JPWO2010061595A1 - 有機半導体素子 - Google Patents

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Abstract

本発明の有機半導体素子は、2つの電極12,15の間に介在される半導体層14を備え、半導体層14が、中性ラジカル化合物であるトリオキソトリアンギュレン(TOT)誘導体を半導体材料として含有するものである。半導体層14がn型半導体として作用し、p型半導体層13と協働して光電変換効果を示す。この有機半導体素子は、狭いバンドギャップを持ち、赤外領域に光吸収性能を有し、かつキャリア移動度の高い半導体層を備えるという特徴を持つ。

Description

本発明は、π電子系を有する中性ラジカル化合物を含有する有機半導体素子に関するものである。
有機半導体素子には、有機太陽電池、有機エレクトロ・ルミネッセンス素子(有機EL素子)、有機電界効果トランジスタなどの種類がある。従来、有機半導体素子において正孔の輸送を担うp型半導体となる有機化合物には、フタロシアニン、ペンタセン、オリゴチオフェンを始めとする多彩な化合物が開発されている。
しかし電子の輸送を担うn型半導体は、フラーレン、ペリレンテトラカルボン酸ジイミドやパーフルオロペンタセンなどに限定されており、その開発研究はp型に比べて遅れている。これは閉殻有機分子が一電子を受容することによって生成する有機分子アニオン体(正確にはラジカルアニオン種)の不安定性が本質的な理由であろうと考えられる。
一方、有機半導体素子の分野ではないが、二次電池に関し、正極に含まれる活物質として、フェナレニル骨格を有する有機化合物若しくはその誘導体を用いたものが知られている(特許文献1参照)。この文献の中で、フェナレニル骨格を有する有機化合物の一例として、トリオキソトリアンギュレン(TOT)誘導体があげられている(特許文献1に挙げられた[化4]の式(a−3)参照)。しかし、前記特許文献1には、当該有機化合物を、有機半導体素子の半導体層に使用して、有機半導体素子として機能させることの示唆はない。
特開2007-227186号公報(分子結晶性二次電池)
有機半導体において、従来材料で最も大きなネックとなっているのが導電率の低さ・キャリア移動度の低さである。このため、従来の有機半導体を用いて作った有機電界効果トランジスタは動作周波数が低かった。また有機EL素子や有機太陽電池でも、大電流での動作は困難であった。
また、これまでに知られている代表的な有機半導体は、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital;最高被占軌道)-LUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital;最低空軌道)間のエネルギー差が1.0 〜 1.7 eVもある。このため、赤外領域に相当する低エネルギーの光を吸収することができない。低エネルギーの光を吸収する有機半導体素子が実現できれば、バンドギャップの大きな半導体素子とタンデム構造にして、太陽光の吸収効率を上げることができる。
このような理由から、赤外線の吸収効率に優れ、移動度の高い新規なn型有機半導体を用いた半導体素子の出現が望まれている。
本発明は、狭いバンドギャップを持つことにより赤外領域に光吸収性能を有し、かつキャリア移動度の高い半導体層を備える有機半導体素子を提供することを目的とする。
本発明の有機半導体素子は、少なくとも1つの半導体層を備えた有機半導体素子において、前記半導体層が、下記[化2]に示す中性ラジカル化合物であるトリオキソトリアンギュレン(TOT)誘導体を半導体材料として含有するものである。ここで「中性ラジカル化合物」とは、不対電子を有し電気的に中性の有機化合物をいう。「半導体材料」とは、半導体層に含まれ、半導体層に半導体特性をもたらす材料をいう。
(ただし式中Rは1価の基を示す。)


前記半導体層において、[化2]の前記中性ラジカル化合物が柱状に重なった結晶配置をとっている場合がある。
TOT誘導体は、巨大なπ電子系を有する縮合多環型の分子構造を有し、電子スピンが分子骨格全体に広く非局在化している中性ラジカル化合物である。ここで「スピン局在」とは、分子骨格の一部に電子スピンが局在化している構造をいい、「スピン非局在」とは、電子スピンが分子骨格全体に広く分布している構造を言う。
TOT誘導体は、中性の開殻有機分子としては25πもの巨大なπ電子系を有する平面性の高い縮合多環型の「スピン非局在型」中性ラジカル化合物である。よって、分子間の強い相互作用、高い自己集積能が期待できる。
[化2]の1価の基Rとして、プロトン、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、フェニル基、4−メトキシフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、ナフチル基、ベンジル基、メトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、フェニルオキシ基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、イソプロピルアミノ基、カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、シアノ基、ニトリル基、ハロゲンからなる群より選ばれる1価の有機基が挙げられる。
TOT誘導体の一例として、[化1]中のRがt−ブチル基であるtert-ブチル体の構造を図1(a)〜図1(c)に示す。図1(a)は、3つのtert-ブチル基を有するトリオキソトリアンギュレン (TOT) 誘導体のスピン局在型の分子構造を示す構造図である。 図1(b)は、実際の電子構造を反映した「スピン非局在型」の分子構造を示す構造図である。 図1(c)は、量子化学計算から求めたスピン密度分布を示す模式図であり、濃い色の大きな球は正のスピン密度分布、薄い色の小さな球は負のスピン密度分布を示している。
TOT誘導体の結晶は、黒色の六角プリズム晶として得られる。一例として前記tert-ブチル体のX線結晶解析により得られた結晶構造を図2(a)〜図2(d)に示す。図2(a)は、当該TOT誘導体の二量体構造(π-ダイマー)を示す図でありSOMO(Singly Occupied Molecular Orbital;半占軌道)の電子分布の状態を併せて示している。図2(b)は、π-ダイマーが一次元方向(図2(b)の矢印の方向)に柱状(カラム状)に積層されていることを示す図であり、π‐ダイマー内の層間距離がπ‐ダイマー間の距離よりも小さいことを示している。図2(c)はπ-ダイマーが多数積層されたTOT誘導体の結晶構造(tert-ブチル基は省略)を電子雲の広がりで表した模式図である。図2(d)は、単結晶の外観である。
TOT誘導体の結晶は、図2(a)に示すように、SOMOの係数が大きい位置(正の電子スピン密度分布が大きい位置)が互いに重なり合うようにπ-ダイマーを形成しており、このπ-ダイマーは、図2(b)に示すように、短い非結合性距離(2.89 - 3.36 A)を有している。さらに、このπ-ダイマーの上下に3.34 - 3.64Aの距離で他のπ-ダイマーが積層しており、一次元の柱構造(カラム構造)を有している(図2(b),(c)参照)。
このように、π型中性ラジカル化合物を分子平面にほぼ垂直に積層したこのような結晶構造を有する従来例はなく、高い自己集積能を有している。これは、巨大なπ電子系とその骨格上に広く非局在化した電子スピンの効果が強く影響していると考えられる。
TOT誘導体は、縮退したLUMOを有する。従来知られている代表的な有機半導体素子のHOMO-LUMOエネルギー差が1.0〜1.7 eVもあるのとは異なり、計算によれば、三つのtert-ブチル基を有するTOT誘導体のSOMO-LUMOエネルギー差(エネルギーギャップ)はわずか0.2 eV程度しかない(ROBLYP/6-31G(d, p)//UBLYP/6-31G(d, p) 法による計算結果)。軌道間の電子反発等の問題がこのエネルギー差に大きく関与しているが、フロンティア軌道エネルギー間のギャップがこのように極端に小さい有機分子は今まで知られていない。このような小さなエネルギー差を利用して、赤外領域まで達する幅広い長波長光エネルギーの吸収が可能になり、太陽電池などの光電変換素子において光電流の向上に直結する赤外光の活用が可能となる。
また、TOT誘導体の分解温度は空気中でも摂氏300度以上であり、閉殻分子と比べても遜色が無い高い安定性が得られ、有機半導体素子としての耐久性・寿命に優れる。
また、有機半導体素子としては、0.01〜20 cm2/Vsという大きなキャリア移動度を有するので、このキャリア移動度の大きさを活用することで、TOT誘導体により優れたn型半導体材料を提供することができる。
以上のように本発明によれば、有機半導体材料として、TOT誘導体からなる中性ラジカル化合物を使用するので、赤外領域の光を光電変換する有機薄膜太陽電池又はハイブリッド型太陽電池、発光強度の高い有機EL素子、動作周波数の高い有機トランジスタなどに応用できる、安定した有機半導体素子を好適に得ることができる。
本発明における上述の、又はさらに他の利点、特徴及び効果は、添付図面を参照して次に述べる実施形態の説明により明らかにされる。
図1(a)は、3つのtert-ブチル基を有するトリオキソトリアンギュレン (TOT) 誘導体のスピン局在型の分子構造を示す構造図である。 図1(b)は、実際の電子構造を反映した「スピン非局在型」の分子構造を示す構造図である。 図1(c)は、量子化学計算から求めたスピン密度分布を示す模式図である。 図2(a)は、X線結晶解析より得られた2つのTOT 誘導体を積層した二量体構造(π-ダイマー)を示す図、図2(b)は、当該TOT誘導体のπ-ダイマーが一次元方向(図2(b)の矢印の方向)に柱状に積層されている結晶構造を示す図である。図2(c)はπ-ダイマーが多数積層されたTOT誘導体の結晶構造を電子雲の広がりで表現した図(tert-ブチル基は省略)である。図2(d)は、単結晶の外観である。 TOT誘導体を半導体層14に組み込んだ有機薄膜太陽電池1の模式図である。 TOT誘導体を有機薄膜セル21の半導体層に組み込んだタンデム型ハイブリッド太陽電池の模式図である。 TOT誘導体を電子輸送層36、電子注入層37に組み込んだ有機EL素子の模式図である。 TOT誘導体を半導体層46に組み込んだ有機トランジスタ(ボトムコンタクト型)の模式図である。 TOT誘導体を半導体層46に組み込んだ有機トランジスタ(トップコンタクト型)の模式図である。 測定したTOT誘導体の電子吸収スペクトルを示す図である。 TOT誘導体を有機薄膜層49に組み込んだ光電流測定用セルの模式図および測定回路図を示す。 TOT誘導体−P3HTの光導電性を測定した結果を示すグラフである。 比較のためP3HTの光導電性を測定した結果を示すグラフである。 比較のためC60−P3HTの光導電性を測定した結果を示すグラフである。 TOT誘導体を半導体層として電界効果トランジスタを作製し、そのゲート電圧VGに対してドレイン電流IDをプロットしたグラフである。
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
<有機薄膜太陽電池>
狭いSOMO - LUMOエネルギーギャップを有し、赤外領域まで達する幅広い長波長の光を吸収するTOT誘導体を、有機薄膜太陽電池のn型半導体層として利用することにより、赤外領域の光を電力に変換する有機薄膜太陽電池を製作することができる。
赤外線を利用する太陽電池用の材料としては、赤外領域に吸収を有するだけでなく、発生した電子やホールを再結合させることなく分離して移動させる性能も必要であるが、TOT誘導体は0.01〜20 cm2/Vsという大きなキャリア移動度を示すことから、この目的に最適な化合物である。
なお[実施例]において後述するように、TOT誘導体は置換基の構造を変えるなどの分子設計によりフロンティア軌道のレベルを任意にコントロールすることが可能となる。これによって、太陽電池のpn接合層として要求される特性、例えば電極の仕事関数(フェルミ準位)、半導体の価電子帯(HOMO, SOMO)及び伝導帯(LUMO)のレベルなどを精密にチューニングすることが可能となる。
図3は、TOT誘導体をn型半導体層に用いた有機薄膜太陽電池の概略断面図である。この有機薄膜太陽電池1は、透明ガラス基板11の上に、二酸化錫(SnO2)などの透明電極層12、p型半導体層13、n型半導体層14、反射電極層15をこの順に積層している。なお、透明電極層12とp型半導体層13との間にバッファ層を設けても良く、n型半導体層14と反射電極層15との間にバッファ層を設けても良い。n型半導体とp型半導体は必ずしも積層構造である必要はなく、バルクヘテロジャンクション構造であってもよい。また、p型半導体層13とn型半導体層14との間にi(真性半導体)層を入れることもある。i層の材料としては、p型半導体とn型半導体との混合層を用いるとよい。さらに、p型半導体層13とn型半導体層14がなく、前記混合層を用いたi層のみの有機薄膜太陽電池も実現可能である。
TOT誘導体はn型半導体として作用するため、ヘテロジャンクション型太陽電池とするためにはp型半導体と組み合わせる必要がある。ここでは最適なp型半導体として、ペンタセン、テトラチアフルバレン、チエノチオフェン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン等を例示することができる。
製造方法の一例を簡単に説明すると、透明ガラス基板11に、スパッタリング法などにより透明電極層12を蒸着する。その上からp型半導体層13を真空蒸着法あるいは塗布法により形成し、p型半導体層13の上にn型半導体層14を真空蒸着法あるいは塗布法により形成する。この薄膜形成プロセスにおいて分子同士のスタックが最適となるような条件を設定する必要がある。具体的には、真空蒸着法の場合には蒸着源及び基板の温度・昇温プロファイル・蒸着時間、蒸着源と基板の距離などのパラメーターを調整しながら、最適条件を設定する。また塗布法の場合にはスピンコート、インクジェット、グラビア印刷など塗布プロセスの選択に加え、塗布する溶液の溶媒種、濃度、温度、乾燥条件などのパラメーターを調整して最適条件を設定する。最後にn型半導体層14上に反射電極層15をスパッタリング法などにより形成する。
前記構成により製造する有機薄膜太陽電池1は、波長0.8μm以上の赤外領域光の照射(AM1.5; 1 kW/m2光源)により7mA/cm2以上の短絡電流を発生させることができると予想される。
さらにシリコン系太陽電池とのハイブリッド化(タンデム化)も可能である。図4は、ハイブリッド型太陽電池の断面を模式的に示す図である。
このハイブリッド型太陽電池2は、図4に示すように、透明ガラス基板16の上に、二酸化錫(SnO2)などの透明電極層17、アモルファスシリコンで形成したトップセル(「セル」とは1つの太陽電池素子をいう)18、多結晶シリコンで形成したボトムセル19を積層し、ボトムセル19の上に、透明電極層20を介して本発明のTOT誘導体を利用した有機薄膜セル21を形成し、最上に反射電極層22を積層している。有機薄膜セル21の構造は、図3に示したような、p型半導体層13とn型半導体層14との積層体となる。上述のように必ずしも積層体である必要はなく、バルクヘテロジャンクション構造であっても良く、バッファ層やi層を含んでいてもよい。
シリコン系太陽電池は800 nmより短波長側の紫外・可視領域の太陽光を利用し、近赤外〜赤外領域の光電変換にはほとんど寄与していない。従って、図4に示したように、シリコン系セル18,19の裏側にTOT誘導体を利用した有機薄膜セル21を組み合わせることにより、シリコン系セルを素通りした赤外領域の光を電流に変えることが可能となる。これにより従来のシリコン系太陽電池の変換効率をさらに向上することができる。
<有機EL素子>
有機EL素子3は、図5に示すように、透明ガラス基板31の上に、透明電極層32、正孔注入層33、正孔輸送層34、発光層35、電子輸送層36、電子注入層37、反射電極層38を積層した構造である。図示した構造に加えて、必要に応じて電子や正孔をブロックする層が挿入される。また電子注入層や正孔注入層を含まない構造もある。
本発明のTOT誘導体は、n型半導体層としての電子輸送層36及び電子注入層37に適用可能である。有機EL素子において発光効率や寿命など重要な特性を支配する要因は、材料同士の組み合わせに依存する部分が大きいので、TOT誘導体のフロンティア軌道のバンドギャップ、LUMOのエネルギーレベル、界面の接触状態などを、使用する発光材料に応じて細かくチューニングすることにより所望の性能を得ることができる。
製造方法を簡単に説明すると、透明ガラス基板31に、スパッタリング法などにより透明電極層32を蒸着する。その上から正孔注入層33、正孔輸送層34、発光層35を真空蒸着法あるいは塗布法により形成し、続いてTOT誘導体を含む電子輸送層36、電子注入層37を真空蒸着法あるいは塗布法により形成する。最後に電子注入層37の上に反射電極層38をスパッタリング法などにより形成する。場合により正孔注入層33、正孔輸送層34、電子輸送層36、電子注入層37のうち一つあるいは複数の層を省略することも可能である。塗布法としては例えばスピンコート法、インクジェット法、スプレーコート法、グラビア印刷法などを採用可能である。
この薄膜形成プロセスにおいて分子同士のスタックが最適となるような条件を設定する必要がある。具体的には、真空蒸着法の場合には蒸着源及び基板の温度・昇温プロファイル・蒸着時間、蒸着源と基板の距離などのパラメーターを調整しながら、最適条件を設定する。塗布法の場合にはスピンコート、インクジェット、グラビア印刷など塗布プロセスの選択に加え、塗布する溶液の溶媒種、濃度、温度、乾燥条件などのパラメーターを調整して最適条件を設定する。
TOT誘導体は、置換基として導入する官能基を変化させることで、フロンティア軌道のエネルギーレベルを任意にコントロールできる。従って、従来知られているフラーレン系、銅フタロシアニン系などのn型有機半導体材料と比較して、発光材料の本来有するポテンシャルを容易に最大限引き出すことが可能である。さらに、従来の有機半導体素子には見られない特徴としてTOT誘導体は、テトラアニオンまで電子を貯蔵することが可能であり、これは有機EL素子における局所的な電流の集中に対してバッファとして作用することとなり、素子の長寿命化に寄与できる。
また、有機EL素子において発光強度や発光効率を大きく左右する材料は発光層であるが、本発明のTOT誘導体を、発光層のホスト材料として使用することもできる。
<有機電界効果トランジスタ>
図6及び図7に、有機電界効果トランジスタの代表的な素子構造を示す。図6は、ソース・ドレイン電極を作製した後に有機半導体薄膜を形成するボトムコンタクト構造、図7は、有機半導体薄膜を形成した後にソース・ドレイン電極を作製するトップコンタクト構造を示す。いずれの構造でも、電流は、有機半導体薄膜の横方向に形成されるチャネル層に沿って流れ、この電流がゲート電極に印加される電圧によって制御される。
ボトムコンタクト構造の有機電界効果トランジスタ4Aは、図6に示すように、ゲート絶縁膜43上にソース電極44、ドレイン電極45を形成し、その上に本発明のTOT誘導体を利用した半導体層46を成膜したものである。この有機トランジスタ4Aを製造するには、基板41上に、ゲート電極42となる金属層を形成し、その上に二酸化ケイ素やポリイミドなどのゲート絶縁膜43を形成する。その上にソース電極44、ドレイン電極45をパターニングし、本発明のTOT誘導体を利用した半導体層46を蒸着プロセス又は塗布プロセスで形成し、最後に封止膜47で全体を保護する。
トップコンタクト構造の有機電界効果トランジスタ4Bは、図7に示すように、ゲート絶縁膜43上に本発明のTOT誘導体を利用した半導体層46を成膜し、その上にソース電極44、ドレイン電極45を形成したものである。この有機電界効果トランジスタ4Bを製造するには、ゲート絶縁膜43に、本発明のTOT誘導体を利用した有機薄膜を蒸着プロセス又は塗布プロセスで形成し、その上にソース電極44、ドレイン電極45を設ける。
また逆の順序、すなわち、基板上にソース・ドレイン電極を形成し、その上に有機半導体膜を設け、ゲート絶縁膜を形成し、その上にゲート電極を形成した構造(トップゲート構造)もある。
本発明のTOT誘導体を有機薄膜に使用することにより、動作周波数の高い電界効果トランジスタを実現することが出来る。
なお、図6及び図7に示した構造の他、ゲート金属と半導体層との間でショットキー障壁を形成する電界効果トランジスタもある。
このような有機電界効果トランジスタは、例えばディスプレイ駆動用のTFTとして利用される。
以上で、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施は、前記の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更を施すことが可能である。
<TOT誘導体の製造>
TOT骨格は、炭素原子と酸素原子のみからなる剛直な平面型π電子系分子である。このTOT骨格に電子供与性や電子受容性官能基を導入することによりTOT誘導体を生成する。
TOT誘導体のR=t−ブチル基の構造を有する化合物は、特開2007−227186号公報(特許文献1)に記載された方法により合成した。
R=イソプロピル基の構造を有する化合物は、以下に示す方法により合成した。
アルゴン雰囲気下、300mLのシュレンク管に1−ブロモ−4−イソプロピルベンゼン12.5g(64mmol)を入れ、四塩化炭素40mLとクロロメチルメチルエーテル28.9mL(384mmol)を加えた。これを−30℃に冷却し、塩化アルミニウム17.1g(128mmol)を加えた後0℃まで昇温して20分間撹拌後、室温まで昇温して5分間撹拌した。反応液を氷水に注ぎ入れてよく撹拌しながら、2M塩酸100mLとジクロロメタン100mLを加えた。有機層を分離後、水層をジクロロメタン50mL×2で抽出し、有機層を合一した。この有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥後ろ過し、ジクロロメタンを留去することにより1−ブロモ−2−クロロメチル−4−イソプロピルベンゼン15.6gを淡黄色透明オイルとして得た。
前記反応を繰り返して得られた1−ブロモ−2−クロロメチル−4−イソプロピルベンゼン31.1g(126mmol)を300mLナス型フラスコに入れ、アルゴン雰囲気下にナトリウムメトキシドの1Mメタノール溶液160mL(160mmol)を加え、75℃で11.5時間加熱還流させた。その後室温まで放冷し、水100mL、2M塩酸200mLおよびジクロロメタン100mLを加えた。有機層を分離し、水層をジクロロメタン50mL×2で抽出した後有機層を合一した。この有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過した後ジクロロメタンを留去して得られた租生成物を、6%含水シリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィーにより精製し、1−ブロモ−2−メトキシメチル−4−イソプロピルベンゼン23.4gを無色透明オイルとして得た。
アルゴン雰囲気下、250mLシュレンク管に前記1−ブロモ−2−メトキシメチル−4−イソプロピルベンゼン3.47g(14.3mmol)を入れ、テトラヒドロフラン(THF)80mLを加えて溶解させ、−90℃に冷却した。ここにt−ブチルリチウムの1.53Mn−ペンタン溶液19.1mL(29.2mmol)を45分かけてゆっくり滴下した。徐々に−78℃まで昇温して1時間撹拌し、再び−90℃に冷却して炭酸ジエチル0.52mL(4.29mmol)を加えた。徐々に室温まで昇温し、18時間後にpH7のリン酸緩衝液100mLを加えた。有機層を分離後、水層を酢酸エチル30mL×2で抽出し、有機層を合一した。この有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過して溶媒を留去し、ヘキサンから再結晶して白色固体1.16gを得た。この白色固体を200mLシュレンク管に入れ、アルゴン雰囲気下トリフルオロ酢酸24mLを加えて溶解させた。0℃に冷却し、水素化ホウ素ナトリウム848mg(22.4mmol)を2回に分けて加えた。30分後トリフルオロ酢酸を減圧留去し、水10mLおよび飽和炭酸水素ナトリウム水溶液15mLを加えた。ヘキサン10mL×3で抽出した後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去することによりトリフェニルメタン誘導体1.06gを白色固体として得た。この白色固体を200mLシュレンク管に入れ、アルゴン雰囲気下ジクロロメタン65mLを加えて溶解させた。−78℃に冷却して三臭化ホウ素1.8mL(19mmol)を加え、25分後−40℃に昇温し、さらに−25℃までゆっくり昇温しながら1時間撹拌した。メタノール10mLと2M水酸化ナトリウム水溶液30mLを加えた後有機層を分離し、水層をジクロロメタン20mL×2で抽出して有機層を合一した。この有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過して溶媒を留去することによりトリブロモ体1.3gを黄色粉末として得た。この黄色粉末を200mLナスフラスコに入れ、ジメチルスルフォキシド(DMSO)55mLを加えて懸濁させ、炭酸水素ナトリウム8.7g(104mmol)を加えて100℃で8時間撹拌した。室温まで法冷した後2M塩酸100mL、ジクロロメタン150mL、飽和塩化ナトリウム水溶液100mLを加えた。有機層を分離し、水層をジクロロメタン20mL×3で抽出して有機層を合一した。この有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過し、溶媒留去して得られた租生成物を酢酸エチル、およびヘキサンで洗浄してトリホルミル体913mgを白色粉末として得た。
30mLナス型フラスコに酸化クロム(VI)2.67g(26.7mmol)を入れ、水7.5mLと濃硫酸2.3mLを加えてJones試薬を調整した。30mLナス型フラスコに前記トリホルミル体500mg(1.10mmol)を入れ、アセトン10mLを加えて懸濁させた。0℃に冷却し、0℃に冷却した前記Jones試薬1.75mLを5分かけて添加し、室温まで昇温した。24.5時間後、反応液を0℃に冷却してイソプロパノール5mLを加えて撹拌した。析出した緑色固体をろ別し、ろ液に水20mLを加えてジクロロメタン5mL×3で抽出した。有機層を合一して1M水酸化ナトリウム水溶液20mL×4で抽出し、水層に2M塩酸を加えてpHを1に調整した。この水層をジクロロメタン10mL×4で抽出し、合一した有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過し、溶媒を留去することによりトリカルボン酸体510mgを白色粉末として得た。
アルゴン雰囲気下、20mLシュレンク管に前記トリカルボン酸体300mgを入れ、塩化オキサリル15mLに溶解させた。65℃で45分間加熱還流した後放冷し、過剰量の塩化オキサリルを減圧留去した。残渣をジクロロメタン6mL×3で洗浄後ジクロロメタン27mLを加えて−40℃に冷却し、1時間後に塩化アルミニウム796mg(5.97mmol)を加えてゆっくり0℃まで昇温した。3時間後ジクロロメタンを減圧留去し、残渣に炭酸カリウム3gを加えてよく撹拌した後、氷冷しながらアセトニトリル20mLに懸濁させた。氷を加えた後有機層を分離し、水層をアセトニトリル20mL×4で抽出して有機層を合一した。この有機層を飽和食塩水30mLで洗浄した後無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過して溶媒を減圧留去した。得られた固体をヘキサンで洗浄してカリウム塩497mgを青色固体として得た。この青色固体を100mLナス型フラスコに入れ、2M塩酸40mLに懸濁させた。60℃で1時間撹拌した後放冷し、不溶物をろ過して集めて2M塩酸で洗浄することによりヒドロキシル体269mgを紫色固体として得た。これを30mLナス型フラスコに入れ、10wt%水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液4mLに懸濁させ、60℃で1時間撹拌した。不溶物をろ過して集め、60℃の蒸留水で洗浄した後真空下70℃で乾燥させることによりアンモニウム塩222mgを青色固体として得た。50mLナス型フラスコにアンモニウム塩150mg(0.186mmol)を入れ、クロラニル46mg(0.186mmol)とジメチルエーテル(DME)を加えた。40分間撹拌後、さらにクロラニル92mg(0.372mmol)を加えて3時間撹拌した。DMEを減圧留去し、残渣をクロロホルム18mLに溶解させてアルミナカラムで精製し、得られた租生成物をアセトンで洗浄することによりR=イソプロピル基のTOT誘導体56mgを褐色固体として得た。
<電子スペクトルの測定>
TOT誘導体の一例として、tert-ブチル体の微粉末とKBrの微粉末とを混合して圧力をかけて板状にしたもの(「KBrペレット」という)を用いて、前記tert-ブチル体の赤外領域の電子スペクトルを測定すると、図8に示すように、1134 nm (1.1 eV) を極大とし、その長波長側、赤外領域まで達する幅広い低エネルギーの吸収が観測された。なお、この1.1 eVの?吸収エネルギーはSOMO−LUMO間のエネルギーギャップに相当するものではなく、もっと大きなレベル差の準位間の遷移に帰属される。0.2eVの準位差に対応する波長は、図8のグラフから右へ大きくはみだしており、測定範囲外である。しかし、0.2eVのギャップに対応する波長にまで達するであろう幅広い低エネルギーの吸収が観測されたことは間違いない。
この低エネルギー吸収の起源は、一次元カラム内での電荷移動に基づく吸収であると考えられる。トップコンタクト法(図7)による単結晶のFET特性を評価した結果、0.1 cm2/Vs という高い移動度を有するn型半導体の特性を示した。この高い移動度は、カラム内の高い電子的相互作用と電子受容性を反映しているものと考えられる。
<光導電性の測定>
太陽電池や有機EL素子としての特性確認のため、TOT誘導体のうちtert-ブチル体を用いて光導電性(Photoconductivity)の測定を実施した。光導電性測定用セルは以下のように製作した。
tert-ブチル体とポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)とを重量比で1:1に混合してクロロホルムに溶解させ、1wt%溶液としたものを、ITO導電膜付きのガラス基板48にスピンコートして有機薄膜層49を成膜した。さらにその上に蒸着法により金(Au)電極50を成膜した。このようにして得られた光導電性測定用セル及び測定回路の概略を図9に示す。
このセルにハロゲンランプ(50W)の光を10cmの距離から照射し、セルの光導電性(電流−電圧特性)を測定した。暗所での光導電性と合わせて図10に示す。
同様に比較のため、n型半導体を用いずにP3HTのみで作製したセル、およびtert-ブチル体の代わりに一般的なn型半導体であるC60を用いたセルについても光導電性を測定した。P3HTのみの場合の測定結果を図11に、C60を用いたセルの測定結果を図12に示す。
図10のグラフでは、図11のP3HTのみの場合と比べて、暗所電流に大きな差はないものの、暗所電流に対する明所電流の向上度合い(傾きの差)が大きくなっている。すなわち光照射したことにより、電圧に対する電流比(I/V)が大きくなっている。これは光照射に基づく導電性の向上(内部抵抗の減少)、すなわち内部光電効果の存在を示している。この結果、tert-ブチル体に由来する内部光電効果が確認できた。
また図10のtert-ブチル体のセルと、図12のC60のセルを比較すれば、ともに明所電流の傾きは大きい。しかし、その由来が異なっている。tert-ブチル体の場合、暗所電流に対する明所電流の向上度合いが大きいことから、この明所電流は、内部光電効果に基づくものであると推測できる。しかし、C60の場合暗所電流に対する明所電流の傾きの差が小さいことから、C60の場合は、内部光電効果の寄与は小さいことが示されている。したがって、tert-ブチル体のほうが、C60よりも内部光電効果が顕著であることが確認できた。
<有機電界効果トランジスタの作製と移動度測定>
図6に示すようなボトムコンタクト構造の有機電界効果トランジスタを以下のとおり作製した。ゲート電極兼ゲート絶縁膜として機能する熱酸化膜付き導電性シリコンウェハー基板を用い、この上にソース電極とドレイン電極を金蒸着により形成した。その上にTOTのtert-ブチル誘導体単結晶を設置した。封止膜は使用せず、空気中で移動度を測定した。
ドレイン電圧VDを10Vとし、ゲート電圧VGを−20Vから20Vまで変化させてドレイン電流IDをプロットしたグラフを図13に示す。ドレイン電流IDの増加率(直線の傾き)から、式[2]より移動度μを計算した。
D=Ci(VG−Vth)VDμ(L/W) [2]
(ただし、Ciはゲート絶縁膜のキャパシタンス、Vthはしきい電圧、Lは伝導チャネルの長さ、Wは伝導チャネルの幅)
この計算により、移動度μとして、0.12cm2/Vsという大きな値が得られた。さらにTOT誘導体が大気中で安定に動作するn型有機半導体であることが確認できた。したがって、高い周波数まで使用できる実用的な有機電界効果トランジスタが得られることが確認できた。
<エネルギーギャップの計算>
TOT誘導体は置換基の構造を変えるなどの分子設計によりフロンティア軌道のレベルを任意にコントロールすることが可能である。表1に、TOT骨格上の置換基Rを変化させた誘導体のLUMOのエネルギー準位及びSOMOのエネルギー準位とそれらのエネルギー差を示す(ROB3LYP/6-31G//UB3LYP/6-31G 法による計算結果)。
表1によれば、置換基Rが電子供与性官能基(NH2, OCH3)の場合は、予想通りSOMOエネルギーレベルは比較的高くなり、電子受容性官能基(i-C3F7, C6F5, CN, COOH, NO2)の場合、SOMOエネルギーレベルは比較的低くなった。また、SOMO-LUMOエネルギー差はいずれの場合もtert-ブチル基やイソプロピル基の場合と比較して小さくなっている。
このように置換基を選択するだけでSOMOのエネルギーレベルを最も高いレベルから最も低いレベルまで約1.7 eVの範囲で変化させることが可能であり、SOMO-LUMOエネルギー差を最も高いギャップから最も低いギャップまで約0.3 eVの範囲で変化させることが可能であるということは、分子設計上有用である。
なお置換基としてtert-ブチル基を選んだ場合、0.73eVというSOMO-LUMOエネルギー差が得られているが、前に[課題を解決するための手段]であげた数値0.2eVと違っているが、これは単に計算方法の相違によるものであると考える。実際には0.1〜1.0eVの範囲にあると考えられる。
置換基選択のもう一つ重要な観点は、スピン間相互作用(SOMO-SOMO相互作用)以外の他の分子間相互作用の導入と結晶構造の多次元化である。TOT誘導体は、図2に示したように、縦方向の一次元性高い結晶構造を有している。そのため、巨大なπ電子系とその骨格上に広く非局在化した電子スピンによるπ-π型の強いSOMO-SOMO相互作用(2500 K, 5.0 kcal/mol)の他に強い非結合性相互作用が存在していないためと考えられる。このような電子スピン系に分子間相互作用が可能なNH2基やCOOH基等を導入した場合は、横方向にも構造を持った、次元性の高い結晶構造の形成が予想できる。従って、横方向での電子的なコミュニケーションも期待でき、薄膜の構造や半導体としての性質を変化・調整できる可能性がある。
1 有機薄膜太陽電池
2 ハイブリッド型太陽電池
3 有機EL素子
12,17,32 透明電極層
13 p型半導体層
14 n型半導体層
15,22,38 反射電極層
11,16,31 透明ガラス基板
18 トップセル
19 ボトムセル
20 透明電極層
21 有機薄膜セル
33 正孔注入層
34 正孔輸送層
35 発光層
36 電子輸送層
37 電子注入層
4A,4B 有機トランジスタ
41 基板
42 ゲート電極
43 ゲート絶縁膜
44 ソース電極
45 ドレイン電極
46 半導体層
47 封止膜
48 ITO透明電極付きガラス基板
49 有機薄膜層
50 金電極

Claims (12)

  1. 少なくとも1つの半導体層を備える有機半導体素子において、
    前記半導体層が、下記[化1]に示されるトリオキソトリアンギュレン(TOT)誘導体からなる中性ラジカル化合物を半導体材料として含有することを特徴とする有機半導体素子。
    (ただし式中Rは1価の基を示す。)

  2. 前記半導体層において、[化1]の前記中性ラジカル化合物が柱状に重なった結晶配置をとっている、請求項1に記載の有機半導体素子。
  3. [化1]の前記中性ラジカル化合物は、前記1価の基Rが、プロトン、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、フェニル基、4−メトキシフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、ナフチル基、ベンジル基、メトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、フェニルオキシ基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、イソプロピルアミノ基、カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、シアノ基、ニトリル基、ハロゲンからなる群より選ばれる1価の有機基である、請求項1又は請求項2に記載の有機半導体素子。
  4. [化1]の前記中性ラジカル化合物の半占軌道と最低空軌道のエネルギーギャップが0.1〜1.0eVである、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の有機半導体素子。
  5. 前記有機半導体素子が有機薄膜太陽電池である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の有機半導体素子。
  6. 前記半導体層は、p型有機半導体材料とp−n型接合を形成するn型半導体層である、請求項5に記載の有機半導体素子。
  7. 前記有機薄膜太陽電池がシリコン系太陽電池と組み合わされたハイブリッド型太陽電池である、請求項5又は請求項6に記載の有機半導体素子。
  8. 前記有機半導体素子が有機電界効果トランジスタである請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の有機半導体素子。
  9. 前記有機半導体素子が有機EL素子である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の有機半導体素子。
  10. 前記半導体層は、発光層に電子を供給する電子注入層又は電子輸送層である、請求項9に記載の有機半導体素子。
  11. 前記半導体層は、0.01〜20cm2/Vsのキャリア移動度を有する、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の有機半導体素子。
  12. 前記半導体層は、[化1]の前記中性ラジカル化合物を塗布プロセスで製膜して得られるものである、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の有機半導体素子。
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