の転移を顕著に抑制することができることを見出した。すなわち、前記非特許文献1より、膵臓癌患者の生存率の観点からは、膵臓癌にMUC5ACが発現している方がよいと考えられるにもかかわらず、MUC5ACをノックダウンすることにより、癌の増殖を抑えることができることを見出した。本発明のsiRNAは、癌患者における癌細胞に対する免疫応答を誘導することが可能であり、例えば、B細胞による癌細胞に対する抗体の産生、白血球(例えば、B細胞、又は顆粒球)の癌組織への浸潤、癌細胞に対する単核球、又は多核球の細胞障害性を効果的に誘導することが可能である。すなわち、本発明者らは、MUC5ACに対するsiRNAを含む医薬組成物が、癌、特には、膵臓癌の治療薬として有用であることを見出した。更に、本発明のsiRNAにより、喘息の患者の症状の改善に有用であることを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、ムチンサブタイプ5ACのmRNAを、RNA干渉を介して開裂することのできるsiRNAに関する。
本発明によるsiRNAの好ましい態様においては、前記RNA干渉の標的mRNA領域が、配列番号1で表される塩基配列からなるmRNA、配列番号3で表される塩基配列からなるmRNA、配列番号5で表される塩基配列からなるmRNA、配列番号7で表される塩基配列からなるmRNA、配列番号9で表される塩基配列からなるmRNA、配列番号11で表される塩基配列からなるmRNA、配列番号16で表される塩基配列からなるmRNA、及び配列番号21で表される塩基配列からなるmRNA、からなる群から選択されるmRNA領域である。
本発明によるsiRNAの別の好ましい態様においては、前記siRNAの二重鎖RNA部分の長さが15〜40ヌクレオチドである。
本発明によるsiRNAの別の好ましい態様においては、前記siRNAの二重鎖RNA部分のアンチセンスRNA鎖が、前記標的mRNA領域の塩基配列に相補的な塩基配列からなるRNA部分を含むか、又は前記標的mRNA領域の塩基配列に相補的な塩基配列において、1〜9個の塩基が欠失、置換、若しくは付加された塩基配列からなるRNA部分を含み、より好ましくは、前記標的mRNA領域の塩基配列に相補的な塩基配列における連続する少なくとも9塩基の塩基配列からなるRNA部分を含む。
また、本発明は、二重鎖RNA部分のアンチセンスRNA鎖が、配列番号2で表される塩基配列からなるRNA、配列番号4で表される塩基配列からなるRNA、配列番号6で表される塩基配列からなるRNA、配列番号8で表される塩基配列からなるRNA、配列番号10で表される塩基配列からなるRNA、配列番号12で表される塩基配列からなるRNA、配列番号17で表される塩基配列からなるRNA、及び配列番号22で表される塩基配列からなるRNA、からなる群から選択されるRNAである、siRNAにも関する。
本発明によるsiRNAの好ましい態様においては、前記siRNAの二重鎖RNA部分において、(a)二重鎖RNA部分を形成する2つのRNA鎖が、ヘアピンループを形成することのできるRNA部分によって結合しているshRNA、(b)二重鎖RNA部分の末端が平滑である二本鎖ヌクレオチド、又は(c)二重鎖RNA部分を形成する2つのRNA鎖の一方又は両方の3’末端に、デオキシリボヌクレオチド及び/又はリボヌクレオチドが結合し、突出末端を形成している二本鎖オリゴヌクレオチド、である。
また、本発明は前記siRNAをコードするDNA部分と、その5’側に前記DNAの転写を制御することのできるプロモーターと、前記siRNAをコードするDNAの3’側にターミネーターとを含むDNA、並びに前記のDNAを含むベクターにも関する。
更に、本発明は前記siRNA、前記DNA、及び前記ベクターからなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含む、医薬組成物に関する。
本発明による医薬組成物の好ましい態様においては、MUC5ACの過剰発現を伴う疾患の治療用であり、好ましくはMUC5ACの過剰発現を伴う疾患が、癌又は喘息であり、より好ましくは前記癌が、膵臓癌、肺癌、乳癌、胃癌、子宮頸癌、及び大腸癌である。
本発明は、前記siRNA、前記DNA、及び前記ベクターからなる群から選択される少なくとも1つを、MUC5ACの過剰発現を伴う疾患の治療が必要な対象に、有効量で投与することを含む、MUC5ACの過剰発現を伴う疾患を治療する方法に関する。
本発明の治療方法の好ましい態様においては、MUC5ACの過剰発現を伴う疾患が、癌又は喘息であり、より好ましくは前記癌が、膵臓癌、肺癌、乳癌、胃癌、子宮頸癌、及び大腸癌である。
本発明は、MUC5ACの過剰発現を伴う疾患の治療用医薬としての、前記siRNAに関する。
本発明の治療用医薬としてのsiRNAの好ましい態様においては、MUC5ACの過剰発現を伴う疾患が、癌又は喘息であり、より好ましくは前記癌が、膵臓癌、肺癌、乳癌、胃癌、子宮頸癌、及び大腸癌である。
本発明は、MUC5ACの過剰発現を伴う疾患の治療用医薬としての、前記DNAに関する。
本発明の治療用医薬としてのDNAの好ましい態様においては、MUC5ACの過剰発現を伴う疾患が、癌又は喘息であり、より好ましくは前記癌が、膵臓癌、肺癌、乳癌、胃癌、子宮頸癌、及び大腸癌である。
本発明は、MUC5ACの過剰発現を伴う疾患の治療用医薬としての、前記ベクターに関する。
本発明の治療用医薬としてのベクターの好ましい態様においては、MUC5ACの過剰発現を伴う疾患が、癌又は喘息であり、より好ましくは前記癌が、膵臓癌、肺癌、乳癌、胃癌、子宮頸癌、及び大腸癌である。
本発明は、前記siRNA、前記DNA、及び前記ベクターからなる群から選択される少なくとも1つの、MUC5ACの過剰発現を伴う疾患の治療用医薬組成物を製造するための使用に関する。
本発明の使用の好ましい態様においては、MUC5ACの過剰発現を伴う疾患が、癌又は喘息であり、より好ましくは前記癌が、膵臓癌、肺癌、乳癌、胃癌、子宮頸癌、及び大腸癌である。
更に、本発明は前記siRNAにより、MUC5ACの発現をノックダウンした細胞に関する。
また、本発明は前記siRNAによりMUC5ACの発現をノックダウンした細胞、及びMUC5ACの発現した細胞を用いた、薬剤のスクリーニング方法に関する。
本発明による薬剤のスクリーニング方法の好ましい態様においては、前記薬剤が、抗癌剤又は喘息治療薬である。
本明細書において、「siRNA」とは、小分子量干渉RNA(small interfering RNA)を意味する。siRNAは、少なくとも二重鎖のRNA部分を含み、RNA干渉(RNA interference;RNAi)と呼ばれる配列特異的な遺伝子発現抑制を誘導するものである。RNA干渉により、siRNAの標的となるmRNAが破壊され、そのmRNAがコードするタンパク質の発現が抑制される。
本発明のsiRNAによれば、MUC5ACの過剰発現を伴う疾患の治療を効率よく行うことができる。特には、MUC5ACが過剰に発現している癌細胞の生体内における増殖を効果的に抑制することができる。MUC5ACが発現している癌、特には膵臓癌においては、本発明のsiRNAを含む医薬組成物は、癌の治療に効果的に用いることが可能である。また、本発明のsiRNAは、MUC5ACが発現している気管支の細胞において、MUC5ACの発現を効果的に抑制することができる。喘息において、MUC5ACの発現を抑えることによって、喘息の症状を効果的に予防又は治療することが可能である。
oh−siRNA1〜oh−siRNA8を、SW1990株に導入し、48時間後のMUC5ACの遺伝子レベルでの発現を調べた電気泳動の写真である。陽性コントロールとして、GAPDHの発現を確認した。(レーン1:oh−siRNA1、レーン2:oh−siRNA2、レーン3:oh−siRNA3、レーン4:oh−siRNA4、レーン5:oh−siRNA5、レーン6:oh−siRNA6、レーン7:oh−siRNA7、レーン8:oh−siRNA8、レーン9:siRNAがトランスフェクションされていないSW1990株) RT−PCRによるSW1990si株及びSW1990mock株におけるMUC5ACの遺伝子レベルでの発現を調べた電気泳動の写真である。コントロールとして、GAPDHのsi株及びMock株における発現を確認した。 SW1990mock株及びSW1990si株におけるMUC5ACのタンパク質レベルの発現をFACSで解析した図である。 SW1990mock株及びSW1990si株(MUC5ACノックダウン株)の試験管内での増殖を示す図である。 SW1990mock株及びSW1990si株(MUC5ACノックダウン株)をヌードマウスに皮下移植した場合の、生体内での増殖を示す図である。 SW1990mock株及びSW1990si株(MUC5ACノックダウン株)を皮下移植した場合の腫瘍組織内への白血球の浸潤をHE染色により示した図である。(A)がmock株を、(B)がsi株を示す。 SW1990mock株及びSW1990si株(MUC5ACノックダウン株)を皮下移植した場合の腫瘍組織内へのB細胞、顆粒球、及びマクロファージの浸潤を免疫染色により示した図である。(A)がSW1990mock株における好中球の浸潤、(B)がsi株における好中球の浸潤、(C)がmock株におけるB細胞の浸潤、(D)がsi株におけるB細胞、(E)がmock株におけるマクロファージの浸潤、(F)がsi株におけるマクロファージの浸潤を示す。 SW1990mock株及びSW1990si株(MUC5ACノックダウン株)を皮下移植した場合の、siRNAによるB細胞の抗体産生を示すFACS解析である。 SW1990si株を移植されたマウスに、更にSW1990mock株を移植した場合の、生体内での増殖を示す図である。 MUC5ACの発現したSW1990mock株による、マクロファージからのPGE2の産生を示すグラフである。 ターゲット細胞としてSW1990mock株及びSW1990si株を用いた場合の、単核球及び多核球の細胞障害活性を示すグラフである。 C3H/HeN由来脾細胞に対するConAのマイトジェン活性を、MUC5ACが抑制することを示すグラフである。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.本発明のsiRNA、DNA及びベクター
本発明のsiRNAは、二重鎖のRNA部分を有し、MUC5ACのmRNAを、RNA干渉を介して開裂することができる限り限定されるものではないが、MUC5ACのmRNAである配列番号1で表される塩基配列からなる標的mRNA領域1、配列番号3で表される塩基配列からなる標的mRNA領域2、配列番号5で表される塩基配列からなる標的mRNA領域3、配列番号7で表される塩基配列からなる標的mRNA領域4、配列番号9で表される塩基配列からなる標的mRNA領域5、配列番号11で表される塩基配列からなる標的mRNA領域6、配列番号16で表される塩基配列からなる標的mRNA領域7、配列番号21で表される塩基配列からなる標的mRNA領域8、において、RNA干渉を介して開裂することができるsiRNAが好ましい。標的mRNA領域としては、標的mRNA領域6が最も好ましい。表1に標的mRNA領域のヌクレオチドの塩基配列を示す。
また、MUC5ACのmRNAは、プロセシングの違いにより、いくつかのスプライシングバリアントが知られている(GenBankアクセッションNo.:NM 017511、XM 001714774、NM_001134429、NM_001714104本発明のsiRNAは、それぞれのバリアントが、前記の標的mRNA領域を有する場合、RNA干渉を介してmRNAを開裂することができる。
二重鎖RNA部分の長さは、塩基として、15〜40塩基、好ましくは15〜30塩基、より好ましくは15〜25塩基、更に好ましくは19〜25塩基、最も好ましくは19〜21塩基である。二重鎖RNA部分には、そのままsiRNAとして機能するものも含まれるが、細胞内でDicerにより切断されて、siRNAとしてRNA干渉を誘導することのできる二重鎖RNA部分も含むことができる。
二重鎖RNAのアンチセンスRNA配列は、MUC5ACのmRNAに細胞内でハイブリダイズできるものであれば、限定されず、前記標的mRNA領域の塩基配列に相補的な塩基配列からなるRNA部分(以下、標的相補RNA部分と称する)の塩基配列において、1〜9個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個、最も好ましくは1個の塩基が欠失、置換、若しくは付加された塩基配列からなるRNA部分、及び/又は前記標的相補RNA部分の塩基配列における連続する少なくとも9塩基、好ましくは少なくとも10塩基、より好ましくは少なくとも15塩基、最も好ましくは少なくとも19塩基の塩基配列からなるRNA部分を含むRNAであることができるが、好ましくは、MUC5ACのmRNAの前記標的mRNA領域1〜8に対して、それぞれ完全に相補的な配列番号2で表される塩基配列からなるRNA部分(siRNA−1as)、配列番号4で表される塩基配列からなるRNA部分(siRNA−2as)、配列番号6で表される塩基配列からなるRNA部分(siRNA−3as)、配列番号8で表される塩基配列からなるRNA部分(siRNA−4as)、配列番号10で表される塩基配列からなるRNA部分(siRNA−5as)、配列番号12で表される塩基配列からなるRNA部分(siRNA−6as)、配列番号17で表される塩基配列からなるRNA部分(siRNA−7as)、及び配列番号22で表される塩基配列からなるRNA部分(siRNA−8as)、を含むRNA鎖であり、最も好ましくは、siRNA−6asからなるRNA鎖である。それぞれの塩基配列を表2に示す。
アンチセンスRNA配列は、前記標的相補RNA部分以外のRNA部分を含むことができ、そのRNA部分は、特に限定されるものではないが、MUC5ACのmRNAであって、標的mRNA領域以外のMUC5ACのmRNAの塩基配列に相補的な塩基配列からなるRNA部分が好ましい。
また、アンチセンスRNA鎖の塩基配列は、標的mRNA領域における塩基配列に対して85%、好ましくは90%、より好ましくは95%、最も好ましくは100%の相同性を有する。また、アンチセンスRNA部分は、siRNAの全体のGC含量が70%以下、好ましくは30〜70%、30〜60%程度となるように設計されるのが好ましい。
二重鎖RNA部分のセンスRNA配列は、アンチセンスRNA配列と細胞内でハイブリダイズすることのできるRNAであれば、限定されず、例えば、アンチセンスRNAの塩基配列に相補的な塩基配列からなる塩基配列において1〜9個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個、最も好ましくは1個の塩基が欠失、置換、若しくは付加された塩基配列からなるRNA鎖であることができ、最も好ましくは、アンチセンスRNAの塩基配列に完全に相補的な塩基配列からなるセンスRNA配列である。
また、センスRNA配列は、前記標的mRNA領域(以下、センスRNA配列のRNAを便宜的に、標的RNA部分と称する場合がある)の塩基配列において、1〜9個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個、最も好ましくは1個の塩基が欠失、置換、若しくは付加された塩基配列からなるRNA部分)、及び/又は前記標的RNA部分の塩基配列における連続する少なくとも9塩基、好ましくは少なくとも10塩基、より好ましくは少なくとも15塩基、最も好ましくは少なくとも19塩基の塩基配列からなるRNA部分を含むことができるが、好ましくは、二重鎖RNA部分のセンスRNA配列は、MUC5ACのmRNAにおける、前記標的mRNA領域1〜8のそれぞれの塩基配列、すなわち、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号16、及び配列番号21で表される塩基配列からなるRNA部分(以下、それぞれsiRNA−1s、siRNA−2s、siRNA−3s、siRNA−4s、siRNA−5s、siRNA−6s、siRNA−7s、及びsiRNA−8sと称する)を含むRNAであり、最も好ましくは、siRNA−6sからなるRNA鎖である。それぞれの塩基配列を表3に示す。
また、センスRNA鎖は、前記標的RNA部分以外のRNA部分を含むことができ、そのRNA部分は、特に限定されるものではないが、MUC5ACのmRNAであって標的mRNA領域以外のMUC5ACのmRNA塩基配列からなるRNA部分が好ましい。
本発明のsiRNAの態様の1つとして、二重鎖のRNA部分の末端が平滑である二本鎖ヌクレオチドも含まれ、このようなsiRNAは十分なRNAi活性を示す。
また、本発明のsiRNAの態様の1つとして、二重鎖のRNA部分と、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖の3’末端のオーバーハングとからなり、突出末端を形成する二本鎖オリゴヌクレオチドも含まれる。前記オーバーハング部分は、それぞれ、5塩基以下の任意のヌクレオチド(リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチド)であるが、2塩基のヌクレオチドが好ましい。siRNAの3’側オーバーハングを構成するリボヌクレオチドとしては、例えば、u(ウリジン)、a(アデノシン)、g(グアノシン)、又はc(シチジン)のヌクレオチドを用いることができ、3’側のオーバーハングを構成するデオキシリボヌクレオチドとしては、例えば、dt(チミジン)、da(デオキシアデノシン)、dg(デオキシグアノシン)、又はdc(デオキシシチジン)のヌクレオチドを用いることができる。
前記オーバーハングとしては、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖の3’末端に、それぞれ独立して、1又は2塩基のu又はdtが付加されたオーバーハングが好ましく、センス鎖及びアンチセンス鎖の3’末端に、それぞれ独立して、1又は2塩基のu又はdtが付加されたオーバーハングがより好ましく、センス鎖及びアンチセンス鎖の3’末端に、2塩基のu又はdtが付加されたオーバーハングが特に好ましい。更に、具体的なオーバーハングとしては、例えばug−3’、uu−3’、tg−3’、tt−3’などの塩基配列を挙げることができる。従って、オーバーハング二重鎖siRNAとして、前記siRNA−1s〜siRNA−8sの3’末端にtt−3’が付加されたヌクレオチドと、前記siRNA−1as〜siRNA−8asの3’末端にtt−3’が付加されたヌクレオチドが、それぞれアニールしたオーバーハング二重鎖siRNAを挙げることができ、具体的には、GGAGCCUGAUCAUCCAGCAtt及びUGCUGGAUGAUCAGGCUCCttのアニールしたもの(oh−siRNA1)、GCAGGCACUUCUCCCAGGAtt及びUCCUGGGAGAAGUGCCUGCttのアニールしたもの(oh−siRNA2)、GCAGUGCCUUCACUGUACUtt及びAGUACAGUGAAGGCACUGCttのアニールしたもの(oh−siRNA3)、ACACCAAGCUGACACCCAUtt及びAUGGGUGUCAGCUUGGUGUttのアニールしたもの(oh−siRNA4)、CCCUCAACCUUCUUCAUCAtt及びUGAUGAAGAAGGUUGAGGGttのアニールしたもの(oh−siRNA5)、UUUGAGAGACGAAGGAUACtt及びGUAUCCUUCGUCUCUCAAAttのアニールしたもの(oh−siRNA6)、GGAAACCUACAACAACAUCtt及びGAUGUUGUUGUAGGUUUCCttのアニールしたもの(oh−siRNA7)、並びにCAUCAACAUCAUCCAUGUCtt及びGACAUGGAUGAUGUUGAUGttのアニールしたもの(oh−siRNA8)を挙げることができる。
本発明のsiRNAの態様の1つとして、二重鎖RNA部分を形成する2つのRNA鎖が、ヘアピンループを形成することのできるRNA部分によって結合しているショートヘアピンRNA(short hairpin RNA;以下、shRNAと称する)が含まれる。shRNAは、二重鎖RNA部分を形成する前記センスRNA配列とアンチセンス配列が、ヘアピンループを形成することのできるRNA部分によって結合し、前記センスRNA配列とアンチセンス配列が二本鎖構造を形成している。ヘアピンループを形成するRNA部分の鎖長及び塩基配列は、ヘアピンループを形成することができるものである限り、限定されるものではないが、鎖長は好ましくは3〜23であり、より好ましくは、3から10であり、例えば、UUCAAGAGA、CUUCCUGUCA(配列番号30)、CCACC、CUCGAG、CCACACC、UUCAAGAGA、AUG、CCC及びUUCGからなる群より選択される少なくともひとつの塩基配列からなるRNAを挙げることができる。前記siRNA−6as及びsiRNA−6sの二重鎖RNA形成部分、siRNA−7as及びsiRNA−7sの二重鎖RNA形成部分、並びにsiRNA−8as及びsiRNA−8sの二重鎖RNA形成部分を含むshRNA(以下、それぞれshRNA6、shRNA7、及びshRNA8と称する)の例を表4に示す。
本発明のsiRNAは、公知の製造方法、例えば、化学合成、又は酵素合成法により製造することもできるし、あるいは、後述するように適当な発現ベクターに挿入し、遺伝子工学的に製造することもできる。
化学合成法としては、2’−ACE(2’−bis(acetoxymethoxy)−methylether)又は2’−TBDMS(2’−t−butyldimethylsillyl)等の保護基を用いた方法、酵素合成法としては、T7RNAポリメラーゼ等のRNAポリメラーゼを使用する方法を挙げることができる。化学合成法又は酵素合成法により合成された2本鎖RNAは、安定化や標識化のために、化学修飾基により修飾することができる。
本発明のDNAは、直鎖状DNAの形態で細胞内に導入され、細胞内でsiRNAを生成することができるものである。特に限定されないが、例えば、前記二本鎖オリゴヌクレオチド又はshRNAをコードするDNA部分の5’側に前記DNAの転写を制御することのできるプロモーターと、3’側にターミネーターとを含むDNAを挙げることができる。更に、このようなDNAをベクターに挿入し、本発明のベクターを作製することができる。以下に、本発明のDNA及びベクターについて、ベクターの作製に基づいて説明する。
前記二本鎖オリゴヌクレオチドを生成することのできるDNAの場合、センス鎖及びアンチセンス鎖を異なる2つのプロモーターの制御下に配置し、個別にセンス鎖及びアンチセンス鎖を転写することができる。これらのDNAをベクターに挿入する場合、(1)それぞれのDNAを順方向に配置するタンデムタイプ、(2)ベクターのセンス鎖にて機能するプロモーター下にsiRNAの一方のRNA鎖をコードするDNAが配置され、ベクターのアンチセンス鎖にて機能するプロモーター下にsiRNAのもう一方のRNA鎖をコードするDNAが配置される対向タイプ、及び(3)センス鎖を発現するDNAとアンチセンス鎖を発現するDNAを別々のベクターに挿入するセパレートタイプを挙げることができる。
また前記shRNAを生成することができるDNAの場合、shRNAの全長を発現することができるDNA、例えば、プロモーターの下流側にセンス鎖のRNAをコードする配列、ヘアピンループをコードする配列、アンチセンス鎖のRNAをコードする配列、ポリTストレッチ配列、及びストップコドンからなる塩基配列を順番に有するDNAを用いることができ、このDNAをベクターに挿入することができる。
プロモーターとしては、恒常的に発現するためのプロモーターでもよく、特定の条件下で発現するためのプロモーターでもよく、特に限定されないが、例えば、RNAポリメラーゼIII(pol III)プロモーター(Brummerlkamp,T.R., et al., Science, 297, 1352-1354, 2002)、U6プロモーター(a) Lee NS. et al., Nature Biotech. 20, 500-505, 2002;b) Miyagishi M. & Taira K., Nature Biotech. 20, 497-500, 2002;c)Paul CP. et al., Nature Biotech. 20, 505-508, 2002)、H1プロモーター(Brummelkamp TR et al: Science 296, 550-553, 2002)、tRNAプロモーター(Oshima K., et al., Cancer Research 63, 6809-6814, 15, 2003)などを挙げることができる。
本発明のベクターは、哺乳動物細胞内でMUC5ACのmRNAの発現を抑制することのできるsiRNAを発現させるためのベクターであり、前記細胞内で効率良くsiRNAを発現できるものであれば、骨格となるベクターは、特に限定されるものではない。前記骨格となるベクターとしては、例えば、プラスミドベクター、直鎖状2本鎖DNAベクター並びに、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター及びレンチウイルスベクター等のウイルスベクターを挙げることができる。
本発明のsiRNA、DNA及びベクターは、siRNAとして、又は後述の医薬組成物として、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法、又はカチオン脂質法を用いて目的の組織、又は細胞内に導入することが可能である。骨格となるベクターとして、ウイルスベクターを用いる場合は、目的の細胞へのウイルスベクターの感染によってsiRNAを導入することが可能である。
本発明のDNA又はベクターは、細胞内においてsiRNAを転写し、そのsiRNAが作用するものである。細胞内におけるsiRNAの発現は、一過的でも、安定的でも細胞内において有効に作用する。
《本発明のsiRNAの作用》
後述の実施例で示されているように、本発明のsiRNAであるoh−siRNA1〜oh−siRNA8は、膵臓癌細胞SW1990においてMUC5ACのmRNAの発現を特異的に抑制した。更に、本発明のsiRNAの1つの態様であるshRNA6は、MUC5ACが発現している膵臓癌細胞SW1990においてMUC5ACのmRNAの発現、及びMUC5ACのタンパク質の発現を顕著に抑制した。このshRNA6が安定的に転写されている膵臓癌細胞SW1990株(以下、SW1990si株と称することがある)は、コントロールのベクターが導入された膵臓癌細胞SW1990株(以下、SW1990mock株と称することがある)と比較すると、in vitroでの増殖能は変わらなかった。すなわち、MUC5ACに対するsiRNAであるshRNA6によって、膵臓癌細胞自体の増殖には影響がなかった。また、SW1990si株の接着性、遊走性、浸潤能なども、SW1990mock株と同じであった。
しかしながら、SW1990si株と、SW1990mock株とをヌードマウスに皮下移植した場合の増殖性は明らかに異なっており、SW1990mock株では移植後、腫瘍体積が急激に増加したが、SW1990si株では、腫瘍の体積は殆ど増加せず、増殖が抑制された。すなわち、MUC5ACに対するsiRNAは、生体内において膵臓癌細胞の増殖を抑制することが可能である。
本発明のsiRNAが、生体内で膵臓癌細胞の増殖を抑制することができる理由は、後述の実施例での解析により、以下のような理由が考えられる。しかしながら、本発明は以下の説明によって限定されるものではない。
通常生体内では、癌細胞に対する免疫反応が起こり、癌細胞を生体内から排除しようとする。しかしながら、MUC5ACを発現しているSW1990mock株では、MUC5ACにより、宿主の免疫機能が抑制され、癌細胞を排除することができない。一方、MUC5ACを発現していないSW1990si株では、宿主の免疫機能が抑制されないため、癌細胞の増殖が抑えられたものと考えられる。
具体的なMUC5ACの免疫抑制機能としては、以下の作用を挙げることができる。MUC5ACが発現したSW1990mock株では腫瘍表面と内部に僅かに顆粒球の存在が認められたが、SW1990si株では腫瘍内部への白血球の浸潤が観察された。これらの白血球は、主としてB細胞と顆粒球、単球/マクロファージなどであり、MUC5ACが、幅広い免疫担当細胞の活性を抑制していることが分かる。従って、顆粒球のうち90%以上を占める好中球による免疫活性もMUC5ACにより抑制される。
好中球は免疫担当細胞として、以下に詳述する重要な役割を果たしているが、本発明の医薬組成物、特に免疫抑制剤は、好中球の免疫活性を抑制することもできる。
好中球は主に細菌類の直接貪食や有莢膜細菌に対するオプソニン化後の貪食といった細菌に対する免疫のイメージが強いが、近年抗腫瘍作用を有することも報告されている。この好中球の抗腫瘍作用は、TNF related apoptosis inducing ligand(TRAIL)を介したアポトーシス誘導によることが知られている。TRAILは1995年にアポトーシス誘導能を持ち、TNFファミリー類似配列を持つサイトカインとして分離された。構造は281アミノ酸からなる約30kDaのII型細胞表面蛋白で、Fasリガンドと約28%のホモロジーがある。様々な悪性腫瘍に対して、アポトーシス誘導能を示すが、正常細胞に対しては、細胞毒性を示さないことが大きな特徴であり、分子標的治療薬として期待されている分子の一つである。受容体としては、TRAIL−R1(Death Recepter 4:DR4)、TRAIL−R2(Death Recepter 5:DR5)、TRAIL−R3(Decoy Receptor 1:DcR1)、TRAIL−R4(Decoy Receptor 2:DcR2)、Osterprotegerin(OPG)の5種類が存在する。DR4、5は細胞内にデスドメインを持ちアポトーシス誘導に関与する一方で、DcR1、2はデコイ受容体でありアポトーシスを誘導しない。悪性腫瘍のみにアポトーシス誘導能を示すのは、この受容体の発現の違いが原因とする説もあるが、詳細は分かっていない。また好中球におけるTRAILの発現は、他の血球細胞と比べて有意に高いことが知られている。
また、マクロファージとSW1990mock株、又はマクロファージとSW1990si株とを共培養することによって、マクロファージから産生されるPGE2量を調べた。PGE2産生量はSW1990si株との共培養時には、SW1990mock株の時の1/7〜1/10にまで減少していた。すなわち、MUC5ACは、マクロファージからのPGE2の産生を亢進させ、免疫抑制を起こしている。
更に、SW1990si株の移植されたマウスでは、膵臓癌細胞に対する特異抗体が産生されたが、SW1990mock株の移植されたマウスでは、膵臓癌細胞に対する特異抗体は、ほとんど産生されなかった。すなわち、MUC5ACは、B細胞の抗体産生作用を抑制している。
以上のことから、siRNAによりMUC5ACの発現を抑制することによって、MUC5ACによって抑制される宿主の免疫機能を誘導(回復)することができ、膵臓癌細胞の生体内での増殖を抑制することが可能であると考えられる。
前記のように、本発明者はMUC5ACが宿主の免疫機能を抑制することで、免疫細胞からの攻撃を逃れ、癌細胞自身の増殖に適した環境を作り上げていることを見出した。すなわち、MUC5ACの免疫抑制作用が、(a)白血球(特には、好中球、B細胞、及びマクロファージ)の癌組織への浸潤の抑制、(b)B細胞の抗体産生の抑制、(c)単核球及び多核球の細胞障害活性の抑制、(d)マイトジェン活性の抑制、(e)プロスタグランジンE2の産生亢進、及び(f)TRAILを介するアポトーシスの抑制などによるものであり、幅広い免疫担当細胞に対して効果があることを見出した。
従って、本明細書は、ムチン5サブタイプACを有効成分として含む、医薬組成物を開示する。
また、本明細書は、ムチン5サブタイプACを有効成分として含む、免疫抑制剤を開示する。
前記免疫抑制剤の好ましい態様においては、白血球の機能を抑制する。
前記免疫抑制剤の好ましい態様においては、マイトジェン活性を抑制する。
前記免疫抑制剤の好ましい態様においては、プロスタグランジンの産生を亢進する。
前記免疫抑制剤の好ましい態様においては、B細胞の抗体産生を抑制する。
前記免疫抑制剤の好ましい態様においては、単核球及び多核球の細胞障害活性を抑制する。
前記免疫抑制剤の好ましい態様においては、アポトーシスを抑制する。
前記免疫抑制剤によれば、(1)臓器移植における移植臓器に対する拒絶反応の予防及び治療、(2)自己免疫疾患の予防及び治療、並びに(3)アレルギー性喘息の予防及び治療が可能である。前記医薬組成物、特に免疫抑制剤は、幅広い免疫担当細胞に対して抑制効果を有するため、免疫を抑制することによって改善する多様な疾患に対して効果がある。更に、前記免疫抑制剤の有効成分であるMUC5ACは、元来、生体内に存在する糖たんぱく質であるため、従来の免疫抑制剤、例えば、サイクロスポリンAで問題となっていた腎障害、細動脈障害、高血圧、糖尿病、及び高脂血症などの副作用が見られない。
前記医薬組成物、特に免疫抑制剤は、幅広い免疫担当細胞の機能を抑制することが可能であるので、例えば、自己免疫疾患を含む、免疫が関与していると考えられる疾患の治療又は予防に有用である。このような対象疾患としては、例えば、全身性エリセマトーデス、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎又はクローン病)、多発性硬化症、乾癬、慢性肝炎、膀胱ガン、乳ガン、子宮頸部ガン、慢性リンパ性白血症、慢性骨髄性白血病、大腸ガン、結腸ガン、直腸ガン、ヘリコバクターピロリ感染症、ホジキン病、インスリン依存性糖尿病、悪性黒色腫、多発性骨髄腫、非ホジキン性リンパ腫、非小細胞肺ガン、卵巣ガン、消化性潰瘍、前立腺ガン、敗血症ショック、結核、不妊症、動脈硬化、ベーチュット病、喘息、アトピー性皮膚炎、腎炎、全身性真菌感染症、急性バクテリア髄膜炎、急性心筋梗塞、急性膵炎、急性ウイルス脳炎、成人呼吸促迫症候群、バクテリア肺炎、慢性膵炎、単純ヘルペスウイルス感染症、水痘−帯状疱疹ウイルス感染症、AIDS、ヒトパピローマウイルス感染症、インフルエンザ、侵襲性ブドウ状球菌感染症、末梢血管疾患、敗血症、間質性肝疾患、時局性回腸炎、又は多発性硬化症などを挙げることができる。
2.siRNAが導入された細胞を用いた薬剤スクリーニング
本発明のノックダウン細胞及びMUC5AC発現細胞(例えば、ノックダウン株の親株)を用いると、試験物質がMUC5ACを発現した細胞の増殖(例えば、抑制又は促進)、浸潤能、走化性、接着性又は形態などを修飾するか否かをスクリーニングすることができる。すなわち、MUC5AC発現細胞及びノックダウン細胞と、試験物質とを接触させることにより、試験物質がネイティブなMUC5ACに結合するか否かをスクリーニングすることが可能である。更に、MUC5AC発現細胞及びノックダウン細胞の反応を比較することにより、試験物質がネイティブなMUC5ACに結合し、MUC5AC発現株の増殖、浸潤能、走化性、接着性又は形態などが影響を受けるか否かをスクリーニングすることができる。
本発明のスクリーニング方法にかけることのできる試験物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、ケミカルファイルに登録されている種々の公知化合物(ペプチドを含む)、コンビナトリアル・ケミストリー技術[Terrett, N. K. ら, Tetrahedron, 51, 8135-8137 (1995)]又は通常の合成技術によって得られた化合物群、ファージ・ディスプレイ法[Felici, F. ら, J. Mol. Biol., 222, 301-310 (1991)]などを応用して作製されたランダム・ペプチド群を用いることができる。また、微生物の培養上清、植物若しくは海洋生物由来の天然成分、又は動物組織抽出物などもスクリーニングの試験物質として用いることができる。更には、本発明のスクリーニング方法により選択された化合物(ペプチドを含む)を、化学的又は生物学的に修飾した化合物(ペプチドを含む)を用いることができる。
まず、MUC5AC発現株及びノックダウン株は、試験物質のネイティブなMUC5ACへの結合のスクリーニングに用いることが可能である。試験物質が、ネイティブな抗原構造に結合するか否かの評価においては、目的抗原を発現していない細胞に目的抗原を過剰発現させた細胞を用いて評価するのが一般的である。しかしながら、MUC5ACのような超高分子糖タンパク質の場合、細胞に全長のタンパク質を高発現させることは容易ではない。従って、MUC5AC高発現細胞株に対してsiRNAを導入した本発明のMUC5ACをノックダウンした細胞を陰性コントロールとして用い、ネイティブなMUC5ACとの結合を検討することが好ましい。
更に、本発明のスクリーニング方法においては、MUC5AC発現株及びノックダウン株と、試験物質とを接触させ、前記試験物質の存在下における、MUC5AC発現株の増殖への影響を分析することにより、前記試験物質が、MUC5AC発現株の増殖、浸潤能、走化性、接着性又は形態などを修飾するか否かを判断することができる。例えば、試験物質の不在下におけるMUC5AC発現株の増殖と比較して、試験物質の存在下における前記MUC5AC発現株の増殖が減少する場合には、前記試験物質が、MUC5AC発現株の増殖を抑制又は阻害すると判断することができる。一方、MUC5AC発現株の増殖が上昇する場合には、前記試験物質が、MUC5AC発現株の増殖を促進すると判断することができる。このような試験物質のMUC5AC発現株の増殖への影響は、MUC5ACの発現が抑制されたノックダウン株では、見られないはずであり、ノックダウン株は陰性コントロールとして用いることができる。
3.本発明の医薬組成物
本発明の医薬組成物は、有効成分として本発明のsiRNA、本発明のDNA、又は本発明のベクターを含むことができる。
本発明のsiRNA、あるいは、本発明のsiRNAを投与対象内で転写可能なDNA又はベクターは、それ単独で、あるいは、好ましくは薬剤学的又は獣医学的に許容することのできる通常の担体又は希釈剤と共に、MUC5ACの発現が関与する細胞増殖を伴う疾患の治療及び/又は予防が必要な対象[例えば、動物、好ましくは哺乳動物(特にはヒト)]に、有効量で投与することができる。例えば、本発明のsiRNA、あるいは、本発明のsiRNAを投与対象内で転写可能なDNA又はベクターは、それ単独で、あるいは、好ましくは薬剤学的又は獣医学的に許容することのできる通常の担体又は希釈剤と共に、MUC5ACの発現細胞の生体内での増殖を抑制することにより、癌、特には、膵臓癌を治療することができる。また、喘息においては、細胞内でのMUC5ACの発現を抑制し、MUC5ACの分泌を抑制することにより、症状を改善することができる。
本発明の医薬組成物の対象となる疾患は、MUC5ACの過剰発現を伴う疾患であり、具体的には癌及び喘息を挙げることができる。癌の種類は、特に限定されることはないが、例えば、膀胱癌、乳癌、結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、小細胞肺癌、食道癌、胆嚢癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、子宮頸部癌、甲状腺癌、前立腺癌、扁平上皮癌、皮膚癌、骨癌、リンパ腫、白血病及び脳腫瘍を挙げることができる。本発明の医薬組成物は、特には膵臓癌、肺癌、乳癌、胃癌、子宮頸癌、及び大腸癌を効率よく治療することができる。
本発明の医薬組成物の投与剤型としては、特に限定がなく、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、エキス剤、若しくは丸剤等の経口剤、又は注射剤、外用液剤、軟膏剤、坐剤、局所投与のクリーム、若しくは点眼薬などの非経口剤を挙げることができる。
これらの経口剤は、例えば、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、澱粉、コーンスターチ、白糖、乳糖、ぶどう糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、大豆レシチン、ショ糖、脂肪酸エステル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸、又は合成ケイ酸アルミニウムなどの賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、希釈剤、保存剤、着色剤、香料、矯味剤、安定化剤、保湿剤、防腐剤、又は酸化防止剤等を用いて、常法に従って製造することができる。
非経口投与方法としては、注射(皮下、静脈内等)、又は直腸投与等が例示される。これらのなかで、注射剤が最も好適に用いられる。
例えば、注射剤の調製においては、有効成分の他に、例えば、生理食塩水若しくはリンゲル液等の水溶性溶剤、植物油若しくは脂肪酸エステル等の非水溶性溶剤、ブドウ糖若しくは塩化ナトリウム等の等張化剤、溶解補助剤、安定化剤、防腐剤、懸濁化剤、又は乳化剤などを任意に用いることができる。
また、本発明の医薬組成物は、徐放性ポリマーなどを用いた徐放性製剤の手法を用いて投与してもよい。例えば、本発明の医薬組成物をエチレンビニル酢酸ポリマーのペレットに取り込ませて、このペレットを治療又は予防すべき組織中に外科的に移植することができる。
本発明の医薬組成物は、これに限定されるものではないが、0.01〜99重量%、好ましくは0.1〜80重量%の量で、有効成分を含有することができる。
本発明の医薬組成物を用いる場合の投与量は、例えば、使用する有効成分の種類、病気の種類、患者の年齢、性別、体重、症状の程度、又は投与方法などに応じて適宜決定することができ、経口的に又は非経口的に投与することが可能である。
また、投与形態も医薬品に限定されるものではなく、種々の形態、例えば、機能性食品や健康食品(飲料を含む)、又は飼料として飲食物の形で与えることも可能である。
以下に実施例及び比較例を示し本発明の具体的な説明を行うが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
《実施例1:オーバーハング二重鎖siRNAによるMUC5ACの発現抑制》
MUC5ACの発現している膵臓癌細胞株SW1990に、19merのRNAの3’末端にttを付加したオーバーハング二重鎖siRNAを導入し、MUC5ACの発現の抑制を検討した。標的mRNA領域1〜8に対応する8つのオーバーハング二重鎖siRNAの配列を表5に示す。
表5に示すoh−siRNA1〜oh−siRNA8のそれぞれの1本鎖のRNAを、定法により合成した。合成したセンスRNA及びアンチセンスRNAにアニーリングバッファーを添加し、95℃で1分処理した後、37度で1時間保温し、アニーリングさせ、それをSW1990株へのトランスフェクションに用いた。
SW1990株を2×10/wellで6wellプレートに播種し、50−90%コンフルエントになるまで培養した。無血清DMEM培地250μLに、最終濃度が1μMになるようにsiRNAを添加した(A溶液)。無血清DMEM培地250μLにLipofectamin2000(インビトロジェン社)を5μL加え室温で5分間インキュベートした(B溶液)。A溶液とB溶液を混合し室温で更に20分間インキュベート後、2mLの血清を含むDMEM培地を加え、全量2.5mLを細胞に添加した。48時間培養後、細胞を回収した。
oh−siRNA1〜oh−siRNA8を導入したSW1990株におけるMUC5ACの発現は、RT−PCRによって検討した。回収したSW1990株からRNeasy Mini Kit(QIAGEN)を用いてトータルRNAを抽出、及び精製した。MUC5ACの塩基配列に特異的なセンスプライマー5’−GCCACCGCTGCGGCCTTCTTC−3’(配列番号26)及びアンチセンスプライマー5’−GTGCACGTAGGAGGACAGCGC−3’(配列番号27)を使用し、SuperScript III First Strand Synthesis System(Invitrogen社)に添付の使用説明書に従い、RT−PCRを行い、MUC5AC mRNAの転写を検討した。コントロールとして、GAPDHの塩基配列に特異的なセンスプライマー5’−TCCTGCACCACCAACTGCTTAG−3’、(配列番号28)及びアンチセンスプライマー及び5’−TCTTACTCCTTGGAGGCCATGT−3’(配列番号29)を用い、GAPDHのmRNAを測定した。
図1に示すように、siRNAをトランスフェクションしていないSW1990細胞株に比べて、siRNAをトランスフェクションしたSW1990細胞株においては、MUC5ACのmRNAの発現抑制が認められた。特にoh−siRNA1及びoh−siRNA6で、mRNAの抑制が強かった。
《実施例2:shRNA6、shRNA7、及びshRNA8をコードするプラスミドベクターの構築》
(A)前記標的mRNA領域6、7、及び8に対応するshRNA6、shRNA7、及びshRNA8を転写するベクターを構築するために、shDNA6−1(配列番号13)及びshDNA6−2(配列番号14)、shDNA7−1(配列番号18)及びshDNA7−2(配列番号19)、並びにshDNA8−1(配列番号23)及びshDNA8−2(配列番号24)のDNAを常法により合成した。
shRNA6のセンス鎖:GATCCGTTTGAGAGACGAAGGATACTTCAAGAGAGTATCCTTCGTCTCTCAAATTTTTTGGAAA(配列番号13)、アンチセンス鎖:AGCTTTTCCAAAAAATTTGAGAGACGAAGGATACTCTCTTGAAGTATCCTTCGTCTCTCAAACG(配列番号14)、shRNA7のセンス鎖:GATCCGGAAACCTACAACAACATCTTCAAGAGAGATGTTGTTGTAGGTTTCCTTTTTTGGAAA(配列番号18)、アンチセンス鎖:AGCTTTTCCAAAAAAGGAAACCTACAACAACATCTCTCTTGAAGATGTTGTTGTAGGTTTCCG(配列番号19)、shRNA8のセンス鎖:GATCCGCATCAACATCATCCATGTCTTCAAGAGAGACATGGATGATGTTGATGTTTTTTGGAAA(配列番号23)、アンチセンス鎖:AGCTTTTCCAAAAAACATCAACATCATCCATGTCTCTCTTGAAGACATGGATGATGTTGATGCG(配列番号24)
shDNA6−1(配列番号13)は、ヒトMUC5ACmRNAの塩基配列の一部に相同的な塩基配列からなるRNA(センス鎖)をコードするDNAと、前記塩基配列に相補的なRNA(アンチセンス鎖)をコードするDNAと、これらのDNAの間にループ部分のRNAをコードするDNAを含む。更に、shDNA6−1は、前記のセンス鎖とループ部分とアンチセンス鎖からなるDNAの3’側に、RNAポリメラーゼIIIターミネーターをコードするDNAを、センス鎖5’末端に転写効率を上げるため、一塩基“g”を含む。また、ベクターpSilencer 3.1 neo(Ambion社)に挿入するために、5’末端側にBamH Iサイトと3’末端側にHind IIIサイトが存在する。shDNA6−2の塩基配列(配列番号14)は、制限酵素サイト以外はshDNA6−1(配列番号13)の塩基配列に相補的で、5’末端側にBamH Iサイトと3’末端側にHind IIIサイトが存在するDNAである。すなわち、shDNA6−1とshDNA6−2をアニーリングさせて、BamH IとHind IIIとで消化後、同制限酵素にて消化済みのpSilencer 3.1 neoベクターの切断部位に連結させ、shRNA6をコードするDNAを含有するベクター(以下、shRNA6ベクターと称する)を得た。
また、shDNA6−1及びshDNA6−2に代えて、shDNA7−1及びshDNA7−2、又はshDNA8−1及びshDNA8−2を使用した以外は、同様の操作を繰り返し、shRNA7ベクター、及びshRNA8ベクターを得た。
《実施例3:shRNA6ベクターの膵臓癌細胞株SW1990への導入によるMUC5ACノックダウン細胞株の作出》
(A)膵臓癌細胞株SW1990に、実施例2で作製した3つのベクターのうち、SW1990株への一過性の発現の効率がよいoh−siRNA6に対応するshRNA6ベクターをトランスフェクションした。
膵臓癌細胞株SW1990は、10%ウシ胎児血清含有RPMI1640(100U/mLペニシリンと100μg/mLストレプトマイシン添加;以下、完全RPMI1640培地と称する)中で37℃、5%CO環境下で培養及び維持した。それぞれの細胞を直径10cmの細胞培養ディッシュに1×10個播き、24時問後、細胞が70〜90%コンフルエントの状態とした。shRNA6ベクター11.2μgをLipofectamine 2000(インビトロジェン社)56μLに溶解し、細胞の入ったディッシュに添加し、37℃にて培養した。24時問後に前記の完全RPMI1640培地にGENETICIN(G418;GIBCO社)を最終濃度400μg/mLになるように加えた培地に置換した。
(B)前記G418でのセレクションにより、shRNA6が安定的に転写されるSW1990si株を取得した。また、コントロールとして、shRNA6ベクターの代わりにpSilencer3.1neoを用いた以外は、同様の操作を繰り返し、SW1990mock株を取得した。
《実施例4:SW1990si株におけるMUC5ACのmRNAの転写及びMUC5ACの発現》
SW1990si株におけるMUC5ACのmRNAの転写をRT−PCRによって検討した。
SW1990si株からRNeasy Mini Kit(QIAGEN)を用いてトータルRNAを抽出、及び精製したことを除いては、実施例1のRT−PCRの操作を繰り返し、MUC5AC及びGAPDHのmRNAを測定した。
図2に示すように、SW1990si株では、SW1990mock株と比べて有意に発現の抑制が見られた。
タンパク質レベルでのMUC5ACの発現は、FACS(Fluorescence Activated Cell Sorting)により評価した。10cells/50μLに調整されたそれぞれの細胞に1μgの抗MUC5AC抗体(M5#1)を加え、氷上で30分間インキュベートした。非結合抗体を洗浄後、anti−mouse IgG−FITCを加え、更に氷上で30分間インキュベートした。非結合抗体を洗浄後、FACSによる解析を行った。
図3に示すようにSW1990mock株では確認されていたシフト(抗体が細胞に結合した)が、SW1990si株では全く確認出来なかった。従って、これらの結果から、SW1990si株はsiRNAにより、遺伝子レベル及びタンパク質レベルにおいて、MUC5ACがノックダウンされ、MUC5ACの発現が消失していることが確認できた。
《実施例5:siRNAによるin vitroでの細胞増殖の検討》
本実施例5では、前記SW1990si株及びSW1990mock株のin vitroでの増殖能をMTTアッセイによって検討した。
SW1990si株及びSW1990mock株を10cells/wellで96wellプレートに播種後、0、1、2、3、4、7日目にそれぞれMTT試薬(同仁化学研究所)を加え、3時間インキュベートした。培地を除去後、100μLのDMSOを加え、570−630nmの吸光度を測定した。
図4に示すように、SW1990si株及びSW1990mock株ともに、1日目、2日目、3日目では、同様の速度で増殖し、4日目以降はコンフレントになり、共に細胞増殖は停止した。すなわち、SW1990si株及びSW1990mock株において、in vitroでは、細胞の増殖速度に違いは見られなかった。
従って、siRNAによるMUC5ACの転写の抑制は、in vitroにおいては、癌細胞の増殖に影響を与えなかった。
《実施例6:siRNAによるin vivoでの細胞増殖の検討》
本実施例6では、前記SW1990si株及びSW1990mock株のin vivoでの増殖能を、ヌードマウスへの移植により検討した。
SW1990si株及びSW1990mock株を10cells/匹でヌードマウス(n=10)に皮下移植後、経時的に腫瘍径と体重を測定し評価した。腫瘍体積は、以下の式を用いて算出した。
《式1》
腫瘍体積=長径×(短径)×0.5236
SW1990mock株では移植後7、18、26、32、38、41日目の腫瘍体積が、それぞれ157、163、316、575、1177、1598mmで26日目以降経時的に増加した(図5)。一方、SW1990si株では腫瘍体積がそれぞれ137、109、159、143、120、181mmであり、ほとんど増加を示さなかった(図5)。
次に、SW1990mock株又はSW1990si株を10cells/匹でヌードマウスに尾静脈投与し、肺転移について検討した。SW1990si株とSW1990mock株投与の3ヶ月間飼育後に剖検を行い、肺の組織表面の転移個数を肉眼で評価した。SW1990mock株移植群では転移数にバラツキがあるものの、ほぼ全ての個体で肺転移が確認できたが、SW1990si株移植群では全ての個体で転移が確認できなかった(表6)。
siRNAは、膵臓癌の細胞の増殖を直接抑制することはできないが、生体内において膵臓癌細胞の増殖を抑えている。また、静脈内投与によって、肺における膵臓癌細胞の転移が見られなかったことから、本発明のsiRNAは、膵臓癌の増殖を抑え、転移を抑制することもできる。
《実施例7:siRNAによる白血球の機能の誘導(回復)》
本実施例7では、siRNAにより、膵臓癌細胞SW1990に対する免疫機能が誘導されることをHE染色及び免疫染色によって検討した。
皮下移植41日目のSW1990si株及びSW1990mock株が投与されたマウスの腫瘍組織切片を中性ホルマリン液で固定化後、定法により組織切片スライドを作製した。得られたスライドにHE染色を行った。図6に示すように、mock株移植群では皮下付近で白血球の点在(赤丸部分)が確認できたが、腫瘍内部までの白血球の集積はみられなかった。一方、si株移植群では皮下付近のみならず、腫瘍内部にまで白血球の集積が多数認められた。
腫瘍に集積した白血球について、前記組織切片スライドを免疫染色し解析した。顆粒球、及びB細胞に対する一次抗体には、それぞれラット抗マウスGr−1抗体、ラット抗マウスCD45R/B220抗体、及びラット抗マウスF4−80抗体(それぞれ1μg/mL)を用いた。二次抗体にはanti−rat IgG−HRP(0.1μg/mL)を用い、DAB(DAKO Japan)を基質として発色を行った。その後、ヘマトキシニンによる核染色を行った。SW1990si株の腫瘍組織には、多数の顆粒球、B細胞及びマクロファージの集積が認められた(図7)。一方、SW1990mock株の腫瘍組織にも僅かに免疫細胞の集積が認められたが、その数はsi株移植腫瘍に比べ著しく少なかった(図7)。
従って、siRNAは白血球、特には、B細胞、顆粒球、及びマクロファージの膵臓癌SW1990に対する免疫機能を誘導することがわかった。
《実施例8:siRNAによる膵臓癌細胞SW1990に対する特異抗体の産生》
MUC5ACによる抗体産生の抑制作用を検討した。SW1990mock株又はSW1990si株移植マウスの血液を採取後、ELISA法にて総IgG濃度を測定し、FACSに用いるために濃度を調整した。FACSは、全匹数分(n=10)を混和した抗体をPK45P細胞(MUC5AC陰性膵臓癌細胞株)10個当たり1μg用いて実施例2に記載のFACSと同様の方法で行った。
図8に示すように、SW1990mock株に比べて、SW1990si株移植群では染色された細胞が多く、ピークが右側にシフトしていた。すなわち、SW1990si株移植群では、ヒト細胞に対する高力価の抗体が産生されていたが、SW1990mock株が投与されてマウスでは、抗体産生が抑制されており、siRNAにより膵臓癌細胞に対する抗体の産生が見られた。
《実施例9》
本実施例9では、SW1990si株の移植されたマウスで誘導されたSW1990に対する免疫が、SW1990mock株に対しても有効であるか否かを検討した。具体的には、SW1990si株を移植し免疫が誘導されたマウスに、更に、SW1990mock株を移植した。
SW1990si株を1×10cells/匹でヌードマウスに皮下移植(右側)して、35日後に逆側(左側)に1×10cells/匹でSW1990mock株を皮下移植して、腫瘍形成を観察した。図9に示すように、無処置群(コントロール群)におけるSW1990mock株の腫瘍体積は、移植14、21、28、35、42、49、56日目でそれぞれ54、82、137、300、707、2131、3368mmであった。一方、SW1990si株移植群では、SW1990mock株の腫瘍体積が、それぞれ17、11、17、45、110、475、619mmに留まった。すなわち、一回目に移植したSW1990si株により、マウス個体で免疫が誘導され、その免疫によりSW1990mock株の増殖が抑制されたと考えられる。
《実施例10:siRNAによる免疫抑制の防止》
siRNAにより、MUC5ACの発現がノックダウンされることにより、膵臓癌細胞が移植されたマウスにおける免疫抑制が防止される1つの機構として、MUC5ACのマクロファージからのPGE2産生に与える影響を検討した。
ヒト単球系前駆細胞U937株を10cells/wellで12wellプレートに播種後、50nM phorbol myristate acetate(PMA)存在下でマクロファージに分化させた。48時間後、培地をPMAフリーの培地に交換し、更に24時間インキュベートした。その後、それぞれのウェルにSW1990mock株又はSW1990si株をそれぞれ10、5×10cells/wellずつ播種し、24時間の共培養後、培養上清のPGE2量をPGE2 EIA kit(Cayman Chemical Company)で測定した。結果を図10に示す。
U937細胞株単独ではPGE2の産生が36pg/mLと殆ど産生されないが、SW1990mock株との共培養群では1×10cellsの時に1670pg/mL、5×10cellsの時に2965pg/mLと細胞数依存的に優位に増加した。一方、SW1990si株と共培養されたU937細胞株からは、1×10cellsの時に167pg/mL、5×10cellsの時に408pg/mLであり、産生量は非常に低かった。また、mock株単独の場合、1×10cellsと5×10cellsの時にそれぞれ190pg/mLと319pg/mL、SW1990si株単独の場合、それぞれ190pg/mLと214pg/mLであった。
従って、MUC5ACの発現しているSW1990mock株と、マクロファージを培養することにより、マクロファージによるPGE2の産生が亢進し、免疫抑制が起こっていることが考えられた。一方、SW1990si株では、MUC5ACが発現していないため、免疫抑制が起こらず、SW1990si株の増殖が抑えられているものと考えられた。
《実施例11:SW1990si株に対する単核球及び多核球の細胞障害活性》
本実施例11は、SW1990si株を標的細胞とした健常ヒト末梢血の細胞障害活性を51Crリリース法で検討した。10/wellの51Crラベルしたmock株又はsi株(ターゲット細胞)と2.5×10/wellの単核球又は多核球(エフェクター細胞)とを共培養し、24時間後、ターゲット細胞より遊離した培養上清中の51Crを測定した。その結果、単核球及び多核球ともに、SW1990mock株に対してよりもSW1990si株に対して強い細胞障害活性を示すことがわかった。すなわち、siRNAによりMUC5ACの発現が減少したSW1990si株に対して単核球及び多核球の細胞障害活性が亢進していることが分かった(図11)。
《実施例12:MUC5AC発現細胞からのMUC5ACの分離及び精製》
SW1990細胞株を遠心分離にて集め、RIPA buffer(Santa Cruz Biotechnology)により細胞成分を抽出した。SW1990細胞株由来の細胞抽出液を限外濾過膜(MW:10万)で濃縮後、Sephacryl S−200カラム、Sephacryl S−400カラム、Sepharose 4Bカラムによる分画を行った。MUC5AC画分の分取は、抗MUC5AC抗体、抗シアリルTn抗体、抗シアリルスイスA抗体を用いたELISA並びにsi株のクロマトとの比較により進め、約95%の純度のMUC5ACを得た。
《実施例13:MUC5ACによるマイトジェン活性の抑制》
C3H/HeN由来の脾細胞を溶血後、RPMI培地(10%FBS、5×10−5Mメルカプトエタノール)に5×10/mLで懸濁し、100μLずつ96ウェルプレートに撒いた(5×10/well)。各ウェルにマイトジェンとしてコンカナバリンA(ConA)を5μg/mLと、MUC5AC又はサイクロスポリンAとを種々の濃度で加え、各ウェルの最終用量を200μLとした。96ウェルプレ−トは、湿度100%、二酸化炭素5%、空気95%に保持された培養器内で37℃、48時間培養した。細胞数はMTTアッセイにより測定した。その結果、図12に示されるようにMUC5ACは濃度依存的にリンパ球のマイトジェン活性を抑制した。サイクロスポリンAの分子量が約1200で、MUC5ACの分子量が数百万〜一千万である事を加味すると、MUC5ACの免疫抑制作用はサイクロスポリンAに匹敵するものと考えられた。
本発明の医薬組成物は、癌、特には膵臓癌、及び喘息の予防及び治療に用いることができる。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。
【0008】
[図5]SW1990mock株及びSW1990si株(MUC5ACノックダウン株)をヌードマウスに皮下移植した場合の、生体内での増殖を示す図である。
[図6]SW1990mock株及びSW1990si株(MUC5ACノックダウン株)を皮下移植した場合の腫瘍組織内への白血球の浸潤をHE染色により示した図である。(A)がmock株を、(B)がsi株を示す。
[図7]SW1990mock株及びSW1990si株(MUC5ACノックダウン株)を皮下移植した場合の腫瘍組織内へのB細胞、顆粒球、及びマクロファージの浸潤を免疫染色により示した図である。(A)がSW1990mock株における好中球の浸潤、(B)がsi株における好中球の浸潤、(C)がmock株におけるB細胞の浸潤、(D)がsi株におけるB細胞、(E)がmock株におけるマクロファージの浸潤、(F)がsi株におけるマクロファージの浸潤を示す。
[図8]SW1990mock株及びSW1990si株(MUC5ACノックダウン株)を皮下移植した場合の、siRNAによるB細胞の抗体産生を示すFACS解析である。
[図9]SW1990si株を移植されたマウスに、更にSW1990mock株を移植した場合の、生体内での増殖を示す図である。
[図10]MUC5ACの発現したSW1990mock株による、マクロファージからのPGE2の産生を示すグラフである。
[図11]ターゲット細胞としてSW1990mock株及びSW1990si株を用いた場合の、単核球及び多核球の細胞障害活性を示すグラフである。
発明を実施するための形態
[0018]
以下、本発明を詳細に説明する。
1.本発明のsiRNA、DNA及びベクター
本発明のsiRNAは、二重鎖のRNA部分を有し、MUC5ACのmR
【0036】
濃縮後、Sephacryl S−200カラム、Sephacryl S−400カラム、Sepharose 4Bカラムによる分画を行った。MUC5AC画分の分取は、抗MUC5AC抗体、抗シアリルTn抗体、抗シアリルスイスA抗体を用いたELISA並びにsi株のクロマトとの比較により進め、約95%の純度のMUC5ACを得た。
[0080]
《実施例13:MUC5ACによるマイトジェン活性の抑制》
C3H/HeN由来の脾細胞を溶血後、RPMI培地(10%FBS、5×10−5Mメルカプトエタノール)に5×10/mLで懸濁し、100μLずつ96ウェルプレートに撒いた(5×10/well)。各ウェルにマイトジェンとしてコンカナバリンA(ConA)を5μg/mLと、MUC5AC又はサイクロスポリンAとを種々の濃度で加え、各ウェルの最終用量を200μLとした。96ウェルプレートは、湿度100%、二酸化炭素5%、空気95%に保持された培養器内で37℃、48時間培養した。細胞数はMTTアッセイにより測定した。その結果、MUC5ACは濃度依存的にリンパ球のマイトジェン活性を抑制した。サイクロスポリンAの分子量が約1200で、MUC5ACの分子量が数百万〜一千万である事を加味すると、MUC5ACの免疫抑制作用はサイクロスポリンAに匹敵するものと考えられた。
産業上の利用可能性
[0081]
本発明の医薬組成物は、癌、特には膵臓癌、及び喘息の予防及び治療に用いることができる。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。

Claims (21)

  1. ムチンサブタイプ5ACのmRNAを、RNA干渉を介して開裂することのできるsiRNA。
  2. 前記RNA干渉の標的mRNA領域が、配列番号1で表される塩基配列からなるmRNA、配列番号3で表される塩基配列からなるmRNA、配列番号5で表される塩基配列からなるmRNA、配列番号7で表される塩基配列からなるmRNA、配列番号9で表される塩基配列からなるmRNA、配列番号11で表される塩基配列からなるmRNA、配列番号16で表される塩基配列からなるmRNA、及び配列番号21で表される塩基配列からなるmRNA、からなる群から選択されるmRNA領域である、請求項1に記載のsiRNA。
  3. 前記siRNAの二重鎖RNA部分の長さが15〜40ヌクレオチドである請求項1又は2に記載のsiRNA。
  4. 前記siRNAの二重鎖RNA部分のアンチセンスRNA鎖が、前記標的mRNA領域の塩基配列に相補的な塩基配列からなるRNA部分を含むか、又は前記標的mRNA領域の塩基配列に相補的な塩基配列において、1〜9個の塩基が欠失、置換、若しくは付加された塩基配列からなるRNA部分を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のsiRNA。
  5. 前記siRNAの二重鎖RNA部分のアンチセンスRNA鎖が、前記標的mRNA領域の塩基配列に相補的な塩基配列における連続する少なくとも9塩基の塩基配列からなるRNA部分を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のsiRNA。
  6. 二重鎖RNA部分のアンチセンスRNA鎖が、配列番号2で表される塩基配列からなるRNA、配列番号4で表される塩基配列からなるRNA、配列番号6で表される塩基配列からなるRNA、配列番号8で表される塩基配列からなるRNA、配列番号10で表される塩基配列からなるRNA、配列番号12で表される塩基配列からなるRNA、配列番号17で表される塩基配列からなるRNA、及び配列番号22で表される塩基配列からなるRNA、からなる群から選択されるRNAである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のsiRNA。
  7. 前記siRNAの二重鎖RNA部分において、
    (a)二重鎖RNA部分を形成する2つのRNA鎖が、ヘアピンループを形成することのできるRNA部分によって結合しているshRNA、
    (b)二重鎖RNA部分の末端が平滑である二本鎖ヌクレオチド、又は
    (c)二重鎖RNA部分を形成する2つのRNA鎖の一方又は両方の3’末端に、デオキシリボヌクレオチド及び/又はリボヌクレオチドが結合し、突出末端を形成している二本鎖オリゴヌクレオチド、
    である請求項1〜6のいずれか一項に記載のsiRNA。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のsiRNAをコードするDNA部分と、その5’側に前記DNAの転写を制御することのできるプロモーターと、前記siRNAをコードするDNAの3’側にターミネーターとを含むDNA。
  9. 請求項8に記載のDNAを含むベクター。
  10. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のsiRNA、請求項8に記載のDNA、及び請求項9に記載のベクターからなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含む、医薬組成物。
  11. MUC5ACの過剰発現を伴う疾患の治療用である請求項10に記載の医薬組成物。
  12. MUC5ACの過剰発現を伴う疾患が、癌又は喘息である請求項11に記載の医薬組成物。
  13. 前記癌が、膵臓癌、肺癌、乳癌、胃癌、子宮頸癌、及び大腸癌である請求項12に記載の医薬組成物。
  14. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のsiRNA、請求項8に記載のDNA、及び請求項9に記載のベクターからなる群から選択される少なくとも1つを、MUC5ACの過剰発現を伴う疾患の治療が必要な対象に、有効量で投与することを含む、MUC5ACの過剰発現を伴う疾患を治療する方法。
  15. MUC5ACの過剰発現を伴う疾患の治療用医薬としての、請求項1〜7のいずれか一項に記載のsiRNA。
  16. MUC5ACの過剰発現を伴う疾患の治療用医薬としての、請求項8に記載のDNA。
  17. MUC5ACの過剰発現を伴う疾患の治療用医薬としての、請求項9に記載のベクター。
  18. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のsiRNA、請求項8に記載のDNA、及び請求項9に記載のベクターからなる群から選択される少なくとも1つの、MUC5ACの過剰発現を伴う疾患の治療用医薬組成物を製造するための使用。
  19. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のsiRNAにより、MUC5ACの発現をノックダウンした細胞。
  20. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のsiRNAによりMUC5ACの発現をノックダウンした細胞、及びMUC5ACの発現した細胞を用いた、薬剤のスクリーニング方法。
  21. 前記薬剤が、抗癌剤又は喘息治療薬である、請求項20に記載のスクリーニング方法。
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