本発明は、壁掛けテレビや大型モニターに用いられるプラズマディスプレイ装置およびプラズマディスプレイパネルの駆動方法に関する。
プラズマディスプレイパネル(以下、「パネル」と略記する)として代表的な交流面放電型パネルは、対向配置された前面板と背面板との間に多数の放電セルが形成されている。前面板は、1対の走査電極と維持電極とからなる表示電極対が前面ガラス基板上に互いに平行に複数対形成され、それら表示電極対を覆うように誘電体層および保護層が形成されている。背面板は、背面ガラス基板上に複数の平行なデータ電極と、それらを覆うように誘電体層と、さらにその上にデータ電極と平行に複数の隔壁とがそれぞれ形成され、誘電体層の表面と隔壁の側面とに蛍光体層が形成されている。そして、表示電極対とデータ電極とが立体交差するように前面板と背面板とが対向配置されて密封され、内部の放電空間には、例えば分圧比で5%のキセノンを含む放電ガスが封入されている。ここで表示電極対とデータ電極とが対向する部分に放電セルが形成される。このような構成のパネルにおいて、各放電セル内でガス放電により紫外線を発生させ、この紫外線で赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色の蛍光体を励起発光させてカラー表示を行っている。
パネルを駆動する方法としては、サブフィールド法、すなわち、1フィールド期間を複数のサブフィールドに分割した上で、発光させるサブフィールドの組み合わせによって階調表示を行う方法が一般に用いられている。
各サブフィールドは、初期化期間、書込み期間および維持期間を有する。初期化期間では、各走査電極に初期化波形を印加し、各放電セルで初期化放電を発生させる。それにより、続く書込み動作のために必要な壁電荷を各放電セルに形成するとともに、書込み放電を安定して発生させるためのプライミング粒子(書込み放電を発生させるための励起粒子)を発生させる。
書込み期間では、走査電極に順次走査パルスを印加(以下、この動作を「走査」とも記す)するとともに、データ電極には表示すべき画像信号に対応した書込みパルスを選択的に印加する(以下、これらの動作を総称して「書込み」とも記す)。それにより、走査電極とデータ電極との間で選択的に書込み放電を発生させ、選択的に壁電荷を形成する。
そして維持期間では、表示させるべき輝度に応じた所定の回数の維持パルスを走査電極と維持電極とからなる表示電極対に交互に印加する。それにより、書込み放電による壁電荷形成が行われた放電セルで選択的に維持放電を発生させ、その放電セルを発光(以下、放電セルを維持発光させることを「点灯」とも記す。また、放電セルを維持発光させないことを「非点灯」とも記す)させる。このようにして、パネルの表示領域に画像を表示する。
このサブフィールド法では、例えば、複数のサブフィールドのうち、1つのサブフィールドの初期化期間においては全ての放電セルを放電させる全セル初期化動作を行い、他のサブフィールドの初期化期間においては維持放電を行った放電セルに対して選択的に初期化放電を行う選択初期化動作を行うことで、階調表示に関係しない発光を極力減らしコントラスト比を向上させることが可能である。
また、近年では、パネルの大画面、高精細化にともない、プラズマディスプレイ装置におけるさらなる画像表示品質の向上が望まれている。しかしながら、表示電極対間で駆動インピーダンスに差が生じると、駆動電圧の電圧降下に差が生じ、同じ輝度の画像信号にもかかわらず発光輝度に差が生じることがあった。
そこで、表示電極対間で駆動インピーダンスが変化したときに1フィールド内でのサブフィールドの点灯パターンを変化させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、表示電極対の一方に印加する維持パルスの立ち上がりを行う時間と、表示電極対の他方に印加する維持パルスの立ち下がりを行う時間とが重複する重複期間を設けるとともに、点灯率検出回路において検出した点灯率に応じて重複期間を変更することで、パネルにおける残像現象を軽減し、各放電セルの表示輝度を均一化する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
一方、パネルの大画面化、高精細化にともない、パネルの駆動インピーダンスは増大する傾向にある。そのため、同一表示電極対上に形成される放電セルであっても、駆動回路に近い位置に形成される放電セルと、駆動回路から遠い位置に形成される放電セルとでは、駆動電圧の電圧降下の差は拡大する傾向にある。
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、同一表示電極対上において駆動回路に近い位置に形成される放電セルと、駆動回路から遠い位置に形成される放電セルとに生じる駆動電圧の電圧降下の差にもとづく発光輝度の差を低減させることは困難であった。
また、パネルの大画面化、高精細化はパネルの電極間容量を増大させる。電極間容量の増大は、パネルを駆動する際に発光に寄与することなく無効に消費される無効電力を増加させるため、消費電力を増大させる一因となる。
また、大画面化、高精細化されて駆動インピーダンスが増大したパネルでは、駆動波形にリンギング等の波形歪が生じやすい。そのため、放電のばらつきが大きくなりやすく、輝度ムラと呼ばれる輝度のばらつきを生じやすい。
特開2006−184843号公報
特開2008−209840号公報
本発明のプラズマディスプレイ装置は、初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを1フィールド内に複数設け、サブフィールド毎に輝度重みを設定するとともに維持期間に輝度重みに応じた数の維持パルスを発生して階調表示するサブフィールド法で駆動し、走査電極と維持電極とからなる表示電極対を有する放電セルを複数備えたパネルと、入力画像信号を放電セルにおけるサブフィールド毎の発光・非発光を示す画像データに変換する画像信号処理回路と、表示電極対の電極間容量とインダクタとを共振させて維持パルスの立ち上がりまたは立ち下がりを行う電力回収回路および維持パルスの電圧を電源電圧またはベース電位にクランプするクランプ回路を有し、維持期間に維持パルスを発生させて表示電極対の走査電極と維持電極とに交互に印加する維持パルス発生回路と、パネルの表示領域における全放電セル数に対する点灯させるべき放電セル数の割合を全セル点灯率としてサブフィールド毎に検出する全セル点灯率検出回路と、パネルの表示領域を複数の領域に分け、それらの領域のそれぞれにおいて、放電セル数に対する点灯させるべき放電セル数の割合を部分点灯率としてサブフィールド毎に検出する部分点灯率検出回路とを備え、維持パルス発生回路は、維持パルスの立ち上がり期間および立ち下がり期間の少なくとも一方の長さが異なる複数の維持パルスを発生するとともに、発生する維持パルスの組み合わせを異ならせた複数の駆動パターンのうち、全セル点灯率と部分点灯率とに応じていずれかの駆動パターンを選択して維持パルスを発生し、画像信号処理回路は、点灯させる放電セルの数を表示電極対毎かつサブフィールド毎に算出する点灯セル数算出部と、点灯セル数算出部における算出結果にもとづき各放電セルの負荷値を算出する負荷値算出部と、負荷値算出部における算出結果と選択された駆動パターンと放電セルの位置とにもとづき各放電セルの補正ゲインを算出する補正ゲイン算出部と、補正ゲイン算出部からの出力と入力画像信号とを乗算した結果を入力画像信号から減算する補正部とを備えたことを特徴とする。
これにより、放電セルの位置に応じた補正ゲインでローディング補正を行うとともに、駆動パターンに応じて生じる発光輝度の差に応じた補正ゲインでローディング補正を行うことが可能となるので、消費電力を削減しつつ放電を安定に発生させるとともに、表示輝度を均一にして画像表示品質を向上させることが可能となる。
図1は、本発明の一実施の形態におけるパネルの構造を示す分解斜視図である。
図2は、同パネルの電極配列図である。
図3は、同パネルの各電極に印加する駆動電圧波形図である。
図4は、本発明の一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の回路ブロック図である。
図5は、本発明の一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の走査電極駆動回路の構成を示す回路図である。
図6は、本発明の一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の維持電極駆動回路の構成を示す回路図である。
図7は、本発明の一実施の形態における維持パルスの一例とそのときの発光の様子を示す概略波形図である。
図8は、本発明の一実施の形態における維持パルスの一例を示す概略波形図である。
図9は、本発明の一実施の形態における維持パルスの一例とそのときの発光の様子を示す概略波形図である。
図10は、本発明の一実施の形態における維持パルスの「立ち上がり期間」と放電のばらつきとの関係を示す特性図である。
図11は、本発明の一実施の形態における維持パルスの「立ち上がり期間」と放電のばらつきとの関係を示す特性図である。
図12は、本発明の一実施の形態における維持パルスの「立ち上がり期間」と放電のばらつきとの関係を示す特性図である。
図13は、本発明の一実施の形態における維持パルスの「立ち上がり期間」と発光効率との関係を示す特性図である。
図14は、本発明の一実施の形態における維持パルスの「立ち上がり期間」と発光輝度との関係を示す特性図である。
図15は、本発明の一実施の形態における維持パルスの「立ち上がり期間」と無効電力との関係を示す特性図である。
図16は、本発明の一実施の形態における維持パルスの「立ち上がり期間」と維持パルス電圧Vsとの関係を示す特性図である。
図17は、全セル点灯率が等しくかつ点灯セルの分布が異なる図柄を説明するための概略図である。
図18は、本発明の一実施の形態における部分点灯率を検出する領域の一例を示す概略図である。
図19は、本発明の一実施の形態における全セル点灯率および部分点灯率の最大値と駆動パターンの切換えとの関係の一例を示す図である。
図20は、本発明の一実施の形態における第1駆動パターンにおいて発生させる維持パルスの概略波形図である。
図21は、本発明の一実施の形態における第2駆動パターンにおいて発生させる維持パルスの概略波形図である。
図22は、本発明の一実施の形態における第3駆動パターンにおいて発生させる維持パルスの概略波形図である。
図23は、本発明の一実施の形態における第4駆動パターンにおいて発生させる維持パルスの概略波形図である。
図24は、本発明の一実施の形態における第5駆動パターンにおいて発生させる維持パルスの概略波形図である。
図25Aは、駆動負荷の変化により生じる発光輝度の差を説明するための概略図である。
図25Bは、駆動負荷の変化により生じる発光輝度の差を説明するための概略図である。
図26Aは、ローディング現象を概略的に説明するための図である。
図26Bは、ローディング現象を概略的に説明するための図である。
図26Cは、ローディング現象を概略的に説明するための図である。
図26Dは、ローディング現象を概略的に説明するための図である。
図27は、本発明の一実施の形態におけるローディング補正の概略を説明するための図である。
図28は、本発明の一実施の形態における画像信号処理回路の回路ブロック図である。
図29は、本発明の一実施の形態における「負荷値」の算出方法を説明するための概略図である。
図30は、本発明の一実施の形態における「最大負荷値」の算出方法を説明するための概略図である。
図31は、パネルにおける放電セルの行方向の位置にもとづく維持パルスの電圧降下の差を概略的に示す図である。
図32は、本発明の一実施の形態におけるパネルを駆動する駆動パターンおよび放電セルの位置と発光輝度との関係を示す特性図である。
図33は、本発明の一実施の形態における補正データの一例を示す概略図である。
図34は、本発明の一実施の形態における補正ゲインを用いてローディング補正をかけたときの放電セルの位置と発光輝度との関係を示す特性図である。
図35は、ウインドウパターンにおける領域Cの面積と領域Dの発光輝度との関係の一例を示した図である。
図36は、本発明の一実施の形態における補正ゲインの非線形処理の一例を示す特性図である。
以下、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置について、図面を用いて説明する。
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態におけるパネル10の構造を示す分解斜視図である。ガラス製の前面板21上には、走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対24が複数形成されている。そして走査電極22と維持電極23とを覆うように誘電体層25が形成され、その誘電体層25上に保護層26が形成されている。
また、保護層26は、放電セルにおける放電開始電圧を下げるために、パネルの材料として使用実績があり、ネオン(Ne)およびキセノン(Xe)ガスを封入した場合に2次電子放出係数が大きく耐久性に優れたMgOを主成分とする材料から形成されている。
背面板31上にはデータ電極32が複数形成され、データ電極32を覆うように誘電体層33が形成され、さらにその上に井桁状の隔壁34が形成されている。そして、隔壁34の側面および誘電体層33上には赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色に発光する蛍光体層35が設けられている。
前面板21と背面板31とは、微小な放電空間をはさんで表示電極対24とデータ電極32とが交差するように対向配置され、その外周部をガラスフリット等の封着材によって封着されている。そして、内部の放電空間には、ネオンとキセノンの混合ガスが放電ガスとして封入されている。本実施の形態では、発光効率を向上させるためにキセノン分圧を約10%とした放電ガスを用いている。放電空間は隔壁34によって複数の区画に仕切られており、表示電極対24とデータ電極32とが交差する部分に放電セルが形成されている。そしてこれらの放電セルが放電、発光(点灯)することにより画像が表示される。パネル10では、R・G・Bの各色で発光する3つの放電セルで1つの画素が構成される。
なお、パネル10の構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。また、放電ガスの混合比率も上述した数値に限られるわけではなく、その他の混合比率であってもよい。
図2は、本発明の一実施の形態におけるパネル10の電極配列図である。パネル10には、行方向に長いn本の走査電極SC1〜走査電極SCn(図1の走査電極22)およびn本の維持電極SU1〜維持電極SUn(図1の維持電極23)が配列され、列方向に長いm本のデータ電極D1〜データ電極Dm(図1のデータ電極32)が配列されている。そして、1対の走査電極SCi(i=1〜n)および維持電極SUiと1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。そして、m×n個の放電セルが形成された領域がパネル10の表示領域となる。
次に、パネル10を駆動するための駆動電圧波形とその動作の概要について説明する。なお、本実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置は、サブフィールド法、すなわち1フィールドを時間軸上で複数のサブフィールドに分割し、各サブフィールドに輝度重みをそれぞれ設定し、サブフィールド毎に各放電セルの発光・非発光を制御することによって階調表示を行うものとする。
このサブフィールド法では、例えば、1フィールドを8つのサブフィールド(第1SF、第2SF、・・・、第8SF)で構成し、各サブフィールドはそれぞれ(1、2、4、8、16、32、64、128)の輝度重みを有する構成とすることができる。また、複数のサブフィールドのうち、1つのサブフィールドの初期化期間においては全ての放電セルに初期化放電を発生させる全セル初期化動作を行い(以下、全セル初期化動作を行うサブフィールドを「全セル初期化サブフィールド」と呼称する)、他のサブフィールドの初期化期間においては維持放電を行った放電セルに対して選択的に初期化放電を発生させる選択初期化動作を行う(以下、選択初期化動作を行うサブフィールドを「選択初期化サブフィールド」と呼称する)ことで、階調表示に関係しない発光を極力減らし、コントラスト比を向上させることが可能である。
そして、本実施の形態では、第1SFの初期化期間では全セル初期化動作を行い、第2SF〜第8SFの初期化期間では選択初期化動作を行うものとする。これにより、画像の表示に関係のない発光は第1SFにおける全セル初期化動作の放電にともなう発光のみとなり、維持放電を発生させない黒表示領域の輝度である黒輝度は全セル初期化動作における微弱発光だけとなって、コントラストの高い画像表示が可能となる。また、各サブフィールドの維持期間においては、それぞれのサブフィールドの輝度重みに所定の比例定数を乗じた数の維持パルスを表示電極対24のそれぞれに印加する。このときの比例定数が輝度倍率である。
しかし、本実施の形態は、サブフィールド数や各サブフィールドの輝度重みが上記の値に限定されるものではなく、また、画像信号等にもとづいてサブフィールド構成を切換える構成であってもよい。
なお、本実施の形態では、後述する全セル点灯率検出回路および部分点灯率検出回路で計測されるサブフィールド毎の点灯率に応じて、維持パルスを立ち上げるために後述する電力回収回路を動作させる期間(以下、「立ち上がり期間」と呼称する)および維持パルスを立ち下げるために電力回収回路を動作させる期間(以下、「立ち下がり期間」と呼称する)の少なくとも一方の長さを変更するとともに、維持パルスの立ち上がりと立ち下がりとを重複させる重複期間を変更する。これにより、パネル10における消費電力を削減しつつ、維持放電を安定に発生させる。以下、まず駆動電圧波形の概要および駆動回路の構成について説明し、続いて、点灯率に応じた「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」および重複期間について説明する。
図3は、本発明の一実施の形態におけるパネル10の各電極に印加する駆動電圧波形図である。図3には、書込み期間において最初に走査を行う走査電極SC1、書込み期間において最後に走査を行う走査電極SCn、維持電極SU1〜維持電極SUn、およびデータ電極D1〜データ電極Dmの駆動波形を示す。
また、図3には、2つのサブフィールドの駆動電圧波形、すなわち全セル初期化サブフィールドである第1サブフィールド(第1SF)と、選択初期化サブフィールドである第2サブフィールド(第2SF)とを示す。なお、他のサブフィールドにおける駆動電圧波形は、維持期間における維持パルスの発生数が異なる以外は第2SFの駆動電圧波形とほぼ同様である。また、以下における走査電極SCi、維持電極SUi、データ電極Dkは、各電極の中から画像データ(サブフィールド毎の発光・非発光を示すデータ)にもとづき選択された電極を表す。
まず、全セル初期化サブフィールドである第1SFについて説明する。第1SFの初期化期間前半部では、データ電極D1〜データ電極Dm、維持電極SU1〜維持電極SUnにそれぞれ0(V)を印加し、走査電極SC1〜走査電極SCnには、維持電極SU1〜維持電極SUnに対して放電開始電圧以下の電圧Vi1から、放電開始電圧を超える電圧Vi2に向かって緩やかに(例えば、約1.3V/μsecの勾配で)上昇する傾斜電圧(以下、「上りランプ電圧」と呼称する)L1を印加する。
この上りランプ電圧L1が上昇する間に、走査電極SC1〜走査電極SCnと維持電極SU1〜維持電極SUnとの間、および走査電極SC1〜走査電極SCnとデータ電極D1〜データ電極Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が持続して起こる。そして、走査電極SC1〜走査電極SCn上部に負の壁電圧が蓄積されるとともに、データ電極D1〜データ電極Dm上部および維持電極SU1〜維持電極SUn上部には正の壁電圧が蓄積される。この電極上部の壁電圧とは、電極を覆う誘電体層上、保護層上、蛍光体層上等に蓄積された壁電荷により生じる電圧を表す。
初期化期間後半部では、維持電極SU1〜維持電極SUnには正の電圧Ve1を印加し、データ電極D1〜データ電極Dmには0(V)を印加し、走査電極SC1〜走査電極SCnには、維持電極SU1〜維持電極SUnに対して放電開始電圧以下となる電圧Vi3から放電開始電圧を超える電圧Vi4に向かって緩やかに下降する傾斜電圧(以下、「下りランプ電圧」と呼称する)L2を印加する。
この間に、走査電極SC1〜走査電極SCnと維持電極SU1〜維持電極SUnとの間、および走査電極SC1〜走査電極SCnとデータ電極D1〜データ電極Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が起こる。そして、走査電極SC1〜走査電極SCn上部の負の壁電圧および維持電極SU1〜維持電極SUn上部の正の壁電圧が弱められ、データ電極D1〜データ電極Dm上部の正の壁電圧は書込み動作に適した値に調整される。以上により、全ての放電セルに対して初期化放電を行う全セル初期化動作が終了する。
なお、図3の第2SFの初期化期間に示したように、初期化期間の前半部を省略した駆動電圧波形を各電極に印加してもよい。すなわち、維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧Ve1を、データ電極D1〜データ電極Dmに0(V)をそれぞれ印加し、走査電極SC1〜走査電極SCnに放電開始電圧以下となる電圧(例えば、接地電位)から電圧Vi4に向かって緩やかに下降する下りランプ電圧L4を印加する。これにより直前のサブフィールド(図3では、第1SF)の維持期間で維持放電を起こした放電セルでは微弱な初期化放電が発生し、走査電極SCi上部および維持電極SUi上部の壁電圧が弱められ、データ電極Dk(k=1〜m)上部の壁電圧も、過剰な部分が放電され、書込み動作に適した値に調整される。
一方、直前のサブフィールドで維持放電を起こさなかった放電セルについては放電することはなく、直前のサブフィールドの初期化期間終了時における壁電荷がそのまま保たれる。このように前半部を省略した初期化動作は、直前のサブフィールドの維持期間で維持動作を行った放電セルに対して初期化放電を行う選択初期化動作となる。
続く書込み期間では、走査電極SC1〜走査電極SCnに対しては順次走査パルス電圧Vaを印加し、データ電極D1〜データ電極Dmに対しては発光させるべき放電セルに対応するデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vdを印加して、各放電セルに選択的に書込み放電を発生させる。
書込み期間では、まず維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧Ve2を、走査電極SC1〜走査電極SCnに電圧Vcを印加する。
そして、1行目の走査電極SC1に負の走査パルス電圧Vaを印加するとともに、データ電極D1〜データ電極Dmのうち1行目に発光させるべき放電セルのデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vdを印加する。このときデータ電極Dk上と走査電極SC1上との交差部の電圧差は、外部印加電圧の差(電圧Vd−電圧Va)にデータ電極Dk上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧との差が加算されたものとなり放電開始電圧を超える。
これにより、データ電極Dkと走査電極SC1との間に放電が発生する。また、維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧Ve2を印加しているため、維持電極SU1上と走査電極SC1上との電圧差は、外部印加電圧の差である(電圧Ve2−電圧Va)に維持電極SU1上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧との差が加算されたものとなる。このとき、電圧Ve2を、放電開始電圧をやや下回る程度の電圧値に設定することで、維持電極SU1と走査電極SC1との間を、放電には至らないが放電が発生しやすい状態とすることができる。
これにより、データ電極Dkと走査電極SC1との間に発生する放電を引き金にして、データ電極Dkと交差する領域にある維持電極SU1と走査電極SC1との間に放電を発生させることができる。こうして、発光させるべき放電セルに書込み放電が起こり、走査電極SC1上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU1上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。
このようにして、1行目に発光させるべき放電セルで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、書込みパルス電圧Vdを印加しなかったデータ電極D1〜データ電極Dmと走査電極SC1との交差部の電圧は放電開始電圧を超えないので、書込み放電は発生しない。以上の書込み動作をn行目の放電セルに至るまで行い、書込み期間が終了する。
続く維持期間では、輝度重みに所定の輝度倍率を乗じた数の維持パルスを表示電極対24に交互に印加して、書込み放電を発生した放電セルで維持放電を発生させて発光させる。
この維持期間では、まず走査電極SC1〜走査電極SCnに正の維持パルス電圧Vsを印加するとともに維持電極SU1〜維持電極SUnにベース電位となる接地電位、すなわち0(V)を印加する。すると書込み放電を起こした放電セルでは、走査電極SCi上と維持電極SUi上との電圧差が維持パルス電圧Vsに走査電極SCi上の壁電圧と維持電極SUi上の壁電圧との差が加算されたものとなり放電開始電圧を超える。
そして、走査電極SCiと維持電極SUiとの間に維持放電が起こり、このとき発生した紫外線により蛍光体層35が発光する。そして走査電極SCi上に負の壁電圧が蓄積され、維持電極SUi上に正の壁電圧が蓄積される。さらにデータ電極Dk上にも正の壁電圧が蓄積される。書込み期間において書込み放電が起きなかった放電セルでは維持放電は発生せず、初期化期間の終了時における壁電圧が保たれる。
続いて、走査電極SC1〜走査電極SCnにはベース電位となる0(V)を、維持電極SU1〜維持電極SUnには維持パルス電圧Vsをそれぞれ印加する。すると、維持放電を起こした放電セルでは、維持電極SUi上と走査電極SCi上との電圧差が放電開始電圧を超えるので再び維持電極SUiと走査電極SCiとの間に維持放電が起こり、維持電極SUi上に負の壁電圧が蓄積され走査電極SCi上に正の壁電圧が蓄積される。以降同様に、走査電極SC1〜走査電極SCnと維持電極SU1〜維持電極SUnとに交互に輝度重みに輝度倍率を乗じた数の維持パルスを印加し、表示電極対24の電極間に電位差を与えることにより、書込み期間において書込み放電を起こした放電セルで維持放電が継続して行われる。
そして、維持期間における維持パルスの発生後に、走査電極SC1〜走査電極SCnに、0(V)から電圧Versに向かって緩やかに上昇する傾斜電圧(以下、「消去ランプ電圧」と呼称する)L3を印加する。これにより、維持放電を発生させた放電セルにおいて、微弱な放電を持続して発生させ、データ電極Dk上の正の壁電圧を残したまま、走査電極SCiおよび維持電極SUi上の壁電圧の一部または全部を消去する。
続く第2SF以降のサブフィールドの各動作は、維持期間の維持パルスの数を除いて上述の動作とほぼ同様であるため説明を省略する。以上が、本実施の形態におけるパネル10の各電極に印加する駆動電圧波形の概要である。
次に、本実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の構成について説明する。図4は、本発明の一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の回路ブロック図である。プラズマディスプレイ装置1は、パネル10、画像信号処理回路41、データ電極駆動回路42、走査電極駆動回路43、維持電極駆動回路44、タイミング発生回路45、全セル点灯率検出回路46、部分点灯率検出回路47、最大値検出回路48および各回路ブロックに必要な電源を供給する電源回路(図示せず)を備えている。
画像信号処理回路41は、入力された画像信号sigを放電セルにおけるサブフィールド毎の発光・非発光を示す画像データに変換する。
全セル点灯率検出回路46は、サブフィールド毎の画像データにもとづき、パネル10の画像表示面における全放電セル数に対する点灯させるべき放電セル数の割合を「全セル点灯率」としてサブフィールド毎に検出する。そして、検出した全セル点灯率をあらかじめ定めた複数の点灯率しきい値(本実施の形態においては、30%、70%)と比較し、その結果を表す信号をタイミング発生回路45に出力する。
部分点灯率検出回路47は、パネル10の表示領域を複数の領域に分け、サブフィールド毎の画像データにもとづき、領域毎かつサブフィールド毎に、各領域の放電セル数に対する点灯させるべき放電セル数の割合を「部分点灯率」として検出する。なお、部分点灯率検出回路47は、例えば、1対の表示電極対24における点灯率を部分点灯率として検出することもできるが、ここでは、走査電極22を駆動するIC(以下、「走査IC」と呼称する)の1つに接続された複数の走査電極22で構成される領域を1つの領域として部分点灯率を検出するものとする。
最大値検出回路48は、部分点灯率検出回路47で検出した各領域の部分点灯率の値を互いに比較し、その最大値をサブフィールド毎に検出する。そして、検出した最大値をあらかじめ定めた複数の最大値しきい値(本実施の形態においては、70%)と比較し、その結果を表す信号をタイミング発生回路45に出力する。
なお、本実施の形態における点灯率しきい値および最大値しきい値は、何ら上述した数値に限定されるものではない。これらの数値は、パネル10の特性やプラズマディスプレイ装置1の仕様等にもとづいて最適な値に設定することが望ましい。
タイミング発生回路45は、駆動パターン選択部49を有し、水平同期信号H、垂直同期信号V、全セル点灯率検出回路46および最大値検出回路48からの出力、にもとづき各回路ブロックの動作を制御する各種のタイミング信号を発生し、それぞれの回路ブロックへ供給する。なお、本実施の形態では、上述したように、維持パルスの立ち上がりにおける「立ち上がり期間」、維持パルスの立ち下がりにおける「立ち下がり期間」、および維持パルスの立ち上がりと立ち下がりとを重複させる重複期間を、全セル点灯率検出回路46および最大値検出回路48からの出力にもとづいて制御している。詳細は後述するが、本実施の形態では、「立ち上がり期間」および「立ち下がり期間」の少なくとも一方の長さが異なる複数の維持パルスを発生させるとともに、発生させる維持パルスの組み合わせ、および「重複期間」の長さを異ならせた複数の駆動パターン(例えば、第1駆動パターン、第2駆動パターン、第3駆動パターン、第4駆動パターン、第5駆動パターンの5つの駆動パターン)を設定し、そのいずれの駆動パターンを選択するかを、全セル点灯率検出回路46および最大値検出回路48からの出力にもとづき駆動パターン選択部49において選択する。そして、その選択結果にもとづき、各制御を行うためのタイミング信号を、タイミング発生回路45において発生し、それぞれの回路ブロックへ供給する。
走査電極駆動回路43は、初期化期間において走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する初期化波形を発生するための初期化波形発生回路、維持期間において走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する維持パルスを発生するための維持パルス発生回路50、複数の走査ICを備え書込み期間において走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する走査パルス電圧Vaを発生するための走査パルス発生回路を有する。そして、タイミング信号にもとづいて各走査電極SC1〜走査電極SCnをそれぞれ駆動する。
データ電極駆動回路42は、サブフィールド毎の画像データを各データ電極D1〜データ電極Dmに対応する信号に変換し、タイミング信号にもとづいて各データ電極D1〜データ電極Dmを駆動する。
維持電極駆動回路44は、維持パルス発生回路80および電圧Ve1、電圧Ve2を発生するための回路(図示せず)を備え、タイミング信号にもとづいて維持電極SU1〜維持電極SUnを駆動する。
次に、走査電極駆動回路43の詳細とその動作について説明する。なお、以下の説明においては、スイッチング素子を導通させる動作を「オン」、遮断させる動作を「オフ」と表記し、スイッチング素子をオンさせる信号を「Hi」、オフさせる信号を「Lo」と表記する。
図5は、本発明の一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置1の走査電極駆動回路43の構成を示す回路図である。走査電極駆動回路43は、走査電極22側の維持パルス発生回路50と、初期化波形発生回路53と、走査パルス発生回路54とを備え、走査パルス発生回路54のそれぞれの出力はパネル10の走査電極SC1〜走査電極SCnのそれぞれに接続されている。
初期化波形発生回路53は、初期化期間において走査パルス発生回路54の基準電位A(走査パルス発生回路54に入力される電圧)をランプ状に上昇または降下させ、図3に示した初期化波形を発生させる。
維持パルス発生回路50は、電力回収回路51とクランプ回路52とを備えている。
電力回収回路51は、電力回収用のコンデンサC10、スイッチング素子Q11、スイッチング素子Q12、逆流防止用のダイオードD11、逆流防止用のダイオードD12、共振用のインダクタL10を有している。そして、電極間容量CpとインダクタL10とをLC共振させて維持パルスの立ち上がりおよび立ち下がりを行う。電力回収回路51は電源から電力を供給されることなくLC共振によって走査電極SC1〜SCnの駆動を行うため、理想的には消費電力が0となる。なお、電力回収用のコンデンサC10は電極間容量Cpに比べて十分に大きい容量を持ち、電力回収回路51の電源として働くように、電圧値Vsの半分の約Vs/2に充電されている。
クランプ回路52は、走査電極SC1〜SCnを電圧Vsにクランプするためのスイッチング素子Q13、走査電極SC1〜SCnをベース電位である0(V)にクランプするためのスイッチング素子Q14を有している。そして、スイッチング素子Q13を介して走査電極SC1〜SCnを電源VSに接続して電圧Vsにクランプし、スイッチング素子Q14を介して走査電極SC1〜SCnを接地して0(V)にクランプする。したがって、クランプ回路52による電圧印加時のインピーダンスは小さく、強い維持放電による大きな放電電流を安定して流すことができる。
なお、維持パルス発生回路50は、タイミング発生回路45から出力されるタイミング信号によりスイッチング素子Q11、スイッチング素子Q12、スイッチング素子Q13、スイッチング素子Q14の導通と遮断とを切換えることによって電力回収回路51とクランプ回路52とを動作させ、維持パルス波形を発生する。
例えば、維持パルスを立ち上げる際には、スイッチング素子Q11をオンにして電極間容量CpとインダクタL10とを共振させ、電力回収用のコンデンサC10からスイッチング素子Q11、ダイオードD11、インダクタL10を通して走査電極SC1〜SCnに電力を供給する。そして、走査電極SC1〜SCnの電圧が電圧Vsに近づいた時点で、スイッチング素子Q13をオンにして、走査電極SC1〜SCnを駆動する回路を電力回収回路51からクランプ回路52に切換え、走査電極SC1〜SCnを電圧Vsにクランプする。
逆に、維持パルスを立ち下げる際には、スイッチング素子Q12をオンにして電極間容量CpとインダクタL10とを共振させ、電極間容量CpからインダクタL10、ダイオードD12、スイッチング素子Q12を通して電力回収用のコンデンサC10に電力を回収する。そして、走査電極SC1〜SCnの電圧が0(V)に近づいた時点で、スイッチング素子Q14をオンにして、走査電極SC1〜SCnを駆動する回路を電力回収回路51からクランプ回路52に切換え、走査電極SC1〜SCnをベース電位である0(V)にクランプする。
このようにして、維持パルス発生回路50は、維持パルスを発生させる。なお、これらのスイッチング素子は、MOSFETやIGBT等の一般に知られた素子を用いて構成することができる。
走査パルス発生回路54は、書込み期間において基準電位Aを負の電圧Vaに接続するためのスイッチ72と、電圧Vcを与えるための電源VCと、n本の走査電極SC1〜走査電極SCnのそれぞれに走査パルス電圧Vaを印加するためのスイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHnおよびスイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnを備えている。スイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHn、スイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnは複数の出力毎にまとめられIC化されている。このICが走査ICである。そして、スイッチング素子QHiをオフ、スイッチング素子QLiをオンにすることにより、スイッチング素子QLiを経由して走査電極SCiに負の走査パルス電圧Vaを印加する。
なお、初期化波形発生回路53または維持パルス発生回路50を動作させているときは、スイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHnをオフ、スイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnをオンにすることにより、スイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnを経由して各走査電極SC1〜走査電極SCnに初期化波形電圧または維持パルス電圧Vsを印加する。
なお、ここでは、90本の出力分のスイッチング素子を1つのモノシリックICとして集積し、パネル10は1080本の走査電極22を備えているものとして、以下の説明を行う。そして、12個の走査ICを用いて走査パルス発生回路54を構成し、n=1080本の走査電極SC1〜走査電極SCnを駆動するものとする。このように多数のスイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHn、スイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnをIC化することにより部品点数を削減し、実装面積を低減することができる。ただし、ここに挙げた数値は単なる一例であり、本発明は何らこれらの数値に限定されるものではない。
また、本実施の形態では、書込み期間において、タイミング発生回路45から出力されるSID(1)〜SID(12)を走査IC(1)〜走査IC(12)のそれぞれに入力している。このSID(1)〜SID(12)は、走査ICに書込み動作を開始させるための動作開始信号である。
図6は、本発明の一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置1の維持電極駆動回路44の構成を示す回路図である。なお、図6にはパネル10の電極間容量をCpとして示し、走査電極駆動回路43の回路図は省略している。
維持電極駆動回路44は、維持パルス発生回路50とほぼ同様の構成の維持パルス発生回路80を備えている。維持パルス発生回路80は、電力回収回路81およびクランプ回路82を備え、パネル10の維持電極SU1〜維持電極SUnに接続されている。
電力回収回路81は、電力回収用のコンデンサC20、スイッチング素子Q21、スイッチング素子Q22、逆流防止用のダイオードD21、逆流防止用のダイオードD22、共振用のインダクタL20を有している。クランプ回路82は、維持電極SU1〜維持電極SUnを電圧Vsにクランプするためのスイッチング素子Q23および維持電極SU1〜維持電極SUnを接地電位(0(V))にクランプするためのスイッチング素子Q24を有している。
そして、維持パルス発生回路80は、タイミング発生回路45から出力されるタイミング信号により各スイッチング素子のオン・オフを切換えて維持パルス波形を発生させる。なお、維持パルス発生回路80の動作は上述した維持パルス発生回路50と同様であるので説明を省略する。
また、維持電極駆動回路44は、電圧Ve1を発生する電源VE1、電圧Ve1を維持電極SU1〜維持電極SUnに印加するためのスイッチング素子Q26、スイッチング素子Q27、電圧ΔVeを発生する電源ΔVE、逆流防止用のダイオードD30、電圧Ve1に電圧ΔVeを積み上げるためのチャージポンプ用のコンデンサC30、電圧Ve1に電圧ΔVeを積み上げて電圧Ve2とするためのスイッチング素子Q28、スイッチング素子Q29を有する。
例えば、図3に示した電圧Ve1を印加するタイミングでは、スイッチング素子Q26、スイッチング素子Q27をオンにして維持電極SU1〜維持電極SUnにダイオードD30、スイッチング素子Q26、スイッチング素子Q27を介して正の電圧Ve1を印加する。なお、このときスイッチング素子Q28をオンにしてコンデンサC30の電圧が電圧Ve1になるように充電しておく。また、図3に示した電圧Ve2を印加するタイミングでは、スイッチング素子Q26、スイッチング素子Q27をオンにしたまま、スイッチング素子Q28をオフにするとともにスイッチング素子Q29をオンにしてコンデンサC30の電圧に電圧ΔVeを重畳し、維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧Ve1+ΔVe、すなわち電圧Ve2を印加する。このとき、逆流防止用のダイオードD30の働きにより、コンデンサC30から電源VE1への電流は遮断される。
なお、電圧Ve1、電圧Ve2を印加する回路については、図6に示した回路に限定されるものではなく、例えば、電圧Ve1を発生させる電源と、電圧Ve2を発生させる電源と、電圧Ve1および電圧Ve2のそれぞれの電圧を維持電極SU1〜維持電極SUnに印加するための複数のスイッチング素子とを用いて、それぞれの電圧を必要なタイミングで維持電極SU1〜維持電極SUnに印加する構成とすることもできる。
なお、電力回収回路51のインダクタL10とパネル10の電極間容量CpとのLC共振の周期、および電力回収回路81のインダクタL20と同電極間容量CpとのLC共振の周期(以下、「共振周期」と記す)は、インダクタL10、インダクタL20のインダクタンスをそれぞれLとすれば、計算式「2π√(LCp)」によって求めることができる。そして、本実施の形態では、電力回収回路51、電力回収回路81における共振周期が2000nsecになるようにインダクタL10、インダクタL20を設定しているが、この数値は実施の形態における一例に過ぎず、パネル10の特性やプラズマディスプレイ装置1の仕様等に合わせて最適な値に設定すればよい。
次に、維持期間における駆動電圧波形の詳細について説明する。電力回収回路の出力インピーダンスは、クランプ回路の出力インピーダンスと比較して大きいため、点灯させるべき放電セルの割合が増えて駆動時の負荷が大きくなると、放電が不安定に発生する場合がある。
図7は、本発明の一実施の形態における維持パルスの一例とそのときの発光の様子を示す概略波形図である。なお、図7に示す波形は、点灯率が比較的高いサブフィールドの維持期間で、走査電極SCi、維持電極SUiにおいて観測される電圧の変化の一例を示す波形であり、そのときの発光の強さを示す波形である。
まず、電力回収回路によって維持パルスが立ち上げられると、例えば図面のAに示すように、維持パルス電圧に壁電圧が加算された電圧が放電開始電圧を超えた時点で、1回目の放電が発生する。このとき、点灯率が比較的高いサブフィールドでは、この放電により瞬間的に大量の放電電流が流れるため、維持パルス電圧は一時的な電圧降下を生じる。その後、電力回収回路からクランプ回路に切換えられ維持パルス電圧が電圧Vsにクランプされると、例えば図面のBに示すように、2回目の放電が発生する。ただし、1回目の放電により壁電荷の一部が消費されるため、2回目の放電は強い放電にはならない。そのため、強い放電が発生した場合と比較して、蓄積される壁電荷も少なくなる。
その結果、直後の維持パルスでは、電力回収回路による維持パルスの立ち上げ時においては、放電が発生しないか、あるいはたとえ放電が発生しても非常に弱い放電にしかならない。したがって、その後、電力回収回路からクランプ回路に切換えられ維持パルス電圧が電圧Vsにクランプされたときに、図面のCに示すように、非常に強い放電が発生する。
また、図面のCに示したような強い放電は、放電セル内に十分な壁電荷を蓄積させるので、その次の維持パルスでは、その立ち上がりにおいて、図面のA、Bに示したような2回の放電が発生する。
このように、点灯率が比較的高いサブフィールドの維持期間においては、上述したような、非常に強い1回の放電(図面のCに示す放電)と、それよりは弱い連続した2回の放電(図面のA、Bに示す放電)とが繰り返され、その結果、輝度ムラと呼ばれる輝度のばらつきが発生することがある。
なお、図示はしないが、点灯率が低ければ、上述したような放電のばらつきの発生は少なくなり、安定した維持放電が発生することが確認されている。
一方、維持パルスの立ち上がりと立ち下がりとを重複させる重複期間を大きくしていくと、点灯率が高いサブフィールドであっても、放電のばらつきを低減できることが確認された。
図8は、本発明の一実施の形態における維持パルスの一例を示す概略波形図である。なお、図8には、維持パルスの「立ち上がり期間」および「立ち下がり期間」をそれぞれ1050nsecとし、維持パルスのパルス幅を2.7μsecとした一例を示している。なお、この「パルス幅」とは、維持パルスがベース電位(0(V))から維持パルス電圧Vsに向かって上昇を開始し始めてから再度ベース電位にクランプされるまでの期間を表す。
そして、本発明者が検討を行った結果、例えばこのように設定された維持パルスであれば、維持パルスの立ち上がりと立ち下がりとを重複させる重複期間を850nsecに設定すれば、放電のばらつきを低減できることが確認された。次に、この詳細を説明する。
図9は、本発明の一実施の形態における維持パルスの一例とそのときの発光の様子を示す概略波形図である。なお、図9に示す波形は、図8に示した維持パルスを用いてパネル10を駆動したときに、点灯率が比較的高いサブフィールドの維持期間において、走査電極SCi、維持電極SUiにおいて観測された電圧の変化の一例を示す波形であり、そのときの発光の強さを示す波形である。
本発明者が詳細に検討を行った結果、重複期間を十分に大きくすれば、直前の維持パルスの立ち下がり時において、電力回収回路からクランプ回路に切換わり維持パルス電圧が接地電位にクランプされた時点で、図面のDに示すように、強制的に1回目の放電を発生させることができることを確認した。そして、この1回目の放電を強制的に発生させることで、引き続き、維持パルスの立ち上がり時において電力回収回路からクランプ回路に切換わり維持パルス電圧が電圧Vsにクランプされた時点で、図面のEに示すように2回目の放電を発生させ、かつこれら2回の放電をばらつきを抑えて発生させることができることを確認した。
図7に示したように、重複期間のない駆動波形では、壁電荷の状態により、電力回収回路によって維持パルスを立ち上げる途中で放電が発生する場合と放電が発生しない場合とが混在し、その結果、放電のばらつきが発生していた。
しかし、図8に示した駆動波形では、壁電荷のばらつきにかかわらず、強制的に1回目の放電(図面のDに示す放電)を発生させることができるため、連続した2回の放電(図面のD、Eに示す放電)を放電のばらつきを抑えて発生させることができ、輝度ムラの発生を防止することができる。
なお、上述した放電のばらつきを抑えた連続した2回の放電は、重複期間を設けさえすれば発生するといったものではなく、重複期間を十分な長さに設定することが必要であることがあわせて確認された。
一方、放電のばらつきおよび消費電力と維持パルスの「立ち上がり期間」とには関連性があり、「立ち上がり期間」の長さに依存して放電のばらつきおよび消費電力も変化する。まず、放電のばらつきと「立ち上がり期間」とについて説明する。
図10、図11、図12は、本発明の一実施の形態における維持パルスの「立ち上がり期間」と放電のばらつきとの関係を示す特性図である。なお、ここでは、電力回収回路の共振周期を1200nsec、パルス幅を2.7μsec、重複期間を0nsec、「立ち下がり期間」を900nsecに設定し、「立ち上がり期間」を400nsec、500nsec、550nsecの3通りで変えて実験を行った。そして、図10は「立ち上がり期間」を400nsecに設定したときの測定結果を示した図であり、図11は「立ち上がり期間」を500nsecに設定したときの測定結果を示した図であり、図12は「立ち上がり期間」を550nsecに設定したときの測定結果を示した図である。また、図10、図11、図12では、複数の放電セルにおける測定結果を1つのグラフに重ねて示している。
なお、図10、図11、図12において、縦軸は発光強度を、横軸は電力回収回路の動作が開始してからの経過時間を示す。また、縦軸における単位(a.u.)は任意単位(arbitrary unit)を表す。
例えば、図10に示すように、「立ち上がり期間」を比較的短い400nsecに設定すると、ほとんどの放電セルがほぼ同じ時刻に発光し、放電のばらつきが抑えられていることが確認された。これは、「立ち上がり期間」が短いため、ほとんどの放電セルにおいて、図7において説明した1回目の放電が強く発生しているためと考えられる。
また、図11に示すように、「立ち上がり期間」を図10よりも100nsec延ばして500nsecに設定すると、放電セルの発光時刻にばらつきが生じ、放電のばらつきが大きくなることが確認された。これは、「立ち上がり期間」が適切に設定されていないため、図7において説明した1回目の放電が強く発生する放電セルと、同じく2回目の放電が強く発生する放電セルとに分かれたためと考えられる。
また、図12に示すように、「立ち上がり期間」を十分に長い550nsecに設定すると、ほとんどの放電セルが、図10に示した発光のタイミングよりは遅いが、ほぼ同じ時刻に発光し、放電のばらつきが抑えられていることが確認された。これは、「立ち上がり期間」が十分に長いため、ほとんどの放電セルにおいて、図7において説明した2回目の放電が強く発生しているためと考えられる。
このように、維持パルスにおける「立ち上がり期間」を次の2つのいずれか、すなわち、ほとんどの放電セルにおいて図7において説明した1回目の放電が強く発生する長さ、または、ほとんどの放電セルにおいて同じく2回目の放電が強く発生する長さのいずれかに設定することで、放電のばらつきを低減させることが可能となる。
次に、消費電力と「立ち上がり期間」とについて説明する。なお、消費電力に影響を与える項目として、発光効率、発光輝度、無効電力、維持放電を安定に発生させるために必要な維持パルス電圧Vsが考えられる。そこで、ここでは、各項目と「立ち上がり期間」との関係について順に記す。
図13は、本発明の一実施の形態における維持パルスの「立ち上がり期間」と発光効率との関係を示す特性図である。図13において、縦軸は発光効率の相対比率を、横軸は「立ち上がり期間」の長さを示す。なお、縦軸における単位(%)は、発光効率(lm/W:単位電力あたりの発光輝度)の検出結果を所定の値を100%として相対比率化したものであり、数値が大きいほど発光効率が良いことを表す。また、図13および続く図14から図16では、電力回収回路の共振周期を2000nsec、パルス幅を2.7μsec、重複期間を0nsec、「立ち下がり期間」を900nsecに設定し、「立ち上がり期間」を500nsecから1000nsecまで50nsecずつ延長して実験を行った。
図13に示すように、「立ち上がり期間」の長さによって発光効率は変化する。そして、図13に示すように、「立ち上がり期間」を長くしていくと、発光効率は徐々に低下していき、その後上昇して、再び低下していく。このことから、発光効率を改善できるポイントが2箇所(図13では、約500nsecと約900nsecとの2箇所)あることがわかる。これは、「立ち上がり期間」を徐々に延ばしていくことで、当初1つの維持パルスで1回の放電が安定に発生していた状態(1つ目の発光効率改善ポイント)から、1回の放電と連続した2回の放電とを繰り返す状態に移行し、その後、連続した2回の放電が安定に発生する状態(2つ目の発光効率改善ポイント)へと移行したためと考えられる。
図14は、本発明の一実施の形態における維持パルスの「立ち上がり期間」と発光輝度との関係を示す特性図である。図14において、縦軸は発光輝度の相対比率を、横軸は「立ち上がり期間」の長さを示す。なお、縦軸における単位(%)は、発光輝度(lm)の検出結果を所定の値を100%として相対比率化したものであり、数値が大きいほど発光輝度が高いことを表す。
図14に示すように、「立ち上がり期間」の長さによって発光輝度は変化する。そして、図13と同様に、「立ち上がり期間」を長くしていくと、発光輝度は徐々に低下していき、その後上昇して、再び低下していく。このことから、発光輝度を向上できるポイントが、図13と同じく2箇所(図14では、約500nsecと約800nsecとの2箇所)あることがわかる。これは、図13と同様に、「立ち上がり期間」を徐々に延ばしていくことで、当初1つの維持パルスで1回の放電が安定に発生していた状態(1つ目の発光輝度改善ポイント)から、1回の放電と連続した2回の放電とを繰り返す状態に移行し、その後、連続した2回の放電が安定に発生する状態(2つ目の発光輝度改善ポイント)へと移行したためと考えられる。なお、2つ目の改善ポイントに関し、図13と図14とでは約100nsecのずれがあるが、これは、発光効率が最良になる「立ち上がり期間」と発光輝度が最良になる「立ち上がり期間」とに差があり、その差は、連続した2回の放電のうちの1回目の放電と2回目の放電のどちらを強めるかということに関連しているためと考えられる。
図15は、本発明の一実施の形態における維持パルスの「立ち上がり期間」と無効電力との関係を示す特性図である。図15において、縦軸は無効電力の相対比率を、横軸は「立ち上がり期間」の長さを示す。なお、縦軸における単位(%)は、無効電力(W)の検出結果を所定の値を100%として相対比率化したものであり、数値が大きいほど無効電力が大きいことを表す。
図15に示すように、「立ち上がり期間」の長さによって無効電力は変化する。そして、「立ち上がり期間」が短いほど無効電力は大きくなっている。これは、「立ち上がり期間」を短くすることで、電力回収回路に回収された電力が放電の発生に使用される比率が減少するためと考えられる。
図16は、本発明の一実施の形態における維持パルスの「立ち上がり期間」と維持パルス電圧Vsとの関係を示す特性図である。図16において、縦軸は安定した維持放電を発生させるために必要な維持パルス電圧Vsを、横軸は「立ち上がり期間」の長さを示す。
図16に示すように、「立ち上がり期間」の長さによって、安定した維持放電を発生させるために必要な維持パルス電圧Vsの電圧値は変化し、「立ち上がり期間」が長いほど必要な維持パルス電圧Vsは大きくなっている。これは、「立ち上がり期間」が長くなることで、クランプ回路で維持放電を発生させるときのような強い放電を発生させることができなくなり、その分放電セル内に蓄積される壁電荷が減少するためと考えられる。
これらのことから、「立ち上がり期間」を適宜制御することで、消費電力に影響を与える項目、すなわち発光効率、発光輝度、無効電力、維持放電を安定に発生させるために必要な維持パルス電圧Vsのそれぞれに関し、改善を図れることが確認された。また、改善効果を最良にするための「立ち上がり期間」は各項目で必ずしも一致せず、重視する項目に応じて「立ち上がり期間」を設定すればよいことが確認された。
なお、上述した各効果と「立ち上がり期間」の長さとの関係は共振周期によって変化するため、「立ち上がり期間」の長さは共振周期に応じて最適に設定することが望ましい。
次に、全セル点灯率、部分点灯率について説明する。上述したように、「重複期間」を発生させたり「立ち上がり期間」の長さをパネル10の特性等に応じて最適に設定することで、放電のばらつきを低減する効果および消費電力を低減する効果を得ることができる。しかし、これらの最適と考えられる範囲は、放電セルの点灯率に応じても変化する。これは、電力回収回路の出力インピーダンスが、クランプ回路の出力インピーダンスと比較して大きいため、点灯させるべき放電セル(以下、「点灯セル」とも記す)の割合が変化することで「立ち上がり期間」の波形形状が変化するためである。
したがって、点灯率を検出し、その検出結果に応じた制御を行うことで各設定を最適にすることができると考えられる。そして、本実施の形態では、パネル10の画像表示面における全放電セルに対する点灯セルの割合を示す全セル点灯率を検出し、各制御に用いている。しかし、同じ全セル点灯率であっても、表示する画像の図柄、すなわち点灯セルの分布によって、1対の表示電極対24上に発生する点灯セルの数は大きく変化し、駆動負荷も大きく変化する。
図17は、全セル点灯率が等しくかつ点灯セルの分布が異なる図柄を説明するための概略図である。なお、図17において、表示電極対24は、図2と同様に、図面における左右方向に延長して配列されているものとする。また、図17において斜線で示した部分は維持放電を発生させない非点灯セルの分布を表し、斜線のない白抜きの部分は点灯セルの分布を表す。
例えば、図17の上段に示すように、点灯セルが(図面における)上下に延びた形状で分布している場合は、1対の表示電極対24上に発生する点灯セルの数は比較的少なく、その1対の表示電極対24における駆動負荷も小さい。しかし、同じ全セル点灯率であっても、図17の下段に示すように、点灯セルが(図面における)左右に延びた形状で分布している場合は、ある1対の表示電極対24上に発生する点灯セルの数は多くなり、その1対の表示電極対24の駆動負荷は大きくなる。
このように、同じ全セル点灯率であっても、図柄に応じて部分的な駆動負荷の違いが発生し、図柄によっては部分的に駆動負荷の大きい表示電極対24が発生することがある。
そこで、本実施の形態では、全セル点灯率に加え、パネル10の表示領域を複数の領域に分け、各領域における点灯率を部分点灯率として検出する構成とする。
図18は、本発明の一実施の形態における部分点灯率を検出する領域の一例を示す概略図である。図18には、パネル10、走査IC(例えば、走査IC(1)〜走査IC(12))、走査電極22の引き出し線(図示せず)と走査ICの出力端子とを電気的に接続する接続ケーブルを示し、パネル10と走査ICとを接続ケーブルを介して接続した様子を概略的に示す。なお、パネル10内に示す破線は、部分点灯率を検出する領域をわかりやすく表すために便宜上示したものであり、この破線が実際にパネル10に設けられているわけではない。本実施の形態では、破線で囲まれた領域を1つの領域とし、それぞれの領域で部分点灯率を検出するものとする。また、表示電極対24は、図2と同様に、図面における左右方向に延長して配列されているものとする。
本実施の形態では、図18に示すように、パネル10の表示領域を走査ICを基準にして複数の領域に分割するものとする。すなわち、部分点灯率検出回路47は、1つの走査ICに接続された複数の走査電極22で構成される領域を1つの領域として部分点灯率を検出するものとする。例えば、1つの走査ICに接続される走査電極22の数が90本であり、走査電極駆動回路43が備える走査ICが12個(走査IC(1)〜走査IC(12))であれば、図18に示すように、部分点灯率検出回路47は、走査IC(1)〜走査IC(12)のそれぞれに接続された90本の走査電極22を1つの領域とし、パネル10の表示領域を12分割して各領域の部分点灯率を検出する。そして、最大値検出回路48は、部分点灯率検出回路47で検出した部分点灯率の値を互いに比較し、最も値の大きい部分点灯率を検出する。
そして、本実施の形態では、「立ち上がり期間」および「立ち下がり期間」の少なくとも一方の長さが異なる複数の維持パルスを発生させるとともに、発生させる維持パルスの組み合わせ、および「重複期間」の長さを異ならせた複数の駆動パターン(ここでは、第1駆動パターン、第2駆動パターン、第3駆動パターン、第4駆動パターン、第5駆動パターンの5つの駆動パターン)を設定する。そして、検出した部分点灯率の最大値および全セル点灯率に応じてサブフィールド毎に駆動パターンを切換えて維持パルスを発生させる構成とする。
なお、維持パルスの立ち上がりで強い放電を発生させると、維持パルスの立ち下がりにおいて微弱な放電が発生することがあることが確認された。この放電は、維持放電で形成された壁電荷を減少させるため、この立ち下がりによる放電が発生すると、壁電荷が不足して続く維持放電を不安定に発生させる恐れがあり、好ましくない。そして、立ち下がりにかける時間を長くすることで、この立ち下がりにおける微弱な放電を低減できることが実験的に確認された。一方、維持パルスの立ち上がりで発生させる放電の強度は、パネル10の駆動負荷や維持パルスの立ち上がりにおける波形形状によって変化する。そこで、本実施の形態では、検出した全セル点灯率、部分点灯率の最大値および発生させる維持パルスの「立ち上がり期間」等を考慮して「立ち下がり期間」を設定している。
図19は、本発明の一実施の形態における全セル点灯率および部分点灯率の最大値と駆動パターンの切換えとの関係の一例を示す図である。
本実施の形態では、図19に示すように、部分点灯率の最大値が大きくなく(例えば、70%未満)、かつ全セル点灯率が低い(例えば、30%未満)サブフィールドでは、第1駆動パターンで維持パルスを発生させる。この第1駆動パターンは、発光輝度の向上を目的とした駆動パターンである。これにより、全セル点灯率が低く、かつ部分点灯率の最大値が大きくないとき、すなわちパネル10の駆動負荷が全体的に低いときの発光輝度を向上させて、画像表示品質の向上を図る。
また、部分点灯率の最大値が大きく(例えば、70%以上)、かつ全セル点灯率が高い(例えば、70%以上)サブフィールドでは、第2駆動パターンで維持パルスを発生させる。この第2駆動パターンは、無効電力削減と発光効率改善を目的とした駆動パターンである。これにより、全セル点灯率が高く、かつ部分点灯率の最大値が大きいとき、すなわちパネル10の駆動負荷が全体的に高いときに無効電力を削減するとともに発光効率を改善して消費電力の低減を図る。
また、部分点灯率の最大値が大きく(例えば、70%以上)、かつ全セル点灯率が所定の範囲内にある(例えば、30%以上70%未満)サブフィールドでは、第3駆動パターンで維持パルスを発生させる。この第3駆動パターンは、発光輝度の向上と無効電力削減および発光効率改善とを目的とした駆動パターンである。これにより、全セル点灯率がやや高くかつ部分点灯率の最大値が大きいとき、すなわちパネル10の駆動負荷が部分的に高いときに、発光輝度の向上による画像表示品質の向上と、無効電力削減および発光効率改善による消費電力の低減とを図る。
また、部分点灯率の最大値が大きく(例えば、70%以上)、かつ全セル点灯率が低い(例えば、30%未満)サブフィールドでは、第4駆動パターンで維持パルスを発生させる。この第4駆動パターンは、無効電力削減および発光効率改善の効果を最も高めることを目的とした駆動パターンである。これにより、通常の動画表示において表示頻度が比較的高いと考えられる、全セル点灯率が低くかつ部分点灯率の最大値が大きい画像を表示するときの、無効電力削減および発光効率改善による消費電力の低減効果の向上を図る。
また、部分点灯率の最大値が大きくなく(例えば、70%未満)、かつ全セル点灯率が所定の範囲内にある(例えば、30%以上70%未満)サブフィールドでは、第5駆動パターンで維持パルスを発生させる。この第5駆動パターンは、無効電力削減および発光効率改善の効果を高めることを目的とした駆動パターンである。これにより、全セル点灯率がやや高くかつ部分点灯率の最大値が大きくないとき、すなわちパネル10における駆動負荷の高い領域が第3駆動パターンを適用するときほどは偏っておらず、かつ駆動負荷が全体的にやや高いときに、無効電力削減および発光効率改善による消費電力の低減を図る。
次に、各駆動パターンの詳細について図20から図24を用いて説明する。図20は、本発明の一実施の形態における第1駆動パターンにおいて発生させる維持パルスの概略波形図であり、図21は、本発明の一実施の形態における第2駆動パターンにおいて発生させる維持パルスの概略波形図であり、図22は、本発明の一実施の形態における第3駆動パターンにおいて発生させる維持パルスの概略波形図であり、図23は、本発明の一実施の形態における第4駆動パターンにおいて発生させる維持パルスの概略波形図であり、図24は、本発明の一実施の形態における第5駆動パターンにおいて発生させる維持パルスの概略波形図である。なお、図20、図21、図22、図23、図24において、図面内の上に示した図は発生させる維持パルスの概略波形形状を示した図であり、図面内の下に示した図は「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」、「重複期間」のそれぞれの長さを示した図である。また、図20、図21、図22、図23、図24においては、各維持パルスのパルス幅は2.7μsecであるものとする。
なお、本実施の形態では、図20、図21、図22、図23、図24に示すように、8つの維持パルスから構成される1つのパターンを繰り返して発生させる構成としている。また、全ての駆動パターンにおいて、電力回収回路における共振周期は2000nsecに設定している。
本実施の形態において、第1駆動パターンは、図20に示すように、1つ目の維持パルス(図面のA)は「立ち上がり期間」を800nsec、「立ち下がり期間」を550nsecとする。2つ目の維持パルス(図面のB)は、「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」をそれぞれ400nsec、500nsecとする。3つ目の維持パルス(図面のC)から8つ目の維持パルス(図面のH)は、「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」をそれぞれ800nsec、550nsecとする。そして、「重複期間」を150nsecとする。
第2駆動パターンは、図21に示すように、1つ目の維持パルス(図面のA)は「立ち上がり期間」を650nsec、「立ち下がり期間」を1000nsecとする。2つ目の維持パルス(図面のB)は、「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」をそれぞれ450nsec、850nsecとする。3つ目の維持パルス(図面のC)から8つ目の維持パルス(図面のH)は、「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」をそれぞれ650nsec、1000nsecとする。そして、「重複期間」を150nsecとする。
第3駆動パターンは、図22に示すように、1つ目の維持パルス(図面のA)は「立ち上がり期間」を700nsec、「立ち下がり期間」を900nsecとする。2つ目の維持パルス(図面のB)は、「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」をそれぞれ450nsec、800nsecとする。3つ目の維持パルス(図面のC)、5つ目の維持パルス(図面のE)、7つ目の維持パルス(図面のG)は、「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」をそれぞれ700nsec、900nsecとする。4つ目の維持パルス(図面のD)、6つ目の維持パルス(図面のF)、8つ目の維持パルス(図面のH)は、「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」をそれぞれ750nsec、900nsecとする。そして、「重複期間」を200nsecとする。
第4駆動パターンは、図23に示すように、1つ目の維持パルス(図面のA)は「立ち上がり期間」を750nsec、「立ち下がり期間」を900nsecとする。2つ目の維持パルス(図面のB)は、「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」をそれぞれ450nsec、800nsecとする。3つ目の維持パルス(図面のC)から8つ目の維持パルス(図面のH)は、「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」をそれぞれ750nsec、900nsecとする。そして、「重複期間」を150nsecとする。
第5駆動パターンは、図24に示すように、1つ目の維持パルス(図面のA)は「立ち上がり期間」を750nsec、「立ち下がり期間」を900nsecとする。2つ目の維持パルス(図面のB)は、「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」をそれぞれ450nsec、800nsecとする。3つ目の維持パルス(図面のC)、5つ目の維持パルス(図面のE)、7つ目の維持パルス(図面のG)は、「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」をそれぞれ750nsec、900nsecとする。4つ目の維持パルス(図面のD)、6つ目の維持パルス(図面のF)、8つ目の維持パルス(図面のH)は、「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」をそれぞれを650nsec、900nsecとする。そして、「重複期間」を150nsecとする。
そして、これらの5つの駆動パターンを全セル点灯率および部分点灯率の最大値に応じて切換えてパネル10を駆動することで、表示画像の図柄にもよるが、一般的な動画表示において、平均して約10〜30Wの消費電力削減効果を確認することができた。合わせて、放電のばらつき低減効果による画像表示品質の向上を確認することができた。
なお、本実施の形態では、8つの維持パルスから構成される1つのパターンを繰り返し発生させる構成を説明したが、維持パルスの総数が8未満の維持期間においては、全ての維持パルスを同一の波形形状としてもよく、あるいは、プラズマディスプレイ装置1の仕様等に応じて任意に設定してもよい。
また、ここに示した各駆動パターンの構成は単なる一例に過ぎず、適宜最適に設定すればよい。また、8つの維持パルスで1つのパターンを構成する例に限定されるものではなく、より多くの維持パルス、あるいはより少ない維持パルスで1つのパターンを構成してもかまわない。また、共振周期も何ら上述した数値に限定されるものではない。これらの構成は、パネル10の特性やプラズマディスプレイ装置1の仕様等に応じて最適に設定することが望ましい。
次に、駆動負荷の変化により生じる発光輝度の差について説明する。図25A、図25Bは、駆動負荷の変化により生じる発光輝度の差を説明するための概略図である。図25Aは、一般に「ウインドウパターン」と呼ばれる画像がパネル10に表示されたときの理想的な表示画像を示したものである。図面に示す領域Bおよび領域Dは同じ信号レベル(例えば、20%)の領域であり、領域Cは領域Bおよび領域Dよりも信号レベルが低い(例えば、5%)領域である。なお、本実施の形態で用いる「信号レベル」とは、輝度信号の階調値であってもよく、あるいは、R信号の階調値、B信号の階調値、G信号の階調値であってもよい。
図25Bは、図25Aに示した「ウインドウパターン」をパネル10に表示したときの表示画像を概略的に示した図と信号レベル101と発光輝度102とを示すものである。なお、図25Bのパネル10において表示電極対24は図2に示したパネル10と同様に行方向(図面では、横方向)に延長して配列されているものとする。また、図25Bの信号レベル101は、図25Bのパネル10に示すA1−A1線における画像信号の信号レベルを示したものであり、横軸は画像信号の信号レベルの大きさを表し、縦軸はパネル10のA1−A1線における表示位置を表す。また、図25Bの発光輝度102は、図25Bのパネル10に示すA1−A1線における表示画像の発光輝度を示したものであり、横軸は表示画像の発光輝度の大きさを表し、縦軸はパネル10のA1−A1線における表示位置を表す。
図25Bに示すように、「ウインドウパターン」をパネル10に表示すると、信号レベル101に示すように領域Bと領域Dとは同じ信号レベルであるにもかかわらず、発光輝度102に示すように領域Bと領域Dとで発光輝度に差が生じることがある。これは、以下のような理由によるものと考えられる。
表示電極対24は行方向(図面では、横方向)に延長して配列されているため、図25Bのパネル10に示すように、「ウインドウパターン」をパネル10に表示した場合、領域Bだけを通る表示電極対24と、領域Cと領域Dとを通る表示電極対24とが生じる。そして、領域Bを通る表示電極対24よりも、領域Cと領域Dとを通る表示電極対24の方が、駆動負荷が小さくなる。これは、領域Cの信号レベルが低いので、その分、領域Cと領域Dとを通る表示電極対24に流れる放電電流の方が、領域Bを通る表示電極対24に流れる放電電流よりも少なくなるためである。
したがって、領域Cと領域Dとを通る表示電極対24では、領域Bを通る表示電極対24よりも、駆動電圧の電圧降下、例えば維持パルスの電圧降下が少なくなる。すなわち、領域Cと領域Dとを通る表示電極対24の方が、領域Bを通る表示電極対24よりも維持パルスの電圧降下が少なくなり、領域Bに含まれる放電セルにおける維持放電よりも、領域Dに含まれる放電セルにおける維持放電の方が、放電強度が強くなると考えられる。その結果、同じ信号レベルであるにもかかわらず領域Dの方が領域Bよりも発光輝度が上昇するものと考えられる。以下、このような現象を「ローディング現象」と呼称する。
図26A、図26B、図26C、図26Dは、ローディング現象を概略的に説明するための図であり、「ウインドウパターン」における信号レベルの低い(例えば、5%)領域Cの面積を徐々に変更してパネル10に表示したときの表示画像を概略的に示した図である。なお、図26Aにおける領域D1、図26Bにおける領域D2、図26Cにおける領域D3、図26Dにおける領域D4は、それぞれ領域Bと同じ信号レベル(例えば、20%)であるものとする。
そして、図26A、図26B、図26C、図26Dに示すように、領域C1、領域C2、領域C3、領域C4と領域Cの面積が大きくなるにつれ、領域C、領域Dを通る表示電極対24の駆動負荷は減少する。その結果、領域Dに含まれる放電セルの放電強度が強くなって、領域Dの発光輝度は、領域D1、領域D2、領域D3、領域D4と徐々に上昇する。このように、ローディング現象による発光輝度の上昇は、駆動負荷が変動することにより変化する。本実施の形態は、このローディング現象を軽減し、プラズマディスプレイ装置1における画像表示品質を向上させることを目的とする。なお、ローディング現象を軽減するために施す処理を、本実施の形態では「ローディング補正」と呼称する。
図27は、本発明の一実施の形態におけるローディング補正の概略を説明するための図であり、図25Aに示した「ウインドウパターン」をパネル10に表示したときの表示画像を概略的に示した図と信号レベル111と信号レベル112と発光輝度113とを示すものである。なお、図27のパネル10に示す表示画像は、図25Aに示した「ウインドウパターン」を、本実施の形態におけるローディング補正を施した後でパネル10に表示したときの表示画像を概略的に示したものである。また、図27の信号レベル111は、図27のパネル10に示すA2−A2線における画像信号の信号レベルを示したものであり、横軸は画像信号の信号レベルの大きさを表し、縦軸はパネル10のA2−A2線における表示位置を表す。また、図27の信号レベル112は、本実施の形態におけるローディング補正を施した後の画像信号のA2−A2線における信号レベルを示したものであり、横軸はローディング補正後の画像信号の信号レベルの大きさを表し、縦軸はパネル10のA2−A2線における表示位置を表す。また、図27の発光輝度113は、A2−A2線における表示画像の発光輝度を示したものであり、横軸は表示画像の発光輝度の大きさを表し、縦軸はパネル10のA2−A2線における表示位置を表す。
本実施の形態では、放電セル毎に、その放電セルを通る表示電極対24の駆動負荷にもとづく補正値を算出して画像信号に補正を加えることでローディング補正を行う。例えば、図27のパネル10に示すような画像をパネル10に表示する際には、領域Bと領域Dとでは同じ信号レベルであるが、領域Dを通る表示電極対24は領域Cも通るため駆動負荷が小さいと判断することができる。そこで、図27の信号レベル112に示すように領域Dの信号レベルに補正を加える。これにより、図27の発光輝度113に示すように、表示画像における領域Bと領域Cとで発光輝度の大きさを互いに合わせて、ローディング現象を軽減する。
このように、ローディング現象が発生すると予想される領域における画像信号に補正を加え、その領域の表示画像における発光輝度を減少させることでローディング現象を軽減する。このとき、本実施の形態では、駆動負荷と、選択された駆動パターンの種類と、パネル10における放電セルの行方向の位置とにもとづきローディング補正用の補正ゲインを算出し、その補正ゲインを用いてローディング補正を行うものとする。
この、本実施の形態におけるローディング補正について詳細に説明する。図28は、本発明の一実施の形態における画像信号処理回路41の回路ブロック図である。なお、図28には、本実施の形態におけるローディング補正に関係するブロックを示し、それ以外の回路ブロックは省略している。
画像信号処理回路41は、点灯セル数算出部60と、負荷値算出部61と、補正ゲイン算出部62と、放電セル位置判定部64と、乗算器68と、補正部69とを備えたローディング補正部70を有する。
点灯セル数算出部60は、点灯させる放電セル(以下、点灯させる放電セルを「点灯セル」、点灯させない放電セルを「非点灯セル」と呼称する)の数を、表示電極対24毎、かつサブフィールド毎に算出する。
負荷値算出部61は、点灯セル数算出部60における算出結果を受け、本実施の形態における駆動負荷算出方法にもとづく演算(本実施の形態では、後述する「負荷値」および「最大負荷値」の算出)を行う。
放電セル位置判定部64は、タイミング信号にもとづき、補正ゲイン算出部62における補正ゲインの算出対象である放電セル(以下、「注目放電セル」と呼称する)の行方向の位置(表示電極対24の延長方向における位置)を判定する。
補正ゲイン算出部62は、選択された駆動パターンの種類、放電セル位置判定部64における放電セルの位置判定結果、および負荷値算出部61における演算結果にもとづき補正ゲインを算出する。なお、本実施の形態では、選択された駆動パターンの種類を示す信号は、タイミング発生回路45が有する駆動パターン選択部49から出力され、補正ゲイン算出部62に入力されるものとする。
乗算器68は、補正ゲイン算出部62から出力される補正ゲインを画像信号に乗算し、補正信号として出力する。そして、補正部69は、乗算器68から出力される補正信号を画像信号から減算して、補正後画像信号として出力する。
次に、本実施の形態における補正ゲインの算出方法について説明する。なお、本実施の形態では、この演算を点灯セル数算出部60、負荷値算出部61、補正ゲイン算出部62において行う。
本実施の形態では、点灯セル数算出部60における算出結果にもとづき「負荷値」および「最大負荷値」と呼称する2つの数値を算出する。この「負荷値」および「最大負荷値」は、注目放電セルにおけるローディング現象の発生量を推定するために用いる数値である。
まず、図29を用いて本実施の形態における「負荷値」について説明し、続いて、図30を用いて本実施の形態における「最大負荷値」について説明する。
図29は、本発明の一実施の形態における「負荷値」の算出方法を説明するための概略図であり、図25Aに示した「ウインドウパターン」をパネル10に表示したときの表示画像を概略的に示した図と点灯状態121と算出値122とを示すものである。また、図29の点灯状態121は、図29のパネル10に示すA3−A3線における各放電セルの点灯・非点灯をサブフィールド毎に示した概略図であり、横方向の欄はパネル10のA3−A3線における表示位置を表し、縦方向の欄はサブフィールドを表す。また、「1」は点灯を、空欄は非点灯を表す。また、図29の算出値122は、本実施の形態における「負荷値」の算出方法を概略的に示した図であり、横方向の欄は図面の左から順に、「点灯セル数」、「輝度重み」、「放電セルBの点灯状態」、「算出値」を表し、縦方向の欄はサブフィールドを表す。なお、本実施の形態では、説明を簡略化するために、行方向の放電セル数が15であるものとする。したがって、図29のパネル10に示すA3−A3線上に、15個の放電セルが配置されているものとして以下の説明を行うが、実際には、パネル10の行方向における放電セル数(例えば、1920×3)に合わせて以下の各演算を行う。
図29のパネル10に示すA3−A3線上に配置された15個の放電セルの各サブフィールドにおける点灯状態が、例えば、点灯状態121に示すような状態、すなわち、図29のパネル10に示す領域Cに含まれる中央5個の放電セルにおいては第1SFから第3SFまでが点灯し第4SFから第8SFまでは非点灯であり、領域Cに含まれない左右5個ずつの放電セルにおいては第1SFから第6SFまでが点灯し第7SFおよび第8SFは非点灯であるものとする。
A3−A3線上に配置された15個の放電セルがこのような点灯状態のとき、そのうちの1つの放電セル、例えば、図面に示す放電セルBにおける「負荷値」は、次のようにして求める。
まず、各サブフィールド毎の点灯セル数を算出する。第1SFから第3SFまではA3−A3線上の15個の放電セル全てが点灯しているので、第1SFから第3SFまでの点灯セル数は図29の算出値122の「点灯セル数」の第1SFから第3SFまでの各欄に示すように「15」となる。また、第4SFから第6SFまではA3−A3線上の15個の放電セルのうち10個の放電セルが点灯しているので、第4SFから第6SFまでの点灯セル数は、算出値122の「点灯セル数」の第4SFから第6SFまでの各欄に示すように、「10」となる。そして、第7SF、第8SFではA3−A3線上の15個の放電セル全てが非点灯なので、第7SF、第8SFの点灯セル数は、算出値122の「点灯セル数」の第7SF、第8SFの各欄に示すように「0」となる。
次に、このようにして求めた各サブフィールドの点灯セル数に、各サブフィールドの輝度重みと、放電セルBにおける各サブフィールドの点灯状態とをそれぞれ乗算する。なお、本実施の形態では、各サブフィールドの輝度重みを、図9の算出値122の「輝度重み」の第1SFから第8SFまでの各欄に示すように、第1SFから順に、(1、2、4、8、16、32、64、128)であるものとする。また、本実施の形態では、点灯を1、非点灯を0とする。したがって放電セルBにおける点灯状態は、算出値122の「放電セルBの点灯状態」の第1SFから第8SFまでの各欄に示すように、第1SFから順に、(1、1、1、1、1、1、0、0)となる。そして、その乗算結果は、算出値122の「算出値」の第1SFから第8SFまでの各欄に示すように、第1SFから順に、(15、30、60、80、160、320、0、0)となる。そして、その算出値の総和を求める。例えば、図9の算出値122に示す例では、算出値の総和は665となる。この総和が、放電セルBにおける「負荷値」となる。本実施の形態では、このような演算を各放電セルに対して行い、放電セル毎に「負荷値」を求める。
図30は、本発明の一実施の形態における「最大負荷値」の算出方法を説明するための概略図であり、図25Aに示した「ウインドウパターン」をパネル10に表示したときの表示画像を概略的に示した図と点灯状態131と算出値132とを示すものである。また、図30の点灯状態131は、「最大負荷値」を算出するために、放電セルBの点灯状態を図30のパネル10に示すA4−A4線上の全放電セルにあてはめたときの点灯・非点灯をサブフィールド毎に示した概略図であり、横方向の欄はパネル10のA4−A4線における表示位置を表し、縦方向の欄はサブフィールドを表す。また、図30の算出値132は、本実施の形態における「最大負荷値」の算出方法を概略的に示した図であり、横方向の欄は図面の左から順に、「点灯セル数」、「輝度重み」、「放電セルBの点灯状態」、「算出値」を表し、縦方向の欄はサブフィールドを表す。
本実施の形態においては、「最大負荷値」を次のようにして算出する。例えば、放電セルBにおける「最大負荷値」を算出する場合には、図30の点灯状態131に示すように、A4−A4線上の全放電セルが放電セルBと同様の状態で点灯しているものと仮定して、各サブフィールド毎の点灯セル数を算出する。放電セルBにおける各サブフィールドの点灯状態は、図29の算出値122の「放電セルBの点灯状態」の第1SFから第8SFまでの各欄に示すように、第1SFから順に(1、1、1、1、1、1、0、0)なので、その点灯状態をA4−A4線上の全放電セルに割り当てる。したがって、A4−A4線上の全放電セルの点灯状態は、図30の点灯状態131に示すように、第1SFから第6SFまでが1となり、第7SF、第8SFは0となる。したがって、点灯セル数は、図30の算出値132の「点灯セル数」の第1SFから第8SFまでの各欄に示すように第1SFから順に(15、15、15、15、15、15、0、0)となる。ただし、本実施の形態では、A4−A4線上の各放電セルを、実際に点灯状態131に示す点灯状態にするのではない。点灯状態131に示す点灯状態は、「最大負荷値」を算出するために、各放電セルが放電セルBと同じ点灯状態になったと仮定したときの点灯状態を示したものであり、算出値132に示す「点灯セル数」は、その仮定の上での点灯セル数を算出したものである。
次に、このようにして求めた各サブフィールドの点灯セル数に、各サブフィールドの輝度重みと、放電セルBにおける各サブフィールドの点灯状態とをそれぞれ乗算する。上述したように、本実施の形態では、各サブフィールドの輝度重みを、図30の算出値132の「輝度重み」の第1SFから第8SFまでの各欄に示すように、第1SFから順に、(1、2、4、8、16、32、64、128)とする。また、放電セルBにおける点灯状態は、算出値132の「放電セルBの点灯状態」の第1SFから第8SFまでの各欄に示すように、第1SFから順に、(1、1、1、1、1、1、0、0)である。したがって、その乗算の結果は、算出値132の「算出値」の第1SFから第8SFまでの各欄に示すように、第1SFから順に、(15、30、60、120、240、480、0、0)となる。そして、その算出値の総和を求める。例えば、図30の算出値132に示す例では、算出値の総和は945となる。この総和が、放電セルBにおける「最大負荷値」となる。本実施の形態では、このような演算を各放電セルに対して行い、放電セル毎に「最大負荷値」を求める。
なお、放電セルBにおける「最大負荷値」は、表示電極対24上に形成される全放電セル数(この例では、15)を各サブフィールドの輝度重み(例えば、第1SFから順に、(1、2、4、8、16、32、64、128))にそれぞれ乗算し、その乗算結果と放電セルBにおける各サブフィールドの点灯状態(例えば、第1SFから順に、(1、1、1、1、1、1、0、0))とをそれぞれ乗算して、その算出値(この例では、第1SFから順に、(15、30、60、120、240、480、0、0))の総和を求めて算出する構成としてもよい。このような算出方法でも、上述の演算と同様の結果(この例では、945となる)を得ることができる。
そして、本実施の形態では、次の式(1)から得られる数値を用いて注目放電セル(放電セルB)における補正ゲインを算出する。
(最大負荷値−負荷値)/最大負荷値・・・・・・・・・・・・・式(1)
例えば、上述した放電セルBにおける「負荷値」=665、「最大負荷値」=945からは、
(945−665)/945=0.296
という数値を算出することができる。こうして算出した数値を次の式(2)に用いて補正ゲインを算出する。すなわち、式(1)の結果に所定の係数(パネル10の特性等に応じてあらかじめ定めた係数)を乗算し、さらに、選択された駆動パターンおよびパネル10における放電セルの行方向の位置にもとづく所定の補正量を乗算して補正ゲインを算出する。
補正ゲイン=式(1)の結果×所定の係数×補正量・・・・・・・式(2)
そして、この補正ゲインを、次の式(3)に代入して入力画像信号に補正を施す。
出力画像信号=入力画像信号−入力画像信号×補正ゲイン・・・・式(3)
これにより、ローディング現象が発生すると予想される領域における不要な輝度上昇を抑え、ローディング現象を軽減することができる。
近年の大画面化、高精細化したパネル10では、走査電極22および維持電極23のインピーダンスが大きくなり、駆動回路に比較的近い位置にある放電セルと、駆動回路から比較的遠い位置にある放電セルとで、維持パルスの電圧降下の差が大きくなる傾向にある。しかし、本実施の形態においては、「負荷値」および「最大負荷値」を算出するとともに、選択された駆動パターンおよびパネル10における放電セルの行方向の位置にもとづく補正量をあらかじめ設定し、これらを補正ゲインの算出に用いることで、予想される発光輝度の上昇に応じた補正ゲインを精度良く算出することが可能となり、ローディング補正をより高精度に行うことが可能となる。
図31は、パネル10における放電セルの行方向の位置にもとづく維持パルスの電圧降下の差を概略的に示す図である。なお、図31では、説明を分かりやすくするために、表示電極対24を1対だけ示している。また、走査電極駆動回路43に最も近い位置に形成された放電セルA、走査電極駆動回路43から最も遠い位置に形成された放電セルC、それらの中間の位置に形成された放電セルBの3つの放電セルにおける維持パルスを概略的に示している。
図31に示すように、走査電極駆動回路43に対して最も近い位置にある放電セルAは、維持電極駆動回路44に対しては最も遠い位置となる。したがって、走査電極駆動回路43から見た放電セルAの駆動インピーダンスは比較的低く、逆に、維持電極駆動回路44から見た放電セルAの駆動インピーダンスは比較的高い。そのため、図31に示すように、走査電極駆動回路43から放電セルAに印加される維持パルスの電圧降下が比較的小さいのに対し、維持電極駆動回路44から放電セルAに印加される維持パルスの電圧降下は比較的大きくなる。
一方、走査電極駆動回路43に対して最も遠い位置にある放電セルCは、維持電極駆動回路44に対しては最も近い位置となる。したがって、走査電極駆動回路43から放電セルCに印加される維持パルスの電圧降下が比較的大きくなるのに対し、維持電極駆動回路44から放電セルCに印加される維持パルスの電圧降下は比較的小さい。そして、放電セルBに印加される維持パルスはそれらのほぼ中間的な大きさとなる。
維持放電による発光輝度は維持パルスの大きさに応じて変化し、一般的には維持パルスが大きくなるほど強い維持放電が発生して発光輝度も高くなる。逆に、維持パルスが小さくなるほど維持放電も弱く不安定になって、発光輝度も低くなる。しかし、振幅が比較的大きい維持パルスと振幅が比較的小さい維持パルスとが組み合わせられて生じる発光輝度(例えば、放電セルA、放電セルCにおける発光輝度)と、それらの中間の振幅の維持パルスによって生じる発光輝度(例えば、放電セルBにおける発光輝度)とのどちらが明るくなるかは、パネル10の特性に依存する。
また、駆動パターンによっても発光輝度は変化する。図32は、本発明の一実施の形態におけるパネル10を駆動する駆動パターンおよび放電セルの位置と発光輝度との関係を示す特性図である。図32には、第1駆動パターンから第5駆動パターンのそれぞれでパネル10を駆動したときの、走査電極駆動回路43に最も近い位置に形成された放電セルA、走査電極駆動回路43から最も遠い位置、すなわち維持電極駆動回路44に最も近い位置に形成された放電セルC、およびそれらの中間の位置に形成された放電セルBにおける発光輝度を測定した結果を示す。
なお、図32に示す横軸は放電セルの行方向の位置を示しており、X(1)は放電セルAの位置を表し、X(m)は放電セルCの位置を表し、X(m/2)は放電セルBの位置を表す。また、図32に示す縦軸は、基準の発光輝度(例えば、第2駆動パターンでパネル10を駆動したときの放電セルAにおける発光輝度)との差を相対化して百分率表示したものである。
図32に示すように、パネル10においては、周辺部(例えば、X(1)、X(m))の放電セルよりも中央部(例えば、X(m/2))の放電セルの方が発光輝度が高い。また、例えば第3駆動パターンによる駆動と第5駆動パターンによる駆動とを比較した場合、第3駆動パターンでは、放電セルBと放電セルAとの発光輝度の差は約5%であるのに対し、第5駆動パターンでは、放電セルBと放電セルAとの発光輝度の差は約9%と、第3駆動パターンと比較して約4%も大きくなる。
これらのことから、放電セルの位置に応じて生じる発光輝度の差を補正するように、かつ駆動パターンに応じて生じる発光輝度の差を補正するように、上述したローディング補正に用いる補正ゲインを発生することが望ましい。
そこで、本実施の形態では、式(1)を用いて算出した数値に、駆動パターンおよび放電セルの行方向の位置にもとづく補正を加えて、ローディング補正用の補正ゲインを算出するものとする。
具体的には、図32に示した駆動パターンおよび放電セルの位置と発光輝度との関係を測定した結果にもとづき、駆動パターン毎に補正データを設定する。そして、選択された駆動パターンおよび各放電セルの行方向の位置にもとづき補正データから補正量を選択し、その補正量を用いて補正ゲインを算出する。
図33は、本発明の一実施の形態における補正データの一例を示す概略図であり、第1駆動パターンに対する補正データを例に挙げて示したものである。なお、図33に示す横軸は放電セルの行方向の位置を表し、縦軸は補正量を表す。
例えば、第1駆動パターンでパネル10を駆動しているときには、図32に示したように、基準となる発光輝度に対し、X(1)の位置にある放電セルAは約3%発光輝度が高く、X(m/2)に位置にある放電セルBは約12%発光輝度が高く、X(m)の位置にある放電セルCは約8%発光輝度が高い。そこで、式(1)を用いて算出した補正ゲインが、X(1)の位置にある放電セルAにおいては1.03倍になるように、X(m/2)に位置にある放電セルBにおいては1.12倍になるように、X(m)に位置にある放電セルCにおいては1.08倍になるように、また、X(1)とX(m/2)との間にある放電セルにおいてはその位置に応じて1.03倍から1.12倍の間のいずれかの数値になるように、また、X(m/2)とX(m)との間にある放電セルにおいてはその位置に応じて1.12倍から1.08倍の間のいずれかの数値になるように、補正データを設定する。
そして、このような補正データを、図32に示した特性にもとづき駆動パターン毎に設定する。これにより、選択された駆動パターンおよび放電セルの位置に応じた補正ゲインを算出してローディング補正をかけることができるようになる。
図34は、本発明の一実施の形態における補正ゲインを用いてローディング補正をかけたときの放電セルの位置と発光輝度との関係を示す特性図である。なお、図34には、第1駆動パターンでパネル10を駆動し、かつ放電セルAでローディング現象がでる画像、放電セルBでローディング現象がでる画像、放電セルCでローディング現象がでる画像と表示画像を切換えながら、図33に示した補正データを用いてローディング補正をかけたときの放電セルA、放電セルB、放電セルCの各放電セルでの発光輝度を測定した結果を示す。
そして、上述したように、駆動パターンおよび放電セルの位置に応じて補正ゲインを算出することで、例えば図34に示すように、放電セル間の発光輝度のばらつきを低減してローディング補正をかけることが可能となる。
なお、本実施の形態においては、駆動パターン毎に設定する複数の補正データは、補正ゲイン算出部62内の記憶部(図示せず)に備えられているものとする。そして、その記憶部は、タイミング発生回路45から送られてくる駆動パターンを示す信号に応じて最適な補正データを選択し、その補正データの中から、放電セル位置判定部64から出力される放電セルの位置情報に応じた補正量を出力するものとする。そして、補正ゲイン算出部62は、その補正量を用いて、補正ゲインを算出するものとする。
なお、図33に一例を示す補正データは、表示画像を確認しながら最適な値に設定してもかまわない。
なお、図33には、補正量が線形に変化する、すなわち変化量が直線で表される補正データの一例を示したが、これは単なる一例に過ぎず、パネル10の特性や駆動回路の特性等に応じて最適に設定することが望ましい。ただし、補正量は、画素単位で変化させるものとし、少なくとも、1つの画素を構成するR、G、Bの3つの放電セルは同じ補正量になるように設定することが望ましい。
なお、図33では、補正量として「1.03」、「1.12」「1.08」といった数値を示したが、これは、補正ゲインを算出する際に、補正量がこれらの値になるように、式(1)で算出した値に乗算する係数を設定したために過ぎない。本発明において、補正ゲインに乗算する補正量の値は、補正ゲインの算出方法やパネル10の特性およびプラズマディスプレイ装置1の仕様等に応じて最適に設定することが望ましい。
以上説明したように、本実施の形態では、「立ち上がり期間」および「立ち下がり期間」の少なくとも一方の長さが異なる複数の維持パルスを発生させるとともに、発生させる維持パルスの組み合わせを異ならせた複数(ここでは、5つ)の駆動パターンを設定し、検出した全セル点灯率と部分点灯率の最大値とに応じて駆動パターンを切換えて維持パルスを発生させる構成とする。こうすることで、消費電力を低減しつつ放電のばらつきを抑えた駆動を実現し、パネル10の画像表示品質を向上させることが可能となる。また、放電セル毎に「負荷値」および「最大負荷値」を算出するとともに、選択された駆動パターンおよび放電セルの位置にもとづき補正ゲインを算出する構成とすることで、ローディング現象の発生が予想される画像をパネル10に表示する際に、予想される発光輝度の上昇に応じた補正ゲインを精度良く算出することが可能となる。さらに、駆動パターンおよび放電セルの位置に応じた最適なローディング補正を行うことが可能となる。これにより、同一表示電極対24上に形成される放電セル間に発光輝度の差が生じ、かつその差が駆動パターンによって変化したとしても、駆動パターンおよび放電セルの行方向の位置に応じた最適なローディング補正をかけることが可能となり、画像表示品質を向上させることが可能となる。
なお、本実施の形態では、「負荷値」および「最大負荷値」を算出する際に、各サブフィールドの輝度重みと、放電セルにおける各サブフィールドの点灯状態とをそれぞれ乗算する構成を説明したが、例えば、輝度重みに代えて各サブフィールドの維持パルス数を用いてもかまわない。
なお、一般に用いられている誤差拡散と呼ばれる画像処理を施したときに、階調値の変化点(表示画像の図柄の境界)で拡散される誤差量が増え、輝度の変化が大きい境界部分で境界が強調されて不自然に見えてしまうといった問題が発生するおそれがある。この問題を低減するために、算出した補正ゲインに、誤差拡散用の補正値をランダムに加算または減算し、補正ゲインにランダムな変化を与える構成としてもよい。このような処理を施すことで、誤差拡散を施したときに図柄の境界が強調されて不自然に見えてしまうといった問題を軽減することが可能となる。
なお、図26A、図26B、図26C、図26Dでは、駆動負荷の変動により発光輝度が変化する例を説明したが、パネル10の特性によってはローディング現象が発生するときに必ずしも発光輝度が線形に変化しないものもある。図35は、図26A、図26B、図26C、図26Dに示したウインドウパターンにおける領域Cの面積と領域Dの発光輝度との関係の一例を示した図である。パネル10によっては、領域Cの面積が大きくなったとき(例えば、図26DのC4)、すなわち表示電極対24の駆動負荷が小さくなったときに、ローディング現象が極端に悪化し、領域Dの発光輝度が大きく上昇する場合(例えば、図26DのD4)がある。このようなパネル10の特性に合わせて補正ゲインに重み付けを持たせ、補正ゲインを非線形に変化させる構成としてもよい。図36は、本発明の一実施の形態における補正ゲインの非線形処理の一例を示す特性図である。例えば、パネル10の特性に合わせて設定した複数の補正ゲインをあらかじめルックアップテーブルに格納しておき、補正ゲインの計算結果にもとづきルックアップテーブルから補正ゲインを読み出す構成とすることで、図36に示すように補正ゲインを非線形に設定することが可能である。
なお、本発明における実施の形態は、走査電極SC1〜走査電極SCnを第1の走査電極群と第2の走査電極群とに分割し、書込み期間を、第1の走査電極群に属する走査電極のそれぞれに走査パルスを印加する第1の書込み期間と、第2の走査電極群に属する走査電極のそれぞれに走査パルスを印加する第2の書込み期間とで構成する、いわゆる2相駆動によるパネルの駆動方法にも適用させることができ、上述と同様の効果を得ることができる。
なお、本発明における実施の形態は、走査電極と走査電極とが隣り合い、維持電極と維持電極とが隣り合う電極構造、すなわち前面板に設けられる電極の配列が、「・・・走査電極、走査電極、維持電極、維持電極、走査電極、走査電極、・・・」となる電極構造(「ABBA電極構造」と呼称する)のパネルにおいても、有効である。
なお、本実施の形態において示した具体的な各数値は、表示電極対数1080の50インチのパネルの特性にもとづき設定したものであって、単に実施の形態の一例を示したものに過ぎない。本発明はこれらの数値に何ら限定されるものではなく、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等に合わせて最適に設定することが望ましい。また、これらの各数値は、上述した効果を得られる範囲でのばらつきを許容するものとする。
本発明は、大画面化、高精細化されたパネルであっても、消費電力を削減しつつ放電を安定に発生させるとともに、表示輝度を均一にして画像表示品質を向上させることができるプラズマディスプレイ装置およびパネルの駆動方法を提供することができるので、プラズマディスプレイ装置およびパネルの駆動方法として有用である。
1 プラズマディスプレイ装置
10 パネル(プラズマディスプレイパネル)
21 前面板
22 走査電極
23 維持電極
24 表示電極対
25,33 誘電体層
26 保護層
31 背面板
32 データ電極
34 隔壁
35 蛍光体層
41 画像信号処理回路
42 データ電極駆動回路
43 走査電極駆動回路
44 維持電極駆動回路
45 タイミング発生回路
46 全セル点灯率検出回路
47 部分点灯率検出回路
48 最大値検出回路
49 駆動パターン選択部
50,80 維持パルス発生回路
51,81 回収回路
52,82 クランプ回路
53 初期化波形発生回路
54 走査パルス発生回路
60 点灯セル数算出部
61 負荷値算出部
62 補正ゲイン算出部
64 放電セル位置判定部
68 乗算器
69 補正部
70 ローディング補正部
72 スイッチ
101,111,112 信号レベル
102,113 発光輝度
121,131 点灯状態
122,132 算出値
Q11,Q12,Q13,Q14,Q21,Q22,Q23,Q24,Q26,Q27,Q28,Q29,QH1〜QHn,QL1〜QLn スイッチング素子
C10,C20,C30 コンデンサ
L10,L20 インダクタ
D11,D12,D21,D22,D30 ダイオード
本発明は、壁掛けテレビや大型モニターに用いられるプラズマディスプレイ装置およびプラズマディスプレイパネルの駆動方法に関する。
プラズマディスプレイパネル(以下、「パネル」と略記する)として代表的な交流面放電型パネルは、対向配置された前面板と背面板との間に多数の放電セルが形成されている。前面板は、1対の走査電極と維持電極とからなる表示電極対が前面ガラス基板上に互いに平行に複数対形成され、それら表示電極対を覆うように誘電体層および保護層が形成されている。背面板は、背面ガラス基板上に複数の平行なデータ電極と、それらを覆うように誘電体層と、さらにその上にデータ電極と平行に複数の隔壁とがそれぞれ形成され、誘電体層の表面と隔壁の側面とに蛍光体層が形成されている。そして、表示電極対とデータ電極とが立体交差するように前面板と背面板とが対向配置されて密封され、内部の放電空間には、例えば分圧比で5%のキセノンを含む放電ガスが封入されている。ここで表示電極対とデータ電極とが対向する部分に放電セルが形成される。このような構成のパネルにおいて、各放電セル内でガス放電により紫外線を発生させ、この紫外線で赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色の蛍光体を励起発光させてカラー表示を行っている。
パネルを駆動する方法としては、サブフィールド法、すなわち、1フィールド期間を複数のサブフィールドに分割した上で、発光させるサブフィールドの組み合わせによって階調表示を行う方法が一般に用いられている。
各サブフィールドは、初期化期間、書込み期間および維持期間を有する。初期化期間では、各走査電極に初期化波形を印加し、各放電セルで初期化放電を発生させる。それにより、続く書込み動作のために必要な壁電荷を各放電セルに形成するとともに、書込み放電を安定して発生させるためのプライミング粒子(書込み放電を発生させるための励起粒子)を発生させる。
書込み期間では、走査電極に順次走査パルスを印加(以下、この動作を「走査」とも記す)するとともに、データ電極には表示すべき画像信号に対応した書込みパルスを選択的に印加する(以下、これらの動作を総称して「書込み」とも記す)。それにより、走査電極とデータ電極との間で選択的に書込み放電を発生させ、選択的に壁電荷を形成する。
そして維持期間では、表示させるべき輝度に応じた所定の回数の維持パルスを走査電極と維持電極とからなる表示電極対に交互に印加する。それにより、書込み放電による壁電荷形成が行われた放電セルで選択的に維持放電を発生させ、その放電セルを発光(以下、放電セルを維持発光させることを「点灯」とも記す。また、放電セルを維持発光させないことを「非点灯」とも記す)させる。このようにして、パネルの表示領域に画像を表示する。
このサブフィールド法では、例えば、複数のサブフィールドのうち、1つのサブフィールドの初期化期間においては全ての放電セルを放電させる全セル初期化動作を行い、他のサブフィールドの初期化期間においては維持放電を行った放電セルに対して選択的に初期化放電を行う選択初期化動作を行うことで、階調表示に関係しない発光を極力減らしコントラスト比を向上させることが可能である。
また、近年では、パネルの大画面、高精細化にともない、プラズマディスプレイ装置におけるさらなる画像表示品質の向上が望まれている。しかしながら、表示電極対間で駆動インピーダンスに差が生じると、駆動電圧の電圧降下に差が生じ、同じ輝度の画像信号にもかかわらず発光輝度に差が生じることがあった。
そこで、表示電極対間で駆動インピーダンスが変化したときに1フィールド内でのサブフィールドの点灯パターンを変化させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、表示電極対の一方に印加する維持パルスの立ち上がりを行う時間と、表示電極対の他方に印加する維持パルスの立ち下がりを行う時間とが重複する重複期間を設けるとともに、点灯率検出回路において検出した点灯率に応じて重複期間を変更することで、パネルにおける残像現象を軽減し、各放電セルの表示輝度を均一化する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
一方、パネルの大画面化、高精細化にともない、パネルの駆動インピーダンスは増大する傾向にある。そのため、同一表示電極対上に形成される放電セルであっても、駆動回路に近い位置に形成される放電セルと、駆動回路から遠い位置に形成される放電セルとでは、駆動電圧の電圧降下の差は拡大する傾向にある。
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、同一表示電極対上において駆動回路に近い位置に形成される放電セルと、駆動回路から遠い位置に形成される放電セルとに生じる駆動電圧の電圧降下の差にもとづく発光輝度の差を低減させることは困難であった。
また、パネルの大画面化、高精細化はパネルの電極間容量を増大させる。電極間容量の増大は、パネルを駆動する際に発光に寄与することなく無効に消費される無効電力を増加させるため、消費電力を増大させる一因となる。
また、大画面化、高精細化されて駆動インピーダンスが増大したパネルでは、駆動波形にリンギング等の波形歪が生じやすい。そのため、放電のばらつきが大きくなりやすく、輝度ムラと呼ばれる輝度のばらつきを生じやすい。
特開2006−184843号公報
特開2008−209840号公報
本発明のプラズマディスプレイ装置は、初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを1フィールド内に複数設け、サブフィールド毎に輝度重みを設定するとともに維持期間に輝度重みに応じた数の維持パルスを発生して階調表示するサブフィールド法で駆動し、走査電極と維持電極とからなる表示電極対を有する放電セルを複数備えたパネルと、入力画像信号を放電セルにおけるサブフィールド毎の発光・非発光を示す画像データに変換する画像信号処理回路と、表示電極対の電極間容量とインダクタとを共振させて維持パルスの立ち上がりまたは立ち下がりを行う電力回収回路および維持パルスの電圧を電源電圧またはベース電位にクランプするクランプ回路を有し、維持期間に維持パルスを発生させて表示電極対の走査電極と維持電極とに交互に印加する維持パルス発生回路と、パネルの表示領域における全放電セル数に対する点灯させるべき放電セル数の割合を全セル点灯率としてサブフィールド毎に検出する全セル点灯率検出回路と、パネルの表示領域を複数の領域に分け、それらの領域のそれぞれにおいて、放電セル数に対する点灯させるべき放電セル数の割合を部分点灯率としてサブフィールド毎に検出する部分点灯率検出回路とを備え、維持パルス発生回路は、維持パルスの立ち上がり期間および立ち下がり期間の少なくとも一方の長さが異なる複数の維持パルスを発生するとともに、発生する維持パルスの組み合わせを異ならせた複数の駆動パターンのうち、全セル点灯率と部分点灯率とに応じていずれかの駆動パターンを選択して維持パルスを発生し、画像信号処理回路は、点灯させる放電セルの数を表示電極対毎かつサブフィールド毎に算出する点灯セル数算出部と、点灯セル数算出部における算出結果にもとづき各放電セルの負荷値を算出する負荷値算出部と、負荷値算出部における算出結果と選択された駆動パターンと放電セルの位置とにもとづき各放電セルの補正ゲインを算出する補正ゲイン算出部と、補正ゲイン算出部からの出力と入力画像信号とを乗算した結果を入力画像信号から減算する補正部とを備えたことを特徴とする。
これにより、放電セルの位置に応じた補正ゲインでローディング補正を行うとともに、駆動パターンに応じて生じる発光輝度の差に応じた補正ゲインでローディング補正を行うことが可能となるので、消費電力を削減しつつ放電を安定に発生させるとともに、表示輝度を均一にして画像表示品質を向上させることが可能となる。
本発明の一実施の形態におけるパネルの構造を示す分解斜視図
同パネルの電極配列図
同パネルの各電極に印加する駆動電圧波形図
本発明の一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の回路ブロック図
本発明の一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の走査電極駆動回路の構成を示す回路図
本発明の一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の維持電極駆動回路の構成を示す回路図
本発明の一実施の形態における維持パルスの一例とそのときの発光の様子を示す概略波形図
本発明の一実施の形態における維持パルスの一例を示す概略波形図
本発明の一実施の形態における維持パルスの一例とそのときの発光の様子を示す概略波形図
本発明の一実施の形態における維持パルスの「立ち上がり期間」と放電のばらつきとの関係を示す特性図
本発明の一実施の形態における維持パルスの「立ち上がり期間」と放電のばらつきとの関係を示す特性図
本発明の一実施の形態における維持パルスの「立ち上がり期間」と放電のばらつきとの関係を示す特性図
本発明の一実施の形態における維持パルスの「立ち上がり期間」と発光効率との関係を示す特性図
本発明の一実施の形態における維持パルスの「立ち上がり期間」と発光輝度との関係を示す特性図
本発明の一実施の形態における維持パルスの「立ち上がり期間」と無効電力との関係を示す特性図
本発明の一実施の形態における維持パルスの「立ち上がり期間」と維持パルス電圧Vsとの関係を示す特性図
全セル点灯率が等しくかつ点灯セルの分布が異なる図柄を説明するための概略図
本発明の一実施の形態における部分点灯率を検出する領域の一例を示す概略図
本発明の一実施の形態における全セル点灯率および部分点灯率の最大値と駆動パターンの切換えとの関係の一例を示す図
本発明の一実施の形態における第1駆動パターンにおいて発生させる維持パルスの概略波形図
本発明の一実施の形態における第2駆動パターンにおいて発生させる維持パルスの概略波形図
本発明の一実施の形態における第3駆動パターンにおいて発生させる維持パルスの概略波形図
本発明の一実施の形態における第4駆動パターンにおいて発生させる維持パルスの概略波形図
本発明の一実施の形態における第5駆動パターンにおいて発生させる維持パルスの概略波形図
駆動負荷の変化により生じる発光輝度の差を説明するための概略図
駆動負荷の変化により生じる発光輝度の差を説明するための概略図
ローディング現象を概略的に説明するための図
ローディング現象を概略的に説明するための図
ローディング現象を概略的に説明するための図
ローディング現象を概略的に説明するための図
本発明の一実施の形態におけるローディング補正の概略を説明するための図
本発明の一実施の形態における画像信号処理回路の回路ブロック図
本発明の一実施の形態における「負荷値」の算出方法を説明するための概略図
本発明の一実施の形態における「最大負荷値」の算出方法を説明するための概略図
パネルにおける放電セルの行方向の位置にもとづく維持パルスの電圧降下の差を概略的に示す図
本発明の一実施の形態におけるパネルを駆動する駆動パターンおよび放電セルの位置と発光輝度との関係を示す特性図
本発明の一実施の形態における補正データの一例を示す概略図
本発明の一実施の形態における補正ゲインを用いてローディング補正をかけたときの放電セルの位置と発光輝度との関係を示す特性図
ウインドウパターンにおける領域Cの面積と領域Dの発光輝度との関係の一例を示した図
本発明の一実施の形態における補正ゲインの非線形処理の一例を示す特性図
以下、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置について、図面を用いて説明する。
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態におけるパネル10の構造を示す分解斜視図である。ガラス製の前面板21上には、走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対24が複数形成されている。そして走査電極22と維持電極23とを覆うように誘電体層25が形成され、その誘電体層25上に保護層26が形成されている。
また、保護層26は、放電セルにおける放電開始電圧を下げるために、パネルの材料として使用実績があり、ネオン(Ne)およびキセノン(Xe)ガスを封入した場合に2次電子放出係数が大きく耐久性に優れたMgOを主成分とする材料から形成されている。
背面板31上にはデータ電極32が複数形成され、データ電極32を覆うように誘電体層33が形成され、さらにその上に井桁状の隔壁34が形成されている。そして、隔壁34の側面および誘電体層33上には赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色に発光する蛍光体層35が設けられている。
前面板21と背面板31とは、微小な放電空間をはさんで表示電極対24とデータ電極32とが交差するように対向配置され、その外周部をガラスフリット等の封着材によって封着されている。そして、内部の放電空間には、ネオンとキセノンの混合ガスが放電ガスとして封入されている。本実施の形態では、発光効率を向上させるためにキセノン分圧を約10%とした放電ガスを用いている。放電空間は隔壁34によって複数の区画に仕切られており、表示電極対24とデータ電極32とが交差する部分に放電セルが形成されている。そしてこれらの放電セルが放電、発光(点灯)することにより画像が表示される。パネル10では、R・G・Bの各色で発光する3つの放電セルで1つの画素が構成される。
なお、パネル10の構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。また、放電ガスの混合比率も上述した数値に限られるわけではなく、その他の混合比率であってもよい。
図2は、本発明の一実施の形態におけるパネル10の電極配列図である。パネル10には、行方向に長いn本の走査電極SC1〜走査電極SCn(図1の走査電極22)およびn本の維持電極SU1〜維持電極SUn(図1の維持電極23)が配列され、列方向に長いm本のデータ電極D1〜データ電極Dm(図1のデータ電極32)が配列されている。そして、1対の走査電極SCi(i=1〜n)および維持電極SUiと1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。そして、m×n個の放電セルが形成された領域がパネル10の表示領域となる。
次に、パネル10を駆動するための駆動電圧波形とその動作の概要について説明する。なお、本実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置は、サブフィールド法、すなわち1フィールドを時間軸上で複数のサブフィールドに分割し、各サブフィールドに輝度重みをそれぞれ設定し、サブフィールド毎に各放電セルの発光・非発光を制御することによって階調表示を行うものとする。
このサブフィールド法では、例えば、1フィールドを8つのサブフィールド(第1SF、第2SF、・・・、第8SF)で構成し、各サブフィールドはそれぞれ(1、2、4、8、16、32、64、128)の輝度重みを有する構成とすることができる。また、複数のサブフィールドのうち、1つのサブフィールドの初期化期間においては全ての放電セルに初期化放電を発生させる全セル初期化動作を行い(以下、全セル初期化動作を行うサブフィールドを「全セル初期化サブフィールド」と呼称する)、他のサブフィールドの初期化期間においては維持放電を行った放電セルに対して選択的に初期化放電を発生させる選択初期化動作を行う(以下、選択初期化動作を行うサブフィールドを「選択初期化サブフィールド」と呼称する)ことで、階調表示に関係しない発光を極力減らし、コントラスト比を向上させることが可能である。
そして、本実施の形態では、第1SFの初期化期間では全セル初期化動作を行い、第2SF〜第8SFの初期化期間では選択初期化動作を行うものとする。これにより、画像の表示に関係のない発光は第1SFにおける全セル初期化動作の放電にともなう発光のみとなり、維持放電を発生させない黒表示領域の輝度である黒輝度は全セル初期化動作における微弱発光だけとなって、コントラストの高い画像表示が可能となる。また、各サブフィールドの維持期間においては、それぞれのサブフィールドの輝度重みに所定の比例定数を乗じた数の維持パルスを表示電極対24のそれぞれに印加する。このときの比例定数が輝度倍率である。
しかし、本実施の形態は、サブフィールド数や各サブフィールドの輝度重みが上記の値に限定されるものではなく、また、画像信号等にもとづいてサブフィールド構成を切換える構成であってもよい。
なお、本実施の形態では、後述する全セル点灯率検出回路および部分点灯率検出回路で計測されるサブフィールド毎の点灯率に応じて、維持パルスを立ち上げるために後述する電力回収回路を動作させる期間(以下、「立ち上がり期間」と呼称する)および維持パルスを立ち下げるために電力回収回路を動作させる期間(以下、「立ち下がり期間」と呼称する)の少なくとも一方の長さを変更するとともに、維持パルスの立ち上がりと立ち下がりとを重複させる重複期間を変更する。これにより、パネル10における消費電力を削減しつつ、維持放電を安定に発生させる。以下、まず駆動電圧波形の概要および駆動回路の構成について説明し、続いて、点灯率に応じた「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」および重複期間について説明する。
図3は、本発明の一実施の形態におけるパネル10の各電極に印加する駆動電圧波形図である。図3には、書込み期間において最初に走査を行う走査電極SC1、書込み期間において最後に走査を行う走査電極SCn、維持電極SU1〜維持電極SUn、およびデータ電極D1〜データ電極Dmの駆動波形を示す。
また、図3には、2つのサブフィールドの駆動電圧波形、すなわち全セル初期化サブフィールドである第1サブフィールド(第1SF)と、選択初期化サブフィールドである第2サブフィールド(第2SF)とを示す。なお、他のサブフィールドにおける駆動電圧波形は、維持期間における維持パルスの発生数が異なる以外は第2SFの駆動電圧波形とほぼ同様である。また、以下における走査電極SCi、維持電極SUi、データ電極Dkは、各電極の中から画像データ(サブフィールド毎の発光・非発光を示すデータ)にもとづき選択された電極を表す。
まず、全セル初期化サブフィールドである第1SFについて説明する。第1SFの初期化期間前半部では、データ電極D1〜データ電極Dm、維持電極SU1〜維持電極SUnにそれぞれ0(V)を印加し、走査電極SC1〜走査電極SCnには、維持電極SU1〜維持電極SUnに対して放電開始電圧以下の電圧Vi1から、放電開始電圧を超える電圧Vi2に向かって緩やかに(例えば、約1.3V/μsecの勾配で)上昇する傾斜電圧(以下、「上りランプ電圧」と呼称する)L1を印加する。
この上りランプ電圧L1が上昇する間に、走査電極SC1〜走査電極SCnと維持電極SU1〜維持電極SUnとの間、および走査電極SC1〜走査電極SCnとデータ電極D1〜データ電極Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が持続して起こる。そして、走査電極SC1〜走査電極SCn上部に負の壁電圧が蓄積されるとともに、データ電極D1〜データ電極Dm上部および維持電極SU1〜維持電極SUn上部には正の壁電圧が蓄積される。この電極上部の壁電圧とは、電極を覆う誘電体層上、保護層上、蛍光体層上等に蓄積された壁電荷により生じる電圧を表す。
初期化期間後半部では、維持電極SU1〜維持電極SUnには正の電圧Ve1を印加し、データ電極D1〜データ電極Dmには0(V)を印加し、走査電極SC1〜走査電極SCnには、維持電極SU1〜維持電極SUnに対して放電開始電圧以下となる電圧Vi3から放電開始電圧を超える電圧Vi4に向かって緩やかに下降する傾斜電圧(以下、「下りランプ電圧」と呼称する)L2を印加する。
この間に、走査電極SC1〜走査電極SCnと維持電極SU1〜維持電極SUnとの間、および走査電極SC1〜走査電極SCnとデータ電極D1〜データ電極Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が起こる。そして、走査電極SC1〜走査電極SCn上部の負の壁電圧および維持電極SU1〜維持電極SUn上部の正の壁電圧が弱められ、データ電極D1〜データ電極Dm上部の正の壁電圧は書込み動作に適した値に調整される。以上により、全ての放電セルに対して初期化放電を行う全セル初期化動作が終了する。
なお、図3の第2SFの初期化期間に示したように、初期化期間の前半部を省略した駆動電圧波形を各電極に印加してもよい。すなわち、維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧Ve1を、データ電極D1〜データ電極Dmに0(V)をそれぞれ印加し、走査電極SC1〜走査電極SCnに放電開始電圧以下となる電圧(例えば、接地電位)から電圧Vi4に向かって緩やかに下降する下りランプ電圧L4を印加する。これにより直前のサブフィールド(図3では、第1SF)の維持期間で維持放電を起こした放電セルでは微弱な初期化放電が発生し、走査電極SCi上部および維持電極SUi上部の壁電圧が弱められ、データ電極Dk(k=1〜m)上部の壁電圧も、過剰な部分が放電され、書込み動作に適した値に調整される。
一方、直前のサブフィールドで維持放電を起こさなかった放電セルについては放電することはなく、直前のサブフィールドの初期化期間終了時における壁電荷がそのまま保たれる。このように前半部を省略した初期化動作は、直前のサブフィールドの維持期間で維持動作を行った放電セルに対して初期化放電を行う選択初期化動作となる。
続く書込み期間では、走査電極SC1〜走査電極SCnに対しては順次走査パルス電圧Vaを印加し、データ電極D1〜データ電極Dmに対しては発光させるべき放電セルに対応するデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vdを印加して、各放電セルに選択的に書込み放電を発生させる。
書込み期間では、まず維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧Ve2を、走査電極SC1〜走査電極SCnに電圧Vcを印加する。
そして、1行目の走査電極SC1に負の走査パルス電圧Vaを印加するとともに、データ電極D1〜データ電極Dmのうち1行目に発光させるべき放電セルのデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vdを印加する。このときデータ電極Dk上と走査電極SC1上との交差部の電圧差は、外部印加電圧の差(電圧Vd−電圧Va)にデータ電極Dk上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧との差が加算されたものとなり放電開始電圧を超える。
これにより、データ電極Dkと走査電極SC1との間に放電が発生する。また、維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧Ve2を印加しているため、維持電極SU1上と走査電極SC1上との電圧差は、外部印加電圧の差である(電圧Ve2−電圧Va)に維持電極SU1上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧との差が加算されたものとなる。このとき、電圧Ve2を、放電開始電圧をやや下回る程度の電圧値に設定することで、維持電極SU1と走査電極SC1との間を、放電には至らないが放電が発生しやすい状態とすることができる。
これにより、データ電極Dkと走査電極SC1との間に発生する放電を引き金にして、データ電極Dkと交差する領域にある維持電極SU1と走査電極SC1との間に放電を発生させることができる。こうして、発光させるべき放電セルに書込み放電が起こり、走査電極SC1上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU1上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。
このようにして、1行目に発光させるべき放電セルで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、書込みパルス電圧Vdを印加しなかったデータ電極D1〜データ電極Dmと走査電極SC1との交差部の電圧は放電開始電圧を超えないので、書込み放電は発生しない。以上の書込み動作をn行目の放電セルに至るまで行い、書込み期間が終了する。
続く維持期間では、輝度重みに所定の輝度倍率を乗じた数の維持パルスを表示電極対24に交互に印加して、書込み放電を発生した放電セルで維持放電を発生させて発光させる。
この維持期間では、まず走査電極SC1〜走査電極SCnに正の維持パルス電圧Vsを印加するとともに維持電極SU1〜維持電極SUnにベース電位となる接地電位、すなわち0(V)を印加する。すると書込み放電を起こした放電セルでは、走査電極SCi上と維持電極SUi上との電圧差が維持パルス電圧Vsに走査電極SCi上の壁電圧と維持電極SUi上の壁電圧との差が加算されたものとなり放電開始電圧を超える。
そして、走査電極SCiと維持電極SUiとの間に維持放電が起こり、このとき発生した紫外線により蛍光体層35が発光する。そして走査電極SCi上に負の壁電圧が蓄積され、維持電極SUi上に正の壁電圧が蓄積される。さらにデータ電極Dk上にも正の壁電圧が蓄積される。書込み期間において書込み放電が起きなかった放電セルでは維持放電は発生せず、初期化期間の終了時における壁電圧が保たれる。
続いて、走査電極SC1〜走査電極SCnにはベース電位となる0(V)を、維持電極SU1〜維持電極SUnには維持パルス電圧Vsをそれぞれ印加する。すると、維持放電を起こした放電セルでは、維持電極SUi上と走査電極SCi上との電圧差が放電開始電圧を超えるので再び維持電極SUiと走査電極SCiとの間に維持放電が起こり、維持電極SUi上に負の壁電圧が蓄積され走査電極SCi上に正の壁電圧が蓄積される。以降同様に、走査電極SC1〜走査電極SCnと維持電極SU1〜維持電極SUnとに交互に輝度重みに輝度倍率を乗じた数の維持パルスを印加し、表示電極対24の電極間に電位差を与えることにより、書込み期間において書込み放電を起こした放電セルで維持放電が継続して行われる。
そして、維持期間における維持パルスの発生後に、走査電極SC1〜走査電極SCnに、0(V)から電圧Versに向かって緩やかに上昇する傾斜電圧(以下、「消去ランプ電圧」と呼称する)L3を印加する。これにより、維持放電を発生させた放電セルにおいて、微弱な放電を持続して発生させ、データ電極Dk上の正の壁電圧を残したまま、走査電極SCiおよび維持電極SUi上の壁電圧の一部または全部を消去する。
続く第2SF以降のサブフィールドの各動作は、維持期間の維持パルスの数を除いて上述の動作とほぼ同様であるため説明を省略する。以上が、本実施の形態におけるパネル10の各電極に印加する駆動電圧波形の概要である。
次に、本実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の構成について説明する。図4は、本発明の一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の回路ブロック図である。プラズマディスプレイ装置1は、パネル10、画像信号処理回路41、データ電極駆動回路42、走査電極駆動回路43、維持電極駆動回路44、タイミング発生回路45、全セル点灯率検出回路46、部分点灯率検出回路47、最大値検出回路48および各回路ブロックに必要な電源を供給する電源回路(図示せず)を備えている。
画像信号処理回路41は、入力された画像信号sigを放電セルにおけるサブフィールド毎の発光・非発光を示す画像データに変換する。
全セル点灯率検出回路46は、サブフィールド毎の画像データにもとづき、パネル10の画像表示面における全放電セル数に対する点灯させるべき放電セル数の割合を「全セル点灯率」としてサブフィールド毎に検出する。そして、検出した全セル点灯率をあらかじめ定めた複数の点灯率しきい値(本実施の形態においては、30%、70%)と比較し、その結果を表す信号をタイミング発生回路45に出力する。
部分点灯率検出回路47は、パネル10の表示領域を複数の領域に分け、サブフィールド毎の画像データにもとづき、領域毎かつサブフィールド毎に、各領域の放電セル数に対する点灯させるべき放電セル数の割合を「部分点灯率」として検出する。なお、部分点灯率検出回路47は、例えば、1対の表示電極対24における点灯率を部分点灯率として検出することもできるが、ここでは、走査電極22を駆動するIC(以下、「走査IC」と呼称する)の1つに接続された複数の走査電極22で構成される領域を1つの領域として部分点灯率を検出するものとする。
最大値検出回路48は、部分点灯率検出回路47で検出した各領域の部分点灯率の値を互いに比較し、その最大値をサブフィールド毎に検出する。そして、検出した最大値をあらかじめ定めた複数の最大値しきい値(本実施の形態においては、70%)と比較し、その結果を表す信号をタイミング発生回路45に出力する。
なお、本実施の形態における点灯率しきい値および最大値しきい値は、何ら上述した数値に限定されるものではない。これらの数値は、パネル10の特性やプラズマディスプレイ装置1の仕様等にもとづいて最適な値に設定することが望ましい。
タイミング発生回路45は、駆動パターン選択部49を有し、水平同期信号H、垂直同期信号V、全セル点灯率検出回路46および最大値検出回路48からの出力、にもとづき各回路ブロックの動作を制御する各種のタイミング信号を発生し、それぞれの回路ブロックへ供給する。なお、本実施の形態では、上述したように、維持パルスの立ち上がりにおける「立ち上がり期間」、維持パルスの立ち下がりにおける「立ち下がり期間」、および維持パルスの立ち上がりと立ち下がりとを重複させる重複期間を、全セル点灯率検出回路46および最大値検出回路48からの出力にもとづいて制御している。詳細は後述するが、本実施の形態では、「立ち上がり期間」および「立ち下がり期間」の少なくとも一方の長さが異なる複数の維持パルスを発生させるとともに、発生させる維持パルスの組み合わせ、および「重複期間」の長さを異ならせた複数の駆動パターン(例えば、第1駆動パターン、第2駆動パターン、第3駆動パターン、第4駆動パターン、第5駆動パターンの5つの駆動パターン)を設定し、そのいずれの駆動パターンを選択するかを、全セル点灯率検出回路46および最大値検出回路48からの出力にもとづき駆動パターン選択部49において選択する。そして、その選択結果にもとづき、各制御を行うためのタイミング信号を、タイミング発生回路45において発生し、それぞれの回路ブロックへ供給する。
走査電極駆動回路43は、初期化期間において走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する初期化波形を発生するための初期化波形発生回路、維持期間において走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する維持パルスを発生するための維持パルス発生回路50、複数の走査ICを備え書込み期間において走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する走査パルス電圧Vaを発生するための走査パルス発生回路を有する。そして、タイミング信号にもとづいて各走査電極SC1〜走査電極SCnをそれぞれ駆動する。
データ電極駆動回路42は、サブフィールド毎の画像データを各データ電極D1〜データ電極Dmに対応する信号に変換し、タイミング信号にもとづいて各データ電極D1〜データ電極Dmを駆動する。
維持電極駆動回路44は、維持パルス発生回路80および電圧Ve1、電圧Ve2を発生するための回路(図示せず)を備え、タイミング信号にもとづいて維持電極SU1〜維持電極SUnを駆動する。
次に、走査電極駆動回路43の詳細とその動作について説明する。なお、以下の説明においては、スイッチング素子を導通させる動作を「オン」、遮断させる動作を「オフ」と表記し、スイッチング素子をオンさせる信号を「Hi」、オフさせる信号を「Lo」と表記する。
図5は、本発明の一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置1の走査電極駆動回路43の構成を示す回路図である。走査電極駆動回路43は、走査電極22側の維持パルス発生回路50と、初期化波形発生回路53と、走査パルス発生回路54とを備え、走査パルス発生回路54のそれぞれの出力はパネル10の走査電極SC1〜走査電極SCnのそれぞれに接続されている。
初期化波形発生回路53は、初期化期間において走査パルス発生回路54の基準電位A(走査パルス発生回路54に入力される電圧)をランプ状に上昇または降下させ、図3に示した初期化波形を発生させる。
維持パルス発生回路50は、電力回収回路51とクランプ回路52とを備えている。
電力回収回路51は、電力回収用のコンデンサC10、スイッチング素子Q11、スイッチング素子Q12、逆流防止用のダイオードD11、逆流防止用のダイオードD12、共振用のインダクタL10を有している。そして、電極間容量CpとインダクタL10とをLC共振させて維持パルスの立ち上がりおよび立ち下がりを行う。電力回収回路51は電源から電力を供給されることなくLC共振によって走査電極SC1〜SCnの駆動を行うため、理想的には消費電力が0となる。なお、電力回収用のコンデンサC10は電極間容量Cpに比べて十分に大きい容量を持ち、電力回収回路51の電源として働くように、電圧値Vsの半分の約Vs/2に充電されている。
クランプ回路52は、走査電極SC1〜SCnを電圧Vsにクランプするためのスイッチング素子Q13、走査電極SC1〜SCnをベース電位である0(V)にクランプするためのスイッチング素子Q14を有している。そして、スイッチング素子Q13を介して走査電極SC1〜SCnを電源VSに接続して電圧Vsにクランプし、スイッチング素子Q14を介して走査電極SC1〜SCnを接地して0(V)にクランプする。したがって、クランプ回路52による電圧印加時のインピーダンスは小さく、強い維持放電による大きな放電電流を安定して流すことができる。
なお、維持パルス発生回路50は、タイミング発生回路45から出力されるタイミング信号によりスイッチング素子Q11、スイッチング素子Q12、スイッチング素子Q13、スイッチング素子Q14の導通と遮断とを切換えることによって電力回収回路51とクランプ回路52とを動作させ、維持パルス波形を発生する。
例えば、維持パルスを立ち上げる際には、スイッチング素子Q11をオンにして電極間容量CpとインダクタL10とを共振させ、電力回収用のコンデンサC10からスイッチング素子Q11、ダイオードD11、インダクタL10を通して走査電極SC1〜SCnに電力を供給する。そして、走査電極SC1〜SCnの電圧が電圧Vsに近づいた時点で、スイッチング素子Q13をオンにして、走査電極SC1〜SCnを駆動する回路を電力回収回路51からクランプ回路52に切換え、走査電極SC1〜SCnを電圧Vsにクランプする。
逆に、維持パルスを立ち下げる際には、スイッチング素子Q12をオンにして電極間容量CpとインダクタL10とを共振させ、電極間容量CpからインダクタL10、ダイオードD12、スイッチング素子Q12を通して電力回収用のコンデンサC10に電力を回収する。そして、走査電極SC1〜SCnの電圧が0(V)に近づいた時点で、スイッチング素子Q14をオンにして、走査電極SC1〜SCnを駆動する回路を電力回収回路51からクランプ回路52に切換え、走査電極SC1〜SCnをベース電位である0(V)にクランプする。
このようにして、維持パルス発生回路50は、維持パルスを発生させる。なお、これらのスイッチング素子は、MOSFETやIGBT等の一般に知られた素子を用いて構成することができる。
走査パルス発生回路54は、書込み期間において基準電位Aを負の電圧Vaに接続するためのスイッチ72と、電圧Vcを与えるための電源VCと、n本の走査電極SC1〜走査電極SCnのそれぞれに走査パルス電圧Vaを印加するためのスイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHnおよびスイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnを備えている。スイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHn、スイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnは複数の出力毎にまとめられIC化されている。このICが走査ICである。そして、スイッチング素子QHiをオフ、スイッチング素子QLiをオンにすることにより、スイッチング素子QLiを経由して走査電極SCiに負の走査パルス電圧Vaを印加する。
なお、初期化波形発生回路53または維持パルス発生回路50を動作させているときは、スイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHnをオフ、スイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnをオンにすることにより、スイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnを経由して各走査電極SC1〜走査電極SCnに初期化波形電圧または維持パルス電圧Vsを印加する。
なお、ここでは、90本の出力分のスイッチング素子を1つのモノシリックICとして集積し、パネル10は1080本の走査電極22を備えているものとして、以下の説明を行う。そして、12個の走査ICを用いて走査パルス発生回路54を構成し、n=1080本の走査電極SC1〜走査電極SCnを駆動するものとする。このように多数のスイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHn、スイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnをIC化することにより部品点数を削減し、実装面積を低減することができる。ただし、ここに挙げた数値は単なる一例であり、本発明は何らこれらの数値に限定されるものではない。
また、本実施の形態では、書込み期間において、タイミング発生回路45から出力されるSID(1)〜SID(12)を走査IC(1)〜走査IC(12)のそれぞれに入力している。このSID(1)〜SID(12)は、走査ICに書込み動作を開始させるための動作開始信号である。
図6は、本発明の一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置1の維持電極駆動回路44の構成を示す回路図である。なお、図6にはパネル10の電極間容量をCpとして示し、走査電極駆動回路43の回路図は省略している。
維持電極駆動回路44は、維持パルス発生回路50とほぼ同様の構成の維持パルス発生回路80を備えている。維持パルス発生回路80は、電力回収回路81およびクランプ回路82を備え、パネル10の維持電極SU1〜維持電極SUnに接続されている。
電力回収回路81は、電力回収用のコンデンサC20、スイッチング素子Q21、スイッチング素子Q22、逆流防止用のダイオードD21、逆流防止用のダイオードD22、共振用のインダクタL20を有している。クランプ回路82は、維持電極SU1〜維持電極SUnを電圧Vsにクランプするためのスイッチング素子Q23および維持電極SU1〜維持電極SUnを接地電位(0(V))にクランプするためのスイッチング素子Q24を有している。
そして、維持パルス発生回路80は、タイミング発生回路45から出力されるタイミング信号により各スイッチング素子のオン・オフを切換えて維持パルス波形を発生させる。なお、維持パルス発生回路80の動作は上述した維持パルス発生回路50と同様であるので説明を省略する。
また、維持電極駆動回路44は、電圧Ve1を発生する電源VE1、電圧Ve1を維持電極SU1〜維持電極SUnに印加するためのスイッチング素子Q26、スイッチング素子Q27、電圧ΔVeを発生する電源ΔVE、逆流防止用のダイオードD30、電圧Ve1に電圧ΔVeを積み上げるためのチャージポンプ用のコンデンサC30、電圧Ve1に電圧ΔVeを積み上げて電圧Ve2とするためのスイッチング素子Q28、スイッチング素子Q29を有する。
例えば、図3に示した電圧Ve1を印加するタイミングでは、スイッチング素子Q26、スイッチング素子Q27をオンにして維持電極SU1〜維持電極SUnにダイオードD30、スイッチング素子Q26、スイッチング素子Q27を介して正の電圧Ve1を印加する。なお、このときスイッチング素子Q28をオンにしてコンデンサC30の電圧が電圧Ve1になるように充電しておく。また、図3に示した電圧Ve2を印加するタイミングでは、スイッチング素子Q26、スイッチング素子Q27をオンにしたまま、スイッチング素子Q28をオフにするとともにスイッチング素子Q29をオンにしてコンデンサC30の電圧に電圧ΔVeを重畳し、維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧Ve1+ΔVe、すなわち電圧Ve2を印加する。このとき、逆流防止用のダイオードD30の働きにより、コンデンサC30から電源VE1への電流は遮断される。
なお、電圧Ve1、電圧Ve2を印加する回路については、図6に示した回路に限定されるものではなく、例えば、電圧Ve1を発生させる電源と、電圧Ve2を発生させる電源と、電圧Ve1および電圧Ve2のそれぞれの電圧を維持電極SU1〜維持電極SUnに印加するための複数のスイッチング素子とを用いて、それぞれの電圧を必要なタイミングで維持電極SU1〜維持電極SUnに印加する構成とすることもできる。
なお、電力回収回路51のインダクタL10とパネル10の電極間容量CpとのLC共振の周期、および電力回収回路81のインダクタL20と同電極間容量CpとのLC共振の周期(以下、「共振周期」と記す)は、インダクタL10、インダクタL20のインダクタンスをそれぞれLとすれば、計算式「2π√(LCp)」によって求めることができる。そして、本実施の形態では、電力回収回路51、電力回収回路81における共振周期が2000nsecになるようにインダクタL10、インダクタL20を設定しているが、この数値は実施の形態における一例に過ぎず、パネル10の特性やプラズマディスプレイ装置1の仕様等に合わせて最適な値に設定すればよい。
次に、維持期間における駆動電圧波形の詳細について説明する。電力回収回路の出力インピーダンスは、クランプ回路の出力インピーダンスと比較して大きいため、点灯させるべき放電セルの割合が増えて駆動時の負荷が大きくなると、放電が不安定に発生する場合がある。
図7は、本発明の一実施の形態における維持パルスの一例とそのときの発光の様子を示す概略波形図である。なお、図7に示す波形は、点灯率が比較的高いサブフィールドの維持期間で、走査電極SCi、維持電極SUiにおいて観測される電圧の変化の一例を示す波形であり、そのときの発光の強さを示す波形である。
まず、電力回収回路によって維持パルスが立ち上げられると、例えば図面のAに示すように、維持パルス電圧に壁電圧が加算された電圧が放電開始電圧を超えた時点で、1回目の放電が発生する。このとき、点灯率が比較的高いサブフィールドでは、この放電により瞬間的に大量の放電電流が流れるため、維持パルス電圧は一時的な電圧降下を生じる。その後、電力回収回路からクランプ回路に切換えられ維持パルス電圧が電圧Vsにクランプされると、例えば図面のBに示すように、2回目の放電が発生する。ただし、1回目の放電により壁電荷の一部が消費されるため、2回目の放電は強い放電にはならない。そのため、強い放電が発生した場合と比較して、蓄積される壁電荷も少なくなる。
その結果、直後の維持パルスでは、電力回収回路による維持パルスの立ち上げ時においては、放電が発生しないか、あるいはたとえ放電が発生しても非常に弱い放電にしかならない。したがって、その後、電力回収回路からクランプ回路に切換えられ維持パルス電圧が電圧Vsにクランプされたときに、図面のCに示すように、非常に強い放電が発生する。
また、図面のCに示したような強い放電は、放電セル内に十分な壁電荷を蓄積させるので、その次の維持パルスでは、その立ち上がりにおいて、図面のA、Bに示したような2回の放電が発生する。
このように、点灯率が比較的高いサブフィールドの維持期間においては、上述したような、非常に強い1回の放電(図面のCに示す放電)と、それよりは弱い連続した2回の放電(図面のA、Bに示す放電)とが繰り返され、その結果、輝度ムラと呼ばれる輝度のばらつきが発生することがある。
なお、図示はしないが、点灯率が低ければ、上述したような放電のばらつきの発生は少なくなり、安定した維持放電が発生することが確認されている。
一方、維持パルスの立ち上がりと立ち下がりとを重複させる重複期間を大きくしていくと、点灯率が高いサブフィールドであっても、放電のばらつきを低減できることが確認された。
図8は、本発明の一実施の形態における維持パルスの一例を示す概略波形図である。なお、図8には、維持パルスの「立ち上がり期間」および「立ち下がり期間」をそれぞれ1050nsecとし、維持パルスのパルス幅を2.7μsecとした一例を示している。なお、この「パルス幅」とは、維持パルスがベース電位(0(V))から維持パルス電圧Vsに向かって上昇を開始し始めてから再度ベース電位にクランプされるまでの期間を表す。
そして、本発明者が検討を行った結果、例えばこのように設定された維持パルスであれば、維持パルスの立ち上がりと立ち下がりとを重複させる重複期間を850nsecに設定すれば、放電のばらつきを低減できることが確認された。次に、この詳細を説明する。
図9は、本発明の一実施の形態における維持パルスの一例とそのときの発光の様子を示す概略波形図である。なお、図9に示す波形は、図8に示した維持パルスを用いてパネル10を駆動したときに、点灯率が比較的高いサブフィールドの維持期間において、走査電極SCi、維持電極SUiにおいて観測された電圧の変化の一例を示す波形であり、そのときの発光の強さを示す波形である。
本発明者が詳細に検討を行った結果、重複期間を十分に大きくすれば、直前の維持パルスの立ち下がり時において、電力回収回路からクランプ回路に切換わり維持パルス電圧が接地電位にクランプされた時点で、図面のDに示すように、強制的に1回目の放電を発生させることができることを確認した。そして、この1回目の放電を強制的に発生させることで、引き続き、維持パルスの立ち上がり時において電力回収回路からクランプ回路に切換わり維持パルス電圧が電圧Vsにクランプされた時点で、図面のEに示すように2回目の放電を発生させ、かつこれら2回の放電をばらつきを抑えて発生させることができることを確認した。
図7に示したように、重複期間のない駆動波形では、壁電荷の状態により、電力回収回路によって維持パルスを立ち上げる途中で放電が発生する場合と放電が発生しない場合とが混在し、その結果、放電のばらつきが発生していた。
しかし、図8に示した駆動波形では、壁電荷のばらつきにかかわらず、強制的に1回目の放電(図面のDに示す放電)を発生させることができるため、連続した2回の放電(図面のD、Eに示す放電)を放電のばらつきを抑えて発生させることができ、輝度ムラの発生を防止することができる。
なお、上述した放電のばらつきを抑えた連続した2回の放電は、重複期間を設けさえすれば発生するといったものではなく、重複期間を十分な長さに設定することが必要であることがあわせて確認された。
一方、放電のばらつきおよび消費電力と維持パルスの「立ち上がり期間」とには関連性があり、「立ち上がり期間」の長さに依存して放電のばらつきおよび消費電力も変化する。まず、放電のばらつきと「立ち上がり期間」とについて説明する。
図10、図11、図12は、本発明の一実施の形態における維持パルスの「立ち上がり期間」と放電のばらつきとの関係を示す特性図である。なお、ここでは、電力回収回路の共振周期を1200nsec、パルス幅を2.7μsec、重複期間を0nsec、「立ち下がり期間」を900nsecに設定し、「立ち上がり期間」を400nsec、500nsec、550nsecの3通りで変えて実験を行った。そして、図10は「立ち上がり期間」を400nsecに設定したときの測定結果を示した図であり、図11は「立ち上がり期間」を500nsecに設定したときの測定結果を示した図であり、図12は「立ち上がり期間」を550nsecに設定したときの測定結果を示した図である。また、図10、図11、図12では、複数の放電セルにおける測定結果を1つのグラフに重ねて示している。
なお、図10、図11、図12において、縦軸は発光強度を、横軸は電力回収回路の動作が開始してからの経過時間を示す。また、縦軸における単位(a.u.)は任意単位(arbitrary unit)を表す。
例えば、図10に示すように、「立ち上がり期間」を比較的短い400nsecに設定すると、ほとんどの放電セルがほぼ同じ時刻に発光し、放電のばらつきが抑えられていることが確認された。これは、「立ち上がり期間」が短いため、ほとんどの放電セルにおいて、図7において説明した1回目の放電が強く発生しているためと考えられる。
また、図11に示すように、「立ち上がり期間」を図10よりも100nsec延ばして500nsecに設定すると、放電セルの発光時刻にばらつきが生じ、放電のばらつきが大きくなることが確認された。これは、「立ち上がり期間」が適切に設定されていないため、図7において説明した1回目の放電が強く発生する放電セルと、同じく2回目の放電が強く発生する放電セルとに分かれたためと考えられる。
また、図12に示すように、「立ち上がり期間」を十分に長い550nsecに設定すると、ほとんどの放電セルが、図10に示した発光のタイミングよりは遅いが、ほぼ同じ時刻に発光し、放電のばらつきが抑えられていることが確認された。これは、「立ち上がり期間」が十分に長いため、ほとんどの放電セルにおいて、図7において説明した2回目の放電が強く発生しているためと考えられる。
このように、維持パルスにおける「立ち上がり期間」を次の2つのいずれか、すなわち、ほとんどの放電セルにおいて図7において説明した1回目の放電が強く発生する長さ、または、ほとんどの放電セルにおいて同じく2回目の放電が強く発生する長さのいずれかに設定することで、放電のばらつきを低減させることが可能となる。
次に、消費電力と「立ち上がり期間」とについて説明する。なお、消費電力に影響を与える項目として、発光効率、発光輝度、無効電力、維持放電を安定に発生させるために必要な維持パルス電圧Vsが考えられる。そこで、ここでは、各項目と「立ち上がり期間」との関係について順に記す。
図13は、本発明の一実施の形態における維持パルスの「立ち上がり期間」と発光効率との関係を示す特性図である。図13において、縦軸は発光効率の相対比率を、横軸は「立ち上がり期間」の長さを示す。なお、縦軸における単位(%)は、発光効率(lm/W:単位電力あたりの発光輝度)の検出結果を所定の値を100%として相対比率化したものであり、数値が大きいほど発光効率が良いことを表す。また、図13および続く図14から図16では、電力回収回路の共振周期を2000nsec、パルス幅を2.7μsec、重複期間を0nsec、「立ち下がり期間」を900nsecに設定し、「立ち上がり期間」を500nsecから1000nsecまで50nsecずつ延長して実験を行った。
図13に示すように、「立ち上がり期間」の長さによって発光効率は変化する。そして、図13に示すように、「立ち上がり期間」を長くしていくと、発光効率は徐々に低下していき、その後上昇して、再び低下していく。このことから、発光効率を改善できるポイントが2箇所(図13では、約500nsecと約900nsecとの2箇所)あることがわかる。これは、「立ち上がり期間」を徐々に延ばしていくことで、当初1つの維持パルスで1回の放電が安定に発生していた状態(1つ目の発光効率改善ポイント)から、1回の放電と連続した2回の放電とを繰り返す状態に移行し、その後、連続した2回の放電が安定に発生する状態(2つ目の発光効率改善ポイント)へと移行したためと考えられる。
図14は、本発明の一実施の形態における維持パルスの「立ち上がり期間」と発光輝度との関係を示す特性図である。図14において、縦軸は発光輝度の相対比率を、横軸は「立ち上がり期間」の長さを示す。なお、縦軸における単位(%)は、発光輝度(lm)の検出結果を所定の値を100%として相対比率化したものであり、数値が大きいほど発光輝度が高いことを表す。
図14に示すように、「立ち上がり期間」の長さによって発光輝度は変化する。そして、図13と同様に、「立ち上がり期間」を長くしていくと、発光輝度は徐々に低下していき、その後上昇して、再び低下していく。このことから、発光輝度を向上できるポイントが、図13と同じく2箇所(図14では、約500nsecと約800nsecとの2箇所)あることがわかる。これは、図13と同様に、「立ち上がり期間」を徐々に延ばしていくことで、当初1つの維持パルスで1回の放電が安定に発生していた状態(1つ目の発光輝度改善ポイント)から、1回の放電と連続した2回の放電とを繰り返す状態に移行し、その後、連続した2回の放電が安定に発生する状態(2つ目の発光輝度改善ポイント)へと移行したためと考えられる。なお、2つ目の改善ポイントに関し、図13と図14とでは約100nsecのずれがあるが、これは、発光効率が最良になる「立ち上がり期間」と発光輝度が最良になる「立ち上がり期間」とに差があり、その差は、連続した2回の放電のうちの1回目の放電と2回目の放電のどちらを強めるかということに関連しているためと考えられる。
図15は、本発明の一実施の形態における維持パルスの「立ち上がり期間」と無効電力との関係を示す特性図である。図15において、縦軸は無効電力の相対比率を、横軸は「立ち上がり期間」の長さを示す。なお、縦軸における単位(%)は、無効電力(W)の検出結果を所定の値を100%として相対比率化したものであり、数値が大きいほど無効電力が大きいことを表す。
図15に示すように、「立ち上がり期間」の長さによって無効電力は変化する。そして、「立ち上がり期間」が短いほど無効電力は大きくなっている。これは、「立ち上がり期間」を短くすることで、電力回収回路に回収された電力が放電の発生に使用される比率が減少するためと考えられる。
図16は、本発明の一実施の形態における維持パルスの「立ち上がり期間」と維持パルス電圧Vsとの関係を示す特性図である。図16において、縦軸は安定した維持放電を発生させるために必要な維持パルス電圧Vsを、横軸は「立ち上がり期間」の長さを示す。
図16に示すように、「立ち上がり期間」の長さによって、安定した維持放電を発生させるために必要な維持パルス電圧Vsの電圧値は変化し、「立ち上がり期間」が長いほど必要な維持パルス電圧Vsは大きくなっている。これは、「立ち上がり期間」が長くなることで、クランプ回路で維持放電を発生させるときのような強い放電を発生させることができなくなり、その分放電セル内に蓄積される壁電荷が減少するためと考えられる。
これらのことから、「立ち上がり期間」を適宜制御することで、消費電力に影響を与える項目、すなわち発光効率、発光輝度、無効電力、維持放電を安定に発生させるために必要な維持パルス電圧Vsのそれぞれに関し、改善を図れることが確認された。また、改善効果を最良にするための「立ち上がり期間」は各項目で必ずしも一致せず、重視する項目に応じて「立ち上がり期間」を設定すればよいことが確認された。
なお、上述した各効果と「立ち上がり期間」の長さとの関係は共振周期によって変化するため、「立ち上がり期間」の長さは共振周期に応じて最適に設定することが望ましい。
次に、全セル点灯率、部分点灯率について説明する。上述したように、「重複期間」を発生させたり「立ち上がり期間」の長さをパネル10の特性等に応じて最適に設定することで、放電のばらつきを低減する効果および消費電力を低減する効果を得ることができる。しかし、これらの最適と考えられる範囲は、放電セルの点灯率に応じても変化する。これは、電力回収回路の出力インピーダンスが、クランプ回路の出力インピーダンスと比較して大きいため、点灯させるべき放電セル(以下、「点灯セル」とも記す)の割合が変化することで「立ち上がり期間」の波形形状が変化するためである。
したがって、点灯率を検出し、その検出結果に応じた制御を行うことで各設定を最適にすることができると考えられる。そして、本実施の形態では、パネル10の画像表示面における全放電セルに対する点灯セルの割合を示す全セル点灯率を検出し、各制御に用いている。しかし、同じ全セル点灯率であっても、表示する画像の図柄、すなわち点灯セルの分布によって、1対の表示電極対24上に発生する点灯セルの数は大きく変化し、駆動負荷も大きく変化する。
図17は、全セル点灯率が等しくかつ点灯セルの分布が異なる図柄を説明するための概略図である。なお、図17において、表示電極対24は、図2と同様に、図面における左右方向に延長して配列されているものとする。また、図17において斜線で示した部分は維持放電を発生させない非点灯セルの分布を表し、斜線のない白抜きの部分は点灯セルの分布を表す。
例えば、図17の上段に示すように、点灯セルが(図面における)上下に延びた形状で分布している場合は、1対の表示電極対24上に発生する点灯セルの数は比較的少なく、その1対の表示電極対24における駆動負荷も小さい。しかし、同じ全セル点灯率であっても、図17の下段に示すように、点灯セルが(図面における)左右に延びた形状で分布している場合は、ある1対の表示電極対24上に発生する点灯セルの数は多くなり、その1対の表示電極対24の駆動負荷は大きくなる。
このように、同じ全セル点灯率であっても、図柄に応じて部分的な駆動負荷の違いが発生し、図柄によっては部分的に駆動負荷の大きい表示電極対24が発生することがある。
そこで、本実施の形態では、全セル点灯率に加え、パネル10の表示領域を複数の領域に分け、各領域における点灯率を部分点灯率として検出する構成とする。
図18は、本発明の一実施の形態における部分点灯率を検出する領域の一例を示す概略図である。図18には、パネル10、走査IC(例えば、走査IC(1)〜走査IC(12))、走査電極22の引き出し線(図示せず)と走査ICの出力端子とを電気的に接続する接続ケーブルを示し、パネル10と走査ICとを接続ケーブルを介して接続した様子を概略的に示す。なお、パネル10内に示す破線は、部分点灯率を検出する領域をわかりやすく表すために便宜上示したものであり、この破線が実際にパネル10に設けられているわけではない。本実施の形態では、破線で囲まれた領域を1つの領域とし、それぞれの領域で部分点灯率を検出するものとする。また、表示電極対24は、図2と同様に、図面における左右方向に延長して配列されているものとする。
本実施の形態では、図18に示すように、パネル10の表示領域を走査ICを基準にして複数の領域に分割するものとする。すなわち、部分点灯率検出回路47は、1つの走査ICに接続された複数の走査電極22で構成される領域を1つの領域として部分点灯率を検出するものとする。例えば、1つの走査ICに接続される走査電極22の数が90本であり、走査電極駆動回路43が備える走査ICが12個(走査IC(1)〜走査IC(12))であれば、図18に示すように、部分点灯率検出回路47は、走査IC(1)〜走査IC(12)のそれぞれに接続された90本の走査電極22を1つの領域とし、パネル10の表示領域を12分割して各領域の部分点灯率を検出する。そして、最大値検出回路48は、部分点灯率検出回路47で検出した部分点灯率の値を互いに比較し、最も値の大きい部分点灯率を検出する。
そして、本実施の形態では、「立ち上がり期間」および「立ち下がり期間」の少なくとも一方の長さが異なる複数の維持パルスを発生させるとともに、発生させる維持パルスの組み合わせ、および「重複期間」の長さを異ならせた複数の駆動パターン(ここでは、第1駆動パターン、第2駆動パターン、第3駆動パターン、第4駆動パターン、第5駆動パターンの5つの駆動パターン)を設定する。そして、検出した部分点灯率の最大値および全セル点灯率に応じてサブフィールド毎に駆動パターンを切換えて維持パルスを発生させる構成とする。
なお、維持パルスの立ち上がりで強い放電を発生させると、維持パルスの立ち下がりにおいて微弱な放電が発生することがあることが確認された。この放電は、維持放電で形成された壁電荷を減少させるため、この立ち下がりによる放電が発生すると、壁電荷が不足して続く維持放電を不安定に発生させる恐れがあり、好ましくない。そして、立ち下がりにかける時間を長くすることで、この立ち下がりにおける微弱な放電を低減できることが実験的に確認された。一方、維持パルスの立ち上がりで発生させる放電の強度は、パネル10の駆動負荷や維持パルスの立ち上がりにおける波形形状によって変化する。そこで、本実施の形態では、検出した全セル点灯率、部分点灯率の最大値および発生させる維持パルスの「立ち上がり期間」等を考慮して「立ち下がり期間」を設定している。
図19は、本発明の一実施の形態における全セル点灯率および部分点灯率の最大値と駆動パターンの切換えとの関係の一例を示す図である。
本実施の形態では、図19に示すように、部分点灯率の最大値が大きくなく(例えば、70%未満)、かつ全セル点灯率が低い(例えば、30%未満)サブフィールドでは、第1駆動パターンで維持パルスを発生させる。この第1駆動パターンは、発光輝度の向上を目的とした駆動パターンである。これにより、全セル点灯率が低く、かつ部分点灯率の最大値が大きくないとき、すなわちパネル10の駆動負荷が全体的に低いときの発光輝度を向上させて、画像表示品質の向上を図る。
また、部分点灯率の最大値が大きく(例えば、70%以上)、かつ全セル点灯率が高い(例えば、70%以上)サブフィールドでは、第2駆動パターンで維持パルスを発生させる。この第2駆動パターンは、無効電力削減と発光効率改善を目的とした駆動パターンである。これにより、全セル点灯率が高く、かつ部分点灯率の最大値が大きいとき、すなわちパネル10の駆動負荷が全体的に高いときに無効電力を削減するとともに発光効率を改善して消費電力の低減を図る。
また、部分点灯率の最大値が大きく(例えば、70%以上)、かつ全セル点灯率が所定の範囲内にある(例えば、30%以上70%未満)サブフィールドでは、第3駆動パターンで維持パルスを発生させる。この第3駆動パターンは、発光輝度の向上と無効電力削減および発光効率改善とを目的とした駆動パターンである。これにより、全セル点灯率がやや高くかつ部分点灯率の最大値が大きいとき、すなわちパネル10の駆動負荷が部分的に高いときに、発光輝度の向上による画像表示品質の向上と、無効電力削減および発光効率改善による消費電力の低減とを図る。
また、部分点灯率の最大値が大きく(例えば、70%以上)、かつ全セル点灯率が低い(例えば、30%未満)サブフィールドでは、第4駆動パターンで維持パルスを発生させる。この第4駆動パターンは、無効電力削減および発光効率改善の効果を最も高めることを目的とした駆動パターンである。これにより、通常の動画表示において表示頻度が比較的高いと考えられる、全セル点灯率が低くかつ部分点灯率の最大値が大きい画像を表示するときの、無効電力削減および発光効率改善による消費電力の低減効果の向上を図る。
また、部分点灯率の最大値が大きくなく(例えば、70%未満)、かつ全セル点灯率が所定の範囲内にある(例えば、30%以上70%未満)サブフィールドでは、第5駆動パターンで維持パルスを発生させる。この第5駆動パターンは、無効電力削減および発光効率改善の効果を高めることを目的とした駆動パターンである。これにより、全セル点灯率がやや高くかつ部分点灯率の最大値が大きくないとき、すなわちパネル10における駆動負荷の高い領域が第3駆動パターンを適用するときほどは偏っておらず、かつ駆動負荷が全体的にやや高いときに、無効電力削減および発光効率改善による消費電力の低減を図る。
次に、各駆動パターンの詳細について図20から図24を用いて説明する。図20は、本発明の一実施の形態における第1駆動パターンにおいて発生させる維持パルスの概略波形図であり、図21は、本発明の一実施の形態における第2駆動パターンにおいて発生させる維持パルスの概略波形図であり、図22は、本発明の一実施の形態における第3駆動パターンにおいて発生させる維持パルスの概略波形図であり、図23は、本発明の一実施の形態における第4駆動パターンにおいて発生させる維持パルスの概略波形図であり、図24は、本発明の一実施の形態における第5駆動パターンにおいて発生させる維持パルスの概略波形図である。なお、図20、図21、図22、図23、図24において、図面内の上に示した図は発生させる維持パルスの概略波形形状を示した図であり、図面内の下に示した図は「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」、「重複期間」のそれぞれの長さを示した図である。また、図20、図21、図22、図23、図24においては、各維持パルスのパルス幅は2.7μsecであるものとする。
なお、本実施の形態では、図20、図21、図22、図23、図24に示すように、8つの維持パルスから構成される1つのパターンを繰り返して発生させる構成としている。また、全ての駆動パターンにおいて、電力回収回路における共振周期は2000nsecに設定している。
本実施の形態において、第1駆動パターンは、図20に示すように、1つ目の維持パルス(図面のA)は「立ち上がり期間」を800nsec、「立ち下がり期間」を550nsecとする。2つ目の維持パルス(図面のB)は、「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」をそれぞれ400nsec、500nsecとする。3つ目の維持パルス(図面のC)から8つ目の維持パルス(図面のH)は、「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」をそれぞれ800nsec、550nsecとする。そして、「重複期間」を150nsecとする。
第2駆動パターンは、図21に示すように、1つ目の維持パルス(図面のA)は「立ち上がり期間」を650nsec、「立ち下がり期間」を1000nsecとする。2つ目の維持パルス(図面のB)は、「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」をそれぞれ450nsec、850nsecとする。3つ目の維持パルス(図面のC)から8つ目の維持パルス(図面のH)は、「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」をそれぞれ650nsec、1000nsecとする。そして、「重複期間」を150nsecとする。
第3駆動パターンは、図22に示すように、1つ目の維持パルス(図面のA)は「立ち上がり期間」を700nsec、「立ち下がり期間」を900nsecとする。2つ目の維持パルス(図面のB)は、「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」をそれぞれ450nsec、800nsecとする。3つ目の維持パルス(図面のC)、5つ目の維持パルス(図面のE)、7つ目の維持パルス(図面のG)は、「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」をそれぞれ700nsec、900nsecとする。4つ目の維持パルス(図面のD)、6つ目の維持パルス(図面のF)、8つ目の維持パルス(図面のH)は、「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」をそれぞれ750nsec、900nsecとする。そして、「重複期間」を200nsecとする。
第4駆動パターンは、図23に示すように、1つ目の維持パルス(図面のA)は「立ち上がり期間」を750nsec、「立ち下がり期間」を900nsecとする。2つ目の維持パルス(図面のB)は、「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」をそれぞれ450nsec、800nsecとする。3つ目の維持パルス(図面のC)から8つ目の維持パルス(図面のH)は、「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」をそれぞれ750nsec、900nsecとする。そして、「重複期間」を150nsecとする。
第5駆動パターンは、図24に示すように、1つ目の維持パルス(図面のA)は「立ち上がり期間」を750nsec、「立ち下がり期間」を900nsecとする。2つ目の維持パルス(図面のB)は、「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」をそれぞれ450nsec、800nsecとする。3つ目の維持パルス(図面のC)、5つ目の維持パルス(図面のE)、7つ目の維持パルス(図面のG)は、「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」をそれぞれ750nsec、900nsecとする。4つ目の維持パルス(図面のD)、6つ目の維持パルス(図面のF)、8つ目の維持パルス(図面のH)は、「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」をそれぞれを650nsec、900nsecとする。そして、「重複期間」を150nsecとする。
そして、これらの5つの駆動パターンを全セル点灯率および部分点灯率の最大値に応じて切換えてパネル10を駆動することで、表示画像の図柄にもよるが、一般的な動画表示において、平均して約10〜30Wの消費電力削減効果を確認することができた。合わせて、放電のばらつき低減効果による画像表示品質の向上を確認することができた。
なお、本実施の形態では、8つの維持パルスから構成される1つのパターンを繰り返し発生させる構成を説明したが、維持パルスの総数が8未満の維持期間においては、全ての維持パルスを同一の波形形状としてもよく、あるいは、プラズマディスプレイ装置1の仕様等に応じて任意に設定してもよい。
また、ここに示した各駆動パターンの構成は単なる一例に過ぎず、適宜最適に設定すればよい。また、8つの維持パルスで1つのパターンを構成する例に限定されるものではなく、より多くの維持パルス、あるいはより少ない維持パルスで1つのパターンを構成してもかまわない。また、共振周期も何ら上述した数値に限定されるものではない。これらの構成は、パネル10の特性やプラズマディスプレイ装置1の仕様等に応じて最適に設定することが望ましい。
次に、駆動負荷の変化により生じる発光輝度の差について説明する。図25A、図25Bは、駆動負荷の変化により生じる発光輝度の差を説明するための概略図である。図25Aは、一般に「ウインドウパターン」と呼ばれる画像がパネル10に表示されたときの理想的な表示画像を示したものである。図面に示す領域Bおよび領域Dは同じ信号レベル(例えば、20%)の領域であり、領域Cは領域Bおよび領域Dよりも信号レベルが低い(例えば、5%)領域である。なお、本実施の形態で用いる「信号レベル」とは、輝度信号の階調値であってもよく、あるいは、R信号の階調値、B信号の階調値、G信号の階調値であってもよい。
図25Bは、図25Aに示した「ウインドウパターン」をパネル10に表示したときの表示画像を概略的に示した図と信号レベル101と発光輝度102とを示すものである。なお、図25Bのパネル10において表示電極対24は図2に示したパネル10と同様に行方向(図面では、横方向)に延長して配列されているものとする。また、図25Bの信号レベル101は、図25Bのパネル10に示すA1−A1線における画像信号の信号レベルを示したものであり、横軸は画像信号の信号レベルの大きさを表し、縦軸はパネル10のA1−A1線における表示位置を表す。また、図25Bの発光輝度102は、図25Bのパネル10に示すA1−A1線における表示画像の発光輝度を示したものであり、横軸は表示画像の発光輝度の大きさを表し、縦軸はパネル10のA1−A1線における表示位置を表す。
図25Bに示すように、「ウインドウパターン」をパネル10に表示すると、信号レベル101に示すように領域Bと領域Dとは同じ信号レベルであるにもかかわらず、発光輝度102に示すように領域Bと領域Dとで発光輝度に差が生じることがある。これは、以下のような理由によるものと考えられる。
表示電極対24は行方向(図面では、横方向)に延長して配列されているため、図25Bのパネル10に示すように、「ウインドウパターン」をパネル10に表示した場合、領域Bだけを通る表示電極対24と、領域Cと領域Dとを通る表示電極対24とが生じる。そして、領域Bを通る表示電極対24よりも、領域Cと領域Dとを通る表示電極対24の方が、駆動負荷が小さくなる。これは、領域Cの信号レベルが低いので、その分、領域Cと領域Dとを通る表示電極対24に流れる放電電流の方が、領域Bを通る表示電極対24に流れる放電電流よりも少なくなるためである。
したがって、領域Cと領域Dとを通る表示電極対24では、領域Bを通る表示電極対24よりも、駆動電圧の電圧降下、例えば維持パルスの電圧降下が少なくなる。すなわち、領域Cと領域Dとを通る表示電極対24の方が、領域Bを通る表示電極対24よりも維持パルスの電圧降下が少なくなり、領域Bに含まれる放電セルにおける維持放電よりも、領域Dに含まれる放電セルにおける維持放電の方が、放電強度が強くなると考えられる。その結果、同じ信号レベルであるにもかかわらず領域Dの方が領域Bよりも発光輝度が上昇するものと考えられる。以下、このような現象を「ローディング現象」と呼称する。
図26A、図26B、図26C、図26Dは、ローディング現象を概略的に説明するための図であり、「ウインドウパターン」における信号レベルの低い(例えば、5%)領域Cの面積を徐々に変更してパネル10に表示したときの表示画像を概略的に示した図である。なお、図26Aにおける領域D1、図26Bにおける領域D2、図26Cにおける領域D3、図26Dにおける領域D4は、それぞれ領域Bと同じ信号レベル(例えば、20%)であるものとする。
そして、図26A、図26B、図26C、図26Dに示すように、領域C1、領域C2、領域C3、領域C4と領域Cの面積が大きくなるにつれ、領域C、領域Dを通る表示電極対24の駆動負荷は減少する。その結果、領域Dに含まれる放電セルの放電強度が強くなって、領域Dの発光輝度は、領域D1、領域D2、領域D3、領域D4と徐々に上昇する。このように、ローディング現象による発光輝度の上昇は、駆動負荷が変動することにより変化する。本実施の形態は、このローディング現象を軽減し、プラズマディスプレイ装置1における画像表示品質を向上させることを目的とする。なお、ローディング現象を軽減するために施す処理を、本実施の形態では「ローディング補正」と呼称する。
図27は、本発明の一実施の形態におけるローディング補正の概略を説明するための図であり、図25Aに示した「ウインドウパターン」をパネル10に表示したときの表示画像を概略的に示した図と信号レベル111と信号レベル112と発光輝度113とを示すものである。なお、図27のパネル10に示す表示画像は、図25Aに示した「ウインドウパターン」を、本実施の形態におけるローディング補正を施した後でパネル10に表示したときの表示画像を概略的に示したものである。また、図27の信号レベル111は、図27のパネル10に示すA2−A2線における画像信号の信号レベルを示したものであり、横軸は画像信号の信号レベルの大きさを表し、縦軸はパネル10のA2−A2線における表示位置を表す。また、図27の信号レベル112は、本実施の形態におけるローディング補正を施した後の画像信号のA2−A2線における信号レベルを示したものであり、横軸はローディング補正後の画像信号の信号レベルの大きさを表し、縦軸はパネル10のA2−A2線における表示位置を表す。また、図27の発光輝度113は、A2−A2線における表示画像の発光輝度を示したものであり、横軸は表示画像の発光輝度の大きさを表し、縦軸はパネル10のA2−A2線における表示位置を表す。
本実施の形態では、放電セル毎に、その放電セルを通る表示電極対24の駆動負荷にもとづく補正値を算出して画像信号に補正を加えることでローディング補正を行う。例えば、図27のパネル10に示すような画像をパネル10に表示する際には、領域Bと領域Dとでは同じ信号レベルであるが、領域Dを通る表示電極対24は領域Cも通るため駆動負荷が小さいと判断することができる。そこで、図27の信号レベル112に示すように領域Dの信号レベルに補正を加える。これにより、図27の発光輝度113に示すように、表示画像における領域Bと領域Cとで発光輝度の大きさを互いに合わせて、ローディング現象を軽減する。
このように、ローディング現象が発生すると予想される領域における画像信号に補正を加え、その領域の表示画像における発光輝度を減少させることでローディング現象を軽減する。このとき、本実施の形態では、駆動負荷と、選択された駆動パターンの種類と、パネル10における放電セルの行方向の位置とにもとづきローディング補正用の補正ゲインを算出し、その補正ゲインを用いてローディング補正を行うものとする。
この、本実施の形態におけるローディング補正について詳細に説明する。図28は、本発明の一実施の形態における画像信号処理回路41の回路ブロック図である。なお、図28には、本実施の形態におけるローディング補正に関係するブロックを示し、それ以外の回路ブロックは省略している。
画像信号処理回路41は、点灯セル数算出部60と、負荷値算出部61と、補正ゲイン算出部62と、放電セル位置判定部64と、乗算器68と、補正部69とを備えたローディング補正部70を有する。
点灯セル数算出部60は、点灯させる放電セル(以下、点灯させる放電セルを「点灯セル」、点灯させない放電セルを「非点灯セル」と呼称する)の数を、表示電極対24毎、かつサブフィールド毎に算出する。
負荷値算出部61は、点灯セル数算出部60における算出結果を受け、本実施の形態における駆動負荷算出方法にもとづく演算(本実施の形態では、後述する「負荷値」および「最大負荷値」の算出)を行う。
放電セル位置判定部64は、タイミング信号にもとづき、補正ゲイン算出部62における補正ゲインの算出対象である放電セル(以下、「注目放電セル」と呼称する)の行方向の位置(表示電極対24の延長方向における位置)を判定する。
補正ゲイン算出部62は、選択された駆動パターンの種類、放電セル位置判定部64における放電セルの位置判定結果、および負荷値算出部61における演算結果にもとづき補正ゲインを算出する。なお、本実施の形態では、選択された駆動パターンの種類を示す信号は、タイミング発生回路45が有する駆動パターン選択部49から出力され、補正ゲイン算出部62に入力されるものとする。
乗算器68は、補正ゲイン算出部62から出力される補正ゲインを画像信号に乗算し、補正信号として出力する。そして、補正部69は、乗算器68から出力される補正信号を画像信号から減算して、補正後画像信号として出力する。
次に、本実施の形態における補正ゲインの算出方法について説明する。なお、本実施の形態では、この演算を点灯セル数算出部60、負荷値算出部61、補正ゲイン算出部62において行う。
本実施の形態では、点灯セル数算出部60における算出結果にもとづき「負荷値」および「最大負荷値」と呼称する2つの数値を算出する。この「負荷値」および「最大負荷値」は、注目放電セルにおけるローディング現象の発生量を推定するために用いる数値である。
まず、図29を用いて本実施の形態における「負荷値」について説明し、続いて、図30を用いて本実施の形態における「最大負荷値」について説明する。
図29は、本発明の一実施の形態における「負荷値」の算出方法を説明するための概略図であり、図25Aに示した「ウインドウパターン」をパネル10に表示したときの表示画像を概略的に示した図と点灯状態121と算出値122とを示すものである。また、図29の点灯状態121は、図29のパネル10に示すA3−A3線における各放電セルの点灯・非点灯をサブフィールド毎に示した概略図であり、横方向の欄はパネル10のA3−A3線における表示位置を表し、縦方向の欄はサブフィールドを表す。また、「1」は点灯を、空欄は非点灯を表す。また、図29の算出値122は、本実施の形態における「負荷値」の算出方法を概略的に示した図であり、横方向の欄は図面の左から順に、「点灯セル数」、「輝度重み」、「放電セルBの点灯状態」、「算出値」を表し、縦方向の欄はサブフィールドを表す。なお、本実施の形態では、説明を簡略化するために、行方向の放電セル数が15であるものとする。したがって、図29のパネル10に示すA3−A3線上に、15個の放電セルが配置されているものとして以下の説明を行うが、実際には、パネル10の行方向における放電セル数(例えば、1920×3)に合わせて以下の各演算を行う。
図29のパネル10に示すA3−A3線上に配置された15個の放電セルの各サブフィールドにおける点灯状態が、例えば、点灯状態121に示すような状態、すなわち、図29のパネル10に示す領域Cに含まれる中央5個の放電セルにおいては第1SFから第3SFまでが点灯し第4SFから第8SFまでは非点灯であり、領域Cに含まれない左右5個ずつの放電セルにおいては第1SFから第6SFまでが点灯し第7SFおよび第8SFは非点灯であるものとする。
A3−A3線上に配置された15個の放電セルがこのような点灯状態のとき、そのうちの1つの放電セル、例えば、図面に示す放電セルBにおける「負荷値」は、次のようにして求める。
まず、各サブフィールド毎の点灯セル数を算出する。第1SFから第3SFまではA3−A3線上の15個の放電セル全てが点灯しているので、第1SFから第3SFまでの点灯セル数は図29の算出値122の「点灯セル数」の第1SFから第3SFまでの各欄に示すように「15」となる。また、第4SFから第6SFまではA3−A3線上の15個の放電セルのうち10個の放電セルが点灯しているので、第4SFから第6SFまでの点灯セル数は、算出値122の「点灯セル数」の第4SFから第6SFまでの各欄に示すように、「10」となる。そして、第7SF、第8SFではA3−A3線上の15個の放電セル全てが非点灯なので、第7SF、第8SFの点灯セル数は、算出値122の「点灯セル数」の第7SF、第8SFの各欄に示すように「0」となる。
次に、このようにして求めた各サブフィールドの点灯セル数に、各サブフィールドの輝度重みと、放電セルBにおける各サブフィールドの点灯状態とをそれぞれ乗算する。なお、本実施の形態では、各サブフィールドの輝度重みを、図9の算出値122の「輝度重み」の第1SFから第8SFまでの各欄に示すように、第1SFから順に、(1、2、4、8、16、32、64、128)であるものとする。また、本実施の形態では、点灯を1、非点灯を0とする。したがって放電セルBにおける点灯状態は、算出値122の「放電セルBの点灯状態」の第1SFから第8SFまでの各欄に示すように、第1SFから順に、(1、1、1、1、1、1、0、0)となる。そして、その乗算結果は、算出値122の「算出値」の第1SFから第8SFまでの各欄に示すように、第1SFから順に、(15、30、60、80、160、320、0、0)となる。そして、その算出値の総和を求める。例えば、図9の算出値122に示す例では、算出値の総和は665となる。この総和が、放電セルBにおける「負荷値」となる。本実施の形態では、このような演算を各放電セルに対して行い、放電セル毎に「負荷値」を求める。
図30は、本発明の一実施の形態における「最大負荷値」の算出方法を説明するための概略図であり、図25Aに示した「ウインドウパターン」をパネル10に表示したときの表示画像を概略的に示した図と点灯状態131と算出値132とを示すものである。また、図30の点灯状態131は、「最大負荷値」を算出するために、放電セルBの点灯状態を図30のパネル10に示すA4−A4線上の全放電セルにあてはめたときの点灯・非点灯をサブフィールド毎に示した概略図であり、横方向の欄はパネル10のA4−A4線における表示位置を表し、縦方向の欄はサブフィールドを表す。また、図30の算出値132は、本実施の形態における「最大負荷値」の算出方法を概略的に示した図であり、横方向の欄は図面の左から順に、「点灯セル数」、「輝度重み」、「放電セルBの点灯状態」、「算出値」を表し、縦方向の欄はサブフィールドを表す。
本実施の形態においては、「最大負荷値」を次のようにして算出する。例えば、放電セルBにおける「最大負荷値」を算出する場合には、図30の点灯状態131に示すように、A4−A4線上の全放電セルが放電セルBと同様の状態で点灯しているものと仮定して、各サブフィールド毎の点灯セル数を算出する。放電セルBにおける各サブフィールドの点灯状態は、図29の算出値122の「放電セルBの点灯状態」の第1SFから第8SFまでの各欄に示すように、第1SFから順に(1、1、1、1、1、1、0、0)なので、その点灯状態をA4−A4線上の全放電セルに割り当てる。したがって、A4−A4線上の全放電セルの点灯状態は、図30の点灯状態131に示すように、第1SFから第6SFまでが1となり、第7SF、第8SFは0となる。したがって、点灯セル数は、図30の算出値132の「点灯セル数」の第1SFから第8SFまでの各欄に示すように第1SFから順に(15、15、15、15、15、15、0、0)となる。ただし、本実施の形態では、A4−A4線上の各放電セルを、実際に点灯状態131に示す点灯状態にするのではない。点灯状態131に示す点灯状態は、「最大負荷値」を算出するために、各放電セルが放電セルBと同じ点灯状態になったと仮定したときの点灯状態を示したものであり、算出値132に示す「点灯セル数」は、その仮定の上での点灯セル数を算出したものである。
次に、このようにして求めた各サブフィールドの点灯セル数に、各サブフィールドの輝度重みと、放電セルBにおける各サブフィールドの点灯状態とをそれぞれ乗算する。上述したように、本実施の形態では、各サブフィールドの輝度重みを、図30の算出値132の「輝度重み」の第1SFから第8SFまでの各欄に示すように、第1SFから順に、(1、2、4、8、16、32、64、128)とする。また、放電セルBにおける点灯状態は、算出値132の「放電セルBの点灯状態」の第1SFから第8SFまでの各欄に示すように、第1SFから順に、(1、1、1、1、1、1、0、0)である。したがって、その乗算の結果は、算出値132の「算出値」の第1SFから第8SFまでの各欄に示すように、第1SFから順に、(15、30、60、120、240、480、0、0)となる。そして、その算出値の総和を求める。例えば、図30の算出値132に示す例では、算出値の総和は945となる。この総和が、放電セルBにおける「最大負荷値」となる。本実施の形態では、このような演算を各放電セルに対して行い、放電セル毎に「最大負荷値」を求める。
なお、放電セルBにおける「最大負荷値」は、表示電極対24上に形成される全放電セル数(この例では、15)を各サブフィールドの輝度重み(例えば、第1SFから順に、(1、2、4、8、16、32、64、128))にそれぞれ乗算し、その乗算結果と放電セルBにおける各サブフィールドの点灯状態(例えば、第1SFから順に、(1、1、1、1、1、1、0、0))とをそれぞれ乗算して、その算出値(この例では、第1SFから順に、(15、30、60、120、240、480、0、0))の総和を求めて算出する構成としてもよい。このような算出方法でも、上述の演算と同様の結果(この例では、945となる)を得ることができる。
そして、本実施の形態では、次の式(1)から得られる数値を用いて注目放電セル(放電セルB)における補正ゲインを算出する。
(最大負荷値−負荷値)/最大負荷値・・・・・・・・・・・・・式(1)
例えば、上述した放電セルBにおける「負荷値」=665、「最大負荷値」=945からは、
(945−665)/945=0.296
という数値を算出することができる。こうして算出した数値を次の式(2)に用いて補正ゲインを算出する。すなわち、式(1)の結果に所定の係数(パネル10の特性等に応じてあらかじめ定めた係数)を乗算し、さらに、選択された駆動パターンおよびパネル10における放電セルの行方向の位置にもとづく所定の補正量を乗算して補正ゲインを算出する。
補正ゲイン=式(1)の結果×所定の係数×補正量・・・・・・・式(2)
そして、この補正ゲインを、次の式(3)に代入して入力画像信号に補正を施す。
出力画像信号=入力画像信号−入力画像信号×補正ゲイン・・・・式(3)
これにより、ローディング現象が発生すると予想される領域における不要な輝度上昇を抑え、ローディング現象を軽減することができる。
近年の大画面化、高精細化したパネル10では、走査電極22および維持電極23のインピーダンスが大きくなり、駆動回路に比較的近い位置にある放電セルと、駆動回路から比較的遠い位置にある放電セルとで、維持パルスの電圧降下の差が大きくなる傾向にある。しかし、本実施の形態においては、「負荷値」および「最大負荷値」を算出するとともに、選択された駆動パターンおよびパネル10における放電セルの行方向の位置にもとづく補正量をあらかじめ設定し、これらを補正ゲインの算出に用いることで、予想される発光輝度の上昇に応じた補正ゲインを精度良く算出することが可能となり、ローディング補正をより高精度に行うことが可能となる。
図31は、パネル10における放電セルの行方向の位置にもとづく維持パルスの電圧降下の差を概略的に示す図である。なお、図31では、説明を分かりやすくするために、表示電極対24を1対だけ示している。また、走査電極駆動回路43に最も近い位置に形成された放電セルA、走査電極駆動回路43から最も遠い位置に形成された放電セルC、それらの中間の位置に形成された放電セルBの3つの放電セルにおける維持パルスを概略的に示している。
図31に示すように、走査電極駆動回路43に対して最も近い位置にある放電セルAは、維持電極駆動回路44に対しては最も遠い位置となる。したがって、走査電極駆動回路43から見た放電セルAの駆動インピーダンスは比較的低く、逆に、維持電極駆動回路44から見た放電セルAの駆動インピーダンスは比較的高い。そのため、図31に示すように、走査電極駆動回路43から放電セルAに印加される維持パルスの電圧降下が比較的小さいのに対し、維持電極駆動回路44から放電セルAに印加される維持パルスの電圧降下は比較的大きくなる。
一方、走査電極駆動回路43に対して最も遠い位置にある放電セルCは、維持電極駆動回路44に対しては最も近い位置となる。したがって、走査電極駆動回路43から放電セルCに印加される維持パルスの電圧降下が比較的大きくなるのに対し、維持電極駆動回路44から放電セルCに印加される維持パルスの電圧降下は比較的小さい。そして、放電セルBに印加される維持パルスはそれらのほぼ中間的な大きさとなる。
維持放電による発光輝度は維持パルスの大きさに応じて変化し、一般的には維持パルスが大きくなるほど強い維持放電が発生して発光輝度も高くなる。逆に、維持パルスが小さくなるほど維持放電も弱く不安定になって、発光輝度も低くなる。しかし、振幅が比較的大きい維持パルスと振幅が比較的小さい維持パルスとが組み合わせられて生じる発光輝度(例えば、放電セルA、放電セルCにおける発光輝度)と、それらの中間の振幅の維持パルスによって生じる発光輝度(例えば、放電セルBにおける発光輝度)とのどちらが明るくなるかは、パネル10の特性に依存する。
また、駆動パターンによっても発光輝度は変化する。図32は、本発明の一実施の形態におけるパネル10を駆動する駆動パターンおよび放電セルの位置と発光輝度との関係を示す特性図である。図32には、第1駆動パターンから第5駆動パターンのそれぞれでパネル10を駆動したときの、走査電極駆動回路43に最も近い位置に形成された放電セルA、走査電極駆動回路43から最も遠い位置、すなわち維持電極駆動回路44に最も近い位置に形成された放電セルC、およびそれらの中間の位置に形成された放電セルBにおける発光輝度を測定した結果を示す。
なお、図32に示す横軸は放電セルの行方向の位置を示しており、X(1)は放電セルAの位置を表し、X(m)は放電セルCの位置を表し、X(m/2)は放電セルBの位置を表す。また、図32に示す縦軸は、基準の発光輝度(例えば、第2駆動パターンでパネル10を駆動したときの放電セルAにおける発光輝度)との差を相対化して百分率表示したものである。
図32に示すように、パネル10においては、周辺部(例えば、X(1)、X(m))の放電セルよりも中央部(例えば、X(m/2))の放電セルの方が発光輝度が高い。また、例えば第3駆動パターンによる駆動と第5駆動パターンによる駆動とを比較した場合、第3駆動パターンでは、放電セルBと放電セルAとの発光輝度の差は約5%であるのに対し、第5駆動パターンでは、放電セルBと放電セルAとの発光輝度の差は約9%と、第3駆動パターンと比較して約4%も大きくなる。
これらのことから、放電セルの位置に応じて生じる発光輝度の差を補正するように、かつ駆動パターンに応じて生じる発光輝度の差を補正するように、上述したローディング補正に用いる補正ゲインを発生することが望ましい。
そこで、本実施の形態では、式(1)を用いて算出した数値に、駆動パターンおよび放電セルの行方向の位置にもとづく補正を加えて、ローディング補正用の補正ゲインを算出するものとする。
具体的には、図32に示した駆動パターンおよび放電セルの位置と発光輝度との関係を測定した結果にもとづき、駆動パターン毎に補正データを設定する。そして、選択された駆動パターンおよび各放電セルの行方向の位置にもとづき補正データから補正量を選択し、その補正量を用いて補正ゲインを算出する。
図33は、本発明の一実施の形態における補正データの一例を示す概略図であり、第1駆動パターンに対する補正データを例に挙げて示したものである。なお、図33に示す横軸は放電セルの行方向の位置を表し、縦軸は補正量を表す。
例えば、第1駆動パターンでパネル10を駆動しているときには、図32に示したように、基準となる発光輝度に対し、X(1)の位置にある放電セルAは約3%発光輝度が高く、X(m/2)に位置にある放電セルBは約12%発光輝度が高く、X(m)の位置にある放電セルCは約8%発光輝度が高い。そこで、式(1)を用いて算出した補正ゲインが、X(1)の位置にある放電セルAにおいては1.03倍になるように、X(m/2)に位置にある放電セルBにおいては1.12倍になるように、X(m)に位置にある放電セルCにおいては1.08倍になるように、また、X(1)とX(m/2)との間にある放電セルにおいてはその位置に応じて1.03倍から1.12倍の間のいずれかの数値になるように、また、X(m/2)とX(m)との間にある放電セルにおいてはその位置に応じて1.12倍から1.08倍の間のいずれかの数値になるように、補正データを設定する。
そして、このような補正データを、図32に示した特性にもとづき駆動パターン毎に設定する。これにより、選択された駆動パターンおよび放電セルの位置に応じた補正ゲインを算出してローディング補正をかけることができるようになる。
図34は、本発明の一実施の形態における補正ゲインを用いてローディング補正をかけたときの放電セルの位置と発光輝度との関係を示す特性図である。なお、図34には、第1駆動パターンでパネル10を駆動し、かつ放電セルAでローディング現象がでる画像、放電セルBでローディング現象がでる画像、放電セルCでローディング現象がでる画像と表示画像を切換えながら、図33に示した補正データを用いてローディング補正をかけたときの放電セルA、放電セルB、放電セルCの各放電セルでの発光輝度を測定した結果を示す。
そして、上述したように、駆動パターンおよび放電セルの位置に応じて補正ゲインを算出することで、例えば図34に示すように、放電セル間の発光輝度のばらつきを低減してローディング補正をかけることが可能となる。
なお、本実施の形態においては、駆動パターン毎に設定する複数の補正データは、補正ゲイン算出部62内の記憶部(図示せず)に備えられているものとする。そして、その記憶部は、タイミング発生回路45から送られてくる駆動パターンを示す信号に応じて最適な補正データを選択し、その補正データの中から、放電セル位置判定部64から出力される放電セルの位置情報に応じた補正量を出力するものとする。そして、補正ゲイン算出部62は、その補正量を用いて、補正ゲインを算出するものとする。
なお、図33に一例を示す補正データは、表示画像を確認しながら最適な値に設定してもかまわない。
なお、図33には、補正量が線形に変化する、すなわち変化量が直線で表される補正データの一例を示したが、これは単なる一例に過ぎず、パネル10の特性や駆動回路の特性等に応じて最適に設定することが望ましい。ただし、補正量は、画素単位で変化させるものとし、少なくとも、1つの画素を構成するR、G、Bの3つの放電セルは同じ補正量になるように設定することが望ましい。
なお、図33では、補正量として「1.03」、「1.12」「1.08」といった数値を示したが、これは、補正ゲインを算出する際に、補正量がこれらの値になるように、式(1)で算出した値に乗算する係数を設定したために過ぎない。本発明において、補正ゲインに乗算する補正量の値は、補正ゲインの算出方法やパネル10の特性およびプラズマディスプレイ装置1の仕様等に応じて最適に設定することが望ましい。
以上説明したように、本実施の形態では、「立ち上がり期間」および「立ち下がり期間」の少なくとも一方の長さが異なる複数の維持パルスを発生させるとともに、発生させる維持パルスの組み合わせを異ならせた複数(ここでは、5つ)の駆動パターンを設定し、検出した全セル点灯率と部分点灯率の最大値とに応じて駆動パターンを切換えて維持パルスを発生させる構成とする。こうすることで、消費電力を低減しつつ放電のばらつきを抑えた駆動を実現し、パネル10の画像表示品質を向上させることが可能となる。また、放電セル毎に「負荷値」および「最大負荷値」を算出するとともに、選択された駆動パターンおよび放電セルの位置にもとづき補正ゲインを算出する構成とすることで、ローディング現象の発生が予想される画像をパネル10に表示する際に、予想される発光輝度の上昇に応じた補正ゲインを精度良く算出することが可能となる。さらに、駆動パターンおよび放電セルの位置に応じた最適なローディング補正を行うことが可能となる。これにより、同一表示電極対24上に形成される放電セル間に発光輝度の差が生じ、かつその差が駆動パターンによって変化したとしても、駆動パターンおよび放電セルの行方向の位置に応じた最適なローディング補正をかけることが可能となり、画像表示品質を向上させることが可能となる。
なお、本実施の形態では、「負荷値」および「最大負荷値」を算出する際に、各サブフィールドの輝度重みと、放電セルにおける各サブフィールドの点灯状態とをそれぞれ乗算する構成を説明したが、例えば、輝度重みに代えて各サブフィールドの維持パルス数を用いてもかまわない。
なお、一般に用いられている誤差拡散と呼ばれる画像処理を施したときに、階調値の変化点(表示画像の図柄の境界)で拡散される誤差量が増え、輝度の変化が大きい境界部分で境界が強調されて不自然に見えてしまうといった問題が発生するおそれがある。この問題を低減するために、算出した補正ゲインに、誤差拡散用の補正値をランダムに加算または減算し、補正ゲインにランダムな変化を与える構成としてもよい。このような処理を施すことで、誤差拡散を施したときに図柄の境界が強調されて不自然に見えてしまうといった問題を軽減することが可能となる。
なお、図26A、図26B、図26C、図26Dでは、駆動負荷の変動により発光輝度が変化する例を説明したが、パネル10の特性によってはローディング現象が発生するときに必ずしも発光輝度が線形に変化しないものもある。図35は、図26A、図26B、図26C、図26Dに示したウインドウパターンにおける領域Cの面積と領域Dの発光輝度との関係の一例を示した図である。パネル10によっては、領域Cの面積が大きくなったとき(例えば、図26DのC4)、すなわち表示電極対24の駆動負荷が小さくなったときに、ローディング現象が極端に悪化し、領域Dの発光輝度が大きく上昇する場合(例えば、図26DのD4)がある。このようなパネル10の特性に合わせて補正ゲインに重み付けを持たせ、補正ゲインを非線形に変化させる構成としてもよい。図36は、本発明の一実施の形態における補正ゲインの非線形処理の一例を示す特性図である。例えば、パネル10の特性に合わせて設定した複数の補正ゲインをあらかじめルックアップテーブルに格納しておき、補正ゲインの計算結果にもとづきルックアップテーブルから補正ゲインを読み出す構成とすることで、図36に示すように補正ゲインを非線形に設定することが可能である。
なお、本発明における実施の形態は、走査電極SC1〜走査電極SCnを第1の走査電極群と第2の走査電極群とに分割し、書込み期間を、第1の走査電極群に属する走査電極のそれぞれに走査パルスを印加する第1の書込み期間と、第2の走査電極群に属する走査電極のそれぞれに走査パルスを印加する第2の書込み期間とで構成する、いわゆる2相駆動によるパネルの駆動方法にも適用させることができ、上述と同様の効果を得ることができる。
なお、本発明における実施の形態は、走査電極と走査電極とが隣り合い、維持電極と維持電極とが隣り合う電極構造、すなわち前面板に設けられる電極の配列が、「・・・走査電極、走査電極、維持電極、維持電極、走査電極、走査電極、・・・」となる電極構造(「ABBA電極構造」と呼称する)のパネルにおいても、有効である。
なお、本実施の形態において示した具体的な各数値は、表示電極対数1080の50インチのパネルの特性にもとづき設定したものであって、単に実施の形態の一例を示したものに過ぎない。本発明はこれらの数値に何ら限定されるものではなく、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等に合わせて最適に設定することが望ましい。また、これらの各数値は、上述した効果を得られる範囲でのばらつきを許容するものとする。
本発明は、大画面化、高精細化されたパネルであっても、消費電力を削減しつつ放電を安定に発生させるとともに、表示輝度を均一にして画像表示品質を向上させることができるプラズマディスプレイ装置およびパネルの駆動方法を提供することができるので、プラズマディスプレイ装置およびパネルの駆動方法として有用である。
1 プラズマディスプレイ装置
10 パネル(プラズマディスプレイパネル)
21 前面板
22 走査電極
23 維持電極
24 表示電極対
25,33 誘電体層
26 保護層
31 背面板
32 データ電極
34 隔壁
35 蛍光体層
41 画像信号処理回路
42 データ電極駆動回路
43 走査電極駆動回路
44 維持電極駆動回路
45 タイミング発生回路
46 全セル点灯率検出回路
47 部分点灯率検出回路
48 最大値検出回路
49 駆動パターン選択部
50,80 維持パルス発生回路
51,81 回収回路
52,82 クランプ回路
53 初期化波形発生回路
54 走査パルス発生回路
60 点灯セル数算出部
61 負荷値算出部
62 補正ゲイン算出部
64 放電セル位置判定部
68 乗算器
69 補正部
70 ローディング補正部
72 スイッチ
101,111,112 信号レベル
102,113 発光輝度
121,131 点灯状態
122,132 算出値
Q11,Q12,Q13,Q14,Q21,Q22,Q23,Q24,Q26,Q27,Q28,Q29,QH1〜QHn,QL1〜QLn スイッチング素子
C10,C20,C30 コンデンサ
L10,L20 インダクタ
D11,D12,D21,D22,D30 ダイオード