JP2023108978A - HBV由来cccDNAの抑制剤、抑制方法、HBV感染症用医療組成物、およびHBV感染症の治療方法 - Google Patents

HBV由来cccDNAの抑制剤、抑制方法、HBV感染症用医療組成物、およびHBV感染症の治療方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、核内に存在するcccDNAを抑制する新たな薬剤を提供する。【解決手段】 本発明のHBV由来cccDNAの抑制剤は、フェリチン軽鎖を抑制するフェリチン軽鎖抑制剤を含むことを特徴とする。前記フェリチン軽鎖抑制剤は、前記フェリチン軽鎖の発現を抑制する発現抑制剤である。本発明のHBV感染症用医薬組成物は、前記本発明のHBV由来cccDNAの抑制剤を含むことを特徴とする。【選択図】 図1

Description

本発明は、HBV由来cccDNAの抑制剤、抑制方法、HBV感染症用医療組成物、およびHBV感染症の治療方法に関する。
B型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus: HBV)は、その感染が急性肝炎または慢性肝炎の発症の原因となり、長期化すると、肝硬変および肝細胞癌に到ることが知られている。
HBVは、通常、成熟型DNA(relaxed circular DNA: rcDNA)の状態で存在する。そして、HBVが細胞に感染し、細胞質から核内に侵入すると、宿主である細胞の持っている酵素等で複製中間体である共有結合性閉環状DNA(covalently closed circular DNA: cccDNA)に変化する。これがRNAに転写され、転写されたRNAは、核から細胞質に放出され、ウイルスが持っている逆転写酵素により再度DNA(rcDNA)に転写され、成熟型のHBVとして細胞外に放出される。
HBV感染に対する現在の治療薬は、前記逆転写酵素に対する阻害剤が一般的であり、これによって、RNAからDNAへの再度の転写(rcDNAへの転写)を阻害し、複製されたHBVが細胞外に放出することを抑制している。しかしながら、この治療薬では、核内に存在するcccDNAが除去できないため、投与を中断すると、核内でcccDNAからRNAへの転写が起こり、その後、細胞質において、RNAからrcDNAへの逆転写も再開されてしまう。このため、逆転写酵素による工程よりも上流に作用する治療薬、具体的には、cccDNAの合成阻害等により、核内のcccDNAを低減する治療薬の開発が望まれる。
そこで、本発明は、核内に存在するcccDNAを抑制する新たな薬剤の提供を目的とする。
前記目的を達成するために、本発明のHBV由来cccDNAの抑制剤は、フェリチン軽鎖を抑制するフェリチン軽鎖抑制剤を含むことを特徴とする。
本発明のHBV感染症用医薬組成物は、前記本発明のHBV由来cccDNAの抑制剤を含むことを特徴とする。
本発明のHBV由来cccDNAの抑制方法は、フェリチン軽鎖を抑制する抑制工程を含むことを特徴とする
本発明のHBV感染症の治療方法は、フェリチン軽鎖を抑制する抑制工程を含むことを特徴とする。
本発明者らは鋭意研究の結果、フェリチン軽鎖を抑制することによって、細胞に感染したHBVから産生されるcccDNA量を低減できることを見出した。本発明によれば、前述のような逆転写酵素阻害剤によるrcDNAへの転写ではなく、それより上流側における複製中間体のcccDNAを低減できるため、より効果的にウイルスの複製を抑制できる。したがって、本発明は、例えば、HBV感染症の新たな治療方法として非常に有用である。
図1は、実施例1において、細胞株におけるhFTL用siRNAによるcccDNA抑制を示すグラフである。 図2は、実施例2において、細胞株における各種siRNAによるhFTLの発現抑制を示すグラフである。 図3は、実施例3において、培養細胞におけるhFTL用siRNAとエンテカビルとの併用によるHBVのcccDNAおよびrcDNAの減少を示すグラフである。 図4は、実施例4において、培養細胞におけるhFTL用siRNA、hFTH用siRNA、およびhTFRC用siRNAによるcccDNAの抑制を示す結果である。
本明細書で使用する用語は、特に言及しない限り、当該技術分野で通常用いられる意味で用いることができる。
本発明のHBVcccDNA抑制剤は、例えば、前記フェリチン軽鎖抑制剤が、前記フェリチン軽鎖の発現を抑制する発現抑制剤または前記フェリチン軽鎖の機能を抑制する機能抑制剤である。
本発明のHBVcccDNA抑制剤は、例えば、前記発現抑制剤が、前記フェリチン軽鎖をコードする遺伝子からの転写を抑制する物質、転写された転写産物を分解する物質、および前記転写物からのタンパク質の翻訳を抑制する物質からなる群から選択された少なくとも一つである。
本発明のHBVcccDNA抑制剤は、例えば、前記発現抑制物質が、miRNA、siRNA、アンチセンス、およびリボザイムからなる群から選択された少なくとも一つの核酸物質である。
本発明のHBVcccDNA抑制剤は、例えば、前記発現抑制物質が、前記核酸物質を発現する発現ベクターである。
本発明のHBVcccDNA抑制剤は、例えば、前記機能抑制物質が、前記フェリチン軽鎖に対する活性阻害物質または活性中和物質である。
本発明のHBVcccDNA抑制剤は、例えば、前記活性中和物が、前記フェリチン軽鎖に対する抗体または抗原結合断片である。
本発明のHBVcccDNA抑制剤は、例えば、前記機能抑制物質が、前記フェリチン軽鎖に対する活性中和物質を発現する発現ベクターである。
本発明のHBVcccDNAの抑制方法は、例えば、前記抑制工程において、フェリチン軽鎖の発現を抑制する。
本発明のHBV感染症の治療方法は、例えば、前記抑制工程において、フェリチン軽鎖の発現を抑制する。
本発明において、治療は、広義の意味であり、例えば、進行の抑制、改善(緩和)、および根治等の狭義の治療、感染の防止、および再発の防止等の予防の意味を含む。本発明においては、例えば、いずれか1つを目的として使用してもよいし、2つ以上を目的として使用してもよい。
本発明において、HBV感染症とは、HBVの感染が原因となる疾患であり、例えば、急性肝炎または慢性肝炎等のB型肝炎、肝硬変、肝がん等があげられる。
(1)HBV由来cccDNAの抑制剤
本発明のHBV由来cccDNAの抑制剤は、フェリチン軽鎖を抑制するフェリチン軽鎖抑制剤を含むことを特徴とする。本発明において、以下、HBV由来cccDNAを「HBVcccDNA」または「cccDNA」ともいい、フェリチン軽鎖を「FTL」ともいい、フェリチン軽鎖抑制剤を「FTL抑制剤」、HBV由来cccDNAの抑制剤を「HBVcccDNA抑制剤」または「cccDNA抑制剤」ともいう。
HBVは、肝細胞に感染すると、以下のような複製過程をたどる。すなわち、まず、(1)HBVは、肝細胞表面のレセプターに結合し、細胞内に侵入する。(2)細胞質において、HBVの表面の膜構造が壊れ、成熟型ウイルスゲノム(rcDNA)が核内に移行する。(3)核内において、宿主細胞の酵素によりrcDNAはcccDNAに変化し、4種のRNAが転写される。(4)転写されたRNAのうち、Pregenomic RNAは、核外に放出され、細胞質においてウイルスの逆転写酵素によりrcDNA(成熟型)に逆転写される。(5)そして、細胞質において、rcDNAはキャプシドに覆われ、細胞外に放出される。本発明は、前記(3)におけるcccDNAを抑制する抑制剤である。
本発明において、HBV由来cccDNAの抑制とは、例えば、cccDNAの産生抑制である。前記産生抑制は、例えば、cccDNAの合成自体の抑制でも、合成されたcccDNAの分解でもよく、好ましくはcccDNAの合成自体の抑制である。前記産生抑制とは、例えば、前記FTL抑制剤無添加の場合と比較して、細胞におけるcccDNA量が相対的に減少することを意味する。
本発明のHBVcccDNA抑制剤は、前記FLT抑制剤を含むことが特徴であって、その他の構成および条件は、特に制限されない。また、本発明のFTL抑制剤は、後述する本発明のHBV由来cccDNAの抑制方法等の記載を援用できる。
本発明において、FTL抑制剤は、例えば、FTLの発現を抑制する発現抑制物質でもよいし、FTLの機能を抑制する機能抑制物質でもよい。本発明のHBVcccDNA抑制剤は、例えば、FTL抑制剤として、前記発現抑制物質のみを含んでもよいし、前記機能抑制剤のみを含んでもよいし、両方を含んでもよい。
前記FTL抑制剤の種類は、特に制限されず、例えば、核酸物質等の低分子化合物、抗体等のタンパク質、抗原結合断片等のペプチド等があげられる。
前記発現抑制物質は、例えば、FTLをコードする遺伝子(以下、FTL遺伝子ともいう)からのFTLの発現において、転写および翻訳のいずれの工程を抑制するものでもよく、特に制限されない。転写の抑制としては、例えば、DNAからmRNA前駆体への転写の阻害、mRNA前駆体から成熟mRNAを形成するRNAプロセシングの阻害、mRNA前駆体または成熟mRNAの分解等があげられる。前記翻訳の抑制としては、例えば、成熟mRNAからの翻訳の阻害、翻訳産物の修飾の阻害等があげられる。
前記発現抑制物質は、例えば、核酸物質(以下、核酸型抑制物質もいう)であり、そのままで発現を抑制する形態(第1形態)でもよいし、in vivoまたはin vitroの環境下において発現を抑制する状態となる、前駆体の形態(第2形態)でもよい。
前記第1形態の発現抑制物質は、例えば、アンチジーン、アンチセンス(アンチセンスオリゴヌクレオチド)、RNA干渉(RNAi)物質、リボザイム等があげられる。RNAi物質は、例えば、siRNA、miRNA、人工ミミックmiRNA等があげられる。アンチジーンは、例えば、mRNAの転写を阻害し、アンチセンスおよびmiRNAは、例えば、mRNAからの翻訳を阻害し、siRNAおよびリボザイムは、例えば、mRNAを分解する。前記人工ミミックmiRNAは、例えば、WO2015/099122に記載される構造があげられる。これらの発現抑制物質は、例えば、前記FTL遺伝子の全領域および部分領域のいずれをターゲット領域としてもよい。具体例として、アンチセンスおよびmiRNAは、例えば、FTL遺伝子から転写されたmRNAの3’UTR領域に結合するようにデザインでき、siRNAおよびリボザイムは、例えば、FTL遺伝子から転写されたmRNAの一部の領域に完全に相補的に結合するようにデザインできる。
ヒトのFTLの遺伝子およびタンパク質の配列は、例えば、データベース(NCBI)にアクセッションNo.NM_000146.4およびNo.NM_000137.2で登録されている(配列番号1および2)。
前記第1形態の発現抑制物質は、例えば、前記FTL遺伝子の標的配列に対して相補的なアンチセンス配列(ガイド配列ともいう)を有することが好ましい。前記FTL遺伝子の標的配列は、例えば、前記表1の四角で囲んだ領域、すなわち、以下に示す、配列番号1の533~563位(ftl_#1)、599~629位(ftl_#2)、または822~852位(ftl_#3)の領域内における19~31個、または19~25個の連続する配列であり、下線は、19塩基の標的配列の一例である。
ftl_#1
ttggatcttcatgccctgggttctgcccgca(配列番号3)
cttcatgccctgggttctg(配列番号4)
ftl_#2
ttcctagatgaggaagtgaagcttatcaaga(配列番号5)
gatgaggaagtgaagctta(配列番号6)
ftl_#3
aactatcctaacaagccttggaccaaatgga(配列番号7)
cctaacaagccttggacca(配列番号8)
前記発現抑制物質がsiRNAの場合、アンチセンス鎖とセンス鎖の二本鎖で構成され、前記アンチセンス鎖(ガイド鎖ともいう)が前記アンチセンス配列を有することが好ましい。前記アンチセンス鎖および前記センス鎖は、それぞれ、3’末端に、数塩基(例えば、1~3塩基)のオーバーハングが付加されていることが好ましい。
前記FTL遺伝子に対するsiRNAの具体例を表1に示す。これらのsiRNAは、前述した19塩基の標的配列に対して設計したsiRNAである。表2の配列において、小文字は、オーバーハングを示す。なお、本発明は、この例示には制限されない。
前記第1形態の発現抑制物質は、例えば、FTL遺伝子の発現系を利用したスクリーニング方法により得ることもでき、また、前記FTL遺伝子の配列から設計することもできる。
前記第1形態の発現抑制物質は、例えば、一本鎖でも二本鎖でもよい。前記発現抑制物質の構成単位は、特に制限されず、例えば、糖と、プリンまたはピリミジン等の塩基と、リン酸とを含み、デオキシリボヌクレオチド骨格またはリボヌクレオチド骨格があげられ、この他に、例えば、ピロリジンまたピペリジン等の塩基を含む非ヌクレオチド骨格等でもよい。これらの骨格は、修飾型でも非修飾型でもよい。また、前記構成単位は、例えば、天然型でも、人工の非天然型でもよい。前記発現抑制物質は、例えば、同じ構成単位から形成されてもよいし、二種類以上の構成単位から形成されてもよい。
前記第2形態の発現抑制物質は、前述のように、前記前駆体であり、具体例としては、前記第1形態の発現抑制物質を発現する前駆体があげられる。前記前駆体は、対象に投与することで、例えば、in vivoまたはin vitroの環境下、前記第1形態の発現抑制物質を発現させ、機能させることができる。
前記前駆体は、例えば、前記第1形態の発現抑制物質とリンカーとを含む形態があげられる。具体例として、前記前駆体は、siRNAの両鎖を前記リンカーで連結した形態があげられる。このような前駆体によれば、例えば、in vivoまたはin vitroの環境下、前記前駆体が切断されることにより、前記前駆体から前記リンカーが除去され、二本鎖のsiRNAを生成(発現)できる。前記前駆体の具体例として、例えば、切断によりsiRNAを生成するshRNA等が例示できる。
また、前記前駆体は、例えば、前記第1形態の発現抑制物質のコード配列を挿入した発現ベクターでもよい。前記発現ベクターによれば、例えば、in vivoまたはin vitroの環境下、前記第1形態の発現抑制物質を発現することができる。前記発現ベクターには、例えば、前述のshRNA等の前駆体のコード配列を挿入してもよい。前記発現ベクターの種類は、特に制限されず、例えば、プラスミドベクター、ウイルスベクター等があげられ、前記ウイルスベクターは、例えば、アデノウイルスベクター、センダイウイルスベクター等があげられる。
前記機能抑制物質は、例えば、前記FTLの活性を阻害する活性阻害物質、前記FTLの活性を中和する活性中和物質があげられる。前記活性阻害物質は、特に制限されず、低分子化合物等があげられる。
前記活性中和物質は、例えば、前記FTLに対する抗体または抗原結合断片(抗原結合ペプチド)(以下、あわせて抗体型抑制物質ともいう)等があげられる。前記抗体型抑制物質は、例えば、前記FTLへの結合によって、前記FTLの機能を抑制できることから、中和抗体または中和抗原結合断片ともいう。前記抗体型抑制物質は、例えば、後述するようなスクリーニング方法により得ることもできる。
前記抗体は、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体のいずれでもよく、また、そのアイソタイプは、特に制限されず、例えば、IgG、IgM、IgA等があげられる。前記抗体は、ヒトに投与する場合、例えば、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体等が好ましい。
前記抗原結合断片は、例えば、前記FTLの標的部位を認識して結合できればよく、前記抗体の相補性決定領域(CDR)を有している断片があげられる。具体例として、前記抗原結合断片は、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)等の断片等があげられる。
前記機能抑制物質は、例えば、そのままで前記FTLの機能を抑制する第1形態でもよいし、in vivoまたはin vitroの環境下において前記FTLの機能を抑制する状態となる、前駆体の第2形態でもよい。前記第1形態の機能抑制物質は、例えば、前述のような抗体型抑制物質である。また、前記第2形態の前駆体は、例えば、前記FTLの機能を抑制するタンパク質またはペプチドのコード配列を挿入した発現ベクターがあげられる。前記発現ベクターの種類は、特に制限されず、前述と同様に、プラスミドベクター、ウイルスベクター等があげられる。
また、前記機能抑制物質は、例えば、前記FTLが活性を有し、その機能を失ってはいないが、機能しうる状態を抑制する物質でもよい。すなわち、具体例として、前記FTLが機能するために必要な他の物質を減少させる、または前記他の物質を変化させる等の抑制物質でもよい。前記他の物質の減少は、例えば、前記他の物質の生成の抑制でもよいし、前記他の物質の分解でもよい。
本発明のcccDNA抑制剤は、例えば、有効成分として、前記FTL抑制剤のみを含んでもよいし、前記FTL抑制剤と、その他のHBVに対する薬剤(HBV用薬剤)とを含んでもよい。前記HBV用薬剤は、例えば、HBV等のウイルスの複製阻害剤があげられる。前記複製阻害剤としては、例えば、核酸系逆転写酵素阻害剤(NRTI)がある。NRTIは、五炭糖の3’の水酸基を欠いた修飾ヌクレオシドであり、細胞内でリン酸化酵素により3’にリン酸基が付加され活性型であるヌクレオチド型となる。ウイルスRNAを鋳型として逆転写酵素によりウイルスDNAが伸長される工程において、前記ヌクレオチド型が基質として、伸長過程にあるDNA鎖内に組み込まれると、五炭糖の水酸基を欠くため、次のヌクレオチドが結合できなくなり、ウイルスDNAの伸長が停止する。
前記NRTIの具体例としては、例えば、エンテカビル、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩、テノホビルアラフェナミドフマル酸塩、ラミブジン、アデフォビル、インターフェロン製剤(アルファインターフェロン、ベータインターフェロン、ポリエチレングルコール付加アルファインターフェロン)等があげられる。この他に、前記NRTIとしては、例えば、zidovudine(AZT、またはZDV)、didanosine(ddI)、stavudine(d4T)、abacavir(ABC)、emtricitabine(FTC)等もあげられる。また、前記FTL抑制剤と併用できる合剤としては、例えば、epzicom(EPZ)(lamivudine + abacavir [3TC+ABC])、truvada(TVD)(tenofovir + emtricitabine [TDF+FTC])、combivir(CBV)(zidovudine + lamivudine [AZT+3TC])、descovy(DVY)(tenofovir alafenamide + emtricitabine [TAF+FTC])等があげられる。
さらに、併用できる非核酸系逆転写酵素阻害剤としては、例えば、nevirapine(NVP)、efavirenz(EFV)、delavirdine(DLV)、etravirine(ETR)、rilpivirine(RPV)等、合剤としては、例えば、complera(CMP)(rilpivirine + tenofovir + emtricitabine[RPV+TDF+FTC])等があげられる。
本発明のcccDNA抑制剤は、例えば、前記有効成分のみを含んでもよいし、さらにその他の添加成分を含んでもよい。前記添加成分は、特に制限されず、例えば、以下のような成分、好ましくは、薬理学的に許容される成分があげられる。前記添加成分は、例えば、前記cccDNA抑制剤の投与方法、投与対象、および剤型等に応じて、適宜設定できる。
前記添加成分は、例えば、賦形剤があげられる。前記賦形剤は、例えば、水性溶媒、アルコール溶媒、ポリアルコール溶媒、油性溶媒、これらの混合溶媒(例えば、乳化溶媒)等の液体媒質、乳糖、デンプン等があげられる。前記水性溶媒は、例えば、水、生理食塩水、塩化ナトリウム等の等張液等があげられ、油性溶媒は、例えば、大豆油等があげられる。前記添加成分は、これらの他に、例えば、デンプン糊等の結合剤;デンプン、炭酸塩等の崩壊剤;タルク、ワックス等の滑沢剤等があげられる。また、前記添加成分は、例えば、前記有効成分を目的部位にデリバリーするためのDDS剤を含んでもよい。
本発明において、前記cccDNA抑制の対象となる細胞は、特に制限されず、例えば、HBVに感染した細胞、HBVに感染した可能性がある細胞、HBVを感染させたくない細胞等があげられる。細胞の種類は、例えば、肝臓細胞である。
本発明のcccDNA抑制剤の使用方法は、特に制限されず、例えば、HBVcccDNAの産生を抑制させたい対象に添加すればよい。添加方法は、特に制限されず、例えば、in vivoでも、in vitroでもよい。本発明のcccDNA抑制剤の添加対象は、例えば、細胞、もしくは組織、または生体等である。前記細胞および組織の種類、ならびに生体の部位(器官)は、特に制限されず、例えば、肝臓である。前記細胞および組織は、例えば、生体から単離したものでもよいし、セルラインまたはその培養物でもよい。前記添加対象の細胞および組織は、例えば、ヒト由来でもよいし、非ヒト動物由来でもよく、前記添加対象の生体は、例えば、ヒトでもよいし、非ヒト動物でもよい。前記非ヒト動物は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ウマ、ヒツジ、ウシ、ラクダ等の哺乳類動物があげられる。前記添加対象が非ヒト動物由来または非ヒト動物の場合、前記cccDNA抑制剤における前記FTL抑制物質は、例えば、その特定の非ヒト動物由来のFTLまたはFTL遺伝子に特異的に対応する抑制物質が好ましく、また、前記添加対象がヒト由来またはヒトの場合、前記FTL抑制物質は、例えば、ヒト由来のFTLまたはFTL遺伝子に特異的に対応する抑制物質が好ましい。
(2)HBV由来cccDNAの抑制方法
本発明のHBVcccDNAの抑制方法は、前述のように、FTLを抑制する工程を含むことを特徴とする(本発明の第1の抑制方法ともいう)。本発明は、FTLの抑制によってHBVcccDNAを抑制できることを見出したことがポイントであり、FTLを抑制する方法、その他の工程および条件は、何ら制限されない。本発明の第1の抑制方法において、FTLの抑制は、例えば、本発明のHBVcccDNA抑制剤を添加することにより行うことができる。
本発明のHBV由来cccDNAの抑制方法は、前述のように、前記本発明のHBV由来cccDNAの抑制剤を添加することを特徴とする(本発明の第2の抑制方法ともいう。)。本発明の第2の抑制方法は、本発明のHBVcccDNA抑制剤の有効成分、すなわちFTL抑制剤の添加により、HBV由来cccDNAを抑制できる。本発明の第2の抑制方法は、前記本発明のHBVcccDNA抑制剤を使用することがポイントであり、その他の工程および条件は、何ら制限されない。
本発明のHBVcccDNA抑制方法は、例えば、本発明のHBVcccDNA抑制剤の記載を援用できる。
前記HBVcccDNA抑制剤の添加対象が細胞の場合は、例えば、培地の存在下、前記HBVcccDNA抑制剤を添加し、インキュベートすることによって、前記HV由来cccDNAの産生を抑制できる。前記インキュベートの条件は、特に制限されず、例えば、細胞の種類に応じて、前記培地、温度、時間、湿度等を設定できる。
前記添加対象が組織の場合は、例えば、培地の存在下、前記HBVcccDNA抑制剤を添加し、インキュベートすることによって、前記組織を構成する細胞におけるHBVcccDNAの産生を抑制できる。前記インキュベートの条件は、特に制限されず、例えば、組織の種類、大きさ等に応じて、前記培地、温度、時間、湿度等を設定できる。
前記添加対象(投与対象)が生体の場合、前記HBVcccDNA抑制剤の投与方法は、特に制限されず、非経口投与、経口投与、静脈投与等があげられる。投与条件は、特に制限されず、例えば、生体の種類等に応じて、適宜決定できる。
前記非経口投与の場合、投与部位は、例えば、対象器官、すなわち、肝臓でもよいし、前記対象器官まで前記有効成分をデリバリーできる部位でもよい。具体例として、例えば、前記対象器官が肝臓の場合、投与部位は、対象器官の肝臓でもよいし、肝臓にまで前記有効成分をデリバリーできる部位でもよい。前記非経口投与の方法は、例えば、患部注射、静脈注射、皮下注射、皮内注射、点滴注射、経皮投与等があげられる。前記HBVcccDNA抑制剤の形態は、特に制限されず、前述のように、投与方法等に応じて適宜設定でき、前述の記載を援用できる。
非経口投与の場合、剤型は、特に制限されず、投与方法により適宜決定でき、例えば、液状、クリーム状、ジェル状等であり、媒質と前記有効成分とを混合することで調製できる。前記媒質のうち、水性溶媒は、例えば、生理食塩水、等張液等であり、油性溶媒は、例えば、大豆油等であり、乳化溶媒は、例えば、これらの混合液である。前記非経口投与剤は、例えば、さらに、アルコール、ポリアルコール、界面活性剤等を含んでもよい。また、前記非経口投与剤は、前記有効成分を、対象器官以外から前記対象器官に効果的にデリバリーするためのDDS剤を含んでもよい。また、前記対象器官の中でも、例えば、HBV感染細胞に前記有効成分を効果的にデリバリーする場合、前記非経口投与剤は、例えば、前記HBV感染細胞を特異的に認識するDDS剤を含んでもよい。
前記経口投与の場合、経口投与剤の剤型は、特に制限されず、例えば、錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤等があげられる。前記経口投与剤は、例えば、希釈剤、賦形剤、担体等を含んでもよい。また、前記経口投与剤は、例えば、前記有効成分を前記対象部位に効果的にデリバリーするためのDDS剤を含んでもよい。また、前記対象器官の中でも、例えば、前記HBV感染細胞に前記有効成分を効果的にデリバリーする場合、前記経口投与剤は、例えば、前記HBV感染細胞を特異的に認識するDDS剤を含んでもよい。
前記生体への投与において、本発明のHBVcccDNA抑制剤の投与条件は、特に制限されず、例えば、年齢、体重、投与対象の器官の種類、性別等に応じて適宜決定できる。前記生体は、例えば、治療の点から、前記HBVに感染した対象でもよいし、予防の点から、前記HBVに感染していない対象、または感染の有無が不明な対象でもよい。
具体例として、前記FTL抑制剤がsiRNA等の前記核酸型抑制物質の場合、投与条件は、例えば、前記FTL抑制剤の投与量は0.1~0.5mg/kg/日、投与間隔は1~3週間に一度、投与時間は70分以上かけ緩徐に行う(例えば、特に投与開始15分間は1ml/分、その後は3ml/分)等が例示できる。また、infusion reaction(急性輸液反応)の発生が予想される場合は、前記FTL抑制剤の投与に先立って、例えば、さらに、以下の薬剤を前投薬することが望ましい。
・コルチコステロイド(デキサメタゾン10mgまたは同等薬)(静脈内投与)
・アセトアミノフェン(500mg)(経口投与)
・H1拮抗薬(クロルフェニラミンマレイン酸塩5mgまたは同等薬)(静脈内投与)
・H2拮抗薬(ファモチジン20mgまたは同等薬)(静脈内投与)
本発明において、例えば、前述のように、前記FTL抑制剤と前記複製阻害剤とを併用する場合、両者は、同じ投与方法により同時または異なるタイミングで投与してもよいし、同じ投与方法により別のタイミングで投与してもよいし、異なる投与方法により同時または異なるタイミングで投与してもよい。本発明においては、例えば、前記逆転写酵素阻害剤および/またはHBV DNA(例えば、rcDNA)に対するsiRNA等の発現抑制剤を投与して、HBV量を低減し、さらに、前記FTL抑制剤で処理して、cccDNAを抑制することが好ましい。
(3)HBV感染症用医薬組成物
本発明のHBV感染症用医薬組成物は、前述のように、前記本発明のHBVcccDNA抑制剤を含むことを特徴とする。本発明のHBV感染症用医薬組成物は、前記本発明のHBVcccDNA抑制剤の有効成分、すなわち前記FLT抑制剤を含むことが特徴であって、その他の構成および条件は、特に制限されない。また、本発明のHBV感染症用医薬組成物は、前記本発明のHBVcccDNA抑制剤およびHBVcccDNAの抑制方法等の記載を援用できる。
本発明のHBV感染症用医薬組成物は、前述のように、有効成分として、HBVcccDNAの産生を抑制する前記FTL抑制剤の他に、さらに、核酸系逆転写酵素阻害剤(NRTI)等の複製阻害剤を含んでもよい。前記FTL抑制剤と前記NRTIとは、例えば、同じ投与方法により投与されてもよいし、異なる投与方法により投与されてもよい。後者の場合、本発明のHBV感染症用医薬組成物は、例えば、前記FTL抑制剤と前記NRTI抑制剤とを、それぞれ別個に投与する組成物であってもよい。
(4)HBV感染症の治療方法
本発明のHBV感染症の治療方法は、前述のように、患者の対象器官におけるFTLを抑制する工程を含むことを特徴とする(本発明の第1の治療方法ともいう)。本発明は、FTLの抑制によってHBVcccDNAの産生を抑制できることを見出したことがポイントであり、FTLを抑制する方法、その他の工程および条件は、何ら制限されない。本発明の第1の治療方法において、FTLの抑制は、例えば、本発明のHBVcccDNA抑制剤(または本発明のHBV感染症用医薬組成物)を添加することにより行うことができる。
本発明のHBV感染症の治療方法は、前述のように、前記本発明のHBV由来cccDNAの抑制剤(または本発明のHBV感染症用医薬組成物)を、患者に投与することを特徴とする(本発明の第2の治療方法ともいう。)。本発明の第2の治療方法は、本発明のHBVcccDNA抑制剤の有効成分、すなわちFTL抑制剤の添加により、HBV由来cccDNAの産生を抑制することで、HBV感染症を治療できる。本発明の第2の治療方法は、前記本発明のHBVcccDNA抑制剤(または本発明のHBV感染症用医薬組成物)を使用することがポイントであり、その他の工程および条件は、何ら制限されない。
本発明のHBV感染症の治療方法、例えば、本発明のHBVcccDNA抑制方法の記載援用できる。
(5)用途
本発明は、HBV感染症の治療のための、前記FTLを抑制するFTL抑制剤である。前記FTL抑制剤は、前述の記載を援用できる。
以下、実施例等により、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
ヒトFTLに対するsiRNAにより、細胞核内におけるHBVのcccDNA合成の抑制を確認した。
実施例のhFTL用siRNAとして、前記表1に示すhFTL_#3を合成した(配列番号6および7)。比較例のsiRNAとして、HBVのゲノムDNAを標的とした下記siRNA(以下、ゲノム用siRNAという)と、ヒト遺伝子およびウイルス遺伝子を標的としない下記siRNA(以下、ネガティブコントロール(NC)という)を使用した。
ヒト肝細胞として、細胞株であるHep38.7-Tet細胞を使用した。これは、ヒト肝臓がん由来細胞株HepAD38細胞の核内にHBVゲノムを組み込むことで、HBVcccDNAの発現効率を上昇させた細胞であり、テトラサイクリンの添加により、HBVゲノムの転写が停止される。Hep38.7-Tet細胞は、HBVcccDNAのコピー数が、1コピー/1細胞であり、RNaseP遺伝子のコピー数が2コピー/1細胞であることが知られている(久留主ら、数理解析研究所録、2017年、2043巻、95-101頁、発行所:京都大学数理解析研究所)。
96ウェルプレートに、500nmol/Lの前記siRNA 2.4μLおよびOPTI-MEN(商標) 7.6μLを添加し、さらに、リポフェクタミン液10μLを添加し、室温で20分間インキュベートした。前記リポフェクタミン液は、1ウェルあたり、リポフェクタミンRNAiMAX(商標)0.2μLおよびOPTI‐MEM(商標)9.8μLとした。
継代しているHep38.7‐tet細胞を回収し、テトラサイクリン添加(0.3μg/ml)のダルベッコ改変イーグル培地(D-MEM Tet(+))で3×10 cells/100μLに調整し、前記96ウェルプレートのウェルに、100μLずつ添加し、37°、5% COで20時間インキュベートした。培地を除去し、テトラサイクリン未添加のダルベッコ改変イーグル培地(D-MEM Tet(-))200μLに置換し、さらに、同条件で72時間インキュベートした。そして、細胞を観察した後、細胞上清を全量(約200μL)回収し、上清50μLおよびウェル中の全細胞から、それぞれ、DNA抽出試薬(商品名SMITEST EX-R&D、MBLライフサイエンス社)を用いて、DNAを抽出した。そして、上清由来のDNA抽出液をrcDNAの定量を行い、細胞由来のDNA抽出液をデジタルPCRにより、cccDNAの定量を行った。
cccDNAの定量は、以下の方法により行った。すなわち、前記細胞由来のDNAサンプルを外来のDNaseで処理することなく、下記組成の反応液を調製し、ウェル20,000個のプレートに前記反応液を分配し、デジタルPCRに供し、蛍光シグナルを検出した。デジタルPCRは、市販の機器(商品名QuantStudio(商標) 3D デジタル PCR システム、Applied Biolad System社)を使用し、操作条件は、その使用説明書に従った。
HBVcccDNAの配列は、データベース(GenBank)にアクセッションNo.D12980で登録されており、1541~1920位の領域の配列を配列番号22に示す。フォワードプライマーは、1550~1570位の配列(配列番号19)とし、リバースプライマーは、1882~1863位に対する相補的な配列(配列番号20)とし、プローブは、1781~1805位の配列(配列番号21)とした。
フォワードプライマー1(配列番号19)(1550-1570位)
5’-cgtctgtgccttctcatctgc-3’
リバースプライマー1(配列番号20)(1882-1863位):
5’-gcacagcttggaggcttgaa-3’
プローブ1(配列番号21)(1781-1805位)
5’- FAM/CT GTA GGC A/ZEN/T AAA TTG GTC TGT TCA /TAMSp -3’
NCのDNAサンプルの蛍光シグナルを相対値1として、それぞれの蛍光シグナルの相対値を算出した。これらの結果を図1に示す。HBVゲノムに対するsiRNAを添加すると、ネガティブコントロールと比較して、細胞培養の上清画分におけるHBVDNA(rcDNA)は減少したが(図示せず)、図1に示すように、ネガティブコントロールと比較して、細胞の核内のcccDNAの減少は確認できなかった。これに対して、hFTL_#3を導入して得られたDNAサンプルにおいては、有意にcccDNAの減少が確認できた(約20%の減少)。この結果から、FTLをターゲットとして設計された発現抑制剤によれば、HBV感染細胞の核内で産生されるcccDNAを減少できることがわかった。細胞質でのpregenomic RNAからの逆転写酵素によるrdDNAの逆転写は、逆転写酵素阻害剤を供給している間しか抑制することができないが、本発明によれば、pregenomic RNAの元となる上流側の核内のcccDNAの産生を抑制できるため、効果的にHBVの複製を阻害して、感染を抑制することができるといえる。
また、同様の方法により、細胞培養、実施例のsiRNAの導入を行い、経時的なcccDNAの変化を確認した。具体的には、siRNAの導入をDay0として、24時間後のDay1、Day3、Day5のcccDNAを測定した。比較例として、前記NCのsiRNAを導入した系(NC)と、siRNA未添加の系(NT)についても、並行して、同様に経時的なcccDNAの変化を確認した。
NCのDay1、Day3、Day5のDNAサンプルの蛍光シグナルを、それぞれ相対値1として、Dayごとの蛍光シグナルの相対値を算出した。その結果、siRNA未添加の系(NT)は、Day3を経過しても、NCと比較してcccDNAの減少は確認されなかった。これに対して、実施例のhFTL用siRNAを導入した系は、Day3からNCと比較してcccDNAの減少が確認され、Day5において、cccDNAの有意な減少が確認できた(相対値0.78)。
(実施例2)
実施例1において、ヒトFTLに対するsiRNAにより、細胞核内におけるHBVのcccDNA産生が抑制できることが確認できた。
そこで、実施例1で使用したhFTL用siRNA(hFTL_#3)と、それ以外のhFTL用siRNA(hFTL_#1、#2)とについて、hFTLの発現抑制効果を確認した。
具体的には、前記実施例1と同様にして、Hep38.7-Tet細胞に各siRNAを導入し、細胞上清を回収し、DNAサンプルを調製した。そして、前記細胞上清由来のDNAサンプルについて、real‐time PCRによりhFTL遺伝子の発現量を蛍光シグナルとして測定した。コントロール(NT)は、siRNA未添加とした以外は、同様に処理して測定を行った。
そして、コントロール(NT)の測定結果を相対値1として、それぞれの相対値を算出した。これらの結果を図2に示す。図2に示すように、いずれのhFTL用siRNAを導入した場合も、コントロールと比較して、有意にhFTL遺伝子の発現量が減少した。前記実施例1に示すように、hFTL遺伝子をターゲットとするhFTL_#3の導入によって、HBV感染細胞の核内におけるcccDNAの産生が抑制されることは確認済みであることから、hFTLをターゲットとしhFTL遺伝子の発現を抑制する他のsiRNA(#1または#2)によっても、同様にcccDNAの産生が抑制されることは明らかである。
(実施例3)
FTLをターゲットとするsiRNAによって、HVB感染細胞の核内におけるcccDNAの産生を抑制できることが、実施例1において確認できた。一方、HBV感染におけるHBVの複製の抑制に関しては、本発明とは異なるメカニズムとして、前述のような逆転写酵素阻害剤エンテカビルが知られている。HBV感染細胞は、核内においてcccDNAを元に転写されたpregenomic RNAが、細胞質に放出され、rcDNAに逆転写される。この逆転写工程を阻害するのがエンテカビルである。本発明のcccDNA抑制剤は、上流である核内でのcccDNAの産生を抑制できることから、異なる工程を抑制する逆転写酵素阻害剤との併用によって、HBVの複製の段階的な抑制が可能になる。そこで、本実施例においては、実施例1で使用したhFTL用siRNA(hFTL_#3)と、エンテカビルとの併用により、cccDNAの産生抑制と、HBV rcDNAの産生抑制とを確認した。
ヒト幹細胞として、ヒト初代培養肝細胞(フェニックスバイオ社)を使用した。前記細胞(PXB細胞)が4×10cells/ウェル(dHCGM培地)で播種された市販のウェルプレート(フェニックスバイオ社製)を購入し、各ウェルの培地を、HBV DNA(rcDNA)を6×10Geq(Genome Equivalent)/mlで含有するdHCGM培地に置換し(Day0)、さらに培養を行った。HBV DNA(rcDNA)は、B型肝炎患者の血清由来を使用した。そして、Day3、Day8、Day13、Day18に、新たなdHCGM培地に置換し、置換の度に、前記培地には、siRNAを10nmol/l(終濃度)、エンテカビルを1ng/ml(終濃度)となるように添加した。Day23の時点で、細胞と細胞上清とを回収し、DNAサンプルを調製した。細胞由来のDNAサンプルについて、前記実施例1と同様にしてcccDNAをデジタルPCRにより測定した。細胞上清由来のDNAサンプルについて、rcDNAに対するプライマーセットおよびプローブを用いたreal‐time PCRを行い
、HBV DNAの発現量を蛍光シグナルとして測定した。コントロールは、前記NCのsiRNAのみを添加した系(NC)、エンテカビルのみを添加した系とし、同様に培養と測定を行った。
これらの結果を図3に示す。図3において、各系において左のバーの縦軸がcccDNA量(copies/cell)、右のバーの縦軸がHBV DNA量(copies/ml)を示す。前記細胞上清には、cccDNAは含まれないことから、前記細胞上清のDNAサンプルにおけるHBV DNA量は、理論上、ほぼHBV rcDNAである。図3に示すように、NCのsiRNAのみを導入した系と比較して、エンテカビルのみを添加した系は、HBV rcDNAの有意な減少は確認できたが、cccDNA量の減少は確認できなかった。これに対して、hFTL用siRNAとエンテカビルとを併用した系は、cccDNAおよびHBV rcDNAの両方を有意に減少できた。
(実施例4)
フェリチン(FT)は、鉄代謝に関連する核内存在たんぱくの一つであり、2種類のサブユニットから成るヘテロオリゴマーであり、前記サブユニットは、L型(Light;軽鎖)とH型(Heavy;重鎖)の2種類であり、これら重合し、核内で鉄を保持している。前記実施例1において、FTのL型サブユニットであるFTLをターゲットとするsiRNAにより、cccDNAの産生抑制が確認されたことから、FTのH型サブユニット(以下、FTHという)、FTと同様に鉄を保持するタンパク質であるトランスフェリンをターゲットとした場合における、cccDNAの産生抑制を確認した。
前記実施例1のhFTL_#3、ヒトFTHをターゲットとするsiRNA(hFTH1_#1、#2、#3)、ヒトトランスフェリン受容体をターゲットとするsiRNA(TFRC_#1、#2、#3)を使用した以外は、前記実施例1と同様にして、細胞のDNAサンプルにおけるcccDNAを測定した。具体的には、1細胞中のcccDNAを測定した。1細胞中には2コピーのRNaseP分子が存在する。このため、「cccDNAの検出値」を、細胞数に想到する「RNaseP検出値/2」で割ることにより、1細胞中のcccDNAの値を算出した。
これらの結果を図4に示す。図4において、縦軸は、1細胞中のcccDNA量を示す値(copies/cell)である。図4に示すように、cccDNAの減少が確認されたのは、hFTL用siRNAのみであった。この結果から、FTLの発現抑制が、核内におけるcccDNAの産生抑制に関与することが示唆された。
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
本発明によれば、前述のような逆転写酵素阻害剤によるrcDNAへの転写ではなく、それより上流側における複製中間体のcccDNAを低減できるため、より効果的にウイルスの複製を抑制できる。したがって、本発明は、例えば、HBV感染症の新たな治療方法として非常に有用である。

Claims (16)

  1. フェリチン軽鎖を抑制するフェリチン軽鎖抑制剤を含むことを特徴とするHBV由来cccDNAの抑制剤。
  2. 前記フェリチン軽鎖抑制剤が、前記フェリチン軽鎖の発現を抑制する発現抑制剤または前記フェリチン軽鎖の機能を抑制する機能抑制剤である、請求項1に記載の抑制剤。
  3. 前記発現抑制剤が、前記フェリチン軽鎖をコードする遺伝子からの転写を抑制する物質、転写された転写産物を分解する物質、および前記転写物からのタンパク質の翻訳を抑制する物質からなる群から選択された少なくとも一つである、請求項2に記載の抑制剤。
  4. 前記発現抑制物質が、miRNA、siRNA、アンチセンス、およびリボザイムからなる群から選択された少なくとも一つの核酸物質である、請求項3に記載の抑制剤。
  5. 前記発現抑制物質が、前記核酸物質を発現する発現ベクターである、請求項4に記載の抑制剤。
  6. 前記機能抑制物質が、前記フェリチン軽鎖に対する活性阻害物質または活性中和物質である、請求項2に記載の抑制剤。
  7. 前記活性中和物が、前記フェリチン軽鎖に対する抗体または抗原結合断片である、請求項6に記載の抑制剤。
  8. 前記機能抑制物質が、前記フェリチン軽鎖に対する活性中和物質を発現する発現ベクターである、請求項2に記載の抑制剤。
  9. 請求項1から8のいずれか一項に記載のHBV由来cccDNAの抑制剤を含むことを特徴とするHBV感染症用医薬組成物。
  10. フェリチン軽鎖を抑制する抑制工程を含むことを特徴とするHBV由来cccDNAの抑制方法。
  11. 前記抑制工程において、フェリチン軽鎖の発現を抑制する、請求項10に記載の抑制方法。
  12. 請求項1から8のいずれか一項に記載のHBV由来cccDNAの抑制剤を添加する添加工程を含むことを特徴とするHBV由来cccDNAの抑制方法。
  13. 患者の対象器官におけるフェリチン軽鎖を抑制する抑制工程を含むことを特徴とするHBV感染症の治療方法。
  14. 前記抑制工程において、フェリチン軽鎖の発現を抑制する、請求項13に記載の治療方法。
  15. 請求項1から8のいずれか一項に記載のHBV由来cccDNAの抑制剤を、患者に投与する投与工程を含むことを特徴とするHBV感染症の治療方法。
  16. HBV感染症の治療のための、フェリチン軽鎖を抑制するフェリチン軽鎖抑制剤。
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