JP6961179B2 - トリオキソトリアンギュレン系中性ラジカル化合物の錯体 - Google Patents
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Description
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、トリオキソトリアンギュレン系中性ラジカル化合物を簡便かつ均一に層化できる技術を提供することにある。
すなわち、本発明は、以下の発明を含む。
[1] 式(1)で表されるトリオキソトリアンギュレン系中性ラジカル化合物と、
非共有電子対を有する窒素含有化合物から構成される錯体。
(式中、Xは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、(ヘテロ)アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、スルフィド基、チオール基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホノ基、又はシリル基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。これらXは置換基を有していてもよい。さらに基Xを介して分子間結合が形成されることでトリオキソトリアンギュレン系中性ラジカル化合物が多量化してもよい。実線と破線からなる二重結合は非局在化した二重結合を意味しており、式中、●で表される不対電子は、この非局在化二重結合中に存在する。)
[2] 非共有電子対を有する窒素含有化合物が、窒素原子の隣接位にカルボニル基をもたない化合物である、[1]に記載の錯体。
[3] 前記非共有電子対を有する窒素含有化合物が式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)、(2e)、(2f)で表される化合物、又はポリアミン化合物(ただし、式(2a)〜(2f)で表すことができるポリアミン化合物を除く)である、[1]または[2]に記載の錯体。
(式(2a)、(2b)及び(2d)中、R1は水素原子、アルキル基、環状飽和炭化水素基、アリール基、又はアラルキル基を示し、式(2a)及び(2d)で表される化合物が複数のR1を有する場合、各R1は互いに同一でも異なっていてもよい。式(2c)及び(2d)中、R2は水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、スルフィド基、チオール基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホノ基、又はシリル基を示し、式(2c)及び(2d)で表される化合物が複数のR2を有する場合、各R2は互いに同一でも異なっていてもよい。式(2b)中、R3は、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアミノ基を表し、式(2b)で表される化合物が複数のR3を有する場合、各R3は互いに同一でも異なっていてもよい。
なお、R1、R2又はR3で表されるアルキル基、環状飽和炭化水素基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、又はアルコキシカルボニル基を構成する炭素原子は、アミノ基、ヒドロキシ基、又はカルボキシ基で置換されていてもよい。
式(2d)の環Aは、NR1単位及びCR2 2単位が環の外周に存在する限り、単環でも縮合環でもよく、飽和複素環、不飽和複素環、芳香族複素環のいずれでもよい(ただし、式(2c)になることはない)。mはNR1単位の数を表しnはCR2 2単位の数を表し、複数のNR1単位及びCR2 2単位を有する場合、NR1単位とCR2 2単位の並び方は任意である。NR1単位とNR1単位の間、NR1単位とCR2 2単位の間、又はCR2 2単位とCR2 2単位の間には、酸素原子又は硫黄原子が挿入されていてもよい。
mは1以上4以下の整数であり、nは、2以上7以下の整数である)
[4] 前記非共有電子対を有する窒素含有化合物の沸点が−50〜200℃である[1]〜[3]のいずれかに記載の錯体。
[5] 前記式(1)中のXが、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、(ヘテロ)アリール基、アラルキル基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、又はシリル基を表す[1]〜[4]のいずれかに記載の錯体。
[6] 前記式(1)中のXが、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基、又は炭素数6以下のアリール基である[1]〜[5]のいずれかに記載の錯体。
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載の錯体が溶解している溶液。
[8] [1]〜[6]のいずれかに記載の錯体を含む層。
[9] [8]に記載の層から前記非共有電子対を有する窒素含有化合物を除去して得られる、式(1)で示されるトリオキソトリアンギュレン系中性ラジカル化合物を含む層。
1.1 トリオキソトリアンギュレン系中性ラジカル化合物
本発明の錯体は、トリオキソトリアンギュレン系中性ラジカル化合物と、非共有電子対を有する窒素含有化合物とから構成され、前記ラジカル化合物は、下記式(1)で表される。なお、以下、トリオキソトリアンギュレンを「TOT」と表記し、置換基Xが3つ結合したトリオキソトリアンギュレンについては「X3TOT」の様に表記する場合がある(Xの内容は、置換基の具体例に応じて変化する)。本明細書で「錯体」とは、窒素含有化合物の非共有電子対がTOT中性ラジカル化合物に配位して複合体を形成した状態を意味する。
(式中、Xは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、(ヘテロ)アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、スルフィド基、チオール基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホノ基、又はシリル基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。これらXは置換基を有していてもよい。さらに基Xを介して分子間結合が形成されることでトリオキソトリアンギュレン系中性ラジカル化合物(A)が多量化してもよい。実線と破線からなる二重結合は非局在化した二重結合を意味しており、式中、●で表される不対電子は、この非局在化二重結合中に存在する。)
アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、アミノフェノキシ基、ナフトキシ基などの炭素数が6〜20程度、好ましくは炭素数が6〜10程度のアリール基が結合したオキシ基が挙げられる。
アシルオキシ基としては、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などの炭素数が2〜20程度、好ましくは炭素数が2〜10程度のアシルオキシ基が挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基などの炭素数が2〜20程度、好ましくは炭素数が2〜10程度のアルコキシカルボニル基が挙げられる。
上記TOT中性ラジカル化合物は、上述した様に非共有電子対を有する窒素含有化合物と錯体を形成し、溶剤に対して可溶性を示す。
前記窒素含有化合物は、窒素原子上に非共有電子対を有する化合物であることがより好ましく、窒素原子上に非共有電子対を有する非芳香族化合物、窒素原子上に非共有電子対を有する芳香族化合物のいずれでもよい。また窒素原子上に非共有電子対を有する化合物が酸素原子、硫黄原子などを有する場合には、これら酸素原子や硫黄原子上に非共有電子対を有していてもよい。窒素原子上に非共有電子対を有する化合物としては、アセトニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類などであってもよいが、TOT中性ラジカル化合物への配位能力が高い点で窒素原子の隣接位にカルボニル基を持たない化合物が好ましく、アミン化合物がより好ましく、式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)、(2e)、(2f)などで表される化合物、又はポリアミン化合物(ただし、式(2a)〜(2f)で表すことができるポリアミン化合物を除く)が好ましい。
(式(2a)、(2b)及び(2d)中、R1は水素原子、アルキル基、環状飽和炭化水素基、アリール基、又はアラルキル基を示し、式(2a)及び(2d)で表される化合物が複数のR1を有する場合、各R1は互いに同一でも異なっていてもよい。式(2c)及び(2d)中、R2は水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、スルフィド基、チオール基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホノ基、又はシリル基を示し、式(2c)及び(2d)で表される化合物が複数のR2を有する場合、各R2は互いに同一でも異なっていてもよい。式(2b)中、R3は、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアミノ基を表し、式(2b)で表される化合物が複数のR3を有する場合、各R3は互いに同一でも異なっていてもよい。
なお、R1、R2又はR3で表されるアルキル基、環状飽和炭化水素基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、又はアルコキシカルボニル基を構成する炭素原子は、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基などのヘテロ原子を有する基で置換されていてもよい。
式(2d)の環Aは、NR1単位及びCR2 2単位が環の外周に存在する限り、単環でも縮合環でもよく、飽和複素環、不飽和複素環、芳香族複素環のいずれでもよい(ただし、式(2c)になることはない)。mはNR1単位の数を表しnはCR2 2単位の数を表し、複数のNR1単位及びCR2 2単位を有する場合、m個のNR1単位が連続に並ぶ必要はなく、またn個のCR2 2単位が連続に並ぶ必要はなく、NR1単位とCR2 2単位の並び方は任意である。NR1単位とNR1単位の間、NR1単位とCR2 2単位の間、又はCR2 2単位とCR2 2単位の間には、酸素原子又は硫黄原子が挿入されていてもよい。
mは1以上4以下の整数であり、nは、2以上7以下の整数である。)
R2が示すアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、スルフィド基、チオール基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホノ基、又はシリル基としては、前記Xが示すアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、スルフィド基、チオール基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホノ基、又はシリル基と同様の基が例示できる。また2つのR2が結合して環を形成してもよい。
R3が示すアルキル基、アリール基、アラルキル基、アミノ基としては、前記Xが示すアルキル基、アリール基、アラルキル基、アミノ基と同様の基が例示できる。
置換基としてのアミノ基としては、前記Xが示すアミノ基と同様の基が例示できる。
nは、好ましくは3以上6以下であり、より好ましくは4以上5以下である。
メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、アニリン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、アマンタジン、フェネチルアミン、トルイジン、ドーパミン、ノルアドレナリン、グリシンなどの第1アミン化合物;
ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジフェニルアミン、エチルフェニルアミン、アドレナリンなどの第2アミン化合物;
トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンなどの第3アミン化合物などが挙げられる。
式(2c)で表される化合物としては、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジンが挙げられる。
式(2d)で表される化合物としては、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、イミダゾール、プリンが挙げられる。
ポリアミン化合物(ただし、式(2a)〜(2f)で表すことができるポリアミン化合物を除く)としては、スペルミジン、スペルミンなどが挙げられる。
窒素含有化合物の沸点は、好ましくは−50〜200℃であり、より好ましくは0〜150℃であり、さらにより好ましくは50〜100℃である。
前記錯体は、TOT中性ラジカル化合物と窒素含有化合物を接触させることで形成できる。特に該TOT中性ラジカル化合物が、単離乃至精製された粉体である場合、溶媒に対して溶解性がなく層化が困難であったところ、錯体化することで溶媒に対して溶解性を有する様になり、層化が容易になる。
前記錯体においてTOT中性ラジカル化合物と窒素含有化合物のモル比(TOT中性ラジカル化合物:窒素含有化合物)は、1:10〜3:1である。
TOT中性ラジカル化合物と窒素含有化合物の錯体は、溶液にすることができる。この溶液は、窒素含有化合物が液体の時は、錯体の形成に関与しない余剰の窒素含有化合物を溶媒とする溶液であってもよい。また、錯体形成に用いたものと異なる窒素含有化合物を溶媒とする溶液であってもよく、窒素含有化合物として使用できない液体を溶媒とする溶液であってもよい。なお、錯体溶解液に固形分(溶け残り、析出物など)が存在する場合には、フィルター濾過などの固形分除去手段を適宜利用することによって、該固形分を除去してもよい。
前記錯体溶液を適当な基板上に塗布し、乾燥することで錯体層が形成できる。なお本明細書において、「層」は、「膜」を含む概念であり、好ましくは膜である。
乾燥は、空気中などの、水蒸気及び酸素の存在下で行ってもよく、不活性ガス中などの、水蒸気及び酸素の非存在下で行ってもよい。水蒸気及び酸素の存在下で乾燥すると、錯体層から窒素含有化合物が抜けやすくなり、錯体層からTOT中性ラジカル化合物層への変化が比較的早く進む。また水蒸気及び酸素の非存在下で乾燥すると、TOT中性ラジカル化合物層への変化を遅くして錯体層の寿命を長くすることができる。
前記錯体層から窒素含有化合物を除去することでTOT中性ラジカル化合物層を得ることができる。窒素含有化合物は、例えば、減圧、加熱などの乾燥条件を適宜採用することで除去できる。
このようにして形成された本発明のTOT中性ラジカル化合物層は、該ラジカル化合物の分散液を用いることなく形成されているため、層中のラジカル化合物の均一性が良好である。
TOT中性ラジカル層の厚みは目的に応じて任意に設定可能であるが、例えば、10nm〜100μmが好ましく、100nm〜50μmがより好ましい。
なお、以下で得られた錯体層、TOT中性ラジカル化合物層における分光スペクトル測定及び走査型電子顕微鏡(SEM)像測定は、以下の様にして実施した。
1.分光スペクトル
(株)日立ハイテクノロジーズ製の紫外可視近赤外分光光度計(U−4000)を用い、ガラス基板上に作製したTOT誘導体の薄層について、光路が基板と垂直方向になるよう固定し、測定を行った。測定波長は2600nm〜240nmとし、750nm/min(近赤外領域)及び300nm/min(紫外可視領域)のスキャンスピードで、スリット幅2nm、サンプリング間隔1nmにて測定を実施した。
2.SEM像
日本電子(株)製FE−SEM(JSM−7600F)を用い、酸化皮膜付きシリコン基板上に作製したTOT誘導体の薄層を試料台にカーボンテープで固定して測定を行った。測定条件として、加速電圧は2.0kV、焦点距離は3.0mmを用いた。
(t−Bu)3TOT中性ラジカル化合物・n−ヘキシルアミン錯体の合成
特開2013−172020号公報の製造例1と同様にして得られた(t−Bu)3TOT中性ラジカル化合物(式(E1−1)で表される化合物)17.2mgを試験管に入れ、n−ヘキシルアミン12mL(9.2g)を加えて超音波照射を5分間行うことにより、(t−Bu)3TOT中性ラジカル化合物とn−ヘキシルアミンの錯体(式(E1−2)で表される化合物)を得た。この錯体は過剰のn−ヘキシルアミンを溶媒として溶解しており、溶液の色は青色であった。トリオキソトリアンギュレン(TOT)を基準とするとこの溶液の濃度は0.18重量%と計算される。この溶液を一部とり、過剰に存在するn−ヘキシルアミンを揮発させて乾燥させることにより、(t−Bu)3TOT・n−ヘキシルアミン錯体を青色粉末として得た。この粉末の元素分析から(t−Bu)3TOTとn−ヘキシルアミンのモル比は1:3.2であり、(t−Bu)3TOTに対して水分子を2.1(モル比)の割合で含有することがわかった。
元素分析結果:
C34H33O3+3.2(C6H15N)+2.1(H2O)の計算値 C:75.06%、H:10.09%、N:5.27%。
実測値 C:75.38%、H:10.43%、N:4.97%。
(t−Bu)3TOT中性ラジカル化合物・n−ヘキシルアミン錯体の薄層
金電極付きシリコン基板をアセトン、エタノール、及び蒸留水で洗浄し、さらにオゾン洗浄を10分間行った。この洗浄後の基板をブレードコート装置に設置し、ブレード(厚さ0.12mm)と基板間の距離を100μmに調整した。実施例1と同じ方法で作製した(t−Bu)3TOT中性ラジカル化合物・n−ヘキシルアミン錯体(式(E1−2)化合物)の0.23重量%ヘキシルアミン溶液5μLを基板上に滴下し、10μm/秒の速度で基板を掃引してブレードコーティングを行った。室温で乾燥させることにより、(t−Bu)3TOT中性ラジカル化合物・n−ヘキシルアミン錯体(式(E1−2)化合物)の薄層を得た。
(t−Bu)3TOT中性ラジカル化合物の薄層
サンプル瓶に(t−Bu)3TOT中性ラジカル化合物((式(E1−1)化合物)(9.0mg)とイソプロピルアミン5mL(3.4g)を入れ、この混合物を撹拌することにより青色の(t−Bu)3TOT中性ラジカル化合物・イソプロピルアミン錯体(式(E1−3)で表される化合物)のイソプロピルアミン溶液を得た。不溶物をメンブレンフィルターでろ過して除き、ろ液をガラス基板にスピンコート(溶液0.1mL、2000rpm、30秒)して薄層を作製した。得られた青色の錯体の薄層を大気中室温で1日静置することにより赤紫色の(t−Bu)3TOT中性ラジカル化合物(式(E1−1)化合物)の薄層が得られた。スピンコート直後の錯体薄層の吸収スペクトルと、1日静置後の中性ラジカル化合物薄層の吸収スペクトルを測定し、その結果を合わせて図1に示した。1日静置後の吸収スペクトル(実線)には(t−Bu)3TOT中性ラジカル化合物に特有の1100nm付近の大きな吸収が認められる一方、スピンコート直後の錯体の吸収スペクトル(破線)にはこの中性ラジカル化合物特有のピークが見られなかった。また1日静置後の(t−Bu)3TOT中性ラジカル化合物薄層の走査型電子顕微鏡(SEM)像を図2に示す。
(t−Bu)3TOT中性ラジカル化合物の薄層
サンプル瓶に(t−Bu)3TOT中性ラジカル化合物(式(E1−1)化合物)(15mg)と、クロロホルム(1.3mL)と、イソプロピルアミン(0.6mL)とを入れ、超音波処理することにより(t−Bu)3TOT中性ラジカル化合物・イソプロピルアミン錯体(式(E1−3)化合物)の青色溶液を得た。不溶物をメンブレンフィルターでろ過して除き、ろ液をガラス基板にスピンコート(溶液0.06mL、3500rpm、30秒)して薄層を作製した。得られた青色の錯体の薄層を150℃で1時間加熱することによりイソプロピルアミンを揮発させて(t−Bu)3TOT中性ラジカル化合物(式(E1−1)化合物)の薄層を得た。この中性ラジカル化合物薄層の吸収スペクトルを図3に、走査型電子顕微鏡(SEM)像を図4に示す。(t−Bu)3TOT中性ラジカル化合物に特徴的な1100nm付近の大きな吸収スペクトルが観察された。
(t−Bu)3TOT中性ラジカル化合物の薄層
サンプル瓶に(t−Bu)3TOT中性ラジカル化合物(式(E1−1)化合物)(10mg)と、オルトジクロロベンゼン(1.0mL)と、トリエチルアミン(0.1mL)とを入れ、超音波処理することにより(t−Bu)3TOT・トリエチルアミン錯体(式(E1−4)化合物)の青色溶液を得た。不溶物をメンブレンフィルターでろ過して除き、ろ液をガラス基板にスピンコート(溶液0.8mL、800rpm、60秒)して薄層を作製した。得られた錯体の薄層を大気中室温で1日静置してトリエチルアミンを揮発させ、(t−Bu)3TOT中性ラジカル化合物(式(E1−1)化合物)の薄層を得た。この中性ラジカル化合物薄層の吸収スペクトルを図5に示す。(t−Bu)3TOT中性ラジカル化合物に特徴的な1100nm付近の大きな吸収スペクトルが観察された。
Claims (6)
- 式(1)で表されるトリオキソトリアンギュレン系中性ラジカル化合物と、式(2a)で表される非共有電子対を有する窒素含有化合物から構成され、
前記窒素含有化合物の沸点が−50〜100℃である錯体。
NR 1 3 (2a)
(式(2a)中、R 1 は水素原子、アルキル基、環状飽和炭化水素基、アリール基、又はアラルキル基を示し、各R 1 は互いに同一でも異なっていてもよい。) - 前記式(1)中のXが、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、(ヘテロ)アリール基、アラルキル基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、又はシリル基を表す請求項1に記載の錯体。
- 前記式(1)中のXが、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基、又は炭素数6以下のアリール基である請求項1または2に記載の錯体。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の錯体が溶解している溶液。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の錯体を含む層。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の錯体が溶解している溶液を用意するステップと、
前記溶液を基板上に塗布し乾燥して前記錯体を含む層を形成するステップと、
前記層から前記非共有電子対を有する窒素含有化合物を除去するステップと、を有する前記トリオキソトリアンギュレン系中性ラジカル化合物を含む層を製造する方法。
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