JP2015221026A - 人工合成mRNAの翻訳効率化方法 - Google Patents

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真一 星野
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Abstract

【課題】標的細胞内における人工合成mRNAの翻訳効率を向上させる技術及びその用途を提供することを課題とする。
【解決手段】RNA結合ペプチドとその標的RNA配列を利用して、標的細胞に導入した人工合成mRNAの3'非翻訳領域に翻訳関連因子を繋留させる。
【選択図】なし

Description

本発明は人工合成mRNAの翻訳を効率化させる技術及びその利用に関する。
ヒトゲノムの解読以来RNA研究が注目を集めるなか、RNAを薬として応用しようとするRNA医薬の研究も急速な進展をみせはじめている。RNA医薬に期待される標的疾患の一つとしてウイルス性疾患がある。実際、B型肝炎治療を目的としたRNA医薬の開発研究が進められている。B型肝炎は現在インターフェロンによる治療等が行われているが、このような治療法では肝細胞のゲノム中にプロウイルスとして潜伏しているB型肝炎ウイルス(HBV)を除去することは不可能であり、根治治療はなされていない。そこで、HBVを切断する酵素ZFN/TALEN/CRISPR-Cas9を細胞内で発現させ、HBVを切断除去することを目的とした研究事業(平成24年度厚生労働科学研究費補助金(B型肝炎創薬実用化等研究事業))が開始された。この研究では、ZFN/TALEN/CRISPR-Cas9を人工合成mRNAの形で細胞内に導入し、発現させることでHBVの除去を目指している。
尚、本発明に直接関連するものではないが、mRNAの発現に関する文献(特許文献1、非特許文献1〜3)を以下に示す。
特表2013−520158号公報
尾上耕一, 星野真一: 日薬理誌, 136, 150-154, 2010 Nechama, M. et al.: KSRP-PMR1-exosome association determines parathyroid hormone mRNA levels and stability in transfected cells. BMC Cell Biol., 10, 70 (2009). Funakoshi Y, et al. Genes Dev. 2007;21:3135-3148.
遺伝子治療では一般にウイルスベクターが用いられる。ウイルスベクターを使用した遺伝子導入によれば、標的細胞のゲノム中に外来性のDNAが挿入されるため、発癌等の問題がある。対照的にmRNAを用いた方法には、このような問題はなく、安全性が高いといえる。しかしその一方で、mRNAは細胞内において比較的不安定であり、また発現効率も低い。そこで本発明は、mRNAに特有のこれらの問題点に鑑み、標的細胞内での効率的な発現を可能にすべく、標的細胞内における人工合成mRNAの翻訳効率を向上させる技術及びその用途等を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み検討を重ねる中で、人工合成mRNAの3'非翻訳領域(3'UTR)に翻訳関連因子を繋留し、翻訳効率の向上を図るという戦略を考え、その有効性を検証した。その結果、驚くべきことに、翻訳関連因子(PABPC1又はeRF3のCドメイン)の繋留によって人工合成mRNAの翻訳が活性化されることが判明した。ここで、mRNAの翻訳機構に関する過去の報告(非特許文献3)によれば、翻訳終結因子eRF3とポリ(A)鎖結合タンパク質PABPとが結合しmRNA上で複合体を形成していることがmRNAを安定化しており、eRF3がPABPから解離することが引き金となってPABP上にmRNA分解酵素がリクルートされ、mRNA分解が開始する。この事実に従えば、PABPをmRNA上に繋留すると逆に分解酵素をリクルートする危険性も考えられる。しかしながら、本発明者らの検討では、PABPやeRF3の繋留によって人工合成mRNAの安定性は殆ど影響を受けず、むしろ翻訳が活性化(効率化)した。このように、これまでの報告に照らすと、本発明者らの検討がもたらした知見は予想できないものであり、その意義ないし価値は極めて大きい。
以下に示す発明は主として以上の知見及び考察に基づくものである。
[1]RNA結合ペプチドと融合した翻訳関連因子を発現する核酸コンストラクトと、
目的遺伝子のコード領域と、3'非翻訳領域内に配置され、前記RNA結合ペプチドが特異的に結合するRNA配列とを備えるmRNAと、
を組み合わせてなる、標的細胞内で目的遺伝子を発現させるための組成物。
[2]前記核酸コンストラクトを含有する第1要素と、前記mRNAを含有する第2要素と、からなるキットであることを特徴とする、[1]に記載の組成物。
[3]前記核酸コンストラクトと前記mRNAを含有することを特徴とする、[1]に記載の組成物。
[4]前記mRNAを含有し、標的細胞への導入時に、前記核酸コンストラクトが併用導入されることを特徴とする、[1]に記載の組成物。
[5]前記核酸コンストラクトを含有し、標的細胞への導入時に、前記mRNAが併用導入されることを特徴とする、[1]に記載の組成物。
[6]前記RNA結合ペプチドが、λファージコートタンパク質MS2若しくはその変異体、又はλN22ペプチド若しくはその変異体である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の組成物。
[7]前記RNA結合ペプチドのアミノ酸配列が配列番号1の配列であり、前記RNA配列の塩基配列が配列番号17の配列である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の組成物。
[8]前記mRNAが前記RNA配列を複数備える、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の組成物。
[9]前記mRNAが5'キャップ構造、コザック配列、及びポリ(A)鎖を更に備える、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の組成物。
[10]前記mRNAが、前記コード領域と前記ポリ(A)鎖の間に配置される安定化シス配列を更に備える、[9]に記載の組成物。
[11]前記翻訳関連因子が、PABPC1又はeRF3 Cドメインである、[1]〜[10]のいずれか一項に記載の組成物。
[12]前記核酸コンストラクトがmRNA分子である、[1]〜[11]のいずれか一項に記載の組成物。
[13]前記遺伝子が酵素遺伝子である、[1]〜[12]のいずれか一項に記載の組成物。
[14]前記酵素が、ZFN、TALEN及びCRISPR-Cas9からなる群より選択されるヌクレアーゼである、[13]に記載の組成物。
[15]エキソソーム複合体の機能抑制物質を更に組み合わせてなる、[1]〜[14]のいずれか一項に記載の組成物。
[16]前記機能抑制物質が以下の(a)〜(d)からなる群より選択される化合物である、[15]に記載の組成物:
(a)エキソソーム複合体の構成因子又は補助因子を標的とするsiRNA;
(b)エキソソーム複合体の構成因子又は補助因子を標的とするsiRNAを細胞内で生成する核酸コンストラクト;
(c)エキソソーム複合体の構成因子又は補助因子を標的とするアンチセンス核酸;
(d)エキソソーム複合体の構成因子又は補助因子を標的とするリボザイム。
[17]前記構成因子がDis3であり、前記補助因子がski2ヘリカーゼ又はMtr4ヘリカーゼである、[16]に記載の組成物。
[18][14]に記載の組成物を有効成分とする、B型肝炎ウイルス除去剤。
[19]以下のステップ(1)及び(2)を含む、標的細胞内で目的タンパク質を発現させる方法:
(1)標的細胞に、RNA結合ペプチドと融合した翻訳関連因子を発現する核酸コンストラクトを導入するステップ;
(2)前記標的細胞に、目的遺伝子のコード領域と、3'非翻訳領域内に配置され、前記RNA結合ペプチドが特異的に結合するRNA配列とを備えるmRNAを導入するステップ。
[20]以下のステップ(1')を更に含む、[19]に記載の方法:
(1')標的細胞にエキソソーム複合体の機能抑制物質を導入するステップ。
[21]前記標的細胞が、生体から分離された状態の細胞である、[19]又は[20]に記載の方法。
実験結果。A: HeLa細胞にpMS2-HA、pMS2-HA-eIF4EもしくはpMS2-HA-PABPC1を導入した。導入24時間後に5xFlag-EGFPpA72 mRNAを導入し、その24時間後細胞を回収した。抗HA抗体(上パネル)もしくは抗Flag抗体(下パネル)を用いたウエスタンブロッティングの結果を示している。B: Aにおける5xFlag-EGFPタンパク質量を、pMS2-HA導入細胞を1として定量した結果を示している。C: HeLa細胞にpMS2-Myc、pMS2-Myc-eRF3b、pMS2-Myc-eRF3b(N)、もしくは pMS2-Myc-eRF3b(C)を導入し、Aと同様の解析を行った。D: Cにおける5xFlag-EGFPタンパク質量を、pMS2-Myc導入細胞を1として定量した結果を示している。
1.目的遺伝子発現用の組成物
本発明の第1の局面は標的細胞内で目的遺伝子を発現させるための組成物(以下、「本発明の組成物」とも呼ぶ)に関する。本発明者らの検討によって、標的細胞内で人工合成mRNAの翻訳を活性化させるためには、人工合成mRNAの3'非翻訳領域に翻訳関連因子を繋留させることが有効との知見が得られた。この知見に基づき、本発明の組成物は、二つの要素、即ち、RNA結合ペプチドと融合した翻訳関連因子を発現する核酸コンストラクト(以下、「本発明の核酸コンストラクト」とも呼ぶ)と、目的遺伝子のmRNA(以下、「本発明のmRNA」とも呼ぶ)を組み合わせて用いる点に特徴を有する。ここでの表現「・・・を組み合わせて用いる」又は「・・・を組み合わせてなる」とは、上記二つの要素が併用されることをいう。併用の具体的な態様を以下で説明する。尚、人為的な操作によって調製されるという特徴を表すとともに、細胞内(内在性)mRNAと区別する目的で、本発明のmRNAのことを「人工合成mRNA」と呼称することがある。
一態様では、本発明の核酸コンストラクトを含有する第1要素と、本発明のmRNAを含有する第2要素とからなるキットの形態で本発明の組成物が提供される。この場合、標的細胞に対して同時又は所定の時間的間隔を置いて両要素が投与されることになる。好ましくは、核酸コンストラクトの発現産物、即ち、RNA結合ペプチドと融合した翻訳関連因子の発現に要する時間を考慮し、第1要素を導入した後、所定の時間差で第2要素を導入する。例えば、第1要素の導入から1時間〜48時間後、好ましくは4時間〜30時間後に第2要素を導入する。第1要素と第2要素を同時に導入することにしてもよい。ここでの「同時」は厳密な同時性を要求するものではない。従って、両要素を混合した後に標的細胞へ導入する等、両要素の導入が時間差のない条件下で実施される場合は勿論のこと、片方の導入後、速やかに他方を導入投与する等、両要素の導入が実質的な時間差のない条件下で実施される場合もここでの「同時」の概念に含まれる。
本発明の別の態様では、第1要素と第2要素とを混合した配合剤として本発明の組成物が提供されることになる。一方、本発明のmRNAを含有する組成物とし、その導入時に本発明の核酸コンストラクトが併用導入されるようにしてもよい。この場合の組成物と核酸コンストラクトの導入のタイミングは、上記のキットの形態の場合と同様である。即ち、好ましくは核酸コンストラクトを導入した後、本発明のmRNAを含有する組成物を導入することになる。また、当該態様とは逆に、核酸コンストラクトを含有する組成物とし、その導入時に本発明のmRNAが併用導入されるようにしてもよい。この場合の導入のタイミングは上記態様の場合に準ずる。
有効成分(mRNA、機能阻害物質)の保護を目的としてエキソヌクレアーゼ阻害剤、エンドヌクレアーゼ阻害剤、リン脂質、リン酸カルシウム、ポリエチレンイミン、ナノミセル形成剤であるポリエチレングリコール−ポリカチオン、緩衝剤、無機塩類、2価イオン等を、細菌の混入を阻止することを目的として抗生物質等を、細胞の増殖能を亢進させる目的として動物血清、成長因子、糖類、ビタミン類、2価イオン等を本発明の組成物に含有させてもよい。また、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)を本発明の組成物に含有させてもよい。更に、有効成分の細胞導入効率を亢進させる目的として、ライフテクノロジー社が提供するOpti-MEM等の特殊合成培地を用いてもよい。
2.本発明の核酸コンストラクト
本発明では、翻訳関連因子を人工合成mRNAの3'非翻訳領域に繋留させるために、RNA結合ペプチドとその標的RNA配列(RNA結合ペプチドが特異的に結合するRNA配列)の組合せから構成されるシステム(以下、「RNA結合システム」と呼称する)を利用する。
本発明の核酸コンストラクトには、RNA結合システムの構成要素であるRNA結合ペプチドをコードする配列が組み込まれている。当該配列は、翻訳関連因子をコードする配列とインフレームで連結されており(間に他の配列を介在していてもよい)、核酸コンストラクトからは、RNA結合ペプチドと融合した翻訳関連因子(以下、説明の便宜上、「翻訳関連因子融合体」と呼称する)が発現する。翻訳関連因子融合体中のRNA結合ペプチドは、人工合成mRNAの3'非翻訳領域に配置された特定の標的RNA配列(RNA結合ペプチドに対応するもの)を認識し、結合する。その結果、目的遺伝子の人工合成mRNAの存在下では、翻訳関連因子が、RNA結合ペプチドと標的RNA配列との間の特異的な結合を介して、目的遺伝子の人工合成mRNAにおける3'非翻訳領域に繋留されることになる。
RNA結合システムの代表的なものはMS2システムとλNシステムである。MS2システムは、λファージコートタンパク質MS2と、それが特異的に結合する標的RNA配列(MS2結合配列)を利用する(例えば、LeCuyer, K.A., Behlen, L.S. & Uhlenbeck, O.C. EMBO J. 15, 6847-6853 (1996)、LeCuyer, K.A., Behlen, L.S. and Uhlenbeck, O.C. (1995) Biochemistry, 34, 10600-10606等を参照)。MS2のアミノ酸配列の具体例を配列番号1に示す。また、当該アミノ酸配列をコードする塩基配列を配列番号2(DNA配列)及び配列番号3(RNA配列)に示す。一態様では、本発明の核酸コンストラクトには、当該塩基配列(配列番号2又は配列番号3)が組み込まれる。尚、標的RNA配列への特異的結合性を示す限り、MS2の変異体を用いることにしてもよい。
一方、λNシステムは、λN22ペプチドと、それが特異的に結合する標的RNA配列(Box-B)を利用する(Daigle, N. & Ellenberg, J. Nat. Methods 4, 633-636 (2007)等を参照)。λN22ペプチドのアミノ酸配列の具体例を配列番号4に示す。また、当該アミノ酸配列をコードする塩基配列を配列番号5(DNA配列)及び配列番号6(RNA配列)に示す。一態様では、本発明の核酸コンストラクトには、当該塩基配列(配列番号5又は配列番号6)が組み込まれる。尚、標的RNA配列への特異的結合性を示す限り、λN22ペプチドの変異体を用いることにしてもよい。
前記翻訳関連因子の例は、PABPC1、eRF3 Cドメイン、HuR(RNA結合タンパク質)である。好ましくは、PABPC1又はeRF3 Cドメインを翻訳関連因子として採用し、本発明の核酸コンストラクトを構築する。PABPC1のアミノ酸配列を配列番号7に、それをコードする塩基配列を配列番号8(DNA配列)及び配列番号9(RNA配列)に示す。同様に、eRF3 Cドメインのアミノ酸配列を配列番号10に、それをコードする塩基配列を配列番号11(DNA配列)及び配列番号12(RNA配列)に示す。
DNA分子又はmRNA分子として核酸コンストラクトを構成することができる。核酸コンストラクトをmRNA分子として構成すれば、本発明の組成物がmRNA分子を組合せたものとなり、その使用の際の操作を(特に標的細胞への導入操作)簡略化できる。また、DNA分子を採用した場合に必要とされるウイルスベクターなどが不要となり、安全性が高まる。核酸コンストラクトをmRNA分子として構成する場合には、通常、その翻訳に必要な5'キャップ構造(m7G(7-メチルグアノシン)が5'末端ヌクレオシドに5'-5'三リン酸橋を介して結合した構造)及びポリ(A)鎖も備えることになる。また、5'末端非翻訳領域(5'UTR)(mRNAの調製に利用する鋳型に由来する配列、制限酵素認識配列、コザック配列等を含み得る)を備えていてもよい。
3.目的遺伝子のmRNA
本発明の組成物の構成要素であるmRNA(本発明のmRNA)は目的遺伝子のコード領域(目的遺伝子の発現産物であるタンパク質をコードする領域)を備える。また、その3'非翻訳領域内には、上記核酸コンストラクトに用いたRNA結合ペプチドが特異的に結合する標的RNA配列が配置される。「目的遺伝子」とは、本発明のmRNAを利用して標的細胞内で発現させる遺伝子である。様々な遺伝子を目的遺伝子として採用できる。目的遺伝子の例は、酵素(例えばヌクレアーゼ(ZFN(Zinc Finger Nuclease)、TALEN(Transcription Activator-Like Effector Nuclease)、CRISPR-Cas9等)、サイトカイン、ホルモン、神経伝達物質等の遺伝子、その機能低下(例えば変異によるもの)や欠損などが疾患の原因となる遺伝子、正常に機能をしているがその発現の増強が望まれる遺伝子、標的細胞が本来有しない遺伝子であってそれが発現されることにより標的細胞の生存、維持等に有益な遺伝子、標的細胞に作用し、標的細胞が本来有する機能を高めるタンパク質又は標的細胞が本来有する機能とは異なる機能を発揮させるタンパク質をコードする遺伝子、標的細胞には作用せず、標的細胞から分泌されて周囲の細胞に作用するタンパク質(例えば、細胞間ネットワークに関与するタンパク質)をコードする遺伝子である。標的細胞及び周囲の細胞に対しては実質的に作用しないタンパク質をコードする遺伝子も目的遺伝子となり得る。このような遺伝子として、例えば医薬品等に利用されるタンパク質等をコードする遺伝子(例えば、ヒトエリスロポエチン遺伝子、ヒトフィブリノーゲン遺伝子、ヒト血清アルブミン遺伝子、ヒトラクトフェリン遺伝子、ヒトα-グルコシダーゼ遺伝子)が挙げられる。かかる遺伝子を採用することにより、標的細胞内で医薬品等として利用可能な組換えタンパク質を産生させることが可能である。尚、ZFN遺伝子の配列を配列番号13に、TALEN遺伝子の配列を配列番号14に、CRISPR-Cas9遺伝子の配列(例えばScience. 2013 Feb 15;339(6121):819-23.を参照することができる)を配列番号15にそれぞれ示す。尚、ZFN遺伝子(IL28Bを標的としたもの)の配列を配列番号13(ZFN-right)及び配列番号14(ZFN-left)に、TALEN遺伝子の配列を配列番号15に、CRISPR-Cas9遺伝子の配列(例えばScience. 2013 Feb 15;339(6121):819-23.を参照することができる)を配列番号16にそれぞれ示す。
「標的細胞」とは、その中で目的遺伝子を発現させる細胞である。本発明では、標的細胞に本発明の核酸コンストラクトと本発明のmRNAが導入されることになる。標的細胞は特に限定されず、各種真核細胞を標的細胞として用いることができる。例えば、標的細胞として、哺乳動物(ヒト、サル、ウシ、ウマ、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター等)の各種細胞、例えば心筋細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、線維芽細胞、骨細胞、軟骨細胞、破骨細胞、実質細胞、表皮角化細胞(ケラチノサイト)、上皮細胞(皮膚表皮細胞、角膜上皮細胞、結膜上皮細胞、口腔粘膜上皮、毛包上皮細胞、口腔粘膜上皮細胞、気道粘膜上皮細胞、腸管粘膜上皮細胞など)、内皮細胞(角膜内皮細胞、血管内皮細胞など)、神経細胞、グリア細胞、脾細胞、膵臓β細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、肝細胞、これらの前駆細胞又は幹細胞、或いは人工多能性幹細胞(iPS細胞)、間葉系幹細胞(MSC)、胚性幹細胞(ES細胞)、胚性生殖細胞(EG細胞)、胚性腫瘍細胞(EC細胞)などを使用することができる。また、継代細胞、特定の細胞系譜へと分化誘導された細胞、株化細胞(例えば、HeLa細胞、CHO細胞、Vero細胞、HEK293細胞、HepG2細胞、COS-7細胞、NIH3T3細胞、Sf9細胞)を用いることもできる。
生体から分離された状態の標的細胞(即ち、単離された標的細胞)、又は生体を構成した状態の標的細胞に対して本発明が適用される。従って、In vitro、In vivo及びEx vivoのいずれの環境下でも本発明を実施することが可能である。ここでの「単離された」とは、その本来の環境(例えば生体を構成した状態)から取り出された状態にあることをいう。従って通常は、単離された標的細胞は培養容器内又は保存容器内に存在し、それへのin vitroでの人為的操作が可能である。具体的には、生体から分離され、生体外で培養状態にある細胞(株化された細胞を含む)は、単離された標的細胞としての適格を有する。尚、上記の意味において単離された状態にある限り、組織体を形成した状態であっても単離された細胞である。
単離された標的細胞は生体(例えば患者)より調製することができる。一方、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター、独立行政法人 製品評価技術基盤機構、ATCC (American Type Culture Collection)、DSMZ(German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)などより入手した細胞を、単離された標的細胞として使用することもできる。
本発明のmRNAの3'非翻訳領域内に配置される「標的RNA配列」には、本願発明に特徴的な作用、即ち、上記核酸コンストラクトに用いたRNA結合ペプチドの特異的な結合が生ずるように、RNA結合ペプチドに対応する配列が用いられる。上で説明した通り、好ましくは、本発明ではMS2システム又はλNシステムを利用する。前者(MS2システム)を利用する場合には、MS2が特異的に結合する標的RNA配列、即ちMS2結合配列が本発明のmRNAの3'非翻訳領域内に配置される。MS2結合配列の具体例を配列番号17に示す。他方、後者(λNシステム)を利用する場合には、λN22ペプチドが特異的に結合するRNA配列である、Box-B配列が本発明のmRNAの3'非翻訳領域内に配置されることになる。Box-B配列の具体例を配列番号18に示す。
好ましくは、標的RNA配列を複数用いる。例えば、タンデム状に複数の標的RNA配列が連結した領域を3'非翻訳領域内に設ける。
一方、好ましくは、3'UTRの一部として安定化シス配列が用いられる。安定化シス配列を用いることにより、mRNAの更なる安定化を図ることができる。安定化シス配列の具体例はPRE(pyrimidine-rich element)である。例えば、β−グロビンのPREをコード領域とポリ(A)鎖の間に介在させてmRNAを構成することにより、より安定性の高いmRNAを得ることができる。β−グロビンのPREの配列を配列表の配列番号19〜21に示す(Mol Cell Biol. Sep 2001; 21(17): 5879-5888を参照)。β−グロビン遺伝子等、その3'UTRにPREを含む遺伝子の3'UTR(具体例を配列番号22に示す)の全体又は一部(但し、PREを含むもの)を用いて、本発明のmRNAの3'UTRを構成してもよい。一方、安定化シス配列とは対照的にARE (AU-rich element)、GRE (GU-rich element)等のシス因子はmRNAを不安定化することが知られている(例えば Louis I et al., 2014, J Interferon Cytokine Res. 34: 233-241を参照)。従って、本発明のmRNAは、このような不安定化をもたらすシス配列を含まないことが好ましい。3'UTRを構成し得る要素として、上記の要素の他、mRNAの調製に利用する鋳型(市販のクローニング用プラスミドなど)に由来する配列、制限酵素認識配列(制限酵素サイト)を挙げることができる。
本発明のmRNAはその翻訳に必要な5'キャップ構造(m7G(7-メチルグアノシン)が5'末端ヌクレオシドに5'-5'三リン酸橋を介して結合した構造)及びポリ(A)鎖も備える。ポリ(A)鎖の長さは特に限定されないが、例えば、30〜200塩基である。5’キャップ構造には翻訳開始因子eIF4Eが、ポリ(A)鎖にはポリ(A)鎖結合タンパク質PABP(poly(A)-binding protein)が結合し、両者が足場タンパク質である翻訳開始因子eIF4Gを介して複合体を形成することでmRNAは環状構造をとることになる(Wells SE, et al. Mol Cell. 1998;2:135-140)。さらに、翻訳終結因子eRF3はPABP-eIF4Gと複合体を形成し、3’UTRをループアウトする(Uchida N, et al. J Biol Chem. 2002;277:50286-50292)。このようなmRNAの環状化は、翻訳終結部位と翻訳開始部位を物理的に近づけ、翻訳を終えたリボソームを、3’UTRを経ることなく終止コドンから次の翻訳開始にリサイクルすることで、翻訳開始の効率に大きく寄与する。5’末端キャップ構造と3’末端ポリ(A)鎖は、このような翻訳の効率化だけでなく、エキソヌクレアーゼによる末端からのmRNA分解を阻害することでmRNAを安定化し、翻訳の効率化とmRNA安定化の両過程において転写後の遺伝子発現制御に大きく貢献する。
上記要素の他、5'末端非翻訳領域(5'UTR)を本発明のmRNAが備えていてもよい。通常、5'UTRの一部としてコザック配列が用いられる。本発明のmRNAの5’UTRを構成し得る要素として、上記の要素の他、mRNAの調製に利用する鋳型(市販のクローニング用プラスミドなど)に由来する配列、制限酵素認識配列(制限酵素サイト)を挙げることができる。
本発明のmRNAはin vitro転写系、化学合成等の方法によって調製することができる。in vitro転写用のキット(例えば例えばプロメガ社が提供するRiboMAXsystem、ニッポンジーン社が提供するCUGA7 in vitro transcription kit、ライフテクノロジーズ社が提供するMEGAscript T7 kit)を利用すれば、簡便に目的のmRNAを調製することが可能である。5'キャップ構造の付加も公知の方法で行えば良く、例えばNew England Biolabsが提供する3'-O-Me-m7G(5')ppp(5')G RNA Cap Structure Analogを利用することができる。
本発明のmRNAとして、2種類以上のmRNAを併用することにしてもよい。例えば、特定の遺伝子のコード領域を有するmRNAと、当該遺伝子の発現産物と相互作用する発現産物をコードする領域を有するmRNAを併用することができる。
本発明の組成物に使用するmRNAの量は、本発明の組成物の使用目的、使用する目的遺伝子の特徴、標的細胞の種類等を考慮しつつ、標的細胞内で十分な量の発現産物が得られるように設定すればよい。mRNA量の例を示すと、一回分の量として3 cm 培養ディッシュあたり0.5〜1.0μgのmRNAを含有させるとよい。
4.エキソソーム複合体の機能抑制物質の併用
本発明の一態様では、本発明の核酸コンストラクト及び本発明のmRNA(目的遺伝子のmRNA)に加え、エキソソーム複合体の機能抑制物質(以下、「本発明の機能抑制物質」とも呼ぶ)も併用する。即ち、上記核酸コンストラクト、上記mRNA(目的遺伝子のmRNA)及びエキソソーム複合体の機能抑制物質の3要素を組み合わせる。組合せの態様は、核酸コンストラクトと人工合成mRNAの2要素を組み合わせる場合の態様に準ずる。従って、本発明の核酸コンストラクトを含有する第1要素と、本発明のmRNAを含有する第2要素と、本発明の機能抑制物質を含有する第3要素とからなるキットの形態、第1要素、第2要素及び第3要素を混合した配合剤の形態、第1要素及び第2要素を混合した配合剤とし、その導入時に第3要素が併用導入される形態、第1要素及び第3要素を混合した配合剤とし、その導入時に第2要素が併用導入される形態、或いは、第2要素及び第3要素を混合した配合剤とし、その導入時に第1要素が併用導入される形態として、本発明の組成物を提供することができる。各要素の導入のタイミングは、組成物の形態の制約を受けるが、第2要素の導入よりも他の要素(第1要素、第3要素)の導入が後にならないことが好ましい。従って、例えば、キットの形態であれば、第1要素と第3要素を導入した後(これらの要素は例えば同時に導入される)、第2要素を導入するとよい。第1要素及び第3要素を混合した配合剤とし、その導入時に第2要素が併用導入される形態であれば、配合剤を導入した後に、第1要素を導入するとよい。尚、ここでの「同時」は、上記の定義の通りである。その他、特に言及しない事項については、第1要素及び第2要素を組み合わせた場合についての説明が援用される。
機能抑制物質を併用することにより、標的細胞内で人工合成mRNAを安定化させることができ、目的遺伝子の高発現が促される。尚、二つの用語「抑制」と「阻害」は、その意味するところが重複し、しばしば置換可能に用いられる。そこで本明細書では、前後の文脈から区別が特に必要な場合を除き、統一して用語「抑制」を使用する。
5.機能抑制物質
本発明における機能抑制物質はエキソソーム複合体に作用し、エキソソーム複合体による人工合成mRNAの分解を抑制ないし阻害する。即ち、抑制物質の標的はエキソソーム複合体である。エキソソーム複合体は構成因子と補助因子(以下では、説明の便宜上、構成因子と補助因子をまとめて「成分」と称することがある。)から構成される。従って、エキソソームの構成因子(構成因子(サブユニットDis3/Rrp44, Rrp6, Rrp4, Rrp40, Rrp41/Ski6, Rrp42, Rrp43, Rrp45, Rrp46, Mtr3, Csl4/Ski4)及び補助因子(Ski2ヘリカーゼ、Mtr4ヘリカーゼ、Ski3、Ski8)が抑制物質の標的となり得る。ここで、翻訳の場である細胞質においてエキソソームは、ski2ヘリカーゼ、Ski3及びSki8から構成されるski複合体と相互作用し、その機能を発揮する。このように、細胞質では通常、補助因子としてski2ヘリカーゼ、Ski3、Ski8が利用される。従って、ski2ヘリカーゼ、Ski3及びSki8は、本発明における抑制物質の標的となり得る。この中でも、特に重要な補助因子であるski2ヘリカーゼを阻害することが効果的である。従って、好ましい一態様では、ski2ヘリカーゼを標的とする抑制物質を採用する。実際、後述の実施例に示す通り、ski2ヘリカーゼの抑制が人工合成mRNAの安定化に効果的であることが裏づけられている。一方、ski2ヘリカーゼではなく、核内でエキソソームと複合体を形成するとされるMtr4ヘリカーゼの抑制によっても人工合成mRNAが安定化し、しかもその効果が高いことが明らかとなった(後述の実施例を参照)。この事実に鑑みれば、抑制物質の好ましい標的の一つはMtr4ヘリカーゼである。尚、理論に拘泥する訳ではないが、Ski2ヘリカーゼが十分に機能できない場合や欠損した場合などでは、Ski2ヘリカーゼを補填するようにMtr4ヘリカーゼが機能するといわれている(Saito et al., (2011) J Biol Chem 288:17832-17843)。
2種類以上の機能抑制物質を併用することにしてもよい。この場合、各機能抑制物質の標的、作用等は同一又は類似であっても、或いは異なっていてもよい。例えばDis3の機能抑制物質、Ski3の機能抑制物質、Ski8の機能抑制物質、Ski2ヘリカーゼの機能抑制物質、及びMtr4ヘリカーゼの機能抑制物質からなる群より選択される二以上の機能抑制物質を併用する。
本発明の機能抑制物質の例は次の通りである。
(a)エキソソーム複合体の構成因子又は補助因子を標的とするsiRNA
(b)エキソソーム複合体の構成因子又は補助因子を標的とするsiRNAを細胞内で生成する核酸コンストラクト
(c)エキソソーム複合体の構成因子又は補助因子を標的とするアンチセンス核酸
(d)エキソソーム複合体の構成因子又は補助因子を標的とするリボザイム
上記(a)及び(b)は、いわゆるRNAi(RNA interference;RNA干渉)による発現抑制に利用される化合物である。換言すれば、上記(a)又は(b)の化合物を機能抑制物質として採用すれば、RNAiによりエキソソーム複合体の成分の発現を抑制することができる。RNAiは真核細胞内で引き起こすことが可能な、配列特異的な転写後遺伝子抑制のプロセスである。哺乳動物細胞に対するRNAiでは、標的mRNAの配列に対応する配列の短い二本鎖RNA(siRNA)が使用される。通常、siRNAは21〜23塩基対である。哺乳動物細胞は二本鎖RNA(dsRNA)の影響を受ける2つの経路(配列特異的経路及び配列非特異的経路)を有することが知られている。配列特異的経路においては、比較的長いdsRNAが短い干渉性のRNA(即ちsiRNA)に分割される。他方、配列非特異的経路は、所定の長さ以上であれば配列に関係なく、任意のdsRNAによって惹起されると考えられている。この経路ではdsRNAが二つの酵素、即ち活性型となり翻訳開始因子eIF2をリン酸化することでタンパク質合成のすべてを停止させるPKRと、RNAase L活性化分子の合成に関与する2',5'オリゴアデニル酸シンターゼが活性化される。この非特異的経路の進行を最小限に留めるためには約30塩基対より短い二本鎖RNA(siRNA)を使用することが好ましい(Hunter et al. (1975) J Biol Chem 250: 409-17; Manche et al. (1992) Mol Cell Biol 12: 5239-48; Minks et al. (1979) J Biol Chem 254: 10180-3; 及び Elbashir et al. (2001) Nature 411: 494-8を参照されたい)。
標的特異的なRNAiを生じさせるためには標的遺伝子のmRNA配列の一部と相同なセンスRNA及びこれに相補的なアンチセンスRNAからなるsiRNAを細胞内に導入するか、又は細胞内で発現させればよい。上記(a)は前者の方法に対応する化合物であり、同様に上記(b)は後者の方法に対応する化合物である。
特定の遺伝子を標的とするsiRNAは、通常、当該遺伝子のmRNAの配列における連続する領域と相同な配列からなるセンスRNAとその相補配列からなるアンチセンスRNAがハイブリダイズした二本鎖RNAである。ここでの「連続する領域」の長さは通常15〜30塩基、好ましくは18〜23塩基、より好ましくは19〜21塩基である。
末端に数塩基のオーバーハングを有する二本鎖RNAが高いRNAi効果を発揮することが知られている。そこで本発明においても、そのような構造のsiRNAを採用することが好ましい。オーバーハングを形成する塩基の長さは特に限定されないが、好ましくは2塩基(例えばTT、UU、UG)である。
修飾したRNAからなるsiRNAを用いることにしてもよい。ここでの修飾の例としてホスホロチオエート化、修飾塩基(例えば蛍光標識塩基)の使用が挙げられる。
RNAi法に使用するdsRNAは化学合成によって、又は適当な発現ベクターを用いてin vitro又はin vivoで調製することができる。発現ベクターによる方法は、比較的長いdsRNAの調製を行うことに特に有効である。siRNAの設計には通常、標的配列に固有の配列(連続配列)が利用される。尚、適当な標的配列を選択するためのプログラム及びアルゴリズムが開発されている。
Ski2ヘリカーゼを標的としたsiRNAの配列の例を以下に示す。
GGAGAUAGACUUUGAGAAA dTdT(配列番号23)
Mtr4ヘリカーゼを標的としたsiRNAの配列の例を以下に示す。
GAGUCAAUAACUGAAGACU dTdT(配列番号24)
Dis3を標的としたsiRNAの配列の例を以下に示す。
CUCAUAGAUCGUCUUGCUU dTdT(配列番号25)
上記(b)の「siRNAを細胞内で生成する核酸コンストラクト」とは、それを細胞に導入すると細胞内でのプロセスによって所望のsiRNA(標的遺伝子に対するRNAiを引き起こすsiRNA)が生ずる核酸性分子をいう。当該核酸コンストラクトの一つの例はshRNA(short hairpin RNA)である。shRNAは、センスRNAとアンチセンスRNAがループ構造部を介して連結された構造(ヘアピン構造)を有し、細胞内でループ構造部が切断されて二本鎖siRNAとなり、RNAi効果をもたらす。ループ構造部の長さは特に限定されないが、通常は3〜23塩基である。
ここでの核酸コンストラクトの別の例は、所望のsiRNAを発現し得るベクターである。このようなベクターとしては、後のプロセスによってsiRNAに変換されるshRNAを発現する(shRNAをコードする配列がインサートされた)ベクター(ステムループタイプ又はショートヘアピンタイプと呼ばれる)、センスRNAとアンチセンスRNAを別々に発現するベクター(タンデムタイプと呼ばれる)が挙げられる。これらのベクターは当業者であれば常法に従い作製することができる(Brummelkamp TR et al.(2002) Science 296:550-553; Lee NS et al.(2001) Nature Biotechnology 19:500-505; Miyagishi M & Taira K (2002) Nature Biotechnology 19:497-500; Paddison PJ et al.(2002) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:1443-1448; Paul CP et al.(2002) Nature Biotechnology 19 :505-508; Sui G et al.(2002) Proc Natl Acad Sci USA 99(8):5515-5520; Paddison PJ et al.(2002) Genes Dev. 16:948-958等が参考になる)。現在、種々のRNAi用ベクターが利用可能である。このような公知のベクターを利用して本発明のベクターを構築することにしてもよい。この場合、所望のRNA(例えばshRNA)をコードするインサートDNAを用意した後、ベクターのクローニングサイトに挿入し、RNAi発現ベクターとする。尚、標的遺伝子に対するRNAi作用を発揮するsiRNAを細胞内で生じさせるという機能を有する限り、ベクターの由来や構造は限定されるものではない。
上記(c)はアンチセンス法による発現抑制に利用される化合物である。換言すれば、上記(c)の化合物を機能抑制物質として採用すれば、アンチセンス法によりエキソソーム複合体の成分の発現を抑制することができる。アンチセンス法による発現阻害を行う場合には例えば、標的細胞内で転写されたときに、エキソソーム複合体の成分をコードするmRNAの固有の部分に相補的なRNAを生成するアンチセンス・コンストラクトが使用される。このようなアンチセンス・コンストラクトは例えば、発現プラスミドの形態で標的細胞に導入される。一方、アンチセンス・コンストラクトとして、標的細胞内に導入されたときに、エキソソーム複合体の成分をコードするmRNA/又はゲノムDNA配列とハイブリダイズしてその発現を阻害するオリゴヌクレオチド・プローブを採用することもできる。このようなオリゴヌクレオチド・プローブとしては、好ましくは、エキソヌクレアーゼ及び/又はエンドヌクレアーゼなどの内因性ヌクレアーゼに対して抵抗性であるものが用いられる。
アンチセンス核酸としてDNA分子を使用する場合、エキソソーム複合体の成分をコードするmRNAの翻訳開始部位(例えば-10〜+10の領域)を含む領域に由来するオリゴデオキシリボヌクレオチドが好ましい。
アンチセンス核酸と、標的核酸との間の相補性は厳密であることが好ましいが、多少のミスマッチが存在していてもよい。標的核酸に対するアンチセンス核酸のハイブリダイズ能は一般に両核酸の相補性の程度及び長さの両方に依存する。通常、使用するアンチセンス核酸が長いほど、ミスマッチの数が多くても、標的核酸との間に安定な二重鎖(又は三重鎖)を形成することができる。当業者であれば、標準的な手法を用いて、許容可能なミスマッチの程度を確認することができる。
アンチセンス核酸はDNA、RNA、若しくはこれらのキメラ混合物、又はこれらの誘導体や改変型であってもよい。また、一本鎖でも二本鎖でもよい。塩基部分、糖部分、又はリン酸骨格部分を修飾することで、アンチセンス核酸の安定性、ハイブリダイゼーション能等を向上させることなどができる。また、アンチセンス核酸に、細胞膜輸送を促す物質(例えば Letsinger et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:6553-6556; Lemaitre et al., 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. 84:648-652; PCT Publication No. W088/09810, published December 15, 1988を参照されたい)や、特定の細胞に対する親和性を高める物質などを付加してもよい。
アンチセンス核酸は例えば市販の自動DNA合成装置(例えばアプライド・バイオシステムズ社等)を使用するなど、常法で合成することができる。核酸修飾体や誘導体の作製には例えば、Stein et al.(1988), Nucl. Acids Res. 16:3209やSarin et al., (1988), Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:7448-7451等を参照することができる。
標的細胞内におけるアンチセンス核酸の作用を高めるために、pol IIやpol IIIといった強力なプロモーターを利用することができる。即ち、このようなプロモーターの制御下に配置されたアンチセンス核酸を含むコンストラクトを標的細胞に導入すれば、当該プロモーターの作用によって十分な量のアンチセンス核酸の転写を確保できる。
アンチセンス核酸の発現には、哺乳動物細胞(好ましくはヒト細胞)で機能することが知られている任意のプロモーター(誘導性プロモーター又は構成的プロモーター)によって行うことができる。例えば、SV40初期プロモーター領域 (Bernoist and Chambon, 1981, Nature 290:304-310)、ラウス肉腫ウイルスの3'末端領域由来のプロモーター(Yamamoto et al., 1980, Cell 22:787-797)、疱疹チミジン・キナーゼ・プロモーター(Wagner et al., 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:1441-1445)等のプロモーターを使用することができる。
本発明の一態様では、リボザイムによる発現抑制を利用する(上記(d)の化合物の場合)。部位特異的認識配列でmRNAを開裂させるリボザイムを用いて標的mRNAを破壊することもできるが、好ましくはハンマーヘッド・リボザイムを使用する。ハンマーヘッド・リボザイムの構築方法については例えばHaseloff and Gerlach, 1988, Nature, 334:585-591を参考にすることができる。
アンチセンス法を利用する場合と同様に、例えば安定性やターゲット能を向上させることを目的として、修飾されたオリゴヌクレオチドを用いてリボザイムを構築してもよい。効果的な量のリボザイムを標的細胞内で生成させるために、例えば、強力なプロモーター(例えばpol IIやpol III)の制御下に、当該リボザイムをコードするDNAを配置した核酸コンストラクトを使用することが好ましい。
本発明の組成物に使用する機能抑制物質の量は、本発明の組成物の使用目的、使用する機能抑制物質の特性、標的細胞の種類等を考慮しつつ、標的細胞内で所望の効果を発揮できるように設定すればよい。機能抑制物質としてsiRNAを採用する場合には、例えば、一回分の量として、培養液中においてその濃度が10〜50 nMとなるようにsiRNAを含有させるとよい。
6.導入方法
本発明を利用して標的細胞内で目的遺伝子を発現させるためには、典型的には以下のステップ(1)及び(2)を行う。
(1)標的細胞に、RNA結合ペプチドと融合した翻訳関連因子を発現する核酸コンストラクトを導入するステップ;
(2)前記標的細胞に、目的遺伝子のコード領域と、3'非翻訳領域内に配置され、前記RNA結合ペプチドが特異的に結合するRNA配列とを備えるmRNAを導入するステップ。
ステップ(1)における、核酸コンストラクトの標的細胞への導入、及びステップ(2)におけるmRNAの標的細胞への導入は公知の方法で行うことができる。例えば、リン酸カルシウム共沈降法、エレクトロポレーション(Potter, H. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81, 7161-7165(1984))、リポフェクション(Felgner, P.L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84,7413-7417(1987))、マイクロインジェクション(Graessmann, M. & Graessmann,A., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 73,366-370(1976))、Hanahanの方法(Hanahan, D., J. Mol. Biol. 166, 557-580(1983))、酢酸リチウム法(Schiestl, R.H. et al., Curr. Genet. 16, 339-346(1989))、プロトプラスト−ポリエチレングリコール法(Yelton, M.M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 81, 1470-1474(1984))、超音波遺伝子導入法、カチオン性ポリアミン酸を利用した方法(例えば特開2011−173802号公報を参照)、カチオン性ポリマーセグメントと非架電親水性ポリマーセグメントとを有するブロックコポリマーからなるポリイオンコンプレックス(PIC)型の高分子ミセルを利用した方法(例えば、特開2004−352972号公報、国際公開第2012/005376号パンフレットを参照)等によって実施することができる。
核酸コンストラクトからの翻訳関連因子融合体の発現に要する時間を考慮すれば、核酸コンストラクトとmRNAは、この順序で且つ間隔をあけて導入することが好ましい。従って、好ましくは、ステップ(1)の後、所定の時間(例えば1時間〜48時間、好ましくは4時間〜30時間)が経過した段階でステップ(2)を行う。但し、ステップ(1)とステップ(2)を同時に行うことにしてもよい。この場合、例えば、導入操作に先立って核酸コンストラクトとmRNAを混合したものを用意し、これを標的細胞へ導入する(この場合はステップ(1)とステップ(2)が同時に一つの操作として実施されることになる)。或いは、核酸コンストラクトとmRNAを別個に用意しておき、両者を実質的に時間差のない条件でそれぞれ標的細胞に導入する。
本発明の一態様では、本発明の機能抑制物質も併用する。この態様では、ステップ(1)及び(2)に加えて、以下のステップ(1')を行う。
(1')標的細胞にエキソソーム複合体の機能抑制物質を導入するステップ
機能抑制物質の作用の発現に要する時間を考慮すれば、機能抑制物質とmRNAが、この順序で且つ間隔をあけて導入されることが好ましい。従って、好ましくは、ステップ(1)の前、ステップ(1)と同時、又はステップ(1)とステップ(2)の間にステップ(1')を実施する。ステップ(2)は、通常、ステップ(1)及び(1')が完了した後、所定の時間(例えば1時間〜48時間、好ましくは4時間〜30時間)が経過した段階で行われる。但し、ステップ(1')をステップ(2)と同時に行うことにしてもよい。この場合、例えば、導入操作に先立って機能抑制物質とmRNAを混合したものを用意し、これを標的細胞へ導入する(この場合はステップ(1')とステップ(2)が同時に一つの操作として実施されることになる)。或いは、機能抑制物質とmRNAを別個に用意しておき、両者を実質的に時間差のない条件でそれぞれ標的細胞に導入する。
7.用途
本発明の組成物によれば、標的細胞内で人工合成mRNAの翻訳効率を向上させることができ、目的タンパク質が高発現する。従って、本発明は、目的タンパク質の高発現が望まれる様々な用途への適用が可能である。本発明の用途の例として、(A)各種ウイルス性疾患(例えばB型肝炎、後天性免疫不全症候群AIDS、成人T細胞白血病)や遺伝病(例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィー、嚢胞性腺維症、βサラセミア、Hurler症候群、網膜色素変性症、X連鎖型腎性尿崩症)の治療、(B)癌免疫療法、(C)iPS細胞の作製、(D)幹細胞(例えばiPS細胞やES細胞などの多分化能幹細胞)又は前駆細胞の分化誘導、を挙げることができる。
(A)及び(B)は、いわゆるRNA医薬として本発明を利用するものである。(A)の具体例はB型肝炎の治療である。例えば、ゲノムに組み込まれたウイルスDNAを切断・分解するヌクレアーゼ(ZFN、TALEN、又はCRISPR-Cas9)遺伝子を目的遺伝子として組み込んだmRNAを用いることにより、従来のウイルスベクターを使用した方法で問題となる発がんリスクを伴わないウイルス治療が可能となる。このように、本発明の組成物はウイルス除去剤としても有用である。遺伝病の治療においては、例えば、疾患原因遺伝子(機能低下又は欠損により疾患を引き起こすもの)を目的遺伝子とし、本発明を適用する。(B)の用途では、本発明を利用してがん抗原のmRNAを抗原提示細胞に導入し、癌ワクチンを体内で産生させることになる。(C)の用途に本発明を適用すれば、ウイルスベクターを使用することなく初期化因子を導入することが可能になるため、細胞のがん化の問題を克服することができる。(D)の用途においても同様の利点が得られる。
本発明の組成物をRNA医薬として利用する場合の製剤化は常法に従って行うことができる。製剤化する場合には、製剤上許容される他の成分(例えば、緩衝剤、賦形剤、崩壊剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水、担体など)を含有させることができる。緩衝剤としてはリン酸緩衝液、クエン酸緩衝液などを用いることができる。賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等と用いることができる。
製剤化する場合の剤型も特に限定されない。剤型の例は注射剤、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤及びシロップ剤である。
本発明のRNA医薬はその剤型に応じて経口投与又は非経口投与(静脈内、動脈内、皮下、皮内、筋肉内又は腹腔内注射、経皮、経鼻、経粘膜など)によって対象に適用される。これらの投与経路は互いに排他的なものではなく、任意に選択される二つ以上を併用することもできる(例えば、経口投与と同時に又は所定時間経過後に静脈注射等を行う等)。ここでの「対象」は特に限定されず、ヒト及びヒト以外の哺乳動物(ペット動物、家畜、実験動物を含む。具体的には例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、サル、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ニワトリ、ウズラ等である)を含む。好ましい一態様では本発明のRNA医薬はヒトに対して適用される。
本発明のRNA医薬の投与量は、期待される治療効果が得られるように設定される。治療上有効な投与量の設定においては一般に患者の症状、年齢、性別、及び体重などが考慮される。尚、当業者であればこれらの事項を考慮して適当な投与量を設定することが可能である。投与スケジュールとしては例えば1日1回〜数回、2日に1回、或いは3日に1回などを採用できる。投与スケジュールの作成においては、患者の症状や有効成分の効果持続時間などを考慮することができる。
1.目的
B型肝炎をはじめとするウイルス性疾患の治療や癌免疫療法への適用が期待される人工合成mRNAの翻訳効率を向上することを目的とし、以下の検討を行った。
2.研究材料および方法
(1)プラスミド
RNAトランスフェクション用のベクターpBK-5F-EGFP-MS2bs-pA72は以下のように作製した。pFlag-CMV5/TO-BGG(1-39)MS2bs(Hosoda, N., Funakoshi, Y., Hirasawa, M., Yamagishi, R., Asano, Y., Miyagawa, R., Ogami, K., Tsujimoto, M., Hoshino, S. Anti-proliferative protein Tob negatively regulates CPEB3 target by recruiting Caf1 deadenylase. EMBO J 30, 1311-1323 (2011).)をXbaI処理した後平滑化を行い、さらにEcoRI処理を行うことにより、MS2bs cDNA断片を得た。このMS2bs cDNA断片をpBK-5F-EGFP-pA72の平滑化したXbaIサイトおよびEcoRIサイトに挿入することにより、pBK-5F-EGFP-MS2bs-pA72を作製した。一方、pMS2-HA-PABPC1は以下のように作製した。まず、オリゴヌクレオチド5’-TAG CGG ATC CAT GAA CCC CAG TGC CCC CAG-3’(配列番号26)および5’-CCC TGA GTC GAC TTA AAC AGT TGG AAC ACC-3’(配列番号27)を用いpFlag-PABP(Hoshino, S.*, Imai, M., Kobayashi, T., Uchida, N., and Katada, T.: The eukaryotic polypeptide chain releasing factor (eRF3/GSPT) carrying the translation termination signal to the 3'-Poly(A) tail of mRNA: Direct association of eRF3/GSPT with polyadenylate-binding protein. J. Biol. Chem. 274: 16677-16680 (1999).)を鋳型としたPCRにより得たDNA断片を、pColdI(タカラバイオ株式会社)のBamHI、SalIサイトに挿入し、pColdI-PABPC1を得た。次にpColdI-PABPC1をBamHI処理した後平滑化を行い、さらにSalI処理を行うことにより、PABPC1 cDNA断片を得た。この断片をpMS2-HA(Hosoda, N., Funakoshi, Y., Hirasawa, M., Yamagishi, R., Asano, Y., Miyagawa, R., Ogami, K., Tsujimoto, M., Hoshino, S. Anti-proliferative protein Tob negatively regulates CPEB3 target by recruiting Caf1 deadenylase. EMBO J 30, 1311-1323 (2011).)のSmaI、XhoIサイトに挿入することにより、pMS2-HA-PABPC1を作製した。尚、pMS2-HA-eIF4EはLynne Maquat博士より供与いただいた。
pMS2-Myc-eRF3b、pMS2-Myc-eRF3b(N)、pMS2-Myc-eRF3b(C)は以下のように作製した。pCMV-Myc(Hosoda, N., Funakoshi, Y., Hirasawa, M., Yamagishi, R., Asano, Y., Miyagawa, R., Ogami, K., Tsujimoto, M., Hoshino, S. Anti-proliferative protein Tob negatively regulates CPEB3 target by recruiting Caf1 deadenylase. EMBO J 30, 1311-1323 (2011).)のEcoRIおよびSalIサイトにeRF3b全長、eRF3b(1-204)、eRF3b(205-632)cDNAを挿入することにより、pCMV-Myc-eRF3b、pCMV-Myc-eRF3b(N)、pCMV-Myc-eRF3b(C)をそれぞれ得た。これらプラスミドのHindIIIサイトに、オリゴヌクレオチド5’-CTA AAG CTT ATG GCT TCT AAC TTT ACT CAG-3’(配列番号28)および 5’-CTA AAG CTT ATG GCT TCT AAC TTT ACT CAG-3’(配列番号29)を用いpMS2-HAを鋳型としたPCR法により得られたMS2 cDNA断片を挿入することにより、pMS2-Myc-eRF3b、pMS2-Myc-eRF3b(N)、pMS2-Myc-eRF3b(C)をそれぞれ作製した。
(2)RNA合成
pBK-5F-EGFP-MS2bs-pA72をBglIIで処理したものを鋳型とし、T7 RNAポリメラーゼ(タカラバイオ株式会社)を用いて5xFlag-EGFP-MS2bs-pA72 mRNAを合成した。尚、操作はT7 RNAポリメラーゼの取扱い説明書に従った。
(3)トランスフェクション
HeLa細胞は5% ウシ胎仔血清を添加したDulbecco’s Modified Eagle’s Medium(日水製薬)を用い5% CO2存在下37℃で培養した。HeLa細胞を50%コンフルエントとなるように35mmディッシュに撒種し、24時間培養後、ディッシュあたり0.5μgのRNAをLipofectamine RNAiMAX(ライフテクノロジーズ)を用い取扱い説明書に従って導入した。プラスミドについてはPEI MAX(Polysciences, Inc)を用い取扱説明書に従って導入した。
(4)タンパク質の解析
タンパク質の細胞内発現は、以下に示すウエスタンブロット法により行った。導入後の細胞からのタンパク質ライセートの調製は、SDS-PAGEサンプルバッファー(50 mM Tris-HCl (pH6.8)、4%グリセロール、2% SDS、2% 2-メルカプトエタノール、0.004%ブロモフェノールブルー)を用い行った。タンパク質ライセートは8、10、12、もしくは15%のアクリルアミドを用いたSDS-PAGE法により分離した後、ニトロセルロース膜BioTrace NC (Pall)に電気的に転写した。転写後のニトロセルロース膜は、抗Flag M2マウスモノクローナル抗体(Sigma)、抗Myc 9E10マウスモノクローナル抗体(Roche)、抗HA 3F10ラットモノクローナル抗体(Roche)、およびペルオキシダーゼ付加抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc.)、もしくはペルオキシダーゼ付加抗ラットIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc.)とインキュベートした。ニトロセルロース膜上のペルオキシダーゼ酵素活性は、ルミノール化学発光法を用い、LAS3000mini(富士写真フィルム株式会社)により検出した。
3.結果
翻訳の活性化に関わる代表的な3つの因子について、人工合成mRNAの翻訳効率化に対する影響を検討した結果を図1に示す。mRNAの3’末端ポリA鎖に結合し翻訳を活性化するポリA鎖結合タンパク質PABPC1と翻訳開始因子eIF4Eを、それぞれバクテリオファージMS2との融合タンパク質として細胞に発現させ、MS2結合配列をもつレポーターmRNA(5xFlag-EGFP)の翻訳に対する影響について検討した。図1Aに示す通り、PABPC1の発現量はeIF4Eに比べ低いレベルであったにもかかわらず、PABPC1はレポーターEGFPの翻訳量を2倍以上増大させた(図B)。
また、翻訳終結因子eRF3についても同様にMS2のシステムを用いて5xFlag-EGFPレポーターmRNAへの繋留実験を行なった。eRF3全長、あるいはeRF3のNドメインを発現させた場合には、レポーターEGFPの翻訳量はほとんど影響を受けないかやや抑制されたが、eRF3のCドメインを発現させた場合には、その発現量はeRF3やeRF3Nドメインに比べて低いにもかかわらず(図1C)、レポーターEGFPの翻訳量が4倍以上に増大した(図1D)。
以上の結果から、人工合成mRNAの翻訳効率化には、そのmRNAの3’UTRにMS2配列を挿入し、翻訳終結因子eRF3のCドメインあるいはポリA鎖結合タンパク質PABPC1のMS2融合タンパク質を共発現させることが有効であることが明らかとなった。
人工合成mRNAの翻訳効率化は、様々な用途に適用可能である。例えば、B型肝炎の治療だけでなく、(i)他の多くのウイルス性疾患にも適用することが可能であり、また、(ii)癌抗原をコードする人工合成mRNAを抗原提示細胞に導入して行う癌免疫療法、(iii)疾患原因遺伝子に対する人工合成mRNAを用いて原因遺伝子の機能欠損を補う補充療法、(iv)ウイルスベクターを用いて山中4因子を細胞に導入し多能性幹細胞iPSを作製する代りに人工合成mRNAを用いることで発癌のリスクをなくしたiPS細胞の作製など、RNA医薬が関わるさまざまな局面において応用可能である。
本発明によれば、標的細胞に導入した人工合成mRNAの翻訳が活性化し、目的遺伝子の高発現が可能となる。本発明の用途としてRNA医薬(各種ウイルス性疾患の治療、癌免疫療法等)、iPS細胞の作製、幹細胞又は前駆細胞の分化誘導が想定される。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
配列番号1〜3:人工配列の説明:MS2
配列番号4〜6:人工配列の説明:λN22
配列番号17:人工配列の説明:MS2 binding sequence
配列番号18:人工配列の説明:Box-B
配列番号23〜25:人工配列の説明:siRNA
配列番号24:人工配列の説明:siRNA
配列番号25:人工配列の説明:siRNA
配列番号26〜29:人工配列の説明:プライマー

Claims (21)

  1. RNA結合ペプチドと融合した翻訳関連因子を発現する核酸コンストラクトと、
    目的遺伝子のコード領域と、3'非翻訳領域内に配置され、前記RNA結合ペプチドが特異的に結合するRNA配列とを備えるmRNAと、
    を組み合わせてなる、標的細胞内で目的遺伝子を発現させるための組成物。
  2. 前記核酸コンストラクトを含有する第1要素と、前記mRNAを含有する第2要素と、からなるキットであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記核酸コンストラクトと前記mRNAを含有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
  4. 前記mRNAを含有し、標的細胞への導入時に、前記核酸コンストラクトが併用導入されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
  5. 前記核酸コンストラクトを含有し、標的細胞への導入時に、前記mRNAが併用導入されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
  6. 前記RNA結合ペプチドが、λファージコートタンパク質MS2若しくはその変異体、又はλN22ペプチド若しくはその変異体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
  7. 前記RNA結合ペプチドのアミノ酸配列が配列番号1の配列であり、前記RNA配列の塩基配列が配列番号17の配列である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
  8. 前記mRNAが前記RNA配列を複数備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
  9. 前記mRNAが5'キャップ構造、コザック配列、及びポリ(A)鎖を更に備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
  10. 前記mRNAが、前記コード領域と前記ポリ(A)鎖の間に配置される安定化シス配列を更に備える、請求項9に記載の組成物。
  11. 前記翻訳関連因子が、PABPC1又はeRF3 Cドメインである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
  12. 前記核酸コンストラクトがmRNA分子である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
  13. 前記遺伝子が酵素遺伝子である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
  14. 前記酵素が、ZFN、TALEN及びCRISPR-Cas9からなる群より選択されるヌクレアーゼである、請求項13に記載の組成物。
  15. エキソソーム複合体の機能抑制物質を更に組み合わせてなる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。
  16. 前記機能抑制物質が以下の(a)〜(d)からなる群より選択される化合物である、請求項15に記載の組成物:
    (a)エキソソーム複合体の構成因子又は補助因子を標的とするsiRNA;
    (b)エキソソーム複合体の構成因子又は補助因子を標的とするsiRNAを細胞内で生成する核酸コンストラクト;
    (c)エキソソーム複合体の構成因子又は補助因子を標的とするアンチセンス核酸;
    (d)エキソソーム複合体の構成因子又は補助因子を標的とするリボザイム。
  17. 前記構成因子がDis3であり、前記補助因子がski2ヘリカーゼ又はMtr4ヘリカーゼである、請求項16に記載の組成物。
  18. 請求項14に記載の組成物を有効成分とする、B型肝炎ウイルス除去剤。
  19. 以下のステップ(1)及び(2)を含む、標的細胞内で目的タンパク質を発現させる方法:
    (1)標的細胞に、RNA結合ペプチドと融合した翻訳関連因子を発現する核酸コンストラクトを導入するステップ;
    (2)前記標的細胞に、目的遺伝子のコード領域と、3'非翻訳領域内に配置され、前記RNA結合ペプチドが特異的に結合するRNA配列とを備えるmRNAを導入するステップ。
  20. 以下のステップ(1')を更に含む、請求項19に記載の方法:
    (1')標的細胞にエキソソーム複合体の機能抑制物質を導入するステップ。
  21. 前記標的細胞が、生体から分離された状態の細胞である、請求項19又は20に記載の方法。
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